選ばれし5人

The Five Companions

アルディミオンの日記Aldimion’s Journal

実に奇妙な要請だ!

私は夕暮れ時の散歩で、裏通りにて軽食を取っていた。そしてその時楽しんでいたインペリアルの首が、金のメダルを着けているのに気付いたのだ。見てすぐに、黒き虫の教団の印だとわかった。これに気を取られていると、角のない何かが肉と骨に打ち付けられる鈍い音がして、世界が真っ暗になった。

目覚めると洞窟で椅子に縛られ、頭はほろ苦い痛みでズキズキとしていた。大勢のフード姿の信者が私を囲み、その目には明らかに殺意が浮かんでいた。私はそれを気に入った。

信者の1人は他の者とは違うように見え、リーダーなのだとすぐにわかった。彼は冷たいが落ち着いた振る舞いで、私をまったく恐れていなかった。

彼はアブナー・サルンと名乗った。私が彼の忠実な護衛の1人を夕食にしたことにいささか不満を抱いていた。彼の説明では、通常このようなことをすれば命がなかっただろうが、私のやり方とその…暴力的傾向を気に入ったそうだ。私を大いに有望だと考え、互いに有益な協定を提案したいと彼は言った。

黒き虫の教団に加わることに同意すれば、私は死んだ部下の代わりだ。市内の便利な場所にある地下の隠れ家に住み、そこでは十分な食事と黒魂石の事実上無限の供給が保証される。

この取り決めはよさそうに思えた。だがデイドラの支持者をからかうため、断ったらどうなるか訊ねてみた。その答えとして、サルンは私の足元にコールドハーバーへのポータルを開いた。椅子が揺れ出し、向こうに堕ちた連中の悲鳴が耳を満たした。これを聴くのは楽しいものだが、この身で体験したくはない。

言うまでもなく私は従うことを選んだ。それで今では、昼の内はこのつまらん洞窟を守ってのんびり過ごし、日が暮れると街をうろついている。悪い暮らしではない。実は死霊術の勉強まで始めたくらいだ。いつかサルンも直々に、細かな点を教えてくれるだろう。時が経てば分かる。時間なら私にはいくらでもあるのだ。そうだろう?

チムエル・アダバルThe Chim-el Adabal

レッド・ダイヤモンド、チムエル・アダバルのペンダントである栄光の王者のアミュレットは、神に贈られしアイレイドの遺物である。その創造についていかなる神話があろうとも、これがアカトシュの意志の器として現実的に彼と結びついているのは事実である。

ドラゴンファイアの儀式の改変は苦労多き試みだった。何週間もかけてグリフを刻み、アクィラリオスが先祖と生まれながらの権利を変えられると愚かにも信じていた呪文を準備した。信じやすい馬鹿者め。ムンダスに漂うニルンは、民の魂を楽しむ寄生虫のようなデイドラに対して無防備だ。

サルンが1度、アミュレットはソウルバーストの被害の修復に使うことができるのかと率直に聞いた。アブナーには繊細さというものがない。私に忠誠を誓っているにもかかわらず、彼の目を見れば陰謀を企んでいるのがわかった。彼はその時にも、自分が捨て駒だとわかっていたのだろう。人が神になろうとしている時に、悪事を企む政治家など不要だ。

彼の質問への答えはもちろん「できる」だ。だからアミュレットを手に入れて守らなければならない。これによって私の主人気取りの地位を奪い、私が2つの世界の支配者となるのだ。神が1つの世界で満足することはない。

隠者の記録Anchorite’s Log

議長が到着した。アブナー・サルンという気むずかしいニベン人の政治家だ。これにより虫の王の城の空気は面白い方向に一変した。彼は大声でばかげた命令をし、自分の気まぐれに我々が合わせると思っていた。彼を無視すると「私を誰だと思っている!」だの「マニマルコに言いつけるぞ!」だの子供のようにわめいた。虫の王は彼を無力な愚か者と考えていた。そう言うのを私も聞いた。

しかしサルンは愚かではなかった。彼は自分が用済みとなったのではと薄々感じていたと思う。己の娘がルビーの玉座につき、マニマルコ王が彼女の頭を高貴な妄想でいっぱいにすると、サルンの権力は言葉にする価値もないものとなった。摂政女帝は小装飾品や絹、珍しい食品で簡単に操れる。彼女は父親に対し愛情を見せることはほとんどなく、私の知る限り彼の不在にも関心を持つことはなかった。帝国宮廷での長年の政治経験にも関わらず、この老人はマニマルコが見せた操り手としての才能の半分の力量もなかった。

サルンの最大の誤算は、それでも自分に価値があると思っていたことだ。大きな計画の中で我々は、とりわけ彼は捨て駒なのだ。シロディールでの権力など、残虐と支配の王にとっては何の意味もない。

しかしサルンの無力なかんしゃくは楽しみの種である。いつかこれに飽きた時を想像する。その日にはいいワインを片手に、彼がのたうち回るのを楽しもう。今まで何千人もされてきたように、肉体から魂が引き裂かれる様子を見るのだ。

響きが消えるまでにどれだけかかる?How Long Before the Echoes Fade?

