グレナンブラの伝承

Glenumbra Lore

アルドメリ・ドミニオンへの警告A Warning to the Aldmeri Dominion

エリステラ・リジェン 著

アルドメリ・ドミニオンの君主達に対しここに警告する。武力侵略の野望を放棄して自分の島や密林へ戻れ。さもなければダガーフォール・カバナントの憤怒が神々の槌のように振り下ろされるだろう。

アルドメリの計画にエルフによる他の種族、特に人類とオークに対する支配を取り戻そうとする狙いがあることは周知の事実だ。彼らは第一、第二帝国の遺産を覆し、歴史から消し去ろうとしている。これを許してはならない。自由となった人類とオークがエルフの圧政に従うことは二度とない!

ドミニオンの原動力が傲慢なサマーセットのハイエルフであることは明らかだ。我々カバナントはディレニを受け入れることでエルフと平和に暮らせることを示してきたが、アイレン女王は戦争を求めている。女王のタムリエル大陸侵攻は武力侵略以外の何ものでもない。ドミニオンにシロディールの領土権はない。アルトマーがサマーセットに戻らないなら、侵略軍は倒される。

ウッドエルフとカジートはイリアック湾の王国と長年交易してきたが、裏切り者のサマーセットのアルトマーの味方になるという過ちを犯した。カバナントとして彼らに敵意はないが、ドミニオンとの同盟を続けるならば、我々の手によりハイエルフと同じ運命に苦しむことになるだろう。考え直すか、憤怒に直面するかだ。

ウィレス:名づけの娘達Wyresses: The Name-Daughters

喋る樫のグラーガーギル 著

エルデンの時代、エルフの時代、イェフレは訪れた
走った場所で生物達を名づけた

すべては混沌としていて、名前は存在しなかった
彼の贈りものは獣、植物、石それぞれに名前を与えることだった

人とエルフ以外のすべてのものが身のほどをを知っていた
どこへいっても略奪と破壊を繰り返した彼らを除いて

「お前達をアースボーンと名づける」とイェフレは告げた、
「森、石、根、種の王よ。
この遺産を育む、その保護者となれ
その価値がある者を守りとして指名せよ」

それ以来ウィルドの女性達は緑を守る、
ツンドラから森まで、頂上から谷底まで、

虎であろうと虫であろうと、すべての生物に思い出させる
その名前、その性質、その機能と姿を。

緑を堕落させようとする者には
ウィレスがあらゆる場所で立ち向かうだろう。

だから森を歩く時は注意しろ、イェフレのやり方に敬意を払え
さもなければ監視するウィルドの女性達に連れ去られる。

ウェアウルフの皮The Werewolf’s Hide

謎のパックリーダー 著

我々の最大の強みはその飢え、数、怒り、爪、牙、だと言う者もいるだろう。愚か者だ。ハーシーンの贈り物は武器だけではなく、守りに関するものもある。

主人の大きな猟場で狩りをするには、痛みを感じず、自分の体を支配する必要がある。

多くのウェアウルフの狩人がこの理由から皮を奪おうとする。身につけるか、或いは燃やそうとする。いずれにせよ、これは最大の宝であり、汚したり壊したりしないよう注意せねばならない。
狼の毛皮は地位の証でもある。それは体の代わりに傷つき、痛みから守ってくれる。貴族が装飾品を扱うように扱うこと。なぜならお前はハーシーンの家来だ。

汚い毛皮をした、野生化した狼をよく見かける。お前は野性の犬ではない!獣として森をさまようしかない愚かな狼ではない!狩人達の王だ!
敵に襲われ、敵が押し寄せて剣や鎌、熊手や槍と対峙するために真の姿に変身した時、私に感謝するだろう。その毛皮は輝いて恐怖を呼び起こし、どんな打撃にも傷つくことはない。

オークの本性(発禁版)The True Nature of Orcs (Banned Ed.)

オークたちは深遠の暁紀の最後の頃に誕生したとされている。歴史的にはゴブリンに近い獣人の類と誤認されてきたが、オークは実際はハイエルフの祖霊の中でも最も強大と言われたトリニマクの子供たちだ。トリニマクがデイドラ公ボエシアにより食われ、汚らわしきこの神の臓物と化した時、オークたちも変容してしまったという。オークの古名は「追放されし者たち」を意味する「オーシマー」である。現在のオークたちはトリニマクの遺骸であるモーロッチを信仰している。

モーロッチとは?

一般的には、追放されし者やのけ者にされし者、誓約、そして血の呪いを司るデイドラ公マラキャスとして知られている。厳密にはデイドラ公ではなく、他のデイドラも仲間と見なしてはいないが、その領分を考えればふさわしい扱いといえよう。マラウクはかつてハイエルフの神々の英雄トリニマクとしてハイエルフたちを内外の敵から守り、場所によってはアーリエルすらも凌ぐ人気を博していた。ところがトリニマクは従徒たちと共にヴェロシの反乱を阻止しようと試みた際に、ボエシアに食われてしまう。そしてその肉体と魂を汚され、マラキャスとして世に現れたのである。従徒たちも悲惨な変貌をとげ、神聖なるアーリエルを筆頭に万人から蔑まれ、サールザル近くの北方の荒地へと逃れた。彼らは居場所を手に入れようとノルドとチャイマー相手に戦ったが、得られた領土は僅かであった。スカイリムでマラキャスはオーキー、もしくは叩く者として知られ、イスミールとの戦いの数々は伝説の域となっている。

(指令:この悪しき、伝統的だが反オーク的なプロパガンダは、ダガーフォール・カバナントの全域で禁書となった。各管理者が責任を持つように)

ダガーフォール・カバナントへの案内Guide to the Daggerfall Covenant

ダガーフォール・カバナントは北西タムリエルの人々、ブレトン、レッドガード、オークの間で結ばれた協定であり、タムリエル全域の平和と秩序の実現のために相互防衛同盟を形成している。実際にカバナントの王達はレマンを参考にし、自らを第二帝国の精神的後継者と主張している。

ダガーフォール・カバナントは、「ブラック・ドレイク」のダーコラク率いるリーチの民の大群の侵略を撃退するためにハイロックの王達が同盟を結んだ第二紀542年に結成された。東の山々から来た野蛮なリーチの民はエバーモアを破滅させ、ウェイレストを包囲し、カムローンを略奪し、ようやくブレトンが止めた頃にはダガーフォールの門まで進軍していた。ダーコラクが倒されると、ダガーフォール、ウェイレスト、カムローン、エバーモア、そしてショーンヘルムの王達の間でいわゆる「最初」のダガーフォール・カバナントが結ばれた。互いの王国を守り外敵に対しては一丸となって戦うことを厳粛に誓った。

ブレトンの再建とともにハイロックは繁栄した。第二紀561年にウェイレスト付近の鉱山労働者が歴史に残る最大のオリハルコンを掘り当てた後は特に栄えた。鉱山があったカンバーランド伯爵のエメリックは、鉱山で得た富をウェイレスト艦隊の補強とハイロック全体の貿易の改善に使うことを提案した。ウェイレストのガードナー王は承認したが、艦隊が完成する前に恐るべきナハテン風邪がウェイレストを襲い、ガードナー王家の全員が亡くなった。その後エメリック伯爵が王になり、カンバーランド家がウェイレストの第二王朝となった。

ウェイレストの新しいエメリック王はショーンヘルムのランセル王の娘に求愛していたが、第二紀566年にセンチネルのマラヤ王女と結婚した。裏切られたと感じたランセルがウェイレストに奇襲を仕掛け、最初のカバナントは崩壊しかけた。カムローン、エバーモア、ダガーフォールの王達は皆ウェイレストの味方につき、エメリックの優れた外交術によりセンチネルの軍もエメリックの女王を守るために戦いに参加した。さらに、エメリックはロスガーの大きなオーク・クランに呼び掛け、協力の礼としてオルシニウムを与えると提案した。ショーンヘルムは倒され、カバナントは再生した。単なるブレトンの防衛協定としてではなく、新たな多国間の同盟として。

同盟の交渉の秘密会議はあらゆる場面で論争や議論を伴いながら、数ヶ月に及んだ。最終結果はエメリック王の構想を元にしており、多数の妥協と注意深く交渉された条件により実現された。地域全体の貿易の自由が保障され、リベンスパイアーの貴族やアリクルのクラウン・レッドガードの反対にも関わらず、オークは対等な同盟の一員として受け入れられた。やがて、北西タムリエルのすべての街と州が、上級王エメリックが議長を務めるカバナント王立議会に忠誠を誓った。同盟の設立者として、王は最高の統率力を誇った。

これが現代のダガーフォール・カバナントである。ファハラジャード王率いる北ハンマーフェルのレッドガード、オルシニウムのクログ王率いる北東山間部のオーク、ウェイレストの宮殿から統治するハイロックのブレトンの王エメリックによる同盟だ。理想的には、第一・第二帝国のすべての良い面を象徴する、騎士の精神を持つ高潔な人々による高貴な同盟である。そしてこの強固な基盤から、もしかすると第三の、より強力な帝国が台頭し、タムリエルの全住民に相互尊重、活気溢れる貿易、神々の崇拝の恩恵を与えてくれるかも知れない。

モーロッチの掟The Code of Mauloch

「モーロッチの掟において!」私は何度この誓いを薄汚い酒場で聞いたか、興奮した傭兵が腹の底から叫んでいるのを聞いたか知れない。だがオーク要塞がその言葉を規範としていないと言ったら嘘になるだろう。この私、アマンダ・アレイアが、良い戦士を作り上げるために「伝統」や「昔のやり方」が必要だと言う事はほとんどないが、オークに関しては先祖に忠実でいる事が勝利への近道のようだ。

少し遡ったところから説明させてもらおう。オークによると、オーク要塞は自分達の種族の歴史と同じくらい長く存在しているのだそうだ。それは控えめに言うと武装したキャンプ、大げさにいうと要塞である。壁の内側にいるすべての者が生まれた時からそれを守るよう訓練されている。武器や鎧はすべて要塞内で製造され、食料はオーク戦士によって狩りで捕獲され、獲物を持ち帰ると要塞に住む皆で食べる。

彼らに従うべき法律はなく、自分たちの中に刻み込んだ、文字には記されない「モーロッチの掟」と呼ばれる規範に従っている。これはマラキャスとも呼ばれる、彼らの神々の1人から名付けられている。ほとんどは、盗むな、殺すな、理由もなく人を襲うな(多くの例外があるようだが)というシンプルな内容だ。しかし、オークは要塞内に犯罪者を拘束する監獄を持たない。その代わりにあるのが、血の代償だ。犯した罪に見合った物を差し出すか、被害者が満足するまで血を流し続けるのだ。言うまでもないが、オークは血の気が多い。

掟には誰が要塞を管理すべきかという内容も含まれている。通常は最も強い男が族長で、何かを決断し、モーロッチの掟が守られているかどうかを判断する。ここにいる女はすべて族長の妻か娘だが、例外として儀式や治癒を行うための賢女がいる。深刻な議論は短くも激しい戦いで処理するが、族長とうまくやっていけない者の多くは要塞を追い出され、私達と共に生活する。オークはすべての事柄と戦うよう教えられて成長するが、戦うほどの価値がない物に関して、この掟は適用されない。

オーク要塞はよそ者が好きではなく、今も昔も自分たちだけで自活している。なぜこんなに熟知しているかというと、要塞を去ったオークの大多数は傭兵や兵士になり、ハチミツ酒を数杯飲めば彼らも故郷の事を話し始めるからである。時折、オークがオークでない者を「親族」にすることがあり、そうするとその者が一族として要塞内で暮らすのを許されるという話を耳にする。もちろん、実際に起こったという話は聞いた事がない。

モーロッチの掟に定められている変わった規範や伝統は、覚悟を持った戦士を育て上げる。また、彼らは普通の戦士とは集中の仕方が違う。武器を抜くまでに躊躇せず、隠し立てする事なく問題を解決しようとする。これこそが要塞内にいるオークと街中にいるオークの真の違いだと思う。法は争いを治安官によって解決するよう定めているが、モーロッチの掟は自分の問題を自分で解決するように求めている。これは傭兵として生きるには、うってつけの考え方だと言えるだろう。

リーチの魔術師の陰謀Schemes of the Reachmage

ウィザードのガブリエル・ベネレ 著

墓の歌い手アンゴフとしか知られていないリーチの魔術師を止めようとする獅子の守護団の試みに対し、私は魔術師ギルドの正式な代表として、調査中に予期せぬ事態が起きた場合に備えて発見や推測を記録することにしました。魔術師ギルドの仕事がこれほど危険で興奮するようなものになると、誰が予測したでしょう?とにかく、これは私が書き記した時点では正確かつ最新の記録です。間違いや後日発覚した事実については、後の巻で補足することにします。もし書いたものを自動的に更新する魔法を発明できたら…ダメです。1度に1つのことに集中しなければ!

アンゴフには計画の遂行を助ける多くの仲間がいます。奴は「手下」と呼んでいるようです。この邪悪な死霊術師に協力していると疑われる者について、復習しましょう。

ライカンスロープと関係があり、カムローンに攻撃を仕掛けたファオルチュは、より強力な者の命令で動いているように見えます。おそらくアンゴフだと推測しますが、この繋がりを示す証拠はまだつかんでいません。

ブラッドソーン教団は明らかにアンゴフと繋がりがあります。奴が教団のリーダーか、単なるメンバーかはまだ判断しかねますが、両者に関係があることは確信しています。信者達は遺物や力を持つ物品を求めて土地を探し回り、組織には多くの死霊術師が属しています。デイドラ公のような者と関係があっても驚きません。当て推量をするなら、モラグ・バルでしょうか。

デイドラもまた、アンゴフの矢筒の矢のように思えます。農民が風に種を投げるように、アンゴフはデイドラを世界に放っています。アンゴフのしもべがさらに潜んでいるはずですが、現時点で他の提案は単なる憶測の域を越えません。代わりに、リーチの魔術師本人について発見したことを述べましょう。

まず、アンゴフは何かしらの方法で大地を毒しているように思えます。通った場所に生える汚れた蔓が、魔法が地方を汚染していることを示す証になっています。その名前、墓の歌い手そのものが死の魔法に関する執着と能力を表しています。死と腐敗がアンゴフの領域であり、生と死を支配することを求めています。

信者達はアンゴフを強く説得力のあるリーダーであると考えています。喜ばせるためなら文字どおり死ぬ者もいるでしょう。そのような献身は不健全であり、誰かが他人にそれほどの影響力を持つことを個人的には恐ろしく思います。

アンゴフはできるだけ多くの混乱と破壊を起こそうとしています。最終目的は分かりません。グレナンブラに来たのは征服するためか、破滅させるためか?最終的にその違いに意味はあるのか?分かるのは、止める方法を見つけねばならないことです。絶対に!

さて、続きはまた後日書きましょう。今は出掛けて、キャス・ベドロード近くの要塞で獅子の守護団と合流しなければなりません。集めた知識は、目の前の任務に応用できるでしょうか。

帝国の真の後継者True Heirs of the Empire

エリステラ・リジェン 著

喜べ、北西タムリエルの人々よ!ニルンの他の地は戦争、狂気、デイドラの恐怖に苦しめられているものの、ダガーフォール・カバナントにはレマン帝国の栄光と名誉が存続している。我々は貿易の優位、自由の原理、神々への崇拝に忠実だ。

敵の世界に対して、イリアック湾の貿易の有力者達は強力な同盟を形成した。ハイロック、ハンマーフェル、オルシニウムは、ウェイレストの上級王による支配のもとで1つとなった。オークとブレトンの職人技により同盟は経済的に恵まれ、オークとレッドガードの軍事力により侮れない勢力となった。我々の王達は住民とともにタムリエル帝国の復活、それに伴う経済的繁栄を望んでいる。正しい皇帝が帝都を支配するために、方法は1つしかない。自ら手にすることだ。

現在の「シロディール帝国」はレマンの栄光の第二帝国を真似た見せ掛けだけのごまかしにすぎない。ルビーの玉座に座る詐欺師達は公の場で神々を嘲り、人類の敵であるオブリビオンの王の機嫌を取る。有望と思われたヴァレン皇帝でさえもデイドラの堕落の被害者となり、その改革はデイドラの徒党の黒幕により一掃されてしまった。

ダガーフォール・カバナントが第二帝国の原理を受け継ぐ唯一の真の後継者である。神々の名のもと、シロディールを征服してレマンの遺産の栄光を復興せねばならない。シロディールを堕落させ、ニルンに脅威をもたらしている病的なデイドラ崇拝を、タムリエルから一掃しなければならない。タムリエル・カバナントを設立し、新たな王朝のもとですべての王国に大議会の席を与えるのだ。

進め、カバナントの兵士達!神々の名のもとにすべての人々を自由にしろ!新たな帝国、新たな法と正義の時代のために!

様々な宗派:オークVarieties of Faith: The Orcs

帝国大学 ミカエル・カルクソル修道士 著

オークは他の神の存在も認識しているが、崇拝する神は1つだ:

マラキャス、またはモーロッチ(オークの父、偉大な族長):

オークはモーロッチを最初のオークとして崇めており、名誉や報復などの問題について指示するモーロッチの掟に従って生きる。

モーロッチの掟

掟は明白に述べるよりも暗示することが多いが、以下が記されている:

——鋳造と鍛冶への敬意。
——族長とその妻達の伝統的な役割。
——挑戦と戦いにより新しい族長を選ぶ伝統。
——罪を犯した者は被害者(または被害者の親族)に「血の犠牲」を払うという習慣。
——名誉を傷つけられた者は復讐するという条件。
——戦いで死ぬことはモーロッチを満足させるという認識。

トリニマク教団

多くのオークがエルフの神トリニマクがボエシアに食べられ、排泄された時にトリニマクはマラキャスに、全信者はオークに変異したという起源の神話を信じている。オークの種がエルフに由来するというこの説を信じる者は自らを「オーシマー」と呼ぶ。

ゆえに、オークの中にはマラキャスよりトリニマクを神の祖先として崇拝する者がいる。トリニマク教団のオークたちの主張によると、トリニマクはその体内を通ることで腐敗するとボエシアには信じ込ませ、実際はボエシアの力の一部を吸収して信者に分け与えたという。この考えではオーシマーを「進歩したエルフ」ととらえることができる。

様々な宗派:ブレトンVarieties of Faith: The Bretons

帝国大学 ミカエル・カルクソル修道士 著

八大神

アカトシュ(時の竜神):アカトシュは八大神(シロディールおよびその各地方に普及している一大宗派)の主神であり、タムリエルのすべての宗教で登場する二つの神の一方である(もう一方はロルカーン)。一般に、始まりの場所に出現した神々のうち最初の神だったと見なされている。アカトシュの存在が確立すると他の神格も存在という過程を経るのが容易になり、世界中に様々な神々が登場したという。アカトシュはシロディール帝国の究極神であり、そこでは耐久、無敵、そして永劫に続く正当性などの資質の象徴とされている。

キナレス(大気の女神):キナレスは八大神の一員であり、天空を司る中では最も力のある神格であり、船乗りと旅人を守る。伝説によってはロルカーンの案に最初に同意し、虚無の中に次元を作るための空間を確保したとされている。彼女は雨とも繋がりがあるが、これはロルカーンの神性が失われる以前にはなかったという。

ジュリアノス(叡智と論理の神):ノルドの言語と数学の神であるジュナールとの繋がりがしばしばあるジュリアノスはシロディールの文学、法学、歴史と矛盾の神である。ブレトンの魔術師に最も好まれる。

