ハーシーン | The Elder Scrolls Online 外部蔵書庫The Elder Scrolls Online 外部蔵書庫

リーチの指導者

The Reach Reader

Rによる命令Orders from R

ペンターチ・セヴィダ

リーチの魔女はネザールートの群生地をもう1つ突き止めた。カースワステンの村の下には大量に生えているが、現地の住民には使い道がないのでほぼ無視されている。ネザールートはブラックリーチの北で見つかる形状のものと品種が違うが、出発前に教えておいた材料を加えれば、目的に十分役立つはずだ。ネザールートはより短期間で生えるので、収穫すればさらに強力な喪心の嵐を生み出すための助けになるだろう。

命令はこの新種を育て、魔女に供給することだ。1週間ほどしたら、誰かが進捗を確認に行く。

R

アークスザンドの伝説Legend of Arkthzand

非凡なる功績の学者、ネラモ 著

神話中の神話はどのように追求するのか?物語で名高い北タムリエルのドゥエマーの街は、その秘密の深さが未だ解明されていないとは言え、広大な遺跡の位置は良く知られており、また、土地に住むエルフや人間との交流が数多く歴史に記録されている。だが、それとは異なり、アークスザンドは今も謎のままだ。その場所がどこにあるかは誰も知らず、他の民の書物にはアークスザンドについての話が全く残っていない。我々がアークスザンドについて知ることと言えば、ドゥエマーの文書にある暗号のような言及だけで、その文書自体もほぼ完全な解読は不能だ。確かに言えることは、アークスザンドと呼ばれる場所が実在し、そこが伝承と学びの中心地だったということだけだ。

ああ!確かなことが尽きれば、あとは推測しかできない。

私に言える限り、アークスザンドはブラックリーチと呼ばれる地下世界の洞窟にあった、ドゥエマー文明の絶頂期に築かれた。第一紀の初め、4つのドワーフの街がエセリウムとして知られるアルケインの鉱物を採掘し、その知識を得るために鉱山労働者の連合、もしくは同盟を組んだ。そのうち2つの街、アルクンザムズとブサーゼルはおそらくリーチの西にある山麓の丘陵地帯の下にあった。発見と繁栄の時代、彼らはこの深みのどこかに、大規模な蔵書庫を作るために手を結んだと情報源は示唆している。多くのドゥエマーのクランが、学び知識を共有するためアークスザンドへやって来た。だが、やがてこの隠された領域に衝突や戦争が訪れ、平和に満ちた蔵書庫は放棄された。

妙な話だが、ヌチュアンド・ゼルの街は、アルクンザムズとブサーゼルの近くに位置していたにも関わらず、ブラックリーチの同盟の話やエセリウム戦争と呼ばれる記録の中で驚くほど触れられていない。私にはドゥエマーの忘れられた政治問題について、不思議に思うことしかできない。ヌチュアンド・ゼルは他の街の敵だったのか?あるいは中立地帯?でなければブラックリーチ同盟の内政により、5番目の仲間を加えることが不可能だったのか?

この謎の答えが、アークスザンドの蔵書庫の謎を解くためには重要なのかもしれない。ブラックリーチやブサーゼルやアルクンザムズへの道を見つけ出した者は、知る限りまだいない。しかしヌチュアンド・ゼルはマルカルスの街にある。私はまだ訪れたことはないが、報告によれば地下には遺跡が連なっているそうだ。実在しているとしたら、ここからアークスザンドの蔵書庫への道が開かれていたかもしれない。

未発見かつ略奪されていないドゥエマーの伝承の宝物庫を見つけられるという可能性は、もちろん想像力を刺激する。長年にわたり、多くのダンジョン探検者がアークスザンドの存在に関する手掛かりをいくつか見つけ出し、手つかずのドゥエマーの遺跡を調査するために危険を承知でリーチに挑んだ。これらの盗掘者のほとんどが、数えきれないほどの財宝や富のことしか考えていなかったことはほぼ間違いない。泥棒と破壊者どもめ!何よりも素晴らしい宝は知識だ。ここではどんな秘密が見つかる?エセリウムのクリスタルの働きは?音調の構造?星の秘密とは?誰にも分からない。

後世の人々のため、教養のない金目当ての奴が偶然この場所を見つけて、何かかけがえのないものを不器用に破壊する前に、いつかその地を訪れてアークスザンド蔵書庫を探したい。マルカルスへ訪問できたなら、暴君に合理的な行動を取るよう説得したいのだ。もしかしたら、新たにヌチュアンド・ゼルに降りる試みをさせてくれるよう説得…あるいは賄賂で、どうにかできるかもしれない。求める答えが、悪名高いアンダーストーン砦の下のどこかにあることは確信している。

アークスザンド蔵書庫The Library of Arkthzand

我々はレディ・ビレインがアークスザンドの蔵書庫と呼ぶ遺跡に到着した。蔵書庫のようには見えない。この闇の遺物を目覚めさせることへのビレインの執着には懸念を覚える。長く隔絶されていた悪影響があるのではないだろうか。

闇の遺物の存在は、どうやらある種の奇妙な力の穴を作り出したようだ。レディ・ビレインは彼女の仲間が、短距離を移動するために力を利用したと主張している。他の手段では行けない場所へ。灰の王は私にこの現象のさらなる調査を命じた。これがグレイホストの大きな利益につながるかもしれないからだ。私はこの虚無のポータルの有用性を確認するため、全力を尽くす。

とは言え、警戒は怠らないつもりだ。私は時と共に、ここの闇から活力を得た者たちがどうなったかを見て来た。これは生きるための手段ではない。レディ・ビレインとの同盟がグレイホストの目標にとって必要なことは理解している。だが、彼女の狂気の罠に捕らわれてはいけない。

ペンターチ・シーヴェルネス

あなたに向いたギルドは?Which Guild is for You?

冒険者、傭兵、魔法使い、悪党の皆さん!冒険の仲間が必要だと思ったことはありませんか?大胆な偉業を可能にする深い絆を切望してはいませんか?もしかしたら、ギルドに入る時かもしれません!

現在のリストを確認したい場合は、ギルドの使者アムサードまで

アンスデュランからの手紙Letter from Ansdurran

フェイラへ

今回の襲撃では、なんとかいいものを手に入れたよ。確かに見た目は役に立たない骨のかけらだが、リーチの魔女から奪った。見習いレイレンと名乗って、どうか取らないでくれと懇願してきた。マルカルスの新しい祠に必要だって言ってたな。彼女の師、大呪術師グリンロックに。その魔女のために言っておく。彼女はなかなか健闘したよ。死ぬ前には、俺に怪我までさせたしな。

君の後援者は、こういうガラクタを買うんだろ?彼女の魔術師なら、絶対にこれが本物だって見分けられるはずだ。これはドルアダッチ砦の近くの、いつもの場所に隠しておく。これにはいい報酬を期待してる。この怪我の埋め合わせにな。血が止まらないんだ。

A

イーグルシアー・クランでの1年A Year Among the Eagleseer Clan

グウィリム大学、グラブリアン・ツリエル 著
(第二紀564年、レオヴィック皇帝統治時代に執筆)

数百年に渡り、リーチとその住民は他の土地の人々にとって謎めいた存在だった。だが、マルカルスにおける帝国総督の任命は、リーチと民に新たな時代を告げている。タムリエルの学者と旅人はついにリーチへ踏み込めるようになり、そしておそらくリーチの民と彼らのやり方について理解してきている。

そのような目的を胸に第二紀560年の春、モリカル皇帝からの紹介状を持って私はマルカルスへ旅立った。カダッチ総督は(懸念を持ちつつも)ガイドの調達に力を貸してくれた。ドゥニアルと言う名で、私を友好的なクランであるイーグルシアーに紹介するためのガイドだ。3日間の旅でイーグルシアーのデュン(要塞化された丘の上の村。内陸地域ではよく見られる)に到着した。ドゥニアルが私の任務を説明すると、ダラー族長と側近の魔女アシュリンは私を受け入れてくれた。当初、ダラーは私の意図に戸惑っている様子で、アシュリンは露骨に私を蔑んでいた。彼らが滞在を許したのは、ダラーがカダッチに小さな貸しを作っておけば使えるかもしれないと考えたからにすぎないと思う。

到着したのは早春で、儀式的な狩りの準備が進行していることに気づいた。どうやらこの季節で初めて行うもののようだ。長く寒い冬の後で、クランの食料の備蓄が尽きかけていたのだが、ついに雪が融けたため、大人数の狩りの一行が出発の準備をしていた。狩人たちが出発する前の晩、クランの者がハーシーンの加護を願う儀式のために集まった。野性的な踊りが追跡と殺戮を表現したが、かなり暴力的な光景で不安を感じた。いかなる理由であれ、デイドラ公に祈願するなど、どう考えても無謀に思えた。アシュリンと魔女たちが全てを取り仕切っていた。儀式が最高潮に達すると、彼女はクランの戦士たちに私を追い払うよう命じた。どうやらこの後に続く秘密の儀式は部外者が見るべきものではないらしい。それ以上のことを学ぶ機会はなかった。

儀式(だか何だか知らないが)では、どうやら狩りがうまく行くというハーシーンの好意的意見が得られたようだった。私は狩人たちが戻ってから2週間ほどイーグルシアーに留まり、彼らのライフスタイルを観察した。彼らは下品で遠慮のない人々で、中にはわざわざ無理をしてまで、私を怖がらせるか驚かせられないかと試みる者もあった。しかし、私がダラー族長の保護下にいるという事実が、最悪の事態から私を守ってくれていたようだった。紙とインクの在庫が尽きかけ、また長居しすぎて嫌われたくないという意識から、持ってきた小物を彼らに贈り、別れを告げた。そしてマルカルスへ引き返した。

夏のさなかにイーグルシアーへ戻ると、クランのデュンが半ば空になっていることに気づいて驚いた。クランは家畜の群れを豊かな牧草地に移動させ、多くが貴重な家畜を見張るために一時的なキャンプを設置しているのだと知った。リーチの民はクラン同士が揉めていない限り他のリーチの民から盗みを働くことはないが、山にはオーガやトロール、危険な野獣が住んでいる。家畜の群れは絶え間なく守らなければならない。他のイーグルシアーの者は近くの川岸に釣り用キャンプを設置するために離れていたか、マルカルスへ取引に行ってしまっていた。前に滞在していた頃よりも、彼らは忙しくしていた。

秋には3回目の訪問をしたが、クランはまた新たな生活の一面を見せてくれた。ほとんどのリーチの民のクランのように、イーグルシアーの者が畑に種を撒くことはなく、秋の収穫を楽しみにすることもない。だが、彼らは野生の根やベリーを集め、来たる冬に向けて準備をする。燻製小屋の中にはたっぷりの肉が保管されていた。1年のこの時期、イーグルシアーの者は家畜の群れから寒い季節を耐え抜くために必要な家畜を選んで殺すのだ。今回、私はマルカルスから役に立つ贈り物を持って来ていた。ナイフや毛布などだ。そして、機会があるたびに努めてクランの仕事に参加していた。イーグルシアーの者たちは徐々に私の存在に慣れてきているようだった。

4ヶ月後、私は真冬に雪の中を困難かつ危険な旅をして戻った。私はイーグルシアーの友人たち――この頃には多少いたので――がどうしているか心配だった。私は、冬が道具や服やおもちゃを作る季節であることを学んでいた。狩人たちは天候と獲物の状況が良さそうなら自らの運を試すが、ほとんどの人は夏と秋に蓄えることができた食料で生き延びている。恐ろしいことに、私はイーグルシアーが嘆き、激怒していることに気づいた。

私が戻る3日前にシックスフォード・クランの戦士たちがイーグルシアーの狩猟団を待ち伏せし、ダラー族長を殺したのだ。どうやらシックスフォードとイーグルシアーは昔の侮辱のことで、長年におよぶ確執があったらしい。2つのクランは突発的に紛争を起こしていたが、冬は抗争と襲撃の季節なのだった。アシュリンは真正面からダラーの死について私のことをとがめた。老族長が軟弱なよそ者を歓迎したことで、リーチの厳格な神々の怒りを買ったのだと。彼らは不信を示し、私は直後に不安を感じて去った。

しかしイーグルシアー・クランに一年滞在して得られたものは大きかった。

ウェアウルフ:長く苦しんだ守護者Werewolves: Long-Suffering Guardians

リーチの戦士ブリグウォール 著、グウィリム大学民俗学助教授ザムシク・アフハラズによる書き起こし

「多くのアレッシア人や北方人、豚の民がリーチに贈り物を持って来た。お前たちは無価値な硬貨と本を友好の証として持ってくる。だがそれは全て嘘と欺きだ。リーチの子はよそ者の“贈り物”が全て要求を含んでいることを知っている。知識や土地、敵に対する助力の要求を。獣と霊魂の世界、つまり真実の世界で贈り物は存在しない。取引があるだけだ。だからその口から不誠実な舌を切り落とし、本当の舌を生やせ。我々はお前たちを好きにはならないが、少なくとも敬意は払うだろう」

「例えば、力強きハーシーンを見るがいい。古きエルクの目は苦痛なくして何も与えない。贈り物などない。ただ苦痛に満ちた取引だけだ。栄光も財宝も、饗宴も苦痛なしには手に入らない。ハーシーンの祝福でさえ、噛み傷の先からやって来る」

「狼の踊りを贈り物と呼ぶ者もいる。お前たちは呪いと呼ぶ。どちらの言葉も無意味だ。よそ者は世界の全てを“善”と“悪”に分けるが、本当の闘争は臆病と苦痛の間にしかない。英雄は苦痛を選ぶ。臆病者は安心を選ぶ。それが物事の本来の道だ」

「狼の踊りは苦痛の道だ。双子月の呼びかけは常に我々の胸の中でうずいている。我々の鼻は乾いて荒れる。木の煙とタンニンの臭いで燻される。腹は夜も昼も唸り声を上げ、クランの友人と一族の肉のために飢える。血への渇きと怒りの全てが、紐を引っ張っている。束縛を引きちぎり、世界を粉々に打ち砕くために」

「我々はなぜこのように苦しむのか?残酷な世界の中では、残酷さが唯一の慰めだからだ。リーチを食い物にする獣と人間には、苦痛を与えなければならない。そして我々狼の民は、ほとんどの者に理解できない苦痛を知っている。我々はその痛みを利用して民を守っている。我々は心を固くし、渇望を窒息させ、掌に爪を喰い込ませる。近いうちに遠くから、何者かが我々の持つものを奪いに来ると分かっているからだ。そして奴らが来たら、牙と爪で応じる用意を整えている」

「これで分かっただろう。ハーシーンは贈り物など与えぬ。取引するだけだ。我々の痛みと引き換えに、我々の敵に痛みを与える。我々はこの取引を喜んで行う。苦痛はリーチの道だからだ。我々と道を違える者は、誰であろうとこの教訓を学ぶだろう」

ヴリンドリルの間の積荷証Vlindrel Hall Bill of Lading

マダム・ディアンテナ様

この船荷証は貴重品の長距離輸送が終了したことを確認するものです。今回と以前の3回に関しまして、ご依頼通りヴリンドリルの間にお届けしました。最新の輸送品は下記の通りです。

– 高級アルゴニアンシルク4
– アンヴィルから輸入されたダイヤモンドブローチ2
– リンメン上質なカジートの毛皮6

現時点で商品がお客様の所有物となったため、輸送中に配送品が受けたあらゆる損害、またはあらゆる窃盗の事例に対して、マルカルス商会は責任を負いかねますことを念のためお知らせいたします。またのお買い上げをお待ち申し上げます。

ご利用ありがとうございました。

ヘルミニア・コルヴィヌス
マルカルス商会
高級品取り扱い

カーススパイアー草原の戦いThe Battle of Karthspire Lea

リーチ人はほとんどの学者が慣れているようなやり方で自らの物語を書くことはない。物語を人から人へと伝える彼らの伝承は美しく、それに対して深く敬意を感じている。だが、私の中の学者は、書き記すことなく物語を頭の中に保つのは困難であることに気づいた。私にとって、書き記すということは物語をいつくしむもう1つの形なのである。伝える内容は変わらないが、羊皮紙に書きこむ行為は親密に感じられるやり方でその言葉を私の心に貼り付ける。もちろん、物語の伝え方を正す人などいない。だが、私はこの話をあるリーチのヴァテシュランから聞いたのだが、そいつは私に爪をたて、紙に書き記すまで放してくれなかった。私はこの書き取りをヴァテシュラン本人に捧げたいと思う。彼がこれを読むために学ぶことも期待しないし、それを頼むつもりもない。これは私から彼への記念品、つまり、彼が独自のやり方で表現することで物語を共有してくれたことに対して感謝を示す手段だ。

おそらく彼はこれをよそ者の愚かさと感じて捨て去るだろう。だがそれでかまわない。私はとにかくこの話を聞けたことに感謝しているのだ。

* * *
カーススパイアー草原の戦い
ヴァテシュラン・バースによる談話に基づく。

それは戦いというよりも血の海だった。シックスフォードとイーグルシアーは戦ったのではなく、ただ血を流しただけだった。草原の草はほぼ完全に赤く染まり、遠くからはまるで黒い色のように見えた。

明らかな勝者はいなかった。リーチの者同士の衝突ではよくあることだ。多くの戦いが、この戦いの原因にもなったある種の怒りと激しさをもって行われる。だが歴史的に見ると、その怒りと激しさは一方の軍勢によってもたらされる。それが闘争の本質だ。そして集団というものは、どれだけ怒りに駆られていようと、圧迫されれば勢いが弱まる。だがこの戦いは違った。どちらの勢いも衰えなかった。彼らはお互いに対して身を投げ出し、まるで崖に打ち付ける波のように絶えることなく衝突を続けた。

どちらのクランの男も女も、まるで死ぬつもりで戦っているかのように見えた。彼らの頭に勝利はなく、あるのはただ殺戮のみだった。

戦いが始まって間もない時期に、イーグルシアーの族長マドルファが致命傷を負った。彼の脚に槍が刺さり、歩くことができなくなった。彼は立たなくても戦いを続けられるように、近くの柱に自分を縛り付けるよう側にいた者に強く要求した。戦いは勝敗よりも闇の深い何かになっていた。それは妨げられることのない、留まるところを知らない、可能な限り多くの敵を殺すことを目的とした怒りだった。

その日、カーススパイアー草原から立ち去ったリーチの者は多くなかった。

カース川での生活Living on the Karth River

アオドシル 著

父は私が読み書きを覚えることに賛成しなかったが、私たちの物語は語る価値があるはずだ。リーチの外には、私たちを軽蔑の目で見る者が数多くいる。彼らは父の硬くなった手を見て身をすくめるだろうし、陽に焼かれた頬は見苦しいと思われるかもしれない。だがこの父に関する全てが、カース川における人生を物語っている。父に口を開かせることができれば、リーチを流れる水が血管に流れていることが分かるだろう。

カース川はリーチの民が住む他のどんな場所とも変わらず、暴力的で過酷だ。激流が水から突き出した鋭い石に沿って流れ、狂ったように渦を巻く。切り立った崖から流れ落ちる滝は白く濁った水を雷鳴のように轟かせ、大人の馬も一瞬にして流し去ってしまう。

しかしリーチの大部分がそうであるように、カース川はそこに住む民に恵みをもたらす。ある瞬間には残酷でも、次の瞬間には母の愛を示してくれる。川に頼って生きる者は、また次の日を迎えられる。川の許しがあれば。川辺で老いるまで生きた私の父のような者は、敬意が重要であることを知っている。川はある者に大量の魚を与え、ある者は溺れさせる。そのどちらにも区別はなさそうに見える。だがカース川で育った者は知っている。川が敬意を、少なくとも配慮を要求することを。

父は川の中で服を洗う。川の水を飲み、川で体を洗う。そして川は彼に食料をもたらす。私のクランの者も大半は同じようにする。私たちのクランはずっと川のそばで暮らしてきた。時として他のクランや、川を手なずけ利用するために来たよそ者に追い出され、移動することもある。だが私たちはいつも川に引かれて戻ってくる。どこで分かれても、どのように流れていても、私たちは川に従う。川は故郷なのだ。

もっとも、カース川が私たちから奪わないわけではない。川は私たちと同様、対価を要求する。子供をさらい、食料の貯蔵所を破壊し、骨を折り、嵐の際には計り知れないほど大きく膨れ上がって、川沿いのキャンプを全て水没させてしまう。だが私たちはこうしたことがあっても、川に文句を言わない。カースで生きるとはそういうことだ。

カリスの日記Calis’s Journal

自分用の記録のために日記を書き続けるようマスター・ピシスに指導された。記録を書くのは決して得意ではないけど、記述する代わりに様々な標本の絵を描いて大部分のページを費やしてみたらどうだろうか。絵は単なる言葉より伝えやすいと思う。もしかしたら、私が大した書き手ではないからなのかもしれないが。

でも、どうやらマスター・ピシスは私を信じているらしい。遭遇するたびに困惑させられる。彼の植物学の研究にはずっと感銘を受け続けている。彼が私の指導者になることを申し出てくれたときは、言葉を失ってしまった。どうして彼ほどの人物が、私のような新人を指導して時間を無駄にしたいと思うんだろうか?ものすごく感謝はしている。夢が叶ったんだから。

彼はあまりしゃべらない。不親切ではないが、過度に温かいわけでもない。私もかなり無口なほうだから、これは問題ない。ただ彼の沈黙が、新しい見習いに対する苛立ちから来ているものじゃなければいいと思ってるだけだ。

マスターは最新の計画について固く口を閉ざしている。他のサイジックの人たちの多くが、私たちほどには植物学を真面目に捉えていないことには気づいていた。私は全く気にしていない。集団の中の興味や才能の対象がさまざまな場合は、その方が集団にとっていいと思っている。でも、マスター・ピシスが研究をほぼ私たち2人の間のものにし続けているのは、私たちが研究に対して真の情熱を持ってるからだと思う。彼が他の人には理解できない(私は他の人と話したときにそんな風に思ったことは絶対にないが)とあからさまに言ったことはないが、どちらかというと彼は、他の人に私たちの問題へ口出しして欲しくないんだろうと思う。

キッツァ・エノーへの手紙Letter to Kitza-Enoo

キッツァ・エノー
マルカルスの暴君が、カース川峡谷の全てのクランを石の街の壁の内側に避難させるために呼び集めたという話が耳に入った。我々の団体の文化的遺物コレクションを、ここまで充実させられる機会は今までなかった。

そこで君への現在の指令について考えてみた。リーチの大呪術師グリンロックがマルカルスに入る前に、見習いエグヴァーンを阻止するのだ。彼は狼の頭蓋骨のトーテムを運んでいる。彼らがストリーベグの象徴と呼ぶものだ。このデイドラの遺物が祠に祭られる前に入手してくれれば、かなりの額を支払おう。

迅速に行動して、この機会を無駄にしないように。
V

グレイホスト:歴史 第1部The Gray Host: A History Part 1

偉大なる探検家、アーチバルド・ローレント卿 著

年に一度、聖ぺリンの殉教を再演する赤のパレードの時期にバンコライ駐屯地を訪ねたことがある者ならば、グレイホストの名は聞いているだろう。しかしその恐るべき評判以外にはほとんど何も知らなくても無理はない。私でさえこの高度に脚色された歴史記述の影に何があったのか、あまり考えたことはなかった。しかし私には、ある戦争の光景を目撃したことで、千年前の戦いの実態が見えてくるようになった。

ブラック・ドレイクが駐屯地の壁にリーチの戦士を繰り返し送り込み、門の付近で日々殺戮が行われるのを見ながら過ぎたおぞましい5か月の後、地面は膝まで達する血と泥の海となり、ブラック・マーシュにも劣らぬ底なし沼の様相を呈していた。あの残虐なる液体が予知の聖水となって、私は聖ぺリンの犠牲を完全に理解できた。確かに実際は不器用で愚かな私の下男が、胸壁から転げ落ちた後で起き上がっただけだったかもしれない。しかし類似は明らかだ。リーチの大軍が退却したことで我々も多少の喜びを覚えたが、夜が落ちるにつれて消滅してしまった。恐怖に満ちた囁きが駐屯地中に陰湿な迷信を広め、生まれ変わったグレイホストが血塗れの汚泥から飛び出してきて復讐するという考えに、歴戦の兵までもが長靴を履いた足を震わせた。聖ぺリンの騎士たちは噂を鎮めるため、焦土の中に古代の敵の骨は一片たりとも残らなかったと請け合ったが、私は関心をそそられ、騎士団長にグレイホストの歴史を詳しく教えてほしいと頼んだのである。

私の同郷の者たちが抱いた恐怖は、祖先も殺戮の際に味わっていたようだ。疲労困憊した駐屯部隊は戦場の地面を削り取り、両手に一抱えの土が地平線に到るまで取り除かれた(これも脚色だろう)。女帝ヘストラのアレッシア司教の復讐に満ちた眼差しのもと、倒されたグレイホストの死体は聖なる炎で焼かれて灰となり、塵の山だけが残った。この積み上げられた灰はあるトゥワッカの教団によって南へ埋められ、教団はサタカルの皮膚が剥がれ落ちるまで、誰にも灰には手を出させないと誓った。どうやら、それはあまり長い期間ではなかったらしい。

さて、私も旅の途上で吸血鬼やウェアウルフに出会ったことはある(それどころか、以前の遠征ではその両方が馬鹿な下男を襲ってきたことさえある)。確かに恐るべき怪物だが、それほどの恐怖を引き起こすのは見たことがない。私はグレイホストについてもっと詳しく学び、彼らがいかにしてヘストラの熱狂的な信奉者の心にまで恐怖を与えたのかを知りたいと思った。駐屯地での仕事が終わると、私は駐屯地を去って南へ向かい、騎士団長が言っていた集団墓地を探した。

不浄の墓と呼ばれる場所を見張るパイアウォッチという衛兵に頼まれたので、グレイホストが最終的に埋葬された地の場所は明かさない。彼らに「歓迎」されるまでには、数週間をかけ、崩れかかった谷から飛び降りる不幸な経験が必要だったと言えば十分だろう。洞穴の境界を越えて進むことは誰にも許されず、さもなくば死刑になると言われた。しかし首にかけていた聖ぺリンの土塊によって、私たちは信用に値するとみなされ、とにかく埋葬地の生きた衛兵のところまでは案内された。嘆きのアイギスを身に着けようとした不運な下男を私が引きはがした後、パイアウォッチの衛兵は彼らが見張っている恐るべき軍団について、いくつかの逸話を話してくれた。

