ヒューズベインの書棚

Hew’s Bane Bookshelf

71ページ:エレンデットの貸借報告書Page 71: Erendette’s Account

栽培の月
また満足なお客さんだ!
未払総額:金15

真央の月
返済:金5。エレンデットは指示通り商品を積み直して運んだ。
借金:金22。(エ)はよく喉の乾く女だ!
借金:金9。(エ)が勝手に私の在庫に手を出した!

未払総額:金41

南中の月
返済:金7。(エ)がまた盗みを働いているか究明する。
借金:金31。(エ)はここの秘密の品が好きで仕方ないようだ!

未払総額:金65

メモ:借金を払うまで、返済は中止。(エ)にはもう商品を与えない。

メモ:支払いは金のみ受け付ける。働いて借金を返済させると、(エ)は在庫の損失で余計に金がかかる。

アバーズ・ランディングの商人王 第1巻Abah’s Landing Merchant Lords, V. 1

タネスの女王の秘密の主、タモニール 著

偉そう。傲慢。自己中心的。アバーズ・ランディングの自称商人王たちを表す言葉のほんの一部だ。4つの貿易会社のはじまりは約160年前。当初はハイロックとヴァレンウッドを結ぶ商業と貿易の中心として、アバーズ・ランディングを高めるべく努めるまともな会社だった。だがヒューズベインは文明を発展させようとする者に厳しく、不法な利益を追求する会社がまっとうなものを次々に追い抜き、会社はその努力に反して日増しに腐敗していった。

目立つようになった4つの貿易会社はアトアディン・シンジケート、ヴィエン家、サザール・カルテル、そしてガージェス・アンド・アソシエイツだった。やがてこの4社の王たちが港町の商業と金を全て動かすようになった——合法なものも、違法なものも。利益のほとんどは密輸、奴隷などの違法取引からきていた。商人王たちはアバーズ・ランディングに商品やサービスをもたらしつつ、遠方の地と(控えめに言うと)有益な貿易協定を結んでいた。アバーズ・ランディングが豊かになってくると、他のグループも興味を示し始めた。ここから商人王たちと地元の犯罪者たちとの長く騒がしい関係性が始まったのである。「隠れた」貿易会社の噂まで出回り始め、実際に大手貿易会社と「隠れた」貿易会社の間で、水面下での戦争が行われていた形跡も残っている。この抗争についての詳細を暴くには至っていないが、その結末は明らかである。ガージェス・アンド・アソシエイツは潰され、他の3社も以前の栄光は見る影もないほど廃れ、隠れていた勢力が港町の支配者となった。

ここ15年ほどは、貿易会社たちは一歩引いている。もちろん事業は続けているし、衛兵やインフラといった街のサービスに資金提供もしているが、それまで何十年と見せてきた自信と威勢の良さは見られない。どの市長、どの貿易会社、どの秘密ギルドが中心に立ったわけでもないが、闇の奥深くから誰か、もしくは何かがアバーズ・ランディングを動かしているのは私には明らかだ。そのため、ヒューズベインと取引をする際は注意するよう勧める。

次の報告書では、エリア内で営業している大手貿易会社それぞれの背景について説明していこうと思う。

(メモ:この報告書はタネスの船舶から「回収」され、アバーズ・ランディングの関係者に届けられたものである。湾の向こうの親戚たちが我々のことをどう思っているのか皆に知ってもらうために公開した——匿名)

アバーズ・ランディングの商人王 第2巻Abah’s Landing Merchant Lords, V. 2

タネスの女王の秘密の主、タモニール 著

アバーズ・ランディングの貿易会社の中でも先駆けであり、その末裔たちによれば最も偉大な貿易会社がアトアディン・シンジケートである。武勇と愛想のよい人柄で知られるレッドガードの男アフシュール・アトアディンによって創立され、育てられ、120年近くにわたり繁栄した。野心家アフシュールは初めレッドガードの剣、オークの斧、ウッドエルフの弓などを売買する素朴な武器商人だった。当時の客は主に目的地へ向かう途中でアバーズ・ランディングに立ち寄っていた海賊や私掠船だったが、それらの船舶や船員と輸送契約を交わすようになるまで長くはかからなかった。

時が経つとシンジケートは商品に鎧や盾を加え、身を守ろうとする者や船で戦いに突入しようとする者が、一気に買い物を済ませることのできる場を提供しようと試みた。海賊団、傭兵団、国に仕える私掠船までもが、品質と保証を証明するシンジケート印の入った武器や防具を求めてごった返すようになった。こういった繋がりから、また新たに有力な収益源が生まれた——シンジケートは傭兵契約の仲介業を始めたのだ。

現在のリーダー、オラハン・アトアディンは、シンジケートを厳しく支配している。冷酷で才気あふれるレッドガードである彼は、全ての交渉を戦いのように、全ての競争を戦争のように扱う。その実、戦争こそがアトアディンの主要な取引分野となっており、そのおかげで近年貿易会社を襲う謎の災難を受けても利益をあげ続けることができている。わが女王も承知の通り、私が「隠れた貿易会社」と呼んでいる謎の組織は、実態を捕まれることを避けつつも確実に策謀を張り巡らせている。私は必ずその真相にたどり着く。ただ、それがいつになるか分からない。

オラハン・アトアディンは武具や兵器、傭兵契約、さらには紛争があれば敵味方問わず物資を密輸するといった商売を行っている。彼は金さえ入ってくれば、カバナントに武器を、パクトに鎧を、ドミニオンに物資を売ることもいとわない。貿易会社たちを抑制し、巧みにもひそかな攻撃で衰えさせていた勢力が急に消え、シンジケートは再びアバーズ・ランディングで力を強めようと動き出している。

他に懸念すべきこともあるが、オラハンやその家族と関わる際は注意するよう勧める。しかし誤解して欲しくないのだが、ヒューズベインとアバーズ・ランディングで何かを成し遂げようとするならば、彼らは避けて通れない存在だ。

(メモ:この報告書はタネスの船舶から「回収」され、アバーズ・ランディングの関係者に届けられたものである。湾の向こうの親戚たちが我々のことをどう思っているのか皆に知ってもらうために公開した——匿名)

アバーズ・ランディングの商人王 第3巻Abah’s Landing Merchant Lords, V. 3

タネスの女王の秘密の主、タモニール 著

必然的なことだった。悪徳と腐敗に満ちたアバーズ・ランディングには欲を満たす主人、いや女主人が必要だった。腐敗と道楽の渦巻く港町に自分の居場所を築こうと、威厳と大樽一杯の金を手にウェイレストからアバーズ・ランディングへとやってきたのがレディ・フェリス・ヴィエンだった。彼女がやって来たいきさつについてはほとんど情報が残っていないが、ウェイレストの著名な貴族であった夫と、その死との関わりが原因であったことは突き止めることができた。

アバーズ・ランディングに来た理由が何であれ、レディ・フェリスはすぐさま土地を購入し、酒場兼宿屋ウィンサム・ウェルワを設立して港の話題を呼んだ。はじめは小さな宴会場だったが、やがて他の娯楽、より合法性の低い娯楽も提供するようになった。レディ・フェリスはアバーズ・ランディングを通り抜ける人々が持つ悪習に目をつけ、その欲を満たすことができれば金が稼げると考えたのだった。

ヴィエン家は現在、違法薬物や売春といったアバーズ・ランディングの私的で隠された欲を満たしている。ハイロックの悪名高きチェイストハーピーを真似たウィンサム・ウェルワは売春宿となっており、現在の当主レディ・イレニー・モンテインの本拠でもある。他の貿易会社と同じように災難に見舞われながら、彼女は海賊や商人団、多少の冒険を求める貴族の訪問者の違法な需要を満たすことで、ささやかながら利益をあげ続けている。ヴィエン家の商売は全てレディの鋭い監視の下で、アバーズ・ランディングに集中している。街を歩く彼女は、上品で優雅な態度で顧客や訪問中の貴人と接する。しかし暴力的、殺人的ともいえるほど気が短い——不幸にも彼女のそういった一面を見てしまった者で、それを生きて語り継げる者は少ない。

性行為や薬物と同じように、秘められた情報もレディ・イレニーの商売道具である。絶対に裏切らず、彼女が提供する快楽に関わらないのであれば、目的達成の心強い味方となるかもしれない。

(メモ:この報告書はタネスの船舶から「回収」され、アバーズ・ランディングの関係者に届けられたものである。湾の向こうの親戚たちが我々のことをどう思っているのか皆に知ってもらうために公開した——匿名)

アバーズ・ランディングの商人王 第4巻Abah’s Landing Merchant Lords, V. 4

タネスの女王の秘密の主、タモニール 著

はじめてアバーズ・ランディングの貿易会社ができた頃、他から突出した会社があった。リーダーが変わっているだけでなく、そのリーダーが選んだ業種もまた異質だった。サザール・ラと名乗るカジートが設立したサザール・カルテルは、卑劣でありながら欠くことのできない、港町での奴隷貿易を商売にした。男性の敬称「ラ」を授かった、カジートの歴史の中でも数少ない女性であるサザール・ラは、帝国人、ブレトン、レッドガード、そして少数のカジートから成るカルテルを作り上げた。

カジートに奴隷商売のカルテルが運営できるのか?と疑問に思うかもしれないが、結果から言うとかなり上手にできている。利益次第では我が子をも売りさばく女、サザール・ラの伝説は、カルテルの富の増加とともに広まっていった。遠い国へ向かう途中のアルゴニアンやカジートの奴隷を仲介するかたわらで、カルテルは密輸や情報の売買にも事業を拡大した。同族を売り飛ばすことにも躊躇のないカルテルは非常に危険な存在だ。時が経つにつれ、競合者たちもそれを思い知ることとなった。

今は6代目となるカジート女性サザール・ゴールドファングがサザール・カルテルの商人王となっている。彼女はアバーズ・ランディングの貿易会社の現状にも、自身の事業の現状にも満足しておらず、落ち着きをなくしているように見える。貿易会社を害した何かは、このカルテルには特に大きな打撃を与えたようだ。彼女は「隠れた貿易会社」の活動以前に誇った権力と名声を取り戻し、先祖と同じ栄誉ある敬称を受け継ぐことを切望している。

サザール・ゴールドファングは怒りと野心で煮えたぎっている。本人は自分がアバーズ・ランディングで一定程度の富と敬意を手にするのは当然のことだと考えているが、率直に言ってそれは難しい。そのため彼女は苛立ち、不安をかかえ、かなり危険である。私の忠告を聞くか?あのカジート奴隷商人には近づくな。10フィート圏内にもな。

(メモ:この報告書はタネスの船舶から「回収」され、アバーズ・ランディングの関係者に届けられたものである。湾の向こうの親戚たちが我々のことをどう思っているのか皆に知ってもらうために公開した——匿名)

アバーズ・ランディングの商人王 第5巻Abah’s Landing Merchant Lords, V. 5

タネスの女王の秘密の主、タモニール 著

次は私が「落ちた貿易会社」と呼んでいる、アバーズ・ランディングの4つ目の大手貿易会社の哀れで不幸な運命について説明しよう。ガージェス・アンド・アソシエイツの歴史は、今ではシロディールの記録から消え去ってしまった有力かつ強大な帝国の一家へとさかのぼる。ヒューズベインの商人王たちが力をつけてきたころ、アビシアンの海賊王として知られていたイソベル・ガージェスが襲撃と略奪をやめ、それなりに法に則った事業でその勢力を拡大していった。

当然ながら、アバーズ・ランディングのような場所で言うところの法に則った事業は、一般的な解釈とはだいぶ異なる。イソベルは最初、法外な利子をつけて金を貸し付けていたが、やがて彼女率いるガージェス・アンド・アソシエイツはギャンブル、盗品商、不正資金の洗浄、強奪などに手を染めるようになった(強奪については、部下に商船から貨物を盗ませ、その同じ商人たちに売りつけることで手っ取り早く利益を得ていた)。

15年前の貿易会社危機がアバーズ・ランディングを襲うと、ガージェス・アンド・アソシエイツは破産寸前に追い込まれた。それ以降の暴動と、三旗戦役に至るまでの出来事で、その悲運は決定的なものになった。今のガージェス家には一族と忠臣が一握り残るのみで、現当主のマルチヌス・ガージェスは嫉妬にまみれた悲惨な男だ。だが奴には計画がある。会社を立て直し、富を取り戻し、ガージェスの名が再びアバーズ・ランディングで称えられ、尊敬され、恐れられるようにする計画だ。しかし、その夢を叶える道のりは長い。

(メモ:この報告書はタネスの船舶から「回収」され、アバーズ・ランディングの関係者に届けられたものである。湾の向こうの親戚たちが我々のことをどう思っているのか皆に知ってもらうために公開した——匿名)

アバーズ・ランディングの商人王 第6巻Abah’s Landing Merchant Lords, V. 6

タネスの女王の秘密の主、タモニール 著

これを君に送ろうかずっと悩んでいた。内容は全て仮説や憶測に過ぎない。証拠がないんだ。君に見せられるようなれっきとした事実が。とはいえ、君には私の考えを知ってもらう権利があると判断した。ダークエルフたちが言うように、用心するに越したことはないからな。

前の報告書では、アバーズ・ランディングの貿易会社を妨害し、攻撃までしている別の組織が存在すると示唆した。これを「隠れた貿易会社」と呼んできたが、もっと良い名がある。影のコングロマリットだ。夜中に目の前に広がる大きく深い裂け目のごとく、暗闇の中に確かに存在しているのに、影のコングロマリットは目で見ることができない。

影のコングロマリットとは何なのか?私には分からない。組織の真実を暴けるところまで来たかと思えば、また次の手掛かりを求めてあちらこちらと飛び回らされ、結局いつもあと一歩で届かないところにいる。これまでに分かったことを記す。影のコングロマリットはおそらく40年ほど前に組織された。そしてそれまで1世紀もの間、独占状態にあった商人王たちの前に現れて挑戦状を叩きつけた。そこから25年以内に、影のコングロマリットは貿易会社たちが一歩引き、権力と影響力の一部を譲らなければならないほどの力をつけた。

闇の奥深くで、何らかの戦いが起こったのだろう。この戦いで隠れた貿易会社が勝ち、表に出ている貿易会社たちは痛手を負い、築き上げた玉座から突き落とされたのだ。最も悲惨だったのはガージェス・アンド・アソシエイツで、ほぼ一夜にして総崩れとなり「落ちた貿易会社」と呼ばれるようになった。

影のコングロマリットがアバーズ・ランディングの真の権力者なのだろうか?それがはっきりと断言できないのが、私の一番の悩みだ。

(メモ:この報告書はタネスの船舶から「回収」され、アバーズ・ランディングの関係者に届けられたものである。湾の向こうの親戚たちが我々のことをどう思っているのか皆に知ってもらうために公開した——匿名)

アバーの地域史を完成させるための助力求む!Help Complete Abah’s Local History!

アバーズ・ランディングの市民たちよ!ヒューズベイン記念日の委員会議長の役に立候補し、この職についたことは私の名誉であります。私はこの任を活力と情熱を持ってやり遂げることを誓います!本年の展示は我らの基礎を築いた人物(そして私の母方の祖父という意味で、我が先祖)である、フバラジャード王子の生涯と実績に賛辞を捧げる予定であります!

ヒュー王子の統治時代に遡る種々の歴史的価値を持つ物品の展示に加えて、私が希望しておりますのは、我々の展示コレクションに初めて、「ヒュー王子の大失敗」として知られる、名高く非常に収集価値の高い一連の書籍が加わることであります。そのために、私はこれらの愛すべき書の個人的なコレクションを祭典に貸し出すつもりです。その中には以下のものが含まれております:

——ヒュー王子と使者の爆裂パイプ
——ヒュー王子とハジ・モタの戦車
——ヒュー王子とアイアンレガッタ
——ヒュー王子と二人三脚
——ヒュー王子とペットのトク・ガーヴァ
——ヒュー王子と精霊のパレード
——ヒュー王子とキンドルピッチの泉
——ヒュー王子とオーガのバレエ

目の利く方であればすぐさまお気づきになることでしょうが、このコレクションに欠けているのは1冊だけです。それは悲劇的なまでに希少な「ヒュー王子とスプリガンのバーベキュー」であります。もしこの珍しい本がアバーズ・ランディングで見つかるようなことがあれば、所有者の方にとって我々のコレクションに貸し出すことは市民的寛容の行いとなるでしょう(そしてもし所有者の方に上記の本を売るつもりがおありならば、私は多大な額の報償を提示するつもりです!)

また、我が愛すべき配偶者のレディ・ワラヴィルが他の業務に追われているため、委員会は祭典での発表者として「ヒュー王子の大失敗」の著者と目されている次席高官ハフジファー・アルヤスの役を演じていただくため、それなりに演技のできる美しいレッドガードの女性を探しております。興味のある方はぜひ館にて直接手続きをしていただきたい。

——フザハー・ワラヴィル卿、大公

アルダノビアの強奪日記からの抜粋Excerpt from al-Danobia Heist Journal

フーンディングの道を開くには、トゥワッカの柱を通過しなければならない。その後、マルークの道をたどれば長身のパパの水差しの聖なる灰を手に入れることができるだろう。それによってシンジの真実が明らかになり、そこから宝物庫にたどり着くことができる。

トゥワッカの柱を通過するのが最初の問題だ。ヨクダの将軍たちの装飾がついた錠が壁に設置されている理由が他にあるだろうか?もしこれまで同様、我が知識が正しければ、この錠はナリマヤとトゥナスカの兄弟を基にした物語への言及になっているはず。文書を探して、何か手掛かりになるものがないかどうか探してみる必要がある。

宝物庫に関係があるかもしれない古い文書からの抜粋を見つけた。後で必要になるかもしれないから、書き記しておく:

「こうして、兄弟はそれぞれ戦場に立ち、夜の静けさの中、対峙した。各軍の死体が足元に横たわっていた。彼らの周囲で燃える炎により、戦場は淡い黄金色に照らされた。トゥナスカは北に立ち、彼の将軍であるアキシュとブーリズを従えていた。南に立つナリマヤはこれに対峙し、彼女の信頼する2人の参謀、ニシュカとプントルを従えていた。2人には、これが最後の戦いになるであろうことがわかっていた。2人のうちどちらにとっても、これが生もしくは死への扉を開く戦いになるだろうと」

これは明らかに、将軍たちがそれぞれ、参謀たちの真ん中に位置していたことを意味している。宝物庫への手がかりだろうか?あとはあの部屋に入って、将軍たちの順序を解明できるかどうか試してみなければならない。それと炎についての言及は?方角?どれも決定的な情報になりうる。

文書のこの部分と一致するもので、何か順序を示しているものがないかどうか注意していたほうがいい。部屋の中の何かがこれに言及しているに違いない。順番か、それとも数?とにかく何か。良い予感がする。きっと財宝がじきに手に入る!

ヴァズシャラの日記Vazshara’s Journal

ヴァズシャラが疑うモンクでいたのはたった1週間だというのに、もう自分の決断を後悔している。2つの王国が築かれる以前にここで何が起こったのか誰も話さないけれど、それはいつでもみんなの心の中にある。まるで大きなセンチタイガーが私たちの晩餐を食べているのに、その鼻先をひっぱたいてやることを禁じられているみたい。どこかの月の司祭がここで闇をかき混ぜて、ドロ・マスラをニルニに送ってやったってことはみんな知ってる。でも、なぜ?どうやって?誰もそのことは言わない。ヴァズシャラはもちろん、あらゆる噂を聞いている。ジャ・カジートが誰も聞いていないのを確認してから笑うような、しょうもない物語。たいていのカジートは笑うけれど、馬鹿みたいな話はよく、暗い真実を隠していることを私は知っている。ここで本当に何が起きたのかを見つけださなきゃ。

* * *

書いていて、ヴァズシャラの爪がつりそう!ものすごくたくさんのモンクたちと話して、その話を紙に書きとめた。認めなければならないけれど、これらの話はジャ・カジートとして学んだ物語よりもずっと暗い。役者たちはいつも同じ。頭のおかしいモンクたちと、「石を打つ者」と呼ばれる月の司祭。どうやら、この司祭は魔法の杖を持っていて、それで地面を打つと秘密を話し出すらしい。この魔法の杖がどこからやって来たものなのか、あるいはこの月の司祭が死んだ後どこにいったのか。それは誰も知らないから、ただの作り話かもしれない。でも、謎はひとつずつ解決しなきゃ、そうでしょ?

明けても暮れても、この月の司祭は地面を打って、ニルニのあらゆる秘密を学んでいた。でも結局、魔法の杖はニルニの秘密を出し尽くしてしまい、もっと暗い秘密を語り始めた。ナミイラの秘密を。打つ者はひたすら耳を傾け、年老いて正気を失ってしまった。聖堂のモンクたちも正気を失った。なぜなら、石を打つのが決して止まなかったから。それは大きく、規則的な音だった——コンコン、コンコン、コンコン。心臓の鼓動みたい、そうでしょ?ついに、モンクたちは石を打つ者を殺す計画を練った。モンクたちはハイ・ルナリウムに彼を誘い込み、湾曲したナイフで死ぬまで刺し続けた。打つ者の死体からすべての血と秘密が流れ出して聖堂の扉を打ち開き、モー・オブ・ローカジュと、その先にある闇を明らかにした。

ここからは物語が食い違ってくる。いくつかの説明で、打つ者は血が流れ出してしまった後に起き上がり、稲妻でモンクたちを全員殺してしまう。他の説明では、ローカジュの喉元から大きな翼を持つ獣が飛び出してきて、その爪と牙でモンクたちを切り刻んでしまう。でも、これじゃ意味が通らない。聖堂のそこら中に散らばっている封印は明らかに、月の司祭がモンクたちに挟み撃ちにされて、ベント・スピリットを召喚したことを示している。それに私はハイ・ルナリウムにある扉がどんな見た目をしているか知っている。だから打つ者は生き残って、少なくともモンクたちのうち何人かをベントの踊りに押し込んだはずじゃない?まあいいか。もしかしたら罪の意識だったのかもしれない。疑うモンクは評判が悪いから。多くのカジートがドロ・マスラの解放に教団が一役買っていると考えている。もしかしたら本当かもしれないって思い始めてきたわ。ヴァズシャラもパパの言うことを聞いて、漁師にでもなっておくべきだった。などなど。

* * *

こんな場所は滅びてしまえ!今日、クラン・ドロ修道院長がハイ・ルナリウムにヴァズシャラを呼び寄せて、人生で最悪の罵声を浴びせてきた。「おしゃべりはもうなし!質問もなしだ!」まったく!いったいこの場所のどこに喋れるものがあるっていうの。この聖堂は墓よ。誰も笑わないし、歌ったり、踊ったりもしない。ただ詠唱して、囁いて、尻尾をしまって祈るだけ。それだけでもヴァズシャラは逃げだしたくなるけど、まだあるのよ。修道院長の目に何かがあった。怒りじゃなかった…いいえ、違う。あれは何というか…無だった。鈍くて暗い無。死んだ猫の目みたい。尻尾が立っちゃったくらいよ。ヴァズシャラはもう我慢できない。夜が明けたらすぐに海へ向けて出発するわ。この場所に月の呪いあれ、それから修道院長にも!

ウェイクウォーカーの指令Wake Walker’s Orders

獣使いロドロスへ

上陸部隊を連れて、鮫の歯の洞窟を探せ。新しい准将が喜ぶような、好意を抱かせるような贈り物を見つけろ。噂通りなら、鮫のシャルグは数多くの貴重品を洞窟の内部に隠しているはず。歩き手たちには好きなように略奪させてやっていいが、准将が興味を持ちそうなものは全てとっておけ。

だが獣使いよ、本当の目的を忘れないように。もしクローナ・キーバと呼ばれる伝説の生き物が実際に洞窟の奥深くをうろついていたら、そいつを手なずけて俺のところに連れてきて欲しい。新しい准将のための贈り物として、ペットのハジ・モタ以上のものは考えられないからな!そんな生き物を手にすることができれば、他の海賊船の連中の羨望の的になるだろう。准将だって感激しないはずがない!

さあもう行って、あの生き物を見つけてきてくれ!

ウェイクウォーカーのドロリオン船長

ウェイレストへ捧ぐファランゲル王の頌歌King Farangel’s Ode to Wayrest

これは余の初めての詩作の試みである。これらの言葉は歴史に名を残すであろう。

「猛烈な波がうなり、暗闇のかかった海辺に寄って砕ける。
汝の塔の光は天空に輝く星々にも匹敵し、
その光は影の入り江において倍増される」

だめだ。これはいかん。これでは高尚すぎる。余はこれを皆が共感できるものにしたいのだ。歌ではどうだろう?

「もしも余に娘がいたら、きっと彼女はこう言うだろう。
ウェイレストの男に、毎日一緒にいて欲しい!
そしてもし息子がいたら、きっと彼は望むだろう。
ウェイレストの女と、毎晩一緒にいたいって!」

おっとっと。変な方向に行ってしまった。それもすぐにだ。書記よ、どう思う?何か考えはあるか?

「「ウ」は麗しいこの街の「ウ」
「エ」は偉い王様ファランゲルの「エ」
「イ」は行きたくない場所ダガーフォールの「イ」、あの汚くて臭い貧民街」

よくわかった。これではどうにもならん。こういうことは吟遊詩人に任せるべきだと思う。

なぜまだ書いているのだ?書記よ、確かに余はすべて書き留めろと言ったが…よいか、命令に従わねば死刑にするぞ、止め——

ヴェルサへの手紙Letter to Velsa

あなたを見つけるまで長い時間がかかった

誰かがあなたのことを思っていると知っておいて

あなたの幸せを願っている

ヴェンティリアス・プロキシマスの日記Journal of Ventilias Proximus

またザルガクに裏切られた!奴のところの口の軽い馬鹿が我々の取り決めを漏らしたに違いない

もっと死体が必要だ!ボロボロになっている方がいい。ザルガクの提案にあれほどそそられた理由はそこにある

だがこの「コッシュ」がザルガクを脅迫してノー・シラ要塞に呼び出した——鉄の車輪の本部だ!ザルガクがこの新しい商人王の遊びに参加しなければ、鉄の車輪が俺を訪ねてくるまでどれくらい時間がかかるだろう?

この薄汚れた穴で死にはしない。黒き虫の教団が俺を受け入れるだろう、それは確かだ——ただ自分の価値を証明するために、あと少し魂が要る…

エバニ船長の記録Captain Evani’s Log

記録184
アバーズ・ランディングの盗賊ギルドはタネスの傭兵に潰された。商人王たちがとうとう押し戻したの?アンヴィルの連中と協働するチャンスかもしれない。

記録188
少量の積荷がアバーズ・ランディングの連絡係に配送された。次回は大量に送る。

記録191
新しい准将ということは、至急金が要る。敬意を示すにはそれしかない。次回アンヴィルに行ったらできるだけ荷を積まないと。

記録193
裏切られた!この「コッシュ」は何者?私たちがスクゥーマを密輸するとどうやって知ったの?ノー・シラ要塞で奴に会わなければ、奴は鉄の車輪に私の船を襲わせる!

私が船を遠海にやったら、きっと准将は私たちに敬意を示すつもりがないんだと考える。でも連絡係が怯えて、私たちの荷の受け取りを拒否する。

コッシュのせいで困ったことになった。あの忌々しい古い砦で奴に会うしかない。他に選択肢はない。

エルフと卵とドラゴンみたいなものThe Elf, the Egg, and the Almost-Dragon

幼いイオリは、夜は祖父からエンシェント・ドラゴンの話を聞き、昼は近くの沼でその痕跡を探しまわるという日々を送っていた。一度ドラゴンのものだと信じて、きらきら光るうろこを持ち帰ったことがあった。祖母はただのワマスの皮だと言って、家から遠く離れたことでイオリをきつく叱った。

それでもイオリは諦めなかった。ドラゴンを見つけたい一心で探し続けた。毎日どんどん祖父母の小屋から遠く離れるようになり、ある日暴風雨に遭ってしまった。近くの洞窟に避難したが、そこは汚い水で水浸しになっていた。水たまりを避けながら何とか洞窟の奥までたどり着くと、イオリは思いがけないものを見つけた——それは大きな緑色の卵だった!

暖かい泥に半分埋まったその卵は、命の鼓動で脈打っていた。これはドラゴンの卵に違いない、とイオリは確信した。祖父の話に出てくるドラゴンの卵はいつも大きく、堅く、温かいものだった。この卵も、とてもとても温かかった。

孤独な卵だった。母親のドラゴンも、それ以外の生き物の形跡もなかった。今卵がかえれば、赤ちゃんドラゴンの世話をする者がおらず死んでしまうだろう、とイオリは思った。

「家には持って帰れない。おばあちゃんに潰されるか、料理されちゃう!」彼女の祖母はドラゴンや卵など信じておらず、きっと食べ物として認識されてしまう。

「ここに残るのも無理ね」暗くなってから帰ればどんなお仕置きが待っているか、考えたくもなかった。「どうすればいいの?」

降りしきる雨を眺めながらイオリは考えた。「嵐はひどくなる一方。今帰ろうとすれば道に迷うか風邪をひいちゃう。おばあちゃんも分かってくれるわ」そう自分に言い聞かせて、一晩泊まることを決意した。

次の日の朝、入り口から差し込む日差しを浴びてイオリは目覚めた。それまで経験したことのないほどの空腹感に襲われたが、それでも第一に考えたのは卵のことだった。暖かい泥の中から卵を掘り出し、観察した。卵はとても熱かった!

「きっともう生まれる寸前なんだわ!」興奮してイオリが言うと、それに答えるかのように洞窟の外からうなり声が聞こえてきた。「お母さんドラゴンかな?」と彼女は思った。しかしドラゴンの洞窟に閉じこめられるとなると、良い予感はしなかった。

さらにうなり声と、鼻をクンクン鳴らす音が聞こえた。外にいたのはドラゴンではなく、グアルだった!イオリは片手に卵、もう片手に石を持ち、ゆっくりと洞窟を出た。そこにいたのは地面に鼻をつけるグアルだった。グアルは彼女を見ると、またクンクンと鼻を鳴らした。

「あげない!」そう叫んでグアルに石を投げつけた。石は鼻に強く当たり、グアルは鳴き声をあげた。しかしこのグアルは家の近くで見る、飼いならされたものとは違った。飼いならされたグアルはうなったりしないし、怒って前足で地面を引っかいたりもしない。

イオリは走った。グアルが追いかけてきて、彼女はだんだん恐ろしくなってきた。卵をぐっと胸に寄せて、木の枝や転んだときの衝撃から守った。恐ろしすぎて、グアルが諦めてからもしばらく走り続けた。しばらくしてイオリは力尽き、膝から崩れ落ちて座り込んだ。

「もう安全だと思うよ、ドラゴンちゃん」そう言ったイオリの表情は、一瞬にして再び恐怖にとらわれた。卵を見るとそこにはヒビが入っていたのだ!「キャー!」イオリは泣き叫んだ。きっと強く抱えすぎたか、木の枝に当たったか、もしくは——

すると1つ、また1つとヒビが入っていった。中から押し出されて、殻が落ち始めた。

「生まれるのね!」イオリはどうしてよいか分からず、きょろきょろと辺りを見た。地面に置こうとかがみつつ、ためらった——逃げちゃったらどうしよう?だが傷つけたくもなかったので、あぐらをかいて汚れたエプロンをハンモックがわりにして、卵を膝の上に置いた。

そのまま卵はガタガタと揺れながら崩れ続け、やがて穴からドラゴンの鼻が出てきた!明るい緑色で、少しネバネバしていた。目が開き、イオリを見上げた。くさび形の頭からフォークのような形の舌が現れ、彼女の気持ちは高ぶった。いよいよドラゴンが生まれるのだ!

残りの殻が全て崩れたが、驚くことにその「ドラゴン」には爪はおろか、脚すらなかった。小さな翼の生えたヘビだったのだ。膝にヘビの赤ん坊を乗せるなど、イオリの友達であればゾッとするようなことだが、彼女はただただあっけに取られていた。ドラゴンの話はたくさん聞いたが、翼の生えたヘビの話など聞いたことがなかった!

生き物が殻を完全に振り払うと、イオリはその破片を慎重に片付け、両手でヘビを包んだ。少し冷たかったが、手の中で温もりを帯びていくのが分かった。眠そうな蛇の目でイオリを見上げると、2回まばたきをして、眠りに落ちた。

「まあでも、ドラゴンみたいなものよね?」

カリの品目一覧Kari’s Hit Rist

新人たち、注意して!過去において、盗賊ギルドのメンバーたちは仲間の中で一番の者を決めるために、最も貴重で価値の高いお宝を、タムリエルで最も有力な人々から盗んでいたの。現在のところ、我々にはそういった種類の注目を集める必要は一切ない。本当よ。

とはいえ、あなたたちが技を磨き、実力を見せつけることは重要であるとギルドマスターは考えているの。だから私は特別なものではあるけど、誰もそれを取り返すために軍隊を送らないような品物の目録を作成しておいたわ。見つけて盗んでみて。証拠として、隠れ家まで持って来なさい。

これは自慢のためのものであり、金のためではないわ。だから私のところに来る時、こうした品物に多額の報酬を期待しないでね。

アバーズ・ランディング:ヒュー王子がまだ生きていた時代銀行家のひいひいひい(中略)じいさんの代の甥っ子が、この哀れな間抜けの葬儀壺をまだ持ってる。今は花瓶として置かれているそうよ。

グリーンシェイド:魔術師ギルドはある樹の従士のために、奇妙な生きた本の修復作業をやっている。多分、水をやるとかそういうことでしょう。

オーリドン:ナエモン王子は記念のデキャンタを持っていた。自分の戴冠式のために注文したんだけど、式が行われることはなかった。噂では、まだスカイウォッチの邸宅に展示されているらしいわ。

マラバル・トール:古いウッドエルフの物語に、あまりにも優秀なので、呪われたハープで大会に優勝した詩人の話がある。誤った者の手に渡って誰かの鼓膜を吹っ飛ばしたりしないように、ハープは魔術師ギルドが保管しているそうよ。

リーパーズ・マーチ:魔術師ギルドはラウル・ハの屋敷にいる、ある年老いたカジート戦士の古い持ち物を気遣っているわ。不幸なのは、それが彼の痰壺ということね。

グラーウッド:カモラン王朝の一人が戦闘で死んだ時、その代わりを務めることになっていたマネキン人形があるわ。どうやらそれは見破られたみたい。というのも、大使館で埃をかぶっていたからね。

アリクル砂漠:砂漠にいる裕福な宿屋の主人がある古い鉢を持っている。本人の主張では、彼の血筋があるラ・ガーダの英雄にまで遡ることを示す家宝だそうよ。見た目は人を欺くと言うけど、それにしても疑わしいわね。

ストームヘヴン:ウェイレストの最初の王はいい王様だったかもしれないけど、詩人としてはひどいものだった。彼の作品を収めた未刊行の本が1冊、魔術師ギルドに保管されているわ。朗読しなくていいわよ。

バンコライ:ヨクダの征服者たちの中でも比較的几帳面だった者が、自分の所持品を片付けるのに巨大な文鎮を必要としていたそうよ。これは私の手元に置くことになるかもしれないので、そのつもりでいるように。

グレナンブラ:ダガーフォール城を飾っているじゅうたんのひとつが魔法の力を持っているそうよ。どうしてそんなものを何かの役に立たせずに、ただ置きっぱなしにしているのかは知らないけど。

リベンスパイアー:戦士ギルドはショーンヘルムのお姫様がエメリック王にあてて書いた手紙をいくつか持っているらしい。王が彼女を捨てて、センチネルのお姫様のところに行く前のものよ。興味をそそられるわね。

イーストマーチ:イーストマーチの住民たちは、ジョルン王が叩き壊した古代ドワーフの品が次の宴のメインになると言っているわ。今は現地の魔術師ギルドで修理されているそうよ。

ストンフォール:ある宿屋の地下に、エボンハート・パクト結成時の古い紋章が転がっているそうよ。特に懐かしんではいないようね。

シャドウフェン:ブラック・マーシュでアルゴニアンと一緒に住んでいる奇妙な部族がいるそうよ。驚くことでもないけど、彼らはみんな死んでいる。でも、アルゴニアンはアーティファクトの一部をそのままにしているみたい。何か宗教的な祈りの対象があるんでしょうね。

デシャーン:ほとんどの場合ドワーフのアーティファクトは高値がつくけど、モーンホールドの周囲では一部の旗が奪われ倉庫に放り込まれているそうよ。もう少し深い話がありそうね。

リフト:イスグラモルは一般に戦士ギルドに崇拝されている。彼らはイスグラモルのように利き腕で同じ杯から飲むのよ。でも、彼の古いワインの内、まだ残っているものがあるらしいわ。

キルナの消息Word of Khiruna

キルナの人相書きは市場で巾着切りを衛兵に見つかったときのものだと猫会議で聞いた。鉄の車輪の攻撃の後だが、アジトで嵌められる前の話だ。

噂では、彼らは彼女を罰金刑にして釈放する気だったが、もっと金を稼ぐため鉄の車輪に彼女を引き渡すことに決めたらしい(これは商人王が主任調査官ランビクは仕事に有害だと判断する前だった)。最後の噂によれば、彼女は ノー・シラ要塞へ向かう船に乗せられたらしい。その後は何も聞こえてこない。

—スラグ

クラン・ドロ修道院長への手紙Letter to Abbot Kulan-dro

親愛なるクラン・ドロ修道院長

ヴァルナーゴ・ドロはトルヴァル・クリアタが、あなたの異動嘆願書を受け取ったことの確認として手紙を書いている。少々驚いたと言わざるを得ない。七つの謎の聖堂はあなたの技術と感性にぴったりだとクリアタは考えていた。聖堂の特異な歴史からある程度の難しさが伴うことは分かっているが、これを降格だと考えて欲しくない。断じて!その正反対だ!クリアタとしては、昔から我らの中の最強の指導者たちが封印を見張るべきだと考えてきた。七つの謎の聖堂で働くことは不名誉だろうか?残念ながらそうかもしれない。しかしジョーンとジョーデは最も困難な要求を、最も強い者に課す。そうだろう?厳しい自己管理と、徹底した研究で知られるあなたこそが適任だと思ったのだ。

あなたの嘆願書は検討するが、最も古い友人の一人として、ヴァルナーゴは修道院長としての新しい役割の美点を探すことを勧めたい。月はいつも我らの足をより輝かしい栄光へと導いてくださる。起きる事には全て理由がある。祈ろうではないか。

月のご加護がありますように。

司祭ヴァルナーゴ・ドロ

コッシュの書類からの引用Excerpt from Cosh’s Papers

金と書類は予定通り、レディ・イレニー・モンテインに届けた。これでフバラジャード宮殿は完全に貸切りだ。今後の作戦基地になってくれるだろう。

—コッシュ

この衛兵向け通知を見て!Look at this Guard Dispatch!

(この公文書をどの街の衛兵が書いたか当てた人には、貴重なアカヴィリ金貨を5枚渡しましょう——アンダーリ)

街の衛兵全員に告ぐ。スリに警戒せよ。我々の情報源によると、ある組織された無法者たちの集団が脅迫の目的で、我々の市民の「商売道具」を懐と財布から直接盗むつもりでいるという。これらの盗賊たちはクラフト用品や楽器、そして釣り道具さえも狙っているのだ!

宿屋と港を最も厳しく警戒せよ。これらの区域は人が密集することが多いのに対し、衛兵たちの数が少なくなりがちである。盗賊は吟遊詩人からリュートを盗み、その上発覚することなく宿屋を抜け出してしまうかもしれない。また漁師たちは商売の際、人目につかない場所を好む。幸運なことに、我々のクラフト区域の大半は厳重に見回りが行われる傾向にあるが、頻繁に「休憩」を取ると言って路地をうろついているような者には目を配っておくこと。

(サウスポイント。簡単すぎる——スラグ)

(外れ。それに書かなくたって、直接言えばいい——アンダーリ)

(お前は「眠って」たからな。それから、ノースポイントと言うつもりだったんだ——スラグ)

(どっちにしろ外れ。スラグはもう失格ね——アンダーリ)

(全員失格だよ。あの女、貴重なアカヴィリ金貨を5枚なんて持ってないんだからな——スラグ)

(スラグは三重に失格よ。「貴重なアカヴィリ金貨」っていうのは、私が作った飲み物の名前だからね——アンダーリ)

サロルド最大の宝Saroldo’s Greatest Treasure

愛する娘へ

これを読んでいるなら、間違いなく私の死の知らせを受け取っているだろう。その場合、私は友人のニコラスに、台帳を手に入れ大学にいるお前の元へ届けるよう託しておいた。お前のうめき声がきこえるようだ。私がお前よりもずっと魅了された謎の一つが、私からの最後の贈り物だ。

しかし、正直に言うとお前に解いてほしいのかどうかは良くわからない。私はお前に説明したように生きて来た訳ではない。私はアバーズ・ランディングのある女性と深い恋に落ちた。恥ずかしながら、お前がレディ・スリマを受け入れるのかどうか不安だった。彼女はお前の母親ではないし、代わりを務める気もない。それでも我々はそれぞれ、失う痛みを知っている。

お前に渡せる最大の宝は、お前たち二人が家族となる未来だ。

手紙を丸めて何かに投げつけたんじゃないかと推測するが。さて、立ち直ったところで続けてくれ。

今までにやったことを考えてくれ。お前は台帳の謎を解き、アバーズ・ランディングに旅し、ヒューズベインの砂の土地の位置を突き止め、古い宝箱を掘り当てた。鍵もないのに金庫を開けることに成功した。

全てがお前に私の遺言を読ませることにつながっている。アバーズ・ランディングのレディ・スリマを探すのは問題ないはずだ。彼女はお前の名前を知らないが、肖像画を持っていて、とても会いたがっている。私が彼女と過ごした素晴らしい、おかしな人生を語ってくれるだろう。それから、お前が大学を卒業したら一人立ちするために役立つちょっとした財産を持っている。お前はなりたいものにはなんでもなれる。私が旅立ったとしても、いつも誰かがそばにいてくれるだろう。

ただ、彼女の支えにもなってくれるよう祈るばかりだ。

愛をこめて

—S

ジオベセンの頭蓋骨の信憑性Authenticity of the Giovessen Skull

高潔なる従士フルストロム

「2920年」の記載はほとんどが作り話だが、真実の種がジオベセンの頭蓋骨の形で実になった。皇帝レマンIII世の命令でジオベセン宮殿に閉じ込められた、有名なタヴィアの金に浸され宝石を散りばめた頭骨なのだ。ジオベセンの頭骨は偽の遺物だという噂がハンマーフェルの以前の持ち主から広まり囁かれているが、そのような歴史の上で価値あるものを盗もうという気を起こさせないためであることは間違いない

私はここにジオベセンの頭蓋骨は本物であると証明する。元の頭骨はブレトンの死刑囚から得たと主張する噂はすべて…ただの噂にすぎない

メルカトール・マニックス(帝国歴史学者)

セプ・アダーの繁栄Triumph of the Sep Adder

ウェイレストはあまり選択の余地を与えてくれなかった。ウグイアビの売り上げは資産のいくらかを取り戻させてくれたが、面倒に見合うほどのものじゃなかった。私たちは水の漏れる船を1隻買い、故郷に帰る途中の沿岸で売るための貨物を探し求めた。私、ザビアーコは港の斡旋業者をあまり信用していなかったので、持ちかけられた計画の大部分は拒絶した。

「だがな、ザビアーコ、珍味の取引をするべきだよ!」とあの悪党は言った。「砂糖と米じゃ大した儲けにはならないが、泥で覆われたドゥルーの卵は、アバーズ・ランディングのよく肥えた金持ち商人たちに珍重されてるんだぜ!」その時は危険を冒す価値があると思った。

そんな価値はなかった。ドゥルーは交尾の後、足を取り去って海の中で過ごすのだが、船体の中にあった卵の存在を感じ取ったに違いない。私たちがセンチネルをあとにしてすぐ、奴らは襲ってきた。船に穴が開くと同時に、奴らは水と共に突進してきて、卵を奪っていった。船が完全にバラバラになる前に、私は気を失ってしまった。

でも心配はいらない!これがザビアーコの最期ではない。まだまだ語るべき物語や見るべき生き物がたくさんある。たとえば美しいセプ・アダー。それについてはすぐに話そう。

私たちはヒューズベインの地の南西部にある浜辺で目を覚ました。アバーズ・ランディングから地続きの短い旅だった。街へ向かう旅では多くの冒険に出くわした。その中には自分を鮫だと思っているオークとの出会いもあった。しかし一番よかったのは地元住民にセプ・アダーと呼ばれていた、翼の生えた蛇だ。

ウグイアビと同じように、見た目は間抜けな生き物だ。足はないけれど、蛇のように地上を動き回る。翼を持っているのに、空を飛ぶことはできない。しかしあの馬鹿な鳥とは違って、セプ・アダーはうまく繁栄しているし、優美だ。この生き物はその尽きることのない飢えを満たす術を常に持っている。

セプ・アダーは常に次の食事を狙ってうろついている。この土地の川の緑が生い茂る岸に沿って滑空しながら、空中では虫を取り、水中からは魚を取っている。後に土地が渇いてきて、水が少なくなって来た時、こいつらの数が増えているのを見た。地面の中の乾燥したちっぽけな巣から、小さなネズミを引っ張り出していた。

セプ・アダーはあらゆることに対して不器用に見えるが、実は多くのことをうまくやれる。湿った土地と、乾いた土地の両方に生きている。それはザビアーコも同じ。私は生まれつき金があったわけでも、格別運がよかったわけでもないけど、機転を利かせることによって多くの不運を乗り切ることができた。

この土地の人々はセプ・アダーに敬意を払っている。というのは私たちがアバーズ・ランディングに近寄った時、翼を持つ巨大な蛇に巻き付かれている男の大きな彫像を見たからだ。あんなに大きいのは見たことがないけど、だからといって自然の中にいないとは限らない。もしあんな生き物が困難を乗り越えて、勝者として栄誉を与えてもらえるとしたら、もしかするとザビアーコも、困難を乗り越えて、どこか名誉を授けてもらえるような場所を見つけられるかもしれない。もしその栄誉が、単に次の食事がどこにあるのか知っているというだけのことでも!

ノー・シラにはノーを!No Shira, No Good!

第四紀398年、収穫の月2日
ボスがすごい隠れ家を新しく見つけた!アバーズ・ランディングからはちょっと遠いが、何もかも地下にあるんだ。それに、雨季にも乾燥している。誰が建設したのか知らないが、壁を遮断する方法をよく知っていたんだな。

それに大きく建設する方法も知ってたみたいだぜ。仲間の数を3倍に増やしてもまだ貯蔵庫やお宝、それどころか奴隷のための空間もたっぷり残るぞ!

第二紀398年、収穫の月5日
この場所の名前を発見した。「ノー・シラ」だ。どういう意味なのかはわからんが、「気をつけて歩け」とかそういうことかもしれん。エフィーが寝台に行こうと下に降りたら、凶悪な鎌が壁から飛び出してきて、彼女を真っ二つにしちまったんだ!ボスは俺たちに他の罠を探しに行かせたが、何も見つからない。あれ一つだけだったのかもしれない。

第二紀398年、収穫の月9日
「ノー・シラ」というのはどうも「そんなに甘くない」ってことのようだな。ナックラーが少し酔っぱらって、ふらつきながら階段を下りていった。彼は底のほうで黒焦げになって見つかった。炎がどこから出てきたのかもわからないんだ。

第二紀398年、収穫の月13日
もう限界だ、俺たちはここを去る。何だか知らないが凶悪な罠のせいで、ボスの膝から下が無くなっちまった。ボスには新しいあだ名が要るだろう。「足軽」じゃまずいかな。

パーシー・ヴェルモントへの手紙Letter to Percy Velmont

パーシーへ

さあ来なさい、かわいい弟よ!小説「海賊女帝スサ・アプラグド」最新刊から顔を上げて、しっかり私の言葉に耳を傾けなさい。私は旅に出ます。そう、突然で予期していなかったことね。でも、直接告げる時間はなかったの。たくさんの仕事に関わらなければならず、どうしても参加しなければならない会合もいくつかあるのです。気になるのなら、旅程表の写しを残しておきました。

私のいない間、変なことを思いつかないように。父上は仕事と家族のことを私に託していかれました。私が戻るまで、恐ろしく間違ったことはやらないようにすればいいの。

数週間したら会いましょう。かわいい弟。私のいない間もいい子にしていたら、アンヴィルで次の「海賊女帝」の冒険を手に入れるかもね。

あなたの姉
アナイス

パーシへの手紙Letter to Paathi

パーシへ

心配だ。ショラマイは噂を広めたくはないが、クラン・ドロ修道院長のふるまいは日毎に奇妙になっている。またもや昼の瞑想に遅れ、トジャイの詠唱のあいだぶつぶつ言っていた。マントラのあいだ目を開けるのを禁じられているのはわかっているが、のぞき見ずにはいられなかった。クラン・ドロの口先はねじれて冷笑に変わり、尻尾は祈りのベルのように前後に揺れていた。これだけではショラマイのうなじの毛は逆立ったりしないが——爪がリズムを刻んでいたのだ。石をカチカチと打っていた、何度も何度も。それで私の頭はクラクラしてしまった!

たてがみに手紙を送らねば。あのリズムには何か暗いものを感じる。修道院長が堕落していたら我々全員が危険だ

これから数日間は見えないところにいて、あのリズムを聞いたら聖堂を逃げ出せ

月のご加護がありますように
ショラマイ

バリスの日記Balith’s Journal

記録42
また光だ。昨晩はあまり考えていなかった。ただ静かな海に星がきらめいているのと、遅い時間だから俺の目がぼやけているだけだと思った。あれは今夜戻ってきて、さらに近づいてきている気がする。俺の力ではどうしても見ることができない。ただの変なちらつきか、瞬きにしか見えないんだ。

記録43
嵐がやってきた。海の向こうの空が鋼鉄のような色になってきている。ここ数日の夜中に見たあれに違いない。雷鳴と稲妻だ。もっと気をつけておくべきだった。

記録44
嵐がにじり寄るみたいに動くのなんて初めて見た。海の上に漂っているみたいで、ほとんど動いていない。待っているんだ。こいつは良くない。関税の勘定は明日にして、窓に板を打ちつけておこう。

記録45
船があった!もやのなかに輪郭が見える。ランプのような輝きがあるが、明かりは冷たい。いったいあいつはどれだけの間、嵐の中に閉じ込められているんだろう?無事だといいんだが。ここから俺にできることはあまりない。目を光らせておこう。俺にできるせめてものことは、船が嵐の中で沈んだら港まで走って助けを求めに行くことだ。

記録46
ターヴァの赤い羽根にかけて!船が嵐なんだ!今夜、俺が網の方に針路を向けていたら、ガレー商船が1隻沿岸付近を通り過ぎていった。避雷針みたいだった。あのじりじりした嵐が台風みたいに躍り上がって、まるで生き物みたいにあのでかい貿易船に突撃していったんだ。嵐に飲み込まれたと思っていたあの船はその先頭に立っていて、網みたいに雲を後ろに引きずって、遅い商船を取り囲んでしまった。そいつは稲妻をガレー船の帆に向かって吐き出し、風と波でもみくちゃにしてしまった。

俺には動く度胸がなかった。嵐の船がガレー船を襲うのを見てるしかなかった。雷鳴にかき消されたせいで、叫び声や悲鳴はほとんど聞こえなかった。逃げたいという気持ちが俺をようやく恐怖から立ち直らせた。あいつらに発見されなかったのは運が良かったと言うしかない。

記録47
あいつらが来る。アリーナを探してくれ。愛していると彼女に伝えてくれ。俺のために祈って欲しい。

ヒュー王子とハジ・モタの戦車Prince Hew and the Haj Mota Chariot

次席高官ハフジファー・アルヤス 著

「ハフジファー!いや、次席閣下!」給仕のジェンゲシュだ。階段を駆け上がって来たので、汗をかいている。「王子様があなたにすぐ来て欲しいそうです。厩舎にです。急いで!」

「今度は何?」と言いながら、私はラリバラーの「11の儀式形態」をデスクマットの下に突っ込んだ。水中呼吸の呪文を学ぼうとして一時的に水中でしか呼吸ができなくなって以来、王子は王宮での魔法を禁じていた(私は5つ目と6つ目の音節があべこべだと教えたのだが、王子は無視したのだ)。「またスキーヴァーがオーツ麦の中に入ったの?」

「いーえ!」ジェンゲシュはいたずらっぽく微笑んだ。「ご自分でお確かめになった方がよろしいかと」

ヒュー王子はいらいらした様子で厩舎の扉の前を行ったり来たりしており、先がくるっとカールした黄金のスリッパで糞を踏まないように気を配っていた。「おお来たな、ハフジ!お前に見せたいものがある。お前も今度こそ感動するぞ!」彼が絹の袖に覆われた片腕を振って見せると、いつも側を離れない護衛のビッグ・ドーランは厩舎の扉を車輪に沿ってずらし、開いた。

中にあったのは、私がこれまで見た中で最も醜いものだった。それはラ・ガーダの戦車のように見えたが、サイズが大きすぎたし、車輪は2つではなく4つあった。乗員席に掛けられた金縁の枠には、黄金で縁取られた大きな傘が刺さっていた。乗員席自体はけばけばしくも輝く虹色に塗られていた。これは王子が選んだシンボルである(彼は”色(ヒュー)”男だから。分かるでしょう?)。そして御者が泥で汚れるのを防ぐために、車輪の上に銀板が覆いかぶさっていた。これの全体は採石場で働く牛車ぐらい重そうに見えた。

「見事だろう?」と王子は聞いてきた。「見事だ。そうじゃないか?」彼はきっぱりと繰り返した。「見事だ」

「み…見事ですね。はい、確かに。その通りです」と私は言った。「それに…こいつはなかなか大きいですね。でも見たところこいつを引くには馬を8頭ほど使うことになりそうですが、私たちのところには6頭しかありませんよ」

「馬だって?はっ!馬なんてのは庶民のものさ!新しい我が王子専用戦車はだな…ハジ・モタに引かせるのだ!」

「悪魔の亀?しかしあれを手なずけた者はいませんし…いるはずがない。第一、殿下はそんなものをどこから手に入れるつもりなのですか?」

「もうすでに1匹持っているんだ!」とヒュー王子は言い、その天神ひげを誇らしそうにいじった。「ボズマーの商人から買ったのさ。催眠性の虫の煙で手なずけたそうだ。見に来いよ!」そして王子は厩舎のさらに奥へと進んでいった。

叫び声があがったのはその時だった。通常ならば私は「血が凍るような金切り声」のような陳腐な決まり文句は使わないのだが、冗談抜きで、私の心臓はその音で凍りついてしまった。人間と馬の両方からあがる、おぞましい悲鳴だった。器用な腕のモラドが目をかっと見開いて、檻から駆け出してきた。その後ろからは私の知らないウッドエルフが続いた。私は彼の通り道を塞ぐ形になり、彼が私を押しのけて通り過ぎようとしたところで、私は彼の装飾用の角をつかんだ。「おい!やめてくれよ!逃げなきゃ!」

「何があったのか教えてくれれば行かせてあげるわよ」と私は低い声で言い、念を入れるために角をねじってみせた。

「ハジ・モタだよ!眠りの煙に耐性ができちまったに違いない。何せあいつは目を覚まして…怒ってる!」彼は肩越しに振り返り、身震いした。「あいつは馬を食ってるんだ!次は俺たちだぞ…行かせてくれ!」

私は彼を行かせてやった。そうすると、納屋の奥底から轟音と共に悪魔の亀が現れた。その顎からはまだ馬の一部分を滴らせていた。亀はヒュー王子に向かって真っすぐ突進していた。王子は動かずに立ちつくしていた。私は彼が恐怖で凍りついていることに気がついた。

間一髪だったが、私は王子に体当たりをかまし、ハジ・モタに蹂躙される寸前に突き飛ばした。ハジ・モタは我々を通り過ぎ、そして一瞬立ち止まり、振り返った。なんて素早い奴だ。さらにその重い尻尾でドーランをひっぱたき、彼を一方に、両手剣を別の方向に吹き飛ばした。そしてハジ・モタは我々に注意を集中した。その赤い豚のような目には殺意が宿っていた。

私は手足を広げて王子の上に倒れこんでいたが、彼はそのずんぐりした手で私をぺしぺしと叩き、「助けてくれハフジ!助けて!」と泣き叫んでいた。化け物が近づいてきてその巨大なくちばしを開けたので、私は何か呪文を思い浮かべようとした。どんな呪文でもいい…しかし王子が私に向かって息を切らして喚いていたので、頭の中は空っぽだった。

王子…息を切らして…突然、私の心の中である呪文が形になった。私はそれをとっさに口に出し、ハジ・モタの鼻先に叩きつけた。マジカが私から流れ出して獣に注ぎ込まれ、獣はまばたきをして、鼻を鳴らし、そして頭を左右に振り始めた。ハジ・モタは顎を大きく開き、苦しそうに大きく息を吐き出し、足を投げ出して倒れてしまった。肺が波打っていた。1分とたたずに、獣は窒息して死んだ。

なぜなら、獣には息をするための水がなかったからだった。

私は王子を助け起こし、彼の絹服の汚れを払ったが、馬糞が付いたところはそのままにして、気づかないふりをしておいた。「いったい…いったいあいつに何が起こったんだ、ハフジ?」と彼は言った。彼は目を険しくして「まさか魔法を使ったのではないだろうな?」

「いやあれは…虫の煙への反応が遅れて出てきたものに違いありません。呼吸の問題です!」私は力強くうなずいた。「そうですとも、煙に間違いありません。私があのリハドのジャコウをつけていて、殿下のくしゃみが止まらなくなった時のことを覚えていますか?あれと同じようなものです!」

「ああ、そうか。まあとにかく、運がよかったじゃないか、なあ?ドーラン、あの商人を追いかけて金を取り返して来てくれ!馬をまた6頭、買い直さなきゃ」。王子は醜悪な戦車をいとおしそうに眺めた。「それとも8頭にしようかな!」

ヒュー王子と二人三脚Prince Hew and the Three-Legged Race

次席高官ハフジファー・アルヤス 著

「ハフジ!」と、私の事務室に飛び込んでくるなりヒュー王子は呼んだ。「刃の祭典の準備は全部できてるか?」

私は立ち上がった。コルヴス・ディレニの「召喚の原理」を羊皮紙で隠すためである。

王子の目はぎらりと光った。「またディレニを読んでるのか、ええ?私が宮廷での魔法をどう思ってるか知ってるだろう!」

「こ…これは私のものではないのですよ、殿下!これは給仕のジェンゲシュから没収したのです」私はそう言ってあいまいに笑った。

「ふむ。それでお前はどうして次席高官の正式なターバンを着けてないんだ?」

私は机の隅に置かれたダサいマゼンタと緑色の頭飾りに目をやり、顔をしかめないように努力した。「帽子をかぶるには暖かすぎますので、殿下」

「何を馬鹿な、今は蒔種の月の真っただ中じゃないか!とにかく、私は祭典の準備が計画通りに進んでいるかを知りたいのだ。我が民がパーティー好きなのは知っているだろう!」

私は首を振った。「彼らはレッドガードです、殿下。パーティーにはあまり行かないでしょう。というか、まったく行きません」

「それがこれから変わるのだ!さあ、ラクダの尻尾刺しの準備はできているのか?」

「できています、殿下。というか、できるはずです。モラドの足の添木が取れればすぐにでも」

「血まみれリンゴ食いゲームは?」

「水槽、果物かご、タオルとすべて西の中庭に並べてあります」

「街の衛兵対抗二人三脚レースは?」

私は唾を飲みこんだ。「実は、そこが問題なのでして、殿下。というのも、衛兵たちの誰一人としてその催しに参加を申し込んでこないのです。どうも…気が乗らないようなのです。なにせ、彼らは去年のレースの後で、殿下がザクド伍長に与えた罰を覚えているからなのです」

「あいつがずるをしたんだ!懲らしめるしかなかったんだ!それに、なんだかんだ言ってあいつの足の指の大半はまだ残ってるじゃないか」

「だとしても、彼らがやるとは思えませんよ」

「ふーむ」と、王子はいらいらした様子でひげをいじった。「あいつらが足をほどくようなずるをしないと確実にわかるようにしたらどうだ?やろうとしてもできないようにするんだ」

これはよくない。要するに王子にはいい考えがあるということなのだ。そして王子にいい考えがあるというのは、いつだって悪いことなのだ。「どういう意味ですか、その”やろうとしてもできない”というのは?」

「はっはっは!ドーラン、こっちに来るんだ」と王子は呼びかけた。王子のボディガードは頭を低くして鴨居をくぐり、広間から入ってきた。「ハフジ、あのヨクダの壺の前に立つんだ」とヒュー王子は言った。「ドーラン、次席高官の隣に立て」

私は肩をすくめ、位置についた。ビッグ・ドーランが私の隣に立つと、彼の背丈は私より頭一つ半高かった。ヒュー王子が時代がかったしぐさで両手を掲げたので、私は気がついた。恐るべきことに、彼は呪文を唱えようとしていたのだ。だが私が抗議する前に、それは行われてしまった。呪文は発動し、マジカが私に押し寄せて、自分の左足がドーランの右足に結合するのを感じた。「ひどい!」私は叫んだ。「殿下、何をするんです!」

王子は満足そうにひげをなでた。「コルビュス・ディレニを読めるのは自分だけだとでも思ったのかい、ハフジ?コロンの強制召喚から束縛の一節を切り取っておいたのさ。そしてそれがデイドラの意思以外のものを束縛するためにも使えることを発見したんだ!すごいだろう?」

私はぽかんとして彼を見つめるだけだった。そのうちに、ビッグ・ドーランは魔法で結合させられた我々の足を見下ろし、唸り声をあげてから、前に足を踏み出そうとした。私は倒れないように彼の腕をつかまなければならず、それでも私たちは両方とも引き倒されそうになった。ドーランは頭を振った。「これはひどい。マスター。気に入りません。元に戻してくださいよ、マスター」

「そうか、いいだろう。ほどけろ!」と王子は言って呪文を逆転させたが、愚かしくも格好をつけるためだけのしぐさを加え、それにマジカを注ぎ込みすぎていた。ドーランと私は離れて空中に浮かび、それぞれ部屋の反対側に叩きつけられた。そして我々の背後にあったヨクダの壺は爆弾のように砕け散った。

すると突然、砕け散った壺の上に渦巻く雲が現れ、うつろな鳴き声が響いた。「自由!自由だ!あの臭い壺の中に無限とも思える長い時間、閉じ込められてきたが、もう自由だ!」雲は素早く、空中に浮かぶ装甲に覆われた胴体を、兜をかぶった頭と、それぞれが巨大な三日月刀を握った4本の腕を結合させた。「今こそ、定命の者の世界に復讐する時だ!」

三日月刀は威嚇するようにくるくると回り始めた。私はドーランに目をやったが、彼は私のものだった大理石製のモルワの胸像に頭から突っ込んだらしく、まだ気絶していた。「殿下!」私は叫んだ。「呪文を使うんです!あいつが私たちをオードブルにしてしまう前に、束縛してしまえばいい!」

ヒュー王子は恐怖に目をむいた。「で…できないんだ!さっきの解除呪文でマジカを使い切ってしまった!お前が頼りだ、ハフジ!」

私はしゃがみ、三日月刀が2本頭上をかすめていった後、走って自分の机の後ろに隠れた。奴は私と扉の間にいた。確かにこいつを束縛できるのは私しかいない。だが私はもう何ヶ月も呪文を唱えていなかったのだ。三日月刀がヒュー王子の黄金のフェルト帽の飾りを切り落とし、王子は悲鳴をあげた。「コロンの牢獄だ、ハフジ!それしかない!」

「しかしそれには器が必要です。壺は砕けてしまったじゃないですか!」

「これを使うんだ!」と言って王子はマゼンタと緑色の下級高官用ターバンを私に向けて放った。

三日月刀が3本私の机に飛んできて、机を粉砕したところで、私はターバンを逆さにしてコロンの永続牢獄を唱えた。「嫌だあああ!」忌まわしい帽子の中に吸い込まれながら、悪魔は叫んだ。「髪油の匂いは大嫌いだ…!」

そして奴はいなくなった。私はまだ震えていたが、ヒュー王子はまばたきをし、深呼吸をし、にっこりと笑った。「まあ、そんなにひどいことにはならなかったな。少なくともアイアンレガッタの時とか、あのペットのトク・ガーヴァの時に比べれば悪くなかった!さて、何をしていたんだっけ?」

私はビッグ・ドーランを砕けた大理石像のくずの中から助け起こした。「衛兵対抗二人三脚レースを取りやめにすると言っていたところです、覚えていますか?」

「お前が言うならそうだったんだろう、ハフジ。お前の言うことはだいたい正しいからな」。彼の顔が輝いた。「そうだ!血まみれリンゴ食い競争の後、負けた者の頭のリンゴをクロスボウで撃たせるんだ!ああ、それと…そのターバンは捨てておけよ」

ファラダンの手紙Faradan’s Letter

愛しきナラーニ

お前の息子の捜索にやっと成果があった。ただ、その成果は甘い物ではなく、苦く感じられるのではないかと恐れている。

残念ながら、お前の息子に対する推測が確認された。彼は物乞いをしているスクゥーマ中毒者のグループと関係がある。私の連絡先はこの包みにある地図を渡してくれた。お前の息子へ伝言を渡そうとして近づく前に、彼は息子を連れ去った直後の二人組に攻撃されたそうだ。お前の息子と一緒にいた、だらしないブレトンの若い女性は騒ぎの間に市場へと消えたそうだ。

現地の衛兵に連絡した結果、私の連絡先は2人の男がヴァーデンフェルから来た賞金稼ぎで、タシュミンが犯罪に関係しているという書類を持っていたことを突き止めた。しかし、ヴァーデンフェルに問い合わせてみると、お前の息子が犯罪に関係しているとの書類も、賞金が掛かっているとの証拠もないらしい。連中がドーレス家のために働いていて、お前の息子を奴隷に戻そうとしているのではないかと懸念している。

良い知らせを届けられずに申し訳ない。

—ファラダン

フバラジャード王子の擁護In Defense of Prince Hubalajad

タネスのレディ・シンナバー

ヨクダの歴史に詳しければ、ラ・ガーダが行った最初の植民地化に続く時期において、フバラジャード王子がどんな役割を果たしたか、あるいは果たさなかったかをご存知だろう。私たちは「ヒュー王子」を滑稽な人物とみなしている。不可能な問題に対する彼の頑固な取り組み方を伝え、派手な贅沢を笑いの種にしている。神が不満を示すため、ゼェトの祠が洪水を起こす?より巨大な祠をさらに下流に作れば良い!タネスでは、「フバラジャードのコインで基礎を築く」が無駄遣いを表わす言葉としてよく使われる。

だが、この不運な王子について、本当のことは知られているだろうか?資料として使えるものは、最上のものでも伝聞でしかない。多くの真偽が疑われる物語は問題を混乱させる。私たちを実際の姿から遠くへ引き離すのだ。故に、自身で結論を引き出すためには、ヒューズベインそのものに頼らざるを得ない。ほんの少しの間で良いので、彼の多くの失敗として一般的に受け入れられているものが何か、詳細に検討してみよう

フバラジャードが相当数の兵や職人と、当時「ケフレムのブーツ」と呼ばれた不毛の地に到着したことは分かっている。現地に採石場が無く、信頼できる北からの陸路もなかったため、彼らは大量の切り出した石材を海から運び込む必要があった。のちにアバーズ・ランディングとなる、自然の要害となる港が間違いなく彼らの最初の滞在地だ。荷を積んだ船の定期的な往来は海賊を引き付けるため、フバラジャードは最初にアビシアン海を見下ろす堂々とした要塞、ノー・シラを建設しなければならなかった。

ノー・シラがすぐに洪水の季節によって損なわれたのは事実だ。だが、対策として、フバラジャードは祠を作ってゼェトに懇願した。続く洪水が最初の祠を押し流したとき、彼は次の建設を命じた。さらに入念な祠を。だが石材を調べたところ、新しいものは前の祠よりも上流に建てられたようだった。この点から考えると、「ヒュー王子の頑固」は、一貫した決意を示している。ヨクダの農耕の神に懇願することは、傲慢で無謀な男の行動ではない。

その間に、アバーズ・ランディングは兵の野営地と掘っ建て小屋から広大な都市へと成長した。この辺境の地での暮らしにおける数多くの困難にもかかわらず、フバラジャードは立派な宮殿を建てた。この土地が彼の家であり、地元民も同じように栄えるよう力を注いだ象徴だ。石材はアバーズ・ランディングの大きな壁となり、その中身がヨクダの船と同様、保護に値することを示していた。

数多くの墓、ラ・ガーダの領域へ続く北の道を開いた素晴らしい王子の門、フバラジャード自身の美化された姿だと多くの人が誤って信じている、アバーズ・ランディング港のすぐ南にあるヨクダ像については、今しばらく脇に置こう。彼は同時期に、要塞と壁に囲まれた街を同時に建設している。これには兵站に対する鋭い頭脳が要求されるだろう。もしフバラジャード本人でないとしても、それができる人物を周りに置くべきことを分かっていたのだ。これは知性に欠ける間抜けのやることではない。

筆者はフバラジャードに失敗があったとしても、終わりなき愚行の物語が語られるようなものではないと考える。彼が荒涼した地に資源を注ぎ込んだことを非難した、嫉妬に駆られたライバルによる中傷だろうか?親の腹違いの兄弟が死霊術師であったため、評判に汚点が残ったのだろうか?ヨクダの神の憤怒を呼び起こした?それともデイドラ公の?私たちが真相を知ることはないだろうが、フバラジャードについて心に留めておくべきことが1つある。彼が到着する前、人もエルフもこの地に足跡を残していない。現在、2000年存続している唯一の建造物は、「ヒュー王子」によって建てられたものだ。

ブリーク・ベールは耐え忍ぶThe Bleak Veil Endures

我が不肖の甥の行為にもかからわず、ブリーク・ベールはただ生きているだけではない、耐え忍んでいるのだ!豊富な資源と安全な港を持ち、監視される心配もないこの孤島は、ハンマーフェルでの騒動が起こった後、私の死霊術教団を移転する先として完璧な場所だった。あの優柔不断なフバラジャードを説得して、私の注文通りの仕様で家族の墓を建設させるのは簡単なことだった。そしてそれは死霊術のエネルギーを伝達するための完璧な中継点になった。我々は究極の力に到達するために、あとひとつ儀式を残すだけだったのだ!

我が甥はどんな手段を使ってか、私が王家の墓で本当は何をしているのかを調べ、普段は無為を好むその性質にもかかわらず、行動を起こすことを決めたのだ。奴は私とその支持者たちを、私自身が設計し、建設を手伝った墓の中に閉じ込めてしまった!一歩後退には違いない。だが起こりえた災厄を考えれば、そこまでひどい事態とは言えない。確かに、王子は見たところ強力な司祭たちを数人集め、我らの死霊術のエネルギーでは抜け出せないような仕方で墓を封印することに成功したようではある。そして確かに、我々が持ってきた少量の食料と水はもうとっくに尽きている。だが、問題にはならない。ブリーク・ベールは我が甥やその味方をする者たちが想像することもできないほど力強くなろうとしているのだ!

とはいえ、何か間違いがあった時のために、ブリーク・ベールに関する真実が時の流れに埋もれてしまわないようにしておきたい。私はマグニフィコ・バーラハ、センチネルの子孫にして、ブリーク・ベールという名でのみ知られている不死の教団の最高位の死霊術師である。私は自らの技術を磨き、また弟子と支持者たちを集めるために長い年月を費やしてきた。我々は身を隠し、力を蓄えながらも時が来るのを待っていた。アバーズ・ランディングの先にある荒廃した地は、我々の勢力を結集し、死と暗黒の儀式を行うためには完璧な場所だった。この墓は特別に設計された地下室と通路を持っており、エネルギーを集中することによって我が信者たちを無敵にすることができるのだ!そしてブリーク・ベールのあらゆる成員たちの中で、私は最強の存在である!

当然ながら、我々全員が飢えや渇きで死んでしまう前に、儀式を執り行わなければならない。それに犠牲も捧げる必要がある。この墓の内部に閉じ込められている限り、我々は犠牲用の人間を確保するために誰かを行かせるというわけにはいかない。そのため、くじを引いて我々の成員たちの中から死すべき者を選び出し、残りの者たちが不死者へと転生できるようにしなければならないだろう。さぞ素晴らしいことになるだろう!そしてこれが、体のうちで命がまだ脈打っている間に私が書く最後の言葉である。次に会う時は、私は死体になっているか、あるいは闇が望むならば、より優れた何かになっているだろう。

フレグのメモFleg’s Note

船長

差し出がましいことを言うようですが、この地図は本当に合っているんでしょうか?私が今見ているやつが最新のものだったのは、たぶんヒューがこの場所を故郷と呼んでいた時代ですよ。この地図の示している位置はわかるんですが、見覚えのある目印なんてひとつもありません。

ゴリガンが耳にしたところでは、部隊の一部は戻ってきてさえいないそうです。このしょうもない地図のせいで迷っているのかもしれないし、あるいは逃亡する価値があるとあいつらが思うくらいのお宝を見つけたのかもしれないし、あるいは死んだのかもしれない。申し訳ないですが、無駄な骨折りのために死にたくはありません。ですから隊長、お願いします。古き良き海賊業に戻りましょうよ。

海のほうに行った連中が何人か、こう言ったのを聞いてます。「俺たちは今のところ掘り続けるが、じきに連絡が来なければ、新しい服に着替えるつもりだ」ってね。

—フレグ

マーシェズは死んだMurshez Is Dead

マーシェズは我々がアバーズ・ランディングに戻ったところで鉄の車輪に捕まった。すぐに死んだが、私は彼に借りがある。彼に親族がいたのか誰か知らないか?あそこから出してくれた彼に礼をしたい

過ごしたのは数…週間?数ヶ月?どれくらいの長さだったかわからない…食用のサソリ以外何もない古い遺跡の穴に閉じこめられていた

時々見にくるが、私は母から愚かには育てられていない。この鉄の車輪の騒ぎがおさまるまで、姿を消す

—SのG

マッドクラブの注文要請Mudcrab Order Request

マッドクラブは一般大衆の食べ物であり、平民の主食と考えている者もいる。これは実に陳腐だ。この用途の広い食材は大量の円盤チーズと同じくタムリエルにとって必須である。

私はアバーズ・ランディングの最高のマッドクラブ調理法をまとめて出版する計画を立てている。そのためにはマッドクラブの肉が毎日一樽必要だ。

あなたの貢献は地元の文化促進になるだけでなく、そのサービスにはふさわしい対価も支払われる。

—マスターシェフ「肉を切りし者」

ランビクのメモRhanbiq’s Notes

記録28
ニコラスは確かにこの地域を通ったが、詳細を覚えている者はほとんどいないほど時間が過ぎた。「ベルラーなら知っている」と、誰もが私に言ってくる。ベルラー・チャタービークのことだろう。飲み物をねだりにここに来る、噂好きのスリらしい

だが私が訊ねまわってからは見かけない。私が地元の衛兵と協力していると考え地下に潜ったに違いない。どこであれ奴と仲間が仕事のできる場所だ。だが、スリは衛兵の目につかないためどこへ行くだろう?街中の無法者が使う隠れ家などないだろうし。

ランビクの命令:アルダノビアの墓Rhanbiq’s Orders: al-Danobia Tomb

どんな状況であれ、鉄の車輪の一員と目されるものはアルダノビアの墓には入れない。道を確保するだけだ。マグニフィカ・ファロラーははっきりと入場を禁じており、我々は彼女に雇われる身だ。どんな訓練を受けていようと、彼女の指示に忠実であるべきだ。

—ランビク、鉄の車輪 主任調査官

ランビクの命令:ノー・シラ牢獄Rhanbiq’s Orders: No Shira Prison

鉄の車輪総員へ

規律正しく出発すること。囚人の移送と没収財産の輸送を優先とする。それらをタネスへ配送することにより、最終的な支払いがギルドに行われる。ギルドはヒューズベインの損害から物資と人員を回復するための資金を必要としている。

時宜を過たず配送することの重要性については、どれだけ言っても誇張にならない。

—ランビク、鉄の車輪 主任調査官

ランビクの命令:フルストロム農園Rhanbiq’s Orders: Fulstrom Homestead

従士フルストロムは農園の使用を寛大にも許したが、私は彼の農園の下にある汚染されているカタコンベが心配だ。

どうか偵察をしてこの地域を確保してもらいたい。どんな不意打ちがあろうとも、どんな結果にも準備しておくのが一番だ。盗賊ギルドの残党を逃がすわけにはいかない。

—ランビク、鉄の車輪 主任調査官

ランビクの命令:鉄の車輪本部Rhanbiq’s Orders: Iron Wheel Headquarters

この臨時本部内で働くことは光栄であり特権であるということを、改めて鉄の車輪の全将校、兵士に分かってもらいたい。要塞の外側を巡回したい者は、いつでも異動を申し出てくれて構わない。必要に応じて灼熱用の装備やレインコートが支給される。

この涼しく居心地の良い建物内に残りたいという者は、雑兵ではなく鉄の車輪として正しく振る舞うことを忘れないようにしてもらいたい。

—秘密の通路にコソコソと入り込む行為は異動の申し出とみなす。
—倉庫の上の通路から足をぶら下げる行為も異動の申し出とみなす。だらだらしていてよかったか、アトリウニア副隊長補佐に聞いておいてくれ。

内部で「召使の仕事」を拒否することは異動の申し出とはみなさない。ただし、2千年近く清掃されていない便所の掃除がしたいのだと私は解釈する。

—ランビク、鉄の車輪 主任調査官

ランビク主任調査官の命令By Order of Chief Inspector Rhanbiq

鉄の車輪はこのたび、ヴェルサ(姓不明)と名乗るダークエルフの女性を連行し、レディ・マグニフィカ・ファロラーの盗まれた持参金について尋問する権利を受ける。容疑者は「盗賊ギルド」と名乗る詐欺師と犯罪者の組織と強い繋がりがあるとみられている。

注:容疑者は敵の動きを止め、痛みを引き起こす妨害工作と化学薬品のエキスパートであり、注意が必要だ。抵抗を受けるつもりで当たるように。

レディ・アナイスの命令Orders from Lady Anais

ヴェルモント家執事、ブレクシンへ

もう聞き及んでいるに違いないけれど、仕事の処理と微妙な性質の会合のために、私は急いで予期せぬ旅に出なければなりませんでした。いくつかはまとめる時間があったけれど、下記の品を至急港まで届けてください。これらの品が次に利用可能な船で確実に私の後を追えるように、代理人の助けは確保しておきました。

1.短期の仕事の出張用衣類のトランク3個
2.上流階級の社交用ドレスのトランク7個
3.突発的支出や買い物での散財のため、金が入った貴品箱3個
4.私の大好きなペットにして僕のピムジー

この件の手配に感謝します。

レディ・アナイス・ヴェルモント

レディ・スリマへの手紙Letter to Lady Sulima

愛しい人へ

一緒に過ごした時間で壊れた魂と傷ついた心は再生された。あなたの優しさが私にもう一度愛することを思い出させてくれる。私の旅が私たちに緊張をもたらすのはわかっているが、すべては私たちのためだ。

いつか、もうすぐ、私は旅と仕事を終える。その時点で未来が確保されていれば、私はやっと娘にあなたを紹介できる。その日が楽しみだ、愛する人よ。多くのことを共有できる。

—S

レディ・バリナの結婚式招待状Lady Balina’s Wedding Invitation

レディ・バリナ様

貴殿と(お連れの方)をアバーズ・ランディングのコッシュ卿とタネスの宝石、アルダノビアのマグニフィカ・ファロラー嬢との間でフバラジャード宮殿にて執り行われます婚姻の儀にご招待申し上げます。適切な服装にてご参列ください。

宮殿内で誓いが交わされる夕刻まで娯楽と食事でおもてなしいたします。

ご参列される方は贈り物をご持参ください。

—マーゼル(コッシュ卿個人秘書)

ワラヴィル卿の結婚式招待状Lord Wallavir’s Wedding Invitation

ワラヴィル卿様

貴殿と(お連れの方)をアバーズ・ランディングのコッシュ卿とタネスの宝石、アルダノビアのマグニフィカ・ファロラー嬢との間でフバラジャード宮殿にて執り行われます婚姻の儀にご招待申し上げます。適切な服装にてご参列ください。

宮殿内で誓いが交わされる夕刻まで娯楽と食事でおもてなしいたします。

ご参列される方は贈り物をご持参ください。

—マーゼル(コッシュ卿個人秘書)

黄昏の儀式と讃美歌Twilight Rites and Hymns

スヴィラシュ・サハーラについて

「追い払い」の歌は暁の時代にアズラーの舌からこぼれ落ちた、3つの黄昏の賛歌の一つである。黄昏の淑女その人と同様、「追い払い」の歌はつかみどころがなく、予測がつかない。どうしても必要な時以外に歌うべきではない。

古代において、この歌は病気を治療し、サトウキビにつく虫を撃退するために使われていた。しかし暁中期がやって来て月の司祭たちにいたずらをして、彼らを忘れっぽくさせてしまった。今日、歌はドロ・マスラを追い払うのに用いられるのみである。

ドロ・マスラの踊りは音楽ではなく、ローカジュの心臓の鼓動そのものだ。それは歌のない歌であり、暗く、誘惑的である。鼓動はひたすら繰り返される一つの嘘で、それを聞く猫にとってしまいには真実になってしまう。カジートがローカジュの意志を真実として受け入れるとき、その者はリドル・サールを忘れ、迷い猫になる。本当に歪んでしまったカジートは歌によって救うことができず、ナイフと月の光で追放する他ない。しかし心臓に抗い続ける猫は闇からの帰還を果たすこともある。

スヴィラシュ・サハーラの力はその捉えどころのなさにある。クランマザーはドロ・マスラの前で歌ってはいけないと教えているが、これは賢明な判断だ。うかつに歌を歌えば、心臓の近くに引き込まれることになる。歌は鼓動に共鳴し、そのうちに尻尾が引きつり、モー・オブ・ローカジュの中へと髭から滑り落ちていくことになるだろう。「追い払い」の歌は心臓の律動を破ることのできる唯一の歌である。その音符は影のように音階を上下に激しく揺さぶり、闇を混乱させ、心臓を弱め、鈍らせる。最終的に律動は破れ、腐敗は過ぎ去る。

しかしながら、スヴィラシュ・サハーラを歌う者には大きな危険がつきまとう。ドロ・マスラはアズラの讃美歌を嫌い、それを歌う猫を殺すためならば何でもする。ゆえに、先唱者はよく聞くがいい。ナミイラの暗い砂場と対峙するのであれば、素早く動き、警戒を怠らないことだ。一瞬の油断が破滅を招きかねない。

銀の爪の偽造結婚式招待状Silver-Claw’s Forged Wedding Invitation

your name

貴殿と(お連れの方)をアバーズ・ランディングのコッシュ卿とタネスの宝石、アルダノビアのマグニフィカ・ファロラー嬢との間でフバラジャード宮殿にて執り行われます婚姻の儀にご招待申し上げます。適切な服装にてご参列ください。

宮殿内で誓いが交わされる夕刻まで娯楽と食事でおもてなしいたします。

ご参列される方は贈り物をご持参ください。

—マーゼル(コッシュ卿個人秘書)

銀の爪の台帳Silver-Claw’s Ledger

ムーンシュガー商人たちは約束通り3回の出荷のうち1回目を果たした。罪に関わる手紙を1通返却した。約束通り、残りの荷物が届き次第他の2通も返却する。

ヘヴンから出たゴールデン・サンに乗っている「余分な」積荷に関するとても有益な情報への報酬として、フランリン・シルバーアックスに金75支払うべし。

ゴールデン・サンの船長に、積荷の一部に良心的な値段をつけてもらいたい旨の手紙。宗教的な彫像や珍しいハーブを競合他社より安く販売できれば有利になる。1日以内の返事を強く求める。

ここ2週間で2回、レディ・バリナがセンチ・アンド・サーペントで目撃されている。頭巾をかぶっていれば誰にも気づかれないと思っているらしい。ミムにより注意深く尾行してもらう。ひそかに誰かと会っているのか?実は飲んだくれなのか?どちらにせよ、この先の取引を考えると、夫に勧めてもらうためには使える情報だ。

慌てず騒がずNo Fuss, No Rush

あるいは「年寄りスカラーからのためになる助言」

貴族の連中の中には…あれだけの金を持っていながら、まだ欲しがる者がいる。金をちゃんと払うのも確かだけど。でも、賢く立ち回らなければならないよ。

品物を手に入れて「きれいにする」ためタムリエル中に派遣される時は、素早く済ませて、捕まらないようにすること。それが年寄りスカラーの助言だよ!賞金の支払いは利益から引かれるからね。

年寄りスカラーは次のようなやり方を取る:

1.正しい標的を見つけること。誰かが「儀式用の品」を欲しがっているとする。そういうのは大抵、大聖堂の近くにあったり、司祭たちが持っていたりする。当然だろう?つまり大都市ということで…普通は衛兵がたくさんいる。気をつけて標的を選ぶこと。聖堂が自前の衛兵を抱えているほどには大きくないことを、あるいは衛兵がいるなら、そいつらが全ての方向を一度には見ていないことを確かめること。

2.もし自分に賞金がかかってしまったら、あまり慌てないこと。契約を完了する前に、街の外で何かやることを探そう。年寄りスカラーはかつて、山賊の問題で街を手伝って余分な金を稼いだことがある。そこでは誰も賞金のことなんか気にしちゃいなかった。その仕事が終わる頃になると衛兵たちはもう関心を失っていて、年寄りスカラーは「きれいな」品物を思う存分納品したんだ。

賢くならなければ、死体になるよ。

行方不明:キルナMissing: Khiruna

名前
キルナ。「フレア」としても知られる。過去にはクルとリナの名も使っていた

人相書
平均的身長、鼻と尻尾の先に金色の毛の筋(白と黒の斑点つき)が混じっている

専門
情報収集、スリ、短期詐欺

最後の目撃
鉄の車輪の攻撃の夜に「サーペント・アンド・センチ」にて

彼女を見つけた者、噂を聞いた者はここにメモを残すか静かに歩む者に直接連絡を

行方不明:鮫のゴードンカと怠惰なマーシェズMissing: Gordonkha the Shark and Lazy Murshez

鮫のゴードンカと怠惰なマーシェズを探している。何かの強奪事件に関わっていたと聞いた。誰かが下水道と言っていた。

ゴードンカは濃灰色の肌で、額から背中にかけて細い幅の黒くつんつんした髪が垂れている。マーシェズは漆黒の肌で、左腕と脇に沿って一連の赤い傷がある。右目は垂れ下がり、ほぼ閉じて見える。

情報があれば掲示するか、静かに歩む者に直接知らせて欲しい。

四季の書からの抜粋An Excerpt from the Book of Seasons

季節は四つあるけれど、
私は一番春が好き。
日なたに輝く青い水、
登りたくなる緑の木々。何という喜び!

空気はとても心地よく、私は心を空にする。
石を枕に眠っても、熱すぎるということはない。
そして目が覚め見渡せば、どこまでも続く緑の野、
まだ色あせた牧草も、積まれた落ち葉も見られない。

だから四つの季節の中で、私は一番春が好き。
夏秋冬もあるけれど、どれも春にはかなわない。

静かに歩む者からのメッセージUrgent Message from Walks-Softly

your name

私たちが別の件に対処している間に、私の過去からの特別な積み荷が発見され海賊と共に姿をくらましてしまった。彼女を助けなければ!

アバーズ・ランディングの連絡員は、積み荷が鮫の歯洞窟に連れ去られたと私に告げた。急いでそこに向かう。その気があるなら、助けを断りはしない

—静かに歩む者

赤の呪い 第1巻The Red Curse, Volume 1

デットソー・パンテンヌ 著

子供の頃、私は病気がちで気難しく、ベッドに縛りつけられた虚弱体質の未熟者だった。より偉大な世界が私に訪れたのは、主に私の家族の高価な屋敷の、比較的安全性の高い部屋の窓を通じてだった。大型の窓を通って私の部屋に入り込んでくる生き生きとした光の瞬きと色は、私がベッドの台の中で注意深く学んでいた外の世界への不安と恐怖を高めるだけだった。私の衰弱した骨格にとって、物理的な世界は恐怖と緊張の場所となったため、私は書かれた言葉の慰めの中に逃げ込み、ニルンの深い謎を探ったのである。

私はこのように多くの人生を生き、多くのことを学んだが、ある伝説、すなわちリーチの民たちの王レッドイーグルの伝説が、もっとも強く心に留まった。私は誇り高きブレトンの家に生まれた子なのだが、自分とリーチの王ファオランとのつながりを思い描いた。この嘘が私の心の中に埋め込まれていたため、私は自らの研究を暗黒の技に変更し、レッドイーグルの誓いを果たして彼を蘇らせる方法を探そうと望んだのである。私の策謀によって、彼はリーチを征服するだろう。炎の剣を片手に、そして王が信頼し、愛する高官、すなわち私をもう一方の手に抱えて。

成長するに従って私の病気は過ぎ去り、虚弱なままではあったがもはやベッドの虜になってはいなかった。そして私の家族は気前よく、私が慎重に自分の研究を拡充していくための資金を提供してくれた。私の奇矯な振る舞いは地位の高さと、青春時代をほぼまったく孤独に過ごしたという事実から受け入れられた。

避けがたいこととして、私の研究はデイドラに行きついた。夜遅く暗闇の中、家族の屋敷の奥深くで、私は馴染みのない言葉で古代の儀式を執り行い、忌まわしき悪魔を召喚して閉じ込め、質問責めにしたものである。多くの場合、悪魔たちは私の懇願を無視し、魔法の束縛から解放すれば強大な力や富を与えると約束したものだった。私は肉体が弱々しくとも、精神は屈強だった。私は連中の甘い言葉に抗し、最終的には悪魔も、自由になる唯一の手段は黙って従うことだと認めたのである。

これは何度も繰り返され、私は断続的に自分が望む情報を手に入れたが、それでは十分ではなかった。少しずつ、悪魔たちの毒を含んだ約束が効果をあげ、私はこのオブリビオンに呪われた魂たちを出し抜くことができるのではないかと自分に言い聞かせたのだった。連中の贈り物を受け入れ、なおかつその条件を支配できると私に信じさせたのは、私自身の傲慢であった。

私はあの時いかに未熟だったことか。そして今では知っている真実に、いかに強く取りつかれていたことだろうか。外の世界への恐怖は10倍にもなって戻ってきた。私は再び、祖先の邸宅の孤独の中に慰めを見出している。私は熱に浮かされたように逃げ道を探しているのだが、心の底ではどうにもならないことを知っている。ニルンの根元には闇が住んでいて、一度見たら最後、もう逃れることはできないのだ。

赤の呪い 第2巻The Red Curse, Volume 2

デットソー・パンテンヌ 著

私は身震いして外套を自分の周りに巻き付け、年老いた歯のないリーチの民の先の尖ったふしだらけの指を追った。彼は私が居心地悪そうにしているのを見てくつくつと笑いながら、しわがれた声で言葉を発していた。私の目は丘へ向かう道を追い、それからようやく遠く離れた洞窟の入口に落ち着いたが、それは針のような雪を通してかすかに見えるだけだった。私はこれからの道のりへの決心を固めた。私が蓄えてきたものは物理的にも精神的にも尽きかけていたが、自分の野望がかつてないほど達成に近づいていることを私は知っていた。そして時間の遅さも刺すような寒さも忘れて、私はこの日の夜、レッドイーグルの墓にたどり着こうと決意した。

デイドラの契約者によって私に与えられた力は素晴らしいものだったが、内臓の強度までは高めてくれなかった。そして洞窟の口のところまでたどり着くと私は疲れ果てて倒れ込んでしまった。内部まで這っていく気力もなくそこに横たわっていると、空中を漂う囁き声と、遠くからの角笛の音が聞こえ始めた。運命へと向かって進むよう私に呼びかけていたのだ。この亡霊のような音楽を耳に、私は洞窟の口の中へ這っていき、体の周りにあったすべてのもので身を包んでから、黒く、夢も見ない眠りに落ちていった。

私が目を覚ましたのは鳥の声と光によってだった――若い頃と同様、私の感覚にとっては不快なものである。私は急いで洞窟の暗闇の中へ逃げ込んだ。目的のものはこの深淵の下にあることが私にはわかっていた。暖かい息吹が洞窟の内部から伝わり、私を内部へと引き寄せた。何かを叩くような角笛の音は、下の深いところから響いてきているようだった。こうした導きに従いつつ、私は胸のあたりがぎゅっと引き締まるのを感じ、悪意に満ちた我が祖先にもうすぐ会えることを願った。

侵入者や墓荒らしを思いとどまらせるために設置された罠は、私の知性にとっては子供だましにすぎなかった。私は警戒を怠ることなく、地下墓地のさらに奥深くまで進んでいった。洞窟の壁を押すと、波型の模様がついた粗い岩はゆっくりと退き、切り取られた石と彫刻された壁画が姿を現した。囁き声と不思議な角笛の音は大きくなり、頭の中をより強く圧迫していった。私の感覚は静まったが、精神は警戒していた。何年もの研究の後、高みへ到達する時が近づいてきていることを私は知っていた。

私は最後の角を曲がり、そこがレッドイーグルの墓の中だった。簡素で飾りのない棺が、部屋の中央にある高座の上に乗っていた。側の台座に横たわっていたのは彼の壮麗な剣、レッドイーグルの破滅だった。私は一息にそこへ駆け寄り、剣を見つめた。私の呼吸は重く、早くなっていた。声と音楽は止み、すべてを包み込む、重く不規則で期待に満ちた呼吸に代わっていた。

私の手が柄の上に伸び、指でそれをつかんで握りしめた。恐怖と混ざった興奮。私は注意深く手を伸ばし、刃の部分をつかみ、目の前にまで持ち上げ、視線で突き刺すようにじっと見つめた。

私の心はその次に何が起きたのか、思い出すことを拒否しかけている。あのような恐怖の記憶は鍵をかけてしまっておかなければならない。それを閉じ込めている脳が狂気に追いやられることのないように。

赤の呪い 第3巻The Red Curse, Volume 3

デットソー・パンテンヌ 著

ビロードのようなレッドイーグルの声が、私を棺へと引っ張っていった。彼は剣を棺の中に、彼の死体の隣に置くように私を駆り立てた。我がデイドラの契約者と同じように、彼もまた想像を超えた力について囁き、私がいつも思い描いていたような、2人で支配を行うイメージで私の頭を満たした。私が慎重に剣を床に置き、レッドイーグルの墓の蓋を取り除こうとしてうめいている間、部屋は内側に向かってひしゃげ続け、私は衝撃から保護されて浮かび上がるのを感じた。

私は骸骨となった遺体を見下ろした。墓のじめじめした臭いが鼻の中にまで立ち上ってきて、私の頭をぼんやりとさせた。これこそ私が長年夢見ていた瞬間だった。私に優しく催促するレッドイーグルの声は、私が彼の墓の中に剣を置いた瞬間、いきなり完全に消滅した。

私の頭はすぐ、目がくらむほどの痛みに襲われ、私は地面に倒れ込んだ。視界が脈打つ赤い光で満たされていた。どこか遠いところで、レッドイーグルの骸骨が体をギシギシ言わせながら墓から這い出してこようとしているのが聞こえた。燃え上がる街の姿が映し出され、私自身の肉体が炎に飲み込まれ、骨から溶けていくのを見た。レッドイーグルの高笑いが今では部屋の中で響き、彼は背後に回りこんでいた。「愚かな子供よ」と、彼は人間のものではないその声を刻んだ。「貴様ごときが、余の血族になれると思うか…」

焦りから私はレッドイーグルに突進し、その手から剣を叩き落とすことに成功した。剣を拾い上げると私は部屋から飛び出し、彼の恐ろしい笑い声は怒りの咆哮に変わった。人間というよりは動物のようになって、逃げるのに必死だったため、私はどこかで剣を失くしてしまったが、背後で石の扉がすり合わさって閉じる音を聞いたので、何かの仕組みが発動するくらいには遠くまで持っていったのだろう。こうしてレッドイーグルの追跡は途絶えた。

そしてこれ故に私は恐怖の中で生き、書斎に閉じこもって、自分が世界に解き放ったあの化け物を滅ぼす方法を見つけだそうとしているのである。閉じ込められているとはいえ、誰か他に私のような愚か者がいつ奴を解放してしまうかもしれない。そしてもしそうなったとすれば、哀れむべきはこの世界である。私たちすべてのために、私は恐怖している。

倉庫の所有者変更Warehouse Under New Ownership

銀の爪の不在のために倉庫関連の仕事に困難が生じているのは理解している

驚かないでほしい。今、倉庫は新しい所有者、安定した所有者の管理下に入った。いつもしてきたように仕事に専念してくれ。君が稼ぐ金は以前と同じように使われるだろう

—監督官イズリーナ
—監督官トークミン

捜査官ヴェイル:死の通行料Investigator Vale: A Deadly Toll

「見たところ、殺人で間違いなさそうね」古い木の橋に近づきながら捜査官ヴェイルは言った。「経験上、自分の首はそうそう切り落とせるものじゃないから」

街を少し出たところにある、目立たない川にかかる橋だった。橋にも川にも特に変わったことや特筆すべき点はなかったが、市長とその側近たちは捜査官をそこへ連れてきたのだった。変わったことといえば、橋の右側にかかる手すりの上に丁寧に乗せられた生首ぐらいのものだった。

「ほとんど見ていないじゃないか」。市長に信頼される側近であり、街一番の商人でもあるジャカード・ヘリックが口を開いた。「何を言っている。なぜそんなことが断言できるんだ?」

「それだけ腕がいいの。だから市長は私を雇ったんじゃない」現場の観察を続けながらヴェイルは言った。血が少なすぎる、体が見当たらないなどといった所見を市長と側近たちに指摘し、橋の上で起こった殺人ではないと説明した。

「このかわいそうなハイエルフに見覚えは?」頭部を近くで見ようとかがみながらヴェイルが聞いた。明らかに年をとった男性のエルフであり、髪の毛は完璧に整えられ穏やかな表情をしていた。首にあいた穴から皮や骨が垂れ下がっていなければどう見ても平穏な状態なのに、とヴェイルは思った。

「あれは金貸しのグラノニール。あのうぬぼれた表情はどこで見てもすぐに分かる」橋まで同行していた、若く可愛らしい衛兵が口走った。

余計な口を挟んだ彼女に市長が厳しい表情を向けたが、それ以上は咎めなかった。そしてヴェイルの方を向き直って「それで捜査官さん、ここで何が起こったのか教えてくれないか?」と言った。

最後に辺りをさっと見渡し、ヴェイルはにこやかに答えた。「ええ、間違いないわ。ムーアクロフト市長、あなたの顔にそびえ立つ鼻ぐらい明確よ。というより、彼の鼻かしらね」と言って商人のヘリックに顔を向けた。

ヘリックは咳払いをして、口ごもった。「な、なにが言いたいんだ、捜査官ヴェイル?」

ヴェイルはヘリックににっこりと笑いかけた。「何も言ってないわよ。まだ、ね」そう言うと被害者の髪から何かを抜き出し、さらに首の下の手すりにできていた血だまりから何かを取り出した。その2つを見て、交互に臭いをかぎ、自信たっぷりに市長の方を向いた。

1つ目の物体を見せ、こう言った。「これはどう見てもスッポンタケね。この金貸しの頭髪に何本か茎が刺さっていたから、トロールはこれに引き寄せられたんでしょうね」

続けて2つ目の物体を見せてこう言った。「これは紅茶の葉ね。金貸しから滴っていた血液に混ざっていたわ。紅茶。あなたの主要な売り物の1つよね、ヘリック?」

商人は額に汗をにじませ、大きな音で唾を飲み、橋から後ずさり始めた。可愛らしい衛兵が手際よくその道を阻み、剣の柄に手をかけた。

「捜査官ヴェイル、はっきりと説明したまえ」明らかにうろたえながら、市長が言った。

「ああ、そうね」とヴェイルはため息をついた。「誰もが私のようにはっきりと世界を見る目を持っていないんだったわ。ジャカード・ヘリックはこの金貸しに多額の借金があった。今季の紅茶の不作もあって、返せる見込みがなかった。この橋の下に隠れていたトロールに気付き、それを使って問題を処理しようと考えたのよ。橋で会おうとグラノニールを説得して、そこで突然袋一杯のスッポンタケを頭の上からかぶせ、川に突き落とした。トロールが現れ、金貸しの頭を引きちぎり、残りの胴体を橋の下へと持ち帰ったわけ。かわいそうなグラノニールの残骸と、満腹で眠っているトロールが私たちの真下で見つかるはずよ」

「そんな…そんなのデタラメだ!」商人が叫んだ。

「いいえ、反論の余地はないわ」とヴェイルは自信満々に返した。「ヘリック、あなたの袖にまだ紅茶の葉がついているわ。倉庫で作業しているときに付いたんでしょうね」

「ムーアクロフト市長、この悪人をダンジョンに放り込みましょうか?」捜査官の方へ笑みを向けながら、若く可愛らしい衛兵が聞いた。

「当たり前じゃないの」と言ってヴェイルは市長の腕に手を回した。「そうしたらもっと衛兵を呼んでこないと、いつまでも橋の下のトロールを追い払えないわよ。さ、行きましょ、ムーアクロフト市長。私の報酬の話をしないと…」

逮捕状Arrest Writ

この令状を持つ者はドーレス家の生きた所有物を取り戻すために、ドーレス家のホーテーターにより権限を与えられた代理人である。また代理人は、かかる回収に邪魔が入らぬよう任務遂行に協力していただける衛兵指揮官に対して、適切な謝礼を分配する権利も有する。

場所と名称の特定された所有物を以下に記入:

1.タシュミン

2._________________________

3.________________________

貯水池の淑女:アンダーリの見解Lady in the Cistern: Andarri’s Theory

私たちの盗賊の隠れ家に、どこかの淑女の像がある。私たちがここに来たときから彼女はそこにいて、彼女が誰でなぜそこに像があるのか知っている人は誰もいないみたい。これが誰なのか私に教えてくれる人はいないの?

私は彼女が幸運の老女じゃないかと思ってる。彼女の像は一度ブラヴィルで見た。はっきりとは言えないけど、同じ人だと感じる。それに幸福な女性がここにいる理由も納得。ヒューズベインで唯一の、澄んだ水の安定した供給源であることを祝福しているんだわ。

皆はどう思う?貯水池の淑女は誰なの?

—アンダーリ

貯水池の淑女:スラグの見解Lady in the Cistern: Thrag’s Theory

貯水池の淑女は明らかにノクターナルだ。像をよく見てくれ。顔はどことなくぼんやりして、すべてを隠す長衣に包まれ、かつて別の貯水池の背後にレンガで仕切られていた貯水池に隠れていた。誰が水を隠す?ノクターナルの信者。そいつらだよ。

俺は一度だってノクターナル教団にいたことはないがね。

—スラグ

貯水池の淑女:クエンの見解Lady in the Cistern: Quen’s Theory

私たちは大学で古きヨクダの書籍の翻訳を読んだ。私は貯水池の淑女は、海の女王ハザディーヤだと思う。彼女は有名で、彼女の民の子孫に尊敬されている。ヒュー王子だって彼女の「古きヨクダの失われた島」を読んだかもしれない。それに彼女をくるんだ生き物もシーサーペントよ。これはヒューズベインが古きヨクダ自身の植民地であるかのように、ヒューズベイン唯一の自由港の水供給を海の女王が監視しているって意味ね。尊大な象徴的表現。まるでヒュー王子みたい。

—クエン

貯水池の淑女:静かに歩む者の見解Lady in the Cistern: Walks-Softly’s Theory

アバーズ・ランディングの小路に住む者はしばしば食料がないが、水不足に苦しむ者の話は滅多に耳にしない。なぜ最も貧しい者が、そのような潤沢な水に恵まれているのか自身に訊ねたことがあるだろうか?

像は涙の聖母ゼッキに違いない。彼女の父のゼェトはこの土地を見捨て、ほとんどの食物がここで育たないようにしたが、水の女神はアバーズ・ランディングを故郷と呼ぶ失われた魂に同情している。像は不満げな父の目から隠れ、我々が耐え忍べるように彼女が払ってくれた犠牲に感謝しているのだ。

—静かに歩む者

貯水池の淑女:ヴェルサの見解Lady in the Cistern: Velsa’s Theory

像は夜母よ。彼女の右手が開いているのは彼女が知っているから。彼女に蛇が巻きついている。蛇はシシスを意味している

あなたたちが皆バカなのは、夜の空のようにはっきりとしているわ

ヴェルサ

貯水池の淑女:銀の爪の見解Lady in the Cistern: Silver-Claw’s Theory

貯水池の淑女が誰だったのかは知らない。だが実を言えばその像が誰だろうともはや重要ではない

知ってのとおり、その像は今はゼイラを意味していると信じている。彼女の導きがなかったら、今や自分がその一部と誇りを持って言う、この奇妙な小さな家族はもう存在していなかっただろう。だから私にとって、貯水池の淑女はギルドマスターだ

—銀の爪

貯水池の淑女:ゼイラの見解Lady in the Cistern: Zeira’s Theory

銀の爪、お世辞が上手ね。だけど盗賊ギルドはひとりじゃない。your nameがそのよい証拠よ。

そして、他の皆も間違っている。それは束の間の見せかけの姿のレキ。フバラジャードの時代に、彫刻家が好んで表現したように佇んでいるの。像の左手はまるで剣を持つかのように丸まっている。たぶんずっと前にはそうだったんでしょう。もし盗まれていなかったのなら、ずっと昔に錆びて朽ちたに違いない。

アバーズ・ランディング港のすぐ南にある、大量のフバラジャードの像との類似にも気づいてほしい。彼は自分自身を理想化して、クサリヘビに巻きつかれた彫刻を実物の2倍の大きさで注文した。巨大で酷い代物で(どういうわけか)シャツを身につけず、まるで何も彼を傷つけられないかのようだった。

それでもレキをこの貯水池に隠した彫刻家は彼に反論した。長衣は意図を隠し、彼女はほとんど気づかれずに攻撃できた。霊剣の聖人はヒュー王子よりもよっぽど多くを成し遂げたけど、それでもそれを証明するのに船のマストより高くある必要はない。もっと言えば、彼女は街全体に自分を誇示する必要はない。彼女は影からやらなければならないことをすることに満足している。

それにクサリヘビの飾り帯は素敵よ。ヒュー王子を悩ませたでしょうね。

—ゼイラ

追放のマントラMantra of Expulsion

祝福された月よ、その舞いで私たちの心に名をつけてください。

誇り高きジョーデ、我らの足を祈りへと急がせてください。

誇り高きジョーン、その栄光のために、我らの爪を強くしてください。

幽霊の月よ、去れ!明るい月光のもと消えされ!

月のラティスがすべての命を甘くする。月を崇めるのは正しい。心をこめて月を崇めよ。

偵察報告書:隠れ家Scouting Report: The Hideaway

ファレン・ダー

プロとしての仕事は毎日目にできるものではない。隠れ家を巡回している「悪漢」はそうした例外だ。

ここの宝物を追っているのなら、何より重要なのは気づかれないことだ。絶対に。侵入者の気配がしただけでも、占有者は品をさっと運び出すだろう。

すなわち、秘密の通路を活用することだ。そこの警護は緩めで、状況がヤバくなったら「時期をうかがう」には良い場所だから。

—O

偵察報告書:虚空の広間Scouting Report: Deadhollow Halls

ファレン・ダー

古いデイドラの祠をうろつきまわるほどの金はもらっていないから、これは手短に書く。

使っている連中もその場所は好きではないとわかった。だからそこにある宝はすぐに移動される。入って、品を手に入れたら出て行け。無駄にする時間はない。

巡回部隊は互いによく連絡している。一人に見つかったら全員が警戒態勢になる。猶予時間が短くなる。

それでも中には多くの品がある。そこまでたどりつけなくても、二流の略奪品をポケットに詰めこむことはできるし、費用を賄う助けにはなるだろう。

—B

偵察報告書:地下墓地Scouting Report: Underground Sepulcher

ファレン・ダー

人のよさそうな途方に暮れた奴がこの場所を探している。おかしな顔のやつがここについて尋ねる

そもそも地下墓地ってのは何なんだ?持ってる奴はその宗教が好きだ。遺物とかそんなのがたくさんある。価値のある物も。だがあんたは品を追っている。

彼らはあちこちに隠している。たいていは大きな部屋に。隠し場所を使ってるんだ。幸いたくさんある。そこに貯めこんだのが誰であれ、余分な樽をそこらに置いていくのが好きだったんだ!

見つかったら、場所全体が警戒態勢に入る。俺は少しもらって出て行くが、大きな宝は……こっそりやらないとダメだぞ!

—W

鉄の車輪の囚人移送:ゼイラIron Wheel Prisoner Transfer: Zeira

移送する囚人
アバーズ・ランディングのゼイラ
別名:ダニゼイラ
別名:盗賊ギルドのギルドマスター

移送手段
アネモネ号はノー・シラ要塞よりタネスへ直行し、裁判までそこに留め置く

拘置義務
囚人はタネス衛兵隊長またはタネス港の鉄の車輪執行官の監督下に置かれる

罪状要約
—窃盗罪
—重窃盗罪
—不法侵入罪
—共謀罪
—司法からの逃亡罪

注記
直近ではマグニフィカ・ファロラーの結婚式で招待客になりすました。詳細は私がタネスに戻り次第周知する

—ランビク、鉄の車輪 主任調査官

鉄の車輪の掟15Iron Wheel Precept 15

無法者に慈悲をかけるな
彼らの運命は定まっている
これは崇高な義務——
鉄の輪は彼らの周りにある

鉄の車輪の掟21Iron Wheel Precept 21

悔い改めぬ無法者をどうするか?
拘束が効かぬ者には焼き印を使え
焼痕を見た者は拒めまい——
真実をキャンバスで燃やす

鉄の車輪の掟38Iron Wheel Precept 38

無法者が真実を拒むことはできても
運命は拒めない
大いなる真実を明らかにしよう——
車輪は絶えず進み続ける

謎の後援者へTo My Unknown Benefactor

サーまたはマダムへ

なぜこのような小さな貴重品が私の家の戸口に現れるようになったのかはわかりませんが、あなたは私の生活水準をかなり改善してくださったと言わずにはおれません。しかしながらお返しにあなたが求めるものは、私の力で差し上げられるものを超えています。

例えば、今日から1週間後の夜明けに北へ向かう道を通ってキャラバンが出発することについて話せば、自分の地位が危うくなりそうです。そして私の街の商人が金庫の中味を銀行に持っていくのは毎週3番目の日だと知らせるのは、私が明かしてはならない極秘事項なのです。

私たちは互いに理解していると信じています。

—E

普通の髪型への呼びかけA Call for Common Hair

「匿名」 

麗しき我らの街の貴族たちは装飾品と過度に様式化された髪型に夢中になっている。精巧な髪型の虜になったあの無分別なフバラジャード王子の真似をする以外に、やることはないのだろうか?

高貴な髪の殿下はこれまで、無数の精巧な(そして一般の人間にとっては明らかに馬鹿げた)髪型で公衆の面前に姿を現してきた。かつらでも、拷問にかけられたかのような滑稽な地毛でも。路地には飢えた人々や、街の一部区域の沈没によって家を失くした人々がいるというのに、奇妙な髪型王子は自分の美容師がひとつ「芸術」作品を完成させるたびに、100ゴールドもの金貨を支払っている。

最近における彼の毛に関する愚行の例を以下に挙げる:

白金の塔を表わしたもの。明かりをつけた窓を再現するために、ダイアモンドで飾られている。最近開かれた舞踏会で、王子はレディ・ミシェファバの舞踏会場の入り口を通るためにしゃがまなければならなかったと言われている。

センチネルからの何かの専門家を迎えるために港へ外出した時、我らが王子はその髪で帆を全開にしたヨクダの戦艦を再現した。開いた口がふさがらないほどの馬鹿らしさは、彼の頭上を飛び回っていたアジサシの糞が主要な帆をかすめて落ちたことでさらに増した。

最近外出した際、ヒュー王子の髪は今まさに突進せんとするハジ・モタの形を芸術的に模していたことが目撃されている。噂によればこの「髪の獣」の鱗は、そのひとつひとつが均一なサイズのルビーだったという。さらに獣の瞳はエメラルドだった。ある若い乙女はこの毛髪殿下の頭に乗った怪物に恐怖し、失神してしまった。彼女の両親はとっさに毛のモタではなく暑さが原因だと主張し、ヒュー王子の機嫌を損ねることのないようにした。しかしこの若い女は後に、エメラルドの目に見つめられて、ひどく狼狽したのだと言っているところを聞きとがめられている。

アバーズ・ランディングの人々よ、私は懇願する!王子の髪型に抗して立ち上がるのだ!

(メモ:これはアバーズ・ランディングにもともと住んでいた者によって作成された実際のチラシを再印刷したものである。どうやら「ヒュー王子」というのは単に我々がこの不幸な王子に対して用いているあだ名ではないらしい——彼は同時代の人々に実際にこう呼ばれていたのだ)

旅行日程Travel Itinerary

近々実施されるレディ・アナイス・ヴェルモントのヴェルモント保有地視察についての詳細:

1日目:ヴェルモントの富を積み、ゴールドコーストへ向けて出航。

3日目:風と波が許せば、アンヴィルに到着。地方総督フォルナータが、寛大にもアンヴィル城の部屋を私と従者のために提供してくれている。

4日目:アンヴィル城にて上流の舞踏会に出席。私ならきっと、名誉ある客人になれるわ!

