タムリエルの歴史

Tamriel History

アイレイドの碑文とその翻訳Ayleid Inscriptions Translated

〈告げ示す者〉ベレダルモ 著

以下の碑文は、実に長い年月と大いなる労力をかけて書き写され、解明が行われ、永久保存を目的としてここにまとめられたものである。

Av molag anyammis, av latta magicka.
「火から命。光から魔法」

Barra agea ry sou karan.
「知恵を鎧とせよ」

Agea haelia ne jorane emero laloria.
「痛みによって得た知識は、闇の時代において信頼できる道案内となる」(直訳すれば、「苛酷な知恵は知恵を会得した者を決して裏切らない」)

Nou aldmeris mathmeldi admia aurane gandra
sepredia av relleis ye brelyeis ye varlais.
「国を追われた我らが祖先11人は、川の流れとブナの木と星に、温かく迎えてくれる安らぎの贈り物を聞き取った」(「マスメルディ」は文字通り「故郷を追われて」を意味する)

Suna ye sunnabe.
「祝福し、祝福されよ」

Va garlas agea, gravia ye goria, lattia mallari av malatu.
「知恵の洞窟で、醜くおぼろげに、真実の黄金が輝く」

Vabria frensca, sa belle, sa baune, amaraldane aldmeris adonai.
「泡立つ波は、途方もなく大きく、力強く、威厳に満ちたエルフたちを歓迎する」

ヴァレン皇帝の悼辞Eulogy for Emperor Varen

元老院議長、アブナー・サルン卿 著

ヴァレン皇帝!なんと短く私達の空を輝き抜けたことか、まるで暗黒の中で私達の道を照らすために輝き出た、空の金属片のようだった!

高潔なヴァレン!敬虔なヴァレン!コロヴィア人爵の息子、肉体の優れたパラゴン、戦略的でずる賢い狡猾な狐、あなたは私達の帝国をレマン時代の栄光に戻そうと努力した。あなたは私達に道を示した。ただあなたの臣民である私達が、あなたのもたらした試練に値していたなら!

レオヴィックがルビーの玉座に鎮座した時、彼の奇行にもかかわらず、あなたは仲間のコロヴィア人に皇帝に対して忠誠であるよう強く勧めた。あなたが「もう十分だ!」と叫び正義の剣を抜いたのは、悪意ある評議員達に騙されたレオヴィックがデイドラ公の崇拝を公認し、帝国での保護を宣言した時だけだった。

そしてコロヴィア人があなたの後ろで立ち上がった!アッシュ砦での帝国の部隊による最初の敗北の後、あなたはコロールの帝国軍を指揮し、レオヴィックをハートランドに退散させた。シロディールは救済者を得た。そしてレマンの真の継承者がついに現れたという噂が広まった。コロヴィアの州はあなたのドラゴンの旗のもとで一体となって立ち上がり、あなたは東へ進軍した。

次の戦争はつらく苛酷で、驚くべき勝利と、物凄く巧妙な策と、そして双方ともの逆転で溢れていた。リーチの民の援軍とデイドラの魔法に支援された帝国軍の力は、打ち負かすのがほとんど不可能であった。だがヴァレン、あなたは正しき力を味方につけた!ついに、あなたは帝国宮殿を勝ち取ろうと争い、そして帝国の玉座の間でレオヴィックを打ち負かした。

だが悲しいかな、私達のヴァレン皇帝、あなたはとても短い時間だけ王者のアミュレットを身に着けた。あなたの民をまた偉大にしたいという野望が、触れずにおくのが最良である神々の秘密に触れさせたと言われている。ああヴァレンよ、あの嵐の夜、震える地に、なぜ私達を置いて行ったのだ。そしてどこへ行ったのだ?きっとあなたは死んだのだ、もしまだ生きているのなら、民を希望が奪われたままにはしておかないだろうから。

ヴァレン皇帝、私達はあなたを忘れない。そしてどうにか進み続けようと奮闘し、あなたの輝かしい手本に従って生きようとする。だが再びあなたのような人物に会うことはないだろうと確信している。

オルシニウムへの帰還Return to Orsinium

移住夫人、ウウリタグ・グラオルシニウム 著

北部タムリエルの山々のオーク達へ告ぐ。あなた達の首都はオルシニウムにある。そして、あなた達を故郷へ呼んでいるのよ。

そうよ!上下ロスガーの間の断崖の上にあるオークの都市は、再び真っ直ぐ、誇り高く立ち上がるわ!私達の首都に——つまりあなた達の首都よ!——過去の栄光を取り戻させるために、伝説の鉄に覆われた壁の後ろで、それぞれのクランの牙を持つもの達が働くわ。再び商人がハグラーズ・ブラフに殺到し、戦士達はファイターズ・アンヴィルで鍛錬し、そしてエヴェレンバー鍛冶場の煙突から煙が脈打つ。マラキャスの崇拝者達はグリーヴァンス聖堂に群がり、キノコの農民はダーク・アバンダンス洞窟の中で堆肥の手入れをし、そしてゴンドラがジュグラーを往復するの。

私達は堅牢な門を再建し、そして再び製錬機、槌、添加物が敵意ある世界の打撃から街を守るでしょう。スカープ砦の彼の玉座から、クログ王はあなた達に歓迎の手と試練の拳を差し伸べる。あなた達は新しくなったオルシニウムの仲間達に加わり、そして誇り高く世界に立ち向かうに相応しいオークかしら?さあ!オルシニウムに来るの、そして泥鉄鉱エールのフラゴンをクログ王が復活したタムリエルのオーク達へ掲げる時、私達に加わるのよ!

ニベネイのサルン家House Tharn of Nibenay

シロディールの貴族達、第十七巻

オピウス・ヴォテポリクス伯爵 著

シェイディンハルのサルン家はニベネイ北部の最も名高い貴族のひとつであり、第一紀の初期以来、彼らはその地で広大な私有地を保持してきた。彼らが言うには、彼らの家は第一紀と同じくらい古いだろうとのことである。系図の研究家が指し示す通り、「サラヌス・イ・レッデハンド」が第一紀200年のタムリエル論文集に述べられている。アレッシアの奴隷反乱より以前の当時、この祖サルンはどうやらファナカスのアイレイド・エルフ、つまり今日のシェイディンハル北部丘陵地の採掘要塞に雇われた奴隷監督官であったらしい。アイレイド人は商業的な記録を赤いインクで残したことで知られているという事実に基づき、サルンの歴史家はこの「レッデハンド」はおそらく教養があり何らかの書記的役割で雇われたのだろうと結論付けている。詳しく述べるために、このサラヌスを悪名高き「切断者サーハン」と同一視するレディ・エウフェミア・グラバーの第一紀227年の学説に触れようと思うが、この説は第二紀541年にアブナー・サルン議長によって白金の塔の下の地下室で発見された「先駈聖人達の巻物」の本文によって完全に誤りを証明された。

一族の言い伝えで、サルン家は「剣を研ぎ死体を処理する者」としてペリナル・ホワイトストレークに仕えたヴィリウス・サルンという人物と共に、聖アレッシアの奴隷反乱において活動したとしている。だが歴史的記録に明確に確認される次のサルンは、第一紀1188年から死去(没年不明)までマルクの選ばれし者の最高位聖職者であったアレッシア教団のフェルヴィディウス・サルンである。フェルヴィディウスは、今日では「十七の慈悲を非難する説法」の作家として有名である。

尊きサルンの隊長は、2300年代の正道戦争で両軍において戦った傭兵部隊を率いた。戦闘が終わった後、ターピス・「方向転換」サルン将軍は現在一族が故郷と呼ぶ広大な所有地を掌握した。シェイディンハル郊外の伯爵の称号を受けた時、ターピスはベンドゥ・オロ提督の姪と結婚し、多くの子孫を残した。

レマン帝国の間、サルンは何世代も立派に素晴らしく仕えた。その中には帝国軍の魔闘士の伝統を蘇らせたレグルス・サルン、そしてカスタブ皇帝の刑罰大臣、エクコレ・サルンも含まれている。

そしてその流れは、現在のサルン家の人々に続く。もちろん何よりもまず、一家の長で元老院の長年の議長、アブナー・サルンである。苦難と皇帝の変遷の時代を通して、我々帝国文明が必要とする継続性と堅実性を提供するため、議長はいつもそこにあり続けた。

次にシロディールの摂政女帝であり、そしてアブナー・サルンと彼の7番目の妻であるブラシアとの娘、クリビア・サルン女王陛下に敬意を表す。クリビア女帝は、述べるまでもないが2人の皇帝の妻、レオヴィックとヴァレンの配偶者である。

わずかに影響力が弱いのが、議長の異母妹であり、第二紀576年降霜の月のクーデター以来リンメンの女王であるユーラシア・サルンである。そして彼女の息子、つまり滑稽でチャーミングなジャヴァド・サルンの存在が無ければ、帝都の社交行事はどうなっているだろうか?

