シストレス諸島の書物と暦

Archipelago Books and Almanacs

アークドルイドの手紙Archdruid’s Letter

ドルイド・ウヴェン

そのクリスタルは命に代えても守れ。それを作るのにはとても苦労したのだ。お前が与えられた任務に失敗しても、これ以上クリスタルを作る機会はないだろう。人の通らない洞窟を探し、気づかれずに火山の裂け目に接近できるようにせよ。できるだけ長く、他のサークルの愚か者どもに知られずにいたい。モーナード家に我々の活動を警戒されるのはまずい。遠からず、奴らもファイアソングの力を思い知るだろう!

アークドルイド・オルレイス

アイビーヘイムへの侵入者A Trespasser in Ivyhame

グウィリム大学民俗学助教授、ザムシク・アフハラズ 著

ガレンの古代ドルイドは、いつも私を魅了してきた。研究者としての生活を通じ、私は何度もシストレス諸島を訪ね、この島の最初のドルイドたちが残していった遺跡を調査し、生きた末裔たちに話を聞いてきた。何年もの間、私は古代ドルイド王の玉座の間、アイビーヘイムについての噂を聞いてきたが、そこへ連れていってくれるようドルイドを説得できたことは一度もない。

ついに、私はそこへ行く別の手段を用意することに決めた。ヴァスティルの狩人を雇い、ガレン北東の荒野の沿岸へ案内してもらうことにしたのだ。暖かい森と切り立った丘を二日歩き、私たちは丘から海へと下っていく、絶壁に覆われた谷の頂点にまでたどり着いた。

ここで私の案内人は立ち止まり、それ以上近づくことを拒否した。「あんたをここに連れてくるだけでも、ドルイドたちの怒りを買う危険を冒しているんだ。俺はここで待つ」と言っていた。

私はただの学者だが、勇気がないわけではない。私は道を下ってアイビーヘイムの入口へと向かった。古のドルイドは王の住処として城や宮殿を建設しようとしなかった。その代わりに、ドルイド王はこの聖なる谷に君臨したのだ。もっともアイビーヘイムに王がいなくなって、もう30世紀近くも経っている。しかし神聖な雰囲気と隠された力がここには残留している。岩と自然の大聖堂だ。

私は畏敬の念に包まれつつ、もうほとんど誰にも読めないグリフに覆われた立石や、谷の壁に削りだされた、崩れかけた簡素な小屋の入口を通りすぎた。谷から海に出る場所の近くで、私は丘の内部にある大きな石の扉と、その手前に置かれたボロボロの台座を見つけた。さらなる印が扉中に張り巡らされている。そのシンボルは解読できなかったので、私は座って日記を開き、シンボルのスケッチを描き始めた。

もう少しで描き終えられると思った時、突然聞こえた声に私はぎょっとした。「やめろ!」

慌てて立ち上がると、赤褐色のローブに身を包んだ、厳格そうな髭のドルイドが私の背後に立っていた。彼の服からは灰が流れ落ち、その杖の先端には煤がくすぶって明かりを放っていた。ファイアソング・サークルのドルイドに会ったことはなかったが、目の前にいるとわかった。「後で研究するために絵を描いているだけです」と私は抗議した。

「お前は自分に属さないものを持ち去ろうとしている」と彼は応じた。「お前には値しないものを。立ち去れ、そして二度と戻ってくるな」

スケッチはもう少しで完成するところだったが、ドルイドの怒りは明らかだった。ファイアソングのドルイドが本土人と話すなどという話は聞いたことがなかった。私は自分が未知の状況にいることを知った。「わかりました、去りましょう」と私は言った。私は炭筆をしまい、向きを変えて立ち去ろうとした。

ファイアソングのドルイドは素早く大股で三歩進み、私の手から日記を奪った。彼はスケッチが描かれたページをちぎり、日記を私の足元に投げてよこした。「まだわからないのか?この印はこの地にのみ属するものだ。お前が持ち去ることは許さん!」

私にも常識はあった。私は傷ついた日記を拾い上げ、足が許す限り急いで退散した。

親愛なる読者よ、もしアイビーヘイムを訪ねる機会があったら、ぜひ行って欲しい。美しく、また神聖な場所である。しかし持ち帰るのは想い出だけにするよう、気をつけることだ。

あらゆるシーエルフに告ぐ!Calling All Sea Elves!

ガレンの自然の美を愛している?新しい人々に会うのは好き?本土から来る金払いのいい客のために、凶暴そうな笑みを作ってみせることはできる?それなら、サベージシストレスツアーにはぴったりの仕事があります!

関心と暇のあるシーエルフ船長は、ヴァスティルのジュリーン・クールセレに詳細をお尋ねください。

アルノーとリゼッテ:真実Arnoit and Lisette: The True Story

ジャコア・デュフォート 著

マダム・パジャウドはなんという人だろう。彼女は他でもない私の祖先から極めて詳細な話を聞いておきながらそれを無視し、自分の勝手な空想で恋愛物語を捏造したのだ!当時、現実に起きた悲劇に基づく明らかな警告の物語を、彼女がこのように扱ったのは唾棄すべきことだ。

私がこの文書を書くのは、マダム・パジャウドが「嵐とひまわり」の中で加えた脚色の中で最も甚だしいものを訂正するためである。以下の記述はアルノー・デュフォート(私の祖先)とリゼッテ・モーナード(彼の恋人とされる人物)との間に起きたことについて、私の両親から聞いた詳細である。私の両親は自分たちの親からその話を聞き、親はまたその親から聞いた。この悲劇が実際に起きた家族に行き着くまで遡れる話なのだ。

この物語が正確に描写されたのは、アルノーを「船大工を代表する金髪の男」と形容するところまでだ。この本はリゼッテ・モーナードをありえないほどきらびやかな存在として描いている。賢く勇敢で、騎士としての実力に優れ、愛の殉教者でもあると。彼女はそこまで完全な人間だったのか?ここから、この作品が明らかにフィクションであることがわかる。マダム・パジャウドは明白にモーナード家へ肩入れしており、それを隠そうともしていない。

一度視線を交わしたら後は手紙だけで成立する恋愛を見せられては、きっと読者も困惑したに違いない。これほど底の浅い、馬鹿げた話を聞いたことがあるだろうか?親愛なる読者よ、残念ながらリゼッテはマダム・パジャウドが描くような(あるいはマダム・パジャウド自身がそうありたいと望んだような)、勇敢で美しい人物ではない。

真実は、ナヴィール城でトーナメントを見ていた若い娘、リゼッテ・モーナードがアルノー卿に手紙を渡し、彼は親切心からそれを受け取った。リゼッテはそれから数年間アルノー卿に執着するようになり、卿がその想いに応じなかった時、不幸にも彼女はドルイドに頼ったのである。現実に使われたのはドルイドが毒を塗った剣などではなく、親切を装って手渡された、ドルイドの惚れ薬の入ったコップだった。そう、リゼッテ・モーナードは自分が魔女であることを隠し、ドルイド魔術を使ってシストレスの貴族家を破滅させようと目論んでいたのだ。ヴァスティルを見れば、今日に至るまでドルイドとモーナード家が異様なほど近い関係にあることがわかるだろう。

リゼッテはその後、魔法にかかったアルノーを説得して、彼女と共に船を盗ませた。彼女はアルノーをイフェロンに連れていき、ドルイドの儀式を行ってファイアソング山からガレンに炎の雨を降らせ、ついにガレンをドルイドの手中に収める計画を立てていたらしい。しかし、ここで何が起きたのかについては確かに議論の余地があるが、彼らの船は海賊に襲撃されたか、あるいはリゼッテが船を座礁させてしまい、海辺まで泳ごうとしていた最中にスローターフィッシュの餌食になった。いずれにせよこの話が描いているのは、敬愛された祖先が忌まわしい誘惑者の犠牲になった悲劇である。しかしどの話が真実だとしても、リゼットがふさわしい最期を迎えたことにせめてもの慰めを見出せるだろう。

しかしこの本は二人を、家臣たちの求めに共感する正当な指導者として描いている。彼らは「真実の愛」のために死に、曖昧な結末で読者を失望させている。フィクションとして見た場合でさえ、あらゆる点で面白さを欠いている!虚しく悲惨だ。こんなものは読まないほうがいいだろう。

イヴェス・グランバシェの台帳Yves Grandvache Ledger

フロレンティーノ、どうかこのメモを他の者たちに回してもらいたい。俺には時間も適正もない。真紅を愛する我らが友の相手で手一杯だからだ。

ヴァスティル
我々はここヴァスティルで通常の活動から一時的に退く。レッドブレイドとの契約は重要すぎる。営業所には警備に必要なだけのスタッフを残し、残りはファウンズ・チケット近くの発掘現場へ送るように。我々の注意がよそに向いている間、地域の誰かが変な気を起こすようなら、遺産を見つけた後に始末すればいい。

ゴンファローネ湾
現地の奴らに探らせろ。超越騎士団は仕事の機会になりそうだ。その間、ダーヴィル・ドティルへの働きかけを続けておけ。あいつは利用できる。適当な交渉材料さえ見つければいい。

フンディング港
冷眼のアルガーが機会を与えてくれたことを感謝しなければ。斥候たちが刻印の丘から戻ってきたら知らせるように。素晴らしいチャンスになるかもしれん。成り行きを見守ろう。

アバーズ・ランディング
あそこは滅茶苦茶だ。鉄の車輪ギルドは完全に暴走している。うちの者たちは退散させて、事態が落ち着くまで待たせるつもりだ。アンビに金を払って状況の報告を続けさせろ。それ以外、今のところあそこでやることはない。

ヴァスティルのドルイドの食事Druid Food of Vastyr

旅行記作家カスタス・マリウス 著

ハイ・アイルの休日ラッシュから逃れるため、私はガレンのヴァスティルの港にいるが、胃がゴロゴロと鳴っている。

私はこの街の蔓地区にある岩だらけのトンネルをさまよって、収穫したてのドルイド産品を売っている質素な屋台をいくつか見つけた。この農産物は名前だけなら他の場所にあるものと何ら変わりないが、単に香りと材料だけでも十分に特徴的である。ドルイドたちの間で、食べ物は売り物というより分け合うものであり、新鮮というよりまだ生きており、風味を強める生命力がこもっている。ハイ・アイルで長い時間を味にうるさい上流社会の仲間たちと過ごした後で、私はヴァスティルの石で覆われた街路を歩き、ストーンロアの森で摘まれたリンゴを食べてみた。最初の一口で、私は生命力が復活したように感じた。元気が出た私は、もっと食べたいと思った。

ドルイド王がキメラを創造したとかいう話に触発されたあるドルイドは、「歌う根菜」と名づけられた野菜を見せてくれた。紫の線が入ったネギと人参、ニルンルートの混合種である(ニルンルートは栽培が難しいことで悪名高いが、灰が多いシストレスの土でよく育つのだと教えられた)。彼女はこの野菜の葉の小さなサラダを提供してくれた。細切りにしてエシャロットと混ぜ、ムーンシュガーのドレッシングをかけたものだ。軽くシャキシャキした食感に加えて、夕焼けの色が耳元で鳴り響くような、強烈な風味があった。この体験はあまりに生々しく激烈だったので、私は浜辺近くの平たい岩の上に横になって、感覚が過ぎ去るのを待たねばならなかった。

そのドルイドは後でまた来て、ある根を味見してくれと言っていた。彼女はそれを午後いっぱいかけて煮込んでシチューにし、サルトリスを添えて出す予定だという。しかし私が覚悟を決めて彼女のところに戻った時は、もう夜遅くになっており、鍋は空だった。別のドルイドが私を憐れんで、砕いたオーツを加えたコンベリーの粥に取れたての蟹肉を添えたものを食べさせてくれた。こんな味の組み合わせが合うとは想像もできなかったし、実際合わなかった。それでも腹はふくれ、元気を取り戻したので、島の北にあるドルイド居留地、グリマーターンへ向かっていたグループと共に、一晩かけて歩いた。

ガレンでは春の水でさえ澄んでいるようだ。地域の住民の大半は私がこのことを言うと妙な視線を向けるが、この島のドルイド魔術が関係しているに違いない。それとも、シストレスの骨格を形成する火山岩のせいだろうか。

全体として、ヴァスティルの質素な環境はその食事にも反映されている。どこでも手に入る滋養豊かで簡素な材料が、ドルイドの手によって新たな命と風味を与えられているのである。耕作や他家受粉のプロセスについて質問すると、戸惑ったような謎めいた笑顔が返ってくる。まるでそのような秘密はドルイド仲間にしか教えられないとでも言うようだ。

だとすれば、それはそれで構わない。世界の半分がここにあるような風味の自然魔術を取り入れようとするくらいなら、私はそんな秘密はすぐさまガレンに委ね、帰る口実とするだろう。

ヴァスティルの歌Song of Vastyr

路上につま先を打ちつけても
何も恐れることはない
ダンスはいつでも大歓迎
来たれヴァスティルの街へ!

きらめく港からモーナード城まで
遠い民も近くの者も
決して友には事欠かない
来たれヴァスティルの街へ!

(コーラス)
ヴァスティル、ヴァスティル!ガレンの光り輝く宝石!
ヴァスティル、ヴァスティル!波を越えて高く!
ヴァスティル、ヴァスティル!その旋律を聞け!
ヴァスティル、ヴァスティル!歌のある街!

〈うんざりしたオルナウグ〉で飲めば
あなたの不安も消え失せる
ドルイド、貴族、観光客も歓迎しよう
来たれヴァスティルの街へ!

シストレスの美しい海岸に沿い
我らが海辺を目指して来たれ
名所を巡り、夜は踊り明かそう
来たれヴァスティルの街へ!

(コーラス)
ヴァスティル、ヴァスティル!ガレンの光り輝く宝石!
ヴァスティル、ヴァスティル!波を越えて高く!
ヴァスティル、ヴァスティル!その旋律を聞け!
ヴァスティル、ヴァスティル!歌のある街!

丈夫な壁と商人の店のため
船が埠頭を行き交う
シストレスにこれ以上の場所はない
来たれヴァスティルの街へ!

ヴァスティルの漁師歌Vastyr Fisherfolk Song

よいと引け、よいと引け
海辺が視界に入るまで
夜が朝へと変わるまで
すべての網を使いつくすまで

いったん獲物を見つけたら
それがそいつの運の尽き
俺たちの目からは逃げられない
すぐに味見をしてやろう

さあ勝負の始まりだ
船が揺れても回っても
俺たちは鉤、網、槍で
獲物を近くに巻き寄せる

よいと引け、よいと引け
海辺が視界に入るまで
夜が朝へと変わるまで
魚釣りして角笛を吹く

港じゃ行きかう人々の
視線が俺たちの品に集まる
溢れんばかりの大漁で
皆が踊って跳ね回る

その日の仕事が終わったら
踊るも遊ぶも思いのまま
宿で体を休める時の
ハチミツ酒の甘さがたまらない

よいと引け、よいと引け
再び出発するまでは
好きなように生きればいい
そうして海に出た時は
歌い騒いで帆を揚げる
それがヴァスティル漁師の生き方よ!

ヴァスティルの詩の王者The Poet-Champion of Vastyr

ディベラ司祭、チャンター・ミリウス 著

第二紀400年、最高顧問サヴィリエン・チョラックは最高顧問による統治四世紀を記念して数ヶ月にもわたる祝祭を開いた。帝都の数多くのゲームや余興のうちの一つとなったのが、詩の大会である。実力を認められた詩人たちがタムリエル中から最高顧問の宮廷で詩作をするために訪れ、その多くは有名な詩人であった。ヴァスティルからはシストレス諸島の外で無名のブレトン、ニネル・ドゥマリスという平民生まれの商人が来た。

多くの者が最高顧問に聞かせるため、壮大な叙事詩や威風高き頌歌を歌った。しかし誰もが驚いたことに、サヴィリエン・チョラックの心を揺さぶったのは、ガレンから来た無名の平民が記した言葉だった。最高顧問はニネル・ドゥマリスを詩の大会の優勝者とし、彼女に王宮での地位を進呈した。しかしニネルは辞退し、故郷をあまりにも愛しているので、永遠に離れるのは忍びないと言った。彼女はヴァスティルに戻り、長い生涯の間、数多くの美しい作品を作った。

今日ではニネル・ドゥマリスの優勝作品が、船乗りの恋人を想う女の嘆きを歌ったソネット「太陽のごとく恐れを知らず」であったことがわかっている。女がいくら愛しても、恋人がライバルである海の声に従うことを止める力は彼女にはない。それをニネルは「海鳥の笑い声、鐘の音、船長の呼び声」と印象深い手法で記している。ガレンの民によればこの偉大な詩人は若い頃、若く勇ましい船長を愛した苦い経験を基にしてこの作品を書いたという。

「太陽のごとく恐れを知らず」は有名だが、ガレンで最も愛されている詩ではない。その名誉はソネット「しなやかな妖精」に与えられる。美しいガレン島への喜ばしい讃美歌である。軽く読んだだけだと、ニネルは遊び好きの自然の霊魂について書いていると思っても無理はないだろう。しかしこの詩人はもっと巧妙である。「妖精」とは彼女の島への愛のことであり、彼女がガレンの「太陽に浸った峡谷」と「神聖なる霧」に身を任せたいという心からの想いである。この詩を口ずさめばヴァスティルのどの酒場でも、客たちは立ち上がり、胸に手を当ててあなたが言い終わるのを待つだろう。

ニネル・ドゥマリスは夕暮れの大聖堂の地下にある栄誉の地に、有名な騎士や君主たちと共に眠っている。ヴァスティルの多くの者は、栄誉を受けているのがニネルと共に眠る名士たちであり、その逆ではないと言う。

ヴァスティル包囲Siege of Vastyr

リロス・モレットの日記より。第二紀365年の日付。「群れる嵐」によるヴァスティル包囲終盤の一夜を記したもの。

* * *

昨晩炎が胸壁に降り注ぎ、それを強風が壁から散らし、屋根に振りまいた。我々は長い夜の間中働き、井戸から手桶に水を汲んで、手から手へと渡して運んだ。運の悪い建物の屋根は、我々に戦争を挑んできた「群れる嵐」艦隊のための灯となってしまった。私の家は燃やされる屈辱を免れた。何時間もかけて草ぶきの屋根に十分な水をかけておいたおかげだ。それでも城壁から街路に向かって火花が漂うたび、私は一瞬手を止めて八大神に祈った。私のアトワンと、私たちの大切な拾い子、ノム・タの無事を願った。

衛兵の呼び声が聞こえた。「群れる嵐」のシーエルフたちが我々の沿岸に船を散開させているらしい。奴らのシーメイジが風を呼び起こす呪文を止め、強風が収まったのを感じた。燃えていた家の火は再び勢いを取り戻したが、一瞬の間、手桶を運ぶ手が途中で止まった。すべては静かだった。

そして、驚くべき雷鳴と共に、ある衛兵が叫んだ。「海が退いていくぞ!」

列の中の数人は自分の持ち場を離れて、この奇妙な出来事を見ようと胸壁に駆けていった。他の者たちは手桶を丸石の地面に放り出し、封鎖されたヴァスティルの門めがけて走った。

給水部隊を指揮していた騎士はこの動きを叱責して怒鳴った。「持ち場に戻れ、街が炎に焼かれてしまうぞ!」その声で一部の者は持ち場に戻ったが、さらに多くの者たちが意を決して中心の広場から抜け出していった。最も愚かな者たちは古いドルイドのトンネルの暗闇の中へと駆けこんでいった。私は彼らの影が自分を通りすぎ、墨汁のような地下の暗闇へと消えていくのを見た。

手桶は拾われ、水で満たされたが、人数は減り、列は崩れていた。人員同士の間隔が広がったため、手桶を手渡すのにより多くの労力がかかるようになり、手の皮膚がズタズタになりそうだった。だが我々は必死に耐え、炎が東市場の屋台を飲み込むのを防ぐことができた。

上空から市民と衛兵両方の恐怖の叫び声が聞こえてきた。這うようなその金切り声は、それを引き起こした何かが迫るにつれ、より高く大きくなっていくようだった。視線を上げると、走る足音と共に胸壁から叫び声が迫って来ていた。「逃げろ」人間の洪水は叫んだ。「逃げないと、お前たちも大波に飲み込まれるぞ」。私は理解に苦しんだ。何が襲ってくるのかわからなかったからだ。しかしパニックに陥った人々が迫ってくること自体、十分に危険だった。

「大波だ、逃げろ。高い場所に行くんだ」。その声を受けて私は前進し、階段を上り、急な坂を駆けあがった。私たちが走るにつれ、波の音は大きくなっていった。聞き逃しようのない、不可能なほど高い、間延びした唸りだった。ほんの少し前まで多くの人が立っていた胸壁に、波がぶつかる音を私は聞き、感じた。波はヴァスティルの高い壁にぶつかって割れ、破壊的な水の壁となって側面を流れていった。家はその重さに砕け散った。石は固定用具から切り離され、停泊中の船でさえ目もくらむような余波を受けて突然飛び出し、港に激突した。

私の後ろを走っていた群衆がどうなったかはわからないが、背後に水の音が聞こえてこなくなるまで足を止めなかった。一番高い場所に到達してようやく、私は動きを止めた。全力で走ったため、胸が激しく上下していた。そして振り向いて、「群れる嵐」が召喚した恐るべき何かの姿を見た。

我らがヴァスティルは部分的に沈没していた。残骸が漂い、暗い水の下に沈んでいた。奇妙なことに、私の頭へ最初にはっきり浮かんだのは怒りでも哀しみでもなく、憂鬱な諦めだった。夜明けが来たら、古いドルイドのトンネルから死体を引き上げなければならないだろう。

ウミンディオルからのメモNote from Umindior

クエン

放置してすまない。だがネリのことが頭から離れない。彼女を探しに行くことにした。ドレッドセイルから抜けるよう説得してみる。彼女に遺物の場所を教えてもらえれば、この依頼を終わらせることくらいはできる。

神々の加護があれば、ここに戻ってきて合流しよう。待っていてくれ!

ウミンディオル

エメリックの裁定Emeric’s Judgment

(上級王エメリックが、ランセルの戦争の終結と大ダガーフォール・カバナントの形成、エメリック自身によるハイロックおよびその同盟国の上級王への即位を受けて発した声明の写し)

第二紀567年、新たに即位した大ダガーフォール・カバナントの上級王によって発せられた以下の簡易判決は、ランセルの戦争として知られる事態における、モーナード家の裏切りと戦争への参加、およびウェイレストとその近隣諸国の扇動に対して下されたものである。

ショーンヘルムのランセルの側につき、彼の計略を支援するために騎士と武器を送ったことにより、アヴリッペ・モーナードは即座に、かつ永久に公爵およびシストレス公爵領の管理者としての地位を奪われる。モーナード家はその領地を保持するが、諸島の管理権はデュフォート家に移され、モーナード家の指導者はそれに劣る伯爵の地位を恒久的に担うものとする。

上級王エメリックはこの判決において寛大さと慈悲を示したが、モーナード家がその誓いと義務を再び破るようなことがあれば、王はモーナード家の名も領地もニルンから完全に消し去るだろう。

さらにデュフォート家とその指導者ドノヴェン・デュフォートは、この日より公爵の地位を担い、シストレス諸島公爵領の統治権を与えられるものとする。

以上に記したことを遵守せよ。

より高き上級王、エメリック!

カエルを盗む計画Frog Stealing Plans

へレイン

助手からヴァスティルに滞在中のレッドガード商人の噂を聞いた。名前はムヌブラといい、ある特別なものを持ってハンマーフェルからはるばる来たそうよ。ドラゴンフロッグ。この男はどうやら、このカエルをビジネスパートナーか何かだと思っているみたい。信じられる?

そこで。まああなたが見てもわからないでしょうが、信じて。その獣には同じ重さの黄金に見合う価値がある。そして私には、あれをかすめ取る完璧な作戦もある。港にいる友人が、あの商人の船にいくつか穴を開けてくれる。奴が大慌てで荷物を救いだそうとしている間に、カエルを奪うの!

シストレスでドラゴンフロッグを見たことはない。そもそも他のどこでもない。だから高値で売れるはずよ。
ベルナデッテ

追伸:カエルが暴れた時のために、水を入れたバケツを用意しておいたほうがいいかな。

カソレインの夢The Dream of Kasorayn

三つの種を、一本の木の上に見た
ローワンの種、アッシュの種、オークの種
慎重に種を塵に収めた
民を導き教えるため

三本の木、九本の枝、五百枚の葉
それぞれの根に一つの季節
それぞれの種を深く眠らせよ
さすれば玉座は新たにされる

山が揺れ、種を蒔く者が目覚めし時
玉座は再び花開く
一つの選択、一つの意志、一つの縛りし言葉
すべての地に祝福か災いをもたらすだろう

カソレインの最後の夢The Final Dream of Kasorayn

三つの種を、一本の木の上に見た
ローワンの種、アッシュの種、オークの種
慎重に種を塵に収めた
民を導き教えるため

三本の木、九本の枝、五百枚の葉
それぞれの根に一つの季節
それぞれの種を深く眠らせよ
さすれば玉座は新たにされる

山が揺れ、種を蒔く者が目覚めし時
玉座は再び花開く
一つの選択、一つの意志、一つの縛りし言葉
すべての地に祝福か災いをもたらすだろう

遠い季節の末に来る
種を蒔く者を起こす日が
進んで与えられるなら、すべて良く
奪われるなら、災いが訪れる

カソレインの夢(注釈付き)The Annotated Dream of Kasorayn

グウィリム大学民俗学助教授、ザムシク・アフハラズ 著

シストレス諸島のドルイドは、タムリエルの他の地ではほぼ知られていない莫大な民間伝承の担い手である。彼らの語りは第一紀初期にまで遡る童話や歌、物語を含んでいる。おそらく最も重要なのは「カソレインの夢」と呼ばれる予言の詳細であろう。ガレンのドルイドなら誰でもこれを暗記しているが、予言の真の意味は何だろうか?筆者はささやかながら、以下のページにてこの問いの探究を試みたい。

まず、ガレンの伝達の石に記されている予言を考えよう:

三つの種を、一本の木の上に見た

ローワンの種、アッシュの種、オークの種

慎重に種を塵に収めた

民を導き教えるため

三本の木、九本の枝、五百枚の葉

それぞれの根に一つの季節

それぞれの種を深く眠らせよ

さすれば玉座は新たにされる

山が揺れ、種を蒔く者が目覚めし時

玉座は再び花開く

一つの選択、一つの意志、一つの縛りし言葉

すべての地に祝福か災いをもたらすだろう

興味深い比喩に満ちた、美しい詩のようだが、それぞれの行には秘密の言及が多く含まれている。より深い意味を探ろう。

「三つの種を一本の木の上に」はシストレスにある3つのドルイド・サークルを指している。ローワンは知恵と謙虚な奉仕、すなわちストーンロア・ドルイドの道を意味する。アッシュは神秘の力と再生を意味し、これは隠遁するファイアソング・ドルイドの象徴である。オークは当然力と勇気の象徴であり、エルダータイド・サークルを表している。最後のドルイド王カソレインはここで、3つのドルイド・サークルの確立についての言及を避けている。

ここで我々はとてもいくつかの興味深い数字が、一気に読む者に与えられていることを見出す。枝と葉、根は重要ではない。むしろ、夢の狙いは数字を見出すことだ。3×9×500、すなわち13,500である。さらに「それぞれに一つの季節」ということは、3,375年の期間になる。夢が第一紀4世紀のどこかに位置づけられるとした場合、この期間は第二紀の第6世紀末頃に終わりを迎える。確実に特定できないのは、夢がいつ記されたのか正確には知られていないからである。そして言うまでもなく、ドラゴンブレイクによって事態はさらに複雑化している。しかし、これが約束している出来事はそれほど遠くないと思われる。

第三節は予言が完了に近づいた時に注意すべき兆候と共に始まる。ここで「山」と言われているのはイフェロンの大火山、ファイアソング山である。意外なことではないだろうが、シストレスのドルイドたちはこの山にとても注目している。カソレインが「種を蒔く者」と呼んでいるのが何なのか、誰もはっきりとは知らない。第一節で言及されている種と何らかの関係があるとする学者もいる。しかし筆者はその見解に反対である。種を蒔く者はただの比喩かもしれない。

だが、我々はカソレインの夢から何を期待しているのか?ここで我々は予言の核心に迫っている。第二節と第三節の両方で言及されている玉座は、蔦の玉座のことである。ドルイドの伝説によれば、ドルイド王はガレンにある儀式の地から統治を行ったとされている。この予言は実際、新しいドルイド王の任命あるいは帰還と関係している。三千年以上の時を経て、この肩書を手にする者と。

推測ではあるが、最後の節にある「一つの選択」は新たにされた蔦の玉座を獲得する者の決断を意味しているのだろう。そして「縛りし言葉」は自然の霊魂そのものを束縛して命令する、ドルイド王の象徴と言われるものを指している可能性が高い。すべての地を祝福か災いで包むという部分の意味を解明する証拠は、筆者にはほとんど見つけられなかった。話したドルイドは議論を拒んだが、この予言は善か悪のどちらかで終わるのだろう。しかしシストレスのドルイドでさえ、カソレインの夢の真の意味については一致した見解を持っていない。

ガドからの手紙Letter from Gad

ボス、

あのふざけた海賊たちが最初の頃に力となったことはわかっていますが、奴らは発掘現場で何の役にも立ちません。ファウンズ・チケットに奴らが来なければよかったと思うくらいです。

もう何度か、酔っ払いの殴り合いのせいで作業員をヴァスティルに送り返す羽目になりました。我々の掘削がうるさすぎるというので、奴らはしょっちゅう腹を立てるんです。入口付近の波で溺れ死んだ奴までいます。海賊が腰の高さの水で溺れるなんて、呆れるばかりです。

しかもあのレッドブレイドとかいうレディは、常に監視しています。あの女には、酷く気持ちを落ち着かなくさせる雰囲気があります。気分が暗くなってくる。

あの海の犬どもを抑えておければ、もっとずっと早く財宝を発見できると思います。

ガド

ガレンの獣The Beast of Galen

エリンヒルのフラスタス 著

「カイメラ、カイメラ、カイメラ!今日は何本首がある?」
――伝統的なブレトンの庭遊び

子供の集団がカイメラ遊びをやっているのを最初に見たのは、数年前にウェイレストに旅行した時のことだった。タムリエル中の文化でよく見られる、列を作るタイプの娯楽である。私は酒場の玄関口に立って食事と楽しい歓談を待っていたが、子供たちは互いに向き合う列を2つ作っていた。子供たちはゲームの開始の合図を一斉に叫び、私は笑みを漏らした。「カイメラ」とは明らかにガレン語の「キメラ」の変形だった。先頭にいた子供は自分がどの首かを宣言した。そのグリフォンだか蛇だかの首の子供は反対側の列の子供に向かって走り、その子も同じようにした。彼らは場所を入れ替わり、列の次の子供に、自分の首を宣言する順番を譲った。それは全員の番が終わるまで続いた。

「蛇の首はシュシュシュシュって音を出せよ!」
――伝統的なブレトンの庭遊び

ガレンの深い森にあるエルダータイドの居留地に入ると、そこでは遥かに厳粛な雰囲気が私を取り巻いた。軽く雨が降る中、私は案内人に連れられていくつかの石の小屋や曲がった柱を通りすぎた。カーテンのかかった入口の向こうからは低い歌声が漏れ、出会う視線はどれも静かな軽蔑の念を込めて私を見つめた。私が研究機関と関係しておらず、案内人に多額のゴールドを支払っていなかったら、このキャンプは敵意に満ちた、むしろ危険な場所になっていただろうと確信している。私たちの先には、雲がかった空にくっきりと輪郭を表す立石がいくつか見えた。石の下には巨大な洞窟の入口が横たわっていた。その中からは低い唸り声が聞こえてきた。まるで大きな獣が発したかのような声だ。その音は深く強く、私は一瞬動きを止めた。

「ライオンの首はウオーンって鳴けよ!」
――伝統的なブレトンの庭遊び\

クラウディ・ドレッグの外にいた子供たちはまだ遊んでいたが、私は座ってグウィリム大学の敬愛する学者仲間と食事を始めた。彼女はブレトンとドルイドの伝説におけるキメラの役割について快く話してくれた。一見してわかるように、言葉それ自体が面白い。タムリエルの多様な文化の研究に従事して日の浅い学者の多くは、キメラというこの語が「チャイマー」という文化的名称の変形であると考えがちだ。チャイマーとは今日、ダンマーに先立つ伝統集団を指すために用いられる語である。実際のところダークエルフ以前の者を指すこの語の現代的用法は、「変化」を意味する遥かに古いアルトマー語変形である。そのため当然、チャイマーという文化集団を指すもう一つの一般的な言い方は「変化した者」となる。

「変化の獣」あるいは「変化した獣」を意味する語はディレニ王朝の時代に出現したとされているが、これはアレッシア以前の文書が現代になって研究されたことで生まれた推測である。その時代におけるこの語の用法については、解釈によるところがとても大きい。というのも、この名称を担うガレンの獣たちが創造されるのは、この語が第一紀初期に若いディレニの書記によって教師の手紙の中に書き記された時には、まだ数世紀も先のことだったのだから。

かなりの量の飲酒と探りを入れた後でようやく、私の食事相手はこの語自体が元来はブレトン自身を指していた可能性を認めた。実際、当時の高尚なディレニの学者たちにとって、半人半エルフを指す言葉として「キメラ」以上にふさわしいものがあっただろうか?

「グリフォンの首はクゥオオオオオって鳴くんだぞ!」
――伝統的なブレトンの庭遊び

神聖なる地の下にある石造の核へと降りていくと、周囲の壁が暖かくなっていった。明らかに、シストレスの火山の影響である。これがこの洞窟の気候を、私の目の前に立ち上がってきた巨大な獣にとって快適なものにしているのだろう。獣はこちらを向き、三対の眼が私に向けられた。獣が立ち上がると、三つの頭とその筋張った首が伸びて左右に動いた。私は首筋に冷たい針を当てられたような恐怖を感じた。すると突然、獣はよろめいた。そしてオークの木のような不動の意志を休息へと向け、唸り声をあげて暖かい大地の中に戻っていった。

キメラたちはこの地から消え去ってしまった。今では、最後のドルイド王の時代に置かれた古代の石を守るための数体が残っているだけである。キメラを作るための秘密すら忘れ去られている。案内人によれば長老の中でさえ、呪文を使ってイフレの手を導けるのは数人だけだろうということだった。私の前で眠っていた獣はその蛇の首を真っすぐ立てて、時の経過により鈍った眼で管理人を見た。そのドルイドは彼のサークルが召喚した嵐のように厳格で臆することなく、獣の脇に立ってその鼻に優しく手を置いた。私の想像かもしれないが、彼のフードの下に涙が光っているのが見えた気がする。

「カイメラ、カイメラ、カイメラ!門を抑えて石を守れ!みんな家に帰るから!」
――伝統的なブレトンの庭遊び

私たちが酒場の扉からよろよろと出てきた時、子供たちはゲームを終えていた。私たちは気持ちよく別れを済ませ、私は宿への帰り道を歩き始めた。歩きながら、私はブレトン種族の大きな物語におけるキメラの役割を思った。ドルイドたちの長期の離散と、彼らがより広い文化に刻みつけた痕跡を。キメラがその良し悪しはともかく変化を象徴しているのなら、ドルイドもまた何らかの意味で同じものを象徴しているのだろうか?そして現代の世界において、彼らはどのような役割を演じるのだろうか?

彼らは適応して生き残るのか?それともいつか、私たちはガレンのドルイドについてキメラと同じような物語を書くことになるのだろうか?いつの日か消失する、偉大なる文化の過ぎ去った一部として?

ガレンの動植物The Flora and Fauna of Galen

旅の博物学者、エリス・アグリルミルの日記より

ガレン島は自然の二面性に関する驚くべき一例である。この島は大量のひまわりが、豊かな落葉樹の森へ広がる緑の楽園だ。どんな旅人も羨む旅行先だろう。しかし溶岩だらけの無慈悲な熱帯雨林はすぐそばにあり、足を踏み入れるうかつな犠牲者を飲み込もうと待ち構えている。私はごく短時間島に入っただけだが、そこで見ただけでも心臓が凍りつきそうになった。私はできる限りメモを取った。この島を調査することで得られる知識があると思ったからだ。ここの動植物はこれまで見たもののどれにも似ておらず、未だ発見されていない秘密への手掛かりが隠されているかもしれない。まずはこの島の温暖で快適な部分について記そう。

南ガレン

私はこの島にいた時間の大半を、南ガレンの青々と茂った平原の探索に費やした。ここは広大かつ静かな土地で、引退後にここへ住むことも容易に想像できる場所だ。ゆるやかな起伏のある開けた野には、蝶や種々の野生動物が生息している。私が特に気に入ったのは、地域住民が「ファウン」と呼ぶ、一見して認知能力のある獣の集団である。タムリエル中を旅してきた私も、この諸島以外でこの生物を見たことはない。彼らは二本の後ろ足で立ち、わずかに背中を曲げている。体は長身で細身のエルフのようだが、毛皮で覆われている。頭は鹿のような大型の枝角が飾っている。

鹿を後ろ足で直立させ、両腕を与えればファウンになるだろう。彼らの行動を理解できるほどは接近できなかったが、原始的な文化を有するようだ。彼らは自然と強い結びつきを持っているようで、自然が脅かされれば守ろうとする。私はファウンが道具を使い、踊り、楽器の演奏までするところを見た。コミュニケーションを取りたいと思ったが、聞くことができたのはただの唸り声や鳴き声だった。おそらく最も興味深い点は、明らかにメスのファウンがいないことだった。彼らは私が最初に思ったよりも魔術的な存在なのか、それとも生殖の方法が伝統的なものとは異なっているのか。メスを一目から隠すのが上手いだけかもしれない。

西ガレン

さらに北や西へ進んでいくと、ゆるやかな平原は徐々に落葉樹の森へと変わっていった。温暖さにおいては劣るものの、森には息を飲むような自然美があった。私が本当に自然とつながっていると感じたのはここを散策していた時である。野生動物もこのつながりを感じているのではないだろうか。私はこの地域で「スプリガン」と呼ばれている、感覚能力を持つ植物を数多く見かけた。これまでにもタムリエルで見たことのある生物だが、ここのスプリガンのような振る舞いを私は見たことがない。通常、スプリガンは木のような存在であり、ねじれて縦長の柱のようになった根を持っている。スプリガンは根を使って地面に沿って移動し、森を傷つける者を攻撃する。ここのスプリガンは違っている。より人っぽいのだ。胴にあたる部分を形成している根は分かれて二本の足になっている。彼らは最近の侵入に応じて、より攻撃的になっているのかもしれない。スカイリムの巨人並みの大きさの、巨大なスプリガンがいるという噂も聞いている。自分では目にしていないが、そのスプリガンの怒りは小さなスプリガンよりもさらに強力なのではないだろうか。

北東ガレン

巨大スプリガンは恐ろしいかもしれないが、この島の北東で私が見かけたものに比べれば何でもない。落葉樹の森林は突然、絡みあった茨のジャングルと溶岩の川に変化した。これほどまでに居住不可能な場所は見たことがない。馬ほどに大きい蜂。マグマそのものから生まれたように見える巨大なトカゲ。この島は火山性であり、どの地形にも一定の火山活動が見られるが、このジャングルは火山に絡みつき、そこから栄養を得ているかのようだ。

地元のドルイドたちがこのような場所で生活できていることには驚愕させられる。私の飽くなき好奇心がもう少しで破滅を招くところだった。この危険な地域を住処とするあるドルイドの集落を見つけようとしたのだが、その途中で私は何かを見た。生涯を終えるまで私の記憶に付きまとうだろう。あれは蔓で作られた怪物だった。棍棒を持っており、光る眼で私を見た。あの眼は私の魂を燃やした。よそ者に対する憎しみは明らかだった。私は侵略者であり、縄張りを守ろうとしたのだ。耳をつんざくような金切り声をあげ、あの体格の獣にはありえない素早さで私に接近してきた。私は逃げた。もうあの場所には二度と戻らない。決して!

ガレンへの旅:ある学者の旅Journeys In Galen: A Scholar’s Travels

ジャン・デュシール 著

15日目
私の想いはしばしば大切なフィアンセへと向かう。彼女が分厚い毛布を屋根裏部屋から持ってきて、それにくるまって暖まる姿を思い描く。この旅は執筆中の地域の幽霊についての論文のために欠かせないものとなるだろう。間違いない。だがたとえ一日でも、彼女のそばにいられないのは辛い。

17日目
なんとかある程度の成果を得た。ブレトンはどこに旅をしても、木の霊魂の物語を話す。

論文のための文章:「祖母や宿屋にいる民、鍛冶屋に聞けば、闇の中に光る目の物語を聞かせてくれるだろう」

ガレンのドルイドたちは、闇の中の目を味方につけたらしいことがわかった。彼らによれば、緑がある場所の自然を自分たちの心に受け入れる方法を教えたという。彼らは目を「ドレイフーン」と呼ぶが、酒場やヴァスティルの市場にいた者たちは全員別の名称で呼んでいた。フォレストレイスだ。

18日目
大発見だ。ガレンの奥地を歩くだけでは、木で出来たあの怪物に出会う可能性が低いと人々は言っていた。だが強力なシストレスの酒を集中的に用いることにより、フォレストレイスを生み出す方法がいくつかあるらしいとわかった。

酒場の友人から聞いた話は、我らがグレナンブラの怪談とそっくり同じだった。

論文のための文章:「森で迷子になったある旅人が視界から消える。ドルイドたちは死者の魂を物言わぬ歩哨へ変え、彼らの古代の森を巡回させる。その恐るべき叫び声に注意せよ!」

さらに魅惑的なことに、ドルイド信仰の何らかの宗派が、「緑に服従する」ためのある儀式を記録しているらしい。このドルイドたちは野性の霊魂を自分たちの体に入らせ、レイスに変身するのだという。これは危機的な状況においてのみ行われるとのことだが、真実性には疑問が残る。

19日目
案内人と契約して、グリマーターンと呼ばれるドルイド居留地まで連れていってもらうことにした。そこではフォレストレイスの秘密の一部が、古代ドルイドの石板に保存されているらしい。この若い女性の案内人とちょっと会話しただけでも、すでに極めて興味深い話が聞けた。彼女によればレイスはドルイド王カソレインの逝去後の時期に生み出されたもので、オールウィザーと呼ばれる何かと関係しているのではないかという。不思議な話だが、調べてみる価値はありそうだ。

20日目
この森の幽霊についての真実を明らかにするのはやはり難しい。しばらくはここに留まることになるかもしれない。我が愛する人にメモを送って、ブーツの餌やりなどを頼もう。運が良ければ、キナレスの風が遠からず私を彼女の下へ連れ戻してくれるだろう。

ガレン観光案内Visitor’s Guide to Galen

エミッセ・フェアウィンド卿 著

沈む太陽のごとく美しいガレン島は、シストレス諸島の隠された宝石である。本土からの多くの訪問者はハイ・アイルより先に進まない。しかしちょっとした船旅を厭わないのなら、真の意味で忘れがたい経験によって報われるだろう。ガレンの野生の沿岸と木々の生い茂った峡谷の美しさは他で見られない。さらにこの島の自然の驚異を探検している間、神秘的なガレンのドルイドに出会えるかもしれない!

この島への訪問は古く趣のあるヴァスティル港から始まる。ここはガレンへ向かうほぼすべての船の目的地である。この街はドルイドの集落があった場所に築かれており、蔓地区や街の他の部分には今でもこの古代の村落の名残を見ることができる。ここでは最初のドルイドたちに会えるだろう。街のこの地区にいる商人や職人の多くはドルイドの信仰に従っており、旅人の好奇心にもよく順応している。

街の中央付近にある酒場〈うんざりしたオルナウグ〉は素晴らしい宿だ。燻された垂木と古い旗のある魅力的な部屋には、現地の民と船乗りが集まり活気に満ちている。それ以外にもヴァスティルで必見の場所として、港を見下ろせる美しい夜の大聖堂や、街から北の高地にある雄大なモーナード城がある。ここはガレンの管理者であるレオナード・モーナード伯爵が宮廷を開く場所である。

もちろん、ガレンまで旅をしてヴァスティルの市内に留まる者はいない。旅の疲れを癒した後は、ガイドを雇って島の残りの部分を見に行こう!

ヴァスティルの西門から北に向かい、道を進んでガレン内陸への探検を始めよう。島の中心部にある大峡谷を見下ろす吹きさらしの高い崖にそびえるのが、古代ドルイドの記念碑「伝達の石」である。この地域の伝説によれば、この石は最後のドルイド王によって立てられたもので、王の予言的な夢を保存しているという。だが眺めを見るだけでも訪ねてゆく価値はあるだろう。

伝達の石から北西に旅を続け、人里離れた壮大な西岸に向かおう。ここでは絵画のように美しいトネール城の廃墟がある。これは数百年も前に放棄された金貨男爵の居城である。ガレンの石はそれぞれに固有の物語があり、この城の廃墟も同様だ。トネールの物語はドルイド・サークルにとって神聖な地に家を立てた誇り高い王と、後に彼へ訪れたドルイドの血なまぐさい復讐の恐るべき物語である。実に興味深い!

トネール城から北に旅を続けると、北ガレンの美しい野生の丘に入っていく。ドルイドの村グリマーターンは素敵な山中の湖と、ガレンで最も標高の高い山のふもとに位置する滝に囲まれている。友好的なストーンロア・サークルのドルイドたちが住むグリマーターンは、本場ガレンにおけるドルイド文化の優れた見本を提供している…とはいえ、景色のためだけでもここは見逃せない場所である!

グリマーターンから南東へ向かうと、アメノス海峡とガレン東岸へ着く。見る者を驚かせるアイビーヘイム峡谷には絵に描いたような美しい遺跡がいくつもあり、その中には多くの立石もある。しかしこの地域で出会う可能性のあるドルイドは、グリマーターンのドルイドのように友好的ではない。アイビーヘイムは神聖な地であり、観光客は歓迎されない。さらに南下して、眺めのいいサンクレフト入江に向かうことをお勧めする。この海に面した崖の内部にある洞窟はとても美しく、訪ねてゆく価値は十分にあるだろう。

サンクレフト入江から南には、ドルイドの村トゥイニュがあるが、この一帯は避けたほうが無難である。トゥイニュは孤立を好みよそ者を嫌うエルダータイド・サークルに属しているからだ。岬沿いに伸びている道から外れないようにして、ウィンドラック・ポイントの古い砦へ歩を進めよう。ここからはガレン東に位置する火山島イフェロンを一望できる。ファイアソング山も見えるかもしれない!イフェロンの火山は日中、頻繁に煙を吐き出し、夜には暖炉のごとく明かりを放つ。

旅の最後に、ガレンの南岸沿いを西に進もう。こうしてヴァスティルの街を囲み、島の食料供給を担っている耕作地や住宅地に戻ってくることができる。遠からず、ヴァスティル東の丘の下を流れるガレン入江に到着する。この入江は海に出る船が航海するには浅すぎるが、釣りに最適であり、暖かい日には地元の人々が集まってくる。古代のドルイドが丘の下に掘ったトンネルを通り、ヴァスティルの東門から街に戻ろう。

おめでとう、読者よ!島を一巡りした今、あなたはドルイドの島、ガレンを探索したと豪語できる、希少かつ大胆な旅人の仲間入りを果たしたのだ!

キコの謎かけKiko’s Riddles

この半分は掘られた空き地の、絡まった根の影の下に眠る。火の流れが木を切り、見る者の家の南を通る

第二の欠片は手の届くところにある。西の岸から風と難破の浜辺の間。職人は鋤を手にして近づき、大釜を見て砂を返せ。

キコの最後の謎かけKiko’s Final Riddle

歌い手の道の太陽で温められた側が、宝の場所だ。船に闇のランターンを吊るし、すべての目から船を包み隠せ!

