Telvanni Tomes
アザンダーからの手紙Letter from Azandar
ニルン、タムリエル、オーリドン、スカイウォッチ、聖域
アザンダー・アルサイビアデスより
ごきげんよう!私たちの冒険についてしばらくいろいろと考えていて、この手紙をしたためることにした。
歴史、とでも考えてくれたらいい。
歴史的記録を詳しく調べたことがある者なら、歴史の力の奇妙な盛衰に直面することがあるだろう。私たちの美しい世界は数えられないほど長い間、定命の者、アルケイン、デイドラ、エドラの力によって形作られてきた。その結果は、率直に言って乱雑だ。千年続く集落もあれば、浜辺の砂の城のように栄えては消える文明もある。
それが研究や神秘、ほつれた運命の修復を目的とした勇気ある冒険とどう関係があるのかって?いい質問だ。
私は定命の者の人生が、このプロセスを小さな規模で反映していると考えている。一部の者は穏やかな人生を歩み、地元の池に小さな波を立てる程度だ。自分のいる社会で影響力を持っていても、定命の者の大きなタペストリーにおいてはわずかに言及される程度だ。
意志の力だけでアービスの根幹をかき回して火花を散らす者もいる。武力、魔法、何らかを用いてとてつもない可能性を見せるが、結局、継続的な変化はほとんど起こさない。
この後者が、残念ながら私の運命だったのではないかと思う。私の運命線は、外部の力に影響されなければ、研究中の事故による不名誉な死で終わっていただろう。もしくは敵に消されていたかもしれないし、年老いてから不運による、惨めで痛ましい終わりを遂げていたかもしれない。
お前のおかげで、私はもうそんな心配はしていない。私たちが共に過ごした時間は、協力というものを深く理解させてくれた。今では、似たような関係における以前の立ち振る舞いがずいぶんと身勝手だったと考えるほどだ。
仲間よ、お前は老人の心を変えてくれた。不思議な粘土のように形作り、総体的なものに改善してくれた。過去に自分でも試みて、見事に失敗していたことだ。
うまく表現できていることを願うのだが、私はお前をこの上なく尊敬している。これまでに私たちが達成したことすべて、そして今後達成することすべてを考慮して。
私の感謝の気持ち、称賛、熱烈な礼をどうか受け取ってほしい。
いつものように、前に進め!
アザンダー・アルサイビアデス
アラヴェリスでの仕事についてOn the Work at Alavelis
マスター・シェルレニ、
アラヴェリスでの作業はほぼ完了しました。隠された一族は注意深く指示に従いました。門はご命令通りに用意できるでしょう。聖なる像を再建するためにあなたがお求めになった石は現在、与えられた目的地へと向かっております。デイドラ公の祠はもうすぐ、かつての栄光を取り戻すでしょう!
ドレモラのトーヴェサードが到着いたしました。彼は我々に、アポクリファへの侵入に加勢する準備を整えることを望んでいます。彼はもうすぐ夢の中で見た扉の場所が正確にわかるだろうと言っています。主のないデイドラはあまり信用できませんが、彼に従えというのが我らがデイドラ公の命令です。
ドリームウィーバーと疫病のデイドラ公の栄光のために、
ニレス族長
アラヴェリス鉱山の購入についてOn the Purchase of the Alavelis Mine
キンリーヴ・ライル、
私はアラヴェリスの村の碧水晶鉱山を購入した。同盟者の隠された一族はぺライト公とヴァルミーナ公が提供した化合物、クジャク石の神秘的性質を利用し、私が特別に作った呪文と合わせてあの場所にアーチ型の門を建設する。これで、ハルメアス・モラの注意を引くことなくアポクリファに入るためのポータルが手に入るでしょう。
あなたのドリームカーヴァーをアラヴェリスに送り、トーヴェサードの合図を待ちなさい。早まった攻撃はしないように!トーヴェサードの夢に出てきた扉を探す前に、遺物と儀式を確保したい。でなければ運命のデイドラ公が自身の危機に気づいてしまう。
アラヴェリスでその他の問題が起きた場合は、あなたの判断で対処して。
マスター・シェルレニ・バロ
アラヴェリス鉱山の調査Survey of the Alavelis Mine
ギルドマスター・ピュヴォル、
アラヴェリスからご挨拶を申し上げます。村の地下にある碧水晶鉱山の調査を完了いたしました。今回、この事業への投資はお勧めできません。枯渇には程遠い状態ですが、残された鉱床は商品として通用しません。大量の鉱石を得るために必要な労力と費用はあまりに大きく、特にヴァーデンフェルのより大規模で生産効率のいい鉱山との競争を考えると、現実的ではありません。
成功の見込みがありそうな事業の可能性は2つあります。まず、大型の水晶を装飾用として採掘できるかもしれません。この鉱山の上部を通っているクジャク石の鉱脈層は、溶かして金属様の碧水晶にするには役立ちませんが、とてもきらびやかです。アラヴェリスのクジャク石は武器や防具へ使うには脆すぎるとしても、建築素材の石にする程度の質は間違いなくあります。
次に、私は鉱石の中に特別なアルケインの共鳴があることに気づきました。適切な利害関心(あるいは風変りな趣味)を持つ魔術師なら、ここにあるものに大金を払うかもしれません。しかし、そんな客がどれくらいの数いるものでしょう?
手短に言えば、アラヴェリス鉱山は確かにはした金で購入できます。しかしここを黒字に変えることはできないでしょう。大きなクジャク石の水晶を、ただの水晶として欲しがるような客が見つからない限り、投資する理由はありません。
私は数日間滞在してからサイレン・ヴァルゲイトに戻る予定です。宿屋は快適ですし、ここにいる間、近くの地方を探検しようかと思っています。
敬具、
調査員テニス・ヴァション
あらゆる魔術師に死をDeath to All Mages
我が子の上に立ち、死体から漏れ出る温もりを感じた時、私に理解できたことは一つだけだった。トゥウェルヴェインがいなければ、こんなことにはならなかった。あの悪魔は、自分の魔術ならジャヴァラを冒していた衰弱の病気を治せると言った。あの女の薬はジャヴァラの苦しみを軽減するだろうと約束したのだ。だがそれは嘘だった。あの邪悪な液体がジャヴァラの口に入った瞬間、恐ろしい悲鳴と共にあの子の生は終わりを告げた。
魔術師は皆嘘つきだ。治せると主張するが、奴らの行いは苦痛と死を生むだけだ。たとえ本気で治すつもりでも、奴らの力は邪悪だ。
私たちは力を合わせなければ。失ったものすべてのために。まだ守れる人々の安全のために。あの魔術師たちは害悪だ。奴らの病気が街全体を覆いつくす前に、抹殺しなければならない。
魔術師や魔術を使う者はすべて殺せ。だがトゥウェルヴェインは私のために残しておけ。
元アルカニスト、ヤセイラ
アラロス・サーヴロシの墓石Aralos Sarvrothi Gravestone
アラロス・サーヴロシの遺体
サーヴロシ家の
トリビュナルからの離脱の罪で
聖なる宝物庫から追放
安らかに眠らぬことを
アルカニストとは何か?パート1What’s an Arcanist? Part 1
ガブリエル・ベネレ 著
グウィリム大学の月間回覧向けに書かれたもの
アルカニストとは何者でしょうか?私はこの質問を少なくとも十数人の学生と、その半分ほどの数の教授から受けましたが、作り話だと思われないような答えを思いつくために大変な苦労をしています。まずは基礎から出発しましょう。スイートロールにアイシングを追加するくらい簡単な部分から。
体系化された神秘術
組織的なアルカナムについての短い余談から始めましょう。あなたが私のように、ここ数年間で何人かの冒険者と話す機会を得ていたら、大学の布告を見逃したかと思わせるような用語が投げかけられるのを耳にしているはずです。「テンプラー、ウォーデン、ナイトブレイド」といった、究極的には実地の教育者にとって大した意味を持たない肩書きです。
魔術が何で「ある」かについて何らかの合意を得ることがほぼ不可能な時代において、なぜこうした用語に意味があるのでしょうか?それこそが目的ではないですか?今の流行を支配しているアルケイン思想の、形式にこだわらない性質を見れば、どんなものであろうと分類が存在することが、いかに有意義で魅惑的に思えるかわかるでしょう!
最近のインタビューで、我らが魔術師ギルドのデュレフがウォーデンとは何かについて論じているのを読めば、こうした肩書きが世界中の学ある人々にとってどれほどの可能性を秘めているかを理解できるでしょう。
(余談になりますが、私がシャド・アツーラ大学にいた時の体験を元に書いた「魔法の流派」を参照してください。ヴァヌス・ガレリオンからの拒絶の手紙が増え続けている事実から、彼はまだこの主題に関心を持っていない可能性が高いのですが、皆さんの中には関心のある方がいるかもしれません)
学識と機会の書物
さて、私の解答は十分に表現したので、直接質問に答えましょう。私の知る限り、アルカニストとはアポクリファの力に触れられた神秘の書物から学ばれ、そこから力を得ているアルケインの呪文形態を利用する魔術師です。
学識ある大学のメンバーの多くは知っているとおり、「オブリビオンの領域」はスペクトルに沿って点が存在しているのと同じ程度には特定され、制限された物理的な場所に存在しています。私たちは詳細な文献により、生物や呪文の技術が、オブリビオンの領域に転送された定命の者さえ、その領域を支配するデイドラ公の影響により順応か変化することを知っています。
アポクリファの場合、ハルメアス・モラによって選ばれた(課せられた?)メタファーは広大な蔵書庫です。そのため、領域に進入する獣がその場所に適応して変化するのと同様、存在している領域の一部分が、自らに与えられた神秘的メタファーに適応して変化することも理解できます。要するに、この「書物」はアポクリファそれ自体の一部という仮説を立てています。オブリビオンの基体が姿を変え、ニルンと決定的なことに、定命の精神に住み着いたのです。
アルカニストとは何か?パート2What’s an Arcanist? Part 2
ガブリエル・ベネレ 著
グウィリム大学の月間回覧向けに書かれたもの
深淵の海の流れ
では、アルカニストは何をするのでしょうか?デュレフはウォーデンとは何かを説明するのに苦労していましたが、私もこの呪文使いを分類するのに困難を覚えています。大まかな説明を試みますが、完全なものでないことを予め断っておきます。
アルカニストの呪文詠唱はいくつかの力のあるメタファーを使用します。それぞれのメタファーはとても強力な作用を生むようです。すべての魔術師は様々な種類のルーンを使用しますが、アルカニストが用いるルーン技術は極端に綿密です。
こうしたルーンフォームは強力なビームの放出、ほぼ貫通不可能なスペルアーマー、それに様々な可能的帰結を伴う――あえて「独創的な」と言っておきますが――回復呪文を可能にします。ルーンと言語はアルカニスト神秘術の基礎を成す部分であるようです。他のメタファーも個々の呪文使いによって様々に利用されていますが、ルーンを刻み込むことで現実を形成し、変化させる発想はすべてに共通しているように思えます。
占いし者の領域とのつながりを考えれば、複数の共通する呪文技術に触手が一定の役割を果たしていることは、おそらく読者も驚かないでしょう。攻撃手段として、この方法はとても見事かつ不快です。私はアルカニストを自称する者が素早く触手を召喚し、グレナンブラの郊外でアンデッドの群れを撃退する光景を直接見ました。視覚的にも嗅覚的にも、音響的にも忘れがたい経験でした。
もう一つの一般的なメタファーは、アポクリファを規定するある特徴から引き出されています。それはこの領域の大部分を占領している深淵の海です。深淵の海の沖合は私が知っているどの研究者によってもまだ十分に探索されておらず、あのインクのような水の深部は、おそらく生者の記憶が想像する以上の秘密を飲み込んできたはずです。波や渦、波浪や浅瀬など、このニルン外の海はアルカニストにとって強力な魔術の源泉であり、彼らはその水をいとも簡単に自分の意思で転送し、形成できるようです。
運命それ自体が、アルカニストの道具箱における鋭利な武器となります。私はアルカニストが、狡猾で面白い方法を用いて周囲の確率を変化させるのを見てきました。アポクリファの公が有していると言われる、運命視の反響です。
以上のことをどう考えるか
大学に警鐘を鳴らし、私たちの世界ではよくあるように、我々の目前で新しく強大な神秘の力が威信を高めてきていると宣告したくなる気持ちも、理解できないではありません。だが真実はもう少し複雑だと私は考えています。この現象を研究した結果、私は「アルカニスト」がしばらく前から私たちの中に存在していたものの、おそらく別の形式で、人目を引く呼称を持たずにいたのだと考えています。
また指摘しておくべきこととして、デイドラ公の間におけるハルメアス・モラの「役割」は、こうした呪文使いが用いる神秘的なメタファーに重大な役割を果たしているものの、全面的にアルカニストが秘密の領域に対して持っている関係によるものであり、デイドラ公自身とは関係していません。事実として、私が最近話を聞いた複数のアルカニストは知識のデイドラ公に対して深い不信や、憎悪さえ表明していました。もっとも、不可避の知者に対して信者のような熱狂を示す者もいましたが。
タムリエルの魔術は私たちの学術論文や見事な歴史書が認めるよりも、遥かに多様かつ独特だと申し上げましょう。私はあなたの注意をアルカニストという現象に向けることによって、あなた自身の地域や街にも、新しく刺激的なメタファーの組み合わせが出現していることに気づいてもらえるのではないかと考えています。
ある召使の物語A Servant’s Tale
奴らはろくでなしだ。魔術師のふりをしているだけの、軟弱で甘えた愚か者たちだ。
あの間抜けの雇い人、ハルグロドの地位はどう考えてもすぐに剥奪し、ふさわしい者に明け渡すべきだ。スペルライト・ヴァースヴァのもとで奴がどうやってあの地位を得たのかは、ソーサ・シルでさえ解き明かせない謎だ。
泣き虫のバルヴァーはいつも泣き言ばかりの愚かな家臣で、自分の計画が気づかれていないと思い込んでいるが、私の目はごまかせない。奴は背中を向けて、自分は安全だと思っている。だが、私は奴の動きをすべて見ているし、奴の計画も知っている。しかも、奴からは酷い臭いがする。
そして誓約者ラルロがいる。育ちの悪い成り上がりで、遅かれ早かれ失脚する奴だ。短期間は地位を保つかもしれないが、奴が脱落するのは早いほうがいい。奴の傲慢を利用してやる。
スペルライト・ヴァースヴァとモランは私がこの馬鹿どもの誰よりも価値ある存在だと気づくだろう。魔術を形成する私の能力にはまだ改善の余地があるが、私はまだ召使でありながら、その野心はすでに最高位の賢者をも上回るほどなのだ。私だけが地位を動かし、奴らのいなくなった隙間を狙い、素人には見えない機会を作り出すことができる。
賢者たちも自分たちが見逃していた才能にすぐ気づいて、鋭い知性と巧みな手腕が役に立つことを知るだろう。チャンスを作ることさえできれば。
エリストレネ・スターフラワーへの手紙Letter to Elistrenne Starflower
愛しいエリストレネ、
新しい隠れ家の用意ができた。デシャーンの忘れられた墓地にある。そう、君がやめようと言った場所だ。鍵を同封してある。以前の契約者が鍵を誤った者の手に渡して問題になったことがある。肌身離さず持っていてくれよ。いいな?かばんに入れて放置しないように。
それから、どうか近いうちに訪ねて来てくれ!夜のごとく鋭き者が追ってくるのを待っているんだが、退屈で死にそうだ。痕跡をうまく隠しすぎたかもしれない。
あと、もうお気に入りのペットを自分で手に入れているのなら、ぜひ連れてきてくれ。こっちには夜のごとく鋭き者の妹がいる。彼女のことは多分話しただろう。「鈍い」ほうだ。会話していても彼には到底かなわない。さらに悪いことに、彼女は調整のプロセスに抵抗している。まったく。遊びに来てくれ!この退屈から救って欲しいんだ。
近いうちに話そう、
ソンディヴェル
エロヴル・アラーンディルの墓石Elovul Alarndil Gravestone
エロヴル・アラーンディルの遺体
アラーンディル家が
ネレヴァリンの歌を冒涜した罪で
聖なる宝物庫から追放
安らかに眠らぬことを
オブリビオンの入口の指示書Oblivion Gateway Instructions
この指示に文字通り従うこと。少しでも指示から外れれば、予測にない、おそらく破滅的な出来事が生じるだろう。
ブライトクラウンの薬と、ヴァルミーナから受け取った夢のエキスが石に組み込まれた。トーヴェサードは位置の情報を提供し、私はすべてをつなぎ合わせる呪文を作りだした。
キーストーンが設置されたら、門の用意ができる。トーヴァサードが指令を出すまでは起動しないように。門が開くたびに、ハルメアス・モラが侵入に気づく可能性が高まる。
アポクリファに到達するための呪文を以下に記す:
第七の影と陰鬱の名のもと、
セファリアークの神殿よ、開け。
マスター・シェルレニ
オペレーション・サイフォンの報告Report on Operation Siphon
ラルズ評議員、
アルド・イスラにおける我々の作戦は未だに発覚していません。我々がマスター評議会の内部に設置した情報源は定期的に連絡を取り、機密文書を横流ししています。この情報源の価値は計り知れません。支払ったゴールドには十分見合います。
あなたは我々が安全に情報をやり取りする手順を詳しく説明せよとお求めになられた。毎週日耀と央耀の夜遅くに、トレデシムは北にあるこの地域のカゴーティの巣の中に新しい情報を入れた箱を隠すのです。その後我々は水耀と木耀の朝に書簡を回収します。テルヴァンニのマスターに直接の力添えをするなら、もっと臭いの強烈でない場所を選びたいところですが、成果は否定できません。
トレデシムが積極的に情報を提供してくれるのは実にありがたいことです。傲慢か欲によるものかは不明ですが、奴の口の軽さには万金の価値があります。このレベルの協力者を手に入れるために、幾季節も努力したかいがありました。
我々の作戦の現在の段階はもうすぐ終わるはずですが、機密情報の流入は将来に備えて維持しておくつもりです。
我らが名家のために、
タネル・ドーレス
ガドリからフェデロへのメモNote from Gadri to Federo
フェデロ、
一つ頼みがある。この顧客にはもう俺を使わないでくれ。
仕事自体は構わないが、こんなコソコソしたやり方は報酬の割に合わない。ただでさえ、ドワーフ遺跡の橋の近くにある秘密の扉を通って、秘密の拠点に行くんだぞ!他の契約者には、扉自体のそばに鍵を置いていくと伝えてくれ。それなら見つけるのに大した手間はいらないだろう。
よし、これで文句は終わりだ。今のところはな。俺はグニシス付近で数日泊まるつもりだ。他にやることがあったら言ってくれ。なければ、報酬をどこに送るのか教えて欲しい。
ガドリ
カモンナ・トングの暮らしLife in the Camonna Tong
ゴヴァル・サドリオン 著
ゴヴァル・サドリオンについて最初に知っておくべきことは、俺が密輸業者ではなく、酒場の喧嘩屋だということだ。俺の知識は誰に教わったものでもない。血とあざの教訓を通じて自分で学んだものだ。口で拳を受け止める方法を学ぶまでに、結構な数の歯を失った。素早く身につけた教えもあるが、いくつかは学ぶのに時間がかかった。
小さい頃は物がなかった。小さな家に、泥だらけの床。両親は貧相な自分の土地で一日中働いていたが、生活は潤わなかった。俺たちは自分の家の中でクズのような生活をしていた。泥の上で眠り、泥の中で働き、食料が足りない時は泥を食いもした。それでも、両親は誇りを持っていた。頑固な土の塊から、家庭を一つ作り上げたのだから。
だから誓約者が父について嫌味を言い、雇い人が母を見下した時、俺は何をすべきだった?奴らの侮辱をそのままにしておく?ありえない。俺はいわゆる名家の助けを得ることなく家族を、家庭を一つ築くのがどれだけ大変か知っている。あのクッションに座ってぬくぬくと肥えるだけの連中に、俺たちを見下す資格なんてない!
