デイドラ公

Daedric Princes

アズラの祈りInvocation of Azura

シギラウ・パレート 著

300年もの間、私はアズラことムーンシャドウのデイドラ公、薔薇の母そして夜空の女王の女司祭をしてきた。どのホギトゥムも我々は蒔種の月21日を祝い、価値ある美しいものをあの方に捧げるのと同様に助言を求めて彼女を呼び出す。彼女は残酷だが、賢い支配者である。どのホギトゥムであれ、雷雨の時は彼女に祈らない。たとえ日取りが重なったとしても、こうした夜はマッドゴッドのシェオゴラスに属するからである。そのようなときアズラは我々の注意を理解している。

アズラの祈りは非常に個人的なものである。私は他3柱のデイドラ公の女司祭をしてきたが、アズラは礼拝者の性質と彼女への崇拝の裏にある真実を重視する。私は16歳のダークエルフで侍女であったとき、企みのデイドラ公ことモラグ・バルを礼拝する、祖母の魔術結社に参加した。恐喝、ゆすりそして賄賂は闇の魔法であると同時にモラグ・バルの魔女の武器でもある。モラグ・バルの祈りは、暴風雨を除いて星霜の月20日におこなわれる。この儀式が行われないことはめったにないが、モラグ・バルはしばしば他の日に人間の装いで自分の崇拝者たちの前に姿を現す。ファイアウォッチの後継ぎに毒を盛ろうとして祖母が亡くなったとき、私は自分の信仰をもう一度問いただした。

兄弟はボエシアの教団のウィザードだった。彼の話から、闇の戦士は信用ならないモラグ・バルよりも私の精神に近かった。ボエシアはデイドロスの誰よりも戦士らしいデイドラ公である。数年間を陰の策略で過ごした後では、行動に直接結果が生まれる主人は好ましかった。その上、私はボエシアがダークエルフのデイドラの1人であるのが気に入った。黄昏の月2日、籠手と呼ぶ日に我々の教団は彼女を召喚した。血まみれの戦いが彼女に敬意を表して行われ、9人の信者の命が他の信者の手で奪われるまで衝突は続いた。ボエシアは彼女の信者に対してほとんど気を使わず、彼女の関心は我々の血だけだった。誤ってスパーリング中に兄弟を倒してしまったとき、彼女は確かに笑った。私の恐怖が彼女を大喜びさせたのだと思う。

その後すぐに教団を離れた。ボエシアは私にひどく冷たかった。心に深みのある支配者が欲しかった。人生の次の18年間、私は誰も崇拝しなかった。その代わり、本を読んで研究をした。古くて俗な書に、不可思議なノクターナルの夜の女王、ノクターナルの名前を見つけた。その本が指示したように、炉火の3日、聖なる日に彼女に呼びかけた。ついに、長いこと求めていた自分の主を見つけたのだ。彼女の不可思議な痛みの元になる、入り組んだ哲学を必死で理解しようとした。話し方や私に求めた言動でさえも、彼女に関することはすべて闇に包まれていた。私がノクターナルを理解できることはないという、単純な事実を理解するまで数年かかった。ボエシアへの残忍な行為やモラグ・バルへの裏切りと同じように、彼女の神秘は彼女にとって不可欠だった。ノクターナルを理解することは彼女を否定し、その部分を闇で覆う幕をめくることだ。私は彼女を愛する程に、彼女の謎を解く無益さに気がついた。代わりに彼女の姉妹、アズラのことを考えるようになった。

アズラは私が崇拝したデイドラ公の中で、唯一信者を気にしているように思える。モラグ・バルは私の精神、ボエシアはは私の腕、そしてノクターナルはおそらく私の好奇心を欲しがった。アズラはそのすべてを望み、とりわけ愛を欲しがる。盲従ではなく、誠実で純粋なあらゆる私達の愛だ。そしてその愛は、内側にも向かわねばならない。我々が彼女を愛し自身を憎むと、彼女は我々の苦しみを感じる。私が今後他の主に仕えることはないだろう。

