冒険者年鑑

Adventurer’s Almanac

冒険者年鑑、第一版Adventurer’s Almanac, 1st Edition

冒険者年鑑、第一版

ナイフのスコルド 著

もしお前が俺のような者か、よく理解できるが俺のような者になりたい場合、お前には人々が求めることを成し遂げる才能があるはずだ。より重要な点もある。お前には人々が金を払いたがる才能があるはずだ。ここ最近、我々のような者に対する需要は高くなっている。そのため、俺はわざわざ時間を割いて最高の助言を与えることにした。なぜかって?希望しても仕事を全て受ける訳にはいかないからだ。そして、この本を売る副収入は悪くない。もしこの本を盗んだなら、支払いに行って来い。本を貸している蔵書庫なら話は別だ。盗んでしまえ。それでおあいこだ。たかり屋め。

クラフトの依頼

俺は鍛冶の腕では「ナイフ」と呼ばれないが、仕事の合間に街で過ごしている時は、掲示板を確認するようにしている。依頼を受けてちょっと槌を振るい、支払いを受けて酒場に行く。簡単に儲かる。

ギルド

しっかりした仕事を受ける最も簡単な方法は、ギルドに加わることだ。連中はそのために存在している。明らか過ぎて本に書くのが馬鹿馬鹿しいと思う奴がいるかも知れない。年鑑ってのはあらゆることを書くんだよ、馬鹿野郎。

問題を暴力で合法的に解決するのが好きな場合は、戦士ギルドに行け。連中はタムリエルのどこにもギルドホールを置いている。

俺は不法な殺人を許容しないが、闇の一党があらゆる殺人依頼を請け負っているとは聞いている。

お前は血生臭い仕事を好まないかもしれないが、金は好きだろう。仮定の話だが、闇の仕事を管理している盗賊ギルドがあるらしい。もう一度書くが、年鑑はあらゆるものを網羅しなければならない。

魔術師ギルドは閉鎖的だと思っているかもしれないが、連中も仕事を頼みたがっている。魔法が使えなくても、訪れて見るといい。ほとんどの都市に存在している。

もし大物を狙っていて、常識が足りない場合はアンドーンテッドもお勧めだ。連中は大きな街に居留地を置いている。奴らが手放そうとしている宝は、レッドマウンテンよりも高く積み上がっている。もし、お前がそれを手に入れるために、信じ難い難題をこなすならだが。

戦争

三軍は決して戦争を止めることがない。同盟で運を試すなら、シロディールと帝都に向かって戦いに飛び込め。大量の戦利品があるだろう。勝者には。

そして、戦争に引き裂かれた地域では、人々が他よりも助けを必要としていることを忘れないように。仕事を引き受けるかどうかはお前次第だが、常に助けを必要としている街がある。

注目地域

冒険者を特に必要としている場所もある。俺がロスガーを訪れたのは、故郷に似ているからじゃない。オルシニウムは荒野を平定するため、荒事が得意な奴を特に求めている。それから、簡単に儲かるとは言い難いが、クラグローンはとんでもない場所だ。時間の半分は星が降っていて、残りの半分は宝が降っている。

街から出ても掲示板の確認は忘れないように。少なくとも、ゴールドコーストとヒューズベインでは忘れるな。賞金首とその他のあらゆる奇妙な仕事が、問題を自力で解決できない人々から、掲示板に依頼されている。

最後に

以上だ。この仕事を忙しくする全ての方法を書いた。こいつを毎日やれと言うつもりはないが、望むなら毎日やれる。それから、睡眠はそんなに大事じゃない。この本を一度買って、それで終わりだとは思うな。物事は常に変化する。変化した時、ナイフのスコルドはそれを書き止めるだろう。金を貯めておけ。

チップは歓迎している。

冒険者年鑑、第二版Adventurer’s Almanac, 2nd Edition

冒険者年鑑、第二版

ナイフのスコルド 著

また会ったな! 2冊目を書くほどネタがあるわけないと思ってただろう。もちろん、そいつは間違いだ。今書いてるんだからな。次世代の肉人形たちを教育して金を受け取る機会を、この俺がみすみす逃すはずもないだろう。

ヴァーデンフェル

この埃っぽい岩とキノコの山は、優れた傭兵に極上の機会を提供してくれる。神々と死んだ親類について頑固なダークエルフに我慢できれば、ヴィベク・シティの司法の館で彼らからいい仕事をもらえる。それからトレイランに、この前のカードでいかさました時の貸しが、俺にまだ残ってると伝えてくれ。

クロックワーク・シティ

いいか、俺はこの場所が存在すると言ってるわけじゃない。だがそう言ってる奴を知ってるんだ。もし中に入れれば、不気味な地元の連中には対処する暇がない仕事がたくさんある。あるいは奴らが興味を持たないだけかもしれん。俺にはどうでもいい。人々は俺たちオークをいつも見下してるが、誰かの頭を叩き潰して欲しい時は喜んで財布の紐を緩めるのさ。腰抜けどもめ。

闘技場

待ってました!最近開かれた新しい闘技場について聞いてるか?最高だぜ。アクション、流血、殴り合い、そして勝者が全てを手にする。とにかく、負けなけりゃいい。最高の相手と戦わされるんだ。そして最悪の相手、最悪の中でも最悪の相手とな。闘技場を逃げ回りながら、剣のどっちの側を相手に向ければいいのか考えてるような奴を見たことあるか? あんなザコどもが、装備を身に着けられるだけでも奇跡ってもんだ。

それから、俺はいつもピットデイモンに賭けるんだ。簡単に儲かるぜ。チームにアルゴニアンがいなければだがな。水中に潜る競技はないし。へっ!

これで終わりだ

今回俺から引き出せるのは以上だ。スコルドが次の仕事を探したら、次はもしかするとすごい知識と経験を披露してくれるかもしれないな。とにかく、俺と同じ仕事をしている時は、仕事の邪魔をするなよ?

愛敬はふりまくな。おお、それからさっさと消え失せろ、負け犬ども!

冒険者年鑑、第三版Adventurer’s Almanac, 3rd Edition

冒険者年鑑、第三版

ナイフのスコルド 著

俺は夢のような儲け話は追わず、毎日堅実にドレイクを狩っている。お前たちもそうするべきだ。だからよく読め。スコルドおじさんは剣の技と同じように知恵も売っている。違いの分かる傭兵のため、最新の情報を記してやる。

サマーセット

サマーセットの高尚にして強大なエルフはついに、我らのようなただの定命の者に、汚れなき大地へ足を踏み入れることをお許しになられた。もっとも、甘ったるいたわごとに騙されちゃいけない。あの場所は問題だらけだ。アリノールの司法高官は、有能な傭兵に腕を見せてくれと懇願している。

マークマイア

シロディール・コレクションって聞いたことあったか? 俺もなかったよ。連中が娼館に入ったジョルン王みたいにゴールドをばらまき始めるまではな。どこから資金を調達しているのか知らないが、きちんと遅延なく支払ってくれる。お前がリルモスに行った時は、スコルドに紹介されて来たと伝えろ。手数料がほしいからな。

泥をかき分ける連中のためにお使いをこなすのは気が乗らない場合、デッドウォーター族がマークマイアで一番凶暴な生物を相手に、死の狩りを開催しているぞ。これなら血がたぎるだろう。気を付けないと、たぎった血が首から吹き出すがな。

沼に浸かって、虫に生きたまま喰われるのが性に合わない奴もいるかもしれん。理解できんがな。それでもシロディール・コレクションのおいしいゴールドにありつく方法はある。探検のための物資を調達しているアルゴニアンがいる。ジー・ラーという名だ。放っておくといつまでも喋る奴だが、いつでも何か仕事を抱えている。

ドラゴン

最後に、よりにもよってドラゴンがエルスウェア中で暴れ回ってる。この知らせを俺から初めて聞いた奴は、家にこもってないで外で仕事をしろ!北エルスウェア防衛軍はこの鱗野郎どもを相手にした戦争のために、できる限り多くの協力者を雇っている。グラーウッドにある、コルマウントの街の北で連絡するといい。

さて、俺はドラゴン狩りについては噂程度のことしか聞いていないが、ドラゴンを仕留めれば報酬を払う奴がどこかにいるはずだ。個人的に言うと、空飛ぶ殺人トカゲとやり合うにはいくら払ってもらっても足りないが、まあ金額は聞いてやってもいい。

これで全部だ。事業家精神旺盛な冒険者にはたっぷりと仕事がある。金を儲けた時は、スコルドおじさんのことを思い出せよ。それと死んじまった場合は、お前に戦い方を教えた軟弱者のところに化けて出ろ。

ラ・ガーダ スタイル

クラフトモチーフ28
Ra Gada Style

タネスのレディ・シンナバー

ラ・ガーダ、もしくは「戦士の波」と呼ばれるヨクダからの植民者は、実際のところ第一紀の9世紀に、4次に分かれて襲来している。このカタログは第二次の波(「ターヴァの波」)に焦点を当てる。ターヴァの波と呼ばれる理由は、指導者のハッツ・メトロポルスが大気の女神ターヴァを崇めていたためだ。そのため、ターヴァの波の武器や防具には鳥のイメージが溢れている。この第二次の波は主にハンマーフェルの南に植民し、3000年弱が経過した今でも、沿岸の砂丘に彼らが残した建造物が残っている。そして、この古代の植民者が現代のレッドガード社会に残している影響は、誰の目にも明らかだ。

ブーツ

厚い革でつぎはぎされたラ・ガーダのブーツは、通常ラクダ皮と厚い靴底で砂や石の熱さから足を守っていた。伝統的な上向きの爪先には金属のキャップが隠され、兵士の脆弱な足元を守っていた。

ベルト

ベルトはより広いガードルの中央にある紐で、ラ・ガーダの腹と背中をさらに守っていた。大きく丸いバックルには、空気の流れを示すシンボルが刻まれていた。

ターヴァの波のレッドガードは、頭に頑丈なスティールキャップを付けたターバンを巻いていることが多かった。通常はほとんど普遍的な空気の流れのシンボルが付いていた。ほとんどの者は、顔を口と頬のガードで隠していた。敵を威嚇すると同時に、塵と砂を避けていた。

脚当て

下腿前面を覆う硬く頑丈な防具が、第二次ラ・ガーダの標準装備だった。前腕の強化された籠手と、形状や機能は合わせられている。厚い皮の層がふくらはぎの後ろを覆っている。

大胆に鳥をあしらったラ・ガーダの弓には、真鍮でできたクロトキの頭が2つついていて、近接戦闘時に刃を弾ける。コンパウンドボウの全面が、金属的な色を塗られた角付きの顔になっている。

胸当て

ラ・ガーダは剣士であり、その鎧は装着者が近接戦闘の攻撃に耐えられるよう、頑丈にできている。渦巻く空気の流れのシンボルで覆われていて、ほとんどのものにはターヴァの鳥の翼の旗が刻まれている。

ターヴァの波が持っていたヨクダの剣は、伝統的に背を厚く強くできるように片刃になっていた。これにより、ラ・ガーダの曲刀は片手剣も両手剣も一撃で葬れる重さを持っていた。一撃による決着は、剣術の極みとして常にレッドガードから称讃された。

肩防具

ラ・ガーダの「塔ポールドロン」はとても目立つが、3層のカップは見た目ほど固くない。防具の下は折れ曲がるようになっていて、戦士の腕の動きに合わせて自在に曲がる。

手袋

ラ・ガーダの戦士は、武器のクロスガードではなく重装の前腕鎧で攻撃を受けるように訓練されていた。両手持ち武器を扱う者は特にその傾向が強かった。従って、手袋は基本的に籠手で強化され、武器を精密に動かす指だけが自由になっていた。

ラ・ガーダの盾は広く重い盾で、必要があれば装着者だけでなく周囲の味方を守れるよう、最大の範囲をカバーした。通常の空気の流れのシンボルの装飾に加えて、盾の下には鷹の広い尾が刻まれていた。

ラ・ガーダの魔法使いは、杖の先端をトゥワッカの聖なるトキの姿にすることが多かった、今でも変わらないが、狡猾の神は魔術師の守護神だったからだ。現代では魔法に対する猜疑がレッドガード文化の特徴として扱われているが、常に明確だった訳ではない。

戦棍

ラ・ガーダの戦棍は重装備の敵と戦うために作られていて、ターゲットを叩き潰すためにヘッドは重く、スパイクが付けられていた。こうした棍棒の重さにより、「究極の一撃」スタイルが編み出された。ターヴァの斧の使い手が「一撃必殺」を目指したように。

短剣

ターヴァのラ・ガーダの短剣は、第二次の波の剣と同様、三日月刀状の曲刀になっている。ターヴァの波は短剣を防御に使わず、盾を使うことを好んだ。そのため、短剣にはクロスガードが欠けている。しかし、投擲できるような重さは備えている。

