マークマイアの伝承

Lore of Murkmire

アジム・ジャアからの手紙Letter from Ajim-Jaa

マク・タイードへ

彫刻から少し離れて、本気で聞いてほしい。卵の兄弟として、お前の面倒を見て問題に巻き込まれないようにする責任がある。自身を裁定者と呼んでいるシャドウスケールほど、避けるべき問題は存在しない。

彼女は高齢で盲目だから最初は素直そうに見えるかもしれないが、あの白い目には今でも厳しさが残ってる。シャドウスケールは生まれた時からただ1つ、殺すために訓練されていることを忘れるな。ためらいも後悔の念もない。彼女は以前にも殺したことがあるはずだし、また殺すことは分かりきってる。

とにかく近付くな。いいな?もし通りで彼女を見かけたら、敬意を持って接しろ。彼女に殺したいと思われたら、この有能な卵の兄弟でさえ救ってやれない。

アジム・ジャア

アルゴニアの季節The Seasons of Argonia

ジンチェイ・コヌの番人、ジェッカワス・パザルト 著

時間は不変である。変化の意志を駆り立てる原動力であり、不可避にして始原的である。恒常的な循環の中で動き続ける力。その変化の進展を印づけることは、サクスリールにとって最も神聖な行為である。

各月は年の循環のある特定の面を印し、それに従って祝われる。月とそれに対応する意味を以下に示す。

バッカ(太陽)
循環の最初の月であるバッカは、存在の始原的な起源、あるいは起源一般と関係する。この時期に我々は、部族の長老たちに普段以上の敬意を示すよう求められる。

ジーチ(木の実)
隠匿の時期としても知られるジーチは、種と理想の両方を植える月である。沼の球根が埋められ、まかれた種が芽を出す。長老たちはその知識を伝えることで、知を植え付ける。希望の時期だが、憂鬱の時期でもある。

この月は三つの喪の最初のものである。何かが植えられると、それは隠れて消えてしまうからだ。出てくるものは何か新しいものだ。すなわち、木の実は永遠に失われてしまう。

シセイ(芽)
シセイは新しさ、可能性、若き興奮などを表す。ヒストはその休眠の生を脱ぎ捨て、真の意味で生きた状態になる。多くの子供の祭りがこの時期に行われる。この月はまた「跳躍の季節」としても知られている。スポーツや競技の盛んな月だからだ。力やスピード、意志の強さといった徳が尊重され、祝われる。

ヒスト・ディーク(ヒストの樹液)
ヒスト・ディークは良くも悪くも、権威への反抗と個人の主体性の力に捧げられる。多くの者はこの月を利用して不正を告発し、その結果としてしばしば部族内部の争いが起きる。

言うまでもなく、論争の的になることの多い月である。多くの者は、この時にヒストといかに離れたかを分析する。崇拝について反省し、それが絆であって束縛ではないことを理解するためである。

ヒスト・ドゥーカ(成熟したヒスト)
騒がしいヒスト・ディークを相殺する役目を担うヒスト・ドゥーカは、家族、伝統、義務といった観念を中心に置く。若いサクスリールはより大きな責任を与えられ、多くの若者たちはチュッカ・セイ。すなわち成人の試練に挑み、自らが大人と呼ばれるにふさわしいことを証明する。試練を突破した者は完全な部族の成員となり、この月は通常、大きな祝賀と共に終わりを迎える。

ヒスト・ツォコ(年老いたヒスト)
おそらく一年で最も神聖な月であるヒスト・ツォコは、知識や賢明さ、可能性の充足といった観念に捧げられている。この月に行われる集会の大部分は厳粛な行事であり、その中でも最も重要なのが、部族の長老たちがサクスリールの歴史を暗唱する「根の語り」である。この月はまたヒストが成長を止め、その個々の可能性が使い果たされたという事実から、「第二の喪」をも表している。

スティシル・ガー(卵の籠)
スティシル・ガーは愚行と軽薄の月であり、通常はヒスト・ツォコの重苦しい厳粛さからの喜ばしい小休止である。子供のような驚きや若々しい歓喜、軽い困惑などが祝いの対象になる。多くの旅芸人の一座たちは、利益の大半をこの時期に得る。祭りや宴会はほとんど途切れなく続く。

スティシル(卵)
卵の月は謎や予期、そして(やや奇妙だが)目的にかかわる。大半の部族にとって、このつながりは文字どおりのものだ。産卵の多くはこの月に起こる。

ヌシュミーコ(トカゲ)
トカゲは静かで手早い労働の象徴である。ヌシュミーコは日々の生活において感謝されることのない仕事を祝い、労働はほぼ途切れなく行われる。清掃、建築、修復、準備など。部族の成員は皆、ひたすらに働く。

シャジャ・ヌシュミーコ(半人トカゲ)
この月はヒスト・ディークのように、謎と議論の絶えない月である。半人トカゲが実際に何を表しているのかについては、かなり大きな論争がある。卵から出てきた子供のことなのか、それとも我々の文明の起源を表すのか?

変化や生成、移り行く価値といった統合的な概念について想いが馳せられる。そのため、多くの若者たちの集会がこの時期に開かれ、様々な恋愛がらみの問題が持ち上がる。若者の不器用さがしばしばこの月と結び付けられる。

サクスリール(アルゴニアン)
サクスリールは我々の文化の真の情熱に関係する月である。狩りと収穫の季節が過ぎた今、部族の成員たちは陶芸や木工、その他の創造的な活動を自由に追求できる。物事が終わりを迎えつつあるという感覚が広まる。

多くの部族で、月の終わりには長老たちの大きな集会がある。この祭典の目的は我々の長老たちと共同体の両方を、迫りつつある死に備えさせることである。肌の乾いた者には、これを陰惨な伝統と見る向きも多い。

ズロマート(死者)
多くの伝統と同様、ズロマートは明らかに矛盾する発想の月である。この月は「第三の喪」に結びついており、文字どおり一年の終わりであるため、3つの喪の中で最も強力である。部族は一年の出来事を振り返り、過ぎ去っていくことを受け入れる。

しかしながら、この月は祝賀と追憶の時期でもある。古い生を終え、新しい生へと移行した全ての者に敬意を表すため、大規模な祭典が開かれる。月の大部分はこうした祭典の計画と準備のために費やされる。

イクスタクス探検家の日記、1ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 1

仲間たちは正しかったようだ。イクスタクス・ザンミーアへの旅に備えることはできない。遺跡に入って数分もしないうちに、もう完全に迷ってしまった。しかも、価値のあるものはほとんど何一つ見つけていない!ボロボロの骨や割れた壺を探しに来ていたならよかったが、残念ながら私は財宝を探しに来たのだ。

十分に奥深くまで進んでいないのかもしれない。何か脱出手段を探すべきなのは分かっているが、手ぶらで去るという考えは受け入れがたい。小さなものでもいいから、何か見つけなければ。

何かのクリスタルがここの中心部に隠されているという噂を聞いている。クジュ・ジャスとか、カジプ・ザットとか、そういう(発音不可能な)クリスタルだ。それが見つかれば、この災難も報われるだろうか。

イクスタクス探検家の日記、2ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 2

何時間も暗闇の中で無駄に過ごしたが、その幻のクリスタルには近づいてもいない。日誌のページを撒いていくことにした。パンくずの跡のようなものだ。私は建築家ではないが、この場所の設計者もそれくらい無能だったに違いない。扉や階段はどこにもつながっていないものばかり。ほぼ底なしの穴が不気味なほど頻繁に現れる。それにあの忌々しい像だ。戯画化されたアルゴニアンの顔で、歪んだ口はぞっとする冷笑をたたえている。あれは「してやったり」という表情に見えて仕方がない。控えめに言っても、気味が悪い。

まだ探索していない回廊が一つある。最も暗く、腐臭がする場所だ。どこに続いているのか、見てみるしかなさそうだ。マーラのご加護を。

イクスタクス探検家の日記、3ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 3

ついに進展があった!蜘蛛の群れと、終わりなき罠を避けて素早く通り抜けると、巨大な地下室を見つけた。巨大な像の足元に何かが輝いているのが見える。一直線に駆け寄って行きたいところだが、何かがおかしい。あそこで何か音がしている。ゴボゴボいう妙な音で、背筋が寒くなる。とはいえ、危険を冒さねば何も得られない!あの財宝を取って、家路につく時だ!

イクスタクス探検家の日記、4ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 4

壁の中に何かが隠されていた。のたうち回っている!罠がそこら中にある。これを見つけたら、私のような過ちを犯してはならない。行け!とにかく――

[残りの部分は判読不可能]

エシュラフの日記Eshraf’s Journal

〈ページの大半は切り取られている。以下は残っている部分〉

…何者かが私を見ている。バケツ一杯のゴールドをかけてもいいが、あの忌まわしいナガに違いない。ツォナ・ジーヴァ遺跡ではもう少しで奴らにやられるところだったが、私はセンチネルの路地で育った。あんなトカゲどもに捕まったりはしない!

ただ、荷袋を置いてきてしまったのは後悔している。バッカ石を失くしたと言ったら、ファミアはいつもの悲しい子犬みたいな目をするだろう。気が重い。幸いにも、ディニアは自分の荷袋をここに置いていったようだ。少なくとも、ないよりはマシだろう。

とにかく、今日は刺激的な出来事はもうたくさん。ここの小屋の中で一夜を過ごして、次の朝にはリルモスに戻ろう。時々、この場所がすごく嫌になる!

オリーンの最初の持参品のヒントOleen’s First Dowry Reminder

やあ、爪の曲がった愚か者よ。私はもうお前が好き勝手に物を盗み出して、目録の計算を台無しにするのにいい加減我慢がならない。それほど私の時間を無駄にしたいのなら、私もお前に時間の無駄遣いをさせてやろう!戦うチャンスをくれてやってもいい。まずは品物の倉庫から始めよう。以下のことを覚えておけ。

ルートハウスが盗むかもしれないものはどこに隠す?
見ることのない目の中だ!

オリーン

オリーンの2番目の持参品のヒントOleen’s Second Dowry Reminder

おやおや。正解を当てたらしいな。まぐれ当たりではなかったかな?そろそろ諦めないと、ひらめきを得るために目の前で火打石を叩いて一日を過ごすことになる。頑固にも続けるなら囲いへ向かい、以下の言葉を覚えておけ。

この刃は戦場で役に立つ。
もう身に帯びられぬ者にとってのみ。

オリーン

オリーンの3番目の持参品のヒントOleen’s Third Dowry Reminder

今回の旅で気分が落ち込んだ時、私はいつもお前がグアルの肥やしに肘をついて持参品を探そうとしているさまを思い浮かべているよ。だが、どうやらついに手がかりを解いたようだな。欲しいものが見つかるまで、あらゆるものに手を突っ込んでいるのではあるまいな?次はサラマンダー取りの罠を使うべきかもしれないな。

目当ての物に近づいていると思うなら、監視塔に行って以下の言葉について考えろ。

私は自分のものでない皮膚をまとっている。
他の者たちの手で、私は時間の計測を助ける。

オリーン

それから、絆の儀式の前には風呂に入れ。無礼な蛮族め。

オリーンの最後の持参品のヒントOleen’s Final Dowry Reminder

チーシュ・ナッサへ

私が隠したあの持参品は、お前のお気に入りの箱の二重底の中に見つかるだろう。私が知っているはずはないとお前は考えているだろう。隙間を作るため、お前のコレクションを動かさねばならなかったよ。これからは部屋の中に置くんだな。倉庫はあんなもののためにあるんじゃないぞ。

オリーン

カスタブ皇帝の墓碑銘Emperor Kastav’s Epitaph

2812年に死去した、退位したが極めて神聖な故人、カスタブ皇帝の定命の遺体がここに眠る。埋葬は完了し、私は部屋に戻って自ら命を絶つ。

——儀仗兵隊長サディネラス・コー

キーマ・ルーの墓標Keema-Ru’s Grave-Stake

キーマ・ルー

簡素に生き
真面目に働き
苦難に耐えた

ク・ヴァステイ:必要な変化Ku-Vastei: The Needed Change

魔術師ギルドの秘術師、道を照らす者 著

私の民の文化を記述するのは困難である。説明しようとすると舌が動かなくなることも多いが、インクと筆が私に考えをまとめる時間を与えてくれることを願う。こうした執筆により、私の故郷マークマイアと、魔術師ギルドにおける私の新しい生活が繋がるかもしれない。

この日誌は私のク・ヴァステイとなるべきものだ。これを書くにあたって、これ以上の主題は思い浮かばない。

ク・ヴァステイは大まかに「必要な変化の触媒」と翻訳できる。しかしこのように直訳しても、本来の意味は正しく表現できない。他の訳としては「変化が起きるための必要な道を生み出すところのもの」、あるいは「存在へと来たるべき炎を点火する火花」も可能だろう。

おそらく、より直接的な分析を最初に提示しておくべきだろう。ク・ヴァステイは名詞であり、物か人を指す。ヴァステイを直訳すれば変化であり、それは私の文化の重要な部分である。クのほうは説明が難しい。それは変化を導くものであるが、変化を生み出すものではない。重要な役割でだ。停滞は死よりも悪い運命だからだ。

崖の頂上でぐらつく大岩を例としよう。岩はいつか落ちねばならない。ク・ヴァステイは岩を押して崖から落とさない。むしろ、岩をその場に留めている小石を取り除く。すると岩は落ちるが、押されたからではなく、道が開かれたからだ。

ク・ヴァステイは崇拝される。変化自体が崇拝されるように。過去を振り返ることは、未来へ進む道を躓かせることだからだ。正しい方向へ少し押されるだけで、こうした叡智を思い起こさせることもある。そうでない場合は、強く押されなければならない。

クスル・ツクシスXul-Thuxis

俺たちはここから脱出しないといけない。この場所に留まるくらいなら、密航してリルモスから出たほうがマシだ。

ウィップテイルは先日、俺たちに壁を壊させた。壁の向こうはアルゴニアンの死体で一杯だった。奴は俺たちに中へ入って死体を探り、死体と共に埋められた物がないか確かめさせたんだ。沼で墓を漁ったことは前にもあるが、今回は違っていた。あそこには何か感じるものがある。死体を一つ動かした時にすぐ、脱出しなきゃここで死ぬことになると分かったよ。

今はお前を信じてる。妙なものが見えると言っていたな。何かが聞こえると。俺もそうなり始めてる。

アルゴニアンたちが広間を歩いているのが見えた。自分たちの仲間を生贄に捧げていた。生贄たちは恐怖せず、自分の意思で従っているように見えた。ものすごく静かだった。怖かったよ。だって、本当にそこにいるわけじゃないって分かってたんだから。あれは、別の世界の木霊のようだった。

しかも、ウィップテイルはやめようとしない。奴はもっとやれと言う。シシスの祝福を受けた古代の武器かなんかが、ここに隠されていると確信してるんだ。奴はそう言ってた。あの場所は全部呪われてると思う。

俺は逃げ出そうと思っている。お前も逃げたいだろう。一緒に来るなら今日の真夜中、俺たちがカサンドラのために用意した部屋で会おう。読んだらこの巻物は燃やせ。ウィップテイルに見つかる危険は冒せない。俺たち二人とも殺されてしまう。

M

ケシュ:黒きヒレの戦争、パート1Keshu: The Black Fin Goes to War, Part 1

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

黒きヒレのケシュが古き者(彼女は遥か昔に生きていた、進歩していたサクスリールをこう呼んだ)たちの遺跡から帰還した次の季節。私たちはケシュの望みを実現するため、とてつもなく忙しく働いた。古き者たちの生活について多少のことを知ったのに加えて、ケシュが遺跡で考察に費やした時間は、私たちのリーダーにして生涯の友人の心に新しい考え方を生み出した。彼女は、夢を携えて戻ってきたのだ。

遺跡から戻ってきた瞬間から、ケシュはサクスリールの進歩した社会を復活させようと思っていたのだと言う者もいるだろう。ただし、彼女が古き時代についてさらなる知識を得ることに関心を抱いていたのは確実だが、最初の夢は遥かに単純なものだった。ケシュはサクスリールをよそ者の脅威から守りたかったのだ。ゾシンがダークエルフの奴隷商人たちに捕まったことは、ケシュに深い影響を及ぼしたのではないかと思う。私が思うに、ゾシンや他のサクスリールの捕虜たちを解放した時、ケシュの運命は決まったのだ。

ケシュは軍隊を創設することを決断した。彼女が大マーシュ中から志願者を募ると、驚くべき数がその呼びかけに応えた。村の長老や木の番人、樹液と話す者たちは彼女の行動に複雑な思いを抱いていたが、結局は傍観し、ヒストの解決を待つことにした。サクスリールでの生活は全てそうなのだが、ケシュが成功したなら、それは彼女の計画が実現する定めにあったということだ。もし失敗したら、ケシュは沼に姿を消し、二度とその名を聞くこともなくなる。ブラック・マーシュの物事はそういう風に進むのだ。だがケシュにどんな運命が待っているにせよ、当初の彼女は誰にも止められない勢いを持っていた。

非公式に黒きヒレ軍団と呼ばれる当初の部隊は、活気に溢れていた。最初はケシュとヴォス・フルクが教官、指導者として集まったわずかな戦士を教える任務についていたが、すぐに他の有名な戦士たちが彼女の下に駆け付けた。その中には「虚空の炎」と呼ばれる魔闘士や、「エルフ殺し」と呼ばれるサクスリールの自由戦士もいた。彼らが専門知識を提供し、訓練を手伝うことで、我らの愛するリーダーの負担は減った。ケシュは軍団に試練を受ける準備が整ったと判断すると、標的を決め、新たに研いだ武器で指し示した。私たちはドーレス家の奴隷隊商を襲い、捕虜を解放することになった。

私たちは何週間も計画を練り、訓練し、ケシュと彼女が最も信頼する助言者たちは、考えつく限りのあらゆる偶発事項に備えた。私たちはドーレス家の居留地を偵察した。ストームホールドからモロウウィンドへ向かう道として、最も使われる可能性が高い道を調査した。私たちは監視し、待った。そして行動を開始した。

ドーレス家の奴隷隊商はある雨の朝、ひっそりとストームホールドから出発した。50人以上の卵の同族から成るサクスリールの奴隷が鎖でつながれ、2つの巨大な荷車の間を行進させられていた。それぞれの荷車はグアルの群れによって引かれていた。ドーレス家の衛兵たちは荷車の上に乗り、あるいは奴隷たちの列の両端を行進し、あるいは馬やその他の騎乗動物に乗って隊商の周囲を回っていた。全体として、約30人のダークエルフ戦士が隊商を護衛していた。この襲撃のために、ケシュは黒きヒレ軍団26人を奴隷解放のために従えていた。

戦士たちは緊張していた。彼らの大部分にとって、これが初めての本物の戦闘だったからだ。彼らはよく訓練され、ケシュの大義に賛同していたが、それでも生死を分ける状況に入っていく際によくある恐怖に襲われていた。ケシュと士官たちは見える位置に留まって自信と決意を見せ、これが兵士たちを落ち着かせる大きな効果を示した。私たちは隊商がモロウウィンドの国境から数百歩のところにある狭い道を通るところで奇襲を準備した。ケシュは号令を出しながら敵に向かって突進した。私たちは従い、腐った丸太から出てくるウッドアントのように隠れ場所から飛び出した。私たちがまだ緊張していたとしても、ダークエルフたちに飛び掛かっている最中に緊張は見えなかった。

ケシュの戦略は完璧に機能した。戦いが終わった時、ダークエルフの衛兵たちは死ぬか降伏しており、軽傷者はいたものの、黒きヒレ軍団に死者は1人も出なかった。任務はこれ以上ない成功を収め、ケシュの評判は解放したサクスリール1人ごとに高まっていった。

ケシュ:黒きヒレの戦争、パート2Keshu: The Black Fin Goes to War, Part 2

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

ドーレス家の奴隷商人たちに対するケシュの戦争は幾つかの季節の間継続し、黒きヒレ軍団が勝利を刻むたび、彼女の忠実なサクスリール軍は拡張していった。彼らは遠くから、また様々な地域からやって来てケシュに忠誠を誓った。ダークエルフの支配地から解放された奴隷や、遠くの村から来た危険を好むサクスリールなどが参じた。ストームホールドやヒストの影響外にある地出身の、都会化したアルゴニアンさえ何人か来たほどだ。

私もようやく成人の儀式を完了し、部族にとって一人前の大人と見なされるようになった。私は残りの人生で何をしたいかを決断しようとしていた。私はケシュが好きだったし、その大義を信じてもいたが、兵士や自由戦士になりたくはなかった。私はもっと単純な生活を求めていた。ヒストや、ザル・ウクシスに仕えるような生活が。私は樹液を話す者や卵の番人になる定めだった。少なくとも、当時の私はそう信じていた。だから私はケシュに自分の望みを告げ、黒きヒレ軍団から脱退しようと決めた。

ケシュは私の事情を理解し、私を義務から解放することに同意してくれた。しかしティー・ワンが野営地に戻ってきた時、私はまだ軍団と共にいた。彼は今ケシュの密偵部隊長であり、ドーレス家の勢力との戦いに黒きヒレ軍団が利用できる情報を集めるため、何日も、何週間も戦場を駆けまわっていた。だがこの時彼が持ち帰った知らせは、より大きく、より危険な敵に関するものだった。「遠い海から来たよそ者が、スカイリムの地を侵略している」とティー・ワンは説明した。「ストームホールドで私たちを助けたノルドからの伝言を持ってきた。吟遊詩人のジョルンからだ」

ジョルンの伝言は、アカヴィリと呼ばれる敵がウィンドヘルムの街を襲い、今はモーンホールドに向かって進軍していると説明した。ジョルンの姉は命を落とし、今は彼が一時的にノルド勢力の指揮を執っていた。「俺はこの邪悪な侵略を止めるため、ダークエルフに加勢する」とジョルンは書いていた。「もしお前が借りを返すつもりなら、モロウウィンドで合流してくれてもいいぞ。お前たちアルゴニアンのシェルバックなら間違いなく、この紛争の戦況を変える力になるはずだ」

ケシュの目を見れば、もうジョルンを助けに行くと決めているのは分かった。「ヴォス・フルク、虚空の炎」とケシュは副官たちを呼んだ。「兵を集めてほしい。今日、黒きヒレ軍団は戦争へと向かう」

私はケシュと他の者たちに涼やかな風と澄んだ水を祈ったが、この冒険に加わるつもりはなかった。私は故郷、シークハット・ゾルへ帰るのだ。私は月が幾度か循環する頃には、彼らも帰ってくるだろうと思っていたが、それは間違っていた。私は暦が10周以上するまで、再びケシュに会うことはなかった。そしてその頃、彼女は大きく変わっていた。

だが噂は孤絶したシークハット・ゾルにさえも届いた。私たちはノルドとダークエルフの共闘によって、そしてアルゴニアン戦士の思わぬ介入によって、アカヴィリは打ち破られたと聞いた。その日、エボンハート・パクトが生まれた。ケシュとその軍団はアカヴィリの脅威が片付いた後も同盟の地に留まり、新たに結成された同盟の境界を確立し、パクトが続く限りサクスリールの自由を守るため力を尽くした。ケシュはスカイリムとモロウウィンドを巡回して時を過ごし、反逆者を潰すのに力を貸し、敵対する連合軍から境界を守り、最終的には三旗戦役で武器を取るに至った。

ケシュのこうした冒険に加わらなかったことを後悔しているか?時々はする。だが、卵の番人としてシークハット・ゾルで過ごす時間は、どんなものとも交換したくない。たとえ再びケシュのそばで戦えるとしても。

ケシュ:成人の儀式、パート1The Rites of Maturity, Part 1

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

私たちの成人の儀式は、まるで昨日のことのように覚えている。戦争の英雄にしてサクスリール進歩社会運動の創設者、黒きヒレのケシュは、この試練を完了することでその異名を得た。そして彼女は徐々に名声を築き上げ、当時の仲間との絆を固めていった。仲間たちは全員、試練で優れた成績を残した。ケシュ、ヴォス・フルク、ティー・ワン、ゾシン、私でさえもだ(少なくとも、最後の試練までは)。確かに私たちは偉業を成し遂げたが、功績の多くは私たちの教官にして師であるラジ・デーリス、ドラミーンシンに帰されるべきだろう。

この長老の教師は大変な歳だった。一説によると、彼は私たちの卵の両親が巣から孵った時、すでに年老いていたらしい。だが年齢のせいでドラミーンシンの動きが鈍っているようには見えなかった。それどころか上質の苔や発酵した泥のように、彼は季節が過ぎるごとに活気付いた。私たちが彼の生徒になる頃、ドラミーンシンの技術は最高潮に達していて、私たちは彼の傑作になる予定だった。彼は若いサクスリールを教える通常の方法に従って、私たちを共同体の必要と要求事項に合わせつつ、狩り、追跡、クラフトの上級技術を教えてくれた。しかし彼は水源をさらに遡り、固有の才能を伸ばすこともしてくれた。ドラミーンシンにとって、私たちは籠に入った替えの利く卵ではなかった。私たちは個人だった。とりわけケシュは、彼の指導の下でみるみる成長していった。

サクスリールの成人の儀式は、数日間にわたって行われる技と勇気の試練から成っている。一部の試練は大マーシュ全土のサクスリール共同体で実施される。他の試練は場所や時代、季節によって、あるいは共同体のラジ・ナッサ(長老の指導者)の意向によって変わる。私たちの儀式には3つの異なる試練があった。ケシュが3つの試練を攻略した方法は、彼女がどういう人物に成長しつつあったかを示していた。

3つの試練の第一は「迷子ムカデの試練」だ。私たちは一人ずつ樽の中に手を入れ、マーシュムカデを1匹引っ張り出すよう指示された。見たことのない人のために言っておくと、マーシュムカデは巨大で凶暴な性質を持った素晴らしい生き物だ。平均的なマーシュムカデは指を思いきり広げたぐらいの長さで、太さは手首ほどもある。選ばれたムカデは目立つ印で彩られていた。そしてムカデを与えられた競争者たちは、自然の中に駆けて行ってムカデを放す。試練は私たちの特別なムカデを追跡し、捕まえ、生きたままラジ・ナッサの下へ連れ帰ることだった。さて、植物の生い茂るマーシュで特定のムカデを追跡するのは簡単なことじゃない。技術と忍耐、それに少々の運が必要だ。

ゾシンが最初に自分のムカデを捕まえたが、彼はその際ハジ・モタを刺激した。この獣を避けるため、ゾシンは危険な流砂に入り込んでしまった。その時偶然通りがかったケシュは、ハジ・モタの気を逸らせて反対方向に突進させた。そして戻ってきて、泥と砂の渦に吸いこまれているゾシンを助け出した。

ケシュが自分のムカデの居場所を突き止めた時には、ムカデが恐るべき状況に置かれていた。敵対的なナガの3人組が食事にするため、この丸々としたムカデを追いかけていたのだ。成人の儀式のこの部を完了するため、ケシュはそれを許すわけにはいかなかった。彼女はためらうことなく暗い水の中に体を滑りこませ、3人組に向かって泳いでいった。水面下に隠れて見られないようにしつつ、接近したのだ。ヴォス・フルクは自分のムカデを捕まえて村に帰るところだったが、この場面に出くわして、成り行きを見ていた。彼女が起きたことを報告し、私がそれを今、記録のために書き記しているわけだ。

ナガの狩人たちがムカデを囲み、距離を詰めたその時、ケシュは無言のまま、獲物を探す黒いヒレのように暗い水の中から立ち上がった。片方の手に1本ずつ危険な短剣を握り、両目には決意が宿っていた。彼女は最初の2人を素早い斬撃で仕留め、死体が沼地に沈むよりも早く3人目に接近した。死がすぐそばまで近づいていると最後のナガが気づいた時には、もう身を守るには遅すぎた。迷いなきケシュに対して、ナガは形ばかりの抵抗すら示せずに倒れた。ケシュは自分のムカデを拾い上げ、ヴォス・フルクを追ってラジ・ナッサの下へ戻った。

ケシュ:成人の儀式、パート2The Rites of Maturity, Part 2

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

3つの困難な試練のうちの1つ目が完了し、2つ目の成人の儀式が始まろうとしていた。「完璧な器の試練」だ。これは私たちの製作技術の試練であると同時に、謙遜と自信の試練でもあった。後になってから分かったのだが、目標は工夫の限りを尽くして最も華麗で複雑な器を作ることではなく、簡素で実用的なものも完璧でありうると証明することだったのだ。

この試練は3つの部分から成っていた。まず、器を作るために必要な材料を手に入れる。さらに、今回のため特別にマーシュの危険な地帯に設置された、隠された作業台を見つけ出す。最後に、器を作ってラジ・ナッサに見せ、審査を受ける。危険な場所に置かれた作業台が破壊される前に。

私たちはそれぞれ、器を作るのに使わねばならない特別な素材を課された。例えばティー・ワンは希少な三本爪のマッドクラブの殻を手に入れる必要があり、私はクロナの木の実の殻を手に入れなければならなかった。そしてゾシンは竜の舌の木から完璧な枝を見つける必要があった。これらはそれぞれ難しい題だったが、ケシュが主要な素材にしなければならないものを知った時、私たちは彼女のことが心配になった。ケシュはハジ・モタの巣から卵を盗まなければならなかったのだ!ハジ・モタは巣を守るために細心の注意を払う上、ハジ・モタの卵の脆い殻は、加工が難しいことで悪名高いのだ。細心の注意と技巧を尽くさない限り、殻は割れてしまうのが普通だ。

最初の儀式の成功譚が村中に広まって、今や「黒きヒレ」と呼ばれるようになったケシュは、ハジ・モタの巣を探しに出発した。彼女は前回の試練の間にこの巨大生物に出会っていたので、その一帯に戻って探索を始めた。彼女は沼地を見ながら丸一日過ごし、ハジ・モタの行動を観察した。ハジ・モタは雌で、近くに巣があることがすぐに明らかになった。言うまでもなく、卵を守るハジ・モタの母ほど危険な生物はほとんどいない。ケシュは慎重に進まなければならなかった。試練のこの部を成功させ、生き残って儀式全体を終わらせるために。

さて、ケシュは巣から卵を盗みたかったが、その過程で残りの卵やハジ・モタを傷つけることは望まなかった。彼女は、世界を通り過ぎる際に及ぼす影響が少なければ少ないほどいいと信じていた。だから彼女は再びハジ・モタの気を逸らし、巣から離れさせた。こうすることで、怪物の怒りに立ち向かうことなく卵を手に入れられると期待したのだ。ケシュは今回、オレンジグラスとマーシュルートの束を集めた。これに逆らえるハジ・モタは滅多にいない。その(少なくともハジ・モタにとっては)魅惑的な香りを利用して巣から引き離した。その上でケシュは束を水トカゲに括り付け、沼地のさらに奥へと走って行かせた。ハジ・モタはその後を追っていったので、ケシュは巣へ進むことができた。

巣の中には3つの卵があった。ケシュが選んだのは一番大きな卵でも、一番殻の厚い卵でもなく、一番小さな卵だった。斑点模様が付いたその卵の殻はすべすべしており、彼女の職人としての目からすると完璧だった。ケシュは生まれつつある器を、その卵の中に見ていた。彼女がギリギリまで見なかったのは、雄のハジ・モタが沼地を歩き回り、巣へ向かっていることだった。雄が巣に辿りつき、卵が1つなくなっていることに気づく前に、ケシュはすんでのところで逃げ出した。ケシュは雄が怒りと喪失感の入り混じった咆哮を上げるのを耳にしつつ、作業台へと向かった。

ケシュの作業台は巨大な死の流砂の上に置かれた、1本の丸太で出来た足場の上に設置されていた。彼女は作業台が丸ごと沼の下に沈む前に、器を作らなければならなかった。ケシュは素早くしかし注意深く作業し、卵の先端部分を使って器の基礎とした。ケシュはその部分を洗い、磨き、試薬を加えて殻を補強し、容器として使えるようにした。作品を仕上げて足場から外すと、泥が足場の上に跳ねかかり、丸ごと沼の中に引きずり込み始めた。

ラジ・ナッサが提出品を順番に検討している間、私たちは実に見事なクラフト作品を眺められた。だがこの季節は、ケシュがこの領域で抜きんでていたのは明白だった。彼女の器は最も簡素なハジ・モタの殻で作られていたが、その質素さには気品があり、その純粋さには美があった。殻に必要なのは、その自然な形に忠実であることだけだった。ケシュは脆い殻を強靭で壊れることのない器に変えながらも、その自然な形を見事に輝かせたのだった。

ケシュ:成人の儀式、パート3The Rites of Maturity, Part 3

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

成人の儀式を完了させるための3つ目にして最後の試練は「忍び寄るハックウィングの試練」だ。これは私たちが大人の社会に席を得るために参加しなければならない儀式の中で、最も危険なものだった。私たちはそれぞれ、1羽の巨大なハックウィングと共に牢の中に入れられる。この猛禽は凶暴な生き物で、力強く自信に満ちており、私たちの誰にも劣らない有能な狩人である上に、空を飛ぶことができた。私たちはこいつに攻撃させて血を流さなければならない。ヘマをしなければ、血を流させるだけで重傷を負わずに済む。その後ハックウィングは解き放たれる。目標は、私たちを狙ったハックウィングを捕えて殺すことだ。相手が私たちを殺す前に。

ヴォス・フルクとゾシンはくちばしの一撃を足に受けた。どちらの傷も軽く、血は流れたが筋が裂けることも、骨が折れることもなかった。ティー・ワンは左手を切らせ、肘から肩までの長く浅い切り傷を受けた。ケシュは飛び退くタイミングを誤り、鳥に右目のすぐ上のこめかみを切り裂かせてしまった。しかし私は、試練のこの部分を完全に失敗してしまった。ハックウィングの鋭いくちばしに胸を直撃されてしまったのだ。治癒師が言うには、ギリギリのところで心臓を外したらしい。それでも私は深手を負ってしまい、続けられなくなった。私は成人の儀式を完了するため、次の季節を待つことになる。

ケシュは私の無事を確かめることを望んだが、ラジ・ナッサは耳を貸さず、試練を続けるよう命じた。黒きヒレかハックウィングか、どちらかが死ぬまで。そのため、治癒師が私を助けているのを確かめるために最後の一瞥を送ってから、ケシュは目から血を拭って自然の中に駆けて行った。伝統に則り、彼女は武器も鎧も身につけなかった。自分の体と知恵だけを使うのだ。狩人が、狩りを生き延びるべき時が来たのだった。

