サイジック会の遺物

サマーセットの遺物 Relics of Summerset

遺物マスターグレナディル

君がここに来たのはもちろん、失われた遺物を探すためだな。
いいか、モアウィタの宝物庫で事件が起こった。サイジックが、最も呪われているという遺物を保管している場所だ。だが、普段よりもがらんとしている。どうも押し入られたようでな。
そして、再び回収するのを手伝ってもらうわけだ。できれば誰かが負傷する前に。何せ、あそこの品はあらゆるたぐいの悪さをするからな!

あれは間違いなく危険だ。直接触ることは勧めない。副作用はまちまちだが、その効果は… 控えめに言っても、およそ愉快とは言えないな。憂鬱になり、正気を失い、リュートを弾き続ける、といったところだ。
実際は言葉の響きよりひどいんだ。保証するよ。まだ興味があるなら、各遺物の研究をまとめてある。展示箱の前にある巻物を読むといい。その能力がよく分かるはずだ。
そうだ。モアウィタの宝物庫で適切な名称が貼られている展示箱を探して、その中に遺物を置けばいい。そうすれば、無事に呪いを封じ込められる。

偽りのランターン

偽りのランターン Lantern of Lies

偽りのランターンは、その炎を見た嘘つきの魂を閉じ込めるという。炎を見る勇気はあるか?

童謡、起源不明
-遺物マスターグレナディルによる複写

ランターンと火に気をつけよ
その赤々とした火には力がある
見える所に置けば
ランターンはお前を貪り食う

インドリクの心臓

インドリクの心臓 Heart of the Indrik

インドリクの結晶化された心臓は、不純な心を持って触れた全ての者を呪うという。

シヌタルモ教授による講義の抜粋
-遺物マスターグレナディルによる複写

美しいだろう?ルビーに似ているが、この石は結晶化したインドリクの心臓である。なに、簡単なことだ。月が照らす中で100晩、心臓を純水に浸すだけでいい。

不可能だと思うか?素早くやればできる。

目も眩むほどだが、ほとんどの者はこの水晶に悪事が働けるとは思わない。そして触れない限り、それは確かに真実だ。しかし、不純な心を持つ者に触れられると、水晶の中央に暗い影が現れる。そうなった後は、それを所有する者全員を呪って悲痛をもたらす。そして、まあ…その後は長生きしないとだけ言っておこう。

銀舌の羽根ペン

銀舌の羽根ペン The Silver-Tongued Quill

この羽根ペンで書いたことは、すぐに実現すると言われている。問題は、この羽根ペンが自我を持っていることが多い点だ。

盗賊ギルドマスター、ライシフの書簡
-遺物マスターグレナディルによる複写

オルズダーグ、

計画は取り消しだ。あのいやな魔術師め、汚い真似をしてくれた。これまでの脅迫で十分だろうと思っていたが、仕方がない。次に会う時は、斧のとがったほうを味わわせてやる。とりあえず今は、羽根ペンが役に立たないと知っておけ…少なくとも今回の目的にはな。

問題が大きくなった。まず魔術師は、羽根ペンを使った奴が書いたことは信じられるなんて言ってなかった。まあそれは、もし書かれる内容を選べたらどうにか対処できただろうが。とにかく、面倒な付呪だ。あれを使って書こうとした最後の2人は、縛りつけるはめになった。羽根ペンめは一人に高い屋根から飛び降りるように吹き込み、もう一人には…まあ、独創的になってきてるとだけ言おう。もう二度と起きてほしくない。

あんな呪われたものは川に投げ捨てようと言いたいところだが、誰かが欲しがるかもしれない。買いたがる愚か者の客を見つけよう。探す場所さえ知っていれば、こういうものには収集家がいるものだ。

解けるワンド

解けるワンド The Unraveling Staff

忍耐力のない織工によって発注されたこのワンドは、どんな糸も解ける。問題は建物、木、肉体さえもバラバラにできることだ。

仲裁者アンバーウェンの報告書
-遺物マスターグレナディルによる複写

報告4587:南中の月27日

容疑者を拘束し、杖は魔法の検疫に回した。容疑者の家で見つかった正式な書類から、あの男は街で有名な紡ぎ手から杖を作るように委託されていたことが分かる。あの杖はもともと、絡まった糸をほどくためのものだったと考えられる。

本件においては、数名の目撃者による証言が集められた。

「ああ、アニルヨンの隣人になってからもう数年になる。彼からは全て聞いた。解ける杖と呼んでた。最後に話を聞いた時は、見事に機能してた。どうした?何かあったのか?」

「ひどかった!彼は狂ったように笑いながら通りを走っていた。そしてどこかを示し指すたび、哀れなエルフの服が解けてしまった!あれは恥ずかしい。」

「服が解けるというのは知らない。建物がばらばらになる様子に気が取られていた!石や板が、まるで生きてるかのように飛んでいった。知らなかったな…死者が何人だって?」

「ああ、見た。杖で指したら…彼女はただの若い娘だった。どう説明したらいいか。ああ、かわいそうに。彼女の肉体がまるでただの…すまない、もうこれ以上話せない。」

容疑者は法廷が承認する日まで留置。保釈は認められない。

些細な呪いの頭蓋骨

些細な呪いの頭蓋骨 Skull of Minor Cursing

死を引き起こしたという話はないようだが、この頭蓋骨は多くの者に悲劇をもたらした。

氏名不明なカジート商人の売り込み
-遺物マスターグレナディルによる複写

さて、誰にも嫌いな奴が一人くらいいるだろう?もちろん憎むほどではないが、何かひどいことをしてきた者。不当なことをされたり。死んでほしいほどではないが、少し不快な思いをさせたいとか?少し問題を起こしたいとか?それなら、いいものがある!

こちらの些細な呪いの頭蓋骨ならぴったりだ。ひどい水虫!そこそこ不安にさせる悪夢!止まらないしゃっくり!目的の被害者をかんかんに怒らせること間違いなし。お値段も手頃だ。

影裂きの刀剣

影裂きの刀剣 The Shadowcutter Blade

この輝く刀剣は闇を貫く光の弧を作り出す。人間やエルフの魂の闇さえも貫く。

女司祭エンドゥノルの説教
-遺物マスターグレナディルによる複写

シラベインは刀剣を作り上げ、異常な闇さえ切り裂けるように、それを影裂きと名付けた。自身の作品の素晴らしさを見せようと、シラベインは友人にそれを披露した。

「さあ」シラベインは友人に言った。「壁に映る自分の影を見ろ。それを2つに割いてやる」

友人が影を見つめる中で、シラベインは光を放つ刀剣を高く掲げた。それを大きく下に振り下ろすと、光の弧が前へ押し出された。そして彼の言ったとおり、影が2つに切り分けられた。

しかし、友人は膝から崩れ落ちた。シラベインはエルフの友人の元へ駆け寄ったが、手遅れだった。彼の中にある闇、全ての人間とエルフが持つ闇も、2つに割かれた。彼の魂が貫かれたのだ。そして彼は殺された。

魂の番人の壷

魂の番人の壷 The Soulkeeper’s Urn

強力な魂の器。壷の中に刻まれた碑文は、これが数百年前に作られたことを示している。

刻まれた碑文
-遺物マスターグレナディルによる翻訳、複写

警告:危険な霊魂が入っている。開く前に厳粛な予防措置を取ること。月の周期7回ごとに結界の呪文をかけること。取扱注意。熱湯で洗わないこと。

非難の箱

非難の箱 Chest of Condemnation

この魔法で封印された箱からは、小さな泣き声が聞こえてくる。どんな魔法や獣がこの音を作り出したのかは知られていない。ずっと聞いていると、おかしくなる者が多い。

競売者ポーシャの話の引用
-遺物マスターグレナディルによる複写

さて、この美しい箱の入札を始める前に、一言警告を。気が小さい者には向かない品だ!こういう品の起源についてはあらゆる話が聞かれるが、ほとんど何も知られていない。確かなのは、強く呪われたものだということだ!

皆さん、よく聞いてほしい。聞こえるか?くぐもった、かすかなうめき声。安っぽい芸ではない!言っておくが、中に助手を仕込んでなどいない。非難の箱はいつも泣き声を上げているが、誰もその理由を知らない。中に何があるのか?残念ながらそれも謎だ。手が器用でないと封印を破れないだろうが、そんなことはお勧めしない。

しかし、真の呪いはそんなものじゃない。ちょっとしたうめき声など、害はないだろう?だがしばらくすると、頭をどうにかする傾向がある。この箱のこれまでの所有者は全員、しばらくすると完全にいかれてしまった。ここでは鍵をかけて誰にも聞こえない場所にしまっている。購入者も同じようにしたほうがいいだろう。

さて、入札を始めよう。まずは…50000ゴールドからでどうかな?

終わりなき巻物

終わりなき巻物 The Never-Ending Scroll

この終わりがないように見える巻物は、書いた者を誰でも虜にする。虜になった者は、疲労によって倒れて死ぬまで執筆を続ける。

サマーセットの古い民話、原作者不明
-遺物マスターグレナディルによる複写

ある夏の日、古風で趣のある小さな店で、エルフが古い巻物を買った。彼女は買ったばかりの巻物を使いたくて、兄弟に手紙を書くため座った。しかし、書き始めると何ともおかしなことが起きた。手がまるで勝手に動いてるかのように、物語を書き始めたのだ。

なんとも不思議で魅惑的だった。書きながら、彼女には目の前で物語が展開していくのが見え、まるで言葉の中でその冒険を体験しているような気がした。巻物には終わりがなく、延々とほどかれながらも減ってはいかないようだった。

そうして彼女は次々と書いていった。

数日後、兄弟が彼女の死体を見つけた。指はインクまみれで、口元は微笑みをたたえた状態で横たわっていた。そして彼女が書いた物語は何の意味も持たず、文字は不可思議で不明なものだった。

逃れられぬ兜

逃れられぬ兜 The Inescapable Helm

この兜を装備した多くの者が、出来の悪さではなく呪いによって死んだ。この奇跡の兜が外れるのは、装着者が死んだ時だけだ。

グラッシュの日記
-遺物マスターグレナディルによる抜粋の複写

107日目

この兜を永遠に脱げないかもしれないことを受け入れた。気に入らないが、仕方がない。これを売っていたあのクソ野郎が言っていたとおり、破壊不可能だということが分かった。あらゆる鍛冶を試したが、誰にも何もできなかった。

245日目

今日は別の魔術師に会った。他の連中と同じで、興味を持ったようだった。口ごもって何かを言って、書物を読んだりした。あらゆる呪文を試した。もちろん何も起きなかった。友人を紹介されたが、もうとっくに望みは捨てている。

487日目

かゆみが収まらない。あらゆることを試した。今朝だけでも千回は氷水に頭を突っ込んだはずだ。宿のベッドがシラミだらけなんて、最悪だ。

682日目

書くのはこれで最後だ。書くたび、何もかもが役立たずだということが分かる…もう望みはない。こんな姿で、どうやって生きていくんだ?兜から頭が出ない相手と家族を持とうとする者などいるわけがない。軍隊か何かに入ろうと思う。見込みが低いほどいい。こんなふうに生きていくより、戦場で死ぬほうがましだ。

手放せぬリュート

手放せぬリュート The Sticky-Fingered Lute

無慈悲な音楽教師によって作られた品。このリュートの弦をかき鳴らした者は、完璧に演奏するまで手放すことができない。残酷だが、とても効果的だ。

上級公女ライリルシルウェの手紙
-遺物マスターグレナディルによる複写

拝啓、サピアルチ・テマティラナ様

息子の件をご親切に引き受けてくださりありがとうございます。母親として、ナルリンドリの回復を一刻も早く助けていただくことが唯一の望みです。息子は何日も眠っていないため、あなたの質問には答えられないと思われます。あの額で十分に足りることを願います。

さらに調べましたが、いまだに誰がナルリンドリにリュートを贈ったのかは不明です。12才になったばかりで、祝宴に来た客人も贈り物も多数でした。息子の現状を考慮すると、このまま分からぬままになるのが心配です。明らかに罠だったと、今では分かります。

リュートは美しく、ナルリンドリはすぐに気に入りました。その日の夜から、添えられていた音楽の書にあった曲を演奏しようとしました。最初は熱心なだけだと思っていましたが、夜が更けるにつれて音にうんざりしていきました。やめるように言うと、私の目を見ることも拒んでただ弾き続けました。私が何を言っても、やめさせることはできませんでした。しまいにはリュートを奪い取って、朝まで部屋にいるように命じました。

彼は最初何も言いませんでしたが、震え始めました。体全体が同時に震えていました。そして苦しみながら地面に倒れ、手足はけいれんしていました。「母さん!リュートを返して!」と叫び、その声は拷問を受けているかのように苦しそうでした。

息子の命が心配になり、もちろんリュートを返してやりました。それ以来演奏を止めておらず、もう3日目に入ります。我が家の治癒師は息子のそばから離れていませんが、指が切れて血を流しているのを見ていると心が痛みます。睡眠も食事もほとんど取っておらず、いつもあの呪われたリュートを弾いているのです。

夫がナルリンドリと一緒に向かいますので、他に質問があれば答えられるはずです。どうか、何とかしてやってください。家族そろって恩に着るでしょう。一人息子の命と引き替えならば、費用は惜しみません。

敬具
上級公女ライリルシルウェ

偽顔の扇

偽顔の扇 Fan of False-Face

この扇を身に付けた者は、他者の顔を盗める。ただし、自らの顔もゆっくりと失われていく。

代弁者ギルザロンの手紙
-遺物マスターグレナディルによる複写

リジケー、この仕事を任せられると信じているから、この警告のせいで思いとどまったりするな。この品の使用を許したのは数年ぶりで、とても強力だ。だがお前の標的は簡単ではない。マグニフィコ・ナドブシャールは自分の命が狙われてることを知っていて、深く恐れている。

必要な品は持っているし、ナドブシャールの側近を捕らえるのは楽なはずだ。扇の魔法は被害者が生きていないと効かないから、彼女は生かしておけ。扇を広げるのは、必ず二人きりになってからにすること。お前たちの顔の間に持って、折れ目の中をじっくりと見つめるんだ。次にまばたきをする頃には、側近イムラサーの顔になっているはずだ。

この段階では特に時間が大切だ。扇の効果はゆっくりだが、一定している。すぐ不快に感じるだろうが、訓練のおかげで乗り越えられるはずだ。しかしゆっくりと夜が更けるにつれて、真の姿は消えていく。イムラサーのように考えるようになり、自分はイムラサーだと信じるようになる。朝の光が訪れる前に、変身は完了しているだろう。そうさせてはならない。

飲み物に毒を入れてナドブシャールに渡し、祝宴から立ち去れ。イムラサーのもとに戻って、もう一度扇を使え。こうすることでのみ、自身を維持できる。そうしないと、お前は王家の側近の体の中で永遠に失われる。私に言わせれば、死よりもひどい運命だ。

甘い夢の枕

甘い夢の枕 Pillow of Sweet Dreams

この枕で寝た者は誰でも、幸せな夢を見られる。習慣性はあるが危険な品だ。多くの者が、甘い夢からそのまま目覚めない。

ホノリア・アウルスの詩
-遺物マスターグレナディルによる複写

枕に頭を乗せる
目の奥でいい夢を見る
再び眠りが訪れるのを待ちわびる
嘘で飲み込まれる日を

その時は愛する人が横に寝そべり
彼女の微笑みは明るく、肌は輝く
そこでは死が及ばない
しかし朝が来ると彼女は去る

私は再び眠り
二度と起きない
今夜私の魂は
奪う

致命的な予感の鏡

致命的な予感の鏡 Mirror of Fatal Premonition

この鏡を見る勇気がある者は少ない。この鏡が見た者の顔を映し出すのは、避けられない死の直前のみだ。

タンディファエの遺言
-遺物マスターグレナディルによる複写

起きた。起きた、起きた。傷だ。頬に傷、傷がある。頬にあって、自分にはもうじき最期が訪れるのだと分かる。死ぬんだ。

あんな鏡を見るべきではなかったのだが、好奇心に勝てなかった。年老いた男が見えるだろうと思っていたが、自分を見つめ返した目は同じだった。わずか80才で自分の死を見つめ返していた。唯一の違いは…頬にある傷だった。

気をつけているつもりだった。剣術もせず、何にも乗らず、激しい活動は避けた。それなのに昨日、市場で、敷石につまずいたのだ。こともあろうにあんなものに!そして今ではそこに傷があり…死ぬことになる。鏡は知っていて、見ていて、これが死の証だ。

家族には、とても愛してると知っておいてもらいたいが、運命からは逃げられない。少しでも常識があるなら、あの鏡を破壊してくれ。自分まで破滅させられる前に。

白黒の絵筆

白黒の絵筆 The Monochrome Paintbrush

描いた者の生命力を吸い取る魔法の絵筆。その犠牲によって、最も美しい色が作り出される。

サマーセットの古い民話、作者不明 著
-遺物マスターグレナディルによる複写

昔、素晴らしい才能を持つ芸術家がいた。彼女の瞳は未知の世界で輝き、あまりの壮麗さと明るさに、美しいサマーセットさえ色あせて見えた。彼女は活気に満ちた景色を絵にしようとしたが、普通の色では用足りなかった。どうやったら光景を表現できるだろうか?

やけになっている時、貧しい商人が彼女の家の扉を叩いた。粗末な外見をした年寄りで、連れは足元に犬がいるだけだった。

「この絵筆を買わないか?」とその貧しい商人は聞いた。「この家からして、画家だろう。これを使えば、作品に命を吹き込めるようになるぞ。」

好奇心をそそられた芸術家は、その絵筆に微々たる額を払うことに同意した。先端が白くて黒い象牙の柄をした、わりと大きな筆だった。白黒の絵筆という代物だが、名前に騙されてはならないと言われた。そうして年寄りの商人は満足した笑顔で去っていった。

芸術家はすぐさま仕事に取りかかり、彼女の目の前では信じられないようなことが起きた。ほんの少し前はただの絵の具だったものが、輝きを放ちながら深みのあるものになったのだ。それは色や情緒以上のもので、彼女がそれまで見た全てをしのぐものだった。ついに、色が彼女のずっと思い描いていたイメージと一致したのだ。

しかし、彼女が描いているとおかしなことが起きた。まず、彼女の唇、指先、鼻先から色が抜けていった。髪の毛は黄金のような黄色から色あせた白に変わり、服は青と紫が消えて灰に変わった。

彼女は気づかなかった。彼女はどんどん絵を描き続けた。自分が作り出している景色に没頭し、彼女の体は白と、黒と、灰色だけになった。目は重たくなり、心拍は次第にゆっくりと間隔を開けるようになり、ついに彼女は突然崩れるように倒れた。

彼女の死体の前にはサマーセットで最も美しい絵があった。今でも飾られていると言われているが、ニルンでは二度と目撃されていない。

知覚時間の砂時計

知覚時間の砂時計 Hourglass of Perceived Time

発動すると、この砂時計は使用者の知覚時間を変更できる。1時間を1日のように感じさせることも、一瞬の内に1日を過ぎ去らせることもできる。拷問器具として乱用されたため、この力を発動する秘密は隠されたままだ。

クロックワークの使徒ララム・ファレンのメモ
-遺物マスターグレナディルによる抜粋の複写

記録32

被検体15Aはますます興奮してきている。実験の境界を見つけたことが疑われるが、それがどの程度までかは不確かだ。これが現在の実験にどういう影響を与えるかは、まだ分からない。

被検体15Bは言葉をつなげられなくなってきたが、これは外部からのみそう感じられるという可能性もある。彼女の世界観としては完璧に言葉をつなげて話しているのだろう。気性は相変わらず前向きだが、捕われてからまだ2日だけだと理解しているので、おそらくそのためだろう。

被検体15Cは強硬症になり始めた。他の被験者にはほとんど反応せず、長い間むせび泣くようになった。彼はもう実験に適さないかもしれない。私の計算によると、彼は捕われてすでに5年以上と理解していることになる。

失われた恋の靴

失われた恋の靴 Jaunt of the Jilted

気取った恋人に呪われたこの靴は、装着者を死ぬまで躍らせる。

失われた恋の靴、一幕劇
-遺物マスターグレナディルによる複写

語り手:昔、良家のエルフが2人いた。小さい頃から縁談がまとめられ、成長すると結婚式が計画された。

ノルディンウェ:ああ、素晴らしい結婚式の日が待ちきれない!

語り手:しかし若いクアーネルはためらった。結婚は愛する人としたかったのだ。

クアーネル:ノルディンウェ、悪いが君を愛していない。婚約は破棄しよう。

語り手:ノルディンウェは後に別の求婚者を見つけたが、クアーネルの裏切りを忘れることはなかった。憎しみを抱いた彼女は、靴に呪いをかけた。美しくしなやかなその靴には、恐ろしい秘密があった。

ノルディンウェ:クアーネル、以前は仲がよかったでしょう。ぜひ結婚式に来て。それにほら、この見事な靴を持ってきたわ。ダンスにぴったりよ!

語り手:そうしてクアーネルは式に出席し、披露宴が始まると踊り出した。音楽のリズムが速くなると、彼の足も素早く動き出した。靴は次第に温かくなり、やがて熱くなった。そしてついには足を焼き焦がし始めた。

クアーネル:ノルディンウェ、何をしたんだ?この靴は…いったい!

語り手:しかしクアーネルは踊りをやめられず、しまいには息を引き取った。この間ずっと、ノルディンウェはただ笑顔をたたえていた。

常に満ちた聖杯

常に満ちた聖杯 The Ever-Filling Chalice

この聖杯から飲んだ者は癒されぬ渇きの呪いに苦しむ。多くの者は、常に満ちた水に溺れる。

刻まれた碑文
-遺物マスターグレナディルによる複写

この聖杯から飲む者は、激しい渇望を経験するだろう。渇望にふけり、決して終わることはない。そしてその甘い水に溺れるだろう。

乾燥の胸当て

乾燥の胸当て Chestplate of Desiccation

テルヴァンニ家が奴隷の拷問に使ったアミュレット。装着者の肉体から、ゆっくりと水分を奪う。

元奴隷ウージャ・ナカルとの面談
-遺物マスターグレナディルによる複写

そう、テルヴァンニの看守はよくこれを罰に使う。この種族に、乾燥より気分の悪いものはそうはない。もちろん熱気には慣れてはいるが、ブラック・マーシュの沼の湿気を含んだものは初めてだった。

彼らは、さらに平凡な方法でサクスリールを乾かそうとした。檻に閉じ込め、夏の太陽に乾燥を任せた。しかし、雨の日や島に霧が立ち込めた時は、これを着させられた。両手は縛られ、脱げなかった。そして胸当ての効果が出始めた。

初めの感覚は鈍いものだった。しかし、その効果を知っていたがため、徐々に恐怖に襲われた。それはかゆみのような、多少の不快感から始まった。鱗の先が感じ始め、ゆっくり中へと染み込んでいった。口内の舌がしぼむのが分かった。目を閉じても楽にはならない。鱗がそれぞれ、緩慢に硬くなっていった。

どれほど死を望もうと、彼らは決して許さなかった。

砕け散る剣

砕け散る剣 The Shattering Sword

この柄に収められた剣は、戦いの最も大事な瞬間に砕け散る。

呪いの決闘の独白、第2幕第4場
-遺物マスターグレナディルによる複写

バトルリーブ・タンウィンセア:さればこの呪われし剣を手にしよう。我が敵は決闘の場でこの剣を使うとは承知の上だ。決闘の最高潮に彼の剣は砕けん。とどめが放たれよう。我が行為に名誉はなし。だが恥もなし。命を賭して演ずべき戯れに他ならない名誉に、価値などあるものか。我は大義を知るべし。決闘を制す名誉を知るべし。如何に手段が汚かろうと、勝利とは常に甘美である。

塔の杖 Staff of Towers

聖アレッシアの祝福された使徒、ホルネヴンの文書より

遺物マスター、グレナディル訳

エルフ魔術師アヌマリルの手よ呪われたまえ!アヌイ・エルの誇りよ呪われたまえ!見よ、彼らの柔軟で邪悪な指は世界の破滅を仕組んだ。ウマリルと親族がホワイトストレークの死で苦しむ中で、この杖、この8片の罪はまだ残っている。

アダマンチン:根源的で厳粛。

赤:陰気で血まみれ。

水晶:不敬で不可解。

オリハルコン:静かで忘れ去られている。

雪のノド:冷たく不気味。

緑の樹液:活気に満ちて賢い。

真鍮:大股で歩き強力。

白金:無限で永遠。

全て真っすぐだが、ひねくれてもいる!金属、石、そして冒涜の誓いに縛られている!これら8つの偶像がそれを行使する者の手に渡らぬことを。塔の杖が静かに動かず、魔術師の非情な目に入らぬことを。今も、いつまでも。

曖昧なる予言者 Augur of the Obscure

このわがままな水晶の頭蓋骨は、あなたの手放す決断を無視して留まることを選んだ。創世の壮大な謎についてあらゆることを告げられるが、無駄話、冗談、不平の方を好む。

オリハルコンの杖の欠片

レキの刀剣の遺跡だ。実に考えさせられるよな?死すべき運命について。長く、ゆったりとした時の行進… 厳然たる避けがたき死、腐敗、無。うむ… ま、私には関係ないけどな!

オリハルコンの杖の欠片 Orichalc Staff Fragment 発掘地:アリクル砂漠 レキの刀剣

この魔法金属は、片側に荒削りなオリハルコンの破片がある。塔の杖の一部に違いない。

オリハルコンの欠片だ!オリハルコンの塔については久しく耳にしてないが、お気に入りの場所だった。あの退廃的な感じが堪らない。

アダマンチンの杖の欠片

また墓地か?ここの土の下は財宝の宝庫だ。杖の欠片が見つかるかもしれないぞ。古い骨盤を掘るのはどうだ?嫌か?残念だ。

アダマンチンの杖の欠片 Adamantine Staff Fragment 発掘地:バンコライ ペリン墓地

この不自然に重い金属は、塔の杖の一部に違いない。

これはこれは。アダマンチンの破片だ。どこに入れるか気を使ってくれ。削れたら堪らんからな。

歩く真鍮の杖の欠片

デシャーンだな?ここには越閥の恐ろしい残留物がたくさんある。魚に違いない。魚は37種類の様々な恐怖を感じるんだ。だからいつも驚いてるように見える!

歩く真鍮の杖の欠片 Walk-Brass Staff Fragment 発掘地:デシャーン 牙の尖塔

この見事な作りの金属には、磨かれた真鍮の塊が付随している。塔の杖の一部に違いない。

歩く真鍮?おお、これはややこしい!もし第一紀にアヌマリルが塔の杖を作ったのなら、どうやって彼はドワーフがまだ作っていない塔のことを知った?ポン!脳が破裂する!

水晶の杖の欠片

シャドウフェン?ヒストには我慢ならない。正直に言うが彼らがそんなに利口なら、なぜ樹液を漏らすのをやめられないんだ?私を落とすのは勘弁してくれよ。あれは洗い落とせない。

水晶の杖の欠片 Crystal Staff Fragment 発掘地:シャドウフェン ハッチング・プール

この杖の欠片に付いた水晶は、アルケインの力で脈動している。塔の杖の一部に違いない。

水晶の欠片?うう、これは奇妙なものだぞ。それはここにあり、また別のどこかにもある。複数の別の場所にな。あんまり難しく考えるなよ。肉脳によくない。

雪のノドの欠片

げっ!この場所はひどいな!頭の中で製材所が動いてるみたいだ!それにこの音!聞こえるか?欠片を見つけて、さっさと出よう!

雪のノドの欠片 Snow Throat Fragment 発掘地:クラグローン スペルスカー

磨かれた大理石が、この冷たい金属の頂点に鎮座している。塔の杖の一部に違いない。

雪のノドの欠片!おめでとう。よかったな。さあ、ここから出ようじゃないか。顔から歯が抜け落ちてしまいそうだ!いたたたたたた!

緑の樹液の欠片

木のエルフとその木だな?あいつらが歌で木を面白いものに変えたためしがない。家、橋、椅子… 歌う地上の船みたいな、役に立つものに変える奴はいないのか?

緑の樹液の欠片 Green Sap Fragment 発掘地:グリーンシェイド グリーンハート

金属に付随したディープグリーンの石が、風に吹かれる木のような、穏やかな音を発している。塔の杖の一部に違いない。

緑の樹液の欠片だな?土の中に埋めておけば、そのうち新しい塔が生えてくるぞ。本当だ!

赤の杖の欠片

ちょっと待て… 以前もここにいなかったか?巨大な石の奴らが互いを絞め殺しているところに。アホらしいよな?瓦礫になった方が負けか。

赤の杖の欠片 Red Staff Fragment 発掘地:ストンフォール 闘争家の兄弟

この重く灰に覆われた金属は、赤い石が付着して触ると温かい。塔の杖の一部に違いない。

これは何だ?赤い塔の欠片?ああ、そいつの扱いには気をつけろ。気まぐれだからな… それに霊的な溶岩が詰まってる。一番危険なやつがな。

白金の杖の欠片

ふむ、これは堂々とした石像だ。私の故郷では、石像を作らなくなってしまった。動き出して、死のアルゴリズムをばら撒くからな… いやはや、滅茶苦茶だったよ。

白金の杖の欠片 White-Gold Staff Fragment 発掘地:ストームヘヴン 嘆きの巨人

壮麗な塔の杖の先端。シロディールの白金の塔に似ている。

これはいいものだぞ。白金の欠片だ。アークメイジ・アヌマリルがいつも持ち歩いていた。牛の鈴みたいに、首にぶら下げてたんだ!アイレイドらしいよな?

サマーセットの巻物

Summerset Scrolls

<強欲>The Insatiable

デイドラは目的を持つ獣だ。満足させるべき欲求を表わしている。なぜか?確実に知っているのはデイドラ公のみだが、こうした存在の力を自在に行使する者にとって、目的を理解することは極めて重要である。儀式を補佐するためにクランフィアを、巨人を倒すためにスキャンプを召喚などしないだろう。

〈強欲〉として知られる獣もまったく変わりはない。目的が消費することだと理解せずに、絶え間ない空腹の化身を招きはしない。他の目的はない。一度解放されたらどんな指示にも従わず、協議もしない。唯一の望みは生者を追って貪り食うことのみだ。獲物を巣へ連れ去り、獲物が想像を超えるほど長い間生き延びる、恐ろしくゆっくりとした宴でその内臓をじっくりと楽しむ。獲物の死体を群れに残しておく傾向があるため、彼らはそこに捕食者がいることを明確にして、恐怖の味を楽しんでいるのだと信じる者もいる。

命がなく、恐怖に襲われた場所を見たければ、そして一度肉体が与えられたらその怪物をなだめる術はないと承知しているのなら、捧げるものは下記の通りだ。

-餓死した人間かエルフの死体を置く。
-その舌を切り、それを食道に向けて口の中に戻す。
-太らせた定命者の血で舌を喉に流し込む。簡単にはいかないかもしれない。
-獣脂のロウソクを少なくとも6本、用意した死体の回りで燃やす。
-最後の火が消えたら、舌は死体から滑り出て、溶けた脂の中に収まる。
-3日後に、この肥大化した繭から〈強欲〉が現れ、恐ろしい仕事を始める。見届けるかどうかは自分次第だ。

「沈む島」の偏在The Ubiquitous Sinking Isle

照覧の大学の歴史管理人、ライルフィン 著

いかなる歴史家にとっても、真の仕事は虚構と事実を分けることにある。あらゆる種族の多様かつ互いに矛盾する文書を研究し、信ずるに足る共通の物語へと継ぎ合わせるのである。これには勤勉と規律が必要とされるが、何よりも大事なのは謙虚さである。真の歴史家は新たな証拠が現れた時、誤りを認めて自らの記述を修正する意志を持たなければならない。

新しい歴史家にとって最も有害な罠の一つは、裏付けのある記述に頼ることである。すなわち、複数の著者が同じ出来事を同じ手法で詳述していたら、その記述は本当だろうと信じてしまうことである。実際は、その逆だと考えるべきだ。社会的圧力や広く普及した文化的妄想は、しばしば全く同じ歴史的記述として帰結する。例えば、ネードの文書はしばしば「蛇たちの秋」と呼ばれる出来事に言及している。歴史によれば、何百もの蛇(多くはマンモス並みの大きさである)が大地から出現して町を飲み込んだが、ついにネードの槍の乙女、炭目の放浪者ラネヴによって倒されたことになっている。ネードの学者たちはこの秋を詳細かつ、ほぼ同一の手法で詳述しているが、我々は今日、この出来事が完全な作り話であることを知っている。

著者たちが意図的に嘘を述べているわけではない(そういう場合もあるが)。おそらく、古代の歴史家は出来事を忠実に記述しようと最善を尽くしたのだろう。残念ながら彼らには言語的手段や学問的洗練が欠けていたために、真実を伝えることができなかったのだ。そのため、広く受け入れられているが誇張されているように見える物語はどんなものであれ、厳格に検討しなければならない。また「繰り返される災い」、すなわち大きく異なる場所と時代において、同じ様に起きたとされている出来事にも注意すべきである。

「繰り返される災い」の最も明らかな例は、消える島の物語である。タムリエルの歴史は沈没し、隠され、消滅する島で満ちている。ヨクダ、ピャンドニア、アルテウム、ドラニル・キル、アイベア、スラス、そして(おそらく最大の)アルドメリスなど。消滅の原因はほぼ常に魔法的な性質のものである。多くの場合は傲慢な行いか、秘密を守ろうとした結果である。もちろん、これら全てについてこう問うべきである。こうした物語の中に真実はあるのか?私は疑わしいと思っている。

神話上の「沈没する」島を検討しよう。ヨクダ、スラス、アルドメリスだ。それぞれの島は居住する種族にとって祖先の故郷であり、3つの事例全てにおいて、敵もしくは運命が、傲慢なる行いを罰するため島を破壊した。レッドガードの場合は、愚かなソードシンガーたちが禁断の剣の一撃でヨクダ島を切断した。全旗海軍の戦士たちはスロードとその島スラスを、スラシアの疫病に対する罰として海に沈めた。そして我々の祖先であるアルドマーは、謎の災いを避けるためにアルドメリスの島を避難させた。おそらくは、エドラの恩寵から我々が堕落したことの結果として。

さて、新米の歴史家であれば、これらの物語を額面どおりに受け取るだろう。「複数の歴史が島は沈没したと言っているのなら、沈没したに違いない!」と。だが、どうかもっと深く検討してもらいたい。この「沈没する島」は文字どおりの出来事ではなく、むしろ一つの比喩だという可能性はないだろうか?

スラス、ヨクダ、そしてアルドメリスは単なる土地ではなく、社会的象徴である。時の中に失われた、文化的アイデンティティの体現だ。つまり、こうした島の切断や沈没の物語は脚色かもしれない。その起源が忘れ去られてしまった苦しみを説明するための、詩人の努力である。大陸が丸ごと1つ、剣の一撃で沈没したのか?我々の祖先は神秘的な半エドラの島からサマーセットへ旅したのか?私はそう思わない。これらの失われた島は事実と寓話の中間に位置している。この物語の中に真実が含まれているのは確かだろう。しかし真の歴史家は、全ての真理が文字どおりに描かれていないことを理解している。

アーティヴァルの詳述Ertival’s Recounting

悪夢だ!

目を閉じると、夢幻の暗闇の中に恐るべきものが見えてしまう。心を照らすロウソクの光の輪の向こうにぞっとする奇怪なものが拡がり、もはや目を覚ましていられなくなると襲いかかってくる。

不安を落ち着かせるためのあらゆる方法を試した。瞑想、催眠術、ハニーベリーティー。だが眠りに落ちた瞬間、私は再びあそこで待ち受けている恐るべきものに襲撃されてしまう。

絶望に駆られて、私は筆を取っている。夢の中に見えるものを書き記すことで、夜中に見る暗闇を追い払えるかもしれないと期待して。

夢の中で、私はアルテウムの穏やかな海辺に座っている。波が無限のエセルから砂浜に打ち寄せている。空にある太陽は低く赤く、その静けさで愚弄しているかのようだ。

そして、海の中から怪物が飛び出してくる。巨大で、寄生虫と海底の獣がまとわりつき、腐り落ちている。それは海辺に向かって進み、背後に真紅の泡を残していく。怪物の周囲の水は全て黒く濁り、魚は全て死に、風と音も止んでしまう。怪物の5つある頭はもつれあって互いに噛みつき、耳障りな叫び声をあげる。頭のねじ曲がった節がのたうちまわるのをよそに、その怪物はゆっくりと前に進み、破壊をまき散らす。頭の1つはほとんど腐った肉と骨でしかなく、吠え声をあげている時にさえ、海底の獣がその頭の腐肉を貪っているのが見える。頭が吠えるたびに死んだものが震えて踊り出し、その不浄なる力の操り人形になる。

第二の頭には無数の吹き出物と膿の痕、球根状の水疱があり、真紅と青緑色に光る液体が詰まっていた。それらが破裂して、しみ出した中身が互いに混ざり合う。混ざった液体はヒューっと音を出してバチバチと跳ね、燃えて煙を吹いた。他の頭はこの忌まわしき液体を歓喜と狼狽と共に舐めた。

第三の頭は星のない夜のように、窓のない部屋に置かれたオニキスのように黒かった。それよりもさらに黒いのは目で、太陽によって生じた長い影を、純粋な暗闇の覆いに引き込んでいた。

第四の頭は私から見えなかった。その顔に何があったかは分からなかった。

だが最後の、第五の頭は…それを見るのはあまりにも恐ろしかった。他の頭の数倍の大きさだったからだ。これが叫び声をあげるだけでも他の頭は震え、争いを鎮めた。この巨大な頭はほとんどが輪になった歯で出来ており、その上には恐るべき脳髄が乗っていた…醜悪なまだら模様で、しわと折り目が不吉で吐き気のする脈動に波打っていた。膿の汁と胆汁の線が、フジツボともポリープともつかない肉の窪みから滲み出し、表面で凝固して、空気を求めて喘いでいた。

そしてこの怪物の頭たちは私に注意を向けた。自分を見下ろすあの目に凍りついた。今も凍りついているし、これからも永遠に凍りついたままだろう。それよりもさらにひどいのは、奴らが一斉に歌う歌、破滅を招く不協和音。

ケトール・ア、エン・ガルサ!ベコール・ゲン、ゼマ・ジャ!
ウルヴォクスが待っている、
ウルヴォクスは目を覚ます、
ケトール・ア、エン・ガルサ!ベコール・ゲン、ゼマ・ジャ!

