遺物師の蔵書庫

Library of Incunabula

アーティファクトの記録:オパールのお守りArtifact Record: Opal Charm

ダガーフォールのジェラルディ伯爵がデイドラ公メリディアの崇拝に手を染めたかどで追放された後、銀の薔薇騎士団は彼の領地から異教の道具や信者を根こそぎ排除する任務を与えられた。伯爵の召使の大半は神々を恐れる人々だが、伯爵が後援していた芸術家たちの集団はそれほど純朴でないことを騎士団が突き止めた。教団の所持品の中には、雌鶏の卵ほどの大きさの紋様が刻まれたオパールがあった。この宝石は黄金の型にはめ込まれ、鎖で吊るされていた。騎士団の魔術師たちは、これが強大な魔力を持つことを即座に見抜いた。放出されていた色鮮やかな光は、台座に置かれているだけでも祠全体を照らし出すほど明るかった。

このお守りをさらに調査すると、綺麗な光のショーどころではない力を有するものだと分かった。この石はメリディアの領域と深いつながりを持っており、放出される光は彩られた部屋から直接引き出されているのだ。使い方を理解すれば、光で作り出した物体を離れた場所に映し出せる。単なる幻影ではなく、彩られた部屋の力が生み出す物理的な召喚だ。この召喚を維持するにはかなりの集中力が必要で、集中が途切れるとすぐに消滅する。

一見しただけでは分からないこのお守りのもう一つの特性は、生者に対する支配力である。何といっても、生命と光の淑女は服従を好む。オパールのお守りは生物の生命力を合一させられるのだ。これは信者たちを処刑しようとした際、我々が発見したことである。このアーティファクトの装着者、つまり伯爵を多大な尽力の末に仕留めるまで、お守りに結びつけられた他の者たちは、傷を受けても倒れることがなかった。このような強力な物品がより危険な敵の手に渡る前に、我々の手で押収されたことは幸いである。

公文書保管人バーソロミューによる記録

アーティファクトの記録:大地裂きArtifact Record: Groundsplitters

銀の薔薇がロスガー山脈に巣食うデイゴンの略奪者に勝利したことで、大量の戦利品が手に入った。彼らの武将、雪崩のバーグは自分が築いた瓦礫の下に眠っているが、バーグが大切にしていた「大地裂き」は騎士団の宝物庫に飾られるようになった。オークの山賊があのような強大なアーティファクトをどうやって手に入れたのかは謎だが、この5年間に奴がハイロック中で暴れ回った報酬として、破壊のデイドラ公が授けたのかもしれない。

この威圧的なブーツは戦士にとってそれほど重いものでなく、持っているだけなら特別な力があるようには見えない。しかし足に滑り込ませた途端、装着者は巨人のように、足を踏みしめるたび低い唸り声のような地響きを発生させる。「大地裂き」を履くと、装着者の足踏みの衝撃は数倍に増幅される。つま先で歩いても大きな音が響き、強く踏みつければ地面にひび割れが入る。

誤った者の手に渡れば、このブーツはたとえそのつもりがなくても壊滅的な被害をもたらす可能性がある。ありがたいことに、もはや砦の奥深くの宝物庫から出ることはないだろう。

公文書保管人バーソロミューによる記録

アーティファクトの記録:不実の剣Artifact Record: Duplici Gladio

噂によればこの剣は数百年の間、血なまぐさい陰謀と死の決闘を通じて、帝都でその所有者を変えてきたという。八十年戦争の際に帝国軍によってダークエルフのある戦士から奪われた後、帝国中枢において一種の伝説と化したとされる代物だ。この剣がかつてどのような名を持っていたかは知らないが、インペリアルの間では不実の剣と呼ばれている。その理由はこの剣が強大な力を持つと同時に、終わりなき裏切りの連鎖をもたらしたことが知られているからだ。このように地味な武器が恐るべき評判を得ていることを、不思議に思う者がいても無理はない。しかし詳しい者なら、剣の紋様を見ればその不吉な出自と真の所有者が分かるだろう。これは策略のデイドラ公ボエシアのものだ。

より知名度の高いゴールドブランドほどには人目を引かないが、私見だがこの目立たない剣はダークエルフの油断ならない性質によりふさわしい。不実の剣の最も注目すべき性質は、剣自体と装着者の分身を生み出し、それを本体と独立に行動させられることである。この力の利点は明らかだが、ボエシアの品を無条件で信用するのは愚か者だけだ。分身はデイドラ公に都合のいい時は装着者の命令に従うが、真に忠誠を尽くすべき相手を決して忘れない。

三旗戦争によって直前の所有者がシロディールを追われ、我々の手に転がり込んでこなかったなら、この呪われたアーティファクトは帝都をさらに数百年の間、死と裏切りに染め続けていただろう。今では砦の宝物庫に貯蔵されているので、もう犠牲者を出すことはない。

公文書保管人バーソロミューによる記録

アイスリーチ魔術結社への手紙Letter to the Icereach Coven

アイスリーチの諸君

申し出を受け入れていただき感謝する。その先見の明は古代からの絆を際立たせるだろう。王侯は伴う者によって判断されることが多いが、諸君とは波長が合うと感じる。共に世界をより良くするため、労力を惜しんでいない。

側近たちからは、求められた資料をすべて届けたと聞いている。この儀式が難し過ぎるようならすぐに伝えてほしい。我らの時は近い。今でさえ、動き出した車輪を止める訳にはいかないのだ。多くのことが、諸君たちの速度と精度にかかっている。

我々の協定について、疑いを持つ者もいるやもしれぬ。これは覚えておけ。私は常に約束を守ってきた。約束を守る相手には、血にかけて約束を守ろう。取り決めを尊重できないようなら、諸君の城塞の壁を召使の内臓で染めよう。これも誓う。

儀式の結果を早く確認したい。すぐに我々はノルドを服従させ、諸君たちが失ったものを取り戻すだろう。

敬白
-R

アドシ・フェヴルの日記Journal of Adosi Fevur

彼女が戻ってきた時、私たちは喜んだ。千年の不在の後、我らが祝福されし創設者が大地から現れ、蘇ったのだ。古い宗教は大部分消失しており、彼女の主張を疑う者もいた。私もそうだった。知らなかったのだから。

だが遺産が火花を発して命を得た。奇跡的な光景だった。女族長は遺産に手を伸ばし、囁いた。言葉は聞こえなかったが、彼女の顔が輝いたように見えた。その瞬間、私たちは真実を知ったのだ。

しかし、である。

女族長は物語が伝えるような人物ではなかった。優しく、忍耐に満ちた人ではない。彼女は私たちの幸福など気にもかけなかった。主に憤怒に駆られた人物だ。彼女は狂暴な敵が部下たちを殺し、自分の地位を奪ったと話した。復讐だけが彼女の目標だった。

彼女が災厄のことを言っているのはわかった。長い年月が過ぎた今は、ただの恐怖物語だと思っていた。一瞬のうちに姿を現し、子供を盗んでいく怪物。どんな物語にも一定の真実があるということか。

その後、多くが変わった。ルラディ女族長は私たちに、災厄の次の襲来に備えねばならないと力説した。遺産を守るために私たちは全力を尽くさねばならないと。私たちはそうした。本当にすべてのものを与えてしまったのだ。

ぺライト公が最大の保護を与えてくれた。女族長はそう主張している。災厄をもって災厄に対抗するつもりなのだろうか。私たちは聖堂を築き、遺産をそこに移した。そして、生贄が始まった。私たちはどうやって歩いているのかもわからない、謎の怪物たちに囲まれるようになった。

私は抵抗した、と言いたいところだが、私も他の皆と同様に熱心に崇拝した。おそらく、私はそのことで罰せられるだろう。

数日が過ぎた時、ニルンそのものが裂けたかと思うほどの轟音が響きわたった。空は赤くなり、煙で満たされた。それ以来、私たちは太陽を見ていない。炎と石が降り注ぎ、私たちの家を破壊した。何が原因でこうなったのか、誰にもわからない。これが罰なのだろうか。

ほぼ三時代の間、バル・サナーは世界から孤立していた。3500年以上前、女族長はこの集落を作り上げた。帰還した彼女は、今やその破壊を告げに来たのかもしれない。

アルクンザムズ・フングArkngthamz-Phng

アルクンザムズ・フング:
竜の牙に捕えられた都市

ネラモ 著

最もよく物語の題材にされ、最も理解されていないドゥエマーの遺産は、おそらく失われた都市アルクンザムズ・フングだ。その伝説に最も深く刻み込まれた要素であり、知られているほぼ唯一のことはこの都市の没落だ。それが何だったのか、どのように起きたのかは、ほとんど記憶されていない。その名前さえ、派手な通称の「牙の巣」によって隠されている。これは元の「フング」を切り詰めた不純な表現に、この場所の最も悪名高い居住者の家を指す。適当に不吉な語句を組み合わせたものだ。数千年語られてきた伝説が、何らかの派生を見せたことはこれが初めてでもない。ドラゴンがこの旧ドワーフ都市を根城にした物語は、それより前の魅力的な歴史を残念ながら覆い隠している、と述べるに留めておこう。

幸運にも私の研究を通して、この埋もれた歴史の一部が明るみに出るようになった。私の発見が示唆するところでは、チャイマーとドゥエマーの平和が確立してから数十年後、クラゲン・クランのドワーフがレスデインの先に領地を探し始めた。放浪したローケン・クランが大移動の際に敷いた道に従い、クラゲンのドワーフは現在のスカイリムと考えられる場所に到達し、アルクンザムズを設立して、この地方で最初の拠点を確立した。

クラゲンの探検家が、敵対的なノルドに囲まれてもここに住もうとした魅力が何だったのかは明確でない。しかし好戦的な人間の攻撃を受け続けたにもかかわらず、彼らの街は繁栄した。その成功に触発され、他のクランも領地を西に広げようとしたほどだ。クランの緩やかな同盟は、実質的に都市国家4つの小帝国を築き、難攻不落と考えられていた。だからといってノルドが諦めたわけではないが。

この成功のゆえか、あるいは付近にこれほど多くのクランがいたためか、クラゲン・クランは西へ拡張を続け、危険な竜牙山脈を突破した。私は彼らが、新しい帝国を疎遠になったヴォレンフェルの同胞とつなげようとしたと考えている。いずれにせよ彼らは石を破砕し、現在のハンマーフェルの国境に姉妹都市を築いた。それがアルクンザムズ・フングだ。

地形は居住に適さなかったが、ドワーフたちは拡大を続けるこの居留地を攻撃的なまでに削り、すぐにクラゲン・クランの権力の座を設置したとする証拠が幾つかある。荒廃してはいるが、アルクンザムズ・フングの大広間の貯蔵庫は今も雄大だ。広大で、隔離されていて、資源と生命にあふれた空間が、ドラゴンプリーストに仕えるノルドが作った住居よりも居心地のいい場所を探していたドラゴンにとって、魅力的だったことは想像に難くない。

悲しいことに、私の最初の探検は予期せぬ抵抗に遭遇し、さらなる重大な解明がなされる前にこの地を離れざるを得なかった。しかし、これが出版されることで生じる関心が第二の、より野心的な探検を実現させてくれることを疑っていない。

ある姉の後悔A Sister’s Regret

弟よ

あなたがこれを読むかどうか分からないけど、他に選択肢がない。あなたの怒りは責めないわ。私は自分の言動を後悔している。私はただあなたの安全を守りたかった。でも、あなたはもう二度と私を信じないかもしれない。信じるべきかどうかも私には分からない。

そう、私は後悔している。あなたは私の目を開かせようとしたのに、私はいつも無視した。あの手紙は取ってある。あなたは信仰を忘れるなと言った。ソブンガルデにかけて、どんなに手紙を燃やそうと思ったことか。でもあの時でさえ、私は多分あの言葉の正しさが分かっていた。私は真実に耐えられないのだと思う。

あの日のことははっきりと覚えている。スケイルコーラーの死体が雪山の頂上に横たわっていて、彼女の血が少しずつ雪を赤く染めていた。私は彼女の仮面を取ろうとしていた。私の冷たい指が、彼女の金属をきつく握りしめた。力と支配を求めて必死だった。

でも仮面は私を拒絶した。彼女から離れようとしなかった。その瞬間、お腹の底に重い感覚を受けて、私は悟った。こんなことを始めるべきではなかった。あなたは私に伝えようとしたのに、私は聞かなかった。

お願い、私と一緒に脱出して。この聖堂の魔法の守りは崩れ始めている。私たちは高価なものを身につけているから、見逃してはもらえない。あなたがここに一人、汚らわしい盗賊に殺されるなんて耐えられない。お願い、私たちと一緒に来て。新しい家と、新しい目的を見つけましょう。あなたに誓うわ。私たちは新しい人生を見つけると。

あなたを愛する姉妹
ルエルデ

ある姉の反論A Sister’s Retort

弟よ

あなたを馬鹿だと思ったことはなかったけど、今は思っている。すでに分かっていて当然のことを書くわ。あなたは全ての徴候を無視して、妄想の中に深く潜りこんでいる。私は躊躇せず真実を見ているのに。

目を開いて!もう無視できないわ。スケイルコーラーは私たちの秩序を破壊し、悲惨さだけをもたらした。彼女が無能なせいで、ドヴァー・サーヴォクンは私たちを見捨てたのよ。こんなに明白な真実が分からないの?私たちを破滅させたのは、彼女の弱さ。しかも不機嫌な子供みたいに、彼女は私たちを手放さない。こんな屈辱を我慢するつもりはないわ。

ドラゴンがいなくなって、私たちの教団は崩壊した。私はドヴァー・サーヴォクンに従うことを選んだ。彼だけに。置いていかれた人々に対して、私は何の忠誠心もない。スケイルコーラーはただの抜け殻よ。支配する力もなければ、それを認める力もない。あんな弱者に導かれるのは嫌。

あなたの献身に深く、厳しい一瞥を向けることを勧めるわ。変化は私たち次第。前に進むことを拒否すれば、悲惨な過去に取り残される。賢く選択しなさい、ヤークボーン。選択肢がなくなってしまう前に。

誠意を込めて
ルエルデ

ある弟の嘆願A Brother’s Plea

最愛なる姉さん

認めざるを得ないが、あなたの最後の手紙には困惑しています。ドヴァー・サーヴォクンが去ったことで、私たちは皆不安になっている。あなたの懸念も分かる。だが頼むから、そんなことでゾナーク・ザーンへの信仰を揺るがせないでください。彼女は私たちを守り、導いてきた。崇拝のため、この美しい聖堂を与えてくれた。ザーンを崇めることは私たちの生涯の目的です。

ザーンの行動がおかしいとあなたは言いますが、私からすれば当然のことです。ドヴァー・サーヴォクンとの彼女のつながりは強い。私たちに想像できるどんな絆よりも強いのです。ゾナーク・ザーンには彼の導きがなくなったことで、大きな喪失感があるに違いない。私たちと同じように。長時間隠遁しているのはそれが原因だろうし、それだけのことです。彼女の力が弱っていると疑うなど…

あなたの心配は自分の心にしまっておいてください。手紙で私に伝えてくれたのはよかった。もし盗み聞きでもされたら影響が恐ろしい。それに、遠からず何もかも正常に戻るでしょう。ドヴァー・サーヴォクンは栄光の帰還を果たし、全てはうまくいくはずです。それまでの間、信仰を忘れないように。

敬具
ヤークボーン

ウマリルは失敗したUmaril is Undone

ナリルモル、

私が自分で証言できる。羽なしのウマリルは祖先の聖堂で死んだ。私の兄弟は故郷で名誉を汚した雑種の遺体を持ち去った。彼らは立ち去る前に、この落とし子の頭を牛の女王に贈り物として残していった。

我々は反抗する人間に対し、一致団結して立ち向かわねばならぬ。でなければ我らが君主たちと同じ命運をたどるかもしれない。助力を得られると信じている。

サドリル

オンダゴアの日記Ondagore’s Journal

第一紀1092年、恵雨の月24日

ついにストリキの墓へ入れた!見つかるまでこれだけ長くかかったのも不思議はない。迷信深いレッドガードがグレイホストの遺体をヨクダの遺跡に隠すなど、決して予測できなかっただろう。彼らのアンデッド嫌いを考えれば、とても面白い皮肉だ。

それほど静かに動かなくてもいいだろう。パイアウォッチの衛兵は簡単に気を逸らせる。門を越えて先まで進む者は少ない。この墓は独り占めできそうだな!死んだ吸血鬼を蘇らせるまで、長くはかかるまい。骨の軍団がついに手に入るのだ!

第一紀1092年、栽培の月3日

完全に迷ってしまった。パイアウォッチはここの扉の多くに強力な結界を張っていて、入口へ戻ることが不可能になっている。だから奥へ進むしかない。

第一紀1092年、栽培の月5日

物資は底をつきかけていて、私はまだこの穴と灰の迷路をさまよっている。変身の儀式を実行する前に、下僕の軍団を呼び起こしたかったが。手順を早めるしかなさそうだ。
奇妙だ。聖句箱は手元にあるし、試薬も持っている。なのに今、決定的な瞬間になって躊躇している。きっと飢えのせいだ。私はリッチへ昇り詰めるため、数十年かけて準備してきたのだ。たとえ止めたくても、今さら止めるわけにはいかない。躊躇は餓死を意味する。すぐに儀式を始めよう。

第一紀1092年、栽培の月6日

成功だ。多分。書くのが難しい。心臓の震えを感じる。ずっと。少しでも考えると、手が震える。何かが足りない。そのうちに収まるだろう。収まるはずだ。

第一紀1092年、栽培の月8日

ようやく震えが収まった。だが今は集中できなくなっている。私は何時間も石を見つめて過ごし、絵具を塗ったらどう見えるか想像し、石の構造について思いを巡らせている。私は教えられたとおりに儀式を行った。時が来れば私の心も明晰になるだろう。間違いない。

第一紀1092年、真央の月22日

なぜ誰も手紙をよこさない?なぜ誰も訪ねてこない?私はこの石と灰の大広間に座り、自分と会話している。よりによって、私自身とだ!自分と私は、何を話した?いつもの同じ物語か?同じ使い古しの冗談?仲間を見つけなければ!絶対に!

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この本を見つけた。私のものだと書かれているが、そうだろうか?この筆跡には見覚えがない。起きた事も覚えていない。いたずらだろうか。そうだ、また私を愚かに見せるためのいたずらだ。あの連中に思い知らせてやる。夜の間ずっと、壁の向こう側で笑う声に。それとも日中だったか?両方かもしれない。どちらでもないかもしれない。

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本だ!本だ!書ける本!オンダゴアの日記?何と情けない著者だろう。不満や泣き言ばかり!全く!しかし、この人物も私よりはマシだろうに!孤独は嫌いじゃない…本当だ!だが訪問者がいるなら歓迎だ。多分。礼儀作法にもよるかな?態度とか?いずれ誰かが呼びに来るだろう。そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうだ。

〈日記の残った部分は判読できない文字で埋まっている〉

ガーラス・マラタールの発掘Unearthing Garlas Malatar

元夫の整頓能力は酷いものだが、今は物を貯め込む癖に感謝している。彼はアイレイドに関するボロボロの本と巻物を複数所持していた。ドゥエマー研究の項目に混ざっていて、中には原本まである。クインタスが杜撰なだけだと思って無視しかけたが、いくらあいつでもこれだけ多くの資料を別の場所に置くはずがない。まだ調べなければならないことが沢山あるが、あのバカは本当に何かを発見したらしい。

* * *
クインタスの最悪な整頓能力に感謝する時が来るとは思わなかった。私がドゥエマーに集中している間に、どれだけ長くここの本は埃をかぶっていたのだろう?あいつはアレッシアの奴隷反乱期におけるアイレイド王国間の書簡を、チュルヘイン・フィーレによる後期アイレイド語専門書の助けを借りて翻訳していた。原典を自分で解読するつもりだが、私に分かる限りでは、アイレイドたちが白金の塔の陥落に対処しようと苦心していたようだ。

* * *
アイレイドの巻物を自分で翻訳して分かったのは、反乱した奴隷と戦争していた複数のアイレイド王国が、情勢を逆転させるための計画を練っていたことだ。憤怒の石と呼ばれるアーティファクトへの言及が数多くあるが、アイレイドはこれが解決策だと考えていた。彼らはドゥエマーが石を所持していると睨んでいた。アイレイドたちは力づくで石を奪おうとして失敗したようだが、これについては確認が必要だ。

* * *
クインタスの乱雑さに感謝したことは全部撤回する。あいつの収集品の中から必要なものを見つける前に、私は老衰で死んでしまうだろう。この乱雑さに何らかの秩序があるとしても、私には見当もつかない。だが彼がこのゴミの山から探しものを見つけるのに苦労している様子はなかった。あいつの顔はもう二度と見たくないが、あの裏切り者の頭が必要になりそうだ。

* * *
いつかヴォレンフェルに戻ったら、あの死霊術師のことを覚えておかないと。普段なら繊細な問題に関してアンドーンテッドは信用しないが、彼女はまともな性質の人のようだ。彼女は私を元夫と喜んで「再会」させてくれたが、あいつを手元に置かせてくれるよう計らうにはそれなりの説得が必要だった。私が改造した与圧チャンバーは思ったよりうまく機能している。クインタスはしっかり閉じ込められ、必要に応じて会話できる。必要に応じて黙らせられないのは残念だが。

* * *
1週間もわめき続けた後、クインタスはようやく逆らっても無意味だと気付いた。彼は自分がしていた憤怒の石の調査を完了するため、力を貸すことに同意した。愚かしい嫌味を我慢するくらいは小さな代償だ。

* * *
私の判断は正しかった。クインタスは確かに何かをつかんでいた。あいつにはいつも陰謀をかぎつける才能があった。歴史の記録によれば、アイレイドのドゥエマー襲撃は阻止され、最終的にはアレッシア人に粉砕された。それで話は終わり。でもそうだとしたら、なぜサルンたちはチュルヘイン・フィーレの死後間もなくアイレイドの遺跡を調査していたのか。それにサルン家が有力者たちを説得して資源を分散させ、人里離れた沿岸に砦を築かせることがどうして可能だったのか?帝国史上最大の内戦の最中だったのに。今起きているものを除けばだが。

* * *
クインタスがこうした記録をどう入手したのかは不明だが、おそらく盗賊ギルドから何らかの力添えを受けていたのだろう。公式には、ミストウォッチ砦は季節外れの津波によって崩壊し、洗い流されたとされている。疑わしいのはその知らせが届く前に、砦の下からある物品が掘り出されたかどうかだ。細かい事情については情報が乏しいが、記述からすると憤怒の石の可能性がある。彼らは発見を隠したのだろうか?自分で確かめなければ。何か手がかりが残されているかもしれない。

