ザンミーアの木枠箱

ザンミーア達よ!
沼の奥地には謎めいたアルゴニアンの階段ピラミッドがあります。
何千年も滅びぬように石から作られたようですが、どういった理由かは不明ですが完全に見捨てられてしまいました。
今やブラック・マーシュで知る人などいない上に、人々にとって価値がある遺物を、多くのザンミーア達が持っているなど誰も気にも止めていないようです。
なぜか、この見捨てられた、魅力あるありふれた遺物の数々は、ブラック・マーシュから密かに持ち出され、密封され、君たちの手に届くようになりました!

ラディアントアペクス リワード

  • 灼熱のホースリザードScorching Horse-Lizard

    1200

    • 「ジメジメとした沼でキャンプの火を焚くのは簡単じゃない。だが灼熱のホースリザードがいれば安心だ!1匹でもいれば、二度と冷めたウナギのシチューを食べなくてすむ!」—リルモスの馬屋の親方、ウカスパ

  • 凍えるセンチリザードChilling Senche-Lizard

    1600

    • 「この凍えるセンチリザードはかなり珍しい種で、沼の深部に生息している。氷魔法に精通しており、穏やかな生活を送ることで通常よりも長生きできると言われている。彼らのヒストの木からは、つらら(正体は不明)が落ちるらしい!」—ウカスパ

  • 毒のウルフリザードVenomous Wolf-Lizard

    2500

    • 「暗闇の中で光るほどの毒にまみれた状態で街に入ってきた者に、寄るな!と言う者はいない。ブラック・マーシュのような過酷な土地から来た者は、称賛されてしかるべきだ。」—リルモスのウカスパ

アペクス リワード

400

  • ウルフリザードの駿馬Wolf-Lizard Steed

    • 「マーシュの親方はほぼ全員が、鱗のある上等な騎乗用トカゲを売っている。トカゲには様々な形があり、どれも肌の乾いた者にとってはお馴染みのものだが、沼の奥地の条件に適応しているのだ。我々のトカゲは非常に便利で、鱗たっぷりで魅力的だ!」 —ウカスパ

  • キャメルリザードの駿馬Camel-Lizard Steed

    • 「キャメルリザードは英雄的なアルゴニアンの冒険者が、アネクイナのような乾いた気候を旅するために作られたものだと思われる。もしくはカジートの冒険者がブラック・マーシュを旅するか。理由は知らない。一つ欲しいが。」 —ヘーム・ジャス

  • グアルリザードの駿馬Guar-Lizard Steed

    • 「肌の乾いた者から、グアルは元々沼の爬虫類なのに、トカゲをグアルの姿にするのは無駄ではないのかと質問されたことがある。肌の乾いた者にしては、非常に鋭い質問だ!」 —リルモスのウカスパ

  • センチリザードの駿馬Senche-Lizard Steed

    • 「一度ならず、私は好奇心旺盛なビーク・オジェルに尋ねられたものだ。”ウカスパ、なぜお前のところの乗用トカゲはタムリエルの他の地域の騎乗動物のような姿をしている?なぜお前のところのとっても美しい騎乗動物は、トカゲの姿をしているんだ?”。いい質問だ。」 —リルモスのウカスパ

  • ベアリザードの駿馬Bear-Lizard Steed

    • 「熊だな。トカゲでもある。乗れるのか?ショールの骨にかけて!それだけが知りたかった。乗ろう!」 —祝福されたノルド大使、向こう見ずなリガート

  • ホースリザードの駿馬Horse-Lizard Steed

    • 「アルゴニアンが長い距離を長い間旅しようとする時がある。どうやって?騎乗動物に乗ってだ!役に立つトカゲは役立つ姿の乗用トカゲになり、アルゴニアンは尻尾を鞍に載せて誇り高く乗れるのだ。」 —リルモスのウカスパ

レジェンド リワード

100

  • ヴォッサ・サトルVossa-satl

    • これは奇妙なアルゴニアンのヴォッサ・サトル、別名カエルパイプを鳴らすことができる。沼のパーティーだ!

  • ガス・ブロッサムGas Blossom

    • この異国風の植物は、接近するとガスを発生させて、周囲のターゲットに毒ダメージを与える。

  • スタティックピッチャーStatic Pitcher

    • この異国風の植物は、接近すると電気を発して衝撃ダメージを与え、周囲のターゲットからマジカとスタミナを吸収する。

  • デッドウォーターの鱗Dead-Water Scale

    • 「あまり正面から批判したくないが、デッドウォーターの影のような鱗は少し地味すぎる。確かに、簡素で上品だが。」—ズカス

  • ナイトフォール・サーベルキャットNightfall Sabre Cat

    • 騎乗動物として飼い慣らす上カース峡谷のリーチの民は、ナイトフォール種がデイドラ公ノクターナルの聖獣だと語っている。

  • ナイトフォール・サーベルキャットの子供Nightfall Sabre Cat Cub

    • 「リーチの民の捕虜として過ごした最初の数ヶ月、唯一辛さを和らげてくれたのは、伴うことを許されていた愛しいペット、ナイトフォール・サーベルキャットの子供だった。」 — アーセナイス・ベロック

  • ニックスオックス・ファブリカント駿馬Lustrous Nix-Ox Fabricant Steed

    • 聖ロシスとオルムスを聖者の隔離場に閉じ込めなければならなくなる前、彼らは祝日になるとこの奇妙なファブリカントの騎乗動物に乗って真鍮要塞を通りぬけた。だがそのパレードもなくなって久しい。人工の馬も目的を失っている。

  • ヒストのグアルHist Guar

    • ブラック・マーシュでこの騎乗動物は、「鱗にヒストの樹液が塗られたように見える者」と呼ばれているが、他のタムリエルは単にヒストグアルと呼んでいる。これは音楽を楽しむ唯一のグアル亜種として知られている。

  • ブライトスロートの鱗Bright-Throat Scale

    • 「カオク!ブライトスロートの毒々しい色の鱗はあまりにも派手すぎる。真っ当な者が公の場でする格好か?ありえない。」—デッドウォーター族、ジャクシク・オルン

  • ボリプラムスの弓Voriplasm Bow

    • ボリプラムススタイルの弓に合う衣装。

  • ボリプラムスの剣Voriplasm Sword

    • ボリプラムススタイルの片手武器に合う衣装。

  • ボリプラムスの杖Voriplasm Staff

    • ボリプラムススタイルの杖に合う衣装。

  • ボリプラムスの両手斧Voriplasm Battle Axe

    • ボリプラムススタイルの両手武器に合う衣装。

  • ランターン・マンティスLantern Mantis

    • この異国風の植物は、接近すると定期的に攻撃を行い、周囲のターゲットに物理ダメージを与える。

  • 火愛の蜘蛛Firepet Spider

    • クロックワーク・シティでは機械仕掛けの火壷の蜘蛛がプログラムされ、シェフの周囲を歩くバーベキューのようについて回る。何者かがソーサ・シルの隠された世界から秘密を盗み出したようだが…どうやって?可能な内に手に入れよう。

エピック リワード

40

  • ザンミーア・ドエンの羽ティアラXanmeer Doyen’s Feather Tiara

    • この豪華なティアラはザンミーアの複雑に作られた王位の象徴から複製された。眉の上に置かれたこの美しい羽毛と共に立ち、群集を感動させよう。

  • ザンミーア・ドエンの礼拝ローブXanmeer Doyen’s Worship Robe

    • 「カゴーティ革のコルセット、素敵な綿のフルスカート、殻のビーズ飾り手袋と、鳥の頭蓋骨のポールドロン。樹木の夢見に礼拝者を迎え入れる時、ザンミーアのドエンが必要とする全てが揃っている。”世捨て人”が一段上の品を作った。」と、ジャザ・ケルは話している。

  • セプ・アダーSep Adder

    • 空を飛ぶバイパーは気性が荒く性質が悪いが、可愛い赤い目を見てみよう!中には噛んでも毒を注入しないよう訓練された個体もいる。完璧なペットだ!

  • デイモンチキンDaemon Chicken

    • これはただの目付きの悪い黒い鳥なのだろうか?それともニルンの外にあるメエルーンズ・デイゴンのデッドランドや、マラキャスのアッシュピットから来た生物なのだろうか?実に難しい問題がある。どちらが先に生まれたのだろう?

  • デッドウォーターのブラッドフェイスタトゥーDead-Water Blood Face Tattoos

    • 獰猛なデッドウォーター族が戦いを正式に宣言する時、戦士たちは血に似た赤い染料を体に塗りつける。

  • デッドウォーターのブラッドボディタトゥーDead-Water Blood Body Tattoos

    • 獰猛なデッドウォーター族が戦いを正式に宣言する時、戦士たちは血に似た赤い染料を体に塗りつける。

  • トカゲ式四枚布スカートセットLizardly Four-Fabric Skirt Set

    • 「”世捨て人”がお届けする、最新で滑らかな沼地シック。亜麻布、羽根、落ちた鱗、紡いだ素敵な綿を合わせて、コントラストのあるギザギザを作り出している。いかにもトカゲ風!」と、ジャザ・ケルは話している。

  • バタースコッチドラゴンガエルButterscotch Dragon Frog

    • 「バタースコッチドラゴンガエルの味がどうかはともかくとして、恐らくアルゴニアンは風味からそう名付けたのだろう。自分で確かめるつもりはない。」—ホラ吹きのムアイク

  • リバーウッドシロニワトリRiverwood White Hen

    • スカイリムのホワイトリバー周辺で見られる、群れを成すニワトリ。元々はリバーウッドの旧市街で育てられていたと言われる。所有者は異常なほど愛情を注ぐようになり、傷つけられると激怒したそうだ。

  • 沼の王のフォーマル虫殻ローブMarshlord Formal Bugshell Robes

    • 大胆にも輝こうとするサクスリールのため、隠棲している隠者ジャザが今シーズンの必須フォーマルウェア、多層に分かれた沼の王ローブセットを用意した。小さな沼の虫の輝く殻が、たくさん縫い込まれている!

  • 万華ドラゴンガエルKaleidotropic Dragon Frog

    • この小さな生物の美しい色彩は、実のところ捕食者に対する警告であり、毒を持っていることを示している。幸運なことに、タムリエルの人間がこれを口にしても、軽度の幻覚を引き起こされるだけですむ。

スペリオ リワード

16

  • アンバー・アッシュホッパーAmber Ash Hopper

    • 上アッシュランドとレッドマウンテン山腹原産の元気なアンバー・アッシュホッパーは、国外に出たダンマーが好むペットである。自分で勝手に穴を掘るため比較的手間が掛からず、ダークエルフの故郷を思い起こさせてくれる。

  • クラグローン・ウェルワCraglorn Welwa

    • クラグローン・ウェルワを飼い慣らそうという無責任で愚かな試みは、常にロスガーやスカイリムのオークよりも自分たちが「より悪い牙」だと証明したがる、アイアンオークによって通常行われている。

  • デッドウォーターの歯と牙の冠Dead-Water Tooth-and-Tusk Tiara

    • ナガ・アルゴニアンのデッドウォーター族は、そもそも棘が多い。強く見せたい時は、さらに多くの棘を付ける。この作戦にはまる敵も少なくない。

  • ビターコースト・クリフストライダーBitter Coast Cliff Strider

    • バルモラのセティス・ラマリスは、「ビターコースト・クリフストライダーを愛しているが、うまく飛べないことは残念だ。私は品種改良を行い、いつか彼らがヴァーデンフェルの空を制して、遠くから獲物を狩れることを願っている!」と語っている。

  • ブライトスロートの藻フェイスタトゥーBright-Throat Algae Face Tattoo

    • 色鮮やかな緑の藻の染料を用いた、ブライトスロートスタイルの陽気なフェイスメイク。

  • ブライトスロートの藻ボディタトゥーBright-Throat Algae Body Tattoo

    • 色鮮やかな緑の藻の染料を用いた、ブライトスロートスタイルの陽気なボディメイク。

  • ブライトスロートの大青フェイスタトゥーBright-Throat Woad Face Tattoo

    • 色鮮やかな大青染料を用いた、ブライトスロートスタイルの陽気なフェイスメイク。

  • ブライトスロートの大青ボディタトゥーBright-Throat Woad Body Tattoo

    • 色鮮やかな大青染料を用いた、ブライトスロートスタイルの陽気なボディメイク。

  • ブライトスロートの白墨フェイスタトゥーBright-Throat Chalk Face Tattoo

    • 鮮明な白墨染料を用いた、ブライトスロートスタイルの陽気なフェイスメイク。

  • ブライトスロートの白墨ボディタトゥーBright-Throat Chalk Body Tattoo

    • 鮮明な白墨染料を用いた、ブライトスロートスタイルの陽気なボディメイク。

  • ブライトスロートの卵黄フェイスタトゥーBright-Throat Yolk Face Tattoo

    • 色鮮やかな卵黄染料を用いた、ブライトスロートスタイルの陽気なフェイスメイク。

  • ブライトスロートの卵黄ボディタトゥーBright-Throat Yolk Body Tattoo

    • 色鮮やかな卵黄染料を用いた、ブライトスロートスタイルの陽気なボディメイク。

  • マイアの鼓Mire Drum

    • マークマイアのアルゴニアンが用いる多くの楽器の中で、鼓は最も簡素で最も一般的なものだ。

  • 絆の儀式のヘッドドレスBonding Rite Headdress

    • 伝統を重んじるアルゴニアンにとって絆の儀式は大事な式典であり、その重要性を証明するため、その場に適した派手な頭飾りが必要となる。

ブラックウッドの本

Books of Blackwood

アスタラからの手紙Letter from Astara

エラム

ブラッドラン洞穴の中の遺跡はずっと昔に破壊され、近くの村によって遺体安置用の穴に転用された。とは言え、聖域そのものは元の状態のままだ。計り知れない危険がある場所という洞窟の評判は、今も明らかに残っている。これは我々の役に立つ。

戦いながら進むのは大変な労力を要するだろうが、扉は遺跡のはるか奥深くにある。長い道のりだ。注意してくれ。この聖域を再び開けるつもりなら、片付けなければならない。詳細を渡そう。

それから、これは忘れるな。死だ、我が兄弟。それが鍵だ。

マトロン・アスタラ

アステラ女公爵のメモDuchess Astella’s Notes

もうすぐ、愛するマセンが戻ってくる。でもまだやることが沢山ある!

儀式のためには護符、つまり彼の防具をハートベインの茂みの下に埋めなければならない。あの植物の強烈な毒は、妨害する霊魂を遠ざけておくためのもの。問題はどこに置くかよ。

彼の胸当ては井戸のそばに置こう。彼の心臓が再生するように。

彼の兜は壁のそばに置こう。近づいてくる危険が見えるように。

彼の盾は門のそばに置こう。この城と彼の霊魂を守るために。

最後に、彼の剣はある祖先の手に委ねるわ。危険はあるけれど、やってみるしかない。

アボール評議員の日記Councilor Abor’s Journal

他の元老院の者たちとは違って、私はレオヴィック皇帝に信頼されていた。ロングハウス帝の秘密の真実を知っていた。まあ、そのほとんどだが。私と大司祭。その時はそこに含まれることが名誉のように感じられた。今?私は生命の危険を感じて、この忌々しい監視塔に隠れている。

知っていることを全て書き綴っておくのが最善だろうと判断した。四つの野望とそれがどのように作られたかについて。メエルーンズ・デイゴンとの取引について。あらゆることを。新しい宝物庫の場所を知るのはおそらく私だけだろう。ヴァレンの軍勢が近づいてきたため、レオヴィック皇帝が野望を移動させた場所だ。

この件は全て終わったのではないかと思っていた。レオヴィックが死に、ロングハウス帝が滅びたときに。ファルル・ルパスから受け取った手紙によると、それは間違いだった。以下は四つの野望が収められている3つの宝物庫の場所だ。

〈続く数ページは破り取られている〉

アリジンダの日記Alizinda’s Journal

栽培の月 12日

ああ、彼ったらすごく優しく「アリジンダ、君は私の月夜、昼の太陽だ」なんて言うの。でも、貴族の人ってこの程度のことは恋人に言うの?時々マセンは、私のことをただの一時的な遊び相手としか見てないんじゃないかと不安になる。彼が口説けば手に入れられるだろう、ニベンの女性たちにはとても敵わないと自分でも分かってる。私から彼にあげられるものはほとんど何もない。たとえそうでも、彼からは一番高いアリクル砂漠の太陽よりも温かい愛を感じている。どうか分かっていてもらえますように。

年央 8日

彼は私を愛してる!長身のパパのズボンにかけて、私があんな人に愛されるなんて、一体どうして?彼には無駄に心配してると言われた。彼の心は私のものなんですって。それも私だけの!結婚のことさえ口にした!想像できる?夢が全部叶いそう!

年央 16日

私は本当に馬鹿だった。愛?そんなの残酷な冗談よ。マセンの結婚や旅の話は、全部ただの嘘だった。彼が手に負えない軽薄な行為にふけることを許す甘い言葉。彼が誰かにプロポーズしたって、他の女性たちが教えてくれた。まだ見たこともない、北の地方の跡取りに。女公爵は誇りに思ってるでしょうね。でも、私は笑い者にされない。これ以上は。

年央 18日

準備は整った。マセンは今夜、小屋で私と会うつもりでいる。今夜でなければ。私の怒りは夜ごとに薄れ、悲しみが取って代わっている。彼は私の心を踏みにじった。私を利用した!今報復しなかったら、ずっとできないんじゃないかと思う。あなたが憎いわ、マセン!私に愛する人を傷つけさせる、あなたが憎い!

アルディアの日記Ardia’s Journal

「砕かれた遺跡」の探検

ジギラはこの奇妙な遺跡に調査員を護衛する代金をたっぷり支払ってくれた。正直言うと、ここで何が見つかるか知ってたら、ただでもついて来たかもしれない。

デイドラのデザインは今までに見てきた何にも似てないけど、異様なほど親しみを感じる。最初の印象より、明らかに広大でもある。まだそれほど進んだようには思えないが、施設内の風景は入口の外からの観察と調和していないように思える。おそらくメモに地図を加えた方がよさそうだ。

* * *
地図を描いておくべきだった。グループから離れた瞬間に、ジギラの調査員が裏切った!転んでマントが破けたおかげで逃げ出せた。どこへ行くかを記さなければならない。おそらく遺言として。

* * *
左。左。扉から出る。裂け目を越えて。完全に振り返った。近づく音が聞こえる。時間がない。

アロイシウスのメモAloysius’s Note

私を見つけた人へ。この手紙とかばんに入った指輪をレヤウィンのターシャ・ファルトーに届けてください。

最愛のターシャ

君は「ほら、撫でてあげて。ただの無害なモングレルよ」って言ったね。

僕たちがどれだけ間違ってたか、ほとんど分かってなかったよ。あの悲し気な犬は前兆であり、僕の死の導き手だったんだ。

あのレヤウィンでの完璧な夜は今でも頭に浮かぶ。喜びに満ちた君の顔。まぶしかった。通りを歩いた時の君は太陽の光で輝いてた。できたら、本当にできたら、それをもう一度見たかった。できたら。

ポケットの中にある指輪を渡して、計画どおりにプロポーズすればよかった…

手を伸ばしてあの忌々しい犬を撫でようとせずに。もちろんあいつは噛みついたよ。だけど、その表面的な怪我は単なる始まりに過ぎなかった。

当然ながら、手から血が噴き出している状態で君にプロポーズなんかできなかった。だから僕は我慢して、黙ってその場を離れて一番近い治癒師のところに行った。そこでは親切なアルゴニアンが怪我に包帯を巻いてくれて、痛みを抑えるために薬用ヒキガエルをくれた。不幸にも、それは本当の負傷に対しては貧弱すぎる鎮痛剤だと分かった。

日が沈むと、僕は高熱による狂気じみた夢に苦しめられた。最後に覚えてるのは、自分の服を引きちぎって吠えながら夜の中へ駆けて行ったことだ。目を覚ましたら、誰かの鶏小屋で、血と羽にまみれてた。

どうか分かってくれ。これは君のためにやる。この呪いを受けたままもう一度君に会ったら、危害を与えてしまうかもしれない。そんなことになったら、自分が許せない。だから会わない。渡せなかった指輪を遺すよ。これは他の誰でもない、君のためのものだった。

いつまでも君を愛する
アロイシウス・フルヴァヌス

イナリースからの手紙Letter from Inalieth

バスティアン様

私を覚えていらっしゃるでしょうか。計算だと、そろそろ15歳におなりでしょう。ほとんど大人ですね。最後にお会いした時は本当にお小さかったですが、何年もあなたのことを考えておりました。

私は亡きお父様とご結婚される前から、あなたのお母様の召使をしておりました。お母様が亡くなられてからも、しばらくの間はお世話をさせていただきました。私があなたをダガーフォールのシルヴェッレ家にお連れして、何ヶ月かそちらにお仕えしたのです。ですが、まだ小さい内に去らねばなりませんでした。

私は具合がお悪く、もう長くないことをお分かりになっている時にさえ、お母様が一番気にかけ、心配していたのがあなたであることをお知らせしたいのです。お母様はあなたの教育やその他の資金を確保するため、持参金の中から宝石を取り分けておいででした。そしてシルヴェッレ家を離れることが許されたら、すぐにあなたをお姉さまのところにお連れして、一緒に暮らせるようにして欲しいと私に依頼なさったのです。クラレーヌ様はあなたよりもかなり年上で、お父様が屈辱を受けた時にはすでに幸せな結婚をなさっておいででした。なのにどういう訳か、シルヴェッレ家はあなたを解放するどころか義務を負わせたのです。あなたの旅路が続きそうだと思われた時に何度もお願いしましたが、満足のいく返事は決して得られませんでした。その後間もなく私は解雇されました。

私は今、レッドファーの村に住み、宿屋〈ハーティー・ホーヴァー〉で働いています。グラーウッドには何人か家族もおり、最近は十分に満ち足りています。もしお手紙をくださるなら、あるいはこちらの方にいらっしゃるようなことがあるなら、元気だと一言お知らせいただけたら、こんなに嬉しいことはございません。

心からの愛情を込めて
イナリース

ヴィヌスのメモVinnus’s Note

オーサス

愛しい人よ、探していたものを見つけた。石は間違いなく何らかの闇の力、発見された場所から考えると恐らくメエルーンズ・デイゴン自身の道具だ。だが、これを満足いくまで調べられる機会は得られなかった。彼の領域に不法侵入している間に、デイゴンやその従者の注意をひくのはあまりいい考えと思えない。

この仕事が私の最後になりそうな気がする。私を見つけた人にぜひお願いしたい。もしあなたが味方なら、この石をレヤウィンの戦士ギルドのオーサス・ポンタニアンへ届けて欲しい。あのデイゴン信者たちが私たちに対する武器にする前に、彼がこの石の目的を解明できればいいのだが。

それから、彼の人柄については謝っておく。オルトス、これを読んだら私の新しい友人に親切にしてくれ。これを届けるため、それは長い旅をしたのだ。

ウェアシャーク船長のサーガ、2巻The Saga of Captain Wereshark Vol. 2

沈んだ墓地にとらわれ、ドラウグルの群れに囲まれ、古代アンデッドのプリンスに直面したとき、海賊の船員が応じる方法は沢山ある。プリンス・ヴァウグルの要求に対する強きフリッカの答えは、もっとも直接的なものだったかもしれない。大股で頭蓋骨が散乱する玉座に近づき、プリンス・ヴァウグルに向かって嘲るようにニヤリと笑うと、炎のような王冠を叩き落とせる強さで彼をぶん殴った。

「戦いへ!」強きフリッカは叫んだ。「栄光のために!」。

一度は尻込みしたウェアシャークの海賊たちが即座に応じた。怒号や叫び声が湧き上がると、海賊たちはアンデッドへの恐怖を忘れ、周りを囲むドラウグルに棍棒や、短剣や、拳を叩き込んだ。完全に不意打ちを食らわされたスカイリムの忌まわしい死人は、当初敗北したも同然だった。

残念ながらすでに死しているドラウグルは、一般的な盗賊よりも棍棒や短剣に対する強さを備えていた。我らが海賊が連続で殴打を放っても、プリンス・ヴァウグルの軍勢は同じようにやり返してきた。最初にやられたのは羽のつま先のガーンだった。彼の伝説的なスピードでさえ、矢の雨を避けきれなかったのだ。我々がレッドミスト島から助け出した、化粧をした人食い部族の2人が墓まで彼についていった。

戦いはすぐに我々が不利になった。強きフリッカの大斧が次々にドラウグルを真っ二つにしても、ヴィミー・ラクロイックの輝く短剣が目を、耳を、内臓を奪っても、ドラウグルは押し進み、叩き切り、甲高い声で笑った。ひしめく船員の中央で身動きがとれなくなった私は、自分の棍棒を振り上げ、覚悟を決めた。

だが、征服されるその前に、狂乱の魔術師ネラモが炎の環を放つと、朝の太陽の中の明るいオレンジ色の花のように広がった。炎は一番近くにいたドラウグルを灰になるまで焼き尽くし、残りを追い散らした。「逃げろ、この馬鹿ども!」ネラモが叫んだ。「地表へ!財宝を運べ!」そこで我々は財宝を運んだ。

海賊たちはそれぞれ何であれ運べるもの、黄金、ゴブレット、燭台、あらゆる高価な金属や高価な宝石がはめ込まれたものをさっとひと掴みすると、やってきた方向に逃げだした。

恐ろしく巨大なドラウグルが我々の行く手を塞いだが、硬き鱗の者と毒の短剣が静かな怒りと共に切り裂いた。私と他の者が死体を飛び越すと、硬き鱗の者が後方を守ってくれたが、彼の顔に失望の色が浮かぶのが見えた。またしても、好敵手にも見える相手が、彼をシシスのもとへ送ることに失敗したのだ。

ずぶ濡れの広間全体が大きく振動したとき、我々はほとんど地表に到達していた。我々はよろめいた。いつものように前を行く二つの傷のガレナが、最初に危機へ気づいた。我々がこじ開けた扉が自動的に閉じつつある。止める方法を見つけなければ、永遠にこの沈んだ墓地に閉じ込められてしまう!

だが、石の扉が閉じる前に彼が戻った。船長だ!たなびくシルク、小粋な王冠、大量の色とりどりの羽を見間違える者などいない。ウェアシャーク船長は明るく光を放つ宝石を両手に持ち、古代ノルド語と思われる言葉を叫んだ。彼の耳に残る抑揚は、プリンス・ヴァウグルのそれを真似たものだった!閉じかけた扉は振動し、やがて止まった。

安堵の歓声が上がり、ウェアシャークの船員たちが開いた扉に殺到して駆け抜けると、背後でドラウグルが唸り声をあげた。最後に現れたのは強きフリッカだった。私は彼女がその広い背に、羽のつま先のガーンを担いでいるのを見た。

最初は、彼女がそこまでの危険を冒した意図が理解できなかった。ガーンは死んでいるのだ!だがその後、私は二つの傷のガレナがいつも言っていたことを思い出した。ウェアシャークの船員は家族だ。家族は誰一人置き去りになどしないのだ。

ウェアシャーク船長のサーガ、3巻The Saga of Captain Wereshark Vol. 3

[これより前の数ページは破り取られている]

我々が凍った島の地表に到着するやいなや、プリンス・ヴァウグルの恐ろしい言葉が響き渡った。それはあたかも凍り付いた空気そのものが語っているかのようだった。

「それは我が財宝だ、定命の者め。我が遺産だ。お前たちに盗むことなどできぬ。偉大なる北風が私に仕えているのだ!」

だが、我々がペールスピリット号の伸ばされた上陸用の橋を急いで登り、盗み出した戦利品を運び入れると、もう追って来たドラウグルが水中の墓地から現れることはなかった。大量の財宝と共に逃走する、熟練の海賊の船員にふさわしい迅速さで、我々は巨大なウェアシャークの船の出航の準備を整えた。船を守るために長弓を構えた海賊を乗せ、死して久しいドラウグルのプリンスから盗んだ財宝を腹いっぱいに詰め込んだペールスピリット号は、その深紅の帆を広げた。

凍った島とその水没した墓地を後にすると、北からの強風が帆を膨らませ、同時に新たな雪の結晶が我々の周囲で渦巻いた。だが辛うじて島を脱出したところで、風が我々を裏切った。荒れ狂っていたスカイリムの沖が穏やかな湖となり、博学な観察者でさえガラスと見まごうばかりに静止した。音もなく、風もなかった。スピリット号の船体に打ち寄せる波までもが無音だった。

この巨大な船に乗る者たちにとって、それは間もなく凍ってしまうことを意味するようなものだったが、それよりもさらに恐ろしい運命が私の頭に浮かんだ。プリンス・ヴァウグルが脅したように北風を止めている。漕ぐことも出来るが、ひどく消耗する作業な上に遅い。船を漕いで無事浜辺にたどり着くには、数日、いや数週間かかるだろう。おまけにペールスピリット号に詰まっているのは黄金で、食料ではない。黄金を食べることはできない。我々はこの静かな海の真ん中で、プリンス・ヴァウグルに水中の墓の中から残酷な、光を放つ目で見つめられながら飢えてしまうのではないか?

「いいや!」とウェアシャーク船長は宣言した。「やられはしない!俺は埋葬されたプリンスの宝石を手に入れた。それとレッドミストの島で発見した巻物で、この魔術を打ち破ってやる!」

強きフリッカが口火を切り、海賊たちと私は歓声を上げた。我らが船長はどんなに切迫した状況であっても、我々を失望させたことは一度もなかった。今回も彼がしくじる心配はない。プリンス・ヴァウグルは古代の者で強力かもしれないが、ウェアシャーク船長は私が航海してきた中で、最も機転の利く船長だ。

快活にお辞儀をして手を振ると、ウェアシャーク船長と人食い司祭クラックティースはウェアシャークの私室へと入っていった。逃亡中のレッドミスト島の女王と共に、脱出すべく魔法を手なずけてやる、と船長は断言した。

船長と骨の女王が仕事に取り掛かると、残された我々には何もやることがなかった。ネラモが自らの手で問題を解決しようと心に決めて空中に火花を放つと、ヴィミーがフルートで陽気な音楽を奏でた。

他の何人かは腕相撲かサイコロに興じていたが、より勤勉なものは強きフリッカの監視のもと、甲板の血を掃除し、ロープや帆の確認を行った。我々は風が戻ることを確信していたので、その時のためにスピリット号を万全の態勢にしておく必要があった。

数時間が過ぎた。朝が昼に変わり、二つの傷のガレナと、常に影の如く彼女に付き従う二人の無口なボズマーがその日の食料を配布した。我々はとても早く食べ、とても大声で自慢した。なぜなら凪いだ海の耳に刺さるような静寂が、我々皆を恐怖させたからだ。ヴィミーの陽気な曲さえも悲しげになっていった。その時だ。帆のはためきや木材のきしむ音もなく、船体に当たる泡の音が沸き起こった。動いた!

近づいて来る道化師祭りに声援を送るため、ダガーフォールの壁に向かってわめきたてる興奮した子供のように、私や他の海賊たちはペールスピリット号の欄干に体を押し付けた。ペールスピリット号は動き、船首から泡が広がったが、帆はだらりと垂れ下がったままだった。風もなしにどうやって航海した?

船尾で二つの傷のガレナが喜びの声を上げ、我々を手招きした。我々は船尾に押し寄せ、波の下にある二つの巨大な貝と、上陸用のボートぐらいもある大きさのヒレが泡立てるようにパタパタと動くのを見た。自分の目が信じられなかった。巨大な海亀だ!

どうにかしてウェアシャーク船長と人食い司祭クラックティースが、古代の海の大物を呼び出したのだ。海亀は風でさえ敵わないような速度でペールスピリット号を押した!

我々が圧倒されて眺めていると、私室からウェアシャーク船長と骨の女王が乱れた服装で現れた。どちらも行ったばかりの大仕事により紅潮していて、その時になって初めて私はレッドミスト島で行われていた儀式の話を思い出した。おそらくこのような文書には生々しすぎる話を。船長と司祭が私室で使った魔法が何であれ、それは成功したのだ!

輝く黄ばんだ歯で微笑みながら、クラックティースは髪につけたカタカタと音を鳴らす骨のお守りを払い除け、海を指さした。「見よ、純朴な海賊たちよ。古代の海の婦人たちを。ナールノーズとステゴフィンズだ!お前たちの船長の妙技が、彼女たちの支援を獲得した!」

岸に辿り着くまで一晩はかかるだろうが、私にはもうこの穏やかな海から逃れられることが分かっていた。

ヴェヨンドの伝説Legend of Veyond

イレルニル・デュレリによるガイドと怪談

崩れた壁の奥深く、記憶が語ると言われ死者が生者と交流する場所では、他に類を見ない財宝が待っている。その起源は知られていないが、ヴェヨンドの遺跡に踏み込む勇気を持つ者たちが、遠い昔に死んだ者たちから語られた言葉を持ち帰っている。

もっとも注目すべきは、療養中の母の病の治療法を求め、怪物や夜の獣と戦いながら広間を進んだ若き冒険者の幽霊だ。彼は地中に埋められた回廊で敵と戦う姿を見ることができる。彼は毎回襲撃にあえぎ、まるで声が聞こえているかのように母と話す。あたかも自分が戻ることを伝えて安心させるかのように彼女と話す時もあれば、怒りに満ちた魂をなだめようとする頬につたう涙が見られる時もある。

遺跡の別の場所では、岩場の間に遊ぶ子供たちの声を聞くことができる。鍛冶屋の槌の音が聞こえることもあるが、それは星が雲の向こうに姿を隠した夜だけだ。さらに珍しいものとしては、嵐の間、雷が壁の割れ目を走る直前に、詠唱し、未知の言葉で話す声を聞くことができる。ヴェヨンドが他に何を抱えていようと、はっきりしていることがある。この場所が黙って死者やその秘密を放棄することはない。

ウェルキンド石についてOn Welkynd Stones

魔術師ギルドの学者フィレンルの、頭脳と献身的な研究からなる記録された知識に関する著述

本書で論じた宇宙地質学的な機器に関するより基本的な情報については、同僚の学者タネスのレディ・シンナバーによる「エセリアルのかけら」を参照されたい。

ご承知のように、ウェルキンド石とは膨大かつ未だ解明されていない能力を持つアイレイドの道具である。この石は、大いなる魔術の力の源として一般に高い需要がある。その起源については、石自体がタムリエルに落ちてきたものであることを示唆する記述が数多く存在するという事実以外に語れることはあまりない。この石がどこからどういった目的で来たのか、そもそもアイレイドが発見する以前からこの石に何らかの目的があったのかどうかは分かっていない。だが、この石が地面に落下し、偉大なる魔術師たちの仕事の助けとなったと最初に記録された時から、ずっと使用され続けていることだけは確かだ。

ウェルキンド石の色は青く、偉大なるアイレイドの街には欠かせない素材だった。アイレイド滅亡以来、この石はあらゆる個人的な利益や目的のために集められ、使われてきた。言うまでもないが、これらの石に倫理的な傾向はない。石はどこまで行っても石なのだ。

本書では詳細に述べないある種のウェルキンド石の存在は注目に値する。と言うのは、闇のウェルキンド石について多くのことが知られているものの、未だ謎に包まれている部分も数多くあるからだ。この変異型は、とりわけ純粋に破壊的な類の魔法を蓄えているように思われる。きっかけもなく爆発し、これまでに技術や作品の回収を目的とした遠征でアイレイドの街に踏み込んだ数多くの研究者やトレジャーハンターを死に至らしめてきた。まるでアイレイドが防衛を付加するものとして、闇のウェルキンド石を使っていたかのようである。とても危険なためこの石は遠征隊の間ではよく知られていたが、抑制された状態で研究されたことはない。簡単に言えば、学校や研究所など学問の場に無傷で持ち帰られたことがないということだ。

一方、ウェルキンド石と大ウェルキンド石についてはとても詳細な研究がなされており、その知識の集積は本書でもご覧いただけるだろう。

エスディルの古い日記Esdir’s Old Journal

ラロスとクエンティンは私のことをガヴォスと同じぐらい愚かだと思っている。

奴らの企みは分かっている。彼を消し、在庫を拡張させる気だ。禁制の魔法の遺物に攻撃的な異国の獣。奴らはあの貪欲な手がつかめる、ありとあらゆるものを取引するだろう。

まあ、奴らにしてやられたなどと言わせるつもりはない!間もなくスクゥーマの積み荷が到着する。確実に大修道院全体で、それを売るのは私だけにするつもりだ。小物や野生のペットなどはすぐに飽きられるだろうが、スクゥーマの需要は常にある。

クエンティンは資金を用意した買い手がいるから、金床を回収して売るべきだと言っている。それが本当に労力を費やすに値する話なら、おそらく自ら行動を起こすだろう。念のため、私の印を移動させた。にぎやかな通りのはるか上にある、私が一番うまい酒を飲める場所にな。

エドヴィルダの記録Edvilda’s Log Book

しばらくはリフトに近づかないほうがいい。それほど間違ったことはしてないが、ノルドの中には古い祠や墓地に関してすごく神経質な者もいる。それでも、何とか拾い集めた小さい像は、ちゃんとした収集家にかなりいい値をつけてもらえそうだ。

小さいマンモス像1個 – 象牙、彫刻
さらに小さいマンモスの像2個 – これも象牙の彫刻(考えてみるとちょっと皮肉だ)
小さな熊(?)の像1個 – もしかしたらスキーヴァーかもしれない。木はひどくかじられている(ドラウグルに歯は生えるのか?)

* * *

あんまり長くストンフォールにはいたくない。メエルーンズ・デイゴンの脇みたいな、少なくともデイゴンの脇ってこういう感じだろうなっていう臭いがする。でも、このスチームフォントは、ドワーフの遺跡にしては野営が安全そうだ。内海のアルマチュアでゴミあさりの運を試したいと思っていたけれど、今は盗賊が隠れてると聞いた。奴らに煩わされないように距離を置くべきだし、それが自分の運命なんだろう。

* * *

もうミルテュから買った地図の元は取れた。まだすごい成果ではないが、歴史家に売れそうな古い陶器を見つけた。

小さな花瓶 – 珍しい模様。第一紀のもの?調査が必要。この手のものが好きな買い手が数人いる。必要なら何かでっちあげよう。

* * *

気が変わった。この地図は支払った分の半分の価値にも導いてくれてない!やっぱりアルマチュア周辺に探しに行こう。盗賊は古いドワーフのガラクタなんか気にしないはずだ。

* * *

あの忌々しい穴の中にはものすごく大量の盗賊がいる。勝手に奴らの食料を少しいただいたけど、あちこち見て回るような危険は冒せなかった。

* * *

ちくしょう、ミルテュ。最後のお金をあんたの地図に使ってなかったら、船に乗ってこの灰だめの外のどこかに行けたのに。どこでもいいから。

* * *

ミルテュが以前、ドワーフのガラクタに夢中になっているダークエルフと働いていたことを思い出した。ドワーフのパズルボックスの手掛かりにかなりの大金を払うだろうと言っていた。ミルテュの奴に、彼女をこっちに送らせてやる。それでポケットにゴールドを入れてもらおう。もし彼女があの盗賊たちを片付けられるようなら、さらにいい。

オトゥミ・ラへの手紙Letter to Otumi-Ra

オトゥミ・ラ、この不良卵生まれめ!

40杯じゃ私は負かせない。あなたはそれ以上に飲む必要がある。私はどっちかって言うと
飲む時は自分のペースでいくタイプだから、この
あなたが注ごうとした北の酒なんかに
やられない。だって私はどこもかしこもあんたと同じように強いんだから。ハハ!でもこのこと
変に取らないでね。冒険と勇ましさに満ちた日々が懐かしくなるわ。私は影のように静かで、あなたは
木のように強い。ミーア・タは古代人のように賢く、サトゥル・サは神のような知恵を持ってる。

彼らがなつかしい。

オニミリルの書付Onimiril’s Writings

絶対にあのずる賢い収集家が墓から邪魔をしている。もう何十年もたつのに、まだあの怒りに満ちた目が時々私を睨みつけてくる。忌まわしいダークエルフの赤い目が。それだけの価値はあった。あの謎の価値に比べれば、ダークエルフの恨みなど何ほどのこともない。全く。

* * *

あの魔術師ギルドの気取った輩とは関係のない、そこそこ才能のある魔術師を5人雇った。不満を抱いていて用心深い。彼らは私が追放されたことを知らない。まるで私がヴァヌス・ガレリオンの言いなりになって働く奴らの、柔軟性のない精神を必要としていたかのようだ。彼らはこの実験でギルドへの加入権を提供されると思っている。

* * *

ついに必要となる適切な配列を持つドゥエマーの地を見つけた。それがリフトにあるのは残念だ。私は無骨なノルドと彼らのやり方が好きではない。それでも、アバンチンゼルにはまだ無法者やろくでもないクズが住み着いていない。多少のアニムンクリなら対処できるはずだ。

すぐに、ドワーフがこの奇妙な装置に隠した知識が判明するはずだ。私はこれで他の者よりも抜きんでることになる。特にヴァヌスより。

* * *

何が悪かった?何故だ?雇った馬鹿どものせいだ。当然の結果だ。彼らが死んだのは残念だ。でなければ奴らの精神を、愚かさが故に剥ぎ取ってやったのに。戻らなければ。もう一度試みるんだ。睡眠が必要だ。まずは少し休もう。取り返すんだ。

* * *

赤い目。闇に光る。奴の仕業だ!奴だ!私からは隠せないぞ!財宝と秘密は、すべて取り返してやる!

カロ女伯爵の誕生日Countess Caro’s Birthday

カロ女伯爵の誕生日は単なる行事ではない。これは一つの事件である。

女伯爵その人はレヤウィンの日々の運営からは一線を引いているが、謙虚さによるものでないことは保証しよう。誕生日がその証拠である。快楽の追及はレヤウィンの支配者一族にとってなくてはならないものであり、女伯爵もまた例外ではない。

いかなる祝賀においても、食事は最も重要な部分である。優れたパーティーの基礎は、客人たちの腹を満たすものから始まる。カロ女伯爵の誕生日では、最上のものだけでテーブルを飾ることにしている。黄金の大皿には、よく肥えた鶏にバターとハチミツで焼き色をつけて乗せる。牛肉の赤身のスライス、舌の上でとろける魚の切り身、子豚、こんがり焼いたキノコ――香りが混ざり合ってうっとりしてしまうほどだ。陶器の皿に乗せた野菜料理、柔らかい黒パンと一緒に食べたくなる濃厚なスープ、そしてプルプルしたプディングの入ったボウルなど。

甘いものは全く別のカテゴリーだ。何層もあるケーキは塔のように客人たちの頭上にまで積み上がり、その形もよりどりみどりである。砂糖をまぶしたペイストリーが積み上げられ、アイシングの光沢は鏡のようにきらめく。飴を絡めたサツマイモや、ダークベリーのジャム、パイは甘い樹液で泡立ち、黄金色の皮にはバターがたっぷり。次々に出る新しい菓子はどれも、前に出たものよりさらに美しい。

食事についてはいつまでも書いていられるが、次へ進まなければならない。食事はこの大いなる行事に費やされる贅沢の中の、ほんの一部分でしかない。装飾は私の個人的な誇りであり、私が心血を込めて作った部分である。イメージとして使った言葉は常識外れ、豪勢、途方もない、目のくらむような、といったところだ。

黄金は祝賀の花形である。黄金の皿、金糸入りのテーブル掛け、キラキラ光る黄金のカーテンなど。明かりでさえも、くぼみに隠したりテーブルに沿って並べたりした数百のロウソクの光に合わせて、完璧に設計してある。花束は温かみのある光を浴びて、黄金そのものの色に匹敵する豊潤で輝かしい香りを放つ。

最後になるが、このイベントに出席するには適切な服装が欠かせない。客人たちはその他の装飾品と同じくらいこの行事にとって重要である。幸運にも招待を受けた者は、何ヶ月もかけて服装を整える。派手な絹服に、宝石をはめ込んだ上着、真珠をあしらった靴やサークレット、全ての指に指輪をはめるなど、誰もが最高の身なりをして入ってくる。客人の中には祝賀の途中で服装を変える者もいるほどだ!

この全てにかかる費用?優れたパーティー立案者は、決してそのような秘密を明かさないものだ。

カロ女伯爵への取材An Interview with Countess Caro

帝国の崩壊と元老院解体後に、レヤウィン市民を代表するマーキュロ・カトラソによって行われた。

マーキュロ・カトラソ:なぜ権限を軍団長会議に譲渡することにしたのですか?

カロ女伯爵:誰かに何かを譲渡なんて一切していないわ。私は今もレヤウィンの街とその周辺地域の女伯爵です。それが生得の権利であり神聖な責務なの。より高潔な問題に集中している間に、軍団長会議が街の日常的な業務に対応するよう任命しただけよ。

マーキュロ・カトラソ:より高潔な問題とはどのような類のものですか?

カロ女伯爵:最高に高潔な問題よ、それはもう!でも別の話題にしましょう。こういった繊細な問題は、一般に公開すべきではないわ。

マーキュロ・カトラソ:分かりました。軍団長会議内の人員はどのように選んだのですか?

カロ女伯爵:そうね、調査と熟考を重ねた結果、意思決定を円滑に進行させ、「過半数」の欠如による法整備の遅れを防ぐために、3人体制を取ることに決めたの。数学って役に立つわね。全員が同じ結論に達しなくても、少なくとも2人のうちどちらかの軍団長には同意できるかもしれないでしょ。多数決よ。誰がやるべきかについては、最初のメンバーは明らかだったわ。私は地域に関心を寄せる3つの主要なグループ全てから代表者が出るようにしたかった。テベザ・コとアム・ハルはどちらもロングハウス帝の時代から地域社会に尽くしていたわ。カジートとアルゴニアンが決まったら当然インペリアルも見つけないとね。幸運にも元老院が解体されてから、ロヴィディカス評議員の手が空いていたの。

マーキュロ・カトラソ:あなたと軍団長たちは、時々下された決定に対して納得できないと感じることがあるという噂を聞いています。

カロ女伯爵:どこで聞いたの?首を飛ばしてやらなきゃならない人がいるの?冗談、冗談よ!いいえ。軍団長会議には自分の仕事を好きなようにやらせてるわ。彼らもさっき言ったような高潔な仕事の熟考は任せてくれている。時には城内の場所をあんなに占有しないでくれたらと思うこともあるけど、それ以上に軍団長たちの支援と仕事には感謝してるの。ロヴィディカス評議員にさえ。彼が元老院にいた間は、いろいろあったけど。

マーキュロ・カトラソ:ということは、あなたとロヴィディカス評議員の間にわだかまりがあったと言って差し支えない?

カロ女伯爵:どこからそんなことを思いついたの?政府の役人とはいつだって意見の対立があるものよ。それも仕事のうちなの。でも私たちは、どちらも心の底ではレヤウィンとブラックウッドのことを大切に思ってる。目標を達成する手法が違うとしてもね。それが宮廷生活を興味深くするのよ!

マーキュロ・カトラソ:宮廷と言えば、先月元老院議長アブナー・サルンが街を訪問した際、会談を拒んだと聞きました。それは本当ですか?

カロ女伯爵:アブナー・サルンはうぬぼれた老いぼれよ。彼は私たちが親しんだ帝国の不運な崩壊とこの忌々しい戦争の勃発に関して、何らかの役割を果たしたと確信してる。オブリビオンに行こうが知ったことではないわ。ええ、そのとおり。彼はレヤウィン城の境界内では歓迎されない。

マーキュロ・カトラソ:三旗戦役に関して。現在進行中の紛争に対して、レヤウィンは安全でしょうか?

カロ女伯爵:帝都との距離を思えば、精一杯安全を保ってるってところね。でも、今のところライアン隊長と象牙旅団は最悪の戦いが私たちの地域に及ばないようにできている。解決に至るまでの間、旅団が境界の尊厳を維持してくれると思ってるわ。

マーキュロ・カトラソ:お時間をいただきありがとうございました、カロ女伯爵。

カロ女伯爵:あら、いいのよ、気にしないで。ほんの数分間時間を取って、民と考えを共有するのは楽しいものよ。対処すべき高潔な仕事の息抜きになる。少しだけど気が晴れるの。

ギデオンの門前でBefore the Gates of Gideon

ウド・セラス 著

戦いの熱気で狂乱状態になった数百のアルゴニアンによる騒音が再び街境の向こうで湧き上がると、ファビア隊長はその部族の者こそがこの戦争で不当な扱いを受けている側だと考えずにはいられなかった。彼女の仲間が彼らの土地に入り込んだ。仲間は土地の部族に相談もせず集落を作った。そして今、習慣のようにアルゴニアンを殺している。一体何故?家畜を狩るようなささいな犯罪で?家畜が人のものであるとアルゴニアンに教えた者など、誰一人いないではないか!彼女が先週裁判所で言い争いをしたのは、まさにこの状況全てが理由だった。彼らには適切な外交官が必要だったのだ。

部隊と防衛を任されている長く伸びた壁の背後に身を潜めた彼女は、これまでにも幾度かしてきたように、どうして自分の仕事についてこんなにもひどい勘違いをしたのだろうと考えた。ただ自分の仲間を守り、ちょっとした市民のいさかいを収めたかっただけなのに。ファビアは元々の動機が何であれ、怒りに駆られたアルゴニアンの一団が血を求めるあまり錯乱状態となって自らを傷つけている間、こうして街の防衛施設の端に隠れるため、軍に加わったのではないことだけは分かっていた。

始まった。ファビアにはアルゴニアンが街の反対側を襲撃する音が聞こえた。岩と矢が周囲に降り注ぐなか、他の部隊の指揮官が命令する叫び声が高い石の壁に反射して響き渡った。彼女が立っていたあるギデオンの門の上は恐ろしく静かだった。ファビアは身をかがめて遮蔽の上に出ないようにしながら、兵士たちの前を進んだ。彼女は通り際に肩へ手を置き、勇気づける言葉をささやいた。胸壁の上まで緊張感に満ちた空気が届いていた。他の壁はすべて包囲されていたが、今のところ彼らの前でほんの一瞬の動きすら見られなかった。

それでも彼女は列の間を歩き、入隊できる年齢になったばかりの兵士や、戦闘のリズムとこれから起きることを熟知している、戦い疲れた古参の兵士の恐怖心を落ち着かせた。ファビアが門の上の自分の位置に戻ると、マダーリズが身を乗り出し、耳をぴくぴくさせながら石のように心に重くのしかかる質問をささやいた。

「あんたの技で、奴らを撃退できると思うか?」

ファビアは街の門の外側でフックに吊るしてある小さなランプのことを考えた。ランプは胸壁にいる者から見えないが、沼地にいる者にとって、特にこんな暗い時間には目印だった。ファビアはアルゴニアンの領域が始まる場所ではないかと思われる場所に近い、湿地帯の荒野でランプを見つけた。

「そう願うわ」彼女は静まり返った沼地に視線を走らせながら溜息をついた。「じゃなきゃ私たちは圧倒される」そう言いながら、ファビアは口元に安堵の笑みが浮かぶのを押さえられなかった。あの向こう、沼地の漆黒の闇の中の、静かな水の溜りに反射する光はランプだった。インペリアルのランプだ。

ファビアは立ち上がり、胸壁から降りるために進んでいった。市民たちが家から街の最も静かな壁に逃げてくると、彼らに向かってうなずいた。彼らの腕には荷物と子供たちがしっかりと抱えられていた。数人の兵士がパニックを起こした群衆の流れと衝突したが、ファビアはぶつからなかった。彼女は体の間に滑り込み、埃が充満する道を着実に進んでいった。そして、彼女のすることに誰かが気づき、阻止する前に、彼女は門を開け放った。

ギデオンへの旅の案内Traveler’s Guide to Gideon

アスティニア・イサウリクス 著 公開日:第二紀570年降霜の月22日

聞く相手に応じて、ギデオンはブラックウッド東端の街か、ブラック・マーシュの西端の街か違ってくる。沼地のただ中にある文化と文明の島であり、人口の半分近くはインペリアルの生活様式に馴染んだアルゴニアンである。ブラックウッド街道を終端まで辿る旅人は少ないが、仕事でブラック・マーシュまで行く狩人や木こり、薬草の商人、異国の生物を捕まえる罠猟師は、ギデオンを仕事の拠点としている。

その歴史の大半において活気のない前線の駐屯地であったギデオンは、第二帝国初期の短期間、人々の注目を集めた。皇帝レマン二世がここで大量の人員を集め、アルゴニアンを自分の領域に統合しようとしたのである。強大な軍団は帝国南東のフロンティアへと行進して街道や要塞を築き、そこから皇帝の計画が実行に移された。ニベン人の植民者の波がその後に続いた。

ブラックウォーター戦役で何度も後退と苦戦を強いられた後、皇帝レマン二世はこの地域に恒久的な帝国の権力を確立することに成功した。だが皇帝の注意がブラック・マーシュから逸れたその日から、ギデオンの没落が始まった。危険な前線を防衛していた要塞は、忘れ去られた僻地へと縮小した。ギデオンの防衛は老朽化し、帝国の許可によってこの地に引き寄せられた多くの植民者は、より手間のかからない植民地を求めて去っていった。

今日でも、ギデオンは湿地と数百年前に残された軍団の兵舎や礼拝堂、兵器庫の廃墟に取り囲まれたままである。ブラックウッド街道は高地を通って正門の南西側から街につながっており、湿地帯や崩壊した要塞の姿をよく見渡せる。街の中では、広い道が門から総督の館まで通っている。ギデオンの家屋や商店のほぼすべてはこのたった一つの街路沿いにある。それはこの道が、街の残された部分における唯一の乾いた土地だからという単純な理由による。

市の行政
ギデオンは帝国総督の支配下に置かれている。総督とは、伝統的には西ブラックウッドの主だった貴族に与えられる肩書きである。近年では、ヴァンダシア家かマルティウス家に属する者が総督となるのが通例である。どちらの一族もブラック・マーシュ国境に広い土地を所有している。エルトゥス・ヴァンダシア卿がシロディールで元老院に仕えているため、帝国総督の任務は現在、パーノン・マルティウスの手に委ねられている。

食事、飲み物、宿泊
ギデオン西門の近くには宿屋〈卵とハンマー〉がある。素朴な宿屋だが、沼地のフロンティアにある宿屋にしてはいいもてなしを受けられる。もっとも、食事のメニューはデリケートな旅人に適さないかもしれない。〈卵とハンマー〉調理スタッフに数人のアルゴニアンを抱えている。アルゴニアンの食べ物は人を選ぶが、ギデオンのアルゴニアンの大部分は人間やエルフの相手をすることに慣れているし、他の種族が食べても大丈夫な沼の食料を知っている。

地域の名所旧跡
ギデオンはかつて強大な要塞だったが、もう遥か昔の話だ。壁はろくに修復もされておらず、大部分の監視塔は中に入るのも危険である。街を移動する主要な道であるブラックウッド街道から少し離れた程度の距離にも、小さな沼の穴が点在し、注意の足りない旅人を待ち受けている。

ディベラの聖堂は、この街に残された祠の中で唯一言及に値するものである。ギデオンに愛の淑女の信者がいるのは奇妙に思えるかもしれないが、ブラック・マーシュの国境においてディベラ崇拝が生き残ったのは理由がある。いわゆるブラック・マーシュの輝かしき民コスリンギはディベラを大いに敬愛しており、自分たちの特別な守護者とみなしていたのだ。コスリンギはもはやこの国にいないが、ギデオンのインペリアル市民は彼らのディベラ崇拝を共有している。聖堂自体は元々裕福な貴族で愛の淑女の信者であったレディ・ドルシア・マルティウスの館だったが、彼女は40年前に死去した際、ディベラの司祭たちに家を譲ると遺言を残した。

総督の館が実際の住居として使われることは滅多にない。ギデオンの帝国総督は通常、より大きく快適な地所を付近に所有しているからだ。しかしここは統治の座として、また市政の中心として機能している。館にあるこの地方出身の画家の、絵画コレクションには一見の価値がある。

歴史あるギオヴェッセ城の廃墟は、ギデオンから少し北へ向かったところにある。言うまでもなく、この城は皇帝レマン三世が第一紀末、妻であるタヴィア女帝を幽閉した場所として現在では悪名高い。城の床は不快に程遠いとはいえ、金縁の牢屋も牢屋には違いない。女帝はその驚異的な野心と知性の全てを、玉座から正気を失った夫を取り除き、追放の身から帰還する試みに向けた。

興味深い事実
ギデオン周辺の湿地帯は、ブラック・マーシュの西側を原生地とする大型の肉食ガエル、デスホッパーが大量に住む場所である。

ギデオンはアルゴニアンを屈服させることを目的としたブラックウォーター戦役末期、ルシニア・ファルコ将軍と彼女率いる帝国軍の本営となっていた。

観察眼の鋭い旅人は、総督の館の側の広場や街の南東隅の人気のない地区など、いくつかの場所に古いアーチや奇妙な石細工があることに気づくかもしれない。これらはかつてこの場所にあった、アイレイド都市の廃墟である。

旅の安全を祈ろう!ギデオンはかつての誇り高き駐屯地に比べれば寂れた場所だが、沈みゆく街の中には、斜陽の輝きも見出せるだろう。

クイストリー・シルヴェッレからの手紙Letter from Quistley Silvelle

バスティアン

お前が家族への奉仕から離れ、これ以上私の両親に対する義務を果たす意思がないことは分かっている。だが、個人的なことでお前の助力がどうしても必要なんだ。私にとっては極めて重要なことだ。これは両親とは何の関係もない。実際、できれば両親には知られたくないと思ってる。

我々が良き友だったとは言えない。だから同情に訴えようという気はない。そのかわり、力を貸してくれたらお前が興味を持つと思われるものを提供しよう。私は父の書類の間から見つけた手紙を持っている。お前宛ての手紙だ。恐らく10年ほど前に送られたもののようだ。お前の母親に関連するものだ。

興味があるなら、できるだけ早くダガーフォールの宿屋〈酔いどれライオン〉に会いにきてくれ。二階のいつもの場所にいる。

クイストリー・シルヴェッレ

クエンティンの秘密の往復書簡Quentin’s Secret Correspondence

友へ

間もなく金床を手に入れてやろう。既にガヴォス・ドゥーアに盗まれていると誰もが信じているものである故、惜しむ者などおるまい。必要なのは、同僚の大臣二人から助力を得るための根回しだけだ。最近の彼らは少々扱いづらいが、君が提供してくれた護衛のミノタウロスを紹介すれば、ずっと乗り気になるのは間違いない。

とは言え、少しの遅れも出してはならない。彼らが何かに勘づいたら、金床を確保できなくなるかもしれない。だから可能な限り早く、ゼニタールの大修道院に向かってくれ。

到着したら、鍛造用の火の背後で落ち合おう。私は我々が必要とするものを全て手にしているはずだ。

グルームマイアの鳥Birds of Gloommire

翼のある獣のうち、諸々の理由でこの本の通常の章に載せられなかったもの。この節はドミンド・カマズと若手研究者のウニラ・ロセロスが記載している。

カラス
「私がたまたま気に入った空の一角に巣食う、この翼を持つ災いは、どんな状況においても私の存在を許容しない。数世代前にハグレイヴンが私の一族にかけた呪いのせいかもしれない。地域住民はこの地方、とりわけアルペニア周辺のカラスが異様なまでに高度な知能を持つと警告しており、私はこの忌まわしい鳥についての記述を助手のウニナ・ロセロスへ全面的に委任することにした」

実地調査員にして鳥の専門家ドミンド・カマズ

タムリエルの他の地域と同様、ブラックウッドの南端グルームマイアにもカラスはいる。以前の版を参照するなら、カラスの大きさは手のひら程度から、噂に基づけば人間の前腕ほどの長さまで幅がある。黒いクチバシと、やはり黒を基調とする羽を持つカラスは、荒涼としたこの地形でかなり目立つ存在である。また、この羽根のおかげで、カラスは密林や湿地帯に意外なほどうまく紛れ込める。余談だが、そのせいで私はベースキャンプまで戻る時に、カラスの小さな家族がついてくるのに全く気づかなかった。しかしこの点については後で触れよう。

カラスは知能が高く、よく工夫を凝らす生き物だとよく言われる。大体において正しい。しかし木の上の巣から転げ落ちるカラスも一定数目撃されていることは言及しておくべきだろう。このような行動がカラスの認知的欠陥に基づくのか、娯楽の一環としてやっているのかは不明だ。

ある程度の確実性を持って言えるのは、カラスは恨みが深いらしいということだ。しかも、過去に受けた侮辱の記憶を若い世代に伝えられるという。私はこうした行動を、研究会からの報告を待つドミンドのもとへ戻る際についてきたカラスの一家で目撃できた。このカラスたちは複数の石を彼に投げつけた。私は無傷だったが、さらにカラスたちは凄まじい勢いでドミンドに襲いかかったので、彼は近くのシェルターに逃げ込み、1週間そこから出ようとしなかったほどだ。

ハックウィング
多くの読者は「グルームマイアの鳥」と題された本の中にこの生物が載っていることを意外に思うのではないだろうか。ハックウィングは鳥とみなされる他の生物とどこも似ておらず、形態学的には小さなドラゴンと分類されるべきではないのかと思うだろう。

これは言うまでもなく、完全な誤りである。ハックウィングは鳥に共通する多くの特徴を示し、灰を被った空のネズミ(カラスの欄を見よ)を「鳥」という高貴な名称に含めなければならないのなら、ハックウィングにも当然その資格はある。

鳥とは卵を産み空を飛ぶ、翼のある生物である。もっとも、我々が鳥と呼ぶ生物の一部には、これらの特徴の一つか複数が欠けていることもある(恐ろしい鳥と飛行についての項を参照)。ハックウィングには明らかに翼があり、卵を産み、他の鳥と同様に優雅な様子で空を飛ぶ。そのため、鳥に含められているのである。

行動の点から言うと、ハックウィングは標準的な鳥よりも岩の周辺をうろつくことが多い。長い爪を使って岩の表面や、湿地帯の木の皮を引っかく。ハックウィングはしばしば岩の上で日に当たって1日を過ごし、油断した地域住民の籠から果物や肉を盗むこともある。盗みを働くとはいえ、この生物が盗んだものを食べている光景は目撃されていない。ハックウィングは道端の死骸を食べることを好むので、おそらくはいたずら自体を楽しんでいるのだろう。

個人的に、ハックウィングには好感を持っている。愉快で遊び好きであり、命の危険も少ししかない。性格的に、ハックウィングは綿密に整えられた野営地に突入しても、ベッドを荒らしインク壺をひっくり返す程度で、人に襲いかかって目玉をくりぬくことはあまりない。

グレネッタの日記Grenetta’s Journal

地耀
ようやく運が向いてきた。ダガーフォールの酔っ払った間抜けが自分の婚約を祝ってて、私たちのカードゲームに加わってきたの。その馬鹿は自分の手にすごく自信があったから、持ってた婚約指輪を賭けた。私が勝ったわ!しっかり勝ち分をいただいて街の外に向かった。お金持ちのやることって分からないから…指輪を取り戻すため、誰かに追跡させるかもしれないでしょ。でも私は正々堂々と勝ち取ったのよ。カードでイカサマなんて絶対にしない。