ディベラ(美の女神):八大神の一員で人気のある女神。様々な分派が存在し、女性を尊ぶもの、芸術家や美学を尊ぶもの、性愛の指導を身上とするものなどがある。

アーケイ(生と死の円環の神):八大神の一員であり、他の地方でも人気があるアーケイは、父であるアカトシュが時の神としてあまり扱われていないか、あるいは人々に分かりにくい場合、その文化集団で重要視されていることが多い。アーケイは埋葬と葬儀の神であり、四季との繋がりがある場合もある。アーケイの司祭は死霊術およびあらゆるアンデッドに対し強い敵意を抱いている。アーケイは世界がロルカーンの指導/推奨/欺まんのもとで作られるまでは存在しなかったと言われている。そのため、定命の者たちの神と呼ばれることもある。

ゼニタール(労働と商業の神、商いの神):
八大神の一員であるゼニタールは当然ながらボズマーのズェンとの関連がある。しかしハイロックでは格段に洗練された商人や職人、中流貴族の神となっている。信者たちはその謎めいた出自にもかかわらず、ゼニタールは常に勝利する神だと主張する。

マーラ(愛の女神):ほぼ全ての宗派に存在する女神。元々は神話の時代の多産の女神として登場した。ハイロックでは母神とされている。マーラは時にアヌアドのニール、すなわち宇宙の女性的基盤であり、創造を生み出した存在と関連づけられている。ブレトンの神話では、マーラはアカトシュと夫婦になっている。

ステンダール(慈悲の神):八大神に属するステンダールはノルド由来の神から思いやり、時には正しき統治の神へと発展している。ステンダールは執政官、支配者、遍歴の騎士の守護者とされている。

ブレトンの宗派で著しく重要とされる神

マグナス(メイガス):魔術の神であるマグナスは最後の最後で世界の創造から身を引いたが、その代償は大きかった。この世に残っている彼の名残りは定命の者たちに魔法として認識され、操られている。伝説の一つでは、定命の次元を生み出すこと自体はロルカーンの発案だったものの、実際の構築に必要な図式や図表を作り出したのはマグナスだったとされている。マグナスは黄金の目、天体観測儀、望遠鏡、もしくは、もっとも一般的である杖の姿で描かれることがある。シロディールの伝説でマグナスは強大な魔術師の体に宿り、力を貸すことができると言われている。

イフレ(森の神):時の竜アカトシュが神の王であっても、イフレは「現在」の霊魂として崇拝されている。エルフによると定命の者の次元の誕生後、何もかもが混沌に陥っており、最初の定命の者たちは植物に姿を変えては動物に変化し、再び戻ることを繰り返していた。そこでイフレがアース・ボーンズを意味する最初のエルノフェイ、もしくは「アース・ボーンズ」に姿を変えた。これら自然の掟が確立した後、定命の者たちは新たな世界を理解することで、ある程度の安全を確保できるようになったという。

シェオール(バッドマン):ハイロックでは、バッドマンがあらゆる争いの元凶とされている。当初は凶作の神であったが、今日の神学者の大半はノルドのショールやアルドメリのロルカーンを悪魔化したもので、サールザル陥落後の暗黒時代に誕生したものと見なしている。

フィナスタール:サマーセット諸島の英雄神であり、アルトマーに歩幅を狭めることで自然の寿命をもう100年延ばす方法を伝授したとされている。ディレニの守護神にして「教師」であり、エルフの血を強調するブレトンの魔術師に崇拝されることが多い。

ストームヘヴンの伝承

Stormhaven Lore

アダマントの塔Tower of Adamant

ソリチュード、吟遊詩人の大学、住宅建築家フレーム 著

ハイ・フロスガーを除いて、スカイリムのどこを見てもディレニの塔のようなものはない。自然のものである大きな山とは違って、その塔は建造物である。しかし伝説が真実であるなら、建てたのは人やエルフではなく、エドラ達ということになる。

イリアック湾にあるバルフィエラの島の中心高く、切り立つ荒涼とした場所にそれはあり、時の始まりから建っている。建物を構成する物質が未知で不朽なことからアダマンチンの塔と呼ばれており、それと第零の塔はムンダスに存在するどの建物よりも古い建造物である。

ディレニのハイエルフは第一紀の始まりからバルフィエラを支配している。彼らは塔を取り囲むごく最近の砦しか所有権を主張できないにもかかわらず、その塔に自身の名を付けている(塔の地下墓地を調査する権利者は誰かという話は、答えのない議論である)。

私はアリノールのハイエルフと協議をしなかったが(する人なんているのか?)、ディレニのエルデン古物研究家である高貴なコロイデンは質問に答えてくれた。彼によれば、塔は神々がムンダスの運命を決めるために集まった深遠の暁紀に建てられたようだ。その頂点で、アルドマーの偉大な神アーリエルが詐欺師ロルカーンを殺して彼の心臓に矢を突き刺し、それを世界に向けて撃ち放ったという。心臓はただ笑い声に似た音を出して生き続けた。

その後、エドラはムンダスの事情から手を引き、ディレニが自身の物としているその塔を去っていった。彼らがそこで見つけた秘密とは何だったのか?今日まで何を隠しているのか?その秘密が何であろうと、ディレニはこんな程度の低いノルドの建築家には秘密を明かさなかった。

しかし、その周囲の8地点からディレニの塔の測量を行った結果、そこに秘密があるのは間違いないことが分かった。周知の建材を利用している前提で計算を行うと、あの規模の建造物を建てることは不可能なのである。

ウェイレスト、湾の宝Wayrest, Jewel of the Bay

(カンバーランド版)

長老サシル・ロングリート 著

ウェイレストはタムリエル西部にある最も輝かしい街の1つである。現代の美しさ、そしてその歴史の輝かしさ。ハイロックにある他のどの街よりも価値がある。ブレトンの文化にこれほど寄与した街はない。その街の賢き者達の魂は通りを見ればすぐに分かる。切り妻造りの屋根、雄大な並木道、香り漂う市場。ウェイレストの人々には、ダガーフォールの人々のように歴史に囚われるのではなく、その真価を見抜く力がある。ウェイレストを訪れた人は皆、近代的な街だと感じるのだが、そこには何世紀にもわたる文明こそが織り成せる魔法が存在しているのだ。

歴史家にとって、ウェイレストが創立された日を断言するのは困難なことである。ビョルサエ川がイリアック湾に注ぐ場所には、少なくとも第一紀800年からいくつかの集落が存在していた。ウェイレストの商人と漁師を取り囲むのは非友好的な集団ばかりであった。オークの首都オルシニウムはどんどん北の方向に勢力を伸ばし、西の島々には海賊や襲撃者が群がった。ウェイレストという名に何ら不思議はない。イリアック湾の東の端まで耐え抜いてきた多くの旅人にとって、ビョルサエにある小さな漁村は願ってもいない宿泊所だったのである。

スカイリム占領時代の自慢気な調査にウェイレストのことは一切言及されていない。ダガーフォールの年代記において、第一紀948年にジョイル王がガイデン・シンジに送った手紙には次のような言及がなされている。「オークはウェイレストの人々をずっと苦しめ、今にも大陸の中心に迫る勢いである」

ウェイレストが実際に栄えたのは、第一紀980年のオルシニウム崩壊の後である。勤勉な商人達が貿易同盟を結成する際の助けとなり、それにより湾での海賊の活動も衰退していった。商人として成功を収めたガードナー家は、街の中に城壁を巡らせた宮殿を建てると、そこで銀行やその他の商売を始めるに至った。ガードナー家のファランゲルは、第一紀1100年にウェイレストが王国と名乗ることを認められた際、王に任命された者である。

ウェイレストは一族によって支配されることになったが、商人が持つ偉大な力は相変わらずであった。多くの経済学者がこう主張する。苦境の中でもウェイレストが無限の富を得られるのは、商人と王のこの奇妙な関係に因るものだと。ガードナー王家の跡はカンバーランド王家が継いだが、ウェイレストの王が革命や暗殺によって退位させられることは決してなかった。ウェイレストの商人としての心を忘れる王は1人もいない。商人と王は互いに尊敬し合い、その関係は互いを強くしているのだ。

ウェイレストは荒廃、干ばつ、天災、海賊行為、侵略、そして戦争をその素晴らしい気質と実行力で乗り越えてきた。第一紀2702年、海賊や襲撃者、そしてスラシアの疫病からの保護を理由に、街の人口の大部分は強制的にガードナーの城壁の中へ移された。より愚かな人々には耐えられなかったかもしれないが、ウェイレストの人々は何世代にもわたって生き延び、タムリエルを豊かにしている。

オーク:我々の中の害獣Orcs: The Vermin Among Us

アブソロン・ソリック 著

奴らは穴をねぐらにして寝る。奴らは大量に繁殖し、腐った肉の臭いがする。賢い読者の諸君、これはスキーヴァーのことではない。オークのことだ。差し迫る脅威、無慈悲な大軍。「待て、ソリック。今や彼らとは同盟の仲ではないのか?」と諸君が言っているのが聞こえてくる。エメリック王の指揮を信じたいのならそれもいい。私達をオルシニウムの獣人に縛りつけている、このカバナントを信じたいのであれば。

しかし、実際諸君の信念は間違っている。王への信頼は間違いだ。この不完全な人間どもには残忍で邪悪な狡猾さが備わっているからだ。狩りをする狼の群れのように、オークは今でも草原に潜んでいる。私達の警戒が緩むのをじっと待っているのだ。陛下のような偉大な方々も、この単純な戦略によって誤りへ導かれるかも知れない。

奴らは今や私達の身近な存在だ。名誉ある獅子の守護団に仕えている。裕福な商人の護衛をしながら、傭兵として働いている。聖堂で聖職者の護衛としても働いている。賢い読者の諸君、分からないか?私達がこの獣達に贅沢を与えれば付け上がるだけだということを?あの粗削りの刃を、私達の鎧に突き刺す機会を与えているだけだ!

ブレトンがやるべき仕事を、奴らはその異常な力で奪っている。奴らの臭く厚い皮は、どんなレッドガードも太刀打ちできない防御を与えている。カバナント領域内の様々な都市で、オークが女性を強姦して異常な混血児を発生させているという話も増えている!

読者の諸君、これをどれだけ放っておくつもりか?この不潔な獣にどれだけ屈服するつもりか?私はもううんざりだ!今日、自身の村で志を同じくする者同士団結しよう。そして、この獣どもに対して反乱を起こすのだ!このくずどもに。この…オークどもに。

かつてOnce

〈告げ示す者〉ベレダルモ 著

かつて、我々は偉大であった。

かつて、バトルリーブは戦争の達人であり、サピアルチは賢く教養があった。かつて、我々はエルセリック海からロスガーの山々までハイロックのすべてを支配した。そしてネードは我らの奴隷であり、道具であった。

かつて、ティリゲルの白鳥ことディレニ・シグナスはバルフィエラとその塔を発見し、自身のものだと主張し、後から来た彼女のクラン全員に彼女の名を冠するように命じた。

かつて、錬金術は、アルテウムの初期のサイジックに入会依頼を受けたアスリエル・ディレニが「試料簡略年鑑」を編集するまでほぼ不明瞭であった。

かつて、レイヴン・ディレニの「エルドリッチ結合の法則」の確立以前は、付呪すべてが大変珍しいものであり、その試行のほぼすべてが失敗に終わるようなものであった。

かつて、アレッシア改革の間、リャン・ディレニは帝国に耐え忍んだ。彼のブレトン軍はディレニのエルフから武器の供給と指示を受け、東はマルカルスとエリンヒルまでを支配するに至った。オルシニウムのオークの要塞は何度も略奪を受けたが、そこを最初に略奪したのは我々ディレニである。

かつて、グレナンブリア湿原の戦いで、エイデン・ディレニの無数の軍勢はアレッシアの大軍に圧勝し、彼らをシロディールに追い返した。

かつて、下級デイドラの召喚でさえも恐れられ避けられていた頃に、コルヴス・ディレニは召喚の法則を体系化した。

かつて、ペレグリン・ディレニは自身の真なる意志をイリアック湾の波に変え、ラ・ガーダの船隊をセンチネルへ追い返した。

かつて、ペラディル・ディレニは石の精霊の軍団を召喚することで、リルモシート遺跡に散らばった瓦礫からたった1日でブラックローズ監獄を建設した。

そう、我々はかつて偉大だった。しかし、個人の功績が何であろうと、シグナス以来ディレニは皆、成功に恵まれることはなくなってしまったのだ。

なぜなら我々はゼロストーンの謎を解き明かせず、それによって守られたアージャント・アパーチャーを開くことができないからである。

成人すると、高潔な血筋のディレニは皆、塔の地下宝物庫へ案内され、ゼロストーンを見せられる。我々はそれに触ることができる。我々が決して使うことができない力、そこに流動する神秘的で並外れた力を肌で感じるのだ。そして隣接する金属製の壁にあるアージェント・アパーチャーを見せられる。その扉にはゆっくりと逆回転する13の輪の錠が付いている。決して開くことができない扉だ。

我々ディレニがストーンから力を吸収するか、アパーチャーを開くことができなければ、間違いなく他にできる者はいないだろう。我々は世界の高みへ戻り、壮大なことを成し遂げる。自身の失敗を受け止めずに済むように。

しかし、我々は死の間際に一度、それぞれの知識、功績を集結させ、もう一度地下宝物庫へと続く階段を作る。清算するために。ただ一度だけ。

大半は1日か2日以内に、死んだ状態か体がひどく捻じれた状態で発見される。私の最愛の人であるヘロンのように、中には生き延びる者もいるが、怪我がひどく、混乱状態で自分達に起きたことを理解できない。

私?私はトルマリン尖塔にある自分の部屋に留まり、昼間はヘロンの世話をして、夜は蔵書庫でアイレイドの書物の翻訳をしている。この生活にも十分満足している。

しかし、古代のグリモアやリブラスの魔術師のことを調べていると、長らく行方不明だった一族のアルケインの書物は秘密にしておくべきなのかどうか、時に疑問に思うこともある。

そこでこう考える。何の役にも立たない知識は存在するのか?そしてこう考える。この知識は何の役に立つのだろうか?

そして私は階下への長い道のりに足を踏み出す。

ただ一度だけ。

ハイロックの騎士団The Knightly Orders of High Rock

タネスのレディ・シンナバー 著

封建的な階級制度へのブレトンの愛着は、最も身分の低い小自作農民からウェイレストの上級王に至るまでハイロックのすべての側面に浸透している。ブレトンの騎士社会の興味深い現象においてこれほど明確なものは他にはない。

ここハンマーフェルで、私達レッドガードは剣の握り方を知る男女すべてに平等な市民権を与えている。そう、私達にも支配階級がある。もちろん文明には指示と管理がつきものだ。しかし、この貴族政治と比べると差はほとんどない。

ハイロックでは事情が異なり、皆が自身の階級の高さがどれくらいかを自覚している。それは、ディレニのエルフの大君主達から領土を解放したブレトンの一族にまで遡る。ハイロック文化の歴史の基盤には、エルフの支配を振り払った気高き勇敢な「ブレトンの騎士」の物語が存在している。この騎士達がディレニをバルフィエラの島に追い払った後、貴族の伝統を守るため、そして有事の際にハイロックができるだけ守り手を持てるように騎士社会を築き上げたのである。

少なくとも話ではそうなっている。今日、ハイロックにあるすべての王国と公爵領は独自の騎士社会を築いており、ブレトン解放の全盛期まで遡ると言われるほどの伝統も備えている。ダガーフォールの竜騎士団、アルカイアのフレイム騎士団、エバーモアの聖ペリン騎士団など、例を挙げればきりがない。

これらの騎士団は、その輝きを放つ大剣と鎖かたびらを正当化するために近頃どんな任務をこなしているのか?彼らの旗と豪華な式典の先を見越せば、騎士団はハイロックの社会において主に2つの目的を達成していることが分かる。

まず彼らは、多過ぎる貴族の息子や娘が満足できるほど「高貴な」職業を与えている。貿易によりハイロックが栄えたように、長い時間をかけて商人という職業は、貴族の子供達にとって君主に代わる職業として受け入れられてきた。しかし、実際には男爵の子供すべてに数字と交渉の才能があるわけではない。これらの数多いる後継者候補にとって、地元の騎士社会には常に自分のものにできる地位が存在する。

2つ目に、下層階級の人々に騎士爵を与えることは、社会(や、成り上がって行く君主)に対する顕著な貢献に対して報いる手軽な手段である。彼らはブレトンの社会において重要な階級を得ることになる。騎士のほとんどはこのケースだが、平民が戦闘以外の功績で騎士爵を受ける場合、その騎士団への在籍は名ばかりだ。そうした「卿」は有事に剣と盾を掲げることを期待されていない。しかし、彼らの功績が貿易において極めて重要なものであれば、新たな「商人騎士」は、騎士団の財政維持に対して、重要かつ持続的な貢献を期待される。

外交や貿易の仕事でウェイレストやエバーモアに来て、輸送会社の頭としてドリック卿が紹介されたり、宿泊所を束ねる経営者としてリザベッテ卿が呼ばれたりしても驚かないでほしい。目の前にいるのは、ハイロックの伝説的なブレトンの騎士の1人に過ぎない。

ブレトン:雑種か上位種か?The Bretons: Mongrels or Paragons?

エリンヒルのファラスタス 著

人間とエルフが交配できることは、神話紀の中期に最初の人間がタムリエルの海岸に辿り着いた頃から知られている。しかし、エルフと人間の交配が広まったのは大陸のごく限られた北西地域のみであり、そこでブレトンという人種が発生したのである。タムリエルの他の地域における人間とアルドマーの子孫との紛争の歴史を考えれば、このような交配がいかにして、またどうしてハイロックで発生したのであろうか?