カルウリオンのメモCaluurion’s Notes

あれだけ計画し、準備したというのに。数十年の努力が一瞬にして水の泡になった。無益な実験によって消滅し、取り返しがつかない。状況が違っていたなら、私は激怒しても失敗の原因を突き止めようと思っただろう。

私は数えきれないほどの反復によって魂縛を極めた。毎回克服すべき困難があった。だが今回は、麻痺した気分になるだけだ。文字どおりの絶望に座り込み、仲間の壊れた体と過ぎ去った時代の残り香に、一人取り残されている。

ドラゴンは倒れ、その貴重な魂も去った。種族の最後の生き残りか、違うとしても最後に近いのだから何も違わない。戦利品は勝者にと言うが、今回は違う。私が勝ち取ったのは腐敗した肉と鱗の山だけだ。

この機会を逃してはいけない。魂がなくても、この死体には可能性が満ちている。解体と保存が最優先になるだろう。これからあまり眠る時間はなさそうだ。

この生物の無傷の臓器は、より保存に適した容器へ移された。食料と簡単な試薬は交換可能だ。ドラゴンの巣窟を捜索すると、ドゥエマーの財宝の蓄えが見つかった。その多くは密閉された機械の金庫に入っていた。

それを空にすると、かなりの分量の未知の素材が発見された。精錬されていない、発光する明るい青クリスタルの塊だ。まだ残っている腐りやすいドラゴンの部分を空いた容器の中に封印したら、このクリスタルをもっと詳しく調べよう。宝箱の中身の大部分がもうすぐドラゴンになるという皮肉に、多少の喜びを覚える。

クリスタルは何の役にも立たない。不活性どころの話ではない。あれは停滞のエキスだ。不変であり、変えられない。あれの研究は安心して、無際限に延期していいだろう。

残っている私の食料が、予想していたよりも早く傷んでしまった。この遺跡の湿り気のせいか、それとも菌類の流布がこの結果をもたらしたのかは分からない。だが別の食料源を見つけなければ、私はドラゴンの肉を食べることになってしまう。

ドラゴンの焼肉は、肉に靭帯が密集しているが悪くない。味を表現するなら、そう…鶏肉だった。

ドラゴンの遺体は魔法の性質を内在的に保つという主張は誇張でないが、私ならこの遺体を触媒として分類するだろう。応用の可能性は広いが、錬金術の研究は控えなければならない。替えの素材を入手することは不可能だ。

この生物は容易に秘密を明け渡そうとしない。秘密を解き明かすために何世紀も費やせそうだが、私にそんな時間はない。もう食べるものがほとんど残っていないし、すでに長居をしすぎているのではないかと不安だ。

山を降りる力がないため、この状況を受け入れる時が来ている。私はここで死ぬが、望む方法でそうするつもりだ。問題は、あの不変のクリスタルが従ってくれるのかどうかだ。

ギール・マーの日記Geel-Ma’s Diary

こんなことが可能だとは思わなかったが、ツァトバ・ランは再びなぜ我々シャドウスケールが彼に倣わなければならないかを示している。彼は最も捉えにくい敵の痕跡を捉えた。シルケンリングは我々のことを熟知していて、激しさを増す攻撃に対処することはほとんど不可能だ。どうやってか、ツァトバ・ランは彼らのアジトを突き止めた。彼らを根絶したければ、発見したことに気付かれる前に素早く行動しなければならない。

シルケンリングに対する報復に際して、ツァトバ・ランから呼び出された。彼は攻撃して敵を粛正することを計画している。これだけ多くのシャドウスケールが一つの目的に向かうことは珍しい。このシシスのための虐殺に加わることは、自分の特権だと思われる。

これは簡単な仕事ではない。ツァトバ・ランは、シルケンリングの成功が彼らのアサシン技以外のものによる部分が大きいと打ち明けてくれた。彼らは類を見ないほど自らを強化してくれる力の誘惑により、闇の一党やモラグ・トングを見捨てて来たのだ。だから彼はこれだけ多くの仲間を連れて来て、私を側に置いたのだ。この脅威に対して、あらゆる分裂や分散は許されない。

今晩、我々は敵が拠点にする穴へ下りて行く。ツァトバ・ランはこの中に何があるかはほとんど分からないと認めているが、彼の背骨は自信と熱意に満ちている。私も敵の鼓動を感じられる。まるで我々の行進曲のようだ。静かになる前には早くなるだろうと思うとたまらない。シルケンリングを憐れみたくなるほどだ。

クジャルナルの研究メモKjalnar’s Research Notes

全てはこのためだ。荒らした全ての墓地、ひっくり返した全ての石棺、全ての殺しと眠れない夜、血で支払われた空約束…全てはこのためだったのだ。

仲間の誰も、この場所の本性を知らない。彼らは見つかるだろう小物に熱中しながら、謎めいた雇用者について囁きあっている。彼らにとってここは普通の墓でしかない。だが私は知っている。レッドガードは理由があってここにあの灰を埋めた。邪悪な何かが、もうここに住んでいた。ありえないほど強大な何かが。タムリエルにかつてない苦悶の時代を導く、金切り声で運命を告げる使者だ。

この獣は多くの名で呼ばれている…その全ては歴史から消されており、定命の者の舌に発音できる名は少ない。私が見つけた名が1つだけある。ツィルツァリール、すなわち悪夢のベヒーモスだ。この場所の中心に到達したら、彼をその名で呼ぼう。この洞窟の牢獄から地上に出る時、誰もその名を忘れなくなるだろう。私の名も。

グリフォン観察記録Gryphon Watching Log

野生のグリフォンを手懐けるようになってからもう何年か経ったが、クラウドレストから純血種を手に入れようとすれば、騎士団のための仕事に注目を集めてしまうだろう。私はこれを訓練士として技術を磨くための機会と捉えている。


サンゴの高所は予想していたよりも多くの選択肢を与えてくれた。グリフォンがここでよく巣作りや子育てをすることは知っていたが、これほど数が多く、種類も豊富だとは思っていなかった。


高所に住んでいる獣の中に、有力なものを見つけた。特筆すべきは最大の巣を支配している雄のリーダーだ。こいつはこの小島で2番目に大きな雄よりも2倍近く大きく、まったく恐れを知らずに縄張りを守っている。希少な熱帯種で、羽根の色は黒を基調とするが、そこに鮮やかなオレンジ色の線がいくつも入っていてよく目立つ。夜空に消えていく直前の陽光のようだ。


手懐けたグリフォンを1羽、島へ導き入れることに成功した。オファロは十分に躾けられているので、野生のグリフォンたちとの無用な争いは避けている。しかし彼はより小さな、伴侶のいない雌の注意を引いたようだ。


雌にイリアータと名付けた。この子は臆病なので信頼を得るのは簡単そうだが、戦闘訓練の際には重荷になるかもしれない。交配相手として理想的とは言えないが、持続可能な群れを確立するためには必要な妥協だ。


今日、遠くから訪問者が来た。自然の生息地から遠く離れた、山岳地帯の白い種族だ。おそらく故郷から遠いこの小島に退避することで、長い年月の間クラウドレストの飼育者の手を逃れてきたのだろう。島の雄のリーダーは即座に彼女を屈服させようとしたが、どちらもこの激しい遭遇に備えていたようには思えない。彼女の凶暴さは体格の違いを補って余りあるほどだったが、今年の終わりまでにはこの2羽とも、私に従うことになるだろう。

ケシャルゴの日記からの抜粋Excerpts from Keshargo’s Journal

新しい書記、詩的な暗喩が許されるなら、羽ペンに付けた新しいインクの如き書記がケシャルゴの注意を引いた。ヴァリナ。魔術師ギルド出身だ。実戦的な魔法よりも、オブリビオンの多くの次元に関する学問的な知識の集積のほうに惹かれたからだそうだ。だが、魔法の才覚が劣っているわけではない。彼女は力のある妖術師だ。しかし知識に対する渇望が、入ったばかりの新人の中でも突出した存在にしている。

***

以前言及した有望な新人、ヴァリナがスパイラル・スケインにある網の橋の地図作製を任された。地図作製の技術にはやや改善の必要があるものの、誰もが待ち望んでいたメファーラの領域に関する情報を数多く持ち帰った。それより重要なのは、彼女はスケインを移動するという難問に対応できたことだ(この者は苦戦している)。言うまでもなく、彼女は感銘を与え続けている。

***

研究室を訪れたヴァリナに、地図と歴史的記録の価値における違いについて尋ねられた。ハーモーラーに仕えるためにどの専門技能を用いるか決断するつもりなのだろう。長い時間話し合い、彼女は新しいアイデアを得て研究室を去った。まったく、実に鋭敏な頭脳だ。

***

ケシャルゴはヴァリナに代役を頼んだ。彼女の仕事はすべての分野において優れているし、裂け目の日時に関する専門知識はケシャルゴに匹敵する。この者は彼女にリフトマスターの仕事を引き継がせることを検討してみたが、ナクリのほうが適していた。ここだけの話だが、あの職位では彼女の才能が無駄になることはケシャルゴも認めざるをえない。彼女には裂け目を通じてやってくるものから館を守れるだけの素質と優れた魔法の能力はあるが、あの鋭い頭脳にあんなくだらない仕事をあてがってはもったいない。駄目だ。この者は自分の後任として彼女を育てる。

***

アポクリファで何かが起きた。ヴァリナは向こうで何か不穏なことを見聞きしたらしい。というのは、宝物庫の中を空けに行った彼女が戻ってきて、なぜ介入しないのかとケシャルゴに尋ねたからだ。この者は八分儀を引用して観察という我々の務めについて説いたが、彼女はこの答えが不満だったようだ。今日の彼女は憂鬱そうだ。

***

ヴァリナは介入の件を放置しないだろう。彼女はケシャルゴに出来事の内容を話すことを拒み、この話が出るとこの者を「愚かな老人」と呼ぶようになった。

***

ケシャルゴは噂を耳にしている。我々の消極的な任務に対し、ヴァリナが不満を募らせている。

***

館には新人たちがいる。ヴァリナのような魔術師と同様に戦士たちも。思いがけず彩られた部屋への裂け目が閉じた今、より多くの書記が必要だ。そのことが、この者の頭に重くのしかかっている。警告があまりにも遅く、遍歴の杖は私の手から遠く離れていた。ジリピフとケシャルゴはなすすべもなく裂け目が閉じるのを見ていた。この失態にヴァリナが憤慨するかどうかはわからない。ただ、自分に怒りを感じる。

***

この者が視界に入るとひそひそ話が止まる。何が起きているのかわからないが、このようなことがあると、ほとんど残っていない毛が逆立つ。ヴァリナはさらに口をつぐむようになり、書斎で過ごす時間がかつてないほどに減少した。何が起きているにせよ、原因は彼女だ。ケシャルゴはそう確信している。公衆の面前で私を「愚かな老人」と呼び、他の書記たちに不満を伝えている。彼女は順番がくる前にマグナスタイラスのマントを奪おうとしているのではないかとケシャルゴは恐れている。遍歴の杖を隠さねばならない。彼女が入手を試みる前に。

コヴァン・ジリョンの日記Journal of Kovan Giryon

奴らは来て、彼女を奪っていった。

ルラディ女族長は我らの馬を集め、この山の避難所へと導いた。彼女に触発されて、私たちはこの塔を築いたのだ。そして何より、彼女は地下深くにある我らが遺産を見出した。我らの母は千年も生きられたはずだ。あの方は偽の神々に対抗し、民を取り囲む腐敗から我らを守ってくださるはずだった。

だが災厄、すなわち無から姿を現し、目にも止まらぬ速さで動く侵略者が現れた。我らの一族を切り伏せている悪党どもだ。奴らは私たちが丁重に世話していた召使たちを虐殺した。奴らは一瞬のうちに、栄誉ある我らが女族長から約束された故郷を奪ったのだ。

私たちはあの方がお戻りになると信じている。あのように野蛮な怪物たちが、あれほどの力の持ち主を殺したなどとは決して信じない。あの方こそが、我らを再び栄光へと導いてくださるのだ。

私はまた、災厄が再び現れることも知っている。激しい雨の後、地表へ這い出てくる虫のように、奴らは我らの故郷を破壊に来るだろう。

だからこそ私は準備をしている。

我らの遺産から得た教訓は数多い。私は言葉に記しえないことを見た。本でしか読んだことのないような出来事を。私には理解しがたい規模の悲劇を。そして幻視を得るごとに、私の技術は向上している。

だから災厄よ、来るなら来るがいい。私たちから残酷にも奪い取ろうとする者よ、私はバル・サナーを守ってみせる。女族長がお戻りになった暁には、私の献身を称えてくださるだろう。

ザーン・スケイルコーラーの歴史The History of Zaan the Scalecaller

ドラゴンプリーストの研究家、ジョルバルド・ダヴォー 著

ザーン・スケイルコーラーは短命のドラゴンプリーストで、名も知られていない。彼女は大きな戦いの指揮を執ったこともなければ、強大な敵を征服したこともない。一見しただけでは、彼女が平凡でこれ以上の調査には値しないと思えるだろう。彼女に関する学術書の欠如を考えると、これまでの歴史家たちがこのような見方をしていたのは間違いない。しかしながら、ザーンの物語がこれほど無視されて来た事実こそが、彼女を魅力的な研究対象にしている。

ザーンは彼女のドラゴンロード、強大なるドヴァー・サーヴォクンによって選ばれた時、異例に若かった。サーヴォクンとのつながりは特に強かったと言われている。周知のように、ドラゴンと選ばれたプリーストとの間のつながりが精神的か、魔術的か、単に政治的なものかについては様々な憶測がある。いずれにせよ、ザーンは短時間のうちに強固な関係を築き、彼女の信者たちはこれを大いなる幸運の徴候と捉えた。10年ほどの間、全ては順調だった。

騒ぎが持ち上がったのは、サーヴォクンが自らの聖堂を去った時だ。その理由はおそらく、ザーンその人を除いて誰も知らないだろう。どの記録によっても、この別離の結果としてザーンは、魔術的か心理的なものかは不明だが、次第に鬱へと落ち込んでいった。この鬱は頻繁な隠遁をもたらし、恒常的に閉じこもるまでに至った。

彼女の信者たちは次第に不満を抱くようになり、それは時と共に不信へと変わった。彼らはサーヴォクンに見捨てられたと信じ、今日の我々が神の喪失を見る時のような絶望感でこの件を見た。彼らはスケイルコーラーがその弱さのためにサーヴォクンから見捨てられたのだとして、彼女を責め始めた。この非難に対して、スケイルコーラーは一切反論しなかったと言われている。信者たちはこれによりザーンが非を認めたと捉え、怒りに任せて彼女を殺してしまった。

これがザーンの最大の謎である。信者たちに非難された時、なぜ彼女は自己を弁護しなかったのだろうか?

大部分は憶測だが、私の説はザーンが自らを弁護できなかったのだとするものだ。ドラゴンロードの喪失がもたらした苦悩のために、彼女は話す意志か、話す能力自体を失っていたのだ。とはいえ、これが魔術によってもたらされたのか、単なる心理的トラウマなのかについては、まだ私も確信は持てないでいる。

この歴史的事件を研究することで、ドラゴンプリーストとそのドラゴンロードとのつながりについてのさらなる洞察が得られる可能性があると私は信じている。我々はこのような関係性における初歩的な政治的側面を越えて、その先にあるものを見なければならない。これほど崇拝されていた、この精神的な繋がりとは一体何だろう?スケイルコーラーの助けにより、我々はこの問いに答え始められるだろう。

スキーヴァトンの改造と運用Skeevaton Modification and Operation

見習いザノン 著

本論文の成果は370回にわたってスキーヴァトン・ファブリカントの解体と再構成を徹底的に

〈ここから7枚分の長ったらしい導入は省いた。金属板に文字を彫る時は簡潔に書くべきだろうに〉

標準機能

認識装置:取り外されていない限り、全てのスキーヴァトンは初歩的な音響および視覚機器よりも洗練された感覚機器を所持している。望遠ロッドに取り付けられた認識装置は検知魔法の波動を放出し、決められた範囲内の関係する物体を調査し探索する。

〈標準デザインの中では、これが唯一記載に値する装置だった。匂い分析装置に興味があるなら別だが〉

スキーヴァトンの改造

スキーヴァトンはクロックワーク・シティならどこにでもおり、極度に危険な環境にさえ見られる。細工師はファブリカントのサイズの小ささという弱点を、攻撃および防御に活用できる装置を付けることで補ってきた。

ギアの変速:この中で最もありふれた改造は、一時的にスキーヴァトンの速度を向上させる付随的な駆動ギアである。スキーヴァトンが稼働中の装置の内部を移動する必要がある時には、間違いなく役に立つ。

〈簡単でいいが、重さが難点になるだろう〉

エネルギー吸収:スキーヴァトンは場合によって小型のマジカ蓄積装置を装備しており、これにより一時的に、充填された魂石なしでもエネルギーを貯蔵、転送できる。実践的な用途は理論上無限にあるが、強力な魔法の充填は防御に使うこともできる。

エネルギー放出:完全に充填された小型マジカ蓄積装置は緊急の場合、一時的に蓄積されたエネルギーを解放し、全方位に純粋な破壊魔法を放出できる。この衝撃は稼働中のコンストラクトに過負荷をかけやすいので、他に手段がない場合か、安全な条件下でのみ使用すべきである。

展開可能な障壁:シャーシを強化したスキーヴァトンのほうが一般的ではあるが、発見した中でそれを上回る防御効果を持つのが、広範囲に投射可能な展開型障壁である。これはスキーヴァトン自身を守るだけでなく、他の無防備な物体も保護できる。

雷撃シャーシ:いたずら好きの、あるいは破壊工作志願者たちは、ファブリカントの外装を通して強力な破壊的雷撃を生成する危険な改造を施している。この電撃は生物にとって苦痛であり、アニムンクリを黒焦げにしてしまう。

回復放射器:大抵のスキーヴァトンは物理的な修理器具を装備しているが、ある優れたモデルはスキーヴァトンの周囲に回復魔法のフィールドを生成するよう改造されている。これは損傷した金属を修復し、残存熱を取り除き、エネルギー放出を安定させるなど、円滑な動作を維持するための処理を行う。

〈改造は素晴らしいが、スキーヴァトン1体の容量に全てを組み込むのは不可能だ。特定の役割に適したものを選ぶ必要がありそうだ〉

超身体的操作:私がリバースエンジニアリングを行ったスキーヴァトンの大半は単純な、あるいは決まった任務を自動的に実行するものだったたが、個人が直接ファブリカントを操作できるよう手が加えられているものにもいくつか出会った。この手の改造には人形師の糸にも似た邪魔そうなワイヤーから、携帯用の音波放出器や、ファブリカントそのものの中に入れる超身体的な「与圧チャンバー」まであった!この改造されたドゥエマーの装置は驚くべきことに存在を純粋な境界エネルギーに変換し、気密性の内室に収める。ファブリカントに接続されれば、そこを占めている者の知性はファブリカントを自分の延長として操作できる。言うまでもなく、これによりかつてないほど正確な操作が可能になるが、巨大なリスクを抱えてもいる。与圧チャンバーが使用されている間にスキーヴァトンが壊滅的な損傷を受けると、ほぼ確実に使用者を死なせてしまうのだ。そもそも再び実体化できるかどうかも分からない。

〈超自然的なものを入れるために与圧チャンバーを使うとは考えもしなかったが、驚くべきことではない。音波装置はしばしば、物質と非物質の境界を曖昧にする。これにはいくつかの使い道が考えられそうだ〉

スコーリオンを増やせMore Scorions

スコーリオンの復元は今でも最優先事項だ。

あれが力尽きる以上のスピードで替えを作れなければ、主が求める成果を出すことはできない。”変異”の仕事をしていない者は、疲労で倒れるまで召喚の儀式を続けるのだ。デイゴン公のために命を捧げよ。

そうすればあの方は、お前たちの破壊への献身が本物であると知るだろう。

セレーンの観察Observations on the Changeling

セレーンの肉体は死んだが、私の解剖にも彼女の不満を声に出す能力にも問題はない。彼女の精神体はムンダスに残る肉体から解放された他の魂と似ている。さらに調査するため精神体をわずかに刈り取ったが、死後間もないセレーンの忍耐を試すつもりはない。

* * *
セレーンは野生動物と同じように拘束を引っ張る。壊れるまで抵抗して大声を出す。合理的な生物がすべきではない行動だ。これにより、彼女の姿はエルフでも実際は違うことを再確認させられる。彼女が疲れ果てたら、この形態における変異性の試験を続けられる。

* * *
場所を移さなくてはならない。このひどい森は湿気、カビ、菌が多い。残されたセレーンの遺体を保存することは不可能なようだ。南の荒野は湿気がましだろうし、セレーンとエーテルの繋がりを保持できるほどにはヴァレンウッドに近いだろう。

* * *
腐敗により、セレーンの体から採れた試薬の半分が駄目になった。今後の研究課題が山積みになっていなければ狼狽していたかもしれない。彼女の死体が倒されたデイドラと同じように再生するという理論が正しければ、大きな失敗になることはないだろう。

* * *
予想通り、セレーンは体を切断されても長期的には問題ないようだ。精神体の喪失は一時的に魂を損傷するが、全体の構成に影響は残らない。残念ながら、セレーンの肉体についても同様かどうか試す機会はなかった。

* * *
今日のセレーンは弱っている。回復力を過大評価したようだ。死体から採った素材に注力し、力の回復を待つ。ただし、回復させすぎることはない

テランのメモTerran’s Notes

見事な柱だ。強い光によって「アカト」と文字が焼き付けられている。

偽物がそこで躍る?揺らす?

様々な歩き方?歩くことが一体どう関係しているんだ?

歩き方の種類に分かれる。8種しかないのか?

偽物が塔で踊らなくてはならない、音符を鳴らさなくてはならない。時間はそうしてはいけない。

歌にはyour nameが必要だ。

まったく意味が分からない!

