マラバル・トールの伝承

Malabal Tor Lore

アビシアンの海賊Pirates of the Abecean

嵐がサラジャ船長の計画に予期せぬ変更をもたらした。彼女は海賊船の裂けた帆と折れたマストを見つめた。つい最近の略奪品が流されただけでなく、風がなくなり修理を終えるまで進めなくなってしまった。

「座礁したも同じですよ」。一等航海士のフルツが険しい顔で言った。

「船がいたら、乗ってる奴らに降りるよう話をつけるさ」と船長はしわがれ声で笑って答えた。「船は動けないがまだ浮いてる。お前は悪いことばかり考えてるな」

「だとしてもずっと…あれは船では?」

サラジャは振り返りニヤリと笑った。「未来の我々の船ってことだ」

フルツは距離を見て思慮深く言った。「そう遠くはない。ボートを降ろしましょう」

すぐに乗組員のカジートたちは船に乗り移る準備を整えた。砂州に錨を降ろしたその船は無傷なようだ。近づきながらサラジャは動きがないか船と空の境を見る。静かなものだ。略奪の機は熟した。

フルツが暗い船体をゆっくりと探りながら登っていく。仲間たちが網を張り乗船できるよう、こちら側に警備がいたら彼が抑えなければならない。そっと甲板に上がると、フルツは船首と船尾にちらりと目をやった。警備はいない。手すりから身を乗り出して仲間に合図を送る。

次々と海賊たちが乗船し、武器を抜いて音を立てずに歩き回る。静かな船に全員が乗り込んだ。

「遊覧航海には大きすぎますね」とフルツが船長に囁いた。「それに武装の割に静かすぎる」

サラジャは船室の扉を示して頷いた。「あそこに隠れてるんだろう」と囁く。「我が船から降りてもらおうじゃないか」

ときの声を上げてフルツが船室のドアを蹴り破った。爪を出し武器を構えた海賊たちが彼に続くが、10歩も行かずに足を止めた。中は静かで暗い。

「どうなってるんだ?」

「早く!明かりをくれ!」

海賊の1人がほくちと火打ち石を打つ。ゆっくりとたいまつを掲げると、室内いたるところにある鏡にほのかな明かりが映り込んだ。

「なんてこった!コスリンギだ!」

「コスリンギの死体だ!」

サラジャは壊れた船に戻るよう全員に命じるが、もう手遅れだった。紅き船を見て、生きて戻った者はいない。乗組員たちは見る以上のことをしたのだ。

ヴァレンウッド:研究Valenwood: A Study

公文書保管人 エンダラナンデ 著

アルドメリ・ドミニオンの多くの命がヴァレンウッドで生まれている。緑の森に覆われ、多様な動植物で溢れかえるこの地は、古きエルノフェイから来た最初のエルフたちの一部にとっては故郷である。

時と世代を経て、この初期の移住者たちは森に適応していった。新たな獲物たちを研究してステルスや巧妙さを身につけた。やがて彼らはボズマーことウッドエルフとなった。アルトマーより小柄で、勤勉かつ機敏な彼らは射手や斥候として名高い。

果敢な戦闘員としてのボズマーにはグリーンパクトという独自の強みがある。ボズマーの伝説によると、森の神イフレが敵を破る方法を授けたのだという。ただしヴァレンウッドの植物を食べたり傷つけたり、収穫することはしないのが条件だ。

グリーンパクトの一つの結果であるワイルドハントも有名だが、これについては語らないでおこう。

ボズマーはよその土地から救いを求めてヴァレンウッドに来た者を歓迎する。この点について彼らは、近縁の生粋のアルトマーとは大きく異なる。我々は尊厳を維持しようとするが、ボズマーは若木のようにたやすく他者の意志に従うのだ。

乱暴で愚直だが、このウッドエルフたちはドミニオンにとって不可欠な存在である。我々の同盟の繁栄のため、失うわけにはいかないのだ。

ヴァレンウッドのアイレイド都市Ayleid Cities of Valenwood

抄録

グウィリム大学の高名な歴史家 ホムフリー 著 第二紀445年

南部地域におけるハートランド・ハイエルフの輝かしい集落についての調査

…ここで、注目に値するセイヤタタルの街々や現代のブラヴィルの元になったアイレイドの集落に触れるべきだろう。これらはヘヴン、ウッドハース、シルヴェナールといったヴァレンウッドの街に並び、いずれも栄えていた。現在シロディールの中心である場所に白金の塔が建った後、貿易が活性化したことによるものだった。

特に注目すべきは、エルデンルート近くの大学や蔵書庫だ。その地のアイレイドはエルデンの木、別名始まりの木とその周辺に街を築いた。この木がヴァレンウッド全域に種をまいたのだと多くの者に信じられている。

ヘヴンとウッドハースはマオマーの攻撃で徹底的に破壊された。マオマーはヴァレンウッドのアルドマーの進んだ文明に配慮することはなかった。内陸へと進軍した彼らはエルデンルートを居留地にしただけでなく、あの大樹までも奪ったのだ。あのように荘厳なものを傷つけ奪うとは、なんと不埒な部族か。

マオマーはアルドマーの民族的純粋性を保つ伝統を破り、ピャンドニア先住の野蛮な部族と交わった可能性がある。それならば彼らの凶暴性や、本土の偉大なエルフ文化に対する敬意のなさも説明がつくだろう。

ウッズマーThe Woodsmer

ウィローレッグは足首をさすった。折れてはいない。捻っただけだ。彼は慎重に足に体重をかけ、立ち上がった。よし。耐えられそうだ。ヴァレンウッドを旅しながら、よく転んでいた。彼の片足はもう一方より細く、時々それを忘れてしまうのだ。

「さて、ここはどこか突き止めるか」。ウィローレッグは言った。頭上高く出揺れる木々の葉を見上げると、その間に青空が時折見え隠れする。ウッドエルフでなければ、そんなわずかな眺めからは何もわからない。ウィローレッグはすぐにまた歩き始めた。

すぐに、自分だけではないと気付く。彼の左手に別のウッドエルフがいた。ぼさぼさの濃緑色の髪を顔の周りに垂らしている。一人旅に慣れている彼は、その静かな同行者が彼を追い越さないよう、歩く速度を合わせていることにも気が付いた。

「あんたもファリネスティに?」。ウィローレッグは訊ねた。

「ああ」

ウィローレッグは気さくに続けた。「移動前に夏の地に着けるといいんだが」

緑髪のウッドエルフは言った。「大丈夫だろう」。これ以上話したくなさそうな声音にウィローレッグは黙って頷き、歩き続けた。

彼らはその日ずっと、黙ったまま一緒に旅をした。ウィローレッグが休憩しようと止まると見知らぬ男も足を止めた。ウィローレッグは水と干し肉を分けてやった。そしてまた、残りの旅路につく。木々がまばらになっていき、ファリネスティがぴったり収まった空き地に出た。

空き地の端で、見知らぬ男は立ち止まりウィローレッグの腕に手を置いた。驚いたウィローレッグは、その緑髪のエルフの肌がザラザラで硬く、樹皮のようだと気付いた。

「ここにいろ」と男は言い、小声で呪文を唱えた。

ウィローレッグは動くことも話すこともできず、男がファリネスティの根元へ行き、表面に額で触れるのを見ていた。木の街は震えると、大地から根を上げてゆっくりと移動を始めた。

緑髪のエルフがファリネスティを連れて歩き去ると、ウィローレッグはかけられた奇妙な呪文が解けるのを感じた。そして手足のうずきとともに動けるようになった。下を見た彼は細い片足が治っているのに気付いたが、靴はなくなっていた。

「ウッズマー」だ。ウィローレッグは畏敬の念を抱きつぶやいた。ウッズマーは森で不用心に迷った者を導く神話の存在だが、道を知る者に恵みを授けるとも言われている。

ファリネスティは南へ移動し、ウィローレッグはどこへ行ったのかと考えた。

ウッドエルフのユーモアThe Humor of Wood Elves

発明家テレンジャーによる収集

発酵飲料で広く知られるバルクワステンには、知る中でも特に気さくなボズマーが暮らしている。種族の特徴でもあるが、彼らは勤勉でたいていの人とうまく付き合える。彼らの醸造方法の調査を終え、地元の家に泊めてもらった。

歴史家として私は、ユーモアを研究すればその文化の多くを学べると考えている。そこで将来の研究のために彼らのジョークを書き留めておく。彼らの娯楽をよく知ればきっと、ボズマーの考え方をより深く理解できるだろう。

スケルトンが酒場に入ってきてこう言ったんだ。「ロトメスをくれ。あとモップも」

Q:なぜ猿が木から落ちたか?
A:死んでたから。

Q.茶色くてボーッとしたものは何?
A.棒だろ。

人物1:俺が木か聞いてみな。
人物2:お前は木か?
人物1:いいや。

Q.レイヴンのどっち側に一番羽毛が生えてる?
A.外側。

Q.頭が3つあって、醜くて臭いものは何?
A.おっと違った!君の頭は3つないな!

Q.羽のように軽いけど、あまり長くは持たないものは何?
A.息。

Q.スローターフィッシュがいるのにボートが沈みかけるのを想像して。どう助かる?
A.想像するのをやめる!

Q.なぜサンダーバグは生肉を食べるのか?
A.料理を習ったことがないから。

Q.なぜハチはブンブン言うのか?
A.口笛が吹けないから。

グリーンレディ、わが淑女Green Lady, My Lady

我が淑女よ目覚めよ、朝が来た
あなたを絹で着飾ろう
髪には羽を編み込んで
足には革の履き物を履かせよう

我が淑女よこちらへ、愛が待っている
今日この日、テーブルを囲もう
宴のテーブルの上は
美味なるごちそうばかり

グリーンレディ、我が淑女よこちらへ
客人たちは集まった
そして陽気で楽しい音楽が響く
イフレの子らはなんと恵まれているか!

結婚披露宴:回顧録The Wedding Feast: A Memoir

別名「裸しっぽ」のナラル 著 日付のない回顧録

子供たちよ、旅で出会うウッドエルフたちの奇妙な性質について理解できるよう、ナラルがこれを書き残します。彼らの恨み深さには気をつけて!

最上位のエルフ2人の結婚の宴のため、何ヶ月も前から準備が始まりました。彼らの結婚は森とその人々が一つであるという証。そのためとても大きな宴なのです。

商人として、王族へのちょっとした食べ物の用意をよく依頼されていました。名は挙げないまでも率直に言えば、ムーンシュガーをまぶしたビスケットをエルデンルートの宴のために何度も用意していました。でもこの結婚の宴では、私にできる以上のことをたくさん要求されて、土壇場での変更を余儀なくされたのです。

牛のスープ50樽については、根菜スープを足すことで30樽分を用意して埋めあわせました。ウッドエルフは死んだ素材にはこだわらないので、手に入る骨なら何でもよしとして出どころは聞かずに骨髄10カゴ分を用意しました。

でも小麦粉を使わないケーキ?そんなの聞いたこともない!それが作れるというウッドエルフのパン職人たちに相談しました。ウッドエルフはよそ者に用意されたのでなければ植物は食べません。それなのに小麦粉なしのケーキを出せというのには戸惑いました。そしてレシピをいくつか入手し卸売業者に確認すると、期限内に必要な量を揃えられる者はいませんでした。

かくして私はケーキ作りを始めました。卵のかさ増しをするため水で薄めます。その緩さを消すためにアロールートと粉末のフラックスシードを加えました。砂糖はケーキで最も高価な材料だったので、使う量を減らすために石灰の粉を足しました。味はケーキに似ていました。とても似ていた。これはかかった時間も金もわずかで、ケーキだけで儲けは2倍となったのです。

でもバターの代用品にしたラードと泡立てたフラックスシードオイルが、多くの客人の腹とこの私に破滅をもたらしました。

ウッドエルフは以降の契約をすべて打ち切っただけでなく私の尾の毛をそり、あわてて逃げた私の所持品や品物も奪ったのです。

子供たちよ、ウッドエルフの宴に商品を提供してはいけません。必ず辛い結果に終わります。

赤い塗料The Red Paint

「このように混ぜなさい」とラカールが言った。湿った粘土とハーブを規則的な動きで乳棒ですりつぶす。「塗料を作るという行為そのものが祈りなの」

ヤシールは自分の石の乳棒を掴むと、器を引き寄せて女司祭をまねた。

叩く!上げる!一つかみのハーブを器にばらまき、また叩く!オークたちは膝をつき合わせて側に座り、曲げた膝で器を支えている。

ラカールは動きに合わせて、そっと詠唱した。徐々に一団の動きが強さを帯びてくると、彼女の声はそれに釣り合う大きさになった。

「モーロッチは!」叩く!

「我々の行いを…」上げる!

「…見ている!」ばらまく!

部族の化粧の準備をするという名誉は、少数の族長の娘たちのものだった。ヤシールはこの輪に加わり座ったことはない。これまではハーブや粘土を集めていて、それ以上はなかった。それが今はラカールの右側という栄誉ある位置に座っている。若いウッドオークは誇りを感じた。彼女は明らかに、見習いに選ばれたのだ!

「モーロッチは!」叩く!

「我々に…」上げる!

「…血をくださる!」ばらまく!

最後の言葉で女たちは頭を後ろにそらせ、モーロッチの叫びを解放した。喉の奥から出た遠吠えが木々の間や近くの崖に響き渡る。ラカールは仕事の完了を合図した。

部族の者たちが列を成す。できたての戦赤の粘土で化粧を施してもらうのだ。ラカールは戦にふさわしくない、あるいは向かないと見なした者を脇へとよけさせる。彼らは化粧の儀式に参加することは許されない。

ラカールに列から出るよう合図され、ヤシールは抗議の声を上げようとしたが口を堅くつぐんだ。ラカールの判断に異議を申し立てるのは不名誉とされる。混乱した怒りで頭を下げたまま、ヤシールは選ばれなかった少数のオークに加わった。

ラカールは選ばれなかった者たちに目をやり、ヤシールを自分の横に連れ出した。「モーロッチは次の儀式を行う者にお前を選んだの。剣を持ちなさい。忘れないで、モーロッチはお前を見ています」

ヤシールの手を引いてラカールは空のボトルの上にかがみ、伸ばした首に若いオークの剣を滑らせた。真の戦士の聖なる血で次の化粧を施すため、彼女が意識を失おうとしていてもラカールの手は緩まなかった。

夫はネレイドに盗まれたA Nereid Stole My Husband

ネレイドが私の夫を奪った
私の夫をネレイドが奪った
海辺の乙女には用心して
次にあなたが慰められないように。

私たちは無邪気に海岸をぶらついて
貝を集めたり石をひっくり返したり
そして声が聞こえ今の私は嘆く
その声、歌は、あんなに高い声で!

すぐに夫は足を速めた
「待って」私は叫んだ「ネレイドよ」
しかし夫はさらに足を速めた
彼女の甘い呼び声には逆らえない。

手遅れだ、ああ悲しいかな、もう遅い
彼の心は傾き、もう深い虜
彼の恐れは運命のように現実に
彼はネレイドの呼び声に従った。

そして彼女は美しく残酷で無分別
姉妹の元へ泳ぎながら叫んだ
「あなたの夫はつまらない
返してあげるわ、背中曲がりの奥さん!」

ネレイドが夫を奪って
すぐに返してきた
かわいそうな私、あの日から
望まれないのに彼の側にいる!

民の声The Voice of the People

変化は風の中に。木々の葉や、水の流れの中に。動物たちですらその違いを感じ取れる。「民の声」は沈黙していた。

シルヴェナールは死んだ。予想されてはいたが、多かれ少なかれ騒動を伴う事態だ。

優先すべきは街か、それともシルヴェナールか?答えを知る者も気にする者もいないようだ。かつて混沌があり、何世代も続く社会構造が現れた。いや、社会構造のようなものだ。むしろ組織だった狂乱と呼ぶほうが近い。

次のシルヴェナールである若い男が、マントを手にしようとする。

「彼らが待っています」と従者が言った。彼女は発酵したスープの入ったアラバスターのゴブレットを差し出す。

「わかっている。少し待ってくれ」。インデニールは儀式のカップを受け取る前に目を閉じ、深く息をした。

シルヴェナール。公式には結婚までこの称号は彼のものではなかった。だが彼はすでに変化を感じることができた。耳元での蛾の羽ばたきのように、新たな身分が彼の脈拍を速めてインデニールに囁いてくる。くすぐったい気分だ。

シルヴェナールはウッドエルフの代表だ。彼もしくは彼女は、民の意思を感じそれに従って行動する。この関係は双方に作用する。彼もしくは彼女は、ウッドエルフに影響を与えうるのだ。

彼の民は緊張していた。

リフトの伝承

The Rift Lore

さまようスカルドThe Wandering Skald

あらゆる蔵書庫がカビ臭い古い物語を抱えている
それは雨と雪の中、運ばれた
だがノルドのスカルドは喜んで人々をもてなす
それは遥か昔に詩人達に広く歌われていた物語

あらゆる本には題名と名前がある
だがそのページはすぐに塵となる
私達の歌う詩は名誉と共に生き続ける
私達全てが信じる時代から

古い物語は遥か昔から伝えられてきた
抑揚と拍子と詩歌と共に
すぐにスカルドの顧客は期せずして知ることになる
「そうだ、私の人生は悪くない」

そして王達は真実を知る
剣や盾よりもましなことを
過ぎ去った若き日々から教えられる
スカルド王には行使する英知がある

よくぞ来てくれた友よ
今夜歌う詩のために
終わることなく夜通し続くだろう
乾杯のハチミツ酒から日の出まで!