どれだけの間ここにいるのか見当もつかないが、もう何年もいる気がする。

黒装束の兵士たちが農園を焼き、家族全員を捕らえた。真っ暗で月のない夜、黒い獣脂で覆われ無数の犠牲者たちの血を塗りたくられた石の祭壇に我々を寝かせ、1人ずつナイフを刺した。破滅とはまさにこのことだ。我々はデイドラのための奴隷だった。

今ではもう自分の中に、失ったものを嘆く気持ちも見当たらない。日に日にこの魂のない状態が意志を失わせていく。覚えておくことが難しくなる。考えることが難しくなる。多くの記憶を失った。父の顔は、母の声はどんなだったろう。まさかと思うだろうが、なくなってしまった。ただ消えた。

基本的な感情すら薄れつつある。私を捕らえた連中への怒りを感じることもなくなった。自分を哀れむこともなくなった。残っているのは大きな空虚さと、他人のもののように聞こえる遠い命の響きだけだ。

響きが消えるまでにどれだけかかる?

苦悶の女公爵The Duchess of Anguish

通常の尋問技術が通用しないと判明したため、サイ・サハーンの移動が必要となった。彼の意志はあまりに強い。古代ヨクダの剣の歌の技を蘇らせようとした何年もの孤独な訓練で鍛えられたのだろう。古代の達人が呼吸するように自然にできた「霊剣」の発現には完全に失敗したが、サイ・サハーンは尋常ではないほどの強き自我を保っている。

彼が肉体的苦痛に耐えられる、あるいは完全に無視することができるとわかり、私は彼を帝都の地下牢から、その意志をくじき必要な情報を引き出すためにより適した場所へと移した。モラグ・バルのデイドラの召使の中にいる依頼先は提案を受け入れた。結局のところ、彼らは何年も、あまりに強固な意志の持ち主を破れずにいたのだ。

愛すべき「苦悶の女公爵」はまるで肉を切り裂くカミソリのようなものだ。その声は理性と魂を焦がし、唇は毒に覆われている。その知力は彼女の舌のように鋭い。数えきれぬほどの時間、彼女はその技を使ってきた。彼女ならあのレッドガードを殺さずに情報を引き出せると確信している。

すべてが終わったら、あのレッドガードを始末する必要があるだろう。情報が私のものになったら、彼を女公爵への贈り物としよう。間違いなく殺すだろうが、その前に長い年月をかけ彼を慰み者としていたぶるだろう。

正しい拷問技術 第8巻Proper Torture Techniques, Vol. 8

苦悶の女公爵 著

定命の者の弱点、愛

定命の者の特性の中でも特に理解しづらいものの1つが、「愛」として知られる感情です。これは定命の者が他の定命の者に対して作り上げる、不合理で無条件の好意です。主の領域の住人にはなじみのないこの状態は、拷問官にとってもっとも理解しがたく異質の概念ですが、この感情の中には、この状態を作り出すことで拷問対象を我々の意志に従うよう操れる多くの方法が潜んでいます。

愛とはとても強大な力です。愛を通じて多くの定命の者たちが偉大で勇敢な行為を見せます。愛はさまざまな抽象概念にも向けられます。帝国への愛、信じる神への愛、故郷への愛。これらは取るに足らない感情であり、拷問方法としては効果が大きくありません。抽象概念への愛を操ることは平常時の定命の者を堕落させるには最適ですが、拷問部屋で情報を引き出すためには向いていません。

愛を効果的な拷問方法として使うのなら、定命の者から別の定命の者への愛の方がはるかに強いため、対象の操作には最も効率のよい強い力となります。抽象概念への愛が定命の者の心の中に存在する一方、他者への愛は物理的な領域に存在します。実際に触れることで定命の者の魂への影響は拡大されます。定命の者がたとえばパン職人という自分の仕事を愛していたとしても、その愛を明確にするものは存在しません。この愛情とは彼の心的能力の中のさまざまなものがより合わさった複雑な糸なのです。しかし子供が母を愛する場合、彼にとって母は1人だけ。それが奪われたとしたらその愛で満たすべき場所は空っぽのままです。そのため、正しい拷問官は定命の者の魂を効果的に拷問するため、他者への愛に注目すべきなのです。

ここにまだ疑問はあります。他者への愛をどうやって拷問の手段とするのか。その答えは偏に拷問される魂とその愛の対象との関係によります。家族の愛は同じ家族間での愛であり、それを失う概念を強めるのが最も効果的です。母親が子を愛しているなら、その子を失うことに耐えられないでしょう。故に母親に子の姿を見せ、それをたとえば死や誘拐などで奪えば、効果的な拷問手段となります。友人との愛ならば、その友人に代わって絶えず繰り返す裏切りや明らかな背信を演じるのが最適です。

もし他者に秘密の欲望を抱く定命の者を拷問官が見つけた場合、特にそれが肉欲的愛情であるが遂げられない思い、定命の者が「報われぬ恋」と呼ぶものであった場合、その拷問官は最も魅力的で強力な手段となる愛を手に入れたことになるのです。

