リーパーズ・マーチの伝承

Reaper’s March Lore

エルフの瞳、エルフの密偵Elven Eyes, Elven Spies

ズウィンソデュール・ラウン・ダー 著

我々の中に密偵がいる。エルスウェア中の全ての道、全ての村、全てのキャンプファイアにまぎれこみ、私たちを監視している。

「それはそうだろう!」と思っただろう。「アルコシュ、マーラ、アズラーの名にかけて、我らが長老たちや母たちがいつも見守ってくれているだろう!」と。

そしてそれは正しい。彼らは見ている。

だが、それ以外にもいる。

我々を「不忠」と疑い、不誠実だの反逆者だのと報告すべく、一挙一動を見ている者がいる。

報告?誰にだ?たてがみの役人にか?

いや、違う。相手は猫ですらない。

これら諜報員はエルフにのみ報告する。

正直、名前は聞いたことがあるだろう。誰かがささやいても、絶対に復唱してはならないその名を。

奴らは…女王の瞳だ。

大きく恐ろしいアイレン女王にのみ世話になる奴らだ。

彼女の目は全てを見ると言われている。しかしエルフはどこにでも行けるわけではないのに、どうやって?カジートよ、エルフの金はどこにでも行けるし、実際に行っている。

シッ。本当はわかってるんだろ。

見られているのをわかってるから、尻尾の踊りは少し垂れ下がり、耳からは少し誇りが削がれ、頻繁に背後を確認するようになる。

だって、誰が買収されてて誰がされてないかなんて、分からないだろう?誰が君についての報告書を出しているかも分からないし、どんな報告をしてるかも分からないだろう?

この間の央耀、君の隣人はどこに行ったんだろう?瞳から新しい指示をもらいに行ったのか?もしくはアリノールに連れ去られ、水晶の塔の下の地下牢に入れられているかも?

カジートよ、気をつけろ。髭の神経をとがらせて警戒するんだ。

この者は監視されている。もうこれ以上この者からは警告できないかもしれない。

ゾレイム師範の話、パート1Master Zoaraym’s Tale, Part 1

ギ・ナンス 著

トルヴァルにある「双子月の舞踏の聖堂」は何百年ものあいだ、足と拳が資本の戦士にとって、タムリエルの中でも屈指の試練場でありつづけてきた。師範たちはタムリエル各地からやってくる生徒を年齢に関係なく受け入れ、いにしえの技術から近代的な応用技まで幅広く教えている。過去に卒業した多くの門弟たちが成功を収めた。私もそこで学んだひとりだ。子供のころ、最初の師範であるゾレイムに訊いたことを覚えている。聖堂の教えをもっとも深く理解したのはどの卒業生でしょうか、と。

「あの男に会ったとき、私はまだ師範ではなく一介の生徒だった」と、ゾレイムは言った。懐かしむように笑みを浮かべて。師範のしわだらけの大きな顔が、しなびたバスラムの木の実のように見えた。「ずいぶんと昔の話だ。お前の両親が生まれるよりも前のことだ。何年も聖堂で修練を積んでいた私は、双子月の舞踏の聖堂の誇る博覧強記の師範が教鞭をとる、非常に難度が高く、求められるものも大きい授業を受けるほどまでになっていた」

「ギ・ナンス、お前にもやがてわかる時がこよう。逞しい体は逞しい心と共に鍛えられることを。この神殿には、リドル・サールの流儀に従って我らが何年もかけて築いてきた、基幹となるべき訓練の手法がある。私は極めて大いなる力と技を手にした。たとえ魔術や超自然的な力を使おうとも、素手による戦いでこの私に勝てるものはほとんどいないだろう」

「その当時、聖堂には召使がいた。私や仲間よりもいくらか年上のダンマーだ。が、彼のことなどまったく眼中になかった。もうかれこれ数年間、こっそりと訓練場に入ってきて、数分で掃除をすませ、黙ったまま出ていくのが彼の日課になっていたからだ。もっとも、彼が何かしゃべっていたとしても、我らは上の空だったろうが。訓練と授業に入り込んでいたからな」