セネファンのハチミツ酒の謎Thenephan’s Mysteries of Mead

ダガーフォールから締め出され、エルデンルートから追い出され、モーンホールドから追放されたのには訳がある。私はこの世界にいる限り避けては通れない、人を酔わせるあらゆる物、ワイン、エール、そしてアルゴニアン酒を試してきた。カジートのスクゥーマを試飲し、アルゴニアンのヒストの木を舐め、ボズマーの「魔法」カエルを仕留めたこともあった。

どれもノルドのハチミツ酒とは比較にならない。ハチミツ酒に並ぶようなものは存在しないのだ。

この世界一純粋な酒はノルドの村で作られる。だが今はノルドと戦争中だ。それにブレトンが生きてそこに辿り着ける保証もない。その手のことは専門家に任せるべきだ。だがまだ希望は残されている。もし酒場に行ったとき、そこにノルドのハチミツ酒が置いてあったら、それを飲まない手はない。

ハチミツ酒は発酵したハチミツと水から作られる(糖蜜を使うレシピもいくつかある)。時には、すり潰した穀物を入れて味を調えることもあるが、必ずしも必要というわけではない。ハイエルフの一部はこれを「ハチミツワイン」と呼んでいる、とにかくハチミツ酒には非常に良質のハチミツが必要となる。それぞれのハチミツ酒醸造所には独自のレシピがある。たくさんのハチミツ酒を飲めば、醸造家の名前を自然と覚えるようになる。酔っ払ったノルドは、素晴らしい醸造家の名誉のためであれば、他のノルドの顔を殴りつけさえする。だが酔っ払ったノルドであれば、何かと理由を付けて誰にでも殴りかかるかもしれない。

あらゆる醸造家が、独自に調合したスパイスやフルーツ、そして時にはホップ(これがハチミツ酒に苦味を与え、一部のノルドの舌をしびれさせる)を持っている。詩人や吟遊詩人の伝えるところによれば、英雄の血を混ぜたハチミツ酒もあるそうだ。

あるアルトマーから、醸造はあらゆる文化の根幹を成しているという話を聞いた。だからこそ我々の祖先は農業を始め、街を作ったのだ。そして、小麦と大麦とホップが余り、農業に疲れると、醸造を行う。どうやら酒を飲む文化がノルドを一つに束ねているようだ。

ノルドは本当に農業にうんざりしているようだ。なぜなら彼らは驚くほどのハチミツ酒を造って飲んでいるからだ。素晴らしいハチミツ酒の樽が開くと、ノルドはその樽がすぐに空になると知っているためその周りに集まる。だが、もしノルドの酒飲み文化のしきたりを知らなければ、最後には酔いつぶれて、意識を失い、二日酔いになって、動けなくなってしまうだろう。私はそのしきたりを苦労して身につけたのだ。

ノルドは飲むのが好きだ。だがそれだけではない。ノルドは苦難を乗り越えられる人々を尊敬している。なぜ2人のノルドが「私の顔面を思い切り殴れ」競争をするのかを説明するには大げさすぎるかもしれないが、しかしだからこそ彼らの文化では酔うことを称賛するのである。

吹雪の中を生き抜いたり、鋭い棒きれで熊を倒したりしたときと同じように、ノルドはハチミツ酒を誰よりも多く飲むことで尊敬を得ることができる。彼らは酔うと「ノルドの名誉」について延々と語り出すが、素面の時に比べればまだましである。つまりノルドについて最初に知るべきことは、彼らから尊敬されたければ、飲むのを絶対にやめてはならないということだ。これは試験なのだ。次の酒が飲めなければ、その場から離れなければならない。そうしなければ、とても愉快な場所で目を覚ますことになる、だがその当事者はきっと笑ってはいられないだろう。

ノルドは吟遊詩人も愛している。乱闘や空自慢が頂点に達し、斧を投げ始めるようになると、歌と物語を背景にして観客は大いに盛り上がる。彼らの歌は、彼らがいかに他者より優れているかを語っているものばかりである。彼らはそれを何度も何度も聞いている。だからその場を訪れたら自分しか知らない話をすることをお勧めする。彼らは新しい物語を聞きたがっているのである。

どこにいても、酒は誤りを正したり誤ったりするときの手っ取り早い手段となる。そしてそれはノルドでも同じだ。競争で敗れたら、酒を買わなければならない。失敗したり誰かを怒らせたりしたら、酒を買わなければならない。屈辱を受けたにも関わらず、呆然と立ち尽くすしかなかったら、酒を買わなければならない。

酔っ払ったノルドだらけの部屋を抜け出すには、必ずしも腕っ節の強い人間になる必要はない。彼らの心を動かしたければ、上手く言いくるめるか頭を働かせればいい。だがそのためにはかなりの才能が必要だ。顔を殴られる時を迎えたら、顔面を殴られる準備をした方がいいだろう。殴られるのが嫌ならば、政治や最高の醸造家、さらには誰が一番殴る力があるかなどについては、絶対に話題にしてはならない。そして殴られた理由を決して聞いてはならない。

もっと詳しく知りたければ、ダガーフォールで今度、私に酒をおごってくれ。きっと教えられることがあるはずだ。

ソブンガルデへの道The Road to Sovngarde

語り部達は、ソブンガルデに行って戻ってきたと主張する英雄達の物語を知っている。だが真実のほどは定かではない。偉大なる戦士達は命を落とすことでソブンガルデに向かって歩みを進めることになる、だがもし命のある者がそこに行き、戻ることができたとすれば、前代未聞のことである。

だが語り部はソブンガルデが存在していることは知っている。我らの神がそれを裏づけている、と我々は信じている。ソブンガルデはエセリウスの中心にあり、死亡した戦士達の魂が辿り着くのを待っている。名誉ある戦死を遂げたノルドは、死んだ後にこの地で目覚める。勇気の間では痛みも病も消え去る。酒宴は終わることなく続き、ハチミツ酒が大量に振る舞われ、史上最も偉大なノルド達が、力と勇気の腕比べをする。

この世界の閉じ込められた霊魂は、負け戦や王国の没落、そして目的を失った人々につきまとう、苦しみや空虚や終わりのない苦痛を知っている。だがソブンガルデではそれがないのだ!不死の退屈さというものすら感じることなく、幽霊達はそこかしこにある影に潜み、腕試しをできる相手を待っている。

ショールは大昔にその見事な魔術でソブンガルデの領域を作った。だがこの詐欺師の神は我々の世界から姿を消してしまった。他の神々は彼の欺瞞のベールをはがすべく、見捨てられた力を利用し、この来世の世界へと続く隠された道を探そうとした。だがその試みは全て悲劇に終わった。誰もこの詐欺師を出し抜くことができなかったのだ。言い伝えによれば、ショールはこの領域に引きこもり、彼を出し抜こうとした者を嘲笑っていたとされている。彼はこの世界の支配者でもあるらしく、彼の気の向くままに英雄を選び出して栄誉を与えている。

これはすべて憶測でしかない。尊敬に値する者だけが真実を知ることができる。そして彼らは生者に対して口をつぐむ。この世界のあらゆる苦痛と不幸を耐え抜いた本物のノルドの戦士だけが、ソブンガルデに行けるのである。

リーチのクラン:ガイドClans of the Reach: A Guide

エーセルモ 著

リーチの野蛮なクランの人々と関わり合いを持つ機会、または不運が巡ってきたら、関わりを持つ相手のことを知っておくべきだ。北の都市と穏当かつ平和的に交易を行っているクランも多々あるが、旅行者を脅威や標的とみなしているクランも存在する。

私は研究の過程で、どんな犠牲を払っても特に関わりを避けるべき3つのクランを特定した。

ボーンシェイパー・クラン:

ボーンシェイパー・クランは、トゲのある蔓や植物を用いた数多くの風変わりな儀式を創り上げてきた。クランの名前も、儀式のいけにえの骸骨にそういった蔓を通し、骸骨の中で蔓を育てる彼らの伝統に由来している。この植物は元々リーチにあったものではなさそうだが、彼らは上手に栽培を行っている。

襲撃や戦闘を開始する直前に、彼らはこの蔓で人形を作る。その植物で、生物の大雑把で不格好な似姿を作る。クラン内では死霊術が禁忌となっているようだが、儀式の中には死者を利用するものもある。死体がどんな形で使用されるのかは不明だが、旅行者は彼らの武骨なクランのシンボルを見かけたら、十分な距離を保つべきである。

レイジクロー・クラン:

レイジクロー・クランは、頑丈で好戦的な種類の熊科の動物を家畜化している。この熊は幼いうちから訓練され、クランの特定のメンバーや家族と結び付いている。女性が支配するこのクランは、多くの面で彼らの相棒である動物を模倣している。最も重視されているのはクランの若いメンバーを保護することで、私もレイジクローの家族全体が、子供に対するごくささいな脅威をきっかけに戦いに加わるのを目にしたことがある。

このクランがリーチの他のクランといさかいを起こすきっかけとなっている独特の習慣がある。レイジクローは自分達より規模の小さなクランを制圧し、吸収した上で、レイジクローの流儀に従わせるのだ。新たにクランに加わった女性は、自分達にとてつもない支配権と自由が与えられていることに気づき、変化を楽しむことが多い。男の戦士たちは大人の熊と1対1で闘わされ、熊を1匹服従させることでクランの中での居場所を得るが、こういった巨大な獣の扱いに慣れていないクランの男性は大抵苦戦する。

ストーンタロン・クラン:

最後がストーンタロン・クランである。表向きは上記の2つのクランほど攻撃的ではないが、独特で闘争的なふるまいは多々見られる。レイジクロー同様、ストーンタロンも女系社会だが、女性の数は非常に少ないようだ。目撃される時、女性は皆鳥の羽で作られた重たいマントにくるまれ、まるで病気にでもかかっているような出で立ちをしている。彼らは何か計り知れない目的のために、数々の試練に耐えているに違いない。

いずれにせよ、私が出会ったマントの女性達は1人残らず強力な魔法使いであった。結果として、ストーンタロン・クランは故郷を遠く離れた場所で出会うには最も危険な人々だと言えるかも知れない。

リフテンの利益の河Rivers of Profit in Riften

リフテンの街には冒険を好むならず者の興味をそそるチャンスが満ちているが、隠れた流砂にのみ込まれる危険も潜んでいる。リフトには我々の試みに適した肥沃な土地はほとんどなく、少しの間だけでも立ち寄ることをお勧めできる場所はリフテンのみである。

一旦街に入ったら、「ウィサードツリー」か「シェイドホーム」に仕事の拠点を置くことができる。どちらも違いの分かる旅行者の要求を満たす宿屋である。街をざっと流すと有望な顧客が何人か見つかるだろう。だがここで警告しておく。偵察は常に用意周到に、街のたくさんの商人達から品物を1つ買った上で行うべきだ。街の衛兵隊は活動的で、よそ者に対して異様なほど疑り深く、ノルド以外の人種に対してはことさらその傾向が強い。地元で買った品を持たずにそぞろ歩きしていると、あっという間に監房に入れられてしまうだろう。

街の心臓部を形作る島は、近くにある湖のさわやかな水に囲まれており、商人の屋台がいくつかある。こちらで手早く買いものを済ませれば、衛兵の疑念を和らげるだけではなく、商人が扱っている品物をチェックすることもできる。商品の質や品ぞろえにはかなりの違いがあるため、どの屋台が最も興味深いかについては各自に判断を委ねたい。

北には注目すべき建物が2つある。一般に島内の屋台では手に入らない品物を扱う2軒の老舗である。ロサレン家は手工芸用の素材を扱っており、その中には非常に専門的で貴重な品もいくつか含まれている。このダンマーの一家は、その商品が平凡な街に怪しい魅力を添えているという理由でリフテンの街に受け入れられている。ロサレン家は他のすべてのダンマー同様貪欲で疑り深く、嘆かわしいほど数多くの衛兵を雇った上に、もっと深遠な安全対策も講じている。ここでは貪欲な鉤爪に警告し、大人しくさせるべきである。

ロサレン家の隣にあるのはグラム・アイアンアームの工房である。この引退した鍛冶屋とその家族は、武器や防具の職人として技術を提供している。こういった商売に必要な素材はほぼここでそろうため、リフト中から職人達が訪ねてくる。警備はアイアンアーム一族が行っており、一族の情熱の証として、玄関の上にたくさんの切り落とされた手が釘で打ちつけられている。

衛兵隊長の宿舎や戦士ギルドについて長く語る必要はない。何の見返りも見当たらないのにあれほど深くて流れの速い水に飛び込むのは愚か者のみだからだ。

ああ、しかしリフテンで最も印象的な大建造物、魔術師ギルドのホールは別である!あの中に納められた財宝を想い起こすだけで、私の爪は震える。呪文の一部分に、貴重な巻物、そして強力な魔力を秘めた品々——リフトにしかない貴重なコレクションだ。残念ながらそれを守る護衛はよく切れる頭と破壊力とを兼ね備えている。この建物に入るときはすべての感覚を研ぎ澄ませよ。

水際には街の港がある。単純な者はそこで釣りをしたり、暗い水面をのぞき込んだりするが、我々の中でも貪欲な者はもっと大きな喜びを抱く。港の下層では、海岸すれすれに位置するうっとりするほど湿っぽい倉庫で、人目につかない場所を好む商人が商売を営んでいることがある。ここでは通常どんな種類の売りものにも買い手が見つかる。街の衛兵は港の下層を避けるか、規模の大きい、回避しやすい集団でのみパトロールを行っている。

港の一方の端にある格子戸は、小さな下水道に通じている。現在はネズミの通路でしかないが、リフテンの発展に応じて最終的にはこれが街全体の地下に広がり、秘密の作戦の際にもっと役立つものになるだろう。

ギルドの知識を広げることに貢献できるよう願いつつ、リフテンでの私の体験の記録を提供する。
同志たちよ、潤いを保て。

ここに謹んで提出する
「意志を持った目」

帰還の歌 第5巻Songs of the Return, Volume 5

我らの偉大なる王であり、我ら全ての導き手であるイスグラモルは、キャンプの炎の前に座っていた。ジョルバスクル、ファロウファイア、ケール・カーズの船員達は、彼に食べ物を勧め、自慢話をせがみ、酒をついだ。この土地のいたるところには500の同胞団の愉快な団員達がいた。数々の物語が語られ、哀歓があり、常に焼けた肉の匂いが漂っていた。我ら全ての偉大なる者は、戦士達を全員近くに招き寄せると、ウースラドの鍛造の物語を語り始めた。

導き手が始末したあらゆるエルフは、ウースラドによって殺された。長い戦いの中で、導き手が違和感なく使えた武器は強大なるウースラドだけだった。彼が語ったように、伝説上の斧のほとんどが、夜の最も暗い時に鍛造されたものだった。

それは涙の夜だった。イスグラモルは海を渡ることにした。彼は最後の船に乗り、タムリエルから逃れてアトモーラの岸に向った。そこから彼は、最初の街、サールザルが炎を上げているのをじっと見ていた。膨れ上がった空が炎と海の上に雨を降らせた。そして我ら全ての偉大なる者は、悲痛な涙を流した。

導き手の悲しみは非常に深く、イスグラモルは悲しみを隠すことなく、混じりけのない黒檀の涙を流した。彼の一番上の息子であるユンゴルはその涙を器に集め、暖かく父親を抱きしめた。彼は導き手の偉大なる喉にハチミツ酒を流し込むと、導き手の偉大なる肩を毛皮で包み、導き手を下甲板の偉大なるハンモックに寝かせた。

そして彼は仕事に取り掛かった。我ら全ての導き手の一番上の息子であるユンゴルは、我々が知る限り一番の鍛冶師だった。海の上でユンゴルは自分の道具を使って仕事に取り掛かった。彼は雷を使って夜の涙を温め、海の波でそれを冷やし、勢いを増す風音の中ハンマーを叩き続けた。

イスグラモルが次の朝に目を覚ました時にユンゴルは、昨日の夜彼を打ちのめした悲しみから削り出した強力な斧を彼に渡した。そして我ら全ての導き手は息子を抱きしめた。彼は喜びと、悲しみと、怒りの涙を流した。そして、サールザルからの最後の船の甲板で、イスグラモルはその斧を、アトモーラの言葉で「嵐の涙」を意味する、ウースラドと名付けた。

そして、ここでイスグラモルは言葉を詰まらせた。我ら全ての導き手はユンゴルの名前を叫んだ。ハラックの船員達と一緒にいたユンゴルが、離別の嵐により行方不明になってしまったのだ。イスグラモルの長男であり、彼の一番の喜びでもあったユンゴルは、いつも彼と一緒にいた。嵐の涙に捕らえられたユンゴルは、名誉ある気高い500の同胞団との日々の中で、常にイスグラモルと共にあった。

帰還の歌 第27巻Songs of the Return, Volume 27

ついにシンムールは追い詰められた。我ら全ての導き手イスグラモルは、臆することなく残っていた同胞団を最後の戦いへと導いた。すでに多くの勇敢な同胞達が巨人に倒されていた。そして頑健なヴァルダーとずる賢いハクラが、狡猾な半巨人に攻撃を開始した。彼らの霊魂が長きに渡り讃えられんことを。他の多くの者は、その頃ソブンガルデに向かって神聖な道を歩いていた。彼の血族は全て死に絶え、シンムールだけが我らの偉大なる者に抵抗していた。

百に及ぶ巨人を殺したウースラドは、血を滴らせながら、シンムールの墓地の暗闇の中で鈍く光っていた。イスグラモルは前に進むと、従者達に止まるように指示した。つまり彼は勇敢にも命を賭けてシンムールと戦うことにしたのだ。そしてこの巨人族もそれを受け入れて、大声を上げて挑戦の意志を示すと、戦いにその身を投じた。鉄で強化された彼の巨大な棍棒が敵を潰さんと前に振り下ろされた。我らの王イスグラモルが横に避けると、彼の横にあった岩が棍棒によって打ち砕かれた。ウースラドは血の歌を歌いながら棍棒を切り刻むと、それを麦わらのようにバラバラにしてしまった。

シンムールは怒りに大声を上げると、もはや見る影もなくなったその武器の破片を我らの王イスグラモルの頭めがけて投げつけた。そして彼はイスグラモルを掴むと、握りつぶして殺そうとした。だがその怪物の耳に届いたのは大きな笑い声だった。イスグラモルは額と膝を使ってそれぞれ強力な一撃を放った。シンムールは悲鳴を上げると、我らの王の前に跪いた。

イスグラモルが巨人の頭蓋骨を真っ二つにしたとき、ウースラドは死と歓喜の歌を鋭く響かせた。シンムールから血が噴き出し、死の音が喉元からもれると、イスグラモルは勝利の声を上げた。ウースラドが頭上で振られ、同胞団は大きな歓声を上げた。この巨人とその下劣な一族による略奪行為がついに終わりを迎えたのだ。我ら全ての導き手のイスグラモルの伝説は、このとき強固なものとなった。

帰還の歌 第49巻Songs of the Return, Volume 49

船長達のサークルの命令により、それぞれの船の船員達は各々の判断で船を出すことになり、サークルの伝説的存在、ファロウファイアの船員達を大いに喜ばせることになった。彼らの望みは始末していないエルフ達が住んでいる新しい土地に、人間の恐怖を持ち込むことだった。彼らは自分達の王、イスグラモルの「慈悲の心を捨てよ。思いやりを見せるな」という言葉を深く心に刻み込んだ。

ファロウファイアのために岸に薪が積み上げられた。彼らの愛した船の灰が海に降り注ぐと、アトモーラに向かって流れていった。これにより彼らと故郷との繋がりが完全に絶たれることになった。グリルダ・シャークトゥース船長に率いられたファロウファイアの船員達は、海に背を向けて内陸へと歩みを進めた。

彼らは南に向かい、他のイスグラモルの船員達が手を付けていない土地を探した。彼らはイスグラモルが求めている血の復讐の種を蒔きながら、南へと進んでいった。彼らの斧を目にしたエルフで生き残った者はおらず、彼らが通った後には焼け落ちた住居だけが残された。ファロウファイアは王の怒りを不誠実なエルフ達へ忠実に伝えた。彼らが旅を続ける内に、エルフ達は彼らに対して恐怖心を抱くようになっていった。

グリルダは船員達を険しい山脈の裾野に連れて行った。彼らはそこをイスグラモルの歯と名付け、そこを通り抜ける道を長い間探し続けた。ようやくその道を見つけ出すと、船員達は山を越えて新たな土地へと足を踏み入れた。深い渓谷と流れの速い川で分断されていたことから、彼らはこの土地を「リフト」と呼ぶようになった。彼らはファロウファイアと死んだ同胞達、そしてユンゴルの名の下に、この土地を物色してエルフの村々を焼き払い、出会った者全てをその斧の餌食にした。

ついにエルフ達が戦いを挑んできた。勇敢なグリルダの同胞団と戦うために、臆病なエルフ達は岩の丘の頂上に大軍を集めた。そして実際に攻撃を開始した。苦闘が繰り広げられ、勇気ある決断があり、英雄が生まれた。戦いは時間が経つごとに激化し、その日の太陽が西の山脈の頂上に触れたとき、エルフの軍は崩壊して敗走した。グリルダは多数の武器で刺されて瀕死状態になっており、太陽が沈んでから息を引き取った。彼女の霊魂は、船員達の勝利を知る、ソブンガルデへと登っていった。

その日、エルフによるリフトの支配は終わりを告げた。同胞団は、我ら全ての導き手、イスグラモルの名の下にその地の支配者となり、全てのノルドにその土地を解放した。同胞団は彼らの死を讃えるために、長い間苦心しながらその丘を調査して墓を作った。グリルダは彼女の武器や鎧と一緒にそこに埋葬された。そこにはグリルダと一緒に、船長を守るために戦いで命を落とした、歯なしのベルギッテと鷲の目のカヨルドも埋められた。名誉の戦死を遂げた他の者も同じように埋葬された。墓の入口の周辺には、墓の位置を見失わないように、巨大な石塚が立てられた。

長い間グリルダの一等航海士であった、ひとつ目のヴィコルドは、彼女の後を次いで船長となると、周りにある山々と足下にある渓谷を長い間じっと見つめた。そして彼はここが愛せる場所であり、人々が繁栄できる土地だと考えた。彼は最後には船員達の自由を認め、戦場に大会堂を建設した。ファロウストーンの間はこのようにして、彼らをこの岸まで運んでくれた船に敬意を表して作られた。このとき以来リフトの同胞団はここで暮らしている。彼らの栄光が決して色あせぬことを!