そしてこの恐怖の歌が最高潮に達した時、おぞましき夜が太陽に道を譲った時、私は遠くの地平線に輪郭を見る。海から姿を現す山だ。そしてその頂点から水の中に落ちていくのはさらなる怪物たち。数えきれないほど多く、名状しがたいほど恐ろしい。

彼らが来る。

私たちの方へやって来る。

そして太陽が完全に沈んだ時、私は叫びながら目を覚ます。

アラセルへのメモNote to Arathel

アラセル

何を考えてるかはわかってる。いいか、お前は大きな間違いを犯してる。会って話そう。

宿屋〈碇を揚げよ〉に行って、カジートのバーテンダーにデスランズ・エールを注文しろ。彼女は仲間だ。だから信用していい。とにかく急ぐんだ、わかったな?お前が死んでしまったら力になれない。

E

アリノールの星の瞳の花嫁The Star-Eyed Bride of Alinor

磨かれた琥珀の目、流れ星の尾のように束ねた髪
愛と喜びに燃える魂は、身籠った黄金の帆の下に

アリノールの星の瞳の花嫁
嵐と水しぶきに消えた
アリノールの星の瞳の花嫁
残酷なる運命が奪った

白鳥の羽根が、象牙色の花嫁衣裳になびき
届けたい誓いが、唇から滑り落ちた

アリノールの星の瞳の花嫁
波の底に消えた
アリノールの星の瞳の花嫁
海が墓となった

頭上に集められた雲は、マストから帆を引き裂き
棺の蝶番のように船体が軋み、船長が掴まれと叫んだ

アリノールの星の瞳の花嫁
故郷に戻ることはなかった
アリノールの星の瞳の花嫁
海と泡に溺れた

稲妻が海を叩き、風は大波と吠えた
白く輝く手を掴もうと腕を伸ばしたが、深淵に彼女は落ちていった

アリノールの星の瞳の花嫁
最期の言葉は私の名
アリノールの星の瞳の花嫁
今も無念に泣く

私は未だ浜辺をさまよい、海に目を凝らす
あの人の輝く顔が、微笑み返すのを見たくて

アリノールの星の瞳の花嫁
嵐と水しぶきに消えた
アリノールの星の瞳の花嫁
残酷なる運命が奪った

アルコンの森の群れThe Pack of Archon’s Grove

ソーンファングのゲロドロス 著

我々の族長がこの島への移住を選んだことに対して、多くの者が疑問を抱いた。サマーセットが我々にとっての安全な避難所だと、誰が思えようか?だが私は、彼女の決定に知恵が見える気がしつつある。

端的に言って、ハイエルフはウェアウルフへの対処法を知らない。隔離されていたため、この島では大した問題ではないように思う。賢明に振る舞う限り、かなりの長期間を注目されずに済むはずだ。

競合することもない。とにかく群れは、縄張り意識の強さで悪名高い。過去の対立で多くを失った。だがここには他のウェアウルフがほとんどいないし、群れとなるとなおさら少ない。我々は数を失うよりも増やす可能性が高い。

数を増やすといえば、族長がやっと説得できたことは有難い。群れを強化する必要があるが、唯一の方法は力によるものだ。ここには我々の祝福を喜んで受け入れる者がほとんどいない。旅人を捕らえて追い返すのは危険が伴うが、攻撃に備えて数を強化しなければならない。

今度捕まえた者は、うまく変えてやらねばならない。ウッドエルフの仲間をうまく変えられなかったのは残念だが、仕方がない時もあるのだ。

アルド・マラクの包囲The Siege of Ald Marak

攻城の名手、ゲルミア・デメトリウス 著

レマン王朝の領土拡大戦争中、帝国軍は大小問わず数えきれないほどの要塞に攻城を仕掛けた。ほとんどの場合、無慈悲な砲撃が迅速な降伏につながった。帝国軍の卓越した掘削と攻城技術、そしてアカヴィリの火の魔法と錬金術の見事な腕。その組み合わせは破竹の勢いだった。それでも、帝国と同等と自惚れる敵も中にはいた。ダークエルフの偽神、虚言のヴィベクはそんな敵だった。

数ヶ月の戦闘の末、レマンII世の軍はダークエルフを領地の奥深くへ退却させた。とうとうエルフたちはアルド・マラクの古い要塞に腰を据えた。確かに立派な要塞で、高く頑丈な壁と進入を阻む深い水のため、歩兵による攻撃はほぼ不可能だった。
トリビュナルを信仰する者たちは壁の内側に力を結集し、彼らの神の到着を待ちわびた。しかしヴィベクはやってこなかった。愚かな密偵の助言を受け、彼は別の場所、アルド・イウヴァルの近くの防衛についていた。そこは遠すぎて、攻撃に介入できなかった。

帝国軍は信仰と狂信の力をよく知っていた。背後の神に支えられたモロウウィンド軍との戦闘は愚かだった。長い攻城戦を戦う代わりに、帝国軍は大胆な計画を作り上げた。夜のとばりに紛れ、秘術師たちが水中呼吸の呪文を全軍に唱えたのだ。この魔法のおかげで重装備の軍隊がコロナティ湖を行軍した。遂に彼らは復讐に燃える幽霊のように姿を現し、警備の軽い門を突き抜け、乾いた焚き付けの束のように砦を燃やした。

おわかりのように、創造力と勇気は、破城槌やトレビュシェットと同様に攻城戦に役立つ。兵士よ、狐のように狡猾であれ。きっと役に立つ。

アルトマー文化への案内(決闘編)Guide to Altmeri Culture (On Dueling)

第47章:アルトマー的な武を競う様式

エドラの威厳ある遺産を引き継いだにも関わらず、我々アルトマーは下等種族の間ではびこる日常的ないさかいから自由ではない。知識と分別という観点から考えると、単純な不一致については会話によって解決するのが一番の方法である。ワインを飲みながら熟考することで、すぐに友情が和解をもたらすこともある。しかし、侮蔑の中には深く傷付くものもあり、そうなれば栄誉ある武を競う様式が唯一の和解手段となる。その場合、侮蔑された者は下記の規則に従う。

1.どちらも伝統的なアルトマーの決闘用フルーレを使用する。ロングソード、斧、フレイルなどはトリマニクの神聖な法によって禁止されている。フルーレは天然鉱水で洗浄し、完全に乾燥させた後で磨き上げる。

2.決闘の前に両者は相手の名前を暗唱しなければならない。それが適切と思われる場合は、母方、父方、血族の敬称も忘れずに付ける。言いよどみ、もしくは発音を間違えた場合は、そこでやめて最初からさらに二度繰り返し、相手の名前を暗唱する。

3.決闘者は決闘に全てを捧げなければならない。観客には、当事者たちが名誉を欠いた行動を取った場合に介入する権限が与えられている。名誉を欠いた行動には、相手の目への泥の投げつけ、決闘終了前の戦場からの逃亡、相手をさらに激昂させるような不快な言動などが含まれる。

勝者は倒した相手に思いやりを持って、謙虚な態度で接しなければならない。お抱えの医者や包帯など、傷を治療するためのあらゆる手段が役に立つ。敗者は自分の過ちを認め、自分の行動に対して謙虚に許しを請わねばならない。両者がこの規則に従えば、お互いの名誉を傷付けずに揉め事を解決できる。ニルンでこれ以上名誉なことはない。

アンベリーへTo Amberrie

アンベリーへ

さあ、二度は言わないわよ。信用してるからね、アンベリー!あなたは私が友達になった唯一のハイエルフなの。失望させないで!私たちはもう、もったいぶった態度を取る段階は過ぎたでしょう?イフレもご存じのとおり、私はああいうのに我慢が…ああ、手紙でも愚痴を言っちゃう!まあ、それはともかく。

私はある地位を得たの、それも大きな地位を。女王の密偵になったのよ!

いや、あなたも悪い噂を聞いたでしょうけど、そんなのは全部嘘よ!あなたの同族が女王について言うことときたら。私はグリーンレディについてあんなひどいことは言わないわ!女王陛下は、ならず者を雇って民を命令に従わせたりしない。女王が信頼しているのは善良な人々よ、アンベリー。彼らはアルドメリ・ドミニオンのために多くの善行を施している。それは信じてほしい。

それに、私はとてもしっかりと面倒を見てもらえている。加入してから、師はとても丁重に教えてくれるの。愉快なカジートで、とにかく冗談を言うのが好きなのよ。でも、ちょっと演技しているんでしょうね。彼は女王に最も信頼されている人物の一人なんだから。私たちの仕事は、気の弱い人にできるようなものじゃない!

ついに私も何かの役に立てるのよ。ああ、サマーセットに移住してからこんなチャンスが訪れるなんて思わなかった。私はウッドエルフだし、誰も私なんかまともに取り合わないだろうと感じてた。それなのに、女王その人に抜擢されるなんて!とにかく、私の努力がついに実を結ぶのよ。裏切り者と殴り合うとか、密偵を相手にするの。どんな冒険が待っていることか!

ただ、あなたを置いて行かなければならないのが残念だわ。それが唯一の心残り。できるだけ頻繁に手紙を書くと約束する。でもあなたに、どれだけ事情を伝えられるか分からない。とにかく私は無事だって知っておいて。きっとまた会えるわ。でもね、たまには私のために祈ってくれてもいいわよ。あなたのところの気難しい神々だって、ちょっと私を探すぐらいのことはしてくれると思う。だって、私は、アルドメリ・ドミニオン全体を助けてるんだから!

さあ、すぐに出発しなきゃ。でもあなたには心配してほしくないの。こんな手紙を書いてはいけないんだけど、直接会って伝える時間がない。だから、読んだ後はこの手紙を燃やしてくれるって約束してね。本気で言ってるんだからね!きっと記念にとっておきたいと思うだろうけど、間違った人の手に渡ってほしくないの。だから署名もフルネームでしないようにするけど、あなたには誰だか分かるでしょ。

たくさんの愛をこめて。それから、イフレの祝福が私たちにありますように!

-T

イフレの輝く駿馬Y’ffre’s Sparkling Steeds

メロブリアン 著

サマーセット島の原初の荒野で少しでも過ごせば、息をのむような植生をいくらでも見られる。しかし本当に幸運であれば、歴史上最もよく物語の題材とされてきた生物を見られるかもしれない。それはインドリクである。この生物を見る特権を得たのは、私も数回しかない。野生のインドリクは警戒心が強く、非常に見つけにくい。不純な意図を持つ者に見られた瞬間、インドリクは消え去ってしまうと言われている。

インドリクは見れば分かる、というのは陳腐な言い方だが、この生物を描写する任に耐える言葉は少ない。アルトマー文明と同じほど古い民話が伝えるところによれば、〈歌い手〉イフレはインドリクを森のエキスから紡ぎだし、森に住む全ての生物の姿を盛り込んだ。一瞬目にしただけではただの鹿と見間違える可能性もあるが、何気なく観察するだけでも、インドリクがそれ以上の存在であることが分かるだろう。

インドリクに関しておそらく最初に目を引くのは、その枝角である。インドリクの頭からは最高品質の水晶の先端が、光る大木の枝のように伸びている。この目を奪う光景は、枝角が素敵な戦利品になるだろうと考える多くの野心的な狩人が最期に見たものだ。一瞬でも警戒を解けば、インドリクの額から突き出たこの堂々たる槍に貫かれる危険を冒すことになる。インドリクの角については、数えきれないほどの伝説がある。錬金術の万能薬であるとか、手で触れれば寿命が7倍に伸びるとか、イフレの涙からできているとするものまである。私が言えることは、インドリクの角が美しく、かつ危険であることだけだ。以上に記したことは眉唾だと思うだろうか。しかしこれはまだ序章に過ぎない。

インドリクの体は毛皮と羽根、葉状体で覆われており、分類不能である。動物なのか、鳥なのか、それとも植物なのかと問いたくなるだろう。それともこの全てなのだろうか?あるいはどれでもないのかもしれない。一部の学者が主張する理論によれば、インドリクは神聖な存在であり、実はこの世界のものではなく、定命の者よりもエドラに近いという。ある寓話ではエルフがインドリクを殺すと、その心臓は純粋な水晶だったとされている。彼はこの完璧な宝石を愛する女性に渡そうと決めるが、女は宝石の輝きに魅了され、その欲が完璧な宝石を汚し、呪いにかけてしまう。それ以降、二人の生活は大変な悲しみで満たされ、結局彼らは海に身を投げる。残された親族は宝石を巡って争い、呪いを引き継ぐ。架空の物語ではあるが、インドリクが魔力を秘めていることは確実であるにしても、文字どおり魔法からできていることを示す証拠は、私が見つけた限り十分ではない。

ついでに、インドリクには耳が4つあることも言っておく。他の動物であればこれは目立つ特徴だろうが、私がこれまで記した内容からすれば、わざわざ記すほどのことではないように思えるのは同意してもらえるだろう。推測ながら、この特徴はインドリクが周囲を感知し、脅威を避けるのを助けている。しかし1対の耳は物理的世界を聞くため、もう1対の耳は精神的世界を聞くためにある、という噂がどこかで囁かれているに違いない。より詳細な研究がなされるまでは、インドリクは神話に取り巻かれた生物であり続けるだろう。しかし私には、秘密を暴くのがこの生物の価値を貶めてしまうような気がしてならない。実際、この世界に少々の不思議があることを望まない者がいるだろうか?

イメドリルに宛てた手紙Letter to Imedril

サピアルチ・イメドリル

大学を離れて古代遺跡に行くという決断は間違っていなかったと思う。ここは何かがおかしい。でも、私にはそれが何なのかはっきりとわからない。

できるなら何日も、大学の本の中に身を潜めていたい。蔵書庫の静かな学習室ならずっと隠れていられそう。居心地の良い本の世界のほうが、よっぽど安全な気がする。

私の今後の調査手順について伝えておくわ。まずはテレンジャーのスロードに関する考察を復習する。最後に夕食を一緒にしたとき彼は、自分の書いた文章を私がしっかり覚えていなかったことでがっかりしていたようだった。

次に、シースロードに関する帝国地理学会の論文を何度も読み直す。大学の蔵書庫は本当に広大ね!

そして、我々の偉大な大学に関する魔術師ギルドの考察を読む。間違いと偏見だらけだと思うけど、楽しい驚きがある発見ができそう。

最後に、肩のこらない本を読むつもりよ。研究のためではなく純粋に楽しめる本がいい。ダークエルフ2920年シリーズの4巻がいいかもしれない。あなたがこの本を軽蔑していることは知っているけど、本当に面白いのよ!

外国文学サピアルチが考案した技術を試すのもいいかもしれない。彼女は変わり者だったけど、並んだ演壇に本を置き、同時に読み進めながら、内容に従って次々と演壇を移っていくアイデアには前から興味があった。

このやり方の効果が判明したら、連絡するわね。

ハナイエル

インディリムの日誌(収集済)Indirim’s Journal, Assembled

シースロードがサマーセットに侵入している明らかな証拠。我々は卑劣な生き物を追跡して海岸沿いにアリノールの西、ウェレンキンの入江近くまで来ている。

* * *
我々は元来全く自然に見えない現象に出くわした。ガイザーが現れ、そこから水が噴出された。さらにシマーリーンや島の他の地域で報告されている恐ろしい海の獣、ヤグーラが飛び出してきたのだ。よりひどいことに、獣の群れの中にはアンデッドもいた。

* * *
この発見を確認する必要はある。私見だが、ヤグーラとアンデッドはシースロードのある種の魔法による攻撃だという結論に達した。

* * *
奇妙なガイザーの中心に、サピアルチが「アビサルの真珠」と名付けた宝石を見つけた。真珠はガイザーを固定させるだけでなく、ヤグーラを引き寄せる生餌の役割を果たすような、悪しき魔法を発していた。真珠を破壊すると、恐ろしい出来事は唐突に終わった。

* * *
我々はシースロードを追跡してウェレンキンの入江にある隠れ場所まで来た。この獣はしわがれた口語と直接心に訴える言語を組み合わせてヤグーラの召使に呼びかけ、その際に自らをブコルゲンと名乗った。近づいていくと、我々の頭に精神魔法が入り込んできた。奇妙で冒涜的な体験だった。

* * *
ブコルゲンはアビサルの真珠の、養殖場の世話係のようだった。真珠の周囲の水や、真珠の輝く表面にまで奇妙な印を描いた。それから水に錬金術的な混合物を加えると、海がアルケインの光で輝いた。きっとこれが真珠の魔法の源だ。

* * *
我々が観察している最中に、外套に身を包んで頭巾を被ったハイエルフが、ウェレンキンの入江にいるシースロードを内密に訪れた。人影はこそこそと話していたが、海風に乗って一部が耳に届いた。ブコルゲンは現在サマーセットの影で活動するシースロードのグループの1人のようだ。彼らは「アビサルの徒党」と名乗り、「ベドラムの宮廷」と名乗るハイエルフの集団と協力関係を結んでいるようだった。バトルリーブは彼らについてもっと知りたいだろう。

* * *
聞き取れた会話から、ガイザーはサマーセット中で大暴れし、最終的には島を沈めてシースロードが取り戻すという、大きな計画の一部に過ぎないとわかった。

* * *
機会を伺い、こっそりと近づいて印や真珠、外套と頭巾をまとう人影をよく見ようとした。ブコルゲンは明らかに魔法と錬金術を組み合わせてアビサルの真珠の性質を変えている。その技術を調べる時間がもっとあればよかった。シースロードが頭巾の人影に心配するなと言っているのを聞いた。「ク・トラは役割を果たした。彼の死は残念だったが、それで全体の計画が変わるものではない」

* * *
頭巾の人影は静かに立ち去り、ミリヤと隊長は追跡しないと決めた。ここで知った情報を持ってアリノールに戻り、バトルリーブに次の手を決めてもらうほうが良い。

* * *
これまでにわかったのは、サマーセットは圧倒的なスロードの軍隊に侵略されているのではないということだ。代わりに少人数のシースロードの徒党、4人で始まりク・トラという者の死で今は3人に減っている彼らが、破壊的なアビサルガイザー、ヤグーラとアンデッドの群れを解き放つため、島に侵入していた。彼らはどうやら「ベドラムの宮廷」と名乗るハイエルフの集団と協力関係にあるようだ。

* * *
海兵隊員サルウィが濡れた石の上で滑り、我々の存在がシースロードにばれてしまった。シースロードは手下のヤグーラに殺せと命じた。急いで逃げなくては。この報告書と、知ったことをすべてバトルリーブに届けなければならない。

ウェイリモの体験記Wailimo’s Personal Account

秘術師ウェイリモ 著

こうなるとわかっていた。なぜウェルキナーはシースロードを連れてこようと考えたのか。全くわからない。今、クラウドレストは廃墟になり、私は幸運にも生きている。

全ては大釜から吹きこぼれるように、高所から流れ出た黒い霧から始まった。それから市場が静かになった。実をいうと、何が起こっているのかはっきりわからなかった。だが皆が良いことではないとわかっていた。

その時、霧の中から叫び声が聞こえた。誰もが街の門からできるだけ早く出ようと突進した。あんなに慌てた群衆を見たのは生まれて初めてだった。誰もが叫び、走り回り、逃げようとしていた。

しかし霧は我々の歩みよりも速く、間もなく私たちは霧に包まれた。私の肌には冷たい濃霧のように感じられた。突然、膝が崩れた。一瞬で力がすべて抜け落ちた。心臓の鼓動がゆっくりになっていった。存在全体が重くなった。こんな極端な疲労は今まで感じたことがなかった。

死んでいくとわかった。まもなく心臓の鼓動が完全に止まるだろう。横たわった私が考えていたのは…私と一緒に何人が死ぬのだろうということだけだった。

力強い2つの鉤爪に掴まれたのはその時だった。ウェルキナー・オロライムが助けに来てくれて、街の上流に私を降ろした。救助の記憶はほとんどないが、自分の胴体がきつく抱き締められた感覚と、肌に当たる風はよく覚えている。

シースロードがどんな力を持っていたのかはわからないし、知りたくもない。だが危うく命を奪われそうになった。他の大勢の、既に奪われた命のように。

ヴェヤの個人的メモ(パート1)Veya’s Private Thoughts, Part 1

モロウウィンドを後にした

初めて孤独になった。孤独を感じたことは前にもあったが、今感じているのは息が詰まるほど重苦しい感覚だ。重苦しさが考えにまとわりつく。判断力が鈍っている。

あたしは怒っているの?悲しんでいる?ほっとしている?新しいスタートになると、師のナリューは請け合ってくれた。カジートがあたしの面倒を見る。モラグ・トングとはまったく異なる方法だが、訓練を続けてくれる。過去はきれいに拭い去られる。

でも、これはあたしの望んだことなの?あたしができることとできないことを、別の人に教えてもらう?自分の過去を忘れ、家族の行動によって感じた苦痛を忘れる?あたしがこうなったのはそのためなのに。その痛みは今のあたしを形作っている。

すべて忘れてモロウウィンドに置いてくることが、本当にできるの?

ヴェヤの個人的メモ(パート2)Veya’s Private Thoughts, Part 2

海にいる

計り知れない距離を航海する船の乗客になると、日を追うごとに退屈さが増していく。この退屈さのおかげで、自分の考えを整理できた。明らかになった出来事と、どうして今サマーセットに向かうことになったのか、理解しようとするために。

でも、あたしは何を熟考すべき?むろん、ここまで導いた状況だ。兄さんがどうやって奪い去られ、家のろくでもない名誉がどれだけ責めを負うべきか。あたしは兄さんの復讐をしたが、それによって父さんの命を奪った。かつての師は私を助けようとした。あたしを密かにモロウウィンドから連れ出し、遠い異国へ向かうこの船に乗せてくれた。残りたいというあたしの意見と嘆願を聞き入れなかったにせよ、彼女は善意でやってくれた。少なくとも、自分にそう言い聞かせ続けている。彼女は所属する組織や同盟、愛する者たちの多くに嘘をつかねばならなかった。あたしを無事に脱出させるために。

だが、彼女があたしを殺そうとしたことを、本当に忘れられるだろうか?やらねばならなかったことを止めようとしたことを? 彼女ともう1人。あたしは友人だと思っていた。あたしはまだ生きてる。それは意味のあることだと思う。

あたしは自分が正しいことをしたとわかってる。父さんをまた殺すことになっても。それがこの世界だ。政治と誇りがすべてだ。金と力の追求が。引き起こされるのは死、死、死。完全に終わらせるためなら、どんなことでもしてやろう。

ヴェヤの個人的メモ(パート3)Veya’s Private Thoughts, Part 3

闇の中で声がする

サマーセットへの旅が終わりに近づいているが、率直に言うとあたしは正気を失いつつある。それは、乗客の何人かが影から出てこないことに気づいた時から始まった。彼らは船の下層、最も暗い片隅に居続けている。あたしが彼らに気づくと、彼らもあたしに気がついた。彼らはあたしに話しかけてきた。周囲の闇に耳を傾けろと言う。影の母の声を聞けと。

気味の悪いフードをかぶった頭に刃を突き立て、海に投げ捨てようかと思う。そうすれば少なくとも、夜はもっとよく眠れるようになるだろう。だがなぜか行動に移せないでいる。気に入り始めたのかも知れない。あるいは思っていたよりも孤独だったから、不気味で頭のおかしい、影を這う者たちさえも、いい友人になりかけているのかも知れない。彼らには彼らの利用法があるのだろう。だがこの新しいことは?闇の中の声?これに頭を悩ますようになってきた。

今は、本当に声が聞こえているわけではないようだ。だが気がついてみると、自分で自分に語りかけていた。時には誰かが言うことを聞いているように感じられることもある。こう書いてみると奇妙だけど、そのおかげで気分がよくなる時もある。

母さんが恋しくて、母さんと話しているのを想像しているだけなのかも知れない。この件に関して、母さんにまったく非はない。母さんは今どこにいるのだろう?父さんを殺してから、母さんを直視できなかった。母さんは多くのことを経験した。正当だったかもしれないが、あたしの行動が引き起こす苦痛を見たくなかった。

* * *
いや、あたしは正気を失っているわけではない。夢を見ていた。喋るカラスや影の獣でいっぱいの夢。星まで届く塔。これは闇と変化の夢だ。新しい世界への機会の夢だ。

この言葉を読むと、あたしが恐れているように思える。そうではない。奇妙に聞こえるかも知れないけど、実に快適だ。それは影の淑女なのだろう。夢の中で語り掛けると、彼女はあたしの言葉を聞いてくれる。泣いている時は抱きしめてくれる。あたしを慰めてくれる。

この女性は、自分の母よりもあたしにとって母だ。誰も苦しみ、愛する人を失わないように世界を修復しようと、彼女はあたしに約束してくれた。

ヴェヤの個人的メモ(パート4)Veya’s Private Thoughts, Part 4

サマーセットに近づいている

あたしは生まれ変わった。

あたしがたどってきた道は、あたし自身の道ではなかったと母が明らかにしてくれた。あたしはこの世界の規範や法の奴隷になってしまう。あたしは別人の道を歩かされている。あたしは自由になるべきであり、自由とはあたしがなるべきものだ。

闇の中から、新しい夜明けがこの世界にやって来ようとしている。夜明けの到来とともに、憎悪、強欲、死は一掃されるだろう。あたしはこれがいつ起きてもいい。これほど自分が果たしたい役割について確信できたことは、かつてなかった。

母はあたしにベドラムの宮廷の地位を申し出てくれた。この新しい世界を顕現するために尽くしてきた集団だ。だが、母の計画はこの名高い集団をも出し抜く。

母はあたしに新たな名前を与えてくれた。新たな目的も。血が流されるだろう。命が失われるだろう。だが最後には、世界そのものが変化する。もはや苦痛はない。喪失もない。

もうあたしはレドラン家の娘ではない。今ではノクターナルの娘だ。

我が名はタンディルウェン、よりよい世界が灰から生まれるように、世界を燃やそう。

ウェルキナーのグリフォンThe Gryphons of the Welkynars

ウェルキナー・シロリア 著

さて、はっきり言っておきましょう。グリフォンの訓練は大変な仕事よ。野生のグリフォンに関わるのは命がけ。危険きわまりない。見られた瞬間に食われてしまう。それを証明できる訓練師が、サンホールドには大勢いる。気を抜けば、雛ですら指の数本は食いちぎってくる。

ウェルキナーは自分のグリフォンを、孵化から死の瞬間まで世話することになっている。職務の一環として、もちろん自分が先に死ぬこともある。いずれにせよ、まずは卵を手に入れることからよ。そう、卵を入手するのは自分。初日に助けを求めるべきじゃない。それから、母グリフォンも殺さない方がいい。親を無残に殺された生物と絆を結ぶのは骨が折れる。経験者の言葉を信じなさい。

雛が孵化した瞬間から、絆を結ぶ過程は始まる。すぐに絆を結ぶ魔法の儀式を始める。それだけではなく、雛との関係を親密なものに育て上げねばならない。雛に餌をやり、清潔にして、世話をするの。さんざんつつかれ、引っかかれ、眠れぬ夜を過ごすことになるでしょう。

絆を結ぶ過程が終われば、グリフォンは味方として戦ってくれる。このグリフォンはあなたの馬、守護者、忠実なる友となるでしょう。彼らにとってもあなたにとっても、訓練は厳しく困難なものとなる。でもそれが終わると、この獣は最も優れた兵士となる。

覚えておいて。これは気軽に引き受けられる仕事じゃない。あなたがグリフォンと結ぶ絆は、これまで経験したどんなものとも異なっている。単なる仲間などではない。あなたのグリフォンは、拡張されたあなた自身。あなたの思考、感情、欲求、すべてが彼らとつながり、一体となるでしょう。

この責務を全うすれば、あなたはウェルキナーに迎え入れられる。人生そのものを一変させる名誉ね。だからこそ、慎重に卵を選びなさい。

ウェルキナーの突撃Charge of the Welkynar

サマーセット、ああ、サマーセット、我らの素晴らしく素敵な地
透き通った輝ける海を越えて恐れられる
ウェルキナー グリフォンの騎士は翼を駆り 力を尽くし
勇気と力と大胆さで アルトマーの自由を守る!

突撃せよ、グリフォンの騎士
空を舞い、敵と戦え!
突撃せよ、ウェルキナー
剣と弓を手に翼を広げよ!

アリノールからシマーリーンまで
ウェルキナーは風に乗り、光り輝く島を守る
平民、貴族、商人、女王、誰であろうと
グリフォンの騎士は微笑んで 皆を守る!

突撃せよ、グリフォンの騎士
空を舞い、敵と戦え!
突撃せよ、ウェルキナー
剣と弓を手に翼を広げよ!

ウェルワの回復Restoring the Welwas

動物学サピアルチ、アンボリッセ

アルドマーが原野の岸に初めて辿り着いた時、サマーセットは今とは全く異なる場所だった。今とは違う生物たちが生息していたのだ。恐ろしいものもいれば、温和な生物もいた。初期のアルドマーは、望まれない脅威を島から排除する時には決して手を抜かなかった。彼らはウェルワを根絶やしにすることにした。なぜか記録には残っていないが、彼らはウェルワを酷く嫌っていた。それから数年でウェルワは絶滅し、サマーセットの生態系から排除された。

昔の記録によれば、ウェルワは新たな訪問者であるアルドマーたちを殺そうとしたようだ。ウェルワはギータスやイリアディと一緒にアルドマーを攻撃した。アルドマーたちは星々から先人の知恵と力を引き出すと、雷、氷、炎を使って、この凶暴な獣たちを徹底的に破壊した。

サマーセットの絵や彫像で、ウェルワは角と鋭い歯を持つ奇妙な聖獣として表現されている。実際に、このような姿をしていたことが原因で絶滅することになったと考える学者は少なくなかった。中にはその存在について、ただの神話や伝説の類でしかないと考えていた学者もいた。彼らをハンマーフェル東部のクラグローンで見つけた時の、私たちの驚きを想像してみてほしい。しかもそこには、絶滅してしまった地域で個体数の回復計画を間違いなく実行できるだけの数が存在していたのだ。

サマーセットのウェルワ回復計画に参加できたのは本当に名誉なことだった。私たちは慎重に作業を進め、グラグローンで6組のつがいを集めることに成功した。彼らの健康状態と夫婦仲を確認するためにしばらく隔離した後、北西の沼地に解放した。彼らはすぐにその地域へ馴染んだ。その後さらにウェルアを求めて3回遠征したが、彼らの健康には問題なさそうだ。しかも私は現在のサマーセットで、最初のウェルワの誕生を目撃することもできた。本当に素晴らしい経験だった!

もちろん、この野心的な計画に反対する者もいる。偉大なサピアルチの同僚の中にも、我々が大昔に手に入れた自然に再びこのような危険な生物を呼び戻すなど、無鉄砲で危険すぎると反対する者もいた。批判する人々には、「価値のあることをする時にはある程度の危険が伴う」という古い格言を思い出してもらいたい。最初にウェルワを乗せた船が港にたどり着いたとき、反対の意志を示すため現場に現われた穏健なアルトマーの人数に私は圧倒されてしまった。だが幸運なことに、その場を納めるため神聖執行局と衛兵が現われ、この偉大な生物たちが傷付かないように配慮してくれた。

今でも反対している人々はおり、計画を廃止させるために法的手段へ出る者もいるが、私は屈することなく計画を進め、サマーセットの自然に再びウェルワの群れを取り戻すことに成功した。サピアルチのおかげでこの島はさらに一歩、本来の美しさに近付くことができたのだ。次はできることなら、ギータスとイリアディを復活させたい。

エトン・ニルのウェルキナーThe Welkynars of Eton Nir

ウェルキナーのウィングキャプテン、レレクエン 著

ウェルキナーはサマーセットの偉大な歴史をほぼ常に支え続けた騎士団だ。我々は故郷を守り、邪悪な潮流に抵抗すべく人生を捧げている。悪意が醜悪なる頭をもたげ、邪悪なる者が市民を脅かす所には、どこにでも我々は赴く。

クラウドレストが本拠地だが、我々はいかなる緊急要請にも応じる。このためには素早い行動力が必要であり、だからこそグリフォンと絆を結ぶことが最優先事項となっている。この獣の助けを借りることで、我々は遠く離れた場所へ素早く移動できる。諸島の中心に位置し、高所にあるクラウドレストをウェルキナーが砦に選んだのは、このような理由からだった。

我々は全部で4人、それぞれが4つの方位を表す。引退し、職務半ばで命を落とす者がいれば、その者に代わる者が新たに選ばれる。加入資格を得るための訓練には何年もかかる。自分の相棒となるグリフォンを捕らえ、育てる必要があるからだ。

それぞれのウェルキナーは、選ばれるに足る戦闘能力を備えている。我々はサマーセット随一の魔闘士を輩出することで知られてはいるが、魔法は加入の必須条件ではない。戦強きモルニャレマルは史上最高のウェルキナーの1人に数えられているが、魔法を全く使えなかった。加入に必要なのは、我々の仲間にふさわしい戦闘能力を示すことだけである。

サマーセットの統治機関や軍のメンバーは誰でも、ウェルキナーに助けを求められる。もちろん要請を受けるかどうかは、つねに我々の選択による。任務の合間に我々はサマーセットを巡回して立ち寄り、潜在的な脅威に関する情報を収集して、危機の兆候への警戒を続けている。

そう、ウェルキナーが真の意味で休息することはない。だが、この人生をかけた献身ゆえに、サマーセットの市民の安全を確保できるのだ。この栄誉ある集団に名を連ねることほど、真に名誉なことはない。

エボン・スタドモントに閉じ込められてTrapped in Ebon Stadmont

アンデウェン 著

この森に来るなんて愚かだった。自分は賢く、力強く、揺るがないと思っていたけれど、長年の孤独を通して今は真実がわかる。私は頑固だった。高慢だった。だからとても愚かだった。そしてそのために苦しんできた。

この森に閉じ込められてもう数十年になる。過去に閉じ込められた。私の顔は皺だらけで、心は後悔で暗くなっている。私の人生は私から盗まれた。そう、盗まれたのだ。今はそれがわかる。

私をここに留めるものがある。長い年月を経て、私はこの存在、看守をエボン・スタドモントの霊魂と名づけた。彼女は私を監視した。研究した。私をここに閉じ込めているのは彼女だ。私を現在から切り離し、他の世界から切り離した。

この罠は私が森に足を踏み入れた瞬間に仕掛けられた。なぜ疑問を持たなかった?私を導き案内する声に。彼女が必要とする場所に直行させた声に。どれだけの間分からずにいた?どれだけこの言語を研究し、使い、意思に従わせようとした?あまりに長い。

彼女は何かのためにこの言語を必要としている。言葉はわかるが使えない。彼女には私が必要で、私には彼女が必要だ。その囁き声は、私に聞かせたいことだけを伝える。私は耳を傾け、従う。無意識のうちに忠実で、服従していた。だがもう終わりだ。

私は突き止めた。もう囁き声には頼らないし、彼女の意思だけで動かない。南の石。バネウェ・テルデ。あれが元の時間に戻る方法だ。それで、私は何もかもが起こる前に止められる。自分があの入口から入り、この牢獄に入るのを止められる。

だけど彼女は知っているのではないか。森の中に留まる限り、比較的楽に動き回ることができるのに、南の石へ向かう企ては必ず妨害されてきた。この私と霊魂との静かな戦いはもう何ヶ月も続いているけれど、私は固く心に決めた。自由になる。これを終わらせる。やらなければ。

エボン・スタドモントの言語The Language of Ebon Stadmont

著者不詳 著

私の研究はエボン・スタドモントの調査へと行きついた。噂と憶測は多いが、事実がほとんど知られていない森だ。特に私の興味は森の至るところで見つかる、崩れかけた遺跡内の碑文に描かれた謎の言語にある。この言語は未知で調査されておらず、誰も疑問視していない。これは当該言語の適切な研究をする力がないというより、森の持つ危険性と大いに関係しているのではないかと考えている。

森はある意味で捻じれている。森の中を歩くと変わるのだ。目的地は木々の葉の向こうに見える。ところがたくさんあるアーチ道の1つを抜けると、最初に目指していたところではなく、全く新しい場所にいる。転移の魔法がかかっているようだが、あまりにもスムーズなのできっと気づかないと思う。

木々の葉は密度が濃く、普通の森というより生垣の迷路を思い起こさせる。誰か、あるいは何かがこの森を他から切り離す設計にしたのは明らかだ。明白な目的は、余所者を排除することだと思う。この保護対策は、私が研究しようとしている言語と何の関係があるのだろう。よくわからない。だがきっと私の研究を通して、答えが見つかるだろう。

* * *
エボン・スタドモントにおける最初の発見は、恐れていたように結論へと達しなかった。この言語はデイドラの形に似ていると思ったのだが、その方向のあらゆる実験は何の成果も生まなかった。古さという点は似ているかもしれないが、デイドラに由来するとは思えない。というわけで、ゼロから研究をやり直すことになりそうだ。

この調査旅行の幸運は、私が最大の障害だと思っていたことからやってきた。森そのものだ。噂は誇張されていたのか?森の自然を捻じる出来事は回数も少なく、たいして不便でもなかった。心配していたように、隊員を失うこともなかった。固まって移動するよう命令はしていたが。

受け入れられている感覚がある。まるで森がその謎を明かす価値があると判断したかのようだ。あるいは時を経て、魔法の保護の力が弱くなったのかもしれない。いずれにしても、この幸運を無駄にするつもりはない。退却はしない。この言語を研究すると心に決めた。

* * *
とうとうこの言語の謎が進展し始めた。私は全く間違った見方をしていた。それが問題だったのだ。私は言語が単に記号から成っているとみていた。研究して翻訳するものだと。しかしこの言葉には力がある。今はそれがわかる。

碑文に手つかずの魔法の力の源がある。しかし試したものの、解放する方法が見つからない。使うと、力が使ってほしいと強く願っているのを感じる。一種の創造的な力で、計り知れない可能性に満ちている。しかし何の?

言葉は生きている。私が近くで聞いていると、時々話しかけてくる。私の心に囁くのだ。言葉の持つ力は長い間休止していて、再び存在したいと願っている。あとは私が方法を見つければいい。

オグル船長への手紙Letter to Captain Oghul

よう、オグル。

たった今、アリノールの郵便からお前の手紙を受け取った。お前の質問に答えると、交易はエルフの女王の命令以来順調だ。順調どころじゃない。あの背の高いエルフどもは傲慢だが、ゴールドはゴールドだ。そしてあいつらは大抵の連中よりも払いがいい。とはいえ、サマーセットを航海して回るのは簡単じゃない。お前が下手なのは知ってるから、センチネルに来る時は航海の達人を拾ってきたほうがいいぞ。

サマーセット付近の航海について最初に知っておくべきことは、あの島が見た目より大きいってことだ。ずっと大きい。大半の連中には、あの島は誘っているようにしか見えない。白い砂浜、甘い香りのする花、新鮮な湧き水があってな。だがそういう連中が見てないのは、水面のすぐ下がごつごつした岩礁の巣窟になってることだ。それも全部サンゴに覆われてる。しかもトパル湾で見るような脆いエチャテレ・アントラーじゃない。巨大な海の骨、モーロッチの顎のように硬く、メエルーンズのカミソリのように鋭い脱色サンゴだ。傾斜した部分が触れると、豚の皮をナイフで削ぐように船体を切り裂いちまう。だから注意するんだぞ、いいな?地図と、喫水に気をつけろよ。

それから海賊もいる。忌々しいシーエルフどもだ。奴らのサーペントの旗が、沈没した商船や捕鯨船の上にはためいているのを見ない日はない。斬り込みを撃退する必要があったのは2度だけだが、しっかりと叩きのめしてやったよ。しばらくは奴らもオークのブリグ船を襲おうとは思うまい。礼はいらんがな。

船員にも目を配っておけよ。水夫というのは迷信深いからな。俺が聞いた幽霊話のいくつかは、きっとお前も信じないだろう。巨大な海のサーペント、幽霊船、脳味噌をブラッドプディングみたいにグチャグチャにするナメクジ人間。そんなのばっかりだ。甲板での愚痴をあんまり放っておくと、暴動が起きる危険がある。だからオークが口を閉じないようだったら、そんな迷信は遠慮なく叩き潰しちまえ。

いい風と、静かな海を願おう。近いうちにシマーリーンでジョッキと話を交換しようや。

ヴォシュ、
ダルズール

カートレルの最後の手紙Cartorrel’s Last Words

愛する人へ

今回は家に帰れないでしょう。ここの海はこの上なく穏やかだけど、いつだってどんな航海で私の最後に成り得ると知っていたわよね。私の最期を告げるのは変わりやすい海流ではなく、血管を駆け巡る毒なの。愛してる。そしてごめんなさい。

シーエルフがワステン・コラルデイルを侵略した。今は小さな部隊だけど、増強の準備をしている。この島がもっと大きな軍事行動の足場として使われるまで、そう遠くないでしょう。

二度と本土は見られないけれど、潮の流れがうまくいけば、この伝言は間もなく届くはず。

これを見つけた人へ。王立海軍にシーエルフが来ていると伝えて、これ以上の命が失われる前に、奴らを止めて。親切な方ならこれをアリノールのウェンドレインに届けてください。

愛と希望を込めて、
カートレル

カーンハルの日記Karnhar’s Journal

ここの人々は、この地の呪いなんて怖くないという振りをしているが、何か普通でないことが起こった瞬間に本音が出てくる。我々は昔からここに住んでいて、野営地の水没と粗末な食事以外には何の問題もなかった。大地が揺らぎ、人々が行方不明になっている今は、デイドラが地面から這い上がってきて、我々を食べるとでも言うかのようだ。

真実はおそらく、誰かが穴の中に落ちて助けを求めているのだろう。他の者たちが恐れて行かないことは気にならない。バカげた迷信のために、善良な人々が暗い穴の中で餓死するに任せておくことはできない。

* * *
ある大穴の付近で終わっている足跡を見つけた。確かに誰かが穴の中に降りたのだ。自分の意志でかどうかは不明だが。呼んでも返事がなく、投げ入れた松明はほとんど一瞬で消えてしまった。水の流れる音が聞こえたように思う。浸水しているに違いない。ロープがあったとしても、自分で降りてみる気にはならないが、別の道から降りられるかもしれない。水はどこかに続いているはずだ。

* * *
どうやらあの古い館は土台から滑り落ちてしまったか何かのようだ。崩れ落ちた壁があるし、水の流れは自然の洞窟まで続いている。野営できる乾燥した場所を見つけるまで進み、探索を続けるつもりだ。

* * *
巨大な開けた洞窟へと続くトンネルを見つけた。柱のようなものが見える。かつてここに暮らしていたエルフたちが岩から削り出したに違いない。岩が再び戻ってきて、この場所を占拠しつつあるようだ。この場所はどれくらい古いのだろう?

今のところ、ヘンリグやミンドリルの手掛かりはないが、このトンネルにはもう一つ分岐がある。一晩ぐっすり眠ってから、そっちに行ってみよう。

カソリンウェへの手紙Letter to Casolinwe

カソリンウェ

また君の友人であるマニマルコと、昨日不快な出会いをしてしまった。前にも言ったかどうか分からないが、遺物マスターは私を宝物庫の納品監視係に任命した。簡単な仕事だ。爆発する可能性のある試薬や不安定な遺物を分類するだけだ。

大部分の見習いは小包を1つか2つ持ってきた。だがマニマルコは謎めいた錬金術の溶剤の入った、印のつけられていない木箱や樽などを何十個も持ってきた。彼の経歴を考え、ある程度は大目に見るつもりだった。だがあれだけの量の材料となると…何も言わないわけにはいかないだろう?

私はとても丁重に、最新の納品物の中身は何かと尋ねた。彼は私を見もしなかった。ただ「お前の興味を引くものではない」とだけ言った。私は食い下がった。紳士的にだぞ!もう一度聞くと、彼はあの冷たい目を私に向けて、ウブリヴェイ神秘学の失われた言語で何か囁いた。あの時、私は彼が「もう一度聞いたら、お前は後悔を知る」と言ったように思った。だがいくらか不愉快な回想をすると、おそらく彼は「もう一度聞いたら、お前は殺しを知る」と言ったんだと思う。よくある間違いだ。2つの言葉はよく似ている。だが君には言っておくが、あれは間違いじゃなかったと思う。彼は私が言語学者だと知っている。自分が言っていることはちゃんと理解していたはずだ。今でさえ、考えただけで背筋がぞっとするよ。あのエルフはどこかまともじゃない。私には分かる。お願いだから、気をつけてくれ。

古き習わしが君を導くように
ルリナリオン

追伸――あの男が運んでいく時、木箱はカタカタと虚ろな音を立てていた。私の推測だと、あの木箱には乾燥させた木か、あるいは骨が入っていたんだと思う。どっちの可能性が高いか、君にも予想が付くだろう。

ガリドールの愛の詩Galidor’s Love Poem

愛しきジャヴァナへ、
知っているはず
三度の人生を共にしたいと思っている

けれどポケットは満たされず
分けられるものもあらず
お金もなく、靴には穴が開いてる

でもいつか、そう
一緒に行こう
緑の深い樫の木の森へ

根の中で休み
グラーベリーをついばみ
王と女王の姿へ

ガリドールの走り書きされたメモGalidor’s Scribbled Note

宿主へ

何度も抗議したのに、ならず者が相変わらず部屋の外に集まっている。

犯罪者は見れば分かる。ごろつきの一人で、鼻水を垂らしてもじゃもじゃの赤毛をした若い奴は、とりわけ悪さをしているようだ。そっちが対処しないなら、自分でどうにかするかもしれない。

ガリドール

ガリドールの台帳Galidor’s Ledger

ブラックマーケットでの購入:

アズドル – 未加工のムーンシュガー2杯:支払い済み

キャリエシル – スキャンプの耳のシロップ漬け:支払い済み

キャリエシル – ドレモラの歯:支払い済み

エミール・オンセント – 羊の血1樽:支払い済み

エミール・オンセント – 錬金術用注射器(5個セット):支払い済み

ファンダーカー – ウェルキンド石(盗難):支払い待ち

ガリドールの買い物リストGalidor’s Grocery List

1:子羊のスネ肉

2:シナモン

3:シャロット6個

4:パセリの小枝(付け合わせ用)

5:チーズ丸ごと

キャスタティル船長の輝く剣:第6場The Bright Blade of Captain Castatil: Scene VI

第6場。外洋。恐怖のアッシュ・バイパーの甲板。恐怖の船が演者の足元でゆっくりと沈む

オルグヌム王と、黄金の仮面をつけた謎のキャスタティル船長が入場

オルグヌム王:
キャスタティル!古き大敵よ!踵の薄いハイエルフのブーツで、荘厳極まりなき船の看板をよくも汚したな!