エドラとデイドラAedra and Daedra

神、悪魔、エドラ、デイドラという名称は一般の大多数にとっては紛らわしい物である。これらは同意語として使われることも多い。

「エドラ」と「デイドラ」は相対語ではない。両方共、エルフ語で正確な定義がある。アズラはスカイリムとモロウウィンドのデイドラである。「エドラ」は通常「祖先」と訳され、シロディール語としてはエルフ語の概念に可能な限り近づけている。一方、「デイドラ」は大まかに言うと「我々の祖先ではない」という意味になる。伝説上の系図がイデオロギーを根本的に分岐させているダンマーにとって、この違いはとても重要な物だった。

エドラは静止に関連付けられる。デイドラは変化を象徴する。

エドラは定命の者の世界を作り、アース・ボーンズに縛られている。一方、想像ができないデイドラは変化をもたらす力を持っている。

神の創造に基づく契約の一部として、エドラは殺すことができる。ロルカーンと月がその証明である。

契約が適用されない、変幻自在なデイドラは、追放することしかできない。

オプスカルス・ラマエ・バル・タ・メッザモルチェOpusculus Lamae Bal ta Mezzamortie

ラマエ・バルと休まらぬ死の概要

マベイ・アイウェニル 書記

グウィリム大学出版局翻訳 第二紀105年

光が大きくなると、陰の闇が濃くなる。デイドラのモラグ・バルがアーケイを見て、人間やエルフ族の死を支配するエドラを高慢と考えた時、それは真実となった。

残酷な抑圧と定命の者の魂を罠にかける役割のバルは、ニルンの人間やエルフ族、獣人も死からは逃れられないと知っているアーケイを邪魔しようとしていた。エドラは自分の役割を疑わず、だからこそモラグ・バルは最高の死をニルンに送った。

バルが人の姿になってネードの民のラマエ・ベオルファグの乙女を奪った時、タムリエルはまだ若く、危険や驚くべき魔法に満ちていた。バルは乱暴に愛もなく彼女の体を汚した。その叫びが悲鳴の風になり、今もスカイリムのフィヨルドでは聞こえるところがある。1滴の血を彼女の額に流し、バルは怒りを撒き散らしながらニルンを去った。

乱暴を受け意識のない状態で、ラマエは遊牧民に発見され世話を受けた。2週間後、遊牧民の女性は彼女が他界したために布で覆った。習わしに従い、遊牧民はたき火を作り魂のない体を焼いた。その夜、ラマエは火葬の薪の中から立ち上がり、燃えたまま群衆に襲いかかった。彼女は女性の喉を裂き、子供の目を食べ、バルに暴行されたように残酷に男性を犯した。

そしてラマエ(血の母として有名)はタムリエルの人達に呪いをかけ、醜悪な物を際限なく生み出した。最も狡猾な夜の恐怖、吸血鬼はここから生まれた。タムリエルには不死の苦しみがもたらされ、原初の神々の時代から続くアーケイの生と死のリズムを残酷に阻害したのだ。アーケイは悲しんだが、元に戻すことはできなかった。

ハーシーンのトーテムThe Totems of Hircine

ハーシーンから最も貴重なライカンスロープの贈り物を授かった我々の間で、彼が自分の力をこの世界に存在する特定のアーティファクトにもたらしたという伝説がある。それは人間が書く事も話す事も考える事もほとんどできなかったが、選ばれし者達には野獣の血がまだ色濃く流れていた頃の時代の話だ。

第1:彫刻がほどこされた狼の頭蓋骨。
我々一族を作り上げた血の儀式で古代の呪術師によって使われ、その前にひれ伏す人々への存在感を高めると言われている。それは、ハーシーンの顔をちらっとでも見たことのある人々以外は、彼らの姿を見ると未知の恐怖で縮み上がるほどだと言われる。