基地に戻ってみんなのために夕食の支度をしなくちゃ。みんな私のことは公平に扱ってくれるけど、私は強盗でも無法者でもない。私は料理人。このきれいな指輪が売れたら、まともな服を買って、もう少し清潔にする。もしかしたらちゃんとした酒場か宿屋で雇ってもらえるかもしれない。

火耀
あのならず者のパトレルが巨大な卵を持ち込んできて、大きなオムレツを頼れと言う。確証はないけど、あれはハーピーの卵だと思う。とんでもない思い付きよ!彼らが鳥なのは知ってるけど、多少は人間でもあるでしょ?ゾッとする。誰か他の人にここから持ち出してくれって言うつもり。

明日、夜明け前にここから出て行こう。グレネッタ・ファッセルはここからやり直すの。

グレンブリッジに設置されたアルゴニアンのシシスに捧げる祠Glenbridge’s Argonian Shrine to Sithis

リンメンの旅人の館のガルジールによる記録

最初の印象では、グレンブリッジを貫く主要な街道の脇に立つシシスの祠に、これといって目を引くような部分はなかった。この祠が注目に値しないと言っているのではない。ただ第一印象とは往々にして誤解を招くものであるというだけだ。背の高い建物で、付近のほとんどの木に匹敵する高さでそびえてはいるが、その印象も祠の周りに建物が見られないことによって誇張されたものにすぎない。壁は厚い石板で出来ていて、建物のすべての角にある石細工からは顔が覗いている。それでも、ほど近い場所にそびえ立つザンミーアと比較すると、印象に残るような祠ではない。

祠の中は壁同士が間近に迫っていて、4人ほどしか入れない空間に干渉している。たとえ三方の壁を開放していたとしても、祠そのものの中では呼吸をするのも困難だろう。空間の中央に立つと、あたかも空気が全く存在しないかのように感じられるのだ。

石が落ちたか、あるいは脇に倒されたような場所がある。これが祠の中にも続き、独特の光の欠落も伴って、大方の礼拝の場にはふさわしからぬ荒廃した様相を呈している。祠の外観について司祭たちに尋ねても特に気にしているようには思えなかったが、落ちている石板を正しく設置すべきだという意見には気を悪くしたようだった。若干の会話と慎重な質問で、司祭たちが祠の状態をシシスの行いの指標と見ていることが明らかになってきた。祠の壁の修復は冒涜となるのだろう。

シシスが祠の外観に直接影響を与えたかどうか、石が外れたのは彼の力によるものか、あるいは天候と時の流れのせいなのかははっきりしないが、祠をいつくしむ司祭たちに影響を与えたのは確かだ。

ザイナの契約の書Xynaa’s Book of Contracts

(数百ページがかすれてほとんど消えてしまった手書きの文字で埋められている。だが最後の数ページは輝く黄金のインクで書かれている)

契約 1,137
メエルーンズ・デイゴンの命令により、私は以下の条件の下で拘束に服する。シロディールとして知られる定命の者の領域における征服に対する我が主の支援と引き換えに、ブラック・ドレイクのダーコラクとして知られるリーチの民の首領は、聖なる書に記載された兆候と環境のもとに四つの野望が生まれるようにするものとする。これは定められた。

契約 1,138
メエルーンズ・デイゴンの命令により、私はダーコラクに課せられた契約を、その息子であり後継者であるモリカル現シロディール皇帝まで拡張することを承認する。モリカル皇帝がメエルーンズ・デイゴンによって定められた四つの野望を存在させるという父の重責を遂行したことに対し、私は聖なる書に記載された力の付与の儀式において、皇帝の代行者を導き指示するものとする。これは定められた。

契約 1,137および1,138:不履行
メエルーンズ・デイゴンに課せられた義務に基づき、私は前述の2つの契約の遂行に対するダーコラクの後継者の不履行を証明する。後継者を指名することなくレオヴィック皇帝が死亡したことにより、聖なる書に記載された遺言補足書が有効となる。用意された野望をメエルーンズ・デイゴンが要求する方法で捧げた者は、如何なる者であろうとダーコラクとその後継者に約束された報酬を獲得できる。これは定められた。

(流れるような文字で付け足されている)
忌々しいソンブレンめ!野望の3人はまだ宝物庫に隠れたままだ。捕まえた1人は定命の者の領域に戻ってしまった。少なくとも、奴はメエルーンズ・デイゴンのしもべが全て奴の定命の敵だと信じている。適切な時が来たら、奴をおびき寄せよう。あるいは自ら私を探しに来るかもしれない。それでも報酬は私のものだ。必要なのは忍耐だけだ。

サルヴィットの招待状Salvitto’s Invitation

グラシアン・サルヴィット閣下

誉れ高きヴァンダシア評議員主催の特別な会合にご招待申し上げます。

機密性により、この件については一切口外なさいませんようお願いいたします。会合への移動手段をご用意いたします。2週間以内にレヤウィンの港までお越しください。港にはカラミティ号という船が停泊しています。この船で安全に、かつ安心して移動いただけます。

必ず正装でご来場ください。軽食と宿泊施設をご用意しております。

ヴァンダシア評議員がご来場をお待ちしております。

シャドウスケールへの祈りPrayer for a Shadowscale

絶え間なく変わるシシスを称えよ。

尽きたものは取り戻された。

虚無の無、ヒストの囁き。

血が刃を研ぎ、根を湿らせた。

影を通り抜け、戻れ。

ジリッチ評議員の記録Councilor Jirich’s Records

ジリッチ評議員

世話係を呼び集め、野望を移動すべき時だ。新しい宝物庫の位置は、私か大司祭が必要とするまでの間、野望の安全を確保した状態で隠しておける場所でなくてはならない。反逆者ヴァレンに忠実な軍勢がこれまでになく接近している。野望を彼らの手に渡すわけにはいかない。

これは公式な命令だ。すぐに行動するように。

〈この行はインペリアルの複雑な暗号で書かれている〉

皇帝レオヴィック

スル・ザンのメモSul-Xan Note

神像が渇望している。千もの求める口を伴った顔が上を向き、懇願する。

それははるか昔の時代、忘れられた時代から。だが我々の役にも立つ。奪い、与えるのは我々だ。それが満ち、破壊の霊魂を産み出すまでには多くが必要になる。霊魂は野を焼き沼を血で満たす。どこであろうと触れた場所には混沌を植え付ける。我々がここにもたらせる限り。だが神像は激しく飢えたままだ。儀式のためにはさらなる死体が必要だ。

霊魂は彼らの叫びを楽しむだろうか?さらに多くを捧げよう。

神像は霊魂が到着するまで飲むだろう。

スル・ザンの儀式場Sul-Xan Ritual Site

象牙旅団のサルヴィティカスの日記より。

記録:1
スル・ザンを監視し、活動を報告する任務を負った。レヤウィンとブラックウッドに脅威をもたらしているにも関わらず、このアルゴニアンのナガの部族について分かっていることは比較的少ない。このナガと直接交流するのは危険極まりないため、交渉を試みることは禁じられている。試そうとして、ただ挨拶しただけで命を落とした者もいる。

私の仕事はあるスル・ザンのグループの観察だ。この特定の小集団は極めてよく移動するが、これは我々がこの部族に対して予想していた行動とは異なっている。この日記では、彼らを追う中で発見したことを書き写していく。十分に安全な距離を保ちつつ、観察できるよう願おう。

記録:2
このスル・ザンのグループは私の予想よりもはるかに長い距離を移動した。彼らは北をうろつき、奇妙なことに道中の小さな村や前哨基地で立ち止まった。他の者を監督していると見られるスル・ザンはこういった立ち寄りのあと長々と話すが、内容が聞こえるほど近くにはいない。

記録:3
少数のスル・ザンがグループから離脱した。彼らは近くの街から犠牲者をさらうと、彼らと南に向かった。助けたかったが、人数の差がありすぎた。私にできる最善のことはさらなる情報収集だ。彼らが何をしているのかはっきりと突き止められれば、象牙旅団が阻止できるかもしれない。

記録:4
このスル・ザンのグループは明らかに狩猟グループと見られる。食料などの用途に動物を狩るのに加え、さらなる囚人を獲得するために縄張りから遠く離れた南をうろついているようにも見える。彼らは捕まった不運な人々を生贄にすると聞いたことがあるが、そのような行為は直接目にしていない。

私はヴィーシャという沼の秘術師に率いられるグループをブラックウッド湖の岸辺にある古い遺跡、ギデオンの北西まで追った。少なくとも部族の魔法使いが4人、ある種の儀式に取り掛かろうとしていた。何故彼らが自らの土地から遠く離れたこの辺境の地を選んだのか分からないし、儀式の目的に対する手掛かりもない。分かるのはどことなくおかしい気がすることだけだ。危険で、邪悪でさえあるような。

今のところはここを離れ、レヤウィンに報告を返そう。ライアン隊長は見たものに興味を示すはずだ。

ゼニタール賛歌Hymn of Zenithar

〈リフレイン〉
聖なる金床に跪け、敬虔なる鍛冶場の炎の子よ
誠実な仕事の報酬を取り、ゼニタールへの愛を示せ

ゼニタール、我が労働の主よ
この両手を硬く分厚く鍛えたまえ
あなたの金床に汗流し
我が胸は力強く脈打つ

ゼニタール、我が富の神よ
この貴品箱を稼いだゴールドで満たせ
誠実なる産業の成果で
誓いを守り売った、よき品物で

ゼニタール、我が休息の父よ
この腰に安息の褒美を与えたまえ
日が陰り、石炭の火が弱まる時
喉の渇きを潤し、労働を止めさせたまえ

セリースの別れのメモCerise’s Farewell Note

リエル、最愛の人、いつかこれを見つけてくれますように。どうやらギデオンに戻れそうにないみたい。ロレイン女司祭と争って重傷を負わされた。その後、馬車が崖から湖に落ちたわ。馬車は沈んで、雨によって視界から消えた。宝箱や裏切りのディベラの女司祭と一緒に。私も足を折ってしまった。どうやらこれまでのようね。

ロレインに何かの呪文をかけられてしまって、自分が腐っていくのを感じる。だけど人々に知らせなければならない。愛しい人。これは証言であり遺言でもある。どうか許してね。

ロレイン女司祭とギデオンの治安官の半数が、目覚めの炎というある種の秘密教団に所属してるってことを最近知ったの。ロレインは人々を殺しては魂を盗んでる。おそらく、もう何年も。いつでも好きな時に悪趣味なゲームを追体験できるように、殺人を呪文をかけた石に記録までして。彼女はどうかしているの、リエル。彼女の狂気により、たくさんの修練者が犠牲になった。

昨夜、ロレインがアイディール・マスターとか呼ばれる死霊術師たちと、捕獲した魂を取引する計画をしてることが分かったの。他の手段が見つかればよかったけど、迅速に行動するしかなかった。修練者たちは私たちの友達よ。見捨てることなんてできない。分かったことをあなたに知らせなくてごめんなさい。でも、奴らがあなたを狙うのが怖かった。

ロレイン女司祭が死んだ今、あなたには記憶石とこの宣誓証言をレヤウィンの治安官のところに持っていってもらいたい。他の誰かを殺す前に、目覚めの炎を暴いてやらなければ!

心からあなたを愛してる。愛しい人、いつかまた会いましょう。あなたにディベラの祝福を

あなたを愛する妻
セリース

ソフスの封印された巻物Sophus’s Sealed Scroll

〈封をされた巻物に2枚の羊皮紙が入っている。1枚目にはソフス評議員の印章があり、以下のように書かれている〉

第二紀576年

新たな宝物庫の建造のために雇用された魔術師については、仕事の完了後には確実に抹殺するように。決して未達成の状態にはしておかないこと。

アコニア・ペラ
トラシウス・ヴィノーマン
エフェル・ブロックス
ナリナ・セナレル
ジュルス・クィンティウス
カバンティナ・プロシラス

〈2枚目にはレオヴィック皇帝の印章があり、以下のように書かれている〉

ソフス評議員へ

最後の宝物庫も設置する必要がある。残っている魔術師に必要な呪文をかけさせ、宝物庫を私が選んだ場所へ移動させろ。必要な情報は以下の暗号化された文章の中にある。私を失望させるな。

[以下の文章はインペリアルの暗号で書かれている]

ダリンへの手紙Letter to Darene

ダリン

お前たちは影の外へ踏み出す者から、通常は認められていない性質の仕事を探しているようだな。私も夜を恐れず危険を招くこともためらわない者を探している。私の手伝いをしてくれたら、関与による恩恵に見合う報酬を出そう。

興味があるなら、必要な遺物がある。レヤウィンから北東にあるノクターナルの祠に、聖なる鎌の遺物が収められている。レッドメイン砦の近くだ。その影の鎌をブラッドラン洞穴へ持って来い。そうしたら残った人生に、貧しい日がなくなるよう取り計らってやる。

ツマ・マクサス

ツマ・マクサスの日記Tumma-Maxath’s Diary

かなりの捜索の末、私、ツマ・マクサスは墓所を発見した。今は私の名に影響力はないが、いつの日か口にする者を戦慄させるだろう。

予想どおり、ここには数多くの人が埋葬されている。うまい具合に隠れている上、ここにはすでに獣が住んでいるため、比較的人の手に触れられていないようだ。この場所を無傷で通過できるか否かは、真の勇気があるかどうかの問題になるだろう。だが、私のために戦う死体を蘇らせ始めれば、すぐにずっと楽に過ごせるようになる。単純にそれまで粘ればいいだけの話だ。

* * *

胸躍る進展だ。かつてその名を知られたシャドウスケール、アジュム・シェイの遺体を見つけたようだ。彼は眼窩の内部にはめこまれたままの宝石と共に埋葬されていた!私にとっては幸運な発見だ。頭蓋骨から引き抜けなかったので、頭を完全に取り除いた。この桁外れな発見を活用するためには、持ち帰る必要がある。

ディート・ローのメモ:ネレイドの呪いDeet-Loh’s Notes: Nereid Curses

アルゴニアンの村の古代のニッソが、 ヴナーク遺跡ではブラックウッドで一番楽しげで、耳に心地よい蛙を見つけられると教えてくれた。彼は住人のネレイドに注意するようにも言っていた。どうやら彼女はあまりにも奥深くまで自分の巣に入り込んでくる者に、呪いをかけることで有名なようだった。

いかに私が制作に打ち込んでいるか、いかに音楽家として才能があるかを彼女が知れば、大喜びで遺跡に住む蛙を何匹か引き取ることを許してくれるはずだと私は確信している。

ディート・ローのメモ:蛙の歌Deet-Loh’s Notes: Frog Songs

タムリエルで一番のヴォッサ・サトル奏者になるための努力をする上で、どうしても必要なのが特別な蛙を見つけることだ。ヴナーク遺跡の奥深くにある、自然のままの池で戯れている蛙が、ブラックウッドで最も美しい蛙の歌を生み出すとニッソが教えてくれた。それなら絶対にこの蛙たちを見つけて、自分の耳で彼らのメロディを聞かなくては!

今のところ、この遺跡に住んでいるさまざまな獣は避けることができているが、例のネレイドにもまだ出会っていないことに驚いている。私はどうしても蛙を捕る前に、彼女と話をして許可を得たいと思っている。彼女が私と同じぐらい音楽が好きなら、絶対に分かってくれるはずだ。

ディート・ローのメモ:蛙の魔女Deet-Loh’s Notes: The Frog Witch

私はここに座り、あの素晴らしい小さな蛙たちの美しい歌に耳を傾けている。ニッソは正しかった。こんなのは今までに聴いたことがない!彼らの最新のセレナーデの中盤に差し掛かったあたりで、ネレイドが池から浮かび上がった。彼女はまるで母親のように蛙たちをかわいがっている。これはなかなかいい光景だ。彼女は本当に彼らを愛しているようだ。

彼らに話しかける様子、それに返事をする様子。彼女はただのネレイドじゃない。ああ、彼女はある種の蛙の魔女なのだ!私がこの音楽を奏でる生き物を数匹引き取ることを喜んで認めてくれるに違いない。すごく沢山いるんだから。絶対に気にせず、ヴォッサ・サトル用に何匹か捕まえさせてくれるはずだ。

それでは、あのネレイドに話しにいこう!

ディサストリクス・ザンソラの日記Disastrix Zansora’s Journal

高貴なる大司祭にはすでに伝言を送った。執事と3人の評議員が死んだ。現在ブラックウッドにいないため、イティニア評議員だけが我々の手を逃れている。

また、闇の一党の聖域で回収された文書も送った。その情報があれば、大司祭は何の問題もなく最初の四つの野望の場所を見つけ出せるだろう。加えて、レヤウィン城への攻撃を命じた。すぐに他の評議員が保管している文書も我々のものとなる。そうすれば全ての野望の場所が明らかになる。

さて、私は席を外して遺跡に入り込んだ害虫を始末せねばならない。どうやら聖域からつけられていたようだ。災いのデイドラ公に忠実な者が、必要な時に振るえるよう手にしている真の力を見せてやるのが楽しみだ。

デストロンの日記Destron’s Journal

私たちは双子だ。私たちは羊だ。世話係は我々の訓練と隔離はほぼ完了したと言うが、まだ誰も来ない。

もう何年も新しい教師に会ってない。それに皇帝でさえ、昔は頻繁に訪ねてきていたのに、カリアと私が幼かった頃から姿を見せていない。何かで彼を失望させてしまったのか?私たちに怒っているのか?

カリアと私は勉強を続けている。私たちには私たちの活動がある。だが孤独だ。世話係たちは親切だが、恐ろしく退屈だ。カリアは聖域の外の世界を見たがってるし、私は冒険をして本でしか読んだことのない場所を見てみたくてたまらない。

彼らは時がもうそこまで迫っていると言うけれど、それが実際にどういう意味なのかは教えてくれない。あともう少しなら待てるかもしれない。

どうやら他の選択肢もなさそうだ。

デスホッパーの恐怖Terror of the Death Hopper

レミウス・ヴォルソナスの日記より

発見が困難なデスホッパーの調査を始めてから6日になる。同僚は私のことを異常だと言う。そうかもしれない。馬ほどの大きさのカエルを追うには少々の狂気が必要だ。だが、優秀な研究者でちょっとした危険を好まない者などいるか?あんな途方もない生き物について始めて書いた人物として歴史に名を残せるなら、命を危険に晒す価値はある。

デスホッパーは通常群れで見られる。1匹だけでいるのを見かけたら、他の個体を探すべきだ。この巨大なカエルは棲家であるよどんだ水の表面のすぐ下に潜むことを好む。忍耐強い狩人で、大抵は何も知らない獲物が彼らの通り道に迷い込む失敗を犯すまで待ってから攻撃を仕掛ける。

デスホッパーとの遭遇に関して第一に知っておかねばならないのは、彼らの毒性が極めて高いことだ。その毒が皮膚から分泌されているのかを見極められるほど近くに寄れないが、近々そうする計画である。それに応じてこの記録を新たに書き加えるつもりだ。だが、彼らがかなり遠くまで毒を吐き出せることに気付いた。私はこの巨大な毒物の塊が、あらゆる材質のものを浸食するのを見た。防護のない肉体だったらどうなるか、想像しただけでゾッとする。

第二に注意すべき点は、デスホッパーがそのとてつもない大きさをうまく利用することだ。この生物は空高く飛び上がり、気絶するほどの激しさで獲物の上に飛び降りることが知られている。その後、デスホッパーは横に飛んで放心状態の獲物を混乱させてから、最後の大抵は致命傷となる攻撃を放つ。これまでの研究の日々で、デスホッパーが大きな獲物を丸ごと飲み込むのを見た。だが、その口の中には細く、この上なく鋭い歯が数百も生えている。デスホッパーにとって、骨を噛み砕くなど造作もないことだ。

私はこの巨大で極めて残忍なカエルに際限なく魅了されている。そして、私の調査は始まったばかりだ!デスホッパーに関してこれ以上何が分かるかは想像しかできない。だが、まずは近づかなければ!

テナレイの契約Tenarei’s Contract

テナレイ・ヴェルス:

約束どおり、書面による契約だ。長い親交があるにもかかわらず私の言葉を信用しないとは少々侮辱的だが、大目に見よう。クイストリー・シルヴェッレなる人物をレヤウィンのシンジケートに連れて行ってくれ。生存していればより好ましい。この仕事を完了すれば、シンジケートに対するお前の負債は帳消しとなる。

この愚かなクイストリーは自分の負債を記憶しておくことが困難なようだが、シルヴェッレ家はダガーフォールの裕福な一家だ。恐らく息子の債務は彼らが清算できるだろう。そうでなくても、お前も良く知っているように、負債は様々な手段で清算できる。

現在の居場所:

– 数週間前に街を出るところを目撃された。ギデオンに行くとのこと。

– レヤウィンの南と東にある洞窟の外で活動している、密売人か盗賊と合流した可能性がある。深い嘲笑の洞穴か、洞窟か?(あの地域は洞窟だらけだ)

– 高価な印章指輪を身に着け、役立たずの金持ちのクソ野郎のような服装をしている。自身を色男だと思い込み、やたらに自慢する。

我々が負債を回収するよりも先に、密売人が殺してないことを願う。

ラーズ・トゥル
レヤウィン

トパル湾にてOn Topal Bay

(愛の歌)

トパル湾で愛を見つけた
川が海と出会うところ
2人で岸にぶつかる波を見た
レヤウィンの塔の3つから

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾で富を築いた
海の上の船員として
要塞を満たした黄金で
愛しき人にこの指輪を捧げた

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾で愛を失った
彼女は海辺で散策したが
リバー・トロールを見逃した
逃げ出すことはかなわなかった

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾の海賊Pirates of Topal Bay

評議会議長タルニアン・ロヴィディカス 著

数ヶ月前にシロディールを引退してレヤウィンに来た時、そこで待ち受けていた様々な問題の中でも、海賊はおそらく最も厄介で継続的な問題になりつつある。もちろん、海賊は数百年前のレッド・ブラマンの時代から、ニベン下流やトパル湾に蔓延していた。しかし帝国の権威が失墜したことで、略奪船や血に飢えた海賊船の大群が、かつては安全だった帝国の海域を臆面もなく荒らしまわるようになった。交易が帝国の動脈だとすれば、トパル湾の海賊は最悪の種類の吸血鬼である。自分の糧となるものを平気で破壊する、決して満たされず後先も考えない怪物だ。

レヤウィンの石の胸壁でさえ、大胆なトパル海賊を抑えてはおけない。この悪党どもの一部はただの商人に扮装し、港の役人を買収して街の橋下を通過する。南の海から来る海賊はブラヴィルやコルベレ川ほどの北方でも家を襲い、貨物船を拿捕することで知られている。たとえレヤウィンの軍団長会議でそれ以外に何もできないとしても、私は我らの川のこの恥ずべき現状に終止符を打つ決意を固めている。そのためのゴールドや戦力さえ手に入れられれば。

以下に記す海賊たちは、暴虐の限りを尽くしてブラックウッドのとりわけ悪名高い敵となった者たちである。

三つ爪のアシャサと呼ばれることもあるアシャサ・ドラは、海賊の母と名乗る年老いたカジートである。ペレタイン沿岸沿いのあらゆる場所にスパイを擁しているらしく、リンメンからセンシャルの遺跡に至るまでの各地で手下を操っている。アシャサの海賊団は十数隻の船を沿岸で操り、無害な商人を装って接舷する術に卓越している。つい先月も、アシャサ・ドラとその手下はレヤウィン胸壁の真ん前につないであった商船を盗んでいった。

トパル湾の恐怖、ヴォルダーはトパル島西の海域で数隻の船を略奪した張本人である。この男がいずれレヤウィン本土を襲撃すると豪語したことは有名だが、ここしばらくは目撃情報がない。我々の海域を離れて船を集め、大胆な襲撃のための準備をしているのかもしれない。

ブルーワマスの船長の名前は不明だが、珍しく知能を持ったアルゴニアン・ベヒーモスだと言われている。ブルーワマスは重装備の大型ガレオン船で、船体を犠牲者の骸骨で飾りつけており、また獲物を突き刺す鉤爪を発射する重いバリスタを装備している。ブルーワマスの船長は特に血に飢えた男で、襲撃時には誰も生きて返さない。この海賊船のガレオンはトパル島海域でよく見られる。

最後にノルドのグジャルグリダは、海と風を操る特殊能力を持った自称「海の魔女」である。この女はブラック・マーシュ西沿岸のオンコブラ川で、無数の河口のどこかに潜む海賊船の小艦隊を率いている。グジャルグリダは数隻の素早いガレー船を指揮しており、獲物を開けた海で捕らえることを好む。よく肥えた商人たちを北の狼の群れのように襲うのである。グジャルグリダのせいでタイドホルム東の海域はあまりに危険となったため、トパル湾に入る大部分の商船の船長は、この女に気づかれないよう島の西側の狭い海路を通るようにしている。

挙げられる海賊船長はまだ5,6名ほどいるが、この4人だけでも絶望の淵へ追いやるには十分だ。

帝国元老院に仕えていた長い年月の間、私はブラックウッドにいる帝国の役人からトパル湾の海賊問題について大量の報告を読んだ。レヤウィンは何度も繰り返し白金の塔にこの凶暴な犯罪者たちを制圧するための資金や艦隊を要求したが、我々には余裕がなかった。レヤウィン軍団長会議の議長となった今、私は以前無視していた問題に向き合わねばならない立場に置かれており、助けを求める手立てもない。運命とは皮肉なものだ。

トランス・ニベンの珍味Trans-Niben Delicacies

ニベン川で2番目に速い無許可財宝運搬業者、グアルの嘴の一等航海士スナゴス 著

俺のような決して合法とは言えない仕事を持つ者がレシピの本を書くことに疑問を持つ人は、船に乗って広大な海を航海するといい。初めて風の吹かない日に出くわした瞬間にそういった疑問への答えが得られるだろう。

今の状況、つまり無風の苦境を鑑みた結果、長きにわたる海賊稼業を始めて以来食べてきたうまい食べ物の記録に着手することにした。まずは好物から始めよう。

このレシピは俺がただの若者に過ぎず、旅を始めたばかりでまだブーツが硬く乾いていた頃に、川の側の流れが逆流する場所にいたアルゴニアンの漁師から手に入れたものだ。この漁師はカードゲームの名目で俺から少額の金を巻き上げるつもりでいたが、こちらも同じ方法で夕食代を調達しようとしていた。俺たちは夜更けまで続け、ついには漁師が手放せるものが、まさにその時まで部族の秘密とされていたこのレシピだけになった。

ザリガニのサラダ
潮溜りでザリガニと呼ばれる殻に覆われた生き物を探す。魚とは似ても似つかない姿で、どことなくロブスターのような生き物だ。

風味付けした湯でさっと茹でる。

その間に葉物野菜を集めて準備する。

ザリガニの身を殻から外し、頭を切り落とす。

身が十分に冷めたら葉物野菜に加え、好みの果物や野菜や肉などをトッピングする。俺は提供者の薦めに従い、柑橘類をサラダに加えた。これは葉物野菜に素晴らしい影響を与えた。と言うのも、普通なら葉物野菜はひいき目に見ても好ましいものじゃないからだ。

ニベンを越えてAcross the Niben Bar

(ニベン川の歌)

シロディールからトパル湾まで
ニベンの背中は広がっている
レヤウィン港に船は並んで
朝の満ち潮を待っている

エイルズウェルでは鉱石を
ウェイでコロヴィアの赤を買って
ブラヴィル港まで材木を運び
ブラックウッド・ヘッドへ出航だ

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
濃霧の中に浅瀬が潜む
ニベンを越えて!

トルヴァルで買うはサトウキビ
サウスポイントでは毛皮と染料
ダガーフォールで全部売り
ストロス・エムカイで酔っ払う

ゴールドコーストで絹とワイン
俺たちゃ故郷に舞い戻る
レヤウィンで恋人が待っている
船乗りのお帰りを!

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
波の下にはネレイドが潜む
ニベンを越えて!

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
船乗りたちが海をゆく
ニベンを越えて!

バザールの名簿Bazaar Directory

ディジェリエルの仕立屋 – 仕立専門店、中央市場

ラロスの遺物 – 古代と魔法の品、バザール北西

エルスウェアの砂 – カジートの小間物、バザール南中央

賢者クエンティンの動物店 – 異国の家畜、バザール南東

ダモザグ金属加工 – 上質な宝飾品と鉱物、バザール西中央

高貴なるエスディルの店 – 錬金術試料と植物、バザール東中央

ハックウィングはどのようにして尾を手に入れたのかHow Hackwing Got Her Tail

ツリーンキーシュによって記録されたアルゴニアンの童話

ある日、ハックウィングがせっせと空を飛び回っていると、地上から呼びかける声が聞こえた。「ずいぶんうまく飛ぶもんだ」悪意に輝く目で空中のハックウィングを追いながらボグドッグが言った。「でも、地上での速さはどんなものかな?」

ハックウィングはボグドッグの頭に向かって一直線に襲い掛かり、彼が身をかわすとクスクスと笑って言った。「必要なだけ速くなれるわ」

「絶対に俺の方が速い」ボグドッグが挑んだ。

ハックウィングは空中で回転すると、ボグドッグからは届かない位置にある岩の上に軽やかに着地した。「一体何がしたいの?」

「レースさ。そっちが勝ったらもうお仲間を狩るのはやめよう」

「勝たなかったら?」ボグドッグを信用してはならないと知りながらハックウィングは尋ねた。

「俺が勝ったら」ボグドッグが吠えた。「あんたを食う」

ハックウィングはレースの条件について考えた。見逃すには惜しい内容だった。ボグドッグはそれは長い間、彼女の家族を狩り続けてきた。そして今、彼を阻止する絶好のチャンスを手にしたのだ。ハックウィングはうなずいた。「あの遠くにある大きな石まで競争しましょう。最初にたどり着いたほうがレースの勝者よ」

ボグドッグはうなずいた。「スタートする前に俺の横に並んでくれ。じゃないとどっちかが有利になって不公平だ」

ハックウィングはボグドッグを信じてはならないことを忘れ、頼まれたとおりにゴツゴツとした足場から降りた。その瞬間、ボグドッグの歯をむき出した口先が噛みつこうとしたが、ハックウィングはとても素早かった。彼女がさっと空に飛び立つとボグドッグは胴体を噛み損ね、その短い尾にぱくりと食らいついた。ハックウィングはできるだけ速く翼をはためかせてどうにか前に進んだ。彼女はボグドッグを引きずり、羽ばたき、力一杯動いて、ついに大きな石に到着した。

「勝ったわ!」彼女は得意げに羽づくろいをした。「尾を放して。あたしが勝ったんだから食べられないわよ」

ボグドッグはしぶしぶ尾を放した。その尾はあまりにも長く引っ張られていたので以前よりもずっと伸びてしまっていた。

今もハックウィングは長い尾を保ち、彼らの素早い先祖を称賛し、ボグドッグに約束を守ることを思い出させている。

ファルル・ルパスからの手紙Letter from Farrul Lupus

ジリッチ評議員

旧友よ、お元気でお過ごしだろうか。私がレオヴィック皇帝の執事で、君が元老院にいた頃から何年も経ったというのに、ロングハウス帝の秘密が今も私たちに付きまとっているのではないかと恐れている。

君と他の元老院の者たちは、重大な危機に瀕している。君と同僚たちが何年にもわたってロングハウス帝のために行ってきたことにより、君たちは心ならずも正体不明の存在、あるいは存在たちの標的となってしまったようだ。もちろん、私たちは君がただ命令に従っただけだと分かっている。職務を果たしただけだ。残念ながら、君を追う者は理由など気にしけていない。奴らの望みは、レオヴィック皇帝の最後の秘密のほんの小さなかけらでも知る者を全て抹殺することだけだ。

もっと情報を提供できたらよかったのだが、今のところ私が知っているのはこれだけだ。また何かが分かったら連絡する。とりあえず、今は注意してくれ。

寝る時も警戒を怠るな。

ファルル・ルパス

ファレヴォン最後の戦いThe Last Battle of Phalevon Vero

上級歴史家、シリノ・ヘンター 著

従弟のブルミウンを失い嘆き悲しむファレヴォンは、彼を真っ二つに引き裂いたミノタウロスを追跡し、打ち倒すことを誓った。多くの人にとってミノタウロスはどれも同じように見えるものだが、今回は従弟を殺した者の正体についてファレヴォンは十分に情報を得ていた。グレンブリッジの住人がブルミウンの戦いを目撃していた上に、彼らは戦った相手のミノタウロスのこともよく知っていたのである。その野獣は赤きフルームと呼ばれていた。皮がレンガのように赤く、たてがみも赤茶けたオレンジ色だったからだ。それでも、赤いミノタウロスが潜んでいる場所をファレヴォンに教えられる者は誰もいなかった。

嘆きと冷酷な決意を闇のマントのように身にまとったファレヴォンは、探し求めた対象を追い詰めるまでブラックウッドにあるミノタウロスの巣を空にしていく仕事に取り掛かった。彼はそれぞれの薄暗い洞窟や崩れかけた石の門の前で立ち止まると、老いたカースで作った戦の角笛をとてつもなく大きな音でひと吹きし、ミノタウロスに敵と恐怖の訪れを知らしめた。これを7回行い、7体のミノタウロスを殺したが、赤きフルームはまだ彼の怒りから逃れていた。

ついにファレヴォンはニベンの川岸にある、ブラックウッド内で最後のミノタウロスの巣にやってきた。そして、彼の力強い角笛を吹き鳴らした。「出てこい、出てこい、お前が赤きフルームなら!」彼は叫んだ。「違うのなら、今すぐどこで彼が見つかるか教えるんだ。そうすれば見逃してやる」だが、洞窟からはミノタウロスのうなり声以外、返事はなかった。そこでファレヴォンは身構えて洞窟の中に入った。

(後年、学者たちはファレヴォンがミノタウロスの話を理解していたかどうかは疑問だとしている。と言うのも、理解できる人間はほとんどいないからだ。残念なことに、しがない執筆者である私は挑戦に対するミノタウロスの返事の内容を知らない)

ファレヴォンは洞窟の中に降りていった。その最も奥深い場所でこれまで目にしたどのミノタウロスよりも大きいミノタウロスと対面した。赤きフルームは立ち上がると長身のノルドの2倍は背が高く、犠牲者の頭蓋骨で作った首飾りを身に着けていた。「忌々しい野獣め!」ファレヴォンは叫んだ。「ついに見つけたぞ!さあ、我が従弟を引き裂いたお前に正義をもたらしてやる!」

「フルーム!」と、赤きフルームは答えた。そして血塗られた縞入りの角を下げると、この勇ましき英雄に突進した。

ファレヴォンが脇に飛び跳ねると、赤きフルームは洞窟の壁に力一杯激突した。壁が壊れてヒビが入り、そこから川の水が注ぎ込み始めた。ファレヴォンは赤きフルームが体を引き抜いて再び自由になる前に脇腹を3度切りつけたが、その攻撃は相手をさらに怒らせただけだった。ミノタウロスは大斧をつかむと、ファレヴォンに恐ろしい一撃を与え、彼の右腕を切り落とした。それでもファレヴォンはひるむことなく左手で戦い続けた!

両者の間で激しい攻撃が幾度となく交わされた。そして、ついにファレヴォンがその輝く剣を赤きフルームの心臓に突き刺した!だが、最後の一撃に対する怒りに駆られたミノタウロスは狙いを定めて激しい一撃を与え、勇敢な英雄の輝く兜を叩き割った。ファレヴォンは力尽き、自らが殺した恐ろしいミノタウロスの死体の上に倒れた。

そしてレヤウィンの人々はファレヴォン・ヴェロを発見し、敬意を払って彼を外へと運び出した。

ブラック・マーシュの家産Homesteads in the Black Marsh

布告第19号:第二紀194年 薄明の月11日
帝国評議会最高顧問ヴェルシデュ・シャイエ

ブラック・マーシュとして知られる地域が荒廃した土地であり続け、その地のアルゴニアンの原住民がこの地域で耕作するための方策を講じていない限りにおいて、第二帝国最高顧問は本布告の添付文書に記載されたブラック・マーシュ地域が、この機会を利用することを望むすべての帝国市民が自由に居住できる土地となることをここに布告する。

あらゆる帝国市民(以下「入植者」)は今後ブラック・マーシュの領域内で居住者のいない土地を占有し、それによって900歩尺四方を超えない区画(以下「区画」)の所有権を主張できる権利を有するものとする。その後入植者はギデオンの帝国執政官の面前で、この区画に対する所有権の請求を申し立てることができる。ギデオンの帝国執政官は、入植者の請求および区画が耕作できる状態であり、入植者の主たる居住地であることを示す証拠が提示された日から5年が経過した時点で、入植者とその子孫に対し、区画の永続的な公有地譲渡証書を発行するものとする。

本布告はブラック・マーシュに植民と耕作をもたらすことを目的とするため、入植者は区画を取得した日より土地を改良する権利を有するものとする。改良には、樹木の伐採、開墾、水流の遮断、池の排水、柵の建設が含まれる。入植者が権利を主張する区画内に一時的な住居や野営地を有する全てのアルゴニアンの原住民は、自ら区画から退去および所有物の撤去をしなければならない。さもなければ、最寄りの帝国の守備隊が強制的に移動することとする。

これを布告せよ:ブラック・マーシュは最高顧問の善意の手において繁栄する。

ブラック・マーシュの物語Tales of Black Marsh

物語収集家ジュノ・アセリオ 著

圧迫するような熱気がのしかかり、私を溺れさせる。暑さは喉に詰め込まれた毛布のように、肺の中で広がっていく。こんな暑さは経験したことがない。湿気のこもった熱には具体的な感触がある。手を伸ばせば空気を搾り取れそうなほどだ。

「どうしてあいつらはこんなところで我慢できるの?」とテオドシアは言って唾を吐いた。月明かりの下で、彼女の汗が染み込んだチュニックと、首元にへばりついた髪が見えた。

彼女はきっと、この場所を故郷と呼んでいるアルゴニアンのことを言っているのだろうと思った。私は答えを知らない。喋ろうとしたら、言葉が口の中で溶けてしまいそうな気がして怖かった。

腕に鋭い痛みが走った。もう叫び声をあげる気力も残っていない。ニクバエを狙って叩いたが、離した指は腫れた皮膚の表面からせり上がる血で濡れていた。この痛みも、焼けるような両足の感覚に比べれば鈍い轟きにすぎない。私たちは何時間も歩き続けていた。日が暮れる前に街道が見つかるはずだった。だがもう否定しようがない。私たちは完全に迷ってしまった。

「同じところを堂々巡りしてるのね」とテオが言った。「ブーツがぐしょ濡れだわ」

ブーツが濡れるどころの問題じゃないと言いたかったが、思い直した。彼女を怖がらせたくない。慰める言葉を探していると、低い、くぐもった太鼓の音が聞こえた。音は一挙に周囲に跳ね返り、不気味なこだまと共に汚泥を貫いて響いた。

一瞬、私の頭がおかしくなって、自分の心臓の鼓動が耳の中で鋭い悲鳴に変わったのかと思った。だがテオは頭を上げた。

「今のは何?」彼女の声にも、今では恐怖の片鱗が伺えた。

「太鼓の音みたいだった」と私は役にも立たないことを言った。

私は月に照らされたブラック・マーシュの影に目を凝らした。心臓が早鐘を打っていた。何の動きも見えない。夜に潜む墨汁のように黒い人影も、暗闇に光る目もなかった。沈黙が痛いほどだった。何ひとつ息をしていない。水も動いていなかった。

「とにかく移動しよう」と私は言った。

テオの声はなかった。恐怖で口がきけなくなったかと思い、私は彼女の様子を見るために振り返った。背後には暗闇だけがあった。目の錯覚かと思って手をかざし、テオの体に触れようとした。だが手は空を切った。重く耐えがたい熱気だけが残っていた。

「テオドシア?」私はほとんどたしなめるように呼びかけた。「はぐれてはいけない」

太鼓の音が一度だけ鳴って私に答えた。今度は前よりも近い。もう少しで飛び上がるところだった。周囲を見回すと、今度は私の先を駆けていく人影が見えた。テオにしては足が速すぎる。それにわずかな月光から、尻尾があるのが見えた。

「テオ?」と私は囁いた。

ドン!

恐怖で血が煮え返った。またして太鼓の音がブラック・マーシュを突き抜け、私は走り出した。どこに向かって走っているのか自分でも分からなかったが、逃げるしかない。一歩進むごとに泥を振り払わなければならなかった。分厚い空気に肺が詰まり、汗が背中を流れ落ちた。

ドン!

太鼓は接近し、今やすぐ背後まで来ていた。だが立ち止まって見るわけにはいかない。絶対にダメだ。進み続けなければ…

地面が目の前に飛び込んできた。私は倒れて沼に落ち、汚水まみれになって沈み始めた。耳の中に水が入ってきたが、それでも雷鳴のような太鼓の音はまだ聞こえていた。

ドン!

私は何とか起き上がった。草や泥が指先からこぼれ落ちた。水面から頭を出すと、正面で何者かが同時に頭を出した。テオかと思ったが、顔が違った。大きさは同じくらいだったが、両目がルビーのように光り、月明かりに鱗が輝いていた。自分が見つめているのは、巨大な蛇の顔であることに気づいた。

ドン!

蛇は顎を大きく開いた。底なしの虚無が開き、私を見つめ返している。

ドン!

私に向かって落ちてくる。

ドン!

ブラックウッドのワインWines of Blackwood

オリウス・ヘルタノ 著

シロディールが食事と飲み物に対して抱く愛情はタムリエル中に知れ渡っている。瓶か水差しに入れた香り豊かなワインを食事に添えなければ、インペリアルの食卓は始まらない。しかし愛好家たちが集まってお気に入りのヴィンテージについて話す時、大半の者は豊潤さで知られるコロヴィア台地の赤のブレンドが一番だと決めつけている。著者の考えでは深刻な間違いだ。帝国のどの地域も何らかの価値あるワインを作っている。その中にはもちろん、ブラックウッド地方も含まれる。

当然ながら、これほど広大な地域の醸造業者すべてに対して信頼性の高い調査を行うことは、このささやかな写本の射程を越えている。むしろ、本著はこの顧みられることの少ないブドウの栽培地で作られるワインのスタイルや特徴に注意を向けたい。レヤウィンとその周囲のブラックウッド地方は、帝国内でも最も温暖で湿度の高い地域であり、当然ながらコロヴィアよりも多くの種類のブドウが採れ、多様な栽培技術が要求される。この気候でブドウは短期間で熟し、甘みに加えてフローラルでフルーティな味わいを強く持つ、複雑なワインになる。

アネクイナの乾いた平原にほど近い、ニベン川の西の丘で作られる「レフトバンク」ワインから始めよう。ここはもちろんトランス・ニベン地方で最も乾燥した部分であり、ここで生まれるワインはレヤウィンのどこよりもコロヴィアに性質が似ている。クイーンズティアーやネリアンス・ファインなど、赤の品種がこの地に適している。穏やかな冬と長い栽培の季節のおかげで、ブドウは早期に熟成する。トランス・ニベンの丘は熟練の醸造業者の手にかかれば、真に見事な出来栄えの、甘く豊穣なワインを生み出す。

東に移動すると、ニベン森の軒先にやって来る。川の西にある地域よりも暑く高湿度なこの一帯は、大半の赤ブドウに適さない。しかしプティット・グレイやホワイトムーン、グレート・アンブロシアのような白ブドウの品種は、この森林の影に覆われたブドウ園でよく育つ。これらの品種は言うまでもなく、インペリアルの全てのワインの中でも特に甘くフルーティなワインになるが、だからといってその品質を軽視してはならない。上質なニベン森の白は、優雅で身の引き締まる爽やかな風味を持ち、どのインペリアルのワインセラーに置いても恥ずかしくない逸品である。

さらに東へ向かい、ブラック・マーシュの辺縁に行くと、ついにブドウが一切まともに育たない土地にたどり着く。うだるような蒸し暑さのせいで、ブドウ園を作るのは不可能に近い。しかし必要は発明の母である。そのためブラックウッド東境の人々は手に入るもの、例えばイチジクやブラックベリー、ブルーベリー、さらには桃でワイン(の一種)を作っている。こうした材料ではうんざりするほど甘いフルーツジュースしかできないだろうと思うのも無理はないし、実際そうなることも多い。しかしこのフルーツワインの一部は意外なほどバランスが取れており、この地方の辛い料理によく合う。ブラック・マーシュのピーチワインを地下に貯蔵し、舌の肥えた来客に供すのはお勧めできないが、暖かい夏の夕べに入植者の夕食を流し込むために飲むのであれば、決して悪いワインではない。

ブラックウッドの景色Sighs of Blackwood

ギデオンでランプが消え
筏が沼地を漂う時
聞こえるだろう、槍蛙の歌が
樹液を浴びた合唱のように響きわたるのを

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

あなたの濁った水を泳ぎ
ワッソフルーツを味わう時
ホタルの光のごとき、自らの祝福を思う
我がヒストがここに根を張ったことを

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

泥炭の匂いが鼻を満たし
泥が背中で乾いていく
百の収穫が花開くのを感じて
あなたの黒い大地で眠る

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
あなたの物語の吐息で、我らの鱗を湿らせたまえ
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

ブラックウッドの諸部族:ギデオンと国境Tribes of Blackwood: Gideon and the Border

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

マークマイアへの長く危険な遠征の後、私は故郷のハイロックへ戻ってたっぷりと休息を取るのがいいだろうと思った。しかし八大神には別の計画があったようだ。私の最初の本「マークマイアの諸部族」の売り上げが予想を遥かに上回ったのである。研究者にとっては嬉しいジレンマだ!新たな求めに応えるため、私はトランス・ニベン地方でキャラバンに別れを告げ、ギデオンに向かって東へ出発した。

行ったことのない人のために説明しておくと、ギデオンは無数の文化が不可解に混ざり合う地であり、アイレイド建築とインペリアルの歴史、コスリンギの民間伝承、そしてアルゴニアンの伝統の異様な集合体である。豊かな多民族社会の歴史を持つにもかかわらず、現在のギデオンに住んでいるのは主にアルゴニアンである。私にとっては家族のように大切な存在になった南の親族とは異なり、ブラックウッドのアルゴニアンはシロディールとの長期間の接触により正負双方の影響を受けている。彼らはより正確なシロディール語を話し、より繊細な事業を営み、外国の伝統によりうまく適応している。このことはしばしば、古い伝統やアルゴニアン哲学の純粋な体裁を失う結果につながる。アルゴニアンがヒストの至上性を公然と否定するのを初めて聞いた時、私は驚愕した。だが時と共に、私はブラックウッドの諸部族も複雑さに劣るわけではないことを理解した。多くの点で、彼らは他の部族よりも遥かに複雑だとさえ言えるだろう。

タムリエルのより大きな部分との境に住むアルゴニアンは、外国の破壊の大半を経験している。戦争や飢餓、奴隷貿易、環境破壊などである。国境のアルゴニアンはこうしたこと全てを体験してきた。その結果、この地のサクスリールの友情を得るには大変な苦労が伴った。マークマイアのアルゴニアンの大半は外国人に対し、困惑を交えた滑稽なほどの無関心で迎える。しかしブラックウッドのアルゴニアンは、大部分のよそ者を軽蔑に近い疑念を持って見ている。ケシュという地域の指導者は、民をより広いタムリエル社会に統合するため多大な努力を払っている。この試みが不信の増大ではなく、協力の促進へとつながることを祈っている。

ブラックウッドの諸部族:リバーバックTribes of Blackwood: Riverbacks

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私が追放したい迷信を選べるなら、アルゴニアンの見た目や行動が全員同じという考えを追放したい。ブラック・マーシュの境界の外側にいる人々はしばしば、アルゴニアンの身体機能が固定されていて、部族ごとの違いもごく些細なものだと思い込む。大半のアルゴニアンが基本的な形態学的パターンを共有していることは事実だが、それでも差異は大きなものから小さなものまで存在する。サルパ、ナガ、ハプスリート、パートルなどの例はほんの一部である。確実に言えることは、こうした差異が各部族のヒストを取り巻く生息環境に対応していることだ。長老ナヒーシュの大半は、ヒストが「正しい皮膚を正しい時に」与えてくれると考えるに留めている。それが本当なら、リバーバック族のヒストは実に見事な仕事をしたと言える。

私の案内人である蘭を名づける者は、沼の奥地へ私を連れて行って、ナカ・デシュ、もしくはリバーバックというあまり知られていない部族に会わせてくれた。川の民に会えるほどブラック・マーシュの奥に行くインペリアルは少なく、ナカ・デシュはヒストの根の境界から外に出ることにほとんど意義を見出さない。そのため、大半の者は彼らを秘密主義で神秘的な部族とみなしている。リバーバックは際限なき歓待の精神を持っているため、この誤解は余計に愉快である。

私たちはリバーバックの領域へ渡し舟で近づいた。遠征隊はほとんど一瞬で部族の哨戒兵に出くわした。哨戒兵たちは亀かワニのように水上を漂っていた。彼らの顔の幅広さや目の大きさ、そして前腕と喉元についた水かきには驚かされた。ヒストがこの地域民に「正しい皮膚」を与えたのは明らかだ。リバーバックの領域は地面よりも水が多く、沈んだ沼地は小さな筏やカヌーで移動するしかない。

蘭を名づける者は低い鳴き声で哨戒兵に挨拶をした。彼らは元気よくその音を繰り返し、私たちの船に乗り込んできた。哨戒兵たちの誰もシロディール語はできないらしく、案内人に通訳してもらなければならなかった。彼女によると、リバーバックは通行許可を与える前に、謎かけの貢物を要求しているということだった。この要求に脅迫の匂いは感じ取れなかった。命令というより、誘い掛けのようだった。私に言葉遊びの才能はないが、インペリアルならほとんど誰でも知っているドアノブに関する子供の謎かけを教えた。蘭を名づける者がそれを翻訳すると、すぐに2人の哨戒兵は拍手をした。1人が自分の額を私の額に押しつけて2度鳴き、その後2人は現れた時と同じく突然、水中に消えていった。

私たちはリバーバックと共に4日間過ごした。1日を除いては、ずっと筏に乗って釣りをしていた。リバーバックの釣りは伝統的な釣りと名前しか似ていない。ナカ・デシュは釣り針と糸ではなく、オシージャ・ガースという大きな川魚を使う。オシージャは1匹ごとに変わった引き具と紐で繋ぎ止められている。魚の大量にいる場所を見つけると、アルゴニアンたちはこの捕食者を解き放ち、魚を捕まえさせる。オシェージャが魚をくわえるや否や、アルゴニアンはこのペットを船の脇に引き寄せ、魚を取り上げるのである。私は蘭を名づける者にどういう仕組みなのかと聞いた。どうやら、紐は魚を飲み込むのを防ぐらしい。しかし、オシージャはちゃんと世話されていると彼女は請け合った。もちろん、それはオシージャが年老いるまでの話で、そうなったらやはりこの魚も食べられてしまう。

リバーバックと過ごした時間の中で、苛立つことがないではなかった。私が出会ったアルゴニアンたちの中で、ナカ・デシュは圧倒的に好奇心を欠いていた。謎かけを除けば、彼らは私たちが持ち込むものに全く興味を示さなかった。私たちの食事は拒絶し、私たちの物語には特別関心を持たず、私たちの名前すら聞かなかった。この無関心と、彼らの際限なき歓待が合わさって、遠征隊の大半は居心地の悪い思いをした。蘭を名づける者は、親切に返礼が必要だと思うのがおかしい、と私たちをたしなめた。いつものことながら、こうした小さな失望もまた貴重な教訓を与えてくれるのである。

ブラックウッドの諸部族:レッドドリームの民Tribes of Blackwood: Red-Dream People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

多くのアルゴニアンが石の住居を避ける一方で、国境地帯の部族は大抵それほど信念に固執しない。ブラックウッドを旅すればすぐに様々な種類の古代遺跡に遭遇する。そして、これらの遺跡は頑丈で守りの固い住居を提供しうる――これほど荒廃し、戦火に引き裂かれた土地では非常に重要なことだ。

私たちは沈んだザンミーアの中と周囲に住むいくつかの部族に会った。また、古いアイレイドの集落に避難していた部族にさえも会った。例えばレッドドリームの民だ。彼らの「水浸しの家」は伝統的なアルゴニアン様式で建てられているが、乾燥した時期にはよく近くのアイレイドとアルゴニアンの遺跡に避難する(ブラックウッドのほとんど集落と同じように、これらの遺跡は1年のうちかなりの期間水没している。そのため、長期の住まいには適していない)。

乾季の間、ハッツリールは遺跡の「歌を知る」ために樹液の儀式に参加する。外部の者はおそらくこれを型破りな考古学と解釈するだろう。彼らは遺跡の中で何時間もかけて歴史的価値があるものを探す。欠けた杯や壊れた武器といったものを。十分に集まったらそれらの上に灰をまき、奇妙な樹液の酒を飲み、その品々の「夢を見て」それにまつわる物語を知る。私が確認できたところによると、この物語のほとんどは作り話か完全に暗喩で覆い尽くされていて、学術誌にはほとんど使えないようなものばかりだった。たとえそうでも物語は示唆に富み、場所に対する価値ある思いを部族にもたらすのだ。根の使者、ラー・ネイはそれを「収獲」、狩猟とも農業とも違う習慣だと説明してくれた。儀式が完了すると、この歴史家たちは見つけたものを家に持ち帰り、創造的なやり方で日常生活に組み込む。ハッツリールの農民は剣を鋤の刃として使うかもしれない。料理人たちは古代アイレイドの杯を植木鉢にするかもしれない。それはここブラック・マーシュだけで見られる、素敵な創造力の表れだ。

プロノビウスへの未完の手紙Unfinished Letter to Pronobius

プロノビウス・ヘブリン大司祭様

今頃はギオヴェッセ公爵領の嫡子が、袖にされた恋人によって残酷に殺されたことをお聞きになっていることでしょう。凶行に及んだとされるレッドガードの女は故郷の砂漠に逃げ帰ったようです。女に正義がもたらされるかどうかは怪しいものです。嫡子マセンの死は大いに悼まれています。彼は父親と同じようにギオヴェッセ内外から好かれておりました。彼は母親から大変愛されておりました。愛する、と言うには少し支配欲がありすぎたようですが。私は批判をいたしません。求められれば助言をするか、相談に乗るだけです。

ご存じのとおり、私は何十年もの間忠実にガレヌス家に仕えてまいりました。こういった職務では、時折の厄介ごとはつきものです。亡き公爵は敬虔な方でした。ですが奥様のアステラ女公爵は、もしかしたら… それほどではなかったかもしれません。もちろん、その立場ならやらねばならぬように、祭礼や儀式には全て参加し監督もしておいででした。ですが、常に心がそこにないように感じていました。とは言え、マセンを失った今、私は彼女の神々や光の道への信仰心に対して心から疑問を感じています。差し支えなければギオヴェッセ城を訪ねて、女公爵とお話をしていただけないでしょうか。

最近耳にした噂を、紙に書き記したくはありません。夫人が個人的な研究でしているらしきことに関連して、闇の技に関連する書物を持っているという噂です。また、夫人が我が子を失ったことについてどのように憤慨し、逆上しているかについても書きたくありません。明らかにそのような運命を受け入れる境地に達することはできないようです。

ボロボロになった交易商人の記録Tattered Trader’s Log

今日はアルゴニアンのキャラバンが立ち寄った。何とかいくつかの奇妙な樹液の壺の値段交渉をした。裁定者ガヴォスがまた自由貿易を抑圧する無意味な規制を思いついたりしなければ、結構な利益になるかもしれない。彼から樹液を市場内で取引できない理由に関する、長々とした講義を聞かされずに済むようゼニタールに祈る。

自分自身で実際に仕事をやることもなく、ぜいたくに暮らすのはさぞかし楽しかろうな。ここで商品と金を回し続けてるのは我々商人だ。取引を妨害するだけでも十分よろしくないが、彼は黄金の金床を誰にも見せないらしい。我々と神々の間に立とうとするとは出過ぎた真似だ!それを許すつもりはないし、そう思うのは私一人ではない。

マタス・アムニスへの手紙Letter to Matus Amnis

マタスへ

招待状は受け取ったか?ヴァンダシア評議員の催し物はいつだって素晴らしいからな。それに、今回はとりわけすごいものになると聞いてる。

私はほぼ君と同じぐらい長い間、評議員と彼の試みの忠実な支援者でい続けてる。また、我々はどちらも彼の特別な社会組織に所属している。私は常々、我々の尽力が何かに至るのか疑わしく思っていた。真実が明らかになると、私が長年築いてきた想像なんて、ちっぽけに見えるものだと感じてるよ。

もう一つ。サルヴィットの屋敷で何が起きてるか知ってるか?ブラックウッド湖の近くにある彼の地所でだ。どうやら何かが、ヴァンダシアに次の催し物を前にして人目につかないようにすることを決意させたようだ。グラシアン・サルヴィットと避難したという噂を聞いたよ。サルヴィットが我々よりも先にヴァンダシアの秘密の計画について知ったとしたら、すごく腹が立つ。

君に会うのを楽しみにしている。道中で、もっと詳しい情報を手に入れないとな。

覚醒した兄弟
モリス

モーゲインへのギルド指示Morgane’s Guild Orders

守衛モーゲイン

レヤウィンの魔術師から、ブラックウッドにある奇妙なデイドラの施設に対する調査を依頼された。この「破滅の宝物庫」が領域内にいくつあるのか正確な数は分かっていないが、一ヶ所だけ場所が分かっている。ギデオンの東にある沼の奥深くだ。この地域にはほとんど住人がいないが、建物から奇妙で工業的な音が聞こえてくるとの報告が現地のアルゴニアンからあった。

君と クド・アフハダジャには、この破滅の宝物庫ポルシジドに入り、その忌むべき住民が何を企んでいるのかを明らかにしてもらいたい。中には信者と、もしかしたら多少のデイドラがいることが推測される。君とクドがはぐれた場合は、忘れずに送信石を使用して退却の態勢を整えるように。

戦士ギルドのために
ギルド幹事 ボルヴス・ダルス

ラロスの焼け焦げた日記Ralos’s Charred Journal

ガヴォスは終わった。

予想どおり、奴のしみったれた兵士たちは買収できた。クエンティンとエスディルにとって、説得して同意させる負担は大したものではなかった。我々は彼らを買っても釣りがくるほどの金を持っているからな。

奴が大切にしている金床と共に閉じ込められた今、絶え間なく挟まれる「公正さとは」という言葉を聞くことなく、本物の利潤の獲得に戻れる。奴に何が分かる?この市場の繁栄の理由は我々で、奴の説教や小物のおかげではない。

今日、新しく指名された裁定者が来た。彼は努めてさりげなく一週間分の取り分の増額を示唆し、「夕日の下」での休暇の計画のための金が足りないことを匂わせてきた。言葉の選び方がかなりわざとらしいような気がした。私の秘密の隠れ家を知っているのか?思っていたよりも不注意だっただろうか?

いずれにせよ、我々は今のところ、さらに気前よく心付けを渡せるの余裕がある。だが、奴が私の事情についてあまりにも知り過ぎた場合は、交代させる必要があるかもしれない。

リルモシートの贈り物Gift of the Lilmothiit

チャニル・シースによる、勇気ある青年向けの本

クザールは元気に先頭を行き、草に覆われた岩を軽々とまたいで進んだ。彼はもうすぐ仲間のキャンプに着くと言ったが、2人がジー・ティーの部族の領地を出発して以来、彼は毎朝同じことを言っていた。ジー・ティーはそろそろ我慢の限界だと思い始めた。それでもクザールは仲間がもうすぐ近くにいるし、彼らはまだ移動しないと約束した。ジー・ティーは彼を信じたが、他にどうすればよかっただろう?彼女の部族はリルモシートが持っていた薬を求めていた。しかも、彼女の母親が治療を必要としていた。母親は日に日に衰弱していたのだ。

病気はどこからともなくやってきた。ある日、数人の大人が熱を出した。その後、症状が拡がっていった。当初、拡散はゆっくりだった。治癒師は熱を治し、食事を飲み込むのに苦労する患者の手当てをしたが、それで治癒師の小屋は満杯になった。治癒師はできる限りのことをした。大抵の場合、患者たちは安静にしているしかなかった。

若者が村に迷い込んで来て、奴隷商人から逃げてきたと言った時、最初に近づいたのはジー・ティーだった。クザールはとても若かったが、その話しぶりは子供とは思えなかった。彼は奴隷商人によって仲間のもとから連れ去られて以来、目にしたことを全て覚えていた。連れ去られる時に通った道はまだ彼の記憶に新しく、リルモシートがキャンプを張った場所もよく覚えていた。彼女の部族の大半はこの若者を信用する気になれなかった。リルモシートの策略を忘れていなかったからだ。だがジー・ティーは事の重大さを理解していた。彼女はこの若者と荷物を集め、彼がキャンプにやって来てから3夜と経たないうちにこっそり抜け出した。

今、ジー・ティーはクザールを信用した自分の判断を疑い始めた。あまりに長い間歩き続けていたので、彼女の足はボロボロになり、背中の荷袋はほとんど空になっていた。道の砂埃が喉にこびりついていた。最後に他の旅人を見かけてから数日が経過していた。事情に詳しくなければ、ジー・ティーは誰もこの道を通ったことがないと思っただろう。だが砂埃の中に足跡があったし、茂みも刈り取られていた。最近誰かがここに来たのだ。ただ見えるところにはいなかった。

若者はまた別の大岩の上に昇り、喉を張り上げて短く歓声をあげた。「着いた!ここだ!」

ジー・ティーはしなやかな足で積み上がった岩をよじ登り、若い旅仲間の隣に立って峡谷を見下ろした。キャンプの痕跡があった。狭い円の内側に集められた燃え殻や、テントの柱を立てた時地面にできた穴、そして周囲に置かれた材木、東へと通じる足跡もあった。ジー・ティーは失望で背骨がしぼむ気分だった。リルモシートがここにいたとしても、もう移動したのだ。

ジー・ティーは無言で放棄されたキャンプを歩き、クザールは駆け回って岩や木の陰を探した。まるで部族の成員がひょっこりと姿を見せて挨拶するのを期待しているかのように。2人はキャンプを一回りして、太陽が上空で輝く中、峡谷を移動した。キャンプには灰と穴以外には何も残されていなかった。旅は無意味に終わった。クザールが仲間たちと再会することはないし、ジー・ティーは母親にどうしても必要な薬を取ってくる使命を果たせなかった。

「ほら、これ!」クザールは捨てられた木材と荷車の車輪の山に飛び込んだ。出てきた時、彼は両手に粘土の瓶を抱えていた。ジー・ティーは若者に近づくにつれ、足が重くなるのを感じた。彼の耳は失望感で垂れていたが、目は輝いていた。クザールは瓶の蓋を外した。中には強烈な香りを放つ、濃厚な薬草のペーストが入っていた。

「それは何?」と、臭いに顔を背けながらジー・ティーは尋ねた。

「母さんの調合薬だ。どんな病でも治す。クザールにも、ジー・ティーにも役立つ」

ジー・ティーは嘘だと思うところだった。そもそも、彼は部族が自分を置いていくはずがないと言ったではないか。「薬なの?」

クザールは真剣な目で彼女を見つめ、蓋をした容器をジー・ティーの手に押しつけた。「薬さ。贈り物だよ。俺の部族からあんたの部族へ」

するとクザールは背を向けた。彼は足跡を追って東へ向かい、二度と振り返らなかった。ジー・ティーは彼が地平線の向こうへ消えていくまで見ていた。その後彼女はリルモシートの贈り物を持って帰り、母親と、治癒師の小屋に集まる残った病人たちに与えた。

レオヴィックの偉大なる霊魂の声明Leovic’s Great Spirits Proclamation

〈帝国の公式布告、第二紀576年の原典に基づく写本〉

帝国の全臣民よ、この言葉を聞くがよい。

ロングハウスの古き知恵は国家の繁栄にとって重大であり

多様な宗教的実践を認めることは地域の平和を保つために必須であり

我らの帝国は強さの美徳を尊び、隷従の悪徳を憎む。

以上を鑑みて、私、すなわちブラック・ドレイクの後継者である皇帝レオヴィック一世は、ロングハウスの長に任命された者として、大衆にはデイドラの名で知られるリーチの古い霊魂を、帝国の統治における守護者かつ保証者としてここに承認し、また賛美する。この霊魂の崇拝を禁じるいかなる法や習慣もここに無効化されるものとする。ルビーの玉座の臣下でこの霊魂を賛美する典礼や儀式、祈祷への干渉を試みる者は玉座の敵対者とみなされ、反逆者や不平分子など、国家の敵と同じ懲罰の対象となる。

宗教改革の時代をシロディールとその先にまで押し広げ、栄誉ある我らがデイドラ公の言葉と報酬に、新たな力を求めようではないか。

上記を確認の上、ここに我が手と心を本件の大義に添え、帝国の印を押すものとする。

ロングハウスに栄光あれ!帝国に栄光あれ!デイドラ公に栄光あれ!