虫の舌の感触Touch of the Worm’s Tongue

13日目:外見上好ましくはないが、厳密に保存用の塩のみを使用した場合に最も転換の成功率が高いことが判明した。

17日目:黒ずんだ体液が器の中に戻ってくる前に、残った血液を(特に基本的な臓器から)すべて抜き取る必要がある。

19日目:時に宿主に死に至るほどの苦痛を与えるが、肺に水を押し込むと、将来的に咳と膿を吐く発作を防げるかも知れない。

23日目:ごくまれな状況下においてのみ、器が前世で抱えていた症状を示すことがある。初期段階でこれが問題となった場合は、作業を放棄する以上の対処法がないことが多い。

29日目:今日、指示された特定のやり方で慎重に準備を整えておかないと、宿主が器を受け付けない場合があることが明らかになった。これは宿主に対する重大な侮辱であり、このような事態を招くほど器の扱いがずさんであったとすれば、軽い扱いでは済まないであろう。

31日目:最近採用された2つの早道は、器の寿命をあてにできない状態を招くことが分かった。準備段階では一切の早道を回避することが重要だ。誤った知識が広まる原因となった者達は処分された。

37日目:我々の未来の輝かしい最初の一例が誕生した。宿主と器は完璧に結びつけられ、結果として驚くべき力が生じている。

予期せぬ味方Unexpected Allies

私がまだ若かった頃、私はスカイリムの東端に立ち、モロウウィンドを眺めていた。ステンダールの灯台からはヴァーデンフェルのレッドマウンテンが見えた。だがそこに行ったことは一度もなかった。他の多くのノルドと同じように、私も国外の土地はその国の人々のものだと考えていたのだ。

およそ10年前の第二紀572年、私の父は異なる道を選択した。第二次アカヴィリの侵攻に抵抗するために、父は同盟を結んでいたダンマーと共に戦った。ノルドが侵略者を追ってストンフォールに入った時、父もスカイリムの兵士としてそこにいた。父から聞いた話だが、外国のさらに奥深くへと進軍していた軍隊は、飢餓状態でもはや壊滅状態だったらしい、だがダンマーがノルドのためにアルゴニアンの兵士達を連れてきてくれたおかげで、軍隊はすんでのところで気力を取り戻せたそうだ。

これは誰も予想していなかった。今考えても本当に驚くべき出来事だ。ダンマーはかつてアルゴニアンを奴隷にしていた、だがその時にアルゴニアンが来てくれたおかげで歴史が変わったのだ。密林から現れた彼らは、血と泥にまみれていた。アカヴィリは彼らの爪の前に敗れ、その仲間のノルドとダンマーの剣と魔術によって打ち倒された。その時に同盟が結ばれ、それ以来その関係は一度も揺らいでいない。

協定はエボンハートで結ばれた。だが戦場で築かれた絆と比べると、これは表面的なものでしかなかった。逆境の炎で鍛造されたこの同盟は、我々をあらゆる侵入者から守るための盾となった。それぞれ文化は異なっているが、その目的が我々を一つにしているのだ。

数年前、ダンマーのトリビュナルから同盟に兵の支援要請があった。シロディールで頭角を現しつつある我々の新たな敵、帝国と戦うためだ。カバナントとドミニオンにいる我々の敵も、この土地を解放するために軍隊を送った。

そして今はどうなったか?タムリエル全土へと戦火は広がったのだ。カジートとボズマーは、ダンマーとアルゴニアンと戦っている。アルトマーはスカイリムを攻撃している。そしてハイロックからダガーフォール・カバナントが我々に攻撃を仕掛けてきている。

この混沌の中、我々にはどんな選択肢が残されているのだろうか?ダンマーとアルゴニアンとの同盟は10年続いている。私は仲間達と一緒に戦っている。そして家に帰ると子供達に、ダンマーやアルゴニアンと一緒に勝ち取った誇らしい勝利の話をする。

パクトが永遠に続いたとしても驚くべきことではない。私はかなり前からアルゴニアンの秘術師達と言葉を交わし、その世界観に驚かされている。ダンマーの司祭の洞窟に行けば、暗闇を見つめている間、彼らは神々の物語を聞かせてくれる。

いつかダンマーとアルゴニアンとノルドが共にシロディールの盟主となる日が来るだろう。我々は無敵の確固たる同盟、パクトの旗の下で勝利を挙げるのだ。

リベンスパイアーの伝承

Rivenspire Lore

ウェストマーク・ムーアの墓苑The Barrows of Westmark Moor

長老サシル・ロングリート 著

一般に「サングイン墓地」と呼ばれるウェストマーク・ムーアの墓苑は、その歴史を通じて、地元の人々のあいだに芳しからぬ評判を醸成してきた。リベンスパイアーの貴族は、今生きている者が誰一人憶えていないほど昔から、この墓苑の節くれだった木々の根に死者を埋葬している。腐敗、争い、墓荒らし、その他もっと酷いことを目撃して来た古い墓に、親族を葬ってきたのだ。

ウェストマーク・ムーアの冷たい大地には、ドレル、タムリス、モンクレアをはじめとする北部の有力な家の多くが死者を埋葬している。こうした家の中にはショーンヘルムの王や女王を輩出している家もあるが、彼らが死後、ここで親戚縁者たちと共に眠ることはない。彼らの遺体はグレナンブラにあるキャス・ベドロードの大霊園に送られ、ハイロックの歴代君主たちとともに永久の眠りにつく。これは長らく続く伝統に則ってのことである。

「サングイン墓地」内の埋葬区画の所有権をめぐって家と家が争うのは、珍しいことではない。そもそも「サングイン墓地」などという不吉な通称からして、第二紀551年の初夏に起きたある事件を境に奉られたものだ。私の記憶では、タムリスとモンクレアの両家で、同じ日に不幸があったことがそもそものきっかけだったように思う。両家の墓は境界を接しており、それゆえ長年にわたって争いの種だった。したがって問題の朝、両家の葬列が同じ区画(川を一望できる人気の高い場所だった)に面した同じ丘の上に到着した時点で、悶着は避けられないものだった。

貴族たちは何時間も言い争い、召使たちを何度も往復させては古文書やら証書やら正式な境界線が記された地図やらを持ってこさせたが、どちらも引き下がるわけにはいかない。日没が近づく中、互いに我慢が限界に近づいていた。驚くべきことでもないが、やがて双方が侮辱を受けたといって非難の応酬を始め、ついには武器が抜かれた。リベンスパイアーの人々は、続いて起きた「血の葬列」(呼称は後につけられた)が両家の歴史に汚点を残したと一般に考えている。

「サングイン墓地」では、略奪や冒涜もまた珍しいことではない。墓苑を巡回するのは白霜の高原の当局の仕事なのだが、富の誘惑が番人を罪人に変えるのに充分な時もあれば、自ら手は下さないまでも、墓への侵入に目をつぶってやるには充分な時もある。ショーンヘルムの王や女王がそういった不心得な行いに対して絞首刑という厳罰で臨み、一罰百戒を狙ったことも、一度や二度ではない。

そういった厳罰にもかかわらず、貴族が埋葬される度に、新たな狼藉や盗掘が行われるといっても過言ではない。実際、ある朝、タムリス家の墓所が遺体も含めて丸ごとからっぽになっているのが見つかり、家の人々を呆れさせたのは、つい数年前の出来事なのだ。盗人たちは結局見つからずじまいだ。なぜ彼らが遺体も一緒にさらっていったのかについては、誰しも考えたくないだろう。

「サングイン墓地」は、1つの墓地としては多すぎるほどの悪事や揉め事を体験してきた。しかもこの墓地は何度も繰り返し、その名にふさわしい悪評を得ている。これ以上この記録に暴力や盗みのエピソードを書き加えずにすむことと、いまだそこに埋葬されている貴族たちが未来永劫安らかに眠れることを、私は願ってやまない。

エセルデ王女の物語The Story of Princess Eselde

[このささやかなプロパガンダはタムリス家のために捏造され、エセルデ女伯爵が南部でアーケイ教団の教えを受けているあいだに流布されたものである。]

かつてカットキャップの国にはルルスルブという名の偉大な王がいて、長きにわたり善政を敷いた。やがてルルスルブも老いを感じ、自分が世を去ったあとの王国の行く末を案じるようになる。ルルスルブには2人の王子がいた。普通であれば老境の君主にとっては喜ばしいことだが、この場合はむしろ悩みの種だった。というのも、若いほうのピジョン王子は正室たる王妃の子だが、意志薄弱で政治に関心がなかった。対照的に、年長のランセル王子は大胆で物おじせず、母親もカットキャップ一の名門リスマット家出身だったが、いかんせん正嫡ではなかった。

さて、ルルスルブは英明な王であり、自分がランセル王子を気に入っていることを隠そうとしなかった。ランセルのほうが統治者にふさわしいことは、誰の目にも明らかだったからだ。にもかかわらず、年老いた王がついにエセリウスへと旅立ったとき、柔弱なピジョン王子が王位を継ぐべきだと感じる者が一部にいた。この連中が単に心得違いをしていたのか、それともカットキャップの王権が弱まるべきだと考える何らかの理由があったのか、それはよくわからない。ただ、最終的には良識派が勝利し、ランセル王子が貴族評議会によってカットキャップの王に選ばれた。

王位に就いて間もなく、ランセルは舞踏会でレディ・ヴェスパイアといううら若き乙女を見初め、恋に落ちる。可憐で賢いヴェスパイアはリスマット家の出身であり、短い求愛期間を経て、ランセル王は貴族評議会に彼女を妃に迎えるつもりだと話した。ところが、元王子のピジョン伯爵がこれに異を唱える。ランセル王の母親もリスマット家の出身であり、血縁法に照らしてレディ・ヴェスパイアは血が近すぎる。したがってこの婚姻はふさわしくない、というものだった。これに評議会の他のメンバーも賛同したため、ランセル王は評議会の説得を容れてレディ・ヴェスパイアとの結婚を断念した。知らせを聞いたレディ・ヴェスパイアは姿を消した。ニクサドの一団によって森の中に連れ去られたとも言われている。ランセル王は捜索隊を出したが、失踪した恋人はいくら探しても見つからなかった。

やがて、評議会が王朝存続のためにランセル王に花嫁候補を推薦する。ダル家出身の健やかな娘、レディ・イグノートである。いまだ傷心の癒えぬ王は、この薦めを受け入れる。ランセルとイグノートは華燭の典を挙げ、ランセル王は輿入れしたばかりの王妃の側で国王としての務めに打ち込んだ。それから数ヶ月後、王妃イグノートがランセル王の子をなしたことが発表される。幼い王女のために命名祭の開催が決まり、国中の貴顕紳士が招待された。

命名祭の当日、カットキャップの名士たちがこぞって駆けつけ、アレイエルと名づけられたばかりの王女が眠る揺りかごの足もとに贈りものを置いていった。ところが、その行列のしんがりに、何者とも知れない招かれざる客が並んでいた。それは不吉なウィルド・ハグで、マントに身を包んでフードをかぶり、暗い色の花を一輪、手にしていた。じつは「太陽が死んだ年」からこのかた、カットキャップでウィルド・ハグの姿が見られることはなかったのだが、それでもみな怖気づき、あえてその行く手を遮ろうとする者は誰もいなかった。

ウィルド・ハグは王女の揺りかごに歩み寄ると、フードを脱いで叫んだ。「ごらんなさい、ランセル王!私です、レディ・ヴェスパイアです。今はウィルドのウィレスですが!」着飾った人々は恐怖に駆られて後ずさりをした。というのも、かつて可憐だったレディ・ヴェスパイアが、見る影もなく変わり果て、今や醜いイボに覆われた巨大な鼻をこれ見よがしに突き出していたからである。「何かの手違いで、陛下のご息女の命名祭に私は招かれておりませぬが、それでもこうやって罷り越しました。ごらんなさい、幼き王女殿下に贈りものをお持ちしましたわ!」

「贈りものとは何か?」ランセル王が身を震わせながら訊ねた。「その暗い色の花か?見るからに気に入らんぞ!」

「そうでしょうとも、陛下」ウィルド・ハグは嘲るように言った。「これは「見捨てられたバラ」と言って、誰も欲しがらない花ですもの!そんなふうに疎まれるのがどういうものか、私は知っておりますよ、ランセル王。そして、我が呪いによって、あなたの娘にもそれを思い知らせてやりましょう!」そう言うと、おぞましい魔女はいびつな形をした花を赤ん坊の上に落とした。その刹那、炎がぱっと燃えあがり、異様な臭いの煙が漂ったかと思うと、ハグの姿は消えていた。

その後、王女アレイエルは一輪のバラのように美しく成長したが、性格はひねくれており、そのうえ癇癪持ちだった。それでも彼女が北部の王女であることに変わりはなく、南部のエメティック王が花嫁を探しにやってくると、2人のあいだですみやかに婚約が交わされた。

ところが、昔から足しげく南部を訪れ、エメティック王とも親しくなっていたピジョン伯爵が、南部の王に注進におよぶ。アレイエルは性格がひねくれているうえ癇癪持ちであることを教え、「監視塔の姫」を娶るほうがよほど良縁になると勧めたのである。やがてエメティック王はこの進言を容れ、アレイエルとの婚約を解消し、「監視塔の姫」と改めて結婚の約束を交わした。

しかし、ランセル王がこれをすんなり認めるわけもなく、誓約を破った南部の王に戦を仕掛けることを誓う。そして実際にエメティック王に対して大義ある戦いを挑むが、「トールの戦い」で旗下の将軍の1人に裏切られ、殺害されてしまう。ランセル王の王冠もアレイエル王女も行方がわからなくなり、それ以来、カットキャップの玉座は空位が続いている。

しかし、一説によると、ランセル王誕生のみぎり、実は双子の妹も生まれていたのだが、1人のウィルド・ハグにさらわれ、森で育てられたのだという。ルルスルブ家とリスマット家両方の血を引くこの女児が成長して娘を産み、その娘は母方の一族に引き取られた。この娘というのが、誰あろうエセルデ女伯爵その人だというのである。

もしこれが本当なら、エセルデ女伯爵の本当の称号は「王女」でなければならないのは自明だ。そして、他の誰でもない、彼女こそがカットキャップの玉座の正当な継承者ということになる。しかしながら、それは彼女の領民たちが語るお伽噺にすぎない。

シルバーフーフの騎馬民族The Horse-Folk of Silverhoof

ケフレム大学ヨクダ文化専攻、ナベス・アルジレーン博士 著

ハイロックの北部沿岸にレッドガードの知られざる入植地があるという噂を耳にしたとき、私がまともに取り合わなかったのは言うまでもない。そんなものが到底あるはずがないと思えたからだ。しかし、噂は根強く、一向に衰える気配もないため、とうとう私は長期休暇を取って大学の教授職からしばらく離れ、自分の目で噂の真偽を確かめるべく、北に旅する気になった。

そしてモルワの涙にかけて、噂は本当だった!学術的な詳細は近々発表する論考「群れの母を戴く部族に関する7つの真実」で余すところなく述べるとして、ここでは要点だけ整理しておきたい。というのも、遅々として進まぬ奨学金の手続きに合わせて公表を先延ばしにするには、この発見があまりにも驚異的だと感じるからだ。

ハイロックのリベンスパイアー地方の北西岸、ショーンヘルムから数リーグ西に行ったところに、シルバーフーフ谷と呼ばれる窪んだ牧草地がある。そこには三千年前からレッドガードの一部族が住み着いている。単に「騎馬民族」とだけ呼ばれている集団だ。

彼らはいつ、どうやって、またいかなる理由でそこにやってきたのだろうか?あいにく騎馬民族は書かれた記録を持たないが、その代わり彼らには口承の伝統が根づいている。私は世代から世代へと語り継がれてきたそうした伝承を聞き書きすることに努めた。部族の長老たちは時間を惜しまず私の相手をしてくれたが、なかでもムザールとヤライダの2人は特に協力的で、私はこの2人に聞いたさまざまな話から、次のような歴史らしきものを組み立てることができた。

彼らがもともと住んでいたのはヨクダであり、これには疑いをさしはさむ余地がない。周りに住むネードの民と何世紀にもわたって接触を続けた結果、「ブレトン化」を免れなかったものの、彼らの日常語にはヨクダ語が数多く残っており、それらはいずれも、古アコス・カサズのステップ地方に由来すると思われる、母音を延ばす特徴的な訛りとともに発声される。ここでは彼らの乗馬用語からいくつか例を挙げれば充分だろう。たとえば彼らは馬首を左に向けたいときには「ネトゥー」と命じる。右に向けたいときには「ネトゥー・フゥー」。止まれは「セーリーム」だ。言うまでもなく、「ネトゥ」は古ヨクダ語で「曲がる」を、「アンセリム」は「止まる」あるいは「やめる」を意味する。

つまり、騎馬民族はヨクダの民の末裔であり、おそらくはアコス・カサズの北部で遊牧生活を送っていた諸氏族から枝分かれした部族と考えられるのである。部族の長老たちは自分達の系譜に関する詳細な言い伝えを憶えており、それらに語られる世代の数から、彼らがタムリエルにやってきたのは第一紀の6世紀初頭と推定できる。その頃、ハイロックは動乱の時代だった。ディレニ王朝は断末魔の苦しみにあえぎ、ブレトンの諸王国はいずれも建国の途上にあって、まなじりを決した入植者たちの集落が、先住民に駆逐されたり取り込まれたりする前に、わずかな隙をついて足場を固めることが可能な時代った。そして、私がムザールとヤライダから聞き取ったいくつもの伝承によれば、それこそがまさにラ・ガーダがハンマーフェルにやってくる2世紀近く前、シルバーフーフ谷で起きたことだったのである。

騎馬民族がこの地にやってきた理由を確定するのは、それほど簡単ではない。というのも、話がその点におよぶと、彼らの言い伝えは伝説へと逸脱し、神話の領域にさえ入ってしまうからだ。ここで、私は彼らの一風変わった信仰について触れなければならない。なぜなら、それこそが彼ら騎馬民族の伝統とアイデンティティーの中心をなすものだからだ。知ってのとおり、彼らは古いヨクダの神々のいずれも信仰せず、その代わり、「群れの母」と呼ぶ、一種のアニミズムに基づく聖霊を崇拝している。馬の姿をしたこの存在は、部族を教え導く守護神としてふるまう。部族の青年は夢の旅路で群れの母と心を通い合わさなければならない。夢の旅路というのは、大人の仲間入りをするための一種の通過儀礼(我々に伝わるウォークアバウトの風習に似ている)であり、青年は独りでそれを全うする義務を負う。この群れの母は現在の学術研究の世界で知られていないが、言うまでもなく我々の文化的記録は膨大な量が「旧き島々」を飲み込んだ大変動によって失われてしまったのであり、そのことは踏まえておくべきだろう。

彼らは「旧き島々」で何らかの危機に見舞われた群れの母崇拝を絶やさないために、失われたヨクダを離れたというのが騎馬民族に伝わる伝承である。数多の伝説には、群れの母から賜った「泳ぐ馬の船」を連ねた船団が、アコス・カサズを出港して海を旅する様子が描かれている。船団は「17の海を渡り」、タムリエルにたどりついたのだという。荒唐無稽な話として一笑に付すのは簡単だが、ただ、彼らは自分たちが「騎馬民族」と呼ばれる由来である馬たちを故郷の島々から一緒に連れてきたと言って譲らないし、これに関して私は疑いを抱いていない。なぜなら、乗用馬の目利きである私が見るところ、騎馬民族が乗りこなしている馬がいわゆる「ヨクダ産馬」と同一種であることは疑いない。アリクルの「アスワラの馬屋」育ちだと言っても良いほどだ。

タムリス家:近年の歴史House Tamrith: A Recent History

上級王エメリック陛下のご高覧に限る!(陛下は、この種の報告書がこういうふうに書き出されるのを好まれるようですね)

タムリス家はリベンスパイアーの主に西半分に領地を有し、農業、商業、通商をはじめ、数々の権益を有しています。実際のところ、彼らが紆余曲折の末にストームヘヴンおよびウェイレストの街と強い絆を結べたのも、南部諸国との交易を成功させていたからと言えるでしょう。

リベンスパイアーの三家(タムリス、ドレル、モンクレア)の関係を特徴づける三つ巴の確執は、いろいろな意味で第一紀の末にまで遡れます。それぞれの家が富と名声の礎を築き、リベンスパイアーの繁栄に貢献していた時期です。三家のなかでもタムリス家は特に信心深く、伝統的に宗教への傾倒が盛んで、しばしばアーケイを一族の守護神と頼み、お気に入りの神として崇めていました。

よくご承知のとおり、上級王陛下はお若い頃、リベンスパイアーの2人の貴族と多くの時間をお過ごしになられました。エスマーク・タムリス男爵とヴェランディス・レイヴンウォッチ伯爵です。それゆえ、今から10年以上も前、ウェイレストとその同盟勢力がリベンスパイアーに武力の矛先を向けねばならなくなった時には、気が重かったことと推察します。当時、ショーンヘルム王ランセルはウェイレストに宣戦布告し、忠誠を誓う貴族たちに、自らの負け戦に加わるよう強制しました。本心でウェイレストに対していかなる感情を抱いていたかはともかく、リベンスパイアーの各家は王命に従い、上級王陛下に対して兵を向けたのです。