彼らの話によると、ハンマーフェルは不浄の都市ヴァーカースの暴政に数百年苦しめられていたが、女帝ヘストラが軍を率いて帝国から腐敗を一掃したという。呪われた者の街がいつ廃墟から現れたのかは不明だが、彼らの主張では街がどこからともなく出現し、その影でスカヴィンと周辺の村を覆った。ある説によれば怪物たちは隣人との平和を約束したが、それは獲物を彼らの王国へ誘い寄せる甘い嘘だった。暴君ストリキ王が本性を表した時、グレイホストはソースタッドとエリンヒルの間の全ての地を占拠したと主張し、この地方を2つに分断した。これが女帝の怒りを招き、その怒りが彼らの破滅を招いた。

パイアウォッチによれば、元のヴァーカースの街は大部分がインペリアルによって破壊されたという。この地はアレッシアの名のもとに再び聖別され、解放された者に与えられて、公正なる女帝の似姿として再建された。アレッシア人がどれほど熱心に戦争を遂行するかは知っているが、グレイホストの歴史について、ぞっとするような怪談以上の知識を与えてくれる断片があるはずだ。だから私は、次にこの街を訪れることに決めた。

グレイホスト:歴史 第2部The Gray Host: A History Part 2

偉大なる探検家、アーチバルド・ローレント卿 著

ヴァーカースは近隣の集落と比べて、建築においても文化においても明らかに一線を画している。レッドガードの影響はちらほら見られるが、インペリアルの解放者の象徴がこの街を支配している。しかし街の骨組みはさらに古く、帝国が征服したアイレイドの集落とよく似ている。街の壁を築く石、貴族の邸宅、中心にある城などは全てヴァーカースに固有のものである。優雅であると同時に威圧的で、古代デイドラ遺跡の石細工にも似ているが、より洗練されている。

意外とは言えないが、地元民はよそ者に懐疑的である。そのため私は自分がハイエルフ貴族であることをひたすら秘密にした。このことは愚かな我が下男に頭部への打撃数発を加えて教え込む必要があった。地元民は彼らの祖先をかつて支配した異教の怪物の話になるとあまり役に立たず、街の中央広場に飾られた女帝を称える歌を歌うのみだった。ヴァーカースの下で栄える地下世界に関する調査はより成果があった。しかしその前に、私が役立たずの下男に愚かにも預けてしまった物資を返すよう、彼らを説得しなければならなかったが。

ここの無法者は、地上にあるものを圧倒するほど広大な地下都市を隠れ家にした。広い回廊はヴァーカース最古の建物と交差し、盗賊に地表への容易な侵入口と脱出口を提供している。残念ながら、この地下都市は元々の居住者たちが追い払われて以来大部分が荒らし尽くされてしまったが、このならず者たちは私のような者に売りつけるために、あまり派手でない遺物をある程度残してあった。この手の連中にしては知恵があったものだ。

特に興味を引いたのは、どうやらデイドラ語の方言で書かれたと思われる巻物の束である。これを書いている時点で私の翻訳はまだ不完全だが、この文書は明らかにグレイホストの手によるものであり、内容は私的な伝言から命令、国事に到るまで様々だ。文書はヴァーカースがその君主によって完全に統治されていたわけではなく、街の創設に先立って存在していたグレイ評議会も統治に加わっていたことを示唆している。この評議会のメンバーはどうやら生まれたての王国の行く末について、全員が一致した意見を持っていたわけではないらしい。街が創設された日付を確定することはまだできないが、ヴァーカースはパイアウォッチが言うように一夜にして完成したのではない。街は地表へと拡張される以前も長い間、地下で栄えていたのだ。吸血鬼とウェアウルフの軍団が協力に至った速度を考えるならば、近隣の者たちが気づく前に街が存在していたという考えは、完全に不合理なものではないように思える。

推測は入るが、グレイホストの拠点は外の世界に「現れる」よりもほぼ100年前に形成された。街を築いたグレイ評議会がどういう経緯で成立したのかは分からないが、崩落したトンネルや歩道の存在からして、この地下都市は孤立していなかったと思われる。ここで筆を止めるのは不吉だと承知しているが、これ以上の探検は私の軟弱な下男が悪性の茶腐熱の発作から回復するまで停止しなければならない。言い訳めくが大量の香水で打ち消さないと、奴は常に便所の臭いを漂わせているのだ。そうでなければ、奴の状態にもっと早く気づいてやれたのだが。

最後にちょっとした金言を述べておこう。「埋められたものは、消えてしまったわけではない」。グレイホストに関して、この言葉が当てはまらないことを祈りたいものだ。

グレイホストの諜報報告Gray Host Intelligence Dispatch

同志たちへ

あの魔女の反乱軍一員が街に侵入したと密偵から報告があった。奴らは家や街角に集まり、街を離れて東の丘で奴らと合流するよう、汚らしい親族どもをけしかけている。まともな自尊心のある定命の者なら温かい家を熊皮のあばら家と交換しないが、灰の王が定期的に思い出させてくださるように、リーチの者はまともでないし自尊心もない。

如何なるリーチの者も、街から避難することを許してはならない。この神々に見放された土地の丘や森をうろつく蛮族は全て恰好の獲物だ。反乱軍が森を怖がり、夜を避けるようにしてやろう。奴らが死ぬのが早いほど、我々の計画も早く達成される。

血の結束を
ペンターチ・ハウトリング

シスター・グリノルドからの手紙Letter from Sister Glynolde

姉妹たちへ

この吸血鬼の召使たちは、まるで太り過ぎたメンドリのように動く。遅い。遅すぎる!

私たちの灰の王はさらなる喪心の嵐を求めているのに、このカブの箱ひとつ満足に運べない、ましてや灰の聖骨箱や魔女の長槍のような強力な試料なんて、とても任せられない。こいつらと一緒に何をしろと言うの?

集合場所に来て。ヴァルスム墓地のすぐ北西よ。マルカルスの友人は、そこでよくグレイホストの指導者たちに会う。彼女ならもっと適した労働者を提供してくれるよう、エグザーチを説得できるかもしれない。

霊魂の導きを
シスター・グリノルド

セナンのメモSenan’s Note

ナサリめ!ここで俺たちに選ぶ権利があると言ったのに、何人かが死ではなく生きることを選んだら死を与えやがった。俺は怪我を負った。これが致命傷となるだろう。少なくとも逃れては来たが。

ナサリは生贄として死ねば永遠に生きられるようになると言って、クランの他の者たちを説得した。だが俺は真実を知っている。この儀式は力が目的だ。最後には彼女だけが残って褒美を獲得する。

下の闇への降り口から詠唱が聞こえる。もうすぐ生贄が始まる。ここで孤独に死ぬのと、仲間と一緒にあの恐ろしい穴へ投げ込まれるのとでは、どちらがより悲惨だろう。おかしなものだ。ブラダンはいつも俺に読み書きを覚えるなど時間の無駄だと言っていた。だが少なくとも、おかげで体から血が流れ出ている間に、やることができた。

ディオナス・トルートーの日記Journal of Dionus Trutor

何か大事なものがここに閉じ込められている!だがあの台が気に入らない。まだ我々の存在に反応していないが、ドワーフは不注意な侵入者を罰するために置いたのではないかと思う。

こうしてこの部屋を自分の目で見ると、ヴェセニオンの暗号じみた下手な詩よりもはっきりと理解できる。

王が盗賊を追う
淑女が王を追い回す
駿馬が全員の後を追う
盗賊に報酬をもたらすために

もちろん星座だ。1年の星座の順番は、王、駿馬、淑女、最後に盗賊だ。ヴェセニオンが正しいなら、答えは先頭の盗賊から始まり、最後に駿馬が来る。

盗賊と冬の星座や、北の空のつながりは明らかだ。それに駿馬は夏至の間、南の空でひときわ目立っている。王と淑女は少しはっきりしない。どちらも季節の間は東とも西ともつながりがない。東の星は淑女か?それとも王?

レイドナンを待つのに疲れてきた。少し実験をしてみるべきかもしれない。

トスモーン作品集(翻訳版)、IThe Translated Works of Tosmorn, I

編者注

グザンディア・イデットの本「トスモーン作品集(翻訳版)」は、著者の死後に出版されて以来、20年ほど議論を呼んでいる。

本人の言葉をそのまま受け取るなら、イデットは希少なアーティファクトを求めてリーチの土地を隈なく調査しながら生涯を過ごし――その途中で古代リーチの民による手稿を見つけた。イデットの主張によると現在は死語となった文字で書かれていたこれらの原稿には、伝説的なヴァテシュラン、トスモーンによって書かれた一連の叙事詩が収められていた。

イデットはこれらの手稿の現代語への翻訳に数十年を費やした。イデットの仕事の成果は不完全だったが、それは進行していた手稿の劣化や、翻訳を目指した文字に対する彼自身の知識不足によるものだった。彼は仕事を終え、原稿を出版のため売却してから間もなく亡くなった。

出版直後、学者たちはこの詩が偽物で、イデットの話はでっち上げだと非難した。ほとんどの学者は、現代のリーチの民が口承に頼っており、歴史的な記録にも文書の記録が用いられた形跡がないという事実を指摘している。イデットの話に対する別の反対者は、リーチの民にはトスモーンが著したような芸術的表現をする能力が無いと主張している。この議論は安直で、しばしばリーチやリーチのヴァテシュランに関する経験がない研究者などによって行われている。

これらの偽造だと叫ぶ人々に反対するのは、正当な評価をされていなかった天才、ヴァテシュラン・トスモーンに対する関心を呼び起こした、イデットを称賛する人々である。とりわけ、彼らはブレトンやインペリアルの厳格な詩の形式から程遠い、詩の断片の滑らかさ、刺激性、素朴な純粋さを高く評価している。彼らはまた、失われた技はタムリエルの歴史的記録の中で決して珍しいものでなく、それ故特にタムリエルの他の人々と比較して、リーチの者の文化を扱った学術的研究が少ないことを考えれば、イデットの失われたリーチの文字だという主張は、大激震が走るようなものではないと指摘している。

どちらの側も、イデットの主張を決定的に証明する、またはその反証となるであろう「ある物」が存在しないことを嘆いている。イデットが発見し、翻訳したと主張する手稿だ。生前のイデットを知る人は、彼は隠遁生活を好む孤独な人物で、しばしば荒野のキャンプに引きこもり、1年のうちの長い時間を研究と翻訳をしながら過ごしたと述べた。イデットはリーチ全域に多数のキャンプ地を持つと考えられていたが、彼の手稿を発見するという希望に満ちた野心的な学者により発見されたのはごくわずかな数のみだ。イデットの反対者は手稿がないのは、そもそも存在しないからだと主張している。イデットの支持者は、発見時に既に分解していた手稿は、おそらく朽ちて消滅してしまったのだろうと推測する。

こうして問題は解決することなく――不安定な状態で疑いの目と過剰な称賛の間に捕らわれている。私がこの詩のようなものの研究に打ち込んだ年月は答えを出してくれていない。という訳で、親愛なる読者の皆様には、ぜひこの本をご自身で読み、この後に続く内容が高く評価されたリーチのヴァテシュラン、トスモーンの作品――あるいは精巧な偽造品について知る唯一の手段なのかどうかを考えていただきたいと思う。

ヴァネッセ・オーリリー
第二紀322年、暁星の月5日

トスモーン作品集(翻訳版)、IIThe Translated Works of Tosmorn, II

テンプレアアアアアア 著

第一の断片

[編者注:グザンディア・エデットによって翻訳された詩の第一の断片には、すでに失われた、より大きな作品から抜粋された台詞が登場する。以下に記すエデット自身の序文からは、これがトスモーンのヴァテシュラン(伝承の守り手)としての経歴における初期の作品で、叙事詩的悲劇『イゾレンの愛』の一部分であることが伺える]

翻訳者グザンディア・エデットによる序文

以下に放棄されたリーチ狩人のキャンプの残骸を探して見つけたいくつかの断片のうち、第一のものを記す。これらの言葉が刻まれていた皮は雪解けによってかなり濡れており、また雪を溶かした太陽光もこの悲しむべき損傷を加速させた。このためヴァテシュラン・トスモーンの文章のうち、翻訳可能な程度に判読できたのは一部分だけだった。現代の読者の感覚に訴えるよう詩行に整えてあるが、これは人為的な構築である。皮に刻まれた本来の文に、このような形式はない。

以下の詩に記されたやりとりは、おそらくトスモーンが試みた叙事詩的悲劇の第一作品『イゾレンの愛』から抜粋されたものである。白髪の老戦士グリニンは、最愛の娘イゾレンの死を知らされる。グリニンの嘆きはイゾレンの恋人ヴァルトーンの到着によって中断される。彼はグリニンの憎むべき敵、リーチの魔女デヴェラの一人息子なのだった。

* * *

グリニン
イゾレンは麗しき風
足元に猟犬を従え
娘は丘や谷を駆け回った
弓の弦が歌を奏でれば
雄鹿も雌鹿も倒れたものだ

谷間には重い空気が漂う
林に流れる小川は口を閉ざし
鳥たちは歌うのを止めた
イゾレンがもう狩らないからだ

ヴァルトーン
老グリニン、イゾレンは私の恋人だった
かつて、この丘の木々も
若く緑にあふれていた
イゾレンと私はその間を歩み
深い峡谷の中
霧に包まれ、荒野を二人で過ごした

私たちは約束の言葉を交わし
カバノキの小枝で指輪を作った
我が心は墓石の下に眠る
もはや他の者を抱くことはない

グリニン
ヴァルトーン、我が敵の血よ
下等な虫、魔女デヴェラの血
お前と喪に伏すつもりはない

我がクランの地から去り
穴と闇へ帰るがいい
お前の母の見捨てられた広間へ
この手が悲しみで動きを鈍らせようと
我が石の切っ先はお前の血を流す

ヴァルトーン
イゾレンが死んだというのに
あなたが私にかける言葉は
恋人の死装束のように黒い
私は火の安らぎを求めている
霧は私を骨まで凍えさせた

私の手は石を削って荒れている
死した恋人の墓のため
グリニン、抱擁など求めはしない
我が親族への憎しみは知っている
あなたの親族への愛も知ってもらいたい

グリニン
デヴェラの子よ、お前に与えられるのは刃のみ
イゾレンは私の優しさだったことを知れ
彼女がいなくなった今、私に残されたのは
怒りと恐怖、悲しみだけだ

警告はした、誠実に
だが今や、構えたこの石は
お前の肉と血を求めている
受け入れたくばそうするがいい

ヴァルトーン
グリニンよ、クランはこのことを知るだろう
私は殺されたのだ!
傷から流れ出るこの血が地面を汚すように
この行いはあなたの魂を汚している
私の霊魂は愛するイゾレンの元へ発とう
あなたが追いかけてこない草地へ
冷たい霧からも、残酷なあなたからも自由な地へ
私が死んだら、デヴェラに伝えてほしい
母は殺された息子のために泣くべきだと

トスモーン作品集(翻訳版)、IIIThe Translated Works of Tosmorn, III

第二の断片

[編者注:グザンディア・エデットによって翻訳された詩の第二の断片は、ヴァテシュラン演劇の研究者や好事家におそらく見慣れたものに映るだろう。グウィナ、ロウォラン族長、半神デアロラ、そしてホーンストライド・クランは口承によく現れる。ただしエデットが記しているとおり、彼らの描写は作品ごとに大きく異なっている。事実、エデットはヴァテシュラン・トスモーンの影響力と評判を考慮して、以下の作品がこれらの古典的登場人物の元来の姿であることを示唆している]

翻訳者グザンディア・エデットによる序文

グウィナの歌は、寒い春の夜にヴァテシュランが火のそばに姿を現せば、今日でも聞こえてくる。トスモーン版のこの歌を翻訳して記録するに当たって、私は人気の主題の描かれ方に驚かされた。彼が語るこの歌において、グウィナはロウォラン族長とそのクランの親族であり、ホーンストライド・クランの狩人ではない。現代における描かれ方と同様、ロウォランの神話的なまでの戦闘能力は、ハーシーンの子である半神デアロラから彼の末裔に与えられたものである。

腹立たしいことに、私が収集した手稿はロウォランがホーンストライドに倒される事態を引き起こした経緯を説明していない。トスモーンほど地位のあるヴァテシュランならば間違いなく、それがロウォランの7人目の娘の裏切りのせいだったか(これは特に人気のある説だと聞いている)、白い雄鹿の凶兆を見なかったせいか(これもまた人気の説である)、それともまだ語られていない原因があったのか、決着をつけられるはずなのだが。

* * *
グウィナ
かつてここは静かな森だったのに
今では葬送歌が響き渡る
つるはしの音が聞こえる
大地を掘り返しているのは
神聖なる死者の家を作るため

戦いは勝利に終わった
ホーンストライド・クランは倒れ
絶壁の下の暗闇に消えた

勝利を歌った
力を叫んだ
悲しみを囁いた

今やクランの死体は
この土の中に埋められた
そこから何が育つ?
ただ栄光の物語だけ
大地は不毛のまま
私たちがそう保つから

そして花と草を取り除き
名を思い起こす
クランのために死んだ者の

ロウォラン族長は横たわる
矢に目を射抜かれ、息は吐かれぬ
子が周囲に集まる
力強い樫の周囲に葉が集まるように

巨大な枝が落ちた
葉も共に落ちた
そしてロウォランの血は絶える
その血はハーシーンの娘
デアロラの血

ホーンストライドは撃退された
だが心臓はえぐられた
互いに勝利の笑みを交わし
季節は冬へ移り変わる
そして次の春、私たちは消え去る
陽光の中の霧のように

迅速に攻めねばならぬ
クランが力を失う前に
他の者がロウォランの死を知れば
鴉が集まるだろう

我らの骨が漁られる前に
石の街を攻めなければ
岩の下の王を攻めなければ

魔女の元へ行こう
腐ったイチイの林の中
彼らの風は苦く
我らを中から腐らせる
だが親族よ、この毒を飲まねばならぬ
マルカルスの矢に立ち向かうため

我らのために掘られる墓はない
我らが石の壁を得ても
生きて守ることはできぬのだから

マルカルスの財宝など求めぬ
ロウォランは王を殺し
民を解放しようとした
彼の大義は我らの大義

我らは魔女の炎で血を燃やし
街を蹂躙する

我らは石の下の砦を襲い
王冠を床に叩き落す

我らは王の喉を掻き切る
研ぎ澄ました石と狩人の爪で

我らは死ぬが、それは些細なことだ
ロウォランの夢は成就する
愛するクランは滅びる定め
この季節か、次の季節か
だが孤独には死なぬ

トスモーン作品集(翻訳版)、IVThe Translated Works of Tosmorn, IV

3つ目の断片

[編者注:グザンディア・イデットの翻訳された詩のようなものの断片の3つ目は、リーチの伝説の中でも、最も長く伝わることとなった話を取り上げている――「赤鷲」だ。序文で示されているように、イデットはこの断片を奪われた誇り――赤鷲の物語の要となる部分――と理解し、ほぼ哀歌調の文章を採用している。— V.A.]

翻訳者グザンディア・イデットによる序文

赤鷲。女帝ヘストラによるリーチ征服中の彼の不従順と抵抗は、何世代ものヴァテシュランに加え、リーチの厳しい土地を越えた先にいる吟遊詩人や語り手に感銘を与えた。このことは、トスモーンがこのリーチの者の偉大な英雄の生と死を年代順にまとめていたことを知る者にとって、驚きに値しないだろう。

私がこの遺物の一部を入手できたことはかなり幸運だった。めったに人前に姿を現さない魔女の魔術結社、ソーンルートの保有地に入るための安全な経路を確保した後、私は彼らの骨董品や消耗品の中に、古い頭飾りを見つけた。そのバンドの中に固く巻かれた仔馬の皮があった。その表面には見覚えのある名前が殴り書きされていた。「ファオラン」。赤鷲は現地の言葉でこう呼ばれていた。

断片の文章は、ファラオンと女帝ヘストラの軍隊との最後の戦闘の余波についてのみ焦点を当てている。より広く語られている作品の口調に反して、トスモーンは悲し気な、いつまでも心に残る詩(と呼べるようなもの)で我々を楽しませてくれる。話を盛り上げる赤鷲の最終的な帰還の予言が存在しないため、読者は「赤鷲の復活とリーチの自由を求める声は後のヴァテシュランの創作なのだろうか?」と推測することになる。このことは、この岩だらけの土地に何千とある謎の1つであり続けるだろう。

* * *
ファオランの死

涙に暮れる者たちが彼を背負い、険しい岩山を登る。
生まれた時に赤鷲と呼ばれた者が
死して百の傷より赤く染まる。
朝日の光が世界に示す
死者の絨毯と
千の魂が重くのしかかる
リーチの息子。
呪術師が灰と樹脂の壺を手にやって来る
涙に暮れる運搬人に会うために
そしてファオランは横たわる。

彼を見て族長は涙を流す
無のために引き裂かれた彼を。
彼の体に灰が撒かれる
けれども落ち着くことはない。
ファオランの下の石の上にたまりを作る
彼に足がかりを得られずに。
静かな囁きが広間を飛び回り
全ての頭が下げられた。

今、ハグが与えられるべきものを獲得にやって来た
前には彼女の鴉
そして呪術師を見て笑う
灰も樹脂も役に立たぬと。
彼女はイチイの杖を手に取り、降り下ろす
ファオランの胸の上に。
中のイコルが噴き出す
黒い血が
そして彼女は自らの欲望の種を手に取り
ファラオンに植えた。

百の手が火打ち石を取り、矢をつがえる。
誰もが落胆する。
ハグの笑いは魂を膿ませる
死が彼女を取り巻く時に。
彼女の頭巾の下で千の鴉が飛び立つ
そして彼女は行ってしまう。
彼女は槍も、剣も、弓をも越えている。
逆らえる呪術師はいない。
ファオランが戦いの支援を命じたため
得るべきものを彼女は獲得した。

泣く者はファラオンを下ろす
山の心臓へ。
彼は最後に裸で横たわる
眠りなき眠りの中に。
石は封じられ、蝋が注がれる
そして火打石が砕かれる。

ここにファラオンは死して横たわる。

ドルアダッチの怖い話、第一巻Scary Tales of the Druadach, Book 1

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

親愛なる読者諸君。「怖い話」の新たな書へよく戻った。今回、我々はリーチの人里離れた荒野、特に荒々しく人を拒むドルアダッチ山脈を探検する。野蛮なリーチの者はただ危険なだけではなく、それと同じくらい孤立した場所を好む得体の知れない民族だ。そして、この物語は著しい危険を冒すことなく集めることはできなかった。

だがまたしても、私はこの年季が入った語り手の魅力、機転、そしてとても早く走る能力により、未だ確認も解明もされていない物語を、帝都やそれ以外の地域の読者諸君にお届けするために逃れて来た。

それではお気に入りの椅子に腰を落ち着け、ハチミツ酒を手にして、夜の暗闇にランターンを灯したなら読み進めたまえ。勇気があるなら、だが!

* * *
デイドラの遠吠えをする狼

最初の未だ解明されていない話は、あるレッドガードの商人キャラバンの生き残りから聞いたものだ。この人物はドラゴンスターからソリチュードまで大量の上質な絨毯やカーペットを運んでいる最中に出会った、計り知れない規模の無慈悲な災難を耐え抜いた。この何も知らない、間もなく危険にさらされることになるカーペットの運搬人たちは、その季節のソリチュードの高級装飾品不足をうまく利用できるようにと願いながら、恵雨の月の終わりにドラゴンスターを出発した。キャラバンは匿名を希望している2人の商人で構成され、バーガマの刃と呼ばれるハクミル隊長率いる、8人の傭兵によって守られていた。

商人は最初から呪われていたかのような長旅について語る。境界を越えてリーチに入ると、すぐにキャラバンは最悪の嵐、数日間にわたり弱まることなく降り続く激しい雨に襲われた。レッドガードの荷馬車と頑丈な馬、砂の上で荷馬車を引くことで鍛えられた強く丈夫なその馬でさえ、陰気でぬかるんだ状況の中では速度を保つのが困難になった。隊商と馬が最大限の努力をしたにもかかわらず、キャラバンの進行には数日の遅れが出た。だが、この厄介な不自由さは、夜間にハクミル隊長の傭兵が2人消えたことで一層悲惨なものとなった。

その日は消えた2人の恐怖の叫び声が聞こえることはなく、遺体も見つからなかった。だが、2人が行方不明になる前の晩、キャラバンの生存者全員が1匹の狼の悲し気な遠吠えを聞いたことを思い出している。それはゾッとするようなものすごい遠吠えで、雨でずぶぬれになったテントの中で身を寄せ合ってウトウトしていた者全員が目を覚ました。そして遠吠えが次第に小さくなり聞こえなくなった後も長い時間眠れなかった。彼らは言った。「遠吠えは…まるでデイドラのもののようだった!」と。

雨は朝までに弱まったが、他のキャラバンの護衛6人がどんなに捜索しても、行方不明の仲間の足跡も形跡も一切見つからなかった。歴戦のクラウンの戦士たちが、あたかもキャラバンを苦しめた嵐そのものにさらわれたかのように消えてしまった!あるいは…デイドラの狼に。

先導役の商人が警告を発した…キャラバンは引き返すべきではないか?だが、腕に自信があり、消えた兵士を見つけると固く決意していたハクミル隊長は、進むことが可能だと商人たちに断言した。そこで彼らは強引に進んだが、結局最悪な霧が猛烈な嵐に取って代わっただけだった。1人は「霧があまりにも濃くなって、目の前の自分の指さえ見ることができなかった!」と語ってくれた。

さらにまずいことに、生存者たちは遠吠えを聞いた。その日は1日中、騒々しく弱まることのない、最初の傭兵たちが消えた夜にキャラバンを目覚めさせたのと同じあの恐ろしい遠吠えが何度も何度も聞こえた。いつも霧の中から、しかし突き止めるには遠すぎる位置から。傭兵たちは仲間同士で悪態をつき、文句をつぶやきながら隊列を詰め、身を守ろうとした。しかし攻撃されることはなかった。キャラバンが重い足取りで進むにつれ、彼らは遠吠えはリーチの者によるただの悪質ないたずらに過ぎないと確信するようになった。リーチの野蛮なクランは、決して道を行く6人のクラウン・レッドガードをあえて襲ったりはしない。このような熟練の戦士が不意をつかれるようなことは2度とない!