その答えは、かつてタムリエルの北西部を支配していたエルフのクラン・ディレニの(エルフにとっては)独特な文化の中にある。出会った人間をすべて容赦なく奴隷にするシロディールのアイレイドとは対照的に、ディレニは征服した地元のネードを、単に貴族社会のカーストに組み込んだだけだった。上流階級のエルフは人間を臣下として支配する封建制度を敷き、その権利や特権には望んだ人間を誰でも相手にできる「性交の特典」が含まれた。魅力的なネードとの性交はちょっとした娯楽として考えられ、ディレニの貴族達は、極めて魅力的な人間の臣下をどれだけ抱えられるかを競ったのである。

このような性的関係から必然的に生まれた半エルフの子供は亜エルフと考えられ、ディレニの親の家族に引き取られることはなかったが、ネードの臣下の中でも特権を与えられることがよくあった。これにより、長い時間を経て、「ブレトン」(エルノフェクスの「ベラトゥ」もしくは「ハーフ」から)という名を与えられた混血の人間のカーストがはっきりと形成されるようになった。ブレトンは人間とだけ結婚することを許され、長い時間をかけて彼らのエルフの血はより薄くなり、ネードの外見が濃く出るようになった。

第一紀の頃は彼らも偉大な力を備えていたが、その頃でもクラン・ディレニのエルフは決して数が多くなかった。支配地域の拡大とともに、管理と支配は少しずつブレトンのカーストへと移っていった。第一紀482年に侵攻してきたアレッシアの大軍を打ち負かした後、クラン・ディレニは散り散りになり力を失ってしまった。エルフがハイロックの中央、最終的にはバルフィエラの島に逃れる一方、ブレトンは易々と彼らの跡を継いだ。ディレニが敷いた封建制度をそのまま受け継ぎ、彼らの地位に自分達の貴族を就かせたのである。

ディレニの伝統と自身を区別することを強要されてきたブレトンの貴族は、エルフやエルフに関するすべてを自分達から遠ざけることで新たな即位を正当化した。皮肉にも、古い貴族の家ほどエルフの血が強く残っていたのは言うまでもないが。ディレニは以前の臣下にますます中傷されるようになり、島のクランはさらに隔離されて孤立していった。しかし、彼らは今でも偉大な魔術師として知られており、第一紀907年に起きたレッドガードの侵攻を追い払うほどの力を持っていたことは間違いない。

ブレトンは自身を再定義し続けた。ディレニの支配に抵抗した気高い歴史の神話を創作し、タムリエルの沿岸地方で貿易を行う商人階級を育て続けた。女帝ヘストラとその軍団が第一紀1029年にバンコライ峠に到着した頃には、人間の帝国に加わり、八大神に帰依する態勢が整っていたほどである。レマンの支配下において、ハイロックは第二帝国の中ではおそらく最も安定して栄えた場所であっただろう。

そして、題目の(わざと挑発的にした)質問に戻ってくる。ブレトンは雑種か上位種か?その答えはもちろん両方である(もしブレトンを雑種と呼べば、少しばかりの鋼鉄が飛んできそうだが)。ブレトンという情熱的な人種を見れば、人間とエルフ両方の強さ、そして欠点も同様に体現していることが分かるだろう。

わが使命、わが誓いOur Calling, Our Pledge

ドゥラク修道院長 著

この一団に入ってきた新人はほとんどが私に「霊魂の守人になることの意味とは?」と尋ねてくる。この戸惑いは当然のことだと思う。アズラは道を示して下さるが、それがいつも我々が考えている方法で示されるとは限らない。彼女は私に話しかけてきたが、それも人生で2度である。それも夜に辛うじて聞き取れる穏やかな囁きのみであった。

ドリームシャードとはアズラの贈り物だ。我々が毎晩飲む夢見ずのの薬も同様である。アズラが予見するのは、悪夢の女王ヴァルミーナがこの地にいつ狂気の災いをもたらすのかということだ。我々がそれを止めない限り、数え切れない罪のない命が失われるだろう。

夢見ずの薬を飲めば我々はヴァルミーナの狂気から守られる。そうすれば他の人々を、夢で気を狂わされた魂や犠牲者を助けられるかも知れない。災いの時、我々は立ち向かう。これはアズラ、そして誓いによって示された…我が使命なのだ。

石喰いの聖なる儀式Sacred Rites of the Stonechewers

ネリック・ステロン 著

私は長期間にわたって石喰いゴブリンの部族を観察している。彼らの日々の活動を記録してきて、その習慣や日課に随分詳しくなってきた。ゆっくり時間をかけて、少しずつ彼らのキャンプの境界近くまで近付いた。時々姿を見せて相手に自分の接近を慣れさせるようにも仕向けた。ある時、木の後ろで用を足そうとしていた1人の戦士が私の監視所を見つけ、不平を言いつつ不格好でありながらも使いやすそうな短剣を取り出した時は、私の仕事もここまでかと思った。幸運なことに、部族の呪術師が私の近くへやって来ると、戦士に声を荒げて、彼の剣を振り払ったのだ。呪術師は私を指差して、自分の頭の側でゆっくりと手を回転させた。私が思うに、それはゴブリンの意思表現の1つで、格上の知性を認識したことを意味するのだろう。いわゆるこのような原始生物にそんな学識の一面があるとは誰が考えただろうか?

それ以降、敵対行動は一切なく、彼らの女子供とそれなりの距離を保っていれば、ゴブリン達は私の存在を許容してくれたのだ。時折、戦士が吠えてくることはあったが、私はただ自分の頭の横で手を回転させて「知性的存在」の意思表示を行った。すると、戦士は肩をすくめて自分の仕事に戻っていくのだ。

ゴブリンの宗教的な習慣について知られていることはほとんどないため、私は部族の呪術師を詳細に調べることにした。彼の仕事場のシンボルは骨の棒、おそらく大腿骨だが、その先端に小さな頭蓋骨を取り付けた物であった。その頭蓋骨もおそらくは幼児の物であろう。この頭蓋骨は様々な羽、とげ、そして動物の爪で飾られている。中は木の実の外皮のような物で満たされているため、振るとガラガラと大きな音を立てる。呪術師は、聖なる儀式の招集をかける際や女の食事の給仕が遅い際に、この神聖なシンボルを振り鳴らすのだ。

特に重要な儀式では、呪術師はそのシンボルを胸に当て、それから頭に当てた後、それを空に向けて「モロク!」と叫ぶ。最初私はこれに戸惑った。彼らがヅラゾグや子供を折檻する際に使う言葉「モールク」や糞便に対応する言葉「ムロコー」に類似していたからだ。しかし、少しずつその差異を学び、呪術師が叫ぶ「モロク!」にはゴブリンの神を呼び起こす意味があると、ある日私は気付いたのである。

その言葉がとても印象的だ。「モロク」は「モーロッチ」とそれほど違いがない。まさかゴブリンの神とオークの神は同一のものなのか?

このほどの発見ならウェイレストの大学で終身在職権を得られる!そのためにはこの発見を第三者が確認することが必要だ。だがどうやって?

夢から夢へTo Dream Beyond Dreams

百の預言の予兆 著

メネヴィア、緑多き愛しきメネヴィア、そこにある若いブレトンが住んでいた。彼は歴史的遺産を受け継いでおり、身の周りの世話は人を雇っていたため自分は何もする必要がなかった。間仕切り窓のところに座り、ひし形窓の外で田舎の風景が日の光とともに変化する様子をじっと眺めた。その日彼は、辺りが暗くなり就寝の時間になるまでずっとうとうとと過ごしていた。その後床に入った彼は夢を見たのである。

彼はどんな夢を見たのか?それは自身の所有地の夢だった。しかし日中のものよりも色が濃く、実物以上、さらに汚れのない清らかなものであった。夢のメネヴィアは現実のメネヴィアよりも現実味があり、起きている時よりも寝ている時の方が生を実感できたのだ。毎日彼は間仕切りのところで、夢を越える夢を見る方法を模索した。夢見のメネヴィア、レヴァリメネヴィアで永遠に暮らす方法を。

彼は「レヴァリメネヴィア」と言う。それは祈りの言葉であった。「レヴァリメネヴィア、レヴァリメネヴィア」。彼は何千回もこの祈りの言葉を口にした。すると、その言葉はみるみる「ヴァーメネヴィア、ヴァーメネヴィア」に変化していき、さらに回数を重ねて短くなっていった。そして最後には「ヴァルミーナ」となり、彼は何度もそれを繰り返す。「ヴァルミーナ、ヴァルミーナ」

そこで夢の形でヴァルミーナが現れ、彼のことを天上の夢見人、最初のナイトコーラーと呼ぶと、百の預言の予兆と名付けたのである。目覚めた後も、まだ夢の中にいるようで夢うつつで言葉を発し、彼は他の夢見人を彼のもとへ、レヴァリメネヴィアへ呼ぶのであった。

あなたもすぐに彼のようになれる。ナイトコーラーはそれを夢見てきた。ある夜夢を見たら、そこでその名前を言うのだ。そうすれば彼女が現れる。

霊魂の守人の創設Founding of the Spirit Wardens

信者のサークルの第三の番人、ジャニス・ムリック 著

第1章:ドゥラクの若年時代

ドゥラク修道院長は我々の崇高な指導者であるが、彼がその肩書に満足することはない。巨匠ウグバクがかつて言ったように、その理由はオルシニウムの廃墟での彼の幼少時代に関係しているようだ。オークにしては小柄なドゥラクが、オークにとっては馴染みの薄い神秘主義の道へ進んだのは、兄弟のいじめのせいだというのは誰もが考え得ることである。

ウグバクが言うように、ドゥラクの物語はオルシニウムから始まる。そこでの彼の運命は辛く寂しいものであった。ドゥラクの生活が一変したのは、デイドラ公アズラが囁きかけてきた夜からである。アズラは、ドゥラクが偉大な任務を完遂すると語ったのだ。彼はストームヘヴンへ行き、そこで彼女の名のもとに崇拝者の一団を築き上げる。この一団「霊魂の守人」が混沌の時、ストームヘヴンの人々が悪夢の狂気に苦しめられる時に向けて備えるであろうと。

ドゥラクはこの囁きを兄弟に教えるつもりはなかった。魔法の知識と身体能力が乏しいせいで、すでに嘲笑されていたからだ。彼は杖以外何も持たずにオルシニウムの家を出発し、ストームヘヴンへの長い旅を始めたのであった。

ドゥラクはストームヘヴンへ辿り着くが、「霊魂の守人」の一団をどのようにして築いて、どこで暮らせばいいのか見当もつかなかった。途端に彼は絶望した。ある夜、彼が嘆きの巨人の下で宿りをしていると、再び囁きが聞こえてきた。穏やかなアズラの声が語った内容はムーンリット・モーの西にある丘に隠された道についてであった。その行き着く先で、ドゥラクは草に覆われて見捨てられた古代の大修道院を見つけた。ここが霊魂の守人の本拠地なのだと彼は悟ったのだ。そして、そこがアズラへ通ずる我らが聖堂となったのである。

ドゥラクの指導の下、我々はヴァルミーナによる夢の災いに備えている。我々はストームヘヴンを悪夢から守るために築かれた。命尽きるまでそれを遂行しよう。

バンコライの伝承

Bangkorai Lore

グレンモリル・ウィルドThe Glenmoril Wyrd

タネスのレディ・シンナバー 著

タムリエルで、グレンモリル・ウィルドの魔女たちほど誤解されている者はいない。第一に、これまで彼女たちについての文献を執筆してきた学者が皆、男性だったのが原因であると私は思う。これはリルモスのキギョー師と、シャド・アツーラのバースト教授による革新的な著作物を完全に軽視しているわけではなく、単に彼らの客観性がその男性優位の文化的先入観によって影響を受け、次第に損なわれてきたということだ。

誤解のないように言うと、私が感情的にグレンモリル・ウィルドの姉妹を理解するに適しているのは私が女である事実のせいではない。それどころか、従来の性的役割における背景において客観的でいられるという能力は、著名な私の小論文「聖人で奴隷の女王:アレッシアとジェンダーの観点」で証明済みである。ゆえに、私はウィルド姉妹のような一方の性のための社会における問題に取り組む比類なき資質を持ち合わせていることになる。

グレンモリル・ウィルドは、自然と自然界を深く尊敬し、デイドラ崇拝に傾く魔女が集まった統制の緩い団体である。種族的には完全に人間だが、魔術結社によってはハグレイヴンやラミアなどの人間の混血もいて、彼女らは大抵自分たちの魔術結社を牛耳っている。彼女たちにとって野生の中で生きていくことは、大抵の場合、農業や牧畜を営む「文明人」の少数民族集団から遠く離れて位置することを意味する。それが彼女たちの本性が理解されない一因になっている。これが原因で、グレンモリルの魔女の魔術結社は、不気味、世捨て人、危険、有害、悪などの言葉で表されることが常なのだ。

実際に、グレンモリル・ウィルドには、これらすべての表現が当てはまった。ただし反論するが、悪だけは違う。彼女らが文明世界と文明の習わしを強固に拒み続けているのは事実であり、魔術結社に男性が入ることを一切認めないのも確かだ。また、自分たちのことを、「自然の法則」を施行する者と見なしているのも事実であるが、それを認めているのは彼女たちだけである。しかし、だからといって彼女たちが悪なのではなく、我々のものとは異なる道徳規範を厳格に守っているだけだ。

さらに、グレンモリルの魔術結社が男性を受け入れない状態で人口の維持を可能にしているように見える事実もまた、近接して住む人々が不信感を抱く対象となっている。ウィルドの姉妹は近所の農家から女児を盗むことで数を補充しているという古い中傷があるが、そのような慣習が立証されたことはない(ハイヤルマーチの沼地に住む悪名高き魔女については除くが、彼女らが崇拝するのはモラグ・バルで、子供の誘拐は彼女らの不快な習慣の中でも最もましなことだった)。大規模になりつつある私の研究によって、ほとんどの魔術結社に関しては、困窮した両親によって連れてこられた、望まれない女児を新規のメンバーとして獲得しているという結論が導き出された。(北部地域における望まれない男児はどうなるかという質問は、おそらく投げかけずにしておくのが最善だろう)

グレンモリル・ウィルドは数的に少数だが、地理的に最東は中央スカイリムのグリーンスプリング魔術結社から、最西はハイロックのイレッサン・ヒルズ魔術結社まで広範囲にわたる。8ほどある最も有名な魔術結社はハーシーンの信奉者だが、西ファルクリースにあるハグフェザー魔術結社はナミラをあがめ、マルカルスの姉妹(都会に住む唯一の魔術結社)はメエルーンズ・デイゴンを崇拝し、前述したハイヤルマーチの沼地に住む魔女たちは、モラグ・バルの信奉者である。

北部の未開地に住むもう一方の主要なデイドラ崇拝者であるリーチの民との関係は、魔術結社によって、そしてリーチの一族によって異なる。ハグフェザー魔術結社、ライムロック・ウィルド、そしてマルカルスの姉妹は皆リーチの民と友好的な関係を持っているが、イレッサン・ヒルズの西の魔術結社とビリジアン・ウッドは、何千年にも遡ってリーチ族たちと争っている歴史がある。これは、イレッサンとビリジアン・ウィルドが、ハーシーンのあまり野蛮でない側面を崇め、ライカンスロープを治癒することで知られている一方、リーチの民がハーシーンのより残忍な側面を好み、ライカンスロープを呪いよりもむしろ贈り物として称賛しているという事実によって説明されるかもしれない。

ということで、これこそが、広範囲に生息するが捕えどころのないグレンモリル・ウィルドの姉妹について分かっていることである。確かに、多くの疑問は未解決のままであるし、なされるべきさらなる研究も残っている。これらの問題に適切に取り組むには、タネスを出て北部の未開地へと個人的な探検に乗り出す必要さえあるかもしれない。ただし、このような価値ある学究的活動への資金援助を申し出る、気前のいい後援者がいればの話だが。

ハーシーンの姿Aspects of Lord Hircine

リーチの民の言い伝え、その5

コロール大学、ジュノ・プロシラス 著

以下は、自らを魔法使いウラキャナックと呼ぶ、ドルアダッチの呪術師による話を書き留めたものである。

「手の指のように、ハグレイヴンの爪のように、熊を殺す矢のように、ハーシーン王の姿は5つある。5つのどれにも出会う可能性はある。どれも真の姿であり、森の中の死である。どれも敬意を払うに値するものである」

「アルラベグと呼ばれる「狩人」に出会うかも知れない。彼は悲痛な慈愛の槍を身に付けている。ハンティング・グラウンドから、新しい獲物を狩るためにここへやって来るか、もともとハンティング・グラウンドにいるユニコーンなどの獲物を、新しい森で狩るために連れてくる。獲物を連れてきてない時に彼と出くわせば、ただでは済まない。野兎役に指名されてしまう可能性がある。そうなったら力の限り逃げるしかないが、逃げ切れはしない」

「ストリーベグと呼ばれる「獣男」に出会うかも知れない。狼の頭蓋骨のトーテムを身に付け、そのうなり声はまるでカース渓谷の地滑りのようだ。子供達のスキンシフターと一緒に狩りのためにやって来るか、新しく子供を養子にして生皮を剥ぐために来る。彼の遠吠えは、星霜の月の真夜中に池が凍るのと同じように体内を凍らせる。死が近づいてくるのが分かるが、逃げることはできない」

「ウリカンベグと呼ばれる「大雄鹿」に出会うかも知れない。そのひづめの音はブラッド・サモンズに鳴り響く。雌鹿と交尾をするためにやって来て、その目的のために魅力的な女性を変身させてしまうこともあれば、群れの中で弱った者を殺すこともある。彼のひづめの音が聞こえたら、群れと走る運命にあり、彼の後についてハンティング・グラウンドに行き、追い回された末に滅ぼされることになるだろう」

「グリベグと呼ばれる「素早い狐」に出会うかも知れない。彼は骨の杖を巧みに操る。定命の狩人達を当惑させるためにやって来て、円を描くように走らせた末で、極端に途方に暮れた状態にして、彼について崖や道のない泥沼を渡らせる。体を激情で満たし、彼を追い求めることしかできなくされてしまうか、彼に利口だと認められて技を教えてもらえるかも知れない」

「フロッキベグと呼ばれる「強大な熊」に出会うかも知れない。爪と牙のトーテムの化身であり、孤独、労働を離れた平穏、そして内なる燃える霊魂の更新を求めてやって来る。彼を刺激して平穏を乱すようなことをすれば、粉々にされてしまうので注意しなくてはいけない。しかし敬意を払って近づき、甘いハチミツ酒を捧げれば、次の戦闘時に熊の心臓の力を授けてくれるかも知れない」

「これらが5つの姿だ。これ以上はなく、あると言う者は無知で愚かな者だ。ウラキャナックがそう言うのだ。これまで私が間違っていたことがあるか?そう言ってるのだから、そうなのだ。ジュニパーの水薬をよこしてくれ」

バンコライ、ハイロックの盾Bangkorai, Shield of High Rock

(イーモンド王による兵士達に向けた最後の演説)

「聖ペリンの騎士、エバーモア衛兵、モウルノスとエフェサスの自由民による市民軍、バンコライの兵士達よ!我々は以前にも、東からの侵略者に対するブレトン王国の防衛の最前線である、ハイロックの盾となったことがあった。これまで幾度も、エバーモアとその周辺地域のブレトンは武器を手に取り、バンコライ峠に軍を配置し、我らが母国を略奪し荒らそうとした者達を追い返した。第一紀の874年、スルジュ戦士長のオークとゴブリンの軍が、レッドガードによってハンマーフェルから送り込まれた際には、通過を阻止して北東への撤退を余儀なくさせ、オルシニウムへたどり着くまで、重い足取りでドラゴンテール山地を通らせた。前哨戦を抜けて我らが母国に入れたゴブリンなど、一体もいなかった」

「そして1029年、女帝ヘストラの帝国軍が、ヴァーカースの吸血鬼であるストリキ王を退位させた際、王は恐ろしいグレイホストを率いて、周囲を火の海にして惨殺を繰り返しながら西へ撤退した。しかしそのコウモリ人間と狼の軍がバンコライ駐屯地に到着した時には、岩に砕け散る波のように倒れた。生存者はヘストラの帝国軍が捕獲して殺した。女帝は大いに感心したため、ハイロックに最初の帝国への加盟の名誉を与えた」

「ルビーの玉座の下でおよそ千年近くが経過した後、アレッシア教団の逸脱行為によって、ハイロックは最初の帝国からの脱退を余儀なくされたが、シロディールの僧兵はおとなしく手を引こうとはしなかった。2305年、修道院将軍プリスクス・マクテータの指揮の下、ブレトンを傘下に戻すべく慈悲と恩寵の帝国軍が送り込まれた。マクテータの狂信者達がフォールンウェイストを端から端まで埋め尽くしたが、バンコライ駐屯地を通ることはできず、信心深い者が気高い者と戦う5ヶ月間の包囲の末、修道院将軍は敗北を認め、面目を失ってシロディールに戻る他はなかった」

「駐屯地がハイロックを防御できなかったことは1度しかない。ダーコラクのリーチの民の大群が、ビョルサエの南岸になだれ込み、それまでいつも我々を守ってくれた北東の尖塔から流れ入った。そしてエバーモアが略奪され、要塞は裏側から襲われた。それでもなお、我々はハイロックのために十分な時間を稼ぎ、ブレトン王国は兵を集めることができ、結果的にはダガーフォールでダーコラクを撃退した」

「今日、東からの侵略者が、シロディールからの帝国軍という形で再び我々を脅かしている。しかし連中は女帝ヘストラの伝説に名高い帝国軍でもなければ、皇帝レマンのよく訓練された兵士達でもない。サルンの強奪者の、堕落した傭兵達だ。おまけにこの帝国軍は、まさしくあの堕落して信念を失った家族の親族が率いている!」

「魔導将軍セプティマ・サルンとは何者だ?追徴課税で自由民を苦しめる以外に、これまでに戦に勝利したことはあるのか?ただの寄せ集めで名前だけの「帝国軍」を、デイドラを崇拝する異端の方法で我々の母国に連れてくるとは、何のつもりなのだ?」