そんな中、タムリス家は早々とランセル王への支援をやめ、兵を引きあげさせて講和を請願しました。ドレル家もすぐに同調しました。リベンスパイアーの他の家に比べて弱いレイヴンウォッチ伯爵家だけは、最初から武器を取りませんでした。レイヴンウォッチ伯爵家は1年続いたその戦を通じて中立の立場を貫いたのです。一方、モンクレア家はほとんど最後までランセル王を支えました。彼らはランセル王の残存兵力が現在「裏切り者の岩山」と呼ばれる場所まで押し戻されることになる合戦の直前まで、ウェイレスト連合の軍門には下らなかったのです。

この戦が終わると、平和と協調を主導する力強い旗手として、タムリス男爵が台頭します。上級王の名においてリベンスパイアーを治める三者連合政府を樹立し、三家それぞれの当主がエメリック上級王に忠誠を誓うというアイデアも、タムリス男爵のものでした。上級王は三者連合政府をお認めになったものの、ショーンヘルムの新しい王については、機会が訪れ次第選出すると約束するにとどめられました(これをお読みになって、陛下はその約束がいまだ果たされていないことを思い出されるでしょう)。

エスマーク・タムリス男爵はエルデ家の息女ジャネスを娶り、両家の財力が合わさった結果、さらに強大な政治勢力となりました。エスマークとジャネスは2人の娘に恵まれます。実際的で思慮深いエセルデと、腕っぷしが強く姉よりもお転婆なジャニーヴです。今から4年前、エセルデはリベンスパイアーを離れました。ストームヘヴンでより高度な教育を受け、宗教に対する理解を深めるためです。ストームヘヴンに滞在中のほとんどの時間を、エセルデは上級王陛下の宮廷の客人として過ごしました。同じ頃、若きジャニーヴは(父親と姉の望みに反して)「ショーンヘルムの衛兵」に加わります。

エセルデは学問に秀で、とりわけ歴史学、政治学、外交研究、そして神学の分野に関心をひかれました。彼女はアーケイの教えと「光の道」に深い確信を示すと同時に、治癒師としても謎かけコンテストの代表としても同期生のなかで抜きんでておりました。エセルデがゆくゆくはタムリス家の当主の地位を継ぐつもりで、その準備に努めていることは、誰の目にも明らかでした。

ジャニーヴもまた、周囲の予想の上を行きました。武勇、軍略、それに戦場での指導力、そのいずれにおいても驚くべき才能を示し、めきめき頭角を現したのです。結果、特進に特進を重ね、とうとう衛兵隊長の地位にまで登り詰めました。ショーンヘルムでの軍務に加え、ジャニーヴはタムリス家の私兵団の長にも就任しました(念のために申し上げれば、戦時をはじめとする非常時において、家の私兵が街の衛兵隊と合同で国防のため単一の戦闘集団を形成することは、決して珍しいことではありません)。ジャニーヴに欠点があるとすれば、それは気が短いことと、絶えず行動したがるところでしょう。行動せずにはいられないのだと言う者もおります。

ここで、悲報をお届けしなければなりません。エスマーク・タムリス男爵が、ほんの数ヶ月前、天寿を全うしました。父親の訃報に接したエセルデはただちにストームヘヴンを発ってリベンスパイアーに戻り、タムリス家当主の跡目を継ぎました。現在、彼女はエセルデ女伯爵として、リベンスパイアーを治める三者連合政府において亡父の後任に収まっています。これまでのところ、ドレル男爵が何かと異を唱えてくるのにもめげず、彼女はみごとに務めを果たしていると言えましょう。モンクレア男爵とどのように渡り合うかはまだ分かりません。と申しますのも、モンクレア男爵はここ数ヶ月宮廷を離れ、病で臥せっている奥方の看病に専念しているからです。

いずれにせよ、何か不測の事態でも起きないかぎり、襲名間もないタムリス女伯爵の前途は洋々たるものでしょう。

上級王陛下の御為に。内務省書記、レギナ・トロアヴォア

ドゥームクラッグにまつわる不吉な伝説の数々Dire Legends of the Doomcrag

タムリス家の側近ナラナ 著

はるか昔、ドゥームクラッグと呼ばれる陰鬱で不吉な石の尖塔は、アイレイドの民が学びや信仰に身を捧げる場所だった。しかし最近では、霧と影に覆われた剣呑な道の先にそびえる、取り憑かれた場所として知られている。

これまであまり顧みられることのなかった場所ではあるが、目下にわかに関心を集めていることから、タムリス女伯爵の依頼を受け、この禁断の地にまつわる伝説をここに列挙する。

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陰鬱な伝説の1つに、ならず者の首領レッド・ロブを追って「隠された峠」に分け入ったドレル家の女傑、「豪胆なるブリアンナ」に関するものがある。ブリアンナと配下の騎士たちは、レッド・ロブを捕えて裁きにかけ、それまでに犯してきた数々の罪を償わせるため、北部の海岸伝いにはるばる一味を追跡してきた。このならず者の仕業とされる数多の罪状には、最近ドレル家の貨物船から略奪を働いた一件も含まれていたのである。レッド・ロブにとってあいにくだったのは、その船にドレル家当主の娘、つまり男爵令嬢が乗って旅をしていたことだ。怪我を負ったうえに屈辱を味わわされた令嬢は、レッド・ロブの首級を望み、「豪胆なるブリアンナ」を捕り手として差し向けたのだった。

さて、ブリアンナが「隠された峠」の鳥羽口にたどりついたとき、配下の騎士たちは一人残らず殺されるか深手を負っていた。彼女が頼みにできるのは自分だけというありさまだった。ただ、レッド・ロブもまた似たような状況だった。仲間をみな失った彼は、ブリアンナを振り切るため、独りで濃い霧のなかに飛び込んだ。ブリアンナも「豪胆」の呼び名に恥じず、躊躇なく後を追う。それ以来、2人の姿は二度と見られることがなかった。

けれども、その地方に住む人々に言わせると、空気の冴えた寒い夜、空を突いてそびえる石の塔を赤い霧が薄く彩るとき、剣と剣を打ち合せる音が聞こえるのだという。ブリアンナとレッド・ロブが丁々発止の闘いを今も続けており、それは永遠に終わることがないのだと。

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ドゥームクラッグにまつわる伝説でよく知られているものとしては、もう一つ、聞く者をやや落ち着かない気持ちにさせるかもしれない話がある。恋に破れ、この石の塔の頂で憔悴していったアイレイドの女性の話だ。とある貴族の屋敷で執事を務めるハンサムな男性にふられた彼女は、ドゥームクラッグの頂上に登って籠城を決め込んだ。友人と家族は、彼女を元気づけて塔から降りてこさせようと、あれこれ手を尽くすのだが、それでも、傷心の彼女は懇願や慰めの言葉にいっさい耳を傾けようとしない。そしてとうとう苦しみに耐えられなくなり、ドゥームクラッグからはるか下の海に身を投げてしまう。

けれども、この悲しい物語はそこで終わらない。今でも人々は信じている。ハンサムな旅人が不用意にドゥームクラッグに近づきすぎれば、恋に破れたアイレイドの女性の注意を引いてしまう恐れがあるのだと。いわく、彼女の安らげぬ霊魂が疾風のように降りてきて、不運な旅人をさらい、石の塔の頂に運んで慰みものにするのだという。しかし、どんなに辛抱強い囚われ人も、最後にはアイレイドの女性の霊を拒み、肘鉄をくわすことになる。寂しい夜、重なり合う2つの悲鳴が聞こえてくるかもしれない。それは、アイレイドの女性の霊がまたしても海に身を投げ、いちばん新しい恋人を水の墓地へ道連れにしたことを意味しているのだ、と。

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しかし、ドゥームクラッグにまつわる伝説で最も人口に膾炙しているのは、なんといっても「歩く死」の話だろう。そしてこの伝説に限っては、始めから終わりまで、恐怖譚というよりはむしろ用心を促すための教訓話と呼ぶほうがふさわしい。この伝説は言う。「隠された峠」を辿ろうとする者は誰であれ、否応なく自らの死を目指して坂をのぼることになるのだと。なぜなら、一歩歩みを進めるごとに、寿命が1年縮むからだ。年齢や健康状態によっては、濃い霧のなかに入ってほんの数歩進んだだけで死が訪れることもありうる。逆に、人並み外れて幸運な者であれば、「隠された峠」を登り切り、頂に到達できるかもしれない。噂に聞く、宝物庫に足を踏み入れることができるかもしれないのだ。ただそれでも、結局「歩く死」に追いつかれることは変わらない。

いずれにせよ、避けられない死に向かって進める一歩には、それなりの苦痛と衰弱が伴う。この伝説こそ、他のどの伝説よりもドゥームクラッグを神秘のベールに包んできた原因と言える。なぜなら、この話の真偽を確かめようという勇気の持ち主が、ほとんど現れないからだ。

自分の原稿を読み返してみると、なぜタムリス女伯爵が幼いころドゥームクラッグを怖がったか察しがつく。正直、いい歳をした私でさえ、こういった伝説には恐怖を覚えずにいられないのだから。

ノースポイント:その評価Northpoint: An Assessment

ノースポイントと街で随一の権勢を誇るドレル家に関するこの報告書は、上級王エメリック陛下じきじきの命により、丹念な調査を経て作成されました。私こと内務省書記レギナ・トロアヴォアは、個人的にこの努力の成果を査読し、そこに盛られた情報が正確であることを保証するものです。

まず、背景を知るために歴史の講義を行いましょう。ノースポイントは第一紀の9世紀、ダガーフォールからソリチュードに至る夏季航路を行き来していた冒険的なブレトン人の交易商、イリック・フロウディス船長によってその礎が築かれました。一帯の海岸は理想的な港を築くには適していないものの、周囲の水深が深く、大型船も難なく航行できました。また、交易路沿いに位置することから、商人が再補給し、船の修繕を行い嵐をやり過ごすにはちょうど良い中間点でした。この二点に着目したフロウディス船長は、投錨地として最も適したノースポイントに最初の船着き場を築き、そのまま港の名前としました。

船着き場を建設して間もなく、フロウディス船長は次第に大きくなってゆく寄航港の東にあるドレ・エラードの丘に、防壁をめぐらせた小さな砦と倉庫を建設させます。ほどなくして街は活気にあふれるようになり、自分の投機的事業が成功したことを確信したフロウディス船長は、この丘の名前を新たな姓として名乗ることにしました。それ以後も彼とその一族は海運事業を成長させ、同時に港とその周辺の土地で開発と投資を行い、ついには農民に土地を貸し出すことで新たな収入源を確立したのです。

第一紀の大半を通じて、ドレル一族は活動的で企業家精神に富んだ豪商の典型として、ハイロックに大いなる繁栄をもたらしました。第一紀の1029年、女帝ヘストラがハイロックを「最初の帝国」に併合したのを機に、ドレル家は男爵家に叙せられました。以来、ドレル家の財力とノースポイントの富は、北西海岸の沿岸貿易の消長と運命を共にしてきたと言えます。

24世紀、財力と権勢を伸張させ続けたドレル家は、数世代にわたってショーンヘルムの王位を保持します。この栄光が、その後何世紀ものあいだドレル家の自己認識を彩り続けました。それ故にこそ、今でも彼らにはリベンスパイアーの真の指導層の一翼を担っている自覚があるのです。そして、かつて王座に君臨していたという事実は、彼らに政治的陰謀への嗜好を植えつけました。それがただでさえ野心的な本来の性向と相まって、彼らを無視できない存在にしています。現在の当主アラード男爵は、ランセル王亡きあとリベンスパイアーを統治する三者連合政府の一角を占め、権勢をほしいままにしています。モンクレア家とタムリス家の当主たちと共に上級王へと忠誠を誓うアラード・ドレルは、いつの日かただ1人のショーンヘルム王としてリベンスパイアーを統治する権利を手中に収めたいと考えています。

近年、海運と交易を牛耳る雄として、ドレル家の存在感は抜きんでています。当主が宮廷事情に疎くならないように、わざわざショーンヘルムに男爵(または女男爵が)住まう広壮な邸宅を構えてもいます。ノースポイントの屋敷は一族郎党に任せているものの、所領の管理は依然として宗家の専権事項のままです。現在、当主アラードの息子で若年ながら有能なエリック卿がノースポイント周辺の領地を管理し、男爵自身は宮廷で三者連合政府の一翼を担っています。

ドレル家は軍事と政治の両面で抜け目がないうえ、伝統的に商業に力を入れてきた甲斐があって、その財力はリベンスパイアーで稀に見る水準に達しています。ドレル家はソリチュードの商人たちとの結びつきを深めてきましたが、これは彼ら自身が懸命に指摘するように、武力を用いた威嚇とは何ら関係がありません。ドレル家にしてみれば、単に商売として引き合うだけのことです。

三者連合政府を形成するリベンスパイアーの三家を私なりに研究した結果、モンクレア家はほとんど信用に値しないという結論に達しました。彼らと関わる際には、どのような状況であれ警戒を怠らないことをお勧めします。彼らが真に忠誠を捧げているのは、彼らの野心だけです。一方ドレル家は、野心的であることに変わりはないものの、ある程度の名誉の概念、そしてモンクレア家(ランセルの後裔だということを過度に誇っているように見える者たち)が稀にしか示さない愛国心を持ち合わせているように見えます。タムリス家はどうかというと、彼らは常にウェイレストの忠実な友でした。もっとも、現在の女伯爵は当主の地位に就いたのが比較的最近ということもあり、今以上に大きな責任を負う用意はできていないかもしれません。

リベンスパイアーの狂血鬼Bloodfiends of Rivenspire

タムリス家の側近ナラナ 著

このところリベンスパイアー全土に出没するようになった狂血鬼について、調べられるだけのことを調べよと仰せつかった。この生物は一見、過去に我々が観察してきた他の狂血鬼とまったく変わりがないように見える。しかし、さまざまな点が似ている一方で、1つだけ重大な違いがある。それは、彼らが吸血鬼の周期の終わりにではなく、始めに現れるという点だ。

このプロセスは、長くつらい潜伏期間の終わりに現れるのではなく、恐ろしいほど短い時間内に、ごく普通の人々を凶暴な怪物に変えてしまう。まるで、驚くべきスピードで感染者の体を溶かしてしまう血液性の熱病のようだ。触媒に接触した者が全員発症するわけではないが、発症すれば吸血鬼に(稀に)なるか、短時間で全ての狂血鬼の特徴である狂乱状態に陥る(ほとんどはこちらの経過をたどる)。

調査したところこれらの狂血鬼は、どうやらモンクレア家の宮廷魔術師であるアルゴニアンのリーザル・ジョルと、ワイロン・モンクレア男爵のレディ・ルレラヤ・モンクレアに関わりがあることが分かってきた。その2人はモンクレア家の兵を率いてリベンスパイアーを転戦しているが、旗下の兵のなかには吸血鬼も混じっている。噂によるとリーザル・ジョルとルレラヤは、何らかの邪悪な魔術、血の呪いのおかげで、単に一瞥し、手を振り、二言三言つぶやくだけで、ごく普通の人々を狂血鬼に変えてしまう能力を手に入れたのだという。もっとも、数々の目撃情報は贔屓目に見ても錯綜しており、こうした主張はまだ完全に裏付けが取れたと言えない。

過去に我々が対処してきた他の狂血鬼同様、リベンスパイアーの狂血鬼も正気を失った吸血鬼である。彼らの精神は回復不能なほど退化し、動くものと見れば見境なく襲いかかる。まさに骨と血に飢えた、残忍で暴力的な獣と言うほかない。この「血の呪い」は、異常な速さで進行する。いったんこれに取りつかれるや、ほんのわずかな時間で凶暴化した人々の例は、それこそ枚挙にいとまがない。リーザル・ジョルとルレラヤがいかにしてこの恐ろしい力を身につけたのかは詳らかでない。分かっているのは、2人がどうやらオブリビオンの力に頼って、モンクレア男爵のリベンスパイアー平定を支援しているということだ。

この「血の呪い」は例外的なものではあるが、リベンスパイアーの狂血鬼の習性は彼らの同族と変わらない。理性を欠いたこの凶漢たちは、犠牲者に自らの苦しみを伝染させる能力を持ち、しばしばそれを行使する。リベンスパイアーの狂血鬼に傷を負わされるか殺されるかした者が、それこそ瞬く間に狂血鬼に変貌してしまう確率は、相当に高い。

さらなる情報が集まるまで、リベンスパイアーの狂血鬼に関して私が推奨できる行動指針は1つしかない。滅ぼすべきだ。

レイヴンウォッチ伯爵家からの布告House Ravenwatch Proclamation

理解を求める者たちに告ぐ。

掴まえ所がなく古い貴族の家が、分かりやすく目標を公開することなどないとお考えだろう。そう考える者がいても不思議はない。しかしながら、故郷と味方に不和という災厄が訪れた今、明敏とは言えぬ者達のために旗幟を鮮明にしておくべきだと考えた。

レイヴンウォッチ伯爵家にとっての最優先課題は、いにしえの昔からリベンスパイアーに巣食う邪悪な存在を滅ぼすことだ。それは数々の名前で呼ばれている。アバガンドラ、ロラダバル、そして現在においては「光なき名残」。はるかな昔から、幾世代もの学者たちが、このアーティファクトを理解しようと努めてきた。しかし、理解など土台無理な話だ。それはムンダスに取りついた疫病であり、駆除する他はない。

レイヴンウォッチ伯爵家の第二の目標は、「光なき名残」の力を利用しようとする不心得者たちの野望をくじくことだ。モンクレア男爵の美辞麗句と「熱烈な愛国心」とやらに騙されてはならない。彼は「光なき名残」の力に屈し、リベンスパイアーの美しい郷土を破壊することをもくろんでいる。我々がなぜそれを知っているかというと、モンクレア男爵が「光なき名残」の力に取りつかれたとき、その場に居合わせたからだ。

我々はどちらかというと日陰を好む。本来、旗振り役を自ら買って出る柄ではない。しかし、事態は切迫している。もはや手段を選んでいる余裕などない。どうか知っておいてほしい。リベンスパイアーがいかなる脅威に直面しているにせよ、諸君だけが矢面に立つわけではない。我々が諸君の味方をしよう。レイヴンウォッチ伯爵家はエメリック、そしてリベンスパイアーの善良なる民と共にある。

レイヴンウォッチ伯爵家当主、ヴェランディス

光の名残The Remnant of Light

アイレイドの書
〈告げ示す者〉ベレダルモ 訳

その血の刹那(または永劫)のうちに、アヌマリルはフィレスティス(卿)に「光の名残」(アウタラク・アラタ)を届け、それをタムリエルの「太陽が沈む寒い果て」(ファル・ソーン・グラセ)に運んでほしいと頼んだ。気高いフィレスティスは「光の名残」を受け取ると、クラン(または家畜)を引き連れてクワイロジル(?)を離れ、はるかな地へと旅立った。常に夕日をいちばん左の目で見るようにして旅を続けるフィレスティスの後ろを、アイレイドの移民たちがついてきた(または追ってきた)。

一行は「冷たい岩の大地」にたどりつき、泳いで岸にあがった(打ちあげられた?停泊させられた?)。岩は冷たく硬かったが、「光の名残」が全てを肥沃に(またはうごめくように)してくれた。移民の多くは健康を損なったが、「光の名残」のおかげで岩(または山々)に食用石(クレ・アンダ)がなるようになり、これは美味なだけでなく治癒の効果もあった。

フィレスティスは「冷たい岩の大地」全体に「光の名残」が微笑む(輝く、ぬくもりを広げる)ことを望んだ。そこで、今や光輝に力づけられた移民たちが山(または峰)を隆起させ(または削り取り)、「光の名残」をその上に置けるようにした。これは、880刹那(または永劫)のうちに照合(?)された。すると、「冷たい岩の大地」にはあまねく食用石がなるようになり、移民たち全員が健やかに(または多産に、あるいは賢く)なった。

時は過ぎ(何ヶ月もが無為に過ぎ)、気高いフィレスティスは死の(餌食に)なった。すると、移民たち1人ひとりが涙にくれ、その涙で青く澄んだ湖ができた。けれども、フィレスティスの配偶者が彼を「光の名残」がある山(または峰)に連れていった。すると、フィレスティスは光輝に力づけられ、さらに8コーラスを踊った。