まさに、サルン家は現代のニベン人貴族の典型である。我々は何が起ころうとも、彼らが未来に渡って我々とともにあり続けることだけを願う。

(メモ:十分に仰々しいか?それと、魔導将軍セプティマについて触れるのを忘れた。そうしたら特別手当Aをもらえるに違いない。確約されている。)

開拓、征服Frontier, Conquest

開拓、征服、順応:シロディールの社会史

グウィリム大学出版局、第二紀344年

歴史家によっては、人間のタムリエル入植をスカイリムのノルドの軍事拡張政策の一環としてとらえる傾向にある。実際には、スカイリムが興る以前から人間はタムリエルに入植し、そのほぼ全域に散らばっていた。彼らは「ネードの民」と呼ばれ、その中にはシロディール人の始祖、ブレトンの先祖、ハンマーフェルの原住民が含まれており、ひょっとすると今はなきモロウウィンドの人間も含まれていたかもしれない。厳密に言えば、ノルドは「ネードの民」の一派でしかなく、タムリエルの先住種族であるエルフと平和的に共存する道を見つけられなかった唯一の種族である。

イスグラモルがタムリエル最初の人間の入植者でないことははっきりしている。実際のところ、イスグラモルはアトモーラから移り住むという長い伝統にのっとって、「帰還の歌」にあるように「アトモーラの内乱から逃げようとしていた」のである。イスグラモルがやってくるまでの数世紀のあいだ、タムリエルはアトモーラにとっての「安全弁」であったのだ。不平分子、反体制派、反逆者、土地を持たない若者たち、その誰もがタムリエルという新世界を目指して、アトモーラからの困難な横断をやり遂げた。最近の考古学的な発掘調査で、ハンマーフェル、ハイロック、シロディールへの人類最初の入植は神話紀800~1,000年であることがわかった。これは、ハラルドよりも前にいたとされる12人のノルド王が歴史的に実在したと想定しても、イスグラモルがやってくる数世紀前のことである。

「ネードの民」はエルフの土地では少数派であるため、先住種族とは平和的に共存するより道はなかった。ハイロックやハンマーフェル、シロディールでは、それにおそらくモロウウィンドでもそれにならって「ネードの民」は繁栄し、神話紀の最期の数世紀に勢力を拡大していった。「帰還の歌」に歌われるように、こうした順応はスカイリムでのみ失敗した。これは推測だが、アトモーラからの援軍がそばに控えていたため、ノルドの始祖たちはスカイリムのエルフの権威に屈する必要はないと感じたのではなかろうか。実際のところ、初期のノルドの年代記には、歴史上最初のノルド王とされるハラルド王(第一紀113~221年)が中央集権国家としてスカイリムを統合すると、「アトモーラの傭兵は故郷に帰還した」と記されている。細かい経緯はどうあれ、パターンは決まっていた。スカイリムでの拡張が軍事的に進められ、征服によってフロンティアが延びるとそこへ人間が定住していくのだ。この地での人間とエルフの領土の境界は比較的はっきりしていた。

それでも、この「紛争地域」を飛び越えて、他のネードの民はエルフの隣人と混じりあっていった。第一帝国のノルド軍がついにハイロックとシロディールに進軍したとき、彼らはブレトンとシロディールの始祖が既にエルフに混じって暮らしていることに気づいた。実際のところ、ノルド人はエルフとブレトンを見分けるのに苦労していた。これらの二種族はそういうレベルまで混血が進んでしまっていたのだ。ノルド軍の到着によりネードの民とエルフのバランスは乱れた。ノルドがハイロックとシロディールまで勢力を拡大したのはわずかな期間(200年に満たない)にすぎないが、その影響は甚大であった。それ以降、この地域での実権はエルフから人間へと移っていったのである。

黒き虫の教団The Order of the Black Worm

魔術師ギルド報告書:黒き虫の教団

恐れていたことが起こりました、アークマギスター。黒き虫の教団は単なるデイドラの教団ではなく、それどころか我ら魔術師ギルドと競い地位を奪おうとする、死霊術師の一党です。

ちょうど魔術師ギルドが元サイジックのヴァヌス・ガレリオンによって創立されたように、黒き虫の教団も彼の最大のライバルで敵である元サイジックのマニマルコによって創立されました。両者はアルテウム島で育ちましたが、マニマルコが禁じられた死霊術法に手を出したためガレリオンはマニマルコを追放し、自称虫の王は単にタムリエル大陸に移動し、彼の忌まわしい活動を本格的に開始しました。彼はドラゴンプリースト達がどうやって彼らのドラウグルを虜にしたかを記述している隠された写本、死者の霊魂の召喚に関する古代アイレイドの石板、そしてシャリドール自身が破壊されたと思っていた頭蓋骨のクリムゾンブックを捜し出したことで知られています。マニマルコはデイドラの主達と付き合いがあることを自慢しており、そして吸血鬼の始祖、モラグ・バル自身とさえ取引をしていたかも知れません。

それからマニマルコは彼の冒涜的な伝承を広めることに着手し、無節操な魔術師達、見捨てられた魔女達、そして下劣なリーチの民を彼の死霊術ネットワークに参加させた。神々の修道士の教団と競い合い、もしくは嘲笑うために、彼は新しい教団を黒き虫の教団と呼びました。タムリエルのほとんどの範囲において、死者を立ち上がらせることは当然ことながら非道な行為であると考えられていたので、当初虫の教団は不法な組織として完全に秘密裏に運営されていました。だがマニマルコは、強力な死霊術師であることに加えて賢く狡猾な外交家であり、多くの地域において、彼が説得し、買収し、あるいは脅した権威者達は教団の活動に目をつむるようになりました。

シロディールにおいてはさらに悪いことに、虫の王は帝都を支配するサルンに対し、死霊術は合法的な魔術技法であり、黒き虫の教団は帝国王家の公認魔術顧問として今や魔術師ギルドに取って代わったと宣告するよう説得しました。

非公式に「虫の巣」として知られている代表的な下部組織は、「虫の隠者」の肩書を持つ死霊術師に率いられています。連絡手段はいまだ知られていませんが、隠者はマニマルコに直接連絡をします。隠者の支配下には、熟練した死霊術師、虫の戦士、そして虫の信者と呼ばれる従僕達がいます。新しい信者達は、忠実に仕える者達へ対する偉大なる力に魅かれ、そして皆、不死の痛みに誓って秘密を守ろうとするのです。

地方の陰謀は第二の報告書に記載しました。加えて偶然耳にした噂によると、現時点では未確認ですが、教団はスラスのスロード達との交渉を開始したそうです。私はさらなる情報を探し求めており、次の暗き月までにはさらに分かるかも知れません。

報告書は修行者クオリタティスにより調査され——アーケイが彼の魂をエセリウスへ導きますように——、そして死後、幻術師ブルサイルに編集された

戦士ギルドの歴史 パート1History of the Fighters Guild Pt. 1

第二紀283年、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエは、帝国分裂の危機に直面していた。タムリエルに散らばる隷属国の反抗ぶりは新たな次元に到達し、公然と彼の支配に挑んでくるようになった。彼らは税金の支払いを拒絶し、軍を率いて各地の帝国軍に襲いかかった。ドーンスターの砦が陥落すると、シャイエは帝国評議会を招集した。ドーンスターの南にある会合地となった街の名前をとって、「バードモント会議」とでも呼んでおこう。その会議で、最高顧問は包括的かつ普遍的な戒厳令を宣言した。軍隊を解散しないタムリエルの王子たちには最高顧問の懲罰が待っていた。