グリマーターン:ストーンロアのコミュニティGlimmertarn: A Stonelore Community

マノン・ロレイン 著

私がガレン最大のドルイド居留地グリマーターンを歩き回る許可を求めた時、ストーンロアのドルイドたちは快諾してくれた。この辺りにドルイド以外の者は少なく、この報告を読んだ者にもここへ行くことはあまり勧められない。言葉にできないほど美しい場所だが、ここは彼らの故郷であり、ドルイドの生活を体験しようと望む者のためのリゾート地ではない。

私はグリマーターンを美しい風景の断面だと考えている。十分に遠くから見れば、この牧歌的な村を構成する二つの明確に区別される色があることがわかる。底の部分から始めよう。ここには丘の中腹を貫いて流れる、渦のような小川の豊かな青がある。水は雲にまで登っているかのように見える、強大な滝から押し出されている。目を上に動かすと見えてくる第二の層は、よく茂った緑に包まれた景色である。グリマーターンはドルイドの村である以上、当然のごとく自然美に敬意を払っている。明るい木々の葉、活気ある植物、エメラルド色に輝く根の堆積が、グリマーターンの主要地区の大半を覆っている。木々はドルイドが集まる場所の大部分に守護者のごとく立っており、まるで記憶の中で永遠に根を下ろした、昔のドルイドがそこにいるかのようだ。

ガレンの豊かな野性の中に根づいているだけでなく、グリマーターンはいくつか石の建物を擁している。それらは時間の経過によって損傷しているが、真に見る価値のある建物だ。曲がりくねった階段、崖の表面へ綺麗に削りだされたトンネル、流れ続ける滝や岩だらけの断崖などだ。グリマーターンの建物は伸ばされた手のように広がり、自然の風景の中に織り込まれている。

グリマーターンには一種の階級が存在するという話を聞いた。階級という言葉は、ドルイドの生き方に慣れていない我々とは大きく違うものを意味している。富の大きさや生まれが問題ではなく、ドルイドの肩書きは獲得されるものである。志願者は見習いのドルイドであり、新しく、しばしば(常にではないが)若いドルイドである。彼らは最も経験の浅いドルイドだ。その次の地位は入門者であり、少し経験を積んでいるが、最後のドルイドの試練を通過していない者たちである。私はグリマーターンに滞在中、そうした神聖な試練をいくつか見学する機会を得た。ただし近くからではなく、かなり遠くからである。どんな試練が行われていたかはともかく、美しい光景だった。入門者が試練を通過すれば、正式にドルイドになることができる。これがグリマーターンの人口の大半を構成している。そしてもちろんアークドルイド、すなわちマスタードルイドが、基本的にコミュニティを率いている。

他のドルイド・サークルの居留地も同じような肩書きを用いて、類似の美しさを誇っていると考えていいだろう。しかし私には自分の目で見たものを書き記すことしかできない。グリマーターンは文化と美、歴史に満ち溢れた場所である。親愛なる読者のためにもっとうまく説明できないことが悔やまれる。とにかく、あなたがこれまでの人生の大半を街で過ごしてきたのなら、私の記述が新しい視点を開いてくれることを願っている。

シーエルフって何?Who Are the Sea Elves?

不明なブレトンの子供によって書かれたもの

シーエルフって何?お母さんは悪いやつだと言っていたけど、ちょっとおかしな名前だと思う。マオマーだって。妹が言おうとしたら、モー!オー!マー!っていう音になった。お母さんは僕たちがこのことを話すと嫌がるけど、お父さんは夜遅くになるとたまに物語を聞かせてくれる。

お父さんはシーエルフが大きな海の蛇に乗ること、オルグヌムという大きな怖い王様がいることを話してくれる!お父さんはその王が不死身だって言ってたけど、そんなことありえないよね?不死身じゃなくても怖そうだった。

シーエルフは怖い。お父さんの話にはたくさん血が出てくる。海の戦いも!妹は物語が怖すぎて、わんわん泣いてしまうこともある。お母さんはそういう時腹を立てる。シーエルフのことなんか話さないほうがいいし、知らないほうがいいって。でも、そんなこと言われたら余計知りたくなるじゃないか!

シーエルフって本当に何なんだろう?どんな音楽が好きなんだろう?僕や妹みたいな子供がいるんだろうか?シーエルフの船には玩具があるんだろうか。玩具がなかったらとても退屈だろう。

シーエルフは僕たちと同じものを食べるのかな?自分たちが乗る海蛇に名前を付けるのかな?僕だったら自分のにはダーセルと名づけよう。

シーエルフに聞けたらいいのに。手紙を書いて送ろうかな。シーエルフは手紙を書くのかな?船の上で手紙を受け取れるんだろうか?シーエルフに手紙を書こうとしたら、お母さんは怒るだろうけど、気になって仕方がない。シーエルフの肌は本当に青なの?きっと綺麗だろう。全員が悪人なのかな。優しい人もいるんじゃないかな。

シーロード・ナロスからの命令Orders from Sealord Nalos

ドレッドセイル艦隊の船長

船員を集合させ、ヴァスティルの街を大艦隊で襲撃する準備をせよ。捕虜たちは目立った弱点を明かしていないが、我々の数なら防衛部隊が反撃を展開する前に街を制圧できるだろう。

ファイアソング・サークルの援護には期待するな。アークドルイド・オルレイスはドルイド議会で我々が協力したことへの返礼として力を貸すと約束したが、あの女は我々の襲撃前にストーンロアの種を探したいと言っている。俺は待ちたくないし、正直言ってあの女は信用できない。

シーロード・ナロス

シストレスのワインWines of the Systres

ワインとスピリッツの愛好家にして地域情報の専門家メリニー・アグナンによる、シストレス諸島のすべての島において最も豪勢かつ独自色豊かなワインについての解説

ハイ・アイル

ハイ・アイルの気候と等級は、素晴らしいワインを発見するのにとても適している。私はハイ・アイルで低品質のワインを飲んだことがないが、以下に記すワインを探すことを勧める。これらは特に独特なワインなので、諸島を回る旅の価値を大いに高めてくれるだろう。

リーダーズライズ・レッドブレンド

ハイ・アイルで支配的な名家たちによる提携の成果であるこのレッドワインブレンドは、モーナード家のブドウ園のブドウを使い、デュフォート家の職人によって製作された樽で熟成される。このビンテージの創造は、二つの貴族の家の友好の時代を象徴するものだった。このワインは深みのあるボディと微かな温かみを持ち、夏のワインとして完璧である。デュフォート家の賓客はしばしば、ハイ・アイルのひまわり畑を見学中にこのワインを供される。

アルバトロス・カベルネ

アルバトロス騎士団の団員であるルドヴェル・ガマシェ卿は、キャンプファイアを囲んで伝説を語り聞かせる際のお供に完璧なワインを生み出した時、伝説の騎士の地位を獲得した。このワインの豊潤な風味は飲む者を香り豊かな冒険へ連れだし、騎士を目指す者は冒険の味を心に刻みつけるため、このワインをワインスキンに入れて旅に出ることで知られている。

デュフォート・シンギュラーアンバー

デュフォート家によって開発された、希少なスペシャルブレンド。ピーチやチェリーなどに由来するまろやかな舌触りと紅茶のような風味に、甘くならないハチミツが垂らされる。第二紀571年のビンテージは最も人気が高く、市場にほとんど残っていない。その年のボトルを見つけたなら、強くお勧めしよう!

揺るぎなき者のシャルドネ

揺るぎなき邸宅で、バカロ卿の慈善パーティーのために開発された。この単体で飲むためのワインは非常な人気を博したので、シストレス諸島中の宿屋に複数の樽が輸送された。驚異的にバランスの取れた味と、豊かな黄金の色合いを実現したことで知られている。

ガレン

ガレンに足を踏み入れるハイロックやシヴァリング・アイルズの貴族は少ないが、この島はそれでも素晴らしいワインを生産する。

ストーンロア・ゴラップルミード

シストレス諸島中で、ドルイドは数えきれないほどの年月、あらゆる種類の果実やベリーをフレーバーにしてワインやミードを作ってきた。しかしガレンにおいて、ストーンロア・ドルイドの強力なゴラップルミードはドルイド以外の住民の間でも人気がある。噂によるとエルダータイドのケルプミードのレシピが存在し、それはさらに美味であるとされているが、これを味わったことのあるブレトンは存在しないため、ゴラップルミードと比較することはできない。

モーナード・レッド

この濃厚なワインを味わうのは、もはやヴァスティルだけではない!モーナード家のワイン業者は芳醇で味わい深いワインを開発し、常に進化を続けている。この進化の理由はステファン・モーナードにあるとも言われている。彼はドルイドと親交が深く、モーナードのぶどう園はおかげで不当な有利を得ているとのことだ。ここまで美味しいワインができるなら、そんなことを誰が気にするだろう?

アメノス

アメノスのワインについては、できるだけ言及しない方がいい。

イフェロン

私自身は以下に記すワインのどちらも味わったことがない。ドルイドを除いて、イフェロンに足を踏み入れた者はごく少数だからだ。とはいえ、私は何人かのドルイドに話を聞く機会を得た。彼らはファイアソング山のふもとで育つぶどうのワインが極めて独特であるという点で意見の一致を見ている。

スモークスパイス・ブランデー

ワインや古い樽から蒸留された、この濃厚なアルコール飲料は煤のように黒く、加えられたスパイスによって深く豊潤な風味を得たらしい。その複雑性を理解するには、味わって飲むしかない。

アッシュ・ホワイト

煙と灰をファイアソングは歓迎している。この蒸留に使われる穀物は蒸留する前に自然に燻され、濾過され瓶に詰められる前に、島の火山の裂け目によって長く樽で熱せられるという。味は豊潤で深く、煙の匂いがするようにも思われる。賛否は分かれるかもしれないが、とても個性が強い。

シストレスの歴史:ヴァスティルSystres History: Vastyr

グウィリム大学上級講師、ヴァロナ・ヴェドラル 著

集落はドルイド王カソレインの時代以来、ガレン南端の海辺に位置している。丸石が密集した近代都市ヴァスティルの地下で行われた採掘により、ドルイドのトンネルや古代の掘っ立て小屋、ドラオイフェの儀式場、シニストラルの戦争野営地、ソードシンガーの試合場、さらにはスロードのスライム飼育場の明らかな痕跡まで見つかっている。

今日の我々が知っているこの街は、諸島最北の島の宝石のような海辺に、ほんの最近付け加えられたものだ。ゴンファローネ湾は男爵提督オロによる船舶建造の中心地としての名誉を(正当にも!)得ているが、ガレンの広大な密林は、全旗海軍の船大工たちにとって無視できない魅力を放つ宝の山だった。

何世紀も本土からの統治を受けたことで、ハイ・アイルではゴンファローネ湾の北岸から、平民が雑木林を管理する伝統的なシステムが出来上がっていた。それに対して、ガレンはドルイドのサークルたちが何世紀も費やしてその聖地としての威厳を保っていたため、実質的に手つかずの原野であった。第一紀2240年頃、男爵提督ベンドゥ・オロとその部下たちは船舶建造にさらなる力を入れた。スラスへの襲撃に備えるため、ガレンの緑野とドルイドたちが艦隊の成功に不可欠だと確信していたのだ。物資はあらゆる港から本土に届けられていたが、ガレンにある未開発の資源は無視できるものではなかった。

フォルヴス・ネルヴィロの覚え書きには、「提督のブーツは泥に浸かり、残った我々は波に乗った。ドルイドの評議会には使者を送っていたが、砂を歩く間、浜辺には誰もいなかった。彼が振り返ったので、松明の光の下でにやけた自信のありそうな顔が見えた。船長は向き直り、立ち尽くして待った。一晩中待ったように思えていたが、突然浜辺の反対側で焚火が灯された。ドルイドが来たのだ。三つのサークルが全て、数百のドルイドがいた。指導者は交渉に来たのだが、オロが勝ったことはもうわかっていた」と記されている。

全旗海軍の港と造船所として機能していた初期の時代以来、ヴァスティルではブレトンとドルイド文化が混ざりあっていた。この街は常に立石の群と八大神を崇拝するための空間が同居しており、真の道についての繊細な議論は、港沿いの酒場でも、貴族のゴシップや詩人の歌の中でもさかんに取り交わされていた。

ヴァスティルが本当の意味で自立したのは第二紀初期、モーナード家の財産が増大を始めた頃だった。中傷と賄賂、暴力によりファネ・モーナードはシストレス諸島の地方統治官の地位に上り詰めた。この一族の主な関心はハイ・アイルの豪邸やアメノスでの採掘事業だったが、一族の中の多くの者は、ファネの母ドロナのおかげで、ドルイド文化との強い結びつきを感じていた。

ドロナはウィルドと緑に深いつながりを持っていたと言われており、家族に対してドルイドのためにも一族のためにも、ヴァスティルに投資するべきだと力説したのである。

モーナードの金貨の価値が証明されたのは、数百年後に「群れる嵐」が街を襲撃した後のことである。帝国の凋落はタムリエル中に混沌を生み出した。シストレス人たちはタムリエルの民にも劣らぬ苦境にあえいだ。支配者になろうと目論む者や、王を僭称する者たちが百年の間に六度も諸島を襲撃したからである。第二紀365年におけるヴァスティルの陥落は、この島の歴史の中で最も凄惨な瞬間の一つだった。街の半分が破壊され、市民の大半は野へ追われ散り散りになった。

後のルッフェ・モーナード公爵は独裁を非難されたが、彼の祖先は再建者にして新たなヴァスティルの守護者であるとして尊敬を集めた。ベルニクは攻囲の後何十年もの間「街の母」として知られるようになった。モーナードの各領地から流れる金貨と支援物資により、街が立ち直り、世界の中に新たな地位を占められるようになったからである。ヴァスティル湾のどちらの終端にもある高い壁や、今では街の景色の中心となった広大な邸宅は、この時代の名残である。

ナハテン風邪とランセルの戦争という二つの災害の後、モーナード家は傷を癒し将来の計画を練るため、ヴァスティルへ退いた。この近代都市はハイ・アイルとドルイド、そして本土の文化のるつぼとなっている。世界中からやって来たアイデアが街の門から流れ込み、ドルイドの産品は街の壁を越えて海に出て、大陸中の顧客へと届けられる。

ヴァスティルはガレンの自然の端にあって、常に「文明的な」文化の足掛かりであり続けてきた。多くの世界、多くの文化、多くの約束を持つ街なのだ。

シストレスの歴史:補遺Systres History: Addendum

グウィリム大学上級講師ヴァロナ・ヴェドラルによって発見され翻訳された、あるドルイドによる文書

第一紀2484年のファイアソング山の噴火は、アメノス、ハイ・アイル、ガレンの主要な集落すべてを完全に破壊するか、居住不可能なレベルで損壊させた。今日でもシストレス諸島の学者や歴史家の多くは騎士や貴族の行いを扱っており、その後に続いた「緑の時代」についての我々の理解は、主に二次的な歴史資料を基にしたものである。

以下に記すのは、第一紀のストーンロアがいた場所の採掘により発見された複数のドルイド文書を、私ができる限り再構成して翻訳したものである。私とディーン・へラドレンに同行して諸島へ向かった学生たちには、これらの希少な断片の回収を助けてくれた功績を感謝したい。

最初の記述は、噴火が始まった直後に記されたもののようだ:

「今日はまた空から灰が降り注ぎ、(彼らの)骨の熱が、石が海と出会う場所へと流れた。私たちはまだ動ける者たちを集め、(解読不能)ができる(安全な場所)に移動した。私たちの中には、街の絹や船の革を身に着けた人々は追い返せと言う者もいたが、アークドルイドは聞き入れなかった。こうして私たちはファイアソング山の歌が下の大地を揺らせている間、できる限り多くの人々をかくまった」

2つ目の記述は噴火が弱まってから数ヶ月後に書かれたものらしい:

「ベリーは豊富だ。私たちの(真の道の魔術)により、木々の葉が戻り、茂みが実をつけることができた。これで私たちの枝の下に隠れる者たちも、島中の揺れに耐えて安全にしていられる。私たちはできる限りのことをタムリエルの民に教え、彼らもまたその返礼として私たちに教えを与えてくれた。ドルイド(判別不能な名前)はウェイレスト出身の男を夫として受け入れた。新しい親族を得て、私たちの絆は強くなった。この災害では多くが失われた。私たちは、これが種を蒔く者の予兆ではないかと恐れた。だが今日は、新しい命が灰の下から芽生えたようだ。緑よ、感謝します」

3つ目の記述は1年か2年後のものだ。この文書は経年による劣化が激しく、その意味の多くは同時代の作品に基づいた私の推測である。学術論文でこの文に言及する際は、その点を考慮してもらいたい:

「すべては(時間の無駄/嘘)だった。(よそ者?)は(諸島/イフレを尊敬)しない。彼らは私たちの贈り物を受け取っておきながら、(ドルイド・サークルの)目に唾を吐きかけるのだ。いつか夢は(実現?)し、私たちは世界の中に自分たちの居場所を獲得するだろう。そのことは石の中にも、我らの心と魂の中にも見えている」

参照のために言っておくが、ここに含まれている文書はすべて、元々は軽石とダークウッドを組み合わせた板に記録されていた。石には印が刻まれており、木にはこの地域のベリーブラッド・インクが使われていた。こうした遺物は要請に応じて大学の保管庫で閲覧できる。

シストレスの歴史補遺:ガレンのドルイドSystres History Addendum: The Druids of Galen

グウィリム大学上級講師、ヴァロナ・ヴェドラル 著

シストレスの歴史の本文でディーン・へラドレンが論じたとおり、ドルイドは諸島についての我々の理解を形成するために決定的な役割を果たしてきた。ガレン島はハイロックから最初の離散以来、真の道の中心であり続けてきた。口承によれば、ガレンはドルイドたちが第一紀330年に初めて上陸した場所である。

脇道にそれるが、とても学問的な題「ガレンのドルイド」は、この一般に真理とされる出来事に由来するのだろう。自分も歴史的先入観の罠に陥ったことがある学者として、このことを記すのは単にいきさつを説明するためである。

ガレン初期の時代がどのようなものだったか想像するのは難しい。ディレニに支配された本土での生活とは劇的な対照をなす、美しく感動的な体験だったことは疑いない。ついに自らの信仰を追及する自由を得て、緑の限りない優しさを与えられた最初のドルイド使節たちは、この島を楽園へ作り変えた。多くの伝説的な力の場や、深い森をさまよう独特な獣たちが現れたのは、ドルイド移住の初期の時代だった。

最後のドルイド王カソレインは、この時期の安定と成長の立役者であった。現代の記述ではドルイド王が観想的な立場の存在とされ、信者たちを遠くから見守り、どうしても必要な時を除いて介入しなかったと言われる。しかしそれでも、王は魔術と世俗の資源を大量に費やし、ドルイドたちの新たな故郷を補強した。キメラやフォレストレイス、その他のガレンの古代の石にまつわる奇妙な現象についての現代の記述を読むだけでも、そのことは明らかだろう。

ドルイド王の死は謎に満ちており、単に王は引退してシストレスの奥地に退いたと述べている記述もある。そうした記述によれば、ドルイド王は穏やかに逝去し、民には変わらず称賛され崇拝されたが、民から離れ私的な生活にいそしむことを許されていた。別の記述では、何か暴力的で忌まわしいことが王の支配を突然終わらせたことになっている。大挙してハイロックに帰還し、かつての圧制者を打ち倒すよう扇動したドルイドがいたのだろうか?文書の記録は少なく、口伝には対立する内容が多いため、確実なことは永遠にわからないかもしれない。

ドルイド王の死に続く数世紀の間、深き森は不可侵の領域だった。第一紀660年のシニストラルの襲撃は当時の物理的な記録の多くを破壊したが、ドルイドたち自身はその多くがいわゆる「レフトハンド・エルフ」の侵略を生き延びたようである。ガレンの奥地に退くことで、カソレインの子たちは侵略者に対して強力な防衛線を張ることができた。

ディーン・へラドレンは第一紀668年のファイアソング山の噴火が、何らかの仕方でレッドマウンテンの災害と関係していると示唆するが、私はドルイドたち自身がイフェロンの火山を活性化させたかもしれない証拠を見つけている。確かに爆発の際はドルイドたちも死んだが、ガレンの中心である彼らの聖地はほぼ無事だった。それが偶然ではなかったことを示す証拠は豊富にある。

ドルイドの統治評議会であるドラオイフェは、何世紀も後の全旗海軍の形成へ公的に参加することはなかったが、私はドルイドたちが海軍と船に乗ったことを示す当時の記述を複数発見した。彼らはスラスへの旅路で天候を鎮め、道案内をする役割を担ったが、大陸を沈没させるにも一定の役割を果たした可能性がある。とはいえ、それは残された乏しい資料に基づいた、私の単なる推測であることは断っておかなければならない。しかし明らかなのは、海軍の負傷者たちが男爵提督オロの帰還に際して、ドルイドの癒し手たちによる大規模な治療を受けたことである。

ドルイドの信仰とその治癒の能力は、第一紀の終わり近くに二度目のファイアソング山の噴火が起きた時、再び注目を集めた。残された地域の貴族と本土の公爵たちはシストレスの平民が飢え死にしても何とも思わなかったが、ファイアソングとエルダータイド、そしてとりわけストーンロアのサークルたちは島中に人員を展開させた。彼らは火山から飛び散った炎を消し、家を失った者のために避難所を築き、火傷を治療し、避難民たちを養うための新たな作物を育てた。

「ヴェイルテ」、「ドライ」、「ゲイテ」といったドルイドの言葉がシストレスの民の間で一般的に用いられるようになったのは、「緑の時代」として広く知られる、歴史のこの時期に由来している。これはドルイド史の中で最も活発で、協力的な時期の一つを印づけるものであり、真の道のすべての成員が自らの聖地と深き森を離れ、友人や隣人、家族たちの生存を助けた。

こうして我々は最近の歴史に行き着く。シストレス諸島の所有権がグイマルド家から、様々に姿を変えた帝国、ブレトンの金貨男爵、モーナード家へと移り変わり、現在のダガーフォール・カバナントとデュフォート家による半独立の状態へと、終わりなき変遷を遂げた時期である。これらの変化の間ずっと、ガレンのドルイドたちは古代の伝統を維持し、遠く離れた地にある黄金の会計事務所で文書が交わされたことなどほとんど気づきもしなかった。諸島を管理する貴族の大半はドラオイフェに評議会を開かせておくのを妥当とみなし、必要な時を除いて介入しなかった。特に部分的な汚名を被ったモーナード家には、ドルイド・サークルを認容してきた長い歴史がある。

実際のところ、どちらのグループもガレン島の二重の物語を象徴している。片足はしっかりと過去に根ざし、もう片足は不確定な未来の砂地を踏みしめている。

しなやかな妖精A Lissome Sprite

ガレンの詩人、ニネル・ドゥマリス 作

しなやかな妖精の軽やかな笑い声が
見守る木々を通り抜けてさまよい
秘密の喜びをたたえて、石と小川に口づけをする
それは他の者に見えぬ愛の触れあい

麗しき緑の丘の向こう、立石が
遠い昔の聖なるドルイドの夢を覚えている
この陽気な妖精は、誰にも見られずアイビーヘイムの
玉座に姿を現し、海辺に留まる

陽気な妖精の笑い声が私を呼ぶ
日々の仕事への没頭から引き出されて
私は作業を止め、自由に踊る
太陽に浸された峡谷の、聖なる霧の中で

私はガレンを歩く、独りで
森や丘、海への想いだけを胸に抱えながら

タムリエルの城への案内A Travel Guide to Tamriel Castles

アスティニア・イサウリクス 著

私がここに大いなる喜びをもってお届けするのは、旅へのはなむけであり、探検への誘いであり、普段の生活から抜け出て世界を見ることへの気軽な招きである。これはタムリエル全土の独自で恐ろしく、血と栄光に浸った主な城十選を論評したものだ。私は旅の間に、これらの魅惑的な建物であなたと出会えるかもしれない!

ウェイレスト城
おそらくタムリエルで最も有名なウェイレスト城は、第一紀の初期からストームヘヴンの中心地、すなわちブレトンの中心地に立っている。この城の最大の特徴は、街だけでなくその先の地方までも見通せる巨大な尖塔である。ガードナー家によって建設されたこの城は古典的な石造の砦として、以降数百年の間、貴族たちの家屋の基準を決定してきた。

モーナード城
シストレス諸島最北の島の街、ヴァスティルの深水港を見下ろし、広大な複数の棟を有するモーナード家の城塞は、この街の心臓であり魂であると言えるだろう。ある意味で、モーナード城こそがヴァスティルなのだ。「群れる嵐」による第一紀365年の攻囲の後、急遽再建されて出来上がったこの城は、「ヴァスティルの母」と言われたベルニク・モーナードにふさわしい記念碑でもある。彼女の遺産は広大な石壁のカーテンと、海側の丈夫な防波堤の中で存続している。

ソーン城
ソーン家の奇妙な伝統については噂が絶えないが、祖先からの家の壮麗さは否定しがたい。中央には巨大な尖塔がハーフィンガル山脈のふもとから突き出し、その同心円状の壁には、それぞれミナレットが添えられている。私は信頼できる情報筋から、一族が城の公共の空間の見学を許可しているが、朝限定であると聞いている。だから早い時間に訪れて欲しい。

アリノール宮殿
サマーセットのハイエルフには息をのむような古代建築の伝統があり、アリノール宮殿は数千年の時を遡る王族の系列を代表する。この城は複数の大きく風通しのよい部屋を基礎とし、その上に空高く伸びる尖塔が築かれている。実はそもそもこの本を書くアイデアを私に与えたのは、アルドマー評議室の巨大な窓壁だった。

エボンハート城
エボンハートの街の中心部にある城は美しくも恐ろしい古い石の建物であり、アッシュマウンテンのふもとで狩りをするクリフ・レーサーのように鎮座している。ダークエルフの宗教的恍惚とトリビュナルへの崇拝は、訪問者を困惑させるような建築上の選択を生んでいるが、その結果作られた三重尖塔の、古風ではあるが雄大な輝きは誰もが認めるだろう。

スカープ砦
オルシニウム砦とも呼ばれるこの広大な石の建物は、オーク王の権力の座である。今では廃墟となった古代都市、旧オルシニウム中心部の王宮を元として作られたこの近代建築物は、昼夜を問わず炎の輝きと笑い声、そして饗宴に満たされている。洞窟のような大広間に足を踏み入れ、この広大な空間を挟み込む巨大な石の柱を見上げる時に感じる畏敬の念は、決して忘れられないだろう。

ナヴィール城
遠く離れたハイ・アイルに立つナヴィール城から無秩序に広がる大地は、ほとんど目を疑うほどである。緑豊かな野生の花畑が、ドルイドによって世話された古代の森へと続いている。城自体は古典的なブレトン風の驚くべき建物であり、デュフォート家が居住している。私は年に二度行われるサファイアトーナメントの最中に訪れることができたが、騎士のチャンピオンに観客が送る声援の轟きを聞くことほど、血をたぎらせるものはない。

レイヴンウォッチ城
リベンスパイアー北の山脈のふもとにそびえるレイヴンウォッチ城は、このリストに載っている他の場所の壮大さに比べると、少々控えめなように見えるかもしれない。それは間違いだ!このブレトン建築の古典的な代表作は保存状態が完璧で、レイヴンウォッチ家の者たちはこの歴史的価値の高い建物を見学する際に、素晴らしいもてなしを提供してくれる。特に、城の地面の下を通る洞窟のような霊廟を探検することを勧める。

レヤウィン城
タムリエルの古代の建造の中から一番のお気に入りを選ばなければならないとしたら、私はレヤウィン城を選ぶだろう。ブラックウッドの入口にそびえるこの美しいインペリアルの建物は、壮麗な城に求めるすべてのものを備えている。頑強な円形の塔、空高くまで伸びる大広間、四方八方に広がり、街を見下ろす主砦まで通じている廊下。見事だ。このニベン下流の宝石に行く機会があったら、ぜひとも逃さないように!

ブルー・パレス
西スカイリム、ソリチュードの中心から大きなアーチを広げるブルー・パレスは、この大陸で最も独自の建物かもしれない。訪問者はとてつもない大きさの外壁を越え、広大な階段が二つある印象深い入口の間に入る。この豪勢な城は、この地域のノルドの荒々しい評判にはそぐわないように思える。しかし実際のところ、この美しさは見せかけにすぎない。ブルー・パレスは最も苛烈な攻囲にも耐えられるようになっており、帝国式の舞踏会場では貴族の美を示しつつも、戦争への備えを万全にした砦である。

以上だ!親愛なる読者たちよ、この本があなたの出発点から目的地へと向かう長旅の、ささやかな楽しみとなってくれれば幸いである。街道から離れないように。そして、キナレスがあなたの旅の無事を保証することを祈ろう!

ドルイド・セナの最後の記録Druid Senna’s Last Account

ファイアソングは私たちを殺しに来た。これはドルイド・セナの最後の記録になるかもしれない。私の最高の作品ではないかもしれないけど、死の手紙に多くは望めない。

ファイアソングが襲ってきた時、私はとっさの反応で、哀れな友人や家族と同じ運命を避けられた。私は彼らの命が消されるのを、岩陰に隠れながら見ていた。ファイアソングは私の隠れている場所にじわじわと近づいてきた。武器を抜き、炎を高く掲げて。だがとても奇妙なことが起きた。

私たちも皆知っている霊魂の塵が、谷間を越えて分厚い幕のようになって降りてきたのだ。塵はファイアソングに落ちかかり、彼らの姿は霧に包まれた影と化した。ごく短い間苦悶の声が響いた後、彼らの武器はそばに落ちた。床に倒れて深い眠りについたのかと思ったが、彼らは滝に向かって歩いていき、視界から消えた。その後彼らがどうなったのかは知らないが、不気味だった。

塵は私を囲んでおり、動物たちもそこら中を徘徊している。私は生き延びられないかもしれないが、この記録は残したい。誰かに起きたことを伝えたい。クロニクルを守らなければ。クロニクルは私たちが何者かを教えてくれるのだから。

ドルイドたちの脱出Exodus of the Druids

ストーンロア・サークルのドルイド・ローレル 著

ドルイドの教団はハイロックで生まれ、その地を愛したが、ハイロックでの生活は最終的に彼らへ耐え難いものとなった。イフレを崇拝するドルイドは第一紀330年にハイロックを去ったが、それが徐々に敵意を増すディレニ王朝に追われた結果なのか、ドルイドたちが自ら出て行ったのかは不明である。私の調査によれば、動機はどうあれドルイド王カソレインが移住の旅を計画し、ドルイドたちに船を育てさせ、それによってついに本土から脱出できたようだ。

ドルイドの伝説や口承が伝えるところによると、この海に浮かぶ船はイフレと緑による特別な贈り物であり、夢の中でドルイド王に与えられたものである。王はドルイドたちにこの船を生み出す歌を教えた。その歌はハイロックの植物や木々を、正確に決められた大きさに成長させられたのだ。残念ながら、この船を作る秘密は時の流れによって失われてしまった。

今存在する三つのサークルに分かれる以前、ドルイドの本来の共同体はどれほどの大きさだったのだろうか?私には推測しかできない。真の道を信奉する者は百万ほどもいたと主張する長老もいるが、数千だとする者もいる。いずれにせよ、ドルイド王は民をディレニから逃れさせるため多数の船からなる船団を必要とし、出発する準備が整うまでこの計画を秘密にしておく方法を考えねばならなかった。残っている物語によれば、ドルイド王は成功したことになっている。最後の戦いや危機一髪の脱出はなかった。ドルイドたちはディレニに気づかれることさえなく、ある夜、ただ姿を消したようだ。

さて、タムリエル西の広い海に出航することを想像して欲しい。当時、タムリエルの民による長い航海は行われていなかったし、海辺が見えない場所を航海する船もほとんどなかった。しかしドルイドたちは新たな故郷と呼べる場所を探そうとしていた。ドルイド王によって約束された地を。伝説によれば、ドルイド王は夢とイフレの囁きによってシストレス諸島へ導かれたが、民には王が未知の海を越えて自分たちを安全に運んでくれると信じる根拠があったのだろうか?

ハンマーや釘で作られたのではなく、生やされた奇妙な船の一団が、海辺から出航していく様を思い浮かべてもらいたい。実に異様な光景だったに違いない!ドルイド王が船団をどうやって離れ離れにならないようにしたのか、完全にはわかっていない。船を導く海図のようなものを持っていたのだろうか?確実なことは永遠にわからないかもしれないが、最近の発見が示すところ、少なくとも1隻のドルイド船が諸島にたどり着けなかった。嵐やその他の障害で遭難した船がどれだけいたのかは不明だが、たどり着けなかった船が1隻あったなら、おそらくそれ以外にも沈むか遭難するか、他の原因で姿を消した船がいたと思われる。

結果として、ドルイド船団の生き残った船はシストレス諸島の海辺にたどり着いた。最終的にドルイドたちは諸島の全土に広がったが、船団が最初に上陸したのはガレンだとされている。イフレの導きで我々はこの島々にたどり着いたのだが、ここの自然は無秩序だった。ドルイド王と民は最初の季節をかけて自然に秩序を与え、この地を維持する助けとするため霊魂を召喚した。素晴らしい時代だったに違いないのだが、とても多くの情報が失われてしまっている。

私はドルイド王カソレインの時代の生活についての探索と調査を続けるつもりだ。ドルイドの失われた歴史について、さらなる解明を試みたい。

ドルイドのモノリスThe Druid Monoliths

高名な学者にしてあらゆる文化の学徒、イグナティウス・ガレヌス 著

これはシストレス諸島のドルイドの島を旅した記録である。

私は冒険を続け、ガレン島へ流れ着いた。ここの一部しか見ることができていないが、ドルイドの大きな石の記念碑がまず目についた。彫刻とエッチングでわずかに飾られているが、意味は推測するしかない。石の柱は、どんな祠や聖堂よりも強力な何かを発していた。

こうした巨大な石を装飾する時、何をすべきだろうか。最初のモノリスにあった螺旋のパターンは肥沃の象徴だと思われる。自然が循環する性質と、季節に対するドルイドの考えを示している。円と曲線は、ほとんど官能的にも思えるほどだ。

他にもエッチングとして、環のパターンで重なり合っている同心円がある。この彫刻は、発せられる力と解釈すべきだろう。属性の力と、自然の力を組み合わせればいかに強力になるかを例示している。率直に言うと、この簡素だが意義深いデザインに秘められた情報には驚かされる。

疑問に思っていることはある。刻まれ飾られたこうした巨大な石には、メッセージが含まれているのだろうか?それとも単に美学の問題で、見たものに喜びを与えようとしているだけか?宗教的意義があるのか?話したがるドルイドを探し、強力なモノリスの意味を説明してもらわねばならない!

何人かのドルイドが、私のモノリスに対する意見を聞いてくれた。その視線からは多くのことが読み取れた。会話はかわされなかった。彼らは首を振るだけで、私が熟考するに任せた。

ドルイドがここで作りだしたのは、何とも際立って魅力的な文化だ。

ドルイドの葬式:イフレの断片Druid Funerals: A Piece of Y’ffre

エルデンルートのアレネス 著

シストレス諸島に住むドルイドがいるという話を最初に聞いた時、私は彼らに会わなくてはならないと思った。タムリエル中の他の民も私たちと同じように木々へ囲まれて生活することを好むことは知っているが、ドルイドの生き方について聞いた物語は、なぜか私の心に残っていた。最近、私はイフレから離れていると感じていた。もしかしたら、新たな視点を開くことでイフレの抱擁に戻る道を探す助けになるのではないかと思ったのだ。

ガレンへの旅は簡単だった。難しかったのはドルイドを見つけることだ。結局ある宿の主人の助けを借りて、ストーンロア・サークルのメンバーであるタイラと会うことができた。彼女は最初から親切だった。私が故郷から遠く離れて、とても居心地が悪かったことを見て取ったのかもしれない。

私は持っていたわずかな金貨を差し出して、この辺りの案内をしてもらうか、あるいは彼女の仲間たちについて話してもらおうと思った。彼女はそれを見て笑ったが、嘲る様子はなかった。ゴールドは彼女にとって使い道がないのだった。しかし彼女は、サークルの他の者たちに私を紹介すると言ってくれた。

タイラの村に入ると、大きな集まりが私の注意を引いた。彼らはいくつかの輪を作って、その中心に何かがあるようだったが、よく見えなかった。内側の輪には5人しかいなかった。その外側の輪には11人くらいだろうか。一番外の輪にはさらに多くの人がいた。儀式が行われていたのだ。私は折りの悪い時に来たのではないかとタイラに言った。

彼女は暖かく微笑んで、首を振った。長老が亡くなったので、あれはその葬式だったのだとタイラは説明した。自然死で、何も悲しむことはない。長老を失って寂しいのは確かだが、生は死と手を取り合って歩む。ありふれた感情だ。

私は葬式に出席してもいいかと尋ねた。タイラは困ったような顔を見せた。不安だったのかもしれない。彼女はガレンの外の生活についてある程度知っていたので、ドルイドの儀式を不快に思うよそ者がいることを理解していた。私は反射的に少しにやついてしまったかもしれない。ウッドエルフは外部の者を不快にさせる伝統に慣れている、と私は説明した。私が彼女に勝手な判断を押しつけることはないと。

集会に近づくと、私は言葉ではない低いハミングを聞いた。いくつかの音は重なり、輪になった人々の間を漂っていた。それはまるで森の中を吹き抜ける風のように、強くなっては弱くなっていた。

中央では、亡くなったドルイドが石板の上に裸で横たわっていたが、新鮮な枝と花びらで覆われていた。とっさに不快感を覚えたことを恥じている。彼らは生きている緑を育った場所から取り払ったのだ。だが私は自分に言い聞かせた――自分は他者の生き方を学ぶために来たのだ。私の信念を教えに来たのではない。それに、タイラには判断を押しつけないと約束したではないか。

レディンという名の女性が立ってグループに語り掛けていた。彼女は私に理解できない言語で話していたので、タイラが親切にも私のために翻訳してくれた。言葉を日記に書き記すのは失礼だと思ったので、レディンが言っていたことを私の大雑把な記憶からここに記しておく。

「死ぬのは正しいことです。死ぬとはかつて生きたということ。終わりは私たちに、いつも始まりがあることを思い出させてくれます。

歌い手は、この世界を流れている息吹で私たちを祝福することを望みました。その息吹から離れていくこと、それもまた祝福なのです。

私たちはこの世界の掟を知っています。命は命となり、それがまた命となる。だから私たちはエミルの死を受け止め、それを命へ返すことで彼を称えましょう」

という内容だった。レディンの声にはある種の確信があった。彼女はこれが物事のあり方だと知っていたのだ。

私は内側の輪のメンバーがローブからナイフを取り出すのを見た。彼らはそれぞれ、死者の体の一部分を切り取った。最初の女性は片目を、次の男性は耳を一つ。その後は、子供が足の指を1本取った。その女の子はいたずらっぽくもう一人の大人に笑いかけ、その大人も笑顔を返した。明らかに彼らの間の私的な冗談のようだった。おそらく死者の想い出と関係しているのだろう。

儀式は内側の輪が完了するまで続いた。その後は次の輪の人々が取り除く部分を選ぶ作業を始めた。私は見ていて落ち着かない気分になった。それはあまりにも親密だったからだ。死者の体から何を切り取るかという選択は明らかに、各人にとって何かを意味していた。私はとても個人的な決断を盗み見ていたのだ。

またしても、タイラは私を心配し出した。彼女は話をするために私の腕を取って連れ出した。

少しした後、彼女は庭の植物の茎を切る意味を知っているかと私に尋ねた。私は知らない理由を簡潔に説明した。彼女は多くの庭に植物を広げるための方法だと説明した。植物の一部を切り取り、新しい土に植える。うまくやれば、切った部分は根を生やし、新しい命へと育つ。

サークルの死者についても同じだと彼女は言った。当人に最も近しかった人物から始め、各人はその人個人にとって意味のある部分を選ぶ。選んだ部分は切り取って、それをどうするかは各人の自由だ。皿に乗せて外に置き、動物たちに食べさせる者もいる。木の近くの地面に埋める者もいる。あの子供は足指を乾燥させ、ペンダントとして身に着けるつもりだろうと彼女は予想した。

いずれにしても、部位は生者のもとに還る。動物は食事を得るし、木は栄養を得る。子供は祖父の想い出を抱えて笑い、森の中で遊ぶ。あの子供の選択は比較的珍しいと彼女は認めた。

それでも、サークルのメンバーは死者をどうやって自然の循環へ還すのかを自分で選択する。誰しも、歌い手への道を自分の心の中に持っているのだから…

私はそれ以来、この知恵についてずっと考えてきた。私なら自分のどの部分をイフレに捧げるだろう?もしかすると私の人生の目標は、自分のすべての部分がイフレに値するようになることなのかもしれない。

ドルイドの童話:シストレスのビーバーDruid Fables: Systres Beavers

アークドルイド・イレスによる語り 著

森の中である木が倒れ、シストレスのすべての動物が見に来ました。

それはビーバーとその連れ合いの仕業でした!まだ海水をポタポタさせながら海辺までやって来た彼らは、休む暇もなく川の隣にあった木を嚙みちぎったのです。ビーバーは確かに泳ぎがうまいことで知られていますが、ガレンに住む獣たちはずっと、わざわざアビシアンを越えてシストレスなんかに来る奴はいないだろうと思っていたのです。

「そんなに大きな音を立てる必要ある?」と鳥たちはさえずりました。

「その木を切り倒す必要はある?」とリスたちは鳴きました。

「川にダムを作る必要はあるの?」と狐は吠えました。巣が浸水したので、子狐を連れて逃げなくてはならなかったのです。

ビーバーたちはびっくりしました。「我々には皆と同じように、ここに家を作る権利がある!」と彼らは言いました。「でなきゃどうやって子供たちを食わせていくんだ?」

他の動物たちはぐうの音も出ませんでした。動物たちのほうが先にこの島に来て、この地に調和して生きてきたとはいっても、彼らは心優しかったので、せっかくここまで泳いできたビーバーたちを追いだすのは残酷だとわかっていたのです。狐は子供たちを連れて新しい巣を探し、鳥とリスは他にも住みつける木がこの島にはたくさんあると考えました。

「新しいお隣さんのために場所を空けてやらないとな」と動物たちは言いました。

時は過ぎました。シストレスに元々住んでいた動物たちはお隣さんのために場所を空けましたが、ビーバーたちは同じようにしませんでした。子供たちが成長すると、彼らは別の川で木を切り倒して自分たちの巣を作るため、出て行ってしまいました。

すると、ずっと前に出て行った二匹に何があったのか気になった他のビーバーたちがやってきました。彼らもまた森を切り崩し、どんどん大きなダムを作りました。シストレスの動物たちは、島を完全に追い出されるのではないかと心配になってきました。

するとある日、大地が揺れ始めました。ファイソング山が歌い出し、空から炎と灰が降り注ぎました。ビーバーたちの丈夫なダムでさえこの揺れには耐えられませんでした。ダムが決壊すると、強力な波が次のダムに送り出され、さらに次のダム、さらに次のダムへと続きました。かつて綺麗な水が流れていた場所に溶岩の川が流れ込み、まだビーバーたちが中にいるダムを焼き尽くし、あるいは煮えたぎる海の中に放り出しました。

生き残ったわずかなビーバーたちは、シストレスの他の動物たちに卑屈なほど親切にして残りの日々を過ごしました。でも彼らは、この諸島で最後のビーバーとなったのです。

何かを建てられるなら、いくらでも建てて構わないと思うかもしれません。でも自然の意見はいつも違います。自然が声を発するのは、時間の問題なのです。

ドルイドの童話:ファウンロードDruid Fables: Butterfly and Faun Lord

アークドルイド・イレスによる語り

昔、広大な森を支配する偉大なるファウンロードがいました。ファウンの中で一番強く大きく、誰も挑戦しようとはしませんでした。ロードは誰彼構わず、自分の力のすごさを自慢しました。ウサギは恐れ、狐は自分の草むらを踏んで通ってくる時に隠れていました。鳥でさえ、近づいてくるのを見ると木から飛び去っていきました。

ある日、ファウンロードはすべての動物を、霧の立ち込める高い山のふもとにある崖に集めました。声が動物たちの上に轟きました。

「俺はこの森で一番強い生き物だ」とファウンロードは誇り高く宣言しました。「誰も俺を倒せる奴はいない」

動物たちは全員、同意するようにうなずきました。

「俺が常にこの森を支配するんだ」とファウンロードは続けました。

別の声が割り込みました。「私も強いわよ!」

ファウンロードが振り向くと、近くに小さな蝶が浮いていました。蝶は絶えず羽をパタパタさせていました。

ファウンロードは嘲笑い、手を振って蝶々を追い払おうとしました。

「お前はこの森でも一番無力だ、消え失せろ」と王様は言いました。

「そんなことはないわ!」蝶は退きませんでした。「今すぐあなたを倒すこともできるのよ!」

何匹かの動物が笑いました。他の動物たちはその大胆さに驚きました。ファウンロードは唸り声を上げ、蹄を地面に食い込ませて蝶に向き直りました。

「ならやってみろ!ひねりつぶしてやる!」と王様は叫びました。

他の動物たちは蝶がファウンロードに向かって飛んでいくのを見て恐怖しました。ファウンロードは蝶を捕まえようとしましたが、蝶はとても素早く、羽を揺らして崖の端っこのほうへ飛んでいきました。ファウンロードは蝶を追いかけ、手を右に左に振り回してつかみ取ろうとしました。

蝶は毎回、爪をぎりぎりのところで避けました。蝶は風に乗って優雅に飛びまわり、ファウンロードをてんてこ舞いにさせました。ファウンロードはイライラして唸りました。

「こんなことで俺を倒したつもりか」とファウンロードは言いました。「単なる嫌がらせではないか!いつまで続けるつもりだ!こっちに向かってこい、虫けら!」

そこで蝶はファウンロードの鼻先に止まりました。

ファウンロードは驚いて瞬きしました。あまりに驚いたので反応できなかったのです。ファウンロードは息を吸い込み、激しいくしゃみをしました。その力がとても強かったので、崖から転げ落ちてしまいました!