霧が立ち込めた晩、ハクミル隊長は傭兵たちに交代で寝ることにすると告げた。夜明けが来るまで3人が眠り、3人が起きているのだ。彼の計画は妥当なもののように思えた。霧に満ちた晩の最も暗い時間に、狼のデイドラじみた遠吠えが再び夜を切り裂くまでは。キャンプ中の全員がすぐに目を覚まし、ハクミル隊長が闇の中の兵士たちに声をかけた。だが返事をする者はなかった。瞳に激しい怒りをたたえたこのバーガマの刃は、残った2人の兵士に如何なる状況であろうと決してキャラバンを離れないように命じ、自らの巨大な剣を抜いた。ハクミルはデイドラの狼と対峙し、仲間の運命を知るため霧の中へと勢いよく歩いて行った。

そしてこの勇敢なハクミル隊長だが、皆が待ち望むこの物語の語り手は不幸にもこうお知らせしなければならない。決して戻ることはなかった。

翌朝も霧は残り、再び強い雨も加わっていた。間もなく頑丈なレッドガードの荷馬車の車軸の1本がまっぷたつに折れた。どうしてそんなことが有り得るだろうか。荷馬車は出発前に、ドラゴンスターで修理し強化してあったのに!一体なぜこんなことに?嵐と、霧と、この幽霊じみた奇妙な狼に悩まされながら2週間もとぼとぼ歩くしかないということが予想されると、クラウンの商人たちは荷馬車を放棄して、さっさと馬でソリチュードに帰るという決断をした。「カーペットやシルクにはまだ生きている人間ほどの価値はない!」と、彼らは言い切った。

1頭の馬に2人がまたがり、回収できた所有物を乗せた最後の馬と共に一行が荷馬車を離れると、すぐに恐ろしく深い霧が晴れたと言う。緊迫した4日間の後に、生存者たちはソリチュードに到着した。放棄した財産は失われたが、それ以外は略奪もされず、怪我を負うこともなかった。

だが、ハクミル隊長と消えた6人の勇敢な傭兵の消息は不明なままだ。デイドラのような狼の記憶だけが残り、その遠吠えを聞いた者全員の脳裏に焼き付けられている。嵐と霧で作られた狼が夜中に不用心な者を奪い去って消えた。その犠牲者を、ドルアダッチ山脈の影に連れ去ったかのように!

ドルアダッチの怖い話、第二巻Scary Tales of the Druadach, Book 2

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

次に話したい物語は、ドルアダッチ山脈の影を舞台にした病と裏切りの物語だ。恐怖を味わってくれ!

* * *
カースワステンの滴る病

北リーチにある包囲された街カースワステンは何世代も残り続けてきたが、その支配は頑健なノルドと油断ならぬリーチの民との間で、センシャルの賭博場における金貨以上に何度も持ち主を変えてきた。この街に関して、心騒がす裏切りの物語はアリクルの砂粒のようにありふれたものだが、ある嘆きと死の物語は他の全ての物語を凌ぐ。それがカースワステンの滴る病の物語である!

20年ほど前、リーチの民は再びカースワステンのノルドを追い払い、家を焼き、カースワステンを掌握した。このリーチのクランは飛び抜けて残虐で、カースワステンへの侵入を試みた勇敢なノルドは、リーチの民と獣の軍隊を相手にすることになった。聞くところによれば、このリーチの民は凶暴なウェアウルフと手を組んだという!

この街は1年ほどリーチの手に留まり続けたが、それも高名なノルドの略奪者、ウルガー・ストーンビアードが鴉の手という名のみが知られる強大なリーチ魔女に会うまでのことだった。一説によればウルガーと鴉の手は最初戦場で出会ったが、どちらも相手を仕留められなかったという。2日間の戦闘の後、彼らは停戦して食事を共にした。そこでウルガーは、鴉の手とカースワステンの向こう見ずなウェアウルフ戦士クランが別に良好な関係にはないことを知った。そしてウルガーの戦士たちによれば、彼はこの悪魔の女と闇の取引を結んだ。

鴉の手はカースワステン手前の平原に乗り出し、ウルガーの戦士たちに守られて、多くの不浄な犠牲を捧げた。美しくも忌まわしい言葉を詠唱しながら、彼女は墨汁のように黒い雨を降らせた。妖術の嵐はカースワステンとその建物を汚れで覆った。間もなく、叫び声が上がり始めた。
門が開かれ、リーチの戦士がよろめき出てきた。真っ黒な雨によって体の肉が燃え上がり、金切り声をあげながら!リーチの強力なウェアウルフでさえ病にかかり、苦悶の吠え声は傷ついた獣のようだった。配下の戦士の言葉によると、ウルガーはこの虐殺の報を聞いて喜び、街へ突入してリーチの生き残りを始末せよと命じた。

だが頑健なノルド戦士の集団でさえ、漆黒の妖術に覆われた街に足を踏み入れるのは躊躇した。鴉の手はウルガーに対して漆黒がリーチの民とウェアウルフにしか危害を加えないと保証したが、ノルドにはリーチの魔女の言葉を信じる気などなかった。街の叫び声は彼らを骨の髄まで震え上がらせた。配下の戦士がこのように怯えるのを見て、ウルガーは全員を臆病者と罵り、悠々と街に踏み入って、立っているのもやっとの状態で挑もうとしたリーチの民を切り伏せた。ウルガーが街の中心に立ち、斧が怖いかと生き残りに叫んだその時、漆黒の雫が一滴、彼の眉に落ちかかった。

漆黒の雫はウルガーの兜の表面で獣のように大きくなり、彼の頭を幕のように覆った。すぐにウルガーの体全体が漆黒で覆われ、ノルドの話では、死そのもののように黒い笑みを浮かべた。

裏切りを目撃した他のノルドたちは鴉の手に襲いかかり、指揮官を乗っ取った狂気の魔女を倒そうとした。しかしリーチの魔女が笑うと、ノルドの斧は空を切った。大鴉の群れが空に飛び立ち、カーカーと鳴き声が上がった。そして今や漆黒に覆われた指揮官が、その斧から疫病を滴らせながら向かってくるのを見て、ノルドは戦場から逃げ出した。

現在も、漆黒に包まれた巨大な戦士がドルアダッチ山脈の影をうろついているのを見たという話を耳にする。その手に持つ斧は肉も鋼鉄も溶かす雫を滴らせ、通った道には鴉の手の笑い声がついてくるという。彼は顔に笑みを浮かべた死神であり、道を塞ぐ者全てを切り刻む。それがカースワステンの滴る病だ!

ドルアダッチの怖い話、第三巻Scary Tales of the Druadach, Book 3

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

読者のみなさんにお伝えする物語も、これが最後になった。これは魔女と魔術に関する話だ。こうした物語が全てそうであるように、今回のものもドルアダッチ山脈の影が舞台になる!

* * *
肌が赤に染まった姉

この物語は私を斧で叩こうとすることなく話してくれる、わずかなリーチの民が教えてくれた。これは全ての物語の中で最も背筋の凍るものだ。老女は2人の姉妹について語った。1人は金髪、もう1人は黒髪で、どちらも最高クラスのリーチの魔女だった。老女によれば、どちらも力への渇望により正気を喰い尽くされてしまった。

色白で年長のリーチ魔女タンシアは、その年齢と強大な風の魔術によって選ばれ、クランを率いることになった。しかしタンシアはすぐに予想もせぬ挑戦者と争うことになった。1歳下の妹ウレシアである。彼女はタンシアの風の魔術と同じくらい強力な、水の魔術の使い手だった!

クランの中には姉妹のどちらにも戦いで適う者がいなかったが、姉妹が殺し合う様を見るのに耐えられる者もいなかった。タンシアとウレシアはクランの誇りであり、数世代で最強の魔女たちだった。クランの誰もが、これほどの逸材を失うことを望まなかったのだ。だがクランのメンバーたちが姉妹にどれほど懇願しても、タンシアとウレシアはどちらがクランを導くか、意見を一致させることはできなかった。結局、クランはこの膠着状態を解消する唯一の道に落ち着いた。驚異的な魔術の課題を解くコンテストである!

こうしてタンシアとウレシアは、魔術の力を試す様々な妙技を披露した。技が行われるたびに激しさを増していった。タンシアは荷馬車を動かすほど強力なつむじ風を召喚したが、妹が木を根ごと押し流すほど強力な水流を召喚したのでうろたえたという。ウレシアがクランの水をハチミツ酒のように甘くしたかと思えば、タンシアはクランの狩人を空気のように軽くして、空を階段のように駆けられるようにした。

老女によると、最終的に常軌を逸してコンテストを激化させてしまったのはタンシアだった。妹に勝とうと必死になったタンシアは、デイドラ公と約束を交わし、クランを指揮する力と引き換えに70年の奉仕を申し出た。しかしデイドラとの取引の常として、デイドラ公はタンシアが要求した以上のものを与えた。新たな族長が指名される前日、タンシアがクランのキャンプに戻った時、白かったタンシアの肌は血のように赤く変わり、両目は小さな炎のように輝いた。そしてクラン全員の前でタンシアは大気を沸騰させ、妹を生きたまま焼き殺した。

裏切られたクランは恐れをなし、散り散りになって逃げ去った。しかしリーチの老女によれば、赤い肌と炎の目を持つ姉は今でもかつてこのクランがいた荒野を放浪しており、人を見れば叫び声を上げ、この孤独な生を終わらせてくれと戦いを挑んでくるという。クランも家族もいない、孤独で陰気な終わりなき生を。

だが赤い肌の姉が持つ力は絶対的で、誰も彼女を倒すことができない。彼女は自分が交わしたデイドラの取引に囚われたまま、誰にも対抗できない力と、誰にも終わらせられない不死の生という呪いを受けているのだ。姉妹のうちウレシアは運がよかったと老女は言った。自由なまま死ぬことができたから。

ドルアダッチ山脈の動植物Flora and Fauna of the Druadach Mountains

帝国植物学者、テルラヴェス・デカニス 著

ドルアダッチ山脈は旅人に人気がない場所のままだ。多くの人に恐れられている。リーチの慣習を知らない人々は、断崖に潜むクランや山道の至る所にある暗い洞窟を恐れ、徹底的にこの場所を避ける。実に残念なことだ。何故なら最も美しい景色が、この力強い山岳地帯にはあるからだ。リーチの民は、おそらく彼らの領域に存在する動植物について、我々が得られる知識よりも多くのことを知っているだろう。私が得た知識は、主に周辺部に暮らす人々から、日記の余白に荒々しく書きなぐられた「茂みに隠れて息を潜めろ!」というメモと共に教わったものである。私はこれまでに記録されていなかった植物や動物について知りたいと願っていたが、恐怖のあまり深い探求ができなかったのではないかと感じている。いずれどなたかが加筆してくれることを望みつつ、私はここに記録したことを書き記した。

* * *
リーチの植物

ジュニパーベリー
まるで真珠のように美しく輝く白いベリーは、自然の環境下に数多く育ち、ドルアダッチ山脈を走る山道に無秩序に広がっている。危険を承知で摘みに行く勇気ある人々は、よく見かけるこのベリーにさまざまな使い道を見出している。ハチミツ酒に風味付けしたい場合であれ、甘い菓子を作りたい場合であれ、各種の薬用チンキ剤の材料として使う場合でさえあっても、このベリーは万能であり豊富に実る。

垂れ苔
ずっと垂れ苔の生えている光景には奇妙に引き付けられてきた。洞窟の入り口や岸壁を美しく覆う姿。世界における彼らの存在には、何か不思議で魔法的なものがある。ドルアダッチ山脈にはその湿度が高い気候により、驚くほどの数が生育している。

モラ・タピネラ
この風変りなキノコは倒木や腐敗した切り株などで発見される。平凡な外観ではあるが、私は彼らを美しいと思う。彼らは死がその手を触れた場所に育ち、それがもたらす静寂にひるむことはない。私はその執念を称賛する。彼らはドルアダッチ山脈における最も魅力的な菌類の見本とは言えないが、私の一番のお気に入りであることは確かだ。

* * *
動物

雪熊
この本で恐るべき力を持つ雪熊について触れなかったとしたら、それは私の怠慢だろう。ドルアダッチ山脈の高く雪深い山頂は、この巨大な野獣にとって完璧な生息地である。しかしながら、彼らの愛らしい見た目に騙されてはいけない。雪熊はより低い地域に生息する同等の生物と同じくらい危険だ。彼らの毛皮はその白い光沢と柔らかさ故に極めて人気が高いが、皮を入手するための対価は、この大胆不敵な観察者が積極的に支払おうとは思わないものである!

リーチメア
リーチの外でこれほど忍耐強い馬の血統は見つけられないだろう。リーチメアはかつては野生種だったのだろうと私は推測する。山脈の谷を突き進む彼らの姿はどれだけ素晴らしかったことだろう。しかし、手なずけられたからといってその非凡さが損なわれたわけではない。リーチ人の闘志と不屈の精神は、この堂々とした動物に具現化されている。時に彼らは気難しく、他者に対して極めて強い不信感を抱くことがある。この項目のための観察で、手足を1本も折らずに済んだのは幸運だった!リーチメアは愚か者には容赦しないのだから。

ハグレイヴン
私は自分の書いたものが、いつの日か旅人にドルアダッチ山脈を訪れ、自分の目でこれらのものを見てみようという気を起こさせる可能性があることについて考慮しなければならない。だから、私にはあなた方に警告をする責任があるのだ、読者諸君ん。もし自分がドルアダッチ山脈にいることに気づいたら、冷静さを失わないように。自然の土地にある以上の危険がそこにはある。私はこの記録にハグレイヴンも含めたいと思っていた。何故なら彼らもこの記録の一部だからだ。私は皆さんがハグレイヴンを見たことがなく、また見る理由もないことを祈る。だが、もし鳥のような性質を持つ恐ろしい老婦人に偶然出会ったら、自分が差し迫った危険に直面していることに気づいて欲しい。観察の時間は終わり、今や逃げるべき時なのだ。

ドワーフ・ディナスターについてOn Dwarven Dynastors

ドゥエマー古遺物研究者、レイノー・ヴァノス 著

大半のアマチュア探検家は、旅のどこかで何らかのドゥエマーの機械を見たことを自慢するだろう。そうした物語に出てくるのは決まってドワーフ・スパイダーやドワーフ・スフィアで、型通りの退屈な代物だ。アニムンクリが壁から飛び出し、両手の爪を振り回してくる話だ。こうした物語はドゥエマー技術の表面に触れているだけだ。最も奥深くの遺跡には様々なドワーフの機械が動き回っている。私たちが発見したものは、彼らの機械仕掛けの下僕のほんの一部でしかないと言っても過言ではない!

一例として、ディナスターを挙げよう。この巨像を自分の目で見たことはないが、いくつか部分的な描写を見つけている。記述だけに頼って正確なサイズを判断するのは難しいが、おそらくディナスターの背丈はドワーフ・センチュリオンを越え、横幅はゴールドコーストの交易馬車に匹敵する。他のアニムンクリと同様、ディナスターは有機体の形状を模倣しているようだ。この場合、角の生えたベヒーモス・ショークである。最も興味深いと思うのは、中核をなす装置だ。

設計図に関する私の理解が正しければ、ディナスターは運搬器具の一種として使われていたようだ。中心部の甲殻内に複数のドワーフ・スフィアが格納されていた。その時になればスフィアは隠された射出口から飛び出し、おそらく遭遇した敵を倒すために連携して戦ったのだろう。この装置はドワーフの基準からしても、めまいがするほど複雑に見える。

ここから導かれる問いは、なぜドゥエマーがこんな機械を作ったのかということだ。他のドワーフの下僕と異なり、ディナスターが戦争のため特別に作られたことは明らかであるように思える。私たちはレッドマウンテンの噴火以前にタムリエル地下で起きた戦いについて、未だわずかなことしか知らない。これよりさらに大きな機械が、ドゥマクの敵を探して遺跡をうろついていてもおかしくない。探索がさらに深くまで進展し、この古代の謎が今まで以上に明らかになることを期待しよう!

ナミラの踊りNamira’s Dance

リーチの儀式の観察
文化書記、ゲンマ・パンフェリウス 著

リーチの儀式について直接の目撃報告は少ない。大抵の場合、よそ者がこうした儀式に参加することは激しく忌避され、見学さえ許されない。私がリーチとその鋭く不屈の人々について発見したことがあるとすれば、それは彼らがドルアダッチ山脈の崖や谷間に人知れず咲く野生の花のように、互いに全く異なっているということだ。

多くのリーチのクランはよそ者が自分たちの生活に入り込むことを許さないが、ボールドクロウ・クランは私が学者だと名乗ると丁重にもてなしてくれた。彼らはデイドラ公ナミラを称える儀式に私を参加させてくれた。時として霊魂の女王、あるいはより劇的に死の女神と呼ばれることもあるナミラは、暗闇と終末の霊魂とみなされている(ただしリーチの民は、ナミラを再誕を司る霊魂ともみなしている)。リーチの民はナミラを自然界における強大な力と考えている。彼らのデイドラ崇拝は、例えばタムリエルの他の地域の人々が神々を崇拝するのと意味合いこそ違うが、彼らが霊魂と呼ぶ存在はリーチの民の生活に重要な役割を果たしている。リーチの民はデイドラとの間に持ちつ持たれつの関係を築いており、日々の課題や困難の助けを得るため、合意を形成しているのである。

ボールドクロウはナミラを深く尊敬している。彼らはナミラが死と生の両方に及ぼす作用を、古代の儀式によって称える。この儀式の光景は言葉で描写できるものではないが、私が目撃したものを記述するよう努力してみる。

ナミラの踊りはボールドクロウ・クラン全員の参加を必要とする。最年少の子供から最年長の狩人までの全ての成員が、空き地の中心にある大きな炎の周囲に集まる。多くの者は暗い色の服を身に着け、暗い色の絵具を顔から喉にかけて塗りつける。しかしそれ以外の人々は全裸で現れる。彼らが世界に生まれてきた時の姿を象徴するためである。踊れる者は一斉に踊り、死と生まれ変わりを目まぐるしく表現する。これは恐ろしく、また美しくもある。

この踊りの最中には血が流されるのだが、何が暴力を加えているのかはよく分からなかった。それに「暴力」は言い過ぎかもしれない。炎のきらめきの中に捉えられた血は溶けたルビーのようで、美しいと言ってもいいくらいだった。ある者は血の色を両目の下になすり付け、別の者は土に手形を押しつけた。彼らは血を恐れるだけでなく、血を称えてもいるようだった。おそらくそれがナミラの踊りの核心にあるのだろう。

私自身に関して言えば、デイドラ公についてどちらかというと伝統的な視点を持っていた。特にナミラについてはそうだ。それは恐怖と不快感が混ざった視点であり、リーチの民には無縁な視点のようだ。彼らはナミラを肯定的に捉えており、私が見た儀式は美に満ちていた。リーチの出身でない私たちにとっては奇妙に聞こえるかもしれないが、自分の目で見ればきっと同意してもらえるだろう。この地とその人々に、愛が欠けているわけではないのだ。

ノルドの子供の日記Nord Child’s Journal

父さんは行かなきゃいけないって言ってる。ここは僕たちの土地じゃなくって、自分たちの土地だって言う悪い人たちがいるんだ。僕にはよく分からない。ここがその人たちのなら、どうして僕たちはここに住んでるの?ここが誰か他の人の家だなんて誰も教えてくれなかった。考えると悲しくなる。僕はここで暮らすのが好きだけど、父さんはいつも人のものを取ったらいけないって言ってる。それって、人のだって知らなかったとしてもダメってことかな?

どうして悪い人たちと話してみようとしなかったのかな。それはあの人たちが危険だからで、僕たちは攻撃される前に出て行かなきゃいけないんだって父さんは言う。でも、「ここがあなたたちの家だって知らなかったんです」って説明したら、絶対に親切にしてくれると思う!父さんは僕があんまり子供だから分からないんだって言うけど。

僕は行きたくない。悪い人たちと一緒にここに住めたらいいのに。あの人たち、どのくらい悪いのかな?もしかしたら、僕みたいな子供がいて、僕と友達になれるかもしれない。

ファルクフィルのメモ、1ページ目Falkfyr’s Notes, Page 1

3日目:私はファルクフィル・スノウメイソン。ソリチュードのハイルフラルド王の臣下だ。これはきっと最後の報告になると思うが、我が王を失望させるつもりはない!

私の任務は、我が国境で問題を起こしているリーチの民の略奪者の一団を追跡することだった。リーチの民はカースワステンを通り越して西に逃れ、その後北に向かった。私は彼らを山の中まで追ったが、ブリザードに阻まれてしまった。洞窟に避難しようとしたとき、足元の地面が崩壊した。

2日間ほど救助を待ち、今は食料が尽きかけている。この巨大な洞窟の中に扉を見つけたものの、開くことができない。コンパスはまだ機能している。だから私は西へ向かい、高い土地を探そうと思う。多分他の出口を見つけられるだろう。

万が一出口を見つけられなかった時のために、この報告書はここに置いて行く。もしこれを見つけたら、ファルクフィル・スノウメイソンが任務を放棄しなかったことを知ってくれ!

ファルクフィルのメモ、2ページ目Falkfyr’s Notes, Page 2

4日目:この洞窟には終わりがないらしい。おまけに巨大な虫がはびこっている!子供の頃、祖父がモーサルの沼にいる巨大な虫の話をしてくれたが、私は全く信じなかった。今、その虫がどこから来るのかが分かった。

食料も尽きてしまったが、もっと重要なのは水が尽きそうだということだ。4日間の偵察任務用の1週間分の物資では、穴に落ちた後の分はまかなえない。だが、ここから地下に川が見える。水筒に補充したいなら、あの巨大虫の前をこっそり通り抜ける以外に選択肢はない。

もし成功したら、別のメモを川の横に残そう。失敗したら、ファルクフィル・スノウメイソンは両手に斧を持って戦って死んだと理解してくれ!

ファルクフィルのメモ、3ページ目Falkfyr’s Notes, Page 3

5日目:今、真実が分かった。この巨大な洞窟は昔話の地下世界、ブラックリーチだ。私、ファルクフィル・スノウメイソンはここに足を踏み入れた最初の男だ!

水筒に水を汲んでいたら巨大な虫に見つかった。それを殺したあと、あることを思いついた。私は体中に虫の膿のような液体を塗り付けた。それ以後、他の虫は寄ってこなくなった。思ったとおり、奴らは臭いで狩りをする!

本当にここで生き延びられるんじゃないかと思う。ソリチュードに戻ったら私は伝説になるぞ。人々はブラックリーチを発見した斥候、ファルクフィル・スノウメイソンの銅像を建てるだろう!

もう寝よう。明日は上にあるドワーフの遺跡で食べ物を探すつもりだ。必要に駆られるまでは、そこら中に生えてるキノコを試すような危険は冒したくない。今ではあきらめる気は全くなくなった。

ファルクフィルのメモ、4ページ目Falkfyr’s Notes, Page 4

6日目:ドワーフどもは街を固く閉じたままにしやがった。入る手段も鍵をこじあけるものもない。中に食料があるとしても、私には食べることができない。

今朝、灰色がかった白い色のキノコを1つ食べた。生焼けの肉みたいな味だった。今日は休んで、死なないか様子を見る。死ななかったら、必要な食料は十分にあるってことだ!

7日目:キノコは毒じゃなかった。必要なら何だってあさってやるぞ!私は生きるんだ!ブラックリーチの奥深くで生き延びた話は、語り草になるだろう!

川を渡った南に、木のようなキノコの林が見える。今度はあっちの方に行ってみよう。

ファルクフィルのメモ、5ページ目Falkfyr’s Notes, Page 5

9日目くらい

食べられるキノコキノコ
大きくて灰色は肉のような味
小さくて青はおいしいおやつ
緑に光るのはとても甘く歌う

ここにあるキノコは全部食べられる。偉大なるウームがそう言ってる。偉大なるウームは私が南に行くことを望んでいる。私は南へ行こうと移行と以降と思う。

探さなきゃならないものがあったはずなのに、何だったか思い出せない。まあいい。今では全部の根が私の名を知っている。

ファルクフィルのメモ、6ページ目Falkfyr’s Notes, Page 6

?日目

私は選ばれし者だ。偉大なるウームは私を胞子にし、そして、私、スノウファルク・メイソンルートは、永遠に生きる。根は真実を知っている。根、ウーム、歌、全てつながっている。これはとても深い!

下の方に扉があるが、そっちは私の行く道じゃない。今、偉大なるウームは私に北について告げている。悪臭と虫の源だ。宝物はそこに捨ててもいい。何故ならもういらなくなるから。私は胞子で、まもなくウームになる。私は全てのウームになる。

家を見つけ、根を広げる。

ファルクフィルの完成した報告書Falkfyr’s Complete Report

3日目:私はファルクフィル・スノウメイソン。ソリチュードのハイルフラルド王の臣下だ。これはきっと最後の報告になると思うが、我が王を失望させるつもりはない!

私の任務は、我が国境で問題を起こしているリーチの民の略奪者の一団を追跡することだった。リーチの民はカースワステンを通り越して西に逃れ、その後北に向かった。私は彼らを山の中まで追ったが、ブリザードに阻まれてしまった。洞窟に避難しようとしたとき、足元の地面が崩壊した。

2日間ほど救助を待ち、今は食料が尽きかけている。この巨大な洞窟の中に扉を見つけたものの、開くことができない。コンパスはまだ機能している。だから私は西へ向かい、高い土地を探そうと思う。多分他の出口を見つけられるだろう。

万が一出口を見つけられなかった時のために、この報告書はここに置いて行く。もしこれを見つけたら、ファルクフィル・スノウメイソンが任務を放棄しなかったことを知ってくれ!

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4日目:この洞窟には終わりがないらしい。おまけに巨大な虫がはびこっている!子供の頃、祖父がモーサルの沼にいる巨大な虫の話をしてくれたが、私は全く信じなかった。今、その虫がどこから来るのかが分かった。

食料も尽きてしまったが、もっと重要なのは水が尽きそうだということだ。4日間の偵察任務用の1週間分の物資では、穴に落ちた後の分はまかなえない。だが、ここから地下に川が見える。水筒に補充したいなら、あの巨大虫の前をこっそり通り抜ける以外に選択肢はない。

もし成功したら、別のメモを川の横に残そう。失敗したら、ファルクフィル・スノウメイソンは両手に斧を持って戦って死んだと理解してくれ!

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5日目:今、真実が分かった。この巨大な洞窟は昔話の地下世界、ブラックリーチだ。私、ファルクフィル・スノウメイソンはここに足を踏み入れた最初の男だ!

水筒に水を汲んでいたら巨大な虫に見つかった。それを殺したあと、あることを思いついた。私は体中に虫の膿のような液体を塗り付けた。それ以後、他の虫は寄ってこなくなった。思ったとおり、奴らは臭いで狩りをする!

本当にここで生き延びられるんじゃないかと思う。ソリチュードに戻ったら私は伝説になるぞ。人々はブラックリーチを発見した斥候、ファルクフィル・スノウメイソンの銅像を建てるだろう!

もう寝よう。明日は上にあるドワーフの遺跡で食べ物を探すつもりだ。必要に駆られるまでは、そこら中に生えてるキノコを試すような危険は冒したくない。今ではあきらめる気は全くなくなった。

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6日目:ドワーフどもは街を固く閉じたままにしやがった。入る手段も鍵をこじあけるものもない。中に食料があるとしても、私には食べることができない。

今朝、灰色がかった白い色のキノコを1つ食べた。生焼けの肉みたいな味だった。今日は休んで、死なないか様子を見る。死ななかったら、必要な食料は十分にあるってことだ!