レッドメイン砦の帝国軍の歴史A Legionary’s History of Fort Redmane

第二紀233年薄明の月19日、プリスタン・ヴィニツィオ百人隊長 著

護民官マルティウス・コンダラ殿

前回我々の拠点をご訪問頂いた際、貴官はレッドメイン砦の名の由来を尋ねた。私は恥ずかしながら答えを知らなかったので、若い士官であるアギアン副隊長に頼んで、我らが拠点の信頼できる歴史を調査してまとめてもらった。彼女の勤勉な仕事のおかげで、レッドメイン砦という名前の起源について、貴官の質問に答えられることを誇りに思う。

砦の建設が開始されたのは、レマン皇帝がアカヴィリに大勝利を収め、第二帝国が築かれて間もない第一紀2707年だったことがはっきりしている。この時期についての俗説では、周辺地域がすぐにレマン皇帝の支配を認めたということになっているが、必ずしも真実ではない。当初、第二帝国の国境は確定していなかった。ヴァレンウッドのウッドエルフやアネクイナのカジート、ブラック・マーシュのアルゴニアンは皆、生まれ変わった帝国への統合に抵抗したのだ。

ここトランス・ニベン地方では、カジートの好戦的なクランがリンメン周辺のサバンナからやって来て、川を越えてブラックウッド北方の農地や小さな街を襲撃することもあった。大河から西へ領土を広げるニベンの植民者たちは、伝統的なアネクイナの狩猟地にまで食いこんだため、好戦的な狩猟公たちは自ら問題の解決に乗り出した。このプライドの高いカジートたちは自らの土地で行われる「ニベン人の密猟」に対して、人間の土地で「狩り」を行うことで報復した。

カジートの絶え間なき略奪の脅威からこの地域を守るため、第十軍団を指揮していたネメニウス・ヘスター将軍はニベン下流の峡に国境要塞を建設することを提案した。これはレヤウィンの屈強な守りとニベン湾の守りの中間に位置するだけでなく、峡はカジートの略奪者たちが好んで渡河する場所でもあった。ヘスター将軍の本来の計画では、この強力な要塞がニベン砦と呼ばれる予定だったが、建設はなかなか進まなかった。レマン皇帝の統治初期、シロディールの人員はタムリエル中の脅威に対処する必要のせいで酷く不足していた。ブラックウッドのカジート盗賊は、他の脅威に比べれば霞んでしまっていたのだ。

上官たちの出し渋りに業を煮やしたヘスター将軍は、アネクイナの略奪者の脅威に彼らの注意を向けるため、少々問題のある策略を思いついた。彼は凶暴だが公式には知名度の低いフンズー・リというカジートの族長を選び、人間を奴隷にして血を抜き取る「野獣」軍団のリーダーに仕立て上げたのである。将軍はフンズー・リに「赤いたてがみ」という異名まで与え、トランス・ニベン地方から全ての人間を追い出す聖戦を呼びかける、狂信的な宗教的指導者であると報告した。

言うまでもないが、カジートのたてがみは常に一人であり、このリーダーがそれほどの戦士でもなく、強盗でもないことは良く知られていた。だが第二帝国初期、カジートの地域アネクイナとペレタインはシロディールの民にとって未知の異国だった。この見慣れぬ国の「野獣」たちについてのあらゆる不正確な物語が、まことしやかに伝えられていたのだ。

ヘスター将軍の計画はうまくいった。赤いたてがみの脅威を誇張したことで、帝国の財布の紐が緩んだ。ヘスターが国境を守るために要求した砦の建設には、大量のゴールドが投入された。

一方その頃、フンズー・リはインペリアルを「挑発」したことで他の狩猟公たちに叱られ、困り果てていた。ヘスター将軍の報告で広められた作り話に激怒したフンズー・リは、忠実な仲間を集めて小規模な部隊を作り、ニベンを渡って憎き敵を探し求めた。噂されたような騒々しい大軍ではなく、たった一回の密かな襲撃だった。砦から歩いて1時間も離れていない場所で、フンズー・リと戦士たちはヘスター将軍に奇襲をかけた。将軍は自分が悪名を押しつけたカジートに殺されたが、フンズー・リもヘスターの兵士たちに切り伏せられた。

帝国軍は討伐すると主張した怪物がおそらく自分たちの捏造であったことは認めず、ネメニウス・ヘスターの死を英雄的な抗戦として描き出し、将軍は「赤いたてがみ」の脅威に終止符を打つために、勇敢にも命を捧げたのだと喧伝した。数年後、ニベン砦は軍団の獰猛な敵の名を取って赤いたてがみ、すなわちレッドメイン砦と改名された。皮肉なことに砦が完成する頃には、ヘスター将軍にこの地域の守りを強化させたそもそもの要因である略奪の問題が終結していた。カジート王国のアネクイナとペレタインは、すでに帝国の支配下に入っていたからだ。

それから現在に至るまで、レッドメイン砦はニベン川の峡に立ち、決して来ることのない敵を見張り続けている。

レヤウィンにて傭兵求むWork for Hire in Leyawiin

問題がブラックウッドの民を悩ませている。自分がもっとも勇敢で強く、金と栄光を山積みにするためには計り知れない危険に向き合うことも厭わない冒険者だと思うなら、軍団長会議は仕事を提供する。

詳しくは、レヤウィンの街にいるサーヴァティウス・レオントゥロンを探してほしい。

レヤウィンの解放The Liberation of Leyawiin

雷鳴と共に、サイ・サハーンは
激戦の中、レヤウィンに向かう
レオヴィックの戦士が攻め
裏切り者はサイの背後を襲う

矢が飛び交い、剣がきらめく
死の鐘が鳴る時は近い
動じぬ顔で内なる力を引き出し
彼はレヤウィンのため剣を振るう

背後の裏切り者、前方のロングハウス
両者が戦いに望むは、剣聖の死
サイ・サハーンはその運命に抗い
今や一人で、門を突破する

中に入り、サイは息を吐く
二つの軍隊と戦い、死を相手取る
剣と知恵のみを武器にして
レヤウィンの自由のため戦う

背後の裏切り者、前方のロングハウス
両者が戦いに望むは、剣聖の死
サイ・サハーンはその運命に抗い
街の解放を試みる

軍と激突しても、サイの剣は鎮まることなく
レオヴィックは逃げ、サイの使命は果たされる
彼は裏切り者の死体の山に立つ
防衛者は悪を滅ぼし
レヤウィンの民は自由となった!

レヤウィンの出港スケジュールLeyawiin Shipping Schedule

レヤウィン港出航予定 — 第二紀580年 蒔種の月 第3週

メリトリアス号 – 象牙旅団の巡回船。日耀の明け方、2週間の巡回のため出航。恵雨の月第2週帰港予定。(密航、海賊に遭遇、飛び降りる?)

フラウンダリング・フラウンダー号 – ブラクソン・エムリの漁船。央耀の朝出航。同じ週の金耀帰港予定。(退屈すぎ!)

シェル・バック号 – 黒きヒレ軍団の軍艦。月耀の正午、ギデオンへの潮流で出航。(硬き鱗の者なら一緒に航海できるはず。あの章は読み返さないと)

メリーマーメイド号 – ランジェル・ミリの商船。税関検査終了まで出航は保留。ゴールドコーストのアンヴィル行き。レッドセイルの密売人の疑いあり。(完璧!港に引き止められていてくれるなら、忍び込む時間はたっぷりある!)

レヤウィンへの旅の案内Traveler’s Guide to Leyawiin

アスティニア・イサウリクス 著 公開日:第二紀569年降霜の月1日

ニベン川の河口にまたがって位置するレヤウィンは活気溢れる港であり、産業の集積地であり、崇拝の中心地でもある。ブラックウッドの温暖な丘陵と肥沃な農地に囲まれた、この陽気な経済都市は、その居住者の多様性を誇っている。3つの異なる種族に属する民が象牙の馬の街で出会い、交流している。ここレヤウィンでは、エルスウェアの異国情緒溢れるカジートとブラック・マーシュの原始的なアルゴニアンが、帝国都市の貿易と文化に触れる。これはタムリエル中を探しても他では見られない光景である。

レヤウィンは誇り高く、厳格な顔を外の世界に見せている。高い側壁や円柱型の塔、強靭な門に守られたこの街は、要塞としても貿易の中心地としても機能している。街の大部分はニベン川の西岸に位置しており、東岸はレヤウィン城が占めている。レヤウィンで最も人目を引く要素である、ニベン川を横断する巨大な石橋と防護壁が街を接続している。毎日大量の船がシロディールやアビシアン海沿岸、あるいはモロウウィンドの港へと向かって出発し、レヤウィンの橋の下を通っていく。船は大きな門が開いて通行を許すと、一旦停止して帆をたたむ。

市の行政
レヤウィンはレヤウィン属州にあるブラックウッドの首都である。第二帝国の初期、カロ家はこの国を統治する一族として正式に認知された。ネヴェニア・カロ女伯爵はこの誇り高き血統を継ぐ者である。この優雅な女性は高官たちに余興を提供し、街の社交界を取り仕切るだけでなく、街の演劇を支える気前のいい後援者でもある。

日々の行政事務は帝国の布告によって任命された総督の役目である。総督は女伯爵と共に、この地方全体を監督する。軍団長会議は市内の活動における細かな政務処理に従事する。

大礼拝堂
壮麗なゼニタール大礼拝堂に言及することなく、レヤウィンの話は始まらない。空に突き出す鐘楼が屋根よりも高くそびえたつ様は、街のほとんどどこからでも見ることができ、初めての訪問者にとっては目印としても役立つ。この大聖堂は第一紀600年代、聖カラダスによってペリナル・ホワイトストレイクと聖戦士の戦棍を称えるために築かれた。この尊敬を集めた聖人は、死後礼拝堂地下の聖なる墓に安置された。今日でも、信心深い人は聖カラダスの墓で礼拝中に、聖戦士の戦棍の幻視を見たと報告することがある。

食事、飲み物、宿泊
レヤウィン通が高く評価するのが、ゼニタール大礼拝堂から広場の向こう側、街の中心に位置するカラダスの宿屋である。ここは歴史ある建物で、鉛枠が付いた美しい窓ガラスに、優雅な鏡板、上質のカウンターを備えている。この宿は400年以上もこの場所にあり、無数の大貴族や名のある英雄を迎えてきた。

格式にこだわらない旅人には、レヤウィンの商店街地区が予算的にお手頃だ。 多くの商人が季節ごとに変化する短期の市場で露店を開いているが、常駐の食事処としては、礼拝堂南の労働者地区にある「頬落ち大根」がお勧めだ。数多くのレヤウィンの職人や商人がここで日常的に昼食をとるため、早めに行って行列を避けたほうがいいだろう。

主な施設
レヤウィンの店や職人街、ギルドホールは主に大礼拝堂の南、街の西半分にある。

魔術師ギルドは礼拝堂広場の南に位置している。ここにはブラックウッド最大の蔵書庫があり、本棚で一杯の部屋にあらゆる種類の謎めいた書物が置かれている。ここではまた、カジートの秘術師フェイッフィが瞑想のモルフォリスの印を掲げ、奇妙かつ強力なクリスタルを売っている。

ゼニタールは言うまでもなく、鍛冶と産業の守り神である。そのため、レヤウィンの商店街地区で高品質の鍛冶屋を見つけても驚くには値しない。鍛冶屋「歌う鋼鍛冶」はトランス・ニベン地方でも最高クラスの武器と防具を作っている。

最後に、鎧と素敵な服の簡素な看板に欺かれてはならない。熟練の仕立屋たちが特別な機会や催し物のために作った驚くべき作品が誇らしく展示されており、その隣にはより実践的な、防御力の高い作品が並べられている。

興味深い事実
この街のシンボルである象牙の馬の起源は知られていない。ある伝統では、古代の英雄ペリナル・ホワイトストレイクが関係していると信じられている。別の伝統では、神話の時代にブラックウッドは神のごとき力と美しさを持つ光り輝く白馬の住む地であり、この馬が岸辺を守っていたのだと述べられている。

カジートの武将であるアネクイナの黄金の獣、ダルロック・ブレイは第一紀500年代にレヤウィンを征服した。この街は20年以上もの間、カジートの支配下にあった。

第二紀299年、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエはレヤウィンの橋を撤去し、大型の帆船がトパル湾からニベン川へと通過できるようにせよと命じた。しかしレヤウィンの軍団長会議は商業の流れが増えても、レヤウィンに停泊せず通り過ぎるだけではないかと考え、帝国の計画を遅らせた末、ついには放棄させることに成功した。今日においても、大きすぎて橋の下を通過できない船は街の南の港に停泊し、貨物をより小さな川船へと移し替えねばならない。

親愛なる読者よ、よき旅を!象牙の馬の街への訪問をどうか楽しんでほしい。

ロヴィディカス評議員への手紙Letter to Councilor Lovidicus

ロヴィディカス評議員長

我々が共に帝国元老院へ仕えたのははるか昔のことだが、今でも君のことは同僚であり友人であると思っている。確かに私はあのウッドエルフが君に伝えた警告を無視した。あの古い秘密が未だに何らかの力と、何らかの危険をはらんでいると信じることを拒否した。間違いだった。

今日、ファルル・ルパスから手紙を受け取った(彼の死の報告が確かなら、殺される前に送ったに違いない)。そして、私は尾行されているのではないかと思っている。今朝、島の散歩中に岩の方から私を見ている人影が垣間見えたような気がしたのだ。私はその光景にひどく動揺して、ファルルの手紙を落としてしまった。洞窟に到着する直前まで、手紙を失くしたことに気づかなかった。

これはきっと20年ほど前に、モリカル皇帝から与えられた計画に関連しているに違いない。彼はある種の宝物庫のための世話係を必要としていて、私がそれを調達したのだ。契約の手配をした。費用を払った。だがそれはかなり昔の話だ。

これを書きながらも、締めなわがきつく引かれるのを感じる。これを受け取ったら、他の者に伝えてくれ。警告に耳を傾け、君の支援を受け入れるよう説得してくれ。ロングハウス帝の秘密。今回は本当に自分の死につながると考えている。

ジリッチ評議員

愛しい人へTo My Love

最後に別れた時、あなたが言ったことをずっと考えてた。そして、決断した。愛しい人、あなたを選ぶよ!真の幸せへの道があなたと共にあることを知った今では、あちこち走り回る無数のペットの影に埋もれながら、ただ彼女の側に存在するだけで満足することはできない。

苦しくはあったけど、脱出に最適な時が来るのを待つ必要があった。今手紙を書いているだけなのはそれが理由だ。君がこの手紙を受け取る頃には、リルモスにある2人のアパートで君のことを心待ちにしてるよ。そこで2人の未来の計画を立てよう。毎日希望が膨らんでいってる。

私の態度の変化に、彼女が疑いを抱きつつあるように感じる。これを書いている今も窓のほうから小さな爪がカチカチと鳴る音が聞こえるし、影の中でブラシのような尻尾を持つ、げっ歯類のビーズのような目がギラギラと輝いているのを感じるんだ。ああ、ついにこの毛皮の拷問者から逃れて、君の腕の中に行けるんだ!

愛しき者を救ってくれSave My Precious

頼む、誰でもいいがこれを見つけた人。何としても我が愛しき者を守ってくれ。なだめてくれ。このひどい場所から連れ出してくれ。

全力を尽くしたが、成し遂げられなかった。我が愛しき者をこのひどい場所に置き去りにしないでくれ。

お願いだ。

トゥーモン

愛情を込めて書かれたメモLovingly Written Note

事は起きた。

兵士たちが裁定者ガヴォスに背いたんだ!聞いたところでは、奴が大修道院の内陣に閉じこもったので、交易大臣たちが魔法で中に封じるらしい。実に皮肉だ!

彼らは俺たちに対して大きく貢献してくれた。このおかげで俺たちの子は、市民のことを市民が決められる自由な街で成長できる。武装した支配者に上から布告をされずにな。解放者の一人にちなんだ名前を子供につけるのはどうかな?ラロスか、エスディルか、クエンティンか。一番好きな交易大臣は誰だ?

義父さんのところから戻ったら話し合おう。

海賊の財宝のメッセージPirate’s Treasure Message

幸運な冒険者へ

我々のチャンスはないに等しい。ブルーワマスは数で勝ってるし、こっちは水が不足してる。私の財宝が奴らの手に落ちるのだけはお断りだ。その名誉は君に委ねよう。

レヤウィンから港を隔てた向かいに滝がある。その水源まで辿れ。

水源から90歩南に進む。

すると、かつて私がその基盤を徹底的に破壊するという栄誉に浴した古い要塞がある。

一番北東の角に立っている木の根本を掘る。

よい狩りを、友よ。何が起きても世界が決して君の名を忘れないようにするんだ。

トパル湾の恐怖、ヴォルダー

皆さんいらっしゃい!Come One, Come All!

楽しくて型破りなショーであなたの気持ちを温かくします!

圧巻のダンスをお楽しみください!

夢見の館が夢の世界にあなたをご案内します!

ファーマーズヌークの南の火までぜひお越しを!

巻き牙の機密情報Fang-Furls’ Dead Drop

クラフティングホールの商人から追加徴収しろ。忌々しい信者どもが、ずっと港での活動を邪魔しやがるから埋め合わせが必要だ。

ブラックウッドの商人どもはみんな腰抜けだ、シシスに感謝するよ。奴らが気骨の気配でも見せたら、行儀よくさせておけるかどうか怪しいものだ。

巻き牙の台帳Fang-Furls’ Business Ledger

[この後のページには犯罪者の所有物と巻き牙の活動が記載されている。それには大量の記述だけではなく、走り書きされた指示も含まれている]

引き渡し場所

今度は滅茶苦茶にするなよ。見つけるのは簡単なはずだ。

– 街の北、小山の上にある水の中
– 東に向かう。完全には橋を通り過ぎるな。隠し場所は大きな木の下だ
– フタン・ツェルの北、ちょっとした旅。丘の中腹に隠されてる

パンジェント・アダーのための大樽を回収するのも忘れるな。オリアンダーコースト・リザーブだ。積荷はレヤウィン港に置いてある。街から来るなら、一番左端だ。「絶対に」落とすな。あるいはどんな形であれ手を出すな。アダ―は気づくぞ。必ずな。

巻き牙の第二の機密情報Fang-Furls’ Second Dead Drop

我々が待っている隊商がボーダーウォッチで引き止められてるらしい。商品を入手する手段を他に見つけなければならん。港の作業員どもを絞り上げよう。家族を持ってる奴を見つければ、より簡単にいくだろう。

あのレヤウィンの奇妙な兄弟は反抗ばかりする。争いなど、ここでは全く必要ないものだ。すぐに思い知らせないと、他の奴らが同じことをやり出す。

巻き牙の第三の機密情報Fang-Furls’ Third Dead Drop

いくつか扉を壊して、何軒か荒せ。どうやら皆、我々に金を払う理由を忘れ始めてるようだ。思い出させてやれるかどうかは我々にかかっている。

教団のせいで状況が厳しくなり始めてる。仲間がどんどん捕まってる。我々はすでに力が半減していて、これ以上弱体化したらブラックウッドを支配できない。

完全な飲み物A Perfect Drink

オトゥミ・ラの日記から

私は旅を通じて、大規模な村から最も質素な農場に至るまでのあらゆる場所で、数多くの酒に出会ってきた。自分の人生と経験してきた事柄を振り返る時間ができた今、最高の飲み物を探し出すのは、晩年を過ごすための平和的な手段と思われる。戦士から醸造家への対照的な転換だ。

だが、実験ではいくつかの失敗をおかした。これらの材料のいくつかを組み合わせた醸造や試験は、ある種の予測し得ない結果に終わった。例えば、ゴールドルートワインは舌触りが良く滑らかだが、最初にこれを飲むとすぐに気分が悪くなることが分かった。その前に赤ニガヨモギを飲んでおけば別だが。どうやらこれが効果を消してくれるらしい。だが、私は先に何かしっかりしたものを胃に入れておかないと、これを飲むことができない。ひとつかみのベリーや豚の足肉とかだ。幻覚を誘発する効果を吸収するものなら何でもいい。

先日、ハチミツ酒の醸造でそれなりの成功を収めた。庭のハーブひと揃いと組み合わせて素晴らしい緑の色合いを付け加えたものだ。これはすでにたらふく食べた後の夜の締めくくりには最高だ。外に座り、マグカップを手に下の谷を見渡す… 自分が目の当たりにするとは思いもよらなかった人生だ。自分で材料を育てることが、仕事にとって大きな利益となっている。

とは言え、野生のベリーや根を求めてゆっくり歩くことにも恩恵がある。まだいくらか作業が必要だが、私のベリーエールは野生の風味から恩恵を受けている。どのバッチも見つかったものによって異なっているが、どれも必ず同じように粘度が高くシロップのような濃度だ。まるで飲むと言うよりも食べるかのように。昼間にこれを飲むと、他に何も入らなくなるので、少量の混合用になることは間違いない。私は材料を外の植物に依存しているから、それはいいことだ。

風の者たちと共にした冒険の日々が懐かしい。これに疑問の余地はない。だが、ここでの作業を通して、私は彼らと共有できる新しい何かを見つけられるだろう。比較的平和で落ち着いた残りの人生を楽しみながら。私が気に留めておかなければならないのは、ただこれらの飲み物がお互いにどう調和するかだ。また意図せず、前後不覚になってしまってはいけないから。

協力に感謝するYour Assistance Is Appreciated

我が愛しき者を傷つけようとする輩を抹殺してくれたことに心から感謝する。あの卑劣な狩人どもが消された今なら、我が愛しきものを追跡して助け出せるかもしれない。だが、荒野でとても気掛かりなものを見つけた。どうやら我が愛しき者は過剰に恐れてしまっているようだ。彼女は恐れるものから逃れようとして、ついにはオブリビオンへのポータルとしか言いようがないものを通り抜けてしまった。

私はこの奇妙な現実の裂け目がブラックウッドの荒野のあちこちに開いているのを見た。次に機会が訪れたら、そのポータルに飛び込んで、我が愛しき者の救出を試みるつもりだ。もし貴殿が私の替わりにこのメモに遭遇したなら、それは私がポータルが導いた先から戻る方法を見つけられていないということだ。

その場合は、どうか私の後に続いてくれ。私のためではなく、我が愛しきもののために。

トゥーモン

鏡とカラスOn Mirrors and Crows

レヤウィンから運び出せる古い鏡は全部集めた。こんなに沢山の反射面が本当に必要なのか?それと、あの鳥たちは本当に喋るのか?と言うか本当に鳥なのか?あの鏡が彼らを忙しくさせて、静かにさせてくれることを期待するよ。あれがなければあいつらは絶対に黙らない。

何故あの獣たちが我々の計画にとって重要なのか理解に苦しむ。だけど、君の言うとおり、彼らがエバーグロームに通じる扉を開けるための鍵となるなら、割れたガラスを磨いたりかき集めたりするのも、やる価値がある仕事なんだろう。

銀のチャイムChimes of Silver

ナカ・デシュ族の歌う代弁者、ギーム・シャー 著

多くの肌の乾いた者たちが私たちにコスリンギ殺害の罪を着せる。彼らは顔をゆがませ、「人殺し」「陰謀」「妖術」といった乾いた言葉を私たちに浴びせかける。長い季節が過ぎ去った今でさえ、人々はサクスリールが呪文でナハテン風邪を呼び起こしたと信じている。彼らがその目から憎しみを引きはがし、私が子供だった頃に目を向けてくれればいいのだが。その当時、根の民と銀の肌の部族は共に手を取り合って歩んでいた。泥、良き食料、そして陽気な踊りで結ばれていたのだ。

私には銀の肌の者たちの思い出が沢山ある。定命の目を閉じると、今でもかまどから出したてのクーサのヒール・スネイルケバブの匂いを嗅ぐことができる。ダシルの腰でぶつかり合って音を立てる、錫のチャイムの歌が聞こえる。ハドゥクの根の泡が喉を滑り降り、腹を温めるのが感じられる。だが、何よりもよく思い出すのが音楽だ。キラキラと輝く終わりのない曲の数々。何よりもあれらの曲を懐かしく思う。

私たちサクスリールには、単純なものからあまり単純とは言えないものまで数多くの楽器がある。だがコスリンギはさらに多くの楽器を使っていた。実際、卵の姉妹と私はコスリンギの手にかかればどんなものでも楽器になってしまうことについて冗談を言い合っていたほどだ。彼らの木のカッターは空洞のある丸太をワマス大の太鼓に変える。彼らはクリフストライダーから腱を抜いて、低い音でブンブン音を立てる弓状のハープを作る。だが、彼らが最も愛した楽器はチャイムだ。

根の民とは異なり、コスリンギは金属に対して嫌悪感を抱いていなかった。彼らが服を着ることはほとんどなかったが、細くより合わせた縄に付けた金属片を身に着け、歩くたびにカチャカチャと音を鳴らしていた。コスリンギの金属使いであるビーラーは、よく錫と銅の塊を大きな炉に流し入れて熱し、その後取り出してあるべき形になるまで、石の槌を使ってねじり、成形していた。金属の棒が冷めたら木の大枝に吊るし、曲を見定めるためにそれぞれの棒を調子よく叩く。ビーラーは金属が出すあらゆる音を意のままにしようとして、このチャイムを何百も作った。

ヌシュミーコのある暖かい晩、彼は饗宴のために部族を村に呼び集めた。彼らがなぜ饗宴をしたのかは分からないが、私たちは気にしなかった。饗宴の終わりが近づくと、見事なイトスギの木の周りに集まって彼の家族が演奏するチャイムを聴いた。8人のコスリンギ、彼の妻、叔父、5人の息子がまるで足元のしっかりしたツリーフロッグのように根元から飛び上がり、演奏用のバチでチャイムを叩いた。チャイムから生じる音は、まるで穏やかな雷鳴の子供のように響いた。私たちは心が松明のように明るく燃えるのを感じ、銀の肌の者の多くが喜びの涙を流した。

私たちがコスリンギを殺したと肌の乾いた人々が言うのを聞くと、私はあのヌシュミーコでの晩のことを考える。私が子供の頃に見聞きしたもののことを聞いたら、あれほど美しいものを破壊するヒストの子など誰もいないということが彼らにも分かるだろう。

苦々しい奴らに甘味をSweets for Sour Company

(カジートの侮辱の歌)

歩き手よ、お前がさまよう場所が
遠く毛皮のない場所ならば
少しシュガーを取っておけ
先には苦みがたっぷりだ

シロディールではご用心
奴らがやるのは挑発ばかり!
鈍さにかけちゃ帝国一
ブラック・マーシュの沼を入れても!

モロウウィンドには何がある?
にやにや顔の虫食いの陰口だ!
ダークエルフにむかついたなら
シュガーが吐き気を止める!

スカイリムの雪の小山に、温かみなんてない
炉端も機知もぼんやりだ
ノルドの傲慢さより分厚いのは
頭蓋骨と花嫁を結ぶ紐だけ!

毛のない奴らに追い詰められたら
臭いのきついつるつる肌?がぶりといこう!
杯に甘味をひとつまみ
尾のねじれた爪なしども?もうひと口!
ナメクジ舌の疥癬舐め?そんな奴らはひと飲みだ!
スイートロールに手を出すな、北の豚め!

汗が染みてるハンマーフェルの砂漠?
友よ、嗅いだことない悪臭だ
芳香を放つレッドガードの文化に興味を持つ者など
輪を描いて飛ぶハゲワシの群れだけ!

ヴァレンウッドの木で爪を研ぐな
立ってる場所から小さな雑草が生え出す
爪に噛みつき、噛みしめ、裂くために
むき出しの足首が擦り切れるまで

ハイロックの断崖に挑むべき?
ブレトンのわめき声が好きなら
あそこにあるのは雨と霧だけ
それと濡れた犬のしつこい臭い

毛のない奴らに追い詰められたら
へこんだ鼻の平たい歯?おかわりといこう!
杯に甘味をひとつまみ
無作法なかぎ足?ゴクリと飲み込め!
よだれ垂らしの雑種?今こそ一気飲み!
尻嗅ぎの尻好き?ジョッキを空けろ!

サマーセットの象牙の浜辺?
ハイエルフが悔やむしょっぱい涙に身を浸せ
とても高貴な自然は楽しめない
聞こえるのは鼻声のすすり泣きだけ

ブラック・マーシュで語るべきこと?
いささか手厳しい野生動物?
ぐちゃぐちゃのぬかるみ?
それとも最高の収穫がウジだってこと?

毛のない奴らに追い詰められたら
衰えゆく杖吸い?ワインを取り出せ!
杯に甘味をひとつまみ
無骨なのろま?そいつはいただきだ!
毛づくろいの行き届かぬムスカルセ、こすってやる!
バーンダリの慈悲よ、風呂桶はどこだ?
ジスヴォー!

愚かなる翼Foolish Wings

囁く影のロミエン・ガルヴェッタ 著

パタパタと舞う、愚かな羽の大群。奴らは自分たちを、高貴で狡猾で賢いと思っている。

だが奴らは空っぽだ。小さく、お喋りなあの方の模造品。あの方の優雅の切れ端でしかない。影ではなく、ハエのように群がるだけ。愚かな獣。均衡を欠いていて、賢くない。不愉快で、爪で引っかき、羽をばたつかせる。奴らはコウモリと戦う。棒切れと葉の戦いだ。

奴らはなぜあの方の意志にあれほど近い?うるさい音を立ててばかり。追い出されたのも当然だ。追放された。奴らの力は無駄になった。無駄、無駄だ。利用できたはずのものが無駄になった。奴らはお喋りしてばかり。叫び声だ。爪をちっぽけな愚かしい財宝に引っ掛ける。キラキラした、錆びついた輝き。

何と奇妙な獣だ。馬鹿どもめ。奴らには何も与える価値がない。奴らは無価値だ。私は奴らを恐れない。あいつらはあの方の囁き声。割れ目から漏れた囁き声が、ゴミを漁り、貪っているのだ。奴らのにやついた目に恐怖はない。ただ黒いだけ。光り輝く黒。

あのような模造品の気を逸らすのは簡単だ。利己的で、愚かな奴らめ。剣ではなく羽根の騎士たち。なまくらなクチバシどもめ。鈍った爪め。奴らはあの方のオブリビオンの絵をすぐ近くで運んでいる。我々をあの高みまで登る手助けをしてくれれば。だが奴らは笑うだけ、ただ笑うだけ。ケラケラと政治工作をしている。

内部で大量の力が失われた。あの方は、あれを我々に入手させたくないのだろうか?

軍団長の議事録:ゴブリンに関してLegate Minutes: Concerning Goblins

地元のゴブリンに関する探鉱者ヴィヌス・ドニチクスの苦情。第二紀581年 降霜の月26日、タシタ・マエニウスによる記録

ここに来るのはこれが3度目だ。自分の土地を離れるのは好きじゃない。俺はこの八大神に見捨てられた街と、その洒落のめしたコウノトリみたいな曲がった足の街の住民どもが大っ嫌いなんだ。だがブラックウッドの状況は日増しに厳しくなってる。俺たちは剣と盾でやるべきことをツルハシと鋤でやってる。もういい加減嫌気が差してんだ。

俺が言ってんのはゴブリンのことだ。あんたらが肉と上等なワインで腹をいっぱいにしてベッドでスヤスヤとお休みになってる間に、こっちは納屋や鉱山の中で眠っちまわないように自分の顔をひっぱたいてんだ。自分の財産を守るために必死でな。ああ、あんたらにとってはあんなちっぽけな緑の奴らなんて単に邪魔くさいだけだろうよ。犬にたかる刺す虫みたいなもんだ。だが俺らのような壁の外側に住む、素朴な者にとってはどうだ?こっちはクソみてえな戦争を戦ってる。それも絶対に勝ち目がないって分かってる戦争でな!

例えば先週、月耀の夜のことだ。俺は友達のシルスと火を囲んで座り、鹿の尻肉を焼きながら翌日の仕事の計画を立ててた。すると突然藪の中からカサカサという音が聞こえてきた。狐とかアナグマが立てるような音じゃなかった。何かもっと大きいものが骨や腐った革の中でざわめいてた。俺が皮はぎ用のナイフを抜くと、シラスはツルハシを手に取った。俺たちは恐ろしく長い間、猫のように静かに立っていた。その後、奴らが突然飛び出してきた。あのひどく猫背な野郎どもが6、7人、シューシューとかキーキーとか音を立てながら錆びた剣を振り回しやがった。シルスは危うくズボンを汚すところだった。ツルハシを落として、あわてて鉱山に逃げていったよ。俺はというと、蹴とばし、唾を吐き、突破する途中で奴らの1人を突き刺して、森に向かって駆けだした。3人ほどが激怒して、歯をカチカチ鳴らせて、イカれちまったかのように口からつばを飛ばして奴らの汚らしい言語で何かを言いながら追いかけてきた。命からがらランプが灯った友達の家の玄関にたどり着いたよ。シルスはどうしたかって?今も彼の破片が岩の下や古い立て抗の下から見つかってる。

これは俺が経験した話にすぎない。それも一番最近にだ。2週間前にはアスティア・ブルソがゴブリンに見事な牝牛を盗まれた。2日後、まるでマスみたいにはらわたを抜かれて他の牛が水を飲む川を汚している牝牛が見つかった。その1週間前には、異母姉妹のヴァラが追っかけられて屋根の上に逃げた。ヴァラが煙突の背後によじ登って身を隠してる間、1時間かそこら矢を浴びせ続けた。ヴァラが言うには、奴らはその間ずっと笑ってたらしい。

いいか、俺は何も軍隊を送れって言ってんじゃない。ディベラの胸にかけて、兵士の一団すら望んじゃいない。望んでいて必要なのは、オブリビオンの恐怖をあのちっぽけな野郎どもに植え付けてやれる、肝っ玉のすわった数人の戦士だ。1人か2人、見せしめにしてやるんだ。みんなの土地の周囲にゴブリンの頭を突き刺した槍を設置する。北での馬鹿げた赤、青、黄の騒ぎが起きる前、俺たちはそこそこの民兵を持ってたんだ。今、ここにあるのは何だ?あんたらには指ぬきを満たせる程度の根性しかないじゃないか!腰を上げて何かしろよ!

軍団長会議についてOn the Chamber of Legates

カロ女伯爵の統治下にあるテベザ・コ軍団長による考察

軍団長方式は都合よく機能している。他の君主国には当てはまらないのかもしれないが、レヤウィンで法の制定や街の日常生活の監視は、帝国時代から街の支配者が事前に目を通すものではなかった。帝国が消え元老院が解体された今、この仕事はそれを果たすために最近作られた、軍団長会議が担うことになった。歴史的に見ると街の支配者と運営機関を切り離すことで、君主たちは街の運営を気にすることも放棄することもなく、政治ゲームに興じていたのだ。

軍団長会議は街と周囲の管区の運営に関する、行政的な機能全体の支配権を有している。例えば、港湾での事業には免許証、認可、目録、必要な品すべてが確実に正しい場所や船、業者に運ばれるようにするための輸送機関が必要だ。これらの職務を完遂させるため、我々は登録簿に商船とその航路の詳細を記録し、いつ積荷の準備ができるのか計算できるようにしている。日中はずっと、時には夜間にも十分な訓練を受け情報に通じた港長を配置し、各船を出迎えて正しい指示を与えられるようにしている。道は安全かつ確実に品物が運搬できるよう整えられ、廃棄物などがない状態が保たれなければならない。

それを達成するために、我々軍団長が港長を監督する。港を建造し、維持するための木材の入手。新しい商船からの積荷の予定。港長のそれほど大きくはない権限下で信任された船長たち。レヤウィン、特に市場周辺の街道や通りを整備するための人員の雇用。例えば飼い慣らされていない動物や医療目的の範囲を越えた使い方をするスパイスやハーブといった、特定の外来品を除くあらゆる品やサービスに対する販売許可。そういったものを。

レヤウィンに影響を与える事業について話し合うため、軍団長会議は必要であれば毎日顔を合わせる。時には一般市民に会議への出席を許可することもある。そうすることで一般市民、特に商人階級は市民生活の中で軍団長会議が目を向けねばならないと信じている、あらゆる領域に対して関心を寄せるよう求めることができる。軍団長会議側も政策がどのように機能しているか、また欠陥への対処の必要性、手法の変更の必要性について直接意見を聞くことができる。だが何よりも、一般公開された会議の存在により、我々は街から信頼された誘導者となれるのだ。現在の我々の評価は上々である故、市民たちは臆すことなく苦情を告げるだろう。彼らは強く懸念している問題に我々が耳を傾け、いずれ命や生活手段に脅威を与えることなく対処することを知って安心する。

この管理体制は帝国崩壊後に軍団長会議が設立されて以来使用され、改良され続けている。この体制は完璧ではない。まだ政治的野心、階級格差、偏見、あらゆる統治体制に内在するその他多くの欠陥に満ちている。だが、軍団長会議による代議体制、そして玉座に座る我々の意見を進んで取り入れる女伯爵によって欠陥を回避し、先頭に立ってレヤウィンの利益を維持し、街の事業を前進させられると承知している。

賢者ロヴィリセルのメモNotes of Lovirithel the Sage

第二紀575年、収穫の月6日
これはいけるかもしれない!何週間もレヤウィン城の散らばったコレクションを研究した成果が出たようだ。推論通り、アレッシア帝国の初期に建設された聖堂の施設がブラックウッド沿岸の荒れ地にあった。遺跡が埋まっていたのはブラックウッド南東にある、これといって特徴のない島だった。古代の聖堂に続く、原始的に掘られたトンネルには最近様々な集団が使用した形跡があった。おそらく密売人か盗賊だろう。しかし、幸運なことに現在は地下の部屋をそのような犯罪者が使用してはいないようだ。明日から探索を始めよう。

第二紀575年、収穫の月8日
隠された聖堂の上層にはほとんど何も残っていなかったが、風雨に耐えた建築と彫刻を慎重に調査した結果、多くのことがわかった。羊皮紙と木炭で拓本を取らなければ判別できない色褪せたシンボルは、古い秘密を示している。「下」を象徴するシンボルが「怒り」「憤怒」と組み合わされている。これは、明らかにこの場所の現在の名前、 「深い嘲笑」を示している。

また、他にも面白いヒントがあった。「闇で待つ者」「破壊者」「貪る者」。原始の神シシスの呼び名だ。この場所は明らかに古代ニベンで、シシス崇拝の中心だったようだ。とても興味深いことは言うまでもない。この地域でシシス崇拝は一般的に見られるが、信者はたいていがアルゴニアンであって、獣からより遠い種族の間ではあまり多くない。深い嘲笑の洞穴は、混沌の力を崇めるアイレイドを模した秘密結社の隠れ家だったのだろうか?さらに研究する必要がある。

第二紀575年、収穫の月14日
大きな発見だ!見つけたオベリスクの部屋には崩れた壁に隠された通路があり、聖堂の奥へとつながっていた。助手に壁を外して洞穴と部屋へ向かえるよう指示した。明日の探索が楽しみだ。ただし、通路には奇妙な冷気が漂っている。石が侵入を感知していると感じられるほどだ。

第二紀575年、収穫の月17日
新しい洞窟の広がりはただただ素晴らしい。以前は探索できなかった場所の先には、曲がりくねった通路と広大な部屋が広がっている。ほとんどは未完のように見えるが、二つの大広間が広がっている。最初に名付けたのはシシスの間だ。二つ目は嘲笑の神殿と名付けた。中には色褪せた印があったところだ。冷たく、何かに見られているような沈黙が中に入る者の背筋を凍らせる。もちろん、地下の空気の興味深い特質にすぎない。

助手たちが神経質になっている。新しく見つかった部屋で、何らかの力が動き始めたように感じられると考えているのだ。エリエンドロは下の階を塞いでいた壁を建て直すように言って来た。もちろん、彼の根拠のない恐怖に屈するつもりはない。学問とは臆病者に向かない仕事だ!

第二紀575年、収穫の月20日
愚かしい!エリエンドロが姿を消した。ヤイルセスは嘲笑の神殿の闇に連れ去られたと主張しているが、もちろん馬鹿げている。愚かな恐怖に屈して、ここの仕事を放棄したのだろう。おそらくレヤウィンの酒場で安ワインでも飲みながら、故郷へ帰る計画を立てているはずだ。残念なことに、ヤイルセスはより下の階の部屋へ足を踏み入れることを拒否した。私は神殿の探索を一人で続けるので、ここに残るよう彼女に伝えた。

愚かな子供だ。

幻の発見が待っている!Phantasmal Discovery Awaits!

アルケイン考古学調査隊が、スリル溢れる実験のために勇敢な冒険者を求めています!

できれば重量のある魔法の器具を運ぶ能力を有する方。幽霊、亡霊、その他のアンデッドに対峙した際、勇敢でいられることは必須です。

詳しくはヴェヨンドの遺跡にいるリヴス・デムネヴァンニへお尋ねください。

幸福なアヴェルノ輸送会社の看板Happy Averno Shipping Company Sign

幸福なアヴェルノ輸送会社
仮本社

イウリウスとシピオン・アヴェルノ
経営者

勧誘お断り

魂の台帳Ledger of Souls

目覚めの炎の教団の諸君

私はアイディール・マスターのために3つの新たな魂を獲得した。だがもう私の黒魂石は全て満たしてしまった。アイディール・マスターとの関係を向上させたいなら、もっと石を見つける必要があるだろう。

台帳への記録用として、獲得した魂を以下に記す:

– 修練者クララ・アスティエ
– 修練者アリエール・エフィーン
– 修練者エドガルド・ゲイン

今も修練者の腐敗の噂はギデオンを流れている。私が獲得した魂については、すでに人生に不満があったという噂を街中に流し、ディベラの聖堂の金庫からコインを取り除いておいた。単純な偽装だが、無知な街の住人は簡単に信じるだろう。

収穫は続く。約束しよう。

目覚めの炎のために!

災いよ去りたまえMay Disaster Turn Away

大地が揺れて、空震え
森に炎が灯りだす
闇が落ちて、混沌が広がり
裏切りがはびこる

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

遠くの雲から嵐来る
火は燃え盛り、死者は積み上がる
忍び寄る黒、迫る不和
オブリビオンの門開く時
剣のごとく、裏切りが光る

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

破壊の主よ、災いの公よ
我らの民に手を出すな
流血の神よ、裏切りの王よ
不幸はどこかへ持ち去っていけ

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

作家助手求むAuthor’s Assistant Wanted!

作家が地域の歴史調査のため、筋肉質で活力あふれる助手を求めています。

応募者は進んで沼地や取りつかれている(可能性がある)遺跡を歩いていただける方に限ります。比類なき武術の技能とデイドラに動じない姿勢は必須です。できれば前向きな考え方や明るい気質をお持ちの方。

この高報酬のチャンスをお見逃しなく!

全てギデオンの宿屋〈卵とハンマー〉にいる、センチネルのイサラにお問い合わせください。

死霊術師の日記Necromancer’s Diary

影の鎌が手に入れば、目的を達成するのも時間の問題だ。今までずっと進めて来た計画が実を結ぶ。あのブレトンどもがこの刃を鍛造した時は、何を成し遂げられるのか想像もできなかっただろう。生きた者をその影から切り離す能力を持った刃。それがどんな力を秘めているか気づくには類まれなる才能が必要だったのだろう。この刃は単なる玩具ではない。影を切り離されると、人は自分自身との接点を失い始める。その不運な者が紛れもない奴隷となるまで、生命の基本的な事実を超えた思考が消滅していくのだ。これが私がよく知る魔法だ。

もちろん、他にも同じことに気づいた者はいるだろう。そうでなければ、この鎌が贈り物に見せかけてノクターナルの祠に隠されていた理由がないではないか?これだけ重要な遺物がただ祠に置かれ、故意に忘れ去られることなどない。影の女王自身は、今となっては何とも愚かしい呼称だが、疑いなく鎌がただの道具だと信じている。だが今に分かるだろう。他の皆と同じように。

当然だが、完璧な計画でもなかなかうまくは行かない。影の鎌を回収するために雇った馬鹿どもは無能さのあまりあやうく私の計画を台無しにするところだった。子供時代の友人に見つかるとは。本当に愚か者の無謀さには限度というものがない。それでも、仕事は半ば適切に行ったのだから、報酬は与えるべきだろう。彼らの行動を逐一制御できるようになれば、このような失敗を繰り返すこともなくなる。もちろん、彼らを使わなくても構わない。利用価値が尽きたらすぐに縁を切ることもできる。

鎌の力を完成させるための儀式の前に、持って来てもらわねばならない品物はあと少しだ。鎌の力が頂点に達すれば、それを使って如何なる強情な精神も私の目的とする方向へ変えられるようになる。それに新たな奴隷の精神が傷つけられたとしても、いつでも魔法を使って支配できるように修復できる。しもべの寿命と生命力は留まるところを知らぬ。

私の時代はもう目の前だ。人を率いる指導者たちも今は拒絶しているかもしれないが、私が如何なる才能を持つか知った時には、恐怖におののくだろう。

招待状の添え状Invitation Cover Letter

最も優れた、選ばれし者の教団における仲間と過ごす特別な催しにあなたをご招待します。恵み深いヴァンダシア評議員が、かつて誰も目にしたことのない、歴史を変える公演を開きます。評議員は祝宴であなたと同席することを望んでいます。

移動と宿泊に関する詳細と共に、特別なコインを同封しました。行事は数日間行われますので、正装と教団のローブを含めた着替えをご持参ください。また、コインもお持ちください。会場まで確実に移動するために必要となります。

炎が揺らがず、洪水が収まらぬことを

商人王たちの積み上げられた文書Merchant Lords’ Compiled Documents

ラロスの焼け焦げた日記:

ガヴォスは終わった。

予想どおり、奴のしみったれた兵士たちは買収できた。クエンティンとエスディルにとって、説得して同意させる負担は大したものではなかった。我々は彼らを買っても釣りがくるほどの金を持っているからな。

奴が大切にしている金床と共に閉じ込められた今、絶え間なく挟まれる「公正さとは」という言葉を聞くことなく、本物の利潤の獲得に戻れる。奴に何が分かる?この市場の繁栄の理由は我々で、奴の説教や小物のおかげではない。

今日、新しく指名された裁定者が来た。彼は努めてさりげなく一週間分の取り分の増額を示唆し、「夕日の下」での休暇の計画のための金が足りないことを匂わせてきた。言葉の選び方がかなりわざとらしいような気がした。私の秘密の隠れ家を知っているのか?思っていたよりも不注意だっただろうか?

いずれにせよ、我々は今のところ、さらに気前よく心付けを渡せるの余裕がある。だが、奴が私の事情についてあまりにも知り過ぎた場合は、交代させる必要があるかもしれない。

* * *
クエンティンの秘密の往復書簡

友へ

間もなく金床を手に入れてやろう。既にガヴォス・ドゥーアに盗まれていると誰もが信じているものである故、惜しむ者などおるまい。必要なのは、同僚の大臣二人から助力を得るための根回しだけだ。最近の彼らは少々扱いづらいが、君が提供してくれた護衛のミノタウロスを紹介すれば、ずっと乗り気になるのは間違いない。

とは言え、少しの遅れも出してはならない。彼らが何かに勘づいたら、金床を確保できなくなるかもしれない。だから可能な限り早く、ゼニタールの大修道院に向かってくれ。

到着したら、鍛造用の火の背後で落ち合おう。私は我々が必要とするものを全て手にしているはずだ。

* * *

エスディルの古い日記

ラロスとクエンティンは私のことをガヴォスと同じぐらい愚かだと思っている。

奴らの企みは分かっている。彼を消し、在庫を拡張させる気だ。禁制の魔法の遺物に攻撃的な異国の獣。奴らはあの貪欲な手がつかめる、ありとあらゆるものを取引するだろう。

まあ、奴らにしてやられたなどと言わせるつもりはない!間もなくスクゥーマの積み荷が到着する。確実に大修道院全体で、それを売るのは私だけにするつもりだ。小物や野生のペットなどはすぐに飽きられるだろうが、スクゥーマの需要は常にある。

クエンティンは資金を用意した買い手がいるから、金床を回収して売るべきだと言っている。それが本当に労力を費やすに値する話なら、おそらく自ら行動を起こすだろう。念のため、私の印を移動させた。にぎやかな通りのはるか上にある、私が一番うまい酒を飲める場所にな。

沼の巨人についての研究On Marsh Giants: A Study

グウィリム大学、植物研究の副学部長ファネミル 著

数多くの同僚が、森のスプリガンの研究に生涯を捧げてきた。彼らの発見は森の霊魂を理解するための堅固な基礎を与えてくれているが、スプリガンの驚くべき親戚である沼の巨人に関する奨学金は、未だに乏しいのが現状である。巨人たちの生息地へのシロディール難民による侵略は、残念ながらここ数ヶ月で多くの死者を出している。この点だけを考えても、この謎多き森の巨人たちについて、詳しく知るため努力すべき理由となるだろう。

まず、沼の巨人が実際には伝統的な意味での巨人でないことを繰り返しておいたほうがいいだろう。体のサイズと牧畜を営む性質を除けば、沼の巨人はスカイリムの巨人と何の共通点も持たない。彼らは森の霊魂であり、古き自然の守り手の顕現である。この存在、あるいは力の正確な性質については神学の教授たちに任せるとして、重要なのは沼の巨人がスプリガンと同じく、野生の空間を保全する意思を持っているらしいことである。

沼の巨人の知的能力は議論の的になり続けている。多くの学者はスプリガンに初歩的な知能があることを認めているが、沼の巨人との接触機会は限られているため、彼らの認知能力を判断するのは困難である。現時点では、我々の知識の大半がアルゴニアンの民間伝承や伝統から来ている。ギデオンの学者によれば、原始的なアルゴニアンの大半はこの生物に近寄ろうとはしない。どうやら、ヒストはこの森の巨人との間に長く白熱した歴史を持っており、ヒストはアルゴニアンたちに(仲介者を通して)できる限り巨人を避けるよう求めているらしい。

その反対に、多くのルキウル(文明化されたアルゴニアン)は、沼の巨人に敬意を払っていることを私は知った。この生物の幅広く節くれだった足は大地をよく耕し、彼らの通り道にはしばしば、乾いた小枝や果物、その他の有用なものが吹き飛ばされて落ちており、ルキウルはそれを熱心に拾い集める。

私が最も興味深いと考えるのは、沼の巨人がブラックウッドの自然の営みとリズムに果たしている役割である。私の調査によれば、この生物は自然という布地に欠かせない継当てである。大地を単に耕すだけでなく、沼の巨人は枯れ木を倒して若い植物のための隙間を作り、貴重な苔の繁殖を助け、繁殖力の強い菌類の発達を抑え、野生の猫やその他の捕食者を近づけないようにして鳥類の多様性を促進している。そしておそらく最も重要なのは、巨人は木こりや鉱員、商人などが荒らされぬ沼を傷つけることを防いでいる点だろう。

私はこの森の巨人と共存する方法を見つけられると心から信じているが、そのためには労働者と地域の指導者の双方に忍耐と柔軟性が必要になるだろう。この生物と必要もなく戦うことのないよう願いたい。沼も森も彼らの存在に依存しているのだから。

象牙旅団についてOn the Ivory Brigade

評議員長にして軍団長会議参加者、タルニアン・ロヴィディカス 著

国政の研究から学ぶべき永遠の教訓のうち、「平和を望む者は戦争に備えよ」ほど変わりなく有効なものはないだろう。近隣諸国との競争に没頭し、問題を力で解決する誘惑に屈することには危険が伴う。力を示すことで敵を思いとどまらせる方が遥かによい。思い留まらせることに失敗した場合は、最悪の事態に備えている指導者の方が、この義務を怠った指導者よりも遥かによく領地を守るだろう。

残念なことに、レヤウィンは今この古い問題に悩まされている。我々はもはやシロディール軍の保護を期待できない。帝国の崩壊により、我々は潜在的な敵対者に取り囲まれた独立都市国家となった。三旗戦争で中立を維持することはもう何度も繰り返し宣言してきたが、同盟のどれかが二つの危険な事実に気づくのも時間の問題ではないだろうか。ブラックウッドは裕福かつ無傷であり、さらにニベン川の河口に位置するレヤウィンには、測り知れない戦略的価値があることをだ。レヤウィンを支配する者はタムリエルのどの港からも、直接帝都に艦隊を派遣できる。大胆な一撃さえあれば、ルビーの玉座の争奪戦を決することができるのだ。ジョルン、エメリック、アイレンの誰一人として中立の侵害を望まなかったとしても、果たして彼らの競争者たちも同じ気持ちであると賭けるだろうか?他の者の手に渡さないためだけに、彼らの誰かがレヤウィンを掌握しようとしてもおかしくない。

こうした事実を考慮すると、三旗戦争がブラックウッドにまで飛び火するのを防ぐ道は一つしかない。レヤウィンも自らの強力な軍隊を育てることだ。今すぐに。

これは破滅的に金のかかる提案に見えるかもしれないが、私もよく考えた。同盟の集中攻撃を真っ向から打ち破れるほどの勢力は必要ないと考えている。必要なのは適度の防衛力を示し、どの同盟もレヤウィンを確保しようとすれば損害を受け、競争者との戦いに致命的な不利を被ると分からせることである。そのために完全な軍団を展開する必要はない。訓練を受け武装を整えた、強力な旅団が1つあれば短期的には十分なはずだ。

元帝国軍所属のライアン・リオレ隊長は、レヤウィンの紋章にあしらわれている白い馬にちなんだ象牙旅団という名称を提案してくれた。私は次の軍団長会議にこれを持ち込むつもりだ。名称について議論するのは無駄だと思うかもしれないが、名前には心を奮い立たせ、動機を与え、単なる概念を現実に変える力がある。

当然ながら世界最高の名前をつけても、それを担う兵がいなければ無意味だ。そこで帝国の騒乱が我々の有利に働く。ブラックウッドに滞在中の多くの帝国軍団兵はもう数ヶ月の間、シロディールから給金も命令も受けていない。彼らの部隊は、もう実質的に解体しているのだ。我々はこうした遭難状態の軍団兵を積極的に雇用し、繰り越し分の給金を支払い、この地域の守護者としての彼らの役割を認めることで、我々の大義に役立ってもらうべきだ。数百人もの経験豊富な帝国軍団兵がいれば、レヤウィンに必要な戦力を築く素晴らしい土台ができるだろう。

インペリアルの熟練兵から成るこの盤石な中核を礎として、跡は故郷を守るために戦う力と意思のあるブラックウッド出身者で民兵を組織すればいい。民兵は経験豊富な仲間から軍の規律や帝国式の戦闘技術を学べるだろう。また私の考えが正しければ、地域の民兵は熟練兵たちにブラックウッドの地理や人間、気候条件などについての貴重な知識を教えられるはずだ。
今は危険な時代である。しかし正しい指導と軍団長たちの支持があれば、我らが象牙旅団はきっと試練に耐え抜くことができると信じている。

身代金のメモAdder’s Ransom Note

お前たちは重要な判断を誤った。

我々が来た時にお前がいなかったのは、単に運がよかっただけだ。

アヴェルノ兄弟は預かった。殺すつもりだ。

彼らを助けたいなら、ギデオンの地下の騒動の輪に来い。一対一で話をつけよう。

パンジェント・アダー

水避けの巣の建設The Making of Wading-Nests

ブラック・マーシュにおいて様々なアルゴニアン部族に招かれた個人的な経験に基づく、ラニャールネ・アビティウスの文化概説。

水避けの巣と呼ばれる形式の家屋は部族の土地のあちこちで見られるが、新しい巣の建設は通常、共同体の活動として実施される。水避けの巣の実際の建設手順は簡単なものだ。大きな木の杭を蔓やロープで束ね、縦にして地面に突き立てる。その部族が居住する土地によってはまず地面に穴を掘り、杭をしっかりと固定してより大きな重さを支えられるようにするが、洪水が少なく、地面が硬い地域でこの工程はあまり一般的でない。

木の杭が立ったら、それが水避けの巣の土台となる。床は杭にまたがるように建設され、その上に住居の残りの部分が築かれる。部族によっては巣の床を支柱となる脚の面積へ正確に合わせて作るが、それよりも広く床を作る部族も一部存在する。これは虫が木の土台を昇って、家の中に入るのを防ぐためである。

個人でも数日かければできそうなこの仕事は通常、部族全体の共同作業として行われる。私がその理由を尋ねると、返ってきた答えはいくつかのテーマに分かれていた。最も一般的なのは、水避けの巣が落ちるか洪水で流されれば、被害を受けた巣全てが再建されなければならないから、というものだ。個人が自分の力で家を作ることはできるが、複数の巣が必要な場合はより計画的に行わなければならない。私の質問に対する他の答えは、楽しみと関係していた。どうやら、部族はこのような計画を必要な仕事としてのみならず、娯楽としても等しく重視しているようだ。

おそらくもう一つ答えがあるのではないかと思う。大きなグループは、建物が脆弱な部分を発見して修正するのが容易だからだ。大工仕事や森林管理についての知識は個人で異なる。共同体全体をこのプロセスに包摂すれば、重要な過程を見逃さずに済む。またこれは、知識が部族の若いメンバーにも受け継がれることを保証する。私は多くの若いアルゴニアンが、水避けの巣の作り方を卵の母親や部族の長老から教わっているのを見た。この点からすると、水避けの巣の建設を部族の仕事として扱うことには、いくつもの目的があると言えるだろう。

聖コエリシアの饗宴 第一巻The Feast of Saint Coellicia I

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

序章

親愛なる読者よ、まずは歓迎の一言を述べたい。あなたをこの書へと導いたのが単なる好奇心か、それとも食の文学への燃え盛る渇望かは測りかねるが、いずれにせよここに来たからには、ぜひともこの第二紀中期において最も有名なニベン流域南東の料理書に数えられる、本書の成り立ちに関する説明を加えておきたい。というのも、聖コエリシアの饗宴はこの時代、この地域における料理本の中で25位以内に入る有名な文書であることは確実であり、14位以内に入るかもしれないからだ。

帝国の中心地よりも外側の出身である読者や、八大神の光を信仰していない人々のため、案内を試みたい。以下に続く書はレマン二世の後継者にして、帝国行政の大部分を最高顧問に委ねた放蕩者とこの時代の学者の大部分に評されるブラゾラス・ドール皇帝の統治時代に行われた、豪勢な宴会を詳細に記したものである。職務の重圧から解放されたブラゾラス皇帝は、飽食や無為、遊興を比類のないレベルにまで進歩させ、それはロングハウス皇帝の時代が来るまで続いた。

この本が記録しているのは、アレッシアの奴隷蜂起におけるやや知名度の低い殉教者、聖コエリシアを称えるために行われた、ブラゾラス皇帝の饗宴である。聖コエリシアは通常、収穫の月の終わり頃の数日間に断食によって称えられるが、これは彼女が拷問の末に餓死したことによる。ブラゾラス皇帝は臣下の敬意を再び得るため、断食を饗宴に変えたのである。皇帝は自ら率先してこれを実行し、無数の料理人や宮廷人、美食家たちは皇帝が秋を過ごすレヤウィンの地に集まり、饗宴を開いた。

そこで起きたのは12時間をかけて40皿を食べるマラソンだった。5皿のコースが8回に分けて用意された。私はそれぞれのコースの皿を1つずつ詳細に紹介していこうと思う。読者の理解を助けるために、必要に応じて注釈を付けながら。

聖コエリシアの饗宴 第二巻The Feast of Saint Coellicia II

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第1コース

著者による注記:レマン宮廷における饗宴の伝統として、第1コースは味覚を活性化し、腸を活発にするように構成されていた。

伝統的に聖コエリシアの断食中に唯一食べることが許されていた「パン屑」。レヤウィンからブラヴィルに至るまで、あらゆるパン焼き窯から集められたパン屑がスプーンに一杯ずつ各招待客に出された。ブラゾラス皇帝の愛人だった「牙を見られぬ者」は、司祭がパン屑の教義を語る間に待ちきれず、側にいた5人のスプーンを口に入れてしまったと言われている。

生きて殻に入った状態で配膳され、テーブルの脇でむき身にした「牡蠣」。ニベンの伝統ではオリーブのつけ汁の他に、煮つめたワインをみじん切りの玉ねぎに混ぜたものが付け合わせとして招待客に提供された。より冒険心に満ちた招待客には、牡蠣にブラゾラス皇帝が好んでいたアルゴニアンのピリッとしたソースをかけることが許された。牡蠣を食べ終えると、ブラゾラス皇帝はレヤウィンの貧しい人々に殻を配るよう指示した。皇帝が牡蠣の殻で貧しい人々に何をさせるつもりだったかは定かでないが、それを言った時のブラゾラスはすでにワインを何杯もがぶ飲みした後だったことを記録は示唆している。

丸ごと1羽の「溺れたガーネットビーク」。ガーネットビーク、より正確に言うならトパル・ガーネットビークは、貴族の食卓で一般的な品だった。ほとんどの場合、鳥はワインで溺死させた。彼らは速やかに羽をむしられたのちに給仕され、招待客は通常頭の上から布をかけてそれを丸ごと食べた。これは表向きにはワインの蒸気を逃がさないようにするためとなっていたが、実のところは食べる際にしばしば鳥から激しく噴き出す内臓や分泌物を封じ込めるためだった。長年に及ぶこの習慣が、ガーネットビークを絶滅に至らしめた。