ターヴァの波の中で斧を装備していた者は、「一撃必殺」と教えられていた。目標を最初の攻撃で両断することを目指していたようだ。このため、ラ・ガーダの斧には大きく重い刃が一つ備わっている。

デイドラ公

Daedric Princes

アズラの祈りInvocation of Azura

シギラウ・パレート 著

300年もの間、私はアズラことムーンシャドウのデイドラ公、薔薇の母そして夜空の女王の女司祭をしてきた。どのホギトゥムも我々は蒔種の月21日を祝い、価値ある美しいものをあの方に捧げるのと同様に助言を求めて彼女を呼び出す。彼女は残酷だが、賢い支配者である。どのホギトゥムであれ、雷雨の時は彼女に祈らない。たとえ日取りが重なったとしても、こうした夜はマッドゴッドのシェオゴラスに属するからである。そのようなときアズラは我々の注意を理解している。

アズラの祈りは非常に個人的なものである。私は他3柱のデイドラ公の女司祭をしてきたが、アズラは礼拝者の性質と彼女への崇拝の裏にある真実を重視する。私は16歳のダークエルフで侍女であったとき、企みのデイドラ公ことモラグ・バルを礼拝する、祖母の魔術結社に参加した。恐喝、ゆすりそして賄賂は闇の魔法であると同時にモラグ・バルの魔女の武器でもある。モラグ・バルの祈りは、暴風雨を除いて星霜の月20日におこなわれる。この儀式が行われないことはめったにないが、モラグ・バルはしばしば他の日に人間の装いで自分の崇拝者たちの前に姿を現す。ファイアウォッチの後継ぎに毒を盛ろうとして祖母が亡くなったとき、私は自分の信仰をもう一度問いただした。

兄弟はボエシアの教団のウィザードだった。彼の話から、闇の戦士は信用ならないモラグ・バルよりも私の精神に近かった。ボエシアはデイドロスの誰よりも戦士らしいデイドラ公である。数年間を陰の策略で過ごした後では、行動に直接結果が生まれる主人は好ましかった。その上、私はボエシアがダークエルフのデイドラの1人であるのが気に入った。黄昏の月2日、籠手と呼ぶ日に我々の教団は彼女を召喚した。血まみれの戦いが彼女に敬意を表して行われ、9人の信者の命が他の信者の手で奪われるまで衝突は続いた。ボエシアは彼女の信者に対してほとんど気を使わず、彼女の関心は我々の血だけだった。誤ってスパーリング中に兄弟を倒してしまったとき、彼女は確かに笑った。私の恐怖が彼女を大喜びさせたのだと思う。

その後すぐに教団を離れた。ボエシアは私にひどく冷たかった。心に深みのある支配者が欲しかった。人生の次の18年間、私は誰も崇拝しなかった。その代わり、本を読んで研究をした。古くて俗な書に、不可思議なノクターナルの夜の女王、ノクターナルの名前を見つけた。その本が指示したように、炉火の3日、聖なる日に彼女に呼びかけた。ついに、長いこと求めていた自分の主を見つけたのだ。彼女の不可思議な痛みの元になる、入り組んだ哲学を必死で理解しようとした。話し方や私に求めた言動でさえも、彼女に関することはすべて闇に包まれていた。私がノクターナルを理解できることはないという、単純な事実を理解するまで数年かかった。ボエシアへの残忍な行為やモラグ・バルへの裏切りと同じように、彼女の神秘は彼女にとって不可欠だった。ノクターナルを理解することは彼女を否定し、その部分を闇で覆う幕をめくることだ。私は彼女を愛する程に、彼女の謎を解く無益さに気がついた。代わりに彼女の姉妹、アズラのことを考えるようになった。

アズラは私が崇拝したデイドラ公の中で、唯一信者を気にしているように思える。モラグ・バルは私の精神、ボエシアはは私の腕、そしてノクターナルはおそらく私の好奇心を欲しがった。アズラはそのすべてを望み、とりわけ愛を欲しがる。盲従ではなく、誠実で純粋なあらゆる私達の愛だ。そしてその愛は、内側にも向かわねばならない。我々が彼女を愛し自身を憎むと、彼女は我々の苦しみを感じる。私が今後他の主に仕えることはないだろう。

エドラとデイドラAedra and Daedra

神、悪魔、エドラ、デイドラという名称は一般の大多数にとっては紛らわしい物である。これらは同意語として使われることも多い。

「エドラ」と「デイドラ」は相対語ではない。両方共、エルフ語で正確な定義がある。アズラはスカイリムとモロウウィンドのデイドラである。「エドラ」は通常「祖先」と訳され、シロディール語としてはエルフ語の概念に可能な限り近づけている。一方、「デイドラ」は大まかに言うと「我々の祖先ではない」という意味になる。伝説上の系図がイデオロギーを根本的に分岐させているダンマーにとって、この違いはとても重要な物だった。

エドラは静止に関連付けられる。デイドラは変化を象徴する。

エドラは定命の者の世界を作り、アース・ボーンズに縛られている。一方、想像ができないデイドラは変化をもたらす力を持っている。

神の創造に基づく契約の一部として、エドラは殺すことができる。ロルカーンと月がその証明である。

契約が適用されない、変幻自在なデイドラは、追放することしかできない。

オプスカルス・ラマエ・バル・タ・メッザモルチェOpusculus Lamae Bal ta Mezzamortie

ラマエ・バルと休まらぬ死の概要

マベイ・アイウェニル 書記

グウィリム大学出版局翻訳 第二紀105年

光が大きくなると、陰の闇が濃くなる。デイドラのモラグ・バルがアーケイを見て、人間やエルフ族の死を支配するエドラを高慢と考えた時、それは真実となった。

残酷な抑圧と定命の者の魂を罠にかける役割のバルは、ニルンの人間やエルフ族、獣人も死からは逃れられないと知っているアーケイを邪魔しようとしていた。エドラは自分の役割を疑わず、だからこそモラグ・バルは最高の死をニルンに送った。

バルが人の姿になってネードの民のラマエ・ベオルファグの乙女を奪った時、タムリエルはまだ若く、危険や驚くべき魔法に満ちていた。バルは乱暴に愛もなく彼女の体を汚した。その叫びが悲鳴の風になり、今もスカイリムのフィヨルドでは聞こえるところがある。1滴の血を彼女の額に流し、バルは怒りを撒き散らしながらニルンを去った。

乱暴を受け意識のない状態で、ラマエは遊牧民に発見され世話を受けた。2週間後、遊牧民の女性は彼女が他界したために布で覆った。習わしに従い、遊牧民はたき火を作り魂のない体を焼いた。その夜、ラマエは火葬の薪の中から立ち上がり、燃えたまま群衆に襲いかかった。彼女は女性の喉を裂き、子供の目を食べ、バルに暴行されたように残酷に男性を犯した。

そしてラマエ(血の母として有名)はタムリエルの人達に呪いをかけ、醜悪な物を際限なく生み出した。最も狡猾な夜の恐怖、吸血鬼はここから生まれた。タムリエルには不死の苦しみがもたらされ、原初の神々の時代から続くアーケイの生と死のリズムを残酷に阻害したのだ。アーケイは悲しんだが、元に戻すことはできなかった。

ハーシーンのトーテムThe Totems of Hircine

ハーシーンから最も貴重なライカンスロープの贈り物を授かった我々の間で、彼が自分の力をこの世界に存在する特定のアーティファクトにもたらしたという伝説がある。それは人間が書く事も話す事も考える事もほとんどできなかったが、選ばれし者達には野獣の血がまだ色濃く流れていた頃の時代の話だ。

第1:彫刻がほどこされた狼の頭蓋骨。
我々一族を作り上げた血の儀式で古代の呪術師によって使われ、その前にひれ伏す人々への存在感を高めると言われている。それは、ハーシーンの顔をちらっとでも見たことのある人々以外は、彼らの姿を見ると未知の恐怖で縮み上がるほどだと言われる。

第2:頭蓋骨同様、彫刻が施された大腿部の骨だが、何の動物の骨かは不明。より古代の仲間の多くが薬効効果のある棒として使用し、視力も嗅覚も高めると言われていた。そのため感覚が鋭くなった我々から獲物が遠くに逃れられなくなった。

第3:平凡な太鼓。そのありふれた外観はおそらく長い歳月の中で忘れ去られたことを意味するのだろう。我々の父が戦場から仲間を呼ぶために拍子をとったように、太鼓を鳴らせば我々の血の中に眠る先祖が同族を呼び集めるだろう。

これらのトーテムを通して、我々は野獣の力を呼び起こし、集中させる。ウェアウルフが人々に知られている魔法を見限る一方で、我々は時により直接的な自然エネルギーと接触できる。そしてこのようなトーテムを通して、人工的な文明に汚される前の最初に世界を支配した力を見つけられるのだ。

フラグメンテ・アビーサム・ハルメアス・モラスFragmentae Abyssum Hermaeus Morus

…そしてイスグラモルは巨人の妻の嘆きを集め、フロアとグロスタの元に持って行き、イスグラモルの強弓ロングランチャーを張り直すため、より合わせて悲嘆の弦にしてもらった。以来、ロングランチャーは運ばれるとため息をつき、発射されると嘆きの声をあげた。そして、イスグラモルはそれを狩りに持って行くことにした。

そして彼はアトモーラのフロストウッドで狩りをして、多くの獲物を仕留めてから、喉を心ゆくまで潤そうと浅瀬で立ち止まった。そこにフォーレルグリムの白鹿が、流れを越えて飛び跳ねた。イスグラモルは鹿を射た。だが彼は何と射損じた。不機嫌な彼は誓った。白鹿を倒すまで追い続けると。だが鹿は静かに落ち着いて、雪の上にかかる霧のごとく通り過ぎていった。イスグラモルは何度も鹿を見たが見失った。悲嘆の弦のため息が、白鹿の足音より大きくなったがゆえに。

再び跡を見失い、怒りに燃えて立ち止まったとき、ウサギが現れて言葉を発した。「鹿はあそこの谷の中に潜んでいます」「どうしてわかるのだ?」イスグラモルはウサギに問いただした。ウサギは答えた。「長い耳があるのでわかります。ええ、あなたも私ほどの長い耳を持っていたら、獲物がどこに行っても聞きつけることができますよ」

「それならば」イスグラモルは言った。「私の耳が汝のものほどの長さになるように」するとウサギの鼻がひくひくと動き、イスグラモルは自分の耳が伸びて先が尖るのを感じた。ところが一匹のキツネが雑木林から飛び出して、ウサギに飛びかかって殺した。イスグラモルは不思議なことに、自分の耳が縮んでいつもの大きさになったのを感じた。

そしてキツネが言葉を発した。「知るがよい、定命の者よ。我が名はショール。この者はウサギなどではなく、ハルマ・モラである。汝を欺き、エルフの仲間に変えるところであった。これより後は、人間の素直なやり方に頼り、エルフのごまかしを避け、彼らのようにならぬようにせよ。さあ、谷で汝を待つ白鹿のもとへ向かうがよい」

ハイルマ・モラ・パド・アダ・オイア・ナガイア・アバ・アゲア・カヴァ・アポクラ・ディーナ・ゴリア・ガンドラ・アルカン

「ハルメアス・モラはアダ、アビサル・セファリアークよりも年長であり、この下劣な者の請願に耳を傾ける。私が否定された知識を交換するに至ったがゆえに。私が求めるものはこの羊皮紙に名前が書かれており、それによって私はお前に敬意を表して知識の悪魔を使役する。我が願望にとって知ることは計り知れず、償いには名づけられたいかなる対価もみたされるであろう」エ・ハルマ・モラ

エ・ハルマ・モラ・アルタドゥーン・パドメ・ルカン・エ・アイ

(私の次なる夢は)アポクリファの夢だった。そこで私は(名もなき書物)の間の影の広間、煙のごとく吸い込んだ意見と議論の間を歩いた。左手にはベラムの巻物、右手には羽根ペンを持ち、通り過ぎてきた歴史(を書いた)が、巻物が文字で満たされることはなかった。(言葉を)下に書くにつれて上の(言葉が)消えていくからだった。

そして私はラピスラズリの台座の元で立ち止まった。そこにはこれまで述べてこなかった(物が)しまってあった。奇妙な装飾の壷だった。そこで私は巻物と羽根ペンを(脇に置いて)、装飾をつかんで蓋を持ち上げた。