5日目:アンヴィルの街の保有地を調査し、家族の事業を処理する。

6日目:タネスへ向けて出航。旅のために海賊のエールを積んでおくのを忘れないこと。

10日目:風と波が許せば、タネスの港町に到着。タネス女王が寛大にも小さなお屋敷を、この訪問中私が使えるように提供してくれている。

11~12日:商人王たちと会い、事業の調整について話し合う。拡大する需要のために、新しい倉庫を買う交渉をする。

13日目:タネス女王の主催する大舞踏会に出席。ザクロのワインを飲みすぎないよう気をつけること。

14日目:アバーズ・ランディングへ向けて出航。戻るその時まで、さようなら!

ゴールドコーストの書

Gold Coast Tomes

アリーナのメモArena Note

物乞いと自称している者に関して。

彼女は物乞いではない。本当のところ、彼女が何者かは定かではない。なぜ貧しい物乞いのふりをしなければならないのか。それも、あんなに下手な仕方で。私にはさっぱりわからない。しかし、彼女はなかなかハンサムなカジートと同行していたところを見られている。

暗号の場所:大通りではない。

アリーナの対戦表Arena Fight Card

何か聞きたいことがある場合、赤いサッシュを身に付けた客席管理者に直接問い合わせてください。アリーナマスターのアプドゥガルには決して近づかないでください!アリーナマスターは非常に多忙です。アリーナの業務に支障をきたすような行いをした方は排除します。

賭け金は対戦が始まる前に、必ず係員に預けてください。対戦が始まったら、それ以降賭け金の受付は行いません。また、賭けに勝った方には独占するのでなく、手に入れた金の10分の1をアカトシュ大聖堂に納めるよう推奨しています。

以下のリストにあるように、興奮するイベントが目白押しです。対戦が終わったら次の対戦が始まるまで少し時間がありますので、そのときに賭け金を預け、回収できます。また、配当金を入手せずにアリーナを出ると、強制的に排除された場合も含め、そのお金はアリーナの所有物になります。ルールを守りましょう!

クヴァッチ・アリーナの予定:

大説教師フィシアによるアカトシュへの祈祷。

殺し屋セノが無制限デスマッチでブラッディー・ボアと対戦!あらゆる戦術と武器が使用可能!卑劣さと残忍さに制限なし!最もずる賢くて強い戦士に勝利を!

野蛮なケイブ・トロールが歴戦のマンモスと対戦!最強の獣に勝利を!

巨人の水路の亡霊、ベネディクタ・ファルトが短剣の二刀流試合で傷だらけのジャノナと対戦!ピッタリとした衣装に身を包んだ、危険な悪女達による剣限定の対戦。血みどろの戦いになること間違いなし!

危険で美しいベラディスとジェンダエルのバイン姉妹が、灰に閉ざされたヴァーデンフェルから来た新たな2人の挑戦者、サイレント・アッシュウォーカーと対戦!この異教徒達は一体どんな汚れた魔術を使うのだろうか?ヴァレンウッドのずる賢いウッドエルフ姉妹は、アッシュランドの獰猛なデイドラ信仰者達を倒せるのだろうか?

神々に対する罪で死刑を宣告された10人の異教徒達。悔悛者のサークルで、パンシウス指揮官から刑の執行を延期する最後の機会が与えられる。悪魔崇拝を放棄して、アカトシュの光を受け入れる者が現れるのだろうか?パンシウスの剣が彼らの運命を決める!

アンヴィルの税Anvil Taxes

アンヴィルの全収税官へ——今すぐ読むように!

頭の回転が遅いお前達の一部が、販売や購入に費やした全額の10分の1という、エフレム伯爵が定めた入港手数料を未だに課していると最近分かった。お前達のろまが最近のアンヴィルの出来事を忘れているのなら言っておくが、エフレム伯爵はもはや港の責任者ではない。今は、フォーチュナタ総督が港を運営している。そしてお前達は、俺の港に入り貨物の交易を行う全船舶に対して、彼女の新しい手数料、5分の1を課すのだ。

5分の1が何なのか分からない間抜けは、5本指を数えろ。親指が5分の1、つまり徴収する量だ。そして他の4本指が残りとなる。よって金の山を見たら、親指と同じ量またはそれ以上を徴収しろ。それ未満はだめだ。文句を言う者がいれば、頭をかち割れ。

割る頭が一人では手に負えないほど多ければ、俺に伝えろ。船に行って、一緒に頭を割る。如何なる理由であれ、船長が支払いをするまで船は出港できない。税金を払わずに船が港を出たら、船を港に留まらせる役目の哨戒兵が、入港手数料を5本の指で支払うことになる。

また明日以降だが、従来の課税率で徴収する者を俺が見つけた場合、そいつは海の檻で一晩過ごすことになる。

倉庫長カマール

アンヴィルの謎の人魚The Mysterious Mermaid of Anvil

アンヴィルはゴールドコーストに建設された時から、冒険と魅力にあふれた都市である。伝説と謎に富み、通りや酒場は世界中からの話題に満ちている。中にははるか彼方の地に起源を発しないものもある。それは建造物の土台に見られるどれよりも古い石から切り出されたアンヴィルの美と魅力の権化、アンヴィルの人魚である。

基本的なことに関する何の記述もなく、街の記録にも起源の記載が見つからないこの人魚は、真っさらな状態でおかれてきた。地元民と訪問者は一様に自分なりの解釈をしてきた。のどかに横たわり慎みのない姿態の彼女は、いくつもの名前と称号を持っている。いくつかはここに記すのにふさわしくない。悲しげな海水の乙女、足長の少女、しょっぱいセレナーデ、石の誘惑者など、他にもたくさんのあだ名があるアンヴィルの人魚は、彼女を眺める者に必ずと言っていいほど長く残る印象を与える。

その人魚のどこに我々はひきつけられるのか。なるほど城っぽい色の岩のなだらかなカーブは美しい姿を生み出しているが、芸術のために裸で横たわっているのか?その完全なる気高さは神々のため、タムリエルの王族、デイドラ公のために建てられた多くの石像と競うほどで、人魚はかつて正体不明の作者にとってそれに似たようなものだったと推測される。美しい人魚は実際のところ長きにわたって忘れ去られた神なのか、それとも隠された神の姿であるのか。さらに不名誉な噂になるが、古代の海の民の文明に現れたアズラではないかという噂もある。だがスロードがあのような美を生み出したとは考え難い。では何だろうか?ドゥルーか?いや、考えられるのは鱗とエラを持っていたシーエルフだ。

人魚が本当は誰を、何を体現しているのか、ほんの少ししかわかっていない。誰が作ったのか、または作らせたのかはさらに謎だ。誰がその巨石を慎重に掘り磨いてこの世にその美を生み出したのか、信用に値する記録はない。多くの者が人魚の起源を説明しようとし、また古い祖先がその設計に関わったと主張した。情報源がいかに信頼できようとも、さらなる調査により常にどの説明よりも古代にさかのぼる。実際、もっとも最近の考古学的研究では、人魚はアンヴィルのどの建造物よりもはるかに昔のもので、少なくとも何人かの称賛者が彼女の側に拠点を置き、その美しい姿の周りに街を築いたのだという。人魚は街中が彼女を見上げることになり喜んだか、それとも恥ずかしく思っただろうか。彼女の遠慮がちな表情を見た者は、答えることができたとしても謎は永遠に解けないだろうという。

それがアンヴィルで彼女が愛される理由だ。

アンヴィル灯台の報告Anvil Lighthouse Report

M—

新しい灯台の守り手について懸念がある。十分な金をばらまいたら、彼女の夫は見て見ぬふりをした。

だが彼が死んだ今、その妻のほうはそうはいかないようだ。申し出はすべてはねのけ、知人以外には扉を固く閉ざしている。うまくいかないのならば、代わりを連れてこなければ。

説教師は闇の一党についてあれこれ言い続けている。本当に近くにいるなら、彼らが契約を受けるかどうか確かめよう。商人の船団に乗り込む必要などない。座礁するのを待てばいい。

—X

イアヌス・ファレリアの墓碑銘Epitaph for Ianus Faleria

我々の間には永遠の絆がある

イアヌス・ファレリア

421年 薄明の月19日死亡

享年 25歳

ヴァレンの壁Varen’s Wall

グウィリム大学歴史学者、ミダラ・サルヴィティカス 著

最後のロングハウス帝に対するヴァレン・アクィラリオスの反乱の初期に急造されたヴァレンの壁と呼ばれる建造物は、ゴールドコーストをコロヴィア台地から隔てている。その壁について、そして地域と反乱、三旗戦役に象徴される継続中の紛争におけるその重要性について説明しよう。

ヴァレンの反乱が始まって間もなく、アクィラリオスは従者に対し、クヴァッチやゴールドコースト全域をロングハウス帝とその軍隊による反撃から守るため、壁の建設を始めるよう命じた。戦いを帝国の中心部へ持ち込む決意を固めていたアクィラリオスは、故郷であり本来の権力の座である場所が、自分の留守中に敵から狙われることは避けたかった。著名な技師であったジャロス・トルプターに設計と建設管理で協力を求め、記録的な速さで高く頑丈な防壁を築くように命じた。

雇われた労働者たちと、増え続ける熱心な志願者たちを従え、ジャロスは目前の作業に取り掛かった。見た目の美しさよりも速さと頑丈な構造のほうが重要だと判断したジャロスは、作業者たちが周囲の田園地帯から集められるどんな建築素材でも使えるように、比較的単純な設計計画を立てた。自然の岩や石、廃虚の一部、購入した建築素材、さらには田園地帯に点在していた屋敷の一部を漁ってきたものまで、すべてが寄せ集められてヴァレンの壁を築き上げるために使われた。

ジャロスによる壁の設計自体は単純で、実用性を重んじたものであり、その見た目は彼の名を知らしめていた他の美しい建築物とは比べものにならなかった。壁は荒く切られた石や不揃いな岩、協力的または非協力的な寄贈者の屋敷から徴発されたブロック、さらには土地そのものの自然の輪郭が混じり合ってできた。壁には塔がほぼ等間隔に配置され、長々と続く岩を遮り、衛兵や見張り用の場所、もしくは守備隊が防衛線沿いに集合する場所を提供した。

クヴァッチとアンヴィルの市民の間ではヴァレンの人気が高かったため、ジャロスは志願者による作業チームを作ることができ、昼夜通して建設を進めるために十分すぎるほどの人員を確保できた。しかし、人々が時間と労力を提供する気になったのは、人気だけによるものではなかった。ヴァレンの言葉と行動がそれを実現させたのだ。彼は人々を、その反乱が正しいことであるだけでなく、デイドラを崇拝する皇帝レオヴィックを止めるために必要なことだと説得した。さらに、人々とその土地を守るために皆を呼び集め、1年のうちにヴァレンの壁は、アビシアン海の岸辺から始まってコロヴィア台地の南西にある田園地帯を曲がりくねりながら通った末、ストリッド川に到達するところにまで建てられた。

ヴァレンの壁は、ヴァレンの反乱の最中にその地域を守るために重要だったが、帝国が没落して三旗戦役が始まると、壁はさらに大きな役割を果たすようになった。シロディールを懸けた激しい争いが繰り広げられる中で、クヴァッチとアンヴィルはヴァレンの壁に守られ、滅びた帝国のかつての中心部において続いた戦闘によるひどい損害を受けずにすんだ。ある種の避難所としてゴールドコーストは栄えた。この場所はクヴァッチとアカトシュ大聖堂に代表される法と秩序、もしくはもっと混迷したアンヴィルと海賊や密売人のどちらが、地域における最強の勢力として勝ち抜くのかを示す政治的な実験場とも言える。

ウィサードローズへの手紙Letter to the Withered Rose

親愛なるラディア

ご機嫌はいかがだろうか、我が親愛なる、麗しき婦人よ。ウィサードローズでの事業が改善したことを願っている。私はあなたの素敵な宿での戯れをいつも楽しんできたが、この地域で近頃、旅行が下火になりつつあることは理解している。かつてあなたのつつましやかな家に詰め掛けていた訪問者たちも少なくなり、さぞかし辛いことだろう。

だが、心配しないでもらいたい!もうあなたはよくご存じのことと思うが、私は約束を守る男だ。あなたのところの建物の下にあり、私の地所の地下へと通じているトンネルを引き続き使わせてもらうことと引き換えに、私はあなたにたっぷりと補助金を支払いたい。我が祖父とあなたの祖父が、かつてあのトンネルを使ってアンヴィルに品物を密輸入していたなどと、誰が知っていただろう?我々が古い家業を続けることを決めたのは、実に幸運なことだったと思う

それと、気にしているようだといけないので言っておくと、私は総督と海賊との協定を延長したので、安心してくれたまえ。あなたがトンネルのことを秘密に保っておき、同業者たちにいつでも使えるようにしておいてくれる限り、金は入り続けるだろう。それから、クモの侵入をどうにかできないか検討を願いたい。前回通過した際、海賊たちが文句をつけてきたのだ。

それからあなたの美しい娘に、私が彼女のことを気にしていたと伝えていただきたい。ルシニアは素晴らしく魅力的な女性に成長しつつある。どうだろう。近い未来の彼女の予定について、また一つ約束を取り付けるというのは。それがいい。

クインタス・ジャロル

ウェアシャーク船長のサーガ、パート4The Saga of Captain Wereshark, Part 4

ピャンドニア探検

負債を清算した後、ナールノーズとステッゴフィンズに別れを告げてスカイリムの凍った岸から離れ、失った勇敢な船員達の2倍の重さの財宝を乗せて海に出た。ペールスピリット号にはたくさんノルドの戦利品が積まれていたため、海を航行する姿はまるでアザラシのようだった。だが船員をひとりも海に放り出すことなく港に辿り着くことができた。その時はまだ、次の探検がこれまでで最も危険なものになるとは誰も思っていなかった。

我々はウェイレストの港に辿り着いた。そしてそれから数日もせずにウェアシャーク船長は、老いたブレトンの探検家、ギグナック公爵と親しくなった。彼は我々からノルドの遺物の多くを買い取った。そして、我が船長の伝説的なカリスマ性に感動したこの老人が (そして、何より重要なことに、彼の長女であるルセッテの強い要望により)、ピャンドニアのマオマーを調べるため、ペールスピリット号に資金を提供してくれることになった。ルセッテからもらった新しい赤い羽根を頭に付け、ウェアシャークは海へと戻った。

我々の名目上の目標は、シーエルフと恒久的な交易関係を築くことだったが、ウェアシャークはいつもどおり、略奪できるだけ略奪することだけを考えていた。戦争用のガレオン船、クリフ・レーサー号とシルバーアロー号(高額な手数料と戦利品の一部と引き替えに、ベルドロス・フラールから借り入れた)を引き連れて、我々は背中から風を受けながら航海を続けた。船には数カ月間、飢えたノルドの腹を満たすために十分な食糧が積まれていた。いつものように順調な航海だった。あの出来事が起るまでは。マオマーのシーサーペントは、ただの伝説ではない。

最初に出会ったのは、深い霧の遥か向こう側に、シーエルフが住んでいそうな木々の茂った島を初めて目にした直後のことだった。木が折れる音がして、叫び声を上げる男達が海の向こう側から流れてきたのだ。ウェアシャークや私、そして武装した船員達全員が、ペールスピリット号の甲板へと急いだ。そして我々は、巨大な蛇の体が巻き付いた、壊れたクリフ・レーサー号の船体が波に飲込まれていく姿を目にした。

ウェアシャークは常に全力だった。彼は叫び声を上げると、船の射手全員に矢を放つよう命じた。海の墓場にクリフ・レーサー号を引きずり込もうとしていた不快な怪物に矢が降り注いだ。だが、怪物の分厚い鱗を貫くことができた矢は1本もなかった。そしてその時、年老いたトカゲの硬き鱗の者が毒の短剣を手に取り、大声でシシスの名を叫びながら海に飛び込んだ。このおかしなアルゴニアンは、この船に乗ることを決めた日から死に場所を探していたのだ。

そしてまさかの出来事が起った。強きフリッカがメインマストの頂上からシルバーアロー号に警告を発し、ウェアシャークが剣を扱える船員達を招集したとき、泡立つ海面に何かが現れたのだ。硬き鱗の者だった。蛇の黒い血を浴びてギラギラと光り、その背後には、巨大なマオマーの蛇の体が浮き沈みしていた。まるで野良猫に引きずられてきた何かの死体のようだった。

硬き鱗の者はどうやって短剣で鱗を貫いたのか、それにどうやってそれだけ長い間海に潜っていられたのか、またはその毒がガレオン船の2倍の大きさの蛇に効果があることをなぜ知っていたのか、といった質問はなしだ。我々が知っていることは、シシスにもう一度会うことができなくて残念だと言ったこと以外、硬き鱗の者はこの件について一切語らなかったということだけだ。クリフ・レーサー号の生存者を回収しながら、ウェアシャークは硬き鱗の者に箱一杯の戦利品を渡すことを約束した。反対する者はいなかった。

またサーペントが現れることを警戒したウェアシャークは、霧に包まれたジャングルの島の海岸に停泊するよう命じた。その浅瀬であれば、我々と島の間だけでなく海底全体も見渡すことができた。ペールスピリット号とシルバーアロー号は、ウェアシャークを乗せた船を先頭にして小舟を4隻派遣した。だが島に辿り着いても、水色のシーエルフの姿はどこにもなかった。

我々はこの島には誰も住んでいないと考えた。だがそれは大間違いだった。

ウェアシャーク船長のサーガ、パート5The Saga of Captain Wereshark, Part 5

ピャンドニア探検の続き

それが始まったのは、船員が小舟を岸に上げた直後のことだった。耳をつんざくような木の折れる音や、うなり声と鼻息の音が不規則に聞こえてきたのだ。まるで野生のイノシシが腐った材木の上にのしかかっているかのようだった。それは白い砂浜を取り囲むやせこけた木々の森のどこかから響いてきていた。

他の船長なら落ち着く間もなく、小舟に戻ってペールスピリット号に向かうよう指示を出しただろう、だがウェアシャークは違った。彼は全員に白い砂浜へ留まるよう指示したのだ。とどろき渡るような彼の怒鳴り声を聞き、船員たちは軍隊のように背筋を伸ばした。そしてウェアシャークは、歯を鳴らしているこの獣を最初に倒した船員に、この探索で得た略奪品と、船長の個室でウェルワのステーキを食べられる権利を与えると約束した。

その結果、船員たちの不安は打ち消され、彼らは戦いへと駆り立てられた。ウェルワのステーキを食べたことがない読者のために言っておくが、あれ以上すばらしい食べ物はない。バグロガが塩をかけて火を加えれば、それはまるで牛肉に塩漬けチーズを加えたような味になり、油を塗ったオオバコのように食道を滑り落ちていく。ウェアシャークと一緒に船で旅をすれば、誰もがその香りをかいだだけで思わずよだれを出してしまうのだ。正直に言うが、それが真実であることを示すかのように、私の腹も音を立てていた。

ウェアシャークは我々をいくつかのグループに分けた。硬き鱗の者は、森の獣たちが海に出てきた時と、略奪できる集落を見つけた時のために、バグノーズ、隻眼のバンジ、そして浜辺に止まっているクリフ・レーサー号の船員5名で構成されている一団を率いることになった。強きフリッカは、スタービングドッグ号で契約を交わしたノルドの斧使いの一族を引き連れて、そのリズミカルなうなり声の主を始末、もしくは排除するため東の森に入った。そこには斥候である二つの傷のガレナもいた。あれほど森好きのウッドエルフに会ったのは初めてだった。

ウェアシャークは最後のグループを自分で率いることにした。そこには忠実な一等航海士(つまり私)と、双子のスノークロー、ヴィミー・ラクロイック、そして追放されたハイエルフ、ネラモが含まれていた。我々は上陸地点の南にある岩の多い浅瀬に向かい、硬き鱗の者のグループを回り込むようにしながら探索することになった。我々は他のチームより小規模だった。それにしても、狂乱の魔術師ネラモほど、人々を吹き飛ばすことに長けたエルフはそれまで見たことがなかった。

浅瀬は足場が不安定だったが生物は見当たらなかった。そしてあの恐ろしいうなり声を耳にしながら1時間ほど歩いたとき、木と泥と葉できた無人の小屋がたくさんある集落を発見した。そこには誰もおらず、巨大な卵の殻の欠片以外には何もなかった。だがこれにより、この島には生物がいるか、もしくは森の中にいた生物が腹を空かせて砂浜へと現れるまで存在していたことが分かった。

うなり声と歯ぎしり音は相変わらずあちこちで鳴り響いていた。だが他の部隊の叫び声や怒鳴り声は聞こえてこなかった。つまりその生物の正体が何であれ、まだ強きフリッカには発見されていないということだ。この騒ぎを起こした主に思わず同情しかけたそのとき、それは突然浜辺に姿を現して我々を睨み付けた。4本脚のリザードブルで、大きさはバグノーズの2倍ほどもあった。それは緑色の鱗に覆われており、マーラのスカートにかけて誓うが、オーリドンの路上にいる退屈なアルトマーの女王の衛兵が持っているような、美しいトライデントを携えていたのだ。

言うまでもないが、ネラモが顔面にファイアボールを放ったことに異議を唱える者はいなかった。

ウェアシャーク船長のサーガ、パート6The Saga of Captain Wereshark, Part 6

ピャンドニア探検の続き

ネラモに燃やされたリザードブルは、トライデントを手に猛然と突進してきた。ウェアシャークは我々に浅瀬へと戻るよう命じた。不確かな足下であればリザードの動きを封じられると考えたのだ。双子のスノークローは矢を浴びせたが、獣が倒れることはなかった。私は硬き鱗の者の強力な毒が手もとにあればと心から願った。その時だった。ヴィミーが素早く体を翻し、追いつかないほどの早さで走り出したのだ。

獣は彼女に向かってトライデントを振ったが、ヴィミーはその下をくぐり抜けると、馬に乗るかのようにいとも簡単にその生物の背中に飛び乗った。その直後、リザードブルの両目にナイフが突き立てられた。そしてネラモが再び火を放ったが、目の見えなくなったその獣は、もはや叫び声を上げてトライデントを振り回すことしかできなかった。

ウェアシャークは凄まじい雄叫びを上げ、我々に攻撃を命じた。ウェアシャークとスノークロー達は斧と剣でその獣に斬りかかり、私は遠くから回復呪文の詠唱に徹した。獣は視覚を失い、燃やされ、疲弊し、ついに倒れた。だが闇雲に放った一撃を受け、バルドール・スノークローが浜の反対側まで吹き飛ばされてしまった。幸運なことに、その一撃はノルドの一番堅い部分である頭に当たっただけだった。私には、その出血をすぐに止めることができた。

獣を倒したウェアシャークは、最後にもう一度、小屋を調べるように命じた。結局あの卵の欠片以外には、価値のあるようなものは見つけられなかった。ウェアシャークは賢明にもそれに固執せず、我々に小舟に戻るよう命じた。うなり声はまだ響いていた。これは巨大なリザードブルが森の中にまだいることを意味していた。

何もない小屋とリザードブルしか存在しない島で、我々の命を危険に晒す必要はない。真珠は他でも手に入れられる。我々は他の者を待つために浜辺に戻ることにした。そしてそこにたどり着いたときだった、ギラギラと光るシーエルフの軍団を発見したのだ。彼らは我々の小舟を取り囲み、硬き鱗の者、バグノーズ、そしてクリフ・レーサー号の生存者達を捕虜にしていた。この猫嫌い達が、お遊びで隻眼のバンジを殺したことが分かったのは、それからしばらく経ってからのことだった。

ウェアシャークは身を隠しながら我々の意見を求めた。硬き鱗の者とバグノーズを鎖に繋がれたままにはしておけなかった、それにシーエルフは我々の船を占拠していたのだ。ペールスピリット号とシルバーアロー号と外洋の間に、マオマーの軍艦が係留しているのが見えた。これでは、どうにかして船に戻ることができたとしても逃げ切れないだろう。しばらく考えた後、ウェアシャークは決定を下した。「交渉」することにしたのだ。

彼は我々に隠れているように命じ、「ステンダールの血を!」と叫んだ時にだけ攻撃するよう指示した。読者諸君、分かっていると思うが、我々は海賊だ。海賊であればシーエルフに捕まった者がどうなるか理解している。嵐の生贄として切り刻まれることになっても、あの尖った耳を殺すことができるなら我々は喜んで命を捧げる。シーエルフが交渉を拒否したら、ウェアシャークが言っていたとおり、奴らの多くが海に浮かぶことになるだろう。

ウェアシャークが名を名乗ると、40以上のシーエルフ達が彼の方に白い目を大きく見開いて、剣を抜き、弓を構えた。だが船長はまるでアバーズ・ランディングの人混みの中を歩くかのように、堂々と彼らの方に向かって歩いていった。両手を示して、剣に手を近づけないようにしていたため、シーエルフが彼を攻撃してくることはなかった。指示されていたように、硬き鱗の者が船長の功績を彼らに話していたことは明らかだった。

彼らはウェアシャークに近づいてくると、ブーツやベルトの短剣だけでなく、袖に仕込んでいた武器や持っていた剣も取り上げた。その間ウェアシャークは一切抵抗しなかった。そして一番線の細い、白い顔をしたシーエルフがその金色の鎧を太陽に輝かせながら船長に近づくと、いきなり顔を逆手で打ちつけた。ウェアシャークは足下に唾を吐くと、ニヤリと笑った。

ヴィミーに目をやると、やれやれという顔をしていた。これから交渉しようというのに先が思いやられる。するとそのとき突然、強きフリッカとノルド達が、怒ったウェルワの集団のように吠えながら森から飛び出してきた。

するとそれに続いて、二つの傷のガレナに追われていた、トライデントを持つ8体のリザードブル達が浜辺に押し寄せてきた。

ウェアシャーク船長のサーガ、パート7The Saga of Captain Wereshark, Part 7

ピャンドニア探検の続き

血に飢えたノルドの斧使い達と、トライデントを持つリザードブル達が突然突進してきたことで、シーエルフの船長は混乱したのだろう。彼はパニック状態で叫びながら射手達に攻撃を命じた。そして彼らは、愚かにも突然現れた獣達に向かって矢を放ったのだ。その無益な攻撃はリザードブル達をますます怒らせた。そしてそれと同時に、ウェアシャークは「ステンダールの血を!」と叫んだ。我々はそれを合図に、一斉にその戦場に突撃した。

怒ったリザードブル達は怯えたシーエルフ達に襲い掛かり、彼らを分断して森の中に次々と放り投げた。シーエルフ達が態勢を整える頃には、強きフリッカ達もそこを通り抜けて岸に辿り着いており、我々は全員で盾を使ってファランクス陣形を作り、雷と嵐の魔法の詠唱を開始していた。ウェアシャークはすでに自分の武器を回収しており、我々も仲間達の救出に当たっていたが、その頃シーエルフ達はまだ空中にいた。

航海の歴史上最も冷酷な海賊と、怒ったリザードブルに囲まれれば、いくらシーエルフ達といえどもセンチネルの真ん中にあるムーンブロッサムのように萎れるしかなかった。結局はリザードブル達に追い立てられ、マオマーの生存者達は蜘蛛の子を散らすように森の中へと逃げ込んだ。我々はネラモやヴィミーと協力して、他の者達に狩り方を教え、向かってきたわずかなリザードブル達を始末した。

エルフの死体から金になるようなものを全て回収した後、我々は小舟に急いで乗り込み、外海へと向かった。全員がペールスピリット号の先に停泊しているシーエルフのガレオン船を警戒して身構えていた。背後には霧が再び立ちこめてきていた。リザードブルに追われて八つ裂きにされて苦しむ、あのシーエルフ達の叫び声は決して忘れないだろう。彼らのやり方は残酷だったが、島の恐ろしい生物たちに惨殺される姿には思わず同情してしまった。

ウェアシャーク船長を見ると、シーエルフの船長の金色の兜を被っていた。これからこの兜を使っていくというわけではなく、バカにするための冗談だったようだが、まるでウェアシャークがついに色とりどりの美しい羽を脱ぎ捨ててしまったかのようだった!そうなったら、一体誰が彼を見分けられる?

船を漕ぎ、シーエルフが叫び声を上げている間、我々は雷や嵐の訪れと、新たなシーサーペントの攻撃を警戒していた、だがシルバーアロー号の時と同じように、生きてペールスピリット号に辿り着けた。我々は船を出したが、シーエルフの軍艦は停泊したまま一切動かなかった。その時になって分かったことだが、シーエルフの愚かな船長が、帰港するために十分な船員を船に残していなかったのだ。船を奪取することもできたが、その船を操舵できるだけの船員がおらず、それを買い取ってくれるような人物にも心当たりがなかった。

霧がシーエルフの軍艦と怒ったリザードブルの島を飲み込んでいった。その2つが視界から消えても、叫び声はしばらく響き渡っていたが、すぐに波がぶつかる優しい音と、ペールスピリット号の力強い帆の音だけしか聞こえなくなった。シーエルフの軍艦を探すために新たな船が現れることを警戒して、シルバーアロー号と共に夜通し航海を続けたが、我々の行く手を阻む者はついに現れなかった。次の日を迎えると霧はすっかり晴れ、新たな島が姿を現した。前の島よりも遥かに期待できそうだった。

静かに進み、船員達が武器を準備していると、シーエルフ様式のギラギラとした尖塔が視界に入ってきた。さらに重要なことに、浜辺を守るシーエルフの戦士がどこにも見当たらなかったのだ。漁村のようだが、余りにもへんぴな場所にあるため、襲われることを予期していなかったのだ。この襲撃は大規模なものになるだろう。

目を輝かせて羽を風にはためかせながら、ウェアシャーク船長は攻撃を命じた。

お前の契約に関してRegarding Your Contract

何度も言っているとおり、クラヴィカス・ヴァイルを召喚するのは難しいことではない。ただもう一度忠告するが、この案は全くもってお勧めできない。アザチがああなったのは偶然だ。それに10年後どうなっているかなんて誰にも分からない。デイドラ公ほど気が長いゲームをやる者はいないのだ。

ヴァイルが定命の者と取引するのは、彼らがその取引を後悔することが分かっているからだ。アザチがどうやって彼を出し抜いたのかは知らない。ただ同じことがまた起きるだなんて思わないことだ。よほどのことがない限り、アザチのことは秘密にしておけ。それにこの件に関わっている間は、私の名前も出さないでくれ。

ただ、お前が持っている金は他の金と同じだ、それにお前はこの件に、異常なほど執着しているように見える。だから説明だけはしておく。暁星の月の1日に、地図に記してある草に覆われた祠に行け。そして古い涸れ井戸に500ゴールドを投げ込むんだ。クラヴィカス・ヴァイルが取引をする気になれば、すぐに現れるはずだ。

今、お前が何を考えているのかよく分かるぞ。500ゴールドを井戸に投げるだって?それだけでデイドラ公を召喚できるのか?愚かな友よ。様々な印と汚れなき生贄を期待していたかもしれないが、それは他のデイドラ公を呼び出すためのものだ!ヴァイルはゴールドと魂に価値があると考えている。

考え直せ。欲望に捕らわれずに、今持っているもので満足するんだ。これを実行するなら、というかお前はそうするだろうが、失敗しても私に文句を言うな。

警告はしておいたぞ。

ガーラス・アジーア工作記録Garlas Agea Construction Log

第1日:今日、我々はゴールドコースト貿易会社の依頼でガーラス・アジーアに到着した。会社は我々に、彼らの呼ぶところでは古代の機械仕掛けの不要物を解除して欲しいとのことだ。自身の目で「不要物」を見て、以前に到着した時よりも少し不安になっている。この仕掛けは巨大なアカヴィリの刃で、大広間一つ分の振り幅を揺れている。こいつをどうすればいいのか、ちょっとわからない。この死の罠の残りの部分を確認し、飛び出して我々をいきなり殺してしまうかもしれないものを排除すべきだろう。

第2日:巨大な揺れる刃は、対処しなければならない唯一の障害ではないということか。おそらく私の最高の斥候であるルシウスが、主要な部屋の一つに入って窒息死した。それでわかったのは、その部屋の床が有毒のガスを噴き出していることだ。この分だと、この場所を掃討するまでにもう何人か、最良の作業員たちを失うことになるかもしれない。この遺跡から無事に出られたら、費用について交渉をやり直さなければならないだろう。

第4日:あの忌々しいガスの罠をようやく遮断できた。それもさらなる作業員を失うことなくだ。とはいえ作業員たちには、あの部屋であまり長時間過ごさないように言っておいた。さらなるガスが何らかの仕方で漏れ出してくるに違いない。いずれにせよ、我々は遺跡の内部へ向かってある程度進むことができた。

第7日:我々はあの揺れる刃の罠がある広間と思われる場所の反対側を見つけた。サブリナはうまいタイミングで入っていけばすり抜けられると考えているようだ。私はどちらかというと木の板を数枚使って、刃を塞いでいる間に彼女を通り抜けさせようと思う。これで少なくとも動きを止めて、大広間の再建のための準備ができるだろう。

第9日:成功だ!揺れる刃をとりあえず止めることができた。さらに足場をいくつか築くことにも成功した。もしかしたら最初に恐れたほどには、この場所に苦労させられずに済むかもしれない。

第10日:意外にも刃の罠が我々の封鎖を破り、作業員一人の命を奪った。どうやら今、我々はここに閉じ込められてしまったようだ。封鎖のうち一つだけがまだ持ちこたえているが、いつまで続くのだろうか?サブリナは駆け抜けてみようと思っていると言っていた。

第11日:サブリナは駆け抜けることを試みたが、予定したようにうまくはいかなかった。しかし私も同じことをやってみようと考えている。ただサブリナがひどい傷で出血死しようとしている点が、私を押し留めている。雇った傭兵たちの何人かが、我々のところに食料とワインを投げ入れることに成功したが、近いうちに何とかしなければ、ここで死ぬことになるだろう。勇気を出せば、死の刃を駆け抜けられるかもしれない。明日になれば。

キレスからの手紙Letter from Kireth

いとこのデミナーへ

この手紙が無事届くことを祈っているわ。ヴァーデンフェルの様子はどう?ハンマーフェルでの仕事が終わったら、レイノーと一緒に遊びに行くのもいいわね。まあ、まずはハンマーフェルに辿り着いてからの話だけど。最近の冒険について話すわ。ええ、全部レイノーが悪いのよ。いつものようにね。

私達は、ターヴァの祝福の近くで新しいドワーフ遺跡が見つかったと連絡を受けたの。レイノーは出来るだけ早く向かおうとしたわ。私が旅行の物資を確保している間、レイノーはセンチネルへ航海するよう交渉に行ったの。でも、彼のことは知っているでしょう。興奮して、新しい発見に夢中になってしまった。そこで失敗したのよ。彼はハンマーフェルへの船を予約しようとしたけど、私達はアンヴィルへ向かう船に乗せられてしまった。今はそこにいるわ。余分な金はないし、しばらくハンマーフェルへ辿り着ける見込みはない。

心配しないで。私達は何か考えつくわ。いつものように。アンヴィルに来たのはこれが初めてよ。びっくりするくらい海賊が多いの!ここは気に入るかもしれないわね。最後に私達が伺った時の記憶だと、あなたはいつも海賊っぽかったもの。旦那さんは元気?まだあの、自分ではワインと呼んでいる悪しき混合物を売って生計を立てようとしているの?正直に言うけど、あなたがやった方がいいわよ!

さて、この辺りで。私達はこの悲惨な街で仕事を探さないといけない。センチネル行きの船代を払えるようにね。幸運を祈って!もし私達が行く時は、きっとシェインをお土産に持って行くわ。あなたも、私と同じように旦那さんの商品を気に入っていないでしょう!

キレス・V

クヴァッチ・アリーナ、再開!Kvatch Arena Reopens!

クヴァッチの住民よ!カロラス伯爵の承認により、我々はクヴァッチ・アリーナを即刻再開させる!

クヴァッチの全住民その他は、躍動感あふれる数多の新イベントの観覧に招待される。イベントに含まれるのは、戦闘技術コンテスト、獰猛な獣達による戦闘、グランド・メレーなどだ!時の騎士団との協力で、新イベント「悔悛者のサークル」も追加される!

今後、名高いアリーナが定期的に開催することになる、スリル満載のイベント一覧を以下に記す。

力の衝突
ぜひご覧あれ。大陸で最も危険な剣闘士達が1対1、2対2、4対4で戦う。血塗られた戦いで扱われる武器よりも大きいのは、勝者に贈られる財布だけだ!勇敢なコロヴィア人に加えて、異国の戦士達を目の当たりにするだろう。残忍なノルド、獰猛なレッドガード、残酷なオーク、策略のウッドエルフ、さらに沈黙のシーエルフアサシンまでもが加わる。

このスリリングな戦いを見逃す手はない。コロヴィア人の英雄達に歓声を上げるか、異国の戦士達に賭けることで、彼らに最高のコロヴィア戦士と戦う理由を与えてやろう。よいショーになることを約束する!

獣達の衝突
勇敢な調教師によって集められたタムリエル中の野蛮な獣達が、その牙とかぎ爪こそが最強であると証明する戦いを目撃せよ!バンコライライオンの容赦ないどう猛さにスリルを味わおう!アリクルデューンリッパーの奇襲攻撃に息を飲もう!さらに、我々がチケットの販売で十分な金を獲得できたら、伝説的なマンティコラを未開地クラグローンから連れてくると、商魂たくましい商人に約束させた!

グランド・メレー
10名の戦士がアリーナに入るが、立ち去れるのは1名の戦士のみ!闘士であれば、誰でも地上の近接戦に参加できる。使用武器、戦闘方法は問わない!すべての戦闘が残酷で、結果が予期できないということ以外、何が起きるかは予測不能だ。我々の新しい階層戦闘システムにより、賭けた闘士が敗退しても最後の敗者グループに属していれば、なお金を獲得できる。一生に一度のイベントを見逃すな!

悔悛者のサークル
クヴァッチの時の騎士団の勇敢な騎士達が主催。神々に対して罪を犯した異端者、異教徒が悔悛する最後の機会を与えられる!数多の異教徒が勇敢で容赦ない時の騎士団の剣闘士達と対峙する。彼らの信仰が本物であると証明されれば、神々は彼らに微笑み、生き残ることさえ可能になるかも知れない。助からなかった者達も、死ぬ前には救済を目にするだろう。

デイドラ公との闇の儀式に手を出し、死霊術を行い、アカトシュへ罪を犯すすべての異教徒と戦って打ち負かす、勇敢な時の騎士団の剣闘士達に声援を送ろう。

クワマー鉱山労働者のメモKwama Miner’s Note

ボス

クワマー鉱山労働者同盟に頼まれた調査は現場にてほぼ完了しました。極めて明るい展望です。降霜の月が来る前に別の女王が誕生したので、新しいクワマーの巣にちょうどいい状態になっています。

存続能力のある巣がそれまでに出来なければ、雪解けまでコストを下げるために洞窟を諦めなければなりません。我々の出発から帰着までの間に、何かが住み着かないとも限らない。この鉱山を失うのは大変な損害になるでしょう。

中止の命令が出るまで計画通りに仕事を続けます。我々に関係のある変更があれば都度教えてください。

クワマー鉱山労働者ダブルーン

ゴールドコーストガイド パート1Gold Coast Guide, Part One

ゴールドコースト:ロングハウス帝の保養地
アスティニア・イサウリクス 著
公開日:第二紀566年 恵雨の月8日

シロディールの絶景を目にして、アンヴィルの素敵な天気と黄色い砂の浜辺を楽しみたいのなら、ゴールドコーストは最高の行き先と言える。外国へ旅行に行く時、身の安全に配慮するのは当然のことだが、先見の明のある警察とレオヴィック帝の指導力により、海岸の治安は劇的に向上した。皇帝自身は我々と頻繁に保養地へと行かれるが、温和なゴールドコーストへ念願の旅を果たすには、今が絶好の機会である。

輝く太陽と澄んだ波のゴールドコーストは、アビシアン海からの暖流により、良好な気候に恵まれている。我々は、真の冒険を求める好奇心旺盛な者に、手頃な価格で新緑の楽園を提供している。アビシアン海の警備と地域の安全確保の任務を偉大な皇帝より課される帝国海軍はアンヴィルを母港としており、皇帝の力に挑戦しようとする海賊は誰一人としていない。皇帝の完全武装した海軍と、熟練の兵士達があなたの安全を守る。

この案内書はゴールドコーストの歴史と、数多の素晴らしい観光地を案内するものである。
* * *
二つの大河に囲まれた肥沃な土地

二つの巨大河川によって、ゴールドコーストの境界が定められている。北のブレナ川がシロディールをハンマーフェルから隔てており、南のストリッド川がヴァレンウッドとの境界線になっている。二つの河川は大陸内部の中心的な交易路である。過去には数多くの海賊が両河川の所有権を主張したが、帝国海軍の存在により、そのような行為に終止符が打たれた。

大河の規模を真に理解するには、交易がピークに達する時期に、積荷に溢れるガレオン船がブレナ河とストリッド河を往来する喧騒を目にしなくてはならない。夏に河川を航行するのは歓迎だが、冬にはお勧めしない。冬の月の河は、湿気と霧で不快になる。
* * *
西の高地の美と神秘

ゴールドコーストの内陸は、そのほとんどが、ごつごつした高地と、木々が点在する低い山で構成される。密集したオークの木々や、ブナ、灰の森がその例だ。この地域は、ハイキングツアーや、学者や歴史家が特別な興味を示す数多くの古代遺跡を、ガイド随行で探検する時に最適である。コロヴィアの富の多くは伐採搬出業から生まれているが、林業の有力者はゴールドコースト全土で事業を行っている。コロヴィアの木は依然として、建設や武器の製造用に大きな需要がある。

高地では季節的な濃霧が発生しやすい。これにより、我々の遺跡を闊歩する「ブルメン」の物語などの迷信が多数生まれた!高地にねぐらを構える盗賊達によって広まった噂に過ぎないが、旅行者には、武器の携行や武装した同行者とともに旅をするよう推奨する。ゴールドコーストでは、旅行者の安全が我々の最重要課題であり、滞在を可能な限り快適に楽しめるようにするため、我々は尽力している。

ゴールドコーストガイド パート2Gold Coast Guide, Part Two

ゴールドコースト:ロングハウス帝の保養地
アスティニア・イサウリクス 著
公開日:第二紀566年 恵雨の月8日

歴史的都市クヴァッチ

丘から見下ろすクヴァッチの街は、シロディールでも最古のコロヴィア都市の一つで、豊かな歴史と脈打つ伝統を兼ね備えている。クヴァッチの住民は博識で快活、保守的で信心深いという評判を気に入っている。神々との交信、または神々の学びを求める敬虔な旅人にとって、クヴァッチの司祭は献身と信仰を行う巡礼者を、諸手を上げて歓迎してくれる存在となっている。

荘厳なたたずまいと豪奢な内装を誇る名高いアカトシュ大聖堂は、クヴァッチの空にそびえ立っている。各神の祠を擁する大聖堂は、その雄大さと美しさを眺める訪問者を各地から引き寄せる。大聖堂内やその周りでは、アカトシュ大司教と大聖堂の守護者である由緒正しき時の騎士団が任務を行う姿をしばしば見られる。彼らは、「クヴァッチの番人」という何世代にも渡って街の警戒に当たってきた者達の仕事を補っている。二つの団体に守られ、クヴァッチは帝国随一の安全な街となっているのだ。

一方で、クヴァッチが崇拝と熟考以外にすることがない場所であると考えてはならない。タムリエル最古のアリーナの一つ、伝説のクヴァッチ・アリーナも存在する。帝都のアリーナに匹敵するものは存在しないが、アリーナ最高の戦士の多くは、ここゴールドコーストにてキ戦いを開始した。クヴァッチ・アリーナで観戦を満喫すれば、帝都で地位を築く前の新たな戦士を見られる、素晴らしい機会が訪れるだろう。
* * *
国際的な楽園アンヴィル

ゴールドコーストへの旅路の寄港地、アンヴィルはアビシアン海の至宝!

ゴールドコースト最高の港街であるアンヴィルは、シロディール各地や、さらに遠方から訪れる王族や高官の保養地を有している。聡明で気高いエフレム・ベニルス伯爵が帝国総督の称号を冠し、夏の月に頻繁に訪れる皇帝の意向により、この素晴らしき街を統治している。幸運な訪問者なら、アンヴィル城のバルコニーから臣民に手を振る偉大なレオヴィック皇帝を見られるかも知れない。

タムリエル中の珍しいものや美味しいものが並ぶ素敵な青空市場を活用するために、旅人が至るところからやってくる。他の者は、数多の素晴らしいレストランで食事をするためにやってくる。また、砂の浜辺で戯れ、アビシアン海の澄んだ水で泳ぐ者もいる。街には貴族と資産家のためのたくさんの豪華な宿泊施設があるが、一部にはより手頃な料金で、居心地の良い浜辺に面したコテージの客室も提供されており、訪問者に料理を振る舞っている。

つまるところ、温和で美しいゴールドコースト以上に理想的な旅行先はない。アカトシュ大聖堂の聖地巡礼で行くにせよ、クヴァッチ・アリーナの心躍る戦いを楽しむために滞在するにせよ、古代の遺跡を研究するにせよ、アンヴィルの都会の輝きを見るにせよ、アビシアン海の端で快適さと冒険を経験するだろう。今すぐ来るといい。お会いできるのを楽しみにしている!

ゴールドコーストのゴブリン部族Gold Coast Goblin Tribes

戦士ギルド小冊子
アンヴィルの戦士ギルド 編集

戦士ギルドは公共の利益のために、タムリエルの住人の脅威となる事項について、一般に指導を行っている。この小冊子は、ゴールドコーストのゴブリン部族に関する情報をアンヴィルの戦士ギルドが編集したものである。

* * *

ギルド幹事シャベー・アフナイファへ

懲罰合意に従い、私がこのゴールドコーストのゴブリン部族に関する評論を届けることになった。そちらの話では、何日も掛かるようなことはないだろうとのことだった。一週間遅れでこの件を報告することになり、非常に申し訳なく思っている。

シャープスティック族はゴールドコーストの南部を自分達の領土だと主張しており、ロングトゥース族は北部の領有権を主張している。ゴールドコーストのゴブリンについて他に知るべきことはあるだろうか?

実はたくさんある。調べたのだ。ただ、ほとんどが混乱させられる。

私は当初、ロングトゥース族がこの地域で一番古いゴブリン部族だと思っていた。だが、彼らが台頭したのはつい最近だった。彼らはかつて3つの部族、ロングクロウ族、トゥースロック族、ロックスティック族に別れていた。ロングクロウ族とトゥースロック族はかつて、コロールの南西部にある猟場を巡って頻繁に争っていた。コロールの戦士ギルドが彼らを排除するために雇われたことで、すぐに両部族はそこを後にした。

両部族はその後もゴールドコーストに移住して、規模の大きな隔絶されたロックスティック族に出会うまで争い続けていた。そして共通の敵が現れたロングクロウ族とトゥースロック族は、彼らと敵対するロックスティック族を滅ぼすために団結するようになった。

それから1カ月もしないうちに、残っていたゴブリン達は自分達をロングトゥース族と呼ぶようになった。彼らは粗野な旗を立て、実質的にアンヴィル北部の支配者となった。経緯は不明だ。ロングトゥース族はその点を明らかにしようとしない。

シャープスティック族についてだが、彼らは先に述べたようなゴブリン部族の寄せ集めだ。アイスティック族はシャープロック族と戦い、シャープロック族はシャッターボーン族を使ってブラッドスカル族に攻撃を仕掛けた。だが、ブラッドスカル族の宿敵はガットブレード族で、ガットブレード族はシャッターボーン族とブラッドスカル族に奇襲を掛けていた。

シャープロック族とアイスティック族は、宿敵達が三つどもえの戦争になっていることに気付くと、他の部族を支配するためすぐに同盟を結んだ。勝利の前夜、アイスティック族とシャープロック族はお互いを攻撃し始めた。この大戦争はゴールドコーストの南部で勃発し、現場にたまたま居合わせた可哀想なカジートの猟師(彼は有名なクヴァッチの酒場の歌、「なかった戦争」で知られている)以外に知られることなく終結した。

反目し合う5つの部族だったが、生き残った者もいた。一部は逃げ出してロックスティック族となり、(数年後に)ロングクロウ族とトゥースロック族に吸収された。そこに残った者はシャープスティック族になり、ロックスティック族の反撃に備えて戦力を強化したが、結局攻撃を受けることはなかった。彼らは最終的に農業を営むようになり、それを生活の糧にするようになった。

ロングトゥース族とシャープスティック族は非常に接近しており、戦争が始まるのはもはや時間の問題だろう。最終的にロングスティック族が大きな部族を形成するようになったら、一つだけ頼みたいことがある。彼らをゴールドコーストから追い出す任務に私も加えてほしい。

—[懲罰合意に従い名前は非公開]

ゴールドコーストの海賊女王Pirate Queen of the Gold Coast

グウィリム大学歴史学者、ミダラ・サルヴィティカス 著

ゴールドコーストは、第二紀576年にヴァレン・アクィラリオスがロングハウス帝レオヴィックに対する反乱を率いて以来、劇的な変化を遂げた。まず、地域の住民はヴァレンの壁を築くために結束した。その件については同名の論文において詳細に考察している。その防衛的境界線によって、ゴールドコーストはコロヴィア台地から遮られ、帝国の報復やその他外部の脅威から守られた。次に、地域は反乱を利用し、シロディールからの独立を宣言した。これら2つの出来事により、ゴールドコーストは他の地域を悩ませる問題から隔離された安全地帯として確立されたが、それによって別の種類の試練が生じることにもなった。

第二紀577年、最後の石が置かれてヴァレンの壁が完成し、帝国海軍が北部と東部で反乱に対処するため留守にしていたちょうどその頃、商人の戦闘艦と海賊船からなる船隊がアンヴィルの港にたどり着いた。各船の上には、血の赤のサーベルで飾られた白い旗がはためいていた。ゴールドコースト貿易会社の海運王、フォーチュナタ・アプドゥガルによって率いられたその船隊は、港を乗っ取り、船乗りと海賊の戦士たちをあっという間に上陸させ、残っていた帝国長官に忠実な軍隊を圧倒した。1日も経過しないうちにフォーチュナタはアンヴィルを支配し、自ら地方総督と名乗り、ゴールドコーストが、アビシアン海からヴァレンの壁にかけて、自由な独立した街になったことを宣言した。

地方総督を自ら宣言したが、仲間と敵の両方からは海賊女王としてよく知られた彼女は、ゴールドコースト貿易会社の高位商人王としての人脈を利用して権力の土台を築いた。海賊に対しては、安全な隠れ家と地域に入ってくる富の一部を分け与えることを引き換えに、援助と支持を求めた。海賊たちは、雇い主の会社よりも常にフォーチュナタに忠実だった商船員とともに、海賊女王がアンヴィルとその周囲の田園地帯を支配し維持するために必要な武器を与えた。

様々な意味で、真実の方が現在アンヴィルの街中で新聞に登場するきわどく風変わりな冒険物語よりも、ずっと信じ難い。こうしたきわどい物語では、一応架空の海賊女帝スサ・アプラグドの手柄が語られており、かなり人気を博している。本物の海賊女王はその物語を許容しており、日頃から積極的に発行を後押ししているほどである。

今では白地に赤いサーベルの旗がアンヴィル城とアンヴィル灯台の上ではためき、海賊女王はアンヴィルを「自由の街」に変えた。いかなる同盟の軍艦もアンヴィル港に近づくことは許可されていない。その代わりに、タムリエル中から来る商船が波止場を埋め尽くし、喜んで積み荷を安値で売買している。かつて高慢で影響力の強かったゴールドコースト貿易会社も、世間体と誰が主導権を握っているかについて争うよりも利益のほうが重要だと判断して、海賊女王の要求を不本意ながら受け入れている。事実上、海賊女王の言うとおりにしているのだ。

海賊女王がアンヴィルの北東に隣接するクヴァッチを狙っていることは、預言者に聞くまでもなく分かることだ。よく知られた彼女による独立宣言の中でも言及されたことである。様々な海賊が次から次へと彼女の旗の下に集まり、恐れをなした貴族からは税金と称した保護料が流れ込んでおり、フォーチュナタの元にはやがてカロラス伯爵、さらにはアルトリウス大司教にさえ対処できる資源が集まるだろう。単に時間の問題である。そして海賊女王はこれまで幾度となく、計画を温めることにかけてはとても辛抱強いところを見せてきた。

あらゆる意味、フォーチュナタはアンヴィルを高圧的に支配している。レッドセイルの海賊たちは私的軍隊のような役割を果たし、襲撃や暴力行為、また命令によっては警察の任務を遂行している。彼女は冷酷無残な独裁者かもしれないが、地域を安定させ、無秩序な混迷を引き起こすことを阻止している。統治者に対し、それ以上のことを求められようか?

ゴールドコーストの子供のための動物寓話集A Gold Coast Children’s Bestiary

ゴブリン
ゴブリンは荒れ地の先に住んでいて
子供達の歯を首飾りにしている!
ゴブリンの矢には毒が塗られている。
ニクサドの内蔵をすり潰して作られた毒。

ミノタウロス
ミノタウロスは生まれながらの戦士。
彼らは角に死んだ子供達をぶら下げる!
彼らは牛じゃない、絶対に「モー」とは言わない。
彼らが一番好きなものはお前の肉だ!

ニクサド
ニクサドは蝿のように飛び回る。
彼らの好きな食べ物は子供達の目!
この砂糖中毒者達は残酷で見栄っ張り。
彼らは子供達の苦しみを喜ぶ。

リバー・トロール
やる気のある子供は
リバー・トロールが一番不親切だと知っている。
そうでない子供はすぐにトロールの糞の中で
自分の間抜けさを後悔することになる!

ゴールドコーストの有力者Gold Coast Notables

ミラベル・モティエールによる兄弟姉妹への報告書

統括せし者アスタラから、ゴールドコーストの有力者についての考えと顕著な点をまとめるように指示を受けたわ。具体的には、いつか相手をしなければならない最も重要な連中について。こいつらを殺さなければならないって訳じゃないからね。協調して頼みごとをすることもあるかもしれない。または… いえ、おそらく彼らを殺すんでしょうね。いつものように。

地方総督フォーチュナタ・アプドゥガル:以前の海賊女王は、その技と野望で商人王となって組織の頂点に立つ前、ゴールドコースト貿易会社で大した役職についていなかった。フォーチュナタには十分じゃなかったのね。彼女は貿易事業を拡大するため航海に出て、戻った時にはレッドセイル海賊の中で、実に人気のある海賊船団の頭領となっていた。アンヴィルを容易に掌握し、街の地方総督になったの。今やフォーチュナタは、鉄の拳をベルベットの手袋で包んでアンヴィルを支配している。その確固とした人格と証明された戦闘技術に加え、彼女の後ろには常に重装備の海賊が1ダースも控えているから、挑戦しようとする者はいないわ。恋人が贈り物をするように秘密を提供する、個人的なラットマスターについては言うまでもないわね。しかし彼女の野望は港町の境界を越え、ゴールドコースト全体がその支配下にあることを既に宣言した。事実とは言えないけど、すぐに現実となりそうね。

カロラス・アクィラリオス伯爵:クヴァッチの狼はヴァレン・アクィラリオスの甥よ。戦争に赴いたヴァレンの後を受けて街に仕え、防御したの。ゴールドコーストの有力者の中で唯一、真の善人ね。信仰と強い信念を持ち、その地位に名誉と誇りを抱いている。ついでに言うと、物凄く退屈ね。彼はフォーチュナタを良く思っておらず、今のところは海賊からクヴァッチを守り抜いている。街を見下ろすだけでなく、宗教的良心ともなっているアカトシュ大聖堂とは微妙な同盟関係よ。実際、彼は大聖堂の護衛である時の騎士団に拡張した権利と義務を与えて、クヴァッチ衛兵を補ったの。彼は闇の一党の強大な敵になるかもしれない。祭のガチョウのように街を切り分けたいと考えている者どもから街を救うため、今のようにどっぷりと政治にはまっていなければね。

アルトリウス・ポンティカス大司教:アカトシュ信者の長であり大聖堂の指導者でもある彼は、興味深く複雑な男よ。信仰に熱心で、アカトシュが彼の努力を導き支えてくれることを心から信じている。彼はまた独自の方向ながらフォーチュナタのように野心的で、聖職者の階級を一気に上り詰めたことからも分かる。信仰に生きる者として、ゴールドコーストに驚くべき巨大な密偵と情報提供者のネットワークを隠し持っているわ。大司教が知らないことはほとんどない。スルス大詠唱師とフィシア大説教師の支持を取りつけており、時の騎士団の修道戦士も同様よ。アルトリウスがその忠実な信者を我々にけしかけたら、闇の一党を脅かすかもしれない。そういったことが起こるとも思わないけど。

その他の有力者としてはクインタス・ジャロル卿、時の騎士団のコマンダー・マルクス・スキピオ、ゴールドコースト貿易会社のハーソー・ブレント卿、気づかれないと思っている我らの島への訪問者、〈女王の瞳〉のラズム・ダーがいるわ。潜在的な脅威、目標、味方についての報告は、追って近々届けるわね。

ゴールドコースト貿易会社のメモGold Coast Trading Company Note

ガルヴェラス

常に機会を利用することを受け入れるべきだということはわかっている。だが利点がわからなくなってきた。彼らが他と同じように買い物をしたいことは分かっているが、ゴールドコースト貿易会社の商品に彼らはどれだけの金を払えるんだ?この連中は下水道に住んでいる。文字どおり下水道にだぞ。

たまたま誰かが何かの箱を釣り上げて、何か手に入れたんじゃないかと期待してるのか?かつてない創造的な選択肢が必要な肥料が不足しているとでもいうのか?私は何か見落としているか?

この事業を続ける理由をよほどうまく説明できないなら、残念だが会社の関与は終了する。

カークランド

P.S.返信を送る前に、礼儀として外気にさらしてくれよ。下水道の悪臭は相当なもんだ。

サングインの陽気な人のメモSanguine’s Revelers Note

おい!そこのお前!そうだお前だよ!お前がこれを受け取ったのは、俺達が干上がりそうだからだ!ヴァートルはまだ辛うじて街まで荷車を押していける。だから、何か欲しいものがあったら、ここに書いて、他の者にまわせ。

ワインを8瓶。

30瓶にしろ!

数瓶はスパイス入りにしてくれるか?

ハチミツ酒を5樽。

スーーマ。

スクゥーマのことか?

ああ、俺にもスクゥーマをくれ!

もっと仲間を連れてこい。お前らは大体酔いすぎてて、全然面白くない。

ディベラの聖堂はそんなに遠くない。

ああ、それならスタミナ回復薬も20個頼む。

バカか!内緒にしておくって言っただろ!

口が開かない!

何が面白いんだ?

エールを1杯頼めるか?

だめだ。

喉がカラカラだ。いいからさっさと街に行ってこい!

ブランデーを2瓶。

新しいズボン。

それとエチャテレを1頭。エチャテレがいないとパーティーと言えないからな!

シビリン・エルヴェへの手紙Letter to Sybilline Elve

大切なお友達、シビリンへ!前に出した手紙をなくしたの?まあいいわ。もう一度繰り返すから。

スクリボニア家は以前、ゴールドコーストで一番の名家だった。私達の墳墓は帝都全ての街区で話題にされた。皇帝が我らの邸宅を訪れては、青々とした手つかずの土地を走り抜けたものよ。皇帝の支配への忠誠は疑われたことがない。母は完全にヴァレン・アクィラリオスの側についていた。我らの邸宅にあった石は、ヴァレンの壁に貢献した。

でもヴァレンの運が尽きると、スクリボニア家も同じ運命をたどった。名家であるのに、わずかな金しか残らなかった。あなたもよく知っているように、金を得るためには金を費やさなければならない。私達の正当な所有地を取り戻すには、たった5万クラウンのローンで十分よ。そしてあなたは信頼できる金貸しでしょう。返事を楽しみにしているわ!

あなたの親友

—メラッセ・スクリボニア

PS:クヴァッチのアリーナでかなりの時間を過ごしたというのは本当よ。スポーツの興奮を楽しむだけで、ギャンブルと関係ないことは保証するわ。

シャドウバニッシュ醸造所のメモShadowbanish Vintners Note

ようこそお客様!

私どもシャドウバニッシュ醸造所は、お客様を特別なワインのテイスティングに招待できてうれしく思っております。今晩、10種類以上のビンテージワインをお楽しみいただけます。もちろん、お気に召された場合は、大量にご購入いただけます。無税でワインを購入できるこの機会を是非ご利用くださるようお願いいたします。他の場所でここより安く購入できることはありません。保証いたします。

飲み過ぎと足元に注意してください。冷涼な入り江は、ワインの保存に最適ですが、湿った岩礁は時として不安定です!商品を購入していただけるかもしれないお客様が、海に流されたとあっては困ります。

慇懃な主催者

ジャロル卿の深い考えLord Jarol’s Deep Thoughts

今夜また彼女がくるが、私的な訪問ではない。共通の問題について話す会談だ。彼女のような女性は「共通の問題」など気にする必要もないが、少なくとも私の助力を喜んで受けてくれる。

今夜は海賊のサッシュをしてくるだろうか。彼女にはとても似合う。フォーチュナタに航海の雰囲気を纏わせ、思わず手を貸して甲板を掃除したくなる(ああ、これはいいな!次の会話で使ってみよう)。

こんな考えに囚われる時は、いつもテラスから海を眺めてやり過ごす。ワインも役目を果たしてくれる。

仕事が終わったら、フォーチュナタを少し長くとどまるよう説得して見よう。最高のヴィンテージを開け、ここに彼女を連れてきて、景色を眺めながら一緒に飲むんだ。

スイートロールの受取人Sweetroll Recipients

いわゆる「スイートロールの殺し屋」から脅迫スイートロールを受け取った同僚一人と、最近噂のあった何人かのリストだ。他にも受取った者がいるかもしれないが、私に何もかもやらせて報酬を貰おうというのは考えが甘い。

ドビアス:ゴールドコースト貿易会社の同僚。人が好すぎて損をするタイプ。商売にはまったく向いていない。標的にされたのはおそらく、人が好すぎてうんざりするからだろう。

ロウナ:気の強い女で、最近結婚をしたがスイートロールの殺し屋のせいで夫を失った。そして今、殺し屋は彼女を標的にしている。せっかくいい女が独り身になったのに、死んでしまったら残念だ。

トゥインダル:美しい目にふっくらとした唇、スプーンですくって食べたくなるような男だ。このハイエルフは多分誰かの心を奪ったに違いない。私の心も奪われた!皮肉なことに、彼はパン職人だ。これ以上のスイートロールを作れる者がいるか?

ヤーミア:ウッドエルフの物乞い。日光にさらして腐らせたキノコ4種のシチューみたいな臭いがする。言わせれば、スイートロールの殺し屋がこいつを連れ去っても別に構わない。臭いも一緒に頼む!

ステンダールの篤信者のメモResolutes of Stendarr Note

この下水道に住んでいる者の噂を聞いて、我が隊が調査のために派遣された。個人的にはこういう場所に住むあらゆる不潔な者も、汚れた場所に住む者も見てきたが、今日の話は無駄な労苦以外のなにものでもない。不幸なことに、武力で何とかできる類の問題ではないのだ。武力で解決していたほうが慈悲深かったということにさえなるだろう。

トンネル内では、世の中で起こった災難から逃れるために全てを失った家族を見つけた。ほとんどはその悲しい運命を受けるにふさわしくないのだが、不幸な人の中には疑いようもなく悪の芽がまじっている。我らは職務を勤勉に実行してこの集落を調査し、住民の護衛を申し出ると見せかけてそこに潜む悪を調査する。何もないと分かれば、そのまま立ち去ろう。

ステンダールの慈悲があらんことを。

セインツポートの裏切り者へTo the Traitor of Saintsport

昨夜、エンリックの群衆の中にお前がいたことは分かっている。メデリック。髪型を変えて、きれいな服に身を包んでいたとしても、あご先の傷や指のない右手を隠すことはできない。

お前がどこに逃げて、今どこにいるのかも知っている、それに、フンディング港でリーノックをやったのがお前の船員だということもだ。彼は20年間、私の最高の仲間だった。それを忘れていたとしても、彼を拷問していた時に思い出したはずだ。

礼儀としてこのメモは残しておくつもりだ、お前が身辺整理できるようにな。最後の日まで3日ある。言い訳はなんでもいい。この港のむさ苦しい場所で集めた友人達に別れを告げろ。それが終わったら、お前のところに行く。間違いなく、お前はこの世界を後にすることになる。

騒がなければすぐに終わる。お前がリーノックにやったことに比べればあっという間だ。逃げたら次の出会いは全く違うものになるだろう。捕まえたら、長い時間をかけていたぶってやる。

豚面の臆病者よ。もし待つことに耐えられなくなったら、期限を迎える前に自分でやってもらっても構わない。自分のやり方で、自分の意志でだ。ただ… 確認だけはしっかりとさせてもらう。

忘れるなよ、メデリック。お前を見ているからな。私が誰よりも人捜しが得意だということは、リーノックと同じようにお前も知っているはずだ。アンヴィルから逃げることができたとしても、私からは逃げられない。お前はもう終わりだ。

3日後に会おう。

ソラス・ヴァーティラスの日記Solus Vertilus’s Journal

たった今ベルダブーロが見えた。地上に建造物が余り残っていないようだが、アイレイドの土台はその耐久力があらゆる場所で知られている。崩壊せずに何かが残っていることを祈ろう。

* * *
ミノタウロスの部族がアイレイドの遺跡をねぐらにしたようだ。理想には遠いが、いい兆候だろう。ミノタウロスが野営したということは、ベルダブーロはそれほどひどくないということだ。

* * *
この小型望遠鏡は素晴らしい発明品だな。もう数日も安全な距離からミノタウロスを監視している。どこかへの移住の旅として一時の宿にしていると思いたかったが、彼らはあそこを家と決めたらしい。

* * *
今晩遺跡に明かりが見えた。たいまつの灯じゃない。もっとまばゆく安定した光だ。アイレイドの魔術の残像か。ミノタウロスが何かしているのか。

* * *
ミノタウロスはベルダブーロの外側はたいして探検していないようだ。遺跡を拡張する様子はない。ではこの場所に何を求めているのか。ミノタウロスは住居の確保のためでなくアイレイドの遺跡の周辺に集っているのかと思ったが、そうでもないらしい。

* * *
ミノタウロスが本能的にこの地に集ったと考えるのはどうだろう。モリハウスの血の記憶がこの地への記憶を呼び覚ましているのだろうか。

* * *
ミノタウロスは今朝、遺跡から消えた。狩りをしているのだろう。ひっくり返った石があるだけでなく、この遺跡がそれ以上のものであることを証明してみよう。

* * *
光だ!形をなしている!人間なのかエルフなのか、確認できる前に扉をすり抜けた。これまでは戸口が開くことの意味を考えていなかった。ミノタウロスが狩りから戻る前に、はっきりさせたい。

ダイアウルフ調教の手引きGuide to Taming Dire Wolves

クヴァッチの獣使いシェルガ・グラブル 著

ダイアウルフを見たら、君は笑うか?奴らは普通の狼の体を大きくして、頭を悪くしたものだと考えるか?だとしたら、君は馬鹿だ。ダイアウルフは狡猾で危険だ。彼らにとって君の笑いは「次に君たちのお腹に入るのは私だぞ」と言うのと同じだ。シェルガは一度だけ、ダイアウルフに向かって笑ったことがある。今、シェルガの耳は一つだ。

シェルガはもう馬鹿ではない。今シェルガはダイアウルフの旗を持つ街、クヴァッチの獣使いだ。だからシェルガはダイアウルフを調教するために多くの時間を割いている。

ダイアウルフを調教するのは不可能だと思うかもしれない。それは真実だ。肉食獣を調教することはできない。完全には無理だ。だがもしシェルガがこの本を「ダイアウルフに自分ではなく敵を食わせるための手引き」と名づけたら、誰も買わないだろう。あるいは間違った理由で買う人が出るかもしれない。

1つ目。ダイアウルフは狼のように見える。狼のような動きをする。狼のような匂いがする。でも狼ではない。ダイアウルフはダイアウルフだ。

簡単な事のように聞こえるが、忘れるのも簡単なことなのだ。

狼は群れを必要とする。群れに入っていない狼は悪い。狼は孤立することを恐れる。努力すれば狼を調教できる。腹が減っていたら食い物をやる。君の群れに属していると狼に思わせればいい。

ダイアウルフには群れが必要ない。それはダイアウルフが1匹でまるごと一つの群れだからだ。ダイアウルフが悪くなるのは、そうなりたい時だけだ。孤立することは恐れない。ダイアウルフだからだ。

ダイアウルフを狼のように調教することはできない。腹が減っていたら、君が餌になる。自分さえいれば、群れは必要ない。君も自分が一つの群れであることを示さなければならない。君の群れとダイアウルフの群れが一緒に旅をして、より多くの食べ物を探した方がいいということを見せるのだ。ダイアウルフはこのことを理解する。なぜなら、ダイアウルフは狼の群れ一つと同じくらい食べるからだ。

2つ目。ダイアウルフの記憶は長持ちする。40年前のことをまだ恨んでいるクランマザーみたいなものだ。ダイアウルフに君を憎む理由を与えてはいけない。シェルガの姉妹グラルガは一度、食事を横取りしたダイアウルフに平手打ちをしたことがある。こうしてグラルガは親指を1本失くし、同時に礼儀を学んだ。グラルガはもうクヴァッチを訪ねてこない。

もしダイアウルフが君を憎むことがあったら、退いてはいけない。恐れてはいけない。憎いのはわかっていると示せ。憎しみを恐れないということを示せ。これは敬意を示すことになる。そしてたくさんの食料を与え、憎しみを抑えるのだ。

シェルガが思うに、これだからクヴァッチはダイアウルフを旗印にしたのだ。クヴァッチは忘れない。クヴァッチは敬意を払う者を尊敬する。そして民にたくさんの宴を与えれば、クヴァッチは憎しみを和らげる。

時として、ダイアウルフはそれでも君を憎む。その場合はダイアウルフを殺さなくてはならない。ダイアウルフのつがいのもう片方が見ている時に殺さないこと。そのダイアウルフも君を憎むようになる。人と同じだ。

3つ目。お腹をなでろ。耳の後ろをなでろ。でも耳の中はだめだ。尻尾と背中の境目をなでろ。尻尾は先端だけ!顎の下もなでろ。

足をなでないこと。ダイアウルフの足はハイエルフと同じく敏感だ。それにダイアウルフは鋭い爪も持っている。君が足を奪い去ろうとしているとダイアウルフが考える時、そいつは君を憎むようになる。

最後に。ダイアウルフは賢いが、魔法を理解しない。だから魔法を使え。巻物は義手よりも安い。物語に出てくるようなやり方でダイアウルフを調教しようとするな。馬鹿になってはいけない。

シェルガの姉妹ボルガは、これはズルだと言った。魔法で従順になったダイアウルフはダイアウルフではないと。シェルガはボルガを罵倒した。ボルガは引かず、シェルガの尊敬を勝ち取った。するとボルガは、シェルガに茹でたサンダーバグの卵を持って来た。

シェルガは言う。ボルガさえ学べるのだ。君にもできる。

ディベラの謎と啓示Dibella’s Mysteries and Revelations

ディベラ修道院聖女、オーガスティン・ヴィリアーネ 著

ウェイレストの空は嵐が多く、荒れやすいし、青よりも灰色のことが多い。でも栽培の月の朝には、太陽が天まで昇って空を青く晴らし、優しく温かい風がイリアック湾から吹いてくる。まさにそんな朝のことだった。花の香りを振りまく木々の下で、私はディベラ修道院の聖職へ、新人たちを何人か迎えた。

彼らには質問することが山ほどあった。若い人たちはいつもそうだ。「聖女様」と、アルドクロフトからやって来たひとりの若いカキ採りが聞いた。「愛とは本当にすべての問いへの答えなのでしょうか?」

「そうよ。もしその問いが心に関するものであればね」と私は言った。「精神に関するものである場合は、まず違うけれど」

「聖女様?」と、アルカイアから来た恥ずかしがりの版画家が聞いた。「私たちが崇拝者たちのために踊らなければならないというのは本当ですか… 裸で?」

私は微笑んだ。「それはあなたの魂がそう望むのならよ。それから、お天気が許すのならね!」

「一つ質問です、聖女様」とウェイレスト銀行家の賢い子が言った。「エドラたちが自分たちを犠牲に捧げ、一人一人が世界の創造に何かを付け加えたのだとすれば、私たちの淑女は世界にどんな貢献をしたのでしょうか?」

返事をする代わりに、私は芝生に落ちた花を両手ですくい取り、驚いた様子の彼の眉毛の上に注ぎ落した。

「私は困惑しています、聖女様」とノースポイントから来た宿屋の馬丁が言った。「自分の父親が誰か知らないのです」

「美の女神にとってそんなことは何でもないわ」と私は優しく答えた。「だって、彼女はこう言っているもの。”種が何であれ、芽が愛をもって育てられたのなら、その花は美しくなるのではないでしょうか?”」

「集会の方が私を情熱の相手として求めた際に」とエバーモアの騎士の子が言った。「私がその人に好意を感じないとしたら、どうすればいいのでしょう?」

「誰を愛しても構いません」と私は歌った。「でも、強いられた愛は愛ではない」

「聖女様、ほ、本当でしょうか」と、フクロウ使いの息子がどもって言った。「あなたが大病でし、視力を失ったというのは?」

「ええ、そうよ」と私は微笑んだ。「でも、それがどうしたの?私が踊れないとでも言うの?」

「聖女様!」「聖女様!」

「静かに、新たなる者よ!」私は叫んだ。「今日は金耀なのよ。夕暮れの鐘が鳴り、集会の方々が私たちを教会で待っているわ。さあ、おいでなさい!ワインと太鼓、それに軽い足と暖かい心を持ちなさい!私たちの淑女が崇拝を呼びかけているわ」

ドラゴンスターキャラバン社のメモDragonstar Caravan Company Note

キャラバンの御者め。いつもボスに良く見せたいために、通行料と税関を避けて主街道を迂回していく。で、どうなるかって?泥にはまると手押車と荷馬車を空にしなきゃならん。奴らを護衛するのが仕事であって、税関を迂回する度に溝から助ける契約は受けてない!キャラバンの衛兵の典型的な仕事だなんて言ってみろ。息の根を止めてやる!

次の夜のシフトの時にでも台帳を覗いて、会社にとってどれくらい価値があるものか見てみるとしよう。違法なようなら、絶対に契約の再交渉をしてやる。

お前は何かあれば俺の方につくだろうが、他の護衛の連中の考えも把握しておきたい。 ドラゴンスターの商人王と議論になったら、優位に立っておきたいからな。

ドラゴン協会The Society of the Dragon

時の竜神のアカトシュに愛と信仰を捧げたいが、アカトシュの聖職者になる覚悟はまだない?クヴァッチ大聖堂はそうした考えを理解できる。そこで、我々はドラゴン協会を設立した。

スルス大詠唱師と選ばれたアカトシュ司祭が指導する協会は、仲間や学習を求め、日毎に神学に関する最も重要な疑問を議論したいと望む入会者を組織に歓迎する。協会に参加しようではないか。アカトシュへの祈り、信仰、献身で、クヴァッチをより良い場所にするよう協力してほしい。

切実な問いにはすべて回答する。協会の一員として活動できる場所が待っている。

ナイツグレイブ:伝説か遺産かKnightsgrave: Legend or Legacy

大聖堂の歴史家、ウォボラン詠唱師 著

ナイツグレイブの遺跡が意味するものは何であろうか?そして、遺跡はどうしてアカトシュ大聖堂と、時の騎士団にとって重要なのだろうか?これらは人々が決して問いかけない疑問だが、神に献身する者はすべからく答えを知る必要のあるものである。

多くの者は、ナイツグレイブがある種の荒廃した墓、帝国が強大で永遠の存在であった時の名残りのようなものであると考えている。墓地が建設されたのは、それ以降であると知る者はほとんどいない。墓地の本当の意味は、奥深くに用意されている。当初、巨大な地下の構築物は、初期の時の騎士団本部としての役割を果たしていた。

本部を建設したのは、騎士団の創設者であるエノン・デカンだった。この地は竜神を崇拝する者達にとって常に重要だったと伝説にあるが、事実であると示す証拠は何も見つからなかった。騎士団が本部を築いたのは、訓練や瞑想のために祈りを捧げ観想を行う場所が必要だったからであり、さらに騎士団のメンバーが休み、落ち着く場所が必要だったことを知るべきだ。

エノンと初期の仲間の一団が死に、創設者達の名残りとして巨大な像が建てられた。騎士団は存続し、この地を拠点として100年近く活動していた。この間、より多くの部屋が切り出され、より多くの改良が本部に施された。騎士団の第一段階に終止符が打たれ組織が解散すると、この地は封鎖され、保全がアカトシュ大聖堂に委ねられた。しかし、大聖堂は施設をどのように使えばよいか思いつかなかった。そのため、詠唱師と説教師達は地下の建物を墓地の類に変える決断をした。名誉ある時の騎士団の死者は、深き地で葬られた。

カボー・メルラが騎士団を再建した時、彼の最初の任務の一つはナイツグレイブとして知られる場所を、騎士団の創設メンバーの遺産として捧げることだった。祝祷と儀式が執り行われ、墓地の薄暗い内部を彷徨する高尚な死者に捧げ物を与えた。 その場に眠る者の邪魔とならないように、カボーは砂時計の居留地を、ゴールドコーストにおける騎士団の新たな本部として建立することに決めた。

そう、伝説は忘れたまえ。ニクサドの蔓延やミノタウロスのガーディアン、騎士団の高尚な騎士が未だに封印された奥深くの間の警戒にあたっているという物語は無視したまえ。ナイツグレイブは、時の騎士団の誇りと力強さの遺産である。そして、アカトシュの信者である我々の遺産でもあるのだ。

ナリューのフォーチュンロールNaryu’s Fortune

暗闇がどれだけ美しくても、太陽が昇る時、暁はそれを破壊する。

ニクサドとの苦い経験Bitter Travels Among the Nixad

アバーズ・ランディングも他の都市と変わらない。金のない愚かな者は長く生きられない。幸いにも、私は愚か者ではない。私は長い間この街を見て回り、財産を再び手にする方法を探してきた。無鉄砲で自信過剰な商人には謙虚さが必要だ。私の名前はザビアーコ。スポットレスグッズ輸送会社で働いている。

熱心に働いたことで、すぐに荷車とグアル(その頑固さから、リトル・バズラグと名付けた)だけでなく、ゴールドコーストへの販路と外国の商品も手に入れることができた。これでザビアーコは父親との約束を果たせる!彼女はそのポケットを金で膨らませながら、コーヒーの袋と果実のような後味で有名なミストラル・ムーンシュガーを持ち、子供の時に住んでいた村に戻ることにした。

だがアンヴィルからクヴァッチに向かっていた時、ザビアーコに悲劇が訪れた。採掘場の労働者にホーカーのサマーソーセージを売った後、彼女は彼らから招待され、その夜はキャンプの端で休んでいくことになった。

しかし、その眠りは長く続かなかった。大地が揺れて、それに続くように叫び声が聞こえてきたのだ。労働者達は散り散りになり、鬼ごっこで標的になっているネズミのように、あちこちに逃げていった。リトル・バズラグは起きようとしなかった。だからザビアーコは隠れることにした。

彼らを見たのはその時だった。小さな生物で、私のブーツより小さく、耳障りな羽音をさせていた。彼らに寝袋から追い出された労働者のひとりが、「ニクサドだ!」と悲鳴を上げると、崖から落ちて足を骨折してしまった。するとこの小さな生物は、痛みにうめき声を上げる彼を、クスクスと笑い、嘲ったのである。

近くにいたザビアーコの耳にかん高い鳴き声が聞こえてきた。1匹のニクサドが、その鋭い爪からゴールドの袋をぶら下げていた。そんなに重い物を持って飛べるはずがないと思っていた、しかし羽が激しく音を立てると、ついにはそのゴールドを持ち去ってしまった。他のニクサドは腕を頭の上にあげ、ミストラル・ムーンシュガーに攻撃する準備をしていた。そして頭から袋に突っ込むと、足と羽を袋の外に出して、慣れたようにムーンシュガーを食べ出したのである。

私はこの泥棒の足を掴んで袋から引き抜いた。それは私の頭を叩くと、意地悪そうにクスクスと笑った。ニクサドが音を立てて飛び去ると、その航跡を示すようにムーンシュガーが落ちていた。私はその後を追ったが、暗闇の中で見失ってしまった。そうこうしている間に、別のニクサドがムーンシュガーの袋に頭を突っ込んでいたが、ザビアーコは気付いていなかった。

ザビアーコが戻ってくると袋は空になっていた。中には、ムーンシュガーを食べ過ぎた、3匹のニクサドの死体だけしか残っていなかった。そしてリトル・バズラグも姿を消していた。

また私は商品を失ってしまったのだ!貴重なミストラル・ムーンシュガー。あの不潔で意地悪な生物のせいで大損だ。コーヒーはどうかって?触れられた痕跡すらなかった。

ザビアーコはその夜たくさんことを学んだ。まず、ニクサドにミストラル・ムーンシュガーを食べられてしまったら、そのニクサドを火であぶること。その甘い肉を食べれば、舌をくすぐられるような甘酸っぱい余韻を楽しむことができる。

次に、ニクサドがいる土地を通るときは、ムーンシュガーをコーヒーの袋で囲むこと。その香りが彼らを遠ざけるため、苦い思いをせずに旅をできる。

ニクサドのせいなのA Nixad Made Me Do It

お母さん

確かに私はセリアを海に突き落としたわ。でも彼女のドレスをだめにしたかったわけじゃないの!

海岸に行く途中でニクサドを見つけたわ。セリアがこっそり立ち去るのはよくないってずっと言ってた。大声で言うから、注意をひいてしまったの。

ニクサドがどういうものか知っているでしょう。思い上がった子供から目をくりぬいて、ムーンシュガーの中で転がしちゃうの!ニクサドがセリアの目を食べてしまわないように、どうにかしなきゃならなかったの。

最初に彼女の髪をひっぱろうとしたけど、ニクサドが笑ったわ。でもセリアは走りながら叫んだの。

それでニクサドが不機嫌になったから、私はセリアを追いかけた。海のそばの小丘でつかまえて腕を掴んだわ。そうしたら彼女が言ったのよ、「あんたのしたことをお母さんに言ってやるから!」

ニクサドの翼の音が聞こえたわ。ということは、彼らは怒っていたのよ。他にどうしろっていうの?

だから押したの。海に落ちた彼女はびしょ濡れになったわ。ニクサドは空から落ちるほど笑い転げていた。

セリアは家に帰る途中、泣きわめいていたわ。私は彼女をおぶってあげず、歩かせた。それでニクサドは満足したの。

お母さん、セリアには悪いことをしたけど、あの子を守るために他にどうすればよかったの?お母さんが言ったのはそういうことじゃなかった?妹をかばうってことでしょう?

—あなたの愛する娘より

ネランシ・ファレリアの墓碑銘Epitaph for Neransi Faleria

私の行動があなたに平安をもたらさんことを

ネランシ・ファレリア

421年 薄明の月19日死亡

享年 8歳

バーンダリ行商人のメモBaandari Peddler Note

どうやらこの者は、通過する旅人を乗せるなという指示を明確に出せていなかったようだ。例え金を積まれようともダメだ!旅人が多くなればより注意を引く。我々は注意を求めていない。我らが輸送するいくつかの商品は、故郷と違って高く評価されていない。いくつかの商品は所有自体が違法だとされている。だから私はお前の新しい友人が「よさそうな人」だろうが何だろうが気に留めない。役人の質問に答えなければならなくなったら、同じ監房にいる間にお互いをますます嫌いになるだろう。

カジートは新しい友人に申し訳なく思うが、我らの次の出発には連れて行かない。さもなければ、この者は爪をお前の財布にかけ、適度に分け前を減らしてしまう。

この者は理解して貰えたと願う。そうだろう?

ファントス・エピリオンの日記Fantos Epilion’s Journal

項目 42
アンヴィル魔術師ギルドに加わるのは簡単だと思っていた。この街は海賊が支配しているんだ!それでも賢者は「厳格な精神」とかいうものを見せろという。

項目 43
賢者は融通が利かないと思っていたので、ギルドホールにミノタウロスの脳みそを届けた。私は馬鹿じゃない。ワックスペーパーに三重に包むことにした。その何が悪かったのかわからない。

項目 44
ついに突破口を見つけた!賢者はドゥルーについての実際的知識を持っていない。ということはその話題を軽く披露すればいい。爪のバリエーションの簡単な報告で十分だろう。

項目 45
賢者は私にもドゥルーについての実際的知識がないことに気づいた。今私はドゥルーの交配と指揮系統についての本「グロムの錬金術的用法の発見」を持っている。いったいグロムとはなんだ?

項目 46
本を読んだ。グロムとはドゥルーの殻で、交配の後に食べられ吐き出されるものだ。本によれば「繊維質のボール状物体」で「悪臭がする」という。グロムの用途は錬金術的にもその他にも知られていない。

どうも賢者は私のようではないらしいと思えてきた。

項目 47
アンヴィルの北海岸、ドゥルーが交配している場所で野営を張った。この生物は怒らせなければおとなしいので、必要なだけ観察してグロムを採取できる。

楽しい日だ。

項目 48
退屈とは何かについて分かっていたつもりだったが、今の私の毎日はドゥルーの交配を待つだけになっている。

項目 49
初めてグロムの玉を見つけた!

今はこれが興奮する出来事だ。

項目 50
古い本は正しかった。グロムに錬金術的用途はない。「様々な高価な錬金術の材料を無駄にする」とか「乳鉢と乳棒に消えないシミを残す」以外は。

だが、賢者に恥をかかされるつもりはない。

項目 51
グロムは食用にできない。ゆでたら臭いがひどくなるだけだ。

項目 52
ゆでるのが鍵だったんだ!冷えると繊維質のパルプが殻のように固くなる。この状態でパルプを作れることに気づいた。きっちり閉まる薬用フラスコを作れた。

落としても割れない薬用フラスコ。賢者、錬金術的用途だ。

もちろん、グロムは使い果たしてしまった。実験の再現のために、もっとドゥルーが必要だ。

項目 53
また退屈だ。ドゥルーの交配がもっと早ければいいのに。

項目 54
ドゥルーの勾配を早められる!錬金術の調合薬を海に廃棄している間に、近くにいたドゥルーが元気になって爪をこすり合わせていた。そのドゥルーはすぐに他のドゥルーを探し出してその周りを歩き回った。過去にない。

別に1回分を作って今夜海岸にまいた。

項目 55
ドゥルーは興奮したようだ。今すべてが歩き回っているが、交配は早まらない。

今晩の分の効能を8倍にしてみよう。それで彼らの無気力が変わらないなら、もう他に手はない!

ブラヴィルの殺し屋The Butcher of Bravil

イエナ・アピニア隊長の日記

これまでの戦歴で、私の呼び名は一つや二つではなかった。友人や戦友からは称賛を受け、敵からは呪われて忌み名をつけられたが、おそらくは死ぬまで呼ばれ続けるだろう現在の呼び名よりも憎悪の混じった、言われる覚えのないものはない。「ブラヴィルの殺し屋」だそうだ。

突然帝都を脅かす脅威が現れた際、シロディールの戦争は最高潮に達していた。部下の兵士は当然の休息を満喫していたが、空から鎖が降ってきたのはまさにその時だった。帝都への妨害を目的に同盟の一部が奇妙で恐ろしい魔法を唱えたとある者は言い、裏で糸を引いているのはデイドラ公の誰かだと信じる者もいた。私に言わせれば、首謀者がアイレン女王だろうがモラグ・バルだろうが関係なかった。ただ、指揮下の兵士たちを可及的速やかに脱出させる必要があるのは分かっていた。

目標は明確だった。生き残ることだ。帝都の防衛のために得体の知れない敵と戦おうとして死なないこと。生きて、勝つ見込みのある日に戦うことだった。一部の者は、亡した私のことを臆病者だと言うが、私の行動で部隊の全兵士の命が助かった。もちろん取り急ぎ脱出したため、壁の外の荒野で生き残るには準備が不足していた。再集結、再補給の必要があったから、行動計画は慎重に策定した。計画を考慮しつつ、南方を目指して脱出するよう部下に命じた。

ブラヴィルは帝都の南に位置する汚らしいさびれた街だった。ブラヴィルがみすぼらしい街であると言うのは褒めすぎだと言える。経済の水準をそこまで向上すれば、街の人々は喜ぶだろう。彼らはスキーヴァーの巣のように、互いの上に積み上げられた木の小屋に暮らしていた。持たざる者達だが、私と兵士達が切実に必要としていたものを持っていた。我々を支援するのは、彼らの義務でもあり、帝国の繁栄と栄光のためでもあった。私はその義務をブラヴィルの市長に対し、非常に簡潔に説明した。

しかし、ブラヴィルの市長は丁重に私の要請を断った。「備蓄食料はわずかかも知れませんが、ブラヴィルとその民にとって、欠かせないものです」と彼は説明した。「隊長、私の辞退する理由はご理解いただけるはずです。どうか兵士たちと共に立ち去ってください」

「スカルド王はほろ酔いの馬鹿に過ぎない」と言われるのと同じくらい、市長は私を激高させたが、彼の窮地も理解できた。私が備蓄食料を徴収すれば、周囲を覆う寒冬の到来とともに、市民の半数程度が緩慢な餓死を迎えるのを彼は目撃することになる。解決は容易だったが、命令を下したことに心が痛んだ。部下の兵士が街の人口の半分を排除する。そうすれば残りの人々は食料にありつけて、冬を越せる希望をもてる。

私にしてみれば、可愛そうな生物を助けてやったと思っていたが、彼らは感謝したのだろうか?いや。街の残り半分は蜂起した。結局のところ、市長を含む半数以上を虐殺しなければならず、惨事の責任は市長にすべて押し付けた。我々は物資をかき集め、戦費を調達するために貴重品を徴収し、ブラヴィルを出発した。

別の小規模な居留地に到達して、ブラヴィルの事件の噂が拡散し始め、実態より膨れ上がっていると分かったのは、数日後のことだった。彼らは我々のことを「ブラヴィルの殺し屋」と呼び、道を踏み外して無実の民を殺した悪人だと言われた。奴らは戦争について何も分かっていないし、戦場で指揮官が下さなければならない心苦しい決断について分かっていない。私の兵士に餓死しろと言うのか?それなら、どうやってシロディールを守ったらいいのか?また、私を捕らえ、徴収品を回収し、いわゆる戦争犯罪を償わせるために、アイレン女王が卑しい「女王の瞳」を派遣したことを知った。

私は帝都の外にいた残存兵とともに、多数の兵士を集合地点に送った。また同時に、小隊を率いてゴールドコーストを目指した。「女王の瞳」と対峙するのなら、自分の選んだ場所で会うことにする。そして、どちらが正義なのか見定めようではないか。

ブラックドラゴンThe Black Dragon

ラットマスターへ

波止場と裏通りを仕切るお前のネズミを使いたい。聞き耳を立ててごみを漁らせ、必要とあれば地元民を締め上げよ。手段は問わないが、私が必要な情報を提供するのだ。一刻も早く!お前はこれまでに数えきれない数の噂やゴシップをもたらしたが、そのほとんどは有用なものだった。にもかかわらず、私がネズミの目と耳を切望している時、本件に関しては「アンヴィルとクヴァッチの通りが不気味なほど静かになった」と報告するのか?ああ、古き友よ、それは受け入れられない。

私が知りたいのは、「ブラックドラゴン」という謎に包まれ、非常に危険と噂されている者のことだ。出自は?目的は?本当に男なのか?さらに重要なのは、私との利害関係だ。古き友人よ。私はお前を高く評価しているが、それが誤りだと言わせないでくれ。悪名高きラットマスターが老いぼれて、スパイ網と情報提供者が素っ気なくなったとは考えたくもない。長年にわたる忠誠と献身を考えれば、お前を交代させたくない。しかもその理由が単に、お前とネズミがブラックドラゴンの足取りをまったくつかめないからだとあってはな。

手を貸そう。今までのようにうまく軌道に乗せてやる。聞いたところによればブラックドラゴンは、黒いプレート鎧に身を包んだ強面の戦士で、ものすごい長剣を操るという。この男は、闇社会の大勢の者達を殺害していると考えられている。殺害された者のうち少なくとも一人は、秘密に包まれた闇の一党の構成員であると長く信じられていた。殺人鬼を誰かが送り込んだところで私が懸念するわけではないが、ブラックドラゴンの偏狭な愛が私の縄張りに迷い込まないようにしたい。

さあ、どうして手紙をまだ読んでいる?ネズミを送り、私が必要な情報を入手しろ。今すぐにだ!

アンヴィル地方総督 フォーチュナタ

ブラックドラゴンの日記The Black Dragon’s Journal

長い間この日記を書く気になれなかった、だが最近起きた出来事のせいで、私が本当に幸せだったあの頃のことが妙に懐かしくなった。私を愛して信じてくれた家族がいたあの頃だ。騎士団の男や女とは違う。彼らは私を信じ、恐れている。だが彼らが愛しているのは竜神だけだ。アルトリウス大司教のことも愛しているかもしれないが。

ブラックドラゴンの鎧を身につける前、私は闇の一党の奪いし者でしかなかった。今はブラックドラゴンであり、闇の一党から奪いし者であり、時の騎士団の第一の剣でもある。これは私が選択したことではない。それは違う。闇の一党がそうなるように私を追い込んだのだ。そして偶然にも、必要な能力が十分に備わっていた。

ライラ・ヴィリアという女を殺した。それは闇の一党時代に私がこなした最後の任務であり、遙か昔に忘れ去られた聖域の最後の任務だった。その後に私はしばらく目的を失った。そして時の騎士団を見つけ、ブラックドラゴンになった。

アカトシュに仕えながら許しを求めている、だが本当に何か変わったのだろうか?私は今でも殺人者だ。今も苦しんでいる。だが今はアカトシュが死を宣告した人々を殺している。もしくは、少なくとも、彼に選ばれたタムリエルの人々が標的だ。それを考えると、いくらかましになっているのかもしれない。

私はかつて自分の功績や行動に自信をもっていて、全く疑っていなかった。これは闇の一党時代(辞めるまで)のことであり、ブラックドラゴンになってもそれは変わらなかった。しかし今は不満を感じている。そしてそれは私が生涯苦手としていること、つまり疑問に対する答えを私自身に求めるようになった。これについて考えねばならない。また大司教に話を聞いてもらうべきかもしれない。

ブラックドラゴンの日記、パート2The Black Dragon’s Journal, Part 2

砂時計の居留地は人が多すぎて狭すぎると思い始めた後に、ナイツグレイブの遺跡を探し当てた。多くの活気のある人々と交流する資格は私にない。死は使命以上のものになった。今や私の一部だ。この地に長居して何が悪い?

* * *
遺跡に下る階段にある像には感心した。時の騎士団の創設者は誠実な戦士だったのだ。その一員だったことに誇りを持っていた時もあった。だが今は?分からない。今となっては分からない。

* * *
創設者か、もしくはその後にきた者は侵入者からこの場所を守ろうとしたようだ。かがり火は騎士団の道を開ける鍵か何からしい。どうにかして、この鍵を開ける方法を考えればいい。

* * *
かがり火に火を入れる順番は実に簡単だった。この聖なる地下に入る方法を見つけた者がほとんどいなかったとは驚きだ。

* * *
遺跡に入る方法が他にもあるに違いない。さもなければミノタウロスはどうやってここに入ったのか?驚きのあまり1匹倒さなければならなかった。その後、彼らをかわすには相当苦労した。殺さなければならない訳ではない。思うに、彼らはガーディアンのようなものなのだろう。そのままにしておこう。

* * *
武器庫の少し先で、時の騎士団の最初の第一の剣のために作られた部屋を発見した。ジュスティアとの確かな関わりを感じる。彼女の武器を手にしたら、彼女は微笑みかけてくれるだろうか。

* * *
パラゴンの王冠として知られる柱の輪の中で長いこと祈った。アカトシュは私の懇願をお聞きになったのだろう。すぐに私は遺跡のより古い部分へと繋がる地下道を見つけた。騎士団はより古い時代を思い起こさせる洞窟の上に元の本拠を建てたのだろう。印象的で、敢えて言うなら洞窟を支配するアカトシュへの畏れを感じる。この場所はアレッシア教団と、彼らのアカトシュを他のすべての神の上に押し上げようとする努力の恩恵を受けているのだろうとしか思えない。散らばった檻でさえ、アルトリウス大司教とクヴァッチ大聖堂の手下が行ったのよりも暗い儀式の存在を仄めかしている。

* * *
大司教、時の騎士団、闇の一党。皆が私をこんな風にした!ここ、アカトシュのもっとも恐ろしい存在の影の中で、私の本当の姿がついに分かるかもしれない。

プロウラーの歌Song of the Prowler

ハンマーフェルから出港、
明るく輝いた朝に、
美しい船が風を浴び、
そして岸から進む。
そして岸から進む。

船長が血の誓約を誓い、
その目は真っ黒で残忍。
「海賊か私掠船員か?」
俺達は決して口にしない。
俺達は決して口にしない。

ダガーフォールの船を襲撃、
そしてブリークロックは略奪の限り、
しかし友の多くはヘヴンに、
そしてグラーウッド中に。
そしてグラーウッド中に。

船長は正直な魂。
彼女は船を見事に操る。
俺達は正直かと問われれば、
彼女は決して口にしない。
彼女は決して口にしない。

海岸沿いで盗品を収集、
それでも大丈夫だと誓う。
アイレン女王は決して文句を言わない。
まるで一度も言ったことがないように。
まるで一度も言ったことがないように。

だが俺達の財宝の場所はどこだと聞くか?
深く埋めたか、うまく隠したか?
財宝の宝箱に封じたのか?
俺は決して口にしない。
俺は決して口にしない。

マキシヴィアン・ファレリアの墓碑銘Epitaph for Maxivian Faleria

あなたは私の闇の中の光だった

マキシヴィアン・ファレリア

421年 薄明の月19日死亡

享年 1歳

ミノタウロスに関してOn Minotaurs

一時的に無所属の帝国古美術品学者、ノヌス・カプレニウス 著

どれだけ多くの高等教育機関に追放されようとも、どれだけ多くの出版社に学説の印刷や配布を断わられようとも、私は立場を撤回するつもりも研究の対象を変更するつもりもない。ミノタウロスがふさわしい評価と敬意を受けるようになるまでは!

帝国の起源に関する研究、特にアレッシア教団の盛衰に関する研究を通じて、私は驚くべきことに遭遇した。背景に隠れ、多くの場合意図的に人目につかないでいるが、見る目がある私のような者には見えるものがある。それは歴史的記録からほぼ消されていた、あるヒューマノイドの種族だった。この歴史への罪をそのままにしておくべきではない。私はこの生き物を、帝国の年代記の適切な場所に復活させることを誓う。

私が話しているのはもちろん、悪評が高く人々に誤解されている、ミノタウロスのことである。この人間のような体を持ち、牛のような頭をしたヒューマノイドの血は、女帝アレッシアにまでつながっている。この真実について言及する当時の記録は残っていないが、後の時代のもので、奴隷女王とキナレスの息子、神がアレッシアに手を貸して助言するために送ったモリハウスとの関係に触れた古い書物は数多くある。よくミノタウロスとして描写される半神半人のモリハウスが、奴隷女王との戯れと彼女の息子である牛人間、ベルハルザの誕生を通してその種族を生じさせたと私は考える。

ミノタウロスの起源に関する真実がどうであろうと、彼らは女帝アレッシアが統治していた期間とそれ以降に大多数が現れ始めた。初期のミノタウロスは知能が高く、エルフやオークやカジートと同様に独自の文化を持っていたと私は考えている。帝国に対する忠誠心が強く、ミノタウロスは女帝アレッシアにとって特に忠実な擁護者だった。当時の美術品や書物の一部もそれを暗示しているが、私を中傷する者たちの多くは私の主張を裏付ける確かな証拠はどこにあるのかと聞きたがる。残念ながら証拠の多くは、その名が過って名付けられたアレッシア教団が、帝国を支配していた間に破壊されてしまった。

結局のところ、アレッシア教団とは厳格なアレッシアの教義に従った集団だった。七十七の不動の教義によって定められた掟と規則の中でも、特に悪名高いのはエルフに対する断固とした反対姿勢だった。私の考えでは、教団のそうした姿勢は反エルフ的感情だけに限られたわけではない。怒った信徒たちは教義をあらゆる非人間種族にあてはめて迫害するために使い、それにはミノタウロスも含まれた。ベルハルザの石として知られる、現代に残された古代の石版の断片からは、アレッシア帝国の第2代皇帝、牛人間ベルハルザが敵を見下ろす様子を描いたものだと多くの学者が主張している、大きな彫刻の一部がうかがえる。しかし私自身によるその断片の研究からは、まったく異なるものが浮かび上がってくる。

彼らの鎧の外見と槍の形からして、その彫刻に描かれた敵と呼ばれている者たちは、実際には熱狂的なアレッシア軍の先遣隊であると考えられる。ミノタウロスの心臓めがけて突かれた槍は、これら初期のアレッシア軍がミノタウロスを殺したかまたは追い払ったことを表しており、現代に残る証拠の中に今でも見られるその種族の衰退につながったことを表している。かつて威厳を持った牛人間の種族にとって、なんと残念な末路だろうか!しかし、すでに私の中傷者の声が聞こえてくる。彼らは証拠を要求している。アレッシア教団によって行なわれた他の多数の残虐行為と共に消え去った恐れがある証拠だ。しかしもう一つだけ考慮すべきことがある。それは、特定の場所に出向き、安全な距離を取ってミノタウロスの様子を観察しさえすれば、誰にでも明らかなことである。

もし荒野でミノタウロスを研究することがあれば、ミノタウロスが帝国にとって重要だった古代の遺跡かその近くに集まってるのを見掛ける。なぜか?それは彼らが、かつて自分たちが初期の帝国における強力な守り手だったことを本能的に覚えているからだと考えられる。アレッシア教団の行為が原因で、その注目すべき生き物はほぼ完全に滅んでしまったが、彼らはそこに引き寄せられ、守り続けずにはいられないのだろう。

笑いたければ笑うがいい。ひどい仕打ちは受けてきた。しかし少し時間を取り、せめて考えてほしい。自分に問いかけてみるのだ、ミノタウロスはどうして古代帝国の遺跡を守っているのか?そうすれば、ミノタウロスの価値をほんの少しは認めるようになるかもしれない。

ミノタウロスの歌The Minotaur Song

おおミノタウロス、おおミノタウロス
怒りに燃える荒々しい獣よ。
おおミノタウロス、おおミノタウロス
お前の高潔な姿は誰も否定できない。

帝国の遺跡に集まる、
蹄と角を持つ永遠なる守護者よ。
何の記憶がお前をそこに導く。
お前が惜しんでいるのはベルハルザか、それとも帝国か?

おおミノタウロス、おおミノタウロス
お前は怪物?エルフ?それとも人間?
おおミノタウロス、おおミノタウロス
どうやって神の計画に含まれたか教えてくれ!

リバー・トロールのフィールドガイドField Guide to River Trolls

エリンヒルのファラスタス 著

トロール種の起源はいささか不明瞭である。これは、彼らがどこからどうやって、どういう理由でやって来たのか、どうして存在しているのか、何もわからないということを言い換えただけである。

トロールが記録にも残っていない時代から、タムリエルの民間伝承に出没し続けてきたことは確かである。ほぼすべての文化において知られており、児童向けの寓話から古代人の歴史まで、あらゆる種類の物語に現れる。実際、トロールはコーセイの名高き「タムリエル論文集」でも触れられており、そこでは「貪欲なるトロールは、いかにも丸々とした巨体で[それは]民と王の肉を[等しく]喰らう」と言及している。

タムリエルにおける我々とトロールとの長い歴史を考えれば、人もエルフもトロールについて多くのことを知っているのが当然ではないだろうか。おそらくそうだろう。だが、知らないのだ。我々に知られている数少ない事実は以下である。

-トロールは獰猛で強大な肉食哺乳類であり、捕まえたものは何であれ、爪の先や骨髄に至るまで貪り尽くしてしまう。
-火以外の手段で傷つけられたトロールは超自然的な速度で回復する。この再生は魔法的な性質のものであることがほぼ確実である。
-トロールの脂肪は錬金術師に珍重される試料である。しかしその効能はレシピや精製技術によって変化する。
-その身体的な強靭さにもかかわらず、トロールは隠遁を好む生物であり、彼らの巣は通常、人が通る道から大きく外れたところにある。

これ以外に確実性を持って言えることはほとんどなく、様々な生息地に暮らしているとか、出身地域に応じた変種が存在するようだとか、その程度である。最も一般的で、それゆえ最もよく知られているトロールの種類は、タムリエル中部のフォレスト・トロールと極北のフロスト・トロールである。

しかし歴史や伝説は、他の種類のトロールがいることを伝えており、それらはあまり知られていないながらも、興味深いことにおいては引けを取らない。ヴァーデンフェルのラーバ・トロールなどのように、絶滅しているのがほぼ確実な種もある(もちろん、コーナークラブの話好きなダークエルフの妄想以外で、実際に存在していたとすればの話だが)。だが今日は、「貪欲なるトロール」のある希少種について述べておこう。このトロールには今でも確実に遭遇することができる。しかもアルゴニア中部やトパル島のような遠く離れた地域ではない。他でもないシロディールに住んでいる… もし、探すべき場所を知っていればの話だが。

私が言っているのは見つけにくいリバー・トロールのことである。帝国の獣と下級生物図鑑には載ってはいないだろうが、このトロールが実在することは私が容易に証明できる。私自らが個人的に、サッチの市場でリバー・トロールの死骸を目撃した。ブレナの支流に罠を仕掛ける、恐れを知らぬ狩人によって運ばれて来たものだった。彼女が私に語ったところによると、リバー・トロールたちは川沿いの洞窟や塚の中の目に付かないところを巣にしており、マッドクラブや大きな魚、クロコダイル、そして不用心な人間を同様に手の届く範囲で捕まえ、生き延びているらしい。リバー・トロールの目撃情報がこれほど希少なのはそのためだろう。出会っても生き残れるものがほとんどいないのだ。

死骸の外見は、火で傷ついていたとはいえ、この勇敢な狩人の報告を裏付けていた。よく見られるフォレスト・トロール種とは異なり、このリバー・トロールの皮は水をはじくキラキラした鱗で覆われており、銀がかった青色をしていて、丈夫であるだけでなく、加工も容易である。鱗のついた長い手は、爪のある指の間に水かきがついていた。そして牙は魚を食う生物に特徴的な、鋭く先の尖ったものであった。狩人が言うには、リバー・トロールは長い時間息を止めて、見られぬよう浅瀬に潜み、飛び出して奇襲をかけ、獲物を圧倒できるという。

この出会いがあって以来、私はシロディールの野生地で活動している他の人々に質問をしてきた。それでわかったのは、サッチのあの狩人の経験は特別なものではないということだった。リバー・トロールは滅多に見られないとはいえ、ブレナやストリッド、そして中央ニベン川系の流域に潜んでいる可能性があり、これらの地域で行方不明となっている家畜、および人間の少なからぬ割合は、疑いなくこれが原因であろう。自分が何をしているか知った今、私は自然の中での散歩を、より乾燥した高地に制限すると心に決めてしまった。何せ学者としての自分の経歴を、どこかの泥にまみれた川沿いの塚の中で、トロール種の餌食として終えたくはない!

リバー・トロールを駆除するようにRiver Trolls Exterminator?

レッドセイルの全船長へ

私が脱出するための秘密地下道に、2匹のリバー・トロールをおびき寄せるのが名案だと考えた馬鹿者はどいつだ?奴らのおかげで、入口の洞窟から地下道に入る野次馬はいないが、その一方で私が出入りしにくくなっている!

私が最後に城を抜け出した時は、ローストダックで一杯の手桶を遠くへ丸ごと投げる必要があった。さもなくば、あの恐ろしい獣の横を通れなかっただろう。

私が安全にトロールを回避できる方法を編み出すか、あの生物を私のトンネルから追い出せ!次に私が秘密の通路を使う必要のある時に奴らがまだいたら、お前達をまとめて一緒に閉じ込めてやる!

フォーチュナタ・アプドゥガル

ルシナ・ファレリアの墓碑銘Epitaph for Lucina Faleria

涙を止めよう

ルシナ・ファレリア

421年 薄明の月19日死亡

享年 47歳

レッドセイルの台頭Rise of the Red Sails

海を使って取引を行う大半の商人にとって、海賊は避けて通れない問題である。しかし、船乗り以外の者に海の厄災の原因となる人物の名を一人挙げてみろと言っても、間違いなく非常に困惑されるだろう。内陸に住む人々の耳に届くほどの悪行を成し遂げる海の無法者はほとんどいない。しかし、レッドセイルとそのリーダー、海賊女王フォーチュナタ・アプドゥガルにだけは、例外的にこのルールが適用されない。彼らの悪名はアビシアン海の沿岸全体に広まっており、海辺に住む人々にとっては、誰もが知っている万能の幽霊のごとき恐ろしい存在なのである。この評判は比較的最近になって広まった。

つい最近までレッドセイルは、他の海賊達と同じように自由気ままで目立たない存在だった。元々はストリッド川沿いの小さな集落を襲っていた襲撃者の集団だったが、フォーチュナタ・アプドゥガルが現れたことで新たな時代が始まった。この襲撃者達はすぐにレッドセイルとして知られるようになった。彼女はゴールドコースト貿易会社での自分の地位を利用して彼らを仲間に引き込むと、すぐに艦隊の編成に取り掛かった。

フォーチュナタの野心的、あるいは恐れを知らぬ指導力によって、襲撃者達はアビシアン海に初めて船を出した。そしてこの襲撃者達の小さな部隊は、無謀と言わざるを得ない状況の中で、自分達の船よりも大きな海賊船に乗り込んだ。海賊船の船長は小さな川舟があることに気付いていたが、判断を誤り、その船の接近を許してしまったのである。狡猾で残忍なフォーチュナタ達は、海賊船の船長を捕獲すると降伏を迫った。敵船の船員達には誓いを立てて彼女の元で働くよう提案し、前船長と将校達については、仲間達にマストから吊して殺すよう命じた。そしてフォーチュナタは、それ以降彼らの象徴となる、敵の血が染み込んだ帆を掲げたのである。

そしてフォーチュナタは、商人王としての人脈とレッドセイル海賊の台頭する力を利用して、船長と船員という立場を保ちながら、この無法な悪党の一団を君主と臣下という封建的な階級制度を持つ集団に作り変えた。数々の急襲作戦を成功させていくつもの海賊船と商船を拿捕したことで、彼女の旗の元にはますます多くの船長達が押し寄せるようになった。海賊女王とレッドセイルの恐ろしい評判は野火のように港から港へと広まっていき、その襲撃は恐怖の物語として、焦げ臭い酒場や混雑する宿屋で当たり前のように語られるようになった。

適切な時期を見計らっていたフォーチュナタとその艦隊は、ついにアンヴィル港に入ると、都市全体を支配下に置いた。現在、フォーチュナタ地方総督とレッドセイルは、白地に血染めのサーベルの旗のもと、20隻以上の船を所有していると言われている。正統な海軍を手に入れたことで、彼女はあらゆる港を自由に使えるようになった。帝国海軍の妨害がない今、彼女がゴールドコーストの先に目を向けるようになるのは時間の問題だろう。レッドセイルはあらゆる野望を果たしたと考える者がいるかもしれないが、それは単に現実から目をそらしているだけである。

アビシアン人よ、気を付けろ。嵐がやってくる。

レマンのフォーチュンロールReman’s Fortune

運命の聖なる教えに背く者は、労働の成果を味わえない。

淫らなネレイド劇団Naughty Nereid Players

皆集まってよく聞け!淫らなネレイド劇団が街にやってくる!

ほんのわずかな金を払えば、お気に入りの物語のセクシーで大胆、そして猥雑な描写の公演を見られる。演じられるのは、淫らなネレイド劇団のみ。

見れば見るほど艶やかになる千の顔の淫らな女、魅惑のティルウェンに驚愕せよ!