7日目:キノコは毒じゃなかった。必要なら何だってあさってやるぞ!私は生きるんだ!ブラックリーチの奥深くで生き延びた話は、語り草になるだろう!

川を渡った南に、木のようなキノコの林が見える。今度はあっちの方に行ってみよう。

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9日目くらい

食べられるキノコキノコ
大きくて灰色は肉のような味
小さくて青はおいしいおやつ
緑に光るのはとても甘く歌う

ここにあるキノコは全部食べられる。偉大なるウームがそう言ってる。偉大なるウームは私が南に行くことを望んでいる。私は南へ行こうと移行と以降と思う。

探さなきゃならないものがあったはずなのに、何だったか思い出せない。まあいい。今では全部の根が私の名を知っている。

* * *
?日目

私は選ばれし者だ。偉大なるウームは私を胞子にし、そして、私、スノウファルク・メイソンルートは、永遠に生きる。根は真実を知っている。根、ウーム、歌、全てつながっている。これはとても深い!

下の方に扉があるが、そっちは私の行く道じゃない。今、偉大なるウームは私に北について告げている。悪臭と虫の源だ。宝物はそこに捨ててもいい。何故ならもういらなくなるから。私は胞子で、まもなくウームになる。私は全てのウームになる。

家を見つけ、根を広げる。

* * *
何日目か…どうでもいい。

空気が紫を歌い、血が石を湿らせる。偉大なるウームの胞子が根を張る。もうそんなに長くはかからない。

私は土を食べ、闇を飲む。私は今、家にいる。私たちが家だ。

殻が砕けるが、素早く動く者たちは気に留めない。それは中にある、そして準備できている。

語れ、偉大なるウームよ!ルートメイソンについて語れ!もう一度、葬られた夢について私に語れ!

成長する時が来た。

ペンターチ・ドラルジュルへの手紙Letter to Pentach Draljura

ペンターチ・ドラルジュル

ラダ・アルサランがあなたは頼りにできると保証してくれた。闇の予言で果たす役割のため、ゴーストソングに準備をさせるまで何年もかかった。この期に及んでつまらない失敗を許すつもりはない。

ナサリに時が来たことを納得させた。闇の予言に必要な儀式を行わなけばならない時が来たと。彼女とクランが妨害されないようにするため依頼することは、何でもやって欲しい。彼女の影響力は強いけど、実際に何をするつもりかを知ったらクランは尻込みするでしょう。必要なら最後の一歩を手助けするように。ナサリが扉を封じたら、全員を墓地から退避させること。

私は待っている。儀式が闇の心臓を目覚めさせたら、私はそこにいなくてはならない。ゴーストソング・クランが私たちの目標への最も確かな道であることを忘れないで。何者にも、私のペットの魔女を邪魔させないように。

レディ・ビレイン

マスター・ピシスの日記Master Pythis’s Journal

彼は何も疑わない。彼を騙して、私が装置を確保するのを手伝わせるのは簡単だった。私自身の手では不可能だった。遺物に与える損傷についての便利な嘘は、無能な腰抜けどもが私を追うのを阻止してくれるだろう。できれば、これが音調の魔法から受けるあらゆる潜在的な影響に対する言い逃れにもなるといいが。遺物の力を最大限利用するためには、音調の混乱をとても大きく産み出さなければならない。

運が良ければ、サイジックが遺物の紛失に気づくまでに、カリスは完璧な犯人になっているだろう。彼は報いを受ける。その後はこの遺物から手に入れた新しい力で、ご立派なサイジック会に、彼らが本当はどれほど私より劣っているか、見せつけてやる。

マルカルスにて傭兵求むWork for Hire in Markarth

多数の問題がリーチの民を悩ませている。自分がもっとも勇敢で強く、金と栄光を山積みにするためには計り知れない危険に向き合うことも厭わない冒険者だと思うなら、リーチの者は仕事を提供する。

詳しくは、マルカルスの街にいる執政官カルデアを探してほしい。

マルカルスのインペリアルAn Imperial in Markarth

アルドの行政官、執政官カルデア 著

ロングハウス帝の時代からマルカルスは大きく変化したが、変わらない物事も多い。モリカル皇帝がカダッチを総督に指名した後、私は最初の任務としてここに派遣された。

シロディールからマルカルスへの移住は、思ったほど大きな衝撃をもたらさなかった。リーチ自体は大きく異なっていたが、故郷のしがらみは都市の中にいても常に明らかだった。私はささやかながら秩序を維持するために派遣された。文書や行政、この場所を治めるための様々な任務を処理するために。ある意味では私がここにいる目的自体が、ホームシックの防止に役立ったと言えるかもしれない。

マルカルスは住民にとって常に捉えどころのない場所で、その古代の技術は魅力的であると同時に、圧迫感を伴ってもいる。リーチには野生的で無秩序という評判があるが、マルカルスには今でもドワーフの緻密な意匠が残っている。秩序立てられ細密だが、時を経てそれとはまるで反対の人々が占めるようになった。

帝国が倒れた後も留まるほど自分がこの場所を好きになると誰かに言われていたら、私は面と向かって相手を笑い飛ばしていただろう。だが実際にそうなった。カダッチがアルド・カダッチになった時、彼が個人的に私の残留を求めたのも一因だった。彼を相手に断るのは難しく、しかも私は常に自分の事務能力を評価してくれる者に弱かった。

私がリーチの民をこれほど気に入るようになったのは、それが理由かもしれない。彼らの多くは読み書きができないし、学ぶ意思もない。そのため私は、彼らにとって欠かせない存在である。この立場を喜んだことは否定しがたい。

しかしインペリアルとしてマルカルスで暮らすことが大変でないとは言わない。誰もが私の仕事を評価してくれるわけではない。やって来るクランの中には、自分たちの仲間でさえ信用しない者もいる。彼らと異なる者はなおさらだ。記録をつけ、彼らと話して問題を解決する手伝いをするのが私の役目だが、大変な不利を抱えつつ働かなければならない。私は脅迫され、侮辱され、憎悪されてきた。どれだけ長くここで働いても、リーチには自分たちの問題に干渉するインペリアルを信用しない者が未だにいる。

だが私はこの地が好きだ。人間とクランの個性が奇妙に混ざり合うマルカルスが好きだ。アルド・カダッチと働くのは楽しく、必要とされているという感覚も楽しい。この地と民への献身にとって、解決できない困難など存在しない。

マルカルスの暴君についての報告Report on the Despot of Markarth

ストームヘヴンのレディ・ナイリーン・デヴィエリン 著

陛下のご下命により、私はマルカルスの暴君宛てに苦情を届け、彼が我々の国境を襲撃するクランの制御に意欲を見せるかどうかを見極めるためマルカルスに参りました。我々の交渉における困難な問題についてまとめた報告書はすでにウェイレストに送付済みです。ですが、どのような男がリーチを統治しているのかを理解することは、宮廷にとって有用であろうと思われます。マルカルスの暴君は教養のない軍人ではありません。また、彼をそのように扱わないよう注意する必要があります。

まずは、ブラック・ドレイクのカダッチが現在の地位についたいきさつについて、改めてお話するところから始めさせていただきます。その名が示すとおり、カダッチはロングハウス帝ダーコラクの親族にあたります。若い頃、ダーコラクの次男でありロングハウス朝第二代皇帝モリカルのリーチ衛兵を務めるため南に向かい、若くても戦えることを示しました。シロディールに滞在中、カダッチはインペリアルの協力と軍事訓練を受けました。モリカルが徐々に落ち着きを失くしていく母国の各クランに対して、ある程度帝国の権威を確立する必要があると考えた時、彼はその任務に信頼のおける血族を指名することを選び、カダッチをマルカルスに送り返しました。

帝国法の全てを自由なリーチの民に強いるつもりではないことをクランの族長に再認識させるため、モリカルはカダッチの権限をマルカルスと街を直接取り巻く土地に制限しました。この結果、カダッチはマルカルス内の秩序を維持するに留まり、それ以外は各クランの統治に任されることとなったため、クランの族長たちは納得しました。モリカル皇帝の残った統治期間、カダッチ総督は効果的にマルカルスを管理し、レオヴィック皇帝の不穏な統治期間を通してその地位を維持しました。

この期間に、カダッチはリーチ流の支配を敷きました。採決は迅速で野蛮であり、マルカルスの暴君と呼ばれるようになったのです。

レオヴィックが倒され、残ったリーチの民がシロディールから撤退すると、カダッチは自らの名において権力を獲得し、かつてのリーチの民の称号「アルド(砦の王)」を手に入れました。次に彼は自身のクランを残忍な手法で粛清し、主導権を脅かす可能性のある、残存するブラック・ドレイクを全て殺害か追放しました。いずれにしても15年に及ぶマルカルスの支配は、自らの指揮下にある統制のとれていない戦士を、王として支える覚悟のある忠実な軍隊に育てる機会をカダッチにもたらしました。

カダッチはアルドとして、「クランではなく、リーチを所有している」ことを主張しています。各クランが他の王を選ばず、必要な時要請に応じる戦士がいる限りにおいて、彼は他のクランを支配し、彼らの問題に干渉するつもりはありません。一部に嫌々ながらというケースもありましたが、リーチのクランは彼がマルカルスを統治することに同意しています。如何なるクラン、または有効と思われるクランの同盟も、カダッチの軍に挑むことはできません。自ら玉座につき、総督の称号を放棄してからの5年間で、暴君カダッチはゆっくりとマルカルスにおける権力を強化し、かつての要塞を簡素な都市国家、自由で独立したリーチのための首都へと変貌させました。

それでは、カダッチがどのような男なのかという話ですが。彼を説明するのに最も適した言葉は「現実的」であると考えます。彼は自分の力が確信できない限り、注意深くリーチのクランが乗り気ではないことを強要しないようにしています。しかし自分の力が確信できる時は、制御できないクランを服従させるために全力を尽くすことを躊躇しません。これが、ハイロックを脅かしているクランと休戦協定を結ぶための仲介を暴君カダッチにさせるのが困難である主な理由です。カダッチは我々の国境の平和のため、彼らを刺激して自分の力に反抗させることに興味がないのです。マルカルスにおける法(のようなもの)の強制、アンダーストーンでの文書記録維持の命令、より強力な魔術結社への助言の要求、必要だと感じられた際の同盟の結成および破棄など、彼は自分の目標を達成するためなら、あらゆる手段を積極的に使います。

しかし、暴君カダッチの真の才能は、政治的計算にあります。彼はリーチの伝統を正しいものとし、またよそ者の劣ったやり方(彼の言葉であり、私のものではありません)を軽蔑しながら、リーチの民に向かって自由で独立したリーチについて語ります。ですが、この「リーチの民のためのリーチ」という大仰な話の背後で、カダッチは罠や帝国の権威の体制を利用し、マルカルスをリーチの長く血生臭い歴史の中で最初の機能的な国家に変化させたのです。また、これを認めるリーチの民はいないかもしれませんが、カダッチの権力の強化と、彼がマルカルス周辺に強制している相互的な平和は、良い方向へ向かうための、本物で長続きする変化に向けた必要な手順だと多くの者が理解しています。

外国を激しく嫌うクランがアルド・カダッチの権威を認め続けるか、あるいは反発するかは、当然ながらリーチの大きな問題です。

マルカルスの歴史:石の物語History of Markarth: A Story in Stone

アルドの行政官、執政官カルデア 著

マルカルスの物語はドワーフがこの地に定住し、地上と地下深くの双方に建物を築いた第一紀初頭に始まる。彼らはカース川の峡谷の上流にそびえる山、カースマッドの麓に新たな要塞を建設した。長い年月をかけ、ドワーフは山の心臓部からヌチュアンド・ゼルの街を削り出し、地上へ建設を続け、ついに太陽の射す世界へ顔を出した。この高い谷で、ドワーフは地上に強力な防衛設備と大きな貯蔵庫を作った。ヌチュアンド・ゼルはしばらく繁栄した。そして他全てのドワーフ集落と同様、第一紀700年に突如として放棄された。

放棄され空になった他のドワーフの街の大半は廃墟と化した。しかしヌチュアンド・ゼルには、大部分のドワーフ都市に欠けていたものがあった。地上に広がる要塞と、付随する建物である。ドワーフたちの消失から数年後、リーチの民の様々なクランがドワーフの建造物を隠れ家や要塞として、窮乏の時期に利用し始めた。第一紀930年にはこの地を訪ねた希少な旅人が、リーチの民がこの廃墟を通年占拠していたことを報告している。彼らはここをマル・カース(「カースの上」の意)と呼び、この場所に住むクラン最強の族長はアルド(「砦の王」の意)として知られた。

マルカルスはリーチの民に占拠され、皮のテントや手触りの粗い毛皮で飾られた遺跡となっていた。しかし第一紀1033年、女帝ヘストラがリーチを服従させ、支配地に加えるように命令をアレッシア帝国軍に出した。女帝の将軍はこの遠征の最初の目標をマルカルスに定め、帝国の力をリーチの要塞に叩きつけた。アルドは勇猛果敢に要塞を防衛したが、女帝ヘストラの軍団は士気が高く、指揮も素晴らしかった。一方リーチの民は組織が乱れ、共通の敵を前に団結するのが遅れた。マルカルスはインペリアルの手に落ちた。アルドの最も勇猛な戦士の多くは、降伏よりも壁から身を投げ、石を血に染めることを選んだ。

リーチを屈服させるための戦いは長く続いた。帝国の軍団はしばしばマルカルスで包囲され、壁の向こう側には赤鷲の反乱軍が待ち受けていたので、外に出ることも困難だった。だが、赤鷲がインペリアルをマルカルスから追い払うことはできなかった。彼の反乱が終結する頃のマルカルスは、要塞から都市へと変化する最初の一歩を踏み出していた。アレッシア帝国の終焉まで、マルカルスはインペリアルの支配下にあり続けた(駐屯部隊に配属されたインペリアル兵士にとっては、陰鬱で危険な任地だった)。この時期、ドワーフの貯蔵庫の多くは広間や家屋、工房に変えられた。街は現在のような外見になったが、いかなる人間の技術もドワーフが築いた壁と監視塔を改良できなかった。

150年前にアカヴィリ最高顧問が死に、インペリアルの権威が大きく低下したことで、マルカルスは再び歴史の闇に埋もれた。インペリアルの支配下でも常に反抗的だったリーチは、帝国の力が下がった瞬間に、よそ者が滅多に旅することのない場所となった。ブレトンの男爵もノルドの首長もこのリーチの街に攻め込んだが、そのたびに難攻不落のドワーフの防衛設備に撃退された。外国の侵略者がマルカルスの冷たい石に血を流し、リーチの民は独立を取り戻した。

リーチの民が再び敵対的になると、マルカルスとタムリエル他都市の交易や旅は途絶えた。その結果、マルカルスの統治者やその治世についての噂リーチの外に届くことはほとんどなくなった。しかしこの暗闇の中から、タムリエル全土を根底から揺るがす嵐が勃発した。ブラック・ドレイクと呼ばれる戦士長ダーコラクが、第二紀533年にリーチ戦士の大軍勢を招集してシロディールになだれ込み、ルビーの玉座を奪取したのである。

この動乱は多くの変動をもたらし、マルカルスはある意味で再びインペリアルの影響を受けるようになった。シロディールに入ったリーチの征服者は大量の略奪品と捕虜を故郷に持ち帰り、かつてないほど多くのリーチの民が、外国で財産を築くことを求めた。マルカルスへの道は再び賑わい、長い間忌避されて来たこの街道は、交易の恩恵で息を吹き返した。

現在、この街はアルド・カダッチの支配下にある。いわゆるマルカルスの暴君である。ロングハウス帝ダーコラク家の親戚となるブラック・ドレイク・クラン出身のカダッチは、第二紀559年に帝国の総督に任命された。その任務は街の統治だけでなく、反抗的なリーチのクラン同士の平穏を保つことも含まれた。レオヴィック帝が玉座を失うと、カダッチは帝国の称号を捨て、古いリーチの称号であるアルドを名乗った。彼は躊躇なくブラック・ドレイクの生き残りを粛正し、この街の支配を確立してライバルを黙らせた。

アルド・カダッチが反抗的な親族を街の一番高い壁から投げ落として処刑し、胸壁を血に染めたことは言っておかねばなるまい。これはマルカルスの石に刻まれた残酷な物語の、最も新しい章にすぎない。

リーチのおとぎ話Reach Bedtime Stories

語り部イサ・トルイアンド 著

語り部イサ・トルイアンド著

これらの物語は話すことに同意してくれた、様々なリーチの民から収集したものである。大半の人はよそ者に対して何を教えるのにも積極的ではなかったが、私はタムリエル中の物語を分かち合おうとしているただの語り部だと強調した。交換に興味を示す者もおり、私は他の人々から聞いた物語をリーチの民の方式で語るように最善を尽くした。揺れる炎の周りを囲んで、強い感情を込めて演じるのである。その見返りとして、私は以下に記録したリーチのおとぎ話を集められた。

* * *
小さな薄き血の者

昔々、小さな男の子がいました。男の子の父は勇敢な狩人で、息子にも同じようになってほしいと思っていました。父親は毎日少年を訓練し、追跡して戦い、殺す方法を教えました。でも男の子は心優しく、戦いや殺しに興味がありませんでした。男の子は矢にも荒野での生存術にも関心がなく、上等な服を作り、ヴァテシュランの話を聞いていました。

ある日、少年は森に行って父と練習をしていました。熊が丘を駆け下りてきて、二人を急に襲いました。熊は子供を守ろうとして襲ってきたのです。少年の父はこの大きな動物から身を守りつつ、息子に助けを求めました。でも少年は剣を握ることも、矢を削ることもできませんでした。恐ろしい熊は少年の父を倒し、父は血を流しながら、武器を取って熊を殺すよう息子に言いました。

「教えたとおりにやるんだ!」と父は命じました。

でも少年は針と糸やヴァテシュランの物語にばかり時間を費やしていました。男の子は恐怖でその場から動けませんでした。熊も話せば理解してくれるかもしれない、と少年は考えました。

「熊さん、ちょっと話を聞いてくれないか…」と少年はどもりながら言いました。

熊は怒って吠えました。熊には理解できるはずもなかったのです。熊は喉に噛みついて少年を殺してしまいました。少年は最期に、父へ囁きかけました。「お父さん、ごめんなさい。お父さんの言うことを聞いていればよかった」

だから子供たち、お父さんの言うとおりにしないと、熊に食べられてしまいますよ!

* * *
裏切りのノルド

昔、メロックというクランの族長が、皆と友達になろうとしました。ある日、ノルドが一人で馬に乗ってやって来て、取引を求めました。メロック族長はノルドを食事に招き、クランと談笑して時を過ごすよう誘いました。多くの者がメロック族長に、新参者と友達付き合いをするのはやめるよう助言しました。その男が礼儀正しく友好的であることは彼らも認めましたが、リーチの者ではないのだから、本当に理解することはできないと言いました。彼らはよそ者を信用しないよう族長に警告しましたが、この警告は聞き入れられませんでした。

メロック族長はノルドとの交流に気をよくして、次の日彼を狩りに誘いました。二人は一緒にキャンプを出て、笑いながら付き合いを楽しんでいるようでした。彼らは獲物を探して森の奥へ入っていきました。歩きながら、メロック族長はクランの古い霊魂との付き合い方や、秘密の伝統などをノルドに教えました。ノルドは愛想よくうなずき、質問を返しました。族長はノルドの学習意欲に喜びました。親友ができたと思ったのです。

二人は獲物を見つけました。メロック族長は一番お気に入りの槍をノルドに渡しました。「新たな友よ、とどめの一撃を加える名誉は君が得るべきだ」と彼は言いました。ノルドは槍を手に取りましたが、空き地に立っている鹿を殺すのではなく、槍をメロック族長の腹に突き刺しました。

キャンプでは、ノルドの仲間の戦士たちがクランを全滅させていました。族長がいなくなったので、クランには侵入者を撃退できる強さがなくなったのです。

メロック族長は倒れて血を流しながら、ノルドに質問をしました。「なぜだ?」

ノルドは残酷に笑って答えました。「お前たちは俺たちがほしいものを持っているからだ。これで、お前たちの土地を奪える」

メロック族長とクランはその日死に絶えました。族長がよそ者を信用する愚か者だったからです。どれだけ友好的に見えても、リーチの子でない者は信用できないのです。

* * *
夜の王

(注記:私はこの物語の様々な派生版を複数のリーチの民から聞いた。その大半は年寄りから。しかし全体的なテーマは同じである。ここには私が一番好きな物語を記しておく)

ずっと昔、夜の王たちがリーチを支配していました。彼らは影をさまよい、その目は血のように赤く光っていました。平原の獣は恐怖して逃げ出しました。彼らが姿を現すと、木々も身をすくめて嘆きの声を上げました。

他の怪物でさえ彼らを恐れました。

リーチの子供たちよ、気をつけて、毛布に身をくるみなさい。暗くなった後でキャンプから離れすぎると、夜の王たちに見つかるかもしれません。彼らにとって、リーチの子の血は蜜のように甘いのですよ。

リーチのクランについてOn the Clans of the Reach

帝国書記、テオフォ・ハーヴィアン 著
(第二紀568年、レオヴィック皇帝統治時代に執筆)

「ブラック・ドレイク」のダーコラクがリーチの戦士を率いてシロディールに対抗するまで、リーチの民をうなり声をあげる蛮族以外として述べた学者はほぼいなかった。タムリエルの他の人々は、リーチの者を無秩序な状態で存在する、手に負えない大規模な集団と見ている。残念ながら1世代前に、ブラック・ドレイクの戦士がその無知の代償を明確に支払わせた。シロディールの賢者たちが、現在帝都を支配するこの戦を好む民族について学ぶべきことが数多くあると気付いた時にはすでに手遅れだったのだ。その必要に応じるため、現在指名された統治者であるブラック・ドレイクのカダッチが管理する、マルカルスでの7ヶ月におよぶ貿易大使の経験から、リーチとそのクランについて学んだことを書き記そう。

序文:リーチにはさまざまなクランが数多く存在し、それぞれが独自の性質や伝統を有している。一ヶ所に恒久的なキャンプを設置し、定住するクランもある一方で、遊牧民であり続けるクランも存在する。クランは大家族と故郷の村の中間的な存在であり、中にはクラン内で血縁関係にある者もいるが、それ以外の者はクランへの忠誠を示すためにクラン名をつける。新しい土地に居住するため、または獲物の群れを追うため、あるいは無秩序な時期には近隣の地域の襲撃や略奪をするため、気の合うリーチの者の一団が集まれば、いつでも新しいクランが出現する。その結果、クランは驚くほど流動的になることがあり、時間と共に分裂や再編成が行われる。

各クランは族長が統制する。中には自ら首領、代弁者、長老、王と名乗る者もあるが、ほとんどのリーチの民は自身を「王」などと呼ぶのはどこか気取った感じがすると考えている。リーチではもう何十年も、わざわざ自らを王だと主張するクランの族長はいない。だが、その者が王の称号を主張するに足る強さを持つと十分な数のリーチの民が同意すれば、如何なるクランの族長も王となれる。事実、歴史的には多数のクランの族長が同時期に王と名乗る時代もあったが、リーチの民がよく言うように、リーチでは誰もが王になれるが、リーチの王となれる者は誰もいない。その称号はダーコラクでさえ主張しなかった。現在に至るまで、リーチの民はロングハウス帝を自らの自由意思で従った戦いの統率者と見ている。たとえそれがシロディールのリーチの民の王であっても、王にひざまずくことはより弱い人々がすることなのである。

すでに述べたように、リーチには数多くのクランが居住している。ほとんどは小規模なクランで、小さな村や、遊牧民の集団や、人里離れた洞窟や地域にある略奪者の住み家だ。しかし、リーチを訪れる旅人なら誰もが知る有名なクランには以下のものがある。

ブラック・ドレイク:人数としては少ないブラック・ドレイクは、偉大なる武将ダーコラクによって誕生した。敵からも味方からもブラック・ドレイクと呼ばれたダーコラクは全リーチ人を彼の旗の下に結集させ、シロディールを征服してロングハウス帝の血統の基礎を築いた。彼の近親やリーチの友人は、有名な呼称を自らのクラン名とした。必然的に、他のクランは普通なら命令を下す規模のクランでありながら、ダーコラクの親族にはより多くの敬意を示している。また、総督のカダッチもブラック・ドレイクである。

シンダーハート:しばしばマルカルス付近で見かける好戦的なクランであるシンダーハートは、捕虜を生きたまま燃やすことで知られている。彼らは犠牲者の空の胸の空洞に熱い石炭を詰めることで、ブライア・ハートを用意すると言われている。ただでさえ陰惨な儀式に対する、恐ろしい改良点だ。

イーグルシアー:誇り高く好戦的なイーグルシアーは、他のクランが子供たちの世話をするようなやり方で確執を育てる。これは外部の者との接触を妨げるように思われるかもしれないが、実際の彼らは友好的で、口論の相手でなければ心を開く。イーグルシアーの者にとって、単に他の土地からの訪問者はリーチの抗争相手に値しないのである。

ゴーストソング:東リーチの荒野に生まれた孤立を好むクランであるゴーストソングは、その強力な魔女と忠実なウェアウルフで知られている。彼らはナミラに対して特別な崇拝の念を抱き、彼女を霊魂の女王と呼んでいる。

ヒルハンター:マルカルスの南の山中に居住する遊牧民の狩人であるヒルハンターは、木工技術で有名である。他のクランの間では、ヒルハンターの者からあえて狙われない限り、彼らを追跡できる者はいないと言われている。

リバーエルク:大所帯を誇るリバーエルククランは、カース峡谷全体に数多くある半恒久的なキャンプで暮らしている。彼らはよそ者のやり方に不信を抱いてはいるが、自身がクランにとっての友であることを証明するよそ者とは進んで取引をする。

シェイドフェザー:幸いなことに少人数であるシェイドフェザーは、ハグレイヴンの強力な魔術結社の支配下にあるクランだ。彼らはリーチのあちこちで旅人を待ち伏せし、捕虜となった者を闇の儀式で殺害する。他のリーチのクランでさえ、邪悪な彼らからは逃れられない。シェイドフェザーの者はしばしばキャンプを移動し、不運にも偶然出くわしてしまった者は誰であれ全て殺害する。

ソーンルート:獰猛で強いソーンルートは、通常ブライアロック近辺で野営している。彼らはシェイドフェザー同様ハグレイヴンに率いられているが、近隣のクランとは友好的な関係を維持し、激しい怒りはよそ者に向けるために温存している。クランの戦士の多くがブライア・ハートになることを選び、戦闘でのソーンルートをとても危険な存在にしている。