「私は連中をクズと呼ぶ。かつて高貴だった「帝国軍」という名前を汚す行為である。私は連中を暴徒と呼ぶ。そして、我々が壁を守っている限り、バンコライ駐屯地を通させはしないと確信している!」

「どうだろう、聖ペリンの騎士、エバーモア衛兵、モウルノスとエフェサスの自由民による市民軍、バンコライの兵士達よ!先祖の血を裏切って、敵を通してやるのか?あり得ない!今日も、明日も、この先も決してそんなことをさせてなるものか!」

ビリジアンのセンチネルThe Viridian Sentinel

しーっ。もう少し寝なさい。ビリジアンのセンチネルがいるかぎり、ここにはトロールは来ないから。

何だって?ビリジアンのセンチネルの話をまた聞きたいって?もちろんいいよ。さあ、枕に頭を休めてお聞き。

バンコライ北部の者なら、誰もがビリジアンのセンチネルについて知っている。センチネルは、野生のものすべてを森にとどめておくガーディアンだ。センチネルが監視をしている限り、トロール、熊、魔女と仲間の狼。どれも征服された土地には入らせない。そしてセンチネルはいつも監視を続けてくれる。

そんなビリジアンのセンチネルがいなかった時代があると知っていた?ずっとずっと遠い昔のこと。私達ブレトンはディレニのエルフから自由を勝ち取ったばかりで、エルフはまだ苦々しく思っていた。「さあ、お前達がハイロックと呼ぶこの地を所有するがいい」と彼らは言った。「すぐに手放すことになる。私達は塔のある島へ撤退する。アース・ボーンズとの協定を断ち、これらの土地は荒野に返すことになる」

エルフの話し方についていつもそうであるように、私達は彼らの意味したことを理解しておらず、ただ肩をすくませて、この土地を自分達のものにすべく働き始めた。畑を耕し、作物の種をまいた。草原には柵を立て、家畜用に牧草地を作った。道を作り、市場街を建設し、人々が互いに生産物や商品を売れるようにした。何事もうまくいっているように見えた。

しかし、森に最も近い農家で悪いことが起き始めた。軒の下に魔女達が潜み、森に近寄りすぎたブレトン達が森の影の中に消え去ったまま戻ってこないようになった。次第に農民達は森に近い畑を放置せざるをえなくなった。

事態はさらに悪化した。森の中から、恐ろしい生物や獣といった様々なものが、主に夜間だが時には昼間にも現れ始めた。それらの生物は農場をうろつき、農家の家族を脅かし、可能ならば殺しさえした。農民の多くは「荒野から来たあんな生物には太刀打ちできない。さあ、農場を去って街に行こう」と言った。

しかし彼らが街に到着すると、農民にできる仕事は見つからなかった。さらに悪いことに、農民達が街に食料を送り出さなくなったので、食べるものはほとんどないに等しかった。街の住民達は農場を放棄した農民達を責め、農民達は武装した番人を送ってくれなかった街の住民達を責めた。どうすればいいのか、意見をまとめられる者はいなかった。

農家の子供でグリーンワードという名の青年は、とても心配していた。礼拝堂に行って真剣にステンダールに祈りを捧げた。「慈悲と保護の力を持つ高潔な神よ、私達はひどい窮地に立たされており、あなたの助けを必要としています。荒野の獣たちが解き放たれ、私達の土地は荒れた地に戻りかけています。じきに、規律と調和を重んじる定命の者が住める場所はなくなってしまいます。私達自身も獣になってしまい、名前を忘れ、神々に背を向けることになってしまわないかと心配なのです。神よ、どうしたらいいか、どうぞ助言をお与えください」

するとカワセミが礼拝堂に飛び込み、グリーンワードの前にある祭壇に止まった。とても大きなカワセミで、青年がそれまで見たことがないほどだった。カワセミは頭を上に向けると、口笛を吹くようにさえずって、くちばしを鳴らした。グリーンワードには、そのさえずりとくちばしの音に混ざって、話し声が聞こえるようだった。「獣が荒野から出てきたのは、あなた達の名前を忘れ、殺すことが認められている同じ獣だと思い込んでいるからだ。誰かが荒野に入り、獣達に対して、自分には名前があり、征服された土地は没収されたのだと伝えなくてはならない」。その後カワセミは鳥らしくそこを汚してから飛び去った。

青年はお辞儀をして言った。「家族と、征服された土地にいる他の家族のために、私がやります」。彼は父を抱きしめ、母にキスをすると、街を出て荒野の端へ戻った。そこで凶暴な虎と出くわし、虎は彼に襲いかかりそうになったが、青年はこう言った。「名前があって獣ではない自分を襲うことは認められていない。名前はグリーンワード。この土地は征服された土地であると宣言する。荒野に戻って二度とここへは来るな」

するとどうなったと思う?凶暴な虎は言われたとおりにした。植えた狼も、よろよろ歩く熊も、恐ろしいトロールも、危険なスプリガンも、すべて荒野に戻り、それ以上征服された土地には来なくなった。

これをやり終えた時、青年は務めを果たし、家族の元に戻れると思ったが、そうではなかった。荒野から新しい獣が現れる度に、境界線で教えてやらなければいけなかったのだ。そのため、それから青年は森の近くに住み、荒野の端へ歩いて行って、獣に名前を伝えて送り返すようになった。そして人々は彼をビリジアンのセンチネルと呼んだ。

時は流れ、そのうちビリジアンのセンチネルはかなりの高齢になり、やがて境界線へ歩いて行けなくなるかも知れないと思い始めた。彼は心配になった。しかし、鳥から話を聞いたという1人の少女が現れ、それからは2人で一緒に境界線へ行くようになった。そしてついにセンチネルが亡くなり、彼の名前が魂と共にエセリウスへ行くと、少女が新しいビリジアンのセンチネルになり、征服された土地の安全は保たれた。

それ以来これはずっと続いている。この先も続くはずだ。

フォールン・グロットの伝説The Legend of Fallen Grotto

遠い昔、7人の息子と7人の娘を持つ男がバンコライに住んでいた。家族の住まいは、森の外れにある、奥深くまで続く曲がりくねった洞窟の中にあった。

周囲を取り囲む森は、熊、狼、アナグマ、鹿など、ありとあらゆる種類の生物であふれていた。大家族ではあったが、獲物は豊富にいて狩りも楽だったため、空腹とは無縁だった。

「ハーシーンの祝福に感謝しなくては」と男は言った。

そして狩りの神を祭った祠を家の中に建て、ハーシーンに祈りを捧げることにした。洞窟の壁には動物の脂肪と土を混ぜたものを塗った。子供達が狩った鹿から枝角を取って祭壇を作り、妻は皮を編んで敷物を作り、土の地面を覆った。

祠が完成すると、男のその家族は獣脂のキャンドルを灯し、雄牛をあぶり焼きにし、祈りの言葉を唱えながら雄牛の血を祭壇に注いだ。

すると突然、笑い声が聞こえ、雄牛の死に際の鳴き声とその焼かれた肉の匂いに誘われたハーシーンが、彼らの目の前に現れたのだった。

「上出来だ!」とハーシーンは大股で歩み寄りながら大声を上げた。何重もの動物の革に身を包んでいたが、足元は裸足だった。

「私はあなたの忠実なるしもべです」と男は神の前にひれ伏しながら言った。

「信仰心の証明として」ハーシーンは言った。「7人の息子と7人の娘を送り出すがいい。夜明けから夕暮れ、そして夜明けまで、私が満足するまで狩りの獲物にしよう」

男は恐怖で後ずさりした。「そんなことできません!」男は言った。「他のものなら構いませんが、子供達だけはご勘弁を!」

ハーシーンは目をしかめ、洞窟の天井に向けて片手を上げた。そしてもう一方の手で地面を指した。ハーシーンが叫び声を上げると、壁が内側へ崩れ、祠と男の家は破壊された。

捧げ物から上がる煙のように塵が舞い上がり、がれきの中から16体の森のトロールがドシンドシンと頼りなさげに現れ、よろめきながら洞穴から森の中へと入っていった。

ハーシーンが冷たく言った。「獣にするにも値しなかったが、どうせだから狩りをするとしよう」

ライカンスロープ症と生きるLiving with Lycanthropy

時代を超えて、「ウェアウルフ」という言葉を聞く時、それは恐怖と嫌悪からくる叫びだった。しかしこれからは、必ずしもそうではない。セイニーズ・ルピナスに苦しんでいても、生産性のある平穏な暮らしを送ることは可能だとタムリエルに証明するのだ。

掟:暴力的な行動をしたくなる衝動を抑える

社会から遠ざかることで、このシンプルな掟を毎日の生活に適用する方法を学べる。私達の苦境を理解できない者に対して報復するという、野生の願望に負けてはいけない。他者を単なる娯楽目的で殺すべきではない。ハーシーンは私達に、優れた戦闘能力と、普通の人間を超える強さを与えて下さった。この祝福を、他者を傷つけるために利用してはならない。代わりに、他者にも恩恵があるように使わなくてはならない。狩りはやりがいのある趣味にもなり、恩人に感謝する方法にもなる。しかし人間であれ獣であれ、他者を苦しめる方法であってはいけない。

この祝福は、祝福であって呪いではない。おかげで重い荷物を運ぶことができ、疲労することなく長距離を移動できる。このため、旅の商人に向いており、あらゆる種類の肉体労働にも向いている。継続して自制を見せ、他者に暴力を振るわず、空腹感によって殺す衝動に駆られないと証明することで、自分達と家族に敬意を払うことができる。

ハーシーンの祝福に忠実であり続け、ウェアウルフも穏やかでいられると示すことは、私達の務めである。

狩りへの出立The Posting of the Hunt

いかなる者にも人前で言わせてはならない。狩りが中止されてないことも、儀式の宣言がされたことも、古代の務めの存在についても。

純潔な獲物の儀式は、グレートハントとも呼ばれる。この世界を包み込む強力なマジカの流れから魔法のエネルギーを引き込む、古代の儀式である。儀式の作成者と時期については遠い昔に忘れ去られた。しかし正しく行えば、儀式はハンツマンに強大な力と威厳をもたらす。

儀式では、上級犬と下級犬を連れた全能のハンツマンを、定命の生物である人類の狩りにちなんで伝統的に「野兎」と呼ばれる、哀れで不幸な純潔の獲物と戦わせる。ハンツマンは即座にその能力がもたらす強烈なスリルと栄光、そして無力な獲物に対する支配力で満たされ、それと同時に、純潔な獲物の悲劇的で崇高な、究極的に無益な苦境に心を動かされる。儀式のこれ以上になく美的な実現の中で、殺しによって我を忘れる歓喜は、純潔な獲物が抱く悲しみと絶望をハンツマンが認識することによって釣り合いが保たれる。純潔な「野兎」の死体が小さく切り裂かれる中で、ハンツマンは力の悲劇的な不均衡について、そして世界における残酷な不公平について思いを巡らせる。

狩りが始まると、下級犬は緑のクリスタルが映し出す純潔な獲物の礼拝堂の前に集合する。礼拝堂の中では、ハンツマン、上級犬、そして狩りの王が儀式を執り行い、ハンツマン、ハント、そして純潔な獲物を参加者として清める。次に、ハンツマンは礼拝堂から出て、悲痛な慈愛の槍を掲げ、「狩りの務め」を読み上げる。そこには狩りの4段階、すなわち、さらい、追跡、合図、検分における掟と条件が説明されている。

第1段階:さらい。下級犬が地面をさらい、隠れている「野兎」を外に出す。

第2段階:追跡。上級犬が「野兎」を見える所へ狩り出す。

第3段階:合図。上級犬が「野兎」を罠にかけ、仕留めるために漁師を呼ぶ。

第4段階:検分。ハンツマンは儀式で使う悲痛な慈愛の槍を使って仕留め、街の鐘を鳴らして狩りの王を呼び、見てもらう。次に狩りの王は、狩りで悲痛な慈愛の槍を巧みに使った、勇敢なる猟師に報酬を授ける。狩りの王はさらに勇敢なるハンツマンに、次の狩りにおける「野兎」を指名するように要求する(勇敢なるハンツマン自身は次の狩りに参加するとは限らない)。

勇敢なるハンツマン、狩りの王、猟犬が厳粛に守らなくてはいけない「狩りの務め」には、狩りの手法と条件が詳細に記述されている。これらの手法と条件は掟とも呼ばれ、狩りにまつわる詳細がすべて具体的に定められている。例えば、参加できる各種猟犬の数、悲痛な慈愛の槍を使う際の方法などである。さらに掟では、たとえわずかであれ、「野兎」には現実的に狩りから逃げられるチャンスがなくてはならないと定めている。実際には、デイドラの儀式の聖堂に集めると、野兎が狩りから離れた場所へ転移できる、すなわち猟師と槍から逃れられる鍵が6つ用意されているという条件で満たされる。当然ながら、「野兎」が実際に鍵を発見して逃避することは起こりえないが、その形式は守られなくてはならず、鍵に細工をしたり、「野兎」が鍵を発見または使用できる本来のチャンスを削いだりする行為は、恥ずべきものであり、狩りの掟に対する許されざる裏切り行為である。

真のホーリン伝説 パート1The True-Told Tale of Hallin, Pt. 1

「若きファハラジャード王子へ伝えられた物語の歴史」より

おお王子よ、ではお話しよう。ラ・ガーダがたちまちハンマーフェル中に広がって牙の民を追いやり、かつてヨクダ人であった人々が剣を捨て、代わりにシャベルとこてを拾い上げるやいなや平和が生まれた。三世代の間レッドガードは地を掘り、偉大な建造物を数多く砂漠の上に建立した。また、我らが民は皆、その偉大さを称える記念碑を建設していたために、剣の道の研究を行う者はほとんどいなかった。

今のアリクル東部、そしてバンコライの峠の南部に、立派であり続けるオジュワ女王によって見事な街が建設され、すべて白い石と縦溝掘りの柱に彩られたその街の名は、非常に高名な女王のその名にちなんで、オジュワンブと名付けられた。その道々と広大な大通りには、商業的かつ創造的なすべての芸術を扱った家や集会所がたくさん見られた。人々は洗練された服に身を包み、輝く宝石で自らを飾り立てて通りをうろつき、美味しいものを食べ、活気ある曲や心静まる曲を聴いた。そして、それについてはすべて、心地よいものであった。

壁によって光が遮られた、取るに足らない街角に立つ「戦いの美徳の間」では、アンセイ最後の戦士、ホーリン師が、剣の道に関心を持ったオジュワンブの若者たちにそれを教えていた。そんな若者は少ししかいなく、同輩から冷やかしや冷酷なからかいを受けたりしたが、それでも彼らは年老いたホーリンから刺激を受け、レッドガードの真の戦士となるまで剣の道を学んだ。後にお分かりいただくように、申し分のない戦士になった。

「竜の尾」という山岳地帯にて未だ潜伏する牙の民が、レッドガードに対する怒りの不満を大げさに示すがごとく、そのぼろぼろになった衣服を引き裂いていた。その中に、謀略によってディヴァドの呪いを逃れたために減退していなかった、ゴブリンの偉大なる領主がいた。悪賢さと活力の両方を備えていたこの巨大なゴブリンは、部族の中で長い間働き、ある日竜の尾にいるすべての牙の民の領主となっていることに気がついた。彼の名は石拳のマーグズールといった。そういうわけでマーグズールは、偉大な剣「骨切り」を掲げて地震のような力強い声で吠え、復讐の日はついにそこまで来ていると宣言した。

それからマーグズールは、竜の尾から「直立軍」を率いて大きな砂嵐のようにハンマーフェルへと殺到したが、その前に立ちはだかる者は誰もいなかった。フォールン・ウェイストの人々は、牙の民の怒りを前に逃げまどい、街が溢れ返るまで、実に多くの者がオジュワンブの壁の向こうに避難した。苦悩と不安の中、市民は泣き叫び、「ああ、オジュワ女王よ。我々のために一体誰が戦うのか?我々は皆、職人に、そして喜びを作る者になってしまった。今や剣の道を忘れてしまったのだ」と嘆いた。

すると、オジュワ女王は民に話しかけ、「剣の道を覚えている者は誰もいないのか?」と言った。そこで、ホーリン師が名乗り出て、女王の前でお辞儀をするとこう言った。「女王様、私はアンセイ最後の戦士です。少なくとも自分が心得ているだけの剣の道を覚えております。できる限りのことをいたしましょう」

それから、ホーリンの弟子たちも前に進み、女王の足元に剣を置いた。しかし、非常に高名なオジュワは、剣の数があまりに少ないことに失望し、取り乱してこう言った。「そのように少ない剣でどうやって直立軍を撃退することができるのか?牙の民は砂漠の砂のように無数にいるのだぞ」

ホーリンはそれでも決して思いとどまることなく、大胆に、「偉大なる陛下よ、ご安心ください。あなたの民はレッドガードです。剣の道を容易に思い出すでしょう。剣の柄をいま一度手に取れば、円環の書からもう一度格言を学び、敵が無数であろうと、全世界のどの民にも匹敵するでしょう」と言った。

「アンセイの師よ、そのようになさい」と、オジュワ女王は答えた。「しかし、レッドガードといえども、剣の道を習得するには時間を要する。しかし我々には時間がない」

「それなら、もっと時間を作りましょう。十分な時間を与えるのが我が任務です。それは我が人生において、最高の仕事となりましょう。オンシのまばゆい刀剣にかけて、与えることを誓います」そして、彼は女王の目の前で剣を引き抜き、剣の仲間への誓いをかけた。驚くべきことに、ホーリンの背丈は巨人の背丈になった。剣の鋭い刃は輝く光になり、皆は注視できなかった。

そのうちに視力が戻った彼らが目にしたのは、いつものホーリン師が、微笑みながら剣を鞘に収める姿であった。すると、アンセイ最後の戦士は、まるでオジュワンブの全市民を抱擁するかのように両手を掲げて言った。「レッドガードの仲間たちよ。私は君たちに、長きに渡って守ってきた円環の書の知識を伝授しよう。どんな脅威であれ対処できるであろう。我が弟子たちが君たちに知識を教えれば、皆が剣の道をもう一度理解するだろう」

それから彼はオジュワ女王に振り向いて言った。「さあ、民を導いてください。偉大なる女王よ。それはあなたにしかできない仕事です。彼らを西へ連れて行き、ハンマーフェルは自ら直立軍との戦いの準備を整えられると、剣の道の評判を広めるのです。私はこの街にとどまり、人々が自らのために戦う準備が整うまで、他のアンセイと共にできるかぎり防衛しましょう」

真のホーリン伝説 パート2The True-Told Tale of Hallin, Pt 2

ホーリン師の言葉をそのまま信じたオジュワ女王は、直ちに兵士に命令し、円環の書からの教練を毎日行わせながらも、アリクルへと向けて西へと進軍させた。ただし、オジュワ女王が行ったのはこれだけではなかった。フクロウの仲間である賢明な女王は、すべてのフクロウに敬意を払い、殺してはいけないと法令で定めていた。そのお返しに、フクロウも女王の願いを叶えていた。だから女王はフクロウの父を呼び出し、オジュワンブで待機してホーリンの防御を見守るように頼んだ。女王は、「街全体を1人の男がどうやって守るのかを知りたい」と言った。

アリクルへ続く秘密の道を進むため、最後尾にいたオジュワンブの人々が門から出たと同時に、東に牙の民の斥候が現れたが、ホーリンはそれに気がついた。なぜなら、彼は年老いてはいたが、その目は鋭かったのだ。

聞いていたのはフクロウの父以外にはいなかったが、ホーリンは言った。「蛇が脱皮をするように、アンセイは過去の殻から新たに現れよう」彼は剣を掲げ、「同胞よ!人々の救援を求める。時が終わるとしたら、その時は今なのだ」と叫んだ。