「最後の師範が、私を含めた数名の生徒に向かって、聖堂を後にするか師範となるときが来たようだと告げると、盛大な祝祭が催された。「たてがみ」もわざわざ足を運んで祝祭をご覧になられた。昔も今もここは哲学と戦闘の聖堂であるため、聖堂のアリーナでは、数名の選ばれた者だけでなく全生徒が参加して、討論会や競技会が行われた」

「祝祭の初日、初戦の相手は誰なのだろうかと登録名簿をながめていると、背後の会話が耳に入ってきた。召使が聖堂の大司祭と話していたのだ。ダンマーの声を聞いたのはそのときが初めてだった。そして初めて彼の名を知った」

「モロウウィンドで戦っている故郷の仲間に合流したいという気持ちはよくわかるとも、タレン」と、大司祭は言った。「残念至極ではあるがな。お前はもう、この聖堂になくてはならない存在であったから。みんなさみしがるだろうが。私にできそうなことがあったら、なんなりと申しつけるがいい」

「なんと嬉しいお心遣いでしょう」と、ダンマーは答えた。「ひとつだけ頼みがございますが、おいそれと認められることではないかもしれません。この聖堂にやってきてからずっと、修練にはげむ生徒たちの姿を目にしているうちに、自分でも職務の合間を縫って練習を続けてきたのです。私はしがない召使でしかございませんが、アリーナで戦うことをお許しいただけるのなら、まことに名誉でありましょう」

「あまりにおかどちがいなエルフの放言に、私はあえぎかけた。修練を積んだわれわれと対等に戦わせてほしいなどと、よくもぬけぬけと言えたものだ。驚いたことに、大司祭はふたつ返事で請け合うと、初心者階級の登録名簿にタレン・オマサンの名を書き加えたのだ。私は選ばれた同輩たちにこの話を耳打ちしたくてうずうずしていたが、あと数分で自分の初戦が始まるところだった」

ゾレイム師範の話、パート2Master Zoaraym’s Tale, Part 2

ギ・ナンス 著

「あまりにおかどちがいなエルフの放言に、私はあえぎかけた。修練を積んだわれわれと対等に戦わせてほしいなどと、よくもぬけぬけと言えたものだ。驚いたことに、大司祭はふたつ返事で請け合うと、初心者階級の登録名簿にタレン・オマサンの名を書き加えたのだ。私は選ばれた同輩たちにこの話を耳打ちしたくてうずうずしていたが、あと数分で自分の初戦が始まるところだった」

「私は十八戦連続で戦い、全勝した。アリーナに集った観衆は私の才能のことを知っていて、対戦が終わるたびに控えめな、驚きの少ない拍手を浴びせてきた。どんなに戦いに集中しようとしても、アリーナの他の出場者に注目が集まっていくのが気になってしかたがなかった。観客はひそひそ話に勤しみ、無傷の連勝記録よりもはるかに刺激的で、先の読めない対戦を求めて何人もが席を立ちはじめていた」

「双子月の舞踏の聖堂で教えるもっとも大切な授業のひとつが、虚栄心を捨てることだろう。私はそのとき、心身を合致させて無意味な外部の影響をはねつけることの大切さを理解してはいたが、心では受け入れていなかったのだな。自分が強いことはわかっていながら、自尊心が傷ついたのだ」

「とうとうチャンピオン決定戦となった。私は勝ち残ったふたりのうちのひとりだった。対戦相手の戦士を目にしたとき、傷だらけの威厳に満ちていた私の心は不信感に染まった。私の敵は召使のタレンだったのだ」

「これは冗談にちがいない、哲学的な最終試験にちがいないと、私は自分に言い聞かせた。それから観衆を見やると、世紀の一戦が始まるという期待感で誰もが目を輝かせていた。タレンと敬意を取り交わした。私はぎくしゃくと、彼はいかにも慎み深く。戦いが幕を開けた」