テンマール渓谷の観察Observations on Tenmar Valley

この地域は思っていたより人がいない。以前はある程度のカジートが居住していたことを示す遺跡はあるが、この渓谷に長く定住者がいなかったことは明らかだ。ここなら何も邪魔されず実験ができる。

* * *
山頂の辺りに花が咲き誇っているようだ。灰や緑に明るい青が混ざっている。この時期に開花するのは珍しいが、標高の関係だろうか。研究所は洞窟のかなり奥にあるので、気が散ることはない。

* * *
腐敗臭が風に運ばれてくる。研究所が腐敗臭で満たされつつあり、セレーンさえも蝕んでいるようだ。

* * *
この辺りに最近死んだようなものは見つからなかったが、相変わらず腐敗臭が周辺に広がっている。山頂から流れ込んでくるようだが、かつてないほど山頂に鮮やかな青が見える。ニルンで最も悪臭を放つ花でなければ、あれが原因だとは考えられない。

* * *
原因はその花だった。咲き誇る野の花と思われたが、まったく別物らしい。先ほど見た獣を参考にするなら、侵襲性の虫の群れだろうか。青みを帯びた雲が鳥の群れを飲み込むと、鳥たちは地上へ真っ逆さまに落ちた。

* * *
ようやくセレーンが自発的に話すようになった。彼女はこの場所に病が広がっていると感じている。何ということだ。ここに残ればセレーンに危険が及ぶ可能性もあるが、数ヶ月分の研究を虫のために放棄することは考えられない。この先の行動を慎重に検討しなくては。

ドラゴンは放っておけLeave the Dragons Where they Lie

お前の言うとおり、私もあのみじめなサーロトナックスを抹殺したいとは思っている。だが、それは後先を考えない身勝手な衝動だ。そんなことに時間を使えば、我々の責務は妨げられる。もう我々はドラゴンガードではない。あのマントは遠い昔に捨て去った。ドラゴン殺しは、もう我々の目標ではない。もしそうなら、この数百年の間に奴らを隠れ場所から追い出して絶滅させただろう。それは他の者の仕事だ。彼らに任せておけばいい。我々は玉座に注力する。

お前が例のクランマザーを頼ったおかげで、我々は大きな危険に晒されている。吸血鬼の行為に諸手を挙げて賛同する者は信じるな。ましてドラゴンの力を得る?それは幻想だ、グランドウルフ。お前の関与を正当化するための言い訳さ。任務がドラゴン殺しほど華やかでないことは分かっている。しかし虚栄に走るな。我々がここに残っている理由を忘れるべきではない。

私はアネクイナへ2日後に発つ。そちらへ到着する前に、この言葉を胸に刻んでくれ。

R

ドラノスの日記Dranos’s Diary

元の仲間のため、私は憤怒を装った。どうしてシルケンリングが領域へ踏み込むのを傍観して許したのだ。我々の契約を盗み、密偵を殺されるような弱みを見せるとは。私は言葉で火をつけ、ナイフで燃料を提供した。連中が気付くことはなかった。怠けた、傲慢な愚か者め。

レースの女公は私の偽装を喜ばれている。モラグ・トングは影を追っているが、本当の脅威には全く気付くことがない。私は努力によって、シルケンリングに招かれるようになった。これにより、私はメファーラに単なる称賛を述べるだけでなく、自分の手で彼女に奉仕できるのだ。デイドラの祝福を受けることに比べれば、金の約束など何だろうか?

女公は私が紡ぎ手の祝福を受ける前に、最後に一つのことを求めた。献身の捧げ物。メファーラに似合う犠牲だ。他の愚か者は急いで飛び出し、彼女の名の下にナイフを振るう。私は違う。これには慎重さが必要だ。自己紹介は完璧でなくてはならない。

私は絆を求めたことはない。どうして自分の心を縛って、敵が利用できる武器を与えるのだ?しかし、それでも私がこうした拘束を甘受し、錠を閉じられたことはあった。ニリとのことだ。おそらく、今度は私が絆を提供するべきだろう。

ニリは私の前進に備えていなかった。それも不思議ではない。私は自分の意志を明らかにしていた。私は彼女に変心を疑わせる時間を与えなかった。彼女はまだ私を愛していたからだ。ニリの疑いは私の手によって消え失せ、彼女はメファーラの網へと自ら落ちて行った。

私は夜の度にニリへ嘘を吹き込んだ。モラグ・トングについて疑いを植え付けた。彼らの許可なく動くべきだと説得した。私は今晩、彼女をシルケンリングに導く。きっと完璧になるだろう。

短剣が彼女の心臓を貫いた時の、ニリの顔は素晴らしかった。最後に苦しむ瞬間に、隠していた感情が全て現れたかのようだった。レースの女公は私の犠牲に大きな感銘を受け、私は彼女の目に留まった。当然だ。

さあ、影のゆりかごに行こう。メファーラの真の力を味わうために。私の献身への報酬はきっと素晴らしいだろう。

これは正しい行動だった。今までになく確信している。あらゆる疑いは、レースの女公と会った時に消え失せた。彼女が与えてくれた力は、モロウウィンドの愚か者が想像もできないようなものだ。多くの利点は、定命の者の枷を捨て、より高次の目的を受け入れることによってもたらされた。官僚主義と偽神への借りによって堕落する前に、モラグ・トングは本来こうなるべきだったのだ。

ドルイド・アンワスの記録Logbook of Druid Anwas

1日目

私、カソレイン王の忠実なる僕アンワスは、ハイロックを去る我らの旅を記録することを誓った。私たちは故郷にも歴史にも永久に残るような民ではないが、この旅は栄誉に値すると信じている。

私たちは新しい自治領を築くことを目指している。残酷なよそ者の邪魔を受けることなくドルイドが繁栄し、信仰を実践できる場所を。我らが王は海を越える船旅を導き、私たちは心に喜びをたたえて王に従う。恐れてはいない。むしろ希望に満ちている。

出立前、カソレイン王は私たちの前から姿を消した。最初、多くの者が置き去りにされたと思い不安になった。しかし私は違った。王は決して私たちを見捨てない。外出したのは私たちのためを考えてのことだと信じた。

王がついに帰還なされた時、私は自分が動じなかったことに大きな誇りを感じた。王に直接問われることはなかったが、私が信じていたことは伝わっていると思う。

3日目

海に出てたったの数日だが、士気はまだ高い。私たちは毎朝集い、イフレに祈りを捧げる。我らの旅路を導く強い風を、そして腹を満たすための魚を求める祈りだ。今のところ、イフレは私たちの願いを叶えてくれている。

今日の夜の夕食中、王の小間使いベトリスと相席する幸運が巡った。彼女はおそらく私と話している時、少々ホットワインを飲みすぎていたが、それが笑顔をより美しくしていたので気にならなかった。彼女はふと、出航前に不在だった王に同行していたと口を滑らせた。グレナンブラのウィルドを訪ねていたらしい。最初、私は彼女の話を疑った。ありそうにないことだと思ったからだ。彼女は私が不信を示したことに少し傷ついて、語気を強めた。

私はできるだけ穏やかに、その会合の目的を聞きだそうとした。王の行動について知る権利など私にはなかったが、好奇心に負けてしまったことが悔やまれる。ベトリスは会合の理由についてはほとんど知らないと言ったが、それは本当だろう。王はいつも、ただ恩寵があったと答えるだけだ。

出過ぎた質問をしたのに気づいた私は、ワインを注ぎ足し、潮風の匂いに話題を移した。

15日目

アビシアンの航海は続き、風は基本的に私たちを南に運んでいった。私たちの船は他の船から段々離れていったが、物資はまだ豊富だった。海上で過ごす時間が長くなることを予期して、必要になりそうなものすべてを貯蔵しておいたのが役に立った。

あの最初の夕食以来、私はベトリスと多くの時間を過ごすようになった。彼女は素敵な人だ。この記録の目的とは無関係なので友情については細かく記さないが、私たち全員が互いに対して感じている親愛の情の一例として伝えておきたい。

いや、全員と言ったが、ベトリスは私たちのある仲間について懸念を表明した。サエルだ。彼はイフレの命の祝福の終焉を専門とした、闇の技を研究している。これはまっとうな研究領域であり、多くの信者がこの道を進んでいる。しかし、サエルにはどこか不安を感じさせるものがある。彼は情報に飢えているように見える。王のため、彼には目を配っておくべきだろう。

32日目

風に運ばれて私たちはとても小さな孤島へたどり着いた。船団の痕跡は見当たらない。私たちは手短に探索と物資集めを行ってから、再び出航することにした。島では、ドワーフが作った入口があった。私たちの民はドワーフとあまり接触したことがない。生き方についての考え方が根本的に違うので、出会う機会がなかったのだ。私自身もドワーフを見たことはない。だが、彼らの技は見ればわかる。

これを書いている間も、サエルは扉を開けるよう主張しており、かなり強硬なようだ。正直に言うと不安だ。ベトリスがここに来てくれてよかった。彼女がいると心が落ち着く。それにもし何かあっても、彼女は杖の扱いに長けている。

?日目。今が何日目かもわからない。

私たちはサエルの要請に折れて、ドワーフの扉を開けた。扉は金属と石で作られた、曲がりくねった迷路のような洞窟へ通じていた。中には誰もいなかったが、アルケインの力が唸っていた。

サエルは先を走っていった。彼は私に見えない何かを追っているかのようだった。まるで奥へと招かれているみたいだ。私たちは隠された危険を警戒しながらも、彼を追いかけた。だが暗闇の中で見失ってしまった。彼の呼び声が時折聞こえてきた。歓喜の叫びか、あるいは怒りの声か。意味をなさない叫びだった。

ベトリスと私はグループの残りの者たちから離れてしまった。ドワーフの機械の唸る音の奥に、私たちはどちらも甲高いこだまを聞いた。サエルに違いなかった。

私たちはこっちに戻ってこいと呼びかけた。広間をさまよい、海底を眺めていると、かつて仲間だったものの姿が目に入った。彼は変化していた。深淵で何をしたのか、肉体が取り除かれ、霊魂だけが残されたのだ。恐ろしい光景だった。これ以上は考えるのも、書き記すのも気が進まない。

背後からサエルの声が近づいてきたため、私たちは逃げた。私たちはずっとこのおぞましい場所を出るため動く床を探していたのだが、迷子になってしまった。歩き回るほど、声は近くなっていった。もう、このトンネルに隠れるしかない。休まなくてはならない。

なぜイフレは私たちをこんな恐るべき場所へと導いたのか、自問し続けている。これは試練なのだろうか?このような形で私たちを試すのは残酷じゃないか?仲間をあのような怪物に変身させ、私たちの心に、私が愛する女性の心に恐怖を打ち込むとは。

だが、私はまだ信じている。王はこの邪悪から私たちを救ってくださるだろう。他の船が戻ってきて私たちを見つけてくれるはずだ。もう少しで私たちは緑に輝く新たな故郷を目にするのだ。ただ――

ドルイド・ベトリスの記録Logbook of Druid Betrys

1日目

私、ガレンのドルイドにしてカソレイン王に従う者ベトリスは、新たな故郷を探す私たちの旅を記録することをここに誓う。私はアンワスにこの約束をしたが、彼も私たちの移住と、ドルイドの新たな地を発見する物語を保存することに意味があると信じていた。

私は一時、王の召使として仕えていた。この呪われた島に上陸した今、王は別の者を召使にお選びになったのだろう。仕方ない。遠くからドルイド王のためにできることはあまりないのだから。

文章を書くのは苦手だ。私はこういうことをした経験があまりない。私の観察はアンワスが書いたものほど面白くないかもしれないが、できるだけ努力するつもりだ。

それではハイロックから出航した日ではなく、今日から記録を始めよう。アンワスがこの任務を果たせなくなった日。つまり、船団に追いつくため再び出航する準備が整った日だ。

8日目

定期的に記入できなくて残念だ。前にも言ったけれど、物を書くのには慣れていない。私たちはあの恐ろしい島を出た後、船団の航路を追って南西へ向けて出港した。海は青く、雲は白く穏やかだ。少し前に降った雨が暑さを和らげてくれて助かった。他の者たちは集まってこの祝福をイフレに感謝したが、私はしなかった。

食料の備蓄にはかなり余裕がある。士気を維持する助けになるだろう。私たちはもう月が一巡する以上の時間を海上で過ごしていて、多くの者は上陸を待ちわびている。私も同じ気持ちだ。この別れは、新しい故郷に到着した時の喜びを高めるための試練なのかもしれない。

22日目

海はまだ青い。嵐にぶつかり、私たちの船は大きく揺られた。しかし損害はなく、乗船者は全員生き延びた。今はそれ以上のことを望めない。

37日目

星を利用して位置を見定める方法を試してみた。船長とその船員が航路を外れないためにどうしているかをよく見て、それを真似している。彼らからはいくつかのことを学んだし、それには感謝している。いつか迷子になって、助かるために航路を定める必要があるかもしれない。星に目を配っておくのが最善だ。

49日目

随分長い間海にいたが、ついに上陸した。ここの草が肌に触れる感覚は優しく、気に入った。特に内陸を歩いていると、空気が甘く感じられる。私たちは船団の残りを発見したが、すでに錨を下ろして野営していた。カソレイン王は上の崖から見下ろしている。離れたところから、民の活動を観察なさっているのだ。

私も自分から行動しようと思う。島のどこか別の場所で野営したい。仲間たちが気にくわないというのではないが、ある仲間をとても残念に思っているので、孤独に彼のことを考えたい。この新しい故郷で、私の民はこれまで考えられなかったほどの繁栄が可能になったが、犠牲もあった。私が生きている限り、彼らには感謝の念を捧げ続けたい。

ナ・ケッシュの日記Na-Kesh’s Journal

樹液。殻の薄い愚か者どもはそう呼ぶ。そのような物質がニルンに汚された樹脂と比べられるかのように。いいや。それは樹液以上のものだ。

ある学者が、強きチュダンへ食わせる前に「琥珀のプラズム」と呼んでいた。オブリビオンの混沌とした基準が、傷口からの血のように我々のヒストを通じてムンダスに流れ込んだものらしい。あの乾いた舌と態度と来たら。私よりもヒストの秘密を知っている者がいると思うのか!

サクスリールが最初の鋤を持ち上げる前から、プラズムはツォノ・クヒルの根に貯まっている。しかし、その秘密を見つけたのは私だけだ。これを飲むか、浴びるだけでサクスリールはおかしくなる。しかし錬金術の研究とヒストの導きによって、私はその力を制御できるようになった。これは簡単なことではない。この基準は混沌のものだ。その本質はシシスを求めている。しかし、その指令には耳を塞がねばならない。彼を父と呼ぶサクスリールは、泥の小屋で衰弱し、木の器から古い魚を食べている。ジット・ザートは秩序を求める声を聴き、輝ける都市へと永遠に住むだろう!

適切に操作されれば、琥珀のプラズムは価値あるサクスリールに素晴らしい速度と力を与える。私がその効果の証拠だ。すぐに私の醸造薬は、全てのジット・ザートに配られるだろう。その時、マザッタンは帝都にも並ぶ!根の民が初めてブラック・マーシュを支配するのだ。そして、全タムリエルも!

ナシーン・モーティウの研究その1Research of Nathien Mortieu, Vol. 1

この聖堂は素晴らしい場所だと分かった。ここはより寒いため、混合剤の調合には最適と思われる。しかも尋問する卑劣な衛兵もいない。無知から来る嫌悪感を剥き出しにして、我らの祝福を見下す目はないのだ。多くの者は私の決断に疑問を呈したが、連中は近視眼的だった。私のように、その先を見なかったのだ。

洞窟のオーガの研究の成果には…確かに副作用があった。奴らは比較的簡単に感染した。予測しやすい行動パターンと鈍い知性のおかげで、素晴らしい実験材料になる。我々は疫病が物理的に表出する初期の徴候を確認したのだ。いいぞ、これはいい。素晴らしい、実に素晴らしい。この汚らわしい怪物も、私の導きによって美しくなった。ああ、こいつらは何と幸運なのだろう。このような愛すべき疫病に抱かれる、最初の者になったのだから。

だが、そこで全てが失敗してしまった!奴らは失敗だ。失敗だったのだ!奴らはとても疫病とは思えない行動を見せ始めたのだ。あの嫌らしくて愚かな怪物どもは死のうともしない!奴らはただ…怒るばかりだった。より強くなり、ひたすら凶暴になった!奴らは私の研究者たちを攻撃し始めた。昨晩だけで相当な人数を失ったと思う。これから予定どおりに進めればいいが、すでにかなりの遅れが見込まれそうだ。

この研究を放棄するのは心苦しいが、このオーガたちは野獣と化してしまったと結論せざるを得ない。研究を続けることを望むならば、我々にはもっと人間の被験者が必要だ。この山が隔離された場所であることを考えると、どうしても通常の手順を踏む時間がない。多くの者は巨人が利用できるかもしれないと提案した。危険だ。危険きわまる。だが死人の出ない発見などあるだろうか?

個人的なことだが、私のもう片方の耳がついに腐り落ちた。まだもう少しかかりそうだが、現在の状態には期待が持てる。私は日々美しく、より完璧になっていく。より祝福されていくのだ。

ナシーン・モーティウの研究その2Research of Nathien Mortieu, Vol. 2

最新の進展のおかげで興奮して、どうにも震えが止まらない。我らが愛すべき疫病は見事、とても見事に結実した。そう、今やこの病気はほぼ不治と言ってもいいくらいだ!初期は症状の遅延を作り出すのが難しかった。被験者の消耗が早すぎ、要するに拡散するための時間がなかったのだ。我々は彼らを歩き回らせ、我らが祝福をできる限り多くの人々に広めたい。何と…崇高なことか。

そして実際に症状が出た時には、いやはや…とても書き記せるものではない。あの汁気たっぷりの膿や、広がる発疹について詩のように語ることはできる。腫れ物は膨れ上がって、ほとんど半透明になる。あの愛らしい、病的な緑色の影を見るだけでも、私の体全体が喜びでゾクゾクする。これほど美しいものを見たことがあるか?私はいつも自分の仕事に誇りを持ってきたが、これはもう愛情に近い。

巨人はオーガと同じく有用だと分かったが、奴らの反応はやはり…間違っている!奴らは私の可哀想な作品を何か別の、予測不能なものに変えてしまった。蛮族どもめ!オーガと同じように、疫病は奴らを強靭にし、攻撃性を高めてしまう。人間性が足りないのだ。おかしい!奴らの大部分は今頃もう死んでいて当然なのだが、かつてないほど頑健になっている。病気になった気分だ。良くない意味で!

我々はすでに多くの研究者を失っている。これ以上失うことはできん。巨人の女族長はとりわけ攻撃的になっている。実に愛らしくなってきたところだというのに、残念だ。暇な時間にスケッチを描きたいと思っていたのだが。まあ、発見への道のりはいつも足場が悪いものだ。目標に辿りつくためには、犠牲が不可避というものだ。

目標といえば…おお、そうだ、そうだとも!彼女が目覚めつつある。骨で感じるのだ。まったく、ひどいお寝坊さんだ。だが彼女の音が聞こえる。おお、聞こえるとも!彼女は我らが栄光の計画と、我らが新しい時代を導くことを私の耳に囁いている。きっと実現するだろう。今は彼女の安全を確保しなければ。そして、彼女は導き手となる。

ついに彼女と会う時のために、私の外見を最高にしておきたい。私の鼻は腐り始めているが、進行が遅い。自分で切り落としたくなるくらいだ!だが、いかん。それはだめだ。それではおかしくなるだけだ。全てに辛抱強くしなければ。我が祝福の美はいずれやって来るだろう。

ナシーン・モーティウの研究その3Research of Nathien Mortieu, Vol. 3

奴らは我々を笑った。馬鹿にしたのだ。母でさえ私を理解してはくれなかった。母は家族の伝統を継ぐことを求めていた。「尊敬すべき教団に入りなさい」と言ったものだ。だがヴァルミーナは混沌の嘘にすぎない。我が主は完璧な真理の秩序だ。なぜ奴らは我々の話を聞かない?奴らは決して耳を傾けない!だが今では、奴らも我々に耳を貸さざるを得ないだろう。奴らは全員、ペライトの名を心に刻むのだ。

我らが祝福の準備はもう整った。祝福は拡散する。全てを飲み込む疫病が、この世界を死体で埋め尽くすだろう。この嫌らしく不完全な、秩序も敬意もない世界を。全ては我が主、あの方の秩序に属するようになる。奴らの笑い声は咳に埋もれ、溜まった胆汁が無礼な言葉を窒息させるだろう。奴らは美しく、完璧になる。そして奴らは自分の汚物に倒れて死ぬ。その光景を想像しただけで、心が躍るようだ。

仲間の研究者たちに、我々が作り出したこの祝福を受けることを許可し始めた。おお、私と同様、彼らも激しく求めていたのだ。だが気をつけねばならない。気分に流されてしまえば、この作戦全体が崩壊してしまうかもしれん。そんなことを許すわけにはいかない。我々は真の自然の秩序に、これほど近づいているのだから。

まずは小さく始めよう。この近くに村がある。非常に小さく、我々の需要に合致している。まず彼らを消し、噂を広めよう。奴らの心に恐怖を植えつけるのだ。我が作品の名はタムリエルの全ての民の口にのぼるだろう。その上で、奴らの舌が腐り落ちるようにする。

だがあの女は…おお、なんと気難しい、嫌らしい女だ。彼女は我々の実験や計画のことなどまるで気にも留めていない。ただ私を見つめるのだ。あの女は何を考えている?彼女の顔は見えない。あの見苦しい仮面を取ろうとしないからだ。まだ以前の主への愛着があるのではなかろうな。嫌らしい、嫌らしい!