(壷の中には)ねばねばした不快な匂いの(液体)があった。その上に浮かんでいたのは、灰色に輝く定命の者の(思考器官)だった。それで、なぜかはわからないが理解した。その(液体)は塩水ではなく、その脳は保存されていたのではなく生きていて、警戒しており、闇の知性によって思考を続けていたのだと。私は蓋をしめて壷(から目を上げて)、そして(台座の向こうの)長くどこまでも続く回廊を見やった。左右に数え切れないほどの台座が並び、(それぞれの台座の上には)壺があった。

(そういうわけで)私が目を覚ました(時)、私の舌は刺し貫かれていたのであった。

ボエシアの証明Boethiah’s Proving

(以下の説明は真実である。聞く耳と考える心を持つ人々に警告として届きますように)

ある日ある時刻に、信仰深い者たちは主を一目見ようとある儀式を行うために集った。日程は正しく、まさしく召喚日和だった。

ベールに立ち込める煙を掻き分けて、恐ろしくもまばゆい女が姿を現した。彼女は太陽の表面よりも熱く燃え上がる刀剣を振りかざしながら、月が出ていない夜よりも暗い漆黒の衣装で着飾っていた。ダンマーの戦う女王の姿だったが、レッドマウンテンから彫り出された像のようにそびえ立っていた。

「なぜ私の眠りを妨げたのだ?」

驚いて、人々の間で1番目の者は祈った。

「ボエシアよ、策略のデイドラ公にして民を惑わす者であり、影の女王でありそして破壊の女神でもああるお方よ。あなた様に崇拝を奉げるために参りました!」

彼女は証言をしようと集まった彼らを見下ろした。不機嫌そうな顔で最初に尋ねた。

「答えよ。お前は私を知っているが、私はどうやってお前を知ればいいのだ?」

恐る恐る男は答えた。

「毎晩あなた様に祈ります。毎晩あなた様の素晴らしいお名前を声に出してお呼びします。もちろんあなた様は私の声がお判りになりますよね?最も忠実な信者ですよ?」

彼女は顔をしかめて長い溜息をもらすと、そこから出た空気が男を包み、突然彼の姿は消えた。

2番目の者の方を向き、彼女は尋ねた。

「お前はどうだ?どうお前の価値を見定めればいい?」

その声の力に衝撃を受け、男は漆黒の衣装を纏った彼女の前で頭を垂れた。

彼女が手をたたくと、彼もまた消えた。

3番目の者には次のように尋ねた。

「そこのお前、答えてみろ。私は先ほどの彼ら、そしてお前のように情報がない者をどう知ればいいのだ?」

震え、仲間の失踪に言葉を失い、男は囁いた。

「我々にお慈悲を!」

彼女は2度まばたきした。1度目のまばたきで男は苦しみ悶絶し、2度目で死んだ。

彼女は残りの者たちに容赦ない視線を向けて言った。

「私は慈悲を与えはしない」

他の者たちも一緒だった。彼女は彼らを試し、彼らは何も与えられなかった。

ついに、怒りで目をぎらつかせ憎しみで舌を濡らし、彼女は私のところに来て言った。

「すべての私の信者の中で残りは2人だ。最後から2番目の者よ、どうやってお前の存在を証明するのだ?」

ためらうことはなく私は武器を抜いて、隣に立っているもう1人の胸を突き刺した。恐れることなく答えた。「今この刃から血を流すこの男に、私が存在しているかどうかを聞いてください」

彼女は微笑んだ。そして彼女の歯の間にあるオブリビオンの門が開いた。それから言った。

「最後となった者よ、なぜ他の者たちがいない場所に残るのだ?」

私は刃をしまい、答えた。

「そこにいる者が死んだから、私は生きています。私が存在しているのは、その意思があるからです。この刃から血が滴るように私が仕事をする証がある限り、私は生き残るでしょう」

贈り物を受け取りながら、彼女は言った。

「確かに」

(もし、これを読んでいるときに血管の血が煮えたぎり、心が燃えていたなら、ボエシアに呼ばれるだろう。彼女の声に耳を傾けることは最も賢明である)

モラグ・バルの子供The Spawn of Molag Bal

モラグ・バルは奴隷にする。モラグ・バルは冒涜する。

モラグ・バルは従わざる者との子供を生み、軽率な者の魂を刈り取る。

伝説によれば、モラグ・バルは最初の吸血鬼の父である。吸血鬼の多くの種についての詳細は明らかではないが、吸血鬼はみな彼の子と考えられるかも知れない。

大部分の吸血鬼は血をたどっていくと同じ遠い祖先に行き着く。モラグ・バルに汚された、ネードの従わざる処女だ。彼は怪物の血を生み出し、怪物達はさすらい、彼の汚れを遠くに撒き散らした。

モラグ・バルとの契約や取引の結果吸血鬼となった種もある。モラグ・バルは契約の見返りに、不死と永遠の罰を伴う力を約束したのだ。

モラグ・バルは混沌と不和の種を蒔き、次々と魂を腐敗させることで争いを撒き散らす。彼の軍は勢をなし、彼の忍耐は無限である。彼の究極の目的は、生きとし生けるものすべてを支配し、奴隷とすることだ。

現代の異端者Modern Heretics

帝都内のデイドラ崇拝の研究

ゴトルフォントのハデラス 著

シロディール内でデイドラ崇拝は法で禁じられてはいない。これは主に、デイドラの召喚を許可するために帝都が魔術師ギルドに対して認めた特権の結果といえる。にもかかわらず、聖職者および一般大衆からのデイドラ崇拝への風当たりが非常に強いため、デイドラ関連の儀式を行うものたちは秘密裏に活動している。

一方で、諸地方に目を向けてみるとデイドラ崇拝に対する見方は様々である。シロディール内でも年月と共に伝統的な世論に少なからぬ変化が見られ、デイドラを崇拝する集落も存続している。伝統的なデイドラ崇拝を志す者には信仰心や個人的な信念を動機とする者がいるのに比べ、現代的なデイドラ信者の多くは魔法的な力を目当てにしている傾向がある。とりわけ冒険家と呼ばれる人種は、伝説に名高いデイドラのアーティファクトの、武器や魔法的な利点を追い求める傾向にある。

筆者自身も、夜明けと黄昏の女王であるアズラを信仰する一団と遭遇している。デイドラ崇拝に興味をもつ研究者は複数の方法で調査を進めることができる。既存の文献の研究、古代のデイドラの祠の探索および発見、各地の情報通からの聞き取り、そして信者そのものからの聞き取りなどが挙げられる。筆者自身はアズラの祠を発見する際にこれらの手段を全て用いている。

筆者は最初に文献を紐解くことにしている。本書のような解説書からデイドラの祠に関する一般的な事情などを知ることができる。筆者が自身の研究によりシロディール内のデイドラの祠について理解している事項を例示すると、一般的に、デイドラの主の像が祠の象徴となっており、祠の位置は集落などから離れた野外にあり、各々の祠には信者の一団がついており、祠ごとにデイドラの主への嘆願等を行うべき特定の時間(週の間のある日であることが多い)が決まっており、デイドラの主は嘆願者が十分な力を有しているか、相応の人物でない限り嘆願に応じないことが多く、また返答を得るには適切な供物を捧げる必要があり(捧げるべき供物については信者の一団のみが知る秘密となっていることが多い)、そしてデイドラの主は何らかの仕事や使命を達成した冒険家には、しばしば魔力をもったアーティファクトを授けることがわかっている。

筆者は次の段階として、周辺地域の地理に精通している地元住民に聞き取りを行う。とりわけ得るものが多い聞き取り対象は二つあり、一つめは(移動中に祠を発見する可能性のある)旅の狩人や冒険家であり、二つめは魔術師ギルドの学者たちである。アズラの祠については、どちらの対象も有益な情報源となってくれた。旅路の途中で奇妙ながらに雄大な彫像を見かけたというシェイディンハルの狩人によると、像は両腕を伸ばした女性の姿をしており、片方の手には星を、他方の手には三日月を持っていたとのことだった。祟りを恐れて像を避けたものの、その位置は記憶しており、シェイディンハルの遥か北方、アリアス湖の北西、ジェラール山脈の奥深くという情報が聞き出せた。像の外観に関する情報が得られたので地元の魔術師ギルドを訪ねてみると、その外見を元に崇拝の対象となっているデイドラの主の正体が特定できたのであった。

祠の位置が判明したので現地に足を運んでみると、祠の周囲に信者の一団が住み着いていることがわかった。デイドラ崇拝に対する風当たりの強さゆえ、信者たちは当初こそ自分たちの素性を認めたがらなかったものの、筆者が彼らの信頼を得た後にはアズラが嘆願に耳を貸す時間帯(夕暮れから夜明けまで)に関する秘密や、捧げるべき供物がウィル・オ・ウィスプから得られる「発光する塵」であることを教えてもらえた。

筆者は一介の聖職者兼学者であるため、ウィル・オ・ウィスプを発見して発光する塵を入手することはかなわなかったうえ、供物として捧げられたとしてもアズラが耳を貸してくださったかどうかは定かではない。しかし、仮に供物を捧げてアズラがそれを認めてくださった場合、筆者は何らかの使命を与えられ、それを達成できた暁には伝説的な魔力を秘めたデイドラのアーティアクト「アズラの星」を授かることができた可能性があったのは確かである。

筆者はその後、シロディール内に上記以外にも複数のデイドラの祠が存在すること、およびそれぞれの守護神であるデイドラの主の名、そして冒険家たちが授かりうるデイドラのアーティファクトに関する噂を耳にしている。狩人のハーシーンは強力な魔力を帯びた鎧である「救世主の皮鎧」の伝説と結びついている。魔剣「ヴォレンドラング」は妖魔の王マラキャスと関連があるらしく、名をそのまま冠した「モラグ・バルの戦棍」もデイドラ崇拝の対象となっているようである。シロディール内にあるこれら以外のデイドラの主の祠および信者たちについては、たゆまぬ努力を続ける探究者たちによって明らかにされていくことだろう。

災厄の神The House of Troubles

聖ヴェロスとチャイマーに従って約束の地モロウウィンドへと向かった祖先の霊魂の中で、デイドラの主である4人、マラキャス、メエルーンズ・デイゴン、モラグ・バル、シェオゴラスは、災厄の四柱神として知られている。彼らデイドラの主は、トリビュナルの助言と勧告に反発し、クランと名家に大いなる騒動と混乱をもたらした。

マラキャス、メエルーンズ・デイゴン、モラグ・バル、シェオゴラスは、試練の時に障害物の役割を果たすという意味において聖人である。時に彼らは、この地域の敵であるノルド、アカヴィリ、あるいは山のオークとさえ交流を持った。

マラキャスはかつてトリニマクだった者の残骸であり、弱いが復讐心に燃えた神である。ダークエルフは彼がオークの神王マラクだと言う。彼はダンマーの身体的な弱さを試す。

モラグ・バルは、モロウウィンドにおける残虐の王である。彼は名家の血統を壊そうと試みており、さもなければダンマーの遺伝子プールを汚すつもりでいる。モラグ・アムールに住んでいたと言われる怪物の種族は、前紀に行われたヴィベクの誘惑の結果である。

シェオゴラスは狂気の王である。彼は常にダンマーの精神的な弱さを試す。多くの伝説において彼は、ダンマーのある派閥に対抗しようとする派閥に招かれている。物語のうち半数において、彼は自分を呼んだ者たちを裏切らず、そのため、全体的な枠組みにおける彼の立場について混乱が生じている(果たして彼は我々を助けられるのか?障害にはならないのか?)。彼は、例えば帝国のように、ダンマーが恐怖を抱く他の種族と、役に立つ同盟者として結びつくことがある。

メエルーンズ・デイゴンは破壊神だ。火事、地震、洪水など、自然の危険と関わりを持つ。ある者たちにとって、彼はモロウウィンドの住みにくい土地の象徴である。耐えて生き延びる意思がダンマーにあるかどうかを試す。

これら四柱の邪悪は崇拝は、聖堂の掟と慣習に反することである。しかし、四柱に仕えようとするどん欲で無謀な者や、正気を失った者が絶えた試しはない。古代の聖堂の掟と秩序、そして帝国の法に基づいて、こうした魔女やウォーロックたちは処刑される。帝国の駐留部隊は聖堂のオーディネーターやボイアント・アーミガーと協力して、荒野の隠れ家や古代の遺跡に隠れて冒とく的な崇拝を行う者たちを追い詰め、始末している。

夢中の歩みThe Dreamstride

1000年以上もの間、ヴァルミーナの司祭は錬金術の達人である。彼らの混合剤の複雑さと効用は、まさに伝説にほかならない。このような錬金術の秘宝は非常に人気があり、闇市に出回る水薬1つが大金を生むこともある。