「最初はさっさと終わらせる気でいた。タレンなどアリーナを掃除するほどの価値もないのに、そこで戦うなどもってのほかだと思っていた。まったくとんちんかんな考えだったよ。タレンも私と同じように、何人もの生徒を倒して決勝の舞台まで勝ち上がってきたとわかっていたはずなのに。タレンは私の攻撃に対してよくあるカウンターで応じ、殴られたら殴り返した。幅広いスタイルを持っていて、洗練された難しい足技を使ったかと思えば、次の瞬間には単純なジャブやキックを放ってきた。私は執拗に攻撃を繰り出してタレンを圧倒しようとしたが、私の才能を恐れるような、あるいは見下すような色がその顔に浮かぶことはなかった」

「長い戦いになった。いつ敗北を覚悟したのかは覚えていないが、試合が終わっても結果をすんなりと受け入れた。普段は感じないようなうそ偽りのない謙虚さでもって、私は彼に一礼した。が、万雷の拍手に送られながらアリーナをあとにするとき、私は訊かずにはいられなかった。いったいどうやって師範級の腕前をこっそりと磨いていったのかと」

「私の立場ではそうするしかなかったのです」と、タレンは言った。「毎日毎日、私は優秀な生徒の訓練場を掃除し、それが終わると初級の生徒の訓練場を掃除してきました。そのせいか、初歩的な失敗や教訓、技術を忘れるという不運に見舞われることなく、師範のあるべき道を観察し、学んでいくことができたのです」

「翌朝、タレンはトルヴァルを後にして故郷へ帰っていった。それ以来、彼とは会っていない。人づてに司祭や師範になったという話を耳にはしたが。私も師範になって、双子月の舞踏の聖堂で訓練を始めたばかりの子供達や、才能ある者達の面倒を見ている。そして傑出した生徒がいれば、ゆめゆめ初心を忘れることのないよう、未熟な戦いを見物しに連れていくことにしているのだ」

闇の子供Litter-Mates of Darkness

月の司祭フナル 著

新月:
ドロ・マスラの闇の遊戯について。

満ちる月:
真の猫が死ぬとその魂はケナーシによって持ち上げられ、星の裏の砂場へと飛ばされ、次の襲撃まで遊びと捕食を行う。

曲がった猫が死ぬとその魂はナミイラによって世界の影の闇へと引きずり込まれ、尻尾がまっすぐになるまでローカジュの心臓に仕える。

満月:
これらは闇の踊り子となり、音楽ではなく心臓の鼓動に合わせて舞う。時にニルニの亀裂をすり抜けて月明かりの世界に現れ、月のない夜そのもののような風貌で我々に混ざって練り歩く。そして我々はそれをドロ・マスラと呼び、恐怖の名となっている。

真の猫がドロ・マスラのベントの踊りを見ると、闇に引っ張られる感覚に陥り、尻尾が一定の間隔でけいれんを起こし始める。けいれんするたびに月明かりから引き離され、影が長くなり曲がっていく。そして闇の潮が光の潮を上回ると、真の猫は消え、曲がった猫となる。

真の危険はその先にあり、ドロ・マスラは曲がった猫の魂を引き抜き、亀裂を通して闇に送り込める。心臓の鼓動を聞くと、その魂もベントの踊りを始める。

その踊りはなかなか止まらない。ある夜、ローンの村人たち全員がベントの踊りをしているところを発見されたことがある。今はもう誰もそこを訪れない。

欠ける月:
ドロ・マスラを追い払うには二つの方法がある:ジョーンの法とジョーデの法である。

戦士はジョーンの技を用い、爪を使って闇が消えるまで打ち続ける。この方法は心と爪の強い者は誰でも用いることができるため、優れている。

司祭はジョーデの法を用い、まばゆい月明かりで月なき闇を照らす。この方法を用いると、追い払われた曲がった霊魂は復活できないため、より優れていると言える。

月の猫とその踊りThe Moon Cats and their Dance

クランマザー・アニッシについて

髪のない学者が自分の砂漠から我らの砂漠を訪ね、「カジートの真実が知りたい」と言った。

するとクランマザーは「一つだけ?あまり好奇心がないわね、髪のない学者よ」と言った。

髪のない学者は、鼻の上に乗った小さな窓の向こうからクランマザーをじっと見てこう言った。「君たちのさまざまな種について知りたい。生まれた時の月の満ち欠けによって身体的な形態が決まるというのは本当か?」

