29日目
奇妙なことがあった。あなたのための材料集めをして順調な1日も終わり、夜に備えて野営の準備をしていると、プラッキーが吠え始め、暗闇の中へ走って行ったの。この手紙を書いている今も戻って来ていない。肉切り包丁で捌かれるのをただ待っているホーカーみたいな気分よ。あの子はただ兎を追いかけてるだけよね?
30日目
ああ、後援者様、どうすればいい?目覚めると、寝ていたマットの脇の木にメモが止めてあった。「あなたの犬を預かっている。生きている犬にもう1度会いたければ、遺跡の場所を教えろ」とあり、ナルシス・ドレンの悪名高い宿敵である、無情のモレラの署名があった。ああ、どうすればいい?それはそれとして、あなたの材料は入れてある。
31日目
宿敵を持って生きて行くような心の準備はまだできていないわ!しかも、屈強なナルシス・ドレンを何年も脅かす様な強敵なんて。でもプラッキーは私が必要。いい犬だし、無情のモレラの手に渡るにはもったいない。今回の物資の質は勘弁して。分かって欲しいの。今のことで頭が一杯だから。
32日目
川に接する空き地は、待ち伏せに最適みたい。罠に向かって進んでいるのは分かっているけど、仕方ない。プラッキーを卑劣な無情のモレラから救い出さなくてはならないの。けれど、弱虫として育てられた覚えはないわ。自分なりの作戦がある。それについては次回話す。幸運を祈って!
33日目
私がマンモスを殴ったときのことを覚えている?あの日、貴重な教訓を得た。マンモスの好物は、ハチミツ酒に漬けたフルーツボールだってこと。そしてちょうど、美味しい甘い菓子を詰めた小袋を持っていたの。これをヒントに、無情のモレラに近づく方法をひらめいたわ。そうそう、この手紙と一緒に材料も入っている。
34日目
用心しながら空き地に入った。棒杭に縛り付けられたプラッキーが、横にいる女に向けてうなっている。私よりは背が低いけど、ブレトンの女としては平均以上だ。物腰と隙のない身なりから、無情のモレラだと分かった。6人の手下を引き連れている。「協力してくれることを願っている」。そう言ってモレラはプラッキーの綱をぐいっと引いた。
35日目
ヴァリンカより。この手紙と一緒に積み荷の材料も確認して。もし心配だったとしても、プラッキーは私と一緒にいるし、全て無事だから安心して。先日の騒ぎが片付いた今、顛末を話させて欲しいの。ただし次の機会にね。今はまだモレラの一団と一定の距離を保つことに苦労してるの。