シストレス諸島の書物と暦

Archipelago Books and Almanacs

アークドルイドの手紙Archdruid’s Letter

ドルイド・ウヴェン

そのクリスタルは命に代えても守れ。それを作るのにはとても苦労したのだ。お前が与えられた任務に失敗しても、これ以上クリスタルを作る機会はないだろう。人の通らない洞窟を探し、気づかれずに火山の裂け目に接近できるようにせよ。できるだけ長く、他のサークルの愚か者どもに知られずにいたい。モーナード家に我々の活動を警戒されるのはまずい。遠からず、奴らもファイアソングの力を思い知るだろう!

アークドルイド・オルレイス

アイビーヘイムへの侵入者A Trespasser in Ivyhame

グウィリム大学民俗学助教授、ザムシク・アフハラズ 著

ガレンの古代ドルイドは、いつも私を魅了してきた。研究者としての生活を通じ、私は何度もシストレス諸島を訪ね、この島の最初のドルイドたちが残していった遺跡を調査し、生きた末裔たちに話を聞いてきた。何年もの間、私は古代ドルイド王の玉座の間、アイビーヘイムについての噂を聞いてきたが、そこへ連れていってくれるようドルイドを説得できたことは一度もない。

ついに、私はそこへ行く別の手段を用意することに決めた。ヴァスティルの狩人を雇い、ガレン北東の荒野の沿岸へ案内してもらうことにしたのだ。暖かい森と切り立った丘を二日歩き、私たちは丘から海へと下っていく、絶壁に覆われた谷の頂点にまでたどり着いた。

ここで私の案内人は立ち止まり、それ以上近づくことを拒否した。「あんたをここに連れてくるだけでも、ドルイドたちの怒りを買う危険を冒しているんだ。俺はここで待つ」と言っていた。

私はただの学者だが、勇気がないわけではない。私は道を下ってアイビーヘイムの入口へと向かった。古のドルイドは王の住処として城や宮殿を建設しようとしなかった。その代わりに、ドルイド王はこの聖なる谷に君臨したのだ。もっともアイビーヘイムに王がいなくなって、もう30世紀近くも経っている。しかし神聖な雰囲気と隠された力がここには残留している。岩と自然の大聖堂だ。

私は畏敬の念に包まれつつ、もうほとんど誰にも読めないグリフに覆われた立石や、谷の壁に削りだされた、崩れかけた簡素な小屋の入口を通りすぎた。谷から海に出る場所の近くで、私は丘の内部にある大きな石の扉と、その手前に置かれたボロボロの台座を見つけた。さらなる印が扉中に張り巡らされている。そのシンボルは解読できなかったので、私は座って日記を開き、シンボルのスケッチを描き始めた。

もう少しで描き終えられると思った時、突然聞こえた声に私はぎょっとした。「やめろ!」

慌てて立ち上がると、赤褐色のローブに身を包んだ、厳格そうな髭のドルイドが私の背後に立っていた。彼の服からは灰が流れ落ち、その杖の先端には煤がくすぶって明かりを放っていた。ファイアソング・サークルのドルイドに会ったことはなかったが、目の前にいるとわかった。「後で研究するために絵を描いているだけです」と私は抗議した。

「お前は自分に属さないものを持ち去ろうとしている」と彼は応じた。「お前には値しないものを。立ち去れ、そして二度と戻ってくるな」

スケッチはもう少しで完成するところだったが、ドルイドの怒りは明らかだった。ファイアソングのドルイドが本土人と話すなどという話は聞いたことがなかった。私は自分が未知の状況にいることを知った。「わかりました、去りましょう」と私は言った。私は炭筆をしまい、向きを変えて立ち去ろうとした。

ファイアソングのドルイドは素早く大股で三歩進み、私の手から日記を奪った。彼はスケッチが描かれたページをちぎり、日記を私の足元に投げてよこした。「まだわからないのか?この印はこの地にのみ属するものだ。お前が持ち去ることは許さん!」

私にも常識はあった。私は傷ついた日記を拾い上げ、足が許す限り急いで退散した。

親愛なる読者よ、もしアイビーヘイムを訪ねる機会があったら、ぜひ行って欲しい。美しく、また神聖な場所である。しかし持ち帰るのは想い出だけにするよう、気をつけることだ。

あらゆるシーエルフに告ぐ!Calling All Sea Elves!

ガレンの自然の美を愛している?新しい人々に会うのは好き?本土から来る金払いのいい客のために、凶暴そうな笑みを作ってみせることはできる?それなら、サベージシストレスツアーにはぴったりの仕事があります!

関心と暇のあるシーエルフ船長は、ヴァスティルのジュリーン・クールセレに詳細をお尋ねください。

アルノーとリゼッテ:真実Arnoit and Lisette: The True Story

ジャコア・デュフォート 著

マダム・パジャウドはなんという人だろう。彼女は他でもない私の祖先から極めて詳細な話を聞いておきながらそれを無視し、自分の勝手な空想で恋愛物語を捏造したのだ!当時、現実に起きた悲劇に基づく明らかな警告の物語を、彼女がこのように扱ったのは唾棄すべきことだ。

私がこの文書を書くのは、マダム・パジャウドが「嵐とひまわり」の中で加えた脚色の中で最も甚だしいものを訂正するためである。以下の記述はアルノー・デュフォート(私の祖先)とリゼッテ・モーナード(彼の恋人とされる人物)との間に起きたことについて、私の両親から聞いた詳細である。私の両親は自分たちの親からその話を聞き、親はまたその親から聞いた。この悲劇が実際に起きた家族に行き着くまで遡れる話なのだ。

この物語が正確に描写されたのは、アルノーを「船大工を代表する金髪の男」と形容するところまでだ。この本はリゼッテ・モーナードをありえないほどきらびやかな存在として描いている。賢く勇敢で、騎士としての実力に優れ、愛の殉教者でもあると。彼女はそこまで完全な人間だったのか?ここから、この作品が明らかにフィクションであることがわかる。マダム・パジャウドは明白にモーナード家へ肩入れしており、それを隠そうともしていない。

一度視線を交わしたら後は手紙だけで成立する恋愛を見せられては、きっと読者も困惑したに違いない。これほど底の浅い、馬鹿げた話を聞いたことがあるだろうか?親愛なる読者よ、残念ながらリゼッテはマダム・パジャウドが描くような(あるいはマダム・パジャウド自身がそうありたいと望んだような)、勇敢で美しい人物ではない。

真実は、ナヴィール城でトーナメントを見ていた若い娘、リゼッテ・モーナードがアルノー卿に手紙を渡し、彼は親切心からそれを受け取った。リゼッテはそれから数年間アルノー卿に執着するようになり、卿がその想いに応じなかった時、不幸にも彼女はドルイドに頼ったのである。現実に使われたのはドルイドが毒を塗った剣などではなく、親切を装って手渡された、ドルイドの惚れ薬の入ったコップだった。そう、リゼッテ・モーナードは自分が魔女であることを隠し、ドルイド魔術を使ってシストレスの貴族家を破滅させようと目論んでいたのだ。ヴァスティルを見れば、今日に至るまでドルイドとモーナード家が異様なほど近い関係にあることがわかるだろう。

リゼッテはその後、魔法にかかったアルノーを説得して、彼女と共に船を盗ませた。彼女はアルノーをイフェロンに連れていき、ドルイドの儀式を行ってファイアソング山からガレンに炎の雨を降らせ、ついにガレンをドルイドの手中に収める計画を立てていたらしい。しかし、ここで何が起きたのかについては確かに議論の余地があるが、彼らの船は海賊に襲撃されたか、あるいはリゼッテが船を座礁させてしまい、海辺まで泳ごうとしていた最中にスローターフィッシュの餌食になった。いずれにせよこの話が描いているのは、敬愛された祖先が忌まわしい誘惑者の犠牲になった悲劇である。しかしどの話が真実だとしても、リゼットがふさわしい最期を迎えたことにせめてもの慰めを見出せるだろう。

しかしこの本は二人を、家臣たちの求めに共感する正当な指導者として描いている。彼らは「真実の愛」のために死に、曖昧な結末で読者を失望させている。フィクションとして見た場合でさえ、あらゆる点で面白さを欠いている!虚しく悲惨だ。こんなものは読まないほうがいいだろう。

イヴェス・グランバシェの台帳Yves Grandvache Ledger

フロレンティーノ、どうかこのメモを他の者たちに回してもらいたい。俺には時間も適正もない。真紅を愛する我らが友の相手で手一杯だからだ。

ヴァスティル
我々はここヴァスティルで通常の活動から一時的に退く。レッドブレイドとの契約は重要すぎる。営業所には警備に必要なだけのスタッフを残し、残りはファウンズ・チケット近くの発掘現場へ送るように。我々の注意がよそに向いている間、地域の誰かが変な気を起こすようなら、遺産を見つけた後に始末すればいい。

ゴンファローネ湾
現地の奴らに探らせろ。超越騎士団は仕事の機会になりそうだ。その間、ダーヴィル・ドティルへの働きかけを続けておけ。あいつは利用できる。適当な交渉材料さえ見つければいい。

フンディング港
冷眼のアルガーが機会を与えてくれたことを感謝しなければ。斥候たちが刻印の丘から戻ってきたら知らせるように。素晴らしいチャンスになるかもしれん。成り行きを見守ろう。

アバーズ・ランディング
あそこは滅茶苦茶だ。鉄の車輪ギルドは完全に暴走している。うちの者たちは退散させて、事態が落ち着くまで待たせるつもりだ。アンビに金を払って状況の報告を続けさせろ。それ以外、今のところあそこでやることはない。

ヴァスティルのドルイドの食事Druid Food of Vastyr

旅行記作家カスタス・マリウス 著

ハイ・アイルの休日ラッシュから逃れるため、私はガレンのヴァスティルの港にいるが、胃がゴロゴロと鳴っている。

私はこの街の蔓地区にある岩だらけのトンネルをさまよって、収穫したてのドルイド産品を売っている質素な屋台をいくつか見つけた。この農産物は名前だけなら他の場所にあるものと何ら変わりないが、単に香りと材料だけでも十分に特徴的である。ドルイドたちの間で、食べ物は売り物というより分け合うものであり、新鮮というよりまだ生きており、風味を強める生命力がこもっている。ハイ・アイルで長い時間を味にうるさい上流社会の仲間たちと過ごした後で、私はヴァスティルの石で覆われた街路を歩き、ストーンロアの森で摘まれたリンゴを食べてみた。最初の一口で、私は生命力が復活したように感じた。元気が出た私は、もっと食べたいと思った。

ドルイド王がキメラを創造したとかいう話に触発されたあるドルイドは、「歌う根菜」と名づけられた野菜を見せてくれた。紫の線が入ったネギと人参、ニルンルートの混合種である(ニルンルートは栽培が難しいことで悪名高いが、灰が多いシストレスの土でよく育つのだと教えられた)。彼女はこの野菜の葉の小さなサラダを提供してくれた。細切りにしてエシャロットと混ぜ、ムーンシュガーのドレッシングをかけたものだ。軽くシャキシャキした食感に加えて、夕焼けの色が耳元で鳴り響くような、強烈な風味があった。この体験はあまりに生々しく激烈だったので、私は浜辺近くの平たい岩の上に横になって、感覚が過ぎ去るのを待たねばならなかった。

そのドルイドは後でまた来て、ある根を味見してくれと言っていた。彼女はそれを午後いっぱいかけて煮込んでシチューにし、サルトリスを添えて出す予定だという。しかし私が覚悟を決めて彼女のところに戻った時は、もう夜遅くになっており、鍋は空だった。別のドルイドが私を憐れんで、砕いたオーツを加えたコンベリーの粥に取れたての蟹肉を添えたものを食べさせてくれた。こんな味の組み合わせが合うとは想像もできなかったし、実際合わなかった。それでも腹はふくれ、元気を取り戻したので、島の北にあるドルイド居留地、グリマーターンへ向かっていたグループと共に、一晩かけて歩いた。

ガレンでは春の水でさえ澄んでいるようだ。地域の住民の大半は私がこのことを言うと妙な視線を向けるが、この島のドルイド魔術が関係しているに違いない。それとも、シストレスの骨格を形成する火山岩のせいだろうか。

全体として、ヴァスティルの質素な環境はその食事にも反映されている。どこでも手に入る滋養豊かで簡素な材料が、ドルイドの手によって新たな命と風味を与えられているのである。耕作や他家受粉のプロセスについて質問すると、戸惑ったような謎めいた笑顔が返ってくる。まるでそのような秘密はドルイド仲間にしか教えられないとでも言うようだ。

だとすれば、それはそれで構わない。世界の半分がここにあるような風味の自然魔術を取り入れようとするくらいなら、私はそんな秘密はすぐさまガレンに委ね、帰る口実とするだろう。

ヴァスティルの歌Song of Vastyr

路上につま先を打ちつけても
何も恐れることはない
ダンスはいつでも大歓迎
来たれヴァスティルの街へ!

きらめく港からモーナード城まで
遠い民も近くの者も
決して友には事欠かない
来たれヴァスティルの街へ!

(コーラス)
ヴァスティル、ヴァスティル!ガレンの光り輝く宝石!
ヴァスティル、ヴァスティル!波を越えて高く!
ヴァスティル、ヴァスティル!その旋律を聞け!
ヴァスティル、ヴァスティル!歌のある街!

〈うんざりしたオルナウグ〉で飲めば
あなたの不安も消え失せる
ドルイド、貴族、観光客も歓迎しよう
来たれヴァスティルの街へ!

シストレスの美しい海岸に沿い
我らが海辺を目指して来たれ
名所を巡り、夜は踊り明かそう
来たれヴァスティルの街へ!

(コーラス)
ヴァスティル、ヴァスティル!ガレンの光り輝く宝石!
ヴァスティル、ヴァスティル!波を越えて高く!
ヴァスティル、ヴァスティル!その旋律を聞け!
ヴァスティル、ヴァスティル!歌のある街!

丈夫な壁と商人の店のため
船が埠頭を行き交う
シストレスにこれ以上の場所はない
来たれヴァスティルの街へ!

ヴァスティルの漁師歌Vastyr Fisherfolk Song

よいと引け、よいと引け
海辺が視界に入るまで
夜が朝へと変わるまで
すべての網を使いつくすまで

いったん獲物を見つけたら
それがそいつの運の尽き
俺たちの目からは逃げられない
すぐに味見をしてやろう

さあ勝負の始まりだ
船が揺れても回っても
俺たちは鉤、網、槍で
獲物を近くに巻き寄せる

よいと引け、よいと引け
海辺が視界に入るまで
夜が朝へと変わるまで
魚釣りして角笛を吹く

港じゃ行きかう人々の
視線が俺たちの品に集まる
溢れんばかりの大漁で
皆が踊って跳ね回る

その日の仕事が終わったら
踊るも遊ぶも思いのまま
宿で体を休める時の
ハチミツ酒の甘さがたまらない

よいと引け、よいと引け
再び出発するまでは
好きなように生きればいい
そうして海に出た時は
歌い騒いで帆を揚げる
それがヴァスティル漁師の生き方よ!

ヴァスティルの漁師歌Vastyr Fisherfolk Song

よいと引け、よいと引け
海辺が視界に入るまで
夜が朝へと変わるまで
すべての網を使いつくすまで

いったん獲物を見つけたら
それがそいつの運の尽き
俺たちの目からは逃げられない
すぐに味見をしてやろう

さあ勝負の始まりだ
船が揺れても回っても
俺たちは鉤、網、槍で
獲物を近くに巻き寄せる

よいと引け、よいと引け
海辺が視界に入るまで
夜が朝へと変わるまで
魚釣りして角笛を吹く

港じゃ行きかう人々の
視線が俺たちの品に集まる
溢れんばかりの大漁で
皆が踊って跳ね回る

その日の仕事が終わったら
踊るも遊ぶも思いのまま
宿で体を休める時の
ハチミツ酒の甘さがたまらない

よいと引け、よいと引け
再び出発するまでは
好きなように生きればいい
そうして海に出た時は
歌い騒いで帆を揚げる
それがヴァスティル漁師の生き方よ!

ヴァスティルの詩の王者The Poet-Champion of Vastyr

ディベラ司祭、チャンター・ミリウス 著

第二紀400年、最高顧問サヴィリエン・チョラックは最高顧問による統治四世紀を記念して数ヶ月にもわたる祝祭を開いた。帝都の数多くのゲームや余興のうちの一つとなったのが、詩の大会である。実力を認められた詩人たちがタムリエル中から最高顧問の宮廷で詩作をするために訪れ、その多くは有名な詩人であった。ヴァスティルからはシストレス諸島の外で無名のブレトン、ニネル・ドゥマリスという平民生まれの商人が来た。

多くの者が最高顧問に聞かせるため、壮大な叙事詩や威風高き頌歌を歌った。しかし誰もが驚いたことに、サヴィリエン・チョラックの心を揺さぶったのは、ガレンから来た無名の平民が記した言葉だった。最高顧問はニネル・ドゥマリスを詩の大会の優勝者とし、彼女に王宮での地位を進呈した。しかしニネルは辞退し、故郷をあまりにも愛しているので、永遠に離れるのは忍びないと言った。彼女はヴァスティルに戻り、長い生涯の間、数多くの美しい作品を作った。

今日ではニネル・ドゥマリスの優勝作品が、船乗りの恋人を想う女の嘆きを歌ったソネット「太陽のごとく恐れを知らず」であったことがわかっている。女がいくら愛しても、恋人がライバルである海の声に従うことを止める力は彼女にはない。それをニネルは「海鳥の笑い声、鐘の音、船長の呼び声」と印象深い手法で記している。ガレンの民によればこの偉大な詩人は若い頃、若く勇ましい船長を愛した苦い経験を基にしてこの作品を書いたという。

「太陽のごとく恐れを知らず」は有名だが、ガレンで最も愛されている詩ではない。その名誉はソネット「しなやかな妖精」に与えられる。美しいガレン島への喜ばしい讃美歌である。軽く読んだだけだと、ニネルは遊び好きの自然の霊魂について書いていると思っても無理はないだろう。しかしこの詩人はもっと巧妙である。「妖精」とは彼女の島への愛のことであり、彼女がガレンの「太陽に浸った峡谷」と「神聖なる霧」に身を任せたいという心からの想いである。この詩を口ずさめばヴァスティルのどの酒場でも、客たちは立ち上がり、胸に手を当ててあなたが言い終わるのを待つだろう。

ニネル・ドゥマリスは夕暮れの大聖堂の地下にある栄誉の地に、有名な騎士や君主たちと共に眠っている。ヴァスティルの多くの者は、栄誉を受けているのがニネルと共に眠る名士たちであり、その逆ではないと言う。

ヴァスティル包囲Siege of Vastyr

リロス・モレットの日記より。第二紀365年の日付。「群れる嵐」によるヴァスティル包囲終盤の一夜を記したもの。

* * *

昨晩炎が胸壁に降り注ぎ、それを強風が壁から散らし、屋根に振りまいた。我々は長い夜の間中働き、井戸から手桶に水を汲んで、手から手へと渡して運んだ。運の悪い建物の屋根は、我々に戦争を挑んできた「群れる嵐」艦隊のための灯となってしまった。私の家は燃やされる屈辱を免れた。何時間もかけて草ぶきの屋根に十分な水をかけておいたおかげだ。それでも城壁から街路に向かって火花が漂うたび、私は一瞬手を止めて八大神に祈った。私のアトワンと、私たちの大切な拾い子、ノム・タの無事を願った。

衛兵の呼び声が聞こえた。「群れる嵐」のシーエルフたちが我々の沿岸に船を散開させているらしい。奴らのシーメイジが風を呼び起こす呪文を止め、強風が収まったのを感じた。燃えていた家の火は再び勢いを取り戻したが、一瞬の間、手桶を運ぶ手が途中で止まった。すべては静かだった。

そして、驚くべき雷鳴と共に、ある衛兵が叫んだ。「海が退いていくぞ!」

列の中の数人は自分の持ち場を離れて、この奇妙な出来事を見ようと胸壁に駆けていった。他の者たちは手桶を丸石の地面に放り出し、封鎖されたヴァスティルの門めがけて走った。

給水部隊を指揮していた騎士はこの動きを叱責して怒鳴った。「持ち場に戻れ、街が炎に焼かれてしまうぞ!」その声で一部の者は持ち場に戻ったが、さらに多くの者たちが意を決して中心の広場から抜け出していった。最も愚かな者たちは古いドルイドのトンネルの暗闇の中へと駆けこんでいった。私は彼らの影が自分を通りすぎ、墨汁のような地下の暗闇へと消えていくのを見た。

手桶は拾われ、水で満たされたが、人数は減り、列は崩れていた。人員同士の間隔が広がったため、手桶を手渡すのにより多くの労力がかかるようになり、手の皮膚がズタズタになりそうだった。だが我々は必死に耐え、炎が東市場の屋台を飲み込むのを防ぐことができた。

上空から市民と衛兵両方の恐怖の叫び声が聞こえてきた。這うようなその金切り声は、それを引き起こした何かが迫るにつれ、より高く大きくなっていくようだった。視線を上げると、走る足音と共に胸壁から叫び声が迫って来ていた。「逃げろ」人間の洪水は叫んだ。「逃げないと、お前たちも大波に飲み込まれるぞ」。私は理解に苦しんだ。何が襲ってくるのかわからなかったからだ。しかしパニックに陥った人々が迫ってくること自体、十分に危険だった。

「大波だ、逃げろ。高い場所に行くんだ」。その声を受けて私は前進し、階段を上り、急な坂を駆けあがった。私たちが走るにつれ、波の音は大きくなっていった。聞き逃しようのない、不可能なほど高い、間延びした唸りだった。ほんの少し前まで多くの人が立っていた胸壁に、波がぶつかる音を私は聞き、感じた。波はヴァスティルの高い壁にぶつかって割れ、破壊的な水の壁となって側面を流れていった。家はその重さに砕け散った。石は固定用具から切り離され、停泊中の船でさえ目もくらむような余波を受けて突然飛び出し、港に激突した。

私の後ろを走っていた群衆がどうなったかはわからないが、背後に水の音が聞こえてこなくなるまで足を止めなかった。一番高い場所に到達してようやく、私は動きを止めた。全力で走ったため、胸が激しく上下していた。そして振り向いて、「群れる嵐」が召喚した恐るべき何かの姿を見た。

我らがヴァスティルは部分的に沈没していた。残骸が漂い、暗い水の下に沈んでいた。奇妙なことに、私の頭へ最初にはっきり浮かんだのは怒りでも哀しみでもなく、憂鬱な諦めだった。夜明けが来たら、古いドルイドのトンネルから死体を引き上げなければならないだろう。

ウミンディオルからのメモNote from Umindior

クエン

放置してすまない。だがネリのことが頭から離れない。彼女を探しに行くことにした。ドレッドセイルから抜けるよう説得してみる。彼女に遺物の場所を教えてもらえれば、この依頼を終わらせることくらいはできる。

神々の加護があれば、ここに戻ってきて合流しよう。待っていてくれ!

ウミンディオル

エメリックの裁定Emeric’s Judgment

(上級王エメリックが、ランセルの戦争の終結と大ダガーフォール・カバナントの形成、エメリック自身によるハイロックおよびその同盟国の上級王への即位を受けて発した声明の写し)

第二紀567年、新たに即位した大ダガーフォール・カバナントの上級王によって発せられた以下の簡易判決は、ランセルの戦争として知られる事態における、モーナード家の裏切りと戦争への参加、およびウェイレストとその近隣諸国の扇動に対して下されたものである。

ショーンヘルムのランセルの側につき、彼の計略を支援するために騎士と武器を送ったことにより、アヴリッペ・モーナードは即座に、かつ永久に公爵およびシストレス公爵領の管理者としての地位を奪われる。モーナード家はその領地を保持するが、諸島の管理権はデュフォート家に移され、モーナード家の指導者はそれに劣る伯爵の地位を恒久的に担うものとする。

上級王エメリックはこの判決において寛大さと慈悲を示したが、モーナード家がその誓いと義務を再び破るようなことがあれば、王はモーナード家の名も領地もニルンから完全に消し去るだろう。

さらにデュフォート家とその指導者ドノヴェン・デュフォートは、この日より公爵の地位を担い、シストレス諸島公爵領の統治権を与えられるものとする。

以上に記したことを遵守せよ。

より高き上級王、エメリック!

カエルを盗む計画Frog Stealing Plans

へレイン

助手からヴァスティルに滞在中のレッドガード商人の噂を聞いた。名前はムヌブラといい、ある特別なものを持ってハンマーフェルからはるばる来たそうよ。ドラゴンフロッグ。この男はどうやら、このカエルをビジネスパートナーか何かだと思っているみたい。信じられる?

そこで。まああなたが見てもわからないでしょうが、信じて。その獣には同じ重さの黄金に見合う価値がある。そして私には、あれをかすめ取る完璧な作戦もある。港にいる友人が、あの商人の船にいくつか穴を開けてくれる。奴が大慌てで荷物を救いだそうとしている間に、カエルを奪うの!

シストレスでドラゴンフロッグを見たことはない。そもそも他のどこでもない。だから高値で売れるはずよ。
ベルナデッテ

追伸:カエルが暴れた時のために、水を入れたバケツを用意しておいたほうがいいかな。

カソレインの夢The Dream of Kasorayn

三つの種を、一本の木の上に見た
ローワンの種、アッシュの種、オークの種
慎重に種を塵に収めた
民を導き教えるため

三本の木、九本の枝、五百枚の葉
それぞれの根に一つの季節
それぞれの種を深く眠らせよ
さすれば玉座は新たにされる

山が揺れ、種を蒔く者が目覚めし時
玉座は再び花開く
一つの選択、一つの意志、一つの縛りし言葉
すべての地に祝福か災いをもたらすだろう

カソレインの最後の夢The Final Dream of Kasorayn

三つの種を、一本の木の上に見た
ローワンの種、アッシュの種、オークの種
慎重に種を塵に収めた
民を導き教えるため

三本の木、九本の枝、五百枚の葉
それぞれの根に一つの季節
それぞれの種を深く眠らせよ
さすれば玉座は新たにされる

山が揺れ、種を蒔く者が目覚めし時
玉座は再び花開く
一つの選択、一つの意志、一つの縛りし言葉
すべての地に祝福か災いをもたらすだろう

遠い季節の末に来る
種を蒔く者を起こす日が
進んで与えられるなら、すべて良く
奪われるなら、災いが訪れる

カソレインの夢(注釈付き)The Annotated Dream of Kasorayn

グウィリム大学民俗学助教授、ザムシク・アフハラズ 著

シストレス諸島のドルイドは、タムリエルの他の地ではほぼ知られていない莫大な民間伝承の担い手である。彼らの語りは第一紀初期にまで遡る童話や歌、物語を含んでいる。おそらく最も重要なのは「カソレインの夢」と呼ばれる予言の詳細であろう。ガレンのドルイドなら誰でもこれを暗記しているが、予言の真の意味は何だろうか?筆者はささやかながら、以下のページにてこの問いの探究を試みたい。

まず、ガレンの伝達の石に記されている予言を考えよう:

三つの種を、一本の木の上に見た

ローワンの種、アッシュの種、オークの種

慎重に種を塵に収めた

民を導き教えるため

三本の木、九本の枝、五百枚の葉

それぞれの根に一つの季節

それぞれの種を深く眠らせよ

さすれば玉座は新たにされる

山が揺れ、種を蒔く者が目覚めし時

玉座は再び花開く

一つの選択、一つの意志、一つの縛りし言葉

すべての地に祝福か災いをもたらすだろう

興味深い比喩に満ちた、美しい詩のようだが、それぞれの行には秘密の言及が多く含まれている。より深い意味を探ろう。

「三つの種を一本の木の上に」はシストレスにある3つのドルイド・サークルを指している。ローワンは知恵と謙虚な奉仕、すなわちストーンロア・ドルイドの道を意味する。アッシュは神秘の力と再生を意味し、これは隠遁するファイアソング・ドルイドの象徴である。オークは当然力と勇気の象徴であり、エルダータイド・サークルを表している。最後のドルイド王カソレインはここで、3つのドルイド・サークルの確立についての言及を避けている。

ここで我々はとてもいくつかの興味深い数字が、一気に読む者に与えられていることを見出す。枝と葉、根は重要ではない。むしろ、夢の狙いは数字を見出すことだ。3×9×500、すなわち13,500である。さらに「それぞれに一つの季節」ということは、3,375年の期間になる。夢が第一紀4世紀のどこかに位置づけられるとした場合、この期間は第二紀の第6世紀末頃に終わりを迎える。確実に特定できないのは、夢がいつ記されたのか正確には知られていないからである。そして言うまでもなく、ドラゴンブレイクによって事態はさらに複雑化している。しかし、これが約束している出来事はそれほど遠くないと思われる。

第三節は予言が完了に近づいた時に注意すべき兆候と共に始まる。ここで「山」と言われているのはイフェロンの大火山、ファイアソング山である。意外なことではないだろうが、シストレスのドルイドたちはこの山にとても注目している。カソレインが「種を蒔く者」と呼んでいるのが何なのか、誰もはっきりとは知らない。第一節で言及されている種と何らかの関係があるとする学者もいる。しかし筆者はその見解に反対である。種を蒔く者はただの比喩かもしれない。

だが、我々はカソレインの夢から何を期待しているのか?ここで我々は予言の核心に迫っている。第二節と第三節の両方で言及されている玉座は、蔦の玉座のことである。ドルイドの伝説によれば、ドルイド王はガレンにある儀式の地から統治を行ったとされている。この予言は実際、新しいドルイド王の任命あるいは帰還と関係している。三千年以上の時を経て、この肩書を手にする者と。

推測ではあるが、最後の節にある「一つの選択」は新たにされた蔦の玉座を獲得する者の決断を意味しているのだろう。そして「縛りし言葉」は自然の霊魂そのものを束縛して命令する、ドルイド王の象徴と言われるものを指している可能性が高い。すべての地を祝福か災いで包むという部分の意味を解明する証拠は、筆者にはほとんど見つけられなかった。話したドルイドは議論を拒んだが、この予言は善か悪のどちらかで終わるのだろう。しかしシストレスのドルイドでさえ、カソレインの夢の真の意味については一致した見解を持っていない。

ガドからの手紙Letter from Gad

ボス、

あのふざけた海賊たちが最初の頃に力となったことはわかっていますが、奴らは発掘現場で何の役にも立ちません。ファウンズ・チケットに奴らが来なければよかったと思うくらいです。

もう何度か、酔っ払いの殴り合いのせいで作業員をヴァスティルに送り返す羽目になりました。我々の掘削がうるさすぎるというので、奴らはしょっちゅう腹を立てるんです。入口付近の波で溺れ死んだ奴までいます。海賊が腰の高さの水で溺れるなんて、呆れるばかりです。

しかもあのレッドブレイドとかいうレディは、常に監視しています。あの女には、酷く気持ちを落ち着かなくさせる雰囲気があります。気分が暗くなってくる。

あの海の犬どもを抑えておければ、もっとずっと早く財宝を発見できると思います。

ガド

ガレンの獣The Beast of Galen

エリンヒルのフラスタス 著

「カイメラ、カイメラ、カイメラ!今日は何本首がある?」
――伝統的なブレトンの庭遊び

子供の集団がカイメラ遊びをやっているのを最初に見たのは、数年前にウェイレストに旅行した時のことだった。タムリエル中の文化でよく見られる、列を作るタイプの娯楽である。私は酒場の玄関口に立って食事と楽しい歓談を待っていたが、子供たちは互いに向き合う列を2つ作っていた。子供たちはゲームの開始の合図を一斉に叫び、私は笑みを漏らした。「カイメラ」とは明らかにガレン語の「キメラ」の変形だった。先頭にいた子供は自分がどの首かを宣言した。そのグリフォンだか蛇だかの首の子供は反対側の列の子供に向かって走り、その子も同じようにした。彼らは場所を入れ替わり、列の次の子供に、自分の首を宣言する順番を譲った。それは全員の番が終わるまで続いた。

「蛇の首はシュシュシュシュって音を出せよ!」
――伝統的なブレトンの庭遊び

ガレンの深い森にあるエルダータイドの居留地に入ると、そこでは遥かに厳粛な雰囲気が私を取り巻いた。軽く雨が降る中、私は案内人に連れられていくつかの石の小屋や曲がった柱を通りすぎた。カーテンのかかった入口の向こうからは低い歌声が漏れ、出会う視線はどれも静かな軽蔑の念を込めて私を見つめた。私が研究機関と関係しておらず、案内人に多額のゴールドを支払っていなかったら、このキャンプは敵意に満ちた、むしろ危険な場所になっていただろうと確信している。私たちの先には、雲がかった空にくっきりと輪郭を表す立石がいくつか見えた。石の下には巨大な洞窟の入口が横たわっていた。その中からは低い唸り声が聞こえてきた。まるで大きな獣が発したかのような声だ。その音は深く強く、私は一瞬動きを止めた。

「ライオンの首はウオーンって鳴けよ!」
――伝統的なブレトンの庭遊び\

クラウディ・ドレッグの外にいた子供たちはまだ遊んでいたが、私は座ってグウィリム大学の敬愛する学者仲間と食事を始めた。彼女はブレトンとドルイドの伝説におけるキメラの役割について快く話してくれた。一見してわかるように、言葉それ自体が面白い。タムリエルの多様な文化の研究に従事して日の浅い学者の多くは、キメラというこの語が「チャイマー」という文化的名称の変形であると考えがちだ。チャイマーとは今日、ダンマーに先立つ伝統集団を指すために用いられる語である。実際のところダークエルフ以前の者を指すこの語の現代的用法は、「変化」を意味する遥かに古いアルトマー語変形である。そのため当然、チャイマーという文化集団を指すもう一つの一般的な言い方は「変化した者」となる。

「変化の獣」あるいは「変化した獣」を意味する語はディレニ王朝の時代に出現したとされているが、これはアレッシア以前の文書が現代になって研究されたことで生まれた推測である。その時代におけるこの語の用法については、解釈によるところがとても大きい。というのも、この名称を担うガレンの獣たちが創造されるのは、この語が第一紀初期に若いディレニの書記によって教師の手紙の中に書き記された時には、まだ数世紀も先のことだったのだから。

かなりの量の飲酒と探りを入れた後でようやく、私の食事相手はこの語自体が元来はブレトン自身を指していた可能性を認めた。実際、当時の高尚なディレニの学者たちにとって、半人半エルフを指す言葉として「キメラ」以上にふさわしいものがあっただろうか?

「グリフォンの首はクゥオオオオオって鳴くんだぞ!」
――伝統的なブレトンの庭遊び

神聖なる地の下にある石造の核へと降りていくと、周囲の壁が暖かくなっていった。明らかに、シストレスの火山の影響である。これがこの洞窟の気候を、私の目の前に立ち上がってきた巨大な獣にとって快適なものにしているのだろう。獣はこちらを向き、三対の眼が私に向けられた。獣が立ち上がると、三つの頭とその筋張った首が伸びて左右に動いた。私は首筋に冷たい針を当てられたような恐怖を感じた。すると突然、獣はよろめいた。そしてオークの木のような不動の意志を休息へと向け、唸り声をあげて暖かい大地の中に戻っていった。

キメラたちはこの地から消え去ってしまった。今では、最後のドルイド王の時代に置かれた古代の石を守るための数体が残っているだけである。キメラを作るための秘密すら忘れ去られている。案内人によれば長老の中でさえ、呪文を使ってイフレの手を導けるのは数人だけだろうということだった。私の前で眠っていた獣はその蛇の首を真っすぐ立てて、時の経過により鈍った眼で管理人を見た。そのドルイドは彼のサークルが召喚した嵐のように厳格で臆することなく、獣の脇に立ってその鼻に優しく手を置いた。私の想像かもしれないが、彼のフードの下に涙が光っているのが見えた気がする。

「カイメラ、カイメラ、カイメラ!門を抑えて石を守れ!みんな家に帰るから!」
――伝統的なブレトンの庭遊び

私たちが酒場の扉からよろよろと出てきた時、子供たちはゲームを終えていた。私たちは気持ちよく別れを済ませ、私は宿への帰り道を歩き始めた。歩きながら、私はブレトン種族の大きな物語におけるキメラの役割を思った。ドルイドたちの長期の離散と、彼らがより広い文化に刻みつけた痕跡を。キメラがその良し悪しはともかく変化を象徴しているのなら、ドルイドもまた何らかの意味で同じものを象徴しているのだろうか?そして現代の世界において、彼らはどのような役割を演じるのだろうか?

彼らは適応して生き残るのか?それともいつか、私たちはガレンのドルイドについてキメラと同じような物語を書くことになるのだろうか?いつの日か消失する、偉大なる文化の過ぎ去った一部として?

ガレンの動植物The Flora and Fauna of Galen

旅の博物学者、エリス・アグリルミルの日記より

ガレン島は自然の二面性に関する驚くべき一例である。この島は大量のひまわりが、豊かな落葉樹の森へ広がる緑の楽園だ。どんな旅人も羨む旅行先だろう。しかし溶岩だらけの無慈悲な熱帯雨林はすぐそばにあり、足を踏み入れるうかつな犠牲者を飲み込もうと待ち構えている。私はごく短時間島に入っただけだが、そこで見ただけでも心臓が凍りつきそうになった。私はできる限りメモを取った。この島を調査することで得られる知識があると思ったからだ。ここの動植物はこれまで見たもののどれにも似ておらず、未だ発見されていない秘密への手掛かりが隠されているかもしれない。まずはこの島の温暖で快適な部分について記そう。

南ガレン

私はこの島にいた時間の大半を、南ガレンの青々と茂った平原の探索に費やした。ここは広大かつ静かな土地で、引退後にここへ住むことも容易に想像できる場所だ。ゆるやかな起伏のある開けた野には、蝶や種々の野生動物が生息している。私が特に気に入ったのは、地域住民が「ファウン」と呼ぶ、一見して認知能力のある獣の集団である。タムリエル中を旅してきた私も、この諸島以外でこの生物を見たことはない。彼らは二本の後ろ足で立ち、わずかに背中を曲げている。体は長身で細身のエルフのようだが、毛皮で覆われている。頭は鹿のような大型の枝角が飾っている。

鹿を後ろ足で直立させ、両腕を与えればファウンになるだろう。彼らの行動を理解できるほどは接近できなかったが、原始的な文化を有するようだ。彼らは自然と強い結びつきを持っているようで、自然が脅かされれば守ろうとする。私はファウンが道具を使い、踊り、楽器の演奏までするところを見た。コミュニケーションを取りたいと思ったが、聞くことができたのはただの唸り声や鳴き声だった。おそらく最も興味深い点は、明らかにメスのファウンがいないことだった。彼らは私が最初に思ったよりも魔術的な存在なのか、それとも生殖の方法が伝統的なものとは異なっているのか。メスを一目から隠すのが上手いだけかもしれない。

西ガレン

さらに北や西へ進んでいくと、ゆるやかな平原は徐々に落葉樹の森へと変わっていった。温暖さにおいては劣るものの、森には息を飲むような自然美があった。私が本当に自然とつながっていると感じたのはここを散策していた時である。野生動物もこのつながりを感じているのではないだろうか。私はこの地域で「スプリガン」と呼ばれている、感覚能力を持つ植物を数多く見かけた。これまでにもタムリエルで見たことのある生物だが、ここのスプリガンのような振る舞いを私は見たことがない。通常、スプリガンは木のような存在であり、ねじれて縦長の柱のようになった根を持っている。スプリガンは根を使って地面に沿って移動し、森を傷つける者を攻撃する。ここのスプリガンは違っている。より人っぽいのだ。胴にあたる部分を形成している根は分かれて二本の足になっている。彼らは最近の侵入に応じて、より攻撃的になっているのかもしれない。スカイリムの巨人並みの大きさの、巨大なスプリガンがいるという噂も聞いている。自分では目にしていないが、そのスプリガンの怒りは小さなスプリガンよりもさらに強力なのではないだろうか。

北東ガレン

巨大スプリガンは恐ろしいかもしれないが、この島の北東で私が見かけたものに比べれば何でもない。落葉樹の森林は突然、絡みあった茨のジャングルと溶岩の川に変化した。これほどまでに居住不可能な場所は見たことがない。馬ほどに大きい蜂。マグマそのものから生まれたように見える巨大なトカゲ。この島は火山性であり、どの地形にも一定の火山活動が見られるが、このジャングルは火山に絡みつき、そこから栄養を得ているかのようだ。

地元のドルイドたちがこのような場所で生活できていることには驚愕させられる。私の飽くなき好奇心がもう少しで破滅を招くところだった。この危険な地域を住処とするあるドルイドの集落を見つけようとしたのだが、その途中で私は何かを見た。生涯を終えるまで私の記憶に付きまとうだろう。あれは蔓で作られた怪物だった。棍棒を持っており、光る眼で私を見た。あの眼は私の魂を燃やした。よそ者に対する憎しみは明らかだった。私は侵略者であり、縄張りを守ろうとしたのだ。耳をつんざくような金切り声をあげ、あの体格の獣にはありえない素早さで私に接近してきた。私は逃げた。もうあの場所には二度と戻らない。決して!

ガレンへの旅:ある学者の旅Journeys In Galen: A Scholar’s Travels

ジャン・デュシール 著

15日目
私の想いはしばしば大切なフィアンセへと向かう。彼女が分厚い毛布を屋根裏部屋から持ってきて、それにくるまって暖まる姿を思い描く。この旅は執筆中の地域の幽霊についての論文のために欠かせないものとなるだろう。間違いない。だがたとえ一日でも、彼女のそばにいられないのは辛い。

17日目
なんとかある程度の成果を得た。ブレトンはどこに旅をしても、木の霊魂の物語を話す。

論文のための文章:「祖母や宿屋にいる民、鍛冶屋に聞けば、闇の中に光る目の物語を聞かせてくれるだろう」

ガレンのドルイドたちは、闇の中の目を味方につけたらしいことがわかった。彼らによれば、緑がある場所の自然を自分たちの心に受け入れる方法を教えたという。彼らは目を「ドレイフーン」と呼ぶが、酒場やヴァスティルの市場にいた者たちは全員別の名称で呼んでいた。フォレストレイスだ。

18日目
大発見だ。ガレンの奥地を歩くだけでは、木で出来たあの怪物に出会う可能性が低いと人々は言っていた。だが強力なシストレスの酒を集中的に用いることにより、フォレストレイスを生み出す方法がいくつかあるらしいとわかった。

酒場の友人から聞いた話は、我らがグレナンブラの怪談とそっくり同じだった。

論文のための文章:「森で迷子になったある旅人が視界から消える。ドルイドたちは死者の魂を物言わぬ歩哨へ変え、彼らの古代の森を巡回させる。その恐るべき叫び声に注意せよ!」

さらに魅惑的なことに、ドルイド信仰の何らかの宗派が、「緑に服従する」ためのある儀式を記録しているらしい。このドルイドたちは野性の霊魂を自分たちの体に入らせ、レイスに変身するのだという。これは危機的な状況においてのみ行われるとのことだが、真実性には疑問が残る。

19日目
案内人と契約して、グリマーターンと呼ばれるドルイド居留地まで連れていってもらうことにした。そこではフォレストレイスの秘密の一部が、古代ドルイドの石板に保存されているらしい。この若い女性の案内人とちょっと会話しただけでも、すでに極めて興味深い話が聞けた。彼女によればレイスはドルイド王カソレインの逝去後の時期に生み出されたもので、オールウィザーと呼ばれる何かと関係しているのではないかという。不思議な話だが、調べてみる価値はありそうだ。

20日目
この森の幽霊についての真実を明らかにするのはやはり難しい。しばらくはここに留まることになるかもしれない。我が愛する人にメモを送って、ブーツの餌やりなどを頼もう。運が良ければ、キナレスの風が遠からず私を彼女の下へ連れ戻してくれるだろう。

ガレン観光案内Visitor’s Guide to Galen

エミッセ・フェアウィンド卿 著

沈む太陽のごとく美しいガレン島は、シストレス諸島の隠された宝石である。本土からの多くの訪問者はハイ・アイルより先に進まない。しかしちょっとした船旅を厭わないのなら、真の意味で忘れがたい経験によって報われるだろう。ガレンの野生の沿岸と木々の生い茂った峡谷の美しさは他で見られない。さらにこの島の自然の驚異を探検している間、神秘的なガレンのドルイドに出会えるかもしれない!

この島への訪問は古く趣のあるヴァスティル港から始まる。ここはガレンへ向かうほぼすべての船の目的地である。この街はドルイドの集落があった場所に築かれており、蔓地区や街の他の部分には今でもこの古代の村落の名残を見ることができる。ここでは最初のドルイドたちに会えるだろう。街のこの地区にいる商人や職人の多くはドルイドの信仰に従っており、旅人の好奇心にもよく順応している。

街の中央付近にある酒場〈うんざりしたオルナウグ〉は素晴らしい宿だ。燻された垂木と古い旗のある魅力的な部屋には、現地の民と船乗りが集まり活気に満ちている。それ以外にもヴァスティルで必見の場所として、港を見下ろせる美しい夜の大聖堂や、街から北の高地にある雄大なモーナード城がある。ここはガレンの管理者であるレオナード・モーナード伯爵が宮廷を開く場所である。

もちろん、ガレンまで旅をしてヴァスティルの市内に留まる者はいない。旅の疲れを癒した後は、ガイドを雇って島の残りの部分を見に行こう!

ヴァスティルの西門から北に向かい、道を進んでガレン内陸への探検を始めよう。島の中心部にある大峡谷を見下ろす吹きさらしの高い崖にそびえるのが、古代ドルイドの記念碑「伝達の石」である。この地域の伝説によれば、この石は最後のドルイド王によって立てられたもので、王の予言的な夢を保存しているという。だが眺めを見るだけでも訪ねてゆく価値はあるだろう。

伝達の石から北西に旅を続け、人里離れた壮大な西岸に向かおう。ここでは絵画のように美しいトネール城の廃墟がある。これは数百年も前に放棄された金貨男爵の居城である。ガレンの石はそれぞれに固有の物語があり、この城の廃墟も同様だ。トネールの物語はドルイド・サークルにとって神聖な地に家を立てた誇り高い王と、後に彼へ訪れたドルイドの血なまぐさい復讐の恐るべき物語である。実に興味深い!

トネール城から北に旅を続けると、北ガレンの美しい野生の丘に入っていく。ドルイドの村グリマーターンは素敵な山中の湖と、ガレンで最も標高の高い山のふもとに位置する滝に囲まれている。友好的なストーンロア・サークルのドルイドたちが住むグリマーターンは、本場ガレンにおけるドルイド文化の優れた見本を提供している…とはいえ、景色のためだけでもここは見逃せない場所である!

グリマーターンから南東へ向かうと、アメノス海峡とガレン東岸へ着く。見る者を驚かせるアイビーヘイム峡谷には絵に描いたような美しい遺跡がいくつもあり、その中には多くの立石もある。しかしこの地域で出会う可能性のあるドルイドは、グリマーターンのドルイドのように友好的ではない。アイビーヘイムは神聖な地であり、観光客は歓迎されない。さらに南下して、眺めのいいサンクレフト入江に向かうことをお勧めする。この海に面した崖の内部にある洞窟はとても美しく、訪ねてゆく価値は十分にあるだろう。

サンクレフト入江から南には、ドルイドの村トゥイニュがあるが、この一帯は避けたほうが無難である。トゥイニュは孤立を好みよそ者を嫌うエルダータイド・サークルに属しているからだ。岬沿いに伸びている道から外れないようにして、ウィンドラック・ポイントの古い砦へ歩を進めよう。ここからはガレン東に位置する火山島イフェロンを一望できる。ファイアソング山も見えるかもしれない!イフェロンの火山は日中、頻繁に煙を吐き出し、夜には暖炉のごとく明かりを放つ。

旅の最後に、ガレンの南岸沿いを西に進もう。こうしてヴァスティルの街を囲み、島の食料供給を担っている耕作地や住宅地に戻ってくることができる。遠からず、ヴァスティル東の丘の下を流れるガレン入江に到着する。この入江は海に出る船が航海するには浅すぎるが、釣りに最適であり、暖かい日には地元の人々が集まってくる。古代のドルイドが丘の下に掘ったトンネルを通り、ヴァスティルの東門から街に戻ろう。

おめでとう、読者よ!島を一巡りした今、あなたはドルイドの島、ガレンを探索したと豪語できる、希少かつ大胆な旅人の仲間入りを果たしたのだ!

キコの謎かけKiko’s Riddles

この半分は掘られた空き地の、絡まった根の影の下に眠る。火の流れが木を切り、見る者の家の南を通る

第二の欠片は手の届くところにある。西の岸から風と難破の浜辺の間。職人は鋤を手にして近づき、大釜を見て砂を返せ。

キコの最後の謎かけKiko’s Final Riddle

歌い手の道の太陽で温められた側が、宝の場所だ。船に闇のランターンを吊るし、すべての目から船を包み隠せ!

グリマーターン:ストーンロアのコミュニティGlimmertarn: A Stonelore Community

マノン・ロレイン 著

私がガレン最大のドルイド居留地グリマーターンを歩き回る許可を求めた時、ストーンロアのドルイドたちは快諾してくれた。この辺りにドルイド以外の者は少なく、この報告を読んだ者にもここへ行くことはあまり勧められない。言葉にできないほど美しい場所だが、ここは彼らの故郷であり、ドルイドの生活を体験しようと望む者のためのリゾート地ではない。

私はグリマーターンを美しい風景の断面だと考えている。十分に遠くから見れば、この牧歌的な村を構成する二つの明確に区別される色があることがわかる。底の部分から始めよう。ここには丘の中腹を貫いて流れる、渦のような小川の豊かな青がある。水は雲にまで登っているかのように見える、強大な滝から押し出されている。目を上に動かすと見えてくる第二の層は、よく茂った緑に包まれた景色である。グリマーターンはドルイドの村である以上、当然のごとく自然美に敬意を払っている。明るい木々の葉、活気ある植物、エメラルド色に輝く根の堆積が、グリマーターンの主要地区の大半を覆っている。木々はドルイドが集まる場所の大部分に守護者のごとく立っており、まるで記憶の中で永遠に根を下ろした、昔のドルイドがそこにいるかのようだ。

ガレンの豊かな野性の中に根づいているだけでなく、グリマーターンはいくつか石の建物を擁している。それらは時間の経過によって損傷しているが、真に見る価値のある建物だ。曲がりくねった階段、崖の表面へ綺麗に削りだされたトンネル、流れ続ける滝や岩だらけの断崖などだ。グリマーターンの建物は伸ばされた手のように広がり、自然の風景の中に織り込まれている。

グリマーターンには一種の階級が存在するという話を聞いた。階級という言葉は、ドルイドの生き方に慣れていない我々とは大きく違うものを意味している。富の大きさや生まれが問題ではなく、ドルイドの肩書きは獲得されるものである。志願者は見習いのドルイドであり、新しく、しばしば(常にではないが)若いドルイドである。彼らは最も経験の浅いドルイドだ。その次の地位は入門者であり、少し経験を積んでいるが、最後のドルイドの試練を通過していない者たちである。私はグリマーターンに滞在中、そうした神聖な試練をいくつか見学する機会を得た。ただし近くからではなく、かなり遠くからである。どんな試練が行われていたかはともかく、美しい光景だった。入門者が試練を通過すれば、正式にドルイドになることができる。これがグリマーターンの人口の大半を構成している。そしてもちろんアークドルイド、すなわちマスタードルイドが、基本的にコミュニティを率いている。

他のドルイド・サークルの居留地も同じような肩書きを用いて、類似の美しさを誇っていると考えていいだろう。しかし私には自分の目で見たものを書き記すことしかできない。グリマーターンは文化と美、歴史に満ち溢れた場所である。親愛なる読者のためにもっとうまく説明できないことが悔やまれる。とにかく、あなたがこれまでの人生の大半を街で過ごしてきたのなら、私の記述が新しい視点を開いてくれることを願っている。

シーエルフって何?Who Are the Sea Elves?

不明なブレトンの子供によって書かれたもの

シーエルフって何?お母さんは悪いやつだと言っていたけど、ちょっとおかしな名前だと思う。マオマーだって。妹が言おうとしたら、モー!オー!マー!っていう音になった。お母さんは僕たちがこのことを話すと嫌がるけど、お父さんは夜遅くになるとたまに物語を聞かせてくれる。

お父さんはシーエルフが大きな海の蛇に乗ること、オルグヌムという大きな怖い王様がいることを話してくれる!お父さんはその王が不死身だって言ってたけど、そんなことありえないよね?不死身じゃなくても怖そうだった。

シーエルフは怖い。お父さんの話にはたくさん血が出てくる。海の戦いも!妹は物語が怖すぎて、わんわん泣いてしまうこともある。お母さんはそういう時腹を立てる。シーエルフのことなんか話さないほうがいいし、知らないほうがいいって。でも、そんなこと言われたら余計知りたくなるじゃないか!

シーエルフって本当に何なんだろう?どんな音楽が好きなんだろう?僕や妹みたいな子供がいるんだろうか?シーエルフの船には玩具があるんだろうか。玩具がなかったらとても退屈だろう。

シーエルフは僕たちと同じものを食べるのかな?自分たちが乗る海蛇に名前を付けるのかな?僕だったら自分のにはダーセルと名づけよう。

シーエルフに聞けたらいいのに。手紙を書いて送ろうかな。シーエルフは手紙を書くのかな?船の上で手紙を受け取れるんだろうか?シーエルフに手紙を書こうとしたら、お母さんは怒るだろうけど、気になって仕方がない。シーエルフの肌は本当に青なの?きっと綺麗だろう。全員が悪人なのかな。優しい人もいるんじゃないかな。

シーロード・ナロスからの命令Orders from Sealord Nalos

ドレッドセイル艦隊の船長

船員を集合させ、ヴァスティルの街を大艦隊で襲撃する準備をせよ。捕虜たちは目立った弱点を明かしていないが、我々の数なら防衛部隊が反撃を展開する前に街を制圧できるだろう。

ファイアソング・サークルの援護には期待するな。アークドルイド・オルレイスはドルイド議会で我々が協力したことへの返礼として力を貸すと約束したが、あの女は我々の襲撃前にストーンロアの種を探したいと言っている。俺は待ちたくないし、正直言ってあの女は信用できない。

シーロード・ナロス

シストレスのワインWines of the Systres

ワインとスピリッツの愛好家にして地域情報の専門家メリニー・アグナンによる、シストレス諸島のすべての島において最も豪勢かつ独自色豊かなワインについての解説

ハイ・アイル

ハイ・アイルの気候と等級は、素晴らしいワインを発見するのにとても適している。私はハイ・アイルで低品質のワインを飲んだことがないが、以下に記すワインを探すことを勧める。これらは特に独特なワインなので、諸島を回る旅の価値を大いに高めてくれるだろう。

リーダーズライズ・レッドブレンド

ハイ・アイルで支配的な名家たちによる提携の成果であるこのレッドワインブレンドは、モーナード家のブドウ園のブドウを使い、デュフォート家の職人によって製作された樽で熟成される。このビンテージの創造は、二つの貴族の家の友好の時代を象徴するものだった。このワインは深みのあるボディと微かな温かみを持ち、夏のワインとして完璧である。デュフォート家の賓客はしばしば、ハイ・アイルのひまわり畑を見学中にこのワインを供される。

アルバトロス・カベルネ

アルバトロス騎士団の団員であるルドヴェル・ガマシェ卿は、キャンプファイアを囲んで伝説を語り聞かせる際のお供に完璧なワインを生み出した時、伝説の騎士の地位を獲得した。このワインの豊潤な風味は飲む者を香り豊かな冒険へ連れだし、騎士を目指す者は冒険の味を心に刻みつけるため、このワインをワインスキンに入れて旅に出ることで知られている。

デュフォート・シンギュラーアンバー

デュフォート家によって開発された、希少なスペシャルブレンド。ピーチやチェリーなどに由来するまろやかな舌触りと紅茶のような風味に、甘くならないハチミツが垂らされる。第二紀571年のビンテージは最も人気が高く、市場にほとんど残っていない。その年のボトルを見つけたなら、強くお勧めしよう!

揺るぎなき者のシャルドネ

揺るぎなき邸宅で、バカロ卿の慈善パーティーのために開発された。この単体で飲むためのワインは非常な人気を博したので、シストレス諸島中の宿屋に複数の樽が輸送された。驚異的にバランスの取れた味と、豊かな黄金の色合いを実現したことで知られている。

ガレン

ガレンに足を踏み入れるハイロックやシヴァリング・アイルズの貴族は少ないが、この島はそれでも素晴らしいワインを生産する。

ストーンロア・ゴラップルミード

シストレス諸島中で、ドルイドは数えきれないほどの年月、あらゆる種類の果実やベリーをフレーバーにしてワインやミードを作ってきた。しかしガレンにおいて、ストーンロア・ドルイドの強力なゴラップルミードはドルイド以外の住民の間でも人気がある。噂によるとエルダータイドのケルプミードのレシピが存在し、それはさらに美味であるとされているが、これを味わったことのあるブレトンは存在しないため、ゴラップルミードと比較することはできない。

モーナード・レッド

この濃厚なワインを味わうのは、もはやヴァスティルだけではない!モーナード家のワイン業者は芳醇で味わい深いワインを開発し、常に進化を続けている。この進化の理由はステファン・モーナードにあるとも言われている。彼はドルイドと親交が深く、モーナードのぶどう園はおかげで不当な有利を得ているとのことだ。ここまで美味しいワインができるなら、そんなことを誰が気にするだろう?

アメノス

アメノスのワインについては、できるだけ言及しない方がいい。

イフェロン

私自身は以下に記すワインのどちらも味わったことがない。ドルイドを除いて、イフェロンに足を踏み入れた者はごく少数だからだ。とはいえ、私は何人かのドルイドに話を聞く機会を得た。彼らはファイアソング山のふもとで育つぶどうのワインが極めて独特であるという点で意見の一致を見ている。

スモークスパイス・ブランデー

ワインや古い樽から蒸留された、この濃厚なアルコール飲料は煤のように黒く、加えられたスパイスによって深く豊潤な風味を得たらしい。その複雑性を理解するには、味わって飲むしかない。

アッシュ・ホワイト

煙と灰をファイアソングは歓迎している。この蒸留に使われる穀物は蒸留する前に自然に燻され、濾過され瓶に詰められる前に、島の火山の裂け目によって長く樽で熱せられるという。味は豊潤で深く、煙の匂いがするようにも思われる。賛否は分かれるかもしれないが、とても個性が強い。

シストレスの歴史:ヴァスティルSystres History: Vastyr

グウィリム大学上級講師、ヴァロナ・ヴェドラル 著

集落はドルイド王カソレインの時代以来、ガレン南端の海辺に位置している。丸石が密集した近代都市ヴァスティルの地下で行われた採掘により、ドルイドのトンネルや古代の掘っ立て小屋、ドラオイフェの儀式場、シニストラルの戦争野営地、ソードシンガーの試合場、さらにはスロードのスライム飼育場の明らかな痕跡まで見つかっている。

今日の我々が知っているこの街は、諸島最北の島の宝石のような海辺に、ほんの最近付け加えられたものだ。ゴンファローネ湾は男爵提督オロによる船舶建造の中心地としての名誉を(正当にも!)得ているが、ガレンの広大な密林は、全旗海軍の船大工たちにとって無視できない魅力を放つ宝の山だった。

何世紀も本土からの統治を受けたことで、ハイ・アイルではゴンファローネ湾の北岸から、平民が雑木林を管理する伝統的なシステムが出来上がっていた。それに対して、ガレンはドルイドのサークルたちが何世紀も費やしてその聖地としての威厳を保っていたため、実質的に手つかずの原野であった。第一紀2240年頃、男爵提督ベンドゥ・オロとその部下たちは船舶建造にさらなる力を入れた。スラスへの襲撃に備えるため、ガレンの緑野とドルイドたちが艦隊の成功に不可欠だと確信していたのだ。物資はあらゆる港から本土に届けられていたが、ガレンにある未開発の資源は無視できるものではなかった。

フォルヴス・ネルヴィロの覚え書きには、「提督のブーツは泥に浸かり、残った我々は波に乗った。ドルイドの評議会には使者を送っていたが、砂を歩く間、浜辺には誰もいなかった。彼が振り返ったので、松明の光の下でにやけた自信のありそうな顔が見えた。船長は向き直り、立ち尽くして待った。一晩中待ったように思えていたが、突然浜辺の反対側で焚火が灯された。ドルイドが来たのだ。三つのサークルが全て、数百のドルイドがいた。指導者は交渉に来たのだが、オロが勝ったことはもうわかっていた」と記されている。

全旗海軍の港と造船所として機能していた初期の時代以来、ヴァスティルではブレトンとドルイド文化が混ざりあっていた。この街は常に立石の群と八大神を崇拝するための空間が同居しており、真の道についての繊細な議論は、港沿いの酒場でも、貴族のゴシップや詩人の歌の中でもさかんに取り交わされていた。

ヴァスティルが本当の意味で自立したのは第二紀初期、モーナード家の財産が増大を始めた頃だった。中傷と賄賂、暴力によりファネ・モーナードはシストレス諸島の地方統治官の地位に上り詰めた。この一族の主な関心はハイ・アイルの豪邸やアメノスでの採掘事業だったが、一族の中の多くの者は、ファネの母ドロナのおかげで、ドルイド文化との強い結びつきを感じていた。

ドロナはウィルドと緑に深いつながりを持っていたと言われており、家族に対してドルイドのためにも一族のためにも、ヴァスティルに投資するべきだと力説したのである。

モーナードの金貨の価値が証明されたのは、数百年後に「群れる嵐」が街を襲撃した後のことである。帝国の凋落はタムリエル中に混沌を生み出した。シストレス人たちはタムリエルの民にも劣らぬ苦境にあえいだ。支配者になろうと目論む者や、王を僭称する者たちが百年の間に六度も諸島を襲撃したからである。第二紀365年におけるヴァスティルの陥落は、この島の歴史の中で最も凄惨な瞬間の一つだった。街の半分が破壊され、市民の大半は野へ追われ散り散りになった。

後のルッフェ・モーナード公爵は独裁を非難されたが、彼の祖先は再建者にして新たなヴァスティルの守護者であるとして尊敬を集めた。ベルニクは攻囲の後何十年もの間「街の母」として知られるようになった。モーナードの各領地から流れる金貨と支援物資により、街が立ち直り、世界の中に新たな地位を占められるようになったからである。ヴァスティル湾のどちらの終端にもある高い壁や、今では街の景色の中心となった広大な邸宅は、この時代の名残である。

ナハテン風邪とランセルの戦争という二つの災害の後、モーナード家は傷を癒し将来の計画を練るため、ヴァスティルへ退いた。この近代都市はハイ・アイルとドルイド、そして本土の文化のるつぼとなっている。世界中からやって来たアイデアが街の門から流れ込み、ドルイドの産品は街の壁を越えて海に出て、大陸中の顧客へと届けられる。

ヴァスティルはガレンの自然の端にあって、常に「文明的な」文化の足掛かりであり続けてきた。多くの世界、多くの文化、多くの約束を持つ街なのだ。

シストレスの歴史:補遺Systres History: Addendum

グウィリム大学上級講師ヴァロナ・ヴェドラルによって発見され翻訳された、あるドルイドによる文書

第一紀2484年のファイアソング山の噴火は、アメノス、ハイ・アイル、ガレンの主要な集落すべてを完全に破壊するか、居住不可能なレベルで損壊させた。今日でもシストレス諸島の学者や歴史家の多くは騎士や貴族の行いを扱っており、その後に続いた「緑の時代」についての我々の理解は、主に二次的な歴史資料を基にしたものである。

以下に記すのは、第一紀のストーンロアがいた場所の採掘により発見された複数のドルイド文書を、私ができる限り再構成して翻訳したものである。私とディーン・へラドレンに同行して諸島へ向かった学生たちには、これらの希少な断片の回収を助けてくれた功績を感謝したい。

最初の記述は、噴火が始まった直後に記されたもののようだ:

「今日はまた空から灰が降り注ぎ、(彼らの)骨の熱が、石が海と出会う場所へと流れた。私たちはまだ動ける者たちを集め、(解読不能)ができる(安全な場所)に移動した。私たちの中には、街の絹や船の革を身に着けた人々は追い返せと言う者もいたが、アークドルイドは聞き入れなかった。こうして私たちはファイアソング山の歌が下の大地を揺らせている間、できる限り多くの人々をかくまった」

2つ目の記述は噴火が弱まってから数ヶ月後に書かれたものらしい:

「ベリーは豊富だ。私たちの(真の道の魔術)により、木々の葉が戻り、茂みが実をつけることができた。これで私たちの枝の下に隠れる者たちも、島中の揺れに耐えて安全にしていられる。私たちはできる限りのことをタムリエルの民に教え、彼らもまたその返礼として私たちに教えを与えてくれた。ドルイド(判別不能な名前)はウェイレスト出身の男を夫として受け入れた。新しい親族を得て、私たちの絆は強くなった。この災害では多くが失われた。私たちは、これが種を蒔く者の予兆ではないかと恐れた。だが今日は、新しい命が灰の下から芽生えたようだ。緑よ、感謝します」

3つ目の記述は1年か2年後のものだ。この文書は経年による劣化が激しく、その意味の多くは同時代の作品に基づいた私の推測である。学術論文でこの文に言及する際は、その点を考慮してもらいたい:

「すべては(時間の無駄/嘘)だった。(よそ者?)は(諸島/イフレを尊敬)しない。彼らは私たちの贈り物を受け取っておきながら、(ドルイド・サークルの)目に唾を吐きかけるのだ。いつか夢は(実現?)し、私たちは世界の中に自分たちの居場所を獲得するだろう。そのことは石の中にも、我らの心と魂の中にも見えている」

参照のために言っておくが、ここに含まれている文書はすべて、元々は軽石とダークウッドを組み合わせた板に記録されていた。石には印が刻まれており、木にはこの地域のベリーブラッド・インクが使われていた。こうした遺物は要請に応じて大学の保管庫で閲覧できる。

シストレスの歴史補遺:ガレンのドルイドSystres History Addendum: The Druids of Galen

グウィリム大学上級講師、ヴァロナ・ヴェドラル 著

シストレスの歴史の本文でディーン・へラドレンが論じたとおり、ドルイドは諸島についての我々の理解を形成するために決定的な役割を果たしてきた。ガレン島はハイロックから最初の離散以来、真の道の中心であり続けてきた。口承によれば、ガレンはドルイドたちが第一紀330年に初めて上陸した場所である。

脇道にそれるが、とても学問的な題「ガレンのドルイド」は、この一般に真理とされる出来事に由来するのだろう。自分も歴史的先入観の罠に陥ったことがある学者として、このことを記すのは単にいきさつを説明するためである。

ガレン初期の時代がどのようなものだったか想像するのは難しい。ディレニに支配された本土での生活とは劇的な対照をなす、美しく感動的な体験だったことは疑いない。ついに自らの信仰を追及する自由を得て、緑の限りない優しさを与えられた最初のドルイド使節たちは、この島を楽園へ作り変えた。多くの伝説的な力の場や、深い森をさまよう独特な獣たちが現れたのは、ドルイド移住の初期の時代だった。

最後のドルイド王カソレインは、この時期の安定と成長の立役者であった。現代の記述ではドルイド王が観想的な立場の存在とされ、信者たちを遠くから見守り、どうしても必要な時を除いて介入しなかったと言われる。しかしそれでも、王は魔術と世俗の資源を大量に費やし、ドルイドたちの新たな故郷を補強した。キメラやフォレストレイス、その他のガレンの古代の石にまつわる奇妙な現象についての現代の記述を読むだけでも、そのことは明らかだろう。

ドルイド王の死は謎に満ちており、単に王は引退してシストレスの奥地に退いたと述べている記述もある。そうした記述によれば、ドルイド王は穏やかに逝去し、民には変わらず称賛され崇拝されたが、民から離れ私的な生活にいそしむことを許されていた。別の記述では、何か暴力的で忌まわしいことが王の支配を突然終わらせたことになっている。大挙してハイロックに帰還し、かつての圧制者を打ち倒すよう扇動したドルイドがいたのだろうか?文書の記録は少なく、口伝には対立する内容が多いため、確実なことは永遠にわからないかもしれない。

ドルイド王の死に続く数世紀の間、深き森は不可侵の領域だった。第一紀660年のシニストラルの襲撃は当時の物理的な記録の多くを破壊したが、ドルイドたち自身はその多くがいわゆる「レフトハンド・エルフ」の侵略を生き延びたようである。ガレンの奥地に退くことで、カソレインの子たちは侵略者に対して強力な防衛線を張ることができた。

ディーン・へラドレンは第一紀668年のファイアソング山の噴火が、何らかの仕方でレッドマウンテンの災害と関係していると示唆するが、私はドルイドたち自身がイフェロンの火山を活性化させたかもしれない証拠を見つけている。確かに爆発の際はドルイドたちも死んだが、ガレンの中心である彼らの聖地はほぼ無事だった。それが偶然ではなかったことを示す証拠は豊富にある。

ドルイドの統治評議会であるドラオイフェは、何世紀も後の全旗海軍の形成へ公的に参加することはなかったが、私はドルイドたちが海軍と船に乗ったことを示す当時の記述を複数発見した。彼らはスラスへの旅路で天候を鎮め、道案内をする役割を担ったが、大陸を沈没させるにも一定の役割を果たした可能性がある。とはいえ、それは残された乏しい資料に基づいた、私の単なる推測であることは断っておかなければならない。しかし明らかなのは、海軍の負傷者たちが男爵提督オロの帰還に際して、ドルイドの癒し手たちによる大規模な治療を受けたことである。

ドルイドの信仰とその治癒の能力は、第一紀の終わり近くに二度目のファイアソング山の噴火が起きた時、再び注目を集めた。残された地域の貴族と本土の公爵たちはシストレスの平民が飢え死にしても何とも思わなかったが、ファイアソングとエルダータイド、そしてとりわけストーンロアのサークルたちは島中に人員を展開させた。彼らは火山から飛び散った炎を消し、家を失った者のために避難所を築き、火傷を治療し、避難民たちを養うための新たな作物を育てた。

「ヴェイルテ」、「ドライ」、「ゲイテ」といったドルイドの言葉がシストレスの民の間で一般的に用いられるようになったのは、「緑の時代」として広く知られる、歴史のこの時期に由来している。これはドルイド史の中で最も活発で、協力的な時期の一つを印づけるものであり、真の道のすべての成員が自らの聖地と深き森を離れ、友人や隣人、家族たちの生存を助けた。

こうして我々は最近の歴史に行き着く。シストレス諸島の所有権がグイマルド家から、様々に姿を変えた帝国、ブレトンの金貨男爵、モーナード家へと移り変わり、現在のダガーフォール・カバナントとデュフォート家による半独立の状態へと、終わりなき変遷を遂げた時期である。これらの変化の間ずっと、ガレンのドルイドたちは古代の伝統を維持し、遠く離れた地にある黄金の会計事務所で文書が交わされたことなどほとんど気づきもしなかった。諸島を管理する貴族の大半はドラオイフェに評議会を開かせておくのを妥当とみなし、必要な時を除いて介入しなかった。特に部分的な汚名を被ったモーナード家には、ドルイド・サークルを認容してきた長い歴史がある。

実際のところ、どちらのグループもガレン島の二重の物語を象徴している。片足はしっかりと過去に根ざし、もう片足は不確定な未来の砂地を踏みしめている。

しなやかな妖精A Lissome Sprite

ガレンの詩人、ニネル・ドゥマリス 作

しなやかな妖精の軽やかな笑い声が
見守る木々を通り抜けてさまよい
秘密の喜びをたたえて、石と小川に口づけをする
それは他の者に見えぬ愛の触れあい

麗しき緑の丘の向こう、立石が
遠い昔の聖なるドルイドの夢を覚えている
この陽気な妖精は、誰にも見られずアイビーヘイムの
玉座に姿を現し、海辺に留まる

陽気な妖精の笑い声が私を呼ぶ
日々の仕事への没頭から引き出されて
私は作業を止め、自由に踊る
太陽に浸された峡谷の、聖なる霧の中で

私はガレンを歩く、独りで
森や丘、海への想いだけを胸に抱えながら

タムリエルの城への案内A Travel Guide to Tamriel Castles

アスティニア・イサウリクス 著

私がここに大いなる喜びをもってお届けするのは、旅へのはなむけであり、探検への誘いであり、普段の生活から抜け出て世界を見ることへの気軽な招きである。これはタムリエル全土の独自で恐ろしく、血と栄光に浸った主な城十選を論評したものだ。私は旅の間に、これらの魅惑的な建物であなたと出会えるかもしれない!

ウェイレスト城
おそらくタムリエルで最も有名なウェイレスト城は、第一紀の初期からストームヘヴンの中心地、すなわちブレトンの中心地に立っている。この城の最大の特徴は、街だけでなくその先の地方までも見通せる巨大な尖塔である。ガードナー家によって建設されたこの城は古典的な石造の砦として、以降数百年の間、貴族たちの家屋の基準を決定してきた。

モーナード城
シストレス諸島最北の島の街、ヴァスティルの深水港を見下ろし、広大な複数の棟を有するモーナード家の城塞は、この街の心臓であり魂であると言えるだろう。ある意味で、モーナード城こそがヴァスティルなのだ。「群れる嵐」による第一紀365年の攻囲の後、急遽再建されて出来上がったこの城は、「ヴァスティルの母」と言われたベルニク・モーナードにふさわしい記念碑でもある。彼女の遺産は広大な石壁のカーテンと、海側の丈夫な防波堤の中で存続している。

ソーン城
ソーン家の奇妙な伝統については噂が絶えないが、祖先からの家の壮麗さは否定しがたい。中央には巨大な尖塔がハーフィンガル山脈のふもとから突き出し、その同心円状の壁には、それぞれミナレットが添えられている。私は信頼できる情報筋から、一族が城の公共の空間の見学を許可しているが、朝限定であると聞いている。だから早い時間に訪れて欲しい。

アリノール宮殿
サマーセットのハイエルフには息をのむような古代建築の伝統があり、アリノール宮殿は数千年の時を遡る王族の系列を代表する。この城は複数の大きく風通しのよい部屋を基礎とし、その上に空高く伸びる尖塔が築かれている。実はそもそもこの本を書くアイデアを私に与えたのは、アルドマー評議室の巨大な窓壁だった。

エボンハート城
エボンハートの街の中心部にある城は美しくも恐ろしい古い石の建物であり、アッシュマウンテンのふもとで狩りをするクリフ・レーサーのように鎮座している。ダークエルフの宗教的恍惚とトリビュナルへの崇拝は、訪問者を困惑させるような建築上の選択を生んでいるが、その結果作られた三重尖塔の、古風ではあるが雄大な輝きは誰もが認めるだろう。

スカープ砦
オルシニウム砦とも呼ばれるこの広大な石の建物は、オーク王の権力の座である。今では廃墟となった古代都市、旧オルシニウム中心部の王宮を元として作られたこの近代建築物は、昼夜を問わず炎の輝きと笑い声、そして饗宴に満たされている。洞窟のような大広間に足を踏み入れ、この広大な空間を挟み込む巨大な石の柱を見上げる時に感じる畏敬の念は、決して忘れられないだろう。

ナヴィール城
遠く離れたハイ・アイルに立つナヴィール城から無秩序に広がる大地は、ほとんど目を疑うほどである。緑豊かな野生の花畑が、ドルイドによって世話された古代の森へと続いている。城自体は古典的なブレトン風の驚くべき建物であり、デュフォート家が居住している。私は年に二度行われるサファイアトーナメントの最中に訪れることができたが、騎士のチャンピオンに観客が送る声援の轟きを聞くことほど、血をたぎらせるものはない。

レイヴンウォッチ城
リベンスパイアー北の山脈のふもとにそびえるレイヴンウォッチ城は、このリストに載っている他の場所の壮大さに比べると、少々控えめなように見えるかもしれない。それは間違いだ!このブレトン建築の古典的な代表作は保存状態が完璧で、レイヴンウォッチ家の者たちはこの歴史的価値の高い建物を見学する際に、素晴らしいもてなしを提供してくれる。特に、城の地面の下を通る洞窟のような霊廟を探検することを勧める。

レヤウィン城
タムリエルの古代の建造の中から一番のお気に入りを選ばなければならないとしたら、私はレヤウィン城を選ぶだろう。ブラックウッドの入口にそびえるこの美しいインペリアルの建物は、壮麗な城に求めるすべてのものを備えている。頑強な円形の塔、空高くまで伸びる大広間、四方八方に広がり、街を見下ろす主砦まで通じている廊下。見事だ。このニベン下流の宝石に行く機会があったら、ぜひとも逃さないように!

ブルー・パレス
西スカイリム、ソリチュードの中心から大きなアーチを広げるブルー・パレスは、この大陸で最も独自の建物かもしれない。訪問者はとてつもない大きさの外壁を越え、広大な階段が二つある印象深い入口の間に入る。この豪勢な城は、この地域のノルドの荒々しい評判にはそぐわないように思える。しかし実際のところ、この美しさは見せかけにすぎない。ブルー・パレスは最も苛烈な攻囲にも耐えられるようになっており、帝国式の舞踏会場では貴族の美を示しつつも、戦争への備えを万全にした砦である。

以上だ!親愛なる読者たちよ、この本があなたの出発点から目的地へと向かう長旅の、ささやかな楽しみとなってくれれば幸いである。街道から離れないように。そして、キナレスがあなたの旅の無事を保証することを祈ろう!

ドルイド・セナの最後の記録Druid Senna’s Last Account

ファイアソングは私たちを殺しに来た。これはドルイド・セナの最後の記録になるかもしれない。私の最高の作品ではないかもしれないけど、死の手紙に多くは望めない。

ファイアソングが襲ってきた時、私はとっさの反応で、哀れな友人や家族と同じ運命を避けられた。私は彼らの命が消されるのを、岩陰に隠れながら見ていた。ファイアソングは私の隠れている場所にじわじわと近づいてきた。武器を抜き、炎を高く掲げて。だがとても奇妙なことが起きた。

私たちも皆知っている霊魂の塵が、谷間を越えて分厚い幕のようになって降りてきたのだ。塵はファイアソングに落ちかかり、彼らの姿は霧に包まれた影と化した。ごく短い間苦悶の声が響いた後、彼らの武器はそばに落ちた。床に倒れて深い眠りについたのかと思ったが、彼らは滝に向かって歩いていき、視界から消えた。その後彼らがどうなったのかは知らないが、不気味だった。

塵は私を囲んでおり、動物たちもそこら中を徘徊している。私は生き延びられないかもしれないが、この記録は残したい。誰かに起きたことを伝えたい。クロニクルを守らなければ。クロニクルは私たちが何者かを教えてくれるのだから。

ドルイドたちの脱出Exodus of the Druids

ストーンロア・サークルのドルイド・ローレル 著

ドルイドの教団はハイロックで生まれ、その地を愛したが、ハイロックでの生活は最終的に彼らへ耐え難いものとなった。イフレを崇拝するドルイドは第一紀330年にハイロックを去ったが、それが徐々に敵意を増すディレニ王朝に追われた結果なのか、ドルイドたちが自ら出て行ったのかは不明である。私の調査によれば、動機はどうあれドルイド王カソレインが移住の旅を計画し、ドルイドたちに船を育てさせ、それによってついに本土から脱出できたようだ。

ドルイドの伝説や口承が伝えるところによると、この海に浮かぶ船はイフレと緑による特別な贈り物であり、夢の中でドルイド王に与えられたものである。王はドルイドたちにこの船を生み出す歌を教えた。その歌はハイロックの植物や木々を、正確に決められた大きさに成長させられたのだ。残念ながら、この船を作る秘密は時の流れによって失われてしまった。

今存在する三つのサークルに分かれる以前、ドルイドの本来の共同体はどれほどの大きさだったのだろうか?私には推測しかできない。真の道を信奉する者は百万ほどもいたと主張する長老もいるが、数千だとする者もいる。いずれにせよ、ドルイド王は民をディレニから逃れさせるため多数の船からなる船団を必要とし、出発する準備が整うまでこの計画を秘密にしておく方法を考えねばならなかった。残っている物語によれば、ドルイド王は成功したことになっている。最後の戦いや危機一髪の脱出はなかった。ドルイドたちはディレニに気づかれることさえなく、ある夜、ただ姿を消したようだ。

さて、タムリエル西の広い海に出航することを想像して欲しい。当時、タムリエルの民による長い航海は行われていなかったし、海辺が見えない場所を航海する船もほとんどなかった。しかしドルイドたちは新たな故郷と呼べる場所を探そうとしていた。ドルイド王によって約束された地を。伝説によれば、ドルイド王は夢とイフレの囁きによってシストレス諸島へ導かれたが、民には王が未知の海を越えて自分たちを安全に運んでくれると信じる根拠があったのだろうか?

ハンマーや釘で作られたのではなく、生やされた奇妙な船の一団が、海辺から出航していく様を思い浮かべてもらいたい。実に異様な光景だったに違いない!ドルイド王が船団をどうやって離れ離れにならないようにしたのか、完全にはわかっていない。船を導く海図のようなものを持っていたのだろうか?確実なことは永遠にわからないかもしれないが、最近の発見が示すところ、少なくとも1隻のドルイド船が諸島にたどり着けなかった。嵐やその他の障害で遭難した船がどれだけいたのかは不明だが、たどり着けなかった船が1隻あったなら、おそらくそれ以外にも沈むか遭難するか、他の原因で姿を消した船がいたと思われる。

結果として、ドルイド船団の生き残った船はシストレス諸島の海辺にたどり着いた。最終的にドルイドたちは諸島の全土に広がったが、船団が最初に上陸したのはガレンだとされている。イフレの導きで我々はこの島々にたどり着いたのだが、ここの自然は無秩序だった。ドルイド王と民は最初の季節をかけて自然に秩序を与え、この地を維持する助けとするため霊魂を召喚した。素晴らしい時代だったに違いないのだが、とても多くの情報が失われてしまっている。

私はドルイド王カソレインの時代の生活についての探索と調査を続けるつもりだ。ドルイドの失われた歴史について、さらなる解明を試みたい。

ドルイドのモノリスThe Druid Monoliths

高名な学者にしてあらゆる文化の学徒、イグナティウス・ガレヌス 著

これはシストレス諸島のドルイドの島を旅した記録である。

私は冒険を続け、ガレン島へ流れ着いた。ここの一部しか見ることができていないが、ドルイドの大きな石の記念碑がまず目についた。彫刻とエッチングでわずかに飾られているが、意味は推測するしかない。石の柱は、どんな祠や聖堂よりも強力な何かを発していた。

こうした巨大な石を装飾する時、何をすべきだろうか。最初のモノリスにあった螺旋のパターンは肥沃の象徴だと思われる。自然が循環する性質と、季節に対するドルイドの考えを示している。円と曲線は、ほとんど官能的にも思えるほどだ。

他にもエッチングとして、環のパターンで重なり合っている同心円がある。この彫刻は、発せられる力と解釈すべきだろう。属性の力と、自然の力を組み合わせればいかに強力になるかを例示している。率直に言うと、この簡素だが意義深いデザインに秘められた情報には驚かされる。

疑問に思っていることはある。刻まれ飾られたこうした巨大な石には、メッセージが含まれているのだろうか?それとも単に美学の問題で、見たものに喜びを与えようとしているだけか?宗教的意義があるのか?話したがるドルイドを探し、強力なモノリスの意味を説明してもらわねばならない!

何人かのドルイドが、私のモノリスに対する意見を聞いてくれた。その視線からは多くのことが読み取れた。会話はかわされなかった。彼らは首を振るだけで、私が熟考するに任せた。

ドルイドがここで作りだしたのは、何とも際立って魅力的な文化だ。

ドルイドの葬式:イフレの断片Druid Funerals: A Piece of Y’ffre

エルデンルートのアレネス 著

シストレス諸島に住むドルイドがいるという話を最初に聞いた時、私は彼らに会わなくてはならないと思った。タムリエル中の他の民も私たちと同じように木々へ囲まれて生活することを好むことは知っているが、ドルイドの生き方について聞いた物語は、なぜか私の心に残っていた。最近、私はイフレから離れていると感じていた。もしかしたら、新たな視点を開くことでイフレの抱擁に戻る道を探す助けになるのではないかと思ったのだ。

ガレンへの旅は簡単だった。難しかったのはドルイドを見つけることだ。結局ある宿の主人の助けを借りて、ストーンロア・サークルのメンバーであるタイラと会うことができた。彼女は最初から親切だった。私が故郷から遠く離れて、とても居心地が悪かったことを見て取ったのかもしれない。

私は持っていたわずかな金貨を差し出して、この辺りの案内をしてもらうか、あるいは彼女の仲間たちについて話してもらおうと思った。彼女はそれを見て笑ったが、嘲る様子はなかった。ゴールドは彼女にとって使い道がないのだった。しかし彼女は、サークルの他の者たちに私を紹介すると言ってくれた。

タイラの村に入ると、大きな集まりが私の注意を引いた。彼らはいくつかの輪を作って、その中心に何かがあるようだったが、よく見えなかった。内側の輪には5人しかいなかった。その外側の輪には11人くらいだろうか。一番外の輪にはさらに多くの人がいた。儀式が行われていたのだ。私は折りの悪い時に来たのではないかとタイラに言った。

彼女は暖かく微笑んで、首を振った。長老が亡くなったので、あれはその葬式だったのだとタイラは説明した。自然死で、何も悲しむことはない。長老を失って寂しいのは確かだが、生は死と手を取り合って歩む。ありふれた感情だ。

私は葬式に出席してもいいかと尋ねた。タイラは困ったような顔を見せた。不安だったのかもしれない。彼女はガレンの外の生活についてある程度知っていたので、ドルイドの儀式を不快に思うよそ者がいることを理解していた。私は反射的に少しにやついてしまったかもしれない。ウッドエルフは外部の者を不快にさせる伝統に慣れている、と私は説明した。私が彼女に勝手な判断を押しつけることはないと。

集会に近づくと、私は言葉ではない低いハミングを聞いた。いくつかの音は重なり、輪になった人々の間を漂っていた。それはまるで森の中を吹き抜ける風のように、強くなっては弱くなっていた。

中央では、亡くなったドルイドが石板の上に裸で横たわっていたが、新鮮な枝と花びらで覆われていた。とっさに不快感を覚えたことを恥じている。彼らは生きている緑を育った場所から取り払ったのだ。だが私は自分に言い聞かせた――自分は他者の生き方を学ぶために来たのだ。私の信念を教えに来たのではない。それに、タイラには判断を押しつけないと約束したではないか。

レディンという名の女性が立ってグループに語り掛けていた。彼女は私に理解できない言語で話していたので、タイラが親切にも私のために翻訳してくれた。言葉を日記に書き記すのは失礼だと思ったので、レディンが言っていたことを私の大雑把な記憶からここに記しておく。

「死ぬのは正しいことです。死ぬとはかつて生きたということ。終わりは私たちに、いつも始まりがあることを思い出させてくれます。

歌い手は、この世界を流れている息吹で私たちを祝福することを望みました。その息吹から離れていくこと、それもまた祝福なのです。

私たちはこの世界の掟を知っています。命は命となり、それがまた命となる。だから私たちはエミルの死を受け止め、それを命へ返すことで彼を称えましょう」

という内容だった。レディンの声にはある種の確信があった。彼女はこれが物事のあり方だと知っていたのだ。

私は内側の輪のメンバーがローブからナイフを取り出すのを見た。彼らはそれぞれ、死者の体の一部分を切り取った。最初の女性は片目を、次の男性は耳を一つ。その後は、子供が足の指を1本取った。その女の子はいたずらっぽくもう一人の大人に笑いかけ、その大人も笑顔を返した。明らかに彼らの間の私的な冗談のようだった。おそらく死者の想い出と関係しているのだろう。

儀式は内側の輪が完了するまで続いた。その後は次の輪の人々が取り除く部分を選ぶ作業を始めた。私は見ていて落ち着かない気分になった。それはあまりにも親密だったからだ。死者の体から何を切り取るかという選択は明らかに、各人にとって何かを意味していた。私はとても個人的な決断を盗み見ていたのだ。

またしても、タイラは私を心配し出した。彼女は話をするために私の腕を取って連れ出した。

少しした後、彼女は庭の植物の茎を切る意味を知っているかと私に尋ねた。私は知らない理由を簡潔に説明した。彼女は多くの庭に植物を広げるための方法だと説明した。植物の一部を切り取り、新しい土に植える。うまくやれば、切った部分は根を生やし、新しい命へと育つ。

サークルの死者についても同じだと彼女は言った。当人に最も近しかった人物から始め、各人はその人個人にとって意味のある部分を選ぶ。選んだ部分は切り取って、それをどうするかは各人の自由だ。皿に乗せて外に置き、動物たちに食べさせる者もいる。木の近くの地面に埋める者もいる。あの子供は足指を乾燥させ、ペンダントとして身に着けるつもりだろうと彼女は予想した。

いずれにしても、部位は生者のもとに還る。動物は食事を得るし、木は栄養を得る。子供は祖父の想い出を抱えて笑い、森の中で遊ぶ。あの子供の選択は比較的珍しいと彼女は認めた。

それでも、サークルのメンバーは死者をどうやって自然の循環へ還すのかを自分で選択する。誰しも、歌い手への道を自分の心の中に持っているのだから…

私はそれ以来、この知恵についてずっと考えてきた。私なら自分のどの部分をイフレに捧げるだろう?もしかすると私の人生の目標は、自分のすべての部分がイフレに値するようになることなのかもしれない。

ドルイドの童話:シストレスのビーバーDruid Fables: Systres Beavers

アークドルイド・イレスによる語り 著

森の中である木が倒れ、シストレスのすべての動物が見に来ました。

それはビーバーとその連れ合いの仕業でした!まだ海水をポタポタさせながら海辺までやって来た彼らは、休む暇もなく川の隣にあった木を嚙みちぎったのです。ビーバーは確かに泳ぎがうまいことで知られていますが、ガレンに住む獣たちはずっと、わざわざアビシアンを越えてシストレスなんかに来る奴はいないだろうと思っていたのです。

「そんなに大きな音を立てる必要ある?」と鳥たちはさえずりました。

「その木を切り倒す必要はある?」とリスたちは鳴きました。

「川にダムを作る必要はあるの?」と狐は吠えました。巣が浸水したので、子狐を連れて逃げなくてはならなかったのです。

ビーバーたちはびっくりしました。「我々には皆と同じように、ここに家を作る権利がある!」と彼らは言いました。「でなきゃどうやって子供たちを食わせていくんだ?」

他の動物たちはぐうの音も出ませんでした。動物たちのほうが先にこの島に来て、この地に調和して生きてきたとはいっても、彼らは心優しかったので、せっかくここまで泳いできたビーバーたちを追いだすのは残酷だとわかっていたのです。狐は子供たちを連れて新しい巣を探し、鳥とリスは他にも住みつける木がこの島にはたくさんあると考えました。

「新しいお隣さんのために場所を空けてやらないとな」と動物たちは言いました。

時は過ぎました。シストレスに元々住んでいた動物たちはお隣さんのために場所を空けましたが、ビーバーたちは同じようにしませんでした。子供たちが成長すると、彼らは別の川で木を切り倒して自分たちの巣を作るため、出て行ってしまいました。

すると、ずっと前に出て行った二匹に何があったのか気になった他のビーバーたちがやってきました。彼らもまた森を切り崩し、どんどん大きなダムを作りました。シストレスの動物たちは、島を完全に追い出されるのではないかと心配になってきました。

するとある日、大地が揺れ始めました。ファイソング山が歌い出し、空から炎と灰が降り注ぎました。ビーバーたちの丈夫なダムでさえこの揺れには耐えられませんでした。ダムが決壊すると、強力な波が次のダムに送り出され、さらに次のダム、さらに次のダムへと続きました。かつて綺麗な水が流れていた場所に溶岩の川が流れ込み、まだビーバーたちが中にいるダムを焼き尽くし、あるいは煮えたぎる海の中に放り出しました。

生き残ったわずかなビーバーたちは、シストレスの他の動物たちに卑屈なほど親切にして残りの日々を過ごしました。でも彼らは、この諸島で最後のビーバーとなったのです。

何かを建てられるなら、いくらでも建てて構わないと思うかもしれません。でも自然の意見はいつも違います。自然が声を発するのは、時間の問題なのです。

ドルイドの童話:ファウンロードDruid Fables: Butterfly and Faun Lord

アークドルイド・イレスによる語り

昔、広大な森を支配する偉大なるファウンロードがいました。ファウンの中で一番強く大きく、誰も挑戦しようとはしませんでした。ロードは誰彼構わず、自分の力のすごさを自慢しました。ウサギは恐れ、狐は自分の草むらを踏んで通ってくる時に隠れていました。鳥でさえ、近づいてくるのを見ると木から飛び去っていきました。

ある日、ファウンロードはすべての動物を、霧の立ち込める高い山のふもとにある崖に集めました。声が動物たちの上に轟きました。

「俺はこの森で一番強い生き物だ」とファウンロードは誇り高く宣言しました。「誰も俺を倒せる奴はいない」

動物たちは全員、同意するようにうなずきました。

「俺が常にこの森を支配するんだ」とファウンロードは続けました。

別の声が割り込みました。「私も強いわよ!」

ファウンロードが振り向くと、近くに小さな蝶が浮いていました。蝶は絶えず羽をパタパタさせていました。

ファウンロードは嘲笑い、手を振って蝶々を追い払おうとしました。

「お前はこの森でも一番無力だ、消え失せろ」と王様は言いました。

「そんなことはないわ!」蝶は退きませんでした。「今すぐあなたを倒すこともできるのよ!」

何匹かの動物が笑いました。他の動物たちはその大胆さに驚きました。ファウンロードは唸り声を上げ、蹄を地面に食い込ませて蝶に向き直りました。

「ならやってみろ!ひねりつぶしてやる!」と王様は叫びました。

他の動物たちは蝶がファウンロードに向かって飛んでいくのを見て恐怖しました。ファウンロードは蝶を捕まえようとしましたが、蝶はとても素早く、羽を揺らして崖の端っこのほうへ飛んでいきました。ファウンロードは蝶を追いかけ、手を右に左に振り回してつかみ取ろうとしました。

蝶は毎回、爪をぎりぎりのところで避けました。蝶は風に乗って優雅に飛びまわり、ファウンロードをてんてこ舞いにさせました。ファウンロードはイライラして唸りました。

「こんなことで俺を倒したつもりか」とファウンロードは言いました。「単なる嫌がらせではないか!いつまで続けるつもりだ!こっちに向かってこい、虫けら!」

そこで蝶はファウンロードの鼻先に止まりました。

ファウンロードは驚いて瞬きしました。あまりに驚いたので反応できなかったのです。ファウンロードは息を吸い込み、激しいくしゃみをしました。その力がとても強かったので、崖から転げ落ちてしまいました!