それからの37年間は、タムリエルの暴力の歴史において、最も血塗られた時代となった。

王の軍をひとつ残らず叩きつぶすため、ヴェルシデュ・シャイエは自らの精鋭軍の多くを犠牲にすることを強いられた。さらに、帝国公庫の財源もほとんど使い果たした。それでも、彼は考えられないことをやってのけた。歴史上初めて、地上に軍隊が一つしかない、シャイエの軍隊しか存在しない時代が到来したのである。

いくつかの問題がすぐさま表面化した。それは、シャイエの偉業と変わらないほど衝撃的なものだった。シャイエの戦争は貧困を蔓延させていた。敗戦国もまた、軍資金を防衛費につぎ込んでしまっていた。農民も商人も生活の手段を粉みじんに破壊されていた。タムリエルの王子たちは以前のように税金を出し渋るのではなく、払いたくても払えなくなっていたのだ。

戦争で利ざやを稼いだのは犯罪者だけだった。地元の衛兵や民兵が消えうせた今、逮捕される心配もないまま、彼らは無法と化した土地の残骸を食い荒らした。シャイエが最後の部下の軍を破壊する以前からアカヴィリが懸念していた事態だったが、解決策はどこにもなかった。シャイエとしては、隷属国に軍隊を再組織させるわけにもいかず、結果として、かつてないスケールで無秩序が深まりつつあった。シャイエの軍は犯罪の増加を食い止めようとしたが、地元の犯罪組織は中央政権をみじんも恐れてはいなかった。

320年の幕開けとともに、ヴェルシデュ・シャイエの親類である「鉄宰」ディニエラス・ヴェスが、大勢の仲間を従えて最高顧問に謁見した。常備軍の代案として、利益を追求した、貴族が雇うことのできる傭兵の結社を作ってはどうかと提案したのが彼だった。雇用契約は一時的なものとし、契約料の数パーセントを中央政府が徴収する。そうすることで、シャイエの激痛のうち、二つは癒せるのではないかと。

結成当時はまだ、ツァエシ語で「戦士」を意味する「シフィム」と呼ばれてはいたものの、ここにおいて、後に「戦士ギルド」として知られるようになる組織が誕生したのである。

戦士ギルドの歴史 パート2History of the Fighters Guild Pt. 2

「鉄宰」ディニエラス・ヴェスは当初、アカヴィリだけの結社にすることが大切だと考えていた。彼がこうした信念を抱いていたことはどの歴史家も認めるところだが、その動機については意見が分かれる。古典的でシンプルな理論は、ヴェスは同郷人のことをよくわかっていて、信用しており、利益のために戦うという彼らの伝統がプラスに働くと踏んだからだ、というものだ。また、鉄宰と大君主のどちらもこの組織を利用して、五百年前に端を発するタムリエルの征服を達成しようとしたのだという、これまたもっともな意見もある。第一紀2703年にタムリエルを襲撃したとき、アカヴィリはレマン王朝に撃退された。そして今、最高顧問が権力の座につき、ディニエラス・ヴェスの策謀によってアカヴィリだけの現地軍が生まれようとしている。戦闘で成し遂げられなかったものを、忍耐力でまんまと成し遂げようとしていたのだ。多くの研究者が提唱するように、こうしたやり方はアカヴィルのツァエシにとって、伝統的な戦略なのである。なにしろ彼らはいつでも時間を味方につけられる、不死の蛇人なのだから。

だが、それらは空論でしかない。シフィムはシロディールと隣接するいくつかの王国で地位を確立したものの、あっという間に現地の戦士の必要性が高まった。問題の一部は単純に、なすべき仕事をこなせるだけのアカヴィリがいなかったということだ。それから、配属された地域の地理や政治を蛇人が理解しないという問題もあった。

シフィムがアカヴィリだけでは成り立たないことは明白だった。そして、その年の中頃までに、戦士兼妖術師、ならず者、騎士のノルド3人が組織に加わった。

そのノルドの騎士は、名前が時間の流砂に埋もれてしまったが、腕のいい鎧職人でもあった。それにひょっとすると、ディニエラス・ヴェスを除けばもっとも組織の発展に貢献した人物であったかもしれない。しばしば述べられてきたように、アカヴィリ、とりわけツァエシは鎧よりも武器についての造詣が深い。彼らが鎧を着ることはなかったとしても、騎士は他のメンバーに敵の鎧の弱点を説明し、ポールドロンやグリーヴには関節がいくつあるかとか、ゴーゲットとグリドシュリム、パレットとパスガード、陣羽織と草ずりの違いについて説いて聞かせたのだった。

こうした知識のおかげでシフィムは、その心もとない戦力からは考えられないほど効率的に、賊どもを一掃するための長い戦いに勝つことができた。歴史家はこんな冗談すら口にする。アカヴィリが第一紀にノルドの鎧職人を雇っていたら、侵略は成功しただろうに、と。

シフィムに加わった3人の部外者が活躍したことで、現地メンバーの加入に拍車がかかった。その年度末までに、シフィムの活動は帝国全域に広がっていた。若い男や女が大挙として組織に加わった。その理由は、生活が苦しいから、ひと暴れしたいから、冒険に出たいから、犯罪のはびこる隣国を助けたいから、などなど、十人十色だった。彼らは訓練を積み、悩みを抱える貴族を救うべくすぐさま派遣され、管轄区域における衛兵や戦士としての役割を担った。

犯罪撲滅や怪物退治におけるシフィムの目ざましい活躍ぶりが呼び水となって、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエは帝国の承認を求める他の組織の代表者も手厚くもてなすようになった。魔術師ギルドは、比較的早い時期に結成されてはいたものの、帝国から疑わしく思われていた。第二紀321年、最高顧問は「ギルド法案」を採択し、魔術師ギルドは帝国公認のギルドとなった。この法案では他にも、鋳掛師、靴職人、娼婦、代書人、建築家、酒造家、ワイン商、機織工、ねずみ捕獲人、毛皮職人、料理人、占星術師、治癒師、仕立師、吟遊詩人、弁護士、それから戦士であるシフィムも公認ギルドとなった。ただし、勅許状にはシフィムとは記されておらず、すでに市民のあいだに浸透していた呼称を立てる形で、「戦士ギルド」と呼ばれるようになった。どのギルドも、第二紀からその後にかけて新たに認められた他のギルドも、タムリエルの人民に対する価値を認められ、シロディールのもとで保護され、奨励されることになっていた。対価を払わなければ勢力を広げることはできなかった。ギルドの存在により帝国の基盤は強化され、その財源は再び潤っていった。

ヴェルシデュ・シャイエの死後間もなく、ギルド法案の採択からわずか3年後、世継ぎのサヴィリエン・チョラックは現地軍の再編に着手した。戦士ギルドはもはや地方貴族の主力部隊ではなくなっていたものの、その存在価値は揺るぎないものとなっていた。過去においても、私的財産を求めた力のある個人は確かに存在したが、ディニエラス・ヴェスこそが、近代における冒険ブーム、つまり、富と名誉をつかむことに人生を捧げる男たちや女たちの「奔り」とも言える存在であると、多くの歴史家が述べている。

それゆえに、誰もが戦士ギルドに感謝しなければならない。そのメンバーだけでなく、対価を払えば法の範囲内で強い戦士を提供するというギルドの公平なる方針に助けられてきた人々も。戦士ギルドがなければ、どんなギルドも存在しなかったのだから。それどころか、自立した冒険家という生き方すら存在しなかったかもしれないのである。

第二次アカヴィリ侵攻The Second Akaviri Invasion

資金要請

ソリチュード、吟遊詩人大学の王家歴史家、イングマエア・レイヴンクィル 著

陛下、我々西部のスカイリムのノルドは幸運にも、近年のタムリエルへのアカヴィリ襲来へ巻き込まれることを免れましたが、それでもなおこの奇妙な出来事を理解しようとすることは大切です。とりわけそれが東部スカイリムにいる我らが疎遠になった同族を、我々の古代の敵、油断ならないモロウウィンドのダークエルフとの異様で無分別な同盟に導いたのですから。

その出来事はたった12年前に起きましたが、アカヴィリからの急襲という事実は、伝説と憶測の混迷によってすでにあやふやになってきています。確かに分かっていることは何でしょうか?