巨山の男、トリド・トロロンに心躍れ。彼はその眼差しだけで、男女両方の心をとろけさせる。

ハンマーフェルの燃える砂で鍛えられた魅惑と快活さをもつ、謎に包まれたリタベスの虜となれ。

劇団は、あなたのお気に入りはすべて演じると約束しよう。公演内容は、「ネッチよ、いたるところに!」、「勇敢なる小さなスクリブ」、「ペソリスとアルゴニアンの乙女」を含む。

荷物の準備完了Your Package Is Ready

荷物を確保し、前金も受け取った。手はずは整った。港でラウディ・グアル号を見かけたら、真夜中過ぎに埠頭へ来てくれ。荷物を渡す。

封のされた樽を探せ。青い炎を上げる杖が目印だ。金の入った袋を私から見えるように樽の上に置くんだ。そこで、お互いに持ってきた物の受け渡しをする。

金を数え終わったら、樽の横腹を叩く。そうしたらリンゴや魚を運ぶように、樽を家まで持ち帰ってくれ。倉庫長には話を通してある。だからレッドセイルに呼び止められることはないはずだ。もし何か言われたら、「ネズミの肉」を運んでいると答えろ。それで通じるはずだ。

樽の中から音や叫び声が聞こえてくるんじゃないかと心配しているかもしれないが、その点は大丈夫だ。上陸する前に、私の作った特別な薬でそうならないようにしておく。そちらの荷物は、家に持ち帰るまで間違いなくおとなしくしているはずだ。たとえ転がしているときに倒したとしてもだ。その効果を和らげるための薬も渡す。

この荷物であれば絶対に満足させられるはずだ。だが、飽きてしまったら、お望みとあらば、また他をすぐに用意することもできる。金さえあれば、いつでもブツは手に入れられる。

海賊女王の栄光Glories of the Pirate Queen

お前達ゴロツキの多くは、誉れ高きフォーチュナタ船長と航海する喜びを味わったことがない。そこでだ。崇高で輝かしい地方総督のことを正しく理解させるため、以下に事実を列挙する!

フォーチュナタ船長が声を上げれば、風が耳を傾ける。

フォーチュナタ船長は過去一度も壊血病を患ったことがない。壊血病が彼女をイラつかせたくないからだ。

フォーチュナタ船長はかつて、ものすごいくしゃみをして船を沈めたことがあるが、乗船していた船乗り達は溺れなかった。彼女が生きろと命じたからだ。

フォーチュナタ船長が風に向けてオナラをすると、ハリケーンが生じる。

フォーチュナタ船長はかつて、エバーモアの街につばを吐いたことがある。ビョルサエ湖はそこから生まれた。

頭の悪いダークエルフはかつて、フォーチュナタ船長は歌えないと言った。彼女は奴を思い切り殴ったので、空へ飛んでいった。我々は奴が落ちてくるのをまだ待っている。

フォーチュナタ船長が剣しか扱わないのは、その小さな指で殺すのに飽きたからだ。

フォーチュナタ船長は釣りをしない。魚がほしい時は魚がデッキに上がり、自らを料理する。

鮫はフォーチュナタ船長を噛まない。なぜなら歯を折りたくないからだ。

デイドラ公はフォーチュナタ船長と取引したいと頭を下げる。

そして、これは愛する海賊女王の栄光の始まりに過ぎない!

噛まれたメモChewed Note

ワーロシュをここに連れてきて卵に受精させるときは、子供達が走り回っていないか確認しろ!

何回説明すればいいんだ?ワーロシュが子供達を攻撃すれば、ワーロシュが子供達に傷つけられる!この辺りに成熟した雄はワーロシュしかいない、彼がいなければ卵は全て無駄になってしまう。

もう一度面倒を起こしたら、お前をワーロシュの餌にしてやる。間抜けな騎士達との約束なんてどうでもいい。

パーネイ隊長

騎士団に加われ!Join the Order!

アルトリウス大司教とアカトシュの聖なる意志により、犯罪行為から足を洗い、時の竜神に魂を捧げたレッドセイルには、過去に犯した不法行為についてその真偽を問わず、無条件に恩赦を与える。

時の騎士団はそのような人々が聖なる軍団に加わることを歓迎している。用意している赦免状の配布が終わるまで、砂時計の居留地で定期的に申し込みの受付を行う。

急げ!騎士団はあなたを必要としている。あなたに永遠の救済を。

疑わしいメッセージSuspicious Message

美しき暗闇は、調査の次の段階のために配達場所を変えることを要求した。クヴァッチ周辺の新たな場所に、お前の発見物と巻物を置いてくるのだ。正確な地図のためには、以下に記された部分のすべてが必要だ。

次の伝令が届けられるように、お前の暗号を下部に置いておくこと。

-狼の絶え間なき流れ
-闘士の上の止まり木
-永遠の騎士
-道を見下ろす場所

吸血鬼信奉者の告白Confessions of a Vampire Devotee

吸血鬼の女王、ザラル・ドーのことを初めて耳にしたのは、エルデンの市場を回っていたときのことだった。噂は興味深くもあり、恐ろしくもあった。権力と悪評を得たカジートのことを、人々は恐れとかなりの尊敬をもって、その名を囁いていた。正直に言うと、私は幼少期以来、吸血鬼として生きることのリスクと恩恵をずっと考えていた。そして吸血鬼の物語を聞くにつけ、噂を理解するにつけ、自分の目的を理解するようになった。

ザラル・ドーを探し出して説得し、私を吸血鬼に変えてもらうことだ。

どうして私が吸血鬼になりたいか?それはいい質問だ。確かに、この執着心にとりつかれてからというものの、自問したのは1度きりではない。思うに、力への欲求と、一部の学者が繰り返し主張する吸血症とセックスの相関に関係しているのではないだろうか(そう、私は本件に関する本と手紙を探し出し、すべてを読破した)。だが、全てさらけ出してよいのなら——そしてこれは私の個人的な日記であるから、そうするべきか——私が本当に魅力を感じたのは、吸血鬼の一族の長寿だ。古代種は数百年、時として数千年も生きられると読んだことがある。幼少期に早すぎる両親の死を経験した身としては、この「不死」という選択肢には非常にそそられた。

血を飲むことについては、あまり積極的になれないが、何事にも一長一短はあるものだ。世界の仕組みと同じといえる。飲み始めは気分が悪くなるかも知れないが、忍耐をもって事に当たれば、やがて深紅の流体が毎夜の楽しみにさえなることだろう。知的生物の血が必須だろうか?むき出しの牙はそのためにあるのだろう。

私がザラル・ドーのねぐらを見つける前、吸血鬼の女王に自己紹介をする前に、メル・アンドリスという狩人が街にやってきた。街の衛兵との会話を盗み聞きしていた私は、彼が失踪と不審な死について問いかけ、ザラル・ドーの名を口にするのを目撃した。私が吸血鬼の女王に会い、見習いを申し出る機会を彼が台無しにしてしまう。私は狩人を追って、彼がザラル・ドーの痕跡を探し出し、ねぐらまで辿り着くのを見た。もちろん、吸血鬼はいなかった。彼女の知性を考えれば、メル・アンドリスのような者が捕捉できるはずもない。

以後、見つからないように数ヶ月を費やして、できる範囲で吸血鬼ハンターを尾行した。分かったことといえば、ザラル・ドーを探し出せる能力は、彼の方が高いということだ。吸血鬼の女王にさえ近づければ、メル・アンドリスを遠ざけて吸血鬼の力の報酬をくれるように、彼女を説得できると確信していた。この夢こそが、グラーウッドからグリーンシェイド、マラバル・トール、そして最終的にゴールドコーストまで狩人を追跡した私の原動力となっていた。

はたして天は私に味方した。船がアンヴィルに到着すると、吸血鬼ハンターは具合が悪くなった。ひどい嵐を通過したせいで、不憫な男は病気になったようだ。これで、私はザラル・ドーの手がかりを探し、メル・アンドリスよりも数歩有利な状況に立った。吸血鬼の女王はロータ洞窟に巣を構えていると思われる。血の渇きがやってきた際に、アンヴィルの獲物を追うには最適な場所と言える。私は洞窟まで足を運び、吸血鬼の女王に姿を見せるつもりだ。彼女の見習いになるのが待ちきれない!

恐ろしき悪の暴露Exposing a Terrible Evil

かつて素晴らしい街であったクヴァッチを犯罪と堕落だらけの掃きだめに変えてしまった、犯罪者とならず者にはもう我慢できない。そんな悪党どもの中で最もひどいのは誰だと思う?密売人でも山賊でも海賊でもない。あの毒蛇の集団、まともな商売を装っているあの秘密の教団だ。噂話を聞いたことがある者もいれば、伝説を知っている者もいるだろうが、その全貌、血にまみれた真実を知っているのは私だけだ!そして今、残酷な狂信者たちを白日の下にさらしてやるつもりだ!闇の一党よ、いかに卑劣な殺人者か、明かされる覚悟をすることだ!

* * *
兄弟の所有していた書類に混ざって、この書きかけの手紙を見つけた。そして証拠や秘話、さらに宗教的な禁欲主義者を自負しながら落札者に闇の能力を売る者たちに関する、とりとめのない推測で埋め尽くされた日記も見つけた。完全に証明することはできないものの、私から見れば兄弟の最期について不確かなことなど何一つない。腐った赤キノコのシチューを食べたから死んだのではない。違う。あの堕落した信者によって残酷にも暗殺されたのだ。その指示はあの夜——

* * *
なんてことだろう。最初は義理の兄弟。そして今度は夫。自分の家の男たちがこれほど弱く、若くして死ぬ傾向があるなんて、誰も考えはしないはずだ。2人の兄弟に起きたことには、一見明白な結論では片付けられない何かが隠されているのかもしれない。たくましく、健康的で男盛りの2人が、机で書き物をしている最中に突然倒れて死んだという話を信じろって?私は2人が書き始めていた手紙をよく調べ、殺し屋や、真夜中に行なわれる闇の儀式について書かれた、悪事を暴く日記をじっくり読んでみた。

すべて読み終え、出すことができた結論はただ1つだけだった。夫と夫の兄弟が死んだ理由は… 自然死だ。ゴールドコーストでは、雇われた殺し屋の教団なんて活動していないのだ!もし違うことを言うような者がいたら、おそらく私の最愛の夫や役立たずの兄弟のような最期を迎えることになるだろう。だからこれを読む人がいたら、私は日記を焼き払い、くだらない殺人の話を忘れることにすると言っておく。

とはいえ、しばらくの間、赤キノコのシチューを食べることはないだろう。

興味深いアイレイド遺跡Intriguing Ayleid Ruin

とても興味深いアイレイドの遺跡をゴールドコーストの荒野に発見した!将来、キレスと僕が戻ってきて、遺跡の適正な調査と目録を作成できるよう、地図に印をつけておいた。僕に分かるのは、遺跡の扉が強固に封印されていることだ。ずっと長い間、誰も足を踏み入れていないのだろう。

何ということだ!資金を援助されているハンマーフェルの探検が僕たちを待っているというのに、この心惹かれる遺跡は目の前に鎮座して、僕たちが奥深くに進むまで辛抱強く待っている。キレスと僕にお金さえあれば、必要な道具を購入して、すぐにでも中に入るのに。

まあ、少しメモをしておこう。ページが頻繁に抜け落ちてイライラする、癖のあるキレスの日記を使うのは嫌だが、手元にはこれしかない。このページは絶対に落とさないはずだ。結局、僕は優秀なレイノー・ヴァノスなんだから。

銀なる暁の任務Silver Dawn Contract

浄化師ガンサファーへ

尊敬すべき教団を代表してこの聖なる義務を引き受けてくれたことに感謝する。この世界から汚れたライカンスロープ症の呪いを排除するために、銀なる暁と神々の司祭達はたびたび協力し合ってきた。是非とも、もう一度力を貸してもらいたい。

今回の標的は、ヒルデガルドという名の若いノルドの女性だ。彼女は髪に花を付けていて、頻繁にアンヴィルのディベラ大礼拝堂を訪れている。だが、その見た目に騙されるな。目立つような体格ではないが、怪物の心の持ち主だ。

彼女が今度礼拝堂を訪れたとき、呪いを与えたスカイリムの森に戻るよう彼女を説得するつもりだ。彼女を追跡して始末しろ。とにかく全力を尽くすんだ、そうすればお前達は多額の寄付金を手にできる。

詠唱師ネムス

銀のウェアウルフThe Silver Werewolf

ヒルデガルドの話

ある日、トロルヘッタ山の坂道でウサギ狩りをしていた銀のウェアウルフは、風に乗って聞こえてきた泣き声の方に耳を向けた。誰かが苦しんでいるのを無視できるものなどいない。銀のウェアウルフはウサギを繋いだ紐を肩に掛けると、声のする方にゆっくりと向かった。するとやがて、火の消えたキャンプの前で、空を見上げながら一人悲しみの声を上げている、髭の生えた大きな巨人の元に辿り着いた。

「なぜ泣いているんだ?」と銀のウェアウルフはうなり声を上げた。彼女が首に掛けていた疾き狐グリベグのメダルのおかげで、巨人はその言葉を理解できた。

「妻がいなくなった。子供もいなくなった。消えたんだ。寝ている間に。小さな足跡がたくさんある。ゴブリンに連れ去られたのかもしれない」

彼の言ったとおりだった。銀のウェアウルフの鋭い嗅覚は、少なくとも10匹のゴブリンの臭いと、麻痺性の毒の独特な香りをかぎ取っていた。巨人の家族は死んでいない。だが間もなくそうなるだろう。殺されて腹を空かせたゴブリン一族の食糧になるのだ。そんなむごい運命を迎えるに相応しいものなどいない。

銀のウェアウルフは背筋を伸ばして低くうなり声を上げると約束した。「彼らはゴブリンから解放される」

「皆を家に連れてきてくれたら、何でも言うことを聞く」

「お前に笑顔になってもらいたい」とだけ彼女は言った。

銀のウェアウルフは地面に鼻をつけると、トロルヘッタ山に残されたゴブリンの臭いを追い、スモークフロスト・ピークスを越えて、ロストプロスペクトの端にあるゴブリンの巨大なキャンプに辿り着いた。ひとつの場所にこれだけのゴブリンがいるのを見るのは初めてだった。ゴブリンでもこれだけいれば、巨人を食糧にするために勇気を奮い立たせて誘拐できた。小さな部族であれば執念深い巨人を怒らせるようなことは絶対にしない。

10匹程度のゴブリンであれば無傷で倒すことができる銀のウェアウルフでも、相手が数百となると話は別だった。彼女は冷静にならなければならなかった。そして近くにある死体の臭いが、彼女にひとつの策をもたらした。彼女はノルドに変化すると、この死んだ女の衣服に身を包んだ。その服を着た彼女からはもはや全く殺気は感じられなかった。そして彼女は、雪の中、道に迷った可哀想なノルドを演じながら、ゴブリンのキャンプに転がり込んだ。

ゴブリンはすぐに彼女の元に来たが、彼らが目にしたのはぼろ切れに身を包んだ無防備なノルドの女だけだった。素晴らしい褒美だ。彼らは銀のウェアウルフを傷つけることなく、しっかりと縛り上げると、捕らえた獲物を調理するまで保管しておく食糧貯蔵庫に連れていった。

彼女が考えていたとおり、自信過剰なゴブリン達は彼女の計略にかかったのだ。ノルドの体に包まれていたものの、銀のウェアウルフの鼻は近くに巨人がいることをかぎ取っていた。後は夜になるまで待ち、巨人の家族や自由を求める者達と一緒に逃げるだけだった。

夜が訪れ、ゴブリン達が眠りにつくと、食糧小屋の周りをうろつくのは訓練されたヅラゾグだけになった。分厚い雲のせいで月がおぼろで、狩りには向かない夜だった、だが隠密行動にはもってこいの夜だ。この檻であればノルドを閉じ込めることはできる。だが、彼女の獣の力の前では無力だった。

銀のウェアウルフはその鋭い嗅覚を使って、影のように静かに辺りを散策し、ついに巨人の閉じ込められている食料小屋を見つけた。静かに扉を開け、中に入り、巨人とその子供を縛りつけていた縄を引き裂いた。

「お前の愛する者が、お前が消えた場所で待っている」彼女は小さくうなり声を上げた。

「ありがとう、月に口づけされし者よ。これで彼にまた会える、絶対に帰ってみせる」

そしてキャンプから出ようとしていた銀のウェアウルフは、ノルドが閉じ込められている食糧小屋を見つけた。彼女は、生きるためでなく遊びで殺しをする狼殺しや動物達のことを嫌っていた。だが彼らにも利用価値があるということは分かっていた。

「すぐに逃げろ!」彼女は巨人に向かってうなり声を上げると、ノルドの食糧小屋を引き裂き、歯をむいてヨダレを垂らしながら彼らを爪で威嚇した。

ノルドは悲鳴を上げながら檻から飛び出すと、四方八方に逃げ、ヅラゾグとゴブリンの注意を引き付けた。その混乱の中、銀のウェアウルフは巨人を見つけると、彼女をキャンプの外れに連れていった。ゴブリンが彼らの前に立ちふさがったが、銀のウェアウルフの爪と牙に引き裂かれ、復讐に燃えた巨人に何度も殴りつけられて粉々になった。

すぐに追ってくるのはヅラゾグだけになった、だが銀のウェアウルフが耳をつんざくような遠吠えを上げると、臆病な犬達は飼い主の元へとすぐに退散した。銀のウェアウルフは、一部のノルドも逃げることに成功したことに気付いていた。彼らはすぐにゴブリンを倒すために、大群を引き連れて戻ってくるだろう。そしてノルドは実際にそうした。その時ばかりは銀のウェアウルフも彼らの幸運を祈った。

銀のウェアウルフは闇に紛れながら、巨人と一緒にトロルヘッタ山を登り、キャンプへと戻った。そして家族達は再会を果たした。孤独な巨人は子供と妻を抱きしめると、しわがれた声で感謝の言葉を言った。

「どうすればいい?どうやって恩返しをすればいいんだ?」

自分の子供達を思いながら彼女は答えた。

「笑顔になってもらいたい。お前が彼らを一番大切に思っていることが分かるように」

そして彼はそうした。

血の連祷Litany of Blood

アヌの元に生まれた人々に、夜母の災いあれ。

死の牢獄の向こう側から、あなたの冷たい刃の抱擁をもって、我が罪深き瞳を見た者を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

スカイウォッチから、踊り続けながらその瞳と服に神々を映し出す彼女を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

エルデンルートから、木々と同じように老いて捻れ、腰が湾曲ではなく曲がっている彼を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

マーブルクから、鳶色のベールを被りながら市場を調べ、心臓の近くに常に銀を携えている彼女を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

バルクワステンから、麦わらとその尻尾を振って、季節を追い払う彼女を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

ラウル・ハから、茶色と金色の縞を着た彼を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

ダボンズ・ウォッチから、銅線細工に覆われた、銀であり、灰であり、炎である彼を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

モーンホールドから、赤い紋章を付けて行進し、湾曲した鋼を振るう彼女を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

ストームホールドから、泥がこびりついているがぬかるみに触れていない、光り輝く骨の光輪を持つ彼女を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

ウィンドヘルムから、時の流れにより腰が衰えているが、その年月から黄金の王冠を守り続けている彼女を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

リフテンから、海藻が腕に巻き付き、インク汚れが付いている彼を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

ダガーフォールから、その心と同じように退屈な外見と知力を持ち、同じようにひんやりとした服を身につける彼を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

ウェイレストから、深紅のカーテンと傷ついた顔の向こう側からのぞき込み、その正体を隠す彼女を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

ショーンヘルムから、喜びのない頑なな笑顔を浮かべ、死を姉妹として歓迎する彼女を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

センチネルから、金色の檻にぶら下がった美しい黒いロープをたなびかせる彼を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

* * *
アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

エバーモアから、心にたくさん傷を負っているが、それを恐れず誇らしげに受け入れる彼女を捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

血の連祷、完遂Litany of Blood Fulfilled

アヌの元に生まれた人々よ、汝、恐怖の父の生贄となれ。

夜母よ、あなたから生まれた人々を生贄として受け入れたまえ。

呪いが隠そうとした彼らを捧げよう。

目を見れば彼らを見つけられる。

称えよ、彼らが血の中で涙を流している。

五つの戒律The Five Tenets

伝えし者テレヌスによる注釈付き

兄弟たちよ、我々は捕食者ではあっても、動物ではない。我々は国家や同盟のいかなる法にも従わないが、規則と倫理は持っている。これらの教義を破る、あるいは従うことを拒絶するならば、その危険を覚悟するがいい。闇の一党からの追放は、そのような忌むべき裏切り者を待ち受ける処罰の内で最小のものである。

五教義に従い、お前の献身に決して疑いを持たぬようにせよ。

教義その1。夜母の名誉を決して汚さぬこと。これを破ることは、シシスの憤怒を呼び起こす。

夜母を崇拝せよ。我らが不浄なる母は我々の任務の供給源であり、闇の一党の生命線である。

教義その2。闇の一党を裏切らず、その秘密を決して明かさぬこと。これを破ることは、シシスの憤怒を呼び起こす。

我々は影の中で繁栄する。その影に光を当てることはシシスと夜母への冒涜である。

教義その3。闇の一党の上官からの命令に対する不服従、あるいは拒絶は許されない。これを破ることは、シシスの憤怒を呼び起こす。

聞き、そして従うこと。闇の一党のすべてのメンバーに与えられる最初の教えである。

教義その4。闇の兄弟や姉妹の所持品を決して盗まぬこと。これを破ることは、シシスの憤怒を呼び起こす。

兄弟から盗みを働くことは、夜母から盗みを働くことである。シシスはそのような盗賊を憎む。

教義その5。闇の兄弟や姉妹を決して殺さぬこと。これを破ることは、シシスの憤怒を呼び起こす。

我々は家族であり、家族は家族を殺さない。メンバーが追放されない限り、その命は自分自身の命と同様に神聖である。

この契約を守れなかった時、裁きのためにやって来るのはお前の親類ではないということを知るがよい。すべての新たな入門者に伝えられるレイスの物語を覚えておけ。物語はただの寓話ではない。シシスの憤怒は本当に存在しレイスを送って教義を破った兄弟や姉妹を処罰させる。

黒き手The Black Hand

市井の歴史家、ジョーン・アリニー 著

闇の一党としてのみ知られる地下組織の詳しい調査は、長く困難なものだった。だが何年もの研究、数えきれない面談、そして幸運に恵まれて、ついに殺人教団の指導組織を突き止めた。悪名高い黒き手だ。以下の記述は理論と憶測で補強されているものの、私が作り上げた概要に基づく分析結果は、事実に基づき間違っていない。

闇の一党のアサシンに命令する力を持っているのは、黒き手と呼ばれる一団だ。一般的な手と同じく、そのグループは5人の構成員からなる。4本の指と親指だ。指に相当する構成員は伝えし者と呼ばれ、親指に相当する構成員は聞こえし者と呼ばれる。称号と位階はこの教団に入っていない人間には馬鹿げて聞こえるが、アサシンは彼らの言葉を非常に真剣に受け止めている。

ここで、より不思議な概念を説明しなければならない。信じ難く、下位のアサシンを制御するために用いられる伝説のようにも聞こえるが、私が明らかにした限り、教団はこの概念を固守している。ほぼ神格化された影の女族長、闇の女、またの名を夜母と言われる存在が、闇の一党を率いているという。どうやら、闇の女を見た者はいないようだ。かわりに彼女は聞こえし者にささやいて命令し、聞こえし者は伝えし者を1人選んで命令を伝える。そして、ほとんどの命令は殺人に関係している。

聞こえし者は何を聞くのか?詳細は分からないが、知識に基づいて推測すれば、顧客から闇の女に依頼された殺す対象の名前か目標だと推測できるだろう。聞こえし者はこの情報を伝えし者の1人に渡し、この伝えし者が個人の一存で実行犯となるアサシンを選ぶか、または下位の部下に情報を伝えて任務を授ける。

私が知る限り、アサシンは1ヶ所に集まらない。この教団はその構成員をヘヴン、聖域、避難所、アサシンポートなどとして知られる、小さく自給自足した集団に分けている。ここでも情報はしばしば変動し、相反することさえあるが、様々な情報の中から真実を理解するため私は最善を尽くした。特定の地域からアサシンを広く放つために作られたと見られるこうした安息所の指導者たちは、卿、統括せし者などと呼ばれる(ある文献では未亡人と呼ばれているが、私の研究の中ではこの他の呼称のほうがより一般的である)。伝えし者は部下に命令を伝え、行動を起こすアサシンを選ばせることができる。

最終的に、私はそれぞれの伝えし者が個々のアサシンに命令を下すことがあると突き止めた。おそらくは本当に特別な任務のためだと推測する。個々のアサシンが手首や指の関節といった体の一部と考えられているのかどうかははっきり言えないが、黙りし者、静かなりし者、または奪いし者という称号が与えられている可能性があることがわかった。威圧的で、馬鹿げた名前でもある。彼らは他に類を見ない最上の殺し屋と考えられている。黒き手の構成員となっているかどうかについては確証は得られず、また彼らがどのように命令を受けとるのかという情報も見つからなかった。

闇の一党。黒き手。おかしな殺し屋の教団としては芝居がかった名前だ。だが、殺し屋に変わりはない。

時の騎士団Order of the Hour

アカトシュの司祭、説教師エクソードー・ヴァシディアス 著

時の騎士団は帝国最古の騎士団の一つである。第一紀、帝国の初期に誕生し、第二紀の間にひっそりと消えた。エノン・デカンはアカトシュに身を捧げる騎士団として創立したが、当初からメンバーには聖職者と軍人が混じっていた。

現在の時の騎士団は、第二紀432年にアカトシュの戦闘司祭カボー・メルラによって、第二帝国の崩壊とロングハウス帝の到来に応じて作られた。竜神の司祭の安全が脅かされていると感じ、アカトシュ大聖堂と数多くの歴史的、宗教的に重要な宝を保護する目的で、カボーは献身的で信頼の置ける仲間の司祭を集め、大聖堂を守るために自身と仲間の身を捧げた。その日、時の騎士団は再誕した。

やがて、信心深い兵士とアカトシュに仕える戦闘司祭が、騎士団の旗の下に集まり始めた。しかし、懸念されたようなロングハウス帝の神々に対する報復は実際に起きず、時の騎士団は大聖堂やアカトシュの信仰の指導者である大司教に仕える、小規模ながら精鋭たる護衛隊に姿を変えた。訓練を続け、戦闘への準備を保ちながら、時の騎士団は様々な意味で主に儀式的な組織へと発展した。何らかの脅威に襲われることは時々あったが、騎士団には対処する準備ができていた。

例えば、第二紀467年クヴァッチのパン暴動。赤麦病で2年続けて不作になったことで恐怖と怒りを抱いていた民衆は、アカトシュとその司祭たちが状況を正すために十分な手を打っていないと考えた。グラフ・ボジョールは斧とたいまつを掲げた暴徒を大聖堂の階段まで率いて、暴力を行使して自分たちの不満を知らしめようとした。しかし時の騎士団はその攻撃に備えており、セヴェラ修道女と戦闘司祭たちは群衆の半数を、たいまつが投げられる前に虐殺した。大司教は苦難が終わるように祈ることを約束し、次の季節が訪れる頃には病気が自然と収まっていた。

時の騎士団の勇敢さと献身を示す例は他にもある。第二紀540年にファラスタス大司教を暗殺者の剣から救ったこと、そして第二紀561年に司祭と巡礼者が乗ったキャラバンを山賊から救い出したことなどだ。騎士団は大聖堂、そしてその延長として司祭や、その聖なる場所を使う崇拝者に仕えて守るという誓いに迷うことなく従っている。

第二紀480年、アカトシュ大司教による布告により、宗教的緊急事態においては騎士団に軍隊を結成する許可が出された。宗教的指導者のみに応える形で、軍隊化した騎士団はオークのカリスマ的略奪者、剣折りのバズが率いた悪党集団から街を守るため、クヴァッチの城壁に出向いた。騎士団による奮闘のおかげで、悪党どもは敗北して街は救われた。その直後に軍隊は解散し、騎士団は大聖堂における通常の任務に戻った。

騎士団への入団者は信心深いアカトシュの信徒で、完全に騎士団とその厳しい規則に身を捧げられるように、未婚でなくてはならない。騎士団は小規模な戦闘司祭の集まりとして始まったものの、その組織は近年その受け入れ条件を広げ、聖職者でない者も誓いを立てられるようになった。騎士団に誓いを行うと、メンバーは戦闘術と大聖堂の安全を守るために必要なスキルを磨く厳しい訓練を受ける。

帝国が崩壊して三旗戦役が始まり、ゴールドコーストがシロディールから孤立した際、クヴァッチ大司教アルトリウス・ポンティカスは、直ちに時の騎士団の力と権限を強化することに取り掛かった。コマンダー・マルクス・スキピオに騎士団の規模を拡大するよう指示し、騎士団の務めが大聖堂の境界に縛られず、クヴァッチの街全体に及ぶよう拡張を始めた。それは大司教がこれまで何度も言っていたように、「危険で困難な時期にクヴァッチ衛兵の軍事力を強化するため」に行なわれた。誰が見ても分かる通り、大司教はクヴァッチと人々のことだけを最優先に考えているのだ。

街と大聖堂に対する昨今の脅威を受けて、クヴァッチ伯爵はアカトシュ大司教に緊急事態の権限を与え、再び騎士団を軍隊に変えられるようにした。今日、時の騎士団は組織の歴史上最多の人員を抱えている。拡大を続ける軍隊は、献身的な戦闘司祭たちと、信仰心のある熱心な兵士たちの両方によって構成され、現在の騎士団はアカトシュ大聖堂の土地における安全を維持して平和を保つだけでなく、クヴァッチ全体の平和を維持している。ヴァレンの壁の向こう側でどんなに事態が混迷しようとも、クヴァッチでは騎士団がすべてをうまく治めているのだ。

自分自身につく嘘The Lie We Tell Ourselves

愛しき母へ

あなたの名前を覚えている。私の周りは嘘つきだらけで、自分も嘘つきになってしまった。でも私の嘘には、密かな殺人の影に飛び散る血液のように、あなたの支配する世界がはっきりと見える。だから彼らの前で真実を叫んだり、死者の耳にあなたの名前を囁いたりしたくなっても、それを秘密にすることが私の信条であり、私の楽しみであり、正しいことなのだと自分に言い聞かせる。

ただあなたともう一度だけ話したい。なぜ私じゃ駄目なんだ?私はいつもあなたの声を求め続けてきた。彼らが私を闇の姉妹と呼ぶようになる遥か前、私はあなたの闇に包まれていた。私はキマイラだった、あなたのために幾度となく姿や形を変えて、無数の嘘をつき続けた。あなたに見てもらうために。聞いてもらうために。彼らは自分達のことを聞こえし者と呼んでいる、だが私より希望と願望をもって、あなたの囁きに耳を傾ける者はいない。

私は八つの影に隠れながら、あなたの教えに従って歩き続けている。私は偽りの生活をし、人々を殺めている。恐怖の父ではなく、あなたのために。彼らは自分達のことを伝えし者と呼んでいる、だが私以上に強い信念を持ちながら、あなたの言葉を伝える者はいない。

私が建てた祠が見えるだろうか?私の体は祠だ。どの顔も真実ではない。嫉妬によって生まれ、嫉妬によりそれを感じる。誘惑の力。恐れの抱擁と支配、家族と真実の裏切り。他者を殺し、自分を殺す。飽くなき願望。そしてあらゆる宝物が偽物だったとき、私が感じて解放する怒りを。あなたの、そう、あなたの中で再び感じるのだ。

愛する母よ、あなたの名前を覚えている。だがあなたが望むのであれば私は嘘をつき、その嘘を愛そう。それがあなたの教えなのかもしれない。宝物は偽りだ。

失われたファレリア砦The Lost Fort Faleria

アレッシアの教義が出来た直後、シロディール初期の伝説によれば、クヴァッチ王国の摂政評議会を構成する3人の領主がいた。王と2人の領主の名は歴史の中で失われた。しかしファレリア卿の名は、人は愛する者を守るためどこまでできるかという訓話の中で夜ごとささやかれている。

ファレリア卿は若かりしころ、秘密裏にそして家族に恥ずべきことに、闇の魔法と死霊術に長けたエルフの研究者と恋に落ちた。ネナラータのアイレイドは帝国に忠誠を誓っていたが、彼らは上流社会でいまだ認められていなかった。彼らは共に失われた秘密について研究し、共にいられる方法を見つけようと模索した。彼らは秘密裏に結婚し、帝国の布告が終わりを告げるまでは短い幸せを楽しんだ。

粛清から妻を隠すため、ファレリア卿はその要塞を地下にトンネルを張り巡らせて拡張した。空間魔術と雇った労働者の汗、ミノタウロス種族の助けによって空間を拡張した。その地下施設は妻のアイレイドの祖先のもののように、壮大で同様に凶暴だった。

各棟が完成すると、彼らはひそかに労働者を抹殺した。埋められた者がいた。ファレリア卿とその妻の寿命を延ばすために命を抜き取られた者もいた。中には不死のガーディアンとして生き返った者もいた。ファレリア卿は噂と秘密を漏らすことはできず、死人には口がなかったのだ。

棟が拡大すると、ファレリア卿の家族も増えた。彼はエルフの子供たちを、死と帝国による追放から守るためなら何でもすると誓った。ファレリア夫人は3番目の子供を産む際に亡くなった。喪に服した彼は地下道に巨大な真鍮の墓碑を立てて愛を誓い、子供たちを帝国の狂信的な信者から守るためにあらゆることをすると約束した。

このとき、ファレリア卿は闇魔術の研究にのめりこみ、どこか遠い領域で罪なき者を犠牲にして得た闇の力で、物騒な魔術を企てた。力を導く方法を学び身に着けたが、限度を知らなかった。

ファレリア卿はエルフの妻の死の後、狂気に落ちていったが、外の世界にいる人々に彼の問題を説明できなかった。 エルフの家族の秘密を守るために彼はその領土を拡張し、新しく快適な場所を与えるために、使い捨ての労働力を使い続けた。

子供たちは成人したが、日の光を見ることは滅多になかった。大人になった末の息子はもはや幽閉に耐えられなかった。彼はごく簡単に、しかも頻繁に脱出した。息子が商人の娘と恋に落ちたのは自然なことだ。すぐに子供ができた。彼女の家族はその子のエルフとしての特徴を不審に思い、彼女に恋人がファレリア卿の息子であることを告白させた。ファレリア卿は露見したことでおびえ、孫を他の家族と一緒に隠した。

帝国は反逆と敵への協力という罪状を掲げ、数日で門まで押し寄せた。帝国に対する罪を前に、彼にできることはなかった。だが彼はこの日のために返答を用意していた。狂気の中、ファレリア卿は闇の儀式を実行した。家族と一緒にいられないのなら、作り出したものをすべて破壊するつもりだった。帝国軍と一緒に。

夜が来た。儀式は終わった。完全な闇の中で、城全体を潰すためには最後の行動が一つ残されているだけだった。最後の瞬間、彼の肩を叩いた者があった。息子が他の家族と一緒に、背後に立っていた。

遅すぎた。闇が地面から煙のように這い、物体を、壁を、人間を、エルフを溶かした。人間のような姿を型作り、内側から包囲する軍を攻撃した。または亀裂のように開き、辺りを飲みこんだ。

終わったとき、廃墟となった中にファレリア卿だけが残った。伝説では、彼は子供たちと孫をかつて行くことを許さなかった外界に埋葬した。それから彼は地下の穴に戻り、自身を埋めてしまった。

ほとんどの偉大な人間の名よりも、壁と記念碑の方が長く残った。ファレリア卿の名前は残ったが、彼の要塞は時間の流れの中で失われた。

取引The Deal

隅々までしっかりと読み、絶対にやり方を間違えるな。ここに書かれている手順に従わなければ、お前の安全と帰還は保証できない。お前がここに来て、要求したということを忘れるな。

予定の夜に出発する前に、子羊の皮で作られた巻物にお前の嘆願を書き込め。子羊の皮でできたものでなければ駄目だ。自分がまともだという自信があるなら、嘆願書は短くまとめて、再審問される隙を与えないようにしろ。彼はお前が書いた言葉を利用して、お前を非難する機会を虎視眈々と狙っている。

メモ:嘆願書を書くときは、私が貸した木炭を使用すること。その木炭は、アルビノの鹿を調理しようとしていた片足のリザードマンが使っていた火の中から手に入れたものだ。よほど運が良くなければもう手に入らない。

王や儀式や塔の印の下、任意の月の3番目の夜に、書いた嘆願書と生贄を持って石の輪に近づけ。言葉を発すればお前の嘆願は聞き入れられない。だから1人でそこにいき、絶対に口を開くな。

雲が月を覆い隠したら、そこにあるクレストストーンを探せ。印によって形は違う。月明かりのないところで光を発しているから見分けが付くはずだ。そうしたら嘆願書を石の前に置いて、巻物の上に生贄を乗せろ。

次が重要で面倒だ、だから実行する前に練習しておけ。石の前の巻物に生贄を置いたら、石に印を描け(忘れるな、媒介として使用できるのは豚の血だけだ)。印は月が再び現れる前に描き終わらなければならない。印を描いたら、立ち上がり、待機しろ。

嘆願が聞き入れられれば、すぐに彼が現れるはずだ。月が再び現れる前に彼が石の中から駆けつけてこなかったら、お前の試みは失敗したということだ。再び嘆願するには、次の月の3番目の夜が訪れるまで待ち、新たな生贄を捧げなければならない。

それから、すでに頭に浮かんでいるだろうから言っておくが、生贄を再利用するな!見られているぞ。彼でも怒ることはある。機嫌を損ねるような真似はするな。

最後に、嘆願する夜のことだが、紫色のものは身につけるな。日によって、彼の目にはその色が攻撃的に映ることも魅力的に映ることもある。それに彼がどう反応するのかは事前に分からない。なぜこんな話をするのかというと、どちらの反応を目の当たりにするにしても、楽しめるようなものではないからだ。

以上だ。最悪の事態になれば、今後500年間巨大なチーズの輪の中で転げ回ることになるか、長いすのクッションとして過ごすことになるだろう。しっかりと警告しておいたからな。二度と会わずに済むことを祈っている。

上方のメモUp High Note

パン職人に関して。

奇妙な男。ハイエルフの基準からしても奇妙だ。あまり多くの人を好きになるタイプではなく、人々もそれは同感であるらしい。しかしながら、彼のパン焼きの技術には疑問の余地がない。事実、人々は彼がゴールドコースト全体で最高のスイートロールを焼くと主張している。ぜひそのスイートロールを調べてみるべきだと思う。私が注文しよう。

暗号の場所:大聖堂の東。

人々の自由市場Free Market of the People

聞け、船乗りよ!我らの栄えあるフォーチュナタ総督が、本日をもってアンヴィルを種族や信条にかかわらず、すべての船舶と船乗りにとって、自由で開かれた港にすると宣言した!彼女の法以外、アンヴィルに法はない!

ストロス・エムカイ、ブラックハート・ヘヴン、アラバスター、聖域、アバーズ・ランディング、ブラヴィルの出身であろうが、船乗りならば実入りのよい港で、第二の故郷とビジネスパートナーを見つけることだろう。奴隷であれ、スクゥーマであれ、戦利品であれ、貨物が何であろうと、ここでは自由に交易できる。お前の積荷はお前のものだ。そして、それを誰に売却するかは、お前自身の問題だ。入港手数料を払う限り、如何なる事業でも望むままに行って構わない。

アンヴィルの港で我々が執行する法は3つのみ。

1)不必要な流血沙汰を避けて事業を行うこと
2)出港前に入港手数料を払うこと
3)そしてフォーチュナタ総督に最大限の敬意を払うこと

また、港に滞在する間、我々の合法的な賭博施設で金を増やすのはどうだ?タムリエル中から集まった最も美しく、手の届く女とお楽しみの時間を過ごすのはどうか?クヴァッチ近郊で、剣闘士の戦いと流血を見るのは?お前の悪癖が何であれ、求めるものはここで見つかるだろう!

友よ、誤解するな。アンヴィルの港より船乗りと私掠船員に優しいところはない。どこにも!

請負業者のメモContractor’s Note

警備主任ペレタスへ

ジャロル卿に頼まれていた機械の取り付けが終わった。屋敷の階下に繋がる通路は封印し、私のやり方で鍵を掛けておいた。以下に通路の使い方を明記しておいた。信用できる者にだけこの情報を伝えてくれ。

本物にそっくりな偽物のワイン樽を3つ作った。1つが通路を隠しており、他の2つはそれを開くために使用する。

この仕掛けを解除するには、まずこの大樽を見つけなければならない。ランターンの一番近くにあるのが偽物の大樽だ。大樽を開くには、大樽を2回ずつ叩く必要がある。2つの大樽を2回ずつだ。一番頭の悪い衛兵でもこれなら覚えられるはずだ。

ここまでの手順をしっかり守れば、3つめの大樽からカチっという音が聞こえてくるはずだ。3つ目の大樽は西の壁にあり、それが古い通路を塞いでいる。しばらく開いたままになった後、自動的に閉じるようになっている。カチっという音が聞こえてこなければ、それは私の仕掛けが壊れているのではなく、お前がやり方を間違えているだけだ。

以上
発明と錠前の奇才ベルランデ

追伸。手順を覚えたらこの手紙は燃やしてくれ。前の客のように食堂には掲示するな。そんなことをすれば全部台無しだ。

捜査官ヴェイル:影の組織Investigator Vale: Shadow Fellows

「男爵夫人、これはただの殺人ではありません」死体から身を起こし、後ろに下がりながら捜査官ヴェイルが言った。「影の組織による暗殺です。そう見抜けなければ、私の目はモロウウィンド・マッシュルームと同じく節穴です。名誉に誓ってそう断言できます」

「影の組織?」 ふっくらした赤い唇に華奢な手を当て、エスモンダ男爵夫人が驚きの声を上げる。「暗殺者の組織?それはただの作り話よ!」 男爵夫人は異議を唱えるが、その顔が突然青白くなり、落ち着かない様子で辺りを見回す。

「いいえ、影の組織は実在します」とヴェイルは言って、革の手袋を脱ぎロングコートのポケットに収めた。「彼らは数百年もの間、秘密裏に活動してきました。真相に近づく者がいると、賄賂、脅迫、殺人を行い、活動を隠匿する。私はこの不法組織について、もちろん内密に調査を行ってきましたが、これ以上に彼らの関与が明白な事件は見たことがありません」

「恐ろしくありませんの?」と男爵夫人が問う。「あなたが捜査から身を退いたとしても、十分理解できます…」

「親愛なる男爵夫人、私がこれまでに捜査を諦めたことは一度もありません。そして今もそうするつもりはない。ただ、最善の捜査方法を考えねばなりません」

* * *
その夜、何十人もの街の者に聞き込みをし、片手の指の数ほどの手がかりを調査した捜査官ヴェイルは、豪華に飾り付けられた宿屋の階上の部屋で、断続的に睡眠を取っていた。

突如、ヴェイルは跳ね上がり、身体からシーツを引き離して、枕の下に常時置いてある短剣を引き抜いた。短剣を真っすぐ向けたその先には、部屋唯一の椅子に腰かける暗がりの人影があった。その人影が指を鳴らすと、ベッド脇のロウソクが火花とともに明るくなった。多少視界が開けたが、部屋の影が伸びた程度だ。

「影の組織から来たのね?」とヴェイルが問う。

「レッテルを張らないで欲しいわね」と影の女は言う。影と長い黒髪の覆いに隠れたその顔は未だにはっきりと見えないが、女は身体に密着した革の服を身に着けていて、捜査官をすぐさま攻撃できる刃を、少なくとも3本所持していることは見てとれた。

「私の寝込みを襲いに来たの?」 自らの持つ刃を決して揺らすことなく、ヴェイルが問いかけた。

「私も私の暗殺者達も、優秀な捜査官ヴェイルに危害を加えたいとは望んでいない」と革の服に身を包んだ女が言う。「何の得もないからね。履行義務のある契約をもう一つ終えたら、朝日の霧のように消えるわ」

「男爵夫人!」 とヴェイルは叫んだ。

「評判通りの洞察力ね」 女が言う。「しかし、時として洞察力があっても、必然を変えるには遅すぎることもある」 女は立ち上がり、部屋に備わる唯一の窓に足をかけた。「捜査官、よい夜を」 軽く会釈しながらそう言うと、闇夜に消えた。

その後、長い暗がりの夜、捜査官ヴェイルは眠りにつけなかった。

* * *
朝になり、ヴェイルが男爵夫人の屋敷に戻ると、すでに街の衛兵が現場に到着していた。彼女は昔同僚だった年上の隊長に近づき、厳しい表情を浮かべながら会釈した。

「男爵夫人が死んだのね」とヴェイルが言う。それは問いかけではなかった。

衛兵の隊長は頷き、「夜に階段から落ちて首の骨が折れた」と言う。「夫の殺害を悲しんでいて、不注意だったに違いない。非常に残念だが、このような事故を防ぐ手立てはない」

「そうですね」とヴェイルが同意する。「しかし、報いはあるでしょう」

そう述べると、捜査官ヴェイルは踵を返し、屋敷から退出した。頭の中はすでに影の組織への対処方法で一杯だった。いつかあの悪人どもを捕まえられるかも知れない。だが、それは今日ではない。

そう、今日ではないのだ。

総督からの手紙Letter from the Governor

親愛なるジャロル卿へ

次に会うのを楽しみにしています。一緒に仕事をすることは常に私の喜びであり、極秘会談のために屋敷の地下にある秘密部屋の使用許可を与えてくれたことに非常に感謝しています。

我々の客は変わった方法ですぐに現地に到着します。彼らをしっかりと歓迎し、私が行くまで彼らの求めには必ず応じるようにしてください。私はもちろん、適度に遅れて到着する予定です!

それから私が到着する前に、カロラス伯爵と大司教がお互いに首を絞め合わないよう、しっかりと見張っていてください。我々には重要な取引があり、両者には目の前にある問題に集中してもらわなければなりません。彼らがお互いを絶えず中傷している様子を見ると、私には彼らがクヴァッチを一体どうしたいのか分かりません。

ああ、それと地下に来る時に、そちらの屋敷にある一番良いワインを持ってきてくれませんか?いずれにしてもその前を通るわけですし。

地方総督フォーチュナタ

大詠唱師への手紙Letter to the Grand Chanter

大詠唱師殿

もう一度お尋ねします。いつになったらクヴァッチ大聖堂に再度転任していただけるのでしょうか。ここディベラ礼拝堂のアカトシュに捧げた祠は悪くありませんが、ディベラの信者の存在に戸惑いがあるのは認めなければなりません。八大神の一柱はもちろん偉大ですが、私の心と魂はクヴァッチにある竜神の荘厳な宮殿を求めています。加えて、アンヴィルには異教徒の海賊が多くいます。他の神々の司祭には耐えられても、私には耐えられません。

分かっています!もし私が忌むべき影に対抗する試みで役に立つことができれば、それによって大聖堂での地位が与えられるでしょうか?過去2回私がお送りした手紙でお知らせした、あの小さなノルドの女性がいます。血も凍るような話を私に打ち明けたのです。大詠唱師殿。忌むべき影を混乱させるために、彼女が私を信用して打ち明けた内容を使えるかもしれません。次にお話しするときは、彼女を集団から引き離す行動を取ることを強く提案します。銀なる暁の狂信者も使えるかもしれません。

大聖堂に私の役職を見つけていただけるという良い知らせを、常にお待ちしています。

アカトシュ大聖堂におけるあなたのしもべ
ネムス詠唱師

大司教:栄光へThe Primate: Rise to Glory

グウィリム大学歴史学者、ミダラ・サルヴィティカス 著

大司教アルトリウスが長年にわたり説明してきたように、アカトシュが「暗がりにいた彼を呼び出した」後、この青年は神々に仕える司祭となった。彼はその後も聖堂に仕え続け、その聖地を作り上げている八大神の祠で時間を過ごしながら、さらに多くのことを学んでいった。その慈善が次第に人々へと知られるようになっていたこともあり、その行いと献身により、彼は再びクヴァッチの大司教ジョナスの目に止まる。

アルトリウスはクヴァッチのアカトシュ大聖堂に配属されることを切望していた。彼は「竜神の大宮殿」の物語を知っており、そこ以上にアカトシュに仕えるのに相応しい場所はタムリエルには存在しないと信じていた。彼はその役目を任されたいがために、大聖堂の大司祭と大司教の目に止まるようにあらゆる手段を講じた。最終的には「最初の祠の奇跡」と呼ばれる出来事が起こり、その目的は達成された。

その出来事とは次のようなものであった。狩人のカシラスが、胸から矢柄が突き出た若い息子を聖堂に連れてきたため、司祭のアルトリウスは助けるためにすぐに駆けつけた。子供がその酷い傷により死ぬのはもはや明らかだったが、アルトリウスは悲しむ父親をアカトシュの祠に連れていき、祈りを捧げ始めた。アルトリウスは飲食や睡眠などを一度もとらず、三日三晩、祈り続けたと言われている。そして3日目が終わりを迎えたとき、この司祭は誰も聞き取れないような早さで話し始めた。そしてそのとき、言い伝えによれば、祠からまばゆい光が発せられた。その光はアルトリウスを直撃すると体の中を流れ、腕から手のひらへと伝わり、死んだ少年の体に流れ込んだ。その光が消えると、矢は消えていて、傷が治り、子供は目を覚した。アルトリウスの祈りにアカトシュが応えたのだと誰もが口を揃えて言った。

この奇跡の評判は帝国中に野火のように広がっていき、すぐに大司教ジョナスの耳にも入ることになった。そして彼は、アカトシュが司祭を通して奇跡を起こしたのであれば、その司祭はクヴァッチの大聖堂に必要な人物であると結論づけた。その直後にアルトリウスは、ノルドがハチミツ酒を飲むがごとくその言葉を受け入れ、常に大司教の側にいられる大聖堂へとその身を移した。そしてアルトリウスは大聖堂で昇進していき、ついにクヴァッチ大司教に次ぐ役職、アカトシュの大説教師となった。

この時期から次第に大司教と大説教師との関係は緊張したものになっていた。アルトリウスは、高まり続けているナハテン風邪の脅威だけでなく、帝国全土に広がる政治不安にも聖職者がもっと関わるべきだと考えていた。その一方でジョナスは、これからも非宗教的なことに大聖堂は関わるべきではないと考えていた。両者はこの件に関して絶えず議論をし続け、最終的には大説教師を遠方に送ることを計画するなど、大司教があらゆる手段を用いてこの論争を終わらせようとするまでになった。

しかし大司教はその考えを実行する前に、不審な状況の中で急逝してしまう。クヴァッチのいたるところで大司教は殺されたのだという噂が囁かれた。闇の一党やその手の組織のアサシンが関わっていると考える者もいた。だが大司教はデイドラ崇拝やそれに準じる組織について説教を行ってきており、特に闇の一党についてはゴールドコーストの癌と呼んでいた。真実がどうであれジョナスの死は、より高みに登るための機会をアルトリウスに与えることになった。

そしてアルトリウス・アンクラスはクヴァッチ大司教に選ばれた。彼は名前をアルトリウス・ポンティカスに変え、この10年の大半、教会の中で確固たる権力を手に入れている。

大司教:教えの探究The Primate: Finding Faith

グウィリム大学歴史学者、ミダラ・サルヴィティカス 著

神々の聖堂は、アルトリウス・アンクラスにとってもっとも似つかわしくない場所であった。しかし、第二紀542年が終わる頃、この若いインペリアルはまさにそこにいたのである。彼は帝都の犯罪王ヴォドゥニウスの元で働いていた頃に犯した罪を償わなければならなかった。父親の富と影響力のおかげで、アルトリウスは懲役刑を免れることができた。聖堂に仕えることが、父親の案であることに彼は気付いていた。

4番目の子供であるアルトリウスは、神々に仕えることを約束させられていた。この青年はその約束から必死に逃れようとしたが、信仰の生活は彼の運命だったようである。「1年と1日仕える。でもそれが終わったらここから去る」とアルトリウスは、彼の看守であり後に助言者となる司祭、イラヴィウス・アルフェノに言った。この老齢の司祭はただうなずくと、信仰に対する自分の役割を説明し始めた。

アルトリウスは聖堂で、厳しい重労働をこなしたと思えば、無気力に近い静かな1日を過ごすなど、両極端な生活を送るようになった。毎日のように数々の雑用を与えられ、掃除や食糧の準備や神々の祠の手入れを手伝い、その合間に勉学や瞑想や祈祷を行った。アルトリウスはあまりにも忙しすぎて、すぐに父親に対する怒りを維持できなくなっていった。怒りが収まると、彼はしっかりと司祭達の言葉に耳を傾けるようになり、神々の教義を学び始めた。

宗教に無関心であったにも関わらず、アルトリウスはすぐに神々の物語や教義に魅了されるようになった。アーケイからディベラ、そしてステンダールからジュリアノスまで、彼は順番に全ての祠を訪れると、その聖なる領域と儀式について、司祭達に延々と質問をした。しかしアルトリウスは神々の中でも時の竜神アカトシュに対して特別な感情を抱いていたようである。ひょっとしたら、アカトシュが神殿の最も高い位置に置かれていたために、最初にアルトリウスの目に入ったのかもしれない。さもなければ、彼の持つその能力か、帝国の守護神として語られるその物語に魅了されたのかもしれない。動機が何であれ、この若い貴族は自分の教えを見つけたようである。

アカトシュ大司教ジョナス・カバンタインが例年の訪問でクヴァッチを訪れたとき、彼はすぐに若いアルトリウスに好感を抱いた。祈りを捧げるために聖堂を訪れた後、大司教はアルトリウスを個人的な話し合いの場に招待した。ジョナスもアルトリウスもそのときの詳細については明らかにしていない、だがその直後にアルトリウスは神々に誓いを立てている。保護観察期間が終了すると、彼は司祭になるという誓いを守り、アカトシュにその身を捧げた。

大司教:光の訪れ以前The Primate: Before the Light

グウィリム大学歴史学者、ミダラ・サルヴィティカス 著

クヴァッチやゴールドコースト、荒廃した帝国の跡地の中で、アカトシュ大司教アルトリウス・ポンティカス以上に献身と信仰を実践している者はいない。判断力がなく、自分のために聖なる真実を見られない者がいれば、彼が最初にそのことを指摘するだろう。それにしても、非常に控え目な人物が教会の規律の中で、一体どのようにしてそのような威厳のある地位を手に入れたのだろうか?それを明らかにするためには、初めてアルトリウスが導きと力を求めてアカトシュに助言を求めた、第二紀542年の帝都の街路まで話を遡らなければならない。

裕福なアンクラス家の4番目の子供として生まれたアルトリウスは、故郷と呼べるようなものを持たずに成長した。長男は帝国の中心地にある一家の財産全てを管理するために育てられ、次男は遠方のハンマーフェルにある一家の資産を守るために教育を受けた。三男のアンゲルスはすでに帝国軍の若い将校になっており、軍人としての未来が約束されていた。伝統に従うと、アルトリウスには、神々に身を捧げる道しか残されていなかった。残念ながら若いアルトリウスには、歌と伝説で語られる例の好色なアルゴニアンの侍女と同じぐらい、崇高な精神と信心が欠けていた。彼は祈りや犠牲には無関心だったのである。

その代わりに若いアルトリウスは、2つの危険なことに没頭するようになった。まず彼は、ウェイレストのエメリックとリーチのダーコラクの間で起きていた戦いをはじめ、ブレトンの王国で起きている出来事に深い関心を持つようになった。そしてそこで起きている出来事をより詳しく教えてくれる住人を探し回り、帝都の中でも最も不穏な地域でよくそういった人物と話をするようになった。そして次には、父親と兄達にとって非常に残念なことに、悪名高い犯罪王、ヴォドゥニウス・モンリウスの手下達と行動を共にするようになった。そしてそれほど時間が経たないうちに、ヴォドゥニウスとその手下達のため、伝言やそれ以外の雑務をこなすようになった。

誰もが眉をひそめるような出来事である。大司教アルトリウスは過去のこの暗黒時代のことを正直に話してくれる。この本のために調査をしていたときに彼は、「私はその当時、怒りに満ちていて誰の言うことも聞かなかった」と笑いながら語っていた。「私は怒っていて、あてもなく何かを探していた。だがそれが何なのか分からなかった。それこそが、情熱を見つけるか道を見失うかの分かれ道なのだ。幸運なことに、アカトシュには計画があった」

大司教はその計画が、青年期が終わりを迎えたこの頃から始まったと考えている。彼は犯罪王のために市場地区を巡回し、そこで働いている様々な商人や職人から金を取り立てるようになった。毎日の10分の1税は、金を無理矢理払わされる人々だけでなく、ヴォドゥニウスの金庫を満たすために金を回収していた人々にとっても、いわば恐怖の儀式のようなものだった。アルトリウスは、犯罪王と部下達のために雑用をこなす、たくさんいる若い男女のひとりでしかなかった。だが彼はその役目を楽しんでおり、情熱をもってその仕事をこなしていた。少なくとも、避けられない運命の日を迎えるまでは。

アルトリウスがカジートのパン屋、粘る爪の店に入ったとき、毎日徴収していた10分の1税以外のものが彼を待ち受けていた。4人の衛兵将校が、この若い貴族を捕まえて最近始めた犯罪者生活をやめさせるために待機していたのである。「お前は帝国の法を犯している、その袋に入っている金が証拠だ。お前にはあまり選択肢が残されていない」と衛兵隊長は言った。

このときアルトリウスは恐怖心と不安を感じていたはずだが、彼にはあるひとつの感情しか湧き上がってこなかった。それは粘る爪のオーブンのような、父に対する急激な憎しみだった。衛兵の将校はアルトリウスに対して、最も重い刑罰を与えて、1年と1日牢獄に収監することもできるが、犯した犯罪を償う方法もあると説明した。だがアルトリウスは、自分の鼓動のせいで、その言葉がほとんど頭に入ってこなかった。

「お前の父親のこともある」と将校は言うと、「だから後者を選ぶことにする。1年間、司祭として神々に仕えれば、正しい道に戻ることができるはずだ」と彼の処遇を決めた。そしてその通りアルトリウスは、必死になって逃げてきた運命の手の中に引き戻されることになった。そして彼は懺悔するために、神々の聖堂の司祭の元へと送られた。

大聖堂の組織Cathedral Hierarchy

アミア詠唱師 著:修練者のための入門書

修練者の諸君、時の竜神アカトシュに仕える君達の新しい役割をもう一度歓迎させてほしい。君達は極めて重要な、魂が応じられる旅を始めることになるが、この道を歩むのは君達が初めてではないし最後でもない。多くの修練者達が共にこの旅を進め、目の前の同じ課題に挑戦するのだ。その道が仲間の修練者達と同じ目的地に続くとは限らないが、俯瞰すれば、旅路は間違いなく同一である。

アカトシュ大聖堂の任務を遂行するにあたって、君達はいかにして時の竜神を崇めたいのか自問しなければならない。祈りと導きを通して、または崇拝者の献身と彼らの請願を聞き入れ、引率することで神の御言葉を広めるのか?はたまた聖なる書を手に取り、説教壇や街路へ赴き、信仰の炎を再びかきたてることを望む者達に神々の真実を唱えるのか?入信の儀を完了すれば、選択を迫られるだろう。詠唱師のマントを手に取るのか、説教師のマントを手に取るのか。決断は慎重に、自ら考えるのだ。進む道でそれぞれが求めるものは、まったく異なる。

大詠唱師と大説教師が共に支える大司教は、大聖堂におけるアカトシュ信仰のあらゆる面を監督していることを覚えておくように。そのため、詠唱師と説教師は肩を並べて立ち、アカトシュの御光を等しく、しかし異なる方法で人々にもたらす。

詠唱師になると、君は大詠唱師の導きに従い、助けを求めて大聖堂を訪れる者達に慈悲と指導を授ける。祈りと知恵を駆使して、彼らの身体、精神、魂を改める方法を学び、自身もまた師となることで、捧げ物や儀式を通して崇拝者を導き、アカトシュに近づけるようにする。

説教師になると、君は大説教師の後ろに集まり、己の信念を武装して異端、不信心という強大な敵と戦い、迷える信仰心を失った者達を導いて、竜神の守りの翼の庇護に戻す。闇の誘惑と自己愛の不道徳を清める言葉、心に響く言葉の操り方を学ぶだろう。悪人は贖いを許される前に、懲罰を受けて糾弾されなければならない。彼らの闇を駆逐するのが君だ。

任務が区別されているのは、目的が一致していないからだと誤解しないように。我々は大司教によって導かれる。アカトシュを崇拝するためには、双方の道が等しく重要だと理解する知恵が彼にはある。大司教は大聖堂を導く光だ。その煌めく輝きを敬う者のすべての生を高めてくれる。アカトシュと同様に、大司教は君達を決して誤った道に進ませない。

そしてもし別の任務、兵役の一種で忠実な信者達を守る必要のある任務がよいのなら、時の騎士団への入団を考えるのだ。大聖堂の生活は精神的なもので、時の竜神への献身を示す方法としてはやや退屈すぎるかもしれない。大聖堂とアカトシュの敬虔な信者達を世界の危険から守る使命は、高潔なものと言える。

修練者よ、道は前にある。君達を究極の目的地へといざなう、アカトシュの導きがあらんことを。

大聖堂は閉鎖される!Great Cathedral Closed!

偉大なるアカトシュ大司教であるアルトリウス・ポンティカスの命により、アカトシュ大聖堂への一般入場は、労働者たちがこの雄大な崇拝の家の老朽化した石細工や、軋む床板の維持や改装を行っている間は禁止となる。

このことはしかし、聖なる街クヴァッチにおける崇拝が禁じられることを意味しない。我らが勤勉なる詠唱師と説教師たちはあなたがたと共に歩み、アカトシュとその他の神々の言葉と意思とを広めるだろう。

時の騎士団の忠実なる剣が我々の家と故郷を守るように、詠唱師と説教師たちの言葉があなた方の魂を支え、時の竜神の真理で満たしますように。

大説教師の言葉Words of the Grand Sermonizer

信者たちよ。クヴァッチは暗闇とその中に潜む者たちに対する防壁として、何世代もの間、立ち続けてきた。あなたがたの番人たちは、この地の純粋さを毒するであろう隠された悪に対する、その疲れを知らぬ監視のために、帝国中の街で羨望の的となっている。

だが、満足するわけにはいかない!なぜなら、我々は今こそ、最大の脅威に対峙すべき時だからだ。その脅威とは、闇の一党である!

大司教はその無限の知恵の中で、この脅威の接近を見てきた。今この瞬間も、彼らは我々の地に忍び込み、アンヴィルの長い影と未開の荒野にその足場を築いている。この腐敗に助けられ、彼らは我らの愛するゴールドコーストを汚染する。放っておけば、その傷は膿むばかりであろう。

クヴァッチは範を示すことで先陣を率いなければならない。我々はこの殺し屋たちをどこであろうと、たとえ我々の領域内でなくとも、見つけ次第根こそぎにしなければならない。あなたがたもまた、番人にならなければならない。あなたがたもまた、時の騎士になることを望まなければならない。あなたがたもまた声をあげ、あるいは正義の剣を抜き、あの外道たちの疫病をもたらすナイフに立ち向かわなければならない。彼らを光で照らす時、あなたがたが見出すのは恐るべき怪物などではない。ただ影を剥ぎ取られた、臆病な抜け殻があるのみである。

報いの時は近づいている。信仰篤く、その時を待ち受けるがよい。

大説教師の日記The Grand Sermonizer’s Journal

計画通りに事は運んでいる。当初は若干の失敗があったが、今日我らの密偵は闇の一党と疑われるメンバーを葬ることに成功した。殺人者を問い詰めたかったが、密偵は短剣と剣を使う方に熱心だった。

* * *
クヴァッチの通りを闇の一党への恐れと憎しみで満たすよう、一連の説教を用意した。あの教団は神から見れば嫌悪の対象だ。皆が気づかねばならない!我が説教師たちが言葉を広め、殺人者を隠す闇に光を投げかける。

* * *
密偵に対して、特に次の殺人者を見つけたら殺さぬよう頼んだ。尋問室を用意し、殺人者から真実を聞き出す用意はできている。必要とあればあらゆる手段で。アカトシュよ、我を導きたまえ!

* * *
ブラックドラゴンは今日、手負いだが息のある殺人者を連れてきた。殺人者に吐かせるいくつかの技術を試すのが楽しみだ。1日が終わる前に、闇の一党が隠れている場所を見つけてやる。そして我々は、ゴールドコーストから障害を消し去る努力をさらに強化できる。

* * *
アカトシュに不手際をお詫びしなければ。失敗した。殺人者は頑固で、予想以上の抵抗を見せた。その肉体にどんな拷問を加えようとも、彼は役立つことを少しも漏らさなかった。彼は死ぬまでとても苦しんだ。まあいい。ブラックドラゴンはすぐに他の奴を見つけるだろう。

おかしい。何かが尋問室にあった殺人者の死体に触った。アカトシュが私の祈りにお答えになり、問い質せるよう他の殺人者を送ってくださったのか。まあ、待っている者を待たせないようにしよう。

帝国大学のメモImperial University Note

ダーヴィアン

この暗い洞穴であとどれだけ謎の連れと座っていられるかわからない。あなたが話をしている時の彼らの見返し方、ガラスのような目と精霊のような空虚さを見たら、我々が共通の言語を話さないと思うだろう。言うまでもなく、あなたの論文をロウソクの灯りの元で読んでいた私の目は、ほぼ見えなくなっている(ところであれはとても興味深いな。だが私の環境が刺激を求めさせているのかもしれない。気を悪くしないでくれ)

大学がここで何が見つかるのを期待しているのか分からないが、私が学んでいると思われるのは健常な精神をもって地中に住むことの効果だ。 ああ、始まりはきっとこうだったのだろう!気高きエルフがファルメルになるという、哀れなどん底におちる緩慢な悲劇。友よ、もし私の精神状態が悪化して、よだれをたらし、凶暴になったら、事例研究で言及してくれ。

ジリヴェルン

特別な指示Special Instructions

2日後、真夜中に鐘の音が鳴ったらお前は持ち場を離れる。そして10分経つまで戻らない。やり方を間違えるな、間違えたら大変なことになるぞ。金はいつもの場所においてある。

忘れるなよ。こうすることが皆の利益になるんだ。私との誓いを破ろうだなんて考えるなよ。お前の子供には無事でいてもらいたいんだ。

分かったな。2日後、真夜中、10分経つまでだ。計画を台無しにするなよ。

毒ある緑舌の者の聖域の傍注Venom’s Sanctuary Marginalia

日耀

聖域を訪問する際の最近の騒動は、俺が前にいたブラックウッド国境地帯の聖域を思い出させる。あそこで起きたことが再び俺の居場所に起きるのは、絶対に避けたい。自分がこれほど詳細な記録をつけているのも、おそらくそのせいなのだろう。俺の聖域の誰かが教義を破っているのであれば、その絶対確実な証拠を手に入れておきたい。そしてもし我々が教義を破ったという糾弾が誤りなら、ちゃんとした日記を突き付けて、今度ばかりは黒き手が間違いを犯したのだということを示せるようにしておきたい。

だから、何もかも書き記しておく。

央耀

統括せし者が気分はどうだと聞いてきた。なぜだ?彼女は俺が知らない何かを知っているのだろうか?

木耀

今日、俺の生活空間がヒルデガルドの毛だらけになってしまった。狼形態でいる間はこっちに来るなと言ったのに。念のために、この違反を記録につけておく。

金耀

山羊のミルクと酸味ビールを混ぜたら何が起きるのだろう?次にコーが物資を持ってきた時に試す。覚えておくこと。

月耀

タネクが俺の鱗と尻尾について心無いことを言った。いつか伝えし者に、あいつが家族をどう扱っているか知らせてやるつもりだ。

火耀

家族の中でまた一人、殺害された者が今日、見つかった。哀れなシンドゥル。彼の殺され方にはどこか見覚えがある。これについては少し考えて、昔のメモ帳を探らないといけない。

木耀

伝えし者は俺に不満があるようだ。誰かが言ったことを俺が書き留める度に、彼は俺に暗い一瞥を投げかける。

金耀

今日、説教師の話を聞いた。俺はいつも通りメモを取り始めたのだが、すぐに頭がカッとなって、自分の書いた字が読めないほどになってしまった。奴らはなぜ闇の一党についてあのような嘘を言うのだろう?統括せし者に伝えなければ。

地耀

シンバーが拷問を受け、殺された。水が湖に満ちるように、悲しみが聖域に満ちている。哀れなミラベルのことを考えると、俺の心は痛む。彼女はシンバーとの密会を可能な限り行い、とても楽しんでいた。俺が記録しておいた2人の交尾の詳細なメモを全て読み返すと、彼女は喜ぶだろうか?

日耀

新たなる剣は非常に興味深い質問をする。書き記しておかなければ。

「ブラックウッドに着いたら何をする?」いい質問だ!
「どうすればいい?」少し飲み込みの悪い時がある。
「何をしてほしい?」ここで何か意地の悪いことを言ってやってもよかった。
「この聖域は放棄されたんじゃなかったのか?」ちゃんと聞いていなかったようだ。もう説明したのに。

月耀

ライラ・ヴィリア。その名前は長いこと考えていなかった。俺たちはかつて友達であり、兄弟と姉妹の関係だった。彼女は死んだ。少なくとも俺はそう聞いた。そして今、彼女が生きているだけではなく、我々の聖域を浄化したのが彼女であることもわかっている。さらに彼女が現在の俺の兄弟たちを殺している張本人、ブラックドラゴンであることもわかっている。俺にはなぜ彼女が闇の一党に敵対するようになったのか想像もつかないが、そんなことはどうでもいい。彼女は死ななければならない。

央耀

前の聖域で過ごした一夜を思い出す。俺は新しい入門者で、ライラも同様だった。先輩の兄弟たちは色々な恐ろしい話をして、俺たちを怖がらせようとして楽しんでいた。特によく覚えている話がひとつある。ライラと俺は緊張と興奮が入り混じった気持ちで聞いていた。それはブロンバーという、兄弟を裏切ったアサシンの話だった。その男は処罰のために送られた姉妹によって致命傷を負った。彼女がそいつを瀕死の状態に留めたのは、シシスのレイスが彼の魂を取りに来た時、自分に何が起きているのかがわかるようにさせるためだったのだ。我々は2人ともその話に震え上がってしまって、1週間以上もよく眠れなくなってしまった。なぜ、この話を思い出したのだろう?

木耀

統括せし者が俺にブラックドラゴンを探し出して殺すよう命じた。彼女が俺を信頼してくれていることを誇りに思うと同時に、悲しい気持ちにもなる。

濡れたメモSoggy Note

商人と自称している者に関して。

ドビアスは文書や契約書、その他の財務記録をゴールドコースト貿易会社から盗んでいる。彼が盗んだ情報で何をするつもりなのかはいまだ明らかではないが、彼の計画には利益もおそらく絡んでいるだろう。それだけで、彼の死を望む理由になるか?おそらく。

暗号の場所:銀行の南。

伯爵の書簡Count’s Correspondence

親愛なる叔父上

なぜか、あなたに手紙を書くことを止められません。あなたはとうに亡くなったのに。あなたはもう手紙を読むことも、返事を書くこともできないのに。手紙は送っていません。実際のところ、手紙を貯めている箱はほとんどいっぱいです。理由がどうあれ、あなたに話しているかのように手紙を書くことで私は落ち着き、その日の問題を考えられるのです。ああ叔父上。問題があるのでした!

以前に長々と恥ずべき、忌まわしいフォーチュナタ・アプドゥガルについて話しましたが、あの女はまったくゴールドコーストの病原菌です!クヴァッチの略奪と破壊を、彼女の欲深い手先から守るので精一杯です。 アンヴィルはもう彼女にやられました。ここも同じ運命にすることは許しません。最新の書簡を書いた理由はそのためです。あなたの賢さと経験から、もう一度だけ得られることがあったらよかったのに。

愛する街を救うため、悪いには変わりありませんが、比較的ましな方法をとることにしました。闇の一党がよりマシな悪になるとは思いもしませんでしたが、今はそういう時なのです。忌まわしき儀式を行うために必要なすべてのものは集まりました。楽しい儀式にはなりませんが、暗殺者たちを雇う他の方法を知らないのです。叔父上、私に失望されることでしょう。フォーチュナタを倒すには、こうするしかないのです。

次にまた手紙を書くことができたなら、クヴァッチがまた安全になったことをお教えします。叔父上、お会いしたい。

カロラス

悲痛の短剣The Blade of Woe

毒ある緑舌の者による監視

悲痛の短剣。この世に生を受けて以来一番幸せだったのは、伝えし者によりこのすばらしい武器を授けられた日だ。

悲痛の短剣は私の手から離れたらどこへ行くのだろう。我が兄弟姉妹たちは1つの武器を共有するのだと思い込んだが、できるものであろうか?どうしたらそのようなことが起こるのだろうか?私が呼んだ時には一度も現れたことがない。我らの恐怖の父の謎なのだろう。おそらくは。

完全な刃で完全な殺しをした時ほど満足できるものはない。

タネクは私が契約を果たす時に同行したことがある。彼は私と同時に悲痛の短剣を呼ぼうとした。彼は失敗したが、我らがなした2つの殺しは実に印象的だった。

かつて伝えし者に、悲痛の短剣を私の鞘に納めていいかどうか尋ねたことがある。鞘は神聖なものだと彼女は言ったので、できなかった。彼女は私を実によく知っている。

悲痛の短剣はその鋭さで魂を切り離して虚無へと送る。だが毒や我が剣、ダイアウルフの牙、絶妙のタイミングで落とされた岩でも同じことができる。それでも、私は使える時に悲痛の短剣を使うほうが好きだ。シシス万歳!

コーはめったに悲痛の短剣を呼ばないのに気づいた。彼はターゲットを長期戦に巻き込んで殺しを難しくするほうが好きなようだ。コーはダメな殺人者ということになるのか?そんなことはない。だが、人それぞれということなのだろう。

秘密のメモSecret Note

庭師に関して。

夫がスイートロール・キラーに殺されたと主張しているが、彼女に結婚歴があるという証拠はどこにもない。彼女は運命について話すようである。それもたっぷりと。彼女は間違いなく戦い方を知っている。彼女にスリを働こうとした盗賊の首を絞めているのを目撃した。

暗号の場所:3つの道が出会う場所にある建物の中。

必要なものNeedful Things

今日の買い物リスト

ブラックタール
ケルンボリートキャップ
ハラーダ
腐った鱗
骨髄
フェンネルの種
ウィスプストークキャップ
吸血鬼の灰

メモ:塵のことは、杖をついているあの不機嫌なダークエルフに聞くこと。彼が山のように持っている。

壁の目撃者Eyewitness to the Wall

昨晩兵士が農場に到着した。みな公爵の制服を身に着けている。今季税金をちゃんと払ったかどうか思い出そうと心臓がドキドキしたが、それが目的じゃなかった。柵を取り外すように言われたから、土地を区画整理し直すのかと聞いたら違うという。 集められるものは、すべて軍に。異教徒のロングハウス帝と戦争になるのだ!

* * *
家族で荷車を積み上げた。日暮れまでにヴァレン公爵の野営地に着くだろう。

* * *
思ったよりテントが多い。荷車もだ。見知った人もいるが、他は国の一番遠くから来たに違いない。ヴァレン公爵による軍の招集が届いたのだろう。皇帝にも知らせは伝わったのだろうか。

* * *
軍は帝国軍をコロヴィアに近づけないと決めた。ここを防衛線にするため、休むことなく要塞を築いている。石を積んだ私の荷車を1時間近く調べ、浮石を見つけて集めるよう言った。我が家の柵を取り壊すしかないようだ。

* * *
妻と隣人の何人かが取り壊しを手伝ってくれた上に、荷車を提供してくれた。残念だが、この石は家畜を歩き回らせないようにするより、薄汚いリーチの民を祖国に近づけない方がより役立つ。

* * *
見て楽しいような物ではないが、壁は日々圧倒的になりつつある。今では身長より高く、果てが見えない。私には分からないが公爵には考えがあるのだろう。帰るには暗すぎるので、一晩荷車で過ごすことにする。

* * *
兵士から野営地に招待された。マーラのお恵みを。寝台や、最低でも干し草の山なしに一夜を過ごすには年を取りすぎた。日夜レンガを運搬している彼らは疲れているようだ。公爵は交代制で働かせている。戦が近づきつつあると思っているのだ。その時はここにいたくない。

* * *
浮石を探すためにまた外へ出た。 家を解体して敷石を剥がしても石が不足しているので、できるかぎりのことをした。仲間の中には、古い遺跡から取ってこようという者もいる。

* * *
古いエルフの家など知ったことか。全く構わない。手当たり次第に石を荷車に投げ入れ、何かが怒り出す前に帰ろう。

* * *
最後の荷を運んだ。荷車が今にも崩れ落ちそうだ。私のここでの仕事はすぐに終わる。ヴァレン公爵の仕事は始まったばかりだが。八大神の恩恵を受けた彼らが、忌々しいリーチの民を北方の腐乱死体の小屋に送り返してくれますように!

* * *
帝国軍だ!帝国軍の行進が確認できた。壁はしっかりしているようだが、荷車を見つけてここを出なければ。

夜の輝きThe Glint in the Night

希少アンティーク商人マクサ・コランド 著

アサシンが使用する道具はたくさんあるが、ある武器だけは闇の一党の兄弟と姉妹にとって特別な存在となっている。それは悲痛の短剣と呼ばれる特に特徴のない短剣で、彼らの仕事のシンボルであり、彼らの影の支持者の象徴となっている。この短剣は、夜母が自分の子供達を生贄として捧げた時に使ったためそう呼ばれるようになったと言われており、闇の一党の者達がその恐ろしい任務を実行する時に使用される。闇の一党全体で1本の短剣を共有しているという噂があるが、それとは反対に、各人の武器はオリジナルのものを模して作られたものだという報告もある。前者より後者の方が真実に近いと考えているが、真相は未だに謎のままである。

悲痛の短剣は闇の一党を守護する神、恐怖の父シシスに捧げられたもので、これで命を奪うとその魂を直接虚無に送れると言われている。私は同じような遺物を研究してきたが、そのようなマジカの存在を証明するようなものは見つかっていない。シシスの従者だけがそのような力を引き起こすことができるのかもしれない。しかし実のところ、この短剣はそれを持つ者にとって特別な宗教的意味合いがあるだけで、魔法のような力はないのではないだろうか。それに闇の一党の被害者達は、少なくとも魂がシシスの元に送られると彼らが信じているとされる方法、つまり毒や破壊工作といった、誰もが想像できるような方法で殺されているのである。

闇の一党は秘密主義であるため、情報を手に入れることはほとんど不可能であり、いくらこの件を調査してもせいぜい疑惑止まりにしかならず、調査することもままならない状況である。この件を公にすることで、他の勤勉な学者達があの謎に包まれた暗殺集団を調査し、彼らの信仰心と行動を取り巻く謎を解明する手助けをしてくれると信じている。

[意図的にここで切られている]

優しき考察者のメモKindly Contrivers Notes

アバナス・スミード作成:クラヴィカス・ヴァイルの「優しき考察者」の隔週秘密会議議事録

8時:会議開始。

8時1分:会議中断。

8時5分:怒鳴り合いが収まる。

8時6分:秘密会議の議題その1。蒔種の月の前に新しい農具を求めるサンダークリフの村の請願に対する適切な回答の発案。

8時30分:極度の不安により、議論中断。身の程を分かっている。

8時40分:厄介な吹き出物に対処するため、フーリガンが退出。サンダークリフの板挟みの状況を打開する策に合意。

9時:サンダークリフの提案採決。

9時5分:多数決によりサンダークリフの提案受理

9時15分:反対投票者のヤジが収まる。

9時17分:秘密会議の議題その2。呪われた魂の石の研究の進捗報告。

9時30分:開幕の大演説が終了。

9時31分:報告開始。

9時32分:報告終了。主だった進展なし。

9時55分:暴言が収まる。

10時:抗議の沈黙が終わる。

10時1分:秘密会議の議題その3。ランチ。

10時30分:食べ物のようなものについての合意が得られず。

10時31分:休憩の提案。献酒のコルク栓、抜かれる。

11時:樽が空になるまで飲んだのは、やや行き過ぎだったのではないかという合意が得られる。収まりのつかない笑いに対処するため、ベドリムが退出。

11時5分:集団で吐き気に襲われるという、恐ろしい事件が発生。

11時30分:生まれてこなければよかったと、マレインが大声で叫ぶ。

11時31分:満場一致で同声明を可決。

11時50分:参加者がカンパを行い、500ゴールドの献金を用意する。

11時59分:ランチについての合意が得られる。

正午:献金の準備にあたり、秘密会議休止。

竜神の崇拝Worship of the Dragon God

「アカトシュの神よ、力をお貸しください!アカトシュの神よ、光をお与えください!」
——竜神アカトシュに対する一般的な祈り

もしもゴールドコーストで信じられる神を一柱選ぶとするなら、それは時の竜神、アカトシュだろう。クヴァッチにある壮大なアカトシュ大聖堂を中心地として、アカトシュの言葉とその召使は竜神の光と真実をあらゆる者へ広めている。

八大神の中でも最初かつ最高の神であると言われ、始まりの場所を築いた最初の神とも言われているアカトシュは、並外れた強さを持って地上と人々を見守り、帝国の守り神の役目を引き受けている。それは帝国が崩壊している状態であっても変わりはない。クヴァッチの大司教が事あるごとに言うように、「竜神は日々の懸念の先を見ており、長期的な視点から熟考している。現在の状況は取るに足らない流れの乱れでしかなく、すべてはアカトシュの制御下にある」のだ。

アカトシュは自身が司る3つの重要な性質として、耐久、無敵、永劫に続く正当性を奨励している。帝国が竜神とその教義をあれほど早く受け入れたのはそのためかもしれない。クヴァッチ大司教の言葉によれば、アカトシュはその3つの重要な性質を次の方法で具現化している。

耐久:「この性質は、アカトシュの継続し耐える能力と強さを表していて、時の神としての役割と直結している。アカトシュは耐え忍ぶ。彼の言葉を受け入れて彼の教えに身を捧げて真の信者も同じである。疲労に負けず、ストレスや逆境にも影響されず、アカトシュと信徒たちは継続する。それが、竜神が持つ耐久性である」

無敵:「アカトシュは征服されることも、倒されることも支配されることもない。それは竜神を信じて敬意を示す者たちも同様である。それが、竜神の無敵の性質である」

永劫に続く正当性:「この性質はあらゆる面で調べられなくてはならない。アカトシュの恒久性だけでなく、掟、道理、そして相続の方針に対する敬意も表すものである。アカトシュから祝福を受けて認められたものは、偽りもしくは不当とされることはない。それが、竜神の継続的な正当性である」

こうした基本的な教義以外に、クヴァッチ大司教と司祭たちは、忠実な信者と信仰心のない者の両者にアカトシュの訓示を5項目説いている。

「皇帝に仕えて従うこと」。帝国とアカトシュ崇拝は当初から密接な関係にあり、この訓示がそのよい例である。

「合意について学ぶこと」。アカトシュと、アレッシアやその子孫のような定命の者である信徒との間で交わされた合意は、結ばれた血と誓約の象徴という役割を果たしている。すべての信徒には、こうした永遠なる契約を理解することが強く求められている。

「八大神を崇拝すること」。しかしアカトシュは嫉妬深い神ではない。信徒たちには彼自身だけでなく、他の神々も称えることを求めている。

「自らの本分を尽くすこと」。義務と責任は、規則を好む竜神の教えにおいて特に重要な位置を占める。責務を果たさないことは、アカトシュの目から見れば罪なのだ。

「聖者と司祭の指令に注意を払うこと」。アカトシュは階級と組織を好む。自分の信徒たちが聖者と司祭による命令に従うことを求めるのは当然だろう。

クヴァッチ大司教はよく、「アカトシュの意志を実現すべし」と宣言している。過去、現在、未来を具体化する時の竜神として、彼は秩序ある厳格な世界を保つ規則を受け入れる。献身と崇拝によってアカトシュに敬意を示すことで、信徒たちも同じことを受け入れるのである。

狼とドラゴンThe Wolf and the Dragon

グウィリム大学歴史学者、ミダラ・サルヴィティカス 著

ヴァレン・アクィラリオスが、第二軍団を連れてシロディールの中心で反乱を起こすためにゴールドコーストを去った時、彼は愛する故郷を無防備に残しはしなかった。アビシアン海の岸からストリッド川の土手へと延びる薄い壁、そして甥であるカロラスが代わりに守ったクヴァッチと周囲の田園地帯は、ロングハウス帝の報復と、その後に続いた戦争による堕落の両方から逃れた。しかし、クヴァッチの狼が帝国のドラゴンに戦いを挑む機会はまだ十分にあった。

カロラス・アクィラリオスは伯父を敬愛しており、ヴァレンが皇帝に対する反乱を宣言すると、手を貸すことに積極的であった。実際、カロラスはヴァレンに加わり、帝都に向かって行進しながら一緒に戦いたがっていたのだ。しかしヴァレンはカロラスに別の計画を用意していた。ヴァレンは信頼の置ける立派な甥に故郷を守らせたかったのだ。ヴァレンに同行して反乱に参加できないことに失望したカロラスだったが、それでも伯父が期待したとおりにクヴァッチの地と人々の安全を守ることを誓った。彼は即座にクヴァッチの臨時指揮官の地位に就いた。

ヴァレンと第二軍団の大多数がゴールドコーストから出発すると、アンヴィルの帝国長官とアンヴィル伯爵エフレム・ベニルスは、沿岸の街の奥地に配置していた帝国軍を送り込み、ヴァレン・アクィラリオスの所有地と財産を略奪しようとした。カロラスは、ヴァレンに託された第二軍団の歩兵隊一部隊と、街の守り手として有名なクヴァッチの番人を集めた。クヴァッチの守り手は街の下にある平原で帝国軍と交戦した。戦いは短く激しいものであり、数を大幅に減らされたアンヴィル軍が来た方向へ退却する形で終わった。クヴァッチの狼が帝国のドラゴンによる攻撃を撃退したのだった。

その年が終わる前に、アンヴィルは数を減らした帝国軍をクヴァッチに対して三度送ったが、その度に敗れて人数を減らした。その後、ヴァレン・アクィラリオスがルビーの玉座に就いたという話が伝わってきた。その勇敢さと指導力からクヴァッチの狼と呼ばれていたカロラスは、正式にクヴァッチ伯爵という称号を継ぎ、狼の頭のシンボルを使うようになった。

しかし残念ながら、クヴァッチの幸運は長続きしなかった。カロラスが正式にクヴァッチ伯爵になると間もなく、クヴァッチ大司教であるアルトリウス・ポンティカスは伯爵の権威を衰えさせ、自分の権力と影響力を高めようと動き始めたのだ。常に野心的で自分自身もシロディールにおける宗教的な権力を握っていた大司教は、渋々ながらヴァレンと礼儀にかなった関係を持ち、カロラスがクヴァッチの安全を守ろうとする間は自身の野心を忘れなくてはいけなかった。しかし首都における体制が変わったことで、どうやら大司教は街の支配体制においてより有力な地位を求めたようだ。ただし、この問題が表に出る前に、アンヴィルではある重要な事件が起きた。

しかし、それはまた別の本にて記す。

狼と海賊女王The Wolf and the Pirate Queen

グウィリム大学歴史学者、ミダラ・サルヴィティカス 著

クヴァッチの狼、カロラス・アクィラリオスの活躍のおかげで、海賊女王フォーチュナタ船長が港に航行してきた時には、アンヴィルの守りはほとんど存在しない状態だった。港街に配属された帝国兵士たちが幾度となくクヴァッチの侵略を試みた結果、アンヴィルの兵舎は狼を相手にした敗北続きでほぼ空になっていた。フォーチュナタ船長に忠実な海賊たちはすぐさま街を乗っ取り、彼女は自ら地方総督の地位に就いた。

それで収まっただろう、とカロラス伯爵は見ていたが、海賊女王は次の行動に出ることにした。彼女はゴールドコーストが独立し、シロディールと帝国から解放されて独立した国になったと宣言した。クヴァッチが新しい体制の一部としてアンヴィルに加わるよう彼女が要請すると、伯爵はそれを拒否し、皇帝ヴァレンに忠誠を誓い続けることを望んだ。当時は勝利に確信が持てなかったフォーチュナタは強要しなかった。しかし伯爵による支持の欠如を忘れはしなかった。ソウルバーストが起きてヴァレンが消えた時、彼女は突然孤立したクヴァッチの状況を利用し、より強い態度で要求を迫った。

アンヴィルはクヴァッチに対し、外交と不正な手段の両方でゴールドコーストへ加わるよう強要を始めた。略奪者と山賊団がクヴァッチ周囲の黄金街道沿いに現れ始め、交易を妨害し、旅人を襲った。クヴァッチの精鋭である番人たちが山賊に対処するために派遣されたが、その度に山賊たちはストリッド川へ逃げ延びることができた。そして人数を増やして戻ってくると、攻撃を拡大して遠くの農場まで襲撃し、怖がった避難民は街の保護を求めた。

こうした侵略にもかかわらず、カロラスの忠誠は揺るがず、海賊女王と交渉することを拒否した。激怒したフォーチュナタは、クヴァッチが正式にゴールドコーストに併合されることを発表した。彼女は街を乗っ取るためにアンヴィルの衛兵を派遣した。クヴァッチの伯爵は壁に番人を配置し、侵略者に対抗するために歩兵隊を派遣して対処した。両勢力は宿屋〈ゴットショウ〉近くの黄金街道で対面した。統制が行き届き高度に訓練された歩兵隊は、アンヴィルの寄せ集めの衛兵を粉砕したが、状況は見た目どおりではなかった。それは罠だったのだ。隠れていた海賊の集団がなだれ込み、歩兵隊を取り囲んだ。海賊たちはボロボロの服装で統制も取れていなかったが、その数では兵士たちの6倍と圧倒していた。歩兵隊は壊滅し、それはゴットショウの大虐殺として知られるようになった。

カロラス・アクィラリオスに選択肢は残っていなかった。歩兵隊の助けがなくては、ゴールドコーストへの忠誠を誓うしかなかった。海賊女王とアカトシュ大司教の2人に挟まれる形になった伯爵は、誓いを守ってクヴァッチの街と人々を守ろうと全力を尽くしながらも、自分の力の無さに憤っていた。

腕利き求むA Call to the Worthy

緊急の要件。非常に危険。報酬は弾む。命の危険がある仕事。特別に実力のある冒険者のみ募集。

詳細を知りたい者は、クヴァッチの宿屋でレマン・メヴァヴィウスというインペリアルを探すこと。

クロックワークの記憶

Clockwork Mnemonix

アイアンストークキノコの保存と殺菌Ironstalk Mushroom Preservation and Sterilization

安酒をがぶ飲みして、頭が働かなくなった。菌類と、自分の儲けを守るための手順は全部ここに書いてある。フリン一口だけじゃ話す気はないが、真鍮要塞での商売に大きな影響を与えていても、奇跡を起こせるわけじゃない。何があっても、酔っ払っている時には決して、絶対にこの作業をしない、それを忘れないためにメモする。

—ただの濃い塩水から始める。塩水5に対して、腐食性のあるファブリカントの唾液を加える。そうすると、キノコが吸収したミネラルを破損することなく弱められる。

—キノコが柔らかくなったら、潤滑油を入れた器の中で、頭から下に向かって傘の部分に小さい切り込みを入れる。油を混ぜ、胞子が排出されるまで強く揺する。

—新しい油を入れた器に移して、胞子の大部分がなくなるまで作業を繰り返す。

—キノコを塩水に戻す。油と腐食性の唾液の混合物から出る蒸気を吸い込まないこと。

—合金の大釜に入れて封をし、2日間煮込むと、残った胞子の活動が停止する。これは最も大事な手順だ!ホール・オブ・レギュレーションの外に胞子が根付いてしまうくらいなら、全部台無しにしてしまう方がましだ。

—大釜を火から下ろし、封をしたまま、少なくとも1週間は寝かせる。

1週間以上寝かせたとしても、キノコが変化するわけではない。だが製造時期をつけておくと、古い在庫に高い値段をつけさせる交渉にはとても役立つ。

アルテウムの謎The Mystery of Artaeum

女王代行への報告
宮廷顧問、ペネウェン 著

アイレン女王陛下の代行者殿

長く予期されぬ不在からサイジック会のメンバーが世界に帰還したという噂を追い続けている。有力なサイジック会のモンク、ハイエルフのリラサがソーサ・シルのクロックワーク・シティの帰還について、勇者に連絡を取ろうとしたことは確かなようだ。再び現れた理由と、それがアルテウムの帰還も同時に意味するのかどうかについては、調査を続けている。軍部の指導者は、この件について懸念を表明した。複数の宗教学者も懸念を表明している。(本当に戻ったとするなら)アルテウムの帰還が良い前兆なのか悪しき前触れなのか、真っ二つに意見が別れている。

過去の記録から、島について以下のような事実を発見した。のどかな果樹園、広々とした牧草地、霧深い森林が島の多くを占め、穏やかで静かな湖も複数存在する。サマーセット南西の海岸先にアルテウムが確認できた最後の時期は500年以上前で、その時の目撃情報によれば、ある変わった建造物が建っていて、周囲の田園に自然と溶け込んでいたそうだ。セポラ塔は島に建っていたと思われる。このハイエルフの時代以前からある遺物は、謎めいたサイジック会の本部であり、夢見る洞窟の入口を守っていた。伝説によれば、ソーサ・シルもオブリビオンへの移動手段として洞窟を使っていたらしい。記録を見ると、アルテウムは350年前にタムリエルから消息を断っていた。

サイジック会は魔法を使う修道士の集団で、魔術師ギルドよりも歴史が古い。灰色のマントを着た構成員たちは、かつて霊的、魔法的な問題についてタムリエルの支配者に助言を与えていた。アルテウムが戻ったことで、サイジック会がまた政治に関わるようになるのかどうかはまだ判断できない。長命だった儀式を統べるイアケシスが、今も指導者なのかどうかもまだ分からない。サイジック会の代表者に会いたいという多くの申し出が却下されたからだ。

サイジック会に関して、さらに情報がある。

サイジックのモンクは「古き習わし」に従っている。神秘主義、十一の力、聖なる法によって、実在の本質が哲学と生き方に集約されている。彼らは「アース・ボーンズ」とも呼ばれ、タムリエルを歩いていたエドラの子孫、人類とエルフの始祖とも言われるエルノフェイについて深く理解していたと言われている。サイジック会が使用していた儀式魔法の多くはその理解を利用しており、おそらくそれによって時間と天候の影響から守られたのだろう。往時の彼らは卓越した予知者であり、時間と空間を超えた遠い出来事を知ることができ、他の魔法使いよりも通信の能力に優れていたとも言われている。

サマーセットとアルドメリ・ドミニオンにとってこれが何を意味するのか、それはまだ不明だ。サイジック会の力を味方にする必要があるかもしれないが、今のところ対話を始めようとするこちらの努力をすべて拒絶している。ソーサ・シルのクロックワーク・シティがあるモロウウィンドの密偵からも報告が届いている。彼はサイジック会とアルテウムとの深い関係が記録されており、私もサイジック会とクロックワーク・シティが開かれたことの関連を偵察するため、ダークエルフの地に向かうべきかもしれない。何か重大なことが、定命の者の手が届かない高みで起きている可能性がある。

できるだけ早く戻るつもりだ。

顧問、ペネウェン

アルド・ソーサの概略史A Brief History of Ald Sotha

ソーサ・シルの使徒、ヴァリンシ・アランドゥ 著

ソーサ・シルへの信仰とは、歯車が回る音を聞き、現在や過去の形ではなく、何にもなれる無限の可能性を考えることだ。私はそれを理解しているが、そのためには過去の真実も知らねばならない。謎の父への献身は揺らいだことはなく、バネ仕掛けと言われたこともある。だが、長い間未完成だ。質問を始めたが、知る者が少ないことに驚いた。我が主がどこから来たのか?私は名を与えられたが、答えはまだだ。

アルド・ソーサ。

答えはすぐに見つかった。慎重な他者の言葉ではなく、誠実な本の中にあった。最初の発見は、私が見つける情報はすべてアルド・ソーサのものだろうということだ。街はずっと昔に破壊されたからだ。かつては小さなソーサ家の故郷だった。どんな理由であれ、我が主の名に「小さな」と添えるとは、何とも奇妙な気分だ!だが調査によれば、そう結論づける他にない。これといった偉業も、特別な技術もなかった。取るに足らない一族が所有する、取るに足らない街。だが、謎の父が生まれた場所であることに疑いはない。

アルド・ソーサはデイドラ公メエルーンズ・デイゴンによって、第一紀に破壊された。なぜ破壊のデイドラ公がこの街を破壊しようとしたのかは不明で、判明させる必要もないと考える。混沌の裏にある情報をつなぎ合わせる理由があるだろうか?結果は同じことになる。アルド・ソーサと共に生きた全ての者の死が、結果として残った。そう、全て。ただしセト卿だけは、ヴィベク卿によって救出された。2人が真に神となる前のことだ。

しかし、ヴィベク卿による救出は、もっと深く調べる価値がある。セト卿はいかに攻撃を生き延びたのか?戦いに関する記述はなく、私の分析によればデイゴンの破壊の後にセト卿は救出されたことが推測できる。それ以外の推論は導き出せなかった。トリビュナルが他の者たちに知らせたいなら、この物語を共有するだろう。私が彼らの袖を引っ張って、そんな些細なことを質問するだろうか。そんな訳がない!

改めて言うが、最後の結果は同じだ。セト卿は救出され、ヴィベク卿に育てられ、やがて彼のあるべき姿、クロックワークの神の座に登りつめた。デイゴンの激怒をどうやって逃れたにせよ、それが聖なる歯車の運命だったのだ。彼が生きるように我々を動かし、失われた遺産、最後のタムリエルを取り戻す導きとなる。

ヴィベク、戦詩人Vivec, The Warrior-Poet

ヴィベク、戦詩人

刃と竪琴。真実の子供、嘘。韻と暗喩。彼がニルンの道を長く歩き続けんことを。彼が求めるものを長く求め続けんことを。

ガスコーンの覚え書きGascone’s Memorandum

使徒の同志へ

最近、非常に重要な問題に気づいた。早急に処理しなくてはならない。わずかな間不在にするが、混乱を生む可能性があって申し訳なく思う。緊急事態が起きたら、助手に伝えてくれ。

何も心配いらない。大丈夫だ。持ち場の仕事を続けてほしい。

信仰の同志
-G

カラス観測のメモNotes on Crow Sightings

今日は、いつもより多く頭に落とされた。奴らの狙いは、どんどん正確になってくる。私を標的か何かだと思って付きまとってくる。道で追いかけてきて、嫌がらせをする。いつでも見て、聞いている。

部下には、あの小さい怪物がいる時には口を閉じ、用心深く話せと言ってきた。侍者の間では笑い話の種になっているが、鳥たちには本気で警戒してほしいものだ。この仕事には、言葉を話す鳥よりももっと危険な何かがある。

クロックワーク・シティの水循環The Water Cycle of Clockwork City

ソーサ・シルの使徒、ヴァリンシ・アランドゥ 著

使徒は外の世界を知らない訳ではないが、大概無視してきた。頻繁に崩壊し、一貫性のない形で粉々になる歴史や文化について、我々は何を知っておくべきだろうか?ダークエルフの名家、ブレトンの王、オークの族長。彼らのささいな争いや心配を学ぶことが、我々が時の意思に近づくために役立つのだろうか

役立つことがあるとすれば、おそらく共生を余儀なくされている他のニルンの環境だろう。変わり続けている人間とエルフの影響を除いて考えれば、残されるのは原初の神が築いてきた一貫性だ。日光の力で、緑は育つ。天気と温度は、風の影響で変わる。そして生命の拠り所である水は、終わりなき循環で回っている。

全ての者が頼りにしている水の循環に関しては、分からないことも多い。水は日光に暖められ、蒸気に変わる。蒸気は空に浮かび、雲に変わる。雲が大きく成長すると、内包した水をもう一度地表に戻す。それがずっと続いていく。永遠の車輪のように。

クロックワーク・シティを自然に巡っている水は、一般的に「セトの血」として知られ、革新的アイデアであふれている。悪い側面もあって、だから住民は絶対に飲めない。しかし彼は全てに英知を持ち、このことに関しても計画を持っている。

我々の家は、聖なるメトロノームの形をしている。全ての真実を知るセト卿の意志によるものだ。しかし彼は、この終わりのない循環の美しさを理解している。だから自らを信じる者に、ホール・オブ・レギュレーションの中で水の恵み、命の恵みを与えた。そこでは全てが完全にシンクロしている。

全ての水はホール・オブ・レギュレーションに流れる。そこでまず、細かいメッシュで沈殿物が除かれる。次に蒸留起動装置に送られ、魔法の力でさらに細かい汚染物質が除去される。魔法の力を使わないと、クロックワークの住民が使う水には多くの汚染物質が残ったままになるだろう。

浄化された水は、その後に貯水池か蒸気連結管に送られる。貯水池には真鍮要塞に送られた水がすべて保持され、飲料、入浴、清掃に使用される。しかし、蒸気連結管も同じように重要だ。有機物が育つために必要な湿気を産み出すからだ。蒸気連結管がなければ、我々が吸う空気は危険なものになる。

さあ、セト卿が作り上げた輝きを、完璧な最も重要な循環を称えよう。規定され、最も完璧で不変な循環だ。

クロックワーク・シティの領域:ラディアスRealms of the Clockwork City: The Radius

ヴァルーニ・アーヴェル参事 著

セト卿の高貴で神々しい創造は、謎の父の単なる安息地を遥かに超えるものだ。彼の献身的な使徒の中で最も熱心な者によって発見され研究されるべき、無数の安全な部屋、工場、研究所、実験用の物体を収容したテラリウムに満ちている。

この一連の書物で、私はクロックワーク・シティにある、より知られているセト卿の小規模な領域について手短に説明する。完全なリストでは全くない。街の幅広さを考えれば、見たところ有限なスペースが実際には無限にあるようだ。

真鍮要塞の居住者にとって最もなじみ深いのは「ラディアス」と呼ばれる領域だ。この長く伸びた人口の荒野は、要塞の壁の外からクロックワーク・シティの外縁まで広がっている。そこには人工の生態系があり、タムリエルの住民にとってできる限り親しみが持て、心地良いように作られているとセト卿は見なしている。

第一に、金属製の土壌から発芽するファブリカントの植物相に注目すべきだ。その樹皮と葉は光を完全に反射する。クロックワーク・シティ内でほとんど育っていないのは確かで、源泉のように特化された事業や、行商人や偶然の訪問者によって一時的に持ち込まれた菌類などに限られている。故に、ラディアスで遭遇する生物の多くが肉食であることは必然だ。タムリエルで相当するものの形と機能を模倣するように設計されたファブリカントの獣は実際に生きていて、肉体と金属が混合されて構成されている。賢明な使徒は最も凶暴で巨大な生物を避ける。彼らは魂石の主要な材料を供給するもの以外にも、栄養を必要とするからだ。

第二に、ラディアスの低地と小渓谷に溜まっている、キラキラと光る潤滑油の蓄積に注目すべきだ。この懸濁液はファブリカントや使徒の体液と分泌物と同様の機械油と、地表の下にある無数の工場によって作り出された大量の物質との混合物だ。この潤滑油はラディアス中の盆地で湧き出て、集められ、自動洗浄施設に引き込まれ、必要な環境に配布する機器に戻される。ラディアスの潤滑油はほとんどマイア・メカニカで集まる。恐らくセト卿がタムリエルの沼地に類似させたものだろう。

第三に、ラディアスにはクロックワーク・シティに数多くある、天候を制御し水を処理する施設がある。これに近接していることで激しい暑さや寒さも感じず、十分に摂取できるきれいな水を確保できる。それでもなお、ファブリカント、人、エルフのバランスは非常に難しく、真鍮要塞は人口と必要摂取量の注意深い検討を必要とする。

もちろん、ラディアスはクロックワーク・シティの領域の一つに過ぎない。次の巻では、謎の父によって行われた希少な実験に触れ、同時に彼らの存在理由についても推測する。

クロックワークのファブリケート動物相The Fabricated Fauna of Clockwork

自然学者エンディラリル 著

ああ、タムリエルを形作る緑豊かな自然と多様な野生動物を、どれほど焦がれたことか。なぜもっと前に感謝しなかったのだろう?オーリドンの緑の大地、ヴァレンウッドの深い森に。頂上が雪で覆われた、スカイリムの雄大な山々。ブラック・マーシュの危険な美しさ。この不毛の荒れ地に囲まれた真鍮の街に流れ着くまで、全て見逃していたとは。

ずっと長いこと考えていた。私の天命は、機械や人間の研究ではなく、取り巻く動物の研究なのだ。初めてクロックワーク・シティに来た私は落胆していた。自然学者として尊敬を受けていたキャリアが終わってしまったと考えていた。だが、しっかりと観察しただけで、やがて私は新しい研究対象の種族を発見した。肉や腱でなく、機械と装置でできた種族だ。

この街で発見した、もっと忘れがたい「動物」の種族についてのリストを作成した。「動物」と呼ぶのは大胆すぎるかもしれないが。彼らの外観は、相当する自然物の擬態であることは明らかで、奇妙なことに行動も似ている。いったい創造主はどんな考えだったのか、見当もつかない。彼らの役割は限られたものだが、この荒れた地に生命を吹き込んでいる。

ブラシリスク

ブラシリスクは相互に接続された正方形の真鍮で構成され、外側にある銅のワイヤーでヘビのような動きが可能になっている。ペットとして人気で、若い学者の後を急ぎ足で追いかける姿を見かけることも多い。より可愛く最も貴重な種類は、セプ・アダーの皮の翼を擬態している。この動物は様々な色があり、行動は攻撃的だが、攻撃することはない。

スキーヴァトン

推測は好まないが、この動物の起源に関する噂は興味深い。スキーヴァトンは銅のマウスの形をしている。足はなく、中央に格納されたボールを回転させて移動する。隅から隅までこのような機械であふれている街に、これ以上ありふれたものはない。伝説によれば、スキーヴァトンは仲間の学者たちを監視する目的で作られたらしい。今度狭い路地から見つめるマウスの視線を感じたら、そのことを思い出してほしい。

セトのドヴァー・フライ

汚れた街の空気の中を飛んでいくこの機械仕掛けの昆虫は、不幸な恋人たちの合作だと考えられていた。噂話は好きでないことを改めて確認しておくが、この物語は確かに感情へと訴えかけるものがある。2人の見習い学者が恋に落ち、しかし二度と会うことを禁じられてしまった。お互いの師が長い間いがみ合ってきたからだ。セトのドヴァー・フライは2人が連絡を取り合うためのメッセンジャーとして開発された。弟子たちのエレガントな創作物に感動し、師匠たちは自分たちの争いを忘れ、2人が共に未来への計画に携わることを許したそうだ。美しい物語だ。真実かどうかは別にして。

クロックワークの使徒による詩集Clockwork Apostle Poetry Collective

読師トリヴラ提唱

我々の年若い使徒たちの学問的完全性を強化するために進行中の実験として、「創造的思考」という抽象概念の新コンセプトが終了した。全ての算出可能な結果は引き続き結論に至っておらず、6週間の試験を経たこのプロジェクトは失敗だったと見なされている。これはこの構想の結果として得られた詩の選集で、将来の分析のために集められたものである。

* * *
ファクトタムへの頌歌

光るユニットの真鍮のボディ
それにより動作する機能
全てが完璧な規則に設定
いつも皆が喜ばしい状況

道をきれいにして品を売買
登録や死を管理する
食事を作って銀行を運営
全ての機能が頭にある!

しかしどこで作られた
全てを知るセト卿が作ったか?
なぜ我らは部屋に入れない?
彼が鍵をかけて忘れたか?

しかし使徒は真実を知る
沈黙が恐れを知らぬ心を生む
謎は解かれるために作られる
私が種の謎を解き明かす!

* * *

間違った数字

2週間もあれば
市場価格は上昇する
どこへ行くかは分かってる
もっとも頑丈な物資を探す

頭は数字でいっぱい
だけどそれは間違っている
それは値段、人、売上
間違っていると分かってる

数字について考えるべきだ
秩序と連なりについて語る
しかし長く留まることを拒む
ただ私を緊張させる!

私は使徒になりたい
家族が誇りに思う
だけどこの間違った数字が
私に許された全てだ

* * *

ずぶぬれのベッド

ずぶぬれのベッドに黴臭いシーツ
その臭いは黴と油
姉妹は夜に咳を続ける
助けられない、私は役立たず
私はいつだってただの役立たず

いつか私の手に魔法が集まる
温かく明るく、希望にあふれてる
そして機械を毎日学ぶ
コグと歯車と部品
熱心に秘密を学ぶ

私はついに分かった、私はついに自由だ
私は上の世界へ行く
学び、聞き、言われたとおりにやる
新しい人生の新しい名前
目の前の道を歩く

囁きがついてくる、でも耳を貸さない
私は子供時代の家で強くなった
戻らない事はわがままだと分かってる
だけど記憶はいつまでも残る、ずぶぬれのベッド
楽にできない、止まらない咳

〈メモ:この選集の最後の詩は詩に課される必要な韻のパターンに従っていない。それでも、その自由な表現の作成と創造的プロセスのため、指定された条件の範囲に含めても問題がないと判断された〉

クロックワークの使徒の説得Inveigling the Clockwork Apostles

役に立つ市民 著

ラディアスから真鍮要塞に入ると、クロックワークの使徒に関わることになる。いいか、もし彼らが味方じゃなかったらどうなる?君は終わりだ。とはいえ、彼らを本当に理解するのは難しい。使徒は先人たちの栄光、あるいは戦いのスリルを求めていない。戦争、飢饉、疫病を思って苦しんでいる訳ではない。実際、苦しむことはあまりない。ファクトタムに何でもやらせる。例外はトイレの後くらいだ。いや、先へ進もう。彼らが何を気にしているか、そこから始めよう。

ソーサ・シルは使徒にとって神であるだけでなく、一種の師でもある。お互いの関係は、教えに飢えた生徒と、冷ややかな先生だ。使徒はいつでも自分が関わっていることを師に認めてもらいたがっているが、認めて貰ったことはないはずだ。謎の神は、いつでも自己中心的だ。

使徒は全員同じ目標を目指している。彼らは後のニルンと呼ぶ。あるいは最後のタムリエル、もしくは2つ目のニルン、呼び名はあれこれだ。退屈な詳細に興味があるなら、ソーサ・シルの説話集を読むといい。何度か読めば、本当に理解できるだろう。ただし、本当に興味があれば。彼らはこの世界がそれほど好きではなく、世界を改善しようとしている。どうにかして。私が知っているのはそれだけだ。

世界を改善するなら、基本的には寛大な行為であり、少なくとも基本的な思いやりに基づくと思うだろう。今回に関して、それは間違いだ。いいか、完璧なニルンとは飢えた人に食料を与え、病人を保護することを含まない。実際には、機械を山ほど作ることだ。どういうわけか。

だから使徒の善に触れるには、神のみぞ知る彼らの実験に手を貸さねばならない。つまり、魔法、機械、あるいは両方の技術を披露することだ。もしそういう技術を持っていないなら、他の機会によく話を聞いておくべきだ。クロックワークの使徒は頼み事をしないほどお高くない。特に、自分たちより下だと思う相手には。もちろん、簡単なことや楽なことを頼むとは限らないが、申し出があったら逃さないことをお勧めする。

クロックワークの未知の潜在能力The Unseen Potential of Clockwork

ソーサ・シルの使徒、読師サエローン・テナー 著

人間でもエルフでも、ドングリを見ればそれが何なのかは分かる。単純にその形、大きさ、色を見分けられる。謙虚に、葉と土の中に投げ捨てられている。どんな子供でも、そのことを知っている。確かに、単純な知識があれば、子供はドングリがいずれ何になるかを簡単に想像できる。その可能性も知っている。ドングリはいずれ木になる。それを知らない者などいるだろうか?