もちろん、私はペライト公の意志を疑わない!そんなことはしない!あの方は私の忠誠心をご存じだ。忠実だった。私はあの方の秩序づけられた世界の幻視を見て、魅了されたのだ。腐って輝く死体で埋め尽くされた地。新しい時代が来る、新しい秩序が来るのだ!全ては我が主の旗の元。母は私を追い出した日を後悔するだろう。

記録を続けたいが、中指が取れて記述が難しくなってきた。残念ながらこれが最後の記述になりそうだが、それが何だろう?計画が失敗するはずはない。疫病のデイドラ公の意志に打ち勝てる者などいない!そして皆が、あのお方の祝福を知るだろう。

ニコラード・リアの日記Nicolard Lia’s Journal

運命とは奇妙なものだ。ある者の運命が、定命の者からみれば何の前触れや理由もないような状況で、突如として変わってしまうことが多々ある。だがこの場所に私を導いた一連の出来事は、何らかの知性がある存在が作り上げたものとしか思えない。多くの偉大な発見と同じように、これも偶然によって引き起こされた。ジュリアノスは悪戯が好きなのだろう。

私のクラグローンへの旅は遅れに遅れ、降霜の月になってようやく出発できた。賢い者であれば翌年に延期していただろうが、立ち往生があまりに長く、悪意に悩まされた経験は以前にもあった。最初の数日間の夜は、燃えさかる決意のおかげで凍えることもなくジェラール山脈を登り続けられた。だが逃げ帰れなくなるほど遠くまでやって来た時、その寒さは腕の良い追いはぎのように、私から決意を奪い取っていった。

選択肢は残っていなかった。勇気を出して近くにある乾いた洞窟に入り、そこが熊やトロールの住処ではないことを祈るしかなかった。そして岩の中へと続く、天然の洞窟を発見したのである。そのゴツゴツとした岩の中から響いてきた恐ろしい遠吠えに思わず飛び上がりそうになったが、それはただの風の音だった。その風に服を引っ張られた私は、その暗闇へと引きずり込まれた。好奇心を刺激された私は、寝床に向いた一番居心地の良い花崗岩の調査をいったん打ち切り、その先に何があるのか調べてみることにした。

そこで私が見たものは、山々に囲まれ、世間から隔離された渓谷だった。その一番奥と思われる場所には熊がいて、私はその熊を眠りから目覚めさせるという大失敗を犯してしまった。私は疲れ切っていたが、のろまな獣の怒りによって、寒さにもう少し長く立ち向かう勇気を奮い起こさせられた。山道沿いの奥地とは違い、身を切るような寒さにもかかわらず、そこでは自然界の生物がまだ生に執着していた。

その地が寒さに耐えていたとしても、身を隠せる場所がなければ寒さにやられる程度には寒かった。だから私は寝床に適した狭い場所を探した。何度ももうダメだと思った。この極寒の地で死の魔法をかけられているようだったが、忍耐はどうにか報われた。渓谷の突き当たりにある山には、削り出されたような古い遺跡が建っていたのだ。その中に潜む危険を考える余裕もなかった私は、最後の力を振り絞って巨大な石の扉を押し開け、その場に倒れ込んだ。暖かい風に迎え入れられた記憶を最後に、私は気を失った。

私はうつ伏せになったまま目を覚ました。だが顔の下には冷たい石でなく、温かい大地と生い茂る草花があった。最初は服が湿っていたのは解けた氷のせいかと思ったが、服が肌にくっついていたのは私の汗のせいだった。その遺跡はどうやら、熔岩の流れている洞窟の中に作られていたようだ。活力に溢れる植物が存在しているのは、そこが熱帯気候の土地だからだと自分に言い聞かせようとしたが、その言い訳も調べていくうちに破綻してしまった。この遺跡が理由なのか、もしくはこの洞窟にそういった特性があるためにこの遺跡が建てられたのかは分からないが、どうやらここには植物を異常成長させる不思議な力があるようだ。

寒さによって死ぬ可能性がなくなった私は、この洞窟の入口に拠点を構え、遺跡の外面を隅々まで調べることにした。これはネードの民が作ったものだ。その程度は見当がつく、だがシロディールで見られる他の建築物よりも洗練されていない。アレッシア時代以前のものだ。数ヶ月クラグローンで調査しても、これほどのものは見つけられないだろう。だが私は、探検を始めてからわずか数日で、文字どおりの偶然によりここを見つけた。運命とは本当に奇妙なものだ。

ニコラードの自分用メモNicolard’s Note to Self

この遺跡では寝る場所に気を付けなければならない。今日の夜、仕事中に居眠りをしたあと、恐怖のあまり命を落としそうになった。大蛇に締めつけられているような感覚がして、目を覚ました後にのたうち回りながら、崖から飛び降りそうになった。実は、寝ている最中に蔓が絡まっただけだった。

夢の中で何か楽しいことに熱中していたようだ。あの酷い目覚めのあとで、何だったのかを忘れてしまったのは残念だ。

ニサーズダの日記Nisaazda’s Journal

これ以上望むべくもない恩恵に対し、サンジーンに感謝を!この者はドラゴンの血を最後の一滴まであなたの名で飲み干すだろう。一滴たりとも無駄にはしない。この機会を逃さず賢く血を利用しなくてはならないが、残された時間は少ない。グランドウルフはいずれ報酬の催促に来るだろう。

* * *
ニサーズダの願いには十分な根拠があり、ここまでは慎重に対処できている。ドラゴンの血を採った小瓶は今も温かい。マジカは溢れんばかりだ。そのためエキスの力が十分に測れない。もしもこの口からよだれが垂れるなら、この獣の血を飲むと想像するだけで喉が潤うだろう。しかしアネクイナの灼熱の砂漠の香辛料に含まれるような、血の激しさによって踏みとどまっている。忍耐が必要だ。

* * *
レノルドめ、ネズミのようにコソコソと。奴の手紙がグランドウルフに届いた経緯は不明だが、どうやらかなり真相に近づいているようだ。ニサーズダは、あの老いぼれがこの計画の可能性に気づいていないのだと〈貪る者〉に請け合った。奴がこれで諦めることはないだろう。ニサーズダは今すぐ行動に移るべきだ。

* * *
ニサーズダの調合薬は、この素材の範囲ではほぼ完璧に近いものだ。希少な血の小瓶をすべて使った。あらゆる儀式も執り行った。知る限りの供物を血の猫に捧げた。ドラゴンの血を味わう準備は万端だ。自分が慎重過ぎると思いたいが、たとえ〈貪る者〉が貪られようとも、この努力は無駄にならないはずだ。

ネボルへの手紙Letter to Nabor

親愛なるネボルへ

あなたは多分、私を憎んでいるでしょう。私があなたに与えた運命を憎んでいるはずよ。それをとやかく言うつもりはない。でも私がなぜこんなことをしているのか、説明すべきでしょう。私が理由もなく苦しめているわけではないことを知ってほしい。これであなたの心が落ち着くと願いたい。

実を言うと、私にはあなたの持っているものが必要なの。正確に言うと、命と活力が。パイアウォッチから入手すれば、我々の存在に気づかれてしまう。ホストの骨にも活力が残っていないから無理。だから残るはあなたよ、ネボル。強くて丈夫な、頼れるネボル。

さて、あなたは飢えのようなものを経験するかもしれない。腹とは違う場所から来る、説明不能の渇望。正直に言いましょう。飢えは増大し続け、あなたは耐えがたくなるでしょう。つまり、私があなたから奪ったものを取り戻さねばならない。あなたは近くに寄ってくる、あらゆる生き物から力を奪うでしょう。私は気にしない。でも、私は仕事が完了するまで、あなたから必要なものを奪い続けると知ってほしい。我が創造が完成し、この広間を歩き回るまでは。

この獣、我らの子供は闇の技に新たな意味をもたらすでしょう。どんなアンデッドも、この栄光には比べられない。あなたはこの偉業において、不可欠な役割を果たすの。飢えの苦しみと苦痛が耐えがたくなった時は、そのことを考えて。

敬具
ヴォリア

ネリル・ベルヴァインの日記Journal of Nerile Belvayn

私たちの新しい家で一番気に入っているのは、太陽を防ぐ涼しい壁だ。せりだした岩は奥まった谷間中に影を作っており、その光景は荘厳だが、温かみもある。これだけ十分な防壁があれば、日中の暑熱もほとんど私の皮膚まで届かない。

女族長は石の囁きが聞こえると言っていた。彼女の信念には、私を信じさせる何かがある。それに、彼女は私たちをここまで導いてくれたのだ。危険な賭けだとは思うが、あの人のことは密かに信用している。彼女の演説には時として、より大きな精神と交信しているかのような響きがある。

私たちの多く、いやもしかすると全員が、故郷で起きた政治的駆け引きには反対だった。自らを神と称する者たちを崇拝するなど、納得がいかない。だが私は遊牧民と化して我らが家の伝統を捨てることも望まない。だからこの動乱の時代に安全と孤立を約束してくれるのは、私たちの多くにとって渡りに船だった。ルラディ女族長はその約束を果たしたのだ。

井戸のために掘削している時、何かを見つけた。物体だが、固形物ではない。周囲には空気と光が非現実的な形で渦を巻いていた。女族長は喜びに我を忘れているようだ。これが我らの遺産だと言う。

あれが地下にあったことを彼女は知っていたのだと思う。彼女は街の拡張を監督していたが、常にどこか上の空だった。しかしある日、彼女はある特定の場所を掘るよう強く言い張った。彼女が選んだ地点からずれることは許されなかった。そして掘ってみると、あの物体があったのだ。

一体あれには、どんな力が込められているのだろう。

ノルゴルゴルの日記Norgorgol’s Journal

ついに運が巡ってきた!要塞にこれ以上適した場所はない。確かに前回も同じことを言ったが、ここは隙間風の入る兵舎やボロボロのシーツがある壊れかけの古い砦じゃない。この遺跡は、まさに追いはぎの楽園だ。

ここは人里離れた場所だ。洞窟をいくつか通り抜けた先にあり、山道からは渓谷が見えない。ノルドの兵士が偵察に来ることはないし、気付かれることを恐れてキャンプの火に気を使うこともない。そもそも、料理以外では火を使う必要がない。料理にさえ必要ないかもしれない。この地域には熔岩が流れていて、洞窟と遺跡の中を快適な温度に保ってくれている。草が生い茂っているのもそのせいだろう。肩幅と同じぐらい太い蔓があることも、この標高にこれだけ植物があることも、誰にも想像できないだろう。

状況がまずくなって人目を避ける必要が出来た時も、ここなら十分に暮らしていけそうだ。警戒が解かれるまで蔓を切り、雪を溶かし、温かい草のベッドでゆっくり過ごせばいい。隠れ家の暮らしとして、こんなに贅沢なことはない。

確かに、品物をここまで運んでくるのは思っていたよりも大変そうだ。だが、帰り道で他の人間やエルフの姿も見ていない。リーチの民が痕跡を辿ってこちらに向かっているという噂があるが、腰布を巻いた原始人を恐れる必要なんてあるのか?それでも遺跡の防備を固めるまで、罠や警報を設置しておいたほうがよさそうだ。

ここを初めて訪れた時、この壁が血を流したような色をしていることには気付いていなかったと思う。ここには、このくすんだ赤い石がそこら中にある。いや、実際には血を流しているわけではない…とにかくこれを見てから、その姿が頭から離れなくなった。

昨夜寝ている時、仲間を殺しそうになった。奴がずっとこそこそ動いていたので、全く休めなかった。眠れたと思ったら必ず、服のこすれる音が軋む車輪のように耳をくすぐってくる。奴を殴りつけたが、振り返ると奴は死んだように眠っていた。実際に死んでいた可能性もあったが、とにかく、こすれるような音がまだ鳴り響いていた。

音の正体は蔓だった。蔓が酔っ払った大蛇のように身をよじっていたのだ。

少し離れなければならない。あの蔓の音は、どんな騒音の中でも耳に届くようになった。頭がおかしくなりそうだ。山道を探索して、まともな場所を探すしかなさそうだ。

1時間の間に、3回カラスの群れを見た。それとも道に迷った同じ群れだったのだろうか?鳥がこの辺りをうろうろするには少し季節外れだ。これは悪い予兆だ。そういう噂を聞いたことがある。

どこから来たのかは分からない。リーチの民による山狩りだ。大勢いる!何かを探しているようだ。だがここに彼らが求めるようなものは何もないはずだ…我々以外には。彼らはまだ隠れ家を見つけてはいないようだが、いずれ見つかってしまうだろう。

できることなら荷物をまとめて早くここから逃げ出すよう仲間に言いたいが、蛮族に気付かれず抜け出せるとは思えない。事態が思ったより早く好転することを祈るしかなさそうだ。

あの鳥どもめ!カラスが遺跡をねぐらにして、それからずっと鳴き続けている。洞窟の外まで鳴り響く声は、実際よりも十倍ぐらい大きい獣が鳴いているかのようだ。

神よ、あれを止めてくれ!

バーソロミューの仮説Bartholomew’s Theory

ウェルキンド石の台座周辺に刻まれたこの文字は、隠し通路のようなものを指し示しているのだと思う。こういう仕掛けはハイロック中の王宮や要塞で用いられているし、「セリ」は広間を意味すると聞いた覚えがかすかにある。王宮や要塞の地下居住地を指す一般的な言葉だ。とにかく宝物庫にも要塞自体にも、そんな隠し通路があるという記録は残っていない。それが問題だ。

* * *
ティエリック団長は我らの砦と特に遺物の宝物庫が、思っていたほど安全ではないかもしれないという懸念に同意している。騎士団長は我々の防備が抱えているかもしれない弱点を探すよう命じた。期待に応えてみせる。

* * *
ウェルキンド石を元の台座に戻してみたが、何も起きない。これだけで隠し通路が明らかになるなら、そもそも前任者たちが見つけなかったはずはないだろう。もっと色々試してみなくては。

バーソロミューの任務Bartholomew’s Task

騎士団長は前任者たちの記録を調べ、神聖なる砦の地下の宝物庫を調査せよと私に命じた。騎士団はもう数百年も前、神々のためにこの異教の間を聖別したのだが、騎士団長が古代の野生のエルフ魔術を疑いの目で見るのも仕方のないことだろう。

* * *
記録によれば、砦の地下の宝物庫には連結したウェルキンド石があるらしい。初期の前任者は正当にも、デイドラの影響を恐れてこの物体を台座から取り除いた。私は野生のエルフの専門家ではないが、デイドラ公に対する彼らの献身は、世俗の者にとってさえよく知られている。

* * *
ティエリック団長はこれまでの発見を喜んでいるが、不安も感じているようだ。ウェルキンド石を入手し、石と遺跡とのつながりについて調査を続けるよう命じられた。気が重い任務だが、全力で取り組むつもりだ。オブリビオンの冒涜的な物品が保管されている宝物庫を、無条件で信用できると思い込んではいけない。あの宝物庫の起源を考えればなおさらだ。

* * *
ある前任者はアイレイド研究者を任じていたため、赤い花弁の砦の地下にあった元々の建物から多くの拓本を残している。アイレイド語はさっぱりだが、ウェルキンド石を載せる台座から取られたある言葉が繰り返し出てくる。ゴリセリ・モラブロ。ついに手掛かりが見つかった。

バーソロミューの発見Bartholomew’s Discovery

ついに進展があった!ウェルキンド石は宝物庫の遺物の一部に共鳴した。以前にはなかった輝きが灯ったのを見て、私はウェルキンド石が消耗していたに違いないと気づいた。魂石と同じなのだ。よく考えれば当然かもしれないが、私は野生のエルフの手法が我々のものとは全く異なると思い込んでいた。とはいえ、デイドラの魔術が何らかの形で関わっていてもおかしくはない。慎重に進めなければ。

* * *
もう1週間経ったのか?この宝物庫の中で時間の感覚を失ってしまった。アーティファクトを漁り、石の反応を確かめ、力を送ろうと試みていた。だがうまくいっている。石は遺物から吸収した輝きを維持している。私が接続を引き出すたびに光は確実に強まっている。もう少し続けよう。きっと成果が出るはずだ。

* * *
家に戻って、少し休息を取ったほうがいい。宝物庫の衛兵にもそう言われた。私が仕事をしに行く時、背後から彼らの囁き声が聞こえるのだ。私はかっとなって静かにしろと怒鳴ったが、彼らは自分がしたことを認めようともしない。全く、子供のような連中め。とはいえ、騎士団長に報告する成果が必要だ。また台座を試そう。そろそろ秘密を明かしてくれるだろう。きっとそうだ。

パイアウォッチの掟Pyre Watch Precepts

生者も死者もこの境界を越えてはならない。

やむをえぬ場合を除き、封印の先に行ってはならない。

できる限り、ここに埋葬された者の名を口にしてはならない。

名誉を守り、モルワの徳を尊重せよ。

息をするごとにトゥワッカを称えよ。彼に仕えることで強くなれる。

哨戒兵は誓いを守り、灰の監視を怠ってはならぬ。たとえそよ風でも、この墓から灰を巻き上げるならば遮断すべきだ。

バローグの計画Balorgh’s Plan

ヴィコサ様

すでに疑問の余地はありません、バローグはあなたを蹴落とすつもりです!彼は私たちをグレートハントへ入らせ、ハーシーンの恩恵を勝ち取り、あなたを倒す力を得ようとしています。まだあからさまには言っていませんが、その代わりに恩恵がどのように群れのために使われるかについて、つまらない言い訳を述べています。私は彼の言葉が嘘以外の何ものでもないことを知っています。

私一人では彼を止められず、あなたの密偵であることを明らかにして危険に晒される意味もありません。よって私は、バローグの監視を続けて攻撃の時を待ちます。戦闘になれば、私に彼を倒すことはできません。理解していますが、私は全力で彼を止めると誓っておきます。

敬具
ロネラ

バローグへの懸念Concerning Balorgh

ヴィコサ様

私たちの一団がハンティング・グラウンドへの侵入に成功したことを喜んで報告します。詳細は帰還時にお話しします。いつ戻れるか分かりませんが。バローグがどうしてもと言うため、もう一週間以上ハーシーンの領域に留まっています。

あのオークは、ハーシーンの弱点を見つけるため偵察を続けるべきだと主張していますが、私は動機を疑っています。私があなたの命令を彼に思い出させようとするたび、ただ癇癪を起すのです。彼の言い訳は段々説得力に乏しくなってきており、他の何かを探しているのではないかと危惧しています。ひょっとすると、あなたに危害を加える何かかもしれません。

私は観察と報告を続けます。

敬具
ロネラ

バローグへの手紙Letter to Balorgh

バローグへ

お前はヴィコサを失望させないだろうね?この任務は重要なのだから。

まだ死んでいないのに、ハンティング・グラウンドへ侵入する方法を見つけるのは簡単じゃない。しかし、この者たちは今後に備えなければならない。タムリエルを手中に収めたら、腹を空かせた猫の領域へ攻め込むのだ。しかし、まずは侵入方法を探さないといけない。

侵入方法を見つけたら、すぐに月狩人の砦へ戻ること。ハーシーンを絶対に警戒させてはならない。お前が戻ったら、攻撃の準備を行う。

失敗は許さないよ、バローグ。

-超越者ヴィコサ

ハンツマンのデイドラ公The Huntsman Prince

ザイナブ部族のハヌ 著

ハンツマンのデイドラ公。獣人の父。腹を空かせた猫。ハーシーンには多くの名があるが、そのすべては彼が司る狩りに関連している。このデイドラ公は追跡、捕獲、殺害にとりつかれている。獲物がエルフか人間か、獣かは関係がない。

ハーシーンはタムリエルで人気がある信仰の対象だが、その評判を疑うことは不適切でない。彼を慈悲の神と呼ぶ者はいないだろう。実際、ハーシーンは積極的な崇拝や崇敬を望んでいないように思える。彼は単に価値があると考える狩人を探して報いる。

それが崇拝対象としての魅力なのかもしれない。彼の残酷さには奇妙な純粋性がある。他の多くのデイドラ公と異なり、彼の恩恵は概ね公平に思える。彼の信者は力を示すだけでよい。そうすれば死後、彼のハンティング・グラウンドで永遠の狩りが約束される。

ハンティング・グラウンド

ハーシーンの信者にはあることが約束される。それは死後、ハンティング・グラウンドと呼ばれる、このデイドラ公のオブリビオンにおける領域で暮らすことだ。永遠の狩りが行われる無限の森。残酷で暴力的な森。死と転生の無限の循環が行われる森。

その土地には狩猟小屋が点在する。この領域に出没する者たちの住処である。森には強力な獣が潜み、ハーシーンの信者たちは素晴らしい狩りに没頭できる。人生をハンツマンに捧げた者たちの、真の楽園である。

グレートハント

稀にしか起こらないが、ハーシーンは生者を自らの領域に入れることもある。この事象はグレートハントとして知られている。ハンツマンの娯楽、血なまぐさい競技だ。この技能と悪知恵の競技には唯一の目的がある。野兎を捕まえてハーシーンに届けることだ。そうして初めて彼の恩寵を受けられる。

このようにハーシーンの恩恵を受けようとして、大勢が死ぬ。参加者同士で敵対するか、この領域にある自然の脅威に倒れるのは珍しくない。もちろん、野兎も無抵抗ではない。

ライカンスロープ

ハーシーンの称号である獣人の父は、実態に相応しい称号である。エルフや人間が獣に変身できる能力は彼がその創造主であると信じられている。変身能力の中でも、狼への変身は非常によく知られている。

生来あるいは感染により狼への変身能力に冒された者は、血の渇望へと駆り立てる強烈な感情に苦しむ。死後は余生をハンティング・グラウンドで過ごすよう送られる。たとえハーシーンへの忠誠がなくとも。

ハンティング・グラウンドから逃れた者を指す既知の書物は存在しないが、1つの可能性がある。グレートハントの参加者が恩恵として魂の解放を望んだ場合、ハーシーンは魂を解放する義務がある。私が無慈悲な領域から父の解放を望むなら、まさにそれを実行しなければならない。

フォージに関するニコラードのメモNicolard’s Notes on the Forge

この古代部族は高度な技術を持っていなかったかもしれないが、原始的だったわけではない。この遺跡の中心部に用いられている建築技術は、ドワーフほどではないにしても、アイレイドのように精巧だ。部屋は広く実用性があり、儀式に使うこともできそうだ。だがその目的については、まだはっきりと分かっていない。現時点では、フォージのようなものだったのではないかと考えている。彼らは熔岩の流れを利用して鉱石を溶かし、金属に熱を加えていた。そのようにして作ったものを冷やすための、巨大な水盤らしきものもある。だが近くに水源らしきものは見つかっていない。

それに鍛冶が使っていたと思われる巨大な石の槌と鉄床もある。だが彼らがどう動かしていたのかは分からないし、魔力が使われていたような形跡もない。これだけ昔のものだ。かなり前に魔力が切れてしまったとしても不思議はない。

フォブス・リブルの遺言Final Will and Testament of Fovus Rivul

これを見つけたあなたが、私を捕えた者たちの一味でないことを願って

私の名前はフォブス・リブルだ。覚えておいてほしい。私はここから遠くない小さな村に住んでいた。おそらくあなたもそこで、この私の遺言を見つけたのだろう。何年もの間、私の仕事は単純なものだった。友人や隣人の服を繕うだけだ。いたずら気分で新しい意匠を施しもした。だが心地よい日常だった。私のように快適で穏やかな生活を望む者にとっては完璧だった。家庭は持たなかったが、気にならなかった。私たちの村は… 閉鎖的だった。だが、今何人が村に残っているのか、見当もつかない。

警戒しておくべきだったのかもしれない。私たちはあまりに長い間、この世界の秩序を乱す者たちと無縁でいた。完全に平穏な生活だったとは言わないが、危険を感じたことはない。それも目覚めの炎が来るまでのことだった。まず、私たちは彼らの松明を見た。あの者たちは長い列を作って、私が今閉じ込められているこの放棄された鉱山の入口に向かって歩んでいた。炎がゆっくりと行進するのを隣人たちと一緒に見ていると、何かを詠唱する低い声が聞こえた。間違いなく地面の下から小さな揺れを感じたが、あの時は緊張のせいだと思っていた。もっと注意を払うべきだった。

間もなく、人々が姿を消していった。ベッドから、田畑から、路上から。誰も帰って来ることはなかった。当然、私たちは鉱山の居住者たちを疑ったが、武器を取って戦うほど腕に自信のある者はいなかった。

そして私の番が来た。荷物が届かなかったので、モーンホールドまで物資を取りに行かなくてはならなかった。その時は不思議に思った。送り主はいつも時間を守っていたからだ。たちまち、私は外套を着た人影たちに襲われた。奴らは馬を殺し、私を殴って気絶させた。目が覚めたら牢屋に閉じ込められ、体は濡れて冷え切っていた。おそらくここで死ぬだろう。

遠くで詠唱する声が聞こえる。そして自然のものではない獣の甲高い鳴き声も聞こえる。だから、急がなくては。私の店は、まだ生きているなら若いリラシに譲る。リラシが死んでいたら、若いメーデンに譲る。私の家とその中にあるもの全ては、困窮している村の人々に分配してもらいたい。私たちの慣習に反するのは分かっているが、残された者たちには避難所が要るかもしれない。それから私の酒場の勘定は、バーテンダーのドリナーに任せる。愉快な間抜けじじいに。

書き間違いや汚れた文字はご容赦願いたい。血塗れの指で書くのは容易ではなかった。

以上のことを認め、ここに署名する。
フォブス・リブル

ブジャーフルド・スクジョラルモルの碑文Epitaph of Bjarfrud Skjoralmor

この街を作った石がここに眠る
人の形を取り、偉業により冠を授けられた
異教徒の森から獣を三度追い出し
森を切り倒してこの街に植えた
彼が立っていたその場所に

ブルルの筆記練習Burr’s Writing Practice

ネズミ

食べる

熱い

料理

冷たい

刺す

ヘラルフへの手紙Letter to Haeralf

ヘラルフ

スヴァーディスから、潮に乗って出発すると聞きました。港で見送れなくてごめんなさい。渦潮に向かって航海するあなたを見ることに、耐えられそうもありません。スカルド王が興味を持っているというなら、自分で見に行けばいい!ごめんなさい。彼は私たちの安全を願っていることはわかっています。あなたや他の人たちを傷つけないことが可能だといいのですが。

古い樺の木の下で言ってくれたことを考えています。私たちの結婚について。ためらってごめんなさい。父の気性が問題なだけなの。ハチミツ酒を飲むとどうなるかは知っているでしょう。とにかく、一晩中考えた結果を伝えるわ。愛しいヘラルフ。結婚しましょう。ソヴンガルデまで一緒よ!