北部の王宮都市、ショーンヘルムShornhelm, Crown City of the North

第39代モンクレア男爵、ワイロン卿 著

マルクワステン・ムーアとショーンヘルムの高地に住むブレトンの民には、繰り返し物語に語られる長い歴史があり、誇るべき事績には事欠かない。伝説の時代にあった「巨人族の捕縛」、「太陽が死んだ年」の「ウィルド・ハグの粛清」(これにより、ムンダスの空という空がマグナスを取り戻した)、「グレナンブリア湿原の戦い」における「モンクレア騎士団の突撃」(しばしば誤って「ショーンヘルム騎士団の突撃」と呼ばれる)等々…

こうした波乱万丈の歴史を経ながらも、終始リベンスパイアーの民草は幸運であった。恐怖が支配する時代も勝利に沸く時代も、常にモンクレア家の当主によって巧みに導かれてきたからである。

モンクレア家の当主が常に天命を授かりショーンヘルム王としても君臨してきたかというと、必ずしもそうではない。しかしながら、モンクレア家が備える数多の美徳のなかには謙譲の精神もまた含まれる。ことを丸く収めるために、歴代の当主たちが自分よりも王位を主張する根拠が弱い者たちに、自ら進んで即位の権利を譲ることも少なくなかった。この謙譲の精神を発揮しすぎたことによって時に悲劇が起きたことは、我が父にして第38代モンクレア男爵たるフィルゲオンの例が、悲しくも証明している。

ブレトンの歴史を学ぶ者であれば誰しも知るとおり、レマン皇帝亡きあとの最も偉大なショーンヘルムの君主といえば、「グランデン・トールの戦い」で我が軍を率い、第二紀522年より北部を治め、在位のまま同546年に身まかったハールバート王をおいて他にない。ハールバートはブランケット家の出で、第21代ブランケット伯爵であった。そして妃には、モンクレア女伯爵イフィーリアを迎え入れている。ハールバート王崩御のみぎり、正嫡のフィルゲオン王子はわずか14歳と幼く、その王位継承権にはモンクレア家の後ろ盾があったにもかかわらず、ブランケットとタムリスの両家はフィルゲオン王子の異母兄に当たるランセル王子を支持した。ランセル王子はタムリス家の血筋に連なる病弱な女性とのあいだに生まれた庶子であった(ドレル家は例によって争いから距離を置き、どちらの候補に肩入れすることも拒んだ)。

ランセル王子がフィルゲオン王子を抑えてショーンヘルムの王位に就くまでに、どのような裏工作が行われていたかは、あまりよく知られていない。若きモンクレア男爵の顧問官たちは(男爵の母君はハールバート王よりわずか2年早く逝去していた)、正嫡であるフィルゲオン王子こそが王位の正当な継承者であると主張した。これには、かの有名な「ブレトン出生録」の補遺による裏付けもあった。その補遺は、「マウント・クレール家」こそがショーンヘルムの王統であると明言していたからである。複数の王位請求者たちの正統性を審議するため北部評議会が召集されたが、この審議が続いているさなか、モンクレア家の顧問官たちはブレトン出生録補遺が紛失しているのに気づく。一方ランセル王子は、長らく行方知れずになっていたという(いかにも胡散臭い話だが)「ディレニの勅書」なる古文書を持ち出してきた。それには、リベンスパイアーにおける「ブレトン王家の代理人」として、ブランケット家が指名されていたのである。

やがて評議会で投票がおこなわれ、ランセル王子が僅差で勝利をつかみ、ショーンヘルム王ランセルとなった。フィルゲオン王子の顧問官のなかには一戦交えても王位を争うべきだと主張する者もいたが、若い王子はこれを拒み、ただのモンクレア男爵となる道を選んだ。

そのような謙譲の精神が、どれほど裏目に出たことか!フィルゲオンが評議会の決定に唯々諾々と従った結果どのような事態を招いたか、我々はみな知っている。すなわち、566年の一連の悲劇、そして、第一次ダガーフォール・カバナントに対する反乱である(我々にとっては恥ずべきことだが、この反乱は「ランセルの戦争」として知られる)。標準的な歴史によれば、モンクレア、タムリスはもちろん、ドレルまで全ての家がランセル王の召集に応じ、エメリック上級王と南部を敵にまわした彼の致命的な戦争に兵を出したことになっている。このとき、ランセルの掲げる大義の正当性に確信が持てなかったモンクレア伯爵フィルゲオンが、ランセル王とエメリック王に対して、両陣営のあいだを取り持つ和平特使になろうと申し出たことはあまり知られていない。これに対してエメリック上級王がどのような返事をしたかは歴史の闇に埋もれてしまったが、ランセル王が激怒して言下に拒絶したことはよく知られている。我が父は再び異母兄に服従し、結果、モンクレアの騎士たちは滅びる定めにあったランセルの軍に加わったのであった。

ランセル王が陣没すると、リベンスパイアーはたちまち混乱状態に陥った。ショーンヘルムの王冠は「裏切り者の岩山の戦い」で行方知れずとなり、ランセルを玉座につかせるために決定的な役割を果たした「ディレニの勅書」もそれ以来目にされていない。ランセルの死によってブランケット家の血筋は途絶え、以来、ショーンヘルムの玉座は空位が続いている。リベンスパイアーは現在、三者連合の北部評議会によって治められている。評議会は北部諸州の平和と秩序を維持すべく誠心誠意努めてはいるが、本音が許されるならば、彼らの努力が充分だと言う者は誰もいまい。ショーンヘルム、および北部には王が必要なのだ。

そもそも、なぜ北部に王がいてはいけないのか?腹蔵のないところを言わせてもらえるならば、モンクレア家伝統の謙譲の精神はひとまず、いかに残念であろうとも脇に置いてこう言わねばならない。モンクレア男爵ワイロン卿たる私こそが、ショーンヘルムの玉座につくべき正統なる継承者なのだ。我が祖父はハールバート王その人であり、私はその正嫡の系譜に連なる直系の後裔に他ならない。これは、北部広しと言えども、私の他に誰一人掲げることのできない主張である(このことはまた、ブランケット家の領地を継ぐべき唯一の存命相続人たらしめてもいる。当該領地の大半は不公正にもタムリス家とドレル家によって分割され…いや、これ以上は言うまい。謙譲。常に謙譲の精神を忘れてはならないのだから!)

さらに言うならば、この決定的な局面において、次の事実を公表できることを幸運に思う。すなわち、長らく行方知れずだった「ブレトン出生録補遺」がモンクレア家の歴史家によって発見されたのである。その中から、重要なくだりをここに引用しよう。

「…当時シャーン・ヘルムとその隣接地域においては万事が秩序のうちにありしことに鑑みて、いと気高くも高貴なる…(判読不能)…はマウント・クレール一門に…(判読不能)…並びにシャーン・ヘルムの統治…(判読不能)を永久に付与せんとする。かくあらしめよ」

リベンスパイアーの民に告ぐ。モンクレア男爵ワイロン卿は自らの務めを果たす用意がある。

デシャーンの伝承

Deshaan Lore

クワマーの採掘の楽しみと利益Kwama Mining for Fun and Profit

フラール家のドレイン・レダス 著

クワマー鉱山を開拓し維持すれば利益が得られるだろう。さらに重要なことは、それぞれがクワマーとクワマーの環境条件について時間をかけて学べば、もっと利益が上がるだろうということだ。クワマーとは、卵鉱山と呼ばれる地下に作られたコロニーに生息している巨大な虫だ。卵はすべてのクワマー鉱山にとって主要な収入源だが、鉱山で産出できる生産物は決して卵だけではない。クワマーのカトル、スクリブのゼリー、スクリブジャーキーなどがすべてクワマー鉱山にとっての収入源となる。

クワマー鉱山に着手するにあたって:

1a.野生のクワマーコロニーを見つけ出して手なずける(難易度は高い)、あるいは
1b.過剰供給状態の鉱山から余ったクワマーを購入する(高価である)
2.クワマーの匂いが体にしみ込むまでコロニーの近くに住む
3.クワマー・クイーンの部屋には決して近づかない
4.卵を集めカトルを集める
5.利益を計算する

その名前に反して、クワマー鉱山は生きた生物から構成されている。賢明かつ控えめな維持を行えば、中規模の鉱山から貴重なクワマーの卵を大量生産できる。さらに、クワマー鉱山では味のいいスクリブジャーキー、すっぱいスクリブのゼリー、錬金術師に評価が高いクワマーのカトルの生産も可能である。

クワマーコロニー:利益が見込める鉱山を手に入れるには、まずは健康なクワマー・クイーンと大量のクワマー・ワーカーを確保することだ。クイーンは鉱山の最奥部にある部屋で卵を産む。クワマー・ワーカー達が卵の世話をし、必要な空間や環境条件、卵の発育状況に合わせて様々なトンネルや部屋へと卵を運ぶ。クワマー・ワーカー達は、鉱山のための食べ物の生産、クイーンの給餌や洗浄、コロニーの発達に合わせた鉱山の拡大なども行う。普段の仕事をしていない時、クワマー・ワーカー達は発展し続ける迷宮のごとき鉱山の中に新たな部屋やトンネルを掘ることもある。クワマー・ワーカーは普段は大人しいが、威嚇や攻撃を受けたりクイーンが危険に晒されると凶暴化する。

クワマー・ウォリアー達はコロニーを守っており、危険を察知すると迅速に対応する。攻撃的で極めて危険なため、慎重に丁寧に扱わなければならない。クワマー・ワーカーが四足歩行なのに対し、クワマー・ウォリアーは二足歩行で非常に強力である。

スクリブは、鉱山労働者が未熟なクワマーと呼んでいるように、クワマーコロニーの中を自由に動き回る。鉱山では通常スクリブの群れを2つのグループに分ける。ワーカーやウォリアーに成長させるグループと、ゼリーやジャーキーにするため幼いうちに捕獲するグループだ。スクリブのゼリーは食料源など様々な用途に使用されるが、薬を作り病気を治癒するための重要な材料として錬金術師に重宝される。スクリブの薄切り肉を乾燥させて作られるスクリブジャーキーには多少の回復効果があり、ダークエルフの料理専門家のあいだで大変美味だと評判である。

クワマー鉱山の入手:設置済みの鉱山からクイーンとクワマーを購入する際にかかる法外な料金を支払いたい人はいないだろうから、まずは野性のコロニーを見つけ出して手なずける必要がある。しかしこの方法でも資金が必要ないわけではない。野生のコロニーの探索へと本格的に着手する前に、鉱山オーナー志願者はフラール家からライセンスを購入する必要がある。

有望なコロニーを見つけても、すぐに中に入って営業開始というわけにはいかない。鉱山労働者がコロニーの凶暴な戦士達によって始末されてしまうだろう。そのための解決法がある。順応することだ。順応作業には時間がかかるが、時間をかけてコロニーを慣れさせ、中に入っても不快だと思わせないようにすることで、(コロニーのメンバーと鉱山労働者両方の)負傷者や死者の数を最小限に抑えられる。鉱山労働者がその辺りのクワマーと同じ匂いを発するようになれば、ウォリアー達は彼らをコロニーの仲間だと認識するようになる。

卵の捕獲:クワマーの卵の実際の「採掘」には技術はそれほど必要ない。鉱山労働者は仕事を行うための根気と常識を持ち合わせていれば十分だ。卵の捕獲者にはバランスを見極める目が必要だ。卵を多く取りすぎるとウォリアー達やクイーンを刺激してしまう可能性がある。少なすぎると、クイーンの卵産出量が減少してしまう。鉱山管理者はクイーンの卵産出量が多すぎたり少なすぎたりしないように、注意深く目を配らなければならない。産出量が大幅に上下してしまうと利益に影響が出て計画を立てるのがより困難になる。避けなければならない。

クイーンの部屋には決して近付かないこと。クイーンに近付くといかなる者もクワマー・ウォリアーとクワマー・ワーカーによって脅威と見なされ、適切な対処をされる。コロニーに混乱が起こってしまうと鉱山労働者が安全に鉱山に入れず、生産を中止せざるを得ない。コロニーで暴動が起きている際に鉱山労働者を何人か失ってしまうかもしれないが、ここで忘れてはいけない最も重要なことは、クワマーはいずれ落ち着きを取り戻し、鉱山労働者が中に入っても再び受け入れるようになるということだ。

注意:フラール家の卵鉱山ライセンス取得後は、定期的に生産高を報告する必要がある。遵守できなければ制裁措置や罰金が課せられ、鉱山の閉鎖を強いられる場合もある。そうなるとつまらないし、当然儲けを出すこともできない。

ゴーストスネークの伝説Legend of the Ghost Snake

第二紀568年、マブリガシュの観察記録。放浪者ボノリオンの日記より

デシャーンでは奇妙なダークエルフのアッシュランダーの部族に遭遇した。彼らは自分自身をマブリガシュと呼んでいる。ヴァーデンフェルの同胞とは違ってこの部族は遊牧民ではなく、彼らがゴーストスネークの谷と呼ぶデシャーンの中でも隔絶した地域に定住しているようだ。恐ろしいゴーストスネークの話は、外部の人間が村に長居しすぎないように彼らがでっち上げたものに違いない。しかし正直に言わせてもらうと、これまでに出会ったどの文明的なダークエルフにも負けないほどのあの無礼さがあれば、そんなことをしなくても外部の人間は逃げていくだろう。しかしその孤立した部族に対する好奇心が勝り、私はその無礼さになんとか耐え、近くに滞在して観察記録をつけられた。わかったことは以下の通りだ。

マブリガシュは訪問者を歓迎しない。

マブリガシュは母系社会のようで、明らかに男性よりも女性のほうが力を持っている。数の上でも男性の3~4倍はいるようだ。この社会は男性を嫌悪しているとまでは言わないが、男性に対する信頼度は明らかに低く、あまりよく思われていない。少なくとも私が見た限りは。

彼らはゴーストスネークが谷を越えて助言を与え、見守ってくれていると主張している。訪問者を怖がらせて村の人口を一定に保つために、このいわゆる「ゴーストスネーク」を利用しているに違いない。

彼らはこの架空の神に部族内の仲間をいけにえとして捧げているようだ。長老達はこの「ゴーストスネーク」を称えるための試練を促しているが、ほとんどの場合参加者の死亡という結果に終わっている。

ゴーストスネークの伝説の内容を、6才か7才くらいのかわいい少女が教えてくれた。彼女はまったく怖れたり遠慮することなく私に近付いて来た。なぜそんなに気味が悪くてずっと監視しているのかと尋ねられた。少なくとも要点はそういう内容だった。私はマブリガシュの方言はせいぜい初歩的なものしか理解できない。私はその質問には答えず質問で返した。「みんなが口にしているゴーストスネークとは何なんだ?」私は彼女に尋ねた。

「くねくね道を進んで行ったらわかるよ」と、そのかわいい小さなまつ毛をまばたかせながら彼女は答えた。「谷を大事にしていればゴーストスネークが助言をくれて守ってくれるの」。彼女は続けた。「みんな知ってるよ」。彼女は話し続けてくれた。ゴーストスネークとは部族の女性の祖先の霊的実体が合わさったもので、幽霊のような外見をしていると部族に信じられ崇められているということだった。あるいは、谷を呪っている恐ろしい死んだ蛇が罪のないマブリガシュの子供達を好んで食べていると言っていたのかもしれない。彼女は早口で喋った上に、さっき書いた通り、私の方言の理解度は完璧にはほど遠いものだったのだ。

経済的な観点から話をすると、部族は独特な蛇革を作る。服からリュックサック、シンプルな鎧に至るまで、彼らは何を作るにもこの蛇革を使う。しかしこんなにも素晴らしい物にも関わらず、外部の人間どころか部族内の男性にさえも、それを売ったり交換したりしようとはしない。もしマブリガシュに外界との取引を説得できれば、関わった者全員が一財産を築けるだろう。

偵察中のマブリガシュの斥候に出会ったこともある。彼女には「くねくね道の亡霊と大蛇の中に投げ込む」と脅された。幸いにも私の走る速さと木登りの腕は彼女よりもはるかに上回っていたので、この残忍な儀式は避けることができた。さらに観察を続けると、彼らは主に蛇の肉を食べて暮らしているということがわかった。彼らの手に負えない非友好的な態度はその食生活のせいかもしれない。

近くに野営し観察を数日間続けた頃、ずいぶん恐ろしいマブリガシュの戦士の訪問があった。グラカーンと名乗ったその人物は、彼らが私を谷の大蛇の中に投げ込まなかった理由は、千里眼が私を不運な愚か者と認識したからにすぎない、と言った。きっと翻訳の過程で何かを聞き逃してしまったのだろう。千里眼に会いたいと申し入れると、その腰にぶら下げたずいぶん危険な見た目をした剣の柄を握ったグラカーンの手に力が入ったように見えた。それでマグリガシュ族と過ごす時間を終わらせることにした。

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第二紀576年、部族学者司祭
ニュロス・ラロロからの注釈

この非常に馬鹿げた「観察記録」は、ストンフォールとの境界近くに捨てられているところを数年前に発見された。このボズマーの歴史家であるボノリオンは、変わった出来事や民族の正確な記録方法に関して5才児ほどの理解力も持ち合わせていなかったようだ。作り話や飛躍した論理ともいえないようなものを用いて彼が言うところの「結論」を出している。少なくともマブリガシュとの会話を行っているという点や、当部族に関する情報は珍しいという点から、この文書はトリビュナル蔵書庫内に保存されており出版もされている。

シャド・アツーラ魔法大学の手引きShad Astula Academy Handbook

魔法大学シャド・アツーラへようこそ!ここはエボンハート・パクトの才能溢れる魔術師達が共通の学び舎を持ち、魔術師コミュニティのリーダーとなるために学ぶ場所です。あなたの旅はここから始まるのです。

多くの人にとって、魔法の達人への道のりは挫折と困難に満ちたものです。ここで行われている訓練は、最高の教師と指導法のおかげで、奉仕の人生とやりがいのある仕事へと繋がっていきます。この魔法大学に招待された人は全員、偉大な魔術師になれる可能性があるという将来性を見込んで招待されたわけですが、実情を言えば、全員が与えられた課題に合格できるというわけではありません。不運にも落第してしまった人達には、自分自身や他人に危害を加えることなく足りない技術に磨きをかけるための、セーフティネットとしての役割をシャド・アツーラが担います。

しかしあなたは落第しません。あなたはその不運な1人ではありません。あなたなら乗り越えられます。エボンハート・パクトのリーダーになるのです!

あなたは自分がマジカという才能を持ち、他の人達とは違っていることにもう気付いていることでしょう。さあ、力の世界へと誘われる準備はいいですか。あなたのために、翼を広げる場所をシャド・アツーラが提供します。魔術師の達人であるスタッフの助けを借りて、ただ飛び方を学ぶどころか、空高く舞い上がるのです!