蝶はファウンロードが崖から消えると同時に、何事もなく飛んで戻ってきました。動物たちは喝采をあげました。

自然は予測がつかないものです。一番小さな生き物でも巨人を倒せるのです。小さな火花が山火事を引き起こすこともあります。イフレの領域には、軽く見てよいものなどありません。強い者は決して傲慢になってはならないのです。

ドルイドの童話:誇り高きファウンDruid Fables: The Proud Faun

アークドルイド・イレスによる語り

ファウンは森で最も賢い獣でした。その蹄は素早く軽やかで、滑り落ちることも地面に足をつけることもなく、岩から岩へ飛び移ることができました。毛皮は滑らかで輝いていました。二本の角は美しく曲がり、完全な左右対称になっていました。ファウンはそういうことを全部知っていました。そして、自分の頭がいいことも知っていました。森の他の獣たちを簡単に言いくるめて、従わせられることも。そして波の上に泡が集まるように、すぐ考えをまとめられることも。

ある日、ファウンは茂みを跳ね回っている時、罠を踏んでしまいました。突然ミシッという音がして、罠が蹄に巻きつき、締めつけました。驚いたファウンは罠にかかった蹄ごと足を蹴りだし、絡まって森の地面から少し離れた位置にぶら下がってしまいました。

ファウンはもがき、力強い足で蹴りましたが、ロープはしっかり食い込んでいました。バタバタと身をよじると、ロープはファウンがとても誇りにしていた美しい巻き毛に絡みつき、引きちぎってしまいました。ファウンは宙ぶらりんになったまま、涙を懸命にこらえました。

森の動物たちの中でも一番小さく静かな蛇が、ファウンのすすり泣きの音で目を覚ましました。「ファウンさん、どうしたの?」と蛇は尋ねました。

蛇が近くにいたことに気づいていなかったファウンは、すぐ我に返りました。「別に何でもないのだ、蛇よ」。毛皮も蹄もない獣に弱みを見せるなんて、ファウンのプライドが許さなかったのです。

「空中にぶら下がっているようだけど」

「そうしたかったのだ。昼寝をしようと思ったが、地面ではゆっくり休めなかったのでね」

「足首のあたりにロープがあるけれど」

「あるに決まっている。他にどうやって自分を高く持ち上げるのだ?お前の弱い頭では理解できないだろう」

蛇はもう一度だけ尋ねてみました。「降りるのを手助けしたほうがいい?」

「助けを借りてどうなる?お前には手も蹄もないじゃないか。たとえ助けてもらおうと思っても、お前には助けられないだろう」

「そうか。それなら、私はもう行くよ」

ファウンは蛇が去っていくのを見ながら、自分のプライドと必死に戦っていました。近くに他の獣は見えないし、吊るされているおかげで目がくらみ、苦しくなっていたからです。ほとんど考えることもできませんでしたが、何かしなければなりませんでした。

「蛇よ!」ファウンは叫びました。

「何だい?」、と蛇は答えます。

「もし地面にロープの結び目が見えて、それをほどきたいのなら、我慢しなくてもいいぞ」

蛇はファウンと会った時の傲慢さを思い返しながら、意地の悪い笑みを浮かべました。「でもどうしてそんなことをするのかな?ロープの結び目をほどくなんて。あなたのお休みを邪魔したくないよ」

そして蛇はファウンから去っていきました。森で一人、空中に吊るされたままで。ちゃんと助けを求めることもできないくらい、プライドが高い自信家だったのです。

ドルイドへの不当な非難Druid Scapegoats

「嵐とひまわり」におけるドルイドへの偏見の検討
エルダータイド・サークル、ドルイド・ニヴィエンヌ 著

フィービー・パジャウドはシストレス諸島で休日を過ごす恋愛好きの読者の心に訴えるため、「事実を基にした」歴史恋愛小説を執筆した。この作品から同名の歌も生まれている。この物語の目立たないながらも否定しようのない成功は、ジャコア・デュフォートによる反論と、彼の祖先の「真実の物語」の主張を呼び起こした。この作品はフィクションであり、一度たりとも実名に言及していないにもかかわらず。興味深いことに、どちらの話でも実在するエルダータイド・サークルの名が言及されている。私がこれから論じるのはこのサークルについてである。

まず、事実を確認しよう。リゼッテ・モーナードとアルノー・デュフォートは第二紀初期にシストレスに生まれた。それは二人の一族の家系図を、ナヴィール城のトーナメントの日付と合わせれば容易に確認できる。ナヴィール城のトーナメントの記録から、リゼッテ・モーナードが確かに騎士であったこと、彼女が第二紀42年トーナメントのチャンピオンであったことがわかる。注目すべきは、物語の重要な証拠の一つが見つからない点だ。すなわち、手紙である!この恋愛の記録が隠匿されたか、破壊されたのはなぜだろうか?この点は後に検討しよう。

私はモーナード側が語る物語を聞いたことがあるが、似ているのは一族の内で語り継がれてきた点だけである。彼らの物語では、アルノーの剣に毒を塗ったのがドルイドではなく、デュフォート家の弟アンデールだった。これは一石二鳥の計画だった。高貴なるリゼッテと無能な兄を一挙に始末し、ライバルの一族を弱体化させると同時に自らの一族の中で地位を確保できるわけだ。アルノーはアメノスに送られ、そこですぐ一番高い崖を探して飛び降りた。狡猾なデュフォート家は人々に愛されたガレンの娘を堕落させ殺した、不実な悪者として描かれている。

だが、モーナード側の物語でさえ、恋人たちがドルイドの介入によって追い詰められたと主張しているのは事実だ。この点についての議論はほとんど見たことがない。あるいはジャコア・デュフォートの空想的な考えについても同様である。リゼッテ・モーナードの正体が…ドルイドなのか?魔女なのか?彼はどちらとも決めかねているようだ。いずれにせよ、この物語のそれぞれのバージョンで、ドルイドは本土のブレトンにシストレスを去るよう求める、正体不明の怪物であるという感情が込められている。

これに関する私の意見は、それの何がおかしいのか、だ。ドルイドがこの島に住んだ最初の者であることを考えれば、それほど大きな要求だろうか?確かに空想的な考えではある。だがドルイドの観点からすれば、理不尽なものではない。

また、非ドルイド文化に基づいて判断できる内容でも、この二人の悲劇の恋人たちの物語の矛盾点を明らかにできると思われる。
リゼッテとアルノーが第一子であることを考えると、一方の手で他方の嫡子が事故死したのに、この家の間で全面戦争が引き起こされなかったことになる。そんな話を本当に信じてよいだろうか?

それに二人が家系図に記されている時期に死亡したのだとすれば、彼らはどこに埋葬されたのか?

そして、最後の疑問がある。対立しているにもかかわらず、なぜ両家はドルイドが何らかの形でリゼッテとアルノーの末路に責任がある点で意見を一致させているのか?

恋人たちの観点を想像してもらいたい。公的に添い遂げる選択肢はない。シストレスから一緒に逃げることは不可能であり、ブレトンがすぐに適当な見合い結婚を用意する民族であることを考えれば、どちらかが一番財布の重い金貨男爵へ家畜のように売りに出される前に、素早く手を打たねばならなかったはずだ。

ここで認めておくが、私のエルダータイド・サークルの口承の歴史では、確かにこの恋人たちの間の手紙を運んでいるし、それ以上のこともしている。おそらく我々は彼らの結婚を執り行い、ガレンとハイ・アイルから彼らを隠したのだろう。実際、シストレスには脱出不可能とされる島が存在している。

そう、私が言っているのはアメノスだ。考えてみよう。二人の家を統合させる契約が破られることがあれば、おそらく死に帰結する。つまり、彼らは自らを良心の牢獄に閉じ込めたのだ。これは彼らの家族に強力なメッセージを送りつける、優れた計画だった。

むしろ、強力すぎたと言うべきかもしれない。

第一子が共に家族の名を拒絶し、一緒になれる島から実質的に出られないよう自らを縛ったのだ。私が非ドルイドのブレトン文化について知っていることからすれば、このような事件は間違いなく破滅的なスキャンダルであり、本土にまで届く余波を巻き起こすだろう。これは生涯の敵同士が、双方の合意の上で一つの物語を作るに至るほど強力なものである。すなわち、両家の子たちは互いの手で死に、かつドルイドが彼らを追い詰めてそうさせたという物語だ。

リゼッテとアルノーについてだが、名を捨て、本土の習慣も捨ててアメノスのドルイドとしての生を受け入れたことで、長く幸福な生涯を送ったはずだ。それほど考えられないことだろうか?

私はあり得ることだと思うが、同意してくれる人は少ないだろう。

ドレッドセイルの脅威Dreadsails: Threat to the Isles

街の警備隊長殿

これを書きたくはありませんでした。ここにいる者は皆まっとうな市民だと思っていました。当然、ドレッドセイルのような海賊どもが我々の生活に及ぼす危険を承知していると。私は間違っていました。

造船所で一日働いた後、酒場〈うんざりしたオルナウグ〉に座ってエールを飲んでいた時、ダミエン・ギニーズが大きな口を開けてこう言うのが聞こえたのです。「ドレッドセイルが欲しがっているものをくれてやったらどうだ?ヴァスティルを明け渡す。俺たちはどこでもやり直せるさ」

ヴァスティルを明け渡す?あの男は街を明け渡せば襲撃が止むとでも思っているのでしょうか?奴らが欲しいのは土地ではない。奴らが港を襲うのは、ヴァスティルに住みたいからではないのです!

ドレッドセイルに区画を渡したら、奴らは軟弱と思い、我々が諦めた証と見なすはずです。ヴァスティルの路地が奴らの手に落ちたら、もう攻撃が止むことはありません。我々が全員死に、奴らがガレンを海賊の隠れ家か何かに変えてしまうまでは。

だから何があっても、ダミエン・ギニーズのような愚か者の言葉に耳を貸してはなりません。海賊の要求に屈してはいけない。そしてモーナード家を信じ続けてください。彼らは我らの街を守り、悪党どもを追い払ってくれるのですから。

忠実なる市民、クリストフ・アリエル

ドレッドセイルへの命令Dreadsail Orders

ドレッドセイルよ!

私はお前たちに安息の地を約束した。今、我らの新たな故郷への道が目の前に開けている。私はガレンの強大なドルイドと取引した。その人物が、島で我らが要塞の確保を助けてくれる。

見返りとしてその人物は敵対するサークル、エルダータイドが所持する、ある遺物の入手を求めている。島の東岸を襲撃し、その遺物を探せ。見つからなければ、捕虜を捕えて尋問し。エルダータイドのドルイドの中に、伝承の語り部がいるはずだ。探し方を知っているだろう。

俺を失望させるな。ドルイドの遺物だけで、新たな家が手に入るんだぞ!

シーロード・ナロス

ナヴィール城の騎士The Dame of Castle Navire

船乗りたちよ、集まって耳を貸せ

激しい愛の物語を話そう

私は略奪者と戦い、極寒のスコールにも耐えた

だがナヴィールでの試合で恋に落ちた

伝令の布告を聞いて、我々は遠くから来た

山の崖から、寒い海辺から

腕を掲げ、我らが愛する人を称えた

ナヴィール城の騎士となった人を

巻きついた船の綱よりもがっしりした筋肉

「戦艦の一撃」とあだ名された右手のフック

彼女はゴンファローネの路上で孤独に育ち

一度もトーナメントで負けたことがなかった

伝令の布告を聞いて、我々は遠くから来た

山の崖から、寒い海辺から

腕を掲げ、我らが愛する人を称えた

ナヴィール城の騎士となった人を

汗でもつれた髪の毛で、彼女は剣を掲げ

その切っ先をナヴィールの騎士団長に突きつけた

「私はすべての騎士を倒し、すべての試練に打ち勝った

ハイ・アイルで一番強い者に馬上試合を挑みたい」

伝令の布告を聞いて、我々は遠くから来た

山の崖から、寒い海辺から

腕を掲げ、我らが愛する人を称えた

ナヴィール城の騎士となった人を

蹄が叩く音と声援に囲まれ、二人は激しく戦った

壊れた盾は血まみれの中庭に投げ捨てられた

老いも若きも、男たちは彼女の死を恐れた

二人は激突し、我らは全員息を止めた

この老いぼれの海賊はもうずっと

涙を流したことなんてなかったが

砂埃が収まり、彼女の姿が現れた時は

海を贈れそうなほど感激した

伝令の布告を聞いて、我々は遠くから来た

山の崖から、寒い海辺から

腕を掲げ、我らが愛する人を称えた

ナヴィール城の騎士となった人を

ナヴィール城の騎士となった人を

ネリへのメモNote to Neri

ネリ、

忙しくしているようだが、本当の任務のために少しは体力を温存しておけ。

ミナヘルはあのエロリエンとラニウィスの馬鹿どもが何をしたのか、はっきりするまで閉じ込めておきたいと言っている。奴らは古いドルイドの部屋にいる。俺たちが普段、酔いつぶれたり暴れたりした船乗りを、酔いが醒めるまで閉じ込めている場所だ。シーウィッチよりも先に、奴ら同士で殺しあわないよう見張っておけ。今は奴らに、それなりに元気なまま生きていてもらわねばならん。

ミナヘルは何だか知らんが奴らが起動させたものを元に戻すため、二人を生かしておく必要があると何度も念を押している。ミナヘルは奴らの愚かさに怒り狂ったかと思えば、急に冷静になる。そういう時は、彼女に魅力を感じるよ!普段なら恐ろしい存在なんだが。しかしドルイドが不気味な儀式をしていた場所にあった古代の遺物を使ってみようと思うなんて、相当な馬鹿だな。

それはそうと、お前の新しいおもちゃに嫉妬したほうがいいか?

モリグ

バカロ卿の日記Lord Bacaro’s Journal

〈直近の記述が以下に記されている〉

当初、ハイ・アイルとガレンでの失敗には怒りが収まらなかった。成功を確実にするためあらゆる準備をしたのに。同盟の指導者たちは海で死ぬはずだったが、奴らはしぶとかった。そして魔導師は全旗の小島で奴らを仕留めることに失敗した。レディ・アラベルの勇者があの愚か者を殺していなかったら、私が始末していたところだ。

さらに奴らはガレンでの計画も阻止した。モーナード家は倒れ、私は統一されたドルイド帝国を味方につけているはずだった。そして揺るぎなき者の会を解散させ、超越騎士団に置き換えるはずだった。

魔導師は傲慢すぎたし、アークドルイド・オルレイスは臆病すぎた。他の者にまた裏切られるのはごめんだ。新たなドルイド王が立ち上がり、予言を実現して聖なる象徴を手にするべきだ。

私はこの瞬間を常に目指してきた。これは私の血の遺産なのだ。私はドルイド王カソレインの最後の生きた末裔。我が母の血筋により、ブレトンの遺産は私が手にするべきだ!私は自分が権力を集中させて計画を練っている間、しばらくはオルレイスに統治を任せてやるつもりだった。だがあの女は弱すぎた。今、私が足を踏み出さねばならないことがわかった。ルビーの玉座の腐敗に代えて、純粋なる蔦の玉座を置かなければならない。自然もそれを求めている。

王の象徴を手に入れ、ファイアソング山の真の力を目覚めさせたら、今の秩序など炎と灰の中に沈めてやる。そして灰の中から新たな秩序が立ち上がる。脆いルビーと石ではなく、絡みつき成長し、広がっていく茨と蔦、根の秩序だ。新たな緑の時代が幕を開け、古い時代の血を糧とするだろう!

ファウンズ・チケット調査メモFauns’ Thicket Research Notes

ドルイド・マデナ、ファウンズ・チケット

観察 45:
ファウンは目立たないながらも厳格な階級の下で生きている。群れはオスとメスのつがいによって率いられ、おそらく指導者のつがいに報告する副官たちを見分けられると思う。その下には食料を探すファウンや若者の世話をするファウン、危険を見張るファウンがいる。

観察 46:
すべてのファウンは明確にベリーと果物を好むが、最も若いファウンが常に、手に入る中で最も熟した食料を与えられる。これまで群れの中では見られなかった利他的行動である。

観察 47:
ある副官が群れを指導するメスと普段より長い時間を過ごしている。

観察 50:
ファウンには意識があるのか?これはガレンのドルイドたちの間で大いに議論されている。彼らは道具を使用する能力を示し、娯楽のためにゲームをする。しかしカラスも道具を使いゲームをするが、我々はカラスに意識があるとは考えない。ここでの観察を続けよう。この根本的な問いへの答えは、私の住居と海辺の間の距離くらいに、私の知性から遠く離れている。

観察 52:
ファウンたちは私の持ち物を漁り始めている。紙を踏みつけた者がいる。また別のファウンは、土に残った蹄の跡でわかるが、私の毛布めがけてわざとインクの瓶をひっくり返したようだ。この程度の被害で済んだことを喜ぶべきなのだろうが、そんな気にはなれない。毛布の染みはもう落とせないだろう。

観察 53:
指導者のオスが下剋上を狙う副官に気づいた。今夜は群れから多くの鳴き声が聞こえる。彼らの争いと議論で、私の休息が妨害されるのではないかと不安だ。

観察 60:
ファウンの戦闘における様々な戦法の図を書いた。機嫌の悪いファウンと戦う羽目になったら、彼らの蹄の威力についてより正確な予測ができるだろう。

観察 61:
狡猾な副官は群れから追放された。彼が肩を落として夜明けに去っていくのを見た。私も夜は眠れず辛かったが、あのファウンは間違いなく、それ以上に辛い思いをしたはずだ。

観察 63:
いくつかの石に警告と呪いの言葉を刻んでおいた。ファウンは私の怒りを恐れはしないだろうが、ドルイド魔術の匂いは知っている。私の住居は安全だ。今のところは。

観察 67:
指導者のつがいは宮廷での王や女王のように振る舞っている。彼らはチケットを大々的に巡回し、自分たちの優れた毛皮と、群れのファウンに対する支配力を見せびらかしている。若いファウンたちが女王に花や収穫したばかりのベリーを持ってくるのもこっそり見た。王は自分の領地を視察し、群れの安全を守るために歩哨を増やすべき場所を指図した。見事な光景だったし、彼らが複雑な階級を有しているという、私の信念を強めてくれた。

観察 70:
これは茶番だ。ファウンたちは私が観察しているのを見て、宮廷生活の真似事をしようと決めたのだ。王と女王だって?彼らは互いを好きでさえなかった。私が巡回を観察した後、「宮廷」のある若いメンバーが私のほうを向いて忍び笑いを漏らしたのに気づいた。彼らは領地を視察していたのではなく、チケット中を歩き回って、私によく見えるよう取り計らっていたのだ。

私はここに留まりすぎた。夜が明けたらすぐグリマーターンに出発しよう。ファウンたちが私をからかっていただけということにより、私の仕事はすべて台無しになってしまった。

ブレトンの遺産Legacy of the Bretons

ステファン・モーナードによる一連の考察

ブレトンとして学術を学んだ貴族であり、ガレンのドルイドと共に学んだ者として、私はしばしば自分の本当の素性について考える。要するに私はいつもブレトンであるとはどういうことか、我々の先人たちはどのような遺産を残したのかを理解しようと努めている。それ以上に重要なのは、後に来る者たちのために我々がどのような遺産を残すべきかということだ。

モーナード家の子でありブレトンである私の場合、どちらの遺産の方が大きく、今日の私を形作っているのだろう?それよりも、私はどちらの側を望むのだろう?人間でありエルフでもあるという私の二重の性質は、私の血管を流れる血に由来するのか?ブレトンは我々の歴史の初期、望まれぬ混血種と考えられていたが、我々はその暗黒時代を乗り越え、ハイロックと諸島の中核をなす民となった。だが、そのことは何を意味しているのか?私は人間か、それともエルフか?それとも合わさって新しい何かに、足したよりも優れた何かになったのだろうか?

現代のブレトンには二重の遺産がもう一対ある。騎士団の伝統と、我々が生まれ持つ魔術だ。それは我々の血の中に流れている。だがアルケインの呼び声は、我々の血筋を流れる唯一の魔術ではない。ドルイドの自然魔術は、ブレトンの出現からまだそれほど経っていない時代、ハイロックに最初のドルイド共同体が集まった後に生み出された、真の意味でブレトンが創った最初のものかもしれない。我々の魔導騎士や魔術師の魔術は独特な形式ながら、ドルイドの魔術と一定の類似を有している。呪文や儀式へ特に顕著に現れているが、アルケインが形式的な教えや魔術書に依拠するのに対し、ドルイドは自然の霊魂やイフレの神聖なる力に呼びかける。

これらすべてと関わるのは、古来よりの戦いである。すなわち、どちらの社会形態がブレトンをより代表しているのか?まずハイロックで発展し、それからシストレスに手を伸ばした騎士と城塞の家紋と栄光か、それとも自然の受容と純粋で飾り気のない生への呼びかけか、どちらがブレトン文化の真の証なのか?私はどちらの方式も、我々に共通の遺産を形成していると信じる。融合させて新しい、完全にブレトン的なものへ作り変える道を見つけたいと思う。それこそが正当なる遺産となるだろう。

ベライとモルモーBelaigh and the Molmor

上級歴史家、シリノ・ヘンター 著

全旗海軍がスラスに出航し、正義の稲妻のごとくスロードを滅ぼしたと一般に言われている。しかし、これが物語のすべてではない。スラスのスロードは無気力で臆病だったかもしれないが、彼らはハイ・アイルの造船所で形を取りつつあった破滅を予期していた。スロードは何度か巨大な海の怪物を解き放ち、シストレス諸島を攻撃させた。その中でも最強の怪物は、モルモーと呼ばれる獣である。

生存者の中には、滴り落ちる粘液に覆われた巨大なクジラと記している者がいる。また、タコのような触手でものを掴むと主張する者もいる。そしてモルモーを見た者の一部は、それぞれ騎士の槍よりも長い鋭い棘が、まさしく森となって生えていたと語っている。モルモーが泳げば、海は黒く泡立つ。そして海岸まで寄ってくると、その途上にあるすべてのものは粉砕される。

7年間、この獣はガレンの沿岸を荒らしまわった。全旗海軍の多くの船長がモルモーを倒そうとしたが、成功しなかった。ついに男爵提督ベンドゥ・オロは支援を呼びかけ、この獣を倒すことのできた者には誰であろうと、望みの褒美が与えられると約束した。

モルモーは狩ろうとしたほぼすべての者を溺れさせ、あるいは貪り食ってしまったため、最も勇敢な英雄でさえ躊躇した。しかしその時、無名の若いガレンのドルイドが前に進み出た。「私はエルダータイドのベライです」と彼女は男爵提督に言った。「その怪物を追い払いましょう。しかしあなたには約束を守り、私に褒美を与えてもらいます」

ベンドゥ・オロはすぐに同意したが、自分の約束について不安を抱いてはいなかった。ベライは20歳にもならないメイドであり、葦のごとく細身で、ボロを身にまとっていた。しかしこの若い女の態度の何かが、彼を困惑させた。そのためオロは自分の家から騎士を同行させ、彼女の行動を報告させることにした。

まずベライはガレンで最も高い丘に登り、その頂上から石の欠片を取った。そして彼女は島の森へ行き、最も元気なオークの木からドングリを拾った。次に、ベライは蒸気を噴き出す火口へ行き、灰を集めた。最後に、彼女は島の中心にある深い泉に行き、その清水を使って灰とドングリ、石を混ぜ固めた。「これで獣の相手をする用意ができました」と彼女は困惑する騎士に言った。

「濡れた土くれでどうやってモルモーを殺すつもりだ?」と騎士は嘲笑った。

「モルモーは自分で自分を殺すでしょう」とベライは答え、海辺に行って怪物を探した。モルモーを探すのは難しいことではなかった。モルモーは西の湾に浮かんで休んでいた。脇腹の部分から汚い泡が噴き出していた。乙女は湾を見下ろせる場所まで登り、怪物に呼び掛けた。「忌まわしき獣よ!私は小さな肉片だけど、あなたの腹を満たしましょう。来て私を食べるがいい!」

モルモーは彼女の叫びを聞き、急いでやって来た。そのあまりの素早さと恐ろしさに、ベンドゥ・オロの騎士は恐怖で転んでしまった。しかしモルモーが口を開けてベライを飲み込もうとした時、彼女は石と種、灰と水の塊を怪物の喉の奥に投げ込み、緑に呼びかけた。モルモーはあと少しのところでベライも飲み込んでしまうところだったが、彼女は横に飛びのいた。もう一度襲いかかる前に、大きな痛みが怪物の腹を襲った。

モルモーは咆哮を上げながらもがき、海に戻っていった。騎士が驚いたことに、以前は粘液が垂れていた穴から、生きた茨の蔦が噴出していた。怪物の触手や脇腹は石のようになり、急速に海底へと引きずりこまれた。そして突き出していた棘は木に変わっていた。ほんのわずかな間に、モルモーは海の中で大岩に変化し、海草で覆われ、小さな森を生やしていたのだ。

「終わりました」とベライは騎士に言った。「さあ、あなたの指導者のところへ連れていって」

騎士は求められた通り、ベンドゥ・オロに見たことをすべて伝えた。男爵提督はベライを見て頭を下げた。「約束は守ろう。望みの褒美を言うがいい」と彼は言った。

「ガレンの生きた木を切ること、石を壊すことをやめてください」と彼女は答えた。「あなたたちの木こりと鉱山労働者を呼び戻して。この島をあなたたちの艦隊を作るために利用してはなりません」

ベンドゥ・オロは無念そうにため息をついた。ガレンの力強い木々と豊富な鉱脈があれば、全旗海軍の建設に大きな助けとなっただろうに。しかし約束はすでになされた。そして彼は約束を守った。「よかろう」とオロは答えた。こうしてガレンは斧とつるはしによるこれ以上の被害を免れたのだった。

ベライについて、これ以上の物語は伝えられていない。だがモルモー島はガレン西岸沖の海に今でも残っている。

ヘレニー卿の冒険Dame Helenie’s Quest

モーナード家のヘレニー卿による、ヴァスティルの宝石を取り戻す危険な冒険を成功させた英雄物語。アルバトロス騎士団のランディル卿によって記録された

悪しき盗賊の一団が、モーナード城の衛兵たちを騙すことに成功した。無謀で傲慢ではあったが、盗賊たちは宝物庫への道を見つけだし、ヴァスティルの貴重な宝石を盗む程度には巧妙だった。盗みを働く間に血は一滴も流れなかったが、モーナード家に対する侮辱が無視されることはなかった。

ヘレニー卿は勇敢にも盗賊たちを追いかけることを志願した。彼女は二週間で盗賊どもを裁きにかけると約束した。モーナード家はこれを認め、旅のための物資を彼女に与えて送り出した。
ヘレニー卿は城を去ると、三日間盗賊たちの痕跡を追った。ヘレニー卿は馬に乗って進んだが、海からやって来た激しい嵐に巻き込まれ、ガレンの深い森へと逃げ込んだ。そこから彼女は道を見失わないため、機転と地形についてのわずかな知識を用いなければならなかった。彼女はスプリガンやファウンなど、自然に潜む凶暴な敵と戦い、眠る時はすぐに飛び起きて戦えるよう、剣を膝の上に乗せた。

盗賊たちにはモーナード城を出た後別々の道を行くほどの知恵がなかったので、ヘレニー卿は簡単に彼らの痕跡を追うことができた。盗賊たちは愚かにも、ガレンの自然深くにあるドルイド集落の近くにいれば、モーナード家も追手をよこすまいと思い込んでいた。だがヘレニー卿はそんなことで怯むような人間ではなかった。それどころか、彼女は道の途中で数人のドルイドに話しかけ、盗賊を見なかったかと尋ねた。大部分のドルイドは友好的で、貴重な情報を与えてくれた。彼女を追い払い、明確に敵意を見せた者はごくわずかだった。そのような障害に出会った場合でさえ、ヘレニー卿は礼儀正しく話し合いで解決した。彼女の任務はモーナード家のために犯罪者に裁きを下すことだけだ。それ以外は島の何も乱すつもりはなかった。

旅の10日目、ヘレニー卿の食料は残り少なくなり、馬は足を引きずるようになった。彼女は馬を休ませた。盗賊たちが野営した場所はすぐ近くにあることを知っていたからだ。彼女は盗賊たちの不意を突くため夜明けに起きた。影のように音もなく、ヘレニー卿は盗賊の野営地に忍び込み、一番近くにいた盗賊の首に短剣を突きつけた。彼女は口を開くなと言い、盗賊の手足を縄で縛った。そして彼女は他の盗賊たちに互いを縛り上げるよう命じた。その間もずっと、最初の盗賊の喉元に刃を突きつけながら。

盗賊たちを見事に捕えた後、ヘレニー卿は彼らの馬を集めて、盗賊たちを全員ヴァスティルまで送り届けた。彼女は大股で街を歩き城へ向かったが、見てもほとんどヘレニー卿だとはわからないほどだった。彼女の鎧は泥に覆われ、ブーツからは葉が突き出し、顔には引っかき傷や泥の汚れが付いていた。十四日の間、街の外にいた彼女は野生の獣のように見えた。だがヘレニー卿はモーナード家に盗賊たちを突き出して、にやりと笑った。その後、ヘレニー卿は自らの手でヴァスティルの宝石を宝物庫へ返却し、彼女を称える祝宴が開かれた。

ボルガによるガレンの獣ガイドBolga’s Guide to Galen Beasts

ミストラルの女狩人、ボルガ・グラブール 著

編者注:オークの狩人ボルガは友人を訪ねるため、美しいガレンに来ている。そのため彼女はペンを取って紙に記すことにした。ここではボルガが彼女なりの面白おかしい方法で、ガレン島の獣について教えてくれる。弱い獣から強い獣までの倒す方法と、食べて旨いかどうかを。

* * *

フェニックスモス

綺麗だけど燃えている。食べるには最悪。

ドルイドは自分たちがこの蛾を作る物語を話す。本当なら大したものだけど、ボルガは疑わしいと思う。

育つまでは熱い芋虫。お茶に入れるとすぐ暖まる。

藁のテントにでも住んでいるのでなければ、危険はあまりない。その場合、水を用意すること。

* * *

ハドリッド

大きな蟹の民。喋る?よくわからない。

とても危険。強力な魔術と鋭い武器を持つ。集団で狩るために移動する。できれば海辺は避けるべき。

小さなグアルのような生き物を飼っている。サメのようなグアル。サメル?グアサメ?

倒せるなら、食べるととても美味しい。喋る蟹の民を食うのは間違っている?そういう話は学者に任せる。もっとバターが欲しい。

* * *

マグマフロッグ

カエル。でも火がついている。どうして燃えないのだろう?

長い舌で打ちつけ、長い距離をジャンプする。オスには硬い角がある。ヘラジカに似ているけど、尖ってる。

最初のマグマフロッグはイフレの道の物語から飛び出してきたという話を聞いた。どういう意味かはよくわからない。

意外なほど美味。秘密のレシピ:肉の切り身を冷まし、塩とニンニク、パプリカを振る。果物のジュースに一晩浸けて柔らかくする。サラダに加えて食べる。

* * *

ファイアニクサド

これは一体何なの?虫?人間?気味が悪い。

刺すし、噛む。あなたがボルガの兄弟より馬鹿なら、服も燃える。

危険というより害虫。食べるのにはまるで向かない。熱すぎて舌が火傷するし、味は灰のようだ。

ヴァスティルの人がニクサドに、音に合わせてハミングする芸を教えていた。いい音だった。\

* * *

キメラ

首が三つあるライオンみたいなやつ。多分会うことはないだろう。見たら走って逃げたほうがいい。急いで。

友達が昔キメラの世話をしていたけど、死んでしまったと言っていた。その話をする時、彼女は悲しそうだった。

食べようとするのは労力に見合わない。ボルガを信じて欲しい。

* * *

ファウン

鹿の民。ボルガは友達になりたかったが、殺されそうになった。

鋭い武器と欺きの魔術。避けたほうがいい。

鹿は美味しい。でもファウンを食べるのはどう考えても間違っている気がする。ハドリッドと何が違うのか?

ボルガに聞かないで。ボルガは真実を書いているだけ。

* * *

アッシュホッパー

大きなバッタ。あまり危険はない。

味はとてもいい!体は食べ応えがあり、たんぱく質は豊富だ。火にかける前に濃いソースを塗る。溶岩に直接突っ込んでもいい。それでも焼ける。

* * *

フォレストレイス

ボルガには不気味すぎる。物語は聞くが、見たことはない。探そうともしなかった。

これはボルガの推測だけど、多分味もよくない。

* * *

パングリット
旅をしていたら、あのサメグアルの名前がわかった。パングリット!

アリットに似ている。口に脚が付いている。歯が多すぎる。

可愛くて調教しやすいだけでなく、かなり美味。この点ではグアルに似ている。

ハチミツを塗って焼くか、スパイスを効かせたベリーソースがいい。

マッドクラブのモリスMolith the Mudcrab

ガレンの潮だまりにモリスというマッドクラブが住んでいた。
誰も関わりたがらない、気難しい蟹だった。
彼は6まで数えることができた、脚1本につき1つ
そしてシャウラスの卵の色をした、自分の殻を誇りにしていた

大きな恐ろしい爪で、彼は小さい動物に命令した
シースラグや魚、水面を走るものに
爪を打ち鳴らして、彼はこうしろああしろと命じた
そして言い返す者がいたら、彼は叩き潰してしまった

「ウニやヒトデや、その他の雑魚どもよ
この仕事をやらなければ、すぐさま放り出すぞ!
そこの海草を片づけろ、その真珠を磨け
そこのフジツボを削り取って、投げ捨ててしまえ!」

動物たちは全員従い、仕事をすべてやった
海辺に投げ捨てられないようにするためにはそれしかなかった
海辺は乾いて不愉快な場所、拾い上げられて食べられるだけ
厳しく働くか、誰かのシーフードになるかだった

ほとんどのマッドクラブは宗教なんて言葉を知らないが
彼らが働いている間、モリスは内面に深く目を向けた
彼は塩水に浸った心の中に、愛と似ていなくもない温かみを感じた
そして大きな蟹が空の上から見守っていると考えた

彼は石でできた大きな爪を持つ蟹を思い描いた
自分の殻と似たような、明るく輝く殻を持ち
それから名前も!そう、名前だ!重要な蟹には名前がある
ゾリスとかゴリスとか、そういう名前が

大きな蟹が見たらどんなに素晴らしいことだろう
モリスが海のこの部分を手懐けたことを
この潮だまりは彼のもの、すべては美しく秩序だっている
どの表面も手入れされ、完璧に磨かれている

するとモリスのささやかな家の上に影が立ち上る
泡を突き抜けてブーツの底が現れる
そのわずかな一瞬だけ、彼はあの方が来たと思った
お空の大きな蟹が、一泳ぎするために降りてきた!

だがそれはゾリスでもゴリスでもなく、名のあるどんな神でもなかった
ジャンヌとかいう名前の、ただの若い船乗りだった
彼女は無頓着に潮だまりを駆け抜け
足を置く場所なんて気にもかけなかった

そして船乗りはやって来たと思ったらいなくなり
動物たちはがっかりしたかと思うだろう
彼らは泣き、肩をすくめてため息をついたかもしれない
マッドクラブのモリスが死んだ哀しみのせいで

でも潮だまりは静かになって、誰も命令しなくなった
海草が絡まっても、伸びすぎても誰も気にしない
フジツボが居座って、真珠がくすんだからどうだって?
誰も通りすがりのカモメに放り投げられるのを怖れなくてもよくなった

だから誰も汚れに文句を言わなくなった
潮だまりには活気が戻ってきた、シースラグとその粘液も戻ってきた
海草たちもすくすくと伸びた
今じゃフジツボの家族も、モリスという殻に住み着いた

ミナヘルのメモMinahel’s Note

エロリエンとラニウィスのように愚かな連中が、他にドルイドの小物を見つけていないか確認しなさい。とりあえずアンキュルは眠らせるしかなかった。彼はあの遺物の効果により早くやられてしまった。愚かにもあれを素手で触ったから。

妙な感覚がするようになったら、部屋を離れなさい。水辺を歩いたほうがいいかもしれない。新鮮な空気とそよ風は影響を緩和してくれる可能性がある。私たちはこの遺物が引き起こすらしい、最悪の衝動を抑えられるものがないか探している。

この遺物の力を抑制する方法を見つけてみせる。実際、遺物の作用を恒久的にどうにかする方法を発見できる日も遠くないかもしれない。でもそれには時間がかかる。できるだけドレッドセイルには近づかないように。奴らの規則的な生活は影響をそれなりに緩和しているけど、私たちが取り組んでいる解決法が完成するまで、バランスを崩したくない。

ミナヘル

ミラの日記:サルベージMirah’s Journal: The Salvage

(水で損傷しているため、この日記の記述の多くはほとんど解読できない)

滑らかな肌の者が地図と夢を持ってくるたびに金貨をもらえていたら、ミラはガラクタと交換で愚か者どもに自分の船を貸し出す必要なんてなかっただろう。今日、ガルスという財宝を嗅ぎまわる者がありったけの船乗りに頼み込んで、スラシア海域に連れていってもらおうとしていた。あの哀れな愚か者は、船乗りがどれだけ迷信深いか知らないらしい。

* * *
今日、あのガルスとかいう奴がまた来た。ミラは彼の地図に一瞬だけ目を通した。もしかすると、これは本物かもしれない。

* * *
ミラの目が恐ろしいとガルスが言う。ランターンが消えると、獣の目のように輝くと。この者はそれが悪いことだとは思わない。ミラは財宝を探す滑らかな肌の者の相手をする時、恐怖が強力な道具になることを学んだ。それに、夜中にランターンを消して航海するのはこの者の発案ではない。ガルスの奴が言い張ったのだ。今奴は地図に目を凝らしているが、それでも考えは変わらないらしい。爪の鈍った愚か者め、顔にほとんど毛もないくせに。ジョーンとジョーデよ、導きたまえ!

* * *
死んだサンゴ礁の端まで来た。ガルスは興奮しているようだが、この者にとっては危険な海域で1週間を無駄にしただけだ。しかし、ガルスには水泳の才能があるらしく、水中呼吸の魔術の知識も持っているようだ。奴は一日の大半を海に飛び込んで過ごし、石の破片や残骸を引き上げている。富を約束し、もうすぐだと言っているが、怪しいものだ。

* * *
今日、妙なことが起こった。釣りをしている時、この者はガルスが息継ぎのため針の近くに上がってくるのを見たように思った。ミラはよくも夕飯を追い払ったなと叱ろうとした。奴が持ってきた石を投げようと手に取ったほどだ。だがそれはガルスじゃなかった。この者が瞬きすると、財宝探しの顔が見えたと思った場所には、午後の陽を浴びて白く色褪せたサンゴの死骸があるだけだった。

* * *
3日間潜り続けた後、ガルスはついに金目のものを見つけた。アレッシア帝国のシンボルが印璽された、ゴールドの詰まった袋だ。この滑らかな肌の者は、全旗海軍の船の残骸を見つけたのだ。この下にはまだ何が眠っているかを思って、ミラは唾を飲み込んだ。

* * *
日没になったのに、ガルスはまだ息継ぎに上がってこない。いくら魔術が使えるといっても、奴がこれほど長い間水中にいられるはずがないことをミラは知っている。その意味を考えると、ミラの胃がぎゅっと締めつけられた。もう沖に出ていても仕方ない。太陽は低すぎるし、海風さえなくなった。ガルスが朝までに戻らなかったら、この者はヴァスティルに戻るため船を出す。

* * *
船体がノックされている?気のせいじゃない。何かが水面下から、船の外側を叩いているのだ。一刻も早く夜明けが来て欲しい。

* * *
奴の姿が見えた。ガルスだ。風を受けて、もうサンゴ礁から遠く離れているのに、この文を書いているミラの爪が震える。奴は歪められていた。異形の抜け殻へと変貌させられていたのだ。地図もあの海域もクソ喰らえだ。キナレスよ、ガルスをレレスウェアに導きたまえ。

* * *
ノックだ。まだノックの音が聞こえる。

王からの命令Orders from the Lord

ドルイド・エドレルド、

ギャリックズ・レストの地下にある庭園が満開だそうだな。完璧だ。積荷のワインを受け取ったら、以下のように事を進めてもらいたい。

お前が新たに開発した毒をワインボトルのうち1本に加えろ。私はボトルがレディ・アラベルへの贈答品に入るよう取り計らっておいた。彼女は疑いを強めており、我々が行動しなければ揺るぎなき邸宅にいる密偵を発見されてしまう可能性が高い。彼女はこの希少なビンテージの誘惑に耐えられまい。ワインには目がない女だからな。

エリア女公爵に送る贈り物にも同じようにせよ。その後残りのボトルを木箱に詰めろ。配達人が外でお前に会う。配達された品を受け取り、ワインの木箱を配達人に渡せ。配達人はそれをナヴィール城に送る命令を受けている。すべて計画通りに行けば、アラベルとエリアは両方とも死に、その責任は当然、デュフォート家の不平分子に課せられるだろう。

遺物については、私が離れている間お前に保管してもらう。揺るぎなき邸宅が私の留守中に破損した場合は、館の地下室の下にあるトンネルに入れ。そこにある文書はすべて破棄しろ。その時が来るまで、我々の真の素性を明かすわけにはいかない。

超越の王

火山の霊魂Spirit of the Volcano

(ドルイドの歌)

我らが山の歌は煙と炎をもたらす
熱を恐れるなかれ、手懐けようとするなかれ
大地は割れ、炎は飲み込む
不吉な予兆も、怒りも責めてはならぬ

山の震える言葉に耳を傾けよ
山が声を発するたび、木々は折れ
波も山に当たって砕け、その足元で煮え上がる
山はどんな王にも膝を曲げることはない

火山の霊魂は自らの織り機で命を紡ぐ
炎が弾けるところには、今や花が咲き
大地が割れるところには、島が育つ
快晴の空は、分厚い煙を貫いて現れる

夜が明けると、我らは山を称えて歌う
鳥たちはその燃え盛る視線から帰還し
新たな命が焼けただれたふもとから育つ
その霊魂は我々の生を越えて続く

我がシストレスを見るためにTo See My Systres

1.
亡霊の海の海岸を抱きしめ
囁き声を聞くたび飛び上がる
カイネの麗しき眷属に最期のキスを
だが私はシストレスを見たい

(コーラス)
進め、波に揺られながら
陽光のきらめきに包まれて
輝く青い海を越え、船を走らせる
我がシストレスのために

2.
作業員を乗せダンマーの国を進み
サクスリールの早口言葉を歌う
モロウウィンドで酒を飲み、罪を犯しに行けばよい
私はそれよりシストレスを見たい

3.
レヤウィンへ船を走らせ
上品な乙女や紳士と出会う
トパル湾から錨を上げ
シストレスを見るため船を出す

4.
カジートの地には暖かい砂
尻尾と髭には心地よい
だが猫の仲間たちは絶えず喉を鳴らす
我が甘美なるシストレスへの愛のために

5.
ボズマーの乙女が私に船代を払った
力添えを頼むために
金さえもらえば一晩中でも船を走らせる
我がシストレスを見るためならば

6.
ヴァルケルガードで吟遊詩人と寝た
逆らえない魅力を持っていた
サマーセットに太陽が沈むなら
昇るのは我がシストレスの上

7.
地上から離れず、足にまめを作って世界を歩く
そんな男の話ほど悲しいものはない
だがアリクルの声援と共に、彼も船に乗り
祝福されし我がシストレスに出会うだろう

(コーラス)
進め、波に揺られながら
陽光のきらめきに包まれて
輝く青い海を越え、船を走らせる
我がシストレスのために

8.
ストーントゥース要塞でオークのクランに出会った
牙とでこぼこの髭を持つ者たちに
海辺を遠く離れれば、もう戦わない
休戦は我が愛するシストレスのため

(コーラス)
進め、波に揺られながら
陽光のきらめきに包まれて
輝く青い海を越え、船を走らせる
我がシストレスのために

9.
人生は船乗りの歌のように長い
私は死のことなど考えない
運命の波に逆らうつもりもない
だから私をシストレスに帰してくれ
我々をシストレスに帰してくれ

歓迎しよう、新たなる者よ!Welcome, Initiates!

ようこそ、超越騎士団の入団者たち!

全旗の小島での事件以来、多くの者が我々は敗退したと信じている。だが理想の炎はそう簡単に消えるものではない。お前たちは噂をたどって我々にたどり着いた。他の者たちも遠からず、我らの地を支配している戦争狂の王族に抗う大波に加わるだろう。

シストレスに蜂起が迫っている。ガレンの事件は始まりにすぎない。ドルイドの同志に加わり、我らの正当な所有物を取り戻せ!カソレインの夢は現実となり、我らは力を合わせてブレトンの遺産を取り返す!

私はそれを誓う。
超越の王

救い出してくれRescue Me

(哀愁漂う旋律)

鎮まった海の岸から遠く離れて
私たちは遭難した
悲劇だ
やむを得ずグログを節約した
キナレスが我らを解放してくれるまで

孤独な漂流の旅、笑顔も消えた
故郷からは遠く
未知の領域へ向かう
この先に起こることを予期して
航海士の心は重く沈む

[リフレイン]
空は赤く光り、パンにはカビが生える
絶望が皆の心をふさぎ込ませる
我らは運命に絡めとられた、もはや手遅れだろうか
この呪われた戒めから逃れるのは

道を示してくれるものもほぼなく
我らは皆で祈った
遠く、道を見失って
希望はいまだ残っている、我らの湾を見つけて
宴会の日までに、故郷へ帰りたい

[リフレイン]
空は赤く光り、パンにはカビが生える
絶望が皆の心をふさぎ込ませる
我らは運命に迷い込んだ、もはや手遅れだ
この呪われた戒めから逃れるのは

[虚ろなこだま]
戒め
[長く響かせる]
戒め

キナレスよ許してくれ、我が願いを聞いてくれ
私を解放してくれ
この海から
この旅路で残されたのは私だけ
誰か、私を救い出してくれ
誰か、私を救い出してくれ
どうかキナレスよ、私を救い出してくれ

禁じられた島、イフェロンY’ffelon, the Forbidden Island

高名な学者にしてあらゆる文化の学徒、イグナティウス・ガレヌス 著

これはシストレス諸島のドルイドの島を旅した記録である。

この島に着いた時から、私が歓迎されないかもしれないことはわかっていた。この島から離れようとしない、秘密に包まれたドルイドの知識を記録し保存するために必要なリスクではある。 危険があったとしても構わないと思っていた。しかし、危険はあらゆる場所に潜んでいる。そして、ハイ・アイルやガレンのストーンロア・ドルイドから受けたような歓迎はイフェロンで受けられなかった。

島と建物を研究した結果、私はこの地のドルイドと接触を目指した。彼らは私の報告をより詳細にしてくれるし、その導きがなければ報告を完成できないだろう。どんな学術文書にも文脈は要る。ストーンロアは歓迎してくれたが、エルダータイドはそうでもなかった。

しかし羽根ペンを手にイフェロンのドルイド、ファイアソングの元へ向かうと、当初は混乱された。次に無表情となり、すぐに怒りが続いた。彼らに挨拶してから無害な質問を始めたが、質問が進むごとに表情が険しくなっていった。質問に対する彼らの反応はメモして、沈黙を唯一の非ドルイドとのコミュニケーションとして解釈を続けた。その時、ついにあるドルイドが前へ出て来てこちらを指さしてきた。無意識の反応として、敵意がないことを示すため手を上げようとした。しかし、羽根ペンのインクが乾き切っていなかった。それは指を指して来たドルイドの目に飛び込んだ。ただの事故だったのだが。

その場を離れるのが最善だと感じて、ドルイドから離れようとした。一歩離れるたびにドルイドは追ってきた。杖を握り、歯を剥き出して。理解できないが、私を傷つけようというのだ!必死に雇った船に戻って、船長に出港を願った。残念ながら、ファイアソング山のふもとに住むドルイドからこれ以上の情報は引き出せなかった。しかし、学術研究にはよくあることだ。

後は、学者仲間に任せよう。

現代のブレトン:人間かエルフか?Modern Day Bretons: Man or Mer?

ヴァスティルの歴史家、フィリバート・ビューシャム 著

ブレトンの歴史はかなり錯綜しており、長年の間多くの学者たちによって議論されてきた。この著作が出版されてずっと後になっても、議論が止むことはないだろう。それが謎というものだ。

積年の議論はある問題に集約される。ブレトンとは何者か、人間なのかエルフなのか?一般的な理解で我々ブレトンはそのどちらでもあるとされているが、どちらが優勢なのかについては様々な見解がある。

私の調査はもう何度も行ったり来たりを繰り返している。私はブレトンにおける人間性の優位についてと同じほどエルフの血の優位を論じてきたが、次の朝になると考えが変わってしまう!だが、ようやく一方の側に足を落ち着けることができたと思う。すなわち、エルフの側だ!

いかにしてこの結論に到達したのか、説明させて欲しい。ブレトンの起源として最も広く受け入れられている説は、神話紀におけるネードとアルドマーの交雑を基盤としている。ディレニ・クランがハイロックに来た時、彼らは我々のネードの祖先を見出したが、その中でも特筆すべきはガレンのドルイドと呼ばれる、ドルイド王の一族を通じてこの地域を統治していた集団であった。ディレニ・クランが影響力を行使し統治を行うにつれ、我らの祖先たちは封建的制度を構築し、それは多少の変化を加えながらも今日まで続いている。ディレニとネードの子供たちは人間よりエルフに近いと考えられたが、ディレニの親たちに受け入れられるには至らなかった。完全なエルフから排除される程度の違いはあったのである。

幸運にも、この違いは彼らを人間種から排除するほど大きくはなかった。むしろ、この違いは彼らの地位を高めたようだった。この子供たちはネード社会の中で有利な地位を占めた。そうして共同体が築かれ、その中で人々は繁栄した。

現在、我らブレトンがエルフよりも人間であると信じる者の多くは、我々の祖先が有利な立場にあったとはいえ、他の人間としか婚姻を許されなかったという事実に依拠している。文書や絵、その他の記述によっても、この事実は長年の間、我々の血統に一定の影響を及ぼしてきたことが見て取れる。尖った耳や角ばった顔、細身の体、特徴的な目などのエルフの身体的特徴は徐々に消えていった。その論理は確かに理解できる!我々の中のエルフの血が、時と共に薄められていったという考えは理に適っている。いわば池の中に落ちた絵具の雫のようなものである。

だが、ここからが私の仮説だ。我々がいくらかでもエルフ的血統の兆候を有しているということは、それが今でも我々の中で力を持っている証拠である。我々と、最初のブレトンの祖先たちは無数の世紀を隔てている。我々の特徴は時と共により人間的になっていったが、我々のエルフ的性質が完全に消滅していないことは重要である。ブレトン出身の人間としか子供を生むことを許されなかったのであれば、我々のうちにほとんどエルフは残っていないはずだ。これだけ長い間、これほど明確にエルフの性質が生き残ってきたことは、その強さを物語っている。

この文書で私は、問題が割合ではなく、強さであると申し上げたい!以下の23章で、私はこの仮説を詳細に解説し、これまでに集めた調査をより整理された形で展開していく。

古代ドルイドの血脈Ancient Druid Bloodlines

第二紀541年、レディ・ラリーナ・マーチャドによって依頼された詳細な系図調査

網羅的な調査を終え、ある程度の確実性を持って言えることは、あなたの一族が常に感じていたことがほぼ間違いなく真実だということです。マーチャドの血筋は確かに古代ブレトンの血筋であり、ハイロックにハーフエルフ種族が最初に出現した時にまで遡ります。さらに今日知られているこの一族が、ガレンのドルイドたちの最初の艦隊と共に、シストレス諸島に到着したドルイドにまで祖先を辿れる明確な証拠を発見いたしました。第一紀にハイロックを去ったドルイドです。

その上、マーチャドはブレトン原始ドルイドの祖先の一部だっただけでなく、明らかに王族の血筋であったことも自信を持って主張できます。ドルイド王カソレインが、現在のハイロックを統治する貴族に比較しうる存在と考えるならの話ですが。それにヴォロラスの血筋について我々が知っていることを付け加えれば、あなたのご子息は両王朝で最高の部分を受け継ぐことになるでしょう。

マーチャド家の紋章が種と葉を蒔く三つの器として描かれていることの説明は、ドルイドとの繋がり以外にありうるでしょうか?