若い頃はかなりの数のクズどもに絡まれた。数えるのも面倒なくらいよく痛めつけられた。だが偉そうな連中が俺たちを下衆と呼んでくる限り、俺は反撃した。母は言葉が拳よりも痛いと言っていた。傷つく言葉はよく聞いたが、俺の拳はそれ以上に痛かったはずだ。
収穫が悪かった時は、父はスジャンマに溺れた。大きなジョッキで何杯も。飲みすぎた後の不愉快な臭いが家中に広がった。母は必要な分を越えては金貨1枚も使いたがらなかった。母は外に出て苦い野菜を引き抜き、生で食った。俺たちが見つけた時、母は寒さで凍結していた。
それだけ苦労して得たものは何だ?自分の農場の土で凍りついた母親と、胃の内容物を肥料にする父親だ。両親は誰よりもよく働き、俺たち全員に同じ生活を強いた。何のために?多分それが母から教わった最後の教訓だ。人生の運命を受け入れたら、死ぬまで馬鹿にされて、叩きのめされるだけだと。
その後はすぐに立ち直って自立するようになった…と言いたいが、そうはしなかった。酒場の喧嘩屋だったと言ったのは覚えているか?俺は昔身分の低い名家の連中と喧嘩したこと、俺を鼻で笑ったあのクズどもに仕返しするのが爽快だったことを思い出した。俺はもっと喧嘩を挑んだ。長い間、戦って過ごしていた。俺の拳は変わった。言い返してくる馬鹿どもを殴って黙らせるのが上手くなった。俺より殴るのが上手い奴もかなりの数いたが、そういう連中の大半はどこかのトングに属していたから、それほど気にはしなかった。
俺は多少の注目を集め始めていたらしい。タフな野郎だという評判が生まれ、それでどこかの血に飢えた戦士たちが感心して、ある夜コーナークラブで俺に接触してきた。酒をおごろうと言われたが、断った。アルコールは父のゲロの臭いがするから、飲めたものじゃない。連中はそれでなおさら感心したようだった。こういう奴を雇いたかったんだと連中は言った。当時俺はそれを聞いて、物に釣られない賢い奴という意味だと思っていたが、今では俺がやった殴り合いのことだったのを理解している。連中は安定した仕事と旅行の機会、さらに母をネクロムに送ってまともな埋葬をしてやれるくらいのゴールドを約束した。それに、奴らは俺たちを破滅させたクズどもに報復する機会もくれると言った。
クズどもは綺麗な服を着て、本物のベッドで寝ているのに、なぜ俺はずっとあんな生活をしなきゃならない?なぜ俺は土を耕して、土と泥にまみれなきゃならない?俺にはもっとマシなことがやれる。もっとマシな生活をする資格がある。
だから俺はカモンナ・トングに入った。連中の言葉は正しかった。支払いはいい。いつも仕事はあるし、正しい人々の関心を買う方法もある。まださらなる戦いが待っているし、叩きのめすべきクズがいて、今はそいつらを実際に叩きのめすことができる。あんなに沢山の鼻から血を噴き出させたのも、あんなに色々な連中の態度を改めさせてやったのも初めてだった。そのうち、奴らは皆俺を恐れるようになった。少なくとも、俺の拳が引き起こす苦痛を恐れていた。
ここでは俺は尊敬されている。前の季節にはトロールを1匹殴り倒した。それで俺は追加のゴールド1袋と、ネクロムに母を訪ねるための短い休暇をもらった。母は俺を誇りに思っている。男前になったと言ってくれた。やっと十分な食事ができるようになったねと。危険な仕事なのは気に入ってくれなかったが、俺の両親には反抗する勇気がなかった。両親は人生から与えられた以上のものを取ることを知らなかった。俺は知っている。
母は言葉は拳よりも痛いと言っていた。俺は拳も受けたし、言葉も聞かされた。もうどっちも痛くない。俺は痛みを利用して強くなる方法を身につけた。たとえ、カモンナルーンに帰る途中でニレラがトロールに殺されたように、俺が何かに殺されることがあったとしても、俺は少なくとも出発点よりはマシなところに行けたんだ。俺は死ぬまで、この人生から俺が得て当然のものを取り続ける。それがカモンナ・トングのやり方だ。
サヴィエニー・マヴリンの墓石Savienie Mavlyn Gravestone
サヴィエニー・マヴリンの遺体
マヴリン家が
偉大なるヴィベクを疑った罪で
聖なる宝物庫から追放
安らかに眠らぬことを
サシルの研究メモSathile’s Research Notes
疑念がネズミのように心に這いあがってきた時は、自分が正しかったことを思い出すようにしている。私は正しい。彼の死は無駄ではなかった。私の仕事はもうすぐ、もうすぐ成果を挙げる。我々は発見に近づいている。きっとそうだ。
デルモン胞子サンプル1105号
さらに高速で生命体を分解している。前例がないほどの速さだ。胞子の攻撃性は被験者の感情の乱れが激しくなるにつれて増大する。私の計算では、サンプル902号から計測された激しい感情的執着以来、壊死の速度は二倍になっている。何かのきっかけでより強力な反応が起きたら、私の結界では防げないかもしれない。
対処法
被験者が感情的な均衡を回復するまで、徹底的な隔離と一日2回の病棟の清掃を行うこと。被験者の執着や苦悩から考えると、これにはしばらく時間がかかり、私の魔術と体力にかなりの負担をかけることになりそうだ。結界の規模を縮小し、より小さな隔離地区を用意しよう。感染が拡大するか、状況が危険すぎると判断される場合は鎮静物質の使用も考慮する。
被験体
確保して牢屋に入れてある。外見上はテストしてよさそうだ。そこで次の問題が生じる。
治療合成シリーズ6905-6999号
もっと頼れる協力者が見つかるまでは封鎖中。召使の女ダシアを手放したことを後悔しているが、この状況はすでに危険すぎた。どこから頼れる協力者を手に入れればいい?奴隷では私の要求に合致しないし、奴隷は詮索しすぎる。最近はフェデロでさえ傭兵を維持するのに苦労していると聞いている。だが私に傭兵は必要ない。研究助手すら不要だ。欲しいのは私がもう一人。あの問題には自分で対処したいが、ここ20数年、私の手はこの件で塞がっている。
サンヴィス・ゴルサシンの墓石Sunvys Golsathyn Gravestone
サンヴィス・ゴルサシンの遺体
ゴルサシン家が
よそ者と共謀した罪で
聖なる宝物庫から追放
安らかに眠らぬことを
シャデヤからの身代金を求めるメモRansom Note from Shadeya
盗賊、
お前はシャデヤのことを知らない。だが長老エイリース・ドロはこの者に奴のちっぽけな陰謀と、お前の関与を教えてくれた。
シャデヤはあの行商人どもから受け取るわずかなゴールドよりも、護符のほうがいい金になると考えている。
長老とその残された家族に生きていて欲しければ、キャンプ東の放棄された基地に護符を持ってこい。
妙な真似をすれば、この基地をバーンダリの血に染めてやる。
シャデヤ
ソンディヴェルの日記Sondivel’s Journal
ついにやった。この金属、ティラナイト・カルクスは適切な熱と魔術を加えることで展性が生まれる。結合はアルゴニアンの鱗に対してサラマンダー以上に大きな刺激と興奮を引き起こす。しかし、私の影響下にある被験者は炎症にも刺激にも一切文句を言わない。私の最新のシリーズで、被験者たちは完全な暗示の影響下にあり、私の指示をすべて明確かつ熱心に遂行する。私の意思が彼らの欲望だ。彼らは意識明瞭に見えるが、調和を外されると元に戻る際に記憶の間隙が生じ、まるで何も起きなかったかのように振る舞う。
夜のごとく鋭き者が発揮したような、模範的な意志力と抵抗力による「突破」はもう起こらないだろう。彼を探し出して再び調和させたら、彼の記憶は戻り、これまでどおり「鋭く」なる。彼の厄介な自由への欲求は除くが。とはいえ、あれのせいで彼は私にとって特別な存在だった。この躍進は彼のおかげなのだから。
初期の実験で破滅しかかった後、ここにいることだけでも満足を覚える。我が野望は愛する人々に過大すぎた。多くの友を失い、都合の良い婚約者も失った。孤独になった時、夜のごとく鋭き者は奴隷の一群の唯一の生き残りだった。大変な強さだ。以前我々が交わした会話が懐かしい。奴隷以外でも、夜のごとく鋭き者ほど私のアイデアに反抗した者はいなかった。あれに匹敵する話相手はいない。あの反抗心がいつも、私の霊感を燃え上がらせる刺激になった。私の計画という剣のための砥石だ。彼は私の完璧な実験、私の最後の試練だった、いや、今でもそうだ。無理矢理私の手から奪われたことで、彼は私に関する記憶を失ったが、腹を立てる気にはなれない。彼を失わなかったら、どう考えてもこの躍進を手にすることはなかっただろう。彼を私の意思に従わせ、かつあの特別な性質を無傷のまま保つことができたら、それは私が成功した証だ。私の名はネクロムからダガーフォールに至るまで、すべての魔術師の耳に鳴り響くだろう。しかしそれも夜のごとく鋭き者を取り戻すことに比べたら、小さな成果にすぎない。手の届くところに置いておくだけでは足りない。彼に手を噛みちぎられる不安なく、私の手から食べ物を与えられるようにしたい。私が欲しいのはあの鋭い舌であり、爪ではない。
私は何度も再会を思い描いてきた。きっと彼は自分の記憶を欲しているだろう。でなければ、私を探し出して殺そうとするはずがあろうか?あの男が自分の言うよりも遥かに好奇心を抱き、警戒していることは、私の有利に働く。当の本人は自分が失ったものを惜しんでいると認めないだろうが、私なら必ず、彼を完璧にしてやれる。
ただあの男を見つけ出せばいいのだ。
ダスクセイバーについての報告A Report on the Dusksabers
レンシアス大司教
シェイディンハル、アーケイ大礼拝堂
閣下
本日はハルルンの監視所での事件に関する調査について報告いたします。閣下もおそらく覚えておいでかと思いますが、ブラヴィルのある強盗団が、街の廃墟で野営している間に壊滅させられました。唯一の生存者は影を蠢く剣と、血を滴らせた牙を持つ怪物について語りました。
明らかに、これは地域のゴブリン部族の仕業ではない。それゆえ襲撃を行った怪物を追うため私が派遣されたのです。
私はブラヴィルの生存者に話を聞き、ダスクセイバーという名を知りました。この吸血鬼たちは高度な技術を持つ傭兵として働き、腕(と牙)にものを言わせて、報酬を支払う顧客に特別なサービスを提供しています。今回の場合、ダスクセイバーはあるテルヴァンニの魔術師に雇われ、ブラヴィルの強盗が探していたものと同じ、アイレイドの財宝を入手しようとしたのです。
私はこの脅威を排除するためモロウウィンドへ向けて出発しました。我らの教団員はトリビュナル聖堂の地では歓迎されないことを考え、変装に身を包んで旅をしました。ダスクセイバーのような怪物たちがどこに隠れようとも、アーケイの神聖なる裁きから免れさせるわけにはいきません。
ヴォスの酒場にて、私はダスクセイバーを見つけた…というより、彼らが私を見つけたのです。私はある怪しいダークエルフを観察し、彼が立ち去るのを待って隠れ家まで追跡しようと考えていました。しかし日が暮れてもこの男は去ろうとせず、私がついに諦めると、彼は立ち上がって近づいてきたのです。
「もう出ていく必要はないぞ、司祭」と彼は牙をきらめかせて言いました。「ここに残っているのは我々とお前だけだ」
この建物に残っているダークエルフたちが全員、飢えた真紅の目で私を見ていることに気がつきました。私は自分の不注意を呪いながら、アーケイの光に呼びかけ、命を捧げようと身構えました。しかし私と向かい合った吸血鬼は片手を上げました。「我々はそのためにいるのではない」と彼は言い、私の向かい側に座りました。
「では、何だ?怪物と口論する気はない。殺すなら殺せ。トリビュナルのオーディネーターが仕事を引き継いでくれる」。私はそう尋ねました。
「私のためを思っての警告だとでも言うつもりか?」と私は言い返しました。
「警告は我々のためだ。お前の教団にメッセージを持ち帰ってもらいたい。お前たちがテルヴァンニ半島でダスクセイバーを襲えば、それは我々を雇っているマスターを襲うのと同じことだ。テルヴァンニのマスターと争う意思があるのか、よく考えろ。その覚悟がないなら、どこか別のところで吸血鬼狩りを続ければいい」
「お前たちを雇っているのはどのマスターだ?」と私は聞きました。
「どのマスターもだよ。時期によって変わるがね」と私の敵は冷たい笑みをたたえながら言いました。「我々はとても有能なんだ。さあ、行け」
私は気が進まないながらも去りました。勝ち目の薄い戦いを始めるよりも、このメッセージを修道院に届けるほうがよいと判断したのです。
閣下もご存じのとおり、ここに我々の仲間はほとんどいません。テルヴァンニは彼らの中に吸血鬼がいても、それがいずれかのマスターの役に立っている限り、まったく問題なく受け入れる連中です。そしてダスクセイバーは実際、非常に役立っているらしいのです。
あなたの僕、
礼拝堂衛兵、エラティオ・フレンナ
ダスクセイバーの報告Dusksaber Report
指示通り、私はダスクセイバーの部隊を集め、テル・レンディスに野営地を設営した。我々はすぐに行方不明の賢者の防備がまだ機能しており、極めて危険だということを突き止めた。この場所を3歩も進めば、怒れる精霊に気づかれてしまう。簡潔な調査で明らかになったことは以下だ。
賢者の塔:閉鎖中
馬小屋:破壊されている
召使の部屋:特別なものはない
旧広間:奇妙な結界によって守られている
食堂:精霊に守られていた。現在は安全
客室:精霊に守られている
マスター・シェルレニが到着するまで、戦いを続ける理由はない。彼女は間違いなく不満を示すだろう。
ダスクのゼンフィス隊長
ダスクのゼンフィス隊長からの命令Dusk Captain Zenfis’s Orders
ダスクセイバー
マスター・シェルレニはテル・バロ塔の入口を塞ぐため、新たなアルケインの結界を設置した。警戒は怠るなよ。この結界は彼女がより恒久的で持続力のあるものを召喚するまでの、一時的なものにすぎない。
お前たちの中で塔に入ることを許可されたごく少数の者たちだけが、一時的に結界を解除して中に入れるようにするため、テル・バロの紋章が必要になる。紋章がないなら、塔の入口に近づいた時の責任は負えない。
塔の洞窟全体に、4つの錠が設置されている。
ダスクのゼンフィス隊長
デイドラ崇拝とダークエルフDaedric Worship and the Dark Elves
ゴトルフォントのハデラス 著
モロウウィンドのダンマーはいくつかの宗教的伝統に従っている。相手によっても異なるが、第一にして最大のものはトリビュナルの生き神、すなわちアルマレクシア、ヴィべク、ソーサ・シルの崇拝だろう。ダークエルフ文化の変わらぬ特徴の一つは、先人の霊魂に向けられる敬意と崇拝を中心としている。どちらの伝統も名家のダンマーによって実践されているが、アッシュランダー・クランは特定の先人と三柱の「善なる」デイドラ――アズラ、メファーラ、ボエシアを崇拝する。アッシュランダー・クランはトリビュナルの神性を拒絶している。
では、ダークエルフたちはいかにしてデイドラ崇拝とそれ以外の宗教的伝統を共存させているのだろうか?すべては彼らの先人崇拝への傾向に遡る。というのも、ダークエルフは(彼らの言い方によれば)善良なデイドラをすべてのダークエルフ民族の祖先と見なしている。これはトリビュナル神学にさえ組み込まれており、これらのデイドラ公は三大神の「守護者」であるとされている。
善良なデイドラが存在するなら、邪悪なデイドラもまた存在すると考えてよい。ダークエルフにとって、それは災厄の四柱神という形態を取り、これはまた敵対者、試す神々としても知られている。デイドラ公メエルーンズ・デイゴンとシェオゴラス、マラキャス、モラグ・バルがこれに含まれる。これらのデイドラ公に捧げられた古代の聖堂はモロウウィンド中に見られ、一部の主張するところでは今日に至るまで秘密裡に崇拝されている。
デイドラ崇拝のその他の例は、他のデイドラ公信仰も含めて、ダークエルフの地でもそこかしこで見出されるが、最も有力なのは上記の崇拝形態である。トリビュナルと名家の支配下にある、いわゆる文明化された街では、聖堂のオーディネーターが熱心に異教の教えを狩り出しており、大半のデイドラ崇拝がその対象となっている。
デイルデラ・ギルロムの墓石Dayldela Gilrom Gravestone
デイルデラ・ギルロムの遺体
ギルロム家の
モラグ・ガルの冒涜の罪で
聖なる宝物庫から追放
安らかに眠らぬことを
テルヴァンニ家の歌House Telvanni Song
どのようにしてテルヴァンニ家で
頂点まで這い上がるか?
どのようにしてテルヴァンニ家で成功し
ナイフを背に突き付けられながら生き延びるか?
嘘つきの雇い人の底辺から始まり
家臣から誓約者へと昇る
法執行官に到達して休む者もいる
高みへ登るのは疲れるから
どのようにしてテルヴァンニ家で
頂点まで這い上がるか?
どのようにしてテルヴァンニ家で成功し
裏切りと嘘に耐えられるか?
次の歩みで代弁者となる
マスターや賢者を代表する
その上にはスペルライトと魔道師
塔が育つように高く登る
いつか我々はマスターとなり、高みから導く
賢者の影響が強くなる
その時望み、計画し、夢を見られるだろうか?
全てを統べるアークマギスターに
どのようにしてテルヴァンニ家で
頂点まで這い上がるか?
どのようにしてテルヴァンニ家で成功し
真実が希少で裏切りが安い場で生き延びるか?