定命の者のちっぽけな自己認識と欲望をかなえるという無駄な欲求は、定命の者という存在の特徴です。己の目標に到達するという時には一生ものの野心が、多くの定命の者にとっては短く結局は無意味な人生の原動力となるのです。たとえむなしい偽りであっても、その報われない欲望をわずかでもかなえると定命の者に持ちかければ、彼らの野心の核心を突き根本的な感情の欲求をかき立てることになります。拷問官が犠牲者の衝動をかき立てられれば、拷問の成功は約束されたも同じです。

正しい拷問技術 第13巻Proper Torture Techniques, Vol. 13

苦悶の女公爵 著

失敗に注目すべし

痛みは定命の者の拷問に有効な手段となりえますが、固有の欠点があります。一時的でしかない点です。一方「失敗」は永遠に続くものです。

その短い存在の間、定命の者たちは常に大きな成果を挙げようと願い、自分の身体的能力を超えた活動を試みます。彼らはその性質を「野心」と呼びます。過度の無理や努力、見込み違いや単に不運のせいで複雑な事態となり、必然的に単数、複数の試みで悲惨な結果に終わるのです。それに伴う不名誉や自戒の念はしばしば心に刻まれ永遠に消えず、残りの日々の間彼らを苦しめます。

従って定命の者の野心の副産物である「失敗」は、拷問官の武器庫において特に有効な武器の1つであるのです。

定命の者は自由意志の行使をする中で、自分の失敗や報われなかった野心について思い出すことを望みません。その失敗について詳しく語ることは、彼らの「自尊心」に壊滅的な影響を与えるのです。自尊心とは広く無意味な世界で、それぞれを価値のある人物と考えさせる哀れな性質です。定命の者の自尊心が影響を受けると、彼らが持ちえる長所に対する自己認識の評価は下がってしまうのです。すなわち、自分を精神的に苦しめ始めるのです。

定命の者の精神を壊す上で特に洗練され効率のよい方法は、彼らが一番の失敗や欠点だと考えている出来事を絶えず繰り返させることです。強調し誇張し、ある程度その出来事をゆがめさえもして、彼らの不信感や落胆が内に向かい、己の心も体も魂も苦しめるという状況を作り出せるのです。

これは肉体的な拷問よりも多くの時間と手間がかかりますが、強制的な失敗のシナリオを毎日繰り返すことで、いずれは対象の意志も砕かれます。暴力や流血行為も必要なく、それで増える清掃の手間や死体処理のためとされている損失もなくなるのです。

選ばれし5人の記録1Chronicles of the Five Companions 1

私はスカイリムのリリス、ティタンボーンと呼ぶ者もいる。私の友人であり協力者、歴史が「預言者」として記憶するであろう、ある男性の代わりにこれを書いている。彼の深い洞察力と星霜の書の研究を通して、我々はタムリエル全域に迫る、恐ろしい脅威の本質の理解に達した。

これを読む人々に知らせたい。第二期579年に起きたソウルバーストは、あるエルフの裏切りによるものだ。それはアルトマーの死霊術師マニマルコ。虫の王でありデイドラ公の中で最も下劣な策謀の神、残虐の王たるモラグ・バルのしもべだ。

過去にマニマルコはヴァレン・アクィラリオス皇帝の宮廷の主席顧問であった。元々コロールの公爵だったヴァレンは征服によりタムリエルの皇帝となる。マニマルコの助言で、ヴァレンは前の王朝に対し反乱を起こした。ロングハウス帝として知られるリーチの民の野蛮な政権だ。だが征服と勝利を収めたにもかかわらず、ヴァレンは真の皇帝とならなかった。前皇帝レオヴィックと同じく、ヴァレンにはドラゴンの血が流れていなかった。伝統により真の皇帝がなすべき、選ばれし者の聖堂でドラゴンファイアを灯す資格がなかったのだ。

ドラゴンファイアは何代にも渡り灯されないままだった。アカトシュが聖アレッシアに贈った神々の遺物である王者のアミュレットが、レマン王朝の崩壊に続く数世紀で失われていたためだ。第一紀の帝国皇帝たちが伝統的に身につけていたこの遺物だけが、真の血統たる支配者に新たなドラゴンファイアを灯させるのだ。

マニマルコにせき立てられ、ヴァレンはこの遺物を探す仲間を集めた。このグループには私とレッドガードの剣聖サイ・サハーン、最高議長のアブナー・サルン、マニマルコ自身もいた。何年もの間、我々は無数の手がかりを追ってタムリエル中を探し回り、ついにその在処を突き止めた。

帝都に戻るとマニマルコはヴァレンの不安をあおり、即位の儀式を行わせた。儀式には手が加えられており、ドラゴンファイアを灯せないばかりか、アカトシュにドラゴンの血による神の代行権と祝福を彼に与えさせることもなかった。これがマニマルコの陰謀だと我々が知ったのは、即位の儀式の後だった。

虫の王はアミュレットの力を汚そうと魔法を使い、ソウルバーストとして知られる大惨事を引き起こした。あの出来事についてはほとんど覚えていない。その後の混乱が即座に起き、破壊的だったことしか。

ヴァレンはソウルバーストの恐ろしい猛威により消滅した。サイ・サハーンと私は不当にも、彼の死に関わっているとされた。意識の戻ったサイ・サハーンが王者のアミュレットと共に消え失せたために、より疑いが強まってしまった。最高議長サルンは日和見主義で、すぐにマニマルコ側についた。