彼が剣を左に指し示すと、胸壁に沿って北のほうで、蛇皮のようなカサカサという音がした。すると驚いたことに、胸壁沿いに兵士の集団の影ができた。そこには、かつては皆アンセイの女であったらしき者たちが立っていて、ホーリンの方を向いて敬礼をした。ホーリンが右に同じような身振りをすると、胸壁に沿って南のほうで、カサカサという音がした。すると驚いたことに、かつては皆アンセイの男であったらしき者たちがそこに現れ、同様にホーリンに向かって敬礼をした。それから、北と南のすべての者は、輝く剣を抜き、胸壁の上で立って待ち構えた。

牙の民の斥候は、オジュワンブの防衛を観察しようと、直ちに立ち止まった。街の人々が剣の道を忘れてしまったと聞いていた彼らは、胸壁に相当な数の戦士がずらりと並んでいるのを見て驚いた。そして、誰がマーグズール戦士長へこの知らせを届けるかについての相談がなされたが、そのような知らせを伝える者は首を切り落とされるだろうと恐れたために、彼らは口論になり、言い逃れをすることとなった。しかし、最終的には一番小さな者が、心の打撃を受けながらも戦士長への報告を持ち帰った。

そのようにして斥候は、マーグズールに、オジュワンブの壁には奇妙なことに、相当数の防衛にあたる戦士がいると報告した。石拳は瞬く間に斥候の首を打ち落としたが、悪質さも活力も備わっている彼は、よく考えた。そして彼は、「だからどうだというのだ?我々は砂漠の砂ほど無数にいる。このオジュワンブを取り囲んで、入口も出口も離れない。彼らの畑を荒らし、物資の流れを止めて、誰も飲まず食わずにさせるのだ。さすれば、街は陥落しよう」と考えた。

そしてマーグズールは命令を下し、それは実行された。牙の民は外塁の戦利品で暇をつぶし、壁を防衛する戦士たちに罵声を浴びせ、彼らを愚弄した。しかし、戦士たちは何も応じなかった。捕虜を虐待して最低な楽しみ方で時間を過ごしていたマーグズールとその部隊は、オジュワンブの防衛者たちが衰弱し、その数が減少するのも時間の問題であると確信していた。

だが、そうではなかった。戦士長の骨計数機による計算が、市内の食料や飲料の底がついたと示しても、戦士たちはじっと立ち、屈強な様子で、黙っていた。そこでマーグズールは呪術師を招集し、「呪術師よ!我々はレッドガードにばかにされているのか?我々が見ている戦士は、実際に胸壁に並んでいるのか?それとも、ただの影なのか?」と言った。

それで、呪術師たちは前兆を占い、双子の乳児をいけにえに捧げ、東門へ偵察を送ったが、ホーリンはそれを上から槍で突いた。彼らは戻り、こう言った。「いいえ、偉大なるマーグズール様。我々はばかにされてなどおりません。我々が目にしているのは、確かに胸壁に並んだ相当数の戦士です。しかし、いかにして飲まず食わずで立っていられるのかは、私どもにはわかりません」

マーグズールはほんの一瞬で呪術師たちの首を打ち落とし、それから血まみれの「骨切り」を掲げて叫んだ。「戦闘準備だ!隊列を作れ!今夜我らはオジュワンブの血を飲むのだ!」

その戦いを生き延び、話を語るレッドガードは誰もいなかった。しかしそれでも、フクロウの父によって伝えられたために、賢明なオジュワ女王はその事実をすべて知ることとなった。まさに17日もの間、ホーリンとそのアンセイの戦士たちがいかにして攻撃に耐えたかが伝えられた。戦士の数はかなり多かったが、それでも時間と共にアンセイの戦士は減少した。ただし、彼らは蛇皮へと変わるように、殻のみを残して逝った。最後には、東門に立つ者はホーリンだけとなり、「骨切り」を振り上げたマーグズール戦士長が門を押し開けた。すると、ホーリンの体は戦士長に匹敵するほど拡大したように見え、どちらも剣の戦いへと突入した。

長きにわたって剣はぶつかり合ったが、月が昇ると石拳はついに、ホーリンを地面に叩きつける強打を放った。しかし、ホーリンを倒したと同時に、円環の書のありとあらゆる切り込みと突きを心得たホーリンは、剣を振ってマーグズール武将の首を切り落とした。それから両者とも死に果てたが、その死に顔に微笑みと平穏な表情を浮かべていたのは、1人であった。

オジュワ女王はこの知らせを聞きながらうなずき、「それはよろしい」と言った。そして、円環の書のありとあらゆる切り込みと突きを心得たレッドガードの戦士による大軍隊の方を向き、言った。「レッドガードよ!今こそ牙の民から我らの地を取り戻すため、進撃するのだ。もう一度我らの壮麗な街を取り戻したら、それをホーリンズ・スタンドと新しく名付けよう。その日はきっと訪れるであろう」

そのようにして、街の名は、その後ずっとホーリンズ・スタンドと呼ばれている。

野蛮人と獣の生活A Life Barbaric and Brutal

アーセナイス・ベロック 著

第一章:リーチの民による拉致

私は、エバーモアからビョルサエを北へ行った、マルシエン村で生まれた。母は織工で、父は、川貿易用の小さな漁船やコラクル舟を作る船大工だった。少年時代は、父が働く港で遊んだり、森の近くでイッポンシメジのかさやクルミを隅々まで探したりと、幸せだったことを覚えている。

それはある日、後者の遊びをしていた時だったが、私はいつもより村から少し離れて道に迷い、ブライアの茂みに入り込んでしまった。すると突然、いつの間にか気がつくと、1対の人間の頭蓋骨をじっと見つめていた。自分が見ていたものが、杖に乗った頭蓋骨と、その隣にあった頭蓋骨のような模様を描いた女の顔だということに気がついた時には、打ちのめされて縛られ、女の肩に担がれていた。

家から離れ、北へと連れていかれた先は山の中だった。蹴ったり叫んだりし始めると女は私を投げおろし、さらにきつく縛って、おまけに猿ぐつわをかませた。それから女はまた、辺境へと私を運んでいった。結局私は、極度の疲労で気絶した。

目が覚めると辺りは暗かったが、火明かりのゆらめきのおかげで、ぼんやりと物影を見ることはできた。それは、角や骨、そしてくぎや羽毛を身につけた人影だった。リーチの民だ。私は目を閉じて、目覚めようとしたが、それは悪夢ではなかったのだ。目を開けると、彼らはまだそこにいた。

猿ぐつわは外されていたので、水が欲しいと叫ぶと、頭蓋骨顔の女(後にヴォアンシェという名だと知る)が、コップに入れた水を持ってきてくれた。女は縄を確認したが、私が痛みにたじろいだ部分を、実際に少し緩めてくれたのだ。これに私は驚いた。リーチ族は未開人で、残虐行為にふける意地悪なデイドラ崇拝者であるといつも聞かされていたからだ。もしかすると、私がどれほど苦しんでいたかを知れば、解放され家に帰されていたかもしれない。

だがそれは、空頼みだった。私はそのまま、8年間もクロウワイフ・クランの捕虜にされたのだ。リーチの民は、故郷のブレトンで信じ込まされたよりもはるかに複雑で、理解し難かったが、1つだけ間違っていないことがあった。それは、リーチにおいて野蛮な行為と残酷さは、ごく当たり前の日常だったことだ。ヴォアンシェは馬飼いで、前の奴隷が頭を蹴られて死んで以来、馬の世話をする奴隷が必要だったため、私を拉致したのだった。彼女が私に水を与え、縄を緩めたのは、新しい所有物の状態を心配しただけに過ぎなかった。

ヴォアンシェのクランは、クロアブドラというハグレイヴンが牛耳っていたが、かぎつめのような爪をしたこのしなびた婆は、かなりの権力を持った女呪術師だった。彼女は、デイドラの霊魂ナミラという、クモや虫、ナメクジや大蛇といった不快な害獣を制する古代の闇の淑女に仕える女司祭だった。ナミラは有害な小動物の支配者だったので、リーチの民は彼女を「子供の神」と呼んだ(ユーモアがないわけではなかったが、彼らの冗談はいつでも悪意あるものであった)。双子月の闇の度に、クロアブドラはリーチも奴隷も含む一族の子供を抽選で無作為に選び、闇の女神へのいけにえにした。選ばれた子供は、「いつもにじみ出る祭壇」に連れて行かれ、ナミラへの供物としてその心臓を切り離された。いつも自分が選ばれると思っていたが、羽が引かれると、そこに書かれた名前は、いつでも他の子供の名前だった。

クロアブドラの醜い夫は、コインスサックという無作法で暴力的な男だった。彼は墓の歌い手で、死体を意のままにする呪術師だったが、それを私の国では死霊術師と呼んだ。彼はいつも、焼いた鳥肉を見るかのようにヴォアンシェを横目で見ながら唇をなめていた。彼は一族で権力があったし皆に恐れられていたが、ヴォアンシェは高慢な態度で接したため、それは時にコインスサックを怒らせることとなり、夜にテントへ嘲笑する幽霊を送り込まれたり、馬の肥料にライスワームで呪いをかけられたりした。ヴォアンシェはまったく動じず、彼の醜い妻クロアブドラに苦情を出すぞとコインスサックを脅して、いつでも追い払っていた。

リーチでの生活は大変だった。クロウワイフは狩猟クランだったため、荒野の至る所で群れを追いまわすのが私たちの生活だった。それは厳しく危険な暮らしで、大牡鹿の枝角や、サーベルキャットの牙で一瞬にして生命が奪われてもおかしくないような日々だった。しかし、私が最も恐れていたのは、半年ごとにある、ツンドラの群れの後を追ってカース川を横断することだった。私の仕事は、ヴォアンシェとその役立たずの娘が、氷のように冷たい過流を馬に泳いで渡らせるのを手伝うことだったが、毎回これが最後だと、そう思っていた。カース川に捕らえられる度に、2人の兄弟たちのようにビョルサエで水泳を習っていたらと、どれほど願ったことだろうか。

時折、横断の途中で馬がパニックに陥り私たちの手を離れたが、それは大抵、溺れて死ぬことを意味していた。ヴォアンシェと私は馬の死体が打ち上げられている場所が見つかるまで、はるか下流を捜索した。それは馬の皮をはいで、貴重な脂肪や肉、そして骨を手に入れるために死体を解体するためだった。リーチの民の間で、無駄になるものは何もなかったのだ。

カラス妻の奴隷になって6回目の夏(なんと、大嫌いなカースを11回も渡っていた!)、クロアブドラとコインスサックの無礼な息子、アイオックノールに注目され始め、私は迷惑していた。彼はその注目を、私を泥の水たまりに落としたり、シチューにネズミを入れるという形で表現した。アイオックノールは私よりも1歳年下だったが、彼が私を悪ふざけの対象以上の存在にしたがっていることはすぐにわかった。彼はハグレイヴンの息子として、罰を受けることなくやりたいことは大体何でもできたし、ヴォアンシェはクロアブドラに苦情を言って私を守ることはできなかった。横暴な老女はゲラゲラ笑い、手を振って追い払うだけだった。

だから、毛皮の山で寝ているべきはずの夜、私は槍を作り始めた。

リベンスパイアーの伝承

Rivenspire Lore

ウェストマーク・ムーアの墓苑The Barrows of Westmark Moor

長老サシル・ロングリート 著

一般に「サングイン墓地」と呼ばれるウェストマーク・ムーアの墓苑は、その歴史を通じて、地元の人々のあいだに芳しからぬ評判を醸成してきた。リベンスパイアーの貴族は、今生きている者が誰一人憶えていないほど昔から、この墓苑の節くれだった木々の根に死者を埋葬している。腐敗、争い、墓荒らし、その他もっと酷いことを目撃して来た古い墓に、親族を葬ってきたのだ。

ウェストマーク・ムーアの冷たい大地には、ドレル、タムリス、モンクレアをはじめとする北部の有力な家の多くが死者を埋葬している。こうした家の中にはショーンヘルムの王や女王を輩出している家もあるが、彼らが死後、ここで親戚縁者たちと共に眠ることはない。彼らの遺体はグレナンブラにあるキャス・ベドロードの大霊園に送られ、ハイロックの歴代君主たちとともに永久の眠りにつく。これは長らく続く伝統に則ってのことである。

「サングイン墓地」内の埋葬区画の所有権をめぐって家と家が争うのは、珍しいことではない。そもそも「サングイン墓地」などという不吉な通称からして、第二紀551年の初夏に起きたある事件を境に奉られたものだ。私の記憶では、タムリスとモンクレアの両家で、同じ日に不幸があったことがそもそものきっかけだったように思う。両家の墓は境界を接しており、それゆえ長年にわたって争いの種だった。したがって問題の朝、両家の葬列が同じ区画(川を一望できる人気の高い場所だった)に面した同じ丘の上に到着した時点で、悶着は避けられないものだった。

貴族たちは何時間も言い争い、召使たちを何度も往復させては古文書やら証書やら正式な境界線が記された地図やらを持ってこさせたが、どちらも引き下がるわけにはいかない。日没が近づく中、互いに我慢が限界に近づいていた。驚くべきことでもないが、やがて双方が侮辱を受けたといって非難の応酬を始め、ついには武器が抜かれた。リベンスパイアーの人々は、続いて起きた「血の葬列」(呼称は後につけられた)が両家の歴史に汚点を残したと一般に考えている。

「サングイン墓地」では、略奪や冒涜もまた珍しいことではない。墓苑を巡回するのは白霜の高原の当局の仕事なのだが、富の誘惑が番人を罪人に変えるのに充分な時もあれば、自ら手は下さないまでも、墓への侵入に目をつぶってやるには充分な時もある。ショーンヘルムの王や女王がそういった不心得な行いに対して絞首刑という厳罰で臨み、一罰百戒を狙ったことも、一度や二度ではない。

そういった厳罰にもかかわらず、貴族が埋葬される度に、新たな狼藉や盗掘が行われるといっても過言ではない。実際、ある朝、タムリス家の墓所が遺体も含めて丸ごとからっぽになっているのが見つかり、家の人々を呆れさせたのは、つい数年前の出来事なのだ。盗人たちは結局見つからずじまいだ。なぜ彼らが遺体も一緒にさらっていったのかについては、誰しも考えたくないだろう。

「サングイン墓地」は、1つの墓地としては多すぎるほどの悪事や揉め事を体験してきた。しかもこの墓地は何度も繰り返し、その名にふさわしい悪評を得ている。これ以上この記録に暴力や盗みのエピソードを書き加えずにすむことと、いまだそこに埋葬されている貴族たちが未来永劫安らかに眠れることを、私は願ってやまない。

エセルデ王女の物語The Story of Princess Eselde

[このささやかなプロパガンダはタムリス家のために捏造され、エセルデ女伯爵が南部でアーケイ教団の教えを受けているあいだに流布されたものである。]

かつてカットキャップの国にはルルスルブという名の偉大な王がいて、長きにわたり善政を敷いた。やがてルルスルブも老いを感じ、自分が世を去ったあとの王国の行く末を案じるようになる。ルルスルブには2人の王子がいた。普通であれば老境の君主にとっては喜ばしいことだが、この場合はむしろ悩みの種だった。というのも、若いほうのピジョン王子は正室たる王妃の子だが、意志薄弱で政治に関心がなかった。対照的に、年長のランセル王子は大胆で物おじせず、母親もカットキャップ一の名門リスマット家出身だったが、いかんせん正嫡ではなかった。

さて、ルルスルブは英明な王であり、自分がランセル王子を気に入っていることを隠そうとしなかった。ランセルのほうが統治者にふさわしいことは、誰の目にも明らかだったからだ。にもかかわらず、年老いた王がついにエセリウスへと旅立ったとき、柔弱なピジョン王子が王位を継ぐべきだと感じる者が一部にいた。この連中が単に心得違いをしていたのか、それともカットキャップの王権が弱まるべきだと考える何らかの理由があったのか、それはよくわからない。ただ、最終的には良識派が勝利し、ランセル王子が貴族評議会によってカットキャップの王に選ばれた。

王位に就いて間もなく、ランセルは舞踏会でレディ・ヴェスパイアといううら若き乙女を見初め、恋に落ちる。可憐で賢いヴェスパイアはリスマット家の出身であり、短い求愛期間を経て、ランセル王は貴族評議会に彼女を妃に迎えるつもりだと話した。ところが、元王子のピジョン伯爵がこれに異を唱える。ランセル王の母親もリスマット家の出身であり、血縁法に照らしてレディ・ヴェスパイアは血が近すぎる。したがってこの婚姻はふさわしくない、というものだった。これに評議会の他のメンバーも賛同したため、ランセル王は評議会の説得を容れてレディ・ヴェスパイアとの結婚を断念した。知らせを聞いたレディ・ヴェスパイアは姿を消した。ニクサドの一団によって森の中に連れ去られたとも言われている。ランセル王は捜索隊を出したが、失踪した恋人はいくら探しても見つからなかった。

やがて、評議会が王朝存続のためにランセル王に花嫁候補を推薦する。ダル家出身の健やかな娘、レディ・イグノートである。いまだ傷心の癒えぬ王は、この薦めを受け入れる。ランセルとイグノートは華燭の典を挙げ、ランセル王は輿入れしたばかりの王妃の側で国王としての務めに打ち込んだ。それから数ヶ月後、王妃イグノートがランセル王の子をなしたことが発表される。幼い王女のために命名祭の開催が決まり、国中の貴顕紳士が招待された。

命名祭の当日、カットキャップの名士たちがこぞって駆けつけ、アレイエルと名づけられたばかりの王女が眠る揺りかごの足もとに贈りものを置いていった。ところが、その行列のしんがりに、何者とも知れない招かれざる客が並んでいた。それは不吉なウィルド・ハグで、マントに身を包んでフードをかぶり、暗い色の花を一輪、手にしていた。じつは「太陽が死んだ年」からこのかた、カットキャップでウィルド・ハグの姿が見られることはなかったのだが、それでもみな怖気づき、あえてその行く手を遮ろうとする者は誰もいなかった。

ウィルド・ハグは王女の揺りかごに歩み寄ると、フードを脱いで叫んだ。「ごらんなさい、ランセル王!私です、レディ・ヴェスパイアです。今はウィルドのウィレスですが!」着飾った人々は恐怖に駆られて後ずさりをした。というのも、かつて可憐だったレディ・ヴェスパイアが、見る影もなく変わり果て、今や醜いイボに覆われた巨大な鼻をこれ見よがしに突き出していたからである。「何かの手違いで、陛下のご息女の命名祭に私は招かれておりませぬが、それでもこうやって罷り越しました。ごらんなさい、幼き王女殿下に贈りものをお持ちしましたわ!」

「贈りものとは何か?」ランセル王が身を震わせながら訊ねた。「その暗い色の花か?見るからに気に入らんぞ!」

「そうでしょうとも、陛下」ウィルド・ハグは嘲るように言った。「これは「見捨てられたバラ」と言って、誰も欲しがらない花ですもの!そんなふうに疎まれるのがどういうものか、私は知っておりますよ、ランセル王。そして、我が呪いによって、あなたの娘にもそれを思い知らせてやりましょう!」そう言うと、おぞましい魔女はいびつな形をした花を赤ん坊の上に落とした。その刹那、炎がぱっと燃えあがり、異様な臭いの煙が漂ったかと思うと、ハグの姿は消えていた。

その後、王女アレイエルは一輪のバラのように美しく成長したが、性格はひねくれており、そのうえ癇癪持ちだった。それでも彼女が北部の王女であることに変わりはなく、南部のエメティック王が花嫁を探しにやってくると、2人のあいだですみやかに婚約が交わされた。

ところが、昔から足しげく南部を訪れ、エメティック王とも親しくなっていたピジョン伯爵が、南部の王に注進におよぶ。アレイエルは性格がひねくれているうえ癇癪持ちであることを教え、「監視塔の姫」を娶るほうがよほど良縁になると勧めたのである。やがてエメティック王はこの進言を容れ、アレイエルとの婚約を解消し、「監視塔の姫」と改めて結婚の約束を交わした。