盾をしっかり掲げて、できるだけ早く戻ってきて。計画しなければいけないことが、たくさんあるから!

あなたの雪花
グウェノラ

マーセロクの偵察記録1Maarselok Reconnaissance Log One

テンマールの国境は滞りなく越えられた。ここまで西になると、カジートの居住は長く確認されていない。ドラゴンの気配はないが、激しい嵐を予期するように野生動物が苛立っている。隊長からは主力部隊よりも大きく先行しろと言われている

* * *
ここに来たのは初めてだ。穏やかすぎるようにも感じられるが、この渓谷は自然が豊かだ。なぜカジートは定住に戻らなかったのだろう。そもそもなぜ立ち去ったのか。

多数のカジートがここに住んでいたことを示す、たくさんの遺跡がある。ただし安全な訳ではなく、危うくセンチライオンの餌になるところだった。普通ならセンチライオンは、猫のようにもっと隠れて行動しようとする。

まだドラゴンの気配はない。隊長はそのことしか心配していない

マーセロクの偵察記録2Maarselok Reconnaissance Log Two

遺跡は完全に放棄されたわけではないようだ。足跡が見られる。最近の足跡も古い足跡もあるが、ここ数ヶ月の間に居座ったか、少なくとも通り過ぎた者がいることは分かる

* * *
ここでは魔術師が野営しているらしい。魔法の痕跡が多数ある。しかし、隠遁した魔術師など物語の中にしか存在しない。ドラゴンが現れて立ち去ったのだろう。この洞窟は、主力部隊のよい拠点になるはずだ

マーセロクの偵察記録3Maarselok Reconnaissance Log Three

見つけた!ついにドラゴンが巣から出てきた。何かを探しているように見えた。恐ろしくて5分ほどは息もできなかった。奴は攻撃部隊の存在を察知したが、結局、山頂近くに降りた。これで青いドラゴンの住処が分かった

* * *
ドラゴンが巣を作るとは聞いたこともなかったが、こいつは収集癖があるのかもしれない。スキーヴァーのような癖が。しかし、悪臭はスキーヴァーどころではない。山頂付近は奴と同様に青みがかってきた。夜は眩しいほどい光る。真夜中の山頂への行軍を導く星となるだろう

マーセロクの偵察記録4Maarselok Reconnaissance Log Four

イフレよ、我々を守りたまえ!それまで辺りは静まり返っていた!主力部隊が野営した瞬間、青い腐敗から獣があふれてきた。まるで待ち伏せしていたように!我々は囲まれた。この悪臭の汚水に捕らわれた。奴らは脱出を試みない限り攻撃してこない

* * *
もう他の者は見えない。姿が見えない。逃げられたのは私のみ。私だけだ。

今でも叫び声が聞える。彼らの中に〈青〉が入り込み、おかしくさせた。攻撃を仕掛けてきたのだ!みんな逃げた。みんな逃げて逃げて逃げたが、今は私しかいない。故郷に帰らなくては。〈緑〉が守ってくれる。〈青〉から守ってくれる。

頼む、私を守ってくれ!

マグナスタイラスへの手紙Letter to the Magnastylus

後任者へ

ふざけるつもりはないが、マグナスタイラスでいるのがどんなものかは個人的な経験から知っている。苦役だ。書記の館の監督という悪夢のような業務をたった一人に任せるとはな。オブリビオンの常に変化する地勢の正確な情報を、館中に行きわたらせる。それを要求される新しい裂け目が開くたび、次元の地図は更新されなければならない。そして古い地図は蔵書庫の棚から保管庫へ移されなければならない。書物は検証済みでありながらも偏見に影響されていてはならない。これらすべてがモラの書記を導く仕事の最上位か?新たな書記が足りなかったらどうする?ああ、そして何人がオブリビオンで消えた?何人が旅で命を落とす?これは罰だ。間違いない。私は何やら恐ろしい間違いを犯し、ハルマエス・モラは自分の過ちを教えるためにこの肩書を私に与えたのだ。

この肩書にも一ついいことがある。マグナスタイラスの書斎だ。この忌むべき館で唯一のんびりと読書ができる場所だ。おそらくは、私が書記に加わるに至った原因となる書物の数々を。自分だけの部屋だ。そして、誰も遍歴の杖に触れない唯一の部屋でもある。

私は次元への小旅行以外の杖の持ち出しは好まないが、過去のマグナスタイラスには地位の象徴としてどこでも携帯する者もいた。杖は書記の仕事に大げさすぎると思う。私がこの杖を使うと、杖自身が力を持っているように感じる時がある。虚無を通じて呼びかけ、答えを得る力だ。できれば、それについて考えたくない。

おお、そうだ、最後に記そう。宝物庫へ入ろうとするな。レインファーが許さないだろう。君があのカートクレプトの始末を手伝えば別だが、それは何かなどと聞かないでくれ。私はただレインファーに手伝うとだけ言って立ち去った者なのだ。レインファーが宝物庫の番人ではなくなっていたとしても、後継者のことを検討するには及ばない。おそらくレインファーが自分と似たような者を選び、宝物庫を監視させるだろう。

心配するな。君ならうまくやれるはずだ。

マグナスタイラス・ロウレナ・ブランク

マザー・シアネイトへの手紙Letter to Mother Ciannait

マザー・シアネイト

ヒティ、メイフィンや他の者は進行状況に満足しているようですが、正直に言うと祝えることはあまりありません。ほとんど!彼女たちは雷や炎を扱うだけで日々を過ごせますが、私は研究所で、嵐の可能性を最大限に引き出そうと苦闘しているのです!

マザー、死体が足りません。しもべたちが引き上げてきた船員たちは膨れ上がっていて、使い物になりません。私の実験台に残されている哀れな連中に至っては、語るまでもないでしょう!少しでも前進するためには、新鮮な死体が必要なのです。

ゴーラに運試しをしないかと提案しました。私たちは庭で一番強い子たちを組み合わせ、無作為の選択を数日ごとに行うことができます。彼らは喜んで命を捧げるでしょう、マザー。間違いありません!

私たちが成功するかどうかは、死を極められるかどうかにかかっています。死には犠牲がつきものです。お考えください。

忠実な召使
バニ

マザンディの裂け目の記録Mazandi’s Rift Tracking

ハンティング・グラウンド
開いた日:第二紀570年 収穫の月1日
閉じた日:第二紀570年 収穫の月1日

アポクリファ
開いた日:第二紀570年 収穫の月2日
閉じた日:第二紀570年 収穫の月31日

走り回る虚無
開いた日:第二紀570年 薄明の月28日
閉じた日:第二紀576年 黄昏の月30日

彩られた部屋
開いた日:第二紀570年 薪木の月1日
閉じた日:第二紀571年 薪木の月1日

ムーンシャドウ
開いた日:第二紀571年 薪木の月2日
閉じた日:第二紀573年 星霜の月25日

デッドランド
開いた日:第二紀576年 薪木の月7日
閉じた日:

スパイラル・スケイン
開いた日:第二紀580年 真央の月13日
閉じた日:

マリカに宛てた未完の手紙Unfinished Letter to Marika

マリカ、愛しています。そのことを今のうちにどうしても伝えたかった。気持ちを言葉にするというのは気持ちの良いものです。例えそれが、永遠に届かないとしても。

私たちは今、閉じ込められています。リーチの民が山から洪水のように押し寄せてきたのです。彼らは村をいくつも略奪して街道を占拠し、唯一の避難所だったファルクリースに私たちを押し込みました。もっと遠くへ逃げるべきでした。必要ならソリチュードにだって。でもすでに手遅れです。街はもう数週間、彼らに包囲され続けています。

この街はある程度の包囲に耐えられるよう作られています。でも人が多すぎて食糧が足りません。それにリーチの民は残忍です。食糧のことで長く悩んでいられるような暇は与えてくれないでしょう。

もし生き残ることができたら、私は

ミレンヌへの手紙Letter to Mylenne

ミレンヌ

私たちが懸命に成し遂げてきたことを疑ってはならない。群れは、この者が望むべくもないほど大きく成長した。強くもなった。ヴィコサが過ごした長い年月で、これほど自らの成功を誇りに思い、確信したことはない。

あまりにも長い間、私たちは狩られ、倒されてきた。自らを英雄と名乗る戦士たちに虐殺されてきた。あまりにも長い間、私たちはただ逃げた。

今こそ反撃しなくてはならない。

私たちの群れは月が変わるにつれて強くなる。味方も集めた。私たちは組織の者を強化した。その結果が、タムリエル全域を震撼させる軍隊だ。

私たちが影に隠れることはない。狩ろうとする者を恐れることもない。私たちは立ち上がる!私たちが支配する!私たちに協力を拒む者がいれば、この爪にやられるだろう。

ミレンヌ、あともう少しで完了する。信じ続ければ大きな報酬がある。この者がそう誓う。

-超越者ヴィコサ

メファーラの書記Scribes of Mephala

書記の館の蔵書庫が管理されてきた長い間、マグナスタイラスのための試験が一つあった。その人物の技能と才能がそのための責任と合致することを証明するための試験だ。アポクリファへの裂け目が現れたら、マグナスタイラスは中に入ってハルメアス・モラの声を聞かなければならない。

ケシャルゴとの訓練中、私は自分の能力に疑いを抱くことはなかった。もっとも強く、力にあふれ、知性があり、モラの書記となるための順応力と意欲を持つ者だと自覚していたからだ。仮に疑念を持つことがあっても、ケシャルゴが私のことを重要だと言い聞かせてくれた。私を他の書記と比較し、あからさまに彼らの欠点を指摘して私を持ち上げてくれた。私の就任はほぼ確定していて、あとはただ裂け目が開くのを待つばかりだった。

だが、その時がきても何も聞こえなかった。一言も、囁きさえも。アポクリファのすべてが静まり返っているようだった。その領域の中の私は、聴力を失っていた。静寂が私の血液の流れを止めた。まるで上から突っ込んで来る鷹に気づけない兎のような気分だった。

ああ、私は喜ぶふりをした。愚かな老人が私の就任を疑わないようにした。だが、それが何を意味するかはわかっていた。ハルメアス・モラが私たちから目を背けたのだ。彼は私たちと私たちの働きを遠ざけた。彼を失望させたか、彼が書記の館が提供するものに興味を失ったか。私はケシャルゴやマザンディのような愚か者が書記の八分儀に対して表す情熱を見てきた。知る者を怒らせるようなことは何もしていない。そこから導かれる答えはただ一つ。彼は私たちに価値を見出さなくなった。そして、私は気に掛けてくれない主人のため働くつもりはない。

話はこれで終わりではない。まったく近くにいないのに、声を聞いたからだ。呼びかけを感じる。死んだ書物と愚かな関心であふれたアポクリファの沈黙の館からではない。そう。スパイラル・スケインの光を帯びたキノコが発する声だ。隠された知識の生命の領域。死んだ本ではなく、生きた精神に情報が格納されるところ。書記が長く忘れ去られた時代の空論で停滞するのではなく、成長できる場所。

私たちの仕事は囁きの女にとって価値あるものだ。ゆっくりと書記たちを八分儀から切り離していこう。あのやり方にある誤りを示しながら。そして然るべき時がきたら、私たちの忠誠をハルメアス・モラからメファーラに移行させる。スパイラル・スケインへの裂け目は決して閉じない。新たな師から見捨てられることは決してない。私たちは彼女を通じて隠された知識を聞くことを学ぶ。真の力の秘密を。

ムヴナクの追跡In Pursuit of Mhuvnak

アイレイドのムズルトに対する遠征についての部分的な報告を見つけたが、そこでは憤怒の石が少なくとも9回言及されている。争いはこのアーティファクトを巡って行われたが、妙だ。ドゥエマー自身の報告によれば石は街の中になく、タイミングもまるでずれている。帝国が奴隷反乱の真っ最中だというのに、なぜアイレイドはドゥエマーを襲撃したのだろう?

* * *
報告に前後する数年間、ムズルトは紛争に蝕まれていた。街はノルドとアイレイド、さらに近隣のドゥエマー部族の襲撃に抵抗していた。彼らは全員、憤怒の石を探していたのだろうか?

* * *
偉大なるドゥエマーの建築家ムヴナクはこの頃、ムズルトから姿を消している。戦争の犠牲になったという説が有力だが、私が見つけた内容からすると、上級王ゲリルの治世にノルドが破壊する以前には、ムズルトに大量の死者が出たと考える証拠がどこにもない。

* * *
分かった!カグレンゼルだ。ムヴナクはアイレイドの襲撃の後、カグレンゼルへ出発した。安全な街を去って山中の小さな隠れ家へ向かったのは、何か重要なものがあったからとしか考えられない。明日イーストマーチへ行こう。

* * *
またしても後退を強いられた。護衛として雇ったノルドの2人組が落ちた。文字どおり、ほとんどあっという間に死の罠へ落ちていった。この場所はドゥエマーの名残というよりも、ヨクダの墓を思い出させる。調査しようとする者を殺すのが唯一の目的と思えるほどだ。

* * *
カグレンゼルを慎重に調査した今では、憤怒の石がここにないと確信している。今の私の仮説は、ムヴナクが来て回収したというものだ。設計は巧妙だが、この場所は盗賊を捕まえるのに適したもので、軍隊を押し返すようなものではない。ムヴナクは防衛装置がライバルからアーティファクトを守ってくれるとは信じなかったのだろう。

* * *
ムヴナクは彼の時代における最も優れた建築家だった。彼ほど細部にこだわる者が、計画もなしに憤怒の石を取って逃げ去ったとは思えない。ムズルトにさらなる答えがあるかもしれない。

* * *
今回は護衛を控えることにした。これまで連れて行ってもいいことがなかったし、ムズルトで答えを探すには時間をかけて調査する必要がある。意外ではないが、アニムンクリが未だに広間を徘徊して、壊れていない回路に刻まれた任務をずっと継続している。だが、遺跡の奥深くから何か響いてくるのが聞こえる。鈍くガタガタいう音と、動物の鳴き声だ。何かがコンストラクトの相手をしている。私にとっては好都合だ。今のところは。

* * *
ムズルトについてこれまでのメモを記すための紙がなくなりつつある。なのに私はまだこの街のごく表面に触れたに過ぎない。大抵の学者はこの場所の秘密を解明しながら幸福に一生を過ごせるだろうが、私の目的は大半の者よりも高い。これ以上寄り道は無用だ。ムヴナクについて分かることを探し、彼が逃げ込んだ場所を見つけるのだ。

* * *
ムズルトには監視所のようなものがあって、部屋全体をある装置が占めている。このようなものは見たことがない。ドゥエマーが頭上にある世界を評価していたとは思わなかった。ましてや空を。

* * *
ここにはいくつか文書が残っている。ムヴナクの時代ではなく、ずっと後のものだ。ドゥエマーはムズルトをノルドから取り返し、最終的に姿を消すまでは栄えていた。「オキュロリー」というこの装置は、動いていた時には恐るべき正確さで世界を観察できた。ドゥエマーはこれを使ってムヴナクの失われた宝物庫の場所を突き止めたが、「フロストヴォルト」は氷山の下に埋まっている。彼らの王国のために宝物庫の発掘が試みられたという記録は見つからなかった。

* * *
私の解釈が正しければ、フロストヴォルトが見つかりそうな場所は分かると思う。だが、資金が尽きかけている。クインタスの土地は資産というより借金だし、最後までやり通すには間違えられない。

* * *
私は正しい道を進んでいる。きっとそうだ。西にある山脈の中に、ドゥエマー建築物の証拠を見つけた。あの記録が書かれてから今日までの間に、氷が退いたようだ。溶けた氷河が他に何を明らかにしたのかも知りたいところだが、結果として生じたクレバスはゴブリンにとって魅力的な隠れ家になっている。あれだけのことを通り抜けて来たのに、あんなネズミ喰いに邪魔されるわけにはいかない。これがフロストヴォルトだという可能性に全てを賭けてみよう。

より厳しく調べろApply More Pressure

サリディル、

メダルについての事前報告を手紙の写しと共に超越の魔導師に送ったが、これだけでは十分じゃない。著者は自分の素性も受け手の素性も注意深く隠していた。魔導師の予定通りに計画を進めるためには、このメダルについて何もかも知っておく必要がある。メダルの届け先も例外ではない。囚人の尋問を続けてもらいたい。質問の仕方をもっと工夫することを許可しよう。ただし殺さない範囲でだ。
ヴァラリオン

ライカンスロープの治療A Cure for Lycanthropy

銀なる暁教団の公文書保管人アーナルデ 著

ようやく治療薬が手に入りそうだ。狼への変身はこれによって根絶できる。10年以上もこの研究に打ち込んできた。だと言うのに、ようやく答えが見つかったら否定されるのか?

イデット指揮官の懸念が事実無根でないのは理解できる。あのような試みの危険性は否定できない。ハーシーンに変化させられたウェアウルフを探すことさえ、あまりに危険だ。ましてその獣の捕獲など、銀なる暁教団ができる保証はない。

そうであっても、試すことさえいけないのか?私の実験が実を結んだ場合、実現されるすべての利点を考慮してほしい!私たちの教団が存在するのは、まさにその目的のためではないのか?ウェアウルフへの変身の脅威を完全に消し去ることじゃ?

私は、イデット指揮官がこの実験に賛成するよう説得しなくてはならない。絶対に。

***

神々が微笑んだようだ。私が照会してからほんの数か月しか経っていないが、マラバル・トールのどこかに隠れているヴィコサというウェアウルフから連絡を受けた。

噂によると、彼女は最初の変身者であり、ハーシーンの手により獣に変えられたらしい。私の記録とも合致するようだ。数世紀前に彼女の名を挙げる記録を見つけた。これはまさに私が求めていた機会かもしれない。

残念ながら、今もイデット指揮官の賛同を得られない。彼女の言葉はこの砦の法であり、私の研究に触れるたび、私を否定しようとする決意が強まるようだ。

しかし、私は希望を捨てることができない。今は捨てられない。あまりにも多くのものが懸かっているこの時に、捨てることはできない。如何なる犠牲を払っても、絶対に指揮官を説得しなくてはならない。そして、私には彼女を味方につけるものがあると信じている。

***

ついにイデット指揮官がヴィコサの捕獲に同意した。驚きはしない。今では彼女の夫が狼への変身に苦しんでいるのだから。私の手元にあった、多くの血液サンプルによる変身だ。

治療薬の考えを推進すると、指揮官はその危険性に尻込みする。しかし、愛する人が治療薬を必要とするとどうか?私の目の前で崩れ落ちた。無様だ。

あとはヴィコサに罠を仕掛けるだけでいい。もちろん簡単なことではないが、私ほどの知性があれば成し遂げられるはずだ。勝利は近い。いずれにせよ治療薬は作る。八大神に誓って作らなくてはならない。これは自己満足のために行うのではない。人類の利益のために行うのだ。

ロレアの日記Rolea’s Journal

月狩人の砦は最後の望みだ。すでに銀なる暁教団は群れの残りを倒している。ソブンガルデにかけて、ホルスまで失いはしない。私たちはシャドウフェンへ向かう。

数は多いほど安全で、ヴィコサの群れほど大きい群れはないと噂されている。すでに連中は銀なる暁教団を戦闘で破っている。なんと、教団の砦さえ占拠した!私たちを守れる者がいるとすれば、それは彼らだ。

***

月狩人の群れからは、望んでいたような歓迎を受けていない。ここを安全な楽園だと考えた私が愚かだったとしても、何かがおかしい。

私たちが到着するやいなや、連中に不信の目を向けられた。ホルスにはそれが普通の群れだと言われた。真に受け入れられるには、まずは忠誠と力を示さなくてはならない。それは真実かもしれないが、この群れの目にはある種の敵意がある。それがとても怖い。

***

本当にすまない、ホルス。これが私たちの最後の望みだと思っていた。ようやく安全になる。ようやく逃げるのをやめられると。しかし、私が間違っていた。この恐ろしい場所へ入った瞬間、私が間違っていたと分かった。

だが、私たちは生き残った。一緒にあの呪われた生垣の迷宮から逃れた。一緒に群れの虐待と侮辱を押しのけた。私たちが力を示すために行ったことは今でも悩む。

だが、私たちは生き残った。

その後、お前は公文書保管人に呼ばれ、私たちは離れた。私は初めて真の恐怖を感じた。お前がもう戻ってこないのではないかと。そして、その通りになった。

すまない。お前は死んだ。私は敵討ちすらできない。絶望のあまり立ち向かうことができない。絶望のあまり逃げることすらできない。

お前がハンティング・グラウンドで安らぎを得られることを望む。私もすぐに加われるといいが。

愛しのヴァネッサMy Dear Vanessa

ヴァネッサ、

お前がいなくて寂しい。農場や家族はそうでもないが、お前のいない日々は長く感じられる。だがそれだけの価値はあった。ここでの仕事はあまり変わらない。丸太や甲板を運ぶのは穀物袋や泥を動かすのと大して違わないが、農場労働者だった頃の10倍も稼げる。俺もようやくお前に本物の指輪を買って、ここで自分の家を持てるぐらいのゴールドを手に入れられる。買えるのはせいぜい集合住宅だろうが、出だしとしては悪くないさ!