その一:アカヴィルには多数の地域があり、第一紀の襲撃者達(その後、帝国に支配者達をもたらした者達)はツァエシ出身で、一方、近年の侵略軍はカマルから来たことが分かっている。しかしながら、両地域については事実上何も分かっていない。

その二:この二回目の侵略の指導者はカマルの王で、アダソーム・ディル・カマルである。彼あるいは彼のタムリエル侵略の理由については、東部王国にいる我々の密偵からですらほとんど分かっていない。捕らえられたアカヴィリのほとんどはタムリエル語を知らず、そして大半は取り調べ中に死んだ。ある報告書は、ディル・カマルは「定められし入れ物」と呼ばれる誰かもしくは何かを探していたと陳述していたが、これは翻訳ミスである可能性が大きい。

その三:理由は分からないが、アカヴィリ船団は、最終的にウィンドヘルム北東のホワイト川の河口へ入港する前に、タムリエルの北東端を回って亡霊の海へ入り、テルヴァンニ半島、ヴァーデンフェル、そしてソルスセイムを迂回した。

その四:侵略は完全に思いがけないことであり、ウィンドヘルムはマブジャールン女王が守りを固める猶予もなく包囲された。短い攻城の後、侵略者達は南門に突破口を開き、街は襲われ焼かれた。マブジャールン女王と彼女の娘であり後継者のナルンヒルデ姫は、王家の宮殿の門の前の激しい戦闘の中で殺害された。

その五:王家の士官学校生徒、ジョルン王子は、ウィンドヘルムの攻撃を逃れて少しの間姿を消した。再び姿を現した時、彼は自身をジョルン王と呼び、ノルドがアカヴィリを倒す手助けをするためにソブンガルデから引き返したという灰の王ウルフハースと名乗る強力な戦士を同伴していた。このいわゆるウルフハースを味方に、ジョルンは東部ノルドと強化されたリフテンを鼓舞した。

その六:ディルカマルが彼の軍隊をウィンドヘルムから南へ動かした時、その動機は不明瞭であるが再びリフテンを迂回し、西部モロウウィンドへ行軍した。彼らは、アルマレクシアと彼女の筆頭将軍であるインドリル家のタンバルの命令により、アッシュランドで撤退戦を行ったダークエルフの軍隊と対立した。

その七:ディルカマルはダンマーの軍を東部ストンフォールへ追い、その地では既設の守備施設を占領することによってエルフが退却を止めていた。アカヴィリの前進は減速して止まり、そして急に、彼らの後ろにジョルンと「ウルフハース」の指揮下にあるノルドの軍隊が現れた。これが偶然であるはずがない。信じがたいことだが、ノルドとエルフの間の古くからの敵対にもかかわらず、ジョルンとアルマレクシアの間に協定があり、ストンフォールでのアカヴィリの包囲は計画通りであったのだと我々は結論付けなければならない。

その八:しかしながらアカヴィリは、易々と倒されはしなかった。内海を背に、彼らは死に物狂いの防御を見せ、彼らの船が海岸から彼らを連れ出すためにホワイト川の河口に現れるまで持ちこたえようとした。何度も試みたにも関わらず、ダンマーとノルドの連合軍は彼らの戦線を突破し損なった。アカヴィリの船団が現に北の水平線上に見えたのは、もう一つの信じられない出来事が起きた時であった。土壇場で、南から戦場へ行軍していたアルゴニアンの二部隊によってノルドとダークエルフへ援軍が送られたのだ。卑怯なシェルバックの突入によって、タムリエル人はついにアカヴィリ戦線を破り、そして侵略者達は逃げ場を失い最後の一兵まで殺戮された。

おそらく陛下がお気づきになられたように、この説明は答えよりもはるかに多くの疑問を提起します。この出来事について我々が知っていることは、我々が知らないことによって小さく見えるのです。その結果、私はこの事件の重大な影響を捜査するため、王家査問委員会への資金調達を要望します。もちろん私は、この委員会を自ら進んで統率し、それに伴う任務などの負担は、適切な報酬によって補われるでしょう。

魔術師ギルドの沿革Origin of the Mages Guild

(ヴァレニア版)

アークメイジ・サラルス 著

第二紀の初頭において、魔術師、妖術師および各種の秘術師たちが研究と公的福祉のために才能と糧を結集させるという発想は革新的なものであり、目的および構造の面で今日の魔術師ギルドに近いといえた当時の唯一の組織は、アルテウム島のサイジック会であった。当時、魔術とは個人、もしくは少数の同好の士で学ぶべきものとされており、魔術師は隠者とまではいかないものの、大抵は非常に孤高の存在だったのである。

サイジック会はサマーセット諸島の支配者たちに助言役として仕え、部外者には理解できない複雑な儀式によってその構成員を選抜していた。組織としての存在意義や目的が公示されることもなく、彼らを非難するものたちはサイジック会の力の根源をあらゆる邪悪な要素に結びつけようとした。サイジック会の宗教は祖先崇拝といえるものであったが、この類の教義は第二紀には徐々に時代遅れと見なされつつあった。

アルテウム島のサイジックの一人であり、かの有名なイアケシスの弟子であったヴァヌス・ガレリオンがサマーセット諸島中から魔術師を集め始めた時、誰もが彼の行いに反感を抱いたという。彼はファーストホールドの街中を拠点としていたが、これが魔術の実験は住民の少ない地域でのみ行うべきとする(ある程度根拠のある)考え方に反していたのである。さらに衝撃的であったのは、ガレリオンが費用さえ払えば一般市民の誰もが魔術品、秘薬、そして呪文でさえも利用できるようにすると申し出たことであった。これは魔術が貴族階級や知識階級の特権ではなくなることを意味していたのである。

ガレリオンはイアケシスおよびファーストホールドの王、ライリスXII世の前に召喚され、作りつつあった組織の意図を問いただされた。ガレリオンがライリス王とイアケシスに対して行った演説が後世のために記録されていなかったのは悲劇に違いないが、ガレリオンが今や全土に広がったこの組織を創設するためにどのような虚構や説得を用いたのかについて歴史家たちが空論を戦わせる題材にはなっているようだ。いずれにせよ、ガレリオンの組織は認可されたのである。

ギルド創設から間も無くして、保安面の懸念が生じた。アルテウム島は侵略者から自らを守るのに武力を必要としていなかった。サイジック会が何者かの上陸を阻止すべきと判断した場合、島およびその全住民がこの世から姿を消してしまうだけのことだったのである。これに対し、新たにできた魔術師ギルドは番兵を雇わざるを得なかった。ガレリオンはすぐに、タムリエルの貴族階級が何千年もの間思い知ってきた、金だけでは忠誠は買えないという事実を知らされることになる。次の年にはランプ騎士団が結成された。

ドングリから木が育つかのように、サマーセット諸島の各地に魔術師ギルドの支部ができ、やがてタムリエル本土にも進出していった。迷信ゆえか妥当な懸念ゆえか、魔術師ギルドを領土内で御法度とした領主の記録も数多くあるが、その次の代もしくは次の次の代くらいまでには魔術師ギルドに自由を認めてやることの利点が浸透した。魔術師ギルドはタムリエルにおいて強大な一派となり、味方としてはどこか無関心ながら、敵にまわすと手強い存在になっていたのである。魔術師ギルドが実際に地元の政争に関わるのは稀であったものの、一部の例外的な案件においては魔術師ギルドの関与が最終的な顛末を決定づけることになっている。

ヴァヌス・ガレリオンによる創設以来、組織としての魔術師ギルドはアークマギスター六名からなる評議会によって統制されている。各ギルドホールは賢者により運営され、遺物師と武芸の長の二名がこれを補佐する。武芸の長はランプ騎士団の支部長を兼ねる。

魔術師ギルドの一員でなくとも、この複雑に構築された階級制度が時に絵空事でしかなくなることは想像がつくであろう。タムリエルを離れてあの世へ向かう際にヴァヌス・ガレリオン自身が苦く言っていた。「ギルドは奇妙に入り組んだ、政治的な内紛に過ぎなくなった」のだ。