あなたは飢えたハックウィングに追われたことがあるだろうか?当惑する経験であり、少々どころではなく恐ろしい。大抵の場合は翼がはためく音と、空気のざわめきが聞こえてくるだけだ。通り過ぎていく影に気づくこともある。翼や爪が一瞬でも目に入ることは珍しい。そして少しでも弱みを見せれば、ハックウィングは降下して傷を負わせようとしてくる。その後は、ただ出血多量で倒れるのを待ちながら追ってくるのである。儀式の場合、私たちはすでにこの鳥に血を流されている。手段はどうあれ、追ってくることは間違いないのだ。攻撃を予期しつつ、攻撃して迎え撃つのがコツだ。

(「私たち」と言っているが、私は実質的に試練から脱落していたことを理解してほしい。私は負傷して弱っており、試練の残った部分の大半はほとんど意識もなかった。何が起きたのかを知ったのは治療を受けて回復し、この季節の試練が終了した後になってからだ。)

ケシュは空の見える場所がほとんどないマーシュの一帯にハックウィングを誘い出した。彼女は木の幹や葉の屋根を利用し、ハックウィングと現在位置との間に直線の道しか残さないようにした。ケシュは木々のさらに奥深くまで進んで道を低くし、ハックウィングがついに攻撃してくる時には、上空からではなく水平方向から、それもほぼ地面すれすれの位置から攻めざるを得ないようにしたのだった。

ケシュは捕食者であり獲物である相手を待ちながら、傾いた角度に生えていた木から丈夫な枝を折って取り、粗雑ながらも先の尖った即席の槍を作った。彼女は槍を構え、背中を木の幹に押し付けて、ハックウィングが姿を現した時に素早く槍を持ちあげられる位置に着いた。長く待つ必要はなかった。獲物が出血に倒れ、木の群れの中で動きを止めて力尽きたと思ったハックウィングは、急降下してケシュが用意した道にぴったりと沿って飛んできた。ケシュは限界まで待ってから槍を上に向けて持ち上げ、後はハックウィング自身の速度と軌道がとどめを刺した。

狩りは終わった。ケシュは勝利した。彼女は成人の儀式を完了し、共同体の成人メンバーとしての席を得る準備を整えた。そして彼女が最初にしたことは、駆け戻って私がまだ生きているかどうかを確かめることだった。

ケシュ:村の外への旅、パート1Travels Beyond the Village, Part 1

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

戦争の英雄にしてサクスリール進歩社会運動の創設者である黒きヒレのケシュが、成人の儀式を完了してサクスリールの成人としての地位を獲得した後、最初に行った決断の一つは、私たちの小さな村の外の世界についてより多くのことを知るため、旅に出ることだった。抜け目のないティー・ワンと力持ちのヴォス・フルク、手先の器用なゾシン、そして私を脇に従え、ケシュは村と私たちの教師、ラジ・デーリスのドラミーンシンに別れを告げ、シークハット・ゾルの見慣れた境界の外に待ち受ける驚異を見るために出発したのだった。

私たちは北に進んだ。道の途上にあった村全てに立ち寄って友人や家族を訪ねながら、伝説の都市ストームホールドへと向かった。ズルークの村で、私たちはストームホールドにあるダークエルフの居留地を避けるようにと警告を受けた。彼らは迷い込んだサクスリールを捕え、奴隷にするためモロウウィンドに送ってしまうことで悪名高かったからだ。私たちは子供の頃にダークエルフの奴隷商人の噂を耳にしていたが、大マーシュの孤絶した地域にいた私たちは、そのような物語を本気で信じたことはなかった。

私たちは他の訪問者たちの群れに混じってストームホールドに到着した。訪問者の中には交易商、傭兵、職人、他にも私たちがこれまで見た中で、最も多様な種類の人々がいた。明らかに都市生活に慣れたサクスリール(他の種族にはアルゴニアンと呼ばれていることをその時知った)に加え、大柄なノルド、肌のきれいなハイエルフ、派手なブレトン、陰鬱なダークエルフ、わずかだがカジートやウッドエルフまでもが街角をうろついている姿を、驚きでぽかんと口を開けて見ていた。

彼らは全員、私たちにとっては奇妙で異国情緒に溢れていた。それに私たちの卵の兄弟や卵の姉妹が、よそ者にどんな風に扱われているのか、直接見たのだ。例えば力も尊厳もある街の居住者の一部は、頭を下げて敬われていた。弱く貧しい他の者たちは、命令され、蔑まれ、主人たちの気分によっては殴られていた。私たちは衝撃を受け、嫌悪感を覚えたが、ケシュは私たちに平静でいるように命じた。「この川の流れを私たちに変えることはできない」と彼女は言った。「少なくとも、今は」

街を探索している間、私たちは若いノルドの集団を見つけ、その人望篤きリーダーであるジョルンという吟遊詩人に出会った。私たちはジョルンの演奏を聞き、彼が語る物語に魅了され、その明瞭で表現豊かな声に聞きほれた。彼は私たちの、特にケシュの強い関心に気づき、自分と仲間たちに混じって夕食をとらないかと誘ってくれた。ケシュとジョルンはすぐに友達になり、夜遅くまで色々なことについて語り合った。実はジョルンと仲間たちは私たちとそれほど変わらない年頃で、彼らもやはり、成人の責任を担わされる前に世界を見ておこうと旅をしているのだった。私たちはジョルンとその友人たちに伝統的なサクスリールの食事の食べ方や飲み方を教え、彼らは宿に用意されていたノルドの珍味を紹介してくれた。

私はジョルンとケシュがその夜に話し合ったこと全てを聞いていたわけではないが、いくつかの内容は耳にした。ジョルンは自分の家族やスカイリムの素晴らしさ、そしていつかは有名な吟遊詩人になりたいという望みを語った。姉がノルドの女王になると彼は説明していたが、どうせ彼の空想的な物語の一つだろうと思った。ケシュが信じたのかどうかはよく分からない。ケシュのほうはジョルンにマーシュでの生活や、サクスリールであることの意味、そして私たちの民が昔、ずっと進歩した文明を持っていたことなどを話した。ジョルンは彼女の言うこと全てに心から関心を抱いているようだった。暖炉の炎が煤となり、ノルドのハチミツ酒とサクスリールの胆ビールのジョッキがついに空になった時、ティー・ワンが駆け込んできた。「ゾシンが」と彼は言った。声が恐怖と悲しみにかすれていた。「奴隷商人に連れ去られた」

ケシュは迷わなかった。彼女は立ち上がり、行動を命じた。ケシュには私たちの卵の兄弟がダークエルフにさらわれ、鎖で縛られるのを黙って見過ごすつもりはなかった。武器を集めて出発する前に、ジョルンが立ち上がった。「友達ってものは、戦いに行く友達を放置しないものだ」と大柄なノルドは宣言した。「それに、俺たちは木耀からまともな殴り合いをしてない。俺の仲間たちは長いこと殴り合いをしてないと、機嫌が悪くなるんだ」

ケシュ:村の外への旅、パート2Travels Beyond the Village, Part 2

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

ストームホールドを訪ねた旅は、陽気な一日に突然襲いかかる嵐のように不運な展開を迎えた。ゾシンとティー・ワンは、ケシュとヴォス・フルクと私がノルドの新しい友人たちと夜を過ごしている間に、自分たちで街を探索することに決めたのだ。ティー・ワンが戻ってきた時、彼は一人だった。彼はダークエルフの奴隷商人たちがゾシンを捕らえたと説明した。ケシュは当然、彼を救出する計画を立てた。そして驚いたことに、新しいノルドの友人たちのリーダーである吟遊詩人のジョルンが、私たちを手伝いたいと言ってきた。「正しい目的のためにダークエルフの頭をぶん殴るなんて、これほど血が沸き立つことはないぞ」と、彼は深く、よく通る声で宣言した。

ケシュとジョルンは街の外れにあるダークエルフの居留地へと進んだ。「ドーレス家か」とジョルンは言ったが、名前というより呪いの言葉のような言い方だった。「わかっていたさ」。私たちは居留地を偵察し、衛兵の位置や巡回経路を記録した。新しく手に入れた奴隷たちが収容されている場所を判断し、解放するための計画を立て始めた。ケシュが戦略についての議論を主導した。ジョルンはそれを注意深く聞き、時々提案を挟んだが、それ以外では彼女の計画に賛成した。太陽が空に昇り始めると同時に、4人のサクスリールと5人のノルドはドーレス家の奴隷商人の居留地に戦争を仕掛けた。戦いは栄光に満ちたものだった!

自信過剰で備えていない敵に対して奇襲を仕掛けるのは、想像するよりも簡単なことだ。半分酔っぱらった、熱意に満ちたノルドが数人味方についていればなおさらだ。ケシュとジョルンはつむじ風のように戦って奴隷の檻への道を開き、残った私たちは到着した援軍の相手をした。ダークエルフたちが防衛体制を整えるまで、私たちの予想よりも長くかかった。遅い時刻に予期しない襲撃を受けたことで、どうやら奴隷商人たちの活動は完全に混乱してしまったようだった。ジョルンの説明によると、彼らは荒野で隊商を防衛するのには慣れているが、ドーレスの居留地を直接襲撃するような大胆な者はこれまでにいなかったそうだ。「だからお前の計画は成功するよ」と彼はケシュに言った。

ケシュは苦もなく奴隷の檻の門を守っていた衛兵たちを片づけた。ジョルンは彼女が切り開いた道に踏み込み、巨大な戦斧を一振りして檻の錠を叩き壊した。ゾシンが檻から飛び出し、みすぼらしい身なりのサクスリールの一団を檻の外へ導いた。この時、ダークエルフたちは隊列を整えて私たちの位置へと進んできていた。「お客さんのお出ましだよ、黒きヒレ」とヴォス・フルクが警告した。「奴らは魔術師も連れている」と私は付け加えた。ケシュは必要なら全滅しても戦う覚悟をせよ、と命令を出しかけた。だがジョルンには別の考えがあった。

「死ぬまで戦わなくたっていいこともあるぞ、アルゴニアンの友よ」と大柄なノルドは目をきらめかせて言った。「お前の民を連れて逃げるんだ。俺と仲間であの弱っちいエルフどもを抑えておくから、その間に抜け出せばいい」。ケシュは彼に感謝し、いつか借りを返すと約束した。「その約束は、本当に守ってもらうことになるかもしれないぞ」と言ってジョルンは笑い、迫りくる奴隷商人たちに向き直った。「そのうちにな」

ケシュは私たちと解放した奴隷をマーシュへ誘導し、ジョルンとその仲間たちが背後で守った。ノルドたちは喜び勇んで戦い、私たちは彼らの笑い声と戦いの歌を耳にしながら、沼地へ姿を消した。太陽が空の一番高い位置にまで昇るくらいまで走り続けた後、ケシュが私たちに止まるよう呼び掛けた。彼女は私に、街へ戻ってノルドたちが奴隷商人の領地での戦いに生き残ったかどうかを確かめてきてほしいと頼んだ。隠密とごまかしの技に優れるティー・ワンが私に同行すると申し出た。ケシュが解放された奴隷たちに話しかけている間、私たちはすぐに出発した。

私たちはできる限り静かに、人目につかないようにストームホールドへ戻った。居留地は厳重に封鎖されており、大規模な衛兵の派遣部隊が到着して守りを固めていた。ティー・ワンと私は宿屋へ戻った。私たちはジョルンとその仲間たちをそこに発見した。朝の戦いの時よりも悪い状態には見えなかった。彼は心配して様子を見に来てくれたことに感謝したが、長居をしないように言った。「ドーレス家のリーダーは奴隷を失ったことに大層ご立腹だ」とジョルンは言った。「俺たちもここを離れるつもりなんだ。食事とハチミツ酒を片づけたらな。また会えるのを楽しみにしてる、とケシュに伝えてくれ」

こうして、ティー・ワンと私はストームホールドの街を去り、ケシュや皆の元へと帰った。

ケシュ:村の外への旅、パート3Travels Beyond the Village, Part 3

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

戦争の英雄にしてサクスリール進歩社会運動の創始者であるケシュの若き日々の物語はまだ続く。私たちが育ったシークハット・ゾルの村の外への旅は続き、大マーシュを通る私たちの道は全て、ケシュが決定した。私たちの仲間は5人から12人以上へ増えた。ストームホールドのドーレス家の領地から解放した奴隷たちの大半は、故郷と家族の元へ帰る道を探して去って行った。だが全員に帰る場所があるわけではなかった。それに、ケシュはどうやらストームホールドで会ったノルドのジョルンのように、カリスマ性を持ち、慕われるリーダーになりつつあった。

ケシュはいつも、遥か昔に栄えたとされる先進的なサクスリール社会の物語に魅了されてきた。旅のこの時期、彼女はそうした古代都市の跡地を訪ねる意思を固めていた。私たちはラジ・デーリスのドラミーンシン先生から借りた古い書の手がかりに従い、マーシュの奥深くへと進んだ。私たちが通った沼地は、鱗なきよそ者と同様、サクスリールにとっても危険な場所だった。奇妙な肉食獣や猛毒の雲が当たり前のように空気中を漂い、肉食の植物や肉を溶かす泥の動く塊、飢えた昆虫の大群まで相手にしなければならなかった。しかし、私たちは試練を受けて力を認められた成人のサクスリールであり(ただし、私はまだ成人の儀式を終えていなかったので除く)、しかも偉大にして強大な黒きヒレがリーダーなのだ。沼などものの数ではなかった。

私たちはしばらくうろつき回り、陰気なマーシュの奥地で、ある特定の目印を探そうとした。ケシュの書には2本の巨大なイトスギの木を探せと書いてあった。その幹は樹齢のためにねじ曲がり、互いに近くにあるため絡まり合い、結んだ分厚いロープのようになっているとのことだった。その絡まった木々をついに見つけたのはティー・ワンで、彼は興奮と恐怖の入り混じった叫び声で自分の発見を告げた。というのも木々の向こう、沼の不透明な水の先には、サクスリール先進文明の石の古代遺跡が山のようにそびえたっていたからだ。

遺跡は私たちを待ち構えていた。遺跡を構成する石と暗い影とには、どちらも同じような圧迫感があった。私たちの大半はこの場所へ近づくことに対して警戒心、というより全くの恐怖心を感じていた。真のサクスリールが、こんな建物の中に住むことをどうやって耐えていたのだろう?だがケシュは他の者たちが感じていた恐怖を一切示さなかった。彼女の顔は驚きと興奮で輝いていた。誰かが止める間もなく、ケシュはザンミーアの頂点へ向かう石の階段を駆け上がり、失われた文明の秘密を解き明かそうと急いだ。他の者たちがしり込みしているのを見て、彼女は戻ってきて皆に呼びかけた。

「ヴォス・フルク」ケシュは言った。「皆をシークハット・ゾルまで誘導して。私もすぐに後から行く」私たちはケシュが一人で遺跡に残ることを不安に思ったが、村に帰りたくもあった。「ここで何をするつもり?」と私は聞いた。ケシュは慈悲の背骨を立て、ただ「できる限りのことを学ぶわ」と答えた。

ケシュが沼地から出てシークハット・ゾルへ戻ってきた時には、私たちが村に帰ってからほぼ月が一巡するくらいの時間が経過していた。彼女は英雄として出迎えられた。私たちの冒険の物語は語り伝えるたびに大きくなり、ケシュは私たちの中でもっとも偉大な存在と考えられたからだ。彼女は決してお世辞を煽ることも、栄光を求めることもしなかった。彼女は私たち全員の様子を見に来て、同行した解放奴隷の状態を尋ね、それからドラミーンシン先生の助言を求めに行った。ケシュはかつての師が日光の熱を避け、泥の家にいる姿を発見した。「よくぞ帰った」と彼は言い、挨拶の背骨を立てた。

「ラジ・ディーリス」とケシュが口を切った。「古き者たちの地で見つけたものについて話させてください」

ケシュ:卵から青年期Keshu: From Egg to Adolescence

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

戦争の英雄にしてサクスリール社会進歩運動の創設者である黒きヒレのケシュも、最初はどこにでもいる数多くの卵の同族の一人だった。私たちがシークハット・ゾルの村で育てられた間、彼女には特別なところが何もなかった。もっとも私に見分ける力があったわけではないが。彼女は伝統的な遊びをし、伝統的な食べ物を食べ、狩り、追跡、戦いのやり方を学んだ。ケシュが何かに秀でていたとすれば、それは追跡と戦闘だった。彼女は水を得たシャプのように追跡と戦闘を身につけた。他の者を圧倒する様は、ほとんど超自然的なくらいだった。

ケシュと私は、ほとんど卵から出てきた瞬間から友人になった。私たちを引き離すことはできなかった。一緒に遊び、雑用も勉強も一緒にやり、全てのサクスリールと同じように成長した。多分、私はこの時期にケシュが何か違うと気づき始めたと思う。彼女は歴史に関して、事実と数字を暗記する以上の情熱を持っていた。彼女はダスクフォール以前に存在していた、かつての偉大なるサクスリール文明についてできる限りのことを知りたがった。この点に関して、彼女は際立っていた。他の卵の家族よりもずっと自立して、自由な考えを持っていた。彼女の燃えるような個人主義はある意味で、私を怯えさせた。

多分、ヒストは私が気づいたのと同じものを見たのだろう。私たちの名付け日にヒストを舐めた時、彼女は「ケシュ」の名を授けられたのだから。これは文字どおり「離れて立つ」という意味だ。力強く、いい名前だった。シャプばかりの湖にいるワニだ。ケシュはこの名を尊厳と名誉をもって受け入れた。彼女にはぴったりだった。

ケシュが歴史と戦闘だけの退屈な人物でなかったことを示すために、私たちが小さな子供だった頃のある出来事を話しておこう。卵の番人ジュラン・ナーはいつも私たちを叱りつけ、ザル・ウクシス、すなわち聖なる巣から私たちを追い払っていた。ケシュは育ちつつある卵に混じって遊ぶのが大好きだったのに。ケシュは卵の番人を懲らしめるため、若いワマスを追って捕らえた。彼女は卵の番人を怖がらせて笑ってやろうと、ワマスを巣に向かって放した。確かにそれは成功したが、同時に罪のない無力な卵が3つ割れてしまった。ケシュは自分が引き起こした被害に深く恥じ入り、暦が完全に一巡するまでの間、番人を手伝うことを志願したのだ。

それで暦が一巡する頃、ラジ・ディーリス(文字どおり訳すと長老の教師)のドラミーンシンが、私たちの成人の儀式のための準備として、教えを与えるためにやって来た。ケシュの仲間たちが集まったのは、この集中講義と訓練の時期の最中だった。ケシュは私に加えて、力の強いヴォス・フルク、いたずら者のティー・ワン、そして機転の利くゾシンの注目を集めた。ヴォス・フルクは山のようにそびえたつ女性で、戦いではケシュに匹敵するほどだった。ティー・ワンは後に盗賊、そしてスパイとなった。それに対してゾシンは錬金術の溶剤を混ぜるのが好きで、後に強大な魔術師となった。全員がケシュについて戦争に行った。私を除いて。

その季節の間中、私たちの友情は深まり、ドラミーンシンは力の及ぶ限り私たちを成人の儀式に備えさせた。だが、それはまた別の機会に話そう。

ゴースト族についてOn the Ghost People

新しい案内人のオリク・ジャーは、前にこのじめじめした沼のあちこちを案内した者と同じくらい苛立たしい。目的地まで真っ直ぐ連れて行ってくれるように頼んでいるのだが、相変わらず聞き入れようとしない。どうやら、まっすぐ行くとヴィーシュクリールの土地の中心を通ることになるようだ。そして彼はそこを通りたくないらしい。毎日何か新しい呪われた洞窟、侵すべからざる干潟、あるいは聖なる木の森が出て来る。私たちがこの八大神が見捨てし場所のどこにでも行けるとは奇跡だ。

ヴィーシュクリールはゴースト族という変わった名で知られている。真っ白な幽霊のような存在で、汚水まみれのこの土地に捨てられた水死体を回収し、彼らの聖なる木の近くに埋める。一見すると、この魅力的な住民たちが片付けをしているだけのように思える、ただオリク・ジャーによると、彼らには「ヒストへの帰還」を阻止する力があるらしい。この木々に興味のない私にとってはどうでもいいことだ。それでも私は案内人について行くしかない。どうやら彼にとっては、数十キロ遠回りしてでも回避すべきことらしい。個人行動をするほど私は愚かじゃない。あんなことがあった後なら尚更だ。

シロディール・コレクションにご協力を!Cyrodilic Collections Needs You!

アルゴニアンの骨董品の回収、修復、保存、マークマイアの正当な所有者への返還を目的とする協会、シロディール・コレクションは、最高の仲間を探しています。シロディール・コレクションは歴史を重視し、過去の過ちを正そうとする者を求めます。

バルケルガード、ダボンズ・ウォッチ、ダガーフォールでコンコルディア・メルシウスを探してください。競争に勝ち、アルゴニアンの文化を守るための助力をお願いします。

セプティミウスへの手紙Letter to Septimius

セプティミウス修道士

私を弟子に取っていただいて以来、多くのことを学びました。私にとって最も重要なことは、無謀になれと誰かに言ってもらえたことでした。あなたのように、私も好奇心の強い者です。普通の生活は送れません。あなたは必要なら、好奇心のせいで殺されればいいと教えてくれました。そして解決すべき謎の一覧をくれ、ブラック・マーシュへ送り出しました。アルゴニアを恐れるなと教えてくれました。私が沈まないようにしてくれましたが、そのことにあなたの体調が優れないという知らせを聞くまで気づいていませんでした。

何年にもわたるやり取りを通じて、数多くの発見を共有しましたね。いつかあの一覧を完了できると私は本当に信じています。それはもちろん、私がブラック・マーシュに戻れた場合です。ええ、心配するなとは言われましたが、私はシロディールへ向けて出発しました。あなたが乗り越えるまで、私がそばにいます。その時まで私の個人的な問題は後回しにして、あなたが寝床で読めるものをお届けします。

私が怖がってやめることを願って、あなたは一覧の最初に最も難しい謎を挙げましたね。ヒストの本質とは何か?

答えは分かりません。それどころか、この事項について事実として述べられるようなことはあまりありません。それでも、私の推測を楽しんでもらえたらと思っています。

懐疑的な者たちは、あれがただの木にすぎないと言います。ブラック・マーシュのトカゲ族によって樹液を飲むために育てられた木。トパルが悪臭の漂う悪しき場所とした記述を誰もが覚えていて、皆が慎重な結論に達しています。戻ってきた帝国軍は、毒を持つ植物、有毒な沼地、ある時は怒りに満ちて襲ってくるのに、ある時には侵略者を無視するおかしな守り手の話をしました。そして、より「文明的な」トカゲ族でさえ恐怖を和らげられる答えを提供できないのですから、博学とされる学者たちがアルゴニアンとおかしな木を恐れるようになったのは当然のことでしょう。

私たちの周囲では、ヒストの木には知覚があり、トカゲ族を育てたのは木の方かもしれないと言い伝えがあります。この件については、サクスリールにおける生の連鎖を注意深く研究することで証明するか、反証を挙げたいと思っていました。残念ながらご存知の通り、全ての答えはまた別の疑問を生みました。はっきり言えるのは、この問題について話を聞くたび、あるものの前に別のものが存在したという考えが、サクスリールには理解できないという結論に達しました。この魅惑的な文化が線形の出来事をどう考えるかについて語って、これ以上話をそらすのはやめておきます。私が何か書くたびにそう言われましたから。

しかし、これは言えます。ヒストは感覚があろうとなかろうと、単なる木ではありません。あの木が堂々としていて、その下に立つとある種の敬意を払わずにはいられないのは事実ですが、私はいつもその根に最も興味を引かれてきました。セプティミウス修道士、私が目にしたことをうまく表現できたらいいのですが。根は沼の下に深く延び、それがどの木のものか分からないほど広く広がっています。私は、ある意味で根は沼そのものだと信じています。根が一つにまとめ、変化する時を決めているのです。

このことは以前にも話したのは分かっていますし、あなたは沼の無秩序な性質が、単にヴァレンウッドのエルフに似た一種の魔法によるものだと仮定していました。私にはその主張が誤りだと証明できず、論理は理解できますが、それが本当だとは信じていません。

私は腕の立つ追跡者がこの地の気まぐれに挫折させられる姿を見てきました。動きを見たとは言えませんが、経験を積む中で堂々巡りにされる方向感覚は十分に習得しました。もっと疑わしい相対空間の説については述べるまでもありません。私は、サクスリールが環境に応じて変化するように、根もブラック・マーシュをふさわしいと思われる形に変えているのだと考えます。

セプティミウス修道士、ブラック・マーシュはこれまで一度も征服されそうになったことがありません。アルゴニアの境界は考えられたことさえほとんどありません。地図が正しいはずもありません。根は深く広く延びすぎて、私たちが真のアルゴニアを知ることは無理なのです。

学会は樹液にばかり注意を注いできました。自らを樹液の民と呼んでいるのは、私が書いたばかりのウッドエルフではないのですか?

サクスリールは根の民であり、あなたの難しい謎に対する答えはそこで見つかることになるでしょう。

それは私が戻る時まで待たなければいけません。じきにお会いして、あなたが回復への道へ向かえるようにしましょう。

愛を込めて、
ジュニア・セヴェラ

そこにある虚無That of Void

ニッソ・ゼーウルム 著

永遠なる虚無であるもの
第一の創造者、第一の破壊者
全て無から生まれたものは
再び無へと帰った

黄昏へと溶けゆく日
鋭い一突きにより奪われる命
崩れて塵と化す石
咲いて命になる死

望まれぬ変化、必要な変化
成長し、腐敗し、再び生まれる
闇のように、汝の死のように
瀕死の者にかける無の言葉

季節は変わる、我々の意志を越えて
全てのものは変わる、我々の恐怖を越えて
虚無であるものを見よ
目を開いて見よ

テーバ・ハツェイTeeba-Hatsei

肌の乾いた者はよくテーバ・ハツェイについて尋ねる。彼らはボールとコートを見て、ありとあらゆるおかしなことを言う。今日は旅を共にする長身のエルフがコートを指さして「これは菜園だな?」と聞いてきた。どう答えたものやら分からず、ただ目をしばたたかせることしかできなかった。食物を育てない菜園?長身のエルフは馬鹿なのかもしれない。それでも人々からの質問が減るように、ルールを書き留めておくべきだと私は考える。

テーバ・ハツェイとは肌の乾いた者の言葉に直すと、「ヒップ・アンド・テイル」となる。我々は皆この競技を行い、中には他の者より秀でた者もいる。私はあまり上手ではなかった。腕が長すぎるし、尾が細すぎるからだ。最もティーバの選手に適しているのは、ずんぐりした体型で、ワニのような幅広い尾と、シナモン草の袋のように左右に揺れる尻を持つ者だ。

試合は乾いた泥と塩牧草の干し草の広い競技場で行われる。競技場の両端には泥とイートの茎の壁がある。競技場の大きさと壁の高さは村によって異なる。例えばシニスでは、壁の高さが20の手の高さだ。競技場の上には葦の輪が二つ吊るされている。一つは大体30の手の高さ。もう一つは大体50の手の高さだ。これも統一はされていない。例えば、タム・タリールは肥えていて愚かで、あまり高く飛べないために輪を低く吊るしがちだ。

各チームは5人の選手で構成されている。試合はボール(ティーバ)を空に向かって放り投げることで始まる。各チームは尻、肘、あるいは尾でボールを打とうと試みる。これは少し痛いかもしれない。なぜならティーバは非常に重く、デパサ・ガムで作られているからだ。保護のために木と乾燥したワッソの葉のパッドを身に付ける選手もいるが、ほとんどのサクスリールはそうすると馬鹿にする。

それぞれの選手がボールを相手の壁に当てようとして、ティーバを前後に飛ばし合う。成功すれば、そのチームは点を獲得する。チームワークは非常に重要だ。1人の選手が上に向かってティーバを弾き、次の選手がそれを尾で叩けるようにする。大抵は尾の打撃のほうがずっと強い。一方のチームが10点獲得するまで続く。

低いほうの葦の輪を通せば、3ポイント獲得できる。輪はとても小さいため、通すのは非常に難しい。もし選手が上の輪を通すことができたら、そこで試合は終了し、その時点で多く点を取っているほうが勝者と認められる。

もちろん、これが全てではない。だが、少なくともこの入門書は、鱗のない連中がコートの中央にテントを張ろうと思わないようにはできるはずだ。

ドラデイヴァの日記Dradeiva’s Journal

私はあらゆる物語を聞き、あらゆる語り部や長老と話した。多くの季節をかけた探索と調査の末、私の卵の家族の祖先は、インペリアルの第九軍団をツォフィア洞窟に連れ込んだという結論に達した。軍団はそこで歴史の中に埋もれ、失われた軍団になったのだ。

* * *
ツォフィア洞窟に関係する物語の多くは、ウジュカと呼ばれる巨大かつ強力なボリプラムスに言及している。確かめた限り、この邪悪なスライムの巨大な塊は、他のボリプラムスとは行動が異なる。自身を拡張するのだ。ウジュカと何らかの形で連結している動く粘液の塊を広げ、ウジュカの目、耳、触角として機能させる。それがウジュカの外の世界との接触点になっているのだ。私が話した長老たちは敬意を込めてウジュカについて語ったが、明らかに彼らもその生物を恐れていた。彼らが言うには古代の季節において、付近の部族の長老たちがツォフィア洞窟に行き、拘束の儀式を執り行って、巨大なボリプラムスとその拡張を洞窟内部に閉じ込めていたそうだ。

拘束の儀式はもう非常に長い季節の間行われていない。ツォフィア洞窟への入口が落石で塞がれて以来ずっとだ。第九軍団が行方不明になったのはその時か?彼らはどのようにしてか、洞窟の内部に閉じ込められたのだろうか?

* * *
私がボリプラムスについて知ったことは以下の通りだ。あのスライムは沼を這い回り、その途上にあるもの全てを吸収する。新しく生まれる時は分裂して新しいボリプラムスになるか、吸収した肉をボリプラムスの死体に代えてしまうか、どちらかだ。ボリプラムスの死体は半透明の体のような外見をしており、肉が骨から溶け落ちてボリプラムス状のスライムに置き換わっている。この吐き気をもたらすような蠢く生き物は、生まれる元となったボリプラムスと何らかのつながりを持っているが、ウジュカの場合ほどではない。

* * *
ある長老はウジュカのための拘束の儀式を私に教えてくれた。少なくとも、彼女は以前の長老に教わったことを私に教えてくれた。ウジュカがもう存在していなければいいが。もしあれがまだツォフィア洞窟を占領しているとしたら、洞窟を去る前に拘束の儀式を行わなければならない。ただ、私としては第九軍団の痕跡と証拠も見つけだして祖先の動機を示し、私の卵の家族を貶めてきた、裏切り者の汚名を返上したい。

パヒーザからの手紙Letter from Paheiza

ナーヘイへ

沼バエが何度噛みついても、クロコダイルは自分の道を進み続けるものよ。お前の脅迫と私や、私の卵の姉との関係も同じ。確かに、私はお前に借金がある。でも脅すだけで早くゴールドを稼げるようになったりはしない。

もう少し時間が欲しいと言っているだけよ。キーマ・ルーは私たちの農場が苦労していることを知っている。近いうち売却に同意してくれるでしょう。その時に借金は全て返す。

パヒーザ
パヒーザ

パヒーザへの脅迫状Threatening Letter to Paheiza

パヒーザへ

キーマ・ルーはすでに私が申し出た貸付金を、サルトリス農場の未来を確保するために受け入れた。彼女が自分の土地を売ったとしても、利益は直接、この貸付金の返済に回る。

分かっているのか?お前の趣味が積み上げた借金は全て、お前の財布から支払うしかないんだぞ。何しろ、お前にやっているスクゥーマは簡単に入手できるものじゃないんだ。お前の卵の姉の貯金を散財しつづけたら、キーマ・ルーにお前の窃盗を伝えるしかなくなる。もちろん、事業のパートナーとしての懸念からな。

ナーヘイ

ヒートザシの日記、1ページHeetzasi’s Journal, Page 1

より多くの金がRを探すためにばらまかれている。

マーラの聖堂でサングインを見つける可能性の方がまだ高そうだ。

奴はまた厚かましくなってきている。俺は譲らなかったが、奴については色々な噂を聞いている。陰惨な噂を。カサンドラの件がうまく片づけばいいが。

ヒートザシの日記、2ページHeetzasi’s Journal, Page 2

また調べ回っている。痕跡を探すため。

地元の者たちはRについて「知って」はいない。伝え続けるような情報じゃないんだ。全てはヒストの知識。本能だ。具体的なことは何もない。仕事が面倒になる。真面目に働くのは嫌いだ。

ブラックガードの発想は正しい。部族からヒストと話すのに使う物を奪う気だ。それでRについて知ろうとしている。だがデッドウォーターに試すのは正気の沙汰じゃない。ナガどもが遺物を盗まれて黙ってるわけがない。奴らは葬式を出したようなものだ。

奴は今日もまたやって来る。紹介をする必要があると言っている。

ヒートザシの日記、3ページHeetzasi’s Journal, Page 3

ベーリシャルス…5ゴールド
カルガ・フラヴォニウス…7ゴールド
ヒフプ…3ゴールド、魚取り網2つ(なぜ?)
あの上唇の割れたオーク(名前?)…18ゴールド

ファミア・メルシウスの日記、1ページFamia Mercius’s Journal, Part 1

自分の幸運が信じられない!1ヶ月の間毎日冒険者を募って、ついに本物の英雄を見つけたわ!古典的な意味の英雄ね。まだ知り合ってから間がないけど、限界が見えないほどの機転、勇気、力を示してる。この人と知り合えなかったら、完全に挫けていたと思うわ!

私たちはついに、長いこと遅れていたイクスタクス・ザンミーアへの探検に乗り出したの。ほぼ一瞬にして危機に陥ったわ。幸運にも、我らが英雄と私は遺跡の数多の脅威を通り抜け、カジン・ジャットのクリスタルを回収できた!カサンドラの展示ケースにあれを置いた時、彼女は微笑んだみたいだった。珍しい光景よ!