「舌のローフ」のミントとチャービルのグリーンソース添え。もう一つの貴族の食卓の定番である舌のローフは、それぞれの家庭に見合った何らかの動物の舌を集めたもので作られていた。この食事の場合は、ほぼ間違いなくアヒルの舌で作られたローフだったようだ。

「エッグパフ」の塩炭焼き。ブラゾラスは鶏卵の燻製を出すことで有名だった。これは大抵の場合、数ヶ月もの間泥に埋められていた。そうすると白身は硬くなりマホガニー色を帯びるが、黄身は緑色の凝固物に変化した。アルゴニアンから得た技術を使って卵に驚くほどの弾力性を与えることができたブラゾラスのシェフたちは、針によって殻を貫通させた蒸気で4倍の大きさになるまで膨張させた。卵を最初に割った時の燻製の芳香は、極めて満足が得られるものだったと招待客たちは記している。

* * *
第2コース

著者による注記:最初の塩味の料理が終わると魚が出された。魚の定義は海、川、湖の生き物全てにまで拡大されていた。

「ニベンパイクのクリーム和えソレル詰め」、サフランの皮包み焼き。これは典型的なニベン川料理の見本とも言えるものを、ブラゾラス皇帝の食卓に適合するよう昇華させたものだ。サフランは平均的な漁師にとって決して手が届くようなものではなかったが、ソレルやその他のハーブと共に詰め物をするのは当時も今も一般的な調理法だ。サフランの皮は魚を食べられる黄金で包みたかったブラゾラスと、それを馬鹿げた考えだとしたシェフの間の妥協案だと言われている。

生きたマッドクラブから吸い出した「生の白子」。聖コエリシアの饗宴はトパル湾でマッドクラブが産卵するのと同時期に行われる。卵を抱えた雌の蟹が貧者の食卓に最適である一方で、貴族たちは雄の蟹の濃厚でミルクのような白子をすすることを好む。ゲームの愛好家であるブラゾラスは召使に大量の生きたマッドクラブをテーブルに放り投げさせ、招待客に手と口だけでこの生物に立ち向かい、白子を取り出すよう要求したと当時の歴史家は記している。

「ビーバーの尾」の小麦粉巻きフライ。ブラゾラス皇帝はビーバーの尾を、人が食することができる最高の白身魚だと主張することで知られていた(だが、どのシェフもその肉はいかなる川魚よりも硬く色が濃いと言うだろう)。ブラゾラスはビーバーの尾だけで楽しんだため、記述された調理法にはこのメニューの他の部分で見られる付け合わせがほとんどない。

「子イルカ」の母イルカミルク煮。子牛を同じように馬の乳で煮込んだノルドに人気のごちそうを捻じ曲げたものだが、あれは家畜で作られるものであり、イルカではない。イルカの肉と乳は地上のいかなる生物のものよりも濃厚なので、この料理には例えようもないほどコクがある。残念ながら、香味料と付け合わせは失われてしまった。

「スローターフィッシュの肝」のロースト。料理の記録では定説となっているが、スローターフィッシュの肝は中に含まれる毒を取り除いてからでなければ提供するのが難しいため、通常は避けられていた。ブラゾラスがスローターフィッシュの肝を100人以上の招待客に出したのは、その料理を作るために契約した30ものアルゴニアンの部族に対する信頼を示す証拠だ。彼の信頼は適切だった。呼び集められた客人たちの中で、失明と腸の弛緩に苦しんだのはネッティオ公爵だけだったからだ。

聖コエリシアの饗宴 第三巻The Feast of Saint Coellicia III

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第3コース

著者による注記:慣習に従い、魚料理のあとに野菜料理が続いた。

「しんなりさせた葉物野菜」、オリアンダーコーストのビネグレットドレッシング添え。ケールと思われる野菜の簡素でボリュームたっぷりなサラダは、おそらくはこの晩のもっとも衝撃的な料理で、オリアンダーコースト・リザーブを使って作られたビネグレットと組み合わせられた。このアリノールから輸入されたワインは大変希少で、サファイアが入っているゴブレット(それもハイエルフの主張によれば、ゴブレットには未使用のサファイアの飾りがそれぞれ必要とされる)で飲まなければ、真の味わいを楽しむことができないと言われている。このようなビンテージをサラダドレッシングに使うことは、ある者にとって巨万の富の証となるが、他の者から見たら途方もない愚かさの証でもあった。

強くたたいて伸ばした「アンバーパーシモンの芯」。多くの人はアンバーパーシモンの甘い果肉を楽しむが、グリーンシェイドのマーブルク郊外にある果樹園はこのフルーツの芯の多い種類を栽培している。この高価でもちもちとした芯は木槌で平らに潰され、軽くガーリックオイルがまぶされていた。

「キノコの塔」。組み立てられた料理が12フィートを超える高さだったためそう呼ばれた。この技巧を凝らした塔は白金の塔を模していたと言われているが、現代まで残っているスケッチは存在しない。塔の崩壊を防ぐため、召使たちは改造された竿状の武器を使い、招待客のために塔の天辺から下に向かってキノコを選んでいった。

ブラゾラスのシェフによるオリジナル料理、「シンムールのニンジン」。この一品の中心となるのは、シェイディンハル郊外の農民によって発見され、ブラゾラスの城代が公表されていない金額で購入した驚異的な大きさのニンジンだ。高さは十分に成長したブレトンと同じくらいで、幅はホグスヘッドほどもあったと言われている。ニンジンは丸ごと穴に埋め、炭で焼いた後、酢とシロップを添えて出された。

トリュフ油のアイオリ添え「昆布のフリッター」。トパル湾の島々で採れる硬い昆布は、コリンス産の茶に数日間浸してその革のような食感を柔らかくする。昆布に小麦粉をまぶし、製本会社の手法で折りたたむ。溶き卵に浸し、全体にパン粉をまぶしたらラードに入れる。出来上がった品には複雑な食感が詰まっている。サクサクとした衣の下には噛み応えのある層があり、内部はクリーミーだ。

* * *
第4コース

著者による注記:地位の低い者の家庭では、大抵穀物料理が最後に食された。肉類が簡単には手に入らなかったためだ。

ブドウの果もろみをたっぷり入れた「マーラの目」。通常は子供向けの菓子の扱いである味付けをした米球を、ブラゾラス・ドールは悪趣味な冗談として出した。その頃、彼の義理の兄弟のアンウェンテンデが海賊に捕らわれ去勢されたばかりだったのだ。その冗談が歓迎されたか黙殺されたかは、後世のために記録されていない。

バターとクリーム付き「ブラゾラスのサプライズ」。簡単なロールパンだが、ブラゾラスの指示でそれぞれに独自の具が入ったものが無作為に招待客に配られた。歴史が示す限り、皇帝のサプライズには生きた鳩が入っていたこともあったらしい。一方、とある無名な従騎士が自分の分にブドウ大の真珠がぎっしり詰まっているのを見つけたこともあったようだ。

伝統的な配膳方式の「アルムフィンガー」。アカヴィリ様式のオーブンを使うブラゾラスの厨房では、サルトリスを数倍に膨らませて蜂の巣のような奇妙な食感にすることが可能だった。マスタードを混ぜたハチミツの鉢がテーブルの脇に用意され、招待客はその中で粘つくソースを手全体に絡めてから、膨らませたサルトリスの中に入れられるようになっていた。その後、膨らませたサルトリスとソースは手から舐めとられた。参加していたカジートの外交官はこの不快な習慣に潔癖な感性が耐えきれず、怒ってその場を飛び出してしまった。シロディールとエルスウェアの関係の回復には数年間を要したとのことだ。

煮込んだハーブのソースに入れた「ニベン編み」。ニベンの編み麺が珍重されたのはその長さ故だったため、皇帝ブラゾラスは自らのシェフに、決して9フィート以下の麺を作ってはならないと命じた。

付け合わせなしの「宗教的なウエハース」。聖コエリシアの断食では、終わりの印としてウエハースが食された。ここでブラゾラスは、断食の終了と豪華な食事の到来を示すものとしてウエハースを出した(ここまでのコースでは肉類を強調していなかったため)。出どころの疑わしい話によれば、皇帝ブラゾラスは聖コエリシアの骨を掘り出してすり潰し、ウエハースの小麦粉に混ぜ込ませたとも言われている。当然ながらこれはばかげている。と言うのは、聖人食の習慣はそれより10年ほど前に禁止されていたからだ。

聖コエリシアの饗宴 第四巻The Feast of Saint Coellicia IV

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第5コース

著者による注記:ジビエと鶏をテーマとした第5コースは、「空の獣」を広く解釈したものである。注目すべき点として、レヤウィンはブラック・マーシュに近いため、このテーマは空を飛ばない様々な生物を含みうることがある。

細切れにした「クリフストライダーの膜」の煮込み。この料理はシチューに似ているが、そんな呼び方は侮辱も甚だしいとダークエルフは言う。モロウウィンドの田舎で食されるこの料理は、おそらくブラゾラスが大臣のアーヌス・デムネヴァンニへ内密に謝罪するために供したものと思われる。皇帝は当時、デムネヴァンニの妻と積極的に同衾していたからだ。

「コウモリの串焼き」のヨーグルトとピスタチオがけ。またしても、ブラゾラスは平凡な料理を最高の素材と見事な調理技術によって、帝国の饗宴に相応しい一品に変えている。コウモリはブラックウッドの湿地で頻繁に見かける生物であり、地元の漁師にとっては魚が釣れない時にも豊富な肉の供給源である。網で捕らえたコウモリを串に刺して、ヨーグルトソースを塗りながら丸焼きにし、砕いたナッツをまぶす。この料理は大変な人気を博したため、ニベンのコウモリ生息数が壊滅的に減少したほどである。

ブランデーで仕上げた「レマンのスープ」。この料理は主に冗談のために作られたものである。スープはこれの前に出されたコウモリの串焼きと同じく一般的な料理だが、ブラゾラス皇帝が平凡な食事を提供することは決してない。肉汁で野菜や豆類を煮込むのではなく、ブラゾラスが供するスープは鴨の眼球を使っており、これは食事の開始時に食べさせた鴨の舌と同じ鴨から取った眼球である。ブラゾラス皇帝は全員が出された食事を食べ終えるまでは、スープの材料を客人たちに教えようとしなかったと言われている。

「詰め物入りの白鳥」、付け合わせは不明。この料理は供された人々にとって最も強く記憶に残った一皿であり、しばしば「ブラゾラスの馬鹿げた茶番」と呼ばれている。白鳥に様々なものを詰めた料理だということは分かっているが、あまりにきつく詰め込まれていたので、白鳥はテーブルに置かれた途端、爆発したのである。サテンやダマスクが油と肉汁でぐしょ濡れになり、テーブル付近にいた全ての人々が嘆いた。

「クチバシのゼリー」およびその他のゼリーのクリームアニスソース添え。最後の一皿はウッドエルフの漬物作りの技術を使って柔らかくしたクチバシで、さぞかし見ものだったろうと思われる。残念ながら、この料理に関する記録は少ない。直前に供された白鳥の爆発のせいで、部屋には陰鬱な空気が漂っていたからである。

* * *
第6コース

著者による注記:大半の饗宴について言えることだが、肉のコースはシェフと主催者が食事全体で表現しようとしている中心的なテーゼが明らかになる部分だと考えられている。ブラゾラス皇帝がこのコースで何を伝えようとしたのかは不明だが、もしかすると聖コエリシアの殉教を快楽趣味の中に沈めようとしたのかもしれない。

「ラクダの丸焼き」の羊肉と鶏肉と卵とナッツ添え。ブラゾラスが一夜の話題をこの茶番で持ちきりにするつもりだったのは間違いないが、知ってのとおり最も人々の記憶に残ったのは白鳥の詰め物だった。それでも、ラクダの中に羊を詰め、羊の中に鶏を詰め、鶏の中に卵を詰め、卵をナッツでコーティングした姿は確かに見ものではあった――しかもシェフはこの化け物を全てテーブルのそばで切り分けてみせたのである。シナモンの香りが何週間も取れなかったと言われている。

「ヤマネ」のゼンマイ添え。典型的な快楽趣味の見世物であり、ブラゾラスは数週間、レヤウィンにいる浮浪児を1人残らず雇い、賓客に供するためのヤマネを集めさせたという。ブラゾラスはヤマネをガチョウの油で徹底的に肥えさせたので、食べた時には、ヤマネの骨までも舌の上で溶けてしまうほどだったという。

「若黒鶏」の亀甲焼き。ホワイトローズの黒鶏種はその猛毒の肉で知られている。有毒の甲虫を食べるせいで、体に黒い斑点ができるのである。ブラゾラスはこの食事のためにまたしてもアルゴニアンの発明を採用した。まず、普通の亀に彩色を施してこの若鶏の肉を食べさせる。亀は毒を無効化できるからである。あとは鶏肉が完全に消化される前に亀を殺し、丸焼きにして客に供すればよい。亀の肉は平凡だが、体内に入った若黒鶏の肉の病的な味わいは、五感を刺激する逸品である。

「センチの心臓のフィレ」のサトウキビ添え。この料理は挑戦的である。多くの賓客はセンチの心臓を食べるという象徴的行為を問題視したからだ。しかしこの臓器を食べることを選んだ者たちは、通常は硬いはずの心臓の筋肉がとても柔らかく処理されていることに感動した。

「骨髄と腱」のブラウンソース添え。この料理はブラゾラスの前任者のシェフ、アルベレット・ソーヴィンが発明したもので、帝国の宮廷で長く人気を博した。インペリアル料理の伝統にアカヴィリの影響を交えており、特に腱の味つけと調理法にそれが現れている。腱は雄牛の骨に浸され、骨髄をすくうための道具として用いられる。

聖コエリシアの饗宴 第五巻The Feast of Saint Coellicia V

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第7コース

著者による注記:第7コースはこの晩の唯一の甘味料理だ。これは高貴な晩餐会の形式から逸脱していた。通常は少なくとも2つの甘味コースが食事の前後にあったからだ。だが、この逸脱は大いに成功し、すぐに伝統的なコース料理の順番に取って代わった。

砂糖チーズのアイシング付き「ナツメヤシとベリーのケーキ」。このコースの1品目となるこのケーキは極めて美味であったが、それよりも驚くほどの大きさ(直径10フィート弱)と、指1本分程度の高さしかないことで知られていた。ケーキの表面にある砂糖をまぶしたチーズは複雑で美しい形に編み上げられており、切り分けられるのを見て多くの人が涙した。

「ファイアベリータルト」。中身が漏れたり服を汚したりする心配をせずに持って食べられるように折り込まれたこのタルトは、この晩の画期的な取り組みの一つだった。これらの形状は魔術師ギルドの研究の賜物だと言われている。

カルダモンシロップ添え「ノルドのミルク」。「ノルドのミルク」の興味深い部分は、ノルドと無関係ということ以外、未だ完全には分かっていないことだ。シェフはミルクを凍った半固形の状態にできて、この世でもっともおいしいお菓子の一つであること以外は。もちろん作るためにつぎ込む金額を思えば、これを食せるのは極端な特権階級だけだ。

シナモン入り「焼き蜂の巣」。ハチミツが噴き出す蜂の巣をオーブンでじっくりと火を通したものは、最高に美味だったことだろう。だが、ブラゾラスがどのようにしてこれだけ多くの巣を確保したのか、はっきりとは分かっていない。

「プラム煮とクリーム」。何やら楽しげな雰囲気だが、名前とは誤解を招くものだ。ブラゾラスはホワイトローズへの探検隊と契約してから、以前のレヤウィンでは見られなかった果物を出すようになった。ここでプラムと呼ばれているものは、アルゴニアンの間で食べると舌が痺れるトカゲフルーツとして知られていた。その効果はローズウォーターを飲むだけで消えるのだが、ブラゾラスが少なくともわずかな間自分が楽しむため、その情報を招待客に伝えることを差し控えていたのはほぼ間違いない。

* * *
第8コース

著者による注記:この晩の最後のコースは濃厚なチーズで構成されていたが、これは胃を落ち着け、消化を促すことを意図したものだった。このコースを食べ切る能力があった招待客はほとんどいなかったと記録は示しているが、ここまでの料理の数々を思えば十分にうなずける。

「メロン皮チーズ」。この晩のために車輪型のメロン皮チーズの塊が2ダース注文された。その大きさは最も小さいものでも3個積み重ねた荷車の車輪ほどもあったと言われている。硬いが砕けやすいこのチーズの名は、2年熟成させると皮の部分に現れる興味深いへこみ傷に由来している。

ローリエの葉に入れて配膳された「ラッカーウェブチーズ」。凝乳を入れる前に、型の中へ手間をかけて糸あめ細工の網を作り上げる。この形状は動物の血管に似ており、それぞれ枝分かれした部分の中は空洞になっている。型に凝乳を注ぎ、チーズが十分に硬くなったら、刺激的な酢を網の中に流し込む。網は融け、チーズの中全体に素晴らしい風味の筋が残される。

「エイダールチーズ」。スカイリムからの輸入品。チーズ好きの食品庫の定番だ。

「レッドアーモンド」。レッドアーモンドの料理は幸運の印として知られているが、ブラゾラスがどのようにしてこれほど多くの量を客人に提供できたのかは依然として謎である。これらのナッツは、ある種のアナグマの消化管を通過したものでなくてはならず、風味の熟成に時間がかかるため、入手が困難なのだ。

「砕いた桃の種」。これはしばしばアリノールの様々な果樹園から来た客人に、より伝統的な挽きナッツの代替品として出される。

走り書きされた呪文Scrawled Incantation

母の悲しみを深く覗き、怒りの種を引き抜け

冷酷な亡霊を呼び出し、力を借りて魂の道を照らせ

長くねじれた影で、血によって奪われた命を蘇らせよ

殺害に奪われたものを取り戻せ。高すぎる代償などない

大司祭の命令High Priest’s Orders

ブラック・ドレイクの邸宅以来、あのウッドエルフの射手にはずっと悩まされている。彼女とその友人は、レオヴィックの秘密の真実を知るまであとわずかというところまで来てしまった。また、奴らは我々が四つの野望を手にしようとする懸命な取り組みの邪魔をし続けている。

奴らを闇の一党の兆候で煩わせるのは、しばらくの間だがうまくいった。時間を稼げた。そろそろ終わらせる時だ。

大司祭として、奴らを闇の一党の聖域まで追跡するよう命じる。遺跡にレオヴィックが隠した物を回収し、奴らを皆殺しにしろ。暗殺者とレヤウィンの傭兵も同様だ。そしてウッドエルフが死んだら、まだ聖なる書物を持っているかどうかを確かめろ。あの書が欲しい。

帝国の策略の歌Imperial Deception Song

ワインあふれる金のゴブレット
美しい目をした官能的な踊り子
ルビーのサークレットを頭上に戴く
毛布はもつれ、ベッドに倒れる

燃え盛る炎に熱い油脂が滴る
欲望に口を開けばブドウが揺れる
青いベルベットと黄金の縁が満ち
あさましき者が取り囲み喜び

だが素晴らしいものには代償がある
黄金にも隠せぬ腐敗がある
色鮮やかに塗られた唇の下に牙が潜む
船から矢のように無垢が落ちる

疲れた脚が血を吹くまで踊る
珍味とハチミツ酒に溺れる
素敵な策略が黄金を曇らす
何を売ったか最後に気付く

伝令が運んだ手紙Courier-Delivered Letter

好奇心に満ちた目があらゆる場所にあるため、このような形をとることをお詫びしたい。

お前が是が非でも知りたいと思っている情報を持っている。あの奇妙な遺跡で共に過ごした後に知った情報だ。

ギデオンの南側にあるアムニス邸に来てくれ。お前とあのウッドエルフだけで。

誰にも言うな。最大限に注意を払い、また俺を信用してくださるよう願う。俺の意図が誠実なものであることを、誰もが信じるわけではないだろう。

塗られた目の要求Demands of the Painted Eye

ボーダーウォッチの指揮官へ告ぐ

我々は要塞を掌握した。中に残された民間人の招待客、労働者、要人は全て我々の囚人となった。彼らの身柄を無傷で解放するのと引き換えに、以下を要求する:

一、象牙旅団の完全な武装解除と解散。また、全士官と官兵をソルスセイム島に送り、生涯そこで追放すること。

二、以下の囚人の解放:
-アルクトゥルス・ヴァノ。現在スキングラードの議員暗殺により収監中。
-ハイマンドリル。現在ネクロムでの放火により収監中。
-ベンコル。ホワイトランの虐殺者。現在陰謀の罪で収監中だが場所は不明。
-ダガーフォールの5人。現在カバナントに対する犯罪によりマッディング・ウインド監獄に収監中。
-レディ・ベンウィン・スローンベイン。現在セスパーに追放中。
-その他我々が要求する囚人全員。

三、ケナーシズルーストを政治的に独立した地域とし、ルビーの玉座、アルドメリ・ドミニオン、およびその他のあらゆる外部の権威者から干渉されることなく自由に独自の法を作り、利益を追求できるようにすること。

四、全ての定命の者が自己を統治する普遍的な権利を受け入れ、自身の権力機関による独立した統治を認める、シロディールの貴族階級によって署名された通知の作成と配布。加えて、これらの冊子には、前述のような自立した地域の制定と、それが塗られた目の価値観を共有する者を歓迎する地域であることを記載するものとする。

五、それぞれが3本以上のマストを持つ4隻の船の係留。航海に必要な食料および物資を完全に蓄えた状態でブラックウッド南沖に係留することとし、併せてボーダーウォッチから当方への安全な経路を保証すること。

上記のいずれについても交渉は受け付けない。人質の命と引き換えに、それぞれの要求は完全に達成されなければならない。

反逆者の色褪せた手紙Rebel’s Faded Letter

もうすぐ事態が急速に進展する。

あの横暴な裁定者ガヴォスから、大修道院を解放する計画がある。奴のある兵士と話したら、彼らも我々とそう変わらないことが分かった。ただ生活と養うための金を稼ごうとしてるだけだ!彼らも裁定者を快く思っていないし、阻止する人々に協力する意思がある。彼らが味方につけば、戦うことなく裁定者を追放できる!

交易大臣たちは、裁定者ガヴォスが権力の放棄を拒んだら投獄するつもりだ。彼らはすでに魔法の封印を作り出すため、魔術師も雇っている。3つの印でできた封印だ。それぞれの交易大臣の印だよ。奴を解放するには3人が同意しなければならない。だから、あいつが二度と日の光を拝めないってことは請け負う!

今晩、いつもの場所で会おう。計画と今後の行動について説明する。

秘密の保持Preserve the Secret

ディサストリクス・ザンソラ

四つの野望の時が目前に迫っている。我々の活動を加速させなければ、数十年におよぶ計画が水の泡になる。レオヴィック皇帝は野望を隠し、その場所を私に知らせる前に殺された。だが彼は帝国のあちこちにある様々な隠し場所に、手掛かりを残した。

処刑する前に同僚の評議員たちを追求して、彼らが気付いている秘密の一部を探し出すこともできるだろう。もちろん、彼らはロングハウス帝の秘密を保護するために死なねばならない。殺害の責任は闇の一党に負わせる。それによって目覚めの炎教団への疑惑を、可能な限り長くそらす。また、レオヴィックの隠し場所が彼らの元のブラックウッドの聖域に一つ隠されていることが最近分かった。

最高の侍者を送り出してくれ。執事ファルル・ルパス、アボール、ファレリア、イティニア、ジリッチ、ソフス評議員を殺すのだ。ロヴィディカスも殺す必要があるかもしれない。元評議員長は、安寧に暮らすには賢すぎる。恐らく起きていることに気づき、我々が四つの野望を確保する前に行動を起こしてくるだろう。

私も自分自身に対する攻撃を計画する。失敗に終わるものだが、闇の一党をさらに関与させる。

忘れるな、私に接触してはならない。私のほうから連絡する。適切な時が来るまで、私の正体については一切明かされてはならない。

我らが炎と洪水の王の名において
大司祭ヴァンダシア

冒険者求む!胸躍るチャンス!Adventurers Wanted for Exciting Opportunity!

新たに発見された遺跡の探索のため勇敢な人を募集します。栄光と金を手にできる、またとないチャンスです!

探検についてはジギラにお尋ねください。

〈別人の筆跡で書かれている〉

大仕事よ。合法とは言えないようだけど、お金は本物よ。レッドメイン砦の北で会いましょう。お友達を連れてきて。それじゃまたね、弟くん

ミッリ

目覚めの炎教団The Order of the Waking Flame

ペレグリナ・ポムピタラスによる暴露記事

熱心な読者の皆さん、ご注目あれ!この数ページに及ぶ出来事の記録者である私が、ブラックウッドの貴族の間で急速な広がりを見せている最新の集団の真実を明らかにしよう。この集団について、ある人はレヤウィンとギデオンの有力者用の、単なる社交クラブと考えている。またある人は、暇を持て余した金持ちのための罪のない道楽だと見ている。とんでもない、熱心な読者よ!目覚めの炎教団は、もっとずっとたちの悪いものだ!

象牙旅団の士官を含め、この動きに詳しい当局者は彼らを比較的新しい哲学者のクラブだと考えている。彼らに言わせれば無害だそうだ。高級な宿屋や酒場の奥まった部屋で生み出された新たな気晴らしに過ぎないと。これほどの誤りがあるだろうか!目覚めの炎教団はその程度のものでは全くない。実際には、彼らは破壊のプリンスと呼ばれる、あのメエルーンズ・デイゴンに身を捧げる危険なデイドラ教団なのだ!

このデイゴンの狂信者たちの望みは何か?実に明白だ。タムリエルの完全破壊に他ならない。もしかしたら全ニルンの破壊さえも!さらに詳しく説明しよう。

綿密な調査の結果、以下の結論に至った。一つ、新たに結成された志を同じくする裕福な思想家の集まりのように見えるものは、実際には少なくとも皇帝モリカルの時代、おそらくはそれ以前の時代から秘密裏に活動してきた大規模な組織である。二つ、彼らは間違いなくデイドラ公の信条に心服して従う宗教的な組織である。三つ、彼らが崇敬するのは、破壊のデイドラ公、洪水と火の王メエルーンズ・デイゴンである。四つ、この教団はロングハウス帝とつながりがあるが、彼らの歴史のその部分を明らかにすることは控え目に言っても困難である。五つ、潜伏していたこの教団が姿を見せるようになったのは、彼らが忠誠と献身を強く主張するための何らかの活動を大々的に行うことを計画しているからだと拙記者は考えている。また、それが大惨事を引き起こす自然災害と同程度に破滅的なものであるのではないかと危惧もしている。

教団の組織そのものについて述べると、調査の結果は大司祭が指導していることを示唆しているが、その正体は今のところ巧みに私の目をかわしている。教団内の個々の小集団は「破滅の運び手」と呼ばれる有力者たちの指揮下にある。他の高位には「災害の化身」、「カミソリ」、「破壊者」などがある。しゃれているではないか?こうした肩書がこの教団の本質を示すわけではないだろうとおっしゃるなら、ダメ押しの情報を公開させていただこう。

私はギデオンの近くにある古い遺跡で行われた目覚めの炎の儀式に潜入することに成功した。怪しい数人を尾行し、その中の1人からローブを拝借し、背後をうろついて観察するのは実に容易だった。目撃した儀式は心底ゾッとするものだった。厳粛な儀式を取り仕切っていたのは「破滅の運び手」だ。儀式はデイゴンに対する祈りと歓喜の声で始まったが、彼のことはほとんど数多くの大げさな称号のいずれかで呼んでいた。おお、権勢を誇る高貴なる王、野望のデイドラ公、大洪水の父、といった具合だ。その後、彼らはニルンでデイゴンの意思を達成させるための力を授けるよう願い求めた。その次に行われたのは、どこからともなく流れ出る溶岩の噴煙、祭壇の上に出現した猛烈な嵐、炎のカーテンと群衆の上空で裂ける稲妻を伴う複雑かつ不穏な儀式だった。感動的であると同時に恐ろしくもあった。

こっそりと抜け出す前に、私は「破滅の運び手」がうたい上げる声を聞いた。「デイゴン卿よ、我ら控えたり!デイゴン卿よ、野望を示したまえ!デイゴン卿よ、君が革命は我らが革命!ニルンは君のものとなろう!」

我々は賛詠の始めの数行を聞いたに過ぎないのではないだろうか。破壊が訪れるだろう、熱心な読者の皆さん。備えを!

目覚めの炎教団への参加Join the Order of the Waking Flame

世界は混沌から成り、いずれ混沌へ帰ります。破壊は不可避です。しかし瓦礫の灰から新たな世界が生まれるのです。

この考えに賛同する者、環境に対する自然災害の利点についての議論に関心がある者、あるいは来たるべき新世界に居場所を得たいと望む者よ。目覚めの炎教団はあなたを歓迎します。

日没に会いましょう。

外套を持参してください。

旅団の日記Brigadine’s Journal

他の象牙旅団が街をうろつき、スリを捕まえ、大酒飲みを街から追い出しているというのに、俺たちはクソにどっぷりと浸かって生きたままニクバエに食われてる!俺は普段から文句を言ってるわけじゃない。贅沢な暮らしを期待して入ったわけじゃない。だけどこいつは無茶苦茶だ!アルゴニアンはどうやってこんな場所に耐えてるんだ。沼の空気はまるで肺にずぶ濡れの羊毛を吸い込んでるような感じだし、ちゃんとした服を身に着けてなかったら一瞬で虫に殺されるだろうし、馬ぐらいでかい蛙までいやがる!どうやったらこんなとこで生活できる?

これで民が友好的ならまだマシだった。アルゴニアンたちには、この場所を少しでも暮らしやすくするための防御策が沢山あるはずなんだ。だが明らかに俺たちを歓迎してない。隊長がひどいことをするために来たんじゃないって説明しようとしてたが、どうやら交渉はあまりうまくいかなかったようだ。可能な限り彼らを避け、全力で反感を買わないようにしろというのが俺たちが受けた命令だからな。

交易路を拡張する、と奴らは言った。簡単だろうと。ハッ!ブラックウッドの沼地で簡単なものなんて何一つない。

少なくとも、俺たちは繋がってる。よく聞く話だが、苦しみってのは兵士を仲間に変えるもんだ。プレンタスにあれほど話術の才能があるとは思わなかった。それにアクシラの奴、ホッパーが驚いて死ぬくらいでかいゲップができるとはね!

ここにいるのもそんなに悪くはないのかもしれない。いい時も悪い時も共有できる、旅団の仲間がいる限りは。

力を貸してくれ!I Need Your Help!

これを読んでいる人へ

私、トゥーモンは切実に助けを求めている。私にとって価値あるものを失くしたのだ。心から深く愛しているものを。私の落ち度だ。ほんの一瞬よそ見をして… まあ、細かいことはどうでもいい。重要なのは我が愛しき者を傷つけたがっている奴らがいることだ。彼女を追い詰め、戦利品として手にすることを望む奴が。そんなことをさせるわけにはいかない。この卑劣な狩人どもは始末する必要がある。莫大な報酬を約束しよう。

下に記した3人を見つけ出し、片付けてほしい。その後、この野営地に戻ってくれ。新しいメッセージが待っているだろう。頼むから質問は一切しないでくれ。信じてくれ、この狩人どもは心底卑劣な奴らだ!

悪しきフジャルダー。最後に目撃されたのはレヤウィン周辺の丘。

邪悪なヴァシャ。最後に目撃されたのはギデオン付近の沼地。

素早きビンギム。最後に目撃されたのはストーンウェイストを囲む湿地。

スル・ザン スタイル

クラフトモチーフ102
Sul-Xan Style

グウィリム大学人類学部、アスティニア・ビンカル教授 著

アルゴニアン文化慣習の研究者が無数にいることは、読者に注意を促すまでもないと思われる。この沼地に住む獣の「闇の秘密」を明らかにしようという、学者コミュニティによる最近の熱狂は「歯ごたえのある虫としっとりした棘について――南アルゴニアンの食習慣調査」のような取るに足りない成果を生むのみだった。しかし最近ブラックウッドを旅して回った際、私は記録せざるを得ないと感じるほど奇異な文化を持つ部族に出会った。従者たちがこのスル・ザンを何人も見事に切り伏せた後、私は彼らの持ち物を拾い集めた。以下はこの集団に特有と思われる、素材と製作技法についての記述である。

ブーツ

沼地を歩き回って全身泥だらけになってしまったのは嫌な思い出だ。だからスル・ザンの靴が足先を開放しているのを見た時、私は困惑した。この部族の爪は特別に鋭いのか? 確かに、柔軟な革の構造はふくらはぎをしっかりと支えている。高速で逃げる獲物を追いかける際には役に立ちそうだ。

ベルト

おそらくハジ・モタの革を主な素材としたスル・ザンのベルトは、複数の重装武器を持ち運ぶ際に役立つ。バックルは平凡な金属製のようだが、そこに刻まれた図の作成には鋭い目と熟練の腕を必要としたと思われる。

どの頭装備にも、明るい色のヒスイから削り出したいかついデスマスクが付いている。威嚇が目的なら成功している。巨大な蟹の爪のような、大きく曲がった角をあしらったものもある。学問的関心のために言っておくが、目を閉じてもこの顔が頭から離れない。

脚当て

美的には簡素だが、機能的には完璧だ。足を覆う柔軟な革は機動性を大きく高めている。しかし脛周りの金属が斬撃から守ってくれる。想像でしかないが、膝に付いたスパイクも激しい接近戦では効果を発揮するのだろう。

驚いたことに、我々のグループは小さなスル・ザンの野営地に行き着いた。敵対者たちの抵抗が止んだ後、私は彼らがアリットの筋をよく伸ばし、骨の台の上で乾燥させたものを弓の弦に使っていると知った。両端の繊細な逆反りと、中央に配された派手な金属装飾が、奇妙な対照を生み出している。

胸当て

これほど凶暴な民なら、重要な体の部位を保護することに注力するのは当然だ。軽装鎧にさえ、胸と内臓を守る金属プレートが付いている。どの鎧も肌への密着度が高く、戦闘中邪魔になることがない。暗革の下に鱗を継ぎ合わせたプレートが入っていて、さらに防御力を高めている。

スル・ザン武具の大半と同じく、この件は基本的に簡素ながら殺傷力が高い。刃は分厚い鋼鉄製で、肉を切り裂きやすいようわずかに湾曲している。柄は暗い色の木にアリットの革を巻きつけ、さらに定番のヒスイの輪を底にあしらっている。

肩防具

沼地にいる獣の顎から着想を得たスル・ザンの肩防具は、殺傷力の高いスパイクに力を入れている。鎧から突き出す大きな鋼鉄の棘は防具を大きく見せるだけでなく、至近距離で取っ組み合いになった場合も有利に働く。ある護衛がこのスパイクで頭蓋骨を突き刺されたので、その有効性は実地で証明された。

手袋

ブーツと同様、スル・ザンの手袋は爪を出すために先端を開放している。アルゴニアンの戦士は武器を失った場合でも、常に最後の攻撃手段を持っているだ。この手袋には戦士が鋭い爪を失わないように、手首から前腕にかけて分厚い金属の覆いが付いている。

スル・ザンの装備全ての中で、私が最も高く評価するのはこの盾だ。他の文化でよく見られる卵型と比べて、この盾はより角張っている。左右に付いた切込みに武器を置けるようになっており、盾を下げることなく突きを繰り出せる。表面にあしらわれた見事なヒスイの意匠は、この蛮族が予想よりも高度な技術を持っていることを証明している。

主に魔法使いによって用いられるが、杖に付いた大型のスパイクは接近戦になった場合に役立つ。先端には仮面と同じおぞましい顔が装飾されている。敬愛する祖先でもかたどっているのだろうか?生きた個体を見つけて聞きたい。

戦棍

戦棍に関するスル・ザンの想像力は「重くて硬い」よりも先までは進んでいないようだ。先端は太い円筒形をした高密度の金属塊であり、おそらく鋼鉄に装飾の意匠を刻み込んだものだろう。取っ手は簡素だが、他の武器にも見られるヒスイの輪が底に付いている。

短剣

短剣と聞けば、私は初めて家を出た時ポケットに入れて持っていった刃物を思い浮かべる。スル・ザンにとって、短剣とはドラゴンの歯ほどの長さがあるものである。簡素な鋼鉄の刃に革の取っ手の作りは単純だが、サイズは巨大だ。

この武器は長く細い鍔の上に、他では見たことがない半月型の刃が付いている。刃の両側には威圧的な銀色のスパイクが2本付いている。しかしこのスパイクは単なる装飾に留まらない。護衛が数人、この湾曲した刃によってほとんど真っ二つにされた。切断する能力は私自身の経験に基づいて保証できる。

黒きヒレ軍団 スタイル

クラフトモチーフ103
Black Fin Legion Style

黒きヒレのケシュ 著

多くの者が黒きヒレ軍団はアルゴニアンを守るための軍隊だと思っている。それは間違いだ。私たちは人間であろうとサクスリールであろうと、平和に暮らすことを望む全ての人々に仕えている。私は自分たちだけを守るために戦うのではなく、隣人たちと肩を並べて立つことが、ギデオンにできた新たな故郷を守るための最高の手段だと信じている。黒きヒレ軍団はあらゆる種族を歓迎する。望むのは屈強な腕と熱意だけだ。
ブラック・マーシュの境界地域にいる軍隊にとって、最初の敵は気候そのものだ。ここでは特別な油をつけない鉄と鋼は錆び、弓の弦は腐り、北の木材でできた武器の柄は反り始める。黒きヒレ軍団の兵士は頭から爪先まで、他の土地の武器や防具を破壊する環境に適した服装をしなければならない。だが、沼地が準備不足な者にとって敵であるなら、沼地での振る舞いを学ぶ戦士にとっては力強い味方にもなりうる。
当然ながら、緑は黒きヒレ軍団の基本色となる。ギデオンを取り巻く森と沼地で、迷彩の価値を見過ごすことはできない。真鍮と金の明るい輝きは場違いのように思えるかもしれないが、それにも目的がある。水面にきらめく陽光を模倣するのだ。

ブーツ

私たちの軍団の兵士は、しばしば湿地、茂み、流砂と戦ってきた。過剰な装飾や重量のある履き物は、一歩ごとに足元がはまってもつれる危険をはらんでいる。そのため、黒きヒレ軍団のブーツは簡素で装飾がない形にデザインされている。

ベルト

黒きヒレ軍団の兵士のベルトは真鍮のバックルを備え、鼠径部を守るため分節された腰当てを支えている。中装や軽装鎧では腰当ての分節部をボイルドレザーで作り、ギデオン周辺の湿度が高い状況でも、腐敗を抑える処理を施している。

発見される前に敵を発見するのが、ブラック・マーシュで生き延びる者が守る最初のルールだ。私たちは最大限の視野を確保するため、顔が露出した兜を好む。それに葉や苔を模したボロ布の覆いで迷彩を施す。

脚当て

黒きヒレ軍団が通り抜けねばならない地形を考慮し、脚防具は可能な限り軽くなっている。中装鎧と軽装鎧はほぼ完全に省略しているが、重装鎧も他の土地における同様の防具より水を含むことが少ない、足にぴったりしたグリーヴを用いている。

ブラック・マーシュの最も一般的な樹木に含まれるバニヤンは、あまりにも柔らかく吸水性が高いため、弓としては使い物にならない。だが、バニヤンの根から切り出した木材は丈夫で耐久力があり、湿度の高い環境下でも反らず膨張しない。黒きヒレ軍団の弓に最強の威力はないが、この気候を耐え抜くことができる。また、私たちの鬱蒼とした森林に覆われた地形で、長距離射撃が可能になることは滅多にない。

胸当て

最も効果的な迷彩は、直線や人工的な形状を崩れた輪郭に置き換える。周囲の自然の不規則な様子を反映するものだ。黒きヒレ軍団のブレストプレートと胸当ては、葉と苔のような形をした緑のボロ布の覆いを備えていて、兵士が沼地の茂みの中で隠れ続けるために役立っている。

ギデオン周辺で鋼の刃の状態を維持する苦労は無視できないため、黒きヒレ軍団の兵士たちの間で、剣はあまり一般的ではない。典型的な軍団の剣は頑丈な刃で、切断と刺突の双方の用途に向けてデザインされている。つり下がっている植物の蔓に引っかからないよう、簡素な鍔がついている。

肩防具

鋼か頑丈なボイルドレザーのポールドロンが軍団兵の肩を守る。黒きヒレ軍団の兵士の鎧の他の部分と同様、肩防具も深い緑でエナメル加工が施されるか、染色されている。より重装の者は、苔や葉に擬態するためボロ布の覆いを備えている。

手袋

丸みを帯び、他の戦士がしばしば身に着けるような突き出た棘や突起のない黒きヒレ軍団の篭手は、枝や蔓に引っかからないよう滑らかだ。

黒きヒレ軍団の盾は、軽い鋼を使って特別な三角盾の形にされている。葉のようなデザインにカットされたオイルレザーの覆いは、装備者が深い群葉の中で身を隠し続けるために役立ち、ブラック・マーシュとブラックウッドの湿った環境による、絶えず存在する錆の脅威から鋼を守る。

草が生い茂り、頻繁に豪雨が発生するブラック・マーシュでは、かなりの近距離で小競り合いが起きることが多い。射手、歩兵、魔術師を問わず、全ての黒きヒレ軍団の兵士は白兵戦に備えなければならない。そのため黒きヒレ軍団の杖は、魔法使いが混戦に巻き込まれた時のために、打撃用の鉛でできた先端と、しっかりした真鍮の柄を備えている。

戦棍

より好戦的なアルゴニアンの部族はブラック・マーシュの硬材で作ったツォジェイという棍棒を好むが、こういった素朴な武器は鎧やプレートに対して効力が低い。黒きヒレ軍団は、しっかりとした真鍮の柄がついた双頭の鉛のハンマーを採用した。錆びにくく柔らかいが重量のある金属は、強烈な打撃をもたらす。

短剣

叩き切るか切り刻むというより、鎧の継ぎ目に突き刺すためデザインされた黒きヒレ軍団の短剣は、強い先端と細い柄を備えている。絶えず存在する錆の脅威に耐えるため、通常はカエルの脂肪から作られた油を十分に塗り続ける。

ブラック・マーシュでは、斧は武器であり道具である。黒きヒレ軍団の兵士は、いつ茂みを切り開いて進み、木を切り倒していかだを作ることになるか分からない。そのため、私たちの斧は刃の反対側がハンマーのように平らになっている、片刃の武器だ。柄は真鍮か青銅でできている。これは鋼ほど強くないが、錆に耐える。

マークマイアの伝承

Lore of Murkmire

アジム・ジャアからの手紙Letter from Ajim-Jaa

マク・タイードへ

彫刻から少し離れて、本気で聞いてほしい。卵の兄弟として、お前の面倒を見て問題に巻き込まれないようにする責任がある。自身を裁定者と呼んでいるシャドウスケールほど、避けるべき問題は存在しない。

彼女は高齢で盲目だから最初は素直そうに見えるかもしれないが、あの白い目には今でも厳しさが残ってる。シャドウスケールは生まれた時からただ1つ、殺すために訓練されていることを忘れるな。ためらいも後悔の念もない。彼女は以前にも殺したことがあるはずだし、また殺すことは分かりきってる。

とにかく近付くな。いいな?もし通りで彼女を見かけたら、敬意を持って接しろ。彼女に殺したいと思われたら、この有能な卵の兄弟でさえ救ってやれない。

アジム・ジャア

アルゴニアの季節The Seasons of Argonia

ジンチェイ・コヌの番人、ジェッカワス・パザルト 著

時間は不変である。変化の意志を駆り立てる原動力であり、不可避にして始原的である。恒常的な循環の中で動き続ける力。その変化の進展を印づけることは、サクスリールにとって最も神聖な行為である。

各月は年の循環のある特定の面を印し、それに従って祝われる。月とそれに対応する意味を以下に示す。

バッカ(太陽)
循環の最初の月であるバッカは、存在の始原的な起源、あるいは起源一般と関係する。この時期に我々は、部族の長老たちに普段以上の敬意を示すよう求められる。

ジーチ(木の実)
隠匿の時期としても知られるジーチは、種と理想の両方を植える月である。沼の球根が埋められ、まかれた種が芽を出す。長老たちはその知識を伝えることで、知を植え付ける。希望の時期だが、憂鬱の時期でもある。

この月は三つの喪の最初のものである。何かが植えられると、それは隠れて消えてしまうからだ。出てくるものは何か新しいものだ。すなわち、木の実は永遠に失われてしまう。

シセイ(芽)
シセイは新しさ、可能性、若き興奮などを表す。ヒストはその休眠の生を脱ぎ捨て、真の意味で生きた状態になる。多くの子供の祭りがこの時期に行われる。この月はまた「跳躍の季節」としても知られている。スポーツや競技の盛んな月だからだ。力やスピード、意志の強さといった徳が尊重され、祝われる。

ヒスト・ディーク(ヒストの樹液)
ヒスト・ディークは良くも悪くも、権威への反抗と個人の主体性の力に捧げられる。多くの者はこの月を利用して不正を告発し、その結果としてしばしば部族内部の争いが起きる。

言うまでもなく、論争の的になることの多い月である。多くの者は、この時にヒストといかに離れたかを分析する。崇拝について反省し、それが絆であって束縛ではないことを理解するためである。

ヒスト・ドゥーカ(成熟したヒスト)
騒がしいヒスト・ディークを相殺する役目を担うヒスト・ドゥーカは、家族、伝統、義務といった観念を中心に置く。若いサクスリールはより大きな責任を与えられ、多くの若者たちはチュッカ・セイ。すなわち成人の試練に挑み、自らが大人と呼ばれるにふさわしいことを証明する。試練を突破した者は完全な部族の成員となり、この月は通常、大きな祝賀と共に終わりを迎える。

ヒスト・ツォコ(年老いたヒスト)
おそらく一年で最も神聖な月であるヒスト・ツォコは、知識や賢明さ、可能性の充足といった観念に捧げられている。この月に行われる集会の大部分は厳粛な行事であり、その中でも最も重要なのが、部族の長老たちがサクスリールの歴史を暗唱する「根の語り」である。この月はまたヒストが成長を止め、その個々の可能性が使い果たされたという事実から、「第二の喪」をも表している。

スティシル・ガー(卵の籠)
スティシル・ガーは愚行と軽薄の月であり、通常はヒスト・ツォコの重苦しい厳粛さからの喜ばしい小休止である。子供のような驚きや若々しい歓喜、軽い困惑などが祝いの対象になる。多くの旅芸人の一座たちは、利益の大半をこの時期に得る。祭りや宴会はほとんど途切れなく続く。

スティシル(卵)
卵の月は謎や予期、そして(やや奇妙だが)目的にかかわる。大半の部族にとって、このつながりは文字どおりのものだ。産卵の多くはこの月に起こる。

ヌシュミーコ(トカゲ)
トカゲは静かで手早い労働の象徴である。ヌシュミーコは日々の生活において感謝されることのない仕事を祝い、労働はほぼ途切れなく行われる。清掃、建築、修復、準備など。部族の成員は皆、ひたすらに働く。

シャジャ・ヌシュミーコ(半人トカゲ)
この月はヒスト・ディークのように、謎と議論の絶えない月である。半人トカゲが実際に何を表しているのかについては、かなり大きな論争がある。卵から出てきた子供のことなのか、それとも我々の文明の起源を表すのか?

変化や生成、移り行く価値といった統合的な概念について想いが馳せられる。そのため、多くの若者たちの集会がこの時期に開かれ、様々な恋愛がらみの問題が持ち上がる。若者の不器用さがしばしばこの月と結び付けられる。

サクスリール(アルゴニアン)
サクスリールは我々の文化の真の情熱に関係する月である。狩りと収穫の季節が過ぎた今、部族の成員たちは陶芸や木工、その他の創造的な活動を自由に追求できる。物事が終わりを迎えつつあるという感覚が広まる。

多くの部族で、月の終わりには長老たちの大きな集会がある。この祭典の目的は我々の長老たちと共同体の両方を、迫りつつある死に備えさせることである。肌の乾いた者には、これを陰惨な伝統と見る向きも多い。

ズロマート(死者)
多くの伝統と同様、ズロマートは明らかに矛盾する発想の月である。この月は「第三の喪」に結びついており、文字どおり一年の終わりであるため、3つの喪の中で最も強力である。部族は一年の出来事を振り返り、過ぎ去っていくことを受け入れる。

しかしながら、この月は祝賀と追憶の時期でもある。古い生を終え、新しい生へと移行した全ての者に敬意を表すため、大規模な祭典が開かれる。月の大部分はこうした祭典の計画と準備のために費やされる。

イクスタクス探検家の日記、1ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 1

仲間たちは正しかったようだ。イクスタクス・ザンミーアへの旅に備えることはできない。遺跡に入って数分もしないうちに、もう完全に迷ってしまった。しかも、価値のあるものはほとんど何一つ見つけていない!ボロボロの骨や割れた壺を探しに来ていたならよかったが、残念ながら私は財宝を探しに来たのだ。

十分に奥深くまで進んでいないのかもしれない。何か脱出手段を探すべきなのは分かっているが、手ぶらで去るという考えは受け入れがたい。小さなものでもいいから、何か見つけなければ。

何かのクリスタルがここの中心部に隠されているという噂を聞いている。クジュ・ジャスとか、カジプ・ザットとか、そういう(発音不可能な)クリスタルだ。それが見つかれば、この災難も報われるだろうか。

イクスタクス探検家の日記、2ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 2

何時間も暗闇の中で無駄に過ごしたが、その幻のクリスタルには近づいてもいない。日誌のページを撒いていくことにした。パンくずの跡のようなものだ。私は建築家ではないが、この場所の設計者もそれくらい無能だったに違いない。扉や階段はどこにもつながっていないものばかり。ほぼ底なしの穴が不気味なほど頻繁に現れる。それにあの忌々しい像だ。戯画化されたアルゴニアンの顔で、歪んだ口はぞっとする冷笑をたたえている。あれは「してやったり」という表情に見えて仕方がない。控えめに言っても、気味が悪い。

まだ探索していない回廊が一つある。最も暗く、腐臭がする場所だ。どこに続いているのか、見てみるしかなさそうだ。マーラのご加護を。

イクスタクス探検家の日記、3ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 3

ついに進展があった!蜘蛛の群れと、終わりなき罠を避けて素早く通り抜けると、巨大な地下室を見つけた。巨大な像の足元に何かが輝いているのが見える。一直線に駆け寄って行きたいところだが、何かがおかしい。あそこで何か音がしている。ゴボゴボいう妙な音で、背筋が寒くなる。とはいえ、危険を冒さねば何も得られない!あの財宝を取って、家路につく時だ!

イクスタクス探検家の日記、4ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 4

壁の中に何かが隠されていた。のたうち回っている!罠がそこら中にある。これを見つけたら、私のような過ちを犯してはならない。行け!とにかく――

[残りの部分は判読不可能]

エシュラフの日記Eshraf’s Journal

〈ページの大半は切り取られている。以下は残っている部分〉

…何者かが私を見ている。バケツ一杯のゴールドをかけてもいいが、あの忌まわしいナガに違いない。ツォナ・ジーヴァ遺跡ではもう少しで奴らにやられるところだったが、私はセンチネルの路地で育った。あんなトカゲどもに捕まったりはしない!

ただ、荷袋を置いてきてしまったのは後悔している。バッカ石を失くしたと言ったら、ファミアはいつもの悲しい子犬みたいな目をするだろう。気が重い。幸いにも、ディニアは自分の荷袋をここに置いていったようだ。少なくとも、ないよりはマシだろう。

とにかく、今日は刺激的な出来事はもうたくさん。ここの小屋の中で一夜を過ごして、次の朝にはリルモスに戻ろう。時々、この場所がすごく嫌になる!

オリーンの最初の持参品のヒントOleen’s First Dowry Reminder

やあ、爪の曲がった愚か者よ。私はもうお前が好き勝手に物を盗み出して、目録の計算を台無しにするのにいい加減我慢がならない。それほど私の時間を無駄にしたいのなら、私もお前に時間の無駄遣いをさせてやろう!戦うチャンスをくれてやってもいい。まずは品物の倉庫から始めよう。以下のことを覚えておけ。

ルートハウスが盗むかもしれないものはどこに隠す?
見ることのない目の中だ!

オリーン

オリーンの2番目の持参品のヒントOleen’s Second Dowry Reminder

おやおや。正解を当てたらしいな。まぐれ当たりではなかったかな?そろそろ諦めないと、ひらめきを得るために目の前で火打石を叩いて一日を過ごすことになる。頑固にも続けるなら囲いへ向かい、以下の言葉を覚えておけ。

この刃は戦場で役に立つ。
もう身に帯びられぬ者にとってのみ。

オリーン

オリーンの3番目の持参品のヒントOleen’s Third Dowry Reminder

今回の旅で気分が落ち込んだ時、私はいつもお前がグアルの肥やしに肘をついて持参品を探そうとしているさまを思い浮かべているよ。だが、どうやらついに手がかりを解いたようだな。欲しいものが見つかるまで、あらゆるものに手を突っ込んでいるのではあるまいな?次はサラマンダー取りの罠を使うべきかもしれないな。

目当ての物に近づいていると思うなら、監視塔に行って以下の言葉について考えろ。

私は自分のものでない皮膚をまとっている。
他の者たちの手で、私は時間の計測を助ける。

オリーン

それから、絆の儀式の前には風呂に入れ。無礼な蛮族め。

オリーンの最後の持参品のヒントOleen’s Final Dowry Reminder

チーシュ・ナッサへ

私が隠したあの持参品は、お前のお気に入りの箱の二重底の中に見つかるだろう。私が知っているはずはないとお前は考えているだろう。隙間を作るため、お前のコレクションを動かさねばならなかったよ。これからは部屋の中に置くんだな。倉庫はあんなもののためにあるんじゃないぞ。

オリーン

カスタブ皇帝の墓碑銘Emperor Kastav’s Epitaph

2812年に死去した、退位したが極めて神聖な故人、カスタブ皇帝の定命の遺体がここに眠る。埋葬は完了し、私は部屋に戻って自ら命を絶つ。

——儀仗兵隊長サディネラス・コー

キーマ・ルーの墓標Keema-Ru’s Grave-Stake

キーマ・ルー

簡素に生き
真面目に働き
苦難に耐えた

ク・ヴァステイ:必要な変化Ku-Vastei: The Needed Change

魔術師ギルドの秘術師、道を照らす者 著

私の民の文化を記述するのは困難である。説明しようとすると舌が動かなくなることも多いが、インクと筆が私に考えをまとめる時間を与えてくれることを願う。こうした執筆により、私の故郷マークマイアと、魔術師ギルドにおける私の新しい生活が繋がるかもしれない。

この日誌は私のク・ヴァステイとなるべきものだ。これを書くにあたって、これ以上の主題は思い浮かばない。

ク・ヴァステイは大まかに「必要な変化の触媒」と翻訳できる。しかしこのように直訳しても、本来の意味は正しく表現できない。他の訳としては「変化が起きるための必要な道を生み出すところのもの」、あるいは「存在へと来たるべき炎を点火する火花」も可能だろう。

おそらく、より直接的な分析を最初に提示しておくべきだろう。ク・ヴァステイは名詞であり、物か人を指す。ヴァステイを直訳すれば変化であり、それは私の文化の重要な部分である。クのほうは説明が難しい。それは変化を導くものであるが、変化を生み出すものではない。重要な役割でだ。停滞は死よりも悪い運命だからだ。

崖の頂上でぐらつく大岩を例としよう。岩はいつか落ちねばならない。ク・ヴァステイは岩を押して崖から落とさない。むしろ、岩をその場に留めている小石を取り除く。すると岩は落ちるが、押されたからではなく、道が開かれたからだ。

ク・ヴァステイは崇拝される。変化自体が崇拝されるように。過去を振り返ることは、未来へ進む道を躓かせることだからだ。正しい方向へ少し押されるだけで、こうした叡智を思い起こさせることもある。そうでない場合は、強く押されなければならない。

クスル・ツクシスXul-Thuxis

俺たちはここから脱出しないといけない。この場所に留まるくらいなら、密航してリルモスから出たほうがマシだ。

ウィップテイルは先日、俺たちに壁を壊させた。壁の向こうはアルゴニアンの死体で一杯だった。奴は俺たちに中へ入って死体を探り、死体と共に埋められた物がないか確かめさせたんだ。沼で墓を漁ったことは前にもあるが、今回は違っていた。あそこには何か感じるものがある。死体を一つ動かした時にすぐ、脱出しなきゃここで死ぬことになると分かったよ。

今はお前を信じてる。妙なものが見えると言っていたな。何かが聞こえると。俺もそうなり始めてる。

アルゴニアンたちが広間を歩いているのが見えた。自分たちの仲間を生贄に捧げていた。生贄たちは恐怖せず、自分の意思で従っているように見えた。ものすごく静かだった。怖かったよ。だって、本当にそこにいるわけじゃないって分かってたんだから。あれは、別の世界の木霊のようだった。

しかも、ウィップテイルはやめようとしない。奴はもっとやれと言う。シシスの祝福を受けた古代の武器かなんかが、ここに隠されていると確信してるんだ。奴はそう言ってた。あの場所は全部呪われてると思う。

俺は逃げ出そうと思っている。お前も逃げたいだろう。一緒に来るなら今日の真夜中、俺たちがカサンドラのために用意した部屋で会おう。読んだらこの巻物は燃やせ。ウィップテイルに見つかる危険は冒せない。俺たち二人とも殺されてしまう。

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ケシュ:黒きヒレの戦争、パート1Keshu: The Black Fin Goes to War, Part 1

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

黒きヒレのケシュが古き者(彼女は遥か昔に生きていた、進歩していたサクスリールをこう呼んだ)たちの遺跡から帰還した次の季節。私たちはケシュの望みを実現するため、とてつもなく忙しく働いた。古き者たちの生活について多少のことを知ったのに加えて、ケシュが遺跡で考察に費やした時間は、私たちのリーダーにして生涯の友人の心に新しい考え方を生み出した。彼女は、夢を携えて戻ってきたのだ。

遺跡から戻ってきた瞬間から、ケシュはサクスリールの進歩した社会を復活させようと思っていたのだと言う者もいるだろう。ただし、彼女が古き時代についてさらなる知識を得ることに関心を抱いていたのは確実だが、最初の夢は遥かに単純なものだった。ケシュはサクスリールをよそ者の脅威から守りたかったのだ。ゾシンがダークエルフの奴隷商人たちに捕まったことは、ケシュに深い影響を及ぼしたのではないかと思う。私が思うに、ゾシンや他のサクスリールの捕虜たちを解放した時、ケシュの運命は決まったのだ。

ケシュは軍隊を創設することを決断した。彼女が大マーシュ中から志願者を募ると、驚くべき数がその呼びかけに応えた。村の長老や木の番人、樹液と話す者たちは彼女の行動に複雑な思いを抱いていたが、結局は傍観し、ヒストの解決を待つことにした。サクスリールでの生活は全てそうなのだが、ケシュが成功したなら、それは彼女の計画が実現する定めにあったということだ。もし失敗したら、ケシュは沼に姿を消し、二度とその名を聞くこともなくなる。ブラック・マーシュの物事はそういう風に進むのだ。だがケシュにどんな運命が待っているにせよ、当初の彼女は誰にも止められない勢いを持っていた。

非公式に黒きヒレ軍団と呼ばれる当初の部隊は、活気に溢れていた。最初はケシュとヴォス・フルクが教官、指導者として集まったわずかな戦士を教える任務についていたが、すぐに他の有名な戦士たちが彼女の下に駆け付けた。その中には「虚空の炎」と呼ばれる魔闘士や、「エルフ殺し」と呼ばれるサクスリールの自由戦士もいた。彼らが専門知識を提供し、訓練を手伝うことで、我らの愛するリーダーの負担は減った。ケシュは軍団に試練を受ける準備が整ったと判断すると、標的を決め、新たに研いだ武器で指し示した。私たちはドーレス家の奴隷隊商を襲い、捕虜を解放することになった。

私たちは何週間も計画を練り、訓練し、ケシュと彼女が最も信頼する助言者たちは、考えつく限りのあらゆる偶発事項に備えた。私たちはドーレス家の居留地を偵察した。ストームホールドからモロウウィンドへ向かう道として、最も使われる可能性が高い道を調査した。私たちは監視し、待った。そして行動を開始した。

ドーレス家の奴隷隊商はある雨の朝、ひっそりとストームホールドから出発した。50人以上の卵の同族から成るサクスリールの奴隷が鎖でつながれ、2つの巨大な荷車の間を行進させられていた。それぞれの荷車はグアルの群れによって引かれていた。ドーレス家の衛兵たちは荷車の上に乗り、あるいは奴隷たちの列の両端を行進し、あるいは馬やその他の騎乗動物に乗って隊商の周囲を回っていた。全体として、約30人のダークエルフ戦士が隊商を護衛していた。この襲撃のために、ケシュは黒きヒレ軍団26人を奴隷解放のために従えていた。

戦士たちは緊張していた。彼らの大部分にとって、これが初めての本物の戦闘だったからだ。彼らはよく訓練され、ケシュの大義に賛同していたが、それでも生死を分ける状況に入っていく際によくある恐怖に襲われていた。ケシュと士官たちは見える位置に留まって自信と決意を見せ、これが兵士たちを落ち着かせる大きな効果を示した。私たちは隊商がモロウウィンドの国境から数百歩のところにある狭い道を通るところで奇襲を準備した。ケシュは号令を出しながら敵に向かって突進した。私たちは従い、腐った丸太から出てくるウッドアントのように隠れ場所から飛び出した。私たちがまだ緊張していたとしても、ダークエルフたちに飛び掛かっている最中に緊張は見えなかった。

ケシュの戦略は完璧に機能した。戦いが終わった時、ダークエルフの衛兵たちは死ぬか降伏しており、軽傷者はいたものの、黒きヒレ軍団に死者は1人も出なかった。任務はこれ以上ない成功を収め、ケシュの評判は解放したサクスリール1人ごとに高まっていった。

ケシュ:黒きヒレの戦争、パート2Keshu: The Black Fin Goes to War, Part 2

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

ドーレス家の奴隷商人たちに対するケシュの戦争は幾つかの季節の間継続し、黒きヒレ軍団が勝利を刻むたび、彼女の忠実なサクスリール軍は拡張していった。彼らは遠くから、また様々な地域からやって来てケシュに忠誠を誓った。ダークエルフの支配地から解放された奴隷や、遠くの村から来た危険を好むサクスリールなどが参じた。ストームホールドやヒストの影響外にある地出身の、都会化したアルゴニアンさえ何人か来たほどだ。