ニルンの伝説

Legends of Nirn

アイレイド最後の王The Last King of the Ayleids

ヘルミニア・シンナ 著

ハートランド・ハイエルフことアイレイドは、有史以前の神話の時代に長きに渡りシロディールを支配してきた。有史初期の記録に残る第一紀243年の白金の塔の陥落は、一般的にアイレイドの終焉と見なされている。

アイレイドによるシロディールの支配が破られたのはその第一紀243年であったが、これは長い衰退期の終盤における大きな局面のひとつにすぎない。第一紀初めの2世紀は、シロディールのアイレイド君主たちの争いが増加した。アレッシアは内戦をうまく利用して反乱を起こしたものとみられる。帝国歴史家たちは昔から彼女の勝利はスカイリムの介入によるものと考えているが、白金の塔の包囲戦ではそれと少なくとも同等の助力を、反乱側のアイレイド君主たちから得ていたようだ。

一般的なアイレイド像である冷酷な奴隷使いは事実に基づいたものだ。だが243年以降もアイレイドの王子たちがシロディールの新女帝の臣下として、シロディールの一部を治め続けていたことはあまり知られていない。このことはアイレイドの支配が広く忌み嫌われたわけではなかったか、昔から考えられていたよりもアレッシアとその後継者たちが現実主義だったことを示す(あるいは、どちらもある程度正しいか)。

いずれにせよ、数あるアイレイドの遺跡からの出土物は、いわゆる後期アイレイド時代(第一紀243年~498年頃)にも彼らが暮らし、居住地の拡大すらあったことを物語る。当初多くのアイレイド君主たちが人間による新政権の家臣として支配を続けていた。アレッシアを支持するアイレイドには、殺された敵たちから没収した土地が褒美として与えられることもあった。シロディール帝国でいつまで人間が奴隷とされていたかは定かではない。人間たちはシロディールのアイレイド支配地域に住み続けていたが、どのような関係であったかについて示す確固たる証拠はない。

これはもともと不安定な関係であり、長続きするはずがなかった。帝国内にアイレイドの貴族が存続していることに対する憤りが、マルクが興したいわゆるアレッシア教団の繁栄を招いたのだ。教団による最初の犠牲者はシロディールのアイレイドたちだった。300年代初め、人間の支配地域で続いていたアイレイドの集落は次々に潰されていき、その避難民が残っていたアイレイド君主たちの力を一時的に増すこととなった。

そして361年アレッシア教団は帝国を完全に支配し、全域にアレッシア主義を強いる。アイレイドの君主は廃された。この教義の強制によって大規模な暴力が巻き起こることはなかったようだ。この時までに勢力はアイレイド側に大きく不利となっており、彼らの運命は明らかであった。残っていたアイレイドの大半がおとなしくシロディールを去り、ヴァレンウッドやハイロックのエルフたちに加わっていった。このシロディールからのアイレイドの大移住がディレニ王朝の興りに関わっていた可能性もある(これについての歴史家による研究はごくわずかである)。

しかしアレッシア教団の支配下で、残ったアイレイドたちは生き延びていたらしい。ディレニ派が482年、アレッシア教団に対し決定的な勝利を収めたグレナンブリア湿原の戦いに「アイレイド最後の王」が参加していたという説がある。王の一派がそれまでの1世紀どうやって存続していたのかは明らかになっていない。彼らが何者かも定かではないが、最近の調査では「最後の王」がネナラータに眠っている可能性が示唆されている。残念ながら現在の帝国の状況では、あのように広大な遺跡で適切な科学的調査を行う資金は捻出できない。そのため、これらの疑問に対する答えは未来の世代に期待するしかない。

アダバル・アThe Adabal-a

編者注:アダバル・アとは、奴隷の女王アレッシアの夫であったモリハウスの物語であると考えられている。このことについては歴史学的に証明することは難しいが、アダバル・アが第一紀から伝わる最古の文書のひとつであることは間違いない。

ペリナルの死

そして、血の海と化した白金の塔の玉座の間で、ペリナルの切り落とされた首は翼のある半神の雄牛にしてアレ=エシュの想い人、モリハウスに向かってこう語った。「我らの敵が私を殺し、この体を引き裂いて別々の場所に隠したのだ。神々の意思をあざ笑いながら、あのアイレイド達は私を8つに引き裂いた。彼らはその数字に取り付かれているからだ」

モリハウスは困惑し、鼻輪のついた鼻を鳴らして言った。「ホワイトストレーク、あなたの戦いぶりは彼女の想像を超えていた。だが、俺は思慮のない雄牛だ。これからすべての捕虜をこの角で突く。もし、あなたがやつらを生かしたままにしておくのなら。あなたは血まみれの栄光そのものだった、伯父よ、あなたは必ず帰ってくるだろう。今度は狐か光となって。シロドは我々のものだ」

そして、ペリナルは最期にこう語った。「気をつけろ、モリハウス。気をつけるんだ!こうして死にゆく私には感じられるのだ、敵はまだ生きている。それを知りながら死んでゆくのは辛いことだ。勝利を信じたまま死ねればよかったのだが。おそらくだが、彼は再び現れるだろう。油断するんじゃないぞ!私はもはや、人々をウマリルの復讐から守ってはやれないのだ」
 

アレッシアの若き奴隷時代

ペリフの出身部族はわかっていないが、彼女はサルド(サルダヴァー・リードとも呼ばれる)で育った。この地には、アイレイドがニベン中の数々の部族から人間を集めて来ていたのである。それらの部族とは、コスリ、ネード、アル・ゲマ、クリーズ族(彼らは後に北方から連れてこられたことが明らかになった)、ケプトゥ、ギー族(花の王ニリチが虫の神である??にいけにえを捧げたことで滅ぼされた)、アル・ハレッド、ケト族、その他であった。しかし、この地はシロドであり、支配者エルフたちの領土の中心であり、人間たちには何の自由も与えられていなかった。家族を持つことや、公に名前を持つことすら禁じられていた。侵略者の支配者たちは、彼らに名前をつける必要などみじんも感じていなかったのである。

人間たちは、岩を運んだり、用水路を作ったり、神殿や道路を整備したりといった労働を強制された。また、人間たちはアイレイドの拷問芸術の歪んだ喜びの犠牲にもなった。ヴィンダセルの嘆きの車輪、セルセンの内臓庭園、多くの奴隷の体に見られた人体彫刻などである。また、炎の王ハドゥールの領地ではさらにひどいことも行われていた。デイドロンから抽出した薬を人間に使って苦痛を与える新たな方法が発見されたのである。子供たちは夜になると彼らの戦いを見て大喜びした。

モリハウスが説明するアレッシアの名前

そして、モリハウスは彼らに言った。「彼女のことを語るとき、お前たちは彼女を様々な名前で呼ぶ。アレ=エシュというのは、畏敬の念を込めた呼び名だ。訳すと、「高貴な、あまりにも高貴な」という冗長な意味になる。アレ=エシュという名前がくずれて、もう少し親しみやすい呼び名が生まれた。アレシュト、エシャ、アレッシアなどだ。また、彼女はパラヴァントとしても知られている。彼女の即位のときに、「彼らのなかで始めたもの」という意味を込めてつけられた名前だ。死を免れない人間でありながら敵を討ち、捜し求め、癒し続けた彼女の偉大さを称えて神々が与えた。この名前からは、パラヴァル、ペヴェシュ、ペレス、ペリフなどの名前が生まれた。そして、俺自身は、大切な彼女をパラヴァニアと呼んでいた」

「彼女は俺のもとを去ってしまったが、今でも星々に囲まれて光り輝いている。最初の女帝、天の女神、シロドの女王として」

彼らはその答えに満足し、その場を去った。

タムリエルのアーティファクト パート1Tamrielic Artifacts, Part One

以下は私が過去数世紀にわたって集めてきた、想像を絶する重要性を持った品々に関する覚え書きである。そのいずれもタムリエルの至る所で繰り返し目撃され、所持され、失われてきた。一部は伝説で、その他はでっち上げかもしれない。しかし、それにも関わらず、多くの人々がこれら誰もが欲しがる品々を追って、または守ろうとして、命を落としてきた。