もちろん、私たちの喜びは最近のブラックガードの事件で曇らされた。どういう方法でか、あの悪党どもは私たちがアルゴンの名残を探していることを知った。奴らは私たちの組織のメンバーを誘拐までしたの!運よく新しいメンバーと親友のズカス、そしてジャクシク・オルンというデッドウォーター族の戦士が彼らを救出してくれた。友人たちを無事に取り戻せて安心したけど、ブラックガードのならず者どもが名残の場所についてどれだけ知っているのか不安が残る。この新しい英雄さんの力を借りて、先に名残を見つけられるといいんだけど!

ファミア・メルシウスの日記、2ページFamia Mercius’s Journal, Part 2

前回日誌に書いた時から、すごく沢山のことが起きたわ!この文を書いている最中にも、カサンドラの船が私とズカス、ジャクシク・オルン、カサンドラ、そしてウィップテイルをリー・アン・ウー、別名「呑まれた林」へ運んでいる!マーラの心臓にかけて、先走りすぎね。

シロディール・コレクションの新メンバーがまたしても、欠かせない存在だということを示したの。ズカスとジャクシク・オルンに協力して、アルゴンの名残についての重要情報が、ブライトスロートとデッドウォーターの遺物の中に隠されていることを発見した。それぞれの部族の遺物は謎の半分を与えてくれた。その謎は私が解けたわ!分かっている限り、呑まれた林に行って「夢浸り」と呼ばれる儀式を行うの。この儀式が何を教えてくれるのか、見当もつかない。それが名残自体へ導いてくれることを祈るしかないわ。きっとすぐに分かるわね。待ちきれないわ!

ファミア・メルシウスの日記、3ページFamia Mercius’s Journal, Part 3

ようやく、書く時間ができたわ!呑まれた林への旅以来、沢山のことが起こった。どこから始めればいいのか分からないくらいよ。

ズカスとジャクシク・オルンの夢浸りの儀式は、彼らが話した幻想的な伝説にふさわしかった。強力な錬金術の煙を吸い込んだ後、新しい友は過去の鮮明な幻視に入り込んで、名残が実は失われたアルゴニアン部族の作ったものだと知った。昔、バルサエビク・アイレイドの一団がその部族の村を襲撃し、そこに住んでいたアルゴニアンを皆殺しにして、しかもその魂を使い尽くそうとしたの!幸運なことに、アルゴニアンの長老は部族の魂を保管して守る器を作ることができた。それがアルゴンの名残よ。

私たちがそのことを知ってすぐ、カサンドラは私たちを裏切った!彼女は儀式の最中に現れた魔法の杖を奪い取り、逃げ去ったの(私を引きずってよ!)

その後の数時間は本当に怖かった。彼女の不気味な手下ウィップテイルは、思ってた以上にひどい奴だった。私をシシスに捧げようとしたんだから!新しい友がすんでのところで現れて、あのブラックガードの暴漢から助け出してくれてよかった。

いくつもの予期せぬ展開と、長い追跡の後、友と私はカサンドラに追いついた。でも残念ながら、彼女を救うには手遅れだった。カサンドラは名残に触れ、巨大なマイアゴーントと結合してしまったの。彼女は一時的に怪物を支配したけど、我らが英雄は撃破に成功したわ。私はこの出来事にまだ悩んでいる。カサンドラを止めることは明らかに必要だった。でもどうしても彼女を救えなかったかと考えてしまう。彼女の狂気にもっと早く気づいていたら、カサンドラは今も生きていたかもしれない。悲しいわ。

とにかくカサンドラが倒れた後、私は名残を手に取ってズカスとジャクシク・オルン、そして我らが英雄に頼んで、中に入ってもらった。本当は、ほとんど覚えていないの。ヒストの中の何かが私を包んだ。苦痛ではなかったけど、快適でもなかった。私があんなものを長時間持ってちゃいけなかったのよ!

名残の中で起きたことにはあまり詳しくないけど、友達を1人失ったことには今でも動揺している。でも、犠牲が無駄ではなかったと知って気持ちが晴れたわ。ルートウィスパーのヒストは完全に開花し、枝の下に新しい部族が集った。新しい始まりよ。私にとってもね。カサンドラの支えとリーダーシップがなくなった今、シロディール・コレクションはかつてのままじゃいられない。でも色々なことを見て経験した後では、これまでよりさらに素晴らしいものにできる自信があるわ。次の冒険が待ちきれない!

ファラルへの手紙Letter to Faral

ファラルへ

ボグブライトには気を付けろとお前が言ってたのは覚えてる。気を付けてるよ、信じてくれ!お前が言ったとおりパンジーの煙を仕掛けた。俺たちの匂いを隠すため大量の腐った肉を置いたよ。だがファラル、お前に俺の計画を検討してもらいたいんだ。俺はあいつらを観察してる。動き方や狩りの仕方、それから、破裂する仕方を記録してる。あの力の一部を利用できたら、ブラックローズの連中は俺たちを英雄扱いしてくれるぞ!

まず考慮すべきは、あいつらの居場所と起こし方が分かってるってことだ。この点に謎はないよな?アルゴニアンの死体を水の下に留めてるあの墓標が集まってる場所を探して、引き抜けばいい!まあ、死体はただ水面を流れていくこともある。だが時々、ここみたいなアンデッドの鉱脈が見つかる。何がここの死者たちを目覚めさせているのか分かるといいんだが。水の中に何かあるんだろう?きっとそうだ。ナガだけがあれを飲めるんだ。何年か前、口一杯に含んじまったことがあるが、気持ち悪くて死にそうになった。

ボグブライトを捕まえるのは不潔だが、難しいことはない。ブラックガード数人とロープ1巻き、少々の忍耐があれば、すぐに何体かは手に入る。爆発させないようにするのがコツだ。

正直言って、そこがまだよく分からない。死体をあまり長く放っておくと、ふいごみたいに膨らむのは知ってる。だが爆発はあまりに急で、強烈だ。ボグブライトはわざとやってるに違いない。突進して、ハンマーで叩かれたカボチャみたいに破裂するんだ。
確かに、まだ解明すべきことはたくさんある。でも、だからこそ捕まえなきゃいけないんだ!少なくとも、ドラキーとあの連中に話をしてくれよ。いいな?

モンガノー

ブラック・マーシュの鱗の騎乗動物Scaly Steeds of Black Marsh

リルモスの馬屋の親方、ウカスパ 著

肌の乾いた者の多くが、血もつながっていないにもかかわらず、毛の生えた騎乗動物に感情的な執着を抱いていることに私は気づいた(我らの隣人カジートは例外かもしれない。彼らは全ての猫が親戚だと言う。それは本当かもしれないが、カジートの髭とピクピクする耳から、表情を読み取れる者などいるだろうか?誰も彼らを信用しないのも当然だ)。とにかく、肌の乾いた者が自らの愛する毛の生えた騎乗動物に乗ってブラック・マーシュまでやって来ると、馬は突発の流砂に飲み込まれ、ニクバエから泥肌病をうつされ、斑点模様の毒キノコを食べてバタン!と死ぬ。そして肌の乾いた者は目から水を流すのだ。

確かに、悲しきビーク・オジェルにとって酷い状況だ。簡単に避けられる状況であればなおさらだ!なにせ、マーシュの親方はほぼ全員が、鱗のある上等な騎乗用トカゲを売っているのだから。トカゲには様々な形があり、どれも肌の乾いた者にとってはお馴染みのものだが、沼の奥地の条件に適応しているのだ!我々のトカゲは非常に便利で、鱗たっぷりで魅力的だ。1頭欲しがらない者がいるだろうか?あるいは何頭でも?

一度ならず、私は好奇心旺盛なビーク・オジェルに尋ねられたものだ。「ウカスパ、なぜお前のところの乗用トカゲはタムリエルの他の地域の騎乗動物のような姿をしている?なぜ馬トカゲやラクダトカゲ、センチトカゲがいる?なぜお前のところのとっても美しい騎乗動物は、トカゲの姿をしているんだ?」。いい質問だ。私ウカスパはこれに答えたいと思うが、大きな謎になっている部分は別だ。

我々サクスリールはヒストの子であるゆえに、肌の乾いた者たちと違うことは知っているだろう。だが、それはどういう意味なのかと思うだろう。ヒストは木であって、我々は明らかに苗ではない。それは、ヒストが木以上の存在であり、根を持つ知恵だからなのだ!ヒストは高く、広く成長し、とても賢いが、成長する場所に留まっていなければならない。それが不便な時もある。だがヒストは人間とエルフが足で歩き、器用な手を持っているのを見て、「おお、これはいい!」と賢くも考えたのだ。そして急いで根を伸ばし、今ではマーシュのどこでも我々が「役に立つ」と呼ぶ種類のトカゲがいるわけだ。そしてある出来事が起こった。我々が「役に立つ」と呼ぶ種類のトカゲをヒストが手に取り、それからあなたがアルゴニアンと呼ぶ民を作ったのだ。

川がどこに流れているか見えてきただろう?ヒストは歩く足と器用な手のある子供としてアルゴニアンを扱っているのだ。そしてアルゴニアンは最も優れた民だ。なぜなら人間とエルフの持つ欠点がないからだ。だが、彼らは時々長い距離を長い間旅しようとする。人の形をした者がどうやって旅する?騎乗動物に乗ってだ!だから役に立つトカゲは役立つ姿の乗用トカゲになり、アルゴニアンは尻尾を鞍に載せて誇り高く乗れるのだ!

だが分かっているぞ、ビーク・オジェルよ。さらなることを知りたいのだろう。知識が鱗を潤わせるとでも言うように(ちなみにそんなことはない)。役に立つトカゲがたまたまヒストの子供であり、乗用トカゲでもあると知っただけでは足りず、あらゆる細かい点、特にあのトカゲは肌の乾いた者が「セクシー」と呼ぶようなものなのかを知りたいのだ。しかし、それについてウカスパは手助けできない。なぜならそうしたことは全て大きな謎だ。ああ、もちろんヒストのアルゴニアンにとってはそうではない。全ての手がかりを知っている我々にとって、それが大きな謎であるはずはないのだ。だが君には全く手がかりがない。君は我々の卵の兄弟ではないからだ。とにかく、私が乗用トカゲについて教えられることは以上なので、もう行っていい。喜びに打ち震え、潤いを保ち、愚か者のように沼の奥地にふらふらと迷い込まないように。いいな?

ブラック・マーシュは待っている!Black Marsh Awaits!

シロディール・コレクションはマークマイアの沼の探検に参加してくれる、勇敢で進取の気性に富む冒険者を探しています!アルゴニアンの故郷の謎めいた奥地で、興奮、発見、財宝が待ち受けています!

興味のある方は、リルモスでファミア・メルシウスまでご連絡ください!

ブラックウォーター戦役、第1巻The Blackwater War, Volume 1

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

ブラック・マーシュの侵略が第一紀2811年に始まった時、帝国軍は勝利を確信していた。インペリアルはアルゴニアの戦いで決定的な勝利を得ていて、他の衝突も同様の結果に終わった。これらの戦闘は一方的であり、アルゴニアンたちが多数の負傷者を出したのに対して、インペリアルにはほとんど疲労の色さえ見えなかった。第一紀2811年蒔種の月、トカゲの民は全面的な退却状態にあり、ブラック・マーシュ内陸の薄暗い奥地に逃げ込んだ。帝国はこれを好機と判断し、アルゴニアンたちが態勢を立て直す前に総力を挙げて侵略を試みた。

部隊は若く人望のあるアウグリアス・ブッコという司令官に率いられていた。ブッコはシロディールで名を知られた人物だった。その麗しい外見と巧みな弁論術により、彼は前例のない早さで帝国軍の階級を駆け上がったのである。25歳になる頃、ブッコはすでに将軍の証であるダイヤモンドを身につけていた。将軍の印を受け取るに際して、彼は実質的にシロディールのどんな場所の軍団も選択できた。ブッコが指揮することを決めたのは、ブラック・マーシュの第四軍団だった。

他の歴史家たちはなぜブッコがこのような陰鬱で危険な仕事を選択したのかについて、無数の理論を提供してきた。私としては単に、プライドが決定的な要因だったと主張したい。ブラック・マーシュの国境沿いにおける帝国軍の活躍の噂が、第一紀2811年恵雨の月にはすでに、帝都の宿屋や街路に届いていた。沼地の征服を大将軍への昇進への機会と見ていたブッコは、ブラック・マーシュでの戦争が短期間の大勝に終わるだろうと確信し、貪欲にも第四軍団指揮官のマントをまとったのである。彼の判断は完全に誤っていた。

ブラックウォーター戦役、第2巻The Blackwater War, Volume 2

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

ブラックウォーター戦役の当初数年間は、帝国軍にとって厳しい戦局になった。シロディールの大地では数々の勝利を手にしていたこの軍団は、悪臭を放つブラック・マーシュの沼地に対処する用意がまるでなかった。

まず、帝国軍の装備はこのような環境に適していなかった。例えば彼らの鎧は重く、湿気の多い気候の中ではすぐに錆びてしまった。軍団兵たちはブーツや盾から泥を落とすために何時間もかけ、戦場に持ち込んだ荷物を少しでも軽くしようと必死になった。2年目の終わりに差し掛かる頃になると、軍団兵たちは胸当てやグリーヴを完全に放棄し、金属の鎧で汗にまみれて死ぬよりも、快適な死を選んだ。

数世紀にわたってインペリアルが発展させてきた戦術も、この厳しい地においては鎧と同様に役立たずだった。歩兵隊の展開や厳格な隊列システムは、沼だらけの内陸部で実施できるものではなかった。イトスギの枝の繁茂や泥まみれの地形によって部隊はすぐ散り散りにされ、その結果頻発した小規模の乱戦では主にアルゴニアンが勝利した。こうした条件では命令系統がすぐに悪化した。これにより、軍団内では命令無視や士気を下げる権力闘争が早晩巻き起こった。

そして、沼自体が部隊を飲み込んでしまうことがしばしばあったようである。帝国軍の野営地周辺では噂や事実の断片が始終飛び交っていた。ある者は行方不明の部隊が道に迷って方角が分からなくなり、安全な場所に戻る道を見つけられずに飢えや乾きで死んだと考えた。別の者たちは大いに恐れられていた「ゴーストウォリアー」の仕業だと言った。残忍なことで知られた、青白く醜いアルゴニアンである。暗く邪悪な化け物が沼の下に潜んでいて、それが一口で歩兵部隊を丸ごと飲み込んでしまったのだと囁く声すらあった。こうした噂は明らかに間違いだったが、軍の士気には大きな打撃を与えた。

さまざまな障害と環境が絡み合って、何年も続く悲惨な戦争が始まろうとしていた。ブラック・マーシュの戦闘が終結するまでには、数千もの兵士たちが死ぬことになった。

ブラックウォーター戦役、第3巻The Blackwater War, Volume 3

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

第一紀2816年になると、ブッコ将軍の軍団は歩兵隊6部隊にまで縮小していた。しかも戦いが続くうち、どれ一つとして万全の状態ではなくなっていた。終わりなき襲撃に疫病、謎めいた失踪などが重なり、絶望と悲観が常態化するようになった。

援軍がない限り敗北は必至と見たブッコは、ブラック・マーシュにもう一軍団を展開することを要請した。新しい部隊を前線に送って追い詰められた部下たちを休ませるのではなく、ブッコは彼らに「レマン街道」(後の沼街道)の建設を行わせた。この道がどこに続くのか、これが将来の紛争にどう貢献するのかを知る者はほとんど誰もいなかったが、ブッコは舗装されて警備された道路が戦いを助け、戦況を帝国軍へ有利に傾けると確信していた。

理論上、この道路はインペリアルにとって願ってもない恩恵であるはずだった。帝国軍にとって、物資の不足は長らく悩みの種だった。安全な物資の流れがあれば兵を頻繁に交換でき、食料や水、装備の流入も阻害されなくなる。だが、街道が完成することはなかった。

レマン街道は工事の開始とほぼ同時に攻撃を受けた。アルゴニアンの波状攻撃が作業員たちを日夜襲い続けた。盾と槍で武装すべき兵たちは、シャベルと鎖で身を守らねばならなかった。兵士たちはまた、疲労と沼風邪に倒れることも多かった。街道は前線まで半分の距離を建設したところで放棄されてしまった。沼街道の計画はブラック・マーシュ侵攻が苦い失敗に終わった後も、「ブッコの愚行」として記憶される。

ブラックウォーター戦役、第4巻The Blackwater War, Volume 4

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

第一紀2820年、ブッコ将軍の第四軍団は完全に崩壊していた。残存する数少ない兵士たちはまともに戦える状態になかった。暴動まがいの事態でブッコの指揮権が脅かされるに至ってようやく、彼は残った兵士たちに退却と、マーシュ内陸部からの脱出を命じた。彼は帝国軍が沼を去れば、アルゴニアンも追っては来ないだろうと判断した。

10日間の厳しい退却の後、帝国軍の残存兵たちは「ジ・ツェイ」と呼ばれる古代アルゴニアンのピラミッド周辺に集まった。軍はこの時点でもはや350人程度にまで減少していた。ブッコはピラミッドの陰で短い休息を取ったら、残存勢力は比較的安全なシロディールまで退却できるだろうと考えていた。その望みが果たされることはなかった。第一紀2820年収穫の月14日、ブッコの誇った第四軍団の残存兵たちは全滅したのである。

ジ・ツェイの虐殺の詳細は歴史コミュニティにおいて議論の多い問題である。ブッコの残存勢力が大規模なアルゴニアン軍団によって撃破されたことについては広く合意されているが、この結論を支える証拠には一貫性がないと言わざるを得ない。ピラミッド周辺の考古学的発掘調査では数百の死体と放棄された武具が見つかったが、帝国軍の遺体が少なくとも100体は未発見のままだ。これは当然、この兵士たちに何があったのかという問いを導く。彼らがシロディールに辿りつけたことを示す証拠は何もないため、捕虜として連行された可能性もある。だが既知の戦場の野営地の発掘からは、帝国軍捕虜のいかなる証拠も発見されていない。これもまた、この紛争中に発生した謎の失踪事件の一つである。アルゴニアンはこれ以上のことを知っているかもしれないが、歴史家に情報提供を申し出た者はこれまでに誰もいない。

ブラック・マーシュでの大敗によって、帝国議会はこれ以上の屈辱を許容できなくなった。他の敵対勢力はブラック・マーシュを見て、かつては恐れられた帝国軍が弱体化したと見て気勢を上げた。議会は対抗措置として、第四軍団をレグルス・サルデカス将軍の指揮の下に再編成し、第二次ブラックウォーター戦役を開始した。

ブラックウォーター戦役、第5巻The Blackwater War, Volume 5

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

サルデカス将軍は帝国軍において伝説的と言ってもよい存在であった。数えきれないほどの会戦に参加した古参兵であり、兵士としても将軍としても、周囲に抜きん出た力を示してきた。

サルデカス(別名「岩のサルデカス」)は、行方不明でおそらくは戦死したブッコ将軍とは正反対の人物だった。目撃者の証言が記すところによれば、彼は大柄で冗談を解さない男であり、鷹のように鋭い容貌を持っていた。彼は足を引きずって歩き(アルゴニアの戦いの古傷である)、短く重々しい言葉で服従を命じた。正装や礼服の類は全て避け、簡素な百人隊長の鎧兜に、自らの役職を示す勲章を身につけることを好んだ。

サルデカスと再編成された第四軍団は間を置かずに戦いへと復帰した。第一紀2823年、彼らはブッコが退却した際に失った全領域を取り戻した。多くの軍事学者はこの成功をサルデカスの適応力と戦略的独創性に帰している。例えば、サルデカスは全帝国軍兵士に命じて金属の鎧を捨て、胸当て付きの革鎧を身につけさせた。インペリアルの補給係はアルゴニアンの非正規兵や斥候と連携を取り、沼地から得られる食料だけで生き残る術を学んだ。また、百人隊長や軍団長には追加権限が与えられ、軍が分断された際も独立して戦えるようにされた。大隊と中隊が独立して機能するように計らうことは、兵士たちの士気を驚くほど高めた。帝国軍兵士たちはこの時初めて指揮官を自分の目で見て、その命令に従って個人として戦いに参加できるようになったのだ。もちろん、軍団長たちの手腕と指揮能力に負うところも大きかった。しかしサルデカスは要求の厳しい指揮官として悪名高く、期待に背いた兵を格下げすることもためらわなかった。

だが、サルデカスが最も成功したのは外交の領域においてだった。紛争初期、彼は追放されたアルゴニアンの部族に呼びかけ、帝国側について戦えば報酬を与えると申し出た。死したブッコ(および多くの同時代人たち)はトカゲの民を一枚岩の蛮族集団と見ており、低俗な交配と野蛮な気質によって結びついていると考えていた。サルデカスはそれが誤りであることをほぼ一瞬で見抜いた。彼は影響力のあるいくつかの部族と強固な同盟関係を結び、その中には油断ならぬアーチェインやショス・カリールもいた。彼の勢力は一挙に3倍近くへ膨れ上がった。ブラック・マーシュ戦役はようやく、帝国軍有利に傾きつつあった。

ブラックウォーター戦役、第6巻The Blackwater War, Volume 6

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

サルデカスの指揮戦術は一つの原則に基づいていた。それは真の敵が沼であり、アルゴニアンではないというものだった。第一次戦役における死者の約半数は疫病が原因であり、ほぼ同数が謎の失踪によるものであった。彼の算定で、アルゴニアンの襲撃はそれらより遥かに低い第三の要因だった。この事実を考慮して、サルデカスは新たな戦いの心得を作り、士官全員に普及させた。この戦術の要点は単純だった。すなわち、ブラック・マーシュを征服する唯一の方法は、それを破壊することであるというものだ。

サルデカスは技術者と工兵で構成された大隊を全て前線に展開した。帝国軍兵士が国境付近の村に激しい襲撃を行っている間、支援兵が沼を干上がらせ、水田に塩をまき、数百の木を切り倒した。戦役のこの時点において最もよく知られている出来事は、第一紀2828年の「大炎上」である。

記録が示すところによれば第一紀2828年恵雨の月上旬、エリシア・マリシウス(サルデカスが信を置いていた軍団長の1人)が工兵部隊に命じて、ストームホールド外にある泥炭の沼地に火を放たせた。工兵たちは命じられたとおり行動したが、沼地が地下に広がる巨大な網構造の一部であることは知らなかった。数ヶ月経って、帝国軍兵士たちはソウルレストやギデオンなどの遠隔地で突然の出火を報告するようになった。この地域全体が炎に包まれていることに帝国軍が気づくまでには、さらに数ヶ月を要した。

泥炭や廃棄物が燃えて発生した炎は、3年以上もの間足元で荒れ狂った。ただでさえ危険なマーシュがさらに凶悪になり、帝国軍はこの10年近くの期間で初めて後退を余儀なくされた。窒息する煙と燃える沼から噴出するガスにより、この地帯はアルゴニアンにとってさえほとんど居住不可能になった。この地帯に固有の数百種もの動植物が絶滅させられ、アルゴニアンの中には部族ごと消滅したものもあった。帝国軍でさえ、多大な犠牲者を出した。数百の兵士が「沼肺」やガス爆発のために命を落とし、あるいは炎の猛烈な熱さのために逃げ出した。帝国軍とアルゴニアンのどちらにとっても壊滅的な打撃だった。この出来事が第二次戦役と、サルデカスの任期を終焉させた。帝国軍が退却したすぐ後、サルデカスは病に倒れ、帝都に帰りつく前にエセリウスへ旅立った。公式の診断では、マーシュから脱出する際に受けた傷による急性の感染症ということになっているが、帝国軍の兵士たちは納得しなかった。

サルデカスの死に本当はどのような事情があったのかについては、いまだに歴史学上の論争となっている。シャドウスケールの関与の可能性は排除できない。彼らの組織や方法について我々はほとんど何も知らないが、この紛争において何らかの役割を果たしていたと考えて間違いはないだろう。大炎上のような惨事のすぐ後に高位の将軍が謎の死を遂げたということは…私が歴史の研究で学んだことがあるとすれば、偶然などというものが存在しないということだ。

ブラックウォーター戦役、第7巻The Blackwater War, Volume 7

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

歴史家たちはしばしば、ブラックウォーター戦役を26年間にわたって繰り広げられた単一の紛争としている。戦いに参加した主要な人々は基本的に同じだが、第一次、第二次、第三次戦役は互いにほとんど共通点を持たない。第一紀2833年、インペリアルの戦術はあまりに刷新されていたため、ほとんどインペリアルのものと認識できないほどだった。「サルデカスの改革」は帝国軍を再編したが、「ファルコ理論」はこの戦役を大詰めへ導いた真の触媒だった。

ルシニア・ファルコ将軍はサルデカスの逝去後まもなく、帝国軍の指揮を引き継いだ。彼女は順当な人選だった。サルデカスの親友であり、力強く、かつ過激なほど帝国に忠実であり、さらに情け容赦のない人物であった。彼女はアルゴニアの戦いのすぐ後に士官となった。つまり、軍人としての功績が全面的にブラックウォーター戦役で形成されたことを意味する。前任者とは異なり、ファルコは単一の方向から攻めるだけでは戦いに勝つことはできないと理解していた。彼女は帝国に要請し、リルモスとアルコンの沿岸沖にいた無数の海賊たちに対し、敵国船の私掠免許状と一時的な任命書を発行させた。ダイヤモンド海軍と連携することで、この勢力はマーシュ南東の広大な地と、内陸部にある一部の沼さえ奪い取ることに成功した。

ギデオンを拠点とし、ファルコは地域全体にわたる攻撃の第二波を開始した。ファルコは前任者のように軍団をまとめて派遣することは控え、勢力を小規模で戦闘能力に優れた数百の部隊に分けた。後に「レッドベルト」と呼ばれるこの小隊は沼で長年戦ってきた古参兵に率いられており、彼らの一部は第二次戦役の初期から従軍していた。

レッドベルトは当初大きな戦果を挙げ、ブラック・マーシュ西の大部分を占拠した後、分厚い沼と不気味な沈黙が支配するこの地の中核部の外側でようやく止まった。残念ながら部隊の規模のため、彼らは占拠した地を長く維持できなかった。国家間の戦いとして始まったものは引き延ばされ複雑化したゲリラ戦争となり、紛争に付きものの残虐行為に満ちていた。第一紀2834年から2836年は、双方にとって暗黒の時期だった。アルゴニアンとインペリアルは互いに対して威圧とテロを仕掛けたのである。

公式の休戦協定を結ぶことなく、戦いは第一紀2836年に終わったように見えた。数十年もの間インペリアルと戦ってきたアルゴニアンたちは正式に降伏するわけでもなく、突然武器を地面に埋め、農作業や魚釣り、裁縫の仕事に戻った。帝国は機を逃さず、第一紀2837年にこの地域の占拠を公式に主張した。ついにブラックウォーター戦役は突然の、しかも不可解な終わりを遂げたのである。

アルゴニアンたちによる敵対の急激な停止もまた、この紛争にまつわる謎の一つである。推測として支持されているのは、木を崇拝する彼らの奇妙な伝統が関係しているということであるが、彼らが武器を捨てた本当の理由は、永遠に分からないかもしれない。歴史家としては悩ましい状況だが、ブラック・マーシュの深い暗闇で生まれた謎が解決されることは滅多にない。少なくとも、満足のいくような結論によって解決されることは珍しい。

ブラックローズ監獄の歴史A History of Blackrose Prison

ウェイレストの放浪者、ティリリャ・レン 著

悪名高いブラックローズの街から名前を取ったブラックローズ監獄は、1日で建てられたと言われている。そんな話が誇張なのか驚くべき真実なのかは、誰もわからない。しかし1つ確かなのは、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエが監獄の建設を命じ、ペラディル・ディレニが忠実に、もしくは自慢げに石の精霊の集団を召喚して働かせ、その命令を遂行したということだ。

街に隣接して建てられたと考えられることが多いが、実際に監獄がある場所は街から南へ1日進み、沼の危険が及びながらも岸から到達可能な場所だ。この孤立した場所は、囚人が逃げないようにするため特に選ばれた。地元の民以外で危険なマークマイアを横断できた者はわずかしかおらず、脱獄者のように装備の乏しい者ならなおさらだ。

ブラックローズ監獄へ送られた帝国の囚人は、凶悪犯や政治犯ばかりだった。その時の権力者が二度と見たくないと考えた人間やエルフが送られた場所だったのだ。そのため、監獄の職員は好きなように振る舞った。囚人が受けた残虐で残酷な行為は、誰に聞いても大変ひどいものだ。

その都合の良い立地のせいで、帝国の権力と衝突したマークマイアの民も皆、ブラックローズ監獄送りになった。特にナガは、帝国の圧政に対する反抗的な姿勢から、そこへ送られる傾向があった。他の囚人にもナガは軽蔑された。それは彼らの攻撃的な文化と、目立つ外見からくるものだった可能性が高い。ナガの囚人数が増え、この地域における帝国の権力が衰えたことから大規模な暴動につながって、結果的にブラックローズ監獄が放置されることになったと考えられている。

放置されてから数年後、監獄は解放しようとした囚人自身によって乗っ取られた。かつて彼らを拘束した場所を奪い、自分たちの故郷を危険にさらしたインペリアルの撲滅を誓った。彼らはブラックガードと名乗り、自分たちだけに忠誠を誓った。

この主張は周囲の部族から歓迎されず、彼らはそうした価値観が自分たちの文化の根幹に反するものだと考えた。私が話したアルゴニアンは、この件について次のように語った。「ブラックガードは石のような心と不快な腹を持っていて、石の巣の中で変化から隠れている。彼らは後ろを見るばかりで、前を見ない。だから部族は彼らを支持しないのだ。そして今では、盗賊とほとんど変わらない」

確かに元の理想がどれほど高潔なものだったとしても、今のブラックガードはマークマイアで最大の犯罪組織として知られている。ここ10年で、彼らは非アルゴニアンのメンバーも組織に入れ始め、その中には彼らがかつて激しく戦ったインペリアルも含まれる。

残念ながら、ブラックローズ監獄の現在の様子については、ブラックガードによる危険が存在するために記述できない。訪問すれば豊かな歴史が見られるので、残念な事態ではある。

ボーキへの手紙Letter to Bhoki

卵の父へ

あなたからは数多くの警告を受けたが、愚かしさの許しを乞おうとは思わない。あなたがこれを読む頃、私はすでに百合の道へ進んでいるだろう。私はメワー・ジェズの頑固さから見習いたちを救っているか、救えなかったかのどちらかだろう。どちらにせよ、私は捕らえられて刑期を待つことになると想定している。全ては、我らの部族が愚か者の訓練で若者たちを殺し続けるのを、我慢できないから起こったことだ。

もう一つ別の点でも、私はあなたの望みに反する行いをした。あなたはカディーリスだった時に使っていた古い訓練の手引きを破棄せよと私に言った。あなたにはぜひ、私があれを隠した場所へ行って回収し、見習い全員が殺される前に戦士長を説得し、再び健全で成功を収めた訓練を採用させてほしい。

この詩で我々のお気に入りの隠し場所を思い出してほしい。

「階段の頂点にて青い炎の前に立ち、
その目を公正なるヒストへ向けよ、
心を乱す恍惚へ歩み入り、
守りの枝の下に探し物を見よ」

キシ
キシ

ホスティア・アセラスの日記Journal of Hostia Asellus

また厳しい時期になった。人々は私たちが監視している道に足を踏み入れようとしなくなっている。私はファンダスに、間抜けな手下たちが旅人を頻繁に襲いすぎるのよと言った。今、旅人は私たちを完全に避けてしまっている。欲が深くて、馬鹿な連中だ。

やはりまともな収穫はない。限られた物資を長持ちさせるために蛙を捕まえているけど、状況が変わらなければじきに革のブーツを煮る羽目になるだろう。ジュリッタを食べさせるために自分の食事を抜いている。こんなところに病気の子供がいるべきじゃない。

ファンダスはもう大丈夫だと請け合った。言い合いになった。彼は手下たちと共に襲撃を計画していると言った。気に入らない。一番近くの村はあのルートハウスの民に属している。凶暴で、縄張りにうるさい。ファンダスは戦士たちの大半が狩りに出ている間に食糧庫を襲うと言っている。議論しても仕方がない。食料は必要だ。

ジュリッタは誰もいないキャンプで不安がっている。父親がいつ戻ってくるのか何度も聞いてくる。私が「もうすぐ」と言うのは嘘だと気づいている。

やった。ファンダスと仲間たちは偉そうにして、馬鹿みたいにニヤニヤしながらキャンプに戻ってきたけど、腕には新鮮な食料と乾燥させた保存食をたっぷり抱えてきた。今夜はたっぷり食べられる。少なくとも、これから数週間は大丈夫。

もう3日になる。叫びすぎて声が出なくなった。泣きすぎて涙も枯れてしまった。このままでいいはずがない。ジュリッタの命を守らなければ。あの子はようやく眠っている。私も寝たほうがいい。

あの目。目覚めるといつも、あの丸い黄色の目がある。いつもそう。まるで、またあそこにいるみたい。ジュリッタがベッドから引きずり出されても叫び声をあげないから、現実じゃないと分かるだけ。あの忌まわしいトカゲどもめ。

危険を冒して沼地の奥、ブラックローズに向かって進んだ。その価値はあった。ブラックガードのキャンプをもう一つ見つけた。彼らは養う相手が増えるのを歓迎しないようだった。檻に入れろと思っていた者も何人かいたのが分かった。でもグルズナックは私が一人前の仕事をしている限り受け入れようと同意した。後で教えてくれたが、私の目を見て判断を決めたらしい。娘を檻に入れさせるくらいなら、素手で何人でも殺しそうな様子なのが分かったと言っていた。実際そのつもりだった。

グルズナックは今、私に家畜の餌をやらせている。こいつらを見ると胃が痛くなる。痛めつけられた奴は問題を起こさない。嫌なのは新しい連中だ。犬を躾ける時は、少なくとも言葉を話して懇願はしないのに。動かなくなるまで殴ってしまった。

家畜を傷つけたことで大目玉を喰らった。問題は歯だった。買い手は見苦しい獣を好まない。次はそのことを覚えておけとグルズナックは言った。彼は新鮮な家畜の訓練を始めてくれと言っている。私には才能があると。

ここに来てから、時間が飛ぶように過ぎていく。将来が期待できると思うくらい。グルズナックは理解のある指導者だ。分け前はたっぷり持っていくけど、私たちが全員ちゃんと生活できるように計らってくれる。ジュリッタと私は他の皆より少し取り分が多い。気に入られているのだと思う。

またしても1年が過ぎた。早いものだ。いい年は長く味わえたらいいのに。食べ物や暖かいベッドを求めていたのはもう昔の話なのに、今もできるだけ溜め込む癖がついている。圧迫するような恐怖は嫌なものだ。あのトカゲたちの目は、私が眠っている間も見ている。明日は2匹潰してやろう。グルズナックが何と言おうと知ったことじゃない。

ジュリッタはもう子供じゃない。泥トカゲどもの事件があっても残っていた無邪気さもなくなった。一週間前には私のスカートにしがみついていたかと思ったら、今じゃもう言い寄ってくるグルズナックの下っ端たちを、私があげたナイフで撃退している。あの子もそろそろ、自分の仕事をしなきゃならない歳になった。ナイフの使い方を教えてあげてもいいかな。

ジュリッタに臆病なブライトスロートの世話をさせた。最初は怖がっていたけど、もうこの獣を恐れる必要はないと示してあげた。

ジュリッタはブライトスロートに紐をつけて引っ張るのを楽しんでいる。こんなに屈託のないあの子の姿を見たのは久しぶりだ。あの子がどれだけの恐怖を抱えていたのか、私は気づいていなかった。もう数日間は楽しませてあげるつもりだけど、泥トカゲをペットにする考えについては少々話し合う必要がある。

グルズナックの奴隷事業は大きく成長している。一味の数は彼がヴァーデンフェルのテルヴァンニに販路を開いて以来、3倍にもなった。グルズナックは私に自分の部隊を組織してもらいたいと言っている。その響きは、嫌いじゃない。

ボリプラムスについてOn Voriplasms

沼の泥に関する論文、シロディール・コレクションのコンコルディア・メルシウス 著

個人的にはまだその風変わりな泥を見たことがないが、確かな情報によると、ねばねばした土と軟泥の動く水たまりであるボリプラムスは、実に驚くべきものである!広範囲にわたる研究と、シロディール・コレクションのジー・ラー氏を含めたマークマイアの民に話を聞いた結果、ボリプラムスにおいて分かったことは以下の通りだ。

ボリプラムスの生態には謎めいた部分が残っている。自然の中で見かけると、浅い沼の中であろうと草に覆われた川底であろうと、ボリプラムスはどろっとして粘性の高い緑色をした、ヘドロの水溜まりでしかない。しかし詳しく調べると、そのヘドロは水溜まりのように広がることも、消散することもない。代わりにその形のない形をとどめ、極めて穏やかならぬ様子で波のように動く。見たところ感覚組織も内臓もまったくないその注目すべき泥の塊は、とても効率よく動き、狩りをし、食べる。それもジー・ラー氏の主張によると、ボリプラムスは20ペース以上離れたコヒョウグアルに気づき、目もくらむような速さで地面を滑って進み、哀れな獣に身の危険を感じる暇を与えることなく飲み込んだという。その泥はすぐに獲物をむさぼり、残った骨を排出し、日光浴をしていた以前の場所へ滑って戻ったのだ。

この件に関する数少ない学術的研究から、ボリプラムスには基本的な知能があるらしい。ほとんどの肉食獣と同様に、獲物を認識し、危険を避け、強い相手から逃げるのは確かだ。群れをなし、単独でだけでなく集団で狩りをすることも多い。どうやって意思の疎通をしているのかは、周囲の世界との交流に使う方法と共に謎のままだ。解剖の試みはまだ成功していないらしい。

これについて研究する学者、グウィリム大学のイクセリアス・タロス氏によると、ボリプラムスは大きくなってから分裂して、新しいボリプラムスを作り出すことで繁殖すると推測している。生産という意味では効率的ながらいくらか孤独だとも思われるが、歩くヘドロの塊としては筋が通っている。

さらに驚くべき説として、マークマイアの自然の中には、ボリプラムスの死体と呼ばれる同族らしい獣がいると噂されている。ボリプラムスは獲物の肉を食べてから骨を出すのに対して、その泥は骨を新しい皮膚のように保持するのだ。自然界で見かけると、それはまるで骸骨のような体で、骨から肉が溶け落ちてボリプラムスのヘドロに入れ替わったかのように見える。ボリプラムスの死体は、その名前と裏腹に歩き回る性質を持つが、死霊術やその他の超自然な存在とは関係がない。カタツムリが貝に住むように、ボリプラムスは捕えた骸骨を利用して泥に形を与え、しっかりとした輪郭を与えているのだ。それが、少なくとも私の現在の説だ。シロディール・コレクションのマークマイア奥地への探検に参加できたら、さらに知識を深め、この書を更新するつもりである。

マークマイアで冒険を探そう!Seek Adventure in Murkmire!