この小包にはウェイレストからのチケットが入っている。ここでお前と一緒になれるのが待ち遠しいよ。
ダヴィン

遺跡の起源に関するニコラードのメモNicolard’s Notes on Ruin Origins

調査には1週間ぐらいかかったが、作った部族を特定できたようだ。古代ケプトゥの碑文があった。碑文というより「グリフ」と言ったほうがいいかもしれない。この時代の彼らの文化はほとんど口承によって伝えられていたはずだが、それはまた別の話だ。これは「ブラッドルート」という意味のようだ。ここにある太い蔓と血色の良い岩を、色彩豊かに暗示したのだろう。

これだけ豊富にあるニルンクラッツは、彼らにとって大きな発見だったはずだ。つまりここに建造物を作ったとしても不思議ではない。だが実際に採掘したような痕跡は見つかっていない。もしかしたらここは、ネードが石を精錬する技術を開発する前から存在していたのかもしれない。聖堂のようなものだろうか?

隠された子鹿の意味The Meaning of the Hidden Fawn

稲妻が地面を打つとその形が明らかになるのと同様、自然の力もそれに最もよく適した形を取る。古代のストーンロア・ドルイドの導き手がなぜ子鹿の形態を取ったのかと聞くことは、鳥の形態や風の色を疑問に付すようなものだ。心静かに読み、ドルイド・アヌークの知恵を心に染み込ませるがいい。

物語によると、ドルイド・ジェオナルドが潮風の道を歩いていると、小さな透明の子鹿が岩の間の割れ目から飛び出してきた。そこに立った子鹿は、日の出が八度来るまでは彼の目に見えていたが、九度目の日の出が来ると消えてしまった。子鹿がいた場所には風と塩のしぶきで滑らかになった丸石が置かれていた。ドルイド・ジェオナルドはこの石を持ち帰り、これの上で石の霊魂と交信して、その歴史と秘密を学んだ。彼は子鹿の贈り物の内部で成長するクリスタルのこと、その生命は大地の下から来たこと、それを緩慢に地表へと運んできた力のことを学んだ。ドルイド・ジェオナルドの生が終わりを迎えた時、彼はこの石を心臓の上に置いて眠りについた。石の霊魂は若い見習いの精神を、今ではあのクリスタルの洞窟の中にある、ドルイド・ジェオナルドの眠る地へと導くことができる。その美しさは、心でそれを知覚する者の目に必ず涙を浮かべさせるという。

さらなるドルイドたちが子鹿を見たと主張している。子鹿の存在は冒険や財宝、潮風の意思と結びついている。自然の力には善意も悪意もない。それは波や空と調和している。予期せぬものへの覚悟がなければ、子鹿を追ってはならないが、恐れてもいけない。むしろ、自然の力の顕現を前にした畏怖の気持ちを祝福と思うことだ。稲妻や雷鳴の轟きを前にした時と同じである。

隠された日記Hidden Diary

ネストラナ・フロティスの所有物

この日記をつけることに関しては警告された。その日に思ったことを書き記しているのを長老に見つかった時、彼女は私の手からページをもぎ取って、即座に燃やしてしまった。「”秘密の教団”という言葉の意味が分からないの?」と言われた。

でも、私は若い頃から日記をつけてきたのよ!孤独な時もこれのおかげで正気でいられる。それに正直に言うけれど、今ほど孤独に感じたことはもうずっとなかった。だから私は書き続ける、でも内緒にするわ。あなたと私だけの秘密よ。ね、日記さん?
——
私たちは宿舎を去ってデシャーンの新しい崇拝の地に向かうことになった。幹部が何年も探し続けていた祠がそこにあるらしい。噂では、洞窟に住むことになるらしい。洞窟なんて!コウモリと虫だらけじゃない。

前の季節に入団した時は、詠唱して物を燃やすなんて面白そうだと思ってた。でも今じゃ周りは本物の狂信者ばかりで、ゴミにまみれて寝るのも気にならないらしい。とんでもない間違いをやらかしちゃったわ。

——

出て行かなきゃ。私はなんてことをしてしまったの?奴隷たちに働かせているのよ!彼らが疲れて死ぬまで。それに怪物が…あれが何なのか分からないけど、ここの作業を管轄しているんだわ。私たちがかかわるデイドラについては色々と読んだ。何体かは自分で召喚を手伝いもした。でもあのザウドラス男爵とかいうのは見たこともない。ものすごい巨体で、私の腕なんて指一本で引きちぎってしまいそう。

もうすぐ儀式を行うことになっている。あの人たちを殺すんだわ。それも全員。そんなことできない。出て行かなきゃ。

噂に対する返答In Reply to Concerning Rumors

トリクへ

夜に人をさらう恐怖の獣とかいう下らない作り話で、私の仕事の邪魔をしないでくれ。騙されやすい子供や迷信好きな農民が主張しているだけだ。リーチから来る強盗を追い払うため、警備を強化するよう主任に伝えてくれ。我々の一族は何世代も、あのみすぼらしい犬どもの嫌がらせに耐え続けてきた。それはこれからも変わらない。奴らを恐れる必要などない。

—フジュルゴル・スクジョラルモル首長

援軍を送れ、ナリルモルSend Your Forces, Narilmor

ナリルモル、

お前は人間が門の前に来るまで剣を抜かないつもりか?言い訳はもういい。沿岸は快晴だし、嵐は内地に収まっている。警戒を解き、戦争のために進軍せよ。補給線が維持されなければ、ムズルト攻囲は失敗してしまう。奴らが海から来ることはない!

憤怒の石はもうすぐに手に入る。堅苦しいメリディアの義務なぞに振り回され、捨ててはならんぞ!

サドリル

殴り書きされた数Scrawled Tally

IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII IIIII

王冠を戴いたドラゴンThe Crowned Dragon

オーギュサン・コロヴェル 著

ブラック・ドレイク、ダーコラク陛下の聖人伝作家として、陛下の輝かしき統治の最初の年に依頼を受託した

世界を変えた男について、何を言うべきだろうか?彼は数え切れぬほどの民を、自らの頽廃に溺れていた社会の暗闇と、罪深き怠惰から救い出した。錯覚と幻滅に落ち込むあまり正義を忘れた人々の富で私腹を肥やす、腐敗した支配層に戦いを挑んだのである。シロディールの救世主、ブラック・ドレイクのダーコラクについて何を言うべきだろうか?久しく望まれ、彼によってもたらされた過ちの清算と矯正がなければ、私たちはどうなっていただろう?おお、シロディールよ、首を垂れて自由に感謝するがいい。新たな時代の誕生は近い!

ダーコラクの物語は、北方の開けた荒野と雪深い山脈で始まる。我らが皇帝が生を受けた夜には巨大な流星が空を横切り、彼がこの世界に現れた時間には、母親の慎ましき家屋の上を、銀色に輝く無数の白鳥が飛び交った。赤子を抱きかかえた者は全て、彼の若き顔の強烈なまでの美しさに衝撃を受けた。その目はあまりに黒く勇猛で、偉大なる戦士たちもその眼差しには目を背けてしまうほどであった。

我らが未来の皇帝がその偉大さに相応しい王宮ではなく、むしろ最も質素で過酷な環境の中で育てられたことは言っておかねばならない。リーチの偉大なる荒野は数多くの試練と危険が住まう場所だが、そうした苦難も少年皇帝を最も早い時期から鍛え上げ、勇気や名誉、忍耐や知恵の価値を学ばせるのに役立つばかりであった。3歳の時、若きダーコラクは母の命を救うため父が狩りに使う槍を手に取り、すでに20人の男を食い殺していた黒い大熊を無慈悲な一撃で葬り去った。そしてたったの5歳で、ダーコラクは寒く厳しい冬にカースワステンからドルアダッチ山脈の頂上まで連なるヘラジカ100頭の群れを狩り、村を飢えから救った。

2本の足で歩き始めた時から狩りに万能の腕を示したダーコラクは、遠からず知恵をも身に着けた。ダーコラクは鷹から、風に乗って運ばれてくる遠い国の知らせを聞く術を、そしてたったの一瞥で人間の心を見透かす術を教わった。彼は山の頂上から流れ落ちる冷たく速い小川の流れを見て素晴らしい音楽を身に着け、その歌声を聞いた者は二度と、他の音楽に喜びを見いだすことができなくなるほどだった。そして彼は大きな灰色の狼たちから勇気と忠誠心、上に立つ者の心得を学んだ。

過酷な故郷の地にあって、若きダーコラクはそのうち、戦の技を極める必要があることを知った。7歳の誕生日の折、樹齢100年の木ほども背丈のある巨人の部族によって、ダーコラクの民が羊毛を保管していた平和な牧草地が襲撃されたのである…

〔手記の残りの部分は焼け焦げていて読めない〕

我らの計画の唯一の記録The Only Record of Our Plan

ファイアソングよ

これは我々が得ようとしているものすべての始まりだ。我々が夢見る未来は今日始まる。目標に達することを妨げるような愚かな過ちは、私が許さない。

私の邪魔をするような気の迷いを起こす者を出さないために、以下の義務を与える。

ストーンロアの誰もが、我々に対して反抗する自信をつけないよう取り計らうこと。
私のため、この居留地が擁する霊魂たちへの道を開くこと。
霊魂たちを腐敗させ、種の場所を言わせるために手伝うこと。
種を見つけること。
居留地にいるストーンロアを残さず始末すること。
種を手に入れるまでストーンロア全員を殺さないこと。回収のために一人は必要かもしれない。
ストーンロアの聖なる種を持ってイフェロンに戻ること。

我々の計画の、最初で最後の記録をわざわざ作ってやったのだ。よく記憶しておけ。襲撃の日にわずかでも失敗すれば、厳罰が下るだろう。

アークドルイド・デヴィリック

外に出られないWe Can’t Leave

不安なの、ログラン。

荷車を押して物資を仕入れようとしたけど、門の衛兵に追い返されたわ。理由は言ってくれなかった。騎士たちは胸壁の上で前よりも忙しくしているし、門はもう何週間も通行止めよ。攻城戦になるの?私がここで働いている間、攻撃されたことなんてなかったのに。そんなことが起きるなんて、お父さんは何も言っていなかった。どう思う?

ガブリル

活動報告:西ナルシスの採掘に関する懸念Operations Report: West Narsis Mining Concern

報告者:アルヴェン・ナドゥス監督官

進捗には期待が持てます。鉱石の採掘は約53パーセントの効率を維持しており、当初の予想を上回っています。最先端の繊細な技術を用いることで、我らが地層術師たちは当地に横たわる大鉱脈を感知したと述べています。これが本当なら、この鉱山は長期にわたって高い生産レベルを維持できると期待してよいでしょう。

近い将来に対処する必要があるかもしれない、小さいながらも予期せぬ問題に遭遇しました。鉱員たちから、彼らの言葉によると「呟き」が聞こえてくるという報告が出てきているのです。鉱員の主張では、声は鉱山内部のどこかから来ているそうです。当初、誰かが鉱山の奥で迷って出られなくなったのかもしれないと思いました。しかし徹底的な捜索の結果、労働キャンプの範囲外まで降りていった者がいるはずはないという結論に至りました。

私自身は、この呟きとやらを耳にしていません。私が普段から色々と任せているある鉱員に尋ねたところ、彼は次のように説明しました。

「俺たちが仕事してる時は、鉱山を叩く音が周り中に響き渡ってるだろう?大抵の場合、それ以外の音は聞こえない。でもそのうち、そういう音の端々から、微かな囁き声を聞く者が出てくる。最初、俺はエンダノルがふざけてるんだと思った。あいつはそういう奴だからな。だがあいつも誓って声を聞いたと俺に言うんだ」

「深く掘り進むほど、囁き声も大きくなっていった。岩の中から沢山の声が聞こえたが、何を言ってるのかは聞き取れなかった。でも怒っているのは分かったよ。俺まで腹が立ってきちまうこともあった」

大変残念ですが、鉱員のうち数人は感覚を制御できなくなったため、現場から外されました。ある者は悲鳴を上げ続けて止まらなくなり、煎じた薬草を飲ませてようやく落ち着きました。また別の者は気絶するまで石の壁に頭を打ちつけたのです。2人とも作業の邪魔にならないように、労働キャンプから離れさせました。

すでにお察しのことと存じますが、私は行き詰まりのようなものを感じております。生産効率は高いままなのですが、作業を続けるにつれ危険が増しているように思えるのです。当面、ご指示をいただくまで、作業はそのまま継続することにいたします。

歓迎のメッセージMessage of Welcome

すべてのサークルのドルイドへ告ぐ。私はアークドルイド・ウィン。あなたがたが到着した際、正式に歓迎をする居留地のドルイドが不在の場合に備えて、ここにメッセージを残せることは光栄である。アーセンルート居留地への訪問に感謝する。あなたがたが必要なだけ時間を取り、自然と交流できることを願っている。

私たちは雄大なる霊魂を三体住まわせることができた。石、根、大気の霊魂だ。霊魂たちと交信し、その近くで瞑想することによって、霊魂たちと同じように自然の領域を体験する能力を授かる。それぞれの霊魂の台座は快適さを考えて作られており、静かで落ち着いた雰囲気を生み出すことによって、あなたの心を彼らと共鳴させてくれる。もちろん好きに霊魂を訪問してくれて構わないが、私たちは以下に記す順番を推奨している。

ストーンサイトの台座には、石の霊魂が辛抱強い観想の中に沈んでいる。その目を通せば、あなたが座る大地の下に眠るアースボーンズまで見ることができるだろう。石の霊魂と共に過ごす時間は消え去ることなく徐々に刻み込まれ、大切に保管される。

ルートスピークの台座は植物の根の歌で満たされている。ハーモニーは根の霊魂の動きと共に揺れ動く。根の霊魂と交信すれば、最も孤独な場所にあっても私たちは孤独でないことを思い出させてくれる。すべての生物の声が私たちの周りにあるからだ。

最後に、スカイトレマーの台座は最も遠く離れた、威圧的な台座だ。この台座は私たちの島の奥の端にある、崖の遥か上に置かれている。この霊魂を見るために旅するドルイドは、スカイトレマーの台座で長い時間を過ごす準備を整えておくといい。というのも、霊魂はしばしば周囲を吹き荒れる風のため、物質界に集中できなくなるからだ。風はニルン中からこの霊魂の耳に知らせを運んでくる。大気の霊魂は、言われたすべてのことを教えてくれる。これを宝とする者もいれば、重荷と捉える者もいる。大気の霊魂は嘘をつくことができない。残酷なまでに正直な存在なのである。自分が生涯に言ったことすべてと向き合う覚悟のない者は、この体験を省略することが推奨される。しかし、この霊魂は私たちに自らについての真実を教えてくれるが、真の教訓は私たちが人生のそれぞれの瞬間に込める価値である。

あなたがどの台座を訪問し、どの霊魂と交信するにしても、私たちはアーセンルート居留地への訪問で求めていた知を得られることを願っている。質問があるなら、迷わずこの居留地に住むドルイドに尋ねてほしい。そして、改めて歓迎する。快適な滞在になることを願っている。

記録#321 予想外の結果Log #321: Unexpected Results

月狩人の群れの公文書保管人アーナルデ 著

最新の実験は著しく期待外れに終わった。以前の実験は容認できないほど乏しい結果だったが、現在の手法はやや不幸な揺り戻しにつながった。

すなわち、群れの8人が死んだ。

うち5人の被検体は実験の重圧による神経衰弱を起こしたようで、暴力的な錯乱を起こした。私自身と仲間の研究者の保身のため、彼らを倒さざるを得なかった。彼らの力が大きく上昇していたことを考えれば、非常に不運だった。

被検体42を失ったのは同じような状況下だった。彼は群れの数少ないノルドの1人だったので残念だ。彼の妻を次の実験ラウンド用に確保したいとも思ったが、要請はミレンヌに却下された。私たちの親愛なるナンバー2が感傷的にならないことを強く願う。

うち3人の被検体は単に死んだ。原因はおそらく過労だ。私たちの審査が、実験を受けるには弱すぎる被検体を排除したことを望んでいたが、すべては排除できないようだ。これら被験者に判明した共通点は、すべてまとめる必要がある。

そして被検体46の事例だ。特定の任務の実行をためらうという理由で実験に組み込まれた若いカジートの女性。これは非常に興味深い事例だ。なぜ私の実験が被検体にヴィコサの強制力への免疫を備えさせたのか、今も分からない。

しかし、私たちの栄光あるボスがどれほど認めたがらなくても、結果に誤りはない。幸運なことに、私は被検体46の処刑を回避させられた。結局のところ、彼女がヴィコサの支配を打破する鍵となる可能性は、十分にあり得る。

しかし、その実験はまたの機会だ。ヴィコサが無敵のウェアウルフ戦士を求めているため、私は従わなくてはならない。少なくとも今は。

議長の記録:タグ・ドロイロックHigh Chancellor’s Papers: The Tagh Droiloch

元老院議長、アブナー・サルンの私的な記録より

第二紀536年、栽培の月10日

タグ・ドロイロックとは何者か?彼らはいかにして、リーチの民をルビーの玉座に据える力を得たのか?そして何のために?ブラック・ドレイクのダーコラクが故郷から雄たけびを上げる軍勢を帝国の心臓部まで引き連れてから丸三年が経ったが、未だにこれらの問いへの答えを探している。私の感知もスパイも、ダーコラクの不可解な勃興と、彼の手にリーチと帝国を明け渡した残忍な魔法使いたちについて、暗示以上のものを与えてはくれなかった。

知る限りでは20年ほど前、リーチの荒野である秘密の魔術結社が生まれた。結社はタグ・ドロイロックと名乗ったが、これはリーチの方言で「闇の大魔術師たち」という意味だ。リーチの魔術結社の大半と異なり、タグ・ドロイロックは魔女ではなく魔法を使う男性のみを構成員とし、すぐに最強のデイドラさえも召喚して使役する力を示した。タグ・ドロイロックは邪魔な敵対結社のいくつかをあっさりと壊滅させ、リーチの影の支配者となった。

何年もの間、タグ・ドロイロックは機を伺いつつ、彼らの名がもたらす恐怖と、不満を告げる囁きで無法のリーチを支配するだけで満足しているようだった。しかし9年前、ある飛び抜けて強靭で頭の切れるダーコラクという名の族長が現れ、リーチで支持を集め始めた。ダーコラクは学習の経験もなく、我流の魔術師として小さからぬ実力を身に着けていた。もっとも、彼は杖よりも剣を好んだ。タグ・ドロイロックはこの男が現れるのを待っていたとでも言わんばかりにブラック・ドレイクの味方に付き、結社の力と恐るべき名声を彼の支配に任せた。

タグ・ドロイロックの力添えにより、ダーコラクはリーチの敵対クランを屈服させ、忠誠を要求した。話したリーチの民は時としてデイドラの力と結んだ契約や、ここで繰り返すのも恐ろしい約束について語ったが、こうした物語の真実が何であれ、その結果は明らかだ。タグ・ドロイロックに受け入れられてから1年も経たぬうちに、ダーコラクは2千人の兵を指揮するようになった。2年経つうちには、その数が1万に増大した。そして、ついに自らの野心に相応しい力を手にしたと判断すると、ダーコラクはそのさらに数倍の勢力を無防備のタムリエルに向けて解き放った。その後の出来事は、歴史に伝えられているとおりである。

そしてダーコラクの権力掌握への道を敷いた後、タグ・ドロイロックは消滅した。ブラック・ドレイクがルビーの玉座に据えられると、この謎めいた魔術師たちは闇の中へと帰っていったのである。ダーコラクの信任厚き魔術師たちの一部、バールセルグ、ファオショル、そしておそらく老ウナグはこの秘密の結社のメンバーであった可能性が高い。しかしダーコラクがシロディールを征服して以降、誰もタグ・ドロイロックについて噂一つ聞いていない。ダーコラクを皇帝に据えることで、彼らに何の益があったのだろうか?まだ生きている者は何人いるのか?彼らは解散したのか、それとも何らかの新しい計画に従事しているのか?