テルヴァンニ家の地位と肩書きRanks and Titles of House Telvanni
学者アンドゥンリリーによって、アリノールのアルウィナレ女王代理の宮廷のために作成された報告書
宮廷の皆様方にご挨拶を申し上げます。
私はアルドメリ・ドミニオンの魔術師にして顧問であるペネウェンの依頼により、ダークエルフとも呼ばれる我らの親類ダンマーの社会について説明し、要約する役目を仰せつかりました。ダークエルフは諸々の家に分かれ、それらすべてに固有の内部社会組織があります。本報告は最も複雑な層構造の社会を有するテルヴァンニ家のダークエルフにほぼ限定してお伝えいたします。以下に記すものがテルヴァンニ家の地位です。
「奴隷」は通常、社会的地位に含まれません。所有物と考えられているからです。ダークエルフの家の大半は、エボンハート・パクトに加入した際にこの忌むべき実践を放棄しましたが、テルヴァンニ家は奴隷制を伝統とみなし、奴隷の所有を地位の証と考えています。
「雇い人」は地位と認められている中でも最下層の存在であり、高位のエルフ家によって直接雇用されている自由人を指します。この地位に含まれるのは主に召使、書記、傭兵といった者です。雇い人は望むままに受け入れることも追いだすこともでき、タムリエルのどの民族でもよく、打算的なテルヴァンニには使い捨ての手駒として扱われています。雇い人の家族は独立した存在であり、正式に家の一員と見なされることはありません。
「家臣」は雇い主の家へ正式に受け入れられた雇い人です。家臣はより恒久的な仕事や住居を持ち、テルヴァンニの誓約者と直接やり取りします。家臣は家の許可があれば結婚も可能で、自分と同じ地位の者と結婚する傾向にあります。家臣の子もまた家臣と見なされています。
どのテルヴァンニの家も、その大部分は「誓約者」で占められています。他の名家もまた雇い人、従者、誓約者の地位を用いますが、テルヴァンニは他の名家よりもこれらの地位を強調する傾向にあります。誓約者の活動にはより自由が認められており、家を補佐するため個人的に行動することが期待されています。誓約者の子は誓約者と見なされます。
「法執行官」、「スペルライト」、「代弁者」はどれも、専門化された誓約者です。これら3つの集団は、自らを一般的な誓約者よりも優れた地位にあると見なしています。法執行官は衛兵や看守など、複雑なテルヴァンニ法制度の公的な代弁者です。スペルライトは中堅クラスの力を持つ魔術師であり、しばしば初めて大きな責任を担わされた見習いが就く地位です。
テルヴァンニの「代弁者」はより大きな責任と、より高い地位を担う存在です。彼らはより強大な魔術師(魔道師やマスター、賢者、アークマギスター)に仕え、その公的な発言を代弁し、大部分の領域で代理人の役目を果たします。彼らは主人の声で語り、行政事務を動かす存在です。各代弁者は、自らの主人の代理として大きな権力を有しています。
「魔道師」はテルヴァンニ家において最初に真の権力を有する地位です。このレベルの地位を獲得したテルヴァンニの魔術師は誰でも、マスターや賢者を含むより大きな地位を目指すことができます。
「マスター」は強大な力を持つ貴族の魔術師によって構成されています。マスターはテルヴァンニ家の評議会に一つ以上の席を得ることができ、その中にはマスター評議会や権威あるテルヴァンニ評議会も含まれます。評議会への所属権は評議会そのものへの招待状です。アークマギスターが評議会を率い、評議会はテルヴァンニ家に対する主要な脅威に対処する責任を担います。また危機の時にはホーテーターを選抜する役目も担っています。
「ホーテーター」は希少かつ、一般的に特異な性質を持つ地位です。ホーテーターはどのダークエルフ名家にも存在し、テルヴァンニ社会では非魔術師が占める最高の地位です。ホーテーターは危機の時代に任命され、広範な権威を与えられます。過去のホーテーターには強力な戦士や才能ある誓約者、さらにはオーディネーターも見受けられます。ホーテーターは緊急事態が持続している間のみ、戦争の指導者の役割を果たします。ホーテーターはマスターよりも上の地位ですが、マスターはホーテーターの権力をいつでも棄却できます。
「賢者」はマスターの地位を獲得した魔術師の中で最も強力な者を指します。合意によって得られたにせよ、別の方法によって他のマスターたちを納得させたにせよ、賢者の肩書きはその魔道師がアークマギスターと対等か、あるいはそれ以上の力を持ち、アークマギスターの地位に挑戦する資格を持つと見なされていることを意味します。
「アークマギスター」はテルヴァンニ家公式のリーダーであり、テルヴァンニ評議会によって選出されます。現在のリーダーはネロス・オセリで、この人物には自分の書斎で孤独に過ごす以外の望みはありません。評議会の残りの者の大半はこれと同じ考え方を持っているため、彼の支配は未だ脅かされていません。テルヴァンニ家の危機が速やかに、かつ静かに、他の者によって処理されている限り、オセリの支配は安泰でしょう。
地位を上げることは努力によって可能です。空いている地位の数は限られているため、昇格には激しい競争が伴い、地位の低いテルヴァンニはしばしば陰謀(政治あるいは毒)によって上位者を取り除き、昇格のための機会を作ろうとします。
この最後の特性により、外部勢力が地位の低いテルヴァンニを利用して騒乱を引き起こし、問題のあるリーダーをより受け入れやすい者に置き換える機会が生まれやすくなっています。野心のある個人なら、テルヴァンニ家が弱体化するような状況を容易に作りだせるでしょう。この方面に関してはさらなる調査を行う価値があると思われます。
テルヴァンニ家の歴史概説A Brief History of House Telvanni
学者アンドゥンリリーによって、アリノールのアルウィナレ女王代理の宮廷のために作成された報告書
宮廷の皆様方にご挨拶を申し上げます。
私はアルドメリ・ドミニオンの魔術師にして顧問であるペネウェンの依頼により、ダークエルフとも呼ばれる我らの親類ダンマーの社会について説明し、要約する役目を仰せつかりました。ダークエルフは諸々の家に分かれ、それらすべてに固有の内部社会組織があります。本報告は最も複雑な層構造の社会を有するテルヴァンニ家のダークエルフにほぼ限定してお伝えいたします。以下に記すものがテルヴァンニ家の簡潔な歴史です。
テルヴァンニはチャイマーの末裔であるダークエルフの名家です。チャイマーは我らの祖先アルドマーの子孫でした。彼らは反乱軍の予言者ヴェロスの指揮の下で我らの地を去り、現在ではモロウウィンドと呼ばれている、大陸北西部に居を据えました。この時代のテルヴァンニは第一公会議の一員としてドワーフとドレロス家に敵対していました。テルヴァンニはまた、レッドマウンテンの戦いですべてのダンマーが経験した変化の影響を受けました。
レッドマウンテンの戦いの直後、勝利したダークエルフの家がモロウウィンドを支配し、テルヴァンニはその中でも筆頭の存在でした。しかしこの時期はまたトリビュナル、すなわち神に昇格したと主張し、自らの宗教を創設したダークエルフの指導者たちの隆盛を印づけた時代でもあります。この「生き神」たちはすべてのダークエルフに尊敬されていますが、テルヴァンニ家は他の名家よりも懐疑的です。トリビュナルの成り上がりたちの誰もテルヴァンニ家の出身ではありません。テルヴァンニが他の名家にならって三大神を卑屈に崇拝することに消極的なのは、おそらくこの事実から説明できるでしょう。
第一公会議戦争の最中、テルヴァンニは優れた魔道師と危険な魔法攻撃を戦場に提供しました。テルヴァンニの真の力はここにあります。テルヴァンニ家の格言は「力強い意志を表現することが、真の栄誉を先人に与える」です。この力強い意思の表明は通常魔術を意味します。彼らのリーダーは強力な呪文使いであり、統治評議会は最も優秀な魔術師たちで構成されています。それぞれの魔術師は自身の他者に対する優越を証明する機会をうかがっています。自らのアルケインの知識や作品をライバルから守ろうとし、他のすべてのテルヴァンニを自分のライバルと見なしています。その結果、テルヴァンニは極端なまでに隠遁主義かつ孤立主義の態度を取る傾向にあります。
テルヴァンニが組織化された聖堂ではなく先人崇拝を行っていることは、半島の東沿岸にあるネクロムの街を潤わせてきました。ヴィべクが大いなる怪物に敗れた場所へ築かれたと伝説に言われるこの街は、地下墓地と納骨堂の迷路と化しており、死者の番人が墓を維持管理しています。あらゆる名家のダークエルフが先人たちを埋葬、回想するためにこの街へとやってきます。テルヴァンニは他の名家との関係を保つことで、こうした訪問者たちから恩恵を受けています。今やネクロムは国際的な大都市と化しているからです。
テルヴァンニの歴史は有名な(あるいは悪名高い)魔道師たちによって印づけられています。犠牲のヴォルリスやディヴァイス・ファー、アルナス・テニム、狂乱のダロデル、現在のアークマギスター・ネロスはそのほんの一部です。彼らの歴史は内部対立や一族内での争いに満ちています。彼らは他の名家との協力に消極的で、特にエボンハート・パクトへの加入を拒んでからはその傾向が強まっています。テルヴァンニ家はヴィべクの枝角の戦いで雪の悪魔カマルを倒すために兵士や魔術師を派遣しましたが、それは嫌々なされた決定で、人員もごく少数でした。軍事的支援が必要になると、彼らは通常傭兵や冒険者を雇います。
テルヴァンニ家はヴァーデンフェル地域で強大ですが、孤立主義の結果として、一族の多くの者は他の名家から離れた遠隔地に家庭を築くことを求められます。彼らの権力の大部分はヴァーデンフェルとモロウウィンドの東端に集中しています。その結果、彼らの名が冠された半島には小さな私有地が散りばめられ、通常それらは一族の年長の者、それも主に強大な魔術師によって支配されています。テルヴァンニのカースト制度は住民に忠誠心を要求し、伝統的な価値を強制します。
そうした価値の中で重要なのが奴隷の所有であり、これこそテルヴァンニがダークエルフの親類たちと共にエボンハート・パクトへ加入しなかった最大の理由です。パクトへの加入は爬虫類のアルゴニアンを対等の存在と認め、アルゴニアン奴隷を軛から解放することを意味しました。その結果、テルヴァンニは他のダークエルフからそれまで以上に孤立しました。
テルヴァンニ家は強大な魔術の力を持っていますが、私見ではダークエルフの脆弱な部分です。テルヴァンニは他の名家のような統一性を欠いており、その性質はより孤立主義的であり、エボンハート・パクトへの加入も拒否しました。その結果、力のある個人が外部からの接触を受けて伝統的な忠誠心に背を向け、将来の対立において密偵や同盟者として利用される可能性があります。個人的なプライドや魔術への欲は、彼らのうちで最も頑健な者さえも揺るがし、各個撃破を許してしまうでしょう。
デレドリアンへの手紙Letter to Deredrien
デレドリアン、
あなたに助けを求めろとメヴェイに説得されたわ。私には余裕がないし、あなたが私の手紙に返事をくれないのが耐えられない。この手紙はあなたの扉の下に滑り込ませたから、取ったのはわかってる。
私たちは古いセイレンモラの基地から河を渡ったところに野営している。二つの岩の間の道を北に向かったところよ。
助けてくれれば、メヴェイと私があなたをどこか新しい場所で再出発させてあげる。改革者の手から遠く離れたところで。
約束するわ、グラーウッドのようにはならない。私はあいつが品物に与えた損害を、安全に取り除く方法を見つけたの。今回はあなたに危険がない。誓うわ。
R.T.
トーヴェサードからの通信Correspondence from Torvesard
マスター・シェルレニ、
アラヴェリスにおけるお前の尽力は高く評価されている。我々はもうすぐ、グレートアイにすら見えないアポクリファへの扉を手にするだろう。
ブライトクラウンと奴の隠された一族が、ネクロムの状況に直接対処している。我々がもうすぐ遺物を入手し、知識と秘密の領域への扉を開くことは確実だろう。黒の書を入手し、儀式の情報を得たらすぐに知らせてくれ。すべては適切な時に用意しなければならないことを忘れぬように。
デイドラ公たちは最後の調整が終わり次第、お前のライバルたちを始末するため力を貸すつもりだ。
トーヴェサード
ドーレスの伝言Dres Message
アラム、
秘密の名前を使う時期は終わった。モラグ・トングがお前を探しにくる。もう見つけているかもしれない。とにかくこの伝言が早くお前に届くことを祈る。
これを読んだらすぐに、南にある私たちの野営地に来い。躊躇するな。予定を立てようとするな。逃げる以外のことをするにはもう手遅れだ。
お前はドーレス家のために大いに貢献した。その報酬を受ける資格がある。我々はお前を護衛して半島の外に出し、ドーレスの領地に帰して保護する。お前は身を隠すための新しい素性を受け取る。もうお前はアラム・グイトットではなくなるが、少なくとも死なずにはすむ。
ドーレス家の命令House Dres Orders
ドーレス家のすべての同胞たちへ、
我々は憎き敵、テルヴァンニ家に対して大きな勝利を手にする瀬戸際にいる。確かに我々は利益の出る相互商業協定を結んでいる。だが我々が現在アルド・イスラで行っている作戦は、何世代分もの富を我らの家にもたらすだろう。
残念ながら、モラグ・トングの密偵がテル・フーレンに向けて放たれたという知らせが届いた。密偵の女が持っている文書は我々の尽力を数週間後退させる可能性がある。それどころか我らの作戦を完全に崩壊させるかもしれない。彼女が連絡先に荷物を届けないよう取り計らえ。
トライス・レーロの墓石Triys Rehlo Gravestone
トライス・レーロの遺体
レーロ家の
アークカノンの大虐殺の罪で
聖なる宝物庫から追放
安らかに眠らぬことを
ドリームストーンの歴史History of the Dreamstone
研究者マレニア・コルスによる、ドリームストーンの不穏なる歴史についての短い記述
ドリームストーンは信じがたいほど謎の多い、奇妙な物体である。その発見についてはいかなる記録も存在しない。ダヴォンズ・ウォッチにある魔法道具の宝物庫に、これの追加を告げる目録表の記述が1行あるだけだ。由来が記されていない以上、この石は誰にも気づかれず、場所を知られぬよう秘密裡に宝物庫へ加えられたのだと考えるしかない。しかし、魔術師ギルドの人々に特有の好奇心だけでは説明できない様々な理由により、ドリームストーンが研究されずにいた期間は長く続かなかった。
我々の記録によれば、ナヌルレミルは学習や講義の課題を眠った状態で行うことができるという仮説を調べようとした。これが事実ならば、いくつものクラスで無意識の学生たちが日夜を問わず、講義の内容を実践し考察し続けることができる。ナヌルレミルは4日後、ぐったりしているところを発見された。その後ほどなくして彼の生は終わりを告げた。
その十年ほど後、アルフリンはドリームストーンの調査を任された。彼女はこの物体の観察記録を残すことができなかった。同じ日の夜に死亡したからである。
ドリームストーンの所有者がナヌルレミルからアルフリンへ変わるまでの間、3人の宝物庫管理人が退職した。彼らは理由として眠れないこと、あらゆる魔法道具に対するそれまでにない嫌悪感が生じたことを挙げている。不眠はストレス性の症状として退けられたが、神秘恐怖症と名づけられたもう一つの現象は、少なからず厄介なものだった。これ以後、悪影響を及ぼす魔術に対して結界を張ることは、すべての宝物庫管理人の標準的実践となった。この実践は今日まで続いているが、結界が本当に保護を与えてくれているのかについては、誰もはっきりとわかっていない。
次にドリームストーンを手に取った魔術師グラウマニオンは、正気を失った。彼女は意味不明な言葉を喚き、世界の終わりを宣言しながら、残りの生涯を隔離院で過ごした。彼女はドリームストーンと接触して「アンスール」という名を発した、記録されている中で最初の魔術師である。これはドリームストーン研究における進歩を意味した。
グラウマニオンの後に現れたのはオワイ・ナート、エドレルド・パリエル、クザム、そしてスローアロンである。彼らは協力してドリームストーンを研究し、現在ではアンスールの支配として知られるものをいくつかの季節の間耐えることに成功したが、その後は各人なりの道を辿って支配に屈した。この集団研究の重要な側面は、アンスールを抑制し、その影響を跳ね返すためにどの結界が効果を発揮するかを証明したことである。このグループはアンスールを保全し、無害にしたように見えたが、結果的に彼らの努力は失敗に終わり、アンスールは彼らの精神を征服した。詳細は重要でないし必要でもないが、拷問者アンスール――それが現在の名称である――は、エドレルド・パリエルに仲間たちを引き裂いて喰わせたのである。
失敗した集団研究の後、ドリームストーンは宝物庫の深く暗い隅に戻された。石は警告にくるまれ、厳重に結界を張られた器の中に眠っている。この物体を研究したいと望む者は、自らの身に危険が及ぶことを自覚した上で行うこと。
ドレイニスのメモ、項目001Dreynis’s Notes, Entry 001
ゴルン島のインドリル家の地所に宿泊所を確保した。また、この島にはすでに正気を失った魔道師のための隔離場があるとはいえ、インドリルのマスターたちは私が研究を行う間、完全なプライバシーを保証してくれた。皮肉な事態なのは承知しているが、これが私の必要としている転換点になってくれることを願う。
若い頃の発見に続く成果を挙げるのに苦労していることを認めるのは苦痛だ。魔術研究の領域で、私は若きポータルマスターとして名を挙げたものだが、今では――
いずれにせよ、新発見は時間の問題だと感じている。すでに私は屋敷のロタンダを魔術のフォーカスに仕立て直した。アルケインのフォーカスを部屋の周りに配置することで、島の中心部にうまく中継点を作れた。ここからなら、以前よりもさらに深くポータル魔術を探究できるはずだ。そして多少の運さえあれば、私が未だに後れを取っているあの若きドレイニスに対し、ついに目にものを見せてやれそうだ。
ドレイニスのメモ、項目007Dreynis’s Notes, Entry 007
彼の名前を紙に記したくない。彼の贈り物がいかに大きくとも、私の研究の中に彼の名前を含めれば、研究のすべては戯言と化してしまうだろう。それにしても、だ。
プリズムは不可解であると同時に、美しくもある。私の後援者は消滅間近な知恵のプリズムと呼んでいる。私の個人的な蔵書の中にはそのようなものの記録が見つからなかったし、ネクロムの蔵書庫に尋ねても、これまでのところ何も出てきていない。しかし、この点にあまり執着するつもりはない。
プリズムの構造を調べるため、私はこれを持ち上げて太陽光に向けてみた。そこで私はプリズムの真の美しさを目にした。プリズムはフィルターの役割を果たす。平凡で見知ったものを切り捨て、未知のものを明らかにするレンズなのだ。それこそ、我々の次元を維持している魔術の核心部分だ。
おそらくこれはプリズムが示すもののほんの一部だ。だがまずは、お茶だ。美味しいハニーベリーティーが飲みたい。いや、そうだ!プッカーミントがいい!
ドレイニスのメモ、項目028Dreynis’s Notes, Entry 028
親愛なる私の後援者は、ゴルンをデイドラの一団で活気づけようと思ったようだ。彼の判断は正解だったと言わざるを得ない。私はずっと、閉じこもって埃を被った古い本をめくっているのがどれだけ退屈か気づかなかった。ポータルの反射がどうの、動的次元がこうのと、退屈極まりない!
インドリル家が屋敷の現在の状態を見たらどう思うかは想像もつかないが、それは私の問題ではない!私は大切な友達のプリズミーと話すのに忙しいのだ。プリズマ?プリシム?あれに名前を聞くのを忘れないようにしなければ。
我々が初めて共にお茶を飲んだのはほんの昨日のことのように感じる。それ以来、まあ自慢するわけではないのだが、私は自分の能力を十倍にも高めてきた。私は手を軽く振るだけで、汗一つかかずに島中を転移できる。
いつも何かをやり遂げるたびに、私は次の新発見の出発点にいるような気がしている。ここに来たのは出版を期待してのことだが、今ではあの頭の固い魔術師どもに私の大切なプリズムを見せることなど考えられない。あれの秘密はすべて私のものになる。
トレデシムに関する手紙Letter Concerning Tredecim
高貴なるソヴァリ、
この要請の手紙を我々の命令系統ではなく、貴殿に直接送ることをどうかご容赦願いたい。通常の行政網を通す時間の余裕がない、緊急の要件なのです。
貴殿もご存じのとおり、私はテルヴァンニ家の指導者から情報を引き出す長期の任務に就いています。内部にいる我々の密偵トレデシムが、最近の情報引き渡しの際に次のようなメモをよこしてきたのです。
* * *
原因は不明ですが、マスターは自分たちの中にスパイがいることに気づきました。マスター・スリスはモラグ・トングの執行令状を発動したものと思われます。この仕事に危険が伴うことは承知していますが、私の身は安全だと思っていました。このままでは、私の腹にナイフを突き刺される可能性がとても高くなっています。
危険が高まったため、私は緊急の手段を取りたいと思います。あなたには私の季節ごとの支払いをネクロムの銀行にあるマスター・スリスの口座に送金していただきたい。そうすれば雇われた暗殺者に対する私の恐怖を、一時的に和らげることができるでしょう。この要請を躊躇するならば、これからの情報を犠牲にすることを覚悟してください。
これから先、私は標的に言及する際には暗号を用いるつもりです。そうすればもし私が捕まっても、否認する余地ができます。これからは以下の名前を使っていただきたい。
マスター・スリスは「雀」
マスター・フォーヴスは「ブリストルバック」
マスター・シルセは「ビートル」
雀の口座への送金を期待してよいのか、教えてください。不可能とおっしゃるなら、これ以上我々の関係を継続する必要はありません。
* * *
我々の潜入作戦は見事な成果を挙げています。少々のゴールドの追加を惜しんでこの重要な情報源を失うのは得策ではありません。どうか要求された送金を行ってください。完了後はご一報を願います。
モヴィス・ドーレス
トロールの連れ帰りBringing Home the Trolls
ボス、
妙なものを見つけたので、持って帰ります。隅のほうに大型の檻を用意しておいてください。いつも豚用に使ってる中型のやつは、ファナサ・ロルズが先週激突して首を折っちまったんで。あれは酷いもんでしたよ。あの女の残骸をあれだけ回収できたのが驚きです。
で、見つけたもののことですがね。あまり心配される前に言いますが、ご命令どおりラビリンシアンには行きましたよ。トロールは大したことありませんでした。しばらく前から連中には苦労していませんし、俺たちが持ち帰る奴らの見た目はあなたも気に入ると思います。
とにかく、去ろうとしたその時、巨大な岩が見えたんです。岩は何かのキノコのようなものに覆われていましたが、カサの部分は硬かった。ああ、それとカサが青く光ってたんです。これは重要です。ルラーラム・ヴェラスは美しいと言ってましたが、どうですかねえ。あのキノコを見てると、なんか耳がかゆくなるんですよ。見た目は黄金に似ています。
いや、別に岩を檻に入れろと言ってるわけじゃありません。残りの荷物と一緒に運べばいいだけですから。でも、あの岩には何か不思議なことが起きている気がするんです。あれは卵みたいなものじゃないでしょうか。ラビリンシアンで自然に生えたわけじゃないと思うんです。それにあの虫も戻ってきました。前に俺が言ってた、大きな丸いやつです。テトリス・ラモリはシャウラスっていう名前だと言ってました。あいつが言うには手懐けられるそうです。
いずれにしても、そいつらを何匹か持って帰ります。トロールは岩に興味がないようなので、俺たちが帰る前に岩を壊しはしないでしょう。
これで先週のヘマを忘れてもらえるくらい、いい儲けが出ることを祈ってますよ。
フェラレア・セニム
ナシンへのメモNote to Nathyn
ナシン、
私はテル・ドレロスを去るわ。遠縁の親類が死んでまとまった金が手に入ったから、もう召使として働く必要がなくなったの。
ミストレス・ドレロスは私が向かう場所を教えないほうがいいと言っている。まず、彼女はいつもあなたの状態を正しく理解していたし、結界を出ればあなたは間違いなく死ぬでしょう。それから、私はどこかの金持ちのよそ者と結婚して、平和で贅沢な人生を送るつもりよ。私は色々と苦労したし、あなたの母親のために頑張って働いたんだから当然だわ。
あなたのことを本当に愛していたとは言えないけど、死んで欲しいとは思わない。私を追わないで。あなたの母親の言うとおりにしなさい。彼女はよくわかってる。
元気でね
ダシア・カロ
ニルファスとソリンの通信Communications Between Nilphas and Thoryn
ニルファス、
台帳にメモを書いて通信するなんて、名案だ! それはそうと、西棟でドワーフ・スパイダーが騒音を起こしている。真夜中にスパイダーの足が床に当たってガタガタ音を立てるんだ。ずっと眠れない。自分で見に行きたいところだが、君は研究所のあの区画に入る許可を私に与えるのを忘れただろう。それにプロトゥスは私のために道を開いてくれないんだ。
君の調査が順調に進んでいることを願っている。この神聖な地の管理者仲間として、君の研究についてもっと知りたいものだ。私はトリビュナルに詳しいから、君の助手にだってなれるかもしれないぞ!