蝶はファウンロードが崖から消えると同時に、何事もなく飛んで戻ってきました。動物たちは喝采をあげました。

自然は予測がつかないものです。一番小さな生き物でも巨人を倒せるのです。小さな火花が山火事を引き起こすこともあります。イフレの領域には、軽く見てよいものなどありません。強い者は決して傲慢になってはならないのです。

ドルイドの童話:誇り高きファウンDruid Fables: The Proud Faun

アークドルイド・イレスによる語り

ファウンは森で最も賢い獣でした。その蹄は素早く軽やかで、滑り落ちることも地面に足をつけることもなく、岩から岩へ飛び移ることができました。毛皮は滑らかで輝いていました。二本の角は美しく曲がり、完全な左右対称になっていました。ファウンはそういうことを全部知っていました。そして、自分の頭がいいことも知っていました。森の他の獣たちを簡単に言いくるめて、従わせられることも。そして波の上に泡が集まるように、すぐ考えをまとめられることも。

ある日、ファウンは茂みを跳ね回っている時、罠を踏んでしまいました。突然ミシッという音がして、罠が蹄に巻きつき、締めつけました。驚いたファウンは罠にかかった蹄ごと足を蹴りだし、絡まって森の地面から少し離れた位置にぶら下がってしまいました。

ファウンはもがき、力強い足で蹴りましたが、ロープはしっかり食い込んでいました。バタバタと身をよじると、ロープはファウンがとても誇りにしていた美しい巻き毛に絡みつき、引きちぎってしまいました。ファウンは宙ぶらりんになったまま、涙を懸命にこらえました。

森の動物たちの中でも一番小さく静かな蛇が、ファウンのすすり泣きの音で目を覚ましました。「ファウンさん、どうしたの?」と蛇は尋ねました。

蛇が近くにいたことに気づいていなかったファウンは、すぐ我に返りました。「別に何でもないのだ、蛇よ」。毛皮も蹄もない獣に弱みを見せるなんて、ファウンのプライドが許さなかったのです。

「空中にぶら下がっているようだけど」

「そうしたかったのだ。昼寝をしようと思ったが、地面ではゆっくり休めなかったのでね」

「足首のあたりにロープがあるけれど」

「あるに決まっている。他にどうやって自分を高く持ち上げるのだ?お前の弱い頭では理解できないだろう」

蛇はもう一度だけ尋ねてみました。「降りるのを手助けしたほうがいい?」

「助けを借りてどうなる?お前には手も蹄もないじゃないか。たとえ助けてもらおうと思っても、お前には助けられないだろう」

「そうか。それなら、私はもう行くよ」

ファウンは蛇が去っていくのを見ながら、自分のプライドと必死に戦っていました。近くに他の獣は見えないし、吊るされているおかげで目がくらみ、苦しくなっていたからです。ほとんど考えることもできませんでしたが、何かしなければなりませんでした。

「蛇よ!」ファウンは叫びました。

「何だい?」、と蛇は答えます。

「もし地面にロープの結び目が見えて、それをほどきたいのなら、我慢しなくてもいいぞ」

蛇はファウンと会った時の傲慢さを思い返しながら、意地の悪い笑みを浮かべました。「でもどうしてそんなことをするのかな?ロープの結び目をほどくなんて。あなたのお休みを邪魔したくないよ」

そして蛇はファウンから去っていきました。森で一人、空中に吊るされたままで。ちゃんと助けを求めることもできないくらい、プライドが高い自信家だったのです。

ドルイドへの不当な非難Druid Scapegoats

「嵐とひまわり」におけるドルイドへの偏見の検討
エルダータイド・サークル、ドルイド・ニヴィエンヌ 著

フィービー・パジャウドはシストレス諸島で休日を過ごす恋愛好きの読者の心に訴えるため、「事実を基にした」歴史恋愛小説を執筆した。この作品から同名の歌も生まれている。この物語の目立たないながらも否定しようのない成功は、ジャコア・デュフォートによる反論と、彼の祖先の「真実の物語」の主張を呼び起こした。この作品はフィクションであり、一度たりとも実名に言及していないにもかかわらず。興味深いことに、どちらの話でも実在するエルダータイド・サークルの名が言及されている。私がこれから論じるのはこのサークルについてである。

まず、事実を確認しよう。リゼッテ・モーナードとアルノー・デュフォートは第二紀初期にシストレスに生まれた。それは二人の一族の家系図を、ナヴィール城のトーナメントの日付と合わせれば容易に確認できる。ナヴィール城のトーナメントの記録から、リゼッテ・モーナードが確かに騎士であったこと、彼女が第二紀42年トーナメントのチャンピオンであったことがわかる。注目すべきは、物語の重要な証拠の一つが見つからない点だ。すなわち、手紙である!この恋愛の記録が隠匿されたか、破壊されたのはなぜだろうか?この点は後に検討しよう。

私はモーナード側が語る物語を聞いたことがあるが、似ているのは一族の内で語り継がれてきた点だけである。彼らの物語では、アルノーの剣に毒を塗ったのがドルイドではなく、デュフォート家の弟アンデールだった。これは一石二鳥の計画だった。高貴なるリゼッテと無能な兄を一挙に始末し、ライバルの一族を弱体化させると同時に自らの一族の中で地位を確保できるわけだ。アルノーはアメノスに送られ、そこですぐ一番高い崖を探して飛び降りた。狡猾なデュフォート家は人々に愛されたガレンの娘を堕落させ殺した、不実な悪者として描かれている。

だが、モーナード側の物語でさえ、恋人たちがドルイドの介入によって追い詰められたと主張しているのは事実だ。この点についての議論はほとんど見たことがない。あるいはジャコア・デュフォートの空想的な考えについても同様である。リゼッテ・モーナードの正体が…ドルイドなのか?魔女なのか?彼はどちらとも決めかねているようだ。いずれにせよ、この物語のそれぞれのバージョンで、ドルイドは本土のブレトンにシストレスを去るよう求める、正体不明の怪物であるという感情が込められている。

これに関する私の意見は、それの何がおかしいのか、だ。ドルイドがこの島に住んだ最初の者であることを考えれば、それほど大きな要求だろうか?確かに空想的な考えではある。だがドルイドの観点からすれば、理不尽なものではない。

また、非ドルイド文化に基づいて判断できる内容でも、この二人の悲劇の恋人たちの物語の矛盾点を明らかにできると思われる。
リゼッテとアルノーが第一子であることを考えると、一方の手で他方の嫡子が事故死したのに、この家の間で全面戦争が引き起こされなかったことになる。そんな話を本当に信じてよいだろうか?

それに二人が家系図に記されている時期に死亡したのだとすれば、彼らはどこに埋葬されたのか?

そして、最後の疑問がある。対立しているにもかかわらず、なぜ両家はドルイドが何らかの形でリゼッテとアルノーの末路に責任がある点で意見を一致させているのか?

恋人たちの観点を想像してもらいたい。公的に添い遂げる選択肢はない。シストレスから一緒に逃げることは不可能であり、ブレトンがすぐに適当な見合い結婚を用意する民族であることを考えれば、どちらかが一番財布の重い金貨男爵へ家畜のように売りに出される前に、素早く手を打たねばならなかったはずだ。

ここで認めておくが、私のエルダータイド・サークルの口承の歴史では、確かにこの恋人たちの間の手紙を運んでいるし、それ以上のこともしている。おそらく我々は彼らの結婚を執り行い、ガレンとハイ・アイルから彼らを隠したのだろう。実際、シストレスには脱出不可能とされる島が存在している。

そう、私が言っているのはアメノスだ。考えてみよう。二人の家を統合させる契約が破られることがあれば、おそらく死に帰結する。つまり、彼らは自らを良心の牢獄に閉じ込めたのだ。これは彼らの家族に強力なメッセージを送りつける、優れた計画だった。

むしろ、強力すぎたと言うべきかもしれない。

第一子が共に家族の名を拒絶し、一緒になれる島から実質的に出られないよう自らを縛ったのだ。私が非ドルイドのブレトン文化について知っていることからすれば、このような事件は間違いなく破滅的なスキャンダルであり、本土にまで届く余波を巻き起こすだろう。これは生涯の敵同士が、双方の合意の上で一つの物語を作るに至るほど強力なものである。すなわち、両家の子たちは互いの手で死に、かつドルイドが彼らを追い詰めてそうさせたという物語だ。

リゼッテとアルノーについてだが、名を捨て、本土の習慣も捨ててアメノスのドルイドとしての生を受け入れたことで、長く幸福な生涯を送ったはずだ。それほど考えられないことだろうか?

私はあり得ることだと思うが、同意してくれる人は少ないだろう。

ドレッドセイルの脅威Dreadsails: Threat to the Isles

街の警備隊長殿

これを書きたくはありませんでした。ここにいる者は皆まっとうな市民だと思っていました。当然、ドレッドセイルのような海賊どもが我々の生活に及ぼす危険を承知していると。私は間違っていました。

造船所で一日働いた後、酒場〈うんざりしたオルナウグ〉に座ってエールを飲んでいた時、ダミエン・ギニーズが大きな口を開けてこう言うのが聞こえたのです。「ドレッドセイルが欲しがっているものをくれてやったらどうだ?ヴァスティルを明け渡す。俺たちはどこでもやり直せるさ」

ヴァスティルを明け渡す?あの男は街を明け渡せば襲撃が止むとでも思っているのでしょうか?奴らが欲しいのは土地ではない。奴らが港を襲うのは、ヴァスティルに住みたいからではないのです!

ドレッドセイルに区画を渡したら、奴らは軟弱と思い、我々が諦めた証と見なすはずです。ヴァスティルの路地が奴らの手に落ちたら、もう攻撃が止むことはありません。我々が全員死に、奴らがガレンを海賊の隠れ家か何かに変えてしまうまでは。

だから何があっても、ダミエン・ギニーズのような愚か者の言葉に耳を貸してはなりません。海賊の要求に屈してはいけない。そしてモーナード家を信じ続けてください。彼らは我らの街を守り、悪党どもを追い払ってくれるのですから。

忠実なる市民、クリストフ・アリエル

ドレッドセイルへの命令Dreadsail Orders

ドレッドセイルよ!

私はお前たちに安息の地を約束した。今、我らの新たな故郷への道が目の前に開けている。私はガレンの強大なドルイドと取引した。その人物が、島で我らが要塞の確保を助けてくれる。

見返りとしてその人物は敵対するサークル、エルダータイドが所持する、ある遺物の入手を求めている。島の東岸を襲撃し、その遺物を探せ。見つからなければ、捕虜を捕えて尋問し。エルダータイドのドルイドの中に、伝承の語り部がいるはずだ。探し方を知っているだろう。

俺を失望させるな。ドルイドの遺物だけで、新たな家が手に入るんだぞ!

シーロード・ナロス

ナヴィール城の騎士The Dame of Castle Navire

船乗りたちよ、集まって耳を貸せ

激しい愛の物語を話そう

私は略奪者と戦い、極寒のスコールにも耐えた

だがナヴィールでの試合で恋に落ちた

伝令の布告を聞いて、我々は遠くから来た

山の崖から、寒い海辺から

腕を掲げ、我らが愛する人を称えた

ナヴィール城の騎士となった人を

巻きついた船の綱よりもがっしりした筋肉

「戦艦の一撃」とあだ名された右手のフック

彼女はゴンファローネの路上で孤独に育ち

一度もトーナメントで負けたことがなかった

伝令の布告を聞いて、我々は遠くから来た

山の崖から、寒い海辺から

腕を掲げ、我らが愛する人を称えた

ナヴィール城の騎士となった人を

汗でもつれた髪の毛で、彼女は剣を掲げ

その切っ先をナヴィールの騎士団長に突きつけた

「私はすべての騎士を倒し、すべての試練に打ち勝った

ハイ・アイルで一番強い者に馬上試合を挑みたい」

伝令の布告を聞いて、我々は遠くから来た

山の崖から、寒い海辺から

腕を掲げ、我らが愛する人を称えた

ナヴィール城の騎士となった人を

蹄が叩く音と声援に囲まれ、二人は激しく戦った

壊れた盾は血まみれの中庭に投げ捨てられた

老いも若きも、男たちは彼女の死を恐れた

二人は激突し、我らは全員息を止めた

この老いぼれの海賊はもうずっと

涙を流したことなんてなかったが

砂埃が収まり、彼女の姿が現れた時は

海を贈れそうなほど感激した

伝令の布告を聞いて、我々は遠くから来た

山の崖から、寒い海辺から

腕を掲げ、我らが愛する人を称えた

ナヴィール城の騎士となった人を

ナヴィール城の騎士となった人を

ネリへのメモNote to Neri

ネリ、

忙しくしているようだが、本当の任務のために少しは体力を温存しておけ。

ミナヘルはあのエロリエンとラニウィスの馬鹿どもが何をしたのか、はっきりするまで閉じ込めておきたいと言っている。奴らは古いドルイドの部屋にいる。俺たちが普段、酔いつぶれたり暴れたりした船乗りを、酔いが醒めるまで閉じ込めている場所だ。シーウィッチよりも先に、奴ら同士で殺しあわないよう見張っておけ。今は奴らに、それなりに元気なまま生きていてもらわねばならん。

ミナヘルは何だか知らんが奴らが起動させたものを元に戻すため、二人を生かしておく必要があると何度も念を押している。ミナヘルは奴らの愚かさに怒り狂ったかと思えば、急に冷静になる。そういう時は、彼女に魅力を感じるよ!普段なら恐ろしい存在なんだが。しかしドルイドが不気味な儀式をしていた場所にあった古代の遺物を使ってみようと思うなんて、相当な馬鹿だな。

それはそうと、お前の新しいおもちゃに嫉妬したほうがいいか?

モリグ

バカロ卿の日記Lord Bacaro’s Journal

〈直近の記述が以下に記されている〉

当初、ハイ・アイルとガレンでの失敗には怒りが収まらなかった。成功を確実にするためあらゆる準備をしたのに。同盟の指導者たちは海で死ぬはずだったが、奴らはしぶとかった。そして魔導師は全旗の小島で奴らを仕留めることに失敗した。レディ・アラベルの勇者があの愚か者を殺していなかったら、私が始末していたところだ。

さらに奴らはガレンでの計画も阻止した。モーナード家は倒れ、私は統一されたドルイド帝国を味方につけているはずだった。そして揺るぎなき者の会を解散させ、超越騎士団に置き換えるはずだった。

魔導師は傲慢すぎたし、アークドルイド・オルレイスは臆病すぎた。他の者にまた裏切られるのはごめんだ。新たなドルイド王が立ち上がり、予言を実現して聖なる象徴を手にするべきだ。

私はこの瞬間を常に目指してきた。これは私の血の遺産なのだ。私はドルイド王カソレインの最後の生きた末裔。我が母の血筋により、ブレトンの遺産は私が手にするべきだ!私は自分が権力を集中させて計画を練っている間、しばらくはオルレイスに統治を任せてやるつもりだった。だがあの女は弱すぎた。今、私が足を踏み出さねばならないことがわかった。ルビーの玉座の腐敗に代えて、純粋なる蔦の玉座を置かなければならない。自然もそれを求めている。

王の象徴を手に入れ、ファイアソング山の真の力を目覚めさせたら、今の秩序など炎と灰の中に沈めてやる。そして灰の中から新たな秩序が立ち上がる。脆いルビーと石ではなく、絡みつき成長し、広がっていく茨と蔦、根の秩序だ。新たな緑の時代が幕を開け、古い時代の血を糧とするだろう!

ファウンズ・チケット調査メモFauns’ Thicket Research Notes

ドルイド・マデナ、ファウンズ・チケット

観察 45:
ファウンは目立たないながらも厳格な階級の下で生きている。群れはオスとメスのつがいによって率いられ、おそらく指導者のつがいに報告する副官たちを見分けられると思う。その下には食料を探すファウンや若者の世話をするファウン、危険を見張るファウンがいる。

観察 46:
すべてのファウンは明確にベリーと果物を好むが、最も若いファウンが常に、手に入る中で最も熟した食料を与えられる。これまで群れの中では見られなかった利他的行動である。

観察 47:
ある副官が群れを指導するメスと普段より長い時間を過ごしている。

観察 50:
ファウンには意識があるのか?これはガレンのドルイドたちの間で大いに議論されている。彼らは道具を使用する能力を示し、娯楽のためにゲームをする。しかしカラスも道具を使いゲームをするが、我々はカラスに意識があるとは考えない。ここでの観察を続けよう。この根本的な問いへの答えは、私の住居と海辺の間の距離くらいに、私の知性から遠く離れている。

観察 52:
ファウンたちは私の持ち物を漁り始めている。紙を踏みつけた者がいる。また別のファウンは、土に残った蹄の跡でわかるが、私の毛布めがけてわざとインクの瓶をひっくり返したようだ。この程度の被害で済んだことを喜ぶべきなのだろうが、そんな気にはなれない。毛布の染みはもう落とせないだろう。

観察 53:
指導者のオスが下剋上を狙う副官に気づいた。今夜は群れから多くの鳴き声が聞こえる。彼らの争いと議論で、私の休息が妨害されるのではないかと不安だ。

観察 60:
ファウンの戦闘における様々な戦法の図を書いた。機嫌の悪いファウンと戦う羽目になったら、彼らの蹄の威力についてより正確な予測ができるだろう。

観察 61:
狡猾な副官は群れから追放された。彼が肩を落として夜明けに去っていくのを見た。私も夜は眠れず辛かったが、あのファウンは間違いなく、それ以上に辛い思いをしたはずだ。

観察 63:
いくつかの石に警告と呪いの言葉を刻んでおいた。ファウンは私の怒りを恐れはしないだろうが、ドルイド魔術の匂いは知っている。私の住居は安全だ。今のところは。

観察 67:
指導者のつがいは宮廷での王や女王のように振る舞っている。彼らはチケットを大々的に巡回し、自分たちの優れた毛皮と、群れのファウンに対する支配力を見せびらかしている。若いファウンたちが女王に花や収穫したばかりのベリーを持ってくるのもこっそり見た。王は自分の領地を視察し、群れの安全を守るために歩哨を増やすべき場所を指図した。見事な光景だったし、彼らが複雑な階級を有しているという、私の信念を強めてくれた。

観察 70:
これは茶番だ。ファウンたちは私が観察しているのを見て、宮廷生活の真似事をしようと決めたのだ。王と女王だって?彼らは互いを好きでさえなかった。私が巡回を観察した後、「宮廷」のある若いメンバーが私のほうを向いて忍び笑いを漏らしたのに気づいた。彼らは領地を視察していたのではなく、チケット中を歩き回って、私によく見えるよう取り計らっていたのだ。

私はここに留まりすぎた。夜が明けたらすぐグリマーターンに出発しよう。ファウンたちが私をからかっていただけということにより、私の仕事はすべて台無しになってしまった。

ブレトンの遺産Legacy of the Bretons

ステファン・モーナードによる一連の考察

ブレトンとして学術を学んだ貴族であり、ガレンのドルイドと共に学んだ者として、私はしばしば自分の本当の素性について考える。要するに私はいつもブレトンであるとはどういうことか、我々の先人たちはどのような遺産を残したのかを理解しようと努めている。それ以上に重要なのは、後に来る者たちのために我々がどのような遺産を残すべきかということだ。

モーナード家の子でありブレトンである私の場合、どちらの遺産の方が大きく、今日の私を形作っているのだろう?それよりも、私はどちらの側を望むのだろう?人間でありエルフでもあるという私の二重の性質は、私の血管を流れる血に由来するのか?ブレトンは我々の歴史の初期、望まれぬ混血種と考えられていたが、我々はその暗黒時代を乗り越え、ハイロックと諸島の中核をなす民となった。だが、そのことは何を意味しているのか?私は人間か、それともエルフか?それとも合わさって新しい何かに、足したよりも優れた何かになったのだろうか?

現代のブレトンには二重の遺産がもう一対ある。騎士団の伝統と、我々が生まれ持つ魔術だ。それは我々の血の中に流れている。だがアルケインの呼び声は、我々の血筋を流れる唯一の魔術ではない。ドルイドの自然魔術は、ブレトンの出現からまだそれほど経っていない時代、ハイロックに最初のドルイド共同体が集まった後に生み出された、真の意味でブレトンが創った最初のものかもしれない。我々の魔導騎士や魔術師の魔術は独特な形式ながら、ドルイドの魔術と一定の類似を有している。呪文や儀式へ特に顕著に現れているが、アルケインが形式的な教えや魔術書に依拠するのに対し、ドルイドは自然の霊魂やイフレの神聖なる力に呼びかける。

これらすべてと関わるのは、古来よりの戦いである。すなわち、どちらの社会形態がブレトンをより代表しているのか?まずハイロックで発展し、それからシストレスに手を伸ばした騎士と城塞の家紋と栄光か、それとも自然の受容と純粋で飾り気のない生への呼びかけか、どちらがブレトン文化の真の証なのか?私はどちらの方式も、我々に共通の遺産を形成していると信じる。融合させて新しい、完全にブレトン的なものへ作り変える道を見つけたいと思う。それこそが正当なる遺産となるだろう。

ベライとモルモーBelaigh and the Molmor

上級歴史家、シリノ・ヘンター 著

全旗海軍がスラスに出航し、正義の稲妻のごとくスロードを滅ぼしたと一般に言われている。しかし、これが物語のすべてではない。スラスのスロードは無気力で臆病だったかもしれないが、彼らはハイ・アイルの造船所で形を取りつつあった破滅を予期していた。スロードは何度か巨大な海の怪物を解き放ち、シストレス諸島を攻撃させた。その中でも最強の怪物は、モルモーと呼ばれる獣である。

生存者の中には、滴り落ちる粘液に覆われた巨大なクジラと記している者がいる。また、タコのような触手でものを掴むと主張する者もいる。そしてモルモーを見た者の一部は、それぞれ騎士の槍よりも長い鋭い棘が、まさしく森となって生えていたと語っている。モルモーが泳げば、海は黒く泡立つ。そして海岸まで寄ってくると、その途上にあるすべてのものは粉砕される。

7年間、この獣はガレンの沿岸を荒らしまわった。全旗海軍の多くの船長がモルモーを倒そうとしたが、成功しなかった。ついに男爵提督ベンドゥ・オロは支援を呼びかけ、この獣を倒すことのできた者には誰であろうと、望みの褒美が与えられると約束した。

モルモーは狩ろうとしたほぼすべての者を溺れさせ、あるいは貪り食ってしまったため、最も勇敢な英雄でさえ躊躇した。しかしその時、無名の若いガレンのドルイドが前に進み出た。「私はエルダータイドのベライです」と彼女は男爵提督に言った。「その怪物を追い払いましょう。しかしあなたには約束を守り、私に褒美を与えてもらいます」

ベンドゥ・オロはすぐに同意したが、自分の約束について不安を抱いてはいなかった。ベライは20歳にもならないメイドであり、葦のごとく細身で、ボロを身にまとっていた。しかしこの若い女の態度の何かが、彼を困惑させた。そのためオロは自分の家から騎士を同行させ、彼女の行動を報告させることにした。

まずベライはガレンで最も高い丘に登り、その頂上から石の欠片を取った。そして彼女は島の森へ行き、最も元気なオークの木からドングリを拾った。次に、ベライは蒸気を噴き出す火口へ行き、灰を集めた。最後に、彼女は島の中心にある深い泉に行き、その清水を使って灰とドングリ、石を混ぜ固めた。「これで獣の相手をする用意ができました」と彼女は困惑する騎士に言った。

「濡れた土くれでどうやってモルモーを殺すつもりだ?」と騎士は嘲笑った。

「モルモーは自分で自分を殺すでしょう」とベライは答え、海辺に行って怪物を探した。モルモーを探すのは難しいことではなかった。モルモーは西の湾に浮かんで休んでいた。脇腹の部分から汚い泡が噴き出していた。乙女は湾を見下ろせる場所まで登り、怪物に呼び掛けた。「忌まわしき獣よ!私は小さな肉片だけど、あなたの腹を満たしましょう。来て私を食べるがいい!」

モルモーは彼女の叫びを聞き、急いでやって来た。そのあまりの素早さと恐ろしさに、ベンドゥ・オロの騎士は恐怖で転んでしまった。しかしモルモーが口を開けてベライを飲み込もうとした時、彼女は石と種、灰と水の塊を怪物の喉の奥に投げ込み、緑に呼びかけた。モルモーはあと少しのところでベライも飲み込んでしまうところだったが、彼女は横に飛びのいた。もう一度襲いかかる前に、大きな痛みが怪物の腹を襲った。

モルモーは咆哮を上げながらもがき、海に戻っていった。騎士が驚いたことに、以前は粘液が垂れていた穴から、生きた茨の蔦が噴出していた。怪物の触手や脇腹は石のようになり、急速に海底へと引きずりこまれた。そして突き出していた棘は木に変わっていた。ほんのわずかな間に、モルモーは海の中で大岩に変化し、海草で覆われ、小さな森を生やしていたのだ。

「終わりました」とベライは騎士に言った。「さあ、あなたの指導者のところへ連れていって」

騎士は求められた通り、ベンドゥ・オロに見たことをすべて伝えた。男爵提督はベライを見て頭を下げた。「約束は守ろう。望みの褒美を言うがいい」と彼は言った。

「ガレンの生きた木を切ること、石を壊すことをやめてください」と彼女は答えた。「あなたたちの木こりと鉱山労働者を呼び戻して。この島をあなたたちの艦隊を作るために利用してはなりません」

ベンドゥ・オロは無念そうにため息をついた。ガレンの力強い木々と豊富な鉱脈があれば、全旗海軍の建設に大きな助けとなっただろうに。しかし約束はすでになされた。そして彼は約束を守った。「よかろう」とオロは答えた。こうしてガレンは斧とつるはしによるこれ以上の被害を免れたのだった。

ベライについて、これ以上の物語は伝えられていない。だがモルモー島はガレン西岸沖の海に今でも残っている。

ヘレニー卿の冒険Dame Helenie’s Quest

モーナード家のヘレニー卿による、ヴァスティルの宝石を取り戻す危険な冒険を成功させた英雄物語。アルバトロス騎士団のランディル卿によって記録された

悪しき盗賊の一団が、モーナード城の衛兵たちを騙すことに成功した。無謀で傲慢ではあったが、盗賊たちは宝物庫への道を見つけだし、ヴァスティルの貴重な宝石を盗む程度には巧妙だった。盗みを働く間に血は一滴も流れなかったが、モーナード家に対する侮辱が無視されることはなかった。

ヘレニー卿は勇敢にも盗賊たちを追いかけることを志願した。彼女は二週間で盗賊どもを裁きにかけると約束した。モーナード家はこれを認め、旅のための物資を彼女に与えて送り出した。
ヘレニー卿は城を去ると、三日間盗賊たちの痕跡を追った。ヘレニー卿は馬に乗って進んだが、海からやって来た激しい嵐に巻き込まれ、ガレンの深い森へと逃げ込んだ。そこから彼女は道を見失わないため、機転と地形についてのわずかな知識を用いなければならなかった。彼女はスプリガンやファウンなど、自然に潜む凶暴な敵と戦い、眠る時はすぐに飛び起きて戦えるよう、剣を膝の上に乗せた。

盗賊たちにはモーナード城を出た後別々の道を行くほどの知恵がなかったので、ヘレニー卿は簡単に彼らの痕跡を追うことができた。盗賊たちは愚かにも、ガレンの自然深くにあるドルイド集落の近くにいれば、モーナード家も追手をよこすまいと思い込んでいた。だがヘレニー卿はそんなことで怯むような人間ではなかった。それどころか、彼女は道の途中で数人のドルイドに話しかけ、盗賊を見なかったかと尋ねた。大部分のドルイドは友好的で、貴重な情報を与えてくれた。彼女を追い払い、明確に敵意を見せた者はごくわずかだった。そのような障害に出会った場合でさえ、ヘレニー卿は礼儀正しく話し合いで解決した。彼女の任務はモーナード家のために犯罪者に裁きを下すことだけだ。それ以外は島の何も乱すつもりはなかった。

旅の10日目、ヘレニー卿の食料は残り少なくなり、馬は足を引きずるようになった。彼女は馬を休ませた。盗賊たちが野営した場所はすぐ近くにあることを知っていたからだ。彼女は盗賊たちの不意を突くため夜明けに起きた。影のように音もなく、ヘレニー卿は盗賊の野営地に忍び込み、一番近くにいた盗賊の首に短剣を突きつけた。彼女は口を開くなと言い、盗賊の手足を縄で縛った。そして彼女は他の盗賊たちに互いを縛り上げるよう命じた。その間もずっと、最初の盗賊の喉元に刃を突きつけながら。

盗賊たちを見事に捕えた後、ヘレニー卿は彼らの馬を集めて、盗賊たちを全員ヴァスティルまで送り届けた。彼女は大股で街を歩き城へ向かったが、見てもほとんどヘレニー卿だとはわからないほどだった。彼女の鎧は泥に覆われ、ブーツからは葉が突き出し、顔には引っかき傷や泥の汚れが付いていた。十四日の間、街の外にいた彼女は野生の獣のように見えた。だがヘレニー卿はモーナード家に盗賊たちを突き出して、にやりと笑った。その後、ヘレニー卿は自らの手でヴァスティルの宝石を宝物庫へ返却し、彼女を称える祝宴が開かれた。

ボルガによるガレンの獣ガイドBolga’s Guide to Galen Beasts

ミストラルの女狩人、ボルガ・グラブール 著

編者注:オークの狩人ボルガは友人を訪ねるため、美しいガレンに来ている。そのため彼女はペンを取って紙に記すことにした。ここではボルガが彼女なりの面白おかしい方法で、ガレン島の獣について教えてくれる。弱い獣から強い獣までの倒す方法と、食べて旨いかどうかを。

* * *

フェニックスモス

綺麗だけど燃えている。食べるには最悪。

ドルイドは自分たちがこの蛾を作る物語を話す。本当なら大したものだけど、ボルガは疑わしいと思う。

育つまでは熱い芋虫。お茶に入れるとすぐ暖まる。

藁のテントにでも住んでいるのでなければ、危険はあまりない。その場合、水を用意すること。

* * *

ハドリッド

大きな蟹の民。喋る?よくわからない。

とても危険。強力な魔術と鋭い武器を持つ。集団で狩るために移動する。できれば海辺は避けるべき。

小さなグアルのような生き物を飼っている。サメのようなグアル。サメル?グアサメ?

倒せるなら、食べるととても美味しい。喋る蟹の民を食うのは間違っている?そういう話は学者に任せる。もっとバターが欲しい。

* * *

マグマフロッグ

カエル。でも火がついている。どうして燃えないのだろう?

長い舌で打ちつけ、長い距離をジャンプする。オスには硬い角がある。ヘラジカに似ているけど、尖ってる。

最初のマグマフロッグはイフレの道の物語から飛び出してきたという話を聞いた。どういう意味かはよくわからない。

意外なほど美味。秘密のレシピ:肉の切り身を冷まし、塩とニンニク、パプリカを振る。果物のジュースに一晩浸けて柔らかくする。サラダに加えて食べる。

* * *

ファイアニクサド

これは一体何なの?虫?人間?気味が悪い。

刺すし、噛む。あなたがボルガの兄弟より馬鹿なら、服も燃える。

危険というより害虫。食べるのにはまるで向かない。熱すぎて舌が火傷するし、味は灰のようだ。

ヴァスティルの人がニクサドに、音に合わせてハミングする芸を教えていた。いい音だった。\

* * *

キメラ

首が三つあるライオンみたいなやつ。多分会うことはないだろう。見たら走って逃げたほうがいい。急いで。

友達が昔キメラの世話をしていたけど、死んでしまったと言っていた。その話をする時、彼女は悲しそうだった。

食べようとするのは労力に見合わない。ボルガを信じて欲しい。

* * *

ファウン

鹿の民。ボルガは友達になりたかったが、殺されそうになった。

鋭い武器と欺きの魔術。避けたほうがいい。

鹿は美味しい。でもファウンを食べるのはどう考えても間違っている気がする。ハドリッドと何が違うのか?

ボルガに聞かないで。ボルガは真実を書いているだけ。

* * *

アッシュホッパー

大きなバッタ。あまり危険はない。

味はとてもいい!体は食べ応えがあり、たんぱく質は豊富だ。火にかける前に濃いソースを塗る。溶岩に直接突っ込んでもいい。それでも焼ける。

* * *

フォレストレイス

ボルガには不気味すぎる。物語は聞くが、見たことはない。探そうともしなかった。

これはボルガの推測だけど、多分味もよくない。

* * *

パングリット
旅をしていたら、あのサメグアルの名前がわかった。パングリット!

アリットに似ている。口に脚が付いている。歯が多すぎる。

可愛くて調教しやすいだけでなく、かなり美味。この点ではグアルに似ている。

ハチミツを塗って焼くか、スパイスを効かせたベリーソースがいい。

マッドクラブのモリスMolith the Mudcrab

ガレンの潮だまりにモリスというマッドクラブが住んでいた。
誰も関わりたがらない、気難しい蟹だった。
彼は6まで数えることができた、脚1本につき1つ
そしてシャウラスの卵の色をした、自分の殻を誇りにしていた

大きな恐ろしい爪で、彼は小さい動物に命令した
シースラグや魚、水面を走るものに
爪を打ち鳴らして、彼はこうしろああしろと命じた
そして言い返す者がいたら、彼は叩き潰してしまった

「ウニやヒトデや、その他の雑魚どもよ
この仕事をやらなければ、すぐさま放り出すぞ!
そこの海草を片づけろ、その真珠を磨け
そこのフジツボを削り取って、投げ捨ててしまえ!」

動物たちは全員従い、仕事をすべてやった
海辺に投げ捨てられないようにするためにはそれしかなかった
海辺は乾いて不愉快な場所、拾い上げられて食べられるだけ
厳しく働くか、誰かのシーフードになるかだった

ほとんどのマッドクラブは宗教なんて言葉を知らないが
彼らが働いている間、モリスは内面に深く目を向けた
彼は塩水に浸った心の中に、愛と似ていなくもない温かみを感じた
そして大きな蟹が空の上から見守っていると考えた

彼は石でできた大きな爪を持つ蟹を思い描いた
自分の殻と似たような、明るく輝く殻を持ち
それから名前も!そう、名前だ!重要な蟹には名前がある
ゾリスとかゴリスとか、そういう名前が

大きな蟹が見たらどんなに素晴らしいことだろう
モリスが海のこの部分を手懐けたことを
この潮だまりは彼のもの、すべては美しく秩序だっている
どの表面も手入れされ、完璧に磨かれている

するとモリスのささやかな家の上に影が立ち上る
泡を突き抜けてブーツの底が現れる
そのわずかな一瞬だけ、彼はあの方が来たと思った
お空の大きな蟹が、一泳ぎするために降りてきた!

だがそれはゾリスでもゴリスでもなく、名のあるどんな神でもなかった
ジャンヌとかいう名前の、ただの若い船乗りだった
彼女は無頓着に潮だまりを駆け抜け
足を置く場所なんて気にもかけなかった

そして船乗りはやって来たと思ったらいなくなり
動物たちはがっかりしたかと思うだろう
彼らは泣き、肩をすくめてため息をついたかもしれない
マッドクラブのモリスが死んだ哀しみのせいで

でも潮だまりは静かになって、誰も命令しなくなった
海草が絡まっても、伸びすぎても誰も気にしない
フジツボが居座って、真珠がくすんだからどうだって?
誰も通りすがりのカモメに放り投げられるのを怖れなくてもよくなった

だから誰も汚れに文句を言わなくなった
潮だまりには活気が戻ってきた、シースラグとその粘液も戻ってきた
海草たちもすくすくと伸びた
今じゃフジツボの家族も、モリスという殻に住み着いた

ミナヘルのメモMinahel’s Note

エロリエンとラニウィスのように愚かな連中が、他にドルイドの小物を見つけていないか確認しなさい。とりあえずアンキュルは眠らせるしかなかった。彼はあの遺物の効果により早くやられてしまった。愚かにもあれを素手で触ったから。

妙な感覚がするようになったら、部屋を離れなさい。水辺を歩いたほうがいいかもしれない。新鮮な空気とそよ風は影響を緩和してくれる可能性がある。私たちはこの遺物が引き起こすらしい、最悪の衝動を抑えられるものがないか探している。

この遺物の力を抑制する方法を見つけてみせる。実際、遺物の作用を恒久的にどうにかする方法を発見できる日も遠くないかもしれない。でもそれには時間がかかる。できるだけドレッドセイルには近づかないように。奴らの規則的な生活は影響をそれなりに緩和しているけど、私たちが取り組んでいる解決法が完成するまで、バランスを崩したくない。

ミナヘル

ミラの日記:サルベージMirah’s Journal: The Salvage

(水で損傷しているため、この日記の記述の多くはほとんど解読できない)

滑らかな肌の者が地図と夢を持ってくるたびに金貨をもらえていたら、ミラはガラクタと交換で愚か者どもに自分の船を貸し出す必要なんてなかっただろう。今日、ガルスという財宝を嗅ぎまわる者がありったけの船乗りに頼み込んで、スラシア海域に連れていってもらおうとしていた。あの哀れな愚か者は、船乗りがどれだけ迷信深いか知らないらしい。

* * *
今日、あのガルスとかいう奴がまた来た。ミラは彼の地図に一瞬だけ目を通した。もしかすると、これは本物かもしれない。

* * *
ミラの目が恐ろしいとガルスが言う。ランターンが消えると、獣の目のように輝くと。この者はそれが悪いことだとは思わない。ミラは財宝を探す滑らかな肌の者の相手をする時、恐怖が強力な道具になることを学んだ。それに、夜中にランターンを消して航海するのはこの者の発案ではない。ガルスの奴が言い張ったのだ。今奴は地図に目を凝らしているが、それでも考えは変わらないらしい。爪の鈍った愚か者め、顔にほとんど毛もないくせに。ジョーンとジョーデよ、導きたまえ!

* * *
死んだサンゴ礁の端まで来た。ガルスは興奮しているようだが、この者にとっては危険な海域で1週間を無駄にしただけだ。しかし、ガルスには水泳の才能があるらしく、水中呼吸の魔術の知識も持っているようだ。奴は一日の大半を海に飛び込んで過ごし、石の破片や残骸を引き上げている。富を約束し、もうすぐだと言っているが、怪しいものだ。

* * *
今日、妙なことが起こった。釣りをしている時、この者はガルスが息継ぎのため針の近くに上がってくるのを見たように思った。ミラはよくも夕飯を追い払ったなと叱ろうとした。奴が持ってきた石を投げようと手に取ったほどだ。だがそれはガルスじゃなかった。この者が瞬きすると、財宝探しの顔が見えたと思った場所には、午後の陽を浴びて白く色褪せたサンゴの死骸があるだけだった。

* * *
3日間潜り続けた後、ガルスはついに金目のものを見つけた。アレッシア帝国のシンボルが印璽された、ゴールドの詰まった袋だ。この滑らかな肌の者は、全旗海軍の船の残骸を見つけたのだ。この下にはまだ何が眠っているかを思って、ミラは唾を飲み込んだ。

* * *
日没になったのに、ガルスはまだ息継ぎに上がってこない。いくら魔術が使えるといっても、奴がこれほど長い間水中にいられるはずがないことをミラは知っている。その意味を考えると、ミラの胃がぎゅっと締めつけられた。もう沖に出ていても仕方ない。太陽は低すぎるし、海風さえなくなった。ガルスが朝までに戻らなかったら、この者はヴァスティルに戻るため船を出す。

* * *
船体がノックされている?気のせいじゃない。何かが水面下から、船の外側を叩いているのだ。一刻も早く夜明けが来て欲しい。

* * *
奴の姿が見えた。ガルスだ。風を受けて、もうサンゴ礁から遠く離れているのに、この文を書いているミラの爪が震える。奴は歪められていた。異形の抜け殻へと変貌させられていたのだ。地図もあの海域もクソ喰らえだ。キナレスよ、ガルスをレレスウェアに導きたまえ。

* * *
ノックだ。まだノックの音が聞こえる。

王からの命令Orders from the Lord

ドルイド・エドレルド、

ギャリックズ・レストの地下にある庭園が満開だそうだな。完璧だ。積荷のワインを受け取ったら、以下のように事を進めてもらいたい。

お前が新たに開発した毒をワインボトルのうち1本に加えろ。私はボトルがレディ・アラベルへの贈答品に入るよう取り計らっておいた。彼女は疑いを強めており、我々が行動しなければ揺るぎなき邸宅にいる密偵を発見されてしまう可能性が高い。彼女はこの希少なビンテージの誘惑に耐えられまい。ワインには目がない女だからな。

エリア女公爵に送る贈り物にも同じようにせよ。その後残りのボトルを木箱に詰めろ。配達人が外でお前に会う。配達された品を受け取り、ワインの木箱を配達人に渡せ。配達人はそれをナヴィール城に送る命令を受けている。すべて計画通りに行けば、アラベルとエリアは両方とも死に、その責任は当然、デュフォート家の不平分子に課せられるだろう。

遺物については、私が離れている間お前に保管してもらう。揺るぎなき邸宅が私の留守中に破損した場合は、館の地下室の下にあるトンネルに入れ。そこにある文書はすべて破棄しろ。その時が来るまで、我々の真の素性を明かすわけにはいかない。

超越の王

火山の霊魂Spirit of the Volcano

(ドルイドの歌)

我らが山の歌は煙と炎をもたらす
熱を恐れるなかれ、手懐けようとするなかれ
大地は割れ、炎は飲み込む
不吉な予兆も、怒りも責めてはならぬ

山の震える言葉に耳を傾けよ
山が声を発するたび、木々は折れ
波も山に当たって砕け、その足元で煮え上がる
山はどんな王にも膝を曲げることはない

火山の霊魂は自らの織り機で命を紡ぐ
炎が弾けるところには、今や花が咲き
大地が割れるところには、島が育つ
快晴の空は、分厚い煙を貫いて現れる

夜が明けると、我らは山を称えて歌う
鳥たちはその燃え盛る視線から帰還し
新たな命が焼けただれたふもとから育つ
その霊魂は我々の生を越えて続く

我がシストレスを見るためにTo See My Systres

1.
亡霊の海の海岸を抱きしめ
囁き声を聞くたび飛び上がる
カイネの麗しき眷属に最期のキスを
だが私はシストレスを見たい

(コーラス)
進め、波に揺られながら
陽光のきらめきに包まれて
輝く青い海を越え、船を走らせる
我がシストレスのために

2.
作業員を乗せダンマーの国を進み
サクスリールの早口言葉を歌う
モロウウィンドで酒を飲み、罪を犯しに行けばよい
私はそれよりシストレスを見たい

3.
レヤウィンへ船を走らせ
上品な乙女や紳士と出会う
トパル湾から錨を上げ
シストレスを見るため船を出す

4.
カジートの地には暖かい砂
尻尾と髭には心地よい
だが猫の仲間たちは絶えず喉を鳴らす
我が甘美なるシストレスへの愛のために

5.
ボズマーの乙女が私に船代を払った
力添えを頼むために
金さえもらえば一晩中でも船を走らせる
我がシストレスを見るためならば

6.
ヴァルケルガードで吟遊詩人と寝た
逆らえない魅力を持っていた
サマーセットに太陽が沈むなら
昇るのは我がシストレスの上

7.
地上から離れず、足にまめを作って世界を歩く
そんな男の話ほど悲しいものはない
だがアリクルの声援と共に、彼も船に乗り
祝福されし我がシストレスに出会うだろう

(コーラス)
進め、波に揺られながら
陽光のきらめきに包まれて
輝く青い海を越え、船を走らせる
我がシストレスのために

8.
ストーントゥース要塞でオークのクランに出会った
牙とでこぼこの髭を持つ者たちに
海辺を遠く離れれば、もう戦わない
休戦は我が愛するシストレスのため

(コーラス)
進め、波に揺られながら
陽光のきらめきに包まれて
輝く青い海を越え、船を走らせる
我がシストレスのために

9.
人生は船乗りの歌のように長い
私は死のことなど考えない
運命の波に逆らうつもりもない
だから私をシストレスに帰してくれ
我々をシストレスに帰してくれ

歓迎しよう、新たなる者よ!Welcome, Initiates!

ようこそ、超越騎士団の入団者たち!

全旗の小島での事件以来、多くの者が我々は敗退したと信じている。だが理想の炎はそう簡単に消えるものではない。お前たちは噂をたどって我々にたどり着いた。他の者たちも遠からず、我らの地を支配している戦争狂の王族に抗う大波に加わるだろう。

シストレスに蜂起が迫っている。ガレンの事件は始まりにすぎない。ドルイドの同志に加わり、我らの正当な所有物を取り戻せ!カソレインの夢は現実となり、我らは力を合わせてブレトンの遺産を取り返す!

私はそれを誓う。
超越の王

救い出してくれRescue Me

(哀愁漂う旋律)

鎮まった海の岸から遠く離れて
私たちは遭難した
悲劇だ
やむを得ずグログを節約した
キナレスが我らを解放してくれるまで

孤独な漂流の旅、笑顔も消えた
故郷からは遠く
未知の領域へ向かう
この先に起こることを予期して
航海士の心は重く沈む

[リフレイン]
空は赤く光り、パンにはカビが生える
絶望が皆の心をふさぎ込ませる
我らは運命に絡めとられた、もはや手遅れだろうか
この呪われた戒めから逃れるのは

道を示してくれるものもほぼなく
我らは皆で祈った
遠く、道を見失って
希望はいまだ残っている、我らの湾を見つけて
宴会の日までに、故郷へ帰りたい

[リフレイン]
空は赤く光り、パンにはカビが生える
絶望が皆の心をふさぎ込ませる
我らは運命に迷い込んだ、もはや手遅れだ
この呪われた戒めから逃れるのは

[虚ろなこだま]
戒め
[長く響かせる]
戒め

キナレスよ許してくれ、我が願いを聞いてくれ
私を解放してくれ
この海から
この旅路で残されたのは私だけ
誰か、私を救い出してくれ
誰か、私を救い出してくれ
どうかキナレスよ、私を救い出してくれ

禁じられた島、イフェロンY’ffelon, the Forbidden Island

高名な学者にしてあらゆる文化の学徒、イグナティウス・ガレヌス 著

これはシストレス諸島のドルイドの島を旅した記録である。

この島に着いた時から、私が歓迎されないかもしれないことはわかっていた。この島から離れようとしない、秘密に包まれたドルイドの知識を記録し保存するために必要なリスクではある。 危険があったとしても構わないと思っていた。しかし、危険はあらゆる場所に潜んでいる。そして、ハイ・アイルやガレンのストーンロア・ドルイドから受けたような歓迎はイフェロンで受けられなかった。

島と建物を研究した結果、私はこの地のドルイドと接触を目指した。彼らは私の報告をより詳細にしてくれるし、その導きがなければ報告を完成できないだろう。どんな学術文書にも文脈は要る。ストーンロアは歓迎してくれたが、エルダータイドはそうでもなかった。

しかし羽根ペンを手にイフェロンのドルイド、ファイアソングの元へ向かうと、当初は混乱された。次に無表情となり、すぐに怒りが続いた。彼らに挨拶してから無害な質問を始めたが、質問が進むごとに表情が険しくなっていった。質問に対する彼らの反応はメモして、沈黙を唯一の非ドルイドとのコミュニケーションとして解釈を続けた。その時、ついにあるドルイドが前へ出て来てこちらを指さしてきた。無意識の反応として、敵意がないことを示すため手を上げようとした。しかし、羽根ペンのインクが乾き切っていなかった。それは指を指して来たドルイドの目に飛び込んだ。ただの事故だったのだが。

その場を離れるのが最善だと感じて、ドルイドから離れようとした。一歩離れるたびにドルイドは追ってきた。杖を握り、歯を剥き出して。理解できないが、私を傷つけようというのだ!必死に雇った船に戻って、船長に出港を願った。残念ながら、ファイアソング山のふもとに住むドルイドからこれ以上の情報は引き出せなかった。しかし、学術研究にはよくあることだ。

後は、学者仲間に任せよう。

現代のブレトン:人間かエルフか?Modern Day Bretons: Man or Mer?

ヴァスティルの歴史家、フィリバート・ビューシャム 著

ブレトンの歴史はかなり錯綜しており、長年の間多くの学者たちによって議論されてきた。この著作が出版されてずっと後になっても、議論が止むことはないだろう。それが謎というものだ。

積年の議論はある問題に集約される。ブレトンとは何者か、人間なのかエルフなのか?一般的な理解で我々ブレトンはそのどちらでもあるとされているが、どちらが優勢なのかについては様々な見解がある。

私の調査はもう何度も行ったり来たりを繰り返している。私はブレトンにおける人間性の優位についてと同じほどエルフの血の優位を論じてきたが、次の朝になると考えが変わってしまう!だが、ようやく一方の側に足を落ち着けることができたと思う。すなわち、エルフの側だ!

いかにしてこの結論に到達したのか、説明させて欲しい。ブレトンの起源として最も広く受け入れられている説は、神話紀におけるネードとアルドマーの交雑を基盤としている。ディレニ・クランがハイロックに来た時、彼らは我々のネードの祖先を見出したが、その中でも特筆すべきはガレンのドルイドと呼ばれる、ドルイド王の一族を通じてこの地域を統治していた集団であった。ディレニ・クランが影響力を行使し統治を行うにつれ、我らの祖先たちは封建的制度を構築し、それは多少の変化を加えながらも今日まで続いている。ディレニとネードの子供たちは人間よりエルフに近いと考えられたが、ディレニの親たちに受け入れられるには至らなかった。完全なエルフから排除される程度の違いはあったのである。

幸運にも、この違いは彼らを人間種から排除するほど大きくはなかった。むしろ、この違いは彼らの地位を高めたようだった。この子供たちはネード社会の中で有利な地位を占めた。そうして共同体が築かれ、その中で人々は繁栄した。

現在、我らブレトンがエルフよりも人間であると信じる者の多くは、我々の祖先が有利な立場にあったとはいえ、他の人間としか婚姻を許されなかったという事実に依拠している。文書や絵、その他の記述によっても、この事実は長年の間、我々の血統に一定の影響を及ぼしてきたことが見て取れる。尖った耳や角ばった顔、細身の体、特徴的な目などのエルフの身体的特徴は徐々に消えていった。その論理は確かに理解できる!我々の中のエルフの血が、時と共に薄められていったという考えは理に適っている。いわば池の中に落ちた絵具の雫のようなものである。

だが、ここからが私の仮説だ。我々がいくらかでもエルフ的血統の兆候を有しているということは、それが今でも我々の中で力を持っている証拠である。我々と、最初のブレトンの祖先たちは無数の世紀を隔てている。我々の特徴は時と共により人間的になっていったが、我々のエルフ的性質が完全に消滅していないことは重要である。ブレトン出身の人間としか子供を生むことを許されなかったのであれば、我々のうちにほとんどエルフは残っていないはずだ。これだけ長い間、これほど明確にエルフの性質が生き残ってきたことは、その強さを物語っている。

この文書で私は、問題が割合ではなく、強さであると申し上げたい!以下の23章で、私はこの仮説を詳細に解説し、これまでに集めた調査をより整理された形で展開していく。

古代ドルイドの血脈Ancient Druid Bloodlines

第二紀541年、レディ・ラリーナ・マーチャドによって依頼された詳細な系図調査

網羅的な調査を終え、ある程度の確実性を持って言えることは、あなたの一族が常に感じていたことがほぼ間違いなく真実だということです。マーチャドの血筋は確かに古代ブレトンの血筋であり、ハイロックにハーフエルフ種族が最初に出現した時にまで遡ります。さらに今日知られているこの一族が、ガレンのドルイドたちの最初の艦隊と共に、シストレス諸島に到着したドルイドにまで祖先を辿れる明確な証拠を発見いたしました。第一紀にハイロックを去ったドルイドです。

その上、マーチャドはブレトン原始ドルイドの祖先の一部だっただけでなく、明らかに王族の血筋であったことも自信を持って主張できます。ドルイド王カソレインが、現在のハイロックを統治する貴族に比較しうる存在と考えるならの話ですが。それにヴォロラスの血筋について我々が知っていることを付け加えれば、あなたのご子息は両王朝で最高の部分を受け継ぐことになるでしょう。

マーチャド家の紋章が種と葉を蒔く三つの器として描かれていることの説明は、ドルイドとの繋がり以外にありうるでしょうか?

〈この後にはこの文書が書かれた日からガレンの原始ドルイドの古い時代までたどり直す、複雑な系譜の記述が続いている。最後のドルイド王カソレインが明らかに家系図の中に示されている。この文書が記された日の最後の記述は、以下のようになっている〉

レディ・ラリーナ・マーチャド、第二紀521年――
ルーカン・ヴォロラス卿、第二紀516年――
(第二紀538年に結婚)

バカロ・ヴォロラス、第二紀540年――

使者の報告Messenger’s Report

倉庫長はあのフードを被った騎士たちが、造船所を警備するためデュフォート家に雇われたただの傭兵だと言っているが、信用できない。実際、デュフォート家の紋章を身につけた作業員がここには誰もいない。

はぐれ騎士団が造船所を奪取しているという、バカロ卿が受け取った報告は事実なのかもしれない。この情報をすぐにバカロ卿に届けたいが、倉庫長は出発前に造船所を巡っていくことを強く求めている。断れば疑いを招くかもしれない。揺るぎなき邸宅へ戻るには、少し待たなければなるまい。

使者への対処Deal with the Messenger

騎士隊長

揺るぎなき者の会はダンカン・ジェニスという使者をデュフォート造船所へ派遣した。我々が造船所を引き継ぐことを確認し、バカロ・ヴォロラス卿に我々の活動を報告する命令を受けている。到着したら、始末しておけ。我々の存在が確認されたことは、できる限り長い間秘密にしておかねばならん。

デュフォート造船所は我々の部隊を再建するために必須だ。必要と思うならばどんな方法でも使ってよい。支配を維持せよ。

超越の王

司祭とドルイドの議論12Argument Between Priest and Druid Number 12

八大神の司祭アーナレルウェとストーンロア・サークルのドルイド・マクセロットとの対話。
ドゥニウス・ソシアによってヴァスティルの路上で聞かれ、後世のために記録された。

(注記しておくべきと思われるが、著者はこの宗派間の議論がいつ起こるかを日常的に予想できるので、スイートロールを持って見物に来ていた。彼らのやりとりは友人同士の議論より、貴族が好む馬上槍試合に近いものである。著者はこれを大いに楽しんでおり、すべての議論を立ち聞きしている)

「ドルイドよ!質問を受ける覚悟はいいか!」
「おお、友よ。大聖堂では元気にやっているかね?」
「面倒な挨拶はいい。お前はなぜイフレだけに尽くす?八大神が与えたもう恵みには敬意を払わないのか?」
「その言い方はちょっと酷いだろう」
「それは謝るが、質問の意味は明確だろう、ドルイドよ。なぜイフレが唯一崇拝に値する神なのだ?」
「そうだな、他の者が何を信じているかは知らないが…まあ、周りを見てくれ。こんなに美しいものを見て、跪きたいと思わずにいられるだろうか?これはイフレの贈り物だ。私は自分に見える贈り物に感謝している」
「それでは心が狭すぎるのではないか?」
「そんなことはない。ああ!キナレスやマーラも称えるべきだと言いたいのか?それらの神々もいいだろう。君が彼らを称える歌を歌うならどうぞご自由に。しかし私は君の神々にあまり訴えるものを感じない。正直言って、八大神すべてを称える時間を君がどうやって見出しているのかわからないよ」
「時間だって?八大神のそれぞれには定められた饗宴や祝祭がある。我々は彼らの御業をすべての物事の中に認め、求められる通りに感謝を捧げるのだ」
「それじゃ同じことの繰り返しじゃないか」
「繰り返し?何を言う、反復はニルンの自然秩序だ。季節は回り続ける車輪のごとく巡る。鳥や獣の群れは規則的に移住する。雨は予測のつく道を通って降る。崇拝とはすべて繰り返しなのだ」
「だから君には自然の荒々しさが理解できないのさ。自然の自発性と神秘がね。確かに、私たちはイフレが教えるとおりの季節に従う。だが君は祭典や祝祭に従っている」
「八大神は称えられることを期待している」
「もちろんだとも」
「神々の知恵と命令に異を唱えたら、私は一体何になってしまうだろう?」
「単に自分の使命に忠実な司祭じゃないか?」
「この議論に勝ったと思っているのだろう?」
「まあ心配するな。きっと次はもっとちゃんと準備してくるんだろう」
「また明日、いつもの時間に市場でだな?」
「もちろん。たとえイフレが与えてくださるハチミツのためでも、議論の機会を逃したくはない!」
「今度は、大聖堂で崇拝することについて、お前の考えを聞かせてもらおう」
「大聖堂の中で?草と木から離れて?風を避けて?そんなところでは祈る相手がいないじゃないか」
「いや、いるのだよ!お前が崇拝する森の騒音から離れれば、我々の内に働く八大神を見出すことができる。我らの善行の一つひとつのうちに、神々の声を聴くことができる。そして――」
「アーナレルウェ!議論は明日のためにとっておけよ!」
「これは失礼。ではまた」

次の祝典に向けてFor Your Next Celebration

宛先:ナヴィール城、エリア・デュフォート女公爵

デュフォート家の昇格記念日に、貴家の大好物のワインならばお喜びいただけるのではないかと思いました。これの入手がいかに難しいかは承知しております。どうぞ貴家のため、お父上のため杯を掲げてください。デュフォート家による諸島の諸島統治よ、永遠なれ!

差出人:あなたの崇拝者より、情熱と感謝をこめて

自然の秩序を受け入れることEmbracing the Natural Order

ドルイドと生活した都会人の報告、パリッセ・エルガラ 著

私はヴァスティルで育った。この街はいつでも私の故郷だ。私は石に囲まれて、子供の頃は街路に導かれて育った。だがヴァスティルに住むすべての者と同じように、私は街の外にある自然の物語を聞き、想像力を満たしながら育った。ヴァスティルは島のほんの小さな一部分だが、それでも世界のすべてと感じられるような場所だ。少なくとも私にとってはそうだった。そしてヴァスティルの外にあるものはすべて魔法のような未知の何かで、大人たちの穏やかな声から聞こえてくるものだった。

私は同郷の大部分よりもガレンの他の場所に魅了された。ドルイドたちの物語に対する私の興味は尽きることがなかった。結局、都会は自分に向いていないと判断した。私は物語の中と蔓地区で見た数人のドルイドのように、緑の丘と自然への献身を求めた。両親は少女の空想癖と受け止め、いずれは過ぎ去るだろうと思っていたが、それは間違いだった。

17歳の時、私は食料とお気に入りの杖だけを持って出発した。街の北にあるストーンロア・サークルの居留地グリマーターンを目指して。ストーンロア・サークルがサークルの中で最も友好的であり、ドルイドの生き方を求める者を歓迎してくれることを知っていたからだ。私は新しい生活を始める覚悟を固めて、自信たっぷりに進んでいった。

ストーンロア・ドルイドは物語に言われていたとおり優しく歓迎してくれ、すぐに私のための休息所を用意してくれた。最初の夜、私は長旅で疲れていたにもかかわらず、自然の音で何度も目を覚ました。正体のわからない獣の吠え声や、葉のこすれる音、流れる水の踊る音を聞いた。その次の日、居留地の中や周辺を通っている無数の道を探検していた時、私は木の葉の堆積を踏みつけてしまい、それが足中に広がる発疹を引き起こした。この病気を治している時、私は何か食べて体力を回復するように言われた。残念ながら、ストーンロア・ドルイドの食事は私にとってあまり食欲をそそるものではなかった。食べ慣れていない味が多かったし、食感も不快に感じた。それにまだ虫のことを話していなかった。私は生きたまま喰われかけたと言ってもいい。自分の体のどこかを掻いていなかったことは一瞬たりともなかったくらいだった。

グリマーターンで5日間過ごした後、私はもう限界だと思った。ドルイド・パリッセになる夢は、自然という恐るべき現実によって速やかに打ち砕かれてしまった。ありがたいことに、私が最も親密にしていたストーンロア・ドルイドはとても優しかった。自然の中で生きるのに向いていないからといって、何も恥じることはないと彼らは言ってくれた。私はヴァスティルに戻った。腹は空き、体はかゆく、疲れ果て、完全に自分へ失望していた。そして私はここに留まったのだ。

この報告は、私自身の成長のためだけでなく、私のようにドルイドの風変りな生活を夢見て育った者たちにとっても重要な意義を持っている。私は自分の中の若者の欲望を尊重し、ヴァスティルの外の大地を探検したことをよかったと思っている。大人になった自分は最終的に、自然に囲まれているよりも街の中で安全にしていたほうが幸せだと判断したが、少なくとも試してみるだけの勇気はあったのだから。

自然の霊魂についてOn Nature Spirits

アークドルイド・デュアナ 著

私たちドルイドは周囲の霊魂と特別な、不可逆のつながりを結んでいる。森や山、川に結びついた霊魂は私たちの生活にとって、人間と同じほど欠かせない存在である。私たちは他の人々に感じ取れない方法で霊魂を知るが、自然の霊魂を称え、理解しようと努めて生を送ってきた私たちでさえ、霊魂を完全に知ることはできない。それが彼らの存在の美点である。自然とは予測不可能で、不可知なものなのだ。どれだけ解読しようとしても、完全に理解することはできない。

だからといって、私たちがイフレの意思に従う霊魂について何も知らないわけではない。

一部の自然の霊魂が恐ろしく強大なことはわかっている。感情を持つ霊魂もおり、深い優しさや激しい攻撃性を示すことがある。また霊魂の中には比較的この世界に来て新しく、葉に溜まる朝露のように新鮮なものもいるが、ガレンを歩んだ最初のドルイドと同じくらい古い霊魂もいる。私たちは霊魂も人間と同じように迷い、途方に暮れることがあるのを知っている。霊魂はまた私たちが目的、あるいは場所に迷っている時は、導きの力ともなりうる。

しかし自然の霊魂との協調は、私たちが彼らに敬意を払わなければうまくいかない。自然の霊魂をその居場所から追いだし、無理やり働かせ、霊魂を意思に従属させるような真似をすれば(そのようなことが可能だとしても)、彼らと交信する希望は失われる。いかなる時でも、私たちは協力を求める霊魂のそれぞれを理解しようと最善を尽くさなくてはならない。この霊魂は守護者か?門番か?動かない石の霊魂に作物の生育を助けるよう頼むことはできないし、心優しい花の霊魂に捕食者から私たちを守るよう頼むこともできない。自然の霊魂と交信するにはまず霊魂に自らを紹介し、友情とも呼べる関係を築かなければならない。

霊魂はドルイド魔術の影響を受けるが、私は多くの場合、その手段に反対している。霊魂が苦しんでいるのでない限り、自然な状態に介入する理由はない。攻撃的な霊魂でさえ、変化させようとするより手を出さずに放っておいたほうがいい。それが真の道である。私たちが自然を支配できたとしても、この世界のためにはならないだろう。イフレは決してそんなことを望みはしなかった。それに誤った魔術が霊魂の性質を歪めてしまったら、危険でもある。

まとめると、私たちドルイドは自然を尊重し、すでに存在するものの調和を乱さないよう努めている。この大地や海に住む多くの霊魂と交信できることは私たちにのみ許された栄誉であり、そのことを決して軽く考えてはならない。

出荷ラベルShipping Label

ショアバード運送代理店
差出人:ダガーフォール
宛先:揺るぎなき邸宅

内容
防具屋〈雄鹿と馬〉から木枠箱6個

担当者:揺るぎなき者の会、マルガリーテ隊長

助けになる揺るぎなき手A Helpful, Steadfast Hand

市井の歴史家、アダンドラ 著

揺るぎなき者の会はシロディールの戦場と、タムリエル中の自然災害の発生地でその名声を築いた。バカロ・ヴォロラス卿によって創設されたこの会は治癒師や看護師、および物資を抱えたチームを必要に応じて移動させるための、小規模な騎士団によって構成されている。

バカロ卿は繰り返しこう述べている。「我々はできることをやっている。これ以上のことができる人数や資源があればいいのだが」

ブラヴィルの街近くでは、エボンハート・パクトとアルドメリ・ドミニオンの軍が激戦を繰り広げた後で素早く現地に入り込み、戦争による負傷者や避難民に支援を提供した。著者は兵士と市民に話を聞いたが、どちらも戦いで受けた負傷を、この会の治癒のテントで治療している最中だった。

「ここの善良な治癒師たちの手早い治療のおかげで、私の足が救われたのは間違いない。あのハイエルフの槍で貫かれた時は、この足を失うことになると確信していた」と、北の僻地から来たノルドの兵士ヘイルブリットは説明した。

「私は何かの呪文の爆発に巻き込まれたんだ」とブラヴィルの住民ルリウスは言った。「私の家も破壊されたよ。この会がなかったら住むところもなく、家族は飢え死にしていただろう。バカロ卿の慈悲に感謝する!」

「この戦争は忌まわしい」と癒し手プロールは言った。「若者の内臓を、手で握らずにすむ日が来るのが待ち遠しいよ。でもそれまでは、力の限り支援を続ける。やらないわけにはいかない」

その後、私はハイ・アイルにある揺るぎなき者の会の本部を訪ねた。ここは携帯可能なテントでは処置できない、より集中的な長期の治療が必要になる負傷者を扱う診療所を擁している。バカロ卿は一族の地所のかなりの部分を、この会が使用するために割いている。

「私はその力がある者は誰でも、可能な限り他者の手助けをするべきだと信じている」とバカロ卿は言う。「良心があるなら、そうせずにはいられないだろう?」

三同盟すべてが揺るぎなき者の会の中立性と優れた活動を尊重し受け入れているが、だからといって自分たちの防備を顧みないわけではない。私はこの点について揺るぎなき者の会の副官であり、騎士団のリーダーであるマルガリーテ隊長に話を聞いた。

隊長は次のように説明してくれた。「私たちのテントやキャラバンは食料や医薬品などの物資を大量に運んでいるから、野盗や怪物の標的になりやすい。だから、基本的にその時発生している戦争に参加している戦闘員を恐れる必要はなくても、私たち自身を守る必要はある。騎士の数は多くないけど、私たちのところで働く騎士たちはよく訓練されていて、勇敢すぎるくらいよ。私は彼らの指揮官であることを誇りに思っているわ」

あなたが戦争や飢餓、病気のために支援を求めるようなことがあれば、揺るぎなき者の会の治癒のテントに掲げられた特徴的な旗を探そう。「私たちは助けを必要としている者なら、誰も追い返すことはない」とマルガリーテ隊長は言っていた。

新たな成功を祝して!Congratulations On Another Success!

宛先:ゴンファローネ湾マンドレイク邸、レディ・アラベル・ダヴォー

またしても、あなたは予想を上回る偉業を成し遂げました!あなたの行いにより、三同盟の指導者たちが苦痛に満ちた死から救われたのです。これで和平は単なる希望に留まらず、実現する可能性が残されました。私の称賛と共に、この希少なビンテージをお楽しみください。これからもご健闘のほどを!

差出人:あなたの崇拝者より、情熱と感謝をこめて

生命の儀式の始まりRitual of Life’s Commencement

あらゆる生命が存在するのは、それ以前の生命が存在したおかげである。我々はすべての生物の喜ばしい創造を祝い、その歓喜に浸ることを奨励する。

適切な時期に、儀式は指導役の二人組と共に開始される。彼らの模範は風に舞う種のごとく拡散するだろう。情熱を分かち合うことは、生命の報酬である。

次の月の周期に、我々はこの力を受け入れる。完了すれば、その力は満たされ旅立つだろう。

捜査官ヴェイルとダークマストInvestigator Vale and the Darkmasts

捜査官ヴェイルは港に立ち、地平線まで伸びる青い海をじっと眺めていた。ガレンを訪れるのは初めてだった。彼女はもう何度もシストレスを旅行していたが、これまではいつもハイ・アイル止まりだったのだ。

「どう思う、捜査官?」と騎士団長が尋ねた。「これは恐るべきダークマストの仕業だろうか?」

ヴェイルはため息をついて、再び木の板の上に横たわった死体を見た。明らかに港で働いていたこの地域の人間で、海風と船の油の匂いがするたくましい作業員だ。今は残念なことに、死臭がそれに加わっていた。

「海の近くで出た災害や死人をすべて海賊やシーエルフのせいにするのは簡単だけど」とヴェイルは言った。「この犯罪にはシーエルフの略奪らしい形跡がないわね」

騎士団長は顔をしかめた。「確かなのか?アダラードは明らかにこの埠頭で殺された。それに彼に加えられた暴力を見てくれ。ダークマストがもっと悲惨な目に遭わせるのを私は見てきた」

「そのとおり!シーエルフ海賊が沿岸までやって来て、たった一度の攻撃で済ませるなんて聞いたことある?略奪も破壊もせずに?それにこの傷はサーベルや戦棍のような、ダークマストが使う典型的な武器によるものじゃない。この男は作業員のフックで殺されたのよ。そして犯人は哀れなアダラードが殺される前に、これを何度か武器として使っている」

その時バラリン・ルモンズという作業員が進み出た。邪魔をしないよう離れていたが、ヴェイルと騎士団長の会話が聞こえる程度には近くにいたのだ。「違う、俺はダークマストの船をこの目で見たんだ!」と彼は怒鳴った。「アダラードを殺したのはシーエルフだ!シーエルフに間違いない!」

騎士団長はバラリンとヴェイルの間に入り、厳しく、だがなだめるような口調で言った。「落ち着け、バラリン。お前の証言は聞かせてもらった。捜査官に仕事をさせてやれ」

「ちょっといい、騎士団長」とヴェイルは口を挟んだ。「バラリンだった?あなたのベルトにフックが垂れ下がっていないのが、どうしても気になるんだけど。有能な港の作業員で、フックを持たずに歩く者なんて私は知らないわ」

バラリンは目を細め、表情は険しくなった。「一体何が言いたいんだ?」と彼は詰問した。

騎士団長はヴェイルからバラリンへと目をやり、彼の表情もまた険しくなった。「質問に答えろ、バラリン。お前のフックはどこだ?」

バラリンは答えず、騎士団長を捜査官ヴェイルに向けて突き飛ばし、向きを変えて逃げだした。それを予測していたヴェイルはあっさりと横に移動してかわした。ヴェイルは何気なく手を伸ばして木箱から魚をつかみ取った。もちろん、朝の漁獲分の残りである。そしてバラリンに向かって投げつけた。魚は彼の分厚い首の後ろに気持ちのいい音を立てて直撃し、気絶させた。男は地面にぐったりと伸びてしまった。

「バラリンのフックを見つければ、凶器が見つかる。これはシーエルフの襲撃の結果じゃない」とヴェイルは説明した。「仕事仲間同士の口論が行き過ぎただけよ」

騎士団長は意識を失った作業員を縛り上げてから、ヴェイルに向き直った。「問題が我々の間で起きていることを認めるよりも、外から来たものだと信じるほうが楽だったという話のようだな」

ヴェイルは木箱から別の魚を選び出して匂いを嗅ぎ、袋に入れた。「夕食用にもらうわ」とヴェイルは言った。「報酬から値段分を引いてくれてもいい。まあ、あなたの言うとおりよ騎士団長。私たちは身近にいる人々を仲間だと思いたがる。安全だとね。でも私の経験上、ほとんどの殺人事件の犯人は犠牲者が知っている人物で、偶然出会った未知の悪党じゃない」

立ち去ろうと向きを変える途中で、ヴェイルは付け加えた。「でもだからといって、ダークマストに警戒しなくていいわけじゃない。奴らはあなたの作業員を殺さなかったけど、危険には違いない。さて、この魚の調理法を知ってる人を探しに行かなきゃ。誰かいい人を知らない?」

太陽のごとく恐れを知らずFearless as the Sun

ガレンの詩人、ニネル・ドゥマリス 作

海に踊る太陽のごとく恐れを知らず
短く力強い一瞥で私の心を見抜く
私の恋人は夕刻の雨を駆け抜け
陸へ来て私を求める、彼の財宝を

だが別の乙女が彼の心を招き寄せる
私を選んだことを妬む、魅惑的な美女
千人の恋人を虜にしてきたこの敵手が
今や私の恋人に向かって声を張り上げる

女がただ呼びかければ、彼はそちらへ向かう
海鳥の笑い声、鐘の音、船長の呼び声
魅了された彼は、雄鶏が鳴くよりも早く去っていく
あの女の力は強く、私の力は弱い

だが泣いても仕方がないことは知っている
定命の女が海に勝てるはずはないのだから

注意!大樽に触るな!Warning! Do Not Touch Cask!

このエール樽の中身には極度の圧力がかけられている。いかなる事情があっても触れてはならない。

これは警告である。

嵐とひまわりThe Storm and the Sunflower

(シストレスの歌)

ひまわりよ、波の音が聞こえるだろうか
私たちを引き合わせてくれた海が、今は引き離そうとしている
私はもうすぐ最後の息を吐き
心に愛の傷を抱いて死ぬだろう
望まぬ戦争を終わらせる夢を見たことを、慰めと思いながら

さあ、頭を下げて
その柔らかな花びらのような唇で、最後の口づけを
抱き寄せて、私のひまわりよ
私たちが交わした愛は、罪ではない
ただマーラの慈悲を知ることを、時が許さなかっただけ

あなたが雨の雫を味わう時、私の唇を思い出して
あなたが顔に風を感じたら、それは優しく撫でる私の手
そして遠くに雷鳴が聞こえる時、それはあなたの名を呼ぶ私の声
雷がひまわりと出会う時は、辺りを炎に包むものだから

ひまわりよ、私を覚えていてくれるだろうか
結ばれて、誰にも縛られず自由になる夢を共に見たことを
それとも、あなたも私の後に続くだろうか
ただ一緒になりたいがために、私たちが犠牲にしたものを思いながら?
海を飲むつもりなら、雨を求めてあえがなくてもいい

嵐とひまわりThe Tempest and the Sunflower

ニヴィエンヌ・トネール 著
実話を基にした物語

レディ・マーラがナヴィール城の馬上槍試合の会場に微笑みかけた。二人の騎士、好敵手、よく似た心の持ち主の運命的な戦いに、これ以上ふさわしい日はなかった。

船大工を代表する、金髪のサンフラワー卿は、ガレンの長女、憂鬱なるレディ・テンペストと対峙した。どちらも、相手の家名に憎悪を抱くよう育てられてきたのだ。槍は互いに向けて勢いよく繰りだされた。乱戦の中、剣は交差し火花が散った。だが兜が外れた時、両者の間に沈黙が下りた。そこに生まれた穏やかな驚愕と好奇心は、見物人ならば煮えたぎる敵意と見誤っただろう。

二人は短く言葉を交わし、それから弱々しくそれぞれの地所に帰った。最大の負傷は、打ち砕かれた心だった。トーナメントの勝者となったのはレディ・テンペストだったが、儚き台風にふさわしく、先に威勢を弱めたのは彼女だった。

***

サンフラワー卿はレディ・テンペストの想いを震える両手で抱えた。彼女は多大な労力を費やし、手紙が彼の元へ届くよう取り計らった。エルダータイド・ドルイドへ秘密裡に諸島の反対側へ届けるよう依頼したのである。今、彼はレディ・テンペストの破滅になりえた。この女はトーナメントに勝利して、彼の家を侮辱したのだ。

だが、レディ・テンペストの言葉は夏の嵐のように届いた。手紙はまるでサンフラワー卿の心臓のうちに響くこだまを書き写したかのようだった。剣が交わされた時、彼女もずっとこのまま、二人が島を隔てることなく、すぐそばに居られるよう望んだのである。レディ・テンペストの想いに対して無感動を装うことは、彼にとって最大の苦痛だった。

家族の敵意は今や、この巨大な情熱に比べれば些細なものに感じられた。なんと勇敢な女性だろう!ドルイドに助けを頼むとは、なんと賢いのだろう。彼は返事の手紙にありのままに自分の愛を記し、「あなたの破滅」と署名した。彼女が微笑んでくれることを願って。

季節がいくつも巡り、潮が満ちては引く間も、二人は手紙を書き続けた。エルダータイドはシストレスを越えて彼らの秘密の手紙を運んだ。言葉を通して、二人は互いの魂を隅々まで探った。だが時を経るにつれ、言葉だけでは足りなくなった。

今度、先に折れたのはサンフラワーの方だった。

次にナヴィール城で会う時、テンペストはトーナメントの終わりに彼と結婚してくれるだろうか?

感動の波に包まれたレディ・テンペストは承諾した。だが、誰が結婚させてくれるのか、どこで結婚するのか?

ここで、サンフラワー卿はドルイドに助けを求めた。

だが今回、ドルイドたちは見返りを求めた。

***

彼らの結婚式とグランドメレーの夜、レディ・テンペストとサンフラワー卿は夕闇に紛れて会った。一緒にいられるのはごくわずかな間だけであることをどちらも知っていた。

サンフラワー卿は彼女を腕に抱いた。長い間待ち望んでいたのだ。サンフラワー卿は恋人に願いへ同意してくれるかどうか尋ねるような、愚かなことはしなかった。

ガレンの島を去れ、とドルイドたちは言った。お前たちが結婚し、両家が一つになったら、ドルイドでない者は二度とこの島に足を踏み入れるな。

愛のためなら大きすぎる代償などない、と強がることもできた。だが二人は、自分たちの家が決してそれを許さないことを知っていた。結び合わせるくらいなら、家族は二人の死を選ぶだろう。ましてやエルダータイドの求めるものを与えるなどもってのほかだった。

「ガレンが私だけのものであったなら、喜んで譲り渡しましょう」とレディ・テンペストは言った。まるで彼の考えを読むかのように。「ただ――」

「臣下たちを見捨てることはできない」とサンフラワー卿は彼女の心を読み、言った。

サンフラワー卿は彼女の目を見つめた。

「結婚する場所は気にしない。結婚などしなくてもいい。ただ一緒にさえいられれば」と彼は言った。「どんな名前でも、どんな旗の下でも、結婚しようがしまいが、私は君のものだ。トーナメントが終わったら、人目を盗んで抜け出し、私の父の船を奪おう。祝祭も、秘密の結婚式も忘れよう。シストレスが私たちを結び合わせてくれないのなら、そうしてくれる国を探そう」

そうして彼らは次の日に会う約束をして別れた。暗闇の中にエルダータイドの耳があることにも、復讐の罠が彼らの周りに仕掛けられつつあることにも気づかずに。

***

サンフラワー卿は彼の婚約者、正当なるチャンピオン、強敵テンペストと対峙した。これはすべて見世物だ、と彼は自分に言い聞かせた。今夜、彼は恋人と海辺から去り、死ぬその時まで共に暮らすのだ。

だがそれについて、実現したのは半分だけだった。

剣が最後に交わされた。誰が勝つかは問題ではなかった。ただ敵意が本物に見えればよかった。彼の剣が彼女の手首をかすめた時に滴った血は本物だった。彼女がバランスを崩し、膝をついて倒れたのも本当だった。彼は叫んで彼女を抱きとめ、彼女の顔が苦痛で歪む…待て、これは本当なのか?

「ドルイドが」レディ・テンペストは声を絞り出した。二人はようやく気づいた。剣に揺らめく毒に。エルダータイドはテンペストとサンフラワーがガレンを渡さないのなら、互いの破滅となることを確実にしたのだった。

レディ・テンペストが息絶えると、サンフラワー卿は首を垂れて泣いた。結び合うよりも死ぬことを世界が望むならば、彼は死ぬことを選ぶであろう。

シストレスの書物と巻物

Systres Tomes and Scrolls

1.スラシアの疫病1. The Thrassian Plague

第一紀2200年を皮切りに、恐るべき病がタムリエルを襲った。スラシアの疫病と呼ばれるようになるこの死の病は、その勢いを失うまでに人口の半数以上を奪い去った。

この世紀初期のかなりの間、疫病の起源は謎に留まっていたため、さまざまな憶測がなされた。最初は大陸南西の海辺沿いに現れ、ダガーフォールやヘガテ、アンヴィル、ファリネスティなどから広がっていった。ハイエルフの島々でさえ安全ではなく、サマーセットの街コルグラドはこの病によって破滅的な被害を被った。

疫病がもたらした被害は、失われた人命の数だけでは計測できなかった。政治的な余波はタムリエルの進む道を変えてしまった。ヴァレンウッドは弱体化し、イリアック湾の人口は劇的に減少し、エルスウェアの諸部族の数は16からたったの2へと減った。

この予期せぬ攻撃がスロードによるものだったことが明らかになると、この脅威に終止符を打つための行動が取られた。

2.ベンドゥ・オロ男爵提督2. Baron-Admiral Bendu Olo

アンヴィルのコロヴィア王ベンドゥ・オロは、スラスのスロードによる脅威に終止符を打つための大胆な計画を考案した。彼はすべての民族の船から成る大規模艦隊の結成を提案したのである。さらにベンドゥ・オロは王族の務めから退き、この艦隊の招集と指揮を自ら行うことを申し出た。彼は艦隊をスロードとの直接対決のために使うことを計画したのである。

ベンドゥ・オロや他の指導者たちにスロードが疫病の原因だと確信させた証拠が何だったのかは、公にされることはなかった。しかし2230年頃には、大陸の人々の大半がスロードに罪があることを信じており、病気はスラシアの疫病と呼ばれるようになっていた。

2241年、アレッシア皇帝〈名前は削り取られている〉はついに戦争への予算に同意し、ベンドゥ・オロに計画の始動を命じた。オロはまず自らに男爵提督の地位を与え、作戦や戦略を練るための補佐をする船長や、彼の構想した大艦隊を建設するために必要な船大工を集め始めた。

オロが全旗海軍と呼ぶようになった艦隊のための拠点として、シストレス諸島のある島が選ばれるまで長くはかからなかった。2243年、オロとその配下たちはハイ・アイル島に上陸し、艦船の建造や、決行の日に艦隊を出撃させるため必要になる乾ドックや設備の建設を開始した。

3.全旗海軍3. The All Flags Navy

ハイ・アイルで開始された作業は、可能な限り秘密裡に行われた。ベンドゥ・オロ男爵提督がスロードに手の内を明かすことを望むはずもなかった。艦隊に任命された最初の艦船はハイ・アイル周辺で既に存在していた海軍や巡回船団であり、それらが島を警備するために配備された。

当初、スロードはハイ・アイル周辺の活動を無視していたが、造船所が完成に近づくと、スラスとシストレスの間の海域で小競り合いが起こり始めた。スロードは島に対して大規模な先制攻撃を仕掛けることはなく、彼らが脅威を認識していなかったのか、それとも島を襲撃するのに十分な戦力がなかったのかは、未だに不明である。

造船所と港は第一紀2249年に完成した。タムリエルのあらゆる国で構成された大艦隊はすでに島を防衛するために配備されていた。これらの船が新しくオロに与えられた全旗海軍の基礎となった。島での設備やインフラの建設が完了すると、労働者たちはすぐに艦隊へ加えるための戦艦の建造に力を注いだ。広く布告が出され、船乗りや海軍兵士、船長として新造船に乗り込む志願者が求められた。

強大な統一艦隊を結成してスロードを粉砕するというベンドゥ・オロの夢は、実現に近づきつつあった。

4. 復讐の道具4. Instrument of Vengeance

第一紀2249年から第一紀2259年の間、造船所は昼夜を問わず働き、全旗海軍を強化するために凄まじい数の艦船を建造した。2260年に、艦隊はさまざまな規模の船を130隻も擁していた。アルゴニアンやブレトン、コロヴィアやエルフ、カジート、レッドガードの旗を掲げ、また海賊や傭兵も含まれていた。これらの国家はまた数千人もの船乗りや海軍兵士、冒険者、補佐の人員を、タムリエル史上おそらく最大のこの同盟作戦に投入した。艦隊の準備は整った。タムリエルの復讐の道具を、スロードに向けて解き放つ時が来たのである。

強大なエルフの魔術師シラベインを脇に従え、ベンドゥ・オロ男爵提督が命令を発すると、同盟艦隊はハイ・アイルの港からスラスのコーラル王国に向かって出航した。艦隊はアビシアン海から真珠海へ、付呪をした磁鉄鉱を用いて方角を定めつつ、大船団の陣形を崩さぬよう、また航路を外れぬように航海した。激しい嵐を通り抜け、スラシア諸島に到着すると、艦隊は島々が濃い霧に包まれていることを発見した。ベンドゥは魔法の幻影を使ってそれぞれの船に現れ、艦隊に一番大きな塔を攻め、そのサンゴの塔を打ち崩せと命じた。

多くの船が失われたが、スロードは卑劣な疫病をタムリエルに放った代償を支払った。男爵提督ベンドゥ・オロは勝利し、生き残った艦隊をハイ・アイルに連れ帰ったのである!

5. 記念島の建設5. Construction of Monument Island

全旗海軍はハイ・アイルに帰還し、英雄として迎えられたが、勝利の喜びは後悔によって弱められた。艦隊の派遣部隊のほぼ半数が、スロードに復讐を果たすための戦いで失われたのである。

スラスに対する全面戦争の後、ベンドゥ・オロ男爵提督とタムリエル史上最大の同盟海軍を結成するために集まったさまざまなグループの指導者たちは、スラシアの脅威を打ち倒すために戦って死んだ者たちを称え、記憶するための記念碑を作ることを決定した。

建築監督トビン・ムーアクロフトの監督のもと、ハイ・アイルのちょうど真ん中にあるとても小さな記念碑の小島が、追悼の地に選ばれた。全旗海軍を称える重要な記念建築物の建設はほとんど間を置かずに始まった。その中には以下のものが含まれる。

全旗の城、記念碑の灯台、記念庭園、記念碑の宿屋である。

記念碑の建築物群は第一紀2271年に完成した。オロ男爵提督や同盟の指導者たち、そして生き延びた船長たちの多くは、記念碑が失われた船やその乗組員たちと、スロードに対する勝利に捧げられた時、その場に立ち会った。

アークドルイド・ミシエルへの命令Archdruid Michiel’s Orders

アークドルイド・ミシエルへ、

霊魂を我らの手中に収めなければならない。ウィレスたちに秘密の道を開くよう求めろ。だが協力しない場合、任務を完了するために必要ならどんな手段でも使うことを許可する。できればウィレスの長老がいいだろう。普通の自然の魔女よりも、多くの知識と力を持っているからな。

道が開かれ、私が教えた通りに儀式を行ったら、あとはいくつかの手順が残るだけだ。そうなれば、自然の霊魂と聖なる種はファイアソングのものになるだろう!

アークドルイド・オルレイス

アドウィグの日記Adwig’s Journal

リバーラーク号(海上で遭難)の操舵手、アドウィグ・レイシコットの所有物

第二紀574年、恵雨の月6日

船はシストレス諸島北のどこかで遭難した。スコールの中で雷に打たれたのだ。俺は海辺に辿りついたが、他の者たちは運がなかった。ドネルやワトキンス、船長の姿は見つからない。周辺を見回って、現在位置を確かめたい。

第二紀574年、栽培の月2日

八大神よ助けたまえ。どうやら俺はアメノスに打ち上げられたらしい。この島には蛇と犯罪者、そしてその他の不愉快なものが一杯だ。とてつもなく腹が減っているが、囚人たちには近寄りたくない。静かな場所を探して、しばらく身を潜めているべきだろう。とにかく海に目を配っておかなくては。会社はいずれ我々を探しに誰かを送ってくるはずだ。

第二紀575年、真央の月?日

船の痕跡は一切なし。忌まわしい緑の大蛇と、地平線に見えるシーエルフの船を除いて、誰の姿も見えない。希望を失いつつある。

第二紀575年、降霜の月?日

ドネルとワトキンスを見つけた!海辺のすぐそばにいた。どうしてこれまで見逃していたんだろう。彼らは少し傷ついている。腕や足がなくなっている。だが俺が直してキャンプに連れていった。マーラにかけて、再び話し相手ができてよかった!

第二紀576年? 、黄昏の月?

もう2年ぐらいになるだろう。ドネルとワトキンスや、残りの仲間たちはうまく野営地に落ち着いた。時々言い合いにはなる。主に何を食うかとか、あいつらが皿洗いをしないこと、難破の前には誰の恋人が一番美人だったか、といった話題だ。それでも、こいつら抜きでこの自然の中を生き延びられたとは思えない。一人で苦しむより、一緒に苦しむ仲間がいるほうがいい!

第二紀577年? 、恵雨の月?

もう難破から3年になる。乗組員が揃ったのだから、もう少し遠くまで探索の手を伸ばす時だ。野営地から遠くないところに入江があるはずだ。いい収穫があるかもしれない!

第二紀577年? 、恵雨の月?

入江はダメだ。忌々しい魚エルフどもの巣窟になっていやがる! ついてないにもほどがある。もっと警戒しなくてはならない。罠をもっと仕掛けるんだ!何者かがこの野営地を視界に入れようものなら、網に入った魚のように捕まるだろう!

第二紀580年? 、黄昏の月?

最後に書いてから長い時間が経った。書く道具を手に入れるのも難しくなった。ここ数ヶ月は漂流物もさっぱり来なくなった。モーナードが巡回の手を厳しくしたのか、人々がここに来るのをやめたのかはわからない。まあ、どうでもいいことだ。俺には仲間たちがいるし、他に行く場所もない。

アミヴィリディル・アルケニウムAmiviridil Arcanium

〈奇妙な秘密の暗号で書かれたこの文書は、適切な道具と特殊な呪文を使わなければ読むことができない〉

イフシティス アディハ シソティプ。ブト ハピティ エグ ロギボグ。タノディ パル モハ。テセフェ ドゥ エリ トゥノ タロラム ラヘレ? ギ アニレト テソル レエウ オレイ ニヒイ リナニエド レフサル ワシル エベ。レア ル ラル ニエジェファン ラゲポク ウナ レニド トゥノ ネリ。ビス メヤ ウノイエド オニレゲプ。エキヌ ペネー ニウ ロビ タナ。レゲ アセプ ジュニト ホヴェウィス ウケポズ ノレル ピエゴ。ラレレ アヘトハ デコモ トポゴ レレ タレネイ ヴォテム ニ ティテク ボヒエス。

ニカ メル ウペト レタト イディ セイ イルダブ ティシル コデセ ドミ。ウテ イクシパロ シム ピワス。アトン ドゥシエダ エヒジェ イネル ミエト リエファメル ル リト。セラタン アシラハ ラニイ アスタシ フメエ ロリル ウイェリト ホト イビソル オロレミト。ガミプ トラエ エガロ ゴソト エポコノ オモプタグ テレイエ セプ オセティ。クシヴ ツィエ セタネイ ルリド シエソベ エシ シ オゲス トパナス ネヴァト。イロペ ゲラナト ムニエル ラニネ。オバ オロベ レジ ウノパヒ ナリテ ディテ クトイ。

アメノスの秘密Secrets of Amenos

ゴンファローネ湾歴史社会協会会長、ミラメル・シャラセル 著

シストレス諸島の本島から北東に海峡を横断した位置にあるアメノスは、ハイ・アイルの陰鬱な双子である。この島は現在すでに陰気な評判を得ているが、アメノスの長く暗い歴史はそれを悪化させるばかりである。我々歴史社会協会は近隣の島がこれほど危険ではなく、魅力のある場所であることを期待しているが、犯罪者や政治犯はどこかに置かねばならず、アメノスは適切な場所のように見えるのも事実である。

アメノスへの植民の最初期の記録は限られているが、おそらくガレンのドルイドたちが第一紀330年頃にハイロックからやって来て、四島すべてに住むようになった。アメノスは四島の中で常に最も危険かつ過酷な島だった。ドルイドたちがハイ・アイルとガレン、イフェロンにおいて、彼らの言い方で「自然の均衡を取る」ためにどのような魔術を使ったにせよ、アメノスには十分に効果を発揮しなかったようだ。第一紀660年頃、いわゆるレフトハンド・エルフがヨクダから到着し、諸島の征服を開始した。彼らはアメノスに足掛かりを築き、そこに要塞を作って拠点とし、他の島々を襲撃しつつイフェロンを攻囲した。レフトハンド・エルフたちが第一紀676年のファイアソング山の噴火に飲み込まれなかったら、今日の諸島の状態がどのようになっていたかは、誰にもわからない。アメノスに残っていた少数の者たちは、第一紀785年に攻め込んできたラ・ガーダによって殲滅された。

その後、諸島はアカヴィリ帝国の統治下に置かれた。第二紀11年、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエはアメノスをレマン派の政治犯のための流刑地に変えた。年月を経るうちに諸島の規則は何度か変更を受けたが、変わっていないことが2つある。ドルイドたちが野生の居留地から島の世話を行っていること、そしてアメノスは今でも、最悪の犯罪者たちの監獄であることだ。

金貨男爵の時代に、海賊はアメノス周辺の海域を侵食した。その中で最も偉大だったのは、シストレス姉妹だろう。伝説によれば、彼女たちは財宝を保管するため、島に宝物庫を建てたという。宝物庫は三つの鍵が揃わなければ開かず、姉妹それぞれが鍵を手にしたそうだ。鍵の一つは南のジャングル、もう一つは西に隠されているらしい。三つ目の鍵は姉妹の間で内紛が起き、殺された時に失われた。

今日、アメノスには3つの主要な場所がある。アメノス監獄、営倉、ジャングルだ。港町であるアメノス監獄には、この島に安全に接近できる唯一の入口がある。残りの海岸線は切り立った岩場や、ほとんど途切れることのない嵐、そして危険な激流に取り巻かれている。多くの船がこの島の他の部分に到達しようとして難破したが、まっとうな理由もなく船を危険にさらすのは、最も勇敢な、あるいは最も無謀な船長だけである。

アメノス監獄はこの島の寄港地であり、囚人輸送船が定期的に物資と、営倉に移送させる新たな囚人たちを運んでくる。この街にもある程度の娯楽があるが、ゴンファローネ湾とは比べるべくもない。アメノス監獄は主に営倉とそこに滞在する看守、港、そして監獄島の「スリル」を味わうために訪問した本土の道楽者を支えるために存在している。モーナード家がこの街の監督と維持を担っている。

営倉地区はその名にたがわない。輸送船で運ばれて来た囚人たちを収容するための、隔離された監獄だ。看守砦が営倉を監視しており、小規模の看守部隊(一部はモーナード家の家臣、残りは雇われの傭兵)がこの場所を警備し、囚人たちが出ないようにしている。営倉では、二種類の囚人がいる。素行がよいため特権を与えられている模範囚と、処理を待っているか、すでに処理を済ませてジャングルへの追放を待っている一般的な囚人である。

処理と追放について話そう。囚人たちが受ける「処理」について多くのことは知られていない。モーナード家はこれを注意深く秘密にしているからだ。何らかの魔術か錬金術による処置で、囚人がアメノスのジャングルの外では生きられないようにするものだと言われている。この処理を受けた後で、囚人はジャングルへ追放され、そこに留まるか、さもなければ即死する。これはただの作り話だろうと推測する者もいるが、囚人たちは信じている。いずれにせよ、これによって囚人たちはジャングル内に留められている。

では、アメノスのジャングルについて話そう。致命的な植物、危険な自然地形、肉食獣が溢れているため、単独の囚人は何らかの支援を受けずに追放後長く生き延びることはできない。支援は主に2種類ある。囚人のギャング団と労働契約である。噂によると、追放された囚人たちのギャング団が10種類以上もアメノスのジャングルを徘徊し、緊密な集団行動を取って安全を確保し、周囲の危険を生き延びているという。モーナード家の報告によると、そうした中で最も強大なのが、悪名高い緑の大蛇である。それとは違う道を進むことを望む者には、モーナード家とその家臣が労働契約という選択肢を提供している。部屋と食事、そして安全保障の代わりに、囚人は鉱山や労働キャンプで働く契約を交わすことができる。モーナードの富の大半は、この事業によって生み出されている。

というわけで、我らが監獄島を訪問するつもりなら、アメノス監獄に留まり、ジャングルは避けよう。むしろ、この島には近寄らずに、ゴンファローネ湾ではるかに優れた娯楽を楽しむのがいいだろう。

アルケインクラフトに関する海の伝承Sea Lore for Arcane Crafting

リアナラ・オラマー 著

章:海岸と砂

これまでの章で論じたように、ニルンの海域は常に流動し、かつ相互につながっており、また手つかずの深さと神秘を備えているため、熟練のアルケイン技師に多様な機会を提供している。この神秘は呪文の製作にも、付呪の詠唱にも、まっとうな錬金術の調合薬を作るのにも利用できる。

(ここでいうまっとうな錬金術とは複数の魔術学派の技を学んだ、魔術とのかかわりの深い者によって研究された技法である。地域の賢女が出産の痛みを和らげるために作る薬や、低級な魔術師が作るイボの治療薬とは異なる。まっとうな錬金術は、最高位のアルケイン分野だ。だが脇道に逸れるのはよそう)

さまざまな地域の潮だまりや砂地は、錬金術の試薬の宝庫である。この研究分野はまだ始まったばかりであり、成長を続けているが、一部の文化はこの点で他よりも進歩している。例えばスロードは、海から魔術を引きだすと言われている。彼らのアルケインのどんな残骸がシストレス諸島の砂浜に眠っているのか?そしてゴールドコーストには何が打ち上げられているのだろうか?

ハイ・アイルの海辺に打ち上げられる、海で削られ滑らかになった不思議な青い石は、大海原を数百年もさまよった後アンヴィル沿岸に行きついた、よく似た外見の石片とは異なる性質を持っている。発見されたものは試験と検査を徹底的に行い、アルケインの性質があるか、あるならそれはどのような性質か、そして呪文や錬金術の下地にどう利用できるかを理解しなければならない。

本章では、あなたの魔術が海の素材の利用に向いている場合に、我々の世界の海岸沿いで探すべき物品について論じていく。

例えば、石は大抵の海岸で見つかる。時間をかけて海の中で丸く変形した、手のひらに収まるほどか杖やサークレットに入るほどの小さな石は、大いに重宝される。一般の民がシーエルフと呼ぶマオマーは、こうした海の石を探して、海に関する彼らの儀式に使っている。私と話をしてくれたあるマオマーは――酒場で何杯か飲んだ後のことだが、酒場の名前は明かさないほうがいいだろう――彼の民の間で、青と紫の色彩は高い価値を持っているが、きわめて希少だと言っていた。この言葉が真実かどうかを確かめる術は私にはないが、彼が身に着けていたイヤリングはとても小さく、褪めた青色の石で装飾されており、それは内部から光を発していた。それを調べさせてはくれなかった。しかしまたしても、話が逸れてしまったようだ。

だが彼は正しかった。海の石の色は重要である。黄色がかった滑らかな石は美しいが、アルケイン的な価値は低い。青と紫の海の石には高いアルケインの共鳴性があり、赤と緑の石はその中間である。

ある捨てられた愛人の日記Journal of a Scorned Lover

日記へ、

昨晩、私の人生はすべて変わった。きっとこう考えているんだろう。「クエンティン、それは前にもあっただろう」と。だが今回は違う。誓ってもいい!

たった一晩の情熱。求めていたのはそれだけだ。私は馬鹿じゃない。ジャカーンの評判は聞いていた。彼の好みもだ。タムリエルのどの街にも暖かいベッドはあるというのに、あの真夜中の達人がこの島にやって来た。私は一晩だけでも彼の愛が欲しかった。そして手に入れたのだ!