〈この後にはこの文書が書かれた日からガレンの原始ドルイドの古い時代までたどり直す、複雑な系譜の記述が続いている。最後のドルイド王カソレインが明らかに家系図の中に示されている。この文書が記された日の最後の記述は、以下のようになっている〉

レディ・ラリーナ・マーチャド、第二紀521年――
ルーカン・ヴォロラス卿、第二紀516年――
(第二紀538年に結婚)

バカロ・ヴォロラス、第二紀540年――

使者の報告Messenger’s Report

倉庫長はあのフードを被った騎士たちが、造船所を警備するためデュフォート家に雇われたただの傭兵だと言っているが、信用できない。実際、デュフォート家の紋章を身につけた作業員がここには誰もいない。

はぐれ騎士団が造船所を奪取しているという、バカロ卿が受け取った報告は事実なのかもしれない。この情報をすぐにバカロ卿に届けたいが、倉庫長は出発前に造船所を巡っていくことを強く求めている。断れば疑いを招くかもしれない。揺るぎなき邸宅へ戻るには、少し待たなければなるまい。

使者への対処Deal with the Messenger

騎士隊長

揺るぎなき者の会はダンカン・ジェニスという使者をデュフォート造船所へ派遣した。我々が造船所を引き継ぐことを確認し、バカロ・ヴォロラス卿に我々の活動を報告する命令を受けている。到着したら、始末しておけ。我々の存在が確認されたことは、できる限り長い間秘密にしておかねばならん。

デュフォート造船所は我々の部隊を再建するために必須だ。必要と思うならばどんな方法でも使ってよい。支配を維持せよ。

超越の王

司祭とドルイドの議論12Argument Between Priest and Druid Number 12

八大神の司祭アーナレルウェとストーンロア・サークルのドルイド・マクセロットとの対話。
ドゥニウス・ソシアによってヴァスティルの路上で聞かれ、後世のために記録された。

(注記しておくべきと思われるが、著者はこの宗派間の議論がいつ起こるかを日常的に予想できるので、スイートロールを持って見物に来ていた。彼らのやりとりは友人同士の議論より、貴族が好む馬上槍試合に近いものである。著者はこれを大いに楽しんでおり、すべての議論を立ち聞きしている)

「ドルイドよ!質問を受ける覚悟はいいか!」
「おお、友よ。大聖堂では元気にやっているかね?」
「面倒な挨拶はいい。お前はなぜイフレだけに尽くす?八大神が与えたもう恵みには敬意を払わないのか?」
「その言い方はちょっと酷いだろう」
「それは謝るが、質問の意味は明確だろう、ドルイドよ。なぜイフレが唯一崇拝に値する神なのだ?」
「そうだな、他の者が何を信じているかは知らないが…まあ、周りを見てくれ。こんなに美しいものを見て、跪きたいと思わずにいられるだろうか?これはイフレの贈り物だ。私は自分に見える贈り物に感謝している」
「それでは心が狭すぎるのではないか?」
「そんなことはない。ああ!キナレスやマーラも称えるべきだと言いたいのか?それらの神々もいいだろう。君が彼らを称える歌を歌うならどうぞご自由に。しかし私は君の神々にあまり訴えるものを感じない。正直言って、八大神すべてを称える時間を君がどうやって見出しているのかわからないよ」
「時間だって?八大神のそれぞれには定められた饗宴や祝祭がある。我々は彼らの御業をすべての物事の中に認め、求められる通りに感謝を捧げるのだ」
「それじゃ同じことの繰り返しじゃないか」
「繰り返し?何を言う、反復はニルンの自然秩序だ。季節は回り続ける車輪のごとく巡る。鳥や獣の群れは規則的に移住する。雨は予測のつく道を通って降る。崇拝とはすべて繰り返しなのだ」
「だから君には自然の荒々しさが理解できないのさ。自然の自発性と神秘がね。確かに、私たちはイフレが教えるとおりの季節に従う。だが君は祭典や祝祭に従っている」
「八大神は称えられることを期待している」
「もちろんだとも」
「神々の知恵と命令に異を唱えたら、私は一体何になってしまうだろう?」
「単に自分の使命に忠実な司祭じゃないか?」
「この議論に勝ったと思っているのだろう?」
「まあ心配するな。きっと次はもっとちゃんと準備してくるんだろう」
「また明日、いつもの時間に市場でだな?」
「もちろん。たとえイフレが与えてくださるハチミツのためでも、議論の機会を逃したくはない!」
「今度は、大聖堂で崇拝することについて、お前の考えを聞かせてもらおう」
「大聖堂の中で?草と木から離れて?風を避けて?そんなところでは祈る相手がいないじゃないか」
「いや、いるのだよ!お前が崇拝する森の騒音から離れれば、我々の内に働く八大神を見出すことができる。我らの善行の一つひとつのうちに、神々の声を聴くことができる。そして――」
「アーナレルウェ!議論は明日のためにとっておけよ!」
「これは失礼。ではまた」

次の祝典に向けてFor Your Next Celebration

宛先:ナヴィール城、エリア・デュフォート女公爵

デュフォート家の昇格記念日に、貴家の大好物のワインならばお喜びいただけるのではないかと思いました。これの入手がいかに難しいかは承知しております。どうぞ貴家のため、お父上のため杯を掲げてください。デュフォート家による諸島の諸島統治よ、永遠なれ!

差出人:あなたの崇拝者より、情熱と感謝をこめて

自然の秩序を受け入れることEmbracing the Natural Order

ドルイドと生活した都会人の報告、パリッセ・エルガラ 著

私はヴァスティルで育った。この街はいつでも私の故郷だ。私は石に囲まれて、子供の頃は街路に導かれて育った。だがヴァスティルに住むすべての者と同じように、私は街の外にある自然の物語を聞き、想像力を満たしながら育った。ヴァスティルは島のほんの小さな一部分だが、それでも世界のすべてと感じられるような場所だ。少なくとも私にとってはそうだった。そしてヴァスティルの外にあるものはすべて魔法のような未知の何かで、大人たちの穏やかな声から聞こえてくるものだった。

私は同郷の大部分よりもガレンの他の場所に魅了された。ドルイドたちの物語に対する私の興味は尽きることがなかった。結局、都会は自分に向いていないと判断した。私は物語の中と蔓地区で見た数人のドルイドのように、緑の丘と自然への献身を求めた。両親は少女の空想癖と受け止め、いずれは過ぎ去るだろうと思っていたが、それは間違いだった。

17歳の時、私は食料とお気に入りの杖だけを持って出発した。街の北にあるストーンロア・サークルの居留地グリマーターンを目指して。ストーンロア・サークルがサークルの中で最も友好的であり、ドルイドの生き方を求める者を歓迎してくれることを知っていたからだ。私は新しい生活を始める覚悟を固めて、自信たっぷりに進んでいった。

ストーンロア・ドルイドは物語に言われていたとおり優しく歓迎してくれ、すぐに私のための休息所を用意してくれた。最初の夜、私は長旅で疲れていたにもかかわらず、自然の音で何度も目を覚ました。正体のわからない獣の吠え声や、葉のこすれる音、流れる水の踊る音を聞いた。その次の日、居留地の中や周辺を通っている無数の道を探検していた時、私は木の葉の堆積を踏みつけてしまい、それが足中に広がる発疹を引き起こした。この病気を治している時、私は何か食べて体力を回復するように言われた。残念ながら、ストーンロア・ドルイドの食事は私にとってあまり食欲をそそるものではなかった。食べ慣れていない味が多かったし、食感も不快に感じた。それにまだ虫のことを話していなかった。私は生きたまま喰われかけたと言ってもいい。自分の体のどこかを掻いていなかったことは一瞬たりともなかったくらいだった。

グリマーターンで5日間過ごした後、私はもう限界だと思った。ドルイド・パリッセになる夢は、自然という恐るべき現実によって速やかに打ち砕かれてしまった。ありがたいことに、私が最も親密にしていたストーンロア・ドルイドはとても優しかった。自然の中で生きるのに向いていないからといって、何も恥じることはないと彼らは言ってくれた。私はヴァスティルに戻った。腹は空き、体はかゆく、疲れ果て、完全に自分へ失望していた。そして私はここに留まったのだ。

この報告は、私自身の成長のためだけでなく、私のようにドルイドの風変りな生活を夢見て育った者たちにとっても重要な意義を持っている。私は自分の中の若者の欲望を尊重し、ヴァスティルの外の大地を探検したことをよかったと思っている。大人になった自分は最終的に、自然に囲まれているよりも街の中で安全にしていたほうが幸せだと判断したが、少なくとも試してみるだけの勇気はあったのだから。

自然の霊魂についてOn Nature Spirits

アークドルイド・デュアナ 著

私たちドルイドは周囲の霊魂と特別な、不可逆のつながりを結んでいる。森や山、川に結びついた霊魂は私たちの生活にとって、人間と同じほど欠かせない存在である。私たちは他の人々に感じ取れない方法で霊魂を知るが、自然の霊魂を称え、理解しようと努めて生を送ってきた私たちでさえ、霊魂を完全に知ることはできない。それが彼らの存在の美点である。自然とは予測不可能で、不可知なものなのだ。どれだけ解読しようとしても、完全に理解することはできない。

だからといって、私たちがイフレの意思に従う霊魂について何も知らないわけではない。

一部の自然の霊魂が恐ろしく強大なことはわかっている。感情を持つ霊魂もおり、深い優しさや激しい攻撃性を示すことがある。また霊魂の中には比較的この世界に来て新しく、葉に溜まる朝露のように新鮮なものもいるが、ガレンを歩んだ最初のドルイドと同じくらい古い霊魂もいる。私たちは霊魂も人間と同じように迷い、途方に暮れることがあるのを知っている。霊魂はまた私たちが目的、あるいは場所に迷っている時は、導きの力ともなりうる。

しかし自然の霊魂との協調は、私たちが彼らに敬意を払わなければうまくいかない。自然の霊魂をその居場所から追いだし、無理やり働かせ、霊魂を意思に従属させるような真似をすれば(そのようなことが可能だとしても)、彼らと交信する希望は失われる。いかなる時でも、私たちは協力を求める霊魂のそれぞれを理解しようと最善を尽くさなくてはならない。この霊魂は守護者か?門番か?動かない石の霊魂に作物の生育を助けるよう頼むことはできないし、心優しい花の霊魂に捕食者から私たちを守るよう頼むこともできない。自然の霊魂と交信するにはまず霊魂に自らを紹介し、友情とも呼べる関係を築かなければならない。

霊魂はドルイド魔術の影響を受けるが、私は多くの場合、その手段に反対している。霊魂が苦しんでいるのでない限り、自然な状態に介入する理由はない。攻撃的な霊魂でさえ、変化させようとするより手を出さずに放っておいたほうがいい。それが真の道である。私たちが自然を支配できたとしても、この世界のためにはならないだろう。イフレは決してそんなことを望みはしなかった。それに誤った魔術が霊魂の性質を歪めてしまったら、危険でもある。

まとめると、私たちドルイドは自然を尊重し、すでに存在するものの調和を乱さないよう努めている。この大地や海に住む多くの霊魂と交信できることは私たちにのみ許された栄誉であり、そのことを決して軽く考えてはならない。

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ショアバード運送代理店
差出人:ダガーフォール
宛先:揺るぎなき邸宅

内容
防具屋〈雄鹿と馬〉から木枠箱6個

担当者:揺るぎなき者の会、マルガリーテ隊長

助けになる揺るぎなき手A Helpful, Steadfast Hand

市井の歴史家、アダンドラ 著

揺るぎなき者の会はシロディールの戦場と、タムリエル中の自然災害の発生地でその名声を築いた。バカロ・ヴォロラス卿によって創設されたこの会は治癒師や看護師、および物資を抱えたチームを必要に応じて移動させるための、小規模な騎士団によって構成されている。

バカロ卿は繰り返しこう述べている。「我々はできることをやっている。これ以上のことができる人数や資源があればいいのだが」

ブラヴィルの街近くでは、エボンハート・パクトとアルドメリ・ドミニオンの軍が激戦を繰り広げた後で素早く現地に入り込み、戦争による負傷者や避難民に支援を提供した。著者は兵士と市民に話を聞いたが、どちらも戦いで受けた負傷を、この会の治癒のテントで治療している最中だった。

「ここの善良な治癒師たちの手早い治療のおかげで、私の足が救われたのは間違いない。あのハイエルフの槍で貫かれた時は、この足を失うことになると確信していた」と、北の僻地から来たノルドの兵士ヘイルブリットは説明した。

「私は何かの呪文の爆発に巻き込まれたんだ」とブラヴィルの住民ルリウスは言った。「私の家も破壊されたよ。この会がなかったら住むところもなく、家族は飢え死にしていただろう。バカロ卿の慈悲に感謝する!」

「この戦争は忌まわしい」と癒し手プロールは言った。「若者の内臓を、手で握らずにすむ日が来るのが待ち遠しいよ。でもそれまでは、力の限り支援を続ける。やらないわけにはいかない」

その後、私はハイ・アイルにある揺るぎなき者の会の本部を訪ねた。ここは携帯可能なテントでは処置できない、より集中的な長期の治療が必要になる負傷者を扱う診療所を擁している。バカロ卿は一族の地所のかなりの部分を、この会が使用するために割いている。

「私はその力がある者は誰でも、可能な限り他者の手助けをするべきだと信じている」とバカロ卿は言う。「良心があるなら、そうせずにはいられないだろう?」

三同盟すべてが揺るぎなき者の会の中立性と優れた活動を尊重し受け入れているが、だからといって自分たちの防備を顧みないわけではない。私はこの点について揺るぎなき者の会の副官であり、騎士団のリーダーであるマルガリーテ隊長に話を聞いた。

隊長は次のように説明してくれた。「私たちのテントやキャラバンは食料や医薬品などの物資を大量に運んでいるから、野盗や怪物の標的になりやすい。だから、基本的にその時発生している戦争に参加している戦闘員を恐れる必要はなくても、私たち自身を守る必要はある。騎士の数は多くないけど、私たちのところで働く騎士たちはよく訓練されていて、勇敢すぎるくらいよ。私は彼らの指揮官であることを誇りに思っているわ」

あなたが戦争や飢餓、病気のために支援を求めるようなことがあれば、揺るぎなき者の会の治癒のテントに掲げられた特徴的な旗を探そう。「私たちは助けを必要としている者なら、誰も追い返すことはない」とマルガリーテ隊長は言っていた。

新たな成功を祝して!Congratulations On Another Success!

宛先:ゴンファローネ湾マンドレイク邸、レディ・アラベル・ダヴォー

またしても、あなたは予想を上回る偉業を成し遂げました!あなたの行いにより、三同盟の指導者たちが苦痛に満ちた死から救われたのです。これで和平は単なる希望に留まらず、実現する可能性が残されました。私の称賛と共に、この希少なビンテージをお楽しみください。これからもご健闘のほどを!

差出人:あなたの崇拝者より、情熱と感謝をこめて

生命の儀式の始まりRitual of Life’s Commencement

あらゆる生命が存在するのは、それ以前の生命が存在したおかげである。我々はすべての生物の喜ばしい創造を祝い、その歓喜に浸ることを奨励する。

適切な時期に、儀式は指導役の二人組と共に開始される。彼らの模範は風に舞う種のごとく拡散するだろう。情熱を分かち合うことは、生命の報酬である。

次の月の周期に、我々はこの力を受け入れる。完了すれば、その力は満たされ旅立つだろう。

捜査官ヴェイルとダークマストInvestigator Vale and the Darkmasts

捜査官ヴェイルは港に立ち、地平線まで伸びる青い海をじっと眺めていた。ガレンを訪れるのは初めてだった。彼女はもう何度もシストレスを旅行していたが、これまではいつもハイ・アイル止まりだったのだ。

「どう思う、捜査官?」と騎士団長が尋ねた。「これは恐るべきダークマストの仕業だろうか?」

ヴェイルはため息をついて、再び木の板の上に横たわった死体を見た。明らかに港で働いていたこの地域の人間で、海風と船の油の匂いがするたくましい作業員だ。今は残念なことに、死臭がそれに加わっていた。

「海の近くで出た災害や死人をすべて海賊やシーエルフのせいにするのは簡単だけど」とヴェイルは言った。「この犯罪にはシーエルフの略奪らしい形跡がないわね」

騎士団長は顔をしかめた。「確かなのか?アダラードは明らかにこの埠頭で殺された。それに彼に加えられた暴力を見てくれ。ダークマストがもっと悲惨な目に遭わせるのを私は見てきた」

「そのとおり!シーエルフ海賊が沿岸までやって来て、たった一度の攻撃で済ませるなんて聞いたことある?略奪も破壊もせずに?それにこの傷はサーベルや戦棍のような、ダークマストが使う典型的な武器によるものじゃない。この男は作業員のフックで殺されたのよ。そして犯人は哀れなアダラードが殺される前に、これを何度か武器として使っている」

その時バラリン・ルモンズという作業員が進み出た。邪魔をしないよう離れていたが、ヴェイルと騎士団長の会話が聞こえる程度には近くにいたのだ。「違う、俺はダークマストの船をこの目で見たんだ!」と彼は怒鳴った。「アダラードを殺したのはシーエルフだ!シーエルフに間違いない!」

騎士団長はバラリンとヴェイルの間に入り、厳しく、だがなだめるような口調で言った。「落ち着け、バラリン。お前の証言は聞かせてもらった。捜査官に仕事をさせてやれ」

「ちょっといい、騎士団長」とヴェイルは口を挟んだ。「バラリンだった?あなたのベルトにフックが垂れ下がっていないのが、どうしても気になるんだけど。有能な港の作業員で、フックを持たずに歩く者なんて私は知らないわ」

バラリンは目を細め、表情は険しくなった。「一体何が言いたいんだ?」と彼は詰問した。

騎士団長はヴェイルからバラリンへと目をやり、彼の表情もまた険しくなった。「質問に答えろ、バラリン。お前のフックはどこだ?」

バラリンは答えず、騎士団長を捜査官ヴェイルに向けて突き飛ばし、向きを変えて逃げだした。それを予測していたヴェイルはあっさりと横に移動してかわした。ヴェイルは何気なく手を伸ばして木箱から魚をつかみ取った。もちろん、朝の漁獲分の残りである。そしてバラリンに向かって投げつけた。魚は彼の分厚い首の後ろに気持ちのいい音を立てて直撃し、気絶させた。男は地面にぐったりと伸びてしまった。

「バラリンのフックを見つければ、凶器が見つかる。これはシーエルフの襲撃の結果じゃない」とヴェイルは説明した。「仕事仲間同士の口論が行き過ぎただけよ」

騎士団長は意識を失った作業員を縛り上げてから、ヴェイルに向き直った。「問題が我々の間で起きていることを認めるよりも、外から来たものだと信じるほうが楽だったという話のようだな」

ヴェイルは木箱から別の魚を選び出して匂いを嗅ぎ、袋に入れた。「夕食用にもらうわ」とヴェイルは言った。「報酬から値段分を引いてくれてもいい。まあ、あなたの言うとおりよ騎士団長。私たちは身近にいる人々を仲間だと思いたがる。安全だとね。でも私の経験上、ほとんどの殺人事件の犯人は犠牲者が知っている人物で、偶然出会った未知の悪党じゃない」

立ち去ろうと向きを変える途中で、ヴェイルは付け加えた。「でもだからといって、ダークマストに警戒しなくていいわけじゃない。奴らはあなたの作業員を殺さなかったけど、危険には違いない。さて、この魚の調理法を知ってる人を探しに行かなきゃ。誰かいい人を知らない?」

太陽のごとく恐れを知らずFearless as the Sun

ガレンの詩人、ニネル・ドゥマリス 作

海に踊る太陽のごとく恐れを知らず
短く力強い一瞥で私の心を見抜く
私の恋人は夕刻の雨を駆け抜け
陸へ来て私を求める、彼の財宝を

だが別の乙女が彼の心を招き寄せる
私を選んだことを妬む、魅惑的な美女
千人の恋人を虜にしてきたこの敵手が
今や私の恋人に向かって声を張り上げる

女がただ呼びかければ、彼はそちらへ向かう
海鳥の笑い声、鐘の音、船長の呼び声
魅了された彼は、雄鶏が鳴くよりも早く去っていく
あの女の力は強く、私の力は弱い

だが泣いても仕方がないことは知っている
定命の女が海に勝てるはずはないのだから

注意!大樽に触るな!Warning! Do Not Touch Cask!

このエール樽の中身には極度の圧力がかけられている。いかなる事情があっても触れてはならない。

これは警告である。

嵐とひまわりThe Storm and the Sunflower

(シストレスの歌)

ひまわりよ、波の音が聞こえるだろうか
私たちを引き合わせてくれた海が、今は引き離そうとしている
私はもうすぐ最後の息を吐き
心に愛の傷を抱いて死ぬだろう
望まぬ戦争を終わらせる夢を見たことを、慰めと思いながら

さあ、頭を下げて
その柔らかな花びらのような唇で、最後の口づけを
抱き寄せて、私のひまわりよ
私たちが交わした愛は、罪ではない
ただマーラの慈悲を知ることを、時が許さなかっただけ

あなたが雨の雫を味わう時、私の唇を思い出して
あなたが顔に風を感じたら、それは優しく撫でる私の手
そして遠くに雷鳴が聞こえる時、それはあなたの名を呼ぶ私の声
雷がひまわりと出会う時は、辺りを炎に包むものだから

ひまわりよ、私を覚えていてくれるだろうか
結ばれて、誰にも縛られず自由になる夢を共に見たことを
それとも、あなたも私の後に続くだろうか
ただ一緒になりたいがために、私たちが犠牲にしたものを思いながら?
海を飲むつもりなら、雨を求めてあえがなくてもいい

嵐とひまわりThe Tempest and the Sunflower

ニヴィエンヌ・トネール 著
実話を基にした物語

レディ・マーラがナヴィール城の馬上槍試合の会場に微笑みかけた。二人の騎士、好敵手、よく似た心の持ち主の運命的な戦いに、これ以上ふさわしい日はなかった。

船大工を代表する、金髪のサンフラワー卿は、ガレンの長女、憂鬱なるレディ・テンペストと対峙した。どちらも、相手の家名に憎悪を抱くよう育てられてきたのだ。槍は互いに向けて勢いよく繰りだされた。乱戦の中、剣は交差し火花が散った。だが兜が外れた時、両者の間に沈黙が下りた。そこに生まれた穏やかな驚愕と好奇心は、見物人ならば煮えたぎる敵意と見誤っただろう。

二人は短く言葉を交わし、それから弱々しくそれぞれの地所に帰った。最大の負傷は、打ち砕かれた心だった。トーナメントの勝者となったのはレディ・テンペストだったが、儚き台風にふさわしく、先に威勢を弱めたのは彼女だった。

***

サンフラワー卿はレディ・テンペストの想いを震える両手で抱えた。彼女は多大な労力を費やし、手紙が彼の元へ届くよう取り計らった。エルダータイド・ドルイドへ秘密裡に諸島の反対側へ届けるよう依頼したのである。今、彼はレディ・テンペストの破滅になりえた。この女はトーナメントに勝利して、彼の家を侮辱したのだ。

だが、レディ・テンペストの言葉は夏の嵐のように届いた。手紙はまるでサンフラワー卿の心臓のうちに響くこだまを書き写したかのようだった。剣が交わされた時、彼女もずっとこのまま、二人が島を隔てることなく、すぐそばに居られるよう望んだのである。レディ・テンペストの想いに対して無感動を装うことは、彼にとって最大の苦痛だった。

家族の敵意は今や、この巨大な情熱に比べれば些細なものに感じられた。なんと勇敢な女性だろう!ドルイドに助けを頼むとは、なんと賢いのだろう。彼は返事の手紙にありのままに自分の愛を記し、「あなたの破滅」と署名した。彼女が微笑んでくれることを願って。

季節がいくつも巡り、潮が満ちては引く間も、二人は手紙を書き続けた。エルダータイドはシストレスを越えて彼らの秘密の手紙を運んだ。言葉を通して、二人は互いの魂を隅々まで探った。だが時を経るにつれ、言葉だけでは足りなくなった。

今度、先に折れたのはサンフラワーの方だった。

次にナヴィール城で会う時、テンペストはトーナメントの終わりに彼と結婚してくれるだろうか?

感動の波に包まれたレディ・テンペストは承諾した。だが、誰が結婚させてくれるのか、どこで結婚するのか?

ここで、サンフラワー卿はドルイドに助けを求めた。

だが今回、ドルイドたちは見返りを求めた。

***

彼らの結婚式とグランドメレーの夜、レディ・テンペストとサンフラワー卿は夕闇に紛れて会った。一緒にいられるのはごくわずかな間だけであることをどちらも知っていた。

サンフラワー卿は彼女を腕に抱いた。長い間待ち望んでいたのだ。サンフラワー卿は恋人に願いへ同意してくれるかどうか尋ねるような、愚かなことはしなかった。

ガレンの島を去れ、とドルイドたちは言った。お前たちが結婚し、両家が一つになったら、ドルイドでない者は二度とこの島に足を踏み入れるな。

愛のためなら大きすぎる代償などない、と強がることもできた。だが二人は、自分たちの家が決してそれを許さないことを知っていた。結び合わせるくらいなら、家族は二人の死を選ぶだろう。ましてやエルダータイドの求めるものを与えるなどもってのほかだった。

「ガレンが私だけのものであったなら、喜んで譲り渡しましょう」とレディ・テンペストは言った。まるで彼の考えを読むかのように。「ただ――」

「臣下たちを見捨てることはできない」とサンフラワー卿は彼女の心を読み、言った。

サンフラワー卿は彼女の目を見つめた。

「結婚する場所は気にしない。結婚などしなくてもいい。ただ一緒にさえいられれば」と彼は言った。「どんな名前でも、どんな旗の下でも、結婚しようがしまいが、私は君のものだ。トーナメントが終わったら、人目を盗んで抜け出し、私の父の船を奪おう。祝祭も、秘密の結婚式も忘れよう。シストレスが私たちを結び合わせてくれないのなら、そうしてくれる国を探そう」

そうして彼らは次の日に会う約束をして別れた。暗闇の中にエルダータイドの耳があることにも、復讐の罠が彼らの周りに仕掛けられつつあることにも気づかずに。

***

サンフラワー卿は彼の婚約者、正当なるチャンピオン、強敵テンペストと対峙した。これはすべて見世物だ、と彼は自分に言い聞かせた。今夜、彼は恋人と海辺から去り、死ぬその時まで共に暮らすのだ。

だがそれについて、実現したのは半分だけだった。

剣が最後に交わされた。誰が勝つかは問題ではなかった。ただ敵意が本物に見えればよかった。彼の剣が彼女の手首をかすめた時に滴った血は本物だった。彼女がバランスを崩し、膝をついて倒れたのも本当だった。彼は叫んで彼女を抱きとめ、彼女の顔が苦痛で歪む…待て、これは本当なのか?

「ドルイドが」レディ・テンペストは声を絞り出した。二人はようやく気づいた。剣に揺らめく毒に。エルダータイドはテンペストとサンフラワーがガレンを渡さないのなら、互いの破滅となることを確実にしたのだった。

レディ・テンペストが息絶えると、サンフラワー卿は首を垂れて泣いた。結び合うよりも死ぬことを世界が望むならば、彼は死ぬことを選ぶであろう。

太古ブレトン スタイル

クラフトモチーフ93
Ancestral Breton Style

ブレトンの歴史を称える本は作り話に満ちている。だが鋼鉄が情報源であれば、全ては明白だ。胴鎧が真実を腐らせるだろうか? ありえない! 我らが祖先たちの真実性を検証する唯一の方法は、現存する戦争の武器を研究することである。そして著名な軍事学者である私、サージ・サーリンは、この問題に関する知識を豊富に有している。

ブーツ

快適な布の生地を上下の留め金で固定したもので、慎重に歩くにも大股で機敏に歩くにも向いている。このブーツにはしばしば、三つの連なった三角形がエッチングか彫り模様として飾られている。もちろん、どちらの方式が用いられるかは素材による。

ベルト

革製の輪を、三角形の装飾品でつなぎあわせたもの。サイズは巨大なものから極小のものまでさまざまだが、見てすぐそれとわかる三角形の護符は常に用いられている。

ハイエルフは三という数を称え、神聖なものとみなしている。おそらく我らの祖先の兜に三つの縁が付いているのはそのためだろう。兜の先端には三つの紋章が配され、それが兜の全側面に向かって均一に湾曲している。これまでの私の研究では、三つ組への執着がエルフ的なものへの崇拝から来ているのか、我らブレトンの血に含まれるエルフの祖先から引き継がれたのか、結論が出ていない。

脚当て

尖ったプレートが脚当てに沿って縦に伸びており、それぞれの節に配された銀が足の下部を狙う攻撃を防ぐ。金属の層は音を増幅するために作られたらしく、足の着地音がより強烈で、うるさくなっている。

腕利きの弓使いであるエメロード・エンデルは、長い矢柄と短い矢筒で敵と戦った。彼女の歴史はこのスタイルについて記述しつつ、矢筒の短さにより矢の柄が露出し、乱戦の最中でも手でつかみやすくなっていたという事実に言及している。

胸当て

狩人は腹部に装着した革のベルトにフックをつける。フックは仕留めた獲物の死骸を運び、薬草や薬袋を吊り下げるために役立つ。はっきりと言えば、ポケットの前身である。

ブレトンの両手持ち大剣は見る者を圧倒する。裕福な君主の家から発掘されたこの剣は、人間の体のほぼ半分ほどの長さがある。熟練の剣士がこの武器を繰り出せばどれほどの威力があるか、想像することも困難だ。

肩防具

ストームヘヴンの父祖たちは、装着者の脆弱な喉元の左右を、丈夫な革の覆いで守ることを好んだ点が共通している。このスタイルは吸血鬼の襲撃が頻発した時期に主流となったもので、刃や爪に対する緩衝の役割を果たす。

手袋

ドルイドたちはブレトンの国境から追放させられる前に、薄い生地で指を覆う手袋を用いるスタイルを普及させた。自然を育てる人々にとっては、このスタイルのおかげで人差し指を土の中に突っ込んで植林を行うことが可能になった。

この古い銀の盾の中央にある勇敢そうな獅子の顔の紋章は、戦いの狂騒を見つめている。獅子は数えきれないほどの土地を制圧したので、同じことをした高慢な君主たちを表す印としては適切である。第一紀には、多くの軍隊が獅子の唸り声を前にして退却した。

書物では、初期のブレトン魔術師がウィルドの木を削って杖を作ったと主張されている。私は世界のあらゆる場所に根を張っている木などという物語を信じていない。しかしその熱意には何か根拠があるかもしれない。この杖はサピアルチの棒よりも容易にマナを操作できる。

戦棍

ある左利きの達人が自分の戦棍の中に空洞を作り、秘密の伝言をまとめて伝えたという伝説がある。私は手に入った全ての戦棍の中に、そのような隠された空洞がないかどうか調べた。私が調べた限りで鋼鉄が割れて開くようなことはなかったが、第一紀に作られたブレトンの全ての戦棍には、そのようなパネルが戦棍の先端に刻み込まれている。

短剣

古きブレトンは作られたばかりの短剣と共に死者を埋葬した。死と宝飾品や武器を組み合わせる民間の伝統は忘れ去られていないが、死者の刃はなまくらになっている。しかしこの短剣の両刃は鋭い。おそらく、彼らは死後の生のことを配慮し、新品のナイフで武装するほうがよいと判断したのだろう。

カラスの翼のように湾曲した我らが祖先の斧には、レバーのような長い取っ手がついている。比較的ハイロックの近くに住んでいたレッドガードと違い、ブレトンは木を切るための斧と、頭蓋骨を割るための斧を区別する手間を惜しまなかった。多くの戦士たちは、大いに戦果を上げられる武器を求めたのである。

リーチの指導者

The Reach Reader

Rによる命令Orders from R

ペンターチ・セヴィダ

リーチの魔女はネザールートの群生地をもう1つ突き止めた。カースワステンの村の下には大量に生えているが、現地の住民には使い道がないのでほぼ無視されている。ネザールートはブラックリーチの北で見つかる形状のものと品種が違うが、出発前に教えておいた材料を加えれば、目的に十分役立つはずだ。ネザールートはより短期間で生えるので、収穫すればさらに強力な喪心の嵐を生み出すための助けになるだろう。

命令はこの新種を育て、魔女に供給することだ。1週間ほどしたら、誰かが進捗を確認に行く。

R

アークスザンドの伝説Legend of Arkthzand

非凡なる功績の学者、ネラモ 著

神話中の神話はどのように追求するのか?物語で名高い北タムリエルのドゥエマーの街は、その秘密の深さが未だ解明されていないとは言え、広大な遺跡の位置は良く知られており、また、土地に住むエルフや人間との交流が数多く歴史に記録されている。だが、それとは異なり、アークスザンドは今も謎のままだ。その場所がどこにあるかは誰も知らず、他の民の書物にはアークスザンドについての話が全く残っていない。我々がアークスザンドについて知ることと言えば、ドゥエマーの文書にある暗号のような言及だけで、その文書自体もほぼ完全な解読は不能だ。確かに言えることは、アークスザンドと呼ばれる場所が実在し、そこが伝承と学びの中心地だったということだけだ。

ああ!確かなことが尽きれば、あとは推測しかできない。

私に言える限り、アークスザンドはブラックリーチと呼ばれる地下世界の洞窟にあった、ドゥエマー文明の絶頂期に築かれた。第一紀の初め、4つのドワーフの街がエセリウムとして知られるアルケインの鉱物を採掘し、その知識を得るために鉱山労働者の連合、もしくは同盟を組んだ。そのうち2つの街、アルクンザムズとブサーゼルはおそらくリーチの西にある山麓の丘陵地帯の下にあった。発見と繁栄の時代、彼らはこの深みのどこかに、大規模な蔵書庫を作るために手を結んだと情報源は示唆している。多くのドゥエマーのクランが、学び知識を共有するためアークスザンドへやって来た。だが、やがてこの隠された領域に衝突や戦争が訪れ、平和に満ちた蔵書庫は放棄された。

妙な話だが、ヌチュアンド・ゼルの街は、アルクンザムズとブサーゼルの近くに位置していたにも関わらず、ブラックリーチの同盟の話やエセリウム戦争と呼ばれる記録の中で驚くほど触れられていない。私にはドゥエマーの忘れられた政治問題について、不思議に思うことしかできない。ヌチュアンド・ゼルは他の街の敵だったのか?あるいは中立地帯?でなければブラックリーチ同盟の内政により、5番目の仲間を加えることが不可能だったのか?

この謎の答えが、アークスザンドの蔵書庫の謎を解くためには重要なのかもしれない。ブラックリーチやブサーゼルやアルクンザムズへの道を見つけ出した者は、知る限りまだいない。しかしヌチュアンド・ゼルはマルカルスの街にある。私はまだ訪れたことはないが、報告によれば地下には遺跡が連なっているそうだ。実在しているとしたら、ここからアークスザンドの蔵書庫への道が開かれていたかもしれない。

未発見かつ略奪されていないドゥエマーの伝承の宝物庫を見つけられるという可能性は、もちろん想像力を刺激する。長年にわたり、多くのダンジョン探検者がアークスザンドの存在に関する手掛かりをいくつか見つけ出し、手つかずのドゥエマーの遺跡を調査するために危険を承知でリーチに挑んだ。これらの盗掘者のほとんどが、数えきれないほどの財宝や富のことしか考えていなかったことはほぼ間違いない。泥棒と破壊者どもめ!何よりも素晴らしい宝は知識だ。ここではどんな秘密が見つかる?エセリウムのクリスタルの働きは?音調の構造?星の秘密とは?誰にも分からない。

後世の人々のため、教養のない金目当ての奴が偶然この場所を見つけて、何かかけがえのないものを不器用に破壊する前に、いつかその地を訪れてアークスザンド蔵書庫を探したい。マルカルスへ訪問できたなら、暴君に合理的な行動を取るよう説得したいのだ。もしかしたら、新たにヌチュアンド・ゼルに降りる試みをさせてくれるよう説得…あるいは賄賂で、どうにかできるかもしれない。求める答えが、悪名高いアンダーストーン砦の下のどこかにあることは確信している。

アークスザンド蔵書庫The Library of Arkthzand

我々はレディ・ビレインがアークスザンドの蔵書庫と呼ぶ遺跡に到着した。蔵書庫のようには見えない。この闇の遺物を目覚めさせることへのビレインの執着には懸念を覚える。長く隔絶されていた悪影響があるのではないだろうか。

闇の遺物の存在は、どうやらある種の奇妙な力の穴を作り出したようだ。レディ・ビレインは彼女の仲間が、短距離を移動するために力を利用したと主張している。他の手段では行けない場所へ。灰の王は私にこの現象のさらなる調査を命じた。これがグレイホストの大きな利益につながるかもしれないからだ。私はこの虚無のポータルの有用性を確認するため、全力を尽くす。

とは言え、警戒は怠らないつもりだ。私は時と共に、ここの闇から活力を得た者たちがどうなったかを見て来た。これは生きるための手段ではない。レディ・ビレインとの同盟がグレイホストの目標にとって必要なことは理解している。だが、彼女の狂気の罠に捕らわれてはいけない。

ペンターチ・シーヴェルネス

あなたに向いたギルドは?Which Guild is for You?

冒険者、傭兵、魔法使い、悪党の皆さん!冒険の仲間が必要だと思ったことはありませんか?大胆な偉業を可能にする深い絆を切望してはいませんか?もしかしたら、ギルドに入る時かもしれません!

現在のリストを確認したい場合は、ギルドの使者アムサードまで

アンスデュランからの手紙Letter from Ansdurran

フェイラへ

今回の襲撃では、なんとかいいものを手に入れたよ。確かに見た目は役に立たない骨のかけらだが、リーチの魔女から奪った。見習いレイレンと名乗って、どうか取らないでくれと懇願してきた。マルカルスの新しい祠に必要だって言ってたな。彼女の師、大呪術師グリンロックに。その魔女のために言っておく。彼女はなかなか健闘したよ。死ぬ前には、俺に怪我までさせたしな。

君の後援者は、こういうガラクタを買うんだろ?彼女の魔術師なら、絶対にこれが本物だって見分けられるはずだ。これはドルアダッチ砦の近くの、いつもの場所に隠しておく。これにはいい報酬を期待してる。この怪我の埋め合わせにな。血が止まらないんだ。

A

イーグルシアー・クランでの1年A Year Among the Eagleseer Clan

グウィリム大学、グラブリアン・ツリエル 著
(第二紀564年、レオヴィック皇帝統治時代に執筆)

数百年に渡り、リーチとその住民は他の土地の人々にとって謎めいた存在だった。だが、マルカルスにおける帝国総督の任命は、リーチと民に新たな時代を告げている。タムリエルの学者と旅人はついにリーチへ踏み込めるようになり、そしておそらくリーチの民と彼らのやり方について理解してきている。

そのような目的を胸に第二紀560年の春、モリカル皇帝からの紹介状を持って私はマルカルスへ旅立った。カダッチ総督は(懸念を持ちつつも)ガイドの調達に力を貸してくれた。ドゥニアルと言う名で、私を友好的なクランであるイーグルシアーに紹介するためのガイドだ。3日間の旅でイーグルシアーのデュン(要塞化された丘の上の村。内陸地域ではよく見られる)に到着した。ドゥニアルが私の任務を説明すると、ダラー族長と側近の魔女アシュリンは私を受け入れてくれた。当初、ダラーは私の意図に戸惑っている様子で、アシュリンは露骨に私を蔑んでいた。彼らが滞在を許したのは、ダラーがカダッチに小さな貸しを作っておけば使えるかもしれないと考えたからにすぎないと思う。

到着したのは早春で、儀式的な狩りの準備が進行していることに気づいた。どうやらこの季節で初めて行うもののようだ。長く寒い冬の後で、クランの食料の備蓄が尽きかけていたのだが、ついに雪が融けたため、大人数の狩りの一行が出発の準備をしていた。狩人たちが出発する前の晩、クランの者がハーシーンの加護を願う儀式のために集まった。野性的な踊りが追跡と殺戮を表現したが、かなり暴力的な光景で不安を感じた。いかなる理由であれ、デイドラ公に祈願するなど、どう考えても無謀に思えた。アシュリンと魔女たちが全てを取り仕切っていた。儀式が最高潮に達すると、彼女はクランの戦士たちに私を追い払うよう命じた。どうやらこの後に続く秘密の儀式は部外者が見るべきものではないらしい。それ以上のことを学ぶ機会はなかった。

儀式(だか何だか知らないが)では、どうやら狩りがうまく行くというハーシーンの好意的意見が得られたようだった。私は狩人たちが戻ってから2週間ほどイーグルシアーに留まり、彼らのライフスタイルを観察した。彼らは下品で遠慮のない人々で、中にはわざわざ無理をしてまで、私を怖がらせるか驚かせられないかと試みる者もあった。しかし、私がダラー族長の保護下にいるという事実が、最悪の事態から私を守ってくれていたようだった。紙とインクの在庫が尽きかけ、また長居しすぎて嫌われたくないという意識から、持ってきた小物を彼らに贈り、別れを告げた。そしてマルカルスへ引き返した。

夏のさなかにイーグルシアーへ戻ると、クランのデュンが半ば空になっていることに気づいて驚いた。クランは家畜の群れを豊かな牧草地に移動させ、多くが貴重な家畜を見張るために一時的なキャンプを設置しているのだと知った。リーチの民はクラン同士が揉めていない限り他のリーチの民から盗みを働くことはないが、山にはオーガやトロール、危険な野獣が住んでいる。家畜の群れは絶え間なく守らなければならない。他のイーグルシアーの者は近くの川岸に釣り用キャンプを設置するために離れていたか、マルカルスへ取引に行ってしまっていた。前に滞在していた頃よりも、彼らは忙しくしていた。

秋には3回目の訪問をしたが、クランはまた新たな生活の一面を見せてくれた。ほとんどのリーチの民のクランのように、イーグルシアーの者が畑に種を撒くことはなく、秋の収穫を楽しみにすることもない。だが、彼らは野生の根やベリーを集め、来たる冬に向けて準備をする。燻製小屋の中にはたっぷりの肉が保管されていた。1年のこの時期、イーグルシアーの者は家畜の群れから寒い季節を耐え抜くために必要な家畜を選んで殺すのだ。今回、私はマルカルスから役に立つ贈り物を持って来ていた。ナイフや毛布などだ。そして、機会があるたびに努めてクランの仕事に参加していた。イーグルシアーの者たちは徐々に私の存在に慣れてきているようだった。

4ヶ月後、私は真冬に雪の中を困難かつ危険な旅をして戻った。私はイーグルシアーの友人たち――この頃には多少いたので――がどうしているか心配だった。私は、冬が道具や服やおもちゃを作る季節であることを学んでいた。狩人たちは天候と獲物の状況が良さそうなら自らの運を試すが、ほとんどの人は夏と秋に蓄えることができた食料で生き延びている。恐ろしいことに、私はイーグルシアーが嘆き、激怒していることに気づいた。

私が戻る3日前にシックスフォード・クランの戦士たちがイーグルシアーの狩猟団を待ち伏せし、ダラー族長を殺したのだ。どうやらシックスフォードとイーグルシアーは昔の侮辱のことで、長年におよぶ確執があったらしい。2つのクランは突発的に紛争を起こしていたが、冬は抗争と襲撃の季節なのだった。アシュリンは真正面からダラーの死について私のことをとがめた。老族長が軟弱なよそ者を歓迎したことで、リーチの厳格な神々の怒りを買ったのだと。彼らは不信を示し、私は直後に不安を感じて去った。

しかしイーグルシアー・クランに一年滞在して得られたものは大きかった。

ウェアウルフ:長く苦しんだ守護者Werewolves: Long-Suffering Guardians

リーチの戦士ブリグウォール 著、グウィリム大学民俗学助教授ザムシク・アフハラズによる書き起こし

「多くのアレッシア人や北方人、豚の民がリーチに贈り物を持って来た。お前たちは無価値な硬貨と本を友好の証として持ってくる。だがそれは全て嘘と欺きだ。リーチの子はよそ者の“贈り物”が全て要求を含んでいることを知っている。知識や土地、敵に対する助力の要求を。獣と霊魂の世界、つまり真実の世界で贈り物は存在しない。取引があるだけだ。だからその口から不誠実な舌を切り落とし、本当の舌を生やせ。我々はお前たちを好きにはならないが、少なくとも敬意は払うだろう」

「例えば、力強きハーシーンを見るがいい。古きエルクの目は苦痛なくして何も与えない。贈り物などない。ただ苦痛に満ちた取引だけだ。栄光も財宝も、饗宴も苦痛なしには手に入らない。ハーシーンの祝福でさえ、噛み傷の先からやって来る」

「狼の踊りを贈り物と呼ぶ者もいる。お前たちは呪いと呼ぶ。どちらの言葉も無意味だ。よそ者は世界の全てを“善”と“悪”に分けるが、本当の闘争は臆病と苦痛の間にしかない。英雄は苦痛を選ぶ。臆病者は安心を選ぶ。それが物事の本来の道だ」

「狼の踊りは苦痛の道だ。双子月の呼びかけは常に我々の胸の中でうずいている。我々の鼻は乾いて荒れる。木の煙とタンニンの臭いで燻される。腹は夜も昼も唸り声を上げ、クランの友人と一族の肉のために飢える。血への渇きと怒りの全てが、紐を引っ張っている。束縛を引きちぎり、世界を粉々に打ち砕くために」

「我々はなぜこのように苦しむのか?残酷な世界の中では、残酷さが唯一の慰めだからだ。リーチを食い物にする獣と人間には、苦痛を与えなければならない。そして我々狼の民は、ほとんどの者に理解できない苦痛を知っている。我々はその痛みを利用して民を守っている。我々は心を固くし、渇望を窒息させ、掌に爪を喰い込ませる。近いうちに遠くから、何者かが我々の持つものを奪いに来ると分かっているからだ。そして奴らが来たら、牙と爪で応じる用意を整えている」

「これで分かっただろう。ハーシーンは贈り物など与えぬ。取引するだけだ。我々の痛みと引き換えに、我々の敵に痛みを与える。我々はこの取引を喜んで行う。苦痛はリーチの道だからだ。我々と道を違える者は、誰であろうとこの教訓を学ぶだろう」

ヴリンドリルの間の積荷証Vlindrel Hall Bill of Lading

マダム・ディアンテナ様

この船荷証は貴重品の長距離輸送が終了したことを確認するものです。今回と以前の3回に関しまして、ご依頼通りヴリンドリルの間にお届けしました。最新の輸送品は下記の通りです。

– 高級アルゴニアンシルク4
– アンヴィルから輸入されたダイヤモンドブローチ2
– リンメン上質なカジートの毛皮6

現時点で商品がお客様の所有物となったため、輸送中に配送品が受けたあらゆる損害、またはあらゆる窃盗の事例に対して、マルカルス商会は責任を負いかねますことを念のためお知らせいたします。またのお買い上げをお待ち申し上げます。