「預言者」の素性も謎の1つだ。彼はある日シロディールにある聖蚕会の修道院を訪れた。彼らはただの放浪者だと考え、彼を迎え入れて食事を与えた。だがその夜、蔵書庫で彼が星霜の書の銅版画を読みふけるのを見つけて驚く。この書を読めるのは聖蚕の僧侶たちだけであったため、彼らは彼の来訪を神々からの預言的なしるしだと考えた。

それを読んだ者全員と同様に星霜の書は預言者の視力を奪い、永遠に盲目とした。だがそれでも彼は心の目でその研究を続け、やがては今我々が直面している大きく過酷な脅威を予知するまでになったのだ。

彼の言葉は遠く広く伝わり、帝都とマニマルコの耳にも届いた。虫の王は噂で儲けようとした罪と反逆の罪で直ちに預言者を逮捕した。そして修道院の何もかもを焼き払ったのだ。

「預言者」が告げた破滅はすぐに形を成し始めた。帝国の広大な土地はデイドラの炎に焼き尽くされ、最初のダーク・アンカーがその地に降ろされた。

モラグ・バルによる我々の世界の侵略が始まった。マニマルコの裏切りがこれを可能にしたのだ。

選ばれし5人の記録2Chronicles of the Five Companions 2

もう一度この私、スカイリムのリリスが預言者に代わって記録を行う。実を言うと彼がこれを書くように頼んだわけではない。だが結末がどうなるにせよ、出来事を記しておくべきだと感じるのだ。

預言者の幻視と悪夢は悪化している。彼はモラグ・バルが我々の世界を支配する恐ろしい幻視を見続けているのだ。目覚めている間、彼に深刻な影響はない。だが彼がなんとか眠りにつく夜、その貴重な数時間に見る未来はますます不穏なものとなっている。それを詳しく語ることは拒んでいるが、彼は冷や汗をかいて飛び起きている。彼の正気がすり減らされているのは明らかだ。

我らの仲間your nameは、すでに極めて有能だとわかっている。嘆きの監獄からの脱走は始まりに過ぎない。「面影」は危険を冒して私を悲痛の鋳造所から救い出してくれた。新たな友は私の命と魂、おそらく正気までも救ってくれた恩人だ。

我々は今、サイ・サハーンと王者のアミュレットを見つけるためにあらゆる手がかりを追いかけている。アミュレットを取り戻せれば、我々がモラグ・バルに挑み世界を救えると預言者は信じている。いつも彼は、私には理解できない飾り立てた言葉や曖昧な言い回しを使っていたが、その趣旨ははっきりしていた。

時にはスカイリムを離れシロディールに行かなければよかったと思うこともある。己の信じる偉大な人物のために戦い、心から愛しいと思う人にも出会った。戦いも栄光も経験した。でもこのすべてに価値はあっただろうか。シロディールが、あの裏切り者のスキーヴァーみたいなマニマルコと情けないご機嫌取りのアブナー・サルンに最初に会った地であることはこれからも変わらない。どちらが酷いかはわからない。我々を裏切ろうと準備していたマニマルコの魅力や巧みさか、サルンのひっきりなしの侮辱や苛つく見下しか。少なくともサルンに対して、我々は何をすべきかわかる。

預言者はこの事態におけるサルンの役割はまだ終わっていないと言った。いいことがあるとは私には思えない。ソウルバースト後、あの情けないクズ野郎はマニマルコの機嫌を取りに戻ったのだから。彼は自分の身の安全と帝都での家族の地位を保つためなら何でもするだろう!

これを書くのはここまでにしなければ。預言者が起きたらしい。

選ばれし5人の記録3Chronicles of the Five Companions 3

やっぱりだ。サルンがまたこちらにつく。まったく気に入らない。

your nameと私は、魂なき者である友人キャドウェル卿の助けでマニマルコの城に入り込んだ。キャドウェルはまるで鬼火。わかるだろうが「沼地の明かり」のようだ。だが彼は時にとても役立つこともある。それに驚くべき場所にも現れる!

我々が命がけで虫の教団信者や肉の精霊たちの中を切り抜けていた間、サルンは我々を煽ろうと城のあちこちに自分の薄笑いを映し出していた。ようやく彼が捕らえられている塔についたが、マニマルコは準備周到であらゆるアンデッドをぶつけてきた。最終的に我々は奴らを倒し、サルンと逃げた。だがここが傑作だ。サルンは嘘をついていた!サイがどこに捕らえられているのかも、王者のアミュレットがどこに隠されているかもサルンは知らなかったのだ!