私がジャカーンに会ったのは、彼の船が港に来た夜の、波止場の近くでだった。ハンサムでお洒落だった。魅惑的でさえあった。ジャカーンはのぼせ上った愚か者どもの群れに囲まれていた。奴らは彼のすべての言葉と服にすがりつき、一瞬でも動きを止めれば、腕にさえすがりつきそうな勢いだった。ジャカーンは注目の的になって嬉しそうだったが、迷惑そうでもあった。だから私は救い出してやることにした。酒場で最も匂いの強烈な酒を1パイント購入して、テーブルの間を通った。そこで私はつまずき、ジャカーンの周りに集っていた崇拝者全員に背後から酒をまき散らした。ビールがジャカーンにかからないように細心の注意を払った。

ジャカーンの崇拝者たちは罵声を上げるか泣き叫びながら逃げ去った。奴らが消えたことで、酒場の雰囲気は変化し、より親密な空間になった。私にとっては完璧な状況だ。ジャカーンはぜひ、私がこぼした分のビールをおごらせてくれと言った。私は笑顔で彼の申し出を受け入れた。その夜の残りに起きた、卑しくも素晴らしい、親密な出来事については詳しく記したくない。私たちの間に何が起きたか、かいつまんで伝えよう。

ああ、なんたる想い出か!ジャカーンのあの身振り、彼の完璧な唇から出てきたあの優しい言葉。まるで星座の注目を得たかのような気分だった!汚い港の酒場にいても、私たちはこの世界で価値のある唯一の存在になったような気がした。彼は私を理解してくれた。本当に、私のすべてを深く理解したのだ。彼は後でそのことを証明してくれた。あんな気分を味わわせてくれる人は他にいなかった。そして私も彼を理解した。これは大事なことだ。ジャカーンが楽しんだすべてのことを私は学んだ。彼を笑顔にしたもの、彼を笑わせたジョーク、何もかも。

またあの腕に抱かれることがあるだろう。間違いない。何ものも私たちを引き離すことはできない。あの強力なつながりを分かち合った後では無理だ。これは運命だ。どんな運命かはわからないが、胸の奥深くに引力を感じる。彼はまた会おうと約束した。きっと今夜、戻ってくる。ジャカーンは私を見つけだし、私たちはまた一緒に消え去るのだ。

* * *
日記へ、

自慢は趣味じゃないが、私は正しかった。

昨晩は最初の夜と同じくらい素晴らしかった。私たちは話し、お互いのことをさらによく知った。ジャカーンは昔の仕事について話し、英雄譚や歌からは省かれた、彼の生活のあらゆる側面を明らかにしてくれた。

明日また会うことになっている。約束してくれたのだ。彼は注意を引こうとする他の者たちには何の魅力も感じないとさえ言っていた。ハイ・アイルすべての中で、彼が求めるのは私だけだと。

* * *
日記へ、

ジャカーンは来なかった。私は一晩中起きて、彼の拳が扉に当たる微かな音を待っていた。まだ私と彼をつなげる胸の中の引力を感じている。きっと探し出してみせる。明日は造船所に行かない。ジャカーンを探しに行く。危険な目に遭っていたらどうする?もし彼に何かあったら、私はどうなってしまうだろう。いや、きっと生きている。感じるんだ。こっちに来ない理由が何であろうと、まっとうな理由に違いない。きっとそうだ。

* * *
日記へ、

ジャカーンのことを話すのはもうやめだ。彼は私の心を胸から抜き取り、引き裂いてしまった。私にかけた言葉はすべて口先だけだったのか?いや、そんなはずはない。彼は誠実だった。それはわかっている。だが、なぜジャカーンがあのお針子と過ごしたのか理解できない!あの女が私にない何を持っているというの?

あるいは、ジャカーンは最初から私に興味などなかったのか。だが私は好かれていると思った。確信していたのに!

きっと彼を見つけてみせる。この件の真実を聞き出す。私が恐れる言葉を彼に直接言ってもらいたい。あの酒場に寄って、一番匂いの強い酒をジョッキ1杯分買っていこう。私の恐れていることが事実だったら、酒をジャカーンにぶちまけてやる。

最後の1滴に至るまで。

イズバッドの手紙Izbadd’s Letter

一つ助言を与えよう。

お前たちは暗く危険な隅をつついている。はっきり言わせてもらおう。お前たちのどちらも、どれほど危険か理解していない。能力と努力を否定するわけではないが、これは見た目より遥かに大きい問題なのだ。

私は主にバンコライの外で活動する商人だ。交易に影響のある、あらゆる種類の情報を集めている。いつもはエバーモアにいる。有益な情報を伝えてくれた他の者たちの観察からすると、お前たちは別の誰かと協力しているのではないかな。もしそうなら、私はその者とも話をしたい。

商人イズバッド

〈メモの最後に走り書きされた短いメモ〉
E

こいつが誰かも、なぜジャカと私の行動を知っているのかもわからない。私たちは馬鹿じゃない。気づかれないように行動してきた。特に私はね。あの大猫はいつも注意を引くから。この商人と会ったほうがいいかもしれない。こいつが罠だった場合に備えて、ジャカと私もそっちに行く。私たちに危害を及ぼそうとする奴なら、遠慮なく始末できるわ。

イフレの大鍋を訪ねる人へのガイドVisitor’s Guide to Y’ffre’s Cauldron

文化遺産副大臣、ベルナルディン・ゲルヴェス 著

ヴァレンウッドを除けば、ハイ・アイルのイフレの大鍋ほどにタムリエルの自然崇拝者の尊敬を勝ち取っている建物は数少ない。この千年以上前の大建造物は闘技場や円形劇場に間違えられやすいが、その起源ははるかに興味深いものである!

ストーンロア・サークルのドルイドによれば、大鍋は強力な「骨の線」の頂点、すなわち自然エネルギーの交流点に位置している。大鍋の内部で唱えられたドルイドの呪文は不思議な特性を示し、この場所で唱えられた祈りはより強い力を持って空に届く。サークルの内部にはもう1つのサークルがあり、4本の線が上下左右に伸びている。ストーンロアのドルイドたちの話では大いなる星見の儀式が存在し、その際に祖先たちは石の配列とサークルを使って未来を占ったという。残念ながら、その儀式の詳細は第一紀665年のヨクダ侵略の際に失われてしまった。

しかし霊能師に憧れる者は、それでも大鍋の謎の探究を続けている。歴史を通じて、魔術師たちは大鍋の力を利用しようと試みてきたが、成功していない。例えば第一紀2345年のマレント・ヴァンヌという死霊術師による試みは、破滅的な結果をもたらした。

ヴァンヌの主張だと、大鍋は魂を二つに切断できる。これは当時の死霊術師たちが「二重憎悪のパラドックス」と呼んだ、冒涜的な行いである。ヴァンヌの呪文は逆流し、刻み込まれた「夢見人の顔」を二つに切り裂いてしまった。その結果起きた崩落によってこの魔術師は死亡した。この悲劇は海外のイフレ崇拝者にとって、未だに深い憤りの種となっているが、ストーンロアのドルイドたちは水に流したようである。彼らは時折割れた顔を示して肩をすくめる。破壊された残骸が無謀な魔術師たちに対する十分な警告になると信じているのだ。

現在、この場所を訪れる人々はドルイドと魔術師だけではない。様々な神々の司祭たちが、この地には自らの宗教にとっての重要な意義があると信じており、巡礼も頻繁に訪れる。休日に本土からやって来る道楽者もまた、この場所に魅力を見出している。

大鍋の訪問者は、この神聖な地の古い秘密を解明することはできなくても、探検するだけでも大いに楽しめる。良識ある観光客は、地域のドルイドにささやかな寄付をすることを考慮するといいだろう。この場所の維持費は小さくないからだ。また、内部ではどうか慎みを忘れないように。石を持ちだしたり、頂点の中心部に持ち物を置いたり、植物をいじることは厳しく禁じられている。

ヴァニサンデ・マウルの水浸しの日記Waterlogged Journal of Vanisande Maul

〈日誌のページの大半はインクのにじんだ紙くずだが、最後の部分だけはある程度読める〉

何週間もつけられていたが、ようやくまくことができたようだ。准将は艦隊に、ウェイレスト海軍が近くを通りすぎるまでシーヘヴン湾に身を隠せと命じている。奴らはもう何ヶ月も我々を追い回しているし、我々が略奪した商船はこれまでで最大の収穫だった。奴らはシストレスを隅々まで掘り返すのではないかと思うほどだ、奴らが出航

ウィルドとドルイドWyrd and Druid

第二紀553年、アークドルイド・バルナベと本土人との対話の口述

ドルイドの物語はブレトンの物語である。そしてある点までは、ウィルドの物語でもある。あなたがたは、我らドルイドの信念を尋ねた。我らの信念は、我々が生まれた場所に由来すると答えよう。ウィルドとドルイドは――つまりすべてのブレトンは――同じゆりかごで生まれたのだ。

古代、エルフの血が入らぬ祖先がハイロックの丘と草原を歩んだ。彼らは空の儀式と、他の全ての星々を称えた。我々の頭はまだイフレを知らなかったが、心はイフレを知っていた。そのうち、アヌイエルという者の子供たちが我々に言葉を授けた。イフレ、緑の王、ニルンの眠る父。我々は土と石、森の獣たちから救いを得た。この最初の時代にはドルイドもウィルドもなかった。ただブレトンだけがいて、自らの道、すなわち真の道を、厳しく美しい世界の中で探し求めていた。

時と共に、真の道に向かう道は分かれていった。エルフの奢侈を嫌うウィルドが形成され、文明に完全に背を向けた。彼女たちは生のまま、手懐けられていない自然に美を見出し、裸の子供のように、イフレの抱擁に包まれることを求めた。彼女たちはアースボーンズに囁きかけ、再び子供に還ったのだ。我らドルイドもまた、自然に美を見出した。だが我々は獣のように生きられなかった。知恵は万物のあるべき場所を知ることにある。マンマーは狼でも、シダでもなく、嵐でもない。我らはマンマーであり、マンマーとして生きねばならない。それは前進すること。孤立と別離ではなく、改善された世界を求めることを意味した。

ドルイドはドルイド王の時代が戻ってくること、ガレンの末裔が本土との結びつきを絶ち、未知の場所へ出発することを望んでいるのか? そう考える者もいる。だが我らストーンロア・サークルの者たちは、いわゆる文明化された我らの仲間と調和して生きる道があると信じている。我々のよき仕事と範例によって、同じブレトンに、シストレス諸島のその他の住民たちに、真の道に従うことの恩恵を示せると。

本土のウィルドは我らの遺産が結びついていると認めない。彼女たちはドルイドを蔦のローブを着た貴族と呼んでいる。だがウィルドと同様、我々もブレトンの国家を完全に信用してはいない。しかし世界の文明化された地域を無視し、自然の中を孤独に生きるのではなく、我々は範例を示すことで教えようとしている。イフレがそうしたように、我らを取り巻く世界を作り変えるため。それがストーンロア・サークルの使命だ。我々は喜んでこの重荷を引き受ける。ブレトンに背を向けることは、さらに大きな苦痛を生むだけだ。さらなる木々が切り倒され、さらなる城が建てられ、さらなる戦争が起こる。我々は街に住み慣れた仲間たちを、真の道へと導かねばならない。そうしてこそ、ブレトンの魂は純化されるのである。

ヴェティティア・マルコットからの手紙Letter from Vetitia Marcott

誓うわ、今度はこれまでとは違う。リンドレスの馬鹿は商家全体の資金の裁量権と引き換えに、自分の借金を返したの。私たちはすでにちょっとした量のゴールドを確保したわ。オースバウンド・クランと契約して用心棒を雇えるくらいのね。

私たちは金の出どころをハイ・アイルまで遡って追跡する計画を立てているの。ゴンファローネ湾に地上部隊を派遣できたらどうなる?ヴェロイーズ夫妻が時ならぬ最期を遂げるかも?これを書いている今、心配なのは一つだけ。つまらないことよ。ハイ・アイルの小さな貴族の女が私たちの事業を嗅ぎまわっているの。心配はいらない、その女は始末するわ。

私たちはこの瞬間をずっと待っていた。目立たないようにしていて。次の手紙は黄金で封蝋して送るわ!

心からの愛をこめて、

ヴェティティア・マルコット

ヴルケシュのメモNotes on Vulk’esh

この日記を見つけたら、サマーセットの「拾い物は俺の物」にいるタッリノアに返してください。

妻は私が調査しないと思っている。やっているわ!ただ彼女ほど徹底してないだけよ。この諸島に向かう前、私たちはヴルケシュについて見つけられたものすべてを読んだ。ヴルケシュが炎と溶岩の獣だということはわかっている。一番硬い石でも溶けるほど熱い、火山の深部で育つ。魚が水の中を泳ぐように、火の海を泳ぐことさえできるらしい。

ヴルケシュは岩を食べるのだと思う。ヴルケシュが植物に火がつくぐらい接近する場面なんて想像できないし、奴らは普段他の動物たちが少ない場所に生息している。もちろん、ヴルケシュが岩を食べるというのもただの推測よ。どのガイドや本、報告書もヴルケシュの生態については詳しく書いていない。

ほらね?調査に時間をかけすぎても役に立たない!時には本を置いて、思いつきに賭けなきゃいけないこともある。ヴィニルサーレにはそれがわからない。彼女は本さえ読めば準備ができると思ってる。本の中には答えが見つからない問題なんて、何百もある!

例えば、どんな条件でこの生物は生まれたの?明らかに、魔術ではない。足元の地面を溶かすようなトカゲを作ろうとする魔術師がいる?別の領域から来たのかもしれない。オブリビオンのどこかとか?空気が焼け焦げ、大地が燃える場所から。そういう領域は存在する。私はデイドラの伝承に詳しくないけど、それでも2つくらいは即座に思い浮かぶ。

あるいは、ヴルケシュがずっとここにいて、足元のずっと下に埋まっていたから気づかなかったのかもしれない。そうだとしたらここサマーセットにさえ、ヴルケシュは何千匹もいたっておかしくない。なのに私ははるばるシストレス諸島まで探しにきた、ってことになる。それじゃ笑い話だ!

エバーグロースの回復儀式Evergrowth Restoration Ritual

エバーグロースと我らが聖なる森との絆を強めるため、イフレの力を乞う。

我らの霊魂をこの呪われた土地に結びつける拘束を取り除くため、我らは歌の神の力を乞う。

おおイフレよ、この犠牲を受け入れたまえ。皆が真の道を歩むために。

エメラルドアイの魔術師の日記Emerald Eye Mage’s Journal

ナバイル卿はどうしてもマーテラーに母親の後を継がせるつもりだ。卿はマーテラーを適度に隔絶された場所、すなわちモタリオン・ネクロポリスに移動させた。すぐ近くで見ない限り、変わった墓の扉が増えても誰も気づくまい。よって邪魔されることはないだろう。覚え書きのため、周辺の地図を描いておいた。ここで扉を探すのは、控えめに言っても難しい。

マーテラーは未だに協力の姿勢を見せない。眼に直接影響されるか、私の説得スキルをかなり駆使しない限り、彼女は相変わらず自分の名前をソングだと主張し、束縛から逃れようと試みる。私は彼女の血を使い、さらにネクロポリス自体にいる死者の力を引き出して、周辺領域に監禁結界を設置した。彼女が幻視と遺物だけに従うなら、苦痛も和らぐのだが。

次の儀式についての計画を話し合うため、ナバイル卿と会うつもりだ。マーテラーに最後の幻視があってから、そろそろ一週間になる。彼女の意向など関係ない、遺物とは交信してもらう。

彼女に選択肢はない。

エリア女公爵の調査メモDuchess Elea’s Investigation Notes

〈先月〉
妙だ。シストレスの衛兵はハイ・アイル中で通常の強盗が減少しているようだと報告している。衛兵の考えでは、どこかの新しい野盗の族長が、島の無法者たちを集めて統括しているらしい。執事へルシアンに調査を命じた。

〈2週間前〉
ハイ・アイル中の強盗は再び増加し、耐えられないレベルになった。この無法者たちは以前よりも強く団結し、かつてないほど強力に武装している!へルシアンの報告によれば、平民たちは超越騎士団と名乗る「民の騎士団」の話を伝えている。私に言わせれば、法を破る反逆者どもだ。この超越騎士団とかいう強盗がデュフォート家の利益を脅かすなら、私も対策を取らねばならない。

執事へルシアンは情報筋からの報告を、超越騎士団の活動分布図にまとめてくれた。彼が連中の活動をそれぞれ調査する予定だ。

〈2日前〉
超越騎士団の連中は思っていたよりも野心的だ。何者かがハイ・アイル北東の海岸沖で巨大な嵐を召喚した。それで上級王エメリック、アイレン女王、スカルド王ジョルンの息子をバカロ卿の和平交渉へ送るために乗せていた船が破壊された。タムリエルで最も力のある統治者たちが、ここの海岸沖で溺れ死んだかもしれないのだ!

だからヘルシアンの密偵にこのグループを見張らせておきたかったのだ。これほど大きな不測の事態はまったく受け入れがたい。この脅威について知っていたら、何かできたはずなのに。せめて、この状況を有利になるよう利用できたかもしれない。

エルセリック・アンモナイトの謎Mysteries of the Eltheric Ammonite

アルケイン博物学者、カラディラン 著

シストレス諸島は多くの原料や交易品を輸出しているが、エルセリック・アンモナイト以上に興味深いものはない。この貝殻の実際の起源は未だ不明だが、博物学者たちはこれが神話紀最古の遺跡にすら先立つという点で意見を一致させているようだ。

一部の収集家はその美しさに価値を見出しているが、多くの魔術師はより実践的な目的のためにこの貝殻を欲しがる。現在でも理由は不明ながら、このアンモナイトには生のままのマジカが貯蔵されている。容量には貝殻ごとに差があり、ごくわずかなマジカしか入っていないものもあれば、低級の魂石に匹敵するほどのマジカを蓄えているものもある。魂石とは違い、アンモナイトは魂を吸収できない。魔術師たちは未だに、このアンモナイトの有効な充填方法を発見していない。またアンモナイトはアルケインの劣化も被る。収穫後1ヶ月以内に力を失ってしまうのである。それでもこのアンモナイトはハイ・アイルの魔術師とドルイドにとって、いつでも使える予備マジカの源として重宝されている。

マーブルクのラグレンシルやドサシ・サルヴィのような魔術哲学者は近年、このアンモナイトに対する関心を強めており、その起源に加えて、アンモナイトを使用することに伴う道徳的懸念をも論じている。起源の問題は、道徳の問題に関わるからである。

ラグレンシルの見解では、アンモナイトにさまざまなスロード魔術が込められているため、追放されるべきである。アンモナイトのスラスとの近接性、そのアルケイン的性質、そしてその海中の起源を考えれば、このウッドエルフの賢者がこのような結論に至ったことは理解できる。しかし、名高いドサシ・サルヴィは鋭い反論を行っている。サルヴィは魂縛という、アルケイン使用者の間で一般的に受け入れられている実践が道徳に反することは認めている。生物はこの行為に同意していないからである。それに対してアンモナイトは、魂縛を必要としない。彼女はアンモナイトを鉄鉱石や黒檀鉱石のような自然資源と同類のものと捉え、魂魔術に疑念を抱く魔術師にとって遥かに受け入れやすい選択肢だとしている。道徳的な問題はどうあれ、アンモナイトはその特殊な性質とコストの低さにより、シストレス各島の研究所や蔵書庫でよく見られる。これもまた、この美しい島々の魅惑的な特徴の一つである。

オーレリア・ジョーベルからの手紙Letter from Aurelia Jourvel

最愛のイジー、

改めてあなたの親切と友情や、背中を押してくれたことに感謝するわ。とっても楽しく過ごしてる!ハイ・アイルを去った後、私はストームヘヴンという小さな街を訪ねて、ある有名な静物画家から絵画の講義を受けたの(そう、また絵を描き始めたのよ)。

ある友人と一緒にストロス・エムカイに行くことにしたわ。友達の画家で、キヴ・リンドレスという素敵な男性よ。私は宿屋〈叫ぶ人魚〉(すごい名前でしょう)に滞在している。そこでキヴと一緒に海の景色を描いているの!

少し不愉快な知らせがあるわ。私たちが確か17歳? の頃に、あなたが私にくれた指輪を覚えてる?

本当にごめんなさい、イジー。でも私の部屋に泥棒が入ったの。私が持っていた他の持ち物と一緒に、指輪もなくなってしまった。それで落ち込んでいるわ。だってあの指輪はずっと前から持っていたものだし、あなたも私に持っていてほしいだろうと思っていたから。

地元の衛兵のところに行ってみるわ。きっと盗賊を見つけだしてくれるはずよ。だって、ストロスはそんなに広くないものね。心配しないで、大したことじゃないわ。でも申し訳ない気分だから、あなたには何があったか知らせておきたかったの。

あなたに会いたいわ、大切な人。

あなたのオーレリア

オーレリアの手紙Aurelia’s Letter

お母さん、

絵のようなフェルズランの街からこの手紙を書いています。犯罪グループの正体をもうすぐ突き止められそうなの!次に話すべき相手を見つけたら、きっとヴェロイーズ商会のゴールドがどこに行ったのか判明するわ。そうしたら、やっとイソベルに連絡できる。

本当に恥じているわ。慰めてくれてありがとう、でも本当なの。これはすべて私のせい。近いうちに、マーソと一緒に城を訪ねるわ。そうしたら皆で抱き合って乾杯しましょう。

愛をこめて、
あなたのオーレリア

PS:お母さんの手紙をマーソに見せたら、彼はずっと笑っていたわ。マーソも私と同じ意見よ。お母さんはそういうところをもっと見せたほうがいいって。人を笑わせる才能があるんだから。

オルナウグの生態Ecology of the Ornaug

フロント・マエシリウスによる実地研究メモ

西アビシアン海のサンゴ礁や海岸で見られる一般的な捕食生物であるオルナウグは、研究者に対していくつかの難しい問いを提示している。オルナウグは犬の体と足を持ち、ワニの顎を持ち、魚のような滑らかな鱗と針のようなヒレを持つ。明らかに水中での生活に適していながら、オルナウグはその生涯の大部分を水の外で狩りと採取をして過ごす。さらに見つけたものは何でも食べるほどの適応力を有するが、容易に家畜化でき、主人との間に強い絆を作る。オルナウグはこのように、複数の点で既存の枠に当てはめられることを拒むのである。

解剖してみると、オルナウグの分類は明らかになる。魚のような外見をしているが、オルナウグは高度に発達した大気を呼吸する生物の肺を持っている。また水棲生物は湿った柔らかい皮膚を持つのに対し、オルナウグの鱗は明確に乾燥していて硬い。蛇の皮膚に似て、見た目が光沢を放つだけである。この生物は魚でも水棲生物でもなく、水中や水辺で過ごすことの多い両生類なのだ。

もちろん、これと似たような適応能力を示す水棲の哺乳類は数多く存在する。例えばアシカやホーカーである。こうした哺乳動物と同様、オルナウグは瞬きする膜で水中にいる時に目を保護し、鼻は水が入らないように閉じ、さらに泳ぎを補助するヒレを持っている。だがアシカやホーカーとは違い、オルナウグには断熱効果の高い脂肪も、強力なヒレ足や尾もないため、水中ではそれほど機敏に動けない。

野生のオルナウグを忍耐強く観察することで、こうした謎は解明される。オルナウグは獲物を水中で狩るのではなく、海辺で拾い集めるのである。オルナウグが水に入るのは単に新たなサンゴ礁や島の海岸地域に移動するためであり、事実、断熱性に欠けるオルナウグの移動範囲は温暖な海域や浅瀬に限られる。オルナウグは完全に地上で生きる動物に比べると優れた泳ぎ手だが、水泳よりも走るほうがはるかに得意である。

(実地研究者は飢えたオルナウグの群れに出会った時、以上の観察を心に留めておくといいだろう)

カリーン船長の記録Captain Kaleen’s Log

新たな航海
契約相手、レディ・アラベル・ダヴォー。通常の倍の料金。保証人はウェイレスト財務省のエドウィナ・ゲーリング

その1
ウェイレスト

空は灰色だが、落ち着いている。

もう何日もここで足を休めている。コッパーとかいうあのダガーの環の女、とてつもないカード名人だ。口数は少ないが、よく勝つ。うちの積荷についても二言以上は口にしない。
***
ついに出航だ。南西へ航路を定めよ、余計なことは聞くな。乗船してきた護衛対象の貴族はえらく派手だった。あの上流階級の者たちが必死に目立たないようにしていることに、誰も気づかないでいてくれるといいが。

その3
ダガーフォールを通過中

天候は安定している。

上級王エメリックはあれでごまかしているつもりなのだろうか。あの声ではどこにいてもわかる。あの男の肺活量はノルドのスカルド並みだし、船全体に聞こえるくらい大声で喋っている。乗組員たちが下を向いて、口を閉じていることを祈るしかない。

***
上級王はようやく秘密を打ち明けた。迫ったので、他に選択肢がなかったようだ。シストレス諸島へ向かうことになった。ドミニオンとパクトの旗を掲げる船2隻と途中で合流する。何かの首脳会談だろう、賭けてもいい。とはいえ、賭け事をしないのが今日の私の仕事だ。

その6
ストロス・エムカイ西。

天候は晴れ、安定している。

パーフェクトパウンスとカマルズベインに合流。ザジ船長とツゾ船長の評判は聞いていたが、直接会うのは初めてだ。沖合で信号を使って合図することを直接会うと言っていいかどうかは微妙だが、まあそれに近い。残りの航海は一緒に向かうのだろう。

その9
アビシアン海

天候は変わりやすい。
天候の動きが妙だ。この海域は10回以上も航海しているが、こんな状態になるのは見たことがない。巨像の姿が見えてくるまでにこのスコールがやむことを祈ろう。その間、読書の遅れを取り戻す。ウェイレストを出る前に、タイリン・ウィロリアンの「欲望と恋人たち」と、捜査官ヴェイルの最新作「呪われた灯台」を手に入れた。これで本土に戻るまでの暇つぶしになるだろう。

その12
シストレス視認可能

荒天

ハイ・アイルを確認するやいなや、激しい嵐に襲われた。乗組員全員に命綱をつけるよう呼びかけ、甲板下にまで行って陛下に荒れた海へ備えるよう伝えた。衛兵たちは喜ばなかったが、王は喜んでいた。笑ってしまう。この嵐では船団を維持できない。嵐はどこからともなくやってきた。ここらの海で、こんな経験はしたことがない。

これが最後の記録になるかもしれない。海はデューンリッパーの尻のように大揺れしている。ゴンファローネ岬から光が差さないので、我々は盲目だ。尻軽女のターヴァめ、私に借りがあるだろう。生き延びさせろ!こんなことで挫けてはいられない。いつものように、船員たちと一緒に生き延びる。

キヴのメモKiv’s Notes

タムリエル中の人々についてのメモ。

〈最近の出来事は以下〉

バンコライ – Sはハルシオンの近く。“かき回している”ふりをするのが好きな女だ。

ウェイレスト:JLが近寄ってきた。指輪?彼には品質がわかる。別れる準備をしておく。

ウェイレスト:かなり金持ちの女。サファイア!芸術を好む。馬鹿ではない。上手く騙してあのネックレスを手に入れる。

ベルカース – ゴールドリーフ。金貨と共に旅をしている。ブツを隠しているかも。後でもっと大物を売りさばく?

セイダ・ニーン:郵便を確認する。ガレドラのせいで面倒になった。新しい隠し場所を探す。

キヴの日記Kiv’s Journal

あの小さな村は外れだと思ったが、そこでレディ・ジョーベルに出会った。ハイ・アイル出身の、かなり若い女だ。

宿屋でデートをして“芸術”の話をした。それなりの宝石を持っていそうだと思ったが、何も高価なものはなかった。だが、印章指輪をはめているのが見えた。

自分の一族ではなく、ヴェロイーズ商会のものだ。どうやって手に入れたのか聞かなければ。使えるかもしれない。

よく喋る女だが「個人レッスン」に誘うことができた… ストロス・エムカイの話をしてやると、彼女はぜひ冒険に出たいと言った。いや、完璧だ。

グウェネンギスの日記Gwenengith’s Journal

1日目

ゴンファローネ湾に来た。 注意深き貴品箱で銀行員として働いて1日経った。宝物庫に保管すると言ったら思いつく普通の品々以外に、修理が必要な複数の武器、かなりの量の毒物、ルーフタッパーというヤギを受け取った。シャルルバートは私にヤギを突き返すよう求めていた。うちは家畜を保管しないと。でもあいつはヤギを運んできたノルドに私の後ろから手を振って、そう言うチャンスを逃したのだから仕方ない。ヤギは私が預かる。

もちろん、あのノルドのために。

それにノルドが臭いとは全然思わなかった。仕事か戦争のせいで汗臭かっただけだ。ノルドの場合はどっちかわからない。

2日目

うちの衛兵がヤギのいる棟を気に入ってくれた。今日、ルーフタッパーがシャルルバートの昼食を食べた時、彼女も私と同じくらい笑っていた。ヤギは彼の外套も食べてしまった。ヤギは本当に何でも食べる。

その後、ルーフタッパーに日を浴びさせてあげようと外に連れていったら、すぐに脱走してしまった。ヤギが建物を登るところを見るまでは、本当の意味で何かが「登る」のを見たとは言えない。ヤギを戦士ギルドから降ろす方法を考えるのに1時間もかかった。シャルルバートは私がデスクを留守にしすぎたことに怒ったが、気にしない。ヤギには日光浴が必要だ。このヤギには屋根も1つか2つ必要らしい。

今日はなかなか大量の魂石を預かった。忙しい人がいるらしい。

3日目

あのノルドが戻ってきて、よかったらヤギをもらってくれと言った。ヤギは彼に失った恋人を思い出させるらしかった。その恋人というのは最近ハドリッドというものに真っ二つにされたという。うちの衛兵が即座にヤギをもらうと言ったので、シャルルバートは安心した。どうも彼女は私がヤギを食うと思っているらしい。まあいい、彼女もそのうち理解してくれるだろう。

もちろん、私は衛兵を脇に連れだし、ヤギをもう少しここに置けないかと頼んだ。あの偉そうな銀行家には、ここにあるすべてのものが彼の自由にはならないことを思い知らせてやらねば。そのほうが彼にとっても幸せだ。それにルーフタッパーは今日、彼の黄色い扇を食べてしまった。私は笑いすぎて昼食を失くすところだった。

衛兵は同意してくれた。彼女もきっとシャルルバートが好きではないのだろう。

後で、我らがヤギの友をまた屋根登りに連れだしてやろう。その前に扉から脱走しないでくれるといいが。衛兵は今日だけですでに2度も、ヤギが出ていくのを止めたのだ。あの子には屋根で過ごす時間が必要ということだろう。

ゲームのルールRules of the Game

ようこそ、ようこそ!私、看守 ティナン・マニックがホエールフォールのゲームに歓迎しよう!

ルールは簡単だ。運命の競争者であり、惨めなクズである君は死んだ。君がアリーナに入るのはアメノスから逃げるためではなく、再び生きるためだ。君は島をうろつく、熟練の狩人たちの追跡から生き残らなければならない。

毒矢の達人、狩人マーカス
北方の恐るべき狂戦士、狩人キャム
勇猛なる聖職者、狩人ギルドナー
不屈の騎士、狩人ルシア
ブラック・マーシュの災厄、狩人クロウ
獣たちの女主人、狩人ディー

君は島の北端にある、勝者のステージまで生き延びられるか? それとも彼らの手で真の最期を遂げるか?

見届けよう!

ゴンファローネ湾の巨像The Colossus of Gonfalon Bay

ゴンファローネ湾歴史社会協会会長、ミラメル・シャラセル 著

ハイ・アイルの誇り、いや諸島全体の誇りが、ゴンファローネ湾の港から立ち上がり、300フィートほどの高さにそびえたっている。ゴンファローネ湾の巨像は、この島の民と歴史の力と威厳を示す偉大なる像である。しかし、ハイ・アイルの民の大半はこの偉大なる巨像を畏敬と驚異の念をもって眺めるが、像が建設された歴史や、像が体現しているもの、あるいはこの巨大記念碑が誰の顔をかたどっているのかを実際に知る者は少ない。そう、筆者はそれを修正すべき時が来ていると思うのである!

ゴンファローネ湾の巨像は、全旗海軍のための主要な記念碑の案として始まった。大艦隊の生き残りがハイ・アイルに帰還した後、建築監督のトビン・ムーアクロフトが男爵提督ベンドゥ・オロに計画を見せた時、オロはそれを却下した。オロが全旗の小島の記念碑のために望んでいたのは、全旗海軍を構成したすべての船と船乗りを称えることであり、特定の人物の記念碑ではなかった。たとえその人物が男爵提督であっても。こうして、小島の記念碑が建設される間、巨像の計画は見合わせとなった。

第一紀2274年に全旗の小島の記念碑群の完成が近づくと、スロードに対抗して全旗艦隊を集め率いたベンドゥ・オロの尽力を正しく評価する時が来たと判断された。ゴンファローネ湾から突きだす荒々しい岩が選ばれ、石細工の達人と加工術師のチームが集められ、そびえたつ岩壁を芸術作品に変える作業が始まった。完成式とお披露目は第一紀2290年に行われた。ベンドゥ・オロは老齢で健康に優れなかったが、それでもアンヴィルからはるばるやって来て名誉を受け入れた。

多くの人々が巨像と呼ぶようになったこの作品は、ハイ・アイル民にとって驚異であると同時に誇りの源でもある。今日、ベンドゥ・オロの名や彼がタムリエルの民のために成し遂げた業績を記憶する者は少ないが、港を見下ろす彼の顔は、その眼差しの下を歩むすべての者に安心を授けている。伝説によれば、巨像が立っている限り、ハイ・アイルやシストレス諸島に危害が加えられることはないとされている。像が末永く立ち続けていることを願いたい!

ゴンファローネ湾の仕事Work in Gonfalon Bay

剣や弓の扱いは得意か?

死をもたらす呪文をたやすく唱えられるか?

ハイ・アイルとアメノスで、最も危険な領域を探検する意志はあるか?

昔ながらのやり方で、ゴールドと栄光を手に入れたいか?

それならば、仕事がある!

詳しくは、ゴンファローネ湾の中央北地区でグルゼグを探せ。

ザジ船長の記録Captain Za’ji’s Log

その458
あの契約が果たされるとは、この者にはどうしても思えない。レディ・アラベルからの手紙は明快だった。スカイウォッチに停泊し、連絡を待て。我々がずっと待ち続けていると、ついにアイレン女王の高名な女王の瞳がやってきた。彼女は次々と約束を突き付けてきたが、ザジは尻尾の上に座って、キャスカをなだめなくてはならない。キャスカには得意なことが沢山あるが、我慢はその中に入っていない。

オーリドン港ではいつものことだが、天候は快晴。

その459
ザジは間違っていた!正しくもあった。これは契約ではない。我々は徴集された!パーフェクトパウンスは今、王族の密偵を乗せてハイ・アイルへ航海している。少なくともチズバリとシデュラやいつもの船員たちは、スカイウォッチの酒場に戻ったら使える金貨を少し手に入れた。

女王の瞳のレディは港で約束した。この家臣たちをシストレス諸島に無事送り届ければ、王家から大きな富を受け取れるだろうと。だがザジはこのカリエルという者を信用しない。信じるのはこの目で見たものだけだ。

天候はザジが昨晩夕食を共にした仲間と同じくらい快適で、美しい。

その460
パーフェクトパウンスはストロス・エムカイの西で、スピアヘッドとカマルズベインに出会った。空には明るい月。この者の見える範囲には海賊もなし。もちろん、我々とスピアヘッド以外には。堂々たる船長たちに合図をして、我々はこの先の航海のため陣形を組んだ。違う同盟の船が3隻、船団を組むのは奇妙だ。しかし、ザジが戦争と平和について何を知っているだろう?

天候は悪くないが、この者の尻尾は説明しにくい仕方でちぢれてしまっている。ザジには嫌な予感がするが、昼に食べたチーズのせいかもしれない。チーズはザジに優しくない。

追記:乗客は他ならぬアイレン女王その人だった!ザジが知ってはいけなかったのだろうが、あの陰のある顔は他の誰でもない!キャスカには沈黙を守るよう誓わせた。キャスカはとってもお喋りだからな!もちろん、キャスカはとっくに知っていたと言っていた。なんというほら吹き!

更新の更新:女王だ!彼女は船室に来て目的地を確認し、我々の分別に感謝してくれた。我々には分別があまりないと伝える勇気はなかったが、とにかく感謝しておいた。

その461
ハイ・アイルが間もなく見えるはずだ。この者には嫌な予感がするが、空は晴れて明るい。キャスカに舵を任せて、必要な昼寝をしよう。近づけば起こしてくれるはずだ。それまで、この者は面白い夢に戻らなければならない。

サンゴの復讐Coral’s Revenge

自然は私たちの周りで育ち続ける
地上でも、そして海の上でも
不自然な街路を押しのけて
育つ根は自由に生きる

海辺の世界はぼやけさせる
大地と、海の境界を
活気あるサンゴ礁は道標をもたらし
川は自由に流れる

この秩序ある領域は自然のもの
大地と、そして海と
すべての岩と石と
穏やかで自由に過ごす者の領域

だが私たちは奴らを倒そう、波と雨により
すべての大地と、そして海を洗い流して
人間とエルフに苦痛の約束をもたらそう
自由なものに鎖を課した罪で

木々は根であり、根は大地である
大地と、そして海の下
私たちの手の下で、すべては沈み去り
自然は自由になるだろう

シーエルフの脅威The Sea Elf Threat

デュフォート家の執事、へルシアン・スタロ 著

エリア女公爵閣下の代理として、私はシーエルフによるシストレス公爵領の民と商業への脅威を査定し編纂した。衛兵に命じて我々の海域に詳しい船員たちに話を聞かせ、学者を雇ってシーエルフによる襲撃の歴史記録を調査させ、戦艦を派遣してシーエルフの上陸地を捜索させた。その結果、私は十分な自信をもってシーエルフの脅威は過大に喧伝されていると言える。

私はこの結果を予想していなかったので、詳しく説明させてほしい。

まず、地域の防備はシーエルフの襲撃に対する大きな防波堤である。ハイ・アイルはゴンファローネ湾とナヴィール城の壁、そしてデュフォート造船所に停留している戦艦によって守られている。シーエルフがハイ・アイルに侵入することは珍しく、侵入する場合も小規模な集団のみであり、長期間留まることはない。シーエルフはアメノスの荒々しい海岸沿いや、より遠く離れたガレンといった、強力な防備を欠く区域でより頻繁に見られる。モーナード家がデュフォート家のように自らの島の防衛に力を注いでいれば、シーエルフがこうした区域に居座ることもないだろう。

第二に、海が見えるところで起きた自然災害や海岸地帯の強盗はすべて、シーエルフが関わっているかどうかとは無関係に、シーエルフ海賊の仕業だとされている。商船が嵐で沈んだら、シーエルフに沈められたことになる。農夫の家畜が行方不明になったら、シーエルフの襲撃である。天気が悪化したら、マオマーのシーメイジのせいにされる。私の情報源に基づいて推測するなら、シーエルフの略奪報告のうち、実際に起きたと考えられるのは10回に1度ほどだと思われる。

第三に、シーエルフが様々な旗を掲げて航海することも重要な点である。それぞれの艦隊はいわば、自らの縄張りを有する海賊団のゆるやかな連合である。シーエルフの艦隊は他のシーエルフ艦隊と協力して行動することはないし、別の艦隊の領域で密漁することもない。シストレス諸島をうろつくシーエルフはドレッドセイル艦隊に属している。公爵領の海域でそれ以外のシーエルフが目撃されても、大した危険はない。

まとめると、シーエルフはハイ・アイルにとって大きな脅威ではない。当然ながら、ハイ・アイルこそがシストレス公爵領の最も裕福かつ価値ある部分である。確かにドレッドセイルはガレンを悩ませているが、それはモーナード家の問題である。それにアメノスやイフェロンで起きていることは、まったく重要ではない。あんな荒れ果てた野生の海岸は、シーエルフどもに好きなように荒らさせておけばいい。

シストレスの騎士団 第1巻Systres Knightly Orders Vol 1

騎士の年代史家、エダナ・オギエ 著

ごきげんよう、読者よ!私はアルバトロス騎士団の騎士志願者たちの中で、駆け出しとして訓練しながら青春の大半を過ごした。しばらく時が経ってから、自分の才能は騎士よりも年代史家や知識の編纂者に適していると気づいた。それでも故郷の島々に住む勇敢な騎士団について、手に入る限りのことを記録し調査する欲求が、私の研究生活にずっと付きまとっていた。そして今、私は定命の者の筆によって生み出された中で最高の騎士団についての本を書いている!

アルバトロス騎士団
まず、騎士団組織の中でも頂点にあり、勇敢さも抜きんでたアルバトロス騎士団に目を向けよう。この騎士団の最初の騎士は第二紀初期に逃亡してきて、ハイ・アイルに騎士団を築いた。それ以来、休まず活動を続けている。

比喩を許していただけるのなら、アルバトロス騎士団はその広げた翼の大きさを誇りとしている。活動中の騎士とニルンを探検した割合の両面で、彼らの数は諸島に拠点を置く他の騎士団を圧倒している。これはこの騎士団が冒険と発見、大胆な偉業に注力して、本土から入団者を惹きつけているからこそ可能になったことである。現在の指導者メルフレン・ル・フルーリー卿は、空に浮かぶ星の数よりも多くの島を、アビシアン海で発見したと主張している。幼少期の大部分を彼の庇護のもとで過ごした私は、これが事実であることを証言できる。確かに私は星も卿の発見も数えたことはないのだが、比較しうるものであることは確かだ。

フォンテノット・レイラは、親の遺産を期待できない貴族の子供たちに自分の力で遺産を築く手だてを与えるために、この騎士団を創設した。自身も第四子であるフォンテノットは自分の行いへのあらゆる表彰を拒み、謙虚に日々を過ごした。伝説によると、彼は仲間の騎士たちに自分の名前から肩書きを外すよう頼みさえしたという。フォンテノット・レイラはまさしく、アルバトロス騎士団への入団を望むすべての者が目指すべき存在である。

アイアンノット騎士団
その数多くの武勇譚にもかかわらず、アイアンノット騎士団の始まりはアルバトロス騎士団以上に伝説的である。創設者の女男爵ベレーネ・シャティヨンは、あの全旗海軍と共に航海した。彼女はスロードと戦い、記録を信じるなら、スロードの腐敗のため片腕を失いさえした。その犠牲と勇敢さを称えるため、この騎士団の団員には片方の手に黒い籠手を身に着ける者もいる。

ハイ・アイルの統治者は他のどの騎士団よりも、アイアンノットに注意を払っている。これは気まぐれな推測などではなく、この騎士団自身の記録と報告によって証明されている。彼らは数世代も前まで遡る、ハイ・アイル貴族からの信書を保管しているのである。

アルバトロス騎士団の騎士のように、アイアンノットの名声には、数多くの大胆かつ勇敢な偉業が結びついている。彼らは武術に優れることで知られており、路上でもトーナメントでもたゆまぬ訓練が行われている。とりわけ、私はアイアンノット以上にうまく剣を扱える騎士団を知らない。

入団を認められたその瞬間から、小姓や従者は最強の戦士以外を全員振り落とすための容赦ない試練に立ち向かうことになる。結び目の勇士は困難のない生活に耐えられず、(戦場にいない時は)大半の時間をトーナメント場で過ごしている。

ハイ・アイルの現在の統治者はアイアンノットを高く評価しているが、彼らを管理するのは困難だと感じている。統治者たちは個々の団員が地域の他の騎士団と戦うのを防ぐため、明確な目的を持たない、長く回りくどい任務を与えて出発させることで、ナヴィール城にいる騎士の数を大きく減らした状態を保っている。アイアンノット現在の団長であるモリック卿はこの過保護に苛立っている。彼は自分の騎士たちを率いてタムリエルの戦場に向かう日を心待ちにしているのだ。モリック卿は密かに私財を蓄えて遠征資金を捻出しようと試みているが、エリア女公爵はアイアンノットにトーナメントでの見栄えを整えるには十分だが、独立を得るには至らない程度のゴールドしか与えないように細心の注意を払っている。

シストレスの騎士団 第2巻Systres Knightly Orders Vol 2

騎士の年代史家、エダナ・オギエ 著

ごきげんよう、読者よ。第一巻ではアルバトロス騎士団とアイアンノット騎士団を扱った。そのため、尊敬を集めるこれら二つの騎士団から離れて、シストレス諸島の残りの騎士団の説明に移ろう。

オーク騎士団
シストレス諸島を拠点とする最も新しい騎士団であるオーク騎士団は、軍事的戦闘よりも魔術や魔法の知識を優先している。このため、彼らはドルイドと親密な関係を築いており、しばしば彼らの高度な魔法の知識の基礎として、ドルイド出身の師の名を挙げている。最近では、オーク騎士の一部が破壊魔術と召喚魔術の領域で、魔術師ギルドの呪文製作者をも上回るほどになっている。

残念ながら、オーク騎士団はその方向性と能力のために、少なくない数の敵を作っている。アイアンノットの騎士たちはオーク騎士に対する軽蔑を隠さないことで知られており、彼らはオークの騎士が真の騎士に相応しい騎士道と戦闘に対する敬意を欠いていると述べている。さらに、魔術師ギルドの召喚師はしばしばオーク騎士団の技能を脅威と感じ、この騎士たちは正当な魔術の実践者ではないと主張している。

それでも、オーク騎士団には強力な味方がいる。ダマード伯爵はオーク騎士団に個人的な演習と教授を施しており、高く評価されている。貴族たちは明らかにオーク騎士団を支持する意義を理解している。この騎士たちはよくその魔術の力を貴族の名家に提供することで、さまざまな事業の手助けをしているからである。

小規模な騎士団、および解体された騎士団
シストレス諸島を拠点とする他の騎士団に触れなければ、有能な年代史家とは言えないだろう。というのも、ここまで詳細に解説した騎士団はこの諸島の騎士の大半を擁しているが、現在および過去に存在した騎士たちの全員ではないからだ。例えば数世紀前、デスバローと呼ばれる騎士たちがいた。この騎士団がなぜ勢力を失ったのかについては記録がないが、この騎士団の拠点が無人の荒地と化しているという報告は数多い。それでも最盛期の頃、デスバローの騎士たちは地方を巡回し、分断と流血の時代に平和を保っていた。

現在も活動中のブレイデッドバイン騎士団は、ドルイドの騎士団である。この騎士団がドルイドの理念への関心を引き起こすために形成されたのか、それとも本当にドルイドの技を騎士団のライフスタイルに組み込めるという考えがあったのかはわからない。いずれにせよ、この騎士団は主に森と、ドルイドたちが神聖と考える島の各地を守ることを任務とした、ストーンロア・サークルのドルイドたちで構成されている。

最後は、単なる伝説と考える者もいる、謎に包まれた炎と影の騎士団である。現存する書物や歴史記述が示すところに基づく限り、この騎士団はたった一人の騎士で構成されており、長期に及ぶ秘密の訓練の後で後継者に責務を受け継がせる。炎と影の騎士は数世紀の間に何度か目撃されており、貴族に協力する場合もあれば、民たちの中にいて積極的に反乱を呼び掛ける場合もあった。残念ながら、彼らの素性や居所、動機についてこれ以上の情報はない。炎と影の騎士の噂はここ数年聞こえてこない。私は肩書を有する最後の者が遺産を受け継がせる前に死去したのではないかと疑っている。気の重くなる考えである。

シストレスの歴史 第1巻Systres History: Volume 1

グウィリム大学エルセリック史学部長補佐、トリラム・ヘラドレン 著

シストレス諸島の島々には、少なくとも第一紀にまで遡る、長く動乱に満ちた歴史がある。

島についての最初の記述は、ドルイドの文書に由来する。ドルイドとは、第一紀330年頃に敵意を増したディレニの支配から逃れるためハイロックに逃亡した、イフレを崇拝するブレトンたちである。この時代はハイロック史の動乱期であり、ディレニのエルフと、厳格さを増すアレッシア帝国との間で権力闘争が起きていた。アレッシア教団は正教からの逸脱を許さなかったため、ドルイドたちの一部を人間に与する異教徒として粛清した可能性が高い。同様に、勢力を増していたディレニ王朝は彼らをハイロックにおけるエルフの利益に対する潜在的な脅威とみなした。ドルイドたちはこの地域のドルイドによる統治を公に要求したことで、タムリエル北西のほぼ全陣営から標的となった。

ディレニ家によって追放されたにせよ、自らの意思で去ったにせよ、伝説によるとドルイドたちはシストレス諸島への危険な旅を、ドルイドの長老が風の中に聞いたという謎の「歌」に従うことで成し遂げた。彼らは星霜の書を携えており、その導きに従って新たな居住地イフェロンの海辺にたどり着いたとする伝説もある。

我々は諸島の初期の時代についてほとんど知らない。大部分の記録は第一紀660年、左利きの侵略の最中に焼けてしまったからである。しかしドルイド正教に従うなら、最初のドラオイフェがアースボーンズの力を伝えて傷ついた者を変身させ、火山島を緑の楽園に変えたという。大半の学者はこの記述を正式に認めていないが、私はドルイドたちの到着のすぐ後に、豊穣の時代が訪れたという証拠を見つけた。

この黄金時代はドルイドたちが諸島を越え、その先へと拡大するのを早めた。司祭の航海士たちは付呪をかけた船を出航させ、不毛な岩場や色褪せたサンゴ礁を見つけるたびに、命の火を灯していった。この時代には争いも起きた。この「三朝の航海」の時に、ドルイドの「サークル」が生まれた――互いに区別される3つの文化的派閥である。オソ・カラトリウスやリランドリルのティルネンダリオンのような宗教学者の考えでは、荒波でそれぞれの司祭が得た経験と、おそらくは彼らが交流した種族たちのおかげで、新たな信念が生まれた。この新たな理論上の対立はストーンロア、エルダータイド、そしてファイアソング・サークルを分離させ、危うく表立った紛争に激化するところだった。しかし幸運にも、彼らの海の外側からの脅威が、シストレスにおけるドルイドの優位を終結させた。

シストレスの歴史 第2巻Systres History: Volume 2

グウィリム大学エルセリック史学部長補佐、トリラム・ヘラドレン 著

イフェロンとシストレス諸島のはるか西で、ヨクダの抗争は破滅的な終焉を迎えようとしていた。第一紀600年、マンセル・センスニットの外交的粛清と、猛反発を招いたランディク・トルンの布告により、移民の爆発的増加が起きた。冷遇された貴族とその家臣は、大陸東にある無数の岩多き島へと散った。こうした島々は長い間、流刑者や海賊、そして落ちぶれた、左利きのエルフという名のほうがよく知られているレフトハンド帝国の残党の隠れ家として機能していた。

多くの者はレフトハンド・エルフがレッドガードの祖先たちに完全に滅ぼされたと信じているが、私は第一紀まで生き延びた人々がいるという証拠を数多く見つけている。海軍の記録はモニの東にある「エルフの」居留地への攻囲が、神話紀の後期まで延期されたことを証拠立てている。ただし、レフトハンダーに関する仮説を確実に証明することはできない。高位ヨクダ語の「エルフ」という語は二重の意味で古い、単に「敵」を意味する言葉から派生したものだからだ。シンガー時代の外交の流動性を考えるなら、ヨクダにおいてはいつ誰が敵であってもおかしくない。

いずれにしても島に無断で居住する者たちは、エルフであろうとなかろうと、新たなヨクダの避難民の集団を避けるため、エルセリックをさらに東へ移動しなければならなかった。ある者はサマーセットへ向かって南東に移動し、海で力尽きるか、マオマーの私掠船団と結託した。また別の者はイリアック湾へ向けて北東へ移動した。こうした旅路に関しては、いくつかのディレニ海軍の公文書に「西の旗を掲げた船」との短い戦闘の概要が記されている以外は、資料が不足している。しかしこうした艦隊のうち一つは東へ向かい、シストレス諸島に錨を下ろした。旅行ではなく、征服するために。

またしても、高位ヨクダ語の流動性と残されたドルイドの記録の乏しさのせいで、侵略艦隊の正確な構成を解明するのは困難である。私の同時代人の多くが、親友のガルノバグ・グロ・マログも含めて、艦隊は数百年も前のアルダナン・ハバ皇帝の治世に大陸を去った、ヨクダの反乱者で構成されていたと主張している。私の見解は、侵略者たちが左利きのエルフだったというものだ。

最大の争点は、第一紀665年の出来事を記した、残存する数少ないあるドルイド文書に由来している。著者はブラレン・トゥサドというドラオイフェのメンバーだが、この人物は侵略者を「顔が長く、耳も長い西方の者」と記している。一見すると、これは明らかにレフトハンド・エルフに言及しているように思える。しかしガルノバグは、トゥサドが記述しているのが侵略者の身体的特徴ではなく、その兜であるという有力な議論を提起している。神話紀中後期のヨクダの兜にはしばしば「華麗なるターヴァ」、すなわち翼を広げた女神を金属で表現したものが配されていた。この紋章が兜に鷲のような形状を与えており、翼の部分はエルフの耳に酷似している。

ガルノバグはこの見解をさらに一歩進め、レフトハンド・エルフは、そもそも存在しなかったと主張している。彼は左利きの物語全体が、本質的には「エルフ」と「敵」が同一視されたという悲劇的事実に基づく、翻訳の誤りであると述べている。彼によればレフトハンド・エルフとは単に左利きの敵のことであり、エルフでもネードやアトモーラでもあった。私としてはこの話を信じるのはきわめて困難だが、ここでその問題を論じるつもりはない。むしろ、一次資料に向き直ることにしたい。

後のほうの記述で、トゥサドはハイ・アイルのある祠への襲撃について書いており、次のように述べている。「剣の民は盾を寄せ合って、野を這う蛇のように長大な列を作って歩いた」。真理が見いだされるのはこの記述である。「盾を寄せ合って」。古遺物研究者たちはナ・トタンブ遺跡にヨクダの盾を発見してきたが、現在に至るまで希少であり、戦闘で装備する道具としてよりも、儀式用の遺物か芸術作品だった可能性が高い。有名なアンセイ、七連斬りのナシファは、ある死せる戦士のための哀歌の中で、次のように述べている。「彼女は決して、エルフやゴブリンのように盾を構えなかった。求めたのは隠れ場所ではなく、鋼鉄とシェハイが授けるもの。命を奪う要塞、切り裂く守り」。ヨクダ戦士の軍団が「盾を寄せ合って」歩くという考えは、ヨクダの軍事活動について我々が知っているすべてに反する。しかしこれは少なくとも、ある種族には完璧に合致する。すなわち、エルフである。

エルフによるシストレスの攻囲は長引き、双方の陣営に何百人もの死者を生んだ。最終的には、エルフたちがドルイドの心臓部に近づいた時、島それ自体が介入した。イフェロンの中心部にあるドルイドたちの神聖な火山ファイアソングが噴火し、第一紀668年のレッドマウンテンの災厄に匹敵するほどの地割れが生じて、ドルイドとエルフを等しく飲み込んだのである。むしろ、私のささやかな意見ではこの出来事が関係している。日付が一致しているからである。

結局、エルフたちはせめてもの成果として諸島を占拠し、ドルイドたちは歴史の後景へと退いた。シストレス自体の秘密の小地域に、あるいはその付近の荒れ果てた岩場に。

レフトハンダーの勝利は相対的に短命だった。最初のラ・ガーダの戦士たちが第一紀785年にやって来て、飢えた侵略軍の残党を殲滅した。ヨクダは来た時と同じ性急さで島を去り、東へ航海してハンマーフェルに運命の地を求めた。残されたのはドルイドのみだった。数は大幅に減ったが、以前よりはるかに知恵をつけていた。

シストレスの歴史 第3巻Systres History: Volume 3

グウィリム大学エルセリック史学部長補佐、トリラム・ヘラドレン 著

ファイアソング山の最初の噴火から1500年ほど後、スラスのナメクジの民は世界に向けて大いなる疫病を解き放った。第一紀2200年以降の数十年は、タムリエル史上最も悲惨な時代に数えられる。病は超自然的と思えるほどの速度で大陸を駆け巡り、数十万の歪んだ死体を後に残していった。癒し手の記録は腫瘍や脆くなった骨、目や耳からしみ出す粘液、そして人々を狂気に陥れた癒されることのない渇きについて記している。

フラヴィア・レンティヌスやラッサフェルドのイロルリエル、マザジム・アル・ヘガテといった世に知られることなき英雄たちは、命を懸けて治療法を探したが、無駄に終わった。誰も病を止めることはできなかったが、彼らの仕事は人々が長い間恐れていたことを確証した。疫病は自然のものではなく、海からやって来たのであると。それはスラスから来ていた。

第一紀2241年、アンヴィルのコロヴィア船乗り王ベンドゥ・オロは、スラスの罪を罰する意図を高らかに宣言した。彼はアレッシア人たちに権限を嘆願し、それはすぐに受理された。皇帝の祝福を受けたオロは帝国艦隊の男爵提督の肩書を得て、逆襲の艦隊を集め始めた。オロもアレッシア議会の議員も、艦隊が疫病の治療法を発見できるという幻想を抱いてはいなかった。オロの旅路に同行した癒し手の数は少なかった。全旗海軍の意図は明らかに、スラスとその住民の完全な掃討であった。

2年の間に、男爵提督と全旗海軍の創設メンバーたちはシストレス諸島に居を据えた。コロヴィアの技師たちはブレトンとオークの労働者に支えられて、ゴンファローネ湾および現在の全旗の小島に、シストレス造船所を建設する作業を始めた。当然ながら、第一紀2240年には無数の造船所が協力して作業に当たっていた。特に有名なのはアリノールとリベンスパイアーである。だがシストレスの生産活動は規模と量のどちらでも他を圧倒していた。第一紀2249年には、海軍基地とその最初の船団が、スロードに対して戦争を仕掛ける準備を整えた。第一紀2250年代初期の小競り合いは、第一紀2258年、全面戦争に移行した。

ダークエルフ旗艦ホープスファイアーの船長フォルヴス・ネルヴィロの覚え書きには、スロードとの交戦の様子が次のように記されている。

「そこで我々は獣の姿を見た。巨大な肉の塊が、病気のクジラのように表面で煮えたぎり、長い列になった漏斗状の穴から墨が噴き出していた。この緑色の胆汁は水夫も船も等しく溶かしてしまい、我々が火をつけて焼くまで止まらなかった。ナメクジどもは戦争の獣の背にまたがり、ここに記すのがためらわれるほど冒涜的な力を持つ呪文を放った。エルフたちは頭を押さえて叫び、我々が海の獣に乗り込み、剣と銛でスラシアの民を殺すまで回復しなかった」

この海の獣を打ち破る秘訣を解明することが、勝敗を左右する戦法だった。スロードはしばしば波の下から一方的に攻撃してきたからである。これに関しては偉大なる妖術師シラベインの功績があったかもしれない。というのも紛争の間中、彼はアルケインの海上戦闘に力を注いでいたようだからだ。しかし詳しいことは、控えめに言っても不確かである。

海上でいくつかの大きな勝利を収めた後、オロとその大艦隊は第一紀2260年、スラスに対する最終攻撃を仕掛けた。決定的な戦いだったにもかかわらず、直接経験した者による報告は異常なまでに少ない。現在でさえ、全旗艦隊がいかにしてスロードの国を滅ぼしたのか、あるいは、スロードがサンゴの塔を使って自ら滅びたのか、我々には何もわかっていない。シラヌス・ルロのような研究者の主張によれば、この記録の空白は意図されたものであり、大地を丸ごと海に沈める方法は、後世の者にとって危険すぎたのがその理由だということになる。判明しているのは、この出来事を目撃した者は誰もが、多大な衝撃を受けたことだ。出来事に続く記録では、船長と船員のどちらも祝わず、憂いを交えた深い安堵の感情を示している。艦隊の半数が渦巻く波に失われたことも、気分を高揚させる助けにはならなかった。

恐怖と喪失にもかかわらず――あるいはまさにそれが理由で――男爵提督と生き残った船長たちはシストレス諸島に帰還し、全旗の小島で友愛協定に署名した。この文書は各船長と各種族に、和平と協調を誓わせるものだった。出席者全員が、シストレス諸島をタムリエルの勝利の記念碑に、そして大陸規模の団結の象徴にするという決意を抱いていた。もちろん、喉元過ぎれば熱さを忘れるものである。人々はその後遠からず、元のように小競り合いを始めた――特に正道戦争が有名である。だが短くきらびやかな瞬間、タムリエルの人々は一致団結し、共通の敵に勝利したのである。

シストレスの歴史 第4巻Systres History: Volume 4

グウィリム大学エルセリック史学部長補佐、トリラム・ヘラドレン 著

友好条約に署名した後、残された全旗海軍の船長と乗組員は、ハイロックとコロヴィア出身の少数の者を除いて、自分たちの国に帰った。後に残った人々の大半は、スロードに対する艦隊の勝利を記念するための記念碑の建造を託された技師や労働者であった。この大型記念碑は完成までに20年を要した。その間に、多くのブレトン労働者がハイ・アイルに家族を連れ、主にゴンファローネ湾の、造船所周辺の村に定住した。ブレトンの影響力は増したものの、この島は帝国の領地に留まった。ベンドゥ・オロ自身がコロヴィアの延長として島を要求したのである。ブレトンとアレッシア帝国の関係は、諸島の未来を不安に陥れた第一紀2305年のハイロック脱退に先立つ数年間に悪化した。

コロヴィア人たちは皇帝の要求にもかかわらずブレトンを追放せず、排除の費用が高くつきすぎるという異議を唱えた。本当は、コロヴィア人たちは時間稼ぎをしていただけだった。自分たちの独立を主張する機会をうかがっていたのである。

信仰と敬虔の軍団がハイロック奪回に失敗したこと、西方の出来事にアレッシア聖職者が介入を続けたことに勇気づけられ、コロヴィアの領地は第一紀2321年、ついに反乱を起こし、正道戦争が始まった。

すべてのシストレス住民にとって大きな安心の種となったのが、戦線はタムリエル本土の海岸線を越えて伸びなかったことである。しかし戦争の費用は、最も裕福なコロヴィア人でさえ手に負えなくなるほど膨れ上がった。ハイロックはドラゴンテール山脈やドルアダッチ、そしてハンマーフェルの不毛の荒野を頼みとして帝国の攻撃を防げたが、コロヴィアの高地は自然の防壁に乏しかった。アレッシア人とコロヴィア人はどちらも、敵に対して物質的な優位を得ようと必死になるあまり、財宝を使い果たしてしまった。第一紀2326年、領地の富は完全に枯渇した。追加資金を確保するため、コロヴィアの王たちは必須ではない領地を売却し始めたが、その中にはシストレス諸島も含まれていた。マルティーヌ・グイマルド女公爵が主導するハイロックの金貨貴族協会が、第一紀2327年に諸島を購入したが、その価格は公開されていない。

グイマルド女公爵は疑いなく、当時最も抜け目のない統治者であった。同時代の人々には冷淡で傲慢と形容されたが(この時代に権力を持った女性に対しては一般的な悪口である)、彼女は結婚と外交ではなく市場によって、すなわち巧妙な貸し出しと密輸、土地の買収、そして過酷なまでの税制によって莫大な富を得た。

シストレス諸島を買収したことで、グイマルド女公爵の宮廷での評判は、彼女自身が期待した以上に高まった。いとこのマルク・グイマルドへの手紙の中で、彼女はこう述べている。「名家たちは大いに喜んでいました――味方も、競争相手も同様に。本当に、まるで一握りの穀粒で、タムリエルのすべてを得たような気分でした!」

グイマルド家はシストレスの所有権を得て、島の自然資源を採掘しようとしたが、諸島の真の価値は文化的なものであることにすぐ気づいた。帝国の統治下にあっても、諸島で栄える労働者の共同体は、言語も文化も慣習も、完全にブレトンのものであった。この人口の動きと、ハイ・アイルやガレン、イフェロンにおけるドルイド遺跡の発見により、ハイロックの人々の想像の中で、シストレスのイメージが確立された。すなわち手つかずのまま残された、ブレトンの歴史の発祥の地というイメージだ。それがブレトンによって占拠され、今やブレトンの所有となったのである。

グイマルドは同時代の他の数人の者と共に、第一紀2328年に公式の就任式のためシストレスを訪れ、ブレトン祖先の故郷にちなんで最大の島に「ハイ・アイル」と名づけた。この名称は現在も使用されている。

シストレスの歴史 第5巻Systres History: Volume 5

グウィリム大学エルセリック史学部長補佐、トリラム・ヘラドレン 著

グイマルド家はシストレス諸島を150年の間統治した後、求婚を拒絶したため冷遇された。その後、野心的なマンテル家が諸島の所有権を獲得したが、短命に終わった。第一紀2484年、長い間休眠状態だったファイアソング山が、記録されている歴史上2回目の噴火を起こした。この破滅的な爆発はハイ・アイルの古代の造船所を粉砕し、アメノスで拡大していた居留地を完全に破壊し、全旗の記念碑を損傷させ、諸島の住民のほぼ3分の1の命を奪った。目撃者の報告では、噴火に続く数ヶ月間、リランドリルほどの離れた地からも煙が見え、硫黄の匂いが漂ってきたという。またどうやら震動により、ヘガテの鈴が揺らされたようである。

生存者たちの大半は漁師や捕鯨家などの海産業者であり、彼らは本土に支援を求めたが、物質的な援助はほとんど受けられなかった。シストレス貴族はほぼ全員、山の怒りによって死亡し、諸島の人々とハイロックの支配階級との実用的な連結がすべて絶たれてしまったのである。その後の数年間で、ブレトン封建政治の不平等がまざまざと明らかになり、大飢饉と水を原因とする病気で、ハイ・アイルのブレトンはさらに数千人死亡した。ドルイドたちの介入により、シストレス社会の全面的崩壊はかろうじて防がれた。

ストーンロア・サークルの者たちは島についての知識を活用して栄養のある根菜やキノコ、治療効果のある軟膏、そして真水を窮乏する生存者たちに提供した。これによって短くも重大な、「緑の時代」として知られるドルイド信仰の再興が起こった。ドルイドたちは島に対する権力の完全な復活は実現させなかったが、彼らは敬意を獲得し、大幅に地位を向上させた。今日諸島で用いられるドルイド用語の多くは、この再生と支援の時代に生まれたものである。

この後数百年にわたってブレトンたちが得たものは質素ながら、大きな歓喜に満ちていた。もはや貴族階級に邪魔されることがなくなったシストレスの民とドルイドの同胞たちは、船乗りや農民、羊飼いによる牧畜共同体を形成した。巨大な木材搬出キャンプと大規模農業は小さな自給自足の農地や牧歌的な草原、そして拡大するドルイド集落にとって代わった。壊れた記念碑や粉砕された村は破壊されたまま残り、ツタや苔、キノコが、ほとんどのシストレス住民が記憶に留めていないほどの歴史を通じて成長し続けた。

シストレスの歴史 第6巻Systres History: Volume 6

グウィリム大学エルセリック史学部長補佐、トリラム・ヘラドレン 著

シストレスの牧畜復興は、第一紀2704年黄昏の月11日に急速な終わりを迎えた。新たに形成されたレマン帝国の使者がゴンファローネ湾の海辺に現れ、諸島は再びシロディールの法定領地になったとの布告を発したのである。使者たちはブレトンの金貨貴族を取り巻きとして引き連れ、彼らは速やかに手綱を取って、シストレス諸島を元の封建社会に戻した――ただし今度は皇帝の名のもとに。諸島中で小さな抵抗勢力が生まれたが、どの反抗も勢いを得ることなく終わった(例外としてエルダータイド・サークルの活動は、今日に至るまで続いている)。帝国総督府とブレトン資本家の監視のもと、諸島は10年足らずのうちにタムリエルのより大きな政治的秩序の中に引き戻された。

レマンの支配の時代、シストレスはこれまでどおりの交易に戻った。材木と採掘、船舶業である。第一紀2800年にはニベン妖術師の手によってアンモナイト採取が爆発的に増加したが、すぐにより標準的な、ラリマーやそこそこ希少な宝石の採掘に道を譲った。いくつかの海産業がこの時代、漁業から蛙鋼の再利用に方向性を変えた。これはアメノス地下にある洞窟でこの浮力のある合金の大鉱脈が発見されたためである。レマン時代を通じて、諸島はあらゆる点で繁栄を遂げたが、復興期の自由は犠牲となった。

アカヴィリ最高顧問の出現によって、諸島の運命は再び変化した。第二紀11年、新たに権力を得た最高顧問ヴェルシデュ・シャイエはアメノス島をレマン派の政治犯罪者用の流刑地に作り変えた。タムリエル統一の象徴であるシストレスを政治犯の掃きだめにするという皮肉は、当時の学者たちも気づいていた。そうした年代史家のリソルダ・パコワはこう記している。「ナメクジに対する我々の勝利の記念碑を汚すのが大蛇であることは、誰も意外に思わないであろう!」パコワは同時代の多くの者たちと共に、アメノスで死んだ。悪名高いローズでの作業を終えた後も、最高顧問はこの流刑島に囚人を送り続けた。その大半は、ラリマーとアンモナイト採掘に従事させられた。

最高顧問の政治はハイ・アイルに一定の影響を及ぼしたものの、本土からの距離のおかげでこの体制の最悪の暴政がこの島に及ぶことはなかった。シストレスのブレトン監督官たちは平和を保つために、積極的な追従と隷従の評判を築き上げ、ゴンファローネ湾で誇らしげに最高顧問の旗を振ったが、そうしながらも彼らはヴェルシデュ・シャイエの支配からの脱出を計画していた。

第二紀110年代から280年代の間、ブレトンのモーナード家はシストレスでの権力をひたすら強めていった。それは主に、最高顧問との密接な関係のおかげだった。不安定な本土の統治に手を焼いたヴェルシデュ・シャイエは、シロディールに資源を集中させ始め、実質的にシストレスを民営化して、モーナード家にその管理を任せた。この時点から、シストレスは再びブレトンのものになった。

シストレスの歴史 第7巻Systres History: Volume 7

グウィリム大学エルセリック史学部長補佐、トリラム・ヘラドレン 著

第二紀324年に最高顧問ヴェルシデュ・シャイエが倒れ、さらにその後継者サヴリエン・チョラックが第二紀430年に倒れると、タムリエル全土が大混乱に陥った。王を僭称する者や残忍な征服者が雨後の筍のように出没し、大陸の支配権の苦痛に満ちた再編成が引き起こされた。

ガードナー王朝の臣下として、モーナード家の公爵は通常ならばウェイレスト王国に忠誠を誓う義務があった。しかしシストレス諸島と本土の間の情報交換は、空位時代の初期にまだ不安定だった。外交使節団はレッドガードの海賊団やシーエルフの強盗によって頻繁に奇襲を受けた。伝令が到着しても、モーナード家はしばしばそれを無視して、海上で失われた、あるいはエルフのスパイに妨害されたと主張した。この不安定な外交のおかげで、モーナード家は諸島に対する全面的な覇権を確立できた。ただし唯一の例外は、デュフォート家の領地であった。

デュフォート家の男爵たちはハイ・アイル中に小さいながらも価値の高い領地を所有しており、彼らは機会が訪れるごとにそれを利用してモーナードの計画を妨害した。デュフォートはモーナードの邪魔をする機会を決して逃さなかった――特にそうすることでガードナー王の宮廷から信用を勝ち取れる場合には。このやむことなき牽制は数百年にもわたる陰謀や暗殺、誘拐の駆け引きを巻き起こし、少なくとも一度は海上の小戦闘でデュフォートの世継ぎ候補の命が奪われた。ついに第二紀478年、ルフェ・モーナード公爵は捏造文書と強制された証言を大量に用意し、王家に対する反乱を扇動した罪でデュフォート家の土地の3分の1を没収し、デュフォートの指導者をアメノスに追放した。ガードナー王家の者たちはこの反乱に疑念を抱いたが、彼ら自身が勢力を増すカムローンとの不和に悩まされていたため、この件は未解決のまま放置された。

モーナード家は諸島の支配を第二紀563年まで維持した。ナハテン風邪が驚異的な速度でこの地域に拡散し、平民と貴族を分け隔てなく葬り去った。輸送港であるシストレス諸島は甚大な被害を受けた。悪化の一途をたどる疫病の波が、次々と押し寄せてきたのである。第二紀565年には、アヴリッペ・モーナード公爵は島全体を封鎖し、何者も諸島に出入りすることは適わぬと宣言した。交易に依存していたシストレスは、完全な欠乏状態に陥った。疫病の勢いが弱まると、今やエメリック王の支配下であったウェイレストはアヴリッペに嫌悪の眼差しを向けた。彼は民を犠牲にして自らの安全と富を守ったからである。復帰しつつあったデュフォートは事態を見守り、待った。

エメリックの非難に怯えたアヴリッペ・モーナードは、自らの地位を守るため他の貴族名家に頼った。第二紀566年にショーンヘルムのランセル王がウェイレストに戦争を宣言した時、アヴリッペは臣下としての義務を放棄し、エメリックの敵側に付いた。エメリックは意外な同盟者たちとの外交的関係を利用して、マルクワステン・ムーアの戦いでランセルに圧勝した。本土での問題が落ち着くと、エメリックはシストレスに目を向けた。

上級王は速やかに裁きを下した。エメリックはアヴリッペ公爵の肩書を剥奪してシロディールに追放し、彼は1年後に死去した。さらに、エメリックはモーナード家の領地の3分の2を没収し、それをモーナードの宿敵デュフォート家に与えた。残されたモーナードの土地と財産はアヴリッペの息子レオナードに譲渡された。さらに恥辱の仕上げとして、ウェイレストはデュフォート家をシストレスの統治者に任じた。

今日、諸島はエリア・デュフォート女公爵の統治のもとで栄えている。昔の日々のように、シストレス諸島はすべての者を迎え入れ、タムリエルがその最大の力を発揮できる港として機能している。シストレスは学びの地であり、奥深い伝統と海の冒険、そしてうち続く友好の絆の地である。エルセリックの光り輝く宝石として、タムリエルの未来がここで生み出されるかもしれないのだ!

ジャカについてAbout Jhaka

ボスはあの大きな猫、ジャカが役に立つと確信していたが、奴は咳やくしゃみをしてばかりで、大して力もないようだ。ブラスラはインチキな品を売りつけられた、もう一度オシソス・モレロのところに行くしかなさそうだと言っている。

それまでの間、あの猫は牢屋に入れてパンと水を放ってやり、皆には近づくなと言っておいた。感染症かもしれないし、仮病か、あるいは死にかけているのかもしれん。わからんが、どうでもいい。

ジュレス・ラウルドンからの手紙Letter from Julles Laurdon

親愛なるキヴ、

また会えるのが待ち遠しいよ。前回会った時に約束したとおり、君に似合うネックレスを探しておいた。なかなか優雅なルビーだ。赤はまさに君の色だと思う。私たちの絆を確たるものにするために。私は君がくれた黄金のペンダントを胸元に毎日着けている。君は簡素な装飾で申し訳ないと言っていたが、私は自分が持っている他の高価な装飾品よりも大切にしている。

君がウェイレストに戻って来たとき、私が家にいなかったら、市場を探してくれ。もちろん、八大神の聖堂でもいい。

あの時言ったことは本当だ。私たちの財産の違いは問題じゃない。君がしっかり働いていること、旅して苦労していることは知っているんだから! それで、シストレス諸島の有名な交易会社の代理人として働くつもりはないか? 君が善良な人なのはわかっている。私は自分が君のような人をどれだけ必要としていたか、知らなかったんだ。ウェイレストの聖堂で私たちの道が交差したあの運命の日以来、私は毎晩八大神に祈っている。あの日、マーラが私に、いや私たちに触れたのだ。

沢山話すことがあるし、立てるべき計画も山積みだ。この手紙はセイダ・ニーンの宿屋に送るよ。それが連絡を取る最善の方法だと君が言っていたから。きっと君は働き続けていないとプライドが許さないんだろう。それは理解しているつもりだ。だが私ならせめて君の仕事をもう少し円滑に、そしてもっと利益が出るようにしてあげられると思う。君の新たな人脈と、私のさまざまな事業上の配慮があれば、私たちは力を合わせて多くのことを達成できるはずだ。

君の生き神たちについてもっと学べることを楽しみにしているよ。アルムシヴィの概念にはいつも興味があったんだ。最近それについて本を読んでいて、君に質問したいことが沢山ある!

会いたくてたまらないよ。
君の ジュレス・ラウルドン

シルバースリップの日記Silverslip’s Journal

その1
今日、仕事があると言ってレッドガードが近づいてきた。ソングに関することだ。怪しいと思ったが少し興味もあったので、話を聞くと言った。ソングの家族は生きていて、彼女の無事を確かめようと必死だという。ソングは仲違いをして家を出たらしく、家族は私に彼女と話してもらいたいそうだ。考えておくと言っておいた。皆に伝えるべきだろうか。様子を見たほうがいいか。

その2
レッドガードがまた来た。今度は、ソングに手紙を届けてくれという。手紙は受けとった。ソングの母親からのようだ。迷っている。ソングに手紙を渡すべきか? いや、それだとソングに隠しごとをしていたのがばれてしまう。悪いことをしている気分だ。私は短気だし、たまに暴力も振るうが、ソングには無理だ。彼女を傷つけるなんてできない。この件でソングは傷つくだろうか?

その3
正直に言おう、誘惑に負けた。手紙を読んでしまった! 好奇心だったのか、それとも嫉妬か――どっちでもいい! 変な手紙だった。感情的で涙を誘うような内容かと思ったけど、もっと厳しそうな内容だった。それに、紙の上に奇妙な絵が描かれていた。眼だ。魔術師ギルドの旗に付いているようなやつとはちょっと違うけど、それを思わせる絵だった。さらに混乱してきた。手紙は燃やしてしまったほうがいいのかもしれない。

その4
なぜ? なぜ? なぜ? なぜ私は自分の直感を無視した!? 間違いだと感じていたのに、あの忌々しい手紙を受けとるなんて。つけられていなかったのは間違いない。なのに連中は私たちの拠点を見つけた。傭兵の一団が押し寄せ、私たちは全員捕まった。ジャカがどこに連れていかれたのかわからない。どうにかソングとは一緒になれたが、彼女はずっと泣いていた。どこに連れていかれるのだろう。わかっているのは、私のせいだということだけ。ソングに言いたかったが、怖かった。恥ずかしかった。とにかく二人でここを抜け出さなくては。エンバーが助けに来てくれるかもしれない。慎重にやらなければ。

その5
あの卑劣な奴らは、私を吸血鬼に売り渡した。でも正直言うと、当然の報いだ。笑えてきそうなくらいだ。ずっと皆のことを考えているけど、あの頃の生活はもう忘れなければ。皆には私が死んだと思ってもらったほうがいい。実際、死ぬべきなのだ。

シンリック宛てのメモNote to Cynric

シンリック、

みんな私がよく、考えに沈んでいることへ気づき始めている。考えているのはいつもあなたのこと、そして月明りの下で過ごした私たちの秘密の時間。今は、それしか考えられない。

前回は遅れてごめんなさい。今夜は埋め合わせをするわ。その時に会いましょう。

永遠にあなたの、
J

ソーティが製作中の舟歌Sorti’s Shanties in Progress

我らの守護者は赤い心臓を隠す
深い洞窟の中に、暗闇の中に
そして激怒の発作に身を任せ
荒れ果てた牢獄の中で
彼らの骨を平らげる!

我らの獣は空から稲妻を呼び出す
醜い、耳をつんざく悲鳴と共に
だから逃げろ、大切な友よ
鉄で覆われた甲板の下に
外に立てば、お前は死ぬ!

さあ行け、我が雄鹿たちよ、険しい顔つきで
暗く陰鬱な牢獄の穴へ
お前たちが流すは、自らの血
お前たち全員が満たされるまで
あるいは泳げなくなるまで!

ツゾ船長の記録Captain Tsuzo’s Log

その78
リルモス。1日半待った後、我々が輸送を任された謎の客がカマルズベイン号に乗船した。彼と側近は平民の傭兵の格好をしていたが、衛兵が誰も聞いていないと思って「王子」と呼んでいたのがはっきりと聞こえた。レディ・アラベルが機密保持にこだわっていた理由がこれでわかった。すぐに出発し、快晴のうちに西へ航路を定めよう。

その79
ヘヴン。3日間かけてトパル湾の河口を横断し、ロングコーストを通って夕暮れ前にヘヴンにたどり着いた。食糧補給のために停泊。乗客の要請で、乗組員には滞在中船からの外出を禁止した。乗組員たちは不満そうだったが、秘密を守るため十分な支払いは受けている。

その80
ドラウン・コースト航行中。朝潮と共にヘヴンを出発。追い風で、海に出るとすぐスコールに見舞われたが、乗客はついに目的地を明かした。シストレス諸島のハイ・アイルだ。乗客は正体もその時明かしたが、既に知っていたとは告げなかった。彼によれば諸島へ向かう前に、まずはストロス・エムカイ西の海域で待ち合わせる必要があるらしい。

その82
アビシアン海航行中。夜明け、ストロス・エムカイが見えるところで、スピアヘッドとパーフェクトパウンスを発見。カリーン船長、ザジ船長に声をかけると、我々は一緒に最終目的地へ向かうことを知らされた。天候は良好なようだ。楽な航路になるだろう。

その83
西アビシアン航行中。正午、見張りが左舷側に煙を噴くイフェロンの頂上を見つけた。シストレスに近づくにつれ、風が我々を北に押し流しているようだ。アメノス海峡に向けて舵を切るよう操舵手に命じた。南のゴンファローネ湾へ向かう前に。

奇妙だ。空は快晴だが、嵐の雲が我々の前方に集まり始めている。こんな天候は見たことがない。乗組員には荒天に備えるよう命令を出し、乗客たちには甲板に出ないよう言っておこう。厳しい状況になるかもしれない。

ディーシュ・ジーからの手紙Letter from Deesh-Jee

スカルド王の斧が欲しいのか。いいだろう。きっと素晴らしい戦利品になる。それに、この貴族たちは超越の魔導師が言っていたよりも重要だってこともわかったな。

だが、なぜ残り二人の貴族はまだ俺たちの手に転がってこない? さっさと残りの奴らを探しに行ってこい! 魔導師は言い訳なんて聞かない。三人の貴族が何者だろうと、魔導師はそいつらを求めてる。俺も同じだ!

俺は魔導師が約束した報酬が欲しいんだ。この岩場からの出口と、自由だ。あの馬鹿どもに働けと言ってこい! でないと、残らず俺の美しいペットの餌にしてやるぞ。

それから、すでに捕まえた奴をコイン砦に確保しておくのを忘れるな。とにかく気をつけろ。奴の力は巨人並みだぞ!

ディーシュ・ジー

テイルズ・オブ・トリビュート:シリーズ1Tales of Tribute: Series One

ごきげんよう、ロイスターたちよ!

ロイスターズ・クラブ創立者は満を持して、トーナメントプレイに向けて以下のデッキを導入する。

赤鷲
リーチの野生の力を使いこなせ! このデッキはリーチ王ファオランの冒涜的な契約と、ヘストラの軍団兵に対する絶望的な戦争の物語を伝えている。勝利を得るため、君は何を犠牲にする?

カラスの公爵
喋るカラスの噂話が、大陸中の酒場やギルドホールを駆け巡っている。カラスの公爵デッキはこの不思議なブラックフェザーと、彼らの止むことなき光り物の探究の起源を紐解く!

ライトマスター・セララス
秘密に包まれたサイジックたちがタムリエルに帰ってきた! 謎多きロアマスター・セララスに率いられたサイジック会は、ここタムリエルで秘密の活動に着手している。それがこの回復と再生のデッキの着想となった。

聖ペリン
第一紀1029年のグレイホストに対するハイロックの英雄的戦いは、伝説となっている。この偉大なる勝利を記念する方法として、テイルズ・オブ・トリビュート以上のものがあるだろうか? 教区役人の英雄、聖ペリンを主役とするこのデッキは、バンコライ駐屯地の鉄門のごとく敵を押し返す!

デルメネ・フラール大師範
モロウウィンドのすべての名家の中で、フラール家の満たされぬ強欲に適う者はいない。八十年戦争とフラールの黄金の栄光の時代に遡ることで、デルメネ・フラール大師範が君を威厳と利益へ導くだろう!

ラジーン
トリックスターにして、盗賊、そして… 神? このデッキは狡猾な猫ラジーンの最も伝説的な盗み――アレッシア女帝から王者のアミュレットを盗んだ時の軌跡を辿っている! この物語は真実なのか? 誰にわかろう? 満悦の虚言者は、皆を困惑させるのだ!

妖術王オルグヌム
ピャンドニアの霧から現れたシーエルフの不死の王が、戦いへ向けて船を進める! このデッキは海水と流血の物語を紡ぎ、ハイエルフ艦隊に対するオルグヌムの最も破壊的な襲撃の足跡を辿っている。この悪党の濡れたブーツに足を入れ、自らの手で攻め込もう!

フランダー・フンディング
このアンセイの伝説の物語で、剣の道を身につけろ! フンディングの物語を伝えるこのデッキは、無限の柔軟性をもたらす。あらゆる角度から敵を攻撃できるのだ!

よきドローと幸運を!
創立者

デボネアの船長日誌Debonaire’s Captain Log

反乱の匂いがする。准将が我々をこの騒動に巻き込んで以来、乗組員たちの中に彼への不信の念が湧き上がってきている。追手を避けるために別々の方向に分かれず、慌ててここに戻ってきて略奪品を分配するとは。欲深い男がやるヘマだ。彼は考えがあると言っている。あのウェイレストの大艦隊を相手にしても負けなくなるような秘策が、カビが生えた本の中に載っていたという。

この目で見たら信じてやるさ。

デュフォート家の歴史History of House Dufort

公爵家の歴史家兼年代記編者、カエラ・メトリック 著

最初は質素だった一族がのし上がり、ブレトンの強大な貴族家になることを可能にするものは何か? この珍しい事例においては、忠誠心と如才なき実践、そして何よりも、忍耐であった。

一族の記録と口承が伝えるところによれば、デュフォート家の歴史は第二紀70年頃のカムローンに始まった。デュフォートは貴族とのつながりを持たぬ小さな家だった。ジャスティン・デュフォートは農民として生まれたが、武術に天性の才能を示す稀有な若者だった。一族は彼を従者として騎士団に預けてもらえるゴールドを何とかかき集めた。ジャスティンは無数の大胆にして勇敢な偉業を成し遂げて実力を証明し、騎士の地位を手にした。そうした偉業の中に、カムローンの公爵の娘を、身代金で儲けようと企んだ野盗から救出したことがある。野盗たちはジャスティンの剣に倒れ、彼に公爵の好意と、愛する娘を救った感謝として小さな財産ほどのゴールドをもたらした。

この時点から、一族の影響力は増大していった。第二紀125年、ジャスティンの孫であるイルボレはシストレス諸島に旅行した。この時、デュフォートは裕福な商家として知られており、その財産を活用するための新たな道を探していた。イルボレの直感はタムリエルとシストレス諸島の間の交易が成長するにつれ成果を生み出した。彼の富は増大し、残りの親類たちに知らせを送れるほどになった。短い間に、デュフォート家は一流の船舶建造者として知られるようになり、全旗艦隊の結成の後に廃用された施設の再利用に着手した。

時は過ぎ、諸島の二大名家であるデュフォートとモーナードは、協力してハイ・アイルを急成長する居留地に作り変えた。デュフォートの船のおかげで、モーナードの交易網は広大な範囲へと拡大し、ノースポイントからファリネスティへ、そしてサマーセットへ至るまですべてのタムリエルの大規模港を含めるようになった。モーナードの影響力が大きくなるにつれ、ハイロックの公権力はシストレスが真に繁栄するために合法的な貴族の所有権が必要だと判断した。モーナード家には公爵位が授けられ、デュフォート家は男爵位を与えられて、モーナード公爵の傘下に入るよう布告が出された。

貴族となったことで、どちらの一族も繁栄した。モーナード家の富はアメノスに新たな鉱山が開かれ、諸島と本土の間の新たな交易路が開発されることで増大した。それに対してデュフォート家は、モーナードが品物を市場から市場へと届けるために必要な高速船を提供し、ハイロックに戦艦を供給する契約さえ確保した。

しかし年月が経つと、事業の関心の一致によって名家のつながりは残ったものの、両家の貴族社会における地位が確立されるにつれて、友好的な提携はライバル関係に発展していった。多くの場合、モーナード家はデュフォート家に対して影響力と支配力を行使し、公爵位を利用して男爵位のデュフォートへ優位に立とうとした。両家の態度におけるこうした変化は、狂気の男爵としても知られるデンシル男爵の行いによるものだと言う者もいるが、この主張を確証する歴史的証拠は存在しない。

もちろん、こうしたことすべてはモーナード家がランセルの戦争と呼ばれることになる事件の際、ランセルを支持した時に変わった。裏切り者ランセルの権力要求を支持したことで、アヴリッペ・モーナード公爵はウェイレストの憎悪を買った。上級王エメリックはモーナードの領地の多くを没収し、シストレス諸島の支配をデュフォート家に移した。彼らの忠誠心と抜け目ない実践により、諸島が滞りなく管理されるものと信頼されたのである。モーナードは伯爵に格下げされ、その活動拠点はハイロックから、ガレンとヴァスティルの街に移された。

こうしてエリア女公爵によって見守られ、シストレス諸島は全旗海軍の頃以来なかったほどの富と安全、繁栄の時代を謳歌している。それはすべてデュフォート家と、女公爵の知恵のおかげである。

ドールレディの船長日誌Dour Lady’s Captain Log

船乗りは誰でも、無慈悲な海で生き延びるためのお守りを持っている。ある船乗りは頭が水の下に沈まないように、恋人の髪の毛を首に巻きつけていた。私はいつも自分のロープを右舷側に結ぶようにしている。だがあの歪んだ偶像やフジツボだらけの本は、健全な人間の船に置いていいものではない。まあ、殺し屋の艦隊を従えている者が健全な人間だとは言えない。彼はこれまで我々を見捨てたことはない。だから准将の運がまだ尽きていないことを信じるしかなさそうだ。

トビン・ムーアクロフトTobin Moorcroft

トビン・ムーアクロフトここに眠る
全旗の記念碑の
建築監督

彼はよく知っていた
ハンマーとノミの使い方を

トリビュート ビギナーズガイドTribute Beginner’s Guide

ゴンファローネ湾のゲーム男爵、マスター・ラズハマド 著

刺激的なゲーム、テイルズ・オブ・トリビュートへようこそ! この手軽なポケットガイドではゲームの基本を教え、トリビュートマスターへの道を歩み始めたプレイヤーにヒントを与えよう!

まずは基本だ。テイルズ・オブ・トリビュートは二人用のカードゲームで、各プレイヤーは対立する「物語」を話す。カードを集めることでプレイヤーはゲームの動きを導き、勝利に近づくためのポイントを得る能力を増やせる。

プレイヤーは自分のターンに40もしくはそれ以上のプレステージを集め、その状態を対戦相手のターン終了時まで維持するとゲーム(「マッチ」という)に勝利する。また、デッキの4体のパトロンへ集中して勝利することもできる。一度に4体のパトロン全員に支持されると、即座に勝利できるのだ!

各プレイヤーは所有する2体のパトロンのデッキを選択してマッチを開始する。どのデッキを選ぶかによって、各プレイヤーが最初に持っているカードと、酒場(マッチの中央にある共通エリア)に出現するカード、そのマッチに登場するパトロンの種類が決定される。

プレイヤーは自分のターンに5枚までカードを引き、好きな順番でプレイできる。これらのカードはゴールドかパワーを与えてくれる。ゴールドは通常、酒場でカードを購入するために使い、パワーはパトロンを発動させ、敵に損害を与えるために使う。余ったゴールドは自分のターン終了時に消滅するが、使われなかったパワーはプレステージに変換される。

プレイヤーは酒場でカードを購入し、それをクールダウンパイルに加えて自分のデッキを強化する。ドローパイルが完全になくなったら、プレイヤーはクールダウンパイルをシャッフルして新しいドローパイルを作らなくてはならない。このように、マッチ中に入手したカードは徐々に手札に加えられ、プレイ中のデッキの能力を拡張してくれる。

カードの大半は、その勝負に存在する4体のパトロンのうち1体に対応するスーツを持っている。スーツはコンボを発動するために重要な役割を果たす。コンボとは、一部のカードの効果を増幅させる強力な効果だ。コンボの発動に必要なカードは最低2枚、最大で4枚だが、プレイヤーが必要な数のスーツカードを使った時点で常に発動する。

最後に、パトロンについて説明しよう。パトロンは個々のデッキの中心となる存在であり、プレイ方法と勝利方法に第二の選択肢をもたらしている。プレイヤーは1ターンに1体のパトロンと交流できる。パトロンは当初中立だが、交流したプレイヤーに対して好意を得る。相手に好意を与えているパトロンと交流すれば、そのパトロンは中立属性に戻る。パトロンの中には一定の条件を満たさないと利用できないものもいるので、よく見てから選択しよう!

マッチの序盤、プレイヤーは1ターンに獲得できるゴールドの額を増やすため、デッキにカードを加えるといい。そうすれば購買力が高まり、酒場ではより高価で強力なカードを購入できる。また、購入するスーツの数は制限したほうがいい。スーツの種類が少なければ、それだけコンボが発動する可能性が高くなるからだ。最後に、初期カードをデッキから取り除くのはいい戦法だ。弱い初期カードをデッキから減らせば、酒場で購入したより強力なカードを引ける確率が高まる。

トリビュートはテーブルを離れても終わるわけではない! 試練を完了し特別な場所への手がかりを追うことで、新しいデッキやすでに持っているデッキのアップグレードが見つかることがある。プレイしている時には、まだ見つけていないカードやデッキを見られる。新しいカードを知り、新しいデッキを入手するための手がかりを探すのに役立つぞ!

さあ、これで君もテイルズ・オブ・トリビュートをプレイする準備ができた! これからの試合で、君に幸運が微笑まんことを!

トリビュートの隠された起源The Secret Origins of Tribute

ゲーム研究者、ブルニル・デュフォント 著

我々が危機の時代に生きていることを否定する者は少ないだろう。モラグ・バルの鎖が空から降る中、単純な快楽に安息を見出すのは難しいかもしれない。だが単純な快楽こそ、まさに我々に必要なものだ。そこで、テイルズ・オブ・トリビュートの出番である!

このゲームが最初にゴンファローネ湾に導入された時、私は大して気に留めなかった。だが、本土にも広まっている今は、注目しないわけにいかない。残念ながら、このゲームの起源についてはほとんど知られていない。私は真実の探求に出かけたが、発見したものはさらなる疑問を呼ぶばかりであった。ささやかながら、私が知っていることを話しておこう。

今では、テイルズ・オブ・トリビュートをプレイする者がほぼ全員ロイスターを名乗っているが、当初ロイスターズ・クラブを構成していたのは、ゲームの製作者たちだけだった。この最初の同好会はかなり規模が小さかった。おそらく数十人程度だろう。ゲームデザイナーであるこの初期メンバーたちは、今では創立者と名乗っている。創立者たちは自らの匿名性を保つため多大なる労力を払っているが、その目的はわからない。

私にはっきりと言えるのは、創立者たちが主に学者や職人、探検家といった人々で、タムリエルの物語や歌、伝統を集めて、このとてつもない人気ゲームを作ったということだ。ゲームのシステム自体も、様々なカードゲームの伝統から多くの要素を借り受けている。六角形のカードの形状はペレタインの占いデッキから来ているし、シンボルの配列は現在でもハンマーフェルでプレイされている古代ヨクダのカードゲームに由来している。だが、全体としてのテイルズ・オブ・トリビュートは単なる寄せ集めから程遠い。デッキのカードの枠と裏の美的スタイルは統一されている。この要素はわずかながらブレトンのモチーフを採用しており、翼の生えた王冠を導入することで、それぞれのカードに共通のアイデンティティを与えている。

カードの美的スタイルは大陸中から集められている。製造自体はここゴンファローネ湾で行われている。印刷業者と絵師は、基本的に厚紙を用いてカードを描く。耐久性に優れ、ここシストレス諸島では容易に入手できる素材だからだ。芸術家たちはタムリエル中から手に入れた様々な色素や絵具を使っている。数字の情報はイカ墨で表されている。これは本物のカードを偽物から見分けるのに役立つ部分である。ロイスターの印刷機は昼夜を問わずさらなるカードを製造しており、新しいデッキが定期的に出現している。

当然ながら、トリビュートのデッキはカードだけではない。私が言っているのはもちろん、パトロントークンのことである。ロイスターズ・クラブの石切職人や細工師、宝石職人は、元々このトークンをラリマーから作っていた。ラリマーとは、シストレスでしか取れない乳青色の宝石である。ここ最近の数ヶ月は、特に北タムリエルでホーカー象牙のトークンが主流になりつつある。しかしこうした素材の価格の高さのため、クラブは石灰石や砂岩を削り出したもの、あるいは鉄をハンマーで打ち出したものでパトロンを作った、安価なゲーミングセットも販売し始めている。

その秘密主義にもかかわらず、創立者たちはゲームの後援をするゲーミング・チャプターや、トーナメントの組織、優れたプレイに対する報酬の提供などに精を出している。おそらく時が来れば、この先駆者たちの何人かは皆の前で正体を明かし、その正当な名声を受け入れるのではないだろうか。だが今のところ、私たちにできることは彼らが与えてくれるカードを取り、ゲームを楽しむことだけだ!