第2:頭蓋骨同様、彫刻が施された大腿部の骨だが、何の動物の骨かは不明。より古代の仲間の多くが薬効効果のある棒として使用し、視力も嗅覚も高めると言われていた。そのため感覚が鋭くなった我々から獲物が遠くに逃れられなくなった。

第3:平凡な太鼓。そのありふれた外観はおそらく長い歳月の中で忘れ去られたことを意味するのだろう。我々の父が戦場から仲間を呼ぶために拍子をとったように、太鼓を鳴らせば我々の血の中に眠る先祖が同族を呼び集めるだろう。

これらのトーテムを通して、我々は野獣の力を呼び起こし、集中させる。ウェアウルフが人々に知られている魔法を見限る一方で、我々は時により直接的な自然エネルギーと接触できる。そしてこのようなトーテムを通して、人工的な文明に汚される前の最初に世界を支配した力を見つけられるのだ。

フラグメンテ・アビーサム・ハルメアス・モラスFragmentae Abyssum Hermaeus Morus

…そしてイスグラモルは巨人の妻の嘆きを集め、フロアとグロスタの元に持って行き、イスグラモルの強弓ロングランチャーを張り直すため、より合わせて悲嘆の弦にしてもらった。以来、ロングランチャーは運ばれるとため息をつき、発射されると嘆きの声をあげた。そして、イスグラモルはそれを狩りに持って行くことにした。

そして彼はアトモーラのフロストウッドで狩りをして、多くの獲物を仕留めてから、喉を心ゆくまで潤そうと浅瀬で立ち止まった。そこにフォーレルグリムの白鹿が、流れを越えて飛び跳ねた。イスグラモルは鹿を射た。だが彼は何と射損じた。不機嫌な彼は誓った。白鹿を倒すまで追い続けると。だが鹿は静かに落ち着いて、雪の上にかかる霧のごとく通り過ぎていった。イスグラモルは何度も鹿を見たが見失った。悲嘆の弦のため息が、白鹿の足音より大きくなったがゆえに。

再び跡を見失い、怒りに燃えて立ち止まったとき、ウサギが現れて言葉を発した。「鹿はあそこの谷の中に潜んでいます」「どうしてわかるのだ?」イスグラモルはウサギに問いただした。ウサギは答えた。「長い耳があるのでわかります。ええ、あなたも私ほどの長い耳を持っていたら、獲物がどこに行っても聞きつけることができますよ」

「それならば」イスグラモルは言った。「私の耳が汝のものほどの長さになるように」するとウサギの鼻がひくひくと動き、イスグラモルは自分の耳が伸びて先が尖るのを感じた。ところが一匹のキツネが雑木林から飛び出して、ウサギに飛びかかって殺した。イスグラモルは不思議なことに、自分の耳が縮んでいつもの大きさになったのを感じた。

そしてキツネが言葉を発した。「知るがよい、定命の者よ。我が名はショール。この者はウサギなどではなく、ハルマ・モラである。汝を欺き、エルフの仲間に変えるところであった。これより後は、人間の素直なやり方に頼り、エルフのごまかしを避け、彼らのようにならぬようにせよ。さあ、谷で汝を待つ白鹿のもとへ向かうがよい」

ハイルマ・モラ・パド・アダ・オイア・ナガイア・アバ・アゲア・カヴァ・アポクラ・ディーナ・ゴリア・ガンドラ・アルカン

「ハルメアス・モラはアダ、アビサル・セファリアークよりも年長であり、この下劣な者の請願に耳を傾ける。私が否定された知識を交換するに至ったがゆえに。私が求めるものはこの羊皮紙に名前が書かれており、それによって私はお前に敬意を表して知識の悪魔を使役する。我が願望にとって知ることは計り知れず、償いには名づけられたいかなる対価もみたされるであろう」エ・ハルマ・モラ