ご利用ありがとうございました。

ヘルミニア・コルヴィヌス
マルカルス商会
高級品取り扱い

カーススパイアー草原の戦いThe Battle of Karthspire Lea

リーチ人はほとんどの学者が慣れているようなやり方で自らの物語を書くことはない。物語を人から人へと伝える彼らの伝承は美しく、それに対して深く敬意を感じている。だが、私の中の学者は、書き記すことなく物語を頭の中に保つのは困難であることに気づいた。私にとって、書き記すということは物語をいつくしむもう1つの形なのである。伝える内容は変わらないが、羊皮紙に書きこむ行為は親密に感じられるやり方でその言葉を私の心に貼り付ける。もちろん、物語の伝え方を正す人などいない。だが、私はこの話をあるリーチのヴァテシュランから聞いたのだが、そいつは私に爪をたて、紙に書き記すまで放してくれなかった。私はこの書き取りをヴァテシュラン本人に捧げたいと思う。彼がこれを読むために学ぶことも期待しないし、それを頼むつもりもない。これは私から彼への記念品、つまり、彼が独自のやり方で表現することで物語を共有してくれたことに対して感謝を示す手段だ。

おそらく彼はこれをよそ者の愚かさと感じて捨て去るだろう。だがそれでかまわない。私はとにかくこの話を聞けたことに感謝しているのだ。

* * *
カーススパイアー草原の戦い
ヴァテシュラン・バースによる談話に基づく。

それは戦いというよりも血の海だった。シックスフォードとイーグルシアーは戦ったのではなく、ただ血を流しただけだった。草原の草はほぼ完全に赤く染まり、遠くからはまるで黒い色のように見えた。

明らかな勝者はいなかった。リーチの者同士の衝突ではよくあることだ。多くの戦いが、この戦いの原因にもなったある種の怒りと激しさをもって行われる。だが歴史的に見ると、その怒りと激しさは一方の軍勢によってもたらされる。それが闘争の本質だ。そして集団というものは、どれだけ怒りに駆られていようと、圧迫されれば勢いが弱まる。だがこの戦いは違った。どちらの勢いも衰えなかった。彼らはお互いに対して身を投げ出し、まるで崖に打ち付ける波のように絶えることなく衝突を続けた。

どちらのクランの男も女も、まるで死ぬつもりで戦っているかのように見えた。彼らの頭に勝利はなく、あるのはただ殺戮のみだった。

戦いが始まって間もない時期に、イーグルシアーの族長マドルファが致命傷を負った。彼の脚に槍が刺さり、歩くことができなくなった。彼は立たなくても戦いを続けられるように、近くの柱に自分を縛り付けるよう側にいた者に強く要求した。戦いは勝敗よりも闇の深い何かになっていた。それは妨げられることのない、留まるところを知らない、可能な限り多くの敵を殺すことを目的とした怒りだった。

その日、カーススパイアー草原から立ち去ったリーチの者は多くなかった。

カース川での生活Living on the Karth River

アオドシル 著

父は私が読み書きを覚えることに賛成しなかったが、私たちの物語は語る価値があるはずだ。リーチの外には、私たちを軽蔑の目で見る者が数多くいる。彼らは父の硬くなった手を見て身をすくめるだろうし、陽に焼かれた頬は見苦しいと思われるかもしれない。だがこの父に関する全てが、カース川における人生を物語っている。父に口を開かせることができれば、リーチを流れる水が血管に流れていることが分かるだろう。

カース川はリーチの民が住む他のどんな場所とも変わらず、暴力的で過酷だ。激流が水から突き出した鋭い石に沿って流れ、狂ったように渦を巻く。切り立った崖から流れ落ちる滝は白く濁った水を雷鳴のように轟かせ、大人の馬も一瞬にして流し去ってしまう。

しかしリーチの大部分がそうであるように、カース川はそこに住む民に恵みをもたらす。ある瞬間には残酷でも、次の瞬間には母の愛を示してくれる。川に頼って生きる者は、また次の日を迎えられる。川の許しがあれば。川辺で老いるまで生きた私の父のような者は、敬意が重要であることを知っている。川はある者に大量の魚を与え、ある者は溺れさせる。そのどちらにも区別はなさそうに見える。だがカース川で育った者は知っている。川が敬意を、少なくとも配慮を要求することを。

父は川の中で服を洗う。川の水を飲み、川で体を洗う。そして川は彼に食料をもたらす。私のクランの者も大半は同じようにする。私たちのクランはずっと川のそばで暮らしてきた。時として他のクランや、川を手なずけ利用するために来たよそ者に追い出され、移動することもある。だが私たちはいつも川に引かれて戻ってくる。どこで分かれても、どのように流れていても、私たちは川に従う。川は故郷なのだ。

もっとも、カース川が私たちから奪わないわけではない。川は私たちと同様、対価を要求する。子供をさらい、食料の貯蔵所を破壊し、骨を折り、嵐の際には計り知れないほど大きく膨れ上がって、川沿いのキャンプを全て水没させてしまう。だが私たちはこうしたことがあっても、川に文句を言わない。カースで生きるとはそういうことだ。

カリスの日記Calis’s Journal

自分用の記録のために日記を書き続けるようマスター・ピシスに指導された。記録を書くのは決して得意ではないけど、記述する代わりに様々な標本の絵を描いて大部分のページを費やしてみたらどうだろうか。絵は単なる言葉より伝えやすいと思う。もしかしたら、私が大した書き手ではないからなのかもしれないが。

でも、どうやらマスター・ピシスは私を信じているらしい。遭遇するたびに困惑させられる。彼の植物学の研究にはずっと感銘を受け続けている。彼が私の指導者になることを申し出てくれたときは、言葉を失ってしまった。どうして彼ほどの人物が、私のような新人を指導して時間を無駄にしたいと思うんだろうか?ものすごく感謝はしている。夢が叶ったんだから。

彼はあまりしゃべらない。不親切ではないが、過度に温かいわけでもない。私もかなり無口なほうだから、これは問題ない。ただ彼の沈黙が、新しい見習いに対する苛立ちから来ているものじゃなければいいと思ってるだけだ。

マスターは最新の計画について固く口を閉ざしている。他のサイジックの人たちの多くが、私たちほどには植物学を真面目に捉えていないことには気づいていた。私は全く気にしていない。集団の中の興味や才能の対象がさまざまな場合は、その方が集団にとっていいと思っている。でも、マスター・ピシスが研究をほぼ私たち2人の間のものにし続けているのは、私たちが研究に対して真の情熱を持ってるからだと思う。彼が他の人には理解できない(私は他の人と話したときにそんな風に思ったことは絶対にないが)とあからさまに言ったことはないが、どちらかというと彼は、他の人に私たちの問題へ口出しして欲しくないんだろうと思う。

キッツァ・エノーへの手紙Letter to Kitza-Enoo

キッツァ・エノー
マルカルスの暴君が、カース川峡谷の全てのクランを石の街の壁の内側に避難させるために呼び集めたという話が耳に入った。我々の団体の文化的遺物コレクションを、ここまで充実させられる機会は今までなかった。

そこで君への現在の指令について考えてみた。リーチの大呪術師グリンロックがマルカルスに入る前に、見習いエグヴァーンを阻止するのだ。彼は狼の頭蓋骨のトーテムを運んでいる。彼らがストリーベグの象徴と呼ぶものだ。このデイドラの遺物が祠に祭られる前に入手してくれれば、かなりの額を支払おう。

迅速に行動して、この機会を無駄にしないように。
V

グレイホスト:歴史 第1部The Gray Host: A History Part 1

偉大なる探検家、アーチバルド・ローレント卿 著

年に一度、聖ぺリンの殉教を再演する赤のパレードの時期にバンコライ駐屯地を訪ねたことがある者ならば、グレイホストの名は聞いているだろう。しかしその恐るべき評判以外にはほとんど何も知らなくても無理はない。私でさえこの高度に脚色された歴史記述の影に何があったのか、あまり考えたことはなかった。しかし私には、ある戦争の光景を目撃したことで、千年前の戦いの実態が見えてくるようになった。

ブラック・ドレイクが駐屯地の壁にリーチの戦士を繰り返し送り込み、門の付近で日々殺戮が行われるのを見ながら過ぎたおぞましい5か月の後、地面は膝まで達する血と泥の海となり、ブラック・マーシュにも劣らぬ底なし沼の様相を呈していた。あの残虐なる液体が予知の聖水となって、私は聖ぺリンの犠牲を完全に理解できた。確かに実際は不器用で愚かな私の下男が、胸壁から転げ落ちた後で起き上がっただけだったかもしれない。しかし類似は明らかだ。リーチの大軍が退却したことで我々も多少の喜びを覚えたが、夜が落ちるにつれて消滅してしまった。恐怖に満ちた囁きが駐屯地中に陰湿な迷信を広め、生まれ変わったグレイホストが血塗れの汚泥から飛び出してきて復讐するという考えに、歴戦の兵までもが長靴を履いた足を震わせた。聖ぺリンの騎士たちは噂を鎮めるため、焦土の中に古代の敵の骨は一片たりとも残らなかったと請け合ったが、私は関心をそそられ、騎士団長にグレイホストの歴史を詳しく教えてほしいと頼んだのである。

私の同郷の者たちが抱いた恐怖は、祖先も殺戮の際に味わっていたようだ。疲労困憊した駐屯部隊は戦場の地面を削り取り、両手に一抱えの土が地平線に到るまで取り除かれた(これも脚色だろう)。女帝ヘストラのアレッシア司教の復讐に満ちた眼差しのもと、倒されたグレイホストの死体は聖なる炎で焼かれて灰となり、塵の山だけが残った。この積み上げられた灰はあるトゥワッカの教団によって南へ埋められ、教団はサタカルの皮膚が剥がれ落ちるまで、誰にも灰には手を出させないと誓った。どうやら、それはあまり長い期間ではなかったらしい。

さて、私も旅の途上で吸血鬼やウェアウルフに出会ったことはある(それどころか、以前の遠征ではその両方が馬鹿な下男を襲ってきたことさえある)。確かに恐るべき怪物だが、それほどの恐怖を引き起こすのは見たことがない。私はグレイホストについてもっと詳しく学び、彼らがいかにしてヘストラの熱狂的な信奉者の心にまで恐怖を与えたのかを知りたいと思った。駐屯地での仕事が終わると、私は駐屯地を去って南へ向かい、騎士団長が言っていた集団墓地を探した。

不浄の墓と呼ばれる場所を見張るパイアウォッチという衛兵に頼まれたので、グレイホストが最終的に埋葬された地の場所は明かさない。彼らに「歓迎」されるまでには、数週間をかけ、崩れかかった谷から飛び降りる不幸な経験が必要だったと言えば十分だろう。洞穴の境界を越えて進むことは誰にも許されず、さもなくば死刑になると言われた。しかし首にかけていた聖ぺリンの土塊によって、私たちは信用に値するとみなされ、とにかく埋葬地の生きた衛兵のところまでは案内された。嘆きのアイギスを身に着けようとした不運な下男を私が引きはがした後、パイアウォッチの衛兵は彼らが見張っている恐るべき軍団について、いくつかの逸話を話してくれた。

彼らの話によると、ハンマーフェルは不浄の都市ヴァーカースの暴政に数百年苦しめられていたが、女帝ヘストラが軍を率いて帝国から腐敗を一掃したという。呪われた者の街がいつ廃墟から現れたのかは不明だが、彼らの主張では街がどこからともなく出現し、その影でスカヴィンと周辺の村を覆った。ある説によれば怪物たちは隣人との平和を約束したが、それは獲物を彼らの王国へ誘い寄せる甘い嘘だった。暴君ストリキ王が本性を表した時、グレイホストはソースタッドとエリンヒルの間の全ての地を占拠したと主張し、この地方を2つに分断した。これが女帝の怒りを招き、その怒りが彼らの破滅を招いた。

パイアウォッチによれば、元のヴァーカースの街は大部分がインペリアルによって破壊されたという。この地はアレッシアの名のもとに再び聖別され、解放された者に与えられて、公正なる女帝の似姿として再建された。アレッシア人がどれほど熱心に戦争を遂行するかは知っているが、グレイホストの歴史について、ぞっとするような怪談以上の知識を与えてくれる断片があるはずだ。だから私は、次にこの街を訪れることに決めた。

グレイホスト:歴史 第2部The Gray Host: A History Part 2

偉大なる探検家、アーチバルド・ローレント卿 著

ヴァーカースは近隣の集落と比べて、建築においても文化においても明らかに一線を画している。レッドガードの影響はちらほら見られるが、インペリアルの解放者の象徴がこの街を支配している。しかし街の骨組みはさらに古く、帝国が征服したアイレイドの集落とよく似ている。街の壁を築く石、貴族の邸宅、中心にある城などは全てヴァーカースに固有のものである。優雅であると同時に威圧的で、古代デイドラ遺跡の石細工にも似ているが、より洗練されている。

意外とは言えないが、地元民はよそ者に懐疑的である。そのため私は自分がハイエルフ貴族であることをひたすら秘密にした。このことは愚かな我が下男に頭部への打撃数発を加えて教え込む必要があった。地元民は彼らの祖先をかつて支配した異教の怪物の話になるとあまり役に立たず、街の中央広場に飾られた女帝を称える歌を歌うのみだった。ヴァーカースの下で栄える地下世界に関する調査はより成果があった。しかしその前に、私が役立たずの下男に愚かにも預けてしまった物資を返すよう、彼らを説得しなければならなかったが。

ここの無法者は、地上にあるものを圧倒するほど広大な地下都市を隠れ家にした。広い回廊はヴァーカース最古の建物と交差し、盗賊に地表への容易な侵入口と脱出口を提供している。残念ながら、この地下都市は元々の居住者たちが追い払われて以来大部分が荒らし尽くされてしまったが、このならず者たちは私のような者に売りつけるために、あまり派手でない遺物をある程度残してあった。この手の連中にしては知恵があったものだ。

特に興味を引いたのは、どうやらデイドラ語の方言で書かれたと思われる巻物の束である。これを書いている時点で私の翻訳はまだ不完全だが、この文書は明らかにグレイホストの手によるものであり、内容は私的な伝言から命令、国事に到るまで様々だ。文書はヴァーカースがその君主によって完全に統治されていたわけではなく、街の創設に先立って存在していたグレイ評議会も統治に加わっていたことを示唆している。この評議会のメンバーはどうやら生まれたての王国の行く末について、全員が一致した意見を持っていたわけではないらしい。街が創設された日付を確定することはまだできないが、ヴァーカースはパイアウォッチが言うように一夜にして完成したのではない。街は地表へと拡張される以前も長い間、地下で栄えていたのだ。吸血鬼とウェアウルフの軍団が協力に至った速度を考えるならば、近隣の者たちが気づく前に街が存在していたという考えは、完全に不合理なものではないように思える。

推測は入るが、グレイホストの拠点は外の世界に「現れる」よりもほぼ100年前に形成された。街を築いたグレイ評議会がどういう経緯で成立したのかは分からないが、崩落したトンネルや歩道の存在からして、この地下都市は孤立していなかったと思われる。ここで筆を止めるのは不吉だと承知しているが、これ以上の探検は私の軟弱な下男が悪性の茶腐熱の発作から回復するまで停止しなければならない。言い訳めくが大量の香水で打ち消さないと、奴は常に便所の臭いを漂わせているのだ。そうでなければ、奴の状態にもっと早く気づいてやれたのだが。

最後にちょっとした金言を述べておこう。「埋められたものは、消えてしまったわけではない」。グレイホストに関して、この言葉が当てはまらないことを祈りたいものだ。

グレイホストの諜報報告Gray Host Intelligence Dispatch

同志たちへ

あの魔女の反乱軍一員が街に侵入したと密偵から報告があった。奴らは家や街角に集まり、街を離れて東の丘で奴らと合流するよう、汚らしい親族どもをけしかけている。まともな自尊心のある定命の者なら温かい家を熊皮のあばら家と交換しないが、灰の王が定期的に思い出させてくださるように、リーチの者はまともでないし自尊心もない。

如何なるリーチの者も、街から避難することを許してはならない。この神々に見放された土地の丘や森をうろつく蛮族は全て恰好の獲物だ。反乱軍が森を怖がり、夜を避けるようにしてやろう。奴らが死ぬのが早いほど、我々の計画も早く達成される。

血の結束を
ペンターチ・ハウトリング

シスター・グリノルドからの手紙Letter from Sister Glynolde

姉妹たちへ

この吸血鬼の召使たちは、まるで太り過ぎたメンドリのように動く。遅い。遅すぎる!

私たちの灰の王はさらなる喪心の嵐を求めているのに、このカブの箱ひとつ満足に運べない、ましてや灰の聖骨箱や魔女の長槍のような強力な試料なんて、とても任せられない。こいつらと一緒に何をしろと言うの?

集合場所に来て。ヴァルスム墓地のすぐ北西よ。マルカルスの友人は、そこでよくグレイホストの指導者たちに会う。彼女ならもっと適した労働者を提供してくれるよう、エグザーチを説得できるかもしれない。

霊魂の導きを
シスター・グリノルド

セナンのメモSenan’s Note

ナサリめ!ここで俺たちに選ぶ権利があると言ったのに、何人かが死ではなく生きることを選んだら死を与えやがった。俺は怪我を負った。これが致命傷となるだろう。少なくとも逃れては来たが。

ナサリは生贄として死ねば永遠に生きられるようになると言って、クランの他の者たちを説得した。だが俺は真実を知っている。この儀式は力が目的だ。最後には彼女だけが残って褒美を獲得する。

下の闇への降り口から詠唱が聞こえる。もうすぐ生贄が始まる。ここで孤独に死ぬのと、仲間と一緒にあの恐ろしい穴へ投げ込まれるのとでは、どちらがより悲惨だろう。おかしなものだ。ブラダンはいつも俺に読み書きを覚えるなど時間の無駄だと言っていた。だが少なくとも、おかげで体から血が流れ出ている間に、やることができた。

ディオナス・トルートーの日記Journal of Dionus Trutor

何か大事なものがここに閉じ込められている!だがあの台が気に入らない。まだ我々の存在に反応していないが、ドワーフは不注意な侵入者を罰するために置いたのではないかと思う。

こうしてこの部屋を自分の目で見ると、ヴェセニオンの暗号じみた下手な詩よりもはっきりと理解できる。

王が盗賊を追う
淑女が王を追い回す
駿馬が全員の後を追う
盗賊に報酬をもたらすために

もちろん星座だ。1年の星座の順番は、王、駿馬、淑女、最後に盗賊だ。ヴェセニオンが正しいなら、答えは先頭の盗賊から始まり、最後に駿馬が来る。

盗賊と冬の星座や、北の空のつながりは明らかだ。それに駿馬は夏至の間、南の空でひときわ目立っている。王と淑女は少しはっきりしない。どちらも季節の間は東とも西ともつながりがない。東の星は淑女か?それとも王?

レイドナンを待つのに疲れてきた。少し実験をしてみるべきかもしれない。

トスモーン作品集(翻訳版)、IThe Translated Works of Tosmorn, I

編者注

グザンディア・イデットの本「トスモーン作品集(翻訳版)」は、著者の死後に出版されて以来、20年ほど議論を呼んでいる。

本人の言葉をそのまま受け取るなら、イデットは希少なアーティファクトを求めてリーチの土地を隈なく調査しながら生涯を過ごし――その途中で古代リーチの民による手稿を見つけた。イデットの主張によると現在は死語となった文字で書かれていたこれらの原稿には、伝説的なヴァテシュラン、トスモーンによって書かれた一連の叙事詩が収められていた。

イデットはこれらの手稿の現代語への翻訳に数十年を費やした。イデットの仕事の成果は不完全だったが、それは進行していた手稿の劣化や、翻訳を目指した文字に対する彼自身の知識不足によるものだった。彼は仕事を終え、原稿を出版のため売却してから間もなく亡くなった。

出版直後、学者たちはこの詩が偽物で、イデットの話はでっち上げだと非難した。ほとんどの学者は、現代のリーチの民が口承に頼っており、歴史的な記録にも文書の記録が用いられた形跡がないという事実を指摘している。イデットの話に対する別の反対者は、リーチの民にはトスモーンが著したような芸術的表現をする能力が無いと主張している。この議論は安直で、しばしばリーチやリーチのヴァテシュランに関する経験がない研究者などによって行われている。

これらの偽造だと叫ぶ人々に反対するのは、正当な評価をされていなかった天才、ヴァテシュラン・トスモーンに対する関心を呼び起こした、イデットを称賛する人々である。とりわけ、彼らはブレトンやインペリアルの厳格な詩の形式から程遠い、詩の断片の滑らかさ、刺激性、素朴な純粋さを高く評価している。彼らはまた、失われた技はタムリエルの歴史的記録の中で決して珍しいものでなく、それ故特にタムリエルの他の人々と比較して、リーチの者の文化を扱った学術的研究が少ないことを考えれば、イデットの失われたリーチの文字だという主張は、大激震が走るようなものではないと指摘している。

どちらの側も、イデットの主張を決定的に証明する、またはその反証となるであろう「ある物」が存在しないことを嘆いている。イデットが発見し、翻訳したと主張する手稿だ。生前のイデットを知る人は、彼は隠遁生活を好む孤独な人物で、しばしば荒野のキャンプに引きこもり、1年のうちの長い時間を研究と翻訳をしながら過ごしたと述べた。イデットはリーチ全域に多数のキャンプ地を持つと考えられていたが、彼の手稿を発見するという希望に満ちた野心的な学者により発見されたのはごくわずかな数のみだ。イデットの反対者は手稿がないのは、そもそも存在しないからだと主張している。イデットの支持者は、発見時に既に分解していた手稿は、おそらく朽ちて消滅してしまったのだろうと推測する。

こうして問題は解決することなく――不安定な状態で疑いの目と過剰な称賛の間に捕らわれている。私がこの詩のようなものの研究に打ち込んだ年月は答えを出してくれていない。という訳で、親愛なる読者の皆様には、ぜひこの本をご自身で読み、この後に続く内容が高く評価されたリーチのヴァテシュラン、トスモーンの作品――あるいは精巧な偽造品について知る唯一の手段なのかどうかを考えていただきたいと思う。

ヴァネッセ・オーリリー
第二紀322年、暁星の月5日

トスモーン作品集(翻訳版)、IIThe Translated Works of Tosmorn, II

テンプレアアアアアア 著

第一の断片

[編者注:グザンディア・エデットによって翻訳された詩の第一の断片には、すでに失われた、より大きな作品から抜粋された台詞が登場する。以下に記すエデット自身の序文からは、これがトスモーンのヴァテシュラン(伝承の守り手)としての経歴における初期の作品で、叙事詩的悲劇『イゾレンの愛』の一部分であることが伺える]

翻訳者グザンディア・エデットによる序文

以下に放棄されたリーチ狩人のキャンプの残骸を探して見つけたいくつかの断片のうち、第一のものを記す。これらの言葉が刻まれていた皮は雪解けによってかなり濡れており、また雪を溶かした太陽光もこの悲しむべき損傷を加速させた。このためヴァテシュラン・トスモーンの文章のうち、翻訳可能な程度に判読できたのは一部分だけだった。現代の読者の感覚に訴えるよう詩行に整えてあるが、これは人為的な構築である。皮に刻まれた本来の文に、このような形式はない。

以下の詩に記されたやりとりは、おそらくトスモーンが試みた叙事詩的悲劇の第一作品『イゾレンの愛』から抜粋されたものである。白髪の老戦士グリニンは、最愛の娘イゾレンの死を知らされる。グリニンの嘆きはイゾレンの恋人ヴァルトーンの到着によって中断される。彼はグリニンの憎むべき敵、リーチの魔女デヴェラの一人息子なのだった。

* * *

グリニン
イゾレンは麗しき風
足元に猟犬を従え
娘は丘や谷を駆け回った
弓の弦が歌を奏でれば
雄鹿も雌鹿も倒れたものだ

谷間には重い空気が漂う
林に流れる小川は口を閉ざし
鳥たちは歌うのを止めた
イゾレンがもう狩らないからだ

ヴァルトーン
老グリニン、イゾレンは私の恋人だった
かつて、この丘の木々も
若く緑にあふれていた
イゾレンと私はその間を歩み
深い峡谷の中
霧に包まれ、荒野を二人で過ごした

私たちは約束の言葉を交わし
カバノキの小枝で指輪を作った
我が心は墓石の下に眠る
もはや他の者を抱くことはない

グリニン
ヴァルトーン、我が敵の血よ
下等な虫、魔女デヴェラの血
お前と喪に伏すつもりはない

我がクランの地から去り
穴と闇へ帰るがいい
お前の母の見捨てられた広間へ
この手が悲しみで動きを鈍らせようと
我が石の切っ先はお前の血を流す

ヴァルトーン
イゾレンが死んだというのに
あなたが私にかける言葉は
恋人の死装束のように黒い
私は火の安らぎを求めている
霧は私を骨まで凍えさせた

私の手は石を削って荒れている
死した恋人の墓のため
グリニン、抱擁など求めはしない
我が親族への憎しみは知っている
あなたの親族への愛も知ってもらいたい

グリニン
デヴェラの子よ、お前に与えられるのは刃のみ
イゾレンは私の優しさだったことを知れ
彼女がいなくなった今、私に残されたのは
怒りと恐怖、悲しみだけだ

警告はした、誠実に
だが今や、構えたこの石は
お前の肉と血を求めている
受け入れたくばそうするがいい

ヴァルトーン
グリニンよ、クランはこのことを知るだろう
私は殺されたのだ!
傷から流れ出るこの血が地面を汚すように
この行いはあなたの魂を汚している
私の霊魂は愛するイゾレンの元へ発とう
あなたが追いかけてこない草地へ
冷たい霧からも、残酷なあなたからも自由な地へ
私が死んだら、デヴェラに伝えてほしい
母は殺された息子のために泣くべきだと

トスモーン作品集(翻訳版)、IIIThe Translated Works of Tosmorn, III

第二の断片

[編者注:グザンディア・エデットによって翻訳された詩の第二の断片は、ヴァテシュラン演劇の研究者や好事家におそらく見慣れたものに映るだろう。グウィナ、ロウォラン族長、半神デアロラ、そしてホーンストライド・クランは口承によく現れる。ただしエデットが記しているとおり、彼らの描写は作品ごとに大きく異なっている。事実、エデットはヴァテシュラン・トスモーンの影響力と評判を考慮して、以下の作品がこれらの古典的登場人物の元来の姿であることを示唆している]

翻訳者グザンディア・エデットによる序文

グウィナの歌は、寒い春の夜にヴァテシュランが火のそばに姿を現せば、今日でも聞こえてくる。トスモーン版のこの歌を翻訳して記録するに当たって、私は人気の主題の描かれ方に驚かされた。彼が語るこの歌において、グウィナはロウォラン族長とそのクランの親族であり、ホーンストライド・クランの狩人ではない。現代における描かれ方と同様、ロウォランの神話的なまでの戦闘能力は、ハーシーンの子である半神デアロラから彼の末裔に与えられたものである。

腹立たしいことに、私が収集した手稿はロウォランがホーンストライドに倒される事態を引き起こした経緯を説明していない。トスモーンほど地位のあるヴァテシュランならば間違いなく、それがロウォランの7人目の娘の裏切りのせいだったか(これは特に人気のある説だと聞いている)、白い雄鹿の凶兆を見なかったせいか(これもまた人気の説である)、それともまだ語られていない原因があったのか、決着をつけられるはずなのだが。

* * *
グウィナ
かつてここは静かな森だったのに
今では葬送歌が響き渡る
つるはしの音が聞こえる
大地を掘り返しているのは
神聖なる死者の家を作るため

戦いは勝利に終わった
ホーンストライド・クランは倒れ
絶壁の下の暗闇に消えた

勝利を歌った
力を叫んだ
悲しみを囁いた

今やクランの死体は
この土の中に埋められた
そこから何が育つ?
ただ栄光の物語だけ
大地は不毛のまま
私たちがそう保つから

そして花と草を取り除き
名を思い起こす
クランのために死んだ者の

ロウォラン族長は横たわる
矢に目を射抜かれ、息は吐かれぬ
子が周囲に集まる
力強い樫の周囲に葉が集まるように

巨大な枝が落ちた
葉も共に落ちた
そしてロウォランの血は絶える
その血はハーシーンの娘
デアロラの血

ホーンストライドは撃退された
だが心臓はえぐられた
互いに勝利の笑みを交わし
季節は冬へ移り変わる
そして次の春、私たちは消え去る
陽光の中の霧のように

迅速に攻めねばならぬ
クランが力を失う前に
他の者がロウォランの死を知れば
鴉が集まるだろう

我らの骨が漁られる前に
石の街を攻めなければ
岩の下の王を攻めなければ

魔女の元へ行こう
腐ったイチイの林の中
彼らの風は苦く
我らを中から腐らせる
だが親族よ、この毒を飲まねばならぬ
マルカルスの矢に立ち向かうため

我らのために掘られる墓はない
我らが石の壁を得ても
生きて守ることはできぬのだから

マルカルスの財宝など求めぬ
ロウォランは王を殺し
民を解放しようとした
彼の大義は我らの大義

我らは魔女の炎で血を燃やし
街を蹂躙する

我らは石の下の砦を襲い
王冠を床に叩き落す

我らは王の喉を掻き切る
研ぎ澄ました石と狩人の爪で

我らは死ぬが、それは些細なことだ
ロウォランの夢は成就する
愛するクランは滅びる定め
この季節か、次の季節か
だが孤独には死なぬ

トスモーン作品集(翻訳版)、IVThe Translated Works of Tosmorn, IV

3つ目の断片

[編者注:グザンディア・イデットの翻訳された詩のようなものの断片の3つ目は、リーチの伝説の中でも、最も長く伝わることとなった話を取り上げている――「赤鷲」だ。序文で示されているように、イデットはこの断片を奪われた誇り――赤鷲の物語の要となる部分――と理解し、ほぼ哀歌調の文章を採用している。— V.A.]

翻訳者グザンディア・イデットによる序文

赤鷲。女帝ヘストラによるリーチ征服中の彼の不従順と抵抗は、何世代ものヴァテシュランに加え、リーチの厳しい土地を越えた先にいる吟遊詩人や語り手に感銘を与えた。このことは、トスモーンがこのリーチの者の偉大な英雄の生と死を年代順にまとめていたことを知る者にとって、驚きに値しないだろう。

私がこの遺物の一部を入手できたことはかなり幸運だった。めったに人前に姿を現さない魔女の魔術結社、ソーンルートの保有地に入るための安全な経路を確保した後、私は彼らの骨董品や消耗品の中に、古い頭飾りを見つけた。そのバンドの中に固く巻かれた仔馬の皮があった。その表面には見覚えのある名前が殴り書きされていた。「ファオラン」。赤鷲は現地の言葉でこう呼ばれていた。

断片の文章は、ファラオンと女帝ヘストラの軍隊との最後の戦闘の余波についてのみ焦点を当てている。より広く語られている作品の口調に反して、トスモーンは悲し気な、いつまでも心に残る詩(と呼べるようなもの)で我々を楽しませてくれる。話を盛り上げる赤鷲の最終的な帰還の予言が存在しないため、読者は「赤鷲の復活とリーチの自由を求める声は後のヴァテシュランの創作なのだろうか?」と推測することになる。このことは、この岩だらけの土地に何千とある謎の1つであり続けるだろう。

* * *
ファオランの死

涙に暮れる者たちが彼を背負い、険しい岩山を登る。
生まれた時に赤鷲と呼ばれた者が
死して百の傷より赤く染まる。
朝日の光が世界に示す
死者の絨毯と
千の魂が重くのしかかる
リーチの息子。
呪術師が灰と樹脂の壺を手にやって来る
涙に暮れる運搬人に会うために
そしてファオランは横たわる。

彼を見て族長は涙を流す
無のために引き裂かれた彼を。
彼の体に灰が撒かれる
けれども落ち着くことはない。
ファオランの下の石の上にたまりを作る
彼に足がかりを得られずに。
静かな囁きが広間を飛び回り
全ての頭が下げられた。

今、ハグが与えられるべきものを獲得にやって来た
前には彼女の鴉
そして呪術師を見て笑う
灰も樹脂も役に立たぬと。
彼女はイチイの杖を手に取り、降り下ろす
ファオランの胸の上に。
中のイコルが噴き出す
黒い血が
そして彼女は自らの欲望の種を手に取り
ファラオンに植えた。

百の手が火打ち石を取り、矢をつがえる。
誰もが落胆する。
ハグの笑いは魂を膿ませる
死が彼女を取り巻く時に。
彼女の頭巾の下で千の鴉が飛び立つ
そして彼女は行ってしまう。
彼女は槍も、剣も、弓をも越えている。
逆らえる呪術師はいない。
ファオランが戦いの支援を命じたため
得るべきものを彼女は獲得した。

泣く者はファラオンを下ろす
山の心臓へ。
彼は最後に裸で横たわる
眠りなき眠りの中に。
石は封じられ、蝋が注がれる
そして火打石が砕かれる。

ここにファラオンは死して横たわる。

ドルアダッチの怖い話、第一巻Scary Tales of the Druadach, Book 1

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

親愛なる読者諸君。「怖い話」の新たな書へよく戻った。今回、我々はリーチの人里離れた荒野、特に荒々しく人を拒むドルアダッチ山脈を探検する。野蛮なリーチの者はただ危険なだけではなく、それと同じくらい孤立した場所を好む得体の知れない民族だ。そして、この物語は著しい危険を冒すことなく集めることはできなかった。

だがまたしても、私はこの年季が入った語り手の魅力、機転、そしてとても早く走る能力により、未だ確認も解明もされていない物語を、帝都やそれ以外の地域の読者諸君にお届けするために逃れて来た。

それではお気に入りの椅子に腰を落ち着け、ハチミツ酒を手にして、夜の暗闇にランターンを灯したなら読み進めたまえ。勇気があるなら、だが!

* * *
デイドラの遠吠えをする狼

最初の未だ解明されていない話は、あるレッドガードの商人キャラバンの生き残りから聞いたものだ。この人物はドラゴンスターからソリチュードまで大量の上質な絨毯やカーペットを運んでいる最中に出会った、計り知れない規模の無慈悲な災難を耐え抜いた。この何も知らない、間もなく危険にさらされることになるカーペットの運搬人たちは、その季節のソリチュードの高級装飾品不足をうまく利用できるようにと願いながら、恵雨の月の終わりにドラゴンスターを出発した。キャラバンは匿名を希望している2人の商人で構成され、バーガマの刃と呼ばれるハクミル隊長率いる、8人の傭兵によって守られていた。

商人は最初から呪われていたかのような長旅について語る。境界を越えてリーチに入ると、すぐにキャラバンは最悪の嵐、数日間にわたり弱まることなく降り続く激しい雨に襲われた。レッドガードの荷馬車と頑丈な馬、砂の上で荷馬車を引くことで鍛えられた強く丈夫なその馬でさえ、陰気でぬかるんだ状況の中では速度を保つのが困難になった。隊商と馬が最大限の努力をしたにもかかわらず、キャラバンの進行には数日の遅れが出た。だが、この厄介な不自由さは、夜間にハクミル隊長の傭兵が2人消えたことで一層悲惨なものとなった。

その日は消えた2人の恐怖の叫び声が聞こえることはなく、遺体も見つからなかった。だが、2人が行方不明になる前の晩、キャラバンの生存者全員が1匹の狼の悲し気な遠吠えを聞いたことを思い出している。それはゾッとするようなものすごい遠吠えで、雨でずぶぬれになったテントの中で身を寄せ合ってウトウトしていた者全員が目を覚ました。そして遠吠えが次第に小さくなり聞こえなくなった後も長い時間眠れなかった。彼らは言った。「遠吠えは…まるでデイドラのもののようだった!」と。

雨は朝までに弱まったが、他のキャラバンの護衛6人がどんなに捜索しても、行方不明の仲間の足跡も形跡も一切見つからなかった。歴戦のクラウンの戦士たちが、あたかもキャラバンを苦しめた嵐そのものにさらわれたかのように消えてしまった!あるいは…デイドラの狼に。

先導役の商人が警告を発した…キャラバンは引き返すべきではないか?だが、腕に自信があり、消えた兵士を見つけると固く決意していたハクミル隊長は、進むことが可能だと商人たちに断言した。そこで彼らは強引に進んだが、結局最悪な霧が猛烈な嵐に取って代わっただけだった。1人は「霧があまりにも濃くなって、目の前の自分の指さえ見ることができなかった!」と語ってくれた。

さらにまずいことに、生存者たちは遠吠えを聞いた。その日は1日中、騒々しく弱まることのない、最初の傭兵たちが消えた夜にキャラバンを目覚めさせたのと同じあの恐ろしい遠吠えが何度も何度も聞こえた。いつも霧の中から、しかし突き止めるには遠すぎる位置から。傭兵たちは仲間同士で悪態をつき、文句をつぶやきながら隊列を詰め、身を守ろうとした。しかし攻撃されることはなかった。キャラバンが重い足取りで進むにつれ、彼らは遠吠えはリーチの者によるただの悪質ないたずらに過ぎないと確信するようになった。リーチの野蛮なクランは、決して道を行く6人のクラウン・レッドガードをあえて襲ったりはしない。このような熟練の戦士が不意をつかれるようなことは2度とない!

霧が立ち込めた晩、ハクミル隊長は傭兵たちに交代で寝ることにすると告げた。夜明けが来るまで3人が眠り、3人が起きているのだ。彼の計画は妥当なもののように思えた。霧に満ちた晩の最も暗い時間に、狼のデイドラじみた遠吠えが再び夜を切り裂くまでは。キャンプ中の全員がすぐに目を覚まし、ハクミル隊長が闇の中の兵士たちに声をかけた。だが返事をする者はなかった。瞳に激しい怒りをたたえたこのバーガマの刃は、残った2人の兵士に如何なる状況であろうと決してキャラバンを離れないように命じ、自らの巨大な剣を抜いた。ハクミルはデイドラの狼と対峙し、仲間の運命を知るため霧の中へと勢いよく歩いて行った。

そしてこの勇敢なハクミル隊長だが、皆が待ち望むこの物語の語り手は不幸にもこうお知らせしなければならない。決して戻ることはなかった。

翌朝も霧は残り、再び強い雨も加わっていた。間もなく頑丈なレッドガードの荷馬車の車軸の1本がまっぷたつに折れた。どうしてそんなことが有り得るだろうか。荷馬車は出発前に、ドラゴンスターで修理し強化してあったのに!一体なぜこんなことに?嵐と、霧と、この幽霊じみた奇妙な狼に悩まされながら2週間もとぼとぼ歩くしかないということが予想されると、クラウンの商人たちは荷馬車を放棄して、さっさと馬でソリチュードに帰るという決断をした。「カーペットやシルクにはまだ生きている人間ほどの価値はない!」と、彼らは言い切った。

1頭の馬に2人がまたがり、回収できた所有物を乗せた最後の馬と共に一行が荷馬車を離れると、すぐに恐ろしく深い霧が晴れたと言う。緊迫した4日間の後に、生存者たちはソリチュードに到着した。放棄した財産は失われたが、それ以外は略奪もされず、怪我を負うこともなかった。

だが、ハクミル隊長と消えた6人の勇敢な傭兵の消息は不明なままだ。デイドラのような狼の記憶だけが残り、その遠吠えを聞いた者全員の脳裏に焼き付けられている。嵐と霧で作られた狼が夜中に不用心な者を奪い去って消えた。その犠牲者を、ドルアダッチ山脈の影に連れ去ったかのように!

ドルアダッチの怖い話、第二巻Scary Tales of the Druadach, Book 2

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

次に話したい物語は、ドルアダッチ山脈の影を舞台にした病と裏切りの物語だ。恐怖を味わってくれ!

* * *
カースワステンの滴る病

北リーチにある包囲された街カースワステンは何世代も残り続けてきたが、その支配は頑健なノルドと油断ならぬリーチの民との間で、センシャルの賭博場における金貨以上に何度も持ち主を変えてきた。この街に関して、心騒がす裏切りの物語はアリクルの砂粒のようにありふれたものだが、ある嘆きと死の物語は他の全ての物語を凌ぐ。それがカースワステンの滴る病の物語である!

20年ほど前、リーチの民は再びカースワステンのノルドを追い払い、家を焼き、カースワステンを掌握した。このリーチのクランは飛び抜けて残虐で、カースワステンへの侵入を試みた勇敢なノルドは、リーチの民と獣の軍隊を相手にすることになった。聞くところによれば、このリーチの民は凶暴なウェアウルフと手を組んだという!

この街は1年ほどリーチの手に留まり続けたが、それも高名なノルドの略奪者、ウルガー・ストーンビアードが鴉の手という名のみが知られる強大なリーチ魔女に会うまでのことだった。一説によればウルガーと鴉の手は最初戦場で出会ったが、どちらも相手を仕留められなかったという。2日間の戦闘の後、彼らは停戦して食事を共にした。そこでウルガーは、鴉の手とカースワステンの向こう見ずなウェアウルフ戦士クランが別に良好な関係にはないことを知った。そしてウルガーの戦士たちによれば、彼はこの悪魔の女と闇の取引を結んだ。

鴉の手はカースワステン手前の平原に乗り出し、ウルガーの戦士たちに守られて、多くの不浄な犠牲を捧げた。美しくも忌まわしい言葉を詠唱しながら、彼女は墨汁のように黒い雨を降らせた。妖術の嵐はカースワステンとその建物を汚れで覆った。間もなく、叫び声が上がり始めた。
門が開かれ、リーチの戦士がよろめき出てきた。真っ黒な雨によって体の肉が燃え上がり、金切り声をあげながら!リーチの強力なウェアウルフでさえ病にかかり、苦悶の吠え声は傷ついた獣のようだった。配下の戦士の言葉によると、ウルガーはこの虐殺の報を聞いて喜び、街へ突入してリーチの生き残りを始末せよと命じた。

だが頑健なノルド戦士の集団でさえ、漆黒の妖術に覆われた街に足を踏み入れるのは躊躇した。鴉の手はウルガーに対して漆黒がリーチの民とウェアウルフにしか危害を加えないと保証したが、ノルドにはリーチの魔女の言葉を信じる気などなかった。街の叫び声は彼らを骨の髄まで震え上がらせた。配下の戦士がこのように怯えるのを見て、ウルガーは全員を臆病者と罵り、悠々と街に踏み入って、立っているのもやっとの状態で挑もうとしたリーチの民を切り伏せた。ウルガーが街の中心に立ち、斧が怖いかと生き残りに叫んだその時、漆黒の雫が一滴、彼の眉に落ちかかった。

漆黒の雫はウルガーの兜の表面で獣のように大きくなり、彼の頭を幕のように覆った。すぐにウルガーの体全体が漆黒で覆われ、ノルドの話では、死そのもののように黒い笑みを浮かべた。

裏切りを目撃した他のノルドたちは鴉の手に襲いかかり、指揮官を乗っ取った狂気の魔女を倒そうとした。しかしリーチの魔女が笑うと、ノルドの斧は空を切った。大鴉の群れが空に飛び立ち、カーカーと鳴き声が上がった。そして今や漆黒に覆われた指揮官が、その斧から疫病を滴らせながら向かってくるのを見て、ノルドは戦場から逃げ出した。

現在も、漆黒に包まれた巨大な戦士がドルアダッチ山脈の影をうろついているのを見たという話を耳にする。その手に持つ斧は肉も鋼鉄も溶かす雫を滴らせ、通った道には鴉の手の笑い声がついてくるという。彼は顔に笑みを浮かべた死神であり、道を塞ぐ者全てを切り刻む。それがカースワステンの滴る病だ!

ドルアダッチの怖い話、第三巻Scary Tales of the Druadach, Book 3

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

読者のみなさんにお伝えする物語も、これが最後になった。これは魔女と魔術に関する話だ。こうした物語が全てそうであるように、今回のものもドルアダッチ山脈の影が舞台になる!

* * *
肌が赤に染まった姉

この物語は私を斧で叩こうとすることなく話してくれる、わずかなリーチの民が教えてくれた。これは全ての物語の中で最も背筋の凍るものだ。老女は2人の姉妹について語った。1人は金髪、もう1人は黒髪で、どちらも最高クラスのリーチの魔女だった。老女によれば、どちらも力への渇望により正気を喰い尽くされてしまった。

色白で年長のリーチ魔女タンシアは、その年齢と強大な風の魔術によって選ばれ、クランを率いることになった。しかしタンシアはすぐに予想もせぬ挑戦者と争うことになった。1歳下の妹ウレシアである。彼女はタンシアの風の魔術と同じくらい強力な、水の魔術の使い手だった!

クランの中には姉妹のどちらにも戦いで適う者がいなかったが、姉妹が殺し合う様を見るのに耐えられる者もいなかった。タンシアとウレシアはクランの誇りであり、数世代で最強の魔女たちだった。クランの誰もが、これほどの逸材を失うことを望まなかったのだ。だがクランのメンバーたちが姉妹にどれほど懇願しても、タンシアとウレシアはどちらがクランを導くか、意見を一致させることはできなかった。結局、クランはこの膠着状態を解消する唯一の道に落ち着いた。驚異的な魔術の課題を解くコンテストである!

こうしてタンシアとウレシアは、魔術の力を試す様々な妙技を披露した。技が行われるたびに激しさを増していった。タンシアは荷馬車を動かすほど強力なつむじ風を召喚したが、妹が木を根ごと押し流すほど強力な水流を召喚したのでうろたえたという。ウレシアがクランの水をハチミツ酒のように甘くしたかと思えば、タンシアはクランの狩人を空気のように軽くして、空を階段のように駆けられるようにした。

老女によると、最終的に常軌を逸してコンテストを激化させてしまったのはタンシアだった。妹に勝とうと必死になったタンシアは、デイドラ公と約束を交わし、クランを指揮する力と引き換えに70年の奉仕を申し出た。しかしデイドラとの取引の常として、デイドラ公はタンシアが要求した以上のものを与えた。新たな族長が指名される前日、タンシアがクランのキャンプに戻った時、白かったタンシアの肌は血のように赤く変わり、両目は小さな炎のように輝いた。そしてクラン全員の前でタンシアは大気を沸騰させ、妹を生きたまま焼き殺した。

裏切られたクランは恐れをなし、散り散りになって逃げ去った。しかしリーチの老女によれば、赤い肌と炎の目を持つ姉は今でもかつてこのクランがいた荒野を放浪しており、人を見れば叫び声を上げ、この孤独な生を終わらせてくれと戦いを挑んでくるという。クランも家族もいない、孤独で陰気な終わりなき生を。

だが赤い肌の姉が持つ力は絶対的で、誰も彼女を倒すことができない。彼女は自分が交わしたデイドラの取引に囚われたまま、誰にも対抗できない力と、誰にも終わらせられない不死の生という呪いを受けているのだ。姉妹のうちウレシアは運がよかったと老女は言った。自由なまま死ぬことができたから。

ドルアダッチ山脈の動植物Flora and Fauna of the Druadach Mountains

帝国植物学者、テルラヴェス・デカニス 著

ドルアダッチ山脈は旅人に人気がない場所のままだ。多くの人に恐れられている。リーチの慣習を知らない人々は、断崖に潜むクランや山道の至る所にある暗い洞窟を恐れ、徹底的にこの場所を避ける。実に残念なことだ。何故なら最も美しい景色が、この力強い山岳地帯にはあるからだ。リーチの民は、おそらく彼らの領域に存在する動植物について、我々が得られる知識よりも多くのことを知っているだろう。私が得た知識は、主に周辺部に暮らす人々から、日記の余白に荒々しく書きなぐられた「茂みに隠れて息を潜めろ!」というメモと共に教わったものである。私はこれまでに記録されていなかった植物や動物について知りたいと願っていたが、恐怖のあまり深い探求ができなかったのではないかと感じている。いずれどなたかが加筆してくれることを望みつつ、私はここに記録したことを書き記した。

* * *
リーチの植物

ジュニパーベリー
まるで真珠のように美しく輝く白いベリーは、自然の環境下に数多く育ち、ドルアダッチ山脈を走る山道に無秩序に広がっている。危険を承知で摘みに行く勇気ある人々は、よく見かけるこのベリーにさまざまな使い道を見出している。ハチミツ酒に風味付けしたい場合であれ、甘い菓子を作りたい場合であれ、各種の薬用チンキ剤の材料として使う場合でさえあっても、このベリーは万能であり豊富に実る。

垂れ苔
ずっと垂れ苔の生えている光景には奇妙に引き付けられてきた。洞窟の入り口や岸壁を美しく覆う姿。世界における彼らの存在には、何か不思議で魔法的なものがある。ドルアダッチ山脈にはその湿度が高い気候により、驚くほどの数が生育している。

モラ・タピネラ
この風変りなキノコは倒木や腐敗した切り株などで発見される。平凡な外観ではあるが、私は彼らを美しいと思う。彼らは死がその手を触れた場所に育ち、それがもたらす静寂にひるむことはない。私はその執念を称賛する。彼らはドルアダッチ山脈における最も魅力的な菌類の見本とは言えないが、私の一番のお気に入りであることは確かだ。

* * *
動物

雪熊
この本で恐るべき力を持つ雪熊について触れなかったとしたら、それは私の怠慢だろう。ドルアダッチ山脈の高く雪深い山頂は、この巨大な野獣にとって完璧な生息地である。しかしながら、彼らの愛らしい見た目に騙されてはいけない。雪熊はより低い地域に生息する同等の生物と同じくらい危険だ。彼らの毛皮はその白い光沢と柔らかさ故に極めて人気が高いが、皮を入手するための対価は、この大胆不敵な観察者が積極的に支払おうとは思わないものである!