いずれにせよ、元気で。
ソリン
* * *
君の協力とトリビュナルについての専門知識は必要ない。
西棟のコンストラクトは私が処理しておく。ただし外で崖をうろついているスペルライトを、今度こそ完全に追い払ってもらいたい。君はあの女に他の情報の泉を探すよう丁重に頼んだようだが、明らかに無駄だった。
ニルファス
* * *
ニルファス、
あのスペルライトがまだいるって? 彼女はケメル・ゼーの研究所を妨害しないことがトリビュナルにとってどれほど大事か、理解してくれたように見えたんだが。わかった。もう一度彼女と話をつけてこよう。三大神の神聖な願いを尊重しろと彼女に言うつもりだ。彼女がエレベーターシャフトに侵入しなくても、この広大な場所を管理する仕事は十分に大変なんだ。君がこのことをプロトゥスに話したかどうか知らないが、エレベーター付近の警備を強化したらどうだ?
三大神の光の導きが君にあるように。
ソリン
* * *
私の仕事のやり方に口を出す前に、スペルライトを片づけて自分の仕事をするがいい。プロトゥスの警備体制は計算し尽くされたものだ。ケメル・ゼーは適切に守られている。
ニルファス
* * *
ニルファス、
不服を言いたかったわけじゃない。ただ君が最近プロトゥスの指令の一部を変えたのを見たんだ。君の変更で控えの間の防備が弱まったことを見逃して欲しくなかっただけだ。もちろん、君が私よりもプロトゥスの能力についてよく理解していることは認めるよ。
ここのコンストラクトがどういう活動をしているのか詳しく説明してくれれば、私ももっと協力できるんだが。私はトリビュナルについて詳しいが、ソーサ・シルが私に最も縁遠い生き神なのは確かだ。私の感性は母により近い。だが学ぶつもりはある。三大神によりよく仕えられるように、特に君が力を貸してくれればな。.
トリビュナルが君を記憶に留めて下さるように、
ソリン
ニレス族長への命令Orders to Kindred Rector Nyleth
ニレス族長、
アラヴェリスでの進捗報告には満足している。トーヴェサードに失われた夢を取り戻す計画を説明してもらったが、夢が隠されている場所を知るためにモラのインクで汚れた記録を調べるそうだ。お前にはキンリーヴ・ライルとドリームカーヴァーの任務に同行してもらいたい。奴らが秘密を探すのを手伝うのだ。言われていたのと状況が違った場合は、お前が自分で入手しろ。
忘れるな、お前は親方の命でドリームウィーバーに仕えている。
ぺライトの名のもとに、
ブライトクラウン
ネクロム・クワマーの準備、第五稿Preparing Necrom Kwama, Fifth Draft
アーシン・ヘランダス 著
ネクロムのクワマー農場は、クワマーを葬式や装身具用にしっかりと準備する役割を任される高貴な立場である。この責任は母から残されたと言いたいが、実際は私が奪ったかもしれない。
ちなみに母は気にしなかった。今では他の地を訪れては、何か新しいことやひどいことを発見している。(この序文は削除すべきだ。いや、前書きか?わからない。金を貯めてどこかのいい書記を雇って、書き直してもらおう。とにかく続けよう。これはどこかに書き留めておかなくては)
スクリブ
クワマーの幼虫段階であるスクリブには、ネクロム特有の用途が複数ある。しかしまず、しっかりと入れておける囲いが必要だ。すぐに逃げ出すからだ。
脚の関節をすり潰して粉にする。この粉は一部の訪問者、主にフラールが、先人の周りでロウソクにふりかけ、一瞬だけきらびやかな光を放たせるために使われる。私はこの作業にルーブダイトで作られた特別な乳鉢と乳棒を使う。粉は潰されたばかりでないと使えない。
スクリブにいつも毒キノコを与えていれば、そのゼリーを食べ物を主体とした捧げ物に使用できる。先人のために作る料理やお菓子の中に新鮮なゼリーをスプーン1杯混ぜ入れれば、その捧げ物は数日間鮮度を保てる。自分で食べることはお勧めできない。アルゴニアンなら特に。見たことがあるが、二度と経験したくないと思うような痛みを2日間味わうだろう。これもゼリーは作りたてのものでないと、乾物の材料とうまく混ざらない。(どうして毒キノコなのかは私もまだ知らない。錬金術と関係がありそうだ。第六稿までに調べるか?)
食べ物がここの者たちのものである必要性も明記すべきだろう。エルスウェアのフォンデュのレシピでうまくいくと思ってはいけない。レドランの祖母がモラグ・マールで採れた材料を使ったレシピに変えたとかいう話は聞きたくない。
クワマー・ワーカー
こうしたクワマーは仕事をしたいだけだ。させてはいけない。囲いの中に入れて満足させておくことだ。近くに生きたスクリブが少しいれば、何らかの決まった行動に落ち着くだろう。この獣が持つ通常の用途に加えて、ネクロム特有の用途もいくつかある。
テルヴァンニは先人への捧げ物をここのワーカーで作られたばかりの盆に乗せることを好む。甲羅を扱う際、内側の腹膜をそのまま残す特殊な切り方がある。職人が作業を始める前に、その膜を甲羅にそっと巻いておく。職人は錬金術の試薬で処理してから、膜を甲羅の上で乾かす。その結果、甲羅の盆は金属的な輝きを帯びる。その後、職人は客の注文どおりの彫刻をその層に彫る。かなり装飾的な盆になることもある!鉱山労働者の中で、クワマー・クィーンが卵、スクリブ、ワーカー、フォリージャー、ウォリアーに囲まれた絵を頼んだ者がいた。彼は鉱山を守っていて死んだので、まさにぴったりだったと思う。(ここでオル・マージーのことを話す必要はないだろう。最終原稿で削除するように。)
正しく扱えば、クワマーのカトルはネクロム中で見掛けるようなロウソクにできる。クワマー・ワーカーから収穫したら、カトルはネクロムにいる死者の番人のロウソク商に取っておく。ちゃんとした薬草と錬金術の試薬に混ぜ入れるために、新鮮なものが必要なのだ。この処理により、ネクロムのロウソクは普通のロウソクよりもずっと長持ちする。また煙が立ち、消えかかることもない。さらに匂いもいい。新鮮なスクリブのゼリーを明るく輝く夕焼けに混ぜた感じだ。先に言っておくが、これは売り物ではない。ここの死者の番人が作るもので、材料と作り方は秘密にされている。(でも、明るく輝く夕焼けとはどんな匂いなんだ?第六稿で削除候補に入れよう。)
そしてもちろん、クワマーの収穫にまつわるその他ありふれたことも全部行えるが、それはネクロムと訪問者が必要とする上記のアイテムを提供してからだ。
この素晴らしい獣をどこから採ってくるかというと、複数の場所があり、どれも完璧なスケジュールが決まっていて、翌日の仕事用にワーカーとスクリブがバランスよく揃うようになっている。ネクロムの需要が大きければ、鉱山にたっぷりいる場合に限り、より多く入手できる。
第六稿でここは絶対に削除するが、スクリブのゼリーを売った後で思いついたからちょっとここに書き留めておこう…
スクリブのゼリー
最高、最高
お腹の中
全部自分の、自分の
その鳴き声
素敵、素敵
心の奥をじらす
ほとんどいつも、いつも
さあここへ来て
今日を満たしてくれ
その素早い動きと
気楽な視線で
スクリブの不思議
最高、最高
お腹の中
全部自分の、自分の
ネクロムの歴史:死者の街History of Necrom: The City of the Dead
メラリン・ランダス 著
この手引きが今日を越え、過去が教えるすべてをあなたに示してくれることを願う。
先人たち
実は偉大なる街ネクロムを創設したのが何者なのか、誰も知らない。本当だ。ネクロムは数千年前にもこの河口の街だった。アズラの呪いよりもずっと前だ。またトリビュナルについて講義するつもりはないが、この古代都市は大昔でさえ、見目麗しい街だった。
チャイマーは世界の中に自分の道を切り開き、自分自身の神々、つまり我々が今日デイドラ公と呼ぶ者を崇拝するためこの地域にやって来た。新鮮な水と守りに向いた地形は、彼らの初期の集落にとって完璧な場所だった。彼らはボエシアやメファーラ、アズラの祠を築き、こうした庇護者たちから学んだ教訓の多くを実践に移した。一例として、彼らはボエシアの教えに従って、大穴を渡るため木の大きな足場を築いた。その痕跡は今日でも大理石の歩道の中に見られる。
チャイマー文化の遺産と明確にわかるものは、ほとんど残っていない。呪いの後の数百年、我らの先人の多くは、もはや彼らに無関係と思えた過去に背を向けることを望んだ。だが現在ネクロムとなったこの古代都市では、後にダンマーの先人崇拝となるものの原型が、記録されている時代が始まるより以前に、アルトマーによって実践されていた崇拝の形態から初めて分離したことがわかっている。ボエシアが我らの古代の民の祖神であったのなら、我々自身の先人が前面に現れたのはネクロムにおいてだった。
死とネクロム
この街にはどこか、死者に呼びかけるものが常にある。チャイマーの時代においてさえ、当時の文献は生死の境を越えて先立った人々と話すのがいかに容易であるかを語っている。生と死が同じ道の部分にすぎないとしたら、古代人はネクロムをその長くねじ曲がった道の経由地と見なすようになっていった。
内面を見て、家族やクランの先人の価値を理解し、死後もなおその活躍を称えてより高い存在へと移行させること、それが我らの民にとっての根本的な転換点だった。それがチャイマー文化全体で起きていたことは疑う余地がない。結局のところ、ボエシアは強力な模範だったのだ。だがここネクロムでは、ある家族の殺された親類を崇拝することが日常生活の一部になった。私は以前ある家族が、死んだ親戚が生前好きだった書物を紛失したという古い物語を読んだ。その家族はただ親戚がどこに本を置いたかを聞くためだけに、彼の霊と話しに行ったのだ!
愉快な物語だが、これが書かれたことにはちゃんとした意図がある。死者と生者のどちらも、ネクロムを故郷としているのである。
街と街
アズラの呪いと忌み嫌われたドゥエマーの消失後、ネクロムはダンマー文化のお膝元となり、アッシュランドの隅にまで広がっていった。死者の街はエボンハートからヴァーデンフェルまで広く見られるが、長い間ネクロムは我らの民全体にとって、唯一無二の死者の街であり続けてきた。名家の出身であろうと、小さなクランの者であろうと、金持ちでも貧乏人でも、著名人も不遇の人も、ネクロムで悔悟者は両手を広げて迎え入れられる。
祝祭の日にこの街を見に来るといい。喪に服する人々の列がすべての歩道を埋め尽くし、ここからバル・フォイエンまでの道を渋滞させることもあるほどだ。香の煙が盛大に空を駆け上って空気を満たし、死者たちは街頭に列をなして並び、生者が彼らを祀ると同時に、死者もまた生者に敬意を表する。なかなかの見ものだ。
想像はつくと思うが、このように死者たちの中で生きることで、この街の人々は独特の人生観を持つようになる。もちろん、死者が街頭を歩いているのを見かけたら、敬意をもって遇することだ。旅立った人々の最大の秘密を知っているなどと主張する行商人やペテン師が中庭を埋め尽くしているが、そういう者は無視するように。それと、ネクロムの路上芸人が少々不謹慎な冗談を言っているのを聞きとがめても、寛大な心でいてほしい。死は我々の周り中にあり、それは人を変えてしまう。あなたも変わるかもしれない!
パクトを越えて
こうして、当然ながら今日に至る。エボンハート・パクトが形成され、テルヴァンニの賢者たちが大同盟への加入を拒んだことで、三大神は賢明にも死者の街の平穏と安全を保証するよう動いた。
パクトの問題は脇において、我々にこの「中立」の地の統治を許すことで、彼らは我々の民全員が大巡礼を続けられることを保証したのだ。ハイエルフの不信やブレトンの帝国主義が我らの門を閉じ、我らの聖堂を焼かないように。
ネクロムは独立しているが、我ら全員と共に立っている。
そして、これは道を通るすべての者に言っていることだ。ここを去り、この街の一部をあなたが持っていく時、あなた自身の一部をこの街に残していくことになっても、驚かないでもらいたい。
バーン・ダルの目The Eye of Baan Dar
エイリース・ドロはこの歴史がバーンダリにとって永久に失われてしまうことを恐れている。子供たちがこの歴史を知り、心を軽くしてくれることを願って、ここに書き写しておく。
* * *
多くの時代を遡った頃、ダークエルフは出会う者すべての征服を望んだ魔術師、燃え上がる者に導かれてエルスウェアの砂地を渡った。カジートたちがこの灰を被った顔の異国人を両手で迎え入れた時、胸に剣を突き刺されなかった者たちは枷をはめられて輸送され、二度と姿を見ることはなかった。
この者の小祖先はキャラバンと共に砂漠へ逃れた。燃え上がる者は日の出が迫るように彼らを追い回した。食料も避難する場所もなく、彼らは逃げ場を失って捕らえられた。燃え上がる者は小祖先を取り調べ、獲物を掲げた。カブほどの大きさの宝石。双子月のように明るく、多くの手を渡ってきたために滑らかになっていた。
「これは何だ?」燃え上がる者は尋ねた。
だが小祖先は舌を噛み、何も言わなかった。
「お前たちにとって神聖なものか?」
小祖先はまだ沈黙していた。
「大きな力を秘めているのだろう、違うか?」
そしてついに、小祖先は口を開いた。「バーンダリの手を離れれば無力よ」
燃え上がる者は戦士たちに退くように手で合図した。宝石は彼を魅了したのだ。「その惨めな命をせいぜい大事にしろ」と彼はバーンダリに言った。「私が故郷に凱旋し、我が不屈の意志をもってこの聖なる宝石に込められた秘密の力を解き明かすことを知って泣くがいい」
そうして燃え上がる者はクランをその惨めな命と共に、砂漠の中に置いていった。
しかし燃え上がる者は知らなかった。小祖先がこの宝石をクランマザーから受け取ったのは、人々の心を元気づける甘美な歌と交換にだったこと。小祖先はこの宝石をいとこに贈り、小祖先がずっと前から欲しがっていた、いとこの口琴と交換してもらうつもりだったことを。
だからクランは涙を流した。だがそれは笑いの涙だった。バーン・ダルの目は確かに神聖なものだったが、バーンダリの手を離れては、本当に無価値だったからだ。
バルヴァー・ベミスの日記よりFrom the Journal of Balver Bemis
ルラロ・ララスは私がこれまでに出会った中で最低の誓約者だ。あの男は残忍で恐ろしく、傲慢だ。テルヴァンニの基準からしてもだ!先週、奴はスペルライト・ヴァースヴァの目の前で私を怒鳴りつけた。私は頭を下げて立ち尽くし、奴の暴言を耐え忍ばねばならなかった。そのうえで奴は私の後頭部を殴った!殴ったんだ!涙が出たよ!
奴がいびり屋の悪党だということは皆が知っている。奴は自分の気の短さを「頭痛」のせいにしている。それなら、その「頭痛」を永久に治してやろうじゃないか。
材料の大部分はありふれたものだが、一部は少々入手困難だ。特別な種類のスッポンタケ、特殊なブル・ネッチの臭腺、ある地域のシュルームビートルの背中に生えるキノコ。強力なやつを作れば、ルラロはおしまいだ!おまけに、奴の地位に空きができる。
この計画に欠陥があるとすれば、私が自分で薬を渡せないことだ。それは無理だ。奴は怖すぎるし、あいつに目を向けられた瞬間、私は狼狽してしまうだろう。いや、手下が必要だ。毒を渡してくれそうな、人目を引かないお人よしが。それさえ何とかなれば、奴の頭痛は完全に「治療」できるだろう。テルヴァンニ家の全員のためになるぞ。
ファヴァミ・セラヴェルの墓石Favami Seravel Gravestone
ファヴァミ・セラヴェルの遺体
セラヴェル家の
アルマレクシア様のみぞ知る罪で
聖なる宝物庫から追放
安らかに眠らぬことを
フェデロへの謎の手紙Mysterious Letter to Federo
フェデロ、
私も昔はあなたと同じだった。テルヴァンニ家の賢者の下で要求される忌まわしい仕事を我慢してやり遂げ、彼らの仲間になれば、状況も変わるだろうと自分に言い聞かせていた。
忠告を聞きなさい。私たちのような地位を昇ろうとする者と奴隷との唯一の違いは、奴隷に生まれつき価値があるということよ。私たちの誰かが死ねば、別の者が喜んでその空白を埋める。
そして奴隷とは違い、私たちには立ち去る選択肢がある。
あなたが誰のために働いているかは知っている。あなたの懐を潤している魔道師を知っている。以前そいつは私の懐を潤していたのだから。あなたが何かミスを犯し、奴があなたの役に立つ時期は過ぎたと判断するのが時間の問題だということも知っている。
まだチャンスがあるうちに立ち去りたいのなら、誰にも言わないで。特別な用意などせず、東へ行くの。地元の者にトビンの居場所を聞きなさい。ウィットの娘の北よ。その場所の目印は2つのランプ。そこなら安全だわ。
返事は送らないで。時が来れば、私があなたのために新しい、まっとうでお金も稼げる生活を築く手助けをしてあげる。
そしていずれ、あなたが私たちのような人々を助けるためにもっと力を尽くしたいと思う時は、喜んで迎え入れるでしょう。
フォルシの報告Folsi’s Report
あなたの令状に載っている、トレデシムという標的の正体を突き止めることに関してはまったく進展がない。ただしドーレス家が、アルド・イスラの南に野営地を設営したことを発見した。あなたが探している裏切り者が、そのドーレス家の密偵と共謀していることは疑う余地がない。
奴らの活動を調査することをお勧めする。でも気をつけて。私が関心を持っていることに、気づかれたかもしれない
ブライトクラウンの命令Blightcrown’s Orders
香炉を焚き続け、修道院をぺライトの祝福されし息吹で充たすのだ。だが注意せよ、目的のものを見つける前に物資を使い果たすな。
我らがデイドラ公の賜物を受けた番人を尋問せよ。遺物はどこにある?ダードリン副院長の墓はどこだ?墓地には他にどんな秘密が隠されている?熱病に冒された状態でなら、奴らは遺物を探すために必要な情報を明かすはずだ。
イルヴェル修道院長は他の死者の番人よりも詳しく知っているかもしれない。奴を自分の部屋に運んでおけ。私が直々に尋問する。
ブライトクラウン
ぺライトの救済Peryite’s Salvation
レイナ・ブレイディンの思想
私たちは土から生まれました。私たちの中で最も裕福な者でさえ、石や砂、塵の抱擁を逃れることはありません。私たちの体は崩れ去り、私たちを養い、覆ってくれた大地へと還ってゆく。ノルドを覆う氷から、葉をまとうウッドエルフの体まで、私たちは皆、不浄なる獣です。それに異を唱える者は皆、錯覚に惑わされています。
土と共にあるだけでなく、私たちは皆、腐敗します。病は若者にも老人にも、健康な者にも弱者にも襲いかかります。熱病や咳、体の痛みの前ですべては平等です。
なぜアズラの偽りの約束を信じるのですか?夜明けに希望などありません。どんな温もりや慰めも、体を繊細な塵へと分解する汚泥の冷たい抱擁を越えては続かない。定命の世界の苦痛を終わらせる神など存在しないのです。いかなる癒し手も、あなたを死から救い出してはくれません。
自然の秩序を受け入れなさい。真の秩序を。不浄と病気の秩序を。唯一の定め、それは時は短く、苦痛は無限だということ。私たちの居場所は、腐敗のデイドラ公と共にあります。あの方こそは定命の者のあり方を完全に理解している唯一のデイドラ公。あの方は嘘をつかず、定められたこと以上の何も約束しません。私たちの献身に対する恩寵は、私たちの種族の他すべての者を悩ます疫病です。私と同じ不適合者たちよ、ぺライトを信じなさい!私たちをその真の姿のまま、汚物として受け入れる唯一の神を崇拝するのです!