ドルイド・ローレルからの手紙Letter from Druid Laurel

your name

私はこの見慣れぬ地で、力ある人の助けを求めています。有望な候補として、あなたの名を教えてもらいました。

時間がありません。この手紙の裏に私の居場所を記しておきました。どうか、なるべく早くその場所へ会いに来てください。何とかしてお礼をすると約束します。

よろしくお願いします。
ドルイド・ローレル

ドレッドセイルに捕えられてCaptured by the Dreadsails

船乗りレリサ・ブルールによる報告

私たちが港を出発した時、風は北に吹いていた。これを吉兆と信じるほど私は愚かではない。なんと呪われた運命に遭ってしまったことか。この手記が生き残るなら、私よりも長生きするだろう。これが――私とは違って――海にさらわれずに済んだとしたら、あなたが手にしているのはレリサ・ブルールの最期の記録だ。あなたが私の記憶を受け入れ、私よりもいい風に恵まれんことを。

私たちの船ハーベスツデライトは、蛙鋼を積んでダガーフォールに向かっていた。港を出るか出ないかのうちに、不自然な霧が海上に落ちかかってきた。前方の海にどんな危険があるか見えなくなったため、タイン船長は帆を閉じろと叫んだ。私たちは急いで彼の命令を実行し、ロープを結んで緩んでいたものを引き締めた。すぐに私たちは分厚い霧に囲まれて、完全に何も見えなくなってしまった。私は甲板から転落するのを恐れて、ほとんど身動きができなかった。

霧の中に人影が動いた。甲板は私の足元で悲痛な音をあげて軋んだ。灰色の空間はより色が濃くなり、これまでに経験したどんな霧よりも遥かに長く、甲板の上に留まった。一番驚いたのが、ネスタルの喉から物悲し気な低い泣き声が出てきたことだ。この年老いた先任伍長は、酔った時の余興に昔の航海の物語を話す時以外、一切音を発することがなかった。普段なら決して動じないネスタルによる突然のパニックは、波そのもののように甲板中を飲み込んだ。

私はその音に気を取られて、自分の背後に何かがいたことに気づかなかった。その後、私は酷い頭痛と共に目を覚ました。自分の怪我を確認すると、頭の傷が最も重症で、その次が膝の深い切り傷だった。膝の傷をできるだけしっかりと覆ってから、私は周囲を見渡して状況を確認した。

ネスタルと他数人は私と同じ監房に横たわっていた。彼らの頭は血まみれで、殴られて紫色になっていた。船室の中には私の仲間が20人いるのを数えたが、全員檻に入れられるか、鎖で縛られて動けなくなっていた。上で足音が響き、悪寒で指が震えた。この航路に霧を召喚し、それを利用して音もなく大人数を仕留める力を持っている者といえば他にいない。ドレッドセイルだ。あの海賊が私たちの船に乗り込んだのだ!

恐るべきシーエルフの海賊たちは、血まみれの船員たちを次々と船室に引きずってきた。上の甲板で恐れて動けない他の者たちは、霧の中で自分が殴られて引きずられる番が来るのを待っていた。私は身を隠したり、気絶を装ったりはしなかった。だが告白すると、声をあげて警戒を呼び掛けることもしなかった。そんなことをしてどうなる? 甲板にいる者たちはシーエルフの海賊よりも味方を攻撃する可能性のほうが高いだろう。ドレッドセイルから逃れた者はいない。逃れようとすれば、乗組員全員を破滅させる。

どうして自分が最初の夜を生き延びたのかはよくわからない。タイン船長が降伏し、シーエルフのリーダーに剣を渡してから、事態は血なまぐさい方向へ進んだ。奴らは船長を刺し、死体を甲板の外に投げ捨てた。致命的な怪我か、動けなくなるほどの傷を負った者たちも同じ運命を辿った。素早い一突きと、無慈悲な海への長い落下だ。シーエルフたちが殺しに快感を覚えている様子はなかった。私たちを快楽や同情の対象とはみなしていないようだった。

海賊の一部はその夜、自分たちの船に戻った。残りの者は私たちを見張り、船を操縦するために留まった。私たちはどこからともなく吹いてきた南風を捉えた。航路が明確になると、ネスタルが再び泣き声をあげた。奴隷だ、と彼は言った。もうおしまいだ。

海賊たちは彼の足首を縛りあげて、泣き声を止めさせた。青あざがついてむくんだ彼の顔は、まだメインセイルの下にぶら下がっている。今ではカモメがついばんでいる。

自分の番がもうすぐ来るかもしれない。膝の切り傷は恐ろしい緑色の光沢を放っており、腐った魚より酷い臭いがする。痛みはあまりないが、感染の兆候はわかる。普段の状況なら、船医が私を縛りつけて感染源を切除するだろうが、ドレッドセイルが占拠している今、そんな処置が受けられるとは思えない。奴らは私を殺すだろう。感染が先に命を奪ってくれるといいが。冷たい水の下よりも、上で力尽きたい。

ドレッドセイルの書簡Dreadsails Communique

シレンゴス船長、

海の王新たな命令を出した。お前たちはイフェロン北での作戦を中断し、指揮下にあるスリザーミストを直ちにアメノスへ向かわせよ。急ぎ拠点を築き、次の命令を待て。

アメノス付近の航海は極めて危険なことに留意せよ。ブレトンの巡回やとても見えづらい浅瀬に警戒するため、操舵手と船乗りの全員に、完璧な行動が求められる。海の王は島の北西岸にあるスカルトゥース湾に係留することを提案している。大胆な私掠船や密売人が多い領域だ。そこで見つけた船は獲物としてよい。追加命令が来るまで、そこで隠れていろ。

失敗は許されない。

タエロン准将

ハイ・アイルの珍味The Delicacies of High Isle

料理研究家ベロナ・カラトリウスによって収集された、ハイ・アイルで最も高価かつ人気のある食事

焼きスパークリング・アングラーマウスの海藻ベッド乗せ
完璧な味と焼き色のついた、この身が薄く香り高い魚は、豪勢にも脱色した海藻を格子状に並べて添えることで、食感と微かな明るさを加えている。シェフは海藻に加える柑橘風味が強くなりすぎないようバランスを取る技術を身に着けるまで何ヶ月も費やすが、正しく作られた場合、これは特別な一皿となる。

アビシアン・ハリバットのスープ
ハリバットの風味はスープの香味と濃厚さによく合う。スープの野菜が魚と完璧に調和している。この組み合わせにより、簡素なスープが饗宴の主役に変わるのである。

燻したアルバトロスの卵のキャビア添え
一般的には海が荒れた時に供されるこの一皿は、ハイ・アイルで通常手に入る珍味の多くよりも野性味が強い。巨大な卵は2日間かけて燻し、島のアップルウッドの強い香りを黄身に染み込ませる。これを好物とする者によれば、散らされたキャビアが卵の個性を強め、ハイ・アイルの食事にふさわしい海の要素を加えているのだという。

シーソルトティー
通常は料理の間の口直しとして用いられるこのお茶は、島の茶葉とシーソルトを組み合わせたものである。澄んだ美しい色が見えるように、繊細なガラス容器に淹れて暖かい状態で提供される。

ハニーケーキのクロッテド・クリームとパールホワイトチョコレート添え
口だけでなく目にとってもごちそうであるこの甘いデザートは、第二紀455年に宮廷料理人によって導入された時、饗宴会場全体を拍手に包んだ。ケーキには滴り落ちんばかりのクローバーハニーとクロッテド・クリームが添えられており、上に散りばめられたホワイトチョコレートの球がケーキの甘さを緩和している。新鮮なベリーやきりっとした味のコンポートを加えるシェフもいるが、多くの者はこのデザートの白く泡だった外見に合わせて、メレンゲか軽く風味をつけたカスタードを加える。

ハイ・アイル観光案内Visitor’s Guide to High Isle

エミッセ・フェアウィンド卿 著

エルセリック海の宝石、ハイ・アイル! 陽光溢れる海辺、緑の丘、そして親切な人々で知られる地! 何かと不穏な今の時代にあっても、タムリエルの裕福な者の多くが、シストレス諸島の温暖な気候と、快適なそよ風に休息と安楽を求めにやって来ている。

ハイ・アイルの訪問者の大部分は、シストレス最大の街であり島の主要な港であるゴンファローネ湾に到着する。あなたの旅は世界の不思議、ゴンファローネの巨像から始まる。この雄大な像は伝説の全旗海軍の指揮官、男爵提督ベンドゥ・オロを描いたものである。彼は街の港の入口を、太陽を迎えるように高く掲げた六分儀で守っている。城の塔にも匹敵するほど高い、王の姿である。

ゴンファローネ湾自体が、快適な広場と古風な街路を持つ魅惑的な港町である。多くの訪問者は欲しいものがすべてここにあるので、この先へ行かない。扉の上にかかった歴史的遺物にちなんで名づけられた宿屋〈古代の碇〉は、街で最高の酒場であり、夜を過ごすには絶好の場所だ。さらに賑やかな場所がよければ、ハーバー・アイランドのゴンファローネ・ゲーミングホールを訪ねよう。だが注意してほしい! ここのカードプレイヤーはゴールドが余っている観光客を相手に、生活費を稼いでいるのだ。

ゴンファローネ湾にいるだけでも何週間も楽しめるが、ハイ・アイルにはまだまだ探検すべき驚異が沢山ある。島全体を一周しなければ、シストレスを旅行したとは言えない! まずはハイ・アイルの南海岸沿いを西に向かおう。ゴンファローネ湾から出てすぐのところにあるゴンファローネ岬灯台は、船乗りに愛される目印である。灯台は女神キナレスの祝福を受けており、キナレスの司祭によって管理されている。

南の海を眺めながら、灯台から西へさらに進もう。すぐにハイ・アイルの心臓部へ通じる二つの主要な湾の一つ、ナヴィール湾に着くだろう。200年前にルイス・モーナード公爵によって建てられた、上質な石の橋がかけられている。北の道を進み、内部に向かおう。ハイ・アイルの中心部は断崖に囲まれた大きな流域、すなわち全旗港である。

南の海域で最も強大で、守りの厚い停泊所である全旗港は、全旗海軍がスロードに対する有名な遠征のために集結した地である。港の中心地には全旗の城がそびえたち、またかつての勇敢な船乗りたちに捧げられた大きな記念建築物群は現在、訪問者たちが再び観光できるように改築中である。

ナヴィール湾の西側にあるハイ・アイルの南沿岸に戻れば、雄大なナヴィール城に行き着く。これはデュフォート家の拠点であり、シストレス公爵の居城である。ここでは女公爵とその一族が壮麗に行事を取り仕切っており、著名な客人たちを迎えて大宴会を開いている。

道を西に進み続ければ、ハイ・アイルで最も荒々しく壮大な部分である、人気のない西海岸に行き着く。ここではオークの木やドルイド・サークルの古く趣のある遺跡、そして忘れ去られた祠が日当たりのよい丘陵地に点在している。ハイ・アイルの地方の民の中には、未だに古いドルイドの伝統に固執している者もおり、そうした人々はより文明化された生き方よりも、森の生活を好む。シストレスの一部で、こうした田舎者たちはよそ者に懐疑的である(それどころか危険でさえある)が、ハイ・アイルのドルイドたちは全体として友好的である。

岩だらけの入江と砂浜の景色を楽しみながら海岸沿いをさらに北へ向かい、ミストマウス岬を一周して東へ方向転換しよう。海岸のこの部分は、ハイ・アイルの近隣諸島アメノスとイフェロンを見渡すのに絶好の地である。活火山であるファイアソング山がイフェロンの上にそびえたち、雄大な頂上からしばしば、煙と蒸気の雲を発している。実は諸島全体が火山であり、島の辺境には蒸気の噴出口や温泉、その他のさまざまな地形的特徴が頻繁に見られる。

ここから、道はハイ・アイルの北海岸沿いに続いている。アメノス海峡はここの左側に横たわっているが、この監獄島は嵐によって視界から隠れていることが多い。北海岸の中央部付近には、広大なデュフォート造船所がある。ここではタムリエル全土でも最高品質の船舶が建造されている。付近の港からはアメノス行きの渡し船が定期的に出航しているが、観光客はこの島の港町、アメノス監獄の外に行ってはならないことを覚えておこう。

さらに道を進み、トール・ドライオクの絵画のような遺跡や、クリムゾンコインの尖塔を通り過ぎよう。見慣れたゴンファローネ湾からアブへイン湾を反対側に渡ってすぐのところにある、アブヘイン礼拝堂の絵に出てきそうな遺跡に到達したら、ハイ・アイル巡りの旅は完了だ。少し立ち止まって、ここにかかっている力強い男爵提督の橋を眺めていこう。巧妙に重さの釣り合いを取ることで、伸びた橋の中央部を上昇させ、最大の船舶でも下を通れるようになっている。

最後に、ご褒美としてゴンファローネ湾の素晴らしい食事とショッピングで楽しむことを忘れないように。また、名所の一部を見逃しても心配はいらない。シストレスを一度訪問したら、再び呼び戻されるのは時間の問題だからだ!

ハドリッド研究者の日記Hadolid Researcher’s Journal

第二紀581年黄昏の月16日
もう何日もハドリッドの姿を目にしてきた。なんと奇妙な獣だろう! 最初は、ドゥルーの派生種かと思っていた。だが長期間研究した今では、あれはまったく違う種族だと考えている。

私の調査によれば、ハドリッドは移住性だ。10年かそれ以上の間波の下に姿を消し、それから再浮上して同じくらいの期間を地上で過ごす。ハドリッドのライフサイクルの詳細は、グウィリムの研究者にさえよく知られていない。これは主に水中にいるハドリッドを観察することができないせいだ。ハドリッドはとても深い位置まで苦もなく降りていくことができる。胸の厚いアルゴニアンでさえ、波の下に降りていくハドリッドについていくのには苦労する。もっと調べなくては!

第二紀581年蒔種の月23日
ナヴィールの蔵書庫で何日も過ごしたことで、大発見ができたと思う! シルバースミスという船はスラシア戦役の最中、スロードに対する多くの襲撃に参加した。この船の船長グリゲッテ・マストンは、外洋でのハドリッドとの遭遇を次のように詳述している。

「スロードの獣との交戦中、蟹の民の群れと遭遇した。短時間戦闘に参加した後、退却した。感謝の色を掲げたが、返答はなかった。外交を求めるべきか?」

ハドリッドはスロードに好意を持ってはいないようだ。私たちは実のところ、それほど異なってはいないのではないだろうか?

第二紀581年恵雨の月2日
ハドリッドの意思疎通の初期の試みを記した日記をまた見つけた。どうやら、敵の敵はやはり敵であるらしい。

「男爵提督の密使が、アメノスの蟹の民の居留地に派遣された。外交官7名が殺され、2名が誘拐された。彼らは1週間後、溺死体となって見つかった」

ハドリッドにはスロードを憎む彼らなりの理由があるようだが、一体どんな理由なのだろう? 縄張り争いだろうか? スロードが何らかの形で彼らを虐待したのだろうか? 蟹の民と直接意思疎通する手段がない以上、答えは永遠に見つからないかもしれない。

ハドリッドが近くのブリークウォーター洞窟に避難したかもしれないという知らせを受け取った。これは彼らと会い、再び交渉を試みるチャンスだ。成功したらいずれ報告するつもりである。

バルキへの指示Balki’s Instructions

いいか、バルキ、お前にチャンスをやる。揺るぎなき邸宅の周辺で地図の断片を探してもらいたい。あのあたりで最後に目撃された、友人の友人が持っていたものだ。ゴンファローネ湾から遠くないが、岩場の陰によく危険な連中が潜んでいるという話だから、強盗に遭わないよう気をつけろ。欠片を見つけたら、デュフォート港にいる私のところに持ってこい。

エシュマディン船長

フィニミの居住地Finimi’s Domicile

この家に入っていいのは姉妹だけ

聖なるタンナの葉を、島の中心に最も近い台座に置け

私の姉妹のショールを、騎士の剣が決して錆びない台座の上に置け

裏切り者の褐炭を、動物たちが死ぬ台座の上に置け

裏切り者の名に呪いあれ

フィニミの呪文書Finimi’s Spellbook

シストレス姉妹の仲間の海賊たちにも才能はあるが、私の特殊技能がなければ成功することはなかっただろう。私はアルケインの達人で、大きな実績のある魔術師だ。私の力がなかったら、追跡を逃れることも、大型艦船を繰り返し撃破することもできなかったはずだ。

この呪文集は私のライフワークだ。この中には、私の住居や新たに建設された私たちの宝物庫を守る保護の呪文を集めてある。その他に戦闘用の呪文や、防御の呪文、隠蔽の呪文も入っている。

私の分の宝物庫の鍵をしまった金庫にも保護の呪文をかけなければいけないのだが、もう時間がない。すでに私の関知呪文は、ファマザとアルティンウェが私やフェラを裏切ろうとしていることを告げている。ファマザが私たち姉妹の絆を盗賊の男のために破るつもりなら、これからどうなろうと責任は彼女にある!

〈一連のアルケインの記述が続いている。フィニミの私的な暗号で書かれているらしく、魔術師ギルドの熟練の魔術師にも解読は難しいだろう〉

フェラの日記Fera’s Journal

103日目。姉妹たちはこれまでで最大の戦利品を手に入れた。上級王のゴールドを運ぶ軍艦が、嵐に隠れればアビシアン海を安全に航海できると考えたらしい。愚かな間違いだ。でもこれで、奴らはシストレス姉妹の操舵術を相手にする必要もなくなった!私たちは金持ちだ!

110日目。私たちはついに夢を実現することにした。ファマザとフィニミも賛成してくれたので、アメノス島に絶対安全な宝物庫の建設を始めることにした。いずれ海賊と略奪の生活から引退するまでの間、私たちの富を隠しておくのにあれ以上の場所はない。

134日目。建設は計画どおりに進んでいる。その途中で、また収穫があった。今度は商船を襲い、その他色々の財宝と共に、名高い夜明けの宝石を手に入れたのだ。宝物庫が完成したらそこに保管しよう。ロスガーの夜明けのモンクたちの財宝を見つけるため、宝石を使う日が来るまでは。伝説によれば非常に美しく、とてつもなく価値のある財宝だという!

164日目。ファマザは完全にあのアルティンウェの盗賊の虜になってしまった。あいつを信用すべきかわからないが、あの子は彼がいれば幸せなのだ。文句は言えない。

173日目。宝物庫は完成し、今日私たちは鍵を受け取った。私たちはそれぞれ鍵を1本持つ。それぞれの鍵は隠された入口を封印している3つの錠に対応している。ただ、ファマザがあの役立たずのアルティンウェを捨ててくれるといいのだが。奴のことは全く信用できない。

179日目。フィニミはファマザがアルティンウェと話しているのを立ち聞きした。2人は私たちを捨てて、宝物庫の中身を自分たちのものにしようと計画しているらしい。そう簡単に行くとでも思うの?私は自分の鍵を金庫に隠して、私の住居の後ろにしまっておく。そうしておけば、あの裏切り者たちを始末するまでは安全だろう。

フェロネへの指示Ferone’s Instructions

興味を示してくれてよかった、フェロネ。ストーンロア森から地図の断片を回収すれば、労力に対してちゃんとゴールドを払おう。ドルイドは問題にならないが、あそこの自然は荒々しい。足元には気をつけてくれ。欠片はデュフォート港にいる私のところに持ってきてくれ。

エシュマディン船長

マニアの純潔The Purities of Mania

私はこの論文に署名するつもりはない。絶対に断る。だが私がシヴァリング・アイルズにいた時に見て、感じた驚異については書き記しておかなければ気がすまない。

私を乗っ取った狂気は開かれた口であり、私はそれに恐怖し、また惹きつけられた。それは創造や不眠症、激怒や歓喜が飛び出してくる狂気の渦巻だった。

どれくらいの期間だったかは思い出せないが――1年か1ヶ月か、はっきりしない――グリーンモートを使って理解力が拡張されている間に、ある呪文の秘密に飛び込み、探究した。私はこの体験から出てきた時、アイレイド遺跡に時折発見される希少なクリスタルの謎を解く鍵を手にしていた。

私は(おそらく)古代のアイレイドによって作られたアメジスト・クリスタルの中心部を調べ、その面と形状がマニアの風によって生み出されていることを発見した。そう言ったら、あなたは笑って信じないかもしれない。私の説明を聞けば、あなたにも真実が見えるだろう。

明白にして輝かしい、すべてを飲み込む真実が!

モーナード家の歴史History of House Mornard

デュフォート家およびエラルド蔵書庫の代理としてドロセア・エラルドによって調査された、モーナード家の歴史に関する、事実に即した網羅的報告。

モーナード家の家系とシストレス諸島の歴史について一族の誰かに聞けば、一族が海を旅し、商業で大きくのし上がり、島々の中で最も危険なアメノスを監督して力を得たことを喜んで話してくれるだろう。彼らは自分の一族がかつて諸島の指揮権を有していたことや、恩寵を失ったことについては語らない。これはモーナード家についての完全な歴史である。

シストレスにやって来る以前、モーナードはウェイレストとエバーモアの中間地を支配しており、そこは高品質の金属や宝石の鉱脈で知られる価値の高い領地だった。モーナードの探鉱者はしばしばビョルサエ河を越えてドラゴンテール山脈の鉱脈を採掘していたが、この裏稼業のせいで彼らはハンマーフェルで忌避されていた。それでも、ウェイレストの統治者たちはこの事業から利益を得ていたため、ほとんど介入することがなかった。

アカヴィリの最高顧問が第一紀2920年に権力の座に就いた時、モーナードの者たちは間を置かずシロディールとより親密な関係を築いた。モーナードの金貨貴族はレマンの顧客をハイロックに移住させる手助けをし、それは帝国に金塊数千個分の税収をもたらした。多くの貴族の名家はこれを苦々しく思ったが、帝国とより近しい関係を持つことの利点も理解した。特にウェイレストはモーナードの計画に乗り、この一族とヴェルシデュ・シャイエ政権とのつながりを利用して、西タムリエル中で価値ある交易契約を確保した。アカヴィリ最高顧問がハイロックの孤立した国家や領地の制圧を開始した時、モーナード一族はそれを支援して利益を得た。

第二紀110年、モーナード商家の大部分は本土を去り、シストレス諸島で事業を確立した。その少し後、一族の家長が帝国総督として実際に任命された。ウェイレストとシロディールで買っておいた評判と好意が地位につながったのである。15年後、デュフォート家がやって来て船の建造を始めると、二つの商業帝国は諸島の繁栄と共に、並び立って成長していった。時と共に、両家は貴族の肩書きを与えられ、モーナード家は公爵位を、デュフォート家は男爵位を手にした。

モーナード家が諸島の監督権を手に入れると、その富と権力は千倍にもなった。すでにアメノスで鉱山を経営していた公爵は、自分の一族にこの島の採掘占有権を与え、またアメノスにあった監獄施設の支配権も与えた。モーナードの権力と影響力が強まるにつれ、モーナードとデュフォートの間の提携はライバル関係へと変わっていった。

諸島の二つの名家は数百年も覇権を争ったが、モーナードは常に本土との関係の近さと、ハイロックにおける物資の流通に果たしていた決定的な役割を利用して、デュフォートの尽力を阻止していた。アヴリッペ・モーナード公爵が第二紀562年のナハテン風邪で、諸島としての対応に失敗した時にようやく、一族の鎧にひびが入った。公爵は第二紀566年にショーンヘルムとウェイレストで争いが起きていた時、ランセル王の味方をすることでこの失敗を埋め合わせようとした。その結果、上級王エメリックはアヴリッペと彼の一族から公爵位を剥奪して伯爵に格下げし、採掘業と交易路、アメノス監獄島の運営だけを任せるようになった。

こうして今は、レオナード・モーナード伯爵が一族の事業をガレン島のヴァスティルにある領地から監督している。一族の富は昔どおり膨大で、影響力も保たれているが、デュフォート家の支配下にあることは今でも冗談の種になっている。エリア女公爵がゴンファローネ湾から公正かつ適格な統治を行っている現在、モーナードが以前の地位を取り戻すことは考えにくい。デュフォート家の注意深い目のもとで、シストレスの住民は皆、より明るい未来を期待してよいだろう!

モーに餌を与えすぎるなQuit Overfeeding the Maw

いいかい、乾き足をサンゴ礁に放り込んで、何回噛んでから飲み込むのか賭けるのは確かに楽しい。でもモーは太ってきている。もうすぐあいつは自分じゃホーカーも捕まえられなくなって、私たちに完全に依存してしまう。アリーナの下僕どもはご褒美の時だけに与えるべきよ。それがあいつのためになる。

誰かがモーにおやつを与えているのを見たら、私がこの手でそいつを口に放り込んでやるからね。

女王

ラシュムの報告書Lashum’s Report

ボス、

貴族たちが漂着し、ジャングルをさまよっていることはほぼ確実だ。しかし見つけるのは難しい。部下を海に何度も送っているんだが、次々とやられてる。何かがジャングルの中で奴らを始末しているんだ。

古参の船乗りが北東の海岸まで辿りついたが、そいつは何か大きな猫の怪物が部下たちを海辺で殺しまわっていると言っている。その船乗りは急いで退却した。

俺はもっと志願者を集めて武装させるために内陸へ向かう。そうしたら再び北東の海岸沿いを探す。とにかく知らせておきたかった。

ラシュム

ラハドへの指示Rhadh’s Instructions

ラハド、

地図の欠片は私が示したホエールフォールの壊れた船体にある、小さな宝箱の中に隠されているという話だ。だから欠片を手に入れたら、なるべく早くそこから出てこい。手に入れたら、デュフォート造船所にいる私のところに持ってきてくれ。

エシュマディン船長

哀しみの風Sorrows of the Wind

歴史家、バスティビアン・マロレ 著

トール・ドライオクの力の源泉については、いくつかの物語がある。その中で頻出するのは邪悪な魔女や、復讐心に駆られ敵を倒すために闇の魔術に手を染めた族長などである。歴史記述はさまざまだが、確かなことはある。それは遠い昔、この塔に起きた何らかの出来事が痕跡を残したということだ。最も広く知られている伝説は「哀しみの風」と呼ばれている。空想的な物語ではあるが、その核心部分には一抹の真理が眠っているかもしれない。地域住民の言葉によれば、時々目の端で点滅する塵は、哀しみの風と呼ばれる、悲嘆に沈んだ恐るべき霊魂の残滓だという。

この物語によれば、小島はかつてエルフか人間の外見をした獣の住みかだった。この獣の存在は確認されたことがなく、話を面白くするための詩人の脚色かもしれない。確かなのは、小島の最初期の住民は強力な魔法使いであり、大地や海を形作ったことだ。時と共に、諸島は人間やエルフに発見され、移住が行われた。この古い住民たちが残っていたとしても、彼らは基本的に隠れて生活していた。高潔で美しい、ある女性の古代生物は、小島を吹き去るそよ風に調和しており、彼女の服や髪の毛は常に、まるで風に吹かれているかのように揺れ動いたと言われている。彼女は近くに移住してきた古代の族長と恋に落ち、諸島の秘密の場所を去って彼と共に暮らした。

物語の伝えるところでは、この古代生物は族長に子供を二人授けた。どちらも賢く美しい子だった。何年も過ぎ、彼女は自分の母親が亡くなったことを知った。それゆえ彼女は家と子供を残して自分の民のところへ帰った。旅から戻ってくると、彼女は夫が自分を捨て、別の女のもとへ行ったことを知った。その別の女は嫉妬深く、暗い心を持っていた。この女は偉大な族長の心を魔術によって曇らせたのだ。さらに悲劇的なことに、女は二人の子供を毒殺し、自分の子孫がすべてを受け継ぐように取り計らったのである。

追い出された妻は夫の裏切りに耐えたが、子供たちを失った彼女の悲しみは風を解き放った(と伝説にはある)。苦しみと悲しみのために激昂した彼女は何日もの間、自分の行くところすべてを破壊し去った。ドルイドや族長、戦士や魔女らで構成された、勇者たちの一団が彼女を抑え、凶暴な風を止めて小島を元に戻すため戦った。

トール・ドライオクが現在立っている可憐な谷は、彼らが哀しみの風と名づけた獣に対するその激烈な戦いの場だった。彼女の墓は塔に近いどこかに眠る、と伝説には言われている。物語のこのバージョンによれば、塔の周囲を舞う塵は彼女と、共に埋葬された子供たちの霊魂の顕現だという。他の物語では、彼女は敗北したが征服されることはなく、いつか帰ってきて、あらゆる岩に至るまでハイ・アイルを破壊しつくすだろうと言われている。

愛書家ニルスモンへのメモNote to Nilsmon Booklover

おい、愛書家。

小屋の周り中に瓶を捨てていくのをやめろ。今度必要な桶の中に吐いたら、お前の頭上から中身をぶちまけるぞ。

お前からはラムと不幸の臭いがする。泥酔するならよそでやれ。それとパンツを履いて、風呂に入れ。

志願者にはならないとしても、せめて少しはまともに生きるよう努力したらどうだ。

ラングレー

乙女の鼻に捧げる歌Ode to the Nose of a Woman

私たちはあまり鼻について考えない
考えなさすぎるくらいだ
鼻は命を吸い込む場所で
しかも顔の真ん中にある

顔が美を形にしたものなら
鼻はその頂点だ
歓喜の庭園の中にある
鼻こそ我が愛する人の顔

ああ、あなたの鼻が知る、澄んだ空気を吸う喜び
優しい傾斜、桃色がさした先端のつぼみ
生命と美の花よ
我が愛する人よ、それはあなたの顔に

仮説:ソウルレイザー騎士Theories: Soulrazer Knights

アルケイン博物学者、カラディラン 著

私はいつもソウルレイザー騎士に関心を抱いてきた。あの自然に憑依された空の鎧はどこからやって来るのだろう? 一体何者があれを作ったのか? どうやって姿を現しているのか? あれを動かすために儀式は必要なのか? 必要だとしたら、誰が儀式を行っているのか? 儀式を生み出したのは誰か? あの鎧はコンストラクトか、霊魂か、それとも両者が不浄に合成されたものか? そして、あの鎧はそもそもなぜ存在するのか? あの悪夢のような驚異を眺めるたびに、こうした質問が頭に浮かぶのである。

ソウルレイザー騎士に大した説明は必要ないだろう。動く巨大な鎧であり、中身は空で、いかなる物理的な存在にも、あるいは分かりやすく霊的な存在にも身に着けられていない。要するに、この鎧には特定可能な霊魂がない。もちろん、鎧には何らかの霊的な力が宿っている。でなければ動くはずがない。また、鎧が本物の金属製であることも言っておくべきだろう。手で作られたものであり、霊的やアルケイン的な素材ではない。

この鎧の性質は一体何だろう? 過去の騎士たちの本能や信条の表明なのか? 鎧の金属自体に何らかの方法で騎士の意志力が込められていて、形と運動能力が与えられているのか? 証拠がないため、どちらの仮説も完全に正しいとは言えない。

証拠がない以上、別の仮説を検討しなければならない。ソウルレイザー騎士は過去の強大なドルイドによって作られた。この鎧は神聖な洞窟や浜辺のガーディアンとなっているのが目撃されているが、これはドルイドと関係のないただの偶然なのだろうか? おそらく偶然だと思われる。ドルイドは通常、そういう場合には自然の霊魂や生物を召喚するからだ。ドルイドはより世俗的なブレトンの親類のように、騎士の鎧を作ることはない。

この鎧が生み出されたことには、魔術師の手が絡んでいるのではないだろうか。だが、私の同僚が考えるように悪意を持って生み出されたのだろうか? 私はそうは思わない! 鎧が優雅なまでの正確さで動く様子を見てもらいたい。きわめて丹精を込めて作られているのだ。邪悪な力で、あんな美しいものが作れるはずがない! この魔術の偉業、あるいは霊的エネルギーの顕現は、悪の産物であるにはあまりに純粋すぎる。この鎧の真の目的を突き止め、なぜ近づく者を攻撃するのかを解明しなければ。納得のいく説明があるはずだ!

海の石The Sea Stone

伝説によれば、この古代の船はストーンロア・サークルのドルイドが整備して乗り込み、全旗海軍がスラスを襲撃した時、戦いに向かった。ハイ・アイルに帰還した後、アークドルイド・オルリナンはこれを記念碑の一部として展示するために寄贈した。

看守長の台帳Head Jailer’s Ledger

監獄営倉の受刑者、滞在中
-エタノック*
-エウザ*
-ガーウィリス
-ハダミッド
-ヘムグラフ*
-マノロス・ドロヴァス
-ニナ・ジョルヴァンヌ
-サネージケーシュ
-テニシ・ヴェロスレン*
-イヴァラ・ジョシエル*

新規入所者、処理のため営倉に拘留中
-アンブレル・ダガーストライク^
-コソル^
-ファロン・フルール^
-ガーウィリス**
-ケレイルン**
-ラジシウェン^
-ナジミナ**
-ノス・ベラニス^
-ハンマーのオグモル**
-オズバヒム^
-ペリキュラー・セレス^
-ラファエル・メロワルド^
-レミド・ドレン^
-シリン・ドーレス^
-タモル・ルセフ**
-ティーダル^
-ヴァレンティン・ダンテーン**
-ヴィレナ・ラエニウス^
-ウォルウィリン^
-ザスール^

*模範囚
**処理待ち
^処理完了、追放待ち

看守長の日記Head Jailer’s Journal

732日目

また緑の大蛇が問題を起こした。頭にくる連中だ。モーナード家に騎士団の支援部隊をよこしてくれと再び要請を送ろう。本当に来るとは思っていないが。

738日目

看守の一部が、囚人を痛めつけて遊んでいるという噂が私の耳に届いた。具体的な話が聞こえてくるまで、これまでどおり見て見ぬふりをするつもりだ。営倉の周辺で話題になっているという競技とやらには興味をそそられるが、細かいことは知らないほうがいいだろう。知らなければ、報告に書く必要もない。

743日目

モーナード家は近頃、大量の囚人をこちらに送ってくる。看守たちはこれだけの新参者を相手にするのに慣れていない。だから手早く処理してジャングルに送るようにしている。

746日目

なんて嵐だ! この島の海岸沿いの天候はいつも激しい。アメノスの愛すべき特徴だ。しかし昨日、地層を隆起させた嵐は凄まじい強さだった! 突然のことで、あんなのは見たことがない。私はこの海域を何十年も航海しているというのに。それに嵐で地面があんな風に揺れたのも初めてだ。きわめて異常な事態だ。

748日目
囚人たちを処理する前に素性を突き止めろだって? まったく、モーナード家の要求は大きくなるばかりだ。人手はどんどん減っているのに!

看守長への報告Report for the Head Jailer

看守長シャルレミック

先月は、営倉からの脱走の試みが10回ありました。成功したものはありません。

看守たちはしっかり働いていますが、あなたやモーナード家はそのことを滅多に認めてくださらない。ワイン樽を開けて祝ってはどうでしょう。もちろん、士気を高めるためです。

看守書記ロラ

艦隊女王の命令Fleet Queen’s Orders

船長たち

戦隊の準備はいいわね。一部の指揮官は磁鉄鉱も運ぶことになっている。私が磁鉄鉱を渡した者たちの命令には、私自身の命令と思って従うように。実際にそうだからね。船大工の後悔の戦利品を旗艦に艤装させたのは、お前たちをシストレス諸島の向こう側に留めておくためよ。

サーベルを研いでおきなさい。私たちはこのシストレス諸島を縄張りに加えるのよ。そしてお前たち四人の中で最も大きな貢献をした者には、島の統治権を一つ与える!

女王

旗騎士ジャニーンへの命令Banneret Jenine’s Orders

旗騎士ジャニーン、

三つの標的がアメノスへ漂着した。それゆえ、ハイ・アイルの浜辺の捜索は打ち切ってよい。

三つの標的は救出された。そして今私がこの文を書いている間にも、おそらくハイ・アイルへ向かっていることに注意せよ。

だがそのことはよい。超越の王は騎士団を会議へと招集した。できる限り急いで、眠る騎士の下の広間に来るがいい。この手紙を持ってこい。入るには私の印が必要になる。

超越の魔導師

機知の試練The Trial of Wits

機知さえあれば、世界はどんな試練にも手がかりを与えてくれる。

お前はこの試練を乗り越えた。

正しき言葉を記憶に留めよ。

「理解」

記念碑の宿屋Monument Inn

全旗海軍の長い準備と建造期間中、この宿屋には船長やその他の士官が滞在した。その中には有名な男爵提督ベンドゥ・オロも含まれる。その後、宿屋は記念碑の小島の記念建築物の一部として捧げられた。

記念碑の灯台Monument Lighthouse

この灯台はスラスの襲撃に先立つ艦隊建造の時期に、船舶を全旗の小島に導いた。その後、灯台は修復され、全旗海軍の想い出に捧げる記念碑の一部として博物館に変えられた。

貴族の階級と称号Noble Ranks and Titles

シストレスの階級と称号の案内
ナヴィール城執事、へルシアン 著

1ヶ月後、エリア女公爵閣下は著名な慈善事業家バカロ・ヴォロラス卿の協力により、外交交渉と会談のため国外の名士を多数ハイ・アイルに迎えることになる。この名士たちが、ブレトン貴族の慣習について完全な理解を持っていないことは確実である。このような状況で儀礼に欠けることは一般的であり、理解できることでもある。閣下の召使として、我らが島の客人たちを導いて貴族社会の複雑な上下関係を教え、正しい言葉で話しかけてもらうことがお前たちの任務だ。この簡潔な参考文書を、導きを必要とするすべての訪問者に配布してもらいたい。

ハイロックでは上級王が最高権力者だ。上級王か女王に話しかける際、話者は「陛下」と呼びかける決まりになっている。王の子供たち――王子と王女――は、「殿下」と呼ぶように。現在の統治者、カンバーランド王朝の上級王エメリックは、ウェイレストの街から賢く優れた統治を行っている。ブレトンの政治は不愉快なこともあるだろうが、愛すべき我らの上級王は平民からも貴族からも慕われている。陛下の統治が末永く続かんことを!

上級王エメリックの領地は、公爵領として知られる一連の地域から成っている。公爵か女公爵はこれらの土地に対する直接の支配権を有している。名士の方々は公爵および女公爵に対して「閣下」と呼ぶように。王の臣下として、公爵および女公爵は王の法律を適用し、求めに応じて王家に軍隊と租税を提供する。しかし、公爵および女公爵は強力な自治権を有している。これにより、それぞれの公爵領に独特の慣習と法律を維持することが許されている。愛すべき我らのエリア女公爵は、シストレス諸島と周辺海域の支配権を有している。彼女を統治者として持つ我々は皆、幸運だ!

公爵領はさらに、伯爵領として知られるより小さな領域に区分されている。伯爵および女伯爵はこうした土地の管理者だ。名士の方々は伯爵および女伯爵に対して「卿」あるいは「レディ」と呼びかけるように。伯爵の領域は公爵領の一部として従属するため、伯爵は公爵や女公爵ほどの自治権を有してはいない。しかし伯爵はギルドや教会、学校組織といった、公爵領の統治者の注意が及びにくい部分を繋ぐ、重要な仲介者だ。

伯爵と女伯爵の下になると、貴族社会の上下関係は大幅に平均化される。男爵および女男爵はその中で最も上位だが、こうした肩書が具体的な土地に対する権利を伴うことはほぼない。むしろこれは名誉称号で、貴族に裁判所で一定の特権を与えるものだ。名士の方々は男爵および女男爵に対して、それぞれ「卿」あるいは「レディ」の呼称を用いてほしい。

最後に、騎士団に名を連ね、侵略者や反乱に対して領地を守る騎士貴族がいる。騎士に話しかける際は、名士の方々には敬称である「卿」を彼らに対してもつけていただきたい。騎士たちは騎士団によって決められた固有の上下関係と慣習に従っている。大抵の場合、そうした騎士団は司令官あるいは騎士団長によって統率されている。司令官は上の立場にある人々だが、彼らに対する敬称は同じだ。

この案内書が活用され、最悪の無礼が避けられることを願っている。しかし状況に関わらず、あなたがたそれぞれが、閣下の信頼にふさわしい振る舞いをしてくださるものと信じている。

輝くサファイアトーナメントThe Glittering Sapphire Tourney

集まれ、若者たちよ
聞くがいい!
しばしの間
諸島のあまねくところに
我らは誇りの源を手にしたのだから!

誇り高きは騎士団
3つの名がそこにある
長大な詩歌の中で称えられ
家へと伝えられる
だがこの短い詩のほうが簡潔だ!

ああ、シストレスの騎士団よ
これほど身近にいようとは
その数を数え、杯を掲げよう
我らの素敵な同胞たちに!

アルバトロスは波の上を行き
アイアンは前進突撃し
オーク騎士は古代の技を知る
どれも気品に欠けるところなし!

どうか、耳を貸してほしい
サファイアトーナメントがやって来る!
あらゆる街角から
海を越えて、あるいは徒歩で
憂いを抱く者はなし!

志願者は近くや遠くから
古きナヴィールを訪れて
槍試合と乗馬をこなし
誇りも高く歌いだす
注目の星となるために!

ああ、シストレスの騎士団よ
これほど身近にいようとは
その数を数え、杯を掲げよう
我らの素敵な同胞たちに!

アルバトロスは波の上を行き
アイアンは前進突撃し
オーク騎士は古代の技を知る
恐怖するべき力の持ち主!

誰がトーナメントに勝とうとも
最後の日になれば
卿であろうとレディだろうと
その者は名誉と共に生き
ここへの旅路に満足する

誇り高きはトーナメントの勝者!
戦いと流血で得た勝利!
君こそその人かもしれない
どうか正直に言ってくれ
だがこの短い詩はもう終わる!

ああ、シストレスの騎士団よ
これほど身近にいようとは
その数を数え、杯を掲げよう
我らの素敵な同胞たちに!

アルバトロスは波の上を行き
アイアンは前進突撃し
オーク騎士は古代の技を知る
さあところで、私の馬はどこにいった?

騎士オンドリッセへの命令Knight Ondrisse’s Orders

騎士オンドリッセへ

これからの数日間、いくつかの船がハイ・アイルへ近づこうとして破損する。難破した船はアブへイン湾かハイ・アイル北東の海岸沿い、あるいはアメノス南東の海岸に打ち上げられると予想される。船に生存者がいたら捕獲し、私のところへ連れてこい。

信用できる者たちを全て集め、生存者たちが浜辺へ漂着した時に備えて待機させろ。我々への協力を拒むサルベージャーは追い払え。

新しく雇用した者たちは難破の生存者に手をかけるのをためらうかもしれない。報酬は超越騎士団での地位だと思い出させてやれ。民の騎士として、二度と飢えることはなくなるとな。

超越の魔導師

騎士リチェルの命令Knight Richel’s Orders

騎士リチェルヘ

明日の朝、揺るぎなき者の会の家臣二人に護衛された荷車が、ナヴィール城の港から揺るぎなき邸宅へ向かう。お前の騎士たちを連れ、道の途上で奇襲を仕掛けよ。2人の家臣を殺せ。グルニエという男と、ダニスという女だ。この二人は見てはならないものを見た。始末せねばならない。

荷車の積荷は騎士団で使うため押収せよ。それ以外の戦利品はそちらで懐に収めてよい。だが、お前の任務は家臣たちであり、物資ではないことを忘れるな。

ナヴィール城と揺るぎなき邸宅の間には、騎士たちを隠しやすい場所がいくつかある。お前ならきっと適切な場所を選ぶだろう。

超越の魔導師

狂乱のデンシル男爵、パート1Mad Baron Densil, Part the First

どれだけ優秀な一族にも、何人かは出来の悪い者がいる。名高いデュフォート公爵領の場合は何世代も前、デンシルという男がこの貴族の家系を継いだ。デュフォート家の長としての彼の残虐な支配は、一族の御用学者による必死の改ざんにもかかわらず、今日まで記憶されている。現在でさえナヴィール城周辺の別荘客は、子供が言うことを聞かないと「狂乱の男爵が小指を取りに来るよ」と言って脅かすのである。

これは、デンシル男爵が気に入らない者の指を誰彼構わず切り落としたという伝説に由来する。彼は最も小さい指から始め、より大きな指に移るのが伝統だった。理由を聞かれると、彼は処罰の相手が手を使い続けられるようにだと言ったという。つまり彼らは一族に仕えてもよいが、失われた指一本(常習犯は指数本)を見ることで、自分の立場を思い出せというわけだ。

ほんの数年前、とても小さな骨(おそらく指の骨だろう)が、ナヴィール城の地面に大量に埋められていたのが発見された。これで伝説が事実だと証明されたわけではないが、真実味は増した。

この滑稽なほどの大悪人の堕落や残虐性、暴力行為の数々を考えれば、現在の一族の指導者たちがこのような野蛮な懲罰から卒業しているのは、我々にとって喜ばしいことである。

狂乱のデンシル男爵、パート2Mad Baron Densil, Part the Second

青年時代、「狂乱の男爵」デンシルは第三代デュフォート男爵ゲスマーと、妻のヨアンナ女男爵がもうけた四子の一人だった。他の三子が成人となることはなく、その死は現在も謎に包まれたままだ。卑劣な陰謀があったという噂はあるが、完全な推測に過ぎない。

明らかになっているのは、三人目の子供の死がヨアンナ女男爵には耐えがたいものだったことだ。彼女の精神は砕けた。ゲスマー男爵は妻を塔に閉じ込め、彼女は終生をそこで過ごした。

デンシルは成年に達し、次期当主となることを公式に宣言した。ゲスマー男爵の死はその一年後に起こった。狩りの間に外れた矢が男爵の肩に刺さったが、その傷で死ぬはずがなかった! 現代の歴史家は矢尻に毒が塗られていたと考えているが、当時は怪しむ証拠が見つからなかった。

デンシルが男爵領を引き継ぐとすぐに、彼は忠実な家臣やスタッフを解雇した。その中には何世代も仕えていた家も含まれていた。ゲスマーが始めた城の騎士棟の活動は全て停止した。ナヴィール城で温かく迎えられていたほとんどの騎士は、不快ではない環境を求めてこの地を去った。

デンシルはその後数年を、男爵領のかつては豊富だった金庫から金をかすめ、民が他の男爵領へ逃げ出すほど重い税金をかけて過ごした。地域全体で、良き農地は休耕に入った。狂乱の男爵とその手下は地方全体で暴れ回った。

誇り高かった造船所は、ほとんど船が作られなくなった。怒りに包まれ、自分に甘く残虐な精神状態が反映されたかのようだった。かつては巧みに運営され、富んでいた男爵領と造船の転落が深い影を落としていた。

狂乱のデンシル男爵、パート3Mad Baron Densil, Part the Third

デンシルがそこまで残虐に振る舞った理由を知る者は残っていない。デュフォート家第四代男爵の肖像画も残っていない(八大神を称えよ)。現代に残る報告によれば、彼の眼はウッドエルフのように黒かったが、平たく冷たかったという。

当主となって二年もしない内に富を使い果たしたデンシル男爵は、花嫁の持参金に目を付けた。デュフォートの名は野心的で裕福な商人を引きつける力があり、彼はその長女と結婚を承諾した。デュフォートの称号は多額の持参金で買われた。二人は代理人を通して結婚し、ヘレンナ女男爵はまだ会ったことがなかった夫との結婚のため城へ赴いた。彼女は平凡な容姿と、尋常ならざる知性を有した女性だったという。

城に到着すると、彼女はヨアンナとの会合を強く求めたという。ひどい環境にも関わらず、デンシルの老いた母はまだ塔に住んでいた。デンシルは花嫁を義母になる女性の元へ伴った。そこで何が起こったか、正確に知る者は誰もいない。新しい女男爵は後に、デンシルを見ると彼の母が汚いベッドから飛び上がり、恐ろしい叫び声を挙げたと語っていた。

彼女は常軌を逸した力でデンシルを掴み、自身と残虐な子を塔の窓から共に突き落として死んだ。

ヘレンナ女男爵はナヴィール城へ残った。第五代男爵となったのは、デュフォート家に連なるいとこのシンヴェルだった。1ヶ月もしない内に第五代男爵と女男爵が結婚したことに疑問を持った者は誰もいなかった。

それ以来男爵領は栄え、ランセル戦争の結果公爵領へと昇格した。狂乱の男爵とデュフォート家がどんな呪いを受けたにせよ、その呪いは彼と共に死に絶えたように思える。

鏡の道The Mirrored Way

この中には、古代呪文の多様かつ複雑な技が記されている。

この書を読み、その不可思議なまでに心を惑わせる呪文を目にする者は覚悟せよ。

鏡の道の呪文は歪んだ道を紡ぎ、熱狂した多くの見習いを危険や絶望、死へと導いてきた。

油断することなかれ!

この先を読むためには、鏡の道の秘密の呪文を知っていなければならない。

屈強の試練The Trial of Constitution

この混沌と邪悪の領域においては、不屈の騎士のみが生き残る。

お前はこの試練を乗り越えた。

正しき言葉を記憶に留めよ。

「勇気」

賢者イリンのメモMagister Irin’s Notes

ミリスには造船のための木への付呪について、研究者の論文をもっと探してみると言っておいた。諸島には航海の文化があることを考えると、この研究領域は有益だと思われる。

しかし、彼女が自分の学生たちにこの分野を執拗に勧め、私に木のアルケイン的処理について何度も質問してくるのは、別の目的があってのことだ。我々は長い造船の歴史を持つ島社会だからとか、より優れた船を造ることが常に優先的課題だからというようなことが、彼女の関心の出どころだとは思えない。

むしろ、デュフォート家のどこかの勢力が後押ししている可能性が高い。ミリスは才能ある魔術師だが、政治に深入りしすぎているし、野心もある。より優れた船を作るための秘密を発見することは、測り知れないほどの利益と権力をもたらす事業になるだろう。私がまるで塔にこもってブツブツ言うだけの、老いて耄碌した隠者のように、そんな事業のための情報を手渡すと思っている時点で、彼女は驚くほどの無知をさらけだしている。

娯楽を用意してPrepare Some Entertainment

ソーティ

サンゴ礁に客を招くことになっているの。私たちがシストレスを手に入れる前に、本物の海賊生活がどんなものか見る機会を与えて、私に跪かせてやりたいのよ。

彼らが涎を垂らしてドレッドセイルの力を欲しがるようにするために、あなたが必要と思うものは何でも手に入れていい。それから、あの双子にアリーナで何か披露できないか聞いてみて。食物連鎖の中で自分たちがどこにいるのか、客に思い知らせるようなショーを開きたいの。

タレリア

治癒師ジェニレのメモHealer Jenille’s Note

患者…ハイエルフ女性、年齢不詳、タニリン、アルドメリ・ドミニオンの外交官。
状態…酩酊。二次的な中毒?

どうやらこの愚かな女はこれまでロトメスを飲んだことがないにもかかわらず、周囲に促されて昨晩大量に飲んでしまったらしい。おそらく数日間は酷い気分が続くだろう。

彼女の状態が悪化した場合は、マンモスの耳のリーフを砕き、その汁を数滴唇の上に垂らすこと。私は自生しているのを見たが、バカロ卿の許可なしに刈り取ってはならないと言われた。この汁には下剤の効果があり、ロトメスの排出を助けるだろう。それ以外のすべてのものと一緒に。

治癒師ジェニレ

狩人の旅6:ファウンA Hunter’s Journey VI: Fauns

職業的狩人、ヴィオラ・フルシニウス 著

私はソリチュードからリルモスまでのすべての森で矢を放ってきた。母ワマスの皮を剥ぎ、灰色ブルマンモスの牙を抜いてきた。タムリエル中ではらわたを抜き、皮を剥ぎ、剥製を作ってきた。だが最近まで、私がしていなかったことがある――ファウンを狩ったことがなかったのだ。噂話は聞いていた。エルセリックのある島の周辺で、原始的な鹿の民がうろついているという物語だ。大抵の場合、私はそういう話を聞いてもエールを飲んで笑うだけだった。だが少し調査をして、この開拓地の物語が本当であることを知った。当然、私は自分のナイフとロングボウを引っ掴み、船への乗車券を入手して、西に向かって出航した。

これを読んで、ファウン狩りを殺人と呼ぶ者もいるかもしれない。ファウンは民族じゃないのか、と。実は、そんなに単純な話ではない。ゴブリンは人か? オーガは人だろうか? ズボンを履ける程度の知性があることは認めよう。だがあの獣たちが人であるなら、この世界は人殺しだらけになるだろう。事実として、ゴブリンは小さく邪悪な獣であり、オーガは鈍重な野獣である。ファウンもそれと大して変わらない。信じられないのなら、一つ話を聞いてもらいたい。

数年前、タルヴール・ゴンバーヴィルという名の船渡しが、イフレの大鍋から遠くないアブへイン湾に手桶を浸した。彼が手桶を満たす間もなく、ファウンが2頭、野獣のような鳴き声をあげて茂みから飛び出した。ファウンたちはタルヴールに蔦のロープを投げつけ、彼を縛って足首を木に巻きつけた。これはまだ手始めにすぎなかった! すぐに、ファウンたちは彼の口一杯にニンニクを詰め込み、動物的な笑い声をあげた。次いで彼にハチミツをたっぷり塗りつけて、近くの木にあったハチの巣を叩いた。哀れなタルヴールは50回以上も刺されてしまった。家族は次の日に彼を見つけた――生きていたが、危ないところだった。

さて、これはこの「民族」とされる連中の行いに関する話の1つにすぎない。私はもっと酷い結果に終わった話を沢山知っている。だから、ファウンのために涙を流そうというのなら、この哀れな男と彼の手桶を思い出してもらいたい。ハイ・アイルの人々が似たような目に遭うことから救いたいのであれば、狩りの場で再会しようではないか!

囚人の名簿Prisoner Manifest

超越の魔導師の指示により、現在収容中の囚人たちをここに記しておく。

カリーン、スピアヘッド号船長
ツゾ、カマルズベイン号船長
ザジ、パーフェクトパウンス号船長
ギルド将軍クエンティン、戦士ギルド代表団

命令
– 難破時に乗客がどうなったかを問い詰めること。彼らはアイレン、エメリック、イルンスカーがいつ船を降りたのか知っている可能性が高い。
– 大型の埋葬の間から南にある地下墓地が、臨時の牢獄として適当である。使い道がなくなったと確信できるまでの間、船長たちを生かしておくこと。
– 他の捕虜は全て処刑すること。代表団の居場所を教えないのであれば、彼らは警備体制への潜在的な危険要因でしかない。

出航命令Sailing Orders

超越騎士団艦隊の船長へ告ぐ、

我らが計画の最終段階が動き出した。お前たちの船をナヴィール港に向かわせ、騎士を補充せよ。我々は港を制圧しているから、安全に人員を収容できる。

船の戦闘準備ができたら、ハイ・アイル南の海域に出航せよ。沿岸からギリギリ見えない位置に留まり、合図を待て。

出航の準備が間に合えば、私はシルバースワンを旗艦とするつもりだ。無理ならストームペトレルに旗を掲げる。

超越の魔導師

准将の日記Commodore’s Diary

我々はアビシアン海をもう十年以上も荒らしまわってきたのに、あのうろたえた馬鹿どもは少し数で圧倒された程度で恐れをなしていやがる。「奇跡が必要だ」と奴らは言う。それなら、奇跡をくれてやろうじゃないか。このドルイドの装飾品には力がある。ドルイドの古い、忘れられた言葉は話せないが、この書に答えがあることがわかる程度には魔術の言葉を知っている。

ディープドルイドは比類なき力を呼び出したと言われているし、それは本当のことだと思う。この書の中には、艦隊を無敵にする儀式がある。呪文が維持され、偶像が傷つけられなければ、乗組員たちは本当の意味で死ぬことはなくなる。正当な取り分を取ったことで罰を与えようとした、ウェイレストの連中に後悔させてやる。

焼かれた調査メモBurned Research Notes

召喚した嵐の失敗以来、私は多くを学んだ。この火山の島にある大地の力を引き出せば、私の魔術に測り知れない力が加わるのは明らかだ。だが少しでも計算を誤れば、呪文は制御不能に陥り、破滅的な結果を導きかねない。イフェロンの友人たちがもう少し明確に説明してくれていれば!

いずれにせよ、もう仕組みはわかったと思う。最後に試した時は、予想よりもいい結果が出た。この力を手にした以上、我々の攻撃計画は――

〈文書の残りは燃えてしまっていて読めない〉

新人への命令Orders for the Recruits

かつて、お前はこの戦争を焚きつける暴君たちに膝を屈した。今、超越騎士団の外套を身に着けることで、お前の真の目的が明らかになった。小型ロッカーには任務を遂行するために必要な材料が入っている。係留の磁鉄鉱と、秘術の印だ。

磁鉄鉱をマストの根元に設置し、その上に記された秘術の言葉を読み上げよ。そうすれば我々に船の位置が伝えられ、嵐を海上に固定できるようになる。

雲が接近しているのが見えたら、印を半分に折れ。印にはマジカを薄める強力な波動が込められており、暴君たちの逃走を防いでくれる。暴君どもが死ねば、未来は我々の自由になる!

船が破壊されお前たちが漂着したら、トール・ドライオク近くの汚された洞窟で、正当な報酬を受け取るがよい。

全旗海軍ここに始まるThe All Flags Navy Started Here

最初の船団が島で建設中の設備を守るために到着した時、全旗海軍は始まった。造船所が新たな艦船を生み出せるようになる以前、タムリエルの諸民族は彼らの最良の船を派遣し、ハイ・アイル周辺の海域を巡回警備した。それらはすでに確立された海軍や商船、海賊や傭兵から集められた船であり、全員が作業を守り、後にはスロードに対する戦争に直接加わったのである。

以下に記すのは、全旗艦隊の基礎を作るために到着した最初の14隻の船である。忘れることなかれ!

リレントレス、コロヴィア、ベンドゥ・オロ男爵提督
アンヴィルズ・ソング、コロヴィア、ノルス・ファルヴィウス男爵船長
ルビー・トライデント、コロヴィア、ハデルス・ヴィリア船長
キングズ・ジェスト、ブレトン、リソルダ・ダヴォー船長
プリスティン・ハルバード、ブレトン、〈削り取られている〉船長
オンシズ・オース、レッドガード、アフサラー船長
カホサダ、エルフ、チムボーン船長
オイアダエン、エルフ、リニウェン船長
怒りの風、アルゴニアン、フニリーン船長
ムーンチェイサー、カジート、カルグナル船長
ワンダリング・アルバトロス、騎士団、ネパス・ラン船長卿
シルバー・ランターン、商船、ネミク・サンテール金貨男爵
ブラックガル、海賊船、ショシャラ船長
ジョリー・ゴブリン、海賊船、ゴルグザル船長

全旗海軍のバラードBallad of the All Flags Navy

アビシアン海の向こうから
病がやって来た時
善き者は震え、悪しき者はため息をついて
この物語を私に話した

死んだ、死んだ、あまりにも多くの人々が
ダガーフォール、アンヴィルからデューンまで
ナメクジの疫病だと彼らは言い
我らの破滅を招いたスロードを責めた

統治者たちは叫んだ、もはや打つ手なしと
だがアンヴィル王は違った
彼は船に乗って帆を掲げ
船乗りたちに呼びかけた

広く遠くからやって来た
王に応えた英雄たち
ブレトン、レッドガード、エルフ、他にも多くの種族が
大艦隊となって雨の中を航海した

卑劣な敵を打ち破るため
一体となって嵐吹く海を行き
死の嵐が吹きつける中
赤い空の下、轟く大波を越えた
全旗海軍! 全旗海軍!
アンヴィル王に率いられて
全旗海軍! 全旗海軍!
彼らの船と船乗りを称えよ!

艦隊が敵の島に近づくと
濃い霧が流れ込んだ
どんな魔術や武器が相手でも
勝つ以外の道はなし

同盟艦隊はスロードを攻めた
自らの武器と魔術を使って
島の守りはついに崩れ
ナメクジの民は報いを受けた

全旗海軍! 全旗海軍!
アンヴィル王に率いられて
全旗海軍! 全旗海軍!
彼らの船と船乗りを称えよ!

素敵でさわやかな草原Fair and Fresh Upon the Lea

吟遊詩人アディステアによる、レイラ・ミロリのためのソネット

草原に麗しく爽やかな朝が来て、
穏やかな風の甘い口づけと、新たな喜びが、
東の海に靄となって浮かび、
誇り高き太陽を、その輝きにも負けぬ栄光で迎える。

だが平原の黄金の花々に、
他のどれより見事な輝きを放つものが一輪、
花々は喜んで彼女の黄色い髪になびき、
しなやかに踊る足が、露に濡れた葉を祝福する。

こうして美しきバラ色の朝は、
丘の祝福者が自らに匹敵することを知り
賛美する花々と、朗らかに歌う小川の笑い声に怯え、
雲の中へと身を隠す。

なぜなら、草原を歩むレイラこそが、
海に浮かぶ太陽を最初に迎えるのだから。

倉庫長アルノーへの手紙Letter to Dockmaster Arnauld

倉庫長アルノー、

合意に従い、継続的な協力と配慮への謝礼をここに送付する。我々が浅瀬での作業を終えるまで、公権力の注意をハイ・アイルでのサルベージ作業から逸らすことは不可欠だ。

我々の事業を詳しく知りたいとか、沈黙の対価をさらに釣りあげようと考えているかもしれない。予め伝えておくが、決められた合意について事後的に再交渉することには賛同しかねる。入江には近寄らず、これまでに支払われた金額で満足するといい。それが双方にとっての最善だろう。

超越の魔導師

捜査官ヴェイルと呪われた灯台Investigator Vale and the Haunted Lighthouse

捜査官ヴェイルの冒険

「それで、幽霊が出るというのはこの部屋?」捜査官ヴェイルは目の前にある重い扉を身振りで指した。外では嵐が吹き荒れていた。島の岩場に当たった海からの大波が、灯台の壁に向かって水を巻き上げた。

「俺のことを信じていないみたいな言い方だな」。ガウェインは筋骨たくましい両腕を組んで、暗い階段の壁に背を預けた。

「疑ってはいるわ」。ヴェイルは松明を掲げて、もう一度扉に目をやった。「あなたは長い間この島で唯一の管理人だった。本当に幽霊を見たのかもしれないけど、この灯台に別のものがいるってことも十分ありうる」

「自分が聞いたものはわかってる」

「叫んだんでしょう、さっき聞いたわ」。ヴェイルは扉のハンドルに手を滑り込ませた。「叫びの源を見てみましょうか」。ヴェイルはガウェインの抗議の叫びを無視して、扉を押し開いた。

捜査官ヴェイルは部屋の中に踏み込んだ。自分の吐いた息が目の前に見えそうだった。外では嵐が唸り、ヴェイルの手にあった松明が揺らめいて消え、完全な闇の中で、彼女には何も見えなくなった。

「幽霊は本物だ、捜査官! これで奴が灯台の他の部分に入れるようになっちまった。もう二度と眠れない」。階段の吹き抜けから来るガウェインの声は震えていた。

捜査官ヴェイルは微笑んだ。「馬鹿ね。別の松明を持ってきなさい。あなたの幽霊とやらを見せてあげるわ」

新たな松明の明かりが階段を上がってくると、ヴェイルはスカーフを脱いだ。少し見渡すと、彼女は探していたものを見つけた。「恐ろしい幽霊というのは、ただの灯台の壁のひびよ」。ヴェイルはスカーフをひびの前に掲げ、スカーフが風で膨らむところをガウェインに見せた。

ガウェインは布切れを見つめた。「石工のヘマのために、俺は偉大なる捜査官ヴェイルを灯台まで引きずってきたってことか?」

「まあ、あまり自分を責めないで。亡霊と霊魂はたくさんいるから、あなたが気にしたのも無理はない。本当に呪われているより、漆喰を塗った方がいいでしょう。本物の亡霊は、ずっと根絶が難しいから」

その時、外で耳をつんざくような音が鳴った。灯台近くの海に稲妻が落ちたのだ。ガウェインは音を聞いて飛び上がり、それからため息をついた。「この嵐じゃ、海辺に戻ろうとしても無駄だ。捜査官、悪いがここで嵐が収まるのを待ってもらうしかないようだ」

捜査官ヴェイルはにやりと笑った。「この灯台に幽霊はいなかったけど、辺りが落ち着くまでの間、きっと盛り上がれるわよ。ところで、ワインはない?」

造船の歴史、第1巻(全27巻)A History of Shipbuilding, Vol. 1 of 27

シストレス史研究家、エダナ・オーギエ 著

シストレス諸島の民は何世代にもわたり、大小の船を建造してきた。近代において、デュフォート造船所から生まれた船はどの海軍にも見られる。海上に浮かんでいる船の中で、デュフォート造船所の船は最高品質のものに数えられる。

この海洋産業の起源はどこまで遡るのだろうか? 造船業と我々の遺産について理解を深めるためにはどうすればいいだろうか? 読者にはこの魅惑的な物語へと向けた船出に、私と同行していただきたい。

まずは発端から始めよう。つまり、木材からだ。

西の海岸へ目を向けていただきたい。ナヴィール城周辺の土地は、記録に残っている以前の時代から船造りのための木を供給してきた。デュフォート家が存在する遥か前から、丈夫な大小の枝は船団が築かれる際の基礎となっていた。素材の木目を見れば、それが美しく魅惑的な模様を作っていることがわかる。我々の富はこれを基礎として築かれたのである。

ハイ・アイルの木は船造りへ特に適している。ハイ・アイルのコルクオークやその他の木材は強靭で防水性が高い。学者は我々のドルイド系の祖先たちがこうした木々に影響を及ぼし、特に船舶へ適した形に育てたのではないかと仮説を立てている。しかしこれについてはさらなる研究が待たれる。

大治癒師ヴィラレインのメモMaster Healer Viralaine’s Notes

不幸な事態が発生した。ロスレンが研究室を発見したのだ。被験者の血液を大量に与えて、彼女を鎮静化するしかなかった。成功は目前にまで迫っている。どうあっても、今実験を中断するわけにはいかない。

残念なことになったが、ロスレンの症例は新しい洞察を与えてくれるかもしれない。今のところ、私は被験者の血液を薄めて患者の食事と飲み物に入れている。症状は予想どおり数日間かけてゆっくりと現れている。しかしロスレンの場合は投与量が多かったため、すぐに意識を失ってしまった。

ロスレンの状態は一時的に抑えられるが、完全な吸血症に発展するのは確実だろう。幸運にも、知識があれば解毒剤を作るのは簡単だ。ハーピーの羽根の抽出物を、被験者の血液とその他の錬金術の試薬へ混ぜればいい。

近いうちにロスレンに解毒剤を処方せねばならないが、その後はどうする? 彼女がこの件をバカロ卿に報告すれば、パニックと非難が巻き起こるだけだろう。だが、愚かしい過剰反応に私の研究を邪魔されることなど到底許容できない。成功が近づいているのだ!

超越の魔導師の任務The Ascendant Magus’s Commission

超越騎士団のすべての騎士へ

超越の王はレディ・アラベルとその仲間たちが、アメノスから同盟の指導者たちを救出したことを知った。レディ・アラベルは指導者たちを全旗の小島へ送った。このため、緊急対応計画を即座に実行しなければならない。

シルバースワンはまだ完全に出航可能な状態ではないため、へルシアンにネレイズソングの指揮権を与える。隠された入江で彼に会え。へルシアンの指揮でネレイズソングを全旗の小島へ向けて出港させ、戦いに参加せよ。私には別の船がある。

シルバースワンは全旗の小島で我々の仕事が終わるまでの間、エリア女公爵を安全に拘留しておける場所だ。彼女の監視を怠るな。

超越の魔導師

超越騎士団の声明The Ascendant Proclamation

タムリエルの民よ、聞け! 救済の時が近づいている。ただ手を伸ばす勇気さえあればいい!

我々は超越騎士団、全ての国の平民のために戦う、民の騎士団だ。我らの敵はお前たちを隷属させ、全ての国で力と権威を独り占めしようとする者たちだ。我々はお前たちを支配する者に対抗して立ち上がる術を与えよう。そしてお前たちは自分自身の支配者となる!

お前たちはこの三旗戦争を求めてはいなかった。これはすでに統治していた土地では満足できない、王や女王たちが始めた戦争だ。タムリエルの平和的な人々が彼らの強欲ゆえに苦しみ、死んでいる。お前たちは自らの血で貴族の野心の尻ぬぐいをさせられている。お前たちが自ら立ち上がり、「やめろ!」と言うまで、この運命は変わらない。

全ての者にとっての平和と繁栄の道は一つしか存在しない。全てのタムリエルの国家で、腐敗した政府を転覆させることだ。ハイロックの民はアルゴニアンに危害を加えただろうか? レッドガードはダークエルフに対して恨みを抱いているか? 否、そして否だ! 強欲な君主が新たな土地や民を屈服させるだけのために、なぜお前たちが戦わなくてはならないのだ?

我ら超越騎士団と共に立てば、お前たちの生死など歯牙にもかけない王や女王たちを止められる。我らの仲間となれば、力を合わせて世界を変えられるのだ!

帝国に死を!

灯台の命令Lighthouse Orders

騎士ステゴル、

新人の一団をゴンファローネ岬の灯台に連れていき、キナレスの偶像を取り除け。王は灯を消して、近いうちに到着する船にキナレスの導きを与えないようにすることをお望みだ。

偶像を傷つけ、番人に危害を加えることは、止むを得ない場合を除き避けよ。灯台を永遠に暗くしておきたいわけではない。偶像を取り、適当な隠し場所を見つけ、次の指示を待つだけでいい。

超越の魔導師

任務と日課Duties and Routine

エリア女公爵閣下の新しいメイド全員に向けた、閣下の一日を組み立て、秩序立てるための指示書。

早朝
– エリア女公爵を起こし、新鮮な果物と焼き菓子、澄んだ泉の水を寝室に持っていく。
– 夜の間に溜まった最新の書簡と伝言をエリア女公爵に渡す。造船所からのものを優先すること。
– 台所からお湯を持ってきて、エリア女公爵が入浴できるようにする。
– 寝室を片づけ、女公爵の部屋にいる間は何か仕事を続ける。
– エリア女公爵をその日の活動に合わせた服に着替えさせる。高官を訪問する際には長いローブ、港の視察には長ズボン、重要な客人を歓待する場合にはガウン、騎士団の視察にはチュニック。

* * *
午前中
– エリア女公爵の朝の活動に同行する。路上の民に特別の注意を払い、必要に応じ身を挺して閣下をお守りすること。
– エリア女公爵が上記の民や予定にない伝令、貴族あるいは訪問中の名士などに煩わされないようにすること。

* * *
正午
– 料理人に与えられた食事を整えて提供する。すべての食事は提供前に味見し、純度と風味、安全性を確認する。
– 書き物机に新しい羊皮紙と満たしたインク壺、羽ペン一式を用意する。
– 机の右側の、閣下のすぐ手の届くところに軽くつまめるものを用意する。
– すべての往復書簡を集め、エリア女公爵の指示どおりに投函する。

* * *
午後
– エリア女公爵は顧問や諸島の管理を担う人々と会うことを好む。閣下が対話を望む相手を招集し、それぞれの会合の予定を適切に設定する。
– 閣下の執務の邪魔をせぬようにし、閣下の部屋を掃除する。
– 暖炉に手を加えた形跡がないかどうか確認し、必要なら襲撃者に備えて窓を補強する。

* * *
夕方
– 夕方の行事と客人のリストを考慮しつつ、女公爵の承認を受けるため複数のガウンを用意する。
– 女公爵の着替えを手伝う。
– 夕方中、閣下のそばに立って仕え、内密の話を口外しない。たとえ誘われても踊ってはならない。お前は楽しむために来ているのではない。閣下のそばがお前の居場所だ。

* * *

– 夜会がお開きになったら、女公爵に同行して部屋まで行く。
– 寝室を整え、閣下に生命の危険がないかどうか、最後の確認を行う。
– 夜中に必要とされた場合にいつでも駆けつけられるよう、閣下の部屋の扉の外で眠る。

デュフォート家の鍵管理者、マルセル・スティージン

忍耐の試練The Trial of Perseverance

多くの者が人生の試練を通過できないのは、耐え忍ぶ意志を持たないからである。

お前はこの試練を乗り越えた。

正しき言葉を記憶に留めよ。

「技」

破られた誓いThe Broken Oath

デスバロー騎士団、ナサイン卿による記述

騎士道とは、偉大なる重荷である。

私が盾を取った時は、先人たちを導いてきた規律と信条に従い、正しく生きることが人生における自分の役割だという素朴な理解を抱いていた。私が人生を捧げた偉大なる騎士団は、最も偉大な人――ヴィクトレルの継承者、六代目レオバートの指揮によって栄えるだろうと思っていた。

しばらくの間、私の考えは正しかった。我らが騎士団には腕と名誉に優れる騎士が数多くいた。私の青春の輝かしい日々に、我々は中庭で火を囲み、その日に成し遂げた偉業を称えたものだ。

次第にレオバートは我らの火を離れ、責務の重さにより顔の皴は深くなった。笑いは我々を見捨て、火は消えた。それでも我々は義務と名誉を絆として、悲劇を押し留め、誰にも弱さを見られることのない暗がりで、過ぎ去ったよき日々について語った。私も長生きをして、火が再び灯されるのを見たいものだ。

* * *

騎士道とは、力に劣る人々への責務である。

私が若い頃は、笑い声と喜ばしい歌声が中庭に響き渡っていた。今は開けた空間を重い沈黙が満たし、疑念が不協和音を奏でている。時が経ち、この恐るべき瞬間まで気づけなかったほど緩慢に、我々は変わった。罪なき人々を巨大な危険から守るのではなく、資金の供出を催促するようになっていった。我々は自ら、成敗せよと教えられたはずの恐るべき野盗と化したのだ。

これは我らが陥った最も暗い深淵ではなく、最大の失敗でもない。だが、私は馬に乗って通りすぎるたびに、一般市民の顔が憎悪に満ちた怒りで歪む姿を、脳裏から追い払うことができない。この広間には腐りきった膿がある。何かがおかしいのだ。

レオバート卿、あなたは一体何をしでかしたのだ?

* * *
騎士道とは、責任の重圧である。

葬儀以来、レオバートは自室を出ていない。騎士20名と、小姓と従者を含む見習い30名は、彼らが栄光に満ちた成果に笑い、生きた中庭に葬られた。

レオバートは鍵のかかった扉の奥に隠れている。彼の呟き声は小さすぎて私に聞こえないが、足音の重みは砦の土台を揺るがすほどだ。今でさえ、彼が床のどこを行き来しているか辿ることができる。砦の中に暗闇が育っている。ネズミたちは地下室から逃げだし、鳥たちも我らの胸壁に止まることはない。中庭には沈黙が漂っている。この不自然な出来事の原因はまだわからない。だが夜になると、私は恐ろしい悲鳴に満ちた夢を見る。

* * *
騎士道とは、物事を明晰に見て、正しく行為する約束である。

我々全員がこんな目に遭ったのは、あの男のせいだ。行方不明の子供たち、我らが騎士たちの死、忌まわしい死によって失われたすべての命は、レオバートの仕業だったのだ!最後に話した時、レオバートは「容易く征服できる死に、この私が頭を下げるとでも思うのか?」と言っていた。私は彼が言葉どおりのことを言っているとは思わなかった。だが言っていたのだ。魔法の波が廊下を突き抜け、触れた者全員の命を奪い去った時、それは確実になった。

認めるのは恥ずかしいが、自分の番になった時、私は怯えて泣き叫んだ。私が求めていたのは、こんな死に方ではない。私が懇願した死は、自分の故郷でこのように変化させられることではなかった。死につつ残るとは悪夢だ。私は地下墓地へ急ぎ、我らの呪われた最期の原因を探った。

* * *
騎士道とは、恐怖でなく、名誉に基づいて行為する責任である。

レオバートは変わっていた。霊魂からすべての肉を取り除き、鎧の中に自らを移し入れたのだ。彼が一体どうやってこのような方法を学んだのか、決して知ることはあるまい。

これはまさしく狂気だ。だが私は留まるわけにはいかない。彼がこの儀式を続け、我らの呪われた肉体が砦の壁を越えて押し寄せるようなことを許してはならない。

レオバートを殺せるのかどうかはわからないが、彼の呪われた儀式にこれ以上騎士たちを歪めさせられない。私は彼が儀式に使っていた道具を盗んだ。祭壇には、襲撃に備えて我々の神聖な遺物を隠すための、秘密の隙間がある。この隙間を我々の見習いの祈りに結びつけておこう。レオバートはあの言葉を覚えていなかった。

私の最期が恥ずべきものになることはわかっている。私の人生自体が恥だった。願わくば、死後の生が私に慈悲を示し給わんことを。

配達人グルニエのメモCourier Grenier’s Note

これを見つけた者へ

奇襲だ。印のない装備を身に着けた騎士たち。一族の紋章がなかった。我々を待っていたんだ。戦おうとしたが、数が多すぎた。

ダニスは逃げ延びた。彼女は南へ走ったが、殺し屋どもが2人追いかけていった。残りの奴らは我々の荷車を漁った。理解できない。バカロ卿はナヴィール城への道が安全だと保証したのに。

もう長くはもたない。どうか伝えてほしい、私の

〈解読不能の走り書き〉

悲痛なる船旅A Harrowing Sea Voyage

ブリーン・デュフォートによる報告

私たちがハイ・アイルに向けて出港した夕方、ある年寄りの船乗りが警告を聞けと私に言った。最大の島でさえ小さく見えるほど巨大で、船を丸ごと飲み込めるほど大きな口と、船乗りの魂を揺さぶり沈黙させるほど強烈な存在感を持つ生物が、本土と諸島の間の深海を徘徊していると。ハイロックへの旅の途中、あの暗黒の怪物からすんでのところで逃れたが、帰り道では助からないだろうと彼は言った。

最初、私は彼の話を聞いて震えた。しかしエールを数杯飲んだ後で、私は笑い飛ばした。この不愛想な船員の大げさな話はただの物語で、未熟な旅人を怖がらせる作り話だと思ったのだ。

シストレスの宝石に向かって船を進め、もはや海辺が見えなくなると、前方の水が空と交わった。そして、警告もなくすべては静かになった。風は私たちの帆を避け、船は動きを止めた平坦な海の上で停止した。

異様な沈黙が私たちの耳に忍び込んできた。それはあまりに耐えがたく、船に乗っていた誰もが麻痺して立ち尽くしていた。雲一つないのに、空が暗くなった。というより、想像もつかないほど巨大な暗闇が、永遠とも思えるほど長い間深海から立ち昇り、その後再び水面下に消えていったのだ。

今や影は私たちの下を徘徊し、水を黒く染めたため、ノクターナルの領域から水が流れてきているかのようだった。水面下のリヴァイアサンがだんだん近づいてきた。暗闇が広がり、私たちの周りの海を染めていく間も、船は空っぽの沈黙の中で揺れていた。

下で、あの深淵の中に、明るい緑色の光が急に現れた。それが何か気づくのに少し時間がかかった――人間やエルフが作ったどんな建物よりも大きい、巨大な目だ。目は上を向き、私の魂を貫いた。それは一度だけ瞬きした。その瞳孔は巨大な割れ目だった。

目は出現した時と同じくらい素早く消滅した。海は墨のような黒から、再びより自然なサファイアの青に変化した。暗闇は退き、リヴァイアサンは跡形もなく深海に消え去った。風が戻ってきて帆を満たし、私たちは旅をつづけた。

死が訪れるその日まで、私は自分が見たものを誓う。想像しうるどんなものよりも大きな生物が、波の下を徘徊している。

時を待ちながら。

牧草地砦の戦いThe Battle of Meadow Fort

公爵家の歴史家兼年代記編者、カエラ・メトリック著「デュフォート家の歴史」より抜粋

最後の戦いは、当時牧草地砦と呼ばれていた場所で行われた。そこはオールドストーン森にハラバント(後のデュフォート男爵一世)が築いた小さな要塞だった。戦いは夜明けに始まり、日没まで休むことなく続いた。

ハラバントの名剣レッドハートは、戦いが終わりに近づく頃には折れていた。それにもかかわらず、この偉大な戦士は刃を投げつけて恐るべき魔術師フェルボアの黒い心臓を貫き、この邪悪な敵を倒した。ハラバントは戦いで受けた傷により片手を失い、男爵位に上がるまでの間、無手のハラバントと呼ばれた。

ハラバントは自分の大剣を溶かして手を作り、それを失った手の代わりにしたと言われた。ハラバントの家臣たちの多くは彼の気が短いことと、その手によって殴られたことを証言している。何年も経った後、公爵は昔の要塞の代わりとして、西の巨大なナヴィール城を用いるようになった。城は今日も立っており、この名声高き一族にふさわしい名所となっている。

レッドハートの柄が発見されることはなかった。この小さな要塞はもう長いこと、植物が生い茂ったままの状態で立っている。ハイ・アイルを形作った出来事の、物言わぬ証人として。

癒し手の日記のページPage from Mender’s Journal

〈癒し手ロスレンの日記からちぎられた数枚のページ〉

ハーピーたちは興奮しているようだ。邸宅の病気がハーピーにも感染している? それとも攻撃性には別の原因がある? いいハーピーの羽根を手に入れたけど、この辺りのどこかで手袋を失くしてしまった。

〈急いで書き加えられた文〉

邸宅への帰り道、森の中に奇妙な黒い犬を見かけた。見られはしなかったと思うけど、逃げるしかなかった。この環境に生息しているものじゃない。超自然的な存在? 巨大なコウモリもいた。

小川の向こうに洞窟の入口がある。あの犬とコウモリはあそこから来ているんだろうか? あれはもしかして、吸血鬼の巣?

癒し手ロスレンの日記Mender Roslenn’s Journal

〈11日前〉
今日、数人の患者が異様に疲労し、休ませても具合が悪いようだった。妙なことに、彼らは全員悪い夢を見たと言っていた。

〈7日前〉
明らかに何かがおかしい。今ではほぼ半分の患者が疲労と不安に苦しんでいるし、恐ろしい悪夢についての報告が頻発している。感染性の熱病の一種? それとも何か別のもの? これと似たものを以前に見たことがある。どこで見たのだろう?

この謎の病に酷く苦しんでいたノルドの兵士が今、行方不明になっている。自分を傷つけたのではないかと心配だ。

〈5日前〉
さらに2人の患者が行方不明になっているが、状況がわかった気がする。この兵士たちは吸血症の初期症状を発しているのだ! 症状は軽いが、不眠症や倦怠感、恐怖の感情や怯えやすさなど、すべてが一致する。でもこの邸宅に吸血鬼はいない。それは間違いない。

アレクシス・ヴィラレインは納得していない。彼は身体的な症状が単なる睡眠不足であり、その原因は患者たちの恐ろしい戦争体験にあると信じている。彼はベッドで休ませろと指示している。

〈4日前〉
アレクシスには早くここで起きていることを認めてもらいたい。吸血症の初期段階の症状を緩和する霊薬を少量用意してみる。これが効くかどうか確かめよう。

行方不明の患者は今や7人になっている。

〈2日前〉
思ったとおり! 抗吸血症薬は私が処方した患者たちを即座に落ち着かせた。しかし、病気は治っていないと思う。新鮮な材料を使ってもっと強力な薬を作らなければ。必要なものの大部分はここで手に入るが、解毒剤を作るにはハーピーの羽根が必要だ。幸運なことに、ハーピーの群れが邸宅の西にある丘に住んでいる。夜が明けたらすぐに出発しよう。

輸送計画Transport Plans

お前が探す積荷は三隻の船に分けて輸送されている。いずれも行き先はハイ・アイルのゴンファローネ湾だ

– 「鷲」はスカイウォッチから出航するパーフェクトパウンスに乗る。
– 「獅子」はウェイレストからスピアヘッドに乗る。
– 「雛鳥」はリルモスからカマルズベインに乗る。

それぞれの船には磁鉄鉱が設置されているので、我々は船を追跡し、密かに航路を変更させ、嵐の標的にできる。

北東の地平線に現れる雲に注意し、嵐が見えたら移動せよ。嵐が標的を殺せなかった場合、後始末の用意をしておけ。

超越の魔導師

勇敢な魂の記憶In Memory of the Brave Souls

全旗艦隊の一部として働き、タムリエルの民を守って命を落とした勇敢な魂を称えて。

[船とその船長および乗組員のリストが続いている。プリスティン・ハルバードとレンウィック・ムーアクロフト船長が今ではこのリストに載っている]

揺るぎなき者の会The Society of the Steadfast

エリンヒルのファラスタス 著

インペリアル貴族の名士数人の求めにより、通常は私の専門外にある主題に踏み込むことになった。時事問題という領域だ。より正確には揺るぎなき者の会の台頭と、その政治的役割である。

慈善事業家のバカロ・ヴォロラス卿は、三旗戦役によって引き起こされた苦痛に巻き込まれた人々に救いの手を差し伸べるため、揺るぎなき者の会を発足させた。三同盟が衝突する中、戦場の背後で家族は離れ離れになり、子供は孤児となり、兵士は負傷し、飢餓が広まった。会はうち続く紛争に見舞われた人々に、援助と安全を与えるため全力を尽くしている。

ロングハウス皇帝の終焉につながったコロヴィア反乱の初期、地域お共同体の指導者たちが進みでて、ヴァレン・アクィラリオスの軍が帝都に進行した際、流出した難民たちの庇護者として活動した。藁のベッドが作られ、避難所が急遽建設され、シチューの鍋が配備された。血が染みついたチュニックやボロボロのベッドシーツから旗が紡がれ、窮乏する人々のための安全な隠れ家、そして救助の場であることが示された。このような善意と救援の非公式の集合体は、バカロ・ヴォロラス卿の存在がなければ、単なる歴史の一挿話でしかなかったかもしれない。栄華を極めたヴォロラス家は、レオヴィック帝に対する戦争によって深刻な打撃を受けた。バカロ自身も戦闘のために伴侶と子供たちを失った。悲しみに暮れる中、この貴族は巨額の私財をさまざまな種類の慈善活動に注ぎ込んだ。そして三旗戦役が始まると、彼は揺るぎなき者の会を創設して、最も必要とする人々に援助が差し伸べられるよう取り計らった。

会は負傷者のために治癒のテントを設置し、飢えた人々のために食料と水を配り、その他にもできる限りの援助を提供している。バカロ卿の言葉として「私の一族は常に、富は正しい仕事を育てるために用いられるべきだと信じている。我々は同盟戦争の暴力に巻き込まれた民たちを助けることを目的としている」との言が伝わっている。

この会は宗教組織ではないが、ステンダールの教えに着想を得ていることは確かである。治療院と食糧配給テントに加えて、会は戦争に巻き込まれた人々に対し、兵士と一般人を問わず同情と慈悲を示す活動に従事している。比較的小さな組織であるため、この会は基本的にシロディールの戦場付近で活動している。バカロ卿は最近、ハイ・アイルにある地所を治療院へと変え、自ら費用を受け持って特別に深刻な負傷者たちをこの地区に輸送し、治療と保養を受けさせている。

ゴンファローネ湾から日々、揺るぎなき者の旗を掲げた船がやって来る。それぞれの船は各地からの食料や物資など、戦争被害者のための救援物資を運んでいる。パクトであろうと、カバナント、ドミニオンであろうと、戦士のチュニックの色はこの会の船にとって無関係である。彼らは窮乏するすべての者に助けを与える。

嵐吹く海の葬送歌Dirge of the Stormy Seas

海岸から遠く離れて、稲妻が落ち
運命が船員を黙らせ、叫び声が止むその時
私は船のへさきに堂々と立ち
命の終わりを告げる声に唾を吐きかけよう

我らは戦い、海辺の人々を愛した
逝く時は、多くの杯を注いでもらおう
深い水と、嵐吹く冷たい海の中で
船室の底の暗闇に沈む命のために

だから手にジョッキを持ち、乾杯の声をあげよう
失われた者と、陸地で待つ者のために
我らの体は、泡吹く深淵に委ねられようとも
愛する者の悲しいため息を聞くよりはいい

我らは待ち受けるものも知らず、船を走らせる
そして歌い飲み、危険を冒して探検する
力尽きて仕事を終える時
この船乗りたちを友と呼べることが喜びだから

緑の大蛇の証言Green Serpent Testimonials

准編年史家、ミネルヴァ・カロ 著

タムリエルのすべての者が、ローズの話を知っていると言ってもいいだろう。ブラック・マーシュの奥地にある悪名高い牢獄である。アカヴィリの最高顧問はその権力の絶頂期、タムリエル中で無数の牢獄や流刑地を稼働させていた。その大部分はヴェルシデュ・シャイエとその眷属の死後、廃墟と化したが、一部は民間施設として稼働し続けている。その中でも、アメノス監獄島ほどの過酷な環境は滅多に見られない。

この暑苦しい開放式の牢獄に送られた囚人の多くは、追放を受けてから数年、数ヶ月、あるいは数週間のうちに病気になって死ぬか、島にあるその他の自然の脅威に襲われて倒れる。しかしこのジャングルの牢獄の中で生き延び、それどころか栄える者も存在する。それは主に島の大部分を実質的に支配している囚人のギャング団、緑の大蛇である。私は上級王の承認によりジャングルに入る許可を受け、緑の大蛇の証言を後学のために記録した。愛する者の喪失や、潰えた夢の話を語った者も中にはいたが、大部分は紙に記すのがためらわれるほどおぞましい暴力の話を、私に嬉々として話した。しかし、仕事のためである。親愛なる読者に警告しておきたい。心臓の弱い者は、ここに記す話を読まないほうがいい。

まずは「ラットキャッチャー」という、囁き声でのみ話す痩せた汚いウッドエルフから始めよう。「俺は紡ぎ手を殺した」と彼は言った。「そう、紡ぎ手さ。グザードは話をしていた。嘘の話をな。俺の大叔父のニルサリングはツリーホッパーだったが、誰にも悪さなんかしてない! 確かに、枝は何本か切った。誰だってやるだろう? 生活のためだ。だがあの紡ぎ手は、大叔父がグラーを丸ごと切り倒したと歌った――緑に唾を吐きながら! だから俺は思ったんだ。この嘘つきの歌を止めてやるってな。それで奴にヴァレンウッド式の笑顔を刻みつけてやった。片方の耳から反対側の耳にかけてな。もう一度機会を与えられたら、またやるぜ。一瞬も迷わずにな!」

その後、私は「のっぽのアマネル」という、意外なほど礼儀正しいハイエルフと話した(後でわかったことだが、彼女は少し前に「ちびのアマネル」を錆びた銛で殺したのだ)。のっぽのアマネルの話の出だしは単純だったが、最後のほうの展開は不安を抱かせるものだった。「私は彼らの言葉でアプラックスと呼ばれる者なの」彼女は落ち着いた口調で説明した。「サマーセットで法を破ったハイエルフのことよ。通常は追放されて、カリアンという、私たちが皆持っている貴重な家宝を割られて、森とか下水道とか、アプラックスやハルキンドなど追放者が行く場所に住む。私は追放されてしばらく経つ。考えてきたのよ。犠牲者もいない犯罪と、若い頃の愚かな行動のために奪われた特権の数々について。だから、私は清算することにした。私は薪木の月のある涼しい夜、高位司祭の修道院に忍び込み、静かに扉を施錠した。楔までかけてやったわ。それから火をつけた。建物全体を浄化する綺麗な炎だった。誰も出てこなかった。出させなかったわ。私はそのすぐ後、司法官のもとに出頭した。それでわかったの。宗教組織のメンバーを十数人灰にしたら、カリアンを割られる程度じゃすまないって。まあいいわ。あの場所は嫌いだったから」

最後に、私は「スプリットウィロー」と呼ばれる、砂の髪をしたブレトンと話した。ギャング団の中でも一目置かれる魔術師である。彼の話し方は気味が悪いほど率直で、他の囚人たちの空威張りよりも遥かに恐ろしかった。結果として、私の不安は正しかった。彼は自分の犯罪のおぞましい詳細を即座に語り始めた。「人を喰うんだ」と彼は言った。「ウッドエルフがやる冗談みたいな喰い方じゃない(言っておくが、これはまったく荒唐無稽である。私は数えきれないほどのウッドエルフに会ってきたが、私と食事を共にした者はいなかった)。とにかく、俺はナミイラの信者だ。ナミイラの命令と情熱は明白だ。まったく恥とは思わない。大いに楽しんでいるし、ナミイラの贈り物は私の知恵の証明だ。どの種族が一番旨いか知りたいか?」言い返そうとしたが、彼は話を続けた。「ハイエルフだ。プライドと自己満足のおかげで甘い。意外かもしれないが、カジートよりずっと甘いんだ。まだ少しあったはずだから、味見してみるといい」。この時、私は自分の足が許す限り全速力で逃げ去った。そのすぐ後、私は船で出立した。

この話に付け加えることはあまりない。もしあなたがジャングルを前にして判決を待つことがあれば、慈悲が下ってアメノス以外の場所に送られることを願う。あそこは邪悪な地だ。忘れ去ってしまったほうがよい。

緑の大蛇の賞金Green Serpent Bounty

ジャングルで行方を消した三人の貴族を連れてきた者には報酬を出す。生け捕りにしろ。

超越騎士団は恩赦と、この悲惨な島から出る方法を約束した。追放者に対してもだ。

騎士団に直接近づこうなどとは考えるなよ。彼らは俺しか相手にしない。

貴族たちを逃したら、このジャングルのどこにいても俺の獣たちの歯から逃れることはできないと思え。迷子の貴族を見つけだし、自由を勝ち取れ!

ディーシュ・ジー

トリビュートの書

Tomes of Tributes

アンセイの勝利の手掛かりAnsei’s Victory Clue

アリクルの砂漠を越え
フンディングが見守るところ

霊魂は常にぶつかり、警戒を続ける
西の砂の染みで

遺跡の中のストーンサークル
昼も夜もなく

そこにカードは眠る
勝利した戦い

ウィスプマザー・トーテムの手掛かりWispheart Totem Clue

レイスは故郷に住む
呪われた岩だらけの地に

高く牙の生えた尖塔と
亡霊を近くに従える

マルクワステン・ムーアの
南西の隅

そこにカードが眠る
アギア・レルの扉に

カラスの群れの手掛かりMurder of Crows Clue

沼はとても深く
ハグはとても近く

遺跡は沈み
ブレトンは涙にくれる

倒木は
道を示すだろう

そこにカードが眠る
群れが獲物を記すところに

サーペントガードの騎手の手掛かりSerpentguard Rider Clue

緑の影が落ち
波が流れては砕ける

シーエルフの刃は光る
うねる蛇の間に

広がった枝の下
昼夜を問わず

そこにカードは眠る
シーサーペントの一噛み

サイジック遺物マスターの手掛かりPsijic Relicmaster Clue

オーリドンの岸を探せ
ワンサレンへと向かえ

今や飢えた死者を突破せよ
水の流れに沿って

下には哀しみの赤
闇の潮の力が見える場所

そこにカードが眠る
サイジックの力

サマーセット襲撃の手掛かりSummerset Raid Clue

オーリドンへ飛び
シーエルフが船を停める場所

光がまず空に届く
長い砂の羽根の一片

大きな石のアーチの下
しかし戦わねばならぬだろう

そこにカードが眠る
マオマーの光の射撃

セポラの洞察の手掛かりCeporah’s Insight Clue

嘆くために口は開く
とても冷たい港で

広大な洞窟
とても大胆に輝く槍

魂石が高く積み上がる中
夜よりも黒い場所

そこにカードは眠る
塔の洞察

トリビュートプレイヤー求む!Seeking Tribute Players!

テイルズ・オブ・トリビュートをプレイするか?タムリエルを席巻しているこのゲームのルールを学びたいか?

ロイスターズ・クラブのゴンファローネ湾支部に来て仲間を探せ!私たちはいつも新メンバーを求めている!