ワイルドスピア:マルカルスの近くに土地を持つ定住クランであるワイルドスピアは、ハーシーンに心身を捧げ、儀式の狩猟でこの追跡の師を称賛する。彼らは人間、中でも強く賢い敵は、流血の儀式に最適な獲物だと信じている。

リーチの偉大な霊魂 第1巻Great Spirits of the Reach: Volume 1

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

タムリエルに暮らす者の大半は、何らかの信仰を持っている。物理的、精神的な危機に脅かされた世界において、神を捨てるのは難しいものだ。残念ながら宗教的アイデンティティへの共通の欲求が、人々を団結させることは滅多にない。むしろ分断することの方が多い。対立点の多くは分かりやすい。種族間の政治や歴史的な怨恨、神による承認の主張はしばしば誠実な対話の試みを台無しにする。だが、全てを包括する中心的な断絶が1つある。それはエドラ至上主義である。

ある古いオークの格言では「征服者が戦争を名づける」と言われる。これは力ある者が歴史についての理解を形成するという事実を適切に述べている。この格言は、信仰の問題についてはなお正しい。征服者は戦争に名をつけるだけではない。信仰をも形成する。白金の塔を支配する者が何らかの根本的な意味でタムリエルを支配するという約束事を受け入れるなら、エドラ至上主義は完全に筋の通った考えである。それはエドラが実際に他より優れているからではなく、優位な立場にある者が自らの至上性を主張できるからだ。

いくつかの注目すべき例外を除くなら、シロディールの、より広く言えばタムリエルの物語はエドラの信者たちによって形成されてきた。それはアルドマーに始まりアイレイドに受け継がれた。野生のエルフは一時的にデイドラ崇拝に走ったが、彼らはアレッシア人の手によって高い代償を支払わされた。この時点から、エドラはタムリエルの信仰という領域において特別な地位を得た。その地位は本質的に、エドラ以外の信仰実践を奉じる種族の立場を弱体化させた。オーク、アルゴニアン、カジートなど、そうした種族の大半はすでに人間とエルフによる嫌悪と迫害を受けていたが、チャイマーや後のダンマーなど、エルフの同族から冷たい疑惑の視線で見られる者たちもいた。これら全ての民は昔も今も、エドラ崇拝者に与えられた特権に苦しんでいる。だが、リーチの民以上に信仰を理由とした迫害に苦しめられてきた種族はいない。

外国の襲撃者に迫害され、嫌悪され、繰り返し侵略されてきたにもかかわらず、リーチの民は豊かなデイドラ崇拝の文化を維持することに成功しており、希薄化や衰退の兆しも見られない。本論がこの評価されることの少ない信仰について新たな光を投げかけ、リーチの誇り高く頑健な民への敬意を高めてくれることが、筆者の切なる願いである。

リーチの偉大な霊魂 第2巻Great Spirits of the Reach: Volume 2

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

リーチの民は大小様々な、数多くの霊魂を崇拝する。実際にはリーチにいるクランの数と同じだけの信仰が存在する。聖なるエルクや山の泉の霊魂を崇拝するクランもいれば、古代の英雄の亡霊のために山羊を生贄に捧げるクランもいる。しかし一部の霊魂は、クランの境界を超越して崇拝されている。それはタムリエルの残りの部分にいる我々が、デイドラ公と呼ぶ霊魂である。

リーチの主神は狩りのデイドラ公ハーシーンである。古きエルクの目、狩りの王、獣の父、皮を作る者、五又槍など、名称はクランごとに様々だ。リーチの神々全てと同様、ハーシーンは冷酷な師とみなされている。実際、リーチの民は自分たちの信仰を「信心」ではなく「教え」と呼んでいる。しかしハーシーンの教えを聞く者は素早く、強く、狡知に長けた者へと育つ。リーチの狩人にとって、こうした信仰の物理的な表明は、神々の聖堂で議論されるような漠然とした倫理的懸念よりも遥かに大事だ。

ハーシーンは凶暴かつ恐るべき「今」の化身である。彼は生がその瞬間に生きられるものであり、全ての生物は捕食者か獲物か、その両方であることを信者に教える。これにより緊張と注意を怠らない感覚が生まれ、それはしばしば争いにつながるが、リーチの民の安全を守ってもいる。ハーシーン崇拝者の心には休息も、休息の予感もない。

外部の者にとって、このような信仰はひどく不快なものに思える。しかしその成果は無視しがたい。リーチの民が維持している集中力と身体能力に並べる種族はほとんどない。狩りの後には短い静寂があるが、視界の端には常に次の狩りが待ち受けている。

リーチの民はまた、ハーシーンに最も忠実に仕える者を守護者や導き手として遇する。もちろん、ウェアウルフのことである。ライカンスロープを祝福とみなすリーチの民は少ないが、彼らは有用な状態としてこれを受け入れている。ウェアウルフは属するクランのために苦しみ、それは敵の苦痛を引き起こす原因となる。

リーチの偉大な霊魂 第3巻Great Spirits of the Reach: Volume 3

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

リーチの民は2つの世界しか知らない。肉体の世界と霊魂の世界である。ハーシーンは肉体の世界を支配するが、霊魂の女王であるナミラは、無限なる霊魂の領域を支配する。

デイドラ崇拝者の間でさえ、ナミラは恐怖と疑念を持って見られるのが通例である。ナミラが伝統的に影響を及ぼす領域は、定命の者へ即座に嫌悪を催させる。背筋の凍る謎や避けがたい腐敗は、多くの定命の者の恐怖の核心にある。しかしリーチにおいて、ナミラの支配は単なるナメクジと闇よりも遥かに広く及んでいる。リーチの民はナミラを全ての始原的な二元性の化身とみなしている。生と死、始まりと終わり、可能性と無秩序。根本的に対立する全ての力は、ナミラの霊魂の領域から流れ出て来る。多くの宗教は何らかの調和を求めるが、リーチの神学はこのような闘争と避けがたく結びついている。存在の本質的な力としての闘争へのこうした執着が、よそ者やリーチの民同士での敵対的な態度に一定の役割を果たしていることは疑いない。

逆説的だが、リーチの民の大半はナミラの教えに何らかの平穏を見出している。クランの魔女はしばしばナミラを与え、また奪う者として描く。霊魂が深い知恵を見出すまでの間、ナミラは生命を与え奪うのである。

リーチの偉大な霊魂 第4巻Great Spirits of the Reach: Volume 4

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

リーチの民は自然のリズムと時間の無慈悲な歩みを強調する。存在する全てのものは過ぎ去る。高すぎる砦は崩れる。飢えたクランはいつの日か強く成長する。永遠の均衡は課題の主にして秩序の王、ぺライトの仕事である。多くの点において、ぺライトは闘争の至上性を引き立てるために欠かせない存在となっている。戦争や病気は深刻な傷をもたらすが、ペライトは世界が常に自然によって意図された状態へと戻ることを保証する。

多くの文化と同様、リーチの民もぺライトを荒廃と病気に結びつける。しかし他の民とは違い、リーチの民は病気のうちに悪意を見ることはない。むしろその反対である。病気によって消された生命はより健康で、より活発なリーチの民が代わりを務めるための空きを作る。病気は野火のごとく、自然の再生力として働く。豊穣の危機に対する必然的な調整弁である。

リーチ社会におけるぺライトの役割が、多くの重要な点でエドラの信仰におけるアカトシュの役割に似ていることには言及しておくべきだろう。時間や厳格な自然の秩序、圧政者としてのイメージなどは、タムリエル北西で人間とエルフの初期交流の際に、何らかの文化的交配があったのではないかと思わせる。異教的ではあるが、魅惑的な考えである。

リーチの偉大な霊魂 第5巻Great Spirits of the Reach: Volume 5

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

学者はしばしばリーチの神学を単なるデイドラ崇拝として退けるが、リーチの民の偉大な霊魂はオブリビオンのデイドラ公よりも広い範囲を司っている。多くの人間の文化と同様、リーチの民もロルカーンを尊敬している。彼らはロルカーンをロルク、すなわち人間の霊魂、定命の霊魂、あるいは肉を植える者としている。

リーチの神話で、ロルクは霊魂の女王ナミラを説得して永遠の虚無に居場所を与えてもらい、ロルクはそこで放浪の霊魂のための領域を作ったという。ロルクは活気ある楽園ではなく、過酷で苦痛に満ちた場所を作った。苦難を通じて教える領域である。ロルクの残酷さを嫌う者もいるが、多くは彼の知恵を称える。リーチの民によると、最も激しく苦しむ者が最も優れた知恵を持つという。苦難は知恵と栄光のための手段であり、ロルクは苦難を豊富に提供する。

ロルクは今でもニルンの定命の者がいるところに姿を現すとされている。彼が現れることはとても稀だが、心から必要とされる時には創造した苦痛と悲しみの残酷な世界に進み出て、リーチの民を助けるという。私の調査では、恐れられているブライア・ハートの儀式が、この不死の犠牲を反映するものとして始まった可能性を示唆している。

リーチの狩猟賛歌Reach Hunting Hymn

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

狩りは曲のように始まる
脚は葉を散らし
翼は茨を切り裂く
エルクの影がさまよう
エルクの影がさまよう

果てなき森が手招く
恐怖は鋭く身震いする
狩られることは生きること
試されることは価値あること

逃げよ、小さきウサギ
お前の皮は見事な報酬になろう
肉に当たる歯を感じるがいい
ハンティング・グラウンドが待っている
ハンティング・グラウンドが待っている

果てなき森が手招く
恐怖は鋭く身震いする
狩られることは生きること
試されることは価値あること
試されることは価値あること

リーチの酒Drinks of the Reach

ヴォルジャー醸造所のフィヨリダ 著

リーチの民が近隣の土地に求めるものがあるとすれば、それは味の良い酒よ。ノルドのエール、ブレトンのブランデー、シロディール産ワイン。手に入るものなら何だっていい。リーチの土地の多くは他の土地が大量に産出する、ある種の飲料の生産に必要とされるブドウ園や、大麦畑、あるいは家畜化された蜂の巣に適していないけど、リーチの者はほとんどがお酒を好むの。盗めない場合に限ってだけど、お酒はリーチ人が進んで取引する数少ない日用品の1つよ。

外交的なリーチの民はお酒を取引で入手するけど、外界の商人とあまり接触しないリーチの民は手元にあるもので間に合わせなければならないわ。リーチの奥深くに旅することがあれば、すぐにリーチ産のお酒に出くわすことになるでしょう。そういったお酒は、大抵はリンゴ酒か、「クレフ」と呼ばれる発酵させた汚らしい羊の乳の形を取っている。

リーチのリンゴ酒は濃い色で、かび臭くて、甘い――強引に言えばそこそこ飲める――ものから、済んだ色で、どちらかと言うと慣れが必要な酸味のある造りのものまで幅広い。この風味は、使用するリンゴや圧力をかける年数に依存する。リーチに果樹園はめったに見られないけど、森や川の流域には野生のリンゴの木が豊富にある。そういった地域に住むクランには、それぞれが愛飲するリンゴ酒を醸造するために好んで使う手法があるの。その中には良い酒を産み出すものもあるし、最悪の酒を産み出すものもある。

クレフ。言ってしまえば、クレフとは人が羊しか持たない場合に造り出すものね。こんな代物に耐えられる部外者に会ったことがないわ。それどころか、クレフを好きだと主張するリーチの者は、ただその人がどれだけ不快なものに耐えられるかを証明しているだけなんだと思う。これは勇気を試すものなのね、きっと。でも、ほとんどのリーチの者はクレフが好きだと言う振りすらしないけどね。ただ酔っ払うためだけに飲むの。

うちの優良顧客の一部をリーチの民が占めているのはこれが理由よ。

リーチの食べ物の手紙The Reach Food Letters

ロングハウス帝の即位直後、シロディールの人々はリーチについてより詳しく知ろうとした。彼らを魅了した中には、帝都の宮殿から香る奇妙な食べ物の噂もあった。商人の娘がマルカルスの父から来た手紙を出版すると、すぐにベストセラーになった。これは最新版である。

***
親愛なるハイパティア

壊れた荷車を修理するためにあまりにも長くロリクステッドに滞在してしまったこと以外は、何事もなく到着した。リーチは君のお母さんが言ってた通りだと思う。弧を描く地形と景色を数えきれないほどの地区に分断する岩山。マルカルス自体は立派だが、石板の上に積まれた毛皮の山はベッドの代替品としては貧弱だ。

子供たちは寂しがってないか?マルカルスに向かう途中でガイドと一緒に経験した、思いがけない出会いのことを子供たちに伝えたいんだ。あの子たちが眠りにつく前に、これを読んで聞かせてやってくれ。

やあ、チビちゃんたち。父さんは遠くにいるけど、夜が明けるたびにお前たちのことを思ってるよ。父さんはリーチにいるんだ!ここは変わった場所で、変わった人たちが住んでいるよ。獰猛で、知らない人を嫌う意地悪な人たちだ。でも運が良かった!父さんのガイドはあのリーチの者のクランを知ってた。その人たちはごちそうの会をして、父さんも混ぜてくれたんだ!
リーチでごちそうはめったに出ないんだよ、チビちゃんたち。厳しい土地なんだ。うちの方みたいにブドウや小麦が育ったりはしない。彼らは固いものを食べる。例えば干し肉とか、じゃなきゃ大麦みたいな、私たちなら動物に食べさせるようなものだ。だけどごちそうの日は違う!たくさんの料理をクランで分け合うんだ。リーチの者は自分の狩猟ナイフと、浸して食べるためのパンの皮と、時々はヴァレンと呼ぶ短いキルティング用の針みたいな道具を使って食事をする。

父さんはできる限り色々なものを食べてみた。一部を紹介しよう。

ハーシーンの分け前はごちそうの主役だ。スパイスを効かせて骨を抜いた何匹かの動物が動物の中に詰まってる。父さんのごちそうはウサギが詰まったライチョウで、それが山羊に詰まっていた。その山羊は雌鹿に詰まっていたんだ!もっと大きなクランでは丸ごとの雄牛から始まって、最後はネズミで終わるらしい!

リーチのスープはもっと控え目だ。彼らはある種の苔がついた石を見つけて、それを鍋の中で煮る。それでできた薄いスープは深い酸味のある味がする。ごちそうの日のために、スープにオーツ麦を混ぜてある種のお粥を作る。

スモークした鱒と鮭はミルクで料理して、栄養たっぷりのシチューを作る。このシチューは鮭が産卵のために川の上流へ向かって泳いでいく時期には、とても頻繁に食べるんだ。その時期には小さな子供でも、岸から手で捕まえることができるんだよ。フォースタス叔父さんの別荘で、初めて魚を捕ろうとした夏のことを覚えているかな?

アルドノットはお菓子のようなものと考えられている――干し肉の組み合わせを叩いて粉にして、溶かした動物の脂と混ぜてペーストを作るんだ。これを長い糸みたいな形にして、何か小麦粉のようなもので覆う――粉の名前はどうしても覚えられなかった――そうすると複雑な結び目の形にできる。結び目の形はリーチの者の心に響くらしい。何故だかは分からないが。

魔女の水は試した中で一番面白いものだった。植物と種の秘密の組み合わせを石の車輪ですり潰してペーストにして冷たい水と混ぜる。出来上がったものは触ると個体だが、かき混ぜると液体なんだよ。見た目はすごいが全く味がない。だけど妙に食べ応えがあるんだ。

リーチのパンは帝国で食べるようなローフとは全然違う。リーチの民はいろいろな根を掘り出すと、茹でて皮を剥いてから壺に入れて火の側に置く。そこからすくったものが焼く前のパン生地みたいなものなんだ。このパンの皮は素晴らしいぞ。

リンゴは大抵石のボウルに入れてある。ボウルにはクリームが満たされていて、火の側に置いてあるんだ。ほぼお行儀のいい子供だけがもらえるものだ(これは1つ食べて少なからぬ視線を浴びてしまった後に分かったんだよ!)。

ロウソクの火が消えるぞ、子供たち。今夜はここまでにしておこう。次の手紙を楽しみにしててくれ!

みんな大好きだよ。

父さんより

リーチの政治Politics of the Reach

第二紀578年、アルドの行政官、執政官カルデア 著

アルド・カダッチの指示により、私はマルカルスでリーチの民に仕え続けています。帝都からマルカルスに送られた理由は、レオヴィック皇帝自身がマルカルスを助け、シロディールとリーチの架け橋になるよう望まれたためです。現在ルビーの玉座に座る者から追加指令は受けていませんが、私は退出して故郷に帰るものと考えていました。アルド・カダッチが私の行政管理能力を保持したいと望まれたため、私はここに残っています。新しい皇帝が興味を持たれた場合に備えて、職務中に学んだことをここに記録します。

まず、リーチは1つの国ではなく2つの国だと考えたほうが良いでしょう。マルカルスと荒野です。伝統的に、誰であれマルカルスを統治する者は荒野に対してほとんど権力を行使しませんが、一方で荒野の強力なクランの雑然とした集まりには、リーチの都市を支配する力も意思もありません。マルカルスが弱い指導者の統治下にある時――もしくは時々あることですが、完全に統治者が不在の場合は――影響の輪が縮小します。強い統治者がマルカルスを掌握している時は、都市の力が近隣の土地にまでおよび、西リーチのクランは、名目上そうではなかったとしても、実際にはマルカルスの権威を認めなければなりません。長きに渡るリーチの物語は、領域を形作ろうとするマルカルスと、拡大する街の権威に激しく抵抗するマルカルスの外のクランの物語です。

リーチに対処する上でとても困難なのは、それぞれ独立したクランが自らを独自の政治機構だとみなしている点です。自由に襲撃し、取引し、戦争を起こし、クランが選んだ相手であれば誰とでも手を結びます。リーチとの間に長く続く平和を築くためには、数多くのクランと交渉しなければなりません。中には激しく憎み合うクランもあり、彼らは決して敵が受け入れることを選んだ平和を守ることに同意しないでしょう。驚かれるかもしれませんが、これは新皇帝のような外国の支配者に当てはまるのと同様に、マルカルスの支配者アルド・カダッチにとっても当てはまります。いくつかのクランの族長にとって、アルド・カダッチは単に並立した族長であり、彼に服従することは、他の同格の者へ服従するのと同じなのです。実際、彼らはアルド・カダッチをとても懐疑的な目で見ています。彼らのことも支配するつもりでいると信じているのです。

幸い、全てのリーチの民があらゆる人やものを敵にしたいと思っているわけではありません。アルド・カダッチは独立したクランに対し、思慮深く対応しています。彼はマルカルスの利益が直接脅威にさらされた場合にのみ行動を起こします――たとえば、シェイドフェザーのような敵意のあるクランによって、マルカルスへの道中が危険になる場合や、ボーンシェイパーのような境界にあるクランが隣接したクランに対し、全てのリーチの民を対象にして無差別に報復するよう促している様子が見られた場合などです。同様に、比較的規模の大きいクランの大部分はお互いに微妙な友好関係を保っています。無謀な対立を煽るクランは、高い確率で大規模なクランに対抗する他のクランの同盟関係を生じさせます。その上で、全てのリーチの民はマルカルスが中立地帯であるべきだと考えています。そこに行き、取引をしたいと願うあらゆる荒野の者に対して開かれているべきだと信じているのです。リーチの多くの人には、粗削りで用心深い平和のようなものが適しているのでしょう。

荒野での権力は主に有力なクラン(イーグルシアー、シックスフォード、リバーエルク、ソーンルートなど)が握っていますが、リーチには我々がアルド・カダッチの壁を越えてクランとの取引を望む時に考慮すべき慣習があります。「大族長」です。これは通常、味方と敵の両方から尊敬の念を勝ち得た族長が獲得する、ある種の「名誉族長」の称号です。大族長は、最も頑なで外国のものを嫌うクラン以外の全てのクランに対して、影響力のある道徳的権限を行使します。現在、大部分のクランはカニアーという元リバーエルクの族長を大族長として認めています。カニアーは紛争の裁定人であり仲介役で、現役時代は抗争の解決や同盟の修復などを行いました。敵対心の強いクランはカニアーを干渉者と見なし、どちらかと言えば軍事的な指導者の方に従いますが、彼女が死ぬか地位を手放すことを選ぶまで、荒野における彼女の声は大きな力を持ち続けるでしょう。

とても危険な狩りや強力な侵略者を撃退するなど、クランに協力が必要な場合は大族長が一時的な指揮権を得ます。脅威が去るまで、戦略と反応を調整するのです。

アルド・カダッチとマルカルスの民と働く過程で、私はこのような政治状況を理解しました。

リーチの捜査官ヴェイルInvestigator Vale in the Reach

高名な犯罪の解決者にして謎解きの名人、捜査官ヴェイルの紹介は不要だろう。野生のリーチにさえその名は轟き渡っているのだから。ヴェイルをスキングラードからソリチュードへ運んでいたキャラバンは、ファルクリースで停留して北に向かった時、リーチの民の略奪者に襲撃を受けた。

キャラバンの荷馬車4台のうち3台は逃げ延びたが、4台目のヴェイル捜査官を乗せていた荷馬車は車軸が壊れ、たちまち略奪者に包囲されてしまった。キャラバンの護衛4名は武器を掲げ、荷馬車と品物、乗客を守って死ぬ覚悟を決めたが、その時捜査官が客席から飛び降りて前に進み出た。

「リーチの慣習に従って、恩の交換を申し出たい」とヴェイルは言った。リーチの民の伝統を調査した時のことを思い出したのである。「こちらの通行の安全を保証してもらう代わりに、クランの族長にしてあげられることが何かあるでしょう。私は捜査官ヴェイルよ」

略奪者の間で、不愉快そうな囁きが交わされた。言うまでもなく、彼らは破壊と略奪を望んでいたのだった。他と印象の違う女性が前に出てくると、略奪者は沈黙した。明らかにリーチの魔女だった。そして彼女がこの略奪者のリーダーなのも明らかだった。

「私はオラーナ。スピリットテイル・クランの族長よ」と彼女は誇り高く、力強い声で言った。「お前は本当に、ハイロックから来た伝説の謎解き人なの?」

「謎解き人、という呼び名はぱっとしないけれど」ヴェイルは言った。「でも、私は捜査官ヴェイルで間違いない。解決してあげられる犯罪や殺人事件はある?」

オラーナ族長は笑みを浮かべた。「殺人はない。少なくともまだ。だが、複数のクランがフロルダンの環の霊魂に捧げた供物が消え続けている。すでに私のクランと他2つのクランが戦いになるところだった。誰かが供物を盗んだのではないかとね」

ヴェイルは若い男女の狩人が、他の略奪者の間で目立つまいとしていることに気づいた。しかしオラーナが状況を説明している間、2人は互いに緊張した視線を交わし、彼らの頬は赤くなった。

「いいでしょう」とヴェイルは言った。「受け入れます。この謎を解いて、代わりにリーチの領地を安全に通行させてもらうわ」

「それならば儀式を…」とオラーナ族長は言い出したが、ヴェイルは手を振って2人の若い狩人の元へ歩いていった。

「彼らが犯人よ、オラーナ族長」とヴェイルは宣言した。「悪意はなかった。いたずらのつもりだったんでしょう?」

若い狩人は2人とも同意を示すようにうなずいた。明らかに恥じており、次に何が起きるのか不安がっていた。

オラーナ族長は眉をひそめて言った。「狩人のいたずら。なるほど、覚えている。私もかつては若かった。この2人よりも。彼らはクランに報いる必要があるが、それは私たちで何とかしましょう」

「素晴らしい!」とヴェイルは言った。「では私たちは進んでいいのね。約束通り、安全に通行できるんでしょう?」

「安全に通行できる」と族長は笑顔で言った。「儀式の後でな。ここではあらゆる物事に儀式がある」

「そうでしょうとも」とヴェイルは言った。「まあ、失礼にはなりたくないし…」

リーチの魔女の詠唱Reach Witch Chant

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

心に留めよ、血を分けた者よ
高らかな我らの歌を聞け
我らの時に猶予はない
影が長く伸びるとき
大きな目を持つ
強き霊魂が待つ
狼の牙は鋭さを保つ
群れを救うために

心に留めよ、偉大なる野獣よ
高らかな我らの歌を聞け
雄鹿の角は肉体を貫く
腱硬く
筋肉は締まり
我らを通じて力を与えよ
我らが霊魂は降り注ぐ
土の上に
汝への褒美のために

心に留めよ、黒き虫よ
高らかな我らの歌を聞け
無で満たされた
我らの飢餓を知れ
腐敗の活力
虚無の力が
我らの胸を空にする
魂と、求めるもので

リーチの旅行ガイドA Reach Travel Guide

カムハイン・サルン 著
(第二紀558年に書かれたもの)

偉大なる我らがダーコラク帝の生まれた地を訪ねたい?お前たちはリーチをどう見ている?リーチは自分に属している者を知っている。それを詐称する者は誰であろうと飲み込んでしまう。だが、私の叔父を他の全ての者の上に立つ存在に作り上げた地を目にしたいなら、導きを与えよう。そうすればお前たちも跪き、彼がその正しき征服の際に与えた慈悲に感謝するだろう。

まず霊魂の祠を訪ね、今歩いている地の所有者に供物を捧げるべきだろう。リーチに神々の慈悲はないのだから。しかしその前に、民の許しを請わねばならない。さもなければ彼らは以前に来た者たちと同様に、お前たちも追い払ってしまうだろう。クランと霊魂を鎮め、正しく通行許可を得たなら、この旅を生き延びられるかもしれない。

カースワステンの村で休息を取れ。ここには侵入者を侮辱せず、取引を求めてくる者に会えるだろう。物々交換のための品物を持ってくるのが最善だが、民は取引に我らが帝国のゴールドを尊重する。無価値な硬貨をリーチの民の労働の成果と交換させてもらえることを、皇帝に感謝するがいい。

さらに西へ向かえば、深き民の領域の残骸を見ることができる。彼らは石を手にして荒野を征服したと思い込んだが、結局飲み込まれてしまった。石の都市マルカルスは、鳥の骨のように生気がなく、空のまま残っている。リーチの多くの者は、動けない石に住み着いて霊魂の怒りを招くようなことはしないと決めた。だがああいうがらくたを好むなら、ドワーフの玩具がいくらでも見つかるだろう。北の遺跡にもあるが、その名前は口にしたくない。

南へ向かえば、ノルドが我々の土地に刻んだ石の傷がある。この地を手なずけようとしたの失敗の名残だ。ブライアロックとロストバレーの遺跡は、今ではリーチの正当な支配者しか受け入れていないので避けた方がいいだろう。あそこにいるクランは、占拠した地を全力で防衛するからだ。あそこに行ったら、愚かなノルドの死体を数えてみろ。ヴァルスムという墓地で丸太のように積み上げられている。リーチの土もノルドの骨は受け入れないからだ。

飼い慣らされることも、帝国に保護を求めることもないこの地に対する敬意が芽生えたか。ここでは強く生き残る者に育たなければ食料にされる、懐の深い地でもあることが分かるだろう。道なき道を行き、裸足で大地を感じ、葉のこすれる音に耳を澄ませ、霊魂の声を聞け。慣れ親しんだ快適な生活を捨てて1ヶ月過ごせたなら、リーチに帰る資格があるかもしれない。

レディ・ビレインからの手紙Letter from Lady Belain

ペンターチ・ハウトリングへ

魔女の反乱軍が街の南と東で、私たちの努力を無駄にし続けています。念のため言っておきますが、マルカルスでの私の陰謀は、あの好戦的な野良犬が自由に走り回っている限り実を結びませんよね?度重なる失敗が気付かれずに済むことなどありませんよ、ペンターチ。

あなたの使者は、灰の王の召集状を何事もなく届けました。珍しいですが歓迎すべき成功です。私は間もなくヴァルスム墓地へ向かいます。おそらくここのところのあなたの失敗については、徳高き指導者に伝えないでしょう。

今のところは。

血によって結ばれた
レディ・ビレイン

虚無のポータルVoid Portals

アークスザンドのキーストーンの捜索中、他の者たちが消えて久しい。レディ・ビレインと灰の王は蔵書庫に入るために必要としている。だが、この力についてもっと多くを知る必要がある。この遺跡の人気のない静けさは、研究を行うには完璧な環境だ。心を持たないコンストラクトと、力の穴の間を一瞬にして飛んでいく奇妙な、ゆがんだ影以外に邪魔をするものもない。レディ・ビレインはこの虚無のポータルを使えるようだ。きっと私は自力で秘密を掴むことができる。

* * *
レディ・ビレインが闇の遺物に関する秘密を守っていたにもかかわらず、私は突破口を切り開いた。遺跡に集中している力を調査していたら、闇の内部から生じたと思われる、小さな欠片を発見したのだ。

それぞれの欠片には重さがあり、まるで力が外側にあるものを内部に向けて引っ張っているようだった。集中したら、周囲の力の穴にも同じ引力を感じられるだろう。欠片はそれぞれ、まさしく出て来た力に向かって戻ろうとしている。これを持って近づいたらどうなるだろう?