[オルグヌムが威嚇するように前へ出て、冷笑と共に毒の塗られた剣を引き抜く]

キャスタティル船長:
ハッ!魚の王は大言するものだ。周りを見ろ、シーエルフ!お前の艦は波に飲み込まれ、船員は泡と海で窒息するだろう!お前も加われ、裏切りの海賊め!

オルグヌム王:
死ぬのはお前のほうだ、黄金仮面よ!突き刺す前にその仮面を引き剥がしてやる。我が毒の剣で串刺しにするとき、苦悶の表情を見てやれるようにな!

キャスタティル船長:
いいだろう。実はこの時を長年待っていた!

[キャスタティルが仮面を外し正体を明らかにする。それは、復讐に燃えたエロルダリンの息子、マーシベルであった。オルグヌム王は息を呑む]

オルグヌム王:
馬鹿な!マーシベル?エロルダリンの屈強な息子か?

マーシベル:
そうだ!お前が昔を殺した時、お前の廃墟を海に沈めると誓った!今こそ復讐の時だ!

[マーシベルは輝く剣を抜き、戦いに備える]

オルグヌム王:
なら来るがよい、エロルダリンの息子よ!大蛇の牙と戦え!

[2人の敵が舞台を横切りながら、突きを入れ、受け流し、切りつける。一時的にマーシベルが優勢になる]

マーシベル:
魚屋の妻のような戦いぶりだな、オルグヌム!真の挑戦を私から奪うのか?残忍な願いがこうも簡単に満たされてしまうとはな!

オルグヌム王:
ハッ!若いな!その自信過剰が命取りだ!

[オルグヌムが滑りやすい甲板にブーツを強く踏み下ろし、マーシベルを転ばせる。前かがみになったマーシベルが避けて受け流す瞬間、オルグヌムが襲いかかる]

オルグヌム王:
鉤先でのたうつがいい!我々の決闘は残酷な終わりを迎える!

マーシベル:
私を倒したつもりか?見えないものを串刺しにできないと知らないのか?

[マーシベルは付近の手桶をつかみ、中身をオルグヌムの顔にはねかける。青の厚化粧が洗い流され、マーシベルの父エロルダリンの光り輝く顔が露わになる。マーシベルは息を呑む]

マーシベル:
父さん?ど…どういうことだ!

エロルダリン:
ようやく真実が分かったか。そうだ、マーシベル、エロルダリンだ!お前の父だ!スターボーン・アルマダの元提督だ!

マーシベル:
死んだと思っていた!オルグヌム王の手によって!

エロルダリン:
死んだ?ハッ!あのマオマーが殺したのは、老いぼれのアーリエルへの信仰のみ!サマーセットのエルフを縛る欺瞞と虚偽への信仰だ!分からぬか?あの大蛇の真実が最も重要なのだ!サマーセットのあらゆるエルフが学ぶだろう!皆が偉大なる大蛇の魔道師に敬意を払うのだ!

[マーシベルは跳び上がり、器用にエロルダリンの剣を受け流す。最後の一突きで心臓を貫く]

エロルダリン:
クソ!これで終わりか!

[エロルダリンは死ぬ]

マーシベル:
黙れ、父さん。本当に貫かれたのは私の心臓だ!何と言う悲劇!父の敵討ちをするつもりが、父親殺しになってしまった!私はどうしたらいい?

[長い間マーシベルは何も言わずに立ち続けたあと、捨てられた仮面を拾い、おごそかに身に着け、再びキャスタティル船長となる]

キャスタティル船長:
いいや!己を憐れみはしない!マーシベルは死んだ。彼の記憶、そして父の記憶は、壊れた船体と沈むがいい。渦巻く海に誓おう。この仮面をつけるのは1人のエルフのみ。キャスタティル船長だ!アリノールの英雄!シマーリーンの盾!サマーセットの勇敢な剣士!そして、下劣なオルグヌム王の油断なき敵だ!

よく聞くがいい、大蛇の王よ!間もなくお前はエロルダリンと同じ、血塗られた運命に苦しむだろう!キャスタティル船長の輝く剣により、串刺しにされるのだ!

[場の終わり]

キングズヘヴン交易記録King’s Haven Trade Record

地域内のほぼすべての部族と通商協定を結び終えた。海の恵みが内陸の民には最も魅力的だとわかったが、布と道具にも安定した需要がある。交換の対象は彼らが狩りや罠で得る獲物だ。こちらの部族は捕獲も上手だが、地域に生息するウェルワやグリフォンを手なずけることにも熟達している。

それでもこの交易で最も利益があるのは、丘陵地に点在する洞窟から採掘される精製前の鉱物だ。地元民はそれに高い価値をつけず、原鉱を精製した製品と取引することを好むようだ。

キングズヘヴン地域記録King’s Haven Territory Record

基地は東西の道に広がっている。先住の民は建築技術に興味をそそられているようだが、それ以外は居住地に落ち着いている。

* * *
旅人が先住の民の居住地を通過できる道を安全にした。これでコルグラドからシマーリーンまで、かなりの時間を節約できる。

* * *
王は、王冠にまだ忠誠を誓っていない者に、戦略的に重要な土地を委ねたままにしていることを心配している。もっともな心配だ。私たちは部族の残った土地の取得に向けて交渉を開始した。

* * *
東西の道は自然の境界線で簡単に区切られているが、地下通路網の広がりはまだ検証されていない。住民が土地に対する提示に気乗りしないのはこのせいかもしれない。この件で、王は東の岩山を再居住地として認めるという寛大な提案をした。部族の長はこの新しい提案の協議に同意したが、君主の忍耐は無限ではない。

キングズヘヴン偵察記録King’s Haven Scouting Record

丘を東西に抜ける道は、基地を設けて駐留するために絶好の場所となるだろう。北へ丘を抜けるための一番近い道であるだけでなく、地形と洞窟の網目のおかげで非常に守りやすい場所でもある。岩の多い地形にもかかわらずこの地は肥沃であり、自然の小川が丘の高所にある水源からこの一帯に注いでいる。

残念なことに、この地域は少なくとも1つの先住部族に占拠されている。彼らは原始的な農耕社会を営んでおり、野菜を作り、地域内の野生動物を狩っている。彼らはまた、鉱石のために石の加工も行うようだが、加工の技術は初歩的なものだ。

この人々はよそ者に敵対的ではなさそうだ。この部族の人々が捧げ物としてか交易でか、物品を交換するのを観察している。しかし我々の敵となった場合、彼らは攻城戦においてかなりの有利を得るだろう。幸運にも、新鮮な水のための彼らの水源は一つしかなく、直接攻撃の代わりとなる選択肢を提供している。

クラウドレストの秘密の入口Cloudrest Secret Entrance

ばかばかしい。

とにかく、これは強盗だ。普通の市民より、少しはコソコソしないとな。クラウドレストに入るのなら、古い通路を使うがいい。お前のために鍵を開けておこう。安心しろ。

――D

追伸。このメモを落として人に見られるようなへまはするな。アリノールで何があったか忘れるなよ。

グリフォンの飛行The Flight of Gryphons

アルトマーが最初に空を見上げ、雄大なグリフォンが風に乗って飛び上がるのを見た時から、グリフォンを飼いならし、戦いや娯楽のため背中に乗り、世界を遥か下に眺める自由を感じる、という夢が存在してきた。

だがこれは子供の夢であり、人々はすぐにグリフォンが誇り高く凶暴で、いかなる下等な生物にも乗り物として仕えることはないと知った。何世代もの間人々は試したが、グリフォンは決して屈することがなかった。

愚か者は野生のグリフォンを網にかけ、ただの馬のように飼いならそうとした。グリフォンは彼らの愚かさが次の世代に受け継がれるのを防いだ。アルトマーのより賢い部族は島の崖という崖をよじ登り、親がいない間に巣から卵を取ることに成功した。しかし何年もかけたこの方法も、空飛ぶ乗り物を提供するには至らなかった。卵は決して孵らなかったからである。しかしその後の御馳走はそれなりの慰めとなった。卵は王たちに珍味として重宝されたのだ。

島の南の小さなクランは、グリフォンの飼いならされることのない輝きに立ち向かい、頭角を現した。後にサンホールドの王となるウロロームは狩りの最中、見捨てられた巣に卵を1つ見つけた。どうせ孵化することはなかろうと考え、彼は卵をクランへ持ち帰り、宴会に供するため大きな暖炉の火の中に入れた。暖炉と家の古い歌を歌いながら、ウロロームはクランが食べる前に食事へ祝福を与えようとした。だが見よ!暖炉のぬくもりと優しい歌が冷たい卵を蘇らせ、生まれたてのグリフォンが飛び出してきた。火の輝きの中、その羽根は赤々と映えたので、火の鳥かと思った者もいたほどである。ウロロームはこの贈り物を神々に感謝し、まだ燃えている火からグリフォンを取りあげ、セル・ヒンウェと命名した。

セル・ヒンウェがその主人を乗せて戦いへ赴いたのかどうか、伝説は語っていない。だがこの生物、すなわちマオマーの伝説で言う赤い風は、後にサンホールドの有名なグリフォン線の原形となったものである。上級公とグリフォンの二本線は互いを取り囲むように織り込まれ、一方がなければ他方も存在しえないようになっている。グリフォンはまたサンホールドの象徴として受け入れられ、その決して服従せぬ心のシンボルとなった。

ゴージThe Gorge

ボエシアとクラヴィカス・ヴァイルの領域の間には分水嶺が存在し、そこでは需要と飢餓が合一する。僅かな場の痕跡がムンダスの肌にまとわりつき、生き残るため無益に浸食する。これがゴージ、飢饉と絶望の穴である。そこでは凶暴なデイドラが、決して満たされることのない空腹を解消するため、同族すら糧にしながら、あらゆるものを永久にむさぼり続ける。

このような哀れな獣の頂点に君臨するのが、狡猾で力を求める〈強欲〉である。このデイドラが物質界に召喚されれば、その特質を活用してゴージとニルンの間へ自由に入り込み、次の獲物を待ち伏せして、絶えず生命を堪能し続けるだろう。

魔術師は正確な手順さえ理解していれば、同じようにこの領域間を移動できる。ゴージの脅威と向き合う覚悟さえあれば、それは定命の者の世界に感知されない、素晴らしい移動手段となるだろう。

ニルンとオブリビオンの間には障壁が存在するが、そこはどこよりも薄い。その場を物質界に繋ぎ止められているのは、ゴージの一番の欲求が満たされているためである。その欲望とは誰もが必要とする要素、つまり生命、自我、熱意、死すべき運命である。この要素を捧げるためにかがり火を焚き、適切な順番に並べよ。

完成すればアンカーがゴージの喉に繋がり、胃にいつでも入れるようになる。そのアンカーを動かしたいのなら、投げ入れた順番に供物の印を消す。そうすることでアンカーは物質界に戻り、その力をどこでも利用できるようになる。

サイジックThe Psijic Order

現代史の年代記サピアルチ、ヴリシリン 著

現代の出来事とサマーセットの進歩および幸福との関係を理解し、分析する任を追っているサピアルチとして、私は現代という時代の重大な問題について、専門家としての意見を提供するようしばしば求められる。それにより、この問題に導かれた。女王代理アルウィナルウェはサピアルチ大学に対し、サイジックについて知っている全ての情報を宮廷に提供せよとの要請を出した。どうやら、アルケインを学ぶ古き賢者たちが戻ってきて、現在の危機に際して援助を申し出たらしい。

我々は絶対の確信をもって、サイジックがかつてタムリエルで最も偉大な支配者たちの顧問、教師として仕えたことを知っている。我々はまた、約350年前に賢者たちが妨げられず研究するため、アルテウム島に退いたことも知っている。そして島は、文字通り消えたのである。

サイジックとは何か?この古い組織はサマーセット発祥であり、今日われわれが知っているアルケイン魔法の基礎を形成した。歴史上のどこかの時点で、彼らはアルテウム島を占領し、セポラタワーを本拠に定めた。サイジックの功績は数多い。元サイジックの賢者ヴァヌス・ガレリオンによる魔術師ギルドの創設や、秘術の発展も含まれる。秘術、あるいは古き習わしは、問題に対して適切に用いられた場合、宇宙の秘密を解明できると言われてきた。秘術はまた未来を覗くためにも用いられる。彼らがタムリエルの指導者たちに提供した助言は、秘術によるものだった可能性がある。

我々の祖先がサマーセットに居を定めた時、文化は変わり始めた。我々はもはや先人の霊魂を崇拝せず、その代わりそうした霊魂の一部を神格化して崇拝した。長老たちの一部が当時、この流れに反抗した。彼らは自らをサイジック、すなわち古き習わしの守り手と呼んだ。彼らはアルトマー社会の腐敗から離れるため、アルテウムへと退いた。しかし、新たな習わしに対する忌避にもかかわらず、彼らは助言と導きを与えるために戻ってきた。

私の意見を言うなら、サイジックが提供する助力を受け入れるべきだ。この危機の時にあって、秘術の達人を味方に付けられるのは悪い話ではないはずだ。

サイジックの写本:受け渡し場所のリストPsijic Codex: List of Dead Drops

うまく隠されていても
遺物の在りかは分かる
この影のような盗みを止めるには
サマーセットへ行かなくてはならない

悪意を灯す偽りのランターンは
ウェレンキンの入江の岩礁近くで見つかる
サンゴ石の割れ目の中
コーラル・クラブの住むところ

インドリクの心臓は深い水辺の近く
セイ・ターン砦の壁の裏にある
1と3の印のついた木々の裏で
この遺物はすぐに見つかる

筆記を強制する遺物は
用意のできた船の隣にある
アリノール港右端の桟橋を調べろ
銀舌の羽根ペンは近くにある

偉大なる演者の故郷リレンシルで
解ける杖は待っている
穏やかな小川の橋の下に
求める遺物はあるだろう

ラッサフェルドの旅の祠の近くに
背骨を外した頭蓋骨はある
些細な呪いの頭蓋骨は隠れる
大きな窪み近くの崖の縁に

影裂きの刀剣は運ばれた
尖った石と滝によって
アルド・モラの遺跡の東に
この恐ろしげな遺物は隠れる

魂の番人の壷は葬られた
東にも西にもない街に
ラッサフェルドの大邸宅の裏で
待ち受ける遺物は見つかるだろう

非難の箱は見渡す
エボン・スタドモントの泡立つ小川の1つを
壊れたアーチ道を探せば
稀有な呪われた遺物は見つかる

照覧の大学の近くに
別の悲劇の遺物は隠れる
終わりなき巻物は見つかるだろう
通行料を取らない橋の近くで

コルグラド・ウェイスト遺跡の中に
逃れられぬ兜は待っている
ねじれた木の下を見よ
海より水が入り込む場所の近く

サンゴの女王を見渡す
静寂に包まれた小森の中
手放せぬリュートは
王家の孵化場近くに隠れる

北の浜辺の滝近く
岩肌に置かれ
怒りしグリフォンの往来する先に
偽顔の扇は隠れる

ディレニの廃屋と
勇敢だった王の峠との間
岩丘近くの緑葉の下に
甘い夢の枕は見つかるだろう

調和の修道院の目の先
海辺の塔の足元
波をせき止める壁の端に
致命的な予感の鏡は隠れる

シマーリーンの壁境の先
海鳥のさえずりが聞こえるところ
積み重なる苔石の近くに
白黒の絵筆は待っている

知覚時間の砂時計は
東の海の近くで待つ
サンゴの森の隠れたところに
不道徳きわまる遺物は見つかるだろう

ガイザーが噴き出る場所の南東
密輸船の難破船の近くに
待ち受ける失われた恋の靴は
恐ろしい足並みの遺物である

開けたアラクソナルドの北に
大いなる渇きの遺物は運ばれた
常に満ちた聖杯は
羽根の皮の獣の後ろにある

乾燥の胸当ては
サンホールドの巨大な門の左で待つ
白壁が苔石と交わるところに
この遺物は寂しく置かれる

アルテウムの扉のすぐ外
インプの舞い上がる聖堂の南に
待ち受ける砕け散る剣は
不当な戦いの扱いづらい遺物である

サピアルチの推薦状Sapiarch’s Recommendation

廷臣ヴィンディルウィーン様

サピアルチ大学の公式文具がないことを、どうかお許しください。リランドリルからの新しい出荷を待っているところです。その間に、この上質な羊皮紙をお贈りするとともに、スカイリムとエボンハート・パクトの向こう見ずなリガート大使が女王代理アルウィナルウェ陛下にすぐ謁見を賜ることができますよう、心から推挙いたします。

リガートはアリノールの淀んだ世界に新鮮な空気を送り込める人物であると、私は理解しております。女王の布告を受け入れ、訪問者を友好的な微笑みで迎えるべき時です。リガートと名乗り、あらゆる機会にその名を思い出したくなるこの陽気なノルドのいる時こそ、これを始める絶好の機会であると考えます。

知と完全なるものの飽くなき追求の名のもとに。
異国観察のサピアルチ、タンデメン

サピアルチ大学にてOn the College of Sapiarchs

流浪の年代記作家アダンドラ 著

サピアルチ大学。それはリランドリルの西、海から突き出した小さな島にある。リランドリル本土とこの小さな島をつなぐ魔法の出口を操るポータル管理人の許可を得ない限り、一般市民はこの地区に入ることはできない。これは賢者を保護し、深い思想を考え、未知の伝承を研究するための静けさを保つ措置だと言われている。著者は繰り返し、この孤絶した大学地区で何が起きているのかを確かめようとした。私が明らかにしたことを以下に記そう。

だがまずは、サピアルチ自身についての背景を述べておこう。サピアルチとして正式に認定された者は常に223人おり、各人は何らかの専門的研究領域に専念し、その領域を管轄している。例えば、サピアルチを現在指導しているリランドリルのラーナティルはアルケイン学サピアルチを務めており、アルケインの伝承に関して収集された知識を、その卓越した精神の中に詰め込んでいる。また、それぞれのサピアルチには1人か複数の侍者が助手を務めている。侍者は修行中のサピアルチであり、いつの日か自分たちのマスターを引き継ぎ、大学の席を得ることを望んでいる。しかし賢者志望の者にとって、これが唯一の道というわけではない。優秀なハイエルフの学者はいつでも召喚を受け、この名門大学に加入するよう招待を受ける可能性がある。

個人としてのサピアルチは調査の実施と記録によって専門領域を拡張し、講義を行い、自分の研究領域に関する問い合わせがあった場合には助言を与え、論文や本を書いて自分が扱う論題を解説する。集団として、サピアルチ大学の機能はサマーセットの現在の指導者に助言を行い、そして玉座の継承者を訓練することである。また調査や研究によって一般に知らせておくべき新たな情報が解明された場合、彼らは声明を発し、調査を検討した上で、それが学問的価値のある対象に加えられるべきかどうかを判断する。

サピアルチ大学という名で知られている、物理的な地区の話に戻ろう。著者はまだ大学地区を個人的に探索する機会を得られないでいるが、信頼できる筋から得た情報なので、以下のことは大部分において真であり、信用できる可能性が高い。壁に覆われたこの地区は、リランドリルから真西にある小さな島を埋め尽くしている。私に調べられた限り、この地区の中心部分には大蔵書庫や学習室、大学の最上位者のための居室がある。下級のサピアルチが使う寮と学習用の個室があることも分かっている。

しかしサピアルチ大学の真の驚異は、水晶の塔とのつながりを除けば、主要部分の下にある部屋と廊下の巨大な迷路である。「迷宮」として知られるこの区域には複数の機能があるが、その最も名高い用途は、アリノール王家の継承者の試練に関するものである。玉座の継承者は適切な年齢に達するとサピアルチ迷宮へ赴き、3555日の間「アルトマー王の実践と儀式の道」を学び、その上で王位を得る。

謎めいたサピアルチ大学にはさらなる秘密があることを著者は確信しているが、賢者たちがプライバシーを要求し、女王とその密偵がそうした政策を支持している限り、サマーセットの民は大学地区の壁の内側で本当は何が起きているのか、決して知ることがないだろう。

サマーセットにいるカジートへのヒント(バージョン1)Tips for a Khajiit in Summerset V. 1

サマーセットへのカジート特使、ベズミ 著

ハイエルフは特に誇り高き民だ。このことは私たちも知っている。まるで私たちがお尻に巣食うノミでもあるかのように、常に不快そうな眼差しを向けてくる。通常はよく回る口と、さらに素早い爪がこうした侮辱への答えになる。しかし、私たちは今、彼らの地に来ている。ここサマーセットの海辺で、私たちは数でも力でも圧倒されている。適応しなければならない。

この地で、口の巧さは私たちの故郷におけるほど有利にならない。あのハイエルフたちは、腹を抱えて笑うということがない。彼らは心を無視して、頭だけで考える。もちろん愚かなことだけど、ハイエルフの考えは潮の満ち引きを変えられないように変えられない。いつものように、知恵で出し抜くようにしましょう。

歴史から始めましょう。ハイエルフは、カジートが何も知らないと思い込んでいる。この者はあのジェコジートたちの誤りを証明してやる以上の喜びを知らない。彼らは私たちが、最も基本的な知識さえも持たないと考えている。その期待を裏切ってあげましょう。

スラシアの疫病は、今でも血を流し続けているナハテン風邪の傷に比べれば消えつつある傷跡でしかないようだけど、サマーセットのエルフにとって深い重要性を保っている。ベズミが思うに、これは神なる祖先であり、妖術師の神としても知られるシラベインの関与が大きな理由でしょう。その強大さゆえに神へと昇格した魔術師というのは、何というか、ハイエルフの理想じゃない?

スラシアの疫病は自然の病ではなく、スロードとして知られる邪悪な種族の仕業だった。デブでのろまで気持ち悪いスロードは闇の魔術を海にかけ、タムリエルの大部分にこの病気を広めた。病気は素早く、激しく拡散し、街も、都市も、文明も破壊した。しかし大きな悲劇の多くがそうであるように、英雄たちが現れ始めた。シラベインはただそのうちの1人で、ハイエルフに最も尊敬されているだけよ。

シラベインは強大な力を持つアークメイジとして知られていたけれど、その魔法だけで解決したわけじゃない。彼は非常に強力な付呪が施された指輪を持っていたからね。これによって、彼は無数の命を疫病から救うことができた。彼一人の働きにより、この破滅的な疫病にタムリエル全土が飲み込まれるのを免れたと言う者も多い。ベズミはこのアークメイジが尊敬されているのは自分が救った人々への共感よりも、この功績に必要な力によるという感じをよく受けるけど、これについては口を閉ざしておく。

アークメイジ・シラベインはもちろん、これで終わらなかった。彼はコロヴィアのアンヴィル王で、男爵提督ベンドゥ・オロの勢力に加わり、疫病を根源から止めに行った。彼らは協力して、エルフだけでなくコロヴィア人やレッドガード、ブレトン、アルゴニアンまでも含む艦隊で構成された全旗海軍を団結させた。この種族たちは意見の相違を脇に置いて、スロードの故郷であるスラスの襲撃で多くの命を犠牲にした。そして驚くべきことに、多くの損失を出しながらも、彼らは勝利した。彼らは珊瑚の王国を沈め、スロードたちを深海の底という、いるべき場所に追い落とした。

この物語が特に有用だと考える理由がいくつかある。すでに述べたけれど、私たちはカジートが同盟者たちについて無知であるという誤った考えに、すぐに終止符を打たなければならない。もちろん、私はハイエルフの歴史と文化についてさらにいくつかの記事を出版したいと考えている。でも理由はそれだけじゃない。ベズミがこの歴史に関する情報を収集することを選んだのは、これが同盟者の重要性を示しているからよ。つまり私たちの重要性ね。

各種族が戦いに持ち寄った軍事力がなければ、全旗海軍の勝利は不可能だったでしょう。確かにシラベインは便利な指輪を持つ、強大な魔術師だった。でもたった一人でこの戦いに勝てたはずはない。この勝利を達成するために、彼は他の多くの者たちに頼らなければならなかった。

あなたが話し始めた途端、ハイエルフが鼻であしらってきた時。あなたが歩いて通り過ぎようとすると、母親が子供をそばに引き寄せた時。ベズミが言ったことを忘れないように。万能のサマーセットが友人を必要としたのはこれが最初じゃないことを思い出させてやりなさい。私たちが彼らを必要としているのと同じくらい、彼らにも私たちが必要だということを思い出させるの。

サマーセットにいるカジートへのヒント(バージョン2)Tips for a Khajiit in Summerset V. 2

サマーセットへのカジート特使、ベズミ 著

この者がハイエルフの誇りと虚栄心について話す必要はない。誰でも知っているしょう?彼らの目に宿る軽蔑心は、偽造硬貨のように明るく輝く。彼らの見下す態度は、ハチミツをかけた毒のように舌からにじみ出る。我らが背の高い同盟者は、カジートのことをあまりにも低く見ている。誤りを証明する時は今よ。彼らの土俵で出し抜いてやりましょう。

このシリーズの1巻を読んだなら、ハイエルフが自分たちの歴史をいかに重視しているかはもう分かっているはずね。それは分かっている。でもこの誇りさえ、彼らが家の過去に対して抱く虚栄心には及ばない。大半の者は自分の祖先の名前、職業、偉大な点について、何世紀にも遡る知識を持っている。保証するけど、ハイエルフはそういうことを熱心に教えようとしてくるわよ。

ハイエルフにとって家は全て。でもそれを感情的な意味で理解してはいけない。家は彼ら自身を縛る鎖であり、決して変わらない肩書きなの。地位は偉業によってのみ上がる。彼らは日々、自分が栄光に包まれる瞬間を求めてやまない。多くの者はアルケインの技によって自分の価値を証明する道を選ぶ。彼らの特性として、強い魔力を持っていることが多いからよ。芸術に身を投じる者もいる。絵画の傑作を描き、栄光に満ちた音楽を作って自分たちの地位を上げようとする。

そう、ハイエルフは自分の目の前に高い壁を作るの。それを登れというわけよ!でも道のりは多くの場合険しい。ここサマーセットの芸術家たちほど互いに敵意を抱く人々を、私は見たことがない。これまでに出会った盗賊や暗殺者にさえ、敵に対してもっと節度のある者がいたほどよ!魔術師はあらゆる者を見下しているけど、同僚の力をすぐに妬む。同族の間でさえ、ハイエルフは上から見下ろそうとするのよ。

彼らはあなたも、あなたの家も気にしない。彼らにとって、私たちにはたった一つの肩書きしかない。それはカジート。だから私たちは下等で、利用される存在でしかない。それは知っているでしょう。ハイエルフの前で価値を高めてみせるのは簡単じゃないわ。何度も、自分の価値を証明しなければならない。最も勤勉な者にとってさえ疲れる仕事だけど、やるしかないわ。

ハイエルフは技で挑まれるとすぐに受けることをベズミは発見したわ。自分をより優れた存在として示すチャンスをぶら下げてやれば、彼らはいつでも飛びついてくる。でも、狡猾さで得た勝利にもそれなりの名誉があることを私たちは知っている。いつでも自分の有利になるように立ち回りなさい。

ハイエルフに挑戦して勝つのはいつも…いいことばかりじゃないわ。誇りを傷つけられて、再戦を挑んでくる者もいる。強烈な癇癪を起こして、いんちきをしたに決まってると宣言し、さっさと行ってしまう者もいる。でも、頭を下げて敗北を認める、尊敬すべき者たちもいる。そうした者のうちには、敬意の小さな火が灯る。その火を大きくしましょう。

この者の助言とお墨付きがあっても、全てのハイエルフの歓心を買えるわけではない。自分の意見以外には目も耳も貸さない者も多くいる。そういう連中に心を挫かれないようにね。彼らに勝たせてはだめ。毒と無知を吐き出させるようにしなさい。変わるべきなのは私たちだけど、よりよいものに変わらなければ。より偉大なものに。

サマーセットの童謡Nursery Rhymes of Summerset

照覧の大学の詩学教授クイリダンによって収集され、書き写された韻文。

継承者の韻文:
囁き言い合い
王冠のぐらつきを見たまえ
盲目の女王は進む
猫の爪でひっかき合い
勇敢な反逆者を捕らえ
笑って皆を吊るす!

船と骨:
不毛な10と50年、ポケットの中は石ばかり
洞窟、畑も汚染され、残されたのは骨ばかり
船長たちが旗を掲げ、浮かべた船は1000ばかり
ナメクジの民の島沈め、浮かんだスロード刺すばかり!

爪と根の歌:
樹液と鋭い歯を集め
髭、爪、月の花輪も集め
トパルブルートとエルデンルート、ナイフと剣を鞘から抜いて
素早く彼らの綱を切り、泡吹き吠える様を見よ
ドレイクとライオンに食わせてやれ、それが奴らの使い道!

サマーセットの誘いVisit Summerset

アイレン女王はハイエルフ代々の故郷を万人、訪問者や商人、移民に等しく開かれた地にするという、長く続く布告を出した!

黄金のアルトマーは優美と知性で名高い。あなたも彼らの先祖代々の故郷の恩恵に浴することができるようになった。冒険に乗り出そう!名声と栄光を手に入れよう!タムリエルの他のどこにもない、美と魔法の国を探索しよう!新参者は大歓迎される!

かの地への船は主要都市の港から出ている。

サマーセット諸島:訪問者への案内Summerset Isles: A Visitor’s Guide

調査官ルニルスティール 著

ごきげんよう、旅の方々。みなさんは今や、アルトマーの地に足を踏みいれる恵まれた大陸民の一員となった。蒼き分水嶺の心地よい空気と鮮やかな色は、想像したとおりだったろうか?もし諸君が我々の船で渡る贅沢を堪能したのであれば、きっとみなさんの人生で最も円滑な船旅だったろう。しかしそれはみなさんがこの島への訪問で経験するもてなしとくつろぎのうち、最初のものにすぎないと思っていただきたい。岬の冷たい水を後ろに見ながら、我らが太陽のぬくもりと、甘い花の香りの出迎えを受けてほしい。

どうかバルケルガードの活気に怖気づかないでほしい。街の人々は品物を運んでくる大陸民の相手をするのに慣れている。彼らは船乗りの相手をする忍耐心を備えているのだから、みなさんのような礼儀正しい客人に気分を害することなどない。ここの宿の豪勢な部屋を利用し、タムリエルでは見つからない地元の食材を味わってほしい。アルトマーのもてなしは、我々のあらゆる娯楽がそうであるように、一つの芸術であり、数千年にもわたって磨き上げられてきたものなのだ。

あまりに豊かな体験に圧倒されてしまうかもしれないが、安心してほしい。この島は調和の地であり、その自然な平穏に導かれるままにしておけば、自らの均衡を見出すことができるだろう。サピアルチは最も高い木から、最も短いガラスの破片に至るまで、全ての要素が完璧なバランスを保つように気を配っている。

あまり遠くへ行きすぎて日常の静けさを乱さないことが望ましいが、バルケルガードの北へ向かえばサウスビーコン灯台がある。我らが王立海軍を夜間、安全に導いている魅力的な建造物だ。灯台が建っている丘は、聖なる島サマーセットの素敵な眺めを提供してくれる。特に天気のいい日は、シマーリーンの街が忙しく人と物をオーリドンとの間に行きかわせている姿を見られるだろう。灯台に登ってよく見たいと思うかもしれないが、係員の迷惑にはならないようにしてもらいたい。

アルトマー全体を代表して、我々の文化に参加することで新しい発見を得られることを願っている。バルケルガードで過ごす時間が、一生の間残り続ける思い出をもたらしてくれることを願う。滞在が5日を越える場合は、必ず当局の承認を受けなければならないことを忘れないように。でないと、予期せぬ形で訪問を終えることになってしまうかもしれない。

どうぞタムリエルへの帰り道はお気をつけて!

[神聖執行局より承認を受けて配布しています]

シースロードの神話The Myth of the Sea Sloads

海の敵意のサピアルチ、ラーヴァリオン 著

愛すべき我々の島を取り巻く海は食物や資源を供給してくれる上に、迅速な輸送を可能にし、サマーセットとそれ以外の世界の境界にもなっている。だが残念ながら、海から来るものがすべて利益になると考えられているわけではなく、海には島にとって大きな危険を及ぼす脅威も多く存在する。サピアルチ大学に在籍する我々は、危険度が高いと見なしたものに対して、学問領域を越えて研究に取り組み、防衛手段を考案してきた。海の敵意部門の職位に私があるのはそのためだ。

海に由来する脅威は、自然現象から敵の王国に至るまで多岐にわたる。自然は水晶の塔がもたらす魔法の守護をもってしても、破壊的な嵐、砕ける波、洪水がサマーセットに与える被害を常に止められないことを島に知らしめる。敵に関する限り、王立海軍が航路の障害を可能な限り除去し、対立勢力の軍事力を抑止する役割を果たしている。だがこれには例外が残っている。マオマー、すなわちシーエルフは大胆にも定期的に、哨戒をかいくぐって沿岸の集落を襲撃している。

恐らく、最も恐ろしい潜在的脅威はスロードだ。南西のアビシアン海からやって来るこの不快な生物、スラスの珊瑚の王国の住人は、以前よりサマーセットを占領しようという野心が薄れたとはいえ、近年に至るまで我々の所有物の略奪と襲撃を続けている。水陸両生のナメクジのような生物は魔法との親和性を持っているが、有益な魔法よりむしろ闇の魔法に引きつけられているようだ。彼らは死霊術や疫病など、死と破壊の手段を使いこなす。

最近島中で聞かれる噂話によれば、スロードの変異種シースロードが戻って来て、サマーセットを苦しめているそうだ。この数百年間名前も聞かれなかったが、その間シースロードはウルヴォルクスという、真珠海のどこかにある海底王国を支配していた。そのような生物が島に入りこんでいる可能性があるだけで、懸念と最大限の警戒を引き起こしている。この目的のため、私は広大な蔵書庫にある古い学術書や古代の書物を参照し、得られる限りの情報をかき集めた。残念ながら、あまり多くないと言わざるを得ない。シースロードは数多くの近縁種よりも閉鎖的で、謎が多い。

明らかにできたことは、我々はシースロードの脅威を過小評価してはならないということだ。スラスのスロードが常としていたように小さな王国を打ち立てるのではなく、シースロードは特定の目的の元に協調する小集団を形成する。その後は関心や必要性に応じて、分裂、変容、再構築される。シースロードは他のスロードと同様、死霊術に大きな関心を抱いている一方で、錬金術、影魔法、精神魔法など、他の領域の技も披露している。だが彼らの野心と力にもかかわらず、記録上シースロードは今にも絶滅しようとしているとある。前任者のウィナウェンは、有望な著作「ウルヴォルクスの悪党」の中で、多くのことを書いていた。シースロードは数百年すれば自然と姿を消すだろうというのが、彼女の知識に基づいた意見だった。そのような出来事は、今すぐ起こりそうにない。

サマーセットにおけるシースロードの活動が確認されるまで、注意して海を監視し続けた方がよいと思われる。シースロード自体に加え、この不快で敵対的な生物は、すべての種類の海の怪物を利用することで知られている。この不穏な時代に、海からの獣による攻撃は、島に最も起きてほしくない事態だ。

シラベインの物語The Tale of Syrabane

(楽曲:壮大にして危険なるもの)

寄り集まりて聞け
大魔術師シラベインの物語を
その慈悲と力によって
彼はスラシアの疫病を止めた

目前の疫病を止めるための
唯一の手段、それは戦
シラベインは助けを求め呼んだ
あまねく地に向かって

合唱
おおシラベイン、おおシラベイン
神なる運命のエルフよ
おおシラベイン、おおシラベイン
最も新しき八大神

人間もエルフも呼びかけに応えた
負けるはずはないとわかっていた
皆が集い、力を合わせた
全旗海軍は出航した

ベンドゥ・オロを味方につけ
剣と呪文を投げつけて
シラベインは波を押し返し
珊瑚の王国は潰えた

合唱

善きエルフよ、忘れてはならぬ
大魔術師シラベインを
闇の時代がやってきた時
彼が助けを呼びかけたことを

合唱

スロードに関するさらなるメモFurther Notes on the Sload

発明家テレンジャー 著

スロードとマオマー:スロードは他の定命の種を敵と認識しているが、スロードとマオマーの間に外交的な繋がりがあることが確認されている。ナメクジとシーエルフが衝突を起こすのは日常茶飯事である。驚きはない。そもそもシーエルフとスロードは現在、他の種族全てと戦争状態にあるのだ。マオマーの不満の原因は、沼地に覆われた薄暗い群島ピャンドニアだと思われる。酷い悪臭がするあの島で、彼らは身動きが取れなくなっている。スロードが他の種族を敵視している理由については、明らかになっていない。

珊瑚の塔:珊瑚の塔は全旗海軍のスラス侵攻により崩落してしまったため、この塔については今ある知識に基づいて推測するしかない。我々にしてみれば正道とは言いがたいがが、スロードは非常に有能な魔術師の集団であり、珊瑚の塔には神秘の力を集めて投射する力があったとされている。私は塔の伝説の専門家ではない。興味があるのはもっと現実的なものだが、神話歴史学者たちによるこの主張は、いわゆるニルンの塔の目的と実践に(ほとんど)一致するものである。珊瑚の塔はサマーセットにある法の水晶のような「本物」の塔だったのだろうか?それともドゥームスパーアーのような、不完全な模造品だったのだろうか?我々の知識で、その答えは見つけられないだろう。

スロード石鹸:とにかく推測はもうたくさんだ。たまには、自信を持って説明できるものも取り上げてみよう。今回はスロード石鹸だ!スロード石鹸の起源についは多くの誤解があり、それを洗い流す機会を与えてくれたことを嬉しく思う。まず、スロードの生物学的変質について考えてみよう。彼らはスラシアの珊瑚島で生まれる。ベンドゥ・オロ提督は彼らについて「不快で形を持たない小さな幼虫」と説明している。優柔不断な親に見捨てられた幼虫は海までなんとかして這っていき、「ポリウィグル」と呼ばれる水生の疑似頭足類に変態する。成体のスロードは肥満体であるため、珊瑚島の浅瀬から動くことはほとんどなく、そこでポリウィグルと一緒にゴロゴロしている。鈍すぎて親たちの偽足を避けられなかったポリウィグルは、そこで捕らえられて収穫される。これにより弱者は排除され、スロード石鹸の原料となる。

捕まったポリウィグルは常時沸騰している大釜に入れられ、徐々に溶解していき粘液性のスープとなる。このスープにスロード秘伝の物質を加えて錬金的な混合物を精製したら、金型に流し込んで冷えるまで待つ。固まったらこの塊を取り出して、ハグフィッシュの内臓で包み込んで保管する。

この石鹸はスロードの黒魔術的儀式になくてはならないものだと考えられている。黒魔術に詳しいわけではないが、自らの子孫を原料とする乳化試薬に不死者の魔力を増強する力があってもおかしくはない。スロード石鹸はスラス以外で滅多にお目にかかれないが、あったとしても法外な価格で売られている。錬金術師たちはそれが持つ特殊な能力を活用して、敏捷の薬や最も貴重な人格変異の薬を作り出す。錬金術サピアルチの赤きアリアノラによれば、スロード石鹸はスラス以外の土地でまだしっかりと分析されたことがないらしい、つまり未知の錬金術的性質がまだたくさん含まれている可能性もあるということだ。また、この石鹸は非常に優秀な洗浄能力を持っており、奥深くまで優しく浄化してくれるため、これを使うと肌が若返って生まれ変わったような気分になれる。

セランの日記Celan’s Journal

こんな場所なんか消えてしまえ!父さんはグラーウッドを出発した時、ここサマーセットで富と祝福が見つかると言った。ハッ!横柄な足長どもから、犬扱いされるようになっただけだ。

ブドウ園の労働は意味がない。貰える金はごくわずかだ。これでは生活できない。昔のように狩りをしても、鹿は怖がりだし痩せている。ここの獣は呪われているんだ。収穫は1口分の肉と、もろすぎて道具にならない骨だ。

ファリルがいなかったら、ここには耐えられないだろう。イフレに誓って、あれほどの美人は見たことがない。バターチェストナッツのような丸い目、白鳥の首、狼の歯のように鋭い耳。ここに記しておこう。僕はあの少女と結婚する。彼女の気が引けるなら、ここにも価値はある。

* * *

ハリモリオンの獣め!昨夜ファリルが泣いてやってきた。あの好色な男に尻をつかまれ、二又の舌を口に入れられるところだったって!僕は宣言する。あの雑種の頭は、年の瀬までにシチューの具にしてやる。

* * *

信じられない。ズェンに祈りが届いたんだ。狩りに出ると、緑の亡霊に出くわした!本物の緑の亡霊だ。昔ハイエルフが逮捕した偽者じゃない。革、弓、矢筒の一式を渡されて、同じやり方で殺せと言われた。嘘みたいだが本当のことだ。僕は緑の亡霊!復讐を果たす!