私もようやく成人の儀式を完了し、部族にとって一人前の大人と見なされるようになった。私は残りの人生で何をしたいかを決断しようとしていた。私はケシュが好きだったし、その大義を信じてもいたが、兵士や自由戦士になりたくはなかった。私はもっと単純な生活を求めていた。ヒストや、ザル・ウクシスに仕えるような生活が。私は樹液を話す者や卵の番人になる定めだった。少なくとも、当時の私はそう信じていた。だから私はケシュに自分の望みを告げ、黒きヒレ軍団から脱退しようと決めた。

ケシュは私の事情を理解し、私を義務から解放することに同意してくれた。しかしティー・ワンが野営地に戻ってきた時、私はまだ軍団と共にいた。彼は今ケシュの密偵部隊長であり、ドーレス家の勢力との戦いに黒きヒレ軍団が利用できる情報を集めるため、何日も、何週間も戦場を駆けまわっていた。だがこの時彼が持ち帰った知らせは、より大きく、より危険な敵に関するものだった。「遠い海から来たよそ者が、スカイリムの地を侵略している」とティー・ワンは説明した。「ストームホールドで私たちを助けたノルドからの伝言を持ってきた。吟遊詩人のジョルンからだ」

ジョルンの伝言は、アカヴィリと呼ばれる敵がウィンドヘルムの街を襲い、今はモーンホールドに向かって進軍していると説明した。ジョルンの姉は命を落とし、今は彼が一時的にノルド勢力の指揮を執っていた。「俺はこの邪悪な侵略を止めるため、ダークエルフに加勢する」とジョルンは書いていた。「もしお前が借りを返すつもりなら、モロウウィンドで合流してくれてもいいぞ。お前たちアルゴニアンのシェルバックなら間違いなく、この紛争の戦況を変える力になるはずだ」

ケシュの目を見れば、もうジョルンを助けに行くと決めているのは分かった。「ヴォス・フルク、虚空の炎」とケシュは副官たちを呼んだ。「兵を集めてほしい。今日、黒きヒレ軍団は戦争へと向かう」

私はケシュと他の者たちに涼やかな風と澄んだ水を祈ったが、この冒険に加わるつもりはなかった。私は故郷、シークハット・ゾルへ帰るのだ。私は月が幾度か循環する頃には、彼らも帰ってくるだろうと思っていたが、それは間違っていた。私は暦が10周以上するまで、再びケシュに会うことはなかった。そしてその頃、彼女は大きく変わっていた。

だが噂は孤絶したシークハット・ゾルにさえも届いた。私たちはノルドとダークエルフの共闘によって、そしてアルゴニアン戦士の思わぬ介入によって、アカヴィリは打ち破られたと聞いた。その日、エボンハート・パクトが生まれた。ケシュとその軍団はアカヴィリの脅威が片付いた後も同盟の地に留まり、新たに結成された同盟の境界を確立し、パクトが続く限りサクスリールの自由を守るため力を尽くした。ケシュはスカイリムとモロウウィンドを巡回して時を過ごし、反逆者を潰すのに力を貸し、敵対する連合軍から境界を守り、最終的には三旗戦役で武器を取るに至った。

ケシュのこうした冒険に加わらなかったことを後悔しているか?時々はする。だが、卵の番人としてシークハット・ゾルで過ごす時間は、どんなものとも交換したくない。たとえ再びケシュのそばで戦えるとしても。

ケシュ:成人の儀式、パート1The Rites of Maturity, Part 1

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

私たちの成人の儀式は、まるで昨日のことのように覚えている。戦争の英雄にしてサクスリール進歩社会運動の創設者、黒きヒレのケシュは、この試練を完了することでその異名を得た。そして彼女は徐々に名声を築き上げ、当時の仲間との絆を固めていった。仲間たちは全員、試練で優れた成績を残した。ケシュ、ヴォス・フルク、ティー・ワン、ゾシン、私でさえもだ(少なくとも、最後の試練までは)。確かに私たちは偉業を成し遂げたが、功績の多くは私たちの教官にして師であるラジ・デーリス、ドラミーンシンに帰されるべきだろう。

この長老の教師は大変な歳だった。一説によると、彼は私たちの卵の両親が巣から孵った時、すでに年老いていたらしい。だが年齢のせいでドラミーンシンの動きが鈍っているようには見えなかった。それどころか上質の苔や発酵した泥のように、彼は季節が過ぎるごとに活気付いた。私たちが彼の生徒になる頃、ドラミーンシンの技術は最高潮に達していて、私たちは彼の傑作になる予定だった。彼は若いサクスリールを教える通常の方法に従って、私たちを共同体の必要と要求事項に合わせつつ、狩り、追跡、クラフトの上級技術を教えてくれた。しかし彼は水源をさらに遡り、固有の才能を伸ばすこともしてくれた。ドラミーンシンにとって、私たちは籠に入った替えの利く卵ではなかった。私たちは個人だった。とりわけケシュは、彼の指導の下でみるみる成長していった。

サクスリールの成人の儀式は、数日間にわたって行われる技と勇気の試練から成っている。一部の試練は大マーシュ全土のサクスリール共同体で実施される。他の試練は場所や時代、季節によって、あるいは共同体のラジ・ナッサ(長老の指導者)の意向によって変わる。私たちの儀式には3つの異なる試練があった。ケシュが3つの試練を攻略した方法は、彼女がどういう人物に成長しつつあったかを示していた。

3つの試練の第一は「迷子ムカデの試練」だ。私たちは一人ずつ樽の中に手を入れ、マーシュムカデを1匹引っ張り出すよう指示された。見たことのない人のために言っておくと、マーシュムカデは巨大で凶暴な性質を持った素晴らしい生き物だ。平均的なマーシュムカデは指を思いきり広げたぐらいの長さで、太さは手首ほどもある。選ばれたムカデは目立つ印で彩られていた。そしてムカデを与えられた競争者たちは、自然の中に駆けて行ってムカデを放す。試練は私たちの特別なムカデを追跡し、捕まえ、生きたままラジ・ナッサの下へ連れ帰ることだった。さて、植物の生い茂るマーシュで特定のムカデを追跡するのは簡単なことじゃない。技術と忍耐、それに少々の運が必要だ。

ゾシンが最初に自分のムカデを捕まえたが、彼はその際ハジ・モタを刺激した。この獣を避けるため、ゾシンは危険な流砂に入り込んでしまった。その時偶然通りがかったケシュは、ハジ・モタの気を逸らせて反対方向に突進させた。そして戻ってきて、泥と砂の渦に吸いこまれているゾシンを助け出した。

ケシュが自分のムカデの居場所を突き止めた時には、ムカデが恐るべき状況に置かれていた。敵対的なナガの3人組が食事にするため、この丸々としたムカデを追いかけていたのだ。成人の儀式のこの部を完了するため、ケシュはそれを許すわけにはいかなかった。彼女はためらうことなく暗い水の中に体を滑りこませ、3人組に向かって泳いでいった。水面下に隠れて見られないようにしつつ、接近したのだ。ヴォス・フルクは自分のムカデを捕まえて村に帰るところだったが、この場面に出くわして、成り行きを見ていた。彼女が起きたことを報告し、私がそれを今、記録のために書き記しているわけだ。

ナガの狩人たちがムカデを囲み、距離を詰めたその時、ケシュは無言のまま、獲物を探す黒いヒレのように暗い水の中から立ち上がった。片方の手に1本ずつ危険な短剣を握り、両目には決意が宿っていた。彼女は最初の2人を素早い斬撃で仕留め、死体が沼地に沈むよりも早く3人目に接近した。死がすぐそばまで近づいていると最後のナガが気づいた時には、もう身を守るには遅すぎた。迷いなきケシュに対して、ナガは形ばかりの抵抗すら示せずに倒れた。ケシュは自分のムカデを拾い上げ、ヴォス・フルクを追ってラジ・ナッサの下へ戻った。

ケシュ:成人の儀式、パート2The Rites of Maturity, Part 2

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

3つの困難な試練のうちの1つ目が完了し、2つ目の成人の儀式が始まろうとしていた。「完璧な器の試練」だ。これは私たちの製作技術の試練であると同時に、謙遜と自信の試練でもあった。後になってから分かったのだが、目標は工夫の限りを尽くして最も華麗で複雑な器を作ることではなく、簡素で実用的なものも完璧でありうると証明することだったのだ。

この試練は3つの部分から成っていた。まず、器を作るために必要な材料を手に入れる。さらに、今回のため特別にマーシュの危険な地帯に設置された、隠された作業台を見つけ出す。最後に、器を作ってラジ・ナッサに見せ、審査を受ける。危険な場所に置かれた作業台が破壊される前に。

私たちはそれぞれ、器を作るのに使わねばならない特別な素材を課された。例えばティー・ワンは希少な三本爪のマッドクラブの殻を手に入れる必要があり、私はクロナの木の実の殻を手に入れなければならなかった。そしてゾシンは竜の舌の木から完璧な枝を見つける必要があった。これらはそれぞれ難しい題だったが、ケシュが主要な素材にしなければならないものを知った時、私たちは彼女のことが心配になった。ケシュはハジ・モタの巣から卵を盗まなければならなかったのだ!ハジ・モタは巣を守るために細心の注意を払う上、ハジ・モタの卵の脆い殻は、加工が難しいことで悪名高いのだ。細心の注意と技巧を尽くさない限り、殻は割れてしまうのが普通だ。

最初の儀式の成功譚が村中に広まって、今や「黒きヒレ」と呼ばれるようになったケシュは、ハジ・モタの巣を探しに出発した。彼女は前回の試練の間にこの巨大生物に出会っていたので、その一帯に戻って探索を始めた。彼女は沼地を見ながら丸一日過ごし、ハジ・モタの行動を観察した。ハジ・モタは雌で、近くに巣があることがすぐに明らかになった。言うまでもなく、卵を守るハジ・モタの母ほど危険な生物はほとんどいない。ケシュは慎重に進まなければならなかった。試練のこの部を成功させ、生き残って儀式全体を終わらせるために。

さて、ケシュは巣から卵を盗みたかったが、その過程で残りの卵やハジ・モタを傷つけることは望まなかった。彼女は、世界を通り過ぎる際に及ぼす影響が少なければ少ないほどいいと信じていた。だから彼女は再びハジ・モタの気を逸らし、巣から離れさせた。こうすることで、怪物の怒りに立ち向かうことなく卵を手に入れられると期待したのだ。ケシュは今回、オレンジグラスとマーシュルートの束を集めた。これに逆らえるハジ・モタは滅多にいない。その(少なくともハジ・モタにとっては)魅惑的な香りを利用して巣から引き離した。その上でケシュは束を水トカゲに括り付け、沼地のさらに奥へと走って行かせた。ハジ・モタはその後を追っていったので、ケシュは巣へ進むことができた。

巣の中には3つの卵があった。ケシュが選んだのは一番大きな卵でも、一番殻の厚い卵でもなく、一番小さな卵だった。斑点模様が付いたその卵の殻はすべすべしており、彼女の職人としての目からすると完璧だった。ケシュは生まれつつある器を、その卵の中に見ていた。彼女がギリギリまで見なかったのは、雄のハジ・モタが沼地を歩き回り、巣へ向かっていることだった。雄が巣に辿りつき、卵が1つなくなっていることに気づく前に、ケシュはすんでのところで逃げ出した。ケシュは雄が怒りと喪失感の入り混じった咆哮を上げるのを耳にしつつ、作業台へと向かった。

ケシュの作業台は巨大な死の流砂の上に置かれた、1本の丸太で出来た足場の上に設置されていた。彼女は作業台が丸ごと沼の下に沈む前に、器を作らなければならなかった。ケシュは素早くしかし注意深く作業し、卵の先端部分を使って器の基礎とした。ケシュはその部分を洗い、磨き、試薬を加えて殻を補強し、容器として使えるようにした。作品を仕上げて足場から外すと、泥が足場の上に跳ねかかり、丸ごと沼の中に引きずり込み始めた。

ラジ・ナッサが提出品を順番に検討している間、私たちは実に見事なクラフト作品を眺められた。だがこの季節は、ケシュがこの領域で抜きんでていたのは明白だった。彼女の器は最も簡素なハジ・モタの殻で作られていたが、その質素さには気品があり、その純粋さには美があった。殻に必要なのは、その自然な形に忠実であることだけだった。ケシュは脆い殻を強靭で壊れることのない器に変えながらも、その自然な形を見事に輝かせたのだった。

ケシュ:成人の儀式、パート3The Rites of Maturity, Part 3

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

成人の儀式を完了させるための3つ目にして最後の試練は「忍び寄るハックウィングの試練」だ。これは私たちが大人の社会に席を得るために参加しなければならない儀式の中で、最も危険なものだった。私たちはそれぞれ、1羽の巨大なハックウィングと共に牢の中に入れられる。この猛禽は凶暴な生き物で、力強く自信に満ちており、私たちの誰にも劣らない有能な狩人である上に、空を飛ぶことができた。私たちはこいつに攻撃させて血を流さなければならない。ヘマをしなければ、血を流させるだけで重傷を負わずに済む。その後ハックウィングは解き放たれる。目標は、私たちを狙ったハックウィングを捕えて殺すことだ。相手が私たちを殺す前に。

ヴォス・フルクとゾシンはくちばしの一撃を足に受けた。どちらの傷も軽く、血は流れたが筋が裂けることも、骨が折れることもなかった。ティー・ワンは左手を切らせ、肘から肩までの長く浅い切り傷を受けた。ケシュは飛び退くタイミングを誤り、鳥に右目のすぐ上のこめかみを切り裂かせてしまった。しかし私は、試練のこの部分を完全に失敗してしまった。ハックウィングの鋭いくちばしに胸を直撃されてしまったのだ。治癒師が言うには、ギリギリのところで心臓を外したらしい。それでも私は深手を負ってしまい、続けられなくなった。私は成人の儀式を完了するため、次の季節を待つことになる。

ケシュは私の無事を確かめることを望んだが、ラジ・ナッサは耳を貸さず、試練を続けるよう命じた。黒きヒレかハックウィングか、どちらかが死ぬまで。そのため、治癒師が私を助けているのを確かめるために最後の一瞥を送ってから、ケシュは目から血を拭って自然の中に駆けて行った。伝統に則り、彼女は武器も鎧も身につけなかった。自分の体と知恵だけを使うのだ。狩人が、狩りを生き延びるべき時が来たのだった。

あなたは飢えたハックウィングに追われたことがあるだろうか?当惑する経験であり、少々どころではなく恐ろしい。大抵の場合は翼がはためく音と、空気のざわめきが聞こえてくるだけだ。通り過ぎていく影に気づくこともある。翼や爪が一瞬でも目に入ることは珍しい。そして少しでも弱みを見せれば、ハックウィングは降下して傷を負わせようとしてくる。その後は、ただ出血多量で倒れるのを待ちながら追ってくるのである。儀式の場合、私たちはすでにこの鳥に血を流されている。手段はどうあれ、追ってくることは間違いないのだ。攻撃を予期しつつ、攻撃して迎え撃つのがコツだ。

(「私たち」と言っているが、私は実質的に試練から脱落していたことを理解してほしい。私は負傷して弱っており、試練の残った部分の大半はほとんど意識もなかった。何が起きたのかを知ったのは治療を受けて回復し、この季節の試練が終了した後になってからだ。)

ケシュは空の見える場所がほとんどないマーシュの一帯にハックウィングを誘い出した。彼女は木の幹や葉の屋根を利用し、ハックウィングと現在位置との間に直線の道しか残さないようにした。ケシュは木々のさらに奥深くまで進んで道を低くし、ハックウィングがついに攻撃してくる時には、上空からではなく水平方向から、それもほぼ地面すれすれの位置から攻めざるを得ないようにしたのだった。

ケシュは捕食者であり獲物である相手を待ちながら、傾いた角度に生えていた木から丈夫な枝を折って取り、粗雑ながらも先の尖った即席の槍を作った。彼女は槍を構え、背中を木の幹に押し付けて、ハックウィングが姿を現した時に素早く槍を持ちあげられる位置に着いた。長く待つ必要はなかった。獲物が出血に倒れ、木の群れの中で動きを止めて力尽きたと思ったハックウィングは、急降下してケシュが用意した道にぴったりと沿って飛んできた。ケシュは限界まで待ってから槍を上に向けて持ち上げ、後はハックウィング自身の速度と軌道がとどめを刺した。

狩りは終わった。ケシュは勝利した。彼女は成人の儀式を完了し、共同体の成人メンバーとしての席を得る準備を整えた。そして彼女が最初にしたことは、駆け戻って私がまだ生きているかどうかを確かめることだった。

ケシュ:村の外への旅、パート1Travels Beyond the Village, Part 1

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

戦争の英雄にしてサクスリール進歩社会運動の創設者である黒きヒレのケシュが、成人の儀式を完了してサクスリールの成人としての地位を獲得した後、最初に行った決断の一つは、私たちの小さな村の外の世界についてより多くのことを知るため、旅に出ることだった。抜け目のないティー・ワンと力持ちのヴォス・フルク、手先の器用なゾシン、そして私を脇に従え、ケシュは村と私たちの教師、ラジ・デーリスのドラミーンシンに別れを告げ、シークハット・ゾルの見慣れた境界の外に待ち受ける驚異を見るために出発したのだった。

私たちは北に進んだ。道の途上にあった村全てに立ち寄って友人や家族を訪ねながら、伝説の都市ストームホールドへと向かった。ズルークの村で、私たちはストームホールドにあるダークエルフの居留地を避けるようにと警告を受けた。彼らは迷い込んだサクスリールを捕え、奴隷にするためモロウウィンドに送ってしまうことで悪名高かったからだ。私たちは子供の頃にダークエルフの奴隷商人の噂を耳にしていたが、大マーシュの孤絶した地域にいた私たちは、そのような物語を本気で信じたことはなかった。

私たちは他の訪問者たちの群れに混じってストームホールドに到着した。訪問者の中には交易商、傭兵、職人、他にも私たちがこれまで見た中で、最も多様な種類の人々がいた。明らかに都市生活に慣れたサクスリール(他の種族にはアルゴニアンと呼ばれていることをその時知った)に加え、大柄なノルド、肌のきれいなハイエルフ、派手なブレトン、陰鬱なダークエルフ、わずかだがカジートやウッドエルフまでもが街角をうろついている姿を、驚きでぽかんと口を開けて見ていた。

彼らは全員、私たちにとっては奇妙で異国情緒に溢れていた。それに私たちの卵の兄弟や卵の姉妹が、よそ者にどんな風に扱われているのか、直接見たのだ。例えば力も尊厳もある街の居住者の一部は、頭を下げて敬われていた。弱く貧しい他の者たちは、命令され、蔑まれ、主人たちの気分によっては殴られていた。私たちは衝撃を受け、嫌悪感を覚えたが、ケシュは私たちに平静でいるように命じた。「この川の流れを私たちに変えることはできない」と彼女は言った。「少なくとも、今は」

街を探索している間、私たちは若いノルドの集団を見つけ、その人望篤きリーダーであるジョルンという吟遊詩人に出会った。私たちはジョルンの演奏を聞き、彼が語る物語に魅了され、その明瞭で表現豊かな声に聞きほれた。彼は私たちの、特にケシュの強い関心に気づき、自分と仲間たちに混じって夕食をとらないかと誘ってくれた。ケシュとジョルンはすぐに友達になり、夜遅くまで色々なことについて語り合った。実はジョルンと仲間たちは私たちとそれほど変わらない年頃で、彼らもやはり、成人の責任を担わされる前に世界を見ておこうと旅をしているのだった。私たちはジョルンとその友人たちに伝統的なサクスリールの食事の食べ方や飲み方を教え、彼らは宿に用意されていたノルドの珍味を紹介してくれた。

私はジョルンとケシュがその夜に話し合ったこと全てを聞いていたわけではないが、いくつかの内容は耳にした。ジョルンは自分の家族やスカイリムの素晴らしさ、そしていつかは有名な吟遊詩人になりたいという望みを語った。姉がノルドの女王になると彼は説明していたが、どうせ彼の空想的な物語の一つだろうと思った。ケシュが信じたのかどうかはよく分からない。ケシュのほうはジョルンにマーシュでの生活や、サクスリールであることの意味、そして私たちの民が昔、ずっと進歩した文明を持っていたことなどを話した。ジョルンは彼女の言うこと全てに心から関心を抱いているようだった。暖炉の炎が煤となり、ノルドのハチミツ酒とサクスリールの胆ビールのジョッキがついに空になった時、ティー・ワンが駆け込んできた。「ゾシンが」と彼は言った。声が恐怖と悲しみにかすれていた。「奴隷商人に連れ去られた」

ケシュは迷わなかった。彼女は立ち上がり、行動を命じた。ケシュには私たちの卵の兄弟がダークエルフにさらわれ、鎖で縛られるのを黙って見過ごすつもりはなかった。武器を集めて出発する前に、ジョルンが立ち上がった。「友達ってものは、戦いに行く友達を放置しないものだ」と大柄なノルドは宣言した。「それに、俺たちは木耀からまともな殴り合いをしてない。俺の仲間たちは長いこと殴り合いをしてないと、機嫌が悪くなるんだ」

ケシュ:村の外への旅、パート2Travels Beyond the Village, Part 2

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

ストームホールドを訪ねた旅は、陽気な一日に突然襲いかかる嵐のように不運な展開を迎えた。ゾシンとティー・ワンは、ケシュとヴォス・フルクと私がノルドの新しい友人たちと夜を過ごしている間に、自分たちで街を探索することに決めたのだ。ティー・ワンが戻ってきた時、彼は一人だった。彼はダークエルフの奴隷商人たちがゾシンを捕らえたと説明した。ケシュは当然、彼を救出する計画を立てた。そして驚いたことに、新しいノルドの友人たちのリーダーである吟遊詩人のジョルンが、私たちを手伝いたいと言ってきた。「正しい目的のためにダークエルフの頭をぶん殴るなんて、これほど血が沸き立つことはないぞ」と、彼は深く、よく通る声で宣言した。

ケシュとジョルンは街の外れにあるダークエルフの居留地へと進んだ。「ドーレス家か」とジョルンは言ったが、名前というより呪いの言葉のような言い方だった。「わかっていたさ」。私たちは居留地を偵察し、衛兵の位置や巡回経路を記録した。新しく手に入れた奴隷たちが収容されている場所を判断し、解放するための計画を立て始めた。ケシュが戦略についての議論を主導した。ジョルンはそれを注意深く聞き、時々提案を挟んだが、それ以外では彼女の計画に賛成した。太陽が空に昇り始めると同時に、4人のサクスリールと5人のノルドはドーレス家の奴隷商人の居留地に戦争を仕掛けた。戦いは栄光に満ちたものだった!

自信過剰で備えていない敵に対して奇襲を仕掛けるのは、想像するよりも簡単なことだ。半分酔っぱらった、熱意に満ちたノルドが数人味方についていればなおさらだ。ケシュとジョルンはつむじ風のように戦って奴隷の檻への道を開き、残った私たちは到着した援軍の相手をした。ダークエルフたちが防衛体制を整えるまで、私たちの予想よりも長くかかった。遅い時刻に予期しない襲撃を受けたことで、どうやら奴隷商人たちの活動は完全に混乱してしまったようだった。ジョルンの説明によると、彼らは荒野で隊商を防衛するのには慣れているが、ドーレスの居留地を直接襲撃するような大胆な者はこれまでにいなかったそうだ。「だからお前の計画は成功するよ」と彼はケシュに言った。

ケシュは苦もなく奴隷の檻の門を守っていた衛兵たちを片づけた。ジョルンは彼女が切り開いた道に踏み込み、巨大な戦斧を一振りして檻の錠を叩き壊した。ゾシンが檻から飛び出し、みすぼらしい身なりのサクスリールの一団を檻の外へ導いた。この時、ダークエルフたちは隊列を整えて私たちの位置へと進んできていた。「お客さんのお出ましだよ、黒きヒレ」とヴォス・フルクが警告した。「奴らは魔術師も連れている」と私は付け加えた。ケシュは必要なら全滅しても戦う覚悟をせよ、と命令を出しかけた。だがジョルンには別の考えがあった。

「死ぬまで戦わなくたっていいこともあるぞ、アルゴニアンの友よ」と大柄なノルドは目をきらめかせて言った。「お前の民を連れて逃げるんだ。俺と仲間であの弱っちいエルフどもを抑えておくから、その間に抜け出せばいい」。ケシュは彼に感謝し、いつか借りを返すと約束した。「その約束は、本当に守ってもらうことになるかもしれないぞ」と言ってジョルンは笑い、迫りくる奴隷商人たちに向き直った。「そのうちにな」

ケシュは私たちと解放した奴隷をマーシュへ誘導し、ジョルンとその仲間たちが背後で守った。ノルドたちは喜び勇んで戦い、私たちは彼らの笑い声と戦いの歌を耳にしながら、沼地へ姿を消した。太陽が空の一番高い位置にまで昇るくらいまで走り続けた後、ケシュが私たちに止まるよう呼び掛けた。彼女は私に、街へ戻ってノルドたちが奴隷商人の領地での戦いに生き残ったかどうかを確かめてきてほしいと頼んだ。隠密とごまかしの技に優れるティー・ワンが私に同行すると申し出た。ケシュが解放された奴隷たちに話しかけている間、私たちはすぐに出発した。

私たちはできる限り静かに、人目につかないようにストームホールドへ戻った。居留地は厳重に封鎖されており、大規模な衛兵の派遣部隊が到着して守りを固めていた。ティー・ワンと私は宿屋へ戻った。私たちはジョルンとその仲間たちをそこに発見した。朝の戦いの時よりも悪い状態には見えなかった。彼は心配して様子を見に来てくれたことに感謝したが、長居をしないように言った。「ドーレス家のリーダーは奴隷を失ったことに大層ご立腹だ」とジョルンは言った。「俺たちもここを離れるつもりなんだ。食事とハチミツ酒を片づけたらな。また会えるのを楽しみにしてる、とケシュに伝えてくれ」

こうして、ティー・ワンと私はストームホールドの街を去り、ケシュや皆の元へと帰った。

ケシュ:村の外への旅、パート3Travels Beyond the Village, Part 3

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

戦争の英雄にしてサクスリール進歩社会運動の創始者であるケシュの若き日々の物語はまだ続く。私たちが育ったシークハット・ゾルの村の外への旅は続き、大マーシュを通る私たちの道は全て、ケシュが決定した。私たちの仲間は5人から12人以上へ増えた。ストームホールドのドーレス家の領地から解放した奴隷たちの大半は、故郷と家族の元へ帰る道を探して去って行った。だが全員に帰る場所があるわけではなかった。それに、ケシュはどうやらストームホールドで会ったノルドのジョルンのように、カリスマ性を持ち、慕われるリーダーになりつつあった。

ケシュはいつも、遥か昔に栄えたとされる先進的なサクスリール社会の物語に魅了されてきた。旅のこの時期、彼女はそうした古代都市の跡地を訪ねる意思を固めていた。私たちはラジ・デーリスのドラミーンシン先生から借りた古い書の手がかりに従い、マーシュの奥深くへと進んだ。私たちが通った沼地は、鱗なきよそ者と同様、サクスリールにとっても危険な場所だった。奇妙な肉食獣や猛毒の雲が当たり前のように空気中を漂い、肉食の植物や肉を溶かす泥の動く塊、飢えた昆虫の大群まで相手にしなければならなかった。しかし、私たちは試練を受けて力を認められた成人のサクスリールであり(ただし、私はまだ成人の儀式を終えていなかったので除く)、しかも偉大にして強大な黒きヒレがリーダーなのだ。沼などものの数ではなかった。

私たちはしばらくうろつき回り、陰気なマーシュの奥地で、ある特定の目印を探そうとした。ケシュの書には2本の巨大なイトスギの木を探せと書いてあった。その幹は樹齢のためにねじ曲がり、互いに近くにあるため絡まり合い、結んだ分厚いロープのようになっているとのことだった。その絡まった木々をついに見つけたのはティー・ワンで、彼は興奮と恐怖の入り混じった叫び声で自分の発見を告げた。というのも木々の向こう、沼の不透明な水の先には、サクスリール先進文明の石の古代遺跡が山のようにそびえたっていたからだ。

遺跡は私たちを待ち構えていた。遺跡を構成する石と暗い影とには、どちらも同じような圧迫感があった。私たちの大半はこの場所へ近づくことに対して警戒心、というより全くの恐怖心を感じていた。真のサクスリールが、こんな建物の中に住むことをどうやって耐えていたのだろう?だがケシュは他の者たちが感じていた恐怖を一切示さなかった。彼女の顔は驚きと興奮で輝いていた。誰かが止める間もなく、ケシュはザンミーアの頂点へ向かう石の階段を駆け上がり、失われた文明の秘密を解き明かそうと急いだ。他の者たちがしり込みしているのを見て、彼女は戻ってきて皆に呼びかけた。

「ヴォス・フルク」ケシュは言った。「皆をシークハット・ゾルまで誘導して。私もすぐに後から行く」私たちはケシュが一人で遺跡に残ることを不安に思ったが、村に帰りたくもあった。「ここで何をするつもり?」と私は聞いた。ケシュは慈悲の背骨を立て、ただ「できる限りのことを学ぶわ」と答えた。

ケシュが沼地から出てシークハット・ゾルへ戻ってきた時には、私たちが村に帰ってからほぼ月が一巡するくらいの時間が経過していた。彼女は英雄として出迎えられた。私たちの冒険の物語は語り伝えるたびに大きくなり、ケシュは私たちの中でもっとも偉大な存在と考えられたからだ。彼女は決してお世辞を煽ることも、栄光を求めることもしなかった。彼女は私たち全員の様子を見に来て、同行した解放奴隷の状態を尋ね、それからドラミーンシン先生の助言を求めに行った。ケシュはかつての師が日光の熱を避け、泥の家にいる姿を発見した。「よくぞ帰った」と彼は言い、挨拶の背骨を立てた。

「ラジ・ディーリス」とケシュが口を切った。「古き者たちの地で見つけたものについて話させてください」

ケシュ:卵から青年期Keshu: From Egg to Adolescence

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

戦争の英雄にしてサクスリール社会進歩運動の創設者である黒きヒレのケシュも、最初はどこにでもいる数多くの卵の同族の一人だった。私たちがシークハット・ゾルの村で育てられた間、彼女には特別なところが何もなかった。もっとも私に見分ける力があったわけではないが。彼女は伝統的な遊びをし、伝統的な食べ物を食べ、狩り、追跡、戦いのやり方を学んだ。ケシュが何かに秀でていたとすれば、それは追跡と戦闘だった。彼女は水を得たシャプのように追跡と戦闘を身につけた。他の者を圧倒する様は、ほとんど超自然的なくらいだった。

ケシュと私は、ほとんど卵から出てきた瞬間から友人になった。私たちを引き離すことはできなかった。一緒に遊び、雑用も勉強も一緒にやり、全てのサクスリールと同じように成長した。多分、私はこの時期にケシュが何か違うと気づき始めたと思う。彼女は歴史に関して、事実と数字を暗記する以上の情熱を持っていた。彼女はダスクフォール以前に存在していた、かつての偉大なるサクスリール文明についてできる限りのことを知りたがった。この点に関して、彼女は際立っていた。他の卵の家族よりもずっと自立して、自由な考えを持っていた。彼女の燃えるような個人主義はある意味で、私を怯えさせた。

多分、ヒストは私が気づいたのと同じものを見たのだろう。私たちの名付け日にヒストを舐めた時、彼女は「ケシュ」の名を授けられたのだから。これは文字どおり「離れて立つ」という意味だ。力強く、いい名前だった。シャプばかりの湖にいるワニだ。ケシュはこの名を尊厳と名誉をもって受け入れた。彼女にはぴったりだった。

ケシュが歴史と戦闘だけの退屈な人物でなかったことを示すために、私たちが小さな子供だった頃のある出来事を話しておこう。卵の番人ジュラン・ナーはいつも私たちを叱りつけ、ザル・ウクシス、すなわち聖なる巣から私たちを追い払っていた。ケシュは育ちつつある卵に混じって遊ぶのが大好きだったのに。ケシュは卵の番人を懲らしめるため、若いワマスを追って捕らえた。彼女は卵の番人を怖がらせて笑ってやろうと、ワマスを巣に向かって放した。確かにそれは成功したが、同時に罪のない無力な卵が3つ割れてしまった。ケシュは自分が引き起こした被害に深く恥じ入り、暦が完全に一巡するまでの間、番人を手伝うことを志願したのだ。

それで暦が一巡する頃、ラジ・ディーリス(文字どおり訳すと長老の教師)のドラミーンシンが、私たちの成人の儀式のための準備として、教えを与えるためにやって来た。ケシュの仲間たちが集まったのは、この集中講義と訓練の時期の最中だった。ケシュは私に加えて、力の強いヴォス・フルク、いたずら者のティー・ワン、そして機転の利くゾシンの注目を集めた。ヴォス・フルクは山のようにそびえたつ女性で、戦いではケシュに匹敵するほどだった。ティー・ワンは後に盗賊、そしてスパイとなった。それに対してゾシンは錬金術の溶剤を混ぜるのが好きで、後に強大な魔術師となった。全員がケシュについて戦争に行った。私を除いて。

その季節の間中、私たちの友情は深まり、ドラミーンシンは力の及ぶ限り私たちを成人の儀式に備えさせた。だが、それはまた別の機会に話そう。

ゴースト族についてOn the Ghost People

新しい案内人のオリク・ジャーは、前にこのじめじめした沼のあちこちを案内した者と同じくらい苛立たしい。目的地まで真っ直ぐ連れて行ってくれるように頼んでいるのだが、相変わらず聞き入れようとしない。どうやら、まっすぐ行くとヴィーシュクリールの土地の中心を通ることになるようだ。そして彼はそこを通りたくないらしい。毎日何か新しい呪われた洞窟、侵すべからざる干潟、あるいは聖なる木の森が出て来る。私たちがこの八大神が見捨てし場所のどこにでも行けるとは奇跡だ。

ヴィーシュクリールはゴースト族という変わった名で知られている。真っ白な幽霊のような存在で、汚水まみれのこの土地に捨てられた水死体を回収し、彼らの聖なる木の近くに埋める。一見すると、この魅力的な住民たちが片付けをしているだけのように思える、ただオリク・ジャーによると、彼らには「ヒストへの帰還」を阻止する力があるらしい。この木々に興味のない私にとってはどうでもいいことだ。それでも私は案内人について行くしかない。どうやら彼にとっては、数十キロ遠回りしてでも回避すべきことらしい。個人行動をするほど私は愚かじゃない。あんなことがあった後なら尚更だ。

シロディール・コレクションにご協力を!Cyrodilic Collections Needs You!

アルゴニアンの骨董品の回収、修復、保存、マークマイアの正当な所有者への返還を目的とする協会、シロディール・コレクションは、最高の仲間を探しています。シロディール・コレクションは歴史を重視し、過去の過ちを正そうとする者を求めます。

バルケルガード、ダボンズ・ウォッチ、ダガーフォールでコンコルディア・メルシウスを探してください。競争に勝ち、アルゴニアンの文化を守るための助力をお願いします。

セプティミウスへの手紙Letter to Septimius

セプティミウス修道士

私を弟子に取っていただいて以来、多くのことを学びました。私にとって最も重要なことは、無謀になれと誰かに言ってもらえたことでした。あなたのように、私も好奇心の強い者です。普通の生活は送れません。あなたは必要なら、好奇心のせいで殺されればいいと教えてくれました。そして解決すべき謎の一覧をくれ、ブラック・マーシュへ送り出しました。アルゴニアを恐れるなと教えてくれました。私が沈まないようにしてくれましたが、そのことにあなたの体調が優れないという知らせを聞くまで気づいていませんでした。

何年にもわたるやり取りを通じて、数多くの発見を共有しましたね。いつかあの一覧を完了できると私は本当に信じています。それはもちろん、私がブラック・マーシュに戻れた場合です。ええ、心配するなとは言われましたが、私はシロディールへ向けて出発しました。あなたが乗り越えるまで、私がそばにいます。その時まで私の個人的な問題は後回しにして、あなたが寝床で読めるものをお届けします。

私が怖がってやめることを願って、あなたは一覧の最初に最も難しい謎を挙げましたね。ヒストの本質とは何か?

答えは分かりません。それどころか、この事項について事実として述べられるようなことはあまりありません。それでも、私の推測を楽しんでもらえたらと思っています。

懐疑的な者たちは、あれがただの木にすぎないと言います。ブラック・マーシュのトカゲ族によって樹液を飲むために育てられた木。トパルが悪臭の漂う悪しき場所とした記述を誰もが覚えていて、皆が慎重な結論に達しています。戻ってきた帝国軍は、毒を持つ植物、有毒な沼地、ある時は怒りに満ちて襲ってくるのに、ある時には侵略者を無視するおかしな守り手の話をしました。そして、より「文明的な」トカゲ族でさえ恐怖を和らげられる答えを提供できないのですから、博学とされる学者たちがアルゴニアンとおかしな木を恐れるようになったのは当然のことでしょう。

私たちの周囲では、ヒストの木には知覚があり、トカゲ族を育てたのは木の方かもしれないと言い伝えがあります。この件については、サクスリールにおける生の連鎖を注意深く研究することで証明するか、反証を挙げたいと思っていました。残念ながらご存知の通り、全ての答えはまた別の疑問を生みました。はっきり言えるのは、この問題について話を聞くたび、あるものの前に別のものが存在したという考えが、サクスリールには理解できないという結論に達しました。この魅惑的な文化が線形の出来事をどう考えるかについて語って、これ以上話をそらすのはやめておきます。私が何か書くたびにそう言われましたから。

しかし、これは言えます。ヒストは感覚があろうとなかろうと、単なる木ではありません。あの木が堂々としていて、その下に立つとある種の敬意を払わずにはいられないのは事実ですが、私はいつもその根に最も興味を引かれてきました。セプティミウス修道士、私が目にしたことをうまく表現できたらいいのですが。根は沼の下に深く延び、それがどの木のものか分からないほど広く広がっています。私は、ある意味で根は沼そのものだと信じています。根が一つにまとめ、変化する時を決めているのです。

このことは以前にも話したのは分かっていますし、あなたは沼の無秩序な性質が、単にヴァレンウッドのエルフに似た一種の魔法によるものだと仮定していました。私にはその主張が誤りだと証明できず、論理は理解できますが、それが本当だとは信じていません。

私は腕の立つ追跡者がこの地の気まぐれに挫折させられる姿を見てきました。動きを見たとは言えませんが、経験を積む中で堂々巡りにされる方向感覚は十分に習得しました。もっと疑わしい相対空間の説については述べるまでもありません。私は、サクスリールが環境に応じて変化するように、根もブラック・マーシュをふさわしいと思われる形に変えているのだと考えます。

セプティミウス修道士、ブラック・マーシュはこれまで一度も征服されそうになったことがありません。アルゴニアの境界は考えられたことさえほとんどありません。地図が正しいはずもありません。根は深く広く延びすぎて、私たちが真のアルゴニアを知ることは無理なのです。

学会は樹液にばかり注意を注いできました。自らを樹液の民と呼んでいるのは、私が書いたばかりのウッドエルフではないのですか?

サクスリールは根の民であり、あなたの難しい謎に対する答えはそこで見つかることになるでしょう。

それは私が戻る時まで待たなければいけません。じきにお会いして、あなたが回復への道へ向かえるようにしましょう。

愛を込めて、
ジュニア・セヴェラ

そこにある虚無That of Void

ニッソ・ゼーウルム 著

永遠なる虚無であるもの
第一の創造者、第一の破壊者
全て無から生まれたものは
再び無へと帰った

黄昏へと溶けゆく日
鋭い一突きにより奪われる命
崩れて塵と化す石
咲いて命になる死

望まれぬ変化、必要な変化
成長し、腐敗し、再び生まれる
闇のように、汝の死のように
瀕死の者にかける無の言葉

季節は変わる、我々の意志を越えて
全てのものは変わる、我々の恐怖を越えて
虚無であるものを見よ
目を開いて見よ

テーバ・ハツェイTeeba-Hatsei

肌の乾いた者はよくテーバ・ハツェイについて尋ねる。彼らはボールとコートを見て、ありとあらゆるおかしなことを言う。今日は旅を共にする長身のエルフがコートを指さして「これは菜園だな?」と聞いてきた。どう答えたものやら分からず、ただ目をしばたたかせることしかできなかった。食物を育てない菜園?長身のエルフは馬鹿なのかもしれない。それでも人々からの質問が減るように、ルールを書き留めておくべきだと私は考える。

テーバ・ハツェイとは肌の乾いた者の言葉に直すと、「ヒップ・アンド・テイル」となる。我々は皆この競技を行い、中には他の者より秀でた者もいる。私はあまり上手ではなかった。腕が長すぎるし、尾が細すぎるからだ。最もティーバの選手に適しているのは、ずんぐりした体型で、ワニのような幅広い尾と、シナモン草の袋のように左右に揺れる尻を持つ者だ。

試合は乾いた泥と塩牧草の干し草の広い競技場で行われる。競技場の両端には泥とイートの茎の壁がある。競技場の大きさと壁の高さは村によって異なる。例えばシニスでは、壁の高さが20の手の高さだ。競技場の上には葦の輪が二つ吊るされている。一つは大体30の手の高さ。もう一つは大体50の手の高さだ。これも統一はされていない。例えば、タム・タリールは肥えていて愚かで、あまり高く飛べないために輪を低く吊るしがちだ。

各チームは5人の選手で構成されている。試合はボール(ティーバ)を空に向かって放り投げることで始まる。各チームは尻、肘、あるいは尾でボールを打とうと試みる。これは少し痛いかもしれない。なぜならティーバは非常に重く、デパサ・ガムで作られているからだ。保護のために木と乾燥したワッソの葉のパッドを身に付ける選手もいるが、ほとんどのサクスリールはそうすると馬鹿にする。

それぞれの選手がボールを相手の壁に当てようとして、ティーバを前後に飛ばし合う。成功すれば、そのチームは点を獲得する。チームワークは非常に重要だ。1人の選手が上に向かってティーバを弾き、次の選手がそれを尾で叩けるようにする。大抵は尾の打撃のほうがずっと強い。一方のチームが10点獲得するまで続く。

低いほうの葦の輪を通せば、3ポイント獲得できる。輪はとても小さいため、通すのは非常に難しい。もし選手が上の輪を通すことができたら、そこで試合は終了し、その時点で多く点を取っているほうが勝者と認められる。

もちろん、これが全てではない。だが、少なくともこの入門書は、鱗のない連中がコートの中央にテントを張ろうと思わないようにはできるはずだ。

ドラデイヴァの日記Dradeiva’s Journal

私はあらゆる物語を聞き、あらゆる語り部や長老と話した。多くの季節をかけた探索と調査の末、私の卵の家族の祖先は、インペリアルの第九軍団をツォフィア洞窟に連れ込んだという結論に達した。軍団はそこで歴史の中に埋もれ、失われた軍団になったのだ。

* * *
ツォフィア洞窟に関係する物語の多くは、ウジュカと呼ばれる巨大かつ強力なボリプラムスに言及している。確かめた限り、この邪悪なスライムの巨大な塊は、他のボリプラムスとは行動が異なる。自身を拡張するのだ。ウジュカと何らかの形で連結している動く粘液の塊を広げ、ウジュカの目、耳、触角として機能させる。それがウジュカの外の世界との接触点になっているのだ。私が話した長老たちは敬意を込めてウジュカについて語ったが、明らかに彼らもその生物を恐れていた。彼らが言うには古代の季節において、付近の部族の長老たちがツォフィア洞窟に行き、拘束の儀式を執り行って、巨大なボリプラムスとその拡張を洞窟内部に閉じ込めていたそうだ。

拘束の儀式はもう非常に長い季節の間行われていない。ツォフィア洞窟への入口が落石で塞がれて以来ずっとだ。第九軍団が行方不明になったのはその時か?彼らはどのようにしてか、洞窟の内部に閉じ込められたのだろうか?

* * *
私がボリプラムスについて知ったことは以下の通りだ。あのスライムは沼を這い回り、その途上にあるもの全てを吸収する。新しく生まれる時は分裂して新しいボリプラムスになるか、吸収した肉をボリプラムスの死体に代えてしまうか、どちらかだ。ボリプラムスの死体は半透明の体のような外見をしており、肉が骨から溶け落ちてボリプラムス状のスライムに置き換わっている。この吐き気をもたらすような蠢く生き物は、生まれる元となったボリプラムスと何らかのつながりを持っているが、ウジュカの場合ほどではない。

* * *
ある長老はウジュカのための拘束の儀式を私に教えてくれた。少なくとも、彼女は以前の長老に教わったことを私に教えてくれた。ウジュカがもう存在していなければいいが。もしあれがまだツォフィア洞窟を占領しているとしたら、洞窟を去る前に拘束の儀式を行わなければならない。ただ、私としては第九軍団の痕跡と証拠も見つけだして祖先の動機を示し、私の卵の家族を貶めてきた、裏切り者の汚名を返上したい。

パヒーザからの手紙Letter from Paheiza

ナーヘイへ

沼バエが何度噛みついても、クロコダイルは自分の道を進み続けるものよ。お前の脅迫と私や、私の卵の姉との関係も同じ。確かに、私はお前に借金がある。でも脅すだけで早くゴールドを稼げるようになったりはしない。

もう少し時間が欲しいと言っているだけよ。キーマ・ルーは私たちの農場が苦労していることを知っている。近いうち売却に同意してくれるでしょう。その時に借金は全て返す。

パヒーザ
パヒーザ

パヒーザへの脅迫状Threatening Letter to Paheiza

パヒーザへ

キーマ・ルーはすでに私が申し出た貸付金を、サルトリス農場の未来を確保するために受け入れた。彼女が自分の土地を売ったとしても、利益は直接、この貸付金の返済に回る。

分かっているのか?お前の趣味が積み上げた借金は全て、お前の財布から支払うしかないんだぞ。何しろ、お前にやっているスクゥーマは簡単に入手できるものじゃないんだ。お前の卵の姉の貯金を散財しつづけたら、キーマ・ルーにお前の窃盗を伝えるしかなくなる。もちろん、事業のパートナーとしての懸念からな。

ナーヘイ

ヒートザシの日記、1ページHeetzasi’s Journal, Page 1

より多くの金がRを探すためにばらまかれている。

マーラの聖堂でサングインを見つける可能性の方がまだ高そうだ。

奴はまた厚かましくなってきている。俺は譲らなかったが、奴については色々な噂を聞いている。陰惨な噂を。カサンドラの件がうまく片づけばいいが。

ヒートザシの日記、2ページHeetzasi’s Journal, Page 2

また調べ回っている。痕跡を探すため。

地元の者たちはRについて「知って」はいない。伝え続けるような情報じゃないんだ。全てはヒストの知識。本能だ。具体的なことは何もない。仕事が面倒になる。真面目に働くのは嫌いだ。

ブラックガードの発想は正しい。部族からヒストと話すのに使う物を奪う気だ。それでRについて知ろうとしている。だがデッドウォーターに試すのは正気の沙汰じゃない。ナガどもが遺物を盗まれて黙ってるわけがない。奴らは葬式を出したようなものだ。

奴は今日もまたやって来る。紹介をする必要があると言っている。

ヒートザシの日記、3ページHeetzasi’s Journal, Page 3

ベーリシャルス…5ゴールド
カルガ・フラヴォニウス…7ゴールド
ヒフプ…3ゴールド、魚取り網2つ(なぜ?)
あの上唇の割れたオーク(名前?)…18ゴールド

ファミア・メルシウスの日記、1ページFamia Mercius’s Journal, Part 1

自分の幸運が信じられない!1ヶ月の間毎日冒険者を募って、ついに本物の英雄を見つけたわ!古典的な意味の英雄ね。まだ知り合ってから間がないけど、限界が見えないほどの機転、勇気、力を示してる。この人と知り合えなかったら、完全に挫けていたと思うわ!

私たちはついに、長いこと遅れていたイクスタクス・ザンミーアへの探検に乗り出したの。ほぼ一瞬にして危機に陥ったわ。幸運にも、我らが英雄と私は遺跡の数多の脅威を通り抜け、カジン・ジャットのクリスタルを回収できた!カサンドラの展示ケースにあれを置いた時、彼女は微笑んだみたいだった。珍しい光景よ!

もちろん、私たちの喜びは最近のブラックガードの事件で曇らされた。どういう方法でか、あの悪党どもは私たちがアルゴンの名残を探していることを知った。奴らは私たちの組織のメンバーを誘拐までしたの!運よく新しいメンバーと親友のズカス、そしてジャクシク・オルンというデッドウォーター族の戦士が彼らを救出してくれた。友人たちを無事に取り戻せて安心したけど、ブラックガードのならず者どもが名残の場所についてどれだけ知っているのか不安が残る。この新しい英雄さんの力を借りて、先に名残を見つけられるといいんだけど!

ファミア・メルシウスの日記、2ページFamia Mercius’s Journal, Part 2

前回日誌に書いた時から、すごく沢山のことが起きたわ!この文を書いている最中にも、カサンドラの船が私とズカス、ジャクシク・オルン、カサンドラ、そしてウィップテイルをリー・アン・ウー、別名「呑まれた林」へ運んでいる!マーラの心臓にかけて、先走りすぎね。

シロディール・コレクションの新メンバーがまたしても、欠かせない存在だということを示したの。ズカスとジャクシク・オルンに協力して、アルゴンの名残についての重要情報が、ブライトスロートとデッドウォーターの遺物の中に隠されていることを発見した。それぞれの部族の遺物は謎の半分を与えてくれた。その謎は私が解けたわ!分かっている限り、呑まれた林に行って「夢浸り」と呼ばれる儀式を行うの。この儀式が何を教えてくれるのか、見当もつかない。それが名残自体へ導いてくれることを祈るしかないわ。きっとすぐに分かるわね。待ちきれないわ!

ファミア・メルシウスの日記、3ページFamia Mercius’s Journal, Part 3

ようやく、書く時間ができたわ!呑まれた林への旅以来、沢山のことが起こった。どこから始めればいいのか分からないくらいよ。

ズカスとジャクシク・オルンの夢浸りの儀式は、彼らが話した幻想的な伝説にふさわしかった。強力な錬金術の煙を吸い込んだ後、新しい友は過去の鮮明な幻視に入り込んで、名残が実は失われたアルゴニアン部族の作ったものだと知った。昔、バルサエビク・アイレイドの一団がその部族の村を襲撃し、そこに住んでいたアルゴニアンを皆殺しにして、しかもその魂を使い尽くそうとしたの!幸運なことに、アルゴニアンの長老は部族の魂を保管して守る器を作ることができた。それがアルゴンの名残よ。

私たちがそのことを知ってすぐ、カサンドラは私たちを裏切った!彼女は儀式の最中に現れた魔法の杖を奪い取り、逃げ去ったの(私を引きずってよ!)

その後の数時間は本当に怖かった。彼女の不気味な手下ウィップテイルは、思ってた以上にひどい奴だった。私をシシスに捧げようとしたんだから!新しい友がすんでのところで現れて、あのブラックガードの暴漢から助け出してくれてよかった。

いくつもの予期せぬ展開と、長い追跡の後、友と私はカサンドラに追いついた。でも残念ながら、彼女を救うには手遅れだった。カサンドラは名残に触れ、巨大なマイアゴーントと結合してしまったの。彼女は一時的に怪物を支配したけど、我らが英雄は撃破に成功したわ。私はこの出来事にまだ悩んでいる。カサンドラを止めることは明らかに必要だった。でもどうしても彼女を救えなかったかと考えてしまう。彼女の狂気にもっと早く気づいていたら、カサンドラは今も生きていたかもしれない。悲しいわ。

とにかくカサンドラが倒れた後、私は名残を手に取ってズカスとジャクシク・オルン、そして我らが英雄に頼んで、中に入ってもらった。本当は、ほとんど覚えていないの。ヒストの中の何かが私を包んだ。苦痛ではなかったけど、快適でもなかった。私があんなものを長時間持ってちゃいけなかったのよ!

名残の中で起きたことにはあまり詳しくないけど、友達を1人失ったことには今でも動揺している。でも、犠牲が無駄ではなかったと知って気持ちが晴れたわ。ルートウィスパーのヒストは完全に開花し、枝の下に新しい部族が集った。新しい始まりよ。私にとってもね。カサンドラの支えとリーダーシップがなくなった今、シロディール・コレクションはかつてのままじゃいられない。でも色々なことを見て経験した後では、これまでよりさらに素晴らしいものにできる自信があるわ。次の冒険が待ちきれない!

ファラルへの手紙Letter to Faral

ファラルへ

ボグブライトには気を付けろとお前が言ってたのは覚えてる。気を付けてるよ、信じてくれ!お前が言ったとおりパンジーの煙を仕掛けた。俺たちの匂いを隠すため大量の腐った肉を置いたよ。だがファラル、お前に俺の計画を検討してもらいたいんだ。俺はあいつらを観察してる。動き方や狩りの仕方、それから、破裂する仕方を記録してる。あの力の一部を利用できたら、ブラックローズの連中は俺たちを英雄扱いしてくれるぞ!

まず考慮すべきは、あいつらの居場所と起こし方が分かってるってことだ。この点に謎はないよな?アルゴニアンの死体を水の下に留めてるあの墓標が集まってる場所を探して、引き抜けばいい!まあ、死体はただ水面を流れていくこともある。だが時々、ここみたいなアンデッドの鉱脈が見つかる。何がここの死者たちを目覚めさせているのか分かるといいんだが。水の中に何かあるんだろう?きっとそうだ。ナガだけがあれを飲めるんだ。何年か前、口一杯に含んじまったことがあるが、気持ち悪くて死にそうになった。

ボグブライトを捕まえるのは不潔だが、難しいことはない。ブラックガード数人とロープ1巻き、少々の忍耐があれば、すぐに何体かは手に入る。爆発させないようにするのがコツだ。

正直言って、そこがまだよく分からない。死体をあまり長く放っておくと、ふいごみたいに膨らむのは知ってる。だが爆発はあまりに急で、強烈だ。ボグブライトはわざとやってるに違いない。突進して、ハンマーで叩かれたカボチャみたいに破裂するんだ。
確かに、まだ解明すべきことはたくさんある。でも、だからこそ捕まえなきゃいけないんだ!少なくとも、ドラキーとあの連中に話をしてくれよ。いいな?

モンガノー

ブラック・マーシュの鱗の騎乗動物Scaly Steeds of Black Marsh

リルモスの馬屋の親方、ウカスパ 著

肌の乾いた者の多くが、血もつながっていないにもかかわらず、毛の生えた騎乗動物に感情的な執着を抱いていることに私は気づいた(我らの隣人カジートは例外かもしれない。彼らは全ての猫が親戚だと言う。それは本当かもしれないが、カジートの髭とピクピクする耳から、表情を読み取れる者などいるだろうか?誰も彼らを信用しないのも当然だ)。とにかく、肌の乾いた者が自らの愛する毛の生えた騎乗動物に乗ってブラック・マーシュまでやって来ると、馬は突発の流砂に飲み込まれ、ニクバエから泥肌病をうつされ、斑点模様の毒キノコを食べてバタン!と死ぬ。そして肌の乾いた者は目から水を流すのだ。

確かに、悲しきビーク・オジェルにとって酷い状況だ。簡単に避けられる状況であればなおさらだ!なにせ、マーシュの親方はほぼ全員が、鱗のある上等な騎乗用トカゲを売っているのだから。トカゲには様々な形があり、どれも肌の乾いた者にとってはお馴染みのものだが、沼の奥地の条件に適応しているのだ!我々のトカゲは非常に便利で、鱗たっぷりで魅力的だ。1頭欲しがらない者がいるだろうか?あるいは何頭でも?

一度ならず、私は好奇心旺盛なビーク・オジェルに尋ねられたものだ。「ウカスパ、なぜお前のところの乗用トカゲはタムリエルの他の地域の騎乗動物のような姿をしている?なぜ馬トカゲやラクダトカゲ、センチトカゲがいる?なぜお前のところのとっても美しい騎乗動物は、トカゲの姿をしているんだ?」。いい質問だ。私ウカスパはこれに答えたいと思うが、大きな謎になっている部分は別だ。

我々サクスリールはヒストの子であるゆえに、肌の乾いた者たちと違うことは知っているだろう。だが、それはどういう意味なのかと思うだろう。ヒストは木であって、我々は明らかに苗ではない。それは、ヒストが木以上の存在であり、根を持つ知恵だからなのだ!ヒストは高く、広く成長し、とても賢いが、成長する場所に留まっていなければならない。それが不便な時もある。だがヒストは人間とエルフが足で歩き、器用な手を持っているのを見て、「おお、これはいい!」と賢くも考えたのだ。そして急いで根を伸ばし、今ではマーシュのどこでも我々が「役に立つ」と呼ぶ種類のトカゲがいるわけだ。そしてある出来事が起こった。我々が「役に立つ」と呼ぶ種類のトカゲをヒストが手に取り、それからあなたがアルゴニアンと呼ぶ民を作ったのだ。

川がどこに流れているか見えてきただろう?ヒストは歩く足と器用な手のある子供としてアルゴニアンを扱っているのだ。そしてアルゴニアンは最も優れた民だ。なぜなら人間とエルフの持つ欠点がないからだ。だが、彼らは時々長い距離を長い間旅しようとする。人の形をした者がどうやって旅する?騎乗動物に乗ってだ!だから役に立つトカゲは役立つ姿の乗用トカゲになり、アルゴニアンは尻尾を鞍に載せて誇り高く乗れるのだ!

だが分かっているぞ、ビーク・オジェルよ。さらなることを知りたいのだろう。知識が鱗を潤わせるとでも言うように(ちなみにそんなことはない)。役に立つトカゲがたまたまヒストの子供であり、乗用トカゲでもあると知っただけでは足りず、あらゆる細かい点、特にあのトカゲは肌の乾いた者が「セクシー」と呼ぶようなものなのかを知りたいのだ。しかし、それについてウカスパは手助けできない。なぜならそうしたことは全て大きな謎だ。ああ、もちろんヒストのアルゴニアンにとってはそうではない。全ての手がかりを知っている我々にとって、それが大きな謎であるはずはないのだ。だが君には全く手がかりがない。君は我々の卵の兄弟ではないからだ。とにかく、私が乗用トカゲについて教えられることは以上なので、もう行っていい。喜びに打ち震え、潤いを保ち、愚か者のように沼の奥地にふらふらと迷い込まないように。いいな?

ブラック・マーシュは待っている!Black Marsh Awaits!

シロディール・コレクションはマークマイアの沼の探検に参加してくれる、勇敢で進取の気性に富む冒険者を探しています!アルゴニアンの故郷の謎めいた奥地で、興奮、発見、財宝が待ち受けています!

興味のある方は、リルモスでファミア・メルシウスまでご連絡ください!