リーチメア
リーチの外でこれほど忍耐強い馬の血統は見つけられないだろう。リーチメアはかつては野生種だったのだろうと私は推測する。山脈の谷を突き進む彼らの姿はどれだけ素晴らしかったことだろう。しかし、手なずけられたからといってその非凡さが損なわれたわけではない。リーチ人の闘志と不屈の精神は、この堂々とした動物に具現化されている。時に彼らは気難しく、他者に対して極めて強い不信感を抱くことがある。この項目のための観察で、手足を1本も折らずに済んだのは幸運だった!リーチメアは愚か者には容赦しないのだから。

ハグレイヴン
私は自分の書いたものが、いつの日か旅人にドルアダッチ山脈を訪れ、自分の目でこれらのものを見てみようという気を起こさせる可能性があることについて考慮しなければならない。だから、私にはあなた方に警告をする責任があるのだ、読者諸君ん。もし自分がドルアダッチ山脈にいることに気づいたら、冷静さを失わないように。自然の土地にある以上の危険がそこにはある。私はこの記録にハグレイヴンも含めたいと思っていた。何故なら彼らもこの記録の一部だからだ。私は皆さんがハグレイヴンを見たことがなく、また見る理由もないことを祈る。だが、もし鳥のような性質を持つ恐ろしい老婦人に偶然出会ったら、自分が差し迫った危険に直面していることに気づいて欲しい。観察の時間は終わり、今や逃げるべき時なのだ。

ドワーフ・ディナスターについてOn Dwarven Dynastors

ドゥエマー古遺物研究者、レイノー・ヴァノス 著

大半のアマチュア探検家は、旅のどこかで何らかのドゥエマーの機械を見たことを自慢するだろう。そうした物語に出てくるのは決まってドワーフ・スパイダーやドワーフ・スフィアで、型通りの退屈な代物だ。アニムンクリが壁から飛び出し、両手の爪を振り回してくる話だ。こうした物語はドゥエマー技術の表面に触れているだけだ。最も奥深くの遺跡には様々なドワーフの機械が動き回っている。私たちが発見したものは、彼らの機械仕掛けの下僕のほんの一部でしかないと言っても過言ではない!

一例として、ディナスターを挙げよう。この巨像を自分の目で見たことはないが、いくつか部分的な描写を見つけている。記述だけに頼って正確なサイズを判断するのは難しいが、おそらくディナスターの背丈はドワーフ・センチュリオンを越え、横幅はゴールドコーストの交易馬車に匹敵する。他のアニムンクリと同様、ディナスターは有機体の形状を模倣しているようだ。この場合、角の生えたベヒーモス・ショークである。最も興味深いと思うのは、中核をなす装置だ。

設計図に関する私の理解が正しければ、ディナスターは運搬器具の一種として使われていたようだ。中心部の甲殻内に複数のドワーフ・スフィアが格納されていた。その時になればスフィアは隠された射出口から飛び出し、おそらく遭遇した敵を倒すために連携して戦ったのだろう。この装置はドワーフの基準からしても、めまいがするほど複雑に見える。

ここから導かれる問いは、なぜドゥエマーがこんな機械を作ったのかということだ。他のドワーフの下僕と異なり、ディナスターが戦争のため特別に作られたことは明らかであるように思える。私たちはレッドマウンテンの噴火以前にタムリエル地下で起きた戦いについて、未だわずかなことしか知らない。これよりさらに大きな機械が、ドゥマクの敵を探して遺跡をうろついていてもおかしくない。探索がさらに深くまで進展し、この古代の謎が今まで以上に明らかになることを期待しよう!

ナミラの踊りNamira’s Dance

リーチの儀式の観察
文化書記、ゲンマ・パンフェリウス 著

リーチの儀式について直接の目撃報告は少ない。大抵の場合、よそ者がこうした儀式に参加することは激しく忌避され、見学さえ許されない。私がリーチとその鋭く不屈の人々について発見したことがあるとすれば、それは彼らがドルアダッチ山脈の崖や谷間に人知れず咲く野生の花のように、互いに全く異なっているということだ。

多くのリーチのクランはよそ者が自分たちの生活に入り込むことを許さないが、ボールドクロウ・クランは私が学者だと名乗ると丁重にもてなしてくれた。彼らはデイドラ公ナミラを称える儀式に私を参加させてくれた。時として霊魂の女王、あるいはより劇的に死の女神と呼ばれることもあるナミラは、暗闇と終末の霊魂とみなされている(ただしリーチの民は、ナミラを再誕を司る霊魂ともみなしている)。リーチの民はナミラを自然界における強大な力と考えている。彼らのデイドラ崇拝は、例えばタムリエルの他の地域の人々が神々を崇拝するのと意味合いこそ違うが、彼らが霊魂と呼ぶ存在はリーチの民の生活に重要な役割を果たしている。リーチの民はデイドラとの間に持ちつ持たれつの関係を築いており、日々の課題や困難の助けを得るため、合意を形成しているのである。

ボールドクロウはナミラを深く尊敬している。彼らはナミラが死と生の両方に及ぼす作用を、古代の儀式によって称える。この儀式の光景は言葉で描写できるものではないが、私が目撃したものを記述するよう努力してみる。

ナミラの踊りはボールドクロウ・クラン全員の参加を必要とする。最年少の子供から最年長の狩人までの全ての成員が、空き地の中心にある大きな炎の周囲に集まる。多くの者は暗い色の服を身に着け、暗い色の絵具を顔から喉にかけて塗りつける。しかしそれ以外の人々は全裸で現れる。彼らが世界に生まれてきた時の姿を象徴するためである。踊れる者は一斉に踊り、死と生まれ変わりを目まぐるしく表現する。これは恐ろしく、また美しくもある。

この踊りの最中には血が流されるのだが、何が暴力を加えているのかはよく分からなかった。それに「暴力」は言い過ぎかもしれない。炎のきらめきの中に捉えられた血は溶けたルビーのようで、美しいと言ってもいいくらいだった。ある者は血の色を両目の下になすり付け、別の者は土に手形を押しつけた。彼らは血を恐れるだけでなく、血を称えてもいるようだった。おそらくそれがナミラの踊りの核心にあるのだろう。

私自身に関して言えば、デイドラ公についてどちらかというと伝統的な視点を持っていた。特にナミラについてはそうだ。それは恐怖と不快感が混ざった視点であり、リーチの民には無縁な視点のようだ。彼らはナミラを肯定的に捉えており、私が見た儀式は美に満ちていた。リーチの出身でない私たちにとっては奇妙に聞こえるかもしれないが、自分の目で見ればきっと同意してもらえるだろう。この地とその人々に、愛が欠けているわけではないのだ。

ノルドの子供の日記Nord Child’s Journal

父さんは行かなきゃいけないって言ってる。ここは僕たちの土地じゃなくって、自分たちの土地だって言う悪い人たちがいるんだ。僕にはよく分からない。ここがその人たちのなら、どうして僕たちはここに住んでるの?ここが誰か他の人の家だなんて誰も教えてくれなかった。考えると悲しくなる。僕はここで暮らすのが好きだけど、父さんはいつも人のものを取ったらいけないって言ってる。それって、人のだって知らなかったとしてもダメってことかな?

どうして悪い人たちと話してみようとしなかったのかな。それはあの人たちが危険だからで、僕たちは攻撃される前に出て行かなきゃいけないんだって父さんは言う。でも、「ここがあなたたちの家だって知らなかったんです」って説明したら、絶対に親切にしてくれると思う!父さんは僕があんまり子供だから分からないんだって言うけど。

僕は行きたくない。悪い人たちと一緒にここに住めたらいいのに。あの人たち、どのくらい悪いのかな?もしかしたら、僕みたいな子供がいて、僕と友達になれるかもしれない。

ファルクフィルのメモ、1ページ目Falkfyr’s Notes, Page 1

3日目:私はファルクフィル・スノウメイソン。ソリチュードのハイルフラルド王の臣下だ。これはきっと最後の報告になると思うが、我が王を失望させるつもりはない!

私の任務は、我が国境で問題を起こしているリーチの民の略奪者の一団を追跡することだった。リーチの民はカースワステンを通り越して西に逃れ、その後北に向かった。私は彼らを山の中まで追ったが、ブリザードに阻まれてしまった。洞窟に避難しようとしたとき、足元の地面が崩壊した。

2日間ほど救助を待ち、今は食料が尽きかけている。この巨大な洞窟の中に扉を見つけたものの、開くことができない。コンパスはまだ機能している。だから私は西へ向かい、高い土地を探そうと思う。多分他の出口を見つけられるだろう。

万が一出口を見つけられなかった時のために、この報告書はここに置いて行く。もしこれを見つけたら、ファルクフィル・スノウメイソンが任務を放棄しなかったことを知ってくれ!

ファルクフィルのメモ、2ページ目Falkfyr’s Notes, Page 2

4日目:この洞窟には終わりがないらしい。おまけに巨大な虫がはびこっている!子供の頃、祖父がモーサルの沼にいる巨大な虫の話をしてくれたが、私は全く信じなかった。今、その虫がどこから来るのかが分かった。

食料も尽きてしまったが、もっと重要なのは水が尽きそうだということだ。4日間の偵察任務用の1週間分の物資では、穴に落ちた後の分はまかなえない。だが、ここから地下に川が見える。水筒に補充したいなら、あの巨大虫の前をこっそり通り抜ける以外に選択肢はない。

もし成功したら、別のメモを川の横に残そう。失敗したら、ファルクフィル・スノウメイソンは両手に斧を持って戦って死んだと理解してくれ!

ファルクフィルのメモ、3ページ目Falkfyr’s Notes, Page 3

5日目:今、真実が分かった。この巨大な洞窟は昔話の地下世界、ブラックリーチだ。私、ファルクフィル・スノウメイソンはここに足を踏み入れた最初の男だ!

水筒に水を汲んでいたら巨大な虫に見つかった。それを殺したあと、あることを思いついた。私は体中に虫の膿のような液体を塗り付けた。それ以後、他の虫は寄ってこなくなった。思ったとおり、奴らは臭いで狩りをする!

本当にここで生き延びられるんじゃないかと思う。ソリチュードに戻ったら私は伝説になるぞ。人々はブラックリーチを発見した斥候、ファルクフィル・スノウメイソンの銅像を建てるだろう!

もう寝よう。明日は上にあるドワーフの遺跡で食べ物を探すつもりだ。必要に駆られるまでは、そこら中に生えてるキノコを試すような危険は冒したくない。今ではあきらめる気は全くなくなった。

ファルクフィルのメモ、4ページ目Falkfyr’s Notes, Page 4

6日目:ドワーフどもは街を固く閉じたままにしやがった。入る手段も鍵をこじあけるものもない。中に食料があるとしても、私には食べることができない。

今朝、灰色がかった白い色のキノコを1つ食べた。生焼けの肉みたいな味だった。今日は休んで、死なないか様子を見る。死ななかったら、必要な食料は十分にあるってことだ!

7日目:キノコは毒じゃなかった。必要なら何だってあさってやるぞ!私は生きるんだ!ブラックリーチの奥深くで生き延びた話は、語り草になるだろう!

川を渡った南に、木のようなキノコの林が見える。今度はあっちの方に行ってみよう。

ファルクフィルのメモ、5ページ目Falkfyr’s Notes, Page 5

9日目くらい

食べられるキノコキノコ
大きくて灰色は肉のような味
小さくて青はおいしいおやつ
緑に光るのはとても甘く歌う

ここにあるキノコは全部食べられる。偉大なるウームがそう言ってる。偉大なるウームは私が南に行くことを望んでいる。私は南へ行こうと移行と以降と思う。

探さなきゃならないものがあったはずなのに、何だったか思い出せない。まあいい。今では全部の根が私の名を知っている。

ファルクフィルのメモ、6ページ目Falkfyr’s Notes, Page 6

?日目

私は選ばれし者だ。偉大なるウームは私を胞子にし、そして、私、スノウファルク・メイソンルートは、永遠に生きる。根は真実を知っている。根、ウーム、歌、全てつながっている。これはとても深い!

下の方に扉があるが、そっちは私の行く道じゃない。今、偉大なるウームは私に北について告げている。悪臭と虫の源だ。宝物はそこに捨ててもいい。何故ならもういらなくなるから。私は胞子で、まもなくウームになる。私は全てのウームになる。

家を見つけ、根を広げる。

ファルクフィルのメモ、7ページ目Falkfyr’s Notes, Page 7

何日目か…どうでもいい。

空気が紫を歌い、血が石を湿らせる。偉大なるウームの胞子が根を張る。もうそんなに長くはかからない。

私は土を食べ、闇を飲む。私は今、家にいる。私たちが家だ。

殻が砕けるが、素早く動く者たちは気に留めない。それは中にある、そして準備できている。

語れ、偉大なるウームよ! ルートメイソンについて語れ! もう一度、葬られた夢について私に語れ!

成長する時が来た。

ファルクフィルの完成した報告書Falkfyr’s Complete Report

3日目:私はファルクフィル・スノウメイソン。ソリチュードのハイルフラルド王の臣下だ。これはきっと最後の報告になると思うが、我が王を失望させるつもりはない!

私の任務は、我が国境で問題を起こしているリーチの民の略奪者の一団を追跡することだった。リーチの民はカースワステンを通り越して西に逃れ、その後北に向かった。私は彼らを山の中まで追ったが、ブリザードに阻まれてしまった。洞窟に避難しようとしたとき、足元の地面が崩壊した。

2日間ほど救助を待ち、今は食料が尽きかけている。この巨大な洞窟の中に扉を見つけたものの、開くことができない。コンパスはまだ機能している。だから私は西へ向かい、高い土地を探そうと思う。多分他の出口を見つけられるだろう。

万が一出口を見つけられなかった時のために、この報告書はここに置いて行く。もしこれを見つけたら、ファルクフィル・スノウメイソンが任務を放棄しなかったことを知ってくれ!

* * *
4日目:この洞窟には終わりがないらしい。おまけに巨大な虫がはびこっている!子供の頃、祖父がモーサルの沼にいる巨大な虫の話をしてくれたが、私は全く信じなかった。今、その虫がどこから来るのかが分かった。

食料も尽きてしまったが、もっと重要なのは水が尽きそうだということだ。4日間の偵察任務用の1週間分の物資では、穴に落ちた後の分はまかなえない。だが、ここから地下に川が見える。水筒に補充したいなら、あの巨大虫の前をこっそり通り抜ける以外に選択肢はない。

もし成功したら、別のメモを川の横に残そう。失敗したら、ファルクフィル・スノウメイソンは両手に斧を持って戦って死んだと理解してくれ!

* * *
5日目:今、真実が分かった。この巨大な洞窟は昔話の地下世界、ブラックリーチだ。私、ファルクフィル・スノウメイソンはここに足を踏み入れた最初の男だ!

水筒に水を汲んでいたら巨大な虫に見つかった。それを殺したあと、あることを思いついた。私は体中に虫の膿のような液体を塗り付けた。それ以後、他の虫は寄ってこなくなった。思ったとおり、奴らは臭いで狩りをする!

本当にここで生き延びられるんじゃないかと思う。ソリチュードに戻ったら私は伝説になるぞ。人々はブラックリーチを発見した斥候、ファルクフィル・スノウメイソンの銅像を建てるだろう!

もう寝よう。明日は上にあるドワーフの遺跡で食べ物を探すつもりだ。必要に駆られるまでは、そこら中に生えてるキノコを試すような危険は冒したくない。今ではあきらめる気は全くなくなった。

* * *
6日目:ドワーフどもは街を固く閉じたままにしやがった。入る手段も鍵をこじあけるものもない。中に食料があるとしても、私には食べることができない。

今朝、灰色がかった白い色のキノコを1つ食べた。生焼けの肉みたいな味だった。今日は休んで、死なないか様子を見る。死ななかったら、必要な食料は十分にあるってことだ!

7日目:キノコは毒じゃなかった。必要なら何だってあさってやるぞ!私は生きるんだ!ブラックリーチの奥深くで生き延びた話は、語り草になるだろう!

川を渡った南に、木のようなキノコの林が見える。今度はあっちの方に行ってみよう。

* * *
9日目くらい

食べられるキノコキノコ
大きくて灰色は肉のような味
小さくて青はおいしいおやつ
緑に光るのはとても甘く歌う

ここにあるキノコは全部食べられる。偉大なるウームがそう言ってる。偉大なるウームは私が南に行くことを望んでいる。私は南へ行こうと移行と以降と思う。

探さなきゃならないものがあったはずなのに、何だったか思い出せない。まあいい。今では全部の根が私の名を知っている。

* * *
?日目

私は選ばれし者だ。偉大なるウームは私を胞子にし、そして、私、スノウファルク・メイソンルートは、永遠に生きる。根は真実を知っている。根、ウーム、歌、全てつながっている。これはとても深い!

下の方に扉があるが、そっちは私の行く道じゃない。今、偉大なるウームは私に北について告げている。悪臭と虫の源だ。宝物はそこに捨ててもいい。何故ならもういらなくなるから。私は胞子で、まもなくウームになる。私は全てのウームになる。

家を見つけ、根を広げる。

* * *
何日目か…どうでもいい。

空気が紫を歌い、血が石を湿らせる。偉大なるウームの胞子が根を張る。もうそんなに長くはかからない。

私は土を食べ、闇を飲む。私は今、家にいる。私たちが家だ。

殻が砕けるが、素早く動く者たちは気に留めない。それは中にある、そして準備できている。

語れ、偉大なるウームよ!ルートメイソンについて語れ!もう一度、葬られた夢について私に語れ!

成長する時が来た。

ペンターチ・ドラルジュルへの手紙Letter to Pentach Draljura

ペンターチ・ドラルジュル

ラダ・アルサランがあなたは頼りにできると保証してくれた。闇の予言で果たす役割のため、ゴーストソングに準備をさせるまで何年もかかった。この期に及んでつまらない失敗を許すつもりはない。

ナサリに時が来たことを納得させた。闇の予言に必要な儀式を行わなけばならない時が来たと。彼女とクランが妨害されないようにするため依頼することは、何でもやって欲しい。彼女の影響力は強いけど、実際に何をするつもりかを知ったらクランは尻込みするでしょう。必要なら最後の一歩を手助けするように。ナサリが扉を封じたら、全員を墓地から退避させること。

私は待っている。儀式が闇の心臓を目覚めさせたら、私はそこにいなくてはならない。ゴーストソング・クランが私たちの目標への最も確かな道であることを忘れないで。何者にも、私のペットの魔女を邪魔させないように。

レディ・ビレイン

マスター・ピシスの日記Master Pythis’s Journal

彼は何も疑わない。彼を騙して、私が装置を確保するのを手伝わせるのは簡単だった。私自身の手では不可能だった。遺物に与える損傷についての便利な嘘は、無能な腰抜けどもが私を追うのを阻止してくれるだろう。できれば、これが音調の魔法から受けるあらゆる潜在的な影響に対する言い逃れにもなるといいが。遺物の力を最大限利用するためには、音調の混乱をとても大きく産み出さなければならない。

運が良ければ、サイジックが遺物の紛失に気づくまでに、カリスは完璧な犯人になっているだろう。彼は報いを受ける。その後はこの遺物から手に入れた新しい力で、ご立派なサイジック会に、彼らが本当はどれほど私より劣っているか、見せつけてやる。

マルカルスにて傭兵求むWork for Hire in Markarth

多数の問題がリーチの民を悩ませている。自分がもっとも勇敢で強く、金と栄光を山積みにするためには計り知れない危険に向き合うことも厭わない冒険者だと思うなら、リーチの者は仕事を提供する。

詳しくは、マルカルスの街にいる執政官カルデアを探してほしい。

マルカルスのインペリアルAn Imperial in Markarth

アルドの行政官、執政官カルデア 著

ロングハウス帝の時代からマルカルスは大きく変化したが、変わらない物事も多い。モリカル皇帝がカダッチを総督に指名した後、私は最初の任務としてここに派遣された。

シロディールからマルカルスへの移住は、思ったほど大きな衝撃をもたらさなかった。リーチ自体は大きく異なっていたが、故郷のしがらみは都市の中にいても常に明らかだった。私はささやかながら秩序を維持するために派遣された。文書や行政、この場所を治めるための様々な任務を処理するために。ある意味では私がここにいる目的自体が、ホームシックの防止に役立ったと言えるかもしれない。

マルカルスは住民にとって常に捉えどころのない場所で、その古代の技術は魅力的であると同時に、圧迫感を伴ってもいる。リーチには野生的で無秩序という評判があるが、マルカルスには今でもドワーフの緻密な意匠が残っている。秩序立てられ細密だが、時を経てそれとはまるで反対の人々が占めるようになった。

帝国が倒れた後も留まるほど自分がこの場所を好きになると誰かに言われていたら、私は面と向かって相手を笑い飛ばしていただろう。だが実際にそうなった。カダッチがアルド・カダッチになった時、彼が個人的に私の残留を求めたのも一因だった。彼を相手に断るのは難しく、しかも私は常に自分の事務能力を評価してくれる者に弱かった。

私がリーチの民をこれほど気に入るようになったのは、それが理由かもしれない。彼らの多くは読み書きができないし、学ぶ意思もない。そのため私は、彼らにとって欠かせない存在である。この立場を喜んだことは否定しがたい。

しかしインペリアルとしてマルカルスで暮らすことが大変でないとは言わない。誰もが私の仕事を評価してくれるわけではない。やって来るクランの中には、自分たちの仲間でさえ信用しない者もいる。彼らと異なる者はなおさらだ。記録をつけ、彼らと話して問題を解決する手伝いをするのが私の役目だが、大変な不利を抱えつつ働かなければならない。私は脅迫され、侮辱され、憎悪されてきた。どれだけ長くここで働いても、リーチには自分たちの問題に干渉するインペリアルを信用しない者が未だにいる。

だが私はこの地が好きだ。人間とクランの個性が奇妙に混ざり合うマルカルスが好きだ。アルド・カダッチと働くのは楽しく、必要とされているという感覚も楽しい。この地と民への献身にとって、解決できない困難など存在しない。

マルカルスの暴君についての報告Report on the Despot of Markarth

ストームヘヴンのレディ・ナイリーン・デヴィエリン 著

陛下のご下命により、私はマルカルスの暴君宛てに苦情を届け、彼が我々の国境を襲撃するクランの制御に意欲を見せるかどうかを見極めるためマルカルスに参りました。我々の交渉における困難な問題についてまとめた報告書はすでにウェイレストに送付済みです。ですが、どのような男がリーチを統治しているのかを理解することは、宮廷にとって有用であろうと思われます。マルカルスの暴君は教養のない軍人ではありません。また、彼をそのように扱わないよう注意する必要があります。

まずは、ブラック・ドレイクのカダッチが現在の地位についたいきさつについて、改めてお話するところから始めさせていただきます。その名が示すとおり、カダッチはロングハウス帝ダーコラクの親族にあたります。若い頃、ダーコラクの次男でありロングハウス朝第二代皇帝モリカルのリーチ衛兵を務めるため南に向かい、若くても戦えることを示しました。シロディールに滞在中、カダッチはインペリアルの協力と軍事訓練を受けました。モリカルが徐々に落ち着きを失くしていく母国の各クランに対して、ある程度帝国の権威を確立する必要があると考えた時、彼はその任務に信頼のおける血族を指名することを選び、カダッチをマルカルスに送り返しました。

帝国法の全てを自由なリーチの民に強いるつもりではないことをクランの族長に再認識させるため、モリカルはカダッチの権限をマルカルスと街を直接取り巻く土地に制限しました。この結果、カダッチはマルカルス内の秩序を維持するに留まり、それ以外は各クランの統治に任されることとなったため、クランの族長たちは納得しました。モリカル皇帝の残った統治期間、カダッチ総督は効果的にマルカルスを管理し、レオヴィック皇帝の不穏な統治期間を通してその地位を維持しました。

この期間に、カダッチはリーチ流の支配を敷きました。採決は迅速で野蛮であり、マルカルスの暴君と呼ばれるようになったのです。

レオヴィックが倒され、残ったリーチの民がシロディールから撤退すると、カダッチは自らの名において権力を獲得し、かつてのリーチの民の称号「アルド(砦の王)」を手に入れました。次に彼は自身のクランを残忍な手法で粛清し、主導権を脅かす可能性のある、残存するブラック・ドレイクを全て殺害か追放しました。いずれにしても15年に及ぶマルカルスの支配は、自らの指揮下にある統制のとれていない戦士を、王として支える覚悟のある忠実な軍隊に育てる機会をカダッチにもたらしました。

カダッチはアルドとして、「クランではなく、リーチを所有している」ことを主張しています。各クランが他の王を選ばず、必要な時要請に応じる戦士がいる限りにおいて、彼は他のクランを支配し、彼らの問題に干渉するつもりはありません。一部に嫌々ながらというケースもありましたが、リーチのクランは彼がマルカルスを統治することに同意しています。如何なるクラン、または有効と思われるクランの同盟も、カダッチの軍に挑むことはできません。自ら玉座につき、総督の称号を放棄してからの5年間で、暴君カダッチはゆっくりとマルカルスにおける権力を強化し、かつての要塞を簡素な都市国家、自由で独立したリーチのための首都へと変貌させました。

それでは、カダッチがどのような男なのかという話ですが。彼を説明するのに最も適した言葉は「現実的」であると考えます。彼は自分の力が確信できない限り、注意深くリーチのクランが乗り気ではないことを強要しないようにしています。しかし自分の力が確信できる時は、制御できないクランを服従させるために全力を尽くすことを躊躇しません。これが、ハイロックを脅かしているクランと休戦協定を結ぶための仲介を暴君カダッチにさせるのが困難である主な理由です。カダッチは我々の国境の平和のため、彼らを刺激して自分の力に反抗させることに興味がないのです。マルカルスにおける法(のようなもの)の強制、アンダーストーンでの文書記録維持の命令、より強力な魔術結社への助言の要求、必要だと感じられた際の同盟の結成および破棄など、彼は自分の目標を達成するためなら、あらゆる手段を積極的に使います。

しかし、暴君カダッチの真の才能は、政治的計算にあります。彼はリーチの伝統を正しいものとし、またよそ者の劣ったやり方(彼の言葉であり、私のものではありません)を軽蔑しながら、リーチの民に向かって自由で独立したリーチについて語ります。ですが、この「リーチの民のためのリーチ」という大仰な話の背後で、カダッチは罠や帝国の権威の体制を利用し、マルカルスをリーチの長く血生臭い歴史の中で最初の機能的な国家に変化させたのです。また、これを認めるリーチの民はいないかもしれませんが、カダッチの権力の強化と、彼がマルカルス周辺に強制している相互的な平和は、良い方向へ向かうための、本物で長続きする変化に向けた必要な手順だと多くの者が理解しています。

外国を激しく嫌うクランがアルド・カダッチの権威を認め続けるか、あるいは反発するかは、当然ながらリーチの大きな問題です。

マルカルスの歴史:石の物語History of Markarth: A Story in Stone

アルドの行政官、執政官カルデア 著

マルカルスの物語はドワーフがこの地に定住し、地上と地下深くの双方に建物を築いた第一紀初頭に始まる。彼らはカース川の峡谷の上流にそびえる山、カースマッドの麓に新たな要塞を建設した。長い年月をかけ、ドワーフは山の心臓部からヌチュアンド・ゼルの街を削り出し、地上へ建設を続け、ついに太陽の射す世界へ顔を出した。この高い谷で、ドワーフは地上に強力な防衛設備と大きな貯蔵庫を作った。ヌチュアンド・ゼルはしばらく繁栄した。そして他全てのドワーフ集落と同様、第一紀700年に突如として放棄された。

放棄され空になった他のドワーフの街の大半は廃墟と化した。しかしヌチュアンド・ゼルには、大部分のドワーフ都市に欠けていたものがあった。地上に広がる要塞と、付随する建物である。ドワーフたちの消失から数年後、リーチの民の様々なクランがドワーフの建造物を隠れ家や要塞として、窮乏の時期に利用し始めた。第一紀930年にはこの地を訪ねた希少な旅人が、リーチの民がこの廃墟を通年占拠していたことを報告している。彼らはここをマル・カース(「カースの上」の意)と呼び、この場所に住むクラン最強の族長はアルド(「砦の王」の意)として知られた。

マルカルスはリーチの民に占拠され、皮のテントや手触りの粗い毛皮で飾られた遺跡となっていた。しかし第一紀1033年、女帝ヘストラがリーチを服従させ、支配地に加えるように命令をアレッシア帝国軍に出した。女帝の将軍はこの遠征の最初の目標をマルカルスに定め、帝国の力をリーチの要塞に叩きつけた。アルドは勇猛果敢に要塞を防衛したが、女帝ヘストラの軍団は士気が高く、指揮も素晴らしかった。一方リーチの民は組織が乱れ、共通の敵を前に団結するのが遅れた。マルカルスはインペリアルの手に落ちた。アルドの最も勇猛な戦士の多くは、降伏よりも壁から身を投げ、石を血に染めることを選んだ。

リーチを屈服させるための戦いは長く続いた。帝国の軍団はしばしばマルカルスで包囲され、壁の向こう側には赤鷲の反乱軍が待ち受けていたので、外に出ることも困難だった。だが、赤鷲がインペリアルをマルカルスから追い払うことはできなかった。彼の反乱が終結する頃のマルカルスは、要塞から都市へと変化する最初の一歩を踏み出していた。アレッシア帝国の終焉まで、マルカルスはインペリアルの支配下にあり続けた(駐屯部隊に配属されたインペリアル兵士にとっては、陰鬱で危険な任地だった)。この時期、ドワーフの貯蔵庫の多くは広間や家屋、工房に変えられた。街は現在のような外見になったが、いかなる人間の技術もドワーフが築いた壁と監視塔を改良できなかった。

150年前にアカヴィリ最高顧問が死に、インペリアルの権威が大きく低下したことで、マルカルスは再び歴史の闇に埋もれた。インペリアルの支配下でも常に反抗的だったリーチは、帝国の力が下がった瞬間に、よそ者が滅多に旅することのない場所となった。ブレトンの男爵もノルドの首長もこのリーチの街に攻め込んだが、そのたびに難攻不落のドワーフの防衛設備に撃退された。外国の侵略者がマルカルスの冷たい石に血を流し、リーチの民は独立を取り戻した。

リーチの民が再び敵対的になると、マルカルスとタムリエル他都市の交易や旅は途絶えた。その結果、マルカルスの統治者やその治世についての噂リーチの外に届くことはほとんどなくなった。しかしこの暗闇の中から、タムリエル全土を根底から揺るがす嵐が勃発した。ブラック・ドレイクと呼ばれる戦士長ダーコラクが、第二紀533年にリーチ戦士の大軍勢を招集してシロディールになだれ込み、ルビーの玉座を奪取したのである。

この動乱は多くの変動をもたらし、マルカルスはある意味で再びインペリアルの影響を受けるようになった。シロディールに入ったリーチの征服者は大量の略奪品と捕虜を故郷に持ち帰り、かつてないほど多くのリーチの民が、外国で財産を築くことを求めた。マルカルスへの道は再び賑わい、長い間忌避されて来たこの街道は、交易の恩恵で息を吹き返した。

現在、この街はアルド・カダッチの支配下にある。いわゆるマルカルスの暴君である。ロングハウス帝ダーコラク家の親戚となるブラック・ドレイク・クラン出身のカダッチは、第二紀559年に帝国の総督に任命された。その任務は街の統治だけでなく、反抗的なリーチのクラン同士の平穏を保つことも含まれた。レオヴィック帝が玉座を失うと、カダッチは帝国の称号を捨て、古いリーチの称号であるアルドを名乗った。彼は躊躇なくブラック・ドレイクの生き残りを粛正し、この街の支配を確立してライバルを黙らせた。

アルド・カダッチが反抗的な親族を街の一番高い壁から投げ落として処刑し、胸壁を血に染めたことは言っておかねばなるまい。これはマルカルスの石に刻まれた残酷な物語の、最も新しい章にすぎない。

リーチのおとぎ話Reach Bedtime Stories

語り部イサ・トルイアンド 著

語り部イサ・トルイアンド著

これらの物語は話すことに同意してくれた、様々なリーチの民から収集したものである。大半の人はよそ者に対して何を教えるのにも積極的ではなかったが、私はタムリエル中の物語を分かち合おうとしているただの語り部だと強調した。交換に興味を示す者もおり、私は他の人々から聞いた物語をリーチの民の方式で語るように最善を尽くした。揺れる炎の周りを囲んで、強い感情を込めて演じるのである。その見返りとして、私は以下に記録したリーチのおとぎ話を集められた。

* * *
小さな薄き血の者

昔々、小さな男の子がいました。男の子の父は勇敢な狩人で、息子にも同じようになってほしいと思っていました。父親は毎日少年を訓練し、追跡して戦い、殺す方法を教えました。でも男の子は心優しく、戦いや殺しに興味がありませんでした。男の子は矢にも荒野での生存術にも関心がなく、上等な服を作り、ヴァテシュランの話を聞いていました。

ある日、少年は森に行って父と練習をしていました。熊が丘を駆け下りてきて、二人を急に襲いました。熊は子供を守ろうとして襲ってきたのです。少年の父はこの大きな動物から身を守りつつ、息子に助けを求めました。でも少年は剣を握ることも、矢を削ることもできませんでした。恐ろしい熊は少年の父を倒し、父は血を流しながら、武器を取って熊を殺すよう息子に言いました。

「教えたとおりにやるんだ!」と父は命じました。

でも少年は針と糸やヴァテシュランの物語にばかり時間を費やしていました。男の子は恐怖でその場から動けませんでした。熊も話せば理解してくれるかもしれない、と少年は考えました。

「熊さん、ちょっと話を聞いてくれないか…」と少年はどもりながら言いました。

熊は怒って吠えました。熊には理解できるはずもなかったのです。熊は喉に噛みついて少年を殺してしまいました。少年は最期に、父へ囁きかけました。「お父さん、ごめんなさい。お父さんの言うことを聞いていればよかった」

だから子供たち、お父さんの言うとおりにしないと、熊に食べられてしまいますよ!

* * *
裏切りのノルド

昔、メロックというクランの族長が、皆と友達になろうとしました。ある日、ノルドが一人で馬に乗ってやって来て、取引を求めました。メロック族長はノルドを食事に招き、クランと談笑して時を過ごすよう誘いました。多くの者がメロック族長に、新参者と友達付き合いをするのはやめるよう助言しました。その男が礼儀正しく友好的であることは彼らも認めましたが、リーチの者ではないのだから、本当に理解することはできないと言いました。彼らはよそ者を信用しないよう族長に警告しましたが、この警告は聞き入れられませんでした。

メロック族長はノルドとの交流に気をよくして、次の日彼を狩りに誘いました。二人は一緒にキャンプを出て、笑いながら付き合いを楽しんでいるようでした。彼らは獲物を探して森の奥へ入っていきました。歩きながら、メロック族長はクランの古い霊魂との付き合い方や、秘密の伝統などをノルドに教えました。ノルドは愛想よくうなずき、質問を返しました。族長はノルドの学習意欲に喜びました。親友ができたと思ったのです。

二人は獲物を見つけました。メロック族長は一番お気に入りの槍をノルドに渡しました。「新たな友よ、とどめの一撃を加える名誉は君が得るべきだ」と彼は言いました。ノルドは槍を手に取りましたが、空き地に立っている鹿を殺すのではなく、槍をメロック族長の腹に突き刺しました。

キャンプでは、ノルドの仲間の戦士たちがクランを全滅させていました。族長がいなくなったので、クランには侵入者を撃退できる強さがなくなったのです。

メロック族長は倒れて血を流しながら、ノルドに質問をしました。「なぜだ?」

ノルドは残酷に笑って答えました。「お前たちは俺たちがほしいものを持っているからだ。これで、お前たちの土地を奪える」

メロック族長とクランはその日死に絶えました。族長がよそ者を信用する愚か者だったからです。どれだけ友好的に見えても、リーチの子でない者は信用できないのです。

* * *
夜の王

(注記:私はこの物語の様々な派生版を複数のリーチの民から聞いた。その大半は年寄りから。しかし全体的なテーマは同じである。ここには私が一番好きな物語を記しておく)

ずっと昔、夜の王たちがリーチを支配していました。彼らは影をさまよい、その目は血のように赤く光っていました。平原の獣は恐怖して逃げ出しました。彼らが姿を現すと、木々も身をすくめて嘆きの声を上げました。

他の怪物でさえ彼らを恐れました。

リーチの子供たちよ、気をつけて、毛布に身をくるみなさい。暗くなった後でキャンプから離れすぎると、夜の王たちに見つかるかもしれません。彼らにとって、リーチの子の血は蜜のように甘いのですよ。

リーチのクランについてOn the Clans of the Reach

帝国書記、テオフォ・ハーヴィアン 著
(第二紀568年、レオヴィック皇帝統治時代に執筆)

「ブラック・ドレイク」のダーコラクがリーチの戦士を率いてシロディールに対抗するまで、リーチの民をうなり声をあげる蛮族以外として述べた学者はほぼいなかった。タムリエルの他の人々は、リーチの者を無秩序な状態で存在する、手に負えない大規模な集団と見ている。残念ながら1世代前に、ブラック・ドレイクの戦士がその無知の代償を明確に支払わせた。シロディールの賢者たちが、現在帝都を支配するこの戦を好む民族について学ぶべきことが数多くあると気付いた時にはすでに手遅れだったのだ。その必要に応じるため、現在指名された統治者であるブラック・ドレイクのカダッチが管理する、マルカルスでの7ヶ月におよぶ貿易大使の経験から、リーチとそのクランについて学んだことを書き記そう。

序文:リーチにはさまざまなクランが数多く存在し、それぞれが独自の性質や伝統を有している。一ヶ所に恒久的なキャンプを設置し、定住するクランもある一方で、遊牧民であり続けるクランも存在する。クランは大家族と故郷の村の中間的な存在であり、中にはクラン内で血縁関係にある者もいるが、それ以外の者はクランへの忠誠を示すためにクラン名をつける。新しい土地に居住するため、または獲物の群れを追うため、あるいは無秩序な時期には近隣の地域の襲撃や略奪をするため、気の合うリーチの者の一団が集まれば、いつでも新しいクランが出現する。その結果、クランは驚くほど流動的になることがあり、時間と共に分裂や再編成が行われる。

各クランは族長が統制する。中には自ら首領、代弁者、長老、王と名乗る者もあるが、ほとんどのリーチの民は自身を「王」などと呼ぶのはどこか気取った感じがすると考えている。リーチではもう何十年も、わざわざ自らを王だと主張するクランの族長はいない。だが、その者が王の称号を主張するに足る強さを持つと十分な数のリーチの民が同意すれば、如何なるクランの族長も王となれる。事実、歴史的には多数のクランの族長が同時期に王と名乗る時代もあったが、リーチの民がよく言うように、リーチでは誰もが王になれるが、リーチの王となれる者は誰もいない。その称号はダーコラクでさえ主張しなかった。現在に至るまで、リーチの民はロングハウス帝を自らの自由意思で従った戦いの統率者と見ている。たとえそれがシロディールのリーチの民の王であっても、王にひざまずくことはより弱い人々がすることなのである。

すでに述べたように、リーチには数多くのクランが居住している。ほとんどは小規模なクランで、小さな村や、遊牧民の集団や、人里離れた洞窟や地域にある略奪者の住み家だ。しかし、リーチを訪れる旅人なら誰もが知る有名なクランには以下のものがある。

ブラック・ドレイク:人数としては少ないブラック・ドレイクは、偉大なる武将ダーコラクによって誕生した。敵からも味方からもブラック・ドレイクと呼ばれたダーコラクは全リーチ人を彼の旗の下に結集させ、シロディールを征服してロングハウス帝の血統の基礎を築いた。彼の近親やリーチの友人は、有名な呼称を自らのクラン名とした。必然的に、他のクランは普通なら命令を下す規模のクランでありながら、ダーコラクの親族にはより多くの敬意を示している。また、総督のカダッチもブラック・ドレイクである。

シンダーハート:しばしばマルカルス付近で見かける好戦的なクランであるシンダーハートは、捕虜を生きたまま燃やすことで知られている。彼らは犠牲者の空の胸の空洞に熱い石炭を詰めることで、ブライア・ハートを用意すると言われている。ただでさえ陰惨な儀式に対する、恐ろしい改良点だ。

イーグルシアー:誇り高く好戦的なイーグルシアーは、他のクランが子供たちの世話をするようなやり方で確執を育てる。これは外部の者との接触を妨げるように思われるかもしれないが、実際の彼らは友好的で、口論の相手でなければ心を開く。イーグルシアーの者にとって、単に他の土地からの訪問者はリーチの抗争相手に値しないのである。

ゴーストソング:東リーチの荒野に生まれた孤立を好むクランであるゴーストソングは、その強力な魔女と忠実なウェアウルフで知られている。彼らはナミラに対して特別な崇拝の念を抱き、彼女を霊魂の女王と呼んでいる。

ヒルハンター:マルカルスの南の山中に居住する遊牧民の狩人であるヒルハンターは、木工技術で有名である。他のクランの間では、ヒルハンターの者からあえて狙われない限り、彼らを追跡できる者はいないと言われている。

リバーエルク:大所帯を誇るリバーエルククランは、カース峡谷全体に数多くある半恒久的なキャンプで暮らしている。彼らはよそ者のやり方に不信を抱いてはいるが、自身がクランにとっての友であることを証明するよそ者とは進んで取引をする。

シェイドフェザー:幸いなことに少人数であるシェイドフェザーは、ハグレイヴンの強力な魔術結社の支配下にあるクランだ。彼らはリーチのあちこちで旅人を待ち伏せし、捕虜となった者を闇の儀式で殺害する。他のリーチのクランでさえ、邪悪な彼らからは逃れられない。シェイドフェザーの者はしばしばキャンプを移動し、不運にも偶然出くわしてしまった者は誰であれ全て殺害する。

ソーンルート:獰猛で強いソーンルートは、通常ブライアロック近辺で野営している。彼らはシェイドフェザー同様ハグレイヴンに率いられているが、近隣のクランとは友好的な関係を維持し、激しい怒りはよそ者に向けるために温存している。クランの戦士の多くがブライア・ハートになることを選び、戦闘でのソーンルートをとても危険な存在にしている。

ワイルドスピア:マルカルスの近くに土地を持つ定住クランであるワイルドスピアは、ハーシーンに心身を捧げ、儀式の狩猟でこの追跡の師を称賛する。彼らは人間、中でも強く賢い敵は、流血の儀式に最適な獲物だと信じている。

リーチの偉大な霊魂 第1巻Great Spirits of the Reach: Volume 1

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

タムリエルに暮らす者の大半は、何らかの信仰を持っている。物理的、精神的な危機に脅かされた世界において、神を捨てるのは難しいものだ。残念ながら宗教的アイデンティティへの共通の欲求が、人々を団結させることは滅多にない。むしろ分断することの方が多い。対立点の多くは分かりやすい。種族間の政治や歴史的な怨恨、神による承認の主張はしばしば誠実な対話の試みを台無しにする。だが、全てを包括する中心的な断絶が1つある。それはエドラ至上主義である。

ある古いオークの格言では「征服者が戦争を名づける」と言われる。これは力ある者が歴史についての理解を形成するという事実を適切に述べている。この格言は、信仰の問題についてはなお正しい。征服者は戦争に名をつけるだけではない。信仰をも形成する。白金の塔を支配する者が何らかの根本的な意味でタムリエルを支配するという約束事を受け入れるなら、エドラ至上主義は完全に筋の通った考えである。それはエドラが実際に他より優れているからではなく、優位な立場にある者が自らの至上性を主張できるからだ。

いくつかの注目すべき例外を除くなら、シロディールの、より広く言えばタムリエルの物語はエドラの信者たちによって形成されてきた。それはアルドマーに始まりアイレイドに受け継がれた。野生のエルフは一時的にデイドラ崇拝に走ったが、彼らはアレッシア人の手によって高い代償を支払わされた。この時点から、エドラはタムリエルの信仰という領域において特別な地位を得た。その地位は本質的に、エドラ以外の信仰実践を奉じる種族の立場を弱体化させた。オーク、アルゴニアン、カジートなど、そうした種族の大半はすでに人間とエルフによる嫌悪と迫害を受けていたが、チャイマーや後のダンマーなど、エルフの同族から冷たい疑惑の視線で見られる者たちもいた。これら全ての民は昔も今も、エドラ崇拝者に与えられた特権に苦しんでいる。だが、リーチの民以上に信仰を理由とした迫害に苦しめられてきた種族はいない。

外国の襲撃者に迫害され、嫌悪され、繰り返し侵略されてきたにもかかわらず、リーチの民は豊かなデイドラ崇拝の文化を維持することに成功しており、希薄化や衰退の兆しも見られない。本論がこの評価されることの少ない信仰について新たな光を投げかけ、リーチの誇り高く頑健な民への敬意を高めてくれることが、筆者の切なる願いである。

リーチの偉大な霊魂 第2巻Great Spirits of the Reach: Volume 2

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

リーチの民は大小様々な、数多くの霊魂を崇拝する。実際にはリーチにいるクランの数と同じだけの信仰が存在する。聖なるエルクや山の泉の霊魂を崇拝するクランもいれば、古代の英雄の亡霊のために山羊を生贄に捧げるクランもいる。しかし一部の霊魂は、クランの境界を超越して崇拝されている。それはタムリエルの残りの部分にいる我々が、デイドラ公と呼ぶ霊魂である。

リーチの主神は狩りのデイドラ公ハーシーンである。古きエルクの目、狩りの王、獣の父、皮を作る者、五又槍など、名称はクランごとに様々だ。リーチの神々全てと同様、ハーシーンは冷酷な師とみなされている。実際、リーチの民は自分たちの信仰を「信心」ではなく「教え」と呼んでいる。しかしハーシーンの教えを聞く者は素早く、強く、狡知に長けた者へと育つ。リーチの狩人にとって、こうした信仰の物理的な表明は、神々の聖堂で議論されるような漠然とした倫理的懸念よりも遥かに大事だ。

ハーシーンは凶暴かつ恐るべき「今」の化身である。彼は生がその瞬間に生きられるものであり、全ての生物は捕食者か獲物か、その両方であることを信者に教える。これにより緊張と注意を怠らない感覚が生まれ、それはしばしば争いにつながるが、リーチの民の安全を守ってもいる。ハーシーン崇拝者の心には休息も、休息の予感もない。

外部の者にとって、このような信仰はひどく不快なものに思える。しかしその成果は無視しがたい。リーチの民が維持している集中力と身体能力に並べる種族はほとんどない。狩りの後には短い静寂があるが、視界の端には常に次の狩りが待ち受けている。

リーチの民はまた、ハーシーンに最も忠実に仕える者を守護者や導き手として遇する。もちろん、ウェアウルフのことである。ライカンスロープを祝福とみなすリーチの民は少ないが、彼らは有用な状態としてこれを受け入れている。ウェアウルフは属するクランのために苦しみ、それは敵の苦痛を引き起こす原因となる。