ドルイド王のベストの手掛かりDruid King Vestments Clue

ガレンの蔦の家へ、船を走らせる
地面が煮え、大地が唸るところ

コブが生え、根で作られた橋の下
結び合わされた光る石の輪を探せ

新たな岩の上を優雅に歩み
ひび割れた眼の底へ

そこにカードが眠る
島の叫びに耳を澄ませ

ハグレイヴン・マトロンの手掛かりHagraven Matron Clue

山がそびえる
オークの古き故郷

敵が苦闘に倒れ
霜が軍を打ち破る場所

ねじれた古い木の下
鼻息も荒く喋るハーピー

そこにカードは眠る
ハグレイヴンの反論

フラールの評議員の手掛かりHlaalu Councilor Clue

ナルシス湖の岸
デシャーンの中

フラールが注ぎ
信者が企む場所

尾根に
宝箱が横たわる

そこにカードが眠る
評議員の剣

ブラガスからのちぎれたメモTorn Note From Brahgas

ソリンヌ

ゲームが流行ってきたので(農家のノミみたいだと思わないか?)、ラズハマドのためにマスターを何人かメモしておこうとしている。ガレンのブドウ農民でさえ、このゲームをやり始めているんだ。彼らはドルイド王の物語を伝えるデッキを使う。妙なデッキだ。

噂によればブライという変な老人がデッキを作り、遊び方を教えたらしい。この老人はグリマーターンとかいう村に住んでいるようだ。自然の奥深くにあるから行きたくないが、もし会えたらその老人と話すといいだろう。

ブラガス

ブラックフェザーの召使の手掛かりBlackfeather Knave Clue

くちばしが黒く
木々が迫ってくるところ

古代の枷が
薄暗い闇の中に立つ

空の暖炉は
光を放つことなし

そこにカードが眠る
カラスの騎士の呼び声を聞け

騎士団長の手掛かりKnight Commander Clue

ハイ・アイルへ船を出せ
騎士たちが技を競う場所

全身を鎧に包み
志願者たちは高慢になる

大きなアーチの側面
慎重に配置された紙

そこにカードは眠る
騎士団長の刃

軍団の来訪の手掛かりLegion’s Arrival Clue

荷車の上にて
聖ペリンは永遠の休息を迎える

死者はひっそりと跪く
もしくは言い訳を重ねる

対になる場所へ
聖人の思慮深き視線を受け

そこにカードが眠る
軍団のトランペットが響く場所に

血の生贄の手掛かりBlood Sacrifice Clue

リフトのブナ
部族の野営するところ

檻の捕虜はよろめく
野生の熊は足を踏み鳴らす

月の旗の下
デッキが磨かれる場所

そこにカードは眠る
血塗られた石

指輪の狡猾の手掛かりRing’s Guile Clue

死神と行進せよ
激しき地を

アークメイジが審判を務める
異なる場所にあるファリネスティ

側面には小さな泉
樹木の避難所の中

そこにカードは眠る
騙す指輪

聖ペリンの騎士の手掛かりKnights of Saint Pelin Clue

海を渡って古きバンコライへ
駐屯地の道の下

軍勢が守りを固める光景
リーチの民の怒りに備え

またたく青い炎が
夜に目を引く

そこにカードは眠る
聖ペリンの喜び

大演説の手掛かりGrand Oratory Clue

ストロス・エムカイへ
さあ船を出せ

晴れ渡る空を歌え
厳しい島の強風の中

柱の影
水平線が見えるところ

そこにカードは眠る
口説の力

大窃盗の手掛かりGrand Larceny Clue

グラーウッドで見つけるだろう
最も興味深き場所を

雪を突っ切れ
異なる場所にあるファリネスティ

氷のトンネルの下
太陽が見えぬ場所

そこにカードは眠る
盗む一噛み

名家の大使館の手掛かりHouse Embassy Clue

キノコがそびえ立ち
溶岩が流れるところ

レドランは吠え
バルモランは光る

曲がらぬ
木の影

そこにカードが眠る
大使の金を費やせ

デッドランドからの文書

Dispatches from the Deadlands

アイアンクラッドの道Path of the Ironclad

破滅の運び手ジャユース 著

破壊のデイドラ公、メエルーンズ・デイゴンの名においてご挨拶しよう!

目覚めの炎に仕える者には困難な道が待ち受けている。壊れた世界を再建する任務は、取るに足らない者どもを一掃することから始めねばならない。だが、弱く愚かではあっても、敵は多く我々は少ない。この世界は大いなる戦いなくして終わらない。すなわち最終決戦だ。ニルンの全ての生命が、立場を選ばねばならぬ戦いだ。”変異”の父が我々を呼んだのはまさにこの使命のためだ。メエルーンズ・デイゴンを称えよ!

さて、兵士なくしては戦いに勝利できない。破壊のデイドラ公はデイドラの軍団を率いておられるが、我々定命の者にも役割はある。目覚めの炎はニルンでの戦いの最前線に立ち、怯まぬ勇敢さと揺るがぬ信仰で道を切り開く。そうすることによってのみ、我々がメエルーンズ・デイゴンの忠良な下僕であり、その大いなる計画に参加する資格があると証明できる。

突撃の先陣を切って、不信心者の軍勢を叩き潰す格別な名誉は当然ながら、最強かつ最も決意の固い戦士のものだ。それこそ我らがアイアンクラッドで、炎と洪水の王への信仰に劣らぬほどの肉体的な力を誇る。

熱意こそが信徒の鎧だが、目覚めの炎のアイアンクラッドは信仰同様に強靭なデイドラ鋼で守られている。アイアンクラッドがひとたび強力な兜をかぶれば、卑しき定命の者ならではの弱さも疑いも投げ捨てる。彼らは生ける破壊の原動力となり、破壊のデイドラ公が敵を撃つ稲妻となるのだ!慈悲なく、疲れ知らずで、不可避の兵だ。どのような敵も強靭な信仰を持つアイアンクラッドには敵わない!そして誉れある破壊によってついにアイアンクラッドが散る時、デイゴンの勇者は砕かれ、痛めつけられた不信心者どもの死体に囲まれていることだろう。

これこそがアイアンクラッドの道なのだ。入信者よ。信仰に劣らぬ腕力を誇るなら、お前の道にもなり得る。破壊のデイドラ公を称えよ!メエルーンズ・デイゴンを称えよ!

(志願を決めた者は、このパンフレットを高位のディサストリクスに手渡すこと)

インファーニウムに関してOn Inferniums

帝都の評議会付デイドラ学者、ペラギウス・ハーバーのメモより

デイドラ学者はめったにデイドラを召喚しない。我々のほとんどが本物の魔法の資質を欠いているからだ。勇敢か、あるいは愚かな魔術師はオブリビオンの獣をニルンに招くが、大抵はズィヴィライやドレモラといった亜人や、クランフィアやデイドロスのような獣じみた生物ばかりだ。こういった10から15種に偏向することは、不幸にもオブリビオンの住人の真の姿を魔術師の目から覆い隠してしまう。オブリビオンの平原を徘徊するものの中にはニクバエのような大きさのものから、遥かに大きなものまで存在している。

例えばインファーニウムだ。高名なドレモラの外交官によれば、定命の者にその獣の真名は発音できないという。我々の耳で聞き取るにはあまりにピッチが低すぎるからだ。この獣はそのサイズと醜さの両面で既知のデイドラのほとんどを圧倒し、その姿は牙を生やした巨大ヒルや化物じみた芋虫に似ている。馬ほどの生物ですら軽々と丸のみにし、手当たり次第に何でも食べる。

それだけでも大抵の人々には十分に恐ろしいのに、その動機の異様さにはさらなる戦慄を覚える。デイゴンと盟約を結ぶ全てのデイドラのように、インファーニウムは動乱と革命に憑りつかれているようだ。だが、他の獣型のデイドラと違い、この生物はこういった標的を大雑把で一般的な意味では追求しない。この生物は政治的、文化的な力がどこにあるかを鋭敏に知覚しているようで、行動を起こして確認し、恐るべき結果をもたらす。高位のドレモラが定期的にインファーニウムに襲われて餌食になる割合は、身を守る術の乏しい低位のヴァーレットよりもずっと多い。インファーニウムはさらに極大魂石、マスタールーセント、貴重な異次元の遺物などの強力なアイテムを食らう。潜在力、名誉、権威があるところ、必ずやインファーニウムがそばに隠れ潜んで舌なめずりしている。

これは我々定命の者がずっと抽象概念とみなしてきた、力というものの本質に対して様々な存在論的な波紋を起こす。オブリビオンにおいて抽象的な力は、定量化でき、検知できる物理的な力として、計測可能かつ物理的に収拾できる形で存在している可能性を考慮せねばならない。私の生があるうちに真実を明らかにすることはできまいが、いずれ未来のデイドラ学者がこの点を明らかにしてくれるものと信じている。

ヴァルキナズ・ノクブロズについてOn Valkynaz Nokvroz

ヘクソス家貿易共同事業体最高相談役 ガレリア・ヘクソス様

ヘクソス家運営主任 フォーティス・スカエバ より

もっとうまくやれたかもしれません。

たった今、切望の要塞の最高指揮官ヴァルキナズ・ノクブロズという、融通の利かないドレモラとの恐ろしい会談から戻りました。失礼しました――あなたは今もドレモラと彼らの異様な慣習に、大変とまどっておいででしたね。ノクブロズが名前で、ヴァルキナズは称号です。”公”と”将軍”の間のようなものと考えていただければ差支えないでしょう。とにかく、ノクブロズはデッドランドで最も強力な要塞の指揮を執っています。メエルーンズ・デイゴンのしもべの中でも筆頭格で、そのことを本人も自覚しています。

ともあれ。先日、地元民が集めた有害なバーブ・ブライトの根を買い入れるため、ジュニアトレーダーのファルヴィオル・ストリンを作業員や荷馬車と共に、哀れなる者の尖塔に送り出したことは覚えておられるでしょう(この植物でテルヴァンニの魔術師からどのような利益が得られるかはご存じですね!)。ファルヴィオルの一団が戻らなかったため、私は調査を行うべく哀れなる者の尖塔に向かいました。そこで私は、我々の従業員が荷物を積んで出発した直後に、巡回中のドレモラに捕まったことを知りました。彼らは切望の要塞に連行されたのです。私はいつもの世話役に手配させ、ファルヴィオルの解放を交渉するため安全な経路を確保しました。

ノクブロズとは要塞の謁見の間で会いました。そこは率直に言って、タムリエルのほとんどの玉座の間が恥じ入るような場所でした。ヴァルキナズの背はこれまでに会ったことがあるどのドレモラよりも頭一つ高く、幅広い肩と劣った者への軽蔑であからさまに輝く、赤い眼を備えていました。キンの多くが厳格で、残酷ですらありますが、あのように純粋な悪意を感じたことはほとんどありません。私は安全な経路の確約があってさえ、部屋を生きて出られるかどうか疑問に感じていると気付きました。

「で?」ノクブロズは挨拶代わりに言いました。「お前はある種の商人で、取引を望んでいると部下から聞いた。定命の者と商人には我慢ならない。だからさっさと話せ」

私は儀礼的な挨拶を省略しました。「はい、ヴァルキナズ。私はファーグレイブのヘクソス家の代表者です。あなたの戦士が哀れなる者の尖塔の近くで我々の従業員を拘束しました――ファルヴィオル・ストリン他3名です。ここには彼らの解放をお願いにあがりました」

「ダメだ」ノクブロズは顎から突き出た黒い角をなでましたが、愉快そうな様子は露ほども見られませんでした。「奴らはいるべき場所にいる。命を奪わなかったのは、単にデイゴン公のため働く可能性があるからだ」

前任者の謎めいた失踪の後、ヴァルキナズが今の(何にせよ、ドレモラの用語で言うところの)職位に就いて、切望の要塞の指揮を執り始めてからまだ日が浅いということは耳にしていました。彼は自らが支配する領域で、私たちが取引をするために支払う一種の賄賂や手数料のようなもので、新たな収入の見込みを立てたいのだろうと考えました。「もちろん、取り立てて価値もない労働者4人の返還と引き換えに、彼らより価値があるものを提供できますよ」と、私は言いました。「通常は」と始めたところで彼が遮りました。

「お前やお前の家とやらからは、何も求めていない」

私は困惑しました。「では、なぜ彼らを連れ去ったのですか?」

ノクブロズは私を睨みつけました。「定命の者が、処罰もされずにこの領域をうろついていると聞くとむかつくからな。そんなことは容認しない」

「それは今まで問題になりませんでした!」と私は抗議しました。

「今までがどうであろうと関係ない。お前が雇っている定命の者を気にかけるなら、デッドランドに立ち入らせるな」

「目覚めの炎教団はどうなんです?」私は尋ねました。「あなたの軍は、彼らがデッドランド中にある様々な所有地に出入りすることを許可しているじゃないですか」

「目覚めの炎の話はするな!」ノクブロズは怒鳴って勢いよく立ち上がり、私は思わず三歩後退しました。「デイゴン卿は食卓から、あのしおらしい振りをした定命の者どもにパン屑を落としてやるのを楽しんでおられるのだ。奴らなどどうでも良い。我が主人が定命の者の教団で遊ぶことに飽きた瞬間、喜んでデッドランドから残らず排除してやる。お前の馬鹿げた商人を排除したのと同じようにな。それとも、お前はその判断が不当だと思うのか?」

安全な経路だろうが何だろうが、私は哀れなファルヴィオルが陥っている悲惨な状況にとても近いところにいると感じました。私たちはこういった問題に巻き込まれた従業員を救うためなら、どんなことでもすると思いたいところですが、ヴァルキナズと話して自分が加わったところで誰も救われないでしょう。何より、私自身が。

「とんでもない、ヴァルキナズ」私は注意深く答えました。「お立場を明確にしてくださったことに感謝します。これ以上ここで同僚がご迷惑をかけることの無いよう取り計らいましょう。よろしいでしょうか?」

ノクブロズは小さく不快そうな音を立て、何も言わず手振りで私を追い払いました。

以上です。ヴァルキナズの非協力的な態度からすると、デッドランドでの業務を調整する必要があるでしょう。地元で見て見ぬふりをするよう説得できる指揮官を見極めるまでは、仲介人や臨時雇いを使ったほうがよさそうです。そして、残念ながらファルヴィオル・ストリンとそのグループの近親者には、慣習的な金銭を渡さなければならないでしょう。

再び彼らに会えるとは思えません。

ヴァルキナズ・ノクブロズのメモNote from Valkynaz Nokvroz

ポータルの機械を動かすには、充填されたルーセントが挿入されていなければならない。

ルーセントを何度も抜いているところを発見された者は、悔やむことになるだろう。好奇心と実験は、私が与える罰に見合ったものではない。

ヴァルキナズ・ノクブロズ

ヴィビアス・ソシアへの手紙Letter to Vibius Sosia

ヴィビアス、

私の望みはデイドラにここに住んでもらうことだけだ。定命の者同様に。彼らには思考能力も目標もある。敬意を払われるべきだ。

哀れなる者の尖塔の中からデイドラが出ないようにするため手伝うという申し出は、当初ありがたかった。だがもう私は2人殺した。いや、1人はオブリビオンに送り返し、街の庇護から遠ざけたというべきか。ともかく、お前の命で決してできないと思っていた行為をやってのけた。

だが、お前が約束した変化は起きない。だから、残念だが、自分の手で解決する。お前の助言なしで。うまくやってみせる。そうすればデイドラは哀れなる者の尖塔で安全に暮らせる。疑いもなく、彼らの家で。

エヴェリの演説案Eveli’s Speech Ideas

演説メモ!

メエルーンズ・デイゴンの呼び方一覧:

尻の赤い腰抜け
腕が無駄に多い奴
敗北のデイドラ公
割れた巨大ドングリ
敗北者デイゴン
育ちすぎのマッドクラブ
地団駄おじさん
怒鳴り声のデイドラ公
ここから見るとスカートが短すぎる
でかくて醜いスキャンプ

話すこと:
– 激戦だった!爆発、矢、炎について話す。
– 全員の名前を言う。いや、時間がかかりすぎるかも。名前が多すぎる。
– 勝ち目の薄い戦いに勝った!メエルーンズ・デイゴンの醜い顔を蹴飛ばしてやった!(これはいい表現。使う)
– 捜査官ヴェイル

忘れないように
– 長く話しすぎないこと。伸びきった射手は嫌われる。
– 笑顔。でも笑いすぎない。ニヤニヤしすぎると不気味だ。
– デイドラを馬鹿にしない!
– ライランスの話はしないほうがいいかな?彼女が来れば別だけど。その場合、野望の力の話はしないほうがいいかもしれない。

オブリビオンの性質On the Nature of Oblivion

デイドラ学の第一人者、カナンミルディル 著

この私、デイドラ学者カナンミルディルは長年デイドラ研究において、極めて高い確率で創意あふれる結論を生み出してきた。その特大の知性を活かして史上最大の謎にまつわる知識体系を掘り下げよう。つまり、オブリビオンの真の性質についてだ。

周知の通り、オブリビオンはアービスの内に存在し、様々なデイドラの領域を含む。だが、オブリビオンとは何だ?特に領域の狭間には何が存在している?領域の間には敵対的な虚無が存在すると示唆されている。そこに肉体を持つ生命は一切住まうことができず、肉体を持たない生命は次元と次元の間で闇の広がりを目撃し、経験を損なうことなく戻る。デイドラ自身はこの話題を避ける。

私見だがあらゆる無慈悲な力と同じく、オブリビオンの本質が敵対的な訳ではない。だが、その冷酷な性質に破壊への危険な嗜好を孕んでいる。さらに言えばオブリビオンと我々が呼ぶものは、生命を軽視しているわけではないが、見守る気も維持する気もない。結果として性質と方向性によって、多くの領域が衝突しあっている。多くの次元でデイドラ公やその他の勢力が、オブリビオンでの次元の動きを操作していることは幸運だ。そして彼らが不在の次元は、運命に定められた通りに叩き潰される。こういった不幸な次元の証拠は喜びの領域やクアグマイアの夢の中の幻影で見られる。そこには詳細な記録がある。伝説のエバーグロームの囚人が書いた「堕落した男の不穏な考え」や「サングインの儀式と領域」を参照するといい。

オブリビオン学者は無数の真実がクリエイシアの羊水の中で存在しうるという考えを受け入れられずにいる。「なぜそんなことが可能なんだ」とか、「生きた定命の者がいる場所がある一方で、なぜ他の場所では不死の生命が繁栄しているのか?」といった質問に頭をぶつけている。こういう疑問はまったくもってくだらない。オブリビオンに関するあらゆる質問はハルメアス・モラの信者やクラヴィカス・ヴァイルに聞けばいい。ハルメアス・モラとアポクリファの学者は真の学術的疑問に対する最高の資源だ。だがオブリビオンに関する質問は根源にぶつけるべきだ。考えることに長けている諸君は、もうすでに私がクラヴィカス・ヴァイルをオブリビオンに関する最高の専門家と見なしていると結論しているかもしれない。その活動の一部は、彼の手が左右していると言っても過言ではあるまい。この考えに異を唱える者は、オブリビオンについて知られていることがほとんどないのを思い出してほしい。その活動は複雑怪奇だ。オブリビオンのように混沌とした存在の支配者として、狡猾な願いの主ほどふさわしいデイドラ公はいまい。

私の考えを証明しよう。私はまず後悔の野のスカーフィンに対して問いを投げかけてみた。私の興味という贈り物に対し、彼らは活動の観察を許してくれた(私の著書、「デイドラの真の性質」参照)。このとき、私は密かに彼らがオブリビオンをどう思っているか探ってみた。そしてその一人は親切にも、定命の者もクリエイシアで致命傷から回復できると教えてくれた。スカーフィン・マズフィラックスの手を借り、実験をしようと考えている。定命の者がデイドラのようにクリエイシアで再形成できるのかどうかを試す。実験が思うようにいかなかった場合に研究を進めるため、彼とは30年後にまた会う約束をした。

カザシャへのメモNote for Khazasha

カザシャ、

戻ってきたのなら、自分の義務は分かっているだろう。お前はまだカルマーの次期賢女だ。私とバーゾナシュをアッシュピットに送れ。後悔はない。凶悪な獣を相手にして、名誉ある戦いで斃れたのだ。

我々がそばにいないことで、お前の任務は辛くなるかもしれない。だがお前はカルマーだ。他の誰よりも強い。我々のクランの復讐を果たしてくれる。

切望の要塞の中にある略奪者の住処を見つけて、奴を滅ぼせ。アトロズの導きがありますように。お前が最後の望みだ。

カジートの定命の者ザジュッキとの契約Pact with Khajiiti Mortal Zajukki

切望の要塞の契約作成者として、我、テリナックスは定命のカジート、ザジュッキの魂を大いなるメエルーンズ・デイゴンに捧げることを宣言する。

その代償として、我々は彼女の家族の遺骨に結界を張り、彼らの霊が眠り続けられるようにした。いかなる魔術師も、死霊術師も彼らの死を乱すことはできない。なぜなら彼らは、今や破壊のデイドラ公のものとなったからだ。

我かく宣言せり。

契約作成者テリナックス

カスタブの日記Kastav’s Journal

〈折りたたまれボロボロになったページには、土と血にまみれた短い文章が様々な形で書かれている〉

私の名はカスタブ。それを忘れてはならない。カスタブ。苗字は思い出せない。以前は服を仕立てていた。上質なものを。レヤウィンのささやかな店で売っていた。よく息子が手伝ってくれた。

なぜここに来たのか、記憶がぼやけている。おぼろげだ。ここではそうなる。血が滴るたびに詳細が失われる。息子がいるのはわかってるのに、顔が思い浮かばない。

ここには他の人もいて、土まみれで鎖に繋がれている。彼らはあれをドレムナケンと呼ぶ。それが名前なのか種別なのかは思い出せない。その声は私の頭に入り込む。雷鳴のように眼の後ろで響いている。飢えと残酷さを表す、絶え間ない咆哮。

衛兵が連れて行く人の中には、二度と戻らぬ人もいる。彼らは泣き叫ぶオークの男を引きずって行った。あれほど怖がるオークは見たことがない。

と言っても、私が恐れているのは死ぬ方法だ。神々が終わらせてくれることを祈っている。

衛兵たちがドレムナケンの話をしていた。街のこの地域を支配しているらしい。彼らはドレムナケンを称賛している。良い刺激を与えているのだ。ドレムナケンは狩りのたびに存在を危険に晒すのだと言う。彼らはそれを尊敬すべきことだと考えている。どういう意味なのか、私には理解できなかった。

その言葉を聞いて怒りに駆られた。食ってかかろうとしたら、エルフの女性になだめられた。そんなことをして何になる?もう彼女の名も思い出せない。

囲いの中には、ほんの数人しか残っていない。ドレムナケンは狩りを完了できない。力を失いつつあるようだ。より遅くなっている。占いにはもっと人数が必要だ。私は2回、いや、恐らくもう3回は行った。行くたびにより多くの生命を奪われる。息子がいたことを知っているのは、以前書き留めたからに過ぎない。それでも自分の名は思い出せる。カスタブ。

エルフの女性が姿を消す前に秘密を教えてくれた。脱出口がある。以前からの囚人、名前が思い出せない誰かが穴を見つけた。壁のごく一部が欠けている。自由になれる人がいるとしたら、穴を這って抜けられる人だろう。彼女は穴のことを知ったいきさつを思い出せなかった。だがその話は必死に保っていた。

残っているのは私だけだ。さらなる血を求めて怪物が叫ぶ。私はカスタブ。私はカスタブ。私は

グリーフ砦修復The Restoration of Fort Grief

破壊者イドリアン・ヴォルターノ 著 第二紀580年春

目覚めの炎教団の大司祭の命により、グリーフ砦を訪れて古き要塞の調査を行った。ここは帝国ハートランドの基地として理想的な場所だ。そして島の立地は、我々の重要な任務を好奇の目から遠ざけてくれる。推薦理由は下記の通りだ。

まずは歴史的背景から伝える。グリーフ砦はシルバーフィッシュ川の河口にある島に、第一紀2709年から第一紀2718年にかけて構築された。この時期は皇帝レマン一世の治世初期に当たる。ニベンの湾東沿岸をトランス-ニベンやブラック・マーシュから防衛するのを目的としていたが、完成前から過剰だと言われてきた。第二帝国が急速に拡大したことで、敵艦隊がニベンに攻め寄せてくる本格的な脅威は消滅してしまい、最も攻撃的なアルゴニアンの襲撃者ですら、ハートランドに直接攻撃を仕掛けてくることはなかった。第一紀2900年に、要塞はほぼ放棄された。

その後300年、この帝国の砦は近隣都市の税関と巡視隊が、密輸や付近での海賊を取り締まるための監視塔として何度か利用した。しかし、誰も本格的にグリーフ砦を修繕しようとしなかったため瓦解した。壁と石の塔の状態は良好だが、ニベン湾周辺の湿度のため、木の床や屋根は修復できないほど朽ち果てている。

砦復興のための計画は下記の通りとなる:

第一段階(2ヶ月)
土地を所有し、維持費を支払う意思のある貴族であれば、軍団長議会から砦を借りられるとのことだった。「密輸予防の巡視」を支援するのもやぶさかでないという近隣の領主を用意し、レヤウィンの係官を適切に買収する。この問題に関しては、すでに大司祭が手を打たれているとのことだ。

第二段階(4ヶ月)
砦の港を修理し、付近の運河を浚渫する。現状では、島に小型ボートで近づいてから岸まで歩いて上がるしかない。大規模な修理を実行するには、重い木材や石材を積んだはしけが接岸できる上陸地点が必要だ。安価な労働力はブラヴィルとレヤウィンで手に入る。労働者のための仮設住宅も必要だが、それはテントや小屋で十分だろう。

第三段階(8ヶ月)
傷んだ土台を修繕して壁を補強する。もっとも困難な作業は城郭の下にある地下室の大規模な拡張だ。教団の特殊計画のためにこのスペースが必要だと聞かされている。要塞のこの部分の修復作業を担当させるために連れてくる職人は、仕事が終わり次第始末せねばならない。遠くの都市から呼び寄せて、この地の官吏に探りを入れられないようにせねばなるまい。

第四段階(4ヶ月)
内部の建物の床と屋根を全て張り直す。必要に応じて建物に家具を入れる。この作業は近隣の労働者で十分だ。しかし、砦には誰一人立ち入らないようにしなければならない。倉庫と武器庫に、それなりの規模の駐屯兵が3ヶ月しのげる物資を用意しろ。ブラヴィルはさほど遠くないが、定期的な物資供給をあの街に頼るわけにはいかない。継続中の三旗戦役に近いからだ。

資金が十分だと仮定すれば、1年半ほどで再建されたグリーフ砦に住めるようになる。メエルーンズ・デイゴンに栄光あれ!

サドリアクスへの指示Thadriax’s Instructions

破壊者サドリアクスへ

今すぐデッドライト要塞に帰還しなさい。記憶の限り、あなたはこれまでにポータルの鍵を利用していない。デッドランドのポータルを解除するには、この図に示されている通りに鍵のシンボルを並べなさい。

この暗号はしっかりと隠しておくこと。ポータルの鍵とこの暗号を同時に持ち歩かないように。もし捕まりそうだと思ったら、この巻物は破壊しなさい。正しい暗号がなければ、鍵は役に立たない。

私たちの敵は大胆になっています。ひとまず退却し、再編成しなければなりません。次の輝かしい転生者の一団を用意している間、彼らには無駄に探し回ってもらいましょう。

メエルーンズ・デイゴンの名において
シスター・セルディナ

シスター・セルディナの命令Sister Celdina’s Orders

キンマーチャー・ジンド

有望な被験者の獲得はあなたの責任だとヴァルキナズ・ノクブロズから聞いている。もしそうなら、あなたは任務を怠っている。

デイゴン卿の目的にかなう転生者を作り出すため、もっとドレモラが必要よ。どのクランだろうが構わない。この手紙を届けた破壊者に、手元の囚人を全て引き渡しなさい。その後さらに探すように!

また、目覚めの炎の侍者が何人かセヴァーで行方不明になっている。あなたの鋳造所からそう遠くないところよ。キンに指示して地域を捜索させなさい。彼らを見つけて。

シスター・セルディナ

シャンブルズでの生存Surviving the Shambles

ヒンが書き記した、ファーグレイブのシャンブルズと呼ばれる地区に入り込んで生き延びられるようにする方法の概略。彼はこの分野において、現在潜入を検討してるとてつもなく頭のおかしな連中より、ずっと経験豊富だ。

シャンブルズとは記録にない街路の集合体と迷路のような洞窟からなる謎多き地区で、街の北東の壁の向こうに位置する。この本を手にしたからには、きっと興味があるのだろう。我が卓越した知的能力で断言させてもらうが、貴君は娯楽や不法行為を求めて死ぬ、どうしようもない愚か者だろう。もしくは薄汚い通りで消えた仲間を探していて、その哀れな命のために勇敢ではあるが、恐ろしく無謀な救出作戦を敢行しようと思っているのかもしれない。そういうことなら、まさに正しい本を読んでいる。貴君はこの言葉をかけるチャンスを私に与えてくれた。貴君は「知的」というあいまいなカテゴリーに分類された種族をまれに襲う愚行の発作で、人生を投げ出そうとしている。

自分を一番苛つかせた者を始末する理由を他人に与えることによって成り立っているシャンブルズの生活は、そうした目的に叶っている。最も一般的な、凄惨かつ苦痛に満ちた死因は避けたほうが良いだろう。明確かつ効率的にするため、死因を以下に列挙する。

存在
これを避けるためには、定命の者でいることをやめよう。不幸にも読者が定命の者であったら、単に生きることをやめるべきだ。この提案が耐えがたいようなら、やがてその状況に苦しむことはなくなり、存在が消滅する事実に慰めを見出してほしい。そうすれば、シャンブルズのこの面についてはもう頭を悩ませる必要がない。

ゴールドの携行
貴重品を身につけてシャンブルズに立ち入れば、長く苦しむことがないと保証しよう。加えてベルトに下げた小銭入れを欲しがる輩がいるので、ベルトはずっと軽くなる。金が有り余って困っている者にとってはありがたいことかもしれないが、財産を減らすにはより愚かしくなく、苦しまずに済む方法があると断言しよう。間抜けで思いあがった愚者になってはならない。エラント、ヴァンキッシュドとインビジブルウェブが待ち構えている。

目を合わせる
シャンブルズの住人と目を合わせ、にらみ返すことは決闘を挑むのも同然だ。戦闘で彼らに勝つことはできない。どれほど腕が立ってもだ。まさか、と思うのは愚かさの証拠だ。どんな状況においても目立ってはならない。

目を合わせない
にらみ返さねば、襲撃者に自分はカモだと伝えることになる。カモになってはならない。

スキャンプの母のことを話題にする
このルールの起源は不明だが、この疑問への反応は常に迅速で、かなりの痛みを伴う。スキャンプと話していなくとも、スキャンプがそばにいないときに話をしていても、母との絆に関する話題は一切口にしないのが賢明だ。

衣服を脱ぐ
通説とは逆に、衣服や身につけた装飾品を捨てても助かりはしない。それで襲撃者の注意がそれるわけでもなく、従順さを示すことにもならない。どうせシャンブルズで死ぬのなら、衣服を着て尊厳を保ったまま、凄惨なバラバラ死体となって失血死したほうがマシだ。結局、死後に衣服をはぎ取られることになるとしても。

足や尻尾周りの品を捨てる
前項参照。

最初に攻撃する
不幸にもシャンブルズに来てしまったなら、貴君が持ちうる唯一の希望は、襲撃者が攻撃の好機を掴む前に襲い掛かることだろう。とんでもない。シャンブルズはファーグレイブの成立時から存在している。その住人は彼らが徘徊する街を己が掌のように熟知している。つまり、縄張りに新入りがくればすぐに分かるということだ。彼らの隙を突くことができ、なおかつ撃ち倒せるなどという愚かしい妄想を抱いてはならない。

最後に攻撃する
シャンブルズの狭い道を歩く時、後手に回るのもお勧めできない。戦闘が避けられないのなら、必ず最初と最後の間あたりに攻撃を仕掛けるべきだ。そうすることで襲撃者にならず、腰抜けだとも見られずに済む。自身の祖先に会わす顔がないという事態は避けられる。

シャンブルズのギャングGangs of the Shambles

サラアス・トング警備主任、ナシン・ファランダス 著

まずは明白な事実を言わせてもらいたい。サラアス・トングの人員はどうしても必要な場合を除き、シャンブルズに近寄らないこと。

シャンブルズが危険なのは、ストリクチャーのグラスプがこの地区を管轄外とみなしているせいだ。グラスプが不在なため、シャンブルズの住民は好き放題に互いを食い物にできる。手の内に飛び込んでくるうかつな訪問者もだ。その結果、この地区の大半は複数のギャングのどれかに支配されている。エラントやインビジブルウェブ、ヴァンキッシュドなどだ。この中でも、無法のドレモラ集団であるヴァンキッシュドは、最も対処が難しい。

ヴァンキッシュド
ヴァンキッシュドはシャンブルズの中央地区を支配している。シャンブルズのギャングとしても、奴らは予測困難で好戦的だ。このドレモラたちは残酷な戦士で、没落しても圧倒的な傲慢さを失っていない。キンの中でも低い地位に落とされて力を証明しようと躍起になっているため、むしろより危険になっている。ヴァンキッシュドはすぐに気分を害し、定命の者のような下等生物に対して、自分の言葉を約束とは考えない。ヴァンキッシュドとの協定はドレモラに都合がいい間しか続かず、気まぐれに破棄されることもある。

大部分のドレモラとは違い、ヴァンキッシュドは肩書きや称号を無視する。おそらく、奴らが同族にならず者の雑魚と思われているせいだろう。しかしリーダーはいる。エンジルと呼ばれる勇猛な戦士だ。彼女は特に頭が切れる訳でも狡猾な訳でもなく、単に他のヴァンキッシュドが誰も戦いたくないという理由で指導者の地位についているらしい。

他のドレモラは残念ながら、ヴァンキッシュドについてあまり話さない。私の知る限り、奴らはクランを持たないクランだ。一部はデイドラ公に仕え、独立クランに加入する資格がなしとされた者たちらしい。それ以外は以前のクランから罰を受けたか、あるいは追放された連中だ。だが、ドレモラがそんな罰を受けるほどの犯罪とは何なのか、私には想像もつかない。また、今は忘れられている滅びたデイドラ公に仕えていた者もいるという噂だ。

ヴァンキッシュドについて最後に一つ述べておくと、奴らはファーグレイブだけにいるわけじゃない。より知名度の高いドレモラのクランと同じく、ヴァンキッシュドはオブリビオンの様々な領域をうろついている。だがどこに行こうと、奴らは最も不潔な無法地帯を求め、そこを自分たちのものにする。おそらく、自分たちにはそれが相応だと信じているのだろう。

エラント
一方で、定命のエラントはシャンブルズの西側路地を支配している。暴力をちらつかせる脅迫で生活の糧を得ているこのストリートギャングは、ボス・ケゾが率いている。彼らは路地に住む定命の者に一定の保護を提供しているようだが、噂によると保護にはそれなりの代償が伴うらしい。

エラントはシャンブルズでそれなりの権威と支配力を持っているが、活動の規模は明らかに小さい。ボス・ケゾに夢と野心はあるが、周囲から抜きんでるための狡猾さや戦略が欠けている。とはいえ、このギャングは身一つでファーグレイブにやって来た定命の者に安全と仕事を供給する、重要な役割も果たしている。

この路地中に散りばめられた市場や店の活動は、ボス・ケゾの機嫌次第だ。商人の売る品物を彼が気に入り、商人の側がギャングの要求する最低限の支払いに応じれば、商人は比較的安全に仕事ができる。気に入らない点があるか、商人がギャングの保護に金を払わなければ、商人はすぐシャンブルズの路地裏に消え去り、二度と姿を見せない。

エラントはニルンの王国にいるような遍歴の騎士の真似事をして、街路を巡回している。彼らは西の路地をヴァンキッシュドとインビジブルウェブから基本的には安全に保っているが、訪問者や誤って縄張りに迷い込んだ者を襲う機会は伺っている。

インビジブルウェブ
シャンブルズの一部分を支配する第三の有力なグループは、インビジブルウェブだ。このスパイダーキスのクランは蜘蛛のようなデイドラと、形も大きさも様々な蜘蛛の大軍団で構成されている。スケイン・ロウと呼ばれるシャンブルズの東区域は彼らの住処兼狩場となっており、縄張りは建物の間や表面に張り巡らされた分厚い蜘蛛の糸で容易に判別できる。

特に残酷なスパイダーキスの シャエルメタが、有無を言わせぬ力でこのクランを支配している。噂によればファーグレイブのある主要地区で事件が起こり、グラスプとの言い争いの末、ストリクチャーの衛兵少なくとも3人が、再形成に通常の倍の時間がかかるほど徹底的に叩きのめされたらしい。その後、シャエルメタはクランを引き連れてシャンブルズに逃げた。奴らはそこに住んでいた定命のコソ泥を排除して、スケイン・ロウを築いたという噂だ。

現在、インビジブルウェブはスケイン・ロウをしっかりと掌握している。インビジブルウェブの狩人は縄張りに入ってくる者を誰でも獲物とみなすが、獲物が少なくなった時にはシャンブルズの近隣地区を襲うことも厭わない。スパイダーキスは食料がなくても生きられるが、狩って殺すことは奴らの本性であり、シャエルメタの愛する蜘蛛たちを養う必要もある。

シャンブルズに入らなければならない時は、何があってもスケイン・ロウは避けるべきだ。

シャンブルズの薬物Intoxicants of the Shambles

ここに記されているレシピを使った場合、収益の4分の3はバーラクサに帰される。

ここに記した液体や粉末などの物質は、最底辺の獣どもが臭くて汚い手で触れるために殺し合いを始めるような代物だ。こんなものを作るのに技術は要らないし、これを接種する連中は高等動物と名乗るのを恥じるべきだ。こういう物質を接種する定命の者は、自らの劣等を証明しているだけだ。敵のためにたっぷりと、仲間と呼んでくるような間抜けのためにはさらに多くの量を用意しろ。いつものことだが、薬の快楽と引き換えに法外な価格を請求すること。

痺れ鼻
尋問の時に相手が喋るのを止めない場合か、嗅覚やそれ以上の高度な認知機能が不要な場合に用いるペースト。

血の錆が付いたナイフで削ったマグネシウムの欠片を、ホタルの背中から取った炎やドラゴンナイトのポールドロンと混ぜ合わせる。混ぜたものを浅い溶岩の海に放り込み、不屈の墓通りの丸石の上で冷ます。全体が粉末になるまでかき回し、腐ったレモンの汁を数滴加える。犠牲者の鼻孔の下に薄く塗りつける。


この黒っぽい液体は、飲む者の精神をオブリビオンに転送させると報告されている――ただしどの場所に行くかは分からない。また頭蓋骨をボロクズのようにしてしまう。可能な限り定命の者に与えること。目が膨れあがる瞬間に注目されたし。

プラムのブランデーを上等な汚水樽に入れて急速に熟成させ、粉末にした毒キノコを加え、バザールの雨水で薄める。

光る漆喰
鼻や口を必要としないので、監視人に好まれている粉末。この粉は目に直接放り込むもので、正常な摂取量は火山岩を一緒に目へ投げ込んで計測する。岩がむき出しの眼球に当たったら、愚かな監視人はかなりの量を接種したということだ。それでも通常、監視人はさらなる量の接種を止めない。粉を放る役目を積極的に引き受け、投げる時に躊躇しないこと。私は一度、ある顧客の眼球を完全に破壊したことがある。あれはキャリアの中でも最高の一日だった。

オークの牙を砕く。砂利とオグリムの血を混ぜる。中型の火山岩1つと一緒に小袋へ入れる。

乞食の嘆き
元々は光輝と呼ばれていたこの飲み物は、オブリビオンへの帰還が避けられないほどの傷を負った者に重宝されている。光輝の使用者は音を見、姿を聞けるようになる。一説によると、これはオブリビオンの再形成の泉での再形成時間を加速するらしい。骨砕きのスクロ・カグは光輝を傷のミルクで薄めて乞食の嘆きを作った最初の人物だ。この透明でとろみのある飲み物の作り手を見つけるには、荒廃した戸口で休んでいるうつろな目をしたデイドラを探せばいい。定命の者はこの体験を面白いと感じないらしく、数人がこの飲み物はバラの花びらのピクルスのような味がするが、何の効果もないと主張している。

乞食の嘆きのレシピは厳重な秘密にされている。正確な材料を公開した売り手はいない。今までのところは。承認を受けた作り手を殺し、再形成して戻ってくるまでの間に店から奪うほうが簡単だ。

シミ
シミは最も血に飢えたズィヴィライの怒りさえも鎮める。過剰摂取はデイドラを、定命の者の独房に入れられたネズミほど従順に変えてしまう。バザールのデイドラの中には、定命の者を攻撃しなくても意思疎通をしやすくなるため、シミが有用だと考える者もいる。一人前のデイドラがなぜシミに顔をしかめるのか、私には理解できない。私は捕虜によく使っている。移動させるのが簡単になるからだ。

蛇の毒を1.5、セヴァーの嵐の水を3、ムーンシュガー(鮮度は問わない)を1、モルトビネガーを1の割合で混ぜて青白い飲み物を作る。面倒を起こす捕虜の喉に流し込む。

レッドメイデン
大半の定命の者は、デイドラの助けなしにファーグレイブで長く生き延びられない。一部の裏切り者はこの哀れな獣に同情して契約を交わし、役立たずの定命の下僕を実質的に養っている。定命の者と接触して汚点を作りたくない全てのデイドラにとっては幸運なことに、レッドメイデンが存在する。これはドレインの効果を抑制し、短い間だが定命の者の正気を保ってくれる。

火山灰とデイドラットの内臓、味をごまかすため少量のスクゥーマ、トゥム・ソの木の種を砕いたもの、ドレインに冒された定命の者が死ぬ時に出す血液を、小さな器で混ぜる。数周期の間貯蔵する。定命の者に小瓶で与え、2週間以内に戻ってくるようにする。

シャンブルズ観光案内Visitor’s Guide to the Shambles

ファーグレイブの定命の者受け入れおよび視察プログラムのための、ディラマーによる記述

大部分の定命の者は危険な無法地帯という評判にもかかわらず、シャンブルズを住処としている。シャンブルズの路地にこれだけ定命の者やデイドラが引き寄せられるのは、この無法のおかげかもしれない。この地区の様々な住民や雑貨屋、工芸品などは独特の雰囲気を生み出している。住宅地にはファーグレイブの主要地区で課せられる厳格な行動規範から距離を取ることを望む、定命の入植者やデイドラが混じり合っている。

入口
シャンブルズは、ファーグレイブのより上流の地区と隔てる壁の先にある。シャンブルズへ通じる扉の大半は隠されているか目立たない。ファーグレイブの門は派手で精巧な作りだが、シャンブルズの街路への入口の大部分は全く人目を引かない。シャンブルズへの扉を探すには、計画的な探索だけでなく偶然と運も必要になる。旅人は時々、シャンブルズの迷路のような路地に迷い込んでしまうことがある。

市場
バザールの露店とは異なり、シャンブルズの市場は風に舞う葉のように場所を転々と移動する。しかしなぜか、常連客はいつでも店を探す方法を心得ているようだ。街路に記された謎の印を利用した複雑なシステムにより、知識のある者には特定の品物を売っている商人の場所が分かるという噂がある。残念ながら、それについての情報はストリクチャーに反しているため、このガイドの範囲を超えている。シャンブルズでしか得られない品物やサービスが存在すると言えば十分だろう。そうしたものを求めている者にとって、行ってみるだけの価値はある。

飲食
シャンブルズの大きな喜びとして、知る人ぞ知る〈ブリジット〉が挙げられる。ここの食事は素晴らしく、バターの香る菓子や食感豊かな果物、そして外の街路を溶解させられるほど熱い飲み物を味わえる。ミックスリーフティーを頼んで、ディラマーの推薦で来たと告げよう。もっと強い飲み物を求めているなら、ウィッシュボーンがいいかもしれない。この酒場には荒々しい魅力があり、エバーグロームのこちら側では最高の凍結蒸気を出す。

地域の特色
定命の者に入手できるあらゆる商品を取り扱う、ネテリアスとのスリリングな会話を楽しもう。彼の伝説的な話術と友好的な態度は、ドレモラにとってもこの露店で買い物をする楽しみを与える。猫が嫌いでなければ、ネテリアスの猫マルフィーザンスの相手もしてやるといいだろう。

治安
すでに述べたように、ファーグレイブ中心部には定命の者の挑発に暴力をもって応じるデイドラがいる。幸運にも、街の中にいる限りどんなデイドラも破ることのできない法秩序が存在する。ストリクチャーとそれを施行するグラスプはシャンブルズでも活動しているが、これは安全の保障にならない。友好的とは言い難いいくつかの集団がシャンブルズの各地を支配しているため、できる限り彼らの縄張りは避けるべきだ。

ボス・ケゾ率いるエラントは、ファーグレイブの環境で正気を保つための契約を持たない定命の者の集団だ。このためエラントは縄張りの防衛に全力を注いでおり、暴力の行使もためらわない。彼らはシャンブルズに居住する定命の者、特に西の路地に住む者を守っていると主張するが、筆者の見るところでは保護という名の恐喝である。このトラブルメーカーたちには注意しよう。

東の街路網スケイン・ロウは、スパイダーキスのシャエルメタや仲間たちの住処となっている。このデイドラは友好的でなく、特に定命の者は食料とみなしている。スケイン・ロウは建物の間に張り巡らされている広大な蜘蛛の巣を見れば分かる。大きな蜘蛛の巣に出会ったら、回れ右をして引き返そう。

ヴァンキッシュドはシャンブルズ中央広場周辺の一帯を支配している。エンジルとその仲間のドレモラたちは、定命の者を狩って楽しんでいる。さらなる情報があるまで、この地帯は立ち入り禁止と考えていいだろう。

このような危険にもかかわらず、シャンブルズは訪問する場所としても住む場所としても素晴らしい。新しい街は全てがそうだが、この地区で過ごす最初の数日は慎重に行動することを勧める。しかし危険の兆候に慣れてくれば、すぐに私と同様、この地区に溶け込めるだろう。

シャンブルズ観光案内に関するメモNotes on the Visitor’s Guide to the Shambles

ボス・ケゾ 著

いいか、シャンブルズ観光案内とかいうのは全くの嘘っぱちだ!ディラマーがスケイン・ロウより西の路地について知っているはずがない!シャエルメタの巣に入り込んで、ペットの蜘蛛どもに喰われていないならな。あのパンフレットの目的は、定命の者たちを主要な地区から離れさせ、デイドラの主人を喜ばせることだ。シャンブルズについて、本当の話をさせてくれ。

まずスケイン・ロウの蜘蛛の悪魔どもや、エンジルの血に飢えたドレモラのことは忘れちまえ。東はシャエルメタとインビジブルウェブにくれてやる。どうせあそこはもう蜘蛛だらけだ!しかし、エンジルのヴァンキッシュドには忠誠心がない。どのデイドラ公に仕えていたか知らないが、裏切ったんだろう?奴らが仲間割れを起こすまでどれだけかかると思う?どの周期に起きてもおかしくないと思うね。そうなったら、シャンブルズは完全にエラントが支配する。スケイン・ロウは別だがな。俺は蜘蛛が嫌いだ。

あのパンフレットは、こう書かれるべきだ。

入口
シャンブルズへ通じる扉はファーグレイブ中心部の北区ならどこにでもある。ファーグレイブのクラフト広場には大きな入口もある。財布を一杯にして来ることだ。まとまったゴールドやその他の価値ある通貨を提示されれば、俺のギャングが命を奪うようなことはおそらくない。

市場
西の路地のあちこちにある市場は、シャンブルズでも最高の市場だ。我々があそこの売上で利益を得ているから言ってるんじゃない。上前を跳ねているのは確かだが、本当に最高だと思っている。

飲食
うちの醸造家のジクは美味な骨片のエールを作るが、飲めるとは思うな。彼女が作る分量はエラントの喉を潤すだけで精一杯だ。それからアルゴニアンの鉢をかき混ぜる者は、クランフィア焼きの達人だ!これも、お前たちにはやらん。シャンブルズで飲み食いしたいなら、このガイドのお勧めは確かに悪くない。ウィッシュボーンはちゃんとした酒場だからな。それにあそこは静かになりすぎると、必ず誰かがケンカを始める。

地域の特色
一体これは何のことだ?ネテリアスだと?奴は自分のものを決して渡さない詐欺師だ。こいつを忘れずに片付けておこう。次は見ていろ

治安
ここはシャンブルズだ。治安などない。自分の身を守れないなら、我々が守ってやる。うちの価格は高くないし、俺のギャングは大抵の場合、適度に暴力を振るう術を心得ている。それからグラスプには期待するな。奴らの力はシャンブルズに届かない。当然だろう?ここにいるのはほぼ全員が定命の者だ。ストリクチャーは定命の者など気にしない。

というわけで、シャンブルズに来るなら目をしっかりと見開いて、ポケットを一杯にしておくことだ。帰る頃には財布が少し軽くなっているかもしれないが、素敵な品物や見どころがあるのは本当だ。

スキャンプ・ナールの日記Journal of Scamp Naal

ナール、ハスクの鞄で書く棒と葉みたいなのをみつけた。ハスクは変な形で、顔によけいな歯がある。ハスクは歩く時間の間、何もないとこにいかない獣。ハスクは地面にいる。ハスクは書く棒と葉みたいなのを探さない。ナールがもらった。

* * *
ナールはここが好き。とてもあったかい。いい臭い。怒鳴る男はいない。ポータルに突き飛ばされない。怒鳴る男の本を運ばない。焼ける熱い水を運ばない。長い時間本を読まない。ナールは好きなことをする。ナールは歩きたい。大きな丘を登る。小さな丘を下る。耳の間に温かい空気感じる。大きな鐘聞く。ナールはやることを探さない。ナールは怒鳴る男に従わない。ナールは自分に従う

* * *
とっても大きなよくないこと。ナールは大きな鐘のそばを歩く。いろいろ聞く。ドレモラを聞く。幸せなドレモラを聞かない。歩く大きなのを聞く。あいつらは嫌い。ナールは大きな丘をとても急いで越える。歩くハスクが大きな丘の上。ナール止まる。ドレモラ、ハスクを大きく長い火でドカン!やめてほしい。ナールは耳がおかしい。ナールは寒い。ナールは逃げたい。大きな丘越えてあまりみたくない。ナールは止まる。丘の上の岩の後ろにいる。ドレモラとハスクに近づかない。ナールはドレモラの行先見ない。ナールは残って温かくなるまで待つ。ナールは新しい怒鳴る男に従わない。怒鳴るドレモラは嫌。ナールはいらない。

* * *
大失敗。大きな口の大きな獣。ナールを追ってくる。今逃げてる。

* * *
ナール逃げる先知らない。地面が温かくない。空気に光がない。大きな雲。ナールは歩き続ける。どうなるだろう。

* * *
ナールはとても遠くまで歩いた。ここは落ちて濡れる。温かくない。大きなドカンが聞こえる。怒鳴る男いない。ナールは温かいとこに行く。ドレモラがいた。ズィヴィライの剣の女もいる。あいつらは怒鳴らない。もっと大きな火のそばに立ってる。ナールはそばにいる。どうなるかみる

* * *
ナールはまずい。怒鳴らないドレモラとズィヴィライの剣の女がナールを見た。大きな岩のそばでナールを見つけた。ナールは怒鳴る男になるなと言う。ナールはナールに従うと言う。ズィヴィライの剣の女はここがバーンだと言う。ナールがうまく隠れると言う。ナールは怒鳴る男のところも、歩くハスクのところもいかないと言う。ナールは残る。ここはバ-ンとセヴァーだと言う。落ちて濡れるのはセヴァー。怒鳴らないドレモラも同意する。そいつもセヴァーに行きたくないらしい。ナールは何がおもしろいかわからない。でもナールは仲間になる。ズィヴィライの剣の女は言う。ナールは好きなところに行けと。ナールは仲間じゃないと言う。ナールは賛成しない。でもナールはあまり言わない。

ズィヴィライの剣の女はナールが嫌い。ナールはどうするかわからない

* * *
ナールは合ってた。ズィヴィライの剣の女はナールをいさせない。怒鳴らないドレモラはあまりしゃべらない。ズィヴィライの剣の女にナールおいださせた。ナールは残りすぎだと言う。行く時が来たと言う。ナールは怒る。

ナールは怒鳴らないドレモラを追いかける。ナールは泥をぶつける。ナールは火を踏み消す。ナールはズィヴィライの剣の女を蹴飛ばす。ナールは大きなポータル呼ぶ。あいつらバーンを追い出す。ナールに指図するな。ナールは自分の言うことを聞く。

ナールは仲間にならない

ストリクチャーとグラスプThe Stricture and the Grasp

定命の者への手引き、ガレリア・ヘクソス 著

定命の仲間の皆様、ファーグレイブへようこそ!ご存じのように、ヘクソス家は何世代もこの奇妙で危険な領域に存在しつづけてきました。私たちは数えきれないほどの挫折と失敗を通じて、この場所のルールに関して様々なことを学んできました。ファーグレイブ大市場への配属は大きなチャンスですが、同時に危険でもあります。この小冊子は皆さんが豊かになり、しかも無事にタムリエルへ帰還できる可能性を高めることを目的としたものです。

ご注意ください:最初はファーグレイブに圧倒されるかもしれません。人であれエルフであれ、この場所はあらゆることが異なっているように見えます。空は奇妙な色です。邪悪の化身とも思えるような獣が通りをうろついています。当たり前のように思っていた法や習慣は、ここに存在しません。そして皆さんが知りもしないルールを破ってしまった場合は、肉体と魂の両方に対して恐ろしい危険が待ち受けています。

ストリクチャー
ファーグレイブにおけるヘクソス家の事業は、ストリクチャーの存在に依存しています。これはファーグレイブを様々なデイドラの中立地として保つため、規則と合意をもたらすデイドラの協定です。ストリクチャー内の条項により、同様の中立性が定命の者にももたらされています。ストリクチャーがなければ、街を歩くあらゆるデイドラは思い付きで皆さんを奴隷にし、拷問し、ただ貪ることになります。

(当然ながら、全てのデイドラがそのようなことをするわけではありません。多くのデイドラが高い知性を持ち、良好な取引関係の維持に価値を見出しています。ですが、危害を加えたいと思っているデイドラは見ただけでわかりません)

ファーグレイブに足を踏み入れるデイドラは全員、ストリクチャーによる束縛に同意しています。そして違反できません。協定には拘束力があります。ファーグレイブの地区全体が中立とされ、その中にいるデイドラは通常、ストリクチャーに違反せずには他の生物を傷つけられません。「通常」と申し上げたのは、警戒を怠った者にとって致命的となり得る例外があるからです。

– 危害を受けることを承諾した獣は、ストリクチャーによる保護を受けられません。
– 攻撃を受けたか、単に何らかの方法で不快にさせられたデイドラは自由に身を守れます。
– ファーグレイブの特定地域(場合によっては建物や部屋)は、中立条項によって保護されていません。また、自分が保護されていないエリアに進入したことを知る手段もありません。
– デイドラが人を誤った方向に誘導するのは自由です。例えば、皆さんがストリクチャーの中立条項によって保護されたエリアを出ようとしても、デイドラは教えないかもしれません。

安全を確保するため、私たちは知る限りの領域を皆さんに示しています。ですが、常に助言と指示に注意しなかった従業員を失っています。ファーグレイブでは、推測で安全性を判断しないでください。

中立条項に加え、ストリクチャーは主にファーグレイブでデイドラが他のデイドラと接触する際の難解な方法に細かく対応しています。これは途方もなく複雑なため、私たちが知る限り完全な形ではどこにも書き記されていません。私たちがファーグレイブで事業を開始してからもう200年以上になりますが、未だに大市場の営業へ影響を与える新たなルールを発見しています。そこで、グラスプの存在が意味を持ちます。

グラスプ
グラスプは紛争裁定者の役割を果たし、あらゆる状況において複雑なルールのどれが適用されるのかを判定するため、ストリクチャーの規則によって任命されたデイドラです。彼らは治安官ではありません――少なくとも他のデイドラにとっては。ストリクチャーがデイドラに適用されると、その影響と罰則は回避できません。しかし、我々定命の者はストリクチャーによって縛られていません。つまりグラスプのデイドラが定命の者にファーグレイブの平和をしっかり維持させるには、物理的に規則を強制せざるを得ません。

重要:ストリクチャーを擁護する役割のため、グラスプのデイドラはファーグレイブの中立地区内でかなり自由に武力を行使できます。彼らは平和を脅かす(と判断した)定命の者を制圧、追放、殺害できるのです。ファーグレイブのデイドラ全員が自分を傷つける力を持っていないと考えてはいけません――グラスプの見ている前でデイドラを怒らせれば、彼らは介入するでしょう。

グラスプへの対処が難しいことがお分かりでしょう。彼らは定命の者がストリクチャーに縛られていないことを知っていて、基本的に皆さんが容認されないことに関わっているのではないかと疑っています。仕事をする際には止められ、質問されることを想定してください。そして不正に得た品物を手にしたら、どうかそれを持ったままグラスプに捕まらないでください!

グラスプに力を行使させることのないよう、くれぐれもお願いします。

もし質問や懸念がある場合は、ヘクソス家の上長にお問い合わせください。

セヴァーの動植物Flora and Fauna of the Sever

魔術師ギルド研究員、アンスロパス・ガリア 著

大方の素人学者は、デッドランドがメエルーンズ・デイゴンの領土だから、生命のない荒野だと思い込む。確かに、デッドランドの一部には特定のデイドラ以外住めないところもある。結局、溶岩の池の生態学を学んだところで大した意味はない。だが、生命は生存に適さないような場所ですら、しがみつく方法を見出す。いかに過酷であっても。セヴァーと呼ばれる地域はその一例だ。

暴風が吹き荒れ、稲妻はやまず、気温が激しく上下するのがセヴァーの特徴だ。存在する土壌も険しい岩石にうっすらと積もった埃程度だ。しかしこのような環境でも、驚くほど多様な動植物が生き延びている。この巻では、かの地で私が分類した生物のごく一部を詳述する。

動物

アッシュホッパー
その大きさが猫の成獣並みの巨大昆虫。アッシュホッパーは独立行動する採食者で、餌とするのはセヴァーの岩だらけの峡谷や丘陵地に生える固い苔や草だ。彼らは少量の腐肉を食べることもあるが、かの地にはより巨大で危険な腐食性動物がうろついている。一般的な餌動物として、アッシュホッパーはセヴァーの多くの捕食者の主食になっている。この昆虫は、似ているもののニルン各地にいるものとは違う。彼らがオブリビオンで過ごしてきた時間が、まだ完全には判明していない微妙な変化を生んだものと思われる。

デイドラット
アッシュホッパー同様、定命の世界のネズミに比べれば大型で危険ではあるが、セヴァーの食物連鎖では下位に位置する。アッシュホッパーは定命の害虫だが、デイドラットはデイドラ的な特質と食欲を備えた生物だ。彼らは食物も水もなく半永久的に生きられるが、飢えに駆られて何らかの食物を永久に探し続けている。大抵は単独で行動するが、小さな群れをなすこともあり、うかつな冒険者にとっては危険な存在になりうる。

ニクサド
ニクサドという奇妙な亜人型昆虫は驚くほどセヴァーのあちこちにいる。吹き荒れる風がやみただの凪に変わるや否や、この小さな獣の集団が姿を現わして、お気に入りの低木や茂みの上で飛び周り始める。ニクサドはデイドラの獣ではないものの、この自然環境によく適応している。セヴァーの恒常的な稲妻が、ニクサドを招き寄せているのではないかと思われる(なぜそうなのかという理由は推測するしかない)。

ウォッチリング
無数の目を持つ恐怖の存在、ウォッチリングほど恐ろしく、異質なデイドラの獣はいまい。しかし意外なことに、この奇妙な存在は最初から大きく危険な怪物なわけではない。かなり小さなものもいて、人間の拳ほどのサイズだ。このウォッチリング(そのように呼ばれている)はより大きな獣から生まれるわけではない。デイドラは子を生まない。彼らは単に彼らの種の小型の存在で、恐怖すべきでなく、純粋に興味を抱くべき存在だ。彼らが小さいままでいるのか、それともいずれ大型に変身するのか?まだ結論は出ていない。

植物

ブラッドグラス
デッドランドの他の場所と同様、ブラッドグラスはセヴァーのあちこちで茂っている。特徴は荒れ地で育つ長く華奢な深紅の茎だ。アッシュホッパーはこの固く鋭い茎を噛み裂けるようだが、見る限り他の誰もブラッドグラスを食べない。

エンバーオーク
セヴァーのどこに行っても、黒焦げになったかつて生きていた樹の残骸に出くわす。そもそもこのような環境でどうやって育っていけるのか分からないが、明らかに死ぬまでそれなりのサイズに達するほど長く生きている。しかし、中には見た目ほど死んでいないものもある。エンバーオークは樹冠がなく幹の太い植物で、稲妻に撃たれた切株に似ている。実際に樹皮の割れ目には赤く光る木炭が見え、それと分かるほどの熱を放っている。しかしこの樹木はまだ生きていて、水もなくゆっくりと成長している。この木は地面から栄養素を吸い上げる根によって支えられており、我々の世界の樹木が陽光で育つように、稲妻に撃たれることで繁茂するのではないかと思われる。

スタティックピッチャー
セヴァーで最も一般的な食肉植物はスタティックピッチャーだ。この奇妙な植生は周囲の環境から吸収した電気エネルギーで発光し、かすかにパチパチという音を立てている。ネズミより大きな生物がうかつにも近づきすぎると、突然放電して感電させ、即死させることもある。通常、ピッチャーは暖かい沼地のような環境を好むが、セヴァーはそういうところからかけ離れた土地だ。私にできる推測は、デッドランドのこの地域の恒常的な落雷が、この危険な植物の繁殖を助けているというものだ。

デイドラの真の性質On the True Nature of Daedra

デイドラ学の第一人者、カナンミルディル 著

あまり知られていないデイドラに関する発見をしたのは、奇妙な形のサイコロのようなものを動かしている、重装備のズィヴィライ戦士2名の隣に立っていた時だった。彼らはどちらの意志が強く、サイコロを有利に転がせるかと議論していた。バラバラにしてやるぞという脅しが幾度も交わされたのを覚えているが、印象深かったのは、ズィヴィライがサイコロのようなものに影響を与え操作できることをほのめかしていたことだ。それがサイコロだと仮定するなら、だが。サイコロを自在に動かせるなら、他にどんなものへ意志を働かせられるのか?

私は急ぎ書斎に戻り、可能性を考慮し始めた。以下が私の結論だ。デイドラの肉体の動かし方は定命の者とは異なる。彼らの意識は自身の身体の周辺に漂っており、肉体や他の物体を自在に操れる。これでデイドラが倒されても死なないことの説明がつく。彼らの身のこなしが、定命の者には遠く及ばないほど洗練され優雅なことも。監視人が翼も使わずに浮かぶことすら説明がつく!浅い学者は後述の論点を魔法を使って実現しているのだと言うだろうが、それは安易な説明だ。

別の発見は、ドレモラがデイドラの中で唯一の厳格な草食動物であることだ。彼らは生存し続けるために食物を摂取する必要がなく、どんなものであれ肉を食べると消化器官が機能不全を起こしてしまう。彼らが味わう苦しみは、ドレモラに現在の経験を考え直させ、より苦痛の少ない状態で再生されることを願って、自らオブリビオンに帰りたくなるほどだ。

最後に、デイドラの知性は彼らが仕えるデイドラ公に比例していないことだ。さて、これはそれほど異常なことでもあるまい。最も愚かな定命の主君に、極めて知能の高い側近が助言するのはよくあることだ。だが、知識や狡猾といった郎息を司るデイドラ公がいる時、スキャンプがスカーフィンより賢いのは非論理的にも思える。しかし、それこそ私が観察した時に起きたことだ。名前は明かすまい。そんなことをすれば残酷だし、学者失格だ。だが信じてほしい。スキャンプの指図を受けるスカーフィンがいたのだ。スキャンプが早口でまくしたて、あれこれいいことを言ったようだった。一方、スカーフィンは大人しくその後に従って歩いていた。

私はいまだにデイドラの行動について実験と観察記録を続けているので、こういった発見が出版されるのは後日になるだろう。私の知識の及ぶ限り、純粋に科学的な手法を取る唯一のデイドラ学者は私だけだ。研究対象のデイドラからの助言に頼ることはまったくない。彼らが真実を言うことも、客観性を保つこともないからだ。そういうわけで発見には長い期間を要するが、研究の質は図抜けている。独特の手法と幾つもの驚愕の発見ゆえに、この分野での先駆者は私だと言えよう。ペラギウス・ハーバーからこんな真実は手に入れられまい?

デッドライトの伝説The Legend of Deadlight

(アービス収集団に流布している物語)

昔々、スリージェスツのフロファルドという勇敢な収集者が、デッドランド中に散在する忘れさられたデイドラのポータルの台座を開く鍵を見つけた。

(いや、どうして彼がスリージェスツのフロファルドと呼ばれていたかは誰も知らない。この物語をするたびにその質問を受ける)

フロファルドはポータルのネットワークを探検に出かけた。そして隠された秘密を一つずつ暴いていった。ほとんどのポータルは遺跡となって久しい場所に続いていた。一方、まだメエルーンズ・デイゴンに忠誠を誓うデイドラであふれかえる要塞に通じているものや、他の次元につながっているものもあった。フロファルドは極めて慎重に進んでいった。デッドランドより危険なところに取り残されたくなかったからだ。探検を通して彼は貴重な神秘を目にし、面白い財宝を手に入れた。そしてある日、彼は帰ってこなくなった。

それなりに時が経ってから、収集者たちはファーグレイブの運び手の休息所の壁に彼の外套を掛け、名誉のために乾杯し、最後の旅の安全を祈願した。

歳月は流れた。あまりに流れて、フロファルドの名もその冒険のことを知る者もめっきり減った頃、雪のように白い髭を生やし、ぼろをまとった男が現れた。恐ろしいほどの高齢になり、腰は曲がっていた。彼は運び手の休息所によろよろと入ると、壁の外套を取った。「私がフロファルドだ」と彼はその場にいた者に言った。「世界の果てを見て帰ってきたのだ」。そして彼は物語を語った。

彼が消えた日、フロファルドは鍵を使って、崩れかけたポータルの台座を復活させた。入ってみると、そこは不毛の荒野だった。星一つない空に浮かぶ、緑のおどろおどろしいオーロラの光にだけ照らされて、荒れ果てた要塞が立っていた。それでもフロファルドはひるまなかった。最初は恐ろし気に見える次元は珍しくないからだ。何より彼が動揺したのは、この次元に生命も力もまったくないことだった。彼の持つ鍵は力を使い果たしており、この新たな次元には鍵を充填するために必要な原初の力がなかった。

フロファルドは周囲の探索に出かけ、脱出口になりうる他のポータルを探した。だが彼は、この未知の次元が砕け散った残骸にすぎないことに気づいた。凄まじい災厄に見舞われたかつての世界のなれの果てでしかないのだと。数時間歩くと、この寂しい残骸のちぎられたような岸とオブリビオンの海が接するところへとたどり着いた。そして帰る道はなかった。

いかにしてフロファルドがその陰鬱な地で命を保つべく苦闘したかは記録がない。次元の残骸のあちこちで見つけた死骸を漁って生き延びたと言う者もいる。生命と光が消え果たその地では、飢餓という自然のサイクルが這うように緩慢だったと言う者もいる。いずれにせよ、スリージェスツのフロハルドは耐え忍び、ゆっくりやつれていった。たった一人で。

そしてある日、新たなポータルがその領域で開いた。ポータルをくぐったのは2人。司祭のローブに身を包んだ高貴な定命の者と高位のドレモラだった。フロファルドは這い寄って、彼らの話に耳を傾けた。助けを請うた方が賢明なようならそうするつもりだった。

「見ろ、この荒れ果てた世界を、定命の者」とドレモラが司祭に言った。「すでに名前も忘れ去られたデイドラ公の領域の残骸だ。お前の種族がお前の世界で歩み始める前に、破壊のデイドラ公はその敵に戦を仕掛け、その本拠地を壊滅させたのだ。メエルーンズ・デイゴンの憤怒を生き延びられる者などない。これは彼からの贈り物だ。彼の力を示し、味方とも敵とも約束を果たす証拠だ」

定命の司祭は畏怖しているようだった。「大いなる王の教訓に感謝いたします」と彼は言った。そしてその場でひれ伏すと、デイゴンを礼拝し始めた。

祈りの言葉を終えて立ち上がると、司祭はデイドラと共にポータルを通って還っていった。フロファルドは脱出のチャンスと見て、よろばいでた。すんでのところで閉じかけたポータルを潜り抜けると、そこは彼と同様に老いさらばえて荒れ果てたデッドランドだと気づいた。

今日に至るまで、この壊滅した次元を見つけた者はいない。「死んだ光の世界」とフロファルドが呼ぶ世界を。忘れられた財宝がまだそこに隠されていて、そこへの道を見つけ出してデイゴンの戦利品をくすねられるほど賢い収集者を待っているのではないかと考える者もいる。定命の者が、ほとんど目にしたことのない光景について考える者もいる。

とはいえ、デッドライトを探しに行った収集者はほとんどいないことを付け加えておこう。財宝を探すなら、もっとましなところがあるからだ。

デッドライトへの召喚Summons to Deadlight

目覚めの炎の者たちへ

デッドライトの要塞は聖堂、修練所、本部としてよく機能している。我らの主、メエルーンズ・デイゴンはこの不運な次元に神聖なる破壊をもたらすため、恩寵の印として私たちにデッドライトをお預けくださった。

勝利の準備を整えられる堅固な避難所として、デッドライトが最終的な目的を果たす時がきた。この隔離された領域に隠れ、私たちは我らの主の転生者に生命を吹き込む――1体の生きた災厄ではなく、生きた災厄の大軍に。

直ちにデッドライトを、扉のない要塞にしなくてはならない。他の拠点や領域につながるポータルは遮断する。血の穴の先にある溶岩の川の上に位置する西門を除いて。このポータルは開いたままにするが、鍵と暗号で保護して、デッドライトに加わる者が移動できるようにする。

門を封じるまでは、デイドラに対する強力な結界で守ることにする。私たちはもはや我らの主、メエルーンズ・デイゴンに仕える他者を信用できない。彼らは私たちの成功を妬んでおり、気を許せば取って代わられるだろう。ポータルの鍵を持っていようといまいと、彼らは締め出さなければならない。

我が仲間たちよ、デッドライトに来なさい。最後の任務は目前だ。

シスター・セルディナ 著

デッドランドの食料Food of the Deadlands

ヘクソス家の補給係、フララヴ・ポラス 著

もしデッドランドと呼ばれる災厄のデイドラ公、メエルーンズ・デイゴンの領域をさまようなら、食料と水を持参するべきだ。パンとホイールチーズ、乾燥肉やワインと水を持てるだけ持っていけ。この領域で調達しなければならないなら、定命の者が摂取できるのは下記の通りだ。

デイドラットの串
デッドランドをさまよう者によく知られている一般的な料理だ。デイドラットの串焼きで、見た目ほどまずくはない。よく調理したデイドラットは驚くほど美味で、その肉の持つ野趣あふれる味わいと食感を補うスパイスはほとんど必要ない。魅力に付け加えるなら、これは荒涼とした領域をとぼとぼと歩きながら食べられる食料だ。デイドラット一頭で一日以上の間、空腹を満たすことができる。この料理の唯一の難点は、近くに集落があって取引できない場合、図抜けた狩猟の腕を必要とすることだ。デイドラットは素早く、狡猾で、とても鋭い歯を持っている。狩りの手間は成果に見合わないかもしれない。ここで、デイドラの死体に栄養価があるのかという問題にもぶち当たる。これについてはわからないが、ポータルにたどりついてファーグレイブへ戻るまで、飢えをしのげたことはお伝えしよう。

デッドランドの小枝シチュー
デッドランド中には木々がまばらに生えていて、飢えた旅人に別の選択肢を提供してくれる。死んだ木々から集めた枝と大量のお湯で、うまいシチューができる。長く煮込むほど、枝は美味になる。デイドラットのくず肉かバックパックに残った糧食を加えてシチューのかさ増しをしても、味を加えてもいい。

焦げた肉
飢えてデッドランドで迷ったら、食料をえり好みする余裕はない。幸運なことに、正体不明の焦げた炙り肉の塊には事欠かない。完全に焦げたウェルダンの肉が、領域中に転がっている。燃える前に、その肉がどんな姿をしていたかは考えるべきではない。

フラッシュベイクド・アッシュホッパー
アッシュホッパーもデッドランドにあふれている獣だ。ヴァーデンフェルと呼ばれるニルンの地域を旅した者には馴染み深いだろう。この獣がデッドランドに来て、生き残るどころか栄えているのはその耐久力のおかげである。虫を捕まえてバーンの溶岩に放り込んでみると、 飢えた定命の者が得られるデッドランド最高の珍味が生まれた。時間に余裕があるなら虫を集めてゼリーにするといい。モロウウィンドのダークエルフには人気のメニューだ。さらにアッシュホッパーの殻は耐熱性があり、足を覆うこともできる。

デッドランド案内A Guide to the Deadlands

星を歩む者 著

オブリビオンの全次元において、デッドランドより旅人を拒む場所を見つけるのは難しい。メエルーンズ・デイゴンの軍団が警戒し、スパイ、侵略者、脱獄囚に目を光らせている。おまけに恐ろしいモンスターが獲物を求めて徘徊し、しかも気候は恐ろしい噴火の続く火山地帯から、極寒の嵐が唸りをあげて吹きすさぶ荒野まである。そして大地もカミソリのように鋭い岩、ナイフのような岩棚、切り立った谷間を形成している。とは言え、この地において旅人は定命の者が滅多に見ることのできない光景を目にできる。命があれば。

デイゴンの領域への旅を生き延びるには準備が鍵になる。まずは旅に必要となる食料を全て詰め込め。デッドランドという地名は伊達じゃない。食料はほとんど見つからないし、見つかってもロクなものではない。運べるだけの水を運び込め。この世界の半分は溶岩の荒野で覆われ、残りは石で覆われた荒野だ。泉や池に出くわしても汚染されているか、定命の者が飲むのに適していない。

最も大事なことは訪問が終わった時、デイゴンの領域からどう抜け出すかを決めておくことだ。デッドランドへつながるポータルの多くは気まぐれで頼りにならない。旅人を招じ入れはするが、出口としての機能がないのだ。少なくとも3種の脱出方法を用意していなければ、デッドランドを訪れる準備ができているとは言えない。

デッドランドを訪ねる最も簡単な方法は、まず天空の籠、ファーグレイブまで行くことだ。この街の郊外にある広場には二つの常設ポータルがあり、それぞれデッドランドの異なった場所につながっている。このポータルは安定していて、メエルーンズ・デイゴンの軍勢が滅多に巡視しない辺境の地につながっている。ニルンや他の次元で見つけるポータルには気をつけることだ。要塞やダンジョンの真ん中に放り出されることがままある(しかも双方向ではない場合がしょっちゅうだ)。

さて、デッドランド本土の話に戻ろう。メエルーンズ・デイゴンの領域は地域に分かれている。ファーグレイブからの旅人によく知られている主要地域はバーンとセヴァーだ。バーンは火山性の荒れ地で、溶岩の川とデイゴンの軍勢がひしめく要塞が林立している。セヴァーは寒く、風が吹き荒れる石の荒野だ。大きな要塞の間には、強力な怪物と血眼になったスカベンジャーがたくさんいる。この二つの地域の間には名もなく険しい山岳地帯が連なり、通り道は少ない。

勇敢な旅人向けの旅程としては、ファーグレイブからバーン行きのポータルを使うことをお勧めする。ポータルのプラットフォームのそばを通る道を西に向かえ。この道は灼熱の渦の砦と呼ばれる陰惨な要塞に続く。その古びた塔を見ながら先へ進むといい。誰も歓迎してはくれないが。さらに北へ進めば、血の穴と呼ばれる悲惨な牢獄兼鉱山を過ぎる。ここでは破壊のデイドラ公の機嫌を損ねた多くの者が、惨めな一生が終わるまで労役に苦しめられている。彼らの仲間になりたくはないだろう。

高く、曲がりくねった道は血の穴の北にある丘を通り、切望の要塞という大要塞のある東へ続いている。この要塞はメエルーンズ・デイゴンの軍勢が詰める777の要塞でも随一のものだ。この一帯の警戒は厳重だから、遠くから眺めるだけにしておくべきだろう。上の丘を東に進み続けると、セヴァーにつながるトンネルがある。このトンネルは破壊の安置所の玄関先へと連れて行ってくれる。

ここで長居してはならない。この死んだように見える都市はメエルーンズ・デイゴンの本拠地だ。ゲートが開いていても、入ってはならない!

東へと下る道を進み、陰鬱なセヴァーの平原を横切ると、南北へ伸びる道にぶつかる。進むべきは南だが、気をつけろ。この道を永遠に徘徊する凶悪なハヴォクレルは、出会った者に挑戦し続けるよう命じられている。だが、やがて荒れ果てた不毛の地へと出るだろう。そこにある南に向かう道は、デッドランドのこの付近における安全な避難所に通じている。哀れなる者の尖塔と呼ばれる地だ。

哀れなる者の尖塔は、大きな聖堂の残骸の側に建設されている。この聖堂はメエルーンズ・デイゴンがずっと昔、ニルンからデッドランドへと引きずり込んだものだ。ここは追放者やスカベンジャーなど、デイゴンの目を逃れたい者たちの楽園となっている。どういうわけか、デイゴンの下僕たちは決してこの地に近寄ろうとしない。名誉を失ったわずかなデイドラと、迷い込んだ(もしくは逃げてきた)定命の者がmある種の集落を造り上げている。暮らしは厳しいが、旅人を休ませ、いくばくかの物資を調達するくらいのことはできる。

哀れなる者の尖塔から、道は東の高地へと続き、セヴァーの東へと伸びていく。ここには安全なファーグレイブへと帰れるポータルがある。だがメエルーンズ・デイゴンの世界をもう一目見ておきたいのなら、もう少々北へと進むと偽殉死者のフォリーがある。セヴァーの山間の恐ろしい谷間にへばりつく死んだ森、フォリーには、メエルーンズ・デイゴンを怒らせた者たちの魂が捕らわれているという。恐ろしいサイズの昆虫の腐りかけた死骸や、うるさいインプが森の中に潜んでいる。ここでも、長居は禁物だ。デイゴンの敵の石化した残骸を見たら、手遅れになる前に脱出すべきだ。

幸運を祈る、旅人よ!

テロファサの日記Telofasa’s Diary

周期5679

マダム・ウィムと面倒な助手のナスに回収を依頼された次元石を持って、ファーグレイブに向かっている。彼らは大事なウィムの館で待っている。約束されたゴールドは、今でも後でも変わらないだろう。

ちょっとした遊びとして、石を入れたままバックパックをフォリーに放置することにした。そのうち取りに戻ればいい。マダム・ウィムには待たせておこう。強行軍の遠出にはうんざりだ。報酬なんて何の意味もない。私の存在が復活するのは、自分で願った時だけだ。

偽殉死者のフォリーの嵐は前と違っている気がする。前回通り抜けた時は、数歩ごとに稲妻を集める杖が地面から突き出していなかった。杖のおかげで感電を避けるのが容易になったように思う。焼けこげた肉体でオブリビオンに戻るのはまっぴらだ。だが、今は誰でもフォリーを通り抜けられる。少しも大したことじゃない。手応えもない。時間はあらゆることをつまらなくしてしまう。すぐに定命の者が、極めて需要のある品を回収する平凡な仕事をこなすようになるだろう。

かつて勇気と技は意味のあるものだった。存在が自分の力に挑んだ。私の進むべき道は明らかだ。もう一度冒険のスリルを感じたいなら、さらなる危険に身を晒す必要があるだろう。それが唯一の方法だ。

ドレモラのクランに関してOn Dremora Clans

ディヴァイス・ファー 著

定命の者がオブリビオンの無数の軍団を数えられるなどと思ってはならない。デイドラ種族の目録を作るだけでも一生の仕事だ。よりややこしいことに、デイドラの多くが恐ろしく多様な忠誠心と目的を持った組織を作っている。ドレモラもその例に漏れない。

クランとは単なるドレモラの同盟宣言ではない。デイドラに永遠の刻印をする結盟であり、真名を意味するニミックを変え、そのありようをも変えてしまう。デイドラのニミック自体も独立した論文を要する主題ではある。とにかくこの話をするにあたっては、ドレモラがクランと自己のアイデンティティを切り離せないと言っておけばよいだろう。デイドラの場合はよくあることだが、例え死んでもクランの結盟が、オブリビオンから戻ってきた時点のドレモラの姿を決める。

とても多くのドレモラのクランがオブリビオンの次元で暮らしている。そのほとんどがニルンの賢者に知られていない。最も経験豊富な次元の旅人ですら、遭遇するドレモラのクランは一握りといったところだ。絡み合う同盟の網やライバル関係、様々なクランを結びつける憎悪の絆について、理解を深めることもない。ドレモラがどのクランに所属し、定命の者をどう見ているのかを把握するまで、旅人はその怪物が害をなすと思っておいたほうが賢明だ。

その戒めを前提として、比較的知られているドレモラ種族を簡単に説明しよう。なお、クランが通称する「名前」がニミックでないことは覚えておきたい。ニミックは重要機密だ。しかしクランの通称はあり方の一部を反映しているか、クランのニミックの真相を反映している場合もある。

大まかな地位により、以下昇順に記載する:

ヴァンキッシュド・クラン
庇護してくれるデイドラ公のない独立クラン。ヴァンキッシュドは追放者や亡命者で構成され、他のドレモラから軽侮されている。忠誠を誓ったデイドラ公が完膚ないまでに叩き潰された場合、生き残ったドレモラはヴァンキッシュドになると推測する定命の賢者もいる。別の説では、ヴァンキッシュドが大失態や背信に対する刑罰の儀式でのみ作りだされると考えている。ヴァンキッシュド自身は認めないが、耐えがたい苦しみを耐えることに彼らは苦い自負心を抱いている。それでも彼らはドレモラのままだ。つまり、劣っていると思う者に対しては残酷で傲慢だ。

ファイアスカージ・クラン
メエルーンズ・デイゴンは他のどのデイドラ公よりも多くのドレモラ同盟を支配している。ほとんどのドレモラ軍団の戦士たちはデイゴンの777の要塞に駐屯し、オーバーロードに出陣を命じられるまで待っている。ファイアスカージは数こそ多いが地位の低いクランで、洪水と炎の王の忠実な歩兵を努めている。

ドゥームドリヴン・クラン
マラキャスの下僕として、ドゥームドリヴン・クランはオースブレイカーにニルンの信者への使者として遣わされることがある。しかし、彼らはアッシュピットのオークの霊魂の軍団の元帥や指揮官を務めていることのほうが多い。

ブラッドレイス・クラン
デイドラ公ボエシアに仕えるブラッドレイスは大掛かりなトーナメントでチャンピオンに挑み、試練を与えることを使命としている。シャドウナイトと闇の魔術師という名のみが知られる強力な君主が、終わりなきアリーナの試合にクランを駆り立てている。

レイザースウォーン・クラン
破壊のデイドラ公、メエルーンズ・デイゴンに仕えるもう一つのドレモラクラン。レイザースウォーンは略奪者やアサシンとして活動し、他の領域にいるデイゴンの敵を討つために送りこまれる。彼らはファイアスカージを蔑視するが、ルインブラッドの権勢に苦しめられている。

ブレードベアラー・クラン
独立を貴ぶブレードベアラーはデイドラ公に仕えていない。誇り高き戦士で、戦場での勝利によって自らの価値を決める。結果として、定命の傭兵のように世界を股にかけては身を投じられる戦いを探し、どちらかに参戦するため取引を持ち掛けることもある。独立系クランでは最も名高く、強力なクランだ。

フットキラー・クラン
大抵のクランは自ら選んだデイドラ公と長きに渡って絆を保ち、忠誠は揺らがず、関係も変わらない。フットキラーは少なくとも一度は主人を代え、モラグ・バルを捨てた。企みの神が彼らの仇敵であるデスブリンガーを認め、彼らに取って代わらせたからだ。賢者の中にはフットキラーがもう存在しないと考える者もいる。悪名高きドレモラ、ライランスは最後のフットキラーと呼ばれることもある。

デスブリンガー・クラン
モラグ・バルの下僕の中での地位が高いデスブリンガーは、長年フットキラー・クランのライバルだった。ヴァルキナズ・セリスの指揮により、デスブリンガーはフットキラー・クランを引きずり下ろし、追放することに成功した。最後の報告によれば彼らは暗い要塞からコールドハーバーの大半を手中に収めたとのことだ。

ルインブラッド・クラン
メエルーンズ・デイゴンに仕えるクランの中でも最強のクランであるルインブラッドは、破壊のデイドラ公の野望を実行することを任された精鋭の衛兵であり、上級指揮官である。このクランの魔術師はデイドラと定命の者双方の血を用いた魔法に長け、しばしば「ブラッドアデプト」と呼ばれる。このクランの者たちは、デイゴンの軍団の戦士長や士官を務めていることもある。クランの指導者はヴァルキナズ・ノクブロズで、切望の要塞の司令官でもある。

ドレモラは死なずDremora Never Die

ファーグレイブの酔っ払いの歌

故郷を遠く離れて、なお我々は酒を飲む
ここのエールは変わっているが、不死者はがぶがぶ飲む!
ここの仲間は飲みもしないし、食いもしない
楽しみなくして生き続けるとは、驚くほかない!

きっと凄く退屈だろうが、我々が助けましょ
下品で、死に怯える定命の俺たちがご一緒
酔わないなら飲んでも無意味だ
定命の者と戯れるとは落ちたな、いい気味だ

全部ただのおふざけさ、奴らを見下したりしないさ
ここの仲間は誰にも負けやしないさ!
変わることなく、眠ることもなく、よからぬことを企んでるんだ
我らが不死の友は、誤解されてるんだ!

飲め、飲め、飲め、ドレモラのために!
動物なのか植物なのか、よく分からない奴らのために!
飲め、飲め、飲め、ドレモラのために!
俺たちが死に絶えた後も、残る奴らのために!

バーンの動植物Flora and Fauna of the Burn

魔術師ギルド研究員、アンスロパス・ガリア 著

メエルーンズ・デイゴンの領域、デッドランドは通説と異なり、単一の環境ではない。領域は様々な地方に分かれ、それぞれに凄惨で過酷さを形容する名がついている。例えばバーンだ。バーンを一切の生命がいない地獄のような環境だと思いこむのは愚かだ。確かに火山帯の荒涼とした土地ではあるが、それでも活気に満ちている。実際、ここで目にする全ての野生動物や植物を記録すると1冊の本に収まりきらない。この巻では主だった種族のみを記載する。だが読者に強調しておきたいのは、ここに出てくるのがこの過酷ながらも美しい地域で出会うであろう生物の、ほんの一部でしかないことだ。

動物

クランフィア
クランフィアは知能の低いトカゲのようなデイドラだ(異論を唱える者もいる)。ここで各種の定説について論じるのは避ける。クランフィアについて覚えておくべき最も重要なことは、甘く見てはならないことだ。その牙は定命の者の肉体をやすやすと切り裂き、その肉体は鋭い鱗に覆われている。鋭利な爪を持ち、棘の生えた尻尾は刃物にも鈍器にもなる。小さいからといって、侮ってはならない!

スキャンプ
バーンでは珍しく、悲鳴を上げて逃げ出したくならない獣だ。スキャンプは小型の亜人デイドラで、微弱な魔法のような力を操る。デッドランドに住まうものを無害(断言するがスキャンプもある程度の脅威となりうる)と言ったら無責任になるが、この獣は往々にしてとても臆病で、切迫した脅威になることは少ない。むしろ、彼らが仕えるより大きなデイドラを懸念すべきだ。スキャンプにはたくさんの種類があるが、最もよく遭遇するのはバーンにいるマグマの変種だろう。

ドレムナケン
ドレムナケンはデイドラで、その大きさは大型犬程度から一番大きなノルドすら見下ろせるものまでまちまちだ。この四本足のデイドラが群れをなしてバーンをうろついているのをよく見かけるだろうが、その獣のような姿に騙されてはならない。彼らは私たちと同じ程度か、それ以上に賢い。だが彼らには神々の力に対するやまぬ飢えと、満足するまで狩りを続けなければならない暗い欲求がある。メエルーンズ・デイゴンの軍勢はその肉体的な欲求を利用し、敵を追跡して殺すためにドレムナケンを使役する。中には精巧な鎧に身を包んでいるものもいるが、針のように鋭い歯や、尖った爪がある以上、余分にも見える。この獣に備わった純粋な力だけでも、十分な威力を持つ。

植物

スピッダル
スピッダルは簡単に見分けられる。これはバーンで育つ数少ない花だからだ。申し訳程度に花のようなものが、ぬめりのある棘だらけの茎に咲く。大抵は黄だが、熱源のそばには赤とオレンジの変種も育つ。自生しているのを見かけたら、最大限警戒すべきだ。デッドランドに咲くものは、毒ガスを放って自衛する。

ハラーダの根
ハラーダの根は扱いが難しい。この本を執筆するため、私は遥か遠くから自然を観察するのを好むが、その私でさえこの苛立たしい植物の射程を見くびっていたと言わざるを得ない。どうにか回避したが、帽子が棘で裂けてしまった。

変種は2種類ある。一つは洞窟などでよく見かけ、もう一方はより広い屋外で育つ。屋外の種はまっすぐ上に伸びるか、または蔦のように岩沿いへ伸びる。洞窟の種は天井から垂れさがる。その姿がどうであれ、この根は近づき過ぎた者を見境なく襲ってくる。

ブラッドグラス
デッドランドのあちこちに生息するブラッドグラスは、華奢で、深紅の茎を持ち、荒れ地に育つので簡単に見分けられる。必ずしも危険ではないが、この植物のそばでは気をつけるべきだ。その葉は見かけによらず鋭い。正しく収穫すれば、葉は独特な錬金術の効能をもたらす。

ピビハのメモPibiha’s Note

これを見つけた親切な方、どうかこの者の妹に渡してください。妹の名はトゥフェ。ファーグレイブにいます。不可能かもしれないということは分かっています。これだけ無責任な略奪者とペテン師がたくさんいては、ファーグレイブにいつでもたどり着ける訳ではない。でも、これはピビハが最後に残す生きた証となる。何とか妹の手に届くよう願っています。

トゥフェへ

賢いのはいつもあなたの方だった。最初にあなたから目覚めの炎教団にいくなんて、問題を求めに行くようなものだと言われた時に従っておくべきだった。

妹よ、あなたはきっと誇りに思ってくれると思う。どれだけ教官が鞭や言葉と、斧を駆使しても決して折れなかったピビハのことを。もしあなたが想像しているなら申し訳ないけど、この者はどんな恐怖を生き延びたかについて書き留めるつもりはないことをわかって。デイゴンの悪臭を放つ脇にかけて、ここで奴らが囚人にしていることをあなたに伝えはしない。

奴らは私たちにも同じような考えを持たせようとした。ピビハは一緒に捕まった仲間の多くが、らしからぬ行動をとり始めるのを目にした。彼らはさらに怒りを募らせ、浄化の炎が皮膚を浄めることを切望したの。正気の沙汰とは思えなかった。この者がそんな考えを持ったことは一切ない。

最後にあなたの顔を見てから、ずいぶん長い時間が経ってしまった。そのことは後悔している。ここの時間の流れは奇妙よ。空を見ることができないので。トゥフェ。他に悔やんでいるとすれば、このオグリムの尻のおできの中に入ってから、毛皮を吹き抜けるそよ風を感じていないこと。まるで最後に世界を見てから一生分ぐらいの時間が経ったように感じるけど、心の中ではそこまで長くないこともわかっている。

仔猫よ、この者は疲れた。それに寒さで手がけいれんしている。信念に忠実でいて。あなたが何をしようと、姉があなたを愛していることを知っていて。

ピビハ

ファーグレイブの運び手The Bearers of Fargrave

定命の歴史家オレッテ・アルボガスク 著

私はニルンよりもファーグレイブに長く住んでいるが、この場所には今でも驚かされる!私はここ運び手の休息所に座り、目の前に筆記用具を広げ、テーブルには未開封のスパイス入りドリームワインを用意してある。この理想的な場所で、ここに名前を与えた存在、すなわちファーグレイブの運び手について発見したことを記録していこうと思う。

ファーグレイブを訪ねるか、長く滞在した者なら誰でも知っているだろう。見上げればファーグレイブの中央地区周辺を守る境界のようなものを築いている、巨大な骸骨が目に入るはずだ。ちなみに、これは動く骸骨ではない。この巨大な人型生物の骨が一歩でも動くのを見た者は、ドレモラの一生分ほどの時間を遡っても見つからない。また、骸骨の様々な部位がこの街中に自然の地形を生み出している。

ここに座って死に、岩のように固い構造物になって今の空を覆う前、この巨大な生物は一体何者だったのか?本当のことは誰も知らない。しかし仮説は多い。私のお気に入りの説をいくつか話した後、ファーグレイブの運び手の真実についての考えを述べよう。

定命の者の間で人気の仮説は、ファーグレイブがかつて四柱のデイドラ公が支配圏を巡って争う領域だったというものだ。うち続く戦いの末、彼らは全員が同時に滅び、その体は崩れ落ちて分解され、今日我々が目にするような4体の巨大な骸骨を残したという。時を経て、デイドラも定命の者もこのデイドラ公のいない領域に来て、骸骨の間に街を築き、オブリビオンの驚異の地を生み出した、というわけだ。もちろんデイドラに聞けば、対立するデイドラ公が同じ領域の支配を争うなどという考えは一蹴されるだろう。

別のあまり知られていない物語によると、ファーグレイブはかつて、デイドラでもエドラでも定命の者でもない、ある巨人族の埋葬地のような場所だったとされている。スカイリムのマンモスの墓地のように、この巨大生物はファーグレイブを歩き回り、座ったり横になったりしていたが、時が来ると死を迎えた。こうして、今日も残っている骸骨のポーズが生まれた。この物語にも一定の支持者がいるが、骸骨4体では埋葬地にならないだろうとの指摘もある。

様々な物語の中でも一番のお気に入りは、この巨人たちをファーグレイブの運び手と呼ぶ話だ。この物語によると、ファーグレイブはオブリビオンのこの地点(それがどこかはともかくとして)に落ち着く以前、4体の運び手によって場所から場所へと運ばれていた。「天空の籠」という名称はそこから来ている。遠い昔、この巨人たちは荷物運びのように街を肩に担いで移動していたというのだ。これは永遠とも思えるほど長い間続き、街が行った領域と連結した。それが恒久的なポータルとして、今日も残っているのだ。

哀れな運び手たちに何があったのだろうか?誰も本当のことは知らないが、ポータルの連結が確立されてから、ファーグレイブを物理的に移動させることは不要になったのではないだろうか。運び手が不要になったことで、彼らは単純に存在する意志を失ったのだ。しかし彼らは長い間支えてきたこの場所を去ることなど考えられなかったので、かつて力を尽くして働いたその場所で座り込んで死んだという。

運び手たちは奴隷で、もはや忘れ去られた主のためにファーグレイブを運ばされていたと言う者もいる。私としては彼らが忠実な召使で、ファーグレイブとその古い住民たちへの愛のために働いたのだと思いたい。どんな住民だったのかは知る由もないが。

ファーグレイブの歌Fargrave’s Song

輝く夜の屋根の下
霊魂が眠りを知らぬ時
石炭は燃えて勇者を照らす
赤い足跡が真っすぐに
酒場の戸口へ続いてる
皆の声が、ファーグレイブを歌う!

巨人の骨が眠る地はアッシュピットから遥か遠く
外の道は暗く、明かりが灯ることもない
クランが見つけた最も偉大な街
生涯をかけてたどり着けるか
それでもファーグレイブは全て受け入れる!

ここはアポクリファではない
街の中の街、永遠に歌い継ごう
誰にでも利益を与え、誰にも慈悲を与えぬ
繁栄のための仕事は、決して終わらない
ファーグレイブのバザールは閉まらない!

輝く夜の屋根の下
霊魂が眠りを知らぬ時
石炭は燃えて勇者を照らす
赤い足跡が真っすぐに
酒場の戸口へ続いてる
皆の声が、ファーグレイブを歌う!

メリディアの彩られた部屋よりも活気があり
デイドラがいても危険が少ない
取引と交渉が、通りを残らず埋め尽くす
他人も仲間も、出会う相手は皆忘れない
ファーグレイブに入った日を!

虚無の星が遠くに輝く
デイドラ商人が昼から値切る
ポータル広場からどこにでも行ける
運び手の休息所に酒もある
ファーグレイブはいつでも宴会だ!