ブラックウォーター戦役、第1巻The Blackwater War, Volume 1

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

ブラック・マーシュの侵略が第一紀2811年に始まった時、帝国軍は勝利を確信していた。インペリアルはアルゴニアの戦いで決定的な勝利を得ていて、他の衝突も同様の結果に終わった。これらの戦闘は一方的であり、アルゴニアンたちが多数の負傷者を出したのに対して、インペリアルにはほとんど疲労の色さえ見えなかった。第一紀2811年蒔種の月、トカゲの民は全面的な退却状態にあり、ブラック・マーシュ内陸の薄暗い奥地に逃げ込んだ。帝国はこれを好機と判断し、アルゴニアンたちが態勢を立て直す前に総力を挙げて侵略を試みた。

部隊は若く人望のあるアウグリアス・ブッコという司令官に率いられていた。ブッコはシロディールで名を知られた人物だった。その麗しい外見と巧みな弁論術により、彼は前例のない早さで帝国軍の階級を駆け上がったのである。25歳になる頃、ブッコはすでに将軍の証であるダイヤモンドを身につけていた。将軍の印を受け取るに際して、彼は実質的にシロディールのどんな場所の軍団も選択できた。ブッコが指揮することを決めたのは、ブラック・マーシュの第四軍団だった。

他の歴史家たちはなぜブッコがこのような陰鬱で危険な仕事を選択したのかについて、無数の理論を提供してきた。私としては単に、プライドが決定的な要因だったと主張したい。ブラック・マーシュの国境沿いにおける帝国軍の活躍の噂が、第一紀2811年恵雨の月にはすでに、帝都の宿屋や街路に届いていた。沼地の征服を大将軍への昇進への機会と見ていたブッコは、ブラック・マーシュでの戦争が短期間の大勝に終わるだろうと確信し、貪欲にも第四軍団指揮官のマントをまとったのである。彼の判断は完全に誤っていた。

ブラックウォーター戦役、第2巻The Blackwater War, Volume 2

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

ブラックウォーター戦役の当初数年間は、帝国軍にとって厳しい戦局になった。シロディールの大地では数々の勝利を手にしていたこの軍団は、悪臭を放つブラック・マーシュの沼地に対処する用意がまるでなかった。

まず、帝国軍の装備はこのような環境に適していなかった。例えば彼らの鎧は重く、湿気の多い気候の中ではすぐに錆びてしまった。軍団兵たちはブーツや盾から泥を落とすために何時間もかけ、戦場に持ち込んだ荷物を少しでも軽くしようと必死になった。2年目の終わりに差し掛かる頃になると、軍団兵たちは胸当てやグリーヴを完全に放棄し、金属の鎧で汗にまみれて死ぬよりも、快適な死を選んだ。

数世紀にわたってインペリアルが発展させてきた戦術も、この厳しい地においては鎧と同様に役立たずだった。歩兵隊の展開や厳格な隊列システムは、沼だらけの内陸部で実施できるものではなかった。イトスギの枝の繁茂や泥まみれの地形によって部隊はすぐ散り散りにされ、その結果頻発した小規模の乱戦では主にアルゴニアンが勝利した。こうした条件では命令系統がすぐに悪化した。これにより、軍団内では命令無視や士気を下げる権力闘争が早晩巻き起こった。

そして、沼自体が部隊を飲み込んでしまうことがしばしばあったようである。帝国軍の野営地周辺では噂や事実の断片が始終飛び交っていた。ある者は行方不明の部隊が道に迷って方角が分からなくなり、安全な場所に戻る道を見つけられずに飢えや乾きで死んだと考えた。別の者たちは大いに恐れられていた「ゴーストウォリアー」の仕業だと言った。残忍なことで知られた、青白く醜いアルゴニアンである。暗く邪悪な化け物が沼の下に潜んでいて、それが一口で歩兵部隊を丸ごと飲み込んでしまったのだと囁く声すらあった。こうした噂は明らかに間違いだったが、軍の士気には大きな打撃を与えた。

さまざまな障害と環境が絡み合って、何年も続く悲惨な戦争が始まろうとしていた。ブラック・マーシュの戦闘が終結するまでには、数千もの兵士たちが死ぬことになった。

ブラックウォーター戦役、第3巻The Blackwater War, Volume 3

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

第一紀2816年になると、ブッコ将軍の軍団は歩兵隊6部隊にまで縮小していた。しかも戦いが続くうち、どれ一つとして万全の状態ではなくなっていた。終わりなき襲撃に疫病、謎めいた失踪などが重なり、絶望と悲観が常態化するようになった。

援軍がない限り敗北は必至と見たブッコは、ブラック・マーシュにもう一軍団を展開することを要請した。新しい部隊を前線に送って追い詰められた部下たちを休ませるのではなく、ブッコは彼らに「レマン街道」(後の沼街道)の建設を行わせた。この道がどこに続くのか、これが将来の紛争にどう貢献するのかを知る者はほとんど誰もいなかったが、ブッコは舗装されて警備された道路が戦いを助け、戦況を帝国軍へ有利に傾けると確信していた。

理論上、この道路はインペリアルにとって願ってもない恩恵であるはずだった。帝国軍にとって、物資の不足は長らく悩みの種だった。安全な物資の流れがあれば兵を頻繁に交換でき、食料や水、装備の流入も阻害されなくなる。だが、街道が完成することはなかった。

レマン街道は工事の開始とほぼ同時に攻撃を受けた。アルゴニアンの波状攻撃が作業員たちを日夜襲い続けた。盾と槍で武装すべき兵たちは、シャベルと鎖で身を守らねばならなかった。兵士たちはまた、疲労と沼風邪に倒れることも多かった。街道は前線まで半分の距離を建設したところで放棄されてしまった。沼街道の計画はブラック・マーシュ侵攻が苦い失敗に終わった後も、「ブッコの愚行」として記憶される。

ブラックウォーター戦役、第4巻The Blackwater War, Volume 4

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

第一紀2820年、ブッコ将軍の第四軍団は完全に崩壊していた。残存する数少ない兵士たちはまともに戦える状態になかった。暴動まがいの事態でブッコの指揮権が脅かされるに至ってようやく、彼は残った兵士たちに退却と、マーシュ内陸部からの脱出を命じた。彼は帝国軍が沼を去れば、アルゴニアンも追っては来ないだろうと判断した。

10日間の厳しい退却の後、帝国軍の残存兵たちは「ジ・ツェイ」と呼ばれる古代アルゴニアンのピラミッド周辺に集まった。軍はこの時点でもはや350人程度にまで減少していた。ブッコはピラミッドの陰で短い休息を取ったら、残存勢力は比較的安全なシロディールまで退却できるだろうと考えていた。その望みが果たされることはなかった。第一紀2820年収穫の月14日、ブッコの誇った第四軍団の残存兵たちは全滅したのである。

ジ・ツェイの虐殺の詳細は歴史コミュニティにおいて議論の多い問題である。ブッコの残存勢力が大規模なアルゴニアン軍団によって撃破されたことについては広く合意されているが、この結論を支える証拠には一貫性がないと言わざるを得ない。ピラミッド周辺の考古学的発掘調査では数百の死体と放棄された武具が見つかったが、帝国軍の遺体が少なくとも100体は未発見のままだ。これは当然、この兵士たちに何があったのかという問いを導く。彼らがシロディールに辿りつけたことを示す証拠は何もないため、捕虜として連行された可能性もある。だが既知の戦場の野営地の発掘からは、帝国軍捕虜のいかなる証拠も発見されていない。これもまた、この紛争中に発生した謎の失踪事件の一つである。アルゴニアンはこれ以上のことを知っているかもしれないが、歴史家に情報提供を申し出た者はこれまでに誰もいない。

ブラック・マーシュでの大敗によって、帝国議会はこれ以上の屈辱を許容できなくなった。他の敵対勢力はブラック・マーシュを見て、かつては恐れられた帝国軍が弱体化したと見て気勢を上げた。議会は対抗措置として、第四軍団をレグルス・サルデカス将軍の指揮の下に再編成し、第二次ブラックウォーター戦役を開始した。

ブラックウォーター戦役、第5巻The Blackwater War, Volume 5

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

サルデカス将軍は帝国軍において伝説的と言ってもよい存在であった。数えきれないほどの会戦に参加した古参兵であり、兵士としても将軍としても、周囲に抜きん出た力を示してきた。

サルデカス(別名「岩のサルデカス」)は、行方不明でおそらくは戦死したブッコ将軍とは正反対の人物だった。目撃者の証言が記すところによれば、彼は大柄で冗談を解さない男であり、鷹のように鋭い容貌を持っていた。彼は足を引きずって歩き(アルゴニアの戦いの古傷である)、短く重々しい言葉で服従を命じた。正装や礼服の類は全て避け、簡素な百人隊長の鎧兜に、自らの役職を示す勲章を身につけることを好んだ。

サルデカスと再編成された第四軍団は間を置かずに戦いへと復帰した。第一紀2823年、彼らはブッコが退却した際に失った全領域を取り戻した。多くの軍事学者はこの成功をサルデカスの適応力と戦略的独創性に帰している。例えば、サルデカスは全帝国軍兵士に命じて金属の鎧を捨て、胸当て付きの革鎧を身につけさせた。インペリアルの補給係はアルゴニアンの非正規兵や斥候と連携を取り、沼地から得られる食料だけで生き残る術を学んだ。また、百人隊長や軍団長には追加権限が与えられ、軍が分断された際も独立して戦えるようにされた。大隊と中隊が独立して機能するように計らうことは、兵士たちの士気を驚くほど高めた。帝国軍兵士たちはこの時初めて指揮官を自分の目で見て、その命令に従って個人として戦いに参加できるようになったのだ。もちろん、軍団長たちの手腕と指揮能力に負うところも大きかった。しかしサルデカスは要求の厳しい指揮官として悪名高く、期待に背いた兵を格下げすることもためらわなかった。

だが、サルデカスが最も成功したのは外交の領域においてだった。紛争初期、彼は追放されたアルゴニアンの部族に呼びかけ、帝国側について戦えば報酬を与えると申し出た。死したブッコ(および多くの同時代人たち)はトカゲの民を一枚岩の蛮族集団と見ており、低俗な交配と野蛮な気質によって結びついていると考えていた。サルデカスはそれが誤りであることをほぼ一瞬で見抜いた。彼は影響力のあるいくつかの部族と強固な同盟関係を結び、その中には油断ならぬアーチェインやショス・カリールもいた。彼の勢力は一挙に3倍近くへ膨れ上がった。ブラック・マーシュ戦役はようやく、帝国軍有利に傾きつつあった。

ブラックウォーター戦役、第6巻The Blackwater War, Volume 6

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

サルデカスの指揮戦術は一つの原則に基づいていた。それは真の敵が沼であり、アルゴニアンではないというものだった。第一次戦役における死者の約半数は疫病が原因であり、ほぼ同数が謎の失踪によるものであった。彼の算定で、アルゴニアンの襲撃はそれらより遥かに低い第三の要因だった。この事実を考慮して、サルデカスは新たな戦いの心得を作り、士官全員に普及させた。この戦術の要点は単純だった。すなわち、ブラック・マーシュを征服する唯一の方法は、それを破壊することであるというものだ。

サルデカスは技術者と工兵で構成された大隊を全て前線に展開した。帝国軍兵士が国境付近の村に激しい襲撃を行っている間、支援兵が沼を干上がらせ、水田に塩をまき、数百の木を切り倒した。戦役のこの時点において最もよく知られている出来事は、第一紀2828年の「大炎上」である。

記録が示すところによれば第一紀2828年恵雨の月上旬、エリシア・マリシウス(サルデカスが信を置いていた軍団長の1人)が工兵部隊に命じて、ストームホールド外にある泥炭の沼地に火を放たせた。工兵たちは命じられたとおり行動したが、沼地が地下に広がる巨大な網構造の一部であることは知らなかった。数ヶ月経って、帝国軍兵士たちはソウルレストやギデオンなどの遠隔地で突然の出火を報告するようになった。この地域全体が炎に包まれていることに帝国軍が気づくまでには、さらに数ヶ月を要した。

泥炭や廃棄物が燃えて発生した炎は、3年以上もの間足元で荒れ狂った。ただでさえ危険なマーシュがさらに凶悪になり、帝国軍はこの10年近くの期間で初めて後退を余儀なくされた。窒息する煙と燃える沼から噴出するガスにより、この地帯はアルゴニアンにとってさえほとんど居住不可能になった。この地帯に固有の数百種もの動植物が絶滅させられ、アルゴニアンの中には部族ごと消滅したものもあった。帝国軍でさえ、多大な犠牲者を出した。数百の兵士が「沼肺」やガス爆発のために命を落とし、あるいは炎の猛烈な熱さのために逃げ出した。帝国軍とアルゴニアンのどちらにとっても壊滅的な打撃だった。この出来事が第二次戦役と、サルデカスの任期を終焉させた。帝国軍が退却したすぐ後、サルデカスは病に倒れ、帝都に帰りつく前にエセリウスへ旅立った。公式の診断では、マーシュから脱出する際に受けた傷による急性の感染症ということになっているが、帝国軍の兵士たちは納得しなかった。

サルデカスの死に本当はどのような事情があったのかについては、いまだに歴史学上の論争となっている。シャドウスケールの関与の可能性は排除できない。彼らの組織や方法について我々はほとんど何も知らないが、この紛争において何らかの役割を果たしていたと考えて間違いはないだろう。大炎上のような惨事のすぐ後に高位の将軍が謎の死を遂げたということは…私が歴史の研究で学んだことがあるとすれば、偶然などというものが存在しないということだ。

ブラックウォーター戦役、第7巻The Blackwater War, Volume 7

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

歴史家たちはしばしば、ブラックウォーター戦役を26年間にわたって繰り広げられた単一の紛争としている。戦いに参加した主要な人々は基本的に同じだが、第一次、第二次、第三次戦役は互いにほとんど共通点を持たない。第一紀2833年、インペリアルの戦術はあまりに刷新されていたため、ほとんどインペリアルのものと認識できないほどだった。「サルデカスの改革」は帝国軍を再編したが、「ファルコ理論」はこの戦役を大詰めへ導いた真の触媒だった。

ルシニア・ファルコ将軍はサルデカスの逝去後まもなく、帝国軍の指揮を引き継いだ。彼女は順当な人選だった。サルデカスの親友であり、力強く、かつ過激なほど帝国に忠実であり、さらに情け容赦のない人物であった。彼女はアルゴニアの戦いのすぐ後に士官となった。つまり、軍人としての功績が全面的にブラックウォーター戦役で形成されたことを意味する。前任者とは異なり、ファルコは単一の方向から攻めるだけでは戦いに勝つことはできないと理解していた。彼女は帝国に要請し、リルモスとアルコンの沿岸沖にいた無数の海賊たちに対し、敵国船の私掠免許状と一時的な任命書を発行させた。ダイヤモンド海軍と連携することで、この勢力はマーシュ南東の広大な地と、内陸部にある一部の沼さえ奪い取ることに成功した。

ギデオンを拠点とし、ファルコは地域全体にわたる攻撃の第二波を開始した。ファルコは前任者のように軍団をまとめて派遣することは控え、勢力を小規模で戦闘能力に優れた数百の部隊に分けた。後に「レッドベルト」と呼ばれるこの小隊は沼で長年戦ってきた古参兵に率いられており、彼らの一部は第二次戦役の初期から従軍していた。

レッドベルトは当初大きな戦果を挙げ、ブラック・マーシュ西の大部分を占拠した後、分厚い沼と不気味な沈黙が支配するこの地の中核部の外側でようやく止まった。残念ながら部隊の規模のため、彼らは占拠した地を長く維持できなかった。国家間の戦いとして始まったものは引き延ばされ複雑化したゲリラ戦争となり、紛争に付きものの残虐行為に満ちていた。第一紀2834年から2836年は、双方にとって暗黒の時期だった。アルゴニアンとインペリアルは互いに対して威圧とテロを仕掛けたのである。

公式の休戦協定を結ぶことなく、戦いは第一紀2836年に終わったように見えた。数十年もの間インペリアルと戦ってきたアルゴニアンたちは正式に降伏するわけでもなく、突然武器を地面に埋め、農作業や魚釣り、裁縫の仕事に戻った。帝国は機を逃さず、第一紀2837年にこの地域の占拠を公式に主張した。ついにブラックウォーター戦役は突然の、しかも不可解な終わりを遂げたのである。

アルゴニアンたちによる敵対の急激な停止もまた、この紛争にまつわる謎の一つである。推測として支持されているのは、木を崇拝する彼らの奇妙な伝統が関係しているということであるが、彼らが武器を捨てた本当の理由は、永遠に分からないかもしれない。歴史家としては悩ましい状況だが、ブラック・マーシュの深い暗闇で生まれた謎が解決されることは滅多にない。少なくとも、満足のいくような結論によって解決されることは珍しい。

ブラックローズ監獄の歴史A History of Blackrose Prison

ウェイレストの放浪者、ティリリャ・レン 著

悪名高いブラックローズの街から名前を取ったブラックローズ監獄は、1日で建てられたと言われている。そんな話が誇張なのか驚くべき真実なのかは、誰もわからない。しかし1つ確かなのは、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエが監獄の建設を命じ、ペラディル・ディレニが忠実に、もしくは自慢げに石の精霊の集団を召喚して働かせ、その命令を遂行したということだ。

街に隣接して建てられたと考えられることが多いが、実際に監獄がある場所は街から南へ1日進み、沼の危険が及びながらも岸から到達可能な場所だ。この孤立した場所は、囚人が逃げないようにするため特に選ばれた。地元の民以外で危険なマークマイアを横断できた者はわずかしかおらず、脱獄者のように装備の乏しい者ならなおさらだ。

ブラックローズ監獄へ送られた帝国の囚人は、凶悪犯や政治犯ばかりだった。その時の権力者が二度と見たくないと考えた人間やエルフが送られた場所だったのだ。そのため、監獄の職員は好きなように振る舞った。囚人が受けた残虐で残酷な行為は、誰に聞いても大変ひどいものだ。

その都合の良い立地のせいで、帝国の権力と衝突したマークマイアの民も皆、ブラックローズ監獄送りになった。特にナガは、帝国の圧政に対する反抗的な姿勢から、そこへ送られる傾向があった。他の囚人にもナガは軽蔑された。それは彼らの攻撃的な文化と、目立つ外見からくるものだった可能性が高い。ナガの囚人数が増え、この地域における帝国の権力が衰えたことから大規模な暴動につながって、結果的にブラックローズ監獄が放置されることになったと考えられている。

放置されてから数年後、監獄は解放しようとした囚人自身によって乗っ取られた。かつて彼らを拘束した場所を奪い、自分たちの故郷を危険にさらしたインペリアルの撲滅を誓った。彼らはブラックガードと名乗り、自分たちだけに忠誠を誓った。

この主張は周囲の部族から歓迎されず、彼らはそうした価値観が自分たちの文化の根幹に反するものだと考えた。私が話したアルゴニアンは、この件について次のように語った。「ブラックガードは石のような心と不快な腹を持っていて、石の巣の中で変化から隠れている。彼らは後ろを見るばかりで、前を見ない。だから部族は彼らを支持しないのだ。そして今では、盗賊とほとんど変わらない」

確かに元の理想がどれほど高潔なものだったとしても、今のブラックガードはマークマイアで最大の犯罪組織として知られている。ここ10年で、彼らは非アルゴニアンのメンバーも組織に入れ始め、その中には彼らがかつて激しく戦ったインペリアルも含まれる。

残念ながら、ブラックローズ監獄の現在の様子については、ブラックガードによる危険が存在するために記述できない。訪問すれば豊かな歴史が見られるので、残念な事態ではある。

ボーキへの手紙Letter to Bhoki

卵の父へ

あなたからは数多くの警告を受けたが、愚かしさの許しを乞おうとは思わない。あなたがこれを読む頃、私はすでに百合の道へ進んでいるだろう。私はメワー・ジェズの頑固さから見習いたちを救っているか、救えなかったかのどちらかだろう。どちらにせよ、私は捕らえられて刑期を待つことになると想定している。全ては、我らの部族が愚か者の訓練で若者たちを殺し続けるのを、我慢できないから起こったことだ。

もう一つ別の点でも、私はあなたの望みに反する行いをした。あなたはカディーリスだった時に使っていた古い訓練の手引きを破棄せよと私に言った。あなたにはぜひ、私があれを隠した場所へ行って回収し、見習い全員が殺される前に戦士長を説得し、再び健全で成功を収めた訓練を採用させてほしい。

この詩で我々のお気に入りの隠し場所を思い出してほしい。

「階段の頂点にて青い炎の前に立ち、
その目を公正なるヒストへ向けよ、
心を乱す恍惚へ歩み入り、
守りの枝の下に探し物を見よ」

キシ
キシ

ホスティア・アセラスの日記Journal of Hostia Asellus

また厳しい時期になった。人々は私たちが監視している道に足を踏み入れようとしなくなっている。私はファンダスに、間抜けな手下たちが旅人を頻繁に襲いすぎるのよと言った。今、旅人は私たちを完全に避けてしまっている。欲が深くて、馬鹿な連中だ。

やはりまともな収穫はない。限られた物資を長持ちさせるために蛙を捕まえているけど、状況が変わらなければじきに革のブーツを煮る羽目になるだろう。ジュリッタを食べさせるために自分の食事を抜いている。こんなところに病気の子供がいるべきじゃない。

ファンダスはもう大丈夫だと請け合った。言い合いになった。彼は手下たちと共に襲撃を計画していると言った。気に入らない。一番近くの村はあのルートハウスの民に属している。凶暴で、縄張りにうるさい。ファンダスは戦士たちの大半が狩りに出ている間に食糧庫を襲うと言っている。議論しても仕方がない。食料は必要だ。

ジュリッタは誰もいないキャンプで不安がっている。父親がいつ戻ってくるのか何度も聞いてくる。私が「もうすぐ」と言うのは嘘だと気づいている。

やった。ファンダスと仲間たちは偉そうにして、馬鹿みたいにニヤニヤしながらキャンプに戻ってきたけど、腕には新鮮な食料と乾燥させた保存食をたっぷり抱えてきた。今夜はたっぷり食べられる。少なくとも、これから数週間は大丈夫。

もう3日になる。叫びすぎて声が出なくなった。泣きすぎて涙も枯れてしまった。このままでいいはずがない。ジュリッタの命を守らなければ。あの子はようやく眠っている。私も寝たほうがいい。

あの目。目覚めるといつも、あの丸い黄色の目がある。いつもそう。まるで、またあそこにいるみたい。ジュリッタがベッドから引きずり出されても叫び声をあげないから、現実じゃないと分かるだけ。あの忌まわしいトカゲどもめ。

危険を冒して沼地の奥、ブラックローズに向かって進んだ。その価値はあった。ブラックガードのキャンプをもう一つ見つけた。彼らは養う相手が増えるのを歓迎しないようだった。檻に入れろと思っていた者も何人かいたのが分かった。でもグルズナックは私が一人前の仕事をしている限り受け入れようと同意した。後で教えてくれたが、私の目を見て判断を決めたらしい。娘を檻に入れさせるくらいなら、素手で何人でも殺しそうな様子なのが分かったと言っていた。実際そのつもりだった。

グルズナックは今、私に家畜の餌をやらせている。こいつらを見ると胃が痛くなる。痛めつけられた奴は問題を起こさない。嫌なのは新しい連中だ。犬を躾ける時は、少なくとも言葉を話して懇願はしないのに。動かなくなるまで殴ってしまった。

家畜を傷つけたことで大目玉を喰らった。問題は歯だった。買い手は見苦しい獣を好まない。次はそのことを覚えておけとグルズナックは言った。彼は新鮮な家畜の訓練を始めてくれと言っている。私には才能があると。

ここに来てから、時間が飛ぶように過ぎていく。将来が期待できると思うくらい。グルズナックは理解のある指導者だ。分け前はたっぷり持っていくけど、私たちが全員ちゃんと生活できるように計らってくれる。ジュリッタと私は他の皆より少し取り分が多い。気に入られているのだと思う。

またしても1年が過ぎた。早いものだ。いい年は長く味わえたらいいのに。食べ物や暖かいベッドを求めていたのはもう昔の話なのに、今もできるだけ溜め込む癖がついている。圧迫するような恐怖は嫌なものだ。あのトカゲたちの目は、私が眠っている間も見ている。明日は2匹潰してやろう。グルズナックが何と言おうと知ったことじゃない。

ジュリッタはもう子供じゃない。泥トカゲどもの事件があっても残っていた無邪気さもなくなった。一週間前には私のスカートにしがみついていたかと思ったら、今じゃもう言い寄ってくるグルズナックの下っ端たちを、私があげたナイフで撃退している。あの子もそろそろ、自分の仕事をしなきゃならない歳になった。ナイフの使い方を教えてあげてもいいかな。

ジュリッタに臆病なブライトスロートの世話をさせた。最初は怖がっていたけど、もうこの獣を恐れる必要はないと示してあげた。

ジュリッタはブライトスロートに紐をつけて引っ張るのを楽しんでいる。こんなに屈託のないあの子の姿を見たのは久しぶりだ。あの子がどれだけの恐怖を抱えていたのか、私は気づいていなかった。もう数日間は楽しませてあげるつもりだけど、泥トカゲをペットにする考えについては少々話し合う必要がある。

グルズナックの奴隷事業は大きく成長している。一味の数は彼がヴァーデンフェルのテルヴァンニに販路を開いて以来、3倍にもなった。グルズナックは私に自分の部隊を組織してもらいたいと言っている。その響きは、嫌いじゃない。

ボリプラムスについてOn Voriplasms

沼の泥に関する論文、シロディール・コレクションのコンコルディア・メルシウス 著

個人的にはまだその風変わりな泥を見たことがないが、確かな情報によると、ねばねばした土と軟泥の動く水たまりであるボリプラムスは、実に驚くべきものである!広範囲にわたる研究と、シロディール・コレクションのジー・ラー氏を含めたマークマイアの民に話を聞いた結果、ボリプラムスにおいて分かったことは以下の通りだ。

ボリプラムスの生態には謎めいた部分が残っている。自然の中で見かけると、浅い沼の中であろうと草に覆われた川底であろうと、ボリプラムスはどろっとして粘性の高い緑色をした、ヘドロの水溜まりでしかない。しかし詳しく調べると、そのヘドロは水溜まりのように広がることも、消散することもない。代わりにその形のない形をとどめ、極めて穏やかならぬ様子で波のように動く。見たところ感覚組織も内臓もまったくないその注目すべき泥の塊は、とても効率よく動き、狩りをし、食べる。それもジー・ラー氏の主張によると、ボリプラムスは20ペース以上離れたコヒョウグアルに気づき、目もくらむような速さで地面を滑って進み、哀れな獣に身の危険を感じる暇を与えることなく飲み込んだという。その泥はすぐに獲物をむさぼり、残った骨を排出し、日光浴をしていた以前の場所へ滑って戻ったのだ。

この件に関する数少ない学術的研究から、ボリプラムスには基本的な知能があるらしい。ほとんどの肉食獣と同様に、獲物を認識し、危険を避け、強い相手から逃げるのは確かだ。群れをなし、単独でだけでなく集団で狩りをすることも多い。どうやって意思の疎通をしているのかは、周囲の世界との交流に使う方法と共に謎のままだ。解剖の試みはまだ成功していないらしい。

これについて研究する学者、グウィリム大学のイクセリアス・タロス氏によると、ボリプラムスは大きくなってから分裂して、新しいボリプラムスを作り出すことで繁殖すると推測している。生産という意味では効率的ながらいくらか孤独だとも思われるが、歩くヘドロの塊としては筋が通っている。

さらに驚くべき説として、マークマイアの自然の中には、ボリプラムスの死体と呼ばれる同族らしい獣がいると噂されている。ボリプラムスは獲物の肉を食べてから骨を出すのに対して、その泥は骨を新しい皮膚のように保持するのだ。自然界で見かけると、それはまるで骸骨のような体で、骨から肉が溶け落ちてボリプラムスのヘドロに入れ替わったかのように見える。ボリプラムスの死体は、その名前と裏腹に歩き回る性質を持つが、死霊術やその他の超自然な存在とは関係がない。カタツムリが貝に住むように、ボリプラムスは捕えた骸骨を利用して泥に形を与え、しっかりとした輪郭を与えているのだ。それが、少なくとも私の現在の説だ。シロディール・コレクションのマークマイア奥地への探検に参加できたら、さらに知識を深め、この書を更新するつもりである。

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詳細は、ストームホールドのコンコルディア・メルシウスまでご確認ください。

マークマイアの諸部族:ゴーストTribes of Murkmire: Ghost People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

この文章はロウソクの明かりで書いている。私の同行者たちがストームホールドへ向かっていると、不意に案内人が止まれと命じた。彼は空気の匂いを嗅いで鼻にしわを寄せ、それで全て説明されるとばかりに、私たちは「ヴィーシュクリール・ツェル」に近づきすぎていると宣告した。私たちは彼に従ったが、進路を修正しながらもっと説明してくれと頼んだ。案内人はこの話題についてそれ以上口を利くのをためらったが、しつこく説得を続けた。当初思っていた以上の所有物を失うことになったが、ついに答えを得た。

「ゴースト族」はマークマイアの原住部族で、なかなか恐ろしい評判があるらしい。彼は影に向かって一瞥した後、小声でしか話さなかった。彼によると、ゴースト族は完全な暗闇の中で生活しており、ディープマイアから出るのは不注意な者を夜中に追跡し、誘拐する時だけだという。彼も実際に見たことはないのだが、色がひどく薄いので骨が透けて見えるという話だ。アルゴニアンの子供が夜眠れない原因を考えたことのある人は、こいつを思い浮かべればいい。とても歓迎はできそうにないが、この変わった部族についてもっと知りたくなったのも確かだ。彼らの地を直撃したい気にもかられたが、私はヴィーシュクリールについて話す意志のある他の民に聞くだけで満足することにした。

分かったのはゴースト族がこの地の人々の間でも謎に包まれており、彼らを巡る噂が数多いことだった。ヴィーシュクリールについて私が耳にした途方もない話の中でも、二つのことは確かなようだ。彼らはその青白い鱗によって見分けることができ、「死者盗み」であり誘拐者であるという悪評を得ている。墓荒らしに対する嫌悪感はもちろん理解できるが、マークマイアのアルゴニアンが永続性に対して全く執着しないことを考えると、彼らにとってもタブーであることには驚いた。案内人にこのことを尋ねると、ゴースト族が盗むのは死者だけではないと言った。彼らは死体を自分たちのヒストの根の周りに埋め、冒涜的な儀式を行って死者の魂をその部族から盗むと信じられている。アルゴニアンにとって、これ以上に大きなタブーはほとんどない。

ここに座って、暗闇の中で恐るべき死霊術について考えを巡らせていると、私のロウソクが消えかかると共に浅瀬の中から泥にまみれ、腐れ落ちた不運な旅行者たちが起き上がってくるのではないかと想像せずにはいられない。夜が明けたらすぐに出発するべきだ。この黒い夜と青白いゴースト族を追い払える時が、とにかく早く来てほしい。

マークマイアの諸部族:デッドウォーター族Tribes of Murkmire: The Dead-Water Tribe

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私たちの幸運は長く続かないと知っていて然るべきだった。マイアダンサーたちと過ごした愉快な休息の後、私たちは北へ進むことにした。案内人のリーラスは、考え直すよう私たちに迫った。「深い泥はよそ者を飲み込んでしまう」と彼女は言った。リーラスはケール・サッカ橋での事件を蒸し返し、北方の部族はタム・タリール以上に交渉の余地がないのだと説明した。私たちの多くは探検を中断したいと思ったが、結局は多数票に押されてしまった。

自分たちの愚行に気づくまで、長くはかからなかった。北方へ分け入っていくにつれ、植生は1時間ごとに厚みを増していった。以前にも遭遇したニクバエの小さな渦は膨れ上がり、羽音と苦痛の巨大なうねる雲と化していた。リーラスは何度も引き返すよう勧告したが、私たちはさらに暗闇の奥深くへ進んでいった。

月耀の朝早く、ペルシウスがいなくなっているのに気づいた。私たちは分散して、1時間以上もの間声をあげて呼びかけ、分厚い泥の中でつまずきながら彼を探した。荷車のところで再び集合した時、ヴァレンティナとモーテンの姿も消えていることが分かった。私たちの勘違いした勇気が即座に溶けてなくなったことを認めても恥だとは思わない。私たちはすぐに荷車の向きを変え、沼が許す限り急いで南へ移動した。鳴き声が聞こえ始めたのはその時だった。

最初は静かだった。蛙が数匹集まっているような感じだった。少しずつ、声は大きくなった。パニック状態で1時間進んだ後、鳴き声は耳をつんざくばかりの不協和音へと成長していた。そして叫び声が上がった。誰の声かは分からなかった。私に言えるのは、あれは苦悶の叫びだったということだけだ。私は周囲の木々を通り抜けるいくつもの影を見たが、ほんの一瞬見えただけだ。はっきり見えたのはそのうち1つだけだった。リーラスが言うには、間違いなくナガだった。恐るべきナガ・クルのメンバーである。どうやら、デッドウォーター族はマークマイア北方の広大な領域を支配しており、周辺の村のサクスリールから大いに恐れられているらしい。

私が目にした1人に関して言えば、あれを忘れることはできないだろう。その女の顔は蛇の一種に似ていたが、全身が泥で覆われていた。だが一番衝撃的だったのは、その盾だ。顔が付いていたのだ!ナガ・クルはしばしば自らの武器や鎧に死んだ仲間の一部を使うとリーラスが教えてくれた。顔や爪、足の骨などを。死んだ友を切り刻むなどとは考えただけでも寒気がするが、リーラスは肩をすくめるだけだった。「ナガ・クルは日々戦って生涯を過ごす。そうすれば彼らは死んだ後でも戦える」筋は通っている、と思う。
幸運なことに、私たちはそれ以上被害を出さずに逃げおおせた。だがあのナガ・クルのことはすぐに忘れられないだろう。間違いない。

マークマイアの諸部族:ブライトスロートTribes of Murkmire: Bright-Throats

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

数ヶ月前、私はマイアダンサーの長老に、ブラック・マーシュの沼地にはいくつの部族が住んでいるのかと尋ねた。彼は長い間静かに座ったままでいた後(アルゴニアンはよくそうする)、私の背後を指差した。振り返ると、イトスギの木々の間を何百匹ものホタルが飛び交い、薄暗がりを貫いて緑と黄色の光を発していた。「あの光と同じくらいだ」と彼は言った。

これはなかなか信じられなかった。アルゴニアンは大げさに言うことが多いので、長老のこの主張もまた誇張だろうと切り捨てたのである。しかし現地の人々とさらに時間を過ごした後、あの長老の数え方は当初私が考えたよりも実情に近いと信じるようになってきた。私はマークマイアだけでも、少なくとも12のはっきりと区別される部族を発見したし、これを遥かに超える数の部族がいることを確信している。部族の多くは敵対的なので、直接の交流は不可能に近い。だが彼らの存在を神話や伝説として片づけるには、あまりにも多くの証拠を見てきた。この日記は私がマークマイアの未開地を探検して発見した記録として使えるだろう。まずは多くのよそ者が最初に出会うであろう部族から始めよう。

リルモスで少しの間でも過ごしたよそ者の多くは、沿岸に住むいくつかの部族と交流を持つ可能性が高い。しかし最も注目に値するのは「ワッセーク・ハリール」つまり「ブライトスロート」である。大まかに言って、この部族はよそ者と沼の奥地のアルゴニアンの両方と実りある関係を好む、陽気な職人たちで構成されている。ブライトスロートはその豊かな音楽と踊りの伝統、そして商人や外交官、木工職人としての超自然的な才能によって知られる。彼らは数えきれないほどの品を作っており、その中には楽器や台所用品、鎧や武器も含まれるが、最も尊重されているのは「ジーチキ」つまり「種の人形」である。この人形の大きさはさまざまであり、オークの拳ぐらいの大きさのものもあれば、米粒のように小さいものもある。人形はほぼ常に現地の動物をかたどっているが、ブライトスロートは卵や小さなアルゴニアンに似せて種の人形を彫ることもある。

種の人形は非常に珍重されている――お守りとして、また工芸品として。安物の模造品が競争相手の部族によってよく作られるが、本物のジーチキを手に取ったことがあれば、見分けるのは容易である。私もここで過ごす間にいくつか購入した。一番気に入っているのは琥珀が散りばめられた小さな亀である。彫刻家が教えてくれたところによると、この亀は強大だが手に負えないトーテムであると言う。私は亀が特別手に負えないと思ったことはないが、それに関してはここの人々のほうが詳しいだろう。バンコライに戻り、最終的にウェイレストの家へ帰る前にもういくつか買うつもりでいる。

マークマイアの諸部族:ブラックトングTribes of Murkmire: Black-Tongues

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

今日、私たちは見慣れない光景に出くわした。空のフラスコが、フォッサの木の下に山と積まれていたのだ。案内人の説明では「ブラックトングがこの木を吸い出した」そうだ。彼はさらに「コタ・ヴィムリール」つまり「ブラックトング」とは、ブラック・マーシュのマークマイア地域に住む無数のアルゴニアン部族の1つだと説明した。好戦的なタム・タリールや不気味なヴィーシュクリールとは異なり、ブラックトングは基本的に礼儀正しく、物腰が柔らかである。状況さえ許せば。しかし、彼らは不意を突かれると反射的に暴力で応対し、縄張りに侵入する者たちを躊躇も慈悲もなく殺すことで知られている。優れた錬金術師である彼らはしばしば、よそ者に対する警告として、自分たちの縄張りを示すフラスコなど、錬金術の道具を置くのである。

ブラックトングは熱心なシシスの崇拝者である。そのため、彼らは自分たちの資源のほとんど全てを、可能な限り多くのシャドウスケールを生み出すことに用いている。シャドウスケールとは何か?私が聞きたいくらいだ。地元民の大半は、この話題についてよそ者と話し合うことをきっぱりと拒絶する。アルゴニアンの民は彼らを、畏敬と恐怖が混ざったと見られる気持ちで尊敬しており、その名を口にすることさえ文化的な禁忌とされているようである。私が出会った少数の、迷信の度合いが低いアルゴニアンたちは、いくつかの事実を教えてくれた。

どうやら、シャドウスケールとは高度な訓練を受けた暗殺者によって構成された、奇怪な修道院のような教団のメンバーであるらしい。影座の下に生まれたアルゴニアンは誰でもこの教団に渡され、その謎めいた殺人者の一員として育てられる。私は仰天してしまった。「そんな野蛮な実践に従っているとは、ただの敵対的な部族ではないのか?」と私は聞いた。だが、違う。これはどうやら全くどこでも見られる実践のようである。友好的なブライトスロートや賢いマイアダンサーでさえ、この伝統に加わっているらしい。

だが、ブラックトングはこの義務をとても真剣に受け止めている。彼らは沼地の植物や野生生物に関する知識を利用して、「薄闇の甘露」と呼ばれる強力な避妊薬を作る。この薬を飲むことで、この部族は産卵周期を一致させて、大量の新しいアルゴニアンを毎年、影座の下に産むことを保証している。

彼らの錬金術の能力は、影座に生まれた者たちが将来暗殺者となった際にも役立つ。ブラックトングはタムリエル全土でも最大級に強力な毒を作ることで知られている。薄闇の甘露でさえ、アルゴニアン以外が飲めば死を招く。ブラック・マーシュに見出されるものは全て、状況が許せば死を招く証拠がまた増えた。

コタ・ヴィムリールの成員に直接会って、彼らの錬金術の技術と謎めいたシャドウスケールとの結びつきについてさらなることを知りたいのは山々だが、招待もなしに彼らの縄張りに長居をするのは賢い行為ではない。朝の紅茶に毒蛇の牙を入れられるのは勘弁願いたい。

マークマイアの諸部族:マイアダンサーTribes of Murkmire: Miredancers

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私はこれまでにマイアダンサーの長老2人と話す光栄を得たが、どちらとの会話からも非常に多くのことを学んだ。自らを「ギー・ルスリール」と呼ぶ彼らは、私が旅行中に出会った中で最も内省的なアルゴニアンである。彼らはまた、最も好ましいアルゴニアンでもある。孤独を好み、用心深いことの多いアルゴニアンだが、私は彼らほど積極的に食事や、貝殻と石のゲームに誘うことを好む人々を見たことがない。彼らは熟練の職人であり、とりわけヒストの琥珀や卵の殻を加工するのに優れた才能を示す。彼らはまた比類なき航海士であり、縫製の達人であり、熟練の地図職人でもある。

しかしマイアダンサー最大の特徴は信心深さである。ヒストに対する深い信仰心によって、彼らは数えきれないほどの世代にわたって、「樹液と話す者」を任命する権利を得てきた。

私が話した長老たちによれば、樹液と話す者はヒストの直接の媒介者である(これにはもちろん、議論の余地がある。多くの部族はヒストと交信する特別の方法を誇っている。しかし私が見た限り、マイアダンサーが用いる方法は最も説得力がある)。樹液と話す者はしばしば何日も、それどころか何週間もの間隠遁生活を送るため根の奥深くに分け入るか、一番高いところにある枝の葉の層にまで登っていく。彼らはそこでヒストと交信する。実際、長老たちの一人が使った言葉は「旅」だった。

このヒストへの旅は樹液と話す者に多大な負担を強いるもので、徹底的に個人的な行いである。孤独に何日も過ごした後、樹液と話す者は姿を現し、古文書や巻物、石板を持って再び隠遁する。私はこの隠遁の目的を尋ねてみた。いつもどおり、答えは詳細なものではなかった。「樹液と話す者はヒストの抱擁へ入り、大いなる木から学ぶ」と、長老の一人は言った。「根や枝と密に触れていることで、樹液と話す者は幻視や、あなたにも私にも理解できぬその他の形の交信を受けるのだ」。

もう一人の長老は続けて言った。「示されるものの一部は、樹液と話す者にとってさえ神秘的で困惑するものと感じられる。私が聞いたところ、樹液と話す者は古代の隠喩やアルケインの秘密、そして樹液と果肉から離れた生き物には理解しがたい幻視を受け取るという」。どうやら、隠遁の第二期は樹液と話す者に、見せられた内容について考える時間と、以前の樹液と話す者による古い文書を参照する時間を与えるものであるらしい。適切な期間にわたって研究と熟慮を行った後、樹液と話す者は姿を現し、ヒストの意志を部族に明かすのである。

私は樹液と話す者が根や枝の間で瞑想している期間に何が起きるのか、もっと情報を得ようとしたが、長老たちがこれ以上のことを知っているのかどうか定かではない。彼らが教えてくれたのは、樹液と話す者が隠遁期に得られる唯一の栄養はヒスト自体から、樹液や葉、あるいはこれ以外の場合に禁じられている木の実によって与えられるということだった。

しかしながら、ヒストとの交信という贈り物には犠牲も伴う。ヒストの樹液を大量に摂取することは、アルゴニアンにとってさえ危険な行為である。樹液と話す者は樹液中毒の症状に苦しむことが多く、症状には「黄金舌」(口の色素が恒久的に金色に変化すること)や不意の幻覚、「樹皮の鱗」(鱗表面が分厚くなり、色も暗くなる)、その他にも彼らが話すのをためらうような病気がある。現在の樹液と話す者であるトゥマルズは、私が部族の村を訪問した際には隠遁中だった。いつか彼に会えることを期待している。彼が私の話した長老たちの半分の知恵でも持っていれば、多くのことを学べるのは疑いない。

その深い信仰心にもかかわらず、マイアダンサーはあらゆる種類のゲームにも熱中しているようだ。彼らが特に好むのは九つの貝殻、および貝殻と石のゲームである。また有名なスポーツ「テーバ・ハツェイ(ヒップ・アンド・テイル)」も人気だ。自分たちのゲームを嬉しそうに説明してくれるのに加えて、彼らは私たちがウェイレストでどんなゲームを嗜むのかについて、私が教えられる限りのあらゆることを知りたがった。彼らの情熱が移ってしまったことは認めねばなるまい。彼らが私の漠然とした描写に基づいて「詐欺師の骨」を再現しようとするところを見るのは、非常に面白かった。

マイアダンサーは常習的なギャンブラーであるが、しばしば賞金を受け取るのを忘れてしまう。人間やエルフのするゲームとは違い、マイアダンサーの競技は悪意や意地の張り合いとは全く無縁のようである。勝利や敗北は目標ではなく、おまけにすぎないように見える。これは沈着冷静な彼らの気質に負うところが少なくないだろう。大抵の物事におけるのと同様、彼らは厳密に今、この瞬間に集中する。彼らの村を離れるのは心苦しいが、まだまだ研究しなければならない部族が多くいる。もっともマイアダンサーほどに魅力的で、友好的であろうとは思えないのだが。

マークマイアの諸部族:ルートハウスTribes of Murkmire: Root-House People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

今日もまた危ない目に遭った。現地の案内人の激しい抗議にもかかわらず、探検隊はケール・サッカ川を橋で渡ることに決めたのである。案内人たちの1人(明るい色の鱗を持つアルゴニアンで、名をリーラスと言った)は、遥か下流を歩いて渡河し、橋は避けるように強く言ってきた(念のために言っておくと、私はこの計画に賛成だった。リーラスの案内は誤ったことがなかったからだ)。しかしグループの中には、辛い作業や危険な環境に慣れていない学者が数多くいた。私たちは危うく、彼らの快適さのために命を失うところだった。

後で判明したのは、この橋は「タム・タリール」あるいは普通の言葉で「ルートハウスの民」と呼ばれる部族によって「所有」されていることだ。彼らは好戦的で、争いを好む民である。怒りっぽく、残虐性と気の短さで沼中に知られている。彼らは平和な村を襲い、居住者を殺し追い払うのを習慣としている。その上で空になった小屋に住み着き、村の資源を使い尽くしてしまうのである。他のサクスリールはこの部族を「盗賊ガニ」としばしば比較する。カタツムリや小さいカニを食べ、空いた殻に引っ越す生物だ。

我々が橋に足を踏み入れるや否や、この部族の成員が数人、私たちの隊商の前に立ちはだかった。彼らを見た瞬間、自分たちが危機に陥ったことが分かった。タム・タリールは私がこれまでに出会った他のアルゴニアンよりも明らかに大柄であり、肩幅が広く、目は細く、顎は幅広で力強い。彼らは腰布と戦化粧の他は何も身につけておらず、羽根で飾られ、血が染みついた巨大な木の棍棒を手にしていた。

リーラスは素早くキャラバンの先頭に歩み出て、必死な鳴き声で話し始めた。彼女が何と言っていたのかは見当もつかないが、タム・タリールは少しの間、彼女の言葉を考えていたようだった。リーダーは私たちを指差し、低くゴロゴロいう唸り声で何か言った。リーラスはこれにうろたえたと見えて、私たちのほうを向いた。

「彼は馬を欲しがっている」とリーラスは言った。

黙って従う以外の選択肢がないのは明らかだった。私たちは綱を切って馬を放した。4頭全てをだ。ルートハウスの民はそのうち3頭を取り、道を外れて沼へと連れていった。賊のリーダーは4頭目の馬を橋の中央まで連れていき、数歩下がってから、吐き気のするような鈍い音と共に、棍棒を馬の頭蓋骨に叩きつけた。哀れな獣の頭はグシャグシャになってしまった。あんな恐ろしい光景は見たことがない!私の同国人の1人は荷馬車の脇で吐いてしまった。リーラスは間を置かず、一行のうちで一番力のある者たちを集めて橋の反対側まで荷車を押した。幸運にも、次の村に着くまでは半日押し続けるだけでよかった。これからは皆、リーラスの言うことに従うだろう。

マークマイアの諸部族:部族間のつながりTribes of Murkmire: Tribal Connections

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私はここの部族については測り知れないほど多くのことを学んだが、部族間の関係性についてはいまだ重要な洞察が欠けているような気がしてならない。ここには奇妙な友好関係があり、私がこれまでに見てきたほとんど全てのことと矛盾している。暴力的な略奪や死者盗み、密漁があっても、アルゴニアンの種々の部族は互いを卵の兄弟、姉妹として見ている。例えば先日、私はブライトスロートの一家がタム・タリールの略奪者数人とテーバ・ハツェイで遊んでいるのを見た。これは武力衝突によりタム・タリールの1人が命を落として、たった数時間後のことだった。まるで忘れっぽさを強制されているかのようだ。あるいはあらゆる部族間の関係を規定している、特別な許しの文化があるのか。

少なくともこうした友好的な振る舞いの一部は、彼らが人種共有しているという事実に根差しているに違いない。ブラック・マーシュの諸部族は互いの違いを脇に置いて、モロウウィンドやシロディールの侵略者を追い払わねばならない状況が無数にあった。彼らはまた、自分たちがいかに互いに依存しているか理解しているようでもある。この点で、彼らは私がこれまでに会った人間とエルフの大部分よりも遥かに上だ。タム・タリールは自分たちが盗む家や物を作る他の部族が必要だということを認識している。マイアダンサーは国境を守り、大型の沼の捕食者を追い払うためにデッドウォーター族が必要だということを知っている。ブラックトングは錬金術の調合に使うための作物を育てるヘー・テプスリールが必要なことを知っている。ブライトスロートは、誠実な交易を妨害する悪意のよそ者に「沼の法」を強制するため、ブラックトングのシャドウスケールが必要だと知っている。こういった具合だ。

宗教もまた一定の役割を果たしている。私は友人のエウテイになぜ彼らはこれほど寛容なのかと聞いた。彼は輪廻に関する漠然とした信念に言及した。

「我々は皆、根の民だ」と彼は説明した。「ブラックトングは時が来ればマイアダンサーになるかもしれないし、マイアダンサーはブラックトングになるかもしれない。そういうことはヒストだけが知っている。互いを憎むことは我々自身を憎むことだ。サクスリールにとって、自分を憎むことに何の得がある?忘れて、前へ進むほうがいい」

いくらか考えを巡らせてみたが、私たちも少々忘れっぽくなったほうが役に立つこともあるのではないか。そう思わずにはいられない。

より明敏な言語:ジェル語入門The Sharper Tongue: A Jel Primer

魔術師ギルドの秘術師、道を照らす者 著

アルゴニアンの会話におけるニュアンスの多くは、あからさまな隠喩とさりげない動作から生まれるものだ。しかし、ジェル語は学びにくい言語だと感じる者が多い。しかし、共通語を話していても、私たちが母語をたくさんちりばめていることに気づくはずだ。

ほとんどの言語と同様に、旅人なら鍵となる言葉やフレーズを学ぶと、ブラック・マーシュの部族を理解して交流するために役立つだろう。よそ者の関係改善に役立つように、ブラック・マーシュを訪れる者のための短い手引きを書くことにした。この手引きがより良い旅の始まりになることを祈る。

ビーコ:友人。変化形としてディーク・ビーコ、ラジ・ビーコ、ビーク・オジェル、ウクシス・ビーコがある。

ボク:器。深い丸皿、もしくは丸いカップのような空洞。

ディーリス:教師。もっと正確に言うと、知恵を他の者に伝える者。誰にとっても誉れある称号。

グリール:敵。サクスリールは数多くのヒストの下にある1つの民だと信じられているため、他の部族を表現するには滅多に使われない。敵対的な獣やよそ者に対して一般的に使われることが多い。

ハジ:隠れる、隠れた。ハジ・モタの名前の一部に使われているのも納得できる。

カール:戦闘隊長。この称号は特に暴力的な部族で崇められている。

クロナ:大きい、巨大な。「あいつの足はクロナだ!」のように、誇張や冗談で使われることが多い。

ルキウル:非アルゴニアン文化に順応したアルゴニアン。彼らはブラック・マーシュの民からよそ者扱いされることが多い。

ナヒーシュ:部族の長老。尊敬されているが、この称号は一部の学者の説と異なり、地位や権力とは関係ない。

ナルパ:ひどい。直訳は「腐った」だが、ひどい出来栄え、ひどい性格、ひどい料理などを表現するのにも使われる。

ノルグ:禁じられた。ほとんどの禁じられたものは話題にしないので、私の文化ではほとんど使われない言葉だ。

オジェル:部族の者ではない、よそ者。文字通りには「アルゴニアン語を話さない者」もしくは「ジェル語の話し手ではない者」の意。

リール・カ:戦士。力を示せば、いずれはカールになることもある。

サクスリール:アルゴニアン。細かく言えば、アルゴニアン語でアルゴニアンを表わす言葉。

スティシル:卵。この言葉は言いづらいと感じる者が多いようだ。スティシルはサクスリールの文化において重要なものなので残念だ。

ツクシス:蛇。目的を達成するために卑劣な手段を使う者のことを言い表すにも使われる。

トテイク:素晴らしい。対象となるものについてとても強い意見を示すので、たまにしか使われない言葉だ。もし使うのであれば節度を持って使うこと。

ツォナ:泳ぐ(ちなみに、ブラック・マーシュの沼で泳ぐことはお勧めしない)。

ウクシス:巣、家、ベッド。私たちにとって、これらのコンセプトは同じである。誰かのウクシス・ビーコになってほしいと言われたら注意すること。

ヴァステイ:変化。おそらく私たちの意欲の背景にある原動力。変化に逆らうことは究極の愚行として知られている。

ザル:怖い。他の言葉やフレーズと合わせて使われることが多い。例えばジンチェイ・コヌは、ザル・ヴァステイを起こすことで有名な記念碑だ。

ジーチ:木の実、種。さらに、始まり、誕生、まだ見えない潜在力を持つもの。

ズル:死、または死に関係があるもの。私たちからすると同じものとして考えられるため、復活も意味する。

バッカ:太陽。私たちが太陽を崇拝すると信じている学者がいると読んだことがある。それは誤りだ。太陽の温かさと日光浴は好きだが、それだけだ。

リー・ナカルの命令Ree-Nakal’s Orders

あのブライトスロートの女はますます取り乱している。私を信用してくれと言っておとなしくさせているが、いつまでもつか分からない。ブライトスロート村付近にある、ドラゴンソーンの乾いた草地でハクサラを待ち、彼女が自白を決断する前に黙らせろ。

リルモスの歴史A History of Lilmoth

ウェイレストの放浪者、ティリリャ・レン 著

リルモス、ブラック・マーシュの膿んだ宝石。マークマイア最南端の港であり、その先にある自然の沼への入口である。商人や旅人は泥だらけの通りを歩き、湿度が高いので肌の上で汗がしずくへ変わる。ブラック・マーシュの中で、これほど洗練された街はない。

ただし、実際のところは帝国支配の時代から数十年経った今、そもそも他の街に出くわすことがない。元帝国都市のリルモスにも、今では帝国の影響がほんのわずかしか残っていない。沈みかけた屋敷に飾られた絵が、苔に覆われて腐りかけている姿が見えるだけだ。アルゴニアンがブラック・マーシュを取り戻したように、沼がリルモスを取り戻したのだ。

しかし、リルモスの基礎を作ったのは鱗だらけの手ではなかった。それは、街を築いた狐の民を示す独特の名前からすぐに分かる。残念ながら、リルモシートの住民はナハテン風邪で全員死んでしまったので、もうリルモスにはいない。タムリエル中から来た商人と、近くの部族から来たアルゴニアンの旅人が街を占有している。

まともな権力構造が存在しないため、影響力のある商人が集まる議会が街のほとんどの問題に対応している。彼らは港の関税に目を配り、リルモスの街を巡回する衛兵を雇っている。さらに、全ての非住民に対して略式の裁判制度を使って裁きを下す。ただし、うまく賄賂を使えば、口のうまい弁護よりも早く問題を解決できることはよく知られている。

マークマイアの民には、もっと構造的ではない裁きの制度がある。周囲の部族では木の番人と戦士長が紛争のほとんどに決着をつけるのに対し、リルモスにはそのような法的制度が存在しない。リルモスで1年過ごしたが、多くのアルゴニアンがスラーキーシュという名の年長のアルゴニアンに従っていることに気づいた。彼らの社会における彼女の役割はよく分からないが、どうやら彼女は仲間内で尊重される裁定者として見られているようだ。

まだ荒削りではあるが、元は戦い、海賊、政治的紛争の巣だったリルモスはずいぶん変わった。今ではマークマイアの風変わりな謎を、広大な沼の危険に身をさらすことなく経験したい者にとって、素晴らしい場所であることに気づくだろう。私のように、アルゴニアン文化の奇抜さに引きつけられた者なら、ぜひ訪れるべき場所である。

ロスガーからリルモスへ:ある鍛冶師の物語、第一巻From Wrothgar to Lilmoth: A Smith’s Tale, Vol 1

熟練の鍛冶師ガルノザグ 著

俺はただの年老いた武器職人で、武器こそ命だ。まだ牙も小さいヒヨッコだった頃、俺はオルシニウムの大鍛冶場に忍び込んで、達人たちが仕事をするのを見ていたものだ。そのうち俺は見習いになって、鍛冶場の端から端までスラグを運んだ。そうして一人前になり、頭から爪の先まで煤と汗まみれになった。最終的に、俺は偉大なる熟練の鍛冶師に加わった。鉄をたわめ、鋼鉄に槌を打ち付けて過ごした年月の間、俺は金属以外のものを使って武器を作る可能性なんて一度も考えなかった。そりゃ、結んで縛るにはマンモスの革とかも使ってる。時には絹を着て生まれてきたような洒落者が、宝石をはめ込んでくれと求めてくることもあった。だが金属は俺の技の心臓だ。ここリルモスの武器職人に出会った時の俺の驚きを想像してみてくれ。

俺はいつも、タムリエルの南方にはそのうち行ってみたいと思っていた。戦争が始まった時、今行けばいいじゃないかと思った。カバナントの補給係に装備を売ってがっぽり儲けることもできた。だがブラック・マーシュにはなぜか、いつも俺の好奇心を刺激する何かがあった。

このトカゲの民が戦闘で木の棍棒を身につけているという物語は耳にしていた。俺は蛮族がシューシュー言いながら亀甲の兜と粗雑な革のグリーヴを付けてるところを想像してたんだ。完全な間違いだったと躊躇なく認めよう。ここのアルゴニアンたちは、俺に想像もできなかったような方法と素材を使っていて、結果は驚くべきものだ。メモは取ってるんだが、役に立つかどうか疑わしいな。素材の半分はブラック・マーシュでしか見つからないし、何十年も金属を叩いてきたこの手じゃ、細かい仕事までやれるかどうか自信がない。それでも、学ぼうとしない鍛冶師なんて何の役にも立たない。だからここにいる。あのトカゲどもに少々教えてやろうと思ってたんだが、俺のほうがたくさん学べそうだ。

ロスガーからリルモスへ:ある鍛冶師の物語、第二巻From Wrothgar to Lilmoth: A Smith’s Tale, Vol 2

熟練の鍛冶師ガルノザグ 著

今日もリルモスにいる。地元の武器職人で、シュケシュという名の年寄りで狡猾なアルゴニアンは、俺の眼鏡にかなう女だ。彼女は真面目で仕事熱心、しかも少々頑固だ。俺は彼女にオークの血が半分入ってるに違いないと言った。アルゴニアン特有の作り笑いをされた。本気で面白がっているとも、全く賛成していないとも取れるあの笑いだ。俺には違いがさっぱり分からん。最初に会った時、彼女は「トゥシック」の剣を作っていたが、これを「剣」と呼ぶべきなのか自信はない。正直に言って、これがどういう種類の武器なのか分からない。棍棒と剣が子供を産んで歯を半分取っ払い、残りを削って牙にしたような感じだ。もう少し詳しく説明したほうがいいかな。

このアルゴニアンの鍛冶師はまず、ある長さの木を手に取る。自分の腕の長さでもいいし、尻尾の長さでもいい。彼女は一週間かけてこの木を削り出し、櫂の形にする(俺は製作中のものをいくつか見せてもらったが、船の櫂と見間違えた)。多くのアルゴニアンはこの木を染色するだけで次の段階に進んでしまうが、老シュケシュは達人だ。俺には分かる。彼女は自分の欠点を根気で補っている。彼女は骨と精密に削り出した黒曜石のノミを使い、櫂の表面に装飾を刻んでいく。こうした模様の大半は抽象化された動物の形だ。クロコダイルとかな。だが模様の中にはいくつか、ちょっと不気味なものもあった。特にあるトゥシックにはぞっとさせられた。それは暗く着色された頭蓋骨に、隆起と棘がついたもののように見えた。彼女は「特別な客」のためのものだと言っていた。その客には会いたくないな!

木が硬化して染色と研磨が終わったら、シュケシュはそれを脇に置いて、仕事の次の段階に取り掛かる。つまり石の彫刻だ。シュケシュによると、この工程にはあらゆる種類の石を使っていいが、彼女は黒曜石を好むそうだ。原石は削られてナイフの刃のように鋭くなり、粗雑な四角から均一に削られた牙になる。この「歯」を削り出したら、シュケシュは木や骨の釘、煮沸したデパッサ・ガムを使ってこいつを櫂に取り付ける。

デパッサ・ガムというのは、奇妙なねばねばした物体だ。エシャテレの脇の下みたいな臭いがするが、ペーストのように木や石にくっつく。いったん固くなると引き剥がすのは不可能に近いが、アイアンウッドの若木のように軽く柔軟だ。俺はシュケシュに、こいつは俺が皮を固定する時たまに使う、マンモスの下地を思い出させると言った。彼女は特徴的な鳴き声をあげてこう言った。「木を刈るほうが、マンモスを狩るより簡単じゃない?」。それには同意するしかない。

歯がしっかりと所定の場所にはまったら、シュケシュは持ち手に革や樹皮の切れを巻き付け、どんなに雨や血で濡れても滑らない握りを作る。これで武器は完成だ。金属は一切使われていない。もっとも、この作品を完成させるため、彼女はほぼ3週間を費やした。

トゥシックの最も驚くべきところは、武器それ自体(これもまた素晴らしい出来栄えなのだが)ですらない。凄いのはこれの製作に伴う技術だ。シュケシュはただの鍛冶師じゃない。彼女は木工職人であり、錬金術師であり、石細工職人であり、縫製職人でもある。どれか一つを極めるにも一生を要するのに、彼女は4つ全てに熟練している。ほとんど恥ずかしくなるほどだ。暇を見て俺も木工を練習したほうがいいかもしれない。なんてな!無理に決まってる。結局、年寄りのオークに新しい芸は覚えられない。

ロスガーからリルモスへ:ある鍛冶師の物語、第三巻From Wrothgar to Lilmoth: A Smith’s Tale, Vol 3

熟練の鍛冶師ガルノザグ 著

アルゴニアンの「鍛冶場」は奇妙な場所だ。鍛冶場というより作業所に近い気がするな。この場所に入った時、故郷で馴染んでいた音や匂いには全く出会えなかった。金床を叩く音も、石炭の煙も、冷却用の桶がジューっという音もなし。不気味なほど静かで、ノミや斧、変な液体が入った木の桶、積み上げられた石、死んだ鳥、生きたナメクジ…こういったものがたくさんある。

最初の1週間ぐらい、俺はシュケシュの作業所で居心地悪く感じた。彼女はあまり口数が多いほうじゃない。最初の数日の間に彼女が出した唯一の音は、何かが完璧に計画どおりにいかなかった時不意に出てくる、イラついたシューシュー声だった。古いジェルの民謡もいくつか歌ってた。もっとも「歌」と呼べるのかどうか分からんが。初めて聞いた時、彼女はそこらじゅうをうろつきまわってるトカゲを殺してるのかと思った。ここはあいつらの巣窟になってるんだ!