エ・ハルマ・モラ・アルタドゥーン・パドメ・ルカン・エ・アイ

(私の次なる夢は)アポクリファの夢だった。そこで私は(名もなき書物)の間の影の広間、煙のごとく吸い込んだ意見と議論の間を歩いた。左手にはベラムの巻物、右手には羽根ペンを持ち、通り過ぎてきた歴史(を書いた)が、巻物が文字で満たされることはなかった。(言葉を)下に書くにつれて上の(言葉が)消えていくからだった。

そして私はラピスラズリの台座の元で立ち止まった。そこにはこれまで述べてこなかった(物が)しまってあった。奇妙な装飾の壷だった。そこで私は巻物と羽根ペンを(脇に置いて)、装飾をつかんで蓋を持ち上げた。

(壷の中には)ねばねばした不快な匂いの(液体)があった。その上に浮かんでいたのは、灰色に輝く定命の者の(思考器官)だった。それで、なぜかはわからないが理解した。その(液体)は塩水ではなく、その脳は保存されていたのではなく生きていて、警戒しており、闇の知性によって思考を続けていたのだと。私は蓋をしめて壷(から目を上げて)、そして(台座の向こうの)長くどこまでも続く回廊を見やった。左右に数え切れないほどの台座が並び、(それぞれの台座の上には)壺があった。

(そういうわけで)私が目を覚ました(時)、私の舌は刺し貫かれていたのであった。

ボエシアの証明Boethiah’s Proving

(以下の説明は真実である。聞く耳と考える心を持つ人々に警告として届きますように)

ある日ある時刻に、信仰深い者たちは主を一目見ようとある儀式を行うために集った。日程は正しく、まさしく召喚日和だった。

ベールに立ち込める煙を掻き分けて、恐ろしくもまばゆい女が姿を現した。彼女は太陽の表面よりも熱く燃え上がる刀剣を振りかざしながら、月が出ていない夜よりも暗い漆黒の衣装で着飾っていた。ダンマーの戦う女王の姿だったが、レッドマウンテンから彫り出された像のようにそびえ立っていた。

「なぜ私の眠りを妨げたのだ?」

驚いて、人々の間で1番目の者は祈った。

「ボエシアよ、策略のデイドラ公にして民を惑わす者であり、影の女王でありそして破壊の女神でもああるお方よ。あなた様に崇拝を奉げるために参りました!」

彼女は証言をしようと集まった彼らを見下ろした。不機嫌そうな顔で最初に尋ねた。

「答えよ。お前は私を知っているが、私はどうやってお前を知ればいいのだ?」

恐る恐る男は答えた。

「毎晩あなた様に祈ります。毎晩あなた様の素晴らしいお名前を声に出してお呼びします。もちろんあなた様は私の声がお判りになりますよね?最も忠実な信者ですよ?」

彼女は顔をしかめて長い溜息をもらすと、そこから出た空気が男を包み、突然彼の姿は消えた。

2番目の者の方を向き、彼女は尋ねた。

「お前はどうだ?どうお前の価値を見定めればいい?」

その声の力に衝撃を受け、男は漆黒の衣装を纏った彼女の前で頭を垂れた。

彼女が手をたたくと、彼もまた消えた。

3番目の者には次のように尋ねた。

「そこのお前、答えてみろ。私は先ほどの彼ら、そしてお前のように情報がない者をどう知ればいいのだ?」

震え、仲間の失踪に言葉を失い、男は囁いた。

「我々にお慈悲を!」

彼女は2度まばたきした。1度目のまばたきで男は苦しみ悶絶し、2度目で死んだ。

彼女は残りの者たちに容赦ない視線を向けて言った。

「私は慈悲を与えはしない」

他の者たちも一緒だった。彼女は彼らを試し、彼らは何も与えられなかった。

ついに、怒りで目をぎらつかせ憎しみで舌を濡らし、彼女は私のところに来て言った。

「すべての私の信者の中で残りは2人だ。最後から2番目の者よ、どうやってお前の存在を証明するのだ?」

ためらうことはなく私は武器を抜いて、隣に立っているもう1人の胸を突き刺した。恐れることなく答えた。「今この刃から血を流すこの男に、私が存在しているかどうかを聞いてください」