* * *

ハリモリオンを殺せば心が晴れると思ってた。ファリルの傷を癒し、正義をもたらすと思った。でも今は…本当に悩んでいる。泥の中で苦しむ奴を見下ろすと、胸がズシリと重くなった。息もまともに吸えなかった。やめとけばよかった。母さんが知ったらどう思うだろう?許しを乞うために頭を使おう。赤の聖堂で許しを乞えるかもしれない。今から向かおう。

セレンウェの日記Selenwe’s Journal

シラベインの指輪にかけて、私は一体何をしてしまったの?

私の最愛の妹。日曜の午後、お花畑で私を追いかけていたおさげ髪の小さな妖精。マキバドリの歌声を持った心優しい少女が、死霊術師に魅了されるなんて。とても信じられない。私たちが何をしたというの?何かの霊魂を冒涜でもしたの?あの時私がいたら。留まっていれば。全部私のせいだわ。

何もしないわけにはいかなかった。死霊術の実践は許されざる罪。私はあの子に悔い改め、ディレニ一族の慈悲を乞うようにと懇願した。でもあの子は心を変えなかった。あの子は物憂げな生気を欠いた目で、私を見つめて言った。「彼らに私は殺せない。私は復活する、何度でも、永遠に」。あの優しさと穏やかな純粋さは消えてしまった。あの瞬間、私にはもうほとんどあの子と分からなかった。

だから私は儀式を行った。あの子を石棺に閉じ込め、緊縛の言葉を叫び、聖なる炎を燃やした。それから私は墓のそばで泣きながら、あの子の怒りと嘆きの声を聞き、最後にあの子は静かになった。

ただラウリエルの霊魂がここアクロポリスで安らかに眠れることを願う。あの子はここを去れない。決して去れない。アーリエルよ、私をお許しください。私自身は決して許すことができないでしょう。決して。

セレンウェへの手紙Letter to Selenwe

セレンウェへ

元気かしら。あなたの疑問に答えると、残念だけどラウリエルは良くなっていない。あの子はあなたをひどく恋しがっているけど、そのことはほとんど話さない。美しい声を聞きたくてたまらない!あの子が毎朝歌っていた、秋の頌歌を覚えている?今でも時々口ずさむのが聞こえるけど、陰気な調子の歌になっている。

あの子には新しい友達ができたの。サンホールドから来た発明家よ。実を言うと、あの男を見ていると不安になる。滅多に口をきかないし、すごく変な服を着ている。それに臭いがあるのよ。彼の行くところはどこでも、鼻を突くようなカビ臭さがするの。二人は何時間も地下墓地で過ごし、呪文を鍛えている。どうしてそんな陰気な場所で訓練するのかあの子に聞いたけど、答えようとしないの。

何日か前、意を決してラウリエルにあの浮浪者と会うのを禁止しようとしたけど、やっぱりやめたの。毎日あの子は私から離れていくような気がする。あの新しい友達を奪ったら、完全に背を向けてしまうかもしれない。

あなたはあの子を誰よりもよく知っている。どうすればいいの?不安でいっぱいよ。返事を待っています。

あなたの母
オハディル

ソーン・ブラックスタッフに関してRegarding Thorn Blackstaff

ライトマスター・イアケシス

また1人、注目に値する候補者がいます。ジョサジェーから聞いたところによると、一風変わった人物だそうですが、我々にとって大きな価値があるかもしれません。

その候補者とはソーン・ブラックスタッフ。アルトマーであり、オータメルドと思われます。名前はおそらくサマーセットから追放された後に自分で選んだものでしょうが、これはあくまで推測です。ドミニオンとの間にどういう事情があるのかはまだ明らかにできていませんが、元の親類との間にはほとんど愛情もないはずです。彼はダガーフォール・カバナントの旗の下で、無慈悲な戦いをしました。

通常なら、このような根深い敵意を持つ者は考慮の対象外とすべきでしょうが、ジョサジェーが占って私に伝えたところによれば、この男は高貴で寛大です。しばしば導きを必要とする者たちの師として、また守護者として活動しています。気性に合っているから、という以外の理由もないようです。しかし、その助言は経験の浅い者にのみ重宝されているわけではありません。魔術師ギルドのアークメイジとテルヴァンニ家の魔術師王の両人から、非常に重大な事柄について何度も相談を受けているようです。

ブラックスタッフはサイジックになる大きな可能性を秘めていると思います。あのエルフの徳は欠点を上回るのではないでしょうか。承認いただければ、監視を続けるよう勧めます。

ロアマスター・セララス

ターナミルへの手紙Letter to Tarnamir

セルヴァル・ターナミルへ

ウッドエルフの美しい召使ファリルと私との関係について、ウッドエルフのコミュニティから正式な抗議を受け取ったと聞いています。信じてください。この一件は不幸な誤解であり、教育の欠如と生来の粗野な偏見のため、大げさになったのです。私はあのウッドエルフに相応しい敬意を持って接していると、断言します。
ファリルに手を出したことはありません。

ただ、私には客人を心より温かく迎える義務があります。そこで消えぬ疑念に対処するため、ファリルとの契約を解除しました。好意的な推薦状を持たせ、地元の競合相手(彼らもあなたの借家人でしょう)へ送りました。労働環境は良好であり、この結果にとても満足しているようです。

さらなる好意の印として、新しいウッドエルフの隣人に贈り物をするつもりです。

ご存知のとおり、私たちの仕事は、地域の同業者の固い結束と愛が欠かせません。この対応に不手際がないことを祈ります。

調和を求めて

ハリモリオン

ツォクソルザの手紙Tsoxolza’s Letter

ジーマト

サマーセットは使者が言っているような素晴らしい楽園ではない。女王の布告は非常に魅力的だが、ハイエルフはよそ者たちに何も望んでいない。彼らにとって新参者はグアルのノミ以下の存在なのだ。船から下りるとすぐに、私の「社会規則に対する理解力」を確かめるため、修道院の司祭たちに「文化的評価」をされることになった。しかし、結局一度も質問されることはなかった。

彼らは修道院の奥にある独房に私を閉じ込めた。この島に来た他の新参者たちもそこにいた。私は全てのことに納得できなかった、まるで間違って冷たい流れに入り込んでしまったお湯のような気分だ。デイドラの祈りと共に感謝を捧げる、モンクの声が聞こえてきた、もはや脱出する以外に方法はない。彼らが盗賊ギルドに所属していたかどうかは定かではないが、私はお前に認められないだろう友人たちから学んだ技術を活用して、修道院から脱出した。

朝になったらアリノールに向かう。できるならマークマイアまで無事に辿り着きたい。だがとにかく、今はここ以外ならどこでもいい。

ツォクソルザ

ティンドリアの必要画材リストTindoria’s List of Needed Supplies

希少な染料:サマーセットで最も豪華な緑藍の色は、ハエナミルの貴重な染料が唯一の原料だけど、簡単には手放してくれない。この辛辣な世捨て人は、印をつけた場所の小屋で見つかる。染料は、ヨクダのブルーティーと交換すればいい。

ローチの死骸:ブロドランのローチの死骸を粉状にすると、銀がかった灰色になる。この色ほど、岩肌の景色に適したものはない。ブロドランは、印をつけた場所の農園で探すといい。支払いは済んでいるから、私の名を告げれば材料を渡してくれるはず。

オーリアリス:この花は、古風で趣のある海辺の庭園に咲いている。その場所に印をつけた。この花を使うと、最も鮮やかなオレンジの色が出る。明るい太陽には最適よ!花を摘むだけだから、他よりも簡単に入手できるはずよ。

テロムレ隊長へFor Captain Telomure

テロムレ隊長

もしあなたがこれを読んでいるなら、愚かにも追ってきたのでしょう。

やめてください。

司法高官アヴァナイレは単独じゃありません。魔術師が彼女を待っていました。部隊全員で協力しても、生き延びられないかもしれません。ですが女王と国のため、やってみます。

あなたには生き残って報告する義務があります。彼女を逃がしちゃいけません。目的を果たさせてはダメなんです。裏切り者の汚名を広めてください。当然の報いです。

リーウェル

ナイトランナー船長の日記Night Runner Captain’s Journal

ヌガルザと名乗るシースロードは、吐き気のする怪物だ!我々の洞窟に奴が初めて出現した時、私はナイトランナーで最高の襲撃者を派遣して追い払おうとした。だが考えられないことが起こった。あのでかいナメクジに虐殺されたのだ!しかもあの怪物はそれだけで満足しなかった。奴は死霊術師の一種だ!襲撃者たちを蘇らせ、私に敵対させたのだ!

* * *
さらに2つの襲撃団がシースロードと不死の群れにやられた。なお悪いことに、今や彼らも不死の群れの一部になっている!この状況を考え直さなければ。

* * *
私はシースロードに取引を持ち掛け、驚いたことに怪物はそれを受け入れた。我々は密輸のためにこれからも入江を使える。その代わり、私は死霊術の実験のために捕虜をヌガルザに提供すればいい。気味が悪いが、こんな取引でももう一つの道よりはマシだ。

* * *
洞窟をうろつきまわっていたオークを捕らえた。ヌガルザの準備ができるまでの間、襲撃者の1人に彼を縛りあげさせた。幸運なことに、この哀れな奴は完全に酔いつぶれていた。おそらく自分がどんな目にあうのか、何も分かるまい。

* * *
あるハイエルフが交渉を求めてきた。彼女はヌガルザの代理だと主張したが、ヌガルザはアビサルの徒党というものに加わっているらしい。シースロードの集団が邪悪な目的のために協力しているというのは、胸が悪くなる。彼女はヌガルザの意志に従い、徒党のために働くという提案を私にしてきた。彼女が言うには、ヌガルザの仲間の1人が現在南で活動しており、サマーセットを沈没させ、あの地を再びスロードの支配下に置く計画を練っているらしい。

白状するが、最初にこの言葉を聞いた時、最初の反応はこのハイエルフのはらわたを引き抜いて、神聖執行局に警告を伝えることだった。結局、我々の事業はサマーセットが稼働していなければ成り立たないのだ。しかし私は何とか怒りと吐き気を抑え、提案については考慮すると約束した。徒党の契約を受け入れるまで、あまり長く考えないように彼女は警告した。

ブラック・マーシュか、どこか遠い場所に向けて出航するには手遅れだろうか。

ナリアラのメモ、2日目Naliara’s Notes, Day 2

始めたばかりだけど、もう大きな手掛かりが見つかった。メッツェの知り合いの大学の後援者のコテージに立ち寄り、メッツェが公演の話をすると、後援者がコレクションの1つである奇妙なモニュメントを見せてくれた。

それはキングズヘヴン・パスにあった、風化したサンゴのモノリスだった、腰程の高さがあり、エルフ文字が刻まれていた。彼は遠い昔のエルフたちが使っていた道標だと言った。

それを見たメッツェは口から泡を噴きそうになっていた。エルフの文字で「ゴブリン」と書かれていたのがはっきりと見えたのだ。私も同じぐらい興奮した。良い前兆に思える。

メッツェは後援者が提供してくれたベッドの、上等でダウンが入っているマットが固すぎるからもう辞めたいと不満を漏らしていた。岩山でどうするつもりなんだろう?

ナリアラのメモ、8日目Naliara’s Notes, Day 8

キングズヘヴン・パスの丘を越えている間、私たちは隠者から調査に向いていそうな場所を教えてもらった。残念ながら、どれも互いに大きく離れた場所にある。

メッツェは相変わらずゴブリンの縄張りに接近を試みている。彼はそこに行けば未知の発見があると確信しているようだ。それよりも胸を槍で突き刺される可能性のほうが高そうだけど、彼はいまだに楽観視している。

この任務に志願したのが、私だけだった理由が徐々にわかってきた。

ナリアラのメモ、13日目Naliara’s Notes, Day 13

私たちが訪れた場所はどこも、キングズヘヴン・パスの地下に巨大な建造物があることを示唆していた。山の岩もその根拠になった。私たちは今、そこを目指している。

この考察が正しければ、考古学的に非常に重要な意味を持つ可能性がある。この仕事に就いたのはやはり正解だった!

またメッツェがケイルンベリーを食べていた。彼はアレルギーではないと言っているが、発疹はまだ消えず、体臭もどんどん酷くなっている。とにかく目的に集中しよう…

ナリアラのメモ、18日目Naliara’s Notes, Day 18

クソ。ゴブリンの領土の奥深くまで入り込んだが、遺跡が隠されていると思われる場所までまだ大変な距離がある。
メッツェは前進すべきだと言っている、だが危険すぎる。

見られているような気がする。ゴブリンの斥候が潜んでいるようなことはないと思うが、メッツェは考えてもいないようだ。とにかく、私に何かあったら彼の責任だ。少なくとも彼のあの大きな声なら、ゲートに向かうまでいい囮になってくれるはずだ。

ノラシーへの手紙Letter to Norasea

ノラシーへ

辛い知らせを聞いて胸がはりさけそうだ。すぐにリランドリルへ来てくれ!サピアルチは十分な資源を持っている。約束する、この病気は必ず治療する。何を犠牲にしても。

ある人と知り合っている。名をエミールといって、治癒や回復のことに関して類稀なる才能を持っている人だ。3人で君の健康を取り戻す方法を見つけよう。絶対にだ。

頼む、急いでくれ!それから、同じ病気に悩まされている人がいたら一緒に連れてきてくれ。

君の友
ハラダン

ハラダンの研究日誌Haladan’s Research Journal

記録1

ようやく親しい友人のノラシーがリランドリルに到着した。エミールと私はすぐさま彼女を連れ去った。急いでソルトブリーズ洞窟の奥深くに研究室を作った。好奇の目から逃れるために。私はサピアルチの仲間が彼女の状況に気づくことを恐れた。彼らは手遅れになるまで、彼女をただ隔離するだけだろう。

彼女は友人を伴っていた。ゲーウェーデルという痩せたエルフだ。私にはこの女性がもう手遅れに見えた。彼女は常にうろうろしていた。頻繁につぶやきながら。既に、色濃く固い染みが彼女の胸と腕に現れていた。病気の進行を遅らせるように努力しよう。だが、最優先はノラシーのままだ。彼女は、私に友人がいなかったとき、唯一の友でいてくれた人だ。そして今、ようやく恩返しする機会が訪れた。手遅れでなければいいが。

記録2

エミールと私はゲーウェーデルの石化が進まないように、強力な消毒薬を作り出した。だが、これはせいぜい進行を抑えるだけだ。日を追うごとに彼女の振る舞いが常軌を逸している。ノラシーには抗議されたが、彼女を拘束用の部屋に隔離しなければならなかった。

我々の治療薬がノラシーに効果をもたらすことはなかったようだ。エミールと私は協力して昼夜作業をした。正直に言って、エミールがいなかったら私に何ができただろう?長い夜と続く失敗を耐えられたのは、彼の愛と配慮があったからだ。

記録3

出来たと思う。エミールと私はニルンルートの凝縮物に数々の少量の試薬を組み合わせ、高度に集束した石型の霊薬を作り出した。皮膚の下に蓄積している角化の塊を粉砕すれば、病気の進行を止められるかもしれないと私たちは考えた。だが逆に、どうやら私たちは塊を小さな欠片に砕いて、拡散を早めてしまっただけのようだった。もはや万策尽きてしまった。手遅れなのかもしれない。

記録4

エミールがあることを考えた。これを書き記すことはためらわれる。角化の成長に対する試験の結果は、塊が血管の伝送によって拡散することを示していた。病気は血液の成分を皮膚のすぐ下の血管内に蓄積する固い粒に変質させ、その後石灰化し、どんどん成長する。血だ。病気は血の中にある。

決定的な知見に到達すると、エミールは解決策が存在する可能性を示唆した。ポルフィリン・ヘモフィリア。吸血症と言う名が有名だろう。私はその考えに愕然とした。だが彼の理論を信用する。私たちの理解では、吸血症は血液の成分を大幅に変化させる。理論上、この再構成は角化の成長を不可能にするはずだ。ノラシーの視力を回復させることはできないだろうが、病気の進行は十分に止められる。考えなければ。

記録5

長期間検討した後、エミールの計画を進めることを決断した。ノラシーに見通しについて詳しく話すと、彼女はそれに同意した。そう、これは単に吸血病の感染を錬金術的に再現するだけのことだ。サピアルチは決してこのようなやり方を認めないだろう。だが私たちは治療するとノラシーに約束した。時に伝統は、恐るべき革新に道を譲らなければならない。

記録6

無事に工程を終えた。ノラシーは吸血症の取り込みに対して予想通りの反応をした。私たちに分かる範囲では、治療は成功だった。角化の成長の拡大は認められなかった。そして、彼女の精神は完全に回復したようだ。エミールに、ゲーウェーデルに対しても同じ治療を施さなければならないと告げた。それに対して、彼は大きな懸念を抱いているようだ。だが、吸血鬼が危険だからと言ってこのような治療を否定はできない。今晩彼女に注射をするつもりだ。マグナスよ、どうか力を。

ハラダンへの手紙Letter to Haladan

ハラダンへ

またあなたに手紙を書けてすごく嬉しい。長い間連絡が取れなくてごめんなさい。アイレン女王が布告を発表した時、貿易省が厳しい日程を設定したおかげで、個人的な用事に使える時間がまるでなかった。先月はほとんど海で過ごしたわ。

で、そのことなんだけど。いくつか嫌なことをお知らせしないといけない。先日、遠くの島で数日間足止めを食っていたの。航海士の重大な過失のおかげでね。その呪われた島に足を踏み入れた者は皆(私も含めて)恐ろしい病気にかかった。肌が石になって、錯乱をもたらす致命的な病気にね。

今も関節が固くなっているし、頭はいつもぼんやりしてる。この病気に体と心がやられる前に、最後にもう一度あなたに会いたい。会ってくれる?月末までにリランドリルに到着できるわ。

早めにお返事をください。

心を込めて
ノラシー

フォルテ団長の研究Grand Maestro Forte’s Research

エボン・スタドモントの中で発見された巨大な石は、不明な言語で覆い尽くされている。その古代の言語を翻訳する方法はある程度考案できたが、石に刻まれた文を保存する以外の仕事はほとんど進まない。

* * *

この言語は間違いなく、これまでタムリエルで、それどころかニルン全体で研究してきたものより古い。デイドラと何らかの関係があるような気がする。あり得ないような話だが、これはオブリビオンの言語よりも古いかもしれない。

* * *

石にある一部の節を翻訳できたが、何を意味しているのかはまったく分からない。

「カラスが導いてくれる
道に迷った時、
そびえ立つ木が道をふさぐ時に」

* * *

引き続き努力の成果が出ている。この節は特に不可解だ。

「探求を始める時は2羽のカラス、
止まり木には1羽のカラス、
しかし道を開くのは1羽や2羽でなく、
カラスたちの声を聞け」

* * *

この謎めいた言語を研究するにつれ、不安と心配が募ってきている。その意味を解明しようとしているだけで、自分には理解もできないような力の注意を集めているような気がする時がある。しばらくこの研究のことは忘れて、他のプロジェクトに力を入れようと思う。

絹の手袋をなくした3人のカジートに関する、あの喜劇を書き上げようか。

プラキスの代価The Price of Praxis

セルヴァル・ロルマリル

私は自分がカリアンを受け取った日を完璧に覚えている。皆このことによく驚く。とりわけ人間はそうだ。彼らはうろ覚えの夢を漂うのに対し、我々アルトマーは全てを覚えている。あらゆる抱擁、あらゆる侮辱、あらゆる栄光と敗北が我々の視界の端に潜み、時の中に凍りついている。不快なほどの正確さで、思い出されることを待っているのだ。だから私が完璧に覚えていると言う時、それは文字どおりの意味だ。

私は屈強な18歳だった。教会ではお香と桜の匂いがしており、私のクランの母と父、大予言者、その他の者たちが一堂に会して椅子に座り、緊張と誇りに満ちていた。高き者たちの司祭がゆっくり近づいてきた。白鳥の羽根と竜の舌の法衣が彼女の肩を覆っており、額には流木と種々の宝石で彩られたウェルキンの花輪があった。彼女は私からほんの指の長さほどの距離で立ち止まり、私に跪くよう命じた。私がそうすると、彼女は私のカリアンを空中に掲げた。それが星空の光で輝くのを見て、突然自分が泣いていることに気づいた。当時、その球体は素朴なもので、乳白色のエセリアル水晶と陽光で加工したガラスで飾られていた。「すぐに壊れてしまいそうだ」と思ったことを覚えている。当時でさえ、私はその大きな価値を知っていた。アセル・ヴィアレンを暗唱した後、彼女は球体を私の手に置いて微笑んだ。私はそれを、卵から孵ったばかりの小鳥のように包んだ。その瞬間、私はカリアンを守ることを誓ったのである。だが18歳の者に誓いの何を理解できるというのか?若者は神聖なる事柄を大げさに扱うことが多いものだ。あまりにも多い。

私は怒りやすいエルフの若者に成長した。仲間の怠惰な自尊心と、長老たちの軽蔑的な無関心に幻滅したのだ。52歳で、私は私掠船の乗組員となった。13年間、レッドガードの密売人たちを撃退し続けた。時が経つにつれ、我々の金庫は外国の財宝で溢れかえった。別れた時、各乗組員は測り知れないほどの富を手にした。

海上生活の間ずっと、私は一度もカリアンをなくさなかった。自分の寝台の下に置き、ヤナギの木の箱の中に安全にしまった。ハンマーフェルの財宝全てを集めても、この輝きには及ばない。我が高貴なる種族の誇りの全てが、この乳白色の光に込められていた。

身を落ち着ける決心をして、私はアリノールの東に一片の土地を探した。まあまあ評判のあるブドウ園だった。私は年老いたワイン商に大金をゴールドで支払うと申し出たが、彼は売ろうとしなかった。一日ごとに、私の提示額は(私のいら立ちと共に)大きくなった。こんな老いぼれエルフに、私の幸福を邪魔されるとは!こいつに私の望みを奪う権利があるとでもいうのか?私は時間をかけて、この歯のないエルフを説得しようと決意した。私は豪雨の夜に彼の住居へと出かけていった。手には剣を持ち、息からはワインが匂っていた。私は彼を眠りから起こし、小屋に押し入った。汚い言葉を投げかけ、売却証書を彼の顔に突き付けた。彼は立ち去れと私に向かって叫び、私の腹にその貧弱な肩を押しつけ、私を扉から押し出そうと虚しく試みた。私は酔った勢いで激昂し、何も考えずに彼の胸に剣を深々と突き刺した。一瞬後に私は自分の愚かな過ちに気づいた。私は壁に背中をもたれかけ、死に瀕した彼の弱々しい断末魔を恐怖して見つめた。深く恥じ入る気持ちから、私はもう少しで即座に命を絶ってしまうところだった。だが結局は高き者たちの元に出頭すると決めた。裁きを受けるために。

若い頃私にカリアンを渡したのと同じ司祭が、裁判の席に座っていた。私が事件を陳述している間、彼女は冷たい視線を私に注いでいた。私が話を終えると、彼女は同行の修道士に囁いてから、立ち上がって私に会いに来た。修道士は装飾を施された私のヤナギの木の箱を取り出し、開いて私のカリアンを見せた。私の偉大で完璧な宝を。宝石職人のようながっしりした手で、彼は球体をその置き場所から抜き取り、司祭に渡した。彼女は悲しみと怒りが入り混じった目で私を見つめた。一言も発することなく、彼女はカリアンを空中に掲げた。私は肩をこわばらせ、爪が掌に食い込むほど両手を握りしめた。ついに彼女は「アプラックス」と審判の言葉を囁き、球体を指の間から滑らせて落とした。私は貴重な宝が空間と時間を転がり落ち、そして冷たい大理石の床に当たって砕けるのを恐怖と共に眺めた。司祭と同行の修道士は背を向け、下級修道士が私と砕けたカリアンの破片を、闇夜の中に追い出した。

こうしてアプラックスとしての生が始まった。罪の大きさを沈黙のうちに反省するよう任された、恥ずべき追放者である。

30年の間、私は自分の祝福されたカリアンの残骸を直そうと骨を折った。石を切るための道具や、真珠粉の固定剤、聖油などのために、全財産を使い果たした。ほとんど食事をとらず、睡眠は全くとらなかった。私のひげは長く伸び、筋肉は衰えた。1つ成功するごとに、3つの新しい失敗が起きた。その間、他のアルトマーは私をはねつけ、呪った。

ついに栽培の月のある明るい朝、私は最後の繊細なガラス片をはめ込み、カリアンを元々の無垢な状態に戻した。その瞬間、私は安心の気持ちから赤ん坊のように泣き出した。長い時間をかけ、私はバラ水で体を洗い、もじゃもじゃのひげを刈り取って、高位会館へと出発した。

足を震わせながら、私は司祭に近づいた。配慮の気持ちから、両目は床に向けていた。私はヤナギの木の箱を開け、調べてもらうためにカリアンを高く掲げた。司祭と同行の修道士が球体を調べている間の不気味な沈黙は、永遠に続くかと思われた。そして、私は彼女の手が私の肩に置かれるのを感じ、「立ちなさい」との優しい囁きを聞いた。

私はためらいながら立ち上がり、目をあげて彼女と視線を合わせた。

彼女がずっと求めていたあの言葉を言った時、私はほとんど息をすることができなかった。「迷えるアルドマーの子よ、お帰りなさい」。

マオマーの報復主義の偽りThe False Revanchism of the Maormer

スカイウォッチのハデンドリル 著

アルトマーとマオマーの古い対立はあまりに長いため、複雑な対立であるという印象を受けやすい。不当な行為と報復が重なり、数百年も対立が構築されてきた。これは最も有害な集団的誤謬である。何の価値もない略奪に正統性の片鱗を与えているのだ。マオマーはサマーセット諸島の領有権を主張したことはなく、神々の意志によってそれが実現することもない。

我々がアルドマーの恩寵を失うことになった事態への誤った説が、ピャンドニアに住む人々と我々が親密な同胞だという誤解を招いたのではなかろうか。だが真実を言えば、我々は祖先が同じだけの遠く離れた親類でしかない。この歓迎すべき真実の暴露は、水晶の塔にあってこれまで翻訳されていなかったアルドマーのタペストリーによってもたらされた。痛みを伴う研究の後でやっと白日の下にさらけ出された純然たる真実が物語るのは、望まざる移民と悲劇的な民族の離散の苦しみではなく、謀反と追放の物語だった。

マオマーが流す血は常に、強欲と強い野心の名の元にあった。堕落した「王」オルグヌムは、アルドマー代々の故郷を正当な支配者から奪い取ろうと考えていた。サマーセットを我々から盗もうとしたのだ。マオマーに対して長く罪の意識を抱いている者もいたが、彼らはそれに値しない、見下げ果てた者達である。この件についての議論は終わり、マオマーの擁護者たちは黙らされた。そしてピャンドニア人に対する戦争は、後悔の念もなく実行されるはずである。

ミノタウロスの真実The Truth of Minotaurs

帝国の遺物研究者、ティロニウス・リオレ 著

自らを貶めた賢者、ノヌス・カプレニウスの馬鹿げた戯言は既に読まれたに違いない。その名を非難することは少しも楽しいものではない。カプレニウスはかつて野獣学に精通し、学者の中でも傑出した存在だった。悲しいかな、彼の牛男とその怪しげな起源に対する執着があまりにも強く、仲間にとって耐え難いものとなってしまった。この件を明らかにし、今回限りで片を付けさせてほしい。

カプレニウスは明らかに一種の躁病の最中で、ミノタウロスはアレッシアと伝説的な配偶者である牛男、モリハウスの子孫だと主張した。異端である以上に、この主張には歴史的事実の裏付けがない。アレッシアの息子の牛人間、ベルハルザの運命は良く知られている。当時の無数の学者が(遠回しに)記録したのだ。彼はエルフの槍先にかかってその生涯を終えた。確かなのはその程度だ。身体的特徴に共通点があるからといって、奴隷の女王と牛頭の野蛮人の粗野な血を結びつけるのは、人とグアルを二足歩行だからといって繋げるくらいに意味をなさない。

事実を言えば、ミノタウロスは呪文か錬金術のプロセスが失敗した苦い結果だ。そこには大いなる陰謀も、ひたむきに守られた秘密もなく、ただ不幸で恐ろしい事故があるばかりだ。実際、牛属の獣を見て、アカトシュの誇り高き遺産がその獣の血に流れているとわかる者がいるだろうか?これは神経症を患った心の妄言で、そのように取り扱うべきだ。

私の助言を聞き、ミノタウロスに会ってもその高貴な血について尋ねることのないように。遭遇して生き残りたければ、殺すか逃げるかだ。

ミルロンの報告Mirulon’s Report

伯爵の皆様へのご報告:

シマーリーンに対する我々の計画は速やかに進行しています。ある程度の修正は必要でしたが、大枠はそのままです。前回の報告で言及した若者は、予想通りではありましたが与えた任務を放棄しました。私はサピアルチが彼の手によって死なねばならないと明確に説明し、彼は拒否しました。反抗的な態度を取られたため、私は精神操作の使用を決定しました。奴が奴隷になるまで、長くはかからないはずです。

彼を奪回するため、市街で小さい爆発を起こさなければならなかったのは残念です。あれは間違いなく、神聖執行局の注意を引いたでしょう。ですがご安心ください。彼らに妨害する機会はありません。もうすぐサピアルチは抹殺され、この街は大混乱に陥ります。任務が完了したら、またご連絡します。

オブリビオンの名において、
ミルロン

ラウリエルへの手紙Letter to Lauriel

ラウリエルへ

私の手紙に返事をくれるとよかったのに。ここですごくたくさん学んだけれど、妹に会えなくて寂しいわ。夜中に話し合って、変なゲームで遊んだことが懐かしい。お願い、あなたの様子だけでも教えて。ほんの数行でもいい。あなたが元気でいることを知らせてほしいの。

あなたは何日も自分の部屋にこもっていて、歌も滅多に聞こえてこないってお母さんは言っている。自分がそんなひどい状態に追い込んだのかと思うと、心が痛むわ。あと数年で私の勉強は終わるはず。家に戻ったら、もうどこへも行かないと約束するわ。

お願いだから返事をください。

あなたの愛する姉、
セレンウェ

ラウリエルへの別れのメモFarewell Note to Lauriel

ラウリエルへ

出発する前に会いたかったけど、地下に行ってしまったのね。あの古いワイン貯蔵庫に隠れてるんでしょう。どの場所かも正確に分かる。南東の角にある、アリノールの古い樽の後ろでしょう?あなたはいつも隠れるのが下手だった!見つけてあげたいけど、私の船は満潮に出てしまうの。

一人になるのが怖いのも、私が行くことに怒っているのも知っているわ。でも、バルフィエラの長老たちと研究する機会を逃すことはできない。偉大なるディレニの塔を見る機会!いつか、あなたも理解してくれるといいのだけど。

あなたは自分が思っているより強い。もう私が守る必要はないわ。とにかく本を読んで、あの美しい歌を書き続けてね。すぐに帰ってくるわ。

あなたの愛する姉、
セレンウェ

リナイデの日記Rinyde’s Journal

暁星の月9日

ラリデルは最近一層よそよそしくなった。生まれた時からずっとそばにいたのに、今ではほとんど赤の他人。授業への興味は薄まり、一人で何時間も出掛ける。ただ気分転換のために散歩に行ってくると言うけど、それが本当だとは思えない。

もしかしたら心配しすぎなのかもしれない。一人で訓練しているのかもしれないし。彼は私よりも魔法の能力があるし、ただ一緒に授業をすることに飽きたのかもしれない。これまで孤独な時間が必要なのは自分のほうだと思っていたけど、こうして弟がいなくなったことを嘆いている。今夜また話しかけてみよう。

蒔種の月16日

まさか役者の一座が、これほど研究の妨げになるとは思いもしなかった。かつては静かだった街が、彼らの到着以来すっかり無秩序になっている。昼夜問わず、彼らのキャラバンは観客に囲まれていて、騒音だけでおかしくなりそう。

特に最悪な点は、弟がひどく興奮してることよ!いつも彼らの素人芸や陳腐な芝居の話ばかりしてる。役者と話してるところを見かけるのはしょっちゅうだ。弟が自分よりも社交的なことは知ってるけれど、いくら何でも行き過ぎよ。

じきに終わるだろうと自分に言い聞かせている。彼らは目新しい存在で、それも通りすがりにすぎない。街からいなくなれば、すぐに弟も研究に戻るでしょう。間違いない。

恵雨の月2日

弟にあれほど驚かされたことはない。侮辱的すぎて、もう涙が出そう。こんな出来事を書くのは嫌だけど、彼の恥ずかしい行動は否定しようがない。

今夜、ラリデルは酒と香水の匂いをプンプンさせて研究に参加した。どんな類の連中と一緒にいたのか知らないし、知りたくもない。今まであんなばかげたことをするのは見たことがない。私はあの恥と口紅まみれの顔を見るので精一杯だった。

もちろん彼は後悔していた。自分の行動がどんな悪影響を及ぼすか、どれほど許されないかは分かってると言ってた。それでも、彼には今まで以上に失望した。引きこもったと思ったら、次はクズと仲良くなって、今度はこれ?私が知ってる弟を失ってしまいそう。

真央の月9日

今日は素晴らしい知らせを受け取った。どうやって書いたらいいか分からないほどだ。今でも興奮で指が震えて、羽根ペンをしっかり持てないくらい!これまで頑張って研究と実践を続けてきたおかげで、ついにこの時が訪れた。

サピアルチが私たち2人を助手として受け入れたのだ。私は技巧のサピアルチを手伝い、ラリデルは魔術のサピアルチに受け入れられた。うれしすぎて泣きそう。私たちの一人だけが受け入れられて、もう一人は取り残されてしまうかもしれないと心配していた。大切な弟から離れるなんて考えたくもなかったけど、そんな心配はしなくてすむ。今までと同じように、これからも一緒にいられる。

ラリデルは…知らせを聞いてショックを受けていた。今ならそれが分かる。最初は怖いのかと思ったけど、そんなのはばかげてる。何を怖がる必要があるというの?きっとただ驚いてるだけよ!こんな名誉を授かって、心配なのかもしれない。

これはいいことよ。気にしないように努力したけど、ラリデルは最近とてもよそよそしい。自分の研究のために離れて住むことにした理由は分かる。そもそも、彼の足枷になることをいつも心配していた。でも会うと…

彼が別人のように見える時がある。まるで一緒にいる時は仮面を被っているみたい。今でも、考えただけで胸が苦しくなる。だめよ、こんなふうに考えては。もうすぐリランドリルで、また一緒に研究できるようになる。幸せに。やっと追いつける。もう一度彼と並べるの。

こんなに幸せな日は初めて。やっとまた弟と一緒にいられる。

リレンデルの家の祠Lirendel’s Family Shrine

アーリエルの名誉と称賛をニヴリレルに。この威厳ある名を持つ指輪を星空に。 刮目せよ!偉大なる先人の名に刮目せよ

ルミリオン・レン・イネシル・キュラナリン・サロリンウェ・アタ・ピリャデン・イテルノリル・ヒルノア・ファーラミルカル・ターネーベン・ニヴリレル

ルルタリの日記Rultari’s Journal

今日、街から執事がやって来て父を訪ねた。彼はいつも少しやつれているが、今日の表情は普段よりも誠実に見えた。いつになく、本当に心配しているようだった。彼はまた、いつもより口が固かった。普段なら、彼は自分がいかに忙しく欠かせない存在か言及する機会は逃さないのに、今回は一言も引き出せない。晩餐の時、父が詳細を話してくれるかもしれない。

父は昨日、ほとんど丸一日留守にしていた。屋敷に帰ってきたのは日が暮れて大分経ってからで、騒々しさで私はベッドから起き上がった。数十人は引き連れていたはずだ。見た目からして大部分は船員だったが、街の衛兵も近いくらいの数がいた。もしかして、父は暗闇に乗じて家宝を海外に持ち出すつもりなのだろうか、と思った。父は人々を全員、家の地下室へと導いた。全ては秘密作戦のようだった。私は暗闇の中、窓の側で1時間近くも待った。何かこのことを説明してくれるものが見えないかと思ったのだ。だが出てきた時、父は一人だった。

今朝目覚めた時、私は家の衛兵が玄関で待っていることに気づいた。父の命令により、家の全員はさらなる通達があるまで館の中に留まるように、と伝えられた。私はこの知らせに納得しなかった。父の暴君のような振る舞いに抗議したくて、私は父の部屋の前で張り込み、帰ってきた瞬間を待ち伏せしてやろうとした。私は朝食も、昼食も、夕食も取らずに、檻の中のライオンのように廊下を行ったり来たりしたが、父は現れなかった。今夜は、部屋の扉の前で寝るつもりだ。

* * *
父の部屋の扉のせいで、頭にこぶができてしまった。いきなり起こされたが、起こした母は当惑していた。私のバカげた行動を叱りつけた後、母は私を不憫に思い、父の突然の奇妙な振る舞いについて、自分が知っていることを教えてくれた。数日前、ある深海漁業船が王の船にも匹敵するほどの大漁で到着したが、それから船員たちの多くが病気になってしまった。父は皆を地下に隔離し、その間に彼らの状態を調べているという。

* * *
執事が再び訪ねてきた。彼の表情は、いい知らせを持ってきたのではないことを物語っていた。さらなる人々が、街から屋敷の地下室へとやって来た。

* * *
父は2週間近くも会いに来ていない。この事件が始まってからずっとだ。考えてみれば、父が太陽を見たかどうかすら定かではない。これでは健康にいいわけがない。父が病気でなければいいが。どうして我慢できるのだろう。私自身、このきらびやかな牢獄で狂いそうになっているのに。少なくとも私には、外の世界が存在することを思い出させてくれる窓がある。父はあの船員たちを海に帰すべきだったのだ。

* * *
私が時間の感覚を失っているせいかもしれないのだが、街からやって来る人々の流れは、さらに加速しているような気がする。ワインで神経を落ち着かせるためなら何でもするのに、ここにはもう一滴も残っていない。この家で、最後に水がコップを満たしたのはいつだったろう。ひどいことになったものだ。

* * *
家の衛兵たちの一部が、街の不安について噂をしているのを聞いた。どうやらここに閉じ込められているのは、私たちだけでないらしい。私の父はこの疫病が去るまで、誰もコルグラドに出入りしてはならないと布告を出した。すでに何ヶ月にもなることを考えれば、同じ境遇である彼らの気持ちは理解できる。私たちにできるのは、病気が自分たちに来ないことを祈って待つだけだ。

病気が進行した状態で街から運ばれてきた者たちは、ほとんどエルフに見えないほどだ。尊厳を守るため外套に身を包んでいてさえ、担架で地下室へ運ばれていく体が歪んでいるのがすぐに分かる。今頃はもう亡くなっているはずの者たちは、どうなっているのだろう?考えたくない。

* * *
書き物机で飲むのは嫌だが、一日中喉が干上がったような感じがしている。一瞬でも舌を湿らせるのをやめると、歯の裏側がやすりで削られているような感じがしてくる。ここに自前の水源があってよかった。飲み物が必要になる度に街の井戸まで歩いていかなければならなかったとしたら、私はとても健康になるか、疲労困憊していただろう。

* * *
慈悲深きステンダールよ、私たちをお救いください。止まらない。吐くまで飲んでも、喉が渇いてしょうがない。止めてくれ!

引き返せ!Turn Back!