一生に一度の旅を体験できる、屈強な冒険者を探しています!

古代の遺跡!魅惑の風習!雄大な眺めに魅力的な動物!こうしたものが、マークマイアの不思議な沼地で見つかるでしょう!

世界を見る機会を求めていますか?日常を逃れ、地平線の先を探索する機会を夢みていますか?今すぐシロディール・コレクションの仲間となり、未来の歴史書に名を残しましょう!発見と冒険が待ち受けています。今すぐご参加ください!

詳細は、ストームホールドのコンコルディア・メルシウスまでご確認ください。

マークマイアの諸部族:ゴーストTribes of Murkmire: Ghost People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

この文章はロウソクの明かりで書いている。私の同行者たちがストームホールドへ向かっていると、不意に案内人が止まれと命じた。彼は空気の匂いを嗅いで鼻にしわを寄せ、それで全て説明されるとばかりに、私たちは「ヴィーシュクリール・ツェル」に近づきすぎていると宣告した。私たちは彼に従ったが、進路を修正しながらもっと説明してくれと頼んだ。案内人はこの話題についてそれ以上口を利くのをためらったが、しつこく説得を続けた。当初思っていた以上の所有物を失うことになったが、ついに答えを得た。

「ゴースト族」はマークマイアの原住部族で、なかなか恐ろしい評判があるらしい。彼は影に向かって一瞥した後、小声でしか話さなかった。彼によると、ゴースト族は完全な暗闇の中で生活しており、ディープマイアから出るのは不注意な者を夜中に追跡し、誘拐する時だけだという。彼も実際に見たことはないのだが、色がひどく薄いので骨が透けて見えるという話だ。アルゴニアンの子供が夜眠れない原因を考えたことのある人は、こいつを思い浮かべればいい。とても歓迎はできそうにないが、この変わった部族についてもっと知りたくなったのも確かだ。彼らの地を直撃したい気にもかられたが、私はヴィーシュクリールについて話す意志のある他の民に聞くだけで満足することにした。

分かったのはゴースト族がこの地の人々の間でも謎に包まれており、彼らを巡る噂が数多いことだった。ヴィーシュクリールについて私が耳にした途方もない話の中でも、二つのことは確かなようだ。彼らはその青白い鱗によって見分けることができ、「死者盗み」であり誘拐者であるという悪評を得ている。墓荒らしに対する嫌悪感はもちろん理解できるが、マークマイアのアルゴニアンが永続性に対して全く執着しないことを考えると、彼らにとってもタブーであることには驚いた。案内人にこのことを尋ねると、ゴースト族が盗むのは死者だけではないと言った。彼らは死体を自分たちのヒストの根の周りに埋め、冒涜的な儀式を行って死者の魂をその部族から盗むと信じられている。アルゴニアンにとって、これ以上に大きなタブーはほとんどない。

ここに座って、暗闇の中で恐るべき死霊術について考えを巡らせていると、私のロウソクが消えかかると共に浅瀬の中から泥にまみれ、腐れ落ちた不運な旅行者たちが起き上がってくるのではないかと想像せずにはいられない。夜が明けたらすぐに出発するべきだ。この黒い夜と青白いゴースト族を追い払える時が、とにかく早く来てほしい。

マークマイアの諸部族:デッドウォーター族Tribes of Murkmire: The Dead-Water Tribe

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私たちの幸運は長く続かないと知っていて然るべきだった。マイアダンサーたちと過ごした愉快な休息の後、私たちは北へ進むことにした。案内人のリーラスは、考え直すよう私たちに迫った。「深い泥はよそ者を飲み込んでしまう」と彼女は言った。リーラスはケール・サッカ橋での事件を蒸し返し、北方の部族はタム・タリール以上に交渉の余地がないのだと説明した。私たちの多くは探検を中断したいと思ったが、結局は多数票に押されてしまった。

自分たちの愚行に気づくまで、長くはかからなかった。北方へ分け入っていくにつれ、植生は1時間ごとに厚みを増していった。以前にも遭遇したニクバエの小さな渦は膨れ上がり、羽音と苦痛の巨大なうねる雲と化していた。リーラスは何度も引き返すよう勧告したが、私たちはさらに暗闇の奥深くへ進んでいった。

月耀の朝早く、ペルシウスがいなくなっているのに気づいた。私たちは分散して、1時間以上もの間声をあげて呼びかけ、分厚い泥の中でつまずきながら彼を探した。荷車のところで再び集合した時、ヴァレンティナとモーテンの姿も消えていることが分かった。私たちの勘違いした勇気が即座に溶けてなくなったことを認めても恥だとは思わない。私たちはすぐに荷車の向きを変え、沼が許す限り急いで南へ移動した。鳴き声が聞こえ始めたのはその時だった。

最初は静かだった。蛙が数匹集まっているような感じだった。少しずつ、声は大きくなった。パニック状態で1時間進んだ後、鳴き声は耳をつんざくばかりの不協和音へと成長していた。そして叫び声が上がった。誰の声かは分からなかった。私に言えるのは、あれは苦悶の叫びだったということだけだ。私は周囲の木々を通り抜けるいくつもの影を見たが、ほんの一瞬見えただけだ。はっきり見えたのはそのうち1つだけだった。リーラスが言うには、間違いなくナガだった。恐るべきナガ・クルのメンバーである。どうやら、デッドウォーター族はマークマイア北方の広大な領域を支配しており、周辺の村のサクスリールから大いに恐れられているらしい。

私が目にした1人に関して言えば、あれを忘れることはできないだろう。その女の顔は蛇の一種に似ていたが、全身が泥で覆われていた。だが一番衝撃的だったのは、その盾だ。顔が付いていたのだ!ナガ・クルはしばしば自らの武器や鎧に死んだ仲間の一部を使うとリーラスが教えてくれた。顔や爪、足の骨などを。死んだ友を切り刻むなどとは考えただけでも寒気がするが、リーラスは肩をすくめるだけだった。「ナガ・クルは日々戦って生涯を過ごす。そうすれば彼らは死んだ後でも戦える」筋は通っている、と思う。
幸運なことに、私たちはそれ以上被害を出さずに逃げおおせた。だがあのナガ・クルのことはすぐに忘れられないだろう。間違いない。

マークマイアの諸部族:ブライトスロートTribes of Murkmire: Bright-Throats

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

数ヶ月前、私はマイアダンサーの長老に、ブラック・マーシュの沼地にはいくつの部族が住んでいるのかと尋ねた。彼は長い間静かに座ったままでいた後(アルゴニアンはよくそうする)、私の背後を指差した。振り返ると、イトスギの木々の間を何百匹ものホタルが飛び交い、薄暗がりを貫いて緑と黄色の光を発していた。「あの光と同じくらいだ」と彼は言った。

これはなかなか信じられなかった。アルゴニアンは大げさに言うことが多いので、長老のこの主張もまた誇張だろうと切り捨てたのである。しかし現地の人々とさらに時間を過ごした後、あの長老の数え方は当初私が考えたよりも実情に近いと信じるようになってきた。私はマークマイアだけでも、少なくとも12のはっきりと区別される部族を発見したし、これを遥かに超える数の部族がいることを確信している。部族の多くは敵対的なので、直接の交流は不可能に近い。だが彼らの存在を神話や伝説として片づけるには、あまりにも多くの証拠を見てきた。この日記は私がマークマイアの未開地を探検して発見した記録として使えるだろう。まずは多くのよそ者が最初に出会うであろう部族から始めよう。

リルモスで少しの間でも過ごしたよそ者の多くは、沿岸に住むいくつかの部族と交流を持つ可能性が高い。しかし最も注目に値するのは「ワッセーク・ハリール」つまり「ブライトスロート」である。大まかに言って、この部族はよそ者と沼の奥地のアルゴニアンの両方と実りある関係を好む、陽気な職人たちで構成されている。ブライトスロートはその豊かな音楽と踊りの伝統、そして商人や外交官、木工職人としての超自然的な才能によって知られる。彼らは数えきれないほどの品を作っており、その中には楽器や台所用品、鎧や武器も含まれるが、最も尊重されているのは「ジーチキ」つまり「種の人形」である。この人形の大きさはさまざまであり、オークの拳ぐらいの大きさのものもあれば、米粒のように小さいものもある。人形はほぼ常に現地の動物をかたどっているが、ブライトスロートは卵や小さなアルゴニアンに似せて種の人形を彫ることもある。

種の人形は非常に珍重されている――お守りとして、また工芸品として。安物の模造品が競争相手の部族によってよく作られるが、本物のジーチキを手に取ったことがあれば、見分けるのは容易である。私もここで過ごす間にいくつか購入した。一番気に入っているのは琥珀が散りばめられた小さな亀である。彫刻家が教えてくれたところによると、この亀は強大だが手に負えないトーテムであると言う。私は亀が特別手に負えないと思ったことはないが、それに関してはここの人々のほうが詳しいだろう。バンコライに戻り、最終的にウェイレストの家へ帰る前にもういくつか買うつもりでいる。

マークマイアの諸部族:ブラックトングTribes of Murkmire: Black-Tongues

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

今日、私たちは見慣れない光景に出くわした。空のフラスコが、フォッサの木の下に山と積まれていたのだ。案内人の説明では「ブラックトングがこの木を吸い出した」そうだ。彼はさらに「コタ・ヴィムリール」つまり「ブラックトング」とは、ブラック・マーシュのマークマイア地域に住む無数のアルゴニアン部族の1つだと説明した。好戦的なタム・タリールや不気味なヴィーシュクリールとは異なり、ブラックトングは基本的に礼儀正しく、物腰が柔らかである。状況さえ許せば。しかし、彼らは不意を突かれると反射的に暴力で応対し、縄張りに侵入する者たちを躊躇も慈悲もなく殺すことで知られている。優れた錬金術師である彼らはしばしば、よそ者に対する警告として、自分たちの縄張りを示すフラスコなど、錬金術の道具を置くのである。

ブラックトングは熱心なシシスの崇拝者である。そのため、彼らは自分たちの資源のほとんど全てを、可能な限り多くのシャドウスケールを生み出すことに用いている。シャドウスケールとは何か?私が聞きたいくらいだ。地元民の大半は、この話題についてよそ者と話し合うことをきっぱりと拒絶する。アルゴニアンの民は彼らを、畏敬と恐怖が混ざったと見られる気持ちで尊敬しており、その名を口にすることさえ文化的な禁忌とされているようである。私が出会った少数の、迷信の度合いが低いアルゴニアンたちは、いくつかの事実を教えてくれた。

どうやら、シャドウスケールとは高度な訓練を受けた暗殺者によって構成された、奇怪な修道院のような教団のメンバーであるらしい。影座の下に生まれたアルゴニアンは誰でもこの教団に渡され、その謎めいた殺人者の一員として育てられる。私は仰天してしまった。「そんな野蛮な実践に従っているとは、ただの敵対的な部族ではないのか?」と私は聞いた。だが、違う。これはどうやら全くどこでも見られる実践のようである。友好的なブライトスロートや賢いマイアダンサーでさえ、この伝統に加わっているらしい。

だが、ブラックトングはこの義務をとても真剣に受け止めている。彼らは沼地の植物や野生生物に関する知識を利用して、「薄闇の甘露」と呼ばれる強力な避妊薬を作る。この薬を飲むことで、この部族は産卵周期を一致させて、大量の新しいアルゴニアンを毎年、影座の下に産むことを保証している。

彼らの錬金術の能力は、影座に生まれた者たちが将来暗殺者となった際にも役立つ。ブラックトングはタムリエル全土でも最大級に強力な毒を作ることで知られている。薄闇の甘露でさえ、アルゴニアン以外が飲めば死を招く。ブラック・マーシュに見出されるものは全て、状況が許せば死を招く証拠がまた増えた。

コタ・ヴィムリールの成員に直接会って、彼らの錬金術の技術と謎めいたシャドウスケールとの結びつきについてさらなることを知りたいのは山々だが、招待もなしに彼らの縄張りに長居をするのは賢い行為ではない。朝の紅茶に毒蛇の牙を入れられるのは勘弁願いたい。

マークマイアの諸部族:マイアダンサーTribes of Murkmire: Miredancers

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私はこれまでにマイアダンサーの長老2人と話す光栄を得たが、どちらとの会話からも非常に多くのことを学んだ。自らを「ギー・ルスリール」と呼ぶ彼らは、私が旅行中に出会った中で最も内省的なアルゴニアンである。彼らはまた、最も好ましいアルゴニアンでもある。孤独を好み、用心深いことの多いアルゴニアンだが、私は彼らほど積極的に食事や、貝殻と石のゲームに誘うことを好む人々を見たことがない。彼らは熟練の職人であり、とりわけヒストの琥珀や卵の殻を加工するのに優れた才能を示す。彼らはまた比類なき航海士であり、縫製の達人であり、熟練の地図職人でもある。

しかしマイアダンサー最大の特徴は信心深さである。ヒストに対する深い信仰心によって、彼らは数えきれないほどの世代にわたって、「樹液と話す者」を任命する権利を得てきた。

私が話した長老たちによれば、樹液と話す者はヒストの直接の媒介者である(これにはもちろん、議論の余地がある。多くの部族はヒストと交信する特別の方法を誇っている。しかし私が見た限り、マイアダンサーが用いる方法は最も説得力がある)。樹液と話す者はしばしば何日も、それどころか何週間もの間隠遁生活を送るため根の奥深くに分け入るか、一番高いところにある枝の葉の層にまで登っていく。彼らはそこでヒストと交信する。実際、長老たちの一人が使った言葉は「旅」だった。

このヒストへの旅は樹液と話す者に多大な負担を強いるもので、徹底的に個人的な行いである。孤独に何日も過ごした後、樹液と話す者は姿を現し、古文書や巻物、石板を持って再び隠遁する。私はこの隠遁の目的を尋ねてみた。いつもどおり、答えは詳細なものではなかった。「樹液と話す者はヒストの抱擁へ入り、大いなる木から学ぶ」と、長老の一人は言った。「根や枝と密に触れていることで、樹液と話す者は幻視や、あなたにも私にも理解できぬその他の形の交信を受けるのだ」。

もう一人の長老は続けて言った。「示されるものの一部は、樹液と話す者にとってさえ神秘的で困惑するものと感じられる。私が聞いたところ、樹液と話す者は古代の隠喩やアルケインの秘密、そして樹液と果肉から離れた生き物には理解しがたい幻視を受け取るという」。どうやら、隠遁の第二期は樹液と話す者に、見せられた内容について考える時間と、以前の樹液と話す者による古い文書を参照する時間を与えるものであるらしい。適切な期間にわたって研究と熟慮を行った後、樹液と話す者は姿を現し、ヒストの意志を部族に明かすのである。

私は樹液と話す者が根や枝の間で瞑想している期間に何が起きるのか、もっと情報を得ようとしたが、長老たちがこれ以上のことを知っているのかどうか定かではない。彼らが教えてくれたのは、樹液と話す者が隠遁期に得られる唯一の栄養はヒスト自体から、樹液や葉、あるいはこれ以外の場合に禁じられている木の実によって与えられるということだった。

しかしながら、ヒストとの交信という贈り物には犠牲も伴う。ヒストの樹液を大量に摂取することは、アルゴニアンにとってさえ危険な行為である。樹液と話す者は樹液中毒の症状に苦しむことが多く、症状には「黄金舌」(口の色素が恒久的に金色に変化すること)や不意の幻覚、「樹皮の鱗」(鱗表面が分厚くなり、色も暗くなる)、その他にも彼らが話すのをためらうような病気がある。現在の樹液と話す者であるトゥマルズは、私が部族の村を訪問した際には隠遁中だった。いつか彼に会えることを期待している。彼が私の話した長老たちの半分の知恵でも持っていれば、多くのことを学べるのは疑いない。

その深い信仰心にもかかわらず、マイアダンサーはあらゆる種類のゲームにも熱中しているようだ。彼らが特に好むのは九つの貝殻、および貝殻と石のゲームである。また有名なスポーツ「テーバ・ハツェイ(ヒップ・アンド・テイル)」も人気だ。自分たちのゲームを嬉しそうに説明してくれるのに加えて、彼らは私たちがウェイレストでどんなゲームを嗜むのかについて、私が教えられる限りのあらゆることを知りたがった。彼らの情熱が移ってしまったことは認めねばなるまい。彼らが私の漠然とした描写に基づいて「詐欺師の骨」を再現しようとするところを見るのは、非常に面白かった。

マイアダンサーは常習的なギャンブラーであるが、しばしば賞金を受け取るのを忘れてしまう。人間やエルフのするゲームとは違い、マイアダンサーの競技は悪意や意地の張り合いとは全く無縁のようである。勝利や敗北は目標ではなく、おまけにすぎないように見える。これは沈着冷静な彼らの気質に負うところが少なくないだろう。大抵の物事におけるのと同様、彼らは厳密に今、この瞬間に集中する。彼らの村を離れるのは心苦しいが、まだまだ研究しなければならない部族が多くいる。もっともマイアダンサーほどに魅力的で、友好的であろうとは思えないのだが。

マークマイアの諸部族:ルートハウスTribes of Murkmire: Root-House People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

今日もまた危ない目に遭った。現地の案内人の激しい抗議にもかかわらず、探検隊はケール・サッカ川を橋で渡ることに決めたのである。案内人たちの1人(明るい色の鱗を持つアルゴニアンで、名をリーラスと言った)は、遥か下流を歩いて渡河し、橋は避けるように強く言ってきた(念のために言っておくと、私はこの計画に賛成だった。リーラスの案内は誤ったことがなかったからだ)。しかしグループの中には、辛い作業や危険な環境に慣れていない学者が数多くいた。私たちは危うく、彼らの快適さのために命を失うところだった。

後で判明したのは、この橋は「タム・タリール」あるいは普通の言葉で「ルートハウスの民」と呼ばれる部族によって「所有」されていることだ。彼らは好戦的で、争いを好む民である。怒りっぽく、残虐性と気の短さで沼中に知られている。彼らは平和な村を襲い、居住者を殺し追い払うのを習慣としている。その上で空になった小屋に住み着き、村の資源を使い尽くしてしまうのである。他のサクスリールはこの部族を「盗賊ガニ」としばしば比較する。カタツムリや小さいカニを食べ、空いた殻に引っ越す生物だ。

我々が橋に足を踏み入れるや否や、この部族の成員が数人、私たちの隊商の前に立ちはだかった。彼らを見た瞬間、自分たちが危機に陥ったことが分かった。タム・タリールは私がこれまでに出会った他のアルゴニアンよりも明らかに大柄であり、肩幅が広く、目は細く、顎は幅広で力強い。彼らは腰布と戦化粧の他は何も身につけておらず、羽根で飾られ、血が染みついた巨大な木の棍棒を手にしていた。

リーラスは素早くキャラバンの先頭に歩み出て、必死な鳴き声で話し始めた。彼女が何と言っていたのかは見当もつかないが、タム・タリールは少しの間、彼女の言葉を考えていたようだった。リーダーは私たちを指差し、低くゴロゴロいう唸り声で何か言った。リーラスはこれにうろたえたと見えて、私たちのほうを向いた。

「彼は馬を欲しがっている」とリーラスは言った。

黙って従う以外の選択肢がないのは明らかだった。私たちは綱を切って馬を放した。4頭全てをだ。ルートハウスの民はそのうち3頭を取り、道を外れて沼へと連れていった。賊のリーダーは4頭目の馬を橋の中央まで連れていき、数歩下がってから、吐き気のするような鈍い音と共に、棍棒を馬の頭蓋骨に叩きつけた。哀れな獣の頭はグシャグシャになってしまった。あんな恐ろしい光景は見たことがない!私の同国人の1人は荷馬車の脇で吐いてしまった。リーラスは間を置かず、一行のうちで一番力のある者たちを集めて橋の反対側まで荷車を押した。幸運にも、次の村に着くまでは半日押し続けるだけでよかった。これからは皆、リーラスの言うことに従うだろう。

マークマイアの諸部族:部族間のつながりTribes of Murkmire: Tribal Connections

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私はここの部族については測り知れないほど多くのことを学んだが、部族間の関係性についてはいまだ重要な洞察が欠けているような気がしてならない。ここには奇妙な友好関係があり、私がこれまでに見てきたほとんど全てのことと矛盾している。暴力的な略奪や死者盗み、密漁があっても、アルゴニアンの種々の部族は互いを卵の兄弟、姉妹として見ている。例えば先日、私はブライトスロートの一家がタム・タリールの略奪者数人とテーバ・ハツェイで遊んでいるのを見た。これは武力衝突によりタム・タリールの1人が命を落として、たった数時間後のことだった。まるで忘れっぽさを強制されているかのようだ。あるいはあらゆる部族間の関係を規定している、特別な許しの文化があるのか。

少なくともこうした友好的な振る舞いの一部は、彼らが人種共有しているという事実に根差しているに違いない。ブラック・マーシュの諸部族は互いの違いを脇に置いて、モロウウィンドやシロディールの侵略者を追い払わねばならない状況が無数にあった。彼らはまた、自分たちがいかに互いに依存しているか理解しているようでもある。この点で、彼らは私がこれまでに会った人間とエルフの大部分よりも遥かに上だ。タム・タリールは自分たちが盗む家や物を作る他の部族が必要だということを認識している。マイアダンサーは国境を守り、大型の沼の捕食者を追い払うためにデッドウォーター族が必要だということを知っている。ブラックトングは錬金術の調合に使うための作物を育てるヘー・テプスリールが必要なことを知っている。ブライトスロートは、誠実な交易を妨害する悪意のよそ者に「沼の法」を強制するため、ブラックトングのシャドウスケールが必要だと知っている。こういった具合だ。

宗教もまた一定の役割を果たしている。私は友人のエウテイになぜ彼らはこれほど寛容なのかと聞いた。彼は輪廻に関する漠然とした信念に言及した。

「我々は皆、根の民だ」と彼は説明した。「ブラックトングは時が来ればマイアダンサーになるかもしれないし、マイアダンサーはブラックトングになるかもしれない。そういうことはヒストだけが知っている。互いを憎むことは我々自身を憎むことだ。サクスリールにとって、自分を憎むことに何の得がある?忘れて、前へ進むほうがいい」

いくらか考えを巡らせてみたが、私たちも少々忘れっぽくなったほうが役に立つこともあるのではないか。そう思わずにはいられない。

より明敏な言語:ジェル語入門The Sharper Tongue: A Jel Primer

魔術師ギルドの秘術師、道を照らす者 著

アルゴニアンの会話におけるニュアンスの多くは、あからさまな隠喩とさりげない動作から生まれるものだ。しかし、ジェル語は学びにくい言語だと感じる者が多い。しかし、共通語を話していても、私たちが母語をたくさんちりばめていることに気づくはずだ。

ほとんどの言語と同様に、旅人なら鍵となる言葉やフレーズを学ぶと、ブラック・マーシュの部族を理解して交流するために役立つだろう。よそ者の関係改善に役立つように、ブラック・マーシュを訪れる者のための短い手引きを書くことにした。この手引きがより良い旅の始まりになることを祈る。

ビーコ:友人。変化形としてディーク・ビーコ、ラジ・ビーコ、ビーク・オジェル、ウクシス・ビーコがある。

ボク:器。深い丸皿、もしくは丸いカップのような空洞。

ディーリス:教師。もっと正確に言うと、知恵を他の者に伝える者。誰にとっても誉れある称号。

グリール:敵。サクスリールは数多くのヒストの下にある1つの民だと信じられているため、他の部族を表現するには滅多に使われない。敵対的な獣やよそ者に対して一般的に使われることが多い。

ハジ:隠れる、隠れた。ハジ・モタの名前の一部に使われているのも納得できる。

カール:戦闘隊長。この称号は特に暴力的な部族で崇められている。

クロナ:大きい、巨大な。「あいつの足はクロナだ!」のように、誇張や冗談で使われることが多い。

ルキウル:非アルゴニアン文化に順応したアルゴニアン。彼らはブラック・マーシュの民からよそ者扱いされることが多い。

ナヒーシュ:部族の長老。尊敬されているが、この称号は一部の学者の説と異なり、地位や権力とは関係ない。

ナルパ:ひどい。直訳は「腐った」だが、ひどい出来栄え、ひどい性格、ひどい料理などを表現するのにも使われる。

ノルグ:禁じられた。ほとんどの禁じられたものは話題にしないので、私の文化ではほとんど使われない言葉だ。

オジェル:部族の者ではない、よそ者。文字通りには「アルゴニアン語を話さない者」もしくは「ジェル語の話し手ではない者」の意。

リール・カ:戦士。力を示せば、いずれはカールになることもある。

サクスリール:アルゴニアン。細かく言えば、アルゴニアン語でアルゴニアンを表わす言葉。

スティシル:卵。この言葉は言いづらいと感じる者が多いようだ。スティシルはサクスリールの文化において重要なものなので残念だ。

ツクシス:蛇。目的を達成するために卑劣な手段を使う者のことを言い表すにも使われる。

トテイク:素晴らしい。対象となるものについてとても強い意見を示すので、たまにしか使われない言葉だ。もし使うのであれば節度を持って使うこと。

ツォナ:泳ぐ(ちなみに、ブラック・マーシュの沼で泳ぐことはお勧めしない)。

ウクシス:巣、家、ベッド。私たちにとって、これらのコンセプトは同じである。誰かのウクシス・ビーコになってほしいと言われたら注意すること。

ヴァステイ:変化。おそらく私たちの意欲の背景にある原動力。変化に逆らうことは究極の愚行として知られている。

ザル:怖い。他の言葉やフレーズと合わせて使われることが多い。例えばジンチェイ・コヌは、ザル・ヴァステイを起こすことで有名な記念碑だ。

ジーチ:木の実、種。さらに、始まり、誕生、まだ見えない潜在力を持つもの。

ズル:死、または死に関係があるもの。私たちからすると同じものとして考えられるため、復活も意味する。

バッカ:太陽。私たちが太陽を崇拝すると信じている学者がいると読んだことがある。それは誤りだ。太陽の温かさと日光浴は好きだが、それだけだ。

リー・ナカルの命令Ree-Nakal’s Orders

あのブライトスロートの女はますます取り乱している。私を信用してくれと言っておとなしくさせているが、いつまでもつか分からない。ブライトスロート村付近にある、ドラゴンソーンの乾いた草地でハクサラを待ち、彼女が自白を決断する前に黙らせろ。

リルモスの歴史A History of Lilmoth

ウェイレストの放浪者、ティリリャ・レン 著

リルモス、ブラック・マーシュの膿んだ宝石。マークマイア最南端の港であり、その先にある自然の沼への入口である。商人や旅人は泥だらけの通りを歩き、湿度が高いので肌の上で汗がしずくへ変わる。ブラック・マーシュの中で、これほど洗練された街はない。

ただし、実際のところは帝国支配の時代から数十年経った今、そもそも他の街に出くわすことがない。元帝国都市のリルモスにも、今では帝国の影響がほんのわずかしか残っていない。沈みかけた屋敷に飾られた絵が、苔に覆われて腐りかけている姿が見えるだけだ。アルゴニアンがブラック・マーシュを取り戻したように、沼がリルモスを取り戻したのだ。

しかし、リルモスの基礎を作ったのは鱗だらけの手ではなかった。それは、街を築いた狐の民を示す独特の名前からすぐに分かる。残念ながら、リルモシートの住民はナハテン風邪で全員死んでしまったので、もうリルモスにはいない。タムリエル中から来た商人と、近くの部族から来たアルゴニアンの旅人が街を占有している。

まともな権力構造が存在しないため、影響力のある商人が集まる議会が街のほとんどの問題に対応している。彼らは港の関税に目を配り、リルモスの街を巡回する衛兵を雇っている。さらに、全ての非住民に対して略式の裁判制度を使って裁きを下す。ただし、うまく賄賂を使えば、口のうまい弁護よりも早く問題を解決できることはよく知られている。

マークマイアの民には、もっと構造的ではない裁きの制度がある。周囲の部族では木の番人と戦士長が紛争のほとんどに決着をつけるのに対し、リルモスにはそのような法的制度が存在しない。リルモスで1年過ごしたが、多くのアルゴニアンがスラーキーシュという名の年長のアルゴニアンに従っていることに気づいた。彼らの社会における彼女の役割はよく分からないが、どうやら彼女は仲間内で尊重される裁定者として見られているようだ。

まだ荒削りではあるが、元は戦い、海賊、政治的紛争の巣だったリルモスはずいぶん変わった。今ではマークマイアの風変わりな謎を、広大な沼の危険に身をさらすことなく経験したい者にとって、素晴らしい場所であることに気づくだろう。私のように、アルゴニアン文化の奇抜さに引きつけられた者なら、ぜひ訪れるべき場所である。

ロスガーからリルモスへ:ある鍛冶師の物語、第一巻From Wrothgar to Lilmoth: A Smith’s Tale, Vol 1

熟練の鍛冶師ガルノザグ 著

俺はただの年老いた武器職人で、武器こそ命だ。まだ牙も小さいヒヨッコだった頃、俺はオルシニウムの大鍛冶場に忍び込んで、達人たちが仕事をするのを見ていたものだ。そのうち俺は見習いになって、鍛冶場の端から端までスラグを運んだ。そうして一人前になり、頭から爪の先まで煤と汗まみれになった。最終的に、俺は偉大なる熟練の鍛冶師に加わった。鉄をたわめ、鋼鉄に槌を打ち付けて過ごした年月の間、俺は金属以外のものを使って武器を作る可能性なんて一度も考えなかった。そりゃ、結んで縛るにはマンモスの革とかも使ってる。時には絹を着て生まれてきたような洒落者が、宝石をはめ込んでくれと求めてくることもあった。だが金属は俺の技の心臓だ。ここリルモスの武器職人に出会った時の俺の驚きを想像してみてくれ。

俺はいつも、タムリエルの南方にはそのうち行ってみたいと思っていた。戦争が始まった時、今行けばいいじゃないかと思った。カバナントの補給係に装備を売ってがっぽり儲けることもできた。だがブラック・マーシュにはなぜか、いつも俺の好奇心を刺激する何かがあった。

このトカゲの民が戦闘で木の棍棒を身につけているという物語は耳にしていた。俺は蛮族がシューシュー言いながら亀甲の兜と粗雑な革のグリーヴを付けてるところを想像してたんだ。完全な間違いだったと躊躇なく認めよう。ここのアルゴニアンたちは、俺に想像もできなかったような方法と素材を使っていて、結果は驚くべきものだ。メモは取ってるんだが、役に立つかどうか疑わしいな。素材の半分はブラック・マーシュでしか見つからないし、何十年も金属を叩いてきたこの手じゃ、細かい仕事までやれるかどうか自信がない。それでも、学ぼうとしない鍛冶師なんて何の役にも立たない。だからここにいる。あのトカゲどもに少々教えてやろうと思ってたんだが、俺のほうがたくさん学べそうだ。

ロスガーからリルモスへ:ある鍛冶師の物語、第二巻From Wrothgar to Lilmoth: A Smith’s Tale, Vol 2

熟練の鍛冶師ガルノザグ 著

今日もリルモスにいる。地元の武器職人で、シュケシュという名の年寄りで狡猾なアルゴニアンは、俺の眼鏡にかなう女だ。彼女は真面目で仕事熱心、しかも少々頑固だ。俺は彼女にオークの血が半分入ってるに違いないと言った。アルゴニアン特有の作り笑いをされた。本気で面白がっているとも、全く賛成していないとも取れるあの笑いだ。俺には違いがさっぱり分からん。最初に会った時、彼女は「トゥシック」の剣を作っていたが、これを「剣」と呼ぶべきなのか自信はない。正直に言って、これがどういう種類の武器なのか分からない。棍棒と剣が子供を産んで歯を半分取っ払い、残りを削って牙にしたような感じだ。もう少し詳しく説明したほうがいいかな。

このアルゴニアンの鍛冶師はまず、ある長さの木を手に取る。自分の腕の長さでもいいし、尻尾の長さでもいい。彼女は一週間かけてこの木を削り出し、櫂の形にする(俺は製作中のものをいくつか見せてもらったが、船の櫂と見間違えた)。多くのアルゴニアンはこの木を染色するだけで次の段階に進んでしまうが、老シュケシュは達人だ。俺には分かる。彼女は自分の欠点を根気で補っている。彼女は骨と精密に削り出した黒曜石のノミを使い、櫂の表面に装飾を刻んでいく。こうした模様の大半は抽象化された動物の形だ。クロコダイルとかな。だが模様の中にはいくつか、ちょっと不気味なものもあった。特にあるトゥシックにはぞっとさせられた。それは暗く着色された頭蓋骨に、隆起と棘がついたもののように見えた。彼女は「特別な客」のためのものだと言っていた。その客には会いたくないな!