使徒のブーツ

使徒のブーツは真の謎である。誰も見たことがないが、噂によると、着用者は浮揚することが可能であるらしい。

影の弓

伝説によれば、影の弓はデイドラのノクターナルが鍛造したものである。伝説的なレンジャーであるラエルラス・ガイルは、秘密任務のためにこの弓を授けられたが、失敗してしまい弓は消えてしまった。ラエルラスは大人しく敗れた訳ではなく、この弓に助けられて多くの敵を道連れにしたと言われている。この弓は所有者に透明化の特殊能力を与え、速度を上昇させてくれる。影の弓の目撃は何度も報告されており、第二紀の邪悪なダークエルフのアサシン、ドラムも一度この弓を手にしたことがあると言われる。

クリサミア

このパラディンの剣は古代のクレイモアであり、その攻撃力を上回るのはこの剣の防御力のみである。装備する者に体力と炎からの保護を与え、唱えられた呪文を術者へと反射する。特定の勇者を好むことがないため、クリサミアが特定の剣士によって長期間保有されることはあまりない。

救世主の皮鎧

救世主の皮鎧は、ハーシーンのアーティファクトである。この胴鎧にはマジカに抵抗する特別な特殊能力があった。伝説によると、ハーシーンは彼の狩猟場から逃げ出せた最初で最後の定命の者に、彼の皮を褒美として与えたと伝えられている。この無名の定命の者は、この魔法の胴鎧にその皮を縫いこませた。救世主の皮鎧は、あたかも自分の意思を持っているかのように英雄から英雄へと移り行く傾向がある。

デイドラの災厄

デイドラの災厄はフィックルダイアーの炎の中で、神聖な黒檀から鍛造された巨大な戦棍である。マッカーンの伝説的な武器であり、かつては、暗黒の霊魂をオブリビオンへと送り返すために使われた凄まじい武器であった。この武器には、オブリビオンから魔物を召喚する特殊能力がある。

デンスタッグマーの指輪

この指輪に関して知られていることは、利用者に特定の要素からの保護を与えると言うことだけである。名前のデンスタッグマーでさえ謎である。

黒檀の鎧

黒檀の鎧は、先史時代にダークエルフの女神ボエシアによって作られた胸当てである。黒檀の鎧を誰が、どれくらいの期間所持するかを決めるのは彼女である。値すると判断された場合、着用者に火炎耐性とマジカ耐性を付加し、魔法の盾が与えられる。もはや黒檀の鎧を持つには不適格であると判断するのはボエシアのみであり、また、女神はとても気まぐれである。

エレイドンの結界

エレイドンはブレトンの歴史に登場する伝説の聖騎士である。彼はその武勇と、すべての不正を正そうとする決意から人気の高い男であった。ある物語の中で、彼は男爵の娘を邪悪な将軍の手による確実な死から救ったと言われている。報酬として、男爵は財のすべてをなげうって、エレイドンのために魔法の盾を作らせた。その盾はエレイドンに傷を治癒する機会を与えた。

ハイネックトゥナメットの牙

ブラック・マーシュにはかつて、アルゴニアンがワマスと呼んでいた生き物が生息していたことで知られている。北方の男たちはワマスを、稲妻を血に持つ知的な竜であると考えていた。そのうちの1匹である巨大な獣、ハイネックトゥナメットは北方の男たちによって殺されたが、大勢の男たちと7日間、連日連夜かかった。生き残った男のうちの1人は、戦利品として牙を家に持ち帰った。牙は刃の形に削られ、小さな短剣に仕立てられた。その短剣は不思議と獣の魔法の特性を保有しており、所持者に敵への雷ダメージを可能とする特殊能力を与える。旅の英雄が稀に持ち歩いている。

ランダガルフの拳

ベガリン・クランのランダガルフはタムリエルの歴史に、スカイリム出身の最強の戦士の1人として名を残している。彼はその武勇と戦闘での獰猛さで知られており、多くの戦いで帰趨を左右した。ハラルド王がスカイリムを征服したとき、ランダガルフは最後を遂げた。ハラルド王はこの偉大な英雄を尊敬しており、ランダガルフの籠手を自分のものにした。ハラルド王の死後、籠手は消えた。王はランダガルフの拳が所有者の腕力を上昇させたと話していた。

ゴールドブランド

この魔法の剣はほぼ完全な謎である。黄金が作られた様子や、北の古代の竜によって鍛造されたなどの話を盗賊が広めている。彼らの物語によると、それは竜を守ると誓った偉大な騎士に与えられたとされている。その剣は所持者に、炎ダメージを敵に与える特殊能力を授ける。ゴールドブランドは、最近の歴史では目撃されておらず、値する英雄を待っていると言われている。

オレイン・ベアクローの兜

オレイン・ベアクローはヴァレンウッドの伝説の英雄の1人である。「蛙の目」ファウム王の息子で、クランの狩人として尊敬されており、将来の指導者であった。ウッドエルフの伝説は、オレインがエルフの森の魔女、グレンヒャファンヴァを1人で倒し、永遠に彼のクランに平和をもたらしたと伝えている。オレインはその後、多くの偉業を成し遂げ、最終的にはナハテン風邪によって命を奪われた。彼の兜は偉大さの記念碑として、未来の世代が忘れぬよう飾られた。クランが分裂したため結果的に兜は失われてしまい、今は冒険者たちの貴重なアーティファクトとなっている。オレイン・ベアクローの兜は着用者の敏捷性と耐久力を上昇させると噂されている。

タムリエルのアーティファクト パート2Tamrielic Artifacts, Part Two

以下は私が過去数世紀にわたって集めてきた、想像を絶する重要性を持った品々に関する覚え書きである。そのいずれもタムリエルの至る所で繰り返し目撃され、所持され、失われてきた。一部は伝説で、その他はでっち上げかもしれない。しかし、それにも関わらず、多くの人々がこれら誰もが欲しがる品々を追って、または守ろうとして、命を落としてきた。

君主の氷剣

君主の氷剣は真にタムリエルでもっとも珍重されるアーティファクトの1つである。伝説によると、邪悪な大魔術師アルミオン・セルモは、よく目にする氷の精霊の強い個体である氷の君主の魂で、偉大な戦士のクレイモアに付呪したとされている。戦士スルグナー・アッシは、遥か遠くの国の偉大なる王者暗殺の一端を担い、そこの新しい指導者となるはずであった。しかし、暗殺は失敗してしまい、大魔術師は投獄されてしまった。氷剣は、その刃に触れる者すべてを凍らせる。この剣は、次から次へと所有者を変え、一ヶ所に長く留まることはない。

領主の鎧

この太古の胴鎧は卓越した品質を誇り、時にはモリハウスの鎧、またはキナレスの贈り物と呼ばれる。この鎧は着用者に、体力吸収と呪文抵抗の特殊能力を与え、使用した際には自分自身を解毒する。キナレスが着用者のことを相応しくないと判断した場合、領主の鎧は取り上げられ、次の選ばれし者のために隠されると伝えられている。

モラグ・バルの戦棍

吸血鬼の戦棍としても知られるモラグ・バルの戦棍は、相手のマジカを流出させ、装備しているものに与える。その戦棍には敵の力を装備車に移し変える特殊能力もある。モラグ・バルは彼のアーティファクトを惜しみなく使っていたようだ。その戦棍に関する伝説は数多くある。この武器は、魔術師を倒す時に好まれるようだ。

クラヴィカス・ヴァイルの仮面

うぬぼれの強いクラヴィカス・ヴァイルは、彼自身の人格に相応しい仮面を作った。仮面の所有者は、タムリエルの住人から良い反応を得られやすい。人格が優れているほど恩恵は大きい。一番知られている仮面の話は、有名な貴族女性アヴァレアの物語である。幼少の頃、彼女は悪質な召使によって、ひどく醜くされてしまった。アヴァレアはクラヴィカス・ヴァイルと暗黒の取引を交わし、見返りに仮面を受け取った。仮面は彼女の外見を変えることはなかったが、急に万人から敬われ、称賛された。広い人脈を持った男爵と結婚してから1年と1日後、クラヴィカス・ヴァイルは仮面を取り戻した。アヴァレアは彼の子を身籠っていたが、男爵の一家から追い出された。21年と1日後、アヴァレアの娘が男爵を殺してあだ討ちをなした。