しかし、想像してほしい。もし一度も木を見たことがなかったら。描写を聞いたことも、絵を見たこともなく、木について聞いたことがなく、普通のドングリを見たとしよう。目立たず、小さく、そもそも使い道がない。できる限りの観察をした結果、目の前に出されたドングリと巨大な樫の姿は繋がらない。

ドングリと同じように、クロックワーク・シティの大きな可能性は、呼応しない意識に分からない。上のニルンには建物と道がただ縮められ、小さな空間に詰められた小さな世界に見える。最も忠実な信者たちと危険な実験を含んだ、神の玩具かもしれない。だが、こう考える者の視界は、単に可能性を知らないだけだ。

クロックワーク・シティは後のニルンの車軸であり、世界を形作るあまねく車軸だ。とても美しく、壮大な恐怖で輝いている。聖典にはそう記されている。ニルンの現実と一致するかもしれないが、「ロルカーンの大いなる嘘」から生まれた不完全さはさておき、実際の現実とは違う。

聖なるメトロノームの元で働く我々の手は油で汚れ、我々の心は献身的だ。我々は溶接工で、隠された知識を追い求める。聖なるピストンの道を歩き、我々の魂は清潔で、油に濡れている。我々のクロックワーク・シティの真実は、最後のタムリエルのチクタクという音が聞こえる、永遠の車輪だ。

ドングリの先を見よう。未来の姿、強大な樫の樹を見よう。

シラーリのメモChirrhari’s Notes

注意:クロックワーク・シティの土壌との反応は、キノコ種固有の特徴を大きく変える可能性がある。ファブリカントを被験者にした詳細な実験なしにキノコを採取しないように。言われるように、どのキノコも食べられるが、一度しか食べられないものもある。

菌株 A-01-K:大きく、平らで、赤い傘。房の中に、白い茎が必ず一つある。被験者はサンプルを食べた後、平衡感覚を保てなくなった。歯車が3つ回った後、被験者は予測できない動きを見せた。平衡感覚も失っていた。このことで実験に少しの遅れが生じた。ファクトタムが近くにある装備で破損を修復したためだ。

菌株 B-01-T:中程度の大きさで、ふくらんだ傘は白く、血の赤の点がある。被験者はサンプルを早く食べ、次のサンプルに進んだ。ファクトタムは、被験者が全部食べてしまわないように急いで止めた。

菌株 C-02-K:大きく、白いさや。2~3房で育つ。2房で実験。被験者は、接種してすぐ病気になって死亡した。その後被験者に胞子のさやが生まれ、手に取ると燃えた。ファクトタムがすべての胞子を駆除するまで、ラボから退去した。注意点。3房で実験する前に、密閉作業をすること。

菌株 D-01-K:大きく、丸く、ベトベトした傘。黄と白のまだら。被験者は、サンプルを食べると激しく震え始めた。ファクトタムが温めようとしたが、失敗した。被験者は実験に使えなくなったため、処分した。

菌株 E-02-K:大きく/巨大な下向きの傘。色は灰。被験者は最初、完全に発達し切ったサンプルを食べようとして、結果的に歯を数本失い、下あごの拡張機能に小さな裂け目ができた。被験者がもっと成長していない小さいサンプルを食べるよう、ファクトタムが誘導した。茎にあるコブを食べたが、被験者は無事だった。注意点:成長した茎を使って、武器や防具を作るべきだ。

菌株 F-03-T:中程度の大きさで、波打った傘が段になっている。色はオレンジで、へりが白い。被験者は、すぐに胃の中のものを床に吐き出した。そのサンプルをイドロノに送り、分析を依頼した。注意点:ファクトタムには、床にある染みを無視するように改めて伝えること。彼らは衛生状態を保つことにこだわり過ぎている。

菌株 G-02-K:大きく、ボウル状の傘。白紫の茎に、小麦色とオレンジのまだら。被験者はサンプルをガツガツ食べ、摂取後の2日間は空腹になった様子を見せなかった。注意点:この種の栄養に関する影響を、さらに詳しく調べる実験をすること。栽培すれば、労働集約に役立つ。

スタディ・ハンドSteady Hands

ソーサ・シルの使徒、ドロロ・ギラヴロス 著

自分の手を見つめても、そこには欠陥しかない。しわの寄った弱いものだ。止まってほしい時には震え、夜が冷えてくると痛む。日常的な雑事で見習いを頼るようになった私は、母親のスカートにしがみつく赤ん坊よりも役立たずだ。自分で食事をするという簡単なことさえちゃんとできない。この止まらない震えには、すでに気づいていた。人間の、哀しいほどの不完全さが私にもやってきた。だが、真鍮要塞は革新の発信地であり、役立たずをもう一度復活させてくれるだろう。

メカニズムに新しい機能が必要な時、修正が加えられる。頭はまだ働くのに、時の流れのせいで私の手は震えるようになった。虚栄心のためではなく、腐敗を断ち切るためにやった。壊れた箇所をつなぎ合わせるためだ。事前の約束通り、処置に痛みはなく。効果もあった。要求された対価に見合うものだった。処置の後の数時間、寝たり起きたりを繰り返した。頭に力が戻ってきた。そして私は目覚めた。本当に目覚めたのだ。

輝く掌を見て、私は突然平穏を感じた。落ち着いて、穏やかで、強い風の一部に戻ったような気がした。荘厳なピストンの往復運動の一部に。この金属の延長は、私の魂の真実だった。真鍮の指は完璧な反応で動き、滑らかで優雅だ。元通りになったわけではない。これまでよりも、ずっと良くなったのだ。

私は真実、特異点を見出した。私は肉体と血を超越した。私の指は今や安定し、献身と同じくらい確かだ。自分の手を見つめると、そこには可能性がある。

セキュリティ調査Security Survey

ファクトタムに関する報告によれば、ラディアルの周囲で警戒コイルの誤作動が激しく増加している。真鍮要塞の洞窟ネットワークは、東西ともに現在、定期的なセキュリティ停止期間が発生している。

ファクトタムの損耗率も、調査期間中に急上昇している。アイオスの表によれば、17体がまだ行方不明だ。行方不明、動作不良、いずれの場合もすべてビーコンを回収せよ。影響のある全区域で、全面的な使徒の調査を推奨する。住民の苦境に関するレポート「A77645」と「X99876」を参照すること。いずれも関連する区域で「黒ローブ」姿の目撃談が記されている。

内部のセキュリティ評価は、83パーセントに減少した。

ソーサ・シルの記憶The Memories of Sotha Sil

ソーサ・シルの使徒、ヴァリンシ・アランドゥ 著

記憶はつかの間で、傷があり、はかない。感情や思い込みで、簡単に上書きされてしまう。こんなに規定がない出来事の記録は他に考えられない。だから私は、決して変わらないシークエンスプレートに思考を記す。だが、どんなに客観的であろうとしても必ず偏りは生まれ、言葉は多くのことを伝えるだけだ。普通の頭で記憶できるニュアンスや豊かさをプレートに刻んだことも、単純な人間の複雑さの前ではかすんでしまう。

セト卿には分かっている。結局、彼の心臓が永遠の車輪を回し、油を差し、調整している。私たちは知っている。ただの名前ではなく唯一の名前になるには、意識を磨き、調和させなくてはならない。どうすればそんなことが可能なのか?神でさえ感情の重さに苦しみ、論理的な考えから外れてしまう。

だが、この件に関してもクロックワークの神は賢かった。彼は自分の記憶に形を与え、物理的な形を取らせたのだ。星空を広げ、思考の銀河を作り上げた。羊皮紙にインクで書くよりも、言葉や囁きよりも明確で現実的。完全で完璧なもので、これができるのは彼の神性の強さ、光り輝く唯一無二の、全ての秩序の真実を知った意思の力だけが成せる技だ。

確かに記憶は傷つきやすいが、どれも大切なものだ。我々の英知と知識、つまり我々そのものを含んでいる。記憶を捨てることは贈り物を捨てることであり、セト卿もそれを分かっていた。だから彼は大切な意思を記録し、記憶のプラニスフィアで安全に保管した。永遠に沈黙する〈星詠み〉が見守っている。もう感情を含んでいない星たちが、空で揺れている。だが、今も繋がりはあり、知られている。

プラニスフィアの中は静かだが、囁きも聞こえない。低いハミングが、ホールの中で響いているようだ。過去の姿は失われたが、忘れられてはいない。もう一度、光を。

ソーサ・ナルSotha Nall

ソーサ・ナル

超越に値する魂。彼女の歌が全てのピストンの音と、全てのスプリングの溜息に聞こえますように。

テラリのメモTerari’s Notes

どうやら彼は、馴染みの場所をうろついているようだ。彼は私の最初の工房へ戻ってきた。出会った場所だ。今の絶望的な状態では、彼は認識できないだろう。たださまよい、叫んでいるだけだ。迷い、孤独で、痛みを感じている。ボリン、許して。

私は静かな時に、思い切って彼に近づいてみた。しかし、私の姿は彼を興奮させただけだった。彼は自分の身に何が起きたかを知りたがったが、不安から暴力性を増した。彼の体は恐ろしく強力になっていた。私は彼から逃げ出したが、さらに事態を悪化させただけだった。怒りで暴れる音が、渓谷の壁に響くのが聞こえた。

ここで眠るのは難しいことだ。かつては楽しい場所、楽しい我が家だったのに。今は破壊された廃墟だ。ここで笑い合ったのに、涙を流せない機械の泣く声が遠くから聞こえるだけだ。

どのくらいここにいるだろうか?あの哀れな壊れた魂を落ち着かせようと、何度試みただろうか?もう耐えられない。だが、当然の報いだ。

彼を殺そうとした。安息を得て欲しいだけだったが、できなかった。私が何をしても、彼に痛みを与えるだけだ。私は呪われているに違いない。

ドゥルザの記録Dulza’s Log

フェルズランの商人、ドゥルザ・グロー・モークル 著

後悔してることはたくさんあるけど、クランに代々伝わる剣を持って旅に出る決断ほど強く後悔していることはない。これが二度とグロー・モークル家の手によって振られることはないと分かって、自分自身の避けられない死よりも悲しい気持ちで一杯だ。まあ、今は生き延びるしかない。この呪われた金属の世界から、逃げ出すことは不可能なようだから。

本当に私は馬鹿だ。クラグローンへの旅は過去に行った仕事のいくつかに比べたら、簡単なことのように思えた。確かに奇妙で強力な魔術の地だと知っていたが、それで脅えて追い払われることなどなかったはずだ。金払いが良くて、取引が正当なら。

私をこの奇妙な荒れ地に吹き飛ばした嵐は、今までに見たことがないようなものだった。稲妻が奇妙な色に光って、雨が皮膚に熱く降り注いだ。周囲で詠唱が聞こえた。寒気がする、奇妙な言語だった。あの言葉は死ぬまで私につきまとうだろう。

ナリルのメモ:起源Naril’s Notes: Origins

ソーサ・シルは数学を操作し、クロックワーク・シティの谷間に設置した巨大な貯水池を呼び出すためにマジカを適用した。自分の機械的な奇跡の中に巨大なオアシスを作るため、大きな泉を熱い金属の土壌の下に封じ込めたのだ。彼はこれを〈巻かれ続ける源泉〉と呼び、使徒に壮大な計画の一部を話した。だがクロックワークの神は、他の挑戦や数知れぬ謎に気をそらされ、他のことに対処するため去って、二度と戻らなかった。やがて、使徒たちも去った。

私以外は。私はオアシスの計画を信じていた。それはクロックワーク・シティの最も重要な需要を満たすことを理解していた。そして私は独力で源泉に取り掛かり、やがて見習いも取るようになった。すぐに金属のクズからこの施設が生まれた。実験のおかげで、より深く、より大きな成果を出せた。最初の成功はコケと泥と菌類に囲まれていた。菌類は、水とわずかな肥料さえあれば暗い環境でも成長できる生物だ。この成功に助けられ、最も困難な報酬に目標を定めた。

我々の努力は、果実、植物、野菜を育て、クロックワーク・シティに暮らす住民の食事として提供することに変わった。

ナリルのメモ:初期の実験Naril’s Notes: Early Experiments

見習いガサルと見習いオートウェンは、侍者の中でも最も優秀で有望だ。ソーサ・シルさえ、源泉に関する彼らの仕事を見たら感心するだろう。菜園を拡大し、キノコや他の菌類に加えて、果実が茂る木、野菜が育つ作物を植え、花や植物が育つ区域も作った。設定した目標を達成するためには、錬金術の溶液が必要だ。そうすれば、クロックワーク・シティに足りない基本的な成分を得られる。

実験と失敗を繰り返す長い時期を経て、ついに錬金術の化合物の完璧な組み合せを発見した。ファクトタムの助けを得て、パイプと貯水タンクを作ることに成功した。これで、菜園と果樹園に水を引ける。錬金術を施した水から重要な栄養素を受け、最初の種子は完璧に発芽した。最も大きな、最も多い種類の収穫を迎える寸前、予期せぬことが起きた。

どれだけ手をかけても、実が茂る前に木や植物が枯れ、死んでしまった。〈巻かれ続ける源泉〉にとって、破滅の日だった。

ナリルのメモ:疑似太陽光Naril’s Note: Simulated Sunlight

ひどい問題が起きていると明らかにしたのは、一番お気に入りの弟子、見習いガサルだった。「クロックワークの太陽です」ガサルは断言した。「ニルンの空にある太陽とは違い、暖かさも、活力を与える力もありません」

ガサルがこの点を指摘してから、状況は明らかだった。クロックワークの太陽は光を放ち、昼と夜の循環を定期的に与えてくれるが、源泉の植物が育つ力を与えてはいなかった。植物が育つための光を自前で用意する必要があった。そう決めてから、ガサルと私はニルンの太陽の代用品になる装置の開発に取り掛かった。

ある程度の光を得ることには成功したが、その光に当て、外すためファクトタムに植物を動かさせる必要があった。このことでわずかな収穫を得ることに成功し、毎年の収穫と新しい見習いの審査を始めることができた。しかし光を当てる装置、そして実際の太陽の光と同じものを生み出せる動力が必要だった。かなり進展したが、解決にはまだまだ遠かった。

試作と失敗を繰り返し、十数回の実験の後に適切な照明装置を完璧に作成した。疑似太陽光の伝導体として透明な合金に出会った時、正しい過程を進んでいることを確信した。しかし、照明装置がどれほど成功しても、植物の死は止められなかった。もっと動力が必要だったが、クロックワーク・シティに適切な解決策は見つからなかった。大変な難問だった!

ナリルのメモ:悲劇からの成功Naril’s Note: Success Out of Tragedy

見習いガサルと私は、植物を育てられる疑似太陽光を作る過程で、壁にぶつかった。照明装置は完璧に稼働している。疑似太陽光インダクターに使用できる電源を使って産み出せるものよりも、明るく強い光を出す能力もある。もっと強い電源がないと、〈巻かれ続ける源泉〉は失敗してしまう。

* * *

数え切れぬほどの時間を試験と実験に費やした後、ガサルは疑いようのない結論にたどり着いた。我々の疑似太陽光インダクターが植物を育てるには、生命が必要だった。志願者から少量の生命エネルギーを抽出し、それを疑似太陽光の照明装置の動力にした結果、有益と思われる結果を発見した。このエネルギーで生まれる鮮明で明るい光は、これまで使ったどの動力よりも植物がより早く、よりしっかりと育った。その違いは、ほとんど奇跡的だった!だが借り物のエネルギーはすぐに尽き、作物全部が成長するのに必要な照明装置を稼働させるエネルギー量には、全く届かなかった。

かなり進展したが、本物の、持続可能な解決策にはまだまだ遠かった。

* * *

私が工房に戻ると、不安になる光景に出くわした。私が離れていた間に、ガサルは絶対に実施しないよう命じていた実験をしていた。自分自身をインダクターにつないでいたのだ。エネルギーを借りる際、どこまで借りても志願者が再生産可能か判明すれば、もっと生命エネルギーを借りられる。それが彼の主張だった。その正確な限界点が分かれば、照明装置のエネルギーが入手できる。だが、もし取りすぎれば、志願者は死んでしまう。

残念ながら、ガサルはエネルギー吸収装置の使用に熱心すぎた。彼の生命エネルギーが全部吸い出され、体には何も残っていなかった。我が見習い、我が弟子は死んでしまった。だが、哀しみに打ちひしがれるより先に、すごい発見に気がついた。これまでの数知れない試験と実験よりも、はるかに多くエネルギーが貯蔵されていた。ガサルは問題を解決したのだ!インダクターが季節の間、ずっと源泉を疑似太陽光で輝かせるために十分なエネルギーを得るには、対象の生命すべてが必要だった!

その時私は、ガサルの犠牲を無駄にしないと誓った。使徒たちが毎年新しい見習いを差し出すことに同意する限り、収穫の配給が続くことを宣言した。その見習いはインダクターにエネルギーを与え、生命エネルギーが生み出した疑似太陽光は、住民たちの食事に十分な、大量の収穫を与えてくれるだろう。

完璧な解決策だった。知識と引き換えの代償が、とても高くついたとしても。

バリルザーの日記Barilzar’s Journal

クロックワーク・シティにおける研究の記録
ソーサ・シルの弟子、バリルザー 著

私がソーサ・シルにクロックワークの使徒および見習い魔術師として選ばれ、クロックワーク・シティに足を踏み入れてからサイクルタイムキーパーは14周回り、今日歯車が26回目の動きを迎えた。この場所は私を畏敬の念と驚嘆で満たし続けている。ひょっとしたら、初めて小さなドーム型の複合施設に足を踏み入れたときよりも度合いが増しているかも知れない。最初はこの街に入った際に伴う、圧倒的な恐怖を振り払えなかった。私は縮小する過程にひどく恐怖を覚え、自分自身が極小版にされると考えると、移行が行われる前の数日間は悪夢にうなされた。そして起こると、認めるのは少々気恥ずかしいが、縮小の感覚が必ずしも考えと一致するものではなかった。思えば、直前にあんな大量の朝食を取るべきではなかった。だが、ウィックウィートのトーストに乗ったスクリブのゼリーがとてもいい匂いだったのだ!

* * *
クロックワーク・シティで働くには、慣れなければならないことが沢山ある!まず、全てが金属でできていることだ。たとえその姿形が、完全に異なる物質から成っていると考えられるように眼を欺いたとしても。次に、紙ではなくシークエンスプレートを利用して、メモを刻み記録を保持することだ。この場所の美学に大変よく調和している。3番目に、この小さく閉じられた社会で発展した隠語は、定着し始めたときに居なかったらほとんど理解不可能なものだったことだ。クロックワークの機械に関するほのめかしや暗喩は会話の中に満ちていて、いる。ユーモアの中にさえ入り込んでいる。お粗末なものではあるが。誰が最も完璧な歯車が回る文を組み立てられるか、お互いに相手を出し抜こうとしているように感じられる時さえある。だが、クロックワークの使徒同士で競い合うなど、誰が想像できただろうか?まあ、あのアルバクロンは別だ。彼はネッチの尻の穴だ。

* * *
今日、セト卿が私に類まれなる一連の実験の補助を依頼してきた。彼はそれを「崇高なるエニグマの九分析」と呼んでいる。私は今でも自分の歯車を彼の神のような思考と一致させようとしているが、その実験はソーサ・シルの聖なる力の限界を試すように作られていると思われた。彼は実験全体の概要を説明したが、今日は最初の実験を行っただけだった。魅惑的だった。たとえ目撃したものの半分以上が私に理解できなかったとしても。ひょっとしたら、残り8回の実験を進めるにつれ、もっと理解できるようになるのかもしれない。爆発的な変化が起こることを期待している。爆発は大好きだ!

* * *
セト卿は最も興味深く、実用的な道具を開発する。保管と研究のため、彼自身の聖なるエネルギーのごく細かいものを流出させる道具を必要としたとき、彼は自分で厳密な仕様書に従って作り上げたのだ。彼がオブリビオンの別の「場所」との正確な距離を測るための器具を欲したときは、それも作った。我々の周囲の環境を記録し、分析するための機器はどうだろうか?彼はこれを「知覚タビュレーター」と呼んでいる。いつの日か彼が退屈しているとき、または別の仕事をしているときに寄せ集めで作った奇妙な機械装置の半分でも役に立つ機器を考案し、作れたらいいと願っている。彼は究極のマルチタスク処理者だ!

* * *
クロックワーク・シティで過ごす時間が長くなればなるほど、ここを驚異と奇跡として高く評価するようになってくる!真鍮のトンネル、ガラスのドーム、金属メッキ、巨大歯車。私は潜在能力をようやく理解し始めてきた。私はこの建設の拡大と安定に尽力する、使徒の1人なのだ!街が栄養源として供給する味のないペースト以外、この場所は完璧に近い。この奇跡的な発明品を設計し、建設するために何が必要とされるのかを研究し、たとえ3分の1でも理解するには100回の人生が必要だろうと気づいて悲しくなる。私が全力を注いでいるこの仕事を続けるために、寿命を延ばせないだろうか?いずれ研究するべきテーマだ。

* * *
修練者ケルがファクトタムの性格シークエンスにユーモアのセンスを付け加えようとした。結果は予想どおり。彼女の気まぐれなアルゴリズムで改良しようとした3体のファクトタムのうち1体は爆発し、1体はラディアスに駆け込んでそれ以来見かけず、そして3体目は隅に佇んで独り言を言っている。その言葉は低い声で、理解するのは難しいが、私は確かにその哀れな機械が何度も繰り返し「もしもし」と言っているのを聞いた。

別れを告げ、もっと広い世界で自分の場所を見つける時が来たのかもしれない。

ファクトタムの実験助手求む!Assistance Needed for Factotum Experiment!

クロックワークの使徒の見習いザノンから、とても緊急のお願いがある。健康な助手を求む。希望する参加者は、欠落した部品を発見する任務についてもらう。ファクトタムの作成も含まれている。志願者は、反応炉地区にある見習いザノンの工房に連絡すること。任務を完了すれば、報奨金が支払われる。

ファクトタムの謎The Mystery of Factotums

クロックワークの使徒、見習いザノン 著

クロックワークの使徒の間に、ファクトタムの領域における学問的な興味が存在しないことについて熟考しなければならない。これほどまでに我々の生活の一部となっている機械だというのに、顧みる者がほとんどいないからだ。そのことに焦点をあてた講義はほとんどなく、本もほとんど書かれていない。我々の毎日の作業にとって非常に重要な機械は、なぜこのように黙殺されているのだろうか?

ファクトタムは必要に迫られた発明だ。真鍮の召使いはセト卿によって、彼の偉大な創造物であるクロックワーク・シティを維持するために作られた。修理ファクトタムは工場や機能を稼動させ続けてくれる。衛兵ファクトタムは我らが神の最も危険な秘密の場所を守ってくれる。彼らの金属の手によって家は清潔に保たれ、食べ物が供され、街に音楽が流されている。だが、こんなにも近くで働いているファクトタムについて、我々はどこまで分かっているだろうか?

答えはファクトタムの謎の特性の中にある。我々の教義が謎、謎の重要性、その傑出した点について語っているにも関わらず、彼らは未だに我々が解き明かそうとしている何かなのだ。何度も繰り返し再現できる製法、理論、回答。クロックワークの使徒は研究の分野でそれを追い求める。であれば何故、誰も発見していないものを革新しようとしないのか?

分かっているのは、ファクトタムが共通した姿、声、目的意識を持っていることだ。彼らには構造化された知能があり、時にそれは単一の機能に集中している。対話と行動は全てこの機能に基づいていて、クロックワーク神への信仰心だけを共通した特徴にしている。この目標から逸脱させようという試みは、彼らには全く理解できない。

ファクトタムに対する詳細な研究は絶えず反対されている。創造する場所は厳重に守られている。自分自身について与えられる情報量について、機能は厳しく限定されている。どんな魔法、あるいは機械が創造に入り込んでいるのか、我々には分からない。そして、だからこそ彼らに対するさらなる研究が必要なのだ!

恐らく最も不可解な、セト卿の創造の秘密について掘り下げたい。研究の焦点は構造、機能、この外見的には単純な機械の真の目的に置かれる。クロックワーク・シティの全てにおける、恐らくは最大の謎がどのようなものか、私は必ず知識を獲得するつもりだ。

ファクトタムの秘密の声The Factotum’s Secret Voice

クロックワークの使徒、読師ティドラス・ドラン 著

この知識と冒涜的な問いの聖地にあってさえ、いくつかの主題は依然として禁忌のままだ。私はクロックワークの使徒として、長い年月をその境界に立ち向かって過ごしてきた。我々の教団が真にその信条、制限なき問いを実践する姿を見ようと必死だった。ほとんどの場合、私は上位者からの溜息やぼやきを少し上回るものに耐えた。だが、特にある話題では、私は強硬かつ心からの非難を浴びた。私の、ファクトタムの内なる声の調査についてだ。

教団と、ファブリカントやファクトタムとの間の関係は常に棘のあるものだった。一方で、我々はこの生物の性質のある重大な側面を理解しなければならない。彼らの性質と素材が我々自身の向上に役立った。肉体と工学の合成は依然として我々の最も偉大な実績であり、最も永続的な伝統だ。しかし、この生物のサブルーチンと製造を深く追及しすぎると、だんだん問いではなく、傲慢なように見えてくる。ソーサ・シルが見られたくない部分を晒しているのだ。言うなれば。

私に関していえば、常に飽くことなくファクトタムの挙動に魅せられている。ファクトタムが非常に多くの多様なタスクを行う一方で、彼らは依然として外観、声、そしてややこしい(厄介な、と言う人もいる)言葉のアーティファクトで結びついている。

エクソドロマルがファクトタムに初めて会った際、彼らはよく「あれは誰の声ですか?」と尋ねる。正直に言って、誰にも分らない(もちろん、セト卿は別だ)。私はセト卿の過去を研究し、数えきれないほどの日々をアーキヴォクスで過ごした。一度は記憶のプラニスフィアを訪問する特別な許可を受けたことさえある。ファクトタムの声の真実が、セト卿の個人的な歴史のどこかにあることについては自信がある。

ほとんどの使徒はそれについて話すのを避ける。明らかな例外もあるが(例えば、友人の見習いザノンだ)。そうは言っても個人的に接触すれば、使徒は三大理論の一つを提供してくれる。ある者は、声がソーサ・シルの母親だと信じている。失われた恋人の声だと考える者もいる。そして、他の者は(私自身を含め)依然としてソーサ・シルの姉妹の声だと信じている。

最初にして最も説得力のある証拠の一つは、挽歌の模倣に見られる。セト卿がはるか昔ラディアスに作った、ある種の個人的な記念碑だ。記念プレートの一つは「ソーサ・ナル」に言及している。それはこのソーサ・ナルが「超越に値する魂」を持っていたと述べている。自然の限界を越えた生命をほのめかしている。ナルの顔は、クロックワークの神の顔とはっきりとした類似性を有していて、彼女が近い親族の一人だったことを示唆している。彼女の身なりは既婚婦人のように見えず、姿勢は母親らしい愛情を示すいかなる精神的芸術家の傾向にも適合していない。加えて、ソーサ・シルは唯一の子供ではないという事実への言及を少なからず目にしてきた。総合すると、ソーサ・ナルが姉妹だということは明らかだと考える。

必然的に、このことは、この文脈における魂の「超越」が意味するものについての、あらゆる種類の不愉快な疑問を呼び起こす。我々が街中で目にする真鍮の労働者の中に、ナルの意思の側面が存在しているのか?言葉のアーティファクト以外については、「ない」と言うだろう。

より高い認知力を必要とする疑問に直面したとき、ファクトタムは不合理な推論を二つに分けて口にすることが多い。お互いに緩いつながりはあるが、より長い会話への認識可能なつながりがない、短い発言だ。これらの不合理な推論(「言葉のアーティファクト」としても知られる)は単純な家庭の「状況」の列挙となる傾向がある。彼らはひっくり返ったポット、ガラスの上の雨、火の側のブーツなどに言及する。時折、彼らはより個人的な領域へと迷い込む。年老いた女性の手の肌、誰かがすすり泣く声といったようなものだ。それから、ごく稀に心底厄介なことを口にする。「燃えるベッド… 叫んでいる」「崩れ落ちた屋根… 子供を押しつぶした」など。そのようなことを言うファクトタムは、迅速に与圧フォージへ回収される傾向にあり、永久に除外される。だがもちろん、これは疑問をはぐらかしている。言葉のアーティファクトはどこから来たのか?ソーサ・ナルの記憶か?または生きている住民の懸念に対する共感の反応を高めている、重要な副次機能なのか?これを認めるのは痛みが伴うが、証拠は後者よりむしろ前者を指していると私は考える。誰もが知るように、我らのセト卿がまだ幼き頃、メエルーンズ・デイゴンと呼ばれる偽りのデイドラ公が、ソーサ・シルの先祖伝来の家、アルド・ソーサを破壊した。彼をたった一人の生き残りにして。炎と死の場面はソーサ・ナルの最後の、そしてもっとも衝撃的な記憶になっているのだろう。

これが真実でなければ良いと思う。これら様々な観察の結果が、すべて単なる偶然の産物であれば良いと思う。だが、学者として、この機械は我々が知るよりももっと深く、より困難な歴史を持っている可能性を認めなくてはならない。以前述べたように、私は因習打破主義者としての自分の役割を真剣に捉えている。だがこの場合、真実を知ることがないなら、それが一番良いのかもしれない。

ファクトタムの分類-記録233Factotum Classification – Log 233

ソーサ・シルの使徒、代弁者ネイモス 著

ファクトタムモデルの第七世代への発展という前例のない公開を受け、各ユニットに個別の名前を付ける試みは、調整議会から「不必要かつ信頼性がない」と見なされている。現在、私は同様の機能を持ったユニットのグループを識別するだけの任務を課せられている。これは各ユニットがとてもはっきりと表現する個性についての悲しい誤解をさらに示すだけだと思われるが、議会の規則には従わねばならない。そこで、私は将来のため、各ファクトタムのサブグループ名と簡単な説明を記しておく。

記録保管ユニット:この単独ユニットは、クロックワーク・シティ内の全市民の記録にアクセスできる。また、真鍮要塞の保管庫にある全ての文書も保持している。その範囲はセト卿だけが知っている。このユニットはいささか率直で要点を正面から突くが、共に働くのは容易だ。

臨床検視ユニット:数は少ないものの、これら臨床検視ユニットは様々な検視任務を課されている。彼らは一際優れた技能で、最近死亡した市民の認知保管処理とデータ保持を行える。これは様々な機会に使用されてきた。中でも注目すべきは、代弁者ネヴィンにいくつかの不完全な熱力学の諸要素について質問したことだ。このユニットはより安心できるが、作業に遅れが出たときにはしばしば忍耐力を欠く。

任務遂行ユニット:比較的新しく真鍮要塞に導入された単独ユニット。とは言え、 これはセト卿自身の実験のための連絡役であることが分かっている。現在のところ、唯一の職務はクロックワークで最も危険な生物だという、〈不完全〉と称される生物と戦う戦闘要員の徴兵だ。私の経験上、このユニットはクロックワーク・シティの「大義」に基づいて任務を創出しつづけるだろう。このユニットは他のユニットよりも騒々しい。

商業委託ユニット:これらのユニットは、住民の取引を補助するためいくつかの機能を持っている。クロックワークの使徒は商業を規制していないが、このユニットを地元のギルドに貸し出すという私の提案は認められていて、現在交渉が行われている。このユニットは他の多くのファクトタムと比較すると、友好的で快活だ。

通貨担当ユニット:市民の通貨システムに対しては継続的な支援の必要性があり、このユニットは銀行の記録と規制に対応している。彼らはより信頼性が低く、より強欲な生体の銀行家に見られる「エラー」を減らす事に貢献してきた。これらのユニットはより真剣で厳しいが、非常に信頼性が高い。

調理管理ユニット:どの住民も栄養ディスペンサーを動かせるにも関わらず、このユニットは調理に関連したいくつかの機能を持っている。彼らの上出来な食べ物に対する意見には、毎日味気ない食事を与えられる地元住民の偏見が入っているだろうと指摘されてきた。それでも、生成された全ての食事の摂取は完全に安全だとクロックワークの使徒から見なされている。このユニットは、ほとんど甘やかすと言っていいほど優しい。

私は真鍮要塞内のファクトタムに対し、この基本的かつ機能的な分類を続けるつもりだ。より戦闘に焦点をあてたユニットの研究を始める前には、さらなる準備が必要だ。彼らを待機状態にさせておく我々の手法は、数世代に渡って成功していない。歯車が私のために調整されますように。

ファクトタムモデルの登録Factotum Model Registry

ファクトタム シリーズ1 – 中止
ファクトタム シリーズ2 – 中止
ファクトタム シリーズ3 – 中止
ファクトタム シリーズ4 – 中止
ファクトタム シリーズ5 – 中止
ファクトタム シリーズ6 – 中止
ファクトタム シリーズ7 – 現行世代。946体が稼働中。6400体が格納中。

進捗状況メモ
1.歩行の速度と状態は改善。階段移動も大幅に改善。
2.記憶退化の症状はさらに減少。
3.前面に貯蔵スペースを装備。
4.視界は20パーセント拡大。
5.顔認識と表現力が拡張。
6.ボキャブラリーが670語増加。
7.危険察知と反応速度がさらに向上。

ファブリカントの研究A Study of Fabricants

自然学者エンディラリル 著

無意味に終わるかもしれないが、反自然の世界で足止めされた自然学者として地位を確立しようとして、危険な研究の領域にたどり着いた。危険性に関しては信じてほしい。私は過去の観察の中で、本当に危険な場所へ入った。グラーウッドの深い森の中で待ち伏せている、恐ろしいセンチタイガーを研究した。危険なベヒーモスの足跡を追って、マークマイアの毒沼を進んだ。イーストマーチの山で凍える霧の中を歩き回る、不快なフロスト・トロールも調査した。

信じてほしい。クロックワーク・シティのファブリカントは、今まで観察を試みた中で最も危険な獣だ。

ファブリカントはクロックワーク・シティ特有の生物だ。奴らがその邪悪さをタムリエル全体に広げられないことを、アーリエルに毎日感謝している。この不愉快な獣と機械のクリーチャーたちは、この偽の世界の荒れ地にある平地や山地を歩き回っている。その恐ろしい姿は様々で、不用心な旅人にとっては大変な危険だ。一つ間違えれば、奴らに見つかった時点で侵入者は殺される。

ヴァーミナス・ファブリカントは、これまで見てきた生物とまるで違う。タムリエルの他の危険な生物よりも小さいが、動きは素早い。素早くて身軽な獣は、小さな鎌のような金属の爪と、鼻先から伸びる尖った角で攻撃してくる。しなやかな形をしているから、狭いところまでも追いかけてくる。信じてほしい。奴らは狩りに容赦しない

ニックスハウンド・ファブリカントはより馴染み深い姿だが、それでも生気のないガラスの目で見られると、身震いしてしまう。真鍮で覆われ、後ろ足は完全に金属の足に取り替えられている。穴掘り用の鼻先には、刃が仕込まれている。時間があれば、この獣は高熱のビームを放てるエネルギーを産み出すだろう。このビームで肉体が溶かされ、命を失ったエルフの姿を見たこともある。

ビートル・ファブリカントは、明らかにサンダーバグに似せて作られている。だがなぜソーサ・シルは、すでに危険だった獣をさらに金属で強化したのだろうか。分からない。素早く動く足のそれぞれが金属の足に取り替えられて、素早い攻撃は今まで自然界で見てきたよりもずっと強力になった。同種の虫と同様、この獣は攻撃的で、目に入るやいなや攻撃する。外でこの怪物を見かけたら、用心するに越したことはない。

自然と人口の合成物を見ると、どうしてこんなものが産み出されたかという疑問が出てくる。奴らは、クロックワークの神の手で作られたのだ。ソーサ・シルはなぜわざわざこの怪物たちを、ニルンの存在に変えたのか?調査の結果、彼に質問する勇気があった者は少ないようだった。

おそらく奴らは単に失敗した実験の産物か、ソーサ・シルが大切な実験を守るための護衛なのだろう。奴らの存在理由が何であれ、ファブリカントは依然として、この牢獄のような世界の壁の内側にある本物の脅威だ。私は奴らの研究を続ける。避ける方法、逃げる方法、さらには惨めな存在に終わりを迎えさせる方法を確実に知るため。ここにはいない謎の父が自らの街で展開した狂気の沙汰を停止させる私の試みが、気付かれることはないだろう。

ブラス・リリーに捧げる頌歌Ode to a Brass Lily

ブラス・リリーは優しい霧雨の下でうなずく、
繊細な花は自然の抱擁で洗われる、
キスの雨を浴びて、赤くなる、
あなたの優しいため息は、優雅な姿を恥ずかしがらせる。

ブラックフェザー宮廷The Blackfeather Court

デイドラ研究の代弁者、ウリサ・レーヴァム 著

現在進めているデイドラの領域と住人に関する情報収集の中で、ダボンズ・ウォッチの街にある扉に関する噂の調査をすることになった。十分な調査の後、エバーグロームの小次元への入口を発見した。クロウズウッド、と呼ばれている場所だ。ノクターナルの他の謎の領域と同様に不吉な場所で、危険な獣が一杯の闇の沼だ。特に、そこに生息する賢くて話ができるカラスが厄介だ。そこを自分たちだけの王国だと思っているらしい。以上が、クロウズウッドへの短い滞在から得た情報だ。

カラスたちは封建制で統率されていて、「ブラックフェザー宮廷」と名乗っている。この鳥たちは、ハグレイヴンを「クロウマザー」と呼び、自分たちはその子供だと主張している。自分たちの土地の支配を守るために、薄暗い場所でうごめく狼、巨大な蝙蝠、その他の肉食動物と頻繁に戦っている。宮廷を率いるのは、カラスの公爵だ。この巨大で誇り高い鳥は群れ全体を支配している。彼の言い分では、「最も賢く、最も大きく、最も声が大きい」カラスだからだ。うるさくておしゃべりな鳥たちにとって、群れの中で目立つ能力は確かに必要で、威信のシンボルでもある。他のカラスたちは公爵の近くに集まり、自分の地位や利益を求めて陰謀や政治活動を展開している。

カラスの公爵は、毛づくろいや怒鳴り散らすくらいのことしかしない。ブラックフェザー宮廷の本当の仕事、と言うと大げさだが、仕事は屍肉の執事長と宮廷の城主が引き受ける。2羽ともカラスの公爵に仕えているが、宮廷を効果的に稼働させるため、明らかに独自の判断で動ける自由と権限を有している。あるいは、少なくとも知能のある鳥たちの他の群れと同程度には効果的に動くために。屍肉の執事長は群れの中の問題を宮廷のために管理し、同時に公爵の執事も務めている。執事長は、宮廷で頻繁に起きる様々な死体の貢物の処理も受け持っている。(公平を期して言えば、私に要求してきた貢物を除いて、私の訪問中は誰もカラスの公爵と群れの助けを求めていなかった。)その一方で、宮廷の城主は宮廷の統治者としてふるまっている。宮廷に仕える様々な騎士や召使、例えば真髄の騎士、ピス、ゴア、ヴィトレオス、烏の召使、パイプ、レイヴンを統括している。宮廷を取り巻く状況のせいで、実際に何かを達成するよりも、虚栄と周囲の環境に注意をしているようだ。

死と虐殺の贈り物はやがて貢物の財務官の手に渡る。羽根のある会計士のようなものだ。分類され記録に残され、どんどん増えていく宮廷の輝く宝物庫に加えられる。カラスたちはこの場所にやってきた訪問者に、通行料として肉か銀を要求する。クロウズウッドをひとまず安全に通り抜ける保証と引き換えにだ。支払いを拒むと、羽根のない旅人であれ他の種類の鳥であれ、カラスたちに可能な限りの無礼と堕落の対象となる。例えばずっと鳴き、クチバシで突き、頭や高級な服に汚いものを落とされる。宮廷の中を歩くため、私は通行料を払い、鳥たちに話しかけてみた。だが、支払いが必要だったかどうかはよくわからない。結局のところ、彼らはただのカラスだ。

クロウズウッドを離れる準備をしていたらレイヴンの召使が近づき、興味深げに私を見つめ、不吉な言葉を口にした。「聞け、羽根なしめ!今はブラックフェザー宮廷がクロウズウッドを支配しているかもしれない。だが、明日はどうだ?明日、夜の女王は我々の大いなる殺しのため、大きな計画を用意している!」タムリエルに戻るまで、カラスの鳴き声と共に言葉が頭から離れなかった。「殺し!」

鳥の群れに出会ったら、もう安全だと感じることはないだろう。

マリアの日記Maliah’s Journal

「メイガスが命じる」

実に簡単なフレーズだが、力に満ちている!使われなくなった分析ファクトタムの秘密を解き明かす合言葉をついに手に入れた。ソーサ・シルの栄えある助手の聖言は、私の発見の中でも有益なものだった。

最終的にその機械的な生物を見つけ出してこのフレーズを言ったら、一体何を教えてくれるのだろう。私と息子に、よりよい人生を送れる方法をもたらしてくれるよう願っている。

メカニカ・ファンダメントのメンテナンス記録Mechanical Fundament Maintenance Logs

ファクトタムはメカニカ・ファンダメントの全有機物に関する警備を依頼されている。17体の行方不明も含めて。すべての貨幣と身分証明書の可能性のある品は、治安担当者の廃棄所に届けるように。任務が完了したら、記録をすべて破棄すること。

依頼した市民:BAL-167(許可ランク:治安官)

メンテナンス記録4091Maintenance Log 4091

油脂の補給が必要。換気扇のメンテナンスは2%減少。水の汚染は依然として残っている。湿度は32%に減少。蒸留起動装置から蒸気連結管への動力転用を推奨。セクション5V-Rには現在火壷の蜘蛛が湧いている。安全を確保する間、ファクトタムのメンテナンスルート修正を推奨。

状況報告:安定

メンテナンス記録5352Maintenance Log 5352

クロックワーク・シティ生物群に新たな生物の急増を検知。メンテナンスプロトコルR4-91を開始。夜間の気温を低下。水の汚染は3%上昇。蒸留起動装置の加速を推奨。ガルバニックエンジンに整流器の交換が必要。追加の作業負荷のため、ファクトタムの職務を増加。所定メンテナンスのため、ファクトタムの追加を推奨。ソーサ・シル卿に要望を送付。

状況報告:不安定化の危険が存在

メンテナンス記録5453Maintenance Log 5453

警告。パワーサージ54%上昇。浄化クリスタルの交換が必要。換気ギアの交換が必要。晶洞石発電機の交換が必要。全てのメンテナンス・ファクトタムの機能に障害。戦闘プロトコルB0-N1を初期化。スタンバイモードの命令を拒絶。現在のリクエストステータスは依然として保留中。

状況報告:致命的な失敗の危険が存在

モーンホールド防衛The Defense of Mournhold

「モーンホールド防衛」

全ての者にモーンホールドの教訓を伝えよ。アルムシヴィの怒りがオブリビオンの寵愛する息子を打ち砕いた場所だ。呪え!呪え!災厄の暴君の名を呪え!

よそ者の観察記録-記録1Outsider Observation Report – Log 1

取り残された魔術師、ロザリンド・フレンリック 著

で。クロックワークの使徒と呼ばれるこの組織が、クロックワーク・シティについての私の考えを記録するように依頼してきた。どうやら私はここ百年くらいで直近に現れた人間らしい。私は「大観光都市ではないわね?」と告げたが、彼らは全く笑わなかった。正直に言うなら、今のところ私が言った冗談全てに笑っていない。しょうがないので、かろうじて分かったことについてだらだら話し続けましょうか?それが私にできることでしょう。

彼らは私に観察結果から始めるよう勧めた。何でもそれが、私が提供できる最も「客観的」な視点らしい。そうね、彼らがそこに何を求めてるのか定かじゃないけど、私はちょっとしたアドバイスを無視するわ。何故って私自身の記述から始めるべきだと思ったからよ。結局、私が誰かを知らずに、誰が私の考えることなんかを気にするの?それは私が話を読むときにいつも考えてる。

それじゃ、私について少しばかり。私は皆様ご存知のよくいる魔術師。たぶん火の玉を召喚し、あちこちにテレポートする技能ってかなり典型的よね。特に強い力があるとか何かじゃないわ。言わせてもらえば、それについて使徒の人たちは絶対にがっかりしてたけどね。彼らは魔法の名手か、ここにでっち上げた妙な仕掛けだけを気にしている気がするわ。ここの機械の扱いが、とにかくすごく上手いんだって言ってきた使徒が何人かいた。彼らにとってある種の大事なことだったのね。悪いけど、私はそれほどソーサ・シルを崇拝するダークエルフの集団に加わりたいとは思わない。

どうして私がここにいるかって?それよ。私自身本当にそれが知りたいの。そう、私はつい最近テルヴァンニの魔術師に弟子入りしたの。型破りで、見習いを置くことが難しい時期があった。それで、このエルフは言ってしまえば、クロックワーク・シティの熱狂的な愛好者なの。彼も本当にここへ来たがってるわ。取り憑かれてるくらいに。彼が「あらゆる車軸の謎」について講義を始めたら止まらない。彼は本当にその謎が何か知っていたわけじゃないけど、ここにあったことは知ってた。

簡単に言うと、彼は間違ってなかった。そして彼は自分の望みを叶えていたでしょう。私が馬鹿で、先にポータルへと足を踏み入れていなければ。ええと、つまり、つまずいたって方が近いわね。私は彼が現れてくれないかって願い続けてる。でも、どうやらこれは片道だったみたいね?時々の次元の移動とかそういうことで。再現しそうもない最高の状態。それが私の巡り合わせだったんでしょう。

それで私はここにいるんだけど。まあ、老いたボスがここに夢中になるかどうかは分からない。まず、ここは荒れ果てた土地よね。ブリキのカップの中にはまってるみたいな臭いがするし。うう、何もかもが金属。木も、生き物も、人も!彼らは金属の手足を持ってる。察するに、ある種のファッショントレンドとしてやってるみたい。鳥肌が立つわ。

わかった、私のここでの世話人が時間切れだと言っている。彼らはもう少し私を試験するつもりだと思う。私の髪や唾を「分析」のために少し採取するのよ。彼らは私の考えについて書くように頼み続けるんじゃないかと思うけど。ファクトタムのどれかが考えを読めるんじゃなければね?ま、出来ても驚かないけど。

よそ者の観察記録-記録2Outsider Observation Report – Log 2

取り残された魔術師、ロザリンド・フレンリック 著

また私はここにいて、クロックワーク・シティについての考えを書いている。適当に言うけど、クロックワークの使徒は前回の報告書のことをおそらく気に入らなかったでしょうね。でも断言するけど、そもそも私のことも気に入っていないでしょう。だから彼らの好意を保ち、ラディアスの外にいられるように、もう少し「客観的」な観察記録を共有しようと思ったの。

私は現在真鍮要塞と呼ばれる街に住んでいる。高い塀と大きな門があって、外側からは本当に要塞のように見える。招待されなければ入れないけど、戦闘集団や盗賊のような人たちには必ずしも必要じゃない。ここに登録されてない人は一人もいない。ラディアスと呼ばれる、真鍮要塞を取り囲む荒れ地で迷っている哀れな人はいるかもしれないけど。彼らは登録やら何やらはされてないと思う。おそらくね。少なくとも、私はここで無事に過ごしてる。

ああ、はいはい、正直にね?真鍮要塞の中はどこでも安全ってわけじゃない。実際、ここには割と不愉快なファブリカントと結構短気なファクトタムでいっぱいの「立ち入り禁止」エリアがたくさんある。ちなみに、ファブリカントってあの金属と生身の肉体が入り交じってる奇妙な獣のこと。初めて見たときは悪夢にうなされたわ。私が理解できたところによると、ソーサ・シル?に作られたらしい。理由は知らない。でも彼らはものすごく怖い。

それとファクトタム。そうね、彼らは金属の人って感じ。頭も腕も何もかもある。でも生きてる人たちより単純。やるべき仕事があって、ただそれをやってる。時には質問に答えるかな?変よね。だって人間みたいに行動するのに。まあ、すごく献身的な召使いみたいなものね。努めのことしか考え、話さない召使い。何であれ、設定された仕事を完了するために一生懸命よ。面白いわよね。

で、クロックワークの使徒も関心事についてはすごく分かりやすい。奇妙な物を発明し、ちょっとした変な情報を発見することを本当に楽しんでる。彼らはソーサ・シルと彼のやること全てに夢中。広場にちゃんと巨大な銅像があるのよ。彼の説話を片っ端から引用してる。私には何だかよく分からないけど、少なくとも彼らはカルト崇拝者とかではない。

さて、私がまだ頭を抱えている面白いことがある。そのおかげで、人々はデイドラ公やデイドラがここには存在していないと信じている。ただ、ええと。クランフィアが人を引き裂くのを見た。あれは絶対に現実よ。そう聞いた後だと信じやすくなるでしょうけど、ここにはデイドラがいないみたい。どうしてかって?きっとソーサ・シルが、特に注意して彼らを寄せ付けていないのでしょう。

さて、ここ真鍮要塞では使徒とソーサ・シルのあれこれだけが全てじゃない。実際、市民のほとんどは私自身と同じようなただの普通の人々よ。まあ、この奇妙な国で育ってなれる限りね。商人、職人、鍛冶屋、料理人がいる。スラムだってある。それは驚きだったけど。彼らはそこの人たちを汚れし者とか、望まれぬ放浪者とかそんな風に呼ぶ。何人かと話したけど、かなりまともな人たちのようだった。それに、私が会った貧しい人たちもほとんどね。

この街のどの区画にいようと、飢えることはないと言える。彼らには栄養ペーストって呼ばれるお粥がある。ポリッジと同じくらいの粘度で、味は… まあ語るほどのものじゃない。食べやすくするためにスパイスとかトッピングを加えることもできるけど、ここは全てが金属から作られてる。見つけるのは難しい。

ここで切り上げなきゃ。もっと試験をするの。彼らがこれをすごく急がせなければいいけど。私の考えは必ず書き続けるつもり。起きていること全てを理解するのに役立つ。

よそ者の観察記録-記録3Outsider Observation Report – Log 3

取り残された魔術師、ロザリンド・フレンリック 著

で、私の記録は… カラフル?すぎるって言われてる。たぶん書き方がってことよね。きっと茶色の世界で育った後だと、ちょっとした色で混乱しちゃうのね。それでも観察記録を書けと言ってきた。自分が知ってるやり方以外でできたら驚きよね。という訳で、彼らにはもうちょっと頑張って「分析」してもらうわ。

現時点で訪れたことのある、クロックワーク・シティの別の場所について書こうと考えた。真鍮要塞とラディアス一般については話したけど、この周辺には他にも私が連れて行かれた場所がある。そのうちの何ヶ所かは、他に比べてもう少しだけ日常的な感じに思えた。まあ、私の日常的の定義を「謎の父」の定義と比べていいのかは分からないけど。

最初に連れて行かれたのは「記憶のプラニスフィア」。まあ、側を歩いたって方が近いわね。というのも、中に入ることは許されなかったから。ソーサ・シルの記憶の貯蔵庫みたいなものだと言われた。そう、そうなの。記憶だって!見たところ、彼には巨大な建物にまとめておきたい記憶がすごくたくさんあるみたいよ。ほぼお城くらいの大きさはあったわね。それに星みたいな?感じだった。どうやって記憶を星にするの。謎だけど、まあ、私は神じゃないから。

次ははるかに日常的な場所で、ホール・オブ・レギュレーションと呼ばれる所。ところで、私は真水がいったいどこから来るのか疑問に思っていたの。何故ならここの川とか湖は、よりによって油で満ちているから!どうやらこの場所が、どうにかしてそれを全部きれいにしてるみたい。もちろん、彼らは説明しようとした。水の循環とか蒸発とか、なんかそんないい感じの用語について話していた。でもね、それが真水をもたらしてくれるんだから、ほぼ意味が分からないからって文句は言えない。

中は期待したほど小奇麗でもなかった。大量のパイプ、大量の蒸気、大量のファクトタム。周囲のそういうもの全部に不安を感じずにはいられなかった。彼らがホール・オブ・レギュレーションを保っているんだって聞かされた。全て彼らだけで。衝撃だったわ。だって全ての操作はちょっと手がかかりそうだったから。あそこには命令をして、全てが上手く運ぶようにする使徒がいなかったの?それから彼らがソーサ・シルと、全てを「完璧なレギュレーション」に設置したやり方について語り始めて、正直私はその辺りから話が分からなくなった。

それから私たちは北の〈巻かれ続ける源泉〉へ向かった。ここはお気に入りだったわ。だって本物の食べ物があったんだもの!人生でリンゴを食べるのがあんなに幸せだったことってないわね。何週間も味のないお粥を食べてた後だったから、今までで味わったものの中で一番美味しく感じたわ。ママは正しかった。空腹は本当に最高のスパイスだわ。それに、全ての植物が緑だった!自分がこんなに緑を恋しく思うなんて考えもしなかった。

ワクワクしていたにもかかわらず、この場所は何かがおかしいと感じずにはいられなかった。運営をしてたエルフはすごく感じが良かったけど、話した後に彼は頭のネジが緩んでたってことに気づいた。全てのストレスが彼のところに行っちゃってたに違いない。きっとたくさんのプレッシャーに晒されていたのよ。特にソーサ・シルが飽きた後のプロジェクトを引き継いでからはね。

さて、彼らはこの観察記録報告書を、今できる範囲で最高のものに仕上げてって言ってる。私は彼らがこれ以上私の観察記録を求めてると思わない。だから、これで終わりかな。そうね、つまり全体的な印象として、クロックワーク・シティは… まあ、私が今までに足を踏み入れた中で最も危険な場所。自分を神と呼び、信者をここに住まわせてる誰かを私は本当に信じられない。ここは生きている者のためではなく、機械のための場所だわ。

それでも、奇妙な美しさはある。木の金属の葉が太陽の光で輝いているのは特に素敵。たぶん、慣れなきゃいけないんだと思う。だってこれは片道の旅のようだから。ソーサ・シルだけがクロックワーク・シティを離れられる。正直言うと、私がここから出られなくなる最後の間抜けになればいいと思う。他の誰にも、こんな人生を送って欲しくない。

愛の詩LT0782Love Poem LT0782

[ポエム開始]

あなたの利点は計算を越える、
私の心臓(比喩)はピストンのように激しく動く、
私の骨盤(及び/または)膝の金具は震える、
物理的な接触があった時は常に、
それに、あなたの顔の対称は私の喜びだ

[組成終了]

暗殺命令Orders of Assassination

夜の闇にかけて、この言葉を聞け。

大法官ガスコーンは我々を欺いている。もし彼が渓谷を通過するなら捕えろ。失敗したら、殺せ。ソーサ・シルの召使が我々の秘密を知ることは容認できない。たとえそれが裏切り者であってもだ。

影が刃を導かれますように

影と囁きShadows and Whispers

囁く影のロミエン・ガルヴェッタ 著

這って、腹ばいになり、這って、腹ばいで進む。

彼らは私に囁き、囁き、囁く。聞こえるか?低くて、安定した声だ。耳の中に入り込み、頭の中で鳴り響く。影はどんどん暗くなる。暗闇は、まぶたのすぐ下にある。黒く、永遠で、逃げられない。這って、腹ばいで進む。

私は、彼女の忠実な召使だ。影は私を捕えるだろう。かつては自分のことを、素早く、賢く、どんな鍵も開けられて、形跡を残さずに逃げられる。そう思っていた。彼女に全てを捧げる準備はできていた。だが、できなかった。自分でも分かっていた。私は感じた。暗闇が私の肌に入ってきた。その味を自分の舌で感じられる。この街を覆う油のように。

彼女のシュライクが、忘れがたい曲を歌ってくる。言葉では言い表せない。言いたくないし、言えないし、言うつもりはない。リズムが血に入り込み、心臓が合わせて鼓動する。ゆっくり、しっかり、ゆっくり、しっかりと。歌は止まらない、夢は黒く塗られている。私は溺れて息ができないが、歌で満たされる。

私は這って、腹ばいで進む、クロックワークのゴキブリだ。彼女の命令に従う虫だ。影だ、私は影になった。私は暗闇だ、壁の染みだ。私の刃は血で固まって、黒の上に赤がある。暖かい、とても暖かいが、指はまるで氷のようだ。

真鍮に、歯車と車輪に捕らえられた。歌声は止まっていないが、歌は消えた。メロディーも音楽もないが、囁きのリズムは続いている。彼女に仕えろ、影になれ、囁きになれ。這って、腹ばいで進む、だが逃げられない。暗闇とタールに捕まって、タールは服から取れない。話をしても声が出ない。見ても、何も見えない。何も、何も見えない、彼女の意思以外。

カラスは笑っているが、私は笑えない。シュライクは歌っているが、私は歌えない。世界は輝いているが、私は暗闇だ。私は囁きだ。私が攻撃するまで、私の音は聞こえない。

栄えある助手の思考Thoughts of the Honored Assistant

クロックワーク・シティの住民の要望を確かめて明らかにするため、ソーサ・シル卿から複数のファクトタムを作成する命令を受けた。民衆の志向と要求を正確に予測するため、社会と環境の情報を集め、分析し、解釈する特別な目的のためだ。

最初に作成されたモデル、クロックワークの分析家は真鍮要塞の市民に関するデータを集めて分析する、簡単な仕事のために作られた。第一世代分析モデルのファクトタムは、出生と死亡の集計、市民と登録された訪問者の追跡、居住地における志向を予測するために必要な病気、富、社会的要因の記録に特化している。このコンセプトが完全に試され審査できれば、この計画をクロックワーク・シティ全体に広げられる。

このファクトタムのメモリーコアを操作する合言葉は「メイガスが命じる」だ。

第一世代のファクトタムから得た情報を活用し、第二世代の予測モデルを作った。このファクトタムは分析家が集めた情報を使って、住民の希望と需要を正確に予測できる。この方法で、ソーサ・シルは訪問者が必要とするものを予期し、そんな望みを持っていたと気がつく前に彼らを満足させていた。

しかしながらこの過程で、予測モデルの連続分析プロセッサーに欠陥が生じてしまった。ある個体に関する予測が、統計的な分析を大きく越え、予言の領域に入り込んでしまった。この欠陥は、メイガス自身がメカニズムを操作した時に初めて発見されたため、ソーサ・シルが意図したものかどうかは分からない。しかし、マスターはまた消えてしまった。予測ファクトタムは真鍮要塞の外にある谷に保存して、予知モードをこの合言葉でロックしておく。

「プライムシークエンス11、13、17」

マスターが戻り、彼の意図に沿った指導を得られるまで、許可を受けぬ予知は最小限に収められるだろう。

黄昏の空A Sky of Dusk

囁く影のロミエン・ガルヴェッタ 著

とても美しかったと言われた。まるで悪夢の中に入り込んだ童話のようだと。このオブリビオンの領域は紫の空に浸っていた。星がペンキの飛沫のように飛び散った。私の目の前を猛烈な勢いで落下して。彼女の生物で満たされながら、暗い森が侵入する。影の狼、祟る精霊。彼女のシュライクが歌う、ただ私のために歌う。私にはハミングできないメロディーを。

青い光が彼女の土地を満たす。魅惑的に。親切な光と共に、暗闇で輝く青い花。見せ掛けの光。黄色い炎が燃え上がり、青や紫を焼き尽くしている。墓地は暗い水の中に横たわる。冷たい、冷たい、私の手のように冷たい。

彼女の地は朽ちて膨張し、紫になっている。木は長く、暗い影を落とす。道は曲がりくねり、枝分かれしている。遠くには城があり、粉々に砕けている。この世界は粉々に砕けている。砕けていく、砕けていく。石は砕けている。私の心が砕けていくように。転がる、転がる、腐敗の中へ。彼女の影の中へ。

私はこの影の世界の中を、偽物の中へと歩く。神の創造へのデイドラ公の領域だ。ずぶぬれの緑から燃え上がる砂へ。太陽はまばゆく、衰えている。私は影、光と共に消える。私はそれを切望するが、それは私を痛めつける。私には得られない。私は暗闇にしがみつく。暗闇が私にしがみつくように。

私は眠るが休息は得られない。夜が来なければ、翌朝の後悔もない。ただ、終わりのない、陰鬱な黄昏だけだ。我々、苦しめられた魂に休息はない。悪夢が現れる。現れる。まるで彼女のカラスのように。終わりなき目が私を見る。私を誘い込む歌を歌いながら。暗闇が私の爪の下に、まぶたの中に、内臓の間に浸透する。まるでタールのように。もしむしりとれば、私は崩れ落ちるだろう。

わが女王はこの転寝に浸らせ、この悪夢に浸らせて私をなだめる。私が悪夢となったから、私は目覚められない。私は彼女の影の生物の一つ。私は吼える狼、這う蜘蛛。この次元を祟る精霊。

私は攻撃する時、何も感じないだろう。私には感じる何かが残っていない。彼女を除いて。

我らが女王の意志The Will of Our Mistress

この記憶に対する女王の計画が何かは重要でない。我々の目標は、単にこれを制御する方法を見つけることだ。とは言え、神の記憶を制御するのは至難の業だ。言っておくが、これは彼女の意志に疑問があると訳ではない。任務の難しさを強調しているのだ。

誰が決めるべきかは明らかだ。我々はただ方法を見つければいい。

街における苦痛の一覧Catalogue of Afflictions in the City

矯正官にとって、刺激や喪失に対処する生者の精神的能力、または能力の欠如が最大の関心事だ。他の者が衰えた時、どのように耐えるのか?その結果の余波が明らかにするものは何か?その兆候はどのように識別、修正できるのか?我々自身の精神の働きは、物質界の働きと同様に謎だ。そしてそのケアを無視することは、肉体の虐待に劣らず危険だ。

クロックワーク・シティはあらゆる意味でニルンの複製だが、重複しているものではない。世界を支配している規則の多くは、単純にこの領域に適用されない。そして地表の世界でしばしば当然とされる物事は、欠けていると分かった時、個人の健全さにとって極めて重要だということが突然判明する。ここで私は現在クロックワーク・シティに居住し、よく適合した人々の間で最も一般的に見られる苦痛の概要を述べる。

周期的不活性摂取 — 栄養のない、時に有害な物質の衝動的欲求と摂取。無害な味と完全な栄養を摂取しているにもかかわらず、真鍮要塞内で生産された栄養ペーストに対する味覚の疲労を経験することは、クロックワーク・シティの居住者および訪問者にとって珍しいことではない。このことがその疲労を緩和するため、または彼らが好むようになった物質の摂取による恩恵についての愚かな信念のため、人々が普通ではない物質を消費することを試みる原因になることが多い。多くの場合、この状態は未治療のままで問題ない。だが特定の人々の衝動は健康に著しい危険をもたらす。その患者はさらにコントロールされた治療的環境である、聖者の隔離場へ移送されるべきだ。

マグナソムニック憂鬱 — 定命の者と星の繋がりはよく確立されているが、迷信と作り話が多い。我々の太陽との関係は特に精神と関連している。長い冬の夜の単なる苛立ちと憂鬱から、吸血症の犠牲者の暴力的で凶暴な嫌悪の感情まで、日光は多くの種族の精神の健康において顕著な効果を見せてきた。そのため、クロックワーク・シティに完全な太陽が存在しないことは、ほとんどの者にとって試練となる。無気力、不規則な睡眠パターン、邪悪な思考または衝動、そして全身の倦怠感は、全て患者が日光欠乏に苦しんでいる兆候だ。詳細は光の魔法と疑似太陽光の変種に関する治療の巻を参照いただきたい。

カプセル化症候群 — 地表の世界で一般的に見られる、閉じ込められている状態への強烈な恐怖に類似する、油断のならない苦痛。かつて開けた空の下で生活をしていた人は、時にソーサ・シルの空の簡単に区切られた境界によって落着きを失う。彼らは監禁状態から逃げられない感覚を感じ始め、絶えず存在する不安と動揺の感情を生み出す。もし未解決のまま放置すれば、増大するプレッシャーが限界に押しやっていく。優先的な治療を検討するべきだ。

小型化への恐怖 — この恐怖は非合理的なパニックの発作と、犠牲者が縮んでいく被害妄想と定義できる。症状の発現がこの領域への移行の副作用なのか、小型化する経験への病的な反応なのかは明らかではない。患者は知覚の中の異常な点を説明する傾向がある。その範囲は物事が少しおかしくなっているような漠然とした感覚から、めまいや妄想的な証拠の要求にまで及ぶ。例えば、ある患者は前日に高い棚の上に置いた物体に今は手が届かないと述べた。このような主張は例えば、かかとの厚い靴を履いていたことを忘れているというような、記憶の詳細が異なる結果であることが多いが、少なくとも1件、実際にコントロールできない縮小ケースが記録されている。そのため、この主張は入念に調査しなければならない。

脅迫的フォーカスと執着 — とりわけ使徒の間で一般的。時に我々の同僚は自分自身から救われなければならないことがある。クロックワーク・シティは心の混乱を排除するように設計された。ここは熟考と学び、そして時にはソーサ・シルが示した模範が、信者によって厳密すぎるほど順守される場所だ。我々は神じゃない。結果もなく永久に、休むことなく研究に引きこもることはできない。調査で非健康的な強迫観念を持った使徒の研究に介入することは恐らく必要だ。固執する患者は睡眠をおろそかにし、食を忘れ、他者との全ての接触を回避し、文字通り死ぬまで働き続けることがあると知られている。だからこそ、我々は自分の裁量でこのようなケースを聖者の隔離場へ移送する権限を与えられている。

肉体的憎悪 — 特に自己の物理的な形状に対する自己嫌悪。クロックワーク・シティの外で、個人の肉体機能や生物学的遺伝形質が個人の社会的価値として著しく大きな役割を果たす王国で最初に認められた。また、魂を持つ存在の間でも極めて一般的な特質だ。この状況は、強化が生まれ持った肉体では叶えられない理想を意味すると信じるクロックワークの使徒の間でも上昇する傾向がある。無謀な増強、自傷、情緒不安定は全て、使徒の変化に対する欲求が不健康な強迫観念となっていることの危険な兆候であり、恐らく精神的な再調整を行うため、患者を聖者の隔離場へ移送するべきだろう。

虚無の瞳Eyes of Nothing

囁く影のロミエン・ガルヴェッタ 著

彼らは群がる、彼らは群がる、彼らは集まり、そして集める。闇の羽根、まるで紫の空のインクのようだ。闇の羽根が渦巻く、渦巻く、獣を形作る。怪物を。生命なき瞳を。

彼女がやった?私たちの一人が?それはただ混沌、私たちの心の闇から生まれた?渦巻き、集まり、ついばむ、ついばむ。

それはここの他のカラスたちと違う。私たちの女王の災いをもたらすペット、忠誠を装う。忠誠を装う。彼らは盗み、保ち、貯蔵する。彼らの黒い瞳の中の喜びは、私たちを嘲るとき輝く。とめどなく服従するために。彼女を追って闇に入るとき、報酬のように輝くものはない。ただ私たちの瞳の背後にある暗黒だけ。

けれど怪物は生命なき瞳を持つ。彼らは空洞、黒ではない、ただ、無。無、無、彼らはあなたを通りぬけて見詰める。あなたの間を。彼らはついばむ、ついばむ。何も輝かないことが彼らを動かすだろう。彼らの果てなき食欲を満たすものは何もない。群がり、集まり、集める、暗闇の塊。

彼らは怒っている、いつでも怒っている。飢えている。笑いはない、嘲りはない、ただ飢餓だけ。彼らはついばむ、ついばむ、奪い取る骨のような嘴で。えぐり出す群れ、弧を描く暗闇。断ち切り、切り刻み、引き裂くための鉤爪。引き裂く、引き裂く。

彼らはさらに呼び集める。カラスがカーと鳴き、集まり、そしてそれからもう笑いはない。もうからかうことはない。もう話すことはない。いまや彼女のペットは無、ついばむ、ついばむ、忍び寄る飢餓を。引き裂く飢餓を。大いに楽しむ飢餓を。

彼女のオブリビオンの星の下で眠るとき、私は彼らの夢を見る。彼らはただ凝視する。凝視する、凝視する、怒りに満ちる瞳はない。飢餓に満ちる瞳は。私の肉体は彼らを満足させない、けれど彼らは渇望する、私にはわかる。私には自分以外に差し出せるものはないけれど、それは望まない。決して。私は彼女に消費されてきた。彼らは私を得られない。

彼らはついばむ、ついばむ、けれど私は影。肉体は闇。私はもう、彼女に貪り食われた。

指揮官ネレヴァルNerevar the Captain

指揮官ネレヴァル

指揮官にして王。友、学徒、そしてホーテーター。我々は彼の英知を追い求めよう。そして許しを。

歯車の法The Law of Gears

聖なる弾み車の第二革新者、代弁者アルバクロン 著

セト卿の名において、これらは歯車の法の言葉であり、それぞれの法の教えについて注釈を付けたものである。

* * *

多くのコグやスプロケットで構成されたクロックワークの装置のように、我々の多くは決して使わない歯車を持っている。これが歯車第一の法だ。我々には自分で考えるよりも多くの能力があることを教えている。

誰かが歯車を回転させるために、弾み車を回さなくてはならない。これは歯車第二の法で、熱心な働きなくては何も達成できないことを教えている。

仕組みがうまく動かなくなったら、歯車を潰すべきではない。これは歯車第三の法で、やみくもに突進するより、他の方法を考え出すように教えている。

汗と重労働が発明の歯車を回す。これは歯車第四の法で、ひらめきの前には単純な重労働が必要なことを教えている。

現実の歯車の中で、単なるコグ以上のものになるよう努めなさい。これは歯車第五の法で、不可能な夢であっても手を伸ばすように我々を激励している。

歯車をいじる前に、機械を分解しなくてはならない。これは歯車第六の法で、解決を試みる前に、問題の核となる部分まで分類しなくてはならないことを教えている。

一時的な中断や強い動作は、歯車の滑りを引き起こす。これは歯車第七の法で、中断は生産的でないことを教えている。

きちんと油を差した歯車だけが滑らかに回転する。これは歯車第八の法で、訓練と準備が革新の潤滑油となることを教えている。

全てのコグとスプロケットが偉大なる歯車のために奉仕する。これは歯車第九の法で、我々は何よりもセト卿に忠誠を誓い、服従しなければならないことを示している。

言葉はこのように連なっている。

侍者の傷ついた巻物のプレートAcolyte’s Chipped Scroll Plate

メモ 1
助師ダロと一緒にラディアスを巡回していると、奇妙な光景に出くわした。クロックワーク・シティへ続くポータルを、誰かが開いた!知覚タビュレーターがあり、ダロが一緒だったので、近づいて調査することにした。

メモ 2
知覚タビュレーターは調子が悪くなることもあるので、メモを取ることにした。気がついたら、ポータルの真ん前に立っていた。それは異常な注目を惹きつけた。

メモ 3
ポータルに足を踏み入れたが、その時のことは記憶にない。そこは奇妙に美しく、まるで永遠の黄昏の国のようだった。ダロは一緒に来なかった!まあ、いい。調査しよう。

侍者の失われた巻物のプレートAcolyte’s Lost Scroll Plate

メモ 7
何かが自分の足を噛み千切ろうとしている。私は間違っていた。ここは恐ろしい場所だ。奇妙で、最悪だ。自分で何とかできると考えたなら、こっそり装備を持って来るべきだった。

メモ 8
ダイアウルフを100匹くらい倒した後、その足を食べた。スクリブのゼリーさえなかった。食べなければ飢えるしかなかった。この場所から出たら、助師ダロに思い知らせてやる!

メモ 9
ここは別次元にある場所だ、そう感じ始めている。オブリビオンの暗い一角だろうか。間違いなくここには、たくさんの影が存在している。

侍者の焼け焦げた巻物のプレートAcolyte’s Scorched Scroll Plate

メモ 13
橋の向こうに、どこか奇妙な畑がある。知覚タビュレーターはずっと正常に稼働しているが、万が一のこともある。できる限り、自分の日誌に記録をつけていく。今は影の獣に攻撃されるたびプレートが落ちるのを、何とかしなくては!

メモ 14
奇妙なカカシが畑を守っている。知覚タビュレーターを使ってカカシを調べていると、何とカカシが話してきた!死ぬほど驚いて、橋まで急いで戻った。

あの音!そこに何かいるの?

取り残された魔術師の日記Journal of a Stranded Mage

コルマウントの魔術師、オリノル 著

何が一番恋しいか?いや、食べ物ではない。ここで出される水っぽい粥が良く表現して拷問だとしても。それに、そう、緑の香りでもない。たとえ自分が金属臭で一杯に満たされるよう感じられるとしても。そして、安全でもない。なぜならグラーウッドが教えてくれたことは、あらゆる危険に対処することだからだ。

何が一番恋しいか?私の犬だ。

ジョナは可愛い子だ。むくむくした灰色の毛皮、明るいピンクの舌。あの子の瞳はまるで2つの星だ。黄金で輝いてる。しっぽを振るあの子が恋しい。私が家に帰ると、いつだって出迎えてくれた。草原で棒を取ってくるのが大好きだった。イフレよ、何ということだ。私は真夜中に吼えているあの子でさえ恋しい。それであの子をいつも呪っていたのが悔やまれる。何故なら、私はあの子がいい子になろうとして、ひたすら最善を尽くしていたことを知ってるから。

認めるのは情けないかもしれないが、これは間違いなく真実だ。だが、たとえジョナが恋しいとしても、あの子がこんな生活を送ることは望んでいない。実際、私とここに来る羽目になっていたら、今頃は食べられてしまっていただろう。あるいは、この周辺の怪物じみたコンストラクトに殺されていたか。どちらかだ。

こうなった原因は、ある霧の夜に黄昏の月のエールを飲みすぎただけだ。母はいつも、魔術を使うには私が愚かすぎると言っていた。そして、それは全くその通りだった。あのポータルの呪文はそれまでに100回近くやっていたはずだ。エルノフェクスの発声で少し噛んだだけでこうなった。音節が幾つか変わっていたかもしれない。そして、ここにいる。孤独で苦い思いをしながら、犬のことなんかを書いて時間を無駄にしてる。

あの子が世話をしてもらってることをただ願っている。私が旅に出るときは、従姉妹のブレレネルが見てくれていた。だが、ジョナに必要なのはちゃんとした家と優しい手だ。自分よりもあの子を心配してるなんて信じ難い!私は、まあ、自分の尻拭いが自分でできる。あの子のことは、誰がやってくれるんだろう?

修練者オスカードのメモNovice Oscard’s Notes

メモ 3
助師ダロは正しかった。この場所はエバーグロームにつながっていた。影やカラスのような夜の獣が、砂時計の中の砂のようにこの場所を埋め尽くしている!

メモ 4
シャドウクレフトの最初の探索から判明した。ここは、あの忌まわしい獣がクロックワーク・シティに侵入できるよう築いた橋頭堡だった!他の使徒たちに伝えなければ。

メモ 5
どうやらこのナイトシスターが侵略部隊のリーダーで、ナイトテラーと信者が突撃部隊のようだ。目撃した数を記録した、最適な防衛を準備できる。

囁く影の信者 12
ナイトテラー 17
シェイド・ハグ 24
ダイアウルフ 37

住人の物流記録Residential Logistics Log

クロックワーク・シティの居住者(要塞と第6地域)– 176名

居住地域:
真鍮要塞:112
ベントラル・テルミナス:2
記憶のプラニスフィア:2
巻かれ続ける源泉:25
ラディアス:35

居住者の満足度(記録16788):アイオス編集

経済格差は調査期間に7パーセント拡大。事態を緩和するため適量の品を提供することを推奨する。主な要因は心理的な要素によるもの。裕福な調査対象者は、野望や不満のランクが15を越えている。内に秘められた攻撃性の状態は、「中程度」まで上昇した。

治安担当者の不正行為は、安全ではないレベルから変わっていない。全担当者の精神状態を測定する追加調査を推奨する。

栄養状態は問題視する状態にはない。味に関する住民の満足度は、まだ低い。次回の調査期間には、塩を3パーセント増やすことを推奨する。

性交と病気の率は、持続可能な数値に戻りつつある。添加ペーストの効果が実証された。

使徒の革新と発表のレートは、調査期間中に4パーセント上昇した。日照時間が長くなったことが原因と思われる。仮説の立証のため、日照時間をさらに12分増やすことを推奨する。

星を盗むStealing the Stars

我々が必要とする星を奪うことは、細心の注意が必要な作業だ。気をつけなくてはならない。記憶を識別することはほぼ不可能で、必要な記憶を探して広間を走り回るのはごめんだ。忍耐と精度が必要だが、我々の仲間に欠けていることは知っている。

彼女が失敗に対して、あまり寛容でないことを忘れるな。

聖オルムスの評価Evaluation of Saint Olms

聖オルムスは監禁に苛立ち続けている。彼を思い留まらせようとする最善の試みにもかかわらず、オルムスは空に安らぎを求め始めている。しかし、私たちは双方ともアトリウム外での飛行は自由の幻影にすぎないことを知っている。彼の精神を正気から引きずり出している繋がりは聖者の隔離場の壁ではない。人工の身体が彼の監房であり、足に鎖でつながれた錘だ。

理由が何であろうと、セト卿が与えた新しい生命を彼は受け入れられない。どの聖人にもできない。だが、オルムスは特に彼が実在することに格別の苦痛を感じている。彼は試されているか、罰されていると固く信じている。そしてこの被害妄想は、苦痛に耐えることを強要されている間、刻一刻と激しさを増している。今は私を疑い始めてさえいる。彼にとって、私は今や迫害者の代表になっている。彼の審判の実施を継続しようとしている、ここでのソーサ・シルの代理人だ。多くの理由により、これは好ましくない立場だ。

聖フェルムスの評価Evaluation of Saint Felms

聖フェルムスはほぼ常時活動しており、継続的な情動不安の兆候が常に高い。檻の中を歩き回る捕らわれたカゴーティと共通点があるが、拘束する格子なしで、どれだけ長く暴力的な欲望を食い止めておけるのか疑問に思う。正直、教団が聖人の力を閉じ込めておける能力がある檻を建造できるのかどうか、私には確証が持てない。

フェルムスに戦斧を放棄するよう説得する試みは実を結んでいない。戦士に対して武器のように重要な一部を譲るべきだという提案は、激しい侮辱を引き出した。だがそれは改善と見なせるかもしれない。

彼の侮辱の反応は測定され、推論され、他の不満や怒りの噴出と比較された。彼の気分は一瞬のことだったが、フェルムスがまだ理性的な能力を有していることを示す兆しがあった。全体的に安心できるものではなく、軍事的な事柄と征服に対するほぼ単一の焦点を前提とするものだ。

聖ロシスの評価Evaluation of Saint Llothis

聖ロシスの現実逃避は、文字通り衰えることなく続き、落胆した隠遁への道を進んでいる。多くの場合、彼は交信の試みを承認し、認識することに失敗する。私はこの挙動が緊張の一種というより、深刻な抑鬱の現れだと信じている。この診断は短い活動期間中の、ロシスによる指示されていない発話によって裏づけされている。

この症状の発現はより頻繁になり、錯乱の度合いが増している。彼は深い、精神的な繋がりの喪失を嘆き悲しんでいるかのようだ。このトラウマ的な分離が三大神とのあらゆる聖なる繋がりを文字どおり断ち切ることに関連したのか、または単にロシスがトリビュナルとの個人的な関係から離れようとしているだけなのか、私には分からない。この強まっていく動揺はより入念に観察する。私は自傷のリスク、または他の破壊をもたらす衝動がより著しくなることを心配している。

〈星詠み〉の力The Astronomer’s Power

〈星詠み〉の星に対する操作は見事だが、彼はこの力を自然に身につけた訳ではない。今では、彼がこの能力をおそらく終わりがない寿命と共に与えられたことを知っている。この力はどのように与えられたのか、実際のところ一体何なのか、それは定かでない。だが、どう見極めるかは知っている。

攻撃は今だ。彼のプラニスフィアの制御が衰えている間に。幸運はこれ以上我々の側にないかもしれないし、女王が最初に考えていたよりも多くの支援をくださっているかもしれない。構うものか。素早く行動することの価値は皆知っている。機会が失われる前に。

聖者の安全とセキュリティへの懸念Concerning the Saints’ Safety and Security

代弁者ルシアーナへ

前回の私の要請から、結果に繋がる行動がなかったことに驚いている。通信に返信をせず放置するなど君らしくない。ひょっとしたら何か起きたのではないかと考えたが、手紙が君の事務所に届いたことはファクトタムが確認した。我々は君の支配への欲求と信頼の欠如について話し合った。もし君が自分で維持できる以上の懸念事項を背負っているのなら、権限を委譲しなければならない。私は単に君の健康だけではなく、クロックワーク・シティの安全についても懸念している。

残念だが、聖者の隔離場内の状況は改善していない。私の区画はより動揺し、予測できない状態になりつつある。私は彼らが決定的に正気を失う日が近くなっているのではないかと恐れている。もしそれが脱走への欲求となったら、私の数少ないファクトタムは聖人を抑えておけないだろう。彼らは驚くほどの力を持つ存在だ、ルシアーナ。彼らのことを慎重に考慮しなければならなくなる日が来る事は避けられない。それもそう遠い話ではない。準備をしておかなくては。

君の道が大いなる歯車を回さんことを。

矯正官ランドラス

製造された植生の研究からの抜粋Excerpts From Fabricated Flora: A Study

侍者ケルヴィヴィ 著

クロックワーク・シティ土着の植物は、ほとんど例外なく陸の類似物を完全に人工的に模倣したものだが、ホール・オブ・レギュレーションの中で成長しているものが一つあり、それは謎として残っている。アイアンストークキノコと呼ばれていて、しばしばホールの暗く湿ったトンネルに生じる。私は幾つかサンプルを解剖し、この生命体は完全に有機的なものであるが、生体構造や無縁と思える環境との適合性は、ある目的をもって設計されたことを暗示していると信ずるに至った。

これらの菌類は貪欲に鉱物、錬金術の残滓、生理機能に悪影響を及ぼさないと見られる腐食性の素材さえ吸収する。タムリエルの胞子がエクソドロマルによってホールにもたらされ、根を張り、繁殖したのは、単なる偶然の出来事だと推測した者もいる。私に言わせれば、そのように雑な判断は単なる怠慢だ。ソーサ・シルが完全に有機的な創造を壮大な設計にもたらさなかったと無造作に仮定することは、もしそれが彼の目的にかなったなら、彼の能力に対する不信だ。

私は、アイアンストークキノコがホール・オブ・レギュレーションから、有害な、または少なくとも機械にとっては解決が難しいことが分かっている汚染物質を浄化する必要性から生じたという理論を立てている。 我々は極めて細部まで精密に、注意を持って創出された世界に居住する。未知のものを思いつき、宿命、偶然として退けることは、ニルンでは許容できるかもしれない。だがクロックワーク・シティには壮大な図式だけがある。ここには常に世界の仕組みの真相があるのだ。

戦斧ブリスボールのバラード(第六節)The Ballad of Brisbor Battle-Axe (verse six)

ブリスボールの情熱は燃えている、禁じられた欲望に燃え上がる、
焼け焦げた敵の死体から与えられた冷たい声、
死は哀しい鎮魂歌を歌い上げ、魂をバラバラに引き裂いた。

全住民への警告Warning to All Residents

注意!門を越えると安全は保証できない。

ファクトタムの義務への妨害は致命的な結果を招くだろう。

代弁者ルシアーナの日記、第1巻Proctor Luciana’s Journal, Vol 1

日付:(月と日は不明)第一紀2712年(?)

私はおぼつかない手でこれを書いている。ファクトタムはすぐにまた新しい指を自由に動かせるようになると言う。疑わしいものだ。

私は日記をつけたことがない。ずっと虚しい行為だと思っていた。人生の全ての仕事を紙に書くなどということは。まるで誰かが読みたがっているかのように。だがこのような状況では価値があるだろう。私はとても奇妙な場所にいる。クロックワーク・シティだ。

楽な旅ではなかった。あまり多くは覚えていない。木があった。ヴァレンウッドだ、たぶん。私が覚えているのは、召喚した刃を持ったハッとするような何者か。そして閃光。後は?囁きと痛みだけだ。

目が覚めると、ガラスの球体の中で漂っていた。ある種の粘性がある液体に沈んでいた。光沢のある金属の締め具が私の砕かれた手足を固定し、その間に小さな機械の生き物が肉体を新しい真鍮の器官に縫い付けた。とても驚いたことに、私は呼吸する必要も感じなかった。ただひどい喉の渇きと、夢を見ているような感覚だけがあった。背の高いエルフがガラスの反対側から私をじっと見ていた。彼の顔は球体の曲線で覆われていた。彼は自らソーサ・シルと称した。そして、私は生きると告げた。彼はまた、私が息子を持ったとも言った。

これは驚きだった。私は妊娠していたことさえ知らなかった。どうやら、ファクトタムが私の破壊された体を大急ぎで固定していた時、小さく、かろうじて生きられる子供を発見したらしい。タムリエルなら極端な早産は死の宣告だっただろうが、ここでは無理なことが容易なように思えた。

私は子供を持つつもりが全くなかった。アカヴィリで戦争をしながら子供を連れ歩くことは、とても現実的とは思えなかった。だが時と環境は、私たち皆を嘲笑う。

私は彼にマリウスと名付けた。父方の祖父の名を貰って。もし私がこの怪我で死んだら、この日記が彼の役に立つように願う。少なくとも、彼は家のようなものについて知るべきだ。

日付:黄昏の月15日、第一紀2712年(?)

クロックワーク・シティについて知るほど引きつけられる。真鍮要塞はほとんど慰めを与えてくれない。乾いた厳しい場所で、奇妙な機械と奇妙な人々で満ちている。ほとんどがダークエルフだ。ダンマーには以前会ったことがある。もちろん。だがクロックワークの使徒は違う種族のようだ。彼らは他の何よりも論理と革新を尊ぶ。想像できるか?仲間の魔闘士はいつも私の冷静な理性に対する深い敬意を馬鹿にしていた。「お前の火はどこだ?ルシアーナ」。まるで厳密な思考には火が存在しないかのように。

ソーサ・シルはまだ、折に触れて私の状態を確認する。彼のような人には会ったことがない。使徒は彼を神のように崇拝している。だが、それが彼を落ち着かなくさせているのが私には分かる。彼はたまにしか目を合わせないが、それは臆病さから来るものではない。いつも何か別のことに集中しているだけだ。機器、本、何か別のクロックワークの奇妙な物事。私は機会があればいつでも彼に質問した。この場所の性質、彼の真意、彼の来歴についての質問だ。直接答えを得られたことはない。それでも、彼はやりとりを楽しんでいるように見える。たとえここで崇拝者と忠実な機械に囲まれていても、彼が心底孤立していることを感じる。

使徒は私に、ここでは神への冒涜が受け入れられると言い続けている。奨励されてさえいると。だがそれはまるで根拠のない信念のように見える。私が「クロックワークの神」との会話について話すと、世話人の読師マリラは心底驚いていた。例えば、私はソーサ・シルにあのしつこい噂について聞いた。彼と他のトリビュナルはどうしてダークエルフの王、インドリル・ネレヴァルを殺したのかということについて。マリラによれば、その話題は完全にタブーだそうだ。それでもソーサ・シルは、静かな礼儀正しさをもって質問に答えてくれた。

「君はなぜ物事が起きると思う?」彼は聞いた。私は彼に質問の意味が分からないと言った。

「なぜ私たちはここに座って話す?なぜ若きマリウスは存在する?なぜ私はこの場所を支配する?その中で君が回復に向かう間に」

私は少しの間静かに座って、それから答えた。「そういうものだからよ」

彼の冷たい表情は溶け、真面目くさった半笑いになった。「その通り」

自信はないが、彼の声にほっとした響きがある気がした。彼の肩の力が抜け、声のトーンが変わった。彼は自分の罪に安らぎを見出した男のように見えた。程なくして、彼は私に会話の礼を言うと、音もなく部屋を離れた。

私は真鍮のベビーベッドでぐっすりと眠っているマリウスを見下ろした。その瞬間、全てが意味をなしたように思えた。クロックワーク・シティがやっと故郷のように感じられてきた。

代弁者ルシアーナの日記、第2巻Proctor Luciana’s Journal, Vol 2

日付:星霜の月12日、第一紀2713年(?)

1年かけてよく考えたあと、クロックワークの使徒に入ることを決心した。少なくとも1年だと思う。ここの時間の流れはすごく奇妙だ。

容易な決断ではなかった。心の中で、レマン・シロディールに仕えるのをやめたことはなかった。だが今ではタムリエルの紛争が遠いことのように思える。アカヴィル、ヴァレンウッド、コロヴィア。全て遥か遠くに感じる。ここで重要なことと完全に切り離されているように。クロックワーク・シティで重要なのは仕事。論理。秩序だ。セト卿の使徒として、私は本当に貢献できる。そして心から言える。心の中のレマン・シロディールに取って代わるべき者がいるとすれば、それはソーサ・シルだと。

彼を崇拝するという考えには頭を悩ませた。その考えに対して彼がとても不快そうに見えたのが主な理由だ。私は会話がなくなるのではないかと心配した。または、私を大したことがないと考えるのではないかと。幸運にも、その知らせを告げたとき、彼は喜んでいるように見えた。

「一番良いことだと思う」彼は言った。それからマリウスの横にひざまずいて、小さな手をとった。一瞬、彼がとても遠くに見えた。ほとんど悲し気に。最終的に彼は囁いた。「君の母親は強く、賢い。君たち二人がいて嬉しいよ」

なぜかは分からないけど、こう口走ってしまった。「それで、なぜ私たちを助けたの?」

セトは一瞬ためらい、それから囁いた。「それはいつか、君が光を照らすからだ」

どういう意味かと尋ねる前に、彼は消えてしまった。マリウスはそれを見て笑った。彼はソーサ・シルが光の中に消える姿を見飽きることがない。私の方は不安を感じていた。彼の気分を害したのでなければいいのだが。

日付:蒔種の月26日、第一紀2721年(?)

何かがおかしい。マリウスがまた倒れた。監視ファクトタムによれば、力が抜けて呼吸が浅くなり、回廊のすぐ外側で倒れたそうだ。ここ数週間で3回目だ。

最初は少し頑張りすぎただけだと思った。9歳の男の子は無理をしすぎるものだし、あの子はいつも少し病弱だった。だけど、部屋で彼を見たとき、顔色は蒼白で、声にはガラガラとした響きがあった。彼は私に何が悪いのかと尋ねた。私は正直言って分からないと答えた。明日彼を連れてファクトタム・メディカに会いに行こう。

日付:恵雨の月9日、第一紀2721年(?)

数日間検査した後、ファクトタムと臨床医はついにマリウスの診断を下した。出産に関連する心臓の欠陥だった。どうやら、彼の出生時の状況(私の破壊された体、過度の早産、そしてベールを越えた旅)がある種の出血、あるいは動脈のねじれを引き起こしたらしい。タムリエルだったら恐らくもう死んでいただろう。いやむしろ、2回は死んでいるだろう。

私は予後診断を頼んだ。しかしファクトタムは様々な結果の見込みに触れて提供を拒んだ。彼は30歳になれるかもしれないし、明日死ぬかもしれない。いずれにせよ、彼の人生は困難で短いものとなる。私は依然として(いつになく)楽観的だ。セト卿はもっとひどい負傷を治した。そして、人々を一瞬に人生へと連れ戻した。ここクロックワーク・シティで、彼のような欠陥は到底絶望的ではあり得ない。ソーサ・シルが隔絶された場所から現れたら、すぐに願い出よう。

代弁者ルシアーナの日記、第3巻Proctor Luciana’s Journal, Vol 3

日付:南中の月16日、第一紀2722年(?)

もう1年以上になるが、ソーサ・シルはまだコギタム・セントラリスから戻っていない。マリウスの健康状態は悪化し続けている。彼はほとんど毎日自室で過ごし、研究や錬金術の実験をしている。これを書くのは嬉しいことだが、薬やチンキ剤となると類まれな才能がある。彼は薬品のために探し回ることが大好きだ。もちろん、ラディアスで生きている材料を見つけるのは難しいことだろう。私は薬草学の冒険を1日1時間に制限している。それで私のことを快く思っていないけれど、彼は賢い。なぜ自分が要塞の塀の外に長い間留まってはいけないか分かっている。

ファクトタムは、日ごとにマリウスの体調が深刻になっていくと言う。すぐにセト卿が現れてくれるといいのだけど。

日付:栽培の月5日、第一紀2724年(?)

3年が経ったが、まだソーサ・シルの気配はない。他のクロックワークの使徒は戻るまでに数十年か、数世紀かかるかもしれないと言う。明らかにマリウスと私にはそんなに時間がない。

とはいえ、私たちは心地よい日常の中で落ち着いている。私が要塞の用事をして、ラディアスの一部を管理する手伝いをする間、マリウスはフラスコと蒸留器であれこれ研究している。ソーサ・シルの栄光のための労働だ。彼は手足の代用品のことでいつも私を困らせる。曰く、真鍮の手は繊細な計量をする精度の向上に役立つだろうとか。私は「来年あたりね」と答え続ける。でも、それでどれくらいごまかせるのか分からない。彼は意志が強い。頑固でさえある。彼がその意思をどこから手に入れたのか、想像もつかない。

彼の実験は驚かせ続ける。皆が驚いたことに、彼は緩和剤を作った。明らかな副作用が何もなく、心臓の鼓動を普通のテンポの4分の1に低下させるものだ。ファクトタムは彼の生命の予測値を相応の比率で増加させるかもしれないと推測した。重ねて言うが、確かなことはない。ソーサ・シルによる直接的な介入が、回復のための最高の機会であることは変わりない。クロックワークの神が隔絶された場所からすぐに出てこなければ、自分で何とかしなければならないかもしれない。

日付:黄昏の月14日、第一紀2728年(?)

マリウスは今日16歳になった。少なくとも私は16歳だと思う。クロックワーク・シティの中の時間は奇妙な動き方をする。クロックワーク・バシリカの天辺に旅行をしてお祝いをした。私は道中のほとんど、彼を運んで行かなければならなかった。長い間歩くだけの体力はもう残されていなかった。

これまで実際に、塔の天辺に来たことはなかった。見渡す限りの景色は、詩人と恋人のためのものだった。私はどちらでもない。私は日々を埃っぽい通りで過ごして来た。ランタンがバシリカの廊下を照らし、粗野で広大な街から隠した。だが、セトのバンドがセレスティオドロームのガラスに沿って滑るのを見て驚いているマリウスと、ラディアスの厳しい砂漠が下に広がっているのを見た時、私の中に何かが生まれた。この街こそ本当の故郷だと分かった。ずっとシロディールがそうだった以上に、私の故郷だと。今では、私は決してタムリエルに戻らないと分かっている。私はここクロックワーク・シティで生きて、死ぬのだろう。

日付:栽培の月22日、第一紀2730年(?)

今は物事が素早く進んでいく。今朝、マリウスが錬金術の机の横でぐったりしているのを見つけた。かろうじて反応がある。私は彼をベッドに移動させ、最高位の臨床医と少数のファクトタムを彼の看病のために呼び寄せた。そして、コギタムへの旅の準備をした。

上級の使徒が考え直すよう訴えてきたが、これ以上忍耐強く待つような余裕は私にもうなかった。ソーサ・シルだけがマリウスを救える。セト卿を夢から覚ますことができれば、息子を救うために必要なことをやってくれることは分かっている。セトがこの誠実な労働を祝福しますように。行かなくちゃ。

代弁者ルシアーナの日記、第4巻Proctor Luciana’s Journal, Vol 4

日付:収穫の月31日、第一紀2750年(?)

どうしてこれを書いているのか分からない。マリウスの役に立つようこの日記をつけていたけど、彼は去ってしまった。20年が過ぎた。時間はきっと和らげてくれる。虚しさと痛みを。だけど今、私の悲しみはこれまでになく深まっている。

多忙。秩序。これらが助けになる。私は仕事に打ち込んだ。使徒を組織化してより強く、より引き締まった、より実戦的な教団にした。犯罪を取り締まり、マリウスの錬金術の実験に関する論文を出版し、呪文の作成に集中した。だが、仕事の達成はいずれも、息子が去った後のぽっかり空いた穴を埋めるには到底至らなかった。

あのコギタムの中で何が起こったか、私は誰にも話したことがない。人々はその話題を持ち出すことを軽く恐れている。今、20年経っても、私の怒りは強烈に輝いている。

裏切り。考えられるのはこの言葉だけ。私はセントラリスをできる限り素早く渡った。私とセト卿の間に立ちはだかるあらゆる敵対的なファクトタム、ファブリカント、そして機械の罠を破壊しながら。正玉座にたどり着いたとき、私はソーサ・シルが力の玉座に続く階段に座っているのを見つけた。彼は見上げさえしなかった。

「君がなぜここにいるかは知っている」彼は言った。

私はその時純真だったから、微笑んで子供のように彼へと駆けていった。「良かった!」私は叫んだ。「急いで移動しなきゃ。マリウスが死んでしまいそうなの」

けれどソーサ・シルは立ち上がらなかった。私の目を見ることすらしなかった。「すまない」彼は言った。「君が求めるものは与えられない」

私は彼が言っていることを理解しようとして言葉に詰まった。私は馬鹿みたいに同じことを繰り返した。たぶん彼は私が言ったことが聞こえなかったのだと考えながら。「マリウスが死にかけてる。できるだけ早く彼のところに戻らないと!」

彼は立ち上がり、話す前に唇をぎゅっと結んだ。「すまない」彼の答えはそれだけだった。

永遠にも感じられる間、私たちは無言で立ち尽くしていた。最終的に、私は頭を振って囁いた。「分からない。私の身体が破壊されたとき、あなたは治癒した。治したいのはマリウスの心臓だけなのよ」

セトが近づき、私の肩に真鍮の手を置いて言った。「君は誤解している。マリウスを治癒することは私の力の範囲内だ。だが状況が不可能にしている。気の毒に思うよ、ルシアーナ」

見上げると、彼の瞳には涙が浮かんでいた。自分の中に激しい怒りが沸きあがるのを感じた。ハンマーに手を伸ばし、それを自分の頭の上に持ち上げたのは、セトが消滅の言葉を囁いて、私をすごい速さで地表に向けて送り返す、ほんの一瞬前のことだった。

マリウスは2日後に死んだ。ソーサ・シルは今も、コギタム・セントラリスに留まっている。

他の使徒が、かつて帝国軍で私の指揮下で死んだ男の、嘆き悲しむ両親に言ったのと同じ慰めを言ってきた。「寿命だったんだよ」「彼は良い、立派な人生を送ったよ」延々と。だけど心の中では、決してソーサ・シルを許さない。決して。私は使徒の代弁者であり続ける。私は常に愛する街を守るだろう。そして法と教団の伝統を支持するだろう。だが私のクロックワークの神に対する敬愛はしぼみ、消えてしまった。

これは最後の日記だ。誰であれこの日記を読むことを選んだ人へ。これだけは知っておいて。ソーサ・シルは話し合いも慈悲もなく、与え、そして奪う。彼の興味を共感と取り違えてはいけない。支援を本物の思いやりから来る行動と取り違えてはいけない。何人かは救われ、他の者は犠牲となる。これがクロックワーク・シティにおける物事のあり方よ。

懲戒の儀式Castigation Ritual

私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。私はソーサ・シルのお言葉を書き間違えません。

鉄くずの足止めStuck in the Slag

スラグタウンの良き保安官代理、サーコン 著

正直、どうしてこんなものを書いているのか、自分でも分からない。誰が読むの?この管轄区では、誰も読まないでしょう。もっと言えば、読む気になったとしても文字を読めるのは住民の半分もいない。この輝く街は学者であふれているけど、貧しくて汚れた人たちを救うため、古臭いスラグタウンに来た人がいると思う?当然いない。

時々、小さい子たちに読み書きを教えている。仕事の合間に。幸せな気分になれるのは、その時だけよ。でも、彼らもすぐに仕事を見つけて去っていく。母音だとか、動詞だとか、そういう保安官代理のくだらない話に付き合う時間もなくなる。母は聖人のように辛抱強かった。だからこんな自分でも、何とか勉強を終えられた。

今ここで、正確に記録しておきたい。スラグタウンにいる、我々スクラップについて。我々は愚かではないし、怠け者でもない。こんな場所は、絶対我々にふさわしくない。あのきらめく街にいる連中の話に耳を傾けないで。あの学者たちは、自分たちが我々よりずっと上等な存在だと思っている。こっちには、危機を乗り越える知恵がある。あふれるほどの勇気、危機を避ける狡猾さ。駆り立てるものがなければ、長くは生き延びられない。

ああ、もちろん。出口はある。魔法を十分マスターして、技術的なノウハウがあれば逃げ出せる。機械にものすごく詳しい叔母がいた。何でも知っていた。中を見ただけでロボットを分解して、また組み立てられた。叔母はすぐに抜け出して、二度と戻らなかった。母を訪ねることも、一言の便りさえなかった。スラグを去ったら、後ろを振り返るな。誰も、それを責められない。ここはひどい場所よ。

ファクトタムをうらやましく思うことがある。早く仕事を終える、ちょっと指導を受ける、それで終わり!いつかそうなりたい。この道はつまらない。やっと食べられる程度で、自分が偉いと思ってる連中から施しを受ける。頭がおかしくなって当然よ。全部捨てて去りたいのも当然だけど、どこへ行く?行き場所なんてない。街にもないし、この周りの荒野にもない。泥にまみれて、何とかやってみるしかない。

非合理の崇拝Worshiping the Illogical

ソーサ・シルの使徒、代弁者ネヴィン 著

クロックワークの使徒はその人生を多くのことに捧げる。説話は忠実であり続ける第四トゥールビヨンのデルドライズ・モーヴァインによって我々の前に示された。我々の神、セト卿の意志、巻かれ続けるメインスプリング、聖なるメトロノーム。ひらめき、革新、あらゆる形、魔法、技術、霊的な発見の原動力。だが我々はしばしば忘れてしまう。我々が世界の謎を解き明かすための追求をする中で、我々もまたトリビュナルの被験者であることを。

長きにわたる在職期間中、私は生徒たちがトリビュナルの中にある信仰の三重の本質について把握するため大変苦労していることに気づいていた。それでも、繰り返される質問にも関わらず、私が好奇心を拒絶することはない。むしろ、奨励しようとしている。レディ・アルマレクシアとヴィベク卿に対する信仰の中には、おびただしい矛盾があるからだ。結局、これらの神々への崇拝は、我々が教団の中で抱いている信仰と反しているように見える。

なぜ我々は健全で安定したクロックワーク神と同時に、これらのしばしば不可解な神々を崇拝するように言われるのか?何故一人の神でなく、三人に従わなければならないのか?

しかし、この見たところ単純な事実でさえただの誤認に過ぎない。この連なりに我々は真実を見つけたからだ。アルムシヴィは多くの者が認めているような砕かれた存在ではなく、単一の存在にすぎない。それは我々の神々が砕かれたように見えるだけで、分けられた神々なのではなく、全て継ぎ目のない全体の一部だ。彼らは不規則の中に規則されている。レディ・アルマレクシアとヴィベク卿が一貫しているのは彼らの矛盾で、それも我々の真実の秩序を作っている。彼らは我々のセト卿のチクという音の中のタクという音で、車輪は永遠に前へと進むが、ただ円を描いているだけだ。

彼らは我々の混沌とした現在の真実で、我々が一つにしなければならない不規則な振動だ。彼らの中に我々は人間性の側面を見出す。それは機械と融合する魂、恩恵と融合する大志だ。信仰という行為自体が、我々が確信を持っている重要な原理と矛盾するように見える。しかし我々の全てが、完全に冷たく論理的で、互いに結びつける感情を持たない機械であることはない。いや、我々は結合された存在で、三大神と同じように多様で複雑だ。我々の個性を創り出すため同時に生じた、砕かれたパーツだ。

このような側面にどうやって自身を捧げるのか?論理と秩序ではないニルンのこれらの特性に、我々の基本理念はどうなる?説話は我々に限界を理解するように告げる。注意を払い、尺度の境界を知るように。我々の現在の世界、前のニルンに求められている理念がある。そして全体に対する追加に過ぎないものが後のニルンだろう。

言葉、法、限界を強く抱け。彼らは砕かれた自身の、結合された全体の反響であることを知れ。荘厳なピストンは同様に与え奪い、劣ったエルフたちの名のある探究を切り裂く。我々は再び結合された全体を切り離さなければならない。信仰、構造、法律。いつかは時代遅れとなり、必要とされなくなる。

だから我々は神々の側面に敬意を払わなくてはならない。アルムシヴィへの忠誠がなければ、我々は自身が真実から切り離される。敬意をもち、忠誠をもってレディ・アルマレクシアとヴィベク卿の名を語れ。彼らの言葉を聞き、必要な時には彼らの法に注意を払え。彼らは我々を反映する壊れたコグで、我々が称える真実と同様に崇められる。

表現のエンジンEngine of Expression

聖なる弾み車の第二革新者、代弁者アルバクロン 著

最初にソーサ・シル卿によって作られ、後にクロックワークの使徒によって広められた概念である大いなる歯車は、存在するもの全てが緻密に調整された機械の仕組みとして表現できるという考えを示している。大いなる歯車はニルンを繁栄させる生命と力の源たる、自然の根本となるエンジンを象徴している。それは文字通りのエンジンではない。謎の父が彼の教えと哲学を詳しく述べる際に、原始のエンジンという暗喩的な発想を使用したのだ。セト卿から学んだ使徒は彼の手本に従って、暗喩に基づいて豊かで表現力あふれる話し方を作り上げ、それが彼らをトリビュナルの他の信徒と隔てている。

感情、思考、意図を表現するために歯車とピストンの働きを利用した様々な暗喩を用いることにより、使徒は使命と信心に基づいた特有の方言を発展させた。これは慈しまれてきた成句に、大いなる歯車の動きに詳しくない者のために意味を添えたものだ。

「大いなる歯車にかけて!」戸惑いや驚きを示す感嘆の声。だが、これは適切な状況においては衝撃や恐怖を表すためにも使用される。

「大いなる歯車が百万回鳴っても絶対にない」起こった出来事の有り得なさを強調し、起こりそうもないことを説明するための慣用句。

「歯車は私のために調整されなければならない」希望的な意図、好ましい状況、何もかもが前向きな形で同時にやってくることを強く願う表現。

「歯車が滑ったら」何かが極めて正しくないか、状況が悪くなっていることを表現するフレーズ。

「歯車が固まった」何かが台無しになったことを意味する表現。通常は不注意か愚かさによるもの。

「トリビュナルの歯車がカチッと収まる前に」物事を急がせるか、わずかな時間しかないか、過ぎようとしていることを示すフレーズ。

「歯車に巻き込まれた」懸念事項の表明。通常は困難な状況、厄介事、簡単には解決できない問題に関連している。

「あなたの歯車が自由に回りますように」友好的な別れ。受け手の幸運と引き続いての成功を願っている。

「あなたのピストンが決して妨げられませんように」人を送り出す際、幸運を願って使うフレーズ。

「大いなる歯車があなたの方向へ回りますように」クロックワークの使徒か、親しい友人か、教団に関係のない仲間に対して幸運を願う表現方法。

「コグを締めろ」てこ入れする、強化する、より良くする。

「クロックワークは最弱のコグと同じ強さしか持たない」文字通りのフレーズ。しかし、「最弱のコグ」は実際の歯車の歯でなく、比喩的に人やその他の欠けた機能も指す。

「大いなる歯車が回転を止めることはない」望むと望まざるとに関わらず、時は過ぎ、世界は動き続けることを断言するフレーズ。

「大いなる歯車がもう少し回るまでお待ちください」誰か、または何かに時間をくれるよう頼むフレーズ。

「大いなる歯車は回る、だから急げ」時は流れるため、無駄に費やしてはいけない。

「時に大いなる歯車は挫折からチャンスへと回る」如何なる同様の格言も、通常は運命の気まぐれによって状況は良い状態から悪い状態へ、またはその逆に変わることを示唆している。

言葉はこのように連なっている。

〈不完全〉の運用記録The Imperfect Logistics Log

現在の戦闘成功率 – 66%

戦闘分析:
対戦者死亡:126
対戦者降伏:58
対戦者成功:93

〈不完全〉構造分析(記録17901):アイオスによる集計

対戦者の成功率は分析期間中に3%増加。戦闘シークエンスを通して構造的完全性を保持するため、キネティックシールド機能の防御力増加を推奨。過度の電力サージによるセキュリティコイルの過負荷に注意すること。さらなる分析が求められる。

エネルギーアーク機能へ送るパワーの減少は、認証の聖域が構造的損傷を受ける危険性を減少させる。戦闘シークエンスの間に付加的な補修を維持することを推奨。現在のデブリレベルは戦闘に対して許容範囲内と見なされる。

対戦者種別:ノルド、カジート、ボズマーは戦闘中の行動が一貫して予測不可能であることが判明。統計上の共通点における現在の理論は、まだ公開されていない。これらの対戦者内での文化的不規則性と戦術についてのさらなる分析を推奨。

任務遂行ユニットのタスク受諾率は23%に減少。主要な原因は第一に心理的なもの。「虐殺」「斬首」「瀕死」という言葉の削除を推奨。報酬に重点を置き、戦闘時に味方を同行させる必要がある。

〈不完全〉プロトタイプの完成度:不明

〈不完全〉の操作マニュアルImperfect Operations Manual

すべてのファクトタムは基本的な掘削技術を有しているが、〈不完全〉は力に関してすべてに勝る。残念ながら、〈不完全〉の掘削には巨大なエネルギーが必要になる。より劣ったファクトタムとは違い、このオートマタはチャージ済みのアニモ・コア稼働が必要だ。

アニモ・コアをチャージする手順

1.不活性かつ空のアニモ・コアが蒸留液装填ブラケットにしっかりロックされていることを確認する。
2.すべてのフローバルブが正しいスループット位置にあることを確認する。
3.ジオード蒸留液のフローレベルを「フル」に設定する。
4.コアを完全に充填し、装填ブラケットのロックを外してコアを取り出す。

注意点

フローバルブの位置を間違えると、ジオード蒸留液の供給システムが破損する可能性がある。フローの位置が不安定になり、危険になったら緊急リセットバルブを稼働させること。すべてのフローバルブは、元の位置に戻る。

連続した真実 第7巻The Truth in Sequence: Volume 7

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

車輪のことを思え。全てと関連している。

車輪ほど神聖なものが他にあるだろうか?最後のタムリエルのように、車輪は動き、そして動かない。アヌヴァナシ。車軸は眠り、スポークは急いで回る、反射する円を描いて。さあ、ここに名のない秘密、トリビュナルの子がいる。回っている時、それは動くのか?

動きは後のニルンの中心にあるが、全ての動きに名がないわけでない。全ての動きが彼の祝福を得るわけではない。

聖なるメトロノームは、最初の動きを「線の動き」と呼んだ。線の動きとは単純な思考の動きで、弱い意志と学者のうぬぼれの動きだ。「前へ!」そう叫ぶ!安っぽい野望の果実に向かって。永遠に続く王国の約束に向かって。賢者たちが「進歩」と呼ぶ幻影に向かって。このせいで、開拓者たちの冒険が荒れた未来へと誤って導かれてしまった。その後の価値、ある程度価値がないとは言わない、美徳の未来へ。だが、人間やエルフが単一の未来を深く見つめることに、何の得があるのだろうか?定命の者の目的は狭い。狭すぎる!前に進む時、無数にある方向を無視して一つを選ぶ。これは獣か子供のやり方だ。クロックワークの神は、勇気の姿をした虚栄を否定した。この探求者たちの旅は、最後のタムリエルよりももっと先へ進めるだろう。アヌヴァナシ。

セトは第二の動きを囁きでしか語らない。「振り子」、あるいは「名のある揺れはカチカチとした動きだ。混乱と、偽りの動きだ。クロックワークの神だけが、その闇の力を求められる。大きく揺れるたびに、ロルカーンの嘘が聞こえる。「おい、意志が別れたぞ!おい、呪われた多数よ!」灰の子供よ、振り子の道の邪魔をしてはならない。巻かれ続けるメインスプリングだけが、その重みに耐えられる。

最後は往復の動き。「荘厳なピストン」だ。恋人たちの抱擁だ。まるで謎の父のように、同じ量だけ与え奪う。紐についた蝶結びのように、第四の思考を呼び覚ます。大工のノコギリのように前後へ動き、劣ったエルフたちの名のある探究を切り裂く。名のない心臓だけが、その力を抑制できる。芸術家、星数え、技師たちは、これを「ミューズ」と呼んでいる。真実を隠された多数は「破壊者」と呼んでいる。

理解できたかな、トリビュナルの子たちよ。あらゆる動きは意図を隠す。車輪から離れることは、クロックワークの神を捨てることと同じだ。最後のタムリエルでは、すべてが回転する。回転するだけだ。アヌヴァナシ。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第8巻The Truth in Sequence: Volume 8

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

祝福されし謎の父よ、あなたの油を私の舌に与えてくだされば、私はモーンホールドの真の物語を語るだろう。語られざる計算の力を見よ!巻かれ続けるメインスプリングの力を見よ!

全ての名がない魂は、モーンホールドの真実を明らかにせよ。灰の中に、多くの教えが隠れている。さあ、苦悩と恐怖の賛美歌を歌うのだ、セトの子よ!メエルーンズ・デイゴン、破壊の支配者に備えよ!メエルーンズ・デイゴン、炎の暴君!メエルーンズ・デイゴン、大崩壊の父!アルマレクシアの宝石を踏みにじられたことを思い出せ!彼の意思が炉の炎のように燃え、熱い振動が唇から落ちるのを覚えているか?4個の巨大なカミソリを、彼は高く掲げていた。それぞれのカミソリがかん高い音を鳴らし、彼を讃えた。炎の激流が善良な人にも悪しき人にも降り注ぎ、骨から肉は引き剥がされ、叫び声の中で残された、女と子供たちが吹き飛ばされた。

「炎と血に覆われた私に、立ち向かえる者はいるのか?」そうデイゴンは吠えた。暗黒の公は胸を叩き、長く忘れ去られていた呪いを叫んだ。死が墓から吹き出し、慈悲を求めて大声で叫んだ。黒い液体となった罪が下から吹き出し、破壊された家々は熱い嘘と陰謀に飲み込まれた。あらゆる場所で、灼熱の業火が全ての魂を灰に変えた。

慈悲の母アルマレクシアは、かつて美しかった街の残骸を見て涙した。愛したものが燃やされ破壊された姿に、彼女の心は溶けた真鍮に変わった。クロックワークの神は彼女の怒りを記録し、記憶のプラニスフィアに記憶を封じ込めた。彼女の愛の高い代償の記録として。

トリビュナルたちが鋳造の煙のように地面から立ち昇り、災厄のデイドラ公に立ちはだかった。アイエムの声は高い汽笛のようで、ソーサ・シルは傾くエンジンのようだった。

「エラム・ヴァル・エ・アルタドゥーン!」彼らは叫び、衣服を引きちぎり、殺しの仮面をつけた。アイエムはホープスファイアを抜き、川の石のように炎を飛び越えた。強い叫び声を挙げ、彼女はデイゴン卿の胸に剣を深く突き刺し、牢の鍵のようにひねった。燃えるような血が傷から吹き出し、彼女の手や顔は火傷を負った。彼女が倒れると、聖なるメトロノームは無限の角度でわずかなルーン文字を刻み込んだ。我が母の失墜を止めるため、ブリキ、銅、オリハルコンの鉱脈が地下深くから吹き出したのを覚えているか?彼の意思のみで、偉大なセトは鉱脈を神の青銅の鞭に変え、容赦なく公を攻撃した。デイゴンはうめき声をあげ、後ずさった。彼のこの世ならぬ肉体は、鎌に刈られた藁のように崩れ落ちた。ああ、サーミッショネイサムの屍鬼は、どこからでも現れる。

多数の生物がアイエムの周囲に集まり、口や傷口から高熱のタールが滴っていた。アイエムに倒れ込みながら彼らはうめき、吐き、デイゴンの名前だけを口にしていた。ウォーデンは三度歯ぎしりし、祝福された剣を手にして、獣たちを何度も攻撃した。彼女は首から頭を、肩から腕を、美徳から罪を切り離し、古い誓いの消滅を叫んだ。あの赤い日、獣たちが彼女にどう倒されたかを覚えているか?