するとクランマザーはこう言った。「髪のない学者よ、その通りだわ。私はジョーデが満ちつつありジョーンが新月だった時に生まれたので、オムヘス・ラート。ここにいる私の娘はジョーデが満ちつつありジョーンが満月の時に生まれたので、センチ・ラート。そのため全く似ていない」

学者は母子をじっと見たあと、「私には全く同じに見える」と言った。

するとクランマザーは「瞳の丸い者は視力が低いと聞いたことがある。悲しきことね」と言った。

髪のない学者は顎を触りながら言った。「君たちのいわゆる月のラティスについて知りたい。月の満ち欠けによって生活のすべてが規定されるというのは本当か?」

するとクランマザーはこう言った。「髪のない学者よ、その通りだわ。今日はジョーデもジョーンも新月のサセイなので、シチューを冬の光に混ぜることはしない」

髪のない学者はまばたきをして言った。「ウィザーシンズ、つまり逆回りのことか?しかしあなたは、今まさにそのようにスープをかき混ぜているが」

するとクランマザーはこう言った。「それは上から見た場合に限る。もしやあなたの目は一つの方向からしか物が見えないの?悲しきことだ」

髪のない学者は鼻の上の窓を調整して言った。「まあいい。わかった。双子月の舞踏について教えてくれ。君たちカジートは、真夜中に月明かりで踊るというのは本当か?」

するとクランマザーは言った。「それは違う。我々はいつでも双子月の舞踏を踊っている。それが我らの喜びよ」

髪のない学者は言った。「今は踊ってないじゃないか。火のそばで座っている。踊る時は私も参加したいから言ってくれ」

するとクランマザーはこう言った。「私と娘は今この瞬間も月に向かって踊っているが、あなたには尻尾がないので参加できない。悲しきことだ」

髪のない学者は拳を噛んで言った。「まあいいだろう。君たちは月に対して興味深い信仰を持っているそうじゃないか。教えてくれ」

するとクランマザーはこう言った。「いいでしょう。ローカジュがニルニの子らに居場所を作ったとき、心の闇によってそこは牢獄となった。彼の心は切りとられた後ニルニの奥深くに埋められ、体は月の方へ飛ばされたが、第1の秘密を知らなかったため通過できなかった。こうして彼の体は月のラティスの死んだ月となった。すぐそこにある。見える?」

髪のない学者は空をじっと見て言った。「月など全く見えない…マッサーもセクンダも新月だ。どういうことだ?」

するとクランマザーは「髪のない学者よ、この者はあなたの目のことを忘れていた」と言った。ため息をつき、尻尾を踊らせ、肩をすくめてこう言った。「悲しきことだ」

分け前を得よ!Yours for the Taking!

ラヴィニア・アキシウス将軍副官 カトニウス・リボ 著

自由なるコロヴィアの民たちよ!これよりあなた方を故郷、ひいては家族や後継者、そして自分自身のため務めるべく招集したい。

臨時ニュース

スキングラード伯爵の宣告及びシロディール帝国元老院の承認により、以前はヴァレンウッドのアレンシア・ヴァレとして知られていたストリッド川南に位置する地域は、このたびコロヴィアの地、サウスウィールドへと名を変えた。ウェストウィールドの帝国軍はラヴィニア・アキシウス将軍の指揮のもと、サウスウィールドの併合と国境警備という光栄な任務を与えられた。

ウェストウィールド帝国軍でチャンスを

さらに言えばサウスウィールドでの停戦により、占領中の帝国軍は引き上げ、兵士には農場、将校には地所といった土地が与えられる。かの地でのこれまでの土地の領有権は、元老院の命により全て無効となった。今なお居座る無断居住者は国外追放されるか、新しい領主のため契約労働をすることとなる。

栄光、冒険、そして賞金

サウスウィールドでの軍役でコロヴィアから称賛を得よ!以前の抗争の後、重要な捕虜の家族からの身代金により、小貴族の仲間入りを果たしたコロヴィアの民がたくさんいたことも考慮してもらいたい。これはこの時代で最も大きな躍進のチャンスかもしれない。心配性や臆病、ささいな問題が原因で逃すことのないように。