魔法大学が選んだ一員として、魔法を学ぶ際に通常設けられる制約や規則はあなた達に適用されません。ああいった規則は、自分自身や他人に危険をもたらす可能性がある魔術師の安全を確保するために設けられています。魔法大学が選んだ生徒達は優秀であろうと見込んでいますので、すぐに自分の限界を学ぶことができるでしょう。しかしいくつかのルールはあります:

——指定された召喚サークル以外ではオブリビオンの次元から生物を召喚しないこと。
——大学の他の生徒に魔法の実験を行うことは禁止されています。
——スタッフへの魔法の実験は大いに結構です。隙を狙って行い、スタッフも反撃するので気を抜かないように。
——「子分」として助手を持つことは厳しく禁止されており、教団や密教の行動あるいは組織に関わった者は厳しく処分します。権力欲は卒業後まで取っておくように。
——感情制御と精神安定試験(ECMSE)に落第した生徒は部屋の共有を禁止されています。
——魔法による決闘は、スタッフの魔闘士の監督下でない限り厳しく禁止されています。

まもなく校長との面会日時が取り決められ、その際にシャド・アツーラについてや大学の一員としての立場について校長から説明があります。それまでは、自由にキャンパスを歩き回り、学友に自己紹介などしてください。その中には同級生になる人もいれば、下級生になる人、あるいは上級生になる人もわずかながらいるでしょう。しっかり顔見知りになっておいてください。

シャド・アツーラへようこそ。翼を広げて大空に飛び立ちましょう!本当に期待しています。失望させないでくださいね。

ドゥエマーのダンジョン:私が知っていることDwemer Dungeons: What I Know

非凡なダンジョン探検家、キレス・ヴァノス 著

彼らについてはほとんど何も分からない。最も興味深く、興奮に満ちた遺跡を残していったということ以外は。誰について話しているのかわかるでしょう。そう!ドワーフ。あるいはこれを読んでいるかもしれない学者達の間ではドゥエマーと呼ばれている人達。(私の兄弟のレイノーにはドゥエマーと呼べと言われるけど、ドワーフという呼び方のほうが好きよ。そっちのほうが言いやすいから)

さて、ダンジョン探検というのは(どれだけ楽しくもなりうると言っても)大変な仕事で、非常に危険なことでもある。ドワーフの遺跡は発見するだけでも簡単ではないし、中に入って無事に出て来るのはほとんど不可能に近いわ。しかしそれについて書く前に、まず遺跡自体について書きましょう。

ドワーフは建物や街からなる巨大なネットワークを地下に建設した。なぜ岩や土の下に建設することを選んだのかは分からないけど、しかしとにかくそこに建設したの。だから、ドワーフの遺跡を訪れたいなら地下に行かないといけない。1つでも見つければわかるでしょう。地上の入口から地下の構造に至るまで、ドワーフ建築は独特な見た目や雰囲気をしている。彼らは岩に自然に開いていた裂け目を用い、元からあった岩や自然の柱を飾ったり彫ったりして使ったの。他の構造を支える際や砦を設置する際など、どうしても必要な場合にのみ新たな構造を建設したのよ。

自然の岩を彫ったり形作ることに加え、ドワーフは主要な建築材料として石を使ったわ。遺跡内には金庫もある。アクセントとして、あるいは機械の中に、主に銅が使われているの。そして、ここが最も面白い部分なんだけど、ドワーフは装置を好んだようで、遺跡の中は装置だらけなの!罠だけではないわ。非常に巧妙な罠が遥か昔にいなくなったドワーフによって設計されて作成されたのは事実だけど、それだけじゃないの。蒸気ピストンと素晴らしいギアで構成された冷暖房設備、壁から光を放つライト、滝によって回転する巨大な車輪、光のビームを放つ多面型の宝石などなど、他にも驚くべき物が多数ありすぎて書き切れない。

ドワーフの遺跡を通り抜けるのは不気味な仕事よ。空っぽで無人なはずなんだけど、ライトが光り続けてパイプからは蒸気が出続けている。その場所は誰かの帰りを待っているかのようね。まるでドワーフがちょっと外出したっきり、そのまま何百年も帰って来なかったかのように。

さらに、ドワーフの建物はあなたが考えるほど生命体が存在しないわけじゃない。遺跡には住人がいるの。実際には、事実上その生命体だらけになっている遺跡もある。しかしその生命体は、私やあなたが知っているようなものではない。機械の生命体よ。コンストラクトね。彼らはダンジョンの部屋や通路を歩き回り、遥か昔に与えられた任務をこなしているの。しかし、間違えないでね。コンストラクトに見つかってしまうと、襲ってくるわ。音を立てる刃とピストンで動く剣を使って、ドワーフのコンストラクトはダンジョン探検家の全てに多大なる脅威を与えて来る。さらに悪いことに、そのコンストラクトはお互いを修理する方法を心得ている。遺跡の中に、この機械の生物がいなくなることはないらしいわね。

従って、ドワーフの遺跡に入って無事に出て来るには、巧妙な罠を見分けるか避け、強力なさまようコンストラクトの大群を避けるか倒し、鍵のような物がいるのかいらないのか分からない、奇妙な錠の開け方を突き止めなければいけないの。少し面倒かもしれないけど、個人的にはこの挑戦って、とても楽しいものだと思うわ。

もちろん、ここまでに書いてきたことはすべて学説と憶測よ。私の兄弟と私はまだドワーフの遺跡に入ったことはないの。この世界に点在する平凡なダンジョンでしか実践を積んだことはない。でも、本はすべて読んだわ!ようやくブサヌアルというドワーフの遺跡に立ち向かうために必要な資金を調達できた。近いうちにその冒険について書くつもりよ。

ところで、皆遺跡では注意しましょう。ダンジョンは楽しいことばかりじゃないわ。生存とは大変な仕事で、私達は成功だけを狙ってはいけない。生き残りもしないとね!

モーンホールドのポケットガイドA Pocket Guide to Mournhold

旅人よ、ようこそ!光と魔法の街、モーンホールドはあなたを歓迎します!このポケットガイドは第二紀481年に丁寧に書かれたもので、あらゆる要求に応えられる最新のものであることを保証します。

モロウウィンドの首都であるモーンホールドは、タムリエル一偉大な街です。祈りや交易をもたらしてくれる旅人達を心から歓迎します。

毎日あまりにも多くの巡礼者が集まるため、迷っていたり困惑していたり、時には喧噪や街の設計に苛立っている外国人を見かける場合があるということをご理解ください。

すべての訪問者に対応するために、楽しんでいただけそうな場所や活動、従っていただく必要のあるトリビュナルの教えなどをまとめた便利な案内を街の記録官が編集しました。よく読んでよく学び、楽しい時間をお過ごしください!

崇拝:モロウウィンドの最果てやさらに遠い場所から、ダンマーがトリビュナルの生き神に祈りを捧げ崇敬の念を表するために毎日やって来ます。もしあなたが私達ダンマーの兄弟あるいは姉妹であるなら、トリビュナル三大神のアルマレクシア、ヴィベク、ソーサ・シルへの崇敬の念の表し方はすでに心得ていることでしょう。トリビュナル聖堂を含む街の至るところにある聖なる祠では寄進も受け付けています。

あなたがダンマー以外の訪問者の場合は、市民をよく見れば正しい崇敬の念の表し方を身につけられます。最も安全なやり方は最も簡単なものです。ダンマーが行動するように行動してください。ダンマーが言うことを言うようにしてください。そして歩く場所に気を配ってください。

異教徒がトリビュナルの正義の裁きを受けているところを見ても慌てないようにしてください。記録官は異教徒に対する対処法をしっかりと心得ていますので、ご心配なさらないように。あなた方の安全は私達の最優先事項の1つです。

大市場:モーンホールドはモロウウィンドの商業の中心地です。商売は大歓迎です!この偉大な街に来るのが初めてだという場合は、街の監視所でお尋ねいただければ商業地区への安全な最短ルートをお教えします。

市場の中でも最大で、最も厳重にパトロールされている大市場には、滞在中にぜひ訪れておいたほうがいいでしょう。野外劇場で行われている季節ごとのイベント、街広場で行われる放浪の受難劇、手入れが行き届いた公園で行われている聖歌隊の合唱は必見です。そして買物をする度に、モーンホールドの素晴らしいお土産が手に入ることもお忘れなく。

しかしながら、買物は登録された認定商人からのみ行うようにしてください。そうしなければ、違法な手数料や物品税を取られてしまうことがあります。

ブリンディジ・ドローム広場:迷える人々は、彫像に囲まれたブリンディジ・ドロームの庭園を歩き回ることで安らぎを見出すことができます。木々や花が太陽からの栄誉を求めて空へと伸びるように、モーンホールド市民はトリビュナルの叡智を求めて手を上げるのです。ここであなたに慰めが与えられますように!

旅人の多くは、モロウウィンドの生き神が住まうトリビュナル宮殿を訪れるのを楽しみにしています。私達はあなたの熱意を歓迎する一方、過剰に熱意を表しすぎるとオーディネーターが異議を唱えることもあるかもしれないということをご理解ください。例によって、節度が大事です。熱意を抑えられない時は、街の至る所にあるトリビュナルの祠が贖罪のための寄進を受け付けています。

お探しのものはすべてモーンホールドで見つかるでしょう。司祭、記録官、街の衛兵が保証します。滞在をお楽しみください!

闇の遺跡Dark Ruins

狂気のシリロ 著

人は私の頭がおかしいと決めつける。私はその烙印を受け入れ、誇り高く受け入れることにする。私に与えられた名前は、私が闇の中に何度も入ろうとした証に他ならない。世界に知識をもたらすため、狂気と混沌の遺跡に挑んだ証なのだ。三大神よ、私が見つけたものから守りたまえ。そしてこの知識を世界と分かち合うまで私の心を保ちたまえ!

初めてデイドラの遺跡を見つけたのは、ずっと若い頃だ。それはトリビュナルの守護者を祀った古代の祠だった。私は群れからはぐれたクワマー・スクリブを捕まえようとしていた。秘密の峡谷までスクリブを追ったところで、はぐれたスクリブの痛ましい鳴き声が岩壁の裂け目から聞こえてきた。その狭い裂け目を何とか抜けると、岩の中に巨大な空間が広がっていた。しかし、私が足を踏み入れたのはただの洞穴ではなかった。その空間は彫刻を施された石だらけで、それを目にした途端、私は恐怖と感嘆の念に襲われた。その威圧的な石の数々にはクモの巣とクモの模様が施されており、中央に立つ像は他でもないヴィベクの守護者である網の紡ぎ手メファーラを模していた。

像の土台に彫られていた言葉が今も脳裏に焼き付き、決して忘れることはない。「肉欲は愛。嘘は真実。死は命」この言葉に恐怖を覚えたと同時に、心が踊った。この経験から狂気と知識への道へと導かれた。その終わりと始まりの境界線はわからない。

クワマー鉱山へと戻り、スクリブを群れへと導いた。それから荷物をまとめ、母に別れを告げ、デイドラの遺跡が眠る隠された祠と、闇の場所を探し求め始めた。

すべての荒れ果てた祠が地下にあるわけではない。人里離れた平原に隠されたものもある。草が生い茂る場所や、なだらかな丘のくぼみや岩だらけの峡谷に隠されていることもある。海底に眠る祠を訪れたこともあった。

地下洞窟の祠や建造物は、地上の大自然の中にあるものに比べて不気味で威圧感を与える傾向にあるが、それは単に絶えず存在する暗闇や、岩壁の圧迫感を意識することによる影響かもしれない。古代の祠は暗闇にひっそりと佇んでいることもあるが、巨大な建造物の中心を担っているものもあり、その多くが精巧な罠や凶暴な怪物、あるいはその両方によって守られている。

これまで数多くのデイドラの遺跡を訪れてきたが、その中には聖堂の荒れ果てようからは想像できないほどに頻繁に使われているものもある。デイドラ公を称え、崇拝する者は日常的に存在し、私自身かなりの数の新鮮な捧げ物や生贄を目にしてきた。しかし私が新しい名を手にするに至った理由である真の秘密とは、そんなものではない。それに関しては、先入観を持たずに覚悟して聞いてもらう必要がある。なぜなら、これから明らかにする事実は作り話のように聞こえるかもしれないからだ。キャンプで就寝前にたき火を囲みながら、怖がらせるために話すような怪談話のようにさえ聞こえるかもしれない。しかしはっきりと断言する。これは真実だ。

私が最初にたまたま迷い込んだ網の紡ぎ手の祠で見たもの。両親が住む家を飛び出してデイドラの遺跡をさらに探し求めようと思った理由。それは声だった。美しく魅惑的な声。その声が私に囁き、聞いたこともない秘密を教えてくれた。その囁きは古代のひび割れた像から発せられ、洞窟の壁からこだましていた。私の心の中まで鳴り響き、私自身の考えと記憶をかき消すまで、その音量と激しさを増していった。私はこの囁き声に怯えた。しかし、同時に心が踊り、もっと聞きたい衝動に駆られた。しかし網の紡ぎ手はそれ以上囁いてくれなかった。叡智の言葉と闇の秘密を告げ、沈黙したのだ。その場所は再び荒れ果てた場所に戻っていた。

もう一度あの声を聞くには、別の祠を探す必要があった。そして私は聞かずにはいられなかった。こうして私のライフワークが始まった。他の秘密の場所や隠された遺跡を探すしかなかった。他のデイドラが何を語ってくれるのか、聞かなければならなかった。彼らを崇拝しているからではない。何らかの黒魔術にかかってしまったからでもない。知識を世界に広めるために、もっと学ぶ必要があったのだ。それが私の使命であり、義務だったのだ!しかし、こうして言葉をつづりながらも、あの囁き声が私に語ってくれた内容を書くのは不可能に思う。あの囁き声を書き記そうとしても、手が動いてくれない。何度やってみても、それを拒否するのだ!

どうやら使命は果たせないらしい。知るべき秘密が存在している、と伝えることしかできない。しかしその秘密を学びたい者は、自ら足を運ぶしかないようだ。闇の遺跡を訪れ、囁きを聞いてほしい。あなたのほうが私よりもうまくやれるかもしれない。そしてあの囁き声を聞いても、正気を保てるかもしれない。

許容される殺人Sanctioned Murder

ミアラー・ヴィリアンの日記より

物心がついた時からずっと他人の命を奪うことに人生を捧げてきた。手当たり次第殺したわけではない。法を破った者やモロウウィンドの名家を陥れた者、トリビュナルの聖なる教えを冒涜した者を殺してきただけだ。

奴らの命は私の物だったのだ。私に与えられたと言ってもいいかもしれない。奴らは死ぬべきだったのだから。そして私は殺しの達人だったのだから。

私に殺された者達のほとんどは、私に殺されるとは予想もしていなかった。他人を陥れたと自覚している者はいた。無実の者を殺し、名家から窃盗を行い、人の恋人と寝たということを。しかし奴らは何も悪いことはしていないと言い張った。私が誤解していると。人違いだと。しかし喉に剣を突き付けられた人間が、正直にすべてを告白をしてくれる様には感心させられる。

次から次に始末していった。喉を素早く切り裂いた。表面の肉が口を開き、細い血管がきれいに切り裂かれた。叫ぼうとしても、あとは肺に貯まった真っ赤な血で窒息するだけだ。

私は死が大好きだ。他にどんなことをしても得られなかったような喜びで満たしてくれた。これが私の人生だ。これが私という人間だ。

人は私を怖れた。私の兄弟や姉妹を怖れた。我々を突き放し、必要になれば我々を抱きしめた。

英雄として称えられたと思えば、殺人鬼として怖れられた。権力者は我々の秘密の剣に倒れた。そして我々に指図していた者達が我々に従うようになった。

しかし誤りを犯してしまった。過程に欠陥があった。完全になりすぎていたのだ。罪なき血から正義を抜き取ってしまった。

どんなに明確な契約にさえも、こういうことはある。法が誤っているという可能性はいつも存在する。法が過ちを犯したという可能性が。契約は決して嘘をつかないが、いつも正しいというわけでもない。どんなに小さくて無害に見える行いでも、のちに破壊的な津波を引き起こすことがある。

愚か者の自尊心が決断力を鈍らせる。激情の瞬間、壁に塗りたくられた血がすべてを物語る。「モラグ・トング」。その言葉が大声で執拗に叫び続ける。その言葉が世界中に響き渡り、我々に無慈悲な殺人鬼だというレッテルを貼る。規範を守らず法を持たない殺人鬼だと。

常に隠れて秘密裏に動いていたトングが突然凝視にさらされた。奴らが我々を闇から光へと引きずり出そうとしていた。我々は闇の深部へと潜った。契約は減り、仕事は雑事に変わった。暇を持て余した名家の貴族の使い走りをさせられた。我々は耐えた。

そして我々は従った。忠誠を尽くした。目的の達成を命に賭けて誓ったのだから、立ちはだかっているものがどれだけ困難であろうとも背を向けない。世界が我々に背を向けようとも、我々は諦めない。

指導者たちが我々に囁く。忍耐を実践せよと。我々の正義の手が再び伸ばされ世界を支配する日が必ずやって来ると。来るべき闇が世界を一掃するだろうと。

そしてモラグ・トングが再び必要とされるだろう。再び重要となるだろう。

しかし私はもう年老いた。私の人生は終わろうとしている。ヴォウノウラへと旅立つ準備をし、このマントを誰か若い者に手渡さなければならない。経験が少なく、あまり賢くない者に。息子と娘は間もなく短剣を手にするだろうが、彼らは我々が偉大だった時を知らない。2人はモラグ・トングのため、新たな道を切り開かなければならぬ。

戦争の闇がやって来る。その怒りを免れる者は誰もいない。

モラグ・トングはこれまで耐えてきた過ちのことを、ひとまず忘れねばならない。覚悟が必要だ。

生き神The Living Gods

神学者デュリリス 著

ニルンの他宗教は、ダークエルフが知っている絶対的真理にたどり着くことは決してできない。神が彼らを支配し、神は彼らの中におり、神はモロウウィンドの他の住人と同じように実際に存在しているという真理だ。モーンホールドのトリビュナル聖堂の権力の座から、トリビュナルの生き神は民を護り助言を与えている。必要な時には罪や過ちを罰するが、貴き者にも賎しき者にも、それぞれに必要な恩恵を与えてくれる。

しかし生き神とは何か?超人的な鍛錬と積徳、人智を超えた叡智と洞察力によって神性を手に入れた、強大な力を持つダークエルフ達だ。モロウウィンドの3人の神王として、ダンマーの国を神の力によって導いている。三大神——神、母、魔術師——については、以下の通りだ。

戦士であり詩人であり、モロウウィンドの主であるヴィベクは、三大神の中で最も人気がある神かもしれない。彼は公に姿を現すことも多く、人々は彼を愛している。戦士であり詩人であるヴィベクは、情欲や殺人といった、粗野で冷酷な衝動に関わる陰の一面も持っている。

モロウウィンドの母として知られているアルマレクシアは、治癒師と教師の守護聖人である。彼女は治癒の母であり、慈悲と共感の源であり、貧しき者と弱き者の守護者だ。アルマレクシアはダンマーの文化と目的の良き部分の化身だ。彼女は慈悲を体現し、その叡智は日々の細事に至るまでダークエルフを導いてくれる。

機構界の神であるソーサ・シルは、トリビュナルの神の中でも最も知られておらず、隠された神である。モロウウィンドの謎と称されることもある彼は、魔術師であり発明家と魔術師の守護聖人だ。おそらく世界一の力を持つ魔術師で、最も博識な魔術師であることは間違いない。知識の光、クラフトと魔術に関する啓示と見なされている。

生き神はトリビュナル聖堂の三本柱だ。ダンマーの人々の力と統制の象徴であり、慈悲と法規範の遵守を組み合わせることによって統治している。

聖ヴェロスの審判The Judgment of Saint Veloth

マギストリックス・ヴォクス 著

強力な治癒の遺物の多くは巡礼者の聖ヴェロスと関連している。おそらく最も有名で名を残しているアーティファクトは聖ヴェロスの審判だろう。この強力なデイドラの戦槌は、追放者と霊的知識探求者の守護聖人としてヴェロスが具現化した物すべての輝かしい象徴である。

他の聖なるアーティファクトと共にトリビュナル聖堂の地下墓地に厳重に保存されている聖ヴェロスの審判は、預言者と人生の秘密の源泉の役に立ってきたが、聖ヴェロスが聖人に即位して以来伝説的な力を持つようになった。モロウウィンドの神王達がこの遺物を見守っており、領域の防衛にこの遺物の力が必要となった時のために準備を整えている。

聖ヴェロスは勇気を体現した人物であり、彼の人生の教訓と教義を信奉する者はその勇気を学び、大胆な物の見方を育てていく。彼は善きデイドラと悪いデイドラとの違いを明確にし、善きデイドラ公と元の協定の交渉に当たりさえした。善と悪を見分ける能力はこの生きた聖人の特質で、彼の治癒と治癒アイテムの傾向でもあった。この2つの面は彼の個人的な力の象徴であり、審判という名で知られている戦槌に統合されている。

ヴェロスの審判の権威は世界中に知れ渡り、その魔法は堕ちた魂による腐敗を浄化するために使われる。元々は武器として使われていたことは間違いない。しかしヴェロスは、外科医がメスを操るのと同じくらいの正確さでその戦槌を操り、魂から腐敗を取り除いて残りの部分を正常な状態で残すことができた。その戦槌は取り除いた腐敗を蓄え、使い手が戦槌の力の強化に使えるエネルギーへと変えられた。

もちろん、そんなに強力なアーティファクトは、誤った者の手に渡ってしまうと益となるよりも害と成り得る。この理由で、トリビュナルはこの審判を他のアーティファクトと共に鍵を掛けて保存している。審判の使い道として、治癒の道具としてではなく、生物の魂すべてを吸い出して、使い手の力を無限に増大させるために使えるのではないかと提案されたこともある。この提案は実現されなかったし、トリビュナルが道を誤らない限り、決して実現されないだろう。