ファーグレイブの愚か者The Fool of Fargrave

(マダム・ウィムの依頼により吟遊詩人ティラシー・ミレルが執筆した隠者にまつわる歌。隠者を軽視したユーモラスな作品になるはずだったが、吟遊詩人はウィムの指示に従いながらも、この裏通りの人気者に敬意を払うため全力を尽くした)

本当に彼女を知る者はない
本人だって知りゃしない
彼女はあばら屋の隠者
このポータルと次元取引の場で

定命の者が空の手を差し出す
彼女はぼんやりと満たす
この商業の街で
利益も損も気にしない

彼女は仮面の女
解けぬパズル
隠遁の日々を送り
あなたの痛みを感じる、ファーグレイブの愚か者

本当に彼女を知る者はない
本人だって知りゃしない
彼女は裏通りの人気者
外せぬ仮面に捕らわれている

定命の者が嘆き悲しむ
彼らは飢えて苦しんでいる
彼女は支援に力を尽くす
好意もコインも求めずに

彼女は仮面の女
解けぬパズル
隠遁の日々を送り
あなたに手を差し伸べる、ファーグレイブの愚か者

ファーグレイブの事件Fargrave Happenings

ファーグレイブの出来事を記録した事件簿、イラーラ・キンヴァル 著。「ファーグレイブの目撃者」第94号掲載

今日は事件がたくさんあった。ドレモラの一団が、この素晴らしい街において定命の訪問客がゴミを保管し処理するために選んだ場所の封鎖に踏み切った。定命の者はファーグレイブのグラスプの官吏に、廃棄物を処理する仕組みが必要だと訴えた。簡潔でもあり、教育的すぎる訴えだった(事件の詳細は33ページを参照)。グラスプは廃棄物を街の境界の外に留め置く必要を感じ、定命の者の計画に合意した。それでも、この許可にファーグレイブ内の全住人が満足したわけではない。私はいつもの通り定命の者を追って、彼らの行いを記録しようとした。だがファーグレイブに関わりのある、様々なドレモラのクランもまた彼らを追っていた。

続いて小競り合いが起こった。きっかけは帝国の者がシャベル一杯の掘削現場の泥をドレモラに投げつけたことだ。そうなる前に口論もあったようだったが、やりとりは静かだった上、荒野の風が吹き荒れていたので聞き逃した。一方、土は標的に命中した。後に続いたのは正々堂々とした決闘だったとは言えないが、双方ともに激昂し、カジートの女が熊手を廃棄物に突き刺して、戦う者たちにぶつけると脅すまで続いた。双方ともにこの件を黙っておいたほうがいいという結論に達した。私はそのような約束をしなかったので、ファーグレイブの目撃者としての権利により、本件を記録することにした。

* * *
定命の者が夜と呼ぶ期間がこの周期ではゆっくりと流れる。バザールではデイドラの商人が品物を売っている。彼らは見込みのありそうな客を呼び止め、品物の宣伝をすることがない。もう彼らの事業はしっかりと根を下ろしており、目端の利く客に隠すこともない。商人が店や露店の宣伝をするのは希少な品が手に入った時か、新たな定命の者がきた時だけだ。最も活気にあふれるのは、新しい商人が商売を始めた時だ。すると全ての店主が、自分たちの存在を知らしめ、仲間の店より抜きんでているとアピールし始める。その時まで通りは静かなままで、露店はどっしりと構え、誰一人足音ほどの声もあげない。

***
今日からまた負傷者の間引きが始まった。毎度のことだが、非公式に開催されたイベントが、明確な主催者もなく運営されている。定命の者の商人がバザールで店を開けると間もなく、負傷していると見える者や、今や全盛期を過ぎたと思しきデイドラが、街の東の溶岩流へと身を投げた。溶岩流の中へ旅立ったデイドラは今年これで5人目だ。

分解された者たちがみな短期間で再生され、遠からずファーグレイブの門をくぐるよう願っている。

***
今度の周期はストリクチャー広場のグラスプが大いに活躍している。定命の者、デイドラ、その他様々なファーグレイブの商業団体の指導者が会合し、街の統治に関する条約改正について討議した。代表団の間で何度も殴り合いが起きかけた。グラスプ・キン・マルキナズがものすごい剣幕でバネキンの独白を怒鳴りつけ、紛糾する代表団を黙らせなければ収拾がつかなくなっていただろう。しばらくしてから人々は広場を出て、〈運び手の休息所〉へ向かった。そこで静かに敬意を抱き…いや、少なくとも静かに話し合った。グラスプ・キン・マルキナズを再び怒らせたくなかったのだ。

最初の晩の討論が終わり、グラスプは進行の中断を命じた。そして数件の議題が片づいた。

第一に、ストリクチャーの保護の有無に関わらず、ファーグレイブの知性ある市民を市場で売ることを禁じる。

第二に、ストリクチャーの保護の有無に関わらず、市内においてファーグレイブの市民の知性を奪うことを禁じる。

第三に、今後無期限に、ストリクチャーの法令に従うことに合意したファーグレイブの全住民を、ストリクチャーの盟約が与える市民権の保護対象に含めるものとする。

第四に、物資や商品の市内への流入を妨害することを禁じる。

* * *
この会議は8期目を迎えるが、出来事が多すぎて日報にまとめることができないようになってきた。代わりにメモを取っておいて、定命の者が自分が休むための休憩を無理強いする時点で、考えをまとめることにした。これまで本格的な殴り合いの喧嘩は3回以上あった。定命の者は〈運び手の休息所〉をどうしても専用の戦場に変えなければ気が済まないようだ。あるアルゴニアンはグラスプの代表に椅子まで投げつけた。グラスプ・キン・マルキナズは7回も、獰猛なドレモラの戦歌を様々に披露して、高まった緊張を鎮めなければならなかった。

定命の者がデイドラの食事場所を街から排除するように要求したが、これ以上の政策変更は合意にも、実現にも至らなかった。彼らは「生きるための養分を必要としない者に、食事の準備や食事に類似した消耗品の用意を任せられない」と主張していた。

ファーグレイブの傭兵募集Work for Hire in Fargrave

問題と危険が、オブリビオンにあるファーグレイブの街を脅かしています。

ファーグレイブの周辺にある、デッドランドと呼ばれる領域の周辺で、計り知れない恐怖に対処できる冒険者を募集します。興味があり、見返りに金と栄光を求めているなら、ヘクソス家は仕事を提供します。

詳しくは、ファーグレイブのヒューレット・ヘクソスにお尋ねください。

ファーグレイブ観光案内Visitor’s Guide to Fargrave

ファーグレイブの定命の者に向けた、包括的な観光プログラム用にオサタが準備した資料。

旅人よ、幸先のよい一日を!ファーグレイブという栄光の街に到達したことで、あなたの運勢は好転を始めた。自分で用意したか、恒久的なゲートを利用したかはともかく、あなたには次元を越えてこの素晴らしい街にやってきたことで、きっと幸運が訪れるだろう。

ポータルの広場
どのように天空の籠の街を見つけたかにもよるが、ポータルの広場のことはもうご存知かもしれない。この場所には恒久的なポータルが配置され、中にはデッドランドの二つの領域につながっているものもある。他の次元への一時的なポータルを作る許可を持った者は、旅行のためにここへ集合する。ファーグレイブへ行き来する安全なルートの一つとして、多くの定命の者が広場で休憩する。ここはファーグレイブが持つ故郷の領域との絆を、彼らに思い起こさせる場所なのだ。

バザール
あなたがたがファーグレイブを訪れたのは、おそらく高名なファーグレイブの名産品を交易し、取引するためだろう。品物は街のどこでも取引できるが、お探しの場所はバザールに違いない。オブリビオンのあらゆる場所からくる商人や職人が集まっている。望みの物は何でも揃い、望んだ以上の物ですら、バザールでは手ごろな価格で見つけられる。品物の取引はいつでも行われている。バザールを頻繁かつ隅々まで探検して、見落としがないようにしよう。

ファーグレイブのクラフト広場
職人志望の方々に品物を製作するための素材を提供できないのは、我々の街にとってこれ以上ない恥辱だ。そのためファーグレイブのクラフト広場には、作業台や創作を支える様々な工具が用意されている。

定命の者支援
定命の者にファーグレイブの複雑な交易に慣れ親しんでもらうための組織がいくつも存在している。 ヘクソス家、サラアス・トング、アービス収集団は全てがファーグレイブ中に本部を構え、バザールに公式の出店を出している。ガイド、助言、雇用など、必要に応じて助力を提供する。しかし、ストリクチャーのグラスプは避けるべきだ。彼らはストリクチャーの協定を重視し、定命の者やその活動に対して一切の慈悲を持たない。

ストリクチャー
ファーグレイブに王や権力構造は存在しないが、ストリクチャーと呼ばれる魔法の協定が全デイドラを拘束し、天の籠の平和と中立を維持している。ストリクチャーのグラスプ、もしくは単にグラスプと呼ばれるグループがこの協定を強制し、仲介者にして合意の解釈者としていさかいや紛争が起こると介入する。定命の者はストリクチャーに拘束されないため、グラスプは定命の者を信用せず、必要がなければ無視することも多い。ほとんどのグラスプのメンバーはドレモラであり、全てのメンバーはストリクチャーの下で平等である。

シャンブルズ
必死な新顔に警告しておこう。シャンブルズと呼ばれる地区に近づいてはならない。ほとんどの定命の者はシャンブルズの路地や共同住宅に住んでいるが、エラント、ヴァンキッシュド、インビジブルウェブなど複数のギャングの狩場でもある。全ファーグレイブはストリクチャーの掟に拘束されているが、シャンブルズはこの地区に定命の者が多いことを理由にグラスプが無視するため、ある種の無法地帯になっている。

ファヴェンのメモFaven’s Note

テフィラズに要求されたが、デイドラが哀れなる者の尖塔内に留まることを許すつもりはない。直ちに実施する。最強の戦士たちを呼び集め、我らの家から獣を追い出すのだ。

哀れなる者の尖塔の浄化は今日から始まる。

-ファヴェン・インドリル

ブルガリクの日記Brugurikh’s Journal

第二紀582年、暁星の月6日(?)

到着した。どれほどかかったかは言えない。というのも、境界を越える移動の詳細はサラアス・トングの極秘事項だからだ。私がここにきた理由を知る者はいない。あるオークに正体がばれそうになったが、そいつは殺して、死骸はファーグレイブの通りに捨てた。

多くの発見があった。いかにしてメエルーンズ・デイゴンの信者が簡単に次元の間を行き来しているか、デイゴンが我らの愛するタムリエルに何を企んでいるかなどだ。まだ暴くことができていないのは、どうやって炎の暴君の蛮人どもが我々の美しいマンティコラを操れるようになったかだ。彼の丹精込めた作品に何が起きたか摂政ボワードにお伝えせねば。

第二紀582年、薄明の月8日(?)

ドレモラに尋問をしたが、無駄骨だった。デイドラは死を恐れない。痛みに反応するだけだ。石に尋問したほうがマシだった。この忌々しい地で一月探索を続けたが、マンティコラの誘拐犯探しはまったく進展してない。

第二紀582年、薄明の月22日(?)

毎夜、大蛇の知恵に祈る。いや、この地で夜と呼ばれている時間にだが。ここの空気は何か私の体を弱らせるものがある。だが我が信仰は弱まらない。ヴィネシャラというズィヴィライの獣飼いに接触した。彼女はグリルグというオグリムが誘拐犯かもしれないと言った。オグリムを殺したことは一度もないが、トロールなら何度もある。大きな獣の死に様はみな同じだ。怯えて死ぬ。

第二紀582年、薄明の月26日(?)

グリルグはデッドランドという領域へと逃げた。奴め、呪われろ!こんなところは呪われろ!その四本腕の君主も呪われてしまえ!

第二紀582年、恵雨の月3日(?)

行方不明のマンティコラの一頭にようやく出会えた。口にするのも悔しいが、こいつは私を覚えていなかった。このブルガリクが卵の泉で世話をしてやり、ニルンクラッツを目からふき取り、大きな角で隠れた耳に名前をささやいてやったのに。悲しみで胸に穴が開いたようだ。私のかわいい子供たちに、グリルグが何をしたのか解き明かさねば。

第二紀582年、恵雨の月8日(?)

見つけた。マンティコラの苦しみの原因を。数あるメエルーンズ・デイゴンの要塞の奥深くで、グリルグは彼らにデッドランドのハーブと巨大な虫のような獣の血を醸造したものを飲ませていた。オグリムの調合薬を飲むと、彼らの鱗は熱い石炭のように赤く輝き、行動も変わる。狡猾さをそのままに、従順となるのだ。自由にできる獣はたくさんいるのに、なぜデイゴンは我々のタムリエルへの最高の贈り物を奪うのか?なぜ私たちの努力の結晶を、異質で野蛮なものに変えてしまうのか?

明日、子供たちを解放しに行こう。大蛇の力に祈る。クラグローンとタムリエル全土の運命は危うい均衡を保っている。私が死んだら、摂政ボワードに伝えてくれ。私はコートのため、共に生み出した子供たちのために死んだと。

〈後のページには血が染みている〉

マルキナズ・オイクスの報告Report from Markynaz Oyx

強大なるヴァルキナズ

兵士が蔵書庫の壁の下に穴を掘って、脱走を試みていた囚人を発見しました。その女は取り押さえ、畜舎に戻しました。ご指示のとおり、決して出血しないようにさせました。

穴は修理が必要です。大至急スキャンプの作業員を派遣願います。

-オイクス

ミクゲトの作業リストMikget’s To-Do List

ミクゲト、やる

ミクゲト、きれいな次元石見つける。

ミクゲト、ファーグレイブのウィムの館行く。

ミクゲト、ナスに次元石渡す。

ナス、ミクゲトに輝くお金くれようとする。

ミクゲト、とらない。

ナス、マダム・ウィムに「ミクゲトに定命の者の契約やれ」と言う。

定命の者、ミクゲトに詩くれる。

ミクゲト、ファーグレイブの詩、全部持つ。

ミンウィレスの日記Minwileth’s Diary

エリザの具合が悪くなってる。隠そうとしてるけど、バクも私も彼女のことはよく分かってる。子供の頃から一緒に走り回ってきた仲だ。私たちに隠し事はない。

不公平なのは私たちの中で、病気になったのが彼女だと言うことだ。エリザはいつも私たちの支えだった。苦しい時でも私たちをつなぎとめてくれた。私たちの中で一番優しく、面白く、機転が利いた。大抵の連中にとって、私たちはろくでなしの盗賊でしかない。飲んだくれて、ファーグレイブの路地にたむろするネズミの群れ。でもエリザはそれだけの子じゃなかった。思いやりがあって、美しく、活力にあふれ、素敵だった。

ファーグレイブに流れ着いた定命の者なら、誰だって天空の籠での暮らしのことは知り尽くしている。誰もがドレインにかかるリスクを背負っている。あまりに不可解すぎて恐れを抱くのも難しい。定命の者の中には、何十年もファーグレイブで暮らしているのに、毛ほどの影響を受けない者もいる。ドレインにかかった者のことを耳にすれば、必ず何もなかったことにする。自分がかからなくてよかったとか、きっと自分は大丈夫さと言ってみる。愚かにも、自分たちが無敵だと思い込む。

エリザが苦しむのを見るのは耐えがたい。正気を失うと分っているのが、どれほど恐ろしいことか想像もつかない。何かを思い出せない時、彼女の瞳に怯えが浮かぶのを見ると胸が痛む。

でもバクには考えがある。危険だけど、何でもするつもりよ。何もかも捨ててファーグレイブを去ることになっても、エリザを救えるなら惜しくない。

メイリードの日記、項目3Mairead’s Diary, Entry 3

[子供が書いたような乱雑な手書きの文。長い年月を経たせいで文字がかすれている]

女の人がまた来た。あの人は好きじゃない。意地悪だから!いや、意地悪とは違う。でも、すごく厳しい。たぶん笑ったことがない。あの人が話すことは私の義務と責任ばかり。あの人の絵を描いてあげたけど、気に入らなかったみたい。

他の子を見たことがない。子供はみんなこういう場所に住んでいるの?皆、本で読んだみたいな優しいお母さんがいるの?勇敢で強いお父さんも?ここに来る女の人は冷たいから、子供なんていないと思う。どうして私に会いに来るんだろう。私のこと、好きじゃないだろうに。ああしろこうしろって、私に言うばかり!

抱きしめようとしたのに、押し返された。

メイリードの日記、項目346Mairead’s Diary, Entry 346

見慣れないものばかりだ。もちろん予想はついていた。あいつらは私を唯一の家から追い出しておいて、理由も教えなかった。慣れは私と無縁の贅沢よ。それでも、少なくとも快適に過ごせることを期待していた。私に友達はいないけど、十分だと思っていた。でも、ここは何もかもが私に逆らう。ベッドは硬すぎるし、床の溝にしょっちゅう躓くし、壁に押し潰されそうな気分。

あの女はもう訪ねてこなくなった。あの女が懐かしいのか、来る日常が懐かしいのか分からない。もちろん、レオヴィック皇帝が一緒に来ることも懐かしいとは思わない。いつもあいつの目が嫌だった。子供の頃でさえ、あの目は夢に見るほどだった。

でも今は、なくて寂しくなるくらい。あいつの見透かすような眼差しは気味が悪かったけど、少なくとも予想はついた。慣れていたから。

この新しい場所では噂が聞こえてくる。私は14歳だけど、本物の危険がここにあると思うには成熟しすぎている。ここで暮らしているのはそのためじゃないの?檻に閉じこめておけば何も入ってこないし、何も出ていかない。でも、時々心臓がバクバクして、夜中に目を覚ますことはある。まるで悪夢から目覚めたけど、何が怖ろしかったのか思い出せないみたい。この場所のせいなのかもしれない。

それとも、私のせいなんだろうか。

メイリードの日記、項目712Mairead’s Diary, Entry 712

まだ手が震えている。まともに字も書けないけど、これは記しておかないと。頭の中にあるものを外に出してしまいたい。書いておかなかったら、本当に起きたことか分からなくなってしまう。ただの悪夢でなかったと、自分を納得させられなくなる。

一瞬の出来事だった。恐ろしい、奇妙な格好をした男たちが私を連れ去ろうとした。理由は言わなかったけど、数人は私が知らない名を叫んだ。ヴァルキナズ・ノクブロズ。

自分の目がほとんど信じられなかった。あいつらは物凄い勢いでやって来た!宝物庫にこんなに多くの人が一度に入ったのは初めてだ。騒音と異常で、まるで壁が侮辱を受けて震えているかのようだった。耳が赤くなるのを感じた。家に侵入してきた奇妙な男たちは、傷が付くほど強く私の腕をつかんだ。私は殴りかかり、思い切り蹴りを入れた。叫びもしたけど、無駄なことはあの時でさえ分かっていた。私の声など誰にも聞こえない。これまで何度も叫んできたけど、いつも答えるのは反響だけだった。

でも捕まったと思った時、私の内部で何かが解き放たれた。それは私の胸の中から鞭のように飛び出した。痛みを感じたか、それとも何も感じなかったのかは覚えていない。その感覚は私を完全に圧倒した。叫びたかったけど、肺に空気が残っていなかった。少しの間、私には光しか見えなかった。眩しさが全てを洗い流し、光が隅々まで拡がり、全ての影を追い払った。その後は、無が続いた。

目を覚ますと、床に死体が転がっていた。他の者たちは消えていた。また、私は一人だった。何が起きているのか分からないけど、何かが変わろうとしている。永久に。

メエルーンズ・デイゴンの叙事詩、第1巻Epics of Mehrunes Dagon, Volume 1

目覚めの炎教団の歴史家、ヴァレンタイン・リオレ 著

権勢を誇る高貴なる王は、この本に書かれた物語を喜ばない。物語を書き記さねばならないことは俗悪だ。野望のデイドラ公のことを耳にした者ならすべて知っているだろうが、彼こそが全世界の正当なる支配者だ。どんなデイドラ公も彼の機知には敵わない。どんなデイドラ公もカミソリを統べる者のように世界を賢明に導き、浄化する精神的な強さを備えていない。どんなデイドラ公もメエルーンズ・デイゴンの栄光には及ばない。この栄光の物語を書き記す罪を犯したため、この仕事が終わったら、自らを彼の怒りの炎に投じねばならない。

交わした取引に対するはメエルーンズ・デイゴンの尽力と力を披露するため、まずは炎と洪水の王と付呪師アレバスの物語から始めよう。アレバスは炎の暴君を呼び、彼女の最大の儀式を披露するのと引き換えに領域を借用しようとした。彼女は必要な材料を集めた。そこには自然の恵みや定命の者の創造物も含まれていた。一方、デイゴンには結界に彼の力を込め、魔法が誕生するのを見守るように依頼した。

アレバスは、デイゴンに「我が安全を保障せよ」という取引条件を提示し、彼は承諾した。準備が整うと、アレバスは砂浜に図を描き、波の力を呼んで、死者と腐敗した木々を復活させる力を借りた。

儀式がアレバスが想定したより大きな力を水から引き出すにつれ、水は引いて行った。海の中央から山のような大波が殺到してくるのを、彼女は怯えて見ているしかなかった。

デイゴンは取引を思い出し、素早く呪文を放ち、海の力に対抗した。向かってくる波よりも高く炎が膨れ上がり、盛り上がった水は蒸気に変わった。アレバスが気がつくと、自身は焼けた森と潮だまりの入り交じった浜辺におり、無事だったことに気づいた。季節が一つ過ぎ、全ての腐敗した木々は元気に育ち、枝は茂った。

これはまさにメエルーンズ・デイゴンの力の栄光と、取引を結んだ相手への尽力を示している。変化のデイドラ公は血と苦痛で代償を払わせることで知られている。彼と関わった者はみな、この世界は痛みと苦しみが常に存在していることを承知し、定命の体が滅ぶ衝撃を通り越した者たちだ。だがメエルーンズ・デイゴンは取引を裏切らない。デイドラ公と取引をする時は、賢く要領よく立ち回れ。さすればデイドラ公が慈悲を垂れてくださる。

メエルーンズ・デイゴンの叙事詩、第2巻Epics of Mehrunes Dagon, Volume 2

目覚めの炎教団の歴史家、ヴァレンタイン・リオレ 著

この書の前巻は私の即座な死で終わらなかった。ただし高貴なる王の行いと御業を書き記したという僭越さによって、我が命は奪われて然るべきだ。私はさらなるメエルーンズ・デイゴンの物語を書き続けることに決めた。この著作が破壊のデイドラ公の遠謀を高めず邪魔になるようなことがあれば、私は喜んでその生命を再び彼の怒りの炎に引き渡そう。デイゴン卿、どうか心置きなく我をいずれ罰したまえ。

さて、デイゴンの戦闘での信じがたい勇ましさを知っているだろうか?洪水と炎の王の業に関して、畏怖の心をかき立ててやまない物語は枚挙にいとまがない。モーンホールドはデイゴンの怒りを買い、破壊されたことを忘れていない。有名な過去の勝利を蒸し返し、我が王の周知の機略をうそぶくのではなく、新しい物語を語ろうと思う。戦いと、血と、勝利の物語を。デイゴンが恐るべき戦いに打ち勝ち、忠実なる者をモラグ・バルの虜囚から救出した物語を。

コールドハーバーの奥深くで、デイドラの監督官に厳重に監視され、真の信仰者の一団が苦しめられていた。意識ある限り彼らは苦痛にさいなまれたが、メエルーンズ・デイゴンこそが真実であり、彼らと共にあると確信していた。信仰者たちは彼の炎を頼りに暖を取り、捕らえた者どもに破壊的な変化をもたらすため執念を燃やした。この信心深く、先見の明のある定命の者は誰一人としてコールドハーバーから逃れられると思っていなかったが、機会さえ巡ってくれば信じがたい破壊工作と殺戮をやってのけられると信じていた。そこで、彼らは時節を待った。策を練り、血と破壊のデイドラ公に祈り、襲撃の機会に備えた。

一部は信仰を失った。彼らの決意は神聖なる海の星々のように砕けてしまった。だが一団の中でも最も正しき者たちは信仰にすがり続けた。その決意と献身は彼らに信じがたい爆発を授けた。大地を揺るがす魔法の奇跡によって、監督官たちは苦痛を与える器具を取り落とした。一団は団結して飛び掛かった。彼らの襲撃の後には炎が尾を引いた。忠実な一団が苦痛を与える者たちへ反撃したのを目にして、他の囚人たちも立ち上がって彼らに加わった。

定命の者たちの頭上、デイドラとコールドハーバーの山の向こうから見下ろしていたのは大崩壊の父だった。デイゴンの振るう剣は素早く鮮やかで、その腕が霞んで見えた。モラグ・バルの凶悪な尻尾が大地を薙ぎ払い、苛立ち紛れに定命の者や手下を叩き潰した。デイドラ公たちはぶつかり合い、互いを打つ音が雷鳴のように領域中に響き渡った。

最終的に、モラグ・バルが勝ったように見えた。魂の収穫者は山羊のような頭を上げ、憤怒の雄叫びをあげた。一瞬、全てが静寂に包まれた。地表の争いは奴隷たちとデイドラの監督官が共倒れになって終わった。彼らの手は血が流れる耳を押さえつけていた。デイドラ公たちが戦っていた場所に近すぎた哀れな連中は、瓦礫に埋もれていた。彼らは雄叫びの力で、体が粉々になったのだ。

だが、斃れた者たちの遺体の中にデイゴンの真の信仰者はなかった。彼らはデッドランドの熱で目を覚ました。最も賞賛されるべき者は、幻影だけでデイドラ公と戦ってのけながら、彼らをモラグ・バルの束縛から逃れさせたのだ。だから我々は、メエルーンズ・デイゴンに従っているのだ。

ルーセントの教訓Lessons on Lucents

ヘクソス家主任研究員、ロガナス・アティウス

どこかの時点で、定命の者にはファーグレイブの数多くの謎が決して解けないと諦めるべきだ。サラアス・トングの発明家は長年オブリビオンの謎を解き明かそうと頭をひねってきた。はっきり言うが、その割に彼らは大した成果を上げていない。デイドラのガラクタの山を築く過程で、何人か魔術師が正気を失っただけだ。

私はもっと単純な提案をしたい。ファーグレイブの隠された真実に対して根本的な理解を深めようとするのではなく、単に利用方法へ注力すべきなのだ。使い道があるものなら収集する。複雑すぎるなら処分する。冷徹な実利主義は当家の尊い資質だ。我々はデイドラ遺物調査にもこの原則を当てはめるべきだ。

これまで見た中で最も有力な研究対象は、デイドラの「ルーセント」だ。このクリスタルは魂石に似ており、同様の働きをし、素人にも分かりやすい。無論、その類似性はほとんど表面的なものだ。我が主任研究員によると、力を保存して放出する能力の他は、魂石とほとんど共通点がないそうだ。

そこに何が収められているのかについては諸説ある。魔術師の中には何らかの「デイドラのマジカ」が入っていると考えている者もいる。ヴァヌス・ガレリオンに属する者たちは特に、魔術はマグナスに由来するもので、その考えはバカげていると言う。リッシニア・カタラスという魔術師は、その相違を「ムンダスの球」説で切り分けようとした。彼女は「オブリビオン魔法」が原初の神々による創造の残滓だと提案する。マグナスとその仲間が定命の者の世界の天空を割った時に放出された、創造の力の波のようなものだと言う。確かに頭が痛くなるテーマだ。私が聞いた最も説得力のある説は、「オブリビオンの明確なダイナミズム」に関連していて、これはオブリビオンに姿と基本法則を与える普遍の力のようなものだ。その出自も、本質も、どう計測するかも分からない。だが前にも言った通り、我々の焦点は実用性だ。それでうまくいくことが分かっている。

このクリスタルの出所は分からないが、きっとスカイシャードのようにオブリビオンの様々な領域へ降ってきたのではないかと思われる。そのままの形でも微弱な力を含んでいる。そこに再充填する手続きには「ディナマスの源」というアイテムが必要になる。我々はこの物体を作成する術をまだ学んでいない。だが、スカーフィンの仲間であるピラゴスから十分な量を購入できた。ルーセントを源の空洞に入れればクリスタルは充填される。恐らくピラゴスは冗談のつもりだったのだろうが、源にはある種の精霊がいて、その力をルーセントに吸い出しているらしい。軽口だったのだろうが、デイドラの言うことは判断に困る。

充填が完了したら、その力を「放出台」と呼ばれるデイドラの装置で解放できる。デイドラはこの力を多様かつ巧緻に利用する。扉を開け、障壁を作り、排除装置の原動力にする。繰り返すが、クリスタルを挿入するプロセスは分かりやすく、展開しやすい。

この品をできるだけ多く集めて、我々の保安機構に組み入れる方法を模索するよう提案する。繰り返すが、ファーグレイブの謎は多い。だが、何よりも喫緊の謎とは、ヘクソス家のさらなる繁栄のために我々が利用できるガラクタがいくつあるかということだ。ルーセントは、ファーグレイブのより大きな力を解放するための鍵かもしれない。

ロブヒールの手紙Robhir’s Letter

大好きなロウィナへ

君の側を離れていると、毎日が灰色だよ。やるべきことはマダム・ウィムの助手のナスに奇妙な次元石を届けるだけだ。それで全てがうまくいく。僕が契約を交わせば、一緒にファーグレイブでの生活を始められる。

もっときちんと説明しないとな。愛しい人よ、僕はマダム・ウィムというデイドラと契約をしたんだ。ある品を彼女と仲間のもとに持ち込めば、結構な金額を支払ってくれる。

僕がアルビス収集団に入りたがっていることは知っているだろう?たとえ能力があの名誉あるグループへの入会に及ばなかったとしても、マダム・ウィムに気に入られれば絶対に考え直してもらえると思う。

また君に抱きしめられて過ごす日を楽しみにしてる。
愛を込めて

ロブヒール

ロングハウス帝との謁見Audiences with the Longhouse Emperors

元老院補佐センタナス・マーリンの回想録より

初めてロングハウス帝の御前に出たのは若い頃だった。私は帝国元老院の補佐見習いで、ブラック・ドレイクのダーコラクが権力の座に就いた直後のことだった。当時は動乱期だった。冷徹で残酷なリーチの民による支配という現実に、帝国の流儀と伝統をすり合わせようと努力していた。仕えていた評議員の後ろに控えて、皇帝が日常の御触れを出すための羽ペン、インク、羊皮紙を用意しつつ、必死に手の震えを隠そうとしていたことを覚えている。ブラック・ドレイクがいかに我が帝国を征服したかをつぶさに聞き、怯えきってはいたが、ダーコラク皇帝の必死な努力には気づかざるを得なかった。明らかに彼はまともな教育を受けておらず、帝国宮廷の文化や手続きについてほとんど何も知らなかった。しかし、彼は帝国人として振舞おうと務めた。彼は正式な手続きを指南するよう求め、不慣れさと苛立ちが明白ではあったが、謁見の際に殺害した補佐は1名だけで済んだ。その行為によって、偶然にも私の見習い期間は前倒しで終わった。補佐としてダーコラクの御前に立つ機会は、片手で数えるほどしかなかった。彼は懸命に努力したものの、粗暴な本性を捨て去ることはどうしてもできなかった。

ブラック・ドレイクの息子にして後継者であるモリカルはまた別だった。彼はリーチとシロディールの双方の特質を兼ね備えた、強く有能な指導者だった。帝国の教育で育ったおかげでリーチの出自を和らげることはできたが、消し去ることはできなかった。モリカル皇帝は帝国宮廷の政治的な機微をつかみつつ、父親を恐ろしい存在たらしめた獰猛さと非情さも見せつけた。だがモリカルに対する恐怖には畏怖の念も含まれていた。彼は皇帝ごっこに興じる蛮人以上の存在で、な武力と狡猾な知恵の双方で統治した。彼の玉座の間に入った初日、私はその双方が活かされているのを目の当たりにした。彼は後見役のアブナー・サルンとロヴィディカス評議員と議論を戦わせ、ハイロック地方の戦役でダーコラクが戦死したことを踏まえ、当該地方を服従させる最良の手段を論じた。彼はサルンとロヴィディカス双方が様々な選択肢のリスクと利益を並べるところに聞きいった。しばし考えた後、ダガーフォール・カバナントを独立国とみなす宣言を発布する準備を私に命じ、サルンには帝国の西側諸国との和平交渉を命じた。「あの頑固な地方を服従させるため、これ以上命を投げ出すわけにはいかない。かの地は我が父がはまった泥沼だ。私まではまるわけにはいかない」

モリカルの息子のレオヴィックがルビーの玉座に登極した時、私はずっと年老いていた。彼もまたアブナー・サルンの弟子だったが、完全に帝国式の考え方で育てられていた。彼はリーチをほとんど訪れることなく、帝国の中心で富と豊かさがあふれかえった生活にだけ触れて成長した。ロングハウス帝の中では最も洗練された人物で、最も帝国的だった。中には彼を軟弱で頭でっかちと思う者もいたし、甘やかされたとまで言う者すらいた。しかし、彼の芯は父や祖父と同様に鉄でできていた。単にそれをビロードの手袋で隠していただけにすぎない。即位後、初めて謁を賜りはっとした。宮廷はロングハウス帝が台頭する以前に存在していた宮廷のように感じられた。リーチやリーチの民の慣習が話題に上ることはほとんどなかった。少なくとも最初は。後日、拝謁(その時には上級補佐を務めていたのでより頻繁だった)した時には、その考えを改めた。レオヴィックが自身のルーツを受け入れるようになっていたのだ。当初は一時的に熱をあげているだけのように見えた。リーチの呪物や、ダーコラクやモリカルが好んだレシピを再現するように厨房に注文する具合だった。やがて物事はひどい方向に急転換した。レオヴィックがデイドラ公に捧げる偶像や祠を玉座の間に作ったのだ。明らかに彼は、直に触れたことのない伝統と文化に憑りつかれていた。そしてその妄執が、残念なことに、最終的な破滅をもたらした。

ロングハウス帝秘史Secret History of the Longhouse Emperors

ヴァンダシア評議員 著

ブラック・ドレイクのダーコラク。その死から何年経ても、その名は恐怖と絶望を呼び起こす。第二紀485年頃に生まれた彼は、リーチで権力を手にした。まず20代後半で族長としてクランを導き、1万の戦士に号令する武将となった。タグ・ドロイロック魔術結社の助力で彼はデイドラと手を結び、その力を強大かつ確固たるものへと成長させた。第二紀529年、ダーコラクとその軍勢は競合クランを下してリーチを支配すると、シロディールを目指して南へ進軍を開始した。

ダーコラクが勝利とリーチの外の領土を手中に収めるにつれ、帝国の支配層に潜む帝国貴族の同調者と隠れデイドラ信者が彼に手を貸しているという噂が広まった。この支持者たちの協力によって、彼はルビーの玉座に座って幾世代も支配するという契約をメエルーンズ・デイゴンと交わしたようだった。この取引には何らかのデイドラの武器の取引が関わっていたと言われているが、確認することも裏付けることもできなかった。第二紀533年には、ブラック・ドレイクとリーチの民の軍勢がシロディールを征服した。そしてロングハウス帝の治世が始まった。

ダーコラク皇帝はその巨躯と剣の腕前に、獰猛な気性で知られていた。話し方や作法に現れる明らかな出自は決して改められなかったが、それでも彼は帝国文化を吸収しようとした。第二紀534年に彼は新たな元老院を立ち上げ、息子のモリカルの教育係を選び出した。そしてリーチの感性と帝国文化を統合し、シロディールでの支持拡大に務めた。同年、彼はニベン人の有力者であるサルン家のヴェラクシア・サルンを妻にした。これも帝国とのつながりを深めるためだった。

ブラック・ドレイクは過去の勝利に満足することを拒み、さらに多くの領土を獲得するため進軍を続けた。第二紀541年、彼は軍勢を引き連れてクラグローンを抜け、エバーモアへ達してウェイレストに対する長い籠城戦を始めた。最終的には相手が降伏しないことにしびれを切らし、ダガーフォールに注意を向けた。これがブラック・ドレイクの破滅をもたらした。ダガーフォールの門で阻止されたダーコラクとその軍勢は、カンバーランドのエメリックとその軍勢に背後から奇襲された。そこで始まった戦闘でブラック・ドレイクは倒れたと言う。伝え聞くところでは、エメリック自らが討ち取ったそうだ。

大方の期待に反して、ダーコラクの死はロングハウス帝の治世を終わらせなかった。ダーコラクの忠臣たちはまだシロディールを押さえており、すでに玉座の懐刀となっていた息子のモリカルは、帝都で父の崩御の報に触れるや帝位に就いた。23歳のモリカルは、10代で帝国の教師に引き渡されるまで生粋のリーチの子として育てられ、その父にはできなかったやり方で二つの世界を行き来した。続く第二紀542年、モリカル皇帝自身の嫡子が生まれた。その名をレオヴィックという。

彼も、その父モリカルのように、多くのデイドラ公との契約を履行し続けた。その中にはメエルーンズ・デイゴンと交わした取引もあった。モリカルがさらなる領土の拡大を模索する最中も、準備と儀式は隠されたデイドラの司祭たちによって内密に続けられていた。第二紀561年、モリカル皇帝と息子のレオヴィックは少数の例外を除いて立入禁止となった帝国宮殿にほとんど引きこもって暮らすようになった。振り返ってみれば、彼らは待望のデイドラの武器を創造するため、メエルーンズ・デイゴンに究極の犠牲を捧げる儀式を行う準備に追われていたのだろう。1年後、彼らはようやく姿を現わした。その時、モリカルは次の征服の準備を始めていた。すなわち西スカイリムの征服である。

第二紀263年、モリカル皇帝は軍勢を率いてリーチを出ると、スヴァーグリム上級王の領土へと侵入した。ソリチュードの門に迫るまで、彼らは一切抵抗を受けなかった。そこでスヴァーグリム上級王の大軍はモリカルの軍勢に殺到すると、一戦で壊滅させた。モリカルは帝都に帰った。敗れ去った彼は重傷を負っていた。帝国とリーチの治癒師双方が最善を尽くしたにもかかわらず、モリカルが回復することはなかった。第二紀264年に彼が崩御すると、息子のレオヴィックが後を継いだ。

レオヴィック皇帝はロングハウス帝の中で最も帝国風だった。帝都で生まれ、主に帝国の教師に育てられ、父や祖父のようにリーチで培った経験がまったくなかった。しかしながら彼はリーチ式の修行を多少は施されており、教師陣にはアイスリーチ魔術結社の者たちと「ネズミ」としてのみ知られるリーチの民の協力者も含まれていた。まだ彼が王子だった頃、国境を脅かす襲撃者に対して素晴らしい戦果を上げて凱旋すると、父にどんな褒美がほしいか尋ねられた。ためらうことなく、レオヴィック王子はアブナー・サルン議長の娘クリビアとの婚姻を求めた。皇帝となったのち、彼は父とともに着手した極秘計画の監督を続け、最終的にはリーチ人としてのアイデンティティを完全に受け継ぐ決意をした。時が経つにつれ、彼は奇矯になっていた。第二紀576年にデイドラ崇拝を合法化すると宣言したことで、さらに帝国の民の反感を買い、ヴァレン・アクィラリオスの反乱を誘発した。

第二紀577年、ロングハウス帝の治世はヴァレンが帝国宮殿に突入してレオヴィック皇帝を殺害したことで幕を閉じた。ヴァレンは帝位に就いたことを宣言し、シロディールに残っていたリーチの民はリーチへと帰っていった。

悔悟者の物語The Penitent’s Tale

入信者ヴァーニー・モーロルド 著

洪水と火の王に対して背信を働いたために陥った現在の窮状を語り、減刑を嘆願する。

私の過ちは以下の通りだ。

第一に、私が放った炎はあまりに小さかった。

第二に、王が必要とするものを察しようとした。

第三に、メエルーンズ・デイゴンの名において私が実行した破壊は、他のデイドラ公に従って引き起こした被害を超えられなかった。

この失敗によって我が命は終わり、責苦が確定した。炎が足りなかったゆえに、私は熱に囲まれている。王の御心を察しようとした不遜さゆえに、心正しき侍者は私に苦しみが必要であると察し、気が向けば私に苦痛を与える。破壊的傾向が足りなかったゆえに、私は破滅した。

こうした特定の苦しみの他にも、我が王の広大なる領域が我が足を焼いている。あらゆる居住者が我が苦しみを喜ぶ限り、私に安息の場所はない。私が唯一安らげるのは、彼らが私の悲鳴に飽き、他の犠牲者のもとへ行く時だけだ。他の罪人は英雄が助けにくると信じている。格別に勇敢な家の一員や、デッドランドに踏み込むことを決意した傭兵などだ。私はそんな妄想は抱かない。私はすでに王に見放されたと思っているが、お怒りが解けていないことを知っている。私はお仕えしている間、ずっとデイゴン卿の信頼を裏切り続けていたのだ。彼は私を解放しない。

改良型”変異”モデルImproved Cataclyst Model

グリーフ砦での実験で”分裂した変異”がうまく動作し、無事に転生者を作り出せることが証明されたものの、その工程は未だ遅く困難だ。シスター・セルディナは転生者の作成が一度に一体であることと、あまりにも多くの試行で完全に失敗することは許容できないと明言している。メエルーンズ・デイゴン卿が要求しているのは多数の生きた災厄で、ほんの一握りではない。

私は盲目の予言者の設計を分析し、成功率を大幅に高め、培養期間を短縮すると思われる数多くの改良点を割り出した。私の指示により、魔術師たちが共同して改良型”変異”と呼んでいるものの4分の1スケールモデルを組み立てた。これまでのところ、試験でモデルの動作は申し分ない。

次の段階ではフルサイズのドレモラで試験する。新たな設計ではシスター・セルディナの構想を完全に実行し、デイゴン卿が要求する数字の達成が可能になると確信している。

破壊者ノミオ

看守の本日の命令Warden’s Orders for the Day

指示に従わない者は処分する。

1. 再びヴァルキナズ・ノクブロズが、老いた盲目の定命の者を尋問に来る。彼からの質問には全て答えること。特にデイゴン卿のドレモラの囚人について問われた場合は確実に返答すること。諸君の間で交わされた会話は、一言も漏らさず報告すること。

2. 幽閉房内にはヴァルキナズが使用する霊薬を十分に用意しておくこと。さらに作る必要がある場合は、至急私に報告すること。

3. 現在、制圧者フィヴァクスが幽閉房の扉を警護している。彼は私の許可なく扉に近付いた者を、全て殺すよう命令を受けている。注意するように。

看守ファスゾン

矯正施設の登録The Reformatory Register

恵雨の月の収容者記録

名前 措置 日付

ノリメリアン 勧誘 第一日耀

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ヴィットリア・ルルス 再教育 第一月耀

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デクシオン・クロシウス 鞭打ち 第一火耀

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オソ・ママナス 再教育 第一央耀
サビナ・メッサーラ 重労働 第一央耀
カミラ・ヴォルスス 再教育 第一央耀

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ピビハ 勧誘 第二日耀
(困難そうに見える。重労働予定)
クリステラス 勧誘 第二日耀
バルガス 勧誘 第二日耀
デルヴィン 勧誘 第二日耀
カルリッシュ 勧誘 第二日耀

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グラニル 再教育 第二月耀
スタル 再教育 第二月耀

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マルティナ・ホラティウス 鞭打ち 第二央耀
タイナン・ネイサンズ 鞭打ち 第二央耀

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ウェイキン 再教育 第二木耀

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アナンミル 勧誘 第三日耀
ヴィスチャ・タ 勧誘 第三日耀
ナイジシャン 勧誘 第三日耀
ゾエ・レイノ 勧誘 第三日耀

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アルフェ・ファラヴェル 再教育 第三月耀
(4回目の収容。教官は排除を選択)

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スカヴォルフ 重労働 第三火耀
フィニス・レン 再教育 第三木耀
キール・キラヤ 鞭打ち 第三木耀

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オリン・ブレナー 再教育 第三金耀
ハジン 再教育 第三金耀

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クド・テイ 勧誘 第四日耀
アバハジ 勧誘 第四日耀
ガルヴォーチ 勧誘 第四日耀
(有望そうに思われる。コースを加速した)
ウッカ・サ 勧誘 第四日耀
ヘルヴェンヌ 勧誘 第四日耀

* * *

苦情の手紙Letter of Complaint

シスター・セルディナへ

根拠のない懸念を取り上げるのは好みませんし、この問題に具体的な対策がないとなればなおさらですが、我らの大いなる目的が邪魔されるのを傍観しているのは耐えられません。あなたに注意を促したい問題とは、ブランドファイア矯正施設をうろつくデイドラのことです。彼らは自分たちこそが炎と苦痛のデイドラ公の真の下僕だと思っています。我々が働く間も、彼らは隅に立って常に我々を監視しているのです。手際が悪く、メエルーンズ・デイゴンの熱を受け入れるに値しないとして、新人を排除した者さえいるのです。

これが越権行為であることは説明するまでもないでしょう。あのデイドラたちは矯正施設の責任者のように振る舞っているのです。許しがたいことです!確かに、ここがメエルーンズ・デイゴンによる懲罰の場所として使われていることは理解していますが、我々の作業はそんな古い役割よりも優先されるべきです。彼らのリーダーと話し、矯正施設から、でなければせめて我々が利用している区域からのデイドラの退去を命じて頂きたい。定命の者だけの警備隊を創設し、我々のやり方には口出し無用としてほしいのです。あなたに指図をするつもりはありませんが、デイドラたちは私の仕事を妨害しています。

私のやり方はこれまで成功してきたし、あなたにも賛同を頂いています。それについて、絶えずケチをつけられるのは我慢がなりません。

ブランドファイア矯正施設、上級監督官

継承者モリカルの秘密Secrets of Moricar the Inheritor

破壊者イレニアン・ダスト 著

モリカルが皇帝として成し遂げた全ての事柄の中で、最も重要な成果は未だ語られていない。父ダーコラクとメエルーンズ・デイゴンとの長年におよぶ契約の誠実な履行と、ロングハウス帝の秘密だ。

ブラック・ドレイクはシロディール征服以前から破壊のデイドラ公と50年間の取引を結んでおり、後継者がそれを維持することが約束されていた。第二紀541年にダーコラクが没すると、モリカルは占領地と父の負債を共に受け継いだ。

その後、モリカル皇帝は破壊のデイドラ公と自身の契約を結んだ。彼はメエルーンズ・デイゴンに有名な予言者を提供した。モリカルは様々な手段を駆使して、デイゴンがニルン中に変異を発生させ、定命の者の世界の支配を可能にする手法の構想を、この予言者が生み出すよう仕向けた。結果として、メエルーンズ・デイゴンの忠実なしもべは豊かな報酬を獲得し、モリカルの血筋はあらゆる定命の者に勝る力を手にした。

第二紀564年にレオヴィックが玉座を継ぎ、父親の契約を継承した。だが、ロングハウスの後継者は彼だけでない。自分の血統を確実に維持するにはメエルーンズ・デイゴンとの契約が不可欠であることを理解していたモリカルは、複数の妻を娶り、数多くの子の父となった。彼が認めた子も認めなかった子もいる。中には誰の血が流れているのか、本人すら知らない子もいる。

血の穴の囚人名簿Blood Pit Prisoner Roll

〈血の穴に収監されている囚人のリスト。リストの最上部付近に「エレギアン」と名があり、「特別な命令により、牢獄の南西区域にある幽閉房に監禁」というメモ書きがある。

リストの最下部に近い「非公開囚人」の下には「切断者アロクス」の名があることに気付くだろう。名前の横には、「脱走した。もしくは定命の者の囚人に食べられた。いずれにしてもヴァルキナズ・ノクブロズには言うな」と書かれている〉

最初の収集団The First Gleaner

一定の地位を持つ収集団の間で「交換」されるメモ(互いに盗み合うという意味。盗まれても気分を害さないこと。このメモはそういうものだ)。組織の後任に自分の知識と経験を伝えるため、ハリーファイアがこの書にメモを集めた。

* * *
エルジグへ

我らが愛するリーダー、ピエロン・デサントのことは何から話すべきか…そうだな、まずあの男は何も肯定しない。むしろ彼が何かを認めたら、完全な嘘と思っていい。私が彼の素性やファーグレイブに来た理由について知っていることは、あの男と関係のあるドレモラやスパイダーキスから得た情報だ。彼はあるキンリーヴから、ファーグレイブのポータルの秘密を盗んだらしい。そして2週間過ぎるまで、誰もあの男の正体も、よそ者だということも分からなかった。ようやく捕まった時、彼はファーグレイブ中とグラスプから盗んだ大量の財宝を抱えていたため、キンリーヴもこの男を滞在させざるをえなかった。でないと、この定命の大盗賊に面目を潰されてしまうからだ。

ハリーファイア

* * *
ハリーファイアへ

とんでもない嘘っぱちだ。この者は今までこんな酷い嘘を読んだことがない!ストリクチャーのグラスプは財宝など持っていない。ピエロンがファーグレイブに来たのは、どこかの教団の生贄にされそうになって脱走してきたからだ。名前は忘れたが、わずかに生き残っている教団員がまだ彼を探していることは知っている。奴らは彼の血をサングインに渡すと誓い、それを果たすまで休むことはない。だからピエロンはニルンに戻らないんだ。ポータルに足を踏み入れた瞬間、教団のリーダーに見つかることを恐れているんだ。

エルジグ

* * *
エルジグへ

何を言っている?ピエロンがニルンに行かないって?彼はすごいお宝を持ってハイ・アイルズから戻ってきたばかりだよ、この嘘つきめ!グラスプがもう財宝を持ってないのは、手癖の悪い我らがリーダーのせいだって考えたことはないのか?ないだろう。あんたの頭は壊れたドゥエマー・スパイダーよりも働かない。それから、この手紙を盗むのはめちゃくちゃ簡単だったよ、エルジグ。あんたは読めないだろうけど、他の皆には知らせてやるよ。

ピエロンに関しては、どうして自分の考えを紙に記すなんて馬鹿なことをするのか理解できないね。ピエロンはこれまでバザールに来た中で最高の収集団なんだ。彼がこの紙の存在を知ったら、一瞬で盗まれるよ。おふざけも大概にしな!

ステファニー・ラフォーン

* * *
この手紙を次に読む者へ

私がいつも聞いている話によれば、ピエロンはそもそも定命の者ではない。彼は自分の領域から脱走したデイドラで、オブリビオン最大の宝物庫を築くことを目指している。彼が年を取らず、怪我もしないのはそのためだ。とにかく、私はそう聞いている。

ウィ・ジャ

* * *

ウィ・ジャへ

馬鹿げている。ファーグレイブで最初の収集団が、今我々の仕事を監督しているピエロンと同一人物だったはずがない。彼がエルフの血を引いているのでもない限りは不可能だ。ピエロンは彼の一族の名だ。一族の男子は姿を隠して父親から技を学び、十分に成長して髭をたくわえたら、その中の誰かがピエロン・デサントの名を受け継ぐ。だからピエロンの髪の毛は15年ぐらいすると劇的に変わるのだ。これが真実だ!

ガルンフェリオン

* * *
全員へ

お前たちの突拍子もない話は全部間違っている。あるいは本当かもしれないが。

PD

* * *
ピエロンへ

お前は恥知らずだ。

星を縫う者

* * *
全員へ

信じる奴がいるかどうか知らないが、このメモは私の手を離れていない。私はこれを夜の間、枕の下に隠していた。ピエロンにも星を縫う者にも、これを奪う時間や機会はなかった。私はもう何年もの間、我らが創立者の正体について考えを巡らせていたし、このメモには定期的に目を通している。毎日読んでいるんだ!私の頭がずっと上に乗っていたというのに、一体どうやってあの二人はメモに書き記すことができた?

ガルンフェリオン

四重の怒りの祈りPrayer of Fourfold Wrath

おお、破壊のデイドラ公!高貴にして強大なる王よ!洪水と火の王よ!あなたが選ばれたしもべの祈りを聞きたまえ!

あなたの力強い足踏みが大地を揺るがし、信心なき者の塔を打ち崩さんことを。力によって築かれしものは試練に耐え、砂の上に築かれしものは崩れ去る運命なれば。

あなたの溶鉱炉のごとき吐息の下で、森や街が炎に包まれんことを。邪悪なる者は火の中で滅し、徳ある者は浄化され清められるように。

あなたの赤き四本腕の命により、東西南北の川が価値なき者どもを押し流さんことを。あなたの言葉を聞かぬ者は溺れ死に、あなたの警告に耳を傾ける者は救われるように。

あなたの至高なる眼の一瞥により空が割れ、その眼に映る忌まわしきものに稲妻が降り注がんことを。勇気ある者は嵐を切り抜け、臆病者は風が吹かぬ時でさえ恐怖に飲み込まれるように。

変異の父メエルーンズ・デイゴンに称えあれ!あなたのしもべを大地と火により、水と風により試したまえ。我らがあなたに仕えるにふさわしき力を示せるよう!この祈りを聞きたまえ!

捨てられた日記Discarded Diary

デストロンがいないと、すべてが奇妙な感じだ。カリアが恋しがっているのはわかっている。私も同じだ。3人いればあらゆることを制御できるような気がしていた。血と力で結ばれた、3人の野望で。ヴァンダシアがデストロンを殺してから、すべてが変わった。

これまでの全ての研究がここに導いた。デッドランドの秘密が私に開かれ、この宝物庫の中にはメエルーンズ・デイゴンを理解するために役立つ何かが入っていることがわかっている。私たち自身の理解に役立つだろう。探していた答えがすぐ目の前にあるのに、見ることができない。

私の力で何とかカリアと私がこの隠し部屋に来られるようにしたが、どうやらそれが能力の限界らしい。何をどう試しても、宝箱は私の言うことを聞かない。野望の力に耐えるとは、一体どういった防護が施されているのか。

答えを求めて徹底的に本を調べたが、そこから自力で学べることはごくわずかしかない。少なくとも今のところ、ここは安全に調査を続けられる場所だ。カリアはじっとしていられないのだろう。手伝いたがるが、今ひとつわかっていない。責任の一部は私にある。彼女を守るため、立ち入らせないようにしていたからだ。私たちがこの旅を始めたのは、彼女に自分の力の制御を学ばせるためだった――こんなにも自分自身や、野望の力全体について知るとは予想もしていなかった。とても私には整理できない。彼女に説明を試みることなど想像もできない。少なくとも、今はまだ。私がわかるまでは。

この本の中には、これ以上望めないほどの答えがあることはわかっている。だが内容を読むすると、湿った砂の中を歩くような感覚がある。いたる所で私に抗う。真実を発見したと思うと、徐々に離れ、濁ってしまう。

「我が元に来るか、死か」。彼を止められなければどうなるか、メエルーンズ・デイゴンは明確に示した。だが、そのためには自分たちを理解しなければならない。力を支配しなければならない。それが前に進む唯一の道だ。私たちの中にある、この恐ろしく底知れない力が鍵となるはずだ。これが全ての錠を開ける。とにかく時間がもっと必要だ。

もっと時間が。

主任監督官の命令Head Overseer’s Orders

目覚めの炎の侍者とパイアに次ぐ

デッドランド中で、道を踏み外した目覚めの炎教団の信徒をくまなく探せ。それと知らずに献身の熱を求める、新たな祝福の子もだ。

破壊のデイドラ公の計画は最終段階に近づいている。これまでの我々の仕事は、この後のための焚きつけのようなものだ。もう勧誘を控える必要はない。

どんな手段を使うことも許可する。強要、暴力、脅迫。仲間を増やすためなら何をしてもいい。恐れるな。ブランドファイア矯正施設に連れてこられた新入りは気高く、勇敢なメエルーンズ・デイゴンの下僕として生まれ変わる。

成功の報せを待っている。

ブランドファイア矯正施設
主任監督官

狩りの儀式Rites of the Hunt

私は蔵書庫を守る者。デイゴン卿の知識の番人にして確信の塔の番人。

私は力を宿す。メエルーンズ・デイゴンに授けられた贈り物。知識を吸収する力。一度源を消化すれば、私の存在の一部となる。

私は源を狩る。あらゆる源を。全ての知識を。私は聡明になる。よりよい守護者となる。守るべきものを理解する。

私には代価がある。我が主は契約を好む。一度標的を定めれば他のものはない。誓いを果たすまで、私が造り出した血、魂、魔法のオーブが唯一のものとなる。それからまた他を探そう。

この代価を受け入れよう。失敗は許されない。私は全てを知り尽くす。

商品の回収命令Merchandise Retrieval Order

優先度:至急

オークションハウスの職員へ

ガレリア・ヘクソスの命令により、「品目M-62124—黒檀の刀剣」のオークションと販売を延期します。テルヴァンニ家の一員がこの品に対して過度に興味を示しているため、上層部はこの魔術師がファーグレイブを去るのを待って販売を進めるべきだと判断しています。

品物を梱包し、輸送の準備をしてください。本日中にスカーフィンの工作員、ヴリーゴとヒゾラが回収に来ます。今後の問い合わせは全て職員事務所を案内してください。

ヘクソスの名において
フラヴィア・モレナ

消費の誓約Vow of Consumption

カルマー・クランを食らい家の知識を得るために立てられた誓約

私は定命の者の家という概念をより深く理解することを欲し、吸収すべき知識の適当な器を選んだ。

カルマーというオークのクランがニルンの平原に住み、アトロズという存在を生み出している。彼らの団結と家の絆によって、この獣が生み出される。

メエルーンズ・デイゴン公に与えられし力に賭け、アトロズを吸収し、それによって求める知識を得ると誓う。さらに、我が狩りが終わるまでに出会ったカルマーの魂も貪ろう。

この誓いと共に、標的のもとへ私を導いてくれる新たな誓いのオーブを召喚する。失敗すれば、我が体は灰となって霧消し、デイゴン公に二度とお仕えできなくなってもかまわない。

焦げた日記Charred Journal

耐えられない。やりすぎだ。目覚めの炎のやり方に馴染めると思っていた。その残虐さにも。だが無理だった。彼らは力を約束するが、信者はメエルーンズ・デイゴンという炎にくべる薪でしかなかった。

罪悪感に苛まれている。彼らを哀れなる者の尖塔に誘い込んでしまった。ここにいる者たちはそっとしておいてもらいたいだけなのに。忘れられたいだけだ。その彼らに疫病を仕込んだ。想像以上の早さで広まった。

私が逃げ出す直前に、愚か者の何名かを大義のために改宗させたと聞いた。街の有力者の誰かだそうだ。あそこを乗っ取るのには、それで十分だったのだろう。

常なる飢えA Constant Hunger

やめはしない

創造の秘密を追い求めることを

全てが虚無になるまで

尖塔が落ちる時When the Spires Fell

雷鳴が剥げ落ち、空が大きく裂けた
仲間を引き連れ、獣がやってきた
聖堂の立つ穴に突進したが
我らは決して屈しなかった

嵐が頭上を渦巻き続ける
獣が外を徘徊する
だが哀れなる者の尖塔に残る
我が希望は生きながらえる

轟音と悲鳴が叩きつけられた
塵の雲が肺に満ちた
叫んでもどこへも行けぬ
頭を垂れ、言葉を控えよ

嵐が頭上を渦巻き続ける
獣が外を徘徊する
だが哀れなる者の尖塔に残る
我が希望は生きながらえる

教えよう、哀れなる聞き手よ
この街は闘争から守るかもしれぬ
けれどいつまでかは誰も知らぬ
生命の縁に立っている

嵐が頭上を渦巻き続ける
獣が外を徘徊する
だが哀れなる者の尖塔に残る
我が希望は生きながらえる

もはや尖塔の鐘は鳴らず
いかなる書にも答えはない
追放者は皆、デイゴンの眼を逃れ
故郷への道を見出すよう祈っている

双子の要塞の幻視A Vision of the Twin Citadels

破壊者イレニアン・ダスト 著

昨晩、炎と洪水の王がかたじけなくも私を選び、かの世界を覗かせてくださった。

夜明け前の静寂の時にそれは訪れた。あまりの鮮烈さにベッドの上で硬直するほどの夢だった。体から切り離された魂は、炎と灰の荒野をあっという間に飛び越した。溶けた岩が川となってカミソリのように鋭い丘の間を蛇行し、頭上では炎の嵐雲が逆巻いている。私の前には強大な要塞の黒い壁が聳え立っている。威圧的な石塔が輪をなして燃え盛る山の斜面にそそり立ち、デイドラの戦士たちが警備している。

「ここは何だ?」。夢の中で私は問うた。展開する幻視に畏怖を覚えつつ。

「お前が見ているのは切望の要塞だ」と大いなる声が轟いて答えた。夢の中の自己は、熱い灰の道沿いの3つの門に引き寄せられ、燃える山の中心へと吸い込まれた。そこには大きなクレーターに包まれた溶岩の湖があった。小島のような玉座に腰かけ、溶岩に足を浸して私を待っていたのはメエルーンズ・デイゴンだった。その巨体は塔のようだ。

ここでの私はただの魂にすぎなかったが、強大なる王の御前にひれ伏した。「お命じ下さい、我が主。私はつまらない虫けらでしかありませんが!」私は叫んだ。

メエルーンズ・デイゴンは微笑んだ。「ならばここで見たものを忘れるな、虫けら」彼は言った。「切望の要塞の門の数を数え、塔を測り、我が巨大な軍団を目に焼き付けよ。定命の殻に戻った時、出会った者全てに我が意のままになる兵力を伝えよ。私は力。不可避の存在だ。私に仕えることでのみ、お前のみじめな命は意味を持つ。来い」

デイゴン卿は燃える灰の雲となり、空へと舞い上がった。私はその後を追い、切望の要塞とその火山を後にすると、第二の要塞へと昇った。こちらは高い山道に聳え、切望の要塞を見下ろしていた。ここに火はなく、溶岩の川もなく、荒涼とした岩を打つ強風が吹き荒れるばかりだった。

私は壊れた壁と黒い門の向こうにある静まり返った中庭へと吸い寄せられた。ここでは誇り高き軍団が戦に備えて整列しているわけではなく、苛まれる亡霊が影に身を潜めているだけだった。屋根のない巨大な広間の廃墟に、デイゴン卿が再び現れ、冷たく黒い石の玉座の上で静かに考えていた。

口を開くのは憚られたが、そうせねばならなかった。「ここで何が起きたのです、我が主?」

「ここは破壊の安置所。切望の要塞の双子だ」とメエルーンズ・デイゴンが答えた。「かつて私は我が領域の全てをここから統治していた。広間には召使と無数の勝利の記念品がひしめいていた。だがその全てを内側から破壊しつくした」

「なぜなのです、デイゴン卿?」恐怖に慄きながら私は尋ねた。

「なぜなら私は破壊であり、それが私のなすべきことだからだ」デイゴンはがらんどうの宮廷で腕を振った。「亡霊を忘れるな、破壊の激しさを思い知れ、我が不変の決意を心に刻め。定命の姿に戻った時、出会ったもの全てにその目で見たものを伝えよ。私の手によってのみ、彼らの最期に意味を与えられる。さあ、行け」

彼は身振りで私の肉体のない魂を追い払った。私はベッドの上で絶叫して目を覚ました。私の目は見てきたもので焼けるようだった。なぜデイゴン卿がお仕えするようになってたかだか9年の破壊者に、かような名誉を与えられることにしたのかは分からない。

だが、私は我が主の命に従うつもりだ。

大司祭への手紙Letter to the High Priest

第二紀563年、恵雨の月11日

偉大なる目覚めの炎教団の大司祭様

以前はお伝えしなかった真実を把握していただくため、この手紙を書いています。教団内での立場はわきまえておりますのでご安心ください。私はただ、メエルーンズ・デイゴンから直接受けた命令に従って行動してきただけにすぎません。

前回お会いした際、あなたは私の子の父親について質問なさいました。私は床を共にするよう皇帝から命令された衛兵隊長だとお答えしました。あれは嘘です。子の父はモリカル。シロディールの皇帝です。

私はメエルーンズ・デイゴンに従って、モリカルの妻となりました。彼が夢に現れて、皇帝の子をなすよう指示されたからです。彼は、子供の血統の真実を誰にも知らせてはならないともお命じになりました――たとえあなたであっても。

今このことを明かすのは、計画の次の段階が私に示されたからです。私は我が子を養育する役目を担うのです。娘が運命を全うする日が来るまで成長に手を貸し、守っていくべきなのです。

シロディールでの私の仕事は終わりました。今度はデッドライトで見習いたちを管理するよう命じられていますが、ご連絡いただければいつでも向かいます。娘の世話に協力するためなら、全てを投げ捨てるつもりです。

デイゴン卿とロングハウス帝の名において
ディサストリクス・セルディナ

嘆願者の歌A Supplicant’s Song

メエルーンズ・デイゴンからの解放が我らの懇願
喜びによりて我らにもたらされた混沌
皆を苦境から許し、穏やかな休息を与えよ
彼が課す全てから逃れ、安全を共にせよ

デイゴンの過酷な炎から逃れるため力を貸せ
彼の激しい害から守る盾となれ
多くのゲームで我らはポーンと扱われ
その破壊的な狙いから皆を守れ

デイゴンの凄まじい刃を鈍らせたまえ
厳粛な粛清による恐ろしき流血を止めたまえ
信徒はおぞましき闘争に酔い痴れよ
彼の命の放散を終わらせよ

デイゴンの災厄から我らを救え
堅固な戸口を越えて支援をもたらせ
野望の鎖の拘束を受けるでない
さもなくば破滅の痛みで消え去る他ない

定命の歌On Mortal Song

書記フォルサルゴールと教師センデル・オマヴェルを見事に狩り、定命の言葉を学んだことで、新たな定命の概念を獲得した。それは定命の歌だ。

それは定命の者が彼らのみに分かる内なるリズムに合わせて、高低様々な音を生み出す奇妙な現象だ。音はどうやら定命の者が好む順序に並べられているようだ。その時、さらに学ばねばならないと悟った。

私はオーブを呼び出した。スヴァクハートという彼らの土地の北部に住まう定命の者を探すためだ。我が魔法と偵察によれば、歌作りで知られた者のようだった。ゆえに私は彼を追い、彼が寝ているうちに気づかれないよう、定命の者が定期的に飲む毒で酔わせた。

歌の知識が私の精神を駆け巡った。岩を飲み込む溶岩のように。音の流れ、様々なテンポ、その魅力に弱い獣を大人しくさせる効果など。歌は実にくだらないものと思えるが、ニルン中にあまねく漂っている。

定命の者は歌の作り手を尊敬し、名誉ある地位に置いている。だが、彼らに食物のため跪くことを強要してその社会的地位を低下させてもいる。こういった矛盾は、定命の者の暮らしの非論理性の好例だ。

さて、ドレモラを呼んで記述させよう。歌というものを試してみたい。

定命の者に関するドレモラの物語Dremora Stories About Mortals

スカルド・ヘルグネアの編纂

ドレモラは定命の者を軽んじがちだ。それには誰も驚くまい。ほとんどの者は我々をある程度見下している。運がよければその憎悪が好奇心に覆われることもあるが、必ずしもそうではない。しかし、彼らの視点(ドレモラの間でも様々に広がっている)はとても面白い。ファーグレイブに滞在していた間、ニルンの者を様々なドレモラがどう思っているのかを調べてみた。不思議なことに調査するうち、実に多くの荒唐無稽な思い込みや物語に出くわした。聞けば聞くほどでたらめな話ばかりだった。ある種の民話といってもいい。最も有名な(そして私のお気に入りでもある)ものをアンソロジーとして集めた。

貪欲な旅人
間違いなく圧倒的人気を誇る物語は、オブリビオンの珍味を探すべく、正体不明の定命の者がファーグレイブにやってくるものだ。デイドラは食べる必要がない。そういった行為の必要性が見下されているようだ。確かに興味を持っている者もいる。ファーグレイブのような場所は、好奇心旺盛な定命の者を喜ばせる食材に事欠かない。

しかし、この定命の者は満足できなかった。物語によると、彼は食事をしながらファーグレイブを通過して行った。彼は噛まなかった。単に顎を外し、クランフィアのような大口を開けて、食物を放り込んで行った。その場にいた者は(直接の目撃談は聞けなかった)店にあるもの全てを平らげて行った。男が通り過ぎた後には、空っぽになった棚や店が残された。店の物資を貪り尽くすと、次の店に移ってそこでも貪った。

やがて野次馬が集まってきた。デイドラも定命の者も、満たされない飢えを抱えた定命の者を見物にきた。やがて、定命の者は汗をかいて苦しみだした。ズボンが破け、チュニックが裂けて腹がせり出してきた。目につくものを食べつくし、あきらかにそのツケを払うことになったのだ。定命の者は座っている椅子にもたれかかり、眠りに落ちた。何日もの間、誰であっても、何が起きても彼を起こすことはできなかった。そのイビキは遠く離れた通りからも聞こえた。

脆いカジート
デイドラの間に流布する他の物語に、不運なジザルと言う名のカジートの話がある。このカジートが実在したかどうかはどうでもいい。この物語のバリエーションが豊富であることから、ジザルの実在は疑わしい。実在していても、後日付け加えられた物語の一面でしかない。ジザルは多くの人物を一つのキャラクターに凝縮したものだろう。

物語によると、ジザルはニルン出身で大冒険を求めていた。しかし到着するなり、やたらと好戦的なスキャンプにからまれる。スキャンプはジザルの外套をズタズタに引き裂き、彼女が持ってきた食料を奪った。格闘した時の傷が化膿し、彼女は失明する。その後ドレインを受け、精神もやられてしまう。

話にこれ以上付け加えることはない。なぜデイドラがこの話を語り継いでいるのか、よくわからない。

定命の者の優しさ
優しさとはほとんどのデイドラが見下している資質だ。概念そのものが侮辱だと言う者もいて、そういった資質を見せる者は軟弱者として扱われる。そういうわけで、デイドラの間に流布している話は定命の者の優しさを小馬鹿にするものがいくつかある。私のお気に入りはセヴァーへ雷雨の研究に行った名もなきアルゴニアンの話だ。彼女は旅先で多くのデイドラに出会い、それぞれに優しく接する。

残念なことに、毎度彼女はバカにされる。中には優しくされて、文字通り顔につばを吐く者もいた。他の者は彼女を笑った。とりわけ不機嫌なドレモラは彼女の尻尾をネックレスにしてやると脅した。だがそれでも、アルゴニアンの決意は揺らがなかった。 やがて哀れな愚か者の噂が広まり、彼女の愛すべき気質を利用しようとする連中が列をなすようになった。

有り金を全て寄越せと言う者もいた、彼女が本当に渡すか試すためだけにだ。アルゴニアンは承諾し、そのデイドラが物も言わずに持ち逃げしても怒らなかった。他の意地悪な野次馬はフィーンドロースの一団にからまれているふりをした。アルゴニアンは彼らを救おうと果敢に突撃したが、到着すると、犠牲者だったはずの者に手ひどく罵倒されただけだった。優しくしただけで彼女が非道に苦しめられたエピソードがさらにいくつもあるのだが、それでも彼女は怯まなかった!

さて、もしこれがニルンの話であれば、ハッピーエンドを期待するところだ。物語には多少の教訓が織り込まれているだろう。優しさが常に勝つだとか、根気強さとは偉大な長所だとかだ。しかし、大半のデイドラはそういった物語に興味がない。デイドラに優しさがもたらす秘められた利益などない。

優しいアルゴニアンは最後にスカーフィンに出くわし、彼が助けを求めていると思い込む。彼女は「こんにちは!あなた大丈夫?」と呼びかける。スカーフィンは無防備な獲物を察知して、哀れっぽく泣き、足が痛むと嘆いて見せた。しかしアルゴニアンが近づくと、スカーフィンは跳び起きて飛び掛かった。

この話のエンディングには様々なバージョンがある。そのほとんどが実に陰惨だ。優しいアルゴニアンの運命はおしなべて悲劇的だというだけに留めておいたほうがよいだろう。教訓は実に単純だ。デッドランドに来ることがあったら、誰にも優しくしてはならない。

適切な鞭打ちの手順On Proper Whip Procedures

どう考えても、なぜ事態がこのようなことになったのかわからない。このメモを読んで深く反省し、上級教官からの酷評を受け入れること。このリストにある項目のいずれかでも行ったなら、教官トガラス・ヴァノのもとに出向いて再教育を受けるように。

– 授業を始める前に、対象を確実に指定された線の中でひざまずかせること。不適切に滴った血で足を滑らすことにはもう耐えられない。
– 鞭が木の幹の割れるようなピシッとした音を立てない場合は、握り方が間違っている。
– 対象に支配権を握られるのなら、お前にはデイゴン卿に仕える資格がない。
– 対象の骨が見えるようにしてしまったら、それは失敗だ。
– 最後に、鞭を使う予定があるなら、授業の後は必ず適切な場所に戻すこと。他の者をデイゴンのもとへ案内できる時に、鞭を探して時間を無駄にするのはうんざりだ。

破れた日記のページTorn Journal Page

セルヴェニ、お前は偽殉死者のフォリーに向かうんだ。お前の腕をもぎ取りたがっているデイドラの軍団のことは考えるな。乗り越えねばならない荒野に控えているマグマや稲妻のことは絶対に考えてはならない。その責任の重さもだ。

ここに閉じ込められた二つの魂のことを考えろ。お前はマザーストーンを持っている。それを忘れず、先に進め。一歩ずつ進むだけでいい。

たったの一歩だ。

たかだか、小さな一歩だ。

ダメだ。こんなの無理だ!一人じゃ無理だ。三大神は何を考えて、私をここに遣わしたんだ?

破壊の要綱The Tenets of Destruction

炎の暴君に仕える者にとっての破壊の意味に関する考察、クイストン・メリアン 著

破壊。かつて存在していたものを完全に抹消すること。破壊は畏怖の念を抱かせる。徹底的で包括的なものだ。

破壊された家は、住人の望む通りに再建される。彼らの必要性と欲求がその建物の形を決める。家は店、聖堂、さらには公園となることもありえる。そういった場合、当初の破壊を受けた者たちに、圧倒的な幸せと利益をもたらしたことになる。これは、破壊が進歩や改善の力であることを示す。

クーデターが王や議会を転覆し、人々も、そして自身も仕えるべき根本的な法の支配に従わない政体が崩壊したところで、合理的な人間は否定すまい。政治的動乱は、奉仕すべき統治者が押し付けた悪を正すために存在する。このような状況では、裏切り者と愚かしい忠臣のみがかつての首魁をあおぎ、かつてあったものを立て直そうとする。そもそも不健全な政体だったのだ。全市民に対して効率的かつ公平に機能していたのなら、クーデターなど起こらなかったはずだ。

破壊がこうしたこと全てであり、それ以上でもあるのなら、なぜこれほど否定的な響きがあるのか?答えは簡単だ。真の破壊によってのみ可能な絶滅を目撃する幸運に見舞われた定命の者は、事件の凄惨な性質にのみとらわれているからだ。彼らにはそういった素晴らしき破壊がもたらす可能性を見る客観性も知識も欠けている。頼りにしてきた家、政体、街、人物の絶滅を知覚した時、その先の未来が可能だとは思えないのだ。だが可能だ。虐殺自体を目的とした虐殺は破壊ではない。それはただの蛮行だ。

破壊を恐れるな。それは望ましい変化の力だ。そこにある治癒の力は過ちではなく、我々全てが従う基礎的な英知なのだ。

破壊者ウルサナへの手紙Devastator Ursana’s Letter

破壊者ウルサナへ

“分裂した変異”計画のために被験者がさらに必要よ。番兵の一隊をキンマーチャー・ジンドの鋳造所に送り、現在彼女が抑留しているデイドラの被験者を全て預かって。その後、彼らを機械のところまで輸送するため、掃滅王の頂まで連れて行きなさい。

必要条件を書いたジンド宛ての手紙も同封した。ためらうようなら、作業のために囚人を提供することにはヴァルキナズ・ノクブロズも同意していることを思い出させて。

遅れないように。同盟していないクランの中には、行方不明のキンを探すところも出始めた。ブレードベアラー・クランの者を鎖につないでいる時、彼らの仲間に見つかりたくはないでしょう?

シスター・セルディナ

破滅の運び手セルディナの遺言Doombringer Celdina’s Testament

破滅の運び手セルディナ 著

目覚めの炎教団は、人生の立て直しを望むあらゆる人を歓迎します。多くの土地から様々な職業の人々が、メエルーンズ・デイゴンに仕えるためやってきます。ですが強大なデイドラ公の眼から見れば、かつて私たちが何者であったかは全く重要ではありません。崩壊、失敗、失望、悲嘆――すべてどうでもいいことです。デイゴン卿が教えてくださるのは、与えられたものをどう使うかです。

見習いの皆さん、ここで私自身の話をさせてください。これは私の信仰の告白です。

もうかなり昔のことのように思えますが、子供の頃に私は無価値な両親に捨てられました。私は黄金の杖の小修道院に身を寄せました。太陽の神であり偉大な建築家マグナスの信徒は私を世話し、教育してくれました。

しばらくの間、私はそこで幸せに過ごしました。小修道院の侍者たちは、マグナスによるムンダスの壮大な設計と、創造物に取り込まれた欠陥に対する彼の落胆について教えてくれました。ある老いたモンクなどは、より闇の深い設計を明らかにする禁書を見せてさえくれました。かつてのマグナ・ゲの中には、建築者の計画に沿ったものに作り直せるよう、誤って作られたものを破壊する道具を探し求めた者たちがいたのです。

私は混乱しました。自分の眼には甘く若々しく映るこの世界を破壊することが一体何の慈悲なのか、理解できませんでした。その後16歳になった時、ブラック・ドレイクのリーチの大軍がやって来て、ハイロックに対し戦争を起こしました。

リーチの民は私のいた小修道院を燃やしました。彼らは私の兄弟を殺し、姉妹を凌辱し、そして殺しました。偶然私は生き残りましたが、結局はリーチの民の捕虜として連れ去られました。彼らは何ヶ月も無力な労働者である私を手元に置きました。そして私は世界の欠陥の真実を学んだのです。苦しみだけが待ち受けていることを。

やがて軍が解散すると、私を捕らえたリーチの民はそのまま私を捨てました。彼らは私の故郷と家族を破壊しました。塵に帰したのです。だから私は逃れましたが、怒りと復讐心は保ったままでした。私はマグナ・ゲとこの欠陥のある世界を破壊する道具の話を思い出しました。それがメエルーンズ・デイゴン、破壊のデイドラ公です。私は目覚めの炎教団の信者を探し出し、隠されていた彼らの教えに真実を見出しました。その真実の中に、復讐を遂げる方法を見出したのです。

そして、私は支配者を崇拝し、彼の意志が成し遂げられる時を目にするため、毎日勤勉に努めています。メエルーンズ・デイゴンを通じてのみ、偉大なる建築家の完成された仕事とマグナ・ゲの願いが実現することがわかっているからです。

部分的に隠された日記Partially Hidden Journal

我々が取引をした相手が誰なのか、しっかりと覚えておかねばならない。メエルーンズ・デイゴンはデイドラ公だ。人ではない。彼は我々の理屈で納得しない。今はこの協定が双方に利益をもたらすが、いつまでもそうあり続けると考えるべきではない。最悪の事態に備えて、身を守る手段を確保しておかなければ愚かだろう。

これまでのところ、我々の研究の成果は控え目に言っても苛立たしい。「干し草の中の針を探す」という言葉があるが、私の前任者たちがデッドランドで答えを徹底的に探した苦労の半分も表していない。だが、ブラック・ドレイクの努力は無駄ではない。

答えはエゴニミックだ。野望の中にある力は古い。これはメエルーンズ・デイゴンにとって基本となるもので、切り離せない力なのだ。これはデイドラ公の名のかけらだと考えられる。だがこの言葉、エゴニミックは、単なる名をはるかに越えるものだ。この言葉を発する者は誰でも、信じられぬような力をデイゴンにもたらすだろう。それは彼をニルンから追放できる。

これを利用することがないよう願ってはいるものの、これを意のままにできることは私に安堵をもたらす。これだけ有益な秘密をここに置くのはあまりにも危険だ。指示の記録はブラックウッドにある我が娘、メイリードの宝物庫に移した。もし彼女が復讐のために必要とするなら、自由に使えるだろう。

目覚めの炎の日記Waking Flame Journal

破壊者カーシの日記より。

この鍛冶場を言い表せる言葉はない。メエルーンズ・デイゴンはここで兵器を精錬する。炎、硫黄、苦痛の臭いがする場所だ。

鍛冶場は冷えているが、かつてここで燃え盛った偉大な炎の記憶は今も残っている。デイゴン卿の力はこの壁を通じて響いている。その核が石の下で唸りをあげる。この場所の秘密の鍵を開けたい。鍛冶頭は去って久しいようだ。偉大な道具がどのように動いたのか、説明らしきものはない。だから何かを知るつもりなら、自分で解明するしかない。発見をこの日記に記録していこう。

小さな物体が無秩序に散乱している。ルーセントだと思うが、その目的はわからない。ほとんどが反応しない状態だが、以前は力がうなっていたようだ。この場所の周囲に散らばっているのは、深く印が刻まれた様々な放出台だ。私は多くの書で、この放出台がデイドラの結界にとって欠かせない理由を読んだ。ルーセントは台にうまく合うように見える。もしかしたら、これが力を浸み込ませる方法か?炉は動力を必要としている。それも大量の。ルーセントが鍵なのか?解明するには、試みなくてはならない。

歴史上のデイゴン信者Dagonists Through the Ages

最近確認された目覚めの炎教団についての短い論文。デイドラ教団学者、ラリナ・ハヌス 著。

教団は支持者、入信者、指導者が集まった奇妙な集団だ。信仰の性質と存在がどのように受け止められるかという社会的な違いによって、デイドラ公の教団は様々な人口構成を示す。例えば、ペライトの病の教団はほぼ完全に、社会からの追放者で構成されている。真逆の存在なのが自然教団で、貴族の尊敬されるグループだが秘密裏に疫病のデイドラ公を崇めている。

メエルーンズ・デイゴンの教団も構成と信仰の篤さが多様で、その性質は教団が結成された場所と、中核となる人口構成の傾向に左右される。「破壊の兄弟」は第二紀115年から第二紀140年の間に活動し、帝都の貧民で構成されていた。教団は信徒が増加したにも関わらず、5年も概ね秘密主義を貫き通せた。彼らが悪名を轟かせたのは、市内の中産階級の商人を襲い始めてからである。主要な商人が失踪し、流通経路の多くがズタズタにされた。彼らは拷問の末、死刑を言い渡された。

第二紀243年~244年のブラッドファイア教団はそれほど慎重ではなかった。ほぼ完全に貴族のみで創設、構成された教団は迅速に行動し、レイヴンウォッチの中核を叩き潰そうとした。下僕の力を借りた教団の崇拝者は市内の名家の扉を封鎖し、家に火をかけた。市内の教団に関わらない貴族が殺人を目論む者から逃れられたのは、何人かの召使がこの計画を警告してくれたからだった。ブラッドファイア教団のメンバーは残らず現行犯で逮捕され、死刑に処された。

現在ブラックウッド地域などで注目を集めている目覚めの炎教団は、古いデイゴン教団と新しい入信者を組み合わせたもののようだ。ブラッドファイア教団と同様、目覚めの炎教団の信徒は名家の出身を謳っている。数世代にわたって参加する者が多く、判明した中の著名人には裕福な帝国の伯爵とその息子がいた。

ブラッドファイア教団と異なり、目覚めの炎の手口はより「破壊の兄弟」に近い。襲撃の準備が整うまで、活動を隠して待ち構えることを苦にしない。ひとたび計画が走り出せば、教団の活動は散発的に行われ、密かで統制されたものとなる。だが目撃談が増え、教団の活動が活発になるにつれ、より血なまぐさく、破壊的な活動が間違いなく露見するだろう。今後数ヶ月のうちに教団の計画が明らかになることで、ブラックウッド地域の官吏を悩ませてきた未解決事件が解明されるに至っても驚くには当たらない。

目覚めの炎が「破壊の兄弟」教団の道を辿るのなら、次のステップは有力なターゲットに対する大規模な攻撃だ。過去の教団と同様、メエルーンズ・デイゴンとの盟約により、死と破壊がもたらされるだろう。災厄のデイドラ公に従っている以上、それだけは確かだ。

ブラックウッドの本

Books of Blackwood

アスタラからの手紙Letter from Astara

エラム

ブラッドラン洞穴の中の遺跡はずっと昔に破壊され、近くの村によって遺体安置用の穴に転用された。とは言え、聖域そのものは元の状態のままだ。計り知れない危険がある場所という洞窟の評判は、今も明らかに残っている。これは我々の役に立つ。

戦いながら進むのは大変な労力を要するだろうが、扉は遺跡のはるか奥深くにある。長い道のりだ。注意してくれ。この聖域を再び開けるつもりなら、片付けなければならない。詳細を渡そう。

それから、これは忘れるな。死だ、我が兄弟。それが鍵だ。

マトロン・アスタラ

アステラ女公爵のメモDuchess Astella’s Notes

もうすぐ、愛するマセンが戻ってくる。でもまだやることが沢山ある!

儀式のためには護符、つまり彼の防具をハートベインの茂みの下に埋めなければならない。あの植物の強烈な毒は、妨害する霊魂を遠ざけておくためのもの。問題はどこに置くかよ。

彼の胸当ては井戸のそばに置こう。彼の心臓が再生するように。

彼の兜は壁のそばに置こう。近づいてくる危険が見えるように。

彼の盾は門のそばに置こう。この城と彼の霊魂を守るために。

最後に、彼の剣はある祖先の手に委ねるわ。危険はあるけれど、やってみるしかない。

アボール評議員の日記Councilor Abor’s Journal

他の元老院の者たちとは違って、私はレオヴィック皇帝に信頼されていた。ロングハウス帝の秘密の真実を知っていた。まあ、そのほとんどだが。私と大司祭。その時はそこに含まれることが名誉のように感じられた。今?私は生命の危険を感じて、この忌々しい監視塔に隠れている。

知っていることを全て書き綴っておくのが最善だろうと判断した。四つの野望とそれがどのように作られたかについて。メエルーンズ・デイゴンとの取引について。あらゆることを。新しい宝物庫の場所を知るのはおそらく私だけだろう。ヴァレンの軍勢が近づいてきたため、レオヴィック皇帝が野望を移動させた場所だ。

この件は全て終わったのではないかと思っていた。レオヴィックが死に、ロングハウス帝が滅びたときに。ファルル・ルパスから受け取った手紙によると、それは間違いだった。以下は四つの野望が収められている3つの宝物庫の場所だ。

〈続く数ページは破り取られている〉

アリジンダの日記Alizinda’s Journal

栽培の月 12日

ああ、彼ったらすごく優しく「アリジンダ、君は私の月夜、昼の太陽だ」なんて言うの。でも、貴族の人ってこの程度のことは恋人に言うの?時々マセンは、私のことをただの一時的な遊び相手としか見てないんじゃないかと不安になる。彼が口説けば手に入れられるだろう、ニベンの女性たちにはとても敵わないと自分でも分かってる。私から彼にあげられるものはほとんど何もない。たとえそうでも、彼からは一番高いアリクル砂漠の太陽よりも温かい愛を感じている。どうか分かっていてもらえますように。

年央 8日

彼は私を愛してる!長身のパパのズボンにかけて、私があんな人に愛されるなんて、一体どうして?彼には無駄に心配してると言われた。彼の心は私のものなんですって。それも私だけの!結婚のことさえ口にした!想像できる?夢が全部叶いそう!

年央 16日

私は本当に馬鹿だった。愛?そんなの残酷な冗談よ。マセンの結婚や旅の話は、全部ただの嘘だった。彼が手に負えない軽薄な行為にふけることを許す甘い言葉。彼が誰かにプロポーズしたって、他の女性たちが教えてくれた。まだ見たこともない、北の地方の跡取りに。女公爵は誇りに思ってるでしょうね。でも、私は笑い者にされない。これ以上は。

年央 18日

準備は整った。マセンは今夜、小屋で私と会うつもりでいる。今夜でなければ。私の怒りは夜ごとに薄れ、悲しみが取って代わっている。彼は私の心を踏みにじった。私を利用した!今報復しなかったら、ずっとできないんじゃないかと思う。あなたが憎いわ、マセン!私に愛する人を傷つけさせる、あなたが憎い!

アルディアの日記Ardia’s Journal

「砕かれた遺跡」の探検

ジギラはこの奇妙な遺跡に調査員を護衛する代金をたっぷり支払ってくれた。正直言うと、ここで何が見つかるか知ってたら、ただでもついて来たかもしれない。

デイドラのデザインは今までに見てきた何にも似てないけど、異様なほど親しみを感じる。最初の印象より、明らかに広大でもある。まだそれほど進んだようには思えないが、施設内の風景は入口の外からの観察と調和していないように思える。おそらくメモに地図を加えた方がよさそうだ。

* * *
地図を描いておくべきだった。グループから離れた瞬間に、ジギラの調査員が裏切った!転んでマントが破けたおかげで逃げ出せた。どこへ行くかを記さなければならない。おそらく遺言として。

* * *
左。左。扉から出る。裂け目を越えて。完全に振り返った。近づく音が聞こえる。時間がない。

アロイシウスのメモAloysius’s Note

私を見つけた人へ。この手紙とかばんに入った指輪をレヤウィンのターシャ・ファルトーに届けてください。

最愛のターシャ

君は「ほら、撫でてあげて。ただの無害なモングレルよ」って言ったね。

僕たちがどれだけ間違ってたか、ほとんど分かってなかったよ。あの悲し気な犬は前兆であり、僕の死の導き手だったんだ。

あのレヤウィンでの完璧な夜は今でも頭に浮かぶ。喜びに満ちた君の顔。まぶしかった。通りを歩いた時の君は太陽の光で輝いてた。できたら、本当にできたら、それをもう一度見たかった。できたら。

ポケットの中にある指輪を渡して、計画どおりにプロポーズすればよかった…

手を伸ばしてあの忌々しい犬を撫でようとせずに。もちろんあいつは噛みついたよ。だけど、その表面的な怪我は単なる始まりに過ぎなかった。

当然ながら、手から血が噴き出している状態で君にプロポーズなんかできなかった。だから僕は我慢して、黙ってその場を離れて一番近い治癒師のところに行った。そこでは親切なアルゴニアンが怪我に包帯を巻いてくれて、痛みを抑えるために薬用ヒキガエルをくれた。不幸にも、それは本当の負傷に対しては貧弱すぎる鎮痛剤だと分かった。

日が沈むと、僕は高熱による狂気じみた夢に苦しめられた。最後に覚えてるのは、自分の服を引きちぎって吠えながら夜の中へ駆けて行ったことだ。目を覚ましたら、誰かの鶏小屋で、血と羽にまみれてた。

どうか分かってくれ。これは君のためにやる。この呪いを受けたままもう一度君に会ったら、危害を与えてしまうかもしれない。そんなことになったら、自分が許せない。だから会わない。渡せなかった指輪を遺すよ。これは他の誰でもない、君のためのものだった。

いつまでも君を愛する
アロイシウス・フルヴァヌス

イナリースからの手紙Letter from Inalieth

バスティアン様

私を覚えていらっしゃるでしょうか。計算だと、そろそろ15歳におなりでしょう。ほとんど大人ですね。最後にお会いした時は本当にお小さかったですが、何年もあなたのことを考えておりました。

私は亡きお父様とご結婚される前から、あなたのお母様の召使をしておりました。お母様が亡くなられてからも、しばらくの間はお世話をさせていただきました。私があなたをダガーフォールのシルヴェッレ家にお連れして、何ヶ月かそちらにお仕えしたのです。ですが、まだ小さい内に去らねばなりませんでした。

私は具合がお悪く、もう長くないことをお分かりになっている時にさえ、お母様が一番気にかけ、心配していたのがあなたであることをお知らせしたいのです。お母様はあなたの教育やその他の資金を確保するため、持参金の中から宝石を取り分けておいででした。そしてシルヴェッレ家を離れることが許されたら、すぐにあなたをお姉さまのところにお連れして、一緒に暮らせるようにして欲しいと私に依頼なさったのです。クラレーヌ様はあなたよりもかなり年上で、お父様が屈辱を受けた時にはすでに幸せな結婚をなさっておいででした。なのにどういう訳か、シルヴェッレ家はあなたを解放するどころか義務を負わせたのです。あなたの旅路が続きそうだと思われた時に何度もお願いしましたが、満足のいく返事は決して得られませんでした。その後間もなく私は解雇されました。

私は今、レッドファーの村に住み、宿屋〈ハーティー・ホーヴァー〉で働いています。グラーウッドには何人か家族もおり、最近は十分に満ち足りています。もしお手紙をくださるなら、あるいはこちらの方にいらっしゃるようなことがあるなら、元気だと一言お知らせいただけたら、こんなに嬉しいことはございません。

心からの愛情を込めて
イナリース

ヴィヌスのメモVinnus’s Note

オーサス

愛しい人よ、探していたものを見つけた。石は間違いなく何らかの闇の力、発見された場所から考えると恐らくメエルーンズ・デイゴン自身の道具だ。だが、これを満足いくまで調べられる機会は得られなかった。彼の領域に不法侵入している間に、デイゴンやその従者の注意をひくのはあまりいい考えと思えない。

この仕事が私の最後になりそうな気がする。私を見つけた人にぜひお願いしたい。もしあなたが味方なら、この石をレヤウィンの戦士ギルドのオーサス・ポンタニアンへ届けて欲しい。あのデイゴン信者たちが私たちに対する武器にする前に、彼がこの石の目的を解明できればいいのだが。

それから、彼の人柄については謝っておく。オルトス、これを読んだら私の新しい友人に親切にしてくれ。これを届けるため、それは長い旅をしたのだ。

ウェアシャーク船長のサーガ、2巻The Saga of Captain Wereshark Vol. 2

沈んだ墓地にとらわれ、ドラウグルの群れに囲まれ、古代アンデッドのプリンスに直面したとき、海賊の船員が応じる方法は沢山ある。プリンス・ヴァウグルの要求に対する強きフリッカの答えは、もっとも直接的なものだったかもしれない。大股で頭蓋骨が散乱する玉座に近づき、プリンス・ヴァウグルに向かって嘲るようにニヤリと笑うと、炎のような王冠を叩き落とせる強さで彼をぶん殴った。

「戦いへ!」強きフリッカは叫んだ。「栄光のために!」。

一度は尻込みしたウェアシャークの海賊たちが即座に応じた。怒号や叫び声が湧き上がると、海賊たちはアンデッドへの恐怖を忘れ、周りを囲むドラウグルに棍棒や、短剣や、拳を叩き込んだ。完全に不意打ちを食らわされたスカイリムの忌まわしい死人は、当初敗北したも同然だった。

残念ながらすでに死しているドラウグルは、一般的な盗賊よりも棍棒や短剣に対する強さを備えていた。我らが海賊が連続で殴打を放っても、プリンス・ヴァウグルの軍勢は同じようにやり返してきた。最初にやられたのは羽のつま先のガーンだった。彼の伝説的なスピードでさえ、矢の雨を避けきれなかったのだ。我々がレッドミスト島から助け出した、化粧をした人食い部族の2人が墓まで彼についていった。

戦いはすぐに我々が不利になった。強きフリッカの大斧が次々にドラウグルを真っ二つにしても、ヴィミー・ラクロイックの輝く短剣が目を、耳を、内臓を奪っても、ドラウグルは押し進み、叩き切り、甲高い声で笑った。ひしめく船員の中央で身動きがとれなくなった私は、自分の棍棒を振り上げ、覚悟を決めた。

だが、征服されるその前に、狂乱の魔術師ネラモが炎の環を放つと、朝の太陽の中の明るいオレンジ色の花のように広がった。炎は一番近くにいたドラウグルを灰になるまで焼き尽くし、残りを追い散らした。「逃げろ、この馬鹿ども!」ネラモが叫んだ。「地表へ!財宝を運べ!」そこで我々は財宝を運んだ。

海賊たちはそれぞれ何であれ運べるもの、黄金、ゴブレット、燭台、あらゆる高価な金属や高価な宝石がはめ込まれたものをさっとひと掴みすると、やってきた方向に逃げだした。

恐ろしく巨大なドラウグルが我々の行く手を塞いだが、硬き鱗の者と毒の短剣が静かな怒りと共に切り裂いた。私と他の者が死体を飛び越すと、硬き鱗の者が後方を守ってくれたが、彼の顔に失望の色が浮かぶのが見えた。またしても、好敵手にも見える相手が、彼をシシスのもとへ送ることに失敗したのだ。

ずぶ濡れの広間全体が大きく振動したとき、我々はほとんど地表に到達していた。我々はよろめいた。いつものように前を行く二つの傷のガレナが、最初に危機へ気づいた。我々がこじ開けた扉が自動的に閉じつつある。止める方法を見つけなければ、永遠にこの沈んだ墓地に閉じ込められてしまう!