しかし、ランセル王がこれをすんなり認めるわけもなく、誓約を破った南部の王に戦を仕掛けることを誓う。そして実際にエメティック王に対して大義ある戦いを挑むが、「トールの戦い」で旗下の将軍の1人に裏切られ、殺害されてしまう。ランセル王の王冠もアレイエル王女も行方がわからなくなり、それ以来、カットキャップの玉座は空位が続いている。

しかし、一説によると、ランセル王誕生のみぎり、実は双子の妹も生まれていたのだが、1人のウィルド・ハグにさらわれ、森で育てられたのだという。ルルスルブ家とリスマット家両方の血を引くこの女児が成長して娘を産み、その娘は母方の一族に引き取られた。この娘というのが、誰あろうエセルデ女伯爵その人だというのである。

もしこれが本当なら、エセルデ女伯爵の本当の称号は「王女」でなければならないのは自明だ。そして、他の誰でもない、彼女こそがカットキャップの玉座の正当な継承者ということになる。しかしながら、それは彼女の領民たちが語るお伽噺にすぎない。

シルバーフーフの騎馬民族The Horse-Folk of Silverhoof

ケフレム大学ヨクダ文化専攻、ナベス・アルジレーン博士 著

ハイロックの北部沿岸にレッドガードの知られざる入植地があるという噂を耳にしたとき、私がまともに取り合わなかったのは言うまでもない。そんなものが到底あるはずがないと思えたからだ。しかし、噂は根強く、一向に衰える気配もないため、とうとう私は長期休暇を取って大学の教授職からしばらく離れ、自分の目で噂の真偽を確かめるべく、北に旅する気になった。

そしてモルワの涙にかけて、噂は本当だった!学術的な詳細は近々発表する論考「群れの母を戴く部族に関する7つの真実」で余すところなく述べるとして、ここでは要点だけ整理しておきたい。というのも、遅々として進まぬ奨学金の手続きに合わせて公表を先延ばしにするには、この発見があまりにも驚異的だと感じるからだ。

ハイロックのリベンスパイアー地方の北西岸、ショーンヘルムから数リーグ西に行ったところに、シルバーフーフ谷と呼ばれる窪んだ牧草地がある。そこには三千年前からレッドガードの一部族が住み着いている。単に「騎馬民族」とだけ呼ばれている集団だ。

彼らはいつ、どうやって、またいかなる理由でそこにやってきたのだろうか?あいにく騎馬民族は書かれた記録を持たないが、その代わり彼らには口承の伝統が根づいている。私は世代から世代へと語り継がれてきたそうした伝承を聞き書きすることに努めた。部族の長老たちは時間を惜しまず私の相手をしてくれたが、なかでもムザールとヤライダの2人は特に協力的で、私はこの2人に聞いたさまざまな話から、次のような歴史らしきものを組み立てることができた。

彼らがもともと住んでいたのはヨクダであり、これには疑いをさしはさむ余地がない。周りに住むネードの民と何世紀にもわたって接触を続けた結果、「ブレトン化」を免れなかったものの、彼らの日常語にはヨクダ語が数多く残っており、それらはいずれも、古アコス・カサズのステップ地方に由来すると思われる、母音を延ばす特徴的な訛りとともに発声される。ここでは彼らの乗馬用語からいくつか例を挙げれば充分だろう。たとえば彼らは馬首を左に向けたいときには「ネトゥー」と命じる。右に向けたいときには「ネトゥー・フゥー」。止まれは「セーリーム」だ。言うまでもなく、「ネトゥ」は古ヨクダ語で「曲がる」を、「アンセリム」は「止まる」あるいは「やめる」を意味する。

つまり、騎馬民族はヨクダの民の末裔であり、おそらくはアコス・カサズの北部で遊牧生活を送っていた諸氏族から枝分かれした部族と考えられるのである。部族の長老たちは自分達の系譜に関する詳細な言い伝えを憶えており、それらに語られる世代の数から、彼らがタムリエルにやってきたのは第一紀の6世紀初頭と推定できる。その頃、ハイロックは動乱の時代だった。ディレニ王朝は断末魔の苦しみにあえぎ、ブレトンの諸王国はいずれも建国の途上にあって、まなじりを決した入植者たちの集落が、先住民に駆逐されたり取り込まれたりする前に、わずかな隙をついて足場を固めることが可能な時代った。そして、私がムザールとヤライダから聞き取ったいくつもの伝承によれば、それこそがまさにラ・ガーダがハンマーフェルにやってくる2世紀近く前、シルバーフーフ谷で起きたことだったのである。

騎馬民族がこの地にやってきた理由を確定するのは、それほど簡単ではない。というのも、話がその点におよぶと、彼らの言い伝えは伝説へと逸脱し、神話の領域にさえ入ってしまうからだ。ここで、私は彼らの一風変わった信仰について触れなければならない。なぜなら、それこそが彼ら騎馬民族の伝統とアイデンティティーの中心をなすものだからだ。知ってのとおり、彼らは古いヨクダの神々のいずれも信仰せず、その代わり、「群れの母」と呼ぶ、一種のアニミズムに基づく聖霊を崇拝している。馬の姿をしたこの存在は、部族を教え導く守護神としてふるまう。部族の青年は夢の旅路で群れの母と心を通い合わさなければならない。夢の旅路というのは、大人の仲間入りをするための一種の通過儀礼(我々に伝わるウォークアバウトの風習に似ている)であり、青年は独りでそれを全うする義務を負う。この群れの母は現在の学術研究の世界で知られていないが、言うまでもなく我々の文化的記録は膨大な量が「旧き島々」を飲み込んだ大変動によって失われてしまったのであり、そのことは踏まえておくべきだろう。

彼らは「旧き島々」で何らかの危機に見舞われた群れの母崇拝を絶やさないために、失われたヨクダを離れたというのが騎馬民族に伝わる伝承である。数多の伝説には、群れの母から賜った「泳ぐ馬の船」を連ねた船団が、アコス・カサズを出港して海を旅する様子が描かれている。船団は「17の海を渡り」、タムリエルにたどりついたのだという。荒唐無稽な話として一笑に付すのは簡単だが、ただ、彼らは自分たちが「騎馬民族」と呼ばれる由来である馬たちを故郷の島々から一緒に連れてきたと言って譲らないし、これに関して私は疑いを抱いていない。なぜなら、乗用馬の目利きである私が見るところ、騎馬民族が乗りこなしている馬がいわゆる「ヨクダ産馬」と同一種であることは疑いない。アリクルの「アスワラの馬屋」育ちだと言っても良いほどだ。

タムリス家:近年の歴史House Tamrith: A Recent History

上級王エメリック陛下のご高覧に限る!(陛下は、この種の報告書がこういうふうに書き出されるのを好まれるようですね)

タムリス家はリベンスパイアーの主に西半分に領地を有し、農業、商業、通商をはじめ、数々の権益を有しています。実際のところ、彼らが紆余曲折の末にストームヘヴンおよびウェイレストの街と強い絆を結べたのも、南部諸国との交易を成功させていたからと言えるでしょう。

リベンスパイアーの三家(タムリス、ドレル、モンクレア)の関係を特徴づける三つ巴の確執は、いろいろな意味で第一紀の末にまで遡れます。それぞれの家が富と名声の礎を築き、リベンスパイアーの繁栄に貢献していた時期です。三家のなかでもタムリス家は特に信心深く、伝統的に宗教への傾倒が盛んで、しばしばアーケイを一族の守護神と頼み、お気に入りの神として崇めていました。

よくご承知のとおり、上級王陛下はお若い頃、リベンスパイアーの2人の貴族と多くの時間をお過ごしになられました。エスマーク・タムリス男爵とヴェランディス・レイヴンウォッチ伯爵です。それゆえ、今から10年以上も前、ウェイレストとその同盟勢力がリベンスパイアーに武力の矛先を向けねばならなくなった時には、気が重かったことと推察します。当時、ショーンヘルム王ランセルはウェイレストに宣戦布告し、忠誠を誓う貴族たちに、自らの負け戦に加わるよう強制しました。本心でウェイレストに対していかなる感情を抱いていたかはともかく、リベンスパイアーの各家は王命に従い、上級王陛下に対して兵を向けたのです。

そんな中、タムリス家は早々とランセル王への支援をやめ、兵を引きあげさせて講和を請願しました。ドレル家もすぐに同調しました。リベンスパイアーの他の家に比べて弱いレイヴンウォッチ伯爵家だけは、最初から武器を取りませんでした。レイヴンウォッチ伯爵家は1年続いたその戦を通じて中立の立場を貫いたのです。一方、モンクレア家はほとんど最後までランセル王を支えました。彼らはランセル王の残存兵力が現在「裏切り者の岩山」と呼ばれる場所まで押し戻されることになる合戦の直前まで、ウェイレスト連合の軍門には下らなかったのです。

この戦が終わると、平和と協調を主導する力強い旗手として、タムリス男爵が台頭します。上級王の名においてリベンスパイアーを治める三者連合政府を樹立し、三家それぞれの当主がエメリック上級王に忠誠を誓うというアイデアも、タムリス男爵のものでした。上級王は三者連合政府をお認めになったものの、ショーンヘルムの新しい王については、機会が訪れ次第選出すると約束するにとどめられました(これをお読みになって、陛下はその約束がいまだ果たされていないことを思い出されるでしょう)。

エスマーク・タムリス男爵はエルデ家の息女ジャネスを娶り、両家の財力が合わさった結果、さらに強大な政治勢力となりました。エスマークとジャネスは2人の娘に恵まれます。実際的で思慮深いエセルデと、腕っぷしが強く姉よりもお転婆なジャニーヴです。今から4年前、エセルデはリベンスパイアーを離れました。ストームヘヴンでより高度な教育を受け、宗教に対する理解を深めるためです。ストームヘヴンに滞在中のほとんどの時間を、エセルデは上級王陛下の宮廷の客人として過ごしました。同じ頃、若きジャニーヴは(父親と姉の望みに反して)「ショーンヘルムの衛兵」に加わります。

エセルデは学問に秀で、とりわけ歴史学、政治学、外交研究、そして神学の分野に関心をひかれました。彼女はアーケイの教えと「光の道」に深い確信を示すと同時に、治癒師としても謎かけコンテストの代表としても同期生のなかで抜きんでておりました。エセルデがゆくゆくはタムリス家の当主の地位を継ぐつもりで、その準備に努めていることは、誰の目にも明らかでした。

ジャニーヴもまた、周囲の予想の上を行きました。武勇、軍略、それに戦場での指導力、そのいずれにおいても驚くべき才能を示し、めきめき頭角を現したのです。結果、特進に特進を重ね、とうとう衛兵隊長の地位にまで登り詰めました。ショーンヘルムでの軍務に加え、ジャニーヴはタムリス家の私兵団の長にも就任しました(念のために申し上げれば、戦時をはじめとする非常時において、家の私兵が街の衛兵隊と合同で国防のため単一の戦闘集団を形成することは、決して珍しいことではありません)。ジャニーヴに欠点があるとすれば、それは気が短いことと、絶えず行動したがるところでしょう。行動せずにはいられないのだと言う者もおります。

ここで、悲報をお届けしなければなりません。エスマーク・タムリス男爵が、ほんの数ヶ月前、天寿を全うしました。父親の訃報に接したエセルデはただちにストームヘヴンを発ってリベンスパイアーに戻り、タムリス家当主の跡目を継ぎました。現在、彼女はエセルデ女伯爵として、リベンスパイアーを治める三者連合政府において亡父の後任に収まっています。これまでのところ、ドレル男爵が何かと異を唱えてくるのにもめげず、彼女はみごとに務めを果たしていると言えましょう。モンクレア男爵とどのように渡り合うかはまだ分かりません。と申しますのも、モンクレア男爵はここ数ヶ月宮廷を離れ、病で臥せっている奥方の看病に専念しているからです。

いずれにせよ、何か不測の事態でも起きないかぎり、襲名間もないタムリス女伯爵の前途は洋々たるものでしょう。

上級王陛下の御為に。内務省書記、レギナ・トロアヴォア

ドゥームクラッグにまつわる不吉な伝説の数々Dire Legends of the Doomcrag

タムリス家の側近ナラナ 著

はるか昔、ドゥームクラッグと呼ばれる陰鬱で不吉な石の尖塔は、アイレイドの民が学びや信仰に身を捧げる場所だった。しかし最近では、霧と影に覆われた剣呑な道の先にそびえる、取り憑かれた場所として知られている。

これまであまり顧みられることのなかった場所ではあるが、目下にわかに関心を集めていることから、タムリス女伯爵の依頼を受け、この禁断の地にまつわる伝説をここに列挙する。

***

陰鬱な伝説の1つに、ならず者の首領レッド・ロブを追って「隠された峠」に分け入ったドレル家の女傑、「豪胆なるブリアンナ」に関するものがある。ブリアンナと配下の騎士たちは、レッド・ロブを捕えて裁きにかけ、それまでに犯してきた数々の罪を償わせるため、北部の海岸伝いにはるばる一味を追跡してきた。このならず者の仕業とされる数多の罪状には、最近ドレル家の貨物船から略奪を働いた一件も含まれていたのである。レッド・ロブにとってあいにくだったのは、その船にドレル家当主の娘、つまり男爵令嬢が乗って旅をしていたことだ。怪我を負ったうえに屈辱を味わわされた令嬢は、レッド・ロブの首級を望み、「豪胆なるブリアンナ」を捕り手として差し向けたのだった。

さて、ブリアンナが「隠された峠」の鳥羽口にたどりついたとき、配下の騎士たちは一人残らず殺されるか深手を負っていた。彼女が頼みにできるのは自分だけというありさまだった。ただ、レッド・ロブもまた似たような状況だった。仲間をみな失った彼は、ブリアンナを振り切るため、独りで濃い霧のなかに飛び込んだ。ブリアンナも「豪胆」の呼び名に恥じず、躊躇なく後を追う。それ以来、2人の姿は二度と見られることがなかった。

けれども、その地方に住む人々に言わせると、空気の冴えた寒い夜、空を突いてそびえる石の塔を赤い霧が薄く彩るとき、剣と剣を打ち合せる音が聞こえるのだという。ブリアンナとレッド・ロブが丁々発止の闘いを今も続けており、それは永遠に終わることがないのだと。

***

ドゥームクラッグにまつわる伝説でよく知られているものとしては、もう一つ、聞く者をやや落ち着かない気持ちにさせるかもしれない話がある。恋に破れ、この石の塔の頂で憔悴していったアイレイドの女性の話だ。とある貴族の屋敷で執事を務めるハンサムな男性にふられた彼女は、ドゥームクラッグの頂上に登って籠城を決め込んだ。友人と家族は、彼女を元気づけて塔から降りてこさせようと、あれこれ手を尽くすのだが、それでも、傷心の彼女は懇願や慰めの言葉にいっさい耳を傾けようとしない。そしてとうとう苦しみに耐えられなくなり、ドゥームクラッグからはるか下の海に身を投げてしまう。

けれども、この悲しい物語はそこで終わらない。今でも人々は信じている。ハンサムな旅人が不用意にドゥームクラッグに近づきすぎれば、恋に破れたアイレイドの女性の注意を引いてしまう恐れがあるのだと。いわく、彼女の安らげぬ霊魂が疾風のように降りてきて、不運な旅人をさらい、石の塔の頂に運んで慰みものにするのだという。しかし、どんなに辛抱強い囚われ人も、最後にはアイレイドの女性の霊を拒み、肘鉄をくわすことになる。寂しい夜、重なり合う2つの悲鳴が聞こえてくるかもしれない。それは、アイレイドの女性の霊がまたしても海に身を投げ、いちばん新しい恋人を水の墓地へ道連れにしたことを意味しているのだ、と。

***

しかし、ドゥームクラッグにまつわる伝説で最も人口に膾炙しているのは、なんといっても「歩く死」の話だろう。そしてこの伝説に限っては、始めから終わりまで、恐怖譚というよりはむしろ用心を促すための教訓話と呼ぶほうがふさわしい。この伝説は言う。「隠された峠」を辿ろうとする者は誰であれ、否応なく自らの死を目指して坂をのぼることになるのだと。なぜなら、一歩歩みを進めるごとに、寿命が1年縮むからだ。年齢や健康状態によっては、濃い霧のなかに入ってほんの数歩進んだだけで死が訪れることもありうる。逆に、人並み外れて幸運な者であれば、「隠された峠」を登り切り、頂に到達できるかもしれない。噂に聞く、宝物庫に足を踏み入れることができるかもしれないのだ。ただそれでも、結局「歩く死」に追いつかれることは変わらない。

いずれにせよ、避けられない死に向かって進める一歩には、それなりの苦痛と衰弱が伴う。この伝説こそ、他のどの伝説よりもドゥームクラッグを神秘のベールに包んできた原因と言える。なぜなら、この話の真偽を確かめようという勇気の持ち主が、ほとんど現れないからだ。

自分の原稿を読み返してみると、なぜタムリス女伯爵が幼いころドゥームクラッグを怖がったか察しがつく。正直、いい歳をした私でさえ、こういった伝説には恐怖を覚えずにいられないのだから。

ノースポイント:その評価Northpoint: An Assessment

ノースポイントと街で随一の権勢を誇るドレル家に関するこの報告書は、上級王エメリック陛下じきじきの命により、丹念な調査を経て作成されました。私こと内務省書記レギナ・トロアヴォアは、個人的にこの努力の成果を査読し、そこに盛られた情報が正確であることを保証するものです。

まず、背景を知るために歴史の講義を行いましょう。ノースポイントは第一紀の9世紀、ダガーフォールからソリチュードに至る夏季航路を行き来していた冒険的なブレトン人の交易商、イリック・フロウディス船長によってその礎が築かれました。一帯の海岸は理想的な港を築くには適していないものの、周囲の水深が深く、大型船も難なく航行できました。また、交易路沿いに位置することから、商人が再補給し、船の修繕を行い嵐をやり過ごすにはちょうど良い中間点でした。この二点に着目したフロウディス船長は、投錨地として最も適したノースポイントに最初の船着き場を築き、そのまま港の名前としました。

船着き場を建設して間もなく、フロウディス船長は次第に大きくなってゆく寄航港の東にあるドレ・エラードの丘に、防壁をめぐらせた小さな砦と倉庫を建設させます。ほどなくして街は活気にあふれるようになり、自分の投機的事業が成功したことを確信したフロウディス船長は、この丘の名前を新たな姓として名乗ることにしました。それ以後も彼とその一族は海運事業を成長させ、同時に港とその周辺の土地で開発と投資を行い、ついには農民に土地を貸し出すことで新たな収入源を確立したのです。

第一紀の大半を通じて、ドレル一族は活動的で企業家精神に富んだ豪商の典型として、ハイロックに大いなる繁栄をもたらしました。第一紀の1029年、女帝ヘストラがハイロックを「最初の帝国」に併合したのを機に、ドレル家は男爵家に叙せられました。以来、ドレル家の財力とノースポイントの富は、北西海岸の沿岸貿易の消長と運命を共にしてきたと言えます。

24世紀、財力と権勢を伸張させ続けたドレル家は、数世代にわたってショーンヘルムの王位を保持します。この栄光が、その後何世紀ものあいだドレル家の自己認識を彩り続けました。それ故にこそ、今でも彼らにはリベンスパイアーの真の指導層の一翼を担っている自覚があるのです。そして、かつて王座に君臨していたという事実は、彼らに政治的陰謀への嗜好を植えつけました。それがただでさえ野心的な本来の性向と相まって、彼らを無視できない存在にしています。現在の当主アラード男爵は、ランセル王亡きあとリベンスパイアーを統治する三者連合政府の一角を占め、権勢をほしいままにしています。モンクレア家とタムリス家の当主たちと共に上級王へと忠誠を誓うアラード・ドレルは、いつの日かただ1人のショーンヘルム王としてリベンスパイアーを統治する権利を手中に収めたいと考えています。