狂気の叫びを忘れてはならない!ソーサ・シルの攻撃を受け、デイゴンがいかに激怒し怒鳴ったかを!「見よ!」公を砕いた聖なるメトロノームは叫んだ。「失われたアルド・ソーサの怒りを見よ!偽りの父の偽りの息子を、我が手で殺したことを知れ!カエル・パドメ・ヴィエ・アルタドゥーン!」

最後に至ってさえ、破壊の公は態度を変えなかった。生き残った最後の強力な四つの腕を使って、デイゴンは最後の4つの偉大なカミソリを時計作りの顎に当てた。自分の舌で血の味を確かめた我が謎の父は、最後の時の死の言葉を囁き、デイゴンはあらゆる時で爆発した。アース・ボーンズはおののき、全車軸は震えた。この切り裂きの言葉から、真実が根を生やした。

メエルーンズの残骸はニルンとオブリビオンの間を滑り、不機嫌な子供のように呪いを叫んでいた。巻かれ続けるメインスプリングは真鍮で覆われた拳を握りしめ、叩いて隙間を閉じた。最後のタムリエルに、また少し近づいた。アヌヴァナシ。モーンホールドの崩壊の真実はこれで終わる。この物語を決して忘れるな。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第9巻The Truth in Sequence: Volume 9

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説教からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

「巻かれ続けるメインスプリング」は何よりも作成を高く評価する。形作り、組み立てる女と、着想し、創造する男。クロックワーク神の真の子供たちだ。

お前の仕事にはソーサ・シルの荘厳なクロックワークのように、唸りや擦過音を必要としない。ブラシ、木工錐、トング、針。それぞれが謎の父を称えるだろう。彼の真実を語る限りずっと。そしてセトの子よ、彼の真実とは何か?完全なことのみか?そうではない。連なった言葉を聞け!単純な精度は美徳の影以外の何物でもない。たとえ信仰を持たぬ鍛冶屋でさえ、非常に鋭い刃を持った刀剣を作る。完璧な球体、最も澄んだガラス、完全な角度。全て彼の加護を得るには至らない。最も純粋な不調和と大いなる疑念を通してのみ、祝福を得られる。三重に畳んだ心で考えよ。不連続を見つめよ。

定命の者にはこの不連続を完全に把握できないだろう。我々は一部だけを理解する。境界の真実だけを。ある者にとって、不連続は失望をもたらすものだ。他の者は子供の当惑によって眺める。だが極めて少数の者、名もなき探検家にとって、このかすかな理解の光は無限の曲線の橋、転がる車輪だ。

知るのだ、灰の子よ。恐れを知らぬ精神のみがこの道を歩める。分かっているように、名のない魂はぐるぐると回り続けるだけの、綱渡りの軽業師だ。下にも側にも、シェオゴラスの嘘の開いた口が待っている。前に、上に、最後のタムリエルを待て。アヌヴァナシ。

お前の叫びが聞こえる、セトの子よ!お前は尋ねる。「どのように車輪を転がすのか?」と。ここに名のない真実がある。全てのボルトに合うレンチがないように、全ての魂に適合する歩みはない。彫刻家にとって、それは逆転した角度か、入れ替わった形を意味するかもしれない。名のある類似の放棄と抽象化の容認を。数学者にとって、半ば正気を失ったかのような定理を必要とするものかもしれない。想像上の立方数と関数の空間を。発明家にとって、いかなる使い方も知られていない道具か、または疑問のみを焼き付ける、応答する機械を要求するものかもしれない。

完璧に作り、不明瞭に使え。これが最後のタムリエルへの最も確かな道だ。アヌヴァナシ。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第10巻The Truth in Sequence: Volume 10

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

「古きもの」へのやみくもな崇敬には注意せよ、セトの子よ。古の油はしばしば未来を焚きつける。我々の祝福された先人の助言を無視する者は、危険を承知でそうする。だが、全ての遺跡がその荒廃した広間の中に英知を隠している訳ではない。いくつかの遺跡は暗い不毛の場所、嘘と呪いの不安定な墓だ。曲がった車軸、潰れたボルト、苦い慣性の静寂の安息の場所だ。

我々の父が立ち上がる前の時代、古く乏しい知識がエルフの心を支配していた。真実を求めてではなく、真実の屍骸を求めて灰の子が先人の墓所に入った。彼らは先人を誇り高く力強い導き手ではなく、苦しそうな息をする、歯のない幽霊と見なした。愚か者が深い知恵と呼んだ、かび臭く見捨てられたエンジンの守り手と。この古い機械を打ち砕かねばならない、セトの子よ!過去は廃物の山の上で錆びつくことはない。我々の名誉ある先人の痛烈な言葉に駆り立てられ、「巻かれ続けるメインスプリング」の壮大で多角的な未来に向かって急速に突進する!彼らの言葉と行いはいつでも後のニルンの車輪の動きを滑らかにする!いつでも最後のタムリエルの綻びを閉じる!アヌヴァナシ。

けれど、ああ!今もなお「古きもの」のしもべは耳を傾ける者に老いた真実を与える。彼らはかび臭い本の上で、ガーゴイルのように身をかがめるPSJJJJの娘と息子。下に隠された、擦り切れて光沢を失ったローブと直面する。彼らは警戒を、自制を、沈着を勧告する。消え行く前のニルンの古代の美徳。それでも、好奇心の父は彼らを友と呼ぶ。神の忍耐をもって、彼らに教える。父の愛をもって、彼らを導く。全てはいつの日か、彼らが古きものの中に深い真実を見るかもしれない希望の元に。我々は貧弱な幽霊を振り払い、三重に畳んだ心を通して、彼らの記憶に新たな生命を与えなければならない。歯のない歯車は修理できない。溶かされ、再鍛錬されなければならない。それは我々の民の真実と共にある。

PSJJJJの娘と息子が偉大な力を振るうことを拒絶するものはないだろう。クロックワーク・シティのように、彼らのアルテウムの島もそうであるものと、そうであるかもしれないものの間を滑らかに動く。クロックワークの使徒のように、彼らは学び、努力し、創造する。しかし、無限の未来の勇気を持たぬ力は、まるで空のボイラーのようなものだ。激しい熱で満ちているが、蒸気を作り出すことはない。最後のタムリエルから後ずさりする者どもに災いあれ!アヌヴァナシ。クロックワーク神の意志はそのような臆病者をスラグに変える。だが喜べ!謎の父の愛情がPSJJJの価値を証明する。いつの日か、失われた呪文の織り手は聖なるメトロノームの言葉を心に留め、真実と高貴な変化を追い求める。アラタグニティア。その日が来たら、我々は彼らを抱きしめよう。友のようにではなく、兄弟や姉妹のように。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第11巻The Truth in Sequence: Volume 11

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

お前の囁きが聞こえる。子供のような嘆きが。ここクロックワーク・シティで、彼の聖なる英知の油を浴びていてさえ、お前は叫ぶ。「柔らかな草と泡立つ小川はどこだ?すぐに酔えるワインと豊富な果物はどこだ?優しい雨、歌う大枝、揺れ動くキノコはどこだ?」。まるで飢えた子供のようにすすり泣く。「現実はどこだ?」。ふいごをゆるめ、歯車を安定させろ。真鍮のように鍛錬された真実を見詰めよ。最後のタムリエルの現実を見よ。アヌヴァナシ。

物事を現実にするのは何だ?血、樹液、脈打つ心臓か?赤ん坊が生まれるときの、金切り声を上げるトラウマか?潮流の低い咆哮か?根の水に対する渇望、遠い雲の怠惰な漂流か?違う、セトの子よ!順番に言葉を聞け!お前の恐れがロルカーンの嘘から生じることが分からないのか?お前が渇望する柔らかい形状と優しい慰めは腐食した嘘同然だ。魂の忘れられた痛みを失わせる、砕かれた創造物の万能薬だ。

「しかし、ソーサ・シルの聖なる街は複製ではないのか?」お前は尋ねる。「ミニチュアのニルンでは?」。聞け、灰の子よ。クロックワーク・シティは単なる彫像でない。銅の葉と彫刻の丘はニルンの類似物ではなく、ニルンの改良品だ。「巻かれ続けるメインスプリング」の安定した手によって、丸ごと全て作られた現世の構造だ。最後のタムリエルの壮大な結束は集中を要求する。アヌヴァナシ。エルフと機械が全てを作った。自然と工学が全てを作った。過去と未来が全てを作った。やがて、ニルンの全てがセトの祝福された想像上の鍛冶場でプレスされ、火に入れられるだろう。「名もなき天秤」で量られ、測られる!これは現実ではない?原初の罪の償いではない?前のニルンの貧窮した姿が分かるか?自然の輝きに成りすます、安物の空虚な嘘が?

乾いた、堅固な場所を探し出せ、セトの子よ。彼の油を舌に塗れ。彼の滋養に富む穀物で腹を満たせ。そうだったものを追放し、来たるニルン、最後のタムリエルを見据えよ。アヌヴァナシ。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第12巻The Truth in Sequence: Volume 12

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

私は連なった言葉を語ってきた、セトの子よ。お前の眼を後のニルン、避けられぬ壮大な最後のタムリエルへと導いてきた。アヌヴァナシ。憂慮すべき警告を叫び、無限の曲線の秘密を囁いてきた。今、私のエンジンは衰えた。最後の祝福を授けよう。車輪を作り、車軸に取り付ける歌を歌う者よ。古い機械を粉砕し、自然のままの、忘れられしアービスの鉱石から新たな真実を精錬する、恐れを知らぬ星を数える者たちよ。この究極の教えに耳を傾けよ。

最後のタムリエルは、壮大で恐ろしい方法でお前を変えるだろう。アヌヴァナシ。溶融真鍮が鋳型の中で冷めるように、お前の身体も新しく、硬化した形状を獲得するだろう。水が蒸気へ変化するように、お前の精神のつまらぬ偏見も分散し消えていくだろう。油が発火し、エンジンに力を与えるように、お前の魂も明るく輝き、永遠の車輪を動かすだろう。最後のタムリエルの結束は、我々の自己中心的な追求や嫉妬深い意志を洗い流すはずだ、灰の子よ。アヌヴァナシ。輝かしい後のニルンでは、我々が「私」と呼ぶ、ニヤニヤと笑う姿を追い払わねばならない。そうして初めて「巻かれ続けるメインスプリング」の荘厳な真実を知ることができる。無秩序の終焉を求めるなら、変化の道を歩かねばならない。そして全ての道に歩く価値があるように、それは心を喜びと恐怖で満たす。

我々は何とエトアダの歯車に似ていることか。人生を隔離された悲しみの中で、無駄に生きて満足している。その間ずっと砕かれた魂が、苦しみに泣き叫んでいることに気づかない!ニルンの寂しい海岸を見よ。壊れた眼で何が見える?浜辺か?海か?偽りと虚栄心!名のある錯覚!分離した粒子が必死に凝集したのでないなら、「浜辺」は何のためだ?単独の涙の動揺した塊でないなら、「海」とは何だ?分離している!壊れている!傲慢で無益だ!

たとえこの説話について沈思黙考した後でも、前のニルンにしがみつく者は存在する。お前は薄く惨めな「自己」を失うことを恐れている。この子供じみた恐怖を捨て去れ!時間を越えて待っているものの出発点で燃え尽きるなら、「自己」が何になる?謎の父が我々の世界を終焉の向こうへ導こうとしているのが分からないのか?我々を滅ぼそうとしている「肉体から作られた嘘」から守ろうとしているのが?たった一つ覚えるなら、これを覚えよ。祝福されたクロックワークの神は激しく、素晴らしい心でお前を愛する。彼が行うことは、お前と彼の聖なる模範に従う者全てのためだ。

持続する喜び。合一の平和。完璧なリズムの崇高な満足。誠実な労働。永遠に回転する祝福された車輪のスポークの産物だ。「巻かれ続けるメインスプリング」は完全を提供する。セトの子よ。ただ中を見つめれば良い。石炭をくべろ。ボイラーに真水を加えろ。ボルトをきつく締め、信じろ。最後のタムリエルが待っている。アヌヴァナシ。

私は言葉で歯車を巻く。

ヴァーデンフェルの書物

Grahtwood Lore

アークカノンの日記The Archcanon’s Journal

ヴィベク卿のアークカノン、ターヴス 著

建設開始26日目
ヴィベク様の祝福の石が設置されたことで、この偉大なる街の建設は急速に進行している。ヴィベク様の宮殿と最初のカントンはほぼ完成しており、他のカントンの基礎工事もすでになされている。

建設開始35日目
第四カントンに予想外の遅れがあった。ヴィベク様の祝福にもかかわらず、事故が次々に起きている。監督官を厳しく咎めたが、どうやら彼女は心から当惑しているようだ。アーミガーを数人派遣して、調査させる。

建設開始40日目
継続する遅れについて、アーミガーはいかなる理由も見出せないでいる。うち1人は、4人が負傷した崩落の直前、ある土台の周囲に大きな犬を見たと報告している。他の者たちは有り得ないと一蹴している。犬が横木を登れるはずがあるだろうか?だが、私は疑問を抱いている。とはいえ、ヴィベク様を煩わせる理由はない。

建設開始42日目
遅れはより深刻になっている。神としてはこれ以上望めないほど忍耐強いヴィベク様でさえ、心配しているのが分かる。どうやら自分で調査する時が来たようだ。

建設開始43日目
建設中のカントンに立つと、ヴィベク様の祝福が降りかかるのを感じる。愛と保護に私は驚嘆した。作業員たちが熱心に働くのも当然というものだ。

だがその時、タムリエルと太陽の間を通り過ぎる雲のようにそれは消えてしまった。作業員と衛兵たちも感じとったのがわかったが、彼らにとってはどこか落ち着かない気分程度のものだっただろう。何か言葉を発しようとした瞬間、私は衝突音を聞いた。見渡すと吊り下げロープが1本破壊され、2トンの石が落下し、砕け散っていた。死人が出なかったのが不思議だ。

負傷者を助けるために駆けよると、ヴィベク様に誓って大きな犬が逃げ去るのを見た。私の疑いは確信に変わったようだ。しかしあの犬を追いかけるか、それともヴィベク様にすぐ報告すべきか… 選ばなければならない。一晩寝れば、進め方について良い考えも浮かぶだろう。

アサシンへの指令Assassin’s Orders

私達の仕事はもう少しで完了する。注意は怠るな。運が良ければ、私の雇った冒険者が残った石の悪鬼を片付けてくれるはずだ。そうすればまた始められる。今回は、ベナーに邪魔されない。最後の仕上げをするんだ、奴らが互いに殺し合ったように見せかけろ。評議会を納得させないといけない。

仕事が終わったら、バルモラにある私の家に来てくれ。説明したいことがある、約束したとおり、最初の支払いも行う。これは儲かる仕事になるだろう。期待している。

M

アッシュランダーの部族と慣習Ashlander Tribes and Customs

レドラン家のウルラン・レレス 著

アッシュランダーと呼ばれるダンマーの遊牧民はモロウウィンドの荒野を放浪していて、行きたい場所に行き、行いたいことを為している。彼らは体制と名家の高い権威を支えているしきたりから逃れ、緩やかな部族を形成し、ダークエルフの過去の習慣に立ち返っている。遊牧や狩りをして生活していて、自然の中で生きる生活にささやかな喜びを見出しているのだ。

アッシュランダーは先人を敬い、デイドラを崇めている。トリビュナルの生き神の聖性を認めていない。時には他の部族や名家とさえ交易することもあり、グアルの皮やショークの樹脂を、外界の情報や荒野で手に入れ辛い品々と交換している。遊牧民社会の中で、アッシュランダーは礼儀正しく上品で、丁寧に振る舞う。だがよそ者が相手となると、簡単に怒り出すこともある。

アシュカーンと呼ばれる部族の指導者たちは、自身が率いるコミュニティの「戦士兼護衛」としての役割を果たしている。補佐するのはグラカーンで、交易や交渉時に部族を代表して役割を果たしている。よそ者はアシュカーンとの拝謁を求める前に、まずグラカーンに近づいた方が良いだろう。また、それぞれの部族には賢女もいる。歌や伝承、部族の予言を守っている千里眼だ。部族の精神的な指導者である。その他の人々の立場は平等で、それぞれ狩りや牧畜、食糧探しなどの役割を分担しており、お互い助け合っている。

この遊牧民は、主に4つの部族に分かれている。

アヘムサ族はヴァーデンフェル南部の沿岸地域や沼地に住んでいる。かつては海岸から海岸へと移動し、釣りや狩りをして暮らしていたが、以前の生活拠点におけるテルヴァンニやレドランの集落が誕生したことから、近年はビターコースト地方への大規模な移動を強いられている。アヘムサ族はアッシュランダーの部族の中で最も平和的な部族であり、招集できる兵力という観点からすれば最も弱い部族でもある。軽装を好み、小さな貝殻や鱗、網などで飾った服を着ていることが多い。また、単純なナイフや槍など、武器と言うより仕事にも使える道具を、必要とあらば護身に使っている。人付き合いを避けて孤立を好んでおり、狩りや牧畜、特に釣りをして暮らしている。現在はビターコースト沿いに小規模な半永住用拠点を築いており、沼地に生息する魚やその他の野生生物を獲って生活している。

エラベニムスン族はヴァーデンフェルのモラグ・アムール地域に住んでおり、出自である火山のアッシュランドと同様に、気難しく危険な部族である。エラベニムスン族はかなり好戦的だ。他のアッシュランダーたちからも強欲で残酷な部族とみなされており、アッシュランダーの習慣に敬意を払っていないと考えられている。予言、歴史、伝承を軽視しているため、この部族では賢女がほとんど力を持っていない。また、エラベニムスン族は概して最も重装の部族でもある。戦いを何よりも重視しており、何よりも力を重んじている。

ウルシラク族は最も尊敬されている部族で、数も2番目に多い。ウェストガッシュ地方とアッシュランド北部に住んでいる。グレイズランドと同様、狩りや採集に最適と見なされている場所である。だが狩人、戦士、牧童以上に、ウルシラク族は伝承者が名高い。複数の千里眼を現在も擁している唯一の部族であり、その賢女は広く知れ渡っている。ウルシラク族は、アッシュランダーの部族を一時的な平和に導くため、重要な役割を果たしてきた。皆がこれから来る闘争の時代の話を聞き、備えなければならないと考えたからだ。ネレヴァルの転生者がまもなく帰還し人々を束ねるだろうという信仰を強く保っているのは、このウルシラク族である。ウルシラク族は、時に魔法を使うこともある数少ないアッシュランダーの部族でもある。実際に呪文を唱えるよりは付呪や錬金術を行う方が多く、高度な技術を有している。また、ヴァーデンフェルに散在している遺跡内で時折見つかる古代の遺物、巻物、その他の品に最も興味を持っている部族でもある。彼らに気に入られたければ、そのような遺物を持っていくのも良い。

最も人口が多く、誇り高く自信に溢れているザイナブ族は、ヴァーンデンフェル北東部の肥沃地帯、グレイズランド地方に住んでいる。アヘムサ族と同様、彼らはよそ者にさえ非常に温和で友好的だが、やや強欲で横柄なところも見受けられる。ザイナブ族はある意味最も変わった部族だ。彼らは伝統を守りながらも、一方でヴァーデンフェルの変化にも強い興味を持っている。彼らは名家とも積極的に交易を行い、中にはフラール家などの名家と強固な取引関係を築こうとした者すらいる。全体的に見て、ザイナブ族はアッシュランダーの生活様式を完全に捨て去るつもりはないにしても、変化への適応に最も前向きな部族だという印象を受ける。またザイナブ族は最も多種多様なコレクションも所有しており、その中には武器や防具も含まれている。彼らは概して物を作るよりは交易によって手に入れることが多く、肥沃なグレイズランドで収穫、採集、採鉱をすることでも知られている。これによって彼らは、並ぶ者のない繁栄を実現した。

アラーノ大農園からの奴隷の証言Slave Testimony from Arano Plantation

ブレトンの労働者、ビエン・ディエルの証言

彼女はスラン到着後まもなく物乞いを殺したかどで不当逮捕されたが、誰も殺していないと主張している。またアラーノ大農園の衛兵が、弱って働けなくなったレッドガードの奴隷を殴って死に至らしめたと証言している。

***
オークの商人ガモシュの証言

スラン郊外でダークエルフの農業従事者から強奪、および殺害の容疑で不当逮捕されたと証言している。逮捕は地元に後ろ盾となるつながりや家族がおらず、また自分がオークであるからだと主張している。フラレン筆頭治安官がアラーノ大農園に売却した。

***
ノルドの放浪者、フリガ・ベアフィストの証言

アラーノ大農園の主人が不適切な申し出をしたため暴力を振るったことは認めた。フラレン筆頭治安官に、大農園で働けば減刑されると言われたと主張している。これは虚偽である。アラーノ大農園の主人に、彼女を解放する計画はまったくなかった。

イレイヴンへの手紙Letter to Eraven

イレイヴンへ

ザインティラリスの件に対する評議会の優柔不断な態度は受け入れられません。カジートの傭兵は今もイナゴのように遺跡の外に集まっています。確かな筋の情報によれば、レドラン家から送られたようです。あの惨めで頭の鈍い狂信者が、そんなごまかしを行えるとは思っていませんでした。もう少しで感心させられるところでした。もう少しで。

彼らは昼夜を問わず祠を殴りつけています。もしかしたら、叩いていれば扉の暗号が消えると思っているのかもしれません。間抜けな連中です。シェオゴラスの謎を解く鍵は、その単純な謎かけの中にあるのです。幸運なことに、レドランの学者達は抽象的な思考ができないようです。こんな簡単な謎が解けないなんて信じられますか?

「頭蓋骨の一家が”ごきげんいかが?”と尋ねる。
2は大声で”私達は1だ!”と言い、3は”私達は2だ!”と叫ぶ。
5が”3″をにらみつけている間、6は”4″を笑う。
それらを全部焼けば、マッドプリンスの扉は開かれん」

それにしても、シェオゴラスの信者達はなぜこうも子供っぽいのでしょうか?この問題は、問題がそのまま答えになっているようです。

私の研究は重要な局面に差し掛かっています。聖フェルムスの指骨がなければ、すべて無駄になってしまいます。代弁者の間でさらに努力してください。ザインティラリスはテルヴァンニ家に属するべきです。

期待しています。

セラナ
テルヴァンニ家の賢者
テル・ブラノラの主

インドリル家の概要Understanding House Indoril

名家の大歴史家、アンドール・インドリル 著。
黄金の平和五十七周年記念

第一紀初期に基礎を築いたインドリル家は、常に強い政治力を発揮してきた。その信念と展望において正統派かつ保守的である我々は、いつもダンマーの伝統的な慣習と実践の擁護者であり続けてきた。

インドリル家にとって、宗教は最も大切な制度である。我々は自分たちの聖なる先人を崇拝する。我々は善のデイドラ、とりわけボエシア、メファーラ、アズラに対して敬意を払う。またヴェロスやアラロールなどの聖人たちを賛美する。

インドリル家は、ダンマーの文化がいかなる犠牲を払ってでも保全されねばならないと信じている。変化は伝統の敵であり、変化を許せば、力強い土台は弱まるであろう。

インドリル家はよそ者と非ダンマーを本質的に邪悪で危険だと見ているわけではなく、いかなるよそ者もインドリルの支配地域を訪問することを禁じられてはいない。だが名家は常に気を配り、観察を怠ってはならない。訪問者は、すべて注意深く監視されねばならない。大師範ベスティンがこの時代の初期、我々に教えたように、見られている盗賊は盗まない。

ヴァーデンフェルの歌Songs of Vvardenfell

収集者、ジェリン・ドーレス

***
アーミガーの行進曲

軽やかに、大股で進め
ああ、ボイアント・アーミガー
栄光の日々と勝利の夜へ
激しい戦いを勝ち抜き進め!

誇り高く歌い、大声で叫べ
ああ、ボイアント・アーミガー
大声で勇ましく歓声を上げよ
異教徒を震え上がらせよ!

胸を張り、戦果を挙げろ
ああ、ボイアント・アーミガー
敵の戦士を圧倒せよ
弓を手にして追撃せよ!

骨を接ぎ、傷跡を数えろ
ああ、ボイアント・アーミガー
先導者のバッジは身の証
新しい傷は勇気の証!

胸を張り、戦果を挙げろ
ああ、ボイアント・アーミガー
敵の戦士を圧倒せよ
弓を手にして追撃せよ!

***
六は歩道

六は歩道、謎、敵、教師
先駆した神が作り、私たちは今彼らの僕となった
お前の名に輝きを、お前の姿に知識を

剣とはすなわち夜
言葉とはすなわち死者
剣とはすなわちため息
言葉とはすなわち終わり

六は守護者、三が過去、三が転生者
英雄の資質を試し、学べることを示す
目にする本物の作品は、沈黙によって作られる

剣とはすなわち夜
言葉とはすなわち死者
剣とはすなわちため息
言葉とはすなわち終わり

***
言葉の歌

耳にする言葉は肉に基づく——詭弁家に騙されるな
その道を歩くことを恐れるな——興奮に身を委ねろ
彼らの世界ではおかしな者が法を持つ——書かれた場合に限る
賢き者は別の法で代用できる——言葉こそが罰を与える

謝罪のために言葉を使うな——もし赦免を求めているなら
行動こそが唯一の道だ——言葉は解決できない
賢者は謝罪をしない——快楽主義者に罰を与えよ
だから埃を被った舌で歌うな——飲み込まれるまで言葉は真実にならない

ヴァーデンフェルの植物と動物Vvardenfell Flora and Fauna

テルヴァンニの自然学者、ティレンラ・シルドレス 著

ヴァーデンフェルの地形は死と再生の循環を常に繰り返している。レッドマウンテンの溶岩が流れ、噴火と降灰が落葉樹林地帯とキノコのジャングルの枝枯れを引き起こす。激しい隆起は地形を変え、古代文明の潰えた遺跡を埋もれさせる(露出させることもある!)。溶岩が固まるにつれて島は拡大し、新たな植物とキノコが冷却された灰の中から、火成岩の構造物と共に出現する。

植物が火山活動によって栄養を得た豊かな土壌で繁殖するため、ヴァーデンフェルは多様な生息地と環境を有する地となっている。

キノコは溶岩から生まれた土壌の栄養を短期間で吸収し、巨大に成長して一帯を支配する。大型のヒトヨタケはビターコースト沿い、沼地の生物の死体が腐敗して行く場所で繁殖する。より小さなキノコは岩や木々を覆い、いくつかの動物にも付着する。例えばキノコに覆われたシュルームビートルのように。愛らしい!

南西の地、ビターコーストから内陸にあるバルモラでは、レッドマウンテンの噴火による灰が山麓を脅かしているが、それでもなお森林を擁している。

アッシュランドは不毛の地ではあるが、驚くほどの生物種が生息している。アッシュホッパーが乾燥した灰の丘を跳ね回り、大きなジラリア種のキノコが天空に向かって弦を伸ばしている。旅人は注意せよ!飢えた爬虫類、クリフストライダーが絶壁に身を隠している。

フェッチャーフライは卵を温めるため、溶岩の熱が得られる場所に巣を作る。卵が孵ると、女王バエはマグマの源流を利用して巣を動かす。巣は歩くハイブゴーレムとなって、群れを新しい環境へと移動させる。

ニックス・オックスは島の北東にあるグレイズランドをうろついており、一般には温和だと考えられているが、縄張りを守る際には躊躇しない。

二本足のヴァルドヴァークは草地を走り回り、小さな虫を食べる。この可愛い生き物はひどい臭いがするが、ペットにする者もいる。

この地には先人の墳墓が点在しており、ハンガーと呼ばれる強力なデイドラがその中で最近目撃されている。

モロウウィンド最大のキノコはザフィルベル湾に出現する。この雄大な種はテルヴァンニの魔術師によって栽培され、成育には魔術師の一生(1000年間)と同じだけ時間がかかる。こうしたキノコの森には独自の生態系があるが、それはまた別の本で扱おう。

ヴァーデンフェルの捜査官ヴェイルInvestigator Vale in Vvardenfell

「評議員、私は観光のためにヴァーデンフェルまで来たわけではありません」と、捜査官ヴェイルはヴォーベンド評議員の机に乗っていた、アルマレクシアの胸像をいじりながら言った。「もっとも、あなたの国と民はとても魅力的ではありますけれど」

「では何のためにここにいるんだ、ヴェイル?」とヴォーベンド評議員は問い詰めてきた。口調からして、ハイロックから来た女に我慢がならないという雰囲気だった

「私が来てほしいと言ったのよ、お父さん」と、部屋に入ってきた評議員の娘ヴェルネアが言った。「マスター・アドレンに何があったのかが気になるの。フラール家はあの人が存在しなかったふりを望んでいるみたいだけど」

ヴォーベンドは椅子の上にのろのろと崩れ落ちた。責任の重さに、突然疲労を感じたようだった。「このことはもう何度も話しただろう、ヴェルネア」とヴォーベンドはため息をついた。「マスター・アドレンは死んだのだ。そういうことだってある。誰かが死んだからって、いつも陰謀や殺人が隠されているわけじゃない」

捜査官ヴェイルはヴェルネアに輝くような笑顔を見せてから、彼女の父親に向き直った。「それは私に判断させてもらいましょう、評議員」とヴェイルは明らかに興奮して言った。「結局、それが私の仕事ですからね」

***
ヴェイルとヴェルネアは、マスター・アドレン錬金術店の裏にそびえ立つ巨大なキノコの下を並んで歩いた。この老錬金術師はヴェルネアが若い娘だった頃からお気に入りの師で、彼女に錬金術の技や、その他の学問を教えていた。奥のほうは庭になっており、錬金術師御用達の植物や花が展示してあった。側にはイーゼルが立てられており、アドレンがお気に入りの庭の脇に座っている絵のキャンバスが掛かっていた。絵は未完成だった

「アドレンはいつも、私は何にだってなれるって言ってた」とヴェルネアはぽつりと言った。「お父さんの人生に魅力を感じないのなら、商人や交易商人にならなくてもいいって。あの人は… 私を励ましてくれたの… 夢を見ろって」

「素敵な人だったみたいね」とヴェイルは元気づけるように言い、見慣れない訪問者を調べるためにやってきたニックスハウンドを眺めた。「それでヴェルネア。あなたの夢は何なのか、聞いても構わない?」

ヴェルネアは頬を赤らめて躊躇し、未完成の絵のところまで歩いていった。彼女は言った。「私は画家になりたいの。絵を描くのが好きで、アドレンが私の才能を育んでくれた。風景画、肖像画、静物画… かなり多くの作品を創ったわ。あの人は描くたびに前の絵よりもよくなったと言ってくれた。あのことがあった時、私はこれを描いている最中だったの… あのおじいさんがいなくて寂しいわ。とてもね」

ヴェイルは樹木のようなキノコの下を覗こうとして這いつくばり、「それで、ここがアドレンを見つけた場所?」と尋ねた

ヴェルネアは身を震わせ、腕を強く抱えた。「ええ。会おうと思って来たの。アドレンが店の中にいなかったから、ここで読書か庭仕事をしているんだろうと思った。でも、そこで彼が目を開いて、仰向けになって倒れているのを見つけたの。あの光景は二度と忘れないわ」

捜査官は立ち上がり、裏庭の残りの部分を軽く見渡した。「何もなくなってなかったと言っていたわね?うーん。あなたの絵を見る限り、花が1輪消えているようだけど」

ヴェルネアは未完成の絵に目を向け、師の隣の植え込みから力強く伸びている、異国風の花を見た。それから庭を調べ、驚きの叫び声をあげた。「本当だわ!これまで気づかなかったなんて!なくなっているわ!」

「そしてあなたの描写が正確だとすると、なくなった植物は希少なクリムゾンドラゴンソーンね」とヴェイルは言った。「錬金術では重宝される植物よ。それに、キノコの茎が変色している。これはキノコの表面がガーリック・スネイルと接触して、有毒ガスの煙を発生させたことを示しているわ。私が知る限り、非常に毒性の強いガスよ」

「ガーリック・スネイルですって?アドレンの庭に?彼ほどの庭師が、そんな害虫をキノコに住みつかせるはずがないわ」とヴェルネアは言った

「じゃあ殺人ということね」とヴェイルは言った。「教えて。ここの錬金術師の中で、アドレンに敵意を持つ者はいたの?」

***
捜査官ヴェイルはディラニの花屋へ入り、忙しそうにキノコを組み合わせた花束に取り掛かっている年配のダークエルフの元へ、自信たっぷりに歩いていった。ヴェイルの後ろにはヴェルネアとフラール家の兵士1人がついてきていた。ヴェイルは立ち止まって製作途中の花束の匂いを嗅ぎ、掘り返したばかりの土を盛った大型の花瓶へと向かって進んだ。土から突き出しているのは、クリムゾンドラゴンソーンだった

「あら、これはとてつもなく珍しい花じゃない」とヴェイルは言い、もっと近くで見ようとして身を乗りだした。「それに見て。花びらには小さな黄色の斑点がある。あなたの絵と同じだわ、ヴェルネア」

ディラニはヴェイルから兵士に目をやり、またヴェイルに視線を戻した。明らかに動揺して、嫌な汗をかいていた。「な… 何をほのめかしているんです?」女は次第にどもりはじめた

「ほのめかしたりなんてしない」とヴェイルは言い、カウンターの上にあったガラスのケースに手を置いた。ケースにはガーリック・スネイルの小さな巣が入っていた。ヴェイルはその細長い指でケースの横を叩いた。「はっきり言わせてもらうわ。あなたはマスター・アドレンを殺し、彼が大切にしていたクリムゾンドラゴンソーンを手に入れたのよ」

「そ… そんなの馬鹿げてる!」ディラニは抗議の声をあげた。それから向きを変え、花屋の裏口から走って逃げた。フラールの兵士がすかさず追いかけていった

「逃げられてしまうわね」とヴェルネアが言った。悲しげな声に失望がこもっていた

「何言ってるの」とヴェイルは言った。「あなたの兵士はお婆さんくらい余裕で捕まえられるわよ。ところで、私の肖像画を描いてくれたら嬉しいんだけど。裸は描きたくないとかある?」

ヴァルドヴァークの実験The Vvardvark Experiment

テルヴァンニの魔術師、賢者ヴァーケネル 著

何をやったんだ?

簡単な実験のはずだった。ヴァーデンフェルに持ち込まれたまったく新しい動物の変異。それで何を創り出した?今まででおそらく初めて失敗すれば、よかったと思った。テルヴァンニの魔術師としては失格かもしれないが。

創造物は即座に破壊すると決めた。そう、元から悪であるとか、危険だとか、一般的な後悔する実験について回る性質はなかった。だがその不自然な形、突き出た頭、鱗と毛皮の融合で私を悩ませた。破壊しなければならないのはわかっていた。

強い好奇心が破滅の元になった。心ではやったことを元通りにしようと決めていたのだが、少なくとも最も基本的な試験をする前に実験を終わらせることはできなかった。葛藤している最中に、可愛く幼い娘が毎日のお菓子をねだりに研究室へ入ってきた。

この生物がどうやって娘を取り込んだのかはまったくわからないが、娘は即座に虜となった。その気味悪いものを腕に抱くと、喉を鳴らしはじめた。吐き気を催す舌が鼻先から伸びて娘の腕をこすり、娘は恐怖で叫ぶ代わりに、ただ笑って言った。「ねえ、お父さん、なんて可愛い動物なの!何ていう名前か知らないけど」

私は名前を考えるしかなかった。娘はそれをペットにしたがり、私は可愛い赤い瞳を否定できなかった。だがこの恐ろしいものに、家族を用意するというお願いに同意することは拒否した。こんな生物は世界に一匹いるだけで充分に恐ろしい。少なくとも不死にはしなかった。

マスター・スケーリー・テイルの死で彼の種族は終わりになる。それを覚えておいてほしい。愛するヴァーデンフェルがこの生物に蹂躙されることを決して許しはしない。このひどく吐き気がする… 可愛い生き物に。

ヴォルリナのメモVolrina’s Notes

奴らはベルネ族と名乗っている、あのならず者ども!奴らは私の兄弟を殺したけど、私は捕まらなかった。闇に隠れて、あの悪魔どもが食事をする姿を見ていた。あの怪物どもの一部はただの野獣だ。見つけ次第、誰でもいいから血を貪ってしまう。

だが、一部には好奇心があるようだ。ガロム・デウスにまだ住んでいる、コンストラクトについての好奇心が。

変わった2人組がドワーフ・スパイダーを使っているのを見た。コントロールロッドを取り出して集め、別のスパイダーに使おうとしているのだ。あの装置が何かは知らないが、正しく機能していないようだ。彼らが機械の蜘蛛に身振りをすると、あの生物は動き出した。しかし、常に意図した動きはしないようだ。操作されているスパイダーが勝手にどこかへ行ってしまうこともあるし、攻撃してくることもある。彼らは工場にある部品箱を開けるために利用しようとしているようだ。

もし手に入れられるなら、バリルザーは間違いなくあの箱の中の材料を欲しがるだろう。しかし、吸血鬼たちは強すぎて手に負えない。

エスランドラに捧げる詩Ode to Ethrandora

おおエスランドラ
崇拝を伝えられたなら

編み込んだ髪は真紅
あなたの頭にリンク

笑顔は甘く
グアル肉のように美味く

おおエスランドラ
我が心を伝えられたなら

その視線
我に溜息を見せん

あなたはクスクス笑う
我が心臓は倣う

おおエスランドラ
包まれたきあなたのオーラ

あなたのブレラン

エボンハートへの旅On Moving Ebonheart

トリビュナル司祭とフラール家技師のメンバーへ

ここ最近の本土への訪問の際、ヴィベク卿はモロウウィンドの北沿岸、ストンフォールズにある古風で美しいエボンハートの街を大層お気に召された。卿は街の境界内で通常以上の時間を過ごされ、街道の散策をしながら、建物や家々を注意深くお調べになった。正直に言えばこの訪問は我々の予定を遅らせ、ヴァーデンフェルへ帰還する前にすべき他の任務の実行に関する、大きな不安を私に引き起こした。

戦詩人があらゆる壁石やわらの束を執拗に調査しつつ、あらゆる考えや観察をノートに書き込んでおられる中、傍で静かにしていると、ついに生き神は私に向き直られた。「アークカノン」とヴィベク卿は言われた。「この場所は気に入った。ヴァーデンフェルにも一つ必要だ!」

「必要、とおっしゃいますと?」と私は尋ねた。ここから話がどう進んでいくのかを確かめようとしたのだ。

「我が街の南にある、あの場所だ」とヴィベク卿はお続けになった。「そうだ、あそこなら新たなエボンハートを建設するため、完璧な場所になるだろう!」

「建設、とおっしゃいますと?」と私は尋ねた。まだ何を求められているのか不明だったのだ。

「建設、移動、何でもいいようにすればいい」とヴィベク卿は言われた。「カノンとフラールの技師たちに即刻、計画を練り上げさせるのだ。新しいプロジェクトを始めるのが待ちきれない!」

と、いうわけだ。我らが卿の口から諸君の耳へ、この手紙を通じて伝えたぞ。諸君の構想に目を通すことを楽しみにしている。時間はそうだな、3ヶ月ではどうだ?

ヴィベク卿の名において
アークカノン・ターヴス

オーディネーター:総合案内Ordinators: A Comprehensive Guide

ヴィベクのアークカノン、ターヴス 著

聖なる衛兵にして戦う司祭であるオーディネーターは、トリビュナル聖堂と、そこで崇拝される生き神へ身を捧げている。四つの騎士団に分かれたオーディネーターは、トリビュナルの意志をモロウウィンド中に広げる役割を負い、独特な黄金の鎧と仮面により特徴づけられている。守りの覆いとして使われる表情のない仮面は、衛兵の正体を内に隠し、オーディネーターに謎めいた雰囲気と脅威を加えるために寄与する、威圧的なオーラも放っている。

オーディネーターは四騎士団に分かれており、トリビュナル領内の権限は所属によって決まる。監視の騎士団、教義と秩序の騎士団、審問の騎士団、戦争の騎士団である

監視の騎士団はトリビュナルの聖堂と祠を守護し、ヴィベク・シティを含むトリビュナルの街、都市に衛兵を配置する。トリビュナルの集落の警備とトリビュナルの聖地の守護に加えて、監視の騎士団のオーディネーターは聖堂の法を施行する。このオーディネーターは全騎士団のうちもっとも目につきやすく、定期的に民と交流している。

教義と秩序の騎士団を構成するのは軍事学者である。生き神の言葉を精力的に研究し、トリビュナルの意志を支えている。彼らは支配的な教理の裁決者として仕え、ネレヴァリンの予言や他の異端の教えのような、誤った危険な見方に反対する。

審問の騎士団は聖堂の司祭、ダークエルフの民の双方で異端を探し、積極的に弾圧する。調査機関、裁判官兼執行官の役割を担う。この騎士団のメンバーは異端者を裁判にかけ、聖堂に対する罪に相応しいと思われる罰を下す。

最後に戦争の騎士団は、ダンマーの領内で活動する敵対的な教団やデイドラの信者を含む、あらゆる聖堂の敵と戦う。聖なる戦士はモロウウィンド全土から選び抜かれた、極めて献身的で最高の訓練を受けた戦士である。トリビュナル自身から加護を受けていて、その意志を守る責任を負っている。

オーディネーターには別働隊もいるが、ごく少数のため騎士団を構成することはない。トリビュナル聖堂で最高に腕の立つ戦士から個人的に選抜され、アルマレクシアの優れた密偵、アルマレクシアの守り手として仕える。生き神その人が女神の魔法で彼らを強化し、恐ろしい鎧と武器に付呪をしている。

常に正統派でトリビュナル聖堂の熱心な支持者であるインドリル家は、オーディネーターに参加するダークエルフの多くを輩出している。インドリル家の影響力は、オーディネーターの鎧の独特なスタイルに見て取れる。その息子と娘は献身と敬愛をもって、誇らしくトリビュナルに仕える。もちろん、生き神に仕えるのはオーディネーターだけではない。例えば、ヴィベク卿のボイアント・アーミガーだ。彼らについては、次の巻で扱おう。

オーディネーターの布告:第七条Ordinator Edict: Mandate Seven

下記を周知せよ:

審問団はよそ者たちが聖なるオーディネーターの盛装、すなわち献身の黄金仮面と三位一体の信仰のローブを身に着けているという報告を受けている。これは明らかに恭順令第十七条への違反である。ダンマー俗信徒のメンバーで盛装を身に着けている者は、誰であろうと速やかにして無慈悲なる懲罰の対象となる。ダンマー以外で盛装を身に着けているところを見られた者は、その場で抹殺されるものとする。それが冒涜の代償である。
以上を警告する

三大神に勝利を

審問官ニヴォス・ウヴェラン

オーディネーターの布告:第十六条Ordinator Edict: Mandate Sixteen

下記を周知せよ:

異端的宗教実践は、ここヴィベク・シティの境界内では禁止される。これには八背教者の崇拝、ヒストの樹液かムーンシュガーの儀式、礼拝目的のマラキャスの狩猟、デイドラへの交信の儀式などが含まれるが、それが全てではない。このような儀式に参加する市民は誰であれ投獄され、身体的再教育の対象となるものとする。こうした儀式に参加する非市民は、違反行為の軽重と管轄のオーディネーターの判断に応じて、追放か処刑されるものとする。いずれの場合も、礼拝用の素材や文書はすべて押収し、浄化の薪で焼かれるものとする。それが冒涜の代償である。

トリビュナルの元に留まるか、沈黙を保て

三大神に勝利を

審問官ニヴォス・ウヴェラン

オーディネーターの布告:第二十一条Ordinator Edict: Mandate Twenty-One

下記を周知せよ:

不浄なる獣の聖なる記録に登録された生物は、都市の境界内に入ることを許されない。このリストには多くの酪農用動物、フクロウ、尻尾のない猿、ドゥルーの幼生、卵を産む甲殻類が含まれる。禁止動物の包括的リストはトリビュナル聖堂の教義蔵書庫で閲覧可能である

市場での販売を目的とした肉はすべて、恭順令第三十四条に従い、聖堂指定のドレニウロラン、あるいは三位一体の認可副司祭による検査を受けなければならない。肉を検査に提出しなかった場合、聖認可状の没収、罰金、場合により身体的再教育を受けるものとする。それが冒涜の代償である

三大神に勝利を

審問官ニヴォス・ウヴェラン

オーディネーターの布告:第二十七条Ordinator Edict: Mandate Twenty-Seven

下記を周知せよ:

公衆への実演を目的とした吟遊詩人の歌や詩はすべて、まず教義制定省の認可を受けなければならない。異端とされた作品はすべて没収され、浄化の薪にて破壊されるものとする。上述の作品を検査に提出しなかった場合は、罰金か場合により身体的再教育を受けるものとする。それが冒涜の代償である

三大神に勝利を

審問官ニヴォス・ウヴェラン

オーディネーターの布告:第三十四条Ordinator Edict: Mandate Thirty-Four

下記を周知せよ:

聖堂の備品の破壊、移動、その他の蛮行は重大な罪である。聖堂の聖画と建築物はトリビュナルの神聖なる権威の延長である。上述の聖画や建築物に対するいかなる攻撃も、トリビュナルの聖なる者への攻撃とみなされる。そうした攻撃は死をもって罰せられ、続いて忘却の儀式、および浄化の薪における遺体の破棄が行われる。冒涜の代償を見よ

三大神に勝利を

審問官ニヴォス・ウヴェラン

オマレンの供述書の写本Omaren Trial Transcript

ニルビン・オマレンの最後の言葉

トリビュナルの意に叶うことを願い、刑が執行される前にいくつか述べたい。

初めに、私は他のすべてと同じく、トリビュナルを讃える。神を敬う心をもって三大神の前に立っている。ここに集いし多くの者が私のことを異端信仰、背信、殺害の罪で非難している。しかし、私はここに述べよう、私のしたことすべては、トリビュナルの栄光を高めんとして行ったことである。

失礼だが、私を死に追いやる偽善について指摘しなければならない。もしも私が富豪、聖堂、我が名家を守るために剣を抜いたのであれば、私の払った犠牲は正しく祝われるだろう。私の首はドラゴンの舌とリボンに飾られ、首に斧を待つことはない。しかし、私は縛られ哀れな者に代わり行動したため、断罪されているのだ。

奴隷制こそ我々の大罪である。レッドガードが剣を重んじ、ウッドエルフが樹木を重んじる一方で、我々が重んじるのは血塗られた財産である。我々は誇り高き謎めいた人々の生活を無謀にも破壊し、その上に自分たちの名家を建てている。我々は真の信仰と滑らかな肌を理由として、彼らよりも自分達の方が優れていると思っている。しかし、私はこう述べよう。アルゴニアンの労働者の心には、モロウウィンドに土地を持つ誓約者のすべての心を併せたより、大きな善が存在する。

慈悲の女神であらせられる、神聖なアルマレクシアは、我々に慈愛と慈悲を説く。我々は欲に駆られ、殺しをする大食のネッチではないだろうか?苦しみを楽しむセトの子ではないだろうか?

尊敬を集める審問官から宣誓した上でこう聞かれた。「お前は自分のしたことを恥じていないのか?」。その時、私は黙秘していたが、今は自由に言おう。私は何ら恥など感じていない。後悔もまったくない。監督官の死は遺憾に思うが、すべては善のためだったと言っておこう。いつか報いがある。すべての明らかな罪は肥大し、我々を食らうだろう。我々はそれに値する。

望むのなら殺せばよい。正義を進めるためこの命が潰えるのなら、私は「そうあらしめよ!」と言う。しかし、これを知っておけ。私を殺しても無駄だ。他の者が立ち上り、私の役割を引き継ぐ。ブラック・マーシュの息子と娘は自由だ。そしてお前たちが方針を変えない限り、トリビュナルの子供達が血で高い代償を払うだろう。

以上だ。好きにするといい

ガヴロスの研究メモGavros’s Research Notes

被検者K14
傭兵が拘束した数時間後に頭部外傷により死亡。調合薬を投与したが、変性は起こらなかった。これは私の仮説を裏づけている。最後の投与を行うまで、血圧を一定に保たねばならないということだ。投与の前に死亡すると、部分的な変性しか起こらない。これなら今までの失敗の説明がつく。強力な鎮静剤を使えば、早期の死亡率を下げられる可能性がある。もっと実験を行なわなければ。

被験者R32
完璧な変性。量と純度という点では、点滴法がかなり有用なようだ。ただ残念ながら、この方法では作業時間が大幅に増えることが分かった。商売にするには生産性が低すぎる。もっと効率を上げなければ。

被験者S24
調合薬を液体から気体に変えるのは思ったよりも簡単だった。結果も悪くない。この気体に曝露された被験者にはすぐに変性の兆候が見られた。残念ながら、この方法を用いると被験者はかなり暴力的になる。今後の被験者については、さらに強固な拘束が推奨される。

被験者S24(追記):
完全に変性しているにも関わらず、被験者は生きている。現代のあらゆる学者の研究と計算を覆す結果だ。危険な異常行動の発生率が大幅に増加した。この副作用が解消されるまで、この実験は延期することが推奨される。

ガヴロスの日誌Gavros’s Journal

この方法で金持ちになれると信じているなら、私の主人達は本当に愚かだ。確かに、あの調合薬が生み出した物質は見た目も感触も希少な黒檀の鉱石にそっくりだ、だが黒檀ではない。腕利きの鍛冶屋がこれを使って道具を作ろうとすれば、すぐに偽物だと気づくだろう。

この件については何度もマスター・レサンに忠告してきた、調合薬そのものを売ることに力を注ぐべきだ。そのほうが賢いだろうし、同じぐらい利益にもなる。作成方法の翻訳には非常に苦労したし、調合も極めて正確に行う必要があるが、作るための試薬はそれほど珍しいものではない。私なら簡単にたくさん作れる。私が作った気体を、武器として使用しているところを想像してくれ!大儲けできるはずだ。

マスター・レサンは反対している。彼によれば、買い手は黒檀が偽物でも気にしないというのだ。それを使って作った商品でも、いい加減な検査に合格できれば彼らは喜ぶだろう。黒檀は非常に希少で、なかなか手に入らない。私達という供給元がいれば、買い手は検査に通るような偽物を作り、それが偽物だとばれるまえに店を閉められる。どこかの兵士が黒檀の鎧が偽物だったために戦死したとしても、買い手のポケットから金が減るわけではない。

マスター・レサンが正しいのかもしれない。私は同じ種族の多くを突き動かしている、ありのままの欲望を過小評価してしまう傾向がある。このような素晴らしい調合薬を使って研究できることに満足している。いずれ、もっと有用な利用方法が見つかるかもしれない。

カモンナ・トングの誘惑The Lure of the Camonna Tong

ヴォラール・ヴェンドゥ(元カモンナ・トング) 著

カモンナ・トングのことを耳にしたことがあるかも知れない。血の池が丸石を染める、暗い路地で囁かれる名であり、隣人のベッドに置かれた脅迫状の署名でもある。幻影、呪い、社会の底辺の腫物。誇らしく認めるわけではないが、私も過去に属していた。

さて、私がこれを書いているのは、法を尊ぶ者たちのためではない。道徳から外れてしまった者、善悪の間のわずかな境界線上を歩いている者たちのために書いている。空っぽの腹、それ以上に空虚な金庫を持つ者たちは、カモンナ・トングを見込みがある選択肢と思うかも知れない。そう考える者よ。この続きを読むのだ。

確かにカモンナ・トングには安定がある。安定した収入は無下にできず、彼らには収入を支える仕組みがある。栄光、支配、階級の昇進をちらつかせて、あなたを誘惑するだろう。そしてもちろん、彼らの行為はまったくの非合法だ。ただ、もしすでに非合法の活動へ傾倒しているのなら、良き仲間になれるだろうか?

私はうまい話を少し聞いただけで、すぐに参加を決めた。初めは良い生活だった。それまでずっと偉そうにしていた絶壁頭の富豪から金をだまし取る?望むところだった!数件の強盗や不法侵入?別に初めてではなかった。そしてもちろん、よそ者を追放するとか、ヴァーデンフェルをダークエルフの手に取り戻すとか、大きな口を叩いていた。だが正直に言うと、これから自分が何をするのか、まったく疑問に思っていなかった。

だが、それもアルゴニアンのお針子が少々思い上がるまでだった。

そう、それは街であった話だ。鱗の馬鹿が厚かましくも自分の店を始め、利益が上がる成功を収めた!彼女はダークエルフからうまい商売を奪っていた。我らの母、姉妹から金を横取りしていた。よって私たちはカモンナ・トングが得意にしていたことをやったのだ。ツケを払わせた。

誘拐するのは造作もなかった。彼女の店は順調だったが、所詮はアルゴニアンだ。家に侵入しても、衛兵を誰も見なかった。街のその地区に衛兵はいなかった。彼女が助けを求めて声を上げる前に、縛り上げ、さるぐつわをかませた。手の込んだ悪戯をしているかのように笑っていた。酒を飲みすぎた短気な若者のように。私は彼女を脅かし、思い上がりを矯正し、身の程を分からせるだけだと思っていた。

酔いが覚めようとした頃、暴力が始まった。初めに顔を打つと、すぐさま殴る蹴るの暴行に変わった。仲間たちは彼女の耐える様子や、堅すぎる皮膚ゆえにアルゴニアンのアザを見た者はいないことを笑っていた。仲間の笑いが混じる彼女のくぐもった叫びが、今でも耳に残っている。

封じられた口から血が滴りはじめ、暴力が激しくなっても、私は見ているだけだった。私は暴力と無縁ではなかったし、仕事の性質を考えれば完全に反対してもいなかった。だが、アルゴニアンの老女を縛り上げ、ひどく痛めつけ、床に倒れても蹴り続けるのは、何かが違っていた。動かずに見ていると、だんだん喉が詰まってきた。私が白けていることに誰も気付いていないようだった。喜々とした、独善的な正義に我を忘れていた。

誰かが短剣を抜き、何気なく言った。「指を失えば縫うのが大変になるな」

突然、私は目が覚めた。

私は仲間を止めた。そう言えれば良いのだが。賢いことを言ったとか、勇敢なことをしたとか、そう言えるのなら良いのだが。実際のところ、私は歩いて出ていった。部屋から、街から、その生活から去った。誇らしげにではなく、傷ついて、敗北して、あの哀れなアルゴニアンの恐怖に覆われた目に思いを巡らせながら。私の目とはまったくの別物で、あまりにも似ている目に。仲間が本当に指を切ったのかどうかは知らない。指を失ったどこかの物乞いが、悪夢の中で私の顔を見るのかどうかも知らない。これからも知ることはないだろう。

今後、あなたがカモンナ・トングのことを考える時、魅力と金のことを考える時、曲がった道徳観がどれだけ簡単に消え失せるか考えることだ。大口と酒のせいで、自分が進むとは思ってもみなかった、より暗き道に行くことを考えるのだ。口を閉ざすことは容易く、彼らの仲間になることはもっと容易い。

ガルー・リサリの書きかけの日記Ongoing Journal of Galur Rithari

かつての私は高い名声を得ていた。ボイアント・アーミガーの有望なチャンピオンとして一族の名を世に知らせ、我が名に敬意をもたらした。欲しがりも後悔もせず、ヴィベク卿とトリビュナルに仕えて生涯を全うするものだと思っていた。名誉ある死を予見していたのだ。歌に唄われる、戦場で迎える名誉の死を。いかにそれが間違いだったことか。

バル・ウルについての噂を全て考えれば、最後と思われた戦いで敵が迅速に対応することを予想すべきだった。オーンデイ族の吸血鬼は、自分たちの遺産にとって重要な土地を積極的に取り戻そうとしていた。吸血鬼たちは音も立てずに我々を襲い、私が指揮していた無警戒の戦士たちが剣を抜く前に、そのほとんどを殺害した。私の反応は遅れた。数多くの立派なアーミガー達の死に対して、私には責任がある。

劣勢で孤立した私は、敵に屈した。紳士のような装いの怪物に名誉ある待遇を望んだが、気がつくと私は血を飲む怪物の餌になっていた。

バル・ウルの奥で数日が経過し、私は死に際して夢を見始めた。それは当初、神々しいものだった。バール・ダウの影のおかげで汚れのない、ヴィベク・シティの海岸から吹く暖かいそよ風を感じた。近づいてくるヴィベク様の嬉しそうな顔を見て、私は愛と優しさで包まれた。許しと平穏を感じたが、近づくにつれ、ヴィベクは何か本当に不快な、言葉では言い表せないほど邪悪なものへと歪んでいった。すぐにモラグ・バルの無情に笑う姿に気がついた私の心臓には、デイドラ公の牙が突き刺さっていた。恐怖で目が覚めた私は震え、死以上の冷たさを感じた。しかし、胸の中で音がしないことが私の感染を明らかにしていた。私の病を。

自分の腐敗によって辱められ絶望した私は、オーンデイ族へ従順に馴染んでいった。獣だけを狙い、人は獲物にせず、他の者には近づかないようにした。それでもやはり希望は捨て、獣のように生きた。

今の私は、自分が渇きから逃れたいことに気がついている。この辛い苦しみを緩和するには、定命の者の生きた血を堪能しなければならない。それは新たな罪のない者を死に追いやるか、それ以上にひどい仕打ちをすることになる。そうするくらいなら、レッドマウンテンの炎へ飛び込むだろう。それでも、私の自己嫌悪がどれほど欲求を抑えられるのかはわからない。事態はこれまでのように続かない。何かしなければならない。だが、一体何を?

アシャルマウィア。私の同族が、遺跡を巡る虫の教団の主張への不満をつぶやいている。彼らは災いの王の支持を得るための儀式や、祠へ祀る生贄の話をしている。彼らのこういった行為に対する嫌悪感は共通するが、理由はまったく違う。私はアシャルマウィアの見張りを進んで引き受け、ほとんど気づかれぬままオーンデイ族からこっそり離れた。

これに慣れてはいけない。信者を害虫だと考えるのは簡単だが、彼らを殺してきた私は同様に怪物だ。彼らの血は私の苦しみを晴らす慰めで、活力と至福を置いてくれる。私が犯したことを嫌悪する心が生まれたのは、血を吸った後だった。この場所で最期を迎えるなら、それが私にはふさわしい。

いや、この哀れな存在にふさわしいのは、この存在が始まった場所で滅びることだ。この苦しみにおいて、私の思考はいつでもバル・ウルへ戻る。おそらく、私自身も戻るべきなのかもしれない。

カレク・グラ・バグラトへの手紙Letter to Kharekh gra-Bagrat

カレク

迅速なサービスを望んでいることは分かっていますが、こうした件には時間がかかることを理解しなさい。スランを通過する旅人すべてを逮捕するのは無理です。あなたの新しい監獄だってそこまで大きくはありません。

徴用に最適な候補者は家族や後ろ盾のない者、前科があって新たな容疑で私が引っ張れる者です。法廷で争える者や背後に強力な一族のいる者を逮捕すれば、私たちの協定はあっという間に露見するでしょう。

ちょうど明日、シロディールから大規模な難民の一団が通過すると報せを受けました。間違いなく何人も逮捕する理由が見つかるでしょう。人手はもうすぐ渡せます。

焦らないように。

H

キノコの塔に関する証言Testimonials on Mushroom Towers

ミネルヴァ・カロ准編年史家 著

名家のうち、あらゆる点で最も謎めいているテルヴァンニ家は、文字通りの意味でも象徴的にも極めて珍しいキノコの建物を建て、彼らはその中で生活と仕事をしている。テルヴァンニ家が建築様式の趣向について公式な声明を出したことは一度もなく、多くの者はテルヴァンニ家の威光におののき、理由を尋ねることはしない。テルヴァンニ家の賢者たちがプライバシーを重んずることはよく知られているが、なぜ石や木の塔を建てないのか?私は庶民の考えを聞くことにした。テルヴァンニ家の注目を避けるため、発言者の名前は変えてある。

初めに話を聞いたのは、表向きはテルヴァンニ家と関わりのないものの、しばしば家人に商品を売っている地元の商人だった。非常に腹を立てていたヴェルナというダークエルフは、喜んで持論を展開してくれた。

「臭いよ。まさにそれ!彼らは三大神にも見捨てられた悪臭のとりこになっているの。それが好きでたまらない。彼らの生態には何かがある、他のダークエルフとは異なる何かが。それにより、魔法でキノコを塔に変えてしまうほど、キノコの臭いを心の底から欲しているの。一日中塔の中で腰かけて、臭いを嗅いでいるって聞いたことがある。私?頭が痛くなるわ。松の爽やかな匂いとか、石や他のまともな建築素材の何が悪いの?時々思うんだけど、かびの生えた古いキノコよりも、シルトストライダーの糞でできた塔を見る方がマシよ!」

アルゴニアンの宿主である波立てし者は、その目的がより機能性にあると信じていた。

「まあ、テルヴァンニ家が孤立主義者であることは周知の事実だ。評議員の会合にすら出ようとしない。市場に行かないですむようにキノコを食べていると予想している。それ以外に何が考えられる?マッシュルームシチュー、マッシュルームパイ、マッシュルームソース!わずかにキノコがあれば、たくさん料理ができる。私たちが気付かないのは、目立たないように家の奴隷がキノコを集めているからだ。キノコ愛好家と思われて、イメージを壊したくないんだろう。完全なキノコ作りの家を建てる以上に、キノコに固執していると思う」

とても愛想のよいハデルというダークエルフの商人は、キノコの使い道についてまったく異なる意見を持っている。

「キノコには強力な催淫性があると聞いたことがある。賢者たちが塔の中で一日中何をしているのか、非常に気になるところだ。自分でもコレクションを始めてみようかと考えた。もちろん、勉強のために。ただ、塔の居住者の注意を引こうとは思わない。テルヴァンニ家の魔術師は、寛大なダークエルフじゃない。大いに満足している時でもそうだ。それに彼らは、見せかけているよりも頻繁に満足している気がする。意味は分かるな?ところで、私の名前は本当に変えると言ったよな?」

テルヴァンニ家に料理を出している商人は、食材について興味深い情報を提供してくれた。たくさんの疑問が湧いてきたが、テルヴァンニ家に直接仕えている者に興味を引かれた。大半の奴隷は話をしたがらなかったが、オークの雇い人を見つけると、次のことを話してくれた。

「なあ、誰だって[キノコ]は使うだろう?キノコあるところに利用者あり。利用したところで驚くことでもない。キノコの利用はテルヴァンニ家が決めた中で、唯一役に立つことだ。真実は話したぞ」

真実は単純なことだったのかも知れない。テルヴァンニ家はこの自生する植物を見つけ、その利用を望んだにすぎない。聞いた中では「都合が良かったから」が最も有力な説と思われるが、本当のところは?見つけた情報源の中で、最後に話を聞かせてくれたのはカジート商人のルモクで、次のように説明した。

「この者はよそ者を威嚇するために塔を建てたのだと、いつも思っていた。ルモクが[削除]で商売を立ち上げた時は、非常に不安だった。頭上にあの変な塔がそびえているのだから。テルヴァンニ家の象徴とも言えるのではないか?威圧的で、謎めいていて、亡霊が出てくるようだ。テルヴァンニ家は、この者のような者を土地に入れたがらない。怖がらせておくのが利益にかなう」

数回にわたって調査をやめるよう強い調子で要請された以外、テルヴァンニ家の者から公式なコメントは得られなかった。だが、単に脅されたからといって私の好奇心は収まらず、これからもずっとテルヴァンニ家の謎を解こうとするだろう。テルヴァンニ家の高圧的な目にさらされてもなお、多くの者が思いと自説を共有してくれたことに元気づけられた。それぞれの考えは、最後に挙げた説よりも面白く、示唆に富んでいた。

クリフストライダーの歌The Cliff-Strider Song

クリフ・レーサーは翼を広げる、大きく広く
小さな鳥たちは跪き、恐れおののく
唸り、シューと音を出し、唾を吐き、金切り声を上げる!
グアルの文句が聞こえるんだ
「恐ろしい!何て残酷な演説だ!」
ああ、お前みたいに

少し攻撃されるだけで、お前は機嫌が悪くなる
お前は私たちのグアルを盗み、囲いを台無しにする!
お前は私たちのロフトで休み、壁にフンを撒き散らす
真夏のスコールのように屋根をズタズタにする
子供を驚かせ、赤ん坊を泣かせる
お前が変わることはないだろう

クリフストライダー、高く駆け上がる
燃えさかる岸壁の上で、空に触れろ!
クリフストライダー、高く駆け上がる
稲妻のようにかん高い叫び声を上げろ、お前は不死身だ!

お前は義母のように執念深くてケチ臭い
お前は爪についた古い魚のような臭い
お前の腐った臭いにはエルフの大人も涙する
お前の鳴き声はガラスを砕き、私の耳を震わせる
お前は私たちの枕に小便をする、その臭いは何年も消えない
お前はヴァーデンフェルの誇りであり喜びだ!

クリフストライダー、高く駆け上がる
燃えさかる岸壁の上で、空に触れろ!
クリフストライダー、高く駆け上がる
稲妻のようにかん高い叫び声を上げろ、お前は不死身だ!

クロックワーク・シティにてOn the Clockwork City

第七位の魔術師にして驚異の発明家、バリルザー 著

私は謎の父の元で研究した。クロックワークの神から魔術と機械を学んだ。クラフトと魔術によってオブリビオンの秘密を調べた。私はこういった研究を全て、知識の光であり、アルムシヴィのシであり、トリビュナルの魔道秘術師であるソーサ・シルと行った。

研究者兼弟子として、私はメイガスの元で長い時間を過ごし、彼の究極の創造物であるクロックワーク・シティの維持と拡大に協力した。今ではこの伝説の施設に関して、様々な噂や憶測が飛び交うようになっている。この本の目的は、噂を肯定や否定をするためのものではない。その代わりに、この場所に関する秘密や驚くべき謎をさらに興味深いものにしようと考えている。私のかつての師が、それを許してくれることを願うばかりである。

まずは、秘密を一つ明らかにした上でそれを謎で包み、基本的な歯車として話を進めよう。クロックワーク・シティは世界に匹敵するほどの大きさを持つ施設だ。だが大きさはガラスのドームに収まる程度で、ふくよかなネッチほどの幅しかない。ソーサ・シルは間違いなくドゥエマーの技術から影響を受けている。だが真鍮のトンネル、巨大歯車、電気の噴水、稲妻の滝は、三大神のメイガスが独自に作り出したものだ。最後に、クロックワーク・シティは苦労して作り上げられたニルンの再現だと言われるようになったが、実際にはその正反対かもしれない。この施設は、クロックワーク神が想像したニルンの完全な姿である。

私は弟子として時間の多くを、歯車の調整とエナジーの流れの調整に費やした。だが私の一番幸せな思い出は、ソーサ・シルが利用していた多くの工房、ファブリカトリウム、アトリエ(これは工房を気取って呼んだだけだが、メイガスは戦詩人のようにあいまいな言葉の表現が好きだった)で行った、様々な作業だ。私はこの街全体で絶えず行われていた、終わりのない様々な実験に参加することを好んでいた。私たちはあらゆるものを研究し、調査対象となる新しい理論と改良できそうな装置を常に探していた。「私たちが作るのは、作ることが可能だからだ」とソーサ・シルは言っていた。だが私には彼が「私たちが作るのは、作ることが楽しいからだ」と言っているように聞こえた。

他にも熟考してもらいたい謎がある。クロックワーク・シティに入るには、自分を過信せずに謙虚になる必要がある。確かに、シュルームビートルより大きなものが入れるような隙間はない、だが一度中に入れば、その隙間は探索しきれない大きさになる。歯車が動いている間に、是非ともそのことをよく考えてみてくれ!

街には他の都市と同じように住民がいる。中にはファブリカントのように、必要な役割をこなすため特別に作られた者たちもいる。だがそれ以外の者は同じように施設の中に住んでいる。ソーサ・シルの今の弟子たちは、真鍮のトンネルを歩き回り、観察と絶えず微調整が必要となる、終わりのない一連の実験の保守を行っている。それだけでなく、ある実験に参加するためメイガスに招待された者や、外国からの追放者、迷子になった旅行者、プラナーの探検家などもいる。私がこれまで経験してきた最も興味深い会話の中には、クロックワーク・シティで出会ったそういった人物との会話も含まれている。

最後に、ソーサ・シルはクロックワーク・シティを使って「未来を作り出す」ことができると聞いたことがあるだろう。確かに、この発明の泉から生まれる数々の装置が、いつかこの世界を謎の父が最も喜ぶ形に変える日が来るかもしれない。それ以上のことは何も言えない。クロックワーク・シティを使えば、「世界を作り変えられる」とも言われている。謎めいたその言葉の真意を明らかにするつもりはない。だがそのピストンが真実を汲み上げていることは間違いないだろう。

そろそろ自分の実験に戻ろう。一日作業しても、時間が足りたことがない!

シルトストライダー乗りの記録Silt Strider Caravaner’s Log

栽培の月15日——乗客7名を輸送。小包18個で重量は22ストーン。晴天。

5の刻にて、セイダ・ニーンへ進路を向けた。道中は何も起きず。

1の刻にて、バルモラへ進路を向けた。野生のニックスの群れをオーデイ付近に確認。よそ者たちは非常に興奮し、停止を要求した。

2の刻にて、バルモラへの旅を再開。道中は何も起きず。

6の刻にて、バルモラに到着。乗客と小包をすべて確認。

***

栽培の月16日——乗客5名を輸送。小包13個で重量は27ストーン。新米のストライダー乗りが一人送られてきた。メルティシ・アポ。特に雲多し。

5の刻にて、グナール・モクへ進路を向けた。適性を測るため、新米のメルティシが運転穴に行くことを許可。新米は左のアンテナ耳を引っ張り、ストライダーに軽い発作を引き起こした。乗客2名が振り落とされ、小包7個を失った。乗客を回収した後、メルティシを貨物室へ送った。

3の刻にて、グナール・モクに到着。乗客が予定外の停止と小包の損失に賠償を要求。収支は56ゴールドのマイナス。

4の刻にて、グニシスへ進路を向けた。新米のメルティシが繰り返し、運転穴で第二のチャンスを求めた。貨物室へ送り返した。道中は何も起きず。

9の刻にて、グニシスに到着。乗客と小包をすべて確認。

***

栽培の月17日——乗客6名を輸送。小包14個で重量は24ストーン。新米のメルティシ・アポは反対も虚しく残留。晴天。

5の刻にて、クールへ進路を向けた。新米のメルティシが再びストライダーの操作を願い出た。不安はあったが、操作を許可。

7の刻にて、新米のメルティシが右食道下神経節を踏んだ。これがストライダーの消化器官および臭管に激しい排出を引き起こした。乗客は正当にも恐怖した。メルティシを再び貨物室へ。

1の刻にて、クールに到着。乗客たちがまたしても返金を要求。収支は43ゴールドのマイナス。

2の刻にて、マール・ガンへ進路を向けた。乗客4名を輸送。小包9個で重量は12ストーン。道中は何も起きず。次の停止所で新米のメルティシを排除できることに期待。

5の刻にて、マール・ガンに到着。その日の残りはストライダー甲殻の液体を掃除し、詰まった管を磨いて過ごした。

***

栽培の月18日——乗客8名を輸送。小包22個で重量は31ストーン。新米のメルティシは残留。新米はフラール家の有力な後援者が溺愛する甥っ子であるとの通達を受けた。士気低下。高温で強風。南東よりの風。

5の刻にて、テル・ヴォスへ進路を向けた。新米のメルティシがストライダー運転の最後のチャンスを要求。15回目ながらストライダー生理学の基礎を示してやった。運転穴に入ることを許可。

6の刻にて、新米のメルティシが湾曲したヴェドラン棒で視神経を突いた。ストライダーは即座に絶叫を上げ始めた。新米メルティシを再び貨物室へ。

12の刻にて、ストライダーがようやく叫ぶのをやめた。乗客は安心。

12と15の刻にて、安心が苦い非難に、そして返金を求める叫びに変わった。収支は52ゴールドのマイナス。

1の刻にて、新米のメルティシを運転穴に呼び出し個人面接。ストライダー乗りの方法論について簡潔にして市民的な議論をした。

4の刻にて、新米のメルティシが行方不明であると乗客たちが報告。ストライダーを捜索するが発見されず。ザーゴニパル付近で転落した可能性大。悲劇的喪失なり。士気は大きく向上。

7の刻にて、テル・ヴォスに到着。メルティシを除く全乗客を確認。テル・モラにて新たな見習いを迎えるとの通達を受けた。士気低下。

スカーの墓場The Grave of Skar

アンルン・フローズン・コーブ 著

スカーのくぼんだ目がキャンプを見つめ、火が萎れた顔を照らす中、クモの巣がスカーの視界を不明瞭にしている。今、スカーの開いた胃は入口を象徴しており、アッシュランダーの中でも最高に相応しい者にのみ開かれている。彼らは、先祖が戦い敗れた敵であるこの強大な獣の前を歩いている。音楽はなく、酒もないが、厳粛な瞑想と祈祷がある。聞こえるのは囁き声とパチパチと音を立てる炎のみだ。

アッシュランダーは、私のようなよそ者にほとんど声をかけない。部族外への愛は持たず、トリビュナルへ従うダークエルフに燃えるような憎悪を抱いている。混迷が深まり、灰の地に埋まり、敗れたスカーの脚以上に深く据えられるのを感じる。戦機が訪れれば、ヴァーデンフェルのダークエルフはほとんど躊躇しないだろう。

私は彼らの手法と習俗を理解しようとしている。恐ろしい獣との歴史、評議会の名家、過去の祠。スカーはいかにして敗北したのか?なぜその亡骸が集会場に使われているのか?私の質問は大抵沈黙によって迎えられる。話そうとする者は食料や金の約束を求めて話し、ほとんど語ることがなくてもそれを求める。

私の知っていることは、彼らの先祖が戦いでスカーを倒したことだ。その方法は不明だ。槍と言う者もいるが、誰の手によるものかは言わない。この謎の戦士は誰だったのか?彼はアッシュランダーの中でも高く敬われ、崇められているのではないのか?どうして誰も彼の名を知らない?口伝による伝承が行われ、私が参加を許されたたき火の集まりで共有される伝承は、驚くほどこと細かい。なぜその名が記憶から抜け落ちている?

アッシュランダーの集まる墓場にも大きな重要性がある。その墓場は、殺害した相手を王座に載せる族長のことを、力と勝利の顕示のことを思い起こさせる。アッシュランダーが過去の勝利を思うにつれ、未来の栄光への希望も抱く。彼らはこの獣、強きスカーを倒したエルフ。その日が訪れたとして、彼らに成し遂げられないことなどあるのだろうか?

私はスカーの死骸を見る。全身に戦慄が走る。恐怖でいっぱいになるが、このアッシュランダーたちにとっては、希望と力の象徴なのだろう。視線はたき火に沿っていき、私は思いを巡らせる。強さから、誇りから何が生まれるのか?この部族にはどのような未来が待っているのか?別のスカーが現れ、彼らがそれを倒す者になるのかも知れない。もしくは、敗れる者になるのか。真実は時の経過によってのみ明らかになる。

スノーフィンのメモSnorfin’s Notes: Arkngthunch-Sturdumz

よし、アークングサンチの最後の部屋の中央、鍵のかかったドワーフの宝箱の中に、バリルザーのバカが求める部品があるはずだ。宝箱に近づこうとする度、炎が燃え上がって道を阻む。どうやら炉の排出孔を閉じる方法を考えなくちゃならないようだ。あの忌々しいコンストラクトと亡霊が俺を少しの間だけでも放っておいてくれたら、何とかなりそうな気がするんだが。

どうやら3つのバルブ制御装置が排出孔につながっているらしい。結構簡単に閉じられそうだ。そうすれば箱を開けられる。

セイセンの日記のページSeythen’s Journal

母さんは心配性だ。ようやく、一人で出かけることを許してくれた。もちろん、古いデイドラの祠を探検したかったってことは話してない。デイドラの祠はどれも変わっていて不思議だ。

僕に勇気がないわけじゃない。でもあのお腹をすかせた人を見て、少し不安になった。モラグ・バルの祠の近くでは、注意したほうがよさそうだ。

今はクシュタシュピの祠には近づかないでおこう。そもそも、ここからだと僕の両親のいる家の屋根がしっかり見える。これじゃたいした冒険にならない。

一回りしてみよう。もう少し北西に行ったところだ。そこにも祠がある。マラキャスのもので…確かザーゴニパルとか呼ばれてるはずだ。祠の名前はみんな変だ。

ダークエルフ、闇の心Dark Elves, Dark Hearts

放浪の肉体労働者バコゾグ・グロー・シャクフの日記より

オークがひどい仕打ちを受けてるのは間違いない。どこへ行っても同じだ。ウェイレストで縄を引っ張っていても、バーガマでレンガを積んでいても。どこへ行こうと聞こえてくる。「蛮人」、「野蛮人」、「獣」。以前は本当に悲しくなったものだ。ボウルに入った水や店の窓ガラスに映った自分の姿を見て、「連中は正しいのかも」と思ったものだ。だが今は違う。ヴァーデンフェルに引っ越してきてからは。

「蛮人」はどういうものか、じっくり見てみたいか?それならダークエルフと時間を過ごしてみるといい。確かにきれいにしている。ここにあるものは全てきれいで、磨かれていて、しわもない。だがほんの少しでもカーテンをめくってみれば、悪の姿が見える。それも、不格好な子供じみた悪ではなく、好色で赤い目をして、デイドラのように笑う本当の悪だ。奴隷、殺人、詐欺、虐待。罪の名を言えば、それは尊敬されている。デイドラの名を言えば、それは崇拝されている。この島は骨の髄まですっかり堕落しているのだ。信じられない?それなら、虫の話をしよう。

ヴァーデンフェルは虫であふれかえっている。赤ん坊の足の爪ほど小さいものから、マンモスほど大きなものまで。それだけなら心配の種にはならない。故郷にいるエチャテレなら気味悪がる者はいるが。ここにいるほとんどの生き物は見応えがない。だが本当に恐ろしいのは虫そのものではない。ダークエルフがそれに何をするかなのだ。

ニックス・オックスを例に取ろう。見たことがない?馬くらいの大きさのダニに、竹馬のような毛だらけの脚が6本ある姿を想像すればいい。どうだ?それがニックス・オックスだ。

自分が知る限りでは、穏やかな生き物だ。他の群れをなす動物のように鳴き声やうなり声を出さない。ただ歩き回って、硬くなったキノコを大きな顎で割って、皮の中にある菌をぺろぺろとなめて食べている。優しい巨人ってやつだ。優しすぎるかもしれない。

早朝、まだその生き物が眠っている間に、6人か7人のダークエルフがまるで強欲なウェルワのように群れに襲いかかる。10匹ほどのニックス・オックスを追い立てて、車輪付きの牛の檻に入れるまで、それほど時間はかからない。グループのリーダーが手早く獲物を調べて、黒のチョークで殻に印を付ける。値段だ。もちろん、印を付けられないのもいる。弱すぎるか小さすぎて使えないのだ。世話人の一人はそいつらを逃がしてやる代わりに、槍で刺す。顎の真下をだ。それで檻から蹴り出して、放置する。悲しいのは、そいつらがまだ幸運な方だということだ。

市場に送られるニックス・オックスは二つのグループに分けられる。ニックス・トヴォとニックス・リマだ。トヴォはより成長していて大きめであることが多い。リマ1匹の値段で2、3匹は買える。長い間、それがどうしてか分からなかった。そしてようやく世話人の一人に聞いて、どうして大きくて強いニックス・オックスのほうがずっと安いのか説明してもらった。

「皮が分厚すぎる」と彼は言った。「こじ開けられない」

つまり、成長したニックスの殻はオーク材の皮ほど分厚く、圧力を与えるとひび割れる。その一方で若いニックスの皮はもっと柔軟だ。少しの圧力で殻を外して、その下にある内臓を見られる。アクセスのしやすさこそ、リマの価値が高い理由だ。

裕福な農民はドレンリンと呼ばれる専門家を雇って、ニックス・オックスを「仕込む」。これは「壊す」の遠回しな表現だ。ドレンリンはかわいそうなニックスの背中に黒曜石のドリルで穴を開け、肉をこじ開けて、彼らが「操縦室」と呼ぶ空洞にある神経の束をあらわにする。ホックのような突き棒をいくつか内臓に配置して、それから殻を元の場所に戻す。この行程は1時間近くかかるが、それが終わる頃、ニックスは子羊のように従順になっている。ただそこに突っ立っているのだ。落ち着きなくうろつくこともなければ、顎をぴくぴくとさせることもない。生きてもいないが死んでもいない… ただの殻だ。

告白しよう。見ていてつらい光景だ。だが最も恐ろしいのは何だと思う?それは皆がどれほど退屈そうに見えるかということだ。ニックス・オックスの背中をこじ開けていたドレンリンの目をのぞき込んでみて見えたものとは?娘がエチャテレの乳を搾る時にする表情と同じだったのだ。うんざりして、無関心な、空っぽの顔だ。まったく気に留めていない。恥を感じていない顔だ。

もちろん、自分だってうぶではない。スペアリブを丸ごと食べて、豚のジンを飲み干すなんてことは平然とやる。だが生き物の脳みその中を掘り回すなんて?そしてゾンビに変えてしまうなんて?腹黒くないとそんなことはできないはずだ。すごいことに、ダークエルフはそれをいつもやっている。

チョダラとの会談Meeting with Chodala

ネレヴァリンにしてスナラーを持つ者、チョダラとの会談記録
書記デイキンによる編集

グラカーン・ユスザシュテンと火を吹く者ニバポーが見守る中、クンド・ウドはアシュカーン・チョダラを迎えいれた。チョダラは一切の恐怖を見せることなく、追放者の部族に対して滅多に与えられない敬意をクンド・ウドに示した。我々はレッドエグザイルの小部隊を貸し与えたが、彼はより恒久的な合意を結ぶ交渉に来た。

チョダラは会談の冒頭に、部族を結束させる計画について説明した。彼の思い描く統一の中には、レッドエグザイルのための場所があることを強調した。

クンド・ウドはそもそもレッドエグザイルがなぜ、自分たちを追放した部族の元へ戻ることを考えなければならないのかと問うた。チョダラは思慮した様子でこう返答した。「なぜならあなたたちはアッシュランダーであり、我々の血が互いを呼び合うからだ」

そしてチョダラは、我々の部隊が取得を手伝った杖の力を見せた。彼はこの杖をスナラーと呼んでいた。「スナラーは神の力を授けてくれる」とチョダラは言い、杖の先端で石を叩くと、石は卵の殻のように割れた。

クンド・ウドは彼の勇者であるグラカーン・ユスザシュテンに命じ、この神をも恐れぬアシュカーンに身の程を思い知らせるよう言った。しかし彼女が何度剣を繰り出しても、チョダラの肉体に触れることも、貫くこともできなかった。

「お前はどういう怪物なのだ?」とクンド・ウドは聞いた。

「私はネレヴァリンだ」とチョダラは主張し、クンド・ウド、グラカーン・ユスザシュテン、ニバポーは彼の前にひれ伏した。

「レッドエグザイルは我が執行者となり、ユスザシュテンを我が勇者としよう」とチョダラは宣言した。「我が帰還に備えよ。お前たちのためになすべきことがたくさんある」

「どちらへ行かれるのです、ネレヴァリン?」とクンド・ウドが尋ねた。

「次に取るべき行動について熟慮しなければならない」とチョダラは言った。「その上で私は賢女ドヴロシと会合を開き、私がネレヴァリンであることを承認させるのだ」

チョダラは立ち去り、グラカーン・ユスザシュテンは彼に同行した。こうして会談は終わった。

チョダラの備忘録Chodala’s Writings

荒野での生活の間に、私はある興味深いものを手に入れた。後援者のおかげで、ニコティックの信者がある儀式を行い、ただの杖に計り知れない力を流入させようとしていると知った。レッドエグザイルを説得し、私のために杖を取りに行かせることは簡単だった。スナラーは我が物となった。後援者が言っていたとおりだ!

スナラーの力が流れていれば、できないことは何もない!歩を進め、運命を実現しなければならない。私はネレヴァリン、部族の救い主だ!私はずっと疑いを持っていたが、スナラーの力が自信を固めてくれた。この杖は恐れを知らぬ、無敵の存在にしてくれる。名家を震え上がらせ、トリビュナルを恐れさせよう。ネレヴァリン・チョダラが彼らを倒し、大切な伝統を救うのだ。

偽神を下し、失われた伝統を復活させる時が来た。聖戦によってこの地を浄化する時が来たのだ!それを成し遂げれば、モロウウィンドは再び偉大になれるだろう。

ディヴァイス・ファーのメモDivayth Fyr’s Notes

私は新しい世界へ踏み入る時、最初の一歩が最も重要だと考えている。期待や不安、畏怖と驚きに満ちているからだ。私ほどの年月を重ねてもそれは変わらない。それゆえ、私の失望を想像してほしい。神のごとき天才の領域への前例なき旅路が、足元のゴミの山と共に始まった時のことを。見よ、神は拒絶されている!

傷ついた虚栄心のことはともかく、私はここにいる。この機会を最大限活用するつもりだ。


探検隊が誰もゴミの山から出てこないところを見ると、私はムンダスに開いた裂け目しか安定化させられなかったのではないかと疑っている。出てくるのはソーサ・シルの潰れて捨てられた作品だけだ。到着してから、私は攻撃的なファブリカントたちを数対破壊する羽目になった。これがあの常に見ている監視者の命令なのか、故障か、本能によるものなのかは判然としない。


部下たちがオブリビオンの最果てに落ちていないという可能性も少し残っている。この場所の機械オペレーターがブツブツ言っているのを聞いた限り、私以外の侵入者とも戦っているらしい。私としては気づかれないでいる間、手の届くところにある機構の研究を続けたい。

テル・ファー追加仕様Tel Fyr, Additional Specifications

精巧な設計の塔を実現したことは間違いないが、議会はテル・ファーにその名の期待を越えることを希望している。その点については、新たな主が自身の都合に合わせていくつか変更を規定している。この中には、土台に隣接する自然の洞窟中に、地下通路を拡大することも含まれる。広大な範囲のため数ヶ月の追加作業を要するが、我らが家の名誉のためこの作業を完了する義務が全員にある。これまで示してきた通りに作業を続行すれば、この家が生み出した最高の塔の建設に貢献できたことを自ら断言できよう。

テルヴァンニの日記Telvanni Journal

この洞窟は驚異的だ!日光がまったくないのに、あらゆる種類の植物で満ちている。ランド・コーラルの順調な成長さえ見られるというのに、我々はここに水が流れているいかなる徴候も発見できていない。おそらく帯水層が染みだしているのだろう。塔の工房の拡張を開始する前に気をつけておかないと、素晴らしい場所を水浸しにしてしまう危険がある。

正直に言って、こんな光景は今まで見たことがない… だが、これと似た感じを受けたことはある。ここにはエナジーがある。ぬくもりがある。アルマレクシアとヴィベクの部屋を訪問した時のことを思い起こさせる。彼らの神聖な輝きは体で感じられる。この繁殖する洞窟は彼らの作品なのだろうか?もしそうなら、生き神の領域を侵害しているのでなければいいが。

マスター・ファーは自分の塔のためにここを選んだとき、この洞窟のことを知っていたのだろうか?おそらく調査を終えた後で、彼の考えを聞かせてもらえるだろう。いずれにせよここにいる間に、できる限り調べるつもりだ。

ドゥエマーの巨大構造物案内A Guide to Dwemer Mega-Structures

ドゥエマー学者、ヴォリナラ・クリーブ 著

ドゥエマーのアニムンクリの様々な様式については広く知られているが、大型のドゥエマーの驚異の多くは謎のまま残っている。ドゥエマーの天球儀とファブリケーションの伝説は溢れている一方で、直接体験した一次証言は不足している。私は生涯をドゥエマーの巨大構造物の研究に費やしてきた。かなりの成功を収めてきたものの、どうしても見つけたい特別な機械がある。それがドゥエマーの音響共鳴装置だ。

最盛期、ドゥエマーは音の力をほぼ完全に掌握していた。数え切れない年月が過ぎた今も、この分野で彼らと肩を並べる者はいない。魔法ではなく、音が彼らの台頭を促進した。音の幅広い利用には常に驚かされている。ドゥエマーは音を採鉱、医薬、建築、心理学にまで応用した。心理学の利用には最も興味をそそられている。チャイマーの研究によれば、ドゥエマーは音を使って意志の弱い者を自在に操れたという。複雑な聴覚による催眠術の一形式である。幸いドワーフは我々の立派な先人に対して、戦場でこの技術を活用することはなかった。装置は規模が大きく複雑で、輸送はほぼ不可能だった。それでも彼らは音響共鳴装置と呼ばれる巨大な装置を使い、限定的な規模で利用していた。

伝説が真実なら、この共鳴装置は驚くほど複雑な建築学の驚異だ。最も堂々たる巨人よりも高く聳え立ち、洞穴状の部屋をパイプとダイヤルとピストンで埋め尽くしている。起動すると共鳴装置は力強い音を放ち、弱いエルフや人間の脳波を変え、深く落ち着かせて心からの喜びを感じさせるか、過度の不安や恐怖を誘引できた。そうした装置の活用法は事実上無限だ。ああ、この目で一度も見られないなんてたまらない。もしそうした力を複製し完成させられたら、トリビュナルの子供たちはタムリエルもその向こうの大陸も、最高の状態で支配するだろう。

ドーレス家の概要Understanding House Dres

名家の大歴史家、ソラマー・ドーレス 著
黄金の平和八十四周年記念

ダンマーの名家の一つであるドーレス家は、農業を他の何にもまして尊んだ。ドーレス家はサルトリス農場と奴隷労働によって財を築きつつ、デイドラ信仰と先人崇拝の堅固な伝統を維持してきた。ドーレス家はモロウウィンド南東の地域を支配し、その影響をモロウウィンド中央の一部にまで拡大した。ドーレス家は大師範サルシルが奴隷襲撃を成功させ、他の名家たちへの主要な奴隷供給源としての役割を確保したことで、正式に名家としての地位を確立した。

ドーレス家はダンマー社会をタムリエルの他の部分と結びつける努力に対して、常に抵抗してきた。孤立主義者であることを誇りとする我々だが、名家の統一は信じた。我々の農業はモロウウィンドを養い、ダンマー社会の存続に必要な食料品の大部分を供給することも可能なほどだった。そのため、我々の富と影響力の大半はモロウウィンドへの食料供給から発しており、奴隷貿易の支配がそれをうまく補完している。

ドーレス家の孤立主義的立場は、初めから名家の慣習と世界観に埋め込まれていた。我々は他の文化と種族をダンマーに劣るものと考えるだけでなく、我々の完全な思い通りにならない他種族との長期間の接触は、ダンマー社会に危険を呈するものと見なす。思想は疫病のように警告もなく広がり、押し留めることが不可能になる。それよりも我々は名家内部の関係に集中し、ダンマーの地位を改善することで我々の社会を強化し、永遠のものとするべきであると考える。

ドラノス・フレランのバラッドBallad of Dranoth Hleran

恐るべき爪で、スカーは襲いかかった
石のように固い甲殻に守られ
誰も傷を、ヒビを入れられなかった
その獣の力に、我らの軍は倒れ

だが恐れぬ勇者が一人いた
勇敢な戦士、ドラノス・フレラン
強力な槍、カルデラスを手にした
ただ一度、轟く声で唸らん

彼は獣に向け槍を構え
走って、すべてをかわした
決心も固く、彼は速度を増し
強大な敵へ突進した

最後の突き、最後の衝突
強大なるスカーは仕留められる
彼の家へと贈られた名誉
フレランの栄光は永久に語り継がれる

ドルヴァラ評議員への手紙Letter to Councilor Dolvara

ドルヴァラ評議員へ

ウルラン・レレスの降格、後の追放を巡る不運な出来事に、上級評議会は非常に落胆している。この結果は、古く尊敬される家の有望な息子に期待した結果ではない。ウルランの裁判を詳述する報告書は有益な情報をもたらした一方で、我々の心配が和らぐことはなかった。上級評議会は、事態を考慮し、あなたに要請を行う。

まず、あなたはバルモラ地域で頻繁に事業を行っている。エリス評議員の行動を適切な期間、監視してもらいたい。エリス評議員には全幅の信頼を寄せているが、ウルランが息子であることに変わりはない。娘とモラグ・トングのことで、気掛かりな知らせがあったことを加味すれば、我々が憂慮する理由は分かるだろう。

次に、ブリバン・マルロムを隊長の位に昇進させ、レドランの西方軍指揮官にしてから、厄介な報告が来ている。認可していない傭兵団、とりわけフェーハラ・ウォークローの使役が増加している。契約した兵士は名家の全法規を遵守するよう求められるが、フェーハラの傭兵達はしばしば慣例から外れる。特に、アッシュランダーの処遇に関する過剰な暴力の報告は耳にしたくない。知ってのとおり、過酷な扱いは常に許可が求められる。

レレス家との交流や個人的関係を利用し、エリス評議員が身辺整理をするように促してほしい。来る評議会の前に、バルモラでの懸念が静まればありがたい。

メリアス上級評議員

ドロヴォスに宛てたリデナの手紙Ridena’s Letter to Drovos

ドロヴォス

これが最後の警告よ。研究メモの調査を断られただけじゃなく、あなたとの面会さえ完全に禁じられている!私のことを貶め、ケンカをしている学校の子供のように手紙をやりとりさせるのなら、私は喜んであなたのちっぽけな活動を密告するわ。何の後ろめたさもなくね。野生のクワマーの群れにもたらしている脅威と、どうしても説得を受けないあなたについて、フラール家はきっと知りたがるでしょうね。

尊敬するあなたに、最後の選択肢を与えるわ。この愚行を即座に止めなさい。さもないと、動かざるを得なくなる。

直接、すぐに返事をして。

R

ドロヴォスの研究メモ1Drovos Research Notes 1

職務経歴に大きな傷がついた後で、就くべき天職を見つけたようだ。よりによって、クワマーの品種改良家だが。それでも、この未開の分野には可能性が溢れている。この分野の科学的研究は貧弱であり、良く言って遅れている。悪く言えば役立たずだ。私のクワマー品種はより強く、健康で、長寿でなければならない。この知性を用いて、事実上まったく新しい種を生みだせるよう努力する。ヴァーデンフェルがこれまでに見たことのない種であり、クワマーの上位種となるものを。

ケチなフラール家が所有するマタス・エイキン卵鉱山で研究を開始した。彼らは収入を保証する提案なら何でも受け入れる。私は富にほとんど興味がない。金は簡単に手に入るが、私が築きたいのは後世に残るものだ。研究が完了すれば、あらゆる者が私の名を憶え、崇めるだろう。

ドロヴォスの研究メモ2Drovos Research Notes 2

今の雇い主は、私の首に鎖をつないでおくべきだと考えている。リデナ・デヴァニという鎖を。いわゆる「タムリエルの自然学者」は、こちらが刷新と思うところを危険としか見ていない。母親のスカートの裏に隠れている子供のように、彼女は道徳と倫理の裏で縮こまっている。すでに研究の進展を妨害し始めている。自分の研究と、進化中の被検体を守る方策を考えなければ。

私の被検体。素晴らしい発達を遂げている!ありふれた繁殖方法と、私の優れた錬金術の創作のおかげで、他のどのクワマーよりも頑丈で意志が固くなった。不幸な副作用により攻撃性が高まったが、完璧なものなどない。クワマーの気を静めておく目的で、私と作業員用の香料を作った。それでもデヴァニはクワマーが狂暴になりすぎたと心配している。口うるさく言われない方法をすぐにも見つけなければならない。

ドロヴォスの研究メモ3Drovos Research Notes 3

私の被検体はこの上なく強力になったが、まだ完成までの余地はある。あらゆる病気に免疫を持ち、寿命は下位種の二倍になるだろう。そして最大の功績であるクィーンだ。私の育てたクィーンは巣の活力をことごとく証明し、同種の二倍の卵を産むだろう。いや、このクィーンに同種は存在しない!この品種に並ぶものは、ヴァーデンフェル中にもタムリエル全土にもいない!

私の雇った傭兵たちは、楽しい仲間とはならない。だが、研究の存続を保証するために必要な安全をもたらしてくれる。デヴァニを鉱山から追い出し、厄介払いは終わった。彼女は手紙を書くようになり、私の兵士を伝令に変えている。彼女の頼みを聞き入れて、最後に話をしよう。

ナルシス・ドレンと呪われた棺Narsis Dren and the Cursed Coffin

トレジャーハンターのナルシス・ドレン 著

おお、熱心な読者よ!素晴らしきナルシス・ドレンの新たな物語を読もうと言うのか?もちろんそうだろうとも。それ以外に、この見事に紡がれた物語を手にしている理由はないだろう?では、始めよう!

私が古代ノルドの墓地を調査して、未熟者グウェニルドのキラキラ光るガーター(大体そんな感じの名前だった)を探していた時、不吉なレバーを見つけて、隠し扉を開いてしまった。レバーを引っ張ったら何が起きるのか、はっきりと分かっていた訳ではないが、私のモットーは知っているだろう。レバーを残せば、王を失う、という奴だ(信じてほしい。元のアイレイド語ではもっと意味が通じる表現だ)。レバーを起動すると隠し扉が開き、最も意志の強い墓荒らしでさえこれまで見つけられなかった、秘密の部屋を明らかにした(ところで墓荒らしという連中は、不吉なレバーを引くことを嫌がる傾向がある。だからこそナルシス・ドレンは奴らよりも優れている。要するに勇気の問題だ)

秘密の部屋は広々としていて、忘れられた時代の副葬品や遺物がそこら中にあった。特に目を惹くアイテムはノルドのルーンで覆われた、純鉄製の指輪だった。おそらくノルドの太い指には小さいのだろうが、エルフの私には腕にはめられそうなくらい大きく見えた。私は指輪をバックパックに滑り込ませ、部屋の残りの部分を調べるため向き直った。部屋の中央で、巧妙に配置されている巨大な石棺にすぐ気づいた。棺は石を切り出して作られたもので、宝石がはめ込まれ、ノルドのルーンが刻まれていた。鉄の指輪の装飾と同じだ。明らかにこれは重要な首長か王、あるいはドラゴンプリーストの最後の休息地だったのだ。あの石棺に何が待ち受けているのか、可能性を考えると心が震えた。しかし経験から、私は考えなしにハチミツの壺へ手を伸ばしてはいけないことを学んでいる。注意深く石棺を調べ、罠の徴候を探った。視覚的な調査で変わった部分が見当たらないと分かると、私は慎重に、大きな石蓋と深い棺が接する部分を調べ始めた。便利なつるはしとロッドのコレクションを使い、蓋の縁全体を調べた。何もない

それで蓋を持ち上げて中を覗いたかって?そう焦ってはいけない、熱心な読者よ!魅力的な石棺を開ける前に、まだやるべき調査があった。蓋を覆っていた興味深いルーンを調べねばならなかった。あのルーンは少なくともノルド史上の新ハチミツ酒期か、あるいはさらに昔まで遡るかもしれないと考えていた。古いルーンを解読するコツは、認識できる部分を1つか2つ見つけ、そこから翻訳を開始することだ。この場合、私は現在の象形文字で「汚らわしい」あるいは「臭い」を意味するものによく似たルーンを1つ見つけた。その隣には「呪文」か「魔法」を意味することがほぼ確実なシンボルがあった。だから、この緻密なルーンの少なくとも一部分は「汚らわしい呪文」あるいは「臭い魔法」といったようなことを言っているはずだった。ルーンの残りの部分は、読む必要さえなく解読できた。あの石棺は臭いのきつい古代ノルドの呪いによって守られていると言っていたのだ

しかし、呪いが偉大なるナルシス・ドレンを妨げたことはない!私はこれまで、墓のガーディアンたちの詰め合わせや陰険な罠、敵意に満ちた競争者を打ち破ってきた。この私ほど有能な者にとって、古代ノルドの呪いごときが何だろう?心配するほどのことはない!私は呪いによって恐怖もしなかったし、いつものやり方を思い留まるようなこともなかった。私は両手を石棺の蓋に置き、この重い石を横にずらす準備をした。その時奇妙な、まんざら不愉快でもないちくちくする感じが腕に走り、明るく白い光が両目を満たした。光が消えると、私は狭く冷たい、乾いた石とまったくの暗闇に囲まれた場所にいた。どういうわけか、まだ閉じられたままの石棺の中に入ってしまったのだ!呪いの脅威を少しばかり甘く見ていたらしい

「おーい」と私は希望を込めて言ってみた。「そこに誰かいるか?」いないのはわかっていた。情熱に欠ける助手は外にいて、キャンプファイアの周りに座って、一番高価なフリンを痛飲しているに違いなかった。少なくとも、石棺の中に死体が一緒にはいなかった。いたらさぞ居心地が悪かっただろう。全力で押してみたが、蓋はびくともしなかった。さて、下等な者であればここで心が折れてしまうものだが、ナルシス・ドレンは下等な者じゃない。むしろ正反対だ。彼は下等な者よりも優れている!私はこのような状況になると、いつも自らに問いかける。「自分よ、ナルシス・ドレンならどうする?」そして閃いた。鉄の指輪だ!あのルーンは石棺のルーンと合致していた。何かつながりがあるはずだ。私はバックパックへ必死に手を伸ばし、鉄の指輪が見つかるまで引っかき回した

指輪を引っ張り出し、決意と演出上の意図をもってきつく握りしめた。指輪を石の蓋に触れさせた。何も起きなかった。認めるが、これには少し失望した。ため息をついて、大きな指輪を左手の2本目と3本目の指に滑り込ませた。私は大声で「開け」と言った。知っているあらゆる言語でくっきりと発音した。やはり、何も起きない。ここでくじけそうになってきた。拳を作って指輪と共に蓋に触れ、同時に額を素早く、冷たい石に3回連続で軽くぶつけてみた。なぜかって?まあ、ナルシス・ドレンの本能ということにしておこう。再び白い光が私の視界を眩ませた。視界が晴れると、私は秘密の間に戻っており、石棺の外に立っていた

この話の教訓?何があっても魅惑的な石棺は避けることだ。大抵の場合、苦労に見合わない

ニコティック教団The Nycotic Cult

ハイオーディネーター

我らが祝福を受けた民が信仰を捨て、異端の神々に興味を持つのは一体何がきっかけとなるのだろうか。おそらく強欲、怒り、嫉妬、何か良いと思われるものへの探究心などが考えられるだろう。仕方のないことだが、中には道を誤った真の信徒たちもわずかにいると思われる。だがほとんどは、目の前に積まれた何らかの約束に、目がくらんだ愚か者だと思われる。一例を挙げれば、最近ニコティック教団がバルモラ周辺で活発になってきている。奴らは本当に考えられないほどの愚か者だ!

奴らの中に、デイドラ文字を読んで理解できる者が1人もいないことは明白だ。創設メンバーの誰かが古代の巻物、もしくは禁書を発見し、デイドラの言葉をタムリエル語へと改悪したのだ。そうでないなら、他にどう説明できようか?奴らが何の意味もなさないデイドラ文字を使い、「ニコット」などと呼ばれているデイドラ公に忠誠を誓っているという状況を。確かにクラヴィカス・ヴァイルの名をデイドラ文字で表せば、最初の5文字は偶然にもタムリエル語の筆記体、N、Y、C、O、Tと似たような文字になる。だからと言ってそのような書き方や読み方はするべきではない。愚か者どもめ!

その上、自分たちが策略と取引のデイドラ公を崇拝していることすらわかっていないようだ。誰に忠誠を誓ったと思っているのか知らないが、奴らのせいでバルモラからビターコーストまで問題だらけだ。教団の指導者の中には、不可解な芸術に真の才能を発揮している者もいる。何とも言えないが、もしかしたらヴァイルが愚かな祈りを聞き届け、応えることにしたのかもしれない!とにかく、戦争の騎士団を動かしてくれ。奴らが隠れている洞窟と亀裂に進軍し、一掃しなければならない。残らずだ!

ヴィベクの名において、この仕事にそなたを推薦する。

教義と秩序の騎士団、オーディネーター・アルルア

ニックスハウンド:新たな飼い主への手引きNix-Hounds: A Manual for New Owners

おめでとう!あなたはヴァーデンフェルで最も良く見られる、忠実なペットの誇らしき飼い主になった!初めてニックスを飼うなら少し時間をとって、ニックスハウンドの飼育において何をするべきかを確認してほしい。実証済みの正しいやり方に従えば、この先何年も幸せで健康な仲間を持てるだろう!

餌やり:
ニックスハウンドは大食いだ。繭から生まれた赤ちゃんニックスは、少なくとも自分と同じくらいの生物を4体吸える!新鮮な液体の匂いは野生のニックスを引き寄せることがあるので、食事後は毎回ペットの鼻を綺麗にすること。

赤ちゃんグアル、山羊、クワマーのさなぎ、アッシュホッパーはすべて、優れた栄養源だ。倒した時には、厄介なミートハスクを忘れずに取り除くこと。すすられた動物は野生のアリットにとってこれ以上ないごちそうであり、強情な歯だらけの丸っこい生物に、庭を歩き回られることは誰も望んでいない!

成長期の大切な段階における、最後の注意点を伝えよう。小さな子供と他のペットを新しい仲間から遠ざけておくことは、非常に大切である。赤ちゃんニックスはとても好奇心が強く、食べ物を求めて自分よりも小さな生物を刺すことをためらわない。誤った獲物を狙って、不幸にも悲劇を生み出すこともある。幼い者から目を離さないように!

手入れ:
ニックスハウンドはとてもきれい好きである(大半のペットオーナーにとっては嬉しい知らせだ!)。平均的なニックスは、何時間も費やして身体を綺麗にする。素早い触肢を使って顔のキチンと触角をこすり、磨くのだ。残念ながら、鼻の長さと太い首のせいで、残りの腹部と胸部には届きづらくなっている。そこであなたの登場だ!2週間ごとに油を塗ったぼろ切れで、新しい友達をしっかり磨くこと。ニックスの知覚刺毛と腹部の睾丸は避けるように気を付けるように。ニックスは誤った場所を触られると、激しく怒り出すことが知られている。だが、心配するな!数日が過ぎ、1ダース程度肉汁のバケツを与えれば、ペットは可愛らしい気質を取り戻すだろう。

胸部の結合部と呼吸孔で、アッシュマイトを探すことを忘れないように。この小さな害虫は、非常に愛想の良いニックスでさえも狂暴なニックスに変える!

運動:
ニックスハウンドはたくさんの刺激や運動を必要とする。働きもののいとこであるクワマーと同じように、ニクシーは労働と生産性に夢中だ。なので一緒に遊べ!「ウンチ隠し」や「脾臓当て」などのゲームをやれば、数時間、ニックスを夢中にさせ、満足させておける!

扱い:
ニックスハウンドは、優しく、思いやりのあるペットだが、彼らを大人しく、落ち着かせておくための助言を、他にもいくつか書いておく。

ニックスの餌やりをしている時には、常にニックスに向き合うこと。

ニックスが用を足している時には、視線を合わせないようにすること。

あなたの友人や隣人に、ニックスの側でペットや子供を一人にさせないこと。

ニックスを怒鳴らないこと。

ニックスにささやかないこと。

別のニックスに過剰な配慮や愛情を見せないこと。

ニックスの唾は腐食性であり、皮膚と永遠にくっつく恐れがあるので、触れないこと。

ニックスの周りで身体が虚弱である点を見せないこと。

結論:
この短い案内が有益であったことを祈る。ニックスハウンドを飼うことは本当の楽しみであり、すぐには忘れない経験だ!あなたはこの美しい生物との時間をきっと楽しめるだろう。私達が保証する!

バール・ダウに関する証言Testimonials on Baar Dau

見習い記録者ミネルヴァ・カロ 著

バール・ダウはヴィベク・シティの上に不気味に覆いかぶさっている。文字通り、そして比喩的にもだ。公式な説明は著しく曖昧である。マッドプリンスのシェオゴラスがニルンに向けて巨大な岩を投げつけたという。その理由も方法も誰一人として知らないようだ。ダークエルフの基準で考えても興味深い話だ。一般庶民はバール・ダウについてどう思っているのか聞いてみた。これが彼らの話である。話し手を聖堂による報復から守るため、名前は変えてある。

悩みを抱えたダークエルフの商人、トルヴァサと話すところから始めた。クワマーの卵の仕分け作業を止めて、次のような話をしてくれた。

「子供の頃、寝る時間になると、母はいつもバール・ダウにまつわるいろんな話をしてくれた。どれも本当じゃないと思う。お気に入りは”孤独なマグナ・ゲの話”だった。”始まり”で始まる話さ。その話の中で、ウナという名の星の孤児が兄弟や姉妹と一緒に空へ逃げたんだけど、暗闇で迷子になってしまった。助けを求めて泣き叫んだけど、彼女より強くて足の速い子たちは、一人ずつエセリウスへと逃げ込んでいった。そのうち、彼女たちの歌は聞こえなくなり、ウナはひとりぼっちで空間を漂っていた。彼女がすっかり望みを失ったちょうどその時、誰かが泣きじゃくる声がかすかに聞こえた。ひとりぼっちのニルンが、暗闇の中をよろついて、赤ん坊のようにしくしくと泣きながら眠りにつこうとしていたのだ。似た者同士を見つけたウナは、その孤独な惑星を慰めるためムンダスに戻った。そして自身をバール・ダウと名付け、ここヴァーデンフェルの上に寄り添った。今ではその星の孤児とニルンは互いがいるので、決して孤独ではない。いい話でしょう?」

ノルドの鉱山労働者ホッドスタグは、もっと実利的な考え方をしていた。

「金山に違いないんだ!あそこには絶対に何らかの希少な金属がある。地質学者のダチがいて、ゴールドコーストの採掘作業に関わる仕事をしてるんだ。奴は豊かな鉱床が見つかる兆しがあると言ってる。占い棒を持ってるからな。ドワーフのからくりだと思う。このことは話さないことになってるんだ。とにかく、奴がそれをバール・ダウに向けたら、そいつが春の雪ミソサザイみたいな音を立てたんだ!あとはつるはしを持ってあそこへ行って、サンプルを取ってくるだけだ。あそこへ飛ばしてくれる奴を探してるんだが、見つかってない。なあ、お前は人間を飛ばす方法を知らないか?」

もちろん、バール・ダウについて誰もが進んで話したがったわけではない。ドノヴェンという白髪交じりの港湾労働者は次のように話した。

「岩だ。どうやってあそこに飛んだのか分からない。魔法かな?さあ、仕事があるからもういいだろう?あっちへ行け」

ほとんどの話はかなり退屈だった。ある程度の時間と露出があった後では、異様なことでさえつまらなくなるのだ。もちろん、本当に驚くべき話もいくつかあった。ダークエルフの学者で興奮しやすいティラムの話もそうだ。

「あれは、見てのとおり卵だ。道楽者や田舎者があれをよく”岩”と読んでるのを耳にする。ふんっ。無知のたわ言だ。あれほど壮大な天体を見て”岩”と呼ぶなんて、よっぽどの愚か者だろう。バール・ダウはさなぎで、あそこからヴィベクとモラグ・バルの不幸な結合による最後の子供が出てくるのだ。その日が来たら、輝かしいベク卿が聖堂から飛び出て、その悪夢の子と戦うことになる。そして47日にわたる激戦の後、ヴィベクは最後の一撃を与え、その獣の残骸を泡立つ海の中へと投げ捨て、そこで36個の断片となり、その後どれも見つかることはない。まったく壮観な光景だろうな。同時に恐ろしくもある」

おそらく最も面白い説明は、ナルクホズグという酔っ払ったオークによるものだった。

「え、あのでかい岩?ああ、あれは巨大なクソの塊だ。本当だって!聞いた話だと、ヴィベクとマラキャスが夜更けまで飲んだり神っぽい話をしたりしてたんだ。分かるだろう。あ、分からないか。とにかく、ヴィベクがオーガについて、モーロッチの気に触るようなことを言ったもんだから、奴は街の上でしゃがみ込んで、臭いのをヴィベクの頭の上に落としたんだ!汚いだろ?ふふん。それがマラキャスだ。でも考えさせられるな、どうしてマラキャスの話にはいつもクソが関わってるんだ?」

教義審問官に公式な声明を求めたところ、次のような答えしか戻ってこなかった。

「そのような事柄はトリビュナルに任せておくのが賢明であろう。バール・ダウの詳細は謎である。あれに滅ぼされないでいるのはヴィベクの神聖なる慈悲によるもので、それだけを知っておけばよい」

聖堂の努力もむなしく、月のバール・ダウは、その到来から何世紀も経った今も尚、活発な議論の対象であり続けている。意見の多様さは注目に値する。宗教の信者によって徹底的に取り締まられている街であることを考慮すればなおさらだ。このように制限された社会においてさえ、表面下では民話や野心的な説があふれているというのは、とても興味深い。

バール・ダウの物語A Tale of Baar Dau

衒学者、アミリ・ドラルス 著

若き者よ、耳を傾けよ。物語を語ろう!昔々、シェオゴラスは退屈していた。狂乱のデイドラ公が退屈すると、とても危険だ。災厄の神々に共通しているが、彼の心には愛がないので非常に残酷なことをする。彼は我々を取り囲む虚無から強力な石を取り出し、ニルンへ向けて遠くに放り投げた。さてシェオゴラスは、この大きな石がどこに飛び何に当たったかとか、どんな騒乱を引き起こすかには関心がなかった。どうなるか見たかっただけだった。

この悪い計画を止めたのは誰だったろうか。善と知恵に満ちた神々?いいや、彼らには偽りの希望と虚しい信仰を提供する以上のことはできないからね。それではきっと力と魔法があるデイドラ公かな?いや、エルフも人間も、哀れなデイドラ公に大変な挑戦へと直面してほしいとは申し出られなかった。そして石は飛んで飛んで飛んで、まっすぐにニルン全土で最も美しい島にやってきた。ヴァーデンフェルに向かって落ちてきたんだ。

近づいてくると多くが啜り泣き、泣きわめいた。アッシュランダーはアズラに祈ったが、何もしてくれなかった。人間とエルフは神々に祈ったが何もしてくれなかった。しかしダークエルフは三大神に祈った。私たちの常に輝く生き神さまに。そしてヴィベクが祈りを聞いた。

彼は手を挙げた。穏やかで静かに聖なる光に包まれて。そして天空の石の落下は遅くなり、遅くなり、まだ遅くなった。啜り泣きや泣きわめいていた者は泣き止んだ。バール・ダウがついに安息の地を得たのだ。石は安全に空中へと留まっていた。いつの日かヴィベク・シティが建設される、その土地の頭上に。

さて、この話にはどんな知恵があったか考えてみよう。なぜ偉大なヴィベクは単純にこの天の石をニルンの緑豊かな大地にそっと落とさなかったのか?しかし聞きなさい、そこには理由がある。三大神のなさることすべてに理由があるように。毎日、私たちの信仰はバール・ダウに試されている。そして毎日、私たちは石を空中に浮かべ続けることで、ヴィベクとトリビュナルへの愛を示している。なぜなら、私たちのトリビュナルへの愛、献身、信仰が、石を空中に留めているからだ。ヴィベクの力だけでなく、彼の信奉者の愛も示す。

だから、石は永遠に浮かび続ける。皆が忘れないように。さあ一緒に唱和しよう。ヴィベク万歳!三大神万歳!