メエルーンズのカミソリ

闇の一党はこの黒檀の短剣を何世代にもわたって切望してきた。この伝説上のアーティファクトはどのような生物であっても、一瞬にして葬ることが可能であるとされている。メエルーンズのカミソリの所持者は歴史上、1人も記録されていない。しかし、闇の一党は一度、内部の酷い権力争いによって壊滅している。それには、このメエルーンズのカミソリが関係していたと疑われている。

指導者の指輪

この簡素な金属の指輪は、どの魔術士見習いにも珍重される所持品である。この指輪は、着用者に知力と英知を上昇させる特殊能力を与えてくれるので、魔法利用の効率が向上する。上級魔術師のカルニ・アスロンが製作者であると言われている。彼の指導の下で学んでいた、若い見習いのために作った製作品である。アスロンの死後、指輪と他の所持品のいくつかが消失し、以後それらはタムリエル全土を巡っている。

カジートの指輪

カジートの指輪は、その指輪を有名にした盗賊ラジーンより何百年も古い太古の遺物である。ラジーンは指輪の力を使って自分を透明にし、疾風の如く迅速にした。彼は指輪のおかげでエルスウェア史上、もっとも成功した泥棒になった。ラジーンがその後どうなったかは謎だが、伝説によると、指輪はそのような使われ方に反発し、敵の目前で消えて彼を置き去りにしたと伝えられている。

フィナスタールの指輪

フィナスタールの指輪は、冒険的な人生を生き抜くために、良質な防具を必要としていた男によって、何百年も前に作られた。指輪のおかげでフィナスタールは何百年もの間生き続け、それ以降、指輪は人から人へと持ち主が変わった。その指輪は、着用者の毒、マジカ、雷撃への全体的耐性を高める。しかし、フィナスタールは抜け目なくその指輪に、フィナスタール以外とはどこにいても不満になり、いずれは狩りの所有者の手を離れ、他の居場所へと消えていくよう呪いをかけた。

環境の指輪

この貴重品に関して知られていることは少ないが、この指輪は着用者に、周囲の環境に溶け込む特殊能力を与えてくれると言われている。

風の指輪

この指輪に関する事実は何も知られていないが、この指輪の名前といくつかの噂から、着用者に速度を加えると考えられる。

タムリエルのアーティファクト パート3Tamrielic Artifacts, Part Three

以下は私が過去数世紀にわたって集めてきた、想像を絶する重要性を持った品々に関する覚え書きである。そのいずれもタムリエルの至る所で繰り返し目撃され、所持され、失われてきた。一部は伝説で、その他はでっち上げかもしれない。しかし、それにも関わらず、多くの人々がこれら誰もが欲しがる品々を追って、または守ろうとして、命を落としてきた。

スカルクラッシャー

スカルクラッシャーは非常に大きく強力な武器である。この戦槌は魔術師ドラッチ・グサルによって魔法を燃料とする火で作られ、卓越した武器鍛冶職人ヒルボンガード・ローラマスによって鍛造された。鋼は魔法により鍛えられ、武器の重量は驚くほどに軽いため、さらに強力で痛烈な殴打が繰りだせる。この戦槌は祝祭にて飾られる予定であったが、盗賊に先を越されてしまった。スカルクラッシャーは今も製作者を探してタムリエルを旅している。

苦い慈悲の槍

苦い慈悲の槍は、他にも増して謎めいているアーティファクトの1つである。この槍に関して知られていることは皆無か、それに等しい。歴史の記録はないが、多くの人々はデイドラが起源であると信じている。

破呪の盾

一見ドゥエマーのタワーシールドに見える破呪の盾は、タムリエルのアーティファクトのなかでももっとも古い遺物の1つである。ロールケン・シャリドールの戦いでの歴史的重要性に加え、破呪の盾は呪文を反射するか、呪文を唱えようとしている魔術師を沈黙させ、盾を装備しているものをほぼ完全に術者から保護してくれる。破呪の盾はいまだに初代の所有者を探していると伝えられ、他の者の手中には長く留まらない。ほとんどの者にとって、破呪の盾を一定期間所持することは手に余る。

ヘイズドキの杖

ヘイズドキはとても負けず嫌いな魔術師であったと言われていた。彼は全土を歩き回り、彼より優れた魔術師を捜し求めた。知られている限りでは、彼の挑戦に応えられる魔術師は見つからなかった。多くの人々が彼の力を恐れたため、彼は寂しさと孤独を感じ、自らの生命力を彼自身の杖に結合させ、今なお彼の魂はそこに残っていると言われている。タムリエル全土の魔法の使い手がこの魔法の杖を探している。この杖は所有者にマジカからの保護を与え、どの魔法使いにとっても確かな貴重品となる。

マグナスの杖

タムリエルのアーティファクトの中でも古いほうであるマグナスの杖は、生みの親であるマグナスにとって、超自然的道具の類であった。使用されると、敵の体力と神秘のエネルギーを吸収する。やがてその杖は、所持する者が強力になりすぎて、杖自らが保護を誓った神秘の均衡を狂わす前に魔術士の下を離れる。

ウンブラの剣

ウンブラの剣は太古の魔女ナエンラ・ワエルによって付呪され、その唯一の目的は魂の捕獲である。魂石と同時に使うと、敵の魂を石に封じ込める機会を所有者に与える。ナエンラは邪悪な創作が理由で処刑されたが、その前にこの剣を隠すことができた。ウンブラの剣は所有者に関してとても選り好みするので、値する人物が見つかるまで隠れたままである。

吸血の指輪

吸血の指輪は、タムリエルでもより危険かつ珍しいアーティファクトである。この指輪には相手の体力を盗む特殊能力があり、それらを着用者に与えると言われている。指輪の確実な性質とその由来は全く未知である。しかし、多くの長老たちは、吸血鬼信者の教団による、モロウウィンドではるか昔に行われた邪悪な製作について語っている。吸血の指輪は極めて珍しいアーティファクトであり、月の何百周期か毎にしか見られない。

妖術師の指輪

大魔術師シラベインの妖術師の指輪は、神話や作り話の遺物のなかでも最も人気があるうちの1つである。タムリエルの古代史の中で、シラベインは指輪の思慮深い利用法によって大陸全土を救った。それ以降、この指輪はシラベイン程の崇高な目標を持たない冒険者たちの手助けを行ってきた。この指輪は、着用者に向けて唱えられた呪文を反射する特殊能力で最もよく知られている。この指輪はシラベインのみが命令できると言われているため、長期間にわたって妖術師の指輪を着用できる冒険者はいない。

王者のアミュレットThe Amulet of Kings

第一版
ウェネングラス・モンホナ 著

第一紀初頭、アイレイド、あるいは「ハートランドのハイエルフ」と呼ばれる強力なエルフの一族が、中央タムリエルで圧政を敷いた。横柄で傲慢なアイレイドは、危険きわまりないデイドラロードを頼ってデイドラと死霊を呼び出させ、軍隊を編成していた。アイレイドはこの恐れを知らない魔法の軍団を使って若い人間に容赦なく襲いかかり、気の向くままに虐殺し、奴隷にした。

苦しみにあえぐ人間の姿を見かねたシロディール家の始祖、聖アレッシアは、気高きエドラを統べていた「時の竜神」アカトシュに助けを求めた。アカトシュはもだえ苦しむ人間を哀れみ、自らの心臓からかけがえのない血をしぼり出すと、その血で聖アレッシアを祝福した。そして、アレッシアの家系が竜の血脈に誠実でいるかぎり、アカトシュはオブリビオンの門をかたく封じ、彼らの敵であるデイドラ狂いのアイレイドの手に、デイドラや死霊の軍隊が渡らないようにするという契約を交わした。

この契約の証としてアカトシュは、アレッシアとその子孫に「王者のアミュレット」と「帝都の永遠なるドラゴンファイア」を授けた。アレッシアがシロディール家に伝わる王者のアミュレットのひとつめの宝石となるまでには、こういう経緯があったのだ。アミュレットの中央にはめられたレッド・ダイヤモンドがその宝石である。王者のアミュレットは帝都の象徴であり、その後、セプティム家の象徴となった。八個の宝石で縁取りが施されており、それぞれの宝石が神を意味している。