プーナラへ、

すまない。ここに来るべきではなかった。呪いに耳を傾けるべきだった。ここにいるものはエルフに似ているが、獣のような連中だ。奴らは暗がりから我々に飛びかかり、墓地のようなところに引きずっていった。そこに奴らのリーダーがいた。普通の人間のように見えたが、口を開くまでの間だった。奴が大穴について語るのを聞いていると、世界の終わりだという感じがする。奴は救い主たちの期待に背くわけにはいかないが、我々が彼らの親切に報いる助けになるだろうと言い続けていた。

他の者たちも捕われていた。まだ生きていたが青ざめていた。切開された傷があり、ほとんど治療されていなかった。私はお前が見せてくれたように、牢屋の鍵を外せた。だが他の者にその力はなかった。私は戻ってくると約束したが、今どこにいるのか分からない。トンネルは家、家は道、道はトンネルに続いている。追い詰められた。足音が聞こえる。

私を見つけたら、逃げてくれ。このトンネルを海で塞ぎ、二度と戻ってくるな。ここに埋まっているのが何であろうと、埋めたままにしておくべきだ。

カーンハル

開かれた国境の問題A Case for Open Borders

上級公アンドゥリオン 著

我が市民よ、私もアイレン女王の布告を読んだときは心配したものだ。国境を開放するのは、重い決断だった。私もそのような行為が愛する故郷にもたらす不吉な事態を恐れた。我々の街はノミで溢れるのか?夜中に子供たちは寝床からさらわれるのか?断言するが、私も誇らしきサマーセットの安全については同じように心配していた。

上級公としてこれらの懸念をサマーセットの裁判所に伝え、しばしば激論を交わしたことは、大変名誉なことであった。それは前例のないことであり、最も荒々しい問題だった!私は愛する故郷への冒涜を止めようと決意した。私も我々が先人の願いを裏切っていると感じた。そうだ、我が市民よ。私はよそ者、猫、共食い種へ国境を開放する考え自体に強く反対した。その価値がないと知っていたのだ。

だが、変化があった。私が変わったのだ。私が心から女王の布告を支持する理由を説明させてほしい。味方であり、隣人となった者たちの権利を弁護させてほしい。

この変化が始まったのは、戦争への努力について聞いたときだった。ウッドエルフの弓の支援が可能にした辛勝。賢い工作で、決め手となる秘密を聞き出したカジートの密偵。我が勢力の数を見るだけでも良い。我が軍にどれだけの技術と力があっても、この戦いは単独で勝てないと分かっていた。それでも、私は頑なだった。一時的な味方には前線で戦ってもらうだけでよい。サマーセットに用はないはずだと考えていた。

私は意見を定め、変えることはないと感じていた。私が真実を悟ったのは、信じられないようなことが起きた時だった。

我が一人息子、アンディメリルが戦場で倒れた。あの夜のことは幾度となく振り返る。もう少し頑固でなければ。腹いせに黙り込まなければ。息子が残るようにうまく説得できていれば。息子は若く、向こう見ずで、過去の私よりも遥かに勇敢だった。あの顔を二度と見られないと考えただけで、胸が締め付けられ、激痛のあまりほとんど息ができなかった。

息子の死を知ったのは、使者からでも友人からでもなかった。若いウッドエルフが私の前に立ったことで知ったのだ。そのブーツは泥がこびりつき、目は涙でいっぱいだった。その手には簡素な金属製の箱があり、中に息子の灰があるのは彼女が話す前から分かった。彼女の名前はグレニスだった。

「彼に頼まれたわけではありません」と言うと涙を流し始めた。「実際、彼は二度と帰らないと常々言っていました。ただ、私には我慢できなかった。彼は故郷に帰って当然でした」

私はその日まで別の種族の者と話したことさえなく、格段に劣っていると信じ切っていた者たちの目を見ることもなかった。何が起きているのか、もはや否定できなかった。あの日、私の目はようやく真実に開かれた。議論や布告ではなく、グレニスと共感した悲しみによって。それはあまりにも辛く、真実でないはずがなかった。

毎日、我々が気にもしない味方が、息子や娘たちとともに死んでいる。彼らは食事を共有し、物語を伝え、できるときに笑いや慰めを見つけようとする。彼らは一緒に戦い、互いに命を預けている。これが、穏やかな海岸から遠く離れたところの、日々の戦いの現実だ。

アンディメリルの人生最後の数週間はグレニスから聞いた。老いたエルフを慰めるためであっても、息子を讃えることしか言わなかった。息子の勇気と優しさを語る言葉に心から励まされた。息子は己が信じる理想に殉じたのだ。私にとっては女王陛下の手紙より、仲間の兵士の優しい言葉ほどアンディメリルを讃えるものはなかった。

この考えは今でさえ身勝手なものだが、この安らぎは開かれた国境がなければ不可能であった。グレニスが私の家族に表した敬意は存在し得なかった。彼女は私が信じてやまなかったように、下等であり無価値な種族の者として扱われていただろう。彼女がいなければアンディメリルの帰郷はなく、遠い戦場の見知らぬ死体となっていただろう。息子を葬る名誉は決して得られなかった。

我が市民よ、他種族はまさに尊敬に値する。私の個人的な話を聞いて何も感じなかった者は、どうか彼らと話をしてほしい。地元の酒場で酒をおごり、家の食事に招くのだ。学者の文化を持つ私たちは、心を開いて学ばなくてはならない。断言するが、まったく異なる文化が見つかるだろう。しばしば衝撃を受けることもあるが、彼らの文化は私たちと同じく豊かである。

かつて国境を封鎖したように心を閉ざしてはいけない。私たちの未来は先へ進む能力に懸かっている。共に最初の一歩を踏み出すのだ、我が市民よ。間もなく、明日へ歩くようになるだろう。

隔離された賓客のリストList of Sequestered Guests

ウッドエルフ。男性4名、女性3名。全員ドミニオン市民だと主張。1名はサマーセットに1年以上居住していたと述べる。準備房に移動。

カジート。男性7名、女性9名。全員ドミニオン市民だと主張。半分を準備房に送り、半分を待機房へ送る。

アルゴニアン。4名。性別は不明。誰が泥で泳ぐ者のことなど分かる?準備房に移動し、即時吸い上げ。

ブレトン。男性1名、女性2名。自称ウェイレストの商人。いや、ダガーフォールと言ったか?関係はあるのか?一体なぜこれを書き留めているんだ?新たなアルダークはこの情報で何をするつもりなんだ?待機房へ。

レッドガード。男性2名、女性4名。全員ハンマーフェルからの船で到着。1名は商人ラヌルによって送られてきたと述べる。半分を待機へ送り、半分を準備へ送る。

ノルド。男性1名。ノルド文化交流探検隊だか何だかの一員だと主張。待機へ。

観察メモ154:ズマジャの捕縛Observation Note 154: Z’Maja’s Capture

ウェルキナー・ガレンウェ 著

ズマジャの捕縛は、あまりにもあっけなかった。最も楽観的な計算上でも、これほど短時間に彼女を従わせることができるとは考えられなかった。他の仲間たちが勝利に夢中になったのも無理はない。彼らは私が小うるさい虫でもあるかのように、懸念を無視している。

彼女の影魔法は動揺を誘う出来事だった。それは私を傷つけたが、そのようなことは見たことも聞いたこともなかった。力の源は彼女の胸に埋め込まれたアミュレットであると結論づけた。恐らく、デイドラのアーティファクトだろうか?その魔法の存在について研究すればするほど、疑惑は確信へと変わっていった。

これ以上の分析については、推測以外にできることはほとんどない。ズマジャの力はどうやって手に入れたにせよ、危険であり謎めいている。彼女が操っていた影は、触れたものすべての生命を吸い取っていたかに見えた。その力だけで、多くの兵士が失われた。仲間や私が瘴気を克服できたのは、光の性質を有するオロライムの魔法あってのことだった。

さらに厄介だったのは、戦った相手の戦士を複製するズマジャの能力だった。兵士が任務半ばで命を落とすと、その死体から影がむくりと起き上がった。邪悪な物真似に見えるその影は、ズマジャの味方として戦い始めた。シースロードを取り押さえることに成功していなかったら、影が戦局をひっくり返すことは容易だったと思われる。

ズマジャが我々に対する計画を立てた場合、クラウドレストが心配だ。安全が脅かされる以上、彼女を捕らえておかねばならない。逃げられたら…生き残れないだろう。

忌まわしき文明A Loathsome Civilization

発明家テレンジャー 著

敗北したマオマーの艦隊が占有していた、思いも寄らぬ希少な品を収集品に加えられた。この文書が船団に持ち込まれた理由は知る由もないが、どうやらこれは第一紀2260年よりも前に書かれた、スラスに赴任した外交官の日誌のようだ。損傷はしているが、判読可能な状態を保っている。スロードに関する記述は魅惑的なものだ。推測するに、これは虚構やねつ造された奇妙な作品ではない。これが正当なものなら、実に目覚ましい発見だ。何故ならスロードは、常に全タムリエルの種族と交渉を嫌ってきたからだ。

スラスのナメクジたちが悪しき死霊術を行ったことを我々は知っているが、これが本物の文書だったとしたら、彼らと恐怖の技法との関わりは、今まで考えられていたより優れたものだったかもしれない。著者は生き返った奴隷との交流に対し、頻繁に嫌悪感を表している。スロードもまた様々な海洋生物を殺戮し、再生させていたようだ。亀、蟹などをペットとして手元に置くために。だが、彼の嫌悪感はそこでは終わらなかった。彼はスロードの不快な臭い、あらゆる地上の建物の床の上にある粘液で覆われた水、食料として供される様々なカビ、菌類に対して不満を述べていた。

複雑な生贄の儀式に関する言及があるが、これは彼らが通常、崇拝を拒絶していることを考えると極めて稀なものだ。スロードは間違いなく、適切だと思われる場合にはデイドラとの契約を結んでいた。だがここに記されている祭式は、典型的なデイドラへの生贄を示すものではない。彼らは最終的な作業(数週間は続くかもしれない)を、肉体に対する「脱水クリスタル」技術の応用による全ての演者の死で終わらせながら、スロードの神話的英雄と悪役の行いの再現に参加させる固体の仕立てに、何年も費やしていた可能性がある。

さらに興味深いのは激しく損傷している部分の記述で、それは「膨張せし長老」の水中の塔での謁見について論じている。少しだけこの2人の間の議論を判読することができる。だが、「素晴らしく肥満した身体と奇妙に脈動する頭」、そして、腹に浮かび上がる3つの目がそれぞれ「歯のない口として再び開き、(判読不能)を噴き出すと、従者たちが先を争って吸収した」という内容の記載があるが、これは私が初めて遭遇した、スロードの間に文化的指導者がいる可能性につながる見識だ。

「多種多様な荘厳なる影響」への訪問を記録したこの部分の日記はほぼ判読不能だったため、私は限りなく落胆した。名前はさておき、この部分のほとんどは、「化膿の噴出」「血液の腐敗」から、「悪化するハエウジ症」といったものまで、あらゆる種類の苦痛を暗に示す狼狽させるような言葉を除いて、解読できないものだった。スラシアの疫病についての多くは未だ謎のままだ、そしておそらく、埋もれたままにしておくのが最善なのだろう。しかし、ここで示されている病気に対するグロテスクな関心の理由と意図について、興味を引かれることは否定できない。

この文書に対する第一感を記録した、アリノールにいる仕事仲間に、真偽の検証を期待してこれを送らねばなるまい。これから何か役立つものが得られるかどうかに関わらず、万が一このような脅威が再び浮上した場合に、タムリエルの全種族にとっての恐ろしい敵に対し、少なくとも我々の理解を進められるかもしれない。この文書の内容に真実が含まれるとしたら、決して起きないようアーリエルに祈ろう。

血の腐敗Corruption of the Blood

「アルドメリスの真の子」 著

数千年の間、我らアルトマーは神聖なる遺産を守ってきた。我々は旧エルノフェイ最後の生き残りである。我々は彼らがあれだけの犠牲を払って作り出したものを保存する役目を原初の神々に任されたのだ。今でも伝統に忠実な者たちは、遺産を純粋に、文明を無傷のままに保ってきた。アルドマーが敷いた道から外れた者たちは品位を落とした。連中は堕落し、彼らを作った神々とは似ても似つかない存在になってしまった。

この聖なる島の外でエルフと自称する連中は、アルドマーの歪んだ遺骸でしかない。ダークエルフの赤い目を前にして、自分と似たものを見出せるだろうか?もちろん、できるはずがない。そこに見えるのは、より偉大なものが偽の予言者ヴェロスにより破壊され、奴が仕えたデイドラによって忌まわしき影に形を変えられ、残った灰だけである。醜い奇形のオークを見た時、そこにエドラの創造があるだろうか?ない!そこに見えるのはボエシアの排泄物だけだ。汚物から自分たちの糞の神を作り、自分たちの存在に意味を与えねばならなかった、憎悪に満ちた残留物である。

だが、我々が学ばねばならないのはこうした憐れむべき外道からだけではない。我々の生きる道を歪める危険を持つのは、デイドラに誘惑されるような愚か者だけではないからだ。ウッドエルフを見れば、神々の誤った崇拝でさえ、我々の血を倒錯させうることが分かるだろう。森を尊重することと獣になることは同じではない。今やこの放浪の親類は、自らの親族を喰らう野生の蛮族とほとんど区別がつかない。最初の民が生き残って、彼らの完全性がこれほど腐敗したのを見る羽目にならなかったことに感謝したい。

教訓は明白だ。たとえほんのわずかにでも祖先の道から外れれば、深刻な結末が待ち受けているということだ。それが分かっていながら門を開いて、笑顔で腐敗を聖なる地へ迎え入れるなどということを黙認できるのか?あの油断ならぬ女王は我らの破滅の使者である。女王の異端に抵抗しなければならない!

血清投与報告Serum Infusion Report

これまでに実験した動物の中では、インドリクが最も期待できる結果を示した。血清を投与すると魔力が増大する。インドリクを中心に実験を行えば、このプロセスはさらに洗練され、様々なことに活用できるより安全な血清を作り出せるはずだ。

このような進展があった一方で、小さな後退もあった。野生のインドリクに血清を投与すると性格が劇的に変化し、異常なほど好戦的になる。これにより彼らは抑制できなくなり、非常に危険な存在になる。直近の検体以外は安楽死させたが、この検体もいずれ同じ運命を辿るだろう。

飼い慣らしたインドリクにも同様のリスクがあることを確かめるべきだ。ロータスはどの野生のインドリクよりも穏やかだ、このプロセスを上手く乗り切れる可能性が高い。ロータスに必要以上の愛情を注いでいるタロマーが障害になるかもしれない。疑いを持たれずに引き離すのは難しいだろう。だが彼が新入りの動物の世話を拒否するなら、適度に危険な仕事を与えることもできる。

言葉と力Words and Power

発明家テレンジャー 著

タムリエルの言語には、ただの便利な意思疎通の道具以上の役割があるのではないだろうか?私は様々な研究を通して、言語と魔法の繋がりを明示する例を無視できない頻度で発見してきた。特に今行っているルーンストーンの調査がそうだ。考えを言葉に流し込む行為そのものが、発動を意味するのではないだろうか?確かに過激すぎる考えだが、この考えを支持する証拠を提示したいと思う。水晶の塔のサピアルチが、この考えの是非を証明してくれることを心から願う。

まずは付呪のルーンストーンから始めよう。どの石にも文字の組み合わせから成る印が刻まれている。ルーン1文字だけでは効果がない。だが他の文字と組み合わせて適切に配置すると魔力を発揮する。完全な状態、つまり表現が完成すれば魔法が発動する。その言語を完全に理解していなくても、力を解放できる。十分な数の文字が存在していないし、はっきりとした発音もわかっていない、だがグリフを研究してルーンストーンを組み合わせることで、活用するために意図を理解することはできる。言語そのものが根底で魔法と繋がっているのは間違いないが、起源についてはまだわかっていない。

将来有望な付呪の学生たちには説明するまでもないが、解読不能なルーンに出会っても落ち込む必要はない。学んできた文字と文章を何度も復唱し、グリフからルーンを抽出することでようやく、さらに難しいルーンを解読するための知識を得ることができる。辛抱強く他の学生と一緒に研究し、グリフの作成と解体を行えば、いずれ相互作用と本当の意味を理解できるようになる。

特に文字がそうだが、言語はアルトマーにとっても非常に重要なものだ。我々の歴史を保管できるだけでなく、文字があるからこそ、未来を約束された我々の実態を捉えて定義し、全てのエルフに自分の立場を確認させることもできる。アルトマーの社会がタムリエルで最も整然としていて、系統立っているのは偶然ではない。それはザルクセスの意志なのだ。聖なる文字を扱う学者司祭は謎に包まれた存在だが、大昔に失われてしまった言葉を保管していると言われている。ヘラアメリルの「原形を繋ぎ止める者との会話」では、作者不明の文章の中で、巻物を利用することで味、匂い、踊る姿の幻影を作り出し、さらに例え読み書きができなくても、凝視するだけで読めるようになる文章を生み出せることが示唆されている。ヘラアメリルを信じるとするなら、これも文字による魔法の1つである。

日常に目を向けてみよう。戦争を始める際に偉大な将軍が演説を行えば、士気が上がり兵士は素晴らしい働きをする。熟練の吟遊詩人が歌えば感情が刺激される。子供にとって母親の声は癒やしの効果がある。会話や文字を通して意志を伝える日常生活の中に、魔法の断片のようなものが見えてこないだろうか?確かに消滅しつつあるかもしれないが、それは黎明期以前の力の名残かもしれない。細かい話はここでは省くが、タムリエルの歴史を紐解いていけば、この考察を支持する証拠はもっと見つかる。同僚たちとこの仮説について論じるのが楽しみだ。

五重の祝福を!Five-Fold Felicitations!

最愛の姪へ

知らせをもらえるなんて、本当に嬉しいわ!それと、栄えあるエドナヴォリスの証明に五重の祝福を!あなたのお母さんは最後に訪ねた時、興奮を抑えられない様子だった。あなたの結果は、あの人の途方もない妄想さえ上回っていたわ。でも私は疑ってなかった。私たちは名門に属しているし、あなたの父親の祖先には欠陥があるにしても、あなたは私たち高貴な種族の最高の部分を受け継ぐだろうと思っていたわ。肌の色と耳の形についての報告は、特に好ましいものだった。安心したわ!皆が知っているように、耳の欠陥はあなたの父親に根差しているの。あなたが罠を逃れられたのは幸運だわ!

さあ、本題に移りましょう!あなたの質問だけど、そのとおりよ。私たちの地所は完璧な血の優秀な若いエルフを数人、保証人として抱えているわ。ここで彼らについて詳しく記すと共に、色々な証明も添えておくから利用してね。きっとあなたにふさわしい婿が見つかると思う。

1人目はタラノール。名門エンルネルディニオン家に連なる、本当にハンサムなエルフよ。彼のいいところは抜きんでて背が高いことと、父親から受け継いだ特徴である琥珀色の目ね。肌の色と顎の幅に軽い欠陥があるけど、見逃せるものだし、おそらく劣性の形質だから大丈夫。彼は文学にとても詳しくて、あらゆる学派のアルケインを実践できる。この年齢で彼以上に熟練の魔術師は見つからないわ。どこに出しても恥ずかしくない夫になると保証する。

その次はヘレブリムの息子ヒルヨン。この名前には聞き覚えがあるはずよ。ヘレブリムはサマーセットでも最高の作曲家の一人で、世代に一度しか出現しないような音楽の天才なんだから。ヒルヨンの凄いところは、父親の優れた性質の多くを持っていること。彼の歌声はマーラも羨むほどだし、なんと12種類もの楽器を演奏するのよ。残念ながら身体的な特質に関して、素晴らしいとは言い難いわね。顔の対称性には欠陥がある。目がやや小さいのが主な原因ね。それに、鼻梁のところが少しだけ大きくなっているのも欠点よ。これは人間との交雑を示す特徴なの。こうした身体的欠陥が有り余る才能と魅力的な性格を上回るかどうかの判断は、あなたに任せるわ。少なくとも、彼の父親の栄誉は宮廷で有利に働くはずよ。

最後は私の一番のお気に入り、ペランレルよ。底が浅いって言われても構わないわ!この情熱的な若者はトリニマクにも比肩しうる外見と気質の持ち主よ。彼の顔立ちはアルドメリの祖先に気味が悪いほど似ている。本当に、上級公のタペストリーから出てきたみたい。大きなアーモンド色の目と、短剣のように鋭い耳、そして私たちの古代の親類の、引き締まった鷹のような横顔。見とれてしまうわ!彼は練習場でも競技場でも素晴らしい力と速度を見せ、鍛冶をやらせれば水を得た魚のよう。唯一欠けているのは、魔法と学問への意欲だけね。でもそんな弱点は、私たちの家に入れば簡単に克服できるはずよ。

すぐに返事を書いてね、私の大切な姪っ子!この秀逸な男たちの誰にあなたが興味を示すのか、知りたくてうずうずしてるんだから。素早く行動すれば、今年中にも可愛い赤ちゃんができるかもしれないわ!

あなたを愛する伯母、
アンバール

国境開放への拒否A Rejection of Open Borders

シマーリーン上級公女アヴィネッセ

不測の女王は今もなお、急進的な思想を忠臣たちに押しつけており、それが原因で清浄で不屈の地は現在、あらゆる変化と悲しみに苦しめられています。他の種族を尊重し、アルトマーと同列に扱うという試みは、不自然なものでしかありません。ハイエルフが至高の存在であることは誰もが知るところであり、なぜ不浄で完全に正当性を欠いたこの宣言によって、その立場を弱めようとするのでしょうか?この不合理で非常に危険な宣言を撤回させるためであれば、シマーリーンの住人と上級公女は手段を選ばないことを知らせなければなりません。

なぜ私はサマーセットの清浄な性質を手放すことに異を唱えるのでしょうか?なぜなら、それが論理的に正しいことだからです!十分な記録による裏づけがあることですが、アルトマーはこの世界を共有している下等種族に対して、あらゆる面で優れているのです。結局のところ、エドラまで先祖を辿れる者は他に存在しません。我々は自分たちの聖なる遺産を堂々と受け入れれば良いのです。他の種族とは違い、我々は神々の創造したものではありません、我々は彼らの子孫です。その遺伝的な繋がりは、エルノフェイから原初の神々、最初のアルトマーまで遡ることができます。このため、これだけでも、我々には純粋な血を守り、その完璧な聖なる故郷を保護する権利を与えられるべきなのです。

冒険好きな女王がさらなる証拠を求めるなら、我々の像や黄金の肌、生来の魔術的素質に注目すればいいのです。他の種族は知識の追及という点で、我々の足下にも及びません。彼らはそういった戦いに対して無防備なのです。タムリエルで最初に本物の文化を形成したのは我々であり、今でも全種族の中で最も文明化されています。この事実を覆すことはできません。我々は宗教、言語、建造物の基礎を築き上げました。その影響力は大陸全土で見られます。我々はこれだけのものを与えてきたのです。世界のほんの一部を独占することぐらいは許されるべきです。

我々は以上のような自明の事実だけでなく、惨めな下等種族たちのことも考えなければなりません。この素晴らしい文化と社会的風習には厳格さと能力が求められます、彼らに要求するのは残酷すぎると思いませんか?彼らは我々の習慣と伝統に求められる精度を備えていないのです。彼らの無能を責めるべきでしょうか?それとも、彼らが到達できるような低い基準を設けて、欠けている部分を増強するべきでしょうか?彼らは恐らく我々を残酷と考えるでしょう。見えざる門は閉じたままにしておくべきです、そうすればこれ以上お互いに悲しみ、苦痛を味わうことはありません。下等種族にサマーセットへの移住を許しても、彼らのためになりません。むしろその反対です、最後には彼ら自身が傷付くでしょう。

サマーセットの純潔を守りなさい。サマーセットを穢してはなりません。サマーセットはアルトマーだけのものです。それだけが正しいことなのです。

司法高官アヴァナイレの日記Journal of Justiciar Avanaire

サロシルが言っていた。借金取りたちが怒っているみたい。何とも愉快な状況ね。妹が帰ってくることをいつも夢見ていたけど、妹が帰ってきた今は悲しみに満ちている。妹は問題ばかり持ち込む。でも見捨てられないわ。今は無理。しかも妹は助けを求めている。

妹は何かやっているかもしれない。妹にこんなことは言いたくないけど、スクゥーマはエルフを変えてしまう。妹の面影はほとんど残ってなかった、とても痩せていた。骨張った指で私のスカートを掴み、しわがれた声で助けを求めてきた。妹を信じたい。彼女が幸せに生きられるように助けたいわ。でも…無理よ。今はまだ。

だからといって、迷ってはいられない。妹は危険な人物に借金をしている。妹を見捨てればテルヴァンニの魔術師に売られるか、見せしめに殺されるかもしれない。そんな危険は冒せない。

問題は神聖執行局よ。裏取引をすれば信用に傷が付いてしまう。サマーセットには賄賂を喜んで受け取るような愚か者はいない。疑り深いのよ。認めたくないけど、サロシルが見つけた仲介人しか選択肢は残されていない。彼らが真珠を使って何をしようとしているのかは知らない。でも他に選択肢がある?

計画どおり、テロムレ隊長の部隊に潜り込んだ。動くのはトー・ヘイム・カードに近付いてからよ。そこで仲介人が私を待っていてくれているはず。そこについたら隊長に奇襲を仕掛け、真珠を奪い、彼にはそのまま死んでもらう。サマーセットの兵士なら、きっと私を遺跡まで追いかけてくる。そうしたら…仲介人が面倒を見てくれる手はずになってる。永遠にね。

真珠は山賊に奪われたと報告する。しかもその話を否定できるエルフは、その頃には全員死んでいる。全て上手く行けば、私の立場は安泰よ。もしかしたら、勇気を讃えられて昇進する可能性もある。そしてサロシルは必要なお金を手に入れる。そうなれば妹は安全よ。

これは妹のためにやる。昔と違ったとしても、妹は私に残された最後の家族よ。妹は私が守るわ。どんな犠牲を払ってでも。

自らの価値を示せShow Us Your Worth

テラニエル

お前が待ち続けていた瞬間がついにやってきた。機会を与えてやれる。宮廷と我々の支援者に、狡猾さを示す特別な機会だ。彼が有能な者を高く評価することは知っているだろう。

私が多大な金額を支払って入手した書物をお前に委ねよう。領域の間にある場所、我々の世界とオブリビオンの間にある虚無の穴、隙間についての記述がある。そこにはある太古の存在、大いなる欲求を持つ存在が住んでいる。そして我々の支援者は、欲求を持つ者がお好きだ。

この〈強欲〉という生物と取引し、セイ・ターン砦の守備隊に向けて放て。勝利は手が届くところにある。しかし、あの至高な道化に仕える者どもはまだあまりにも近くにいる。安心はできない。我々の計画の最後のピースがはめ込まれるまで、彼らを忙しくさせてやれ。

任務が終わったら、お前をシマーリーンへ戻そう。それまでは状況に注意し、有利な結果を生み出すよう行動せよ。この投資を無駄にしようものなら、我々は皆、大いに失望するだろう。

お前に幸運のあらんことを、

T

失われたアルテウムArtaeum Lost

ヴァヌス・ガレリオン 著

私はサイジックの島アルテウムにいた時のことを滅多に話さない。年齢と気質のせいで、回想すると腹が立つし、気が乗らないのだ。医者ならば、消化に悪いと言うだろう。とはいえ、我らがギルドの出自について、学生たちに一定の説明を与える義務が私にはある。

私をよく知る者は、私がアルテウムの生まれではないことも知っている。私は劣悪な環境で育った。サマーセット島の気難しい上級公の下で働いていたのだ。長い間ではない。諸事情あって、その生活からは離れざるをえなくなった。その後少し経って、サイジックが私の才能を見いだした。彼らは、これまでの生活が終わったと私に言った。もう見つかるのを恐れて、本を床板の下に隠す必要はない。干し草をかき寄せ、食器を洗って膝にアザを作る必要もない。これからは賢者として生活せよ。好きなだけ勉強していい。その勉強が平等や平和、知恵を発展させるものでありさえすればいい。私はその時、喜びで弾けるような気分を味わった。もちろん、どんな喜びも永遠には続かない。

私は導き手である秘術師ヘリアンドに、これまで海を走る乗り物に乗ったことがないので、出航するのが楽しみだと言った。彼女は笑い、光り輝くルーンを下に落とすと、我々はアービスを突き抜けて飛び出した。こんなスピードがありうるとは想像もしていなかった。数秒もすると、我々は風の吹き荒れる丘に立って、アルテウムの田園地帯と牧草地を見下ろしていた。

1日ごとに、新たな発見があった。ニクサドの群生で埋め尽くされた、霧のかかった谷間。出来立てのガラスのように透明な、歌う滝のある秘密の礁湖。風が吹くと秘密を囁く花々、そして定命の者の舌には長すぎる名前を持つ石。私は精力的に本を読み、常に各地を放浪し、すぐに灰色のローブを獲得した。

後に虫の王と呼ばれることになるマニマルコに、私が初めて出会ったのはこの頃だった。当時、彼は私と同じように、将来を嘱望された優秀な見習いだった。私たちは底知れぬ才能を持っていたが、性格は正反対だったため自然なライバル関係ができあがった。だが、サイジックの古き習わしはそのような競争を禁じていた。私の師である強大なライトマスター・イアケシスは「対立は戦争の種をまく」と私に行った。残念ながら、彼は盲目的な好意も同じ結果を招きうることを学んだ。

研究を進めるにつれて、私はサイジックの掟の欠陥に気づき始めた。その中でも特に大きなものは、サイジックでは全てに優先する受動性だ。困惑した亀のようにのろのろと歩き回り、ごくたまに頭を出し、草の陰から危険を確かめる。イアケシスの目は内部へと向かうようになり、タムリエルでの出来事に対する無関心は、年を追うごとに増していくようだった。なぜライトマスターが孤立へと向かう歩みを開始したのか、いまだに私は分からない。だが我々の特使や顧問たちは1人、また1人と帰還し始めた。島の周囲の霧はその濃さを増し、王たちから嘆願が寄せられる頻度も少なくなった。アルテウムの沿岸を越えた先の出来事となると、我々は過剰な警戒心に苦しんだ。この警戒心には高い代償が伴ったからだ。

風の冷たいある降霜の月の夜、私は古代の石塔、セポラタワーの中を歩き回っていた。あの場所では、時間そのものが琥珀の中に閉じ込められているような感じがする。激しい風が、時を経て傷ついた石を突き抜けて笛のような音を上げ、夢見の洞窟の鈍いうなり声がブーツの底を通して感じられる。そこは力の場所であり、法則と理性は創造の崇高なる謎に道を譲る。あの松明に照らされた回廊の内部に隠された場所で、私はマニマルコが闇の力を注ぎこんでいるところを見つけた。異端の死霊術を隠れて実践していたのだ。そして彼は、私も加わるように迫ってきた。私は拒否し、追放の呪文によって彼の儀式をずたずたに引き裂く態勢を取った。私が呪文を紡ぎ始めようとしたその瞬間、我々の周囲で塔が傾いた。夢見の洞窟の唸り声は必死さを増し、悲痛な響きとなった。周囲全体に島の怒りを感じたため、我々は次の日の朝、ライトマスターと話してこの争いを解決することで合意した。

マニマルコはイアケシスの前に立って、死霊術の研究を許可してくれと熱心に訴えた。イアケシスが拒否すると、マニマルコの態度は下品で好戦的になった。彼はデイドラの獣のように、呪いや古代の冒涜の言葉を吐いた。私は脇に立って、ライトマスターはマニマルコを幽閉するだろうと確信していた。だがイアケシスは彼を幽閉しなかった。彼はマニマルコを叱責し、灰色のローブを取りあげ、島から追放した。

「この気のふれたエルフを、タムリエルの人々へ向けて解き放とうと言うのですか?」と私は叫んだ。

イアケシスは何も言わなかった。彼はただ手を上げて、マニマルコを紫に輝く光で包んだ。そのようにして、私のライバルはいなくなった。私は驚きのあまり立ちつくしていた。私が最も尊敬していたエルフが、狼の檻を開いて、おとなしい羊の世界へと解き放ったのだ。次元融合が起こった今、我々はイアケシスの慈悲の無残な結果を目にしている。

私はその少し後、アルテウムを去った。肩越しに振り返って、あの巨大な丘とゆるやかな牧草地が霧の中に退いていく姿を見たことを覚えている。後になってから、私は自分が出発してほんの数時間後、島が消滅したことを知った。これを偶然と考えるのは難しい。イアケシスが自分の過ちを認め、孤立を選んだのかもしれない。サイジックはマニマルコが解き放たれることを知って、戦うことよりも安全を選んだのかもしれない。いずれにせよ、サイジックの島は記憶の中に消え去り、誇り高きサイジックは暗闇の中に沈んだ。

彼らが戻ってくる時は、タムリエルを平和と繁栄へ導くという誓いを、彼らが忘れていないことを願っている。戻ってくることがあればだが。それまでの間、我々ギルドの魔術師は彼らの責任を引き受ける。弱き者を守り、新たな呪文と新たな発見を追い求めよ。そして何よりも、勇敢であれ。秘められた危機を前にして、魔術師ギルドは先陣を切らなければならないのだ。

蛇の王(17編)The King of Vipers, Canto 17

海はサーペントの舳先の前に割れ
風は黒い布の帆船に捕らえられた
打ち鳴らされる鼓は漕ぎ手の苦悶を隠し
海の悪魔が後を追って泳いだ

暗い雨が寡婦のベールのように降り注ぎ
稲光と雷鳴を従え
虐殺者ヴィスカルネは船の舵輪を掴んだ。
砕け散った千の物語の悪党。

彼は膝をついた者も容赦なく刃にかけた
若き者、弱き者、病人、老人をも
その心の残忍さはしばし語られ
その刃にまみえた者は、決して癒えることなし

残忍な艦隊の標的はサンホールド
オルグヌム王が求め続けたアルトマーの獲物
かつてグリフォンの翼を授けられた黄金の港
語られずにはおかれぬ勝利

ヴィスカルネは船を乗り入れた、と我らが先人は歌う
だが港はもはや空っぽ、動くものとてなし
焼く船もなし、殺すべき無実の者もなし
サーペントの苦い一突きを味わう者はなし

すると丘にそびえる宮殿より
黄金をまとった一軍が突撃した
北からのアルトマーの圧倒的な波
マオマーの冷気に太陽のぬくもりをもたらすため

彼らはヴィスカルネの副官を次々殺し
虐殺者の艦隊は港にて燃え上がった
マオマーは彼の敗北を知り
彼の勢力は斃れ、その無力を示した

祝福されし諸島の案内Our Blessed Isles: A Guide

調査官ルニルスティール 著

愛する親族に七重の祝福を。高貴な探究を一時脇に置いて、私と一緒に心を巡らせてほしい。

我々の驚嘆すべき旅は、まず文明の住処であるアリノールから始めよう。西海岸の山々に居を構えるこの街は、山頂とほぼ同じくらいの高所に位置しており、その白い尖塔は空高くそびえている。我らが支配者たちはこの高みから何千年もの間、自分たちの支配地を見渡してきた。華美な王宮を見る機会に王を敬いなさい。我らが王国の比類なき偉大さに包まれることで感じる誇りだけでも、旅をする価値は十分にあるというものだ。

外国のものに興味があるのなら、サマーセットではアリノール以上に世界の物産を味わうために向いた場所はない。タムリエル全土からの雑多な品々が毎日、船で港に運ばれてくる。神聖執行局が販売してよいと見なすものは、生活に全く新しい視点をもたらし、またアルトマーの生産品の評価を高めるだろう。

我々の品がなぜ他に抜きんでているのか知るためには、少し船に乗り、湾岸を越えてリランドリルへ向かえばいい。この祝福された街は何世紀もの間、高等教育の中心地となってきた。多くの王や女王がサピアルチ大学の知恵を求めてやってきた。大学には我が民の中でも最も偉大な知性の持ち主である223人が、あらゆる物事の知識を進歩させている。

芸術に関しては、公道を西に辿ってリレンシルへ向かい、全世界で最高の娯楽が生まれている場、夢見の館を見よう。この名高い一座の団長は、開拓の最も初期の頃から開かれている野外劇場で、昼夜の別なく演目を披露している。我らの文芸の長い遺産を受け継ぐ者であるため、団員は特別な者に限られる。真に才能のある者だけが加わることができるのだ。君の趣味が何であれ、夢見の館が披露するショーには味わい深い魅力がある。

味わうといえば、我らの島でワインが生まれる地に案内させてほしい。少し道を行くだけでいい。ラッサフェルドのブドウ園はリレンシルとシマーリーンを結びつけそうなほど横長に広がっている。ブドウの木から熟した実をもぎ取る誘惑には抵抗してほしい。確かに、自然にこれ以上のものはないが、ワイナリーで作られたものを一旦味わうと、たった1つでも実を取ってしまったことを後悔することになる。

「でもラッサフェルドの赤なら飲んだことがある」と言うんだろう!愛する親族よ、3000年もののビンテージを熟成された樽から直接味わったのでない限り、本当に飲んだとは言えないのだ。その特権のためには家を抵当に入れなければならないかもしれないが、それだけの価値はある経験だ。

目を北に向ければ、大いなるエトン・ニル山の上にクラウドレストが見えるだろう。あの橋やテラスからの眺めは息が止まってしまうほどだが、おそらく辿りつくための昇り道では、文字どおり息が止まってしまうだろう。もちろん、君がウェルキナーの一族ならば別だ。あのグリフォンの騎士たちは我々の地を頂上から見守り、空を駆けてサマーセットのどこにでも、一瞬のうちに守りへ馳せ参じる用意ができている。

クラウドレストを離れる前に、島で一番眺めのいい場所にしばし立ち、水晶の塔の栄光に目を向けよう。悟りの柱は創造の中枢であり、我らの祖先たちと同じほど古い、限りなき知の源泉だ。サピアルチはその秘密を昼夜の別なく守り、研究しながら、高き者の完全性へと我々を近づけることを望んでいる。

旅の疲れを癒したいなら、シマーリーンは愉快な人々で一杯の、快適な海辺の街だ。オーリドンや長い西街道への旅に出発する前に、静かな夜の休息を取るには理想的な場所だ。そのついでに聖なる調和の修道院を訪ね、均衡の儀式への参加を申し込もう。これ以上によく眠れる夜はないだろう。

東海岸に昇る太陽を拝む喜びを味わったら、旅の最後の地に出発しよう。すぐ南にあるシル・ヴァー・ウォードの原初の荒野は、王立動物園のレンジャーたちによって注意深く管理されている。ここでは、世界中から集められた特別な生物たちを見られるだろう。この場所は一般に公開されており、市民なら無料で見学できる。家族で出かけるにはちょうどよい場所だ。

最後に、西に戻ってアリノールの姉妹都市サンホールドへ行こう。間にそびえる山脈がなければ、二つの都市は避けがたく同化して、失われたアルドメリス以来の大都市になっていただろう。サマーセットでも最大の港の一つを有するサンホールドは頻繁にシーエルフたちの襲撃の対象となるが、港は非常に防衛しやすい。分厚い海の壁から、狭く曲がりくねった入江に至るまで、石がそれぞれマオマーの襲撃への対処を考えて配置されている。難攻不落の砦には違いないが、同時に繁栄する街であり、島における海上輸送の中心地であることも忘れてはいけない。迷宮のような通りで何時間か過ごし、世界最高のシーフードを味わうことを強くお勧めする。

愛する親族よ、旅の終わりがやってきたが、これが我らが故郷への旅の始まりに過ぎないことを願っている。旧エルノフェイは懐かしいが、神々の黄金のぬくもりはいつも、太陽の接吻を受けたサマーセットで涙を乾かしてくれるだろう。

照らされし書Illuminus

なんて劇的で芸術的だろう!哀れな学者はそれぞれ古く退屈な仮面を脱ぎ捨て、新たな役に就いた!大胆な冒険家、苦難の皿洗い、伝説の英雄だ!

しかし悲しいかな!そこへおせっかいな詐欺師がやってきて、学者の遊びを邪魔する気だ!彼らに恐ろしい運命が待っていることを、侵入者は知るよしもない!

勇敢な「英雄」は何度も舞台へ押しかけた。不愉快な言葉とともに、この侵入者は役者から力を奪った。しまいに愚かな本の虫たちは役を忘れ、元の退屈で目新しいこともない、笑って「現実」と呼ぶしかない日課に戻ってしまった。

やがて、大胆な脚本家は英雄の干渉にうんざりした。彼女は暗く激しく動く海の向こうを見つめた。極めて勇敢な芸術家でしか航海できない、恐ろしい悪夢の海だ。そしてその真っ暗な奥底から、彼女は想像を超えた恐怖を召喚した。すぐに、英雄は食われてしまうことになる!

悲しいかな、恐怖は十分でなかった!英雄は脚本家を追って向こう見ずに突進し、作品を踏みつけた。その美しさ、狡猾さ、創造力を持ってしても、輝ける存在である脚本家、照らされし者は英雄の的外れな勝利を予見できなかった。断続的な叫びを上げ、復讐を誓って、彼女は自分の本のページへ退却した。今もそこにいる。待ち続け。次の見事な脚本の構想を練りながら。

称えよ(先人の歌)Praise Be (Ancestor Song)

(音楽:落ち着いて威風堂々)

さあマーラを称えよう
おお、愛の女神よ
我らに子の恵みを授けたまえ
高き我らの母よ

コーラス
手を打って称えよう
神々を賛美しよう!
手を打って称えよう
我らが先人の血を!