パクトのパンフレット:おめでとうございます!Pact Pamphlet: Congratulations!

もはや奴隷ではないあなたへ…

エボンハート・パクトと呼ばれる同盟の命令、並びにスカイリム、モロウウィンド、ブラック・マーシュの統治組織の合意により、奴隷制度はパクトの全域で、完全に撤廃されたことをお知らせします。

おめでとうございます!あなたはもう奴隷ではないのです!

人間であろうとエルフであろうと、アルゴニアンであろうとオークであろうと、あるいはカジートであろうと、あなたの足枷は壊されました。あなたは「自由」で「独立」した存在であり、権利と責任を持ち合わせた名誉あるパクトの市民となったのです。

ではこれからどうすればいいのか、そうお思いでしょうか。奴隷として生まれてきた人が突然自由を与えられても、どうすればいいか分からないかもしれません。答えはもちろん、「やりたいことをやってください!」です。それが自由と独立の素晴らしいところです!

相談役とカウンセラーが、エボンハート・パクトによる統治を受け入れる準備のできていない一部の地域*を除くモロウウィンド全土を旅して助言と支援を行い、奴隷から解放される過程を、簡素で痛みの伴わないものにする手助けをします。

パクトへようこそ!あなたが自由になり、私たちも嬉しく思っています!

(*以下のダークエルフの名家はこの規定に合意し、履行することになっています: インドリル、フラール、レドラン。その他のダークエルフの領土において、市民権と自由は保証されていません)

バリルザーの助手Barilzar’s Hirelings

レオナ・ブラジオ:インペリアル。教養に優れる。やや高慢だが、ドゥエマーの遺跡については非常に詳しい!

スノーフィン:図体のでかい頑固なノルドで、希少で奇妙なアイテムの数々を見つける驚くべき才能を持つ。見た目で判断してはいけない!

ヴォルリナ・クアッラ:インペリアル。フリーの密偵になる以前、ナルシス・ドレンや私と共に学んでいた。今、彼女は兄弟と共に働いている。いつか私の卓越した知性に匹敵するようになるかもしれないが、まだそこまでには達していない。

ドゥエマーの部品:音調反転装置を組み立てるためには、以下のドワーフの部品が必要だ。

音波発信機:ドワーフ式に設計された、音を生成するエンジン。

逆流導管:エナジーの流れを入れ換える、負の力を宿したプレート。

クロックワーク作動軸:歯車を回し、ピストンを動かすための複雑なドワーフ式のクランク。

ハリンジルのメモHalinjirr’s Notes

〈落書き、図、シミがページを埋め尽くしている〉

蒔種の月15日
ハリンジルは肥沃な土地を見つけた!偶然だった。この者には疲れた踵を休め甘いものを食べる場所が欲しかっただけだが、到着してみると新鮮でローム質の匂いがした。土だ!本物の土だ。他のどこにでもある、鼻をつくカビくさい岩ではない。ハリンジルは完全に調査しよう。ここが目的の場所かもしれない!

蒔種の月17日
月を称えよ!ザインシピルーは完璧だ!まあ「完璧」ではない。ハリンジルの腹を尖った鼻で突こうとする巨大な虫がたくさんいる。でも、これは母がいつも言ってたことのようなものだ。「困難なくして砂糖なし」。ハリンジルはセイダ・ニーンに旅する予定だ。きっと手伝ってくれる人が見つかる。

蒔種の月20日
またもやハリンジルに幸運が舞い込んだ!街でニックスハウンドの問題を手伝ってくれるダークエルフに会った。不愛想で農業の経験もないが、この者にはいい感触がある。

恵雨の月2日
ニックスを手なずけ作物を植えた。あとは待つだけだ。この者は待つのが嫌いだ。かわいいこの子が、早く育つよう願っている。ハリンジルの砂糖の袋は日ごとに軽くなっている。でもすべてが計画通りにいけば、この者の砂糖の袋は弾けんばかりに溢れる!

バルバスの悪しき真実The Vile Truth of Barbas

帝都の寄宿デイドラ学者、ペラギウス・ハバルのメモより

真のデイドラ学者なら誰にでもお気に入りのデイドラ公がいる。めったに認めはしないが、真実だ。どのデイドラ公も恐ろしい一方で、興味深くて時には滑稽な面がある。シェオゴラスの奇抜さはよく知られているが、よく考えてみると、デイドラ公は全員少し愚かなところがある。ハーシーンは不格好な有蹄類の頭をしている。サングインは慢性の酔っぱらいである。こうした奇抜なところこそ、私のようなデイドラ学者が限りなくデイドラ公に引きつけられる理由なのだ。堅苦しく超然としたエドラとは異なり、デイドラ公は人間やエルフと同じように、ノイローゼ、欠点、子供じみた執着に悩まされる。私たちが認める以上に、私たちと似ているのだ。私はどうだろう?数多くいるデイドラ公の中で、私のお気に入りはクラヴィカス・ヴァイルだ。そしてその理由は、彼の猟犬バルバスと大いに関係がある。

クラヴィカス・ヴァイルは、2人として存在する点が特徴的だと考えるようになった。これはもちろん、デイドラ学者の間においても激しい議論の的である。私の同僚たちは、バルバスが単に上級のデイドラの召使にすぎず、ヴァイルとのつながりは馬と乗り手の関係と変わらないと論じている。しかし証拠をしっかり見てもらいたい。彼らが同じ本質であることを示す、最初にして最も分かりやすい証拠は、芸術品に見てとれる。神話紀初期の大まかに手彫りされた像は、仮面姿のクラヴィカス・ヴァイルが大型の猟犬の横に立っている様子を表現している。古代の洞窟の壁画でも変わらない。私はタムリエルの至る所を風変わりなデイドラを求めて探索したが、その過程でヴァイルの横にバルバスの姿がない描写は見当たらなかった。さらに彼との遭遇をじかに詳しく語った話を数百と読んできた。それらの話では例外なく、バルバスが多かれ少なかれ登場するのだ。

クラヴィカス・ヴァイルとバルバスが(少なくともある意味で)同じ人物であるとの仮定を受け入れるとすれば、自然に出てくる疑問は「なぜ?」である。なぜ神のような力を持つ存在の者が、2つに分かれることになったのか?仮説はいくつかあるが、最も有力な説は単純だ。連れ合いである。デイドラ公の「人生」はほぼ完全に孤立している。一部のデイドラ公、例えばハルメアス・モラやノクターナルは、この孤独を大いに楽しんでいるようだ。しかし、クラヴィカス・ヴァイルについて分かっていることは全て、彼がとても社交的な性分であるということを示唆している。物々交換が好きなこと、関わりを持つ者の願いは快くかなえてやること、魅惑的な仮面。これら全てが、交流や会話、遊ぶことを楽しむ者であることを暗示しているのだ。そのような傾向がある者なら、話し掛け、言い争い、愚痴をこぼす相手がいなくては頭がどうかしてしまうだろう。ある種の結婚と捉えることさえできるが、あべこべではある。マーラの誓約のように二人が一つになる代わりに、一人が二つになったわけだ。エドラの儀式の逆である。

「しかしなぜ犬に?」と疑問に思うかもしれない。私もこの点で何年も頭を悩ませた。ここでも、言えるのは仮説程度のことである。最も説得力がある私の推測は、力関係である。もしクラヴィカス・ヴァイルがもっと大きな力を削って同等の者を作り上げていたら、両者は常時互いに対して陰謀を企てていただろう。しかし犬の相手を作ることで、ヴァイルは自分の主人としての地位を確保しているのだ。犬は古代から忠誠と服従の象徴である。犬は常に召使であって主人にはならない。バルバスも同じだ。

もちろん、バルバスはいつも犬であるわけではない。他のデイドラ公と同様、バルバスも他の様々な姿に変わることができる。人間、エルフ、動物、下級デイドラ、さらには命のない物体として現れたこともある!このように姿を変えつつ、根本的な力を維持する能力は、記録に残っている他のデイドラが真似できない力であり、例外はデイドラ公だけである。偶然だろうか?そうは思えない。

我々はバルバスの位置付けについて確証を持つことはないだろうが、証拠が示唆する結論はただ一つだ。バルバスとクラヴィカス・ヴァイルは二つの姿をした一人の者である。主人が同時に召使でもある。飼い主が同時に猟犬でもある。それは大変珍しく、興味をそそる矛盾であり、デイドラ学を研究する価値があると思わせてくれる類いの謎だ!

フィルスの推薦状Firuth’s Writ of Endorsement

名誉ある評議員達へ

ハヌドとその先にある土地の領主、私マスター・フィルスは、この推薦状をもって、影の中の太陽が名家テルヴァンニの家臣に昇進することを支持し、承認します。

このアルゴニアンは、我々の楽しい競争のことをよく理解しています。これまで私自身、彼女の種族には不可能だと思っていた深い洞察力の持ち主であることを証明しています。これだけでも、彼女には認められ尊敬される価値があります。彼女は新たな家臣としてテルヴァンニ家に利益をもたらすでしょう。

名誉と敬意を込めて
フィルス
テルヴァンニ家のマスター
ハヌドの領主

フェーハラ・ウォークローFerhara’s Warclaws

メリアス上級評議員殿

フェーハラ・ウォークローと呼ばれる傭兵団の状況と性質について、もう一度あなたとレドラン評議会にお伝えするため連絡させていただきました。早急に資金が必要です。そしてバルモラ周辺の軍隊を恒久的に強化するため、この熟練の兵士たちを雇用する権限を私にお与えください。あなたとエリス評議員は、レドランの兵士であればレドラン家を守れると信じています、私も同意見です。ただし、エボンハート・パクトでは常に兵が不足しています。レドランの繁栄の妨げになりうる、デイドラを信じるアッシュランダーのような存在と戦うには、人員があまりも少なすぎるのです。

フェーハラとその素晴らしい能力についてもう一度説明させてください。

カジートの戦士であるフェーハラは、ドミニオンの戦略家として三旗戦役に従事し、名声と信望を獲得しました。彼女は忠誠を果たして兵役を2回果たした後、信頼する戦友を集め、一番高い金を払う者に自分の能力を売るようになりました。彼女の傭兵団は、エルスウェアからモロウウィンドにおける地域で商人王や貴族のために働くうちに、次第に力をつけて名声を得るようになりました。そもそも彼らがヴァーデンフェルにやって来たのはフラール家の指示でしたが、我々の交渉によりレドラン家が雇用することに成功したのです。

今、フェーハラと雇い主に忠誠を誓うカジートの戦士団、フェーハラ・ウォークローは、レドランの利益のために私のもとで働いています。その一例として、彼らがアッシュランダーに対して行った仕事は、彼らの忠誠を我々が保持する重要性を示したものと考えられます。ご賛同いただけることを信じています。新たに包括的な契約を結ぶため、次の評議会で詳細について話し合えることを楽しみにしています。

ブリバン隊長

フェッチャーフライの炎The Flames of the Fetcherfly

ザビアーコ 著

私ザビアーコは、魔術師ギルドの愚か者のために獣の研究をしている。信じられようか?ヴィベク・シティ行きの船に乗った出稼ぎ労働者たちに、腐りかけの砂糖漬けニクサドを売って儲けていたこの者が、獣の研究をするとは。フン!とにかくあの愚か者どもが金を払って物語を書くよう頼んできた。この者は受け取って、それ以上は何も聞かなかった。

ザブザグの腹を新鮮な葉で満たし、バルモラの宿屋〈ランディネッチ〉で一晩過ごした後、この者はヴァーデンフェルの湿地帯を探索するために荷造りをした。二晩の間、出会ったものと言えばただの這い回る害虫だけだった。なんという災難だろう!他の物語なら、窮地に陥れば必ず発見があったというのに。誰がわざわざ害虫に出会いたいのか?私ザビアーコがギルドから金を受け取ったのは間違いだったのかもしれない。

災難にもがいていると、ある臭いがこの者の注意を引いた。大きな光る羽を持った巨大なハエが、この者の頭の横で羽音を立てていたのだ。ダークエルフが「フェッチャーフライ」と呼んでいるハエだ。ただの害虫に見えるが、騙されてはいけない!そのハエが腕に止まった時、煙が上がった。毛皮が焦げていたのだ。

他に選択肢はなかった。獣を追いかけて物語を書き上げ、金を手に入れないといけない。その獣の後を追って巣までたどり着くと、オーク2匹分(オークに聞けば1匹だと言うかもしれない)はあろうかという、巨大な岩があった。数千匹の燃えるハエが周りを飛んでいる岩は熱を帯びて発光し、そこに開いたいくつもの小さな穴は煙と生命を放出していた。突然、巣全体が動いた。その巣が立ち上がった時、自分がどれほど間違っていたか思い知った。それは少なくとも、オーク3匹分の大きさがあったのだ。

その岩の獣とハエがゆっくりとこちらに近づいてきたので、私は汚い泥の中にまっすぐ飛び込んだ。この者は猛獣殺しではないのだ!どうして私をいじめるのか?煙を上げる虫の群れが飛び回り、羽音を立てながら濡れた毛皮にとまった。哀れなザブザグは悲鳴を上げて逃げ去った。ザビアーコは泥に顔をつけたまま最期を迎えると覚悟した。

だがもちろん、そうではなかった。そのハイブゴーレムは、この者がもはや脅威ではないと判断したのだろう。雪のトリュフで満腹になったエチャテレのように、ゆっくりと立ち去った。この者は手土産をたくさん持って宿屋へと戻った。語るべき物語、焦げ穴だらけの服、泥まみれになった毛皮を携えて。

もしヴァーデンフェルの荒野に行くことがあれば、あなたもこの者と同じように疑問を抱くだろう。フェッチャーフライという名前はダークエルフが不快だと思ったからそう名付けたのか、あるいは逆にこの害虫から「フェッチャー」という単語が生まれたのだろうかと。

フラール家の概要Understanding House Hlaalu

名家の大歴史家、フラーンドゥ・フラール 著
黄金の平和百二十一周年記念

誇り高く立て、フラールよ!諸君は文明化されたダンマーの最初の名家の一つに属している。我らが影響力はナルシスの首都から、モロウウィンドの中央地域全体にまで及んでいる。我々のことを日和見主義者と、呪いのように言う者もいる。だが大師範ヘスレスが訴えたように「機会を無視するダンマーは、あらゆる失敗に見舞われても文句を言えない」のだ。

名家の最初期以来、フラールは交易とクラフトに力を注いできた。我々の格言は単純だ。それぞれ商業で成功し、有り余る利益を得ること。書物「富を掴む」は我々に教えてくれる。「あらゆる機会に利益を得ろ。だが名声にも価値があることを忘れるな」と。

強大な軍隊や広大な領地を持たない以上、外交と交渉の達人になることは我々の義務となった。言葉が我々の力となったのだ。おお、それから口説と交渉の添え物として、それほど愉快でない性質も身に着けた。我々は盗賊、隠密、脅迫者や暗殺者にもなった。それでも、我々は取引の価値をいつでも重視してきた。「富を掴む」が教える様に、「交渉への完璧なアプローチは、最高の取引に目を向けながら妥協をすること」なのである。

我々の影響力と富が常に卓越してきたのは、我々が隣人と平和に生活する意欲を持っているためだ。紛争や戦争には短期的な利益があるとはいえ、持続可能な成長は調和と公正な交易からのみ得られる。フラール家はダンマー文化を認めつつ、成功するために条件を変えて適応する。成功とは何か?言うまでもなく、満足のいく取引と有り余る利益だ!

とはいえ、我々の歴史には暗い汚点がある。我々の性質のせいで、他の者たちは我々に賄賂や便宜を図って影響を及ぼそうとしがちなのだ。フラールが誠実で公正な評議員を輩出することもあるが、おそらくその5倍ほどは不正を働き腐敗している。これは懸念すべき事態か?それほどでもない。歴史が教えるところでは、腐敗した者さえ全体の善に役立つことがあるからだ。少なくとも、得られた利益は善でも悪でもない。「富を掴む」にあるように、「友人とはいつまでも取引できるが、愚か者から盗めるのは1、2回だけであり、死人とは交渉もできない。だから常に、最も持続可能な利益を狙うべし」である。

フラール家の苦情Hlaalu Letter of Complaint

尊きレドラン家のサリヨン様

重大な問題についてご連絡を申し上げます。我が執務室が受け取る苦情が、最近増加を続けています。我が家の賓客の多くが、レドラン家の執行官と治安官によって手荒な扱いを受けています。ご存知の通り、フラール家にはこうした問題を賓客の皆様に代わって是正する義務がございます。

サリヨン様にはお分かりのことかと思います。私もダンマーの優越性に関するあなたのお考えには同意しますが、そうした意見は我々の内に留める必要がございます。フラール家は防衛に関して、レドラン家の意見に従っています。商業と外交に関しましては、レドラン家がフラール家の意見に従っていただけますと幸いです。

我々は経済的な問題を抱えています。パクトは確かに安定を与えてくれましたが、犠牲は大きなものでした。我々よりもレドラン家の皆様の方が良くお分かりだと思います。我々の交易担当者は、モロウウィンド外の資産を安定させるために大変な距離を移動しています。敵が領域外の資産を多数接収してはいますが、我々は引き続き帝国の取引所や海外事業に大きな資産を保持しています。こうした富を形成するのは簡単な仕事ではありません。時間と金と、何よりも人脈が必要なのです。パクト外の数少ない友人を粗略に扱う余裕はありません。

今朝も高名なブレトンの投資家、テオドリック・アシュクロフト様より苦情を受け取りました。建設候補の現場を視察中に、彼は治安官の二人組から明らかに手荒な扱いを受けたようです。宗教的なちょっとした揉め事か、フェンスを乗り越えて土地を良く見ようとしたか何かです。アシュクロフト様によれば、治安官は彼を地面に叩き付け、聖堂へと連行してオーディネーターに引き渡したとのことです。オーディネーターは3時間にわたって激しい尋問と再教育を行ったようです。言うまでもなく、彼は我々の都市に投資をしないでしょう。アシュクロフト様と彼の資産は、共に大陸へと去って行きました。

こうした人々は劣っているかもしれませんし、彼らの宗教が気に食わないことも、作法が耐え難いこともあるでしょう。しかし三大神への愛にかけて、誇りを飲み込み耐え忍んでください!無暗な信仰は食べ物を恵んでくれません。香炉と祈りでは、戦争を効率的に戦えないのです。あなたの希望がどうあれ、地域外との商取引は必要悪です。可能な限りの手段を用いて、よそ者の行動に制約を与えないようにしてください。この件についての苦情は、これが最後になるよう願っています。

敬意を込めて

フラール家通商担当副官、ティルヌル・ナリン

フラール家の手紙Hlaalu Letter

最愛なるドルヴァラへ

バルモラの利権に関して、フラール家の利益を全面的に配慮いただき感謝している。名家間は対等であることが最善であり、実現のために内部協力者同士の信頼と協力があれば、それに優るものはない。あなたが渡してくれた情報は非常に有用だった。感謝の気持ちとして、この美しい宝石のコレクションを受け取ってほしい。私が次に訪れる時まで、この宝石をお楽しみいただければ幸いだ。

訪問といえば、互いに知っているドーレス家の仲間が、ついにあなたと直接会うことに賛成した。私を虜にした魅力は、ドーレス家の密偵にも効果を発揮するはずだ。お互いのことをより詳しく知れば、奴隷貿易を100倍改善できるだろう。トリビュナルとちょっとしたパクトの法に、私達の大切な慣習と利益を妨害させることはない。

アヴェラ

フラール建設会社Hlaalu Construction Syndic

メリアス上級評議員殿

現在締結しているフラール建設会社との共同事業について詳細な監査が終了しました。フラールのおかげで切望していた労働者と資源が手に入りましたし、彼らの入札額が驚くほど(今考えると疑わしいほどに)低かったことから、収益の面からしても実に有利な契約であったことは間違いありません。ただし、この関係を継続することで、多くの問題が発生しかねないことが判明しました。

スランとバルモラの建設に関しては、契約でより威厳のあるレドランのデザインを取り込んだものが求められていたにも関わらず、フラールの建築術がふんだんに用いられたという点を除けば、彼らは納期も予算も厳守して仕事を完了させています。しかし、我々は軽率にも、彼らにセイダ・ニーン以外の土地への足がかりを与えてしまったのです。この結果、彼らはヴァーデンフェル全土で取引関係を築いて、あらゆる原料と食糧を手に入れられるようになり、この地域の事業をほぼ独占するようになってしまいました。レドラン家の大半は現在、この地域の商品を全てフラールの商人から購入しているのです!

さらに、フラール家は現在もこの二つの街に対して影響力を強めており、我々の地域評議員たちを立腹させています。彼らが戦略的に重要なこの地域に注目していることは明らかです、そして恐ろしいことに、彼らが事業を通して我々を支配する方法を心得ている一方で、我々は軍事的な動きにしか警戒をしていません。

結論を言いましょう。今さらこんなことを言っても仕方ありませんが、フラール家との取引に応じるべきではありませんでした。長期的に見れば、時間とお金を節約した結果、何としても必要としている地域を失うことになるかもしれません。

マナラン・レニム内務首席事務官、ヴァーデンフェル

フラレン筆頭治安官への手紙Letter to Marshal Hlaren

筆頭治安官

前回、私の畑にあなたが送り込んできた囚人の集団は期待ほどの能力がありませんでした。怠け者で動作が遅く、頭が鈍い者ばかり。でも、ブレトンやボズマーがよい奴隷になるという話は聞いたことがないものね。頑丈な荷馬車の値段で、1ダースの丈夫なアルゴニアンを買えた日々が懐かしいわ。

できるだけ早く、あなたがカレクに送った丈夫なノルドの一部をこちらに寄越してください。彼女も私もあなたの「報酬付労働」計画に同意したのだから、労働力は等分に受け取る権利があります。低品質の労働者で我慢するのは御免よ。最も丈夫で、最も賢い者だけを寄越して。

信頼できる筋から、近々ノルドの一団が商取引のためにスランを通過すると聞きました。何人か逮捕してくれたら、喜んであなたの手間を省きましょう。その時まで、秘密を分かち合える友のままでいます。

ミストレス・ドレン

ブリバン隊長からの報告Report From Captain Brivan

ドルヴァラ評議員殿

あなたの見事な推薦により、バルモラ地域の軍指揮権を授かり、隊長の位に昇進しました。次回、任務から1~2時間ほど離れられる時には、あなたに借りがあることを思い出させてください。

勝手ながら新体制でやり直す機会を与えるため、以前ウルランの指揮下にいた兵士の大多数を再配置しました。手つかずの部隊は、ヴァトラ・テレムの隊のみとなります。彼らは事件当日ウルランに同行していましたので、包括的な改革を行う前に、個人的に報告を聞きたいと考えています。その間暇にならぬよう、バルモラ西にある古い砦の斥候に派遣しました。

また、フェーハラと傭兵団に再び巡り会わせてくれたこと、感謝しています。過去に協力しましたが、紛争地域で存在感を高める任務に対し、非常に助かっています。

以下はその他の部隊の配置になります。興味があればお読みください

〈残りの手紙には、様々な兵士と部隊の配置リストが記載されている〉

ボイアント・アーミガー:ヴィベクの剣Buoyant Armigers: Swords of Vivec

ヴィベクのアークカノン、ターヴス 著

ボイアント・アーミガーほどヴィベク卿の冒険と探索の精神を誇らしげに体現しているものは少ない。トリビュナル聖堂のこの軍団は、献身と勇敢な熱意によってヴィベク卿に仕えている。モロウウィンドの主が持つ戦闘の技、騎士道の精神、巧妙な詩といった様々な技術を模倣すると誓った戦詩人たちは、聖堂の勇者であり、ヴィベクが個人的に指揮する遍歴の騎士である。彼らは特定の任務があればそれに当たり、必要とされない時には冒険を求めて放浪する。ボイアント・アーミガーはヴィベク卿の名の下に行動して、高貴な偉業を行なう。たとえそれが、真面目なオーディネーターを相手に、味方同士で競争することになっても。

この騎士団のメンバーはほとんどがレドラン家の出身である。高貴な理想と冒険心はレドラン家の美徳とぴったりと一致しているため、一族がヴィベクに仕えることに魅力を感じるのは当然だ。レドラン家の評議員にとって自慢の娘である、エリニア・オマインを例に取ろう。彼女はレドランの軍隊における幹部か、他のエボンハート・パクトの国に送るレドランの代表者にもなれたはずだ。しかしその代わり、彼女の大胆さと難解な詩に対する情熱が、彼女をボイアント・アーミガーへの入隊へと導いた。ヴィベク卿のお気に入りであり、他の遍歴の騎士にとって憧れであるオマインは、よくヴィベク宮殿を訪れているが、一度に2日以上滞在することは稀だ。その後は別の任務に出向くか、素晴らしい偉業の物語集へさらに詩を追加すべく、冒険を求めに行く。

「公平で清い騎士オマインは、ニックス・オックスの痕跡を発見。数え切れないほどいて、悪臭が散見。こんな悪臭は、ひどく敵意に満ちたものからのみ臭う」

物語詩ではその後、エリニア・オマインがライバルであり時には愛人であり、ちょうど怪物のニックス・オックスを追っていたオーディネーター・ニサスと会った様子が描かれる。二人は軽く争ってみだらなジョークを交わしながら、怒った獣の破壊の痕跡を追って不毛の峡谷へと向かう。

「強大な剣と見合った武器のオーディネーター・ニサス、恐ろしい獣を獲物に加えんとす。しかし騎士オマインは口早に、罵倒の嵐を獣に。混乱し、感化し、知恵と言葉が脅威を消し、悲劇を防ぎし」

ヴィベクは遍歴の騎士に対し、あらゆる死霊術師や破滅した生き物、闇の勇者を見つけ出して始末することを奨励している。騎士たちにはヴィベクの理想に従い、同時に戦詩人の書物を引用するか、冒険を求めながら自分で詩を作ることを求めている。軍団の見習いメンバーは、ダンマーの伝統的なキチン質の鎧を身に着ける。それとは対照的に、高名な騎士はもっと高級なデイドラの鎧を着るか、碧水晶の鎧を着ることさえある。

オーディネーターが真面目で常に警戒する立場なのに対し、ヴィベクのボイアント・アーミガーは飛び跳ねながら冒険を探す。虚勢や華麗さに溢れ、軍団の典型的なメンバーは勇敢で恐れを知らず、博識で詩の達人である。彼らはヴィベク卿を崇め、引き換えにヴィベク卿は彼らに超自然的な勇気と、劇的な仕事を完遂する能力を与える。重要な仕事を遂行し、目前に迫った危険への対処のに密偵が必要になれば、ヴィベク卿は迷うことなく、忠実で信頼の置けるボイアント・アーミガーを召喚するのである。

マスター・レサンへの手紙Letter to Master Rethan

マスター・レサンへ

素晴らしい報告があります、あなたの計画は今のところ完璧に機能しています!いや… 「完璧」ではないかもしれません、ただ十分な成果を挙げています。最近雇用された作業員の一団は昨日到着しました。やる気のない連中でした。しかも用心深い。ただ賃金の引き上げを約束した後は、指示に従うようになりました。彼らなら良い品になるはずです。

あの錬金術師が… 確かガヴロスでしたか?彼が古いデイドラの遺跡に店を開きました。絶対に見ておくべきです!あんなにたくさんの瓶とバーナーを見たのは、スクゥーマの取引をしていた時以来です!彼が言うには、複数の調合薬の作成に取り組んでいるそうです。この件については、彼に直接聞いたほうがいいかもしれません。彼の研究室の空気は、私の祖母のモレル粥のように白く濁っています。

ノックス作業長

ミストレス・ドラサの日記Mistress Dratha’s Journal

テルヴァンニ家の魔術師、ミストレス・ドラサ 著

まあ、テルヴァンニ家が役に立った試しがないとは言えない。少なくともこの発見の後には。答えというのは、時として予想さえしていなかったところにあるものだが、利用できる資源を無視するのは愚か者だけだ。常に快適だった家には、必ず恩返しをしないといけない。さもなければ、答えの最後は聞かせてもらえない。トリビュナルは知っている。

私の答えは厄介なところにあると知っていた。デイドラを恐ろしいとは思わないが、その一体と交渉する考えはとても気に入らない。まあいい。私はそれほど答えを求めている。そうでなければマントを着ることもない。代価は承知しているが、決意は固い。やらなければならない。

当然のことながら、この墓にある研究記録は無知の塊だ。わずかでも常識のある学者というのは得がたい。テルヴァンニの仲間と関われば、ことさらそう思える。しかし、私はこの特定の信者の賛歌の真実を知っている。この差し迫った要求への答えは、この歌にあるのかも知れない。

冷炎石が青く燃え
公の召使いを呼び起こす
訪問の目的は取引
与えられる報酬を受け取るために

この冷炎石が召喚儀式に必要なのは、子供でも分かる。手遅れになる前に、石を探す者を見つけなくては。シケナズを倒せるほど強い者を。石を使ってでも、奴を弱めなくてはならない。優秀な協力者が見つかれば良いのだけれど。

メナルディニオンの広告Menaldinion’s Advert

病に苦しむ皆様へ

原因不明の痛みに心を奪われ、苦労していませんか?不快な怪我や倦怠感に悩まされていますか?朗報です!大魔術師にして凄腕の外科医であるメナルディニオンが、スランの街にやってきました。

見事な家具が揃った病院で安らぎをお求めください。経験豊かな魔術師が巧みに操るアルケインの術の完全な力で、しつこい病と苦痛を探し、診断いたします。役立たずのいかがわしい魔術やバカバカしい錬金術に頼るのは過去のこと!ひどくまずい茶や、むかむかする霊薬ともおさらばです!出処の怪しいべたつく蒸留薬ともさよなら!あなたとご家族に相応しい、正確で熟練した魔法使い!

適正価格でご相談をお受けします。ぜひお越しください!

メルティスへの手紙Letter to Mertis

誓約者メルティス・オスレンへ

依頼を受けてくれたと聞き、とても嬉しく思っています。魔法では不利かもしれませんが、それでもあなたが適任です。この任務には分別と、ある種の武力が必要になるのではないかと恐れています。情報が確かなら、あなたはどちらも持ち合わせているはずです。

最近昇進したアルゴニアン、影の中の太陽は、自分の立場を大きく逸脱した野心の持ち主です。情報筋によれば彼女は、愚かな私の宿敵、マスター・フィルスのためにヴォス近郊の土地を購入しようとしているようです。

任務は単純です。ヴォスに行って、影の中の太陽の仲間を監視してください。この取り巻きが目当ての土地を見つけたら、すぐに行動を起こしてその土地の権利書を確保し、人目のつかない場所に急行してください。同封した召喚クリスタルを使えば私を呼び出せます。あなたのいる場所に行き、その権利書と引き換えに報酬の残り半分を渡します。できれば流血騒ぎは避けたいのですが、必要であればためらわずに武力を行使してください。

あなたが信用に足る人物だと信じています。忘れないでください。あなたは名家テルヴァンニに仕えています。あなた自身と、あなたの家に名誉をもたらしてください。

J

ルディーマンの詩Ruddy Man Rhyme

(ダークエルフの童謡)

ルディーマンが起きたら覚えておいて
悲鳴も叫びも上げられない
逃げられないし、隠れられない
試みた者は皆殺された!

ルディーマンの好きな食べ物は?
ダークエルフの目とダークエルフの足!
ダークエルフの舌とダークエルフの爪先!
隠したいだけ隠しても、ルディーマンは知っている!

ルディーマンはいつ遊びにいく?
空が暗く、灰色になる時はいつも!
彼はあの鉱山、いや、あの洞窟にいる
あなたを墓場に送ろうとしている!

強大なルディーマンを誰が倒せる?
我らがヴィベク卿、彼が倒せる!
ルディーマンを切り裂いて
ルディーマンをシチューにする!

レッドエグザイルへの指令Red Exile Instructions

レッドエグザイルに告ぐ

バルモラの郊外にある鉱山に侵入し、我々の崇高な大義にとって、また全土におけるアッシュランダーの地位の向上にとって重要性を持つ、ある品を入手してもらいたい。現在、この品はニコティック教団が所有している。彼らは鉱山内で儀式を行い、この品に計り知れない力を伝達する能力を与える計画を練っている。信者たちに儀式を始めさせ、儀式が完了する前に入手せよ。

この品は鉱山の奥にある部屋に置かれており、厳重に守られている可能性が高い。気づかれぬよう潜入し、盗んでこい。見た目は金属と歯車で作られた杖だ。我らの大義を次の段階へと進めるため、この品が必要となる。

杖を入手し、私のところへ持って来い。お前たちの追放が終わり、故郷へと帰る第一歩になるだろう。

CC

レッドマウンテンの影での信仰Faith in the Shadow of Red Mountain

カノン・ルレヴルによる説話

敬虔なる者たちよ。我々は礼拝のためこの聖堂に集い、今こうして向かい合っている。私には分かる。君たちは今悩んでいて、不安で、椅子に座っていても落ち着かず、こうして話している間にも後ろを振り返っている。苦しみ、不安になっている理由は分かっている。レッドマウンテンが揺れて音を立てている時、誰が平然としていられるだろうか。バール・ダウが頭上で震え、デイドラが予期せぬ場所に出現し、ネレヴァリンがアッシュランダーに現れているとさえ言われている。不安にならない者などいるだろうか?

だが言っておきたい、ダンマーの仲間たちよ。こんなことや、さらに悪いことは以前にもなかっただろうか?我々はその度に生き延び、さらに強く成長してきたのではなかったか?我らがヴィベク卿はそのような戦いについて何と言っていただろうか?「六はヴェロスの守護者である。三は再び生まれ、お前が英雄の性質を身につけるまで試練を与える」とヴィベクは言っている。

だからこそ、再び我々は試されているのだ。だからこそ、再び我々は価値を示すために耐えなければならない。三大神がついてくれている。三大神を信じることで、我々は強くなれ。生き神たちは我々の全面的な信仰を望んでいる。

レドラン家には、物理的にも精神的にも古き体制を強化し、新たな体制を生み出すことを求めよう。我々を正義の道に留められるように。

フラール家には、植え、収穫し、保存し、交易の流れを保ち、灰や怒りの息吹が降り注ぐ時さえも、繁栄を確かなものにするように求めよう。

テルヴァンニ家には、賢く忍耐強く、洞察と魔法を伝授するよう求めよう。彼らはパクトの一員ではないが、それでも我々の仲間には違いない。

そしてトリビュナルの信徒たちよ、君たちにも求めたい。聖ネレヴァルの先例を思い出すのだ。彼の勇気は語り継がれ、その忍耐力は伝説となっている。我々は確かに不安で苦しんでいるが、我々には誇りがあり、力もある。我々はダンマーだ。苦しみは神々からの贈り物にすぎない。我々はその苦しみによって試されており、試練を乗り越えることで、自身の真価を知ることができる。

ヴィベクを称えよ!至高の三大神に栄光を!三大神が歩みを共にし、叡知と力を与えてくれる。これまでも、そしてこれからも。

レッドマウンテンの酒宴歌Red Mountain Drinking Song

それは巨人のように眠る、巨大な石造りの塔
レッドマウンテン、レッドマウンテン、ゴロゴロうめく
それは寝返りを打つ、目覚めないように祈る
そして何の前触れもなく、大地が揺れ始める!
世界が終わる時、大地は揺れ始める!だから——

フラスコを持って祈りを捧げろ
レッドマウンテンが爆発する予兆
乾杯しよう、でも気をつけろ
それは山による破滅の予言

グラスを持ってその日を呪え
レッドマウンテンが噴火する
飲んで全部忘れてしまおう
喉が渇いたまま憤死するか?
喉が渇いたまま死んでしまえ!

煙と灰の中で、燃えさかる岩を打ち返せ
私たちはすぐに酔っ払う、ウイスキーを飲み干せ!
炎と煙の中で、スジャンマをがぶ飲みしよう
酒の入った器を傾け、皆で酔い潰れろ!
世界が終わる時、皆で酔い潰れよう!だから——

フラスコを持って祈りを捧げろ
レッドマウンテンが爆発する予兆
乾杯しよう、でも気をつけろ
それは山による破滅の予言

グラスを持ってその日を呪え
レッドマウンテンが噴火する
飲んで全部忘れてしまおう
喉が渇いたまま憤死するか?
喉が渇いたまま死んでしまえ!

レッドマウンテンの力Red Mountain’s Might

アンルン・フローズン・コーブ 著

レッドマウンテンは怒れる巨人のように低く唸っている。その山腹は戦士の赤をしたたらせ、獲物に突進する前によだれを垂らす野獣のようだ。私は山の爆発の夢を見る。押し寄せる灰と噴出する炎。いつも冷や汗をかいて目を覚ます。

ダークエルフの仲間はその話をするとにやにや笑う。彼らは自分たちの偉大な神ヴィベクの力について、力と栄光と魔法について話す。私は魔法もその終わりも知っている。その限界も。彼らの偶像の限界は?見つけるのが怖い。

灰交じりの風のように噂が山を駆け巡っている。伝説。神話。しかし私はかつてドラゴンが支配していたスカイリムを横断した。神話の力も、神話が抱える真実にも無縁ではない。本物の神の持つ力も知らないものではない。

私がショール(あるいはダークエルフの知る名ではロルカーン)の心臓の話をすると笑われた。神に会うこと、神の隣人であること、それがヴァーデンフェルの住民には当然の権利に思われているようだ。だが見えるものに対して、どんな信心を持てるだろうか。信仰は社会で証明できるものが対象ではなく、むしろ自分の内でしか本当には感じられないものが対象なのだ。

それでも彼らは、知っていることを私に教えてくれる。欲深いダークエルフの手が心臓を見つけ、自分のためにそれを使った話。魔法の石は、人によるとそれ以上のものではない。それが何に使われたか私は知らないし、今も存在しているのかどうかもわからない。本物の神の伝説もそんな様子だ。単なる死すべき肉体を超えたところにある。

心臓はまだ偉大なレッドタワーの下にあるという者もいるが、ダークエルフの仲間はこの件でいつになく沈黙を守っている。トレジャーハンターが暗い通路を深く掘り下げていった話、決して地上に届かない叫び声の話を聞いた。

心の中では偉大なレッドマウンテンが決して挫けないこと、その力を決して放棄しないことを知っている。真の善の力がそれを奪うまで。あるいは、もしかすると真の悪の力が。

レドラン家の概要Understanding House Redoran

名家の大歴史家、レモラン・レドラン 著
黄金の平和百七周年記念

レドラン家の最初の形成以来、我らは義務、厳粛さ、敬虔を最大の徳としてきた。浅薄にして柔弱な生は生きるに値しない。我々は文明化されたダンマーの伝統を維持することに努め、戦士の道を守り通してきた。例えば我々の軍事力は他の名家を大きく凌駕している。我々の力は他の全名家を少なくとも一歩上回っており、多くの場合には一歩どころではなく上回る。

レドラン家にとって、向かうべき目標は自らの義務を果たし、自らの名誉を維持することである。それを果たせなければ自分と家の名誉への汚点となる。義務は自分の名誉に、次いで自分の家族、次いで自分の部族という順番で課せられる。

人生は本質的に深刻かつ困難である。我々は生の過酷さを受け入れ、耐え忍ばねばならない。それこそがレドランの道である。あらゆる行動を熟慮と謹厳さを持って反省せよ。厳格で思慮深く、誇り高くあれ!そうでなければ、レドランではない。

レドラン家の勧告House Redoran Advisory

一族に告ぐ

以下の団体や組織が、レドラン家の利益を損なう活動をしている可能性があり、留意してほしい。これらの団体と取引を行う際には、状況に応じて警戒し、注意するとともに、名家のすべての掟と制限を守ること。

アッシュランダー部族

野蛮人の数は、アルドルーン周辺と近郊で増え続けている。当然ながら、野蛮人の存在が、同地へ拡大する試みを妨げている。あらゆる点で、アッシュランダーはフェッチャーフライより始末が悪い。次回、上級評議会はとるべき道について議論し、計画をまとめる。その間、アッシュランダーとの接触は可能な限り避けること。

モラグ・トング

レドラン家はトリビュナルの意志を認め、ダンマー領内での活動をモラグ・トングに許可している。一方で名家の法から見れば、彼らは殺人者であり、犯罪者である。このような二つの見方をするのは、他の名家が我々に対してモラグ・トングを利用し、レドランの利益を損ない、自らの地位を高めようとしているからである。慣行として、レドラン家がモラグ・トングの役務を利用することはなく、モラグ・トングによる一族の無差別殺人も許容しない。

フラール家

厳密に言えば、フラール家は友人であり、味方だと考えているが、レドランの交易路や冒険的事業を妨げる行動への不安は、ここ数週間でますます高まっている。フラールのバルモラ内、バルモラ周辺における活動は、非常に憂慮すべきだ。というのも、彼らは自ら街を支配したがっているようにみえる。フラールのあからさまな、または疑わしい行動は、名家の評議員へ即座に報告すること。

レドラン家の記録House Redoran Registry

—表彰:イリレス軍曹。最近のクワマー鉱山B-37に対するデイドラの侵略で、与えられた任務以上の功績を上げたため。

—重要事項:ノルドが、民族間の親睦と理解を深める目的で、文化交流の代表者を派遣。この試みにおいては、リガート大使の挙動がどれほど変に思えても、懇切丁寧にもてなすこと。

—次の家の衛兵が将校の訓練を完了した:フレヤ、ドーサシ、リヴァメ、バリオン。

—最近、シャド・アツーラ魔法大学を卒業したレナ・ダルヴェルがレドランの調査官に任命された。彼女は聡明で才能があり、立派な人員として、情報収集機関に加わる。ただし前もって警告しておくが、シャドウクラックを爆発させるという彼女の夢物語には気をつけること。

—追放者:レドランの将校、貴族に相応しくない行動により、レドランのレドラン上級評議会の命令をもって、ウルラン・レレス隊長の称号が剥奪され、レドラン家とトリビュナルの領地から追放された。

—ウルラン・レレスの追放を考慮し、ブリバン・マルロムを西方軍隊長に昇進させた。

—アッシュランダー事件:バルモラ先の荒野を占領しているアッシュランダーの、部族間の混乱に関連する事件が増加中。ブリバン隊長は、必要に応じてレドラン軍を支援するため、フェーハラのウォークローと呼ばれる傭兵団を雇った。

レドラン家の指令House Redoran Orders

レドラン家の兵士とフェーハラ・ウォークローを含む、スクリブ大隊の戦士へ

スクリブ大隊には、アッシュランダーの不法占有者からクダナット鉱山と周辺地域を奪取する任務が与えられた。

アッシュランダーは、すべての土地に自由に住めると誤解している。当該地区より排除する我々の試みには抵抗するだろう。これを念頭に入れた上で、以下の命令を守ってもらう。

1.絶対に必要でない限り、アッシュランダーには武力を用いるな。武力による領土制圧よりも、平和的な取引の方が望ましい。

2.アッシュランダーがレドラン家の法律に従う場合は、周辺からの退去を許可させろ。

3.アッシュランダーが抵抗する場合は、扇動者を無力化し、交戦中は拘束しろ。

4.武力行使が必要な場合は、迅速かつ最大限に行使しろ。

ブリバン隊長

ロスナースへの指示Instructions for Lothnarth

ロスナースへ

奴隷達に干渉する必要はない。私の雇った衛兵達がいれば生産性は保てるし、必要な時には彼らが食事と休憩を与える。

週ごとに正確な記録をつけてほしい、そうすれば鉱山の生産力を適切なレベルに保つことに、私の実験が役立っているかどうかを確認できる。

クリスタルの機械には誰も触れるな。機械は固定してある。不器用な奴隷や頭の悪いクワマーがぶつかれば、作業を妨害されかねない。

機械は私が現場に行って止める。機械の使用時と未使用時の生産性を比較したい。機械を動かすレバーと歯車は、私がムザンチェンドの研究室から取ってくる。この件は私に任せるように。

今さら注意する必要はないだろうが、ムザンチェンドには近づくな。有能な賢者でなければ、かなりの確率でオートマトンに切り刻まれるだろう。

意地悪なホタル爺さんMean Old Torchbug

意地悪なホタル爺さんはクワマー鉱山の近くに住んでいた。クワマー・ワーカーをからかうのが大好きだったが、勇敢なる小さなスクリブを問題に巻き込むのはもっと好きだった。露骨には問題を起こさず、ほとんどの場合勇敢なる小さなスクリブは、小さなホタル爺さんを友達だと思っていた。もし勇敢なる小さなスクリブが、自分が罰を受ける羽目になったのはいつもホタル爺さんの話を聞いたせいだったと、少し時間を取って考えていたら、その意地悪な小さい生き物のことを違う目で見ていたかもしれない。しかし勇敢なる小さなスクリブは、そんなことを深く考えなかった。そういう性分ではなかったのだ。

ある日、クワマー・ワーカーが忙しそうにクワマーの卵を孵化場で移動させるのを見ているのが退屈になって、勇敢なる小さなスクリブは思い切って鉱山の外へ出ることにした。天気がいい日で、日が明るく照らしていて暖かく、優しいそよ風がキノコの森を通り抜けていた。入り口でクワマー・ウォリアーが番をしていて、どこへ行くのかと尋ねた。真面目な戦士以外なら誰にでも明らかだろうと思いながら、彼女は「遊びに行くの」と答えた。

勇敢なる小さなスクリブがキノコの森に入ると、輝く光が行く先の上を舞っているのが見えた。友達の、意地悪なホタル爺さんだった。とはいえ、彼女はその小さな虫をそんなひどい名前で呼びはしなかったが。「こんにちは、ホタル爺さん」とスクリブは呼び掛けた。

「こちらこそこんにちは、小さなスクリブ」とホタル爺さんはパチパチと燃える火のような声で鳴いた。「こんないい天気の日に、鉱山の外へ何をしに来たんだい?」

「遊びに来たの」と勇敢なる小さなスクリブは楽しそうに言った。「皆仕事で忙しくしている鉱山はひどく退屈で、ウォリアーはただ戦いたいだけ。私は冒険をしたい!」

「冒険?」ホタル爺さんは上機嫌で尋ねた。「君が一日たっぷり楽しめて、私の午後が面白くなるようなことを知ってるぞ」

知り合ってからこれまでにホタル爺さんが提案してきたことを思い出しながら、スクリブは疑い深く尋ねた。「それってどんなこと?」

「近くに魔術師の塔がある。背の高いキノコの中だ。そこに住む魔術師はいつも、一緒に遊んでくれる勇敢なスクリブを探している。とっても面白い遊びを知ってるんだ」

「どんな遊び?」とスクリブは尋ねた。疑いながらも、急にうきうきしてきていた。

「まあ、最高のだよ、本当だ!」

「それなら連れてって、ホタル爺さん」とスクリブは言い、光を放つ虫の後について、包み込むようなキノコの影の奥深くへと入っていった。

ホタル爺さんについてキノコの塔へ向かっていくと、勇敢なる小さなスクリブは塔の下で空っぽの瓶が無造作に山積みになってるのに気付いた。瓶を調べるために立ち止まり、捨てられていた容器についていた、甘くてベトベトした残りものの匂いを嗅いでみた。

「どうかしたの、小さなスクリブ?」ホタル爺さんは戻ってきて、山積みになった瓶の上を飛びながら尋ねた。

「この匂いはどこかで嗅いだことがある」と勇敢なる小さなスクリブは言った。「でもどこでだか思い出せない」

「それは魔術師がトーストに塗るただのジャムの残りだ。そう言えば、それも彼女が好きな遊びの一つなんだ。勇敢なる小さなスクリブが訪ねてきたらね」

勇敢なる小さなスクリブは鉱山で最も賢いクワマーというわけではないが、勘が働く時がある。この時もそうだった。「魔術師が私をスクリブのジャムにするのを見たいんでしょう、意地悪なホタル爺さん?」

「もちろん」とホタル爺さんは鳴いた。「ジャムがどうやって作られるか見たくて仕方がない」

「それは別の日にしましょう、ホタル爺さん」と勇敢なる小さなスクリブは言った。

「そう言うなら、小さなスクリブ」とホタル爺さんは鳴いた。「それではまた」

そして勇敢なる小さなスクリブは、ホタル爺さんを空の瓶ばかりの影の中に残して、急いでクワマー鉱山に戻った。そして、あんな冒険はしなくてよかったと思ったのだった!

慰撫の儀式The Ritual of Appeasement

デイドラの主を不穏に誘惑してはいけない。我々の先人たちがそうしたように、恐ろしい凝視が部族に降りかからぬよう、彼らに自由を与えなさい。季節が短き好意を示す時、デイドラ公には正当なものを与えたまえ。さもなくば、不都合な時に訪れられよう。時期はグアルが太ること、偽神の道に沿って道に迷った人々がさまようことで判別できる。

部族を偉大なるアルムルバラランミへ導きなさい。そこは先人たちが協定を結んだ場所であり、今後協定が更新される場所でもある。着いたら穀物の山に火をつけること。儀式が終わるまで火を与えなければならない。デイドラ公が満たされるまで、満腹になることはない。

毎日太陽が遠い波の頂上に達するとき、生きた生贄をアルムルバラランミにある古代の祭壇へ集めること。黒い碧水晶の刀剣を使って石の上で喉を斬り裂き、血が新鮮なうちにデイドラ公を呼び出すのだ。誰かを拒絶しようものなら、確実にひどい苦難が訪れよう。

太陽が真の高さに達する前に、祭壇の最端まで生贄の内臓を広げ、捧げ物をデイドラ公の慈悲に委ねよ。ナミラの宿主とペライトの接触が死体を汚したとき、その日の宴が終わったことを知るだろう

付き添いの者たちは捧げ物を取り除き、聖別の油で祭壇を洗う。夕暮れの最も長い日には、デイドラ公への捧げ物が満足のいくものだったとアズラによって示される。我々が断食後初めての食事を取り、嘆願を終えるのはその後だ。アルムルバラランミは彼らの場所であるため、長居してはいけない。

音調反転装置の使い方How to Use the Tonal Inverter

1.音調反転装置の起動には、息の合った大人2名を必要とする。波長調節者1名が音波を生成、準備し、音響放出者1名が準備された音波を放出し、ソーサ・シルの改造されたエナジー吸収装置を妨害する。

2.波長調節者は戦闘の行われる付近で、しかし直接戦闘に参加せずに音調反転装置を操作し、音響放出者は装置を持って戦闘に参加する。

3.波長調節者は音調反転装置を操作し、音エナジーの波動を蓄積する。

4.音調反転装置が正しい音程に達したら、波長調節者は装置の放出準備が完了したことを伝える。例えば、波長調節者は「準備ができた!」と叫んでもよい。

5.音響放出者は戦闘中に十分な隙を作り、音調反転装置を放出する。注意点として、視線がはっきり通っていればどこからでも行える。音調反転装置は遠くからでも音響放出者を認識し、従うように設定されている。

6.音調反転装置は放出され、ソーサ・シルの改造装置から放射されるエナジーを一時的に妨害する。改造装置の持ち主は一定時間無防備になる。

最後に: ソーサ・シルの装置の所持者によって吸収されたエナジーの量によっては、この手続きを複数回繰り返さねばならない可能性がある。妨害とそれに伴う無防備状態は短い。この指示を守れば、問題はないはずだ。大いなる歯車がその場で自由にうなり、回転しますように!

各種の皮膚病Skin Blights By Any Other Name

名家の治癒師レヴォサ・イルドラム 著

著名な貴族である、ロザラン出身のウラサ・ロザランから、長きに渡りあらゆるところで苦しむダークエルフの悩みの種、皮膚病を詳説するよう頼まれた。この痘は経済的、社会的立場とはほとんど関係ない。金持ちでも貧乏人でも、若者でも老人でも、皮膚の伝染病は誰にでも感染するが、ダンマーの肌にはより感染しやすいようだ。伝染病は軽度の不快感から、傷痕を残し、活性化した後は死をもたらす破壊的な蔓延まである。トリビュナルの要請で疫病と疾病に対処するため、それぞれの名家から治癒師が集まり、情報を交換し、協働するダンマー治癒師会は、皮膚に関連するすべての病気を古代ヴェロシ語で「皮膚病」を意味する言葉を用い、「コープラス」と名付けた。

土地を荒らす他の疫病と同じく、コープラスの病気には自然的、非自然的双方の起源がある。時折、病の錬金術版、魔法版までもが解き放たれ、大衆を蹂躙する。例を挙げると、第二紀565年のフレイ・ブライトがある。長く焦がされる夏を通して、恐ろしい病気がヴァーデンフェルの西岸を荒らした。無数のダークエルフが発疹に罹り、肌に炎症を起こし、皮膚にしみをつけた。治癒師会の広範囲に渡る調査で、フレイ・ブライトは、錬金術の製法、秘術師のマジェスティック・フェイス・クリームの変化による直接の結果だったと断定された。

ダンマーの皮膚がコープラスの病気に感染しやすい理由に関しては、理論と推測程度しか提供できない。ダンマーの人々は「運命によって醜くされて」おり、それで特に皮膚病や他の炎症に罹りやすくなっている、と信じる者がいる。冷酷で懐疑的な気質が血の流れを熱くし、あらゆる種類の病気が増えやすく、身体の中に根を下ろしていると考える者もいる。治癒師として、私はそのようなダークエルフと、例えばオークやノルドとの間の体温の違いを確実に示すものを見つけていない(私達はアルゴニアンよりも暖かく見えるが、それは別の報告書のテーマだ)。他にも「古い宗教」にすがり、コープラスと他の皮膚病を、ダンマーに対してマラキャスが激怒している直接の証拠とみる者がいる。彼らの信じる呪いの神が、身体能力と総合的な体力を限界まで上げるため、病気を次々に送り込み、私達を試しているというのだ。

治癒師と錬金術師として、私は理論化を始める際に神話と宗教の問題は放置しようと思う。苦しむダンマーの治療と、モロウウィンドと近隣国で信頼できる治癒師の仕事を再び調査することを含む研究により、炎症と変色、剥離や腐肉の形成、疱疹や潰瘍の発生を含む最も自然なコープラスの発生は不衛生な環境、不安定で面白い、もしくは極小の汚れた、不機嫌な気質の極小生物を原因とするようだと私は結論付けた。もちろん、そのような理論は多くの同僚に嘲笑されている。彼らは全ての行動がマジカの相互作用、天体の動きなど、より伝統的な治癒と病気の関係に対する考え方で説明できると信じている。

結論として、あらゆる種類のコープラスを避ける最良の方法は、頻繁に風呂に入り、清潔な衣服を着て、非常にきれいな食料と酒を飲み食いすることである。それで気分が良くなるなら、マラキャスの望まれない注意をそらすため、守りの祈りをつぶやいてもいい。トリビュナルはおそらく、そのような分かりにくい儀式が皮膚病を蔓延させることはないと知っているだろう。おそらく、より気分を良くしてくれるのではないだろうか。

強きニックス・オックスに関する請願A Petition for the Mighty Nix-Ox

カイリア・サンド 著

ええ、私たちの土地にいる頑丈なニックス・オックスには感謝しています。ニックスハウンドの遠縁にあたる心優しいこの大きな動物は、我々が奴隷なしでやっていかなければならなくなった時の救世主であり、それ以来農業の主力でした。でも我々がこの素晴らしい生き物に何をしているか、立ち止まって考えてみたことがありますか?

日常の労働が皮膚のタコと筋肉を作り出すだけの奴隷と違って、ニックス・オックスは強制的に土中で蝕肢を引きずり、土地を耕すようにされています。おかげでサルトリスやマーシュメロウ、その他必要な作物のための溝ができるのです。我々の暮らしの大部分はこうした作物の素早い成長と商取引に頼っています。しかし、これらの商品の本当の費用はどうなのでしょう?

ニックス・オックスはドワーフが作っていたような鋼鉄の野獣ではなく、生きて呼吸をしている動物です。長年にわたる献身的な仕事により、ニックス・オックスの蝕肢は蝕まれ始めています。彼らはこの重要な保護器官を失うだけでなく、このままでは我々の「良き隣人」、農業従事者に役立たずとされてしまうのです。彼らは荒れた灰の土地に捨てられ飢えるか、その皮のために殺処分されます。長年に渡りヴァーデンフェルの土へと献身してきた存在に感謝するには、何と素晴らしい方法でしょう!

「でもどうすればいいんだ?」と尋ねたいかもしれませんね。「もっといい方法があるのか?」。皆さん、もちろんあるんです。いつだってもっといい方法が。

私はすべての農業従事者が、一定年数の仕事をしたニックス・オックスを引退させる法律が必要だと考えています。彼らはその後平和な引退生活を許され、長年に渡って平和的な協力関係にあった人々から、食事と世話を受けるのです。彼らには美味しいキノコをすべて口にし、晩年を平和で快適に過ごす権利があります。

この計画を可能にするために信任投票と、心優しき大型の友人を守るための請願を提案します。あなたに必要なのは支持を示すことだけです。名家のダンマーの皆さん、一緒に参加しませんか?

血に染まった手紙Blood-Soaked Letter

最愛のマブキルへ

輝く月にかけて、愛しい人よ!昨晩、ジズルクが一座を集めて、私達の問題を訴えたわ。ヌズラザとハニラーがジャ・カジートみたいに不満の声を上げたけど、最後にはあなたの自由が新しい荷馬車より大切だと、友人達が決めてくれた。お金を集めるにはしばらくかかるけど、この者はもうすぐあなたに会えると知っている。ロープフィッシュのカータグを捜して。彼があなたを家に帰す船の船長よ。

愛してる
あなたのエラサルハ

賢者オセリの研究日誌Magister Otheri’s Research Journal

〈この日誌はページが破れているが、多くの部分はまだ判読できる〉

恵雨の月22日
約2年かかった。だがようやく突破口を見つけた。初期に失敗はあったが、3つの音調クリスタルをどうにか1つのマスタープリズムに統合できた。あれを割らずに共鳴させ続けられれば、交換の音波を生み出すことができる。大発見になるだろう!

南中の月3日
規模は小さいがようやく実験の成果が出た。音は繊細で、人間やエルフにとって聞き心地の悪い音ではないが、クワマーを喜ばせている。プリズムは音の力に対して見事に耐えているようだ。鉱山で強制労働させられている獣の奴隷のような、鋭い聴覚の持ち主は影響を受けるかもしれない。その影響が悪いものなら、どんな利益も相殺されてしまうだろうか?持続性が問題だ。どうやって解決する?

薪木の月17日
今日は力のなさを思い知らされた。ムザンチェンドに眠るドゥエマーのアーティファクトを放置してこのプリズムの実験を続けるとしたら、本当の愚か者だ。何年か実験すれば、プリズムのために安定した結界を作り出せるかもしれない。しかし、音の魔法に関しては、ドゥエマーが残したものほど優れた道具は存在しない。

薪木の月19日
あの高慢なゴスレンは、私の仕事に興味を示している振りをしていた。サドリス・モラに密偵を忍び込ませているに違いない。塔の使用人も怪しい。彼の質問は的を射ていた。どうせならゴスレンではなく、テル・モラのあの狂った婆さんと手を組みたい。詳細な情報については、好奇心に満ちた目やうるさい密偵に見つからないよう、しっかり隠しておこう。

黄昏の月21日
やった!ついにドゥエマーの安定化装置を備え付けた。クワマーが何度も突っ込んでいる。クソ虫どもめ。設定の失敗がそれほど大きな問題になるとは思えないが、計り知れない価値を持つ音のプリズムの問題だ。幾重にも注意が必要だ。

星霜の月14日
間抜けな、アナ… アロレンダ… いやアロウェンデめ。彼女はあの場所での発見に興奮し、クランクだけを持って、ムザンチェンドの私の研究室にフラフラと入ってきた。彼女はメモを取りながら工具を落としていた。彼女は賢い。だが集中力に欠けすぎている。彼女に部品を回収してきてもらおう。この機械錠の部品残り3つを見つけるために、ガラクタをかき分けながら遺跡中を歩き回りたくない。私の機械が今のところ順調に動いているのは、彼女にとって大変な幸運だ。

賢者の書状Magister’s Writ

評議会と名家テルヴァンニの皆様へ

私、テル・ブラノラの賢者セラナはこの書状により、アルゴニアンの奴隷である影の中の太陽を、テルヴァンニ家の一員に昇進させることを要求し、それを支持します。彼女は出来得る限り早急に奴隷階級から昇進し、雇い人として認められるべきです。

影の中の太陽には素晴らしい独創性があり、綿密な計画を立てる能力があることも証明されています。私の研究に欠かすことのできない貴重な遺物を発見できたのは、直接的にも間接的にも、彼女の協力によるものです。未だ枷に繋がれているにも関わらず、このような功績を挙げたのは特筆すべきことです。

評議会は間違いなく影の中の太陽の魔術の才能に気づいているはずです。種族として不利な立場であるにも関わらず、彼女は素晴らしい才能を発揮しており、特に変性と召喚を得意としています。このような才能には教育が必要です。彼女の能力はテルヴァンニ家の利益となるでしょう。私はそう信じています。

名誉と敬意を込めて
セラナ
テルヴァンニ家の賢者
テル・ブラノラの主

賢女の日記のページWise-woman’s Journal Page

捧げ者を狩る者が、また1人姿を消した。4人いなくなり、今も戻っていない。捧げ物が不十分で、デイドラ公がご立腹ではないかと不安だ。

偽神の奴隷が聖地を踏み荒らし、不敬な聖堂を立てている。一体デイドラ公が我々に好意を示してくれるのだろうか?奴らはこの地から我々を追い出し、先人の協定を断ち切ろうとしている。

辱められた者も死んだ者も、我々の戦士は復讐を望んで叫んでいる。こんなことを続けさせるわけにはいかない。我々の前にどんな道がある?骨は何を示すのだろう?

鉱山労働者が書き殴った手紙Miner’s Scrawled Letter

ゆびうごかない

くろくなてきた、まるで、こくたんせき

このメモみつけたら

たすけよべ!

なにもかんじない

鉱山労働者の警告Miner’s Warning

何があってもトロールに餌をやるな!

あいつらは信じさせられたのと違って、可愛くも友好的でもない。

鉱山労働者への警告Warning to Miners

警告

許可を受けていない作業員はこの先立ち入り禁止。

現在隔離中。

違反者は即座に罰則の対象となる。

ノックス作業長

最後の獲物—ロルカーンの心臓The Heart of Lorkhan, My Final Prize

職人レナルメン 著

皆がその伝説を知っている。ロルカーンの心臓がアーリエルに伝えた言葉はあまりにも有名である。「この心臓は世界の心臓。一方が他方を満足させるために作られたものだ」。不滅であり、隠され、海に沈められた。レッドマウンテンの地下に位置し、機会を逃さない正しき者が己のために回収するのを待っている。そして今日、私は報酬を得るためにやってきた。

そう、心臓がヌシュレフティングスにあるというのは憶測にすぎないかも知れない。しかし、直感によって成功を収めたことは以前にもある。この神話に関する数多くの書物を研究したが、いずれも心臓はレッドマウンテンの地下にあると示している。最も偉大な発見をするのはここだ。

私はこのエドラのアーティファクトが実在すると信じているが、神々への信仰とは無関係である。唯一、愚か者のみが神話を無視する。すべての物語には真実の核心があるのだ。伝説とは単純な事実が発展し、滑稽な話になったものだ。明らかに強大な力を持っている物体とはいえ、心臓もそれに漏れないと信じている。私が得ようとする魔法の物体という意味で。

ここでネラモを見たのは驚いた。ヴァーデンフェルではあらゆる間抜けに出会う可能性があるが、よりにもよって奴とは。奴と寄せ集めの仲間は逃げ出すか、容易に捕まえられた。私は奴が置いていったコントロールロッドを見つけた。当然、この道具については多くの修正点が頭に浮かぶ。それでも今のところ、ドワーフコンストラクトを制御する効果は発揮している。

ロルカーンの心臓の効果は不明だ。デイドラの心臓よりも効き目のある、強力な薬の材料になるかも知れない。戦いにおける無限の力や耐性など、魔法属性の付与もあり得る。過去タムリエルが見たこともない崇高なものを作動させる、至高の魂石の可能性もある。その用途は関係ない。私が知るのは、それが引退するために十分な金を稼いでくれることのみだ。私は分別がありすぎて、そのように強大な力を持つ品を使おうとは考えない。かかる強欲は、あまりにも頻繁に絶望へと通ずる。

三十六の教訓:第三十七説話The 36 Lessons: Sermon 37

ヴィベク 著

第三十七説話

お前はヴィベクの第三十七説話を見つけた。これは光を曲げる話。遠い過去、一定せぬ顔でありながら、崩壊まで可能な限り支配を行ったホーテーターの年代記である。

ヴィベクは水が細く流れる側で産まれ、星への結びつきを赤く記した。これは速度の新たな場所だった。彼の目は塔の上のスパイクを潰した。そこでは虚無の亡霊がドレイクの鱗の太鼓の上に居座り、リズムに呆けていた。そして彼がこう尋ねた。

「お前は誰で、署名はまったく要らないのか?」

合計すると三になる、アイエムのローブは記憶の明るく黒の縁へと伸び、購入の弧に縄をかけた。これは新たなダッシュの仕事。そしてセトは膨れた腹を文字通りの状態にした。時計職人の娘、世紀の長さの糸に沿って死の告白をする泳ぎ。彼女を名付け、何も食べず、ヴェロスとヴェロシの黄金の貯蔵室。そこ以外にどこへ行くと言うのだろう?

「ここに行け。車輪のない世界、死が霊を示し、こだまが歌っている」とセトは言った。すべてが終わるまで、そしてその中心は何かである何かだった。

そして赤い瞬間は抑制のない大きな唸りになった。なぜなら仮の家が破壊されていたから。そしてヴィベクは蒼水晶のようにランプとなった。ドラゴンのたてがみが壊れ、赤い月が彼に来いと命じた。

「王の印はこれではない」青方偏移の信号(女性)が彼に言った。「独学で学べる正しい教訓はない」

彼は彼女を捕まえる網を撚ることを拒否した。続けない人々は研究によって満たされない。そして精神が飛ぼうとして破壊されたと悪意が込められる。しかし男性の信号は気分を害し、ヴィベクは戦闘の態勢を取った。彼は東の光を元通りにして、アルムシヴィに言った。彼らは戦争の間、何の力も観察されない碧水晶の中の花嫁になると。

光が曲がった。ヴィベクは宝石の赤いプレートでできた胸当てと人間の地で産まれたことを印す仮面を身に着けた。方向を変え、虫の軟膏を塗り、挑戦を受ける時は首にヒストの球根をつけた。雄叫びを上げ、マンモスの亡霊に自分の指を与えた。狼煙は彼らが降伏を見誤ったかと思った。ヴィベクが虚無にすべて元通りにする方法を学んだと言ったからだ。

光が曲がり、どこかで歴史がついに元通りになった。その中で、ヴィベクは狩りがうまくいった時に村のネッチマンが上げる笑い声を思い出した。彼は灰の中を父と歩き、釣りや航海で丈夫に育ち、シルトにがらくたを走らせるようになった。11歳の時、彼はアシュカーンに歌った。レッドマウンテンの後で病気になった。ニックスの血と熱で百年は虚弱だった。母親は息子より長生きし、息子の亡骸をパドメの祭壇に捧げた。彼女は彼に、地下の世界で纏うよう自分の皮膚を与えた。

光が曲がり、ヴィベクは目覚めて牙を伸ばしたが、自分を折り畳める存在にするのは嫌だった。これは新しく、月の約束だった。そして噛むことで彼女はトンネルを掘り、地下へ潜った。彼女の兄弟と姉妹は天国、意見の相違の小さな亀裂、コガネムシと虫のための食事を汚していった。彼女は民を率いて安全にして、アズラと座って彼女自身の夫の姿を泥に引きずりこんだ。

「私が自分の左手と右手を取り去ったので、彼は言うでしょう。それが彼らに勝つ方法だと。愛だけが。そしてあなたは、塩の過ちを初めて知るのです」と彼女は言った。

言葉の世界はアマランスである。

山賊の手紙Bandit’s Letter

あの馬鹿なカジートの最初の作物はなかなかの出来だった。そのため、我々はどうにかあの退屈なニックスハウンドのいない場所を探し、より規模が大きい川床に植えられた… と言っても、数日後にはフェッチャーフライにやられたが。

ニックスハウンドの数を減らすと、何らかの理由でフェッチャーフライの数が増えるようだ。そのせいか、伝説のフェッチャーフライ・ハイヴゴーレムがこの辺りのどこかにいるせいなのかは分からない。事前に知っていれば、あのダークエルフの女の賄賂に同意はしなかった。

レイサルと役立たずの馬鹿二人は、あの愚かなカジートの研究をさらに求めて出かけた。西の洞窟の探索から戻ったら、大量にあふれる害虫とやまない騒音を洞窟から排除するために、フェッチャーフライ狩猟隊を結成するかもしれない。

思考記録1322331455212478Cogitation Log 1322331455212478

こんにちは、作成者よ。

アニモンクリの再処理はあなたの栄光ある設計から逸脱することなく続行されています。

不活性部分の再処理は1体1の比率で続行されています。

回収物から原料への変換効率は、95パーセントに留まっています。命令に従い、改善を続行します。

ドゥエマーの設計の再生産はご指定により、中断したままです。

命令に従い、反復を続行中です。

すべての変化は、問題なく集積され統合されています。

命令を待っています。

信者の日記Devotee Journal

今日、モラグ・マールへの巡礼を開始しました!是非とも自分の目で新しい聖堂が見たい。海の上に建てられたそうね。ひょっとすると浮いているのかもしれない!バール・ダウを少しでも体験したら、その発想も現実離れしているとは言えないでしょう。

ボイアント・アーミガーは見ものです。彼らの多くが巡礼の様々な道を巡回していて、いつも少し弾むような足取りです。彼らの歌や剣は、吹きさらしの道以外の何にも慰めとなります。

聖堂は浮かんでいなかったけれど、だからと言ってモラグ・マールの素晴らしさは変わらない!ここは休憩のため、カンド山への旅の準備のための、素晴らしい場所になります。でもその前に、聖堂で三大神に祈りを捧げなければ。

最終日あたりからボイアント・アーミガーを見かけなくなっています。道を見張りに行ったのでしょうか。ここにいる彼らの長老にいつ旅の案内係を頼めるのか尋ねると、渋い顔をされました。碧水晶鉱山で起きた何かの事件のせいで、忙しいようです。長老は誰も手が空いていないと言っています。

もうずっと待っています。アーミガーは忙しいかもしれないが、彼らがここにいるおかげで、荒野も少し安全になったに違いありません。明日の朝、私は旅を続けます!

神聖なアルマレクシアの朝の寓話Blessed Almalexia’s Fables for Morning

一番背の高いシュルームビートル

背の低さを不満に思っていたシュルームビートルが、大きなキノコのてっぺんまで登っていきました。ビートルはアッシュランドを見渡して叫びました。「どうだ!俺よりも背の高いシュルームビートルはいないぞ!見えないものなんて何もない!」

するとクリフ・レーサーが急降下してきて、ビートルを止まり木から引っ張りだしてしまいました。この獣は歯をいっぱいに見せてにやっと笑い、言いました。「地面に留まっていれば、俺はお前を見ることもなかっただろう。背が低くたって、死ぬよりはマシじゃないか?」

かわいそうなビートルは、本来の性質を捨てても身を滅ぼすだけだと学びましたが、遅すぎました。

***
2人のグアル飼いの物語

2人のグアル飼いが家畜を売ろうとして、市場で出会いました。2人のうち背の低い方は、もう1人を見て笑い、こう言ってからかいました。「市場にたった1頭のグアルしか連れてこなかったのか?私の群れを見なさい!10と20頭も連れてきた。大金持ちになるんだ!」

背の高いグアル飼いは頭を横に振りました。「あなたは10と20頭のグアルを持っているが、どれも痩せこけていて弱々しい。丈夫なのを1頭持っている方が、病気のグアルを100頭持つよりもいい」

背の低いグアル飼いは下品にくすくすと笑い、自分の獣たちを囲いの中に誘導する準備をしていました。すると、大きな灰の嵐がやってきて、市場はものすごい風と息の詰まる煙に襲われました。

そのうちに嵐は収まりました。背の高いグアル飼いと彼の大きくて強いグアルは無傷でしたが、背の低いグアル飼いのグアルたちはあちこちに吹き飛ばされ、1頭たりとも生き残ってはいませんでした。

「友よ、これでわかるだろう」と背の高いグアル飼いは言いました。「数は質の代わりにならないことが」

***
友達が欲しかったアリット

陽気なアリットがアッシュランド中を跳ね回り、「友達」と呼べるような獣はいないかと目を凝らしていました。しばらくすると、灰の穴の中で毛づくろいをしているニックスハウンドが現れました。アリットは大きく笑顔になり、「こんにちは!」と叫びました。ニックスハウンドはアリットの大きな歯を見て取り乱し、岩の下まで走って逃げてしまいました。アリットはため息をついて、そのまま跳ねていきました。

道の途中、ビートルの巣を掘り返しているヴァルドヴァークに出会いました。「やあ!」とアリットは叫び、笑顔でいっぱいになって、その大きく鋭い歯を見せました。ヴァルドヴァークは恐怖でキーキー声をあげて、茂みに走り去っていきました。アリットはまた悲しげなため息をつき、海辺へ向かってゆっくりと進んでいきました。

ようやく、アリットは砂の中で転がっているアッシュホッパーを見つけました。アリットは一番大きく元気のよい笑顔を作り、言いました。「こんにちは、アッシュホッパーさん!」アッシュホッパーは恐怖で後ろに飛びのき、全速力で逃げていきました。

アリットはすっかり挫けてしまいました。「このひどい歯がある限り、友達なんてできるわけがない!」アリットは怒ってシューと音をたてました。歯を全部なくしてしまう決意を固めたのです。アリットは大きな岩を口の中に入れ、思いきり噛みました。緩んだネジのように、歯が全部抜けてしまいました。アリットはため息をつきました。「これでもう、他の獣たちが怖がることもなくなった!」

すると大きなカゴーティが現れて、足を踏み鳴らして襲いかかろうとしてきました。アリットは唸り声をあげ、顎を思いきり開いて追い払おうとしましたが、カゴーティは笑いました。「馬鹿だな!歯が1本も残っていないじゃないか!」アリットが自分の過ちに気づいた時には遅すぎました。カゴーティは突進して、陽気な獣をひと息に飲み込んでしまいました。

そうなのです。自分の内にある嫌いなものが、とても大切なものであることは、よくあることなのです。

***
ヴィベクと萎えた手の者

ヴィベク卿が道を歩いていると、ねじれてしぼんだ頭の者に出くわしました。「そこの若いの!」と彼は叫びました。「誓約者を助ける気はないか?」

ヴィベクは立ち止まり、ひたいにしわを寄せました。「どうしたのだ、老エルフ?」とヴィベクは尋ねました。
彼は手を挙げて答えました。「わしの萎えた手が見えんのかね?古い根っこみたいにねじ曲がっちまって、嵐が来るたびにひどく痛むのさ。こいつが醜いもんだから、女はわしに近寄ろうともせんし、子供は見ただけで逃げちまう。お慈悲を頼むよ!」

ヴィベクは少しの間、静かに立ちつくしていました。それから光り輝く剣を抜き、老エルフの手を一撃で切り落としてしまいました。彼は痛みで泣き叫び、戦詩人は傷口を手当てしました。

「そんなにわめかなくてもいい」とヴィベクは言いました。「私のしたことが最も親切な行いだったのがわからないのか?憐れみを買うために悪を持ち続けるよりも、きっぱりと別れてしまったほうがいい」

神聖なアルマレクシアの昼の寓話Blessed Almalexia’s Fables for Afternoon

カラスとネッチ

ある日、好奇心の強いカラスはこれまでよりも遠くへ飛ぶことにしました。カラスは飛びに飛び、ついにはとても奇妙に思える生物と出会いました。

「友よ!」その生物の脇を飛びながらカラスは呼びました。「友よ、あなたは何だ?あなたのような飛ぶ獣を見たためしがない!」

「ネッチと呼ばれている」、善きネッチが答えました。

「ネッチ!ネッチ!ずいぶん素敵だね!」カラスはびしっと言いました。「教えてネッチ、あなたはどうして飛べるの?」

「生まれた時からこの地を飛んでいる」ネッチが答えました。「どうしてかは知らない」

「知らない、知らない、これは見物だ!」カラスが叫びました。「飛ぶために役立つ、つやつやの羽はどこにあるの?」

「飛ぶために羽は必要ない」ネッチが説明しました。「だが、身を守る丈夫で厚い皮がある」

「毛皮!毛皮!めっけ物」カラスがばかにしました。「教えてネッチ、あなたの目はどこにあるの?」

「空を飛ぶのに目は必要ない。私を見れば明らかだろう」もう一度ネッチは答えました。

「空を飛ぶのに目がない、目がない!」高慢なカラスは続けて言いました。「でも、目のないあなたは、私よりずっと不細工!」。そしてカラスはネッチの不幸を笑い始めました

カラスの笑い声はますます大きくなり、やがて近くのクリフ・レーサーの注意を引きました。獣はカラスめがけて急降下し、丸ごと飲み込みました。カラスはもうネッチをバカにすることができませんでした。

ネッチはただ溜息をつき、言いました。「他者を笑いものにしても意味はない。自らの弱みは誰にも変えられないのだから」

***

贈り物のグアル

ある日、農民が娘に贈り物をすると決めました。家庭を持つ娘の幸運を祈ったのです。極上のグアルを選び、娘の新居に連れていきました

娘は贈り物を見て喜びましたが、夫は睨みつけるだけでした

「選ばせてもくれないのか?」夫は怒って聞きました。「このグアルが病気にかかっていたり、老いていたり、弱っていたらどうする?少なくとも世話をさせられる前に、調べなければ!」

娘は夫をなだめようとしましたが、農民はただうなずき、言いました。「思うままにグアルを調べればいい」

夫は隅々までグアルを調べました。力強いあごまで開けさせて、歯の並びを見たのです。

「まあ、これで我慢するか」夫はしぶしぶ認めましたが、そのグアルは確かに上等なものだと分かっていました。

農民は夫の顎を殴りました。「ああ、お前の言うとおりだ。望みのグアルを選べてしかるべきだな。地元の市場でたくさん売っているぞ」

義理の父がグアルを連れて家に帰ろうとする間、夫はただぽかんと口を開けていました。

妻は夫の腕を叩いて言いました。「バカ!もらったグアルのあら探しをしないで!」

***

評議員の子供

ある夏の日、鮮やかな正装をした評議員がたくさんの召使いを連れて市場を歩いていました。あまりにも華麗な装いだったために、人込みの中の小さなエルフが母に言いました。「評議員が僕のお母さんだったらよかったのに、お母さんの代わりにね!」

小さなエルフは、まさか評議員に聞かれているとは思わず、評議員が雑踏にいるエルフの方を向くとも思っていませんでした。

「あなたの願いは聞きましたよ、坊や。いいでしょう」評議員は、口を開けた小さなエルフに言いました。「私の子になるあなたには、すべての願いを叶えてあげます」

小さなエルフはすぐさま評議員の邸宅へと連れていかれ、おもちゃとお菓子のある部屋に入れられました。エルフは笑い、手を叩き、望むままに遊んで、食べました。しかし、間もなくそれにも飽きて、召使いと話をしにいきました。

「一人で遊んでてもつまらない」エルフは召使いに言いました。「誰か一緒に遊んでくれない?」

「評議員の子供は最上の身分です」召使いが言いました。「あなたと遊ぶためにふさわしい者はいません」

学者が部屋に入ってきて、小さなエルフは召使いの言葉を考える時間がほとんどありませんでした。学者は軽蔑した目で小さなエルフを見て言いました。「数時間も授業の開始が遅れていますよ!評議員の子供は、大切なことをたくさん知っておかねばなりません」

小さなエルフは学者の授業を何時間も聞かされました。そうして、これから知ることを考えると、頭が痛くなりました。

やがて夕食の時間になりましたが、小さなエルフの苦労は終わっていませんでした。

「その服で?その身なりで?」召使いが恐怖に叫びました。「評議員の子供として出るのなら、体を洗い、服を着なければなりません!」。そして小さなエルフはごしごし乱暴に洗われ、とても着心地の悪い服を着させられました。

この時点で小さなエルフは泣きだしそうでした。家や服、友達のことを恋しく思いました。しかし一番恋しく思ったのは、一日たりとも離れなかった母親でした。

小さなエルフがようやくダイニングホールに送られてくると、驚きとともに迎えられました。ダイニングテーブルで座っていたのは家族でした。皆が笑い、笑顔を浮かべています。エルフは母の腕に飛び込み、叫びました。「ごめんなさい、ごめんなさい!やっぱりお母さんがいい!」

テーブルの上席に座っていた評議員は微笑み、小さな子供に言いました。「とても大切な教訓を学びましたね、坊や。欲しいもののことだけを考えていると、今あるものへの感謝を忘れがちになるのです」

神聖なアルマレクシアの夜の寓話Blessed Almalexia’s Fables for Evening

ソーサ・シルと星々

若きソーサ・シルは苔の絨毯に寝転がって星々を見上げました。数学に対する愛に導かれ、彼の心は数を数え始めました。「すべての星を数えて、それぞれに名前を与えてやろう!」と彼は決心しました。何時間もの間、ソーサ・シルは数え、名前を付け続けていましたが、そのうちに目が疲れてしまい、眠りに入りました。

朝が来ると、ソーサ・シルははっとして目を覚まし、空を見上げました。しかし悲しいことに、星々は消えていました。彼は両手に顔を埋め、泣き出してしまいました。彼は厳しい教訓を学んだのです。そう、時間はあらゆる課題を制限してしまいます。

***
最強のニックス・オックス

大きなニックス・オックスが群れに向かって大声で言いました。「俺くらい主人を愛している者はお前らの中にはいないぞ!俺がどんな重荷を背負っているかわかるか?」

「でも、あんたは俺たちより倍も体が大きいじゃないか!」と小さいニックス・オックスたちは文句を言いました。「サルトリスを4俵運ぶほうが、苦労して6俵運んで、ケガをするよりいいよ」

「何言ってんだ!」と強いニックス・オックスは鼻を鳴らしました。「お前らが怖いのはきつい労働だろう、ケガなんかじゃない」。この大きな獣はくびきを手に持って、ゆっくりと畑へ出ていきました。

小さいニックス・オックスたちが柵のそばに集まって見ていると、力強い兄弟はサルトリスを2俵、そして4俵、そして6俵、8俵、10俵も持ちあげたのです!そして最後に、大きなニックス・オックスは12俵を担いでいました。「わかったか?」と彼は言いました。息が苦しそうでした。「俺くらい主人を愛している者はいないんだ!」

すると、このニックス・オックスの甲殻には重みでヒビが入ってしまいました。彼は痛そうなうめき声をあげ、俵の上に倒れ込んで… 潰されて死んでしまいました。

小さなニックス・オックスたちはため息をついて、頭を横に振りました。「馬鹿なやつだ。定命の者の力には限りがあると知るのが遅すぎた」

***
凍えたグアルの物語

ひとりぼっちのグアルが冷たい、月のない夜にアッシュランドを通り抜けようと苦労していました。風は刺すように冷たく激しく、グアルを骨まで冷やしてしまいました。「ああ!」とグアルは叫びました。「私はここで死ぬのだ。ひとりぼっちで凍死するのだ」

すると、グアルは遠くにかすかなオレンジ色の光を認めました。「キャンプファイアだろうか?」とグアルは希望を込めて吠えました。「そうに違いない!違いない!」

グアルは光に向かって走りました。1歩進むごとに足が暖かくなりました。すぐに冷気はなくなり、蒸し暑さが取って代わりました。空気は重たくじりじりとして、グアルの鼻と肺を焦がし始めました。それでも、グアルは急ぎ続け、吠えました。「キャンプファイアに違いない!そうだ!間違いない!」

ついにグアルはオレンジ色の光にたどり着きました。しかしそれはキャンプファイアではなく、大きな溶岩の流れだったのです。グアルはあまりにも熱気に引き寄せられていたので、そのことに注意を払いませんでした。グアルは溶岩の縁まで全力で走り、脆くなっていた石につまずきました。最後に喜びの吠え声を挙げ、獣は頭から燃え盛る液体に突っ込み、死んでしまいました。

そうです。愚か者が安全を求めることは、それ自体危険なことなのです。

***
最も美しいネッチ

ネッチの母がある時、自分の子に向かって言いました。「あなたはこの島々で一番美しいネッチの子よ。どんなブルもあなたには釣り合わないわ!」

このネッチの虚栄心は年を経るごとに大きくなっていきました。多くの立派なブルたちが愛を求めて近づいてきたのに、彼女はこう言って退けてしまいました。「私がこの島々で一番美しいネッチだということを知らないの?あんたたちなんかじゃ、私と釣り合わないんだから!」

長い年月が経ち、このネッチは年を取って疲れ果ててしまいました。「ああ、私はひとりぼっちで死ぬんだわ!」と彼女は叫びました。

若いネッチのカップルが通り過ぎ、彼女の悲惨な状態を見てため息をつきました。「私たちの子供は注意して育てなきゃ」とベティが言いました。「子供を誉め言葉で甘やかしても、ろくなことにならないわ」

酔っ払いの格言Drunken Aphorisms

ミダール・ネルビロ 著

幼いアリットに一塊の肉を与えれば、一時間は満足させられる。幼いアリットに自分で肉を探す方法を教えれば、お前は一週間で死ぬ。

ダークエルフは噴火口に似ている。灰色で怒りっぽく、赤い泥でいっぱいだ。

ニックスハウンドに不恰好だと言うな。シロディール語を話さないから、お前の言うことが分からない。時間の無駄だ。

旅に値する唯一の道は、溶岩でできていない道だ。

テーブルを用意する時には、常に友人のグラスを出しておけ。もし友人が現れなければ、一気に二杯飲める。

富豪になるのは良いことだが、大富豪になることは更に良いことだ。

誰かを殺したければ、ダンマーのナイフを使え。バターを塗りたくても、ダンマーのナイフを使え。ダークエルフは見事なナイフを作る。

最も背の高いキノコより背の高いキノコはない。

俺がグアルだとして、誰かが乗ろうとしたら、振り落すだろう!その後、人間に戻してくれる魔女を探そうとする。

人生とはクリフ・レーサーのようなものだ。飛び去って行き、悪臭を放つ。

どうしてお前はそんなに飲むのかと聞かれたら、最近、妻を失ったと答えておけ。どうやってと聞かれたら、妻がワインボトルの中に転がり落ち、俺が探しているところだと答えろ。

二頭のグアルを一度に追うエルフは、極度に疲労する。恐らくグアルを飼わない方が良いだろう。

人生に酸っぱいイチジクを出された時は、とにかくすぐに食ってしまえ。それが人生の味だ。

グアルに踊りを教えることはできるが、間抜け面は変わらない。

賢いエルフは決してテルヴァンニの魔術師に背を向けない… その背後に、別のテルヴァンニの魔術師がいない限り。その場合は物事がおかしくなる。

トリビュナルの馬鹿さ加減を語るな。待て、俺の話を書き記してるのか?

カジートは最高の妻になる。たくさん飲み、たくさん寝て、あまり長く生きない。

片目のオークの忍耐力を試すな。結末は決まっている。

トリビュナルに雨を乞うと、洪水になる。便秘のダークエルフが祈らないのはそのためだ。

もしアルマレクシアに跳べと言われたら、跳べ。もしソーサ・シルに跳べと言われたら、跳ぶな。ソーサ・シルは誰にも指図をしない。もしヴィベクに跳べと言われたら、少し考えろ。多分彼は、3本足の馬か何かを塗ってほしいと思っているのだろう。

ブルである日もあれば、ベティである日もある。しかしいずれにせよ、お前が巨大な触手の怪物であることに変わりはない。

俺はマッドクラブが大好きだ。本当に美味いし、何を考えてるか言ってこない。

一人で飲むのは友人との飲みと変わらない。ただ人が少ないだけだ。

崇拝されし三十家の墳墓Ancestral Tombs of the Thirty Revered Families

– アンダス家の墳墓
– アラン家の墳墓
– アラーノ家の墳墓
– アレニム家の墳墓
– ファヴェル家の墳墓
– ジニス家の墳墓
– フレラン家の墳墓
– フラーヴュ家の墳墓
– イエネス家の墳墓
– ルレラン家の墳墓
– マレン家の墳墓
– ネラノ家の墳墓
– ノルヴァン家の墳墓
– オスレラス家の墳墓 X
– ラヴィロ家の墳墓
– レダス家の墳墓
– レレス家の墳墓
– レサンダス家の墳墓
– サドリオン家の墳墓
– サロサン家の墳墓
– サラノ家の墳墓
– セラン家の墳墓
– セラノ家の墳墓
– テルヴァイン家の墳墓
– サリス家の墳墓
– セラス家の墳墓
– ウヴェラン家の墳墓
– ヴェラス家の墳墓
– ヴェレルニム家の墳墓
– ヴェニム家の墳墓

墳墓から全ての拓本が集められた時、失われたアンドゥルの蔵書庫の居場所が明らかになるだろう。ヴィベクの蔵書庫へ戻ってくれば、発見の最終段階が始まる。

—司書ブレイディン

生き神への理解Understanding the Living Gods

親愛なる嵐の胸のヴィグリ従士へ

ノルド文化交流の栄誉あるリーダーである私、向こう見ずなリガートが、要請に応えてウィンドヘルムにいるあなたへの報告を書いています。指示された通り、モロウウィンドの小さなダークエルフの研究と、情報交換を続けます(あなたがなぜ到着したばかりのリガートを送り出したのか完全には理解できませんが、この任務は極めて重要なのでしょう)。ヴァーデンフェルに足を踏み入れた瞬間から、リガートはこの任務が楽しみになりました!同盟国と文化交流をして互いのことを学ぶのは、暑い日に冷えたハチミツ酒を飲むことに勝るかもしれません。かもです。今回はトリビュナル、いわゆるダークエルフの生き神について学ぶために来ました。リガートは驚嘆のあまり鳥肌が立っています!

さて、私たちの正しく適切なスカイリムの神、祈りには耳を傾けるがノルドの問題には干渉しない神と違い、ダークエルフの神は実際に人々に交ざって歩き回り、スカルド王がウィンドヘルム中を練り歩くかのように(悪意はありません、スカルド王!)支配しています。モロウウィンドの神王は様々な呼ばれ方をしているようですが、最も一般的な呼称は「王と母と魔術師」のようです。リガートはこのことを知っているダークエルフたちと会話をしようと何時間も費やしましたが、彼らの話は私の頭を混乱させるだけでした。トリビュナルの神々について分かったのは以下の通りです。あなたなら私よりも理解できるかもしれません。

三大神のうち最も人気があるのは、少なくともヴァーデンフェルにおいては戦詩人のヴィベクです。コーナークラブでは彼を称える歌が歌われ、屋上からは彼の勝利が叫ばれます。どこへ行っても、信者のいるおおよその方向に笑顔を向けただけで、彼の教訓や説話が書かれたパンフレットを押し付けられるのです!ヴィベク卿はモロウウィンドの主と呼ばれています。彼の詩を読もうとしましたが、目が痛くなっただけでした。偉大なフョッキのように面白くもなければみだらでもなく、ダークエルフの文化に浸り込んだ者でないと理解できない比喩ばかりです。実際のところ、ダークエルフに詳しい私でさえも、特に難解な概念が理解できませんでした。彼は信仰、家族、主人、そしてあらゆる良きことに対する務めを説いています。最近では念願のエボンハート・パクト成立につながった侵略を含め、少なくとも2度のアカヴィリの侵略を撃退することを手伝うなど、数々の場面で人々を救いました。彼はダークエルフが「善のデイドラ」と呼ぶ、デイドラのメファーラと何らかのつながりがあるそうです。しかし闇の顔もあります。肉欲的な考えや残忍な意図に異常なほど引きつけられているという話を聞いたのです。つまり、他の小さなダークエルフと大して変わらないようですね?彼はここ、都合よく彼自身と同じ名前を持つヴィベク・シティにある、壮大な宮殿に住んでいます。彼の側で数分過ごしましたが、その変わった外見を凝視せずにはいられませんでした。それから、部屋の中では浮かんでいることが多かったと思います。定命の者に劣等感を抱かせる策略としては、驚くほど効果的でした。とはいえ、あれほど印象深い重要人物と貴重な時間を過ごせたのは素晴らしい経験でした。

次に、モロウウィンドの母と呼ばれているアルマレクシアについて、できる限りのことを解明しようとしました。ただ、彼女は実はモーンホールドにある聖堂に住んでいるそうで、ダークエルフの治癒師と教師の守護者とは顔を合わせられませんでした。正直なところ、とても失望しました。女神である彼女は、ヘラジカの枝角のような存在だと聞いていたのですから!さらにダークエルフ文化の特長と決意を体現しているとも言われていて、それならば私の得意分野でした。ある司祭は、彼女は貧民と弱者を守り、その知恵で様々な状況においてダンマーを導いていると話していました。コーナークラブにいた酔っぱらいのダークエルフは、彼女は少し面白みに欠けると漏らしましたが、どういう意味か聞く間もなく、オーディネーターに引きずられていってしまいました。残念です。

3人いる神王の中で最も謎に包まれているのはソーサ・シルで、モロウウィンドの謎、そして不可思議なる魔術師としても知られています(司祭はそう呼んでいたと思います。メモをなくしたので、最後の箇所についてはハチミツ酒を飲みながら記憶を頼りに書いているのです)。噂話はたくさんありますが、私が探した限りでは誰もが、長い間ソーサ・シルを見ていません。聞き回って集めた内容から分かったのは、ソーサ・シルは発明家と魔術師の保護者であり、多くの者、特にダークエルフは、彼が地上で最も強力なマジカ使いだと考えています。ソーサ・シルが世界の内側の仕組みを研究するために作り上げた、クロックワークの歯車の街があるというすごい話まで聞きました。それもたかが小さなマンモスの大きさだと言うのです!最後の兎ミートボールを手放しても見たいものです!彼はさらに、多数のデイドラ公とある種の協定を結ぶことに貢献したとされていますが、その噂話は深追いしないことにしました。フョッキの言うとおり、凝視する愚か者はデイドラの目に留まるものです。リガートはそこまでバカなことをするほど愚かではありません!(ヴィグリ従士、今、あきれ顔をしましたか?したんでしょう)。

ダンマーの3人の生き神はトリビュナル聖堂に力を与え、全てのダークエルフの意思と規律を体現しています。まあ、ヴィベク、アルマレクシア、ソーサ・シルにひざまずくことを拒むアッシュランダーは例外ですが。家庭内の喧嘩の一種でしょうか。ここにいる間に、調べてみます。

ノルド文化交流特使、向こう見ずなリガート

誓いを立てし者:よそ者の勃興 第1巻Oath-Bound: An Outlander’s Rise Vol. 1

赤のハセイド 著

剣を最初に試した時のことは良く覚えている。8歳で、剣の扱いに慣れていなかった。暗く尖ったものを死にかけて倒れていたダークエルフの手から取った。彼は目を開けようとして、拳は固く握られていた。剣が手から離れた時、彼の口から聞こえた呪いは理解できなかった。自分の背と同じほど高く、持ち上げるのに苦労した。直前までそれを喉元に突き付けていた、奴隷商人との格闘よりも。

彼は抵抗されたことに驚いていた。奴隷商人は皆そうだ。我々3人は取るに足らない存在で、簡素な小船に乗っていた。ちょっとした船を奪った、武装した悪漢1ダースにとって簡単な獲物だった。もしくはそう考えられていた。父と母は職業柄戦士ではなかったが、先人の剣術を受け継いでいた。その伝統は誇りに思っていたが、そこまで子供の頃に受け継いではいなかった。その日まで、私は流木で両親とスパーリングを行った経験しかなかった。自分を試したかったのか、両親の命を心配したのかは分からないが、私は剣を手にした。持ち上げられないことは気にせず、無知による自身を胸に戦いへと飛び込んだ。波に浮かぶ流木のように、私は切り合いに飲み込まれた。誰にも気にされず、足元に転がって。

最初の血は、振るというよりよろめくような一撃で流した。醜いダークエルフの剣を近くの奴隷商人に突き刺したのだ。背中から真っ直ぐ突き刺し、背骨を流木のように引き裂いた。彼の身体からはすぐに力が抜け、小船の縁に転がったため、危うく船外に転落するところだった。剣が抜けた時は、時間が止まったように感じられた。剣は敵の血に濡れ、大蜘蛛の牙のように光っていた。暗い色の金属には血の赤が染みついていた。恐ろしい武器から目を離すと、甲板の反対側に母の視線を感じた。彼女の顔に浮かんだのは、誇りと後悔だった。できればその瞬間をずっと味わっていたかったが、犠牲者の死体が海に落ちた衝撃が私を空想から呼び起こしてくれた。自分の攻撃は、気付かれずにはすまなかったのだ。

自分は勇敢だと思っていたが、奇襲できない状態で悪しき奴隷商人の二人組と対面した時、私の決意は崩れた。箱の後ろに隠れて剣から離れ、ぎこちなく剣を振って彼らを面白がらせた。泣きわめく子牛のように両親を呼んだ。最大の後悔はその時恐怖に屈した子供だったことではなく、自分が戦士だと思った愚か者だったことだった。自分の軽率な行動の代償を払うのは、自分ではなかった。

母と父は見事に戦った。彼らは私のところにまでたどり着いたのだ。両親が傷と疲労に倒れるまで、船に乗り込んだ奴隷商人は半減していた。私を捕まえた相手はこの喪失が私から戦う力を奪ったと考えたようだった。怒りの涙を恐怖の涙と見間違えたのだ。私を苦しめた二人組の1人が足を掴もうとした時、私は予想外の力を見せて彼女の顔を真っ二つにした。不浄な怪物のように叫び声を挙げ、適当に振った剣と予測不能な怒りで、残った3人の奴隷商人を寄せ付けなかった。

レドラン家の兵士が我々を見つけたのはその時だった。彼らの巡回部隊が、私から平和と子供時代を奪った怪物たちを倒すために現れたのだ。怒りと疲労に我を忘れていた私には、灰に塗れた奴隷商人と救い主たちの違いが分からなかった。レドラン家の隊長は無謀な攻撃を篭手で簡単に受け止め、甲板に引き倒した。

「立て、坊や」。彼は同情も慈悲も見せずに吠えた。「もう一回やって見ろ」

走り書きされたメモScribbled Note

全部明かりをつけてみた。全部明かりを消してみた。他に何が残ってる?

マッドプリンスは、「数字?数字は怠け者が使うものだ。とにかく私に目をよこせ。もしくは道化師だ。目のない道化師でもいい。それで思い出した、道化師を全員殺すんだ。奴らの骨をよこせ」と言っている。

骨!骨、骨、骨。頭蓋骨も骨じゃないか?

「頭蓋骨の一家が”ごきげんいかが?”と尋ねる。
2は大声で”私達は1だ!”と言い、3は”私達は2だ!”と叫ぶ。
5が”3″をにらみつけている間、6は”4″を笑う。
それらを全部焼けば、マッドプリンスの扉は開かれん」

全部焼こうとしたんだ!自分を燃やそうとしたんだ!あれは痛い。二度とやるべきじゃない。だが私には頭蓋骨があるだろう?あと1回だけやってみよう。小さな焚き火を作れば、掛け金が「カチッ」と開くはずだ!今行きます、我が主よ!チーズの盛り合わせの席に、私の居場所を用意してください!

存在の拡張On Extending Existence

第七位の魔術師にして驚異の発明家、バリルザー 著

大いなる歯車はあらゆる存在に対して、我々の自然な時計仕掛けの機構が摩耗して力尽きるまでの、決まった回数の回転運動、決まった回数の針の動きを与えている。これは黄昏が夜明けに座を譲ることと同様に不可避だが、だからといって我々が受け入れねばならぬわけではない。それに私はまだ達成すべき多くの仕事を抱えている。一日の時間は十分ではない。生涯の時間となればなおさらだ!この状況は、私にはまったく受け入れがたい。

私の教育は古代の術から始まったが、ソーサ・シルの教えを受けるようになってから、私はより科学的で機械的な性質の探求へと向かうようになった。そうした技術をこの問題に適用してみたが、これまでのところコグや歯車、仕掛けなどは何の目立つ成果も挙げられないでいる。ガジェットや装置は驚くべきことをなしうるが、有意義な方法で寿命を延長する、適切かつ有効な機構は現在まで発見できていない。このために、私は自分のルーツであるアルケインに戻り、発明で失敗したことが魔法ならば達成できるかどうか、探求する必要がある。

より機械的な探究に集中していたとはいえ、私の魔法は衰えていない。確かに我が師がそうしたように、私は普段、自分が発明した機械の効力を向上させるために魔法を使っている。だが我が生の延長を可能にするためには、多様な魔法を使うことが必要だと思う。トリビュナル以外の者たち(私自身も含む)にも、社会の改良に貢献するため、一度以上の人生が必要な人々がいる。彼らだけが不死であるべき理由があるだろうか?

さて、「闇」と名づけられた魔法の術を見下す者もいるが、知識と技術は頭ごなしに否定されるべきではない。どんな道具にも使い道があり、どんな仕事にも道具が要る。謎の父がいつも言っていたとおりだ。だから次なる我が冒険は、暗黒の技を極め、自然な寿命を拡張する秘密を発見することになるだろう。もし歯車が正しく合えば、真の不死への道を発見することさえできるかもしれない。

さて、砂時計と、助手にファレドラン家の墳墓から持ってこさせた遺物はどこにやったかな?

堕ちた捜査官の日記Journal of a Fallen Officer

元捜査官、ファルラ・ウヴェレス 著

うまくいった

厳しい選択をした後や、大変な任務を終えた後は、自分にこう言い聞かせた。教科書通りにはいかなかったかも知れないけれど、行った試しなんかなかった。初めはささいなことだった。週末には忘れていそうなことだった。巧妙な賄賂、上司の知る由もない約束。私は堕ち続けていた。毎夜この文句を自分に言い聞かせるまでは。うまくいったのよ。

実際、私の任務に誰が口を挟めるというのだろう?レドラン家の麻薬宣誓局は、ヴァーデンフェルの善き側で有数の組織だった。これ以上に高潔なところはなかった。私たちはヴァーデンフェルを浄化していた。次々に逮捕した。潜入任務をこなしていた者は、危険なことを承知していた。上司の気に入る結果を出せば、口を挟まれることが少なくなると知っていた。それが最初の過ちだったのかも知れない。誰にも見られていないと思っていた。

私の潜入していたスクゥーママフィアは最重要案件だった。スクゥーマは幻覚を引き起こす厄介な薬だ。中毒性があり、きわめて有害で、安価。その薬は見事に三点が揃っていた。ヴァーデンフェルの地でムーンシュガーの栽培と販売が禁じられているには、妥当な理由がある。危険な案件のため、最も優秀な捜査官が派遣された。当時、たまたまそれは私だった。

捜査官がスクゥーママフィアに潜入する際には、期待と現実が乖離している。避けられない習慣もある。賄賂は日常のことで、恐喝も同じことだ。任務を受ける際に拷問のことを語る者はいないが、拷問は行われている。簡単な事務作業を行えば、殺害も認められる。売人のことを嘆く人なんていないでしょう?こういうことには、すべて慣れるようになる。問題は、やがて身を蝕まれることだ。

当然、薬を使わない者や、時々しか使わない者を仲間に加えるスクゥーママフィアはごくわずかだ。パイプを勧められて、断ること以上に危険なことはない。私の職務に至っては、ほんの些細な疑いも暗い路地で人知れず殺されることに繋がりかねない。

その案件自体は問題なく進んだ。いつものように潜入を行い、幹部の信頼を得た。ボスの素性を掴み、麻薬の流入経路も判明した。3ヶ月も経たないうちに事件は解決した。他の捜査官よりも早く解決してみせた。ただ、十分早くはなかった。

告白すると、私は中毒に陥っていた。引っかけないかゆみ、頭からどうしても離れない思考。禁断症状を和らげると考えた私は、飲酒を始めた。しかし、酒は自分の決意を無にするだけで、気が付くと私は売人を探していた。任務とはまったく異なる目的で。

しばらくは平気だった。使用量を抑え、常用癖を周りに悟られないようにした。それもすべてが瓦解した。別の捜査官に連行されてきた売人が、喜々として口を割った瞬間に。驚くことではない。中毒になっても頭の回転は良くならないということか。

階級を剥奪されたものの、服役させられなかったのは幸運だと言われた。けれど私は、口を閉ざして侮辱に耐え、不名誉に甘んずることはなかった。頭を使えない自分に価値はない。自らの行いを正し、身を清めた私には、新たな任務がある。これが最後の務めだとしても。手段を選ばず、名誉を取り戻す。

待機の扉The Waiting Door

カノン・ニレノ・ニルスの覚え書きより

子供の頃、私は何としても待機の扉には近寄らないようにしていた。金持ちとは言えない家だったので、家族の祠は本当にただの小さな棚だった。母が月耀の夕方になるたび、歌いながら祠を磨いていたのを覚えている。だが歌や楽しい交流にもかかわらず、あの空間には何か、私をぞっとさせるものがあった。ロウソクの明かりで暗い地下室へ降りていくような、あるいは悪夢から突然目覚めるような感触が。

両親は待機の扉の敷居に大量の遺物を保管していたが、一番よく覚えているのは、よく磨かれたルアーだ。祖父は釣り人だった。職業ではなく、趣味としてだ。彼は夜が明けるずっと前に目を覚まし、ハイラン湖の中央部へと漕ぎ出したものだ。一日の仕事を始める前に、ベラを数匹釣ろうと意気込んでいた。

降霜の月上旬のあるさわやかな朝、私はパイプの煙の匂いで熟睡から目を覚ました。父が水たばこの火を消し忘れたのではないかと思って、私は起き出して居間へ向かい、火を見つけてもみ消そうとした。大いに驚いたことに、サイドテーブルの上に置かれたパイプは、川の石のように冷たかった。それでも芳香が残っていたのだ。私は匂いを追って隅を探しまわり、広間へ降りて、ついに待機の扉にたどり着いた。いつも感じていた恐怖が、喉元にまで駆け上がってきた。だがそこに祖父のルアーを見つけたことで、私は深く安堵した。できる限り忍び足で棚のところまで行き、ルアーを手に取った。それはもちろん完全なタブーだったが、子供心にこれが正しいことだとわかっていた。

寝巻を着替えることなく、私は裏口の扉からこっそりと出て、叔父のボートに飛び乗った。私は船を漕いで祖父のお気に入りだった場所へ行き、ルアーに糸を結びつけて湖に放った。水が磨かれた鏡のようだったこと、映りこんだ月が穏やかに水の上を滑っていたため、波が一つ立っただけでも冒涜のように感じたことを覚えている。

1時間の沈黙の後、獲物がかかった。巨大なやつだ。乗り出した私の両腕は永遠とも思える間、魚に引っ張られ続けた。最後には、魚を釣り上げた。祖父が昔釣っていた、大きなファイアベラだった。船を漕いで家に帰る間、私の胸は誇らしさにふくらんでいた。この頃には太陽が昇り始め、コヒョウグアルたちが小屋を揺らしていた。私は魚を皮はぎ台の上に置き、手柄話をするために両親の部屋へ向かい始めた。だが最後の瞬間になって、私は躊躇した。肩越しに振りかえって待機の扉と、祖父のルアーが供えられていた何もない部分を見た。私はルアーをポケットから出し、口づけをしてから、元どおり棚に戻した。

その瞬間、私は祖父の顔を見た。そして先人たちの顔も。その時以来、私はもう恐れなくなった。

痛みを和らげる紅茶とハーブティーTeas and Tisanes for Aches and Pains

アルマの骨修復ブレンド

この爽やかなペコ茶の起源は、第二紀初頭のはるか以前まで遡ります。おそらく材料が希少であるという理由で、世にはほとんど知られていない処方です。かつては豊富だったツムジャ草は、ゾウムシの餌食となってしまいました。その希少性にもかからわず、ツムジャ草はエルスウェアのトパル海岸沿いで専門業者より購入が可能です。地元の材料が混ざったこの芳醇ブレンドは、痛みを大きく軽減させ、骨の損傷期間を短縮させます。

材料:
ろ過水 6カップ
骨の粉 大さじ5杯
炎の塩鉱石 1つまみ
粒状ムーンシュガー 半カップ
細かく刻んだ刈り込みコルクバルブ 2束
柳の葯の蒸留液 2カップ
ツムジャペコの匂い麻袋 6袋

解説:
完全に洗浄した鉢に水を注ぐ。コルクバルブと炎の塩鉱石を加える。水を沸騰させたら、火から外す。ツムジャの匂い袋をお湯に加え、7分間浸す。匂い袋を出して、細かく刻んだコルクバルブを濾す。

別の鉢で柳の葯の蒸留液と骨の粉をなめらかになるまで混ぜる。骨の粉の溶液とムーンシュガーを熱いままの茶に加え、骨の粉の溶液とムーンシュガーが完全に溶けるまでかき混ぜる。最良の効果を得るには、温かい状態で飲むこと。

薬味入りカワハギ煮

私の独自レシピによる辛めのブレンド。この茶はイボ、ニキビ、体の病変、発疹、虫刺され、火傷など、あらゆる種類の皮膚病を治します。一部の材料は収集に若干の危険が伴うため、経験の少ない錬金術師は避けるべきでしょう。信頼できる業者を探すか、熟練の冒険家に協力を仰いで下さい。

材料:
神聖水 8カップ
炎の塩鉱石 スプーン2杯
完全に絞ったデイドラの心臓 1つ
スクリブのゼリー 2カップ
すりおろしたグアルの皮 2カップ
ロルムの砕き黒ペコの麻袋 6袋

解説:
水をガラス鉢に注ぎ、沸騰させる。炎の塩鉱石を加える。

大きなすり鉢で同じ割合のスクリブのゼリーとグアルの皮を混ぜ合わせる。注意:同じ割合を測る際、細心の注意を払うこと。いずれの材料の過多も、激しい燃焼につながる。その上でデイドラの心臓を絞り、肉は適切に付呪を施した容器に捨てる。

ロルムの袋をお湯に加え、ちょうど8分浸す。デイドラのジェリーペーストを素早く茶に入れて混ぜ、1時間馴染ませる。最良の結果を得るには、再加熱すること。

典礼衣装の案内A Guide to Liturgical Vestments

ハイオーディネーター、ヴェルメシス 著

オーディネーターの全行動は、トリビュナルの神性を表わさねばなりません。あらゆる思考、言葉、振舞い、どのような些細なことでも、三大神に栄光を与えなくてはなりません。外見も同じく、アルムシヴィに名誉をもたらさなくてはなりません。この案内を見れば、典礼衣装について分かるでしょう。

装着の前に、オーディネーターはレッドマウンテンの聖なる温泉のミネラルウォーターと火山の軽石を使い、十分に身体を洗わなくてはなりません。この所作には深淵な精神的意義があります。身体を洗う際、オーディネーターは魂も洗うのです。トリビュナルの法を無慈悲に適用する際に妨げとなるかもしれない、残った罪と消えない疑念を取り除きましょう。

洗い終わったら、適切に装着を始められます。

オーディネーターは藍に染められ、真鍮のピンで留められた小さな三角形の亜麻布、ラシスから装着を始めます。ラシスは黄金の「アンダーベルト」、アーニスでさらに固定され、真鍮のピンを用いて留められます。アルムシヴィの娘は、胸を支えるために仕立てられた2つ目の衣服、アルラシスの着用も許されています。

ラシスとアルラシスを固定したら、オーディネーターは「2番目の衣服」ルラナノールに移れます。この長いシャツは、日の出前に聖なるミネラルウォーターで洗い、熱い石で3回プレスしなければなりません。ルラナノールを着用する際、オーディネーターは三大美徳の連祷も暗唱しなければなりません。オーディネーターがシャツを完全に着る前に連祷を終わらせてしまったら、装着の次の段階へ進む前に、もう2回連祷を繰り返さなくてはなりません。

オーディネーターのパンツ、すなわちフェラサニは装着前に洗い、3回プレスしなければなりません。オーディネーターは左足からこのスラックスを着るべきであり、ノサと呼ばれる青いロープのようなベルトで締めなくてはなりません。上靴も同じように左足から履き、黄金のリボンで縛られなければならないのです。

最後に、オーディネーターは深紅色の羊毛のストール、すなわちデュレソを首と肩回りに3回巻き、三角形の黄金の聖骨箱の留め具、ネレヴィソで留めなくてはなりません。これにて最初の装着、ルラナスロラニは終わり、オーディネーターは鎧を着用する用意が整います。

聖なる鎧を着る前にオーディネーターは祈りの第四十六賛歌を暗唱し、加護を受けるためにダンマー社会の戦士と守り手の守護者、聖ネレヴァル隊長に懇願しなければなりません。ネレヴァルの祝福を受けた後、オーディネーターは鎧の検査を始めます。

三位一体の信仰の鎧に刻み目、凹み、染み、錆び、その他の美的な不完全さがあってはなりません。小さな欠点でさえ、聖なるアルムシヴィへの侮辱となります。不完全な鎧をまとう姿を見られたオーディネーターには、厳しい処罰が下されるでしょう。

磨きは完全に均一にされること、ただし派手ではいけません。キチンの肌着は油を塗った布でこすり、経年劣化と損傷を防ぐために収縮させなければなりません。さらにオーディネーターは全ての関節部に油を差し、全ての革に固くブラシをかけ、クワマーワックスの鎧用仕上げのりをたっぷりと使うこと。この時点でオーディネーターは、鎧合わせの準備の合図を、見習いに送るべきです。

見習いはサバトンとグリーヴから始める(左から始める)一方、巡礼の擁護者である、聖リルムズへの祈りを暗唱します。この短い祈祷が終わり次第、見習いは腿当てに進み、労働者の擁護者である、聖メリスへの別の祈りを暗唱します。この時点で、オーディネーターはブレストプレートを聖なるミネラルオイルで清め、見習いに手渡す前に、祝福を受けし聖ネレヴァルへの別の祈りを暗唱します。胸当てを締めた後、見習いは肩当てと肘当てに移り、悔悟者聖アラロロールへの別の祈祷を暗唱します。ポールドロンを締めて結んだ後、見習いはオーディネーターに手袋をはめること。左の篭手から始めて、その最中は賢者聖デリンへの祈りを暗唱します。最後に見習いは青い祈祷者のストール、すなわちレセレスを戦士の肩に掛け、勇敢な聖フェルムスへの最後の祈りを暗唱します。これが完了したら、助手は装着後の祈りのため、教会へ赴くことを許されます。

最後の鎧の準備はオーディネーター自身に任されます。左手を使い、オーディネーターはビターグリーンのガラス留めを右のポールドロンの下に押し込みます。右手を使い、オーディネーターはトリビュナルの印を胸になぞります。3回歯ぎしりをして、シーッと言い、三位一体の各点でトリビュナルの憤怒を召喚すること。これにより信仰の火口に火が灯され、オーディネーターは忠誠の黄金の仮面をミネラルオイルで清め、自身を清めるように額を兜に押し当て、その後、兜を装着します。これでオーディネーターはいかなる武器も、それが完全に浄められ、使用前に3回祝福されている限り、装着できるようになりました。

この時点でオーディネーターのあらゆる行動は神の命で守られています。仮面を被る限り、オーディネーターは三大神の完璧な手とみなされ、真の信仰を守るのに必要だと思われる戦いの行為は、すべて承認されます。アルマレクシアの守り手や騎士団の他の専門家は、追って装着する衣装があるかもしれません。しかしこのように装着した三大神のしもべは、完全なるオーディネーターとみなされます。

この案内を取っておき、常に熱心な祈りを捧げなさい。さすればあなたはアルムシヴィに、栄光のみをもたらすでしょう。

三大神に勝利を

転生者アドゥリの巻物Incarnate Aduri’s Scroll

私の台頭と没落はどちらも、愚かしい戦争を好んだことによるものであり、それが私を破滅させました。ネレヴァリンとなる資格を持つはずはなかったのです。

預言を実現するため、私は血と戦争の道を進みました。しかし結局何の成果ももたらさず、高みから突き落とされてしまった。戦争は何も解決しません。

転生者ダナートの巻物Incarnate Danaat’s Scroll

我が悲しき物語が教えるのは、賢明な助言を拒否する者が、決してネレヴァリンにはなれぬということだ。

ネレヴァリンには主張するだけでなく、聞くことも必要だ。私は賢明な助言を受け入れることを拒否し、我が部族の破滅、ネレヴァルの霊魂を蘇らせる道の終わりへとつながった。

私には誰よりも知識があると思ったが、何も知らなかった。それはネレヴァリンの道ではない。

転生者ランソの巻物Incarnate Ranso’s Scroll

我が物語は、制御されぬ力の嘘の話だ。

私は自分がネレヴァルの生まれ変わりだと思った。ヴァーデンフェルで最も力のある、最強の戦士だったからだ。だが力だけで、我が民を救うことなどできぬ。結局は、自身さえも救えなかった。

戦士として、アシュカーンとして、私は同じ世代で最も強大だった。だが我が力のため、私は民の期待を裏切った。私はネレヴァリンではなかった。

発見への「招待」An “Invitation” to Discovery

奴隷たちよ、ごきげんよう!