彼女は微笑んだ。そして彼女の歯の間にあるオブリビオンの門が開いた。それから言った。

「最後となった者よ、なぜ他の者たちがいない場所に残るのだ?」

私は刃をしまい、答えた。

「そこにいる者が死んだから、私は生きています。私が存在しているのは、その意思があるからです。この刃から血が滴るように私が仕事をする証がある限り、私は生き残るでしょう」

贈り物を受け取りながら、彼女は言った。

「確かに」

(もし、これを読んでいるときに血管の血が煮えたぎり、心が燃えていたなら、ボエシアに呼ばれるだろう。彼女の声に耳を傾けることは最も賢明である)

モラグ・バルの子供The Spawn of Molag Bal

モラグ・バルは奴隷にする。モラグ・バルは冒涜する。

モラグ・バルは従わざる者との子供を生み、軽率な者の魂を刈り取る。

伝説によれば、モラグ・バルは最初の吸血鬼の父である。吸血鬼の多くの種についての詳細は明らかではないが、吸血鬼はみな彼の子と考えられるかも知れない。

大部分の吸血鬼は血をたどっていくと同じ遠い祖先に行き着く。モラグ・バルに汚された、ネードの従わざる処女だ。彼は怪物の血を生み出し、怪物達はさすらい、彼の汚れを遠くに撒き散らした。

モラグ・バルとの契約や取引の結果吸血鬼となった種もある。モラグ・バルは契約の見返りに、不死と永遠の罰を伴う力を約束したのだ。

モラグ・バルは混沌と不和の種を蒔き、次々と魂を腐敗させることで争いを撒き散らす。彼の軍は勢をなし、彼の忍耐は無限である。彼の究極の目的は、生きとし生けるものすべてを支配し、奴隷とすることだ。

現代の異端者Modern Heretics

帝都内のデイドラ崇拝の研究

ゴトルフォントのハデラス 著

シロディール内でデイドラ崇拝は法で禁じられてはいない。これは主に、デイドラの召喚を許可するために帝都が魔術師ギルドに対して認めた特権の結果といえる。にもかかわらず、聖職者および一般大衆からのデイドラ崇拝への風当たりが非常に強いため、デイドラ関連の儀式を行うものたちは秘密裏に活動している。

一方で、諸地方に目を向けてみるとデイドラ崇拝に対する見方は様々である。シロディール内でも年月と共に伝統的な世論に少なからぬ変化が見られ、デイドラを崇拝する集落も存続している。伝統的なデイドラ崇拝を志す者には信仰心や個人的な信念を動機とする者がいるのに比べ、現代的なデイドラ信者の多くは魔法的な力を目当てにしている傾向がある。とりわけ冒険家と呼ばれる人種は、伝説に名高いデイドラのアーティファクトの、武器や魔法的な利点を追い求める傾向にある。

筆者自身も、夜明けと黄昏の女王であるアズラを信仰する一団と遭遇している。デイドラ崇拝に興味をもつ研究者は複数の方法で調査を進めることができる。既存の文献の研究、古代のデイドラの祠の探索および発見、各地の情報通からの聞き取り、そして信者そのものからの聞き取りなどが挙げられる。筆者自身はアズラの祠を発見する際にこれらの手段を全て用いている。

筆者は最初に文献を紐解くことにしている。本書のような解説書からデイドラの祠に関する一般的な事情などを知ることができる。筆者が自身の研究によりシロディール内のデイドラの祠について理解している事項を例示すると、一般的に、デイドラの主の像が祠の象徴となっており、祠の位置は集落などから離れた野外にあり、各々の祠には信者の一団がついており、祠ごとにデイドラの主への嘆願等を行うべき特定の時間(週の間のある日であることが多い)が決まっており、デイドラの主は嘆願者が十分な力を有しているか、相応の人物でない限り嘆願に応じないことが多く、また返答を得るには適切な供物を捧げる必要があり(捧げるべき供物については信者の一団のみが知る秘密となっていることが多い)、そしてデイドラの主は何らかの仕事や使命を達成した冒険家には、しばしば魔力をもったアーティファクトを授けることがわかっている。