* * *
新たな発見だ!欠片を持って力の穴に近づいたら、謎が明らかになってきた。引力は近づくにつれて強くなった。突然、滑ったとしか言いようのない感覚がした。まるで滑って転んだかのようだった。それも下ではなく、横に。辺りを見回すと、どこか新しい場所に来ていることに気づいた。私は欠片と共に、力を通じてこの新しい場所に引っ張られてきたのだ。

力を利用することで、この遺跡の長く閉じられていた扉が私に向かって開いた。結局のところ、蔵書庫に入るのにアークスザンドのキーストーンは必要ないのかもしれない。少なくとも建物に入るためには。レディ・ビレインのことだ、キーストーンには、彼女がまだ灰の王に明かしていない別の機能があるに違いない。

ペンターチ・シーヴェルネス

見習いグウェリナへの手紙Letter to Apprentice Gwerina

見習いグウェリナへ

お前がまだ文字に悪戦苦闘していることは知っている。だからこの手紙は手短にしよう。カース峡谷に闇が襲い掛かった。賢い者たちはマルカルスの石の壁の背後に避難している。アルド・カダッチが目を光らせている場所だ。だが、どんなに危険でも自分たちの領域を放棄することを拒むクランもある。

アルドは寛大にも、アリーナの王、我らの狩猟の父ハーシーンの新しい祠を設置する目的で広間を使う許可をくださった。

そこで合流しよう。この祠を正しく設置できるように、フロッキベグの象徴を持って来てくれ。マルカルスで待っている。

大呪術師グリンロック

古代の霊魂を称えよHail to the Ancient Spirits

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

ハーシーンを称えよ、狩りの王を
森と丘を統べる者
生けるもの全ては追うか逃げる
死によって止まるまで

ナミラを称えよ、霊魂の女王を
糸を編む、沈黙の産婆
あらゆる始まりには終わりが要る
生と死の闇の母

古代の霊魂を称えよ
師として練を与える、いついかなる時も
厳しい教訓は必要なもの
敵だらけのこの世界には

モラグ・バルを称えよ、苦痛のデイドラ公を
暴虐の主人、災厄の王
殺し戦うための力を与えし者
人は争うべき存在なれば

古代の霊魂を称えよ
師として練を与える、いついかなる時も
厳しい教訓は必要なもの
敵だらけのこの世界には

古代の霊魂を称えよ
古代の霊魂を称えよ

荒野で生き延びるヒントWilderness Survival Tips

冒険者兼年代記編者、ジェメル・マラエニウス 著

リーチは無情な地であり、無情な地は無情な人々を産み出す。この地域の過酷さに慣れていない人にとって、準備もせずに赴くことは通常死刑宣告を意味する。だからと言って、人は挑むことをやめない、当然ながら。たとえ当人がいかに危険にさらされる可能性があろうと、私は人が冒険することを非難するような人間ではないが、リーチの者なら彼らの土地をもう少し生き残りやすく旅するためにはどんなことを提案するのだろうかと、かなり以前から考えていた。

そういう訳で、自分自身のために明らかにしたいと思う。

話をした数少ないリーチの者のうち、約3分の1が真摯に回答してくれたものと推定する。ここに最も有益な見識をまとめた(クスッと笑ってしまったものも少々含む)。

狼からの攻撃の生き延び方
「逃げるな。自分のいる場所に立ち、狩人としての権威を狼に尊重させろ」

「臆病者は木に登る。真の戦士は近くの小枝をつかみ、獣をかわす!」

「祈ってみろ。お前らには少なくとも時々は効くみたいだ」

「腐った魚の中に身を隠せ。じゃなきゃ何でもいいから本当に嫌な臭いがするものの中だ。狼は繊細な鼻を持ってる。酷い臭いを放ってたら、彼らもしり込みするだろう」

蜘蛛の噛み傷の最良の治療法
「ただ耐えるだけだ。毒に対する耐性がないのなら、多分リーチを歩き回るべきじゃない」

「取り乱すな。ただ毒の回りが早くなるだけだから」

「運よく手足に噛みつかれたのなら、それを切り落とせ。確実に生きて朝日を拝みたいなら、それが一番手っ取り早い」

「蜘蛛にもよる。きちんと違いを知っておくことだ」

道に迷ったら
「水の音を聞け。音の源を見つけたら、流れに従って進め。最終的には誰かを見つけるだろう」

「迷うなら昼間にしろ。リーチで夜が来たらお前は足の折れたウサギ以外の何者でもなくなる」

「リーチの者に道なんか聞くな」

ハグレイヴンに遭遇したら
「お前の死を望むハグレイヴンに出くわしたら、できることはそれほどない」

「お前たちよそ者はみんな理解できないものを酷く恐れる。まるで暗闇を嫌がる子供のように。だが、もし生き延びることを強く求めるなら、とにかく逃げろ。ハグレイヴンはそれほど速く動けない。少なくとも、俺が見たやつはみんなそうだった」

「理由があってハグレイヴンがお前に目を付けたのなら、おそらくお前はそういう運命なんだろう」

熊から逃げるには
「幸運を祈る」

効果的な狩り
「狩る者と狩られる者の関係以上に神聖なものはない。そのつながりを尊重すれば、魚を突く時であれ、矢をつがえる時であれ、ハーシーンはお前の努力に微笑むだろう」

「もし、より強い動物がお前の仕留めた獲物を奪いに来たら、奪わせておくがいい。勝てない時を知っておけ」

「誰かが仕留めるのを手伝ってくれるなどとは期待するな。唯一の真の狩りの報酬は、自身の自立から得られる」

「狼の隙を確実に狙え」

食用の虫
「食べるために足元の虫をかき集める者を見下す奴は、明らかに苦境とは無縁の人生を送ってる」

「蟻をすり潰してペースト状にすると飲み下しやすくなる」

「何だろうが鮮やかすぎる色のやつは食うな。お前にとってもその虫にとっても、ろくな結果にならない」

婚約者たちからの手紙Letter from the Intended Couple

大族長カニアー様

申し訳ございません。あなたが達成されるよう願っていることが何なのかは分かっています。でも、私たちにはやり遂げられません。

エスリンとマデアルン

再び戦うために立つWe Rise to Fight Again

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

悲鳴が聞こえる
息をもらし
急襲を感じ
死を感じ
縫うように前進し
一団を抜ける
命を奪う
その手で

彼らは止まる?
さらに見える
彼らが来る
そして戦う
我らは固守する
血が滴る
たじろぎ
彼らの袋が満ちる

故に我らは裂け目に突き進む
鋭い戦いの声とともに
彼らがリーチの全てを奪い
クランの全てを殺すため
故に衝突は続く
血が地面を湿らせる
涙はもう枯れた
それでもまだ敵は来る

では狩ろう
全ての獲物を
人であれ
迷い犬であれ
安らぎはない
恐怖はない
彼らは
ここに来るだけ

彼らは止まる?
さらに見える
彼らが来る
そして戦う
我らは固守する
血が滴る
たじろぎ
彼らの袋が満ちる

故に我らは裂け目に突き進む
鋭い戦いの声とともに
彼らがリーチの全てを奪い
クランの全てを殺すため
故に衝突は続く
血が地面を湿らせる
涙はもう枯れた
それでもまだ敵は来る

我らは真の自然の姿で
再び戦うために立つ
全ての苦痛を叫ぶ
我らの敵は決して勝たない

そして我らは裂け目に突き進む
大いなる戦いの叫びと共に
彼らがリーチの全てを奪い
クランの全てを殺すため
けれど衝突はいつまでも続く
血が地面を湿らせる
涙はもう枯れ果てた
そしてまだ虐殺者が来る

深き墓にてIn the Deep Tombs

深き墓に入ってから今日で34日目。だと思う。

ボス・トレンロルが俺をここに投げ落とすとは信じられない。忠実な兵士だったのに!彼の要求は全てこなしたのに!まあ、「ほぼ」全てだが。

ボス・トレンロルにはむらっ気がある。一緒に笑っていたかと思うと次の瞬間には怒鳴りつけられる。死ぬ一歩手前まで殴っておきながら、その後自らの手で治癒の湿布を貼って、回復するまで一緒に座っている。それにかんしゃく持ちだ。金だろうが品物だろうが血だろうが、要求するものを相手が出さなかったら、俺と仲間に急襲させて何人かを見せしめにする。「群れを行儀よくさせるためだ」というのが口癖だ。

何人かは考え付く限りの恐ろしいやり方でただ殺す。残りは捕まえて深き墓に閉じ込める。ボス・トレンロルは常に、新鮮な血が自分の手に供給されることを好む。彼は何人かを狂血鬼に与えるのも好きだ。ちょっとした気晴らしのために。

とにかく、ボス・トレンロルにフレイレスの喉を裂けと言われたときは冗談だと思った。時々そういうことをする。忠実な従者をとんでもない残虐行為をすると言って脅す。ただ反応が見たいがために。この時は本気だったみたいだ、多分。喉を切り裂かずに笑ったら、まるで野生動物みたいに向かってきたからな。無茶苦茶殴ってきやがった。

気付いたら、数年来の友達や仲間の吸血鬼たちが俺をひきずって深き墓に入れるところだった。そして、俺が自分の手で投獄した定命の者の、すぐ横にある監房に俺を投げ入れた。屈辱的だった。1週間か2週間俺をここに入れておいたら、ボス・トレンロルは俺を出してくれるだろうと思った。教訓は学んだと。だがもう4(いや、5か?)週間にもなるし、俺は飢えてる。近くに血の臭いがする。ほとんど味もする!だが俺に血をくれる衛兵はいない。ほんの一口でさえ。

俺は忘れられたのだろうか。それとも俺を飢えさせて、野生化させることが前からの計画だったのだろうか。もしかしたら、離れると決心したカサドの考えは正しかったのかもしれない。彼がフレイレスを連れて行かなかったのには驚いたが、きっと戻るつもりなんだろう。だがもしそうしたら、俺と同じ結果になるだろう。

深き民の怖い話、第1巻Scary Tales of the Deep Folk, Book 1

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

親愛なる読者諸君。「怖い話」の新たな書へよく戻った。今日は謎めいた驚異の街、マルカルスの内
部から諸君に書き送ろう。絶滅したドワーフによってはるか昔に築かれたこの街は長く存在し続け、現在はなかなかの信望を集めるリーチの戦士、アルド・カダッチの元に団結した、リーチ部族の集団の本拠地となっている。アルド・カダッチはリーチの人々を一つの旗に集結させた、いとこのレオヴィック以来初の族長だ!

公明正大な作家による、解決も解明もされていない前作の物語の書物「ドルアダッチ山脈の怖い話」が大好評を博した後、この旅の物語の語り手は他ならぬアルド・カダッチその人からマルカルスの街に招待された。アルドは、「リーチは野蛮人だ」という印象(諸君の公明正大な作家は決して伝達するつもりなどなかった印象だ、もちろん!)を正し、我が指導者の全員に、リーチの人々にも全ての人々と同じように、壮大な文化と物語を伝える豊かな伝統があることを思い出させることを望んでおられる。

そこで、我が後援者たちと作家仲間の助言に反し、私はアルド・カダッチに会い、彼の民の長く語り継がれた物語を不滅のものとするため、長く危険に満ちた旅に出発した。
以下はつつましい作家によって初めて集められた、マルカルスのリーチの民による、リーチにおける奇妙で説明のつかない出来事に関する3つの物語だ。それではお気に入りの椅子に腰を落ち着け、ハチミツ酒を手にして、夜の暗闇にランターンを灯したなら読み進めたまえ。勇気があるなら、だが

* * *
暗き場所の魚人

最初の話は歴史の守り手を意味するリーチのヴァテシュランから聞いたものだ。彼女のクランはマルカルスの上にある山の中に、何十年も暮らしていたそうだ。彼女は言った。何年も昔、驚くほど人間にそっくりな生き物が、クランが暮らす場所の下にある洞窟に出入りしているのを見たという斥候からの報告があった。

最初、クランの者はそれをゴブリンだと思った。だがこのゴブリンには毛も目もなく、まるで魚のような生気のない灰色の肌をしていた。このクランが呼ぶところの「魚人」は決してキャンプに近づかず、その中にいるリーチの者を攻撃することも絶対になかった。だが、クランは明らかに忌まわしきものたちとの共存を拒んだ。

族長が戦闘部隊を結成し、彼らを率いて地下の洞窟の中に入っていった。彼らは魚人たちを追い出し、クランの縄張りを取り戻すことを固く決意していた。ところが、部隊が抵抗にあうことはなかった。洞窟中を探し回ったあとでさえもそうだった。戦闘部隊が結成されるほんの数時間前に、多数の魚人が洞窟に入ったと斥候が報告してきたにもかかわらず、彼らが洞窟の中で魚人の痕跡を見つけることは一切なかった。

その夜遅く、夜明け前の最も暗い時間に、最初の襲撃が行われた。数人のリーチの者が音もなく殺され、彼らの遺体が無残に晒され、他の者は完全に消滅していた。族長は再び最強の戦士を集め、クランを襲って殺害した魚人たちを根絶やしにするため洞窟に乗り込んだ。そして、今度も丸一日をかけた捜索で、見つかったものは空の洞窟だけだった。

その夜、クランは警戒状態を保っていたが、新たな襲撃はなかった。その後数週間にわたり、彼らは毎晩見張りを立てた。だが、さらなる襲撃は行われず、魚人たちを目撃することもなかった。一月以上が経ち、族長はついにクランの者たちに通常の見回りを再開することを許した。するとまさにその晩、魚人たちが再び襲撃した。今度は残された長老の遺体が山の上に吊るされ、さらにひどいことに子供たちが何人か跡形もなく姿を消してしまい、それきり行方不明になった。

またしても行われた卑怯な攻撃、そしてクランで最も弱い存在に対するとてつもなくむごい襲撃に憤った族長は、正義の怒りのために我を忘れた。彼女は魔女と呪術師を呼び集め、近くのクランから魔法の支援を受けた。彼らは次々にクランの地下洞窟を封じて行った。彼女は山中の傷を怒りと、魔法と、意志の力で崩壊させた。仕事を終えたとき、洞窟の中にあるのは砕けた岩だけだった。

クランはその後何ヶ月も警戒を解かなかったが、新たに攻撃されることもなく、魚人の姿が目撃されることもなかった。賢明な族長は洞窟を封じたが、十分に行われていない報復が今も彼女と彼女のクランを苦しめている。彼らは尋ねる。あの魚人たちは何者だったのか?如何にして洞窟の中で、見えないように隠れることができたのか?

深き民の怖い話、第2巻Scary Tales of the Deep Folk, Book 2

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

次の物語は宿屋〈川の恵み〉で会ったリーチの斥候、マルコルのものだ。彼は感動的な音楽と青春と悲劇の物語を伝えてくれた。若い斥候の物語を信じられるかどうか、親愛なる後援者の諸氏にはぜひお読みになって判断いただきたい!

* * *
山の下からの音楽

リーチの民の大部分は、大昔に消えたドワーフが残した、永遠の恐怖が付きまとう遺跡を忌避するが、例外もいる。マルコルとエサナという2人の若いリーチの斥候はある日、クランの誰も行きたがらない場所を探検しようと決めた。彼らは名を挙げるため、山の下にあるドワーフの遺跡に向かったのだ。こうして2人はいくつもドワーフ都市の奥深くへ進み、オートマトンやさらに凶悪な敵と戦って、勇気を証明しようとした。

こうしてドワーフ名は知られていないが、リーチの民がダークホロウと呼ぶある遺跡の深部を探検していた時、エサナが最初に山の下からの音楽を聞いた。マルコルは全力で耳を澄ませたが、何も聞こえなかった。しかしエサナは嵐のように大音響で音楽が聞こえると言い張った。彼女はどこにいても聞こえると言った。

エサナは何度もマルコルにその音楽を説明しようとした。それは真鍮の鳥が暗闇の中で奏でる歌、歯車と岩の交響曲、蒸気と炎の賛美歌、などだった。しかしエサナは山の下の音を辿り、マルコルも彼女に付き従ったが、2人ともこの謎めいた音楽の源を突き止められなかった。

マルコルが私に語ったところ、そのうちエサナは音楽に執着するようになり、マルコルと共にキャンプに戻った後も音楽を口ずさんだ。彼の話では、眠っている時もやめなかったという。彼女の口笛は美しいものではなかったが、奇妙に心に響き、今になってもマルコルはエサナの無味乾燥な口笛を頭から追い払えないという。

エサナは毎日ダークホロウへ行きたいと主張し、クランの斥候としての任務を放棄するようになった。そのうちクランのウィッチマザーがマルコルとエサナの2人にダークホロウへ行くことを禁じた。その次の日、ウィッチマザーの怒りを買いクランから追放される危険まで冒して、エサナは最後にもう一度ダークホロウへと向かった。

ウィッチマザーはマルコルがエサナを追うことを禁じたが、彼は禁を破った。幼馴染の友人は獲物を見つけるまで戻らないと確信していたからだ。マルコルはエサナが自分にしか聞こえない山の下の音楽を探して、正気を失うのではないかと恐れた。もう二度と帰れないほどの奥まで進んでしまうのではないかと。マルコルは遺跡の外でエサナの荷袋を見つけ、できる限り奥深くまで進んだ。

マルコルの捜索は悲劇に終わった。最終的に、彼が幼馴染のエサナに関して見つけたのは、ダークホロウの最深部に置かれた、笑顔が落書きしてある動物の皮だけだった。マルコルは悲しみに沈みながら、絵の意味を完璧に理解した。彼は悲痛な気分になった。

「見つけた」と落書きされた絵は言っていた。それはエサナが親友のために残した、最後のメッセージだったのだ。

それ以来、エサナの姿が見られることは二度となかった。

深き民の怖い話、第3巻Scary Tales of the Deep Folk, Book 3

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

マルカルスのリーチの民は謎と魔術に満ちた、数多くの暗く悲惨な物語を抱えている。その数があまりに多いので、一介の作家にはどの物語から記録すべきか判断が難しいほどだ。しかし夜中に火の側で語られ、私が聞くことを許可された全ての物語の中で、血を流す木の物語は最も不気味で奇妙な話だ。ご堪能あれ!

* * *
狩人と血を流す木

この物語は最も高齢のヴァテシュランの大半よりも古く、何世代にもわたってクランからクランへ受け継がれてきたもので、数多くのバージョンが存在するが、始まりは全て同じだ。あるリーチの狩人が昔々、暗い森の鹿に向けて矢を放った。しかしその時、何か他の動物が近くで小枝を折った。大きな音に驚いた鹿は飛び跳ねて駆け出し、狩人の矢は背の高い古木に突き刺さった。

逃げた夕食と運のなさを呪いながら、狩人は矢を回収に行った。しかし木のそばまで近づくと、彼はなんとも奇妙な光景に出会った。鋭く正確な彼の矢尻は、ねじれた高い木の皮を貫いて深く刺さっていた。その木の傷口から、輝く赤の液体がこんこんと流れ出ていたのである。

最初、狩人は樹液がこういう色をしているのに違いないと思った。しかし近づいて見れば見るほど、木は血を流しているのだと確信した。木の皮から流れる赤い液体を味見すると、その考えは確信に変わった。彼の矢を受けたこの木は、明るい色のしょっぱい血を流したのだ。狩人は困惑した。

真相を突き止めてやろうと決心した狩人は、ナイフを取り出して木を突き刺した。よく磨かれた鋭い骨の刃は、暖かい木の皮をいともたやすく貫いた。狩人が傷を付けるたび、そこからさらなる血が流れだし、なぜ木が血を流せるのかを理解できない狩人は何度も突き刺した。物語のあるバージョンで、狩人は木を傷つけたことに罪の意識を覚え、苦痛から解放してやろうと思った。別のバージョンでは、木の血を味見した狩人は怒りの発作を起こし、それまで感じたこともないほどの戦いの憤怒に駆られた。

理由は何であれ、物語のどのバージョンにおいても、狩人は傷口が無数に広がるまで木を刺し続けた。木の足元の血だまりはすぐに、彼の足首が浸るほどの深さになった。流すはずのない血を流し、死ぬ様子もないこの木に対する攻撃で疲れ果てた狩人は、矢を回収して立ち去った。クランを探して自分が見たものを知らせようと決心したのだ。狩人は自分の頭がおかしくなったのかどうかを知りたかった。

次の日、狩人とそのクランは血を流す木のあった場所まで戻ってきたが、そこに木はなかった。塩気を含んでいて不気味な、乾いた黒い血だまりだけが残っており、それが木々の葉の隙間に開いた穴から差し込む太陽光を吸い取っていた。昨日までこんな穴は絶対になかったと、狩人はクランに言った。

狩人の仲間たちは笑い、どうせ血は死にかけた動物のものだろうと言った。しかしその彼らでさえ、これほどの血だまりを作っておきながら死体も残さない動物など考えつかなかった。地面に痕跡は何もなく、体を押しつけた跡もなかった。ただ円形の、不気味な血だまりがあるだけだった。

時が経つにつれ、クランも木を傷つけた狩人も、この問題を気にかけなくなった。この事件はそのうちに焚火の側で話す物語に過ぎなくなった。狩人が奇妙な木を傷つけてから、ちょうど1年が経った。

その朝、狩人が朝食に姿を見せなかった後で、クランの他のメンバーたちはテントの中に彼を発見した。狩人の胸には本人の矢が突き刺さり、無数の刺し傷が体中につけられ、気味の悪い自らの血の海に横たわっていた。

しかしテントの中にも外にも足跡は見つからず、斥候の報告では前の日の夜にキャンプへ入った者も出た者もいなかった。クランの族長は不運を呪いつつ、狩人の死体とそのテントを燃やすよう命じた。彼を襲った森の霊魂か何かを鎮めようと思ったのだ。その後クランはこの区域を去り、荒野のこの部分に二度と戻ってこなかった。他の誰かが、また傷ついた木を見つけるのではないかと恐れて。

* * *
「怖い話」の最新巻はこれで終わりだ。しかし安心してほしい。リーチの民は私をサークルに招いてくれた数夜の間、実に数多くの「怖い話」を話してくれた。アルド・カダッチが明確に説明したように、リーチの民は蛮族や獣ではなく、他の民と同じ人間であり、多様で物語に富んだ口承の歴史を持っている。彼らの奇妙な国は、「怖い話」の宝庫なのだ!

改めて、多大なるご支援に感謝しよう。次巻も乞うご期待!

赤鷲の歌Red Eagle’s Song

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

思い出せ、思い出せ、リーチの子よ
ファオランの血塗られた物語を
思い出せ、思い出せ、リーチの子よ
赤鷲の最後の栄光を

鷲が甲高く彼の名を叫んだ
彼が母の胎内より立ちし時
血のヘラジカの目を持って生まれた
怒りはダイヤモンドの運命の兆し

諦めよ、諦めよ、ヘストラが来た
南生まれの白い石の塔のハグ
鉄の槍と盾の一団と共に
彼女は王の心臓を黒く変えた

季節が過ぎ彼は戦いに吠えた
帝国の娘と息子を殺して
だがリーチの者は矢と槍に倒れた
クランの友がいなくなるまで

ついに彼は自分の鷲の心臓で取引した
我々の力を欲しがるレイヴンと
彼らは胸にブライアの種を植えた
それは死体の花から育つ

数千が炎の剣に倒れた
血の太陽が昇り、沈むと
数百の矢に刺されたが
死を迎えるまで戦った

全ての者よ、ファオランの怒りを思い出せ
皆の心に住んでいる
聖なるリーチを欲しがる者は全て
我らの槍に苦しみ倒れる!

約束と警告A Promise and a Warning

この保管庫を守る者へ

闇の心臓と虚無に関する知識が、まだ私にとって役立つものだったことは幸運だったな。この書状の所持者は、遺言の中から私が興味ある節を書き写すことを許されなければならない。

約束しよう。従うなら、私がこの世界を作り直した暁には、お前のクランを素晴らしいものへと導こう。

警告する。私のペンターチが保管庫に入ることを拒んだ場合、または不当な害が及ぼされた場合は、定命の者たちでさえ涙するほどの、想像を超える苦しみを与えてやろう。

お前たちのレディは死んだ。この上うぬぼれを許容することはできない。

ラダ・アルサラン

抑制装置The Containment Apparatus

欠片を使って虚無のポータルを通り抜けるのは実に爽快だ!おかげでこの素晴らしい抑制装置がある古代の部屋に来ることができる。この機械が大きい虚無の欠片をどう使うか見てくれ。と言うよりも、クリスタルだ。これは、この穴、この現実の構造の裂け目からあふれ出る闇の力を何らかの形で利用している。これはある時点で凍結されたドワーフの実験の名残なのか?