歩兵隊のブリーフィング:アレンシアCohort Briefing: Arenthia

イウニウス・オセラ百人隊長 著

我が隊は2週間以内にアレンシアの占拠にかかる。確実に作戦を成功させるため、全兵士が対象の街や市民について知識を身に着けておく必要がある。準備なしに侵入すれば、何が起こったのか分からないまま、金品を好き放題に強奪されるかウッドエルフの矢に体中を貫かれるだろう。何年かの間、アレンシアからスキングラードへ移動中の隊商を護衛していた経験のある私なら、個人への危害や不必要な住民への挑発を防ぐための情報を提供できよう。

見慣れた雰囲気の建物に安心してはいけない。この街は我らの故郷とは全く違う。ストリッド川の北からコロヴィアの商人がいくらか移住しているが、南から来たウッドエルフや東のサバンナからカジートの方が多い。過去にこの街の所属する国は風のごとく変わり続けていたこともあるが、カジートの薄っぺらい小屋やエルフの間に合わせ的な木の家に比べてコロヴィアの石は長持ちするし、現に持ち応えている建物はほとんどがそうだ。

多くのウッドエルフやカジートと遭遇することになるので、彼らの文化や習慣について大まかに把握しておくと役立つだろう。ウッドエルフは植物や木が危険にさらされていると感じると理不尽なほど攻撃的になる。伐採すべき木があるのであれば、上司の許可を得て武装した分隊を編成すること。加えてウッドエルフは酒好きで、普段も悪い口が酔うとさらに悪くなる。一言助言がある。どれだけ冷やかされても、エルフと飲み比べ勝負をすることのないように。

カジートは人口の大きな割合を占めるが、永住権を持っている者は少ない(基本的にどこでも持っていないが)。この月の信者たちは集団で動き回り、甘ったるい飲料やけばけばしい織物を市場に持ってくる。よくこの手の隊商と一緒にいる娼婦に話しかけられた際は注意すること。必ずといっていいほど泥棒で、やられたと気づいたころにはデューンまで半分逃げられている。

関連事項として、使われなくなった街の神々の聖堂を拠点に、スクゥーマ泥棒のグループが活動しているかもしれないという情報が入った。これは神々への侮辱であり、我々の支配が確立され次第調査にあたる。噂が本当と分かればクズどもを掃討するが、その際聖堂で盗みを働くようなことは絶対にないように。そのうち聖堂の本来の栄光を復活させる。

諸君の仕事は、我々のアレンシアの支配体制が厳格であるよう努めることだ。戒厳令を敷き、可能な限り平和を保ちつつ、騒乱になりうる事態はどんなものであれただちに鎮圧すること。この街に「昔からの」領有権など存在しないことを忘れないように。1人でも多くの兵が立っている側の旗の下で統治される。それは我らの旗となるだろう。

毛皮のつや出し用のムーンシュガー?欲しい!Moon-Sugar for Glossy Fur? Yes!

アズラーの娘 ラスニ・ラ・ドーンウィスカー 著

猫たち、子猫たち、雄虎たち、雌虎たちよ ―中でも特にムーンシュガー好きのあなたに、この者から朗報よ!それはつまり全員よね、獅子の心の皆。だってムーンシュガーをまぶしたスイートロールほど、私たちの尻尾を唸らせるものはないもの!

あなたがラスニと同じなら、この間の薄明の月に出たアベス・ミッツィのソングペーパーで、下劣な麻薬スクゥーマと同様にムーンシュガーも体に害を及ぼすと報じられた時、確実にあなたも浮足立っていたことをこの者は知っている。彼女によると、スイーツの女王を摂取しすぎると、不安神経症、耳下垂、急激な体重増加、呼吸不安症といった症状を引き起こすという。なんとまあ!