筆者は次の段階として、周辺地域の地理に精通している地元住民に聞き取りを行う。とりわけ得るものが多い聞き取り対象は二つあり、一つめは(移動中に祠を発見する可能性のある)旅の狩人や冒険家であり、二つめは魔術師ギルドの学者たちである。アズラの祠については、どちらの対象も有益な情報源となってくれた。旅路の途中で奇妙ながらに雄大な彫像を見かけたというシェイディンハルの狩人によると、像は両腕を伸ばした女性の姿をしており、片方の手には星を、他方の手には三日月を持っていたとのことだった。祟りを恐れて像を避けたものの、その位置は記憶しており、シェイディンハルの遥か北方、アリアス湖の北西、ジェラール山脈の奥深くという情報が聞き出せた。像の外観に関する情報が得られたので地元の魔術師ギルドを訪ねてみると、その外見を元に崇拝の対象となっているデイドラの主の正体が特定できたのであった。

祠の位置が判明したので現地に足を運んでみると、祠の周囲に信者の一団が住み着いていることがわかった。デイドラ崇拝に対する風当たりの強さゆえ、信者たちは当初こそ自分たちの素性を認めたがらなかったものの、筆者が彼らの信頼を得た後にはアズラが嘆願に耳を貸す時間帯(夕暮れから夜明けまで)に関する秘密や、捧げるべき供物がウィル・オ・ウィスプから得られる「発光する塵」であることを教えてもらえた。

筆者は一介の聖職者兼学者であるため、ウィル・オ・ウィスプを発見して発光する塵を入手することはかなわなかったうえ、供物として捧げられたとしてもアズラが耳を貸してくださったかどうかは定かではない。しかし、仮に供物を捧げてアズラがそれを認めてくださった場合、筆者は何らかの使命を与えられ、それを達成できた暁には伝説的な魔力を秘めたデイドラのアーティアクト「アズラの星」を授かることができた可能性があったのは確かである。

筆者はその後、シロディール内に上記以外にも複数のデイドラの祠が存在すること、およびそれぞれの守護神であるデイドラの主の名、そして冒険家たちが授かりうるデイドラのアーティファクトに関する噂を耳にしている。狩人のハーシーンは強力な魔力を帯びた鎧である「救世主の皮鎧」の伝説と結びついている。魔剣「ヴォレンドラング」は妖魔の王マラキャスと関連があるらしく、名をそのまま冠した「モラグ・バルの戦棍」もデイドラ崇拝の対象となっているようである。シロディール内にあるこれら以外のデイドラの主の祠および信者たちについては、たゆまぬ努力を続ける探究者たちによって明らかにされていくことだろう。

災厄の神The House of Troubles

聖ヴェロスとチャイマーに従って約束の地モロウウィンドへと向かった祖先の霊魂の中で、デイドラの主である4人、マラキャス、メエルーンズ・デイゴン、モラグ・バル、シェオゴラスは、災厄の四柱神として知られている。彼らデイドラの主は、トリビュナルの助言と勧告に反発し、クランと名家に大いなる騒動と混乱をもたらした。

マラキャス、メエルーンズ・デイゴン、モラグ・バル、シェオゴラスは、試練の時に障害物の役割を果たすという意味において聖人である。時に彼らは、この地域の敵であるノルド、アカヴィリ、あるいは山のオークとさえ交流を持った。