だが、石の扉が閉じる前に彼が戻った。船長だ!たなびくシルク、小粋な王冠、大量の色とりどりの羽を見間違える者などいない。ウェアシャーク船長は明るく光を放つ宝石を両手に持ち、古代ノルド語と思われる言葉を叫んだ。彼の耳に残る抑揚は、プリンス・ヴァウグルのそれを真似たものだった!閉じかけた扉は振動し、やがて止まった。

安堵の歓声が上がり、ウェアシャークの船員たちが開いた扉に殺到して駆け抜けると、背後でドラウグルが唸り声をあげた。最後に現れたのは強きフリッカだった。私は彼女がその広い背に、羽のつま先のガーンを担いでいるのを見た。

最初は、彼女がそこまでの危険を冒した意図が理解できなかった。ガーンは死んでいるのだ!だがその後、私は二つの傷のガレナがいつも言っていたことを思い出した。ウェアシャークの船員は家族だ。家族は誰一人置き去りになどしないのだ。

ウェアシャーク船長のサーガ、3巻The Saga of Captain Wereshark Vol. 3

[これより前の数ページは破り取られている]

我々が凍った島の地表に到着するやいなや、プリンス・ヴァウグルの恐ろしい言葉が響き渡った。それはあたかも凍り付いた空気そのものが語っているかのようだった。

「それは我が財宝だ、定命の者め。我が遺産だ。お前たちに盗むことなどできぬ。偉大なる北風が私に仕えているのだ!」

だが、我々がペールスピリット号の伸ばされた上陸用の橋を急いで登り、盗み出した戦利品を運び入れると、もう追って来たドラウグルが水中の墓地から現れることはなかった。大量の財宝と共に逃走する、熟練の海賊の船員にふさわしい迅速さで、我々は巨大なウェアシャークの船の出航の準備を整えた。船を守るために長弓を構えた海賊を乗せ、死して久しいドラウグルのプリンスから盗んだ財宝を腹いっぱいに詰め込んだペールスピリット号は、その深紅の帆を広げた。

凍った島とその水没した墓地を後にすると、北からの強風が帆を膨らませ、同時に新たな雪の結晶が我々の周囲で渦巻いた。だが辛うじて島を脱出したところで、風が我々を裏切った。荒れ狂っていたスカイリムの沖が穏やかな湖となり、博学な観察者でさえガラスと見まごうばかりに静止した。音もなく、風もなかった。スピリット号の船体に打ち寄せる波までもが無音だった。

この巨大な船に乗る者たちにとって、それは間もなく凍ってしまうことを意味するようなものだったが、それよりもさらに恐ろしい運命が私の頭に浮かんだ。プリンス・ヴァウグルが脅したように北風を止めている。漕ぐことも出来るが、ひどく消耗する作業な上に遅い。船を漕いで無事浜辺にたどり着くには、数日、いや数週間かかるだろう。おまけにペールスピリット号に詰まっているのは黄金で、食料ではない。黄金を食べることはできない。我々はこの静かな海の真ん中で、プリンス・ヴァウグルに水中の墓の中から残酷な、光を放つ目で見つめられながら飢えてしまうのではないか?

「いいや!」とウェアシャーク船長は宣言した。「やられはしない!俺は埋葬されたプリンスの宝石を手に入れた。それとレッドミストの島で発見した巻物で、この魔術を打ち破ってやる!」

強きフリッカが口火を切り、海賊たちと私は歓声を上げた。我らが船長はどんなに切迫した状況であっても、我々を失望させたことは一度もなかった。今回も彼がしくじる心配はない。プリンス・ヴァウグルは古代の者で強力かもしれないが、ウェアシャーク船長は私が航海してきた中で、最も機転の利く船長だ。

快活にお辞儀をして手を振ると、ウェアシャーク船長と人食い司祭クラックティースはウェアシャークの私室へと入っていった。逃亡中のレッドミスト島の女王と共に、脱出すべく魔法を手なずけてやる、と船長は断言した。

船長と骨の女王が仕事に取り掛かると、残された我々には何もやることがなかった。ネラモが自らの手で問題を解決しようと心に決めて空中に火花を放つと、ヴィミーがフルートで陽気な音楽を奏でた。

他の何人かは腕相撲かサイコロに興じていたが、より勤勉なものは強きフリッカの監視のもと、甲板の血を掃除し、ロープや帆の確認を行った。我々は風が戻ることを確信していたので、その時のためにスピリット号を万全の態勢にしておく必要があった。

数時間が過ぎた。朝が昼に変わり、二つの傷のガレナと、常に影の如く彼女に付き従う二人の無口なボズマーがその日の食料を配布した。我々はとても早く食べ、とても大声で自慢した。なぜなら凪いだ海の耳に刺さるような静寂が、我々皆を恐怖させたからだ。ヴィミーの陽気な曲さえも悲しげになっていった。その時だ。帆のはためきや木材のきしむ音もなく、船体に当たる泡の音が沸き起こった。動いた!

近づいて来る道化師祭りに声援を送るため、ダガーフォールの壁に向かってわめきたてる興奮した子供のように、私や他の海賊たちはペールスピリット号の欄干に体を押し付けた。ペールスピリット号は動き、船首から泡が広がったが、帆はだらりと垂れ下がったままだった。風もなしにどうやって航海した?

船尾で二つの傷のガレナが喜びの声を上げ、我々を手招きした。我々は船尾に押し寄せ、波の下にある二つの巨大な貝と、上陸用のボートぐらいもある大きさのヒレが泡立てるようにパタパタと動くのを見た。自分の目が信じられなかった。巨大な海亀だ!

どうにかしてウェアシャーク船長と人食い司祭クラックティースが、古代の海の大物を呼び出したのだ。海亀は風でさえ敵わないような速度でペールスピリット号を押した!

我々が圧倒されて眺めていると、私室からウェアシャーク船長と骨の女王が乱れた服装で現れた。どちらも行ったばかりの大仕事により紅潮していて、その時になって初めて私はレッドミスト島で行われていた儀式の話を思い出した。おそらくこのような文書には生々しすぎる話を。船長と司祭が私室で使った魔法が何であれ、それは成功したのだ!

輝く黄ばんだ歯で微笑みながら、クラックティースは髪につけたカタカタと音を鳴らす骨のお守りを払い除け、海を指さした。「見よ、純朴な海賊たちよ。古代の海の婦人たちを。ナールノーズとステゴフィンズだ!お前たちの船長の妙技が、彼女たちの支援を獲得した!」

岸に辿り着くまで一晩はかかるだろうが、私にはもうこの穏やかな海から逃れられることが分かっていた。

ヴェヨンドの伝説Legend of Veyond

イレルニル・デュレリによるガイドと怪談

崩れた壁の奥深く、記憶が語ると言われ死者が生者と交流する場所では、他に類を見ない財宝が待っている。その起源は知られていないが、ヴェヨンドの遺跡に踏み込む勇気を持つ者たちが、遠い昔に死んだ者たちから語られた言葉を持ち帰っている。

もっとも注目すべきは、療養中の母の病の治療法を求め、怪物や夜の獣と戦いながら広間を進んだ若き冒険者の幽霊だ。彼は地中に埋められた回廊で敵と戦う姿を見ることができる。彼は毎回襲撃にあえぎ、まるで声が聞こえているかのように母と話す。あたかも自分が戻ることを伝えて安心させるかのように彼女と話す時もあれば、怒りに満ちた魂をなだめようとする頬につたう涙が見られる時もある。

遺跡の別の場所では、岩場の間に遊ぶ子供たちの声を聞くことができる。鍛冶屋の槌の音が聞こえることもあるが、それは星が雲の向こうに姿を隠した夜だけだ。さらに珍しいものとしては、嵐の間、雷が壁の割れ目を走る直前に、詠唱し、未知の言葉で話す声を聞くことができる。ヴェヨンドが他に何を抱えていようと、はっきりしていることがある。この場所が黙って死者やその秘密を放棄することはない。

ウェルキンド石についてOn Welkynd Stones

魔術師ギルドの学者フィレンルの、頭脳と献身的な研究からなる記録された知識に関する著述

本書で論じた宇宙地質学的な機器に関するより基本的な情報については、同僚の学者タネスのレディ・シンナバーによる「エセリアルのかけら」を参照されたい。

ご承知のように、ウェルキンド石とは膨大かつ未だ解明されていない能力を持つアイレイドの道具である。この石は、大いなる魔術の力の源として一般に高い需要がある。その起源については、石自体がタムリエルに落ちてきたものであることを示唆する記述が数多く存在するという事実以外に語れることはあまりない。この石がどこからどういった目的で来たのか、そもそもアイレイドが発見する以前からこの石に何らかの目的があったのかどうかは分かっていない。だが、この石が地面に落下し、偉大なる魔術師たちの仕事の助けとなったと最初に記録された時から、ずっと使用され続けていることだけは確かだ。

ウェルキンド石の色は青く、偉大なるアイレイドの街には欠かせない素材だった。アイレイド滅亡以来、この石はあらゆる個人的な利益や目的のために集められ、使われてきた。言うまでもないが、これらの石に倫理的な傾向はない。石はどこまで行っても石なのだ。

本書では詳細に述べないある種のウェルキンド石の存在は注目に値する。と言うのは、闇のウェルキンド石について多くのことが知られているものの、未だ謎に包まれている部分も数多くあるからだ。この変異型は、とりわけ純粋に破壊的な類の魔法を蓄えているように思われる。きっかけもなく爆発し、これまでに技術や作品の回収を目的とした遠征でアイレイドの街に踏み込んだ数多くの研究者やトレジャーハンターを死に至らしめてきた。まるでアイレイドが防衛を付加するものとして、闇のウェルキンド石を使っていたかのようである。とても危険なためこの石は遠征隊の間ではよく知られていたが、抑制された状態で研究されたことはない。簡単に言えば、学校や研究所など学問の場に無傷で持ち帰られたことがないということだ。

一方、ウェルキンド石と大ウェルキンド石についてはとても詳細な研究がなされており、その知識の集積は本書でもご覧いただけるだろう。

エスディルの古い日記Esdir’s Old Journal

ラロスとクエンティンは私のことをガヴォスと同じぐらい愚かだと思っている。

奴らの企みは分かっている。彼を消し、在庫を拡張させる気だ。禁制の魔法の遺物に攻撃的な異国の獣。奴らはあの貪欲な手がつかめる、ありとあらゆるものを取引するだろう。

まあ、奴らにしてやられたなどと言わせるつもりはない!間もなくスクゥーマの積み荷が到着する。確実に大修道院全体で、それを売るのは私だけにするつもりだ。小物や野生のペットなどはすぐに飽きられるだろうが、スクゥーマの需要は常にある。

クエンティンは資金を用意した買い手がいるから、金床を回収して売るべきだと言っている。それが本当に労力を費やすに値する話なら、おそらく自ら行動を起こすだろう。念のため、私の印を移動させた。にぎやかな通りのはるか上にある、私が一番うまい酒を飲める場所にな。

エドヴィルダの記録Edvilda’s Log Book

しばらくはリフトに近づかないほうがいい。それほど間違ったことはしてないが、ノルドの中には古い祠や墓地に関してすごく神経質な者もいる。それでも、何とか拾い集めた小さい像は、ちゃんとした収集家にかなりいい値をつけてもらえそうだ。

小さいマンモス像1個 – 象牙、彫刻
さらに小さいマンモスの像2個 – これも象牙の彫刻(考えてみるとちょっと皮肉だ)
小さな熊(?)の像1個 – もしかしたらスキーヴァーかもしれない。木はひどくかじられている(ドラウグルに歯は生えるのか?)

* * *

あんまり長くストンフォールにはいたくない。メエルーンズ・デイゴンの脇みたいな、少なくともデイゴンの脇ってこういう感じだろうなっていう臭いがする。でも、このスチームフォントは、ドワーフの遺跡にしては野営が安全そうだ。内海のアルマチュアでゴミあさりの運を試したいと思っていたけれど、今は盗賊が隠れてると聞いた。奴らに煩わされないように距離を置くべきだし、それが自分の運命なんだろう。

* * *

もうミルテュから買った地図の元は取れた。まだすごい成果ではないが、歴史家に売れそうな古い陶器を見つけた。

小さな花瓶 – 珍しい模様。第一紀のもの?調査が必要。この手のものが好きな買い手が数人いる。必要なら何かでっちあげよう。

* * *

気が変わった。この地図は支払った分の半分の価値にも導いてくれてない!やっぱりアルマチュア周辺に探しに行こう。盗賊は古いドワーフのガラクタなんか気にしないはずだ。

* * *

あの忌々しい穴の中にはものすごく大量の盗賊がいる。勝手に奴らの食料を少しいただいたけど、あちこち見て回るような危険は冒せなかった。

* * *

ちくしょう、ミルテュ。最後のお金をあんたの地図に使ってなかったら、船に乗ってこの灰だめの外のどこかに行けたのに。どこでもいいから。

* * *

ミルテュが以前、ドワーフのガラクタに夢中になっているダークエルフと働いていたことを思い出した。ドワーフのパズルボックスの手掛かりにかなりの大金を払うだろうと言っていた。ミルテュの奴に、彼女をこっちに送らせてやる。それでポケットにゴールドを入れてもらおう。もし彼女があの盗賊たちを片付けられるようなら、さらにいい。

オトゥミ・ラへの手紙Letter to Otumi-Ra

オトゥミ・ラ、この不良卵生まれめ!

40杯じゃ私は負かせない。あなたはそれ以上に飲む必要がある。私はどっちかって言うと
飲む時は自分のペースでいくタイプだから、この
あなたが注ごうとした北の酒なんかに
やられない。だって私はどこもかしこもあんたと同じように強いんだから。ハハ!でもこのこと
変に取らないでね。冒険と勇ましさに満ちた日々が懐かしくなるわ。私は影のように静かで、あなたは
木のように強い。ミーア・タは古代人のように賢く、サトゥル・サは神のような知恵を持ってる。

彼らがなつかしい。

オニミリルの書付Onimiril’s Writings

絶対にあのずる賢い収集家が墓から邪魔をしている。もう何十年もたつのに、まだあの怒りに満ちた目が時々私を睨みつけてくる。忌まわしいダークエルフの赤い目が。それだけの価値はあった。あの謎の価値に比べれば、ダークエルフの恨みなど何ほどのこともない。全く。

* * *

あの魔術師ギルドの気取った輩とは関係のない、そこそこ才能のある魔術師を5人雇った。不満を抱いていて用心深い。彼らは私が追放されたことを知らない。まるで私がヴァヌス・ガレリオンの言いなりになって働く奴らの、柔軟性のない精神を必要としていたかのようだ。彼らはこの実験でギルドへの加入権を提供されると思っている。

* * *

ついに必要となる適切な配列を持つドゥエマーの地を見つけた。それがリフトにあるのは残念だ。私は無骨なノルドと彼らのやり方が好きではない。それでも、アバンチンゼルにはまだ無法者やろくでもないクズが住み着いていない。多少のアニムンクリなら対処できるはずだ。

すぐに、ドワーフがこの奇妙な装置に隠した知識が判明するはずだ。私はこれで他の者よりも抜きんでることになる。特にヴァヌスより。

* * *

何が悪かった?何故だ?雇った馬鹿どものせいだ。当然の結果だ。彼らが死んだのは残念だ。でなければ奴らの精神を、愚かさが故に剥ぎ取ってやったのに。戻らなければ。もう一度試みるんだ。睡眠が必要だ。まずは少し休もう。取り返すんだ。

* * *

赤い目。闇に光る。奴の仕業だ!奴だ!私からは隠せないぞ!財宝と秘密は、すべて取り返してやる!

カロ女伯爵の誕生日Countess Caro’s Birthday

カロ女伯爵の誕生日は単なる行事ではない。これは一つの事件である。

女伯爵その人はレヤウィンの日々の運営からは一線を引いているが、謙虚さによるものでないことは保証しよう。誕生日がその証拠である。快楽の追及はレヤウィンの支配者一族にとってなくてはならないものであり、女伯爵もまた例外ではない。

いかなる祝賀においても、食事は最も重要な部分である。優れたパーティーの基礎は、客人たちの腹を満たすものから始まる。カロ女伯爵の誕生日では、最上のものだけでテーブルを飾ることにしている。黄金の大皿には、よく肥えた鶏にバターとハチミツで焼き色をつけて乗せる。牛肉の赤身のスライス、舌の上でとろける魚の切り身、子豚、こんがり焼いたキノコ――香りが混ざり合ってうっとりしてしまうほどだ。陶器の皿に乗せた野菜料理、柔らかい黒パンと一緒に食べたくなる濃厚なスープ、そしてプルプルしたプディングの入ったボウルなど。

甘いものは全く別のカテゴリーだ。何層もあるケーキは塔のように客人たちの頭上にまで積み上がり、その形もよりどりみどりである。砂糖をまぶしたペイストリーが積み上げられ、アイシングの光沢は鏡のようにきらめく。飴を絡めたサツマイモや、ダークベリーのジャム、パイは甘い樹液で泡立ち、黄金色の皮にはバターがたっぷり。次々に出る新しい菓子はどれも、前に出たものよりさらに美しい。

食事についてはいつまでも書いていられるが、次へ進まなければならない。食事はこの大いなる行事に費やされる贅沢の中の、ほんの一部分でしかない。装飾は私の個人的な誇りであり、私が心血を込めて作った部分である。イメージとして使った言葉は常識外れ、豪勢、途方もない、目のくらむような、といったところだ。

黄金は祝賀の花形である。黄金の皿、金糸入りのテーブル掛け、キラキラ光る黄金のカーテンなど。明かりでさえも、くぼみに隠したりテーブルに沿って並べたりした数百のロウソクの光に合わせて、完璧に設計してある。花束は温かみのある光を浴びて、黄金そのものの色に匹敵する豊潤で輝かしい香りを放つ。

最後になるが、このイベントに出席するには適切な服装が欠かせない。客人たちはその他の装飾品と同じくらいこの行事にとって重要である。幸運にも招待を受けた者は、何ヶ月もかけて服装を整える。派手な絹服に、宝石をはめ込んだ上着、真珠をあしらった靴やサークレット、全ての指に指輪をはめるなど、誰もが最高の身なりをして入ってくる。客人の中には祝賀の途中で服装を変える者もいるほどだ!

この全てにかかる費用?優れたパーティー立案者は、決してそのような秘密を明かさないものだ。

カロ女伯爵への取材An Interview with Countess Caro

帝国の崩壊と元老院解体後に、レヤウィン市民を代表するマーキュロ・カトラソによって行われた。

マーキュロ・カトラソ:なぜ権限を軍団長会議に譲渡することにしたのですか?

カロ女伯爵:誰かに何かを譲渡なんて一切していないわ。私は今もレヤウィンの街とその周辺地域の女伯爵です。それが生得の権利であり神聖な責務なの。より高潔な問題に集中している間に、軍団長会議が街の日常的な業務に対応するよう任命しただけよ。

マーキュロ・カトラソ:より高潔な問題とはどのような類のものですか?

カロ女伯爵:最高に高潔な問題よ、それはもう!でも別の話題にしましょう。こういった繊細な問題は、一般に公開すべきではないわ。

マーキュロ・カトラソ:分かりました。軍団長会議内の人員はどのように選んだのですか?

カロ女伯爵:そうね、調査と熟考を重ねた結果、意思決定を円滑に進行させ、「過半数」の欠如による法整備の遅れを防ぐために、3人体制を取ることに決めたの。数学って役に立つわね。全員が同じ結論に達しなくても、少なくとも2人のうちどちらかの軍団長には同意できるかもしれないでしょ。多数決よ。誰がやるべきかについては、最初のメンバーは明らかだったわ。私は地域に関心を寄せる3つの主要なグループ全てから代表者が出るようにしたかった。テベザ・コとアム・ハルはどちらもロングハウス帝の時代から地域社会に尽くしていたわ。カジートとアルゴニアンが決まったら当然インペリアルも見つけないとね。幸運にも元老院が解体されてから、ロヴィディカス評議員の手が空いていたの。

マーキュロ・カトラソ:あなたと軍団長たちは、時々下された決定に対して納得できないと感じることがあるという噂を聞いています。

カロ女伯爵:どこで聞いたの?首を飛ばしてやらなきゃならない人がいるの?冗談、冗談よ!いいえ。軍団長会議には自分の仕事を好きなようにやらせてるわ。彼らもさっき言ったような高潔な仕事の熟考は任せてくれている。時には城内の場所をあんなに占有しないでくれたらと思うこともあるけど、それ以上に軍団長たちの支援と仕事には感謝してるの。ロヴィディカス評議員にさえ。彼が元老院にいた間は、いろいろあったけど。

マーキュロ・カトラソ:ということは、あなたとロヴィディカス評議員の間にわだかまりがあったと言って差し支えない?

カロ女伯爵:どこからそんなことを思いついたの?政府の役人とはいつだって意見の対立があるものよ。それも仕事のうちなの。でも私たちは、どちらも心の底ではレヤウィンとブラックウッドのことを大切に思ってる。目標を達成する手法が違うとしてもね。それが宮廷生活を興味深くするのよ!

マーキュロ・カトラソ:宮廷と言えば、先月元老院議長アブナー・サルンが街を訪問した際、会談を拒んだと聞きました。それは本当ですか?

カロ女伯爵:アブナー・サルンはうぬぼれた老いぼれよ。彼は私たちが親しんだ帝国の不運な崩壊とこの忌々しい戦争の勃発に関して、何らかの役割を果たしたと確信してる。オブリビオンに行こうが知ったことではないわ。ええ、そのとおり。彼はレヤウィン城の境界内では歓迎されない。

マーキュロ・カトラソ:三旗戦役に関して。現在進行中の紛争に対して、レヤウィンは安全でしょうか?

カロ女伯爵:帝都との距離を思えば、精一杯安全を保ってるってところね。でも、今のところライアン隊長と象牙旅団は最悪の戦いが私たちの地域に及ばないようにできている。解決に至るまでの間、旅団が境界の尊厳を維持してくれると思ってるわ。

マーキュロ・カトラソ:お時間をいただきありがとうございました、カロ女伯爵。

カロ女伯爵:あら、いいのよ、気にしないで。ほんの数分間時間を取って、民と考えを共有するのは楽しいものよ。対処すべき高潔な仕事の息抜きになる。少しだけど気が晴れるの。

ギデオンの門前でBefore the Gates of Gideon

ウド・セラス 著

戦いの熱気で狂乱状態になった数百のアルゴニアンによる騒音が再び街境の向こうで湧き上がると、ファビア隊長はその部族の者こそがこの戦争で不当な扱いを受けている側だと考えずにはいられなかった。彼女の仲間が彼らの土地に入り込んだ。仲間は土地の部族に相談もせず集落を作った。そして今、習慣のようにアルゴニアンを殺している。一体何故?家畜を狩るようなささいな犯罪で?家畜が人のものであるとアルゴニアンに教えた者など、誰一人いないではないか!彼女が先週裁判所で言い争いをしたのは、まさにこの状況全てが理由だった。彼らには適切な外交官が必要だったのだ。

部隊と防衛を任されている長く伸びた壁の背後に身を潜めた彼女は、これまでにも幾度かしてきたように、どうして自分の仕事についてこんなにもひどい勘違いをしたのだろうと考えた。ただ自分の仲間を守り、ちょっとした市民のいさかいを収めたかっただけなのに。ファビアは元々の動機が何であれ、怒りに駆られたアルゴニアンの一団が血を求めるあまり錯乱状態となって自らを傷つけている間、こうして街の防衛施設の端に隠れるため、軍に加わったのではないことだけは分かっていた。

始まった。ファビアにはアルゴニアンが街の反対側を襲撃する音が聞こえた。岩と矢が周囲に降り注ぐなか、他の部隊の指揮官が命令する叫び声が高い石の壁に反射して響き渡った。彼女が立っていたあるギデオンの門の上は恐ろしく静かだった。ファビアは身をかがめて遮蔽の上に出ないようにしながら、兵士たちの前を進んだ。彼女は通り際に肩へ手を置き、勇気づける言葉をささやいた。胸壁の上まで緊張感に満ちた空気が届いていた。他の壁はすべて包囲されていたが、今のところ彼らの前でほんの一瞬の動きすら見られなかった。

それでも彼女は列の間を歩き、入隊できる年齢になったばかりの兵士や、戦闘のリズムとこれから起きることを熟知している、戦い疲れた古参の兵士の恐怖心を落ち着かせた。ファビアが門の上の自分の位置に戻ると、マダーリズが身を乗り出し、耳をぴくぴくさせながら石のように心に重くのしかかる質問をささやいた。

「あんたの技で、奴らを撃退できると思うか?」

ファビアは街の門の外側でフックに吊るしてある小さなランプのことを考えた。ランプは胸壁にいる者から見えないが、沼地にいる者にとって、特にこんな暗い時間には目印だった。ファビアはアルゴニアンの領域が始まる場所ではないかと思われる場所に近い、湿地帯の荒野でランプを見つけた。

「そう願うわ」彼女は静まり返った沼地に視線を走らせながら溜息をついた。「じゃなきゃ私たちは圧倒される」そう言いながら、ファビアは口元に安堵の笑みが浮かぶのを押さえられなかった。あの向こう、沼地の漆黒の闇の中の、静かな水の溜りに反射する光はランプだった。インペリアルのランプだ。

ファビアは立ち上がり、胸壁から降りるために進んでいった。市民たちが家から街の最も静かな壁に逃げてくると、彼らに向かってうなずいた。彼らの腕には荷物と子供たちがしっかりと抱えられていた。数人の兵士がパニックを起こした群衆の流れと衝突したが、ファビアはぶつからなかった。彼女は体の間に滑り込み、埃が充満する道を着実に進んでいった。そして、彼女のすることに誰かが気づき、阻止する前に、彼女は門を開け放った。

ギデオンへの旅の案内Traveler’s Guide to Gideon

アスティニア・イサウリクス 著 公開日:第二紀570年降霜の月22日

聞く相手に応じて、ギデオンはブラックウッド東端の街か、ブラック・マーシュの西端の街か違ってくる。沼地のただ中にある文化と文明の島であり、人口の半分近くはインペリアルの生活様式に馴染んだアルゴニアンである。ブラックウッド街道を終端まで辿る旅人は少ないが、仕事でブラック・マーシュまで行く狩人や木こり、薬草の商人、異国の生物を捕まえる罠猟師は、ギデオンを仕事の拠点としている。

その歴史の大半において活気のない前線の駐屯地であったギデオンは、第二帝国初期の短期間、人々の注目を集めた。皇帝レマン二世がここで大量の人員を集め、アルゴニアンを自分の領域に統合しようとしたのである。強大な軍団は帝国南東のフロンティアへと行進して街道や要塞を築き、そこから皇帝の計画が実行に移された。ニベン人の植民者の波がその後に続いた。

ブラックウォーター戦役で何度も後退と苦戦を強いられた後、皇帝レマン二世はこの地域に恒久的な帝国の権力を確立することに成功した。だが皇帝の注意がブラック・マーシュから逸れたその日から、ギデオンの没落が始まった。危険な前線を防衛していた要塞は、忘れ去られた僻地へと縮小した。ギデオンの防衛は老朽化し、帝国の許可によってこの地に引き寄せられた多くの植民者は、より手間のかからない植民地を求めて去っていった。

今日でも、ギデオンは湿地と数百年前に残された軍団の兵舎や礼拝堂、兵器庫の廃墟に取り囲まれたままである。ブラックウッド街道は高地を通って正門の南西側から街につながっており、湿地帯や崩壊した要塞の姿をよく見渡せる。街の中では、広い道が門から総督の館まで通っている。ギデオンの家屋や商店のほぼすべてはこのたった一つの街路沿いにある。それはこの道が、街の残された部分における唯一の乾いた土地だからという単純な理由による。

市の行政
ギデオンは帝国総督の支配下に置かれている。総督とは、伝統的には西ブラックウッドの主だった貴族に与えられる肩書きである。近年では、ヴァンダシア家かマルティウス家に属する者が総督となるのが通例である。どちらの一族もブラック・マーシュ国境に広い土地を所有している。エルトゥス・ヴァンダシア卿がシロディールで元老院に仕えているため、帝国総督の任務は現在、パーノン・マルティウスの手に委ねられている。

食事、飲み物、宿泊
ギデオン西門の近くには宿屋〈卵とハンマー〉がある。素朴な宿屋だが、沼地のフロンティアにある宿屋にしてはいいもてなしを受けられる。もっとも、食事のメニューはデリケートな旅人に適さないかもしれない。〈卵とハンマー〉調理スタッフに数人のアルゴニアンを抱えている。アルゴニアンの食べ物は人を選ぶが、ギデオンのアルゴニアンの大部分は人間やエルフの相手をすることに慣れているし、他の種族が食べても大丈夫な沼の食料を知っている。

地域の名所旧跡
ギデオンはかつて強大な要塞だったが、もう遥か昔の話だ。壁はろくに修復もされておらず、大部分の監視塔は中に入るのも危険である。街を移動する主要な道であるブラックウッド街道から少し離れた程度の距離にも、小さな沼の穴が点在し、注意の足りない旅人を待ち受けている。

ディベラの聖堂は、この街に残された祠の中で唯一言及に値するものである。ギデオンに愛の淑女の信者がいるのは奇妙に思えるかもしれないが、ブラック・マーシュの国境においてディベラ崇拝が生き残ったのは理由がある。いわゆるブラック・マーシュの輝かしき民コスリンギはディベラを大いに敬愛しており、自分たちの特別な守護者とみなしていたのだ。コスリンギはもはやこの国にいないが、ギデオンのインペリアル市民は彼らのディベラ崇拝を共有している。聖堂自体は元々裕福な貴族で愛の淑女の信者であったレディ・ドルシア・マルティウスの館だったが、彼女は40年前に死去した際、ディベラの司祭たちに家を譲ると遺言を残した。

総督の館が実際の住居として使われることは滅多にない。ギデオンの帝国総督は通常、より大きく快適な地所を付近に所有しているからだ。しかしここは統治の座として、また市政の中心として機能している。館にあるこの地方出身の画家の、絵画コレクションには一見の価値がある。

歴史あるギオヴェッセ城の廃墟は、ギデオンから少し北へ向かったところにある。言うまでもなく、この城は皇帝レマン三世が第一紀末、妻であるタヴィア女帝を幽閉した場所として現在では悪名高い。城の床は不快に程遠いとはいえ、金縁の牢屋も牢屋には違いない。女帝はその驚異的な野心と知性の全てを、玉座から正気を失った夫を取り除き、追放の身から帰還する試みに向けた。

興味深い事実
ギデオン周辺の湿地帯は、ブラック・マーシュの西側を原生地とする大型の肉食ガエル、デスホッパーが大量に住む場所である。

ギデオンはアルゴニアンを屈服させることを目的としたブラックウォーター戦役末期、ルシニア・ファルコ将軍と彼女率いる帝国軍の本営となっていた。

観察眼の鋭い旅人は、総督の館の側の広場や街の南東隅の人気のない地区など、いくつかの場所に古いアーチや奇妙な石細工があることに気づくかもしれない。これらはかつてこの場所にあった、アイレイド都市の廃墟である。

旅の安全を祈ろう!ギデオンはかつての誇り高き駐屯地に比べれば寂れた場所だが、沈みゆく街の中には、斜陽の輝きも見出せるだろう。

クイストリー・シルヴェッレからの手紙Letter from Quistley Silvelle

バスティアン

お前が家族への奉仕から離れ、これ以上私の両親に対する義務を果たす意思がないことは分かっている。だが、個人的なことでお前の助力がどうしても必要なんだ。私にとっては極めて重要なことだ。これは両親とは何の関係もない。実際、できれば両親には知られたくないと思ってる。

我々が良き友だったとは言えない。だから同情に訴えようという気はない。そのかわり、力を貸してくれたらお前が興味を持つと思われるものを提供しよう。私は父の書類の間から見つけた手紙を持っている。お前宛ての手紙だ。恐らく10年ほど前に送られたもののようだ。お前の母親に関連するものだ。

興味があるなら、できるだけ早くダガーフォールの宿屋〈酔いどれライオン〉に会いにきてくれ。二階のいつもの場所にいる。

クイストリー・シルヴェッレ

クエンティンの秘密の往復書簡Quentin’s Secret Correspondence

友へ

間もなく金床を手に入れてやろう。既にガヴォス・ドゥーアに盗まれていると誰もが信じているものである故、惜しむ者などおるまい。必要なのは、同僚の大臣二人から助力を得るための根回しだけだ。最近の彼らは少々扱いづらいが、君が提供してくれた護衛のミノタウロスを紹介すれば、ずっと乗り気になるのは間違いない。

とは言え、少しの遅れも出してはならない。彼らが何かに勘づいたら、金床を確保できなくなるかもしれない。だから可能な限り早く、ゼニタールの大修道院に向かってくれ。

到着したら、鍛造用の火の背後で落ち合おう。私は我々が必要とするものを全て手にしているはずだ。

グルームマイアの鳥Birds of Gloommire

翼のある獣のうち、諸々の理由でこの本の通常の章に載せられなかったもの。この節はドミンド・カマズと若手研究者のウニラ・ロセロスが記載している。

カラス
「私がたまたま気に入った空の一角に巣食う、この翼を持つ災いは、どんな状況においても私の存在を許容しない。数世代前にハグレイヴンが私の一族にかけた呪いのせいかもしれない。地域住民はこの地方、とりわけアルペニア周辺のカラスが異様なまでに高度な知能を持つと警告しており、私はこの忌まわしい鳥についての記述を助手のウニナ・ロセロスへ全面的に委任することにした」

実地調査員にして鳥の専門家ドミンド・カマズ

タムリエルの他の地域と同様、ブラックウッドの南端グルームマイアにもカラスはいる。以前の版を参照するなら、カラスの大きさは手のひら程度から、噂に基づけば人間の前腕ほどの長さまで幅がある。黒いクチバシと、やはり黒を基調とする羽を持つカラスは、荒涼としたこの地形でかなり目立つ存在である。また、この羽根のおかげで、カラスは密林や湿地帯に意外なほどうまく紛れ込める。余談だが、そのせいで私はベースキャンプまで戻る時に、カラスの小さな家族がついてくるのに全く気づかなかった。しかしこの点については後で触れよう。

カラスは知能が高く、よく工夫を凝らす生き物だとよく言われる。大体において正しい。しかし木の上の巣から転げ落ちるカラスも一定数目撃されていることは言及しておくべきだろう。このような行動がカラスの認知的欠陥に基づくのか、娯楽の一環としてやっているのかは不明だ。

ある程度の確実性を持って言えるのは、カラスは恨みが深いらしいということだ。しかも、過去に受けた侮辱の記憶を若い世代に伝えられるという。私はこうした行動を、研究会からの報告を待つドミンドのもとへ戻る際についてきたカラスの一家で目撃できた。このカラスたちは複数の石を彼に投げつけた。私は無傷だったが、さらにカラスたちは凄まじい勢いでドミンドに襲いかかったので、彼は近くのシェルターに逃げ込み、1週間そこから出ようとしなかったほどだ。

ハックウィング
多くの読者は「グルームマイアの鳥」と題された本の中にこの生物が載っていることを意外に思うのではないだろうか。ハックウィングは鳥とみなされる他の生物とどこも似ておらず、形態学的には小さなドラゴンと分類されるべきではないのかと思うだろう。

これは言うまでもなく、完全な誤りである。ハックウィングは鳥に共通する多くの特徴を示し、灰を被った空のネズミ(カラスの欄を見よ)を「鳥」という高貴な名称に含めなければならないのなら、ハックウィングにも当然その資格はある。

鳥とは卵を産み空を飛ぶ、翼のある生物である。もっとも、我々が鳥と呼ぶ生物の一部には、これらの特徴の一つか複数が欠けていることもある(恐ろしい鳥と飛行についての項を参照)。ハックウィングには明らかに翼があり、卵を産み、他の鳥と同様に優雅な様子で空を飛ぶ。そのため、鳥に含められているのである。

行動の点から言うと、ハックウィングは標準的な鳥よりも岩の周辺をうろつくことが多い。長い爪を使って岩の表面や、湿地帯の木の皮を引っかく。ハックウィングはしばしば岩の上で日に当たって1日を過ごし、油断した地域住民の籠から果物や肉を盗むこともある。盗みを働くとはいえ、この生物が盗んだものを食べている光景は目撃されていない。ハックウィングは道端の死骸を食べることを好むので、おそらくはいたずら自体を楽しんでいるのだろう。

個人的に、ハックウィングには好感を持っている。愉快で遊び好きであり、命の危険も少ししかない。性格的に、ハックウィングは綿密に整えられた野営地に突入しても、ベッドを荒らしインク壺をひっくり返す程度で、人に襲いかかって目玉をくりぬくことはあまりない。

グレネッタの日記Grenetta’s Journal

地耀
ようやく運が向いてきた。ダガーフォールの酔っ払った間抜けが自分の婚約を祝ってて、私たちのカードゲームに加わってきたの。その馬鹿は自分の手にすごく自信があったから、持ってた婚約指輪を賭けた。私が勝ったわ!しっかり勝ち分をいただいて街の外に向かった。お金持ちのやることって分からないから…指輪を取り戻すため、誰かに追跡させるかもしれないでしょ。でも私は正々堂々と勝ち取ったのよ。カードでイカサマなんて絶対にしない。

基地に戻ってみんなのために夕食の支度をしなくちゃ。みんな私のことは公平に扱ってくれるけど、私は強盗でも無法者でもない。私は料理人。このきれいな指輪が売れたら、まともな服を買って、もう少し清潔にする。もしかしたらちゃんとした酒場か宿屋で雇ってもらえるかもしれない。

火耀
あのならず者のパトレルが巨大な卵を持ち込んできて、大きなオムレツを頼れと言う。確証はないけど、あれはハーピーの卵だと思う。とんでもない思い付きよ!彼らが鳥なのは知ってるけど、多少は人間でもあるでしょ?ゾッとする。誰か他の人にここから持ち出してくれって言うつもり。

明日、夜明け前にここから出て行こう。グレネッタ・ファッセルはここからやり直すの。

グレンブリッジに設置されたアルゴニアンのシシスに捧げる祠Glenbridge’s Argonian Shrine to Sithis

リンメンの旅人の館のガルジールによる記録

最初の印象では、グレンブリッジを貫く主要な街道の脇に立つシシスの祠に、これといって目を引くような部分はなかった。この祠が注目に値しないと言っているのではない。ただ第一印象とは往々にして誤解を招くものであるというだけだ。背の高い建物で、付近のほとんどの木に匹敵する高さでそびえてはいるが、その印象も祠の周りに建物が見られないことによって誇張されたものにすぎない。壁は厚い石板で出来ていて、建物のすべての角にある石細工からは顔が覗いている。それでも、ほど近い場所にそびえ立つザンミーアと比較すると、印象に残るような祠ではない。

祠の中は壁同士が間近に迫っていて、4人ほどしか入れない空間に干渉している。たとえ三方の壁を開放していたとしても、祠そのものの中では呼吸をするのも困難だろう。空間の中央に立つと、あたかも空気が全く存在しないかのように感じられるのだ。

石が落ちたか、あるいは脇に倒されたような場所がある。これが祠の中にも続き、独特の光の欠落も伴って、大方の礼拝の場にはふさわしからぬ荒廃した様相を呈している。祠の外観について司祭たちに尋ねても特に気にしているようには思えなかったが、落ちている石板を正しく設置すべきだという意見には気を悪くしたようだった。若干の会話と慎重な質問で、司祭たちが祠の状態をシシスの行いの指標と見ていることが明らかになってきた。祠の壁の修復は冒涜となるのだろう。

シシスが祠の外観に直接影響を与えたかどうか、石が外れたのは彼の力によるものか、あるいは天候と時の流れのせいなのかははっきりしないが、祠をいつくしむ司祭たちに影響を与えたのは確かだ。

ザイナの契約の書Xynaa’s Book of Contracts

(数百ページがかすれてほとんど消えてしまった手書きの文字で埋められている。だが最後の数ページは輝く黄金のインクで書かれている)

契約 1,137
メエルーンズ・デイゴンの命令により、私は以下の条件の下で拘束に服する。シロディールとして知られる定命の者の領域における征服に対する我が主の支援と引き換えに、ブラック・ドレイクのダーコラクとして知られるリーチの民の首領は、聖なる書に記載された兆候と環境のもとに四つの野望が生まれるようにするものとする。これは定められた。

契約 1,138
メエルーンズ・デイゴンの命令により、私はダーコラクに課せられた契約を、その息子であり後継者であるモリカル現シロディール皇帝まで拡張することを承認する。モリカル皇帝がメエルーンズ・デイゴンによって定められた四つの野望を存在させるという父の重責を遂行したことに対し、私は聖なる書に記載された力の付与の儀式において、皇帝の代行者を導き指示するものとする。これは定められた。

契約 1,137および1,138:不履行
メエルーンズ・デイゴンに課せられた義務に基づき、私は前述の2つの契約の遂行に対するダーコラクの後継者の不履行を証明する。後継者を指名することなくレオヴィック皇帝が死亡したことにより、聖なる書に記載された遺言補足書が有効となる。用意された野望をメエルーンズ・デイゴンが要求する方法で捧げた者は、如何なる者であろうとダーコラクとその後継者に約束された報酬を獲得できる。これは定められた。

(流れるような文字で付け足されている)
忌々しいソンブレンめ!野望の3人はまだ宝物庫に隠れたままだ。捕まえた1人は定命の者の領域に戻ってしまった。少なくとも、奴はメエルーンズ・デイゴンのしもべが全て奴の定命の敵だと信じている。適切な時が来たら、奴をおびき寄せよう。あるいは自ら私を探しに来るかもしれない。それでも報酬は私のものだ。必要なのは忍耐だけだ。

サルヴィットの招待状Salvitto’s Invitation

グラシアン・サルヴィット閣下

誉れ高きヴァンダシア評議員主催の特別な会合にご招待申し上げます。

機密性により、この件については一切口外なさいませんようお願いいたします。会合への移動手段をご用意いたします。2週間以内にレヤウィンの港までお越しください。港にはカラミティ号という船が停泊しています。この船で安全に、かつ安心して移動いただけます。

必ず正装でご来場ください。軽食と宿泊施設をご用意しております。

ヴァンダシア評議員がご来場をお待ちしております。

シャドウスケールへの祈りPrayer for a Shadowscale

絶え間なく変わるシシスを称えよ。

尽きたものは取り戻された。

虚無の無、ヒストの囁き。

血が刃を研ぎ、根を湿らせた。

影を通り抜け、戻れ。

ジリッチ評議員の記録Councilor Jirich’s Records

ジリッチ評議員

世話係を呼び集め、野望を移動すべき時だ。新しい宝物庫の位置は、私か大司祭が必要とするまでの間、野望の安全を確保した状態で隠しておける場所でなくてはならない。反逆者ヴァレンに忠実な軍勢がこれまでになく接近している。野望を彼らの手に渡すわけにはいかない。

これは公式な命令だ。すぐに行動するように。

〈この行はインペリアルの複雑な暗号で書かれている〉

皇帝レオヴィック

スル・ザンのメモSul-Xan Note

神像が渇望している。千もの求める口を伴った顔が上を向き、懇願する。

それははるか昔の時代、忘れられた時代から。だが我々の役にも立つ。奪い、与えるのは我々だ。それが満ち、破壊の霊魂を産み出すまでには多くが必要になる。霊魂は野を焼き沼を血で満たす。どこであろうと触れた場所には混沌を植え付ける。我々がここにもたらせる限り。だが神像は激しく飢えたままだ。儀式のためにはさらなる死体が必要だ。

霊魂は彼らの叫びを楽しむだろうか?さらに多くを捧げよう。

神像は霊魂が到着するまで飲むだろう。

スル・ザンの儀式場Sul-Xan Ritual Site

象牙旅団のサルヴィティカスの日記より。

記録:1
スル・ザンを監視し、活動を報告する任務を負った。レヤウィンとブラックウッドに脅威をもたらしているにも関わらず、このアルゴニアンのナガの部族について分かっていることは比較的少ない。このナガと直接交流するのは危険極まりないため、交渉を試みることは禁じられている。試そうとして、ただ挨拶しただけで命を落とした者もいる。

私の仕事はあるスル・ザンのグループの観察だ。この特定の小集団は極めてよく移動するが、これは我々がこの部族に対して予想していた行動とは異なっている。この日記では、彼らを追う中で発見したことを書き写していく。十分に安全な距離を保ちつつ、観察できるよう願おう。

記録:2
このスル・ザンのグループは私の予想よりもはるかに長い距離を移動した。彼らは北をうろつき、奇妙なことに道中の小さな村や前哨基地で立ち止まった。他の者を監督していると見られるスル・ザンはこういった立ち寄りのあと長々と話すが、内容が聞こえるほど近くにはいない。

記録:3
少数のスル・ザンがグループから離脱した。彼らは近くの街から犠牲者をさらうと、彼らと南に向かった。助けたかったが、人数の差がありすぎた。私にできる最善のことはさらなる情報収集だ。彼らが何をしているのかはっきりと突き止められれば、象牙旅団が阻止できるかもしれない。

記録:4
このスル・ザンのグループは明らかに狩猟グループと見られる。食料などの用途に動物を狩るのに加え、さらなる囚人を獲得するために縄張りから遠く離れた南をうろついているようにも見える。彼らは捕まった不運な人々を生贄にすると聞いたことがあるが、そのような行為は直接目にしていない。

私はヴィーシャという沼の秘術師に率いられるグループをブラックウッド湖の岸辺にある古い遺跡、ギデオンの北西まで追った。少なくとも部族の魔法使いが4人、ある種の儀式に取り掛かろうとしていた。何故彼らが自らの土地から遠く離れたこの辺境の地を選んだのか分からないし、儀式の目的に対する手掛かりもない。分かるのはどことなくおかしい気がすることだけだ。危険で、邪悪でさえあるような。

今のところはここを離れ、レヤウィンに報告を返そう。ライアン隊長は見たものに興味を示すはずだ。

ゼニタール賛歌Hymn of Zenithar

〈リフレイン〉
聖なる金床に跪け、敬虔なる鍛冶場の炎の子よ
誠実な仕事の報酬を取り、ゼニタールへの愛を示せ

ゼニタール、我が労働の主よ
この両手を硬く分厚く鍛えたまえ
あなたの金床に汗流し
我が胸は力強く脈打つ

ゼニタール、我が富の神よ
この貴品箱を稼いだゴールドで満たせ
誠実なる産業の成果で
誓いを守り売った、よき品物で

ゼニタール、我が休息の父よ
この腰に安息の褒美を与えたまえ
日が陰り、石炭の火が弱まる時
喉の渇きを潤し、労働を止めさせたまえ

セリースの別れのメモCerise’s Farewell Note

リエル、最愛の人、いつかこれを見つけてくれますように。どうやらギデオンに戻れそうにないみたい。ロレイン女司祭と争って重傷を負わされた。その後、馬車が崖から湖に落ちたわ。馬車は沈んで、雨によって視界から消えた。宝箱や裏切りのディベラの女司祭と一緒に。私も足を折ってしまった。どうやらこれまでのようね。

ロレインに何かの呪文をかけられてしまって、自分が腐っていくのを感じる。だけど人々に知らせなければならない。愛しい人。これは証言であり遺言でもある。どうか許してね。

ロレイン女司祭とギデオンの治安官の半数が、目覚めの炎というある種の秘密教団に所属してるってことを最近知ったの。ロレインは人々を殺しては魂を盗んでる。おそらく、もう何年も。いつでも好きな時に悪趣味なゲームを追体験できるように、殺人を呪文をかけた石に記録までして。彼女はどうかしているの、リエル。彼女の狂気により、たくさんの修練者が犠牲になった。

昨夜、ロレインがアイディール・マスターとか呼ばれる死霊術師たちと、捕獲した魂を取引する計画をしてることが分かったの。他の手段が見つかればよかったけど、迅速に行動するしかなかった。修練者たちは私たちの友達よ。見捨てることなんてできない。分かったことをあなたに知らせなくてごめんなさい。でも、奴らがあなたを狙うのが怖かった。

ロレイン女司祭が死んだ今、あなたには記憶石とこの宣誓証言をレヤウィンの治安官のところに持っていってもらいたい。他の誰かを殺す前に、目覚めの炎を暴いてやらなければ!

心からあなたを愛してる。愛しい人、いつかまた会いましょう。あなたにディベラの祝福を

あなたを愛する妻
セリース

ソフスの封印された巻物Sophus’s Sealed Scroll

〈封をされた巻物に2枚の羊皮紙が入っている。1枚目にはソフス評議員の印章があり、以下のように書かれている〉

第二紀576年

新たな宝物庫の建造のために雇用された魔術師については、仕事の完了後には確実に抹殺するように。決して未達成の状態にはしておかないこと。

アコニア・ペラ
トラシウス・ヴィノーマン
エフェル・ブロックス
ナリナ・セナレル
ジュルス・クィンティウス
カバンティナ・プロシラス

〈2枚目にはレオヴィック皇帝の印章があり、以下のように書かれている〉

ソフス評議員へ

最後の宝物庫も設置する必要がある。残っている魔術師に必要な呪文をかけさせ、宝物庫を私が選んだ場所へ移動させろ。必要な情報は以下の暗号化された文章の中にある。私を失望させるな。

[以下の文章はインペリアルの暗号で書かれている]

ダリンへの手紙Letter to Darene

ダリン

お前たちは影の外へ踏み出す者から、通常は認められていない性質の仕事を探しているようだな。私も夜を恐れず危険を招くこともためらわない者を探している。私の手伝いをしてくれたら、関与による恩恵に見合う報酬を出そう。

興味があるなら、必要な遺物がある。レヤウィンから北東にあるノクターナルの祠に、聖なる鎌の遺物が収められている。レッドメイン砦の近くだ。その影の鎌をブラッドラン洞穴へ持って来い。そうしたら残った人生に、貧しい日がなくなるよう取り計らってやる。

ツマ・マクサス

ツマ・マクサスの日記Tumma-Maxath’s Diary

かなりの捜索の末、私、ツマ・マクサスは墓所を発見した。今は私の名に影響力はないが、いつの日か口にする者を戦慄させるだろう。

予想どおり、ここには数多くの人が埋葬されている。うまい具合に隠れている上、ここにはすでに獣が住んでいるため、比較的人の手に触れられていないようだ。この場所を無傷で通過できるか否かは、真の勇気があるかどうかの問題になるだろう。だが、私のために戦う死体を蘇らせ始めれば、すぐにずっと楽に過ごせるようになる。単純にそれまで粘ればいいだけの話だ。

* * *

胸躍る進展だ。かつてその名を知られたシャドウスケール、アジュム・シェイの遺体を見つけたようだ。彼は眼窩の内部にはめこまれたままの宝石と共に埋葬されていた!私にとっては幸運な発見だ。頭蓋骨から引き抜けなかったので、頭を完全に取り除いた。この桁外れな発見を活用するためには、持ち帰る必要がある。

ディート・ローのメモ:ネレイドの呪いDeet-Loh’s Notes: Nereid Curses

アルゴニアンの村の古代のニッソが、 ヴナーク遺跡ではブラックウッドで一番楽しげで、耳に心地よい蛙を見つけられると教えてくれた。彼は住人のネレイドに注意するようにも言っていた。どうやら彼女はあまりにも奥深くまで自分の巣に入り込んでくる者に、呪いをかけることで有名なようだった。

いかに私が制作に打ち込んでいるか、いかに音楽家として才能があるかを彼女が知れば、大喜びで遺跡に住む蛙を何匹か引き取ることを許してくれるはずだと私は確信している。

ディート・ローのメモ:蛙の歌Deet-Loh’s Notes: Frog Songs

タムリエルで一番のヴォッサ・サトル奏者になるための努力をする上で、どうしても必要なのが特別な蛙を見つけることだ。ヴナーク遺跡の奥深くにある、自然のままの池で戯れている蛙が、ブラックウッドで最も美しい蛙の歌を生み出すとニッソが教えてくれた。それなら絶対にこの蛙たちを見つけて、自分の耳で彼らのメロディを聞かなくては!

今のところ、この遺跡に住んでいるさまざまな獣は避けることができているが、例のネレイドにもまだ出会っていないことに驚いている。私はどうしても蛙を捕る前に、彼女と話をして許可を得たいと思っている。彼女が私と同じぐらい音楽が好きなら、絶対に分かってくれるはずだ。

ディート・ローのメモ:蛙の魔女Deet-Loh’s Notes: The Frog Witch

私はここに座り、あの素晴らしい小さな蛙たちの美しい歌に耳を傾けている。ニッソは正しかった。こんなのは今までに聴いたことがない!彼らの最新のセレナーデの中盤に差し掛かったあたりで、ネレイドが池から浮かび上がった。彼女はまるで母親のように蛙たちをかわいがっている。これはなかなかいい光景だ。彼女は本当に彼らを愛しているようだ。

彼らに話しかける様子、それに返事をする様子。彼女はただのネレイドじゃない。ああ、彼女はある種の蛙の魔女なのだ!私がこの音楽を奏でる生き物を数匹引き取ることを喜んで認めてくれるに違いない。すごく沢山いるんだから。絶対に気にせず、ヴォッサ・サトル用に何匹か捕まえさせてくれるはずだ。

それでは、あのネレイドに話しにいこう!

ディサストリクス・ザンソラの日記Disastrix Zansora’s Journal

高貴なる大司祭にはすでに伝言を送った。執事と3人の評議員が死んだ。現在ブラックウッドにいないため、イティニア評議員だけが我々の手を逃れている。

また、闇の一党の聖域で回収された文書も送った。その情報があれば、大司祭は何の問題もなく最初の四つの野望の場所を見つけ出せるだろう。加えて、レヤウィン城への攻撃を命じた。すぐに他の評議員が保管している文書も我々のものとなる。そうすれば全ての野望の場所が明らかになる。

さて、私は席を外して遺跡に入り込んだ害虫を始末せねばならない。どうやら聖域からつけられていたようだ。災いのデイドラ公に忠実な者が、必要な時に振るえるよう手にしている真の力を見せてやるのが楽しみだ。

デストロンの日記Destron’s Journal

私たちは双子だ。私たちは羊だ。世話係は我々の訓練と隔離はほぼ完了したと言うが、まだ誰も来ない。

もう何年も新しい教師に会ってない。それに皇帝でさえ、昔は頻繁に訪ねてきていたのに、カリアと私が幼かった頃から姿を見せていない。何かで彼を失望させてしまったのか?私たちに怒っているのか?

カリアと私は勉強を続けている。私たちには私たちの活動がある。だが孤独だ。世話係たちは親切だが、恐ろしく退屈だ。カリアは聖域の外の世界を見たがってるし、私は冒険をして本でしか読んだことのない場所を見てみたくてたまらない。

彼らは時がもうそこまで迫っていると言うけれど、それが実際にどういう意味なのかは教えてくれない。あともう少しなら待てるかもしれない。

どうやら他の選択肢もなさそうだ。

デスホッパーの恐怖Terror of the Death Hopper

レミウス・ヴォルソナスの日記より

発見が困難なデスホッパーの調査を始めてから6日になる。同僚は私のことを異常だと言う。そうかもしれない。馬ほどの大きさのカエルを追うには少々の狂気が必要だ。だが、優秀な研究者でちょっとした危険を好まない者などいるか?あんな途方もない生き物について始めて書いた人物として歴史に名を残せるなら、命を危険に晒す価値はある。

デスホッパーは通常群れで見られる。1匹だけでいるのを見かけたら、他の個体を探すべきだ。この巨大なカエルは棲家であるよどんだ水の表面のすぐ下に潜むことを好む。忍耐強い狩人で、大抵は何も知らない獲物が彼らの通り道に迷い込む失敗を犯すまで待ってから攻撃を仕掛ける。

デスホッパーとの遭遇に関して第一に知っておかねばならないのは、彼らの毒性が極めて高いことだ。その毒が皮膚から分泌されているのかを見極められるほど近くに寄れないが、近々そうする計画である。それに応じてこの記録を新たに書き加えるつもりだ。だが、彼らがかなり遠くまで毒を吐き出せることに気付いた。私はこの巨大な毒物の塊が、あらゆる材質のものを浸食するのを見た。防護のない肉体だったらどうなるか、想像しただけでゾッとする。

第二に注意すべき点は、デスホッパーがそのとてつもない大きさをうまく利用することだ。この生物は空高く飛び上がり、気絶するほどの激しさで獲物の上に飛び降りることが知られている。その後、デスホッパーは横に飛んで放心状態の獲物を混乱させてから、最後の大抵は致命傷となる攻撃を放つ。これまでの研究の日々で、デスホッパーが大きな獲物を丸ごと飲み込むのを見た。だが、その口の中には細く、この上なく鋭い歯が数百も生えている。デスホッパーにとって、骨を噛み砕くなど造作もないことだ。

私はこの巨大で極めて残忍なカエルに際限なく魅了されている。そして、私の調査は始まったばかりだ!デスホッパーに関してこれ以上何が分かるかは想像しかできない。だが、まずは近づかなければ!

テナレイの契約Tenarei’s Contract

テナレイ・ヴェルス:

約束どおり、書面による契約だ。長い親交があるにもかかわらず私の言葉を信用しないとは少々侮辱的だが、大目に見よう。クイストリー・シルヴェッレなる人物をレヤウィンのシンジケートに連れて行ってくれ。生存していればより好ましい。この仕事を完了すれば、シンジケートに対するお前の負債は帳消しとなる。

この愚かなクイストリーは自分の負債を記憶しておくことが困難なようだが、シルヴェッレ家はダガーフォールの裕福な一家だ。恐らく息子の債務は彼らが清算できるだろう。そうでなくても、お前も良く知っているように、負債は様々な手段で清算できる。

現在の居場所:

– 数週間前に街を出るところを目撃された。ギデオンに行くとのこと。

– レヤウィンの南と東にある洞窟の外で活動している、密売人か盗賊と合流した可能性がある。深い嘲笑の洞穴か、洞窟か?(あの地域は洞窟だらけだ)

– 高価な印章指輪を身に着け、役立たずの金持ちのクソ野郎のような服装をしている。自身を色男だと思い込み、やたらに自慢する。

我々が負債を回収するよりも先に、密売人が殺してないことを願う。

ラーズ・トゥル
レヤウィン

トパル湾にてOn Topal Bay

(愛の歌)

トパル湾で愛を見つけた
川が海と出会うところ
2人で岸にぶつかる波を見た
レヤウィンの塔の3つから

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾で富を築いた
海の上の船員として
要塞を満たした黄金で
愛しき人にこの指輪を捧げた

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾で愛を失った
彼女は海辺で散策したが
リバー・トロールを見逃した
逃げ出すことはかなわなかった

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾の海賊Pirates of Topal Bay

評議会議長タルニアン・ロヴィディカス 著

数ヶ月前にシロディールを引退してレヤウィンに来た時、そこで待ち受けていた様々な問題の中でも、海賊はおそらく最も厄介で継続的な問題になりつつある。もちろん、海賊は数百年前のレッド・ブラマンの時代から、ニベン下流やトパル湾に蔓延していた。しかし帝国の権威が失墜したことで、略奪船や血に飢えた海賊船の大群が、かつては安全だった帝国の海域を臆面もなく荒らしまわるようになった。交易が帝国の動脈だとすれば、トパル湾の海賊は最悪の種類の吸血鬼である。自分の糧となるものを平気で破壊する、決して満たされず後先も考えない怪物だ。

レヤウィンの石の胸壁でさえ、大胆なトパル海賊を抑えてはおけない。この悪党どもの一部はただの商人に扮装し、港の役人を買収して街の橋下を通過する。南の海から来る海賊はブラヴィルやコルベレ川ほどの北方でも家を襲い、貨物船を拿捕することで知られている。たとえレヤウィンの軍団長会議でそれ以外に何もできないとしても、私は我らの川のこの恥ずべき現状に終止符を打つ決意を固めている。そのためのゴールドや戦力さえ手に入れられれば。

以下に記す海賊たちは、暴虐の限りを尽くしてブラックウッドのとりわけ悪名高い敵となった者たちである。

三つ爪のアシャサと呼ばれることもあるアシャサ・ドラは、海賊の母と名乗る年老いたカジートである。ペレタイン沿岸沿いのあらゆる場所にスパイを擁しているらしく、リンメンからセンシャルの遺跡に至るまでの各地で手下を操っている。アシャサの海賊団は十数隻の船を沿岸で操り、無害な商人を装って接舷する術に卓越している。つい先月も、アシャサ・ドラとその手下はレヤウィン胸壁の真ん前につないであった商船を盗んでいった。

トパル湾の恐怖、ヴォルダーはトパル島西の海域で数隻の船を略奪した張本人である。この男がいずれレヤウィン本土を襲撃すると豪語したことは有名だが、ここしばらくは目撃情報がない。我々の海域を離れて船を集め、大胆な襲撃のための準備をしているのかもしれない。

ブルーワマスの船長の名前は不明だが、珍しく知能を持ったアルゴニアン・ベヒーモスだと言われている。ブルーワマスは重装備の大型ガレオン船で、船体を犠牲者の骸骨で飾りつけており、また獲物を突き刺す鉤爪を発射する重いバリスタを装備している。ブルーワマスの船長は特に血に飢えた男で、襲撃時には誰も生きて返さない。この海賊船のガレオンはトパル島海域でよく見られる。

最後にノルドのグジャルグリダは、海と風を操る特殊能力を持った自称「海の魔女」である。この女はブラック・マーシュ西沿岸のオンコブラ川で、無数の河口のどこかに潜む海賊船の小艦隊を率いている。グジャルグリダは数隻の素早いガレー船を指揮しており、獲物を開けた海で捕らえることを好む。よく肥えた商人たちを北の狼の群れのように襲うのである。グジャルグリダのせいでタイドホルム東の海域はあまりに危険となったため、トパル湾に入る大部分の商船の船長は、この女に気づかれないよう島の西側の狭い海路を通るようにしている。

挙げられる海賊船長はまだ5,6名ほどいるが、この4人だけでも絶望の淵へ追いやるには十分だ。

帝国元老院に仕えていた長い年月の間、私はブラックウッドにいる帝国の役人からトパル湾の海賊問題について大量の報告を読んだ。レヤウィンは何度も繰り返し白金の塔にこの凶暴な犯罪者たちを制圧するための資金や艦隊を要求したが、我々には余裕がなかった。レヤウィン軍団長会議の議長となった今、私は以前無視していた問題に向き合わねばならない立場に置かれており、助けを求める手立てもない。運命とは皮肉なものだ。

トランス・ニベンの珍味Trans-Niben Delicacies

ニベン川で2番目に速い無許可財宝運搬業者、グアルの嘴の一等航海士スナゴス 著

俺のような決して合法とは言えない仕事を持つ者がレシピの本を書くことに疑問を持つ人は、船に乗って広大な海を航海するといい。初めて風の吹かない日に出くわした瞬間にそういった疑問への答えが得られるだろう。

今の状況、つまり無風の苦境を鑑みた結果、長きにわたる海賊稼業を始めて以来食べてきたうまい食べ物の記録に着手することにした。まずは好物から始めよう。

このレシピは俺がただの若者に過ぎず、旅を始めたばかりでまだブーツが硬く乾いていた頃に、川の側の流れが逆流する場所にいたアルゴニアンの漁師から手に入れたものだ。この漁師はカードゲームの名目で俺から少額の金を巻き上げるつもりでいたが、こちらも同じ方法で夕食代を調達しようとしていた。俺たちは夜更けまで続け、ついには漁師が手放せるものが、まさにその時まで部族の秘密とされていたこのレシピだけになった。

ザリガニのサラダ
潮溜りでザリガニと呼ばれる殻に覆われた生き物を探す。魚とは似ても似つかない姿で、どことなくロブスターのような生き物だ。

風味付けした湯でさっと茹でる。

その間に葉物野菜を集めて準備する。

ザリガニの身を殻から外し、頭を切り落とす。

身が十分に冷めたら葉物野菜に加え、好みの果物や野菜や肉などをトッピングする。俺は提供者の薦めに従い、柑橘類をサラダに加えた。これは葉物野菜に素晴らしい影響を与えた。と言うのも、普通なら葉物野菜はひいき目に見ても好ましいものじゃないからだ。

ニベンを越えてAcross the Niben Bar

(ニベン川の歌)

シロディールからトパル湾まで
ニベンの背中は広がっている
レヤウィン港に船は並んで
朝の満ち潮を待っている

エイルズウェルでは鉱石を
ウェイでコロヴィアの赤を買って
ブラヴィル港まで材木を運び
ブラックウッド・ヘッドへ出航だ

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
濃霧の中に浅瀬が潜む
ニベンを越えて!

トルヴァルで買うはサトウキビ
サウスポイントでは毛皮と染料
ダガーフォールで全部売り
ストロス・エムカイで酔っ払う

ゴールドコーストで絹とワイン
俺たちゃ故郷に舞い戻る
レヤウィンで恋人が待っている
船乗りのお帰りを!

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
波の下にはネレイドが潜む
ニベンを越えて!

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
船乗りたちが海をゆく
ニベンを越えて!

バザールの名簿Bazaar Directory

ディジェリエルの仕立屋 – 仕立専門店、中央市場

ラロスの遺物 – 古代と魔法の品、バザール北西

エルスウェアの砂 – カジートの小間物、バザール南中央

賢者クエンティンの動物店 – 異国の家畜、バザール南東

ダモザグ金属加工 – 上質な宝飾品と鉱物、バザール西中央

高貴なるエスディルの店 – 錬金術試料と植物、バザール東中央

ハックウィングはどのようにして尾を手に入れたのかHow Hackwing Got Her Tail

ツリーンキーシュによって記録されたアルゴニアンの童話

ある日、ハックウィングがせっせと空を飛び回っていると、地上から呼びかける声が聞こえた。「ずいぶんうまく飛ぶもんだ」悪意に輝く目で空中のハックウィングを追いながらボグドッグが言った。「でも、地上での速さはどんなものかな?」

ハックウィングはボグドッグの頭に向かって一直線に襲い掛かり、彼が身をかわすとクスクスと笑って言った。「必要なだけ速くなれるわ」

「絶対に俺の方が速い」ボグドッグが挑んだ。

ハックウィングは空中で回転すると、ボグドッグからは届かない位置にある岩の上に軽やかに着地した。「一体何がしたいの?」

「レースさ。そっちが勝ったらもうお仲間を狩るのはやめよう」

「勝たなかったら?」ボグドッグを信用してはならないと知りながらハックウィングは尋ねた。

「俺が勝ったら」ボグドッグが吠えた。「あんたを食う」

ハックウィングはレースの条件について考えた。見逃すには惜しい内容だった。ボグドッグはそれは長い間、彼女の家族を狩り続けてきた。そして今、彼を阻止する絶好のチャンスを手にしたのだ。ハックウィングはうなずいた。「あの遠くにある大きな石まで競争しましょう。最初にたどり着いたほうがレースの勝者よ」

ボグドッグはうなずいた。「スタートする前に俺の横に並んでくれ。じゃないとどっちかが有利になって不公平だ」

ハックウィングはボグドッグを信じてはならないことを忘れ、頼まれたとおりにゴツゴツとした足場から降りた。その瞬間、ボグドッグの歯をむき出した口先が噛みつこうとしたが、ハックウィングはとても素早かった。彼女がさっと空に飛び立つとボグドッグは胴体を噛み損ね、その短い尾にぱくりと食らいついた。ハックウィングはできるだけ速く翼をはためかせてどうにか前に進んだ。彼女はボグドッグを引きずり、羽ばたき、力一杯動いて、ついに大きな石に到着した。

「勝ったわ!」彼女は得意げに羽づくろいをした。「尾を放して。あたしが勝ったんだから食べられないわよ」

ボグドッグはしぶしぶ尾を放した。その尾はあまりにも長く引っ張られていたので以前よりもずっと伸びてしまっていた。

今もハックウィングは長い尾を保ち、彼らの素早い先祖を称賛し、ボグドッグに約束を守ることを思い出させている。

ファルル・ルパスからの手紙Letter from Farrul Lupus

ジリッチ評議員

旧友よ、お元気でお過ごしだろうか。私がレオヴィック皇帝の執事で、君が元老院にいた頃から何年も経ったというのに、ロングハウス帝の秘密が今も私たちに付きまとっているのではないかと恐れている。

君と他の元老院の者たちは、重大な危機に瀕している。君と同僚たちが何年にもわたってロングハウス帝のために行ってきたことにより、君たちは心ならずも正体不明の存在、あるいは存在たちの標的となってしまったようだ。もちろん、私たちは君がただ命令に従っただけだと分かっている。職務を果たしただけだ。残念ながら、君を追う者は理由など気にしけていない。奴らの望みは、レオヴィック皇帝の最後の秘密のほんの小さなかけらでも知る者を全て抹殺することだけだ。

もっと情報を提供できたらよかったのだが、今のところ私が知っているのはこれだけだ。また何かが分かったら連絡する。とりあえず、今は注意してくれ。

寝る時も警戒を怠るな。

ファルル・ルパス

ファレヴォン最後の戦いThe Last Battle of Phalevon Vero

上級歴史家、シリノ・ヘンター 著

従弟のブルミウンを失い嘆き悲しむファレヴォンは、彼を真っ二つに引き裂いたミノタウロスを追跡し、打ち倒すことを誓った。多くの人にとってミノタウロスはどれも同じように見えるものだが、今回は従弟を殺した者の正体についてファレヴォンは十分に情報を得ていた。グレンブリッジの住人がブルミウンの戦いを目撃していた上に、彼らは戦った相手のミノタウロスのこともよく知っていたのである。その野獣は赤きフルームと呼ばれていた。皮がレンガのように赤く、たてがみも赤茶けたオレンジ色だったからだ。それでも、赤いミノタウロスが潜んでいる場所をファレヴォンに教えられる者は誰もいなかった。

嘆きと冷酷な決意を闇のマントのように身にまとったファレヴォンは、探し求めた対象を追い詰めるまでブラックウッドにあるミノタウロスの巣を空にしていく仕事に取り掛かった。彼はそれぞれの薄暗い洞窟や崩れかけた石の門の前で立ち止まると、老いたカースで作った戦の角笛をとてつもなく大きな音でひと吹きし、ミノタウロスに敵と恐怖の訪れを知らしめた。これを7回行い、7体のミノタウロスを殺したが、赤きフルームはまだ彼の怒りから逃れていた。

ついにファレヴォンはニベンの川岸にある、ブラックウッド内で最後のミノタウロスの巣にやってきた。そして、彼の力強い角笛を吹き鳴らした。「出てこい、出てこい、お前が赤きフルームなら!」彼は叫んだ。「違うのなら、今すぐどこで彼が見つかるか教えるんだ。そうすれば見逃してやる」だが、洞窟からはミノタウロスのうなり声以外、返事はなかった。そこでファレヴォンは身構えて洞窟の中に入った。

(後年、学者たちはファレヴォンがミノタウロスの話を理解していたかどうかは疑問だとしている。と言うのも、理解できる人間はほとんどいないからだ。残念なことに、しがない執筆者である私は挑戦に対するミノタウロスの返事の内容を知らない)

ファレヴォンは洞窟の中に降りていった。その最も奥深い場所でこれまで目にしたどのミノタウロスよりも大きいミノタウロスと対面した。赤きフルームは立ち上がると長身のノルドの2倍は背が高く、犠牲者の頭蓋骨で作った首飾りを身に着けていた。「忌々しい野獣め!」ファレヴォンは叫んだ。「ついに見つけたぞ!さあ、我が従弟を引き裂いたお前に正義をもたらしてやる!」

「フルーム!」と、赤きフルームは答えた。そして血塗られた縞入りの角を下げると、この勇ましき英雄に突進した。

ファレヴォンが脇に飛び跳ねると、赤きフルームは洞窟の壁に力一杯激突した。壁が壊れてヒビが入り、そこから川の水が注ぎ込み始めた。ファレヴォンは赤きフルームが体を引き抜いて再び自由になる前に脇腹を3度切りつけたが、その攻撃は相手をさらに怒らせただけだった。ミノタウロスは大斧をつかむと、ファレヴォンに恐ろしい一撃を与え、彼の右腕を切り落とした。それでもファレヴォンはひるむことなく左手で戦い続けた!

両者の間で激しい攻撃が幾度となく交わされた。そして、ついにファレヴォンがその輝く剣を赤きフルームの心臓に突き刺した!だが、最後の一撃に対する怒りに駆られたミノタウロスは狙いを定めて激しい一撃を与え、勇敢な英雄の輝く兜を叩き割った。ファレヴォンは力尽き、自らが殺した恐ろしいミノタウロスの死体の上に倒れた。

そしてレヤウィンの人々はファレヴォン・ヴェロを発見し、敬意を払って彼を外へと運び出した。

ブラック・マーシュの家産Homesteads in the Black Marsh

布告第19号:第二紀194年 薄明の月11日
帝国評議会最高顧問ヴェルシデュ・シャイエ

ブラック・マーシュとして知られる地域が荒廃した土地であり続け、その地のアルゴニアンの原住民がこの地域で耕作するための方策を講じていない限りにおいて、第二帝国最高顧問は本布告の添付文書に記載されたブラック・マーシュ地域が、この機会を利用することを望むすべての帝国市民が自由に居住できる土地となることをここに布告する。

あらゆる帝国市民(以下「入植者」)は今後ブラック・マーシュの領域内で居住者のいない土地を占有し、それによって900歩尺四方を超えない区画(以下「区画」)の所有権を主張できる権利を有するものとする。その後入植者はギデオンの帝国執政官の面前で、この区画に対する所有権の請求を申し立てることができる。ギデオンの帝国執政官は、入植者の請求および区画が耕作できる状態であり、入植者の主たる居住地であることを示す証拠が提示された日から5年が経過した時点で、入植者とその子孫に対し、区画の永続的な公有地譲渡証書を発行するものとする。

本布告はブラック・マーシュに植民と耕作をもたらすことを目的とするため、入植者は区画を取得した日より土地を改良する権利を有するものとする。改良には、樹木の伐採、開墾、水流の遮断、池の排水、柵の建設が含まれる。入植者が権利を主張する区画内に一時的な住居や野営地を有する全てのアルゴニアンの原住民は、自ら区画から退去および所有物の撤去をしなければならない。さもなければ、最寄りの帝国の守備隊が強制的に移動することとする。

これを布告せよ:ブラック・マーシュは最高顧問の善意の手において繁栄する。

ブラック・マーシュの物語Tales of Black Marsh

物語収集家ジュノ・アセリオ 著

圧迫するような熱気がのしかかり、私を溺れさせる。暑さは喉に詰め込まれた毛布のように、肺の中で広がっていく。こんな暑さは経験したことがない。湿気のこもった熱には具体的な感触がある。手を伸ばせば空気を搾り取れそうなほどだ。

「どうしてあいつらはこんなところで我慢できるの?」とテオドシアは言って唾を吐いた。月明かりの下で、彼女の汗が染み込んだチュニックと、首元にへばりついた髪が見えた。

彼女はきっと、この場所を故郷と呼んでいるアルゴニアンのことを言っているのだろうと思った。私は答えを知らない。喋ろうとしたら、言葉が口の中で溶けてしまいそうな気がして怖かった。

腕に鋭い痛みが走った。もう叫び声をあげる気力も残っていない。ニクバエを狙って叩いたが、離した指は腫れた皮膚の表面からせり上がる血で濡れていた。この痛みも、焼けるような両足の感覚に比べれば鈍い轟きにすぎない。私たちは何時間も歩き続けていた。日が暮れる前に街道が見つかるはずだった。だがもう否定しようがない。私たちは完全に迷ってしまった。

「同じところを堂々巡りしてるのね」とテオが言った。「ブーツがぐしょ濡れだわ」

ブーツが濡れるどころの問題じゃないと言いたかったが、思い直した。彼女を怖がらせたくない。慰める言葉を探していると、低い、くぐもった太鼓の音が聞こえた。音は一挙に周囲に跳ね返り、不気味なこだまと共に汚泥を貫いて響いた。

一瞬、私の頭がおかしくなって、自分の心臓の鼓動が耳の中で鋭い悲鳴に変わったのかと思った。だがテオは頭を上げた。

「今のは何?」彼女の声にも、今では恐怖の片鱗が伺えた。

「太鼓の音みたいだった」と私は役にも立たないことを言った。

私は月に照らされたブラック・マーシュの影に目を凝らした。心臓が早鐘を打っていた。何の動きも見えない。夜に潜む墨汁のように黒い人影も、暗闇に光る目もなかった。沈黙が痛いほどだった。何ひとつ息をしていない。水も動いていなかった。

「とにかく移動しよう」と私は言った。

テオの声はなかった。恐怖で口がきけなくなったかと思い、私は彼女の様子を見るために振り返った。背後には暗闇だけがあった。目の錯覚かと思って手をかざし、テオの体に触れようとした。だが手は空を切った。重く耐えがたい熱気だけが残っていた。

「テオドシア?」私はほとんどたしなめるように呼びかけた。「はぐれてはいけない」

太鼓の音が一度だけ鳴って私に答えた。今度は前よりも近い。もう少しで飛び上がるところだった。周囲を見回すと、今度は私の先を駆けていく人影が見えた。テオにしては足が速すぎる。それにわずかな月光から、尻尾があるのが見えた。

「テオ?」と私は囁いた。

ドン!

恐怖で血が煮え返った。またして太鼓の音がブラック・マーシュを突き抜け、私は走り出した。どこに向かって走っているのか自分でも分からなかったが、逃げるしかない。一歩進むごとに泥を振り払わなければならなかった。分厚い空気に肺が詰まり、汗が背中を流れ落ちた。

ドン!

太鼓は接近し、今やすぐ背後まで来ていた。だが立ち止まって見るわけにはいかない。絶対にダメだ。進み続けなければ…

地面が目の前に飛び込んできた。私は倒れて沼に落ち、汚水まみれになって沈み始めた。耳の中に水が入ってきたが、それでも雷鳴のような太鼓の音はまだ聞こえていた。

ドン!

私は何とか起き上がった。草や泥が指先からこぼれ落ちた。水面から頭を出すと、正面で何者かが同時に頭を出した。テオかと思ったが、顔が違った。大きさは同じくらいだったが、両目がルビーのように光り、月明かりに鱗が輝いていた。自分が見つめているのは、巨大な蛇の顔であることに気づいた。

ドン!

蛇は顎を大きく開いた。底なしの虚無が開き、私を見つめ返している。

ドン!

私に向かって落ちてくる。

ドン!

ブラックウッドのワインWines of Blackwood

オリウス・ヘルタノ 著

シロディールが食事と飲み物に対して抱く愛情はタムリエル中に知れ渡っている。瓶か水差しに入れた香り豊かなワインを食事に添えなければ、インペリアルの食卓は始まらない。しかし愛好家たちが集まってお気に入りのヴィンテージについて話す時、大半の者は豊潤さで知られるコロヴィア台地の赤のブレンドが一番だと決めつけている。著者の考えでは深刻な間違いだ。帝国のどの地域も何らかの価値あるワインを作っている。その中にはもちろん、ブラックウッド地方も含まれる。

当然ながら、これほど広大な地域の醸造業者すべてに対して信頼性の高い調査を行うことは、このささやかな写本の射程を越えている。むしろ、本著はこの顧みられることの少ないブドウの栽培地で作られるワインのスタイルや特徴に注意を向けたい。レヤウィンとその周囲のブラックウッド地方は、帝国内でも最も温暖で湿度の高い地域であり、当然ながらコロヴィアよりも多くの種類のブドウが採れ、多様な栽培技術が要求される。この気候でブドウは短期間で熟し、甘みに加えてフローラルでフルーティな味わいを強く持つ、複雑なワインになる。

アネクイナの乾いた平原にほど近い、ニベン川の西の丘で作られる「レフトバンク」ワインから始めよう。ここはもちろんトランス・ニベン地方で最も乾燥した部分であり、ここで生まれるワインはレヤウィンのどこよりもコロヴィアに性質が似ている。クイーンズティアーやネリアンス・ファインなど、赤の品種がこの地に適している。穏やかな冬と長い栽培の季節のおかげで、ブドウは早期に熟成する。トランス・ニベンの丘は熟練の醸造業者の手にかかれば、真に見事な出来栄えの、甘く豊穣なワインを生み出す。

東に移動すると、ニベン森の軒先にやって来る。川の西にある地域よりも暑く高湿度なこの一帯は、大半の赤ブドウに適さない。しかしプティット・グレイやホワイトムーン、グレート・アンブロシアのような白ブドウの品種は、この森林の影に覆われたブドウ園でよく育つ。これらの品種は言うまでもなく、インペリアルの全てのワインの中でも特に甘くフルーティなワインになるが、だからといってその品質を軽視してはならない。上質なニベン森の白は、優雅で身の引き締まる爽やかな風味を持ち、どのインペリアルのワインセラーに置いても恥ずかしくない逸品である。

さらに東へ向かい、ブラック・マーシュの辺縁に行くと、ついにブドウが一切まともに育たない土地にたどり着く。うだるような蒸し暑さのせいで、ブドウ園を作るのは不可能に近い。しかし必要は発明の母である。そのためブラックウッド東境の人々は手に入るもの、例えばイチジクやブラックベリー、ブルーベリー、さらには桃でワイン(の一種)を作っている。こうした材料ではうんざりするほど甘いフルーツジュースしかできないだろうと思うのも無理はないし、実際そうなることも多い。しかしこのフルーツワインの一部は意外なほどバランスが取れており、この地方の辛い料理によく合う。ブラック・マーシュのピーチワインを地下に貯蔵し、舌の肥えた来客に供すのはお勧めできないが、暖かい夏の夕べに入植者の夕食を流し込むために飲むのであれば、決して悪いワインではない。

ブラックウッドの景色Sighs of Blackwood

ギデオンでランプが消え
筏が沼地を漂う時
聞こえるだろう、槍蛙の歌が
樹液を浴びた合唱のように響きわたるのを

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

あなたの濁った水を泳ぎ
ワッソフルーツを味わう時
ホタルの光のごとき、自らの祝福を思う
我がヒストがここに根を張ったことを

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

泥炭の匂いが鼻を満たし
泥が背中で乾いていく
百の収穫が花開くのを感じて
あなたの黒い大地で眠る

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
あなたの物語の吐息で、我らの鱗を湿らせたまえ
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

ブラックウッドの諸部族:ギデオンと国境Tribes of Blackwood: Gideon and the Border

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

マークマイアへの長く危険な遠征の後、私は故郷のハイロックへ戻ってたっぷりと休息を取るのがいいだろうと思った。しかし八大神には別の計画があったようだ。私の最初の本「マークマイアの諸部族」の売り上げが予想を遥かに上回ったのである。研究者にとっては嬉しいジレンマだ!新たな求めに応えるため、私はトランス・ニベン地方でキャラバンに別れを告げ、ギデオンに向かって東へ出発した。

行ったことのない人のために説明しておくと、ギデオンは無数の文化が不可解に混ざり合う地であり、アイレイド建築とインペリアルの歴史、コスリンギの民間伝承、そしてアルゴニアンの伝統の異様な集合体である。豊かな多民族社会の歴史を持つにもかかわらず、現在のギデオンに住んでいるのは主にアルゴニアンである。私にとっては家族のように大切な存在になった南の親族とは異なり、ブラックウッドのアルゴニアンはシロディールとの長期間の接触により正負双方の影響を受けている。彼らはより正確なシロディール語を話し、より繊細な事業を営み、外国の伝統によりうまく適応している。このことはしばしば、古い伝統やアルゴニアン哲学の純粋な体裁を失う結果につながる。アルゴニアンがヒストの至上性を公然と否定するのを初めて聞いた時、私は驚愕した。だが時と共に、私はブラックウッドの諸部族も複雑さに劣るわけではないことを理解した。多くの点で、彼らは他の部族よりも遥かに複雑だとさえ言えるだろう。

タムリエルのより大きな部分との境に住むアルゴニアンは、外国の破壊の大半を経験している。戦争や飢餓、奴隷貿易、環境破壊などである。国境のアルゴニアンはこうしたこと全てを体験してきた。その結果、この地のサクスリールの友情を得るには大変な苦労が伴った。マークマイアのアルゴニアンの大半は外国人に対し、困惑を交えた滑稽なほどの無関心で迎える。しかしブラックウッドのアルゴニアンは、大部分のよそ者を軽蔑に近い疑念を持って見ている。ケシュという地域の指導者は、民をより広いタムリエル社会に統合するため多大な努力を払っている。この試みが不信の増大ではなく、協力の促進へとつながることを祈っている。

ブラックウッドの諸部族:リバーバックTribes of Blackwood: Riverbacks

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私が追放したい迷信を選べるなら、アルゴニアンの見た目や行動が全員同じという考えを追放したい。ブラック・マーシュの境界の外側にいる人々はしばしば、アルゴニアンの身体機能が固定されていて、部族ごとの違いもごく些細なものだと思い込む。大半のアルゴニアンが基本的な形態学的パターンを共有していることは事実だが、それでも差異は大きなものから小さなものまで存在する。サルパ、ナガ、ハプスリート、パートルなどの例はほんの一部である。確実に言えることは、こうした差異が各部族のヒストを取り巻く生息環境に対応していることだ。長老ナヒーシュの大半は、ヒストが「正しい皮膚を正しい時に」与えてくれると考えるに留めている。それが本当なら、リバーバック族のヒストは実に見事な仕事をしたと言える。

私の案内人である蘭を名づける者は、沼の奥地へ私を連れて行って、ナカ・デシュ、もしくはリバーバックというあまり知られていない部族に会わせてくれた。川の民に会えるほどブラック・マーシュの奥に行くインペリアルは少なく、ナカ・デシュはヒストの根の境界から外に出ることにほとんど意義を見出さない。そのため、大半の者は彼らを秘密主義で神秘的な部族とみなしている。リバーバックは際限なき歓待の精神を持っているため、この誤解は余計に愉快である。

私たちはリバーバックの領域へ渡し舟で近づいた。遠征隊はほとんど一瞬で部族の哨戒兵に出くわした。哨戒兵たちは亀かワニのように水上を漂っていた。彼らの顔の幅広さや目の大きさ、そして前腕と喉元についた水かきには驚かされた。ヒストがこの地域民に「正しい皮膚」を与えたのは明らかだ。リバーバックの領域は地面よりも水が多く、沈んだ沼地は小さな筏やカヌーで移動するしかない。

蘭を名づける者は低い鳴き声で哨戒兵に挨拶をした。彼らは元気よくその音を繰り返し、私たちの船に乗り込んできた。哨戒兵たちの誰もシロディール語はできないらしく、案内人に通訳してもらなければならなかった。彼女によると、リバーバックは通行許可を与える前に、謎かけの貢物を要求しているということだった。この要求に脅迫の匂いは感じ取れなかった。命令というより、誘い掛けのようだった。私に言葉遊びの才能はないが、インペリアルならほとんど誰でも知っているドアノブに関する子供の謎かけを教えた。蘭を名づける者がそれを翻訳すると、すぐに2人の哨戒兵は拍手をした。1人が自分の額を私の額に押しつけて2度鳴き、その後2人は現れた時と同じく突然、水中に消えていった。

私たちはリバーバックと共に4日間過ごした。1日を除いては、ずっと筏に乗って釣りをしていた。リバーバックの釣りは伝統的な釣りと名前しか似ていない。ナカ・デシュは釣り針と糸ではなく、オシージャ・ガースという大きな川魚を使う。オシージャは1匹ごとに変わった引き具と紐で繋ぎ止められている。魚の大量にいる場所を見つけると、アルゴニアンたちはこの捕食者を解き放ち、魚を捕まえさせる。オシェージャが魚をくわえるや否や、アルゴニアンはこのペットを船の脇に引き寄せ、魚を取り上げるのである。私は蘭を名づける者にどういう仕組みなのかと聞いた。どうやら、紐は魚を飲み込むのを防ぐらしい。しかし、オシージャはちゃんと世話されていると彼女は請け合った。もちろん、それはオシージャが年老いるまでの話で、そうなったらやはりこの魚も食べられてしまう。

リバーバックと過ごした時間の中で、苛立つことがないではなかった。私が出会ったアルゴニアンたちの中で、ナカ・デシュは圧倒的に好奇心を欠いていた。謎かけを除けば、彼らは私たちが持ち込むものに全く興味を示さなかった。私たちの食事は拒絶し、私たちの物語には特別関心を持たず、私たちの名前すら聞かなかった。この無関心と、彼らの際限なき歓待が合わさって、遠征隊の大半は居心地の悪い思いをした。蘭を名づける者は、親切に返礼が必要だと思うのがおかしい、と私たちをたしなめた。いつものことながら、こうした小さな失望もまた貴重な教訓を与えてくれるのである。

ブラックウッドの諸部族:レッドドリームの民Tribes of Blackwood: Red-Dream People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

多くのアルゴニアンが石の住居を避ける一方で、国境地帯の部族は大抵それほど信念に固執しない。ブラックウッドを旅すればすぐに様々な種類の古代遺跡に遭遇する。そして、これらの遺跡は頑丈で守りの固い住居を提供しうる――これほど荒廃し、戦火に引き裂かれた土地では非常に重要なことだ。

私たちは沈んだザンミーアの中と周囲に住むいくつかの部族に会った。また、古いアイレイドの集落に避難していた部族にさえも会った。例えばレッドドリームの民だ。彼らの「水浸しの家」は伝統的なアルゴニアン様式で建てられているが、乾燥した時期にはよく近くのアイレイドとアルゴニアンの遺跡に避難する(ブラックウッドのほとんど集落と同じように、これらの遺跡は1年のうちかなりの期間水没している。そのため、長期の住まいには適していない)。

乾季の間、ハッツリールは遺跡の「歌を知る」ために樹液の儀式に参加する。外部の者はおそらくこれを型破りな考古学と解釈するだろう。彼らは遺跡の中で何時間もかけて歴史的価値があるものを探す。欠けた杯や壊れた武器といったものを。十分に集まったらそれらの上に灰をまき、奇妙な樹液の酒を飲み、その品々の「夢を見て」それにまつわる物語を知る。私が確認できたところによると、この物語のほとんどは作り話か完全に暗喩で覆い尽くされていて、学術誌にはほとんど使えないようなものばかりだった。たとえそうでも物語は示唆に富み、場所に対する価値ある思いを部族にもたらすのだ。根の使者、ラー・ネイはそれを「収獲」、狩猟とも農業とも違う習慣だと説明してくれた。儀式が完了すると、この歴史家たちは見つけたものを家に持ち帰り、創造的なやり方で日常生活に組み込む。ハッツリールの農民は剣を鋤の刃として使うかもしれない。料理人たちは古代アイレイドの杯を植木鉢にするかもしれない。それはここブラック・マーシュだけで見られる、素敵な創造力の表れだ。

プロノビウスへの未完の手紙Unfinished Letter to Pronobius

プロノビウス・ヘブリン大司祭様

今頃はギオヴェッセ公爵領の嫡子が、袖にされた恋人によって残酷に殺されたことをお聞きになっていることでしょう。凶行に及んだとされるレッドガードの女は故郷の砂漠に逃げ帰ったようです。女に正義がもたらされるかどうかは怪しいものです。嫡子マセンの死は大いに悼まれています。彼は父親と同じようにギオヴェッセ内外から好かれておりました。彼は母親から大変愛されておりました。愛する、と言うには少し支配欲がありすぎたようですが。私は批判をいたしません。求められれば助言をするか、相談に乗るだけです。

ご存じのとおり、私は何十年もの間忠実にガレヌス家に仕えてまいりました。こういった職務では、時折の厄介ごとはつきものです。亡き公爵は敬虔な方でした。ですが奥様のアステラ女公爵は、もしかしたら… それほどではなかったかもしれません。もちろん、その立場ならやらねばならぬように、祭礼や儀式には全て参加し監督もしておいででした。ですが、常に心がそこにないように感じていました。とは言え、マセンを失った今、私は彼女の神々や光の道への信仰心に対して心から疑問を感じています。差し支えなければギオヴェッセ城を訪ねて、女公爵とお話をしていただけないでしょうか。

最近耳にした噂を、紙に書き記したくはありません。夫人が個人的な研究でしているらしきことに関連して、闇の技に関連する書物を持っているという噂です。また、夫人が我が子を失ったことについてどのように憤慨し、逆上しているかについても書きたくありません。明らかにそのような運命を受け入れる境地に達することはできないようです。

ボロボロになった交易商人の記録Tattered Trader’s Log

今日はアルゴニアンのキャラバンが立ち寄った。何とかいくつかの奇妙な樹液の壺の値段交渉をした。裁定者ガヴォスがまた自由貿易を抑圧する無意味な規制を思いついたりしなければ、結構な利益になるかもしれない。彼から樹液を市場内で取引できない理由に関する、長々とした講義を聞かされずに済むようゼニタールに祈る。

自分自身で実際に仕事をやることもなく、ぜいたくに暮らすのはさぞかし楽しかろうな。ここで商品と金を回し続けてるのは我々商人だ。取引を妨害するだけでも十分よろしくないが、彼は黄金の金床を誰にも見せないらしい。我々と神々の間に立とうとするとは出過ぎた真似だ!それを許すつもりはないし、そう思うのは私一人ではない。

マタス・アムニスへの手紙Letter to Matus Amnis

マタスへ

招待状は受け取ったか?ヴァンダシア評議員の催し物はいつだって素晴らしいからな。それに、今回はとりわけすごいものになると聞いてる。

私はほぼ君と同じぐらい長い間、評議員と彼の試みの忠実な支援者でい続けてる。また、我々はどちらも彼の特別な社会組織に所属している。私は常々、我々の尽力が何かに至るのか疑わしく思っていた。真実が明らかになると、私が長年築いてきた想像なんて、ちっぽけに見えるものだと感じてるよ。

もう一つ。サルヴィットの屋敷で何が起きてるか知ってるか?ブラックウッド湖の近くにある彼の地所でだ。どうやら何かが、ヴァンダシアに次の催し物を前にして人目につかないようにすることを決意させたようだ。グラシアン・サルヴィットと避難したという噂を聞いたよ。サルヴィットが我々よりも先にヴァンダシアの秘密の計画について知ったとしたら、すごく腹が立つ。

君に会うのを楽しみにしている。道中で、もっと詳しい情報を手に入れないとな。

覚醒した兄弟
モリス

モーゲインへのギルド指示Morgane’s Guild Orders

守衛モーゲイン

レヤウィンの魔術師から、ブラックウッドにある奇妙なデイドラの施設に対する調査を依頼された。この「破滅の宝物庫」が領域内にいくつあるのか正確な数は分かっていないが、一ヶ所だけ場所が分かっている。ギデオンの東にある沼の奥深くだ。この地域にはほとんど住人がいないが、建物から奇妙で工業的な音が聞こえてくるとの報告が現地のアルゴニアンからあった。

君と クド・アフハダジャには、この破滅の宝物庫ポルシジドに入り、その忌むべき住民が何を企んでいるのかを明らかにしてもらいたい。中には信者と、もしかしたら多少のデイドラがいることが推測される。君とクドがはぐれた場合は、忘れずに送信石を使用して退却の態勢を整えるように。

戦士ギルドのために
ギルド幹事 ボルヴス・ダルス

ラロスの焼け焦げた日記Ralos’s Charred Journal

ガヴォスは終わった。

予想どおり、奴のしみったれた兵士たちは買収できた。クエンティンとエスディルにとって、説得して同意させる負担は大したものではなかった。我々は彼らを買っても釣りがくるほどの金を持っているからな。

奴が大切にしている金床と共に閉じ込められた今、絶え間なく挟まれる「公正さとは」という言葉を聞くことなく、本物の利潤の獲得に戻れる。奴に何が分かる?この市場の繁栄の理由は我々で、奴の説教や小物のおかげではない。

今日、新しく指名された裁定者が来た。彼は努めてさりげなく一週間分の取り分の増額を示唆し、「夕日の下」での休暇の計画のための金が足りないことを匂わせてきた。言葉の選び方がかなりわざとらしいような気がした。私の秘密の隠れ家を知っているのか?思っていたよりも不注意だっただろうか?