木が硬化して染色と研磨が終わったら、シュケシュはそれを脇に置いて、仕事の次の段階に取り掛かる。つまり石の彫刻だ。シュケシュによると、この工程にはあらゆる種類の石を使っていいが、彼女は黒曜石を好むそうだ。原石は削られてナイフの刃のように鋭くなり、粗雑な四角から均一に削られた牙になる。この「歯」を削り出したら、シュケシュは木や骨の釘、煮沸したデパッサ・ガムを使ってこいつを櫂に取り付ける。

デパッサ・ガムというのは、奇妙なねばねばした物体だ。エシャテレの脇の下みたいな臭いがするが、ペーストのように木や石にくっつく。いったん固くなると引き剥がすのは不可能に近いが、アイアンウッドの若木のように軽く柔軟だ。俺はシュケシュに、こいつは俺が皮を固定する時たまに使う、マンモスの下地を思い出させると言った。彼女は特徴的な鳴き声をあげてこう言った。「木を刈るほうが、マンモスを狩るより簡単じゃない?」。それには同意するしかない。

歯がしっかりと所定の場所にはまったら、シュケシュは持ち手に革や樹皮の切れを巻き付け、どんなに雨や血で濡れても滑らない握りを作る。これで武器は完成だ。金属は一切使われていない。もっとも、この作品を完成させるため、彼女はほぼ3週間を費やした。

トゥシックの最も驚くべきところは、武器それ自体(これもまた素晴らしい出来栄えなのだが)ですらない。凄いのはこれの製作に伴う技術だ。シュケシュはただの鍛冶師じゃない。彼女は木工職人であり、錬金術師であり、石細工職人であり、縫製職人でもある。どれか一つを極めるにも一生を要するのに、彼女は4つ全てに熟練している。ほとんど恥ずかしくなるほどだ。暇を見て俺も木工を練習したほうがいいかもしれない。なんてな!無理に決まってる。結局、年寄りのオークに新しい芸は覚えられない。

ロスガーからリルモスへ:ある鍛冶師の物語、第三巻From Wrothgar to Lilmoth: A Smith’s Tale, Vol 3

熟練の鍛冶師ガルノザグ 著

アルゴニアンの「鍛冶場」は奇妙な場所だ。鍛冶場というより作業所に近い気がするな。この場所に入った時、故郷で馴染んでいた音や匂いには全く出会えなかった。金床を叩く音も、石炭の煙も、冷却用の桶がジューっという音もなし。不気味なほど静かで、ノミや斧、変な液体が入った木の桶、積み上げられた石、死んだ鳥、生きたナメクジ…こういったものがたくさんある。

最初の1週間ぐらい、俺はシュケシュの作業所で居心地悪く感じた。彼女はあまり口数が多いほうじゃない。最初の数日の間に彼女が出した唯一の音は、何かが完璧に計画どおりにいかなかった時不意に出てくる、イラついたシューシュー声だった。古いジェルの民謡もいくつか歌ってた。もっとも「歌」と呼べるのかどうか分からんが。初めて聞いた時、彼女はそこらじゅうをうろつきまわってるトカゲを殺してるのかと思った。ここはあいつらの巣窟になってるんだ!

そのうち、シュケシュは俺に話しかけてくるようになった。最初の頃の話は大抵、俺に鱗がなくて不愉快だとか、俺の目がビーズみたいに丸いとか、そういうことだった。彼女が俺を馬鹿にし始めた瞬間から、すぐに仲良くなれると分かったよ。シュケシュが教えてくれた最初の秘訣は「ナメクジ型」の技術だった。どうやらブラック・マーシュには大量のナメクジがいるらしい。俺の故郷でこのねばねばした生き物はあまり見かけないし、見かけてもすぐに踏み潰して、ブーツが汚れたのを不快に思うぐらいだ。だがここリルモスでは、どんなものにも意味がある。大半のナメクジは食料にしかならない(聞いた話だ。俺は4つ足でないものは食べない)。だが一部のナメクジには驚くべき使い道があるらしい。そういう特別なナメクジの一種は「ジャッサ・レッド」と呼ばれ、一風変わった防衛手段を持っている。脅威にさらされると、このナメクジは酸性の粘液を噴出させる。食べられそうになった時にそれがどう役立つのかはよく分からんが、この酸性の粘液はアルゴニアンの武器職人にとって有用なのだ。

シュケシュが自然の意匠を作品に組み込みたい場合は、このナメクジを木や石の上に置いて、ナメクジのすぐ後ろで繰り返し火打ち石を打ち合わせる。火打ち石の位置を調節すれば、ナメクジを様々な方向に押しやれる。ナメクジは木や石の上を動くにつれて酸性の粘液の細い線を跡に残し、長くなめらかな道が素材の上にできていく。粘液の働きは使われる素材によって異なる。粘液の作用は自然の着色料にもなり、その色は薄茶色から輝く黄色まで様々だ。

シュケシュは試しに俺にやらせてくれた(何の価値もない割れた材木で)。予想はしていたが、俺は下手だった。俺はグチャグチャな溝を作ってしまった。それも全部不気味な緑色の斑点に染まって。気持ち悪くなって火打ち石を投げ捨てたら、シュケシュは笑ったように思えた。本人はただの咳払いだと言って、このナメクジ型は完全に「ラジプ」だと言った。ラジプというのが何なのかよく分からなかったから反論はしなかったが、推測はつく。とにかく、俺には皮膚を焼く鼻水のねばねばした塊より、金槌と鋏のほうがずっといい。

韻と鐘Rhymes and Chimes

編訳 チャク・シュシュ

卵の番人の子守歌(作者不明)

小さなスティシル、小さなスティシル
樹液を飲み干して
小さなスティシル、小さなスティシル
さあお昼寝をして

小さなスティシル、小さなスティシル
殻の中で眠りましょう
小さなスティシル、小さなスティシル
世話をしてあげましょう

小さなスティシル、小さなスティシル
そっと寝返りをうって
小さなスティシル、小さなスティシル
固くしっかりと育って

ヒスト賛歌(作者不明)

我らが生まれた根の中に
あなたの樹液を浴び、姿を形作り
我らはここに集い、あなたの賛美を歌う
あなたが育みしものへ感謝を捧げる

風が鐘を優しく撫でて鳴らす
泥が全ての苦しみを貫いて固く抱きしめる
雨が黄金の陽光を越えて根に辿り着く
太陽が命ある間、葉に口づける

全ての小枝と大枝を祝福しよう
その下で我らは誓いを立てよう
繊細な樹皮と花を祝福しよう
祝福されしあなたを、我らのヒストと呼ぼう

童謡 ミンメ

チリン、チリン、虚ろな鐘
韻に合わせて鳴るね
愛し子のいる巣に思いを寄せる
勝ち得た眠りに落ちる

あなたは容易に揺らいで踊る
夜の優しいそよ風に乗る
怠惰な流れの思いが起こる
喜ばしい夢に渡る

チリン、チリン、虚ろな鐘
韻に合わせて鳴るね
夜の霧の中を率いる
ヒストの根に帰る

番人の根 チャク・シュシュ

あなたの腕の下で
抱かれて横たわる
朝露にしっとりと湿って
過ごした時間がもつれ合う

太陽の口づけを浴びて
湿気を帯びた空気のように熱くて
息は霧のように吐き出され
熱気が耐えられなくなるまで

私は鱗を濡らし、泥で整える
優しい大枝が影を作る
愛しい根の中で、私は血を冷ます
まどろみ始める

あなたはそっと子守歌を歌う
そよ風の中の鐘の歌を
心の目にあなたの種を植える
そして与える木々の夢を

影の道The Way of Shadow

ソリス・アデュロによる翻訳

見習いとして、諸君は常に自らの力の源泉を覚えておかなくてはならない。我らの主人の気まぐれ一つで、力が奪われてしまうこともあるからだ。諸君は多くの他の勢力に誘惑されるだろう。それらの多くは我らが父に似た仮面を被っている。彼らは父が持つ顔と同じぐらい多くの名を持つ。諸君が影のルーンを引き出す時、思い出すべきは父の全ての顔であり、彼らの顔は一つとして思い出してはならない。

また、光なくして影はないことも忘れてはならない。光がなければ虚無があるのみである。我々は父の顔を崇拝するが、避けられないものに向かって進む労力を払うのは我々の定めではない。太陽は血を流す黄身であり、我々はそれを飲むのである。

それまでの間、我らの鱗が黒くあり続け、影の席に仕えられるように。

影の鱗Scales of Shadow

ニッソ・ゼーウルム 著

暗闇の星々よ、星座よ、
集めるべき星を教えたまえ
必要な子供たちに与え
必要な道を教えるため

影の鱗よ、死の手よ
汝の刃によりシシスは名誉を得る
必要な変化を生み出すため
流されるべき血によって

汝は一党に入る
唯一の真ならざるものに導かれて
我らの無の言葉を覚えよ
無が見るものを見よ

ある日、汝の鼻が青白くなる時
汝は沼へ帰る
暗闇は汝の心に留まる
汝の鱗はいまだ影なれば

解き放たれしドラキーの日記、3ページDrakeeh the Unchained’s Journal, Page 3

私の祖父はまさにこの壁の中で鎖につながれていた。彼は私よりも毒舌だったが、彼の心は同じ憎悪で満ちていた。故郷から連れ去られ、インペリアルは彼を自分たちの意志に従わせようとした。ナガ戦士の曲げられない精神を曲げることを。

彼らは失敗した。侮辱するたびに彼の決意は強くなった。鞭を使うたびに彼のかぎ爪は鋭くなった。つながれた鎖は彼を強くするだけだった。彼は卵の兄弟を集め、心に戦士の歌を歌った。共にブラックローズ監獄を、鎖で縛った帝国のクズどもから奪った。

しかし他の部族がその戦士の歌を聴いた時、彼らは恐怖で萎縮した。祖父の心の中にある憎悪を見て、彼が毒されていると考えた。彼らは怒りを忘れるように、帝国の罪を忘れるように言った。ヒストの葉の下でもう一度踊るように、地平線を憧れのまなざしで見つめるだけで満足するようにと。

私の祖父は、それが愚かなことだと考えた。彼は新しい部族の族長、ラジカールになっていた。自分たちを迫害した者たちの道具を利用した。肌の乾いた者の監獄を取り戻して自分の砦にし、彼らの武器を自分の力にし、彼らの鎧を自分の保護に使った。そうして、かつて彼らを拘束していた鎖を振り回し、ブラックガードは生まれた。

解き放たれしドラキーの日記、12ページDrakeeh the Unchained’s Journal, Page 12

あまりにも長い間、私たちは卵の兄弟だけを仲間にして戦った。優秀な戦士ではあるが、数が少ない。私たちの力には限りがあり、活動範囲はちっぽけで、虫のように影をはい回らざるを得なかった。ただの盗賊に成り下がっていた。邪魔な存在なだけだった。

私は変化をもたらすのが賢明だと悟った。数を増やし、影響力を拡大するには、仲間が必要だった。肌の乾いた者が組織に入ることを許し、彼らを私たちの力にするのだ。そうしてブラックガードは大嵐のように、打ち寄せる波のように大きくなった。

しかし目の曇った者たちは、身内を疑った。私の指導力に疑問を持ち、昔のやり方に目がくらんでいた。怒りに満ちた声で叫び、それはどんどん大きくなった。私は彼らを落ち着いて観察した。シシスが、変化は常に混乱につながり、同様に混乱は血につながると教えてくれた通りだった。

そうして私の試練は生まれた。私の決断を疑う者は、仲間である肌の乾いた者の戦闘能力を試す機会を与えられた。そのような挑戦に成功した、数少ない者たちはどうなるのか?彼らは私の相手をする。彼らが疑問視しているのは私の命令で、指導者としての強さだったのだから。

私の前にいたシシスのように、私は破壊と創造を両方行い、疑う者を始末し、従う者を強くした。そうして、ブラックガードは復活した。

解き放たれしドラキーの日記、17ページDrakeeh the Unchained’s Journal, Page 17

誰かが私たちから逃げることはあまりない。ブラックガードに存在するのは、忠誠と死だ。そのため、誰かが私たちの手から抜け落ちる時、私は忘れない傾向にある。

その男は闇を探す者と名乗っているが、私はピマクシ・タイードと言う名を知っている。かつて奴は卵の兄弟であり、戦士であり、ブラックガードだった。今では盗賊の巣に隠れている。なぜマークマイアに戻ることにしたのか、私には分からない。だが、何としてでも後悔させてやる。

奴を私の試練で戦わせるように計画した。目の前で奴がぼろぼろになって死ぬのを見るのは面白そうだ。しかし斥候の話で、奴の仲間が私の砦をうろついているのが目撃されたと聞いた時、私にはどうすべきか分かっていた。

ピマクシ・タイードがゆっくりと苦しみながら死ぬのを見れば満足感が得られるだろうが、奴とそのウッドエルフには絆があるに違いない。ならば、その心を殺してやろう。明らかに大切な存在であるその者の死を自分が引き起こしたのだと悟って、目に不幸がわき上がる様子を見るのだ。

殺すのは後でもいい。今は、手紙を書いてウッドエルフに選択肢を与えよう。報復を遂行するのはそれからだ。

壊れたジンチェイ・コヌThe Broken Xinchei-Konu

黒き棘が崩れた監獄を覆い
根の獣が門の側に潜む
太陽は獣に喰われ、もはや輝かぬ

その枝から離れた実は
苔むした石の上に落ちた
実は東を見る、海へ向かって

淀んだ沼の奥深く
積まれた石に生える芽一つ
捨てられた巣、入るものもなし

沈没船の葦は腐れ落ち
北へ向かい、通り過ぎる交易船が
ヒストの若木に影を投げかける

虚ろなこだまの中、轟く根の向こう
成熟せしヒストは佇む
風の吹きすさぶ洞窟の奥深くに

海と沼が出会う場所、崖の縁の下
黒に覆われたインペリアルの石の陰
冷たい水の中に、年老いたヒストは座る

ヒストなき街の外れ
卵の籠はうずくまる、石造りの巣に
肌の乾いた、定まらぬ手が築いたもの

石の蛇は石の卵を守る
過去の愚行の二柱の間
西には、ハジ・モタが潜む

枯れゆく根の地下室にて
高くそびえる石の背後に
トカゲは座り、待っている

死の水から北
沼の端には根が潜む
その腹の中には、歩くトカゲ

虚無の口の下で
歩く根は我らの一族を飲んだ
轟音を立てる滝の下で

死の最後の季節は
根の最後の敵の内に横たわる
ささやく根が聞こえるほどに近く

蛙の演奏On Playing the Frogs

愛しいヘルガへ

君は先日私が見たことを信じないだろうな。リルモスを通り抜けようとしたら、アルゴニアンの音楽家の小さな集団に出くわした。ほとんどの者は粘土のフルートとトカゲ皮の太鼓を演奏していたが、1人だけ今までに見たことのないイカれた楽器を演奏していた。彼はそれを「ヴォッサ・サトル」と呼んでいた。どうやら、ヴォッサ・サトルにはいろいろな種類があるらしい。口琴のような小さなものから、パイプオルガンのような大きなものまで!我が新しき友のヴォッサ・サトルは、雌鶏くらいの大きさだった。音もちょっと雌鶏に似ていたな。

楽器の見た目は、上部にバルブが連なって付いている、磨いた木製の貝殻のようだ。貝の各部分は意外と小さくて、ラッパのような口がついた仕切りのある空洞になっている(見たやつには5個あった)。音楽家によれば、小部屋はそれぞれ大きさが異なっていて、異なる音色を生み出すんだそうだ。

で、これが一番イカれた点なんだが、奴らは生きた蛙を中に入れるんだ!友人は親切にもヴォッサ・サトルを開けて中にいる5匹の小さい蛙を見せてくれた。1室に1匹ずついるんだ!彼はまるで母親が生まれたばかりの子を自慢するように、蛙について何やら並べ立てていたよ。彼は蛙の名前、好きな遊び、好きな食べ物について教えてくれた。唯一教えてくれなかったのは見つけた場所だ。どうやら産卵池の場所は極秘らしい。

彼は毎回演奏の前に、数滴の蛙香を小部屋に吹きかける。これで蛙たちが興奮して、どうかしたみたいに甲高く、ケロケロ鳴くようになる。バルブを押すことで、他のは開いたまま特定の小部屋の音を弱められる。これで奇妙だけど、調和のとれた音が出せるんだ!ほとんど信じられなかった!即座に楽器を買い取ると申し出たんだが、断られた。まあ、それで良かったのかもな。蛙たちがウィンドヘルムの冬を生き延びられるかどうかは怪しい。結局、君のためにはフルートを買ったよ。一番ワクワクするような楽器じゃないけど、君が好んで吹くあの古い山羊の角笛よりは、いい音を間違いなく出せる!

カイネの天啓を込めて

トラルフ

蛙の集め方ガイドA Guide to Gathering Frogs

友のビーコよ!

ジミラ船長にプレゼントするヴォッサ・サトルを完成させるために、お前には以下の蛙を集めてきてもらいたい。

必要なのはアシゴケガエル、ルビーホッパー、インディゴツリーガエル、太陽に祝福されし蛙だ。これらが最も広い音域を出せる蛙なのだ。

まず、リルモスの東にある湿地の茂みにいる、アシゴケガエルを何匹か探してくれ。こいつらはとてもおとなしく、捕まえやすい。

次に、ルビーホッパーを探すんだ。この珍しい赤いカエルは、リルモスの水辺にある石の上で陽を浴びるのを好む。だが、気づかれないように近づけ。でないと怖がって逃げて行ってしまう。そうなったら、怯えた蛙は街の中心にある大きな木に隠れることが多い。

インディゴツリーガエルを捕まえる手順は少々複雑だ。この蛙が住む木を見つけたら、ニクバエを何匹か集めてくれ。この青い蛙の大好物なんだ!ニクバエを木の下に放してみろ。下に飛び降りて食べに来たら、捕まえればいい。

最後だが、太陽に祝福されし蛙は一番捕まえるのが難しい。泥の穴からこの蛙をおびき出すには、騙して交尾の時間だと思わせる必要がある。そのためには、まず蛙を引き付ける匂いを出す材料を集め、隠れ家から出て来るようにしないといけない。

匂いを作るためには、以下の植物を集めてくれ。ニオイスゲ、シオイグサ、ワライアオイだ。これらを組み合わせて、蛙の香を作るんだ。香が出来たら、蛙の泥穴を探す。そして蛙の香を自分にかけて、クロークホイールを使うんだ。香の匂いとクロークホイールから出てくる鳴き声があれば、きっと太陽に祝福されし蛙をおびき寄せて捕まえられるはずだ。

幸運を祈る!

虚ろなる者の成長Development of the Hollow

我らのヒストは無駄と、他の部族たちの我がままを認識している。彼らは太陽に愛された自らの地で、豊穣な生活を楽しんでいる。彼らのヒストは何も求めず、彼らもまた何も求めない。卵でさえ有り余っており、奴らのヒストは何の使い道も持たないほどなのだ。巣全体が捨て去られ、忘れ去られている。深い沼のリヴァイアサンに子供たちの集団が飲み込まれる苦痛を彼らは知らない。枯れた根も正しく世話すれば生命を得て膨らむことを忘れているのだ。私はあの虚ろなる殻のために目的を見つけてやろう。そうすれば、我々のヒストは再びその根を価値ある子どもに巻き付けてくれるだろう。

失敗。大量の失敗だ。予測済みのことではあった。虚ろなる卵に真の生命を吹き込むのは、捨てられた肉体をなだめすかして生者の行動を思い出させるように単純なことではない。

ブラックトングの霊薬は卵の成長を促進するが、荒っぽく無秩序な代物だ。腫瘍に似た原始的な肉の突起は、私が探し求めていたものから程遠いが、生命は生命だ。必要なのは導き手だ。何をすべきなのかは分かっている。

サクスリールになるはずだったものの萌芽は見える。最初は歯や鱗、あるいは背骨が、形を成さない塊に混じって卵から孵る。樹液は何をすべきか知っている。しかしまだ要素が足りない。時が来れば、この謎への答えが分かるだろう。

私は生命を創造した。短い命だったが、命には違いない。孵化したサクスリールは奇形であり、数時間生き残った者は少数だが、私は正しい道を進んでいる。

これらの卵を次々に孵化していったことで、自分が探し求めているものからどれだけ遠くにいるかようやく理解した。困難を乗り越えるたび、それが前回の困難とは比較にならないほど大きなものだと分かる。子供の成長を促進させることで、生き延びるための体の組成を与えてやることはできたが、身体的な異常を排除してさえ、やはりあれは虚ろなる者だということが明らかになった。サクスリールなのは形だけだ。一歩ずつ目標に近づいていると自分に言い聞かせるしかない。

孵化を生き延びた虚ろなる者を檻に入れねばならなかった。中には知能と言わないまでも、本能を備えているものがある。我々には見えないものに引き付けられているらしく、いかなる干渉に対しても敵意をもって反応する。貧弱な個体であっても適切な監視にはあまりに労力を必要とする。すでに1人以上を失っていると思うが、これほど失敗が多いといちいち数えていられない。

今日のことは勝利とまでは言わなくても、誇りに思っていいだろう。ヴィーシュクリールの儀式を私の錬金術と組み合わせることで、健康なサクスリールを1体作れた。虚ろなる者に比べればおとなしいが、目には認識の兆候が乏しい。魂は感じられるが憑依に欠陥があるのか、それとも体がやはり適さないのか、何とも言い難い。

安定した調合法を手にしたが、儀式に順応することに関しては全く進展がなく、以前の成功例も感知能力の改善を一切示していない。私はこの道を進んだことで、あまりに深い沼に沈み込んでしまったらしい。一歩退いて、他の道を探すべき時が来ている。

私の霊薬の限界を試すために少なからぬ数の卵を失ったが、卵の供給は続いているし、犠牲を払うだけの価値はあった。卵のうち2つからは、これまでに見たことのないサクスリールが生まれた。他の虚ろなる者とは違い、青白くない。体の模様には鮮やかな色が付いており、皮膚からは我々にとってさえ致命的な調合薬の成分が発散されている。安全な研究のため、私は隔離しておいた。

この新しい調合法にはかなり期待をかけている。卵の成長はあらゆる期待を上回るものだ。魂の拘束の儀式も同じような結果を出せればよいのだが。

恐怖の父の嘘Lies of the Dread-Father

ニッソ・ゼーウルム 著

丸い舌はそれに姿形を与える
そして「それ」は「彼」へ変わる
彼らはその腐れ落ちた花嫁に囁きかける
彼を称えよ、彼を崇拝せよと

彼らはそれを父と名づける、恐ろしきものと
彼らは恐るべき血の刃と共に祈る
彼らは真理の一面を語る
彼らの舌に絡みつく何かを

無形が形を与えられ
変化は停滞になる
一つの真理は真ならざるものへ変わる
何かの一党が見つめる

軍団士官のメモLegion Officer’s Notebook

我々が雇ったアルゴニアンの斥候は天の恵みだ。ジン・ラジュルはこの沼地を知り尽くしているようだ。実際の話、この洞窟に野営することを進言したのもあの斥候だった。風雨からの保護と、身を守るのに適した防ぎやすい場所を提供してくれるのに加えて、彼の部族の伝説によれば、ここには大昔、ある強力な武器がしまい込まれたのだと教えられた。その武器を入手できれば、帝国にとって大きな利益となるだろう。

* * *
この洞窟にいるのは第九軍団だけではない。何者かが我々の警備兵と物資捜索隊を襲ったのだ。アルゴニアンの斥候は、ここにいるのが軍団だけだと主張した。つまり我が兵たちが義務を放棄して脱走したと言いたいのだ。馬鹿げている!第九軍団が責任を放棄することなど決してない!ジン・ラジュルは本当のことを言っていない気がするが、なぜ私に嘘をつくのかは分からない。

軍団士官の日記Legion Officer’s Journal

ジン・ラジュルめ!奴は何らかの魂胆で第九軍団をこの洞窟に引き入れたのだ!今では何もかも滅茶苦茶になってしまった。あの物体は兵たちの半数以上を食い尽くしてしまった!あれは巨大になり、さらに強くなっている!

まだ何らかの行動を実行に移せる程度の兵は無傷で残っているが、あの悪臭を放つおぞましい泥の塊が外に出て、帝国を脅威に陥れることのないよう、入口を封鎖するつもりだ。

好色なアルゴニアンの歩兵、第1巻The Lusty Argonian Footman, Volume 1

(未完成)

– 第5幕、第1シーン、続き

背骨を立てし者:申し訳ございません、奥様!

ナデネ・ヴェラス:こんなこともできないの?

背骨を立てし者:努力はしています!でも何をしても…

ナデネ・ヴェラス:もっと磨かないとだめよ。私の器に艶を出してくれないと。

背骨を立てし者:はい!今すぐもっと磨きます。

ナデネ・ヴェラス:そうよ、それいいわ!本当に、熱心に喜ばせてくれるのね。

背骨を立てし者:貴女を喜ばせることが私のすべてです!

ナデネ・ヴェラス:分かってるわ。この後は食卓の準備をしないと。

背骨を立てし者:ただちに!旦那様が出掛けてる間は、お好きな部屋にご用意できます。

ナデネ・ヴェラス:忠実な召使なら、当然ね!

– 第V幕の終わり、第1シーン –

高名な探検家の失われた物語:欠片1Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment I

ソリス・アデュロ 著

「3人だけか」とマティウスは抗議した。3人では偵察隊にもならない。本格的な探検隊となればなおさらだ。「最低でも9人という約束だったのに」

ターナは机の上にドンと足を投げ出した。「それが精一杯だったわ、マティウス。あんたの名前にもう昔みたいな効力はないの」

マティウスはそれが本当のことだと知ってはいたが、自分の友人からそう言われたのは初めてだった。自分の任務を続けるつもりだと言ってから、ターナが彼に冷たくなったことにマティウスは気づいた。彼がインペリアル公認の調査隊のリーダーとして、ブラック・マーシュ地域の正確な地図を作る任務についてもう10年が過ぎた。国境地域は十分に画定されたが、沼地の中心部についての情報は乏しく、検証不可能だった。帝国から市民へ広められる公式の記述ですら、無数の疑わしい報告に基づいて作った、継ぎはぎだらけの物語だった。

探検は失敗と考えられていた。彼の仲間は探検が長引くにつれて死ぬか任務を放棄して、規模を刻々と縮小していった。ターナは彼のところに残った唯一の者だが、彼女は病気にかかってうわごとを言うようになり、旅の最後の日々を思い出せなくなってしまった。

そしてマティウスが大学に戻って失われた都市や古代文明について話すと、彼の主張を保証する目撃者が他にいないこともあって、疑いの目にさらされるたのである。それ以後、ターナとの関係は変わってしまった。マーシュは彼らを二人とも変えてしまったが、その余波もまた楽なものではなかった。マティウスは昔のことを水に流してまた一緒にやれることを期待していたが、ターナはもう二度とブラック・マーシュには戻らないと言ってきっぱり断ったのである。彼女は隊員集めに協力してくれた。マティウスとしては、力を貸してくれる人がいるだけでも感謝しなければならなかった。

「少なくとも、そいつらは経験豊かなんだろうな」。彼には期待するしかなかった。

「運がいいわよ」とターナは言い、何かの書類を眺めた。「まあ、あんたがハイエルフと仲良くできるならね。彼女は魔闘士だから、何とかなるでしょ。名前はサラーラ。聞いたことない名だけど」

マティウスは眉をひそめた。そんな熟練の仲間が手に入るのは嬉しいはずだったが、何か警戒すべきものを感じたのだ。「なぜ魔闘士が私のところに来るんだ?」

ターナは肩をすくめた。「私の知る限り、これは公認の任務じゃない。私の情報筋も彼女については何も知らない。自分なりの理由があって来たんでしょう。今は贅沢言ってる場合じゃないわ」

マティウスはうなずいた。そのエルフには目を配っておかなくてはならないだろう。「で、他の二人は?」

「逃亡奴隷のリファン。若いけど熱心なノルドよ。情熱の大切さは知ってるでしょう。先回りして言っておくけど、彼は読み書きできるし、狩りや食料調達の腕もそれなりにある。これまで自分の力で生き残ってきたんだから、チャンスを与えてやりなさい」

働き手が多いのは悪い事ではないし、チームの規模は小さいからその少年が邪魔になることはないだろう。それでもマティウスは、覚悟のない者にとってこの旅がどれほど厳しいものになるかを知っていたので、申し訳ない気分になった。「で、三人目は?まだ案内人の話をしてないだろう。アルゴニアンの協力者なしにはどこにも行けないぞ。少なくとも、それくらいは覚えているだろう」。そう言ってしまったことをマティウスは後悔したが、ターナは無視した。

「河のエラ」と彼女は言った。「あんたが依頼したとおり、経験豊富なアルゴニアンの案内人よ。条件は一つだけ」

「条件があるのか?」マティウスはため息をついた。「俺が約束した金額は提示したか?」

「したわよ。最後まで聞いて」。ターナは一旦話を切った。彼を待たせるためだけにやっているようだった。「河のエラは途中まで案内してくれる。そこからはあんたが行きたいところに半分の時間で連れていってくれる、別の者を紹介してくれると約束している」

良識ある人間なら断るところだとマティウスは思ったが、彼には断れないのが分かっていた。どんなに見込みが薄くても、もう一度チャンスを得られるのをもう10年も待ち続けてきた。沼にはあまり人前に姿を現さない部族がいて、隠された道を知っているという話はマティウスも聞いたことがあった。そうした部族と安全に接触できるという考えは、彼を勇気づける程度には魅力的だった。

「よしわかった」とマティウスは言った。「ありがとう、ターナ」。彼は背を向けて立ち去ろうとしたが、扉のところで立ち止まった。「本当に、何を言っても一緒に来てはくれないのか?やっぱり、俺たちは二人で行かないと」

「言ったでしょ、マティウス。たとえ世界中のゴールドをもらってもブラック・マーシュには戻らないって。私のほうこそ、行かないようあんたを説得できたらと思うわよ」

高名な探検家の失われた物語:欠片2Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment II

ソリス・アデュロ 著

彼らがようやく野営地に適した開けた場所に辿りついた時、まだ太陽は高く昇っていた。進み続けることもできたが、明かりが続く限りは進めると考えて迷子になった探検隊は数多い。早朝が旅に最適な時間なのだ。沼はまだ寝ぼけており、夜は完全に明けていた。マティウスは火をおこすのに必要なものを集めに行ったが、仲間たちから離れないように気を使った。彼は棒きれとシダも探すことにした。それを使えば光を隠せる。マティウスはこれだけマーシュの奥深くにいる時は、こうしたほうがいいことを知っていた。彼の新しい仲間たちには何も言わなかった。皆疲れていたし、退屈していたからである。