マスター・シェルレニのメモ:トーヴェサードMaster Shelreni’s Notes: Torvesard
もう2年ほど前のことだが、トーヴェサードというドレモラが私に興味深い提案を持ってやって来た。彼はアークマギスターになりテルヴァンニ家を支配するという、私の生涯の野望を実現すると約束したのだ。私はただ暗黒の力のデイドラ公ヴァルミーナに奉仕することを誓えばいい。それで夢がすべて叶うという。
彼は何かがずっと昔に、世界から奪われたと説明した。奪われたものを修復するのが彼の運命なのだと。その修復はある夢から始まった、だから彼はヴァルミーナと手を組んだという。彼は夢の中でドリームウィーバーの祠があったことを覚えていた。私がその祠の修理に協力することが欠かせないらしかった。
多くの研究と調査の結果、私たちはこの古代の地に行き着いた。あとはトーヴェサードが夢で見た祠を探せばいい。
マスター・シェルレニのメモ:修復Master Shelreni’s Notes: The Restoration
何ヶ月もの準備を経て、私たちはついに古いヴァルミーナの像を完全に修復する作業を開始できるようになった。私はまだこの像の重要性を十分に理解していないが、どうすれば像を元の姿に修復できるか、力の限りを尽くして考えた。
トーヴェサードは私と共に作業を行い、できる限りのことを学ぼうとしている。理由を尋ねても彼は答えようとしない。ただ像を修復することが失われたものを取り戻すための鍵だと言うだけだ。今や私はヴァルミーナ信者の軍団を従えており、さらにぺライトの信奉者もそこに加わっている。ブライトクラウンは不愉快だが、奴の知性と指揮能力は否定できない。
アラヴェリス採石所からついにクジャク石が届いたので、作業に着手できる。もうすぐ、ヴァルミーナは私がテルヴァンニ家のアークマギスターになるための力を与えてくれるだろう。
マスター・シェルレニの命令Master Shelreni’s Orders
ダスクのゼンフィス隊長、
テル・レンディスでの仕事はまだ完了していない。ダスクセイバーの強力な部隊を割き、塔の付近に野営地を設営しなさい。私はそこで合流する。
私が到着するまではテル・レンディスに入らないこと。口なきメルンがあそこに強力な防備を設置したので、回避するにはそれなりの時間がかかる。あの古ぼけた愚か者が憎い!
マスター・シェルレニ・バロ
マスターの警告Master’s Warning
一部の召使が鍵を軽率に扱っているという情報が、マスター評議会のもとに入ってきた。我々はお前たちを大いに信頼し、お前たちが我々の意向に従って与えられた雑務をこなせるよう、重要な場所へのアクセスを与えている。その特権を濫用してはならない!
召使がまた中庭のテーブルに鍵を放置しておいたとの知らせを受けたら、召使の部屋のすべての住民が等しく罰を受けるよう私が取り計らう。
マスター・フォーヴス
まとめられた研究メモCompiled Research
項目001
ゴルン島のインドリル家の地所に宿泊所を確保した。また、この島にはすでに正気を失った魔道師のための隔離場があるとはいえ、インドリルのマスターたちは私が研究を行う間、完全なプライバシーを保証してくれた。皮肉な事態なのは承知しているが、これが私の必要としている転換点になってくれることを願う。
若い頃の発見に続く成果を挙げるのに苦労していることを認めるのは苦痛だ。魔術研究の領域で、私は若きポータルマスターとして名を挙げたものだが、今では――
いずれにせよ、新発見は時間の問題だと感じている。すでに私は屋敷のロタンダを魔術のフォーカスに仕立て直した。アルケインのフォーカスを部屋の周りに配置することで、島の中心部にうまく中継点を作れた。ここからなら、以前よりもさらに深くポータル魔術を探究できるはずだ。そして多少の運さえあれば、私が未だに後れを取っているあの若きドレイニスに対し、ついに目にものを見せてやれそうだ。
項目004
数週間経ったが、何も見せるものがない。なんということだ。さらに悪いことに、私の若い頃の出版物に立ち戻り、ページの中の自信たっぷりのドレイニスと泥酔状態で議論をして夜を過ごしてしまっている。あの自信が今の私にもあればいいのだが。
あれ以来、ロタンダを改造して我々の次元の向こうまで探索できるようにした。次元間ポータル魔術はまだ生まれたばかりだ。この分野で発見を成すことができれば、向こう百年は揺るがない先鞭をつけることができるはずだ。
項目005
どうやら私の魔法の探知ロッドに気づいた者がいるらしい。今朝目を覚ますと、ロタンダにメモが置かれていた。メモにはただ「お茶でもいかが?」と書かれていた。
項目006
今日私はあの狂気のデイドラ公の訪問を受けた。今でも彼の笑い声が聞こえる。私の無茶な研究の努力を嘲笑ったのだ。だが私が彼の出てきたポータルに押し戻してやろうかと思っていた時、彼は何かを差し出した。贈り物。プリズムだ。
項目007
彼の名前を紙に記したくない。彼の贈り物がいかに大きくとも、私の研究の中に彼の名前を含めれば、研究のすべては戯言と化してしまうだろう。それにしても、だ。
プリズムは不可解であると同時に、美しくもある。私の後援者は消滅間近な知恵のプリズムと呼んでいる。私の個人的な蔵書の中にはそのようなものの記録が見つからなかったし、ネクロムの蔵書庫に尋ねても、これまでのところ何も出てきていない。しかし、この点にあまり執着するつもりはない。
プリズムの構造を調べるため、私はこれを持ち上げて太陽光に向けてみた。そこで私はプリズムの真の美しさを目にした。プリズムはフィルターの役割を果たす。平凡で見知ったものを切り捨て、未知のものを明らかにするレンズなのだ。それこそ、我々の次元を維持している魔術の核心部分だ。
おそらくこれはプリズムが示すもののほんの一部だ。だがまずは、お茶だ。美味しいハニーベリーティーが飲みたい。いや、そうだ!プッカーミントがいい!
項目010
すでにこのプリズムは私の若い頃の発見を取るに足らないものにしてしまった。次元や次元同士の関係、それが魔術の流れをどのように湾曲させるかについての私の理解を。
極めて不愉快だ。マッドマンの導きによらなければ、私がこの理解に到達することは不可能だったのだから。裏切られたかのような気分だ。これは自分で獲得した知識ではない。だがどうしても続けたい。これを書いている今でさえ、もう片方の手がすでにプリズムに漂っていく。美しい。
項目016
まだ彼の笑い声が聞こえる。頭から離れない歌のようだ。眠る時も口ずさんでいる。
項目021
今日はゴルンの海辺沿いを歩いた。いや、「歩いた」は正確ではない。海辺沿いをポータルで移動したのだ。日没を眺めに外に出たのだが、記憶していたよりも色が褪せている気がした。泥のようなオレンジと、どんよりした茶の、哀れな物体だ。それでも私は立って見ていた。太陽の光と共に、色が消えていくのを見ていた。
項目024
プリズムは私の目を曇らせてしまったようだ。この物体が歪めている光にどのような影響があるのか、私は考えていなかった。この光をこれほど長い間、自分の目の中に直接受けていたとは。プリズムは世界の別の種類の美しさを私に明かそうとしているのかもしれない。もう一度だけ見てみよう。
項目028
親愛なる私の後援者は、ゴルンをデイドラの一団で活気づけようと思ったようだ。彼の判断は正解だったと言わざるを得ない。私はずっと、閉じこもって埃を被った古い本をめくっているのがどれだけ退屈か気づかなかった。ポータルの反射がどうの、動的次元がこうのと、退屈極まりない!
インドリル家が屋敷の現在の状態を見たらどう思うかは想像もつかないが、それは私の問題ではない!私は大切な友達のプリズミーと話すのに忙しいのだ。プリズマ?プリシム?あれに名前を聞くのを忘れないようにしなければ。
我々が初めて共にお茶を飲んだのはほんの昨日のことのように感じる。それ以来、まあ自慢するわけではないのだが、私は自分の能力を十倍にも高めてきた。私は手を軽く振るだけで、汗一つかかずに島中を転移できる。
いつも何かをやり遂げるたびに、私は次の新発見の出発点にいるような気がしている。ここに来たのは出版を期待してのことだが、今ではあの頭の固い魔術師どもに私の大切なプリズムを見せることなど考えられない。あれの秘密はすべて私のものになる。
メルンの作業リストMeln’s To-Do List
1.中庭にもっと召喚サークルを加える
2.召使はスパイの可能性がある。解雇する
3.テル・レンディスの間のポータルにつながる扉は、私が作った破壊的共鳴の結界で封鎖した。解除スイッチで結界が無効化される。隠されていることを忘れないように。何かへ触る前に亡霊の視覚を使うこと!
4.料理人を追いだす。私に毒を盛ろうとしているのはわかっている
5.本を暗号化する?隠す?暗号化して隠す。誰も信用できない!
リラシへのメモNote to Rilasi
親愛なるリラシへ
君の頑張りが誰にも気づかれていないとしたら残念だ。
私は気づいたぞ。
近いうちに話そう。
君だけの、ロスガードの雲雀
レイニラの日記Reynila’s Journal
ティラナイト・カルクス
この金属はダークアンカーの生産に用いられる格子間合金で、魂石の欠片が込められており、知りたくもない他の材質を検知するようになっている。ソンディヴェルは魂魔術の儀式を使ってこれを柔軟性のある輪へと形成し、手首や足首に固定している。これはニルンとオブリビオンの間の障壁を弱めるのと同じように装着者の意思を弱め、支配者の思い通りに服従させる。ソンディヴェルの思考は装着者にとって命令となり、欲望となる。こうして惨めな奴隷や自動機械、精神を欠いた抜け殻に命令する、強い不快感を味わわずに済むようになる。
理論上は。「改革者」はまだこのプロセスを完全に実現していない。
調整
調整に成功すれば、被験者は意識の薄明状態に入る。被験者は完全に自我を保っており、明晰で、きっかけを与えられれば自分の考えを述べられる。ただし支配者――彼の自称では「改革者」――による許可なしでは行動できない。
彼との調整から解放されると、失われた記憶はダムが崩壊して川に流れ込むように戻ってくる。これは非常に不愉快なプロセスであり、被験者が調整されていた期間に比例して、飲みすぎた夜の後のような元気のない状態になる。ソンディヴェルは数ヶ月、あるいは数年分の報酬をまとめて受け取ることと引き換えに、人々が自らの意思でこの調整を志願するようになることを計画しているため、これは彼にとって大きな障害の一つである。
もう一つの問題は、支配者としての改革者の共鳴が、ティラナイト・カルクスの大きな欠片を通じて伝達されていることである。彼はこの実践を大規模に導入したがっているが、私は複数の被支配者を調整させることがどうやって可能になるのか、理解に苦しんでいる。彼はもっと先に進むまでこの問題を気にする必要はないと言っている。
最後の問題だが、調整のプロセスを引き起こすには、その背後に大量の動力源が必要だ。魂1つを他人の命令に従わせるには、魂1つの力が必要なのだ。これは彼が考えているように、束縛から命を助けるものではない。実際、このプロセスはすでに彼の奴隷の大部分の命を奪っている。私はこれを続けるのが非現実的だし、倹約の観点から考えても時間の無駄だと言ったが、彼はそれを知っても手を緩める気はさらさらないようだった。
調整の解除
私は調整された者をソンディヴェルの支配から安全に切り離すプロセスを開発した。魂魔術とティラナイト・カルクスの共鳴について、ごく初歩的な理解があれば可能なことだった。あのような意識の領域で自分が取る行動を記述するのは困難だが、調整された者と金属の欠片との間の媒介として、私自身を用いた。私は気づかれることなく共鳴の中に入り込み、調整された者の魂の絆を安全に切り離すことができる。彼らの生命のエキスは媒介である私を通じて、漏斗にインクを入れるように流れ込み、一瞬の間に通りすぎてゆく。記憶が私自身の記憶であるかのように瞬く。私が見て、感じたもの――束縛状態で過ごした短い生活の浮き沈み――は、これ以上ないほど強く、私の決意を固めさせた。
このプロセスには何時間もかかるが、ソンディヴェルは別のところに意識を集中しているため、通常はこれを感じ取らない。
どれだけ多くの者を救っても、私は夜のごとく鋭き者のことと、彼にしてしまったことを決して忘れないだろう。最も助けを必要としていた私の友。他の者たちの調整の解除は髪の毛を切るように一切痛みを伴わなかったが、夜のごとく鋭き者の場合は毛を根元から引き抜くようなものだった。彼を解放しようと急ぐあまり、私がどれほどの被害をもたらしたのかはアズラのみがご存じだ。
彼を見つけられたらいいのに。まだ彼の一部はティラナイト・カルクスの中で共鳴したままだと思う。
たとえ彼が私や、若くして誘拐され命を落とした彼の最後の卵の親族や、彼を大切に想っていたディーク・ヌジェイを思い出せなくても、私は彼が自由に生き、残りの生涯を平穏に暮らして欲しいと心の底から願っている。
一等航海士ダルミールの記録First Mate Dalmir’s Log
〈22日前〉
ヴィべク・シティを朝の潮にて出立、サドリス・モラへ向かう。出航にちょうどいい朝だ。
〈18日前〉
サドリス・モラの港に到着し、ボロ雑巾の貨物を引き受けた。
〈15日前〉
ファイアウォッチで客を乗せた。ファラム司教とその側近で、沈黙の誓いを守っている。妙な集団で、全員傷跡を身に帯びている。これは過去に天然痘か何かにかかった印だ。聖堂の者でこういうのは見たことがない。それに彼らは大量の貨物を抱えていた。中で何かが死んでいるみたいな臭いのする木箱だ。船室に臭いが移らなければいいが。
〈11日前〉
荒れた海の中、テルヴァンニ半島の北の岬を周回した。今日は乗組員の半分ほどが体調を崩して動けなかった。司教と側近たちは甲板下から動かない。数人が船室にいるのさえ見た。
〈4日前〉
ネクロムまであと3日。乗組員はスキーヴァーに苦情を言っている。船室に何かの感染が起きているに違いない。おそらく司教が持ち込んだあの木箱と関係しているのだろう。中身を確認に行こう。そうしたら、ネクロムに到着するまでは閉じ込めておく。
隠された一族の指示Hidden Kindred Instructions
我が同胞たる一族よ、
我らが栄光ある教団の卓越せし病の主として、私はこの指示へ厳密に従うよう命じる。疫病の王の道具をファイアウォッチまで運び、港で私と合流せよ。ネクロムへの旅は商船ストームウィングに乗って遂行する。
病の聖なる瘴気が込められた小瓶は注意深く密閉せよ。ネクロポリスの誤れるモンクたちに分け与えるまで、ぺライトの息吹が薄められないようにすることが肝心だ。
私はネクロムで必要になるローブと頭巾を持っている。私は聖堂の司教と偽り、お前たちは私の補佐となる。もうすぐ邪魔されることなくネクロポリスを探り、目当てのものを見つけられる。
ぺライトと隠された一族の栄光のために!
ブライトクラウン
運命論理学に対する批評Commentary on Fate Dialectal
[エリドリナ・ナスリンによるアザンダーの論文の分析は簡潔かつ苛烈で、たったの数ページで効率的に論じつくされている]
結論として、私の弟子の思想は方向性を誤り誤解に満ちているが、明らかな魅力もある。アザンダーの学識は完全に要点を外しているが、興味深く魅力的に概念を表現している。この仕事をシャド・アツーラの研究資料を用いてさらに発展させることは即刻却下されるが、私はアザンダー・アルサイビアデスが独自に学術研究を続けることを応援したい。
時間と経験、および実践的な研究技法の指導があれば、おそらく彼はこれから先、素晴らしい魔術師、研究者になれるだろう。
エリドリナ・ナスリン、シャド・アツーラ学究兼神秘学顧問
我らが貧弱な同盟者Our Puny Allies
向こう見ずなリガート 著
スカルド王ジョルンは言いました。「リガート、我らが貧弱な同盟者ダークエルフについて書いてくれ。モロウウィンドでの外交任務の最中に彼らについて学んだことを、皆に伝えるんだ」
リガートは答えました。「わかりました、陛下。どうしてもとおっしゃるなら」。スカルド王ジョルンにはいつもそのように言わなければならないからです。
さて、リガートは色々なことができますが、物書きはできません。私は王のように詩人ではないのです。あの勇敢なスクリブの本の著者のように、作り話をすることもできません。あの勇敢なスクリブの物語は大好きです!
リガートはただの大きな使節で、素晴らしいノルド文化交流の一員です。文化を広める者としての役目を通じて、私は同盟の絆を強める助けをしています。特に強大なスカイリムのノルドと、貧弱な、いやつまり小さな、あるいはそれほど大きくないダークエルフとの絆を。あるいはダンマーでしょうか。彼らはこちらの名称を好みます。多分そうです。リガートは何を書いていたんでしたっけ?
おお、そうだ!思い出しました!我らが貧弱な――いや、小さな――同盟者!アカヴィリが北方を侵略した時、彼らは大きな助けになってくれました。小さなダークエルフは奴らを叩きのめすのに力を貸してくれたのです。我らノルドに助けが必要だったわけではありません。まったく不要でした。しかし我々は戦いに加わればあの小さな尖った耳も喜ぶだろうと思ったのです。そうして我らの同盟が生まれたのです。エボンハート・パクトが。リガートは別の名称を提案したのですが、5つ目の案を出した時、ジョルン王は私を追いだしたのです。
他にリガートは何を言いましょうか?ダークエルフは時に偉そうで傲慢で、気取った服を好みます。しかしあんな貧弱な民にしてはよく戦います。それと、リガートは彼らの飲み物はかなり美味だと思いました。しかしあらゆるものに虫やキノコが少々入りすぎている気がします。
我らダンマーの遺産Our Dunmer Heritage
第二紀第330年、誓約者志願者モルンシュ・バラムによるレドラン家のための要約
他のエルフおよび人間にダークエルフとして知られる、ダンマー民族の内在的優越性を研究し説明する機会を与えられたことを、レドラン家の代表者一同に感謝する。
ダンマーは神話の島アルメリスからの最初の植民者、最初の民アルドマーの直接の子孫である。高き民アルトマーはその子孫であるが、このエルフたちはそれ以来先人の道を外れていった。他の多くの集団はいわゆる古代の民、野生のエルフ、シーエルフ、ドワーフ、オークといった民族から派生した。しかしダンマー民族の祖先であるチャイマーだけが、アルドマー文化に忠実なまま留まった。
チャイマーは巡礼者ヴェロスに率いられて退廃的なアルトマーをサマーセットに残して去り、モロウウィンド北東の端に住み着いた。そこで彼らの力は花開き、やがてドワーフと裏切りのダゴス家と争うようになった。両者は戦い、伝統的なチャイマーの家が勝利したものの、彼らは永遠にダンマーへ変貌を遂げた。しかしこの事態を通しても、我らが民は全員先人たちの規範と真理に忠実なままに留まったので、真にアルドマーの子と呼びうる存在なのである。
我々が維持した伝統のうち最初のものは、古代人から我らの家系や族長に至るまでの先人崇拝である。貴族の古代墓地であれ、ネクロムの偉大なるネクロポリスの墓地であれ、我らダークエルフは過去の霊魂を崇拝し、その導きを求め続けている。残存している名家はその血統をヴェロスその人にまで辿り直すことができ、それぞれの先人は大切にされ敬意を払われている。
第二の伝統は家族の強さである。アルドマーの古代文書や芸術の大半は失われているが、彼らの習わしが我々に類似したものだったということは自信を持って言える。家族の統一が最重要であり、最も力ある最年長の者がすべてを統治する。家族には個別主義的な側面もあり、小さな共同体では力の劣る家族と協力することもあれば、名家の庇護を求めることもある。このようにして、ダンマーは先人たちとのつながりを保ち、また同時代の人々から力を得ているのである。
伝統の第三の柱は、確立され認知された社会的秩序を中心としたものである。アルドマーには貧民と王侯貴族がいたが、ダンマーの名家はそれを洗練させ、安定した社会体制へと築き上げた。地位の名称は名家によって異なるが、最も一般的な位に誓約者と家臣がいる点では共通している。また与えられた地位とは無関係に、テルヴァンニ家の最も貧相な者でも位を昇りつめることは可能であり、才能と実力のある者は相応の待遇を受けられる。社会階層の中で自分の位置を知ることは、我々に所属意識と仲間意識を与えてくれる。
いくつもの時代を通じて、ダンマーは新たな土地に適応しつつも、我らが民の核心となる理念を維持してきた。アッシュランダーのように野蛮に近い状態に堕落した者もいるが、名家、特にレドラン家が先人の霊魂への献身を揺るがせたことは一度もない。我々は先人の助言を聞き入れ、その偉大なる伝統を引き継ぐことで彼らを称えている。このように、我々はアルドマー文化の真の継承者なのである。
我らはパクトを拒否するWe Reject the Pact
慈愛の母と主、そして謎の父に挨拶と感謝、深い尊敬の念を捧げつつ、以下に署名する我々はモロウウィンドの他の名家と共に、エボンハート・パクトへ加入するという申し出を即刻拒否する。
テルヴァンニ家は独立を保つ。
威厳ある我らの政体は、ヴァーデンフェルが若かった頃以来、力と優越の牙城であり続けて来た。アンドゥルの蔵書庫の発掘や焼灼の分裂、第一公会議戦争、レッドマウンテンの戦い、そして忌み嫌われたドゥエマーの消失以前から、我々は自らの評議会を保ち、自らの道を選び取ってきた。
ストンフォール東とデシャーン北のテルヴァンニの地はこれからも評議会の信任によって統治され、パクトの勢力がこれらの領地に入ろうとすれば、速やかで激しい反撃に出会うだろう。
この信書に付帯して、古代都市ネクロムに関する交易、防衛、海上航路、租税、使節権、旅行規定に関する我々の提案を要約した写本を送付する。
弁護士ギルドの代表者たちが連絡を取るだろう。
アークマギスター、ネロス・オセリ
マスター・バロ、ミストレス・ドラサ、賢者メルン(欠席)、賢者ゴスレン、マスター・フィルス、賢者セラナ、マスター・マレナ、ミストレス・アリス、賢者ギヴィン、賢者シルドレス
顧問ディヴァイス・ファー
「力強い意志を表現することが、真の栄誉を先人に与える」
改革者からの手紙Letter from the Reformer
デレドリアン、
作戦に歓迎する!レイニラとの過去の関係はもちろん許そう。私の言うようにすれば、ハーン・オレンヴィへの負債はすぐに消え去るだろう。
私の傭兵を数人用意して、ネクロムの外で君と待ち合わせるようにしてある。そこから彼らをレイニラの野営地に案内してくれ。要求どおり、彼女の組織について名前や追加の情報を渡してくれれば、それに応じて追加の金を払おう。あの女はずっと頭痛の種になっていたのでね。
ディミクはまだ私の役に立つ。可能ならば、あの女は生かしておけ。
しかし、夜のごとく鋭き者が現れたら、すべての指示を放棄して彼の捕獲を優先しろ。
彼は奇妙な運命によって、レイニラの跡を追っている。彼女がいるところには、あの男もいる可能性がある。君は夜のごとく鋭き者に仕返しをしたいだろうが、どうか修復不可能になるまで傷つけないでもらいたい。生かして彼を連れて来るんだ。そうすれば約束した額の3倍を払おう。
共に働けて光栄だ、
改革者
改革者からの別の手紙Another Letter from the Reformer
フェデロ!