さあザルクセスを称えよう
我らの物語を記した者
書記に名誉を
栄光の文書保管者

コーラス

さあイフレを称えよう
おお、第一のエルノフェイよ
森の神
道を示すアースボーンズよ

コーラス

最後にアーリエルを称えよう
全ての者の祖先を
彼らに似せて我らを作った
賢く、気高く、背も高く

コーラス

上級公女の会合への招待状Invitation to the Kinlady’s Conference

会費を支払った貴族、議長、商人王はすべて、上級公女アヴィネッセの邸宅での会議に快く招かれ、現在の政治状況、異国人の流入、女王の布告について話し合うことができます。この案件について、あなたの声を聞き入れることを、上級公女はお約束します。

軽食の提供があります。

上級公女の手紙Kinlady’s Letter

親愛なるアルダーク・ティルカラー

この素晴らしき修道院への赴任を検討してくれて嬉しく思います。実現させるために協力できたのは幸いでした。アイレン女王の急進的でかなり危険な布告について、実りある話し合いをした後だけになお嬉しいものです。一緒に働けることを楽しみにしています。それがシマーリーンだけでなく、サマーセット全体を安全なまま保つ助けになるはずです。

シマーリーンに相応しいかどうか確かめるため、新参者たちを隔離する計画は素晴らしい案だと思います。想像力に富むこの文化の一員になれる能力と気質を持っている者とそうでない者を選別できれば、手遅れになる前に厄介者や情熱に欠ける一時滞在者を見分けられます。完全な解決策ではありませんが、不測の女王が宣言を取り消し、招かざる者ネバラを全員追い返すまで、これで十分でしょう。

サマーセットに相応しいと思われる候補者のリストを送ってください。誰に滞在許可を出し、誰を送り返したかがわかれば、女王代理アルウィナルウェもきっと喜ぶはずです。私は今でもサマーセットを極めて神聖な場所であると考えています。他の種族のことはオーリドンに任せておけばいい。我々の「愛する」女王はいつもそこで、猫やウッドエルフと一緒に浮かれ騒いでいる。仲間が増えれば彼女も喜ぶでしょう。

上級公女アヴィネッセ

食料品の請求書Invoice for Comestibles

今週配送の食料品は下記の通り

-生きているロバ30頭
-干し草の束14個
-リンゴ50キロ
-各種塩漬けの魚4樽
-全粒穀物10袋
-濃縮グリマーベリー5瓶
-ニクサドエキス1壺
-エクトプラズム1ボトル

ウグイアビの肥大化が止まらない。餌のスケジュールを調整して、穀物を与えないようにしてくれ。

森の闇The Forest Dark

ジョセリン・マディア 著

死者の魂で黒く染められた長靴を履き
恐怖の喘ぐ戸口に立った
乾いた茨の向こうに隠れた
狼の喉が遠吠えし、闇の枝が溜息をついた

一度だけその中を彷徨った
年央の心を持った元気いっぱいの若き日に
髪はまだ死の骨ばった手に掴まれてはいない
魂はまだ恐怖の熱い焼印を押されてはいない

苔に覆われた骨とスッポンタケの茎の上
私の足は恐ろしい、油まみれの滑車を見つけた
悪臭の闇が渦巻く木々の向こうに
唸り声をあげる血に飢えた生き物が潜んでいた

周り中で、奴らの息が聞こえた
雨に濡れそぼる森に響く弓鋸を引く音のように
そして遠吠え!あの陰気な聖歌
狩りの王ハーシーンと残忍な気まぐれ

私は向きを変え引っ掻く棘の間を走った
獲物の兎は私の目を見てうろたえる
ぎこちない一歩と共に唸り声が大きくなる
黄ばんだ牙が肉を切り開く

私はギザギザの木々の並びを突き抜ける
ボロボロのシーツをまとい、皮膚はひどく打たれている
しかし黒い狼は茨の茂みの後ろで怯んだ。
真っ黒な目は白い炎に輝きじっと見据えていた

「ここから逃げろ」そう言っているようだった
「お前の炉辺へ、うつろな喜びへ戻れ」
「だが我々狼はまだつきまとう」
「お前の最後の血に染まったスリルを求めて戻る!」

真珠の調査記録3Pearl Research Notes, Log 3

現在アビサルの真珠の研究をしているが、予想していたよりかなり危険なようだ。魂の魔法に反応するらしく、制御できないほどの力を持っている。それが原因で研究者を何人も失った。

最初の犠牲者たちによって、真珠の持つ魔力が目覚めてしまったようだ。その力に引きつけられ、すでに周りにはヤグーラが群がってきている。今はまだ食い止められているが、いずれ防衛線を突破されてしまう。真珠を安全な場所に移動させる必要がある。より内地はどうだろう。サマーセットから完全に隔離するのも一つの手だ。

司法高官アヴァナイレはかなり使えるかもしれない。神聖執行局との繋がりを利用すれば安全に活動できる。サロシルは払った金以上の働きをしてくれた。とにかく、何をするにしてもスクゥーマ常習者は信用できる。自分の唯一の姉だろうと平気で裏切る。

神聖執行局The Divine Prosecution

ノルド文化交流探検隊、巨人殺しのアクスルファ 著

私はこれまでノルド文化交流探検隊の一員として幅広く旅をしてきた。敬愛すべきエボンハート・パクトと関わりのある土地は、モロウウィンドやブラック・マーシュも含めて全て訪問した。オークの住むロスガーも探検した。しかし、私をどこよりも最も苦しめたのは、横柄なハイエルフの住む島サマーセットだ。普通なら誰でも気に入るリガートでさえ、あの自惚れていて耳のとがったミルク飲みの連中を嫌っているほどだ!彼らに対してどんなに苛立っても、私はできるだけ寛大に振る舞い、斧で襲わないよう努めている。

塩水と虚偽の匂いがするこの地に到着して初めての仕事は、とにかく法と秩序に関する情報を集めることだった。いくら平和と外交の旗を掲げて来たと言っても、私たちがノルドであることに変わりはない。ハイエルフに嫌われている理由がパクトと関係しているせいなのか、それとも彼らと見た目が違うせいなのかは分からないが、代表団のメンバーがうっかり決まりを破って、そのせいで外交問題が起きないようにしなくてはならない。島には十分すぎるほど衛兵と治安官がいるが、本当に権力を持ってるのは神聖執行局というおかしな名前の者のようだ。

神聖執行局は、アイレン女王とドミニオンの準軍事的組織であるサルモールに忠実な、権限を与えられた執行官で構成されている。サマーセットでは神聖執行局が法と秩序の象徴であり、宗教的・世俗的な法を守らせる責務を負っている。トリビュナルのオーディネーターに似ているようだが、不気味な仮面や派手な鎧は身につけていない。メンバーの一人、陰気だが気さくなルリオンという名の司法高官に話を聞くことができた。

司法高官ルリオンは、神聖執行局の主な役目が、犯罪や違反における調査官、議論や争いにおける仲裁役を務めることだと説明していた。神聖執行局は彼が言うよりもさらに幅広い権限を持ち、世俗の法の番人であるだけでなく、宗教的および社会的道徳規範の保護者であるような気がした。追求すると、彼は事態が地元の衛兵の手に負えなくなると自分たちが呼ばれるのだと認めた。最後に「調査の必要があるので出掛けるよ」と付け加えて立ち去り、私は兎のミートボールとハチミツ酒の昼ご飯を食べた。

アリノールの街をぶらついていると、ルリオンが常に私の見える所にとどまって神聖執行局の仕事をしていることに気づいた。商人と客の間で起きた口論を、両者から話を聞いた後で拘束力のある裁定を下して事を収め、両者が受け入れた後で立ち去るのを見た。その後で、スリが貴族の財布を盗んでいるところを捕らえ、その犯罪者を街の衛兵に引き渡した。こうした中でずっと、彼は私に目を光らせているような気がした。よそから来た滞在者を観察するのも、神聖執行局の執行官の仕事に含まれるのかもしれない。私はそれでも構わなかった。それに、彼が常に近くにいることで、食事時に彼を探すのが楽になった。

司法高官ルリオンは、ハチミツ酒が好きだろうか?

神聖執行局の事例Cases of the Divine Prosecution

神聖執行局ビューローリーブ、上級執政官リンワレイ 著

神聖執行局はサマーセット島の法秩序を管轄する最高機関であり、女王と王家の宮廷にのみ従う。我々は上級公や上級公女の意志には従うものの、必要であれば貴族においても不正がないかどうかを調査する義務と権力を有している。

例として、不実なキャノンリーブの事例を挙げたい。これは数年前、アイレン女王が玉座につくよりも以前の出来事である。当時、クラウドレストのキャノンリーブは貴族出身で評判も優れたアルトマーで、比類なき血の一族に属していた。このことは当然ながら、血がアルトマーの全てではないことを証明している。我々の司法高官の1人が噂を聞きつけ、キャノンリーブの事業を調べ始めた。徹底的な調査の後、このキャノンリーブがエトン・ニル山の内部に多くある遺跡の1つで行われていた歴史研究プロジェクトから、特に優れた古美術品を着服していたことが判明した。彼は目録や記録を改ざんして外国の収集家に古美術品を売り、美術品が紛失した形跡を一切残さないようにしていたのだ。司法高官は証拠を集め、結局キャノンリーブは、地位と貴族の血があってもこの国の法の外にあるわけではないことを学んだ。

神聖執行局は宗教的、文化的な法律に関することも扱う。アルトマー社会の慣行を守らせることも我々の仕事である。不完全なる完全の事件は検討すべき事例である。この事件はある宝飾師に関するものだが、彼はネックレスや指輪、アミュレットを製作中不運に見舞われ、見た目にも明らかな傷がついてしまった。この職人が完全な宝石細工を作ることにいつも失敗しているという訴えの調査は、筆頭司法高官ナルダルモが引き受けた。筆頭司法高官はこの職人が昔に比べて遥かに熟練の度合いを落としていることを確かめ、令状付きの懲罰措置として、彼が見ている前で職人に自分のアラクソン球を割ることを命じた。職人は再び熟練を得るために働き、新しい球を申請しなければならなくなったのだ。

以上は、神聖執行局によって処理された事例の、ほんの一部である。

神聖執行局の通知Divine Prosecution Notification

女王代理アルウィナルウェおよび神聖執行局の命により、サマーセット島への訪問者全てに関係する以下の命令は、即座に効力を発揮する。

訪問者が十分な戦闘能力を有しており、
かつ訪問者が正当なる道徳意識を抱いている場合、

上記の基準を満たしている全ての新参者は、法の執行任務を代理する任命を受けるため、神聖執行局に出頭すること。

至急、筆頭司法高官キャラウェンまで報告することが推奨される

親愛なる護衛へDear Escort

your name

これを読んでるなら、やっと私に追いついたのね。あなたより先に石の翻訳をしていたら、前の扉が開いたの。あなたを待ったけど、扉が閉まってしまう恐れがあった。石にある碑文を読めば、後を追えるわ。翻訳はわりと簡単なはずよ。

星々の導きがありますように、
アンデウェン

追伸 その骨は私のじゃないから心配しないで。

人間の愚行Folly of Man

よく聞け、警告がある
伸びすぎた草がある
予言ならぬ、このささやかな歌には
心に留めるべき教訓がある

さあ物語は開く、哀れなカビの上に
腐敗の上で育つ定め
この見苦しい細菌、それは手品師の反抗
戦いも終わって遥か後の

これは大いなる断裂、念のため言っておく
天が空から落ちた時
彼らはドシンと落ち、泥に命を与えた
この定命の豚小屋を作った。

それは最悪の汚さ、でもそのことは置こう
私の物語は豚に関するもの
この地に根づいたもの、それは人間という種
垢からキノコが生えるように伸びた

その生は短く、取るに足らないとしても
彼らの不手際には注意せよ
笑うのはたやすい、この単純な害虫を
彼らの略奪を見るまでは

人が破滅の太鼓の音に縛られる時、
死体の神の細工を知る。
トリニマクさえ知らずにいた、彼の最後の一撃に
どれほど強く打たれたかを

人物確認証書Writ of Valid Credentials

ここに神聖執行局を筆頭とする諸機関は、スカイリムの向こう見ずなリガートの背後関係を検証、精査し、証書を発行した。その上で神聖執行局は、当該証書を正式で法的拘束力のあるものと認定した。

ゆえに向こう見ずなリガートは、ノルド文化交流探検隊とエボンハート・パクト双方の正式な外交官兼大使であるというのが、神聖執行局の見解である。この資格ゆえ、彼はサマーセットとアルドメリ・ドミニオンにおいて得られる、あらゆる特権と免責を受けるものとする。

準備、立会、検証
神聖執行局司法高官ロルムデル

水晶の塔The Crystal of the Tower

アルケイン学サピアルチ、リランドリルのラーナティル 著

水晶の塔はサマーセット北部にそびえ立ち、アルトマーが敬愛するすべてのものの導き手であり、象徴である。塔は水晶のような法とも呼ばれているが、我々の大切な国境の彼方で信じられていることとは違い、水晶でできてはいない。塔の名前は頂上にある水晶、透明な法から名付けられた。

透明な法は力とエナジーを水晶の塔に送り、それによってこの謎の建造物はサマーセット全土を守っている。塔より放出された力は見えない日よけのように大地を覆い、諸島の安全を確保している。

こうした守りは古く、水晶がこれを建立したアルドマーによって塔に埋め込まれた時に設定された。率直に言うと、サピアルチは塔や水晶の正確な働きについて、完全に理解している訳ではない。アルドマーが水晶の塔を建立したのは初期のアルドメリ植民者の墓を保存するためであり、エルフの霊魂を永久に記憶し、我々が完全に団結していたわずかな時代を記したことは分かっている。

透明な法の重要性は自明だろう。その名から全てが明らかになっている。透明になっているのは簡単に認知や探知をされず、姿を明らかにし、開かれ、明確かつ隠されぬ状態にされないためだ。法とは、次元の一部を支配する原理と規制を意味している。この場合、水晶はアルドマーの遺産の明確ではっきりした原則を明らかにしている。実際のところ、水晶が実体化した聖性の欠片ではないかと疑っている。

明らかに、透明なる法と水晶の塔に対する重要性の理論はサピアルチ大学の中に留まっている。水晶がアルトマーの完璧に対する意欲を吸収してアルトマーに返し、諸島を弱体化させ危険にさらす完璧ではないものを跳ね返しているという説は気に入っている。私に同意する者が多くはないが、水晶の塔に関する誇りと称賛、安全に対する感情が諸島を覆っていると感じられる時はある。象徴的な関係だ。

もしくは、ただの古代アルドマーの魔法かもしれない。誰にわかるだろう?

水晶の塔の賢者Sages of the Crystal Tower

魔術師ギルドの書記、ヌララン 著

彼らを賢く博学と呼ぶ者もいる。サマーセット諸島で最も優れた魔術の使い手と呼ぶ者もいる(ただし私の仲間の多くはその考えに反対するだろう)。彼らはサピアルチ、水晶の塔の賢者であり、サマーセットの王位継承者の教官である。現代の最も偉大な魔術師と言える者のうち、何名かはサピアルチに存在している。しかし彼らはたいてい魔術や難解な学問の学者であり、それぞれ特定かつただ一つの研究テーマを専門にしている。

サピアルチは水晶の塔の番人を務めている。塔は正当な水晶、「水晶のような法」とも呼ばれる。塔の名前は水晶で出来ているからではなく、塔の頂上に透明なる法という魔法の水晶を収めていることに由来する。

塔の中にはわずかな賢者が住み、塔の管理をして秘密を守っている。他にも研究で出入りする者はいる。当然ながら塔に入るには、ただそこへ行って扉を開けば入れる訳ではない。入口は隠されていて、強力な結界によって守られている。唯一入れる方法は塔の衛士の助けを必要とする。この特別に調整された2人のサピアルチは、それぞれ塔に入るために必要な、決意のダイヤモンドを1つずつ持っている。塔の衛士によって、決意のダイヤモンドが正しく調整されて同時に使用されると、その紺碧のダイヤモンドは水晶の塔への道を開く。そのような衛士は2名しかおらず、それぞれ携えるダイヤモンドへのリンクを確立するため、長く厳しい儀式を受けなければならない。衛士たちはその役目に11年間就き、その後は新たな2名がダイヤモンドの保護を受け持つ。

他の賢者たちはサピアルチ大学に入り、それぞれが魔術や難解な学問における特定の分野を担当して献身する。リランドリルのラーナティルはアルケイン学のサピアルチで、サピアルチとその助手に223の異なる分野が割り当てられたこの大学を取り仕切っている。サピアルチはサマーセット中で個人、もしくは小グループで独自の研究を行うか、大学全体のために特定の課題を研究している。研究の中には水晶の塔、またはリランドリルのサピアルチ大学で行えるものもあるが、それ以外は賢者たちが必要に応じて旅し、自分の書斎に閉じこもって、世界で最も大きい複雑な謎についてあれこれと考える。

サマーセット諸島の支配者が領土を収める慣例として使うプラキスの書の解釈者として、サピアルチは重要な儀式学の持続における役割を果たしている。プラキスの書は、アイレン王女が生まれた際には王女が落ち着きのない不穏な時代を象徴し、いずれは支配することになると予言したとされている。時が来れば、王位継承者は必要条件として王位継承の3555日前に、サピアルチの元へアルトマーの王政プラキスと儀式学を学ぶために訪れる。その後、サピアルチ大学は新しい支配者にとって強力な人材として仕え、求められれば助言や意見を提供する。

学問を追究している者として、サピアルチは兆候や前兆に対して過度に興味を持っているように見える。彼らは星座の動き、月の位置、動物の気質、さらには一世一代のスープに浮いている泡の渦にまで、深く重大な意味があると考えている。こうした知性と迷信の綱引きは、私たちにとって矛盾のように思えるが、サピアルチは同じコインにおける表と裏のように捉えている。そしてコインと同じように、中に入る代金を払うには両方とも必要だ。少なくともサピアルチはそう言っている。

サピアルチの主な研究分野には、オブリビオン学、教化、アルトマー遺産、付呪、神話史、デイドラの誤謬、月学、神正統主義がある。それぞれの研究室と研究分野を示すため、各自がアルトマー美術のサピアルチ、海軍考案のサピアルチ助手といった肩書を持っている。サピアルチは一生、もしくは学問分野の変更を申し立てるまで、その肩書を持つ。ただし、塔の衛士は決意のダイヤモンドにまつわる責務を11年間全うした後、塔の鍵を後任となる次のサピアルチに渡してから、自分たちの研究分野に集中する生活に戻る。

聖なる数に関する考察Thoughts on the Sacred Numbers

この完璧な庭に座り、私は聖なる数について考える。吉兆とされ、宇宙の存在にとって重要と我々が認める数である。

3は最高位の天体の数であり、太陽と2つの月に体現されている。これは私の完璧な娘たちの数でもある。だから我々はこれ以上後継ぎを生んではならない。

5は元素の数である。現実は大地、大気、水、火、エーテルから成っているからだ。これはまた、私が机の上で同時に開いておく本の数でもある。

8は惑星の数であり、3と5の合計でもある。8はまた私が哲学協会の会員たちと繊細なトーニーポートワインを飲む際に定めている、杯の数の制限でもある。それ以上でも、それ以下でもない。

以上が良き数である。そして良き数の合計を我々は16と呼ぶが、これは非常に強力な数だ。

しかし悪い数には気を付けねばならない。2は視野を欠き、二元性を示そうと試みる。それが不可能であることは誰もが知っている。

船乗りに贈るシーエルフガイドA Sailor’s Guide to Sea Elves

シルバーセイル号のヴィリルダ 著

あなたが王立海軍の一員であれ、単に海上の旅行者であれ、マオマーの船を地平線の上に発見するという不運を経験する前に知っておくべきことがある。このガイドは避けがたい事態が起こる日に備える一助になるだろう。これを最初の教訓としてほしい。たとえ短時間でも海上や海辺で過ごせば、シーエルフに出会うことがある。

名前が示しているように、シーエルフは水上を故郷とする。彼らは波を利用することに長けているため、マオマーの船は海と呼べるような場所でさえあれば、いつまでも海上にいられる。マオマーは我々の交易船を襲撃し、艦隊に奇襲をかける際、この点を最大限に活用する。退却するシーエルフの船は決して追いかけてはならない。たとえ弱っているように見えてたとしても。彼らは相手に追いつけると思わせて誘い込むが、勘違いしてはならない。シーエルフのカッター船は我々の艦隊のどの船よりも早い。すぐに沖に誘い込まれて安全に退却できなくなり、鮫のようにあなたの周囲を回り出す。食料が底を突き、衰弱して戦えなくなると、マオマーはとどめを刺しに来る。卑劣ではあるが、有効な戦法だ。

第二に、地上が見えるのでない限り、シーエルフの船から逃げてはならない。見えているとしても、大いに気をつけるべきだ。問題はマオマーに追いつかれるかどうかではなく、いつ追いつかれるかだ。マオマー船に対峙した時の最良の行動は、立ち止まって戦うことである。少なくともこれなら優位に立てる可能性がいくらかある。シーエルフの艦隊は大抵の場合、小さく小回りの利く船で構成されており、素早い一撃離脱の戦法に適している。素早く鼻先をへし折ってやれば、本格的な攻撃へと入る前に追い払える可能性がある。

マオマーと戦う際、恐ろしいのはバリスタなどではない。彼らは海そのものを武器にする。スループ船より大型の船ならどれにでも、その帆の下に少なくともシーメイジが1人いて、風と嵐を召喚し、あなたの船をおもちゃのボートのようにひっくり返そうとしてくる。マオマーのシーメイジをできるだけ早く無力化するため、あらゆる努力を費やすべきである。波で倒せないとなると、シーエルフは獣を放ってくる。マオマーは戦力のために様々な種類の海の肉食獣を交配し、訓練している。水上を飛んで甲板を襲う翼のついたリーフバイパーから、戦艦を転覆させるほど大きなシーサーペントまで。いずれにせよ、一定の速度で移動し続けていれば、こうした怪物はあなたの船へと辿りつく前に疲弊するだろう。

マオマー自身について言えば、欺瞞的な戦術に騙されてはいけない。シーエルフは凶悪な戦闘員であり、アルトマーの血を流す以外の望みを持っていない。彼らがあなたの船の甲板に乗り込んできたら、厳しい戦いが待っているだろう。マオマーは海が最も荒れている時でさえ驚くほどバランスを崩さず、船の索具を通り抜けることに関しては軽業師よりも機敏だ。想像がつくかもしれないが、よく訓練され装備を整えた海兵が侵入に対する最大の防御となる。しかし白兵戦では、回り込みを防げるように陣形を整える必要があるだろう。シーエルフの襲撃者は分散した敵を素早く圧倒する包囲戦術を好むからだ。

ガイド1冊から学べることは限られているが、この知識によって、生死を分ける日の準備を整えやすくなることを願っている。フィナスタールがあなたの船旅を導くように。

捜査官ヴェイル:シャンブルの廷臣(パート1)Investigator Vale: Retinue of Shambles, Part 1

ウッドエルフが汚れ一つない船室のベッドの上で、大の字に倒れていた。短剣が胸から突き出し、下には血だまりが拡がっている。「殺人か、ヴェイル?」と帆船シルバースワン号の船長を務めるハイエルフ、ネムダランが言った。もう少し不吉でない方がいいと期待しているのは明らかだった。「間違いないのか?」

捜査官ヴェイルはため息をついた。「誤って自分の心臓に刃を突き刺したと思うの、ネムダラン船長?ないとは言い切れないけど、可能性はとても低いと思うわ」

ウッドエルフの醸造業者フィリノールは、サマーセットの国境を開放するというアイレン女王の布告に応えるつもりでいた。ハイエルフの故郷に足を踏み入れる、最初の新移民の一人になるはずだった。彼は今やヴァレンウッドの想い出、イフレのキャンプの客人でしかない。捜査官は身をかがめて近寄り、醸造業者の胸から突き出している柄と持ち手を調べた。

「お高く止まったハイエルフの誰かがやったに違いない」とカジートの仕立屋ザラキが言った。「アイレン女王がいくら約束しても、あの連中は自分たちの清純な島を我々に汚されるのが我慢ならないのさ」

「そうかもね」とヴェイルは言いながらロウソクの火を使い、殺人に使われた武器の持ち手を装飾している、緻密な彫り模様をよく調べようとした。「でも、儀式用の短剣が使われているのは重要だと思う。きっとデイドラ関連ね。ここにあるシンボルの全てが分かるわけじゃないけど、模様は複数のデイドラ公の崇拝を示唆している。興味深いわ」

「それで、推理はどうなんだ、ヴェイル?明日の朝にはシマーリーンに到着する予定なんだよ!」とネムダラン船長はせき込んで言った。

「私の推理ではね、船長さん。あなたの船には殺し屋が乗っているだけじゃない。殺し屋で、しかもデイドラを崇拝してる何者かが乗っている。一番興味深い類の殺し屋ね」とヴェイルは言った。興奮を隠す気もほとんどないようだった。「この旅もようやく面白くなってきたわ!」

* * *
ヴェイルとカジートの仕立屋は船底にある船室を捜索し、床から天井まで積み上がっている木枠箱、小樽、大樽などの狭い隙間を探した。「私に付いてこなくてもいいのよ、ザラキさん」と、捜査官は困惑して言った。「自分の身を守る術は心得ているわ」

「ザルは信用してない訳じゃない、捜査官」とザラキは返しながら、黄褐色の毛から蜘蛛の巣を払いのけた。「ただ、一人でこの船底まで下りて行かせるのはよくないと思った。殺人犯がうろついているのだからな。船長や臆病者の船員たちがどうして手伝いを申し出なかったのかは、ジョーデとジョーンだけがご存知だ!」

ヴェイルは積み上がった木枠箱の山2つの間に体を滑りこませ、貨物の中にある、少し開けた場所へと進んだ。山のうち1つがぐらついていることにヴェイルは気づいた。支えている縄が旅の間に緩んでいたのである。彼女は注意深く進んで不安定な山を通り過ぎ、開けた場所の中心に立った。

「ちょうど予想したとおりの場所で見つかったわ」とヴェイルは誇らしげに言い、急ごしらえで作られたデイドラ公の祠を指差した。「グウィリム大学でデイドラ学の教授に受けた授業の記憶が正しければ、誓いと約束の神ね」

ザラキはルーンに覆われた床と、その中心から立ち上がっているデイドラのシンボルの周囲を警戒しながら回った。「大学に行ってたのか?」

「まあ、個人授業を数回聴講したと言っておくわ」とヴェイルは悪戯っぽく言った。「私が彼女から学んだのと同じくらい、彼女も私から学んだ。それがちょっとした自慢よ」

カジートが毛に覆われた手を、邪悪なルーンに囲まれ頭蓋骨を上に乗せた木製の台座に向かって伸ばすと、捜査官はその手をぴしゃりと打って止め、静かにするよう身振りで示した。隠された祠に足音が近づいてきていた。ヴェイルとザラキは、密集した木枠箱の影に身を押しつけて待った。少しすると、木枠箱の山の隙間から、高貴な身なりをした背の高いハイエルフが現れた。

「あなたがデイドラ信者?」と尋ねつつ、ヴェイルは驚いているハイエルフの進路を塞いだ。

「欺きの王の餌食になるがいい!」と彼は叫び、ベルトから曲がった短剣を引き抜いた。「よくも、シャンブルの廷臣の問題に首を突っ込んでくれたな、ブレトンの放浪者め!」

ヴェイルが返事をする前に、ザラキが飛び出した。仕立屋はどこから取り出したのか剣を構えて、信者の短剣による突きを防いだ。「レディに向かって、その態度はないだろう!」

信者は短剣をカジートに向け、呪文を唱え始めた。唱え終わるのを待つことなく、ヴェイルは高価な革のブーツをハイエルフの腰にめり込ませた。蹴りは信者を横に突き飛ばし、緩んでいた木枠箱の山に突っ込ませた。木枠箱は床に散乱し、その下の信者を押しつぶしてしまった。

「しまった!」とヴェイルは言い、目にかかった髪の毛を払い落とした。「全部丸ごと落ちてくるなんて思わなかった!死んだら口を割らせられないじゃない!」

「とにかく、殺人はこれで終わるんだろう?」とザラキは言った。

「こいつはシャンブルの廷臣と言っていた」とヴェイルは答えた。「これはまだ始まりにすぎない予感がするわ」捜査官ヴェイルは立ち止まり、見定めるようにカジートを眺めた。「それと、あなたはただの仕立屋じゃないって気がするんだけど」

「私が?この者は何を言いたいのか見当もつかないな、捜査官」

ヴェイルは顔をしかめた。「謎ね、ザラキ。知らないの?捜査官ヴェイルは謎を解くのよ。でもそれは後で解決するわ。今は二人とも、酒が必要ね。船底の掃除が必要だって船長に伝えましょうか?」

捜査官ヴェイル:シャンブルの廷臣(パート2)Investigator Vale: Retinue of Shambles, Part 2

捜査官ヴェイルは酒場のラウンジにある小さなテーブルに座り、装飾を施された輝くグラスからゴールデンワインを飲んだ。ラウンジの窓はシマーリーンの大通りに面しており、ヴェイルはハイエルフたちが行きかう姿を見ながら、シルバースワン号乗船中に起きた出来事に思いをめぐらせた。シャンブルの廷臣と名乗っていた信者たちのことが、ヴェイルは口に出した以上に気になっていた。この集団が複数のデイドラ信者から成っていて、何か不吉な計画を抱いているらしいとなればなおさらだ。その計画はサマーセットだけでなく、世界全体を脅かすものだとヴェイルは気づいていた。

これは明らかに、ヴェイルが普段相手にするような事件ではなかった。しかしこの近くには、他に解決しようと名乗り出る者は誰もいなかった。サマーセットへの旅は基本的に何事もなく、気楽なものになるだろうと思っていたのに。

ただの仕立屋だと主張するカジートが大股に歩いてきて、ヴェイルの向かい側にある空いた椅子に身を落ち着けた。「ザラキ抜きで飲み始めたんだな」と言いながら、彼は自分のグラスにワインを注いだ。「この者は追いつかなきゃな。ぐいっと!」

ヴェイルはザラキとグラスを合わせてから、泡立つワインをぐっと飲んだ。「白状するけど、この異国の地では調子が出ないのよ」と彼女は言った。「私が普段使っている情報屋や調査網は海の遥か向こうにある。シャンブルの廷臣とかいう連中について、詳しく知るための方法を考えなきゃ」

「心配はいらない、お嬢さん」とザラキは陽気に言った。「こういう時に私たちを助けてくれそうな奴を、この者は何人か知っている」

「私たち?」ヴェイルは訝しげに言った。「最初の質問に戻るけど、本当は何者なの、ザラキ・ダー?」

「この者は糾弾するような口調に傷ついたぞ、捜査官。でも名前の後に敬称をつけてくれたのは嬉しい。その響きはとてもいい。とにかく、信者たちをどうにかしたいんだろう?」

「もう、分かったわよ」と渋々ヴェイルは言った。「サマーセットでの、あなたの情報源のところに連れて行って。きっと服の卸業者やボタン商人が、この島のデイドラ信者の活動を全部教えてくれるんでしょうね」

「質問する相手と内容さえ心得ていれば、驚くほど多くの情報が得られるものだ。そばにいて、ザラキに手本を示させてくれ!」

* * *

4時間後、ザラキについてシマーリーン中の店先や酒場、裏路地を回った後では、ヴェイルもこのカジートが相手に話させる術を心得ていると認めないわけにはいかなかった。彼は魅力的で愛想がよかったが、相手に応じて、話を引き出すために必要な場合は恐ろしく威圧的になった。ヴェイルにはこの男を敵に回すつもりはなかったが、腕前には感心した。それでも、曖昧な噂話や突飛な主張を除けば、シャンブルの廷臣を探す手掛かりは得られなかった。その時、二人は巻物や写本、とてつもなく古い本でいっぱいの地味な店に足を踏み入れた。

「レンテルファン!」とザルは静かな紙の山に向かって呼びかけた。「旧友のザラキが訪ねてきたぞ!」

高く積み上がった山の1つから、ハイエルフが出てきた。長い黒髪の女で、貴族の装飾品を身につけていた。首の周りの鎖からメダルがぶら下がっており、蜘蛛が糸を紡ぐ姿が描かれていた。美しい意匠だが、なぜかヴェイルは居心地が悪くなった。

「レンテルファンはもうこの店の主じゃないわよ」とハイエルフは言った。「何かお手伝いできることがあるかしら。あるとは思えないわね。私は普段、あなた方のような人々とは取引をしないもの」

「あのねえ、何を偉そうに――」ヴェイルは我慢できず、女の前に歩み寄ろうとしたが、ザラキの力強い手に押し留められた。

「お連れの汚い猫は自分の立場をわきまえているようね、ブレトン」とハイエルフは嘲笑った。「あなたも見習えばいいのに」

「高貴なお方よ、これはとんだ失礼を」ザラキは喉を鳴らし、二人の女の間に割り込みつつ、ハイエルフに向かって低く頭を下げた。ザラキは仰々しく複雑な謝罪を続け、その間ヴェイルは後ろに下がり、この機会に周囲をよく観察した。

捜査官ヴェイルの視線は、羊皮紙と何十もの巻物の山の下に埋もれている小さな机の上に止まった。特に1枚の紙がヴェイルの注意を引いた。名前と場所のリストのようだが、その一部はヴェイルが今回の旅行の準備のため、サマーセットの地図を調べていた時に見た覚えがあった。紙にはヴェイルに分からないシンボルも含まれていた。ヴェイルはザラキがハイエルフの視線を塞いでいることを確かめつつ、羊皮紙を長いコートの内ポケットに滑り込ませた。

「もう飽きたわ、ザル」と言って、ヴェイルは黒い髪を振り上げ、唇を目いっぱいとがらせた。「夕食といいワインを約束するって言ったじゃない。ここはダガーフォールのレストランとは似ても似つかないわ」

二人は素早く店を出て、あのハイエルフが追って来ることを考え、背後を一瞥した。

「今、お前が戦いそうになった相手が誰だか分かるか?」ザラキが聞いた。

「メダルから判断するに、メファーラの上級司祭ね」とヴェイルは言った。「しかも驚くほど失礼なやつ。でも、この辺りで起きていることの手掛かりになるかもしれないものを見つけたわよ。あなたの知り合いに、デイドラ語を読める人がいれば」

「この者はたくさんの物事についての専門家をたくさん知っている」

ヴェイルはカジートに微笑みかけ、彼の前足を握った。「あなたのことが好きになってきたような気がするわ、ザラキ・ダー」敬称で呼ばれて、ザラキが喉を鳴らす音が聞こえた。

小さな蜘蛛が後をつけてきていることには、二人とも気づいていなかった。

捜査官ヴェイル:シャンブルの廷臣(パート3)Investigator Vale: Retinue of Shambles, Part 3

捜査官ヴェイルは落ち着きなく足で地面を叩きながら、古書店から取ってきた羊皮紙をハイエルフが翻訳し終えるまで待っていた。ザラキは彼女に目で合図したが、ヴェイルは無視してさらに激しく地面を叩いた。

デイドラ学のサピアルチ助手であるガラーディルは体を後ろに反らし、目をこすった。「私のところに持ってきてくれて正解でした、密偵どの――」

「いやいや」ガラーディルの呼びかけにヴェイルが眉をひそめたのに気づいて、ザラキは割り込んだ。「ここにいるのは皆友人だ。そんなにかしこまらなくていい。ザラキか、ザルと呼んでくれればいい。話を続けてくれ…」

「ここに出ている名前はハイエルフ社会の著名なメンバーです。各人がサマーセットの決まった場所に結びつきを持っている」とガラーディルは説明した。「デイドラの象徴については、彼らは3柱のデイドラ公を崇拝しており、強力な遺物に言及しています。この遺物はどのようにしてか、人々と場所に関連しているようです。実に興味深い!これをどこで見つけたと言いましたか?」

「そんなこと言わなかったわ」とヴェイルは言って羊皮紙を取りあげ、背を向けて立ち去ろうとした。

「そんなに急いでどこに行くんだ、お嬢さん?」とザラキは言って、ヴェイルを追おうとして立ち上がった。

「ただのカジートの仕立屋が私の仕事に興味を持つとは思えないわ」とヴェイルは何気なく言った。「でも、〈女王の瞳〉の密偵、ザラキ・ダーの助けなら借りてもいいわよ」

「何?一体誰が…?この者は別に――」ザラキは口ごもった。そして静かに言った。「いつ分かった?」

「知らないの、ザル?」とヴェイルは意地悪く言った。「女王の耳ザラキ・ダーの物語は、文明の劣ったハイロックの海辺にさえ届いているのよ。私はあなたの黄褐色の、毛深くて丸い…頭に目をやった瞬間から分かってたわ。まあ、それよりは後だったかもしれないけど。さあ、シャンブルの廷臣を止めに行くわよ」

「おかげさまで、ザルの毛深くて丸い…頭は皆に大人気だよ」とザラキはブツブツ言いながら、捜査官ヴェイルに追いつこうとして急いだ。

並んで歩く二人は、小さな蜘蛛がヴェイルの長いコートの後ろにくっついている姿を見ていなかった。

* * *
日没が迫る中、ヴェイルとザラキ・ダーは注意しながらシマーリーンの外にあるサンゴの森へと進んだ。石のように硬くなったサンゴは、島の東海岸に沿って不思議な迷宮のような地形を生み出していた。羊皮紙に記されていた手掛かりが二人をここに導いたのである。この一帯に数歩入りこんだ途端、二人は不吉な歌声が突き出たサンゴに反響して、自分たちの周辺に迫ってくる音を聞いた。未知の言葉は刃のように鋭く、ヴェイルの背筋を寒くし、ザラキは毛を逆立てた。

二人はサンゴの迷路の奥へと進み、周囲に目を光らせた。サンゴの柱の後ろでかがり火の明かりが明滅したのを見て、ヴェイルはその方向へと向かった。ザラキは無言で彼女の肩に前足を置き、警戒を呼び掛けた。ヴェイルはうなずいて、柱の周囲を覗き込んだ。

サンゴの森の中心部にある開けた場所の中には、以前古書店で会った、メファーラのメダルを身につけたハイエルフが、三面の祠の前に立っていた。祠は抽象化されてはいるものの不愉快なほど不格好で、3柱のデイドラ公のシンボルがあしらわれていた。女は3つの燭台に燃えている炎に見入りながら、同じ言葉を何度も繰り返し詠唱していた。彼女の背後では空気が揺らめき、奇妙な、自然のものではない光がきらめいていた。何かが起きようとしていた!ヴェイルが動くよりも先に、小さな蜘蛛が彼女の背中から小走りで降り、信者に走り寄った。女の肩にまで駆け上がった時、蜘蛛は猫ほどの大きさになっていた。

「ちょうどいい時に来たわね」とハイエルフは軽蔑をむき出しにして言った。「下等な種族の中ではあなたたちが最初よ、生まれ変わったアルトマーの威厳と力を味わうのはね!」

「ねえ、ザラキ・ダー」ヴェイルは言った。「この尖り耳の、大げさでデイドラ好きな馬鹿は何のことを言ってるんだと思う?」

「見当もつかないな、お嬢さん」ザルが返答した。「だが、この者はあの祠の見た目が気に入らない。あまり合法でもなさそうだ」

「そう、それだったら」とヴェイルは言って2歩前進し、間に合わせの祠に重い革のブーツで蹴りを入れた。祠はバラバラになり、小さな燭台3本は飛び散って、3つの小さな炎のうち2つが消えた。

信者の背後の光が消え、空気が揺らめくのを止めた。女は激昂して叫んだ。女はローブから長く湾曲した短剣を引き抜き、肩に乗った蜘蛛は立ち上がって口を開いた。

「デイドラ信者の遊びには付き合っていられない」とザラキ・ダーは言い、自分の剣を抜いてヴェイルの前に進み出た。「女王の命により、この者はお前の降伏を受け入れよう!」

それを合図に、十数名のドミニオン兵士が開けた場所に押し寄せ、信者を包囲した。各人が武器を構えていた。信者と蜘蛛は周囲を見渡してから、女は短剣を落とし、蜘蛛は元の姿勢に戻った。

「このままでは終わらないわよ」とハイエルフの信者は捨て台詞を言った。

「そうかしら、終わりだと思うけど」とヴェイルは陽気に言い返した。「少なくともあなたに関してはね」

* * *
ヴェイルは枕にもたれかかり、宿屋の上階の暗い部屋を見上げた。「ああいう連中がまだいると思う、ザル?」

ザラキ・ダーは片手で自分の頭を抑えつつ、もう片方の手でヴェイルのあらわになった腿を撫でた。「いつだっているさ、お嬢さん。だから女王はこの者を抱えているんだ」

「まあそれなら、とりあえず気にしないでおくわ。私はもう一度あなたの黄褐色で毛深い――」

ザルはヴェイルにキスして言葉を遮った。彼女もお返しをした。

懲戒処分Disciplinary Action

クオリル

厄介者の番人助手のことだが、協力できる機会を狙ってレンジャーをつけ回している。しかもまたレンジャーへの異動を志願してきた。エリーゼに今の任務に集中させろ。そうすればそんなことをしている暇はなくなるはずだ。お前の部下の管理はお前の仕事だ。だがそれが私たちの仕事に影響を及ぼすなら話は別だ。レンジャーは隠密行動を得意としているとエリーゼに伝えてくれ、訓練はそこでもできるはずだ。

管理者ヴァインロア

倒れし者の言葉Words of the Fallen

デイドラ公を決して信じるな。この件から学んだことはそれだけだ。私は昔、自分には目的があると思っていた、大がかりな計画の一部なのだと。私は目的を果たした。少なくともそう思っている。だが結果的に、それは想像したようなものではなかった。メリディアは私を器だと言った。私の運命は、彼女が作った瞬間に決まっていたのかもしれない。

私は彩られた部屋に戻ってきた。私はメリディアのためではなく友人のため、剣の修復に力を注いだ。それが私の目的だと思ったからだ。確かに私は戻ってきた。だが今回は前と違う。私の光は消えかかっているのだ。暗闇が近付いている。もう時間がない。光が消えてしまえば、全て終わりだ。

メリディアについて教えておきたいことがある。彼女は詐欺師だ。彼女に尽くすことで、私は自由を与えられるはずだった。彼女は私に、自由とは虚無を別の言葉で表現したものだと語った。彼女を信じるな。デイドラ公を信じるな。絶対に。

だが私は安寧を手に入れた。メリディアは私に世界と守るべきものを見る最後のチャンスを与えてくれた。かつて愛した者たちを救うため。少なくとも、それには感謝している。

できるなら全員に別れの挨拶をしたかった。スコルド。ガブリエル。寂しくなる。だが、とにかくyour nameだ。彼らが私にとってどれほど重要な存在だったのか、理解されることはあるだろうか。もしかしたらまた会えるかもしれない。他の場所で、他の時間に。だがその時の私は、こんなことを書かないだろう。そんな私もいつかいなくなる。仕方ない。

できることなら皆と一緒にもっと過ごしたかった。もっと冒険に行きたかった。いつも話していた飲み物を注文したかった。

友人たちには安寧と幸福と愛に満ちた人生を送って欲しい。私は手に入れられなかったが、彼らには権利がある。この本を見た人に言っておくが、私はここで挙げた人々のことを決して忘れない。彼らに会うことを願っているが、会ったら伝えて欲しい。

愛する者を守れ。手放すな。その瞬間を大切にしろ。笑顔にし、一緒に喜べ。一緒に笑いながら、とても貴重な瞬間だということを決して忘れるな。

それから、私のことを忘れるなと伝えてくれ。まあ、私は伝説の存在だからな。

親切で、男前で、謙虚な騎士

ダリアン・ゴーティエ

謎の後援者:メファーラThe Inexplicable Patron: Mephala

ディヴァイス・ファー 著

トリビュナル聖堂の自称「司祭兼学者」と話すと、私はよくあることだがいつも気恥ずかしくなってしまう。だが我々の祖先たちを「受け入れた」デイドラの性質について大きな誤解があったとしても、当たり前だが驚くようなことではない。現代の司祭はつまらない暗証と、巡礼から金を搾り取る技術のみを訓練しているようで、本来の役割から悲しくなるほど大きく逸脱してしまっている。これを冒涜行為だと考える者もいるだろう。その場合は私との話し合いに招待している。お望みなら魔法による対決でも構わない。社会についてそれほど興味はないが、無知を是認するこの流れを誰かが止めなければならない。

ダンマー全員が私と同じような知的領域に到達できるとは思わない。一般的なエルフは、日々を生き抜くために日常生活を中心に考えている。だとしても、いかなる場合でも怠惰は嫌悪すべきことであり、下層階級の者でも独りよがりな情報の選択は許されない。善きデイドラのわかりやすい例を挙げさせてもらおう。まずは最も誤解されやすいメファーラについてだ。

「善き」という単語はいかなるデイドラに対しても不適切な表現方法だ。だが残念なことに当たり前のように使用されている。各々の領域の絶対的な表現者であるデイドラ公たちは、我々の道徳で分類できるような行動を取らない。デイドラとはそういうものだ。メファーラ、ボエシア、アズラは、ダンマーに多くの利益をもたらしてくれた。そのことを考えると確かに善き存在だ。だがその動機と目的、それがもたらす影響については我々の知るところでない。

メファーラが「網の紡ぎ手」と呼ばれているのには理由がある、だが現代のダンマーはこの異名を知らないらしく、共感を示す代わりに、メファーラが「守護している」正反対の存在である、暴力と知恵と詩の伝道者ヴィベクに傾倒している。この風潮が原因で、メファーラの望みである本来の意味が覆い隠されてしまっているのだ。

メファーラは我々の先人に、全面戦争時に敵だけでなく、味方とも戦うために暗殺術を教えた。子孫たちがタムリエルに移住し、ノルドやダンマーと難しい交渉をする時に「善く」役立ったことは間違いない。我々は綿密な計画の立て方、嘘の付き方、敵をおびき出して罠に掛ける方法、困難の乗り切り方や結果の予測方法を学んできた。しかし、このデイドラ公がなぜ我々を特別視するのか、自問する者は少ない。騙されやすい者は我々が選民だという幻想を抱き、冷笑的な者は我々がデイドラのおもちゃに過ぎないと考える。だが、どちらも恐ろしいほど馬鹿げた仮説でしかない。

デイドラには創造力がないことを忘れてはならない。彼らができるのは模倣、操作て誇張だけである。中には定命の者をただの道具としか考えていない者もいるが、メファーラは当てはまらないだろう。彼女の行動には必ず意味がある。アービス全体を、因果を結び付けるシステムと考えており、彼女自身も新たに糸を紡ぎ、結果に影響を及ぼしている。

ではその目的は?それは私のように、自分で見つけなければならない。私が秘密のデイドラ公の秘密を明かすほど、愚かだと思うだろうか?