近年、海運と交易を牛耳る雄として、ドレル家の存在感は抜きんでています。当主が宮廷事情に疎くならないように、わざわざショーンヘルムに男爵(または女男爵が)住まう広壮な邸宅を構えてもいます。ノースポイントの屋敷は一族郎党に任せているものの、所領の管理は依然として宗家の専権事項のままです。現在、当主アラードの息子で若年ながら有能なエリック卿がノースポイント周辺の領地を管理し、男爵自身は宮廷で三者連合政府の一翼を担っています。

ドレル家は軍事と政治の両面で抜け目がないうえ、伝統的に商業に力を入れてきた甲斐があって、その財力はリベンスパイアーで稀に見る水準に達しています。ドレル家はソリチュードの商人たちとの結びつきを深めてきましたが、これは彼ら自身が懸命に指摘するように、武力を用いた威嚇とは何ら関係がありません。ドレル家にしてみれば、単に商売として引き合うだけのことです。

三者連合政府を形成するリベンスパイアーの三家を私なりに研究した結果、モンクレア家はほとんど信用に値しないという結論に達しました。彼らと関わる際には、どのような状況であれ警戒を怠らないことをお勧めします。彼らが真に忠誠を捧げているのは、彼らの野心だけです。一方ドレル家は、野心的であることに変わりはないものの、ある程度の名誉の概念、そしてモンクレア家(ランセルの後裔だということを過度に誇っているように見える者たち)が稀にしか示さない愛国心を持ち合わせているように見えます。タムリス家はどうかというと、彼らは常にウェイレストの忠実な友でした。もっとも、現在の女伯爵は当主の地位に就いたのが比較的最近ということもあり、今以上に大きな責任を負う用意はできていないかもしれません。

リベンスパイアーの狂血鬼Bloodfiends of Rivenspire

タムリス家の側近ナラナ 著

このところリベンスパイアー全土に出没するようになった狂血鬼について、調べられるだけのことを調べよと仰せつかった。この生物は一見、過去に我々が観察してきた他の狂血鬼とまったく変わりがないように見える。しかし、さまざまな点が似ている一方で、1つだけ重大な違いがある。それは、彼らが吸血鬼の周期の終わりにではなく、始めに現れるという点だ。

このプロセスは、長くつらい潜伏期間の終わりに現れるのではなく、恐ろしいほど短い時間内に、ごく普通の人々を凶暴な怪物に変えてしまう。まるで、驚くべきスピードで感染者の体を溶かしてしまう血液性の熱病のようだ。触媒に接触した者が全員発症するわけではないが、発症すれば吸血鬼に(稀に)なるか、短時間で全ての狂血鬼の特徴である狂乱状態に陥る(ほとんどはこちらの経過をたどる)。

調査したところこれらの狂血鬼は、どうやらモンクレア家の宮廷魔術師であるアルゴニアンのリーザル・ジョルと、ワイロン・モンクレア男爵のレディ・ルレラヤ・モンクレアに関わりがあることが分かってきた。その2人はモンクレア家の兵を率いてリベンスパイアーを転戦しているが、旗下の兵のなかには吸血鬼も混じっている。噂によるとリーザル・ジョルとルレラヤは、何らかの邪悪な魔術、血の呪いのおかげで、単に一瞥し、手を振り、二言三言つぶやくだけで、ごく普通の人々を狂血鬼に変えてしまう能力を手に入れたのだという。もっとも、数々の目撃情報は贔屓目に見ても錯綜しており、こうした主張はまだ完全に裏付けが取れたと言えない。

過去に我々が対処してきた他の狂血鬼同様、リベンスパイアーの狂血鬼も正気を失った吸血鬼である。彼らの精神は回復不能なほど退化し、動くものと見れば見境なく襲いかかる。まさに骨と血に飢えた、残忍で暴力的な獣と言うほかない。この「血の呪い」は、異常な速さで進行する。いったんこれに取りつかれるや、ほんのわずかな時間で凶暴化した人々の例は、それこそ枚挙にいとまがない。リーザル・ジョルとルレラヤがいかにしてこの恐ろしい力を身につけたのかは詳らかでない。分かっているのは、2人がどうやらオブリビオンの力に頼って、モンクレア男爵のリベンスパイアー平定を支援しているということだ。

この「血の呪い」は例外的なものではあるが、リベンスパイアーの狂血鬼の習性は彼らの同族と変わらない。理性を欠いたこの凶漢たちは、犠牲者に自らの苦しみを伝染させる能力を持ち、しばしばそれを行使する。リベンスパイアーの狂血鬼に傷を負わされるか殺されるかした者が、それこそ瞬く間に狂血鬼に変貌してしまう確率は、相当に高い。

さらなる情報が集まるまで、リベンスパイアーの狂血鬼に関して私が推奨できる行動指針は1つしかない。滅ぼすべきだ。

レイヴンウォッチ伯爵家からの布告House Ravenwatch Proclamation

理解を求める者たちに告ぐ。

掴まえ所がなく古い貴族の家が、分かりやすく目標を公開することなどないとお考えだろう。そう考える者がいても不思議はない。しかしながら、故郷と味方に不和という災厄が訪れた今、明敏とは言えぬ者達のために旗幟を鮮明にしておくべきだと考えた。

レイヴンウォッチ伯爵家にとっての最優先課題は、いにしえの昔からリベンスパイアーに巣食う邪悪な存在を滅ぼすことだ。それは数々の名前で呼ばれている。アバガンドラ、ロラダバル、そして現在においては「光なき名残」。はるかな昔から、幾世代もの学者たちが、このアーティファクトを理解しようと努めてきた。しかし、理解など土台無理な話だ。それはムンダスに取りついた疫病であり、駆除する他はない。

レイヴンウォッチ伯爵家の第二の目標は、「光なき名残」の力を利用しようとする不心得者たちの野望をくじくことだ。モンクレア男爵の美辞麗句と「熱烈な愛国心」とやらに騙されてはならない。彼は「光なき名残」の力に屈し、リベンスパイアーの美しい郷土を破壊することをもくろんでいる。我々がなぜそれを知っているかというと、モンクレア男爵が「光なき名残」の力に取りつかれたとき、その場に居合わせたからだ。

我々はどちらかというと日陰を好む。本来、旗振り役を自ら買って出る柄ではない。しかし、事態は切迫している。もはや手段を選んでいる余裕などない。どうか知っておいてほしい。リベンスパイアーがいかなる脅威に直面しているにせよ、諸君だけが矢面に立つわけではない。我々が諸君の味方をしよう。レイヴンウォッチ伯爵家はエメリック、そしてリベンスパイアーの善良なる民と共にある。

レイヴンウォッチ伯爵家当主、ヴェランディス

光の名残The Remnant of Light

アイレイドの書
〈告げ示す者〉ベレダルモ 訳

その血の刹那(または永劫)のうちに、アヌマリルはフィレスティス(卿)に「光の名残」(アウタラク・アラタ)を届け、それをタムリエルの「太陽が沈む寒い果て」(ファル・ソーン・グラセ)に運んでほしいと頼んだ。気高いフィレスティスは「光の名残」を受け取ると、クラン(または家畜)を引き連れてクワイロジル(?)を離れ、はるかな地へと旅立った。常に夕日をいちばん左の目で見るようにして旅を続けるフィレスティスの後ろを、アイレイドの移民たちがついてきた(または追ってきた)。

一行は「冷たい岩の大地」にたどりつき、泳いで岸にあがった(打ちあげられた?停泊させられた?)。岩は冷たく硬かったが、「光の名残」が全てを肥沃に(またはうごめくように)してくれた。移民の多くは健康を損なったが、「光の名残」のおかげで岩(または山々)に食用石(クレ・アンダ)がなるようになり、これは美味なだけでなく治癒の効果もあった。

フィレスティスは「冷たい岩の大地」全体に「光の名残」が微笑む(輝く、ぬくもりを広げる)ことを望んだ。そこで、今や光輝に力づけられた移民たちが山(または峰)を隆起させ(または削り取り)、「光の名残」をその上に置けるようにした。これは、880刹那(または永劫)のうちに照合(?)された。すると、「冷たい岩の大地」にはあまねく食用石がなるようになり、移民たち全員が健やかに(または多産に、あるいは賢く)なった。

時は過ぎ(何ヶ月もが無為に過ぎ)、気高いフィレスティスは死の(餌食に)なった。すると、移民たち1人ひとりが涙にくれ、その涙で青く澄んだ湖ができた。けれども、フィレスティスの配偶者が彼を「光の名残」がある山(または峰)に連れていった。すると、フィレスティスは光輝に力づけられ、さらに8コーラスを踊った。

北部の王宮都市、ショーンヘルムShornhelm, Crown City of the North

第39代モンクレア男爵、ワイロン卿 著

マルクワステン・ムーアとショーンヘルムの高地に住むブレトンの民には、繰り返し物語に語られる長い歴史があり、誇るべき事績には事欠かない。伝説の時代にあった「巨人族の捕縛」、「太陽が死んだ年」の「ウィルド・ハグの粛清」(これにより、ムンダスの空という空がマグナスを取り戻した)、「グレナンブリア湿原の戦い」における「モンクレア騎士団の突撃」(しばしば誤って「ショーンヘルム騎士団の突撃」と呼ばれる)等々…

こうした波乱万丈の歴史を経ながらも、終始リベンスパイアーの民草は幸運であった。恐怖が支配する時代も勝利に沸く時代も、常にモンクレア家の当主によって巧みに導かれてきたからである。

モンクレア家の当主が常に天命を授かりショーンヘルム王としても君臨してきたかというと、必ずしもそうではない。しかしながら、モンクレア家が備える数多の美徳のなかには謙譲の精神もまた含まれる。ことを丸く収めるために、歴代の当主たちが自分よりも王位を主張する根拠が弱い者たちに、自ら進んで即位の権利を譲ることも少なくなかった。この謙譲の精神を発揮しすぎたことによって時に悲劇が起きたことは、我が父にして第38代モンクレア男爵たるフィルゲオンの例が、悲しくも証明している。

ブレトンの歴史を学ぶ者であれば誰しも知るとおり、レマン皇帝亡きあとの最も偉大なショーンヘルムの君主といえば、「グランデン・トールの戦い」で我が軍を率い、第二紀522年より北部を治め、在位のまま同546年に身まかったハールバート王をおいて他にない。ハールバートはブランケット家の出で、第21代ブランケット伯爵であった。そして妃には、モンクレア女伯爵イフィーリアを迎え入れている。ハールバート王崩御のみぎり、正嫡のフィルゲオン王子はわずか14歳と幼く、その王位継承権にはモンクレア家の後ろ盾があったにもかかわらず、ブランケットとタムリスの両家はフィルゲオン王子の異母兄に当たるランセル王子を支持した。ランセル王子はタムリス家の血筋に連なる病弱な女性とのあいだに生まれた庶子であった(ドレル家は例によって争いから距離を置き、どちらの候補に肩入れすることも拒んだ)。

ランセル王子がフィルゲオン王子を抑えてショーンヘルムの王位に就くまでに、どのような裏工作が行われていたかは、あまりよく知られていない。若きモンクレア男爵の顧問官たちは(男爵の母君はハールバート王よりわずか2年早く逝去していた)、正嫡であるフィルゲオン王子こそが王位の正当な継承者であると主張した。これには、かの有名な「ブレトン出生録」の補遺による裏付けもあった。その補遺は、「マウント・クレール家」こそがショーンヘルムの王統であると明言していたからである。複数の王位請求者たちの正統性を審議するため北部評議会が召集されたが、この審議が続いているさなか、モンクレア家の顧問官たちはブレトン出生録補遺が紛失しているのに気づく。一方ランセル王子は、長らく行方知れずになっていたという(いかにも胡散臭い話だが)「ディレニの勅書」なる古文書を持ち出してきた。それには、リベンスパイアーにおける「ブレトン王家の代理人」として、ブランケット家が指名されていたのである。

やがて評議会で投票がおこなわれ、ランセル王子が僅差で勝利をつかみ、ショーンヘルム王ランセルとなった。フィルゲオン王子の顧問官のなかには一戦交えても王位を争うべきだと主張する者もいたが、若い王子はこれを拒み、ただのモンクレア男爵となる道を選んだ。

そのような謙譲の精神が、どれほど裏目に出たことか!フィルゲオンが評議会の決定に唯々諾々と従った結果どのような事態を招いたか、我々はみな知っている。すなわち、566年の一連の悲劇、そして、第一次ダガーフォール・カバナントに対する反乱である(我々にとっては恥ずべきことだが、この反乱は「ランセルの戦争」として知られる)。標準的な歴史によれば、モンクレア、タムリスはもちろん、ドレルまで全ての家がランセル王の召集に応じ、エメリック上級王と南部を敵にまわした彼の致命的な戦争に兵を出したことになっている。このとき、ランセルの掲げる大義の正当性に確信が持てなかったモンクレア伯爵フィルゲオンが、ランセル王とエメリック王に対して、両陣営のあいだを取り持つ和平特使になろうと申し出たことはあまり知られていない。これに対してエメリック上級王がどのような返事をしたかは歴史の闇に埋もれてしまったが、ランセル王が激怒して言下に拒絶したことはよく知られている。我が父は再び異母兄に服従し、結果、モンクレアの騎士たちは滅びる定めにあったランセルの軍に加わったのであった。

ランセル王が陣没すると、リベンスパイアーはたちまち混乱状態に陥った。ショーンヘルムの王冠は「裏切り者の岩山の戦い」で行方知れずとなり、ランセルを玉座につかせるために決定的な役割を果たした「ディレニの勅書」もそれ以来目にされていない。ランセルの死によってブランケット家の血筋は途絶え、以来、ショーンヘルムの玉座は空位が続いている。リベンスパイアーは現在、三者連合の北部評議会によって治められている。評議会は北部諸州の平和と秩序を維持すべく誠心誠意努めてはいるが、本音が許されるならば、彼らの努力が充分だと言う者は誰もいまい。ショーンヘルム、および北部には王が必要なのだ。

そもそも、なぜ北部に王がいてはいけないのか?腹蔵のないところを言わせてもらえるならば、モンクレア家伝統の謙譲の精神はひとまず、いかに残念であろうとも脇に置いてこう言わねばならない。モンクレア男爵ワイロン卿たる私こそが、ショーンヘルムの玉座につくべき正統なる継承者なのだ。我が祖父はハールバート王その人であり、私はその正嫡の系譜に連なる直系の後裔に他ならない。これは、北部広しと言えども、私の他に誰一人掲げることのできない主張である(このことはまた、ブランケット家の領地を継ぐべき唯一の存命相続人たらしめてもいる。当該領地の大半は不公正にもタムリス家とドレル家によって分割され…いや、これ以上は言うまい。謙譲。常に謙譲の精神を忘れてはならないのだから!)

さらに言うならば、この決定的な局面において、次の事実を公表できることを幸運に思う。すなわち、長らく行方知れずだった「ブレトン出生録補遺」がモンクレア家の歴史家によって発見されたのである。その中から、重要なくだりをここに引用しよう。

「…当時シャーン・ヘルムとその隣接地域においては万事が秩序のうちにありしことに鑑みて、いと気高くも高貴なる…(判読不能)…はマウント・クレール一門に…(判読不能)…並びにシャーン・ヘルムの統治…(判読不能)を永久に付与せんとする。かくあらしめよ」

リベンスパイアーの民に告ぐ。モンクレア男爵ワイロン卿は自らの務めを果たす用意がある。

伝記集

Biographies

アイレン:不測の女王Ayrenn: The Unforeseen Queen

アルドメリ礼儀作法大学のタニオン学長 著

当大学のボズマーおよびカジートの生徒の中には、美しい我らがアイレン女王の下に団結するのはすべてのサマーセットのアルトマーではないと誤解し、流言を繰り返す者がいる。それはまったくの嘘である!我々ハイエルフには、古くからある洗練された文化に新たに触れた者には時に勘違いされてしまうような、「しゃれ」や言葉の軽妙なやりとりを好む習慣がある。私はこの件を解決するべく、我らが敬愛するアリノールの女王についてアルドメリ・ドミニオンの新たな仲間にも理解してもらえるように、簡素かつ率直に紹介することを目的に、この簡潔な入門書を整理した。

アルトマーはニルンを創造した神々からの連綿とした子孫であることは当然のことだ。アリノールの王族に関しては、特に当てはまる。威厳ある名を残したアイレンの父ヒデリス王は、サマーセット諸島を長い間うまく統治し、エルフの儀式制君主政治において最良のやり方を例証して、下す決断はすべてプラキスの書に制定された判例を基盤とした。

やがてヒデリス王とその妻の公女トゥインデンは書が定めるとおりに子を儲け、そしてプラキスが決定づけたとおり、その子をアイレンと名付けた。アイレン王女が生まれた第二紀555年の栽培の月5日は吉兆に満ちた日だったが、その重要性を完全に理解するための背景が不足しているだろうから、理由については割愛したい。しかし、サマーセット、オーリドン、アルテウムの全島民が、王女の誕生を55日間にわたって祝ったということは信じてくれて良い。

アイレン王女は自分が生まれてきた、騒然とした落ち着きのない時代を反映すると予言されたが、そのとおりになった。頭の回転が早く勘がいいアイレンは、家庭教師の授業を早々に極め、学業においても若年から型破りな方法で取り組んだ。実際に時折、独自の研究に没頭しすぎるあまり、何日も居場所がわからずにいたこともあった。野外に出かければ際立った知識を身につけて戻り、卓越した新しい技能を披露した。

573年の星霜の月のある日、アルトマーの王政プラキスと儀式制君主政治を必ず3555日間学ぶ大学であるサピアルチの迷宮への入学が許可されたアイレンを祝うため、アリノールの全王族が水晶の塔に集まった。だが、アイレンは現れなかった。王女は宮殿と塔の間のどこかで姿を消し、司法高官による第十七段階の捜査にもかかわらず、どこにも見当たらなかった。しかしサピアルチの迷宮は、アイレンの失踪した夜は兆候と前兆に満ちていたと報じた。淑女座が駿馬座に乗っているかのように見え、大天球儀は反対に廻り、幼い鷲のヒナが探検家トパルの像の上で見つかった。

その結果、アイレンの弟の内もっとも年長だったナエモン王子がアリノール王の後継者として指名され、575年に迷宮へ入学した。ナエモンは自分の父親同様生まれながらの儀式制君主で、後継者のしきたりによって決定する慣習や任務を心から享受しているようだった。ヒデリス王が580年にエセリウスに上がった時も、ナエモン王子は父親の地位へと昇進する八十日の即位の典礼を表明する準備を即座に始めた。

その後、予告もなしにその不測は起きた!大陸にあるポート・ヴェリンから、アイレン王女が白鳥型の船でオーリドンに向かう途中であると便りが来たのである!驚きあわてたアリノールの宮廷は王女を出迎えにファーストホールドへ向かい、王女の予期せぬ帰還を歓迎するために間に合うよう到着した。アイレン王女は最年長の後継者としてアリノールの王座を引き受ける準備ができていると発表し、最高司法官はそれが確かに王女の権利であることを認めた。580年降霜の月7日、王女はアイレン女王として即位した。

さて、諸君の中には、アイレン王女がサマーセットにいなかった間に経験した、冒険に関する数々の面白い話を聞いたことがある者がいるかもしれない。一等航海士としてアンヴィルの海賊船長と共に航海したとか、ネクロムの宝物庫でインディゴの書を読むためにダンマーに変装したとか、リハドの修道僧に刀剣の舞いで打ち勝ったとか、ハチミツ酒飲み比べコンテストで、ウィンドヘルムの炎の髪のマブジャールン女王よりも飲んだとか。断言するが、全ての俗説や噂は実にばかげているし、非常にふざけている。我らが女王は単にご自分のやり方で独自の研究を行い、プラキスと儀式制君主政治の準備をしていて不在であっただけの話だ。