もちろん彼は両方を見つけるのを手伝えると言ったが、嘘を認めた時私はカッとなって、1発で床に殴り倒してやった。ああ、あれは最高だった!ついにやってやった。

その時サルンが秘密を漏らしたのだ。your nameに我々が嘘をつかれていたことと「預言者」の正体を話した。ヴァレン卿は当然、すぐにすべてを認めた。これが早すぎなかったことを願う。your nameの信頼を維持することが我々には重要なのに、今〈面影〉の目には疑いの色が浮かんでいる。

サルンは嘘つきのスキーヴァーだ!気にしているのは自分の帝国と家族の地位だけ。ヴァレン卿はサルンがここにいるのは理由があると信じているが、私は奴を信用しないし、これからもしない。奴を監視することにしよう。

選ばれし5人の記録4Chronicles of the Five Companions 4

私はアブナー・サルン議長、ニベネイの大君主かつ元老院の長であり、生きてきた164年中117年に渡って皇帝や王たちに助言をしてきた。この権力者の地位は運や人脈で手に入れたのではない。むしろ徹底的な自制心と野心、狡猾さで手に入れたのだ。だがその私が、大地のかび臭い穴の中で愚か者どもと手を組むとは。偉大なる私が堕ちたものよ。

時は第二期582年、正確な日付はわからない。私は道を失い、我々の前にある大きな任務の重要さに屈していた。この記録のこれまでの記事を読み、私の側からの物語を残さねばと感じた。未来の歴史家たちに私が誤解されないようにだ。

我々サルン家は最高顧問であった時代から、シロディールで権力のある地位にあった。我々は帝国への忠誠や巧みな政界工作、帝国領土内の反対勢力に対する無慈悲な支配や排除を高く評価されている。我々の仕事は容赦がないが、帝国の存続には必要なものなのだ。

自慢好きで利己主義的に思えるだろうか?そうかもしれない。だがこれらの言葉を紙にしたためておけば、読んだ者は私の視点や行動と、長い目で歴史を見たときにそれがどのような役割を果たしたかを理解してくれるだろう。

ダーコラクからレオヴィックまで、リーチの野蛮人たちの長く野卑な王朝が帝国を荒らしてきた30年近くに渡り、私は彼らに助言を与えてきた。彼らはそれ以前の自称征服者どもの多くよりも長く存続したが、その異質な気性と低い品性はコロヴィアやニベネイの正統な血を引く存在の代わりとなるにはそぐわなかった。彼らからの一番の侮辱は、家で最も若いレオヴィックが我が娘16歳のクリビアを妻にし、女帝として共に支配することを求めた時だ。ヴェラクシア・サルンと結婚した彼の祖父のように、レオヴィックは我々の人脈とニベン人の血が、ルビーの玉座への即位を正当化してくれるよう願ったのだ。それはまったくの無駄であり、私をとても苛立たせた。

だからコロヴィアの公爵の息子にして、有力な軍事指導者であるヴァレン・アクィラリオスが秘密裏に接触し、北からの野卑なよそ者を退位させるための助力を求めてきた時、私は喜んで同意した。戦いは長く血なまぐさいものだった。だが私の持つ帝都の知識を利用し、ヴァレンはついには宮殿の門まで反乱軍を導いた。ヴァレンはレオヴィックの黒き血の心臓に剣を突き立て、彼がルビーの玉座の下で、己の血でむせながら死ぬのを眺めていた。そしてすぐに、自らを皇帝と宣言したのだ。私の忠誠と協力に対し、彼は我が娘クリビアを花嫁とすることに同意した。

マニマルコによるヴァレンの裏切りの後、帝国の支配権をまたもよそ者に渡さねばならなかったのは苦しかった。だが虫の王は危険な敵だ。他のいかなる魔法も制して死霊術での支配を維持するため、マニマルコは直ちに魔術師ギルドを帝都から追放した。そして残っていた反対勢力を国賊として逮捕させたのだ。処刑によってのみ短くなる、長い名簿に名が載るのはご免だった。だから私は彼に忠誠を誓ったのだ。その代わりに帝都の執政の地位を許された。娘のクリビアは摂政女帝を続け、帝国の名目上の支配者となった。だが、玉座の影ではマニマルコが権力を握り続けていたのだ。

もちろんマニマルコは、私が用済みになると攻撃をしてきた。過小評価された私は骨の塔に閉じ込められ、娘は私と敵対した。生と死を操れる力を与える、闇の魔法を教えるとマニマルコが約束したせいだ。

だがこれを知っていてくれ、読者よ。私は帝国を取り戻す。混乱から秩序を取り戻すのだ。これが私の唯一の野心であり、究極の望みである。我が道を阻む者は誰であろうとデイドラの魔術の炎で倒すのみだ。私に挑もうとする者は必ず、永遠の破滅を迎えることになる。

選ばれし5人の記録5Chronicles of the Five Companions 5

アブナー・サルンだ。

拷問の館にレッドガードを迎えに行くのは、結局は簡単な仕事だった。サイ・サハーンが「選ばれし5人」たちとの体験から大きな影響を受けていたのは興味深いことだ。彼の忍耐強さとあのでかい女トロールへの好意は不快だが、監禁されていた間の意志の強さは、伝説的としか言いようがない。

今我々は王者のアミュレットの在処を掴んでいる。彼がそこに戻したのは適切だろう。私が思っていたよりサハーンは博識だが、いささか詩的すぎる。高貴な生まれで賢く愛国的なこの男は、おそらくすぐにサンクレ・トールの古代の要塞とアレッシアの関係や、神々との契約について思いついたのだろう。エルフのマニマルコがシロディールの歴史に興味がないのは大いなる幸いだった。