この件に関して最も不気味なのは、ダーコラク皇帝は私がタグ・ドロイロックの秘密を探っているのをとっくに承知しているらしいということだ。彼は面白がっているらしい。ブラック・ドレイクは自らの支配に対する潜在的脅威を躊躇なく排除してきた。それなのに、あの男は私を元老院の議長の地位に就けたままでいる。私はダーコラクの暴政を改善するために自分の地位を利用しているが、その間にも奴を取り除く手段を探していることを、あの男は知っているはずだ。私としてはこう結論するしかない。ダーコラクは私を脅威だとは思っていないのだ。

奴の自信がプライドを傷つけたことは認めねばなるまい。

緊急の手紙Urgent Letter

ウンスパ

今夜はやめておけ。クサル・ヌルはお前が夕暮れに脱走することを知っている

チーセイが言ったと思うが、クサル・ヌルは見かけほど原始的ではない。奴には知恵がある。奴は老いたクロコダイルみたいなもんだ。幼生たちが運を試そうとするから、寝ている時の方が危険なのさ

奴に捕まれば、バラバラにされてワマスの餌にされるだろう。邪魔をするつもりはないんだ。奴が以前にやったところを見た。血だらけでとても見るに堪えなかった。あの叫び声で、今も目が覚める。

あと数日は待つんだ。お前の命はそれにかかっている。

ジュナル

緊急連絡Urgent Missive

敵の大群よりも先に、この伝言が届くことを祈っています。ファルクリースは陥落寸前です。備蓄は空になり、壁は崩れ落ちそうです。リーチの大群と我々の間には、辛うじて歩ける負傷兵しか残っていません。

この連絡で我々が救われるとは思っていませんが、報復がもたらされることを望んでいます。あなたの栄誉ある戦士たちをここに派遣して、リーチの民とミノタウロスをこの土地から排除してもらえるよう、膝を突いてお願いします。我々の仇を取り、ここを再建してください。我々の存在が、石の遺跡だけしか残らないことがないように。

—ファルクリースの従士エーリカ・スクジョラルモル

銀なる暁教団の命令By Order of the Silver Dawn

同志諸君

あまりにも長い間、私たちは月狩人の砦をヴィコサとその群れに明け渡してきた。あまりにも長い間、私たちは奴らがタムリエル全域に悪意を振りまくことを許してきた。あまりにも長い間、私たちは奴らが力をつけて成長するさまを座視してきた。奴らの目的は殺戮と騒乱の企てにある。

しかし、銀なる暁教団はもう引き下がりはしない。今がみすぼらしい犬どもを討ち、決着をつける時である。

今や月狩人の群れと称する奴らが組織を強化し始めたと信じる理由がある。奴らはウェアウルフの呼び込みだけでなく、周辺の無関係な者たちを誘拐し、獣と化す呪いもかけている。群れの数を必死に増やそうとするこの行為は、タムリエルにとって害にしかならない。

私たちはこの行為の継続を許せない。いかなる犠牲が生じようと、月狩人の群れを根絶しなくてはならない。

諸君はヴァリアン指揮官の指揮を受ける。砦の設計に関するこれまでの知識が侵入の助けとなるはずだ。彼の命令は、私の命令であると心に留めるように。

諸君に八大神のご加護があらんことを。

-アビティウス隊長

嫌だ!No! No! No!

見える!見える!〈緑〉が見える!もうほんの数歩だ。なのに足が。

足が動かない!

言うことを聞かず、〈青〉が入り込んできた!見える、見えるんだ。聞こえもする。もう叫んでいない。だが、叫んでいるのは私だ。

私、私。

この私だ。

元老院に関する帝国法令Imperial Decree Regarding the Elder Council

第二紀534年、薄明の月1日

征服法に基づきシロディールの皇帝にしてタムリエルの守護者となりしブラック・ドレイク、すなわちその名と家を担いしダーコラク陛下のご意向により、以下を帝国の全市民に告げる。これにより、元老院は次のごとく制定される:

豊富な経験と、すでに証明されたルビーの玉座への忠誠心に鑑み、総書記官アブナー・サルンは元老院の一員にして皇帝の首席顧問の任に留まるものとする。

レヤウィンのタルニアン・ロヴィディカス軍団長はニベン地方の代表使節の席と、元老院議長の職務を与えられることをここに定める。これはシロディール各地において卿が集めている、全般的な尊敬と栄誉を考慮した上での決定である。

ギデオンのエルトゥス・ヴァンダシアはロングハウス帝の統治を打ち立てるための貢献と支援により、元老院の職務を与えられる。

ブラックウッドのソフス評議員は、皇帝陛下の全面的な信任を受けブラックウッド代表使節の地位に留まるものとする。

イティニア評議員は、皇帝陛下の全面的な信任を受けコロヴィア代表使節の地位に留まるものとする。

オルランドゥス・プラヴィ評議員は国土からの追放処分を受けることをここに定める。不服従には死をもって応じる

ヘストライア・シラン評議員は四つ裂きの刑に処されることをここに定める。なお処刑は即刻実施される。

マルティアクス・グランシオラ評議員は火あぶりの刑に処されることをここに定める。なお処刑は即刻実施される。

セルガン・ユーラフス評議員は今回の議決に欠席した事実を鑑み、犯罪者、裏切り者にしてルビーの玉座の敵として名指されることをここに定める。彼を捕獲して白金の塔へ連れ戻せば、ドレイク金貨1000枚の賞金が与えられる。生死は問わない。

帝都のフェオマス・ルカスタ卿は、無任所代表使節の席を与えられることをここに定める。これはシロディール各地において卿が集めている、全般的な尊敬と栄誉を考慮した上での決定である。

レヤウィンのタルニアン・ロヴィディクス軍団長はニベン地方の代表使節の席を与えられることをここに定める。これはシロディール各地において卿が集めている、全般的な尊敬と栄誉を考慮した上での決定である。

トロール砕きとも呼ばれる、歯を奪う者ケルガンは、無任所代表使節の席を与えられることをここに定める。これは陛下の意志を実行に移すことにかける大いなる情熱と、最近における陛下の遠征での様々な戦闘で彼が行った、数多くの荒々しき行為を考慮した上での決定である。

以上の決定を記し、周知させよ。

現実的になろうTime to Face Reality

パイター、もう1ヶ月だ。彼らは戻ってこない。騎士には監視されるようになった。砦の雰囲気は感じているだろう。ここでは何かがとてもおかしい。

台所で捌かれる豚のように、ここでずっと待っているのか?この要塞から生きて出る唯一の方法は協力することだ。計画を泉の側に残しておいた。

読んで理解したら、焼いてくれ

古代の碑文Ancient Inscription

異形を元の場所へ帰す手段が我々に欠けている。そのため我々は異形が起源の地へ帰る時が来るまで、投獄することにした。十一の力がこの者の道を照らし出さんことを。

後に続く者への警告A Warning to Those Who Follow

こういうメモは普通、何から始まるものだろうか?冒険物語では死に瀕した著者が深刻そうに自分の名を言い、危険極まる状況にどうして巻き込まれたかを説明するところから始まる。「私の名はギベリル。残酷な風により、この破滅の運命へと導かれた」といった具合だ。

正直に言おう。私の名を記したとしてお前が知るはずはないし、興味もあるまい。これを読んでいるということは、お前もこの忌々しい島に閉じ込められたのだ。だからお前がこのメモを私の家族に持っていくことも期待できない。つまり素性など話しても無意味だ。

だから、最後の紙束でここに警告を記しておく。不快なハドリッドどもはもう見ただろう。我々もだ。隠し戸を通ってここを見つけた時は、安全な場所で体勢を整え、作戦を立てられると思った。アトゥネインはそこら中の穴やドワーフのコグに指を突っ込んだ。それであのコンストラクトが作動して、彼女の両足を切り落とした。あっという間のことで、うめき声をあげる暇もなかったほどだ。モリニレはそいつを叩き壊すために片手を失った。私は腕が折れたらしい。

要するにだ。お前が穴に入ってこのメモを見つけたのなら、とにかくドワーフの機械に触るんじゃない。特に星が描かれたキューブは避けるんだ。好奇心の代償はあまりにも大きい。

我々は脱出する手段を見つけるため、島の探索を続ける。お前がこれを読む頃には、とっくに逃げ出していることを願おう。

港の衝突に関する報告Report on the Dock Crash

作業長、

西の港からあの煙を発する残骸を取り除きました。おがくず10袋と木製の荷運び台1つに燃え移りましたが、港自体は守りました。

オブリビオンが直々にあの船を吐き出したに違いありません。うちの乗組員は港に落ちてきた雷の数をまだ数えています。帆が全部松明になってしまったほどで、切り落とすしかありませんでした。船には誰一人見つかりませんでしたが、船体からはまだボートがぶら下がっています。黒焦げになって。

この船を襲った何かに突き落とされたか、あるいは炎から逃れるために自分から海に飛び込んだか、どちらかでしょう。

船の名前さえ判別がつきません。この呪われた船を沖の外に出して、沈めてしまった方がいいと思います。

黒のオリンの日誌Journal of Orryn the Black

残念ながら、デイドラの獣を保存する試みは行き詰まってしまったようだ。最後にはいつも、オブリビオンの引力が勝利する。この媒体における私の仕事は氷の彫刻に似ている。束の間の美しさしか持たない。
~~
疎遠になった仲間が別れた後に残されたものを眺めるように、見慣れた退屈がやってきている。こういう時には、ドラウグルの長い休眠が羨ましくなる。
~~
私が退屈しているのを見て、野心的な従者が主のために気晴らしを探してくると請け合った。彼女は私に、無味乾燥なドゥエマー史の本を持ってきて時間を潰すよう言ってきた。私は彼女の死体を乾燥させ、抜け殻になっていくのを見る方が楽しいのではないかと少しだけ考えたが、彼女の表情が自信に満ちてニヤニヤ笑っていたので、許してやることにした。
~~
リザベットは役に立った。彼女が持ってきた本は、空想的な伝説についての一片の真実を私に示している。著者は牙の巣と呼ばれる、長く失われていた遺跡を最近訪問したと主張している。この埋葬地を見てみよう。
~~
私に従う者たちの多くは今、牙の巣を探して竜牙山脈を巡っている。あの歴史家が与えてくれた手掛かりがあっても、かなり大変な作業だ。それでも新たな目的ができたことで、忍耐力も増している。
~~
この数ヶ月の探索の間、私はドゥエマーとドラゴンについて多くの記録を収集した。彼らと私の野心はそれほど異なっていない。我々は皆違う道を選んで探求を進めたが、生存より熟達を重視する点ではそう違わないだろう。彼らが辿った運命を考えると、同じ轍を踏みたいとは思わない。
~~
ついに牙の巣が手の届くところまで来た。払った犠牲は極めて軽いものだった。信者数十名の命が危険な山脈によって失われたが、彼らには予想した通り、新しい役割がある。
~~
この場所は見事に荒廃している。幾千の骨がボロボロになった広間に散りばめられている。一部は砕け、黒ずみ、一部は化石になっている。絶滅と恐怖の記録だ。この展示の重要作は、この中に見つかるのだろうか?
~~
さて、ここで予測しなかった展開があった。牙の巣は完全に無人な訳ではなかった。我々の真っただ中に、とても特別な不法居住者がいた。あのドラゴンがまだ生きて呼吸をしていた時代に遡る古代のリッチで、ドラゴンを倒した張本人の1人だ。もっと言うことを聞くようになったら、彼に教えてもらうことがたくさんある。
~~
あのリッチはここに滞在している間、憑かれたようにドラゴンの遺体を研究していた。結果を共有してもらえるのはありがたい。研究を私の方法に適用するのは難しくないだろう。私はすでに驚異的な展示を思い描きつつあるが、あのリッチと仲間たちとの会話で、一つ欠けている要素があることが明らかになった。このドラゴンは生きている時、ある聖職者を支配していて、その女大司祭が行方不明らしい。彼女を手に入れなければならない。

子猫の遊びをやめろ!Enough Kitten Play!

プルーティへ

頼むから滑り石を動かさないでくれ。当直に飽きたことは知っているが、この門を開くのは大きなキューブだけだ。君の血族の多くは君のように門を通ることはできず、我々の物資も通過できない。

滑り石はより大きな謎の一部かもしれないが、太古の猫の謎に関わる意味はない。サンジーンが望むように、杯を満たして命を味わえばいい。この聖堂のほとんどは廃墟だ。壊れた玩具で遊ぶべきではない。さらに言うと、我々を巻き込まないでくれ。

クンダビ

最後の警告Your Final Warning

まだ生きているだろうな。私は死んだ。というより、もうすぐ死ぬところだ。

最初の警告は決まり文句への軽蔑から始まった。腹から血を流しながら最後のメモを書くのは、これ以上ないほど陳腐だ。残念なことだ。

とにかく逃げろ。浜辺に戻れ。太陽と砂のあるところで残りの日々を過ごせ。こんな暗闇で死ぬのは恐ろしい。最期が近づいて、涙を抑えられない。

声は無視しろ。あれの挑発に乗るな。とにかく逃げるんだ。

もう疲れた。

死の準備の成果Cadaver Preparation Findings

目下の計画には適用できないが、主は蘇生の前に一部の組織を注意深く取り除いておくと、より強力で順応性のある検体ができることを発見した。

内臓の多くはほとんど何の機能も果たさず、死体を重くするだけだ。また皮膚はそれなりの防護になるが、腐敗の温床になることが多く、より有用な組織に拡散してしまう。

それに対して靭帯と筋肉は、傷がついていなければ耐久性、安定性、運動能力を大きく向上させる。

ドラゴンプリーストを守るドラウグルの衛兵たちがなぜ蘇生の前にミイラ化されていたのか、これで説明できるかもしれない。

死は笑いごとではないDeath is No Laughing Matter

スキーヴァーの魂をセンチタイガーの死体に縛りつけ、そいつをマンモスの死体の中に埋めた者へ。見つけたら、こいつに食い殺させてやる。

磁鉄鉱を探せ!Find the Lodestones!

まだ浮かんでいる船はどんなものでも叩き壊せ。建設途中でも、壊れかけでも、海に浮かべたことがなくても何でもいい。磁鉄鉱が見つかるまで、すべての甲板を引きはがさせろ。

従徒が死んだら、港をうろついている残りの膨らんだ死人と一緒に働かせろ。見つけられる限りすべての磁鉄鉱を手に入れろという命令だ。だから大量に持ち帰らないと、俺たち全員がドレッドセイル女王に罰せられるぞ。

実現された野望Ambitions Realized

この地を放棄したスパイア評議会は愚かだった。奴らにはドレッドセラーに政治的な都合以上の価値があると見抜く力はないと思っていた。私だけが、この場所の資源としての価値に気づいたのだ。手つかずの力の源泉だ。目覚めの炎の協力を得た今、ここはその潜在力にふさわしい目的を得た。

あの信者どもは見事な装置を思い描いたが、夢を現実に変えられるのは私だけだ。私ほど死霊術とデイドラ魔術を理解しているものはこの世界に誰もいない。この抽出と精製のプロセスを考案できる者など他に存在しなかった。この狂気の装置を実際に動かせる者は、誰もいなかったのだ。

だがこれならうまくいく。そして私は、これから起こることを最前列で目にするのだ。

失われた自然の霊魂Spirits of Lost Nature

病んだ自然の霊魂の治療、隔離、再生に関するアークドルイド・メリエの記述

我々は自らの身を守るため、三つの不安定な霊魂に結界を用意した。結界へのアクセスは失われた自然の霊魂を再生するための訓練を受けた、ストーンロアのドルイドに限られる。

霊魂の苦痛で私の心も悲鳴を上げている。我々は霊魂と深く結びついており、彼らの領域の力に敬意を払っている。このように自らの聖域を奪われ、自然を守護するために生み出されたにもかかわらず、自然との結びつきを奪われた霊魂たち…その苦痛は、我々も味わう。

スカルデッドルーツ

元々はワイルドフラワー森の霊魂だったが、スプリガンの姿となって荒れ狂う野火の道に立ちはだかった。力は尽くしたものの森は焼けてしまい、この霊魂はスプリガンの姿に閉じ込められてしまった。

今、この霊魂は炎と嵐の白昼夢の中を生きている。いずれは霊魂の嘆きの熱を鎮め、焼け焦げた根を冷たい水に浸したいが、今のところこの霊魂は近寄る者を相手構わず攻撃する。調理のための火を起こす時は注意せよ。この霊魂の秘密の領域は、スカルデッドルーツの悪夢の記憶にある炎に接近しているからだ。

ルテア

かつては地下深くの川のネレイドだったルテアは、頭上の世界にいる定命の者とはほぼかかわりを持たなかった。ルテアは失われた自然の霊魂の中で最も古く、定命の者の血管を流れる血の歌を聞いて、解放しようとしている。血を抜けば定命の者が永久に動かなくなることを、彼女が知っているのかどうかは定かではない。

当初、彼女をなだめるため洞窟内に水たまりを作ろうとしたが、川のネレイドにとって水たまりでは不足すぎるようだ。現在は彼女が故郷と呼べる川を作れるようになるまで、支援の試みはすべて停止することになっている。その時が来るまで、ディープルートに水を輸送する際は注意せよ。

ジョドロ

失われた自然の霊魂の中で最も新しいのは、ジョドロという愛称で呼ばれる大地のインドリクである。モーナードの伐採によって破壊された森に住んでいた。潮風の道にいる時が最も落ち着くようだが、ジョドロは毛皮がウッドワームに汚染されたかのように振る舞う。ジョドロは容易に気を許さず、出会うドルイドを無差別に突き刺そうとする。それでも、ジョドロには他の霊魂よりも見込みがあると思う。十分な時間が経てばジョドロの森は再生するかもしれないし、自然に備わった厳しい状況でも栄える力のおかげで、我々による再生の試みも不要になるかもしれない。とはいえ、潮風の道を歩く時は道を外れないようにしたほうが賢明だろう。

手掛かりの回収Picking up the Pieces

クインタスがかつて帝国図書館を歩くことが許されていたとは驚きだ。あいつの地所に残っていた記録の数を信じるなら、クインタスはシロディールの銀行並みに借りたら返さない奴だったらしい。相続の件を片づけた後も、誰も回収に来なかった。だから今では私のものだ。

* * *
この埃だらけの箱の山の中には、世界中のどこよりもドゥエマーについての情報があるかもしれない。本をかき回して何年でも過ごせそうだが、クインタスがヴォレンフェルへの探検以前の数ヶ月、何をしていたのか興味がある。

* * *
クインタスは本当に私がいないと何もできない奴だった。「ガーディアン・アイ」についてのメモに、私が知らないことは何も書いていない。これが最後の手掛かりだったのに。

* * *
数ヶ月クインタスの難解な考察を調べたのは、完全に無駄ではなかった。私があいつに強制して「ガーディアン・アイ」を入手させる前に、それよりもさらに歴史コミュニティを震撼させる可能性を秘めたアーティファクト、狂気の岩についての情報を集めていたのだ。

* * *
憤怒の石だ。クインタスの翻訳が雑だった。

狩りの栄光The Glory of the Hunt

ウィレス・ストリギデイ 著

狩りの栄光。私は最初からそれを知っていたし、感じていた。私の矢が獣の心臓を貫いた時、その血が胸からゆっくりと流れた。私の短剣が敵の頭蓋骨を刺した時、敵の目をのぞきこんだ時、命がゆっくりと色あせていった。獲物の断末魔の叫び、金切り声、嘆願という美しい交響曲。

私は最初からハーシーンの子供の1人だった。苦労して仕留めた勝利の感覚、狩りのスリルに勝る喜びはない。そしてハンツマンはこれを見ると、血まみれの歯で微笑む。

私の内蔵に剣が突き刺さり、死にかけていても恐怖はなかった。魂の行く先は知っていた。

ハンティング・グラウンド。永遠の狩り、永遠の栄光の森。毎日、私は姉妹に加わり獲物を追う。毎夜、私たちはハーシーンの壮麗な星の下に横たわり、過去の勝利の物語を思い出す。ワインは芳醇で、肉は新鮮で、私たちが病気にかかることはない。主人は楽園を与えてくれた。

間もなく、ハンツマンがグレートハントのためによそ者を集める。私たち狩人の全員にとって、彼の領域内での心躍る時間だ。私たちは新人たちを試し、ハーシーンの恩恵に相応しいかどうかを確かめる。倒れようが構わない。彼らは私たちがハンティング・グラウンドと呼ぶ故郷、この楽園に留まるだけだ。

囚人からの没収品Confiscated from the Prisoner

配達人が運んでいた小包を隠していたわけではないが、私は彼の身体検査を行った。この男は伝令として明らかに不自然で、万が一ということもある。以下が没収した品物だ。

– 覆いをかけた小包の中に、封蝋付きの手紙が1通とメダルが1枚
– 銀のフラスコ瓶1本(安酒が少し入っていたので、海に捨てた)
– 革のコート、シャツ、ズボン(汗と酒、そして十種類以上のコロンや香水の臭い付き)
– 鋼鉄のサーベル1本(特別なものではなく、状態から判断するにほぼ威嚇用だろう)
– 未完成の詩が1つ(頭の悪い相手を誘惑する時に言うようなくだらない詩)
– 少量のナッツや生野菜 (捕獲される前に船の食堂でポケットに詰め込んだのだろう)

この男には打撲傷がいくつかあったが、誘拐の際に抵抗はしなかったので、その時受けたものではないだろう。あえて推測するなら痴情のもつれか何かが原因だろうが、私の知ったことではない。

書記の八分儀Octants of the Scrivener

1.知識は力だ。可能な限り獲得せよ。
2.成果を記録せよ。得られた知識も伝達できなければ無に等しい。
3.影響を及ぼすな。ある物事を知りながらその結果を知らないことは無知を意味する。
4.道の導くところへ行け。遥か彼方の地に隠された知識がある。探し出し、書き写せ。
5.余すことなく文書化せよ。愚かな定命の者の頭脳には、秘密の王にとって何が重要か判別する能力はない。類まれなるものを逃すより、すべてを記録したほうがよい。
6.解釈は不要だ。知る者は、目と耳と文書を評価する。定命の者の頭脳ではない。
7.知識を安売りするな。知識の通貨を扱わぬ者はその価値を知らない。
8.何よりも、勤勉に観察を続けよ。眠った瞳には何も見えない。

処刑状Letter of Execution

ハメリン・ヴィドー、

汝はここに殺人、死体切断、およびアーケイの掟に対する冒涜の罪によって裁かれる。

ブシャール・ドレル男爵の命により、汝は死に至るまで首を吊られるものとする。

八大神よ、慈悲を与えたまえ。我らに与えることはできぬのだから。

焼け焦げた聖典Burnt Scripture

ジョーンとジョーデは目を閉じる
夢を見ぬ死の眠りに落ちる

下に広がる世界が
永久に闇へと失われ

そして真の月が支配する時まで

生垣の迷宮The Hedge Maze

初めはウェアウルフたちに食べられると思ったが、この庭園に放り投げられただけだった。もし私が生き残れば彼らと同じ姿に変えると言われた。どちらがよりひどい運命かは分からない。恐ろしい死か、彼らのような怪物になることか。

私はもう数時間ほど隠れているが、ずっと後ろから大きな足音が聞える。数分ほど前、私はあの獣の頭頂部までちらりと見ることができた。ここにはラーチャーがいて、私を狩ろうとしている。

もし私が見つかれば、もし私が今殺されれば、少なくとも私の人間性は保たれる。そう自分に言い続けているが、やり通せそうにない。同じ考えばかりが何回も浮かんでしまう。

私は死にたくない。

逃げ場はない。生き残ることはできない。私の魂にステンダールの慈悲がありますように。

-ラントイン・ビューフォート

深紅の誓いを刺激するなLeave the Crimson Oath Alone

ドレモラの戦士たちは諸君を守るためにここにいる。しかし深紅の誓いはこんな濡れそぼった穴で見張りをしているより、タムリエル中を略奪して回りたがっている。

彼らを作業員扱いして刺激しないように。

挑発すれば、流血に飢えているのを知ることになるだろう。それが諸君の血であっても関係ない。

蘇生検体の収集Reanimation Specimen Collection

主の要請により、我々は適当な生きた動物と死んだ動物の検体を回収することになった。これは研究にとって決定的に重要なものだ。この任務に当たる態度には気をつけるように。

大型四足獣の検体が望ましいが、どんな生物からも一定の意義ある結果が得られる可能性はある。マンモスかワマスは価値が大きいため、相応の報酬が出る。だが危険なので、おそらく諸君の大部分の手には負えないだろう。

蘇生実験の成果Reanimation Experiment Findings

我々の蘇生術師は、一般的な動物を使って興味深い実験を行っている。この獣たちの解剖学について理解を欠く者は、その創造を不格好で歪んだものと感じざるを得まい。死体には順応性があるが、より進化した存在が持つ体と魂の強い連結が欠けている。大部分は認知機能を欠いた心なき人形であり、指示には完全な集中が必要になる。高度な技術によって行われた儀式でも、せいぜい生前に似た本能を持つアンデッドを生産できるにすぎない。残念ながら、この生物たちは大抵の場合、自分の状況を制御不能なほど不快に感じてしまう。

霜が降りた日記Frostbitten Journal

輝ける淑女よ!あなたの最大の祝福を受けた勇者ウマリルが、単なる人間に滅ぼされました。なぜ?あの異端者どもが、なぜ泥の中から這い上がったのか?なぜあの者たちは生まれた時から着けていた軛を投げ捨てたのか?なぜ奪われた者たちが我らの聖堂にて、あなたが選ばれた人々を手中に収めるのか?これはボエシアの策略?あるいはモラグ・バルの?狂気の陰謀家よ、嘘つきどもよ!なぜこのようなことが?