リーチの偉大な霊魂 第3巻Great Spirits of the Reach: Volume 3

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

リーチの民は2つの世界しか知らない。肉体の世界と霊魂の世界である。ハーシーンは肉体の世界を支配するが、霊魂の女王であるナミラは、無限なる霊魂の領域を支配する。

デイドラ崇拝者の間でさえ、ナミラは恐怖と疑念を持って見られるのが通例である。ナミラが伝統的に影響を及ぼす領域は、定命の者へ即座に嫌悪を催させる。背筋の凍る謎や避けがたい腐敗は、多くの定命の者の恐怖の核心にある。しかしリーチにおいて、ナミラの支配は単なるナメクジと闇よりも遥かに広く及んでいる。リーチの民はナミラを全ての始原的な二元性の化身とみなしている。生と死、始まりと終わり、可能性と無秩序。根本的に対立する全ての力は、ナミラの霊魂の領域から流れ出て来る。多くの宗教は何らかの調和を求めるが、リーチの神学はこのような闘争と避けがたく結びついている。存在の本質的な力としての闘争へのこうした執着が、よそ者やリーチの民同士での敵対的な態度に一定の役割を果たしていることは疑いない。

逆説的だが、リーチの民の大半はナミラの教えに何らかの平穏を見出している。クランの魔女はしばしばナミラを与え、また奪う者として描く。霊魂が深い知恵を見出すまでの間、ナミラは生命を与え奪うのである。

リーチの偉大な霊魂 第4巻Great Spirits of the Reach: Volume 4

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

リーチの民は自然のリズムと時間の無慈悲な歩みを強調する。存在する全てのものは過ぎ去る。高すぎる砦は崩れる。飢えたクランはいつの日か強く成長する。永遠の均衡は課題の主にして秩序の王、ぺライトの仕事である。多くの点において、ぺライトは闘争の至上性を引き立てるために欠かせない存在となっている。戦争や病気は深刻な傷をもたらすが、ペライトは世界が常に自然によって意図された状態へと戻ることを保証する。

多くの文化と同様、リーチの民もぺライトを荒廃と病気に結びつける。しかし他の民とは違い、リーチの民は病気のうちに悪意を見ることはない。むしろその反対である。病気によって消された生命はより健康で、より活発なリーチの民が代わりを務めるための空きを作る。病気は野火のごとく、自然の再生力として働く。豊穣の危機に対する必然的な調整弁である。

リーチ社会におけるぺライトの役割が、多くの重要な点でエドラの信仰におけるアカトシュの役割に似ていることには言及しておくべきだろう。時間や厳格な自然の秩序、圧政者としてのイメージなどは、タムリエル北西で人間とエルフの初期交流の際に、何らかの文化的交配があったのではないかと思わせる。異教的ではあるが、魅惑的な考えである。

リーチの偉大な霊魂 第5巻Great Spirits of the Reach: Volume 5

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

学者はしばしばリーチの神学を単なるデイドラ崇拝として退けるが、リーチの民の偉大な霊魂はオブリビオンのデイドラ公よりも広い範囲を司っている。多くの人間の文化と同様、リーチの民もロルカーンを尊敬している。彼らはロルカーンをロルク、すなわち人間の霊魂、定命の霊魂、あるいは肉を植える者としている。

リーチの神話で、ロルクは霊魂の女王ナミラを説得して永遠の虚無に居場所を与えてもらい、ロルクはそこで放浪の霊魂のための領域を作ったという。ロルクは活気ある楽園ではなく、過酷で苦痛に満ちた場所を作った。苦難を通じて教える領域である。ロルクの残酷さを嫌う者もいるが、多くは彼の知恵を称える。リーチの民によると、最も激しく苦しむ者が最も優れた知恵を持つという。苦難は知恵と栄光のための手段であり、ロルクは苦難を豊富に提供する。

ロルクは今でもニルンの定命の者がいるところに姿を現すとされている。彼が現れることはとても稀だが、心から必要とされる時には創造した苦痛と悲しみの残酷な世界に進み出て、リーチの民を助けるという。私の調査では、恐れられているブライア・ハートの儀式が、この不死の犠牲を反映するものとして始まった可能性を示唆している。

リーチの狩猟賛歌Reach Hunting Hymn

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

狩りは曲のように始まる
脚は葉を散らし
翼は茨を切り裂く
エルクの影がさまよう
エルクの影がさまよう

果てなき森が手招く
恐怖は鋭く身震いする
狩られることは生きること
試されることは価値あること

逃げよ、小さきウサギ
お前の皮は見事な報酬になろう
肉に当たる歯を感じるがいい
ハンティング・グラウンドが待っている
ハンティング・グラウンドが待っている

果てなき森が手招く
恐怖は鋭く身震いする
狩られることは生きること
試されることは価値あること
試されることは価値あること

リーチの酒Drinks of the Reach

ヴォルジャー醸造所のフィヨリダ 著

リーチの民が近隣の土地に求めるものがあるとすれば、それは味の良い酒よ。ノルドのエール、ブレトンのブランデー、シロディール産ワイン。手に入るものなら何だっていい。リーチの土地の多くは他の土地が大量に産出する、ある種の飲料の生産に必要とされるブドウ園や、大麦畑、あるいは家畜化された蜂の巣に適していないけど、リーチの者はほとんどがお酒を好むの。盗めない場合に限ってだけど、お酒はリーチ人が進んで取引する数少ない日用品の1つよ。

外交的なリーチの民はお酒を取引で入手するけど、外界の商人とあまり接触しないリーチの民は手元にあるもので間に合わせなければならないわ。リーチの奥深くに旅することがあれば、すぐにリーチ産のお酒に出くわすことになるでしょう。そういったお酒は、大抵はリンゴ酒か、「クレフ」と呼ばれる発酵させた汚らしい羊の乳の形を取っている。

リーチのリンゴ酒は濃い色で、かび臭くて、甘い――強引に言えばそこそこ飲める――ものから、済んだ色で、どちらかと言うと慣れが必要な酸味のある造りのものまで幅広い。この風味は、使用するリンゴや圧力をかける年数に依存する。リーチに果樹園はめったに見られないけど、森や川の流域には野生のリンゴの木が豊富にある。そういった地域に住むクランには、それぞれが愛飲するリンゴ酒を醸造するために好んで使う手法があるの。その中には良い酒を産み出すものもあるし、最悪の酒を産み出すものもある。

クレフ。言ってしまえば、クレフとは人が羊しか持たない場合に造り出すものね。こんな代物に耐えられる部外者に会ったことがないわ。それどころか、クレフを好きだと主張するリーチの者は、ただその人がどれだけ不快なものに耐えられるかを証明しているだけなんだと思う。これは勇気を試すものなのね、きっと。でも、ほとんどのリーチの者はクレフが好きだと言う振りすらしないけどね。ただ酔っ払うためだけに飲むの。

うちの優良顧客の一部をリーチの民が占めているのはこれが理由よ。

リーチの食べ物の手紙The Reach Food Letters

ロングハウス帝の即位直後、シロディールの人々はリーチについてより詳しく知ろうとした。彼らを魅了した中には、帝都の宮殿から香る奇妙な食べ物の噂もあった。商人の娘がマルカルスの父から来た手紙を出版すると、すぐにベストセラーになった。これは最新版である。

***
親愛なるハイパティア

壊れた荷車を修理するためにあまりにも長くロリクステッドに滞在してしまったこと以外は、何事もなく到着した。リーチは君のお母さんが言ってた通りだと思う。弧を描く地形と景色を数えきれないほどの地区に分断する岩山。マルカルス自体は立派だが、石板の上に積まれた毛皮の山はベッドの代替品としては貧弱だ。

子供たちは寂しがってないか?マルカルスに向かう途中でガイドと一緒に経験した、思いがけない出会いのことを子供たちに伝えたいんだ。あの子たちが眠りにつく前に、これを読んで聞かせてやってくれ。

やあ、チビちゃんたち。父さんは遠くにいるけど、夜が明けるたびにお前たちのことを思ってるよ。父さんはリーチにいるんだ!ここは変わった場所で、変わった人たちが住んでいるよ。獰猛で、知らない人を嫌う意地悪な人たちだ。でも運が良かった!父さんのガイドはあのリーチの者のクランを知ってた。その人たちはごちそうの会をして、父さんも混ぜてくれたんだ!
リーチでごちそうはめったに出ないんだよ、チビちゃんたち。厳しい土地なんだ。うちの方みたいにブドウや小麦が育ったりはしない。彼らは固いものを食べる。例えば干し肉とか、じゃなきゃ大麦みたいな、私たちなら動物に食べさせるようなものだ。だけどごちそうの日は違う!たくさんの料理をクランで分け合うんだ。リーチの者は自分の狩猟ナイフと、浸して食べるためのパンの皮と、時々はヴァレンと呼ぶ短いキルティング用の針みたいな道具を使って食事をする。

父さんはできる限り色々なものを食べてみた。一部を紹介しよう。

ハーシーンの分け前はごちそうの主役だ。スパイスを効かせて骨を抜いた何匹かの動物が動物の中に詰まってる。父さんのごちそうはウサギが詰まったライチョウで、それが山羊に詰まっていた。その山羊は雌鹿に詰まっていたんだ!もっと大きなクランでは丸ごとの雄牛から始まって、最後はネズミで終わるらしい!

リーチのスープはもっと控え目だ。彼らはある種の苔がついた石を見つけて、それを鍋の中で煮る。それでできた薄いスープは深い酸味のある味がする。ごちそうの日のために、スープにオーツ麦を混ぜてある種のお粥を作る。

スモークした鱒と鮭はミルクで料理して、栄養たっぷりのシチューを作る。このシチューは鮭が産卵のために川の上流へ向かって泳いでいく時期には、とても頻繁に食べるんだ。その時期には小さな子供でも、岸から手で捕まえることができるんだよ。フォースタス叔父さんの別荘で、初めて魚を捕ろうとした夏のことを覚えているかな?

アルドノットはお菓子のようなものと考えられている――干し肉の組み合わせを叩いて粉にして、溶かした動物の脂と混ぜてペーストを作るんだ。これを長い糸みたいな形にして、何か小麦粉のようなもので覆う――粉の名前はどうしても覚えられなかった――そうすると複雑な結び目の形にできる。結び目の形はリーチの者の心に響くらしい。何故だかは分からないが。

魔女の水は試した中で一番面白いものだった。植物と種の秘密の組み合わせを石の車輪ですり潰してペーストにして冷たい水と混ぜる。出来上がったものは触ると個体だが、かき混ぜると液体なんだよ。見た目はすごいが全く味がない。だけど妙に食べ応えがあるんだ。

リーチのパンは帝国で食べるようなローフとは全然違う。リーチの民はいろいろな根を掘り出すと、茹でて皮を剥いてから壺に入れて火の側に置く。そこからすくったものが焼く前のパン生地みたいなものなんだ。このパンの皮は素晴らしいぞ。

リンゴは大抵石のボウルに入れてある。ボウルにはクリームが満たされていて、火の側に置いてあるんだ。ほぼお行儀のいい子供だけがもらえるものだ(これは1つ食べて少なからぬ視線を浴びてしまった後に分かったんだよ!)。

ロウソクの火が消えるぞ、子供たち。今夜はここまでにしておこう。次の手紙を楽しみにしててくれ!

みんな大好きだよ。

父さんより

リーチの政治Politics of the Reach

第二紀578年、アルドの行政官、執政官カルデア 著

アルド・カダッチの指示により、私はマルカルスでリーチの民に仕え続けています。帝都からマルカルスに送られた理由は、レオヴィック皇帝自身がマルカルスを助け、シロディールとリーチの架け橋になるよう望まれたためです。現在ルビーの玉座に座る者から追加指令は受けていませんが、私は退出して故郷に帰るものと考えていました。アルド・カダッチが私の行政管理能力を保持したいと望まれたため、私はここに残っています。新しい皇帝が興味を持たれた場合に備えて、職務中に学んだことをここに記録します。

まず、リーチは1つの国ではなく2つの国だと考えたほうが良いでしょう。マルカルスと荒野です。伝統的に、誰であれマルカルスを統治する者は荒野に対してほとんど権力を行使しませんが、一方で荒野の強力なクランの雑然とした集まりには、リーチの都市を支配する力も意思もありません。マルカルスが弱い指導者の統治下にある時――もしくは時々あることですが、完全に統治者が不在の場合は――影響の輪が縮小します。強い統治者がマルカルスを掌握している時は、都市の力が近隣の土地にまでおよび、西リーチのクランは、名目上そうではなかったとしても、実際にはマルカルスの権威を認めなければなりません。長きに渡るリーチの物語は、領域を形作ろうとするマルカルスと、拡大する街の権威に激しく抵抗するマルカルスの外のクランの物語です。

リーチに対処する上でとても困難なのは、それぞれ独立したクランが自らを独自の政治機構だとみなしている点です。自由に襲撃し、取引し、戦争を起こし、クランが選んだ相手であれば誰とでも手を結びます。リーチとの間に長く続く平和を築くためには、数多くのクランと交渉しなければなりません。中には激しく憎み合うクランもあり、彼らは決して敵が受け入れることを選んだ平和を守ることに同意しないでしょう。驚かれるかもしれませんが、これは新皇帝のような外国の支配者に当てはまるのと同様に、マルカルスの支配者アルド・カダッチにとっても当てはまります。いくつかのクランの族長にとって、アルド・カダッチは単に並立した族長であり、彼に服従することは、他の同格の者へ服従するのと同じなのです。実際、彼らはアルド・カダッチをとても懐疑的な目で見ています。彼らのことも支配するつもりでいると信じているのです。

幸い、全てのリーチの民があらゆる人やものを敵にしたいと思っているわけではありません。アルド・カダッチは独立したクランに対し、思慮深く対応しています。彼はマルカルスの利益が直接脅威にさらされた場合にのみ行動を起こします――たとえば、シェイドフェザーのような敵意のあるクランによって、マルカルスへの道中が危険になる場合や、ボーンシェイパーのような境界にあるクランが隣接したクランに対し、全てのリーチの民を対象にして無差別に報復するよう促している様子が見られた場合などです。同様に、比較的規模の大きいクランの大部分はお互いに微妙な友好関係を保っています。無謀な対立を煽るクランは、高い確率で大規模なクランに対抗する他のクランの同盟関係を生じさせます。その上で、全てのリーチの民はマルカルスが中立地帯であるべきだと考えています。そこに行き、取引をしたいと願うあらゆる荒野の者に対して開かれているべきだと信じているのです。リーチの多くの人には、粗削りで用心深い平和のようなものが適しているのでしょう。

荒野での権力は主に有力なクラン(イーグルシアー、シックスフォード、リバーエルク、ソーンルートなど)が握っていますが、リーチには我々がアルド・カダッチの壁を越えてクランとの取引を望む時に考慮すべき慣習があります。「大族長」です。これは通常、味方と敵の両方から尊敬の念を勝ち得た族長が獲得する、ある種の「名誉族長」の称号です。大族長は、最も頑なで外国のものを嫌うクラン以外の全てのクランに対して、影響力のある道徳的権限を行使します。現在、大部分のクランはカニアーという元リバーエルクの族長を大族長として認めています。カニアーは紛争の裁定人であり仲介役で、現役時代は抗争の解決や同盟の修復などを行いました。敵対心の強いクランはカニアーを干渉者と見なし、どちらかと言えば軍事的な指導者の方に従いますが、彼女が死ぬか地位を手放すことを選ぶまで、荒野における彼女の声は大きな力を持ち続けるでしょう。

とても危険な狩りや強力な侵略者を撃退するなど、クランに協力が必要な場合は大族長が一時的な指揮権を得ます。脅威が去るまで、戦略と反応を調整するのです。

アルド・カダッチとマルカルスの民と働く過程で、私はこのような政治状況を理解しました。

リーチの捜査官ヴェイルInvestigator Vale in the Reach

高名な犯罪の解決者にして謎解きの名人、捜査官ヴェイルの紹介は不要だろう。野生のリーチにさえその名は轟き渡っているのだから。ヴェイルをスキングラードからソリチュードへ運んでいたキャラバンは、ファルクリースで停留して北に向かった時、リーチの民の略奪者に襲撃を受けた。

キャラバンの荷馬車4台のうち3台は逃げ延びたが、4台目のヴェイル捜査官を乗せていた荷馬車は車軸が壊れ、たちまち略奪者に包囲されてしまった。キャラバンの護衛4名は武器を掲げ、荷馬車と品物、乗客を守って死ぬ覚悟を決めたが、その時捜査官が客席から飛び降りて前に進み出た。

「リーチの慣習に従って、恩の交換を申し出たい」とヴェイルは言った。リーチの民の伝統を調査した時のことを思い出したのである。「こちらの通行の安全を保証してもらう代わりに、クランの族長にしてあげられることが何かあるでしょう。私は捜査官ヴェイルよ」

略奪者の間で、不愉快そうな囁きが交わされた。言うまでもなく、彼らは破壊と略奪を望んでいたのだった。他と印象の違う女性が前に出てくると、略奪者は沈黙した。明らかにリーチの魔女だった。そして彼女がこの略奪者のリーダーなのも明らかだった。

「私はオラーナ。スピリットテイル・クランの族長よ」と彼女は誇り高く、力強い声で言った。「お前は本当に、ハイロックから来た伝説の謎解き人なの?」

「謎解き人、という呼び名はぱっとしないけれど」ヴェイルは言った。「でも、私は捜査官ヴェイルで間違いない。解決してあげられる犯罪や殺人事件はある?」

オラーナ族長は笑みを浮かべた。「殺人はない。少なくともまだ。だが、複数のクランがフロルダンの環の霊魂に捧げた供物が消え続けている。すでに私のクランと他2つのクランが戦いになるところだった。誰かが供物を盗んだのではないかとね」

ヴェイルは若い男女の狩人が、他の略奪者の間で目立つまいとしていることに気づいた。しかしオラーナが状況を説明している間、2人は互いに緊張した視線を交わし、彼らの頬は赤くなった。

「いいでしょう」とヴェイルは言った。「受け入れます。この謎を解いて、代わりにリーチの領地を安全に通行させてもらうわ」

「それならば儀式を…」とオラーナ族長は言い出したが、ヴェイルは手を振って2人の若い狩人の元へ歩いていった。

「彼らが犯人よ、オラーナ族長」とヴェイルは宣言した。「悪意はなかった。いたずらのつもりだったんでしょう?」

若い狩人は2人とも同意を示すようにうなずいた。明らかに恥じており、次に何が起きるのか不安がっていた。

オラーナ族長は眉をひそめて言った。「狩人のいたずら。なるほど、覚えている。私もかつては若かった。この2人よりも。彼らはクランに報いる必要があるが、それは私たちで何とかしましょう」

「素晴らしい!」とヴェイルは言った。「では私たちは進んでいいのね。約束通り、安全に通行できるんでしょう?」

「安全に通行できる」と族長は笑顔で言った。「儀式の後でな。ここではあらゆる物事に儀式がある」

「そうでしょうとも」とヴェイルは言った。「まあ、失礼にはなりたくないし…」

リーチの魔女の詠唱Reach Witch Chant

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

心に留めよ、血を分けた者よ
高らかな我らの歌を聞け
我らの時に猶予はない
影が長く伸びるとき
大きな目を持つ
強き霊魂が待つ
狼の牙は鋭さを保つ
群れを救うために

心に留めよ、偉大なる野獣よ
高らかな我らの歌を聞け
雄鹿の角は肉体を貫く
腱硬く
筋肉は締まり
我らを通じて力を与えよ
我らが霊魂は降り注ぐ
土の上に
汝への褒美のために

心に留めよ、黒き虫よ
高らかな我らの歌を聞け
無で満たされた
我らの飢餓を知れ
腐敗の活力
虚無の力が
我らの胸を空にする
魂と、求めるもので

リーチの旅行ガイドA Reach Travel Guide

カムハイン・サルン 著
(第二紀558年に書かれたもの)

偉大なる我らがダーコラク帝の生まれた地を訪ねたい?お前たちはリーチをどう見ている?リーチは自分に属している者を知っている。それを詐称する者は誰であろうと飲み込んでしまう。だが、私の叔父を他の全ての者の上に立つ存在に作り上げた地を目にしたいなら、導きを与えよう。そうすればお前たちも跪き、彼がその正しき征服の際に与えた慈悲に感謝するだろう。

まず霊魂の祠を訪ね、今歩いている地の所有者に供物を捧げるべきだろう。リーチに神々の慈悲はないのだから。しかしその前に、民の許しを請わねばならない。さもなければ彼らは以前に来た者たちと同様に、お前たちも追い払ってしまうだろう。クランと霊魂を鎮め、正しく通行許可を得たなら、この旅を生き延びられるかもしれない。

カースワステンの村で休息を取れ。ここには侵入者を侮辱せず、取引を求めてくる者に会えるだろう。物々交換のための品物を持ってくるのが最善だが、民は取引に我らが帝国のゴールドを尊重する。無価値な硬貨をリーチの民の労働の成果と交換させてもらえることを、皇帝に感謝するがいい。

さらに西へ向かえば、深き民の領域の残骸を見ることができる。彼らは石を手にして荒野を征服したと思い込んだが、結局飲み込まれてしまった。石の都市マルカルスは、鳥の骨のように生気がなく、空のまま残っている。リーチの多くの者は、動けない石に住み着いて霊魂の怒りを招くようなことはしないと決めた。だがああいうがらくたを好むなら、ドワーフの玩具がいくらでも見つかるだろう。北の遺跡にもあるが、その名前は口にしたくない。

南へ向かえば、ノルドが我々の土地に刻んだ石の傷がある。この地を手なずけようとしたの失敗の名残だ。ブライアロックとロストバレーの遺跡は、今ではリーチの正当な支配者しか受け入れていないので避けた方がいいだろう。あそこにいるクランは、占拠した地を全力で防衛するからだ。あそこに行ったら、愚かなノルドの死体を数えてみろ。ヴァルスムという墓地で丸太のように積み上げられている。リーチの土もノルドの骨は受け入れないからだ。

飼い慣らされることも、帝国に保護を求めることもないこの地に対する敬意が芽生えたか。ここでは強く生き残る者に育たなければ食料にされる、懐の深い地でもあることが分かるだろう。道なき道を行き、裸足で大地を感じ、葉のこすれる音に耳を澄ませ、霊魂の声を聞け。慣れ親しんだ快適な生活を捨てて1ヶ月過ごせたなら、リーチに帰る資格があるかもしれない。

レディ・ビレインからの手紙Letter from Lady Belain

ペンターチ・ハウトリングへ

魔女の反乱軍が街の南と東で、私たちの努力を無駄にし続けています。念のため言っておきますが、マルカルスでの私の陰謀は、あの好戦的な野良犬が自由に走り回っている限り実を結びませんよね?度重なる失敗が気付かれずに済むことなどありませんよ、ペンターチ。

あなたの使者は、灰の王の召集状を何事もなく届けました。珍しいですが歓迎すべき成功です。私は間もなくヴァルスム墓地へ向かいます。おそらくここのところのあなたの失敗については、徳高き指導者に伝えないでしょう。

今のところは。

血によって結ばれた
レディ・ビレイン

虚無のポータルVoid Portals

アークスザンドのキーストーンの捜索中、他の者たちが消えて久しい。レディ・ビレインと灰の王は蔵書庫に入るために必要としている。だが、この力についてもっと多くを知る必要がある。この遺跡の人気のない静けさは、研究を行うには完璧な環境だ。心を持たないコンストラクトと、力の穴の間を一瞬にして飛んでいく奇妙な、ゆがんだ影以外に邪魔をするものもない。レディ・ビレインはこの虚無のポータルを使えるようだ。きっと私は自力で秘密を掴むことができる。

* * *
レディ・ビレインが闇の遺物に関する秘密を守っていたにもかかわらず、私は突破口を切り開いた。遺跡に集中している力を調査していたら、闇の内部から生じたと思われる、小さな欠片を発見したのだ。

それぞれの欠片には重さがあり、まるで力が外側にあるものを内部に向けて引っ張っているようだった。集中したら、周囲の力の穴にも同じ引力を感じられるだろう。欠片はそれぞれ、まさしく出て来た力に向かって戻ろうとしている。これを持って近づいたらどうなるだろう?

* * *
新たな発見だ!欠片を持って力の穴に近づいたら、謎が明らかになってきた。引力は近づくにつれて強くなった。突然、滑ったとしか言いようのない感覚がした。まるで滑って転んだかのようだった。それも下ではなく、横に。辺りを見回すと、どこか新しい場所に来ていることに気づいた。私は欠片と共に、力を通じてこの新しい場所に引っ張られてきたのだ。

力を利用することで、この遺跡の長く閉じられていた扉が私に向かって開いた。結局のところ、蔵書庫に入るのにアークスザンドのキーストーンは必要ないのかもしれない。少なくとも建物に入るためには。レディ・ビレインのことだ、キーストーンには、彼女がまだ灰の王に明かしていない別の機能があるに違いない。

ペンターチ・シーヴェルネス

見習いグウェリナへの手紙Letter to Apprentice Gwerina

見習いグウェリナへ

お前がまだ文字に悪戦苦闘していることは知っている。だからこの手紙は手短にしよう。カース峡谷に闇が襲い掛かった。賢い者たちはマルカルスの石の壁の背後に避難している。アルド・カダッチが目を光らせている場所だ。だが、どんなに危険でも自分たちの領域を放棄することを拒むクランもある。

アルドは寛大にも、アリーナの王、我らの狩猟の父ハーシーンの新しい祠を設置する目的で広間を使う許可をくださった。

そこで合流しよう。この祠を正しく設置できるように、フロッキベグの象徴を持って来てくれ。マルカルスで待っている。

大呪術師グリンロック

古代の霊魂を称えよHail to the Ancient Spirits

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

ハーシーンを称えよ、狩りの王を
森と丘を統べる者
生けるもの全ては追うか逃げる
死によって止まるまで

ナミラを称えよ、霊魂の女王を
糸を編む、沈黙の産婆
あらゆる始まりには終わりが要る
生と死の闇の母

古代の霊魂を称えよ
師として練を与える、いついかなる時も
厳しい教訓は必要なもの
敵だらけのこの世界には

モラグ・バルを称えよ、苦痛のデイドラ公を
暴虐の主人、災厄の王
殺し戦うための力を与えし者
人は争うべき存在なれば

古代の霊魂を称えよ
師として練を与える、いついかなる時も
厳しい教訓は必要なもの
敵だらけのこの世界には

古代の霊魂を称えよ
古代の霊魂を称えよ

荒野で生き延びるヒントWilderness Survival Tips

冒険者兼年代記編者、ジェメル・マラエニウス 著

リーチは無情な地であり、無情な地は無情な人々を産み出す。この地域の過酷さに慣れていない人にとって、準備もせずに赴くことは通常死刑宣告を意味する。だからと言って、人は挑むことをやめない、当然ながら。たとえ当人がいかに危険にさらされる可能性があろうと、私は人が冒険することを非難するような人間ではないが、リーチの者なら彼らの土地をもう少し生き残りやすく旅するためにはどんなことを提案するのだろうかと、かなり以前から考えていた。

そういう訳で、自分自身のために明らかにしたいと思う。

話をした数少ないリーチの者のうち、約3分の1が真摯に回答してくれたものと推定する。ここに最も有益な見識をまとめた(クスッと笑ってしまったものも少々含む)。

狼からの攻撃の生き延び方
「逃げるな。自分のいる場所に立ち、狩人としての権威を狼に尊重させろ」

「臆病者は木に登る。真の戦士は近くの小枝をつかみ、獣をかわす!」

「祈ってみろ。お前らには少なくとも時々は効くみたいだ」

「腐った魚の中に身を隠せ。じゃなきゃ何でもいいから本当に嫌な臭いがするものの中だ。狼は繊細な鼻を持ってる。酷い臭いを放ってたら、彼らもしり込みするだろう」

蜘蛛の噛み傷の最良の治療法
「ただ耐えるだけだ。毒に対する耐性がないのなら、多分リーチを歩き回るべきじゃない」

「取り乱すな。ただ毒の回りが早くなるだけだから」

「運よく手足に噛みつかれたのなら、それを切り落とせ。確実に生きて朝日を拝みたいなら、それが一番手っ取り早い」

「蜘蛛にもよる。きちんと違いを知っておくことだ」

道に迷ったら
「水の音を聞け。音の源を見つけたら、流れに従って進め。最終的には誰かを見つけるだろう」

「迷うなら昼間にしろ。リーチで夜が来たらお前は足の折れたウサギ以外の何者でもなくなる」

「リーチの者に道なんか聞くな」

ハグレイヴンに遭遇したら
「お前の死を望むハグレイヴンに出くわしたら、できることはそれほどない」

「お前たちよそ者はみんな理解できないものを酷く恐れる。まるで暗闇を嫌がる子供のように。だが、もし生き延びることを強く求めるなら、とにかく逃げろ。ハグレイヴンはそれほど速く動けない。少なくとも、俺が見たやつはみんなそうだった」

「理由があってハグレイヴンがお前に目を付けたのなら、おそらくお前はそういう運命なんだろう」

熊から逃げるには
「幸運を祈る」

効果的な狩り
「狩る者と狩られる者の関係以上に神聖なものはない。そのつながりを尊重すれば、魚を突く時であれ、矢をつがえる時であれ、ハーシーンはお前の努力に微笑むだろう」

「もし、より強い動物がお前の仕留めた獲物を奪いに来たら、奪わせておくがいい。勝てない時を知っておけ」

「誰かが仕留めるのを手伝ってくれるなどとは期待するな。唯一の真の狩りの報酬は、自身の自立から得られる」

「狼の隙を確実に狙え」

食用の虫
「食べるために足元の虫をかき集める者を見下す奴は、明らかに苦境とは無縁の人生を送ってる」

「蟻をすり潰してペースト状にすると飲み下しやすくなる」

「何だろうが鮮やかすぎる色のやつは食うな。お前にとってもその虫にとっても、ろくな結果にならない」

婚約者たちからの手紙Letter from the Intended Couple

大族長カニアー様

申し訳ございません。あなたが達成されるよう願っていることが何なのかは分かっています。でも、私たちにはやり遂げられません。

エスリンとマデアルン

再び戦うために立つWe Rise to Fight Again

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

悲鳴が聞こえる
息をもらし
急襲を感じ
死を感じ
縫うように前進し
一団を抜ける
命を奪う
その手で

彼らは止まる?
さらに見える
彼らが来る
そして戦う
我らは固守する
血が滴る
たじろぎ
彼らの袋が満ちる

故に我らは裂け目に突き進む
鋭い戦いの声とともに
彼らがリーチの全てを奪い
クランの全てを殺すため
故に衝突は続く
血が地面を湿らせる
涙はもう枯れた
それでもまだ敵は来る

では狩ろう
全ての獲物を
人であれ
迷い犬であれ
安らぎはない
恐怖はない
彼らは
ここに来るだけ

彼らは止まる?
さらに見える
彼らが来る
そして戦う
我らは固守する
血が滴る
たじろぎ
彼らの袋が満ちる

故に我らは裂け目に突き進む
鋭い戦いの声とともに
彼らがリーチの全てを奪い
クランの全てを殺すため
故に衝突は続く
血が地面を湿らせる
涙はもう枯れた
それでもまだ敵は来る

我らは真の自然の姿で
再び戦うために立つ
全ての苦痛を叫ぶ
我らの敵は決して勝たない

そして我らは裂け目に突き進む
大いなる戦いの叫びと共に
彼らがリーチの全てを奪い
クランの全てを殺すため
けれど衝突はいつまでも続く
血が地面を湿らせる
涙はもう枯れ果てた
そしてまだ虐殺者が来る

深き墓にてIn the Deep Tombs

深き墓に入ってから今日で34日目。だと思う。

ボス・トレンロルが俺をここに投げ落とすとは信じられない。忠実な兵士だったのに!彼の要求は全てこなしたのに!まあ、「ほぼ」全てだが。

ボス・トレンロルにはむらっ気がある。一緒に笑っていたかと思うと次の瞬間には怒鳴りつけられる。死ぬ一歩手前まで殴っておきながら、その後自らの手で治癒の湿布を貼って、回復するまで一緒に座っている。それにかんしゃく持ちだ。金だろうが品物だろうが血だろうが、要求するものを相手が出さなかったら、俺と仲間に急襲させて何人かを見せしめにする。「群れを行儀よくさせるためだ」というのが口癖だ。

何人かは考え付く限りの恐ろしいやり方でただ殺す。残りは捕まえて深き墓に閉じ込める。ボス・トレンロルは常に、新鮮な血が自分の手に供給されることを好む。彼は何人かを狂血鬼に与えるのも好きだ。ちょっとした気晴らしのために。

とにかく、ボス・トレンロルにフレイレスの喉を裂けと言われたときは冗談だと思った。時々そういうことをする。忠実な従者をとんでもない残虐行為をすると言って脅す。ただ反応が見たいがために。この時は本気だったみたいだ、多分。喉を切り裂かずに笑ったら、まるで野生動物みたいに向かってきたからな。無茶苦茶殴ってきやがった。

気付いたら、数年来の友達や仲間の吸血鬼たちが俺をひきずって深き墓に入れるところだった。そして、俺が自分の手で投獄した定命の者の、すぐ横にある監房に俺を投げ入れた。屈辱的だった。1週間か2週間俺をここに入れておいたら、ボス・トレンロルは俺を出してくれるだろうと思った。教訓は学んだと。だがもう4(いや、5か?)週間にもなるし、俺は飢えてる。近くに血の臭いがする。ほとんど味もする!だが俺に血をくれる衛兵はいない。ほんの一口でさえ。

俺は忘れられたのだろうか。それとも俺を飢えさせて、野生化させることが前からの計画だったのだろうか。もしかしたら、離れると決心したカサドの考えは正しかったのかもしれない。彼がフレイレスを連れて行かなかったのには驚いたが、きっと戻るつもりなんだろう。だがもしそうしたら、俺と同じ結果になるだろう。

深き民の怖い話、第1巻Scary Tales of the Deep Folk, Book 1

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

親愛なる読者諸君。「怖い話」の新たな書へよく戻った。今日は謎めいた驚異の街、マルカルスの内
部から諸君に書き送ろう。絶滅したドワーフによってはるか昔に築かれたこの街は長く存在し続け、現在はなかなかの信望を集めるリーチの戦士、アルド・カダッチの元に団結した、リーチ部族の集団の本拠地となっている。アルド・カダッチはリーチの人々を一つの旗に集結させた、いとこのレオヴィック以来初の族長だ!

公明正大な作家による、解決も解明もされていない前作の物語の書物「ドルアダッチ山脈の怖い話」が大好評を博した後、この旅の物語の語り手は他ならぬアルド・カダッチその人からマルカルスの街に招待された。アルドは、「リーチは野蛮人だ」という印象(諸君の公明正大な作家は決して伝達するつもりなどなかった印象だ、もちろん!)を正し、我が指導者の全員に、リーチの人々にも全ての人々と同じように、壮大な文化と物語を伝える豊かな伝統があることを思い出させることを望んでおられる。

そこで、我が後援者たちと作家仲間の助言に反し、私はアルド・カダッチに会い、彼の民の長く語り継がれた物語を不滅のものとするため、長く危険に満ちた旅に出発した。
以下はつつましい作家によって初めて集められた、マルカルスのリーチの民による、リーチにおける奇妙で説明のつかない出来事に関する3つの物語だ。それではお気に入りの椅子に腰を落ち着け、ハチミツ酒を手にして、夜の暗闇にランターンを灯したなら読み進めたまえ。勇気があるなら、だが

* * *
暗き場所の魚人

最初の話は歴史の守り手を意味するリーチのヴァテシュランから聞いたものだ。彼女のクランはマルカルスの上にある山の中に、何十年も暮らしていたそうだ。彼女は言った。何年も昔、驚くほど人間にそっくりな生き物が、クランが暮らす場所の下にある洞窟に出入りしているのを見たという斥候からの報告があった。

最初、クランの者はそれをゴブリンだと思った。だがこのゴブリンには毛も目もなく、まるで魚のような生気のない灰色の肌をしていた。このクランが呼ぶところの「魚人」は決してキャンプに近づかず、その中にいるリーチの者を攻撃することも絶対になかった。だが、クランは明らかに忌まわしきものたちとの共存を拒んだ。

族長が戦闘部隊を結成し、彼らを率いて地下の洞窟の中に入っていった。彼らは魚人たちを追い出し、クランの縄張りを取り戻すことを固く決意していた。ところが、部隊が抵抗にあうことはなかった。洞窟中を探し回ったあとでさえもそうだった。戦闘部隊が結成されるほんの数時間前に、多数の魚人が洞窟に入ったと斥候が報告してきたにもかかわらず、彼らが洞窟の中で魚人の痕跡を見つけることは一切なかった。

その夜遅く、夜明け前の最も暗い時間に、最初の襲撃が行われた。数人のリーチの者が音もなく殺され、彼らの遺体が無残に晒され、他の者は完全に消滅していた。族長は再び最強の戦士を集め、クランを襲って殺害した魚人たちを根絶やしにするため洞窟に乗り込んだ。そして、今度も丸一日をかけた捜索で、見つかったものは空の洞窟だけだった。

その夜、クランは警戒状態を保っていたが、新たな襲撃はなかった。その後数週間にわたり、彼らは毎晩見張りを立てた。だが、さらなる襲撃は行われず、魚人たちを目撃することもなかった。一月以上が経ち、族長はついにクランの者たちに通常の見回りを再開することを許した。するとまさにその晩、魚人たちが再び襲撃した。今度は残された長老の遺体が山の上に吊るされ、さらにひどいことに子供たちが何人か跡形もなく姿を消してしまい、それきり行方不明になった。

またしても行われた卑怯な攻撃、そしてクランで最も弱い存在に対するとてつもなくむごい襲撃に憤った族長は、正義の怒りのために我を忘れた。彼女は魔女と呪術師を呼び集め、近くのクランから魔法の支援を受けた。彼らは次々にクランの地下洞窟を封じて行った。彼女は山中の傷を怒りと、魔法と、意志の力で崩壊させた。仕事を終えたとき、洞窟の中にあるのは砕けた岩だけだった。

クランはその後何ヶ月も警戒を解かなかったが、新たに攻撃されることもなく、魚人の姿が目撃されることもなかった。賢明な族長は洞窟を封じたが、十分に行われていない報復が今も彼女と彼女のクランを苦しめている。彼らは尋ねる。あの魚人たちは何者だったのか?如何にして洞窟の中で、見えないように隠れることができたのか?

深き民の怖い話、第2巻Scary Tales of the Deep Folk, Book 2

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

次の物語は宿屋〈川の恵み〉で会ったリーチの斥候、マルコルのものだ。彼は感動的な音楽と青春と悲劇の物語を伝えてくれた。若い斥候の物語を信じられるかどうか、親愛なる後援者の諸氏にはぜひお読みになって判断いただきたい!

* * *
山の下からの音楽

リーチの民の大部分は、大昔に消えたドワーフが残した、永遠の恐怖が付きまとう遺跡を忌避するが、例外もいる。マルコルとエサナという2人の若いリーチの斥候はある日、クランの誰も行きたがらない場所を探検しようと決めた。彼らは名を挙げるため、山の下にあるドワーフの遺跡に向かったのだ。こうして2人はいくつもドワーフ都市の奥深くへ進み、オートマトンやさらに凶悪な敵と戦って、勇気を証明しようとした。

こうしてドワーフ名は知られていないが、リーチの民がダークホロウと呼ぶある遺跡の深部を探検していた時、エサナが最初に山の下からの音楽を聞いた。マルコルは全力で耳を澄ませたが、何も聞こえなかった。しかしエサナは嵐のように大音響で音楽が聞こえると言い張った。彼女はどこにいても聞こえると言った。

エサナは何度もマルコルにその音楽を説明しようとした。それは真鍮の鳥が暗闇の中で奏でる歌、歯車と岩の交響曲、蒸気と炎の賛美歌、などだった。しかしエサナは山の下の音を辿り、マルコルも彼女に付き従ったが、2人ともこの謎めいた音楽の源を突き止められなかった。

マルコルが私に語ったところ、そのうちエサナは音楽に執着するようになり、マルコルと共にキャンプに戻った後も音楽を口ずさんだ。彼の話では、眠っている時もやめなかったという。彼女の口笛は美しいものではなかったが、奇妙に心に響き、今になってもマルコルはエサナの無味乾燥な口笛を頭から追い払えないという。

エサナは毎日ダークホロウへ行きたいと主張し、クランの斥候としての任務を放棄するようになった。そのうちクランのウィッチマザーがマルコルとエサナの2人にダークホロウへ行くことを禁じた。その次の日、ウィッチマザーの怒りを買いクランから追放される危険まで冒して、エサナは最後にもう一度ダークホロウへと向かった。

ウィッチマザーはマルコルがエサナを追うことを禁じたが、彼は禁を破った。幼馴染の友人は獲物を見つけるまで戻らないと確信していたからだ。マルコルはエサナが自分にしか聞こえない山の下の音楽を探して、正気を失うのではないかと恐れた。もう二度と帰れないほどの奥まで進んでしまうのではないかと。マルコルは遺跡の外でエサナの荷袋を見つけ、できる限り奥深くまで進んだ。

マルコルの捜索は悲劇に終わった。最終的に、彼が幼馴染のエサナに関して見つけたのは、ダークホロウの最深部に置かれた、笑顔が落書きしてある動物の皮だけだった。マルコルは悲しみに沈みながら、絵の意味を完璧に理解した。彼は悲痛な気分になった。

「見つけた」と落書きされた絵は言っていた。それはエサナが親友のために残した、最後のメッセージだったのだ。

それ以来、エサナの姿が見られることは二度となかった。

深き民の怖い話、第3巻Scary Tales of the Deep Folk, Book 3

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

マルカルスのリーチの民は謎と魔術に満ちた、数多くの暗く悲惨な物語を抱えている。その数があまりに多いので、一介の作家にはどの物語から記録すべきか判断が難しいほどだ。しかし夜中に火の側で語られ、私が聞くことを許可された全ての物語の中で、血を流す木の物語は最も不気味で奇妙な話だ。ご堪能あれ!

* * *
狩人と血を流す木

この物語は最も高齢のヴァテシュランの大半よりも古く、何世代にもわたってクランからクランへ受け継がれてきたもので、数多くのバージョンが存在するが、始まりは全て同じだ。あるリーチの狩人が昔々、暗い森の鹿に向けて矢を放った。しかしその時、何か他の動物が近くで小枝を折った。大きな音に驚いた鹿は飛び跳ねて駆け出し、狩人の矢は背の高い古木に突き刺さった。

逃げた夕食と運のなさを呪いながら、狩人は矢を回収に行った。しかし木のそばまで近づくと、彼はなんとも奇妙な光景に出会った。鋭く正確な彼の矢尻は、ねじれた高い木の皮を貫いて深く刺さっていた。その木の傷口から、輝く赤の液体がこんこんと流れ出ていたのである。

最初、狩人は樹液がこういう色をしているのに違いないと思った。しかし近づいて見れば見るほど、木は血を流しているのだと確信した。木の皮から流れる赤い液体を味見すると、その考えは確信に変わった。彼の矢を受けたこの木は、明るい色のしょっぱい血を流したのだ。狩人は困惑した。

真相を突き止めてやろうと決心した狩人は、ナイフを取り出して木を突き刺した。よく磨かれた鋭い骨の刃は、暖かい木の皮をいともたやすく貫いた。狩人が傷を付けるたび、そこからさらなる血が流れだし、なぜ木が血を流せるのかを理解できない狩人は何度も突き刺した。物語のあるバージョンで、狩人は木を傷つけたことに罪の意識を覚え、苦痛から解放してやろうと思った。別のバージョンでは、木の血を味見した狩人は怒りの発作を起こし、それまで感じたこともないほどの戦いの憤怒に駆られた。

理由は何であれ、物語のどのバージョンにおいても、狩人は傷口が無数に広がるまで木を刺し続けた。木の足元の血だまりはすぐに、彼の足首が浸るほどの深さになった。流すはずのない血を流し、死ぬ様子もないこの木に対する攻撃で疲れ果てた狩人は、矢を回収して立ち去った。クランを探して自分が見たものを知らせようと決心したのだ。狩人は自分の頭がおかしくなったのかどうかを知りたかった。

次の日、狩人とそのクランは血を流す木のあった場所まで戻ってきたが、そこに木はなかった。塩気を含んでいて不気味な、乾いた黒い血だまりだけが残っており、それが木々の葉の隙間に開いた穴から差し込む太陽光を吸い取っていた。昨日までこんな穴は絶対になかったと、狩人はクランに言った。

狩人の仲間たちは笑い、どうせ血は死にかけた動物のものだろうと言った。しかしその彼らでさえ、これほどの血だまりを作っておきながら死体も残さない動物など考えつかなかった。地面に痕跡は何もなく、体を押しつけた跡もなかった。ただ円形の、不気味な血だまりがあるだけだった。

時が経つにつれ、クランも木を傷つけた狩人も、この問題を気にかけなくなった。この事件はそのうちに焚火の側で話す物語に過ぎなくなった。狩人が奇妙な木を傷つけてから、ちょうど1年が経った。

その朝、狩人が朝食に姿を見せなかった後で、クランの他のメンバーたちはテントの中に彼を発見した。狩人の胸には本人の矢が突き刺さり、無数の刺し傷が体中につけられ、気味の悪い自らの血の海に横たわっていた。

しかしテントの中にも外にも足跡は見つからず、斥候の報告では前の日の夜にキャンプへ入った者も出た者もいなかった。クランの族長は不運を呪いつつ、狩人の死体とそのテントを燃やすよう命じた。彼を襲った森の霊魂か何かを鎮めようと思ったのだ。その後クランはこの区域を去り、荒野のこの部分に二度と戻ってこなかった。他の誰かが、また傷ついた木を見つけるのではないかと恐れて。

* * *
「怖い話」の最新巻はこれで終わりだ。しかし安心してほしい。リーチの民は私をサークルに招いてくれた数夜の間、実に数多くの「怖い話」を話してくれた。アルド・カダッチが明確に説明したように、リーチの民は蛮族や獣ではなく、他の民と同じ人間であり、多様で物語に富んだ口承の歴史を持っている。彼らの奇妙な国は、「怖い話」の宝庫なのだ!

改めて、多大なるご支援に感謝しよう。次巻も乞うご期待!

赤鷲の歌Red Eagle’s Song

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

思い出せ、思い出せ、リーチの子よ
ファオランの血塗られた物語を
思い出せ、思い出せ、リーチの子よ
赤鷲の最後の栄光を

鷲が甲高く彼の名を叫んだ
彼が母の胎内より立ちし時
血のヘラジカの目を持って生まれた
怒りはダイヤモンドの運命の兆し

諦めよ、諦めよ、ヘストラが来た
南生まれの白い石の塔のハグ
鉄の槍と盾の一団と共に
彼女は王の心臓を黒く変えた

季節が過ぎ彼は戦いに吠えた
帝国の娘と息子を殺して
だがリーチの者は矢と槍に倒れた
クランの友がいなくなるまで

ついに彼は自分の鷲の心臓で取引した
我々の力を欲しがるレイヴンと
彼らは胸にブライアの種を植えた
それは死体の花から育つ

数千が炎の剣に倒れた
血の太陽が昇り、沈むと
数百の矢に刺されたが
死を迎えるまで戦った

全ての者よ、ファオランの怒りを思い出せ
皆の心に住んでいる
聖なるリーチを欲しがる者は全て
我らの槍に苦しみ倒れる!

約束と警告A Promise and a Warning

この保管庫を守る者へ

闇の心臓と虚無に関する知識が、まだ私にとって役立つものだったことは幸運だったな。この書状の所持者は、遺言の中から私が興味ある節を書き写すことを許されなければならない。

約束しよう。従うなら、私がこの世界を作り直した暁には、お前のクランを素晴らしいものへと導こう。

警告する。私のペンターチが保管庫に入ることを拒んだ場合、または不当な害が及ぼされた場合は、定命の者たちでさえ涙するほどの、想像を超える苦しみを与えてやろう。

お前たちのレディは死んだ。この上うぬぼれを許容することはできない。

ラダ・アルサラン

抑制装置The Containment Apparatus

欠片を使って虚無のポータルを通り抜けるのは実に爽快だ!おかげでこの素晴らしい抑制装置がある古代の部屋に来ることができる。この機械が大きい虚無の欠片をどう使うか見てくれ。と言うよりも、クリスタルだ。これは、この穴、この現実の構造の裂け目からあふれ出る闇の力を何らかの形で利用している。これはある時点で凍結されたドワーフの実験の名残なのか?