彼女のソングペーパーによりすべての猫の台所でパニックが起こり、皆がムーンシュガー蜜やグラニュールローフの代用品を探し求めた。ムーンシュガー・ケインの価格は暴落し、ソルガムやテンサイは急に市場から姿を消した。個人的に、リバーホールド初夏祭のスイーツ担当をお願いされたとき、この者は取り乱していた。どうにもこうにも、今までの腕を発揮できなかった。本当に悔しかった!

でも私、最初に朗報があるって言ったよね?それはズバリこれよ。ケインフィールド農業協会の寛大な出資により行われた数か月にも及ぶ錬金術調査の結果、私はどうしてもアベス・ミッツィと同じ結果を得ることができなかった(アベスがどこかで計算ミスをしたとしか考えられない。年をとってきたからね、かわいそうに)。私の調査では、薄明の月のソングペーパーで主張されていた恐ろしい影響は、適度なムーンシュガーの摂取によっては一つとして認められない。

それどころか——これが一番いいところなんだけど、もうこのソングペーパーのタイトルでばれちゃったかな?——蒸留されていないムーンシュガー派生物の定期的な摂取こそが、毛皮につやを出す!そうよ、獅子の心のみなさん。大好きなスイーツが食べられて、同時に枝毛とは無縁のつややかな毛皮も手に入る!(道理で最近毛皮に光沢がなかったわけね!)

そういうことよ、子猫たち!猫じゃらしを持ってくるのはいつもラスニ・ラでしょ?もう分かってると思うけど。最後にこの者から、私のクランマザーの作っていたムーンシュガー・ビスケットの簡単なレシピでお別れするわ。召し上がれ!

—ムーンシュガー3杯
—水1杯
—パット・スエト1つ
—ふるいにかけた小麦粉
—赤小麦粉

まず乾いた材料を混ぜ合わせる。次に混ぜたものをムーンシュガーに、よく混ぜながら加える。スプーンで生地をすくい出し、熱した石の上に置くか、冷却オーブンに入れて金色がかった茶色になるまで待つ。分量は三人前(…もしかするとあなただけかも!)。

略奪者の楽園A Looter’s Paradise

銀髪の影 著

私の本当の名を知る必要はない——私自身ももうあまりよく覚えていない。叔母さんが国境の南の丘に小屋を残してくれていた。選ばれし者の聖堂からフロルの金のガードルを盗むまで、あまり深く考えたことはなかった。一気に人生が複雑になって、きちんと相続するべきだと思った。

叔母さん——あまり多くを伝える必要はない、仮にエイリアス叔母さんとしよう——彼女は帝国の国境斥候部隊で、エルスウェアとヴァレンウッド北部の間に位置するスフィンクスモス砦に駐在していた歩兵隊だった。第二帝国末期の国境斥候の仕事は、喧嘩っ早い地元民が貿易の邪魔をしないよう抑制することだった。「アレスの自由貿易は帝国の原動力だよ」と、叔母さんはよくスリリーファームズのボトルを開けながらウィンクして言っていた。

斥候隊はすべての国境抗争を止められたわけではないが、猫と小型エルフの大量殺戮を止めたり、デューンからアレンシアへと続く道への山賊の侵入を防ぐなどしていた。叔母さんはそこの気候が好きだったので、退職後は小さい土地を買って小屋を建てた。実は見た目よりも大きい。丘の奥の方まで入っているし、叔母さんのことだから念のために裏口も掘ってたはずだ。

黄昏の月のとある暗い夜、私は盗んだ馬に荒っぽく乗せられたせいで膝から血を流しながらここにたどり着いたのだが、その頃には国境斥候はとっくにおらず、ドーンミードの国境は自然な状態に戻っていた。無秩序の一歩手前である。それを後一歩でつなぎとめていたのは復讐法だった。

ヴァインダスクのウッドエルフ対ダカーンのカジートの抗争で、国境間で奇襲や深夜の暗殺が繰り返されていた。移動中の商人を集団で待ち伏せ、村に急襲を仕掛け、過去の復讐をしながらスフィンクスモス砦を交互に占拠していた。昼間は古びた小屋に隠れ、夜は影から影へと国境周辺を飛び回る私に、どちら側も気づくことはなかった。辺りは戦地だった。五百歩も歩けば必ず戦士の死体や中身の半分奪われた荷馬車、惨殺された商人に遭遇した。