現在知られている数多くの薬の中でも、おそらくヴァルミーナの不活性薬が1番素晴らしいだろう。この粘着性のある液体を一滴飲むだけで、「夢中の歩み」として知られる状態に陥る。使用者は他人の夢を、まるで自分がそこに入り込んだかのように体験できるのである。対象者は最初から居たかのように夢の世界に溶け込み、夢の重要な一部になる。夢の中に登場する人々からは、使用者の方が夢を見ている人だと思われるだろう。使用者は、自分の癖や話し方、適切に広がった知識さえも目にするはずだ。

観察者の目には、薬を飲んだ使用者の姿が消えてしまうようだ。対象者が夢の中で行ったり来たり歩くとき、観察者たちもまた実際の世界を行ったり来たり移動する。不活性薬の効き目が切れると、対象者の姿は再び見えるようになり、夢の中でいた場所とまったく同じ場所に出現する。わずか数フィートしか動かなかった対象者もいるし、ほんの数分で元の場所から数千マイルも離れた場所に現れた者もいる。

注意すべきこととして、夢中の歩みは非常に危険で対象者に様々な潜在的危険を与えることだ。ある夢では、対象者は病気や、暴行そして死のような生命を脅かす状況にさらされた。ほとんどの場合は傷を負うことなく現実の世界に戻って来れるが、場合によっては対象者は帰ってこずに薬の効き目が切れたと見なされるか、死亡した状態で現れる。現実世界においては危険で有害な場所に戻ってきてしまうことも多い。たとえ夢中の歩みの中では、そこが安全な場所であったとしてもだ。

ヴァルミーナの不活性薬は、それを作り出す錬金術師のように不思議でとらえ所がないものである。この独特の移動装置が不活性薬自体の効果なのか、単にヴァルミーナの奇妙な企みなのか定かではない。しかし、通り抜けられるはずのない障害物を通り抜ける夢中の歩みの効果は、確実にその不思議な性質によるものである。

盗賊ギルド スタイル

クラフトモチーフ33:
Thieves Guild Style

コインカウンターのカリ

お金を浪費する良い方法は知ってる?…多分、たくさん知ってるでしょうね。言い直しましょう。お金を節約する良い方法は知ってる?教えてあげましょう。大量に買って、一定の基準で製品を生産させるのよ。経済的でしょ。だから、盗賊ギルドは武器と防具に下記の基準を定めたのよ。

ブーツ

ギルドのブーツは頑丈なレザーであること。甲は固く、靴底は柔らかく柔軟にね。一足揃えて、自分で試しなさい。歩く度に音がするようなら、盗賊ギルドには向いていない。

ベルト

正直、ギルドはベルトについて細かいことを気にしない。頑丈で上質な皮ならね。牛だろうがウェルワだろうが、カゴーティだろうが構わない。金属のバックルのデザインも、ピカピカ光らないことに比べたら重要じゃない。

私達は盗賊よ。鋼の兜を頭に被ることはない。金属の兜はうるさく、ピカピカ光って私達の視界を妨げる。私達に必要なのは素敵で柔らかく、暗いレザーのカウルよ。顔の下半分は、仮面で正体を隠しているといいわね。

脚当て

ギルドのグリーブは派手なものじゃない。暗く油を塗られた脚絆よ。接続部分には鈍い鋼のプレートがある。防具の他の部分と同じく、移動時に音を立ててはいけない。

盗賊ギルドの弓はしっかりしていて、良くしなるアッシュやイチイの木で作ること。中距離から衛兵を倒せるようにね。リムの前面は鈍い光の金属で覆って受け流しに使う。矢尻は鋼であること。これも輝いてはダメ。弓の輝きで、敵に自分の位置を教えたくはないでしょう。

胸当て

我々の胸当ては関節を調節された革の層から作られる。油を良く差して、動きやすく音がしないようにすること。重いバージョンは軽い鋼のプレートで重要な部位を守る。ただし、金属部分はつやを消して光を鈍くするように。三つの刃のギルドのシンボルが、胸と背中上部に丸く装飾されているわ。

盗賊は(奇襲された場合を除いて)敵と接近戦を望まない。だから、盗賊ギルドの剣は広刃の両刃で、敵を寄せ付けないように作られているの。短剣と同じように、広がる三つの刃のギルドのシンボルは、受け流しのために使えるわ。

肩防具

正直なところ、盗賊は逃げることが多い。そして、逃げている途中はよく肩を撃たれるの。だから、肩防具はケチらない方がいいわよ。厚く、調整された革の層をポールドロンにして、光の鈍い金属を接続部に加えて。しっかりとね。

手袋

盗賊ギルドの手袋は、手首から上を見れば戦士の籠手のように見えるでしょう。しかし、手先は柔らかい子山羊やカモシカの皮で包み、盗賊の仕事の精密な指の動きを邪魔しないようにしないとね。

盗賊にとって盾を持ち歩く決断は難しいものよ。だから、形もサイズもかなり幅を持たせたい。中装のラウンドシールドでも、重装のカイトシールドでも構わない。ギルドのシンボルは中央か、大きな盾の場合は円形の装飾に刻んでね。

盗賊ギルドの呪文用の杖はとても目立たないようになっている。暗いハートウッドに、見慣れた三つの刃のシンボルを入れたものよ。不安定な地面で盗む時に安定するよう、杖の底には金属の突起を入れておいた方がいいでしょう。

戦棍

盗賊ギルドの戦棍は武器でもあり道具でもある。重く平たいヘッドには釘が打たれ、バールとしても利用できるの。三つの刃のギルドのシンボルは、ヘッドの両面に刻まれていなければならないわ。

短剣

正式なギルドの短剣は両刃の刺殺武器であり、広刃になっているの。ほとんどショートソードよ。柄に広がる三つの刃のギルドシンボルは、受け流し用にも使えるわ。

盗賊ギルドの斧は頑丈で、鎧を着た敵も中々開かない扉もこじ開けるわ。それから、必要な時はフックとして忍び込みに使えるようにもなってる。ギルドの三つの短剣のシンボルが先端の中央にあるわよ。

ドゥエマー

Dwemer

グイレーンのドゥエマー建築Guylaine’s Dwemer Architecture

グイレーン・マリリー 著

(編集部注:以下はグイレーン・マリリーによる、後期ドゥエマー建築についての時代遅れではあるが楽しめるように書かれた論考である。進入路と防衛の第二帝国様式について説明した章と「4つの試練」の共通の公式な表現法について述べた章から引用されている。この本ではテルヴァンニが4つの試練の表現技法を、塔の進入路と防衛の美的な要素として取り入れたとも書かれている)

「パターンの試練は観察者に、実行前にパターンを検証して分析し、多くのパターンが微細あるいは隠されていることを理解することを要求する」

「無秩序の試練は観察者に、パターンが見つからなかったときに体系的に進めていくことを要求する。観察者が多くのすべきことがあるのに特段の秩序が見つからないとき、手続きとしてすべきは、すべての物を把握して整えて、その物にどのようなことをいつ行ったのかを覚えておく。たとえば、観察者はある物の最初の位置と同時に新しい位置を覚えておかなければならない」

「回避の試練は観察者に障害を検証し、自分の資源と能力を比較することを要求する。障害があまりにも困難な場合は、その困難を避けて通る道を探す」

「対立の試練は観察者に障害を検証し、自分の資源と能力を比較することを要求する。障害があまりにも困難な場合は、その困難を避けて通る道を探す…ただし、避けて通る道が見つからない場合には、障害と直接向き合うこと」

ドゥエマーの調査書 第1巻Dwemer Inquiries Volume I

彼らの建築様式と文明

学者 セルウィ・ゲレイン 著

人より遠く離れた、深き広間で

見捨てられたレッドマウンテンの、歪んだ種族

心を称えよ、石を称えよ

ドワーフのプライドは、骨よりも強い

ドゥエマーの研究、彼らのおぼろげな歴史と謎の解明は、私の生涯の研究となっている。この文章の目的は、私の発見と、80年間をかけて行った彼らの建築物の研究に基づく結論を、共有することだ。

かつてのドゥームレス、現在のモロウウィンドからディープエルフの移住があったのは、一般的事実として受け入れられている。記録された歴史がそれを補強しており、特に第一公会議を結成する時にローケン・クランがドゥマク王に加わるのを拒否して、ハンマーフェルへ集団脱出したことが示されている。建築様式の基礎も理にかなっており、ドワーフの建築文化はゆっくりと微妙にではあるが、時代や土地に応じて変化していった。こうした変化は、外観上だけでなく実用上の必要から来ているものと思われる。

従来の見解では、ヴァーデンフェル・ドゥエマーが、ドワーフたちの中で最も多く作品を残したと言われている。スカイリム、モロウウィンド、ハイロックで私が行った発掘に基づくと、それが正しいとは言いかねる。ヴァーデンフェルは土地の表層から突き出たドワーフの遺跡のために雑然としており、しかもこの遺跡の構造は他の場所で調査した様々な遺跡とは明らかに異なっている。

またヴァーデンフェルの遺跡を掘り進むと、内部構造が異なることに気付く。本土の事例とは異なり、主要な家具や使用可能な部屋はヴァーデンフェル遺跡の地上近くで発見される。小さな通路や倉庫は地表近くにあるが、重要な場所は深くまで調査しないと出てこない。

そうした重要な場所はモロウウィンドの外にあるドゥエマーの遺跡では上手く隠されているため、多くの学者はその地方の外には居住しなかったと考えたのである。この早すぎる結論に対して、そういった場所は単なる辺境に過ぎないと信じる者もいる。だが私の研究では、今回のこの事例がそうではないと証明してくれた。

この相違を説明する学説は少ない。都市設計に関して言えば、クランの建築士たちにそれぞれのやり方と好みがあったのかもしれない。ドワーフの技術は実証的研究に基づいており、建築技術のことになると創造性を発揮する余地がなかった可能性はある。土地の地質学的構造は明らかに影響を及ぼしているようで、これは特に、北方のスカイリムのような岩だらけでよく凍る地表がある地方や、火山性の基盤岩が一般的なヴァーデンフェル、または帯水層が偏在するハンマーフェルなどを見ると明らかである。北方のドワーフの建築士が、もっと扱いやすい地表に辿りつくまで大きな建造物を掘削できなかった可能性はある。

しかしながら、ある学者はモロウウィンドの西にある多くの建造物は第一紀420年以降に作られたと言っている。クラン・ローケンがヴァーデンフェルを去った時、いくつかのクランが散り散りになって自分たちの集落を作ろうとし、東方の同胞よりもずっと孤立した生活を選んだという。この説は驚くべきもので、ドワーフの建築士は長い時間をかけてより巧妙に要塞を隠す術を発展させていった可能性を思わせた。

この点を踏まえれば、タムリエル中に未発見のドワーフの考古学的な遺跡が存在するのは間違いないだろう。それはシロディールやブラック・マーシュのような、これまでドワーフがいたとは思われていなかった南方の地域でさえも例外ではない。空想の飛躍は避けるべきだが、この理論が実証されれば、ドワーフのクランはこれまで信じられていたよりもずっと長く、もしかしたら第一紀700年に消息を絶ったレッドマウンテンの戦い以降も生きていたと推定できるかもしれないのである。

ドゥエマーの調査書 第2巻Dwemer Inquiries Volume II

彼らの建築様式と文明

学者 セルウィ・ゲレイン 著

人より遠く離れた、深き広間で

見捨てられたレッドマウンテンの、歪んだ種族

心を称えよ、石を称えよ

ドワーフのプライドは、骨よりも強い

残されているわずかな記録からは、ディープエルフが理論と科学の探求を崇拝していた可能性をうかがえる。これは大多数のエルフ文化の信仰体系とはまったく異なることを示す。そのような信条を中心に構築された社会を考えてみると合理的に思え、多くの学者、特に数学、金属学、そして建築術に携わる者は、より神秘主義的な文化の聖職者のような地位にあったと考えられる。この考えはスカイリムの居留地、イルグンハンドで回収されたドゥーメリスの文章の断片によって裏付けられており、クラン・ローケンと関連があると信じるものである。以下は私のドゥーメリスの原本を解釈したものだ。

「認められたいとこ、特権を持つシェズリーンのクーレックに任じられる。ホーゲン・クルトラの伝統を打ち立てるクランホームを、世界を形作る者とする」

「認められたいとこ〈翻訳不能〉のクーレックに、一族のためホーゲン・クルトラ〈?〉の伝統的な一族の家を建設する任にあたり、父なるムンダスを形作る者とする」

これはドゥエマーがムンダスを崇めていた証拠だと解釈する学者もいるが、そうは思わない。この文章の私の解釈は、クーレックという尊敬されていたドゥエマーは市民階級に上がり、調整建築士になったことを意味している。後半では、クーレックは特定の様式で建築する必要があったことを示している。

ホーゲン・クルトラという言葉はこれまで理解できなかった。しかしこれは、そのような様式の名前だと考えられる。当時複数の様式があり、建築原理や典型的な構造が異なっていた可能性はある。