クリスタルが回転させることによって力の焦点の役割を果たし、それを反射し、屈折させることに気づいた。装置はこの増幅を通じて動き始める。もしかしたら、力の穴を安定させるために調整できるかもしれない。引力は強力だが、制御を維持しなければならない。何か一つでも失敗したら、この力から逃れられなくなるだろう。

ペンターチ・シーヴェルネス

ハンツマン スタイル

クラフトモチーフ65
Huntsman Style

魔法使いウラキャナック 著 (コロール大学のジュノ・プロシラス翻訳)

狩人ハーシーンを崇める者は、ハンツマンの衣装と武器を身に着けるべきだ。ハンティング・グラウンドの槍、鞭、犬の姿をまとえ。ハンツマンが外見を真似ることでハーシーンの姿を呼び起こすように、我々はハンツマンを模倣することでハーシーンを称えよう。偉大な狩人を!彼の呪いでさえも祝福だ!私がそう言っているのだから、そうなのだ。

ブーツ

我々のブーツは動きやすい皮とフェルトで作られる。重装備の場合は釘を打つ。このブーツはハーシーンが狩人アルラベグの姿を取り、伝統的な毛布や狩り小屋の壁掛けに描写されているものと同じだ。最も価値ある獲物を見つけしアルラベグを称えよ!彼の名で踊れ!

ベルト

ハンツマンのベルトはマンモスやヒグマのように強力な獣の皮でできている。通常は毛皮や剛毛でなめされている。ハンティング・グラウンドは森と荒野の地だ。レンガと石の地ではない。そのため、ハーシーンと狩人は常に荒野をまとう。

ボイルドレザーのスカルキャップに、ハンツマンは倒れた獲物の枝角や角を加えた。狩人以上に獲物を尊重する者がいるだろうか?獣の姿をまとう時、我々はスキンシフターのストリーベグに近づき、それゆえに彼を称える。再び吠えよ。かかとを蹄のように踏み鳴らせ!

脚当て

強きハーシーン公のよりも積極的に動き回るデイドラ公がいるだろうか?愚かな過ちを冒す前に答えを教えよう。誰もいない!そのハンツマンも同様だ。ハンツマンを模倣しようとする我々も、素早く敏捷に動かなくてはならない。だから脚当てを最小限にするのだ。大雄鹿ウリカンベグが脚を覆っただろうか?いいや!素早き狐グリベグは?ウラキャナックは、この答えを自ら出すよう求める。

ハンツマンの弓は木、角、枝角、皮から作られる。獲物を追跡し、狩る者たちが使い慣れた武器だ。弓はハーシーンの狼の姿、ストリーベグを称えてリムが狼の頭蓋骨で装飾されている。ストリーベグのために吠えよ!

胸当て

ハンツマンの胴鎧としては、キュイールブイ革があればいい。最も獰猛な獲物に対してもだ。狩人に必要なのは、獣の牙や鉤爪、定命の者の短剣や剣をかわす素早さである。

獲物は首を落とすだけでなく、心臓を刺してとどめを刺さねばならない場合がある。その仕事のため、ハンツマンは剣を用いる。ハンツマンの剣は可能な限り鋭い鋼で鍛造されるが、クロスガードと柄は爪と革を巻かれた骨によるものだ。これは装飾よりも実用を重視している。

肩防具

ハンツマンは比較的軽装を好むが、良いポールドロンを装備して悪いことはない。この話は五世代のウィッチマンに伝えている!ポールドロンは良いものだ。さらに、角や釘を付ける場所がもう一つ増える。全てが素晴らしい。

手袋

革の腕甲はハンツマンの前腕を守る。手の甲から伸びているが、指は決して覆わない。素早い狐グリベグが自らの知恵を飾り、指を布で覆っただろうか?そんなことはない!

ハンツマンのカイトシールドは大きく、厚い皮は金属のように強いがより軽い。大雄鹿ウリカンベグの枝角の姿を模しており、本物の鹿の枝角も付いていて、ハートレザーの紐で装飾されている。武器で攻撃すれば、大雄鹿の蹄のような音がする!

我々の魔法使いの杖は先端に頭蓋骨と枝角による、ハーシーン公の大雄鹿の姿、ウリカンベグのトーテムが付いている。杖の底や爪の持ち手からは、集中を促す線が入っている。攻撃魔法は先端から、回復魔法は底から放たれるためだ。

戦棍

ハンツマンの戦棍は骨を砕く。ヘッドには重い金属に骨、角、枝角を付ける。必要なら致命的な一撃も与えられるが、通常は獲物の首を斧で切り落とす前に足を砕くため用いられる。戦棍を持てば、強大な熊フロッキベグの力が得られる!

短剣

ハーシーンの猟犬の大きなハンティングナイフは様々な用途に用いられる。「武器」はその一つでしかない。皮を剥ぎ、杭の目印に使い、網を手入れする。刃は片刃だが重い金属で鍛造され、刺突両面に使えるよう調整されている。これは賢い道具で、そのため素早い狐グリベグに捧げられている。

ハンツマンの斧は重い刃を持つ。その聖なる用途はただ一つ。這いつくばらせた獲物の首を切り落とすことだ。枝角で装飾された斧は大雄鹿ウリカンベグを呼び起こす。その蹄の音はブラッド・サモンズに鳴り響くのだ。大雄鹿のために足を踏み鳴らせ!

ブラッドフォージ スタイル

クラフトモチーフ54
Bloodforge Style

ハートストーンのストーンハート 著

クランの同胞よ、狩猟の父の名において、私が彼の狩人アルラベグとしての姿で呼ぶ者よ。我らブラッドルート・フォージで働く者の象徴を明確にする、この聖なる図を今受け止めよ。ブラッドフォージの鍛冶屋として、我らは憤怒と憎悪の金床の上にいるノルドをハンマーで打つ。全ての者がハーシーンの狩人に膝を折るまで。フェリボー!

ブーツ

革と飾り鋲、足の防護、蹴りと踏みつけ、攻撃では、獲物を追え、それから前へ。

ベルト

幅広きそのベルト、織り込み、たくましく取り囲む、バックルの幅、サッシュを締め、マンモスの皮革。

枝角が生じる、兜の天辺から、カスクは厚く、頭を抱く、敵が見る、敵は逃げた。

脚当て

蛇紋石、織り込み、鎧の正面、グリーヴ、前面のプレート、ふくらはぎに締める、ブーツの上。

強く反曲、簡素な弓、投げ矢を投げ、敵に向かえ、矢筒を震わせる、素早い矢で。

胸当て

ブラッドフォージの胸部、後ろで繋がれ、込み入り、織りと鋲留め、動きやすくせよ、狩りのため。

諸刃、長く強く、突く先端、切る刃、鋼の死、韻は踏まない。

肩防具

楕円のカップ、頂飾の曲線、金属のプレート、鋼が最高、血で鍛造、毛皮の縁飾り。

手袋

ガントレットといえども、指は自由、前腕が包まれ、筋肉を守る、狩人の手、掴み、切り落とす。

鍵穴の形状、ねじれる紐、真鍮のボス、あと5ラウンド、狩人よ称えよ、ハーシーン卿を。

魔法の杖、先端は角、鋭く輪がつく、力強き針、オークの柄、戦いの血。

戦棍

重い大槌、押しつぶす腕、獲物を叩く、致命的な損傷、真なる武器、ブラッドフォージの。

短剣

直刀で幅広、ガードと刃、柄の中子、ブラッドフォージ製、切って突く、狩人のナイフ。

斧を鍛造せよ、より正確に作業せよ、幅広きその刃、金銀線細工、柄を包め、革のように。

バンコライの伝承

Bangkorai Lore

グレンモリル・ウィルドThe Glenmoril Wyrd

タネスのレディ・シンナバー 著

タムリエルで、グレンモリル・ウィルドの魔女たちほど誤解されている者はいない。第一に、これまで彼女たちについての文献を執筆してきた学者が皆、男性だったのが原因であると私は思う。これはリルモスのキギョー師と、シャド・アツーラのバースト教授による革新的な著作物を完全に軽視しているわけではなく、単に彼らの客観性がその男性優位の文化的先入観によって影響を受け、次第に損なわれてきたということだ。

誤解のないように言うと、私が感情的にグレンモリル・ウィルドの姉妹を理解するに適しているのは私が女である事実のせいではない。それどころか、従来の性的役割における背景において客観的でいられるという能力は、著名な私の小論文「聖人で奴隷の女王:アレッシアとジェンダーの観点」で証明済みである。ゆえに、私はウィルド姉妹のような一方の性のための社会における問題に取り組む比類なき資質を持ち合わせていることになる。

グレンモリル・ウィルドは、自然と自然界を深く尊敬し、デイドラ崇拝に傾く魔女が集まった統制の緩い団体である。種族的には完全に人間だが、魔術結社によってはハグレイヴンやラミアなどの人間の混血もいて、彼女らは大抵自分たちの魔術結社を牛耳っている。彼女たちにとって野生の中で生きていくことは、大抵の場合、農業や牧畜を営む「文明人」の少数民族集団から遠く離れて位置することを意味する。それが彼女たちの本性が理解されない一因になっている。これが原因で、グレンモリルの魔女の魔術結社は、不気味、世捨て人、危険、有害、悪などの言葉で表されることが常なのだ。

実際に、グレンモリル・ウィルドには、これらすべての表現が当てはまった。ただし反論するが、悪だけは違う。彼女らが文明世界と文明の習わしを強固に拒み続けているのは事実であり、魔術結社に男性が入ることを一切認めないのも確かだ。また、自分たちのことを、「自然の法則」を施行する者と見なしているのも事実であるが、それを認めているのは彼女たちだけである。しかし、だからといって彼女たちが悪なのではなく、我々のものとは異なる道徳規範を厳格に守っているだけだ。

さらに、グレンモリルの魔術結社が男性を受け入れない状態で人口の維持を可能にしているように見える事実もまた、近接して住む人々が不信感を抱く対象となっている。ウィルドの姉妹は近所の農家から女児を盗むことで数を補充しているという古い中傷があるが、そのような慣習が立証されたことはない(ハイヤルマーチの沼地に住む悪名高き魔女については除くが、彼女らが崇拝するのはモラグ・バルで、子供の誘拐は彼女らの不快な習慣の中でも最もましなことだった)。大規模になりつつある私の研究によって、ほとんどの魔術結社に関しては、困窮した両親によって連れてこられた、望まれない女児を新規のメンバーとして獲得しているという結論が導き出された。(北部地域における望まれない男児はどうなるかという質問は、おそらく投げかけずにしておくのが最善だろう)

グレンモリル・ウィルドは数的に少数だが、地理的に最東は中央スカイリムのグリーンスプリング魔術結社から、最西はハイロックのイレッサン・ヒルズ魔術結社まで広範囲にわたる。8ほどある最も有名な魔術結社はハーシーンの信奉者だが、西ファルクリースにあるハグフェザー魔術結社はナミラをあがめ、マルカルスの姉妹(都会に住む唯一の魔術結社)はメエルーンズ・デイゴンを崇拝し、前述したハイヤルマーチの沼地に住む魔女たちは、モラグ・バルの信奉者である。

北部の未開地に住むもう一方の主要なデイドラ崇拝者であるリーチの民との関係は、魔術結社によって、そしてリーチの一族によって異なる。ハグフェザー魔術結社、ライムロック・ウィルド、そしてマルカルスの姉妹は皆リーチの民と友好的な関係を持っているが、イレッサン・ヒルズの西の魔術結社とビリジアン・ウッドは、何千年にも遡ってリーチ族たちと争っている歴史がある。これは、イレッサンとビリジアン・ウィルドが、ハーシーンのあまり野蛮でない側面を崇め、ライカンスロープを治癒することで知られている一方、リーチの民がハーシーンのより残忍な側面を好み、ライカンスロープを呪いよりもむしろ贈り物として称賛しているという事実によって説明されるかもしれない。

ということで、これこそが、広範囲に生息するが捕えどころのないグレンモリル・ウィルドの姉妹について分かっていることである。確かに、多くの疑問は未解決のままであるし、なされるべきさらなる研究も残っている。これらの問題に適切に取り組むには、タネスを出て北部の未開地へと個人的な探検に乗り出す必要さえあるかもしれない。ただし、このような価値ある学究的活動への資金援助を申し出る、気前のいい後援者がいればの話だが。

ハーシーンの姿Aspects of Lord Hircine

リーチの民の言い伝え、その5

コロール大学、ジュノ・プロシラス 著

以下は、自らを魔法使いウラキャナックと呼ぶ、ドルアダッチの呪術師による話を書き留めたものである。

「手の指のように、ハグレイヴンの爪のように、熊を殺す矢のように、ハーシーン王の姿は5つある。5つのどれにも出会う可能性はある。どれも真の姿であり、森の中の死である。どれも敬意を払うに値するものである」

「アルラベグと呼ばれる「狩人」に出会うかも知れない。彼は悲痛な慈愛の槍を身に付けている。ハンティング・グラウンドから、新しい獲物を狩るためにここへやって来るか、もともとハンティング・グラウンドにいるユニコーンなどの獲物を、新しい森で狩るために連れてくる。獲物を連れてきてない時に彼と出くわせば、ただでは済まない。野兎役に指名されてしまう可能性がある。そうなったら力の限り逃げるしかないが、逃げ切れはしない」

「ストリーベグと呼ばれる「獣男」に出会うかも知れない。狼の頭蓋骨のトーテムを身に付け、そのうなり声はまるでカース渓谷の地滑りのようだ。子供達のスキンシフターと一緒に狩りのためにやって来るか、新しく子供を養子にして生皮を剥ぐために来る。彼の遠吠えは、星霜の月の真夜中に池が凍るのと同じように体内を凍らせる。死が近づいてくるのが分かるが、逃げることはできない」

「ウリカンベグと呼ばれる「大雄鹿」に出会うかも知れない。そのひづめの音はブラッド・サモンズに鳴り響く。雌鹿と交尾をするためにやって来て、その目的のために魅力的な女性を変身させてしまうこともあれば、群れの中で弱った者を殺すこともある。彼のひづめの音が聞こえたら、群れと走る運命にあり、彼の後についてハンティング・グラウンドに行き、追い回された末に滅ぼされることになるだろう」

「グリベグと呼ばれる「素早い狐」に出会うかも知れない。彼は骨の杖を巧みに操る。定命の狩人達を当惑させるためにやって来て、円を描くように走らせた末で、極端に途方に暮れた状態にして、彼について崖や道のない泥沼を渡らせる。体を激情で満たし、彼を追い求めることしかできなくされてしまうか、彼に利口だと認められて技を教えてもらえるかも知れない」

「フロッキベグと呼ばれる「強大な熊」に出会うかも知れない。爪と牙のトーテムの化身であり、孤独、労働を離れた平穏、そして内なる燃える霊魂の更新を求めてやって来る。彼を刺激して平穏を乱すようなことをすれば、粉々にされてしまうので注意しなくてはいけない。しかし敬意を払って近づき、甘いハチミツ酒を捧げれば、次の戦闘時に熊の心臓の力を授けてくれるかも知れない」

「これらが5つの姿だ。これ以上はなく、あると言う者は無知で愚かな者だ。ウラキャナックがそう言うのだ。これまで私が間違っていたことがあるか?そう言ってるのだから、そうなのだ。ジュニパーの水薬をよこしてくれ」

バンコライ、ハイロックの盾Bangkorai, Shield of High Rock

(イーモンド王による兵士達に向けた最後の演説)

「聖ペリンの騎士、エバーモア衛兵、モウルノスとエフェサスの自由民による市民軍、バンコライの兵士達よ!我々は以前にも、東からの侵略者に対するブレトン王国の防衛の最前線である、ハイロックの盾となったことがあった。これまで幾度も、エバーモアとその周辺地域のブレトンは武器を手に取り、バンコライ峠に軍を配置し、我らが母国を略奪し荒らそうとした者達を追い返した。第一紀の874年、スルジュ戦士長のオークとゴブリンの軍が、レッドガードによってハンマーフェルから送り込まれた際には、通過を阻止して北東への撤退を余儀なくさせ、オルシニウムへたどり着くまで、重い足取りでドラゴンテール山地を通らせた。前哨戦を抜けて我らが母国に入れたゴブリンなど、一体もいなかった」

「そして1029年、女帝ヘストラの帝国軍が、ヴァーカースの吸血鬼であるストリキ王を退位させた際、王は恐ろしいグレイホストを率いて、周囲を火の海にして惨殺を繰り返しながら西へ撤退した。しかしそのコウモリ人間と狼の軍がバンコライ駐屯地に到着した時には、岩に砕け散る波のように倒れた。生存者はヘストラの帝国軍が捕獲して殺した。女帝は大いに感心したため、ハイロックに最初の帝国への加盟の名誉を与えた」

「ルビーの玉座の下でおよそ千年近くが経過した後、アレッシア教団の逸脱行為によって、ハイロックは最初の帝国からの脱退を余儀なくされたが、シロディールの僧兵はおとなしく手を引こうとはしなかった。2305年、修道院将軍プリスクス・マクテータの指揮の下、ブレトンを傘下に戻すべく慈悲と恩寵の帝国軍が送り込まれた。マクテータの狂信者達がフォールンウェイストを端から端まで埋め尽くしたが、バンコライ駐屯地を通ることはできず、信心深い者が気高い者と戦う5ヶ月間の包囲の末、修道院将軍は敗北を認め、面目を失ってシロディールに戻る他はなかった」

「駐屯地がハイロックを防御できなかったことは1度しかない。ダーコラクのリーチの民の大群が、ビョルサエの南岸になだれ込み、それまでいつも我々を守ってくれた北東の尖塔から流れ入った。そしてエバーモアが略奪され、要塞は裏側から襲われた。それでもなお、我々はハイロックのために十分な時間を稼ぎ、ブレトン王国は兵を集めることができ、結果的にはダガーフォールでダーコラクを撃退した」

「今日、東からの侵略者が、シロディールからの帝国軍という形で再び我々を脅かしている。しかし連中は女帝ヘストラの伝説に名高い帝国軍でもなければ、皇帝レマンのよく訓練された兵士達でもない。サルンの強奪者の、堕落した傭兵達だ。おまけにこの帝国軍は、まさしくあの堕落して信念を失った家族の親族が率いている!」

「魔導将軍セプティマ・サルンとは何者だ?追徴課税で自由民を苦しめる以外に、これまでに戦に勝利したことはあるのか?ただの寄せ集めで名前だけの「帝国軍」を、デイドラを崇拝する異端の方法で我々の母国に連れてくるとは、何のつもりなのだ?」

「私は連中をクズと呼ぶ。かつて高貴だった「帝国軍」という名前を汚す行為である。私は連中を暴徒と呼ぶ。そして、我々が壁を守っている限り、バンコライ駐屯地を通させはしないと確信している!」

「どうだろう、聖ペリンの騎士、エバーモア衛兵、モウルノスとエフェサスの自由民による市民軍、バンコライの兵士達よ!先祖の血を裏切って、敵を通してやるのか?あり得ない!今日も、明日も、この先も決してそんなことをさせてなるものか!」

ビリジアンのセンチネルThe Viridian Sentinel

しーっ。もう少し寝なさい。ビリジアンのセンチネルがいるかぎり、ここにはトロールは来ないから。

何だって?ビリジアンのセンチネルの話をまた聞きたいって?もちろんいいよ。さあ、枕に頭を休めてお聞き。

バンコライ北部の者なら、誰もがビリジアンのセンチネルについて知っている。センチネルは、野生のものすべてを森にとどめておくガーディアンだ。センチネルが監視をしている限り、トロール、熊、魔女と仲間の狼。どれも征服された土地には入らせない。そしてセンチネルはいつも監視を続けてくれる。

そんなビリジアンのセンチネルがいなかった時代があると知っていた?ずっとずっと遠い昔のこと。私達ブレトンはディレニのエルフから自由を勝ち取ったばかりで、エルフはまだ苦々しく思っていた。「さあ、お前達がハイロックと呼ぶこの地を所有するがいい」と彼らは言った。「すぐに手放すことになる。私達は塔のある島へ撤退する。アース・ボーンズとの協定を断ち、これらの土地は荒野に返すことになる」

エルフの話し方についていつもそうであるように、私達は彼らの意味したことを理解しておらず、ただ肩をすくませて、この土地を自分達のものにすべく働き始めた。畑を耕し、作物の種をまいた。草原には柵を立て、家畜用に牧草地を作った。道を作り、市場街を建設し、人々が互いに生産物や商品を売れるようにした。何事もうまくいっているように見えた。

しかし、森に最も近い農家で悪いことが起き始めた。軒の下に魔女達が潜み、森に近寄りすぎたブレトン達が森の影の中に消え去ったまま戻ってこないようになった。次第に農民達は森に近い畑を放置せざるをえなくなった。

事態はさらに悪化した。森の中から、恐ろしい生物や獣といった様々なものが、主に夜間だが時には昼間にも現れ始めた。それらの生物は農場をうろつき、農家の家族を脅かし、可能ならば殺しさえした。農民の多くは「荒野から来たあんな生物には太刀打ちできない。さあ、農場を去って街に行こう」と言った。

しかし彼らが街に到着すると、農民にできる仕事は見つからなかった。さらに悪いことに、農民達が街に食料を送り出さなくなったので、食べるものはほとんどないに等しかった。街の住民達は農場を放棄した農民達を責め、農民達は武装した番人を送ってくれなかった街の住民達を責めた。どうすればいいのか、意見をまとめられる者はいなかった。

農家の子供でグリーンワードという名の青年は、とても心配していた。礼拝堂に行って真剣にステンダールに祈りを捧げた。「慈悲と保護の力を持つ高潔な神よ、私達はひどい窮地に立たされており、あなたの助けを必要としています。荒野の獣たちが解き放たれ、私達の土地は荒れた地に戻りかけています。じきに、規律と調和を重んじる定命の者が住める場所はなくなってしまいます。私達自身も獣になってしまい、名前を忘れ、神々に背を向けることになってしまわないかと心配なのです。神よ、どうしたらいいか、どうぞ助言をお与えください」

するとカワセミが礼拝堂に飛び込み、グリーンワードの前にある祭壇に止まった。とても大きなカワセミで、青年がそれまで見たことがないほどだった。カワセミは頭を上に向けると、口笛を吹くようにさえずって、くちばしを鳴らした。グリーンワードには、そのさえずりとくちばしの音に混ざって、話し声が聞こえるようだった。「獣が荒野から出てきたのは、あなた達の名前を忘れ、殺すことが認められている同じ獣だと思い込んでいるからだ。誰かが荒野に入り、獣達に対して、自分には名前があり、征服された土地は没収されたのだと伝えなくてはならない」。その後カワセミは鳥らしくそこを汚してから飛び去った。

青年はお辞儀をして言った。「家族と、征服された土地にいる他の家族のために、私がやります」。彼は父を抱きしめ、母にキスをすると、街を出て荒野の端へ戻った。そこで凶暴な虎と出くわし、虎は彼に襲いかかりそうになったが、青年はこう言った。「名前があって獣ではない自分を襲うことは認められていない。名前はグリーンワード。この土地は征服された土地であると宣言する。荒野に戻って二度とここへは来るな」

するとどうなったと思う?凶暴な虎は言われたとおりにした。植えた狼も、よろよろ歩く熊も、恐ろしいトロールも、危険なスプリガンも、すべて荒野に戻り、それ以上征服された土地には来なくなった。

これをやり終えた時、青年は務めを果たし、家族の元に戻れると思ったが、そうではなかった。荒野から新しい獣が現れる度に、境界線で教えてやらなければいけなかったのだ。そのため、それから青年は森の近くに住み、荒野の端へ歩いて行って、獣に名前を伝えて送り返すようになった。そして人々は彼をビリジアンのセンチネルと呼んだ。

時は流れ、そのうちビリジアンのセンチネルはかなりの高齢になり、やがて境界線へ歩いて行けなくなるかも知れないと思い始めた。彼は心配になった。しかし、鳥から話を聞いたという1人の少女が現れ、それからは2人で一緒に境界線へ行くようになった。そしてついにセンチネルが亡くなり、彼の名前が魂と共にエセリウスへ行くと、少女が新しいビリジアンのセンチネルになり、征服された土地の安全は保たれた。

それ以来これはずっと続いている。この先も続くはずだ。

フォールン・グロットの伝説The Legend of Fallen Grotto

遠い昔、7人の息子と7人の娘を持つ男がバンコライに住んでいた。家族の住まいは、森の外れにある、奥深くまで続く曲がりくねった洞窟の中にあった。

周囲を取り囲む森は、熊、狼、アナグマ、鹿など、ありとあらゆる種類の生物であふれていた。大家族ではあったが、獲物は豊富にいて狩りも楽だったため、空腹とは無縁だった。

「ハーシーンの祝福に感謝しなくては」と男は言った。

そして狩りの神を祭った祠を家の中に建て、ハーシーンに祈りを捧げることにした。洞窟の壁には動物の脂肪と土を混ぜたものを塗った。子供達が狩った鹿から枝角を取って祭壇を作り、妻は皮を編んで敷物を作り、土の地面を覆った。

祠が完成すると、男のその家族は獣脂のキャンドルを灯し、雄牛をあぶり焼きにし、祈りの言葉を唱えながら雄牛の血を祭壇に注いだ。

すると突然、笑い声が聞こえ、雄牛の死に際の鳴き声とその焼かれた肉の匂いに誘われたハーシーンが、彼らの目の前に現れたのだった。

「上出来だ!」とハーシーンは大股で歩み寄りながら大声を上げた。何重もの動物の革に身を包んでいたが、足元は裸足だった。

「私はあなたの忠実なるしもべです」と男は神の前にひれ伏しながら言った。

「信仰心の証明として」ハーシーンは言った。「7人の息子と7人の娘を送り出すがいい。夜明けから夕暮れ、そして夜明けまで、私が満足するまで狩りの獲物にしよう」

男は恐怖で後ずさりした。「そんなことできません!」男は言った。「他のものなら構いませんが、子供達だけはご勘弁を!」

ハーシーンは目をしかめ、洞窟の天井に向けて片手を上げた。そしてもう一方の手で地面を指した。ハーシーンが叫び声を上げると、壁が内側へ崩れ、祠と男の家は破壊された。

捧げ物から上がる煙のように塵が舞い上がり、がれきの中から16体の森のトロールがドシンドシンと頼りなさげに現れ、よろめきながら洞穴から森の中へと入っていった。

ハーシーンが冷たく言った。「獣にするにも値しなかったが、どうせだから狩りをするとしよう」

ライカンスロープ症と生きるLiving with Lycanthropy

時代を超えて、「ウェアウルフ」という言葉を聞く時、それは恐怖と嫌悪からくる叫びだった。しかしこれからは、必ずしもそうではない。セイニーズ・ルピナスに苦しんでいても、生産性のある平穏な暮らしを送ることは可能だとタムリエルに証明するのだ。