「古代アルゴニアンには黄金の鱗があり、卑しい人間やエルフの目を眩ませることができたと言われている」マティウスは全員にこの任務の重要性を思い起こさせることで、彼らの士気を高められればいいと思った。そしてキャンプファイアの物語というのはいつでも、少し誇張した話をするものである。「彼らはその最も偉大な街を高く建設し、太陽にまで届かせた」

「それからどうなったの?」と若きリフェンは聞いた。

マティウスとしては、この若者の尽きることのない好奇心を気に入ったと認めざるを得なかった。マティウスはわざと答えを保留し、河のエラが自分から答えを言ってくれることを半分期待した。こうした伝説についてマティウスが知っていることは全て、他のインペリアルの探検家や学者の業績だった。彼はアルゴニアンからこうした話を聞き出せたことがなかった。

河のエラは全く聞いていないかのように、ただ座って陽の光を浴びていた。マティウスから見ると、このアルゴニアンは眠っているも同然だった。

「太陽が彼らを滅ぼしたと言う者もいる」とマティウスは続け、棒切れの束を放った。「彼らは太陽を卵のように割って開け、神になったと言う者もいる」

エルフのサラーナは失笑した。「馬鹿げてるわ。太陽が卵じゃないのは誰でも知ってる」これまでのところ、マティウスがこの魔闘士について知ったことは、彼女が自分の信念に何の疑いも持っていないことぐらいで、その信念の大部分はギルドの教えから来ていることが彼には分かった。

「じゃあ何?」とリフェンが聞いた。

「穴よ」

リフェンは鼻をすくめて見上げた。「あれって穴なの?」

「見たらダメだ」マティウスはため息をついた。

「黄金の都市も信じてないの、サラーラ姉さん?」とリフェンは聞いた。「船乗りはただの物語だって言ってたけど」

「自分の目で確かめたいんだろう」とマティウスが口を挟んだ。サラーラはこの探検に加わる個人的な理由を教えてくれなかったので、予想しただけである。

サラーラは二人から顔を背け、茂みをじっと見つめた。壊れたコンパスを取り出し、それを強く握りしめた。

「まだ何か、価値のあることが学べると思っているわ」とサラーラは答えた。「彼らの信じていることが全て間違っているとしても」

河のエラが目を開いた。

高名な探検家の失われた物語:欠片3Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment III

ソリス・アデュロ 著

彼らは3日間河を移動し、夜になると河のエラが安全に停泊して休める場所を示した。

1日目、河のエラは理由も言わず、一行を河の土手にある岩だらけの露出部に数時間も停止させた。マティウスはリフェンに、沼の奇妙な植物や動物について教えて時間を潰した。マティウスは名前を知らないもののほうが面白いと思っていたが、捕まえて観察することを考えるわけにはいかなかった。無数の色を持つ鳥や、大きな岩のような甲羅を持つ巨大カブトムシ、集団で移動し、灰色ベヒモスの死骸を食べる鱗犬などがいた。マティウスはどれ一つとして名前を知らなかった。

旅を再開する頃には、夜になっていた。他の者たちは抗議したが、河のエラは今が旅に適した時間だと請け合った。マティウスはアルゴニアンの案内を信じることにして、一行は引き続き河を下った。サラーラでさえ、皆に加わって沼を見つめた。木々を通り抜けて移動する、薄暗い光を放つ不思議なクラゲで沼地が明るくなっていたからである。

2日目、リフェンが何かを発見し、「見てよ!」と叫んだ。

サラーラは息を呑んだ。マティウスは振り向いたが、他の者たちと同様言葉が出なかった。沼の中から飛び出してきたのは蛾の羽根のような、巨大な金属の羽根だった。苔と泥にまみれてはいたが、マティウスは2つのドームのような、何層にもなったガラスの目を見分けることができた。何だか分からないが、あれの全体はどれだけ大きいのだろうと思った。

河のエラは一行の前方にある曲がりくねった河から目を逸らさなかった。頭にあるヒレが高速で振動し、低くうなっていた。

「止めてよ、あれを見なきゃ」サラーラの声は震えていた。彼女は河のエラに向けて手を伸ばした。

「止まることはできない」と河のエラは落ち着いて言った。「少し前から、リヴァイアサンが我々を追跡している」

サラーラは一瞬だけ静止したが、すぐに筏から飛び降りた。他の者たちは落ちないように苦労した。

「サラーラ!」とマティウスは叫び、筏のバランスを保つために重心を移そうとした。「河のエラ、速度を落としてくれ」

「止まることはできない」と河のエラは言った。

サラーラは仲間の抗議を無視して、可能な限り早く泥の中を移動していた。彼女は移動しやすいようにマントの紐を解いて脱ぎ捨てた。サラーラは手足をばたつかせて水しぶきをあげながら、不思議な蛾に接近していった。

「サラーラ姉さん!戻ってきて!」とリフェンは叫んだ。

サラーラは今や沼に引っかかり、のろのろと進んでいた。彼女は立ち止まって力の言葉を囁き、マティウスは移動を補助するものだろうと思った。彼女が壊れたコンパスを手に持っていることに、マティウスは気づいた。

すると突然、沼自体が彼女を引きずり込み、飲み込んでしまったようだった。彼女は音もなく消え、二度と浮かび上がってこなかった。マティウスはただ、水の中を動く何か巨大なものの形をかろうじて見分けられただけだった。虫たちさえ音を出すのをやめたことに彼は気づいた。

サラーラのマントは物憂げに漂っていた。彼女の物語の中で残されたのは、ギルドの留め金だけだった。

「止まることはできない」と河のエラは言った。

誰も反論しなかった。そして事実、その日は誰も口をきかなかった。夜になると、彼らは村ほどもある大きさの木の中で眠った。

次の日の朝マティウスが目を覚ますと、リフェンの姿が消えていた。彼が残していったメモには、近くにある集落の明かりが見えたので、彼らに頼んで都会に帰してもらおうと思う。見捨ててごめんなさい、と書いてあった。マティウスには若者がすでに死んでいることが分かった。マティウスがこれでたった二人になったと言った時、河のエラは一言も発しなかった。

その日、彼らはついに徒歩に戻った。険しい地形だったが、マティウスにはそのほうがよかった。しかし旅を続けるにつれ、マティウスの心は以前の探検の記憶に苛まれた。河のエラはもうあまり遠くまで案内はしてくれない。マティウスには次の案内人がどういう人物なのか見当もつかなかった。ブラック・マーシュにおける孤独と恐怖がどういうものか、彼は覚えていた。

3日目の夜、河のエラはヒレを伸ばしてシューっと音を出し、マティウスに洞窟の中へ隠れるよう命じた。

河のエラは外に留まり、夜の残りの時間、マティウスは眠れなかった。夜中じゅう、彼には確かに、歌声と蛇のシューシューいう音が聞こえていた。朝になると、アルゴニアンは何事もなかったかのように再び現れた。

「ヌブタは今、お前に会うと言っている」河のエラはそう伝えて立ち去り、二度と戻ってこなかった。

高名な探検家の失われた物語:欠片4Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment IV

ソリス・アデュロ 著

ゴボゴボ、ゴボゴボ。

またあの音だ。マティウスは虚しく松明を振り回した。息の詰まるようなこの霧の中では、何も見えなかった。彼は空いているほうの手でマントを引き寄せて口を覆い、洞窟のさらに奥深くへと走った。

ゴボゴボ、ゴボゴボ。

すると、その生物の影が目に入った。巨大な球根状の影。それは彼を追いかけていた。彼は走り続け、息を切らしてあえいだ。

ゴボゴボ、ゴボゴボ。

彼はゲップのような笑い声の反響を耳にした。自分は頭がおかしくなったに違いない、とマティウスが考えるまで、その音は響き続けた。その後、彼の足元で、骨のぶつかる音が聞こえた。霧は晴れ、マティウスは自分があらゆる形と大きさの頭蓋骨を並べた部屋に立っていることに気づいた。床は何の生物のものかも分からない骨で埋め尽くされていた。彼は人間を丸呑みし、骨を吐き出す邪悪なボリプラムスのことを思った。「では、俺もこれでおしまいか」彼は息を吐き出した。あのアルゴニアンの嘘を見抜けなかったとは。

ゴボゴボ。

マティウスは部屋の空気が変わったのを感じた。凄まじい悪臭が彼の鼻を焼いた。

声が響いた。「また肉を持つ者がヌブタに会いに来たのか?飲み込まれる前に全て話してしまえ」

薄暗い松明の明かりの下では、不気味な生物の形がかろうじて分かる程度だった。これはプラムスではないが、吐き気を催させるような湿り気でギラギラしていた。丸々とした腹に、ナメクジのような潰れた顔を持つ、巨大な蛙の一種だった。中でも目が一番ひどかった。マーカスはその目の中に禁じられた知と際限なき恐怖を見た。この生物が喉を膨らませたので、彼は勇気を振り絞った。禁じられた知こそ、彼がこんな朽ち果てた場所に来た理由だったのだから。その獣は喉をゴクリとさせ、突然彼に迫ってきた。頭がくらくらするような煙が、鼻から噴き出していた。

「黄金の階段への道を探しているんだ」とマティウスは吐き出すように言った。自分の声がかすれているのは気に入らなかった。

獣は後退し、息を詰まらせたか、あるいは笑ったようだった。その後でゲップをしたのがマティウスには分かった。気絶せんばかりだったが。

「見せてやってもいい」とナメクジ生物は鳴いた。「対価を払えばな」

「もちろんだ、善良なる泥の王よ」とマティウスは言ったが、言わなければよかったと思った。こいつがお世辞ごときで満足するはずがない。実務的に応じたほうがいい。「その情報の対価とは?」

太った腕がポケットを探った。マティウスはこの生き物が模様の入った緑と茶色のローブを着ていることにさえ気づいていなかった。湿ったでこぼこの指が、黄金の装飾用アミュレットにはめ込まれた光輝く黄色の宝石を取り出して示した。宝石には傷一つなく、まばゆいばかりだったが、マティウスは呪われた遺物や不思議な宝石に関して素人ではなかった。彼は剣を抜き、待った。心臓が鳴り響いていたが、恐怖なのか興奮なのか分からなかった。これは古代アルゴニアの遺物なのか?獣は笑って、顎をぶんぶんと振った。

アミュレットを角のついた、何だか分からない古代の獣の頭蓋骨にかけてぶらさげると、それは松明の明かりの下できらめいた。「お前はこれをヌブタのために黄金の都市へと持っていく。それが対価だ」

マティウスは眉にしわを寄せた。「それで、到着したらこれをどうすればいい?」

「その時になれば分かる」とヌブタは囁いた。マティウスはその言葉が彼の耳の中をくすぐる感覚にぞっとした。「お前が死ぬ直前にな」

一瞬の間、マティウスは怪物の顔が自分の目の前まで来たと思ったが、まばたきをして再び見ると、怪物は動いていなかった。「道を教えてくれ」とかろうじて声に出した。

「ここから行くことはできん」と泥の王は言った。「お前は水中の根のように深く進まねばならん。お前の神々さえも見たことのない場所を潜り、探し回り、行き来するのだ」怪物がゲップをして最後の言葉を発した時、マティウスは何も言えなかった。「私はお前をクスル・アクシスまでは連れていこう」

マティウスは悪臭に逆らって呼吸し、剣を収めた。足を踏み出して黄金のアミュレットを拾い上げると、ぬくもりを感じた。「死ぬつもりはない」と彼は言い、アミュレットを荷袋に滑り込ませた。「そのことで気を悪くしないでほしいが」

怪物のゲップのような笑い声が響き渡り、それが消えた時、マティウスは一人で立ち尽くしていた。松明の明かりが燃え尽きかけていた。

高名な探検家の失われた物語:欠片5Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment V

ソリス・アデュロ 著

マティウスは旅仲間の悪臭のせいか、それとも再び沼を逆さまに通り抜けるという行為のせいか、吐き気を催していた。

ナメクジ生物ヌブタは笑った。「これで分かっただろう。この領域は広さよりも、深さのほうが大きいのだ」

マティウスにはさっぱり分からなかった。彼らが、ヌブタの言い方では「河に滑り込んだ」のはこれで3度目だったが、これをやる度に方向を見失うばかりだった。最後の時など、マティウスは自分が溺れているのを見ていたと確信したほどだった。

「夢を見ているようだった」とマティウスは言った。彼はせき込んでねばねばした水を吐き出した。

「夢を見ていたのだよ」

泥の王はそれ以上何も言わず、太い指で指し示した。その先をマティウスが目で追うと、周辺の沼地を通る開けた道の上に、黒い石のアーチ形の道が見えた。アーチ形の道には、蛇と根が互いに絡まり合っている姿が彫られており、頂点の部分には割れた舌を持つ頭蓋骨があった。マティウスはここから先、一人で旅を続けなければならないことを理解した。彼の案内人はこれから先を助けてはくれないだろう。彼らはクスル・アクシスの門に辿りついたのだ。まだ十分目的地に近づいていないのではないかと思い、彼は不安になった。

マティウスには考えがあった。彼はヌブタに渡された黄金のアミュレットを取り出した。「泥の王よ、あなたは自分の言葉を守った」とマティウスは言った。「私も自分の言葉は守る。この宝石を黄金の都市に帰そう。ただ、道を見つけられればだが」

ヌブタはゲップをしてうなった。その奇妙な目はアミュレットを見て少し考えていた。「影が滲み出る聖堂が見えるまで、道を外れずに行け。それは死の場所だ。中に入ってはならない。聖堂の前に立ったら空に太陽を探し、その方向へ歩め。着いた時は分かるだろう」

泥の王が突然這って河へ戻り、いなくなってしまった時、マティウスは抗議しようかと思った。一瞬だけ、マティウスはパニックが胸をつかむのを感じた。彼の仲間たちは一人また一人とこの旅を放棄していったが、マティウスは突然彼らが正しかったのではないかと考えた。この任務を投げ出すこともわずかな間だけ考えたが、前に進む唯一の道は黒い石の道であることにすぐ気づいた。川は足元で干上がっていた。

マティウスは勇気を振り絞った。アミュレットは彼の手の中でぬくもりを放っていた。彼はアーチ形の道に足を踏み入れて進んだ。

高名な探検家の失われた物語:欠片6Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment VI

ソリス・アデュロ 著

その古代のアルゴニアンはマティウスに向かって大股で歩み寄り、喉から絞り出すような言葉で叫び声をあげた。このアルゴニアンは平均的なサクスリールよりも頭2つ分ほど背が高く、鱗は金色、赤と紫と緑の明るい羽根や大きな曲がった角を持っていた。頭には鳥の顔の形に彫られた黄金の仮面を被っていた。羽根の付いたローブと黄金の腕輪を身につけており、両腕を広げると翼が付いているように見えた。マティウスにはどこまでが生物で、どこからが装飾なのかが分からないほどだった。

彼には考え込む時間はなかった。この黄金の怪物が呪いの言葉を叫びながら、彩色した爪で襲いかかってきたからである。マティウスに翻訳できた言葉は3つだけだった。太陽、炎、死。

マティウスは後方によろめいた。怪物が飛び掛かってきたので剣を抜くことができなかった。怪物は必死の形相で首にかかった黄色い宝石を爪でひっかいた。マティウスは何とか後ろに退き、剣を抜いたところでこの鳥のようなトカゲが叫びながら覆いかぶさってきた。彼は片手でやみくもに突きまくりながら、もう片方の手を怪物の喉に押し付け、爪で切り裂かれまいと必死でもがいた。怪物は何度も繰り返しアミュレットをひっかいた。アミュレットを首から切り離そうとしていた。

マティウスは宝石が砕ける音を聞いた。黄色い塵が空気を舞った。

アルゴニアンはもう動かなくなっていた。ようやく死んだか、とマティウスは安堵のため息をついた。手が疲れていた。

突然、怪物は目にもとまらぬ速さで再び動き出した。爪のついた両手が飛び出し、マティウスの顔を覆った。彼は自分の首が折れる音が聞こえるかと思ったが、アルゴニアンは強い力で抑えつけるだけだった。黄金の仮面が怪物の顔の一方からずり落ちていた。

それは鳥でもトカゲでもなく、蛇だった。さらにマティウスはその鱗が黄金ではなく金色に塗装してあるだけで、仮面の塗装が削れているのを見た。鱗が白黒の斑模様で、死体から色が消えつつあるのを見た。その目は虚ろな穴だったが、塵がその中に流れ込むと、黄色になった。

恐怖からか勇気からか、マティウスは蛇に剣を突き刺し、もう一度攻撃した。それと同時に黄金の仮面が滑り落ち、床に当たってガランと音を立てた。その中には血がついており、マティウスは蛇の顔が何度も繰り返し変化するのを見た。再び蛇に戻るまで、顔は12回変化した。

彼はこの怪物を殺すことを忘れていた。自分の命を守ることも、そもそも自分がなぜブラック・マーシュにまで来たのかさえ忘れていた。マティウスに分かったのは、ただ恐怖のみだった。

マティウスは落下し、そして吹き飛んだ。世界は彼に向って突進し、炎と栄光、狂気となって襲いかかった。持っていた覚えもない背中の翼に風の流れを感じ、飛び上がった。彼はいくつもの黄金の街と黒い石の街を飛び越えた。街々はそれらを包み込むヒストのごとく、尽きることがなかった。空は燃え上がり、太陽は穴だった。それでも彼は飛んだ。ただ風に運ばれる以上のことをする力はなかったからだ。

彼は塔へとやって来た。それは高く広大で、何層にもなったその沼地から、たくさんの木が生えていた。獣たちは、塔の外の世界を知ることなく生き、そして死んでいた。塔の頂上には火を放出する木があった。マティウスに似た、翼を持つ他の者たちがその木の周りを回っていた。彼らは叫び、マティウスはその言葉を理解した。知らない言葉だったのに。彼は深い悲しみを感じ、塔は見えなくなっていった。

マティウスが見上げると、他の世界と他の塔がいくつも見えた。それらは回転する輪であり、互いにめり込んでいた。輪の軸は絡まり合い、互いを破壊し合っていた。彼は自分の世界が壊れていくことも感じたが、蛇のように素早く影がやって来て塔の根を飲み込み、壊れないようにしていた。

マティウスはまだ飛んでいた。すると炎と暗闇だけがあった。そしてひどい騒音。だが恐れるには、彼は疲れすぎていた。だからマティウスは眠り、黒い太陽へと漂っていった。

黒きヒレ、故郷に帰るThe Black Fin Comes Home

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

黒きヒレとして知られるケシュ将軍は、シロディールのパクト勢力の指揮をフェリシ・ヴァロというダークエルフの将軍に任せた。そして私とヴォス・フルク、ティー・ワン、ゾシン、ダークエルフの双子レンシとメラリン、ノルドのジョドとウルフベルという少数の仲間を連れ、戦争で荒れ果てた田舎を離れてモーンホールドへ戻り、スカルド王ジョルンと最後の会合を行ったのだった。

「この奇妙な国で時を過ごすほど、山や雪が懐かしくなる」とジョルンはダークエルフの街の謁見室に入る時に言った。「さて、黒きヒレよ、言ってくれ」と彼は言い、ケシュに顔を向けた。「本当にこれでいいのか?」

ケシュは肯定の背骨を立てて言った。「ジョルン、私はあなたとパクトのためにやると決めたことは全てやった。ブラック・マーシュに帰って、同じことを私の民のためにやるべき時が来たのよ」

ジョルンは厳粛な面持ちでうなずいた。「ならばもう何も聞くまい、信頼する友よ」と彼は言った。目に涙が光っていた。「カイネがお前を故郷へと導かんことを。俺の助けが必要になったら、ただそう言ってくれ」

その言葉を聞いて、ケシュの両目は空の星々のようにきらめいた。「そう、一つ小さな問題があるの」と彼女は言い、彼女の民の知識と経験を広げるため、ブラック・マーシュをよそ者に、特に手工業者や職人に対して開くという望みを説明した。「触れを出そう」ジョルンは同意した。「で、その手工業者や職人はどこへ行けばいい?ストームホールドか?」

「いいえ、」ケシュは答えた。「彼らをギデオンへ送って」

ケシュは私たちをギデオンへと導いた。ブラック・マーシュ中央部にある帝国の拠点である。彼女はここにより開放的で活気のある、「近代的な」アルゴニアン社会を築こうと決心していたのだ。ケシュは旅の途中で私たちに計画を説明した。まずは私たちがモロウウィンドとスカイリムにいる間に学び、発見したことをギデオンに持ち込み、それから古代アルゴニアン文明の秘密を再発見するための冒険を開始する。「私は自分の文化を変えたいわけじゃない」とケシュは誓った。「私は文化を強化して、大昔に持っていた、失われた栄光を取り戻したいの」

故郷への旅路でケシュが説明した全てのことに皆が同意していたわけではないが、私たちは黒きヒレを信じていた。もし彼女が頼めば、私たちはオブリビオンまでもついて行っただろう。だから彼女が民のために抱いていた夢の実現を手伝うのは、それほど突飛なことではなかった。

私たちがブラック・マーシュの国境に近づくにつれ、シークハット・ゾルにいたただのサクスリールが頼れるアルゴニアンへ成長するこの物語も終わりを迎える。これから先また書くかもしれないが、ギデオンに移住したら私の自由な時間は、暑い日の小さな水たまりのように蒸発すると思う。もし、あなたが私たちの麗しき街に来ることがあれば、立ち寄って声をかけてほしい。私たちは全ての訪問者を歓迎する。アルゴニアンも、肌の乾いた者たちも同様に!

黒きヒレ:外国での冒険、パート1The Black Fin: Foreign Adventures, Part 1

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

私は最初、偉大なる黒きヒレのケシュに仕える単なるカーだった。サクスリールの言葉で、カーとは見習いのような意味だが、ノルドやダークエルフの見習いが持つ責任や義務は必ずしも伴わない。後になってケシュが私たちの同盟者の風習を取り入れ始めてから、私は黒きヒレの従者と呼ばれるようになった。ピーク・エリールが軍団を去ると決めた時、私は偉大なるケシュの人生に起こった重要な出来事を記録する義務も引き継いだ。理解してほしいのは、これはカーとしての役割に付随する義務ではないということだ。これはピーク・エリール本人から私に伝えられた義務であり、ケシュは表立ってこのことを知らない。私はこの義務を進んで引き受けた。

では、どこから始めよう?同盟が形を成し始めた日からにしようと思う。3つの国(私は自分の民を1つの国と呼ぶのは難しいと思うが、ノルドやダークエルフにとってはこの呼び方の方がいいらしい)は戦場で出会い、協力してついに侵略するアカヴィリを打ち破った。アカヴィリはウィンドヘルムを陥落させた後、注意を南東へ向け、モロウウィンドへ進軍を開始した。アカヴィリの侵略軍がモロウウィンドへの道を切り開くと、トリビュナルのアルマレクシアに率いられたダークエルフ軍が、侵攻を止めるための防衛線を張った。その間、ジョルンとノルドたちは自らの軍勢を集結させ、アカヴィリに背後から追いついた。アカヴィリは2つの強力な軍団の挟み撃ちに遭ったが、それでも挟撃を持ちこたえた。そのままならアカヴィリが勝利していたかもしれないが、それは私の推測に過ぎない。いずれにせよ、それを確かめる機会はなかった。

サクスリール・シェルバックと沼の戦士たちで構成されたケシュの歩兵部隊がアカヴィリを南から襲い、侵略を終わらせる貢献をもたらしたのだ。ブラック・マーシュにおけるダークエルフの奴隷商人との戦いで経験を積んだ私たちの兵士は、侵略者を圧倒するために必要な切り札だった。私たちは全力でアカヴィリに襲いかかった。ケシュは友人のジョルンを手助けすることを望んでいたが、軍団を沼からモロウウィンドの中心部まで進軍させることには、先を見据えた動機もあった。彼女は他の国にサクスリール、すなわちアルゴニアンの価値と誠実さを認めてもらいたかったのだ。私たちは原始的な蛮族ではなく、奴隷でもない。私たちは他の民と同等であり、彼らを侵略者から守るためにいるのだと。

勝因が全てケシュ軍団の参戦のおかげであるとは言わないが、私たちも役割を果たしたのは確かだ。私たちは猛々しいノルドと狡猾なダークエルフについて勇敢に戦い、一歩前進するたびにアカヴィリの兵士たちを殺戮していった。エボンハートの街付近でようやく戦闘が終結し、勝利を手にすると、ケシュは他2つの陣営のリーダーに急いで会いに行った。私は忠実な従者として彼女に従った。

あれほど多くの強大で重要な人物たちが一堂に会したのは見たことがない!ノルドの吟遊詩人ジョルンについての物語は聞いていたが、本当にあれほど大柄だとは想像もしていなかった!そして、ダークエルフたちが神と崇拝するアルマレクシアは冷たく美しかった。鱗も尻尾もないエルフにしては、だが。ジョルンが歩み出て、ケシュに旧友として挨拶をした。「俺たちは大きな借りを作ったな、黒きヒレよ」とジョルンはその大きく響く声で言った。「今日、お前たちのかけがえのない支援への感謝として、ノルドとダークエルフは何を提供できる?」

ケシュは長い間沈黙していた。まずはジョルンに熱意のこもった視線を向け、次いでアルマレクシアに注意を移した。モロウウィンドの母へ目を向けたまま、ケシュはついに返答した。「アルゴニアンの奴隷をなくすこと。私の民を解放してほしい」

アルマレクシアとジョルンは視線を交わした。大柄なノルドの視線は全くぶれなかった。少し経って、ダークエルフのリーダーは軽くうなずいて言った。「理にかなった要求です。ダークエルフはその願いを尊重しましょう。ただし条件が一つあります。アルゴニアンはダークエルフ、ノルドと共に、相互の協力と防衛の条約に加わらなければなりません。そうすれば、我々三国の全員が自由でいられるでしょう」

こうして、次の日まで続く一連の交渉が始まり、それはエボンハート・パクトの形成という結果になった。ケシュは自らの戦力を北方に留め、新たな同盟者たちの防衛を補強することに同意したが、その前にストームホールドへ伝令を送り、私たちの民に知らせを伝えた。奴隷制は廃止され、アルゴニアンは今やノルドおよびダークエルフの同盟者となった。私たちは政府を持たない。少なくとも私たちの新たな同盟者たちのような政府は持っていないため、ケシュはノルドとダークエルフの領地に残ってサクスリールの地位を確立し、様々な合意が正しく適用されることを確かめることを決断した。その間、彼女はゾシンをブラック・マーシュに送り、同盟の首都で大使となる者を探させた。

このようにして、アルゴニアンはエボンハート・パクトに加入した。

黒きヒレ:外国での冒険、パート2The Black Fin: Foreign Adventures, Part 2

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

エボンハート・パクト結成と、アルゴニアン奴隷の廃止宣言は、ダークエルフ奴隷商人の活動全てを即座に停止させる結果にはならなかった。ダークエルフの領土や支配地の大部分がトリビュナルの命令に従うまでにはほぼ1年を要し、その後でさえ、新たな協定を受け入れようとしないダークエルフの名家が存在した。その結果、ケシュとその黒きヒレ軍団が同盟のアルゴニアン代表としてモロウウィンドの地を巡回した際に、居心地の悪い状況もいくつか生じることになった。

同盟の初期には、恐怖や憎悪の出迎えを受けることが少なくなかった。ダークエルフたちの中には、重武装のアルゴニアン勢力が自分たちの街や村に接近することを不快に思う者もいた。そうした場合、追い返されるのはまだいいほうで、集落でかなりの規模の自警団から襲撃を受けることもあった。だがエボンハートの戦いの話を知って私たちの協力に感謝し、喜んで家に迎えてくれる者もあった。今ではこのように扱われることの方が遥かに多くなったが、当時はほとんど聞いたこともないような待遇であり、私たちは友好的な人々に会うたびに驚き、感謝した。

私たちは同盟の最初の1年をダークエルフの領土で過ごし、私たちの存在を周知させると共に、協定の条約が全て守られていることを確かめた。私たちはまた、新たに解放されたアルゴニアンたちを数多く受け入れ、ブラック・マーシュに戻らないと決めた者、あるいはモロウウィンドで自由なサクスリールとして生きていく意志のある者に、当面の目標と所属する集団を与えた。このようにして、黒きヒレ軍団はモロウウィンドを旅する間にその数を増していったのである。

そのうち、私たちはトリビュナルの客人としてモーンホールドに到着した。私たちは1ヶ月近くも街の外に野営し、アルマレクシアやその他重要なダークエルフおよびノルドの高官と定期的に会合した。ケシュはパクトの防衛を強化するため「同盟軍」を形成する議論に参加した。これは同盟に参加する民のそれぞれから派遣される勢力を含むという話だった。私たちは目的を探していたため、ケシュは黒きヒレ軍団が新設される同盟軍の中心となることを申し出たのだった。時と共に、ケシュは戦争の英雄のみならず、パクトの勢力を率いる将軍たちの筆頭格になった。

最初の1年が終わる前に、ケシュと黒きヒレ軍団は再び窮地を救うことによって、パクトに対して自らの価値を証明した。今度は西の山脈を越えてやってきた略奪者への対処だった。流布していた噂によれば、略奪者たちはダガーフォール・カバナントからの資金提供を受けているか、あるいは偽装したカバナント兵士であるとのことだったが、証明はできなかった。大規模な略奪者の部隊がモロウウィンド西のダークエルフ集落を襲っているという報告がモーンホールドに届くと、ケシュはパクトの軍を連れ、追跡のための遠征に出ることを提案した。

ケシュの勢力は大部分が黒きヒレの軍団で構成されていたが、ノルド兵の分隊とダークエルフ魔術師、治癒師の中隊で補強されていた。私たちは素早く移動して略奪者たちによって残された破壊の跡を追い、インドラノ街道でついに彼らの姿を捉えた。ケシュは勢力を分け、分隊の半分で山脈への逃走経路を塞ぎ、残りの兵たちは矢の型の陣形を組んで略奪者の位置に進撃した。略奪者たちは守りを固めず、方向転換して逃げ出した。そこへ私たちの兵が岩だらけの丘から飛び出し、略奪者たちを挟み撃ちにした。あれだけの被害を引き起こしたにしては、あっけない最後だった。

黒きヒレ:外国での冒険、パート3The Black Fin: Foreign Adventures, Part 3

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

エボンハート・パクトが結成されて2年目に入って久しい頃、ケシュと黒きヒレ軍団(パクト軍の一部としてモロウウィンドに残してきた兵たちを除く)はノルドの地であるスカイリムを巡っていた。ノルドの領地に足を踏み入れて最初に逗留した地はリフテンの街で、私たちはそこで典型的なノルド式の祝賀で迎えられた。大量の食事とハチミツ酒、そして寒い地方ではおなじみの余暇であるらしい、和気あいあいとした乱闘の催しがあった。そこにいる間、私たちは街の防衛の一部の強化を手伝ったが、これは訪問中に可能な限りの支援を提供する意思があることを示すために、ケシュが私たちの行く場所全てで実施するよう強調した行為だった。

リフテンで1週間以上過ごした後、私たちは北へ向かってイーストマーチを通り、ウィンドヘルムの街でケシュとジョルンが再会した。彼は今や、スカルド王ジョルンだった。信じられるだろうか!どうやらこのノルドは王子か何かだったようで、今ではノルド全体のリーダーなのだ!そしてウィンドヘルムはなんという街だろう!大きく、モーンホールドとは違った形で、しかし同じくらい印象深い。だがダークエルフの大都市がその民を反映していたのと同様、ウィンドヘルムも明らかに、否定しがたくノルドを反映していた。アカヴィリの攻囲で受けた被害の修復はまだ続いていたが、それはノルドの街の圧倒的な雄大さを少しも損なうものではなかった。

ジョルンは門のところで私たちを迎え、ケシュを豪快に抱きしめた後で、私たち全員に向かって、彼の故郷である街の歓待を楽しむよう告げた。祝賀は1週間と1日も続いた!ノルドがパーティー好きなのは間違いなく、あらゆる口実を設けてパーティーを開くようだ。祝賀の間、私たちはノルドが作る最高のハチミツ酒とエール、ウサギのミートボールなどの素晴らしい珍味でもてなされ、それに私がこれまで聞いた中で最も下品な歌が加わった。全てが凄まじい大声で歌われ、グラスやジョッキを打ち合わせる音が乱舞するのだった。

ハチミツ酒の樽がついに空になり、ウサギのミートボールが食べ尽くされると、祝賀は突然お開きとなった。そして仕事が始まった。私たちは1ヶ月の大部分の間ウィンドヘルムに留まり、街の外壁の修理を手伝い、ノルドが安心して手伝わせてくれる他の支援を何でも行った。そしてケシュとスカルド王は、時間がある時にいつでも隅に引っ込んで、様々な話題について長時間話し合った。そうした話し合いには誰も加わることを許されなかったが、二人はリーダーシップや同盟、私たちの民の未来についての考えを交換していたのだと思う。

私たちが知らされたのは、黒きヒレ軍団もまた、スカイリムで終結を迎えることだった。私たちの兵士たちは小さなチームに分けられ、民族混合のパクト兵士として仕えるために派遣され、ノルドやダークエルフたちと共に同じ部隊で戦うことになった。私はもちろんケシュの下に留まった。そして私はスカルド王が、彼女に特別の名誉を授けたところに居合わせた。「黒きヒレよ、お前にスカイリムのパクト勢力を指揮してもらいたい」とジョルンは宣言した。「この任務を引き受けてくれるか?」当然のこととして、ケシュは同意した。そしてその後7年間の彼女の努力を通じて、パクト軍の戦略戦術は発展し、確立された。

三旗戦役が始まった時、パクトに備えができていたのはそのためだった。

黒きヒレ:外国での冒険、パート4The Black Fin: Foreign Adventures, Part 4

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

ケシュ将軍によるエボンハート・パクト同盟勢力の構築と改善が続けられているさなか、黒きヒレはスカルド王ジョルンからの召喚状を受け取った。私たちはリフテン付近で連合部隊と訓練を行っていたが、そこへ伝令が封蝋のされた手紙を持ってやって来た。2日後、イーストマーチのアモル砦で会合が開かれる。ケシュはすぐに出発する準備を整えた。