サイ・サハーンは興味深い人物だ。多くのニベン人君主が思うほど、レッドガードが卑劣だとは思わない。彼は生き残った「選ばれし5人」の中でもっとも感じがいい。彼は義務と献身というものをよく理解し、目上と考える相手に仕え、非凡な情熱で己の技を磨く。失われた伝統の復興には失敗したが、それがレッドガードの故郷の滅亡に関わっていたとしたら、かえって失敗してよかった。サイ・サハーンの長剣の腕前は畏怖の念を引き起こすほどだ。

ロングハウス帝との戦いで、彼が傭兵たちの一団を率いた時のことを思い出す。レヤウィンの解放の支援をヴァレンに命じられたのだ。だがその傭兵たちは、タグ・ドロイロックの子孫で時の帝国皇帝レオヴィックの雇った二重の密偵だったのだ。サイがレヤウィンの門の前に「忠実な」兵たちとやって来ると、その兵たちがサイに牙を剥いた。ヴァレンの伝説的なドラゴンガードの指揮官の首を、レオヴィック皇帝に差し出そうとしたのだ。

民の又聞きの噂は当てにならないものも多いが、誇張があるにしても、サイは首と体を切り離そうとする2つの勢力を相手に戦い抜いたのは間違いない。数週間後、ブルーマの反乱軍基地に、彼は86人分の頭皮とレヤウィンが解放されたという知らせを持ち帰った。

尋ねても彼が詳しく語ることはなかった。もちろんヴァレンは詮索しなかった。彼自身の人を惹きつける個性と、華々しい戦いの物語を触れ回る兵士たちの過度な創造力を利用したのだ。1人の男が対するは2つの軍。単独でレヤウィンをレオヴィックの支配から解放した男、サイ・サハーンと。

事実ははるかに残忍で惨いものだったろうと思う。よほどの抑圧された怒りと血に対する飢えを背負わなければ、86もの頭蓋骨から皮を剥ぎはしまい。1人で1度に600人の相手はしまい。あのレッドガードは何日にも渡って、街中で巻き起こる残忍な戦いに立ち向かったのだろう。リーチの民たちが集落をついには離れるまで、指揮官も傭兵たちも殺して。

だからサイ・サハーンはこんなにも危険なのだ。敵はあまりに獰猛で、占領された街の闇に出没する残忍で姿なき亡霊となることでしか脅かせないような連中だが、彼は暗い路地や裏通りに隠れたまま残飯で生き延び、相手を1人ずつ殺していくような人物には見えない。しかしこれがまさに彼なのであり、彼の行いなのだ。

選ばれし5人の記録6Chronicles of the Five Companions 6

私はバンコライのナジル・イタフ・サハーンの息子、サイ・サハーン。この記録に私の言葉も加えるよう頼まれた。私は書記ではないが、全力を尽くそう。

ディヴァド、アバ、カラム、サタメの教えは我々に教えてくれた。戦士は己の技能を完ぺきなまでに磨き、剣を石や鋼を空気のように切り裂けるところまで研ぎ澄ます一方で、剣士の真の価値は彼がどんな敵を引き寄せるかで決められるのだと。私は偉大なるフォアベアーが今の我々を見て、敵であるモラグ・バルというデイドラ公を目の当たりにしたら、この哲学を考え直すだろうかとぼんやり考える。

当初、我が訓練はこの事態に備えられなかったと書くつもりだった。だが数時間の瞑想とかつての皇帝の助言で、私とカスラが長年訓練し学んできたのはこのためなのだと悟った。古きヨクダのソードシンガーたちは定命の者以上の存在だと言われていた。彼らは人が何度も人生を重ねて辿り着くであろう域をはるかに超えた集中力と技能を持っていた。私は自分がそんな偉大さに至ったとは言えない。おそらく私の最後の試練は皇帝たちと共に戦争を行うことではなく、生きとし生けるものの敵に対して正義の剣を振るうことだったのだろう。

来たる闘争への準備が自分にできているかどうかは疑わしい。私は裏切り者の拷問に屈することはなかった。だが拷問の館から無傷で出られたわけではない。裂けた肉は我が主の治癒の魔法で治った。真夜中に野蛮な夢で飛び起きれば、雪のリリーの温かな声が耳元で癒してくれる。だが私はまだ完全な状態ではない。

回復を待つ間、サルンと技能と戦略の方針について長々と話している。私は率直に自分の不安を語った。私の認めた弱さへの彼の軽蔑は雪のリリーの優しい言葉とは対照的で、私が求めていたものだった。私はそれに耐え、受け入れた。謙虚さのない戦士は堅く打ち過ぎた剣のように欠陥品なのだ。彼の言葉は私の決意を固め、私の機知を研ぎ澄ましてくれる。

刀剣の大修道院での多くの死について放置するのは難しい。攻撃の勃発時に我々はできる限りのことをしたが、カスラが刀剣の技と心を多くの生徒に教えられるようになるには何年もかかるだろう。これがすべて終わる時、もちろん我々は生き延びているはずだ。私はあそこに戻り、再建を手伝いたいと思う。

きっと私は、雪のリリーへ共に来てくれと頼むだろう。

選ばれし5人の記録7Chronicles of the Five Companions 7

私はバンコライのナジル・イタフ・サハーンの息子、サイ・サハーン。もう一度我が考えを紙に記そう。

歴史ある街がマニマルコと奴の黒き虫の教団による卑劣な死霊術で腐敗したのを見るのはつらい。シロディールの民は我が民族ではないが、あまりにもひどい文化的な破滅には心が痛む。クラウンもフォアベアーも認めないだろうが、我々と帝国の民は、相違点よりも似ている点の方がはるかにある。