番人の誓いThe Keeper’s Oath

番人の目に祝福あれ、
深紅と黄金で作られ
悔悟の眼差しは呪われた墓に向けられ
最も昏き日々より
骨と死の幕が下で動く時
灯る火を写すため
彼女が負う闇を強いて
魂をきつく縛るため

筆頭司法高官キャラウェンへTo Chief Justiciar Carawen

筆頭司法高官キャラウェン

任務は失敗した。司法高官アヴァナイレが裏切り、配下の兵士たちを何人も殺した。彼女はトー・ヘイム・カードに逃げ込んだ。残った戦力で彼女を追跡中だ。星々の導きがあれば、真珠を取り戻せるだろう。

この伝言があなたに届くことを願って、兵士を派遣する。増援を送ってもらいたい。この遺跡には、アヴァナイレ以外の相手も待ち伏せている。

テロムレ隊長

貧しき姫(第1幕)The Peasant Princess, A Play in One Act

語り手:かつてアリノールの中心にヴィレニアという若いエルフが住んでいた。かなりの美人であり、大勢から讃えられていたが、家は常に貧しかった。そのため召使として働いていた

ヴィレニア:ああ、この境遇から逃れられたらいいのに

ナレーター:ヴィレニアは熱心に掃除をして、女主人のテリルディルからよく褒められたが、なおも驚きに満ちた豪奢な生活を夢見ていた。王宮での来たる舞踏会を耳にすると、ぜひ参加したいと思った

ヴィレニア:王宮の舞踏会!王子様もきっといらっしゃるわ!でもこのような服では行けない

ナレーター:ヴィレニアは決意した。節約し、嘆願し、懇願し、ようやく美しいドレスを購入できた。裕福な女主人を説得して付き添いにもなってもらった

テリルディル:あなたはこれまでずっと働き者だった。頼みを断れる訳がないでしょう?

ナレーター:それでも、賢い女主人のテリルディルは召使に警告を与えた

テリルディル:舞踏会に行ってもいいけれど、あなたの居場所は忘れないでね、ヴィレニア。どれほど美人で、綺麗に着飾ったとしても、召使であることに変わりはないわ

ナレーター:これを聞いたヴィレニアはとても悲しかった。裕福な貴族の目にとまりたかったのだ。しかし、よき召使として彼女は押し黙っていた。まさに次の夜、女主人と召使は舞踏会に参加した

ヴィレニア:何て素晴らしい衣装!何て美味しい食事!毎日がこのような優雅な雰囲気なら、私はサマーセット一幸せなエルフになるでしょう

ナレーター:余りにも美しいヴィレニアは、若い王子の目にとまった。あらゆる礼儀作法を忘れてやってきた王子に踊りを誘われた。王子と召使の少女がその夜の大半を踊ったのであった

王子:あなたほど美しいエルフは見たことがない。ご両親はどなたかな?

ヴィレニア:王子様、正直に言わなくてはなりません。両親は貧しい農民であり、私は裕福な女主人の召使の女に過ぎません

ナレーター:魅力に溢れるエルフの美しい目を見つめたまま、よき王子は事実に驚愕した

王子:私は騙されたのか!求愛していつかは結婚するような大貴族のエルフと思ったが。ただの召使の少女とは

ナレーター:ヴィレニアはその言葉に傷ついたが、本当のことだと分かっていた。王子と結婚できるのは貴族のエルフに限られる。ヴィレニアは、自らの城で相応しい夫を見つけると決意した。当然のことながら、王子は相応しい評判の上級公女と結婚し、召使の少女とは二度と話さなかった。よって私たちはみな忘れてはならない。外見や所持品にかかわらず、我々は常に家に縛られるのだ

粉砕の技、第一巻ART OF SMASHING VOL. 1

ハードカバー版

言葉の細工師ウルベク 著

序文:

ウルベクはこの本が、趣味と実益のために粉砕する夢を追求する、喜びと自信を読者に与えることを願う。粉砕を始めたばかりの時、ウルベクは小さく貧弱な子供で、クラン・タムノッシュのために岩を削っていた。ウルベクも多くの粉砕を失敗してきた。特に紙だ。今ウルベクは言葉を粉砕する事業で大成功した起業家だ。粉砕の難しさに粉砕されてはならない。粉砕が辛くなったら、さらに激しく粉砕するべきだ。

献辞:

粉砕の旅の序盤でウルベクを支えた最初の顧客、ウルベクの親友ファローク、床で寝かせてくれた小さな親方のラウモントに。

第一章:粉砕する対象の発見

粉砕の道を進むことを選んだ場合、どこから始めればいいか不安だろうとウルベクは推測する。全てのものが粉砕に適しているわけではない。木を粉砕するのは楽しいが、バラバラになって壊れるだけだ。金属にも粉砕に向いたものはある。だが正しい粉砕の仕方を知らなければ、脆くて弱いものしかできない金属もある。粉砕できるもので溢れている世界の中で、初心者にいいものは何だろう?答えは簡単だ。岩を粉砕しろ。

岩を粉砕するのは無意味だと考える読者がいるかもしれない。その読者は馬鹿だ。ウルベクは岩の粉砕から始めた。岩を粉砕すると粉砕のための筋肉が付き、もっと大きなものを粉砕する準備ができた時、粉砕して鉱石を集められる。ウルベクは小さな岩から始めて、より大きな岩や石の壁に進むことを勧める。そうすれば痛くない。オークなら話は別だが。

休まず常に粉砕できるようになったら、有用な粉砕が行える。例えばハンマーを作るような。石を粉砕し続け、石像でも作りたいと考える者もいるかもしれない。ウルベクは読者の情熱に水を差したくはないが、石で美しいものを作るには優しく粉砕する技術が必要だ。ウルベクは上級の粉砕技を後の巻で披露する。次の章では、鉱石を粉砕する方法を扱う。ウルベクは次の授業のため、鍛冶場を使えるようにしておくことを読者に勧める。

閉鎖の終わりAn End to Isolation

アリノール玉座の君主であり、アルドメリ・ドミニオンのイーグル・プライマーチたるアイレン・アラナ・アルドメリ女王による、女王の儀式学的布告により、長きに渡ったサマーセット諸島の閉鎖は終わりを告げる。勇敢で無私のアルトマーは、甘やかされ怯えた子供のように世界から隠れることはない。もはや味方や仲間から隔絶されることはない。その代わりに先人の故郷の象徴的な門を開き、仲間として迎える。そして友情を抱き、対話、交易、外交に関わりたいと真に望む者は、誰であってもサマーセットを訪れられるようにする。

この命令に対応するため、私たちは先入観や先天的な偏見を捨て去らなくてはならない。心を開き、豊かな土地を世界と共有せよ。サマーセットの誇りあるアルトマーには、古い不当な行為を許し、過去の反目を忘れてもらいたい。立場や文化の差を受け入れ、それによって心に友情の花を咲かせるべきだ。これは私の確固たる理想であり、女王陛下の命令でもある。

上級公と上級公女、キャノンリーブ、神聖執行局の調査官、サマーセットの市民に対し、過ちを犯さぬよう告げる。女王陛下の意志と、この命令の意図は完全に明らかである。サマーセット諸島が、下等種族の立ち入りを禁じることはない。名誉、高潔、事業の基準に達する者は、旅人、商人、移民を問わず皆を歓迎する。私たちは友情でアルドメリ・ドミニオンを形成し、友情でサマーセットをさらに完璧な楽園とする。これは私の至高の理想であり、女王陛下の命令でもある。

返事をください。愛しきおばダイヤンニよりPlease Respond, Your Beloved Aunt Daiyanni

愛するルルタリへ

あなたの最後の書簡からこれで3通目の手紙になるわ。あなたの健康が心配なの。あなたの父親がしていることは不気味だし、正直に言って危険よ。その感染した旅人たちを自分の家に連れてくるだけでも愚かなことだけど、病人たちと一緒に家の地下聖堂にこもるなんて正気とは思えない。そんなおぞましいことをして、神聖執行局がどう思うの?あなたの父が耳を貸さないのならコルグラドを離れ、彼が正気に戻るまでここに留まりなさい。父を説得できるなら、あなたの兄弟も一緒にね。少なくとも、あなたが無事でいるという知らせをちょうだい。

あなたのおば、

上級公女ダイヤンニ

本物の捜査官ヴェイル?The Real Investigator Vale?

人気のあるミステリー小説「捜査官ヴェイル」の、秘密主義の作家を追う。
流浪の年代記作家アダンドラ 著

捜査官ヴェイルの事件を詳しく描いた人気のミステリー小説は、何百万冊も売れている。有名なブレトンの探偵の冒険はダガーフォールだけでなく、ウィンドヘルムやスカイウォッチでも引っ張りだこである。だが他の作家とは違って、捜査官ヴェイルの作者は自作の素晴らしいヒロインと同じ舞台に立とうとはしない。実際、彼女が誰であるのかは今まで不明だった。

この逃亡中の年代記編者は、ダガーフォール・カバナントの諜報部門であるダガーの環の元メンバーの話を聞いてから、この謎の調査を始めた。この元メンバーは、話によれば手練れの密偵というだけでなく、凄腕の探偵、熟練の戦士、勇敢な冒険者でもあった。この傑出した女性を調査するほど、私の頭の中には小説のヴェイルが浮かんでならなかった。この女性に会わねばならず、私はアラベル・ダヴォーの追跡を開始した。

アラベル・ダヴォーは第2紀527年にウェイレストで生まれた。彼女は高貴な家で育ち、ハイロックで最高の学校に通った。やんちゃな若者、反抗的な十代だった彼女は、15歳で家を出て傭兵部隊に加わり、リーチから押し寄せた侵略者からハイロックを守る手助けをした。獅子の守護団に落ち着くまで、彼女は大陸中で数多くの戦闘に参加した。第2紀560年までには隊長の地位を得て、獅子の守護団の精鋭部隊を指揮した。そこでウェイレストの王にして未来のダガーフォール・カバナントの上級王、エメリックの関心を引いた。

今では、アラベルの業績はヴェイルの物語の最も奇抜な部分で読める。彼女は山賊王を片づけ、トロールを襲撃し、上品かつ堂々とした態度で敵勢力に立ち向かったと報告されている。噂によれば彼女には、1ダースの街、都市、寄港先に、あらゆる種族や性別の恋人がそれぞれいたという。彼女の人生は冒険そのもので、戦闘で敵に向かうように冒険へと立ち向かっていった。スキャンダラスな話でさえ、エメリック上級王を彼女とロマンティックな形で結びつけた。彼の護衛として仕えていた数年間は特に。真実はどうあれ、アラベルがエメリックの目に留まり、ダガーの環が創設された時、最初のメンバーとなったのは明らかである。

50歳になって、アラベルは人生の新しい章を始めることにした。彼女はダガーの環をきっぱりと引退し、世界旅行を再開し、仕事の一環としてしか見てこなかった人々や場所を、楽しみのために訪れるようになった。今の彼女は、陰謀、密偵工作、戦争の噂を扱うには「年を取り過ぎた」と主張し、有閑婦人となって特別室を確保し、異国の地を点々としながら、長く豪勢な日々を過ごしている。私はオークの都市オルシニウムで、彼女に追いつくことができた。

年代記編者:アラベル・ダヴォー、素晴らしい物語を読んでから、あなたにお会いできてうれしく思います。リバー・トロール4体を片手で倒して、カーボルの洞穴の人々への攻撃を食い止めたのは本当ですか?

アラベル:実際には沼トロール6体だったんですが、報告書で自慢したように思われたくなかったんです。

年代記編者:並外れた人生を送ってきましたよね。傭兵、冒険者、兵士、密偵。今は新しい情熱をもっておいでですね。読者に説明していただけますか?

アラベル:今夢中なのは、旅行と観光ですが、読者がツアーガイドとしての冒険について聞きたいのなら…

年代記編者:恥ずかしそうなふりはやめてください。私が言っている情熱が何についてのものか、ちゃんとわかっておいでのはずです。捜査官ヴェイルから始めましょう。

アラベル:あら、それで会いに来てくれたんですね。大人になってから、犯罪とドラマの大胆な物語が好きになったんですよ。はっきり言って、捜査官の下品な様子が大好きですね。お分かりでしょうが、昔の血が騒ぐんですよ!

年代記編者:いやいや、アラベルさん。認めましょうよ!あなたは捜査官ヴェイルの作者でしょ。

アラベル:作者?私が?この細い指が、何時間も羽根ペンを握ってがちがちにこわばっているように見えますか?私の手にインクの染みがありますか?

年代記編者:でも、あなたがご自身の業績をモデルにしてヴェイルを作り上げたのは本当じゃないんですか?薄いベールを羽織って、エメリック上級王の密偵として活躍していた時代の自伝だという説は?

アラベル:すごい想像力をお持ちですね!あなたこそ、ヴェイルのすばらしい冒険の作者じゃないんですか?

年代記編者:私?ばかばかしい!私はニュースを伝えますが、複雑なフィクションを創作することはしませんよ!

アラベル:そういうことにしておきましょうか

年代記編者:でも、あなたが謎解きにまだ手を出しているというのは本当じゃないんですか?どんな犯罪や陰謀が現在地元の権力者を困らせているのかに基づいて、訪問先を選んでいるというのは?

アラベル:私が?気づきませんでした。

年代記編者:なんと!あなたは「捜査官ヴェイルとハイロックの革命」の中で、エメリック上級王とともに「ダガーを鞘におさめる」役割を果たしたことを、事実上認めましたね!

アラベル:そんなことはしてません!それに、エメリックのダガーだったら、もっと正確に、剣として説明されているはずです…

年代記編者:ほら!また認めましたね!

アラベル:ご自分がお感じになったことを、なんでも書くのがよろしいでしょう。私はオルシニウムの衛兵のゴーザ隊長とディナーをご一緒することになっています。好色なオークと会うのは久しぶりなんですよ。彼女は博物館の盗賊を捕らえるのに苦労しているという話です。

年代記編者:誠実な読者のみなさん。レディ・アラベルは捜査官ヴェイルの作者であることを告白しました!有名な探偵にふさわしい事件が、これで解決です!

味方の調査パート1Investigating Our Allies, Part 1

サマーセットの筆頭年代記編者、フェリンウォイン 著

真実を求める皆の叫び、嘆願、要求を聞きました。いつものようにフェリンウォインは伝えるためにいます。最新かつ、最も関連性の高い知らせだけをお伝えしましょう。この新しい布告における自分の役割はわかっています。もちろんドミニオンの同盟がサマーセットの海岸に上陸できるようになった、新しい法について話すつもりです。多くはこの出来事の影響について、もっともな理由から心配しています。街は安全?故郷は安心?

読者の皆さん、それを突き止めるのが私の使命です。

私はアリノールから始めました。宮廷があり、最も王にふさわしき女王代理、アルウィナルウェ様の住まわれる土地。この最も困難な時代に、ご長命と偉大なる統治を願っています。通りを歩くときはできるだけ平民に見える服装に変装しました。誰も私に気づかなかったが、そう望んでいました。平民の人ごみを抜けてゆっくり歩き、新しい、いわゆる裏通りに入ったのです。

最初に出会ったのは商店で買物をしている不愛想なカジートでした。私は脇から観察した。その特徴であるベタベタした手先が盗みに使われないかどうかを油断なく見ました。盗難の目撃は叶いませんでしたが、そこでかなり驚くべき交易を目にしました。このカジートは店員に近づくと自分の持ち物をカウンターに置き、こう尋ねたのです。「いくらだ?」

親愛なる読者の方々、間違っていません!挨拶も、お辞儀も、愛想もないのです!私たちの同盟には基本的な共通の礼儀も望みすぎなようです。ああ、天のアーリエルよ。私は動揺するばかりでした。気の毒な店員がずっとこの場にふさわしい態度で答えようと心を尽くしていましたが、このカジートは礼儀を全く知らないままでした。身を縮こまらせて少し目撃した後、私は不作法の重みに耐えられず店を後にしました。目撃したことのため、心臓がドキドキしていましたが。

次に目撃したのはアリノールに多くある贅沢な噴水での出来事です。近くのベンチに座って間もなく、カジートの子供の集団が噴水に駆け寄ってきました。少なくとも10名はいたでしょう!何の抑制も効かず、全員が同時に澄んだ水に飛び込み、静かな噴水は最も野蛮な形で水をはね散らかしました。後ろから母親がやってきて、頭のおかしいニワトリのように舌を鳴らしました。子供たちは1人ずつゆっくりと噴水から上がってきましたが、その間はずっと興奮して話していました。

もちろんカジートが一腹の子を産むことは聞いていましたが、同年の子供があんなにたくさんいるとは考えていませんでした!毛に覆われた同盟者の人口は、10年毎に10倍上昇するのが見えるようです。そんな…傾向があるなら。母親の子供たちの監督ぶりは言うまでもなく、どうやら子供たちにわずかな礼儀作法を教える気もないようでした。

私が驚きで口をぽかんと開けていると、最も困惑させる交流が始まりました。たぶん私が仲間をあからさまに観察していたせいでしょうが、近くに立っていた若いカジートが話しかけてきたのです。ここに馬鹿げた会話を書いて害を及ぼすつもりはありませんが、それは子供の作り方に関連したもので、彼がそうした活動にとても「奉仕」したいという話でした。淫らな話に直面して、私は顔を真っ赤にしてすぐに立ち去りました。

もちろん読者の方々に、法を守るサマーセットの市民である私が見ることのできない他の評判を思い出させる必要はありません。確かに、身の安全を危険にさらして街のもっと不穏当な一帯に行けば、スクゥーマの増加や闇市の取引を目にしたでしょう。そう、私はこうした主張につながる噂を持っているだけですが、カジートは不法行為に加担する傾向があることで知られています。我々の愛する故郷に彼らが居住することで、犯罪の統計が途切れず上昇することは間違いありません。

我々の指導者がすぐに自分たちの過ちに気づくことを祈りましょう。おそらく戦争のために同盟は必要でしょうが、私たちは愛する島のこの岸で戦っています!私たちの社会を内側から腐らせる恐れがある、粗野で下劣で、往々にして悪党のカジートを相手に。たった1日の観察で、すべての市民が心配するのは当然だと言えるのです!

私たち全員が力を合わせて立ち上がり、平和で隔離された土地の回復を請願しなければなりません。地域の長に訴え、仲間の市民に伝え、既に故郷へ侵入した者に目を光らせましょう。かつて安全だった通りを進む時は、財布と子供をしっかりと抱えるのです。擁護者に動揺させられてはいけません。読者の皆さん。私の信頼された手で書かれた、真実を知ってください!

次号も調査を続けます。今度は我々の下位種族、ウッドエルフの習慣と文化を掘り下げます。購入を忘れずに。そのおかげで、私は大切な仕事を続けられます!

味方の調査パート2Investigating Our Allies, Part 2

サマーセットの筆頭年代記編者、フェリンウォイン 著

我らが崇敬する祖先が没して以来、我々はすべてのエルフが平等に作られていないと知っています。私たちハイエルフは先達の輝かしい歩みに続くことを選びました。私たちは素晴らしく、力強く、正当な存在です。他の者、例えばダークエルフは私たちの習わしを裏切り、罰を受けない代わりに呪われました。偽の神に祈り、灰の中で暮らしています。

それから現在、同盟を組むウッドエルフがいます。ウッドエルフに関して何が言えるでしょう?同じ神を信仰してはいますが、明らかなイフレびいきを考慮すると、信仰心は薄いものです。そして彼らの耳は尖っています。比較はここでやめなければなりません。それ以外のすべては、文化から身長に至るまで私たちの完璧な水準から程遠いのです。

しかし、原始的な親族に恐れる点があるのか?それを見つけるのが今回の使命です。

有名人も私がこの特別な使命を完遂することに興味津々でした。私が調査の決意を固めた頃、独占的な仕事に招待されたのだ。詳細はもちろん明かせませんが(王族のかなり高い地位にある方の屋敷で開催されたことだけは言っておきましょう)、それは私が探し求めていた機会を与えてくれました。仕事を受ける前に熟読した招待状のリストの中に、数名のウッドエルフがいたからです。

これで私たちの同盟国が、サマーセットの社交界で最も高名な人々との交際を企んでいるとわかりました。彼らが我々の文化にどれほど馴染んでいるかを観察する、またとない機会です。手帳を片手に豪華な衣装を身に着けると、私ははやる思いで招待者の屋敷へ向かいました。

食卓へ向かいながら、私は興奮を隠しきれませんでした。そこにクランで固まっていたのは、私の調査の対象であるウッドエルフだったからです。知り合いから、彼らがグリーンパクトの信奉者だと素早く教えてもらいました。実際に目の当たりにできるとは、何という幸運な偶然でしょうか。多くの者がサマーセットの汚れなき原則に激しく対立すると恐れているのは、まさにこの野蛮な信仰なのです。

彼らの食事が出された時、最初の奇妙な出来事が起こりました。ご存知のように、グリーンパクトは植物系の素材の使用や消費を許しません。そのため、親切な主催者はウッドエルフに適したサマーセットの最上級の肉のみを提供した。彼らは食事を物凄い勢いとしか表現しようのない様子で食べていました。銀食器の適切な使用など全く気にかけていませんでした。理由はわかりませんが、中には皿の上の肉汁をデザートスプーンですくった者までいました!

この小さな部族が食事を貪るのを見て、ウッドエルフの軍団が我々の動物を食らいつくす想像ができました。あれが唯一の食物なら、我らの小さな親族が我慢すると信じられるでしょうか?私たちの静かな島を美しく飾る牛、鶏、豚、猫でさえいなくなる日がくるかもしれません。そんな未来を本当に許せるでしょうか?

それでも私はこの招待客と交流しようと決めました。夕食後、私は1人に近づくと、いつものように非の打ち所がない礼儀作法で、島に来た理由を尋ねました。

「私あ王の代理でいています」彼はそう言いましたが、強い訛りで子音が聞き取りにくかった。「アイエルフに、私たちも同様に開化されているとお見せしたくて」

ぼそぼそと単語を並べたので、話の結びがなかなかわかりませんでした。それでも私は礼儀正しくウッドエルフがサマーセットの栄光に何をもたらせると思うか尋ねました。この島を故郷と呼ぶハイエルフの向上にどんな貢献ができるのだろうかと。

残念ながらその簡単な質問の後、彼はかなり粗野な態度をとりました。言葉遣いは無教養のせいと推測するにしても、言葉の選択の下品さはあからさまな敵意を表していました。そのような質問をする私の純粋な意図に図々しくも疑問を投げかけてきた上に、私についての描写をつけ加えてきたのです!

私はただ驚愕してしまいました。彼の仲間が慌てて私に謝罪すると彼を連れ去りました。それでも傷ついたことには変わらない。私たちが国境の内に迎え入れることを選んだ者たちの、礼儀作法と礼節については十分に目撃できました。

読者諸君に思い出してもらいたいのは、私たちの日常生活に危険をもたらしかねない文化の違いです。共食い、目に余る盗み、歩き回る木!このウッドエルフが小さな骨の小屋の周囲を走りまわる代わりに、私たちと一緒にきちんと生活する姿を信じられるでしょうか。これまで見てきたことから、私にはそんなことが可能だとは思えません。

読者諸君、私は抵抗することを強く勧めます。流れに対抗する声を上げましょう!これ以上一歩も許してはいけません。押し戻すのです。私たちはサマーセットに過去の栄光、ハイエルフの故郷、ハイエルフだけの故郷を取り戻すのです。

あなたも、その大義に賛同しませんか?

夢見の館:オーディションHouse of Reveries: The Audition

候補者のための入門書
夢見の館の公文書保管人クィル 著

では、夢見の館に加わりたいのだな?残念ながら、入会するには決意を単に表明するとか、いくらか会費を払うような簡単なこと以上のものが必要だ。教化には長い手順がある。しかし、君はもうセリフを覚えて自分のパートを歌ったな?剣を呑む勇ましい才能であれ、複雑な踊りであれ、技術に磨きをかけたはずだ。それでは、オーディションの話をしよう。

数週間程度の公開オーディションは、季節ごとに開かれる。勇気を出してステージに立ち、その才能で驚かせてくれればいい!見事なパフォーマンスが終われば、一座の演者が君に話しかけ、候補者に相応しいかどうかを伝える。候補者になれなくても、次の季節に頑張れ!

さて、候補者になったことを過大評価してはならない。候補者になれば技術に磨きをかけ、一流の者から学ぶために仮面の館への立ち入りが許される。君だけの仮面と名前を授けもする。ただ、夢見の館に加わったことにはならない。これは初めの一歩にすぎない。候補者は、最終オーディションを通過しなくてはならない。

これは大変な旅ではあるだろうが、孤独な旅ではない。師が候補者全員を導く。一座の古参の助けを受けて、とても重要な最終オーディションに準備をするのだ。この師は知識の泉の役を担い、君はその水を飲む。彼らの言葉を心に留め、模範とするがいい。一座に入るには師が鍵だ。手順を学び、言葉を覚えるだけでは不十分である。真の芸術家の情熱を、心に燃やす必要がある。師は火を灯せるが、それを業火に煽れるかどうかは君次第だ。

この期間、他の候補者は永遠の仲間となる。積極的に手助けをするのだ!間もなく共に演者となるのは、彼らかもしれないのだから。恐怖や嫉妬で敵意に沈んではならない。争う枠は1つではない。全ての候補者が合格した季節もあれば、全員が落選した時もある。最終オーディションの期間は、己が才能のみを頼らなくてはならない。他人のミスに頼ることなく、自分のミスに気をつけよう。

仲間の候補者と仲良くなることは推奨するが、君自身の姿が以前とは異なることを忘れないように。常に仮面をつけ、過去の名を語ってはならない。これは訓練の始まりだ。一座の現役の一員のように行動しなくてはならない。秘密を抱えた興味深い生活を始めるのだ。過去の名前を知るのは自分と、師と、団長のみだ。その後は忘れ去られるべきなのだ。

最終オーディションは思ったよりも早くやってくる。陽気なサーカスの座長であり、壮大な交響曲の指揮者であり、夢見の戯曲の演出家である団長の前に立つのだ。君の命運は団長が決める。

最後のパフォーマンスにはこれまで示した技の表現を至高にまで高めた、誉れ高く夢のような水準が求められる。全力を注げ。君が一座に入る準備ができているかどうかは、その時に分かる。名前、家族、過去の生を捨て去り、夢見の館の一員として加われるかどうかは、その時にようやくわかる。

夢見の館:一座House of Reveries: The Troupe

候補者のための入門書
夢見の館の公文書保管人クィル 著

夢見、興味、戯曲、喜びの生活を求めて加わったのだな!君のことは心から誇りに思っている。まず、私が最初に君を迎えよう。

ここから君は変化を始める。新しい名前を選び、新しい仮面をつけたが、これは始まりに過ぎない。声を変えることを学び、新しい型を学び、髪を明るい色に染めろ。千の自慢をして、真実の欠片も伝えないことを学べ。君は繰り返し試されるだろう。興味を惹くことは、ロマンスの最大のスパイスだから。強くあれ、無口であれ。他ならぬ一座での立場が、君の思慮にかかっている。

学ぶことはまだある。リュートの柔らかい弾き方は習得したのだな?剣を拾い芝居のフェンシングを学べ!君の周りには、サマーセット一の陽気な演者がいる。くだらないプライドを守ろうとして、この機会を無駄にしてはならない。無様に失敗し、震える声で歌い、成長をやめるな。新たな技を学べば、一座全体が強くなる。完全なパフォーマンスと呼べるものはないが、そこに到達しようと皆が努力する。

リレンシルは活動拠点だが、仮面の館が一座の全員を収容することはできない。それにサマーセットは大きな島だ。敬愛する聴衆全員にここまで足を運べとは言えない。君には大半を外で過ごし、必要に応じて手を差し伸べてもらいたい。全ての団員には、自らの役割を果たすことが当然に求められる。馬の毛にブラシをかけ、荷馬車のガタガタした車輪に油を差し、夕飯を料理し、便所を掘る。文句を言っても無駄で、厄介事が増えるだけだということを忘れるな。

それぞれの旅の一座は、自らが堂々たる称号に相応しいと示した座長が率いる。私が初めて座長とサマーセットを旅したのは、そう昔のことではない。バリトンという名の寡黙なエルフだった。私は饒舌で足早を自認しており、険悪な仲になるのは最初から決まっていたようだった。程なくバリトン座長に演技を見抜かれ、最も長く無味乾燥で、初披露のために覚えたセリフの中で、最高に退屈な独白を渡された。

それを読んだときは泣きそうになった。嫌がらせとしか思えなかったからだ。夜には聴衆の不満げな顔を想像しながら寝返りを打った。毎日別のパートをくれるよう座長に懇願したが、うまくいかなかった。首を横に振るだけで、練習に戻るよう言われた。大変な労力をかけ、忌々しい独白のセリフ、無味乾燥なセリフの全てを覚えた。バリトン座長から次の指示を受けたのは、セリフを間違いなく、口ごもらずに暗唱できたときだった。

「さて、クィル」。彼は珍しく微笑みながら言った。「自分で独白を作れ」

唖然とした。憎むべき独白への嫌悪がありながら、葛藤が起きていたからだ。それは歴史の作品だった!千年の時を生き長らえるほど名を馳せた、古き先人によって書かれた独白。どのように変えられるだろうか?あるいは汚せるだろうか?その困惑に終わりはないと感じた。座長は常に規則に固執していたからだ。

「お前はもう十分この作品に敬意を示した」と彼は言った。「繰り返し読んだ。全ての名前、場所、詳細を覚えたが、そこに心がないことも知っている。クィル、お前のことを信じている。それに心を与えるのはお前だ」

その日私は変わった。軽く考えていた名前が、私そのものとなった。私はクィルという羽根ペンであり、再び創作を始め、言葉を記す意欲が湧いた。新たな始まりだった。今日に至ってもなお、冴えない古典に新たな命を吹き込むことより愉快なものはない。そして、初めて会った時から嫌で仕方なかったエルフ、私の座長がそれを教えてくれたのだ。あの初めて涙した夜には、想像もつかないことだった。

学べ。聞け。創れ。君が発したのは初めのセリフに過ぎず、歌ったのは初めの音階に過ぎない。とても長く、難しく、辛く、不思議な旅が待っている。素晴らしい制作の過程を余すことなく楽しめ。幕は開かれた。舞台に立て。君の演技を見るのが待ちきれない。

夢見の館:歴史House of Reveries: The History

候補者のための入門書
夢見の館の公文書保管人クィル 著

サマーセットで最高の演者の故郷、夢見の館へようこそ!君たちは、名声や富を求めて訪れたのかもしれない。あるいは純粋な好奇心や所属への欲求だろうか。いずれにせよ、崇高な一座に加わらんと大がかりなオーディションに参加する前に、規律を理解してもらう。あらゆる壮大な劇と同じく、何事にも序幕はあるのだ。

夢見の館を創設したのは、高貴な意図と莫大な財産を持ったハイエルフだ。イングレス団長は、大変な先見性と途方もない財産を持つ指導者であり、壮大な物語の幕を開いてくれた。その名誉を讃える劇、詩、歌は数多くあれど、いずれも演技という芸術への献身と情熱を語るものだ。ただし、初代団長の献身は、新たな劇を作ろうとする意欲よりも、旧い劇への嫌悪から生まれた。

彼女は団長になる前、熱い情熱を持つが平凡なエルフだった。演技に注ぐ愛は、父親が育んだとされる。壮大な古典から余興としての簡単なジャグリングまで、あらゆる芸術を歓迎した。そう。経歴のない者から一流のスターまで、あらゆる仲間の演技に共感を抱いたのだ。そして、一時は幸せだった。

悲しいかな、彼女は年齢を重ね、物事の裏も見えるようになった。仲間の演技に目を凝らすと、この職業を真に愛している者はごく少数だった。エルフたちが芸術を踏み台にしていることに気付き始めたのだ。それはやがて悪名と権力につながる道だった。最高位に昇格し、特権と名声を掴むための道だ。気の合う者との出会いが減るにつれ、その哀れな魂は孤独になった。間もなく演劇から身を引いたが、それはひどく心を痛める体験だった。

この孤独な期間に、彼女はこの悲しい潮流を変えようと思いを巡らした。変化を起こそうとして、思いもつかないことをした。自らの名を捨て去り、過去の自分を焼き払ったのだ。彼女はイングレス団長として灰より蘇り、同じ志を持つ仲間の一座を作ろうと誓った。こうして夢見の館は誕生した。

一座の全員は、己の情熱のみに生きることになっていた。イングレス団長はこの誓いを忘れないため、演者はみな仮面を付け、名を新たにすると宣言した。彼らが身元を明かすことはなかった。多くの仲間の演者から幸せと楽しみを奪ったのは、他ならぬ名声なのだから。夢見の館に加わった者は、パフォーマンスのスリルに対する愛情だけに従った。演者たちが唯一求めたのは、聴衆の鳴り響く拍手だけだったのである。

では、自分が何に成りたいのか見極めよう。ここの戸口を訪れたのは、名声や富を求めてのことか。もしくは利己的な鎖を捨て去り、芸術に生きる覚悟はあるか?参加の意志があるなら、知っておくといい。君は君でなくなる。より明るく美しいものになる。千の仮面を付けても、素顔を見せることはない。

君は、仮面をつけるか?

緑の亡霊The Ghost of the Green

樹の従士エイニッセ 著

我ら樹液の子は多くの偉大な英雄を認める。吠えし骨のエルソノール、広く語られし狼、フィルドゥノール・ボウブローなど。しかし、ズェンの復讐者、緑の亡霊の栄光のような英雄は、かつて存在したことがない。

緑の亡霊は、人やエルフの輝かしく自賛する英雄とは対照的に、歴史の影に埋もれている。ごく稀に強力な弓の弦を引き、緑の敵を打ち負かす。その精神は不朽だが、忍耐強くはない。民が鹿の心臓とイノシシの牙を供えると、すぐに正義の処刑が行われる。

緑革と恐ろしい頭蓋骨、後に残すシダの葉、ウッドエルフの鋭利な矢、敵の亡骸を見れば彼だと分かる。一度呼び出せば、その憤怒から逃れられる者はいない。煙が立ち上る召喚の日は、聖なる鹿を生贄とする。亡霊が憤激した日は、敵が必ず死ぬ。死は避けられない。それはまるでイフレの摂理のようだ。

鱗のエルフThe Scaled Elves

マリン・ラロワ 著

船員の物語好きは有名だ。遥か遠くの地の途方もないほら話、巨大な獣、莫大な財宝、美しき誘惑者、世界を滅ぼすほどの嵐。多くの者はこうした主張に健全な懐疑を向けるが、全ての伝説が純粋な空想ではない。比較的平穏なイリアック湾から離れれば、海には真に恐るべきものがいろいろと潜んでいる。マオマー・リヴァイアサンはそうしたものの一つである。

シーエルフを見たことがない人のために言っておくと、彼らは奇妙であるが目立たない。体型はハイエルフに似ており、肌は海の水しぶきの色、目は青ざめている。緻密に描かれたタトゥーと悪意ある態度を除けば、大半の人は注意して見ることもないだろう。しかしあの種族がリヴァイアサンと呼んでいる存在は、あなたの血を彼らの血のように冷たくする。

不浄な魔術によってシーエルフとシーサーペントをかけ合わせて生み出されたこの巨人は、目いっぱい背を伸ばした最も背の高いノルドよりも頭1つ半ほど大きい。もっともこのエルフは大抵の場合、噛みつこうとする蛇のように、屈んで背を丸めた獣の姿勢をしているので、なかなか立っている姿は見られない。いざ動く時も、彼らは歩くというより捕食者の動きで、ゆっくり滑るように移動する。まるで地面と足のどちらにも慣れていないかのようだ。

私が生きたリヴァイアサンを見た最初の時、彼女は船の船体をムカデのようによじ登っていた。滑りやすい板を苦もなく伝いながら、ジグザグに進んでいた。その青い鱗には光が当たってきらめき、ほとんど美しいくらいだった。だが死んだような白い目は鮫のように冷淡で、にやりと笑った表情は陰気だった。

彼女が右舷の手すりを乗り越えてきた時、恐怖は倍増した。彼女は一瞬で私に飛びかかり、巨体で私を甲板に引き倒した。とどめを刺されると私は思ったが、彼女は冷たく平然と見つめ、私は蛇を見たネズミのように凍りついた。私は魅了されると同時に恐怖していた。彼女の顎が元の位置から外れてガバッと開き、私を飲み込もうとしたので、ようやくショックから立ち直って抵抗した。

リヴァイアサンの怪力には到底適わなかったが、何とかして片手をもぎ放し、喉の奥に叩きつけた。リヴァイアサンは炎に喉を詰まらせ、その歪んだ生を終えたが、彼女が残した傷跡は、死ぬまで残るだろう。波の下に潜む鱗のエルフをもし見ることがあったら、私はあなたのために祈ろう。

モアウィタの記憶

Moawita Memories

インドリクの心臓Heart of the Indrik

シヌタルモ教授による講義の抜粋
-遺物マスターグレナディルによる複写

美しいだろう?ルビーに似ているが、この石は結晶化したインドリクの心臓である。なに、簡単なことだ。月が照らす中で100晩、心臓を純水に浸すだけでいい。

不可能だと思うか?素早くやればできる。

目も眩むほどだが、ほとんどの者はこの水晶に悪事が働けるとは思わない。そして触れない限り、それは確かに真実だ。しかし、不純な心を持つ者に触れられると、水晶の中央に暗い影が現れる。そうなった後は、それを所有する者全員を呪って悲痛をもたらす。そして、まあ…その後は長生きしないとだけ言っておこう。

影裂きの刀剣The Shadowcutter Blade

女司祭エンドゥノルの説教
-遺物マスターグレナディルによる複写

シラベインは刀剣を作り上げ、異常な闇さえ切り裂けるように、それを影裂きと名付けた。自身の作品の素晴らしさを見せようと、シラベインは友人にそれを披露した。

「さあ」シラベインは友人に言った。「壁に映る自分の影を見ろ。それを2つに割いてやる」

友人が影を見つめる中で、シラベインは光を放つ刀剣を高く掲げた。それを大きく下に振り下ろすと、光の弧が前へ押し出された。そして彼の言ったとおり、影が2つに切り分けられた。

しかし、友人は膝から崩れ落ちた。シラベインはエルフの友人の元へ駆け寄ったが、手遅れだった。彼の中にある闇、全ての人間とエルフが持つ闇も、2つに割かれた。彼の魂が貫かれたのだ。そして彼は殺された。

解けるワンドThe Unraveling Staff

仲裁者アンバーウェンの報告書
-遺物マスターグレナディルによる複写

報告4587:南中の月27日

容疑者を拘束し、杖は魔法の検疫に回した。容疑者の家で見つかった正式な書類から、あの男は街で有名な紡ぎ手から杖を作るように委託されていたことが分かる。あの杖はもともと、絡まった糸をほどくためのものだったと考えられる。

本件においては、数名の目撃者による証言が集められた。

「ああ、アニルヨンの隣人になってからもう数年になる。彼からは全て聞いた。解ける杖と呼んでた。最後に話を聞いた時は、見事に機能してた。どうした?何かあったのか?」

「ひどかった!彼は狂ったように笑いながら通りを走っていた。そしてどこかを示し指すたび、哀れなエルフの服が解けてしまった!あれは恥ずかしい」

「服が解けるというのは知らない。建物がばらばらになる様子に気が取られていた!石や板が、まるで生きてるかのように飛んでいった。知らなかったな…死者が何人だって?」

「ああ、見た。杖で指したら…彼女はただの若い娘だった。どう説明したらいいか。ああ、かわいそうに。彼女の肉体がまるでただの…すまない、もうこれ以上話せない」

容疑者は法廷が承認する日まで留置。保釈は認められない。

乾燥の胸当てChestplate of Desiccation

元奴隷ウージャ・ナカルとの面談
-遺物マスターグレナディルによる複写

そう、テルヴァンニの看守はよくこれを罰に使う。この種族に、乾燥より気分の悪いものはそうはない。もちろん熱気には慣れてはいるが、ブラック・マーシュの沼の湿気を含んだものは初めてだった。

彼らは、さらに平凡な方法でサクスリールを乾かそうとした。檻に閉じ込め、夏の太陽に乾燥を任せた。しかし、雨の日や島に霧が立ち込めた時は、これを着させられた。両手は縛られ、脱げなかった。そして胸当ての効果が出始めた。

初めの感覚は鈍いものだった。しかし、その効果を知っていたがため、徐々に恐怖に襲われた。それはかゆみのような、多少の不快感から始まった。鱗の先が感じ始め、ゆっくり中へと染み込んでいった。口内の舌がしぼむのが分かった。目を閉じても楽にはならない。鱗がそれぞれ、緩慢に硬くなっていった。

どれほど死を望もうと、彼らは決して許さなかった。

甘い夢の枕Pillow of Sweet Dreams

ホノリア・アウルスの詩
-遺物マスターグレナディルによる複写

枕に頭を乗せる
目の奥でいい夢を見る
再び眠りが訪れるのを待ちわびる
嘘で飲み込まれる日を

その時は愛する人が横に寝そべり
彼女の微笑みは明るく、肌は輝く
そこでは死が及ばない
しかし朝が来ると彼女は去る

私は再び眠り
二度と起きない
今夜私の魂は
奪う

偽りのランターンLantern of Lies

童謡、起源不明
-遺物マスターグレナディルによる複写

ランターンと火に気をつけよ
その赤々とした火には力がある
見える所に置けば
ランターンはお前を貪り食う

偽顔の扇Fan of False-Face

代弁者ギルザロンの手紙
-遺物マスターグレナディルによる複写

リジケー、この仕事を任せられると信じているから、この警告のせいで思いとどまったりするな。この品の使用を許したのは数年ぶりで、とても強力だ。だがお前の標的は簡単ではない。マグニフィコ・ナドブシャールは自分の命が狙われてることを知っていて、深く恐れている。

必要な品は持っているし、ナドブシャールの側近を捕らえるのは楽なはずだ。扇の魔法は被害者が生きていないと効かないから、彼女は生かしておけ。扇を広げるのは、必ず二人きりになってからにすること。お前たちの顔の間に持って、折れ目の中をじっくりと見つめるんだ。次にまばたきをする頃には、側近イムラサーの顔になっているはずだ。

この段階では特に時間が大切だ。扇の効果はゆっくりだが、一定している。すぐ不快に感じるだろうが、訓練のおかげで乗り越えられるはずだ。しかしゆっくりと夜が更けるにつれて、真の姿は消えていく。イムラサーのように考えるようになり、自分はイムラサーだと信じるようになる。朝の光が訪れる前に、変身は完了しているだろう。そうさせてはならない。

飲み物に毒を入れてナドブシャールに渡し、祝宴から立ち去れ。イムラサーのもとに戻って、もう一度扇を使え。こうすることでのみ、自身を維持できる。そうしないと、お前は王家の側近の体の中で永遠に失われる。私に言わせれば、死よりもひどい運命だ。

銀舌の羽根ペンThe Silver-Tongued Quill

盗賊ギルドマスター、ライシフの書簡
-遺物マスターグレナディルによる複写

オルズダーグ、

計画は取り消しだ。あのいやな魔術師め、汚い真似をしてくれた。これまでの脅迫で十分だろうと思っていたが、仕方がない。次に会う時は、斧のとがったほうを味わわせてやる。とりあえず今は、羽根ペンが役に立たないと知っておけ…少なくとも今回の目的にはな。

問題が大きくなった。まず魔術師は、羽根ペンを使った奴が書いたことは信じられるなんて言ってなかった。まあそれは、もし書かれる内容を選べたらどうにか対処できただろうが。とにかく、面倒な付呪だ。あれを使って書こうとした最後の2人は、縛りつけるはめになった。羽根ペンめは一人に高い屋根から飛び降りるように吹き込み、もう一人には…まあ、独創的になってきてるとだけ言おう。もう二度と起きてほしくない。

あんな呪われたものは川に投げ捨てようと言いたいところだが、誰かが欲しがるかもしれない。買いたがる愚か者の客を見つけよう。探す場所さえ知っていれば、こういうものには収集家がいるものだ。

魂の番人の壷The Soulkeeper’s Urn

刻まれた碑文
-遺物マスターグレナディルによる翻訳、複写

警告:危険な霊魂が入っている。開く前に厳粛な予防措置を取ること。月の周期7回ごとに結界の呪文をかけること。取扱注意。熱湯で洗わないこと。

些細な呪いの頭蓋骨Skull of Minor Cursing

氏名不明なカジート商人の売り込み
-遺物マスターグレナディルによる複写

さて、誰にも嫌いな奴が一人くらいいるだろう?もちろん憎むほどではないが、何かひどいことをしてきた者。不当なことをされたり。死んでほしいほどではないが、少し不快な思いをさせたいとか?少し問題を起こしたいとか?それなら、いいものがある!