黒きヒレのケシュは軽装で素早く移動することに決め、小規模の分隊だけを連れてスカルド王に会いに行った。私は当然将軍に同行したが、その他にはティー・ワン、ゾシン、ノルドの戦士コラ・グレートストームがいた。ヴォス・フルクは兵を指揮し、訓練を続けるために残った。私たちの小集団がアモル砦に近づくと、砦の外のかなり離れたところで迎えられ、主要な道を迂回して街へ出入りする隠し通路へと導かれた。私たちは急いで首長の館へと案内され、広大な敷地の中にある秘密の会議室へと連れられた。大型のテーブルの後ろに立っていたのは、スカルド王ジョルンだった。

私はすぐに、前回ジョルンに会った時とは何かが大きく違うことを感じた。まず、彼は突進してケシュを激しく抱きしめなかったし、いつものように大声で話さなかった。王冠の重みが元吟遊詩人の支配者を圧迫していたのかもしれないが、彼は私がこれまで見たことがないほど深刻で真剣なように見えた。「トリビュナルが危険な警告を送ってきたんだ、黒きヒレよ」とジョルンは口を開いた。「アルマレクシアが幻視を見た。あるいはヴィベクだったか?誰にも分からん。とにかく、彼らはエボンハート・パクトに対する脅威が育ちつつあり、我々が準備を整えるべきだと警告している。だから、今お前がやっている努力を3倍にして、戦争に備えなければならない」

新たな戦争準備の任は3人の将軍の手に与えられた。パクトの民から1人ずつだ。ケシュがアルゴニアンを代表し、コラ・グレートストームがノルドを、そしてイェベス・ノラミルがダークエルフを代表した。この3人の将軍は協力してこの後数年間、パクトの攻撃と防衛能力を強化し、準備を整えることになった。黒きヒレがすでに始めていた準備のおかげで基礎は確立されていたため、比較的短期間で武装を整え、次の段階に到達できた。私たちが首長の館にある隠し部屋を去る前、ジョルンはケシュに最後の知恵を授けた。「平和は脆く、貴重なものだ」とスカルド王はうんざりしたような声で言った。「平和な時間を大切に過ごせ。決して長続きすることはないのだから」

それからの2年間、拡大するパクト軍はいくつかの小さな試練に出会った。その中には帝国軍やダガーフォールの兵との小競り合いも含まれ、パクト軍は見事に任務を果たした。多くの意味において、こうした小規模の戦いが三旗戦役を導いた。それぞれ異なる3つの同盟がついに互いに対して戦争を布告すると、ケシュはパクト軍を率いて戦場へと向かった。シロディールの地は戦場となり、戦争の音は全土に響いた。

1年の大半の間、ケシュ将軍とパクト軍は領土を奪い取っては失い、再び取り返した。戦争は続いたので私たちは勝利できたわけでなかったが、多くの重要な戦いには勝ち、カバナントとドミニオンを悔しがらせた。そして、権力と人気の絶頂にあった時、黒きヒレは私たち全員を驚愕させる決断を下した。「私たちはパクトのためにできることを全てやった」とケシュは説明した。「もう故郷へ帰る時だ」

こうして、黒きヒレの外国での冒険は突如終わりを告げたのだった。

根の子供たちChildren of the Root

[注:別途言及がない限り、調査員ソリス・アデュロがアジ・コストリール族の口承から収集したもの]

最初は大きな根、アタクしかいなかった。自分のことしか知らなかったので、全てのものになろうとした。無を自分で埋めようとして、どんどん大きくなった。大きくなるにつれて新しい根が作られ、そうした根は名前を持ち、自分たちが育つ空間を欲しがった。

そしてアタクは自分以外のものの存在を知った。アタクと似ていたが、別の道を進んでいた。彼らはおかしな新しいものを見て作ったが、長続きせずに変化を起こすだけだった。

アタクは大きくなり続け、ある時、無から何かが戻ってきた。それは根のようだったが、鱗と目と口があった。アタクに対し、それは自分がコタであり、自分も大きくなり続けてきたことを伝えた。口ができたので、空腹だった。

アタクはコタにふさわしい名前をつけた。蛇だ!アタクは蛇の目に根を通した。しかしコタは根のアタクと同様に古くて強く、遠くへ行っている間に牙を生やしていた。蛇はアタクにかみついた。彼らは互いに巻きつき合った。そうして苦しむ中で、新しいことが起きた。アタクは空腹を含めてコタが学んだことを学び、そしてコタにかみつき返した。彼らは長い間食べて暴れ、やがて一つになって争いを忘れた。

彼らは脱皮して根を断ち、自らをアタコタと呼び、「おそらく」と言った。

アタコタがそう言った時、脱皮した皮は己のことを知った。そして断たれた根を食べ、死んではいたが、影のようにアタコタの後をついていった。

アタコタが暴れ続ける間、それぞれの鱗はアタコタがむさぼった世界だった。しかしアタコタはもう争っておらず、物事には始まりと終わりの時があった。影はそうしたものを食べられたらいいのにと願ったが、その腹は大きくなる根で一杯だった。

影は耐えきれなくなると、アタコタのそばへ泳いでいき、根を吐き出した。そして腹が空になったので、影は危うく目に映るものを全て食べそうになった。しかし、ずっと腹に入れていた根のことは自分の一部として感じるようになっていたので、秘密を教えてから眠りについた。

根は他の者を見つけ、影の腹の中で生き延びたこと、そこでもまだ大きくなれたことを話した。その知識を他の者と分け合った時、それは根を変え、新しい姿になって新しい名前を持った。

一部の霊魂は自分たちが選んだ名前と姿を維持したがったが、影を通して学んだことは霊魂の中にもあり、一時的な存在でしかなかった。空腹と争いを学び、変化を恐れ、それを死と呼んだ。

霊魂たちは怒って恐れていたが、根は霊魂に、アタクが無から道を作った時の場所の間にある道を教えた。その川の道を使えば死から隠れることができた。

霊魂たちは満足して、自分たちと似たような姿のものを作るようになり、愛を与えた。彼らはアタコタと同じくらいの大きさになるまで成長し続け、それが自分たちより先に存在したことを忘れ、眠っている影がいることを忘れた。

やがて、世界は大きくなりすぎ、空きがなくなった。再び、霊魂は根の所に行ってもっと欲しいと頼んだ。しかし根は自分たちが作ったものに満足して眠っており、何度も変化したので大きくなる必要もなかった。

霊魂は次第に腹を空かせて我慢できなくなり、アタコタの皮を引き裂いてその血を飲んだ。アタコタが壊れるまで食べたので、アタクは大きくなることを思い出し、コタは無でいることを思い出した。再び争いが起こり、アタクとコタは霊魂から死について学んだので、暴力、血、樹液が発生した。

そんな大混乱の中で霊魂は途方に暮れておびえ、他の者や互いを食べるようになった。血と樹液を飲み、鱗と毒牙と翼を生やした。そうした霊魂は、食べる以外に作る理由を忘れた。

一方で、まだ元の自分たちと自分たちが作ったものに執着する霊魂もいた。ある森の霊魂は、根が彼女のように子供を愛しているのを見て、歩くことと話すことを教えた。根は言葉を使って彼女に秘密を教え、彼女は歌を歌って返した。それを聞いた根は目を覚まし、森に加わった。

根はコタの血が海を作り、アタクの樹液が石を作るのを目にした。そうした霊魂は影のことを知らなかった。根はそれが意味することを知っており、影に子供たちを守るように頼んだ。

影は目を覚ました。コタとアタクを見て、無がどれほど変わったか、どれほど以前と同じになっているかを目にした。自分がアタコタの皮だったことを思い出し、コタとアタクより自分の方が大きいので、両方とも食べてしまうことに決めた。

そして食べた。影は蛇と根を食べ、樹液と石、血の海、そして全ての霊魂を食べた。子供である根のことを思い出す前に全てを食べてしまったので、それを探すため、自分に目を向けた。

影がそれを見た時、自分よりも先に何かの皮が存在したこと、その後に生まれたものを食べてしまったこと、それは来るべき終わりを意味することを思い出した。

そこで影は脱皮した。たったそれだけではあったが、根を覆う布のように落ち、秘密の中で守ってやることを約束した。

最後の軍団兵のメモNote from the Last Legionnaire

私は帝国第九軍団の最後の生き残りかもしれない。少なくとも、私が知る限り最後の生き残りだ。

私は多少呪文を唱えられる。それでここまで生き残れたのかもしれない。それよりも大事なのは、私はアルケインの訓練を受けたおかげで、我々を壊滅させたあの生物を理解できるかもしれないことだ。あの裏切り者のアルゴニアンはボリプラムスと呼んでいたが、奴は我々が洞窟の外で遭遇した検体のどれとも違っていた。こいつはずっと強大で大きく、耐久力も高い。ジン・ラジュルはウジュカと呼んだが、奴はあの生物に我々を食わせるため、わざとここに導いたのだ!

机か、祭壇のようなものがある。おそらくこれがウジュカを止める秘密を隠していると思う。それさえ分かれば…

まずい!あの生物は自分の一部を私に送ってきた…

死の狩りが待っているDeath-Hunts Await

オジェル。この季節はズル・モタスが溢れていて、死の狩りに向いている。ズル・モタスは我々の戦士たちが狩り尽くす前に、蔓を枯らしてしまう。我々ナガ・クルは、よそ者の中に参加する勇者を求める。

死を恐れないなら、リルモスでボルが待っている。

沼クラゲの世話と餌やりCare and Feeding of Swamp Jellies

黒親指のアグリンドール 著

ハイホー!もし最近沼クラゲを所有したなら、あるいは所有しようと考えてるなら、ここに来たのは正解だ!この小さいラッパ吹きたちは、沼を旅する者にとっては願ってもない最上級の相棒だ。家畜を飼うつもりだったら、世話をするのも簡単だ。

ひょっとしたらもう沼クラゲについて多少はご存知なのかもしれないが、抜けた部分を埋めるために基本から見直そうじゃないか?

生息地:
沼クラゲはブラック・マーシュ固有の野生生物の一種だ。彼らは海岸に近い湿地帯を好む。彼らが海にいるクラゲの遠い親戚である可能性は極めて高い。だが、沼クラゲはいかなる湿った環境でも健康に育てる。必要があれば、汗ばんだブーツの中だって大丈夫だ。

体の構造:
他のクラゲと同じく、彼らには骨も固体化した部分もない。ただ、弾性のある、ゼリー状の体と肢があるだけだ。それ以外の大きさ、形状、色などは種類によって大幅に異なる。マークマイアで見られるもっとも一般的なクラゲは、ひだのある球状の体を持ち、そこから4本の触手がぶら下がっている。これらの触手はクラゲが込み合った場所を移動し、獲物を捕らえるのに役立つが、ほとんどのクラゲの動きは、いくつかの浮き袋に沼のガスを吸い込んで吐き出す小さな開口部が制御している。どうやって沼クラゲが浮くようになったのか確かなことは分からないが、私の理論は海のクラゲが嵐で内陸に運ばれ、沼地の水溜まりで生き延びたというものだ。最終的に、彼らの浮袋は浮き上がって水から立ち去るため、十分な沼のガスを溜め込んだんだ!

習性:
沼クラゲは生来信じられないほどおとなしく、ほとんどの時間を静かにそよ風にのって漂い、何も知らない虫を捕らえて食べている。沼クラゲは単独で生活する傾向があり、たくさん集まるのは産卵の時だけだが、社会的な動物だ。この小さなラッパ吹きはガスの浮袋を使って、複雑な鳴き声でお互いを呼びあう。1匹面倒を見れば、実にお喋りなことが分かるだろう。そしてその鳴き声を少し学べば、沼クラゲに簡単な指示を送ることもできる!これは愛好家にも飼育者にも、とても役に立つ技術だ。

餌:
浮揚する沼クラゲはもっぱら空を飛ぶ種類の虫を食料とするが、彼らの粘つく触手にぶつかるあらゆる小さな生き物が恰好の餌食となる。私は1日に千匹もの虫を食べる沼クラゲを見たことがある。それだけでもブラック・マーシュのような場所で沼クラゲを仲間にする理由には十分だ。少なくとも週に3回は、違う場所で群れを放牧するようお勧めする。1ヶ所にクラゲたちを長く置きすぎると、ほんの数日でその土地の土着の昆虫を消し去ってしまう!虫を切らしてしまった場合は、愛情のこもったスプーン1杯のスクリブのゼリーが適切な代用品になる。

世話:
沼クラゲは生きるために湿気を必要とする。もし服が体に張り付かないなら、それは恐らくクラゲにとって、何の手助けもなしに数時間以上過ごすには乾燥しすぎている。沼クラゲは飲むことを必要としないが、空気中から必要な水分を得られない場合は、ボウルや口の広い器から水を吸い上げられる。理想は汽水だが、淡水でも海水でも問題ない。

特定の時間に限って餌を与えるよりも、可能であれば1日中、安定して虫を供給したほうが良い。飢えた沼クラゲは大食いをする傾向にあり、体が重くなって不活発になる。

沼クラゲが怪我をしたとしても、心配しないように。彼らは切り傷を修復するし、時間をかければ肢の再生さえする。沼クラゲが浮かび続けようとしてもがいていないかだけ気を配れば良い。その哀れなラッパ吹きには、浮袋にガスを溜められるようになるまで、手で餌を与える必要があるだろう。

例え私の助言を肝に銘じたとしても、遅かれ早かれ、小さなラッパ吹きたちとはお別れをしなければならない。野生の沼クラゲは傾向として2年から3年の寿命だが、家畜化された沼クラゲは、きちんと世話をすれば5年生きられる。

食べる時の準備:
ペットとして飼っているのであれ、食肉とするために飼育しているのであれ、彼らの小さなゼリー状の体を無駄にしないためには、入念な解体処理が重要だ。沼クラゲを触る前には、手に食用油を塗ったほうが良い。そうしないと指に張り付いてしまい、手を自由にしようとして彼らをバラバラに引き裂く可能性がある。ほとんどの場合は身から触手を取り外し、後で使うために取っていたほうが良いだろう。彼らをまな板の上に真っ直ぐに置き、横に切る。肢を除去したら、身の真ん中で切り分ける。大包丁で強く押すことを推奨するが、鋭いものなら何でも良い。気を付けないとクラゲと手とナイフが油に塗れ、指のサンドイッチが出来上がる!

身の部分の空洞を洗ったら、クラゲを直火かオーブンで焼く準備は完了だ。赤くなった炭の上で、クラゲの身は少し硬くなり、外側が少々カリッとする。通常、私は触手を身の中に入れて調理し、チキンスープと共に音をたてて飲み干すが、串に刺して10分ほど焼き、塩味のおやつにするのもいい。体重に気を使っているなら、沼クラゲはレシピにある脳ミソやスクリブのゼリーの良い代用品になる。

クラゲの捕獲:
もし野生のクラゲを手懐けるつもりなら、上質の網を手に入れよう。一番いいのは虫取り網だ。クラゲを網で優しくすくい取れば終わりだ。ほとんどの沼クラゲは無害だし、抵抗すらしない。ディープマイアには僅かだが、触手に軽く触れただけで死に至るようなとても強い毒を持つ品種がいるが、それについては心配しなくてもいい。

沼クラゲの捕獲と世話について知るべきことは、本当にこれで全部だ。他のことは全部、クラゲケーキに乗っているジャムみたいなものだ!

沼のマイアゴーントMiregaunts of the Marsh

ブラック・マーシュ探検協会、クラティアス・グレイ

ブラック・マーシュ探検協会は、厳しい沼地の奥で生き残れる勇敢で丈夫な体を持つ冒険家を支援することにおいて、長く立派な歴史を持つ協会である。冒険家は力強く、有能で、広大な沼地と踏み込むことのできない熱帯雨林につきものである、数多くの謎を解明できなくてはならない。例えば、マイアゴーントの謎がそうだ。歩き回る沼の怪物に対面する時には、堅い決心と冷静な頭が必要とされる。

マイアゴーントはマークマイアへ訪れても決して見かけないというほど希少なものではないが、探検を継続的に危険にさらされるほど多くいるものでもない。とはいえ、私たちが探検したい場所の付近に集まっている傾向はある。こうした大きく、歩く沼の怪物は何となく人間のような形をしているように見えるが、頭部は認められない。主に植物から成り、他にも泥、石、蔓、さらには古代建築物の欠片といった物質まで取り込んでいる。

このおかしな獣の生態について、協会には手掛かりがないままだ。タムリエルの他の地域にいるラーチャーや類似の獣の一面と似ている部分もわずかにあるが、他の面においてはまったく独特な生物に見える。地元の伝説はマイアゴーントをヒストの木と関連付けているが、その説明は理解しにくいと言わざるを得ない。一部の部族はヒストの木が沼の一部を呼び起こして、地域の保護、場所の防衛、または何らかの形でヒストを傷つけ、邪魔をした者や物に報復をする特定の仕事をさせると信じている。他の者は、マイアゴーントが故意に生まれたのではなく、ヒストの未知の活動による副産物であり、誤って呼び起こされて、特別な目的もなく放たれたとしているようだ。正直言って、私が聞いた話は腹立たしいほど矛盾している!

ある程度の確信を持って言えることは、全てのマイアゴーントの中に大きな空洞があることだ。遭遇したマイアゴーントの空洞が空である時もあれば、何でもない石やその他の破片が空洞を埋めている時もある。まれに価値の高いものがマイアゴーントの中に入っている。例えば宝石、古代の遺物、もしくは生物だ。地元のアルゴニアンは、そうした貴重なものが守るか捕まえるため、故意にマイアゴーントへ取り込まれたと信じている。非現実的なのは承知だが、それが部族の信じていることだ。

真実が何であれ、探検隊がマイアゴーントに遭遇した場合は、協会が勧める行動を取ってもらいたい。逃げるのだ。

食の旅、第1巻A Culinary Adventure, Volume 1

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

私はついに、緑豊かなブラック・マーシュの沼地に辿りついた!私は常々、本場のアルゴニアン料理を味わう機会を求めてきた。そして今ようやく、念願の瞬間が訪れたのだ!まずは地元の珍味から始めることにした。ナメクジである。

上等なアルゴニアン料理の全てがそうであるように、ナメクジも多くの場合は生で、ソルトメドウの葉の小枝を添えて出される。私は今回の訪問中、3種類しか味わうことができなかった。シェフの訛りは非常にきつかったが、メニューの制限は季節と関係しているのだと思う。沼の季節は風のように素早く移り変わることを私は知った。だから数日後にはまったく異なるメニューから選べるかもしれない。今日食べたものと同じくらい、味わい深ければいいのだが!

ビアーデッド・ブルー
この藍色の美しい生き物はツォフィア洞窟周辺の沼でよく見られる。大まかに言ってノルドの親指くらいのサイズで、長い目の茎状部の下に、毛むくじゃらの触手を生やしている。このナメクジには繊細な香気があるが、さわやかな柑橘系の風味を基調に秘めている。触手の多さゆえにビアーデッド・ブルーには独特の食感があり、その点が少々気になるかもしれない(特に生で食した場合)。しかしその味は端的に言って最高だ。風味としては、噛んだ時に強く柑橘系の香りを感じるが、その奥にはかすかな土っぽさが隠されており、大地を感じさせる。かなりのご馳走だ!

ブラックバンド・スライダー
ブラックバンド・スライダーはこの地方の特産品だ。蒸してからゾウムシの幼虫とオレンジグラスの上に乗せて食べることが多いが、私は生で食すことを強く勧める。このナメクジは刺激されると苦味のある黒い油を分泌するが、それをさっとふき取れば、青白くなめらかな膜の表面に横長の黒い斑点がついた、長い胴体があらわになる。洗った後でもブラックバンド・スライダーは硬く、苦味もあるが、これを我慢すればさわやかで繊細な後味に辿り着く。アルゴニアンはこれを楽しむらしい。基本的には威圧的な食べ物だが、そこに花が咲いたようなまろやかさがあるのだ。

キング・イエロー
キング・イエローがこの時期に食べられると知って喜んだ。これは実に巨大な生物だ。ほぼ私の前腕くらい長く、それが肉々しい、波打つ毛の森で覆われている!アルゴニアンの表情はいつも判別が難しいが、私が生で食べたいと言った時、シェフは非常に驚いたと思う。彼はこの獣をワッソーナッツの葉にくるみ、藍色ユリを添えて出した。私はすぐさまその苔っぽい、草のような豊かな香りに驚かされた。この獣が分泌する粘液の中に、ブラック・マーシュの全ての匂いが感じられると言ってもいい。一口味わうたびに新しい、驚異的な風味の波が押し寄せた。尻尾の肉の複雑で風味豊かな味わいは、次第にコクのある、脂っぽい苦味の膜へと進む。そして最後に、私は頭へと辿りついた。この危険なほどの風味の噴出を上回るものは、ちょっと思いつかない!バターのような甘ったるさ、食べ終わる頃には乾いたマスタードのような味へと激しく移り変わる。感激だ!

私は重い心でテーブルを去った。おそらく次の季節までキング・イエローを味わうことはできないだろうと分かっていたからだ。だが、明日にはまた新しい、大いなる食の冒険が待ち受けていると知って気持ちが高まっている。今回はカブトムシの幼虫だ!待ちきれない!

食の旅、第2巻A Culinary Adventure, Volume 2

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

今日、マク・マカは彼の見事なイモムシ農園を案内してくれた。もちろん、「農園」というのは言葉のあやだ。この農園は小さな葦の囲いがいくつか並んでいるだけで、それぞれに数百匹のイモムシが住んでいる。その種類の多さには驚愕した。私が見たイモムシは長いのや太ったの、オレンジと紫の縞模様のなど…これほどの多様性は見たことがない!いくつか質問をしてみたが、マク・マカのシロディール語力が完全でないため、私たちのやり取りは何度も行き詰った。私は言葉の壁をどうにかするためジェルを学ぼうとしているのだが、なかなか上達しない。それでも、彼は助けようとしてくれる。笑えて仕方がないと彼に言われた。もちろん、アルゴニアン相手に笑われているかどうかを察するのは不可能である。

私はイモムシを食べるのかと聞いたが、面白がられたようだった。彼はただ首を振り、私をより大きな囲いの中へ案内した。彼がランプに火をともすと、部屋は様々な色で溢れかえった。大きな蝶や蛾が壁から一斉に飛び立ち、竜巻のように羽をはばたかせてランプの周囲を踊った。マク・マカは特に大きな個体のいくつかに向かって身振りをしながら、でたらめなシロディール語で長めに喋った。彼は囲いを去る前に、何羽か手に取ってみるよう私を促した。

蛾や蝶を食べるのは大変だったが、貴重な食の経験だった。この特産品を味わってみようという勇気のあるよそ者の大部分は、食べる前に羽を取ってしまう。マク・マカは羽を取ってあげようと申し出たが、私は断った。彼は助手に向かってジェルで何か言い、二人ともしばらくの間、微妙に楽しそうにしていた。これは多分、マク・マカが何かあり得ないくらい笑えることを言ったのだろう。その少し後、彼は私に5羽のグリーン・スリッパーテイルを伝統的な「アジュム」(網目模様の蓋がついた織物の盆)に乗せて出してくれた。大いに堪能できた!

真に満足のいく蝶の一皿は、「ルヒーズ」すなわち「羽畳み」の繊細な技法にかかっている。アルゴニアンの達人シェフはその爪を使って羽を折って畳み、極小ながらも華麗な、食べられる彫刻に変える。残念ながら地元の風習により、よそ者は自分で羽を畳むことになっている。私は最も簡単な「ジーチ」畳みを再現しようと努力したが、結果は悲惨なことになった。それでも、食事は美味だった。グリーン・スリッパーテイルはおそらく、スリッパーテイル種の中で最も甘味が強い。ハニーグラスのような味だが、甘くポロポロと口の中で溶ける。蝶の料理をマスターする機会が、もっとたくさん得られることを期待しよう!

食の旅、第3巻A Culinary Adventure, Volume 3

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

マク・マカはこの数日間、忙しく働いている。私が存在すら知らなかったある料理を準備しているのだ。実に素晴らしい!彼の助手が私に教えてくれたが、地元民はそれを「ナガーセー」と呼んでいるという。これは私が思うに「蛇の巻物」というような意味だろう。「蛇の靴下」といったほうがいいかもしれない。それについてはもう少し後で話そう。

料理はワッソイケガキヘビを捕まえることから始まる。どうやらマク・マカはある地元の蛇商人しか信用していないらしい。パクシットという名の、角ばった顔の狩人だ。パクシットと話していて分かったが、評判のいい蛇商人を選ぶのは、ナガーセーを作る際に決定的な重要性を持つようだ。というのも、ワッソイケガキヘビはアカマルキヘビとほとんど同じ見た目をしているからだ。前者を食べればお腹が満たされるが、後者を食べればテーブルから立ち上がる前に死ぬ。この話を聞いて私は嬉しくなった。私は危険な食べ物に目がないのだ!

シェフは蛇を手に入れたら、内臓を取り除く。この蛇の内臓は他のいくつかの料理に使用されるが、ナガーセーに必要なのは皮だけだ。中身を空にした皮に詰める食材は野生のマーシュ米、乾燥させたパースニップ、バークイヤーキノコのスライス、そして生きたネズミを1匹!パクシットが説明してくれたが、ナガーセーは特別な料理で、常に変化するそうだ。できたてを食べることにした者は新鮮な野菜の組み合わせと、身のしまった生きのいいネズミの肉を味わえる。しかし料理を数時間(あるいは数日)寝かせた者には、その忍耐に見合うだけのものが手に入る。寝かせれば、それだけネズミは太っていく。ネズミはかなり長い時間をかけて米とパースニップを食べ、最終的には死ぬ。ナガーセーは通常、約5日間かけて「熟す」のである。

この話を聞いていて、食べるのが待ちきれなくなってきた。私はほぼ2日間寝かせてある巻物を選んだ。皮の下から、まだかすかな鳴き声が聞こえている。最初の一口を食べる前に、もう少しだけ待とう!

食の旅、第4巻A Culinary Adventure, Volume 4

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

私はもう何日も、マク・マカに催促し続けている。私はアルゴニアン料理について測り知れないほど多くのことを学んだが、未だに味わっていない料理が1つある。アオジェー・サッカだ。私がこれを要請すると、マク・マカはいつも動揺して、別のものを出してくるのだった。彼の躊躇も分からないではない。アオジェー・サッカはタムリエル全土でも最も危険な料理の一つなのだ。

この料理は実のところ、同時に出される2つの料理から成っている。第一の料理は焼き目を付けてきれいにスライスしたアオジェーガエルで、シロップで覆ったイチジクとシナモングラスに乗せて出される。二つ目の料理は冷たいホッシュ(黒くドロドロしたスープ)だ。どちらの料理も、単独で食べることはできない。致死性の毒を含むからだ。これらはゆっくりと、かつ同時に食べなければならない。一方の毒は他方の解毒剤になるのだ。蛙を食べ過ぎると体が激しく震え、口から泡を吹き、その後死が訪れる。ホッシュを食べ過ぎると腸の焼けるような痛みと嘔吐に引き続き、死が訪れる。当然ながら、大抵の人はこの料理を避ける。シェフも客も同様だ。だが私の食欲には逆らえない!

マク・マカは、私の要請を少なくとも考慮してくれていると思う。少なからぬ額のゴールドを用意したし、半ダースもの蛇の皮で出来た文書にサインした(おそらく誓約書か何かの類だろう)。すでに蛙の味が感じられるくらいだ。我が食の冒険は完成しつつある!

* * *

この本を返そう、ラロームの友よ。他のものを調理しようとしたが、彼はアオジェー・サッカでないとダメだと主張した。調理したが、食べ方が違っていた。蛙を食べ過ぎた。彼が死んで残念だ。

よい生活を!私たちのところに食事に来てくれ!でも、アオジェー・サッカはダメだ。

—マク・マカ

深淵からの呼び声The Call Beyond

ソリス・アデュロによる翻訳

来るのだ子供たちよ、集まれ
太陽が沈みつつある
お前たちはもう眠れ
根を恐れることはない
私が留めておく
そしてお前たちが目覚めた時
私がしたことを思い出せ

甚だしき無駄So Much Wasted Potential

浅瀬に分け入っていったが、危険を冒す価値はあった。デッドウォーターは愚かな試練で自分たちの未来を潰しているが、他の部族たちは交配に熱心だ。集める機会が訪れたら、彼らの倒れた戦士たちを喜んでいただこう。

大半の部族は卵の盗難に対して備えがないが、ブラックトングとブライトスロートは例外だ。彼らは自分たちの卵をまばたきもせず見守っている。だが困難はあっても、どちらに関しても見込みは十分あると思う。

ブラックトングの卵用調合薬を直接盗むことはできていないが、観察から多くのことを学んだ。彼らの方法が卵の成長をどのように制限するか、試験を楽しみにしている。

もう数ヶ月の間見張っているブライトスロートに接近してみた。彼女の名はハクサラで、想像していたよりずっと純朴で信じやすい。絶望の臭いを辿れば、必ず機会に行きつくものだ。

ハクサラを説得して、部族の不要な卵を手に入れる手伝いをさせるのは難しいことではなかった。まだ分からないのは、あの愚か者が気づかれずに卵を奪えるかどうかだけだ。彼女が失敗すれば、大きな後退を強いられるだろう。

ヒストは我が道を祝福している。ハクサラはウクシスの卵を数回、問題なく盗むことに成功した。欠陥はあるにしても、興味深い検体だ。これらの卵の安定した供給が得られれば、私もよりリスクの大きい方法を取れるだろう

戦場からの手紙:ウィンドヘルムLetters from the War: Windhelm

シェイ・ハルへ

やあ、卵の姉妹。村の様子はどうだ?お前はまだ、テーバ・ハツェイのフィールドでは一番か?リーク・クースはまだマッドクラブを追うハジ・モタみたいに、お前に付きまとってるのか?本当に故郷が懐かしいよ!

この手紙はウィンドヘルムのコールドムーンという宿で書いている。雪はたくさんあるし、ここは容赦なく寒い。ノルドも物語で聞くとおりに大柄で、声もでかいぞ。だがそれでも、この場所には我々の愛するブラック・マーシュとは全く違う美しさと魅力がある。まだあちこちにアカヴィリの包囲の爪痕が見えるし、スカルド王の王宮は修理中で閉鎖されているが、人々は荒々しくて親切だ。サクスリールがあんな風になることはないだろうな。

お前だったら地元の魔術師ギルドのギルドホールを気に入っただろう。タムリエル中の魔術師が出席していて、その中には見物に来た兵士のために見事な手品を披露する小さなウッドエルフもいたよ。彼女は私の耳から金色の魚を取り出して見せたんだぞ!どうやったのかは分からないが、実にうまそうだった(ちなみに、そのことを言ったら彼女は恐れをなしたようだった。ウッドエルフってのは変わってるな)。

俺が一番気に入った場所は、鍛冶場のあるロングハウスだ。中はすごく暖かくて快適なんだ!建物の端は両方開かれているのに寒さを感じない。燃えている火がそれくらい熱いんだよ。

九つの塔に支えられた巨大な壁が、この街を囲んでいる。攻囲の時に壁の一部が破壊されたことは知っているが、今じゃその痕跡は見られない。九つの塔はスカイリムの九つの地を代表していて、このことはノルドが我々とほとんど同じくらい象徴に敬意を持っていることを示している。彼らはいくつもの祭りや祝賀で、壁の上に沿って大規模な競争をやるらしいんだが、俺がいる間にはそういう競技はなかった。

でもここにいる間、地元の珍味を一つ食べてみたよ。「ウサギのミートボール」と呼ばれているものだ。どうやら耳が長くて毛の生えた、小さなげっ歯類の肉を使っている。砕いて様々なハーブとスパイスを混ぜ、小さな球形にして、外はカリカリ、中は暖かく汁気たっぷりになるまで揚げるんだ。お前はこの描写を読んで、きっと気分が悪くなってるだろう。俺もそうだった。でも意外なことに味はよかったぞ。

次の手紙と一緒に送ろうかな。

ガム・ザウ

戦場からの手紙:シロディールLetters from the War: Cyrodiil

ああ、卵の母よ、会えなくて寂しい!

戦争は悲惨だ。悲惨でないなどという声に耳を傾けてはいけない。嵐の吹き荒れる湖に立って、暗い色のヒレが底から出てきて手足を噛みちぎるのを待っているみたいなものだ。僕たちは長いことじっと待ち、あらゆる方向から迫る脅威を心配しながら監視する。それから突進して敵とまみえ、しばらくの間は激しく戦い、守りの固い、比較的安全な場所に逃げ込む。それを何度も、何度も繰り返すんだよ!

今日、僕は大柄なノルドの女性(多分女性だったと思う。肌の乾いた者の性別は未だによく分からない)と、ダークエルフの魔闘士と共に戦った。どちらとも初対面だったが、パクト兵の少なくとも3部隊と、同数の敵が入り混じった突撃で混乱状態に陥った後、僕たちは気づいたら一緒にいた。他に頼れる相手もいなかったから、僕たちは一言も発することなく共に動き、敵軍の攻撃から身を守った。

僕たち3人は4倍の数の敵に圧倒されていた。どういうわけか、僕たちは2つの丘の間の岩だらけの地帯にいて、残りのパクト軍がどこにいるかすぐには分からなかった。戦いの音が付近の丘の向こうから響いてはいたが、誰がどこで戦っているのか正確に判別する方法はなかった。それに僕たちは、まだ目の前に敵を抱えていた。多分カバナントのオークだったと思うが、僕には未だにハイエルフと区別がつかない。

敵が何者だったにせよ、奴らは突進してきて僕たちの力量を測りに来た。僕たちは何度も押し返し、連中を次々に倒したが、こちらも切り傷や打撲をいくつも受けた。10分だったかもしれないし、10時間だったかもしれない。肩を寄せ合い、固まって敵の波を押し返しているうちに、時間は意味を失ってしまった。

ダークエルフの魔闘士の名前は結局分からずじまいだったが、彼は命の恩人だ。敵の数を減らしたので、相手の数は今や2倍程度になっていたが、そこで敵の魔術師が僕に炎の球を発射した。僕は2人の戦士と戦っていて、1人は剣を、もう1人は戦槌を持っていた。視界の端に明るい輝きを目にしてはいたが、炎の進路から逃れることは不可能だった。その時ダークエルフが僕と炎の間に飛び込んで攻撃を受けてくれたので、僕は目の前の戦士2人を倒すことができた。僕が駆けつけた時は、彼はすでに激しい熱と炎にやられていた。

こうなったらノルドと僕で残りの敵を片づけなければならない。最優先すべきことは、致命的な呪文を再び唱えられる前に妖術師を倒すことだった。そのためにノルドは最後の矢を魔術師の方へ放った。少なくとも2本は命中し、魔術師の胸に突き刺さった。これで3対2になった。残った敵は自信と戦いを続ける気力の双方を失ったようだった。彼らは背を向けて逃げようとしたが、そうはさせなかった。

さらに少し時間をかけて歩き回る必要があったけど、僕たちは結局、どちらも自分の部隊と再会できた。三つの種族の同盟がいかに大事か教えられたのは、あの日だったと思う。

オトゥミ・テイ

戦場からの手紙:ハチミツ酒!Letters from the War: Mead!