ヴァレンは私にドラゴンガードを統率する栄誉を授けてくれた。私自身が隊長たちの多くに剣術や統率力、戦術について教え込み、鍛えたのだ。彼らの民族や主義はさまざまだった。その中に信心深いモロウウィンドのネサイナルがいた。彼はいつも夜明けに異教の半神の説法を静かに暗唱していた。若いルーカス・エヴァネのことも思い出す。彼はつまらない政治上の問題で、ハイロックの家族の土地から追い出されたのだ。我々は全員が帝国民というわけではなかったが、すぐに帝国の伝統や学問、食べ物まで受け入れた。かつては帝国の理想を信じていたのだ。

今では、帝国は夢に過ぎなかったように思える。サンクレ・トールはその夢の滅びた影でしかない。私はヴァレン・アクィラリオスに誓いを立てた。彼を守り、帝国の再統合という彼の夢が現実となることを望むと。だが今、見てしまったからには認めなければならない。その誓いの完遂は不可能だろう。今も帝都は、ルビーの玉座に座ると夢見る小物に包囲されているが、ここが故郷である者はほとんどいない。

サンクレ・トールの喪失と、尽きないありふれた争いにより荒廃し、破壊された帝国を悲しく思う。帝国に特別な愛があるからではない。まるで、わずかな人々のみが途切れた歴史を無私の清廉潔白な理由から取り戻そうとしている、ソードシンガーの歴史と似ているからだ。

選ばれし5人の記録8Chronicles of the Five Companions 8

今一度アブナー・サルンだ。

王者のアミュレットを手にしたがる小物の王や皇帝志望の者が出る度にドレイクを貰えるなら、私は憎むべき蛇人どもの恐ろしい足の下にあるアカヴィルを買い取れるだろう。

私が生まれる何世紀も前、レマン王朝の崩壊と第二紀の始まりの後のアミュレットの喪失は当時最大の大惨事と考えられた。正式に定められた皇帝がルビーの玉座におらず、多くの者が世界の終わりを予言した。だが彼らの予言も、地方の預言者たちの予言と同じく実現はしなかった。今のところはまだ。

王者のアミュレットがなくても、タムリエルはアミュレットが「神に選ばれし者」の首にあった時と同様に続いた。日が昇ると人々は貪欲でちっぽけな野心のために殺し合った。力のある者たちはそれぞれの部下たちの運命を決定し、翌日目覚めても同じことを繰り返した。

デイドラ公に対して勝ち目があるとは思っていない。もし呪文が効いたとしても、あのような強大な存在に挑んで勝利できると信じるとは愚の骨頂である。「面影」は優れた戦士だが欠点はある。実のところ私はこの愚行にはティタンボーンを送り、我々がしっかり準備できた時のために「面影」を取っておきたい。少なくとも彼女は替えがきく。

私は感情なんてものがいかに愚かかわかっている。ティタンボーン、もしこれを読んでいるなら、おかしな結び髪をねじらないようにしろ。私はサルンだ。我々に謙虚さなどふさわしくない。疑う余地はない。我々の唯一のチャンスは今ここにある。やらねば永遠に破滅するだけだ。

タムリエルの大部分はこの戦いの恐怖から免れており、アンカーの落ちた土地はすでにその影響から回復している。平民たちはこれを神意と考え、デイドラの次元融合を終わらせた者たちの尽力を賞賛している。知らないほうが幸せというものだ。デイドラについての我が知識は、モラグ・バルによるこの世界の支配を完全に取り去らなければ、悪夢のような世界が待っているという不穏な気配を感じさせる。

読者よ、こう考えろ。タムリエルは熟したリンゴだ。大きな木に繁る枝に危なっかしくぶら下がっている。長きに渡ってそれは高いところにあり、それを狙うデイドラの飢えた牙から幸運にも逃れていた。しかしマニマルコの堕落した即位の儀式、ソウルバーストによってベールが引き裂かれたことで、前述のリンゴが育っている枝には亀裂が入ったのだ。

そして、風変わりな農業的例えで想像したまえ。モラグ・バルは折れた枝の手近な葉っぱを掴もうとする豚だ。リンゴにありつこうと枝全体を引き裂こうと動く度、奴の汚れた足が力を与える。

次元融合を止め、モラグ・バルのアンカーを粉砕した者たちの努力は豚の足をすくい、その歩みをふらつかせた。だがそれでも、奴の臭い牙は枝に食い込んでいる。奴の回復を許してしまえば、また奮闘を始めるだろう。

我々は途方もない力を使って、モラグ・バルの牙を取り除かねばならない。もちろんソウルバーストの時にしたように、またアミュレットを使うわけにはいかない。だが私が正しければ、いや私は常に正しいが、呪文を修正すれば定命の者を神々の器にできるだろう。彼をアミュレットの力で満たすのだ。

魔法の詳細については、それだけで本が1冊できるほどなので読者に説明はしないでおこう。これは明らかに、博識な学者でも理解が難しい。理解にはサルンの恐るべき頭脳が必要だ。この複雑さを私以上に理解できる者はこの世にいない。