こちらの些細な呪いの頭蓋骨ならぴったりだ。ひどい水虫!そこそこ不安にさせる悪夢!止まらないしゃっくり!目的の被害者をかんかんに怒らせること間違いなし。お値段も手頃だ。

砕け散る剣The Shattering Sword

呪いの決闘の独白、第2幕第4場
-遺物マスターグレナディルによる複写

バトルリーブ・タンウィンセア:さればこの呪われし剣を手にしよう。我が敵は決闘の場でこの剣を使うとは承知の上だ。決闘の最高潮に彼の剣は砕けん。とどめが放たれよう。我が行為に名誉はなし。だが恥もなし。命を賭して演ずべき戯れに他ならない名誉に、価値などあるものか。我は大義を知るべし。決闘を制す名誉を知るべし。如何に手段が汚かろうと、勝利とは常に甘美である。

失われた恋の靴Jaunt of the Jilted

失われた恋の靴、一幕劇
-遺物マスターグレナディルによる複写

語り手:昔、良家のエルフが2人いた。小さい頃から縁談がまとめられ、成長すると結婚式が計画された。

ノルディンウェ:ああ、素晴らしい結婚式の日が待ちきれない!

語り手:しかし若いクアーネルはためらった。結婚は愛する人としたかったのだ。

クアーネル:ノルディンウェ、悪いが君を愛していない。婚約は破棄しよう。

語り手:ノルディンウェは後に別の求婚者を見つけたが、クアーネルの裏切りを忘れることはなかった。憎しみを抱いた彼女は、靴に呪いをかけた。美しくしなやかなその靴には、恐ろしい秘密があった。

ノルディンウェ:クアーネル、以前は仲がよかったでしょう。ぜひ結婚式に来て。それにほら、この見事な靴を持ってきたわ。ダンスにぴったりよ!

語り手:そうしてクアーネルは式に出席し、披露宴が始まると踊り出した。音楽のリズムが速くなると、彼の足も素早く動き出した。靴は次第に温かくなり、やがて熱くなった。そしてついには足を焼き焦がし始めた。

クアーネル:ノルディンウェ、何をしたんだ?この靴は…いったい!

語り手:しかしクアーネルは踊りをやめられず、しまいには息を引き取った。この間ずっと、ノルディンウェはただ笑顔をたたえていた。

手放せぬリュートThe Sticky-Fingered Lute

上級公女ライリルシルウェの手紙
-遺物マスターグレナディルによる複写

拝啓、サピアルチ・テマティラナ様

息子の件をご親切に引き受けてくださりありがとうございます。母親として、ナルリンドリの回復を一刻も早く助けていただくことが唯一の望みです。息子は何日も眠っていないため、あなたの質問には答えられないと思われます。あの額で十分に足りることを願います。

さらに調べましたが、いまだに誰がナルリンドリにリュートを贈ったのかは不明です。12才になったばかりで、祝宴に来た客人も贈り物も多数でした。息子の現状を考慮すると、このまま分からぬままになるのが心配です。明らかに罠だったと、今では分かります。

リュートは美しく、ナルリンドリはすぐに気に入りました。その日の夜から、添えられていた音楽の書にあった曲を演奏しようとしました。最初は熱心なだけだと思っていましたが、夜が更けるにつれて音にうんざりしていきました。やめるように言うと、私の目を見ることも拒んでただ弾き続けました。私が何を言っても、やめさせることはできませんでした。しまいにはリュートを奪い取って、朝まで部屋にいるように命じました。

彼は最初何も言いませんでしたが、震え始めました。体全体が同時に震えていました。そして苦しみながら地面に倒れ、手足はけいれんしていました。「母さん!リュートを返して!」と叫び、その声は拷問を受けているかのように苦しそうでした。

息子の命が心配になり、もちろんリュートを返してやりました。それ以来演奏を止めておらず、もう3日目に入ります。我が家の治癒師は息子のそばから離れていませんが、指が切れて血を流しているのを見ていると心が痛みます。睡眠も食事もほとんど取っておらず、いつもあの呪われたリュートを弾いているのです。

夫がナルリンドリと一緒に向かいますので、他に質問があれば答えられるはずです。どうか、何とかしてやってください。家族そろって恩に着るでしょう。一人息子の命と引き替えならば、費用は惜しみません。

敬具
上級公女ライリルシルウェ

終わりなき巻物The Never-Ending Scroll

サマーセットの古い民話、原作者不明
-遺物マスターグレナディルによる複写

ある夏の日、古風で趣のある小さな店で、エルフが古い巻物を買った。彼女は買ったばかりの巻物を使いたくて、兄弟に手紙を書くため座った。しかし、書き始めると何ともおかしなことが起きた。手がまるで勝手に動いてるかのように、物語を書き始めたのだ。

なんとも不思議で魅惑的だった。書きながら、彼女には目の前で物語が展開していくのが見え、まるで言葉の中でその冒険を体験しているような気がした。巻物には終わりがなく、延々とほどかれながらも減ってはいかないようだった。

そうして彼女は次々と書いていった。

数日後、兄弟が彼女の死体を見つけた。指はインクまみれで、口元は微笑みをたたえた状態で横たわっていた。そして彼女が書いた物語は何の意味も持たず、文字は不可思議で不明なものだった。

常に満ちた聖杯The Ever-Filling Chalice

刻まれた碑文
-遺物マスターグレナディルによる複写

この聖杯から飲む者は、激しい渇望を経験するだろう。渇望にふけり、決して終わることはない。そしてその甘い水に溺れるだろう。

知覚時間の砂時計Hourglass of Perceived Time

クロックワークの使徒ララム・ファレンのメモ
-遺物マスターグレナディルによる抜粋の複写

記録32

被検体15Aはますます興奮してきている。実験の境界を見つけたことが疑われるが、それがどの程度までかは不確かだ。これが現在の実験にどういう影響を与えるかは、まだ分からない。

被検体15Bは言葉をつなげられなくなってきたが、これは外部からのみそう感じられるという可能性もある。彼女の世界観としては完璧に言葉をつなげて話しているのだろう。気性は相変わらず前向きだが、捕われてからまだ2日だけだと理解しているので、おそらくそのためだろう。

被検体15Cは強硬症になり始めた。他の被験者にはほとんど反応せず、長い間むせび泣くようになった。彼はもう実験に適さないかもしれない。私の計算によると、彼は捕われてすでに5年以上と理解していることになる。

致命的な予感の鏡Mirror of Fatal Premonition

タンディファエの遺言
-遺物マスターグレナディルによる複写

起きた。起きた、起きた。傷だ。頬に傷、傷がある。頬にあって、自分にはもうじき最期が訪れるのだと分かる。死ぬんだ。

あんな鏡を見るべきではなかったのだが、好奇心に勝てなかった。年老いた男が見えるだろうと思っていたが、自分を見つめ返した目は同じだった。わずか80才で自分の死を見つめ返していた。唯一の違いは…頬にある傷だった。

気をつけているつもりだった。剣術もせず、何にも乗らず、激しい活動は避けた。それなのに昨日、市場で、敷石につまずいたのだ。こともあろうにあんなものに!そして今ではそこに傷があり…死ぬことになる。鏡は知っていて、見ていて、これが死の証だ。

家族には、とても愛してると知っておいてもらいたいが、運命からは逃げられない。少しでも常識があるなら、あの鏡を破壊してくれ。自分まで破滅させられる前に。

塔の杖Staff of Towers

聖アレッシアの祝福された使徒、ホルネヴンの文書より
遺物マスター、グレナディル訳

エルフ魔術師アヌマリルの手よ呪われたまえ!アヌイ・エルの誇りよ呪われたまえ!見よ、彼らの柔軟で邪悪な指は世界の破滅を仕組んだ。ウマリルと親族がホワイトストレークの死で苦しむ中で、この杖、この8片の罪はまだ残っている。

アダマンチン:根源的で厳粛。

赤:陰気で血まみれ。

水晶:不敬で不可解。

オリハルコン:静かで忘れ去られている。

雪のノド:冷たく不気味。

緑の樹液:活気に満ちて賢い。

真鍮:大股で歩き強力。

白金:無限で永遠。

全て真っすぐだが、ひねくれてもいる!金属、石、そして冒涜の誓いに縛られている!これら8つの偶像がそれを行使する者の手に渡らぬことを。塔の杖が静かに動かず、魔術師の非情な目に入らぬことを。今も、いつまでも。

逃れられぬ兜The Inescapable Helm

グラッシュの日記
-遺物マスターグレナディルによる抜粋の複写

107日目

この兜を永遠に脱げないかもしれないことを受け入れた。気に入らないが、仕方がない。これを売っていたあのクソ野郎が言っていたとおり、破壊不可能だということが分かった。あらゆる鍛冶を試したが、誰にも何もできなかった。

245日目

今日は別の魔術師に会った。他の連中と同じで、興味を持ったようだった。口ごもって何かを言って、書物を読んだりした。あらゆる呪文を試した。もちろん何も起きなかった。友人を紹介されたが、もうとっくに望みは捨てている。

487日目

かゆみが収まらない。あらゆることを試した。今朝だけでも千回は氷水に頭を突っ込んだはずだ。宿のベッドがシラミだらけなんて、最悪だ。

682日目

書くのはこれで最後だ。書くたび、何もかもが役立たずだということが分かる…もう望みはない。こんな姿で、どうやって生きていくんだ?兜から頭が出ない相手と家族を持とうとする者などいるわけがない。軍隊か何かに入ろうと思う。見込みが低いほどいい。こんなふうに生きていくより、戦場で死ぬほうがましだ。

白黒の絵筆The Monochrome Paintbrush

サマーセットの古い民話、作者不明 著
-遺物マスターグレナディルによる複写

昔、素晴らしい才能を持つ芸術家がいた。彼女の瞳は未知の世界で輝き、あまりの壮麗さと明るさに、美しいサマーセットさえ色あせて見えた。彼女は活気に満ちた景色を絵にしようとしたが、普通の色では用足りなかった。どうやったら光景を表現できるだろうか?

やけになっている時、貧しい商人が彼女の家の扉を叩いた。粗末な外見をした年寄りで、連れは足元に犬がいるだけだった。

「この絵筆を買わないか?」とその貧しい商人は聞いた。「この家からして、画家だろう。これを使えば、作品に命を吹き込めるようになるぞ」

好奇心をそそられた芸術家は、その絵筆に微々たる額を払うことに同意した。先端が白くて黒い象牙の柄をした、わりと大きな筆だった。白黒の絵筆という代物だが、名前に騙されてはならないと言われた。そうして年寄りの商人は満足した笑顔で去っていった。

芸術家はすぐさま仕事に取りかかり、彼女の目の前では信じられないようなことが起きた。ほんの少し前はただの絵の具だったものが、輝きを放ちながら深みのあるものになったのだ。それは色や情緒以上のもので、彼女がそれまで見た全てをしのぐものだった。ついに、色が彼女のずっと思い描いていたイメージと一致したのだ。

しかし、彼女が描いているとおかしなことが起きた。まず、彼女の唇、指先、鼻先から色が抜けていった。髪の毛は黄金のような黄色から色あせた白に変わり、服は青と紫が消えて灰に変わった。

彼女は気づかなかった。彼女はどんどん絵を描き続けた。自分が作り出している景色に没頭し、彼女の体は白と、黒と、灰色だけになった。目は重たくなり、心拍は次第にゆっくりと間隔を開けるようになり、ついに彼女は突然崩れるように倒れた。

彼女の死体の前にはサマーセットで最も美しい絵があった。今でも飾られていると言われているが、ニルンでは二度と目撃されていない。

非難の箱Chest of Condemnation

競売者ポーシャの話の引用
-遺物マスターグレナディルによる複写

さて、この美しい箱の入札を始める前に、一言警告を。気が小さい者には向かない品だ!こういう品の起源についてはあらゆる話が聞かれるが、ほとんど何も知られていない。確かなのは、強く呪われたものだということだ!

皆さん、よく聞いてほしい。聞こえるか?くぐもった、かすかなうめき声。安っぽい芸ではない!言っておくが、中に助手を仕込んでなどいない。非難の箱はいつも泣き声を上げているが、誰もその理由を知らない。中に何があるのか?残念ながらそれも謎だ。手が器用でないと封印を破れないだろうが、そんなことはお勧めしない。

しかし、真の呪いはそんなものじゃない。ちょっとしたうめき声など、害はないだろう?だがしばらくすると、頭をどうにかする傾向がある。この箱のこれまでの所有者は全員、しばらくすると完全にいかれてしまった。ここでは鍵をかけて誰にも聞こえない場所にしまっている。購入者も同じようにしたほうがいいだろう。

さて、入札を始めよう。まずは…50000ゴールドからでどうかな?

オーリドンの伝承

Auridon Lore

アイレン女王の台頭The Rise of Queen Ayrenn

スカイウォッチのヌーレテル 著

忠実なるオーリドンの市民よ!私はアルドメリ・ドミニオンの初代イーグル・プライマーチ、サマーセット諸島の上級女王、ウッドエルフのカモラン王家と友誼を結び、カジートのたてがみの親友である、我が女王アイレンの側近であることの喜びを感じている。

王室の側近として、私はアイレン女王の人生と経歴を略叙することにした。我が女王を己の心に迎え入れるつもりで読んでいただきたい。

女王陛下の幼きころは、島の多くの子供たちと同じように過ごされた。父君の側で剣の訓練を受け、我らの黄金の浜辺にて波間を馬で駆けた。そして、女王陛下は柔らかな桃色の花弁の下で、歴史と詩文を暗誦された。

20年以上前、我らの前向きな王——アリノールのヒデリス王、エセリウスで永遠に栄誉に浴されよ——は、殿下の迷宮への道を祝うため、水晶の塔にて王族と集まりになられた。この集中的な勉学の期間は、歴代のサマーセットの統治者に課せられるものであり、殿下はその期間を両腕を広げて迎える予定だった。その時が近づくと、女王だった殿下は失踪していたのだ!

長い捜索活動が開始される間、実際のところ、殿下はご自身の運命を切り拓いていた。殿下はアダマンチンの塔のディレニと共に生きるために、密かにバルフィエラ島に行かれた。殿下はそのクランの者たちに戦闘技術の訓練を受けた。彼らは殿下の単なる貴族の剣さばきを熟達した刃の舞踊へと変えたのだ。殿下の浜辺での乗馬は、馬上の強行軍となり、祖国の木の下での殿下の詩文の吟唱は、神秘的な芸術分野の研究の道を切り拓いた。

殿下のタムリエルでの冒険については、吟遊詩人と一般の書記たちに数多く書かれた。さよう、かつて熊に騎乗されたというのは事実だ。スカイリムのフロスト・トロールを狩り、ドワーフの遺跡の奥深くを探検し、シロディールの海賊船の乗組員になった。殿下はかつてアリクル砂漠の空を巨大な凧で飛び、イレッサン・ヒルズのネレイドと踊った。これらの冒険は理由のない戯れではなく、思慮のある歩みだった。それは、まさに剣の焼き入れのようなものだった!

ヒデリス王が薨去され、遠く離れた島々が歴史に飲み込まれそうになった時、アイレン王女はご帰還された!陛下は塵に落ちた冠を拾い上げ、父君の剣を取り、我々を世界へと導いてくれた。

殿下は我々を世界へと導いてくれ、我が岸辺の近くで待つ、新たな盟友を見出してくれた!殿下の高貴なるウッドエルフたちと猛々しきカジートとの繋がりは、タムリエルをまたぐこの強力なドミニオンの形成を可能にした。我々はシロディールの暗黒の心臓を襲撃できる態勢にあり、戦争を好む北の同盟からの略奪を退けられる。

殿下の勇気のベールの陰から誹謗中傷する者はいるが、アイレン女王はドミニオンの脈打つ心臓なのだ。我らの富と繁栄は、殿下失くしてはありえない。

エボンハート・パクトに関してRegarding the Ebonheart Pact

教化サピアルチ、シマーリーンのアイカンター 著

我々の従姉妹ダークエルフは、自分たちの先祖の裏切りに対する罰を正当に受けている。デイドラを信奉して見習おうと試みたために、呪いによって身体は醜くなり、国土は吹き飛ばされてしまった。今やその呪われた領土の境界線を離れ、本土の他の地を自分たちの異端信仰で染まらせようとしているところを見れば、その教訓はどうやら不十分だったようだ。彼らを意のままにする、ずる賢い悪魔の三人は、お人よしのノルドと、奴隷トカゲのアルゴニアンをだまし、このばかげた突拍子もない行為に参加させている。

エボンハート・パクトにシロディール統治を許してしまうのは、帝国を人間の部族に任せるくらい愚かなことだろう。トリビュナルはニルンにとって、最終的には無頓着で衝動的な人間よりも危険な存在である。彼らの力を破壊した上で、取り憑かれた大陸の隅へと再び追いやらなければならない…永遠に。

サルモールのチラシThe Stormfist Clan

教化サピアルチ、シマーリーンのアイカンター 著

諸島の忠実な市民よ、サルモールの声明を聞け。我らの新たな同志である、カジートとウッドエルフについて言葉の証人になれ。

我らの新たな同志、ウッドエルフとカジートとの結合は迅速に進んでいる。同盟の調和を促進するために、サルモールに忠実なる密偵たちが役に立つ通知を以下の短いリストにまとめた。この義務的な指針を歓迎できれば、我らの新たな同志は好意的に見てくれるだろう。

—カジートを「猫」、「子猫」、「毛玉」や他の猫が関連する差別用語で呼んではいけない。

—カジートの珍味の多くはとても甘く、もしくはムーンシュガーと呼ばれるエキゾチックな材料で味付けされている。食事をする時は気をつけるように。

—許可なくカジートの尾を触ってはいけない。

—我らが味方、カジートの民は珍しい方言を使う。彼らの会話をあざ笑うこと、マネすることはとても無礼なことである、アルドマーらしくない。

—ウッドエルフを食事に招待する時、彼らにとって森は聖なる場所であることを知っておこう。鹿の肉は出してもいいが、サラダはダメだ。

—ウッドエルフのことを、「チビたち」、「小人たち」や背に関する差別的用語で呼んではいけない。

—ウッドエルフの酒は、我らのものとはかなり違うので、飲む時は注意が必要。

—ウッドエルフに彼が食人種であることをほのめかしてはいけない。また、死者の処分はどのように行うのか伺ってはいけない。

鷲よ、団結せよ!

シーバイパーの牙Fang of the Sea Vipers

発明家テレンジャー 著

私は女王陛下の側近であるヌーレテルの要請で、シーエルフとして広く知られるピャンドニアのマオマーについて、簡潔な報告書を作成した。さあ、読みたまえ、そして知識の光明によって恐怖を取り除くのだ。

彼らの古代史はドミニオンの全域でよく知られているので、ここで詳しく述べる価値はない。オルグヌム「王」として知られるアークメイジが、隠れ島の追放者たちを長い間先導したと言えば十分だろう。その者は自分の若さと活力を、邪悪な呪文と儀式、そして生贄を使い、絶えず再生させていた。

すでに耳にしたことのあるその他の噂話も事実である。マオマーはオルグヌムの儀式によってシーサーペントを支配できる。中には、波間をぬって獣に乗る術を習得した者もいるし、より大きくてさらに扱いづらい獣が、彼らの最大の艦隊を支援するため泳いでいるのだ。

今現在オーリドンを脅かす船団は、シーバイパーと名乗っていることが明らかになった。三旗の戦いにおける最近の状況が、バイパーをオーリドンや本土辺りの海へと呼び込む原因となっている。この機に便乗したマオマーは、今や同盟間の争いにおいて自らの勝利を収めようとしている。

オーリドン第一海兵隊およびドミニオン海軍、そしてその他の者たちも、マオマーの前進を止める用意はいつでもできている。バイパーの形跡を見た者は、すぐにキャノンリーブか、近くのドミニオン将校まで報告するように。

鷲たちよ、我々の巣をバイパーに取らせはしない。慎重に、だが勇気を持って挑むのだ。

ダガーフォール・カバナントの罪Crimes of the Daggerfall Covenant

概要

教化サピアルチ、シマーリーンのアイカンター 著

ダガーフォール・カバナントの諸王国には、ディレニの従姉妹たち、北西タムリエルを統治する正当な権利のあるハイエルフに、ひどい抑圧を与えた成り上がりの混血たちが住んでいる。彼らはアレッシア教団として知られる、危険な、大量虐殺の狂信者の台頭に大きく加担した。自分たちの海賊がアルドマーの船舶を襲うことを許容しているのだ。ブレトンも見境がないために、残忍なオーシマーを仲間として受け入れた。(オーシマーだって!一体想像できるか?)相当な数の野蛮な部隊を集める能力はあるが、この堕落した混血に現在ムンダスを脅かす、神による天災に対処する知恵や知識があるという証拠はない。できるだけ早急に彼らを懲罰し、制圧しなければならない。ドミニオンが世界を救い…そして、将来世界を守る仕事を進められるように。

ファーストホールドへの到着The Lay of Firsthold

エルフは試練によって追いやられ
スロードだらけの海を越えてサマーセットへ。
ああ、アルドメリス!旧エルノフェイ!その優しい顔立ちが今でも思い浮かぶ。
今でも我らはそよ風の口づけに心を奪われるが
それは心の記憶の中だけで、
心髄の深遠への悲しみが
すべてのアルドマーを満たす。
マグナスが沈んで夜の時刻が訪れた時、
フクロウと亡霊が忍び足でうろつきまわり
目がもはや星を見られなくなった時、
幻想が深遠を横切り
アルドマーは強烈で多彩な領域に
色を染められたオーリドンに
無関心な宿命を逃れ
東の島々へとなぜ来たのか。

船の前の泡の中から浮かび上がる
その9つの船首はキラキラ光るなぎさを切って進む。
先頭の船からトリナーンが降りてきて
銀色の浜辺から緑に覆われた丘まで、
この地すべてのキンホールドだと主張した
その姿は金色の暁にずいぶんと染められていた。
オーリドンの名前はそのようにして、
ほどなくその王国に与えられた。
そこは未開の地であったが、
一度は後悔したトリナーンの心を瞬時にして掴んだ。
彼は剣を抜いて血を抜き、
決してこの地を出ないと誓いを立てた。
彼らは陸に降り立ち、
家を建てて街を作り、製錬所を建てて群衆を築いた。
そして牧草地を耕し、浜辺を整備して田畑を作り、
エルフが繁栄することのできる郷里を作った。

その後、丘から怒って吠えながら、
目を飾りたてた角のある醜い者がやってきた。
ギータス、ウェルワ、イリアディの
求めたのはアルドマーの残酷な死。
何人かの者はこう言った。改めて船に乗り込み、
遠くのもっと安全な陸地を探し求めるべきであると。
しかし果敢なトリナーンの勇気によって、
先祖の物語を利用して、
オーリドンの織り機で織った
ヴァルラの石の神聖文字に刃を付け、
頭上の星から力を引き寄せ、
怪物を倒し破滅へと追いやった。
皆に恐ろしい魔法で苦しめられながら、
怪物は丘と高台の向こう側へと急かされ、
雷撃、氷、炎で吹き飛ばされて
最後には一人ずつ倒れた。

そのように紡いだ呪文によって
護られたオーリドンはその後、
工芸と農業、イマゴフォームに彫刻と、
アルトマーの器用さの下で繁栄したが、
他のアルトマーがそれよりも感心したのは
トリナーンの勇気ある偉業で、
他のキンホールドがすぐに後からサマーセットへと、
大変恵まれた穏やかな航行でやってきた。
ただ、そのキンホールドによる繁栄は
諸島のいたるところで見られたが、
ファーストホールドの岸を奮起させる
アルドマーの上陸が明らかになり、
彼らは果敢なトリナーンのその勇気、知恵、
洞察力を深く尊敬した。
天を利用し、
窮地のアルドマーを護った英雄を。

オーリドンは素晴らしき家。
マオマーを倒し、スロードを追い出す。

ベールを着けるのはなぜだ?Why Don the Veil?

善良なエルフよ、ベールを着ける理由をご存じだろう。この諸島が脅威に直面していることを、心の中では分かっていよう。我々は裏切られているのだ。

我々の指導者は今、怠け者の子供に従っている。猫と小人たちの女王だ。血統の偶然によって玉座を与えられた策士だ。玉座の間よりも茶碗の家がお似合いの娘だ。

この諸島は我々のものだ!アルドマーの末裔であるハイエルフが、花々の下で何もせず座り込んでいなければならないなんて。平原からやってきたみすぼらしい混血が、エルフのようにはしゃいでいるのをただ見なければいけないなんて。森から来た獣の言葉が我々の道で話されるのを、聞かなければならないなんて。

我々の生活にこのような暴力を引き込んだのも、引き起こしたのも我々ではない。こんな対立は、予想もしなかったし招いてもいない。民の持つ真の強さは、このような瞬間が訪れた時、いかに立ち上がるかで定められる。

オーリドンのエルフよ、今こそ立ち上がれ。ベールを着けるのだ!女王に、そのドミニオンに対抗し、敢然と立ち上がれ。そして、サマーセット諸島を取り戻すのだ!

上級公ライリスと魔術師ギルドKinlord Rilis and the Mages Guild

魔術師ギルド上級遺物師ヴァラステ 著

幹部の者として、上級公ライリスXII世が魔術師ギルドの創設者であるという意見についての説明と根絶が必要だと思われる。一般の者には、上級公の残酷さとサディズムが広く知れ渡る前に、彼は庶民を守るため「危険な魔術師」を支配する協定がまとまるように取り計らったとされている。これは事実ではない。

イアケシスの生徒、ヴァヌス・ガレリオンは確かに大都市での魔法の実験を通じて、市民の間の一般的な考えを侮辱した。彼はファーストホールドの都市に、数多くの学生や発明家たちを呼び集めた。魔法使いが近接する利点を証明しようと初めて試みたのだ。強力な儀式などのためではなく、勉学、研究と友愛のために。

この単純な前提がファーストホールドの住民をあまりにも怖がらせ、彼らは統治者である上級公ライリスXII世に助けを求めた。今では下品な肩書きで呼ばれているが、ライリスは何よりもまず政治家だった。彼は、当時「ガレリオンの愚行」と呼ばれたものに、魔術師と一般人を対立させる機会を見出した。

よくいろいろと推測される「憲章秘密会議」には、ライリス、イアケシス、ガレリオンや、その他諸島とサイジック会の著名人たちを呼び集められた。同意があったため、その会議の記録は確かに残されなかった。だが、このことはご記憶いただきたい。ライリスは会議の開催を許可し、ガレリオンの行動も許可した。すべては己の目的のために。

もちろん、今思い返せば、アルテウムの遺産は新たなる魔術師ギルドの立派な財産だ。我らはギルドの旗印のもとに正々堂々と集い、これから何世紀先も間違いなくそうするだろう。ただ、このことは覚えておいて欲しい。ライリスXII世は危険なエルフだった。秘密会議が行われていた時も、彼は邪悪な力と取引し、デイドラと協定を結んでいた。

我らが仕える誇り高き団体は、彼の思惑と異なり、それに反したことで今現在存在している。

様々な宗派:ハイエルフVarieties of Faith: The High Elves

タムリエルにおける様々な宗派:ハイエルフ

帝国大学 ミカエル・カルクソル修道士 著

八大神

(ただし、帝国外のほとんどのアルトマーは神を八柱に制限することを認めない)

アーリエル(アルドマーの王):

エルフのアカトシュはアーリエルである。アーリエルはアヌイ・エルの魂であり、同様にアヌイ・エルは「すべてのもの」のアヌの魂。ほとんどのアルドマーの神々の長である。大抵のアルトマーとボズマーがアーリエルの直接の子孫であると主張している。唯一知られる欠点として、アーリエルは定命の者の次元の創造で役目を果たすことに同意したが、それは永久なる霊魂の世界からエルフが永遠に分断される行いであった。その埋め合わせをするべく、アーリエルは神話の時代に最初のアルドマーを率いてロルカーンの軍と戦い、強大な力に打ち勝って、アルトマー、アルトモラ、旧エルノフェイの、最初の諸王国を建立した。その後彼は、信奉者たちが定命の者の次元から逃避するのに必要な道のりを学べるよう、皆が注目する中で天に昇った。

マグナス(メイガス):

魔術の神であるマグナスは最後の最後で世界の創造から身を引いたが、その代償は大きかった。この世に残っている彼の名残は定命の者たちに魔法として認識され、操られている。伝説の一つでは、定命の次元を生み出すこと自体はロルカーンの発案だったものの、実際の構築に必要な図式や図表を作り出したのはマグナスだったとされている。

トリニマク:

初期アルドマーの強靭な神で、場所によってはアーリエルよりも人気がある。彼は人間と戦うために軍を率いた、最初のエルフ種族の戦士の魂であった。ボエシアは、アルトマーの群衆に耳を傾けさせるためにその形になったと言われている(いくつかの物語の中で、彼はトリニマクでさえ食べている)が、それによって結果的にチャイマーに変えられてしまった。トリニマクはこの後、神話の舞台からは姿を消すが、恐ろしいマラキャスとして戻ってくる(アルトマーのプロパガンダは、これをダンマーの影響がもたらす脅威として表現している)。

イフレ(森の神):

時の竜アカトシュが神の王であっても、イフレは「現在」の霊魂として崇拝されている。エルフによると定命の者の次元の誕生後、何もかもが混沌に陥っており、最初の定命の者たちは植物に姿を変えては動物に変化し、再び戻ることを繰り返していた。そこでイフレがアース・ボーンズを意味する最初のエルノフェイ、もしくは「アース・ボーンズ」に姿を変えた。これら自然の掟が確立した後、定命の者たちは新たな世界を理解することで、ある程度の安全を確保できるようになったという。

ザルクセス:

ザルクセスは先祖と秘密の知識の神である。始めはアーリエルの書記だった彼は、時間が始まって以来、小さいものも大きいものも含め、これまでのすべてのアルドマーの偉業を記録している。妻のオグマは、歴史上自分が気に入った節目から作り出した。

マーラ(愛の女神):

万物の女神といっても過言ではない。起源は豊穣の女神として神話の時代に始まった。創造を生んだ宇宙の女性の本源である、「アヌアド」のニールを時に連想させる。アルトマーにとっては、アーリエルの妻。

ステンダール(慈愛の神)

慈悲と公正な規範の神。アルトマーの初期の言い伝えの中では、ステンダールは人類の弁証者である。

シラベイン(ウォーロックの神):

アルドマーの魔法の神の先祖であるシラベインは、スロードの衰退でベンドゥ・オロを支援した。魔法の指輪を慎重に使い、スラシアの疫病の災厄から多くを救った。また、魔術師ギルドの若いメンバーから好かれているため、見習いの神とも呼ばれる。

—アルトマーにおいて崇拝されるその他の重要な神々—

フィナスタール:

サマーセット諸島の英雄の神。アルトマーに歩く歩幅を短くすることで自然に100年寿命を延ばす方法を教えた。

ロルカーン(不在の神)

この創造者、詐欺師にして試練を与える神は、タムリエルに存在するどの神話にも登場する。彼の最も一般的に知られる名前はアルドメリの「ロルカーン」か破滅の太鼓である。彼は父親であるパドメイが始まりの場所に不安定さをもたらして現状を乱したのと同じように、原初の魂を説得、もしくはけしかけて定命の者の次元を生み出させた。その世界が実現すると、ロルカーンは神の中心地から離れ、伝承によっては不本意ながらという説もあるが、原初の神々の創造地をさまよう。彼と彼の「計画」については文化によって解釈が大きく違う。ハイエルフにとっては崇高なる力において最も不浄な存在であるが、それは彼らの精神世界へのつながりすべてを永久に壊したためである。言い伝えにおいて彼はいつでもアルドマーの敵であり、ゆえに初期の人類にとっては英雄である。

鷲の影の生活Life in the Eagle’s Shadow

暁星の月、1日:
新たな年、新たな始まり。昨夜、シルネは私の婚約者になることを承諾してくれた!私はマティースン一の運の良いエルフだ。すでに鍛冶場を使えるよう、ヨンディンに手配した。私は父の古い剣を溶かし、マーラの指輪の土台にするつもりだ。マティースン鋼は兵士たちにとって十分満足できるものなんだろう?私の最愛の人にとってもそうだろう。

薄明の月、3日:
伝令が島中で声を上げている。新たな女王が誕生した!それで、私たちは同盟か何かの一員になった。よりによって、ウッドエルフとカジートとの同盟だ。「アルドメリ・ドミニオン」と呼ぶらしい。誇らしく思ったが、父は文句を言うだけだ。父は「あのような連中」を島に入れては、仕事に悪い影響がでる、と言っている。

薄明の月、10日:
夜中に、シルネと一緒にお忍びでスカイウォッチに行った。道端で寝たのがとてもワクワクした。まるでギルドの戦士だった!祝賀を告知するちらしは島中に溢れ、こんなことは見過ごせないと私たちは思った。老いたエルフにこっぴどく怒られることはわかっている。だけど、いいんだ。女王、たてがみとボズマーの樹の従士をこの目で見る機会を見過ごす?ありえない。

薄明の月、11日:
今日が何かの兆候だったのであれば、父は正しかった。パレードは素晴らしかった。女王が門まで続く道を、海兵隊のファランクスを率いながら歩んだ。その後、樹の従士の狡猾な密林のレンジャーがやってきた。ヴァインダスク、と誰かが言っていたかな?それから、髪を編んだたてがみたちが来た!カジートの戦士は素晴らしかった。

私の小銭入れを盗もうとしていた、あの毛むくじゃらのスリよりも素晴らしかった。逃げる前に捕まえようとしたが、カエルレースに熱中していた港の職員たちの中へ紛れ込んでしまった。そのまま消えてしまった。シルネは大丈夫だと言ってくれた。計算したよりも早めに出ればいいと。ちくしょう。彼女をがっかりさせたくない。

薄明の月、17日:
ちくしょう!シルネとスカイウォッチから戻ってきてから、すべてがごちゃごちゃだ。父は私たちがこっそり行ったことをカンカンに怒っていた。あのスリにどれだけ小銭を盗まれたかを教えたら…鍛冶場の仕事を学んでいたとき以来、あれほどあの老人に殴られたことはなかった。

それで、数日前、私たちみんなは鍛冶頭の事務所に連れていかれた。コンダリンから、同盟のおかげでエルフの商人たちが「あの連中」を雇えるようになったという報告を受けた。「彼ら」に仕事を与えれば、サルモールからお金がもらえるらしい。

それで、彼は父の契約を破棄したんだ!鍛冶場で何十年も働いたのに、いまでは猫人間と食人族が代わりに仕事をしている。すべてはこの忌々しい同盟のせいだ。父は自分のことよりも、鋼のことを心配している。彼らはやり方を知らないと言っている。天の星よ、何が起きているんだ?

蒔種の月、5日:
私は夕飯を盗まなければいけないほど落ちぶれたが、もちろん捕まった。夕暮れ後にシルセイレンに忍び込み、おいしそうな白魚の香りが漂っていた。採用担当者が街に来たあの午前中、シルネの母親が作ったスパイス入りのパンを食べて以来、私は何も口にしてなかった。

街に忍び込み、地元の宿屋のにおいをたどった。どうやって調理場に入ろうか考えていたときに、大きな手が私の肩を叩いた。キャノンリーブの部下だった。彼は私が何を企んでいたかはっきりわかっていた。まるで、街に忍び込んでからずっと私のことを監視していたように。今は、リーブの邸宅の近くにある牢屋に座りながら、裁きを待っている。少なくとも、ここでは手記を書かせてくれる。

クソくらえ、アイレン!クソくらえ、ドミニオン!

蒔種の月、10日:
今までの私の人生は終わった。ベールの下で新たな人生が始まった。ヴァラノという誇り高き男であるキャノンリーブ自身も、ドミニオンの下での人生に疑いを持っていたらしい。彼は女王と親友だったらしいが、歳月が彼女を変貌させてしまったと心配している。

ヴァラノはベールの継承者という団体の一員だ。彼らは自由を得るために戦う人たちだ。彼は難しい選択肢を選ぶことを辞さず、外国の影響が我らの土地を汚すのを止めようとしている。

私はあのシルセイレンの地下にある牢屋から連れ出されたとき、重労働を覚悟した。それどころか、私は新たな家族を見つけた。ヴァラノは私が抱える問題のすべてを知っていると言ってくれ、私がドミニオンの採用担当者に連れて行かれたことも知っていた。彼は私を助けてくれると言った。そして、私が自分を助けられるように手伝うと。

私はそのようにする。