視野の狭いテルヴァンニの仲間とは違い、私は強制労働の真の価値を理解している。心配はいらない。私は諸君に洞窟の床の卵を掃除するような、そこらの作業員がやるようなことをやらせはしない。それは他の、より才能の劣る作業員に任せればいい!いいや、枷をはめられた友よ。基本的な理性と、話す木への興味をわずかにでも示したことで、諸君は魔法実践の栄光ある未来において、テルヴァンニを手助けする権利を獲得した!自らを探検家と心得るがいい。秘密の新発見の最先端をゆく探検家だ!この活動は信じがたいほど危険だということは言っておかなければならないが、奴隷ゆえに諸君の異議が何の意味も持たないという事実に慰めを見出すがいい。選択の重圧は取り除かれたのだ。おめでとう!

我らが最初の実験は、高度に腐食性の菌を皮膚に塗ることだ。心配はいらない。そこらの無教養な魔術師がするように、鱗へたっぷりと塗りつけるような真似はしない。我々は菌を強力な安定剤と混ぜ合わせることで、使用者のスタミナを大きく増大させると共に、熱への耐性を向上させる可能性を実現した!確率的には(ごくわずかだが)、少量用いただけでも肺が自然発火することがありうるが、私としては諸君の奇妙な爬虫類の生態が、影響に耐えてくれることを期待している(諸君に肺があるというのは推測だ。次に機会があったら、アルゴニアンの胸部の穴の徹底的研究をすることを忘れないようにしなくては)。志願者は鞭打ちの回数減少と、監督官が諸君に食わせている何だか知らない灰色のスライムの追加によって、たっぷりと報われるだろう。

諸君の一部は運が良ければ見られるかもしれない未来のために、乾杯!

心を込めて
テルヴァンニの誓約者バイラー・サレン

評議会の招集Council Meeting Summons

レドラン評議会員へ

次回の評議会は、バルモラのすぐ外に位置するランドン領事館で開かれる。議題には各領地情勢、財政の最新情報、名家の取引関係、未解決問題の提示、今後追加する議題の提案が含まれる。

提出と再検討のため、関連する記録はすべて持参すること。

メリアス上級評議員

碧水晶の価値The Worth of Glass

ラレス・ヘラドレン 著

今日は他のオークよりもずっと会話しやすいオークに会った。オークの美点を言うとするなら(あまりないが)、人付き合いを好まないことだ。彼らは自分の居場所を知り、身内の外にいる者はダークエルフと同じように疑う。悪くない。それが生き残る方法だ。

私は常に他の種族よりも優秀だと気づいているが、会話では上に立たない。旅行者の仲間と再び会うことがあったとすると、その方がずっと好印象を持たれやすい。我が仲間のダークエルフの多くは、笑顔の見せ時を知っていればずっとうまくやれる。特に乳離れしない赤ん坊のように、街にしがみつく同胞は。

この特筆すべきオークは、私の隣に座った時にモルブロググと自己紹介した。その夜のコーナークラブはいつになく混んでいて、私はいつもの一人用テーブルを維持できなかった。それでも私は微笑んだ。どこかよそで食事を取りたいという衝動と戦い、彼の体臭に対して息を止めた。行き先を尋ねさえした。

彼は行き先が決まっておらず、ただ安定した賃金を求めているとあっさり認めた。その技はオークによくあることだが、力に限られていた。私は鉱山労働か石切り場の仕事を勧めた。彼の種族がしばしば優秀なことに気づいていた。彼は私の提案を受け入れることを躊躇し、代わりに戦士としての腕があるようだと語った。私はうなずきその点を認めたが、ヴァーデンフェルにいる間に傭兵の仕事が見つかる可能性は低く、結局肉体労働をするだろうと言うこともわかっていた。

この時、モルブロググは私の鎧を指差した。私は会話をしながら、彼が熱心に見ていることには気づいていた。彼の目はほとんどギラギラしていた。そう。私は自分の鎧を適切に手入れしていることに誇りを持っているが、彼はこんな状態のものを一度も見たことがないのだろうと思っていた。思った通り、彼はまもなく鎧の素材を尋ねてきた。私はため息を引っ込めて話してやった。

「碧水晶?」彼は鼻を抑えながら尋ね、頭を掻いた。「何だって、窓に使うような奴か?」

また無知な庶民だ。「いや、まったく同じではない」私は無理にニヤリとして言った。「ほら、これはマラカイト製で、見た目はクリスタルだ。かなり硬いが、簡単に動けるよう軽くできている。金属だがよく碧水晶とも呼ばれる。鉱山で収穫されるのでね。よそ者には、いつもちょっとした混乱が生じる」

モルブロググは驚いて目を回すと、革の胸当てを叩いた。「我々オークは革と金属の本当の価値を知っている!いつかお前の素敵な碧水晶を譲ってくれ。きっとその鎧は斧の一撃で粉々になるだろう。どうやら、一度も本物の戦士と対峙したことがないようだ」

さて、私は誇りを持つことは認めているが、誇りが侮辱になると…

私はただ眉を上げた。「賭けるかね?それなら応じよう。負けたらこの鎧を差し上げるよ。少なくともかなりの利益になるはずだ。もし決闘で私を負かしたらね。そして、もし私が勝ったらその革の鎧をもらおう。お互い公平にいこうじゃないか」

彼はワインの染みのついた顎を撫でてうなずいた。「決まりだ。新しい武器を買う金が入る」

決闘で思い出したい唯一の詳細な部分は、簡単で楽だったことだ。少なくとも私の方は。全てが終わった時、聖なる言葉を引っ込めてくれとすすり泣くオークがいた。防具なしでは、傭兵の仕事が絶対に見つからないと懇願していた。

私は革の防具をかき集めながら、ただ肩をすくめただけだった。「いつだって石切場がある」

そう、旅の間に友人を作るのはいいことだ。だが、利益を上げるほうがずっといい。

名誉ある処刑令状Honorable Writs of Execution

エリス・レドラン評議員殿

モラグ・トングとして知られる古代の暗殺者ギルドに関連する最近の出来事に伴い、要請どおりこの手引きを用意しました。名家を狙う現在の活動に対し、情報に基づいて対応方法を決断するために、ギルドとメンバーについて分かっていることを全て知りたいと伺っています。ギルドはダンマーの生活における闇の部分を象徴するもので、メファーラの名の下に殺人を称賛しています。驚くことに、この集団は暴力を抑制し、モロウウィンドにおいて争いの絶えない名家の政争が、全面的な戦争に発展することを防止するために結成されました。そのような戦争はまだ起きていないため、モラグ・トングはこれまでのところ試みに成功していると言えるでしょう。

モロウウィンドの行政はモラグ・トングに対してかなり昔、第一紀に制裁を加えましたが、彼らは「名誉ある処刑令状」として知られる契約システムを利用して、これまでも暗黙裡に合法的な暗殺を続けています。定められている法の下において、いかなるモラグ・トングのメンバーも、標的および容認された殺人の目的が説明された令状がなくては処刑を行えません。モラグ・トングは名家の対立において中立の立場を貫き、大切にしている古代の組織の重みを背負って振る舞っています。メンバーは自らの判断で行動することなく、自ら選んだ任務を行なうこともできません。その代わり、ギルドのグランドマスターに宛てて処刑の請願が送られて検討されます。もし請願が受け入れられれば、名誉ある処刑令状が準備され、モラグ・トングのメンバーに与えられます。そうなると、契約の標的はまだ知らないだけで死んだも同然です。間もなく暗殺者が接触し、死刑を遂行するのです。

他の殺人者や、ましてや闇の一党に属する狂信者などとは異なり、モラグ・トングの暗殺者は殺しを行なった後に行いを認め、名誉ある処刑令状を誇らしげに誇示します。令状によってトングのメンバーは、契約を実施する際に起きる可能性がある、いかなる法的な問題からも免責されます。そのため、法律によってトングの処刑者は名乗り出て、その殺人が合法的に、契約通りに行なわれたことを宣言する必要があります。それによってそのメンバーは免責され、関連して予期されない結果が起きることを防ぐようになっています。トングは犯罪者に隠れ場所を提供しないとしており、そのため従わないメンバーがいれば調査を受け、内部で処罰を受けます。

モラグ・トングの起源については、伝説と推測のベールに包まれたままです。確実に突き止められたのは、このグループがモロウウィンド初期、名家が流血の対立をしていた時期に現れ、第一紀の終わりまでに令状システムを確立して有名になったことです。250年頃前に全盛期を迎え、タムリエル中で公に活動し、無類の、分別がある、誉れ高い殺人者としての評判を獲得しました。グループは自信過剰になり、自らの立場を信じすぎるようになりました。皇帝や王の有名な暗殺が多数行なわれてタムリエルの貴族を恐れさせた後、トングはモロウウィンドにある自らの地へと退き、1世紀以上にわたって公の場から姿を消していました。現在、グループはダークエルフの地における目立たぬ存在であり、名家の間で名誉と評判を回復することを目指して、限定された仕事をしています。

モラグ・トングの組織は長年の間、あまり変わっていません。グランドマスターがギルドを率いて、各ギルドホールのマスターに令状の受託と仕事の割り当てをする権力を与えています。注意すべきなのは、個々のメンバーが許可なく契約を受けられないことです。長年を通じて、ギルドのマスターは契約の受託を決定する際に相応の注意を払うことが分かっています。レドラン家とモラグ・トングとの対立が悪化した場合に対処できる方策としては、欺き、殺人、偽りのデイドラ公であるメファーラと当該グループの友好関係が利用できます。組織は正式なもので、その異端的なやり方はトリビュナルからほぼ許容されていますが、オーディネーターとボイアント・アーミガーは、殺人を見つけた場合異端者に素早く、かつ容赦なく対処するでしょう。それについては決断に委ねます。

レドラン家、記録長エナル・ドレン

勇敢なる小さなスクリブの歌Brave Little Scrib Song

(ダークエルフの童謡)

誰もが知ってるクワマーがいる
ダンマーのように、とても勇敢
ホタルの光で見つけられる
小さなスクリブ、とても不思議

遊べ、遊べ!人生は冒険だ!
走れ、走れ!とても速く!
歌え、歌え!楽しく想像だ!
気にしなければ… とても楽しい!

意地悪なホタル爺さん、ごまかしばかり
声が炎のように音を立てる
彼の言うことは矛盾ばかり
小さなスクリブは厄介に巻き込まれる

遊べ、遊べ!人生は冒険だ!
走れ、走れ!とても速く!
歌え、歌え!楽しく想像だ!
気にしなければ… とても楽しい!

勇敢なる小さなスクリブの心はとても綺麗
いつも探してるのは冒険
彼女は「多分、明日なら」と言い
彼は「わかった
でもあの宝は手に入らないだろう」と言う

遊べ、遊べ!人生は冒険だ!
走れ、走れ!とても速く!
歌え、歌え!楽しく想像だ!
気にしなければ… とても楽しい!

卵鉱山へようこそ!Egg Mines and You!

クワマー取り扱い専門家、カイリア・サンド 著

クワマーの素晴らしい世界へようこそ!この愛らしい生物は大きさ、役割、気性が多様で、それぞれが世代を進めるごとに美しくなります。我々の目的はもちろんヴァーデンフェルのあらゆるクワマーの幸福ですが、多くの人はこの壮麗な生物を収入源としかみなしていません。ですが忘れないでください。幸福な鉱山は生産力の高い鉱山なのです!クワマーに敬意を払い、尊厳をもって取り扱うべきです。

クワマーは卵鉱山との関係で一番よく知られています。もちろんクィーンがなければ卵はありません。クワマー・クィーンは美しい存在で、他のどのクワマーよりもずっと大型です。私たちにとって良いことです。彼女がすべての美味しい卵を産出する唯一の存在で、その美味しい卵はディナーの皿に乗るのですから!悩みを抱えるクィーンは悲しい光景であるだけでなく、卵の生産性を急降下させる原因になります。あなたのクィーンを健やかに保ち、よく餌をやり、1日の終わりにはお腹も満たしてあげてください!

もちろんクィーンの世話をするのはあなただけではありません。クィーンには配下にフォリージャー、ウォリアー、ワーカーがいます。これらのクワマーには各々コロニーにおいて果たす重要な役割があり、クィーンが十分に食事し、守られるように尽くします。幸福なクィーンをお望みなら、幸福なコロニーが必要です。逆もまた真なりです!悩みを抱えるクィーンは常にいらいらしたコロニーを率います。それは生産性を低下させます。

クワマー・フォリージャーはコロニーの斥候の役目を果たし、常に新しい家や適当な獲物を探しています。野生の状態で出会ったら、この愛らしい生物をペットにしたい衝動は抑えた方が賢明です。かなり攻撃的かもしれないからです。もしも見知らぬ人が近づいてきてあなたの頭をぽんぽんと叩いたら、あなたもきっと立腹しますよね。距離をしっかり保てば、この小さな生物があなたを傷つけることはありません。

クワマーは傷つきやすくできていますが、力強い戦士でもあります。愛らしいクィーンほど大きくはありませんが、一般的なダークエルフよりも背が高いことがしばしばあります。出会ったとしても、あまり恐れることはありません。急いで鉱山から逃げれば、大抵は無傷で出られます。ワーカーはクワマー・ウォリアーの怒りから身を守るために、特別な匂いを放出していることがしばしばあります。自分で適切な匂いを入手したい場合は、必ず知識が豊富な錬金術師と話してください。

最後になりますが、これも重要です。クワマー・ワーカーは本当に忙しく働いています!このせわしなく働くクワマー・ワーカーがいなければ、コロニーは存在していません。クワマー・ワーカーはトンネルを掘り、クィーンの世話をして、貴重な卵が収穫の時を迎えるまで監視します。たいてい攻撃的ではありませんが、仕事をしようとしている時には邪魔しないのが賢明です。角の向こうに、クワマー・ウォリアーが潜んでいないとも限りませんからね。

ここでは甲殻の小さな友人を理解するための基本情報を提供しています!この巻の先の章では、育てる方法や栄養ガイド、採掘の実践などについて解説しています!私と一緒に旅をして、一緒にあらゆる種類のクワマーを保護しましょう。

良い旅を!Good Travels!

親愛なる私の友へ

ヴァーデンフェルに行くという話を聞いた時は驚きました。あなたには未知の冒険が似合っているし、あなたが故郷に飽きてきていたことにも気づいていました。

あなたが何を求めているのかは私には分かりません、ただダークエルフの島について私の知っていることを教えておこうと思います。中心となる街はヴィベク・シティです。神々に対するあなたの考え方は知りません。ただトリビュナルの1柱、つまりダークエルフの生き神の1人は、その街に住んでいます。ヴィベク卿その人が、そこにある大宮殿に住んでいるようです。

私の旅の経験が特殊なものでなければ、セイダ・ニーンに上陸するはずです。とても素晴らしい場所ですが、密売人や奴隷に出くわすと、不快な気持ちになるかもしれません。

それから、テルヴァンニの塔はお見逃しなく。彼らはこともあろうに、巨大なキノコを塔として活用しているんです!

とにかく、ダークエルフの地をお楽しみください。あなたが無事にタムリエルへ戻ってきた時、また会いましょう!

良い旅を!

連続した真実 第1巻The Truth in Sequence: Volume 1

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

我々はいかにクロックワーク神と謎の父を知ることになったのか?我らがヴィベク卿と慈悲の女神アルマレクシアは知られている。彼らの顔は知られている。言葉も知られている。だが、ソーサ・シルのそれは?彼は場所と意志の両面が隔たっている。常に警戒しているが、ほとんど見られることはない。常に崇拝されているが、ほとんど聞かれることはない。彼は「巻かれ続けるメインスプリング」なのだ。不動の動かす者であり、聖なるメトロノームを声とするクロックワーク・シティに隠れている。トゥールビヨンとして、私の知る彼の真実を話そう。人々に知られるよう、順番に言葉を紡ぐ。その順番はまさに真実を反映しているが、我々のような知性は秩序ある不順に耐えられない。我々のような知性で完全に知ることはできない。今はまだ。

「巻かれ続けるメインスプリング」の最初の真実は、ニルンの真実である。ニルンの魂には2つの顔がある。1つ目の顔は知られている。前のニルン、または多部品のニルンである。それは粉々になったニルンであり、自身をまだ見つけられない不安定な手により組み立てられる。その振動は不規則であり、その走り行く一行は恐怖と妄想によって妨げられる。その欠陥はニルンを構成するものにはないが、組み合わせたものにはある。それぞれの歯車が神である。それぞれのスプリングが思考である。しかし多くの手により作られた機構は、名工の精度を知ることができない。エトアダの歯車は真のニルンを明かせない。なぜなら歯車はそれぞれの部品しか知らないからだ。全体を見ることはできない。ソーサ・シルの目はそのような分断を無視できる。破片である神は破片のみを見るが、主ソーサ・シルは全体を見る。彼は2つ目のニルンを見るのだ。

2つ目のニルン。不完全な後のニルンである。来る世界、最後のタムリエル、アヌヴァナシを予期する思考型だ。その形を知るのはソーサ・シルのみ。その性質は、アヌが知恵を求め、時の始まりを破った以前に忘れられている。我々の下等種は起源を2つの形、アヌとパドメイとして認識しているが、この二元論に利点はない。統一されたアヌの真実を隠すための、ロルカーンの大いなる嘘の一つである。主ソーサ・シルであれば、我々に真実を教えただろう。パドメイは存在しない。パドメイは価値の欠如である。欠けている。明け方に消える幽霊である。無である。存在するのはアヌのみであり、多くの名前、多くの顔を持つことで隔てられ、知られている。その者である。

アヌが自身を壊した時、その目的は自身の性質を知るためであった。分裂した状態で、広漠たる広がりを泳いだ価値は、自らを知っていると考えた。エトアダの歯車は価値に多くの名前を与え、意志を構築した。ああ、価値はロルカーンの忠告を心に留め、アヌの顔を忘れてしまったのだ。価値のそれぞれは自分をまぎれもない全だと考えた。それゆえに多くの手が世界を組み立て、それぞれの手には別の意図と利己的な目的があった。多部品のニルンは結果だった。壊れて漏れ出る蒸気船であり、逆風に吹かれ続ける船なのだ。

しかしトリビュナルの子供達よ、喜べ!彼の知恵で「巻かれ続けるメインスプリング」は失われた遺産を探している。彼の心臓には油が差され、計測され、黒い真実を血の如く押し出している。彼の心は神のモルタルであり、バラバラになったアヌの性質が礎であり、重視され、彼の意志のみで統一されている。この偉大なる働きで、新たなニルンが生まれる。最後のタムリエル。アヌヴァナシ。我々が彼の働きの成果である完全なる世界、エトアダの歯車のなき世界を見ることを祈る。変化の幻影がない世界。隙のない、永続する世界を。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第2巻The Truth in Sequence: Volume 2

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

ソーサ・シルの意志は疑似時制の意志である。「名のない意志」である。「名」とは何であろうか。神のメトロノームは「名」が歯車を別の歯車から離すためのくさびであると我々に伝える。鎖車を緩め、骨組みを蝕むロルカーンの大いなる嘘の残余。エトアダの歯車は各々の方法で、各々に名を付けた。我々の下等種はこれを優しさと見るが、「巻かれ続けるメインスプリング」は利己的な矜持に根差す呪いと呼ぶ。名を付けるとは、ある者を他の者と分かつことである。それはアヌの収束と後のニルンの死である。誤って組み立てられ、冷淡な嘘を吐くドラゴンを意味する。その名を「多数」という。

「名」でない名は一つしかない。収斂したクロックワーク神のセトであり、その名はピストンのように「その時」と「その後」に流れ出る。その心臓が永遠の車輪を回し、その血が全車軸を円滑にする、謎の父ソーサ・シル。その心が「彼ら」と「私達」を溶け込ませ、後のニルンを産む神の機関「シ」。弱い意志は煙の筋であり、生まれて、無限の空の海に迷う。死んで自由になる、迷える子供達だ。

トリビュナルの子よ、自由とは何だろうか?奴隷と反対のてこなのか?違う。お前は順番に言葉を聞かなかったのか?疑似時制の意志とは、一度しか振れぬ振り子なのだ。それ以上は振れぬ。二度振ることは、別の者の意志を砕くことになり、二つの冒涜を示す。パドメイは幻影に過ぎず、その意志もまた然り。混沌なき「選択」とは何なのか?秩序の欠落、俗悪、勝利なき「自由意志」とは何なのか?真の輪は時計回りに、必ず時計回りに回る。後のニルンが統合した暁には、各々が全に属し、全てが無に属す。最後のタムリエルを除いて。よって子よ、些末な重荷は捨てるのだ。「私がそうしようか?」。その「選択」は幻影だ。統合を追求せよ。最後には、そうなる他ないのだから。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第3巻The Truth in Sequence: Volume 3

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

「永遠に巻かれるメインスプリング」の第三の真実はデイドラの真実である。「始まりの燃焼」以前の日々、チャイマーの民は偽りのデイドラ公、網の紡ぎ手、陰謀のデイドラ公、夜明けと黄昏の女王にひざまずいていた。私は彼らの名を使わない。というのも、「名」はある者を他の者と分かつからだ。お前は彼らをよく知っているだろう、トリビュナルの子よ。偽りの証言をして、愚かなことを鼻にかける時、お前は彼らの名においてそうするのだから。彼らの言葉は心を蝕み、弱くする。彼らの脅迫は留め具を緩め、封印を破る。彼らは歯車に反し、名のない意志の反対に回る。その性質は無である、パドメイの偽りのしもべだ。デイドラの中でも、秩序の灰のデイドラ公のみが自身の性質を知っていた、彼はそれを知り、頭がおかしくなった

分かるだろうか。デイドラ達は知恵と秩序を恐れるのだ。そのため、彼らは何よりもクロックワーク神を恐れる。他の者が16の数の付いた暗き王冠を見る時、ソーサ・シルには影しか映らない。デイドラ達は世界が己に話す嘘である。主のパドメイのように、彼らもまた「無」なのである。そして最後のタムリエル、アヌヴァナシで、「無」は支配できない。「オブリビオン」と呼ばれる彼らの黒き山は、全ての嘘が焼かれ、短気な多数が鉱滓に変わる「忘却数の溶鉱炉」に沈む。

お前の問いが聞こえる。「デイドラ達が”無”であるとして、彼らはどうして私達の敷居に潜めるのか?そもそも彼らはどのようにして潜んでいるのか?」。言葉は順番に聞くのだ、トリビュナルの子よ!不器用に築かれた前のニルンには、エトアダの歯車が「無」の巣食える隔たりと裂け目を残した。不完全さは、ロルカーンの大いなる嘘と砕かれた存在の利己心から生まれた。輝かしい後のニルンのアヌの収束で、すべての隔たりは閉ざされる。すべての裂け目は結合される。機械のきしる音、揺れる音はささやき声に退化し、エトアダの歯車の愚行より生まれた過度の混沌は、収縮し餓死する。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第4巻The Truth in Sequence: Volume 4

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く

次にソーサ・シルの沈黙について話す。時折、灰の子らは問う「クロックワーク神はどこにいるのですか?なぜトゥールビヨンのみが、退屈な順序で彼の言葉を話すのですか?」。彼らは恐怖に額を歪ませ、静かな調子で問うのだ。そのような問いから逃げてはならないぞ、トリビュナルの子よ。これらは知恵、無知を力に変える完全な炎に通ずる、些細な冒涜である。「永遠に巻かれるメインスプリング」は「好奇心の父」であるから、好奇心は喜びに満ちた破壊者なのである。物事は隔てられてのみ、完全になるのだ。分解された原動機のみ、磨き上げられて綺麗になる。よって古い機械は粉砕してしまえ!心の偶像は倒してしまえ!そして、その残骸から新たな真実を組み立てるのだ。完璧で隙のない真実を。

分かるだろうか、トリビュナルの子よ?勇敢なる心を産むのは、ソーサ・シルの沈黙なのである。知識は見つけなくてはならない。そして物を見つけるには、隠されねばならない。教えられるのでは不十分だ。機械が荒々しく動く音は、機械の中に住まう者にとって静寂に等しい。油を差され続けるタービンは、油の不足を知らず、油の目的を知らない。そして、それは真実も然りである。

さあ、好奇心には代償が付きものだと分かったはずだ。アルムよ、この異端の行動を許したまえ!ヴィよ、この異端の行動を許したまえ!私は順番に言葉を紡いでいるのみである。黄金の仮面の法を心に留めながら、その限界も知れ。震えるガラスの声を注意して聞きながら、その規模の限界も知れ。その真実は慣性の真実である。重力の真実である。その心は、液状の真鍮に満たされた器である。衝撃には強いが、動けはしない。「永遠に巻かれるメインスプリング」は動かぬものを拒絶する。後のニルンでは、動かぬものがキルン・アマランザインの餌食となり、そこではセトの静かなる憤怒が太陽のごとく燃え盛り、壊れた歯車が全になる。永遠の車輪は回らなければならない。最後のタムリエルは時を刻まなければならない。アヌヴァナシ。全の中では、それぞれが己の位置につかなくてはならない。一片が欠けても、全は全でなくなるのだから。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第5巻The Truth in Sequence: Volume 5

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

ドワーフ達のことを口にするな、トリビュナルの子よ。陳腐なドゥエマーのぜんまい仕掛けは、ソーサ・シルの崇高な機械の前に青ざめる。ドゥマクの嘆きを無音の嘆きにせよ。シューシュー音を立てる彼の墓を埋没したままにせよ。彼のオートマタを錆びつかせ、崩れさせよ。彼は最大の失敗を犯した。ロルカーンの大いなる嘘と、卑しい矜持に突き動かされたのだ。彼は悲哀と恐怖の物語であり、彼の汚い計算を追う者は、大きな代償を払うだろう。

「しかし、ドゥマクは作成者ではなかったか?」と尋ねるか?「真鍮の子の両手は油に覆われていたのではないのか?その両手は創造の言葉を紡ぎ、車輪を車軸に付けなかったのか?」 言葉は順番に聞くのだ、セトの追随者よ。作意は機械の価値を決める。「永遠に巻かれるメインスプリング」が後のニルンの収束を求める場所では、ドゥエマーの亡霊が叫ぶのだ。「多数!多数!」。エルフと機械は分かたれる。知恵と野心は分かたれる。製作物と被製作物は分かたれる。そしてこの隔絶から、無数の軽やかに舞う機械が作られ、忘れられた回廊に置き去りにされ、さまよい、当てもなく浪費される。ある機械がノブを左に回すことで、他の機械が同じノブを右に回す用意をする。ある機械がパイプを緩めることで、他の機械がそれを締められるようにする。それら機械の存在理由は、真鍮の子らの愚行を続けさせるためだけにしかない。ソーサ・シルの目から見れば、それらの機械は冗長であり、不敬だ。

ただ、最も不敬なのはこれである。NMという「名」を冠する、歩く恐怖である。虚栄心の真鍮塔。前のニルンの愚かなガーディアン。聖なるニルン・スフィアの最も暗き極地を支配する、神の対極物である。最後のタムリエルへの脅威のうち、NMが最大の脅威である。アヌヴァナシ。デイドラ達は思考で消し去ることができるが、NMはニルンと隔絶させなければならない。NMはアヌの中心にある結び目であり、ほどかなくてはならない。神のパズルである。この点について、「永遠に巻かれるメインスプリング」は沈黙を保っている。そして沈黙のあるところには、大いなる知恵がある。

私は言葉で歯車を巻く。

連続した真実 第6巻The Truth in Sequence: Volume 6

「巻かれ続けるメインスプリング」の第四トゥールビヨン、デルドライズ・モーヴァインの説話からの抜粋

私は言葉で歯車を巻く。

クロックワーク・シティよ、見るのだ!正玉座を!あまねく車軸を!喜びに満ちた破壊の、真鍮の喉を持つ使者を!継ぎ目なく組まれた油膜の塔を!喜べ!喜ぶのだ!

聞け、トリビュナルの子よ!お前には歯車の素早く回る音が聞こえないのか?ピストンのシューという音が聞こえないのか?それはソーサ・シルの声であり、お前を後のニルンへ呼ぶ声なのだ。最後のタムリエルへと。アヌヴァナシ。その世俗的な計算を打ち破れ。利己的な追求の鎖を緩めよ。それを説明してくれようか?その目をニルンの未来に導いてくれようか?暗き子よ、言葉は順番に聞くのだ。目を閉じ、目覚めるのだ!

見上げて、セトの輝く帯により締められ、結び付けられた、澄んだ空を見よ。下を見て、彼の意志である黒き石、彼の想像より創られた土を見よ。彼の血のように濃い真実を、広き黒の川で飲め。彼の息吹を肌に感じろ。その夢のような芳香で鼻孔を満たし、目を刺激しろ。お前は車輪の中心に立っている。「永遠に巻かれるメインスプリング」の発祥地に。

磨かれた真鍮と、神の金線細工に飾られる黒曜石の塔が、常に空へ伸びている。絡み合う血管のように伸びる無数のパイプ、あるいは、不老の樹木の黄金の根を通して、巨大なタービンが記憶を送っている。そして活発な、シューと音を立てる楽園を歩き回るのは、彼の第二の子供たちである。ファブリシレイノシム。結合した者達。不連続の生まれであり、後のニルンに運命づけられている。彼らは声を合わせて叫ぶのだ。「多数に死を!悲哀と恐怖!未知なる角度の蒸気缶に破片を入れろ!忘却数の溶鉱炉で、偽りを燃やせ!分解して浄化しろ!解体して全になれ!」彼らはガーディアンである。永遠に巻かれる鍵の主なのだ。名のない心だけが、彼らの憤怒を退ける。その不和の憎しみには際限がない。最後のタムリエルへの道は血に染まる道ではないのだ、トリビュナルの子よ。アヌヴァナシ。神を敬う心をもって、これを考えよ。汚れのない、滑らかな魂を求めるのだ。それが彼の来たる真実の中で、お前の役に立つだろう。

これでお前は、クロックワーク・シティがソーサ・シル自身のようなものであると分かったはずだ。信仰への美に富み、混沌のしもべへの途方もない恐怖に燃えている。お前はどのクロックワーク・シティに住むのか?少し冒涜を犯し、これについて考えるのだ。

私は言葉で歯車を巻く。

祠漁りの日記Shrine Scavenging Journal

この祠に来るまで、私達の祠漁りは実に気楽なものだった。ウルサと一緒の旅行も退屈することはなかった。アルゴニアンがあれほどユーモアのセンスを持っていたとは予想外だった。しかも彼女は、一対のダガーを実に巧みに扱える。

少し足を滑らせたせいで、この冒険がこんな状況に陥ってしまうとは。私の足はまるで太ったネッチのようになっている。愚かにも私は、ウルサが扉の錠を解除した後、頭上にある足場でダンスを披露したのだ。だが彼女は素晴らしい友達だ。彼女はここに私を座らせ、近くに薬と少量のブランデーを置くと、この正門を開くために鍵を探しに行った。これまでの調査により、マッドゴッドの狂信者達が、裏手にも礼拝室を置いていたことが分かっている。鍵はそこにあるはずだ。

彼女はすぐに戻ってくる。そう願ってる。彼女には教えたくなかったが、しっかり止血したはずの傷からまた血が流れ始めている。

疲れた。もうクタクタだ。

スキルブック

Skill Books

アザリードのレースAzarrid’s Race

「あそこ、廊下の奥!あれはサファイアか?」目を輝かせてロディッサーが聞いてきた。「あんなに大きいのは見たことがない。いくらで売れるかな?」

「売る?ハハッ!まずあれはサファイアじゃないし、売りもしない。私が実験で使うのよ。少し時間があれば、あれでどれだけの成果をあげられるか知らないでしょ!」パモルウェが返した。

するとノルドの方が怒鳴った。「何だと?お前の研究のためにあれを献上する気はないな。見ろ!俺の頭くらいの大きさがあるぞ!売れば王のような生活ができる!」

「頭にハチミツ酒が詰まった君には分からないだろうけど、私がそこから得られる新発見のほうが価値があるのよ!」

仲間たちの口論が激しさを増していく中、アザリードは古びた冷たい壁に寄りかかって傍観していた。彼は廊下の先に目をやると、面白いことに気付き笑みを浮かべた。革の防具で爪を磨きながら、最も効果的なタイミングを待った。「カジートは思う」ピリピリした静寂の中で彼は言った。「それを決める権利があるのは最も優れた冒険者であり、すなわち最初にその石を手に取った者であると」。そう言うと彼はノルドとアルトマーの横を走り抜けた。

仲間たちは一瞬だけ唖然とし、その後すかさず賞品を手に入れようと後を追った。夢中になるあまり、アザリードが徐々にスピードを落としていることに気付かなかった。パモルウェは自らのスピードを上げる呪文を唱え、ロディッサーはうなり声をあげながら斧を高く持ち上げ、一目散に光の方へと走った。

両者はアザリードを追い越し罵ったが、彼の笑みは消えなかった。たちまち廊下が真の姿を現し、隠れていた刃が前を行く2人に襲い掛かった。ロディッサーの鎧に刃が当たり彼を横に押しやった。それでも無傷の彼は笑い声をあげ、一方でアザリードはスピードを保ちつつも機敏に罠をかわした。パモルウェは2人のような運もスキルもなかった。刃の打撃に結界が崩壊した。必死で刃の手前で止まろうとしたが、ローブに足が絡まり頭から刃に突っ込んでしまった。

アザリードは後ろを振り返ることなく、なおも叫び続けるロディッサーの後ろをゆっくり走った。巨大な宝石はもう少しで手の届きそうなところまで迫っていた。勝利を確信したロディッサーが最後に罵りの言葉を発そうと振り返った瞬間、足元の石が崩れた。鉄の鎧でカンカンと音を鳴らしながら、彼は深い水たまりへと落ちていった。水の中にいた何かが音をたてて動き出すと、かすかに悲鳴が聞こえてきた。

勝者のカジートはひとっ跳びで宝石の前までたどり着き、その光に照らされた。そして手に取ると、振り返って罠だらけの廊下を改めて見渡した。「友よ、今日の最優秀冒険者はこのアザリードだったようだな」そう言う彼の背後で、刃を纏った装置が気づかれることなく、台から姿を現していた。

イーテラーの年代記 第1巻Chronicles of Ehtelar, Vol. 1

キャラバンはホロウ・ウェイストにたどり着いた。車輪はうなる砂漠の風の下できしんだ。

鎖と皮を着込んだ傭兵は、動かぬ日の下でうだるような暑さを呪った。

彼らがぶつぶつ罵るのを聞きながら、イーテラーは信頼するセンチネルのラハドに感謝した。屈強なレッドガードは、砂漠で培った実用性を備えていた。

「軽装になれ」彼は言った。「アリクルではゆるく編んだチュニックがいいだろう。たくさん着込めばたちまち、魚屋の鍋でゆでられるドゥルー・シュリンプより早くゆであがるぞ」

彼女は助言を聞き入れ、リネンと過酷な暑さの中でも身を涼しく保つ魔法の腕輪だけを身に着けていた。

荷馬車は車輪をゴロゴロいわせながら吹きさらしの峰の頂上に達すると、地響きを立てて停止した。

イーテラーは好奇心にかられて馬からおりた。隊の先頭へと進むと、急な停止に困惑する商人が直射日光を防ぐ日よけから顔を出した。

「友よ」ラハドは先頭を通り過ぎようとする彼女に言った。「多くの海岸に旅したことがあるだろう。教えてくれ。このような光景を見たことがあるか?」

話しながら彼は眼下にある谷への道のほうを示した。焼けた石と曲がりくねった小道の中に巨大なアラバスターの槍が、峰と峰の間全体を何マイルにもわたって砂から厚い芝の上に落ちた矢のように突き出していた。

「あれは何なの?」彼女は冷静さを取り戻して聞いた。

「聞きたいのはこっちだ」彼は言った。「いつもだったらこの道の先はどこまでも続く砂丘でしかない。いったいどれくらいの間埋まっていたんだろう」

イーテラーはこれが利益を生むと考え、一晩この場で野営することを主張した。正午の日差しから一時的に逃れて喜んでいた傭兵は、過酷な旅の中で休めることを大いに喜んだ。

夜になり、彼らは早暁まで大騒ぎしていた。周りの遺跡で何かあっても、騒々しくて気づきもしなかっただろう。

夜明けにはイーテラーとその相棒が、槍の間を進み入口を探していた。昼頃になり、ようやく入口を見つけた。

「ここだ!」ラハドは興奮を抑えきれないといった声で叫んだ。「入口はここだぞ!」

イーテラーは友が何かを見つけた方へと駆け出し、石の角を曲がった。だが彼女を迎えたのは、恐ろしい光景だった。

隙間から繰り出された槍に力なくぶらさがっていたのは、ラハドだった。彼の剣は鞘から抜かれ、近くの砂山に突きささっていた。

恐怖で口を開けたまま立ちすくむ彼女の前で、ラハドは放り出され、砂山で覆われた遺跡の入口から鱗で覆われた大きな頭が出てきた。その生物はすばやく動いてラハドをかたわらに放り、武器の血を拭い始めた。

イーテラーは信じられず頭を振った。大声を出そうとしたが、言葉を発すると同時にその生物に殺されるだろうと思った。ゆっくりと、注意深く、彼女は後ずさりしはじめた。うまく逃れられると思われたが、3歩目が地面についた瞬間その生物が振りかえった。

素早く矛先をかわしたものの、イーテラーは突然はじまった大音量の音楽で何も聞こえなくなった。耳をかばって手でふさいだが、敵の攻撃に彼女はつまづいた。

敵は肋骨が倍になるほど肺いっぱいに息を吸い込みながら身をもたげ、複数のトーンが加わりコーラスになった。キーキーいうハーモニーが砂の中に鳴り響き、遺跡からばらばらと砂が落ちた。敵が動くと彼女の下にあった石が崩れ落ち、彼女は敵の前に投げ出された。

彼女には、柄頭まで砂に埋まったラハドの剣を手に取るのが精いっぱいだった。攻撃が可能な距離から、彼女は悪鬼の黒ずんだ口に剣をいきなり突きたてた。鋼が頭蓋骨に達すると、その声は小さくなりはじめた。

その瞬間、敵は単純な真実に気がついた。もはや血肉を求めてはいなかった。もはやまったく、何も欲してはいなかった。「なんとすばらしい!」地に倒れこむときに思った。その爬虫類はできることなら笑っていただろう。

ラミアが崩れ落ちると、そのフックのついた槍がイーテラーをとらえた。冷たい鋼を感じ、彼女はバランスを崩した。一瞬態勢を整えられるかに見えたが、彼女が立っていた石が突然崩れた。

暗闇に落ちた彼女は砂の雲の中で浮かんでいた。凹凸のある石や槍のような石が下から見上げていた。

まぶしい砂漠の空が見えなくなったのに、きらきらする光に囲まれていることに気づいた。きらめく星が一面にあったが、地下に星があるはずがない。それはアイレイドの輝くクリスタルだった。

落ちた時間は数日経ったかのように感じられた。彼女の側にあるのは、暗闇にまたたく光だけだった。「この小さな星を少しでもつかめたらいいのに」手を伸ばしながら彼女は思った。「この星のように、空気のように軽くなるかもしれない、そしてこの世界から出るの」。

下のほうではささやき声がさらさらそよぐ風のような音になった。下を見ると、地面はもうそこだった。暗闇が近づいていた。

ウーンディングとトゥムルトWuunding and Tumult

ヴォッセル・ベサラスによる記録

以下はノルドの英雄ウーンディングと、その槌であるトゥムルトについての2つの物語である。どの街に行っても彼について異なる伝説があり、どのノルドに聞いても全て真実だと誓われる。こういった誇張された英雄への彼らの関心はある意味魅力的で、紙に保存されているところを見たことがないので、気晴らしにいくつかの物語を書いていくこととする。

ウーンディングと山

強大なるウーンディングは、とても強いトロール王の噂を聞きつけ、戦うために高い山々に入ろうとしていた。傾斜が厳しく雪が深かったため、進むのがだんだん難しくなってきた。ついに彼は悪戦苦闘しながら掘り進むことにうんざりした。雪を払うよう大声で山に要求したが、山は頑固で聞く耳を持たない。

いら立った彼は、石から雪を払いのけ、トゥムルトを使ってその石を全力で叩いた。山は痛みでゴロゴロ鳴り、覆っていた雪が全て谷まで流れ、彼は通ることができた。山々は今でもその痛みを覚えているので、山に向かって叫ぶときは注意をしたほうが良い。誰もが雪崩に耐えられるわけではないから。

マーチの雪解け

その昔、偉大なる氷のデイドラがイーストマーチに根付き、ノルドを惨殺し、魔力を使って終わりなき猛吹雪を発生させた。ウーンディングは他のノルド同様デイドラを嫌い、かの地を自由にして所有者に帰そうと考えた。吹雪の中心部に向かったが、体が凍り始めたのでやむを得ず引き返した。

吹雪の端を彷徨いながら、彼はカイネに祈り助けを求めた。その後まもなく、老婆の住む小屋を見つけた。老婆は彼を招き入れ、話を聞くと、小さなフラスコ瓶を差し出した。「これでデイドラまでたどり着けるだろう」老婆は言った。「だが一度に飲みすぎないように」。その蜂蜜酒は飲んだことがないほど甘く、腹の中で燃えたので、彼はすぐに出発し、魔法の吹雪に影響されずに進むことができた。

ついにデイドラを見つけると、彼らは大地を駆け巡りながら戦った。その冷たい魔法は今までに戦ってきた者たちとはまるで違い、力が失われていくのが分かった。老婆の忠告を無視して、彼はフラスコの中身を全て飲み切った。彼は燃え上がり、トゥムルトも炎を纏った。一撃ごとにデイドラはどんどん融けてゆき、湯気を発する水たまりを残した。最後には、臭い水たまりだけを残してデイドラは完全に消え去り、ウーンディングとトゥムルトは炎に飲み込まれた。水たまりは今も残り、ウーンディングの勇気を思い出させてくれる。

ウォーデンとは何者か?Who are the Wardens?

タネスのレディ・シンナバー 著

エリンヒルのファラスタスによるもっともらしいエッセイ「血の物語:タムリエルを奪う紡ぎ手」において、彼は特有の夢想的なスタイルで、荒野のウォーデンが紡ぎ手と呼ばれるウッドエルフ司祭の軍事部門であると主張している。この主張は適切な学問的素養が欠如しているか、単に大衆受けを狙って論争を巻き起こそうと狙ったものだとしか思われない。

私自身が綿密に行った調査によれば、確かに紡ぎ手とウォーデンの間には共通する部分がある。ウッドエルフ司祭のように、これらのガーディアンは歌と森の神、イフレ神と密接な関係があるようだ。

しかし、私の説によれば共通するのはここまでだ。私の高名なる著作「グレンモリル・ウィルド」で行ったように、こうした戦士に付きまとう神話と誤解を正そうと思う。

まず第一に、紡ぎ手は軍事的でもなく、暴力を好まない。彼らとヴァレンウッドのために他者を戦わせることを好み、ボズマーの社会で顧問、学者、司祭の役割を果たす。一方、ウォーデンは自然を守るために血を流すことをいとわない。そして、イフレの領域に害をなそうとする個人、ギャング、拠点全体へと攻撃を加えたとの報告が数多くある。

また、ウォーデンの力と紡ぎ手の力には大きな違いがある。ボズマーの司祭が過去、現在、未来からの物語で聴衆を魅了するのに対し、ウォーデンは周囲の自然環境から力を得て、現実を形作っている。我が同僚ファラスタスでも分かるように素人臭い言葉を使うとするなら、紡ぎ手が幻惑魔法を使うのに対し、ウォーデンの能力は伝統的な呼び方で言えば変性や召喚と呼ばれる。

紡ぎ手はボズマー文化の中心として独特の司祭的な立場にいるが、研究した限りウォーデンを代表する個人や組織は存在しない。実際のところ、彼らは単独か二人組で旅をしていて、どんな後援も受けていないようだ。彼らが所属する組織と言えば現地の戦士ギルドや魔術師ギルドでしかない。ほとんど記録が残っていない例として、闇の一党に入った事例が一見記録されている程度だ。

イフレとの関係に基づき、ウォーデンの多くはウッドエルフだろうか?そうとも言えないようだ。紡ぎ手は全員がボズマーであるのに対して、ウォーデンはタムリエルの自然を守る者であれば人間、エルフ、獣のあらゆる種族を受け入れる。実際のところ、私はハイロックの北端とエルスウェア南の森でウォーデンに出会った。ハンマーフェルで同胞のウォーデンに会ったことさえある。

そして、グリーンパクトはどうだろうか?ウォーデンは古代ウッドエルフの伝統に従っているか?ウッドエルフのウォーデンはもちろん例外だが、他の場合は従っていないようだ。私が知る限り、ほとんどのウォーデンは生き延びるために自然の恵みを最大限に活用する。植物であろうと、動物であろうと変わりはない。

最後に、紡ぎ手はほとんどヴァレンウッドでしか見られない。古代の森の守りから離れることはほとんどない。一方ウォーデンはタムリエル全土に存在する。最新の報告では、ヴァーデンフェル島にも存在するようだ。

上記がタムリエルのウォーデンに関する初期調査の結果である。彼らは紡ぎ手と同様に独特で神秘的なグループだが、明らかに異なっている。より学術的な調査が必要なことは明らかだが、より詳細に研究すれば、他のエリンヒルのファラスタスが申し立てた主張は(いつものように)誤りだと分かるだろう。

ウルフメアのより良い泥棒ガイドWulfmare’s Guide to Better Thieving

ウルフメア・シャドウ・クローク 著

スリとして成功したい?常に他人を出し抜き、犯罪者として生きてポケットをゴールドドレイクでいっぱいにしたい?裕福な商人に強盗を働き、地方の店主から金を巻き上げたりするのはさぞ魅力的に感じることだろう。だが、ちょっとした助言をしよう——やめておいた方がいい。私が現役の時、優秀な盗賊で必要な資質を持っている奴は何人もいたが、結局獄中で死んでいった。

しかし、私と同じ様に、きみは助言を聞かないタイプの人間かもしれない。何でも好きなことをして、誰にも口出しさせない。危険がはらむオブリビオンにも行ってしまう——大事なのは金だけ。身に覚えはあるだろうか?もしそうなら、この本でケチくさい盗賊と犯罪の達人との違いを学ぶといい。

きみが何を考えているか想像はつく。ウルフメアとは誰だ?より良い盗賊になる方法を教えるなんて何様のつもりだ?どうやって専門家になったんだ?答えは簡単だ。アーチキャノンのダイヤの指輪がなくなったという、モーンホールドで起こった強奪について聞いたことはあるか?もしくは白金の塔から星霜の書がなくなった話は耳にしただろうか?そう…あれは私の仕業だ。きみが想像できるような仕事は大体やってみた。その証拠にお金もある。元盗賊が他に自分の本を出版する方法なんてあるはずもない。

興味を持ってもらったところで、スリとして成功するために磨くべき2つの基本的な技術から教えよう。鍵開けとスリだ。呆れてこの本を放り出してしまう前に言っておくが、基本を無視すると簡単に捕まってしまう。しかし、もしこれらを極めれば、お金の中を泳げるようになることを約束しよう。

スリは覚えるのが最も簡単な技術だが、駆け出しの盗賊が失敗する場面は驚くほどよく見てきた。ここで言いたいのは2つ。1つ目は周囲の状況を知ること、そして2つ目は方法を知ることだ。魚釣りにおいて、いつどこで釣るかが重要であるのと同じように、スリも誰を狙うのかが大切だ。しばらく後をつけてみろ。焦る必要はない。そして、相手が1人になり、衛兵に声が届かない所まで行くのを待て。だが最も重要なのは、時には標的を諦めることだ。すぐに捕まってしまったら、危険を冒す価値はない。ポケットをいっぱいにしている他の標的はいつだってそこら中にいる。接近する以上は、相手の視界から完全に外れるまで体勢に入るな。背後で近い距離が望ましい。何を盗むか決めるのに時間をかけ過ぎるのも禁物だ。優秀な盗賊は値打ちがある物を見定めて盗み出すまで5秒とかからない。最後に、夜に任務を遂行すれば捕まる確率が激減する。もし昼間にやるしかなければ、公の場では絶対に行わないことだ。

鍵開けは習得に数年かかる技だ。覚えておくべき重要なことは、同じものは2つとしてなく、それぞれ性質がまったく違うということだ。常に冷静になり、忍耐強さを覚えれば、思っていたよりも破るのは容易いと分かるだろう。また良い道具を使用することも重要だ。ポケットに必ずたくさんしまっておくように。焦らずじっくり取り組んで、道具は軽いタッチで扱え。タンブラーが正しい場所に収まる時、ピックがかすかに震えるのを感じるはずだ。それはスイートスポットが近いことを意味する。そこでペースを落として、今までよりも優しくピックを動かす。やみくもに鍵をつつけば、大量のピックとプライドがへし折られて終わるだけだ。ちなみに鍵が開かず、どうにもならなくなったら最終手段として、叩き壊すという選択肢もある。ただし、これはごくまれにしか成功せず、大きな音がしてしまうことを心に留めておく必要がある。

この技術さえ使えば、盗賊として成功すると言っているわけではない。信用できる保証書だと思ってもらえればいい。必要なのは少しの我慢とたくさんの練習であり、そうすればウルフメアのように成功できるだろう。

次の巻では大切な技術——隠密行動について言及する。扱い方を知っていれば、影が剣に匹敵するほど強力な武器になることを証明しよう。

オシュグラの破壊の日記Oshgura’s Destruction Journal

南中の月4日

他の生徒は全員、すでにファイアボールの魔法をかけている。けれど私は簡単な雷撃すらうまくできない!母さんは正しかった。オークは魔法に向いていないのだ。もし私が恥をかいても構わないと思えるなら、今すぐ荷物をまとめて故郷に帰るだろう。私は一生鉱山で働くのがお似合いなのだ。他の見習いたちは絶えず私を笑っている。今までで最悪の考えが浮かぶ。オークはソーサラーになれるはずがない!

南中の月8日

マスター・ダンテーンがここに残るように私を説得した。読むべき本を教えてくれ、知識とは霊感のようなものなのだと言った。本を読むことが役に立つのか分からない。でもマスターは信じなさいと言った。教えてもらった本はすごく難しい。「感情的マジカ応答の理論」や「意志的干渉の要因」といった事柄についての本だ。1つは「ガズギク」の伝記だ。彼の名前は聞いたことがないけど、たぶん彼はオークのソーサラーだと思う。「鈍いオークに魔法を教える方法」なんてどうかな?そんなものがあれば私が読むのに。

収穫の月15日

やった!今日は、あの思い上がったブレトンの女生徒の髪の毛を燃やしてやった。それに小さな稲妻の魔法もできた。標的に当てることもでいた!信じられない。この本はまさに私に必要なものだった。すごく難しく見えたけど、結局自分の頭を整理し、神経質にならないようにするということだった。それにガズギク!彼も私と同じだったと分かった。彼は何年間も魔法をかけられなかった。でもやがて村1つを破壊できたのだ!それって最高だ!

カンティヨンの書簡Cantillon’s Correspondence

(編者 注記:この手紙はマルゴー・カンティヨンの書簡のうち、発見された中で最も古いものの1つである。彼女が回復術に与えた影響と、この上ない哀れみの心は長く人々の心に記憶されるだろう。そしてこの手紙から、彼女がまだ若い治療師であった頃から、いかに芯の強い人物であったかをうかがい知ることができる)

修行者バシャンドへ

昨日あなたからの贈り物を受け取りました。そしてとてもびっくりしました。あなたが気前がいい方だというのは明白です。こんな凝った細工物は見たことがありません。金と銀のマーラのシンボルにはめ込まれた真珠の美しいこと。そして先端の金属に彫られた私の肖像は…実物よりずっときれいです。

この贈り物を受け取ることができないのは本当に残念です。心からそう思っています。贈り物に込められたあなたのお気持ちに感謝しています。ただ、これを身に付けて病棟で看護をするわけにはいきません。私たちは最近さまざまな魔法界サークルを訪れています。あなたのいる社会では、このような素晴らしいものを堂々と身につけられるのでしょう。でも私は恵まれない人々の看護に身を捧げています。私の仕事場で、こんな高価なものを身につけるのは場違いでしょう。

あなたは私の研究について質問しましたね。私の教官は、私は共感力が強いのだと言います。他人の苦しみに対して憤りを感じることが、私の回復魔法に効果を与えているのです。この崇高な仕事に対してこのような能力があるのは身に余る光栄なことです。見習い期間に、治癒にもっと重点をおいて学ぶようになればいいのですが。破壊に重点をおくのは、私には的外れな気がします。

おそらく、ウェイレストでの次のギルドシンポジウムでまたお会いするでしょう。

マーラの恵みがありますように

マルゴー・カンティヨン

グリフと付呪Glyphs and Enchantment

光る谷のサネッサルモ 著

誰もがその作り方は知っている。必要なのは3種類のルーンストーン。効力ルーン、品質ルーン、本質ルーンが1つずつ必要だ。かつて実験として、喉力の腎ストーンと品湿の腎ストーン、それと奔嫉の腎ストーンでやってみたけど、うまくいかなかった!

でも、そのことは秘密だ。私の秘密は漏らさないように!絶対にダメだ。秘密について考えることすらいけない。もしそんなことが起こったら…実験だ!実験の話に戻ろう!これまで様々なグリフをたくさん作ってきた。もちろん、その中には傑作と呼べるものもある。例えばマジカを増加させるグリフ(指輪が魅力的!)や火炎や氷結などのダメージを与える武器を作るグリフなどだ。出来があまり良くないグリフもある。例えば「吟遊詩人への豚脂」のグリフなどだ。このグリフは台所のすべてのショートニングにノルドの酒宴の歌を大声で歌わせる効果がある(私がすべてのパンケーキを作るのは、こういう訳だ)。

だからこそ、いろいろなルーンストーンを組み合わせて、どんなグリフができるかを試す時には、何を学んだかを忘れないよう必ず結果を書き留めること(悪影響を及ぼすルーンのときには特にだ。同じ間違いは繰り返したくないだろう。それに優秀な見習いとはなかなか出会えないからな)。明白な理由から(明白!明らかに!)、生きている生き物の皮に実験結果の入れ墨をするのが好きだ。これに関しては、デイドラはマズい選択だ。オブリビオンに戻ってしまったら終わりだからな。哺乳類も問題がある。毛むくじゃらだから、入れ墨をする前に毛を剃らなくてはならない。それに実のところ、ヒグマは手を剃られるのがちっとも好きではなかった。虫が一番いいというのは、そういう理由からだ。

グリンティング・タロンズGlinting Talons

アブラハー・アトタヌル 著

ラ・ガーダが最初にオークを追い返した時、一部の戦士が実践した戦闘スタイルはあまりに恐ろしく攻撃的で、敵は呆然と立ち尽くし、攻撃されていると気づく間もなく切り倒されていたという。彼ら猛者たちはターヴァとダイアグナを崇拝し、剣に鷹の羽を彫り込んでいた。彼らの剣の歌は鷹の視力、正確さ、鋭い爪に影響を受けていて、太陽や光に関する記載もいくつかある。残念ながら彼らの遺物として今も残るのは、私が砂漠の奥深くで見つけつなぎ合わせた板や記念品以外にない。

グリンティング・タロンズと呼ばれたこの戦士たちは、両手に剣を持っていたことが明らかになっている。そう記されているのは、ヨクダからやって来た時代の彼らの活躍の記録だ。圧倒的な数的不利の中、オークの戦闘部隊を退けたこと、奇襲で要塞を奪ったことなど、たくさんの英雄的な話が書かれている。だが、その戦闘スタイルに関してはあまり知られていない。六手の戦いの跡地で見つけた剣技についての記述は、以下の部分的なものだけだ。

「太陽の方を向き、その重荷を顔で受け止めよ。終わりなき2本の刃に従え。
朝にこれらの攻撃を極めよ。光を切り裂き敵を闇に葬れ」

「2つの刃が4つになる」

「ライオンの牙が雷にさらされる」

「5本の矢が空を割る」

「無力な獲物を襲撃する叫び」

「夕方にこれらの攻撃を極めよ。敵を追いかけその肉を焼け」

これ以外に剣技についての記述や解説を見つけることができず、これほど貴重な知識が永遠に忘れられてしまったことに胸が痛くなる。できることならこの技を再興することが私の何よりの望みだが、手掛かりが少なすぎる。この謎に駆り立てられ、私は今後も旅を続ける。ターヴァの恵みを受けてさらなる発見へと導かれ、失われた知識を取り戻せる可能性を信じながら。

サイクハラルの剣の知恵Sword-Wisdom of Saikhalar

それは朝の訓練を終え、サイクハラルが上機嫌でいた日だった。生徒達が演習で見事な成績を残して、その成長に感心したのが理由だ。とてもフェアな精神の持ち主だったから、褒美として環になって座り彼の知恵を得られるように生徒達を招待してくれた。たくさんの質問があった若者達は一斉に大声を上げて話したが、彼は静かにさせて一人ずつ前に呼んだ。

ある物が聞いた。「師範、武器には非常に多くの形態があるのに、なぜ私達は剣だけを訓練するのですか?」

師範は答えた。「剣は我々の心だ。強大なオンシは古代の民に刀身を伸ばす方法を示し、それ以来祝福された美徳が勝利の中にあることを知っている。それのみに集中すれば、どのような武器にも勝つだろう。短剣より遠くに達し、重槌の打撃の下から繰り出され、敵の矢をそらす。剣の道から外れれば混乱するだけで、熟練への道は足元に消えるだろう」

次の者が聞いた。「師範、私達はなぜ同じ演習を毎日しなければならないのですか?」

師範は答えた。「お前は蜃気楼へ走る喉の乾いたジャッカルのようにまだ考えている。ジャッカルは砂に倒れるが、走り去った岩を調べさえすれば隠れた小川を見つけられたのだ!目の前の作業に集中すれば、熟練度は上がる。明日やるかも知れないことを考えるのではなく、与えられた任務を仕上げることだけを考えろ。そうすれば武器と共に成長するだろう」

そうして彼らは聞き続け、師範は若者達と長年の知恵を共有した。多くの質問がされた後、彼はある生徒が落ち着かないで、もぞもぞしていることに気が付いた。注意散漫に苛立って聞いた。「君、質問は?」

腹を低音でゴロゴロ鳴らせながら、男の子はおどおどして頭を上げた。「師範、お昼の時間じゃないですか?」

サイクハラルは珍しく陽気な笑い声を発した。「それなら急いでキッチンに行け!私の知恵は偉大かも知れないが、すきっ腹は満たせない!」

ジョルニブレットの最後の踊りJornibret’s Last Dance

(民謡)

女たちの歌 I:
毎年 冬が来て
戦争が1つ2つ始まりそうな理由が
特になければ
(争いごとは本当に厄介なもの)
女王リンメンとその旦那
家来を集めて陽気な騒ぎ
舞踏会があると聞けば
いの一番に駆けつけるのは
ゲイルのオギン・ジョルニブレット卿
あらゆる美しき乙女にとっての災い

女たちのリフレイン:
ああ可愛い女たち
気をつけて
ひときわ可愛い女性は特にご用心
ジョルニブレットは美男子だけど
あのきれいな手を思い切って握ってしまったら
ひどい魔法をかけられて
初めてのダンスがそのまま最後のダンスになってしまう

男たちの歌 I:
あの社交行事に
出かけた者たちは皆
お辞儀もできれば姿勢も良くて
どんなダンスのステップも知っていた
女王リンメンとその旦那
命じて吹かせるトランペットの大音響
すると誰もためらうことなく
お祭り騒ぎの始まり
お嬢さん方 初めてダンスを踊るなら
ジョルニブレットみたいな男には近づかないで

男たちのリフレイン:
ああ仲間たちよ 説明してやってくれ
兄弟よ 分かりやすく教えてやってくれ
あの男はずっと前からあんなことをしていて
最後の曲が演奏される前に
美しき乙女は涙を流し
初めてのダンスがそのまま最後のダンスになってしまう

女たちの歌 II:
ゲイルのオギン・ジョルニブレット卿は
国で最も美しい女たちが
舞い踊る姿を見ていた
熊皮の兜をかぶった男が来て訊ねる
「女王リンメンとその旦那
気晴らしのために開いた大宴会
お好みはどの麗人?」
ジョルニブレット卿が指さしていわく
「彼女だ あの胸の揺れと編んだ髪を見たまえ
僕が愛して別れるにはうってつけじゃないか」

女たちのリフレイン

男たちの歌 II:
熊の仮面の男は
女たちのダンスが終わる前に
ゲイルの領主のそばから離れた
そしてトランペットが鳴り響き
女王リンメンとその旦那
女たちを誘うように男たちに求めた
尊大な態度で他の女たちの前を通り過ぎて
オギンが近づいていったのは胸が揺れていたあの女
しかし彼女も無視され その悩み多き命は救われた
新たに選ばれた乙女は雪のように清らかだった

男たちのリフレイン

女たちの歌 III:
楽団の演奏が流れるやいなや
美しい乙女はオギンの手を握り
彼の立派な馬車を誉め称えながら
女王リンメンとその旦那の
婚礼のために作られた曲に合わせて踊った
凝った飾りの皮鎧を身にまとって
倒れたりよろめいたりすることなく
優雅に振る舞いながら
継ぎ目の金具がきしむ音もさせずに
甘い夢のように軽やかに踊るのは本当に難しいもの

女たちのリフレイン

男たちの歌 III:
リズムは速くなり 遅くなり
男性らしい優美さと拍子の取り方にかけて
彼を上回る者は一人もなく
領主ジョルニブレットは
女王リンメンとその旦那にまで称賛されることになった
美しい船が港に入ってくるように
皮の重さをまったく感じさせることなく彼は滑らかに動いた
乙女らしい口調で彼女はささやいた「もう遅い時間だわ
それにしても皮鎧を着てこんなにも優雅でいられる人は見たことがない」
かわいそうな話だが そんな彼女を彼は傷つけなければならなかった

男たちのリフレイン

女たちの歌 IV:
すさまじい勢いで曲が演奏されるうちに
彼は気になり始めた
この乙女は今まで一体どこに身を隠していたのだろう
「女王リンメンとその旦那の求めに応じて
このダンスを踊る前
僕は君の姿を女性陣の中に見かけなかった」
「舞踏会に到着した時にドレスが破けてしまったのよ」
彼女は微笑みながら 男のように深い声で言った
「召使たちが急いで直してくれたけど
その間 私は革の鎧と熊の兜をかぶっていたの」

女たちのリフレイン

ジル・ゴの呪文Xil-Go’s Spell

アドジ・カーツ 著

我々のスリザリング・イーブスの集落は一時期好調だった。緑が広がっていて、太陽と木々に守られた安息の地だった。沼地の奥深くでよそ者が訪れることもなく、モロウウィンドのドーレス家から奴隷商人が来る心配もなかった。奴隷商人の襲撃は他のサクスリールにのみ降りかかることだと思っていた。万一襲ってきたとしても、我らの哨戒兵は勘が鋭く矢が速かった。エルフが我々の本拠地に泳いでやってくるなどという想像は、彼らの間では笑い話だった。

ドーレス家の欲深さとずる賢さを甘く見ていた。奴らは夜の最も暗い時間に、いまいましいエルフの魔法で見張りから姿を隠しながらやってきた。黒檀の鎧を纏いながらも埃のように軽い足取りで、静かに水の上を歩いてきた。我らは火矢で攻撃され混乱状態に陥り、村人たちはダンマーの魔法で意識を奪われ、炎の中を連れ去られていった。追いかけようとしたが、多くの戦士たちが重量の魔法にやられ、泥に足を引きずり込まれてしまった。

朝日が昇る中、エルフの襲撃に負傷し疲れ切った我々は、どうすべきか議論した。逃げようという声があがったが、それらをかき消すほどの声をあげたのがジル・ゴだった。「いいえ!あんな乾いた肌の略奪者たちに私たちの村と仲間を奪われてはならない。断じて。私に1日だけくれたら、奴らを永遠に退けてみせるわ」。我々は村を守りたいという気持ちが強く、ジル・ゴは魔法や奇妙なことに詳しかったので、その要望を受け入れることにした。

彼女はその日ずっと、何も食べずに小屋にこもった。日が沈みだすと、村人たちは落ち着きをなくし始めた。すると彼女は出てきた。「どうすればいいか分かったわ。少しでも魔法が使える者は、私と来て。弓が使える者は、矢と私の作った毒で武装しておいて。奴らが戻ってきたら、あなたたちに守ってもらわないといけない」

村人たちは待機した。次の襲撃が来たとき、準備は万端だった。今回も簡単にやれると思われたのか、奴らは前回と全く同じように無音で水を歩いてきた。予想だにしていなかった結界が爆発して眩い光を放ち、それを合図に射手が矢を放ち、ジル・ゴたちが魔法を唱え始めた。だが奴隷商人たちは完全武装の恐ろしい部隊だ。すぐに体制を立て直し突っ込んできた。

するとそれは始まった。彼らが不安そうな表情になる中、魔法が発効したのだ。直後、どんどん熱くなる鎧が皮膚を焼く音とともに、苦痛の悲鳴が聞こえてきた。エルフたちは身を守ろうと必死で鎧を剥がそうとするか、自らの魔法で冷却しようとしたが、時すでに遅かった。我らの戦士たちが侵入者を捕らえ、1人も逃がさなかった。

このことが敵の耳に入ればと思い、勝ち戦を広く伝えた。今でも、奴隷商人は襲撃の際に重い鎧を着たがらないという。たとえ弓矢に狙われやすくなろうとも、軽い鎧を着る者が多いそうだ。それはそれで、我々には好都合だ。

ステルスの哲学The Philosophy of Stealth

ホーリンズ・スタンドの赤きコブラ 著

当たり前に聞こえるかもしれないが、実際に透明化するということは人の眼に映らないことだ。人の眼に映らないとはどういう意味か?逆にこう問いかけたい。人の眼に映るとはどういう意味か?

人の眼に映る、ということは人の目に見える物体が、それを見る者の何らかの注意を引くということだ。多くの場合、人は目標の物体に注意を向けており、20のうち19の物体については実際には見ておらず、視線が物体の上を素通りするだけなのだ。対象物以外の物は、単に見る者を取り囲む、当たり前の背景の一部にすぎないからだ。

人の目に映らない存在になるためには、その当たり前の背景に溶け込む必要がある。個としての特徴を捨て去り、完全に周囲の一部になるのだ。そうすれば、昼間の真っ白な塩田の中ですら、影の衣をまとうことが可能になる。

ステンダールの戒律Precepts of Stendarr

ステンダールの篤信者、輝きのプトラス 著

ステンダールの慈悲深い御手の中に、すべての民が迎え入れられる。安らぎと保護に値するタムリエルのすべての民に、聖堂の扉は開かれている。病にかかった者、望みを失った者、忘れられた者、そして、そう、異教者でさえも彼は受け入れる。ステンダールは彼らに助言と援助を与える。

ステンダールの神聖な輝きは、心を開き、慈悲を求める者を癒やす。彼の慈愛は無限であり、角笛の高らかな呼びかけにより、彼はすべての傷を回復し、すべての病を食い止め、すべての傷付いた魂を鎮める。

ステンダールの信奉者はその治癒の技の偉大なる啓示によって祝福を受ける。彼の知恵を求めるなら、彼の名の元に、回復魔法の恵みを行使せよ。戒律に従い、彼の意思に常に耳をかたむけよ。

・与えることのできる助けを決して惜しむなかれ。

・弱き者、傷ついた者たちを見つけたときはその中に交わるべし。

・毎日ステンダールに祈りをささげよ。

・富を蓄え肉体を甘やかすことなかれ。

これらすべて、ステンダールの命を決して忘れるなかれ。タムリエルのすべての民に心優しく寛容なれ。弱き者を守り、病人を癒やし、必要とする者に与えよ。

ステンダールの神聖なる槍Stendarr’s Divine Spear

ステンダールの篤信者、輝きのプトラス 著

不浄なるものすべてを滅ぼし、

その切っ先と輝きで敵を刺し貫き、

そのオーラは我らを高揚させ、

邪悪なる敵から力を奪う。

デイドラ、アンデッド、獣人、

悪鬼たちを打ち倒す。

我らを再び清め給え、屈強なるステンダール、

槍と王家に忠実なれ!

セリヨルミンウェの翻訳Ceryolminwe’s Translation

元々これらのアイレイドの断片は、古代の英雄にまつわる長い記録の一部だと思っていた。翻訳すればするほど、その確信がなくなっていく。たとえば2番目の抜粋箇所で私が「(技術)」と訳した言葉。これは剣のようなものの刃を表すこともある。切ることや切断についての記述と、絆の兄弟についての記述も相まって、実際の武器について書かれているのではないかと考えるようになった。

文の大部分が抜けていたり、様式や構成が独特のものであるため、通常の翻訳よりもさらに難しいものとなっている。何かを見落としているのだろうが、この部屋にあるもののほとんどがひどく損傷しており、完璧な理解は永遠に得られないのではないかと思っている。

「…八重の恵みを受け、正義の重みを背負っている。あなたが最初に見つけた血はジャンピングウルフから流れたものだった。あなたはその両手を切断し、殺人の報酬を与え、奴隷のように地面を這いつくばらせた。その時まであなたは生まれていなかったが、ここに自分の役目を見つけたのだ」

「スノースローテッド・スロングへの勝利を決定づけたのは、あなたの(技術)ただ一つだ。あなたは空高くから両の手で祈り、奴らは骨を一つずつ闇に葬られながら、怯え、命乞いをした。あなたの絆の兄弟はあなたを(高め)、あなたは彼の号令で星を降らせテントを燃やし、奴らが面前に引きずり出されると、共に笑っていた」

「ああ、栄光と(不明)!あなたの暴力的な物語は3つの世界で響き渡り、その間に光り輝く道を作っている。あなたは名を盗む者、あなたの前に立つ者の伝説を破壊する。あなたは星明りから作られ、人の骨によって研ぎ澄まされている。あなたは相応しい者のためにだけある」

私は護衛に払う金が尽きてきたので、そろそろ行かねばならない。最深部の部屋の扉を開ける方法はとうとう分からなかった。また来るしかないだろう。見つかる限りの全ての破片を摺り写していく。この発見をもってすれば、資金の追加申請が通らないはずはない——中に未発見のアーティファクトが眠っているかもしれないだろう?

ドラゴンガードの遺産Legacy of the Dragonguard

ブレイズの歴史家 キアサ・ヴェーダ 著

子供たちが学校で教わる通り、第一紀2700年にタムリエル北部はアカヴィリの軍勢に侵略された。強大な力を持つアカヴィリの戦士たちがスカイリム全土を破壊し、歯向かうものすべてを滅ぼしていった。そしてペール峠で、レマン将軍率いるシロディール軍に出会った。短い戦いの後、アカヴィリ軍はレマンにタムリエルで探し求めていたものを見つけたと言い、降伏した。

アカヴィリを自身の軍隊に加え、レマンは進軍した。タムリエルの地をほぼすべて平定し、皇帝となって第二帝国を築いた。アカヴィリの戦士の中でも最も強く、賢い者たちがドラゴンガードとなり、皇帝レマン直属の軍となった。

続く200年の間、ドラゴンガードはレマン王朝を守護し、ドラゴンから直々に学んだという能力で代々の皇帝を守った。これはタムリエルの時代よりもずっと前から、アカヴィルに存在していたものである。

しかし2920年にレマン三世が暗殺され、レマン王朝(および第一紀)は終わりを迎えた。公式にはドラゴンガードは解散したが、一説によると、皇帝を守ることができなかった不名誉を恥じての解散とも言われている。しかしヴェルシデュ・シャイエが最高顧問としてルビーの玉座に就いた時、ドラゴンガードは非公式に再召集され、名誉ある護衛としてよりも、主に密偵部隊としての活動を担うようになった。

それ以外の元ドラゴンガードのメンバーはそれぞれさまざまな道に進んだ。この中には元百人隊長、ディニエラス・ヴェスが立ち上げた組織に加わった者もいる。この組織は後に、戦士ギルドとして知られるようになった。また他の者は流浪の冒険者となり、戦闘の訓練師や傭兵として、自分たちの技術を売りながら生活するようになった。

その中の1人に、元ドラゴンガードであり、大師範としてだけ知られている者がいる。今ではその名前は記録に残っていない。新しい激動の第二紀に、彼は自ら古代アカヴィリの武術と秘術を存続させるべく伝えていく使命を負った。しかし、自らの技術を教える代わりに、教わった者がまた他の者へ、その技術を伝えていく条件を付けた。これこそ私たちが現在「ドラゴンナイト」と呼んでいる者たちの起源である。

ドラゴンの爪を見よTo Smite with Dragon Claws

(不敵なる200人の戦歌)

我らはドラゴンナイト。我らはドラゴン。

我らを攻撃するなら、鉤爪が迎え撃つ。

我らを殴るなら、鋭いトゲを食らう。

我らを傷付けても、傷口はふさがる。

我らの怒りを買うなら、炎に包まれる。

我らから逃げ出しても、後を追って捕まえる。

お前は勝てない。我らは負けない。

我らはドラゴンナイト。我らはドラゴン。

トラシウス・メントの日記Journal of Thracius Mento

収穫の月3日

とうとうセンシャルに到着した。疫病の発生により大混乱が生じていた。自分の弱さを実感した。今日、犠牲者の姿を見て、嫌悪を感じてしまったのだ。引き返したかった。だがマーラが私をつなぎ留めた!皮膚のただれ、血の混じった咳、痛みに苦しむかすれた叫び声!もう少しで逃げ出すところだった。しかし私のように知恵ある者が逃げ出してしまったら、どうやってこの疫病を治癒できるというのだろう。そしてどうやって疫病を防ぐというのだろうか?ナハテン風邪を勝利させるわけにはいかない。私がこの疫病を終わらせる手がかりを見つけてやる!

収穫の月8日

街には他にも私のような者たちがいる。故郷を離れ、治療方法を見つけるために自分の命を危険にさらす者たちだ。仲間がいてうれしい。私たちはお互い協力し合って、この病気で死んでいく者たちを楽にする方法を見つけた。患者たちを(そして私たち自身も)頭からつま先まで包むことで、皮膚のただれの露出を減らした。鶏ガラのスープが咳を和らげるという噂は本当だったようだ。だが私が持って来た治療薬では1人の魂も救えなかった。一度症状が出てしまえば、もう進行を止めることはできない。

収穫の月12日

すべてを試した。薬、軟膏、香料。祈りまでも。だが誰一人として回復していない。とても疲れた。焦りと悲しみで食べることもできない。胃がムカムカする。目はかすんでいる。息をするのも苦しい。休息が必要だ。分かっている。だがまだ希望は失っていない。

ニベンの父、断章1Father of the Niben, Fragment One

第一の断章の融合

翻訳・解説:フローリン・ジェリル

序文:

誰かの伝記を書くことは難しい。題材の人物を見極めるにも、いつも何冊もの年代記に書かれた偏った記述を見比べなければならない。ここにある男の記録がある。名前は水先案内人トパル、タムリエルの初期のアルドメリ探検家として知られる。叙事詩「ニベンの父」は、現代にわずかに4つの断章を残すのみである。しかし、これらの断章が、水先案内人トパルがタムリエルの周りの海を航海していたかもしれないという、論争の余地ある面白い見解を神話紀中期に提供した。

「ニベンの父」は水先案内人トパルの航海を書き連ねた記録文書にすぎないが、彼の存在を証明するだけのものではない。サマーセット諸島にある偉大な水晶の塔の財宝の中に、彼の荒削りだが人を魅了する地図がある。それは彼がタムリエルに残した遺産である。

アルドメリの「ウデンドラ・ニベヌ」の翻訳、「ニベンの父」は私の作品であり、他の学者は私の選ぶ言葉に賛意を示さないかもしれない。私は原作の美しさに応える翻訳に仕上がる保障はできない。私はただシンプルで首尾一貫したものを目指す。

断章1

二番目の船にはパスクイニエルが乗っており、水先案内人は
イリオ、「道の石」の指す
南方へと向かった
三番目の船にはニベンが乗っており、
水先案内人はトパル、彼らは「道の石」の指す
北東へと向かった
水晶の塔から命令を受け、
八十ヶ月の航海をし報告に戻る
ニベンだけファーストホールドへと戻り、そこには
金や香辛料、毛皮、生きてる死んでるに関わらず
変わった生き物が空高く積まれていた
旧エルノフェイのトパルはなにも見つけられなかったが
航海で訪れた驚きの地
すべての話を語った
六十六昼夜、彼は激しい波に打たれ、
渦巻きをやりすごし、
炎のように焼き付ける霧の中を航海していたところ
大きな湾口に着き、
彼らはおだやかな谷の陽光に輝く野原に降り立った
乗員が皆休んでいると恐ろしいうなり声が聞こえてきた
真っ暗な谷から見るもおぞましいオークが姿を現した
人を食べてしまう歯には血の塊がついていた

何世紀もの間、古代アルドメリの難破船やら桟橋から、奇妙な水晶玉のようなものが発掘された。それは深遠の暁紀~神話紀の芸術品で、それぞれが具体的な方向へその軸を回転させる性能のものであるとわかるまで、考古学者たちは頭を悩ませた。それは南を指すもの、北東を指すもの、北西を指すものの3種類あった。それらがどのようにして動くのかはわからないが、ある特定の力と波長が合うつくりになっているようだった。これが「道の石」のかけらであった。それぞれの船の水先案内人が自分の船を行きたい方向へ向かわせるのに使っていた。北西の道の石を持つ船は、船体を北西のスラスやヨークダへ向かっていった。パスクイニエルは南の道の石へ、ピャンドニアへ向かって航海しなければならなかった。トパルと彼の北東の道の石はタムリエルの本土を見つけた。

この断章から、3隻の船が旧エルノフェイへ戻る道を探すよう指令を受けていたことがわかる。今もサマーセット諸島で生きるアルドメリが、祖国の姿を知るためであった。本書は水先案内人トパルの研究を目的としており、アルドメリが旧エルノフェイから集団移動したことに関する説を論じる余地はない。この詩を自書の引用元としてのみ使うならば、数隻の船は旧エルノフェイを去ったあと嵐に遭ったという言い伝えを信じている学者に賛成する。生き残った人々はサマーセット諸島へ帰る道を見つけたが、「道の石」を持っていなかったため祖国がどちらの方角にあるのかはわからなかった。結局、この3隻がまったく別の3つの方向へある1ヶ所を探しにいく理由はどこにあるのだろうか?

もちろん1隻だけ戻ってはきたが、ほか2隻のうち1隻、もしくは2隻ともが旧エルノフェイを見つけられたのか、海上で滅びてしまったのか、古代ピャンドニア、スロード、ヨクダの近くまで行けたのかどうかはわからない。アルドメリが特に頭がおかしいのでなければ、3隻中少なくとも1隻は正しい方向へ向かっていたものと思われる。それがトパルであったのだろうが、彼は北東といってもそれほど遠くまでは行かなかったのであろう。

トパルは船をファーストホールドから北東へ出した。偶然にもほかのどんな陸地も見つけずにアビシアン海へと向かう航海ルートであった。もし彼が東へ真っ直ぐ向かっていたら、現代のシロディールのコロヴィア西部へ数週間のうちに到着し、もし南東へ向かっていたら数日でヴァレンウッドの丘へ到着していた。しかしこの水先案内人は、自分を信じて、我々が現代でも使う地図を頼りに、アビシアン海を抜け北東へ真っ直ぐ船を走らせ、イリアック湾へと入っていき、出航して2ヶ月後には現代のライヒ・グラッドキープの近くの土地へと辿り着いた。

この詩の中で、南方にある緩やかな起伏の丘があるところと言えば、ハイロックとしか思えない。その場にいたものは誰でもそう思ったであろう。当然、問題はオークがその地にいたとするこの明確な言及は何なのかということだ。オークはアルドメリが入植するまで出現しておらず、広がったのはレスデインの時代、トリニマクとボエシアの有名な戦いの後のことだからである。

ノルドの防具職人と武器職人Nord Armorers and Armsmen

ノルドの鍛冶屋は自分の金床やハンマー、やっとこに特別な親近感を抱いている。ノルドにとって、(武骨ではあるが)優れた武器と鎧の作成は剣や斧、ハンマーを扱う技術と同じくらい重要である。そうした技術は若い頃から教えられ、ほとんど義務となっている。ノルドの防具職人や武器職人がその技を磨くにつれ、鍛冶場は第二の家となる。すぐそばにあるのは皮なめし台である。北方のあらゆる獣の皮がここでその耐久性や加工しやすさを計測される。その上には鉄、鋼鉄、そして鋼玉の合金が重ねられる。そうしてできるのはより密度が高く、他の地域の武器よりも鋭く食い込む鋼鉄である。

ノルドが自分の刀剣に「針がある」と言うとき、それは単に切れ味のことだけを言っているのではない。迷信深いノルドの鍛冶屋は、自分が作成したすべてのものに野生の蜂の蜜を一滴加えると言われている。その理由は遥か昔に忘れ去られた伝承の中に埋もれてしまったが、これは広く行われている。今日においてもなお、ノルドの防具職人は自分の焼き入れ用桶にまずハチの巣を潰し入れてからでなければ、決して鍛冶場を使わない。

バーンダリの羊肉シチューBaandari Mutton Stew

8人分

角切りの羊肉 2ポンド
スープストック 1カップ
玉ねぎ(大) 1個 みじん切り
トマト(小) 4個 潰す
ジャガイモ 2ポンド 皮を剥いて4等分にする

材料を大きな鉄鍋に入れて火にかける。
バターの塊を加えてかき混ぜる。肉が色づいたら、温かいスープストックをジョッキ1杯加える。火の端に鍋を押しやり調理する。必要なら塩や胡椒を足す。

腐ったら捨てる

代わりにケーキを食べなさい

ハイエルフの宝飾技術The Pretension of High Elf Jewelry

エルデンルートの宝飾師、エルレディス 著

我々ウッドエルフにとって宝石が重要でないわけではないようだ。恋人に持ち帰るために、倒した敵の骨を彫刻するほど好まれていることはほとんどない。よく調理した尻肉の塊が一緒にあれば、すぐにロマンティックな機会が楽しめる。

だが、他の多くのことと同様、ハイエルフは宝飾技術において、まったく違う段階に進んでいる。彼らは単なる職業の選択肢と考えていない。イフレにかけて、情熱とさえ考えていない。それは運命。彼らに与えられた使命なのだ。すべてについて聞きたければ、気軽に聞くといい。彼らは喜んで、うんざりするほど話してくれるだろう。それは経験した。

私の理解できる範囲で言えば、ハイエルフの宝飾技術は世代を通じて受け継がれてきたのが普通である。それはハイエルフにとって意味のあることなのだ。家の遺産を受け継ぐことは、期待されるだけでなく尊敬を受けることでもある。彼らはみな、そうやって互いを尊重する。仕事を正しく行っている限り、王族さえも漁師の家を称える言葉を口にする。タムリエルの他の地域で、そのようなことは決して言えないだろう。

認めざるを得ないが、彼らの宝石は美しい。一般のハイエルフの指にはめられたほど精巧な細工の指輪は、目にすることができない。本当に上品で、精密ですらある。輪と模様は、最小サイズであっても分かちがたく結びついているようだ。複雑な単純さがある。待て、これで説明になっているだろうか?

言いたかったのは、ハイエルフが作る宝石が自然に見えるということだ。木の枝や流れの中にできる渦のように。方法はわからない。あのような長い伝統を通じて受け継がれてきた技術なのだろう。ハイエルフは生涯を通じて技術に磨きをかけるだけではない。世代を越えて技術に磨きをかけているのだ。

サマーセットを訪れている間に少し学びたいと思っているが、できるのかどうかはわからない。私に技術について話してくれる人を見つけられなかったからではない。断じて違う。何百年も前に曾祖父母の伯父が思いついた技術か何かについて、何時間もだらだらと話す相手しか見つけられなかっただけだ。

そしてまだここで、私自身の技術についてはエルフの誰にも尋ねられていない。それはあまり驚くことではない。なにせ、私は骨を彫刻する泥だらけの小さなウッドエルフに過ぎない。

ハスクと骨Husks and Bones

ソレクシウス・レントゥルスの日記

栽培の月12日

ボスがどこかのウッドエルフから地図を買ってきて、今まで見た中でエルデンルートまでの最短ルートが示されていると言ってる。他のやつらより早くそこに木材を輸出できれば大儲けできると考えてるようだ。契約があるだか何だかで、ウッドエルフは自分らの木を伐採しないそうだ。木と契約とは笑えるな!バカエルフどもめ。金が用意できるなら、品を持って行ってやろう。あっちの方には誰も行ったことがないが、いつものエルスウェアのルートと違ってきっと新鮮だろう。陽射しの強さにも嫌気がさしてたところだ。

栽培の月18日

エルデンルートには気持ちいいベッドがあるといいな。あと、虫が少ないと助かる。こんなにたくさんの虫を見たのは初めてだ。手ほどの大きさのある甲虫に、何本足があるのか考えたくもないようなウネウネしたもの、しかも噛まれるんだ!動きを止めた途端にもう体中を這いずりまわっていて、かゆくて夜も眠れない。村のようなところも通っていないし、荷馬車を通すために道を切り進まないといけない。そもそもこれが本当に道なのかどうか怪しい。まるでずっと誰も通っていないかのように草木に覆われている。

栽培の月24日

昨夜、故郷のルースティング・クエイルにいる夢を見た。大好きな酒場だ。あんなうまいエールは飲んだことがない。談話室でマクシンティウスが面白い冗談を言って、俺はエールを噴き出して笑いが止まらなかった。すると目覚めたんだが、笑い声はやんでいなかった。叫ぶような甲高い笑い声が木々の方から聞こえてきた。あの難しい名前のアルゴニアンの護衛が見張りをしていたのだが、彼は何も見なかったそうだ。辺りを調べたが笑い声は止まり、結局そわそわしながら火のそばに座った。フリンの入ったフラスコを口まで運ぶと、じたばたする足の感触があった。口の中でだぞ!他のみんなのフラスコや服にもたくさん入り込んでいた。アカトシュよ、怒りの炎を!

真央の月2日

事態はおかしくなっていく一方だ。みんな早く終わらせたい一心で今日は倍速で切り進んでいたのだが、先の方に大きなクワガタがいることにマクシンティウスが気付いた。ただの大きい虫じゃない、巨大な虫だ。狼ぐらいの大きさだった。凄まじい大きさのハサミに、光沢感のある甲羅。ただ歩いているだけで特に何をしているわけでもなさそうだったが、遠くからでは分かりにくかったのでゆっくり近づいた。石を投げたら当てられるぐらいの距離まで近づくと、何かがおかしいことに気付いた。脚が、まるで人間の脚のようだったのだ!いや、人間の脚だった!その瞬間奴らは急に立ち上がり、笑いながらこちらへ走ってきて、野営地から物を盗って木々の中へと消えていった。追いかけようとしたが、アルゴニアンの放った矢も甲羅に当たって跳ね返ってしまった。あいつらはウッドエルフだったのか?かなり野性的なのもいると聞いたが、虫の恰好なんてするか?盗賊というわけでもなさそうだ。誰も傷つけず、ほとんど何も盗っていかなかった。

真央の月4日

もうたくさんだ。引き返す。エルデンルートまでたどり着ける気がしないし、誰だか知らんがたどり着いてほしくないらしい。どれだけ金を積まれても割に合わない。こんなところにいるくらいならカジートと値切り交渉してる方がましだ。今回は水に薬を盛られた。そうに違いない。誰が何をどうやって入れたのか分からないが、真夜中に目覚めたときにはガイコツがキャンプファイアの周りで踊っていた。動けなかったがぼんやりとした視界の中で見た。変な音楽の中でガラガラ、シューという音や、歪んだ低音のフルートが聞こえた。奴らは骨を着ていたのか?はっきりしていることは一つだけだ。利益など糞喰らえだ、我らは引き返す!

マスターズ・ホールThe Masters’ Hall

作者不明

未だ手の付けられていない遺跡の噂を聞いて飛び出した我々は、まだ青く楽観的だった。準備、計画、地図、全てが甘く、スカイリムとシロディールの間のジェラール山脈で、険しい岩山と霧の中で迷ってしまった。道も分からず空腹で、凍傷になりながらも、山の上の方で半分雪に埋もれた入口を発見できたのは本当に運が良かった。

難解な装置で封じられた扉をこじ開けた頃には物資が底をつきかけていたが、それでもやった甲斐があった。封を解いて薄暗い中を見たとき、噂は本当だったと確信した。長い間泥棒にも荒らしにも、誰にも立ち入られることのなかったこの遺跡で、一体どんなものが見つかるだろう?

その時点では見当もつかなかった。入口がすでに独特だった。光を放つ鉄製の階段は派手に形作られ、奇妙な彫像や紋章が彫り込まれていた。私のブーツが最初の段に当たった瞬間に音が鳴り、みんな驚いた。寒さから逃れたい気持ちと、発見への期待感で、我々は次々と甘い音を鳴らしながら足早に階段を下りた。

階下には、男が縦に50人ほど寝転んでも入りそうなくらいの広さの、丸い部屋があった。天井は闇に隠れて見えないほど高く、部屋の中央には仁王立ちで腕を広げた巨像が13体、円になって立っていた。そのそれぞれが異なる鎧を着ていた。全てが違う材質で作られていて、ぱっとみて分かるものもあったが(鋼、黒檀、鉄など)、分からないものもいくつかあった。

鋼や貴重な石で造られた奇妙な角を兜や関節部に着けているものや、模様や言葉の刻まれたものも多かった。部屋の作りを見ていると、大規模ながらも物の配置にとてもこだわっていて、何かを崇拝するような神聖な雰囲気が漂っていた。我々は鍛造や金属細工について詳しくないことを残念に思いながら、次々に像を見て回ってはその鎧に見入っていた。

それらの中心には銅のモノリスがあった。13面体で、像たちの着ている鎧と関連していそうな文字や図形が上から下まで刻み込まれていた。我々はそれに近づいたのだが、目の前に広がる謎めいた神秘にとらわれ、自分たちが侵入者であることを忘れ、必要な注意を怠ってしまった。私はその金属に触れようと手を伸ばしたのだが、肌が触れた瞬間、混沌が巻き起こった。

そこから覚えているのは、仲間たちの悲鳴、眩い光、そして階段を駆け上ったときの不愉快な音ぐらいだ。再び雪の上に着地したとき、自分が一人であることに気付いた。傷つき、冒険仲間を失ったことに深く悲しみつつも、神々の加護を受けて何とか小さな村へとたどり着くことができた。その後二度と入口を見つけることができなかったが、秘密はまだ雪の中に眠っている。

マズバー・ドーの助言Mazubar-do’s Advice

長い年月の中で、私が学んだ大事なことが1つある。ああ、それともう1つ。私の知っている大事なことは2つあり、それは戦いと踊りである。その2つは密接に関係していてパートナーのようなものなので、時々混同してしまうこともあるが、大目に見てもらいたい。

戦い、そして踊るためには、足を軽く速く動かし、つまずかないようにする。戦いであれ踊りであれ、つまずくことは死を意味する。すなわちそれは喉元に剣を突き立てられることか、恥と拒絶の刃で刺されることだ。両の足が、次の拍もその次の拍も着地する場所を把握していること。そして大胆であること。主導権を握れば、パートナーも敵もそれについてくる。あなたは力強く才気溢れる動きの達人となれるだろう。

感動させねばならない。内なる力を外へ、前へと放出するのだ。考えてもみろ。汚く低俗な物乞いと踊りたがる踊り子はいないだろう?ボロボロの薄汚い装備を着けた者を恐れる敵はいないだろう?自分が誰なのか、何になりたいのか、それを伝えるような衣装を用意しておいた方がいい。あなたは勝者になりたいのだ。トップに立ちたいのだ。

我らにはジョーンとジョーデの加護と導きが必要であると、ファドマイは知っていた。同じように、あなたも右と左の手を使わねばならない。2つの月は別物だがどちらも月であるように、あなたも両手に武器を持つべきだ。同じ武器でなくていい。とにかく武器だ。月はどちらも丸であり、丸と四角ではない。踊りについても同様だ。右手に左手を、左手に右手を持つが、どれも手には変わりない。

戦いと踊りには、リズムがある。潮の干満のごとく、押しと引きがある。ちょうど良いタイミングで回れるような、熟達した動きを見せねばならない。相手の合図を見て、前に出るタイミングや後ろへ引くタイミングを見極めねばならない。相手は自分を映し出すものでしかなく、差し迫った場面では無視してよい。良い戦いや踊りほど、気分の良いものはない。練習すれば、全ての動きが必然的に型にはまっていき、思い描く通りに流れていくのが分かるようになる。そうすれば、勝つ。

ムンダスの心臓で鍛えよForged in the Heart of Mundus

ブルーマのドラゴンスミス 著

ムンダスの子であるなら、そのまさに心臓にある力を利用することを学ぶべし。己に命を与えた世界の大地に立つ足で、大地の支えを感じ、その力の一部となり、幸いのために、災いのために、その核となるものを呼び起こすことができる。

強固な岩で、攻撃に備える鎧と仲間を支援する力を見い出す。溶岩の熱で敵を焼き、灰の雲で敵の動きを妨害する。仲間を金属のごとく強化し、敵を彫像のごとく石化させる。

ムンダスの力は己の中にある。溶岩流が火山から流れ出るように、ムンダスの力を己の中に流せ。己の憤怒を糧とし、己の砦を強化せよ。何物もお前を止められない。お前はムンダスの子なのだから。

モラートの稲妻理論Mora’at’s Theory of Lightning

コリンスの魔術師 小モラート 著

素人や見習いの魔術師の誰もが経験すること、それは雷撃呪文を間違えることだ。魔法が自分に跳ね返ると叫び声が上がり、全身の毛が逆立ち、ショックが体を走り尻尾の先から抜けていく。そしてその者は初めて真剣に考える。稲妻、それは一体何なのだろう?

モラートの話を聞いて欲しい。この者が説明する立場にあるからだ。必死に勉強し、何度も入学試験を受けて、モラートはコリンスの魔術師ギルドホールに正式に認められた修行者になり、魔法の問題について権威を持って話せる立場についた。この者はここのところ稲妻に関する事柄を研究している。アルケインの学者が行うように、それを専門として。そして、その問題については独自に、少なからぬ考えを巡らせてきた。

その結果、この者は1つの仮説に達した。

雷撃、それは炎や氷結と同様、自然の力の姿をした魔法の力の現れだ。ジャ・カジートなら誰でもこの力で遊んだことがある。じゅうたんの上で足をこすって、伸ばした爪から出る小さな火花で兄弟をピリピリさせる。またはふくらませたネズミの革の浮袋を自分の毛が立ち上がるまでこすりつけ、それを自分の胸や腕に「貼り付け」る。

だからこの者にとっては、雷撃が繊維状の物体特有の性質であり、それが摩擦により刺激されて火花になることは、子供のころから明らかなことだった。これは稲妻についても同様だ。雲は巨大なテンマーの脱脂綿と同じで、嵐が空に浮かぶ繊維の塊とぶつかることで摩擦が生じて、雷撃を生成する。

では、魔術師ギルドのこの者たち力のある魔術師が雷撃呪文を唱える時、実際に何が起こるのか?この者の説明はこうだ。ムンダスの世界は物質とマジカという糸から編まれた巨大なタペストリーだ。雷撃呪文はそのタペストリーの縦糸と横糸を通して、繊維を激しく揺り動かしながらマジカを運んで操る。これにより火花が生成され、それが一体化して魔法の稲妻となる。分かるだろう?

こういった直感は熟練した魔術師であればたやすく得られる。この仮説を賢者に伝えたところ、この者は賞賛と激励を手にした。実際、今やモラートは本物の魔法学者になった。この者は、明日にはまた別の仮説を思い付くかもしれない!

ヨクダの宝石Jewels of Yokuda

熟練宝石職人、ドニエレ・ジオネット 著

レッドガードは、比類なき剣の使い手としての名声を獲得している。しかしアリクルの息が詰まるような熱気の中でしばらく過ごしてから、彼らにはただのデューンリッパーや墓泥棒よりもうまく切れるものがあるとわかってきた。もちろん、宝石のことだ!

センチネルを最近訪れていた間に、賢明な宝石職人で歴史家のベルザランという者と話す機会があった。彼によれば、レッドガードの失われて久しい故郷、ヨクダの丘には、至る所に火山性晶石や宝石の産地があるという。古代ヨクダの人々は、トパーズ、サファイア、アメジスト、オパールを採掘していた。いずれも豊かな色彩や滑らかな光沢で、どの石よりも高い価値がある。ダイヤモンドも豊富だが、無色のため捨てられていたそうだ!

幅の広いネックレスや重いバングルを作ることに加えて、ヨクダの人々はこの宝石を最も価値のある所有物、すなわち一族の剣を飾るために使った。彼らは柄頭や鞘、鍔、刃までに、精巧にカットした宝石を散りばめた。時を経て、この習慣は人気を失った。ほぼひっきりなしに続く内戦のせいで、レッドガードは美しさよりも実用性を選ぶことを余儀なくされるのが通例だった。それにもかかわらず、宝石をカットする伝統は根強く残った。ヨクダの宝石職人は武力よりも魅力に重点を移し、複雑なオパールの頭飾りを加工し、サファイアのアンクレットや幅の広いアメジストの指輪をじゃらつかせるようになった。ラ・ガーダの侵攻の時代になって、こうした職人が技術と伝統をタムリエルにもたらした。それ以来レッドガードの宝石職人が変わることなく伝えてきた道具と方法について、私は学ぶことができたのだ。

アリクルに行くことがあったら、宝石のついたレッドガードのナイフやトタンブ様式の指輪を買うとよい。実際にヨクダのうねる丘を目にする機会はまずないだろう。だがこうした宝物が、魂をかの地へ連れて行ってくれることは保証しよう。

ルーンストーンの謎Enigma of the Runestones

発明家テレンジャー 著

タムリエルの至るところで発見される神秘的なルーンストーンの起こりは、曖昧であり不明確だ。水晶の塔の賢者の間では、その本質や物質構成でさえ熱い議論の的となっている。神話史のサピアルチである尊者アンシリンクは、トリナーンの日記のとある難解な一節が、先駆の船乗りが古アルドメリスから到着した時、既にルーンストーンがここに存在したことを示しているという持論を展開している。しかしながら、付呪のサピアルチである「多彩なノリン」は、その起源は神話紀初期にさかのぼるとし、アイレイドの魔術師が実験に失敗したことで生じた予想外の産物だと強く主張している。

起源の真実がどうであれ、サマーセット諸島の魔法の優れた偉人たちによる長年の研究で、ルーンストーンの持つ様々な特性はほぼすべて特定され、武器、鎧、装飾品の付呪における使用についても解明された。大まかには3つに分類され、後の魔術師は、効力、品質、本質と呼んでいる。

付呪の目的では、これら3つの種類のルーンストーンは超自然的に補完するものとして理解される。付呪者は、それぞれの種類のルーンストーンを1つずつ組み合わせることによってのみ「グリフ」を作り出せる。「グリフ」とは、アイテムに魔力を与えるときに使う魔法の物質を示す専門用語である。

しかし、たとえ我々が魔法のアイテムの作り方を知っていようが、謎は残っている。ルーンストーンとは何か?我々は3つの基本的な区分を、効力、品質、本質と名付けた。だが、どういう意味なのか?名付け親である偉大な道化師ファリーズですら、意味を尋ねられた時に肩をすくめ、こう答えるしかなかった。「その名前がしっくりきたから」

3種類のルーンストーンがあるという事実ですら議論を巻き起こしている。二元性がアービスの基礎であると仮定するアヌ・パドゥの法則に矛盾しているように思われるからだ。リランドリルのカミロンウィは、ルーンストーンがたった3種類のはずがないと主張した。そして4つ目を見つけるために人生最後の200年間を捧げた。しかるべき分類は、そのように双数のペアになるという確固たる信念があったのだ。彼は、自ら迅速と呼んでいたこの「第4のルーンストーン」を見つけることはなかった。だが最後まで自身の理論は筋が通っていると言い続けた。

カミロンウィは正しかったのだろうか?通常の定命の者が認識できないある種の現実の中でのみ迅速のルーンストーンは存在するのか?それが、目下の答えられない問いだ。

レドランの秘密の料理Redoran Cooking Secrets

蟹肉のシチュー

 蟹肉 2つかみ
 だし汁 マグカップ1杯
 ニンニク 3つまみ
 タマネギ(大) 1個
 挽いたオート麦 1つかみ

タマネギを網で茶色くなるまで焼く。だし汁、ニンニク、タマネギを大きなボールで混ぜ合わせる。挽いたオート麦を入れ、とろみを出すようにゆっくりとよくかき混ぜる。蟹肉を加える。熱したかまどで、蓋付きで30分から1時間焼く。

カエルのマフィン

 カエルのひき肉 1ストーン
 米粉 1つかみ半
 パン酵母 1キューブ
 胡椒 1つまみ
 タイムの小枝

米粉、パン酵母、水少々を使って衣を作る。フライパンで肉を直火で焼く。肉が茶色くなり始めたら、タイムの葉と一緒に衣へ加える。胡椒を振りかけ、金属製のマフィン型に衣を流し込む。熱したかまどで15分間焼く。

ロットウッドの謎The Rotwood Enigma

彼がどこから来たのか、最後まで分からなかった。エバーモアを少し出たところで旅人を襲っていたロットウッド・ブッチャーズという集団を襲撃したとき、彼は現れた。奴らの隠れ家を見つけたんだが、私たちの知らない出入口が他にあったのか、中は予想以上に人数が多く不意をつかれた。奴らの汚い洞窟内に閉じこめられていたとき、輝く甲冑を身にまとった彼がどこからともなく現れ、一振りごとに山賊どもを切り裂いていった。一気に流れが変わった。1人、また1人とロットウッドの悪党が彼の刃に倒れ、ついにいなくなった。

礼を言って名を聞いたんだが、返事をくれなかった。混乱しつつも自分から自己紹介をして、わが社が北バンコライから山賊と獣を駆逐する事業を行っていることを説明した。それでも反応はない。少しいらつき気味悪がりながら、我々は洞窟を出て野営地へと戻った。彼もついてきた。黙ったまま顔も見せないつもりなら歓迎しないと伝えたが、無駄だった。みんな落ち着かずピリピリしていた。敵意はなさそうだったし、先のロットウッド大虐殺を見た後で彼に挑もうとする者はいなかった。

結局ずっとそのままだった。一言もしゃべらず、食事は野営地から出て一人でとっていた。睡眠もとっていなかったようで、夜になると木や石に寄りかかるだけで、鎧を一部たりとも外すことはなかった。滑らかで曲線美があり、羽のような変な彫りこみがなされていた。銀色に黒が渦巻いていて、そんな美しいものが彼の全身をくまなく覆っていた。最初は落ち着かなかったが(誰だってそうだろ?)、彼は我々が見つけ出した山賊以外を傷つけることはなかった。逆にそいつらはひどく痛めつけられていたよ!

彼は何度も窮地を救ってくれ、おかげで我々も熱が入った。罪のない人々を攫っていた汚いハグ、悪臭のスワンプハートにとどめを刺したのも彼だった。奴は我々の動きを鈍らせる悪質な魔法を使ってきたのだが、彼には効かなかった。農民と家畜を襲っていたイノシシのブラッドガットが葉を怒らせる者を崖から突き落とそうとしていた時、助け出したのも彼だった。私自身、何度か命を救われた。彼は疲れ知らず、恐れ知らずで、おそらくだが、我らの目標に熱心に取り組んでくれていた。

今になっても、彼に名前があったのかどうか疑問に思う。そもそも「彼」なのかどうかも。おそらく一生分からないだろう。6ヶ月間、彼と行動を共にしたが、その6ヶ月で我々はこれまでにない成功を収めた。メンバーまで増やしたんだ。冬が来ると、いつも通りエバーモアに戻って休暇に入ったんだが(寒い時期はなかなか仕事がない)、ある朝目覚めると彼はいなくなっていた。足跡も痕跡も何もなかった。消えたんだ。誰に聞いてもそんな奴は見たことも聞いたこともないと言われるし、話をするといつも変な目で見られる。それはどうでもいい。どこにいようが、元気でいい仕事をしていることを願う。

闇の魔法:3つの口実Dark Magic: Three Pretexts

金色の大蛇 書

「闇の魔法」として知られているアルケインの流派が、世俗の言葉でそのように侮蔑的に呼ばれているのは残念なことだ。そのため学習者はソーサラーの階級の中で、「邪悪な魔術師」として中傷される立場に追いやられる傾向がある。こういった危険な中傷を打ち消すため、次の3つの口実を心に止めておくと役に立つだろう:

第1の口実:マジカや他の魔術師の力を無効にし、奪い取り、食い物にする者がいる限り、闇の魔法の知識はならず者のソーサラーを抑止するための安全策として必要である。

第2の口実:敵意のあるデイドラが使用する有害な呪文の効果を再現することができるため、闇の魔法の知識は、デイドラの魔法の効果に反撃する方法を知るための役に立つ。

第3の口実:無知な者たちに恐ろしく忌まわしい魔法と思われているが故に、罪人にふさわしい刑罰を与えるために闇の魔法を使用することで、犯罪を思いとどまらせ、結果としてより良い社会づくりに貢献できる。

これなら非難する者たちも口を閉ざすはずだ。

偉大なる者たちの言葉Quotes from the Greats

スカポリウス・ピューレックス 著

アリーナ。鎧がぶつかりあう響き、勝利の高揚、敗北の泥、汗、痛み。そしてもちろん、黄金の硬貨が奏でる心躍る音色。タムリエル全土でこれ以上素晴らしいものはない。この最も高貴なスポーツに関しては、私はそれなりの通だと自負しているし、数年を経て自分の好みがはっきりしてきた。お気に入りのチャンピオンたちや、好ましい戦闘スタイルなどだ。その中でも二刀流で戦いに挑む戦士たちほど私を魅了するものはない。確かな技量、信じがたいほど統制のとれた動き、そして敵の攻撃を恐れない。彼らほどアリーナの真の精神を体現しているものはない。

アリーナに頻繁に通い多額の賭け金を支払ったおかげで、私はひいきのチャンピオンの多くに直接会う機会を得た。そして彼らがその傑出した戦闘スタイルについて語った言葉を集めてきた。彼らの言葉を広く世に知らしめることで、二刀流で戦いに挑む者たちが増えること、そして叶うなら私の訪れるアリーナでその姿が見られることを願う!