その傭兵と直接話そう。レイニラの仕事から引き抜くんだ。だが支払いを約束しろ。そうすれば疑われずにお前の招集に応じてくれるだろう?私よりこの手紙のほうが先に着くだろうが、その夜のごとく鋭き者には私が来ることは秘密にしておいてくれ。
彼が私を覚えているか考えてしまう。彼の鱗はまだあの薄暗い真夜中の青色をしているだろうか。彼のとさかにはまだ黒い羽根がきらめいているだろうか。彼の中の変わらない部分が、再び私に所有されることを求めている。私にはわかるんだ。でなければ、私が知っている唯一の名を使い続けているはずがないだろう?
彼には私のことがわかるはずだ。いや、わかってもらう。私を見て、私の名を知り、私の絶え間ない試みが彼の独特の性質を飼い馴らすことを思い出す。私と二度目の出会いを遂げる時、彼がどんな顔をするのか楽しみだ。
お前の力を尽くして今回の出会いを準備してくれ、フェデロ。そうすればお前が望むとおりの報酬をくれてやる。
近いうちに、
ソンディヴェル・ウルレス
賢者メルン・レンディスへの手紙Letter to Magister Meln Rendys
賢者メルン・レンディス、
テル・バロのマスター、シェルレニ・バロの指示により、この手紙を直接貴殿に送ります。貴殿はまだ日々の仕事を担当させる代弁者を任命していないためです。
マスター・シェルレニは貴殿の塔テル・レンディスにて、明日の日の出の時刻に貴殿との対話を要請しています。今回、彼女はこの数年間我々相互の交流を乱してきた敵意に対し、ついに終止符を打つ提案を示す心づもりです。
マスター・シェルレニは自分の意図がテルヴァンニ家の古き良き伝統に合致し、また自分が賢者の地位を受けるにふさわしい人物であることを示したいと望んでおり、この点で貴殿の支援を希望しています。
最後に、マスター・シェルレニは貴殿の所有しているあるアイテムを交換、購入するための交渉の機会を望んでいます。「苦しめる目」という古代の書です。貴殿に使い道はなくても、マスター・シェルレニにとってはとても重要なものです。
マスター・シェルレニは今回の件を解決するため、明朝、貴殿の塔に到着する予定です。
マスター・シェルレニ・バロの代弁者
ヴァブドル
アルド・イスラにおけるマスター評議会
残された者のための飲み物Beverages for the Bereaved
ネクロムの喪中の人々は酒で悲しみを紛らわすことも、腰のフラスコからフリンを啜って我慢することも不要である。以下に記す飲み物は、より手間がかかるものの、先人を忘れないために必要な努力を示しつつ、逝去の苦痛を和らげるための完璧な機会を提供してくれる。
* * *
スパイス入りスジャンマのミルク酒
このコショウの効いたミルク酒は体を中から温め、すぐに死者の最も甘美な記憶を思い出させてくれるだろう。ネクロムの外では、半分の量のハチミツ酒を3倍の水で薄めたものが、止むを得ない場合にスジャンマの代替品となる。
グアルの乳 2
水 1
中サイズのクワマーの卵 1個
スジャンマ 6
アニス スプーン1杯
スライスしたショウガ スプーン3杯
カルダモン スプーン1杯
フェンネルシード スプーン1/2杯
ファイアペタル 1個
虚無の塩 1つまみ
グアルの乳とクワマーの卵を混ぜて泡立てる。水で薄め、沸騰するまで加熱する。軽く煮立つ程度に火を弱め、残りの材料を加える。香りが立つまで浸ける。スパイスを漉し、熱々の状態で提供するか、冷ましてスプーンで提供する。
* * *
フリン・フィズ
この元気の出る調合薬は、冷やして出すのが一番いい。氷なしで作った場合、最低限薄めるためにスプーン1杯の水を加えること。
フリン 2
クワマーの卵(小)の卵白 1個分
マーシュメロウリキュール スプーン1杯
ロータスシロップ スプーン1杯
ベルベズジュース スプーン1杯
氷か冷凍石の入ったシェイカーに材料を入れて混ぜる。泡立つまで混ぜたら漉して氷または石を捨て、液体の大部分が泡になるまで混ぜ続ける。砂糖漬けのコンベリーを飾る。縁にムーンシュガーをまぶしたグラスで提供すると、さらに高級感が増す。
* * *
沼の泥
結果的には似たような風味になるが、このレシピに実際の泥は使われていない!この飲み物をまったく不快と感じる者もいるが、多くの喪中の者は、これの意外性を歓迎してくれる。
グアルの乳 1
グリーフ 1
レモン汁 1
グリーフとレモン汁を混ぜ、グアルの乳とは混ぜないようにしておく。
味わい方:グアルの乳を口に含み、口をほぼ満たす。だが飲み込まないこと。頭を後ろに傾け、グリーフとレモン汁を混ぜたものを口が一杯になるまで加える。口を閉じ、液体が凝固するまで頭を前後に振る。どこまで続ければいいかは、泥の塊を飲み込んでいるような感覚がするのでわかる。
死者の宴、第一章A Feast Among the Dead, Chapter I
高名な旅行者セヴェリア・クアシット 著
ダンマーの故郷への旅は回りくどい道を通る羽目になったが、ついにヴォス行きの商船に席を確保し、セドリス・モラに向かうことができた。そこからはシルトストライダーを駆り、狭海を渡ってアルド・イスラへ行き(南中の月と収穫の月の風がない日にのみ取られる航路だ。それ以外の時に渡航するのは危険すぎるとされている)、最後にネクロムへ向かう巡礼の列に加わればよい。
ネクロム!「死者の街」は逆説的にも適切な異名であると同時に、まったくそぐわない名称でもある。時によっては、この街が霊廟のような場所であることは私も認める。静寂と厳粛な反省に満たされた場所である。魂にのしかかり、肺から嘆きの声を絞り出させるような重厚な雰囲気がある。しかし別の時には動きが飛び交っている――ここではすべての名家のダークエルフや種々の人々が等しく同胞となり、交流し、取引し、騙し、食事を味わう機会を捉えている。ここではインドリルとレドランも、十数世代ほど前に生きた祖先の血を共有していることを知って家の旗を収める。彼らは共にその祖先を称え、安らかな休息を願うのである。
私は心からの願いが叶って、そうした墓前での会合の一つに招待してもらえた。寄宿学校で寝台を共にした者――2人で1台だったのだ、まったく!――が、幸運にも清潔でノミも持っていない、恰幅がよく気さくな織物商だった。彼はエボンハートの西の辺りの出身で、彼の親族数十人の先例にならって、ずっと前に死んだ遠縁の親類を訪ねるためにネクロムに来たそうだ(正直に告白するが、彼が曾祖母の三人目のいとこと、三人目のいとこの曾祖母の違いを説明し始めた時、私の目はぼやけていた)。
この家族の会合の目的である死者の名は、あまりにも多くのHとLから成っており、聞き取ることができなかった。この男はかつて大いに名を知られた料理人であり、ヴィべクのハイ・フェインの食堂に60年近くも務めていたという。彼の死は200年ほども前のことである。私に理解できた限り、多くの先人の霊魂はもっと短期間で定命の次元を去ることを望むらしい。しかし私のホストは懇切丁寧に、この死者は子孫のうちの誰かが自分の料理人としての遺産を受け継ぐに足る能力を証明するまで、定命の次元を手放したくないのだと説明してくれた。私は興味を引かれた。引かれない者がいるだろうか?そして街に夜が落ちかかり始め、長い影が骨のように白い石を覆う頃、私たちはネクロポリスと、その地下にある古代の宝物庫へと出発した。
死者の宴、第二章A Feast Among the Dead, Chapter II
高名な旅行者セヴェリア・クアシット 著
私たちは二十人以上おり、各人が何らかの物品を携えていた(ある年長の女性が私に目をやり、リネンの束を渡してくれた。私にはこれを担う「力がある」と言って)。多くの笑い声や世間話が交わされる中、一同はネクロムの暗く湿った、時にはほとんど真っ暗な地下墓地へと行進した。正直に認めるが、明かりのない時間は危険を感じた。私たちはやがて緑青で緑がかった小さな金属の扉のある、通路の終端にたどり着いた。一行の中で最年長の、賢そうな節くれだったダンマーの老人が、服の内側に手を入れて鍵を取り出した。彼はそれを扉に差し込んだ。
小さな扉の向こうには大きな部屋が広がっていた。陽光は入ってこなかったが、ダークエルフの大きな地所でよく見られる、手入れの行き届いた台所だ。湧き水の小さな噴水が桶に集められ、同じ水の排水溝が台所で出たゴミを街の地下の暗い穴へと運んでいる。私のホストたちはオイルランプを灯しながら、死者は最期の数年間に非常な労力を払って、自分の霊廟に私が見たような様々な設備を導入するよう取り計らったのだと話してくれた。大きな料理用の火は、死者の定命の器が火葬に付された焼却場でもあることがわかった。彼の灰を集めた小さな壺を取り、大きな石のテーブルの頂点に置いた。
少し経つと、部屋は暖かく快適になった。運ばれてきた荷物の束は、私の高級リネンも含めて開封され、部屋を豪華な食事に相応しい広間へと変えるため用いられた。ホストたちが墓に持ち寄った食事を調理し始めると、素晴らしい香りが漂ってきた。年少のある子孫が小さなグラスを乗せたトレイを持って忙しく駆け回った。私は喜んで酒を味わった。スパイス入りのスジャンマが、最も私の口に合った。
私たちは間もなく、食事の用意ができたので着席するようにと言われた。ホストたちは全員首を垂れて祈り、栄誉ある祖先の霊魂に姿を現すことを、そしてこの食事のうちに満足できるものを見出し、定命の次元をついに未練なく離れてくれることを願った。
壺が揺れ、テーブルが少し震えたと思うと、私たちの前に霊が現れた。死者はテーブルの上に光を放っていた――堂々とした目と乱れた髪の、驚くほどハンサムなダークエルフだった。この霊魂は厳粛な言葉で彼の家族と、家族が用意した食事の存在を認めた。彼は食事の開始を要求した。これ以上待てば、食事は墓のように冷たくなってしまうだろうと彼は主張した。
家族はそれぞれコース料理をテーブルに運び、そのたび先人の霊魂にそれぞれの料理を吟味してもらうため立ち止まった。私はこれに好奇心をそそられた――幽霊は食事をするのか?そして提示されたそれぞれの食事について多くのメモを書き記した。
死者の宴、第三章A Feast Among the Dead, Chapter III
高名な旅行者セヴェリア・クアシット 著
食事の最初のコースはヴィベク・シティのカントン聖堂で聖職者が食べるような、ウィックウィートのクラッカー三種だった。それぞれのクラッカーには違うトッピングが配されていた。慈悲の母にはホイップしたグアルミルクのガナッシュ、戦詩人にはビターグラスの棘、ラードのような油は聞いたところによると、秘密の父の機械油を表しているという。
食欲が刺激されたところで、第二のコースは酸味の効いたグレービーソースに浸った小さな団子が出された。団子は糖度を吟味されて選ばれたアッシュヤムを焼いて皮をむき、ピューレ状にしたものから作られていた。そこから、ティアー周辺の土地で育つらしいサルトリスを発酵させたものを砕いて小麦粉と混ぜ、それをアッシュヤムのピューレに加えてグレービーで煮込む。甘い団子と酸っぱいソースはデザートとして美味だが、全体としては変わり種の第二コースと言える。
第三コースはサラダだった。それぞれの皿にはフェンネルと思われるものが積み上げられていた。私はやや残念に思ったが、判断が早かったことを思い知らされた。あるホストがすぐにこの貧相な野菜の皿に、かなり辛いソースをかけたのである。このソースは主にオイルをベースとした煎じ汁のようだった。というのも壺の底からすくった部分にはいくつもの小さな、シラミに似た殻状のものが入っていたからだ。私はまったく無邪気に、この断片は唐辛子の残骸かと尋ねた。私はサイビアデスに唐辛子を使ったオイルをかけるのを見たことがあり、この方法は他のものよりずっと食欲をそそると思ったのだ。私の質問に答えは返ってこなかった。
第四、第五、第六のコースは同時に運ばれてきた。これはトリビュナルを称えるためであり、各コースはそれぞれの生き神に捧げられ、どれかが他よりも優先されるということはない(お腹の中でも、という話である)。彼らはそれぞれ独自の素晴らしさを持っているのである。
私が味わった最初の料理は、皿に盛られた蒸しクワマー・スクリブだった。これはそれぞれの客人に提供されたが、不思議な料理の錬金術により、この生物の硬い甲殻はゼリーのように柔らかく調理されていた。聞いた話では、これを調理する際にはレッドマウンテンの残積層から採取した溶液でスクリブを湯がく工程があるという。私のホストたちはこともなげに、甲殻をこれほど柔らかくするために、スクリブは1匹ずつその溶液で十回以上も湯がいていると述べた。また、彼らはこの工程がスクリブにとって凄まじい苦痛を伴うものであることを請け合った。その話には複雑な気分にさせられたが、これによって肉がさらに甘みを増すらしい。
二つ目の料理にはいくつかのカゴーティの胸腺が使われていた。これは私が名称を間違えただけなのだが、何度も言ってもらったにもかかわらず、この料理の名前をどうしても聞き取れなかったのだ。とにかく、羊のような動物の胸腺と同じく、私たちはカゴーティの複数の異なる腺を提供された。それぞれの腺には戦詩人の流儀にならって一つの徳があてがわれた。この徳もまた、正確に思い出せないのだが、これに関してはダークエルフ言語の複雑さよりも、ダンマーのうぬぼれた生き神に対する私の嫌悪感によるものである。
最後の料理はむしろ儀礼的な性格のものであるという印象を受けた。殺されて間もないウナギが切り身にされ、私たちの目の前で、発酵させたマーシュメロウを主材料としたキャラメル色のタレが入った小さな容器に浸される。私が見ていると、ホストたちは注意深く指をこのタレに浸し、手から液体をこぼしてウナギへと流れ落ちるようにした。ウナギが身をよじる光景といったら!ウナギはまるでまだ生きているかのように震え、身をくねらせた(ただし頭がなかったので死んでいることは確実だった)。ウナギの自然に反する動きはすぐに収まり、不思議なことにウナギの肉にはタレが染み込んでいた。これがどうしてソーサ・シルを称えることになるのかはよく理解できなかった。おそらく文化的な意味があるのだろう。
死者の宴、第四章A Feast Among the Dead, Chapter IV
高名な旅行者セヴェリア・クアシット 著
食事の主要な部分が過ぎたため、私のホストたちは先人の霊魂に向き直った。彼は私たちの食事を厳格な静寂さで見やった。彼の目がテーブルからテーブルへと移るのが見えた。後で寝台の仲間に教えてもらったのだが、彼は目をやるだけでそれぞれの料理がどのように調理されたのかを見極めていたのだという。それが料理における彼の特技だったのだ!