特徴の1つと思われるのは、私がディープ・ベニューと呼ぶ北方のクランに広く見られるドゥエマー様式だ。ディープ・ベニューの特徴として、1つ以上の広大な自然の洞窟内に造られた複数の建造物が挙げられる。ベニュー内の建造物は石から掘られたか、洞窟の底に自由に建てられたのかもしれない。ブザーダムズで発見されたような最も大きく見事なベニューは、10人の巨漢が肩を並べて歩くのに十分な幅の道があるのも特徴と言える。

アルカネックスは典型的な小建造物だ。墓荒らしや欲深な探検家に荒らされる前に研究できた者はとても少ないが、未発見の場所には、魂石や錬金術の調合薬、魔法の教科書など驚くべき量の魔法の道具があった。これらはドゥエマーが、事実として、魔法に手を出していた証拠になるという学者もいる。彼らの文化の知識や、定番の物に比べてほとんどのアルカネックスは小規模の建造物であるという事実を基に、これらは学問の中心地であったと私は考える。ドワーフはこの場所で人間とエルフの研究をするために作ったのではないだろうか。我々にとってドゥエマーが異質な者であるように、彼らにとっても我々が異質だったはずである。

グレート・アニモキュロトリーは、数多くのドワーフの要塞で見つかっている。これはセンチュリオンやその他様々な製造物を造っていた工場だ。こうした部屋を探索して、あの不可思議なオートマタに命を与えた物の手がかりを見つけたいが、そのガーディアン自身がうろついているため、研究は困難かつ危険である。

ドゥエマーの調査書 第3巻Dwemer Inquiries Volume III

人より遠く離れた、深き広間で

見捨てられたレッドマウンテンの、歪んだ種族

心を称えよ、石を称えよ

ドワーフのプライドは、骨よりも強い

私の研究と本論は、ヴァーデンフェル西にあるドゥエマーの考古学的な遺跡が、レッドマウンテンの近くの遺跡よりもずっと深い場所に建設されたという事実に焦点を当てている。重要な建築を始める前に、坑道を掘るドワーフには何らかの開始点があったはずである。

私はこの開始点を「ジオクライン」と呼んだが、多くはディープ・ベニューの一端だと分かった。依然としてディープ・ベニューの実際の深さは様々であるが、ジオクラインは常に都市が始まる目印だと結論づける。

地下道や部屋はより浅い部分にあり、その建築様式ゆえに素晴らしいが、都市の重要な施設として利用されることは少なかったようだ。余剰の食糧を売る店や倉庫は近隣の集落との物々交換に使われ、また上層巡回のための兵舎はジオクラインの上にあるのが一般的である。

この地下道を調べたが、下の方に計画された構造物よりもずっと不規則に曲がりくねっているようだ。これは、ドゥエマーのような賢い種族であっても、掘削するうえで予想不可能な自然的要因によるものであろう。確かに予測していなかった岩盤や地質に起因する災害は都市の建設を困難にしたであろうが、そうした偶然と戦ううちに、建設に適した場所の探索に繋がっていったと考えられる。

地質学的な変則性や「ファルザルダム・ディン」として知られる場所に関する遺跡の参考資料を少し見つけた。これの興味深いところは、この言葉がいくつかの平板にだけでなく、アリフタンド要塞、イルグンハンド、スカイリムのムジンチャレフトの最も深いところにあった華美な金属板にも登場するのだ。これら精巧に彫られた物の意味は解読できていないが、それぞれ遺跡の最深部で見つかったことは非常に奇妙だと考えられる。

「ファルザルダム・ディン」の妥当な翻訳として解読したのは、「暗黒の王国領土」だが、どういう意味なのか想像もつかない。

私が気づかない規則があるのかもしれない。この深まる疑問は、ここ数年間、私の前に何度となく現れては、一生ドワーフの重大な秘密を解き明かせないのではないかという気にさせる。答えは目と鼻の先にあるというのに…いや、文字通り、足元であろうか。

ドゥエマーの法の由来Antecedents of Dwemer Law

(この本はドゥエマーの法がいかに発展してきたか、そしてハイエルフ文化に根差した慣習にまつわる歴史的な説明が書かれている)

手短に言うと、ボズマーの部族の慣習が発展していく過程は、私の調べうる限り、いかなる点においてもアルトマーの法の発展と同様だった。初期の頃、奴隷や動物に課された法的責務は主にサマーセット諸島での監禁だったが、後に賠償制度へと変わっていった。

これがなぜ現在の法に関する研究にとって重要なのか?アルトマーの法、とりわけアルトマーの主従関係に関する法が私達の法に与えた影響に関して言えば、その影響を示す証拠は過去500年に渡って記録されたどの判決文にも見られる。既に述べられているが、私達はこのアルトマーの判事の論法を、空虚ではあるが現在に至るまで繰り返している。アルトマーの慣習がドゥエマーの法廷に取り入れられた様子も、簡単に見せられる。

カーンダール・ウォッチの法(P.D.1180)は「誰かに所有されている立場の者が所有する側の人間を殺害した時、その殺害した者の所有者は共同出資者に何か上等な物を3つ、そして所有している人物を差し出さなければならない」と言っている。他にも似た類の例証がある。同じ原理がセンチュリオンによる殺害事件でも適用されている。「もし作業台を共有している関係で、ある者がアニムンクリに殺害されたら、殺害された者の仲間はそのアニムンクリをバラバラにして、30日以内ならそのバラバラになった部品を持っていって良い」と言っている。

ダークがテンマー・フォレストにいる野卑な野獣に関して言及した事を比較するのは有益である。「沼地の猫がアルゴニアンに殺害されたら、彼の家族はアルゴニアンを殺害して報復するか、または同じ事をしない限り生き恥を曝す事になるだろう。他にも沼地の猫が木から落ちたらその親戚は、木の幹を切り倒し、枝をむしり取り、森のあちこちにそれをばら撒いて復讐を果たすだろう」とも言っている。

ドゥエマー太古の物語 第1部AAncient Scrolls of the Dwemer I-A

ザレクの身代金 第1部

マロバー・サル 著

ジャレミルは彼女の庭園に立ち、召使が持ってきた手紙を読んだ。手にしていたバラの束が地に落ちた。一瞬、鳥のさえずりが消え、雲が空を覆った。丁寧に育て、作り上げてきた安息の地が暗闇に包まれた。

「息子は預かった」手紙にはそう書かれていた。「近いうちに身代金の要求をする」

やはりザレクは、アッガンに辿り着けなかったんだわ。道中の強盗、多分オークか憎たらしいダンマーに、上品な乗り物を見られて人質に取られたんだわ…ジャレミルは柱にもたれ掛かり、息子に怪我がないかを案じた。彼はただの学生で、装備の整った男たちと戦えるような子ではないけど、殴られたりしていないかしら…母親の心には、想像するに耐え難いことであった。

「もう身代金を要求する手紙が来たなんて言わないでよね」聞き覚えのある声と見慣れた顔が垣根の隙間から見えた。ザレクであった。ジャレミルは涙を流しながら、急いで少年を抱きしめに行った。

「何が起こったの?」彼女は声をあげた。「誘拐されたんじゃなかったの?」

「されたよ」と、ザレクは言った。「フリムヴォーン峠で、もの凄く大きなノルド3人が、僕の乗り物を襲ったんだ。マサイス、ユリン、コーグ、この3人は兄弟だって分かったの。母さんにも見せてあげたかったな、本当に。もし正面玄関をくぐろうとしたら苦労すると思うよ」

「何が起こったの?」と、ジャレミルは再度問いかけた。「助けられたの?」

「助けを待とうとも考えたんだけど、身代金要求の手紙を送るって分かっていたし、母さんが心配性なのも分かっているから。だから、アッガンの先生がよく言っていた言葉を思い出したんだ、落ち着いて、周りを良く見て、敵の弱点を探る」ザレクはにっこりと笑った。「彼らは本当に怪物だったから、すこし時間が掛かっちゃったけどね。それで、彼らがお互いに自慢しあっている話を聞いたとき、彼らの弱点は虚栄心だって分かったの」

「それで何をしたの?」

「カエルに近い、幅広い川を見下ろす小高い丘の森のキャンプで鎖につながれていたの。コーグが、あの川を泳いで往復するには1時間近く掛かるだろうって、他の二人に話しているのを聞いたんだ。二人も同感でうなずいていた、そのとき話しかけたんだ」

「僕なら30分で戻って来られるね」そう僕は言ってやった。

「無理だ」と、コーグが言い放った。「お前みたいな子犬より、俺の方が早く泳げる」

「そこで、2人とも崖から飛び降りて、真ん中の島まで泳いで帰ってくるって決めたんだ。お互いの岩まで行ったとき、コーグが義務付けられているみたいに水泳のコツを僕に説教し始めたんだ。最大の速度を出すための、連動した腕と足の動きの重要性。息継ぎは、頻繁すぎて遅くならず、少なすぎて息切れしないように、必ず3,4回水を掻いたあとにすることがどれだけ肝心か。彼が言うコツに同意して、うなずいたんだ。それでお互いに崖から飛び込んだの。1時間ちょっと掛けて島まで泳いで帰ってきたけど、コーグは戻ってこなかった。彼は崖の下にある岩で頭をかち割っていたんだ。水の動きで水面下の岩が分かったから、飛び込むのに右の岩を選んだの」

「それで戻っちゃったの?」と、驚いたジャレミルは聞いた。「そのときに逃げれたんじゃないの?」

「そのとき、逃げるのは危険すぎたよ」と、ザレクが言った。「彼らは僕を簡単に捕まえられただろうし、コーグが消えた責任も負わされたくなかったしね。彼に何が起きたか分からないと言ってから、ちょっと捜した後で、彼らはコーグが競争のことを忘れて、向こう岸で食料でも狩っているのだろうって思ってくれたの。僕が泳いでいたのは見えていたし、彼の失そうに関係があるとは思えなかったんだろうね。兄弟は僕が逃げられないように理想的な場所を選んで、岩の多い、崖のふちに沿ったところにキャンプを張り出したんだ」

「兄弟の一人、マサイスが、下の入り江の周りを巡る土の質と、岩の緩やかな傾斜について意見を言い始めたんだ。競争に理想的だ、そう彼は言った。僕がその競技について何も知らないことを伝えると、彼は競争に適した技術の一部始終を教えたがったんだ。変な顔を作って、どれだけ鼻から息を吸って口から出すことが必要かとか、どのように膝を適切な角度まで持ち上げるかや、足運びの重要性などをね。一番重要なのは、勝つつもりなら走者は積極的な、でも疲れすぎない速度を保つべきだと言った。二番手を走ってもいい、もし最後に追い抜く意思と体力があるならって言ったんだ」

「僕は熱心に聞き入ったよ、そしてマサイスは、夜になる前に入り江のふちの周りで簡単な競争をすると決めたんだ。ユリンは僕たちに、戻るときに薪を持ってこいと言った。僕たちは細道を過ぎたらすぐに、崖のふちに沿って走り始めたの。息や足取りや足運びは彼の忠告通りにしたけど、最初から全速力で走った。彼の足の方が長いにもかかわらず、最初の角を曲がったとき、僕は彼の数歩前を走っていたんだ」

「彼の目は僕の背中に置かれていて、マサイスは僕が飛び越えた崖の割れ目が見えなかったんだ。叫ぶ間もなく下に落ちて行ったよ。キャンプに居るユリンのところへ戻る前に、数分かけて何本か小枝を拾ってから戻ったんだ」

ドゥエマー太古の物語 第1部BAncient Scrolls of the Dwemer I-B

ザレクの身代金 第2部

「まったく、調子に乗って」と、しかめ面をしたジャレミルが言った。「間違いなく、その時に逃げればよかったのに」

「そう思うかもしれないけど」と、ザレクは同意しながら言った。「でもね、あの地形を見れば分かるよ…大きな木が何本かあって、他は低い木ばかりだったんだ。ユリンは僕が居ないことに気付いただろうね。すぐに追いつかれたら、マサイスが居ないことを説明するのがとても難しかったと思う。だけどね、手短に周辺を見て回れたおかげで何本かの木をじかに見られたから、最後の計画を立てられたんだ」

「僕は何本かの小枝を持ってキャンプに戻り、マサイスは大きな倒木を引っ張っているから、戻るのに時間がかかっているとユリンに言ったんだ。そうしたらユリンはマサイスの腕力をあざ笑って、彼では生きている木を引き抜いて燃やすには時間がかかると言ったんだ。僕は言ってやったんだ、そんなことはできないでしょうと」