光の淑女よ、悲嘆にくれて取り乱した罰として、私は自分の手を痛めつけてやりました。至らぬしもべの無礼をお許しください。私は常に忠実だということをご理解ください。あなたの意志は私の意志、そしてあなたの御業は私の知るべきものではないのですから。

新たな知らせが届いた。人間たちが鎖を解かれた獣たちのごとく、祖先の聖堂から漏れ出て、まだ我々の血を渇望している。奴らは我々を貪るために放たれた忌まわしきナミラの軍勢だ。近隣の王国のいくつかはすでに奴らの侵攻により陥落し、他の王国も反逆者どもに屈服している。臆病な日和見主義者どもめ。私はもうすぐ、ヴァイルとの契約を果たすだろう。

他の王国は溺れつつある。絶望してもがき回っている。ナリルモルは憤怒の石を探す最後の計画があると言うが、たった1つの道具にこの戦争の流れを逆転させる力があるのだろうか。我らが勢力は力を合わせ人間に対抗すべきだというのに、伝承を追いかけてどうする!

他の者たちは耳を貸さない。一致して人間に対抗すべきなのに、その意志がない。すでに部隊がドゥエマーの街を攻囲するため北東へ進んでいる。彼らが憤怒の石を持っているという証拠さえないのに。敵は今いるだけで足りないとでも言うのか?

淑女のお言葉があった。あの方が我々に注意を向けてくださったのは、これまで一度だけ。戴冠式の時だ。あの方は深刻な知らせを授けられた。我らの帝国は崩壊すると。あの方の意志のために保ってきたこの美しい王国が、我々の墓になるのだ。だが全てが失われたわけではない。我々は忠実で純粋であるため、あの方は大いなる秘密を打ち明けてくださった。あの方は我らに憤怒の石の片割れを授けられ、保管せよと命じられた。石は我々と共にここへ埋められるだろう。あの方が再び手にされる時まで。

輝ける淑女よ、我々はあなたに頂いた贈り物と、この聖なる責務に値するよう努めます。我々は常に石を見守り続けます。

淑女の目的は一瞬たりとも疑ってはいないが、それでも近隣の諸王国が無駄と分かっている希望に必死にしがみつくのを眺めていて、辛いことに変わりはない。憤怒の石は決して見つからないと伝えることはできない。彼らが救済を求めてあらゆる隙間を探し回るのを見ているしかない。哀れな愚か者たちよ。あれはお前たちのものではない。ただ逃げればよいものを。

反逆者どもがついに我々の壁に達した。上の要塞も遠からず崩れるだろう。頭上で進行している攻囲の振動により、街の地下室はすでにひび割れ、崩れてきている。我らが民の目には恐怖が映っている。彼らに慰めを与えられないのは心が痛む。お前たちの犠牲が忘れられることはないだろう。我らが淑女が、お前たちの記憶を長く継がれるようにしてくれるのだから。

人間がガーラス・マラタールに足を踏み入れることはない。ここが我らの墓になる。封印の時は近い。

即席の弔辞Improvised Memorial

スロム・ウルフガルドはここで死んだ。敵は岩だった。2週間戦ったすえに敗れた。戦いが歌い継がれることはないだろうが、ソブンガルデは迎え入れてくれるはずだ。

退職願Letter of Resignation

ドゥモクめ!私は廊下を掃除し、ダニを退治し、棚のカビをこすり落とす役目だった。そのために雇われた。領域を飛び回る話なんか聞いてない。書記の館はファーグレイブと同じだと思っていた。どのデイドラ公ともつながらず、領域の間を移動するための道だと。

私の持ち物はバケツとモップと、ほうきと、ブラシと、石鹸水だけだ。そんなもので蜘蛛の巣や壁に生えたキノコをきれいにできるか?無理だ。しかも書記どもは忙しすぎて埃の一つも掃除できないという。私たちがいるのは地下の洞窟だ。そこら中が土と埃まみれだ。書記どもはテーブルの上に本を開きっぱなしにしたあげく、図々しくも、なぜ本が汚れまみれなのか聞いてくる。

あの天球儀のことなど知るか。銑鉄のスパイクを掃除しようとしたことがあるか?もう手を15回切った!

昨日はクランフィアが椅子の上で排便した。排便だ。あいつらにそんなことができるとは。できないとしたら、あのクソッタレは一体どこから…

いや、そんなことは考えたくもない。仕事に対する報酬は貰えないかもしれないし、書記どもは部屋代ぐらいの掃除はしていくだろうと考えているかもしれないが、私は次の裂け目からここを去る。行き着く先がシヴァリング・アイルズでもかまわない。辞めてやる。

石鹸水の王、トリラム・ファラシは退職して家に帰る。次のモップマスターは自分で探せ。

大いなる傷痕The Great Stain

戦争が大地を血に染め、世界に爪痕を残すのと同様、霊魂の世界もまた漏れ出した定命の者の命で満たされる。戦争は血に染まった泥の罠が兵士のブーツを引きずり込むほど確実に、魂の沼を作り出す。そのため、多くの戦場は自分が命を落とした場所から抜け出せない、迷える魂の住処になっている。もっとも、広範囲に死をもたらす要因は何であれ似たような結果を残す。洪水、疫病、飢饉など。特定の場所に十分な定命の苦痛を生み出せば、それは数十年もの間ムンダスに傷痕を残す。

大量虐殺が沼を生み出すとすれば、我々はドレッドセラーの内部に井戸を掘ったと言えるだろう。虐待と拷問、死がこの牢獄をあまりに深く染め上げたため、傷痕はもはや消えることがない。とはいえ、それは利用できる。純粋な死霊術の力の貯蔵地が、ほぼ無尽蔵に使われるのを待っている。私はこの貯蔵地に何年もの間、多大な労力をつぎ込んできた。無駄にするつもりはない。

第二の警告A Second Warning

くそっ、モリニレが死んだ。実に凄惨な最期だった。真っ二つにされた後、壁から出てくるエネルギービームに切り刻まれた。あの馬鹿は自分の身のこなしを過信して、避けられると思ったんだ。石につまずいて最初のに当たりやがった。

ドワーフのセキュリティ感覚は実用を越えて残忍なジョークの域に達している。あんな装置を発明した者の頭の中を想像してみろ。あのビームのような高密度の魔法エネルギーが使えればどれほど役に立つだろう。なのに発明者は、装置をこんな辺境の島に隠してしまった。何を守っているのか知らないが、苦労に見合うはずがない。

これを読んでいる者は、もうあの声を聞いたか?この拠点の奥深くから響き、奥へ進むたびに我々を嘲弄してくる声だ。一言聞こえるたびに、心につららを打ち込まれる気分がする。ここは一体何なんだ?マーラよ守りたまえ。

タルディルウェンは先へ進むべきだと言っている。ここでじっとしていても死を待つだけだと。いいだろう。私はもうこれ以上知りたいとは思わないが、アンデッドに臓物を食われたくもない。彼女に従おう。

今となっては、メモを書くのは気分を落ち着けるためだ。もう未来の生存者に警告するつもりなどない。自分の正気を保ちたいだけだ。

脱走計画Plan to Escape

この洞窟にはベラドンナがある。多くはないが、十分だ。いつもの場所で会おう。

蜘蛛の糸に覆われた日記Web-Covered Diary

ここのベールはもっとも厚い。我々と世界の間の境界はあらゆるものについて回り、闇に実態を与えている。光を寄せ付けず、冷気をもたらしている。心地が良い。

この洞窟は我々にとって理想的な環境だ。シルケンリングは駆け出しの連中を助けるために血を与えてくれた。偉大なる母の影で育ち、彼らは大きく強く育つだろう。我々が世界に解き放つ時まで。

私は真に紡ぎ手から祝福されている。私がベールに呼びかけると、私の意のままに動くようになった。私は自分の網を編んだ。それを通して私は我々の種族の動き、卵の鼓動、怯えた獲物の震えを知ることができる。レースの女公が私にこの領域を与えてくれたのは素晴らしい判断だった。

これは面白い。何かが今までに感じたことがないような形で、影の平穏を乱している。侵入者だ。彼らは罠を引き裂いているが、持ち応えられるだろうか。それとも、私の餌食になるだろうか?答えが楽しみだ。

珍しい野兎An Unusual Hare

マヴェルド・ベアファング 著

私はハーシーンが選んだ野兎についてあまり知らないが、確かに分かっていることもある。それは賢く、素早く、追跡がまず不可能だということだ。このグレートハントは、誰も達成できないほど難しいのかもしれない。

さて、私は認めなくてはならない。私にはインドリク狩りの経験があまりない。事実、そのような経験はまったくない。サマーセットはインドリクが見つかる唯一の場所であり、ハイエルフは国境を解放したかもしれないが、私の毛深い皮が向かうのは当分先だ。どういうわけか、アルトマーが狼への変身能力に恵まれた者たちを歓迎するとは思えない。

だが、この獣は本当におかしい。足跡を辿ってもその先は行き止まりであり、絶壁だ。獣の臭いを掴んでも、数分後には途切れる。その上、時々、見られているような気がする。敏感になっているだけだと思いたいが、直感を無視するにはあまりにも長く狩りをしている。

インドリクの痕跡には足跡以上のものがある。焦げた植物、氷に変えられた水。この獣には何らかの属性の力があるに違いない。この獣を仕留めたら、牙と爪の他にも対処する必要がある。もちろん、これはハンツマンの挑戦として相応しいものだろう。

もう近い。獣が疲れてきたのかもしれない。ただ、今は考えざるを得ない。狩られているのはどちらか?

任務報告:成功Mission Report: Successful

記録しよう。私、ティリッシュはヴァリナに命じられ、裂け目を通ってデッドランドまで旅をした。この旅は遠くまでかかり、歩くたびに靴が燃えた。目的地は明確だった。レイジングコーストだ。バーンにある二度と訪れたくない場所だ。それでも、標的は見つけた。計画と手段を備え、目的の達成のためならいつでも求めに応じる獣物だ。狡猾で悪辣ではあるが、創造性のあるものは生み出さない。私の獲物は下級デイドロスで、いずれ知識の悪魔にも匹敵するコレクションを集める者だ。

ヴァリナに告げられた場所でそれを見つけた。高貴な夢を持つスキャンプで、それを見通すだけの先見の明がある。送り出された目的を達成したのは非常に誇らしい。道を誤ったミクゲトを殺害した。これでは止まらないかもしれない。ミクゲトの目標はまだ達成されていないかもしれないが、流れに影響を与えるため私ができる精一杯のことだった。ヴァリナがやらねばならぬと言う通りに。

反抗的な落書きDefiant Graffiti

絶対に屈するな。それが奴らの狙いだ。気を強く持て。好機を待つんだ。ツルハシを振り続けろ。奴らの頭蓋骨に穴を開ける日までな。

部族の恩恵A Boon for the Tribe

ウッドエルフ狩人のローヒエル 著

父が私を加えたことが信じられない!父がグレートハントに同行させる戦士を選んでいる時は、ほとんど期待していなかった。イフレにかけて、私に弓や槍の能力はあまりなかった。

でも父に言われた。「ローヒエル、何を狩るのであれ、倒す前に追わなくてはならない。お前は部族で最高の追跡者だ。もちろんお前に同行してもらう」

私が?最高の追跡者?その、優れているのは分かっていたけれど、最高だなんて!たとえそうでも、グレートハントで父に協力するためには、私のあらゆる能力が必要だとわかっている。

私たちが成功することをただ望む。日に日に部族が飢えている。狩りに失敗して戻る時、立ち止まって目を合わせるのは厳しい。時々、ひょっとしてハーシーン様の寵愛を失ってしまったのではないかと心配になる。

まあ、主人の寵愛を取り戻すとしたら、グレートハントで勝つことしかない。私は父が勝てるよう協力するだけ。部族の未来のため、そうしなくてはならない。

復活者フィンボアFynboar the Resurrected

私と共に歌ってくれ、嘆きと喪失の歌を
歪められた理想と、打ち捨てられた運命の歌を
嵐がインクの風となって吹き荒れる
学ばれた教訓と、隠された秘密の歌を

多くの男たちと同じように、私には父がいた
そして確かに、彼は高名な戦士だった
彼の勇気と胆力は、私の母も保証した
強大なるフィンボア、それが彼の名だった

父は心の中に秘密を隠していた
運命との取引により、自らの最期を知っていた
兵士ならば技をもって容易く相手にできたが
魔術を相手取れば殺されることを知っていた

終わりを恐れるな、我が子よ
大いなる狩りが、野生からの呼び声と共に終わる時
大いなるニメリアがお前の魂を拾い上げ
彼女に守られ、甘美なる暗闇へと旅するのだから

私にとって、父は暖炉の火のようなもの
大きく暖かく、危険な薪の炎
全世界にとって、父は死の影であり
敵はその刃から逃げ惑う

だがある忌まわしき日、逃げぬ者がいた
父に適う者など誰もいなかったのに
外套を着た人影が煙に包まれて現われ
父が内に秘める恐怖が爆発した

父が言っていた、強大な魔力を持つ魔術師
父の高名なる技にも匹敵する存在
魔術の力を前に、フィンボアに何ができただろう
戦い、悲劇の結末へと向かう以外に?

魔術師の呪文が空を切り裂き
フィンボアをニメリアへと送り届けた
魔術師は我らをただ蔑み、笑った
その呪文は父の喉を一瞬で掻き切ったから

父の生命なき抜け殻が冷たくなるのを見て
私の中にある計画が生まれた
霊魂の女王が父を連れ去ったのなら
インクの海の先までも、私は泳いでいこう

我らが伝統に従い、私は父の死の象徴を
木から削り出し、肌身離さず持った
疑いの念が生じるたびこれに目をやった
人生に偶然などないことを思い出すために

祈りを極めるのに数年を費やした
だが 闇の魔術により短縮された
ハルメアス・モラが我が呼び声に応えるまで
そしてインクの大雨の中に姿を現すまで

私は父の不幸な運命を彼に伝え
夜が更けるまで論じ続けた
空のすべての星が輝く中
私の叫びはついにデイドラ公に届いた

おおハルメアス・モラよ、汝のすべての本を探しても
我が嘆きを正す知識はないのだろうか
我が父は死に、私は彼の護符を持っている
彼を取り戻す術を示し給え、さすれば私にできることを教えよう

ハルメアス・モラは私の取引に関心を示したようだった
護符は彼にとって新奇であり、その点で彼は容易く説得された
彼はあまりにも暗い魔術の本を私に授け
それを使用するだけで私は印を刻まれるのだった

小さき定命の者よ、汝が知らぬことに注意せよ
汝は知識を増大させるものを求めた
望むとおりに使うがよい。だが本を読んではならぬ
その魔術が何をもたらすか、汝には知りえぬゆえ

彼の忠告は高く響いたが、すぐに忘れ去られた
私は本が与えてくれる死霊術の知識を利用したから
そこには死者を蘇らせる呪文が載っており
それが導くところへ私は従った

その次に起きたことは、私から言えぬ
私は自分が行ったことの記憶を、永遠に封印したい
私は成功したが、父は情愛を示さなかった
再会は想像したものと違っていた

彼は叫んだ、我が子よ、お前は死の抱擁から私を引き裂いた
最期の瞬間を過ぎて遥か後、私の生を再開させた
戦士の死は、正当に勝ち取られた結末
それともお前は、名誉を焼き捨てるべきものと思うのか

お前は私の戦いに敬意を払わないのか
自分がしたことを見よ、お前がもたらしたものを見よ
お前はロークの闇の心臓を拒み、私の休息を拒んだ
すべてはお前の利己心のため、お前が最善と思ったことのため

お前に従うことはできぬ、お前の墓に唾を吐きかけたい
お前がしたことは、一体何を救った?
人生の暮れに、戦いで朽ち果てた死体だけ
確かに、お前は真に私のやり方を学んだのだ

もう私は去り、お前には知らせない
私が再び死にゆくか
それともこの死のような生を送り続けるのかを
我が子よ、それがお前の定めだ

そうして父は私が追えない場所へと去っていった
私は足跡を辿り、山の洞穴を探った
だが父は吹雪の中へと姿を消した
我が父フィンボアは生きているのか、もはや知るすべもなし

腹を空かせた猫の呪いThe Hungry Cat’s Curse

超越者ヴィコサ 著

ヴィコサは狩りを愛していた。獲物を追う時、身体に走る興奮。獲物を睨みつける時の、強烈な心拍。矢が獣の心臓に刺さる時の、乱れた呼吸。

これほど大きな喜びはなかった。

当時、彼女は純粋な心と澄んだ意識を持つ定命の者だった。若かった。腹を空かせた猫が申し出を行った時、あまりにも若かった。彼が栄光を約束して手を差し伸べた時、あまりにも若かった。猫は力を約束した。

そして、ヴィコサは愚かにも彼に従った。彼を崇めた。彼を讃えた。

そのために彼女は呪われた。

彼女は狩られる者になった。恐れる者になった。いつも逃げ、いつも隠れていた。ハーシーンは彼女を狼に変えたのではない。それは違う。彼は彼女を野兎に変えた。永遠に狩られる永遠の野兎に変えた。

しかし、もう彼女は超越した。この者が恐怖に縮こまることはもうない。彼女は群れを作った。これまでになく大きく、強い群れを作った。彼女の前には軍隊がいる。この者たちを嫌う者に反撃の用意がある軍隊がいる。呪われた獣であるこの者たちのため、土地を手に入れる用意がある軍隊がいる。

腹を空かせた猫よ、お前はヴィコサを見ているか?お前は彼女の苦しみを、痛みを笑っているか?笑えるのも今のうちだ。タムリエルを手に入れたら、次はお前の番だ。

別れのメモFarewell Note

背中が折れた。やっと木をなめる時が来た

いつも農民として死ぬものと思っていた。葉に包まれ、黒い泥を塗られて。今や誰も私の歌を歌うことがなく、ヒストに埋められることもない。私はルキウルに死を迎える。仕方がない。

もし誰かがこのメモを見たら、故郷に帰れるよう私の名を風にささやいて欲しい。このような場所でさえ、風は葉を見つける。時間がかかるだけだ。

-シーサウス

捕虜による慎重さを求める警告Captive’s Discreet Warning

あの間抜けなフィランドが逃げ出した。目を合わせるな。奴らは見せしめとして、誰かに罰を与えるつもりだ!

捕虜のしわくちゃのメモCaptive’s Crumpled Note

誰か私の夫を見ませんでしたか?名前はエブランドです。背が低くて体は細く、優しい目をしています。彼らのせいで離ればなれになりました。それ以来、夫がどこにいるかまったく分かりません。私の無事を伝えてください。

捕虜の日記Captive’s Journal

マーシュにおいて、我々が日付を気にすることはない。そんなことはジェッカ・ワッツに任せている。しかし、ここマザッタンでは昼と夜を必死に数えている。そうせざるを得ない。最後に数えた時は、ここに3ヶ月閉じ込められていた。ここに部族が連れて来られた時、ジット・ザートは鉄のピックを私の手に押し付け、石の山を指した。言葉はなかった。狩人が舌を鳴らし、ジェスチャーで命令しただけだ。

ジット・ザートはほとんど話すことがないが、常に移動し、指さし、鞭打つことをやめない。樹液に酔っているか、悪いものに混乱させられているかのようだ。3ヶ月も閉じ込められていると、同じことを感じるようになっている。狂気だ。ここの樹液は毒だ。土は毒だ。ここにいると、シシスはただの記憶でしかない。命令、積み上げられた石、きれいな角が全てだ…連中は、働かせることによって川に背を向けさせようとしている。しかし、この街はジット・ザートにとっても牢獄だ。ナ・ケッシュがいなければ、彼らは野生化して遺跡からさまよい出し、死ぬことになるだろう。彼女はどこにでもいるがどこにもいない。彼女はヒストの口だという。ヒストの代弁をしているのだそうだ。これが本当なら、ここのヒストは私が見たこともないようなものだ。ヒストは病んでいる。我々は皆、その代償を血で払っている。