霊魂が言葉を発し始めると、部屋には沈黙が訪れた。彼は集まった親族たちに、自分はこの部屋で遺骸を焼かれて以来、40回以上も饗宴を捧げられてきたと述べた。その間、彼の基準に合致する料理は全くなかった。多くの料理が惜しいところまで行ったが、十分ではなかった。
それはこの瞬間までのことだ。霊魂の眉がほとんどわからないくらいわずかに震えた。彼は微かに声を震わせながら、この夜に提供された料理それぞれの美点を称賛した。残るは卵のカスタードで作り、ヴェルムをトッピングした伝統的なタルトで食事を締めくくるだけ。タルトがテーブルに運ばれてきた時、集まった会食者たちの期待は肌で感じられるほどだった。集まった親族の全員が先人の最終的な評価を、そして願わくば定命の次元からの永遠の別離を待ち受けた。
タルトはテーブルに置かれ、重い銅製の覆いが外された。先人の唇がわずかに上ずったことは、すでに十分な評価だった。テーブルの近い位置にいた親族たちの間で感嘆の声が上がり、それは私のホストたち全員に広がった。タルトは完璧だった。
その夜の残りに起きたことは、ほとんど思い出せないくらいである。私たちは完璧な饗宴を祝ってあまりに飲みすぎたため、思い出そうとするだけでまだ頭が痛むほどだ。だがあの厳粛な出来事を思い返すと、私の胸は高鳴る。そしてあの死者たちの饗宴を思うと、私の腹は今でも鳴ってしまう。
死者の番人への加入についてOn Joining the Keepers of the Dead
新加入者に向けたパンフレット
ネクロムのネクロポリス、イルヴェル修道院長 著
我々は死者の番人への加入について尋ねる手紙を数十通受け取っている。規則として、我々は加入予定の者を拒絶することはない。先人を尊敬し、我らの神聖なる使命に向いていると感じるすべてのダークエルフなら誰でも、ネクロムに来て修道院生活を始められる。実際、相当数の他種族の者たちも、先人が遠く離れた地に眠っているとはいえ、我々の仲間に加わっている。彼らはここで必要とされていると感じているのだ。
我らの組織は千年近くも前に創設された。ダードリン副院長はネクロムの古い墓地の上に修道院を築き上げた。彼は我らが従うべき規則と、我らが使命を行う際に守るべき誓いを定めた。これだけの年月を経た今も、我々は創設者の教えに従っている。遠い昔に始められ、先人の意思に適えば自身の生が終わった後も長く続くであろう、神聖なる見守りの役目に加わるといい。
我らの組織のモンクの一日は、朝と正午、夕方の礼拝によって過ぎる。それらの間に炊事や洗濯、生活空間の維持といった、家事や共同体の仕事を与えられる。もちろん、我々は毎日先人の墓の世話をする。夜の間中、我々は墓地で見張りを行い、先人たちの眠りを妨げる悪しき事態が起こらないよう取り計らう。最後に、我々は助けを求める訪問者にいつでも導きと助言を与える。義務と反省の生活だが、深く達成感のある生活だ。
さて、ここからが難しい部分だ。死者の番人の中で仕えた長い年月の間、私は多くの新人が入っては出ていくのを見てきた。修道院生活が誰にでも向いているわけではない。番人になりたいと願う多くの者がネクロムにやって来て我らのローブをまとうが、数ヶ月後にはその生活が自分には合わないと気づくのだ。
私はこのように挫折した新人たちが、ほぼ常にある一点で共通していることに気づいた。彼らは何か他の物事から逃げるために我々のもとへやって来た。番人になることは、傷ついた心を癒してくれない。両親との関係を修復してくれないし、過去を捨て去る手段や、己自身の霊魂に宿る暗闇を克服する手段を与えてもくれない。この使命をやり遂げるためには、ただ以前の生活を否定するだけではなく、死者の番人の生活を肯定しなければならない。
よく考えて選択して欲しい。自分の心に聞いて。それでもまだ番人の誓いを受け入れる気があるのなら、我々はネクロムで待っている。
修道院長の命令により閉鎖しますClosed By Order of the Abbot
さらなる通知があるまで、ネクロムのネクロポリスは閉鎖します。
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
先人への訪問は準備が整い次第、速やかに再開いたします。
小動物の危険:テルヴァンニ半島Critter Dangers: Telvanni Peninsula
テル・ヴァラノ 著
塔と書物とネクロムに向かう果てしない行列は、ただ一つのことを示している。お前はテルヴァンニの領域にいるのだ。足の踏み場には気をつけろ。お前がアッシュランドの沿岸にいようと、死者の街の裏路地を歩いていようと関係ない。ここでは、すべてのものがお前を殺したがっている。
私の助言は「殺されるな」だ。ここにテルヴァンニ低地の動物についてのメモをいくつか記しておいた。使うか使わないかは任せよう。
おそらく殺そうとしてこない動物
ネクロム地域では敵対的でない獣でさえ、潜在的な脅威である。可愛いコヒョウグアルは別だ。あれは三大神が穏やかな魂と優しい心を持つ証拠だ。だが、テルヴァンニの領地の大半は野性的で未開拓に見えるが、それは魔道師たちがそう思わせたがっているのである。数百年の間、賢者とその手下たちはこの地域を開拓し、岩だらけの尖塔や切り立った巨大なキノコを育て、自分たち好みの景観を形作ってきたのだ。風景は芸術だということを理解してもらいたい。
それゆえ、その辺りを徘徊する張り出した岩の下を歩く穏やかなコヒョウグアルや、波の中を走り回るヴァルドヴァーク、運河の橋を渡る時頭上にゆったりと漂うネッチといった獣は、お前のためにいるのではない。テルヴァンニ家の貴族やマスターたちのものだ。そして魔道師の所有物へ手を出す者には災いが降りかかる。
おまけ:踏み潰す獣には注意を払え。でなければ火の玉が飛んできて酷い目に遭う。だがヴァルドヴァークは撫でていい。可愛いからな。
殺しにくるかもしれない動物
賢者の力をもってしても、一部の獣はあまりに強情か、有用すぎるため半島から追いだされずにいる。クワマー鉱山は我らダークエルフが住む場所ならどこでも大量に見られる。ネクロム周辺地域もまた例外ではない。ストンフォール東で営まれる商業の大半と同様に、この大都市の合併会社も大きな獣を世話している。地方の鉱山産のスクリブジャーキーには他の場所では見られないスパイスが使われているという話だが、私には何とも言えない。私はああいうものが大嫌いだ。
それに対し、クワマーの卵は大好きだ。半島の鉱山から産出されるものは間違いなく、微かなコショウの風味が効いており、スカトルや葉物野菜、練り団子によく合う。練り団子とは、ノルドが作る団子を私なりにアレンジしたものである。
もちろんそれはよいのだが、クワマー・クィーンとその子供たちの間に立たないことだ。賢者たちはクワマー合併会社に大量のゴールドを投資しているため、クワマーの巣は大陸中の他のどんな鉱山よりもこき使われている。下層階級のテルヴァンニ魔術師は召使をぞんざいに扱うと思うだろう。相手が家畜の場合にどうなるか、一度見てみるといい。
一方で、この虫だらけの土地では、ニックス・オックスが王様だ。この巨大な虫は他のダークエルフの国、つまりパクトの国でも利用されているが、それはテルヴァンニのお家芸である奴隷労働の代わりとしてだ。ネクロム出身のある集団が、デシャーンやエボンハート、ヴィベク・シティで急成長を遂げていたニックス・オックス事業を半島に宣伝しようと試みたが、受け入れる者は少なかった。数人の賢者が領地の世話をさせるために購入したが、哀れなニックス・リマは脚を折ってしまい、彼らは不満を述べた。
事業が頓挫した時、忙しい市場の売り手たちはもっと栄えている集落にニックス・オックスを連れ戻さず、ただその場に放してしまった。だから半島中にあのデカブツがうろついてる。自然の奥深くで小さな虫の王国を築いているのさ。
おまけ:クワマー鉱山は二重に危険な場所になりつつある。衛兵たちは怒れる魔道師と、限界まで産卵させられているクィーンのどちらに殺されるか不安を抱えている。また、半島のニックス・オックスはすべて失敗した投機事業の結果野生化したものだ。避けたほうが賢明だろう。
確実に殺しにくる動物
私はネクロム付近の大きな怪物に哀れみさえ感じそうになる。変なことだろうか?オーガやトロールに共感するのは奇妙か?いや、おかしいのは私だと言われ続けているが、まだ気持ちは変わらない。「だがテル・ヴェラノよ、なぜお前はあんな粗野で野蛮な盗賊どもに心を動かされたんだ?」とお前は言うだろう。いい質問だ。その口を閉じてよく聞け。
テルヴァンニ家最高のある賢者――報復が怖いので名前は挙げないが――が、大陸中から野獣や害獣を集めてきらびやかな大展覧所を作ろうと思いついた。その賢者はどうやら戦争が始まる前、休暇でサマーセット諸島に行って、そこの豪勢で世話の行き届いた動物園に感銘を受けたらしい。実際、その賢者は自分の魔法の空間を削り出せば、ハイエルフの施設よりもいいものができると思った。
それが何を意味してるのか、テル・ヴェラノに聞かないでもらいたい。私は聞いた話を繰り返しているだけだ。手短に言うと、その神秘の動物園はデシャーンの地方芸人一座が最後にやった演劇「ヴィべクの三十六誓約」よりも酷い結果に終わった。そして今ではオーガやトロールの小さな部族たちが、同族から孤立して、その賢者の代弁者に雇われた狩人たちから逃げつつ、半島の高地を巡回している。狩人たちは主人に恥をかかせないようにするためだけに、そいつらを皆殺しにするつもりだ。
おまけ:テルヴァンニ半島のような隔離された楽園でさえ、自然は自らの道を進む。暗い谷間や岩だらけの洞窟に入る時は注意しろ。それとから醜悪なかつらを被ったアルマレクシアが舞台上で暑苦しい逢瀬を繰り返すのを延々と見せられたくなかったら、今度デシャーンを訪れる時は地元の芸人一座よりもマシな娯楽を探すことだ。
新たな教団の出現A New Cult Arises
オーディネーター・キラオによる報告
知ってのとおり、我らトリビュナルのオーディネーターは異端を軽く受け止めることはない。新たなデイドラ教団がテルヴァンニ半島に地歩を築こうとしているという知らせが我々に届いた時、状況を調査するため私が即座に派遣された。言うまでもなく、テルヴァンニ家の支配下にある土地で行動するのは最良の条件でも容易なことではないが、最近のテルヴァンニのマスターたちは何かの理由により、普段以上に非協力的になっている。
数日間の足踏みが続いた後、私はついにネクロムを調査中にフィルバート・シエンヌというブレトンに出会った。私が何も聞かないうちに、彼は疫病のデイドラ公ぺライトの驚異について私に説教し始めた。彼は私がオーディネーターだとは夢にも思わなかったらしい。オーディネーターの存在さえ理解していなかったかもしれない。私は話を聞き、こちらからも質問してみることにした。彼は喜んで自分の異端信仰について話したからだ。
私はこの男が腫れ物や病気について延々と話すのを聞いた。彼は本気で私を勧誘し、病気とネズミの教団に入るよう説得してきた。口を挟む機会が巡ってきた時、私は彼が噂に聞く新しいデイドラ教団の一員かと尋ねた。
「ああ、隠された一族のことだな」と彼は少し動揺した様子で言った。「あれは二柱の異なるデイドラ公に忠誠を誓う、信者たちの緩い連携みたいなものだ。私の小さな支部、神聖なるスキーヴァーの献身的な信者たちも参加を求められたが、関わらないことにした。まあ、私しかいないんだし、暴力は好まない。人は人さ」
この男の無意味な戯言には混乱させられたが、私はついにこの隠された一族と呼ばれる教団についての有力な詳細を引き出すことができた。彼が言うには、この教団は等しい数のぺライトとヴァルミーナ信者、すなわち病気のデイドラ公と夢のデイドラ公に忠誠を誓う者たちから成っている。ブライトクラウンと名乗る大司教がこの合同勢力を率いており、フィルバートは詳しいことを知らないと言いつつも、教団がこの地域で何か忌まわしいことを計画しているという確信を持っていた。
彼にさらなる質問をし、また異端の罪で逮捕しようとしたが、その前にネクロポリスへ向かう巡礼の行進が突然広場を埋め尽くした。人の波に押されて、私はこのぺライト信者の姿を見失った。フィルバート・シエンヌがトリビュナルにとって大きな脅威になるとは思わないが、隠された一族について彼が話した内容は気にかかる。二柱のデイドラ公信者による合同勢力がテルヴァンニ半島で活動しているというのは、どう考えてもよい兆しではない。
調査を続け、新しい発見があればできる限り速やかに報告する。
聖ヴォリスの寓話Parables of Saint Vorys
夜明け半ばの後、聖ヴォリスは地位を高めたネクロポリスの拡張を監督した。彼の建築家がやってきて、岩が水を浸透させやすいため海をせき止められないと不平を言った。聖ヴォリスは大地の変化を感じたが、動かなかった。そんな中、グルガ・モル・ジルの骨が白い街の周囲で渦を巻き、もろい石となり、空から降って不平を言う者たちを押しつぶした。
「力強い意志を表現することが、真の栄誉を先人に与える」とその聖人は言った。「躊躇なく最期を迎える者たちの犠牲を光栄に思う。忠実なる者は海を押し返すべく生き、ネクロポリスの神聖な部屋に埋葬されるに値するであろう」
そして、故郷から遠くはるか離れた場所で戦死することになると確信しながら、聖ヴォリスはじっとしていられずにネクロムを離れた。従者とエルスウェアへ進軍した。そして最初に到達した村がまったく抵抗を見せないと、彼はそこを跡形もなく破壊することを命じた。
「焼け焦げた地面は、甘い果実を実らせる新たな命を生み出す」と、敬われた聖人は従者に言った。「他者の命によって温められた己を見よ。火をつけなくてはいけないとしても」
そうして猫族は聖ヴォリスのことを恐れ、彼がアネクイナ中に残した火の道から逃げた。ようやく反撃を受けると、彼はこの者たちが一族の中で最も強いと判断し、命を奪う代わりにモロウウィンドへと連れ帰った。
「他者を育み、種を手に送り出さなくてはならない」とその高貴な聖人は従者に言った。「我々の畑で何日も、延々と腰を曲げているところを見るだろう」
組織のメモOrganization Notes
名前:?
(彼らに名前はないとデレドリアンは言っている)
シンボル:2つのランターン
既知の工作員/味方:
– メヴェイ・アンドロス、アルド・イスラ
– ヌエテパ、アルコン
– シリル・カロ、クロップスフォード
– スカイウォッチのテルダンディンド、スカイウォッチ
– 骨を切り裂く者、ギデオン
– カータグ?場所は不明
待機の扉The Waiting Door
聖ヴェロスの大絶望が新たな物語の始まりを告げる
トリビュナルの生みの苦しみ、アズラの慈悲は退けられた
先人は夢から覚め、親族はうわべを崇拝する
ネレヴァルはチャイマーを堕落へ導いた
アズラの呪いに屈せず、ダンマーは歩み続けた
先人たちは昼、日没、夜明けにも呼び出された
新たな司祭が新たな思想をもたらし、待機の扉が求められた
ネクロムの壁の中に死者の街を築いた
生の終わりは霊魂を解放する、それを逃れる者はない
だから、息を吸うたびに先人を称えるがいい
止むを得ぬ時を除き、恩恵を求めぬこと、さもなくば定命者の戦慄が訪れるだろう
ネクロムで死と交流せよ
お前はいずれ死ぬ
お前はいずれ崇拝される
お前は待機の扉を求めるか?
ネクロムの暗い広間のどこにいても、司祭の足音が聞こえる
彼らは訪問者をその先人の家へ迎え入れる
地下墓地をさまようことを恐れるな。お前は孤独ではない
先人と司祭が思い出させてくれる…
生の終わりは霊魂を解放する、それを逃れる者はない
だから、息を吸うたびに先人を称えるがいい
止むを得ぬ時を除き、恩恵を求めぬこと、さもなくば定命者の戦慄が訪れるだろう
ネクロムで死と交流せよ
お前はいずれ死ぬ
お前はいずれ崇拝される
お前は待機の扉を求めるか?
代弁者ヴァブドルの日記Mouth Vabdru’s Journal
〈新しい区切り、その1〉
今日は代弁者サルースと不愉快な会話をした。彼女は自分のマスターの要求を私に伝えてきたのだ。マスター・シェルレニが他のテルヴァンニのマスターにスパイや探知装置を使うのをやめさせろと言ってきた。私はそのような侵害を否定したが、代弁者サルースは私の抗議を一蹴した。
〈その2〉
また面倒が持ち上がった。マスター評議会は新しい準則を設けて、メンバーたちにテルヴァンニ家外部の人間や生物とのあらゆる取引、合意、同盟を開示せよと要求することを考慮しているらしい。この知らせをマスター・シェルレニにどう伝えたものか。
〈その3〉
恐れていたとおり、新たな規則はマスター・シェルレニの私的な取引を暴露するために作られたものだった。私は彼女の否定を同僚たちに伝えた。すると代弁者デルヴィは不信任の投票を呼び掛けたが、私はこれを取り下げさせることに失敗した。マスター・シェルレニは喜ばないだろう。
〈その4〉
アラヴェリスからダスクセイバーの領収書をさらに受け取った。それからブライトクラウンとだけ名乗る、何者かからの奇妙な要求も受け取った。もちろん、支払いはする。マスター・シェルレニはこれらの出費を捻出するに足りるだけの資金を私に任せてくれている。だが、この種々の企みは何のためだろう?それに、なぜマスターはテル・バロの防備を強化したのだろう?新たな結界を解除するには特別な紋章が必要だというが、それは過剰ではないか。
〈その5〉
まだマスター・シェルレニからの返事は来ない。評議会にマスターの代理として何らかの返答をしなければならないが、何と言おう?彼らはこれ以上の否定や遅れを受け入れないだろう。まったく、マスターは日々私の仕事を難しくしてくれる。
〈最新の記述〉
ついに、マスター・シェルレニからの返事が来た!当然ながら、まったく実行できないものだ。マスターはアルド・イスラで同僚たちとの公式聴聞会を要求している。何か恐ろしいことを計画しているのではないだろうか。だが、私はどうすればよい?代弁者として、私はマスターの指示どおりに行動し、彼女の利益を最優先しなければならない。
ああ、今ほど他のマスターと共謀していればよかったと思う瞬間はない!
代弁者ヴァブドルへの手紙Letter to Mouth Vabdru
ヴァブドル、
お前の前回の手紙には失望したと言うしかないわね。代弁者の仕事はアルド・イスラの政治がマスターのより重要な仕事の邪魔にならないようにすることよ。私がライバルたちのくだらない懸念に応答しなければならないとしたら、お前は一体何のためにいるの?
私が何か間違ったことをしたと連中が主張し続けるなら――テルヴァンニの慣習と伝統に従えばそれは不可能なことなのに――会議を開かせればいい。そうなったら、私がライバルたちを完全に始末する。
それまでの間、もっとうまくやりなさい。また私を失望させたら、生きたままお前の皮を剥いで、毛皮の外套に変えてやるわよ。
マスター・シェルレニ・バロ
大魔道師トゥウェルヴェインの布告Archwizard Twelvane’s Decree
魔術は力。それについては皆が同意してくれるでしょう。元素を召喚し、幻影を生み出し、失われたものを再生し、存在するものを破壊し、世界を根本的に変化させる力。これは神々の能力よ。エドラでも、デイドラでも同じ。
それならば、なぜ私たちは自分よりも弱い者と共に生きねばならないのでしょう?私たちの力は、ただ考えるのと大差ない努力で自分の世界を形作ることができる。奴らは錆びたなまくらの道具で変化を引き起こそうとする。私たちは魔術を持たない者たちよりも優れていない?魔術とは、定命の者の歩みにおける明確な進歩でなければ何?
魔術師である私たちは遥かに進んでいる。私たちは権力を持ち、力も強い。私たちは魔法の獣を生み出し、世界の境界を越えた場所から呼び出すことができる。オブリビオンのすべてで最弱の生物、魔術を持たぬ定命の者と共に生きるのは、私たちの力への侮辱でしかない!最下級のデイドラでさえ、魔術を持たぬ定命の者よりも強大で、寿命も長い。
この者はニルンにはびこる弱者たちを間引くため、ある獣を作りだした。そうした連中はニルンの地表からごく短期間で消滅するでしょう。私たちのほうが強い。私たちだけが生き残るに値する。
第三十四説話の尖塔The Spires of the 34th Sermon
注記:この走り書きされた無記名の回想録は、ネクロムの裏路地で濡れてボロボロになった状態で発見された日記である。この記述がいつ記されたのかは不明だが、用いられている言語からするとかなり古いものだろう。街のある見習いが死者の番人から金貨数枚で購入したものであり、私はこれを今月の民話出版物の付録として、後世のために載せておく。この嘆願者の痛切な経験は記憶する価値があると私は思う。真理を信仰のうちに探るすべての者に、長身のパパの加護があらんことを。
ザムシク・アフハラズ、グウィリム大学
* * *
私はネクロムの中庭に立ち、天空に眼差しを向けた。私の目は涙で濡れ、父の灰はまだ私の髪の毛から落ちてくる。彼と私はいつも、あの岩の連なりを驚嘆して眺めていた。あれは現実だったのだろうか?第三十四説話が主張するように、私たちよりも以前にあの怪物がいたというのは?