そのうち、シュケシュは俺に話しかけてくるようになった。最初の頃の話は大抵、俺に鱗がなくて不愉快だとか、俺の目がビーズみたいに丸いとか、そういうことだった。彼女が俺を馬鹿にし始めた瞬間から、すぐに仲良くなれると分かったよ。シュケシュが教えてくれた最初の秘訣は「ナメクジ型」の技術だった。どうやらブラック・マーシュには大量のナメクジがいるらしい。俺の故郷でこのねばねばした生き物はあまり見かけないし、見かけてもすぐに踏み潰して、ブーツが汚れたのを不快に思うぐらいだ。だがここリルモスでは、どんなものにも意味がある。大半のナメクジは食料にしかならない(聞いた話だ。俺は4つ足でないものは食べない)。だが一部のナメクジには驚くべき使い道があるらしい。そういう特別なナメクジの一種は「ジャッサ・レッド」と呼ばれ、一風変わった防衛手段を持っている。脅威にさらされると、このナメクジは酸性の粘液を噴出させる。食べられそうになった時にそれがどう役立つのかはよく分からんが、この酸性の粘液はアルゴニアンの武器職人にとって有用なのだ。

シュケシュが自然の意匠を作品に組み込みたい場合は、このナメクジを木や石の上に置いて、ナメクジのすぐ後ろで繰り返し火打ち石を打ち合わせる。火打ち石の位置を調節すれば、ナメクジを様々な方向に押しやれる。ナメクジは木や石の上を動くにつれて酸性の粘液の細い線を跡に残し、長くなめらかな道が素材の上にできていく。粘液の働きは使われる素材によって異なる。粘液の作用は自然の着色料にもなり、その色は薄茶色から輝く黄色まで様々だ。

シュケシュは試しに俺にやらせてくれた(何の価値もない割れた材木で)。予想はしていたが、俺は下手だった。俺はグチャグチャな溝を作ってしまった。それも全部不気味な緑色の斑点に染まって。気持ち悪くなって火打ち石を投げ捨てたら、シュケシュは笑ったように思えた。本人はただの咳払いだと言って、このナメクジ型は完全に「ラジプ」だと言った。ラジプというのが何なのかよく分からなかったから反論はしなかったが、推測はつく。とにかく、俺には皮膚を焼く鼻水のねばねばした塊より、金槌と鋏のほうがずっといい。

韻と鐘Rhymes and Chimes

編訳 チャク・シュシュ

卵の番人の子守歌(作者不明)

小さなスティシル、小さなスティシル
樹液を飲み干して
小さなスティシル、小さなスティシル
さあお昼寝をして

小さなスティシル、小さなスティシル
殻の中で眠りましょう
小さなスティシル、小さなスティシル
世話をしてあげましょう

小さなスティシル、小さなスティシル
そっと寝返りをうって
小さなスティシル、小さなスティシル
固くしっかりと育って

ヒスト賛歌(作者不明)

我らが生まれた根の中に
あなたの樹液を浴び、姿を形作り
我らはここに集い、あなたの賛美を歌う
あなたが育みしものへ感謝を捧げる

風が鐘を優しく撫でて鳴らす
泥が全ての苦しみを貫いて固く抱きしめる
雨が黄金の陽光を越えて根に辿り着く
太陽が命ある間、葉に口づける

全ての小枝と大枝を祝福しよう
その下で我らは誓いを立てよう
繊細な樹皮と花を祝福しよう
祝福されしあなたを、我らのヒストと呼ぼう

童謡 ミンメ

チリン、チリン、虚ろな鐘
韻に合わせて鳴るね
愛し子のいる巣に思いを寄せる
勝ち得た眠りに落ちる

あなたは容易に揺らいで踊る
夜の優しいそよ風に乗る
怠惰な流れの思いが起こる
喜ばしい夢に渡る

チリン、チリン、虚ろな鐘
韻に合わせて鳴るね
夜の霧の中を率いる
ヒストの根に帰る

番人の根 チャク・シュシュ

あなたの腕の下で
抱かれて横たわる
朝露にしっとりと湿って
過ごした時間がもつれ合う

太陽の口づけを浴びて
湿気を帯びた空気のように熱くて
息は霧のように吐き出され
熱気が耐えられなくなるまで

私は鱗を濡らし、泥で整える
優しい大枝が影を作る
愛しい根の中で、私は血を冷ます
まどろみ始める

あなたはそっと子守歌を歌う
そよ風の中の鐘の歌を
心の目にあなたの種を植える
そして与える木々の夢を

影の道The Way of Shadow

ソリス・アデュロによる翻訳

見習いとして、諸君は常に自らの力の源泉を覚えておかなくてはならない。我らの主人の気まぐれ一つで、力が奪われてしまうこともあるからだ。諸君は多くの他の勢力に誘惑されるだろう。それらの多くは我らが父に似た仮面を被っている。彼らは父が持つ顔と同じぐらい多くの名を持つ。諸君が影のルーンを引き出す時、思い出すべきは父の全ての顔であり、彼らの顔は一つとして思い出してはならない。

また、光なくして影はないことも忘れてはならない。光がなければ虚無があるのみである。我々は父の顔を崇拝するが、避けられないものに向かって進む労力を払うのは我々の定めではない。太陽は血を流す黄身であり、我々はそれを飲むのである。

それまでの間、我らの鱗が黒くあり続け、影の席に仕えられるように。

影の鱗Scales of Shadow

ニッソ・ゼーウルム 著

暗闇の星々よ、星座よ、
集めるべき星を教えたまえ
必要な子供たちに与え
必要な道を教えるため

影の鱗よ、死の手よ
汝の刃によりシシスは名誉を得る
必要な変化を生み出すため
流されるべき血によって

汝は一党に入る
唯一の真ならざるものに導かれて
我らの無の言葉を覚えよ
無が見るものを見よ

ある日、汝の鼻が青白くなる時
汝は沼へ帰る
暗闇は汝の心に留まる
汝の鱗はいまだ影なれば

解き放たれしドラキーの日記、3ページDrakeeh the Unchained’s Journal, Page 3

私の祖父はまさにこの壁の中で鎖につながれていた。彼は私よりも毒舌だったが、彼の心は同じ憎悪で満ちていた。故郷から連れ去られ、インペリアルは彼を自分たちの意志に従わせようとした。ナガ戦士の曲げられない精神を曲げることを。

彼らは失敗した。侮辱するたびに彼の決意は強くなった。鞭を使うたびに彼のかぎ爪は鋭くなった。つながれた鎖は彼を強くするだけだった。彼は卵の兄弟を集め、心に戦士の歌を歌った。共にブラックローズ監獄を、鎖で縛った帝国のクズどもから奪った。

しかし他の部族がその戦士の歌を聴いた時、彼らは恐怖で萎縮した。祖父の心の中にある憎悪を見て、彼が毒されていると考えた。彼らは怒りを忘れるように、帝国の罪を忘れるように言った。ヒストの葉の下でもう一度踊るように、地平線を憧れのまなざしで見つめるだけで満足するようにと。

私の祖父は、それが愚かなことだと考えた。彼は新しい部族の族長、ラジカールになっていた。自分たちを迫害した者たちの道具を利用した。肌の乾いた者の監獄を取り戻して自分の砦にし、彼らの武器を自分の力にし、彼らの鎧を自分の保護に使った。そうして、かつて彼らを拘束していた鎖を振り回し、ブラックガードは生まれた。

解き放たれしドラキーの日記、12ページDrakeeh the Unchained’s Journal, Page 12

あまりにも長い間、私たちは卵の兄弟だけを仲間にして戦った。優秀な戦士ではあるが、数が少ない。私たちの力には限りがあり、活動範囲はちっぽけで、虫のように影をはい回らざるを得なかった。ただの盗賊に成り下がっていた。邪魔な存在なだけだった。

私は変化をもたらすのが賢明だと悟った。数を増やし、影響力を拡大するには、仲間が必要だった。肌の乾いた者が組織に入ることを許し、彼らを私たちの力にするのだ。そうしてブラックガードは大嵐のように、打ち寄せる波のように大きくなった。

しかし目の曇った者たちは、身内を疑った。私の指導力に疑問を持ち、昔のやり方に目がくらんでいた。怒りに満ちた声で叫び、それはどんどん大きくなった。私は彼らを落ち着いて観察した。シシスが、変化は常に混乱につながり、同様に混乱は血につながると教えてくれた通りだった。

そうして私の試練は生まれた。私の決断を疑う者は、仲間である肌の乾いた者の戦闘能力を試す機会を与えられた。そのような挑戦に成功した、数少ない者たちはどうなるのか?彼らは私の相手をする。彼らが疑問視しているのは私の命令で、指導者としての強さだったのだから。

私の前にいたシシスのように、私は破壊と創造を両方行い、疑う者を始末し、従う者を強くした。そうして、ブラックガードは復活した。

解き放たれしドラキーの日記、17ページDrakeeh the Unchained’s Journal, Page 17

誰かが私たちから逃げることはあまりない。ブラックガードに存在するのは、忠誠と死だ。そのため、誰かが私たちの手から抜け落ちる時、私は忘れない傾向にある。

その男は闇を探す者と名乗っているが、私はピマクシ・タイードと言う名を知っている。かつて奴は卵の兄弟であり、戦士であり、ブラックガードだった。今では盗賊の巣に隠れている。なぜマークマイアに戻ることにしたのか、私には分からない。だが、何としてでも後悔させてやる。

奴を私の試練で戦わせるように計画した。目の前で奴がぼろぼろになって死ぬのを見るのは面白そうだ。しかし斥候の話で、奴の仲間が私の砦をうろついているのが目撃されたと聞いた時、私にはどうすべきか分かっていた。

ピマクシ・タイードがゆっくりと苦しみながら死ぬのを見れば満足感が得られるだろうが、奴とそのウッドエルフには絆があるに違いない。ならば、その心を殺してやろう。明らかに大切な存在であるその者の死を自分が引き起こしたのだと悟って、目に不幸がわき上がる様子を見るのだ。

殺すのは後でもいい。今は、手紙を書いてウッドエルフに選択肢を与えよう。報復を遂行するのはそれからだ。

壊れたジンチェイ・コヌThe Broken Xinchei-Konu

黒き棘が崩れた監獄を覆い
根の獣が門の側に潜む
太陽は獣に喰われ、もはや輝かぬ

その枝から離れた実は
苔むした石の上に落ちた
実は東を見る、海へ向かって

淀んだ沼の奥深く
積まれた石に生える芽一つ
捨てられた巣、入るものもなし

沈没船の葦は腐れ落ち
北へ向かい、通り過ぎる交易船が
ヒストの若木に影を投げかける

虚ろなこだまの中、轟く根の向こう
成熟せしヒストは佇む
風の吹きすさぶ洞窟の奥深くに

海と沼が出会う場所、崖の縁の下
黒に覆われたインペリアルの石の陰
冷たい水の中に、年老いたヒストは座る

ヒストなき街の外れ
卵の籠はうずくまる、石造りの巣に
肌の乾いた、定まらぬ手が築いたもの

石の蛇は石の卵を守る
過去の愚行の二柱の間
西には、ハジ・モタが潜む

枯れゆく根の地下室にて
高くそびえる石の背後に
トカゲは座り、待っている

死の水から北
沼の端には根が潜む
その腹の中には、歩くトカゲ

虚無の口の下で
歩く根は我らの一族を飲んだ
轟音を立てる滝の下で

死の最後の季節は
根の最後の敵の内に横たわる
ささやく根が聞こえるほどに近く

蛙の演奏On Playing the Frogs

愛しいヘルガへ

君は先日私が見たことを信じないだろうな。リルモスを通り抜けようとしたら、アルゴニアンの音楽家の小さな集団に出くわした。ほとんどの者は粘土のフルートとトカゲ皮の太鼓を演奏していたが、1人だけ今までに見たことのないイカれた楽器を演奏していた。彼はそれを「ヴォッサ・サトル」と呼んでいた。どうやら、ヴォッサ・サトルにはいろいろな種類があるらしい。口琴のような小さなものから、パイプオルガンのような大きなものまで!我が新しき友のヴォッサ・サトルは、雌鶏くらいの大きさだった。音もちょっと雌鶏に似ていたな。

楽器の見た目は、上部にバルブが連なって付いている、磨いた木製の貝殻のようだ。貝の各部分は意外と小さくて、ラッパのような口がついた仕切りのある空洞になっている(見たやつには5個あった)。音楽家によれば、小部屋はそれぞれ大きさが異なっていて、異なる音色を生み出すんだそうだ。

で、これが一番イカれた点なんだが、奴らは生きた蛙を中に入れるんだ!友人は親切にもヴォッサ・サトルを開けて中にいる5匹の小さい蛙を見せてくれた。1室に1匹ずついるんだ!彼はまるで母親が生まれたばかりの子を自慢するように、蛙について何やら並べ立てていたよ。彼は蛙の名前、好きな遊び、好きな食べ物について教えてくれた。唯一教えてくれなかったのは見つけた場所だ。どうやら産卵池の場所は極秘らしい。

彼は毎回演奏の前に、数滴の蛙香を小部屋に吹きかける。これで蛙たちが興奮して、どうかしたみたいに甲高く、ケロケロ鳴くようになる。バルブを押すことで、他のは開いたまま特定の小部屋の音を弱められる。これで奇妙だけど、調和のとれた音が出せるんだ!ほとんど信じられなかった!即座に楽器を買い取ると申し出たんだが、断られた。まあ、それで良かったのかもな。蛙たちがウィンドヘルムの冬を生き延びられるかどうかは怪しい。結局、君のためにはフルートを買ったよ。一番ワクワクするような楽器じゃないけど、君が好んで吹くあの古い山羊の角笛よりは、いい音を間違いなく出せる!

カイネの天啓を込めて

トラルフ

蛙の集め方ガイドA Guide to Gathering Frogs

友のビーコよ!

ジミラ船長にプレゼントするヴォッサ・サトルを完成させるために、お前には以下の蛙を集めてきてもらいたい。

必要なのはアシゴケガエル、ルビーホッパー、インディゴツリーガエル、太陽に祝福されし蛙だ。これらが最も広い音域を出せる蛙なのだ。

まず、リルモスの東にある湿地の茂みにいる、アシゴケガエルを何匹か探してくれ。こいつらはとてもおとなしく、捕まえやすい。

次に、ルビーホッパーを探すんだ。この珍しい赤いカエルは、リルモスの水辺にある石の上で陽を浴びるのを好む。だが、気づかれないように近づけ。でないと怖がって逃げて行ってしまう。そうなったら、怯えた蛙は街の中心にある大きな木に隠れることが多い。

インディゴツリーガエルを捕まえる手順は少々複雑だ。この蛙が住む木を見つけたら、ニクバエを何匹か集めてくれ。この青い蛙の大好物なんだ!ニクバエを木の下に放してみろ。下に飛び降りて食べに来たら、捕まえればいい。

最後だが、太陽に祝福されし蛙は一番捕まえるのが難しい。泥の穴からこの蛙をおびき出すには、騙して交尾の時間だと思わせる必要がある。そのためには、まず蛙を引き付ける匂いを出す材料を集め、隠れ家から出て来るようにしないといけない。

匂いを作るためには、以下の植物を集めてくれ。ニオイスゲ、シオイグサ、ワライアオイだ。これらを組み合わせて、蛙の香を作るんだ。香が出来たら、蛙の泥穴を探す。そして蛙の香を自分にかけて、クロークホイールを使うんだ。香の匂いとクロークホイールから出てくる鳴き声があれば、きっと太陽に祝福されし蛙をおびき寄せて捕まえられるはずだ。

幸運を祈る!

虚ろなる者の成長Development of the Hollow

我らのヒストは無駄と、他の部族たちの我がままを認識している。彼らは太陽に愛された自らの地で、豊穣な生活を楽しんでいる。彼らのヒストは何も求めず、彼らもまた何も求めない。卵でさえ有り余っており、奴らのヒストは何の使い道も持たないほどなのだ。巣全体が捨て去られ、忘れ去られている。深い沼のリヴァイアサンに子供たちの集団が飲み込まれる苦痛を彼らは知らない。枯れた根も正しく世話すれば生命を得て膨らむことを忘れているのだ。私はあの虚ろなる殻のために目的を見つけてやろう。そうすれば、我々のヒストは再びその根を価値ある子どもに巻き付けてくれるだろう。

失敗。大量の失敗だ。予測済みのことではあった。虚ろなる卵に真の生命を吹き込むのは、捨てられた肉体をなだめすかして生者の行動を思い出させるように単純なことではない。

ブラックトングの霊薬は卵の成長を促進するが、荒っぽく無秩序な代物だ。腫瘍に似た原始的な肉の突起は、私が探し求めていたものから程遠いが、生命は生命だ。必要なのは導き手だ。何をすべきなのかは分かっている。

サクスリールになるはずだったものの萌芽は見える。最初は歯や鱗、あるいは背骨が、形を成さない塊に混じって卵から孵る。樹液は何をすべきか知っている。しかしまだ要素が足りない。時が来れば、この謎への答えが分かるだろう。

私は生命を創造した。短い命だったが、命には違いない。孵化したサクスリールは奇形であり、数時間生き残った者は少数だが、私は正しい道を進んでいる。

これらの卵を次々に孵化していったことで、自分が探し求めているものからどれだけ遠くにいるかようやく理解した。困難を乗り越えるたび、それが前回の困難とは比較にならないほど大きなものだと分かる。子供の成長を促進させることで、生き延びるための体の組成を与えてやることはできたが、身体的な異常を排除してさえ、やはりあれは虚ろなる者だということが明らかになった。サクスリールなのは形だけだ。一歩ずつ目標に近づいていると自分に言い聞かせるしかない。

孵化を生き延びた虚ろなる者を檻に入れねばならなかった。中には知能と言わないまでも、本能を備えているものがある。我々には見えないものに引き付けられているらしく、いかなる干渉に対しても敵意をもって反応する。貧弱な個体であっても適切な監視にはあまりに労力を必要とする。すでに1人以上を失っていると思うが、これほど失敗が多いといちいち数えていられない。

今日のことは勝利とまでは言わなくても、誇りに思っていいだろう。ヴィーシュクリールの儀式を私の錬金術と組み合わせることで、健康なサクスリールを1体作れた。虚ろなる者に比べればおとなしいが、目には認識の兆候が乏しい。魂は感じられるが憑依に欠陥があるのか、それとも体がやはり適さないのか、何とも言い難い。

安定した調合法を手にしたが、儀式に順応することに関しては全く進展がなく、以前の成功例も感知能力の改善を一切示していない。私はこの道を進んだことで、あまりに深い沼に沈み込んでしまったらしい。一歩退いて、他の道を探すべき時が来ている。

私の霊薬の限界を試すために少なからぬ数の卵を失ったが、卵の供給は続いているし、犠牲を払うだけの価値はあった。卵のうち2つからは、これまでに見たことのないサクスリールが生まれた。他の虚ろなる者とは違い、青白くない。体の模様には鮮やかな色が付いており、皮膚からは我々にとってさえ致命的な調合薬の成分が発散されている。安全な研究のため、私は隔離しておいた。

この新しい調合法にはかなり期待をかけている。卵の成長はあらゆる期待を上回るものだ。魂の拘束の儀式も同じような結果を出せればよいのだが。

恐怖の父の嘘Lies of the Dread-Father

ニッソ・ゼーウルム 著

丸い舌はそれに姿形を与える
そして「それ」は「彼」へ変わる
彼らはその腐れ落ちた花嫁に囁きかける
彼を称えよ、彼を崇拝せよと

彼らはそれを父と名づける、恐ろしきものと
彼らは恐るべき血の刃と共に祈る
彼らは真理の一面を語る
彼らの舌に絡みつく何かを

無形が形を与えられ
変化は停滞になる
一つの真理は真ならざるものへ変わる
何かの一党が見つめる

軍団士官のメモLegion Officer’s Notebook

我々が雇ったアルゴニアンの斥候は天の恵みだ。ジン・ラジュルはこの沼地を知り尽くしているようだ。実際の話、この洞窟に野営することを進言したのもあの斥候だった。風雨からの保護と、身を守るのに適した防ぎやすい場所を提供してくれるのに加えて、彼の部族の伝説によれば、ここには大昔、ある強力な武器がしまい込まれたのだと教えられた。その武器を入手できれば、帝国にとって大きな利益となるだろう。

* * *
この洞窟にいるのは第九軍団だけではない。何者かが我々の警備兵と物資捜索隊を襲ったのだ。アルゴニアンの斥候は、ここにいるのが軍団だけだと主張した。つまり我が兵たちが義務を放棄して脱走したと言いたいのだ。馬鹿げている!第九軍団が責任を放棄することなど決してない!ジン・ラジュルは本当のことを言っていない気がするが、なぜ私に嘘をつくのかは分からない。

軍団士官の日記Legion Officer’s Journal

ジン・ラジュルめ!奴は何らかの魂胆で第九軍団をこの洞窟に引き入れたのだ!今では何もかも滅茶苦茶になってしまった。あの物体は兵たちの半数以上を食い尽くしてしまった!あれは巨大になり、さらに強くなっている!

まだ何らかの行動を実行に移せる程度の兵は無傷で残っているが、あの悪臭を放つおぞましい泥の塊が外に出て、帝国を脅威に陥れることのないよう、入口を封鎖するつもりだ。

好色なアルゴニアンの歩兵、第1巻The Lusty Argonian Footman, Volume 1

(未完成)

– 第5幕、第1シーン、続き

背骨を立てし者:申し訳ございません、奥様!

ナデネ・ヴェラス:こんなこともできないの?

背骨を立てし者:努力はしています!でも何をしても…

ナデネ・ヴェラス:もっと磨かないとだめよ。私の器に艶を出してくれないと。

背骨を立てし者:はい!今すぐもっと磨きます。

ナデネ・ヴェラス:そうよ、それいいわ!本当に、熱心に喜ばせてくれるのね。

背骨を立てし者:貴女を喜ばせることが私のすべてです!

ナデネ・ヴェラス:分かってるわ。この後は食卓の準備をしないと。

背骨を立てし者:ただちに!旦那様が出掛けてる間は、お好きな部屋にご用意できます。

ナデネ・ヴェラス:忠実な召使なら、当然ね!

– 第V幕の終わり、第1シーン –

高名な探検家の失われた物語:欠片1Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment I

ソリス・アデュロ 著

「3人だけか」とマティウスは抗議した。3人では偵察隊にもならない。本格的な探検隊となればなおさらだ。「最低でも9人という約束だったのに」

ターナは机の上にドンと足を投げ出した。「それが精一杯だったわ、マティウス。あんたの名前にもう昔みたいな効力はないの」

マティウスはそれが本当のことだと知ってはいたが、自分の友人からそう言われたのは初めてだった。自分の任務を続けるつもりだと言ってから、ターナが彼に冷たくなったことにマティウスは気づいた。彼がインペリアル公認の調査隊のリーダーとして、ブラック・マーシュ地域の正確な地図を作る任務についてもう10年が過ぎた。国境地域は十分に画定されたが、沼地の中心部についての情報は乏しく、検証不可能だった。帝国から市民へ広められる公式の記述ですら、無数の疑わしい報告に基づいて作った、継ぎはぎだらけの物語だった。

探検は失敗と考えられていた。彼の仲間は探検が長引くにつれて死ぬか任務を放棄して、規模を刻々と縮小していった。ターナは彼のところに残った唯一の者だが、彼女は病気にかかってうわごとを言うようになり、旅の最後の日々を思い出せなくなってしまった。

そしてマティウスが大学に戻って失われた都市や古代文明について話すと、彼の主張を保証する目撃者が他にいないこともあって、疑いの目にさらされるたのである。それ以後、ターナとの関係は変わってしまった。マーシュは彼らを二人とも変えてしまったが、その余波もまた楽なものではなかった。マティウスは昔のことを水に流してまた一緒にやれることを期待していたが、ターナはもう二度とブラック・マーシュには戻らないと言ってきっぱり断ったのである。彼女は隊員集めに協力してくれた。マティウスとしては、力を貸してくれる人がいるだけでも感謝しなければならなかった。

「少なくとも、そいつらは経験豊かなんだろうな」。彼には期待するしかなかった。

「運がいいわよ」とターナは言い、何かの書類を眺めた。「まあ、あんたがハイエルフと仲良くできるならね。彼女は魔闘士だから、何とかなるでしょ。名前はサラーラ。聞いたことない名だけど」

マティウスは眉をひそめた。そんな熟練の仲間が手に入るのは嬉しいはずだったが、何か警戒すべきものを感じたのだ。「なぜ魔闘士が私のところに来るんだ?」

ターナは肩をすくめた。「私の知る限り、これは公認の任務じゃない。私の情報筋も彼女については何も知らない。自分なりの理由があって来たんでしょう。今は贅沢言ってる場合じゃないわ」

マティウスはうなずいた。そのエルフには目を配っておかなくてはならないだろう。「で、他の二人は?」

「逃亡奴隷のリファン。若いけど熱心なノルドよ。情熱の大切さは知ってるでしょう。先回りして言っておくけど、彼は読み書きできるし、狩りや食料調達の腕もそれなりにある。これまで自分の力で生き残ってきたんだから、チャンスを与えてやりなさい」

働き手が多いのは悪い事ではないし、チームの規模は小さいからその少年が邪魔になることはないだろう。それでもマティウスは、覚悟のない者にとってこの旅がどれほど厳しいものになるかを知っていたので、申し訳ない気分になった。「で、三人目は?まだ案内人の話をしてないだろう。アルゴニアンの協力者なしにはどこにも行けないぞ。少なくとも、それくらいは覚えているだろう」。そう言ってしまったことをマティウスは後悔したが、ターナは無視した。

「河のエラ」と彼女は言った。「あんたが依頼したとおり、経験豊富なアルゴニアンの案内人よ。条件は一つだけ」

「条件があるのか?」マティウスはため息をついた。「俺が約束した金額は提示したか?」

「したわよ。最後まで聞いて」。ターナは一旦話を切った。彼を待たせるためだけにやっているようだった。「河のエラは途中まで案内してくれる。そこからはあんたが行きたいところに半分の時間で連れていってくれる、別の者を紹介してくれると約束している」

良識ある人間なら断るところだとマティウスは思ったが、彼には断れないのが分かっていた。どんなに見込みが薄くても、もう一度チャンスを得られるのをもう10年も待ち続けてきた。沼にはあまり人前に姿を現さない部族がいて、隠された道を知っているという話はマティウスも聞いたことがあった。そうした部族と安全に接触できるという考えは、彼を勇気づける程度には魅力的だった。

「よしわかった」とマティウスは言った。「ありがとう、ターナ」。彼は背を向けて立ち去ろうとしたが、扉のところで立ち止まった。「本当に、何を言っても一緒に来てはくれないのか?やっぱり、俺たちは二人で行かないと」

「言ったでしょ、マティウス。たとえ世界中のゴールドをもらってもブラック・マーシュには戻らないって。私のほうこそ、行かないようあんたを説得できたらと思うわよ」

高名な探検家の失われた物語:欠片2Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment II

ソリス・アデュロ 著

彼らがようやく野営地に適した開けた場所に辿りついた時、まだ太陽は高く昇っていた。進み続けることもできたが、明かりが続く限りは進めると考えて迷子になった探検隊は数多い。早朝が旅に最適な時間なのだ。沼はまだ寝ぼけており、夜は完全に明けていた。マティウスは火をおこすのに必要なものを集めに行ったが、仲間たちから離れないように気を使った。彼は棒きれとシダも探すことにした。それを使えば光を隠せる。マティウスはこれだけマーシュの奥深くにいる時は、こうしたほうがいいことを知っていた。彼の新しい仲間たちには何も言わなかった。皆疲れていたし、退屈していたからである。

「古代アルゴニアンには黄金の鱗があり、卑しい人間やエルフの目を眩ませることができたと言われている」マティウスは全員にこの任務の重要性を思い起こさせることで、彼らの士気を高められればいいと思った。そしてキャンプファイアの物語というのはいつでも、少し誇張した話をするものである。「彼らはその最も偉大な街を高く建設し、太陽にまで届かせた」

「それからどうなったの?」と若きリフェンは聞いた。

マティウスとしては、この若者の尽きることのない好奇心を気に入ったと認めざるを得なかった。マティウスはわざと答えを保留し、河のエラが自分から答えを言ってくれることを半分期待した。こうした伝説についてマティウスが知っていることは全て、他のインペリアルの探検家や学者の業績だった。彼はアルゴニアンからこうした話を聞き出せたことがなかった。

河のエラは全く聞いていないかのように、ただ座って陽の光を浴びていた。マティウスから見ると、このアルゴニアンは眠っているも同然だった。

「太陽が彼らを滅ぼしたと言う者もいる」とマティウスは続け、棒切れの束を放った。「彼らは太陽を卵のように割って開け、神になったと言う者もいる」

エルフのサラーナは失笑した。「馬鹿げてるわ。太陽が卵じゃないのは誰でも知ってる」これまでのところ、マティウスがこの魔闘士について知ったことは、彼女が自分の信念に何の疑いも持っていないことぐらいで、その信念の大部分はギルドの教えから来ていることが彼には分かった。

「じゃあ何?」とリフェンが聞いた。

「穴よ」

リフェンは鼻をすくめて見上げた。「あれって穴なの?」

「見たらダメだ」マティウスはため息をついた。

「黄金の都市も信じてないの、サラーラ姉さん?」とリフェンは聞いた。「船乗りはただの物語だって言ってたけど」

「自分の目で確かめたいんだろう」とマティウスが口を挟んだ。サラーラはこの探検に加わる個人的な理由を教えてくれなかったので、予想しただけである。

サラーラは二人から顔を背け、茂みをじっと見つめた。壊れたコンパスを取り出し、それを強く握りしめた。

「まだ何か、価値のあることが学べると思っているわ」とサラーラは答えた。「彼らの信じていることが全て間違っているとしても」

河のエラが目を開いた。

高名な探検家の失われた物語:欠片3Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment III

ソリス・アデュロ 著

彼らは3日間河を移動し、夜になると河のエラが安全に停泊して休める場所を示した。

1日目、河のエラは理由も言わず、一行を河の土手にある岩だらけの露出部に数時間も停止させた。マティウスはリフェンに、沼の奇妙な植物や動物について教えて時間を潰した。マティウスは名前を知らないもののほうが面白いと思っていたが、捕まえて観察することを考えるわけにはいかなかった。無数の色を持つ鳥や、大きな岩のような甲羅を持つ巨大カブトムシ、集団で移動し、灰色ベヒモスの死骸を食べる鱗犬などがいた。マティウスはどれ一つとして名前を知らなかった。

旅を再開する頃には、夜になっていた。他の者たちは抗議したが、河のエラは今が旅に適した時間だと請け合った。マティウスはアルゴニアンの案内を信じることにして、一行は引き続き河を下った。サラーラでさえ、皆に加わって沼を見つめた。木々を通り抜けて移動する、薄暗い光を放つ不思議なクラゲで沼地が明るくなっていたからである。

2日目、リフェンが何かを発見し、「見てよ!」と叫んだ。

サラーラは息を呑んだ。マティウスは振り向いたが、他の者たちと同様言葉が出なかった。沼の中から飛び出してきたのは蛾の羽根のような、巨大な金属の羽根だった。苔と泥にまみれてはいたが、マティウスは2つのドームのような、何層にもなったガラスの目を見分けることができた。何だか分からないが、あれの全体はどれだけ大きいのだろうと思った。

河のエラは一行の前方にある曲がりくねった河から目を逸らさなかった。頭にあるヒレが高速で振動し、低くうなっていた。

「止めてよ、あれを見なきゃ」サラーラの声は震えていた。彼女は河のエラに向けて手を伸ばした。

「止まることはできない」と河のエラは落ち着いて言った。「少し前から、リヴァイアサンが我々を追跡している」

サラーラは一瞬だけ静止したが、すぐに筏から飛び降りた。他の者たちは落ちないように苦労した。

「サラーラ!」とマティウスは叫び、筏のバランスを保つために重心を移そうとした。「河のエラ、速度を落としてくれ」

「止まることはできない」と河のエラは言った。

サラーラは仲間の抗議を無視して、可能な限り早く泥の中を移動していた。彼女は移動しやすいようにマントの紐を解いて脱ぎ捨てた。サラーラは手足をばたつかせて水しぶきをあげながら、不思議な蛾に接近していった。

「サラーラ姉さん!戻ってきて!」とリフェンは叫んだ。

サラーラは今や沼に引っかかり、のろのろと進んでいた。彼女は立ち止まって力の言葉を囁き、マティウスは移動を補助するものだろうと思った。彼女が壊れたコンパスを手に持っていることに、マティウスは気づいた。

すると突然、沼自体が彼女を引きずり込み、飲み込んでしまったようだった。彼女は音もなく消え、二度と浮かび上がってこなかった。マティウスはただ、水の中を動く何か巨大なものの形をかろうじて見分けられただけだった。虫たちさえ音を出すのをやめたことに彼は気づいた。

サラーラのマントは物憂げに漂っていた。彼女の物語の中で残されたのは、ギルドの留め金だけだった。

「止まることはできない」と河のエラは言った。

誰も反論しなかった。そして事実、その日は誰も口をきかなかった。夜になると、彼らは村ほどもある大きさの木の中で眠った。

次の日の朝マティウスが目を覚ますと、リフェンの姿が消えていた。彼が残していったメモには、近くにある集落の明かりが見えたので、彼らに頼んで都会に帰してもらおうと思う。見捨ててごめんなさい、と書いてあった。マティウスには若者がすでに死んでいることが分かった。マティウスがこれでたった二人になったと言った時、河のエラは一言も発しなかった。

その日、彼らはついに徒歩に戻った。険しい地形だったが、マティウスにはそのほうがよかった。しかし旅を続けるにつれ、マティウスの心は以前の探検の記憶に苛まれた。河のエラはもうあまり遠くまで案内はしてくれない。マティウスには次の案内人がどういう人物なのか見当もつかなかった。ブラック・マーシュにおける孤独と恐怖がどういうものか、彼は覚えていた。

3日目の夜、河のエラはヒレを伸ばしてシューっと音を出し、マティウスに洞窟の中へ隠れるよう命じた。

河のエラは外に留まり、夜の残りの時間、マティウスは眠れなかった。夜中じゅう、彼には確かに、歌声と蛇のシューシューいう音が聞こえていた。朝になると、アルゴニアンは何事もなかったかのように再び現れた。

「ヌブタは今、お前に会うと言っている」河のエラはそう伝えて立ち去り、二度と戻ってこなかった。

高名な探検家の失われた物語:欠片4Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment IV

ソリス・アデュロ 著

ゴボゴボ、ゴボゴボ。

またあの音だ。マティウスは虚しく松明を振り回した。息の詰まるようなこの霧の中では、何も見えなかった。彼は空いているほうの手でマントを引き寄せて口を覆い、洞窟のさらに奥深くへと走った。

ゴボゴボ、ゴボゴボ。

すると、その生物の影が目に入った。巨大な球根状の影。それは彼を追いかけていた。彼は走り続け、息を切らしてあえいだ。

ゴボゴボ、ゴボゴボ。

彼はゲップのような笑い声の反響を耳にした。自分は頭がおかしくなったに違いない、とマティウスが考えるまで、その音は響き続けた。その後、彼の足元で、骨のぶつかる音が聞こえた。霧は晴れ、マティウスは自分があらゆる形と大きさの頭蓋骨を並べた部屋に立っていることに気づいた。床は何の生物のものかも分からない骨で埋め尽くされていた。彼は人間を丸呑みし、骨を吐き出す邪悪なボリプラムスのことを思った。「では、俺もこれでおしまいか」彼は息を吐き出した。あのアルゴニアンの嘘を見抜けなかったとは。

ゴボゴボ。

マティウスは部屋の空気が変わったのを感じた。凄まじい悪臭が彼の鼻を焼いた。

声が響いた。「また肉を持つ者がヌブタに会いに来たのか?飲み込まれる前に全て話してしまえ」

薄暗い松明の明かりの下では、不気味な生物の形がかろうじて分かる程度だった。これはプラムスではないが、吐き気を催させるような湿り気でギラギラしていた。丸々とした腹に、ナメクジのような潰れた顔を持つ、巨大な蛙の一種だった。中でも目が一番ひどかった。マーカスはその目の中に禁じられた知と際限なき恐怖を見た。この生物が喉を膨らませたので、彼は勇気を振り絞った。禁じられた知こそ、彼がこんな朽ち果てた場所に来た理由だったのだから。その獣は喉をゴクリとさせ、突然彼に迫ってきた。頭がくらくらするような煙が、鼻から噴き出していた。

「黄金の階段への道を探しているんだ」とマティウスは吐き出すように言った。自分の声がかすれているのは気に入らなかった。

獣は後退し、息を詰まらせたか、あるいは笑ったようだった。その後でゲップをしたのがマティウスには分かった。気絶せんばかりだったが。

「見せてやってもいい」とナメクジ生物は鳴いた。「対価を払えばな」

「もちろんだ、善良なる泥の王よ」とマティウスは言ったが、言わなければよかったと思った。こいつがお世辞ごときで満足するはずがない。実務的に応じたほうがいい。「その情報の対価とは?」

太った腕がポケットを探った。マティウスはこの生き物が模様の入った緑と茶色のローブを着ていることにさえ気づいていなかった。湿ったでこぼこの指が、黄金の装飾用アミュレットにはめ込まれた光輝く黄色の宝石を取り出して示した。宝石には傷一つなく、まばゆいばかりだったが、マティウスは呪われた遺物や不思議な宝石に関して素人ではなかった。彼は剣を抜き、待った。心臓が鳴り響いていたが、恐怖なのか興奮なのか分からなかった。これは古代アルゴニアの遺物なのか?獣は笑って、顎をぶんぶんと振った。

アミュレットを角のついた、何だか分からない古代の獣の頭蓋骨にかけてぶらさげると、それは松明の明かりの下できらめいた。「お前はこれをヌブタのために黄金の都市へと持っていく。それが対価だ」

マティウスは眉にしわを寄せた。「それで、到着したらこれをどうすればいい?」

「その時になれば分かる」とヌブタは囁いた。マティウスはその言葉が彼の耳の中をくすぐる感覚にぞっとした。「お前が死ぬ直前にな」

一瞬の間、マティウスは怪物の顔が自分の目の前まで来たと思ったが、まばたきをして再び見ると、怪物は動いていなかった。「道を教えてくれ」とかろうじて声に出した。

「ここから行くことはできん」と泥の王は言った。「お前は水中の根のように深く進まねばならん。お前の神々さえも見たことのない場所を潜り、探し回り、行き来するのだ」怪物がゲップをして最後の言葉を発した時、マティウスは何も言えなかった。「私はお前をクスル・アクシスまでは連れていこう」

マティウスは悪臭に逆らって呼吸し、剣を収めた。足を踏み出して黄金のアミュレットを拾い上げると、ぬくもりを感じた。「死ぬつもりはない」と彼は言い、アミュレットを荷袋に滑り込ませた。「そのことで気を悪くしないでほしいが」

怪物のゲップのような笑い声が響き渡り、それが消えた時、マティウスは一人で立ち尽くしていた。松明の明かりが燃え尽きかけていた。

高名な探検家の失われた物語:欠片5Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment V

ソリス・アデュロ 著

マティウスは旅仲間の悪臭のせいか、それとも再び沼を逆さまに通り抜けるという行為のせいか、吐き気を催していた。

ナメクジ生物ヌブタは笑った。「これで分かっただろう。この領域は広さよりも、深さのほうが大きいのだ」

マティウスにはさっぱり分からなかった。彼らが、ヌブタの言い方では「河に滑り込んだ」のはこれで3度目だったが、これをやる度に方向を見失うばかりだった。最後の時など、マティウスは自分が溺れているのを見ていたと確信したほどだった。

「夢を見ているようだった」とマティウスは言った。彼はせき込んでねばねばした水を吐き出した。

「夢を見ていたのだよ」

泥の王はそれ以上何も言わず、太い指で指し示した。その先をマティウスが目で追うと、周辺の沼地を通る開けた道の上に、黒い石のアーチ形の道が見えた。アーチ形の道には、蛇と根が互いに絡まり合っている姿が彫られており、頂点の部分には割れた舌を持つ頭蓋骨があった。マティウスはここから先、一人で旅を続けなければならないことを理解した。彼の案内人はこれから先を助けてはくれないだろう。彼らはクスル・アクシスの門に辿りついたのだ。まだ十分目的地に近づいていないのではないかと思い、彼は不安になった。

マティウスには考えがあった。彼はヌブタに渡された黄金のアミュレットを取り出した。「泥の王よ、あなたは自分の言葉を守った」とマティウスは言った。「私も自分の言葉は守る。この宝石を黄金の都市に帰そう。ただ、道を見つけられればだが」

ヌブタはゲップをしてうなった。その奇妙な目はアミュレットを見て少し考えていた。「影が滲み出る聖堂が見えるまで、道を外れずに行け。それは死の場所だ。中に入ってはならない。聖堂の前に立ったら空に太陽を探し、その方向へ歩め。着いた時は分かるだろう」

泥の王が突然這って河へ戻り、いなくなってしまった時、マティウスは抗議しようかと思った。一瞬だけ、マティウスはパニックが胸をつかむのを感じた。彼の仲間たちは一人また一人とこの旅を放棄していったが、マティウスは突然彼らが正しかったのではないかと考えた。この任務を投げ出すこともわずかな間だけ考えたが、前に進む唯一の道は黒い石の道であることにすぐ気づいた。川は足元で干上がっていた。

マティウスは勇気を振り絞った。アミュレットは彼の手の中でぬくもりを放っていた。彼はアーチ形の道に足を踏み入れて進んだ。

高名な探検家の失われた物語:欠片6Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment VI

ソリス・アデュロ 著

その古代のアルゴニアンはマティウスに向かって大股で歩み寄り、喉から絞り出すような言葉で叫び声をあげた。このアルゴニアンは平均的なサクスリールよりも頭2つ分ほど背が高く、鱗は金色、赤と紫と緑の明るい羽根や大きな曲がった角を持っていた。頭には鳥の顔の形に彫られた黄金の仮面を被っていた。羽根の付いたローブと黄金の腕輪を身につけており、両腕を広げると翼が付いているように見えた。マティウスにはどこまでが生物で、どこからが装飾なのかが分からないほどだった。

彼には考え込む時間はなかった。この黄金の怪物が呪いの言葉を叫びながら、彩色した爪で襲いかかってきたからである。マティウスに翻訳できた言葉は3つだけだった。太陽、炎、死。

マティウスは後方によろめいた。怪物が飛び掛かってきたので剣を抜くことができなかった。怪物は必死の形相で首にかかった黄色い宝石を爪でひっかいた。マティウスは何とか後ろに退き、剣を抜いたところでこの鳥のようなトカゲが叫びながら覆いかぶさってきた。彼は片手でやみくもに突きまくりながら、もう片方の手を怪物の喉に押し付け、爪で切り裂かれまいと必死でもがいた。怪物は何度も繰り返しアミュレットをひっかいた。アミュレットを首から切り離そうとしていた。

マティウスは宝石が砕ける音を聞いた。黄色い塵が空気を舞った。

アルゴニアンはもう動かなくなっていた。ようやく死んだか、とマティウスは安堵のため息をついた。手が疲れていた。

突然、怪物は目にもとまらぬ速さで再び動き出した。爪のついた両手が飛び出し、マティウスの顔を覆った。彼は自分の首が折れる音が聞こえるかと思ったが、アルゴニアンは強い力で抑えつけるだけだった。黄金の仮面が怪物の顔の一方からずり落ちていた。

それは鳥でもトカゲでもなく、蛇だった。さらにマティウスはその鱗が黄金ではなく金色に塗装してあるだけで、仮面の塗装が削れているのを見た。鱗が白黒の斑模様で、死体から色が消えつつあるのを見た。その目は虚ろな穴だったが、塵がその中に流れ込むと、黄色になった。

恐怖からか勇気からか、マティウスは蛇に剣を突き刺し、もう一度攻撃した。それと同時に黄金の仮面が滑り落ち、床に当たってガランと音を立てた。その中には血がついており、マティウスは蛇の顔が何度も繰り返し変化するのを見た。再び蛇に戻るまで、顔は12回変化した。

彼はこの怪物を殺すことを忘れていた。自分の命を守ることも、そもそも自分がなぜブラック・マーシュにまで来たのかさえ忘れていた。マティウスに分かったのは、ただ恐怖のみだった。

マティウスは落下し、そして吹き飛んだ。世界は彼に向って突進し、炎と栄光、狂気となって襲いかかった。持っていた覚えもない背中の翼に風の流れを感じ、飛び上がった。彼はいくつもの黄金の街と黒い石の街を飛び越えた。街々はそれらを包み込むヒストのごとく、尽きることがなかった。空は燃え上がり、太陽は穴だった。それでも彼は飛んだ。ただ風に運ばれる以上のことをする力はなかったからだ。

彼は塔へとやって来た。それは高く広大で、何層にもなったその沼地から、たくさんの木が生えていた。獣たちは、塔の外の世界を知ることなく生き、そして死んでいた。塔の頂上には火を放出する木があった。マティウスに似た、翼を持つ他の者たちがその木の周りを回っていた。彼らは叫び、マティウスはその言葉を理解した。知らない言葉だったのに。彼は深い悲しみを感じ、塔は見えなくなっていった。

マティウスが見上げると、他の世界と他の塔がいくつも見えた。それらは回転する輪であり、互いにめり込んでいた。輪の軸は絡まり合い、互いを破壊し合っていた。彼は自分の世界が壊れていくことも感じたが、蛇のように素早く影がやって来て塔の根を飲み込み、壊れないようにしていた。

マティウスはまだ飛んでいた。すると炎と暗闇だけがあった。そしてひどい騒音。だが恐れるには、彼は疲れすぎていた。だからマティウスは眠り、黒い太陽へと漂っていった。

黒きヒレ、故郷に帰るThe Black Fin Comes Home

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

黒きヒレとして知られるケシュ将軍は、シロディールのパクト勢力の指揮をフェリシ・ヴァロというダークエルフの将軍に任せた。そして私とヴォス・フルク、ティー・ワン、ゾシン、ダークエルフの双子レンシとメラリン、ノルドのジョドとウルフベルという少数の仲間を連れ、戦争で荒れ果てた田舎を離れてモーンホールドへ戻り、スカルド王ジョルンと最後の会合を行ったのだった。

「この奇妙な国で時を過ごすほど、山や雪が懐かしくなる」とジョルンはダークエルフの街の謁見室に入る時に言った。「さて、黒きヒレよ、言ってくれ」と彼は言い、ケシュに顔を向けた。「本当にこれでいいのか?」

ケシュは肯定の背骨を立てて言った。「ジョルン、私はあなたとパクトのためにやると決めたことは全てやった。ブラック・マーシュに帰って、同じことを私の民のためにやるべき時が来たのよ」

ジョルンは厳粛な面持ちでうなずいた。「ならばもう何も聞くまい、信頼する友よ」と彼は言った。目に涙が光っていた。「カイネがお前を故郷へと導かんことを。俺の助けが必要になったら、ただそう言ってくれ」

その言葉を聞いて、ケシュの両目は空の星々のようにきらめいた。「そう、一つ小さな問題があるの」と彼女は言い、彼女の民の知識と経験を広げるため、ブラック・マーシュをよそ者に、特に手工業者や職人に対して開くという望みを説明した。「触れを出そう」ジョルンは同意した。「で、その手工業者や職人はどこへ行けばいい?ストームホールドか?」

「いいえ、」ケシュは答えた。「彼らをギデオンへ送って」

ケシュは私たちをギデオンへと導いた。ブラック・マーシュ中央部にある帝国の拠点である。彼女はここにより開放的で活気のある、「近代的な」アルゴニアン社会を築こうと決心していたのだ。ケシュは旅の途中で私たちに計画を説明した。まずは私たちがモロウウィンドとスカイリムにいる間に学び、発見したことをギデオンに持ち込み、それから古代アルゴニアン文明の秘密を再発見するための冒険を開始する。「私は自分の文化を変えたいわけじゃない」とケシュは誓った。「私は文化を強化して、大昔に持っていた、失われた栄光を取り戻したいの」

故郷への旅路でケシュが説明した全てのことに皆が同意していたわけではないが、私たちは黒きヒレを信じていた。もし彼女が頼めば、私たちはオブリビオンまでもついて行っただろう。だから彼女が民のために抱いていた夢の実現を手伝うのは、それほど突飛なことではなかった。

私たちがブラック・マーシュの国境に近づくにつれ、シークハット・ゾルにいたただのサクスリールが頼れるアルゴニアンへ成長するこの物語も終わりを迎える。これから先また書くかもしれないが、ギデオンに移住したら私の自由な時間は、暑い日の小さな水たまりのように蒸発すると思う。もし、あなたが私たちの麗しき街に来ることがあれば、立ち寄って声をかけてほしい。私たちは全ての訪問者を歓迎する。アルゴニアンも、肌の乾いた者たちも同様に!

黒きヒレ:外国での冒険、パート1The Black Fin: Foreign Adventures, Part 1

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

私は最初、偉大なる黒きヒレのケシュに仕える単なるカーだった。サクスリールの言葉で、カーとは見習いのような意味だが、ノルドやダークエルフの見習いが持つ責任や義務は必ずしも伴わない。後になってケシュが私たちの同盟者の風習を取り入れ始めてから、私は黒きヒレの従者と呼ばれるようになった。ピーク・エリールが軍団を去ると決めた時、私は偉大なるケシュの人生に起こった重要な出来事を記録する義務も引き継いだ。理解してほしいのは、これはカーとしての役割に付随する義務ではないということだ。これはピーク・エリール本人から私に伝えられた義務であり、ケシュは表立ってこのことを知らない。私はこの義務を進んで引き受けた。

では、どこから始めよう?同盟が形を成し始めた日からにしようと思う。3つの国(私は自分の民を1つの国と呼ぶのは難しいと思うが、ノルドやダークエルフにとってはこの呼び方の方がいいらしい)は戦場で出会い、協力してついに侵略するアカヴィリを打ち破った。アカヴィリはウィンドヘルムを陥落させた後、注意を南東へ向け、モロウウィンドへ進軍を開始した。アカヴィリの侵略軍がモロウウィンドへの道を切り開くと、トリビュナルのアルマレクシアに率いられたダークエルフ軍が、侵攻を止めるための防衛線を張った。その間、ジョルンとノルドたちは自らの軍勢を集結させ、アカヴィリに背後から追いついた。アカヴィリは2つの強力な軍団の挟み撃ちに遭ったが、それでも挟撃を持ちこたえた。そのままならアカヴィリが勝利していたかもしれないが、それは私の推測に過ぎない。いずれにせよ、それを確かめる機会はなかった。

サクスリール・シェルバックと沼の戦士たちで構成されたケシュの歩兵部隊がアカヴィリを南から襲い、侵略を終わらせる貢献をもたらしたのだ。ブラック・マーシュにおけるダークエルフの奴隷商人との戦いで経験を積んだ私たちの兵士は、侵略者を圧倒するために必要な切り札だった。私たちは全力でアカヴィリに襲いかかった。ケシュは友人のジョルンを手助けすることを望んでいたが、軍団を沼からモロウウィンドの中心部まで進軍させることには、先を見据えた動機もあった。彼女は他の国にサクスリール、すなわちアルゴニアンの価値と誠実さを認めてもらいたかったのだ。私たちは原始的な蛮族ではなく、奴隷でもない。私たちは他の民と同等であり、彼らを侵略者から守るためにいるのだと。

勝因が全てケシュ軍団の参戦のおかげであるとは言わないが、私たちも役割を果たしたのは確かだ。私たちは猛々しいノルドと狡猾なダークエルフについて勇敢に戦い、一歩前進するたびにアカヴィリの兵士たちを殺戮していった。エボンハートの街付近でようやく戦闘が終結し、勝利を手にすると、ケシュは他2つの陣営のリーダーに急いで会いに行った。私は忠実な従者として彼女に従った。

あれほど多くの強大で重要な人物たちが一堂に会したのは見たことがない!ノルドの吟遊詩人ジョルンについての物語は聞いていたが、本当にあれほど大柄だとは想像もしていなかった!そして、ダークエルフたちが神と崇拝するアルマレクシアは冷たく美しかった。鱗も尻尾もないエルフにしては、だが。ジョルンが歩み出て、ケシュに旧友として挨拶をした。「俺たちは大きな借りを作ったな、黒きヒレよ」とジョルンはその大きく響く声で言った。「今日、お前たちのかけがえのない支援への感謝として、ノルドとダークエルフは何を提供できる?」

ケシュは長い間沈黙していた。まずはジョルンに熱意のこもった視線を向け、次いでアルマレクシアに注意を移した。モロウウィンドの母へ目を向けたまま、ケシュはついに返答した。「アルゴニアンの奴隷をなくすこと。私の民を解放してほしい」

アルマレクシアとジョルンは視線を交わした。大柄なノルドの視線は全くぶれなかった。少し経って、ダークエルフのリーダーは軽くうなずいて言った。「理にかなった要求です。ダークエルフはその願いを尊重しましょう。ただし条件が一つあります。アルゴニアンはダークエルフ、ノルドと共に、相互の協力と防衛の条約に加わらなければなりません。そうすれば、我々三国の全員が自由でいられるでしょう」

こうして、次の日まで続く一連の交渉が始まり、それはエボンハート・パクトの形成という結果になった。ケシュは自らの戦力を北方に留め、新たな同盟者たちの防衛を補強することに同意したが、その前にストームホールドへ伝令を送り、私たちの民に知らせを伝えた。奴隷制は廃止され、アルゴニアンは今やノルドおよびダークエルフの同盟者となった。私たちは政府を持たない。少なくとも私たちの新たな同盟者たちのような政府は持っていないため、ケシュはノルドとダークエルフの領地に残ってサクスリールの地位を確立し、様々な合意が正しく適用されることを確かめることを決断した。その間、彼女はゾシンをブラック・マーシュに送り、同盟の首都で大使となる者を探させた。

このようにして、アルゴニアンはエボンハート・パクトに加入した。

黒きヒレ:外国での冒険、パート2The Black Fin: Foreign Adventures, Part 2

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

エボンハート・パクト結成と、アルゴニアン奴隷の廃止宣言は、ダークエルフ奴隷商人の活動全てを即座に停止させる結果にはならなかった。ダークエルフの領土や支配地の大部分がトリビュナルの命令に従うまでにはほぼ1年を要し、その後でさえ、新たな協定を受け入れようとしないダークエルフの名家が存在した。その結果、ケシュとその黒きヒレ軍団が同盟のアルゴニアン代表としてモロウウィンドの地を巡回した際に、居心地の悪い状況もいくつか生じることになった。

同盟の初期には、恐怖や憎悪の出迎えを受けることが少なくなかった。ダークエルフたちの中には、重武装のアルゴニアン勢力が自分たちの街や村に接近することを不快に思う者もいた。そうした場合、追い返されるのはまだいいほうで、集落でかなりの規模の自警団から襲撃を受けることもあった。だがエボンハートの戦いの話を知って私たちの協力に感謝し、喜んで家に迎えてくれる者もあった。今ではこのように扱われることの方が遥かに多くなったが、当時はほとんど聞いたこともないような待遇であり、私たちは友好的な人々に会うたびに驚き、感謝した。

私たちは同盟の最初の1年をダークエルフの領土で過ごし、私たちの存在を周知させると共に、協定の条約が全て守られていることを確かめた。私たちはまた、新たに解放されたアルゴニアンたちを数多く受け入れ、ブラック・マーシュに戻らないと決めた者、あるいはモロウウィンドで自由なサクスリールとして生きていく意志のある者に、当面の目標と所属する集団を与えた。このようにして、黒きヒレ軍団はモロウウィンドを旅する間にその数を増していったのである。

そのうち、私たちはトリビュナルの客人としてモーンホールドに到着した。私たちは1ヶ月近くも街の外に野営し、アルマレクシアやその他重要なダークエルフおよびノルドの高官と定期的に会合した。ケシュはパクトの防衛を強化するため「同盟軍」を形成する議論に参加した。これは同盟に参加する民のそれぞれから派遣される勢力を含むという話だった。私たちは目的を探していたため、ケシュは黒きヒレ軍団が新設される同盟軍の中心となることを申し出たのだった。時と共に、ケシュは戦争の英雄のみならず、パクトの勢力を率いる将軍たちの筆頭格になった。

最初の1年が終わる前に、ケシュと黒きヒレ軍団は再び窮地を救うことによって、パクトに対して自らの価値を証明した。今度は西の山脈を越えてやってきた略奪者への対処だった。流布していた噂によれば、略奪者たちはダガーフォール・カバナントからの資金提供を受けているか、あるいは偽装したカバナント兵士であるとのことだったが、証明はできなかった。大規模な略奪者の部隊がモロウウィンド西のダークエルフ集落を襲っているという報告がモーンホールドに届くと、ケシュはパクトの軍を連れ、追跡のための遠征に出ることを提案した。

ケシュの勢力は大部分が黒きヒレの軍団で構成されていたが、ノルド兵の分隊とダークエルフ魔術師、治癒師の中隊で補強されていた。私たちは素早く移動して略奪者たちによって残された破壊の跡を追い、インドラノ街道でついに彼らの姿を捉えた。ケシュは勢力を分け、分隊の半分で山脈への逃走経路を塞ぎ、残りの兵たちは矢の型の陣形を組んで略奪者の位置に進撃した。略奪者たちは守りを固めず、方向転換して逃げ出した。そこへ私たちの兵が岩だらけの丘から飛び出し、略奪者たちを挟み撃ちにした。あれだけの被害を引き起こしたにしては、あっけない最後だった。

黒きヒレ:外国での冒険、パート3The Black Fin: Foreign Adventures, Part 3

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

エボンハート・パクトが結成されて2年目に入って久しい頃、ケシュと黒きヒレ軍団(パクト軍の一部としてモロウウィンドに残してきた兵たちを除く)はノルドの地であるスカイリムを巡っていた。ノルドの領地に足を踏み入れて最初に逗留した地はリフテンの街で、私たちはそこで典型的なノルド式の祝賀で迎えられた。大量の食事とハチミツ酒、そして寒い地方ではおなじみの余暇であるらしい、和気あいあいとした乱闘の催しがあった。そこにいる間、私たちは街の防衛の一部の強化を手伝ったが、これは訪問中に可能な限りの支援を提供する意思があることを示すために、ケシュが私たちの行く場所全てで実施するよう強調した行為だった。

リフテンで1週間以上過ごした後、私たちは北へ向かってイーストマーチを通り、ウィンドヘルムの街でケシュとジョルンが再会した。彼は今や、スカルド王ジョルンだった。信じられるだろうか!どうやらこのノルドは王子か何かだったようで、今ではノルド全体のリーダーなのだ!そしてウィンドヘルムはなんという街だろう!大きく、モーンホールドとは違った形で、しかし同じくらい印象深い。だがダークエルフの大都市がその民を反映していたのと同様、ウィンドヘルムも明らかに、否定しがたくノルドを反映していた。アカヴィリの攻囲で受けた被害の修復はまだ続いていたが、それはノルドの街の圧倒的な雄大さを少しも損なうものではなかった。

ジョルンは門のところで私たちを迎え、ケシュを豪快に抱きしめた後で、私たち全員に向かって、彼の故郷である街の歓待を楽しむよう告げた。祝賀は1週間と1日も続いた!ノルドがパーティー好きなのは間違いなく、あらゆる口実を設けてパーティーを開くようだ。祝賀の間、私たちはノルドが作る最高のハチミツ酒とエール、ウサギのミートボールなどの素晴らしい珍味でもてなされ、それに私がこれまで聞いた中で最も下品な歌が加わった。全てが凄まじい大声で歌われ、グラスやジョッキを打ち合わせる音が乱舞するのだった。

ハチミツ酒の樽がついに空になり、ウサギのミートボールが食べ尽くされると、祝賀は突然お開きとなった。そして仕事が始まった。私たちは1ヶ月の大部分の間ウィンドヘルムに留まり、街の外壁の修理を手伝い、ノルドが安心して手伝わせてくれる他の支援を何でも行った。そしてケシュとスカルド王は、時間がある時にいつでも隅に引っ込んで、様々な話題について長時間話し合った。そうした話し合いには誰も加わることを許されなかったが、二人はリーダーシップや同盟、私たちの民の未来についての考えを交換していたのだと思う。

私たちが知らされたのは、黒きヒレ軍団もまた、スカイリムで終結を迎えることだった。私たちの兵士たちは小さなチームに分けられ、民族混合のパクト兵士として仕えるために派遣され、ノルドやダークエルフたちと共に同じ部隊で戦うことになった。私はもちろんケシュの下に留まった。そして私はスカルド王が、彼女に特別の名誉を授けたところに居合わせた。「黒きヒレよ、お前にスカイリムのパクト勢力を指揮してもらいたい」とジョルンは宣言した。「この任務を引き受けてくれるか?」当然のこととして、ケシュは同意した。そしてその後7年間の彼女の努力を通じて、パクト軍の戦略戦術は発展し、確立された。

三旗戦役が始まった時、パクトに備えができていたのはそのためだった。

黒きヒレ:外国での冒険、パート4The Black Fin: Foreign Adventures, Part 4

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

ケシュ将軍によるエボンハート・パクト同盟勢力の構築と改善が続けられているさなか、黒きヒレはスカルド王ジョルンからの召喚状を受け取った。私たちはリフテン付近で連合部隊と訓練を行っていたが、そこへ伝令が封蝋のされた手紙を持ってやって来た。2日後、イーストマーチのアモル砦で会合が開かれる。ケシュはすぐに出発する準備を整えた。

黒きヒレのケシュは軽装で素早く移動することに決め、小規模の分隊だけを連れてスカルド王に会いに行った。私は当然将軍に同行したが、その他にはティー・ワン、ゾシン、ノルドの戦士コラ・グレートストームがいた。ヴォス・フルクは兵を指揮し、訓練を続けるために残った。私たちの小集団がアモル砦に近づくと、砦の外のかなり離れたところで迎えられ、主要な道を迂回して街へ出入りする隠し通路へと導かれた。私たちは急いで首長の館へと案内され、広大な敷地の中にある秘密の会議室へと連れられた。大型のテーブルの後ろに立っていたのは、スカルド王ジョルンだった。

私はすぐに、前回ジョルンに会った時とは何かが大きく違うことを感じた。まず、彼は突進してケシュを激しく抱きしめなかったし、いつものように大声で話さなかった。王冠の重みが元吟遊詩人の支配者を圧迫していたのかもしれないが、彼は私がこれまで見たことがないほど深刻で真剣なように見えた。「トリビュナルが危険な警告を送ってきたんだ、黒きヒレよ」とジョルンは口を開いた。「アルマレクシアが幻視を見た。あるいはヴィベクだったか?誰にも分からん。とにかく、彼らはエボンハート・パクトに対する脅威が育ちつつあり、我々が準備を整えるべきだと警告している。だから、今お前がやっている努力を3倍にして、戦争に備えなければならない」

新たな戦争準備の任は3人の将軍の手に与えられた。パクトの民から1人ずつだ。ケシュがアルゴニアンを代表し、コラ・グレートストームがノルドを、そしてイェベス・ノラミルがダークエルフを代表した。この3人の将軍は協力してこの後数年間、パクトの攻撃と防衛能力を強化し、準備を整えることになった。黒きヒレがすでに始めていた準備のおかげで基礎は確立されていたため、比較的短期間で武装を整え、次の段階に到達できた。私たちが首長の館にある隠し部屋を去る前、ジョルンはケシュに最後の知恵を授けた。「平和は脆く、貴重なものだ」とスカルド王はうんざりしたような声で言った。「平和な時間を大切に過ごせ。決して長続きすることはないのだから」

それからの2年間、拡大するパクト軍はいくつかの小さな試練に出会った。その中には帝国軍やダガーフォールの兵との小競り合いも含まれ、パクト軍は見事に任務を果たした。多くの意味において、こうした小規模の戦いが三旗戦役を導いた。それぞれ異なる3つの同盟がついに互いに対して戦争を布告すると、ケシュはパクト軍を率いて戦場へと向かった。シロディールの地は戦場となり、戦争の音は全土に響いた。

1年の大半の間、ケシュ将軍とパクト軍は領土を奪い取っては失い、再び取り返した。戦争は続いたので私たちは勝利できたわけでなかったが、多くの重要な戦いには勝ち、カバナントとドミニオンを悔しがらせた。そして、権力と人気の絶頂にあった時、黒きヒレは私たち全員を驚愕させる決断を下した。「私たちはパクトのためにできることを全てやった」とケシュは説明した。「もう故郷へ帰る時だ」

こうして、黒きヒレの外国での冒険は突如終わりを告げたのだった。

根の子供たちChildren of the Root

[注:別途言及がない限り、調査員ソリス・アデュロがアジ・コストリール族の口承から収集したもの]

最初は大きな根、アタクしかいなかった。自分のことしか知らなかったので、全てのものになろうとした。無を自分で埋めようとして、どんどん大きくなった。大きくなるにつれて新しい根が作られ、そうした根は名前を持ち、自分たちが育つ空間を欲しがった。

そしてアタクは自分以外のものの存在を知った。アタクと似ていたが、別の道を進んでいた。彼らはおかしな新しいものを見て作ったが、長続きせずに変化を起こすだけだった。

アタクは大きくなり続け、ある時、無から何かが戻ってきた。それは根のようだったが、鱗と目と口があった。アタクに対し、それは自分がコタであり、自分も大きくなり続けてきたことを伝えた。口ができたので、空腹だった。

アタクはコタにふさわしい名前をつけた。蛇だ!アタクは蛇の目に根を通した。しかしコタは根のアタクと同様に古くて強く、遠くへ行っている間に牙を生やしていた。蛇はアタクにかみついた。彼らは互いに巻きつき合った。そうして苦しむ中で、新しいことが起きた。アタクは空腹を含めてコタが学んだことを学び、そしてコタにかみつき返した。彼らは長い間食べて暴れ、やがて一つになって争いを忘れた。

彼らは脱皮して根を断ち、自らをアタコタと呼び、「おそらく」と言った。

アタコタがそう言った時、脱皮した皮は己のことを知った。そして断たれた根を食べ、死んではいたが、影のようにアタコタの後をついていった。

アタコタが暴れ続ける間、それぞれの鱗はアタコタがむさぼった世界だった。しかしアタコタはもう争っておらず、物事には始まりと終わりの時があった。影はそうしたものを食べられたらいいのにと願ったが、その腹は大きくなる根で一杯だった。

影は耐えきれなくなると、アタコタのそばへ泳いでいき、根を吐き出した。そして腹が空になったので、影は危うく目に映るものを全て食べそうになった。しかし、ずっと腹に入れていた根のことは自分の一部として感じるようになっていたので、秘密を教えてから眠りについた。

根は他の者を見つけ、影の腹の中で生き延びたこと、そこでもまだ大きくなれたことを話した。その知識を他の者と分け合った時、それは根を変え、新しい姿になって新しい名前を持った。

一部の霊魂は自分たちが選んだ名前と姿を維持したがったが、影を通して学んだことは霊魂の中にもあり、一時的な存在でしかなかった。空腹と争いを学び、変化を恐れ、それを死と呼んだ。

霊魂たちは怒って恐れていたが、根は霊魂に、アタクが無から道を作った時の場所の間にある道を教えた。その川の道を使えば死から隠れることができた。

霊魂たちは満足して、自分たちと似たような姿のものを作るようになり、愛を与えた。彼らはアタコタと同じくらいの大きさになるまで成長し続け、それが自分たちより先に存在したことを忘れ、眠っている影がいることを忘れた。

やがて、世界は大きくなりすぎ、空きがなくなった。再び、霊魂は根の所に行ってもっと欲しいと頼んだ。しかし根は自分たちが作ったものに満足して眠っており、何度も変化したので大きくなる必要もなかった。

霊魂は次第に腹を空かせて我慢できなくなり、アタコタの皮を引き裂いてその血を飲んだ。アタコタが壊れるまで食べたので、アタクは大きくなることを思い出し、コタは無でいることを思い出した。再び争いが起こり、アタクとコタは霊魂から死について学んだので、暴力、血、樹液が発生した。

そんな大混乱の中で霊魂は途方に暮れておびえ、他の者や互いを食べるようになった。血と樹液を飲み、鱗と毒牙と翼を生やした。そうした霊魂は、食べる以外に作る理由を忘れた。

一方で、まだ元の自分たちと自分たちが作ったものに執着する霊魂もいた。ある森の霊魂は、根が彼女のように子供を愛しているのを見て、歩くことと話すことを教えた。根は言葉を使って彼女に秘密を教え、彼女は歌を歌って返した。それを聞いた根は目を覚まし、森に加わった。

根はコタの血が海を作り、アタクの樹液が石を作るのを目にした。そうした霊魂は影のことを知らなかった。根はそれが意味することを知っており、影に子供たちを守るように頼んだ。

影は目を覚ました。コタとアタクを見て、無がどれほど変わったか、どれほど以前と同じになっているかを目にした。自分がアタコタの皮だったことを思い出し、コタとアタクより自分の方が大きいので、両方とも食べてしまうことに決めた。

そして食べた。影は蛇と根を食べ、樹液と石、血の海、そして全ての霊魂を食べた。子供である根のことを思い出す前に全てを食べてしまったので、それを探すため、自分に目を向けた。

影がそれを見た時、自分よりも先に何かの皮が存在したこと、その後に生まれたものを食べてしまったこと、それは来るべき終わりを意味することを思い出した。

そこで影は脱皮した。たったそれだけではあったが、根を覆う布のように落ち、秘密の中で守ってやることを約束した。

最後の軍団兵のメモNote from the Last Legionnaire

私は帝国第九軍団の最後の生き残りかもしれない。少なくとも、私が知る限り最後の生き残りだ。

私は多少呪文を唱えられる。それでここまで生き残れたのかもしれない。それよりも大事なのは、私はアルケインの訓練を受けたおかげで、我々を壊滅させたあの生物を理解できるかもしれないことだ。あの裏切り者のアルゴニアンはボリプラムスと呼んでいたが、奴は我々が洞窟の外で遭遇した検体のどれとも違っていた。こいつはずっと強大で大きく、耐久力も高い。ジン・ラジュルはウジュカと呼んだが、奴はあの生物に我々を食わせるため、わざとここに導いたのだ!