「「見せてやるよ」と彼は言い、10フィートもの木を楽々と引き抜いたんだ」

「「でも、それはただの苗木だ」と僕が意見したんだ。「大木を引っこ抜けると思ったのに」」彼の目は、僕の視線を追い、その先にある素晴らしい大木を見た。ユリンはその大木をつかんで、凄まじい力で根から土を離そうとゆすり始めたんだ。それで、木の一番上の枝から垂れ下がっていた蜂の巣が緩んで、彼の頭の上に落ちたんだ。

「母さん、僕はその時逃げたんだ」ザレクは少年らしい誇らしさで締めくくった。「マサイスとコーグは崖の下、そしてユリンは蜂の大群に飲み込まれて必死になっているときにね」

ジャレミルはもう一度息子を抱きしめた。

出版社注:

私はマロバー・サルの作品「ドゥエマー太古の物語」を出版する事に気が進まなかったが、グウィリム大学出版局がこの版の編集を依頼してきた時、この機会にきっぱりと事実を明確にしようと決めた。

学者たちはマロバー・サルの作品の正確な年代に関して同意していないが、それらの作品は、レマン帝国の崩壊後の第二紀に、一般的な喜劇や恋愛物語で有名な劇作家「ゴア・フェリム」によって書かれたものであるという説に大多数が同意している。現在の説が支えるのは、フェリムは本物のドゥエマーの物語をいくつか聞き、金儲けのためにそれらを舞台に適応したり、自分の劇を書き換えたりしたという点だ。

ゴア・フェリムは自分の作品に妥当性を持たせるために、まただまされやすい人々にとってさらに貴重であるよう、ドゥエマーの言語を翻訳できる「マロバー・サル」の人物像を作り上げた。注目すべきは、「マロバー・サル」と彼の作品が激しい論争の題材になったが、実際に誰かが「マロバー・サル」に会った信頼性のある記録もなければ、同名の人物が魔術師ギルドやジュリアノス、または他の知的団体に所属していた記録もない。

どうであれ、「マロバー・サル」の物語の中のドゥエマーのほとんどは、ダンマーやノルドやレッドガードさえも服従させ、現在でさえも解明されていない遺跡を作った、恐ろしくて計り知れない種族と類似していない。

ドゥエマー太古の物語 第2部Ancient Scrolls of the Dwemer II

種たるもの

ロリックの村は、単調な灰色と褐色の砂丘やデジャシスの岩山に抱かれた、静かでのどかなドゥエマーの集落であった。なんの草木もロリックには生えていないが、黒く変色した大きな枯れ木が街中のいたるところに転がっていた。幌馬車で到着したカムディダは、彼女の新しい街に落胆した。彼女は父の家族が暮らしていた、北の森林地帯に慣れていた。ここには木陰や広々とした空もなければ、水も少ない。ただの荒れ地に見えた。

母親の家族がカムディダと弟のネビスを引き取り、とても優しく孤児たちに接したが、彼女は見知らぬ村で寂しかった。そんなとき、給水所で働くアルゴニアンの老女に出会い、カムディダは友達を得た。名前はシゲルスで、彼女の家族は広く麗しかった頃のロリックに、ドゥエマーが現れる何世紀も前から住んでいたと言った。

「なんで木々は死んだの?」と、カムディダは聞いた。

「アルゴニアンしかこの地に居なかった頃、私たちにはあなた達が使うような燃料や木製の建物が必要なかったから、木を切らなかったのよ。ドゥエマーが来たときも、私たちやこの土地にとって神聖なヒストの木を傷つけないかわりに、必要な時は植物を使わせてあげていたの。その後、何年も平穏な暮らしが続いたわ。誰も、何も望まなかったから」

「それで、何が起こったの?」

「あなたたちの科学者が、ある樹液を蒸留して、成形して、乾かすことで樹脂というものを作れると発見したの。弾力性のある鎧を作るために使うのよ」と、シゲルスは言った。「ここで育つほとんどの木の樹皮の下にはちょっとしか液体がないの。でもヒストの木は違うわ。多くは樹液で溢れていた。それはドゥエマーの商人たちを強欲にしたわ。商人たちはジュニンという木こりを雇って、利益のために聖なる木の伐採を始めたの」

アルゴニアンの老女は埃が舞う大地を見て、ため息をついた。「もちろん私たちアルゴニアンは皆反対したわ。私たちの故郷だったし、ヒストの木は1度消えたらもう戻らないもの。商人たちは考え直してくれた、でもジュニンは私たちを打ちのめすつもりだったの。ある恐ろしい日、彼の並外れた斧の腕前は木々だけではなく人にも通用すると証明したの。彼の行く手を阻んだ人たちは、老若男女を問わずバラバラに切り倒されたわ。ロリックのドゥエマーたちは皆、家の扉を閉じて殺人の叫び声に耳を閉ざしたの」

「ひどい」と、あえぎながらカムディダは言った。

「説明するのは難しいけど…」と、シゲルスが言った。「私たちにとって、木々の死に比べたら、生きているものの死はたいしたことじゃないのよ。分かって欲しいのは、私たちにとってヒストの木は母であり、目指す場所なの。体を破壊されるのはどうってことない。でも私たちの木々を滅ぼすことは、私たちを根絶やしにすることなの。そしてジュニンがヒストの木に斧を向けたとき、彼はこの土地を殺した。水は枯れ、動物は死に、木々によってその命を支えられていた生き物はみな干からびて、埃となったのよ」

「でも、まだここに居るの?」カムディダは聞いた。「なぜ去らなかったの?」

「私たちは身動きが取れないの。私は死に行く最後の数人の1人なのよ。私たちの多くは先祖代々の林を離れて暮らしていけるほど強くはないし、今でも時折り、ロリックの空気に生きる気力を与えてくれる香りが漂っている。私たちが全員いなくなるまで、それほど時は掛からないわ」

カムディダは目に涙が浮かんでくるのを感じた。「そうしたら私は木々もなく、友達もいないこんな場所で独りぼっちになっちゃう」

「私たちアルゴニアンには良い表現があるわ」悲しそうな微笑を浮かべ、カムディダの手を取りながらシゲルスは言った。「種の最良の土壌は、心の中にあるものなのよ」

カムディダが手の中を見ると、そこにはシゲルスが渡した小さくて黒いものがあった。種であった。「死んでるみたい」

「ロリックの中のある一ヶ所でしか育たないのよ」と、老アルゴニアンは言った。「街外れの丘に建つ古い小屋の外。私はそこへは行けないの、所有者に見られたら、その場で殺されてしまうし、他の私と同じ種族の人たちのように、今では自分を守るには脆すぎる。でも、あなたならそこへ行って種を植えられるわ」

「どうなるの?」と、カムディダは聞いた。「ヒストの木が戻るの?」

「いいえ。でも、木の力の一部は戻るわ」

その夜、カムディダは家を抜け出し丘へと向かった。シゲルスが話した小屋は知っていた。叔父と叔母からは絶対にそこへは行かないようにと言われていた。近くまで行くと、扉が開き、老いてはいるが屈強な体格の男が大斧を肩に乗せて現れた。

「おい、ここで何をしている?」彼は詰問した。「暗くてトカゲ野郎と間違えそうになったぞ」

「暗くて道に迷ってしまったのです」彼女は瞬時に答えた。「ロリックにある家へ帰ろうとしているのですけど」

「では早く行け」

「ロウソクを1本貰えませんか?」彼女が聞いた。「ぐるぐると同じところを歩いていて、明かりがなかったらまたここに戻ってきてしまいそうです」

老人はブツブツ言いながら家の中へと入っていった。カムディダは素早く穴を掘り、できるだけ深く種を埋めた。男は明かりを灯したロウソクを持って戻ってきた。

「絶対にここへは戻るなよ、もし戻ったら…」うなり声で彼は言った。「真っ二つにしてやる」

彼は暖かい家の中へと戻っていった。次の朝、目覚めた彼は扉を開けると、小屋が巨大な木の中に完全に閉じ込められていることに気付いた。斧を拾って、木に向かって次から次へと切りかかるが、打ち破れなかった。横から切ってみたが、木は治癒してしまった。上下左右から切って、くさび形の切り込みを入れようとしたが、木は治癒してしまった。

ジュニンのやせ衰えた体が、鈍り、折れた斧を手に持ち、開け広げられた扉の前に横たわっているのを誰かが発見するまでにはかなりの時がすぎた。何を切っていたのか皆には謎であったが、刃にはヒストの樹液が付いていたとの伝説が、ロリックでささやき始められた。

それから暫くして、小さな砂漠の花が乾いた土を押し分けて、育ち始めた。新しく植えた木々や植物も、豊かにとは言えなかったとしても、それなりに育ち始めた。ヒストの木は戻らなかったが、カムディダやロリックの人々は、夕暮れ時のある時刻になると、過去の偉大な木々の長い影が、街や丘を包み込んでいることに気付いた。

ドゥエマー太古の物語 第3部Ancient Scrolls of the Dwemer III

「どこ」の重要性

マロバー・サル 著

オスロバーの族長は、彼の賢者たちを集めこう言った。「毎朝、家畜が死んでいる。何が原因なのだ?」

ファングビス戦闘隊長は言った。「怪物が山から下りてきて、家畜を食べているのかもしれません」

治癒師ゴーリックは言った。「新種の疫病が原因かもしれませんな」

ベラン司祭は言った。「女神に助けていただくには、生け贄を捧げる必要がある」

賢者たちは生け贄を捧げ、彼らが女神からの答えを待つ間、ファングビスは師匠ジョルタレグの下へ行きこう言った。「ゾリアの棍棒の鍛造や、それを戦闘でどのように使うのかを実によく教えていただきましたが、今は自分の技能をいつ使えばよいのかを知る必要があります。女神からの回答があるまで、または薬が効くまで待つのでしょうか。それとも山にいると分かっている怪物を退治に行くのでしょうか?」

「「いつは重要ではない」と、ジョルタレグは言った。「「どこ」なのかが重要だ」

ファングビスはゾリアの棍棒を手に持ち、暗い森の中を遠く、偉大な山のふもとまで歩いた。そこで彼は2匹の怪物に出会った。オスロバーの族長の家畜の血でぬれていた片方は、連れが逃げるあいだ彼と戦った。ファングビスは「どこ」が重要であると言った師匠の言葉を思い出した。

彼は怪物の急所5ヶ所を殴った。頭、股間、喉、背中、胸。五ヶ所を5回ずつ殴り、怪物は倒された。その怪物は運ぶには重すぎたが、それでも意気揚々としてファングビスはオスロバーへ戻った。

「おーい、家畜を食べた怪物を殺しました」と、彼は叫んだ。

「怪物を殺したという証拠はどこにあるのだ?」と、族長は聞いた。

「おーい、私の薬が家畜を救いましたぞ」と、治癒師ゴーリックは言った。

「おーい、我が生け贄によって女神が家畜を救ったのだ」と、ベラン司祭が言った。

朝が2回過ぎたが家畜は無事であった、しかし、3日目の朝、また族長の家畜が10匹殺されていた。治癒師ゴーリックは彼の書斎へ新しい薬を探しに行った。ベラン司祭はさらなる生け贄の準備を行った。ファングビスはゾリアの棍棒を手に、またしても暗い森の中を遠く偉大な山のふもとまで歩いた。そこで、オスロバーの族長の家畜の血でぬれた、もう一方の怪物に出会った。彼らは戦い、またしても、「どこ」が重要であると言った師匠の言葉を思い出した。

彼が怪物の頭を5回殴ると、怪物は逃げた。山沿いに追いかけ、彼が股間を5回殴ると、怪物は逃げた。森の中を走りながら、ファングビスは怪物を追い越し、喉を5回殴ると、怪物は逃げた。オスロバーの田畑に入り、ファングビスは怪物を追い越し、背中を5回殴ると、怪物は逃げた。砦の下では怪物が嘆く音を聞き、族長や賢者たちが顔を覗かせた。彼らはそこから族長の家畜を殺した怪物を見守った。ファングビスが怪物の胸を5回殴ると、怪物は死んだ。

ファングビスの名誉を称えて大きな祝宴が開かれ、その後2度とオスロバーの家畜が殺されることはなかった。ジョルタレグは彼の弟子を抱きしめ、こう言った。「やっと「どこ」で敵を殴ればよいのかを覚えたようだな」