二家の戦争War of Two Houses

フラール家歴史学者ドレリサ・フラール 著

モロウウィンドの名家間の戦争は珍しいことではなく、現在でも世界のどこかで2つまたはそれ以上の名家の間でしばしば対立が起きている。この対立が策略や陰謀から全面戦争にまで発展することは稀であるが、敵意が露わにされることはモロウウィンドの歴史上珍しいことではない。この戦争の中から、ある1つの戦争について書こうと思う。

第二紀559年、フラール家とドーレス家は通常の緊張関係や牽制を超えて、ブラック・マーシュの境界上ナルシスの南に戦闘部隊を配置した。商売敵である両家が戦うのはこれが最初ではなく最後でもなかったが、この戦争は戦況が進むにつれ膨らんでいった規模と犠牲者の数の両方において、記憶に残る戦いだった。

フラール家は係争中の領土に断固として交易所を設立しようとしていた。ドーレス家も同様に、これを断固として阻止しようとしていた。交易所の建設が半分ほど終わった頃、フラール家の作業員は突如としてドーレス家の傭兵に包囲されていることに気付いた。作業員の護衛を任されていたピュリラ・ファレンが率いるフラール衛兵の少数部隊はすぐさま防御を固め、交易所の防衛の準備に取りかかった。フラール衛兵の5倍ほどの人員を保有していたドーレス家の傭兵は、フラール衛兵をさっさと片付けて昼食前には交易所を全焼させられるだろうと考えていた。

しかし、そうはいかなかった。

ピュリラと衛兵達は最初の攻撃を比較的容易に撃退した。援軍が到着するまで何としても戦線を死守すると彼女は決意していた。援軍の到着を助けるために、ピュリラは連れて来ていた1人の魔術師にナルシスへのポータルを開く作業に取りかからせた。衛兵がドーレス家の傭兵の猛攻を十分な時間食い止められれば、開いたポータルからフラール家の戦闘商人達が溢れ出して戦況を逆転できる。あと少しの時間でよかった。

魔術師がポータルを開く儀式を行っている間、ピュリラと衛兵達はドーレス家の攻撃に技術と残忍さで対抗していった。傭兵達は突入し、交易所のバリケードを破るために何度も部隊を送り込んだ。軍はことごとく撃退されたが、打撃を与えていないわけではなかった。軍を4度送り込み4時間が経過したころ、ピュリラの軍の数は3分の1まで減っていた。その頃にはドーレス家の次の攻撃を撃退するために残っている者は、ピュリラと衛兵6人のみとなっていた。魔術師が儀式を終えてポータルを開くまではあと数分というところだった。「何としても時間を稼ぐのだ!」ピュリラは宣言した。「フラールのために!」

怒り狂った立派な7人の防衛者達は、魔術師が儀式の最後の手順を終えようとしている間、名誉とすさまじい決意と共に戦った。衛兵が1人やられた。2人。4人。砦に残っているのはピュリラと衛兵2人だけとなっていた。これまでの戦いを援助し見守っていたフラール家の作業員達もまた砦に赴き、工具ややられた衛兵の武器を使って交易所の防衛に参加していた。こうした懸命の努力も関わらず、彼らはドーレス家の攻撃の重圧に押しつぶされそうになっていた。

その時ポータルが開いた。

フラール家の戦闘商人達がポータルからあふれ出し、驚いた傭兵達の隊列に呪文や矢を浴びせた。ポータルから歩兵隊の一個部隊が現れ、ドーレス家の傭兵の戦列を破壊した。ドーレス家は少しの間持ち応えたが、まもなくフラール家の部隊の重圧に崩れ落ちた。戦線が崩壊したドーレス家の傭兵達はついに打破され、残った傭兵達は逃亡した。戦闘商人は完敗を理解させるために十分な長さだけ彼らの後を追い、そのあとは交易所を守るために整列した。

フラール家の勝利は勇敢で誇り高きピュリラ・ファレンの賜物だったが、彼女は最後の戦いで息絶えていた。撤退する途中に、ドーレス家の傭兵の刃が彼女の首を捕らえたのだった。治癒師が到着した時、彼女は死んでいた。しかしこのような歴史によって、彼女の偉業は決して忘れ去られることがないだろう。

神々

Divines and Deities

アヌアドの解釈The Anuad Paraphrased

最初のものたちはアヌとパドメイの兄弟でした。彼らが「虚無」にやってきて「時」が始まったのです。

アヌとパドメイが「虚無」をぶらついていると、光と闇がまざりあってニールが生まれました。アヌもパドメイもニールの出現に驚き、喜びましたが、彼女が愛したのはアヌでした。パドメイは傷心のまま行方をくらましました。

ニールは身ごもりました。ところが、赤ちゃんを産む前にパドメイが戻ってきて、ニールへの愛を打ち明けたのです。私が愛しているのはアヌだけなの。そう告げられたパドメイは怒りにまかせて彼女を打ちのめしました。アヌは帰って来てパドメイと戦い、「時」から追放しました。ニールは「創造」を産み落としましたが、殴られた時の傷のせいで間もなく死んでしまいました。アヌはとても悲しみ、太陽の中に隠れて眠りにつきました。

そのあいだに、「創造」の十二界に生命が芽吹き、繁栄していきました。いくつもの時代が流れてから、パドメイは「時」に戻ることができました。「創造」に会うと、憎しみがわいてきました。彼は剣を抜き放すと、それぞれがつながっている十二界をずたずたに切り裂きました。アヌが目覚め、またもやパドメイと戦いました。長い、激しい戦いのすえ、アヌが勝利しました。パドメイは死んだものと思われました。アヌはパドメイを捨て置いて、十二界の破片をかき集めて一つの世界ニルン、つまりタムリエルにすることで「創造」を救おうとしました。その時でした。パドメイの死に際の一撃がアヌの胸を貫いたのです。アヌはパドメイにしがみつくと、パドメイもろとも「時」の外へと身を投げました。

パドメイの血はデイドラとなり、アヌの血は星となりました。二つの血が混ざり合うと、エドラが生まれました。(そのため、エドラは善にも悪にもなれるのです。「創造」とのつながりがないデイドラよりも、エドラのほうがこの世の出来事に深く関わっているのも頷けます)

ニルンの世界は混沌に満ちていました。「創造」の十二界の唯一の生き残りが、エルノフェイとヒストでした。エルノフェイはエルフと人間の祖先で、ヒストはアルゴニアの樹木です。ニルンは内陸の海原を含めたすべての大地ですが、大洋ではありません。

エルノフェイの世界の巨大なかけらは、それほど壊れることなくニルンに落ちました。エルノフェイの民はそのままそこで暮らし、エルフの祖先となったのです。エルノフェイの民は外界の混沌とをへだてる境界を強化し、彼らの静かな土地をこっそりと隠して、これまでと同じように暮らそうとしました。十二界が裂けたことによる大混乱のさなかには、他のエルノフェイの民もニルンにやってきて各地に散らばり、何年ものあいだ、仲間を見つけながらさまよい歩きました。最終的に、エルノフェイの流浪の民は、前時代のエルノフェイの民が暮らす秘密の土地を探し当て、自分たちの親戚がいにしえの壮麗な暮らしをつづけていることに驚き、喜びました。流浪の民は、この安息の地で歓迎されると思っていましたが、エルノフェイのいにしえの民にとって、彼らは落ちぶれた下劣な民でしかありませんでした。詳しい理由はわかりませんが、戦争が起こり、ニルン全土へと戦火が広がっていきました。いにしえの民が古代の神秘や知識を受け継いできていたとはいえ、流浪の民は数で勝っていたばかりか、長いあいだニルンで懸命に生き抜いてきたため、とてもたくましかったのです。この戦いはニルンの様相を一変させました。たくさんの土地が海に沈み、現在、わたしたちが知る土地(タムリエル、アカヴィル、アトモーラ、ヨクダ)だけがあとに残りました。いにしえの民の土地はこの争いで手ひどく荒らされたものの、後にタムリエルとなりました。生き残った流浪の民は、三つの大陸に散っていきました。

長い時を経て、タムリエルのエルノフェイの民は次のように分かれました。
・マー(エルフ)
・ドゥエマー(深きもの。ドワーフと呼ばれることも)
・チャイマー(変わりしもの。のちのダンマー)
・ダンマー(黒きもの、忌まわしきもの。ダークエルフ)
・ボズマー(緑の民、森の民。ウッドエルフ)
・アルトマー(古きもの、高きもの。ハイエルフ)

他の大陸では、エルノフェイの流浪の民が人間となり、アトモーラのノルド、ヨクダのレッドガード、アカヴィルのツァエシとなりました。

ヒストの民はエルノフェイの戦を黙って見ていましたが、彼らの領地のほとんどは戦渦に巻き込まれて滅びました。難を逃れたわずかな土地はタムリエルのブラック・マーシュとなったものの、その大半は海のもくずと消えました。

やがて、人間がタムリエルに戻ってきました。まず最初に、伝説的人物、イスグラモルの率いるノルドが、先史時代にタムリエルの北岸に入植しました。歴史的文献に初めて登場したノルドは、彼の家の十三代目にあたるハラルド王です。この王の出現によって、神話の時代は終わりを告げたのです。

ヴィベクとメファーラVivec and Mephala

アルムシヴィとは何者か?

モロウウィンドは聖なる国で、神々は血肉を備えている。これらの神々は総じて、トリビュナル、三位一体のアルムシヴィ、ダンマーの徳を体現する三大神と呼ばれている。アルマレクシアは慈悲を、ヴィベクは統制を、ソーサ・シルは神秘を体現する。彼らのうちでヴィベクが最も人気を得やすい。ヴィベクはまた、最も大衆的である。というのも彼は愛された戦士、真なる民の詩人で、美しさと残忍さという相反する性質を備えていたからだ。ヴィベクは風雅な暴力である。ヴィベクはモロウウィンドの聖なる王の1人として、聖堂の文学や典礼に描かれている。彼はヴァーデンフェルという聖ヴェロシの亜大陸を守護し、レッドマウンテンを見張っている。彼は聖トリビュナルの1人で、新聖堂の神、そして神聖にして高潔なアルムシヴィの姿である。

守護神王かつ戦士詩人ヴィベクについてのこの明確な説明は、西の者にとってはもっともよく目にする上になじみのあるものだ。しかしヴィベクがダンマーにとっては、彼の守護者である黒き手のメファーラ、すなわち最初期のチャイマーを作ったデイドラの進化した姿であったことを覚えておくことは重要である。このヴィベクの闇の側面は、人気のある文学や典礼には出ていないが、ダンマーにはヴィベクの神聖な側面に不可欠な部分として無意識に理解され、受け入れられている。ヴィベクの複雑な性質をさらに完全に理解するには、ヴィベクの守護者メファーラの性質と、このデイドラの主の流儀と動機によって表される闇の主題についての理解が必要である。

メファーラとは何者か?

トリビュナルの三大神にはそれぞれ、チャイマー文化の黎明期にその守護者となる存在が描かれている。この守護者は、西では邪悪なデイドラの主アズラ、ボエシア、メファーラとして知られている。聖堂の神学では、アズラはアルムシヴィの魔術王ソーサ・シルの守護者である。ボエシアはアルムシヴィの母にして淑女たるアルマレクシアの守護者だ。メファーラはヴィベクの守護者である。伝説によれば、この3人のデイドラの主の導きにより、現状に不満を抱くアルトマーの群衆が自らを新たな人類に変え、新たな地を創り上げた。策略のデイドラの主として知られるボエシアがこの変化を引き起こすのに必要な革命的な方法を授けたが、メファーラはそれらの方法の陰の開発者であった。

西で知られているように、メファーラは殺人と性と秘密の悪魔である。これらの主題にはどれも、微細な側面と激しい側面が含まれる(暗殺と虐殺、求愛と乱交、配慮と詩的な真実)。メファーラはこれらの相反する主題を逆説的に含み、統合すると考えられている。これらの微細な暗示と矛盾はどれもみな、聖堂の教義では明示も説明もされていないにもかかわらず、ダンマーの持つヴィベクの概念の中には存在するのである。

ダンマーはヴィベク卿を殺人と性と秘密の怪物として思い描くことはない。むしろ彼らはヴィベク卿を善の王、守護戦士、詩人で芸術家として思い浮かべる。だが同時に、無意識にではあるが、彼らはヴィベクの善なる側面の下にほの暗く隠された底流があるという概念を受け入れている。

たとえば、ヴィベクにまつわる長く伝えられる神話の中で最も目を引くものの一つに、彼が支配者の仲間であるアルマレクシアとソーサ・シルと共謀して、ダンマー最高の英雄にして将軍のネレヴァル卿の殺害を企てた物語がある。この物語はアッシュランダーの口承に由来するが、聖堂のどの伝承とも全面的に矛盾している。それにもかかわらず、この話はダンマーの想像力の中に確固たる地位を築いている。それはあたかもこう言っているかのようだ。「もちろん、ヴィベクがネレヴァル卿を殺そうと共謀したはずはないが、とても昔に起きたことだ…誰が真実を知り得るだろうか?」

ヴィベクの表向きの顔は温和で繊細、思いやりがあって下の者を守るというものだ。同時に、ヴィベクの隠された側面、すなわち守護者の持つ、もっと原始的で無慈悲な衝動に関連した、暴力や性欲や陰謀の混じった闇の側面に、ダンマーは見境のない満足を覚えているように思われる。

タムリエルの神々と崇拝についてGods and Worship In Tamriel

タムリエルの神々と崇拝についての概要

帝国大学研究序説部準代書人 ヘッチフェルド修道士 著

神々とは、世界の事象への関心を示すことによって評価されるものだ。ここにはありふれた事柄に神が積極的に関わるという基本理念があるが、疫病や飢饉に対する神々のあからさまな無関心ぶりを鑑みることでその危うさに気づかされよう。

伝説的偉業への介入から日常生活における実体化まで、タムリエルの神の活動に何らかのパターンが認められたことはない。いろいろな意味において、神の関心は定命の者の領域の毎日の試練とは関係がないか、少なくとも関心がないように思える。だが、例外はもちろんある。

歴史的な文献や伝説の多くが、絶望の時代に神、あるいは神々の直接介入があったことを指摘している。たいていの英雄譚では、神のため、神の聖堂のために働き、戦った勇者に授けられた神の祝福について語られている。この世で知られている強力なアーティファクトのいくつかは、元々こうした褒美として神から与えられたものだ。徳のある司祭なら、望みが失われた時は聖堂で神に呼びかけ、祝福や援助を求めることができるという報告もある。こうした神との接触や与えられる祝福が実際にどのようなものであるのか、それについては推測するより他はない。というのも、聖堂はこうした神との交流は聖なるものであるとし、秘密にしておくからである。これらの接触が事実であるなら、神が俗世のことを気にかけていると信じているものにとっては心強いかぎりだろう。が、多くの状況において、まったく同じ神々が、苦痛や死の瀬戸際にあるものたちを前にしても手をこまねいて見ていることがあるのだ。まるで、手を下す必要などないと言わんばかりに。つまるところ、神の用いる理屈や論理は人間の理解のほとんど及ばないところにあるのではないかという結論が導かれる。

すべての神や女神に共通するはっきりとした特徴のひとつが、崇拝や奉仕への興味であろう。神聖なる探求としての奉仕は、神々の気を引く数ある行為のうちのひとつでしかない。各聖堂の規律や義務に従うことは日々の暮らしにおける奉仕の形であり、神々を満足させると考えられている。聖堂で執り行われる儀式もまた神々の気を引くにはもってこいだろう。どういう儀式にすべきかは対象となる神々にとって異なる。結果がはっきりと目に見えるとは限らないが、犠牲や捧げ物も神々の関心をこちらに向けさせるために欠かせないとされる。

毎日の聖堂生活における神々の直接介入が報告される一方で、平凡な暮らしにおける神々の存在が実際のところどういったものであるのかについては、おおいに議論の余地があろう。ウッドエルフのことわざに「こちらの奇跡はあちらの事故」というものがある。毎日の暮らしに積極的に介入するとされる神もいるが、他方では、移ろいゆく出来事への無関心ぶりで知られる神もいるわけだ。

一説によると、賞賛や犠牲や奉仕による崇拝などから神々は実際に力を得ているという。神々の社会における総合的な地位は、その崇拝者の数によって決まるという論理すら成り立つかもしれない。これはあくまでも私的な推論でしかないが、小規模な宗教施設と比較して、大聖堂では神の祝福や支援がさしたる苦労もなくあっさりと手に入るという明白な事実がその根拠となっている。

別の報告書によるとこの世には、人間の行動や奉仕を自らの力に変えられる能力を持つ、まるで神のような霊魂が存在するという。こうした霊魂の真の姿を解明することで、神と崇拝者の絆についてのいっそう深い理解が得られることだろう。

こうした霊魂が存在することで、彼らは神や女神の領域まで自らを高められさえするのではないかという推測が導き出される。帝国神学校のモツスオは、こうした霊魂が時の流れと共に信者のほとんどすべてを失った神や女神のなれの果てであり、神格の本源ともいえる最古の姿に退行したものではないかという説をとなえた。「古代の流儀」を実践するものたちは、この世に神がおらず、上級と下級の霊魂のみが存在すると口にする。ひょっとすると、これらの説はどれも真実であるのかもしれない。

モノミス:「シェザールの歌」Monomyth: “Shezarr’s Song”

シロディール「シェザールの歌」

これはシェザールが神に説明した新たなことだった。母親や父親になること、責任を持つこと、成功の保証なく大きな犠牲を払うことを話したが、その話し方が見事だったため、神々は心を動かされ、疑問や涙を飲み込んだ。エドラは自分達の一部から新たな生命を創れるように、世界や獣や他の生き物に自ら生命を生む権利を与えた。しかしこの自ら生命を生む権利は大きな痛みを伴う物で、この後エドラは創始の頃より持ち続けていた若さ、頑健さ、力強さを失ってしまった。

中には自分達が失った物に失望し、憤慨するエドラもいて、彼らはシェザールが自分達に嘘をついて騙したと感じていたため、彼自身と全ての創造に対して腹を立てた。アーリエルを筆頭とするアルドマーの神々であるこれらのエドラは、弱体化した自分自身と自分達が創ったものに嫌悪感を抱いた。「今も未来も全ては駄目になってしまった。我々にできるのは、エルフの種族に威厳を持って気高く我慢することを教え、自分達の愚かさを責めて、シェザールとその仲間に復讐を果たすことくらいだ」だからエルフの神は暗く陰気なのである。だからエルフは定命であることに満足できず、この苛酷でろくでもない世界の厳しさの中でも誇り高く冷静でいられる。

他のエドラは想像を見て、とても喜んでいた。これらのエドラはアカトシュを筆頭とした人間と獣人の神々で、彼ら定命の種族を褒めたたえ、大事にした。「我々は癒えることない痛手を負い、衰え続けるが、我々の作った定命の者世界は輝かしく、心と魂を希望で満たしてくれる。定命の種族に良い生き方や美しさと誠実さを大切にすること、そして我々が彼らを愛しているようにお互いを愛すことを教えよう」だから人間の神々は優しく忍耐強い。だから人間と獣人は楽しむ心や苦しむ心を持ち合わせ、より素晴らしい知恵とより良い世界に大きな望みを抱いているのだ。

デイドラの主はシェザールの言葉を聞き、彼と他のエドラをあざ笑った。「自分達の一部を切り離す?しかもそれを失う?永遠に?そんなの馬鹿げている!きっと後悔するぞ!我々はお前達より賢い。世界は自分達で創るが、切り離したりも、馬鹿にさせたりもしない。完全に支配できる、永遠に自分達のものとなる世界を自分達の中に創る」

そうしてデイドラの主はデイドラの領域と、偉大な者も低級な者も含めた下級デイドラを作った。デイドラの主の身近には常に崇拝者やしもべや玩具ができたため、彼らは大変満足した。しかし同時に彼らは時折、羨みの目で定命の者の領域を見ていた。確かに定命の者は粗野で力も弱く卑劣だが、その情熱や野心は愚かな下級デイドラと比べてずっと驚きがあり、面白かったのだ。これゆえ、デイドラの主は興味深い定命の種族の生き物、特に情熱的で力強い者に言い寄り誘惑する。彼らにとって、野心を抱く偉大な定命の者をシェザールとエドラから盗み取るのは、至福の喜びなのだ。「お前達は自分をバラバラにする愚か者だ」とデイドラの主はあざ笑い、「その上、自分達の一番上等な欠片を引き止めることすらできない。彼らは考えがまとまっていないエドラの愚かな低俗さよりも、デイドラの主の栄光と力を選んだぞ」と言った。