クリスタルが回転させることによって力の焦点の役割を果たし、それを反射し、屈折させることに気づいた。装置はこの増幅を通じて動き始める。もしかしたら、力の穴を安定させるために調整できるかもしれない。引力は強力だが、制御を維持しなければならない。何か一つでも失敗したら、この力から逃れられなくなるだろう。

ペンターチ・シーヴェルネス

グレナンブラの伝承

Glenumbra Lore

アルドメリ・ドミニオンへの警告A Warning to the Aldmeri Dominion

エリステラ・リジェン 著

アルドメリ・ドミニオンの君主達に対しここに警告する。武力侵略の野望を放棄して自分の島や密林へ戻れ。さもなければダガーフォール・カバナントの憤怒が神々の槌のように振り下ろされるだろう。

アルドメリの計画にエルフによる他の種族、特に人類とオークに対する支配を取り戻そうとする狙いがあることは周知の事実だ。彼らは第一、第二帝国の遺産を覆し、歴史から消し去ろうとしている。これを許してはならない。自由となった人類とオークがエルフの圧政に従うことは二度とない!

ドミニオンの原動力が傲慢なサマーセットのハイエルフであることは明らかだ。我々カバナントはディレニを受け入れることでエルフと平和に暮らせることを示してきたが、アイレン女王は戦争を求めている。女王のタムリエル大陸侵攻は武力侵略以外の何ものでもない。ドミニオンにシロディールの領土権はない。アルトマーがサマーセットに戻らないなら、侵略軍は倒される。

ウッドエルフとカジートはイリアック湾の王国と長年交易してきたが、裏切り者のサマーセットのアルトマーの味方になるという過ちを犯した。カバナントとして彼らに敵意はないが、ドミニオンとの同盟を続けるならば、我々の手によりハイエルフと同じ運命に苦しむことになるだろう。考え直すか、憤怒に直面するかだ。

ウィレス:名づけの娘達Wyresses: The Name-Daughters

喋る樫のグラーガーギル 著

エルデンの時代、エルフの時代、イェフレは訪れた
走った場所で生物達を名づけた

すべては混沌としていて、名前は存在しなかった
彼の贈りものは獣、植物、石それぞれに名前を与えることだった

人とエルフ以外のすべてのものが身のほどをを知っていた
どこへいっても略奪と破壊を繰り返した彼らを除いて

「お前達をアースボーンと名づける」とイェフレは告げた、
「森、石、根、種の王よ。
この遺産を育む、その保護者となれ
その価値がある者を守りとして指名せよ」

それ以来ウィルドの女性達は緑を守る、
ツンドラから森まで、頂上から谷底まで、

虎であろうと虫であろうと、すべての生物に思い出させる
その名前、その性質、その機能と姿を。

緑を堕落させようとする者には
ウィレスがあらゆる場所で立ち向かうだろう。

だから森を歩く時は注意しろ、イェフレのやり方に敬意を払え
さもなければ監視するウィルドの女性達に連れ去られる。

ウェアウルフの皮The Werewolf’s Hide

謎のパックリーダー 著

我々の最大の強みはその飢え、数、怒り、爪、牙、だと言う者もいるだろう。愚か者だ。ハーシーンの贈り物は武器だけではなく、守りに関するものもある。

主人の大きな猟場で狩りをするには、痛みを感じず、自分の体を支配する必要がある。

多くのウェアウルフの狩人がこの理由から皮を奪おうとする。身につけるか、或いは燃やそうとする。いずれにせよ、これは最大の宝であり、汚したり壊したりしないよう注意せねばならない。
狼の毛皮は地位の証でもある。それは体の代わりに傷つき、痛みから守ってくれる。貴族が装飾品を扱うように扱うこと。なぜならお前はハーシーンの家来だ。

汚い毛皮をした、野生化した狼をよく見かける。お前は野性の犬ではない!獣として森をさまようしかない愚かな狼ではない!狩人達の王だ!
敵に襲われ、敵が押し寄せて剣や鎌、熊手や槍と対峙するために真の姿に変身した時、私に感謝するだろう。その毛皮は輝いて恐怖を呼び起こし、どんな打撃にも傷つくことはない。

オークの本性(発禁版)The True Nature of Orcs (Banned Ed.)

オークたちは深遠の暁紀の最後の頃に誕生したとされている。歴史的にはゴブリンに近い獣人の類と誤認されてきたが、オークは実際はハイエルフの祖霊の中でも最も強大と言われたトリニマクの子供たちだ。トリニマクがデイドラ公ボエシアにより食われ、汚らわしきこの神の臓物と化した時、オークたちも変容してしまったという。オークの古名は「追放されし者たち」を意味する「オーシマー」である。現在のオークたちはトリニマクの遺骸であるモーロッチを信仰している。

モーロッチとは?

一般的には、追放されし者やのけ者にされし者、誓約、そして血の呪いを司るデイドラ公マラキャスとして知られている。厳密にはデイドラ公ではなく、他のデイドラも仲間と見なしてはいないが、その領分を考えればふさわしい扱いといえよう。マラウクはかつてハイエルフの神々の英雄トリニマクとしてハイエルフたちを内外の敵から守り、場所によってはアーリエルすらも凌ぐ人気を博していた。ところがトリニマクは従徒たちと共にヴェロシの反乱を阻止しようと試みた際に、ボエシアに食われてしまう。そしてその肉体と魂を汚され、マラキャスとして世に現れたのである。従徒たちも悲惨な変貌をとげ、神聖なるアーリエルを筆頭に万人から蔑まれ、サールザル近くの北方の荒地へと逃れた。彼らは居場所を手に入れようとノルドとチャイマー相手に戦ったが、得られた領土は僅かであった。スカイリムでマラキャスはオーキー、もしくは叩く者として知られ、イスミールとの戦いの数々は伝説の域となっている。

(指令:この悪しき、伝統的だが反オーク的なプロパガンダは、ダガーフォール・カバナントの全域で禁書となった。各管理者が責任を持つように)

ダガーフォール・カバナントへの案内Guide to the Daggerfall Covenant

ダガーフォール・カバナントは北西タムリエルの人々、ブレトン、レッドガード、オークの間で結ばれた協定であり、タムリエル全域の平和と秩序の実現のために相互防衛同盟を形成している。実際にカバナントの王達はレマンを参考にし、自らを第二帝国の精神的後継者と主張している。

ダガーフォール・カバナントは、「ブラック・ドレイク」のダーコラク率いるリーチの民の大群の侵略を撃退するためにハイロックの王達が同盟を結んだ第二紀542年に結成された。東の山々から来た野蛮なリーチの民はエバーモアを破滅させ、ウェイレストを包囲し、カムローンを略奪し、ようやくブレトンが止めた頃にはダガーフォールの門まで進軍していた。ダーコラクが倒されると、ダガーフォール、ウェイレスト、カムローン、エバーモア、そしてショーンヘルムの王達の間でいわゆる「最初」のダガーフォール・カバナントが結ばれた。互いの王国を守り外敵に対しては一丸となって戦うことを厳粛に誓った。

ブレトンの再建とともにハイロックは繁栄した。第二紀561年にウェイレスト付近の鉱山労働者が歴史に残る最大のオリハルコンを掘り当てた後は特に栄えた。鉱山があったカンバーランド伯爵のエメリックは、鉱山で得た富をウェイレスト艦隊の補強とハイロック全体の貿易の改善に使うことを提案した。ウェイレストのガードナー王は承認したが、艦隊が完成する前に恐るべきナハテン風邪がウェイレストを襲い、ガードナー王家の全員が亡くなった。その後エメリック伯爵が王になり、カンバーランド家がウェイレストの第二王朝となった。

ウェイレストの新しいエメリック王はショーンヘルムのランセル王の娘に求愛していたが、第二紀566年にセンチネルのマラヤ王女と結婚した。裏切られたと感じたランセルがウェイレストに奇襲を仕掛け、最初のカバナントは崩壊しかけた。カムローン、エバーモア、ダガーフォールの王達は皆ウェイレストの味方につき、エメリックの優れた外交術によりセンチネルの軍もエメリックの女王を守るために戦いに参加した。さらに、エメリックはロスガーの大きなオーク・クランに呼び掛け、協力の礼としてオルシニウムを与えると提案した。ショーンヘルムは倒され、カバナントは再生した。単なるブレトンの防衛協定としてではなく、新たな多国間の同盟として。

同盟の交渉の秘密会議はあらゆる場面で論争や議論を伴いながら、数ヶ月に及んだ。最終結果はエメリック王の構想を元にしており、多数の妥協と注意深く交渉された条件により実現された。地域全体の貿易の自由が保障され、リベンスパイアーの貴族やアリクルのクラウン・レッドガードの反対にも関わらず、オークは対等な同盟の一員として受け入れられた。やがて、北西タムリエルのすべての街と州が、上級王エメリックが議長を務めるカバナント王立議会に忠誠を誓った。同盟の設立者として、王は最高の統率力を誇った。

これが現代のダガーフォール・カバナントである。ファハラジャード王率いる北ハンマーフェルのレッドガード、オルシニウムのクログ王率いる北東山間部のオーク、ウェイレストの宮殿から統治するハイロックのブレトンの王エメリックによる同盟だ。理想的には、第一・第二帝国のすべての良い面を象徴する、騎士の精神を持つ高潔な人々による高貴な同盟である。そしてこの強固な基盤から、もしかすると第三の、より強力な帝国が台頭し、タムリエルの全住民に相互尊重、活気溢れる貿易、神々の崇拝の恩恵を与えてくれるかも知れない。

モーロッチの掟The Code of Mauloch

「モーロッチの掟において!」私は何度この誓いを薄汚い酒場で聞いたか、興奮した傭兵が腹の底から叫んでいるのを聞いたか知れない。だがオーク要塞がその言葉を規範としていないと言ったら嘘になるだろう。この私、アマンダ・アレイアが、良い戦士を作り上げるために「伝統」や「昔のやり方」が必要だと言う事はほとんどないが、オークに関しては先祖に忠実でいる事が勝利への近道のようだ。

少し遡ったところから説明させてもらおう。オークによると、オーク要塞は自分達の種族の歴史と同じくらい長く存在しているのだそうだ。それは控えめに言うと武装したキャンプ、大げさにいうと要塞である。壁の内側にいるすべての者が生まれた時からそれを守るよう訓練されている。武器や鎧はすべて要塞内で製造され、食料はオーク戦士によって狩りで捕獲され、獲物を持ち帰ると要塞に住む皆で食べる。

彼らに従うべき法律はなく、自分たちの中に刻み込んだ、文字には記されない「モーロッチの掟」と呼ばれる規範に従っている。これはマラキャスとも呼ばれる、彼らの神々の1人から名付けられている。ほとんどは、盗むな、殺すな、理由もなく人を襲うな(多くの例外があるようだが)というシンプルな内容だ。しかし、オークは要塞内に犯罪者を拘束する監獄を持たない。その代わりにあるのが、血の代償だ。犯した罪に見合った物を差し出すか、被害者が満足するまで血を流し続けるのだ。言うまでもないが、オークは血の気が多い。

掟には誰が要塞を管理すべきかという内容も含まれている。通常は最も強い男が族長で、何かを決断し、モーロッチの掟が守られているかどうかを判断する。ここにいる女はすべて族長の妻か娘だが、例外として儀式や治癒を行うための賢女がいる。深刻な議論は短くも激しい戦いで処理するが、族長とうまくやっていけない者の多くは要塞を追い出され、私達と共に生活する。オークはすべての事柄と戦うよう教えられて成長するが、戦うほどの価値がない物に関して、この掟は適用されない。

オーク要塞はよそ者が好きではなく、今も昔も自分たちだけで自活している。なぜこんなに熟知しているかというと、要塞を去ったオークの大多数は傭兵や兵士になり、ハチミツ酒を数杯飲めば彼らも故郷の事を話し始めるからである。時折、オークがオークでない者を「親族」にすることがあり、そうするとその者が一族として要塞内で暮らすのを許されるという話を耳にする。もちろん、実際に起こったという話は聞いた事がない。

モーロッチの掟に定められている変わった規範や伝統は、覚悟を持った戦士を育て上げる。また、彼らは普通の戦士とは集中の仕方が違う。武器を抜くまでに躊躇せず、隠し立てする事なく問題を解決しようとする。これこそが要塞内にいるオークと街中にいるオークの真の違いだと思う。法は争いを治安官によって解決するよう定めているが、モーロッチの掟は自分の問題を自分で解決するように求めている。これは傭兵として生きるには、うってつけの考え方だと言えるだろう。

リーチの魔術師の陰謀Schemes of the Reachmage

ウィザードのガブリエル・ベネレ 著

墓の歌い手アンゴフとしか知られていないリーチの魔術師を止めようとする獅子の守護団の試みに対し、私は魔術師ギルドの正式な代表として、調査中に予期せぬ事態が起きた場合に備えて発見や推測を記録することにしました。魔術師ギルドの仕事がこれほど危険で興奮するようなものになると、誰が予測したでしょう?とにかく、これは私が書き記した時点では正確かつ最新の記録です。間違いや後日発覚した事実については、後の巻で補足することにします。もし書いたものを自動的に更新する魔法を発明できたら…ダメです。1度に1つのことに集中しなければ!

アンゴフには計画の遂行を助ける多くの仲間がいます。奴は「手下」と呼んでいるようです。この邪悪な死霊術師に協力していると疑われる者について、復習しましょう。

ライカンスロープと関係があり、カムローンに攻撃を仕掛けたファオルチュは、より強力な者の命令で動いているように見えます。おそらくアンゴフだと推測しますが、この繋がりを示す証拠はまだつかんでいません。

ブラッドソーン教団は明らかにアンゴフと繋がりがあります。奴が教団のリーダーか、単なるメンバーかはまだ判断しかねますが、両者に関係があることは確信しています。信者達は遺物や力を持つ物品を求めて土地を探し回り、組織には多くの死霊術師が属しています。デイドラ公のような者と関係があっても驚きません。当て推量をするなら、モラグ・バルでしょうか。

デイドラもまた、アンゴフの矢筒の矢のように思えます。農民が風に種を投げるように、アンゴフはデイドラを世界に放っています。アンゴフのしもべがさらに潜んでいるはずですが、現時点で他の提案は単なる憶測の域を越えません。代わりに、リーチの魔術師本人について発見したことを述べましょう。

まず、アンゴフは何かしらの方法で大地を毒しているように思えます。通った場所に生える汚れた蔓が、魔法が地方を汚染していることを示す証になっています。その名前、墓の歌い手そのものが死の魔法に関する執着と能力を表しています。死と腐敗がアンゴフの領域であり、生と死を支配することを求めています。

信者達はアンゴフを強く説得力のあるリーダーであると考えています。喜ばせるためなら文字どおり死ぬ者もいるでしょう。そのような献身は不健全であり、誰かが他人にそれほどの影響力を持つことを個人的には恐ろしく思います。

アンゴフはできるだけ多くの混乱と破壊を起こそうとしています。最終目的は分かりません。グレナンブラに来たのは征服するためか、破滅させるためか?最終的にその違いに意味はあるのか?分かるのは、止める方法を見つけねばならないことです。絶対に!

さて、続きはまた後日書きましょう。今は出掛けて、キャス・ベドロード近くの要塞で獅子の守護団と合流しなければなりません。集めた知識は、目の前の任務に応用できるでしょうか。

帝国の真の後継者True Heirs of the Empire

エリステラ・リジェン 著

喜べ、北西タムリエルの人々よ!ニルンの他の地は戦争、狂気、デイドラの恐怖に苦しめられているものの、ダガーフォール・カバナントにはレマン帝国の栄光と名誉が存続している。我々は貿易の優位、自由の原理、神々への崇拝に忠実だ。

敵の世界に対して、イリアック湾の貿易の有力者達は強力な同盟を形成した。ハイロック、ハンマーフェル、オルシニウムは、ウェイレストの上級王による支配のもとで1つとなった。オークとブレトンの職人技により同盟は経済的に恵まれ、オークとレッドガードの軍事力により侮れない勢力となった。我々の王達は住民とともにタムリエル帝国の復活、それに伴う経済的繁栄を望んでいる。正しい皇帝が帝都を支配するために、方法は1つしかない。自ら手にすることだ。

現在の「シロディール帝国」はレマンの栄光の第二帝国を真似た見せ掛けだけのごまかしにすぎない。ルビーの玉座に座る詐欺師達は公の場で神々を嘲り、人類の敵であるオブリビオンの王の機嫌を取る。有望と思われたヴァレン皇帝でさえもデイドラの堕落の被害者となり、その改革はデイドラの徒党の黒幕により一掃されてしまった。

ダガーフォール・カバナントが第二帝国の原理を受け継ぐ唯一の真の後継者である。神々の名のもと、シロディールを征服してレマンの遺産の栄光を復興せねばならない。シロディールを堕落させ、ニルンに脅威をもたらしている病的なデイドラ崇拝を、タムリエルから一掃しなければならない。タムリエル・カバナントを設立し、新たな王朝のもとですべての王国に大議会の席を与えるのだ。

進め、カバナントの兵士達!神々の名のもとにすべての人々を自由にしろ!新たな帝国、新たな法と正義の時代のために!

様々な宗派:オークVarieties of Faith: The Orcs

帝国大学 ミカエル・カルクソル修道士 著

オークは他の神の存在も認識しているが、崇拝する神は1つだ:

マラキャス、またはモーロッチ(オークの父、偉大な族長):

オークはモーロッチを最初のオークとして崇めており、名誉や報復などの問題について指示するモーロッチの掟に従って生きる。

モーロッチの掟

掟は明白に述べるよりも暗示することが多いが、以下が記されている:

——鋳造と鍛冶への敬意。
——族長とその妻達の伝統的な役割。
——挑戦と戦いにより新しい族長を選ぶ伝統。
——罪を犯した者は被害者(または被害者の親族)に「血の犠牲」を払うという習慣。
——名誉を傷つけられた者は復讐するという条件。
——戦いで死ぬことはモーロッチを満足させるという認識。

トリニマク教団

多くのオークがエルフの神トリニマクがボエシアに食べられ、排泄された時にトリニマクはマラキャスに、全信者はオークに変異したという起源の神話を信じている。オークの種がエルフに由来するというこの説を信じる者は自らを「オーシマー」と呼ぶ。

ゆえに、オークの中にはマラキャスよりトリニマクを神の祖先として崇拝する者がいる。トリニマク教団のオークたちの主張によると、トリニマクはその体内を通ることで腐敗するとボエシアには信じ込ませ、実際はボエシアの力の一部を吸収して信者に分け与えたという。この考えではオーシマーを「進歩したエルフ」ととらえることができる。

様々な宗派:ブレトンVarieties of Faith: The Bretons

帝国大学 ミカエル・カルクソル修道士 著

八大神

アカトシュ(時の竜神):アカトシュは八大神(シロディールおよびその各地方に普及している一大宗派)の主神であり、タムリエルのすべての宗教で登場する二つの神の一方である(もう一方はロルカーン)。一般に、始まりの場所に出現した神々のうち最初の神だったと見なされている。アカトシュの存在が確立すると他の神格も存在という過程を経るのが容易になり、世界中に様々な神々が登場したという。アカトシュはシロディール帝国の究極神であり、そこでは耐久、無敵、そして永劫に続く正当性などの資質の象徴とされている。

キナレス(大気の女神):キナレスは八大神の一員であり、天空を司る中では最も力のある神格であり、船乗りと旅人を守る。伝説によってはロルカーンの案に最初に同意し、虚無の中に次元を作るための空間を確保したとされている。彼女は雨とも繋がりがあるが、これはロルカーンの神性が失われる以前にはなかったという。

ジュリアノス(叡智と論理の神):ノルドの言語と数学の神であるジュナールとの繋がりがしばしばあるジュリアノスはシロディールの文学、法学、歴史と矛盾の神である。ブレトンの魔術師に最も好まれる。

ディベラ(美の女神):八大神の一員で人気のある女神。様々な分派が存在し、女性を尊ぶもの、芸術家や美学を尊ぶもの、性愛の指導を身上とするものなどがある。

アーケイ(生と死の円環の神):八大神の一員であり、他の地方でも人気があるアーケイは、父であるアカトシュが時の神としてあまり扱われていないか、あるいは人々に分かりにくい場合、その文化集団で重要視されていることが多い。アーケイは埋葬と葬儀の神であり、四季との繋がりがある場合もある。アーケイの司祭は死霊術およびあらゆるアンデッドに対し強い敵意を抱いている。アーケイは世界がロルカーンの指導/推奨/欺まんのもとで作られるまでは存在しなかったと言われている。そのため、定命の者たちの神と呼ばれることもある。

ゼニタール(労働と商業の神、商いの神):
八大神の一員であるゼニタールは当然ながらボズマーのズェンとの関連がある。しかしハイロックでは格段に洗練された商人や職人、中流貴族の神となっている。信者たちはその謎めいた出自にもかかわらず、ゼニタールは常に勝利する神だと主張する。

マーラ(愛の女神):ほぼ全ての宗派に存在する女神。元々は神話の時代の多産の女神として登場した。ハイロックでは母神とされている。マーラは時にアヌアドのニール、すなわち宇宙の女性的基盤であり、創造を生み出した存在と関連づけられている。ブレトンの神話では、マーラはアカトシュと夫婦になっている。

ステンダール(慈悲の神):八大神に属するステンダールはノルド由来の神から思いやり、時には正しき統治の神へと発展している。ステンダールは執政官、支配者、遍歴の騎士の守護者とされている。

ブレトンの宗派で著しく重要とされる神

マグナス(メイガス):魔術の神であるマグナスは最後の最後で世界の創造から身を引いたが、その代償は大きかった。この世に残っている彼の名残りは定命の者たちに魔法として認識され、操られている。伝説の一つでは、定命の次元を生み出すこと自体はロルカーンの発案だったものの、実際の構築に必要な図式や図表を作り出したのはマグナスだったとされている。マグナスは黄金の目、天体観測儀、望遠鏡、もしくは、もっとも一般的である杖の姿で描かれることがある。シロディールの伝説でマグナスは強大な魔術師の体に宿り、力を貸すことができると言われている。

イフレ(森の神):時の竜アカトシュが神の王であっても、イフレは「現在」の霊魂として崇拝されている。エルフによると定命の者の次元の誕生後、何もかもが混沌に陥っており、最初の定命の者たちは植物に姿を変えては動物に変化し、再び戻ることを繰り返していた。そこでイフレがアース・ボーンズを意味する最初のエルノフェイ、もしくは「アース・ボーンズ」に姿を変えた。これら自然の掟が確立した後、定命の者たちは新たな世界を理解することで、ある程度の安全を確保できるようになったという。

シェオール(バッドマン):ハイロックでは、バッドマンがあらゆる争いの元凶とされている。当初は凶作の神であったが、今日の神学者の大半はノルドのショールやアルドメリのロルカーンを悪魔化したもので、サールザル陥落後の暗黒時代に誕生したものと見なしている。

フィナスタール:サマーセット諸島の英雄神であり、アルトマーに歩幅を狭めることで自然の寿命をもう100年延ばす方法を伝授したとされている。ディレニの守護神にして「教師」であり、エルフの血を強調するブレトンの魔術師に崇拝されることが多い。

ストームヘヴンの伝承

Stormhaven Lore

アダマントの塔Tower of Adamant

ソリチュード、吟遊詩人の大学、住宅建築家フレーム 著

ハイ・フロスガーを除いて、スカイリムのどこを見てもディレニの塔のようなものはない。自然のものである大きな山とは違って、その塔は建造物である。しかし伝説が真実であるなら、建てたのは人やエルフではなく、エドラ達ということになる。

イリアック湾にあるバルフィエラの島の中心高く、切り立つ荒涼とした場所にそれはあり、時の始まりから建っている。建物を構成する物質が未知で不朽なことからアダマンチンの塔と呼ばれており、それと第零の塔はムンダスに存在するどの建物よりも古い建造物である。

ディレニのハイエルフは第一紀の始まりからバルフィエラを支配している。彼らは塔を取り囲むごく最近の砦しか所有権を主張できないにもかかわらず、その塔に自身の名を付けている(塔の地下墓地を調査する権利者は誰かという話は、答えのない議論である)。

私はアリノールのハイエルフと協議をしなかったが(する人なんているのか?)、ディレニのエルデン古物研究家である高貴なコロイデンは質問に答えてくれた。彼によれば、塔は神々がムンダスの運命を決めるために集まった深遠の暁紀に建てられたようだ。その頂点で、アルドマーの偉大な神アーリエルが詐欺師ロルカーンを殺して彼の心臓に矢を突き刺し、それを世界に向けて撃ち放ったという。心臓はただ笑い声に似た音を出して生き続けた。

その後、エドラはムンダスの事情から手を引き、ディレニが自身の物としているその塔を去っていった。彼らがそこで見つけた秘密とは何だったのか?今日まで何を隠しているのか?その秘密が何であろうと、ディレニはこんな程度の低いノルドの建築家には秘密を明かさなかった。

しかし、その周囲の8地点からディレニの塔の測量を行った結果、そこに秘密があるのは間違いないことが分かった。周知の建材を利用している前提で計算を行うと、あの規模の建造物を建てることは不可能なのである。

ウェイレスト、湾の宝Wayrest, Jewel of the Bay

(カンバーランド版)

長老サシル・ロングリート 著

ウェイレストはタムリエル西部にある最も輝かしい街の1つである。現代の美しさ、そしてその歴史の輝かしさ。ハイロックにある他のどの街よりも価値がある。ブレトンの文化にこれほど寄与した街はない。その街の賢き者達の魂は通りを見ればすぐに分かる。切り妻造りの屋根、雄大な並木道、香り漂う市場。ウェイレストの人々には、ダガーフォールの人々のように歴史に囚われるのではなく、その真価を見抜く力がある。ウェイレストを訪れた人は皆、近代的な街だと感じるのだが、そこには何世紀にもわたる文明こそが織り成せる魔法が存在しているのだ。

歴史家にとって、ウェイレストが創立された日を断言するのは困難なことである。ビョルサエ川がイリアック湾に注ぐ場所には、少なくとも第一紀800年からいくつかの集落が存在していた。ウェイレストの商人と漁師を取り囲むのは非友好的な集団ばかりであった。オークの首都オルシニウムはどんどん北の方向に勢力を伸ばし、西の島々には海賊や襲撃者が群がった。ウェイレストという名に何ら不思議はない。イリアック湾の東の端まで耐え抜いてきた多くの旅人にとって、ビョルサエにある小さな漁村は願ってもいない宿泊所だったのである。

スカイリム占領時代の自慢気な調査にウェイレストのことは一切言及されていない。ダガーフォールの年代記において、第一紀948年にジョイル王がガイデン・シンジに送った手紙には次のような言及がなされている。「オークはウェイレストの人々をずっと苦しめ、今にも大陸の中心に迫る勢いである」

ウェイレストが実際に栄えたのは、第一紀980年のオルシニウム崩壊の後である。勤勉な商人達が貿易同盟を結成する際の助けとなり、それにより湾での海賊の活動も衰退していった。商人として成功を収めたガードナー家は、街の中に城壁を巡らせた宮殿を建てると、そこで銀行やその他の商売を始めるに至った。ガードナー家のファランゲルは、第一紀1100年にウェイレストが王国と名乗ることを認められた際、王に任命された者である。

ウェイレストは一族によって支配されることになったが、商人が持つ偉大な力は相変わらずであった。多くの経済学者がこう主張する。苦境の中でもウェイレストが無限の富を得られるのは、商人と王のこの奇妙な関係に因るものだと。ガードナー王家の跡はカンバーランド王家が継いだが、ウェイレストの王が革命や暗殺によって退位させられることは決してなかった。ウェイレストの商人としての心を忘れる王は1人もいない。商人と王は互いに尊敬し合い、その関係は互いを強くしているのだ。

ウェイレストは荒廃、干ばつ、天災、海賊行為、侵略、そして戦争をその素晴らしい気質と実行力で乗り越えてきた。第一紀2702年、海賊や襲撃者、そしてスラシアの疫病からの保護を理由に、街の人口の大部分は強制的にガードナーの城壁の中へ移された。より愚かな人々には耐えられなかったかもしれないが、ウェイレストの人々は何世代にもわたって生き延び、タムリエルを豊かにしている。

オーク:我々の中の害獣Orcs: The Vermin Among Us

アブソロン・ソリック 著

奴らは穴をねぐらにして寝る。奴らは大量に繁殖し、腐った肉の臭いがする。賢い読者の諸君、これはスキーヴァーのことではない。オークのことだ。差し迫る脅威、無慈悲な大軍。「待て、ソリック。今や彼らとは同盟の仲ではないのか?」と諸君が言っているのが聞こえてくる。エメリック王の指揮を信じたいのならそれもいい。私達をオルシニウムの獣人に縛りつけている、このカバナントを信じたいのであれば。

しかし、実際諸君の信念は間違っている。王への信頼は間違いだ。この不完全な人間どもには残忍で邪悪な狡猾さが備わっているからだ。狩りをする狼の群れのように、オークは今でも草原に潜んでいる。私達の警戒が緩むのをじっと待っているのだ。陛下のような偉大な方々も、この単純な戦略によって誤りへ導かれるかも知れない。

奴らは今や私達の身近な存在だ。名誉ある獅子の守護団に仕えている。裕福な商人の護衛をしながら、傭兵として働いている。聖堂で聖職者の護衛としても働いている。賢い読者の諸君、分からないか?私達がこの獣達に贅沢を与えれば付け上がるだけだということを?あの粗削りの刃を、私達の鎧に突き刺す機会を与えているだけだ!

ブレトンがやるべき仕事を、奴らはその異常な力で奪っている。奴らの臭く厚い皮は、どんなレッドガードも太刀打ちできない防御を与えている。カバナント領域内の様々な都市で、オークが女性を強姦して異常な混血児を発生させているという話も増えている!

読者の諸君、これをどれだけ放っておくつもりか?この不潔な獣にどれだけ屈服するつもりか?私はもううんざりだ!今日、自身の村で志を同じくする者同士団結しよう。そして、この獣どもに対して反乱を起こすのだ!このくずどもに。この…オークどもに。

かつてOnce

〈告げ示す者〉ベレダルモ 著

かつて、我々は偉大であった。

かつて、バトルリーブは戦争の達人であり、サピアルチは賢く教養があった。かつて、我々はエルセリック海からロスガーの山々までハイロックのすべてを支配した。そしてネードは我らの奴隷であり、道具であった。

かつて、ティリゲルの白鳥ことディレニ・シグナスはバルフィエラとその塔を発見し、自身のものだと主張し、後から来た彼女のクラン全員に彼女の名を冠するように命じた。

かつて、錬金術は、アルテウムの初期のサイジックに入会依頼を受けたアスリエル・ディレニが「試料簡略年鑑」を編集するまでほぼ不明瞭であった。

かつて、レイヴン・ディレニの「エルドリッチ結合の法則」の確立以前は、付呪すべてが大変珍しいものであり、その試行のほぼすべてが失敗に終わるようなものであった。

かつて、アレッシア改革の間、リャン・ディレニは帝国に耐え忍んだ。彼のブレトン軍はディレニのエルフから武器の供給と指示を受け、東はマルカルスとエリンヒルまでを支配するに至った。オルシニウムのオークの要塞は何度も略奪を受けたが、そこを最初に略奪したのは我々ディレニである。

かつて、グレナンブリア湿原の戦いで、エイデン・ディレニの無数の軍勢はアレッシアの大軍に圧勝し、彼らをシロディールに追い返した。

かつて、下級デイドラの召喚でさえも恐れられ避けられていた頃に、コルヴス・ディレニは召喚の法則を体系化した。

かつて、ペレグリン・ディレニは自身の真なる意志をイリアック湾の波に変え、ラ・ガーダの船隊をセンチネルへ追い返した。

かつて、ペラディル・ディレニは石の精霊の軍団を召喚することで、リルモシート遺跡に散らばった瓦礫からたった1日でブラックローズ監獄を建設した。

そう、我々はかつて偉大だった。しかし、個人の功績が何であろうと、シグナス以来ディレニは皆、成功に恵まれることはなくなってしまったのだ。

なぜなら我々はゼロストーンの謎を解き明かせず、それによって守られたアージャント・アパーチャーを開くことができないからである。

成人すると、高潔な血筋のディレニは皆、塔の地下宝物庫へ案内され、ゼロストーンを見せられる。我々はそれに触ることができる。我々が決して使うことができない力、そこに流動する神秘的で並外れた力を肌で感じるのだ。そして隣接する金属製の壁にあるアージェント・アパーチャーを見せられる。その扉にはゆっくりと逆回転する13の輪の錠が付いている。決して開くことができない扉だ。

我々ディレニがストーンから力を吸収するか、アパーチャーを開くことができなければ、間違いなく他にできる者はいないだろう。我々は世界の高みへ戻り、壮大なことを成し遂げる。自身の失敗を受け止めずに済むように。

しかし、我々は死の間際に一度、それぞれの知識、功績を集結させ、もう一度地下宝物庫へと続く階段を作る。清算するために。ただ一度だけ。

大半は1日か2日以内に、死んだ状態か体がひどく捻じれた状態で発見される。私の最愛の人であるヘロンのように、中には生き延びる者もいるが、怪我がひどく、混乱状態で自分達に起きたことを理解できない。

私?私はトルマリン尖塔にある自分の部屋に留まり、昼間はヘロンの世話をして、夜は蔵書庫でアイレイドの書物の翻訳をしている。この生活にも十分満足している。

しかし、古代のグリモアやリブラスの魔術師のことを調べていると、長らく行方不明だった一族のアルケインの書物は秘密にしておくべきなのかどうか、時に疑問に思うこともある。

そこでこう考える。何の役にも立たない知識は存在するのか?そしてこう考える。この知識は何の役に立つのだろうか?

そして私は階下への長い道のりに足を踏み出す。

ただ一度だけ。

ハイロックの騎士団The Knightly Orders of High Rock

タネスのレディ・シンナバー 著

封建的な階級制度へのブレトンの愛着は、最も身分の低い小自作農民からウェイレストの上級王に至るまでハイロックのすべての側面に浸透している。ブレトンの騎士社会の興味深い現象においてこれほど明確なものは他にはない。

ここハンマーフェルで、私達レッドガードは剣の握り方を知る男女すべてに平等な市民権を与えている。そう、私達にも支配階級がある。もちろん文明には指示と管理がつきものだ。しかし、この貴族政治と比べると差はほとんどない。

ハイロックでは事情が異なり、皆が自身の階級の高さがどれくらいかを自覚している。それは、ディレニのエルフの大君主達から領土を解放したブレトンの一族にまで遡る。ハイロック文化の歴史の基盤には、エルフの支配を振り払った気高き勇敢な「ブレトンの騎士」の物語が存在している。この騎士達がディレニをバルフィエラの島に追い払った後、貴族の伝統を守るため、そして有事の際にハイロックができるだけ守り手を持てるように騎士社会を築き上げたのである。

少なくとも話ではそうなっている。今日、ハイロックにあるすべての王国と公爵領は独自の騎士社会を築いており、ブレトン解放の全盛期まで遡ると言われるほどの伝統も備えている。ダガーフォールの竜騎士団、アルカイアのフレイム騎士団、エバーモアの聖ペリン騎士団など、例を挙げればきりがない。

これらの騎士団は、その輝きを放つ大剣と鎖かたびらを正当化するために近頃どんな任務をこなしているのか?彼らの旗と豪華な式典の先を見越せば、騎士団はハイロックの社会において主に2つの目的を達成していることが分かる。

まず彼らは、多過ぎる貴族の息子や娘が満足できるほど「高貴な」職業を与えている。貿易によりハイロックが栄えたように、長い時間をかけて商人という職業は、貴族の子供達にとって君主に代わる職業として受け入れられてきた。しかし、実際には男爵の子供すべてに数字と交渉の才能があるわけではない。これらの数多いる後継者候補にとって、地元の騎士社会には常に自分のものにできる地位が存在する。

2つ目に、下層階級の人々に騎士爵を与えることは、社会(や、成り上がって行く君主)に対する顕著な貢献に対して報いる手軽な手段である。彼らはブレトンの社会において重要な階級を得ることになる。騎士のほとんどはこのケースだが、平民が戦闘以外の功績で騎士爵を受ける場合、その騎士団への在籍は名ばかりだ。そうした「卿」は有事に剣と盾を掲げることを期待されていない。しかし、彼らの功績が貿易において極めて重要なものであれば、新たな「商人騎士」は、騎士団の財政維持に対して、重要かつ持続的な貢献を期待される。

外交や貿易の仕事でウェイレストやエバーモアに来て、輸送会社の頭としてドリック卿が紹介されたり、宿泊所を束ねる経営者としてリザベッテ卿が呼ばれたりしても驚かないでほしい。目の前にいるのは、ハイロックの伝説的なブレトンの騎士の1人に過ぎない。

ブレトン:雑種か上位種か?The Bretons: Mongrels or Paragons?

エリンヒルのファラスタス 著

人間とエルフが交配できることは、神話紀の中期に最初の人間がタムリエルの海岸に辿り着いた頃から知られている。しかし、エルフと人間の交配が広まったのは大陸のごく限られた北西地域のみであり、そこでブレトンという人種が発生したのである。タムリエルの他の地域における人間とアルドマーの子孫との紛争の歴史を考えれば、このような交配がいかにして、またどうしてハイロックで発生したのであろうか?

その答えは、かつてタムリエルの北西部を支配していたエルフのクラン・ディレニの(エルフにとっては)独特な文化の中にある。出会った人間をすべて容赦なく奴隷にするシロディールのアイレイドとは対照的に、ディレニは征服した地元のネードを、単に貴族社会のカーストに組み込んだだけだった。上流階級のエルフは人間を臣下として支配する封建制度を敷き、その権利や特権には望んだ人間を誰でも相手にできる「性交の特典」が含まれた。魅力的なネードとの性交はちょっとした娯楽として考えられ、ディレニの貴族達は、極めて魅力的な人間の臣下をどれだけ抱えられるかを競ったのである。

このような性的関係から必然的に生まれた半エルフの子供は亜エルフと考えられ、ディレニの親の家族に引き取られることはなかったが、ネードの臣下の中でも特権を与えられることがよくあった。これにより、長い時間を経て、「ブレトン」(エルノフェクスの「ベラトゥ」もしくは「ハーフ」から)という名を与えられた混血の人間のカーストがはっきりと形成されるようになった。ブレトンは人間とだけ結婚することを許され、長い時間をかけて彼らのエルフの血はより薄くなり、ネードの外見が濃く出るようになった。

第一紀の頃は彼らも偉大な力を備えていたが、その頃でもクラン・ディレニのエルフは決して数が多くなかった。支配地域の拡大とともに、管理と支配は少しずつブレトンのカーストへと移っていった。第一紀482年に侵攻してきたアレッシアの大軍を打ち負かした後、クラン・ディレニは散り散りになり力を失ってしまった。エルフがハイロックの中央、最終的にはバルフィエラの島に逃れる一方、ブレトンは易々と彼らの跡を継いだ。ディレニが敷いた封建制度をそのまま受け継ぎ、彼らの地位に自分達の貴族を就かせたのである。

ディレニの伝統と自身を区別することを強要されてきたブレトンの貴族は、エルフやエルフに関するすべてを自分達から遠ざけることで新たな即位を正当化した。皮肉にも、古い貴族の家ほどエルフの血が強く残っていたのは言うまでもないが。ディレニは以前の臣下にますます中傷されるようになり、島のクランはさらに隔離されて孤立していった。しかし、彼らは今でも偉大な魔術師として知られており、第一紀907年に起きたレッドガードの侵攻を追い払うほどの力を持っていたことは間違いない。

ブレトンは自身を再定義し続けた。ディレニの支配に抵抗した気高い歴史の神話を創作し、タムリエルの沿岸地方で貿易を行う商人階級を育て続けた。女帝ヘストラとその軍団が第一紀1029年にバンコライ峠に到着した頃には、人間の帝国に加わり、八大神に帰依する態勢が整っていたほどである。レマンの支配下において、ハイロックは第二帝国の中ではおそらく最も安定して栄えた場所であっただろう。

そして、題目の(わざと挑発的にした)質問に戻ってくる。ブレトンは雑種か上位種か?その答えはもちろん両方である(もしブレトンを雑種と呼べば、少しばかりの鋼鉄が飛んできそうだが)。ブレトンという情熱的な人種を見れば、人間とエルフ両方の強さ、そして欠点も同様に体現していることが分かるだろう。

わが使命、わが誓いOur Calling, Our Pledge

ドゥラク修道院長 著

この一団に入ってきた新人はほとんどが私に「霊魂の守人になることの意味とは?」と尋ねてくる。この戸惑いは当然のことだと思う。アズラは道を示して下さるが、それがいつも我々が考えている方法で示されるとは限らない。彼女は私に話しかけてきたが、それも人生で2度である。それも夜に辛うじて聞き取れる穏やかな囁きのみであった。

ドリームシャードとはアズラの贈り物だ。我々が毎晩飲む夢見ずのの薬も同様である。アズラが予見するのは、悪夢の女王ヴァルミーナがこの地にいつ狂気の災いをもたらすのかということだ。我々がそれを止めない限り、数え切れない罪のない命が失われるだろう。

夢見ずの薬を飲めば我々はヴァルミーナの狂気から守られる。そうすれば他の人々を、夢で気を狂わされた魂や犠牲者を助けられるかも知れない。災いの時、我々は立ち向かう。これはアズラ、そして誓いによって示された…我が使命なのだ。

石喰いの聖なる儀式Sacred Rites of the Stonechewers

ネリック・ステロン 著

私は長期間にわたって石喰いゴブリンの部族を観察している。彼らの日々の活動を記録してきて、その習慣や日課に随分詳しくなってきた。ゆっくり時間をかけて、少しずつ彼らのキャンプの境界近くまで近付いた。時々姿を見せて相手に自分の接近を慣れさせるようにも仕向けた。ある時、木の後ろで用を足そうとしていた1人の戦士が私の監視所を見つけ、不平を言いつつ不格好でありながらも使いやすそうな短剣を取り出した時は、私の仕事もここまでかと思った。幸運なことに、部族の呪術師が私の近くへやって来ると、戦士に声を荒げて、彼の剣を振り払ったのだ。呪術師は私を指差して、自分の頭の側でゆっくりと手を回転させた。私が思うに、それはゴブリンの意思表現の1つで、格上の知性を認識したことを意味するのだろう。いわゆるこのような原始生物にそんな学識の一面があるとは誰が考えただろうか?

それ以降、敵対行動は一切なく、彼らの女子供とそれなりの距離を保っていれば、ゴブリン達は私の存在を許容してくれたのだ。時折、戦士が吠えてくることはあったが、私はただ自分の頭の横で手を回転させて「知性的存在」の意思表示を行った。すると、戦士は肩をすくめて自分の仕事に戻っていくのだ。

ゴブリンの宗教的な習慣について知られていることはほとんどないため、私は部族の呪術師を詳細に調べることにした。彼の仕事場のシンボルは骨の棒、おそらく大腿骨だが、その先端に小さな頭蓋骨を取り付けた物であった。その頭蓋骨もおそらくは幼児の物であろう。この頭蓋骨は様々な羽、とげ、そして動物の爪で飾られている。中は木の実の外皮のような物で満たされているため、振るとガラガラと大きな音を立てる。呪術師は、聖なる儀式の招集をかける際や女の食事の給仕が遅い際に、この神聖なシンボルを振り鳴らすのだ。

特に重要な儀式では、呪術師はそのシンボルを胸に当て、それから頭に当てた後、それを空に向けて「モロク!」と叫ぶ。最初私はこれに戸惑った。彼らがヅラゾグや子供を折檻する際に使う言葉「モールク」や糞便に対応する言葉「ムロコー」に類似していたからだ。しかし、少しずつその差異を学び、呪術師が叫ぶ「モロク!」にはゴブリンの神を呼び起こす意味があると、ある日私は気付いたのである。

その言葉がとても印象的だ。「モロク」は「モーロッチ」とそれほど違いがない。まさかゴブリンの神とオークの神は同一のものなのか?

このほどの発見ならウェイレストの大学で終身在職権を得られる!そのためにはこの発見を第三者が確認することが必要だ。だがどうやって?

夢から夢へTo Dream Beyond Dreams

百の預言の予兆 著

メネヴィア、緑多き愛しきメネヴィア、そこにある若いブレトンが住んでいた。彼は歴史的遺産を受け継いでおり、身の周りの世話は人を雇っていたため自分は何もする必要がなかった。間仕切り窓のところに座り、ひし形窓の外で田舎の風景が日の光とともに変化する様子をじっと眺めた。その日彼は、辺りが暗くなり就寝の時間になるまでずっとうとうとと過ごしていた。その後床に入った彼は夢を見たのである。

彼はどんな夢を見たのか?それは自身の所有地の夢だった。しかし日中のものよりも色が濃く、実物以上、さらに汚れのない清らかなものであった。夢のメネヴィアは現実のメネヴィアよりも現実味があり、起きている時よりも寝ている時の方が生を実感できたのだ。毎日彼は間仕切りのところで、夢を越える夢を見る方法を模索した。夢見のメネヴィア、レヴァリメネヴィアで永遠に暮らす方法を。

彼は「レヴァリメネヴィア」と言う。それは祈りの言葉であった。「レヴァリメネヴィア、レヴァリメネヴィア」。彼は何千回もこの祈りの言葉を口にした。すると、その言葉はみるみる「ヴァーメネヴィア、ヴァーメネヴィア」に変化していき、さらに回数を重ねて短くなっていった。そして最後には「ヴァルミーナ」となり、彼は何度もそれを繰り返す。「ヴァルミーナ、ヴァルミーナ」

そこで夢の形でヴァルミーナが現れ、彼のことを天上の夢見人、最初のナイトコーラーと呼ぶと、百の預言の予兆と名付けたのである。目覚めた後も、まだ夢の中にいるようで夢うつつで言葉を発し、彼は他の夢見人を彼のもとへ、レヴァリメネヴィアへ呼ぶのであった。

あなたもすぐに彼のようになれる。ナイトコーラーはそれを夢見てきた。ある夜夢を見たら、そこでその名前を言うのだ。そうすれば彼女が現れる。

霊魂の守人の創設Founding of the Spirit Wardens

信者のサークルの第三の番人、ジャニス・ムリック 著

第1章:ドゥラクの若年時代

ドゥラク修道院長は我々の崇高な指導者であるが、彼がその肩書に満足することはない。巨匠ウグバクがかつて言ったように、その理由はオルシニウムの廃墟での彼の幼少時代に関係しているようだ。オークにしては小柄なドゥラクが、オークにとっては馴染みの薄い神秘主義の道へ進んだのは、兄弟のいじめのせいだというのは誰もが考え得ることである。

ウグバクが言うように、ドゥラクの物語はオルシニウムから始まる。そこでの彼の運命は辛く寂しいものであった。ドゥラクの生活が一変したのは、デイドラ公アズラが囁きかけてきた夜からである。アズラは、ドゥラクが偉大な任務を完遂すると語ったのだ。彼はストームヘヴンへ行き、そこで彼女の名のもとに崇拝者の一団を築き上げる。この一団「霊魂の守人」が混沌の時、ストームヘヴンの人々が悪夢の狂気に苦しめられる時に向けて備えるであろうと。

ドゥラクはこの囁きを兄弟に教えるつもりはなかった。魔法の知識と身体能力が乏しいせいで、すでに嘲笑されていたからだ。彼は杖以外何も持たずにオルシニウムの家を出発し、ストームヘヴンへの長い旅を始めたのであった。

ドゥラクはストームヘヴンへ辿り着くが、「霊魂の守人」の一団をどのようにして築いて、どこで暮らせばいいのか見当もつかなかった。途端に彼は絶望した。ある夜、彼が嘆きの巨人の下で宿りをしていると、再び囁きが聞こえてきた。穏やかなアズラの声が語った内容はムーンリット・モーの西にある丘に隠された道についてであった。その行き着く先で、ドゥラクは草に覆われて見捨てられた古代の大修道院を見つけた。ここが霊魂の守人の本拠地なのだと彼は悟ったのだ。そして、そこがアズラへ通ずる我らが聖堂となったのである。

ドゥラクの指導の下、我々はヴァルミーナによる夢の災いに備えている。我々はストームヘヴンを悪夢から守るために築かれた。命尽きるまでそれを遂行しよう。