マラキャスはかつてトリニマクだった者の残骸であり、弱いが復讐心に燃えた神である。ダークエルフは彼がオークの神王マラクだと言う。彼はダンマーの身体的な弱さを試す。

モラグ・バルは、モロウウィンドにおける残虐の王である。彼は名家の血統を壊そうと試みており、さもなければダンマーの遺伝子プールを汚すつもりでいる。モラグ・アムールに住んでいたと言われる怪物の種族は、前紀に行われたヴィベクの誘惑の結果である。

シェオゴラスは狂気の王である。彼は常にダンマーの精神的な弱さを試す。多くの伝説において彼は、ダンマーのある派閥に対抗しようとする派閥に招かれている。物語のうち半数において、彼は自分を呼んだ者たちを裏切らず、そのため、全体的な枠組みにおける彼の立場について混乱が生じている(果たして彼は我々を助けられるのか?障害にはならないのか?)。彼は、例えば帝国のように、ダンマーが恐怖を抱く他の種族と、役に立つ同盟者として結びつくことがある。

メエルーンズ・デイゴンは破壊神だ。火事、地震、洪水など、自然の危険と関わりを持つ。ある者たちにとって、彼はモロウウィンドの住みにくい土地の象徴である。耐えて生き延びる意思がダンマーにあるかどうかを試す。

これら四柱の邪悪は崇拝は、聖堂の掟と慣習に反することである。しかし、四柱に仕えようとするどん欲で無謀な者や、正気を失った者が絶えた試しはない。古代の聖堂の掟と秩序、そして帝国の法に基づいて、こうした魔女やウォーロックたちは処刑される。帝国の駐留部隊は聖堂のオーディネーターやボイアント・アーミガーと協力して、荒野の隠れ家や古代の遺跡に隠れて冒とく的な崇拝を行う者たちを追い詰め、始末している。

夢中の歩みThe Dreamstride

1000年以上もの間、ヴァルミーナの司祭は錬金術の達人である。彼らの混合剤の複雑さと効用は、まさに伝説にほかならない。このような錬金術の秘宝は非常に人気があり、闇市に出回る水薬1つが大金を生むこともある。

現在知られている数多くの薬の中でも、おそらくヴァルミーナの不活性薬が1番素晴らしいだろう。この粘着性のある液体を一滴飲むだけで、「夢中の歩み」として知られる状態に陥る。使用者は他人の夢を、まるで自分がそこに入り込んだかのように体験できるのである。対象者は最初から居たかのように夢の世界に溶け込み、夢の重要な一部になる。夢の中に登場する人々からは、使用者の方が夢を見ている人だと思われるだろう。使用者は、自分の癖や話し方、適切に広がった知識さえも目にするはずだ。

観察者の目には、薬を飲んだ使用者の姿が消えてしまうようだ。対象者が夢の中で行ったり来たり歩くとき、観察者たちもまた実際の世界を行ったり来たり移動する。不活性薬の効き目が切れると、対象者の姿は再び見えるようになり、夢の中でいた場所とまったく同じ場所に出現する。わずか数フィートしか動かなかった対象者もいるし、ほんの数分で元の場所から数千マイルも離れた場所に現れた者もいる。

注意すべきこととして、夢中の歩みは非常に危険で対象者に様々な潜在的危険を与えることだ。ある夢では、対象者は病気や、暴行そして死のような生命を脅かす状況にさらされた。ほとんどの場合は傷を負うことなく現実の世界に戻って来れるが、場合によっては対象者は帰ってこずに薬の効き目が切れたと見なされるか、死亡した状態で現れる。現実世界においては危険で有害な場所に戻ってきてしまうことも多い。たとえ夢中の歩みの中では、そこが安全な場所であったとしてもだ。

ヴァルミーナの不活性薬は、それを作り出す錬金術師のように不思議でとらえ所がないものである。この独特の移動装置が不活性薬自体の効果なのか、単にヴァルミーナの奇妙な企みなのか定かではない。しかし、通り抜けられるはずのない障害物を通り抜ける夢中の歩みの効果は、確実にその不思議な性質によるものである。