親愛なるティーワジへ

今日、素晴らしきウィンドヘルムの街からそれほど遠くないところにある酒蔵を訪ねたよ。そこはヴォルジャー醸造所と呼ばれていて、これまで私が喉に入れた中で最高の酒を造って出してくれるんだ。ハチミツ酒というらしいよ!ベースになる材料は何だと思う?発酵させたハチミツだ!そう、彼らは蜂が吐き出した蜜を使って作るんだよ!いや、つまりズーチのことさ。君の花の庭園をブンブン飛び回ってる、あの針を持つ昆虫だ。

とにかく、ノルドはこいつが大好きなんだ。だから私もここにいる間に味見してみようと思った。美味しかったよ!職人たちの誰かにレシピを教えてもらって、マークマイアに帰った時、自分で作れるようにしておくといいかもしれないな。

ただし、どうして彼らは自分の土地の前に、槍に刺したオークの頭を置いているのかよく分からない。ノルドの風習は、私にとって全く意味不明なものが多いんだ。

子供たちによろしく言っておいてくれ。

太陽を探す者

戦場からの手紙:モーンホールドLetters from the War: Mournhold

おお、偉大なるラジ・デーリスよ、ダークエルフの大いなる栄光の都市、モーンホールドの驚異をあなたに伝えさせてください!

私はモロウウィンドのデシャーン地域を担当するパクト兵団へ派遣されたのですが、最初の休暇の機会に、ダンマーの物語に伝えられるこの都市を探検しました。我々の村で育ったサクスリールの多くと同様、私はダークエルフの街で自分の民がいかに過酷に扱われているかについて、恐ろしい物語を聞いていました。私たちはもう友であり同盟者であるわけですが、私は奴隷や拷問器具で溢れているのをほとんど期待していたほどです。しかし、真実とはかけ離れていました。

大部分において、私が出会ったダークエルフたちは友好的と言ってもいいほど寛容でしたし、また市場では他の種族の人々を大量に見かけました。旅の間はノルドやウッドエルフ、インペリアルにブレトン、カジートやハイエルフにさえ会いました。それに市場で売られている品物の多様さといったら…理解が追い付かないほどでした!

トリビュナル聖堂は見ものでした!巨大で威圧的ですが、偉大なるヒストの木の影に立っているような神聖さも感じられました。自ら三大神を崇拝するようになったアルゴニアンにも会いました。彼との会話は興味深いものでしたが、血と肉で出来た存在を崇拝する気持ちは私にありません。ましてやダークエルフなんて!

それから、有名なダークエルフのコーナークラブを訪れる機会もありました。そこはフラミング・ニックスと呼ばれていて、大広間の中央にファイアピットがあるのが自慢のようです。酔った客たちが順番に飛び込み、熱い石炭に混じって踊るのです。白状すると私もやりました。実に愉快でした!もっとも、炎に踏み込む前にフリンの瓶を数本開けておけば、もっとよかったと思いますが。

近いうちにまた手紙を書きます!どうか、卵の一族に私からよろしくお伝えください!

あなたの最愛の生徒
ララ・ラー

太陽の祝福との調和In Accord With Those Sun-Blessed

ソリス・アデュロによる翻訳

我々は根の民である。そのことはこの世界において、他のあらゆる世界と同様に真実である。我々の根は影へと深く伸びていき、記憶の波を飲むが、我らの枝は空高く伸び、太陽の光を浴びている。我々は今、一つになり、そのぬくもりを鱗に感じなければならない。

偽の予言者は我らの兄弟の心を禁じられた嘘で変えてしまった。彼らは我々の目的を放棄した。我々の運命も。

私は皆に伝える。共に川を上ろう。彼らは海へ沈むに任せておくがよい。我々は栄光の階段を上り、太陽を割り開くのだ。

太陽の祝福の最後の願いThe Last Wish of the Sun-Blessed

ソリス・アデュロによる翻訳

光り輝く栄誉に浸りながらも
黄金と樹皮の肌の
我らは黄身に到達しなかった
今となっては手遅れだ

だが暗闇なき光は目を眩ます
影は常に我らを見ていると
それは今も我らのためここにいる、我らが願いさえすれば
返済の苦役は長いとしても

我ら黄金の鱗
我らは深奥の兄弟たちに加わらねばならぬ
どれほどのものを失おうとも

我らの根は忍耐強く
我らは再び立ち上がる
この世界か、それとも次の世界で

大いなる変身A Grand Transformation

木の番人フリーリイーク 著

変化を恐れてはいけないし、顔を背けてはいけない。そのことを私たちは分かっているし、常に胸の奥底で分かっていなくてはならない。時に、変化は外の力によって訪れる。季節の流れ、もしくは愛する者の死。私たち自身の内側から訪れる変化もある。古い自分を振り払い、新しい自分を受け入れる必要性だ。

自分を変える方法は、もちろんたくさんある。遠くの地へ行って、新しい文化と生活様式を取り入れる者もいる。新しい技術を学び、木工職人から戦士、仕立屋から卵の番人になることを選ぶ者もいる。しかしもっと大きな変化が必要だと感じる者もいて、ヒストの助けを必要とする。それは性別を変えることを選んだ者たちだ。

こうした個人の奥深くでは、この変化を行うことを求めるものがある。ヒストのおぼしめしなのか、各自の意思なのかは分からない。だが私はいつも心と手を開いて耳を傾け、こうした変身の時期を手助けする用意がある。一緒にヒストと語り合い、手助けを受ける準備をする。

儀式にはいつも息をのまされる。ヒストは部族を見守り、私たちの道を案内してくれているが、じかに何かをすることは滅多にない。しかしこの時には、ヒストと霊魂が結合し、愛に満ちた抱擁の後で大きな変化が起きる。

その後、私は変身したばかりの者を部族に改めて紹介する。彼らは全員に迎えられ、大切な者が去ってしまったことと、大切な者が訪れたことを祝って大きく祝福される。

調査報告書:ヴァロ・ホシディアスDossier: Varo Hosidias

インペリアルのヴァロ・ホシディアスに関する報告を以下に記す。年配の男だが、それにしてはずいぶんよく動き回る。ブラックガードには追加費用を支払ってもらいたい。

ヴァロ・ホシディアス:ファミア・メルシウスの仲間として知られ、歴史に関する彼女の慈善事業、シロディール・コレクションに時々雇われている。しばしばカジートのザダザと同行している。地域で調査した結果、彼はブラック・マーシュに移住する以前、帝国軍で際立った働きをしていた。移住の事情は不明瞭。軍法会議やそれに類する軍の処分から逃れるためと言う者もいるが、単なる隠居だと言う者もいる。依頼者の要求にはおそらく無関係だろう。

朝はシロディール・コレクションの本部かリルモスの埠頭で訓練をして過ごす。剣と盾の両方にかなり熟練している。相手にするなら、素手になるまで待つことを勧める。午後の大半は「好色なアルゴニアン歩兵」の中か、その付近で過ごす。酒は飲むが、飲み過ぎは滅多にない。

市の城壁外に頻繁に出ていく。常に他の探検家数人を伴っている。おそらくは帝国軍時代の習慣だろう。移動も戦闘も、常に集団でというわけだ。

お勧めの誘拐方法:酒に何かを混ぜること。最初にファミア・メルシウスをさらっておけば、行動に隙ができる可能性あり。街で正面から襲うのは避けるべき。ここには奴の仲間が多すぎる。

調査報告書:ザダザDossier: Zadaza

カジートのザダザに関する報告を以下に記す。こいつはブラックガードに倍払ってもらわないとならない。ウナギのように捉えどころがない。

ザダザ:カジートの傭兵にしてトレジャーハンター。ファミア・メルシウスやその仲間ヴァロ・ホシディアス、エシュラフ、ジー・ラーなどとよく仕事をしている。ブラック・マーシュの外における彼女の生活について、詳細な情報は未だに少ない。地域住民は対立する仮説を複数提示しており、その中には盗賊ギルドのメンバーだとか、以前ドミニオン軍で活動していたというものもあった。いずれにせよ、ザダザを特定の場所で捕捉するのは非常に難しい。彼女は予測できるルーチンに従わない。食事も睡眠も仕事も、1日ごとに場所を変えている。

彼女はファミアかヴァロとよく食事を共にするが、探検についての話し合いと費用の支払いのためだけだ。どの情報に従っても、ブラック・マーシュには彼女の親しい友人がいない。事業のパートナーだけだ。圧力をかけられる部分が非常に少ない。

我々はザダザが戦いに参加するところを見ていないので、戦闘能力は未だ不明。しかし、高度な隠密と鍵開け、その他の関連技術に高度な熟練を示している。

お勧めの誘拐方法:ザダザと仲間をザンミーアに入らせ、出てきたところを襲撃する。ザダザは通常、最初に外へ出てくる。他の仲間たちがついてくるのを数分待っていることも多い。注意深く計画を立てることを強く勧める。ザダザは容易に捕まらないだろう。

調査報告書:新規加入者Dossier: The Newcomer

この新参者はかなりの評判になっている。我々の知る限りこの地域との深いつながりはないが、ファミアの仲間に加わった。ブラックガードは注意を払っておいたほうがいいだろう。

新参者:旅の冒険者であり、シロディール・コレクションに最近雇われるようになった。戦闘とダンジョン探索の両方に高度な能力を示す。初期の報告が示すところでは、マークマイアに到着してすぐ、イクスタクス・ザンミーアでファミアの一味を救出したか、護衛をしたようだ。

どの程度の情報を知っているかは明らかでないが、ファミアは秘密の一部を明かしていると考えるのが理に適っているだろう。

お勧めの誘拐方法:集団で襲うこと。一致団結して行う必要がある。戦士を少なくとも20人用意することを勧める。それでも足りないかもしれない。リスクを覚悟すること。

帝国の侵攻:士官の嘆きImperial Incursions: Officer’s Lament

帝国備忘録 #61509.N

帝国秘書ジロリン・アリウスへ

親愛なる兄さん、なぜ私は罰せられているの?この神に見放された泥溜めに送られてしまうほど悪いことを何かしたの?きっとメナニウス将軍に口説かれて拒絶したからよ。目をつぶって、ただ彼女の好きなようにさせればよかったんだわ!でもダメ。私にも意地があった。自尊心があったの。それで今どんな目に遭ってると思う?泥と汗まみれよ。この髪に付いた臭いは、もう二度と取れないわ!

ここをどれだけ嫌ってるかって話はもうした?あのトカゲどもは普通の人間みたいに戦わないから、まともに戦闘もできないのよ!卑怯すぎる!あの樹液をしゃぶるアルゴニアンみたいな敵とは、これまで戦ったことがないわ!

で、愛する妹のためにちょっとした口添えをしてもらうには、あなたに何をあげたらいい?今度帝都に戻ったら、付き合ってもいいかなと思ってるって将軍に伝えてくれたら、想像もできないくらい感謝するわよ。この忌々しい沼から脱出させてくれるなら、どんなものでもあげるから!

ミロナ・アリウス隊長
第四軍団
第一紀2812年、栽培の月17日

帝国の侵攻:沼へ進む理由Imperial Incursions: Why a Swamp?

帝国備忘録 #53902.B

帝国議会の皆様へ

まず、帝国に奉仕するこのような機会を与えていただいたことに感謝します。皆様の信認に値する存在であり続けるために、我が力の限りを尽くす所存です。

次に、ブラック・マーシュの第四軍団の指揮を執るという私の決断に関して、一部の議員から意外の念、それどころか不安の声さえも上がっていると伺っております。「もっと重要な拠点があるのに、なぜ忌々しい沼を征服するのだ?」これはある上級議員の発言として、私の耳に届いたものです。申し上げるまでもなく、私は皆様の果てることなき知恵に従う心づもりでおりますが、なぜこの「忌々しい沼」が帝国の将来の安全にとって必要であるのか、思うところをお伝えしたく存じます。

ブラック・マーシュはタムリエル南東の巨大な部分を占めています。我々が行った沿岸地帯の探索によれば、沼地の内陸部はゆうにハンマーフェルやスカイリムに匹敵する大きさであり、そこには採掘を待つばかりの、手付かずの富と資源の宝庫が眠っているのです。トカゲの民がこれを利用しないのであれば、我々がそうすべきでありましょう。

そして、トカゲの民自身についてはどうでしょう?あの原始的な蛮族に、自らの統治を任せて本当によいのでしょうか?彼らから人望ある指導者が出現すれば、我々の国境が襲撃の危機にさらされます。起きると分かっていることを、なぜ待つのでしょう?我々自身の手で問題を処理し、自分の運命は自分で描き出すべきです。それこそが、インペリアルの流儀ではないでしょうか!

最後に、ブラック・マーシュはインペリアルの軍事力にとって最後のフロンティアです。新しく、汚されていない、探検を誘う未知の領域なのです。我らが軍勢を率いてこの必要にして価値ある冒険へ向かうことを、私は心待ちにしています。どうかご安心ください。トカゲの民に対する我らの勝利は素早く、輝かしいものになるでしょう。私は保証します!

アウグリアス・ブッコ将軍
第四軍団指揮官
第一紀2811年、薄明の月13日

倒れた探検家の日記Doomed Explorer’s Journal

7日の間、私はこの遺跡の大広間をうろついてきた。2日目の終わりには、完全に迷ってしまった。5日目の終わりには、食料が底をついた。今、静かで悲惨な1週間目の日没がやって来て、水筒からはただ1滴の水も絞り出すことができない。どうやら私はここで、幽霊と巨大な石の門に囲まれて死ぬらしい。

この魔法の扉に嘲られている!囁き声は毎回逃げ道を約束するが、扉を抜けても太陽はない。ただ虚無が一瞬だけ輝き、それから元通りの、やはり暗い地下室があるだけだ。このアイレイドの石細工はあまりに厳格で、荘厳だ。私は野外で死ぬのに、もう墓に埋められた気分だ。巨大な石棺に埋められているのだ。

一人で死ぬのではない。ここはベールが薄い。薄すぎる!最初は囁き声だけが聞こえた。風に漂うアルゴニアンの泣き声と、アイレイドの声。だが3日目には、彼らがはっきりと見えた。まばゆいほど華麗な、アイレイドの幽霊たち。彼らは私を見ず、私の存在に反応もしなかった。彼らはひたすら、古い出来事を再演していた。いくつかの場面はあまりに平凡で驚いた。だが他の場面は、失われた真実と古代の脅威に満ちている感じがした。ここで何か恐ろしいことが起きたのだ。最初はアルゴニアンに、後にはアイレイドに。この遺跡の中(下かもしれない)の何かが、これらの出来事の展開を見るよう私に要求している。その帰結の深刻さを感じるよう要求しているのだ。何かの力が私の理解を求めている。私はそれゆえに死ぬのだと思う。理解できなかったから、残らねばならないのだ。

この日記を誰かが見つけたら、あの幽霊たちに注意深く耳を傾けてほしい。彼らは大いなるアルゴニアンの財宝の物語を伝えている。彼らの言葉に隠された、深い真実を学べる洞察力が自分にあればと思う。

今はもう、書き物は沢山だ。近くにまた門が見える。もしかすると、これで家に帰れるだろうか。とにかく力を振り絞らなくては。ただ、少しだけ休みたい。

肌の乾いた者の奇妙さThe Strangeness of Dryskins

ナガ・クルのカール・ドリーンジー 著
ウェイレストの放浪者ティリリャ・レン 訳

これから書くことは真実だ。マークマイアに来る肌の乾いた者の存在は歓迎されず、招かれざる客である。デッドウォーターの地に入る者は始末される。これはマークマイア全土で知られていることだ。

だが、私は頭を垂れる。こうしたよそ者を歓迎する部族の所に行くことがあるのだ。彼らは私たちに、愚かな選択を尊重するように頼んでくる。そのため、肌の乾いた者の殺し方以上のことを学ばなくてはならない。私は拳を握る。こういう時のために、平和な交流を学ばなくてはならない。ナガが備えられるように、私が書くことは真実である。

肌の乾いた者の肉は柔らかく、簡単にあざができて切れる。彼らの皮は多くの沼の植物に触れると、水ぶくれができて破れる。子供の食べ物は、肌の乾いた者を病気にすることがある。槍の助けがなくても、多くのよそ者は単なる沼の性質によって死んでしまう。私は微笑む。

この目では見ていないがこの耳で聞いた話によれば、肌の乾いた者は生きた子を産むという。考えただけで身震いする。その幼児(孵化した子について肌の乾いた者が使う言葉)は救いがたいほど傷つきやすくて弱い。歩くことさえできない。私の目は混乱に細まる。そんな生物が、どうやって大人になるまで生き残るのだろう?

さらに、彼らの石の巣は多くの者の手と数多くの石を必要とする。しかし地面が沈み始めたら?嵐が荒れ狂い始めたら?そうしたら彼らは貧しく哀れな状態になってしまう。そんな愚かさに、私は首を振るばかりだ。肌の乾いた者が不変を望む理由の一つだ。

最後に真実を書く。あのよそ者たちのことは、寛大に取り扱うべきではない。彼らはこれまで何度もその下劣な性質を見せてきた。ブラック・マーシュの部族はいつか、肌の乾いた者を避け、追い払うべきなのである!ナガが常にしてきたように。

不透明な時間Murky Time

サクスリールの諸概念の研究 魔術師ギルドのテルデンリンデ 著

「ハジ・モタは古い霊魂を持っている。卵の中にあってさえ、それは古く賢い。ハジ・モタを狩りたいと思うのなら、汝もまた古くあらねばならない」

これはアルゴニアンの文化と民間伝承においてよく見られるテーマである。逆方向に年を取ること、あるいは早期に年を取るという考えだ。よそ者にとって、完全に理解するのが難しい概念でもある。これは驚くべきことではない。人間にとってもエルフにとっても、生の経験は過去と未来の間のどこかで起きる。アルゴニアンにとって、時間とはそれよりも遥かに流動的なものだ。

この理由で、ジェッカワス文明暦の存在と重要性はより混乱を招く。ワッセーク・サクスリールとその隣人たちの多くは、月の移行とタムリエルの年が循環し、再帰する性質を多大に強調している。一部の学者は、この暦が偉大なるアルゴニアンの石彫刻があった古代の時代の名残にすぎないと片づけている。この理論に従うなら、暦は伝統を通じて残った断片ということになる。しかしこの考えは現在のサクスリールの価値観と全く一致せず、私にはあまり納得できない。

私は最近ジェッカワスの長老に、彼らはなぜ時間を流動的で不透明なものと見ていながら、詳細で驚くほど正確な暦を維持できるのか、と尋ねた。彼は永遠と思えるほど長く、静かに座っていた。そのうち、彼は言葉を発した。

「〔暦は〕水の入った鉢のようなもの。昼と夜は鉢の中を泳ぐ」

彼はこの答えに満足していなかったが、諦めてそう言ったのだと私には分かった。彼の苛立ちの原因はシロディールの言語能力の不足にもあったが、彼の母語にも欠陥があった。私の知る限り、ジェルには時制がない。少なくとも、我々が時制と認識できるようなものはない。通訳者が用いるのを耳にした限り、最も近い代替語は「古い」と「新しい」だ。彼らは「変化すること」や「変わること」についてよく話す。前方への運動を含意する語である。いずれにせよ、これらの語は私にさえ解読できないような古代の用語や概念によって不明瞭となっている。

私としてはできる限り理解するよう努めるが、不透明な水が完全に透明になる日が来るとは思えない。

蔓の舌:序章Vine-Tongues: Introduction

自分の蔓の舌を馴らして、言うことを聞かせたいのだな?今はまだ芽でしかない。ここからどうすれば良いのかを知らなければならない。私の詳細な解説の助けがあれば、あなたも遠からず、すっかり育った蔓の舌を馴らす喜びを得られるだろう。

マークマイアのアルゴニアンのような蛮族はこの素晴らしい植物を野蛮な手段に用いるが、我々は蔓の舌を訓練してそれよりもずっといいものに変える方法を学んだ。真の忠実な友だ。

だから私の解説に従ってほしい。そして、蔓の舌はあなたの家の一部というだけではなく、あなたの心の一部でもあることを忘れないでほしい。

蔓の舌:一般的な失敗Vine-Tongues: Common Mistakes

愛すべき蔓の舌の苗を自宅に迎え、何を食べさせればいいかも、どんな住処を好むかも、退屈させないようにする方法も分かった。事故を避け、君の生活の混乱を少なくするため、私が自分の蔓の舌を育てていて学んだ、3つの重要な教訓をここに記しておこう。

1)蔓の舌を完全に躾けるまで、他のペットはどこかへやっておくこと。友人や遠くの家族に世話をしてもらおう。そうすればおませな蔓の舌が抱きしめ、優しくなでた時に、意図せずして食事を始めてしまうことを避けられる。蔓の舌は愛情豊かだが、常に腹を空かせているのだ。私が注意しておけば、猫のミクシーちゃんも生き残っていただろう!

2)否定的な連中は無視すること。多くの人は、蔓の舌を飼うのが危険だと言うだろう。あんな肉食の植物は躾けられないし、信用できないと。私に言わせれば戯言だ!躾けられた蔓の舌は誤解されているだけで、愛すべき生き物だ。危険なのは確かだが、昼ご飯を食べるのだって危険だ。次にウサギのミートボールを噛んだ時、喉を詰まらせないとも限らない。だが、食事するなとは誰も言わないだろう!

3)たとえ完全に躾けていても、蔓の舌に対する支配を保っておく必要はある。この植物は気が短く、すぐに機嫌を悪くするが、ほんのわずかでも躊躇や恐怖を見せれば、君を獲物と見て襲ってくるかもしれない。蔓の舌は愛情を求めている。そのことさえ忘れなければ、全て上手くいくだろう。多分間違いない!

蔓の舌:栄養Vine-Tongues: Nourishment

君は腹が減っている時に幸せだろうか?違うだろう!君の新たな友、蔓の舌にとっても同じことが言える。さて、この素晴らしく驚異的な植物に何を食べさせればいいのかと考えているかもしれない。恐れることはない、私が説明しよう!

蔓の舌にはもちろん、水が必要だ。それも大量に!水をやられた植物は幸せな植物だ!

水はいいし、必要なものだが、蔓の舌にはもう少し実のある食べ物も必要だ。正確に言えば、肉だ。場合によっては生で、できれば生きて動いているやつがいい。私はいつも言っているのだが、ピクピクしているものなら、食べさせても大丈夫だ。

苗の時、蔓の舌にはミミズや昆虫、小魚を食べさせよう。たまにならネズミを1、2匹やってもいい。成長してきたら、蔓の舌の食べ物の量とサイズを大きくしていけば、健康を保ち、しっかりと能力を伸ばせるようになる。だが、食事を与えすぎないこと!太り過ぎた蔓の舌は陰鬱で不幸になり、不適切なものを食べたがるようになる。ペットや主人の手足などを。

蔓の舌:幸福な家Vine-Tongues: A Happy Home

長く疲れる旅から帰ってきた時、君はおそらく暖かい食事とベッドを求めるだろう。蔓の舌も同じなのだ!まあ、暖かい食事は除くが。蔓の舌は生の、まだ動いている食事を好む。蔓の舌には最高のものを与えるべきだし、それを与えるのは君の仕事だ。

最も快適な過ごし方として、蔓の舌は湿気のある気候で、流れる水に囲まれた土の上を好む。それに加えて、蔓の舌が巣に決めた場所は周囲を徘徊する生物にとって魅力的であることが必要だ。君の愛する蔓の舌は十分に大きくなると、君が与える美味しい食事を補完するため、自分で獲物を捕まえるようになる。これにより蔓の舌が達成感を得られるだけでなく、君の家から害虫を排除するにも役立つのだ。

蔓の舌は優れた門番になることに気づいただろうか?高い所に置いて周囲を観察させ、景色を眺められるようにしておくのだ。誰かが君の地所に近づこうとすれば、君の新たな友は彼らにふさわしい出迎えをするだろう。ただし、不幸な誤解を避けるためにも、友人や家族が訪問する前に、蔓の舌を引っ込めておくことだ。

蔓の舌:準備Vine-Tongues: Preparations

蔓の舌を君の人生に迎え入れる覚悟ができたら、完全に準備を整えておかなければならない。この喜ばしい蔓は大変な幸福をもたらしてくれるが、多くの作業と極端な忍耐も要求するのだ!

君のパートナーや友人、家族と話して欲しい。これから先、何が起きるのかを知らせるのだ。そうすれば深夜の餌やりや定期的な土の入れ替え、時々起こる血の儀式に警戒され、気分を害されることがないだろう。

驚きは面白いかもしれないが、お腹を空かせた蔓の舌の吠えるような叫び声が夜中に響けば、人々を仰天させてしまうだろう。だから君も心の準備をして、友人や家族、隣人たちにも心構えをさせておくことだ。生涯の幸福のためなら、少々の不便など安いものだ!

蔓の舌:植物を幸福にするためにVine-Tongues: Happy Plants

小さな植木鉢に蔓の舌の苗を入れて、新しい家に設置する準備を整えたら、あとはどうすればいい?簡単だ!可愛い植物を幸せにするため、できる限りのことをすればいいのだ!

蔓の舌には個性があり、私と君のようにそれぞれ違っている。ある程度は実際に試して、苗を育てる最良の方法を確かめなければならない。一般的に言って、必要なのは長い熊手と水やり用の缶、それと幅広の剣だ。彼らは少々怒りっぽくなる時があるのだ!

この基本的な3つの道具があれば、苗に水をやり、背中をかいてやれる。蔓の舌が隣人の猫や地元の子供を食べようとした時、思いとどまらせることもできる。これらの道具を手許においておけば、君と蔓の舌には長く喜ばしい年月が待っているぞ!

無の代弁者Speakers of Nothing

ニッソ・ゼーウルム 著

無の代弁者、無の言葉よ
虚無は無の舌にしがみつく
千の舌と十倍の言葉
真理は安らう、無の肺と共に

知恵の息吹は空気を汚す
腐れ落ちて久しい果実のごとく
闇は言葉の隙間に挟まる
何かの間にある無

足は多くの道を歩む
ヒストの多くの根によって敷かれた道を
唇は多くの真理を語る
ロウソクの明かりのように広がる真理を

汝にはいかなる安息もなく
恐怖を鎮める優しい真理もない
だが言葉をよく聞け
無の目を見よ

名誉ある行いActs of Honoring

ニッソ・ゼーウルム 著

汝が耕す畑を通じて
壊れた大地を通じて
汝が育てる作物を通じて
変化である名誉を

無の言葉を聞け
多くの舌を聞け
その中に一つの真理を聞け
虚無である名誉を

血にまみれた牙と
激烈なる一撃と
汝の最後の息と共に
死である名誉を

卵の番人の日記Egg-Tender’s Journal

今年こそは違う。昔の人がやっていたみたいに、私はドラゴンソーンを噛み始めている。調合薬と一緒にこれから何ヶ月も続ければ、きっと絆の準備ができるはず。今年こそは私が選ばれる。間違いない。

大恥をかいてしまった。ドラゴンソーンは刺激が強い。息が酸っぱくなって、他の人が気づき始めてしまった。ミンメでさえ私と話すのを嫌がってるみたい。痛んだサラマンダーを食べちゃったのと言ったけど、これからはもっと目立たないようにあの草を噛まないと。

効いてる気がする。鱗にも爪にも、前よりも艶が出てる。多分、これはいい徴候だわ。でも歯に黄色いシミが出てきてる。醸造したスカルドルートを飲んで口を洗い始めた。死にそうな味だけど、歯にはいいと思う。

キーナムが間違って私のスカルドルート茶を一口飲んで、気絶しかけた。ウクシスで彼を看護しなくちゃならなかったから、暗くなるまでドラゴンソーン畑に行けなかった。暗闇の中から女の人が近づいてきたけど、鱗がものすごく青白くて、月明かりの下では特にその色が目立っていた。私は怖くて叫び出しそうになったけど、彼女は優しい声で話しかけた。どうしてこんな夜中にドラゴンソーンを摘んでいるのかと聞かれて、どうしてかは分からないけど、本当のことを彼女に言った。知らない人にどうしてこんなことを告白したのかは分からない。知らない人だったからかもしれない。憐れみの目で見られずにこのことを話せる相手は、村に誰もいない。闇夜の中で、私はこの人とずっと話をした。再び会うことになった。

この頃はほとんど眠れていないけど、仕方ないわ。リー・ナカルは夜中しか会いに来られないと言っているし、私は一日中彼女に会うことばかり考えている。あの人は私の痛みを分かってくれるし、耳を傾けてくれる人がいるって本当にありがたい。家でこの話題が出た時にも、私は恥ずかしさを感じない。リー・ナカルはヴィーシュクリールの一員、つまりゴーストの民。彼女があんなに優しいなんて思っていなかった。ブライトスロートはあの人たちと付き合わない。付き合いのある部族は少ないわ。彼らは卵を奪うから、追放者のように扱われている。でも仕方がないのよ。自分たちでは子供を産めないから、ヒストはあの人たちに他の部族へ行かせている。なんて悲しい話なの。

リー・ナカルと絆の儀式について話した。ブライトスロートはゴーストと絆の権利の取り決めをして、彼らがもう卵を盗まなくてもいいようにできるかもしれないと言った。彼女はありがとうと言ったけど、礼儀上そうしただけだった。私たちの部族が味方になるなんて希望をほとんど持っていないのは目を見て分かった。私たちの絆の儀式は特別なものだから、勝手にやればいいと彼女は言った。私は強く言わなかった。自分の部族にされたことを、彼女に対してしたいとは思わなかった。彼女を憐れんだりはしない。

悲しい一日。ヒストの下へ帰る卵が分かる日は、いつも悲しい日。なぜヒストは他の卵を差し置いて、一部の卵を選ぶの?明らかに病気の卵なら分かるけど、どの卵が孵って、どの卵が根の中に沈むのか、私たちはいつも予測できるわけじゃない。あの子たちのためにできることは何もないとずっと受け入れてきたけど、リー・ナカルはそうじゃないって教えてくれた。あの子たちも生まれることができるんだ。卵を彼女のところへ持ってくれば、あの子たちを助けるために力を貸してくれると彼女は言った。私の部族は卵がなくなっても気づきさえしないだろう。あの子たちのことは、みんなもう諦めている。でも私は諦めない。私はあの子たちが欲しい。あの子たちは、私たちの子供になるのよ。

今夜、私はまたキーナムと一緒に働くことになっているけど、彼の飲み物にスカルドルートのエキスを加えておいた。夜の間に、卵をいくつか持ちだせるはず。考えるのは恐ろしいけど、あの卵には私が必要なの。怖いからって、諦めるわけにはいかない。

やったわ。朝の番人が交代に来た時、私の肌は死んだ樹皮みたいに乾いていた。私は夜のうちに卵がいくつかヒストの元に帰ったと言うと、彼らはただうなずいて受け入れた。彼らが知らせに全く動じないのを見ると、喉がつかえる気分がする。

眠りに落ちるまでに何時間もかかった。木の番人がやって来て私を告発するかと思ったけど、次の番をするために目を覚ますと、全ては日常どおりだった。ヒストは私がしたことを知っているの?

最後の集団から出た不適格の卵はほとんど全部、リー・ナカルに渡してしまった。考えてみれば、ものすごくたくさんあった。何て無駄をしていたんだろう。でもそれももうなくなる。彼女が言うには私がすでに渡した卵は巣の中に入れられ、彼女の部族の人々が番をしているから安全で、健康にしているそうだ。私がここを離れてあの子たちに会いに行くのはまだ早いと彼女は考えている。最後の卵を救い出すまで待ったほうがいい。多分、そんなに長くはかからないと思う。考えただけで棘が震えそう。

私の子供たちは元気でやっていると言われた。まだ卵たちを目にすることはできていない。村で卵の世話をしていると毎日、あの子たちがいないのを思い出してしまう。私は自分の子供の世話をしたい。私はあの子たちの母親なんだから。他の人たちも、自分の卵を育てる時にこういう気持ちを味わうの?

卵がもうすぐ孵るとリー・ナカルが言っている!その瞬間を見たいと彼女に伝えたけど、まだその時ではないと言われてしまった。もうすぐ、絆の儀式が再びやって来る。私は出席しないだろう。でも、そんなこと気にしない。部族は私がいなくてもやっていけるけど、あの卵は違う。あの子たちには私が必要なんだから!

ケンカをして以来、リー・ナカルには会っていない。戻って来なかったらどうしよう。そうなったらどうしていいか分からない。どこで彼女を見つければいいか分からない。私の子供たちがどこにいるのかもわからない!私はあの子たちに会いたいだけなのに!

卵の番人の未完の手紙Egg-Tender’s Unfinished Letter

チーダシへ

あなたの申し出を受けるべきだったわ。あのしょうもない交易の仕事だって、ここの大騒ぎから逃げられるならありがたいくらいだわ。今年は色々なことがまともじゃなくなっていて、まるで全ての目が卵の番人に注がれているみたい。1分だって落ち着いて考えていられない。紙に筆を走らせる暇はなおないわ。あなたが儀式のための物資を持って戻る頃には、事態も落ち着いているかもしれないけど。早く戻って来てくれたら嬉しいわ。親身に耳を傾けてくれる人がいれば、気分が全く違うもの。他の卵の番人に打ち明け話なんてできないし。

ミンメは本当に噂好きで、部族の使者になれそうなぐらいだわ。ハクサラが今の時期になるとどうするか、あなたも知ってるでしょう。ミーナは黄金の蛙の夜以来、口をきいてくれないの。彼女だってそろそろ許してくれなきゃ。

木の番人の間に動揺が走っているみたいね。面倒が降りかかって来なければいいんだけど。