机か、祭壇のようなものがある。おそらくこれがウジュカを止める秘密を隠していると思う。それさえ分かれば…

まずい!あの生物は自分の一部を私に送ってきた…

死の狩りが待っているDeath-Hunts Await

オジェル。この季節はズル・モタスが溢れていて、死の狩りに向いている。ズル・モタスは我々の戦士たちが狩り尽くす前に、蔓を枯らしてしまう。我々ナガ・クルは、よそ者の中に参加する勇者を求める。

死を恐れないなら、リルモスでボルが待っている。

沼クラゲの世話と餌やりCare and Feeding of Swamp Jellies

黒親指のアグリンドール 著

ハイホー!もし最近沼クラゲを所有したなら、あるいは所有しようと考えてるなら、ここに来たのは正解だ!この小さいラッパ吹きたちは、沼を旅する者にとっては願ってもない最上級の相棒だ。家畜を飼うつもりだったら、世話をするのも簡単だ。

ひょっとしたらもう沼クラゲについて多少はご存知なのかもしれないが、抜けた部分を埋めるために基本から見直そうじゃないか?

生息地:
沼クラゲはブラック・マーシュ固有の野生生物の一種だ。彼らは海岸に近い湿地帯を好む。彼らが海にいるクラゲの遠い親戚である可能性は極めて高い。だが、沼クラゲはいかなる湿った環境でも健康に育てる。必要があれば、汗ばんだブーツの中だって大丈夫だ。

体の構造:
他のクラゲと同じく、彼らには骨も固体化した部分もない。ただ、弾性のある、ゼリー状の体と肢があるだけだ。それ以外の大きさ、形状、色などは種類によって大幅に異なる。マークマイアで見られるもっとも一般的なクラゲは、ひだのある球状の体を持ち、そこから4本の触手がぶら下がっている。これらの触手はクラゲが込み合った場所を移動し、獲物を捕らえるのに役立つが、ほとんどのクラゲの動きは、いくつかの浮き袋に沼のガスを吸い込んで吐き出す小さな開口部が制御している。どうやって沼クラゲが浮くようになったのか確かなことは分からないが、私の理論は海のクラゲが嵐で内陸に運ばれ、沼地の水溜まりで生き延びたというものだ。最終的に、彼らの浮袋は浮き上がって水から立ち去るため、十分な沼のガスを溜め込んだんだ!

習性:
沼クラゲは生来信じられないほどおとなしく、ほとんどの時間を静かにそよ風にのって漂い、何も知らない虫を捕らえて食べている。沼クラゲは単独で生活する傾向があり、たくさん集まるのは産卵の時だけだが、社会的な動物だ。この小さなラッパ吹きはガスの浮袋を使って、複雑な鳴き声でお互いを呼びあう。1匹面倒を見れば、実にお喋りなことが分かるだろう。そしてその鳴き声を少し学べば、沼クラゲに簡単な指示を送ることもできる!これは愛好家にも飼育者にも、とても役に立つ技術だ。

餌:
浮揚する沼クラゲはもっぱら空を飛ぶ種類の虫を食料とするが、彼らの粘つく触手にぶつかるあらゆる小さな生き物が恰好の餌食となる。私は1日に千匹もの虫を食べる沼クラゲを見たことがある。それだけでもブラック・マーシュのような場所で沼クラゲを仲間にする理由には十分だ。少なくとも週に3回は、違う場所で群れを放牧するようお勧めする。1ヶ所にクラゲたちを長く置きすぎると、ほんの数日でその土地の土着の昆虫を消し去ってしまう!虫を切らしてしまった場合は、愛情のこもったスプーン1杯のスクリブのゼリーが適切な代用品になる。

世話:
沼クラゲは生きるために湿気を必要とする。もし服が体に張り付かないなら、それは恐らくクラゲにとって、何の手助けもなしに数時間以上過ごすには乾燥しすぎている。沼クラゲは飲むことを必要としないが、空気中から必要な水分を得られない場合は、ボウルや口の広い器から水を吸い上げられる。理想は汽水だが、淡水でも海水でも問題ない。

特定の時間に限って餌を与えるよりも、可能であれば1日中、安定して虫を供給したほうが良い。飢えた沼クラゲは大食いをする傾向にあり、体が重くなって不活発になる。

沼クラゲが怪我をしたとしても、心配しないように。彼らは切り傷を修復するし、時間をかければ肢の再生さえする。沼クラゲが浮かび続けようとしてもがいていないかだけ気を配れば良い。その哀れなラッパ吹きには、浮袋にガスを溜められるようになるまで、手で餌を与える必要があるだろう。

例え私の助言を肝に銘じたとしても、遅かれ早かれ、小さなラッパ吹きたちとはお別れをしなければならない。野生の沼クラゲは傾向として2年から3年の寿命だが、家畜化された沼クラゲは、きちんと世話をすれば5年生きられる。

食べる時の準備:
ペットとして飼っているのであれ、食肉とするために飼育しているのであれ、彼らの小さなゼリー状の体を無駄にしないためには、入念な解体処理が重要だ。沼クラゲを触る前には、手に食用油を塗ったほうが良い。そうしないと指に張り付いてしまい、手を自由にしようとして彼らをバラバラに引き裂く可能性がある。ほとんどの場合は身から触手を取り外し、後で使うために取っていたほうが良いだろう。彼らをまな板の上に真っ直ぐに置き、横に切る。肢を除去したら、身の真ん中で切り分ける。大包丁で強く押すことを推奨するが、鋭いものなら何でも良い。気を付けないとクラゲと手とナイフが油に塗れ、指のサンドイッチが出来上がる!

身の部分の空洞を洗ったら、クラゲを直火かオーブンで焼く準備は完了だ。赤くなった炭の上で、クラゲの身は少し硬くなり、外側が少々カリッとする。通常、私は触手を身の中に入れて調理し、チキンスープと共に音をたてて飲み干すが、串に刺して10分ほど焼き、塩味のおやつにするのもいい。体重に気を使っているなら、沼クラゲはレシピにある脳ミソやスクリブのゼリーの良い代用品になる。

クラゲの捕獲:
もし野生のクラゲを手懐けるつもりなら、上質の網を手に入れよう。一番いいのは虫取り網だ。クラゲを網で優しくすくい取れば終わりだ。ほとんどの沼クラゲは無害だし、抵抗すらしない。ディープマイアには僅かだが、触手に軽く触れただけで死に至るようなとても強い毒を持つ品種がいるが、それについては心配しなくてもいい。

沼クラゲの捕獲と世話について知るべきことは、本当にこれで全部だ。他のことは全部、クラゲケーキに乗っているジャムみたいなものだ!

沼のマイアゴーントMiregaunts of the Marsh

ブラック・マーシュ探検協会、クラティアス・グレイ

ブラック・マーシュ探検協会は、厳しい沼地の奥で生き残れる勇敢で丈夫な体を持つ冒険家を支援することにおいて、長く立派な歴史を持つ協会である。冒険家は力強く、有能で、広大な沼地と踏み込むことのできない熱帯雨林につきものである、数多くの謎を解明できなくてはならない。例えば、マイアゴーントの謎がそうだ。歩き回る沼の怪物に対面する時には、堅い決心と冷静な頭が必要とされる。

マイアゴーントはマークマイアへ訪れても決して見かけないというほど希少なものではないが、探検を継続的に危険にさらされるほど多くいるものでもない。とはいえ、私たちが探検したい場所の付近に集まっている傾向はある。こうした大きく、歩く沼の怪物は何となく人間のような形をしているように見えるが、頭部は認められない。主に植物から成り、他にも泥、石、蔓、さらには古代建築物の欠片といった物質まで取り込んでいる。

このおかしな獣の生態について、協会には手掛かりがないままだ。タムリエルの他の地域にいるラーチャーや類似の獣の一面と似ている部分もわずかにあるが、他の面においてはまったく独特な生物に見える。地元の伝説はマイアゴーントをヒストの木と関連付けているが、その説明は理解しにくいと言わざるを得ない。一部の部族はヒストの木が沼の一部を呼び起こして、地域の保護、場所の防衛、または何らかの形でヒストを傷つけ、邪魔をした者や物に報復をする特定の仕事をさせると信じている。他の者は、マイアゴーントが故意に生まれたのではなく、ヒストの未知の活動による副産物であり、誤って呼び起こされて、特別な目的もなく放たれたとしているようだ。正直言って、私が聞いた話は腹立たしいほど矛盾している!

ある程度の確信を持って言えることは、全てのマイアゴーントの中に大きな空洞があることだ。遭遇したマイアゴーントの空洞が空である時もあれば、何でもない石やその他の破片が空洞を埋めている時もある。まれに価値の高いものがマイアゴーントの中に入っている。例えば宝石、古代の遺物、もしくは生物だ。地元のアルゴニアンは、そうした貴重なものが守るか捕まえるため、故意にマイアゴーントへ取り込まれたと信じている。非現実的なのは承知だが、それが部族の信じていることだ。

真実が何であれ、探検隊がマイアゴーントに遭遇した場合は、協会が勧める行動を取ってもらいたい。逃げるのだ。

食の旅、第1巻A Culinary Adventure, Volume 1

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

私はついに、緑豊かなブラック・マーシュの沼地に辿りついた!私は常々、本場のアルゴニアン料理を味わう機会を求めてきた。そして今ようやく、念願の瞬間が訪れたのだ!まずは地元の珍味から始めることにした。ナメクジである。

上等なアルゴニアン料理の全てがそうであるように、ナメクジも多くの場合は生で、ソルトメドウの葉の小枝を添えて出される。私は今回の訪問中、3種類しか味わうことができなかった。シェフの訛りは非常にきつかったが、メニューの制限は季節と関係しているのだと思う。沼の季節は風のように素早く移り変わることを私は知った。だから数日後にはまったく異なるメニューから選べるかもしれない。今日食べたものと同じくらい、味わい深ければいいのだが!

ビアーデッド・ブルー
この藍色の美しい生き物はツォフィア洞窟周辺の沼でよく見られる。大まかに言ってノルドの親指くらいのサイズで、長い目の茎状部の下に、毛むくじゃらの触手を生やしている。このナメクジには繊細な香気があるが、さわやかな柑橘系の風味を基調に秘めている。触手の多さゆえにビアーデッド・ブルーには独特の食感があり、その点が少々気になるかもしれない(特に生で食した場合)。しかしその味は端的に言って最高だ。風味としては、噛んだ時に強く柑橘系の香りを感じるが、その奥にはかすかな土っぽさが隠されており、大地を感じさせる。かなりのご馳走だ!

ブラックバンド・スライダー
ブラックバンド・スライダーはこの地方の特産品だ。蒸してからゾウムシの幼虫とオレンジグラスの上に乗せて食べることが多いが、私は生で食すことを強く勧める。このナメクジは刺激されると苦味のある黒い油を分泌するが、それをさっとふき取れば、青白くなめらかな膜の表面に横長の黒い斑点がついた、長い胴体があらわになる。洗った後でもブラックバンド・スライダーは硬く、苦味もあるが、これを我慢すればさわやかで繊細な後味に辿り着く。アルゴニアンはこれを楽しむらしい。基本的には威圧的な食べ物だが、そこに花が咲いたようなまろやかさがあるのだ。

キング・イエロー
キング・イエローがこの時期に食べられると知って喜んだ。これは実に巨大な生物だ。ほぼ私の前腕くらい長く、それが肉々しい、波打つ毛の森で覆われている!アルゴニアンの表情はいつも判別が難しいが、私が生で食べたいと言った時、シェフは非常に驚いたと思う。彼はこの獣をワッソーナッツの葉にくるみ、藍色ユリを添えて出した。私はすぐさまその苔っぽい、草のような豊かな香りに驚かされた。この獣が分泌する粘液の中に、ブラック・マーシュの全ての匂いが感じられると言ってもいい。一口味わうたびに新しい、驚異的な風味の波が押し寄せた。尻尾の肉の複雑で風味豊かな味わいは、次第にコクのある、脂っぽい苦味の膜へと進む。そして最後に、私は頭へと辿りついた。この危険なほどの風味の噴出を上回るものは、ちょっと思いつかない!バターのような甘ったるさ、食べ終わる頃には乾いたマスタードのような味へと激しく移り変わる。感激だ!

私は重い心でテーブルを去った。おそらく次の季節までキング・イエローを味わうことはできないだろうと分かっていたからだ。だが、明日にはまた新しい、大いなる食の冒険が待ち受けていると知って気持ちが高まっている。今回はカブトムシの幼虫だ!待ちきれない!

食の旅、第2巻A Culinary Adventure, Volume 2

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

今日、マク・マカは彼の見事なイモムシ農園を案内してくれた。もちろん、「農園」というのは言葉のあやだ。この農園は小さな葦の囲いがいくつか並んでいるだけで、それぞれに数百匹のイモムシが住んでいる。その種類の多さには驚愕した。私が見たイモムシは長いのや太ったの、オレンジと紫の縞模様のなど…これほどの多様性は見たことがない!いくつか質問をしてみたが、マク・マカのシロディール語力が完全でないため、私たちのやり取りは何度も行き詰った。私は言葉の壁をどうにかするためジェルを学ぼうとしているのだが、なかなか上達しない。それでも、彼は助けようとしてくれる。笑えて仕方がないと彼に言われた。もちろん、アルゴニアン相手に笑われているかどうかを察するのは不可能である。

私はイモムシを食べるのかと聞いたが、面白がられたようだった。彼はただ首を振り、私をより大きな囲いの中へ案内した。彼がランプに火をともすと、部屋は様々な色で溢れかえった。大きな蝶や蛾が壁から一斉に飛び立ち、竜巻のように羽をはばたかせてランプの周囲を踊った。マク・マカは特に大きな個体のいくつかに向かって身振りをしながら、でたらめなシロディール語で長めに喋った。彼は囲いを去る前に、何羽か手に取ってみるよう私を促した。

蛾や蝶を食べるのは大変だったが、貴重な食の経験だった。この特産品を味わってみようという勇気のあるよそ者の大部分は、食べる前に羽を取ってしまう。マク・マカは羽を取ってあげようと申し出たが、私は断った。彼は助手に向かってジェルで何か言い、二人ともしばらくの間、微妙に楽しそうにしていた。これは多分、マク・マカが何かあり得ないくらい笑えることを言ったのだろう。その少し後、彼は私に5羽のグリーン・スリッパーテイルを伝統的な「アジュム」(網目模様の蓋がついた織物の盆)に乗せて出してくれた。大いに堪能できた!

真に満足のいく蝶の一皿は、「ルヒーズ」すなわち「羽畳み」の繊細な技法にかかっている。アルゴニアンの達人シェフはその爪を使って羽を折って畳み、極小ながらも華麗な、食べられる彫刻に変える。残念ながら地元の風習により、よそ者は自分で羽を畳むことになっている。私は最も簡単な「ジーチ」畳みを再現しようと努力したが、結果は悲惨なことになった。それでも、食事は美味だった。グリーン・スリッパーテイルはおそらく、スリッパーテイル種の中で最も甘味が強い。ハニーグラスのような味だが、甘くポロポロと口の中で溶ける。蝶の料理をマスターする機会が、もっとたくさん得られることを期待しよう!

食の旅、第3巻A Culinary Adventure, Volume 3

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

マク・マカはこの数日間、忙しく働いている。私が存在すら知らなかったある料理を準備しているのだ。実に素晴らしい!彼の助手が私に教えてくれたが、地元民はそれを「ナガーセー」と呼んでいるという。これは私が思うに「蛇の巻物」というような意味だろう。「蛇の靴下」といったほうがいいかもしれない。それについてはもう少し後で話そう。

料理はワッソイケガキヘビを捕まえることから始まる。どうやらマク・マカはある地元の蛇商人しか信用していないらしい。パクシットという名の、角ばった顔の狩人だ。パクシットと話していて分かったが、評判のいい蛇商人を選ぶのは、ナガーセーを作る際に決定的な重要性を持つようだ。というのも、ワッソイケガキヘビはアカマルキヘビとほとんど同じ見た目をしているからだ。前者を食べればお腹が満たされるが、後者を食べればテーブルから立ち上がる前に死ぬ。この話を聞いて私は嬉しくなった。私は危険な食べ物に目がないのだ!

シェフは蛇を手に入れたら、内臓を取り除く。この蛇の内臓は他のいくつかの料理に使用されるが、ナガーセーに必要なのは皮だけだ。中身を空にした皮に詰める食材は野生のマーシュ米、乾燥させたパースニップ、バークイヤーキノコのスライス、そして生きたネズミを1匹!パクシットが説明してくれたが、ナガーセーは特別な料理で、常に変化するそうだ。できたてを食べることにした者は新鮮な野菜の組み合わせと、身のしまった生きのいいネズミの肉を味わえる。しかし料理を数時間(あるいは数日)寝かせた者には、その忍耐に見合うだけのものが手に入る。寝かせれば、それだけネズミは太っていく。ネズミはかなり長い時間をかけて米とパースニップを食べ、最終的には死ぬ。ナガーセーは通常、約5日間かけて「熟す」のである。

この話を聞いていて、食べるのが待ちきれなくなってきた。私はほぼ2日間寝かせてある巻物を選んだ。皮の下から、まだかすかな鳴き声が聞こえている。最初の一口を食べる前に、もう少しだけ待とう!

食の旅、第4巻A Culinary Adventure, Volume 4

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

私はもう何日も、マク・マカに催促し続けている。私はアルゴニアン料理について測り知れないほど多くのことを学んだが、未だに味わっていない料理が1つある。アオジェー・サッカだ。私がこれを要請すると、マク・マカはいつも動揺して、別のものを出してくるのだった。彼の躊躇も分からないではない。アオジェー・サッカはタムリエル全土でも最も危険な料理の一つなのだ。

この料理は実のところ、同時に出される2つの料理から成っている。第一の料理は焼き目を付けてきれいにスライスしたアオジェーガエルで、シロップで覆ったイチジクとシナモングラスに乗せて出される。二つ目の料理は冷たいホッシュ(黒くドロドロしたスープ)だ。どちらの料理も、単独で食べることはできない。致死性の毒を含むからだ。これらはゆっくりと、かつ同時に食べなければならない。一方の毒は他方の解毒剤になるのだ。蛙を食べ過ぎると体が激しく震え、口から泡を吹き、その後死が訪れる。ホッシュを食べ過ぎると腸の焼けるような痛みと嘔吐に引き続き、死が訪れる。当然ながら、大抵の人はこの料理を避ける。シェフも客も同様だ。だが私の食欲には逆らえない!

マク・マカは、私の要請を少なくとも考慮してくれていると思う。少なからぬ額のゴールドを用意したし、半ダースもの蛇の皮で出来た文書にサインした(おそらく誓約書か何かの類だろう)。すでに蛙の味が感じられるくらいだ。我が食の冒険は完成しつつある!

* * *

この本を返そう、ラロームの友よ。他のものを調理しようとしたが、彼はアオジェー・サッカでないとダメだと主張した。調理したが、食べ方が違っていた。蛙を食べ過ぎた。彼が死んで残念だ。

よい生活を!私たちのところに食事に来てくれ!でも、アオジェー・サッカはダメだ。

—マク・マカ

深淵からの呼び声The Call Beyond

ソリス・アデュロによる翻訳

来るのだ子供たちよ、集まれ
太陽が沈みつつある
お前たちはもう眠れ
根を恐れることはない
私が留めておく
そしてお前たちが目覚めた時
私がしたことを思い出せ

甚だしき無駄So Much Wasted Potential

浅瀬に分け入っていったが、危険を冒す価値はあった。デッドウォーターは愚かな試練で自分たちの未来を潰しているが、他の部族たちは交配に熱心だ。集める機会が訪れたら、彼らの倒れた戦士たちを喜んでいただこう。

大半の部族は卵の盗難に対して備えがないが、ブラックトングとブライトスロートは例外だ。彼らは自分たちの卵をまばたきもせず見守っている。だが困難はあっても、どちらに関しても見込みは十分あると思う。

ブラックトングの卵用調合薬を直接盗むことはできていないが、観察から多くのことを学んだ。彼らの方法が卵の成長をどのように制限するか、試験を楽しみにしている。

もう数ヶ月の間見張っているブライトスロートに接近してみた。彼女の名はハクサラで、想像していたよりずっと純朴で信じやすい。絶望の臭いを辿れば、必ず機会に行きつくものだ。

ハクサラを説得して、部族の不要な卵を手に入れる手伝いをさせるのは難しいことではなかった。まだ分からないのは、あの愚か者が気づかれずに卵を奪えるかどうかだけだ。彼女が失敗すれば、大きな後退を強いられるだろう。

ヒストは我が道を祝福している。ハクサラはウクシスの卵を数回、問題なく盗むことに成功した。欠陥はあるにしても、興味深い検体だ。これらの卵の安定した供給が得られれば、私もよりリスクの大きい方法を取れるだろう

戦場からの手紙:ウィンドヘルムLetters from the War: Windhelm

シェイ・ハルへ

やあ、卵の姉妹。村の様子はどうだ?お前はまだ、テーバ・ハツェイのフィールドでは一番か?リーク・クースはまだマッドクラブを追うハジ・モタみたいに、お前に付きまとってるのか?本当に故郷が懐かしいよ!

この手紙はウィンドヘルムのコールドムーンという宿で書いている。雪はたくさんあるし、ここは容赦なく寒い。ノルドも物語で聞くとおりに大柄で、声もでかいぞ。だがそれでも、この場所には我々の愛するブラック・マーシュとは全く違う美しさと魅力がある。まだあちこちにアカヴィリの包囲の爪痕が見えるし、スカルド王の王宮は修理中で閉鎖されているが、人々は荒々しくて親切だ。サクスリールがあんな風になることはないだろうな。

お前だったら地元の魔術師ギルドのギルドホールを気に入っただろう。タムリエル中の魔術師が出席していて、その中には見物に来た兵士のために見事な手品を披露する小さなウッドエルフもいたよ。彼女は私の耳から金色の魚を取り出して見せたんだぞ!どうやったのかは分からないが、実にうまそうだった(ちなみに、そのことを言ったら彼女は恐れをなしたようだった。ウッドエルフってのは変わってるな)。

俺が一番気に入った場所は、鍛冶場のあるロングハウスだ。中はすごく暖かくて快適なんだ!建物の端は両方開かれているのに寒さを感じない。燃えている火がそれくらい熱いんだよ。

九つの塔に支えられた巨大な壁が、この街を囲んでいる。攻囲の時に壁の一部が破壊されたことは知っているが、今じゃその痕跡は見られない。九つの塔はスカイリムの九つの地を代表していて、このことはノルドが我々とほとんど同じくらい象徴に敬意を持っていることを示している。彼らはいくつもの祭りや祝賀で、壁の上に沿って大規模な競争をやるらしいんだが、俺がいる間にはそういう競技はなかった。

でもここにいる間、地元の珍味を一つ食べてみたよ。「ウサギのミートボール」と呼ばれているものだ。どうやら耳が長くて毛の生えた、小さなげっ歯類の肉を使っている。砕いて様々なハーブとスパイスを混ぜ、小さな球形にして、外はカリカリ、中は暖かく汁気たっぷりになるまで揚げるんだ。お前はこの描写を読んで、きっと気分が悪くなってるだろう。俺もそうだった。でも意外なことに味はよかったぞ。

次の手紙と一緒に送ろうかな。

ガム・ザウ

戦場からの手紙:シロディールLetters from the War: Cyrodiil

ああ、卵の母よ、会えなくて寂しい!

戦争は悲惨だ。悲惨でないなどという声に耳を傾けてはいけない。嵐の吹き荒れる湖に立って、暗い色のヒレが底から出てきて手足を噛みちぎるのを待っているみたいなものだ。僕たちは長いことじっと待ち、あらゆる方向から迫る脅威を心配しながら監視する。それから突進して敵とまみえ、しばらくの間は激しく戦い、守りの固い、比較的安全な場所に逃げ込む。それを何度も、何度も繰り返すんだよ!

今日、僕は大柄なノルドの女性(多分女性だったと思う。肌の乾いた者の性別は未だによく分からない)と、ダークエルフの魔闘士と共に戦った。どちらとも初対面だったが、パクト兵の少なくとも3部隊と、同数の敵が入り混じった突撃で混乱状態に陥った後、僕たちは気づいたら一緒にいた。他に頼れる相手もいなかったから、僕たちは一言も発することなく共に動き、敵軍の攻撃から身を守った。

僕たち3人は4倍の数の敵に圧倒されていた。どういうわけか、僕たちは2つの丘の間の岩だらけの地帯にいて、残りのパクト軍がどこにいるかすぐには分からなかった。戦いの音が付近の丘の向こうから響いてはいたが、誰がどこで戦っているのか正確に判別する方法はなかった。それに僕たちは、まだ目の前に敵を抱えていた。多分カバナントのオークだったと思うが、僕には未だにハイエルフと区別がつかない。

敵が何者だったにせよ、奴らは突進してきて僕たちの力量を測りに来た。僕たちは何度も押し返し、連中を次々に倒したが、こちらも切り傷や打撲をいくつも受けた。10分だったかもしれないし、10時間だったかもしれない。肩を寄せ合い、固まって敵の波を押し返しているうちに、時間は意味を失ってしまった。

ダークエルフの魔闘士の名前は結局分からずじまいだったが、彼は命の恩人だ。敵の数を減らしたので、相手の数は今や2倍程度になっていたが、そこで敵の魔術師が僕に炎の球を発射した。僕は2人の戦士と戦っていて、1人は剣を、もう1人は戦槌を持っていた。視界の端に明るい輝きを目にしてはいたが、炎の進路から逃れることは不可能だった。その時ダークエルフが僕と炎の間に飛び込んで攻撃を受けてくれたので、僕は目の前の戦士2人を倒すことができた。僕が駆けつけた時は、彼はすでに激しい熱と炎にやられていた。

こうなったらノルドと僕で残りの敵を片づけなければならない。最優先すべきことは、致命的な呪文を再び唱えられる前に妖術師を倒すことだった。そのためにノルドは最後の矢を魔術師の方へ放った。少なくとも2本は命中し、魔術師の胸に突き刺さった。これで3対2になった。残った敵は自信と戦いを続ける気力の双方を失ったようだった。彼らは背を向けて逃げようとしたが、そうはさせなかった。

さらに少し時間をかけて歩き回る必要があったけど、僕たちは結局、どちらも自分の部隊と再会できた。三つの種族の同盟がいかに大事か教えられたのは、あの日だったと思う。

オトゥミ・テイ

戦場からの手紙:ハチミツ酒!Letters from the War: Mead!

親愛なるティーワジへ

今日、素晴らしきウィンドヘルムの街からそれほど遠くないところにある酒蔵を訪ねたよ。そこはヴォルジャー醸造所と呼ばれていて、これまで私が喉に入れた中で最高の酒を造って出してくれるんだ。ハチミツ酒というらしいよ!ベースになる材料は何だと思う?発酵させたハチミツだ!そう、彼らは蜂が吐き出した蜜を使って作るんだよ!いや、つまりズーチのことさ。君の花の庭園をブンブン飛び回ってる、あの針を持つ昆虫だ。

とにかく、ノルドはこいつが大好きなんだ。だから私もここにいる間に味見してみようと思った。美味しかったよ!職人たちの誰かにレシピを教えてもらって、マークマイアに帰った時、自分で作れるようにしておくといいかもしれないな。

ただし、どうして彼らは自分の土地の前に、槍に刺したオークの頭を置いているのかよく分からない。ノルドの風習は、私にとって全く意味不明なものが多いんだ。

子供たちによろしく言っておいてくれ。

太陽を探す者

戦場からの手紙:モーンホールドLetters from the War: Mournhold

おお、偉大なるラジ・デーリスよ、ダークエルフの大いなる栄光の都市、モーンホールドの驚異をあなたに伝えさせてください!

私はモロウウィンドのデシャーン地域を担当するパクト兵団へ派遣されたのですが、最初の休暇の機会に、ダンマーの物語に伝えられるこの都市を探検しました。我々の村で育ったサクスリールの多くと同様、私はダークエルフの街で自分の民がいかに過酷に扱われているかについて、恐ろしい物語を聞いていました。私たちはもう友であり同盟者であるわけですが、私は奴隷や拷問器具で溢れているのをほとんど期待していたほどです。しかし、真実とはかけ離れていました。

大部分において、私が出会ったダークエルフたちは友好的と言ってもいいほど寛容でしたし、また市場では他の種族の人々を大量に見かけました。旅の間はノルドやウッドエルフ、インペリアルにブレトン、カジートやハイエルフにさえ会いました。それに市場で売られている品物の多様さといったら…理解が追い付かないほどでした!

トリビュナル聖堂は見ものでした!巨大で威圧的ですが、偉大なるヒストの木の影に立っているような神聖さも感じられました。自ら三大神を崇拝するようになったアルゴニアンにも会いました。彼との会話は興味深いものでしたが、血と肉で出来た存在を崇拝する気持ちは私にありません。ましてやダークエルフなんて!

それから、有名なダークエルフのコーナークラブを訪れる機会もありました。そこはフラミング・ニックスと呼ばれていて、大広間の中央にファイアピットがあるのが自慢のようです。酔った客たちが順番に飛び込み、熱い石炭に混じって踊るのです。白状すると私もやりました。実に愉快でした!もっとも、炎に踏み込む前にフリンの瓶を数本開けておけば、もっとよかったと思いますが。

近いうちにまた手紙を書きます!どうか、卵の一族に私からよろしくお伝えください!

あなたの最愛の生徒
ララ・ラー

太陽の祝福との調和In Accord With Those Sun-Blessed

ソリス・アデュロによる翻訳

我々は根の民である。そのことはこの世界において、他のあらゆる世界と同様に真実である。我々の根は影へと深く伸びていき、記憶の波を飲むが、我らの枝は空高く伸び、太陽の光を浴びている。我々は今、一つになり、そのぬくもりを鱗に感じなければならない。

偽の予言者は我らの兄弟の心を禁じられた嘘で変えてしまった。彼らは我々の目的を放棄した。我々の運命も。

私は皆に伝える。共に川を上ろう。彼らは海へ沈むに任せておくがよい。我々は栄光の階段を上り、太陽を割り開くのだ。

太陽の祝福の最後の願いThe Last Wish of the Sun-Blessed

ソリス・アデュロによる翻訳

光り輝く栄誉に浸りながらも
黄金と樹皮の肌の
我らは黄身に到達しなかった
今となっては手遅れだ

だが暗闇なき光は目を眩ます
影は常に我らを見ていると
それは今も我らのためここにいる、我らが願いさえすれば
返済の苦役は長いとしても

我ら黄金の鱗
我らは深奥の兄弟たちに加わらねばならぬ
どれほどのものを失おうとも

我らの根は忍耐強く
我らは再び立ち上がる
この世界か、それとも次の世界で

大いなる変身A Grand Transformation

木の番人フリーリイーク 著

変化を恐れてはいけないし、顔を背けてはいけない。そのことを私たちは分かっているし、常に胸の奥底で分かっていなくてはならない。時に、変化は外の力によって訪れる。季節の流れ、もしくは愛する者の死。私たち自身の内側から訪れる変化もある。古い自分を振り払い、新しい自分を受け入れる必要性だ。

自分を変える方法は、もちろんたくさんある。遠くの地へ行って、新しい文化と生活様式を取り入れる者もいる。新しい技術を学び、木工職人から戦士、仕立屋から卵の番人になることを選ぶ者もいる。しかしもっと大きな変化が必要だと感じる者もいて、ヒストの助けを必要とする。それは性別を変えることを選んだ者たちだ。

こうした個人の奥深くでは、この変化を行うことを求めるものがある。ヒストのおぼしめしなのか、各自の意思なのかは分からない。だが私はいつも心と手を開いて耳を傾け、こうした変身の時期を手助けする用意がある。一緒にヒストと語り合い、手助けを受ける準備をする。

儀式にはいつも息をのまされる。ヒストは部族を見守り、私たちの道を案内してくれているが、じかに何かをすることは滅多にない。しかしこの時には、ヒストと霊魂が結合し、愛に満ちた抱擁の後で大きな変化が起きる。

その後、私は変身したばかりの者を部族に改めて紹介する。彼らは全員に迎えられ、大切な者が去ってしまったことと、大切な者が訪れたことを祝って大きく祝福される。

調査報告書:ヴァロ・ホシディアスDossier: Varo Hosidias

インペリアルのヴァロ・ホシディアスに関する報告を以下に記す。年配の男だが、それにしてはずいぶんよく動き回る。ブラックガードには追加費用を支払ってもらいたい。

ヴァロ・ホシディアス:ファミア・メルシウスの仲間として知られ、歴史に関する彼女の慈善事業、シロディール・コレクションに時々雇われている。しばしばカジートのザダザと同行している。地域で調査した結果、彼はブラック・マーシュに移住する以前、帝国軍で際立った働きをしていた。移住の事情は不明瞭。軍法会議やそれに類する軍の処分から逃れるためと言う者もいるが、単なる隠居だと言う者もいる。依頼者の要求にはおそらく無関係だろう。

朝はシロディール・コレクションの本部かリルモスの埠頭で訓練をして過ごす。剣と盾の両方にかなり熟練している。相手にするなら、素手になるまで待つことを勧める。午後の大半は「好色なアルゴニアン歩兵」の中か、その付近で過ごす。酒は飲むが、飲み過ぎは滅多にない。

市の城壁外に頻繁に出ていく。常に他の探検家数人を伴っている。おそらくは帝国軍時代の習慣だろう。移動も戦闘も、常に集団でというわけだ。

お勧めの誘拐方法:酒に何かを混ぜること。最初にファミア・メルシウスをさらっておけば、行動に隙ができる可能性あり。街で正面から襲うのは避けるべき。ここには奴の仲間が多すぎる。

調査報告書:ザダザDossier: Zadaza

カジートのザダザに関する報告を以下に記す。こいつはブラックガードに倍払ってもらわないとならない。ウナギのように捉えどころがない。

ザダザ:カジートの傭兵にしてトレジャーハンター。ファミア・メルシウスやその仲間ヴァロ・ホシディアス、エシュラフ、ジー・ラーなどとよく仕事をしている。ブラック・マーシュの外における彼女の生活について、詳細な情報は未だに少ない。地域住民は対立する仮説を複数提示しており、その中には盗賊ギルドのメンバーだとか、以前ドミニオン軍で活動していたというものもあった。いずれにせよ、ザダザを特定の場所で捕捉するのは非常に難しい。彼女は予測できるルーチンに従わない。食事も睡眠も仕事も、1日ごとに場所を変えている。

彼女はファミアかヴァロとよく食事を共にするが、探検についての話し合いと費用の支払いのためだけだ。どの情報に従っても、ブラック・マーシュには彼女の親しい友人がいない。事業のパートナーだけだ。圧力をかけられる部分が非常に少ない。

我々はザダザが戦いに参加するところを見ていないので、戦闘能力は未だ不明。しかし、高度な隠密と鍵開け、その他の関連技術に高度な熟練を示している。

お勧めの誘拐方法:ザダザと仲間をザンミーアに入らせ、出てきたところを襲撃する。ザダザは通常、最初に外へ出てくる。他の仲間たちがついてくるのを数分待っていることも多い。注意深く計画を立てることを強く勧める。ザダザは容易に捕まらないだろう。

調査報告書:新規加入者Dossier: The Newcomer

この新参者はかなりの評判になっている。我々の知る限りこの地域との深いつながりはないが、ファミアの仲間に加わった。ブラックガードは注意を払っておいたほうがいいだろう。

新参者:旅の冒険者であり、シロディール・コレクションに最近雇われるようになった。戦闘とダンジョン探索の両方に高度な能力を示す。初期の報告が示すところでは、マークマイアに到着してすぐ、イクスタクス・ザンミーアでファミアの一味を救出したか、護衛をしたようだ。

どの程度の情報を知っているかは明らかでないが、ファミアは秘密の一部を明かしていると考えるのが理に適っているだろう。

お勧めの誘拐方法:集団で襲うこと。一致団結して行う必要がある。戦士を少なくとも20人用意することを勧める。それでも足りないかもしれない。リスクを覚悟すること。

帝国の侵攻:士官の嘆きImperial Incursions: Officer’s Lament

帝国備忘録 #61509.N

帝国秘書ジロリン・アリウスへ

親愛なる兄さん、なぜ私は罰せられているの?この神に見放された泥溜めに送られてしまうほど悪いことを何かしたの?きっとメナニウス将軍に口説かれて拒絶したからよ。目をつぶって、ただ彼女の好きなようにさせればよかったんだわ!でもダメ。私にも意地があった。自尊心があったの。それで今どんな目に遭ってると思う?泥と汗まみれよ。この髪に付いた臭いは、もう二度と取れないわ!

ここをどれだけ嫌ってるかって話はもうした?あのトカゲどもは普通の人間みたいに戦わないから、まともに戦闘もできないのよ!卑怯すぎる!あの樹液をしゃぶるアルゴニアンみたいな敵とは、これまで戦ったことがないわ!

で、愛する妹のためにちょっとした口添えをしてもらうには、あなたに何をあげたらいい?今度帝都に戻ったら、付き合ってもいいかなと思ってるって将軍に伝えてくれたら、想像もできないくらい感謝するわよ。この忌々しい沼から脱出させてくれるなら、どんなものでもあげるから!

ミロナ・アリウス隊長
第四軍団
第一紀2812年、栽培の月17日

帝国の侵攻:沼へ進む理由Imperial Incursions: Why a Swamp?

帝国備忘録 #53902.B

帝国議会の皆様へ

まず、帝国に奉仕するこのような機会を与えていただいたことに感謝します。皆様の信認に値する存在であり続けるために、我が力の限りを尽くす所存です。

次に、ブラック・マーシュの第四軍団の指揮を執るという私の決断に関して、一部の議員から意外の念、それどころか不安の声さえも上がっていると伺っております。「もっと重要な拠点があるのに、なぜ忌々しい沼を征服するのだ?」これはある上級議員の発言として、私の耳に届いたものです。申し上げるまでもなく、私は皆様の果てることなき知恵に従う心づもりでおりますが、なぜこの「忌々しい沼」が帝国の将来の安全にとって必要であるのか、思うところをお伝えしたく存じます。

ブラック・マーシュはタムリエル南東の巨大な部分を占めています。我々が行った沿岸地帯の探索によれば、沼地の内陸部はゆうにハンマーフェルやスカイリムに匹敵する大きさであり、そこには採掘を待つばかりの、手付かずの富と資源の宝庫が眠っているのです。トカゲの民がこれを利用しないのであれば、我々がそうすべきでありましょう。

そして、トカゲの民自身についてはどうでしょう?あの原始的な蛮族に、自らの統治を任せて本当によいのでしょうか?彼らから人望ある指導者が出現すれば、我々の国境が襲撃の危機にさらされます。起きると分かっていることを、なぜ待つのでしょう?我々自身の手で問題を処理し、自分の運命は自分で描き出すべきです。それこそが、インペリアルの流儀ではないでしょうか!

最後に、ブラック・マーシュはインペリアルの軍事力にとって最後のフロンティアです。新しく、汚されていない、探検を誘う未知の領域なのです。我らが軍勢を率いてこの必要にして価値ある冒険へ向かうことを、私は心待ちにしています。どうかご安心ください。トカゲの民に対する我らの勝利は素早く、輝かしいものになるでしょう。私は保証します!

アウグリアス・ブッコ将軍
第四軍団指揮官
第一紀2811年、薄明の月13日

倒れた探検家の日記Doomed Explorer’s Journal

7日の間、私はこの遺跡の大広間をうろついてきた。2日目の終わりには、完全に迷ってしまった。5日目の終わりには、食料が底をついた。今、静かで悲惨な1週間目の日没がやって来て、水筒からはただ1滴の水も絞り出すことができない。どうやら私はここで、幽霊と巨大な石の門に囲まれて死ぬらしい。

この魔法の扉に嘲られている!囁き声は毎回逃げ道を約束するが、扉を抜けても太陽はない。ただ虚無が一瞬だけ輝き、それから元通りの、やはり暗い地下室があるだけだ。このアイレイドの石細工はあまりに厳格で、荘厳だ。私は野外で死ぬのに、もう墓に埋められた気分だ。巨大な石棺に埋められているのだ。

一人で死ぬのではない。ここはベールが薄い。薄すぎる!最初は囁き声だけが聞こえた。風に漂うアルゴニアンの泣き声と、アイレイドの声。だが3日目には、彼らがはっきりと見えた。まばゆいほど華麗な、アイレイドの幽霊たち。彼らは私を見ず、私の存在に反応もしなかった。彼らはひたすら、古い出来事を再演していた。いくつかの場面はあまりに平凡で驚いた。だが他の場面は、失われた真実と古代の脅威に満ちている感じがした。ここで何か恐ろしいことが起きたのだ。最初はアルゴニアンに、後にはアイレイドに。この遺跡の中(下かもしれない)の何かが、これらの出来事の展開を見るよう私に要求している。その帰結の深刻さを感じるよう要求しているのだ。何かの力が私の理解を求めている。私はそれゆえに死ぬのだと思う。理解できなかったから、残らねばならないのだ。

この日記を誰かが見つけたら、あの幽霊たちに注意深く耳を傾けてほしい。彼らは大いなるアルゴニアンの財宝の物語を伝えている。彼らの言葉に隠された、深い真実を学べる洞察力が自分にあればと思う。

今はもう、書き物は沢山だ。近くにまた門が見える。もしかすると、これで家に帰れるだろうか。とにかく力を振り絞らなくては。ただ、少しだけ休みたい。

肌の乾いた者の奇妙さThe Strangeness of Dryskins

ナガ・クルのカール・ドリーンジー 著
ウェイレストの放浪者ティリリャ・レン 訳

これから書くことは真実だ。マークマイアに来る肌の乾いた者の存在は歓迎されず、招かれざる客である。デッドウォーターの地に入る者は始末される。これはマークマイア全土で知られていることだ。

だが、私は頭を垂れる。こうしたよそ者を歓迎する部族の所に行くことがあるのだ。彼らは私たちに、愚かな選択を尊重するように頼んでくる。そのため、肌の乾いた者の殺し方以上のことを学ばなくてはならない。私は拳を握る。こういう時のために、平和な交流を学ばなくてはならない。ナガが備えられるように、私が書くことは真実である。

肌の乾いた者の肉は柔らかく、簡単にあざができて切れる。彼らの皮は多くの沼の植物に触れると、水ぶくれができて破れる。子供の食べ物は、肌の乾いた者を病気にすることがある。槍の助けがなくても、多くのよそ者は単なる沼の性質によって死んでしまう。私は微笑む。

この目では見ていないがこの耳で聞いた話によれば、肌の乾いた者は生きた子を産むという。考えただけで身震いする。その幼児(孵化した子について肌の乾いた者が使う言葉)は救いがたいほど傷つきやすくて弱い。歩くことさえできない。私の目は混乱に細まる。そんな生物が、どうやって大人になるまで生き残るのだろう?

さらに、彼らの石の巣は多くの者の手と数多くの石を必要とする。しかし地面が沈み始めたら?嵐が荒れ狂い始めたら?そうしたら彼らは貧しく哀れな状態になってしまう。そんな愚かさに、私は首を振るばかりだ。肌の乾いた者が不変を望む理由の一つだ。

最後に真実を書く。あのよそ者たちのことは、寛大に取り扱うべきではない。彼らはこれまで何度もその下劣な性質を見せてきた。ブラック・マーシュの部族はいつか、肌の乾いた者を避け、追い払うべきなのである!ナガが常にしてきたように。

不透明な時間Murky Time

サクスリールの諸概念の研究 魔術師ギルドのテルデンリンデ 著

「ハジ・モタは古い霊魂を持っている。卵の中にあってさえ、それは古く賢い。ハジ・モタを狩りたいと思うのなら、汝もまた古くあらねばならない」

これはアルゴニアンの文化と民間伝承においてよく見られるテーマである。逆方向に年を取ること、あるいは早期に年を取るという考えだ。よそ者にとって、完全に理解するのが難しい概念でもある。これは驚くべきことではない。人間にとってもエルフにとっても、生の経験は過去と未来の間のどこかで起きる。アルゴニアンにとって、時間とはそれよりも遥かに流動的なものだ。

この理由で、ジェッカワス文明暦の存在と重要性はより混乱を招く。ワッセーク・サクスリールとその隣人たちの多くは、月の移行とタムリエルの年が循環し、再帰する性質を多大に強調している。一部の学者は、この暦が偉大なるアルゴニアンの石彫刻があった古代の時代の名残にすぎないと片づけている。この理論に従うなら、暦は伝統を通じて残った断片ということになる。しかしこの考えは現在のサクスリールの価値観と全く一致せず、私にはあまり納得できない。

私は最近ジェッカワスの長老に、彼らはなぜ時間を流動的で不透明なものと見ていながら、詳細で驚くほど正確な暦を維持できるのか、と尋ねた。彼は永遠と思えるほど長く、静かに座っていた。そのうち、彼は言葉を発した。

「〔暦は〕水の入った鉢のようなもの。昼と夜は鉢の中を泳ぐ」

彼はこの答えに満足していなかったが、諦めてそう言ったのだと私には分かった。彼の苛立ちの原因はシロディールの言語能力の不足にもあったが、彼の母語にも欠陥があった。私の知る限り、ジェルには時制がない。少なくとも、我々が時制と認識できるようなものはない。通訳者が用いるのを耳にした限り、最も近い代替語は「古い」と「新しい」だ。彼らは「変化すること」や「変わること」についてよく話す。前方への運動を含意する語である。いずれにせよ、これらの語は私にさえ解読できないような古代の用語や概念によって不明瞭となっている。

私としてはできる限り理解するよう努めるが、不透明な水が完全に透明になる日が来るとは思えない。

蔓の舌:序章Vine-Tongues: Introduction

自分の蔓の舌を馴らして、言うことを聞かせたいのだな?今はまだ芽でしかない。ここからどうすれば良いのかを知らなければならない。私の詳細な解説の助けがあれば、あなたも遠からず、すっかり育った蔓の舌を馴らす喜びを得られるだろう。

マークマイアのアルゴニアンのような蛮族はこの素晴らしい植物を野蛮な手段に用いるが、我々は蔓の舌を訓練してそれよりもずっといいものに変える方法を学んだ。真の忠実な友だ。

だから私の解説に従ってほしい。そして、蔓の舌はあなたの家の一部というだけではなく、あなたの心の一部でもあることを忘れないでほしい。

蔓の舌:一般的な失敗Vine-Tongues: Common Mistakes

愛すべき蔓の舌の苗を自宅に迎え、何を食べさせればいいかも、どんな住処を好むかも、退屈させないようにする方法も分かった。事故を避け、君の生活の混乱を少なくするため、私が自分の蔓の舌を育てていて学んだ、3つの重要な教訓をここに記しておこう。

1)蔓の舌を完全に躾けるまで、他のペットはどこかへやっておくこと。友人や遠くの家族に世話をしてもらおう。そうすればおませな蔓の舌が抱きしめ、優しくなでた時に、意図せずして食事を始めてしまうことを避けられる。蔓の舌は愛情豊かだが、常に腹を空かせているのだ。私が注意しておけば、猫のミクシーちゃんも生き残っていただろう!

2)否定的な連中は無視すること。多くの人は、蔓の舌を飼うのが危険だと言うだろう。あんな肉食の植物は躾けられないし、信用できないと。私に言わせれば戯言だ!躾けられた蔓の舌は誤解されているだけで、愛すべき生き物だ。危険なのは確かだが、昼ご飯を食べるのだって危険だ。次にウサギのミートボールを噛んだ時、喉を詰まらせないとも限らない。だが、食事するなとは誰も言わないだろう!

3)たとえ完全に躾けていても、蔓の舌に対する支配を保っておく必要はある。この植物は気が短く、すぐに機嫌を悪くするが、ほんのわずかでも躊躇や恐怖を見せれば、君を獲物と見て襲ってくるかもしれない。蔓の舌は愛情を求めている。そのことさえ忘れなければ、全て上手くいくだろう。多分間違いない!

蔓の舌:栄養Vine-Tongues: Nourishment

君は腹が減っている時に幸せだろうか?違うだろう!君の新たな友、蔓の舌にとっても同じことが言える。さて、この素晴らしく驚異的な植物に何を食べさせればいいのかと考えているかもしれない。恐れることはない、私が説明しよう!

蔓の舌にはもちろん、水が必要だ。それも大量に!水をやられた植物は幸せな植物だ!

水はいいし、必要なものだが、蔓の舌にはもう少し実のある食べ物も必要だ。正確に言えば、肉だ。場合によっては生で、できれば生きて動いているやつがいい。私はいつも言っているのだが、ピクピクしているものなら、食べさせても大丈夫だ。

苗の時、蔓の舌にはミミズや昆虫、小魚を食べさせよう。たまにならネズミを1、2匹やってもいい。成長してきたら、蔓の舌の食べ物の量とサイズを大きくしていけば、健康を保ち、しっかりと能力を伸ばせるようになる。だが、食事を与えすぎないこと!太り過ぎた蔓の舌は陰鬱で不幸になり、不適切なものを食べたがるようになる。ペットや主人の手足などを。

蔓の舌:幸福な家Vine-Tongues: A Happy Home

長く疲れる旅から帰ってきた時、君はおそらく暖かい食事とベッドを求めるだろう。蔓の舌も同じなのだ!まあ、暖かい食事は除くが。蔓の舌は生の、まだ動いている食事を好む。蔓の舌には最高のものを与えるべきだし、それを与えるのは君の仕事だ。

最も快適な過ごし方として、蔓の舌は湿気のある気候で、流れる水に囲まれた土の上を好む。それに加えて、蔓の舌が巣に決めた場所は周囲を徘徊する生物にとって魅力的であることが必要だ。君の愛する蔓の舌は十分に大きくなると、君が与える美味しい食事を補完するため、自分で獲物を捕まえるようになる。これにより蔓の舌が達成感を得られるだけでなく、君の家から害虫を排除するにも役立つのだ。

蔓の舌は優れた門番になることに気づいただろうか?高い所に置いて周囲を観察させ、景色を眺められるようにしておくのだ。誰かが君の地所に近づこうとすれば、君の新たな友は彼らにふさわしい出迎えをするだろう。ただし、不幸な誤解を避けるためにも、友人や家族が訪問する前に、蔓の舌を引っ込めておくことだ。

蔓の舌:準備Vine-Tongues: Preparations

蔓の舌を君の人生に迎え入れる覚悟ができたら、完全に準備を整えておかなければならない。この喜ばしい蔓は大変な幸福をもたらしてくれるが、多くの作業と極端な忍耐も要求するのだ!

君のパートナーや友人、家族と話して欲しい。これから先、何が起きるのかを知らせるのだ。そうすれば深夜の餌やりや定期的な土の入れ替え、時々起こる血の儀式に警戒され、気分を害されることがないだろう。

驚きは面白いかもしれないが、お腹を空かせた蔓の舌の吠えるような叫び声が夜中に響けば、人々を仰天させてしまうだろう。だから君も心の準備をして、友人や家族、隣人たちにも心構えをさせておくことだ。生涯の幸福のためなら、少々の不便など安いものだ!

蔓の舌:植物を幸福にするためにVine-Tongues: Happy Plants

小さな植木鉢に蔓の舌の苗を入れて、新しい家に設置する準備を整えたら、あとはどうすればいい?簡単だ!可愛い植物を幸せにするため、できる限りのことをすればいいのだ!

蔓の舌には個性があり、私と君のようにそれぞれ違っている。ある程度は実際に試して、苗を育てる最良の方法を確かめなければならない。一般的に言って、必要なのは長い熊手と水やり用の缶、それと幅広の剣だ。彼らは少々怒りっぽくなる時があるのだ!

この基本的な3つの道具があれば、苗に水をやり、背中をかいてやれる。蔓の舌が隣人の猫や地元の子供を食べようとした時、思いとどまらせることもできる。これらの道具を手許においておけば、君と蔓の舌には長く喜ばしい年月が待っているぞ!

無の代弁者Speakers of Nothing

ニッソ・ゼーウルム 著

無の代弁者、無の言葉よ
虚無は無の舌にしがみつく
千の舌と十倍の言葉
真理は安らう、無の肺と共に

知恵の息吹は空気を汚す
腐れ落ちて久しい果実のごとく
闇は言葉の隙間に挟まる
何かの間にある無

足は多くの道を歩む
ヒストの多くの根によって敷かれた道を
唇は多くの真理を語る
ロウソクの明かりのように広がる真理を

汝にはいかなる安息もなく
恐怖を鎮める優しい真理もない
だが言葉をよく聞け
無の目を見よ

名誉ある行いActs of Honoring

ニッソ・ゼーウルム 著

汝が耕す畑を通じて
壊れた大地を通じて
汝が育てる作物を通じて
変化である名誉を

無の言葉を聞け
多くの舌を聞け
その中に一つの真理を聞け
虚無である名誉を

血にまみれた牙と
激烈なる一撃と
汝の最後の息と共に
死である名誉を

卵の番人の日記Egg-Tender’s Journal

今年こそは違う。昔の人がやっていたみたいに、私はドラゴンソーンを噛み始めている。調合薬と一緒にこれから何ヶ月も続ければ、きっと絆の準備ができるはず。今年こそは私が選ばれる。間違いない。

大恥をかいてしまった。ドラゴンソーンは刺激が強い。息が酸っぱくなって、他の人が気づき始めてしまった。ミンメでさえ私と話すのを嫌がってるみたい。痛んだサラマンダーを食べちゃったのと言ったけど、これからはもっと目立たないようにあの草を噛まないと。

効いてる気がする。鱗にも爪にも、前よりも艶が出てる。多分、これはいい徴候だわ。でも歯に黄色いシミが出てきてる。醸造したスカルドルートを飲んで口を洗い始めた。死にそうな味だけど、歯にはいいと思う。

キーナムが間違って私のスカルドルート茶を一口飲んで、気絶しかけた。ウクシスで彼を看護しなくちゃならなかったから、暗くなるまでドラゴンソーン畑に行けなかった。暗闇の中から女の人が近づいてきたけど、鱗がものすごく青白くて、月明かりの下では特にその色が目立っていた。私は怖くて叫び出しそうになったけど、彼女は優しい声で話しかけた。どうしてこんな夜中にドラゴンソーンを摘んでいるのかと聞かれて、どうしてかは分からないけど、本当のことを彼女に言った。知らない人にどうしてこんなことを告白したのかは分からない。知らない人だったからかもしれない。憐れみの目で見られずにこのことを話せる相手は、村に誰もいない。闇夜の中で、私はこの人とずっと話をした。再び会うことになった。

この頃はほとんど眠れていないけど、仕方ないわ。リー・ナカルは夜中しか会いに来られないと言っているし、私は一日中彼女に会うことばかり考えている。あの人は私の痛みを分かってくれるし、耳を傾けてくれる人がいるって本当にありがたい。家でこの話題が出た時にも、私は恥ずかしさを感じない。リー・ナカルはヴィーシュクリールの一員、つまりゴーストの民。彼女があんなに優しいなんて思っていなかった。ブライトスロートはあの人たちと付き合わない。付き合いのある部族は少ないわ。彼らは卵を奪うから、追放者のように扱われている。でも仕方がないのよ。自分たちでは子供を産めないから、ヒストはあの人たちに他の部族へ行かせている。なんて悲しい話なの。

リー・ナカルと絆の儀式について話した。ブライトスロートはゴーストと絆の権利の取り決めをして、彼らがもう卵を盗まなくてもいいようにできるかもしれないと言った。彼女はありがとうと言ったけど、礼儀上そうしただけだった。私たちの部族が味方になるなんて希望をほとんど持っていないのは目を見て分かった。私たちの絆の儀式は特別なものだから、勝手にやればいいと彼女は言った。私は強く言わなかった。自分の部族にされたことを、彼女に対してしたいとは思わなかった。彼女を憐れんだりはしない。

悲しい一日。ヒストの下へ帰る卵が分かる日は、いつも悲しい日。なぜヒストは他の卵を差し置いて、一部の卵を選ぶの?明らかに病気の卵なら分かるけど、どの卵が孵って、どの卵が根の中に沈むのか、私たちはいつも予測できるわけじゃない。あの子たちのためにできることは何もないとずっと受け入れてきたけど、リー・ナカルはそうじゃないって教えてくれた。あの子たちも生まれることができるんだ。卵を彼女のところへ持ってくれば、あの子たちを助けるために力を貸してくれると彼女は言った。私の部族は卵がなくなっても気づきさえしないだろう。あの子たちのことは、みんなもう諦めている。でも私は諦めない。私はあの子たちが欲しい。あの子たちは、私たちの子供になるのよ。

今夜、私はまたキーナムと一緒に働くことになっているけど、彼の飲み物にスカルドルートのエキスを加えておいた。夜の間に、卵をいくつか持ちだせるはず。考えるのは恐ろしいけど、あの卵には私が必要なの。怖いからって、諦めるわけにはいかない。

やったわ。朝の番人が交代に来た時、私の肌は死んだ樹皮みたいに乾いていた。私は夜のうちに卵がいくつかヒストの元に帰ったと言うと、彼らはただうなずいて受け入れた。彼らが知らせに全く動じないのを見ると、喉がつかえる気分がする。

眠りに落ちるまでに何時間もかかった。木の番人がやって来て私を告発するかと思ったけど、次の番をするために目を覚ますと、全ては日常どおりだった。ヒストは私がしたことを知っているの?

最後の集団から出た不適格の卵はほとんど全部、リー・ナカルに渡してしまった。考えてみれば、ものすごくたくさんあった。何て無駄をしていたんだろう。でもそれももうなくなる。彼女が言うには私がすでに渡した卵は巣の中に入れられ、彼女の部族の人々が番をしているから安全で、健康にしているそうだ。私がここを離れてあの子たちに会いに行くのはまだ早いと彼女は考えている。最後の卵を救い出すまで待ったほうがいい。多分、そんなに長くはかからないと思う。考えただけで棘が震えそう。

私の子供たちは元気でやっていると言われた。まだ卵たちを目にすることはできていない。村で卵の世話をしていると毎日、あの子たちがいないのを思い出してしまう。私は自分の子供の世話をしたい。私はあの子たちの母親なんだから。他の人たちも、自分の卵を育てる時にこういう気持ちを味わうの?

卵がもうすぐ孵るとリー・ナカルが言っている!その瞬間を見たいと彼女に伝えたけど、まだその時ではないと言われてしまった。もうすぐ、絆の儀式が再びやって来る。私は出席しないだろう。でも、そんなこと気にしない。部族は私がいなくてもやっていけるけど、あの卵は違う。あの子たちには私が必要なんだから!

ケンカをして以来、リー・ナカルには会っていない。戻って来なかったらどうしよう。そうなったらどうしていいか分からない。どこで彼女を見つければいいか分からない。私の子供たちがどこにいるのかもわからない!私はあの子たちに会いたいだけなのに!

卵の番人の未完の手紙Egg-Tender’s Unfinished Letter

チーダシへ

あなたの申し出を受けるべきだったわ。あのしょうもない交易の仕事だって、ここの大騒ぎから逃げられるならありがたいくらいだわ。今年は色々なことがまともじゃなくなっていて、まるで全ての目が卵の番人に注がれているみたい。1分だって落ち着いて考えていられない。紙に筆を走らせる暇はなおないわ。あなたが儀式のための物資を持って戻る頃には、事態も落ち着いているかもしれないけど。早く戻って来てくれたら嬉しいわ。親身に耳を傾けてくれる人がいれば、気分が全く違うもの。他の卵の番人に打ち明け話なんてできないし。

ミンメは本当に噂好きで、部族の使者になれそうなぐらいだわ。ハクサラが今の時期になるとどうするか、あなたも知ってるでしょう。ミーナは黄金の蛙の夜以来、口をきいてくれないの。彼女だってそろそろ許してくれなきゃ。

木の番人の間に動揺が走っているみたいね。面倒が降りかかって来なければいいんだけど。