「たいていの人間は片手か両手持ちで1つの武器を扱う訓練しかしない。2つの武器で戦う訓練をするには、利き腕ではない腕に集中しなければならない。利き腕ではない腕だけでしばらく実践訓練を続けると、利き腕と同じように使えるようになる。身に付けるには長い時間がかかるし、始めは腕に力が入らずに諦める者も多いが、それでも続ける者はやがて闘技場で自由に戦うことができるようになるだろう!」—メイルストローム

「ミリラはアリーナに来る前は曲芸師だった。だから何本もの短剣を扱うコツを知っていた。ここの稼ぎはいい。だからカジートはここに残っている」—ミリラ

「すべてはスピードの問題だ軽い武器2本と素早い足さばき。ただ素早い攻撃を仕掛けるだけじゃない。相手の動きを先読みして、相手が予想もしないところから現われ、周りを走り回って相手に悪態をつく。対戦相手の平常心を奪うことができれば、戦いを有利に進められる」—「心臓打ち」ゴラニオン

「私には双子の姉妹がいた。騒がしいおちびさんだ!いつも私にまとわりついて、髪の毛を結んで飾り立てたり、お茶会ごっこに引っ張り込もうとしたりね。だから早くから2人をどうやって遠ざけておくかを学ぶ必要があった。多分それがすべての始まりだ。訓練を始めたとき、両手に1本ずつ武器を持つのは当たり前のように感じた。つまり始めるなら早いほうがいいってことだな」—「切断者」ミル・ドロスロ

「そうだ、盾は持たない。2つの武器で、岩のかたまりでも受け流せるようになるんだ。それが相手から武器を奪う一番いい方法だ。間違いない。だから二刀流が好きなんだ。相手の武器を弾き飛ばしてしまえば、相手はもう何もできない、そうだろ?」—処刑人

「二刀流については語るべきことがたくさんある。だから私は本を書いた!街のたいていの本屋に置いてある。タイトルは「生き延びるために戦い、戦うために生き延びる。二刀流戦闘術完全ガイド」だ!私の知り合いと言えば割引がある!」—塔のトディール

衣装についての紛れもない真実Undeniable Truths of Attire

完全無欠のエレヌーメ 著

現代の混沌とした環境下で魔法を学ぼうとする者は、タムリエルの魔法学の未来を脅かしている伝統に対する敬意の低下に屈してはならない。儀式は軽視され、学問としての本来の複雑さは、荒く不適切な分類分けへと変わってきている。これは許されるべきではない。このように高等技術が汎用的、「実用的な」活用術へと落とされていくのを防ぐべく、ちっぽけな努力ではあるが私も最善を尽くそうと思う。そのため真に魔法を学ぼうとする者のために正しい学習法を記載する。まずは基礎として、新人学習者のための適切な衣装だ。

上級者への扉を開きたい者、そのために研究と練習の時間を惜しまない者が身に着けるべき衣装はただ一つ、布のローブだ。ローブの着方を学ぶために貴重な時間を割くのは効率が悪い。魔法使いの防具は魔法であり、それ以外のことに時間を使うのは愚かだ。そのような下品な真似をする者は、革や鉄をいじっている間にマジカへの真の理解から遠ざかるだろう。

とはいえどんな汚い布きれでも使えるわけではないので、考えなければならないこともある。頑丈な材質を使用し、属性への耐性をつけておくべきだ。実験によって危険にさらされることもあるため、長袖で全身を覆っておくのは必須だ。錬金術と魔法は密接に関係しているので、植物の標本などを入れるためのポケットや袋があれば便利だ。探検隊を雇う金がなく自らフィールドワークを行う場合、生地を重ね、防水加工し、標本保管用のスペースを作っておくように。

もちろん見た目も重要だ。仲間からも敵からも、敬意を得ようと思えば聡明な空気を醸し出さねばならない。私のローブには一族の最も強力な者たちの名前を刺繍で列挙していて、防御魔法を使って神聖なまじないも編み込んである。他にはエセリアルの図表など、学問の分野を強調する刺繍を好む者もいる。私の知り合いの中では、見る者すべてに強力な魔術師の着そうな服に見えるよう、強い錯覚を編み込んでいる者もいる。

ローブは自分自身の一部であり、自分の意思をムンダスに示す手段でもある。締め付けの強い無意味な鎧を纏って戦闘に突っ込むような考えは捨て、自分の技術をあらゆる方面で完璧なものへと磨き上げることに尽力するよう、重ね重ねお願いしたい。自分自身の力で敵を退けられるようになれば、そのようなありふれた防具は必要ない。強力な雷撃を放つも、敵の頭を恐怖で毒すも良し。どんな形でも、極めることに心血を注げば、可能性は無限大なのだから。

影の吸収:仮説Shadow Draining: A Hypothesis

微光のフォックスバット 著

闇社会のナイトブレイドたちのいわゆる「影の魔法」を研究する者なら誰でも、襲撃者が負傷者から生命力と体力をじわじわと奪う吸収魔法のことはよく知っているだろう。神秘師の学者が直面する問題は、この魔法の仕組みをどう説明するかということだ。長い研究の末に、主に使用人とその家族たちが寝ている間に微弱な吸収魔法をかけ続けて、私はある仮説にたどり着いた。

魔法をかけられた者から術者へと、境界を超えたエキスの流れを生み出すことから、体力を吸収する魔法は瞬間転移魔法と関係があるように思える。超次元のマジカの感覚を通して、ナイトブレイドは離れた対象のひずみを知覚し、そこに「穴を開ける」のだ。その結果生じる裂け目から、対象により失われるエキスを吸収する。このように、転移において「影の中を歩む」代わりに、魔術師はある場所から別の場所へ「影の吸収」を行うのだ。

少なくとも私の実験はそれを示唆している。

影の中を歩むStepping through Shadows

微光のフォックスバット 著

ナイトブレイドの魔法の中でも、瞬間転移の呪文ほど役に立つ魔法はない。時とともに、この術には瞬間的な反応が最も重要となった。こちらにいた者が意志の働きにより、瞬間的にあちらへ移動する。

実際、経験豊富な学習者にとって転移魔法はもはや当たり前の術となっており、最初に覚えるのがどれほど難しかったかは、皆ほとんど忘れてしまう。古来から、この魔法の術は「影の中を歩む」と呼ばれており、まさに、この術を使いこなす鍵は「横方向を凝視」して、アービスの中にある存在や物体のそれぞれが生み出す影を知覚することなのだ。

もちろん影とは、不透明な物体が光を遮ることで生じる、文字通りの影のことではない。それぞれの物体から放たれる微小な気のことで、ムンダスの現実世界に存在するものが作り出す、深部の気配とも言える。これを知覚するには、超次元感覚に焦点をあてて学ぶ必要がある。職人はこの感覚を通してマジカの流れを知覚するのだ。ナイトブレイドがその場の対象のひずみを「感じる」ことさえできれば、いとも簡単に、範囲内のいかなる場所にも、境界を超えて跳躍できるようになる。

英雄の武器A Hero’s Weapon

リザベット・デルラスク 著

「英雄の武器」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか?おそらく短剣や、盾の後ろに隠れる兵士を思い浮かべる者は少ないだろう。あなたが思い浮かべるのは日の光で輝き、空気を切るかのように簡単に敵を切り裂き、鎧を纏った敵の集団をよろめかせるほどの一撃を放つ、立派な大剣だろう。それが英雄の武器だ。

私は部屋の下の中庭で訓練する兵士を長時間見てきた。最も強く、勇敢で、賢く、ハンサムな兵士は必ず大剣を選ぶことがはっきり分かった(自信あり)。残忍な力と巧みな動きを併せ持っていて、槌や斧のようにがさつでもなければ、小ぶりの剣や弓のように簡単に壊れることもない。使用者には強大な力が求められるが、同時に機敏さや洞察力も必要で、攻撃を避けるタイミングや受け流す方法も心得ていないといけない。

もちろん他の武器を使ったとされる伝説上の人物もいるが、同じだけの畏敬と感嘆の念を沸き上がらせる者はいないと納得いただけるだろう。重い鎧と大剣を背負って街に駆け込んでいく人を見れば、それは勇敢さを絵に描いたようなものだと分かるだろう。大剣使いは怪我を恐れない。敵は逃げるか、もしくは重い罰を受けることになると確信して戦闘に飛び込んでゆく。そんな人が近くを通り過ぎれば、その勇猛果敢な姿に気が遠くなるかもしれない。

そんな剣を使う者は英雄の心得を体現している。つまり、戦闘における全ての要素を極めることだ。重い物を持ち上げ、走り込んで力と耐久力を鍛え、動きや回避の練習をしているところを私はよく見る。大剣使いは他の兵士たちに比べてより厳しい訓練をしている。それは明らかだ。

誰もが英雄に向いているわけではなく、全ての兵士や冒険家が伝説になるわけでもない。日々の仕事や義務以上のものを目指し、戦闘が自分を呼んでいると感じるのであれば、目標を高く持つことを勧める。大剣の極みを目指せ!

円環の書:鍛造の限界The Book of Circles: Forging Maxims

フランダー・フンディング 著

粘土の溶鉱炉で炭火を起こす。歯を黒くする熱を

炭に砂鉄の層を加える

6ヤーバンになったら、鉄の上に炭の層を加える

炭の上に砂鉄を重ねながら、この過程を3日間繰り返す

冷却後、低炭素鋼と高炭素鋼を分離する

高炭素鋼を使って剣の表面を形成する

コツ・アジシアになるまで、アンセリムを剣の表面に鍛接し、重ね、鍛接する

卵を壊さずに削れるようになるまで、剣の表面を研ぐ

捧げ物のことをオンシに話し、コツの精錬の酒を飲む

それからアンセリムを重ねる

仮説上の裏切り パート1A Hypothetical Treachery, Part 1

アンシル・モルヴァー 著

一幕

登場人物

マルヴァシアン:ハイエルフ魔闘士
インゾリア:ダークエルフ魔闘士
ドルチェタス:シロディール治癒師
シアヴァス:アルゴニアン蛮族
亡霊
山賊数名
場面:エルデンウッド

幕が上がると、霧が立ち込めた迷路のようなヴァレンウッドの伝説的なエルデングローブの地形が見える。周囲では狼たちが吠えているのが聞こえる。血まみれの爬虫類の姿をしたシアヴァスが木の枝の間から現れ、周囲を見渡す。

シアヴァス:邪魔はない。

美しいダークエルフ魔術師、インゾリアが蛮族に手伝われて木から下りてくる。近くに足音がする。シアヴァスは彼の剣を構え、インゾリアは呪文詠唱の準備をする。何も現れない。

インゾリア:出血しているわ。ドルチェタスに治癒してもらったほうがいいわ。

シアヴァス:彼はまだ洞窟で唱えた多くの呪文で疲れ果てている。俺は大丈夫だ。もしここから出られて、他に俺よりも必要な人がいなければ、最後の回復の薬をもらう。マルヴァシアンはどこだ?

ハイエルフ魔闘士、マルヴァシアンとシロディール治癒師、ドルチェタスが木から重そうな宝箱を2人で抱えながら現れる。彼らは略奪品を運びながら、ぎこちなく木から下りようとする。

マルヴァシアン:きたよ。何で私が重い荷物を運んでいるのかはサッパリ分からないけどね。蛮族と一緒に洞窟探査に行く利点は、彼が戦利品を持ち運ぶからだといつも思っていたのにさ。

シアヴァス:もし俺がそれを運んだら、手がいっぱいで戦えないだろう。それに、もし間違っていたら言って欲しいんだが、お前ら3人のうち、誰1人としてここから生きて出られるほどのマジカを残していないだろう。地下であの数の小人を感電させて、吹き飛ばした後ではな。

ドルチェタス:小人たちですね。

シアヴァス:心配しなくても、俺はお前らが思っているようなことはしない。

インゾリア(純粋そうに):何のこと?

シアヴァス:お前らを全員殺して、黒檀の鎖帷子をいただくことさ。正直に言えよ…俺がそう考えていると思ったんだろう。

ドルチェタス:恐ろしいことを考える。どれほど卑しく、堕落した者でもそんなことを…

インゾリア:なぜ、やらないの?

マルヴァシアン:運び手が必要だからさ、さっきも言ってたじゃないか。宝箱を運び、エルデングローブの住民と戦うのは無理だからな。

ドルチェタス:ああ、ステンダールの神よ、意地悪く、自己中心的で、典型的なアルゴニアンの中でもあんたは…

インゾリア:それで、なぜ私に生きていて欲しいの?

シアヴァス:必ずしも生きていて欲しいわけではない。ただ、あんたは他の2人よりも可愛いから、ツル肌にしてはな。それに、何かに追いかけられたら、先にあんたを狙うかもしれないしな。

近くの茂みの中から物音がする。

シアヴァス:見てこい。

インゾリア:きっと狼よ。この森にはいっぱいいるもの。見てきて。

シアヴァス:インゾリア、選択肢があるぞ。見に行けば、生きられるかもしれない。ここに残れば、間違いなく生きてはいられない。

インゾリアはしばし考え、それから茂みへと向かう。

シアヴァス(マルヴァシアンとドルチェタスに向かって):シルヴェナールの王者はこの鎧にたんまり金を出すと思うぜ。それに、4人より3人で分けたほうが気持ちいい。

インゾリア:そのとおりね。

インゾリアが突然舞台上に浮揚する。半透明の亡霊が茂みから現れ、一番近くにいる者、シアヴァスに向かっていく。蛮族が悲鳴をあげ、剣でそれを突き刺す中、ゴーストは渦を巻く気体を彼に吹きかけ、彼は地に崩れ落ちる。次にドルチェタス治癒師のほうを向き、亡霊が哀れなドルチェタスに冷気を見舞う中、マルヴァシアンが炎の玉を唱え、ゴーストは蒸発して霧の中へと消えていく。

マルヴァシアンが、亡霊の低下能力により顔を蒼白にしているドルチェタスやシアヴァスの体を調べていると、インゾリアが地上に下りてくる。

マルヴァシアン:結局、多少はマジカを温存していたんだね。

インゾリア:あなたもね。彼らは死んでいるの?

マルヴァシアンは、回復の薬をドルチェタスの袋の中から取り出す。

マルヴァシアン:ああ。幸いにも彼が倒れたとき、回復の薬は壊れなかった。さて、これで報酬を受け取れるのは2人だけになったみたいだね。

インゾリア:お互いに協力しなかったら、ここからは出られないわ。好むと好まざるとに関わらずね。

二人の魔闘士は宝箱を持ち上げ、下生えの中を慎重に歩き出す。何者かの足音やその他の不気味な音に時折、足を止める。

マルヴァシアン:理解しているか確認させてほしい。あなたには少しばかりのマジカが残っていたので、それを使ってシアヴァスを亡霊の最初の餌食にすることを選び、私があなたより強力にならないように、私の限られた蓄えを使わせてゴーストを追い払わせた。一流の考え方だね。

インゾリア:ありがとう。道理にかなっていただけよ。他に呪文を唱える力は残っているの?

マルヴァシアン:当然。このようなときのために、経験を積んだ魔闘士は必ず小さくても非常に効果的な呪文をいくつかは知っているものだよ。あなたもいくつか切り札を持っているんでしょう?

インゾリア:もちろん、あなたが言ったようにね。

恐ろしい泣き声が空気を切り裂き、一旦止まる。それが消えてなくなると、重い足取りで再び歩き始める。

開錠技術の進歩Advances in Lockpicking

俺は作家じゃない。泥棒だ。盗むのは得意だ。文章を書くのは苦手だ。とにかく、錠前破りについて書く。前に、錠前の設計の本を読んだことがある。いい本だった。参考になることが、いろいろ書いてあった。

錠前の鍵穴が、傾いてるやつがある。いつも、曲がったピックを持ち歩くこと。そういう錠前には、曲がったピックがいい。俺はそうしてる、それでたくさん錠前を開けた。銅でできたピックを持ち歩くこともある。銅は曲げやすい。その場で、錠前に合った形に曲げられる。でも、銅のピックは壊れやすい。気をつけること。

錠前のばねにも、ときどき変なやつがある。全部が違うふうにはね返るから、開けるのが難しい。そういう時は、たいまつの火を錠前に近付ける。そしたら、錠前が熱くなる。熱くなったら、ばねは全部同じようになる。同じようにはね返るんだ。これをやるときは、火傷しないように気をつけること。

泥棒の中には、字が読めないやつもいる。字が読めないなら、誰か読めるやつにこの本を読んでもらえ。そしたら意味がわかる。

簡単に料理の達人になる方法Cooking Mastery, The Easy Way

マラカイト・シェフ 著

アブナー・サルン議長専属料理人

簡単に料理の達人になる秘密とは?それはたった一言、レシピです!料理のレシピがあれば(特にそれがマラカイト・シェフのレシピならなおさら!)、目分量なしで食事を作れます。だからレシピを人に頼んで、借りて、または盗んで(冗談です)、必要な食材を用意して、レシピ通りに混ぜ合わせ火にかけましょう。すぐにあなたも名調理師になれます!

ここでプロの小さな秘密をお教えします。20回中19回は、トップランクのシェフでさえ同じことをしているんです!確かにところどころで特別なスパイスを加えてレシピをアレンジすることもありますが、全部を無視するほど愚かではありません。完成したレシピには、何世代にもわたる料理人たちの経験が集約されているのです。シロディールのスイートロールのように簡単なものから、叫ぶチーズフォンデュのように複雑なものまで、何を作る時でも、キッチンではレシピがあなたの最高の友だちです!

議論の叩き台Settling the Debate

レールビン・ネラノ 著

伸縮性か保護性か?ネッチかグアルか?近所のコーナークラブで、マッツェを飲みすぎた人たちが熱く議論しているのをあなたも見たことがあるかもしれない。この件に関してはほとんどの職人が自分のやり方、伝統、商品を宗教的ともいえるほど高く評価している。私は中立的な立場で双方を紹介し、あなた自身で判断できる材料を提供したい。

タムリエルで最も上質な革は、モロウウィンドに生息するグアルとネッチからとられている。これについては議論の余地はなく、タムリエル中でそれらに匹敵しうる革は存在しない。これら自然にさらされた獣の皮は加工もしやすく、それと古代からのなめし技術も相まって、モロウウィンドの外で使われる熊やマンモスなどの革よりも頑丈なものが出来上がる。どちらも非常に上質な革だが、それでもどちらが防具として勝っているかの議論は絶えない。

ネッチ革の方がだいぶ薄い。曲がったり伸びたりしやすく、グアルのものに比べて染料にも強いので、繊細な装飾品には向いているといえる。同時に機動力を求める戦士にとっては理想的である反面、熱して強度を上げたとしてもやはり比較的破られやすい。さらに欠点を挙げるとすれば手入れに手間がかかることだろう。戦闘で使える状態に保つには毎週オイルとドゥルーワックスで磨かねばならない。また、ネッチ革は手に入りにくい。彼らは怒らせると危険で、熟練のネッチハンターでさえも恐れる強烈な毒を持っている。

対してグアル革は分厚く、全体的に重めの防具となる(当然ながら鉄の防具の重さには及ばないが)。そのため比較的作業が難しくなるが、防御力と耐久力には優れたものに仕上がる。頑固な伝統主義者に言わせるとグアル革の方が歴史が長く、先祖への敬意を込めてこちらを使うべきだそうだが、これについては私の知る限り証拠はない。機動力よりも防御力を求めるならば、グアル革の防具の方がお勧めだ。

どちらの革が防具として優れているかについてはどの職人も確固たる意見を持っているが、私はどちらにもなびかない。私の意見では着る者によって選ぶべきものが変わるからだ(防具職人もこの手のアドバイスはしてくれるが)。これであなたも防具の選び方について少し詳しくなれたのではないだろうか。ネッチを選ぼうがグアルを選ぼうが、はたまたそれらを組み合わせた特殊なものを選ぼうが、戦場での武運を祈る。

弓師と矢職人Bowyer and Fletcher

スカヴィンの下手くそ大工、ホアリー・ドゥロッツェル 著

いいかよく聞け、若者よ。これから弓と矢についてちょいと教えてやろう。もしゴブリンが戻ってきたら必要になるからな。だから、いまいましいけん玉なんか片付けて、注意して話を聞けよ。

ところで、弾力性のある木を使った1つの部品からなる弓は「自己」の弓と呼ばれる。それは己のみだからだ、分かるだろ?長弓使いのブレトンはそういう弓を好む。そしてこう言うんだ、糸を張る以前に、その射手の身長と同じくらいの長さの弓じゃない場合、それは弓ではないとね。彼らはイチイ、ニレ、トネリコを使うのが好きだ。そういう木はちゃんと育てば、芯がギュッと詰まっていて頑丈にもかかわらず、しなやかだからだ。

エルフの弓は一般に短めで、より複雑だ。いくつかの部品で組み立てられているため「複合」弓と呼ばれている。おい、聞いているか?こしゃくな若造どもめ。しかも、異なる素材が使われているのだ。中央部分の棒に使われるのは木材と決まっており、自己の弓と同じように湾曲している。しかし、その両端には、威力を強めるために反対側に曲がった部品が取り付けられている。この「逆方向に湾曲した」両端の部品には、角か甲羅が使われることが多い。

ところでヴァレンウッドのウッドエルフだが、ある問題を抱えている。というのも、彼らが私や君たち以上に自分たちの弓を愛しているのに、正気ではないグリーンパクトのせいで弓の胴体部分に使う木を切れないからだ。だから複合弓の全てを、角、虫の殻、枝角、あげくの果てに骨で作っている。その骨の曲げ方は私の理解を超えているよ。どうにかして処理し、お酢のようなものでグツグツ煮るらしい、とか何とか噂に聞いた。

次は矢だ。まずは、真っすぐに飛ぶよう矢の端に付ける羽から始めるとしよう。ほら、この矢。どのように羽がついているか見てみろ。この一直線の羽は、シャフトに対し平行になっているか?いいや、そうじゃないよな。今日はここまで。明日、その理由を説明しよう。

救済のお願いA Request for Relief

親愛なる財務府さま

今年私に課せられました税金について、考え直していただけますよう再度お願い申し上げます。確かに私は帝都に暮らす、認可済みの付呪師です。ですが状況が変わり、かつてはうまくいっていた商売も、今では収入を削るばかりなのです。

数年前、付呪師は付呪をかける対象物を使いました。さまざまな材料と道具を使い、必要な神秘の力をそれに吹き込むのです。このため、付呪師が競う相手は同じ街の同業者だけでした。多くの人々はわずかなゴールドドレイクを浮かせるために剣を下げて何百リーグも先の付呪師の元へ行くのは望みませんでしたから。街での値段は3、4人の付呪師による友好的な会合で決められ、十分な利益を上げられました。王家の権利により、街での営業には高額の税が課せられることもありました。

ですが今はすべてが変わりました。付呪師は望みの効果を閉じ込めたグリフを作るだけです。グリフは単なる宝石で、誰でも剣の柄頭や鎧の部品に取り付けられます。そうすればグリフ内の魔法がその品に流れ込みます。

簡単に思えますでしょう?これが市場の暴落を引き起こしたのです。街ごとの基準で決めた付呪の価格をつけるのではなく、タムリエルの全付呪師が競い合うことになってしまいました。ダガーフォールの三流付呪師が10個の炎のグリフを作り旅の商人に売ります。商人はそれを帝都に持ち込み、シロディールの付呪師たちが決めた値段よりずっと安く売るのです。

この競争により、今では材料費をわずかに上回るほどの金しか得られません。そしてこれでは、あなた方が課した税を払えないのです。

あなた方がよそで作られたグリフの輸入を止めないのであれば、私がこの商売を続けるための税を減らしてください。このままでは20年住み続けた家を売り、商人の息子の家庭教師など、他の職業に就かねばなりません。

お返事を心よりお待ちしております。

疲れ果てた賢者

愚かなる固定観念Folly in Fixation

エストリアーモ 著

強くなりたいのなら、偉業を成し遂げたいのなら、一種の訓練にのみ集中し他を排除せねばならないと教える者がいる。これは全くもって馬鹿げている。より多くを習得できる力があるのに、なぜ一つのことを極めるだけにとどまる必要がある?

同業者である魔法使いの間でこのような考え方が特に広まっている印象がある。物理的な戦闘技術やその他学問から遠ざけられ、完全に魔法にのみ専念させられる学習者は多い。結果的に全く興味も才能もない分野まで献身的に学ぶこととなる。

実践的な使い方よりも抽象的な説や実験に注力する魔術師世代を育成してしまうのは非常にもったいなく感じてしまう。あなたも権利を奪われているうちの一人なら、私が新たな可能性を示してやろう。新しい学問分野を開拓することを恐れず、力強く前へと踏み出すのだ。

タムリエルには魔闘士の伝統がある。彼らはその知力と魔力を、戦闘で破壊力を発揮する呪文に生かし、それでいて重装と剣を身に着け前線で戦うことも恐れず、戦闘の流れを変えることができる。歴史上の名だたる英雄たちにもこうして魔法と武勇を組み合わせていた者が多く、同じ道を歩む者にもっと出てきてほしい。

戦場で栄光をつかみ、敵を震え上がらせたいか?ならば物理的なものも神秘的なものも両方極めるのだ。鎧の小手から放たれる炎。自分への攻撃を鎧で吸収しつつ、周囲の敵に雷を降らせる。敵にとってこれ以上の恐怖があるだろうか?真の力とは弱点を全て排除することであり、それを達成するには複数の分野で知識と経験が必要だ。

これまで魔法にばかり携わってきたなら、おそらく誰にも武器の振り方や防御性能の優れた防具の着方を教わったことがないだろう。最初は愚弄され笑われるかもしれないが、鍛えてくれる人を見つけろ。どんなに弱い(物理的な意味で)魔術師でも、重い防具を身に着けるだけの力をつけることはできる。

戦闘と同時に魔法を使う訓練もできる。そうすることで凄まじい集中力を身につけ、スタミナを強化し、剣を振りながら魔法を使うこともできるようになる。これによりどんな難しい局面にも対応できるようになる。自分の体のことを考えず、結果マジカが尽きてくると隙だらけになってしまう魔法使いがあまりにも多すぎる。

薄っぺらい典型にならぬよう多極化することで、どんな状況にも対応できる力がつくと分かるだろう。最強というのは、単に一つのことのみを極めることではない。あなたにはそれ以上の可能性が秘められているはずだ。自分の能力を拡張しておけば、どんな戦場でどんな敵と戦おうと、戦える準備が整うはずだ。

訓練目標The Chopping Block

カジュルド・ブラックフォックス 著

「騙したな!」スレドルが怒鳴った。ロングハウスの角を曲がると急に立ち止まって斧を落とし、物切り台横に置かれた新しい丸太の積み木の前に立つ。「兄さんのように戦う方法を教えてくれるって約束した!」

「約束してるさ、チビ、忍耐を見せればな」スラロルがほくそ笑んだ。「その斧の使い方を学びたいなら、基本から始めなくては。薪を二つにできないのに、敵の頭蓋骨を切り裂けると思うか?」

「簡単だよ!見せてやる!」スレドルは兄が若い頃に使い込んだ鉄製のおさがりの武器をひったくって 作業台へ突き進んだ。力強く叫び、目を閉じて全力で斧を頭上に振り上げた。刃が丸太をかすめて地面に突き刺さると同時に、スレドルは前へよろめいた。

「そんなに簡単じゃないだろ?力はあるが目標に当たらなければ意味がない。さあ、見ていてごらん」スラロルは数回振ってみせた。「ずっと目標に目を据えて、しっかり立つのが分かるか?じゃあもう一度試すんだ」

スレドルの腕が疲れて柄を握る両手が赤くなった夕暮れまで木を切った。片手で斧を握ってまるまる1コードの木材を休みなしで切れるようになるまで、何週間もこのように単に木を切って訓練した。

ある朝、嬉しいことに日課をするために庭にやってくると兄が側に立っていた。何かが詰まった袋を積み上げ、ダガーフォール・カバナントの吠える獅子が描かれた木の棒を持っていた。

「力が強くなって狙いが良くなったが、別の目標にはどう対応するか見てやろう。さあ、この悪党にノルドの力を見せつけてやれ!」 彼は小柄な弟に間に合わせの木製の盾を投げた。そして朝の間、狙いを叫んでダミーの腕を振り続けた。スレドルはその間ずっと、弱い打撃を防ごうとしていた。

「トロール・ファングを本物の標的に試すのが待ちきれないよ!」近くの木陰で休憩をしていたスレドルは深く息をついた。

「そう名付けたのか?まあ、試す時があまり早くこないといいが」スラロルが返事をした。「たくさん学んだが、まだまだ道のりは長い。練習し続ければ気づかないうちに、戦場へ招集されてもよい準備が整っているだろう。待て、何だ?何か聞こえてくるぞ!」

スレドルは呆れた顔をした。「母さんが呼んでるだけだよ」と彼は反抗した。

「母さんの激怒はどんなカバナントの兵士よりもまずい!」スラロルが叫んだ。「急げ、母さんが探しにくる!」笑いながら兄は庭を横切り、家まで弟を追いかけた。

護身術Saving Your Hide

アンデルス・ゲマネ副隊長 著

手持ち武器の中でも極めて重要な短剣を、兵士達は軽視することが多い。そう。盗賊やアサシンでさえ好む、地味なブーツナイフのことだ。大剣で首を切り落とし栄光を掴もうと戦闘に突撃する夢を見る者達にとってどうして短剣の評価が低いのか容易に理解できるが、ピンチに陥った時の救いとなることがある。

経験豊かな兵士はどんな状況にも対応する準備ができていて、それは大小さまざまな武器に精通していることを意味する。短剣は唯一無二の友人になれる。隠れた刃は捕まった際に拘束具を切り離せるし、丸腰になっても戦うチャンスを与えてくれて、小道で皮を剥いで手軽な食事ができる。手に取って訓練すれば、機動性と近接戦闘について多くを学べる。

戦場に備えて完全な準備をしたいのなら、次の簡単な訓練を最低週一回するべきだ。私の助言を聞けば生存確率が10倍上がる。

早抜き:数本の小振りの短剣を手の届きやすいところに固定しろ。腿に一本、剣の側に一本、または肩に一本つけるのがよいだろう。やることは可能な限り速く短剣を引き抜いて使える状態にするだけだ。簡単に見えるが、この手順は習得の必要がある。素早く取り出せなければ死んだも同然だ。

投剣訓練:弓は優れた武器だが、矢が尽きて敵が突進してきたらどうなる?射手の射程距離で投剣の訓練をある程度行え。手首を固定して確実に振り切る形で、標的と柄が一直線上になったら放せ。早抜きの訓練と一緒にすると特に効果が上がる。

葦:この訓練には相手と練習用武器が必要になる。片手を背後に回してもう一方の手で短剣を握り、相手に全力で挑ませろ。目標は両足でしっかりと立ち続けて素早く体を曲げることだ。後退せずに、短剣が致命傷を与えられる攻撃側の懐へ向かうようにしろ。

何をぐずぐずしてる?表に出て短剣の練習をしろ。それに命を救われたら、私に感謝してもらっていい。

骨の源The Source of the Bone

セラレス 著

どんな獣の骨にも物語がある。植物の中を歩き、森林の上を飛び、狩ったり殺したり食べたりした記憶がある。その骨を矢に作り替えるとき、我々は死の物語を用意し、そこで選んだ骨は大きな意味を持つ。「矢はただの矢でしかない」と、これを笑う者や呆れた顔をする者がいるが、骨こそが最高の物語を伝えてくれることをボズマーは知っている。

狩りをする鳥の骨はほとんど的を外さないし、大きなトカゲやヘビのそれは素早く鋭い。狩られる側の動物の骨は速く、狩る側のそれは的に深く噛みつく。警告に使う元気な矢は、猿から作ると良い。獰猛な獣ほど、危険なものが出来上がる。

我らの知っているものをいくつか紹介する:

リバードループは不活発で川底に生息するが、そのトゲには悪夢にうなされる睡眠を導く毒がある。大きな犬ほどのサイズで、動きが遅いため捕まえやすいが、扱いづらく食べることもできない。密度の高い肋骨や背骨から作る矢には、流れの遅い川や悪夢の眠りの重みが乗っていて、敵の五感を鈍らせる。

センチタイガーの矢で与えた傷は、敵を干からびるほど出血させる。元の獣の爪のように、ギザギザで残酷な形に作ると良い。森林の中を歩き獲物に飛びかかることを覚えていて、素早く静かで、温い血液の味に飢えている。しかし自分で仕留めていないセンチタイガーの骨を使っても、同じ効果は得られない。敬意を勝ち取る必要がある。

強大な沼の怪物ワマスから作った矢は、骨の奥深くをガタガタ揺らす作用があると言い伝えられている。この恐怖を追い求めるなら、相応の努力がいる。ブラック・マーシュの奥の沼地に生息し、遭遇した者のほとんどを惨殺する。その骨は夜の闇のように黒く光り、触るとピリピリする。この力は何年も持続する。

我が民の知識の多くがそうだが、このような事実が書面で残されることは珍しいので、敬意をもって扱ってほしい。また、全ての射手はそれぞれ違う獣を好み、狩りを通してそれと絆を作るものだ。あなたも自分の獣を見つけ、真の射手となれることを祈っている。

詐欺師の謝罪A Grifter’s Apology

著者不明

かなりの額を払って購入した剣を家に戻って振ったら刀身が飛んでいったことがあるか?頭にきたに違いないだろう!魔法の剣と説得した口の達者なくそ野郎を探しに、おそらく激怒して市場に戻るが、露店がもぬけのからだって分かっただろうな。

俺みたいな奴から武器を買ったから分かるんだ。

そのとおり、俺は手に入れられる最も粗悪な偽物の商品をお前みたいな者につかませていた。弟子の偽物を買ったり、錆びた家宝を質屋で見つけたりして、英雄になるデカい夢以外にはあまり考えのない奴らから金を稼いでいた。そんな日々とは縁を切った。間違ったことをしたし、償いをしたい。だから知識を少し授けることにする。

最良の助言は信頼できる鍛冶屋から武器を買うということだ。あまり見栄えはよくないかも知れないが、派手なものは必要ない。俺は大量のドデカい両手剣を怖い目をした若者達につかませたが、穏当なものから始めるのがいいだろう――シンプルでしっかりした片手剣だ。戦士の優秀さは武器による。バラバラになるものを使っていては何も学べない。

市場の露店にどうしても行きたいのなら、まず武器を手に取ることだ。まず近くの柱で試し切りをせずに買うのは絶対ダメだ。商人が触らせずに言い訳を並べ続けるのなら、何かを企んでいる。

俺は気まぐれな動きや感傷的な作り話をして客達の気をそらすのが得意だった。近頃は貴族の騎士の未亡人がもう本当につらい状況にあってなんとか暮らしていて、俺は親切心の有り余る商人だから騎士の古びた剣の利益すべてをともかく彼女に渡すつもりで、一人では市場にやってこれない優しい老婦人に誠実なことをするんだ、なんて話をすれば、誰かをだましてペテンにかけるのは本当に簡単だって驚くだろう。

こうはなるなよ。おしゃべりは無視して武器を手にしたら、錆の上に塗られている痕跡をチェックしろ。刀剣の柄または斧の柄を慎重に調べるんだ。金属が他の物質と接触するところで粘着物の形跡を探せ。宝石がちりばめられている派手な武器はよせ。ガラスの偽物と宝石の区別が多分できないだろうから。一番優秀な詐欺師はほんの少しだけ幻惑魔法の知識もあるから、あると思っている魔法特性を疑って数分以上は品を調べるようにしろ。

ここまでで片手剣に何を求めるべきか十分分かったはずだ。そしてトリックに引っかからないことを祈る。過去に俺がだました者達について申し訳なく思っている。そして市場やトレーニングでの幸運を祈っている。

仕立屋:軽装鎧の基礎Clothier: Light Armor Basics

マントー家伯爵第五夫人、エロイーズ 著

ここウィンド・キープで私たちは、ハイロック一番の軽装鎧の作り手として名をはせています。:極上にエレガントで風雅、それなのに作りがとてもしっかりしていて頑丈だと評判です。私たちの仕事へのこだわりについて、少しばかりお話いたしましょう。

(「私たち」とは、もちろんこの街の仕立屋ファミリーのことです。衣服屋、衣類屋、礼服屋ですね。気高い腕利きの私の監視下ではあるものの、彼らは実際のつまらない仕事をしています)

軽装鎧はすべて布製。補強のために一部、丹念に作られた骨、角、軟骨が使われています。ジャーキンやパンツの表地は装飾されたシルクやダマスク織が使われるかもしれませんが、その裏は、キャンブリック生地や黄麻布のような頑丈で壊れにくい繊維で作られた布の層になっています。これらの層には、打撃の威力を吸収しやすくするようにキルト布か綿入りの布がよく使われます。

四種の悪鬼The Four Abominations

コロールの大司教、ヴィニシウス・インブレクス 著 第一紀1051年〜1087年

ステンダールは定命の者の世界を見つめていた。そして定命の者が悪鬼に苦しむ姿を見た。彼は彼の司祭、篤信者、テンプラーに、この奇怪な冒涜者たちが彼の目前で行った忌まわしい行為を知らせ、彼らを正義の士の手で、慈悲もなく立ち止まることなく根絶やしにするよう命じた。悪鬼たちはそれぞれすべてがムンダスの定命の者の永久の敵である故に、我々の中に存在することは許されないのだ。

悪鬼には4つの種族があり、次のように知られている:

—デイドラ、この世界を超越した恐怖の存在は、ムンダスの者ではない。タムリエルの定命の者に残虐と死を与えるために、オブリビオンから現れた。

—獣人、狂暴なハーシーンによってこの世界に運ばれた定命の者であり、己の皮膚を動物の皮に変え、汚れなき者を捕食する。

—蘇った死体、この不休のアンデッドは、腐りゆく肉体をおぞましい奇怪な生命力で維持しており、生者の世界に恐怖と苦痛をまき散らす。

—不死の吸血鬼、真摯な民を身の毛もよだつ方法で食す。定命の者である正義の士を単なる家畜と見なし、不浄なる渇望を満たす。

4種の悪鬼を知れ。正義の士よ、彼らが現れる場所に集い、根絶やしにせよ。

死との調和の獲得Achieving Harmony with Death

骨と鎌の達人、イミラ 著

骨と鎌について長年教えている間、生徒たちから死との調和を獲得するための道の、個人的な段階に応じた質問を受けてきた。まだ道を歩んでいない者によくあるのは次の問いだ。死との調和を得るため、どの種類の骨を使えばいいのか?さらに次のようなものもある。1日に2時間瞑想すれば、調和の超越を早く獲得できるだろうか?

このような質問は、生徒たちがいかに生へ固執しているかはっきりと示している。どの種類の骨を使うか考えることは注意を工程に向け、物事を行う正しいやり方か間違ったやり方かを問い、生者に適用されるラベルを当てはめることだ。それは生が終わる瞬間から注意を離してしまう。瞑想に時間制限を設けることは、生きていれば呼吸のたびに減っていく時間という虚構を思い出すことである。死において、時間など意味がない。時間の経過を認めることはその結果として、死との調和を獲得する能力を制限しうる。生徒と師の双方を助けるため、私は生徒たちが道のどの位置にいるのかを知る方法について、自身の考えを以下に記しておく。もちろん、経験は個人によって異なるだろうが。

第一に、生徒は「死との調和」という概念に取り組む必要がある。私はまだ行っていない者に対して、この瞑想を課題として出している。彼らが生者の世界への執着に問いを向け、人生の不確実さの居心地悪さに苦しむようになれば、道を歩み始める精神が解放されたということである。そして彼らが自らの死という観念に動じなくなって初めて、最初の一歩を踏み出す準備ができる。

この道を見出せない場合、生徒は失敗する。

第二に、生徒は調和の超越への道はそれぞれ異なることを理解する必要がある。すでに道を見出した者も、やはりある種の確かさを求め続けている。次の一歩は何か?この旅はどのようなものになるのか? 何を避けるべきか? 忘れずにやっておくべきことは何か?

これらは全て当然の質問だが、「正しい」か「間違っている」かに執着していることを示してもいる。繰り返すが、調和の超越への道は個人によって異なる。この生徒たちの次の一歩がどこへ向かうか、はっきりと分からないことに動じなくなれば、彼らは正しい道を進んでいる。それ以上に詳細な徴候は役に立たない。すでに言ったとおり、彼らの道はそれぞれ固有だ。また、不確実さに対する安心感は、各人にとって異なっている。

自らの道を辿れない生徒は失敗する。

第三に、調和の超越は一度獲得しても、無際限に維持されないことを理解する必要がある。調和の超越の空間内に留まるためには、繰り返し選択をしなければならない。死との調和を保つために。

達人たちでさえ、これには失敗する。それは彼らが達人として失格であることを意味しない。むしろ、調和を獲得するほど長く自らの道を旅した後で失敗を受け入れることこそが、達人の証なのである。

死体の世界A World of Corpses

マニマルコ 著

私ほど苦しんでいる者が他にいるだろうか?夜も昼も構わず、死霊術師志望者の子供じみた嘆きに耐え忍ばねばならない者はいるか? 信者たちが私の真実を記憶に刻み込むまで、私はどれだけの魂を無力な失敗から引き離さねばならない?

質問!臆病な謝罪!作り笑いを浮かべた否認!こんな惨めな下種どもが、本当に暗黒の技の継承者なのか?これが我らの栄光高き実践を次の世代へ伝える死霊術師だというのか?実に忌々しい!

死霊術師志望者どもの質問にはどれも腹が立つが、いつも決まって殺意を抱かせる質問が一つある。「名誉ある虫の王よ、どこで死体を探せばいいのでしょうか?」私はこう答える。「他の死霊術師がお前の死体をここで見つけるだろうよ!」そしてそいつの魂を、考えうる限り最も苦痛に満ちた方法で刈り取る。

さて、このような習慣はささやかながら、個人的な憂さ晴らしにはなる。それに無能な魔術師の芽を摘み取ることで、私はタムリエル全土に貢献してもいる。しかし数百年も経った今、こうした儀式全てが面倒で退屈だと感じるようになった。だから簡単な教えを紙に記すことにした。これを無視するなら、命に危険が及ぶと思うがいい。

どこで死体を探せばいいか?どこでもだ!世界全体が一つの墓地だ。タムリエルのどの街や草原、森でも、これまでに数え切れないほどの虐殺や悲惨な事件が起こっている。その中には知られているものもあれば、忘れられたものもある。お前が足を置く場所ならどこでも、その下には死体が眠っていると請け合っていい。必要なのは、死体を呼び出して仕えさせる意志だけだ。古い骨は一定の抵抗を示す可能性がある。時と腐敗で動きが鈍り、扱いにくくなっているかもしれない。だが古代の死体を従わせることができないのなら、死霊術師と名乗る資格はない。

生者が残っている限り、死者もまた残り続ける。死体を探すなど子供の遊びだ。死体を利用することこそ、死霊術師の力を測る真の物差しだ。

至福Bliss

あのキャラバンで全てが始まったとき、私はそこにいた。いまだに旅立つことができない。出ていくことを考えるだけで、恐怖が体を麻痺させる。

もう1年近く前、私は魔術師ギルドのためにデューン原産の植物を調査すべくエルスウェアへ向かっていた。手厚く守られた大きなキャラバンと共に送り出された。旅慣れていなかったが、護衛や重い荷馬車の中で安心感があった。

出立からわずか4日後にその幻想は崩れ去った。朝に出発の準備をしていると、深夜の見張りが1人行方不明になっていると聞いた。仲間たちは当初、単純に仕事を放棄したものと考え(よくあることらしい)あまり気にしていなかったが、準備の過程で彼の荷物が見つかった。何が起きたのか気になりつつも我々は出発した。

日中、カジートの護衛の1人が道の先に何かがあると気づいた。彼が先に様子を見に行ったのだが、カジートが青ざめることがあるとすれば、戻ってきたときの表情はまさにそうだった。彼は何も言わずキャラバンマスターのところへ行った。少し詮索すると、我々の進む道に例の護衛の遺体が立たされていたそうだ。噂によるとそいつの喉を1本の矢が貫いていて、そこには「至福」と書かれていたらしい。

それは始まりに過ぎなかった。毎夜、また別の護衛が消えた。毎日、消えた護衛が進む先で発見され、同じように「至福」と書かれた矢で喉を貫かれていた。キャラバンは動揺に包まれていた。引き返すよう懇願する者もいたが、その頃にはデューンまで半分以上到達していたので、キャラバンマスターは聞く耳を持たなかった。誰一人眠らず、護衛は倍の数が配置され、周囲全体をキャンプファイヤーが照らした。だが、例外なく毎晩1人ずつ消え続けた。我々は常に動き続けることにし、シフトを組んで荷馬車の後ろで睡眠をとった。

デューンまであと2日というとき、私は浅い眠りから目覚め、荷馬車が止まっていることに気付いた。疲れた体を起こし荷馬車の横から頭を出して見渡した。周囲は死体だらけだった。残っていた全てのメンバーが、「至福」と書かれた矢に喉を貫かれ死んでいた。命のある者はいないかと次々と調べたが、やがて諦めてへたれ込んだ。誰、もしくは何がこんなことを?なぜ?なぜその言葉を矢に刻み込む?

そこからデューンに着くまでの2日間はあまりはっきり覚えていない。きっと私は見落とされていただけで、確実に見つかってやられると思っていた。だが今となっては話を広めるために生かされたようにも思える。誰も信じてくれなかった。街の衛兵を連れて惨殺の現場に戻ったが、何もなかった。1つの痕跡もだ。自分がおかしくなってしまったのかと思ったが、そこからわずか1週間後に報告が入ってきた。次々とキャラバンを襲い、「至福」と書かれた矢を使って残酷なゲームをたしなむ亡霊の射手の報告だ。

魔術師ギルドは私を探すため急使を派遣しているが、いまだにデューンを出て戻る気力がない。もう報告は何ヶ月も聞いていないが、恐怖に打ち勝ち出ていくことができない。

犯人はまだどこかにいる。間違いない。

実践での注意Prudence in Practice

サンホールドのエレラーム 著

熟練した魔術師なら、新しい呪文を使った実験においては、安全性こそが最重要であると知っています。破壊魔法を使用する場合は特に重要です。私はこれまでに数えきれないほど、ひどいやけどや凍傷を負った生徒を治療し、生徒の宿舎など、魔法の訓練には不適切な場所で唱えられた呪文の失敗による被害の後片付けをしてきました。

新しい呪文を唱える時は注意しなければなりません。向こう見ずなふるまいや、うっかり規則を破ったことは言い訳にはなりません。この簡単なガイドラインは「不注意」という最も危険な敵からあなたを守るものです。

1.屋内で属性を放出する魔法の練習は決してしないこと。例外はありません!

2.職員と訓練する場合は、広い、開けた場所を見つけ、魔法を使用する前には、不純物や損害を引き起こす武器がないかどうか確認すること。

3.魔法をかける時に目を閉じても、呪文の効果は上がりません。間違いありません!

4.実地に試されていない破壊魔法を、いたずらで他の生徒に試さないこと(破壊魔法に限らずいかなる魔法も同様です。プロとしての行動を心がけてください)。

注意:マスターですら、マスターだからこそ特に、常に適切な注意を払うことが重要だと知っています。魔法による破壊は刺激的で心惹かれるものですが、怠惰で、だらしなく、無責任な行動をとる魔術師は、魔術の探求の道を耐え抜くことはできません!

射手の記録An Archer’s Archive

探求者サバリド 著

何かを真に極めようと思えば、自分の持っている知識は全て捨てないといけない。私が新たな技術を求めてタムリエルを旅していた頃には、すでに私を弓の名人と呼ぶ者もいた。それが真実ではないということは知っていた。自身は何日も動かずに動き回る獲物を追跡する狩人や、2本や3本の矢を同時に放ち的に当てる弓使いなど、他にも似たような異国の話を耳にすることがあった。ただの伝説や噂話だと誰もが断言したが、どんな伝説でも由来はあるものだ。

ウッドエルフは射手として名高いので、まずヴァレンウッドへ行った。森の心臓部への旅は長く、それまで知らなかったような危険に満ちていた。何ヶ月も指導者を求め、そこで出会った弓を持ったエルフ全てに挑戦した。そしてついに全く誤差のない長距離射手のジャクスパーに出会った。彼は一言も発さなかったが、挑戦を受け、私の放った矢を空中で当てて割った。私の同行を許してくれ、森の心臓部の奥深くで共に見たことも聞いたこともないような獣を追跡した。思考と呼吸を落ち着かせ、どれだけ時間がかかろうが、動かずに最良の射程に入るまで待つことを学んだ。

彼と別れたあと(というよりジャクスパーはある朝突然消えていた)、サマーセット諸島行の船に乗ろうとしたが失敗した。ハイエルフは本当に凝縮されたマジカだけで矢を作れるのか、知りたくて必死だった。有力な錬金術、さらに言えば人の視力をワシ並に研ぎ澄ます薬について、噂を耳にしていた。だが私を乗せてくれる船はなく、買収することも懇願することも騙すこともできなかった。

それでも私はくじけず、本物のカジートの短弓を手に入れるべく東のエルスウェアへと向かった。北方の草原では集団で移動するカジートが多く、その中で自分を獲物ではなく面白い人と認識してくれるグループに出会えたことは幸運だったと、それ以来言われ続けている。その頃の自分は青かったのだろうが、馬上からの乱射法や、頑丈な皮も射貫けるようなかかり付きの矢先の作り方を学べたので、危険を冒した価値があった。

次はあの恐ろしい沼地ブラック・マーシュへ向かう。カジートの仲間たちはそこで冒険しようという私を笑いものにするが、逃げだす気はない。沼の奥の方でアルゴニアンはどんな弓術を身につけているだろうか?どんな変わった手法を用いているだろうか?私の努力から誰かが知恵や刺激を受けるかもしれないと願いつつ、この記録は本屋などに寄付すべくカジートに託しておく。

何年も故郷から離れてしまったが、私の旅はまだ終わっていない。旅立ってから多くを学んだが、何よりも、世の中には知らないことが信じられないほど多いことを学んだ

狩猟の好機Sporting Chance

闇に包まれながら、アリースは矢をつがえたまま足場を確保しようとしていた。低いうめき声が木々の間で鳴り響き、月明かりが足元の葉を照らしていた。道はどっちだったろうか?

彼女は目印になるようなものを探しながら呼吸を落ち着けようとしたが、毎晩狩りをしていた林は姿を変えていた。いつもより荒れていて、木が太く、高くなっていた。正体不明の獣が周囲で鳴き声を発していた。いつも狩りをしていた道の痕跡はなく、帰り道も分からなかった。月たちは湿った秋の空気の中で、巨大かつ不吉な姿でぼんやりと見えていた。

大地が揺らぎ、アリースは空き地にいた。2本の角の付いた醜い仮面を被った何かが、ステンドグラスで装飾された石の祭壇の上から彼女を見下ろしていた。マッサーの明かりでその邪悪な歯がきらりと光った。端に無数の物体が集まってきたが、それらを見ようとするたびに散っていった。その何かが手を前に出すと、祭壇に数種類の武器が出現した。忌まわしい槍、2つの鋸歯状の短剣、そして黒い弓。

彼女は前へと引き寄せられ、やむにやまれず近づいた。何かが目の前の武器を取るようジェスチャーで促したが、彼女は手を差し出すことを拒み、首を横に振って自分の弓をより強く握りしめた。気の狂ったような笑い声が頭の中で鳴り響き、再び大地が揺らぎ始めた。

空き地は消えていた。再び足場を持ち直すと、暗い枝葉の中で様々なものが激しく動き回っているのが見えた。無数の輝く目、月明かりに照らされよだれを垂らす口、そして獣とそれに乗る者のうなり声。角笛が低温で鳴り響くと、木々が揺れ、歯がガタガタと振動し、背後の闇が波のように打ち寄せてきた。アリースは走った。

走るアリースの横をいくつもの矢がかすめた。槍が肩の少し上を通り過ぎた。走ってくる音が近づいてきて、距離が詰まっているのが分かったが、後ろを振り返らないようにした。必死に高く飛び上がり、木の枝につかまった。何とか体を引き上げると、数秒前まで自分のいた場所を鋭い歯が切り裂いた。

間をおかず彼女は振り返り、矢を準備し放つと、下にいる獣が痛みに悶える声を聞いて胸をなでおろした。次々と射貫いたが、さらに何匹も現れてはうなり声をあげた。獣と騎手たちはアリースの避難場所を囲んだ。太い枝の中に隠れられる場所までよじ登ったが、矢で狙える位置まで体を乗り出すことができなかった。万事休すだった。

一つだけ希望があった。上の方の木の枝は密度が高く複雑に絡み合っていた。頑丈な枝まで飛ぶことができれば、そのまま移動することができそうだったのだ。近くの枝を試そうと乗り出したその時、足元が激しく揺れバランスを崩した。かろうじて枝を握りしめながら下を見ると、輝く歯に装飾された黒く分厚い毛皮の塊が、大きな肩で木の幹に突進していた。そこに乗っていた角の生えた狩人が彼女に槍を向けた瞬間、木が倒れた。

必死に捕まろうとしながら入り組んだ枝の中を転げ落ち、彼女は地面に叩きつけられた。着地の瞬間、ボキッと嫌な音がした。弓を拾い立ち上がろうとしたが、脚に痛みが走り前に倒れた。期待のこもった荒い息遣いで、怪物が走ってきた。
逃げ場はない。アリースは本能的に素早く狙いを定め、矢を放った。1本目の矢が的を得るより先に、彼女は騎手に向かって2本目、3本目と放った。頭の中で怒りに満ちたうなり声が鳴り響くと、彼女は目を閉じ、その鋭い牙に飲まれるのをただ待った。

痛みはなかった。目を開けると、アリースは知っている場所にいた。木の枝の隙間からたくさんの輝く星が見え、はるか下の谷にある自分の小屋のたいまつも見えた。苦痛に顔を歪めながら、脚に添え木を当て、弓を手に取った。その弓の上部のリムには、赤く光る小さな角が2本ついていた。

種族別の系統発生論Notes on Racial Phylogeny

第3版

帝国大学治癒師会 著

治癒師会では、遠い昔に生体標本を使った分析をおこない、その結果、全ての人間やエルフの「人種」は互いに交配可能であり、繁殖可能な子を産むことができるという結論に達した。通常、子は母親の人種的特長を受け継ぐが、部分的に父親の特徴が現れることもある。カジートやアルゴニアンと、人間やエルフが交配可能かどうかはわかっていない。これら異種間交配やデイドラとの交配で子が産まれたという報告は時代にかかわらず数多く存在するが、信用に足る記録は残されていない。カジートと人間、およびエルフとの違いは骨格や皮膚にとどまらず(カジートは「毛皮」で全身が覆われている)、代謝系や消化器系にまで及ぶ。アルゴニアンは、ドゥルーのような半陸半水生の人間型生物とされているが、アルゴニアンの生物学的分類がドゥルーなのか、人間なのか、エルフなのか、それとも先人の考えたようにブラック・マーシュの木に住むトカゲに近いのかは不明である。

オークの生殖については不明な点が多い。また、ゴブリン、トロール、ハーピー、ドゥルー、ツァエシ、イムガ、デイドラなどについても同様である。強姦や魔術での幻惑によるこれらの「人種」間の性交の例があるのは事実である。しかし、それらによる妊娠は報告されていない。また、これらの生物と文明を持つ人型生物との間の交配の可能性については検証されていない。これは文化的な差異が大きすぎるためであると思われる。つまり、オークによって妊娠させられたボズマーやブレトンは恥を恐れて事実を隠すし、人間の子を妊娠したオークもまた彼女らの社会から追放されると考えられるのである。我々は治癒師であり、残念ながら科学的検証のためにこれらの人種を強制的に交配させるということはできない。しかし、スラスやスロードは幼生時は両性具有で、陸上を動き回れるほどに成長して初めて雌雄どちらかの生殖器を持つようになるという点については確証がある。このため、これらの種と人間やエルフとの交配は理論上不可能であると言える。

これらの「人種」の分類についても疑問は残る(人種というのは不適切ではあるがわかりやすい用語なのでここでも誤解を恐れずに用いる)。人種の特徴そのものが、「アース・ボーンズ」を操作する魔術的な実験の過程で作り出された共通の特徴や相違点などによるものなのか、世代を経ての段階的な変化によるものなのかという問題にはまだ結論が出ていないのである。

重装鎧:鍛冶夫人からの助言Heavy Armor: A Forge-Wife’s Advice

ガーシャグ・グラシャーカブ 著

あなたには鎧作りの素質すらないと賭けましょう。考えてみなさい。一日中、金床に向かって、奴隷のようにあくせく働くことができますか?額から流れる汗で目を痛めながら、鉄や鋼鉄、ときにはオリハルコンさえも、手が上がらなくなるまで何度も何度も叩くことが?完璧な一式を鍛造するまで、金属を持ち上げ、槌で叩き、形を整えながら、何週間も灼熱の日々を過ごせますか?ひどい火傷を負うことをどれだけ恐れますか?

まだいたのですね?結構。あなたには潜在能力があるのかも知れません。鍛冶屋になりたいと真剣に考えているのなら、正しいオークを見つけたのです。私は鍛冶場で育ちました。怒鳴り声と金床が友達で、槌を片時も離しませんでした。本物の鎧が、いかに作られるか教えましょう。

私からの助言です。とにかく、やってみなさい!鉱石を手に入れ、金床の上に置き、槌で叩いて薄い板に伸ばすのです。最初はいびつな出来かも知れないが、やっているうちにコツが分かってくるでしょう。二流の鎧を使って、さらに強いものに鍛えることも可能なのです。そのためには他の鍛冶屋の仕事をできる限り見ることも大事です。風変わりな様式、原料を学びなさい。そうすることで腕が磨かれます。でも一番は実践すること。さあ、始めましょう!

重装鎧の鍛造Heavy Armor Forging

重装鎧は、多くの攻撃を受け止めるよう設計されている。あらゆる武器による攻撃を直接受け、装着者を守ってくれる。すべての鎧には、縛って固定するのに革ひもが使われる。

鉄と鋼は扱いやすい。熱して、叩いて形を作っていけばいい。鍛造の熱はそれほど重要ではない。金属を削ってしまわないように気をつければいい。常に金属の無駄使いを避けながら、形作るよう心がける。

鉄の鎧には大量の鉄のインゴットが必要だ。鍛冶屋によっては鉄の鎧をすべて作るのに数十個が必要かもしれない。鋼鉄の鎧は主に鋼鉄のインゴットを使用するが、鉄製の物も多少使う。

ドワーフの鎧はドワーフの金属から作られる。この素材の秘密は数千年前ドワーフが消えた時に失われてしまった。今では捨てられた街と要塞内の遺跡でのみガラクタとして発見できる。

オークの鎧には大量のオリハルコンに少量の鉄を混合する必要性がある。熱で脆くなるため、慎重さが求められる。オークはこの技術を極めているが、忍耐と技術があればどんな鍛冶屋でも習得できる。

スチールプレートの鎖帷子は、溶けた鋼玉に鋼鉄を加えて作られる。合金にすることで、どちらの金属単体よりも強くなる。鋼玉は取り扱いに細心の注意が必要な素材で、鍛造段階から一定の温度を保ち続ける必要がある。

黒檀は熱した時のみ扱える。冷たいまま叩くとすると小さなヒビが生じ、最終的に粉々になってしまう。他の多くの鎧と違い、黒檀は鉄と合わせて合金にしない。純粋な黒檀でなければならない。

デイドラの鎧の事は聞いたことのある物語を教えることしかできない。実際に自分で見たことがなく、またこれまで見たことがあると言う人にも出会ったことがない。物語によるとそれは夜に作るのがいいそうだ… 新月か満月の夜が理想的で、月食の時は決してやってはいけない。赤い収穫の月が最適だ。黒檀が主要な素材だが、ちょうどいいタイミングでデイドラの心臓を火の中に投げ込まなくてはならない。

召喚の原理Principles of Conjuration

コルヴス・ディレニ 著

—はじめに—

召喚とは、召喚師が自分の利益のために、生き物や物体を他の次元から呼び出すアルケインの術だ。その研究は、召喚術特有の危険性のために長きにわたって敬遠されてきた。召喚されるもので特に多いのは最も知性の高いデイドラだが、彼らは他人の命令に従ってニルンに呼び出されることに憤慨しており、しばしば召喚師に害を与えようとする。

私が安全で確実な召喚呪文の考案に成功したことは注目に値する。この成功は、召喚の魔術において主要となる2つの要素、召喚の呪文と呪縛のルーンを常に連動させる方法を定義したことに由来する。後者はもちろん、召喚されたものを召喚師に従属させることで、召喚師を守るためのものだ。

従来まで、召喚を行う魔術師は召喚と呪縛というまったく別の呪文を同時にかけなくてはならなかったため、召喚は大変危険な行為であった。呪縛の魔法に失敗するか効果が遅すぎれば、召喚師はその命で代償を支払うはめになることもあった。私の考案した呪文は、召喚と呪縛の魔法を組み合わせて1つにしたもので、召喚と同時に、必要な呪縛の効果も得られる。

見習いは付随のグリモアに記載したこの呪文の研究に没頭するよう求められる。私の方法は召喚の危険を減らすものだが、決して気安くぞんざいに試していい術ではない。不注意に術を試みる見習いは、端的に言って師匠のお荷物となるだろう。

消えたクラッツThe Vanishing Crux

センチネルの賢者 マスラ・ドラ 著

オッセウスクラッツの起源と目的は、未だ大いなる謎に包まれている。それはヘガテ近く、アビシアン海の海岸で発見された。非常に大きな未知の獣の骨を材料に組み立てられており、より合わせた繊維のひもで1つに結び付けられていた。ほぼ人間2人分の幅と高さがあり、表面はグリフ、文様、さまざまな種類の手書き文字で覆われていた。そして、見たところでは、その周囲に根源的なエネルギーを、不定期に噴射していた。学者が記すところ、この爆発は現代の破壊魔法の既知の限界をはるかに超える魔法の力を放出したという。

その奇妙なアルケインの図形の中に書かれた言語のうちの1つは、アイレイドが起源のもののように見えた。しかしつづりの中の特有の言い回しと一部の文字は、アイレイド語の学者にとってさえ未知のものであった。放出を短時間抑制し、翻訳を試みたところ、全体のうちほんの一部分だけ、意味が判明した。

次に示す例が、翻訳で判明した文章の全体の語調とテーマを示している。

「這い回る紫の中の[それ]を捕獲せよ。エセリアルの力が下の圧縮的[ろ過作用]により増幅した」

「生命の沈殿を強化する。[切り取った]光を解き放ち手に入れよ。深い影でのみ抑止される」

センチネルの魔術師ギルドの施設へ移送してから3週間のうちに(その困難な任務には何の見返りもないが)、クラッツはギルドの制御室から消えた。何が目的で作られたものなのか?誰が、なぜ作ったのか?残念なことに、私たちがそれを知ることはもうないだろう。

杖1本に多くの杖One Staff, Many Staves

スカヴィンの下手くそ大工、ホアリー・ドゥロッツェル 著

ようし、若者どもよ、つま先でナイフゲーム遊びをするのをやめて、こっちに集まれ。杖の作り方を軽く教えてやろう。そうだお前もだ、かわいいデフェサス!

まずハッキリと言っておくが、杖は杖であり杖だ。間抜けの頭蓋骨に良識を悟らせるために使おうが、充電してクリフ・レーサーに衝撃の魔法を放とうが、杖は杖だ。いずれにしても、目的達成のための試練に耐えうる強度がなくてはならない。また力にムラがあったときに折れてしまったり、曲がったりしないよう、十分にしなやかである必要もある。これは回復の杖でも同じだ。というのも、回復の魔法は攻撃の魔法と同じくらい威力があるからだ。見くびってはいけない。

カエデ、カシ、トネリコ、それにニレ。または別な高密度の木材で杖を作ってみたくなるだろう。杖は何百回、いや何千回と打たれても立っていなくてはならないからな。しかし、内部は宝石のように頑丈でなくてはならない一方で、杖の表面はディベラの尻のように滑らかでなくてはならない。杖の使い手は、どんな長さの杖でも、至る所を握る必要があるかもしれないからだ。ファイアボールを手にし、裂けたカシを持って近づいてくる、怒った魔法使いと対峙せざるを得ない状況に陥りたくはないだろう。

信者への呼びかけCall to the Faithful

プルデンティア・ブレスス 著

タムリエルは、軍隊に顔を踏みにじられ痛みに悶えている。キナレスの神聖な風は矢によって切り裂かれ、神々は命令を太鼓にかき消されて俯く。ああ神よ、我らを取り囲む異教徒たちは冒涜と嘘を振りまき、レマンの遺産を踏みにじり、神々に唾を吐こうとしている。それら全てを永遠に沈めるか、もしくは嘘で包み隠そうとしている。

このような血迷った冒涜者たちに勝ち目はないことを、真の神々の使いである我らは知っている。我らが忠誠を示せば、永遠なる無敵のアカトシュは我らを見放さない。多くの者が殺されていく中で立ち上がることができれば。偽善者たちとその卑劣なる主に立ち向かうことができれば。兄弟たちよ、今こそ我らを取り囲む異教徒どもとデイドラの奴隷たちを黙らせる時だ。我らはアカトシュの叫びによって呼び起こされ、黄金の丘が怒りで震えている今、じっとしているわけにはいかないのだ。

我らが羽織っているのは素朴なローブだけだが、ステンダールに守られている。彼は光で、ゆるぎないエドラの栄光で我らを包んでくれる。冒涜者の刃を退け、我らの永久の勝利を宣言してくれる。我らの武器は言葉だけだが、ジュリアノスが鋭く研ぎ澄ましてくれる。彼は我らの精神力を武器に変え、聖なる言葉で満たしてくれる。臆病な気持ちもあるかもしれないが、それでもアカトシュの声が前に進むように言っている。我らが英雄となり、彼の指揮で帝国を取り戻すのだ。

愛する帝国を再生するためには、怯みも動揺も許されない。我らの家を破壊する軍に怖気づいてはいけない。今こそ、彼の偉大な血で作られた我らが取引を尊重する時だ。我らは見放されたわけではない。打ち寄せてくる悪の波に立ち向かい、ゆるぎない忠誠を示す機会を与えられたのだ。戦いの装備をせよ。神々が我らの盾であり、光り輝く鎧であり、美しき剣である。彼らが我らを引っ張り、敵を追い出し、タムリエルに秩序と平和を取り戻してくれる。

あなたにも聞こえるだろう。魂の中で鳴り響く呼び声が。ためらうな。自信をもって、神々の指令に従うのだ

新しいレシピ?A New Recipe?

トロールの肉が味わい深くおいしそうになるように準備する方法を見つけようとしている。私がどんな料理の実験を行っているのか、伐採キャンプの他の皆に知られたら追い出されるだろうけど、この脂肪質の肉と治癒の特性が、森の民族にとって健康で長期間維持可能な食物源になればいいと思っている。

トロールの小さな肉片が大きくなり続け、食料庫がいつもひとりでに補充されるようにならないか?私はそう思うが、この理論を試すためには1切れのトロール肉が必要だ。それに火の問題もある。トロールの肉はあまり火にうまく反応しないし、森の民が生のトロール肉を食べる姿は見えない。

これを成功させる確信はある。ただ、時間がもっと必要だ。

神話と伝説の防具Armor of Myth and Legend

編集:オーレリーン・デゥルロイ

歴史を学ぶ中で、凄まじい力を宿した特別な武器や防具の話を耳にすることは多い。誇張された神話を実際の遺物から見極めるのは難しいが、例え嘘であってもそれらの詳細を記録しておくことが私の歴史家として、学者としての使命である。いくつかの伝説上の強力な防具について私が読んだ内容をここに記載する。私の知る限り一つも見つかってはいないが、どこかに存在するかもしれないと思うとわくわくするだろう!

刻印の胸当て

この黒檀製の胸当ては不明なダークエルフ将軍の命で作られ、ダンマーの聖人の名前やその教えが刻み込まれた。話によると名前や物語を刻むことで品位が下がってしまうと、担当した職人が将軍に説明しようとしたが無駄だったそうだ。将軍はとにかく完成させるようにと聞かなかった。作業中、高価な胸当てが3つも破損してしまい、職人は何とか名前や物語をうまく配置しようと試みた。司祭や付呪師と相談しながら、4度目で完成させられた。完成品は、デイドラ公以上の力でないと傷つけられないほどのものとなったそうだ。

スキンメイル

この信じがたい作品にまつわる文献は少ない。肌に塗ると、使用者の意思でいつでも硬質化して甲冑のような層を作れる液体が小瓶に入っているという文をいくつか見たことがある。成果を出すためには恐ろしい人体実験をもいとわなかった、強力なハイエルフ錬金術師が作り出したと言われている。開発には費用と時間がとてつもなくかかり、魔術も使われているので、それらの小瓶はこの世に数個しかないと思われる。

ウィドウウィル

帝国のとある小さく貧しい村に、兵士の寡婦が住んでいたという。彼女たち村人は静かに暮らしていたのだが、あるときから近くで死霊術師たちが活動を始め、墓を掘り起こし、夜中に人を攫っていた。村人の中には戦士や傭兵がおらず、貧乏だったため救援要請もできなかった。彼女は夫のものだったぶかぶかの甲冑と剣を身につけ、死霊術師を追い払おうと決心した。この無謀で自己犠牲的な行動にステンダールが気づき、攻撃してきた死霊術師が塵になるほど強力な聖なる守りを、その甲冑にかけたという。

正義のオーラAura of the Righteous

ステンダールの篤信者、輝きのプトラス 著

悪意ある者たちは光を忌み嫌う故に、ステンダールはその名に救いを求める者すべてに、祝福の光による正義のオーラでその身を包む能力を授けてきた。しかし時が経ち、邪悪なる悪鬼たちは、タムリエルの定命の者たちを破壊と死で苦しめる新たな手段を見つけるようになった。そこで、司祭とステンダールの篤信者たちは、ステンダールのその輝かしい恵みに、さらに攻撃、防御、治癒といった多くの効果を加えた。

攻撃の手段とする時、ステンダールの恵みは鋭利な一筋の光となる。その姿は浄化する陽光の槍と例えられ、しばしばそのように呼称される。

鎧となる時、ステンダールの恩寵は拡散するオーラとなり、正義の士を包み込む。忌まわしきものの攻撃を弱め、時には大きな脅威を払いのけるために、実体として感知できるほどの盾となることもある。

リランドリルの平和を求めるマスターたちのように、あらゆる暴力を避ける崇拝者たちは、ステンダールの恵みを治癒の道具として使用し、ステンダールの武力派の信者に対してさえ分け隔てなく、浄化と治癒の儀式の知識を広めている。戦士にあるからといって、病苦を治療することが間違った行いだと言えるだろうか?

正当なるリスラヴ、パート1Rislav the Righteous, Part 1

正当なるリスラヴ、パート1

シンジン 著

真の英雄が全てそうであるように、リスラヴ・ラリッチの生誕は不吉なものだった。年代記に記されているところによれば、彼が生まれた第一紀448年の春の夜は季節外れの寒さで、我が子の姿を目にして間もなく、母親のリネイダ女王は亡くなったことになっている。すでにたくさんの後継ぎに恵まれ、3人の息子と4人の娘の父親であったスキングラードのモーラス王が果たしてリスラヴを大いに可愛がったかどうか、年代記編者たちは特に触れていない。

彼の存在はあまりにも目立たないものであったため、その人生の最初の20年間については実質的に何も記録が残されていない。教育に関して言えば、コロヴィア西部の「予備の王子」がみんなそうであったように、アイレイドの家庭教師たちが狩りと戦闘の仕方を教えていたのだろうということぐらいは想像できる。礼儀作法、宗教的な教え、そして政治の基本でさえ、より文明が開けていたニベネイ渓谷とは異なり、コロヴィア台地における王子教育にはほとんど含まれていなかった。

第一紀461年、薄明の月の23日に行われたゴリエウス皇帝の戴冠式の参列者名簿の一部として、彼および彼の家族に関するごく簡単な記述が見られる。式典が行われたのはもちろんアレッシアのマルク教義の時代であり、それゆえに娯楽性は一切なかったが、それでもとにかく13歳のリスラヴは最も偉大な伝説的人物たちを何人か目撃することができたのである。アネクイナの野獣ことダルロック・ブレイが王国を代表し、皇帝に敬意を表した。スカイリムの長であった白王クジョリックとその息子ホアグも出席していた。さらに、エルフ全般に対して帝国は不寛容であったにもかかわらず、チャイマーのインドリル・ネレヴァルとドゥエマーのドワーフ王ドゥマクも、特に波風を立てることもなく、レスデインの外交代表として確かに参列していた。

また、ハイロックの帝国法廷に雇われていた若いエルフで、後にリスラヴとともに大いなる歴史を築くことになる者の名も名簿の中にはあった。リャン・ディレニである。

ほぼ同年齢であった二人の若者がその場で会って話をしたかどうかに関しては、完全に歴史家の想像に委ねるしかない。最終的にイリアック湾のバルフィエラ島を買い取り、ハイロック全域とハンマーフェル、およびスカイリムの大半も徐々に手中に収めていった、大地主としてのリャンについては称賛の言葉で語られているが、リスラヴの名はさらに17年間、歴史書に一切登場していない。以下に述べる事実に基づいて推測することしか我々にはできないのである。

王の子供たちというものは、言うまでもないことだが、同盟を結ぶことを目的として他の王の子供たちと結婚するものである。五世紀に入るとスキングラードとクヴァッチの王国は共通の領土を巡って小競り合いを繰り返し、ようやく和平合意に達したのは472年のことだった。この協定に関する詳細は記録されていないが、6年後、ジャスティニアス王の娘ベレンの夫としてリスラヴ王子がクヴァッチの宮廷に立っていたことは分かっているから、和平を目的として二人が結婚していたと考えるのは根拠ある推測だと言えるだろう。

これをきっかけとして我々は、シロディール全域、特に独立国のコロヴィア西部において疫病が猛威を振るっていた478年に目を向けることになる。犠牲者の中にはモーラス王およびスキングラードの王族全員も含まれていた。リスラヴの兄として唯一生き残ったドラルドは、マルクの司祭として帝都にいたおかげで助かったのである。ドラルドは王位を継ぐために故国に戻ることになる。

ドラルドに関してはいくらか歴史に記録がある。王の次男であった彼は、ややお人好しであると同時に、非常に信心深い男でもあったようだ。年代記編者はこぞってその人の良さと、幼い頃にお告げを見たことをきっかけとして–父親の賛意を得た上で–やがてスキングラードから帝都へと移り、聖職に就いた経緯について記している。マルクの聖職者にとっては、宗教的なことと政治的なことの間にもちろん何の区別もなかった。それがアレッシア帝国の宗教であり、皇帝に刃向かうことは神に刃向かうことと同じだと説いていたのである。それを知っていれば、ドラルドがスキングラードの独立王国の王となったとしても特に驚くには当たらないだろう。

王位に就いて彼が最初に発した布告は、王国を帝国に譲渡するというものだった。

それに対する反応として、コロヴィアの私有地全域に衝撃と憤激が満ちた。他のどこよりもそうだったのがクヴァッチの宮廷だった。リスラヴ・ラリッチはその妻および義父配下の24人の騎兵隊を引き連れて、兄の王国に向かったとされている。年代記編者がどれほど尾ひれをつけようとしてみても軍隊としては見栄えのしないものであったことは明らかだが、それを阻止しようとドラルドが派遣した衛兵たちを突破するのにさほど苦労は要らなかった。実際のところ、戦闘は行われなかったのである。スキングラードの兵士たちも、自治権を放棄するという新しい王の決定に憤慨していたからだ。

兄弟は自分たちが育った城の中庭で向かい合った。

典型的なコロヴィアのやり方に従い、裁判もなければ反逆罪の告発もなく、陪審員も裁判官もそこにはいなかった。死刑執行人がいただけである。

「汝、我が同胞にあらず」と、リスラヴ・ラリッチはそう言い、一撃でドラルドの首をはねた。血まみれの斧を両手に握ったまま、彼はスキングラード王の冠を戴いた。

戦争の不快症状Discomforts of War

錬金術師ロビヤー・ドゥーアレ 著

発疹、汚臭、伝染病にカビ。どれも戦士にとって心地よいものではないが、正しい順序を踏めば抑制できる。私は戦場で10年間の経験をもつ熟練の錬金術師であり、ひどい野営地も見てきたが、よくある健康被害を発生しにくくする方法をいくつか開発した。私のアドバイス通りにすれば、多くの戦士が仕方なく受け入れてしまいがちな問題も避けて通ることができるだろう。

まず最も大事なのは、水浴びをすることだ。機会はあまり多くないだろうが、一日の行軍や戦闘の後にできるだけ早く水浴びをして、ショークとベルガモットの種を砕いた軟膏を塗ることで、穴あけ虫、草ノミ、膨張虫などの寄生虫を寄せ付けなくなると証明された。戦闘の経験者なら分かると思うが、野営地はこういった不潔な生き物の温床なので、予防することが最善である。

また、環境を考慮することも大事だ。様々な不快症状を回避するためには、敵だけでなく地形とも戦う覚悟が必要になってくる。砂漠での移動時には、擦り傷予防のためドラゴンの舌の粉末を塗るといい。沼地ではワックスでブーツを完全防水にすれば菌の攻撃も防げる。虫は病気を持っていることが多いのを忘れないように。虫よけ軟膏と、かかりやすい病気を治療する薬は常に携帯しておくこと。上官が提供してくれると期待しないように!

この助言はどんな兵士や冒険家にも役立つが、特に革防具について少しだけ話しておきたい。革にアレルギー反応を示す人もいて、その多くが防具に疑問を持っていないのだ!特にスカイリム固有の熊やサーベルキャットから加工されたネッチの防具、革製品でこういったケースが多く見られる(毛皮が付いているものはなおさらだ)。防具を選べず支給されたものを着る立場なら、かゆいところへ塗れるようにエルフのチンキ剤を持ち歩くべきだ。

このように簡単で安上がりな準備を少ししておくだけで、戦争におけるささやかな脅威を避け、戦闘や行軍に集中できる。戦場では体を大事にするように。さもないと戦争の疲れを倍増させ、酷い経験をするだろう。いつでも注意と準備を怠らないように!

戦闘に勝つ方法How to Win a Fight

カエリウス・インブレックス 著

私はあまり本を読まないが、それにはまっとうな理由がある。本では学者みたいな連中が、自分のよく知らないことについてまで哲学を語る!この間は剣の「美学」についての本を見つけた。あんな馬鹿げたものは初めて見た。戦闘は踊りと似ているだとか、そんな馬の小便みたいな「考察」が延々と述べられていたんだ。

私はいくつもの戦闘を見てきたが、そんな高尚な戯言は気を散らされるだけだ。戦闘は戦闘だ。汚く、危険で、生き残るためにやるべきことをやるものだ。ここですごく簡単に説明してやるから、踊りのステップや、刃と心を一つにすることなど気にせず、頭蓋骨をかち割ってくるといい。知っておくべきなのは、以下のことだ:
まず最初に、できるだけ大きい武器を見つけること。両手を使って持つようなものだ。盾や弓、小さな短剣はいらない。まず大事なのは敵をビビらせることであり、そうした武器じゃそんなことはできない。できるだけ大きな槌を手に入れるんだ。大剣も、まあいいだろう。それを持ち上げて振り回せなければ、君はまだ戦うには弱すぎる。できるようになるまで、重い物を持つ練習をしないとな!

次に、それを使って物を破壊すること。横から、もしくは頭上から振り、箱やカカシや人形を、何でもいいから破壊するんだ。振り方を確かめるだけだ。これは芸術ではない。戦場で最も恐ろしい武器を持ち、それを使って敵の兜をかち割り、それを見た敵が逃げ出すくらい、力強く強烈な戦いをすることが目的だ。

最後に、戦闘を見つけること!傭兵部隊か軍に加入しろ。活動するためにできることは何でもやれ。武器を振り回して大声で叫ぶことができれば迎え入れてくれるはずだ。特に体が大きく、筋肉で覆われていればな(でないとダメだが)。これで怒られることなく、生身の的で練習できるわけだ。怒りが沸き上がってくる程度に飲んでから戦闘に参加しろ。力、武器の大きさ、声の大きさが十分なら勝つはずだ。何も読む必要はない。

戦棍の取り扱いMace Etiquette

時に戦士は、戦棍には何の戦術も必要ないと考えるという過ちを犯す。彼らは剣こそ技術のすべてであり、戦棍は腕力とスタミナのみであると決め込んでしまう。戦棍戦術の熟練指導者として言っておこう、彼らは間違っていると。

正しく戦棍を使うには、タイミングと勢いがすべてである。戦棍の一振りが始まると、止めるのも速度を落すのも難しい。戦士は打撃だけではなく、その反動にも全力を出さねばならない。敵が前のめりになっているとき、そしてできれば体勢を崩しているときに攻撃を開始すること。敵が後ろに反ることは容易に想像できるので、敵の頭の後ろを狙うこと。戦棍がそこにたどり着く頃には、彼の頭が戦棍の軌道上にあるであろう。

戦棍は肩の高さで構える。攻撃前の巻き上げは、肩から手の幅の距離以上は持ち上げないほうがよい。振り下ろすときは、肘を先行させること。肘が鎖骨の高さを超えたところで、前腕を鞭のように伸ばす。加算された勢いが戦棍をさらに早く、さらに強く動かし、遥かに多くのダメージを与えるであろう。

衝突する瞬間、手首の力を抜くこと。戦棍は跳ね返り、硬い手首を痛めてしまう。打撃の反動を使って戦棍を構えの位置に戻す、それによって戦士は素早い2撃目の準備ができる。

善意の死霊術は存在するBenevolent Necromancy, It Exists

アンドーンテッドのイ・ザレ 著

死霊術という言葉を聞いて、最初に思い浮かぶことは何だろう?動く死体、怒り狂った亡霊?確かに死霊術とはそういうものだが、それはこの流派のほんの一部でしかない。実際のところ、あなたが死霊術について知っていることの大部分は偽りと迷信で成り立っている。これを読んでいる人の多くは、すでに日々、死霊術と関わっている。広く実践されている付呪の技に欠かせない魂石は、死霊術によって作られている。深手を負い、死ぬほどの病にかかって治癒師に死の淵から救ってもらったことがあるなら、あなたは死霊術の恩恵を受けている。死霊術は破壊魔法と比べて、より善でも悪でもない。全ては用法次第だ。

悪意のある死霊術師は霊魂をその意志に反し、力づくで我々の世界へと引きずり込むだろう。私はただ道を開き、誘い掛けるだけである。私はしばしば愛し合う者たちをわずかな時間再会させ、謎を解き、眠れぬ霊魂の未練を断ち切らせるためにこれを行っている。祈りや式典は生者にも死者にもそれなりの慰めをもたらすが、死霊術は良くも悪くも両者に力を与えられる。魔術師ギルドはこの実践を忌避するのではなく、規制すべきだ。死霊術を影に追いやることは善意の実践者を追放し、悪意を持って研究する者の姿を隠すために役立つのみである。

世界にこれだけの戦争と死が蔓延している今、未だ生にしがみついている者、生から解放された者を手助けする知識は、かつてないほど必要とされている。

想像上の獣、実在する力Mythical Beast, Real Powers

帝国蔵書庫監察官 ドラサス・オヴィキュラ 著

アカヴィリの最高顧問が倒れてから数世代が過ぎた後、タムリエルに新しい武術の流派が台頭してきた。それは伝説のドラゴンと、そのドラゴンと戦った定命の者の力を受け継いだものと言われているが、魔法の分野とも深いつながりを持っている。もちろんそれは、いわゆる「ドラゴンナイト」のことである。

その能力がドラゴンに源を発するものであろうとなかろうと(タムリエルでは数千年の間ドラゴンは目撃されていないのだから、そもそも存在しないのではという疑念はもっともである)、熟練したドラゴンナイトが使う力そのものを否定することはできない。ここ帝都にも何人か存在する。彼らは塔の衛兵のメンバーで、私の依頼に応じてその技をいくつか披露してくれた。

ドラゴンナイトの1人である衛兵の軍曹は、自身の体を燃やすことなく炎で体を包みこむ技を見せてくれた(少し離れた場所からでも熱さを確かに感じることができた)。続いて彼は、ダミーの人形に炎の鎖の輪を放ち、引き寄せて素早く焼き殺す技を見せてくれた。そして最後には軍曹の部下がダミーの人形を文字通り、炎の息を吐き出して燃やしたのだ!

実に素晴らしかった。ドラゴンの存在を信じてしまいそうになったくらいだ。

鍛冶:やりがいある努力Smithing: A Worthy Endeavor

鍛冶場の偉大な賢人、クイナアモ 著

鉱石と槌があれば誰でも金床で粗野な武器くらいは作ることが可能だ。それはそのとおりだが、太くてがっしりした腕だけでは巧妙な技術を習得できない。私の仲間のアルトマーには、平民のやることだと言って、武器の鍛造をあざ笑う者もいるかも知れない。しかし、それは自分の惨めな無知をさらけ出しているだけだ。武器の形や機能、様々な素材の効果の謎を解明することは、明晰な頭脳だけでなく、屈強な体、毎日何時間もの実践を通して得られる忍耐が必要となる一つの事業である。

極めて無双の武器を作れるようになるには、長い時間をかけて研究をしなければならない。徐々に新たな秘密を解明していくことで、さらなる貴重な新事実が見つかるのだ。多くの鍛冶によって作られた、あらゆる様式から武器を学ばないといけない。武器を分解し、結果を念入りに分析し、独特な性質の源を特定するのだ。武器の鋭さ、成分材料、バランスは、精査すべきもの一握りの要素でしかない。

当然、様々な種類の武器を無視はできない。剣から、斧、槌、片手持ちから両手持ちの武器まで、それぞれが研究分野である。1つの武器の知識を突き詰めるか、幅広く様々な武器の知識を求めるかは、完全に鍛冶屋次第だ。とはいえ、完璧を求めるすべての者が行き着く先は同じであるべきだ。つまり、すべての武器の特徴を大局的に理解し、武器に創作を加える方法を獲得することだ

お分かりのとおり、武器作りは、単に敵を攻撃する金属の棒を作ることと大きく異なる。クラフトの複雑さは、いかなる魔法の研究と同じくらい奥深く、時間、研究、実践を通してのみ達人への道が開かれる。

鍛冶の仕事はがさつで無教養だと、言いくるめようとする人が出てくるだろう。そういう人に出会ったら、ニッコリと微笑み返そう。あなたは自分が価値ある道を進んでいると理解しているのだから。知識の飽くなき探究心を通して創作の向上に不可欠な努力をすることによって、あなたを侮辱した人たちが死に忘れ去られても、あなたの仕事は後世に語り継がれるのだ。

中装鎧:革となめしMedium Armor: Tannins and Leather

デフェサス・レクター 著

バルダスへ

今日の講義は、仕立屋が中装鎧を作製する際に使用する革となめしについてだ。夜警を抜け出して父親の武器屋にこもっていることだし気付いていると思うが、中装革には多くの種類がある。ブリガンティンは丈夫で装飾が施されており、ランニングは丈夫でありつつ柔軟性も備えている。このような性質の違いは皮やなめしを変えることで生まれる。

なめしとは、職人が中装鎧の丈夫さと弾力性の均衡を保つために使用する「添加物」のことだ。胸部の革は、アサシンのナイフが貫通しないように板と同様の堅さにすることもできるが、あまりに堅過ぎると着用者は体を曲げられなくなる。だから防具屋は革や織物になめしを使って、丈夫さと柔軟性をうまく両立させるのだ。

これと完成した鎧一式の見た目とはどんな関係があるのか?その口髭の自慢で洗い場の召使の気を引く妄想をするより、講義でそういう疑問を持ってほしいものだ。答えは、すべてが関係している。そのうち自分で分かる。さあ、父親が見本として買った堅い革に取り掛かれ。それが終わるまで洗い場の召使に色目を使うのはやめておけ。

徴募兵の質に関する報告書Report: Quality of Recruits

フルビアヌス百人隊長殿

ご要望通り、今月の報告を申し上げます。

新しい徴募兵の訓練は、1つの分隊を除き順調です。騎兵隊、弓兵隊、歩兵隊は先月から大幅に進歩しており、予定より早く上級演習や合同訓練に取り組んでおります。しかし、アカトシュの聖堂から来た治癒師たちは訓練にて大きな後れをとっており、成功させるには取り組み方を劇的に変える必要がありそうです。それでも、戦える治癒師の導入で前線を補強するというあなたの目標は、達成できる可能性が高いと考えます!

これら徴募兵のほとんどが、民間の聖堂勤務経験しかないということが分かりました。標準的な甲冑、剣、戦棍を支給し、他の歩兵と一緒に演習に参加させるなど、あなたの指示通り一般的な兵士と同様の訓練を試みてきました。ですが彼らは剣をどちらに向けて良いかも分からず、あちこちでつまずき、我らの養成法は崩壊しております。

この経験から言えることは、彼らを「傷を癒せる兵士」として育てるには無理があるということです。それよりも結界を張り、兵士たちを癒し、士気を上げるといった特有の能力を有効活用すべきです。彼らには特殊な装備が必要と考え、パッド入りの軽い防具の発注許可を要請いたします。着慣れている反面戦場で足を引っ張るローブではなく、適切な耐久力のある頑丈な生地です。素早くかつ効率よく負傷した仲間へとかけつけ、戦場での活動時間を延ばし、兵士たちの戦闘力を高めるなどといった任務も、この防具があればより集中して果たせると考えます。

2、3人ずつのグループに分け、主軍の後方に配置する必要があると考えます。こうすることで最低1人が分隊に守りの結界を張っている間、他が危険に陥っている仲間を探すことができます。やむを得ず対人戦になった場合もお互いに防御魔法で援護し合うことができますが、念のため最低でも短剣ぐらいは扱えるよう訓練するのが賢明かもしれません。

これら徴募兵が我が連隊にもたらす可能性を、あなたは的確に見抜いていました。私はこの部隊を信じていますし、無理やり型にはまった兵士に育て上げようとすることに時間を費やすべきではないと考えます。あなたの許可がいただければ、敵に対して真に優位に立てる部隊を作れると確信しております。

敬意をこめて

帝国軍第五軍団 ランプロニウス隊長

潰して、切って、殴って、刺すCrush, Slash, Bash, and Stab

武器の匠グルツグ 著

人は私に聞く。「グルツグ、どんな武器を使ったらいい?選択肢が多すぎる!」戦闘に精通していない者よ、その通りだ!だが心配するな、1つだけを選ぶ必要なんてない。というより、私と似たような感性であれば、2つ持った方がよっぽど楽しい!

2つ選ぶことでさえ難しいが、全て試して自分に合ったものを見つけるんだ。武器はしっくりくるものでないといけないし、自分の流儀に合っていないといけない。例えば、一生剣だけを使い続け、他の武器は試したことがないという兵士や傭兵を私は知っている。そいつらに初めて戦槌を持たせると、新しい世界が開けるんだ。しかも、長年親しんできた剣を捨てる必要はなく、盾だけなくせばいい。それでいいんだ。実際盾というのは恐れと弱さの象徴だから、使い始めるだけ無駄だ。

武器にはそれぞれ長所と短所があるから、知っておくべきだ。斧は腕力に自信があればお勧めだが、敵に刺さって抜けなくなる場合があるから要注意だ。戦槌は重装備に対して効果的で、その下の体にも大打撃を与えるから、これまた力強い者には良い選択だ。ただし重いものが多いので、スピードが落ちるかもしれない。剣は初心者によく選ばれるが、いい状態に保つための手入れは手間がかかるし、使いこなすには少し技巧がいる。短剣はあまり使ったことがないが、他の武器を使って敵の懐に入れたらそれでとどめを刺せる。

私は断然斧と戦槌を使う。右手の斧グリムデスで、重装備をしていない敵には力強く狙いすました一撃を与えられる。防御の厚い敵が来たら、戦槌スカルクラッシュの出番だ。決め技の顎打ちで兜を吹っ飛ばして失神させる。そうしたらまた斧の出番だ。

ちなみに、武器を選んだら絶対に名前をつけたほうがいい。名前を叫んで敵をビビらせることもできるし、戦闘の騒乱とスリルを通して、健全で良い関係性を築ける。

言っておくが、私の領域に近づくためにはかなりの訓練時間が必要だ。だが心配するな。戦闘というのはしょせん、学ぶ機会にすぎない。だからさっさと外へ出て、武器を持って、そしてもう一つ持て。世界は広く、まだ見ぬ何かが君に潰され、切られ、殴られ、刺されるのを待っている!

定命の者すべての友The Friend of All Mortals

スカヴィンの篤信者テンプラー 著

「私の元においでください、ステンダールよ。あなたなしでは、私はあなたの民のつぶやきが聞こえず、彼らが安楽と知恵を求めていることを忘れてしまう。私はただ無駄な落書きに我が身を費やしてしまう」

ステンダールと呼ぶ者。ストゥーンと呼ぶ者。呼びたいように呼ぶ者。その名が何であろうと、慈愛と正義の神はムンダスの定命の者すべての友である。彼の存在を認めようと認めまいと。さらに、モロウウィンドの異端者ダークエルフや、鱗を持つアルゴニアの民ですら、彼の防御と治癒の魔法を使う者がいる。ステンダールはその博愛の心で、彼を正しく崇拝する者と、無知と誤解により彼を崇拝しない者とを分け隔てすることがない。

私と共に、ステンダールに祈り、導きを求めよう。そうすれば慈愛の心で、仲間である定命の者に接することができるかもしれない。そうすれば彼らが助けを必要とする時に、思いやりを示すことができるかもしれない。そして我々を脅かす悪鬼たちを、根絶する強さを得ることができるかもしれない。

伝説のサンクレ・トール、第1版The Legendary Sancre Tor, 1st Ed.

マテラ・チャペル 著

スカイリム進出の期間(第一紀245年―415年)、北のハイロックとモロウウィンドの同族たちの進出と富を妬む野心的なハイランドの伯爵たちは、城壁を見越して南のジェラール山脈に進出のチャンスを窺っていた。ジェラール山脈は困難な障壁であることが判明しており、北シロディールは本格的なノルドの侵略を行なうにはあまりにも小さすぎる報酬であった。しかし、アレッシアは多くの野心的なノルドとブレトンの戦闘集団を傭兵として雇い、見返りに豊かな土地と交易権を約束した。勝利を得たアレッシア統治下のシロディールに落ち着くと、ノルドやブレトンの戦士や魔闘士たちは、瞬く間に快適で裕福なニベン文化に同化していった。

アレッシアはサンクレ・トールにおける奴隷の反逆の聖なるお告げを受け、彼女はそこに聖地を築いた。サンクレ・トールの鉱山は多少の富をもたらしたが、やせ地と人里離れた山の厳しい気候は、ハートランドからの食料や物品の供給が必要であることを意味した。さらに、ジェラールを通る数少ない峠の1つに位置するため、その財産はスカイリムとの不安定な関係に左右された。スカイリムとの関係が良好なときは貿易や同盟によって繁栄し、スカイリムとの関係が悪化したときは包囲攻撃やノルドによる占領を受けやすかった。

アレッシア教団の衰退(第一紀2321年頃)に伴い、シロディールの宗教的統治権は南の帝都に移ったが、サンクレ・トールは山岳要塞として、また大規模な宗教の中心地として残った。アレッシア歴史家は、サンクレ・トールが魔法によって隠され、そして神々によって守られていたと主張した。サンクレ・トールの度重なる敗北や、北方の侵略者による占領がその主張を否定する。要塞への入口は確かに魔法によって隠されており、要塞やその迷路のような地下施設は魔法の罠や幻影によって守られていたが、それらの秘密は、作成したブレトンの付呪師から攻め寄せるノルドに洩らされていた。

サンクレ・トール伝説のなかで永続的に語られているのは、レマン皇帝たちの太古の墳墓である。アカヴィリの侵略者たちを破った後、サンクレ・トールはレマンのシロディール統治、および彼の子孫であるレマン二世とレマン三世の下で、短い間の富と文化の復活を味わった。彼の系図を聖アレッシアまで辿り、聖アレッシアがサンクレ・トールの地下墓地に埋められた伝統に従い、レマンは素晴らしい埋葬区画を太古の要塞の地下道に作った。ここに最後のレマン皇帝であるレマン三世が、王者のアミュレットと共に埋葬された。

サンクレ・トールは第二紀の中頃から廃墟のままであり、その周辺の地域にはほとんど人が住んでいない。現在、すべての連絡はコロールとブルーマの峠を通り、サンクレ・トールの要塞とその地下道は、さまざまな凶暴なゴブリンたちの隠れ家となっている。

編注:聖アレッシアは帝都の最高神の神殿の地に埋葬されたとの競合する言い伝えがある。実際の聖アレッシアの墓は知られていない。

特異な冶金に関する論文Treatise on Metallurgical Anomalies

大冶金術師オヴルド 著

本書は私の代表作となるだろう。タムリエルに存在する鉱石、鉱物、合金について、私が知っていることを網羅した集大成だ。

第1章:鉄、その驚くべき多様性

まずは泥鉄鉱を取りあげたい。これは、その名のとおり鉄泥炭から「採掘」される。根気のよい泥鉄鉱掘りであれば、鉄泥炭のなかに豆粒大の鉱石の塊を見つけられる。その鉱石から作った鉄は錆に高い耐性を示すことが多く、様々な用途があることから、泥鉄鉱は珍重される。

次に、スカイリムの凍てつく山岳地帯のそこかしこで見つかるコールドアイアンがある。精錬し、鍛造した後でさえ、このユニークな鉱物は周囲の温度如何によらず冷気を維持し、冷たい感触を保つ。コールドアイアンには様々な用途があり、また付呪の効果を非常によく保持する。

私は各地を旅する中で、とある謎めいた鉱物にも遭遇した。それがはたして鉄かどうか、確信は持てない。というのも、この奇妙な鉱石との出会いは突然現れたトロールの群れに邪魔され、短時間に終わったからだ…

破壊か、逸脱かDestruction or Distraction

ヒュミウス・エイシディヌス 著

特に知的な論客としての地位を確立したいと考える、若い成り上がり者の間では、マジカの破壊的な潜在力を活用する研究を原始的で単純なものと見なして、研究から離れてしまう者が多い。このような考えを持つ者は、より実践的な魔法を応用することよりも、あいまいな理論的主題を研究することに時間を費やすことを好む。

実際、こういった学者ぶる者たちは、同年代の学者の仮説に反証するために自説の本を書く以外には何も成し遂げず、実際的な魔法の研究において、何の根拠もない仮説を議論することで時間を無駄にしている。彼らはお互いに、彼らの想像上の分野で相手を出し抜くことばかりに気を取られていて、実りある発展は決して生み出さない。私は確信しているが、自らの欲求を優先する振る舞いはアルケインの研究にとって、進歩(呪文の発見などの具体的な発展)を阻むものである。

魔法が奥深く複雑であり、私たちの理解が完全には及ばないことは否定しない。しかしながら、比較的複雑でない魔法を完全に理解する前に、観測し得る現象において根拠の乏しい仮説を議論する価値があるかについては、疑問を呈する。長年の実地経験において私は、最も簡単だと軽視されるマジカの現われを研究することで、時に魔術の本質を明確に知ることができることに気付いた。基本と思われるものを完全に理解せずに、一体どうやって、魔法を進化させ学習者やタムリエルに広く利益をもたらせるというのだろうか?私は読者諸氏に強く願いたい。実りのない知的議論の世界に身を落とすことのないよう、ご注意いただきたいと。

平和を求める主の儀式Rituals of the Harmonious Masters

リランドリルのアリタンウェ 著

一部のエルフの中には、原初のステンダールが人間の擁護者であるという理由から崇拝したがらない者がいる。アルドマーの子供達が尊敬するに値しないというわけだ。だが、もしこのような狭量な人々がステンダールの慈愛に対して魂を解放したとしたら、ステンダールの愛はすべての定命の者を慈しみ、守っていると気付くだろう。その中でもこのとりわけ恵まれない者たちですら慈愛を受けているのだ。

それ故に、平和を求めるマスターの一派である我々は、ステンダールの光の魔法を治癒の呪文に変えようと務めている。それはすべての定命の者だけでなく、獣の姿をした人々にさえ使うことができる。我々の儀式による回復の効力は、すべての種族に対して平等に発揮される。また、いかなる血筋の者でも、いかに卑しい身分の者でも、この魔法の使い方を学ぼうという意志と知恵を持った者であれば、使うことができる。

ステンダールがその限りのない慈愛において、すべての定命の者に彼の魔法の恵みを使うことができる能力を授けたことで、我々、平和を求めるマスターはその名にかけて、ニルンのすべての人々にこの呪文の知識を惜しげなく広める使命を感じている。我々の最大の目的は、いかなる文化を持つ人々であろうと、当たり前に快適な生活ができるように暮らしを改善していくことなのだ。

魔術は死霊術ではない!Sorcery is Not Necromancy!

ディヴァイス・ファー 著

私のように最高位の力と学識を持つ魔術師は、広大なタムリエルのあらゆる場所で、その技を使うよう頼まれることがある。私が広く旅をしたモロウウィンドの地でも同様であった。これは私の個人的な経験から言えることだが、了見の狭い地方の官憲は、その種族や文化に関係なく、皆共通して魔法に対して疑い深く、間違った知識を持っている。彼らは声をそろえてこう言う。「ソーサラーだって?まったく、この地域では蘇らせる死体なんてものはないよ。分かったかね?」

これと同じような台詞を一体何度聞かされたか分からない。こういった無知で尊大な役人たちは、アルケインの術の違いなどまったく何も知らないのだ。彼らが気にしていること言えば、マジカを操る者はすべて、真夜中にコソコソと墓地に忍び込んで、彼らの隣人や先人たちの死体を動かすのではないかということだけだ。

低能で愚かな官僚どもめ。

もちろん召喚が一般的な魔術の1つなのは確かだ。私たちソーサラーは、問題を解決するにあたって狂暴な獣の力が必要だと判断した場合には、オブリビオンに助けを求めて召喚という手段に出ることがある。デイドラの霊魂を召喚し、死体に乗り移らせ操り、情報やその他の目的のために死者の魂を呼び出すこともある。一言で言えば、死霊術とは不快で品位がないものではあるが、召喚術の一部なのだ。しかしながら、このことからすべてのソーサラーが死霊術師と事実上同じである、とするのは誤りであり、誤解を招く中傷である。

とは言うものの、誰にでも若い頃というのはあるもので、危険で禁じられたことを実験しようとするのは若者にありがちなことだ。ずっと昔、私はテル・アルンに住む若者だった。昔のことで、第一紀の初頭の記憶は確かではないが、私は見習いとして、死体を操る呪文を1つや2つ、試したことがあるように思う。もちろん自分の知っていた人の死体は使っていない(少なくともよく知っていた人ではない)し、わずかな時間だけのことだった。私の記憶によればだが。

つまり、いずれにせよ、私が皆にはっきりと言いたいことは、 魔術と死霊術、これはまったく異なるものだということだ。

雷撃魔法の実用性についてOn the Utility of Shock Magic

ヴァヌス・ガレリオン 著

タムリエルでも名だたる魔術師として、私はしばしば依頼を受ける。たいていは王室などの高貴な家柄の人物からで、彼らを喜ばせるため魔術の腕前を披露するのだ。どんな魔法を見たいのか尋ねると、彼らはほぼ決まってこう答える。「ファイアボールを飛ばしてくれ!ものすごく大きいやつが見たい」

タムリエルの貴族たちがいかに魔術についての知識が乏しいかよく分かる。炎の魔術はもちろんそれなりの使い道があるが、真の魔法学者は、己のグリモアにおいて雷撃魔法に最も重きを置くものだ。いくつかの理由により、アルケインの稲妻を操ることは、魔法の炎を生み出すよりも簡単で、その効果には多様な使い道がある。以下にその一部を記す。

—魔術師は稲妻のオーラで自身を包み込み、一定の物理的、魔術的攻撃を受け流すと同時に、身近にいる敵を感電させられる。

—稲妻をルーンの形で物体の表面に帯びさせ、何かが触れ、一定の時間が経った後爆発するようにできる。

—魔術師は近くの敵に稲妻を投げつけ、瞬時にその「稲妻に乗って」敵の方へ移動できる。

—もちろん、稲妻を直接敵に投げつけることもでき、それには多種多様な方法がある。

おそらくだが、氷結と炎の元素魔法を、雷と同じように自在に操る方法も発見できるだろう。だか、私がまだ発見していないのなら、他の誰が発見できるというのだ?

錬金術:特性の発見方法Alchemy: Discovering Traits

デフェサス・レクター 著

バルダス

錬金術師がさまざまな試料の特性を学ぶ方法とは、試料の味を見ることだ。ここでのポイントは「味を見る」ということことだ。いくら試料がおいしそうでも、1人分の試料より多くを食べる必要はない。君が、君の父上のワインセラーを訪れた話を執事長から聞いた。それによると君は、一般的なアルコール飲料は、大量に摂取したとしても錬金術の特性は持たない、とすでに結論付けたようだね。

試料の味を見ることで、試料の最も明白な錬金術の特性を知ることができるが、多くは第2、第3の魔法の性質も持っている。試料を混ぜあわせて結果を観察することで、こうした隠れた特性を明らかにできるのだ。時に目を見張るようなものもある。実験すればするほど、錬金術の技術は高まり、特性の理解が容易になり、効果的に組み合わせられるようになるだろう。

また君は、ある種の試料が共通、または完全に同一の特性を持っていることに気付き始めているだろう。例えば、花の特性は概して有益なものだが、キノコ類はしばしば有害だ。君が先週の月耀、ぎりぎりになって宿題を片付けようとして、9種類のキノコを数分のうちにまとめて食べた時によく分かったようにね。君が吐き戻した勢いときたら、驚くべきものだったよ。

錬金術の基礎Fundaments of Alchemy

アルヤンドン・マシエリー 著

魔術師の卵は見落としがちだが、錬金術とはそれを極めた者の人生を変える力のある由緒あるもので、実りある鍛錬である。錬金術の製法に使用される素材の知識を深めることは簡単なことではなく、しばしば危険を伴う。それでも一生懸命に研究を続けることで、最後に錬金術師は大きな見返りを得ることになる。

成功を果たす前に、もしくは、そもそもやってみようとする前に、初心者の錬金術師はクラフトの背後にある基本原則を理解する必要がある。我々の世界の多くのアイテムは、本来はほとんどが有機体であり、魔法の特性でより基本的なエキスに分解できる。錬金術師の腕が良ければ良いほど、生かすことができる材料の特性は多くなる。2つ以上のエキスを調合することで、誰にでも口にできる薬を作り出すことができる(伝説によると、真の偉大な錬金術師は、1つの材料から薬を作ることができるという。常人の能力をはるかに超えた技巧だ)。

錬金術師が作る薬には様々な効果がある。それは使用する材料によって異なり、すべてが良い効果をもたらすわけではない。ほとんどのレシピは、プラスの効果とマイナスの効果を持った薬を作り出す。どのレシピが最大の効果を生み出すか、それを決めるのは錬金術師次第だ(注目すべきは、マイナスの効果のみを持つ薬を作ることもできることだ。著者はその生成を奨励しないため、この書ではこれ以上のそのような薬について言及することは避ける)。

絞り汁のクラフト

絞り汁のクラフトとは、実際には素人の錬金術だ。つまり、歯ですりつぶす必要のある材料を食べる。そうすることで薬草のエキスが絞り出され、食べた者は少しの間だけその効果を得ることができる。絞り汁には、適切な道具を使用して作った薬ほどの強い効果はない

錬金術師の道具

乳鉢と乳棒は錬金術師にとって最も重要で欠かせない道具である。それなくしては、薬作りに使用する材料をきちんと準備できない。未熟な錬金術師は、いかなるときも乳鉢と乳棒を手放さず、最初のうちに道具の使用に慣れるよう指導を受けるほどだ。材料をすりつぶすことは薬を作る上で基礎中の基礎となる。正しくすり潰し、レッドワートの花びらを薬用人参のような別の材料と正しく調合すると、解毒効果のある薬を作成できる(この調合は、多くの錬金術師がすぐに覚えて記憶にとどめる。薬の調合を間違えると、この調合を必要とすることが多いからだ)

熟練の錬金術師は、質の高い薬を作るために他にも意のままに使える道具を持っている。蒸留器は混合物を精製し、薬のプラスの効果を向上させるために使われる。蒸留器を使って混合剤を浄化することで、薬を精製し、あらゆるマイナスの効果を減少させられる。また焼却炉は、混合剤の不純物を焼き払うために使われる。これにより薬が持つあらゆる効果の潜在能力を高められる。これらの器具は薬の生成に必須ではないが、可能ならいつでも使うべきだ。

材料の組み合わせ

薬はその材料の組み合わせ次第である。同一の効果を持った材料で1つの薬を作れる。1つの薬を作るために必要な材料の組み合わせは、多くて4つまでだ。

錬金術師が材料の準備をする技術を習得するにつれ、新たな特性が発見され、薬を作る際にその特性を使うことができるかもしれない。薬を作り終えたとき、どのような効果を持っているか慎重に確認すべきだ。既に確立したレシピでも新たな結果が出ることがあり、そのすべてが有益というわけではない。

錬金術の実習Alchemy Practicum

デフェサス・レクター 著

バルダス

新人の錬金術師が薬の配合を覚えるための古典的な方法は、実験だ。つまり、注意深く選択され溶媒に入った試料の混合を体系的に試し、結果を観察する。その後で試料の一つを変えて、結果が変わるのかどうか観察する。

しかし君は、大釜でお湯を沸かして、そこに適当に試料を一握り投げ込めば何らかの不思議な薬ができると考えているようだな。

そのようにやらせるつもりだった。道は長くても、間違いから学んでくれると信じたからだ。君の場合は全部上り坂で、岩だらけで、倒木に道を塞がれている長い道だが。だが君の父親の執事長から、君はすでに725ゴールド分の試料を無駄に使い、成果なしだと知らされた。

そこで、君に実習を課すことにした。君は学ぶことができ、父上はお金の節約になる。

通常の菌類と花粉に加えて、げっ歯類の体を使用するように。経費を節約するため、君が食料品置き場での戦いで勝利したネズミを使う。今回は、少なくとも性質の合う試料を使うよう希望する。

錬金術の実習

1( )と2( )を3( )に混合した結果は(  )

A( )とB( )をC( )に混合した結果は(  )

X( )とY( )をZ( )に混合した結果は(  )

熾烈なる炎:ドラゴンの力か、固有の力か?Ardent Flame: Draconic or Endemic?

ガブリエル・ベネレ 著

昨晩、私はアンカーズポイントの酒場に座って、ラリバラーの「11の儀式形態」を読みながら、マグに入ったラム入りのミルク酒をちびちびと飲んでいました。その時、私の静かな空間は突然、長身の鎧姿の男の侵入によって破られました。彼のせいで明かりが遮られたので、私はどこか別の場所に立ってくれないかと頼みました。しかし彼は、美しい女性が月の輝く夜に読書で時間をつぶすなどもったいない、というような意味の返事をし、泡だらけのジョッキをテーブルに置いて私の隣に座ったのです。

私が文句を言う前に、彼はこれまでの人生、そして彼自身について語りだしました。とても熱のこもった様子でした。彼は北部沿岸地域のファルンという港町で生まれ、大物になる運命だという信念を持って育ったようです。年頃になった時、彼は街を出て、中央ハイロックへ向かいました。そこで彼は、年老いた半分アカヴィリの血が入った武術の師範に出会いました。彼が教えていたのはいわゆる「ドラゴンナイト」の技でした。その時、彼はついに自分の真の使命を見つけたのです。彼はドラゴンナイトが「熾烈なる炎」と称する魔法の戦闘術を体得しまし。

ホラかどうかは分かりませんが、彼が持ち出したアルケインの術の話には興味が湧きました。私はその戦いの魔法の基本についてもっと話して欲しいと頼んだのです。私には馴染みがないものでしたら。彼は大喜びで話を続けました。熾烈なる炎について、彼はこう説明しました。ドラゴンナイトは敵に火をつけ、炎の投げ縄で敵を捕まえ、自分の体を炎で包み込み、さらには伝説の古代のドラゴンのように炎を吐くことができるそうです。そして、そんなことができるのはドラゴンナイトが、第一紀よりも前にドラゴンと戦い、勝利し、生還した強力な戦士たちから伝えられた、実際のドラゴンの魔法を使うからだ、と彼は断言しました。

ここで私は彼の話に興味を失いました。魔術師ギルドの一級魔術師である私が、無学で無作法な彼のような男が遠い昔に失われたドラゴンの魔法の呪文を使うなどという話を、本当に信じると彼は思ったのでしょうか?私は乱暴に片手を上げました。驚いたことに(おそらく彼自身も驚いていました)、彼は実際に話すのをやめました。私は彼に、ドラゴンの魔法の話は十分に聞いた、どうもありがとう、私が知る限り、シャド・アツーラの教育過程の中にある「破壊魔法」という炎の呪文の標準的な術と変わらないようだ、と言いました。彼にはもう席を外してもらって、私はまた読書に戻りたかったのです。

彼はしばらくぼそぼそと何か言っていました。それから人をバカにしたような笑顔を見せ、ドラゴンは荒々しいと同時に優しい生き物だから「お嬢ちゃん」が怖がる必要はない、と言ったのです。おそらく私は、彼の炎がどれほど熾烈なのかを理解していなかったのでしょう。

私は帰れと警告しましたが、彼は私を冷やかして帰ろうとしませんでした。彼が私に「溶岩のムチ」を見せようと言い出した時、私の忍耐は限界に達しました。アンカーズポイントの主人に、店の出入り禁止を言い渡されたのは残念です。あの店が気に入っていたのに。

おそらくもう少し我慢すべきだったのでしょう。だけど誰にも限界はありますし、それに何か問題でしょうか?たとえ髪の毛と髭が丸焼けになったとしても、どうせそのうちまた生えてくるのに。