アカトシュとその同輩の崇拝が帝都で続けられ、アレッシアの後継者が王者のアミュレットを身につけるかぎり、アカトシュとその神聖なる同輩は、タムリエルとオブリビオンを分かつ強力な障壁が破られないよう守っていくことだろう定命の者がもう二度と、デイドラの主の召喚による破壊を恐れなくてもいいように。

しかし、帝都が八大神への献身をおろそかにし、アレッシアの家系が途絶えるようなことがあれば、タムリエルとデイドラの世界を隔てる障壁は崩壊し、デイドラの崇拝者は下級デイドラや資料を召喚して人間に苦難をもたらすであろう。

神殿の浄化The Cleansing of the Fane

マルク聖教団の年代記

[編者注:本文書はアレッシア教団第一紀の分派である同教団の記録のうち、現存が確認されているものの一つである。カヌラス湖にある同教団の大修道院群が正道戦争(第一紀2321年)の際に破壊され、保管文書が喪失ないし分散してしまうまで、そこに保管されていたようだ

なお、この時代のアレッシア派の書記はアレッシアの神化(第一紀266年)を元に日付を算出していた点に留意されたい。]

以下に、アレッシアの祝福127年目の出来事を記す。

この年は全土において昼の光が暗くなり、太陽がマッサー三日程度の暖かさにとどまり、日中でありながらその周囲に星々が見えることがあった。これは蒔種の月の5日のことであった。これを目にした者は誰もが不安を覚え、近々大いなる出来事が訪れるであろうと口々に語った。

いかにも、同年中に太古のエルフの神殿であるマラーダより、ベルハルザ王の御世以来となる規模の魔族の大群が湧き出たのであった。これら魔族の汚濁により大地は冒され、耕すことも刈り取ることも種を蒔くことすらままならず、人々は支援を求め、マルク聖教団にすがった。

これを受けてコスマス修道院長が全員を終結させ、エルフの言葉で「大いなる神殿」としても知られるマラーダへと向かい、聖なる炎をもってそれを攻め、汚らわしい魔族たちは滅ぼされ、神殿内で発見された多数の邪悪なる遺物や書物が燃やされたのであった。そしてその地では何年もの間、平和が続くこととなった。

星霜の書の整理An Accounting of the Elder Scrolls

元帝国司書
クインタス・ナーベラス 著

帝国蔵書庫から星霜の書が盗まれたとされた後、このような事件を今後避けるため(少なくとも適切に検証をするため)、私は保管するありとあらゆる巻物の索引や目録を見つけようとした。残念なことに、実際の星霜の書の物理的状態については、聖蚕の司祭が不正確なことで悪名高いと分かった。彼らがいくつ所持していたか、どうやって整理されていたのかも分からなかった。まるで子供がなぜ犬は話せないのかと聞いたかのように、ただ質問しただけでクスクスと笑われた。

白状しよう。星霜の書を読める者への嫉妬は膨らむが、私は疑わしい知識のために視力を犠牲にする気はまだなかった。さりげなく会話をしようとした年長の聖蚕の司祭は、正気を失ってしまった他の年長者と同じように正気ではないように見えた。そのため、読むことで授かる見識を見損ねたのだ。

とにかく、モンクと協力して自分の星霜の書の目録を作るつもりだった。毎日、塔の広間を通り過ぎるたびに、その場所を記録できるようそれぞれの星霜の書の性質を教えてもらった。決して自分で文字を見ないように注意していたので、手掛かりは彼らの言葉だけだった。細心の注意を払い、どこにありとあらゆる予言に関する星霜の書が置かれているか、歴史のどの時代が保管されているかを示す部屋の地図を作った。コツコツと作業を進め1年近く過ぎたが、ついに照合を始めるために使う蔵書庫全体の大まかなメモが出き上がった。

うまく進まなくなって来たのはここからだ。メモを見ると、重複点や矛盾点がたくさんの場所にあった。それぞれ別のモンクが、同じ星霜の書を塔の反対側にあると主張したこともあった。モンクたちがふざけているのではないのは分かる。彼らの遊びに付き合ってバカにされているのでなければ。

年長のモンクの1人と話し、私の心配を説明した。彼は無駄にした時間を哀れんで頭を垂らした。彼は咳こんで「これを始めた時、すべての努力が無駄になるだろうと言わなかったか?星霜の書は数えられる形では存在しないのだ」と言った。

「巻物の数が多すぎて数えられないという意味だと思いました」

「そうだ。しかし複雑なのだ。後ろの倉庫を調べて、巻物がいくつそこにしまわれているか言ってみろ」

金属の外箱に指を這わせ、それぞれの角の丸みを数え上げた。戻って「14です」と言った。

「8番目のものを取ってくれ」と言って手を伸ばした。

円筒を彼の手に渡すと、彼はかすかに頷いて言った。「さあ、もう1度数えてみろ」

言われたとおり再び巻物に手を這わせたが、私が感じていることが信じられなかった。

「今…今は18になってる!」私は息をのんだ。

年老いたモンクはクックと笑った。皴が重なって頬が目を隠すほどだった。「事実、いつだってそこにあったのだ」と彼は言った。

その時、私は今まで聖蚕の教団に受け入れられた最年長の見習いとなった。

聖蚕会の命令The Order of the Ancestor Moth

この聖堂で修行する者は以下を読むこと:

聖蚕会は古代から続く高貴な教団である。我々が育み賛美するのは、聖蚕の形をとって現れる、敬愛する祖先の魂である。それぞれの蚕は祖先の魂のフィロンを持っている。フィロンとは、大雑把に訳せば「平和を求める心」となり、それは歌われることで聖蚕が作る繭の中に込められるのである。その繭から絹糸を紡ぎ、布を織り、正しい祖先へと導く系譜を刺しゅうすれば、素晴らしい力を持った服ができあがる。

教団の者は予知の能力を持つ。この祖先の知恵は、未来を現在に歌い表すことができるのである。そのため、我々の教団は星霜の書の理解という恩恵にあずかることができるが、それは我々の教団のみに許された特権なのである。これらの予言書はエドラとデイドラ双方の神々をも超越している。この現実を織りなす繊維の隙間を覗き込むことは代償を伴う。星霜の書は、読み進めるにつれて難解さを増すという性質を持っている。読んだ代償として視力を失う期間もまた、読むほどに長くなるのである。そして、最期まで読み進めば予言の内容の真髄までをほぼ知ることができるが、その者は永遠に視力を失いこの世の光に別れを告げねばならない。そうなっては予言を読むこともかなわない。

修道院は、我々の教団のそういった高位の者たちが住み、他の者たちが彼らに仕える場所である。彼らは世俗を離れ、敬愛する聖蚕たちと共に生きている。彼らのいる地下は聖蚕たちにとって住みやすい場所なのである。彼らはか弱い蚕たちを育み、歌いかける。また、絹糸をとり、紡ぎ、布を織り、繭を作った祖先の系譜を歴史を刺しゅうする。これが、彼らの新しい生活である。

彼らが聖蚕の世話をしているあいだ、我々が盲目の修道士たちの世話をする。彼らが闇の中で働くあいだ、我々は光のもとで働くのである。彼らの求める食べ物と水を提供する。彼らの求める道具や家具を提供する。彼らの求める秘密と匿名性を提供する。そして、彼らの労働の成果を売りにゆく者を提供する。

排他的な任務The Exclusionary Mandates

マルクの選ばれし者による排他令:いずれも同等である

1:最上位の霊魂アカトシュは、時の単一の直線性が証明するとおり単一の存在である。

1:シェザールの失われし兄弟は誤った特異点であり、それ故に倍崇められている。

1:多様な培養基が(1)からあらゆる手段を用いてアルドメリの汚点を取り除くべきだと教えてくれる。

1:至高類人猿の予言者は、単一の思考が正しい人生を招くと示した。

1:正しき命の目的は汚点を抹消することである。

1:時の狐は聖なる抹消のため定命の者の舞台をもたらす。

1:アカトシュは時であり正しき命、そして汚れた死である。