モノミス:アービスの神話Monomyth: The Myth of Aurbis

アルテウムの擁護者達は、副題に「サイジックの対価」と付けられた「神話のアービス」の中で、ユリエル5世が統治していた初期の最も華々しい時代における、基本的なアルドメリの宗教について皇帝に説明している。この中ではロルカーンの概念に対する批判や偏見が巧みに避けられている。これはシロディールの者達から神々の失われた兄弟「シェザール」として尊敬を集めている存在だ。これにも関わらず、サイジックは古代の視点を見事に概要としてまとめてくれているため、我々のここでの目的を果たしてくれる。この版は帝国神学校の保管所にあった、身元不明の書記官の手書きの書である。

謎のアービスは架空の不自然な領域として、計り知れないほど昔から存在している。

「アービス」はアヌとパドメイの肯定的および否定的存在とのグレーゾーン、つまり判断しにくい曖昧な部分を暗示するために使われている。これには、エセリウスやオブリビオンなどの組織化がそれほどしっかりしていない多数の領域が含まれる。

神秘のアービスから派生した魔法的存在は長い時間をかけ、物語にぴったりな複雑な道を歩みながら、神話を形成していく。

これらは不死の両極性の一部から作られた魂である。これらの最初となったのが時のドラゴン、アカトシュであり、アカトシュの形成によって他の魂が自分達を形成しやすくなった。神と悪は形成を繰り返し、子供をもうける。

最後に、神秘のアービスの魔法的存在が究極の物語を伝えた。彼ら自身の死についてである。これはある者にとっては、具体的で魔法のない世界への芸術的な変貌だった。他の者にとっては、すべての者が殺され、その身体を世界の物質の一部とする戦争だった。または、親の魂が死に、続いていく定命の者達に道を譲るというロマンチックな結婚と子育てだった。

この共有判断をもたらしたのは初期の神話で詐欺師やペテン師と非難されたロルカーンである。もっと共感的な作りになっている物語では、ロルカーンこそ定命の者の次元が存在する理由であるとされている。

芸術家や職人としてか、それとも溢れる創造力からか、はたまた他の類似の感覚からか、魔法的存在は定命のアービスという種族を自分達のイメージに合わせて創った。

魔法的存在はその後、死んで原初の神々になった。原初の神々は定命の者によって神や魂やアービスの特質として認識され、崇められている。彼らの死にも関わらず、これらの魔法的存在は自分達を不自然な領域にいる他の魔法的存在から切り離していた。

デイドラがオブリビオンやパドメイの虚無に近い領域に適した、魂や神として創られたのもこの頃だった。これによって神話の時代(神話紀)が始まった。原初の定命の者達はこれを喜びに満ちた「第二の創造」もしくは(特にエルフからは)痛みを伴う神からの破砕など、様々に認識されている。これらを生み出したのは常にロルカーンだった。

モノミス:ロルカーンとサタカルMonomyth: Lorkhan and Satakal

ロルカーン

この創造者、詐欺師にして試練を与える神は、タムリエルに存在するどの神話にも登場する。彼の最も一般的に知られる名前はアルドメリの「ロルカーン」か破滅の太鼓である。彼は父親であるパドメイが始まりの場所に不安定さをもたらして現状を乱したのと同じように、原初の魂を説得、もしくはけしかけて定命の者の次元を生み出させた。その世界が実現すると、ロルカーンは神の中心地から離れ、伝承によっては不本意ながらという説もあるが、原初の神々の創造地をさまよう。これらの出来事は文化によって解釈が大きく違う。これから挙げるものは比較的良く知られている例である。

ヨクダ、「ワールドスキンのサタカル」

「サタクは最初の蛇と呼ばれる過去から来た蛇で、未来はこの蛇の光る鱗で眠っていた。しかし、それはとても大きく、他には何も存在せず、とぐろを巻いていた。未来は互いの間をすり抜けながらも、呼吸も存在することもままならないほどの空間しか与えられていなかった。そこでこの世界は外に出してくれるよう助けを求めるが、当然のごとく、最初の蛇の外には何も存在していなかったため、助けは内に求めるしかなかった。これが飢えのアケルである。アケルが存在を現し、サタクはこれ以上ないほどの空腹を感じることしかできずに、食べて食べて食べ続けた。しばらくすると世界に空間が生まれ、始まりの時を迎えたのだった。これらは新しく生まれたばかりで、存在することに慣れていないために間違いを犯すことも多かった。そのため、大抵の場合はすぐに早い段階で終わるか、上手にできないか、自分達で見切りをつけた。始まろうとする者も多かったが、サタクが近づいて全部食べてしまった。何とも惨い時代だった。

「それからすぐにアケルは、サタクを自らの心臓に噛みつかせ、それで終わりを迎えた。しかし、死後も空腹は治まらず、最初の蛇は脱皮し、新たな存在に生まれ変わろうとした。古き世界が消滅するとサタカルが始まり、物事はその図式に気が付くと、その中で彼らの果たすべき役割についても気が付いた。そのうちにラプトガやトゥワッカのような名前を名乗り、仲間を求めて歩き回った。サタカルは自分を繰り返し何度も何度も食べたが、強い力を持った魂は奇妙な方向に移動することで、それを回避できるようになった。この行動はウォークアバウトと呼ばれるワールドスキンの合間を歩く方法である。ラプトガはとても大きかったため、弱い魂が自分達の行き先を見つけやすいよう空に星を散りばめられた。これによって魂は道をとても見つけやすくなり、ここは碧落の岸と呼ばれる次の皮膚を待つ場所になった。

「ラプトガは周期を通して多くの子を生み出す事ができたため、長身のパパという名で知られるようになった。他の者のために星を並べて空を作り続けたが、周期が何度も何度も巡るうちに助けを必要としている魂が増えすぎてしまった。そこで過去の皮膚の残骸から助手を作り出した。これをセプもしくは第二の蛇と呼ぶ。セプの中には大きな飢えが残っていた。複数の皮膚にあった複数の空腹感である。その強い空腹感のせいで正気を保てない場合もあった。時折、助けなければいけない魂を食べてしまいそうになったが、長身のパパが必ず手を伸ばして魂を引き離してくれた。しかし結局、長身のパパの手伝いに飽きたセプは、古いものから新しいものを作りだせば新しい世界にたどり着けると言って魂を騙し、古い皮膚の残りを集めてひとまとめに丸めた。魂はこの方が楽だったため、この生き方をとても気に入った。1つの場所からまた別の場所に行かなくていいのだ。多くの魂はこれは良いことだと信じて加わった。これに対して長身のパパは、ただ首を振るだけだった。

「ほどなくして、サタカルの本当の世界から距離が離れすぎているために、丸められた皮膚の塊は死に始めた。そして、ようやく碧落の岸に飛び込むにも遠すぎることに気が付いた。残った魂は長身のパパに元の場所に戻してくれるよう懇願した。しかし、厳しいラプトガはそれを聞き入れず、今度は自分達で星を辿り、碧落の岸に行きつく方法を新たに見つける必要があると言った。それができないなら、自らの子供を通して生き続ける他なかった。しかし、セプにはもっと大きな罰が必要だったため、長身のパパはこの蛇を大きな棒で叩き潰した。すると空腹感が死んだセプの口から零れ落ち、それが第二の蛇に唯一残された物となった。セプを除いて新しい世界の者は皆、神格へと戻るために懸命に努力することを許されているが、セプは死んだ皮膚の中でコソコソ動き回るか、空を泳ぎ回ることしかできず、空腹を感じると嫉妬して星を食べようとしたのだった」

モノミス:世界の心臓Monomyth: The Heart of the World

モノミス:アルトメリ「世界の心臓」

アヌは過去も現在も、全てのものを包み込んでいる。自身がアヌイエルの魂と他の魂全てを創ったことに気が付いているのかもしれない。全ての魂と同様、アヌイエルも自己を顧みる傾向があったため、自分の形、性格、思考力に違いを付ける必要に迫られた。こうして生まれたのがシシス。アヌイエルが自分について思索する際に使用する限界の全てを持つ者である。このため、全ての物の魂であったアヌイエルは様々なものになったが、過去も現在も、これはアービスとの相互作用である。

最初、アービスはアヌイエルの熟考がやみくもに続いたため、動揺し、混乱した。それからアービスの一部は先々の予定や、完全な知識の外で長く楽しむための方法について尋ねた。こうした方法で自分自身を理解できるように、アヌは自分の魂の魂、アーリエルを創り出した。アーリエルはアービスから時という新しい力として流れ出た。時間と共に、アービスの側面は自分達の本質や限界を理解し始めた。そしてマグナス、マーラ、ゼンという名前を持つようになる。これらの1つ、ロルカーンは本質というより限界であり、どこであれ長く存在することはできなかった。

アヌイエルの各側面に立ち入ったロルカーンは、限界を基盤とする考えを植えつけた。その側面の側面が内省することさえできる魂をアービスのために創るという計画について述べたのだ。彼は多くの支持者を得ることができ、アーリエルでさえ、新しい世界の王になれると言われてロルカーンに手を貸すことに同意した。そうして、彼らは自分達の側面が生きるためのムンダスを創り、原初の神々となった。

しかしこれには裏があった。ロルカーンの思惑通り、この世界には限界が多く、そのためアヌのものなどほとんど何もない。ムンダスはシシスの家だったのである。彼らの側面が次々と死にいく中、原初の神々は完全に消滅した。マグナスのように逃げる者もいた。これゆえ魔法には限界がない。イフレのように世界全体が死んでしまわないよう、アース・ボーンズのエルノフェイに姿を変える者もいた。生き延びるために結婚や子供を作らなければならない者もいた。それぞれの世代は前の世代よりも弱く、すぐにアルドマーが現れた。そして暗闇に覆われる。ロルカーンは人間と呼ばれる最も弱い魂から軍を作り、シシスを隅々へと送った。

アーリエルは彼らを取り戻すようアヌに懇願したが、既に他のものでそれらの場所を埋めてしまっていた。しかし彼の魂は以前より穏やかでアルドマーを人間の大群から守れるようにと、アーリエルに自分の弓と盾を与えた。穢れた原初の神々に耳を貸したチャイマーのように人の女を妻にめとることで時の流れを汚した者もいた。

アーリエルはエルダーウッドであるアルトモラを助けることができず、人間に敗れた。彼らは旧エルノフェイまで南へ東へと追いかけられ、すぐ後ろにロルカーンが迫っていた。彼は地面を粉々に打ち砕いた。最後にアーリエルの最も偉大な騎士だったトリニマクがロルカーンを彼の軍勢の前で打ち倒し、彼の心臓を抜きだした。それでも完全には死んでいなかった。人間はロルカーンの身体を引きずっていき、未来永劫アーリエルの子孫に血であがなわせることを誓った。

しかし、トリニマクとアーリエルがロルカーンの心臓を破壊しようとすると、心臓が笑い出した。そしてこう言った。「この心臓は世界の心臓。一方が他方を満足させるために作られたものだ」アーリエルは心臓を矢にくくりつけると海の遥か遠くへ、新しい世界の誰にも見つからないところまで飛ばしたのだった。

モノミス:竜神と不在の神Monomyth: Dragon God & Missing God

「ムンダスにおいては、紛争と不均衡こそが変化をもたらすのであり、変化とは十一の力の中でも最も神聖なるものである。変化とは焦点も根源ももたない力である」
—エグニスル、タヘリタエ、PSJJJJ会

簡単に言えば、人間とアルドメリの世界観の違いは神と定命の者との関係性にある。人間は不死の者の力によって自分達は創られたと謙虚な姿勢を示しているが、アルドマーは自分達がそういった者たちの直系であると考えている。一見、大したことではないように見えるが、これがそれぞれの神話を作り上げる違いとなっている。

タムリエルにおける宗教の始まりは皆同じである。人間であれエルフであれ、世界の始まりはアヌとその片割れという二元論から始まる。この2つの力にはアヌとパドメイ、アヌイエルとシシス、アクとエル、サタクとアケル、肯定的存在と否定的存在といった多くの名前が付けられている。アヌイエルは言語に絶する永遠の光、シシスは言葉で言い表せない堕落した行為である。その中間がグレイ・メイビーだ(エルノフェクスで「ニルン」を意味する)。

多くの文化でアヌイエルは世界の創造に関わった者として崇められているが、実際の反応を生み出すのはシシスであるため、より高い位置付けとなる。このためシシスは原初の創造者であり、自分が意図していなくても本質的に変化をもたらす存在なのである。その存在はヒストでさえも認めている。

混沌のシシスに対し、アヌイエルは秩序として認識されている。アヌイエルが神話的背景でもシシスによる気まぐれの影に追いやられてしまうことから窺えるように、定命の者にとっては完全な停滞状態より変化を思い描くことの方が容易いのかもしれない。非常に生き生きと描かれているヨクダの民話で、サタクは「ハム」としてほんの数回しか出てこない。その力はあまりにも偏在しすぎていて、まるで存在していないも同然になっている。

ともかくこの2つの存在から原初の神々、もしくは原初の魂と呼ばれるものが生まれたのだ。これらの原初の神々は人間にとっての神や悪だが、アルドマーにとってはエドラ/デイドラ、もしくは「先人」なのである。タムリエルの神殿では原初の神々全員を祀っているが、文化によって神々として認識されているメンバーはそれぞれ違う。しかしどの神殿にもアヌやパドメイのような竜神と不在の神の典型が含まれている。

竜神と不在の神

竜神は必ず時と関連していて、一般的に「最初の神」として崇拝されている。「日が差すようになった無限の世界にある止まり木」の持ち主であり、アカトシュと呼ばれることが多い。シロディール帝国における神の中心である。

不在の神は必ず定命の者の次元と関連があり、人間とアルドメリを分ける際の鍵ともなる。「不在」というのは、この神が神殿にいない(様々に解釈されている別の精神的苦痛)という意味、もしくは不死の者から「聖なる光」を奪われたことを意味している。ロルカーンと呼ばれることが多く、良くも悪くも、様々な呼び名が多数存在する。

ここではまだタムリエルと定命の者の次元は存在していないことに注意してもらいたい。グレイ・メイビーはまだ原初の魂の遊び場なのだ。より強くアヌの光と結びつきがある魂もあれば、不可知な虚無とより強い結びつきを持つ魂もある。これらは一定流用と相互作用によって数を増やし、長い時間をかけて性格が固まっていく。アカトシュが形成されると時が始まり、魂が自身について過去と未来を持った者だと気が付きやすくなる。認識可能な魂のうち、最も強いものはメファーラ、アーケイ、イフレ、マグナス、ラプトガなどを具体化する。他は、概念やアイデアや感情のまま残る。その中でも最も強い、ロルカーンと呼ばれたむき出しの衝動がムンダス、つまり定命の者の次元を創る計画を練り上げた。

レッドガードを除く人間はこの行為を神の慈悲、低級生物が不死を手に入れる悟りと見なしている。逆にダークエルフを除くアルドマーはこの行為を、精神世界との繋がりを切り離す残酷な企みと見なしている。

月夜のロルカーンThe Lunar Lorkhan

ファル・ドルーン 著

アダマンチンの塔での出来事に関する様々な報告を説くつもりはない。また、明瞭なる暗喩の戦から生じた話が、俗に呼ばれる「物語」というものの特性に欠けていることに関しても、述べるつもりはない。皆それぞれに、ロルカーンに関するお気に入りの物語、ニルン創造の背後にあるお気に入りのロルカーンの動機や彼の心臓を巡るお気に入りの物語があるだろう。しかし、「月夜のロルカーン理論」はとりわけ注目に値する。

端的に言うと、今も昔も月は、ロルカーンの「聖なる肉体」の二等分から成り立っている。他の神々のように、ロルカーンは「偉大なる創造」に加わった次元(惑星)であった…八大神は自らの神聖なる肉体を一部貸し与え、定命の者の次元(惑星)を創り上げた。一方で、ロルカーンの肉体は粉々に砕け、流星の如くその聖なる光はニルンへ落ち、「その存在価値と多少の利己心の跡を残す」こととなった。

従って、マッサーとセクンダは、二分割の化身(アルテウムによるところの「裂けた二元論」)であり、ロルカーンにまつわる伝説でしばしば非難の対象となるのである。それはすなわち、アニマとアニムス、善と悪、有と無、そして肉体と嗚咽や、失敗した者のうめきと沈黙を織り成す詩歌などといった概念を指す。ロルカーンは、己の役割に命の限りがあることをいつも忘れぬよう、夜空に月を置いたのである。

この理論を支持する者によると、他の「心臓物語」はすべて、月の真原点に関する陳腐な神話であると言う。(また、言うまでもなく、「空虚なる三日月理論」に対しても同様にとらえている)

八大神の九戒Nine Commands of the Eight Divines

聖アレッシアの代祷によって、人は神の恵みや、そこから得られる力や知恵で満たされることだろう。その結果、これらの教えから八大神教団とその栄光の真の意味に至ることもできよう。八大神の知恵が大空というインクで、大海原という羊皮紙に記されているとしたら、多岐にわたる真理と美徳の機微のすべてを人の心に伝えることはきわめて難しい。それでもアカトシュは、人というものがせっかちで、悟りまでの苦しい道のりを嫌うとわかっていたため、その知恵において、力強い明確さと簡潔な定義でもってこれらの単純な十の訓戒をはっきりと書き記すことをお許しになられている。

一の戒:ステンダールいわく、優しさと寛大さをもってタムリエルの人々に接すること。弱者を守り、病人を癒し、貧民に施すこと。

二の戒:アーケイいわく、生と死を分け隔てることなく、大地、生物、精霊を敬うこと。この世の恵みを保護し、慈しむこと。また、死者の魂を冒涜しないこと。

三の戒:マーラいわく、まじめに穏やかに暮らすこと。両親を尊敬し、家庭や家族の平和と安息をいつも心がけること。

四の戒:ゼニタールいわく、懸命に働くものは報われ、賢くお金を使えば心が救われるだろう。盗まなければ、罰せられないだろう。

五の戒:キナレスいわく、母なる自然の恵みを賢く使うこと。自然の力を敬い、自然の怒りを恐れること。

六の戒:ディベラいわく、美や愛の神秘に心を開くこと。友情という宝を大切にすること。謎めいた愛のなりかたちに喜びや創造力を見いだすこと。

七の戒:ジュリアノスいわく、真実を知ること。法を守ること。疑念があれば賢者の知恵を借りること。

八の戒:アカトシュいわく、皇帝に奉仕し、従うこと。誓約を学ぶこと。八大神を崇拝し、務めを果たし、聖人や司祭の言うことを聞くこと。

九の戒:八大神いわく、何にもまして、お互いに優しくすること。

おのおのがこの九戒という鏡をのぞきこみ、そこに天の恵みが映って見えたのなら、これらの訓戒を忠実に守っていれさえすれば、人は悲しみ、悔い改め、慎み深くなるだろう。従順なものが八大神の祭壇を訪れれば祝福され、八大神の慰みや癒しを授けられ、様々な慈悲に感謝の意を表するだろう。

聞き分けのない不道徳なものは、顔を背け、全知全能の八大神より授けられる純粋な知恵をないがしろにし、罪過と無知に満ちあふれた毎日を過ごす。犯した罪の耐えがたい重荷を背負い、人にも神にも邪念を見とがめられ、八大神の祭壇や神殿を訪れても祝福や安息を与えられることはないだろう。

それでも、悪人や愚者が救われないわけではない。どこまでも慈悲深い八大神はこう言っている。「悔い改め、善行を積むのだ。さすれば、恵みの噴水のしぶきはまたお前にも降りそそぐことだろう」

罪を悔い改めよ。過料として皇帝に金銭を納めるがいい。信仰とその恵みを人々にあまねく伝えるために使われよう。

善行をするがいい。輝かしい徳を積み、汚名をそそぐがいい。正義漢としての名声を八大神に知らしめるがいい。そのときこそ、聖堂の祭壇や祠に歩を進めれば、八大神の慰みと恵みを授かることができよう。

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