我々が成功すれば、歴史はこう記録するだろう。「面影」を導いてこの世界に救済をもたらしたのはアブナー・サルンの知識と大志だったと。失敗すれば 誰が賢いかなど問題ではない。我々は時が終わるまでずっと、デイドラ公の生気も心も持たない召使となる。

選ばれし5人の記録9Chronicles of the Five Companions 9

さよう、モラグ・バルにふさわしい確かな罰を与えるために5人は惨禍の闇へと足を踏み入れた!この私、恐れぬ者、コールドハーバー宮廷の騎士、騎士道のチャンピオン、無防備な者の守り手、そして魂なき者の導き手たるコッズワロップのキャドウェル卿は誇りを持って言える。私はこの瞬間が実現するのを、うんと遠くから見ていたのだ。

私はコールドハーバーの美しい眺めを恋しがるだろう。澄み切った青き炎の海、申し分なく曇った暗い空、灰色の雲の中へ高くそびえる岩だらけの峰。タムリエルはこの完璧な世界のただの紛い物にすぎない。だが厄介なことに、多くの者が逆にコールドハーバーをタムリエルの影に過ぎないと考えている!信じられるか?

我が友your nameは素晴らしい働きをした。彼らの名前は耳障りで声に出すには不快だったが。それでも批判するつもりなどない!彼らは企みの神を倒し、私が仕える新たな女主人を見つけてくれた。

ああ、輝くメリディア!彼女の金色に輝く瞳は私に発想をくれる!私が今仕えるべきは彼女だ。守るべき愛しい女性なくして何が騎士だ?「面影」たちがタムリエルをくまなく行き来できるよう、私が「面影」に彼女の光を持っていくことを彼女は強く主張した。今後について話す彼女の声には、恐れの気配があったように思う。どういうわけか、モラグ・バルの鉤爪によるタムリエルの破壊は、最悪の事態ではないと言いたげだった!

もちろん私は、彼女が教えようと思わない詳細を詮索する立場ではない。デイドラの憤怒の魔法の閃光とともに、特徴的な響く声で強めに一言拒絶され、これ以上聞きたがるのはまずいと感じた。素晴らしく眩い方だが、穏やかで優しい訳ではない。デイドラの中で最も無害であっても、沖の大暴風みたいなものだ。闇の美しさなのだ。だが誰だって、それが上陸して舞踏会の邪魔をしないように祈るだろう?

避難所は当座の家になるだろう。危険を冒して外に出るのは、私には難しい。タムリエルは私が切り離されてからの年月で醜悪になっているだろう。温かなメリディアの光が今まで以上にこの心を慰めてくれる。

奴隷の日記Slave’s Diary

彼らは毎日、肉が残っていようといまいとお構いなしに我々を奪ってゆく。自らを「魂なき者」と呼ぶ者たちはすでに大部分を奪われている。肉体はやせ衰えて久しいが、その霊魂はオブリビオンで生き続けているのだ。

自分の魂が宝石の中にあると言う者たちもいる。それぞれの宝石があちこち移動させられる時に、自分たちも揺さぶられているのを感じるそうだ。彼らはあまりに悲しみに満ちていて、ほとんど忘れてしまった人生について語る姿には胸が痛む。

他の者が何をされているかはわからないが、悲鳴が地下牢にまで聞こえてくる。逃れることのできない、終わりなき苦痛だ。

神々に我々の声は届かない。救いはあるのだろうか?果たして希望はあるのだろうか?

年末の収税記録Record of Taxation for Year’s End

最高顧問の命令で、村の課税額は他のコロヴィアやニベンの集落に匹敵する額に上がっている。当然この命令は平民には歓迎されない。暴動鎮圧のために傭兵を雇わねばならず、村長の懐はなお痛んだ。

とはいえ新たに設立された戦士ギルド――事務官の記録では支配者の命令で作られたとのこと、彼の意志が帝国を繁栄に導きますように――彼らの助けによって、徴集された税が帝国の行政官たちにより課された要求を満たした。民の貢献は厳密に記録される。

破り難きレッドガードThe Unbreakable Redguard

サイ・サハーンはその自己不信のため、非常に打ち砕くのが難しい。体を整えるため長年耐え抜いた肉体的訓練に比べれば、体への拷問など軽いものだろう。友人や知人に身体的危害を与えると脅しても効果がない。彼はただ目を閉じ、彼らの仇をとると誓うのみだ。

ソウルバーストの混乱のさなか、彼は巧みにヴァレンの萎れた指から王者のアミュレットを奪った。そして夜のはかない影のように姿を消した。我が計画の最終段階を行うには、それを取り戻さねばならない。あの日から私は、モラグ・バルの次元融合が衰えず続く中で根比べをしている。

当分これは私に有利に働くだろう。だが次元融合が終わる前にアミュレットを見つけなければ、計画の失敗が決定的になってしまう。必要ならばこの大陸を石1つ1つまでバラバラにしてやる。だが今は耐えねばならない。サイ・サハーンは永遠に拷問へと耐えることはできまい。いずれは落ちる、そうなれば王者のアミュレットを再び手に入れられるのだ。