掟:暴力的な行動をしたくなる衝動を抑える

社会から遠ざかることで、このシンプルな掟を毎日の生活に適用する方法を学べる。私達の苦境を理解できない者に対して報復するという、野生の願望に負けてはいけない。他者を単なる娯楽目的で殺すべきではない。ハーシーンは私達に、優れた戦闘能力と、普通の人間を超える強さを与えて下さった。この祝福を、他者を傷つけるために利用してはならない。代わりに、他者にも恩恵があるように使わなくてはならない。狩りはやりがいのある趣味にもなり、恩人に感謝する方法にもなる。しかし人間であれ獣であれ、他者を苦しめる方法であってはいけない。

この祝福は、祝福であって呪いではない。おかげで重い荷物を運ぶことができ、疲労することなく長距離を移動できる。このため、旅の商人に向いており、あらゆる種類の肉体労働にも向いている。継続して自制を見せ、他者に暴力を振るわず、空腹感によって殺す衝動に駆られないと証明することで、自分達と家族に敬意を払うことができる。

ハーシーンの祝福に忠実であり続け、ウェアウルフも穏やかでいられると示すことは、私達の務めである。

狩りへの出立The Posting of the Hunt

いかなる者にも人前で言わせてはならない。狩りが中止されてないことも、儀式の宣言がされたことも、古代の務めの存在についても。

純潔な獲物の儀式は、グレートハントとも呼ばれる。この世界を包み込む強力なマジカの流れから魔法のエネルギーを引き込む、古代の儀式である。儀式の作成者と時期については遠い昔に忘れ去られた。しかし正しく行えば、儀式はハンツマンに強大な力と威厳をもたらす。

儀式では、上級犬と下級犬を連れた全能のハンツマンを、定命の生物である人類の狩りにちなんで伝統的に「野兎」と呼ばれる、哀れで不幸な純潔の獲物と戦わせる。ハンツマンは即座にその能力がもたらす強烈なスリルと栄光、そして無力な獲物に対する支配力で満たされ、それと同時に、純潔な獲物の悲劇的で崇高な、究極的に無益な苦境に心を動かされる。儀式のこれ以上になく美的な実現の中で、殺しによって我を忘れる歓喜は、純潔な獲物が抱く悲しみと絶望をハンツマンが認識することによって釣り合いが保たれる。純潔な「野兎」の死体が小さく切り裂かれる中で、ハンツマンは力の悲劇的な不均衡について、そして世界における残酷な不公平について思いを巡らせる。

狩りが始まると、下級犬は緑のクリスタルが映し出す純潔な獲物の礼拝堂の前に集合する。礼拝堂の中では、ハンツマン、上級犬、そして狩りの王が儀式を執り行い、ハンツマン、ハント、そして純潔な獲物を参加者として清める。次に、ハンツマンは礼拝堂から出て、悲痛な慈愛の槍を掲げ、「狩りの務め」を読み上げる。そこには狩りの4段階、すなわち、さらい、追跡、合図、検分における掟と条件が説明されている。

第1段階:さらい。下級犬が地面をさらい、隠れている「野兎」を外に出す。

第2段階:追跡。上級犬が「野兎」を見える所へ狩り出す。

第3段階:合図。上級犬が「野兎」を罠にかけ、仕留めるために漁師を呼ぶ。

第4段階:検分。ハンツマンは儀式で使う悲痛な慈愛の槍を使って仕留め、街の鐘を鳴らして狩りの王を呼び、見てもらう。次に狩りの王は、狩りで悲痛な慈愛の槍を巧みに使った、勇敢なる猟師に報酬を授ける。狩りの王はさらに勇敢なるハンツマンに、次の狩りにおける「野兎」を指名するように要求する(勇敢なるハンツマン自身は次の狩りに参加するとは限らない)。

勇敢なるハンツマン、狩りの王、猟犬が厳粛に守らなくてはいけない「狩りの務め」には、狩りの手法と条件が詳細に記述されている。これらの手法と条件は掟とも呼ばれ、狩りにまつわる詳細がすべて具体的に定められている。例えば、参加できる各種猟犬の数、悲痛な慈愛の槍を使う際の方法などである。さらに掟では、たとえわずかであれ、「野兎」には現実的に狩りから逃げられるチャンスがなくてはならないと定めている。実際には、デイドラの儀式の聖堂に集めると、野兎が狩りから離れた場所へ転移できる、すなわち猟師と槍から逃れられる鍵が6つ用意されているという条件で満たされる。当然ながら、「野兎」が実際に鍵を発見して逃避することは起こりえないが、その形式は守られなくてはならず、鍵に細工をしたり、「野兎」が鍵を発見または使用できる本来のチャンスを削いだりする行為は、恥ずべきものであり、狩りの掟に対する許されざる裏切り行為である。

真のホーリン伝説 パート1The True-Told Tale of Hallin, Pt. 1

「若きファハラジャード王子へ伝えられた物語の歴史」より

おお王子よ、ではお話しよう。ラ・ガーダがたちまちハンマーフェル中に広がって牙の民を追いやり、かつてヨクダ人であった人々が剣を捨て、代わりにシャベルとこてを拾い上げるやいなや平和が生まれた。三世代の間レッドガードは地を掘り、偉大な建造物を数多く砂漠の上に建立した。また、我らが民は皆、その偉大さを称える記念碑を建設していたために、剣の道の研究を行う者はほとんどいなかった。

今のアリクル東部、そしてバンコライの峠の南部に、立派であり続けるオジュワ女王によって見事な街が建設され、すべて白い石と縦溝掘りの柱に彩られたその街の名は、非常に高名な女王のその名にちなんで、オジュワンブと名付けられた。その道々と広大な大通りには、商業的かつ創造的なすべての芸術を扱った家や集会所がたくさん見られた。人々は洗練された服に身を包み、輝く宝石で自らを飾り立てて通りをうろつき、美味しいものを食べ、活気ある曲や心静まる曲を聴いた。そして、それについてはすべて、心地よいものであった。

壁によって光が遮られた、取るに足らない街角に立つ「戦いの美徳の間」では、アンセイ最後の戦士、ホーリン師が、剣の道に関心を持ったオジュワンブの若者たちにそれを教えていた。そんな若者は少ししかいなく、同輩から冷やかしや冷酷なからかいを受けたりしたが、それでも彼らは年老いたホーリンから刺激を受け、レッドガードの真の戦士となるまで剣の道を学んだ。後にお分かりいただくように、申し分のない戦士になった。

「竜の尾」という山岳地帯にて未だ潜伏する牙の民が、レッドガードに対する怒りの不満を大げさに示すがごとく、そのぼろぼろになった衣服を引き裂いていた。その中に、謀略によってディヴァドの呪いを逃れたために減退していなかった、ゴブリンの偉大なる領主がいた。悪賢さと活力の両方を備えていたこの巨大なゴブリンは、部族の中で長い間働き、ある日竜の尾にいるすべての牙の民の領主となっていることに気がついた。彼の名は石拳のマーグズールといった。そういうわけでマーグズールは、偉大な剣「骨切り」を掲げて地震のような力強い声で吠え、復讐の日はついにそこまで来ていると宣言した。

それからマーグズールは、竜の尾から「直立軍」を率いて大きな砂嵐のようにハンマーフェルへと殺到したが、その前に立ちはだかる者は誰もいなかった。フォールン・ウェイストの人々は、牙の民の怒りを前に逃げまどい、街が溢れ返るまで、実に多くの者がオジュワンブの壁の向こうに避難した。苦悩と不安の中、市民は泣き叫び、「ああ、オジュワ女王よ。我々のために一体誰が戦うのか?我々は皆、職人に、そして喜びを作る者になってしまった。今や剣の道を忘れてしまったのだ」と嘆いた。

すると、オジュワ女王は民に話しかけ、「剣の道を覚えている者は誰もいないのか?」と言った。そこで、ホーリン師が名乗り出て、女王の前でお辞儀をするとこう言った。「女王様、私はアンセイ最後の戦士です。少なくとも自分が心得ているだけの剣の道を覚えております。できる限りのことをいたしましょう」

それから、ホーリンの弟子たちも前に進み、女王の足元に剣を置いた。しかし、非常に高名なオジュワは、剣の数があまりに少ないことに失望し、取り乱してこう言った。「そのように少ない剣でどうやって直立軍を撃退することができるのか?牙の民は砂漠の砂のように無数にいるのだぞ」

ホーリンはそれでも決して思いとどまることなく、大胆に、「偉大なる陛下よ、ご安心ください。あなたの民はレッドガードです。剣の道を容易に思い出すでしょう。剣の柄をいま一度手に取れば、円環の書からもう一度格言を学び、敵が無数であろうと、全世界のどの民にも匹敵するでしょう」と言った。

「アンセイの師よ、そのようになさい」と、オジュワ女王は答えた。「しかし、レッドガードといえども、剣の道を習得するには時間を要する。しかし我々には時間がない」

「それなら、もっと時間を作りましょう。十分な時間を与えるのが我が任務です。それは我が人生において、最高の仕事となりましょう。オンシのまばゆい刀剣にかけて、与えることを誓います」そして、彼は女王の目の前で剣を引き抜き、剣の仲間への誓いをかけた。驚くべきことに、ホーリンの背丈は巨人の背丈になった。剣の鋭い刃は輝く光になり、皆は注視できなかった。

そのうちに視力が戻った彼らが目にしたのは、いつものホーリン師が、微笑みながら剣を鞘に収める姿であった。すると、アンセイ最後の戦士は、まるでオジュワンブの全市民を抱擁するかのように両手を掲げて言った。「レッドガードの仲間たちよ。私は君たちに、長きに渡って守ってきた円環の書の知識を伝授しよう。どんな脅威であれ対処できるであろう。我が弟子たちが君たちに知識を教えれば、皆が剣の道をもう一度理解するだろう」

それから彼はオジュワ女王に振り向いて言った。「さあ、民を導いてください。偉大なる女王よ。それはあなたにしかできない仕事です。彼らを西へ連れて行き、ハンマーフェルは自ら直立軍との戦いの準備を整えられると、剣の道の評判を広めるのです。私はこの街にとどまり、人々が自らのために戦う準備が整うまで、他のアンセイと共にできるかぎり防衛しましょう」

真のホーリン伝説 パート2The True-Told Tale of Hallin, Pt 2

ホーリン師の言葉をそのまま信じたオジュワ女王は、直ちに兵士に命令し、円環の書からの教練を毎日行わせながらも、アリクルへと向けて西へと進軍させた。ただし、オジュワ女王が行ったのはこれだけではなかった。フクロウの仲間である賢明な女王は、すべてのフクロウに敬意を払い、殺してはいけないと法令で定めていた。そのお返しに、フクロウも女王の願いを叶えていた。だから女王はフクロウの父を呼び出し、オジュワンブで待機してホーリンの防御を見守るように頼んだ。女王は、「街全体を1人の男がどうやって守るのかを知りたい」と言った。

アリクルへ続く秘密の道を進むため、最後尾にいたオジュワンブの人々が門から出たと同時に、東に牙の民の斥候が現れたが、ホーリンはそれに気がついた。なぜなら、彼は年老いてはいたが、その目は鋭かったのだ。

聞いていたのはフクロウの父以外にはいなかったが、ホーリンは言った。「蛇が脱皮をするように、アンセイは過去の殻から新たに現れよう」彼は剣を掲げ、「同胞よ!人々の救援を求める。時が終わるとしたら、その時は今なのだ」と叫んだ。

彼が剣を左に指し示すと、胸壁に沿って北のほうで、蛇皮のようなカサカサという音がした。すると驚いたことに、胸壁沿いに兵士の集団の影ができた。そこには、かつては皆アンセイの女であったらしき者たちが立っていて、ホーリンの方を向いて敬礼をした。ホーリンが右に同じような身振りをすると、胸壁に沿って南のほうで、カサカサという音がした。すると驚いたことに、かつては皆アンセイの男であったらしき者たちがそこに現れ、同様にホーリンに向かって敬礼をした。それから、北と南のすべての者は、輝く剣を抜き、胸壁の上で立って待ち構えた。

牙の民の斥候は、オジュワンブの防衛を観察しようと、直ちに立ち止まった。街の人々が剣の道を忘れてしまったと聞いていた彼らは、胸壁に相当な数の戦士がずらりと並んでいるのを見て驚いた。そして、誰がマーグズール戦士長へこの知らせを届けるかについての相談がなされたが、そのような知らせを伝える者は首を切り落とされるだろうと恐れたために、彼らは口論になり、言い逃れをすることとなった。しかし、最終的には一番小さな者が、心の打撃を受けながらも戦士長への報告を持ち帰った。

そのようにして斥候は、マーグズールに、オジュワンブの壁には奇妙なことに、相当数の防衛にあたる戦士がいると報告した。石拳は瞬く間に斥候の首を打ち落としたが、悪質さも活力も備わっている彼は、よく考えた。そして彼は、「だからどうだというのだ?我々は砂漠の砂ほど無数にいる。このオジュワンブを取り囲んで、入口も出口も離れない。彼らの畑を荒らし、物資の流れを止めて、誰も飲まず食わずにさせるのだ。さすれば、街は陥落しよう」と考えた。

そしてマーグズールは命令を下し、それは実行された。牙の民は外塁の戦利品で暇をつぶし、壁を防衛する戦士たちに罵声を浴びせ、彼らを愚弄した。しかし、戦士たちは何も応じなかった。捕虜を虐待して最低な楽しみ方で時間を過ごしていたマーグズールとその部隊は、オジュワンブの防衛者たちが衰弱し、その数が減少するのも時間の問題であると確信していた。

だが、そうではなかった。戦士長の骨計数機による計算が、市内の食料や飲料の底がついたと示しても、戦士たちはじっと立ち、屈強な様子で、黙っていた。そこでマーグズールは呪術師を招集し、「呪術師よ!我々はレッドガードにばかにされているのか?我々が見ている戦士は、実際に胸壁に並んでいるのか?それとも、ただの影なのか?」と言った。

それで、呪術師たちは前兆を占い、双子の乳児をいけにえに捧げ、東門へ偵察を送ったが、ホーリンはそれを上から槍で突いた。彼らは戻り、こう言った。「いいえ、偉大なるマーグズール様。我々はばかにされてなどおりません。我々が目にしているのは、確かに胸壁に並んだ相当数の戦士です。しかし、いかにして飲まず食わずで立っていられるのかは、私どもにはわかりません」

マーグズールはほんの一瞬で呪術師たちの首を打ち落とし、それから血まみれの「骨切り」を掲げて叫んだ。「戦闘準備だ!隊列を作れ!今夜我らはオジュワンブの血を飲むのだ!」

その戦いを生き延び、話を語るレッドガードは誰もいなかった。しかしそれでも、フクロウの父によって伝えられたために、賢明なオジュワ女王はその事実をすべて知ることとなった。まさに17日もの間、ホーリンとそのアンセイの戦士たちがいかにして攻撃に耐えたかが伝えられた。戦士の数はかなり多かったが、それでも時間と共にアンセイの戦士は減少した。ただし、彼らは蛇皮へと変わるように、殻のみを残して逝った。最後には、東門に立つ者はホーリンだけとなり、「骨切り」を振り上げたマーグズール戦士長が門を押し開けた。すると、ホーリンの体は戦士長に匹敵するほど拡大したように見え、どちらも剣の戦いへと突入した。

長きにわたって剣はぶつかり合ったが、月が昇ると石拳はついに、ホーリンを地面に叩きつける強打を放った。しかし、ホーリンを倒したと同時に、円環の書のありとあらゆる切り込みと突きを心得たホーリンは、剣を振ってマーグズール武将の首を切り落とした。それから両者とも死に果てたが、その死に顔に微笑みと平穏な表情を浮かべていたのは、1人であった。

オジュワ女王はこの知らせを聞きながらうなずき、「それはよろしい」と言った。そして、円環の書のありとあらゆる切り込みと突きを心得たレッドガードの戦士による大軍隊の方を向き、言った。「レッドガードよ!今こそ牙の民から我らの地を取り戻すため、進撃するのだ。もう一度我らの壮麗な街を取り戻したら、それをホーリンズ・スタンドと新しく名付けよう。その日はきっと訪れるであろう」

そのようにして、街の名は、その後ずっとホーリンズ・スタンドと呼ばれている。

野蛮人と獣の生活A Life Barbaric and Brutal

アーセナイス・ベロック 著

第一章:リーチの民による拉致

私は、エバーモアからビョルサエを北へ行った、マルシエン村で生まれた。母は織工で、父は、川貿易用の小さな漁船やコラクル舟を作る船大工だった。少年時代は、父が働く港で遊んだり、森の近くでイッポンシメジのかさやクルミを隅々まで探したりと、幸せだったことを覚えている。

それはある日、後者の遊びをしていた時だったが、私はいつもより村から少し離れて道に迷い、ブライアの茂みに入り込んでしまった。すると突然、いつの間にか気がつくと、1対の人間の頭蓋骨をじっと見つめていた。自分が見ていたものが、杖に乗った頭蓋骨と、その隣にあった頭蓋骨のような模様を描いた女の顔だということに気がついた時には、打ちのめされて縛られ、女の肩に担がれていた。

家から離れ、北へと連れていかれた先は山の中だった。蹴ったり叫んだりし始めると女は私を投げおろし、さらにきつく縛って、おまけに猿ぐつわをかませた。それから女はまた、辺境へと私を運んでいった。結局私は、極度の疲労で気絶した。

目が覚めると辺りは暗かったが、火明かりのゆらめきのおかげで、ぼんやりと物影を見ることはできた。それは、角や骨、そしてくぎや羽毛を身につけた人影だった。リーチの民だ。私は目を閉じて、目覚めようとしたが、それは悪夢ではなかったのだ。目を開けると、彼らはまだそこにいた。

猿ぐつわは外されていたので、水が欲しいと叫ぶと、頭蓋骨顔の女(後にヴォアンシェという名だと知る)が、コップに入れた水を持ってきてくれた。女は縄を確認したが、私が痛みにたじろいだ部分を、実際に少し緩めてくれたのだ。これに私は驚いた。リーチ族は未開人で、残虐行為にふける意地悪なデイドラ崇拝者であるといつも聞かされていたからだ。もしかすると、私がどれほど苦しんでいたかを知れば、解放され家に帰されていたかもしれない。

だがそれは、空頼みだった。私はそのまま、8年間もクロウワイフ・クランの捕虜にされたのだ。リーチの民は、故郷のブレトンで信じ込まされたよりもはるかに複雑で、理解し難かったが、1つだけ間違っていないことがあった。それは、リーチにおいて野蛮な行為と残酷さは、ごく当たり前の日常だったことだ。ヴォアンシェは馬飼いで、前の奴隷が頭を蹴られて死んで以来、馬の世話をする奴隷が必要だったため、私を拉致したのだった。彼女が私に水を与え、縄を緩めたのは、新しい所有物の状態を心配しただけに過ぎなかった。

ヴォアンシェのクランは、クロアブドラというハグレイヴンが牛耳っていたが、かぎつめのような爪をしたこのしなびた婆は、かなりの権力を持った女呪術師だった。彼女は、デイドラの霊魂ナミラという、クモや虫、ナメクジや大蛇といった不快な害獣を制する古代の闇の淑女に仕える女司祭だった。ナミラは有害な小動物の支配者だったので、リーチの民は彼女を「子供の神」と呼んだ(ユーモアがないわけではなかったが、彼らの冗談はいつでも悪意あるものであった)。双子月の闇の度に、クロアブドラはリーチも奴隷も含む一族の子供を抽選で無作為に選び、闇の女神へのいけにえにした。選ばれた子供は、「いつもにじみ出る祭壇」に連れて行かれ、ナミラへの供物としてその心臓を切り離された。いつも自分が選ばれると思っていたが、羽が引かれると、そこに書かれた名前は、いつでも他の子供の名前だった。

クロアブドラの醜い夫は、コインスサックという無作法で暴力的な男だった。彼は墓の歌い手で、死体を意のままにする呪術師だったが、それを私の国では死霊術師と呼んだ。彼はいつも、焼いた鳥肉を見るかのようにヴォアンシェを横目で見ながら唇をなめていた。彼は一族で権力があったし皆に恐れられていたが、ヴォアンシェは高慢な態度で接したため、それは時にコインスサックを怒らせることとなり、夜にテントへ嘲笑する幽霊を送り込まれたり、馬の肥料にライスワームで呪いをかけられたりした。ヴォアンシェはまったく動じず、彼の醜い妻クロアブドラに苦情を出すぞとコインスサックを脅して、いつでも追い払っていた。

リーチでの生活は大変だった。クロウワイフは狩猟クランだったため、荒野の至る所で群れを追いまわすのが私たちの生活だった。それは厳しく危険な暮らしで、大牡鹿の枝角や、サーベルキャットの牙で一瞬にして生命が奪われてもおかしくないような日々だった。しかし、私が最も恐れていたのは、半年ごとにある、ツンドラの群れの後を追ってカース川を横断することだった。私の仕事は、ヴォアンシェとその役立たずの娘が、氷のように冷たい過流を馬に泳いで渡らせるのを手伝うことだったが、毎回これが最後だと、そう思っていた。カース川に捕らえられる度に、2人の兄弟たちのようにビョルサエで水泳を習っていたらと、どれほど願ったことだろうか。

時折、横断の途中で馬がパニックに陥り私たちの手を離れたが、それは大抵、溺れて死ぬことを意味していた。ヴォアンシェと私は馬の死体が打ち上げられている場所が見つかるまで、はるか下流を捜索した。それは馬の皮をはいで、貴重な脂肪や肉、そして骨を手に入れるために死体を解体するためだった。リーチの民の間で、無駄になるものは何もなかったのだ。

カラス妻の奴隷になって6回目の夏(なんと、大嫌いなカースを11回も渡っていた!)、クロアブドラとコインスサックの無礼な息子、アイオックノールに注目され始め、私は迷惑していた。彼はその注目を、私を泥の水たまりに落としたり、シチューにネズミを入れるという形で表現した。アイオックノールは私よりも1歳年下だったが、彼が私を悪ふざけの対象以上の存在にしたがっていることはすぐにわかった。彼はハグレイヴンの息子として、罰を受けることなくやりたいことは大体何でもできたし、ヴォアンシェはクロアブドラに苦情を言って私を守ることはできなかった。横暴な老女はゲラゲラ笑い、手を振って追い払うだけだった。

だから、毛皮の山で寝ているべきはずの夜、私は槍を作り始めた。

スキンチェンジャー スタイル

クラフトモチーフ26
Skinchanger Style

魔法使いウラキャナック 著

お前は北の森に住み、自らも荒野に住んでいるだろうか?ハーシーンを狩人アルラベグの姿で崇拝しているだろうか。それとも、スキンチェンジャーのストリーベグの姿で崇拝しているだろうか?血の獲物を探すために解き放つべく、内なる獣を探しているだろうか?それなら、自身の腕と防具に語らせるべきだ。なぜなら、お前は時々唸り声でしか語れなくなるから。獣人よ、聞くがいい。

ブーツ

ブーツは皮をなめし、厚く油をしっかりと差す。これは川や沼を越えて獲物を追うかもしれないためだ。靴底は厚く隆起させること。足元がおぼつかない場所かもしれない。最高の狩人でも、滑って転べば獲物になる。

ベルト

ベルトは獲物の皮から作れる。なめして細工し、歯を飾る。噛みつかれることを恐れないと示すためだ。そして、ベルトは広い方がいい。獲物が追い詰められた時、腹を噛まれないように厚い皮で覆うべきだ。

獣に見つめられた時、彼らは別の獣が見返しているように感じるだろう。お前の兜は鋼の狼だ。ストリーベグでもこうしただろう。内なる獣人を隠し、狩人であるために。

脚当て

脚を守るため、脚当てにはもっとも厚い皮を用いて、金属で鋲を打つべきだ。蛇の牙を跳ね返し、猪の牙を欠いてくれるかもしれない。お前は獣であると同様に人間だ。最も野性的な姿の時以外は、直立していなければならない。

弓にはハートウッドと枝角を用いる。森で真実を射抜くために、射手の道具は森の物でなければならない。弓のリムには獲物の四肢のように爪を付ける。呼び名は好きに呼べば良い。矢筒には獣の顔を示す。

胸当て

胸当ては多層にして頑丈にする。ブレストプレートには獣をあしらう。肉食獣の光る眼と、獲物を追ってしわが寄った鼻を示す。これは別に奇妙ではない。胸当ての下には狩人の心臓が脈打ち、獣の血を送り出しているからだ。

剣は長く曲がっている。強力な腕を伸ばす偉大な鉤爪のように。刃は大猪の牙のように切り裂く。しかし、獲物が死ぬ時に迅速で苦しまぬ死を与えられるように、先が尖って心臓を突けるようにしなければならない。配慮するように。

肩防具

金属、皮、毛皮の何であれ、ポールドロンは自由にして構わない。強く頑丈で、爪と牙の一撃を跳ね返せるものであれば。肩はお前が武器を獲物に振り下ろす支点だ。

手袋

籠手は前腕部を強固に守る。噛みつく獣は前腕部に牙を突き立て、お前を引き倒そうとするだろう。そうさせてはいけない。籠手の背面は金属の釘で飾って牙を跳ね返すべきだが、指先はできるだけ自由にした方が良い。弓やダークが掴めるように。

胸当てと兜同様、盾にも獣の顔をあしらわねばならない。遠くから見た敵が恐怖を感じるように、大きく凶暴な姿で。さすれば遠距離から攻撃するか、接近して自ら叩きのめせるだろう。お前がハーシーンを称えるやり方であれば、どちらを選んでも構わない。

杖から繰り出す全ての呪文はハーシーンを称えねばならない。デイドラ公の姿であっても、アルラベグの姿であっても。お前の杖は狩りの王のように枝角で飾られ、お前の呪文はそこから出でる。他に道はない!

戦棍

戦棍にはクワマー・ウォリアーの拳のように重く釘を打つ。しかし、お前は獣でもあり人であるため、倍は厳しく打ちのめせるだろう。単一の性質しか持たぬ者に、お前を止めることはできない。

短剣

長く曲がった爪のようなダークか、獲物を突き刺して皮を剥ぐ鋼の鉤爪を身に着けること。簡素で飾り気はないが危険である。熊が爪を塗り、隼が鉤爪を飾るだろうか?そんなことはない。誰か異論はあるか?

お前は木こりかもしれないが、斧を持った瞬間に木こりではなくなる。斧は木を切る代わりに、血を流すようになるからだ。前方の刃は広く、後方の刃は狭くすること。しかし後方の刃には3つの爪をつける。獲物に獣の痕を残したい時に用いる。