略奪者にとっては楽園だった。

あの頃はよかった。良すぎて長く続かなかったのかもしれない。ダカーンの猫がデューンやシズリーニ・アリーナでの組織犯罪鎮圧にあたっていたころ、ヴァインダスクの山賊が目標地点を超えてアレンシアを急襲した。双方の市民が民兵や傭兵部隊を組織し、丘を一掃したので国境での盗賊生活は終わった。ヴァインダスクの一族は「ヴァインダスクレンジャー(はっ!)」というボズマーの非正規兵団として再編成され、ダカーンの生き残りはデューンガード・アウトウォーカーズの核となった。国境は再び落ち着き、帝国の原動力はその流れを再開した。

幸いにも、デューンへと続く道から、絶好のチャンスが貿易品を積んでやってきたのを私は見逃さなかった。次の金耀には、ブラヴィルで何人かの旧友の連絡先を調べていた。その半年後にスフィンクスモス砦を占領していたのは私率いる新生ムークウォーター・ギャングで、そこで兵舎を掘り出し、刃を研ぎ、古い罠を修復していた。

いい時代の再来だ。

鷲と猫The Eagle and the Cat

たてがみの代弁者 ガレシュ・リ卿 著

妻、夫、息子や娘。母や父、叔父や叔母。私たちは皆、これらの存在を一つ以上亡くしている。ナハテン風邪。その恐ろしい疫病はエルスウェアのすべての家族にまで達してしまった。

センシャルはブラック・キエルゴのスラム街にあるスウィート通り、スクゥーマ服用者の間で感染は始まった。長老たちは当初商品の中に毒物が入っていたものとして片付けたが、その後ダギズ・プライドやスクウィント・アイに広がり、アラバスターの港でも感染が確認された。

そして、瞬く間に各地に広がった。トルヴァル、オークレスト、デューン、コリンス、そしてそれらの間にある全ての地域。咳や嘔吐の音がケナーシの風に乗って皆の耳に入るようになった。ニルンの猫が絶滅していく過程を見ているようだった。

そんな絶望的な運命に、エルスウェアも徐々に抗い始めた。風邪がカジートからカジートへと感染する仕組みを、コリンスのクランマザー・ミザバ・コが初めて解明した。リバーホールドのアズラーの娘ラスニ・ラ・ドーンウィスカーが、最も深刻な症状を緩和するソルガム茶を精製した。私自身も、それらの新しい知識を役立てるべく、たてがみ軍の残存者を組織することで貢献した。

しかしそれでも足りなかった。群れ単位、一族単位で、カジートがそこら中で死に続けていた。月の司祭の予言も、それはそれは不吉なものだった。

すると、予想だにしない方角から助け舟が来た:サマーセットのエルフたちが、医者や治療師、必要だった物資と共に西の海から現れたのだ。

そして何より、希望を持ってきてくれた。エルスウェアが生き残るという希望を。

当初は多くの猫が怪しんだ。これまでに高慢なハイエルフがカジートを助けたことなどなかったのに、なぜ今助けるのだ、と。だが彼らのキャノンリーブはまるで風邪など恐れないかのように我々の間を通り抜け、こう説明した:アルトマーは友情ではなく政策として動いていると。今は我々が彼らの援助を必要としていて、彼らは後に我らの援助が必要となる。タムリエル南西に侵略者が向かっていて、カジートの助力なしでは撃退できないとのことだった。

共通の敵と戦うため。なるほど、我々猫にも分かりやすい理屈だ。そういうわけで、我々はハイエルフとそのずる賢い親族ウッドエルフたちの援助を受け入れ、ナハテン風邪は徐々に収まり始めた。そしてアリノールのアイレン女王がアルドメリ・ドミニオン同盟条約を提案した時、我々は爪に羽をとって署名した。

カジートの同胞たちよ、我らはここに苦難の試練を乗り越え、新たな同志を得て、今までよりもさらに強くなった。侵略者の血を流し、宝物を奪い、我らの力を試せるこの機会を歓迎しよう。

今こそ、ドミニオンの時代なのだから。