ドゥエマー太古の物語 第4部Ancient Scrolls of the Dwemer IV

おはじきと針の使い方

マロバー・サル 著

ノルドとチャイマーとドゥエマーがコーナークラブにやって来た。

「いかがいたしましょう、ムスセラ?」酒場の主人が尋ねた。

「ハチミツ酒をマグ1杯」ノルドが言った。

「シェインをグラスで。いいやつを頼む」チャイマーが言った。

「チャル茶とおはじき、それに革を縫う針をください」ドゥエマーが言った。

「ハハハ」ノルドは大笑いした。「ショールの骨にかけて!ちっちゃなミルク飲みが棒拾い遊びをやろうとしているぞ。棒1本しか扱えないけどな!」

「少なくとも想像上の、しかも死んでいる神にかけて誓うなんてことはしないぞ」ドゥエマーが言った。酒場の主人がカウンターに、彼が注文したものを置いた。

「おい、何だって?」ノルドは怒鳴った。「何という…!」

「アズラの星にかけて、彼にしてやられたな」チャイマーが自分のシェインを口にしながら言った。「ドワーフ君、君に1点だ」

「それと、少なくともノルドはよその次元の悪魔を崇拝するのが賢明とは思っていない」ドゥエマーはチャルをかき回しながら言った。

「ボエシアとメファーラにかけて!いい加減にしろ!」チャイマーが叫び、短剣を抜き放った。

「そうだ!このちびの内臓をかっさばこうぜ!」ノルドがうなり声を上げ、手斧を抜いた。

ドゥエマーはおはじきをカウンターから落とした。それは床の、チャイマーが前に進もうと足を下ろしかけていたまさにその場所に落ちた。彼は滑って左によろめき、彼の短剣が驚いているノルドの胸に柄まで深々と突き立った。その間にドゥエマーは大きな針を指で正確に弾き飛ばした。針は回転しながら落ちて、床板の隙間に針先を上に向けて直立した。チャイマーは瀕死のノルドから身を引き離したが、バランスを崩して頭から床に倒れた。倒れた先にあった針が、彼の金色の目の片方を貫き、脳にまで達した。わずか数秒のできごとだったが、結局チャイマーもノルドも死んでしまった。

ドゥエマーはチャイマーのベルトから小銭入れを引っ張り出して酒場の主人に渡し、ノルドのハチミツ酒をごくごくと飲み干し、シェインのグラスを手に取って一口すすった。それから酒場の主人に向かってうなずき、グラスを手にコーナークラブを後にした。「市場に行ってくる」彼が言うのが聞こえた。「骨抜きとグアルの卵とブートジャックを買わないといけないな」

ドゥエマー太古の物語 第5部Ancient Scrolls of the Dwemer V

錬金術師の詩歌

マロバー・サル 著

マラネオ国王おかかえの錬金術師が持ち場を去った

研究所での実験中に爆発事故を起こしたからだ

国王のおふれが回された

新しい術師を募集する

薬や何かを混ぜるのだ

王が選ぶと決めたのは

術と道具を使えるものだけ

愚かな術師はもうたくさん

検討、会議、話し合い

王は候補を2人に決めた

イアンスィップス・ミンサークとウンファティック・ファー

どちらもとにかく野心でいっぱい

どちらがすごいか競うのだ

王は「試験を行う」と

薬草、宝石、書物にお鍋、計量カップを用意した

透明ドームの屋根の下、部屋に2人は通された

「飲むと姿が見えなくなる薬を作り出せ」

笑い上戸の王様はやっぱり笑ってこう言った

イアンスィップス・ミンサークとウンファティック・ファー

2人は作業に取り掛かる

薬草刻んで金属溶かし、奇妙なオイルを精製し

釜に入れたら温めて用心深く泡立たす

中身を鉢に移したら混ぜて混ぜて混ぜまくる

時々互いを盗み見て、相手の様子を確認し

45分も経ったころ、

イアンスィップス・ミンサークとウンファティック・ファー

どっちも自分が勝ったと思い、相手にウィンクしてやった

マラネオ国王こう言った

「それでは今から自分たちの作った薬を飲んでみろ

鍋から一さじすくい取り味見をして見せてくれ」

ミンサークは薬を口にするやいなや彼の姿は消え失せた

ファーも味見をしてみたが、彼の姿はそのままだった

「銀とブルーダイヤモンドと黄色の草をちゃんと混ぜたと思うのか?」

王は笑って教えてやった。「見てみろガラスの天井だ

光がお前を惑わせて使うべきだった材料の

色を変えてしまったのだ」

「ところで何を混ぜたのかな」浮かれてうるさい声がたずねた

「レッド・ダイヤモンドと青い草、それに金ではないのかな?」

「(ドゥエマーの神の名前)の力によって」ファーは若干おびえて言った

「私は自分の知能を高める薬を作りました」

ドゥエマー太古の物語 第6部Ancient Scrolls of the Dwemer VI

キマルヴァミディウム

マロバー・サル 著

いくつもの戦いをへて、戦争の勝者が見えてきた。チャイマーはマジカや剣術においては秀でていたが、ジナッゴの手による洗練された防具を装備したドゥエマーの装甲兵が相手では、勝てる見込みはきわめて薄かった。その地の平和維持を第一に考えた戦士長スソヴィンは、「野獣」カレンイシル・バリフと休戦協定を結んだ。スソヴィンは「紛争地域」を獲得し、その代償としてバリフに強力なゴーレムを授けた。北方の蛮族の襲撃からチャイマーの土地を守ってくれるだろう、と。

この贈り物にバリフは満足し、野営地に持ち帰った。ゴーレムを目にすると、仲間の戦士たちはあ然とした。金色に輝くその姿は、誇りに満ちたドゥエマーの騎士そのものだった。その強さを試そうと、彼らはゴーレムを闘技場の真ん中に立たせて稲妻の魔法で打ち抜いた。ゴーレムは目にもとまらぬ早業でほとんどの雷撃をよけてみせた。腰をくねらせることで、バランスを崩さずに攻撃の矛先をかわすことができた。さらに火の玉が弧を描いて飛んでくると、膝を折ってコマのように回転しながら巧みに攻撃をかわした。何度かよけられないこともあったが、もっとも頑丈にできている胸や腹部で攻撃を受け止めていた。

俊敏さと力強さを併せ持ったその創造物に、戦士たちは歓声をあげた。ゴーレムを守備の要に据えておけば、スカイリムの蛮族が村を襲ってきても返り討ちにしてやれそうだった。彼らはゴーレムを、「チャイマーの希望」を意味する「キマルヴァミディウム」と名づけた。

バリフは一族の全家長を連れて、ゴーレムを私室へと持ち込んだ。そこで彼らはキマルヴァミディウムの力、スピード、回復力を徹底的に試した。その設計に穴は見つからなかった。

「丸裸の蛮族め、襲撃にきてこいつを目にしたらどんな顔をするかのう」家長のひとりが高らかに笑った。

「われらではなく、ドゥエマーに似ているのが口惜しいがな」カレンイシル・バリフはゴーレムをとっくりとながめた。

「そもそも、休戦協定など受け入れるべきではなかったのだ」と、強硬派の家長が言った。「戦士長スソヴィンに冷や汗をかかせるにはもう遅すぎるかのう?」

「遅すぎるということはない」と、バリフは言った。「が、やつの装甲兵たちは手ごわいぞ」

「私の情報では…」と、バリフの諜報参謀が言った。「スソヴィンの兵は夜明けとともに目覚める。その一時間前に襲撃すれば、やつらは赤子も同然だ。まだ水浴びも終えてないだろうから、鎧を装備しているはずがない」

「鎧職人のジナッゴをひっ捕らえて、鍛冶の秘訣を吐かせることもできよう」と、バリフは言った。「善は急げだ。明朝、夜明けの一時間前に襲撃するぞ」

段取りは整った。チャイマーの兵は夜のうちに進軍し、ドゥエマーの野営地になだれ込んだ。キマルヴァミディウムを中心とする第一陣を攻撃に送り込んだが、肝心のゴーレムは調子がおかしくなってチャイマーの兵を襲いだした。それに加えて、ドゥエマーは防具一式を装備し、睡眠も充分にとっており、万全の戦闘態勢にあった。奇襲は失敗し、「野獣」カレンイシル・バリフをはじめとするチャイマーの上官はほとんど捕虜となった。

チャイマーたちは何も訊かないことで誇りを守ろうとした。と、スソヴィンはある仲間から「天啓」を与えられて、奇襲攻撃のことを知ったのだと説明した。

「わが陣にスパイがいたというのか」バリフは皮肉っぽく笑った。

捕虜のそばで立ちすくんでいたキマルヴァミディウムが、頭を取り外した。鋼鉄の体からジネッゴの顔がのぞいた。そう、鎧職人の。

「八歳のドゥエマーはゴーレムを作れる」と、ジネッゴは言った。「だが、ゴーレムになりきれるのは真に偉大なる戦士と鎧職人だけだ」

ドゥエマー太古の物語 第8部Ancient Scrolls of the Dwemer VIII

スノーエルフと変幻のレンズ

マロバー・サル 著

音色の建築家ムズルションドは、インナー・ドゥアサンドで見つけた巨大な憎しみの晶石を20年かけて調律して、ニルンピスのエッセンスを抽出するために、春分点と秋分点の歳差と同期させようとしてきた。だが晶石の振動の親和性が彼には理解できなかった。そこで彼はある日、減衰器を投げ捨て、チャル茶を飲もうと工房を出て台所に行った。

台所の入口に近寄ったとき、彼はシューシューという音楽を聞いたが、彼が入口の敷居をまたぐと突然、その音楽は止んだ。彼の家事手伝い、スノーエルフのメイドのリリャレルがスチームグリルの影から手を引っ込めて、気まずそうな顔で見上げていた。

「音楽が聞こえたぞ、リリャレル」ムズルションドは言った。「その温熱器の陰に何を置いた?」

「何もございません、ドワーフの旦那様」メイドは答えた。「ひまつぶしに集めたものだけです」

「なんだと?また私の用具室に入ったのか?そこから持ち出したものを見せなさい」

しぶしぶとスノーエルフはスチームグリルの陰に近づき、こぶし大の金色の金属でできた物体を引っ張り出した。そのへりの覆いについた水晶の取手が輝いていた。ムズルションドが手を伸ばして広げると、リリャレルは注意深くその物体を彼の手のひらに乗せた。「落とさないでください」彼女は言った。「調整が狂ってしまいます」

「そうか、そうか」技術者は言った。「ならばお前は自分で音色の変幻のレンズの原型を作ったのだな。これが私の聞いた音楽を奏でていたのか?」

「その通りです、ドワーフの旦那様」メイドは床を見つめながら言った。「間違ったことをしていないといいのですが」

「この装置がどうした?この音楽を再生する安物の宝石には何の危険もない。増幅器からブトゥン波が漏れない限りは。だがそんなはずはない。静電コンデンサに干渉しているのかも知れない」

「ああ、ご心配にはおよびません。アルコイド遮蔽を使いました——ちょっとですけれど!」彼女は不安げに言った。「でも旦那様、これは音楽再生機ではありません。これは私の心の旋律と同調するのです」

「精神的な観念サイクルと変幻のレンズを同期させる方法など誰も知らない。そんなことは今まで誰もやっていない」

「それについては何も存じ上げません、ドワーフの旦那様」リリャレルは神経質そうに手をねじり合わせながら言った。「私はただ、デュウム放射体を反転させてデミ・エクター波を中和しただけです。それがうまく動いただけです。元に戻しましょうか?」

「女よ、そのままにしておくんだ」技術者はそう言って手を持ち上げて光る装置をさらに入念に見つめた。「デュウム放射体の反転がデミ・エクターを中和するだと?そうか…そうか、どうして動くのかわかるぞ。これは憎しみの晶石を調律してニルンピスのエッセンスを取り出すのに、まさに必要なものかも知れない!」

ムズルションドが興奮して変幻のレンズを工房に持ち帰ろうと向きを変えたとき、エルフのメイドは支柱を両手で抱え上げ、彼の後頭部を殴りつけた。音色の建築家は地面に倒れて死に、リリャレルは自分の輝く装置を拾い上げた。「大嫌いだった」彼女は悪態をついた。「いつもドゥエマー油みたいな臭いをさせて」

それから彼女は通気管の真ちゅう製のよろい窓を開け、這って中に入り、ドワーフの町の中心を抜けて下りて行った。「下りていけばアンダーマーに合流して、戻って来ないで済むようになるかしら」そう言いながら彼女は変幻のレンズのスイッチを入れた。するとそれは突然、彼女の心の旋律と同調し始めたのだった。

ドゥエマー太古の物語 第10部Ancient Scrolls of the Dwemer X

持参金

マロバー・サル 著

イナレイはグナルで最も裕福な地主であった。彼は、娘のゲネフラと結婚する男のために、長年にわたって莫大な額の持参金を蓄えてきた。彼女が結婚を承諾できる年齢に達すると、彼はゴールドをしまい込み、娘を結婚させると公表した。彼女は顔立ちがよく、学者であり、運動も万能ではあったが、気難しく考え込んでいる印象を与える容貌であった。花婿候補として名乗りをあげてくる男たちはこの性格上の欠点を気にしていなかったし、同様に彼女の特性にも関心がなかった。男たちは皆、ゲネフラの夫、そしてイナレイの娘婿として莫大な富が手に入ることを知っていた。それだけで、何百もの男たちがゲネフラのもとへ求愛に訪れるに十分であった。