いずれにせよ、我々は今のところ、さらに気前よく心付けを渡せるの余裕がある。だが、奴が私の事情についてあまりにも知り過ぎた場合は、交代させる必要があるかもしれない。

リルモシートの贈り物Gift of the Lilmothiit

チャニル・シースによる、勇気ある青年向けの本

クザールは元気に先頭を行き、草に覆われた岩を軽々とまたいで進んだ。彼はもうすぐ仲間のキャンプに着くと言ったが、2人がジー・ティーの部族の領地を出発して以来、彼は毎朝同じことを言っていた。ジー・ティーはそろそろ我慢の限界だと思い始めた。それでもクザールは仲間がもうすぐ近くにいるし、彼らはまだ移動しないと約束した。ジー・ティーは彼を信じたが、他にどうすればよかっただろう?彼女の部族はリルモシートが持っていた薬を求めていた。しかも、彼女の母親が治療を必要としていた。母親は日に日に衰弱していたのだ。

病気はどこからともなくやってきた。ある日、数人の大人が熱を出した。その後、症状が拡がっていった。当初、拡散はゆっくりだった。治癒師は熱を治し、食事を飲み込むのに苦労する患者の手当てをしたが、それで治癒師の小屋は満杯になった。治癒師はできる限りのことをした。大抵の場合、患者たちは安静にしているしかなかった。

若者が村に迷い込んで来て、奴隷商人から逃げてきたと言った時、最初に近づいたのはジー・ティーだった。クザールはとても若かったが、その話しぶりは子供とは思えなかった。彼は奴隷商人によって仲間のもとから連れ去られて以来、目にしたことを全て覚えていた。連れ去られる時に通った道はまだ彼の記憶に新しく、リルモシートがキャンプを張った場所もよく覚えていた。彼女の部族の大半はこの若者を信用する気になれなかった。リルモシートの策略を忘れていなかったからだ。だがジー・ティーは事の重大さを理解していた。彼女はこの若者と荷物を集め、彼がキャンプにやって来てから3夜と経たないうちにこっそり抜け出した。

今、ジー・ティーはクザールを信用した自分の判断を疑い始めた。あまりに長い間歩き続けていたので、彼女の足はボロボロになり、背中の荷袋はほとんど空になっていた。道の砂埃が喉にこびりついていた。最後に他の旅人を見かけてから数日が経過していた。事情に詳しくなければ、ジー・ティーは誰もこの道を通ったことがないと思っただろう。だが砂埃の中に足跡があったし、茂みも刈り取られていた。最近誰かがここに来たのだ。ただ見えるところにはいなかった。

若者はまた別の大岩の上に昇り、喉を張り上げて短く歓声をあげた。「着いた!ここだ!」

ジー・ティーはしなやかな足で積み上がった岩をよじ登り、若い旅仲間の隣に立って峡谷を見下ろした。キャンプの痕跡があった。狭い円の内側に集められた燃え殻や、テントの柱を立てた時地面にできた穴、そして周囲に置かれた材木、東へと通じる足跡もあった。ジー・ティーは失望で背骨がしぼむ気分だった。リルモシートがここにいたとしても、もう移動したのだ。

ジー・ティーは無言で放棄されたキャンプを歩き、クザールは駆け回って岩や木の陰を探した。まるで部族の成員がひょっこりと姿を見せて挨拶するのを期待しているかのように。2人はキャンプを一回りして、太陽が上空で輝く中、峡谷を移動した。キャンプには灰と穴以外には何も残されていなかった。旅は無意味に終わった。クザールが仲間たちと再会することはないし、ジー・ティーは母親にどうしても必要な薬を取ってくる使命を果たせなかった。

「ほら、これ!」クザールは捨てられた木材と荷車の車輪の山に飛び込んだ。出てきた時、彼は両手に粘土の瓶を抱えていた。ジー・ティーは若者に近づくにつれ、足が重くなるのを感じた。彼の耳は失望感で垂れていたが、目は輝いていた。クザールは瓶の蓋を外した。中には強烈な香りを放つ、濃厚な薬草のペーストが入っていた。

「それは何?」と、臭いに顔を背けながらジー・ティーは尋ねた。

「母さんの調合薬だ。どんな病でも治す。クザールにも、ジー・ティーにも役立つ」

ジー・ティーは嘘だと思うところだった。そもそも、彼は部族が自分を置いていくはずがないと言ったではないか。「薬なの?」

クザールは真剣な目で彼女を見つめ、蓋をした容器をジー・ティーの手に押しつけた。「薬さ。贈り物だよ。俺の部族からあんたの部族へ」

するとクザールは背を向けた。彼は足跡を追って東へ向かい、二度と振り返らなかった。ジー・ティーは彼が地平線の向こうへ消えていくまで見ていた。その後彼女はリルモシートの贈り物を持って帰り、母親と、治癒師の小屋に集まる残った病人たちに与えた。

レオヴィックの偉大なる霊魂の声明Leovic’s Great Spirits Proclamation

〈帝国の公式布告、第二紀576年の原典に基づく写本〉

帝国の全臣民よ、この言葉を聞くがよい。

ロングハウスの古き知恵は国家の繁栄にとって重大であり

多様な宗教的実践を認めることは地域の平和を保つために必須であり

我らの帝国は強さの美徳を尊び、隷従の悪徳を憎む。

以上を鑑みて、私、すなわちブラック・ドレイクの後継者である皇帝レオヴィック一世は、ロングハウスの長に任命された者として、大衆にはデイドラの名で知られるリーチの古い霊魂を、帝国の統治における守護者かつ保証者としてここに承認し、また賛美する。この霊魂の崇拝を禁じるいかなる法や習慣もここに無効化されるものとする。ルビーの玉座の臣下でこの霊魂を賛美する典礼や儀式、祈祷への干渉を試みる者は玉座の敵対者とみなされ、反逆者や不平分子など、国家の敵と同じ懲罰の対象となる。

宗教改革の時代をシロディールとその先にまで押し広げ、栄誉ある我らがデイドラ公の言葉と報酬に、新たな力を求めようではないか。

上記を確認の上、ここに我が手と心を本件の大義に添え、帝国の印を押すものとする。

ロングハウスに栄光あれ!帝国に栄光あれ!デイドラ公に栄光あれ!

レッドメイン砦の帝国軍の歴史A Legionary’s History of Fort Redmane

第二紀233年薄明の月19日、プリスタン・ヴィニツィオ百人隊長 著

護民官マルティウス・コンダラ殿

前回我々の拠点をご訪問頂いた際、貴官はレッドメイン砦の名の由来を尋ねた。私は恥ずかしながら答えを知らなかったので、若い士官であるアギアン副隊長に頼んで、我らが拠点の信頼できる歴史を調査してまとめてもらった。彼女の勤勉な仕事のおかげで、レッドメイン砦という名前の起源について、貴官の質問に答えられることを誇りに思う。

砦の建設が開始されたのは、レマン皇帝がアカヴィリに大勝利を収め、第二帝国が築かれて間もない第一紀2707年だったことがはっきりしている。この時期についての俗説では、周辺地域がすぐにレマン皇帝の支配を認めたということになっているが、必ずしも真実ではない。当初、第二帝国の国境は確定していなかった。ヴァレンウッドのウッドエルフやアネクイナのカジート、ブラック・マーシュのアルゴニアンは皆、生まれ変わった帝国への統合に抵抗したのだ。

ここトランス・ニベン地方では、カジートの好戦的なクランがリンメン周辺のサバンナからやって来て、川を越えてブラックウッド北方の農地や小さな街を襲撃することもあった。大河から西へ領土を広げるニベンの植民者たちは、伝統的なアネクイナの狩猟地にまで食いこんだため、好戦的な狩猟公たちは自ら問題の解決に乗り出した。このプライドの高いカジートたちは自らの土地で行われる「ニベン人の密猟」に対して、人間の土地で「狩り」を行うことで報復した。

カジートの絶え間なき略奪の脅威からこの地域を守るため、第十軍団を指揮していたネメニウス・ヘスター将軍はニベン下流の峡に国境要塞を建設することを提案した。これはレヤウィンの屈強な守りとニベン湾の守りの中間に位置するだけでなく、峡はカジートの略奪者たちが好んで渡河する場所でもあった。ヘスター将軍の本来の計画では、この強力な要塞がニベン砦と呼ばれる予定だったが、建設はなかなか進まなかった。レマン皇帝の統治初期、シロディールの人員はタムリエル中の脅威に対処する必要のせいで酷く不足していた。ブラックウッドのカジート盗賊は、他の脅威に比べれば霞んでしまっていたのだ。

上官たちの出し渋りに業を煮やしたヘスター将軍は、アネクイナの略奪者の脅威に彼らの注意を向けるため、少々問題のある策略を思いついた。彼は凶暴だが公式には知名度の低いフンズー・リというカジートの族長を選び、人間を奴隷にして血を抜き取る「野獣」軍団のリーダーに仕立て上げたのである。将軍はフンズー・リに「赤いたてがみ」という異名まで与え、トランス・ニベン地方から全ての人間を追い出す聖戦を呼びかける、狂信的な宗教的指導者であると報告した。

言うまでもないが、カジートのたてがみは常に一人であり、このリーダーがそれほどの戦士でもなく、強盗でもないことは良く知られていた。だが第二帝国初期、カジートの地域アネクイナとペレタインはシロディールの民にとって未知の異国だった。この見慣れぬ国の「野獣」たちについてのあらゆる不正確な物語が、まことしやかに伝えられていたのだ。

ヘスター将軍の計画はうまくいった。赤いたてがみの脅威を誇張したことで、帝国の財布の紐が緩んだ。ヘスターが国境を守るために要求した砦の建設には、大量のゴールドが投入された。

一方その頃、フンズー・リはインペリアルを「挑発」したことで他の狩猟公たちに叱られ、困り果てていた。ヘスター将軍の報告で広められた作り話に激怒したフンズー・リは、忠実な仲間を集めて小規模な部隊を作り、ニベンを渡って憎き敵を探し求めた。噂されたような騒々しい大軍ではなく、たった一回の密かな襲撃だった。砦から歩いて1時間も離れていない場所で、フンズー・リと戦士たちはヘスター将軍に奇襲をかけた。将軍は自分が悪名を押しつけたカジートに殺されたが、フンズー・リもヘスターの兵士たちに切り伏せられた。

帝国軍は討伐すると主張した怪物がおそらく自分たちの捏造であったことは認めず、ネメニウス・ヘスターの死を英雄的な抗戦として描き出し、将軍は「赤いたてがみ」の脅威に終止符を打つために、勇敢にも命を捧げたのだと喧伝した。数年後、ニベン砦は軍団の獰猛な敵の名を取って赤いたてがみ、すなわちレッドメイン砦と改名された。皮肉なことに砦が完成する頃には、ヘスター将軍にこの地域の守りを強化させたそもそもの要因である略奪の問題が終結していた。カジート王国のアネクイナとペレタインは、すでに帝国の支配下に入っていたからだ。

それから現在に至るまで、レッドメイン砦はニベン川の峡に立ち、決して来ることのない敵を見張り続けている。

レヤウィンにて傭兵求むWork for Hire in Leyawiin

問題がブラックウッドの民を悩ませている。自分がもっとも勇敢で強く、金と栄光を山積みにするためには計り知れない危険に向き合うことも厭わない冒険者だと思うなら、軍団長会議は仕事を提供する。

詳しくは、レヤウィンの街にいるサーヴァティウス・レオントゥロンを探してほしい。

レヤウィンの解放The Liberation of Leyawiin

雷鳴と共に、サイ・サハーンは
激戦の中、レヤウィンに向かう
レオヴィックの戦士が攻め
裏切り者はサイの背後を襲う

矢が飛び交い、剣がきらめく
死の鐘が鳴る時は近い
動じぬ顔で内なる力を引き出し
彼はレヤウィンのため剣を振るう

背後の裏切り者、前方のロングハウス
両者が戦いに望むは、剣聖の死
サイ・サハーンはその運命に抗い
今や一人で、門を突破する

中に入り、サイは息を吐く
二つの軍隊と戦い、死を相手取る
剣と知恵のみを武器にして
レヤウィンの自由のため戦う

背後の裏切り者、前方のロングハウス
両者が戦いに望むは、剣聖の死
サイ・サハーンはその運命に抗い
街の解放を試みる

軍と激突しても、サイの剣は鎮まることなく
レオヴィックは逃げ、サイの使命は果たされる
彼は裏切り者の死体の山に立つ
防衛者は悪を滅ぼし
レヤウィンの民は自由となった!

レヤウィンの出港スケジュールLeyawiin Shipping Schedule

レヤウィン港出航予定 — 第二紀580年 蒔種の月 第3週

メリトリアス号 – 象牙旅団の巡回船。日耀の明け方、2週間の巡回のため出航。恵雨の月第2週帰港予定。(密航、海賊に遭遇、飛び降りる?)

フラウンダリング・フラウンダー号 – ブラクソン・エムリの漁船。央耀の朝出航。同じ週の金耀帰港予定。(退屈すぎ!)

シェル・バック号 – 黒きヒレ軍団の軍艦。月耀の正午、ギデオンへの潮流で出航。(硬き鱗の者なら一緒に航海できるはず。あの章は読み返さないと)

メリーマーメイド号 – ランジェル・ミリの商船。税関検査終了まで出航は保留。ゴールドコーストのアンヴィル行き。レッドセイルの密売人の疑いあり。(完璧!港に引き止められていてくれるなら、忍び込む時間はたっぷりある!)

レヤウィンへの旅の案内Traveler’s Guide to Leyawiin

アスティニア・イサウリクス 著 公開日:第二紀569年降霜の月1日

ニベン川の河口にまたがって位置するレヤウィンは活気溢れる港であり、産業の集積地であり、崇拝の中心地でもある。ブラックウッドの温暖な丘陵と肥沃な農地に囲まれた、この陽気な経済都市は、その居住者の多様性を誇っている。3つの異なる種族に属する民が象牙の馬の街で出会い、交流している。ここレヤウィンでは、エルスウェアの異国情緒溢れるカジートとブラック・マーシュの原始的なアルゴニアンが、帝国都市の貿易と文化に触れる。これはタムリエル中を探しても他では見られない光景である。

レヤウィンは誇り高く、厳格な顔を外の世界に見せている。高い側壁や円柱型の塔、強靭な門に守られたこの街は、要塞としても貿易の中心地としても機能している。街の大部分はニベン川の西岸に位置しており、東岸はレヤウィン城が占めている。レヤウィンで最も人目を引く要素である、ニベン川を横断する巨大な石橋と防護壁が街を接続している。毎日大量の船がシロディールやアビシアン海沿岸、あるいはモロウウィンドの港へと向かって出発し、レヤウィンの橋の下を通っていく。船は大きな門が開いて通行を許すと、一旦停止して帆をたたむ。

市の行政
レヤウィンはレヤウィン属州にあるブラックウッドの首都である。第二帝国の初期、カロ家はこの国を統治する一族として正式に認知された。ネヴェニア・カロ女伯爵はこの誇り高き血統を継ぐ者である。この優雅な女性は高官たちに余興を提供し、街の社交界を取り仕切るだけでなく、街の演劇を支える気前のいい後援者でもある。

日々の行政事務は帝国の布告によって任命された総督の役目である。総督は女伯爵と共に、この地方全体を監督する。軍団長会議は市内の活動における細かな政務処理に従事する。

大礼拝堂
壮麗なゼニタール大礼拝堂に言及することなく、レヤウィンの話は始まらない。空に突き出す鐘楼が屋根よりも高くそびえたつ様は、街のほとんどどこからでも見ることができ、初めての訪問者にとっては目印としても役立つ。この大聖堂は第一紀600年代、聖カラダスによってペリナル・ホワイトストレイクと聖戦士の戦棍を称えるために築かれた。この尊敬を集めた聖人は、死後礼拝堂地下の聖なる墓に安置された。今日でも、信心深い人は聖カラダスの墓で礼拝中に、聖戦士の戦棍の幻視を見たと報告することがある。

食事、飲み物、宿泊
レヤウィン通が高く評価するのが、ゼニタール大礼拝堂から広場の向こう側、街の中心に位置するカラダスの宿屋である。ここは歴史ある建物で、鉛枠が付いた美しい窓ガラスに、優雅な鏡板、上質のカウンターを備えている。この宿は400年以上もこの場所にあり、無数の大貴族や名のある英雄を迎えてきた。

格式にこだわらない旅人には、レヤウィンの商店街地区が予算的にお手頃だ。 多くの商人が季節ごとに変化する短期の市場で露店を開いているが、常駐の食事処としては、礼拝堂南の労働者地区にある「頬落ち大根」がお勧めだ。数多くのレヤウィンの職人や商人がここで日常的に昼食をとるため、早めに行って行列を避けたほうがいいだろう。

主な施設
レヤウィンの店や職人街、ギルドホールは主に大礼拝堂の南、街の西半分にある。

魔術師ギルドは礼拝堂広場の南に位置している。ここにはブラックウッド最大の蔵書庫があり、本棚で一杯の部屋にあらゆる種類の謎めいた書物が置かれている。ここではまた、カジートの秘術師フェイッフィが瞑想のモルフォリスの印を掲げ、奇妙かつ強力なクリスタルを売っている。

ゼニタールは言うまでもなく、鍛冶と産業の守り神である。そのため、レヤウィンの商店街地区で高品質の鍛冶屋を見つけても驚くには値しない。鍛冶屋「歌う鋼鍛冶」はトランス・ニベン地方でも最高クラスの武器と防具を作っている。

最後に、鎧と素敵な服の簡素な看板に欺かれてはならない。熟練の仕立屋たちが特別な機会や催し物のために作った驚くべき作品が誇らしく展示されており、その隣にはより実践的な、防御力の高い作品が並べられている。

興味深い事実
この街のシンボルである象牙の馬の起源は知られていない。ある伝統では、古代の英雄ペリナル・ホワイトストレイクが関係していると信じられている。別の伝統では、神話の時代にブラックウッドは神のごとき力と美しさを持つ光り輝く白馬の住む地であり、この馬が岸辺を守っていたのだと述べられている。

カジートの武将であるアネクイナの黄金の獣、ダルロック・ブレイは第一紀500年代にレヤウィンを征服した。この街は20年以上もの間、カジートの支配下にあった。

第二紀299年、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエはレヤウィンの橋を撤去し、大型の帆船がトパル湾からニベン川へと通過できるようにせよと命じた。しかしレヤウィンの軍団長会議は商業の流れが増えても、レヤウィンに停泊せず通り過ぎるだけではないかと考え、帝国の計画を遅らせた末、ついには放棄させることに成功した。今日においても、大きすぎて橋の下を通過できない船は街の南の港に停泊し、貨物をより小さな川船へと移し替えねばならない。

親愛なる読者よ、よき旅を!象牙の馬の街への訪問をどうか楽しんでほしい。

ロヴィディカス評議員への手紙Letter to Councilor Lovidicus

ロヴィディカス評議員長

我々が共に帝国元老院へ仕えたのははるか昔のことだが、今でも君のことは同僚であり友人であると思っている。確かに私はあのウッドエルフが君に伝えた警告を無視した。あの古い秘密が未だに何らかの力と、何らかの危険をはらんでいると信じることを拒否した。間違いだった。

今日、ファルル・ルパスから手紙を受け取った(彼の死の報告が確かなら、殺される前に送ったに違いない)。そして、私は尾行されているのではないかと思っている。今朝、島の散歩中に岩の方から私を見ている人影が垣間見えたような気がしたのだ。私はその光景にひどく動揺して、ファルルの手紙を落としてしまった。洞窟に到着する直前まで、手紙を失くしたことに気づかなかった。

これはきっと20年ほど前に、モリカル皇帝から与えられた計画に関連しているに違いない。彼はある種の宝物庫のための世話係を必要としていて、私がそれを調達したのだ。契約の手配をした。費用を払った。だがそれはかなり昔の話だ。

これを書きながらも、締めなわがきつく引かれるのを感じる。これを受け取ったら、他の者に伝えてくれ。警告に耳を傾け、君の支援を受け入れるよう説得してくれ。ロングハウス帝の秘密。今回は本当に自分の死につながると考えている。

ジリッチ評議員

愛しい人へTo My Love

最後に別れた時、あなたが言ったことをずっと考えてた。そして、決断した。愛しい人、あなたを選ぶよ!真の幸せへの道があなたと共にあることを知った今では、あちこち走り回る無数のペットの影に埋もれながら、ただ彼女の側に存在するだけで満足することはできない。

苦しくはあったけど、脱出に最適な時が来るのを待つ必要があった。今手紙を書いているだけなのはそれが理由だ。君がこの手紙を受け取る頃には、リルモスにある2人のアパートで君のことを心待ちにしてるよ。そこで2人の未来の計画を立てよう。毎日希望が膨らんでいってる。

私の態度の変化に、彼女が疑いを抱きつつあるように感じる。これを書いている今も窓のほうから小さな爪がカチカチと鳴る音が聞こえるし、影の中でブラシのような尻尾を持つ、げっ歯類のビーズのような目がギラギラと輝いているのを感じるんだ。ああ、ついにこの毛皮の拷問者から逃れて、君の腕の中に行けるんだ!

愛しき者を救ってくれSave My Precious

頼む、誰でもいいがこれを見つけた人。何としても我が愛しき者を守ってくれ。なだめてくれ。このひどい場所から連れ出してくれ。

全力を尽くしたが、成し遂げられなかった。我が愛しき者をこのひどい場所に置き去りにしないでくれ。

お願いだ。

トゥーモン

愛情を込めて書かれたメモLovingly Written Note

事は起きた。

兵士たちが裁定者ガヴォスに背いたんだ!聞いたところでは、奴が大修道院の内陣に閉じこもったので、交易大臣たちが魔法で中に封じるらしい。実に皮肉だ!

彼らは俺たちに対して大きく貢献してくれた。このおかげで俺たちの子は、市民のことを市民が決められる自由な街で成長できる。武装した支配者に上から布告をされずにな。解放者の一人にちなんだ名前を子供につけるのはどうかな?ラロスか、エスディルか、クエンティンか。一番好きな交易大臣は誰だ?

義父さんのところから戻ったら話し合おう。

海賊の財宝のメッセージPirate’s Treasure Message

幸運な冒険者へ

我々のチャンスはないに等しい。ブルーワマスは数で勝ってるし、こっちは水が不足してる。私の財宝が奴らの手に落ちるのだけはお断りだ。その名誉は君に委ねよう。

レヤウィンから港を隔てた向かいに滝がある。その水源まで辿れ。

水源から90歩南に進む。

すると、かつて私がその基盤を徹底的に破壊するという栄誉に浴した古い要塞がある。

一番北東の角に立っている木の根本を掘る。

よい狩りを、友よ。何が起きても世界が決して君の名を忘れないようにするんだ。

トパル湾の恐怖、ヴォルダー

皆さんいらっしゃい!Come One, Come All!

楽しくて型破りなショーであなたの気持ちを温かくします!

圧巻のダンスをお楽しみください!

夢見の館が夢の世界にあなたをご案内します!

ファーマーズヌークの南の火までぜひお越しを!

巻き牙の機密情報Fang-Furls’ Dead Drop

クラフティングホールの商人から追加徴収しろ。忌々しい信者どもが、ずっと港での活動を邪魔しやがるから埋め合わせが必要だ。

ブラックウッドの商人どもはみんな腰抜けだ、シシスに感謝するよ。奴らが気骨の気配でも見せたら、行儀よくさせておけるかどうか怪しいものだ。

巻き牙の台帳Fang-Furls’ Business Ledger

[この後のページには犯罪者の所有物と巻き牙の活動が記載されている。それには大量の記述だけではなく、走り書きされた指示も含まれている]

引き渡し場所

今度は滅茶苦茶にするなよ。見つけるのは簡単なはずだ。

– 街の北、小山の上にある水の中
– 東に向かう。完全には橋を通り過ぎるな。隠し場所は大きな木の下だ
– フタン・ツェルの北、ちょっとした旅。丘の中腹に隠されてる

パンジェント・アダーのための大樽を回収するのも忘れるな。オリアンダーコースト・リザーブだ。積荷はレヤウィン港に置いてある。街から来るなら、一番左端だ。「絶対に」落とすな。あるいはどんな形であれ手を出すな。アダ―は気づくぞ。必ずな。

巻き牙の第二の機密情報Fang-Furls’ Second Dead Drop

我々が待っている隊商がボーダーウォッチで引き止められてるらしい。商品を入手する手段を他に見つけなければならん。港の作業員どもを絞り上げよう。家族を持ってる奴を見つければ、より簡単にいくだろう。

あのレヤウィンの奇妙な兄弟は反抗ばかりする。争いなど、ここでは全く必要ないものだ。すぐに思い知らせないと、他の奴らが同じことをやり出す。

巻き牙の第三の機密情報Fang-Furls’ Third Dead Drop

いくつか扉を壊して、何軒か荒せ。どうやら皆、我々に金を払う理由を忘れ始めてるようだ。思い出させてやれるかどうかは我々にかかっている。

教団のせいで状況が厳しくなり始めてる。仲間がどんどん捕まってる。我々はすでに力が半減していて、これ以上弱体化したらブラックウッドを支配できない。

完全な飲み物A Perfect Drink

オトゥミ・ラの日記から

私は旅を通じて、大規模な村から最も質素な農場に至るまでのあらゆる場所で、数多くの酒に出会ってきた。自分の人生と経験してきた事柄を振り返る時間ができた今、最高の飲み物を探し出すのは、晩年を過ごすための平和的な手段と思われる。戦士から醸造家への対照的な転換だ。

だが、実験ではいくつかの失敗をおかした。これらの材料のいくつかを組み合わせた醸造や試験は、ある種の予測し得ない結果に終わった。例えば、ゴールドルートワインは舌触りが良く滑らかだが、最初にこれを飲むとすぐに気分が悪くなることが分かった。その前に赤ニガヨモギを飲んでおけば別だが。どうやらこれが効果を消してくれるらしい。だが、私は先に何かしっかりしたものを胃に入れておかないと、これを飲むことができない。ひとつかみのベリーや豚の足肉とかだ。幻覚を誘発する効果を吸収するものなら何でもいい。

先日、ハチミツ酒の醸造でそれなりの成功を収めた。庭のハーブひと揃いと組み合わせて素晴らしい緑の色合いを付け加えたものだ。これはすでにたらふく食べた後の夜の締めくくりには最高だ。外に座り、マグカップを手に下の谷を見渡す… 自分が目の当たりにするとは思いもよらなかった人生だ。自分で材料を育てることが、仕事にとって大きな利益となっている。

とは言え、野生のベリーや根を求めてゆっくり歩くことにも恩恵がある。まだいくらか作業が必要だが、私のベリーエールは野生の風味から恩恵を受けている。どのバッチも見つかったものによって異なっているが、どれも必ず同じように粘度が高くシロップのような濃度だ。まるで飲むと言うよりも食べるかのように。昼間にこれを飲むと、他に何も入らなくなるので、少量の混合用になることは間違いない。私は材料を外の植物に依存しているから、それはいいことだ。

風の者たちと共にした冒険の日々が懐かしい。これに疑問の余地はない。だが、ここでの作業を通して、私は彼らと共有できる新しい何かを見つけられるだろう。比較的平和で落ち着いた残りの人生を楽しみながら。私が気に留めておかなければならないのは、ただこれらの飲み物がお互いにどう調和するかだ。また意図せず、前後不覚になってしまってはいけないから。

協力に感謝するYour Assistance Is Appreciated

我が愛しき者を傷つけようとする輩を抹殺してくれたことに心から感謝する。あの卑劣な狩人どもが消された今なら、我が愛しきものを追跡して助け出せるかもしれない。だが、荒野でとても気掛かりなものを見つけた。どうやら我が愛しき者は過剰に恐れてしまっているようだ。彼女は恐れるものから逃れようとして、ついにはオブリビオンへのポータルとしか言いようがないものを通り抜けてしまった。

私はこの奇妙な現実の裂け目がブラックウッドの荒野のあちこちに開いているのを見た。次に機会が訪れたら、そのポータルに飛び込んで、我が愛しき者の救出を試みるつもりだ。もし貴殿が私の替わりにこのメモに遭遇したなら、それは私がポータルが導いた先から戻る方法を見つけられていないということだ。

その場合は、どうか私の後に続いてくれ。私のためではなく、我が愛しきもののために。

トゥーモン

鏡とカラスOn Mirrors and Crows

レヤウィンから運び出せる古い鏡は全部集めた。こんなに沢山の反射面が本当に必要なのか?それと、あの鳥たちは本当に喋るのか?と言うか本当に鳥なのか?あの鏡が彼らを忙しくさせて、静かにさせてくれることを期待するよ。あれがなければあいつらは絶対に黙らない。

何故あの獣たちが我々の計画にとって重要なのか理解に苦しむ。だけど、君の言うとおり、彼らがエバーグロームに通じる扉を開けるための鍵となるなら、割れたガラスを磨いたりかき集めたりするのも、やる価値がある仕事なんだろう。

銀のチャイムChimes of Silver

ナカ・デシュ族の歌う代弁者、ギーム・シャー 著

多くの肌の乾いた者たちが私たちにコスリンギ殺害の罪を着せる。彼らは顔をゆがませ、「人殺し」「陰謀」「妖術」といった乾いた言葉を私たちに浴びせかける。長い季節が過ぎ去った今でさえ、人々はサクスリールが呪文でナハテン風邪を呼び起こしたと信じている。彼らがその目から憎しみを引きはがし、私が子供だった頃に目を向けてくれればいいのだが。その当時、根の民と銀の肌の部族は共に手を取り合って歩んでいた。泥、良き食料、そして陽気な踊りで結ばれていたのだ。

私には銀の肌の者たちの思い出が沢山ある。定命の目を閉じると、今でもかまどから出したてのクーサのヒール・スネイルケバブの匂いを嗅ぐことができる。ダシルの腰でぶつかり合って音を立てる、錫のチャイムの歌が聞こえる。ハドゥクの根の泡が喉を滑り降り、腹を温めるのが感じられる。だが、何よりもよく思い出すのが音楽だ。キラキラと輝く終わりのない曲の数々。何よりもあれらの曲を懐かしく思う。

私たちサクスリールには、単純なものからあまり単純とは言えないものまで数多くの楽器がある。だがコスリンギはさらに多くの楽器を使っていた。実際、卵の姉妹と私はコスリンギの手にかかればどんなものでも楽器になってしまうことについて冗談を言い合っていたほどだ。彼らの木のカッターは空洞のある丸太をワマス大の太鼓に変える。彼らはクリフストライダーから腱を抜いて、低い音でブンブン音を立てる弓状のハープを作る。だが、彼らが最も愛した楽器はチャイムだ。

根の民とは異なり、コスリンギは金属に対して嫌悪感を抱いていなかった。彼らが服を着ることはほとんどなかったが、細くより合わせた縄に付けた金属片を身に着け、歩くたびにカチャカチャと音を鳴らしていた。コスリンギの金属使いであるビーラーは、よく錫と銅の塊を大きな炉に流し入れて熱し、その後取り出してあるべき形になるまで、石の槌を使ってねじり、成形していた。金属の棒が冷めたら木の大枝に吊るし、曲を見定めるためにそれぞれの棒を調子よく叩く。ビーラーは金属が出すあらゆる音を意のままにしようとして、このチャイムを何百も作った。

ヌシュミーコのある暖かい晩、彼は饗宴のために部族を村に呼び集めた。彼らがなぜ饗宴をしたのかは分からないが、私たちは気にしなかった。饗宴の終わりが近づくと、見事なイトスギの木の周りに集まって彼の家族が演奏するチャイムを聴いた。8人のコスリンギ、彼の妻、叔父、5人の息子がまるで足元のしっかりしたツリーフロッグのように根元から飛び上がり、演奏用のバチでチャイムを叩いた。チャイムから生じる音は、まるで穏やかな雷鳴の子供のように響いた。私たちは心が松明のように明るく燃えるのを感じ、銀の肌の者の多くが喜びの涙を流した。

私たちがコスリンギを殺したと肌の乾いた人々が言うのを聞くと、私はあのヌシュミーコでの晩のことを考える。私が子供の頃に見聞きしたもののことを聞いたら、あれほど美しいものを破壊するヒストの子など誰もいないということが彼らにも分かるだろう。

苦々しい奴らに甘味をSweets for Sour Company

(カジートの侮辱の歌)

歩き手よ、お前がさまよう場所が
遠く毛皮のない場所ならば
少しシュガーを取っておけ
先には苦みがたっぷりだ

シロディールではご用心
奴らがやるのは挑発ばかり!
鈍さにかけちゃ帝国一
ブラック・マーシュの沼を入れても!

モロウウィンドには何がある?
にやにや顔の虫食いの陰口だ!
ダークエルフにむかついたなら
シュガーが吐き気を止める!

スカイリムの雪の小山に、温かみなんてない
炉端も機知もぼんやりだ
ノルドの傲慢さより分厚いのは
頭蓋骨と花嫁を結ぶ紐だけ!

毛のない奴らに追い詰められたら
臭いのきついつるつる肌?がぶりといこう!
杯に甘味をひとつまみ
尾のねじれた爪なしども?もうひと口!
ナメクジ舌の疥癬舐め?そんな奴らはひと飲みだ!
スイートロールに手を出すな、北の豚め!

汗が染みてるハンマーフェルの砂漠?
友よ、嗅いだことない悪臭だ
芳香を放つレッドガードの文化に興味を持つ者など
輪を描いて飛ぶハゲワシの群れだけ!

ヴァレンウッドの木で爪を研ぐな
立ってる場所から小さな雑草が生え出す
爪に噛みつき、噛みしめ、裂くために
むき出しの足首が擦り切れるまで

ハイロックの断崖に挑むべき?
ブレトンのわめき声が好きなら
あそこにあるのは雨と霧だけ
それと濡れた犬のしつこい臭い

毛のない奴らに追い詰められたら
へこんだ鼻の平たい歯?おかわりといこう!
杯に甘味をひとつまみ
無作法なかぎ足?ゴクリと飲み込め!
よだれ垂らしの雑種?今こそ一気飲み!
尻嗅ぎの尻好き?ジョッキを空けろ!

サマーセットの象牙の浜辺?
ハイエルフが悔やむしょっぱい涙に身を浸せ
とても高貴な自然は楽しめない
聞こえるのは鼻声のすすり泣きだけ

ブラック・マーシュで語るべきこと?
いささか手厳しい野生動物?
ぐちゃぐちゃのぬかるみ?
それとも最高の収穫がウジだってこと?

毛のない奴らに追い詰められたら
衰えゆく杖吸い?ワインを取り出せ!
杯に甘味をひとつまみ
無骨なのろま?そいつはいただきだ!
毛づくろいの行き届かぬムスカルセ、こすってやる!
バーンダリの慈悲よ、風呂桶はどこだ?
ジスヴォー!

愚かなる翼Foolish Wings

囁く影のロミエン・ガルヴェッタ 著

パタパタと舞う、愚かな羽の大群。奴らは自分たちを、高貴で狡猾で賢いと思っている。

だが奴らは空っぽだ。小さく、お喋りなあの方の模造品。あの方の優雅の切れ端でしかない。影ではなく、ハエのように群がるだけ。愚かな獣。均衡を欠いていて、賢くない。不愉快で、爪で引っかき、羽をばたつかせる。奴らはコウモリと戦う。棒切れと葉の戦いだ。

奴らはなぜあの方の意志にあれほど近い?うるさい音を立ててばかり。追い出されたのも当然だ。追放された。奴らの力は無駄になった。無駄、無駄だ。利用できたはずのものが無駄になった。奴らはお喋りしてばかり。叫び声だ。爪をちっぽけな愚かしい財宝に引っ掛ける。キラキラした、錆びついた輝き。

何と奇妙な獣だ。馬鹿どもめ。奴らには何も与える価値がない。奴らは無価値だ。私は奴らを恐れない。あいつらはあの方の囁き声。割れ目から漏れた囁き声が、ゴミを漁り、貪っているのだ。奴らのにやついた目に恐怖はない。ただ黒いだけ。光り輝く黒。

あのような模造品の気を逸らすのは簡単だ。利己的で、愚かな奴らめ。剣ではなく羽根の騎士たち。なまくらなクチバシどもめ。鈍った爪め。奴らはあの方のオブリビオンの絵をすぐ近くで運んでいる。我々をあの高みまで登る手助けをしてくれれば。だが奴らは笑うだけ、ただ笑うだけ。ケラケラと政治工作をしている。

内部で大量の力が失われた。あの方は、あれを我々に入手させたくないのだろうか?

軍団長の議事録:ゴブリンに関してLegate Minutes: Concerning Goblins

地元のゴブリンに関する探鉱者ヴィヌス・ドニチクスの苦情。第二紀581年 降霜の月26日、タシタ・マエニウスによる記録

ここに来るのはこれが3度目だ。自分の土地を離れるのは好きじゃない。俺はこの八大神に見捨てられた街と、その洒落のめしたコウノトリみたいな曲がった足の街の住民どもが大っ嫌いなんだ。だがブラックウッドの状況は日増しに厳しくなってる。俺たちは剣と盾でやるべきことをツルハシと鋤でやってる。もういい加減嫌気が差してんだ。

俺が言ってんのはゴブリンのことだ。あんたらが肉と上等なワインで腹をいっぱいにしてベッドでスヤスヤとお休みになってる間に、こっちは納屋や鉱山の中で眠っちまわないように自分の顔をひっぱたいてんだ。自分の財産を守るために必死でな。ああ、あんたらにとってはあんなちっぽけな緑の奴らなんて単に邪魔くさいだけだろうよ。犬にたかる刺す虫みたいなもんだ。だが俺らのような壁の外側に住む、素朴な者にとってはどうだ?こっちはクソみてえな戦争を戦ってる。それも絶対に勝ち目がないって分かってる戦争でな!

例えば先週、月耀の夜のことだ。俺は友達のシルスと火を囲んで座り、鹿の尻肉を焼きながら翌日の仕事の計画を立ててた。すると突然藪の中からカサカサという音が聞こえてきた。狐とかアナグマが立てるような音じゃなかった。何かもっと大きいものが骨や腐った革の中でざわめいてた。俺が皮はぎ用のナイフを抜くと、シラスはツルハシを手に取った。俺たちは恐ろしく長い間、猫のように静かに立っていた。その後、奴らが突然飛び出してきた。あのひどく猫背な野郎どもが6、7人、シューシューとかキーキーとか音を立てながら錆びた剣を振り回しやがった。シルスは危うくズボンを汚すところだった。ツルハシを落として、あわてて鉱山に逃げていったよ。俺はというと、蹴とばし、唾を吐き、突破する途中で奴らの1人を突き刺して、森に向かって駆けだした。3人ほどが激怒して、歯をカチカチ鳴らせて、イカれちまったかのように口からつばを飛ばして奴らの汚らしい言語で何かを言いながら追いかけてきた。命からがらランプが灯った友達の家の玄関にたどり着いたよ。シルスはどうしたかって?今も彼の破片が岩の下や古い立て抗の下から見つかってる。

これは俺が経験した話にすぎない。それも一番最近にだ。2週間前にはアスティア・ブルソがゴブリンに見事な牝牛を盗まれた。2日後、まるでマスみたいにはらわたを抜かれて他の牛が水を飲む川を汚している牝牛が見つかった。その1週間前には、異母姉妹のヴァラが追っかけられて屋根の上に逃げた。ヴァラが煙突の背後によじ登って身を隠してる間、1時間かそこら矢を浴びせ続けた。ヴァラが言うには、奴らはその間ずっと笑ってたらしい。

いいか、俺は何も軍隊を送れって言ってんじゃない。ディベラの胸にかけて、兵士の一団すら望んじゃいない。望んでいて必要なのは、オブリビオンの恐怖をあのちっぽけな野郎どもに植え付けてやれる、肝っ玉のすわった数人の戦士だ。1人か2人、見せしめにしてやるんだ。みんなの土地の周囲にゴブリンの頭を突き刺した槍を設置する。北での馬鹿げた赤、青、黄の騒ぎが起きる前、俺たちはそこそこの民兵を持ってたんだ。今、ここにあるのは何だ?あんたらには指ぬきを満たせる程度の根性しかないじゃないか!腰を上げて何かしろよ!

軍団長会議についてOn the Chamber of Legates

カロ女伯爵の統治下にあるテベザ・コ軍団長による考察

軍団長方式は都合よく機能している。他の君主国には当てはまらないのかもしれないが、レヤウィンで法の制定や街の日常生活の監視は、帝国時代から街の支配者が事前に目を通すものではなかった。帝国が消え元老院が解体された今、この仕事はそれを果たすために最近作られた、軍団長会議が担うことになった。歴史的に見ると街の支配者と運営機関を切り離すことで、君主たちは街の運営を気にすることも放棄することもなく、政治ゲームに興じていたのだ。

軍団長会議は街と周囲の管区の運営に関する、行政的な機能全体の支配権を有している。例えば、港湾での事業には免許証、認可、目録、必要な品すべてが確実に正しい場所や船、業者に運ばれるようにするための輸送機関が必要だ。これらの職務を完遂させるため、我々は登録簿に商船とその航路の詳細を記録し、いつ積荷の準備ができるのか計算できるようにしている。日中はずっと、時には夜間にも十分な訓練を受け情報に通じた港長を配置し、各船を出迎えて正しい指示を与えられるようにしている。道は安全かつ確実に品物が運搬できるよう整えられ、廃棄物などがない状態が保たれなければならない。

それを達成するために、我々軍団長が港長を監督する。港を建造し、維持するための木材の入手。新しい商船からの積荷の予定。港長のそれほど大きくはない権限下で信任された船長たち。レヤウィン、特に市場周辺の街道や通りを整備するための人員の雇用。例えば飼い慣らされていない動物や医療目的の範囲を越えた使い方をするスパイスやハーブといった、特定の外来品を除くあらゆる品やサービスに対する販売許可。そういったものを。

レヤウィンに影響を与える事業について話し合うため、軍団長会議は必要であれば毎日顔を合わせる。時には一般市民に会議への出席を許可することもある。そうすることで一般市民、特に商人階級は市民生活の中で軍団長会議が目を向けねばならないと信じている、あらゆる領域に対して関心を寄せるよう求めることができる。軍団長会議側も政策がどのように機能しているか、また欠陥への対処の必要性、手法の変更の必要性について直接意見を聞くことができる。だが何よりも、一般公開された会議の存在により、我々は街から信頼された誘導者となれるのだ。現在の我々の評価は上々である故、市民たちは臆すことなく苦情を告げるだろう。彼らは強く懸念している問題に我々が耳を傾け、いずれ命や生活手段に脅威を与えることなく対処することを知って安心する。

この管理体制は帝国崩壊後に軍団長会議が設立されて以来使用され、改良され続けている。この体制は完璧ではない。まだ政治的野心、階級格差、偏見、あらゆる統治体制に内在するその他多くの欠陥に満ちている。だが、軍団長会議による代議体制、そして玉座に座る我々の意見を進んで取り入れる女伯爵によって欠陥を回避し、先頭に立ってレヤウィンの利益を維持し、街の事業を前進させられると承知している。

賢者ロヴィリセルのメモNotes of Lovirithel the Sage

第二紀575年、収穫の月6日
これはいけるかもしれない!何週間もレヤウィン城の散らばったコレクションを研究した成果が出たようだ。推論通り、アレッシア帝国の初期に建設された聖堂の施設がブラックウッド沿岸の荒れ地にあった。遺跡が埋まっていたのはブラックウッド南東にある、これといって特徴のない島だった。古代の聖堂に続く、原始的に掘られたトンネルには最近様々な集団が使用した形跡があった。おそらく密売人か盗賊だろう。しかし、幸運なことに現在は地下の部屋をそのような犯罪者が使用してはいないようだ。明日から探索を始めよう。

第二紀575年、収穫の月8日
隠された聖堂の上層にはほとんど何も残っていなかったが、風雨に耐えた建築と彫刻を慎重に調査した結果、多くのことがわかった。羊皮紙と木炭で拓本を取らなければ判別できない色褪せたシンボルは、古い秘密を示している。「下」を象徴するシンボルが「怒り」「憤怒」と組み合わされている。これは、明らかにこの場所の現在の名前、 「深い嘲笑」を示している。

また、他にも面白いヒントがあった。「闇で待つ者」「破壊者」「貪る者」。原始の神シシスの呼び名だ。この場所は明らかに古代ニベンで、シシス崇拝の中心だったようだ。とても興味深いことは言うまでもない。この地域でシシス崇拝は一般的に見られるが、信者はたいていがアルゴニアンであって、獣からより遠い種族の間ではあまり多くない。深い嘲笑の洞穴は、混沌の力を崇めるアイレイドを模した秘密結社の隠れ家だったのだろうか?さらに研究する必要がある。

第二紀575年、収穫の月14日
大きな発見だ!見つけたオベリスクの部屋には崩れた壁に隠された通路があり、聖堂の奥へとつながっていた。助手に壁を外して洞穴と部屋へ向かえるよう指示した。明日の探索が楽しみだ。ただし、通路には奇妙な冷気が漂っている。石が侵入を感知していると感じられるほどだ。

第二紀575年、収穫の月17日
新しい洞窟の広がりはただただ素晴らしい。以前は探索できなかった場所の先には、曲がりくねった通路と広大な部屋が広がっている。ほとんどは未完のように見えるが、二つの大広間が広がっている。最初に名付けたのはシシスの間だ。二つ目は嘲笑の神殿と名付けた。中には色褪せた印があったところだ。冷たく、何かに見られているような沈黙が中に入る者の背筋を凍らせる。もちろん、地下の空気の興味深い特質にすぎない。

助手たちが神経質になっている。新しく見つかった部屋で、何らかの力が動き始めたように感じられると考えているのだ。エリエンドロは下の階を塞いでいた壁を建て直すように言って来た。もちろん、彼の根拠のない恐怖に屈するつもりはない。学問とは臆病者に向かない仕事だ!

第二紀575年、収穫の月20日
愚かしい!エリエンドロが姿を消した。ヤイルセスは嘲笑の神殿の闇に連れ去られたと主張しているが、もちろん馬鹿げている。愚かな恐怖に屈して、ここの仕事を放棄したのだろう。おそらくレヤウィンの酒場で安ワインでも飲みながら、故郷へ帰る計画を立てているはずだ。残念なことに、ヤイルセスはより下の階の部屋へ足を踏み入れることを拒否した。私は神殿の探索を一人で続けるので、ここに残るよう彼女に伝えた。

愚かな子供だ。

幻の発見が待っている!Phantasmal Discovery Awaits!

アルケイン考古学調査隊が、スリル溢れる実験のために勇敢な冒険者を求めています!

できれば重量のある魔法の器具を運ぶ能力を有する方。幽霊、亡霊、その他のアンデッドに対峙した際、勇敢でいられることは必須です。

詳しくはヴェヨンドの遺跡にいるリヴス・デムネヴァンニへお尋ねください。

幸福なアヴェルノ輸送会社の看板Happy Averno Shipping Company Sign

幸福なアヴェルノ輸送会社
仮本社

イウリウスとシピオン・アヴェルノ
経営者

勧誘お断り

魂の台帳Ledger of Souls

目覚めの炎の教団の諸君

私はアイディール・マスターのために3つの新たな魂を獲得した。だがもう私の黒魂石は全て満たしてしまった。アイディール・マスターとの関係を向上させたいなら、もっと石を見つける必要があるだろう。

台帳への記録用として、獲得した魂を以下に記す:

– 修練者クララ・アスティエ
– 修練者アリエール・エフィーン
– 修練者エドガルド・ゲイン

今も修練者の腐敗の噂はギデオンを流れている。私が獲得した魂については、すでに人生に不満があったという噂を街中に流し、ディベラの聖堂の金庫からコインを取り除いておいた。単純な偽装だが、無知な街の住人は簡単に信じるだろう。

収穫は続く。約束しよう。

目覚めの炎のために!

災いよ去りたまえMay Disaster Turn Away

大地が揺れて、空震え
森に炎が灯りだす
闇が落ちて、混沌が広がり
裏切りがはびこる

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

遠くの雲から嵐来る
火は燃え盛り、死者は積み上がる
忍び寄る黒、迫る不和
オブリビオンの門開く時
剣のごとく、裏切りが光る

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

破壊の主よ、災いの公よ
我らの民に手を出すな
流血の神よ、裏切りの王よ
不幸はどこかへ持ち去っていけ

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

作家助手求むAuthor’s Assistant Wanted!

作家が地域の歴史調査のため、筋肉質で活力あふれる助手を求めています。

応募者は進んで沼地や取りつかれている(可能性がある)遺跡を歩いていただける方に限ります。比類なき武術の技能とデイドラに動じない姿勢は必須です。できれば前向きな考え方や明るい気質をお持ちの方。

この高報酬のチャンスをお見逃しなく!

全てギデオンの宿屋〈卵とハンマー〉にいる、センチネルのイサラにお問い合わせください。

死霊術師の日記Necromancer’s Diary

影の鎌が手に入れば、目的を達成するのも時間の問題だ。今までずっと進めて来た計画が実を結ぶ。あのブレトンどもがこの刃を鍛造した時は、何を成し遂げられるのか想像もできなかっただろう。生きた者をその影から切り離す能力を持った刃。それがどんな力を秘めているか気づくには類まれなる才能が必要だったのだろう。この刃は単なる玩具ではない。影を切り離されると、人は自分自身との接点を失い始める。その不運な者が紛れもない奴隷となるまで、生命の基本的な事実を超えた思考が消滅していくのだ。これが私がよく知る魔法だ。

もちろん、他にも同じことに気づいた者はいるだろう。そうでなければ、この鎌が贈り物に見せかけてノクターナルの祠に隠されていた理由がないではないか?これだけ重要な遺物がただ祠に置かれ、故意に忘れ去られることなどない。影の女王自身は、今となっては何とも愚かしい呼称だが、疑いなく鎌がただの道具だと信じている。だが今に分かるだろう。他の皆と同じように。

当然だが、完璧な計画でもなかなかうまくは行かない。影の鎌を回収するために雇った馬鹿どもは無能さのあまりあやうく私の計画を台無しにするところだった。子供時代の友人に見つかるとは。本当に愚か者の無謀さには限度というものがない。それでも、仕事は半ば適切に行ったのだから、報酬は与えるべきだろう。彼らの行動を逐一制御できるようになれば、このような失敗を繰り返すこともなくなる。もちろん、彼らを使わなくても構わない。利用価値が尽きたらすぐに縁を切ることもできる。

鎌の力を完成させるための儀式の前に、持って来てもらわねばならない品物はあと少しだ。鎌の力が頂点に達すれば、それを使って如何なる強情な精神も私の目的とする方向へ変えられるようになる。それに新たな奴隷の精神が傷つけられたとしても、いつでも魔法を使って支配できるように修復できる。しもべの寿命と生命力は留まるところを知らぬ。

私の時代はもう目の前だ。人を率いる指導者たちも今は拒絶しているかもしれないが、私が如何なる才能を持つか知った時には、恐怖におののくだろう。

招待状の添え状Invitation Cover Letter

最も優れた、選ばれし者の教団における仲間と過ごす特別な催しにあなたをご招待します。恵み深いヴァンダシア評議員が、かつて誰も目にしたことのない、歴史を変える公演を開きます。評議員は祝宴であなたと同席することを望んでいます。

移動と宿泊に関する詳細と共に、特別なコインを同封しました。行事は数日間行われますので、正装と教団のローブを含めた着替えをご持参ください。また、コインもお持ちください。会場まで確実に移動するために必要となります。

炎が揺らがず、洪水が収まらぬことを

商人王たちの積み上げられた文書Merchant Lords’ Compiled Documents

ラロスの焼け焦げた日記:

ガヴォスは終わった。

予想どおり、奴のしみったれた兵士たちは買収できた。クエンティンとエスディルにとって、説得して同意させる負担は大したものではなかった。我々は彼らを買っても釣りがくるほどの金を持っているからな。

奴が大切にしている金床と共に閉じ込められた今、絶え間なく挟まれる「公正さとは」という言葉を聞くことなく、本物の利潤の獲得に戻れる。奴に何が分かる?この市場の繁栄の理由は我々で、奴の説教や小物のおかげではない。

今日、新しく指名された裁定者が来た。彼は努めてさりげなく一週間分の取り分の増額を示唆し、「夕日の下」での休暇の計画のための金が足りないことを匂わせてきた。言葉の選び方がかなりわざとらしいような気がした。私の秘密の隠れ家を知っているのか?思っていたよりも不注意だっただろうか?

いずれにせよ、我々は今のところ、さらに気前よく心付けを渡せるの余裕がある。だが、奴が私の事情についてあまりにも知り過ぎた場合は、交代させる必要があるかもしれない。

* * *
クエンティンの秘密の往復書簡

友へ

間もなく金床を手に入れてやろう。既にガヴォス・ドゥーアに盗まれていると誰もが信じているものである故、惜しむ者などおるまい。必要なのは、同僚の大臣二人から助力を得るための根回しだけだ。最近の彼らは少々扱いづらいが、君が提供してくれた護衛のミノタウロスを紹介すれば、ずっと乗り気になるのは間違いない。

とは言え、少しの遅れも出してはならない。彼らが何かに勘づいたら、金床を確保できなくなるかもしれない。だから可能な限り早く、ゼニタールの大修道院に向かってくれ。

到着したら、鍛造用の火の背後で落ち合おう。私は我々が必要とするものを全て手にしているはずだ。

* * *

エスディルの古い日記

ラロスとクエンティンは私のことをガヴォスと同じぐらい愚かだと思っている。

奴らの企みは分かっている。彼を消し、在庫を拡張させる気だ。禁制の魔法の遺物に攻撃的な異国の獣。奴らはあの貪欲な手がつかめる、ありとあらゆるものを取引するだろう。

まあ、奴らにしてやられたなどと言わせるつもりはない!間もなくスクゥーマの積み荷が到着する。確実に大修道院全体で、それを売るのは私だけにするつもりだ。小物や野生のペットなどはすぐに飽きられるだろうが、スクゥーマの需要は常にある。

クエンティンは資金を用意した買い手がいるから、金床を回収して売るべきだと言っている。それが本当に労力を費やすに値する話なら、おそらく自ら行動を起こすだろう。念のため、私の印を移動させた。にぎやかな通りのはるか上にある、私が一番うまい酒を飲める場所にな。

沼の巨人についての研究On Marsh Giants: A Study

グウィリム大学、植物研究の副学部長ファネミル 著

数多くの同僚が、森のスプリガンの研究に生涯を捧げてきた。彼らの発見は森の霊魂を理解するための堅固な基礎を与えてくれているが、スプリガンの驚くべき親戚である沼の巨人に関する奨学金は、未だに乏しいのが現状である。巨人たちの生息地へのシロディール難民による侵略は、残念ながらここ数ヶ月で多くの死者を出している。この点だけを考えても、この謎多き森の巨人たちについて、詳しく知るため努力すべき理由となるだろう。

まず、沼の巨人が実際には伝統的な意味での巨人でないことを繰り返しておいたほうがいいだろう。体のサイズと牧畜を営む性質を除けば、沼の巨人はスカイリムの巨人と何の共通点も持たない。彼らは森の霊魂であり、古き自然の守り手の顕現である。この存在、あるいは力の正確な性質については神学の教授たちに任せるとして、重要なのは沼の巨人がスプリガンと同じく、野生の空間を保全する意思を持っているらしいことである。

沼の巨人の知的能力は議論の的になり続けている。多くの学者はスプリガンに初歩的な知能があることを認めているが、沼の巨人との接触機会は限られているため、彼らの認知能力を判断するのは困難である。現時点では、我々の知識の大半がアルゴニアンの民間伝承や伝統から来ている。ギデオンの学者によれば、原始的なアルゴニアンの大半はこの生物に近寄ろうとはしない。どうやら、ヒストはこの森の巨人との間に長く白熱した歴史を持っており、ヒストはアルゴニアンたちに(仲介者を通して)できる限り巨人を避けるよう求めているらしい。

その反対に、多くのルキウル(文明化されたアルゴニアン)は、沼の巨人に敬意を払っていることを私は知った。この生物の幅広く節くれだった足は大地をよく耕し、彼らの通り道にはしばしば、乾いた小枝や果物、その他の有用なものが吹き飛ばされて落ちており、ルキウルはそれを熱心に拾い集める。

私が最も興味深いと考えるのは、沼の巨人がブラックウッドの自然の営みとリズムに果たしている役割である。私の調査によれば、この生物は自然という布地に欠かせない継当てである。大地を単に耕すだけでなく、沼の巨人は枯れ木を倒して若い植物のための隙間を作り、貴重な苔の繁殖を助け、繁殖力の強い菌類の発達を抑え、野生の猫やその他の捕食者を近づけないようにして鳥類の多様性を促進している。そしておそらく最も重要なのは、巨人は木こりや鉱員、商人などが荒らされぬ沼を傷つけることを防いでいる点だろう。

私はこの森の巨人と共存する方法を見つけられると心から信じているが、そのためには労働者と地域の指導者の双方に忍耐と柔軟性が必要になるだろう。この生物と必要もなく戦うことのないよう願いたい。沼も森も彼らの存在に依存しているのだから。

象牙旅団についてOn the Ivory Brigade

評議員長にして軍団長会議参加者、タルニアン・ロヴィディカス 著

国政の研究から学ぶべき永遠の教訓のうち、「平和を望む者は戦争に備えよ」ほど変わりなく有効なものはないだろう。近隣諸国との競争に没頭し、問題を力で解決する誘惑に屈することには危険が伴う。力を示すことで敵を思いとどまらせる方が遥かによい。思い留まらせることに失敗した場合は、最悪の事態に備えている指導者の方が、この義務を怠った指導者よりも遥かによく領地を守るだろう。

残念なことに、レヤウィンは今この古い問題に悩まされている。我々はもはやシロディール軍の保護を期待できない。帝国の崩壊により、我々は潜在的な敵対者に取り囲まれた独立都市国家となった。三旗戦争で中立を維持することはもう何度も繰り返し宣言してきたが、同盟のどれかが二つの危険な事実に気づくのも時間の問題ではないだろうか。ブラックウッドは裕福かつ無傷であり、さらにニベン川の河口に位置するレヤウィンには、測り知れない戦略的価値があることをだ。レヤウィンを支配する者はタムリエルのどの港からも、直接帝都に艦隊を派遣できる。大胆な一撃さえあれば、ルビーの玉座の争奪戦を決することができるのだ。ジョルン、エメリック、アイレンの誰一人として中立の侵害を望まなかったとしても、果たして彼らの競争者たちも同じ気持ちであると賭けるだろうか?他の者の手に渡さないためだけに、彼らの誰かがレヤウィンを掌握しようとしてもおかしくない。

こうした事実を考慮すると、三旗戦争がブラックウッドにまで飛び火するのを防ぐ道は一つしかない。レヤウィンも自らの強力な軍隊を育てることだ。今すぐに。

これは破滅的に金のかかる提案に見えるかもしれないが、私もよく考えた。同盟の集中攻撃を真っ向から打ち破れるほどの勢力は必要ないと考えている。必要なのは適度の防衛力を示し、どの同盟もレヤウィンを確保しようとすれば損害を受け、競争者との戦いに致命的な不利を被ると分からせることである。そのために完全な軍団を展開する必要はない。訓練を受け武装を整えた、強力な旅団が1つあれば短期的には十分なはずだ。

元帝国軍所属のライアン・リオレ隊長は、レヤウィンの紋章にあしらわれている白い馬にちなんだ象牙旅団という名称を提案してくれた。私は次の軍団長会議にこれを持ち込むつもりだ。名称について議論するのは無駄だと思うかもしれないが、名前には心を奮い立たせ、動機を与え、単なる概念を現実に変える力がある。

当然ながら世界最高の名前をつけても、それを担う兵がいなければ無意味だ。そこで帝国の騒乱が我々の有利に働く。ブラックウッドに滞在中の多くの帝国軍団兵はもう数ヶ月の間、シロディールから給金も命令も受けていない。彼らの部隊は、もう実質的に解体しているのだ。我々はこうした遭難状態の軍団兵を積極的に雇用し、繰り越し分の給金を支払い、この地域の守護者としての彼らの役割を認めることで、我々の大義に役立ってもらうべきだ。数百人もの経験豊富な帝国軍団兵がいれば、レヤウィンに必要な戦力を築く素晴らしい土台ができるだろう。

インペリアルの熟練兵から成るこの盤石な中核を礎として、跡は故郷を守るために戦う力と意思のあるブラックウッド出身者で民兵を組織すればいい。民兵は経験豊富な仲間から軍の規律や帝国式の戦闘技術を学べるだろう。また私の考えが正しければ、地域の民兵は熟練兵たちにブラックウッドの地理や人間、気候条件などについての貴重な知識を教えられるはずだ。
今は危険な時代である。しかし正しい指導と軍団長たちの支持があれば、我らが象牙旅団はきっと試練に耐え抜くことができると信じている。

身代金のメモAdder’s Ransom Note

お前たちは重要な判断を誤った。

我々が来た時にお前がいなかったのは、単に運がよかっただけだ。

アヴェルノ兄弟は預かった。殺すつもりだ。

彼らを助けたいなら、ギデオンの地下の騒動の輪に来い。一対一で話をつけよう。

パンジェント・アダー

水避けの巣の建設The Making of Wading-Nests

ブラック・マーシュにおいて様々なアルゴニアン部族に招かれた個人的な経験に基づく、ラニャールネ・アビティウスの文化概説。

水避けの巣と呼ばれる形式の家屋は部族の土地のあちこちで見られるが、新しい巣の建設は通常、共同体の活動として実施される。水避けの巣の実際の建設手順は簡単なものだ。大きな木の杭を蔓やロープで束ね、縦にして地面に突き立てる。その部族が居住する土地によってはまず地面に穴を掘り、杭をしっかりと固定してより大きな重さを支えられるようにするが、洪水が少なく、地面が硬い地域でこの工程はあまり一般的でない。

木の杭が立ったら、それが水避けの巣の土台となる。床は杭にまたがるように建設され、その上に住居の残りの部分が築かれる。部族によっては巣の床を支柱となる脚の面積へ正確に合わせて作るが、それよりも広く床を作る部族も一部存在する。これは虫が木の土台を昇って、家の中に入るのを防ぐためである。

個人でも数日かければできそうなこの仕事は通常、部族全体の共同作業として行われる。私がその理由を尋ねると、返ってきた答えはいくつかのテーマに分かれていた。最も一般的なのは、水避けの巣が落ちるか洪水で流されれば、被害を受けた巣全てが再建されなければならないから、というものだ。個人が自分の力で家を作ることはできるが、複数の巣が必要な場合はより計画的に行わなければならない。私の質問に対する他の答えは、楽しみと関係していた。どうやら、部族はこのような計画を必要な仕事としてのみならず、娯楽としても等しく重視しているようだ。

おそらくもう一つ答えがあるのではないかと思う。大きなグループは、建物が脆弱な部分を発見して修正するのが容易だからだ。大工仕事や森林管理についての知識は個人で異なる。共同体全体をこのプロセスに包摂すれば、重要な過程を見逃さずに済む。またこれは、知識が部族の若いメンバーにも受け継がれることを保証する。私は多くの若いアルゴニアンが、水避けの巣の作り方を卵の母親や部族の長老から教わっているのを見た。この点からすると、水避けの巣の建設を部族の仕事として扱うことには、いくつもの目的があると言えるだろう。

聖コエリシアの饗宴 第一巻The Feast of Saint Coellicia I

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

序章

親愛なる読者よ、まずは歓迎の一言を述べたい。あなたをこの書へと導いたのが単なる好奇心か、それとも食の文学への燃え盛る渇望かは測りかねるが、いずれにせよここに来たからには、ぜひともこの第二紀中期において最も有名なニベン流域南東の料理書に数えられる、本書の成り立ちに関する説明を加えておきたい。というのも、聖コエリシアの饗宴はこの時代、この地域における料理本の中で25位以内に入る有名な文書であることは確実であり、14位以内に入るかもしれないからだ。

帝国の中心地よりも外側の出身である読者や、八大神の光を信仰していない人々のため、案内を試みたい。以下に続く書はレマン二世の後継者にして、帝国行政の大部分を最高顧問に委ねた放蕩者とこの時代の学者の大部分に評されるブラゾラス・ドール皇帝の統治時代に行われた、豪勢な宴会を詳細に記したものである。職務の重圧から解放されたブラゾラス皇帝は、飽食や無為、遊興を比類のないレベルにまで進歩させ、それはロングハウス皇帝の時代が来るまで続いた。

この本が記録しているのは、アレッシアの奴隷蜂起におけるやや知名度の低い殉教者、聖コエリシアを称えるために行われた、ブラゾラス皇帝の饗宴である。聖コエリシアは通常、収穫の月の終わり頃の数日間に断食によって称えられるが、これは彼女が拷問の末に餓死したことによる。ブラゾラス皇帝は臣下の敬意を再び得るため、断食を饗宴に変えたのである。皇帝は自ら率先してこれを実行し、無数の料理人や宮廷人、美食家たちは皇帝が秋を過ごすレヤウィンの地に集まり、饗宴を開いた。

そこで起きたのは12時間をかけて40皿を食べるマラソンだった。5皿のコースが8回に分けて用意された。私はそれぞれのコースの皿を1つずつ詳細に紹介していこうと思う。読者の理解を助けるために、必要に応じて注釈を付けながら。

聖コエリシアの饗宴 第二巻The Feast of Saint Coellicia II

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第1コース

著者による注記:レマン宮廷における饗宴の伝統として、第1コースは味覚を活性化し、腸を活発にするように構成されていた。

伝統的に聖コエリシアの断食中に唯一食べることが許されていた「パン屑」。レヤウィンからブラヴィルに至るまで、あらゆるパン焼き窯から集められたパン屑がスプーンに一杯ずつ各招待客に出された。ブラゾラス皇帝の愛人だった「牙を見られぬ者」は、司祭がパン屑の教義を語る間に待ちきれず、側にいた5人のスプーンを口に入れてしまったと言われている。

生きて殻に入った状態で配膳され、テーブルの脇でむき身にした「牡蠣」。ニベンの伝統ではオリーブのつけ汁の他に、煮つめたワインをみじん切りの玉ねぎに混ぜたものが付け合わせとして招待客に提供された。より冒険心に満ちた招待客には、牡蠣にブラゾラス皇帝が好んでいたアルゴニアンのピリッとしたソースをかけることが許された。牡蠣を食べ終えると、ブラゾラス皇帝はレヤウィンの貧しい人々に殻を配るよう指示した。皇帝が牡蠣の殻で貧しい人々に何をさせるつもりだったかは定かでないが、それを言った時のブラゾラスはすでにワインを何杯もがぶ飲みした後だったことを記録は示唆している。

丸ごと1羽の「溺れたガーネットビーク」。ガーネットビーク、より正確に言うならトパル・ガーネットビークは、貴族の食卓で一般的な品だった。ほとんどの場合、鳥はワインで溺死させた。彼らは速やかに羽をむしられたのちに給仕され、招待客は通常頭の上から布をかけてそれを丸ごと食べた。これは表向きにはワインの蒸気を逃がさないようにするためとなっていたが、実のところは食べる際にしばしば鳥から激しく噴き出す内臓や分泌物を封じ込めるためだった。長年に及ぶこの習慣が、ガーネットビークを絶滅に至らしめた。

「舌のローフ」のミントとチャービルのグリーンソース添え。もう一つの貴族の食卓の定番である舌のローフは、それぞれの家庭に見合った何らかの動物の舌を集めたもので作られていた。この食事の場合は、ほぼ間違いなくアヒルの舌で作られたローフだったようだ。

「エッグパフ」の塩炭焼き。ブラゾラスは鶏卵の燻製を出すことで有名だった。これは大抵の場合、数ヶ月もの間泥に埋められていた。そうすると白身は硬くなりマホガニー色を帯びるが、黄身は緑色の凝固物に変化した。アルゴニアンから得た技術を使って卵に驚くほどの弾力性を与えることができたブラゾラスのシェフたちは、針によって殻を貫通させた蒸気で4倍の大きさになるまで膨張させた。卵を最初に割った時の燻製の芳香は、極めて満足が得られるものだったと招待客たちは記している。

* * *
第2コース

著者による注記:最初の塩味の料理が終わると魚が出された。魚の定義は海、川、湖の生き物全てにまで拡大されていた。

「ニベンパイクのクリーム和えソレル詰め」、サフランの皮包み焼き。これは典型的なニベン川料理の見本とも言えるものを、ブラゾラス皇帝の食卓に適合するよう昇華させたものだ。サフランは平均的な漁師にとって決して手が届くようなものではなかったが、ソレルやその他のハーブと共に詰め物をするのは当時も今も一般的な調理法だ。サフランの皮は魚を食べられる黄金で包みたかったブラゾラスと、それを馬鹿げた考えだとしたシェフの間の妥協案だと言われている。

生きたマッドクラブから吸い出した「生の白子」。聖コエリシアの饗宴はトパル湾でマッドクラブが産卵するのと同時期に行われる。卵を抱えた雌の蟹が貧者の食卓に最適である一方で、貴族たちは雄の蟹の濃厚でミルクのような白子をすすることを好む。ゲームの愛好家であるブラゾラスは召使に大量の生きたマッドクラブをテーブルに放り投げさせ、招待客に手と口だけでこの生物に立ち向かい、白子を取り出すよう要求したと当時の歴史家は記している。

「ビーバーの尾」の小麦粉巻きフライ。ブラゾラス皇帝はビーバーの尾を、人が食することができる最高の白身魚だと主張することで知られていた(だが、どのシェフもその肉はいかなる川魚よりも硬く色が濃いと言うだろう)。ブラゾラスはビーバーの尾だけで楽しんだため、記述された調理法にはこのメニューの他の部分で見られる付け合わせがほとんどない。

「子イルカ」の母イルカミルク煮。子牛を同じように馬の乳で煮込んだノルドに人気のごちそうを捻じ曲げたものだが、あれは家畜で作られるものであり、イルカではない。イルカの肉と乳は地上のいかなる生物のものよりも濃厚なので、この料理には例えようもないほどコクがある。残念ながら、香味料と付け合わせは失われてしまった。

「スローターフィッシュの肝」のロースト。料理の記録では定説となっているが、スローターフィッシュの肝は中に含まれる毒を取り除いてからでなければ提供するのが難しいため、通常は避けられていた。ブラゾラスがスローターフィッシュの肝を100人以上の招待客に出したのは、その料理を作るために契約した30ものアルゴニアンの部族に対する信頼を示す証拠だ。彼の信頼は適切だった。呼び集められた客人たちの中で、失明と腸の弛緩に苦しんだのはネッティオ公爵だけだったからだ。

聖コエリシアの饗宴 第三巻The Feast of Saint Coellicia III

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第3コース

著者による注記:慣習に従い、魚料理のあとに野菜料理が続いた。

「しんなりさせた葉物野菜」、オリアンダーコーストのビネグレットドレッシング添え。ケールと思われる野菜の簡素でボリュームたっぷりなサラダは、おそらくはこの晩のもっとも衝撃的な料理で、オリアンダーコースト・リザーブを使って作られたビネグレットと組み合わせられた。このアリノールから輸入されたワインは大変希少で、サファイアが入っているゴブレット(それもハイエルフの主張によれば、ゴブレットには未使用のサファイアの飾りがそれぞれ必要とされる)で飲まなければ、真の味わいを楽しむことができないと言われている。このようなビンテージをサラダドレッシングに使うことは、ある者にとって巨万の富の証となるが、他の者から見たら途方もない愚かさの証でもあった。

強くたたいて伸ばした「アンバーパーシモンの芯」。多くの人はアンバーパーシモンの甘い果肉を楽しむが、グリーンシェイドのマーブルク郊外にある果樹園はこのフルーツの芯の多い種類を栽培している。この高価でもちもちとした芯は木槌で平らに潰され、軽くガーリックオイルがまぶされていた。

「キノコの塔」。組み立てられた料理が12フィートを超える高さだったためそう呼ばれた。この技巧を凝らした塔は白金の塔を模していたと言われているが、現代まで残っているスケッチは存在しない。塔の崩壊を防ぐため、召使たちは改造された竿状の武器を使い、招待客のために塔の天辺から下に向かってキノコを選んでいった。

ブラゾラスのシェフによるオリジナル料理、「シンムールのニンジン」。この一品の中心となるのは、シェイディンハル郊外の農民によって発見され、ブラゾラスの城代が公表されていない金額で購入した驚異的な大きさのニンジンだ。高さは十分に成長したブレトンと同じくらいで、幅はホグスヘッドほどもあったと言われている。ニンジンは丸ごと穴に埋め、炭で焼いた後、酢とシロップを添えて出された。

トリュフ油のアイオリ添え「昆布のフリッター」。トパル湾の島々で採れる硬い昆布は、コリンス産の茶に数日間浸してその革のような食感を柔らかくする。昆布に小麦粉をまぶし、製本会社の手法で折りたたむ。溶き卵に浸し、全体にパン粉をまぶしたらラードに入れる。出来上がった品には複雑な食感が詰まっている。サクサクとした衣の下には噛み応えのある層があり、内部はクリーミーだ。

* * *
第4コース

著者による注記:地位の低い者の家庭では、大抵穀物料理が最後に食された。肉類が簡単には手に入らなかったためだ。

ブドウの果もろみをたっぷり入れた「マーラの目」。通常は子供向けの菓子の扱いである味付けをした米球を、ブラゾラス・ドールは悪趣味な冗談として出した。その頃、彼の義理の兄弟のアンウェンテンデが海賊に捕らわれ去勢されたばかりだったのだ。その冗談が歓迎されたか黙殺されたかは、後世のために記録されていない。

バターとクリーム付き「ブラゾラスのサプライズ」。簡単なロールパンだが、ブラゾラスの指示でそれぞれに独自の具が入ったものが無作為に招待客に配られた。歴史が示す限り、皇帝のサプライズには生きた鳩が入っていたこともあったらしい。一方、とある無名な従騎士が自分の分にブドウ大の真珠がぎっしり詰まっているのを見つけたこともあったようだ。

伝統的な配膳方式の「アルムフィンガー」。アカヴィリ様式のオーブンを使うブラゾラスの厨房では、サルトリスを数倍に膨らませて蜂の巣のような奇妙な食感にすることが可能だった。マスタードを混ぜたハチミツの鉢がテーブルの脇に用意され、招待客はその中で粘つくソースを手全体に絡めてから、膨らませたサルトリスの中に入れられるようになっていた。その後、膨らませたサルトリスとソースは手から舐めとられた。参加していたカジートの外交官はこの不快な習慣に潔癖な感性が耐えきれず、怒ってその場を飛び出してしまった。シロディールとエルスウェアの関係の回復には数年間を要したとのことだ。

煮込んだハーブのソースに入れた「ニベン編み」。ニベンの編み麺が珍重されたのはその長さ故だったため、皇帝ブラゾラスは自らのシェフに、決して9フィート以下の麺を作ってはならないと命じた。

付け合わせなしの「宗教的なウエハース」。聖コエリシアの断食では、終わりの印としてウエハースが食された。ここでブラゾラスは、断食の終了と豪華な食事の到来を示すものとしてウエハースを出した(ここまでのコースでは肉類を強調していなかったため)。出どころの疑わしい話によれば、皇帝ブラゾラスは聖コエリシアの骨を掘り出してすり潰し、ウエハースの小麦粉に混ぜ込ませたとも言われている。当然ながらこれはばかげている。と言うのは、聖人食の習慣はそれより10年ほど前に禁止されていたからだ。

聖コエリシアの饗宴 第四巻The Feast of Saint Coellicia IV

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第5コース

著者による注記:ジビエと鶏をテーマとした第5コースは、「空の獣」を広く解釈したものである。注目すべき点として、レヤウィンはブラック・マーシュに近いため、このテーマは空を飛ばない様々な生物を含みうることがある。

細切れにした「クリフストライダーの膜」の煮込み。この料理はシチューに似ているが、そんな呼び方は侮辱も甚だしいとダークエルフは言う。モロウウィンドの田舎で食されるこの料理は、おそらくブラゾラスが大臣のアーヌス・デムネヴァンニへ内密に謝罪するために供したものと思われる。皇帝は当時、デムネヴァンニの妻と積極的に同衾していたからだ。

「コウモリの串焼き」のヨーグルトとピスタチオがけ。またしても、ブラゾラスは平凡な料理を最高の素材と見事な調理技術によって、帝国の饗宴に相応しい一品に変えている。コウモリはブラックウッドの湿地で頻繁に見かける生物であり、地元の漁師にとっては魚が釣れない時にも豊富な肉の供給源である。網で捕らえたコウモリを串に刺して、ヨーグルトソースを塗りながら丸焼きにし、砕いたナッツをまぶす。この料理は大変な人気を博したため、ニベンのコウモリ生息数が壊滅的に減少したほどである。

ブランデーで仕上げた「レマンのスープ」。この料理は主に冗談のために作られたものである。スープはこれの前に出されたコウモリの串焼きと同じく一般的な料理だが、ブラゾラス皇帝が平凡な食事を提供することは決してない。肉汁で野菜や豆類を煮込むのではなく、ブラゾラスが供するスープは鴨の眼球を使っており、これは食事の開始時に食べさせた鴨の舌と同じ鴨から取った眼球である。ブラゾラス皇帝は全員が出された食事を食べ終えるまでは、スープの材料を客人たちに教えようとしなかったと言われている。

「詰め物入りの白鳥」、付け合わせは不明。この料理は供された人々にとって最も強く記憶に残った一皿であり、しばしば「ブラゾラスの馬鹿げた茶番」と呼ばれている。白鳥に様々なものを詰めた料理だということは分かっているが、あまりにきつく詰め込まれていたので、白鳥はテーブルに置かれた途端、爆発したのである。サテンやダマスクが油と肉汁でぐしょ濡れになり、テーブル付近にいた全ての人々が嘆いた。

「クチバシのゼリー」およびその他のゼリーのクリームアニスソース添え。最後の一皿はウッドエルフの漬物作りの技術を使って柔らかくしたクチバシで、さぞかし見ものだったろうと思われる。残念ながら、この料理に関する記録は少ない。直前に供された白鳥の爆発のせいで、部屋には陰鬱な空気が漂っていたからである。

* * *
第6コース

著者による注記:大半の饗宴について言えることだが、肉のコースはシェフと主催者が食事全体で表現しようとしている中心的なテーゼが明らかになる部分だと考えられている。ブラゾラス皇帝がこのコースで何を伝えようとしたのかは不明だが、もしかすると聖コエリシアの殉教を快楽趣味の中に沈めようとしたのかもしれない。

「ラクダの丸焼き」の羊肉と鶏肉と卵とナッツ添え。ブラゾラスが一夜の話題をこの茶番で持ちきりにするつもりだったのは間違いないが、知ってのとおり最も人々の記憶に残ったのは白鳥の詰め物だった。それでも、ラクダの中に羊を詰め、羊の中に鶏を詰め、鶏の中に卵を詰め、卵をナッツでコーティングした姿は確かに見ものではあった――しかもシェフはこの化け物を全てテーブルのそばで切り分けてみせたのである。シナモンの香りが何週間も取れなかったと言われている。

「ヤマネ」のゼンマイ添え。典型的な快楽趣味の見世物であり、ブラゾラスは数週間、レヤウィンにいる浮浪児を1人残らず雇い、賓客に供するためのヤマネを集めさせたという。ブラゾラスはヤマネをガチョウの油で徹底的に肥えさせたので、食べた時には、ヤマネの骨までも舌の上で溶けてしまうほどだったという。

「若黒鶏」の亀甲焼き。ホワイトローズの黒鶏種はその猛毒の肉で知られている。有毒の甲虫を食べるせいで、体に黒い斑点ができるのである。ブラゾラスはこの食事のためにまたしてもアルゴニアンの発明を採用した。まず、普通の亀に彩色を施してこの若鶏の肉を食べさせる。亀は毒を無効化できるからである。あとは鶏肉が完全に消化される前に亀を殺し、丸焼きにして客に供すればよい。亀の肉は平凡だが、体内に入った若黒鶏の肉の病的な味わいは、五感を刺激する逸品である。

「センチの心臓のフィレ」のサトウキビ添え。この料理は挑戦的である。多くの賓客はセンチの心臓を食べるという象徴的行為を問題視したからだ。しかしこの臓器を食べることを選んだ者たちは、通常は硬いはずの心臓の筋肉がとても柔らかく処理されていることに感動した。

「骨髄と腱」のブラウンソース添え。この料理はブラゾラスの前任者のシェフ、アルベレット・ソーヴィンが発明したもので、帝国の宮廷で長く人気を博した。インペリアル料理の伝統にアカヴィリの影響を交えており、特に腱の味つけと調理法にそれが現れている。腱は雄牛の骨に浸され、骨髄をすくうための道具として用いられる。

聖コエリシアの饗宴 第五巻The Feast of Saint Coellicia V

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第7コース

著者による注記:第7コースはこの晩の唯一の甘味料理だ。これは高貴な晩餐会の形式から逸脱していた。通常は少なくとも2つの甘味コースが食事の前後にあったからだ。だが、この逸脱は大いに成功し、すぐに伝統的なコース料理の順番に取って代わった。

砂糖チーズのアイシング付き「ナツメヤシとベリーのケーキ」。このコースの1品目となるこのケーキは極めて美味であったが、それよりも驚くほどの大きさ(直径10フィート弱)と、指1本分程度の高さしかないことで知られていた。ケーキの表面にある砂糖をまぶしたチーズは複雑で美しい形に編み上げられており、切り分けられるのを見て多くの人が涙した。

「ファイアベリータルト」。中身が漏れたり服を汚したりする心配をせずに持って食べられるように折り込まれたこのタルトは、この晩の画期的な取り組みの一つだった。これらの形状は魔術師ギルドの研究の賜物だと言われている。

カルダモンシロップ添え「ノルドのミルク」。「ノルドのミルク」の興味深い部分は、ノルドと無関係ということ以外、未だ完全には分かっていないことだ。シェフはミルクを凍った半固形の状態にできて、この世でもっともおいしいお菓子の一つであること以外は。もちろん作るためにつぎ込む金額を思えば、これを食せるのは極端な特権階級だけだ。

シナモン入り「焼き蜂の巣」。ハチミツが噴き出す蜂の巣をオーブンでじっくりと火を通したものは、最高に美味だったことだろう。だが、ブラゾラスがどのようにしてこれだけ多くの巣を確保したのか、はっきりとは分かっていない。

「プラム煮とクリーム」。何やら楽しげな雰囲気だが、名前とは誤解を招くものだ。ブラゾラスはホワイトローズへの探検隊と契約してから、以前のレヤウィンでは見られなかった果物を出すようになった。ここでプラムと呼ばれているものは、アルゴニアンの間で食べると舌が痺れるトカゲフルーツとして知られていた。その効果はローズウォーターを飲むだけで消えるのだが、ブラゾラスが少なくともわずかな間自分が楽しむため、その情報を招待客に伝えることを差し控えていたのはほぼ間違いない。

* * *
第8コース

著者による注記:この晩の最後のコースは濃厚なチーズで構成されていたが、これは胃を落ち着け、消化を促すことを意図したものだった。このコースを食べ切る能力があった招待客はほとんどいなかったと記録は示しているが、ここまでの料理の数々を思えば十分にうなずける。

「メロン皮チーズ」。この晩のために車輪型のメロン皮チーズの塊が2ダース注文された。その大きさは最も小さいものでも3個積み重ねた荷車の車輪ほどもあったと言われている。硬いが砕けやすいこのチーズの名は、2年熟成させると皮の部分に現れる興味深いへこみ傷に由来している。

ローリエの葉に入れて配膳された「ラッカーウェブチーズ」。凝乳を入れる前に、型の中へ手間をかけて糸あめ細工の網を作り上げる。この形状は動物の血管に似ており、それぞれ枝分かれした部分の中は空洞になっている。型に凝乳を注ぎ、チーズが十分に硬くなったら、刺激的な酢を網の中に流し込む。網は融け、チーズの中全体に素晴らしい風味の筋が残される。

「エイダールチーズ」。スカイリムからの輸入品。チーズ好きの食品庫の定番だ。

「レッドアーモンド」。レッドアーモンドの料理は幸運の印として知られているが、ブラゾラスがどのようにしてこれほど多くの量を客人に提供できたのかは依然として謎である。これらのナッツは、ある種のアナグマの消化管を通過したものでなくてはならず、風味の熟成に時間がかかるため、入手が困難なのだ。

「砕いた桃の種」。これはしばしばアリノールの様々な果樹園から来た客人に、より伝統的な挽きナッツの代替品として出される。

走り書きされた呪文Scrawled Incantation

母の悲しみを深く覗き、怒りの種を引き抜け

冷酷な亡霊を呼び出し、力を借りて魂の道を照らせ

長くねじれた影で、血によって奪われた命を蘇らせよ

殺害に奪われたものを取り戻せ。高すぎる代償などない

大司祭の命令High Priest’s Orders

ブラック・ドレイクの邸宅以来、あのウッドエルフの射手にはずっと悩まされている。彼女とその友人は、レオヴィックの秘密の真実を知るまであとわずかというところまで来てしまった。また、奴らは我々が四つの野望を手にしようとする懸命な取り組みの邪魔をし続けている。

奴らを闇の一党の兆候で煩わせるのは、しばらくの間だがうまくいった。時間を稼げた。そろそろ終わらせる時だ。

大司祭として、奴らを闇の一党の聖域まで追跡するよう命じる。遺跡にレオヴィックが隠した物を回収し、奴らを皆殺しにしろ。暗殺者とレヤウィンの傭兵も同様だ。そしてウッドエルフが死んだら、まだ聖なる書物を持っているかどうかを確かめろ。あの書が欲しい。

帝国の策略の歌Imperial Deception Song

ワインあふれる金のゴブレット
美しい目をした官能的な踊り子
ルビーのサークレットを頭上に戴く
毛布はもつれ、ベッドに倒れる

燃え盛る炎に熱い油脂が滴る
欲望に口を開けばブドウが揺れる
青いベルベットと黄金の縁が満ち
あさましき者が取り囲み喜び

だが素晴らしいものには代償がある
黄金にも隠せぬ腐敗がある
色鮮やかに塗られた唇の下に牙が潜む
船から矢のように無垢が落ちる

疲れた脚が血を吹くまで踊る
珍味とハチミツ酒に溺れる
素敵な策略が黄金を曇らす
何を売ったか最後に気付く

伝令が運んだ手紙Courier-Delivered Letter

好奇心に満ちた目があらゆる場所にあるため、このような形をとることをお詫びしたい。

お前が是が非でも知りたいと思っている情報を持っている。あの奇妙な遺跡で共に過ごした後に知った情報だ。

ギデオンの南側にあるアムニス邸に来てくれ。お前とあのウッドエルフだけで。

誰にも言うな。最大限に注意を払い、また俺を信用してくださるよう願う。俺の意図が誠実なものであることを、誰もが信じるわけではないだろう。

塗られた目の要求Demands of the Painted Eye

ボーダーウォッチの指揮官へ告ぐ

我々は要塞を掌握した。中に残された民間人の招待客、労働者、要人は全て我々の囚人となった。彼らの身柄を無傷で解放するのと引き換えに、以下を要求する:

一、象牙旅団の完全な武装解除と解散。また、全士官と官兵をソルスセイム島に送り、生涯そこで追放すること。

二、以下の囚人の解放:
-アルクトゥルス・ヴァノ。現在スキングラードの議員暗殺により収監中。
-ハイマンドリル。現在ネクロムでの放火により収監中。
-ベンコル。ホワイトランの虐殺者。現在陰謀の罪で収監中だが場所は不明。
-ダガーフォールの5人。現在カバナントに対する犯罪によりマッディング・ウインド監獄に収監中。
-レディ・ベンウィン・スローンベイン。現在セスパーに追放中。
-その他我々が要求する囚人全員。

三、ケナーシズルーストを政治的に独立した地域とし、ルビーの玉座、アルドメリ・ドミニオン、およびその他のあらゆる外部の権威者から干渉されることなく自由に独自の法を作り、利益を追求できるようにすること。

四、全ての定命の者が自己を統治する普遍的な権利を受け入れ、自身の権力機関による独立した統治を認める、シロディールの貴族階級によって署名された通知の作成と配布。加えて、これらの冊子には、前述のような自立した地域の制定と、それが塗られた目の価値観を共有する者を歓迎する地域であることを記載するものとする。

五、それぞれが3本以上のマストを持つ4隻の船の係留。航海に必要な食料および物資を完全に蓄えた状態でブラックウッド南沖に係留することとし、併せてボーダーウォッチから当方への安全な経路を保証すること。

上記のいずれについても交渉は受け付けない。人質の命と引き換えに、それぞれの要求は完全に達成されなければならない。

反逆者の色褪せた手紙Rebel’s Faded Letter

もうすぐ事態が急速に進展する。

あの横暴な裁定者ガヴォスから、大修道院を解放する計画がある。奴のある兵士と話したら、彼らも我々とそう変わらないことが分かった。ただ生活と養うための金を稼ごうとしてるだけだ!彼らも裁定者を快く思っていないし、阻止する人々に協力する意思がある。彼らが味方につけば、戦うことなく裁定者を追放できる!

交易大臣たちは、裁定者ガヴォスが権力の放棄を拒んだら投獄するつもりだ。彼らはすでに魔法の封印を作り出すため、魔術師も雇っている。3つの印でできた封印だ。それぞれの交易大臣の印だよ。奴を解放するには3人が同意しなければならない。だから、あいつが二度と日の光を拝めないってことは請け負う!

今晩、いつもの場所で会おう。計画と今後の行動について説明する。

秘密の保持Preserve the Secret

ディサストリクス・ザンソラ

四つの野望の時が目前に迫っている。我々の活動を加速させなければ、数十年におよぶ計画が水の泡になる。レオヴィック皇帝は野望を隠し、その場所を私に知らせる前に殺された。だが彼は帝国のあちこちにある様々な隠し場所に、手掛かりを残した。

処刑する前に同僚の評議員たちを追求して、彼らが気付いている秘密の一部を探し出すこともできるだろう。もちろん、彼らはロングハウス帝の秘密を保護するために死なねばならない。殺害の責任は闇の一党に負わせる。それによって目覚めの炎教団への疑惑を、可能な限り長くそらす。また、レオヴィックの隠し場所が彼らの元のブラックウッドの聖域に一つ隠されていることが最近分かった。

最高の侍者を送り出してくれ。執事ファルル・ルパス、アボール、ファレリア、イティニア、ジリッチ、ソフス評議員を殺すのだ。ロヴィディカスも殺す必要があるかもしれない。元評議員長は、安寧に暮らすには賢すぎる。恐らく起きていることに気づき、我々が四つの野望を確保する前に行動を起こしてくるだろう。

私も自分自身に対する攻撃を計画する。失敗に終わるものだが、闇の一党をさらに関与させる。

忘れるな、私に接触してはならない。私のほうから連絡する。適切な時が来るまで、私の正体については一切明かされてはならない。

我らが炎と洪水の王の名において
大司祭ヴァンダシア

冒険者求む!胸躍るチャンス!Adventurers Wanted for Exciting Opportunity!

新たに発見された遺跡の探索のため勇敢な人を募集します。栄光と金を手にできる、またとないチャンスです!

探検についてはジギラにお尋ねください。

〈別人の筆跡で書かれている〉

大仕事よ。合法とは言えないようだけど、お金は本物よ。レッドメイン砦の北で会いましょう。お友達を連れてきて。それじゃまたね、弟くん

ミッリ

目覚めの炎教団The Order of the Waking Flame

ペレグリナ・ポムピタラスによる暴露記事

熱心な読者の皆さん、ご注目あれ!この数ページに及ぶ出来事の記録者である私が、ブラックウッドの貴族の間で急速な広がりを見せている最新の集団の真実を明らかにしよう。この集団について、ある人はレヤウィンとギデオンの有力者用の、単なる社交クラブと考えている。またある人は、暇を持て余した金持ちのための罪のない道楽だと見ている。とんでもない、熱心な読者よ!目覚めの炎教団は、もっとずっとたちの悪いものだ!

象牙旅団の士官を含め、この動きに詳しい当局者は彼らを比較的新しい哲学者のクラブだと考えている。彼らに言わせれば無害だそうだ。高級な宿屋や酒場の奥まった部屋で生み出された新たな気晴らしに過ぎないと。これほどの誤りがあるだろうか!目覚めの炎教団はその程度のものでは全くない。実際には、彼らは破壊のプリンスと呼ばれる、あのメエルーンズ・デイゴンに身を捧げる危険なデイドラ教団なのだ!

このデイゴンの狂信者たちの望みは何か?実に明白だ。タムリエルの完全破壊に他ならない。もしかしたら全ニルンの破壊さえも!さらに詳しく説明しよう。

綿密な調査の結果、以下の結論に至った。一つ、新たに結成された志を同じくする裕福な思想家の集まりのように見えるものは、実際には少なくとも皇帝モリカルの時代、おそらくはそれ以前の時代から秘密裏に活動してきた大規模な組織である。二つ、彼らは間違いなくデイドラ公の信条に心服して従う宗教的な組織である。三つ、彼らが崇敬するのは、破壊のデイドラ公、洪水と火の王メエルーンズ・デイゴンである。四つ、この教団はロングハウス帝とつながりがあるが、彼らの歴史のその部分を明らかにすることは控え目に言っても困難である。五つ、潜伏していたこの教団が姿を見せるようになったのは、彼らが忠誠と献身を強く主張するための何らかの活動を大々的に行うことを計画しているからだと拙記者は考えている。また、それが大惨事を引き起こす自然災害と同程度に破滅的なものであるのではないかと危惧もしている。

教団の組織そのものについて述べると、調査の結果は大司祭が指導していることを示唆しているが、その正体は今のところ巧みに私の目をかわしている。教団内の個々の小集団は「破滅の運び手」と呼ばれる有力者たちの指揮下にある。他の高位には「災害の化身」、「カミソリ」、「破壊者」などがある。しゃれているではないか?こうした肩書がこの教団の本質を示すわけではないだろうとおっしゃるなら、ダメ押しの情報を公開させていただこう。

私はギデオンの近くにある古い遺跡で行われた目覚めの炎の儀式に潜入することに成功した。怪しい数人を尾行し、その中の1人からローブを拝借し、背後をうろついて観察するのは実に容易だった。目撃した儀式は心底ゾッとするものだった。厳粛な儀式を取り仕切っていたのは「破滅の運び手」だ。儀式はデイゴンに対する祈りと歓喜の声で始まったが、彼のことはほとんど数多くの大げさな称号のいずれかで呼んでいた。おお、権勢を誇る高貴なる王、野望のデイドラ公、大洪水の父、といった具合だ。その後、彼らはニルンでデイゴンの意思を達成させるための力を授けるよう願い求めた。その次に行われたのは、どこからともなく流れ出る溶岩の噴煙、祭壇の上に出現した猛烈な嵐、炎のカーテンと群衆の上空で裂ける稲妻を伴う複雑かつ不穏な儀式だった。感動的であると同時に恐ろしくもあった。

こっそりと抜け出す前に、私は「破滅の運び手」がうたい上げる声を聞いた。「デイゴン卿よ、我ら控えたり!デイゴン卿よ、野望を示したまえ!デイゴン卿よ、君が革命は我らが革命!ニルンは君のものとなろう!」

我々は賛詠の始めの数行を聞いたに過ぎないのではないだろうか。破壊が訪れるだろう、熱心な読者の皆さん。備えを!

目覚めの炎教団への参加Join the Order of the Waking Flame

世界は混沌から成り、いずれ混沌へ帰ります。破壊は不可避です。しかし瓦礫の灰から新たな世界が生まれるのです。

この考えに賛同する者、環境に対する自然災害の利点についての議論に関心がある者、あるいは来たるべき新世界に居場所を得たいと望む者よ。目覚めの炎教団はあなたを歓迎します。

日没に会いましょう。

外套を持参してください。

旅団の日記Brigadine’s Journal

他の象牙旅団が街をうろつき、スリを捕まえ、大酒飲みを街から追い出しているというのに、俺たちはクソにどっぷりと浸かって生きたままニクバエに食われてる!俺は普段から文句を言ってるわけじゃない。贅沢な暮らしを期待して入ったわけじゃない。だけどこいつは無茶苦茶だ!アルゴニアンはどうやってこんな場所に耐えてるんだ。沼の空気はまるで肺にずぶ濡れの羊毛を吸い込んでるような感じだし、ちゃんとした服を身に着けてなかったら一瞬で虫に殺されるだろうし、馬ぐらいでかい蛙までいやがる!どうやったらこんなとこで生活できる?

これで民が友好的ならまだマシだった。アルゴニアンたちには、この場所を少しでも暮らしやすくするための防御策が沢山あるはずなんだ。だが明らかに俺たちを歓迎してない。隊長がひどいことをするために来たんじゃないって説明しようとしてたが、どうやら交渉はあまりうまくいかなかったようだ。可能な限り彼らを避け、全力で反感を買わないようにしろというのが俺たちが受けた命令だからな。

交易路を拡張する、と奴らは言った。簡単だろうと。ハッ!ブラックウッドの沼地で簡単なものなんて何一つない。

少なくとも、俺たちは繋がってる。よく聞く話だが、苦しみってのは兵士を仲間に変えるもんだ。プレンタスにあれほど話術の才能があるとは思わなかった。それにアクシラの奴、ホッパーが驚いて死ぬくらいでかいゲップができるとはね!

ここにいるのもそんなに悪くはないのかもしれない。いい時も悪い時も共有できる、旅団の仲間がいる限りは。

力を貸してくれ!I Need Your Help!

これを読んでいる人へ

私、トゥーモンは切実に助けを求めている。私にとって価値あるものを失くしたのだ。心から深く愛しているものを。私の落ち度だ。ほんの一瞬よそ見をして… まあ、細かいことはどうでもいい。重要なのは我が愛しき者を傷つけたがっている奴らがいることだ。彼女を追い詰め、戦利品として手にすることを望む奴が。そんなことをさせるわけにはいかない。この卑劣な狩人どもは始末する必要がある。莫大な報酬を約束しよう。

下に記した3人を見つけ出し、片付けてほしい。その後、この野営地に戻ってくれ。新しいメッセージが待っているだろう。頼むから質問は一切しないでくれ。信じてくれ、この狩人どもは心底卑劣な奴らだ!

悪しきフジャルダー。最後に目撃されたのはレヤウィン周辺の丘。

邪悪なヴァシャ。最後に目撃されたのはギデオン付近の沼地。

素早きビンギム。最後に目撃されたのはストーンウェイストを囲む湿地。

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