ここには私のものは何も残っていない。家は背を向けた。母はもうずっと墓地に眠っている。私は安心するべきなのだろう。彼の苦痛が終わりを迎えたことに。彼が母や先人たちと共に立ち、私もまた彼らのそばに来る日を待っていることに。私はまだ彼の拳の骨を持っていた。故郷の祠に加え、我らの尊敬されし死者の殿堂の仲間入りをさせるために。
* * *
フェリーでヴィベク・シティへ。マスターに聞いてみようか。喪中の息子になら答えてくれるだろう。
* * *
央耀に到着。列は長く、立ち続けるのは疲れた。私は快適な枕や、ロウソクのちらつく光、羽の先で搔いてもらうことに慣れていた。財布にあったすべての金貨は施しと、自分や他の告解者たちのための食料、そして特別早くマスターに会わせてくれると請け合った聖職者へと消えた。聖職者の笑顔がひどく明るかったことを覚えている。あの歯のなんと白かったことか。
* * *
施しが断食に移行するまで、どれだけ待ったか思い出せない。ただ祈りたいだけなら、数時間で終わると言われた。いや、質問をしたいのだと私は言った。詩人に作品のことを聞きたい。長くかかるだろう、と言われた。それでもいいと私は言った。欲しいのは真実だ。
* * *
マスターのそばに跪いた時は地耀になっていた。私は言われたとおり頭を下に向けていたが、彼が私の前に座った――いや、浮遊した――時、彼の視線の熱さを感じられた。この瞬間が来るまでどれくらい待ったかはわからないが、ひしゃくから飲んだ水は清潔で冷たかった。ウィックウィートの薄焼きはご馳走のように感じられた。私は話そうとしたが、しゃがれ声しか出てこなかった。マスターの強く深い忍耐心と、時間の経過が感じられた。時間があまりにも少なかった。
私がここに来た目的の言葉を言えるとようやく感じた時、私は頭を上げた。後ろにいた聖職者は誓いの言葉を呟いたが、マスターの表情は変わらなかった。彼らは待っていた。
「王よ、私は遠くから来て、長い間待ちました。私と父親、そして彼の父親とさらにその父親が、ネクロムへ来る者たちのために死者の巻物を書きました。私の家族はもう何世紀も街の中庭に立ち、尖塔を見守ってきました。私たちは第三十四説話のことを考え、それについて話し、復唱しました。私たちはあなたの言葉に動かされたからです。特に、少し前に先人たちに加わった私の父がそうでした。」
これほど長く喋るのは実に久しぶりだったので、息を整えるのに少し時間がかかった。マスターの表情は変わらず、わずかにさえ歪むことなく、私を見つめ続けていた。
「あなたにどうしても伺いたいのです、マスター。私の父と家族のために。そうすれば私はネクロムに帰り、街の人々に何が真実で何が詩なのかを伝えられます。街に高くそびえる尖塔は、グルガ・モル・ジルの骨なのでしょうか?彼がモラグ・バルの息子だったというのは本当でしょうか?あなたが海辺の街で彼と会い、あの獣が海の中に両足で立ち、困った顔を浮かべたというのは?あれがムアトラの最後に自らの意志で死に、今私の故郷の街の下に眠っているというのは?」
母――怪物たちの父、モロウウィンドのマスター、ヴィべク王は座り、あまりに長い間私を見つめていたので、私は自分が死んだのだと思った。自分の体が精神から抜け落ちて、光の冠が部屋を照らしていた松明の周囲から放出された。私は泣いた――
* * *
「しかし、なぜ?なぜそのような言葉をお使いになるのです?あなたを愛する定命の者は、一つの言葉をこれほど求めているのに?」
彼らは首を振った。その小さな動きは私の髪を乱し、扉のそばにいたアークカノンを気絶させた。
「お前は曖昧さのない真理という、存在しないものを求めている。お前は私に、比喩の中に存在する謎を解くことを求めているが、それは私の役目ではない」。そう話すマスターの表情は、ほとんど悲しげと言ってよいものだった。
「灰の娘と息子、一族の最後の者よ、世界のすべての物事がお前に知られるためにあるわけではない。お前が説話を理解しているかどうかなど、説話も私も気にかけない。世界が理路整然としていなければならないとお前に言ったのは誰だ?物事は真か偽でなければならず、その間には何も存在しないと教えたのは?」
* * *
これ以上は一言も聞きたくなかったが、マスターは再び言葉を発した。「お前はこの答えが気に入らないようだな。お前はここに来た時間が無駄だったと感じている。だが生を無駄に過ごすことは不可能だ。生は天空に昇る月の弧ではなく、グアルの喉目がけて飛ぶ矢の軌跡でもない」。彼らがかがみこむと、私は自分の顔に神聖なる息吹を感じた。
彼らが身振りをし、光が部屋を去る前に言った最後の言葉、私が一人に、真の意味で完全に一人になる前に言った言葉は、次のようなものだった。「お前の生は出来事の一つの連鎖、それ以上でもそれ以下でもない。お前がそこから教訓を学ぶか、あるいは学ばないか。その真理はお前が選ぶもの、お前にしか選べないものだ」
泥に覆われた手紙Mud-Covered Letter
トレデシム、
お前の情報は着実に成果を挙げ続けている。我々としては感謝するしかない。浸透の罠計画についてのお前の最近のメッセージは、我らの家の魔術師たちに大きな刺激を与えた。テルヴァンニ家がそのような凄まじい兵器を手にすれば、力の均衡が奴らの有利に傾きすぎる。お前の尽力が我らの地の平和を保証するだろう。
ブリストルバックが要請したように、我々は雀の口座にゴールドを送金しておいた。詮索する者がいたとしても、これでお前から注意が外れる程度には疑念を生じさせるはずだ。
ブリストルバックには支援すべてに感謝していると伝えて欲しい。我々は長く実りある関係を望んでいる。
配達人の許可証Courier’s Permit
魔術師ギルドの命により、本文書は以下の者:
ベルヴィス・サラヴェル
古遺物収集家協会配達人
に対し、魔術師ギルドのメンバーに通行を許されているすべての国、城塞、国境を公正かつ自由に移動するための速やかな許可を与える。
本文書の所持者は、移動中に発生した費用、すなわち通行料や許可費、賄賂、食費、宿泊費、保険料、身代金、賭け事の損失、強盗被害、その他諸々に対する責任を負うことに同意する。
輸送中に古遺物が損失した場合、古遺物のゴールド換算価値が配達人の給料から減算される。
本文書の所持者は魔術師ギルドおよび古遺物収集家協会の利益を代表して行動するが、どちらの組織にも成員として属していない。本文書が発見された場合、最寄りの魔術師ギルドホールに返却されたし。
本文書は所持者が死亡した場合の支払いを約束するものではない。
署名、
ヴァヌス・ガレリオン、魔術師ギルド創設者にしてアークメイジ
斑点の塔The Spotted Towers
この荒れた地と
高くそびえる山の驚異を見た時
灰の砂に感謝した
頼れるキノコを育む地に
キノコの塔は強く高く
皆を愛する我らの王を守る
斑点の守護者、キノコの友
終焉までそびえ続けますように
遠い昔、先人はさまよった
同族に追放されて仕方なく
心と星に導かれ
故郷と呼ぶ高いキノコを見つけた
キノコの塔は強く高く
皆を愛する我らの王を守る
斑点の守護者、キノコの友
終焉までそびえ続けますように
風にも獣にも倒されることがない
豪勢な塔は空を埋め尽くす
キノコの避難所は安全で
いつも目を楽しませる
キノコの塔は強く高く
皆を愛する我らの王を守る
斑点の守護者、キノコの友
終焉までそびえ続けますように
番人の誓いOath of the Keepers
死者の番人は、ネクロムのネクロポリスを維持管理する役割を担う献身的なモンク構成された宗教的教団である。彼らは職務を遂行するために命令や儀式、法令の山のようなリストを使用している。しかしすべては、それぞれの番人が任命を受ける際に交わす誓いから始まる。
* * *
死者の番人の誓いを復唱し、ネクロムのネクロポリスに奉仕することを約束せよ。
死者の声に耳を澄ませるべし。
子孫を常に探し求める先人へと導くべし。
死者の家は規則正しく清掃するべし。
贈り物は死者の墓に置かれるべし。
先人の霊魂の眠りを乱してはならぬ。
その時が来たら、敬意をもって遺骸を取り扱うべし。
死者のために奉仕すべし。
以上すべての義務を、今生きている生と、その後に送る生にかけて守ることを誓う。
副院長のフルクラムThe Prior’s Fulcrum
イルヴェル修道院長 著
ネクロムのネクロポリスと死者の番人の創設者であるダードリン副院長については多くの物語が伝えられている。彼はモロウウィンドのすべての草とキノコを知っており、匂いを嗅ぐだけで錬金術的性質を言うことができた。彼は土や灰、石を調べ、内海と亡霊の海の間にある土地で百の種類を見分けた。彼はネクロムの古代史に異常な関心を示し、77のデイドラの名前を知っていた、など。
さて、大半の定命の者にとって、デイドラと取引するのは危険な試みである。どれだけ善意があっても歪められ、デイドラの隠された目的に利用される。だがダードリン副院長は正義感に溢れると同時に賢いモンクであり、先人の教えに精通し、かつ揺るぎなき信仰を持っていた。彼の心にはデイドラの囁きや誘惑がつけ入る隙はなかった。信仰を鎧としたダードリン副院長は他の定命の者に隠された多くのことを、オブリビオンの力との奇妙な対話を通して学んだのである。
ダードリン副院長はトリビュナルを親密な協力者として、また生き神として頼りにした。ある時点で、ヴィべク王は副院長に褒美として、戦詩人の大冒険の一つに由来する記念品、何かの巨大な獣の牙を渡した。彼はダードリンにデイドラとのつながりを利用して、この想い出の品を強力な遺物に変化させるよう命じた。そうしてダードリンはフルクラム・オブスキュラを考案したのである。文字どおり「秘密の鍵」を意味するこの道具を、彼は忘れられた記憶や、時の中に失われた名前や顔、かつて読まれ、聞かれたがもはや記憶されていない知識を取り戻すために思いついた。死者の秘密でさえ、白日の下に置き直すことができた。
祈りと反省で多くの日々を過ごした後、ダードリンはこの遺物を作るためにデイドラ公の協力を求めることにした。彼は禁断の知識の番人にして秘密の王ハルメアス・モラを召喚した。副院長とハルメアス・モラの間に交わされた取引についての記録は存在しないが、ダードリン副院長はその後間もなく、フルクラム・オブスキュラをヴィべク王に献上した。
ヴィべク王が遺物を使ったかどうか、戦詩人は何も言っていない。だがある時点で彼はこれをダードリンに返還した。副院長は死者の懸案を調停し、不正を正すために遺物を使ったという。彼は殺人事件を解決し、失われた財宝を発見し、遺志を表明する前に死んだ者たちの望みに従って遺産を公正に分配した。ダードリン副院長はネクロムの死者から奪った秘密で利益を得ていたと示唆する者もいる。さらに、フルクラム・オブスキュラは定命の者が使うには危険すぎる道具だと考える者もいる。ダードリン副院長が問いに答えを得るたび、彼はさらなる秘密への飢えを強めていった。最終的に彼は目覚めている時間のすべてを、遺物が彼に明かした内容を調べるために使った。
ダードリン副院長はその人生の最後の数年間、フルクラム・オブスキュラと共に自室へ籠もった。彼が何を見て調べたのか、誰も知らない。彼はついに餓死したと言われている。遺物から離れるのが嫌で、ただの一度も食事をとらなかったのだ。ダードリンの死後、他の死者の番人は誰もこの遺物を受け取ろうとしなかった。遺物がダードリンの力をも超えていたのなら、知力や信仰心で彼に劣る者が身を滅ぼさずにいられるはずはなかった。そのため、番人たちはこの偉大なるモンクの墓の中にフルクラム・オブスキュラを埋葬し、今日でもそのままになっている。
訪問者への案内:テルヴァンニ半島Visitor’s Guide: Telvanni Peninsula
オリン・ヴァルケネル 著
著者注:では、ネクロムのネクロポリスに干渉することを選んだ者がいるわけだ!年老いた私は、多くの親族や仲間、愛するペットまでネクロムに休ませてきた。それが死者の街の外の生活を探究する機会を与えてくれた。あなたの悲しむ心が観光と探索という単純な薬を求めているか、むしろ海辺や太陽を味わいたいのなら、私がネクロムからバル・フォイエンまでに利用可能な歓楽施設、宿泊施設、それ以外の様々なものを案内しよう!
ネクロム
あなたが喪中であるなら、おそらくネクロムを去る頃にはこの街の作法や哀歌、壺などによく慣れ親しむことができるだろう。唯一忠告しておきたいのは、ここで死者に正しい道を与えるべきだということだ。特に街の階段にある木の窪み付近だ。これは主に死者の番人が棺を入れるために使われる。この忠告を無視すれば、永遠に滞在する危険を冒すだろう。
ゴルン
インドリル家の管理下にある島だ。一説によれば、自らの魔術と実験によって正気を失ったテルヴァンニ家の魔術師のための療養所だという。これを書いている時点で、常識的な価格でゴルンへ渡らせてくれる船を見つけられなかった。おそらくそのほうがいいのだろう。危険を十分承知した上で向かうこと。
アンクレ卵鉱山
ネクロムから南に少し行ったところにあるこの目立たないクワマー鉱山は、この地域の重要な食料源だ。クワマー農場を見たことがなければ、労働者に頼み込めば案内してくれるかもしれない――ただし丁寧に頼むこと。
ヴェン・テル・フルラグ
ネクロムから南にあるこの場所は、かつて川を見下ろしていた、大きな塔の廃墟らしい。今では、パドメイ山頂に向かう途中の、便利な休息所としての役割を果たしている。
フンガル低地
ヴェン・テル・フルラグの川の反対側にあるこの一帯には、探検家の興をそそる広大な平野が開けている。川沿いには平坦な地が多くキャンプに向いており、道路と沿岸の間には人里から離れた空き地がいくつかある。
テル・バロ
伝統的なキノコの塔のスタイルに合わせるのではなく、山の側面に築かれた緊密な土地だ。この風変りな建築は隣接した丘から眺めることを勧める。これを書いている時点で、ここの居住者は訪問者に好意的でない衛兵を雇っているからだ。
ケメル・ゼー
この北西の遺跡の唯一残された入口への道は驚くほど美しいが、探索を試みる前によく考えたほうがいい。テルヴァンニ家で最も影響力のある者でさえ、内部を覗く許可を与えられることは滅多にない。ツアーはなく、宿泊施設もなく、浜辺にも接していない。
テル・レンディス
この巨大な地所はかつての所有者によって何十年も放置されていたようだ。中を探索したいと言うなら責任はとれない。だが外に出れば、ピクニックに適した快適な場所が多く見つかるだろう。
テル・ドレロス
2つの見事なキノコの塔が沿岸を見下ろす、灰にまみれた土地。地上の働き手や研究員は数が少なくよそよそしいため、勝手に丘を下って2つの塔の間へ行き、自分だけの美しい浜辺を探せる。ツアーはない。
セイレンモラ
テルヴァンニ家の守護聖人、聖ヴォリスのための手入れの行き届いた墓地と祠がある。聖ヴォリスの護符が展示されている。近くで見られるのは一定の地位を有するテルヴァンニ家の者だけだが、見ること自体は一般にも開かれている。古いセイレンモラ基地は最近廃墟と化したので、宿泊所は別を当たった方がいいだろう。
アルド・イスラ
パドメイ山頂に行くつもりがないのなら、ネクロムからすぐ南東に行けばシルトストライダーを借りてアルド・イスラまで向かえる。この西海岸の宝石はテルヴァンニ賢者の代弁者たちの住まう場所である。代弁者はテル・ヴァラの塔に事務所を構えており、塔は訪問者にも開かれているが、必ずしも歓迎はされない。何かの重要な会議室があると言われるテル・フーレンの塔でも似たような待遇を受けるだろう。しかし、外の陸地はよく管理されていて安全であり、快適な観光旅行ができる。どうしても尋ねたいことがあるのなら、通りかかる召使に聞くこと。その際は服装をきちんとしておこう。でないと召使に間違われる。
カモンナルーン
親愛なる旅人よ、この地域の南西から外れた地区カモンナルーンには何もないという私の言葉を信じてもらいたい。バル・フォイエンの近くにあるからといって、訪問者向けの場所だと思わないように。その堂々とした外観に惹きつけられてはいけない。あなたがモロウウィンド出身の者でないならなおさらだ。急いで街道に引き返し、南の環状路を通ってアラヴェリスに向かってくれ。後悔はしないと約束する。
アラヴェリス
南端の奥まった部分にある素敵な村だ。健康的で陽気な住民たちは、主に付近の碧水晶鉱山の労働者であり、宿屋〈緑の碧水晶〉はネクロムのより陰鬱な宿泊地と比べて一服の清涼剤である。お勧めの観光地であり、可能ならば長期の滞在を勧める。
冒険者よ、注意せよ!Adventurers, Take Heed!
トリビュナル聖堂は我らが生き神たちの意志を実行するため、有能な冒険者を求めている。
冒険者とその仲間たちのための特別な機会が豊富にある。栄誉ある任務、優れた仕事への報酬もある。
詳しくはネクロムのハイオーディネーター・ボリンに尋ねること。
夜のごとく鋭き者からの手紙Letter from Sharp
かつて、自分が未開の地を自由に流れる川になった夢を見た。進む方向を求めて広がるが、どこを向いても進めず、干からびた。
自分を知ろうとするのはまさにそういう感じだった。だからやめた。
ソンディヴェルにはあらゆるものを奪われた。家。家族。自由意志。奴の実験を通し、記憶も奪われた。
お前と出会ったとき、過去に関する答えが再び顔を出した。自分の中を流れるものを感じた。あることさえ知らなかったものだ。
フェデロ。私とはまったく違うが、私を変えようとも抑制しようともしなかった。前と同じように感じさせてくれた。以前は気づかなかったが、友人だ。
ディミク・エイ。血は繋がっていないが、魂や記憶よりも深いところで繋がっている。彼女を守ると約束したことは覚えていないが、失敗すると打ちひしがれた。
反抗心。母国語であるジェル語の一部。釣り…記憶でも習慣でもなく、もっと強いものだ。ヒストの木の近くで感じるのと似ている。切望と絆。平穏と混乱。
ソンディヴェルに由来する部分もある。再び自分が川になったのを夢見ると、奴に流れをせき止められ、泥を走らされ、自分に属さないもので埋め尽くされた。不信。暴力への傾倒。ずっと抱いてきている怒り。
しかし今はお前がいる。前とは違う。
再び、川になった夢を見た。飛び跳ねる魚がたくさんいる山の急流だった。緑の森の中で笑う小川だった。強くて深い流れが日当たりのいい谷間を曲がりくねりながら進んでいた。大地が自分を形作り、導いたが、抑制しようとはしなかった。
俺を変えてくれたのはソンディヴェルではない。お前だ。
野営地の状況Camp Update
この規模の野営地では普通だが、規則を破った者や怠け者が出ている。
ハルヴェルは夕食後、奴隷たちにこっそり食べ物を与えている。
デダエンクは警備シフトの間に眠っている。
ブラノスは雇われの作業員を通じて密輸品を取引している。
お前が適切と思う判決と罰を教えてくれ。そのとおりに処罰する。
勇敢なスクリブとリバー・トロールBrave Little Scrib and the River Troll
勇敢なスクリブはクワマー鉱山から出て、明るい朝日に出会いました。
「やあ、また会ったね、小さなスクリブ」と、ホタルが巨大キノコのカサの下を飛びまわりながら歌いました。「今日はどんな楽しいことをするのかな?」
「いや、ここに座って甲羅に日を浴びているだけだよ」と勇敢なスクリブは言いました。「あなたはどうなの、小さなホタルさん?」
「そうだな、リバー・トロールにいたずらを仕掛けようとしていたんだ。でも君が一人でくつろいでいたいのなら、私のお遊びくらい我慢してもいい」とホタルは歌いました。
さて、勇敢なスクリブはリバー・トロールが小川の曲がり角でゴミ漁りをしているのを見ていました。そいつは凶暴で力持ちで、友達のマッドクラブを容赦なく貪っていました。スクリブにはリバー・トロールにいたずらを仕掛けるなんて、まるで楽しそうには思えませんでした。
「だめだめ」と勇敢なスクリブは言いました。「ここで日を浴びているだけで満足だよ。あなたも一緒にどう、ホタルさん?」
「私はホタルなんだよ。光と熱は自分で作れる。どこにいても手に入るんだ。ずっと飛び回っていられるのに、座ってじっとしているなんて面白くないね」
「ああ、そうだった。あなたが飛べることを忘れていたよ、ホタルさん。羨ましい。でもリバー・トロールの長い手よりも高く飛べるとは思えない。あなたの羽根は小さすぎるもの!」
ホタルは勇敢なスクリブの言葉に傷ついたようでした。「冗談だろう!私が飛べば、誰にも捕まえられないよ。君にも自分の羽根があったらわかっただろう」
「多分そうだね、ホタルさん。羽根を持って空を飛ぶのがどういうものか、私は知らない。私はこの太い脚8本で地面に釘づけだから。でも…」
「でも、何だい?」
「リバー・トロールはあの長い長い腕の先に、とても鋭い爪を持っている。羽根があっても、私ならいたずらで腹を立てたリバー・トロールに捕まえられるのが怖くなると思う。一瞬でも飛ぶのが遅れたら、やられてしまう」
「ホタルがのろまだって言いたいのかい?ホタルの羽根がリバー・トロールの不器用な、空も飛べない爪より遅いって?」
「まさか、そんなことは言わない。でも…」
「また”でも”か!いいさ、見せてあげよう、小さなスクリブ!リバー・トロールにいたずらして、あいつが気づく前に飛んで逃げてやる!」
するとホタルは力強くうなりながら飛び去り、小川の曲がり角に突進してリバー・トロールにいたずらを仕掛けに行きました。その瞬間、太陽の前に雲が通りかかり、気持ちの良い陽光は消え去りました。
「まあ、家に帰りましょうか」と勇敢なスクリブは言い、卵の部屋に戻っていきました。ホタルやリバー・トロール、いたずらなどのことは全部忘れてしまいました。
「明日はきっとまた別の冒険があるわ」
妖術師ヴァントンの研究提案Warlock Vanton’s Research Proposal
シャリドール、トゥウェルヴェイン、およびこの問題に関して適切な地位を有している方々へ、
私、妖術師ヴァントンはドリームストーンに接触する許可を要請するためにこれを書いている。石がダヴォンズ・ウォッチ地下の宝物庫に隠されていることは知っている。私はドリームストーンの危険性を承知しているが、危険に対処するのにふさわしい人物だということは、きっと同意していただけるだろう。
私は眠り薬と自然な眠りとの差異の分析を完成させるために、ドリームストーンを必要としている。おそらく最も大きな差異は、2つの無意識状態によって生み出される夢にある。十分に訓練すれば、私はおそらく自分が落ち込んでいる夢の状態を認識できると思う。これは測り知れないほど有用なはずである。なぜなら今のところ2つの間にはほとんど区別がなされておらず、知的な精神の持ち主たちは多くの時代を通じて、どちらの状態がより強力かという問題に頭を悩ませてきたからだ(魔道師サラヴェル、へリック、シャー、オゲス、メーセイらを参照)。この問いについに決着を付けられれば、多くの探究に答えが与えられ、将来の魔術を改良するための洞察も得られるだろう。
添付の参考文献からもわかるとおり、私はこの近距離結界や予防呪文に関しては最先端の専門家であり、劣った魔術師の多くがより派手な魔術研究のために放棄している研究に関わる、繊細な技術に習熟している。
私はまた、今回の要請以前にドリームストーンを所持した者たちの報告も調べた。私はアンスールの犠牲者たちのそれぞれが何を適切に行わなかったかを確認しているし、彼らの過ちを繰り返さないための計画も有している。さらに、研究期間中私は隔離されることになるので、知識のない人々を危険にさらすこともない。私がこの知識の探究において失敗することはまったく不可能である。
簡単に言えば、ドリームストーンの怒りに対処しうる者が存在するなら、それは私だ。あなたがたにも同じ結論に到達していただけることを願っている。
敬具
妖術師ヴァントン
卵運び全員への警告Attention All Egg-Hands
スクリブをよく見張っておくこと。小さいスクリブが何匹も鉱山の古い部分に迷い込んで、緑の粘液にまみれて戻ってくるのを目にしている。何かのカビか、地表から漏れ出したものかもしれないが、あれのせいでスクリブは凶暴になっている。普段はおとなしいスクリブに、私はもう2回噛まれた。
会社は気に入らないだろうが、この緑のイコルがどこから来ているのかわかるまで、生産を停止したほうがいいかもしれない。鉱山中に病気が蔓延したら最悪だからな。
ウルフェンガル監督官
穢された卵鉱山の報告Tainted Egg Mine Report
イコルは想像をはるかに上回るほど効果的だった。鉱山内に素早く広がり、コロニーのほぼ完全崩壊につながった。
イコルの効果を遅くすることを試みるべきだ。気づかれる頃には毒ができるだけ生産ラインの先まで広がっているのが理想である。穢れた鉱山は処分できるが、ネクロム中で売られる毒された卵は?卵が毒されていると気づく頃には、もう手遅れになっているだろう。
とはいえ、現段階でも、イコルは強力な武器になってくれる。
ペライトを称えよ