「我が娘と結婚する男は…」と、イナレイは参列者たちに言い放った。「金銭欲から結婚を希望してはならぬ。私が満足する自らの富を示さなければならぬ」

その簡単な表明によって、彼らのわずかな財産では地主を感心させられないと分かっていた男たちの大多数は離れていった。それでも以後数日間、数十名は良質なキラーク布と銀糸で仕立てた衣服をまとい、異国の召使たちを引き連れ、素晴らしい乗り物に乗って現れた。訪れた男たちでイナレイに認められたものの中でも、ウェリン・ナリリックの服装はひと際輝いていた。誰も聞いたことがないこの若い男は、ドラゴンの群れに引かせる眩い黒檀の乗り物に乗り、非常に珍しい仕立ての衣服を身にまとい、グナルの誰も今までに見たことがないような幻想的な召使の行列に付き添われて到着した。従者の目は前後左右に着いていて、召使たちはまるで宝石を散りばめたかのような外観であった。

それでも、イナレイにとって十分ではなかった。

「我が娘と結婚する男には、自分が知的であることを証明してもらう。私の義理の息子、そして一緒に仕事をする上で、無知な男はほしくない」と、彼は宣言した。

この宣告で、贅沢な生活の中でほとんど物事を考える必要が無かった大多数の求婚者が失格となった。それでも、それからの数日間、才覚と教養を披露したり、過去の偉大な賢者の言葉を引用したり、基本原理や錬金術に関する持論を披露する男達が数人訪れた。ウェリン・ナリリックも同様に、彼がグナルの郊外に借りた別荘で食事をともにするようイナレイにお願いした。そこで地主は、数多くの筆記者がアルドメリ語の小冊子を翻訳する姿を目にし、その若者の、少々的外れではあるが興味をそそる知性を楽しんだ。

イナレイはウェリン・ナリリックに十分感心していたが、それでもなお、別の課題を出した。

「私は娘を深く愛している」と、イナレイは言った。「また、娘が結婚する男にも彼女を幸せにしてほしい。もし彼女を笑わせることができる男がこの中に居るならば、娘と莫大な持参金を与えよう」

それからの数日間、求婚者たちは列をなし、彼女に歌を捧げたり、深い愛情を示したり、彼女の美しさをこれ以上ない詩的な言い回しで表現した。ゲネフラは憂うつさと嫌悪で彼らを睨むばかりであった。彼女の側に居たイナレイは、とうとう失望し始めた。求婚者たちは皆、この課題を果たせずにいるのだ。そこでやっと、ウェリン・ナリリックが部屋に入ってきた。

「私があなたの娘を笑わせましょう」と、彼は言った。「思い切って言いますが、私と彼女の結婚を認めていただいた後に、彼女を笑わせます。もし、婚約から1時間経っても彼女に喜んでいただけなかったら、結婚は破棄していただいて結構です」

イナレイは娘のほうを向いてみた。笑ってはいなかったが、目の中に、彼女がこの若者に対して陰湿な興味を持った色が伺えた。他の求婚者たちはそんな反応すら彼女から得られなかったので、彼は同意した。

「当然のことながら、持参金は結婚してからでなければ支払われない」と、イナレイは言った。「婚約だけでは不十分だ」

「持参金を見せていただけますか?」と、ウェリンは頼んだ。

この宝がどれだけ有名で、恐らくこの若者が実際に手にすることはないだろうと考えたイナレイは了承した。彼はかなりウェリンのことが気に入っていた。イナレイの命令で、ウェリン、イナレイ、不機嫌そうなゲネフラ、そして城代の一行は、グナルの砦奥深くへと進んだ。最初の扉を開錠するにはルーン文字を連続で押さなければならなかった。もし一つでも押す文字を間違えたならば、毒矢の一斉射撃が盗賊を見舞ったであろう。イナレイは次の警備策を特に誇りに思っているようだ‐‐錠は18本の回転式の刃で構成され、3本の鍵を同時に回すことで入室が許される。刃は、一つだけの鍵穴を破ろうとする者を切り刻むように作られている。ようやく一行は保管室に辿りついた。

完全にカラだった。

「ああ、ロルカーンよ、強盗に入られた!」イナレイは悲痛に言った。「しかし、どうやって?誰がこんなことをできたのだ?」

「恐れながら申し上げますが、かなりの才能がある強盗のようです」と、ウェリンが言った。「長年にわたってあなたの娘を遠くから愛し続けた男でしたが、人を感心させるような富も教養もありませんでした。でもそれは、彼女の持参金が私にその機会を与えてくれるまでの話です」

「貴様が?」と、とても信じられないイナレイは叫んだ。その時、さらに信じ難いことが起きた。

ゲネフラが笑い始めたのだ。彼女は、このような盗賊と出会えるなどとは夢にも思っていなかった。彼女は、激怒している父の目前で、ウェリンの両腕の中に飛び込んで行った。しばし時がたち、イナレイも同様に笑い始めた。

ゲネフラとウェリンは1ヶ月もしないうちに結婚した。彼は実際貧乏であったし教養も無いに等しかったが、この義理の息子と一緒に仕事を始めてからの富の増えかたにイナレイは驚きを隠せなかった。ただし、その過剰な金の出どころに関しては絶対に聞かないようにした。

ドゥエマー太古の物語 第11部Ancient Scrolls of the Dwemer XI

アズラと箱

マロバー・サル 著

ニチェルバーは若いころは冒険心にあふれていたが、やがてとても賢い老ドゥエマーとなり、真理の探究や俗説の見直しに生涯をささげた。彼は実にいろいろな定理や論理的構造を打ち出しその名を世間にとどろかせていった。しかし彼にとって世界の多くはいまだなお不思議なものに満ち、とりわけエドラとデイドラの本質は謎そのものであった。探求の結果、神々の多くは人やエルフによる作り事であるという結論に達した。

しかしながら、ニチェルバーにとって神の力の限界以上の疑問はなかった。偉大なる存在がこの世全体の支配者なのであろうか?もしくは謙虚な生き物たちが自ら己の運命を切り開く力を持っているのだろうか?ニチェルバーは自分の死期が近いと予感し、最後にこの疑問に挑まなければならないと感じた。

彼の知人でアシーニックというチャイマーの司祭がいた。司祭がベタラグ=ズーラムを訪れた際に、ニチェルバーは彼に神の力の本質の探究に挑むつもりであることを話した。アシーニックは恐れおののき、そのような謎に手を出さないよう説得したが、ニチェルバーの決心は固かった。司祭は神への冒涜になあることを恐れたが、最後は愛する友のため手伝うことに同意した。

アシーニックはアズラを召喚した。司祭が彼女の力への信仰を誓ういつもの儀式を行い、アズラが司祭には危害を加えないことを約束すると、ニチェルバーと彼の多くの教え子たちは召喚の間へと大きな箱を運び入れた。

「この地に降り立つアズラよ、あなたは黄昏と暁の神であり、神秘の支配者である」とニチェルバーは語りかけ、できるだけ従順な態度に見えるようにした。「あなたの知識は絶大です」

「そのとおり」とデイドラは微笑んだ。

「たとえば、この箱の中には何が入っているのかお分かりでしょうね」とニチェルバーは言った。

アズラはアシーニックの方に向き直った。険しい顔だった。司祭は急いで、「神よ。このドゥエマーはとても賢く、尊敬された人物です。どうか私を信じてください。これは貴方様のお力を試すためではございません。しかし、この科学者と疑い深い連中の念をはらすため貴方様のお力をどうかお見せください。何度私のほうから説明しても、彼はその目で確かめたいという信念を持っているのです」と釈明した。

「もしこのドゥエマーたちが持ち込んだやり方で私の力を示すのであれば、その力はこれまで行ってきたことよりも印象的な業となるであろう」とアズラは怒鳴り、そしてニチェルバーの目を真っ直ぐに見た。「箱の中には赤い花が1本入っている」

ニチェルバーは表情を変えず、箱を開けて中身を見せた。箱の中身は空だった。

教え子たちはいっせいにアズラの方を向くと、彼女は姿を消していた。唯一アシーニックだけが彼女が消え去る前に「神の業」を見た。彼はただ何もしゃべることが出来ず、震えているだけであった。彼は呪いがふりかかった、と確信した。しかし先ほど証明された神の力についての考えの方が呪わしかった。ニチェルバーは青ざめ、足元もおぼつかなかったが、彼の顔は恐れではなく喜びで輝いていた。疑問に過ぎなかった真実の証拠を見つけた、という笑顔だ。

教え子の2人は彼を支え、もう2人は司祭を支え、召喚の間から出て行った。

「私は長い年月をかけて研究してきた。数え切れないほどの実験をこなし、独学で何ヶ国語も学んだ。最終的な真実を私に教えてくれた技術でさえ、ただ食べていくためだけに努力する貧しい若者だった頃に身に着けたやり方だ」と賢者は言った。

ベッドに上がる階段に連れて来られた時、彼のゆったりとしたローブのたもとから1枚の赤い花びらが落ちた。ニチェルバーはその夜、息を引き取った、彼の死に顔は知りえたことに満足して穏やかなものだった。

ドワーフのオートマトンDwarven Automatons

ノルドのエルバン 著

ドワーフが絶滅してから長いが、それでよかったのかもしれない。大きめな子供くらいの男女みんなに髭がある光景は、見るに堪えない。しかしドワーフがどんな怒りを神から受けてすべての文明を崩壊させられたのか、目撃すれば畏敬を感じるに違いない。

彼らの文明の名残が山の中に埋まっており、世界中の学者や盗賊が過去の骨をきれいにし、掘り起こされるのを待つ古い知識や発見を待つ財宝をかき集めるため、ドワーフの街の白骨遺体に飛びかかった。だがドワーフの遺跡は戦わずに財宝を渡すことはなく、多くの者が呪われた広間で倒れた。

私が子供だった頃、親類がいかにドワーフが機械を作ることに優れていたかを教えてくれた。我々の時代の前、ドワーフは大地の力を利用し、金属と魔法の古代建造物に命を吹き込むという機械の才能を生かして、火とハンマーを扱い鋼と銅の形に整えたと言う。歯車を磨いたり蒸気を放出する単調な音が絶え間なく続く暗い広間や部屋の真ん中で、ドワーフの聖域に来る自称略奪者を混乱、または倒すために待ち伏せしている。絶滅した他種族文化の最期の痕跡である恐ろしい番兵のように。

私はムズルトの湿った闇を降りた。蒸気がゆっくり漏れ、金属がきしみ古い歯車が無人の街に動力を送る音は、ほとんどの人間を緊張させる。闇の中で何かが動き、視界の外の床を素早く横切るのを聞いた。そしてここまで来られなかった略奪者や学者の遺体を踏みつけたとき、それが広間をさまようネズミではないと分かった。

小さな機械のクモが素早い動作で攻撃してきた。機械は壁から現れ球体から広がり、歯車の上に転がる足、腕はクロスボウの仕掛けに変化した。この機械が人を殺すためだけに作られたことに驚かずにはいられなかった。剣と盾が私の力であり、こんなものに止められる訳にはいかなかった。より巨大な物がこの深さを歩くのを、確かにこの部屋で何かが動くのを、そしてものすごい重みを反響させたのを聞いたからだ。近づいてくると、巨大なピストンのように足が大地を踏みつけ、闇から浮かび上がると、両手に斧とハンマーを持ち、成人男性の5倍ほど高く、銅で作られたモンスターがはっきり見えた。スチーム・センチュリオンだ。物語は正しかった。これは最高のドワーフの財宝を守るガーディアンだった。

我々は戦った。死者を起こすのに十分なくらい激しい戦いだったが、ドワーフは確実に絶滅しているようだ。そいつはハンマーと斧、そして人外の力と素晴らしい不屈の精神をもって襲ってきた。目的は倒すことだけだ。周囲の石を破壊する無駄な攻撃を避け、剣で突いたり切ったりして、広間を暴力で震わせながらできることをすべてやった。機械に負けるのはお断りだ。

普通の人間ならとっくに死んでいたが、死んだ機械の抜けがらの上に立つと、蒸気が最後の呼吸のように逃げた。ドワーフのアーティファクトを持っていくこともできたが、他の者のために残した。死者の宝で呪われた旅にしたくはない。恐らく無数の人がそこで間違えるのだろう。

大地を渡って旅を続ける。エルバンはいつか価値ある挑戦に出会うだろう。私はまだ震えるほどのものを見ていないのだから。