王座を継承してからというもの、女王はこの地の規則を改変させた。ただ、それは女王の吉兆な誕生の時に予言されたとおりで、サピアルチは誰もが近代化を支持した。であるからして、諸君。アイレンは島々の女王であることは明白であり、すべてはそうあるべくして正しく、当然のことなのである。

スカルド王ジョルンJorunn the Skald-King

ウィンドヘルムの吟遊詩人、リュート・ボイスのヘルグレイル 著

第二紀546年に炎の髪のマブジャールン女王のもとに生まれたジョルン王子は、姉のナルンヒルデが即位する宿命にあるということを理解し育った。人間の声が持つ力をあがめる文化において稀に見る歌の才能を見せたジョルンは、リフテン外部に位置するゴールド島にある、スカルドの静養所で学んだ。彼はそこで、東王国で最も名高い吟遊詩人らから学べる限りのすべてのことを教わった。ジョルンは、スカイリムの「スカルド王子」と呼ばれていた。

ジョルンはほとんどの青年時代を芸術や哲学的探究に費やし、東スカイリム全域と、それを越える地域から実に様々な芸術家、職人、演者を育てた。モーンホールド、ストームホールド、サッチ、エリンヒルで過ごした彼だが、西スカイリムの首都であるソリチュードを変装して訪れたという噂まである。また、政治や統治に興味はないと主張していたが、生まれ持った指導力のおかげで、どんな独創的な分野に身を置いてもリーダー的存在となっていた。戦闘と武力行使の策謀に関して受けた正規の教育はほんのわずかだった(といっても、ノルドの王子が何とか習得できるほどのわずかさだが)一方で、タムリエル全土を旅するのはいつでも危険な行為であった。旅をすることで、彼は問題への対処法を正統ではない方法で学んだのである。

第二紀572年にアカヴィリのディル・カマルがスカイリムの北東海岸を襲撃した時、ジョルンはリフテンにいた。ジョルンと彼の親しい仲間による「吟遊詩人団」は戦いながら海岸を進み、ウィンドヘルムへ到着したのは、アカヴィリによってその門が破られるまさにその時であった。ジョルンは戦いに身を投じ、それなりに慣れていた市街戦に加わったが、街の陥落も、戦いに向かったマブジャールンと「短命の女王」となってしまったナルンヒルデの殺害も防げなかった。

負傷し、精神的にもひどく落ち込んだジョルンは、ウィンドヘルムの略奪をどうにか無事に逃れた。王家生まれの責任を初めて感じた彼は、グレイビアードに援助を訴える決心をして、隠れながらも大急ぎでハイ・フロスガーへと向かった。その理由は明らかになっていないが、グレイビアードはスカルド王子に、ソブンガルデから英雄を召喚し、召喚者の言葉のために戦うスームを教えた。しかしジョルンの声では、スームは王家の勇気の呼び声となってしまい、召喚される英雄は灰の王、ウルフハース以外にいなかった。

今やスカルド王の称号を共に得たウルフハースとジョルンは東スカイリムのノルドを再結集し、リフトと、イーストマーチの外側領域から兵力を集め、その後リフテンを要塞化した。ウィンドヘルムから南に移動したディル・カマルが目にしたものは、ウルフハースの存在に触発されて怒ったノルドがリフテンを守り、しきりに戦いたがっている姿であった。それを見たディル・カマルは、レッドマウンテンの戦い以来、初めてリフテンを迂回してモーンホールドへ前進を続けた。アカヴィリの指揮者が立ち去るのを見て喜ぶだろうと考えたからだ。

その選択は致命的な誤りだった。ジョルンとウルフハースは兵を率いてアカヴィリ部隊を追跡し、ノルド軍はレッドマウンテンの戦い以来、初めてモロウウィンドに入った。アカヴィリ軍はストンフォールで、ノルドとアルマレクシア率いるダンマーの軍団の間で捕まった。大規模な戦いの行く末がどちらに転ぶかは不明であったが、爬虫類の魔闘士3人が率いる、アルゴニアン・シェルバックの部隊が予期せぬ介入を行ったことによって決着した。アカヴィリの戦線は突破され、海へと追いやられた彼らは、数千人単位で溺れ死んだ。

目的を果たした灰の王はソブンガルデへと帰っていった。3週間後のウィンドヘルムでは、ジョルンが王の宮殿の王座の間にて、上級王に即位した。

皆に対して情け深いファハラジャード王The All-Beneficent King Fahara’jad

第一章:立派な青年時代

ああ幸福な読者よ。センチネルの王座まで上り詰めた立派な話を始めとする、国王陛下の非常に恵まれた人生の話を、そして陛下の数えきれない長所と美点の列挙を、いかにして語ればよいのか。

ああ、敬愛する読者よ。我らが吉兆の王の家は貴族であり王族でもあるが、父はジャフルールのマカラの子孫、まさにアルアザル上級王の子孫である。同様に、母の先祖は、最も威厳ある名と功績を残したジゼーンをはじめとする、アンチフィロスの大公である。いかにもジゼーン大公に関しては、あまりにも誠実だったために、婦女の浴場に誤って入ってしまった際、直ちに自分の目をくりぬき、みだらな行為を未然に防いだという逸話が、詩人ベロウズによって伝えられている。

(アルアザル上級王については、知りたがり屋の探検家が「立派なアルアザルの偉業」の書を探している)

さて、皆に対して情け深いファハラジャード王がまだアンチフィロスの王子だった頃、ある日大公の庭で象牙の弓を使って野鳥狩りをしていると、大カラスがイチジクの木に止まったのを見た。するとファハラジャード王子は、「我はこのカラスを、オンシのまばゆい刀剣にかけて殺害せん!」と誓った。そうして王子は象牙の矢を象牙の弓につがえて放った。見よ、それはカラスの目に命中し瞬時にして死んだ。

その時、空から忌まわしいハグレイヴンが辛辣な呪いをもって落ちて来た。「そなたは我が愛情を注いだ子を殺したがゆえ、死なねばならぬ!その目を引き抜き、葡萄のように食らってやろう!」と叫びながら、若き王子を汚れたかぎ爪で脅した。そして大きな叫び声をあげながら、王子の眼球を引っかいた。

すると、天から金の光の筋が照らされ、永遠に壮大なるオンシがまるでまばゆい刀剣の上を闊歩するかのように降りてきて、「待て、悪魔の生き物よ」と叫んだ。そして、ハグレイヴンのカラスをひょうのように地面に落として打ち負かすと、彼女も同様に倒れ、神にひれ伏して情けを請い始めた。オンシは、「嘆願しても無駄だ。金切り声のうるさい女め。お前は我が特別に大事に育て守るべき運命の王子を脅かした。この貴族の青年ファハラジャードは、長年にわたる危難において人々を導く予言を与える者であるゆえ、お前は死なねばならぬ」と言って、ハグレイヴンの首をはねた。

ひどく驚いた王子は両目を覆い、もう一度見てみた時には、神もハグレイヴンもいなかった。それゆえ自分の目を疑った王子は聖堂へと急ぎ、オンシの司祭に起きたことをすべて話した。そして、司祭は王子が見たことは真実であると判断した。これが、第一の王室の予言であった。

君主の勝利、第三章Triumphs of a Monarch, Ch. 3

第三章:ダガーフォールの門にて

グランデン・トールの戦いの十数年後、平和だったハイロックの王国では、ウェイレスト、ダガーフォール、センチネルの商船がタムリエルの全港の遠くや近くで商売をしていた。ウェイレストにある父の商売の間では、配送した荷の追跡、収支バランス、通貨の変動を学んだ。だが、カンバーランドのピエリックは世界の本質を知っていて、自分の息子に単に平和と商売のやり方だけを学ばせても満足はしなかった。毎日朝にはカンバーランドの戦闘の達人とスパーリングし、昼は天気の許す限り軍馬に乗ってメネヴィアの重装竜騎兵と運動した。それはただの練習ではなかった。毎年夏の2ヶ月間は馬に乗ったエバーモア・キャラバンの護衛団の副官として旅に出て、山賊やゴブリンの襲撃者、リーチの民の部隊を片手では数えきれないほど撃退した。

私がまだ20歳だった第二紀541年、ブラック・ドレイクのダーコラクがリーチに勢力を広げ、野蛮な部族民を戦争に招集した。武器を長く手にしていたのは幸運なことだった。蹴られた蟻塚の蟻のように山の隠れ家から噴出してきたリーチの民は、雄叫びを挙げて略奪をしながらバンコライへと突入した。わずか3日の包囲の末、エバーモアはこの軍勢の手に落ちた。土地は略奪され、人々は大量に虐殺された。ホーリンズ・スタンドは比較的長く抵抗したが、最終的には異教徒の軍勢によって占領されてしまった。ビョルサエの向こう側にいる彼らは、数日のうちにウェイレストに迫ると思われた。

その頃は街が大きくなったせいで古い壁が限界に来ており、ガードナー王がウェイレスト周辺に新しく壁と胸壁を建てたことを皆が喜んでいた。地方から大勢の人が殺到してきて、街の壁の中にメネヴィア、ガヴァウドン、アルカイアが全て入っているように見えた。しかし、ウェイレストにリーチの民の嵐が突如現れると、その混雑もデイドラを愛好する異教徒の怒りから自分たちを守るための、小さな犠牲のように思えた。

このようにして、叙事詩にあるウェイレストの包囲が始まった。ストームヘヴンのブレトンは恐ろしい敵の攻撃から57日間壁を守り抜いた。攻城兵器が不足していたリーチの民は、新しい壁を破壊することも街を略奪することもできなかった。また、船が不足していたため、港を封鎖することも、街を飢えさせて人口を減らすこともできなかった。手詰まりだ。ダーコラクによるハイロックの侵略は終わったのか?

いや、そうではなかった。恐れなき凶暴なリーチの戦士は、そこまで我慢強くはなかった。ブラッド・ドレイクは、我々を中に閉じ込めておくよう壁の周辺にある護岸に十分な軍勢を残し、あっさりとグレナンブラへ去っていってしまった。奇襲を受け、新たに独立した都市国家カムローンが陥落して略奪された。そしてその後、ダーコラクは南へ、ダガーフォールへとその目を向けた。

幸運にもガードナー王が、重装竜騎兵を輸送するために我々の商船を使用するという助言に耳を傾けてくれた。それがきっかけで、ウェイレスト最高の槍騎兵を引率し、ダガーフォールの街門の前で固まっていたリーチの民の背後から突入した。ブラック・ドレイクの戦士がいかに完全な不意打ちを受けたか、私がどのようにダーコラクを倒して奴の不浄な旗を引き下ろしたか、ブレトンは皆知っている。我々が始めた仕事をベルガモット王のダガーフォール騎士が終わらせ、強風の前の秋の落ち葉のように破れた異教徒軍を追い散らしたことを、ブレトンは知っているのだ。

その後たったの2週間で、ダガーフォール、カムローン、ショーンヘルム、エバーモア、そしてウェイレストの王たちが最初のダガーフォール・カバナントに署名したところを、私は頭を伏せながら見ていた。

君主の勝利、第六章Triumphs of a Monarch, Ch. 6

第六章:ランセルの戦争——ウェイレスト包囲

第二紀563年は重大な年だった。ウェイレストの国王に即位してから、王妃を誰にするかが私と側近の関心事だった。ショーンヘルムのランセル王にラエレ王女という美しい娘がいて、ショーンヘルムにいる私の仲間がその娘をしょっちゅう私に勧めてきた。実際に、私はショーンヘルムの王女を受け入れる決心をほぼしていたが、センチネルを訪れた際にファハラジャード王の娘、マラヤ王女を初めて見た時に気持ちが変わった。その瞬間から、マラヤ以外にウェイレストの女王はいないと誓った。もちろん、他にも予期せぬ利点があった。彼女が持参金として2つの国の通商協定を持ってきたおかげで、皆が大きく繁栄したのだ。

悲しいことにランセル王は娘の手を取らなかった私に激怒し、ウェイレストの宮廷にいる大使を召喚した。566年の春、私とマラヤの結婚式にはランセルを招待したが、彼はカバナントの他の王たちと同様に、ショーンヘルムにとどまって怒りで煮えくり返っていた。

おそらく私はランセルの機嫌の悪さにもっと注意を向けるべきだったが、新しい花嫁と、イリアック湾界隈での商売の問題に夢中になりすぎたために、山地のショーンヘルムは遠く無関係のように思われた。この誤りによって、王座を危うく失うところだった。

1年以上もの間、ランセルは静かに軍勢を集結し、傭兵への支払いのために金庫を空にしていった。第二紀566年の収穫の月、彼は南に落雷が落ちる中軍隊を率いてショーンヘルムを後にした。ランセルがアルカイアとメネヴィアを進軍して通り抜ける直前まで、我々はその接近に気がつかなかった。ショーンヘルムの先遣隊がウェイレストの門に到達した頃、我々が急いで招集した民兵はまだ列を成して門を通り過ぎていた。これが、歴史を揺るがす幕開けの時だった。オールドゲートの槍騎兵隊の攻撃が我々の民兵を追い散らして門を占拠していれば、ウェイレストは1時間以内に攻撃者の手に落ちていたかもしれない。

幸いにも、私自身がカンバーランドの衛兵と門にいた。事の重大さに気がついた私は、自分の旗手に突撃を知らせ、オールドゲートの槍騎兵隊に対抗するべく門衛と家の兵士を率いた。兵士たちは鎧兜に身を固め、私は鎧を着けていなかったが、利点の多い魔法の剣、オリハルコンのメスを腰につけていた。オリハルコンのメスを使ったのはその時が初めてだったが、我々が槍騎兵隊に猛然と突っ込んでいくと、製材機の刃のようにきらめいてうなった。挑む敵が混乱した不正規軍ではなく武装した古参兵であることを急に理解した敵は、突如到来した雷雨によってさらに打ち負かされた。ひょうに激しく打たれた敵の馬は雷を怖がり、首や手足を刈るオリハルコンのメスに直面した。評判の高いオールドゲートの槍騎兵隊もたじろぎ、急に方向を変えてあわてて門から逃げ出した。

ランセルの主力が現場に到着した時、すでに我が軍は全員壁の中だった。門は固く閉まっていたが、ショーンヘルムの王は後に引かなかった。ウェイレストの街はまたもや包囲され、リーチの民のダーコラク以上の策略と周到な準備を持ったランセルは、攻城兵器を伴ってやってきていた。

君主の勝利、第十章Triumphs of a Monarch, Ch. 10

第十章:運命の召喚

読者の諸君、これが私の話だ。ここまで、私のカンバーランド家での気楽な青春時代、私の父ピエリック卿が通商の船で私を訓練してくれた経緯、戦争や国について、そしてダガーフォールの門にてダーコラク相手に初めて大勝利を収めたことや、カンバーランド鉱山で当家が掘り当てたオリハルコンの巨大な鉱脈のことも読んでいただいたと思う。ナハテン風邪が到来した悲劇によって私の父とウェイレストの王族全員が命を奪われ、我々の王国が大混乱の時代に指導者のいない状態になってしまった経緯もお分かりいただいただろう。ウェイレストの王座に、説得されて就任したことが私にとって不本意であったこと、即位式で太陽が金の円光を縁取ったことも、もうご存知かと思う。あの神々による賛同の予兆のおかげで私の疑念はすべて晴れ、最もねたんでいたライバルでさえ、心の底からの盟友と変わった。

ランセルの戦いの真の歴史と、ハンマーフェルのレッドガードや、我々が最も切実に援助を必要としていた時に来てくれたオルシニウムのオークを含み、どのようにしてそれが第二次の、より偉大なダガーフォール・カバナントへと導いたのかをこれで学んでいただけたと思う。タムリエルの自由な人々は、それが内部であれ外部からのものであれ、全ての脅威に対して共に抵抗することを誓ったのだ。

我々はすぐに試されることになった。第二紀578年、協定を結んでいたヴァレン皇帝が帝都から姿を消し、シロディールはまたもやデイドラの陰鬱な陰謀に支配された。ヴァレンの謎の失踪により、野蛮なリーチの民の子孫であるクリビア「女帝」がルビーの玉座に就任した。それ以降帝国の中心部は、狂気、殺人、腐敗に陥ってしまった。我々の民にとっては(実際のところ、タムリエルのすべての民にとっては)帝国の真の炎がまだダガーフォール・カバナントで燃えていることは幸いなことである。今はひどい時代だが、我々の運命は、我々の前にレマンの道々のようにまっすぐ、そして真実味を帯びて並んでいる。我々はシロディールを行進して偽の女帝とその血統すべてを倒し、タムリエルの帝国を取り戻さなければならない。そうすれば、血と炎ではなく、平和と正義による国の統治が今一度実現されるだろう。

死の幻惑The Illusion of Death

[断片]

…その後、猿の娘ダルサをもてあそんだために、マルクは自らの世紀の秘跡をストーンメドウズで過ごしたが、目は焼け、舌は腫れ上がり、皮膚はまだら模様になって、左手の親指は常に塔の星を指していた。そして、アレッシュの影が絶えず彼に話しかけ、概念の臓器をノコギリの言葉でギシギシとこすり、苦痛によって知恵をもたらした。

そして彼は、その猿の血が流れる中で、グリフを使って懇願のスカープに彼女の言葉を記録し、人面の石には血から燃える火によって七十七の不動の教義が刻まれた。そして、労働が劣化しようとも自分の実体を惜しむことなく破壊したのは、死が幻であることを知っていたからだ。死んでいるにもかかわらず、アレ=エシュが話すナイフを貫かなかったから?そして、ペリナルはウマリルの死で彼自身死んだのに、彼女の死の目撃者ではなかったのか?そうするとマルクは、真の命とエルノフィックの破棄に捧げられた正しき到達が、死の幻惑を越えて存続することを知っていたが、それは腐敗を消し去る原動力がアーケイの円環でさえ打ち負かすことができるからだ。

聖アレッシアの裁判Trials of Saint Alessia

[聖アレッシアの裁判からの断片]

はるか昔のその当時、アカトシュはアレッシアと契約を結んだ。彼はオブリビオンのもつれた糸を集め、それを血まみれの心臓の腱であっという間に編んでみせると、アレッシアに贈ってこう言った。「これを、汝の血と誓いが事実であるかぎり、我が血と誓いが汝にとって事実であるという我が印とする。この印は王者のアミュレットとなり、霊魂の王である我と、定命の女王である汝の間で契約が結ばれよう。汝は定命の者の肉体すべての証人となり、我は不死の魂すべての証人となろう」

そしてアカトシュは胸から一握りの燃える心臓の血を取り出し、アレッシアの手に渡しながら言った。「これも、我らの結ばれた血と、固く誓った誓約の印となろう。汝と汝の後裔が王者のアミュレットを身につけているかぎり、永遠の炎であるこのドラゴンファイアが、人類と神々すべてにとって信義の印として燃え続けるであろう。そしてドラゴンファイアの火が灯っているかぎり、我が心臓の血がオブリビオンの門を堅く保つことを、汝とそのすべての子孫に誓う」

「ドラゴンの血がその支配者に強く流れるかぎり、帝国の栄光はいつまでも拡大するであろう。ただし、ドラゴンファイアが弱まり、王者のアミュレットを身につける我らの血を受け継ぐ者が誰もいなければ、帝国は闇へと陥り、失政の悪魔の権力者がその地を統治することになろう」

—ドラゴンファイアの再点火式より

同胞団の偉大な導き手Great Harbingers of the Companions

この歴史は、第二紀ジョルバスクルのサークル、千里眼のスワイクによる記録だ。私は文才に恵まれなかったが、自分の前の同胞団の歴史を学び、私の代でそれが失われることのないよう記録を始めた。ここには有名な同胞団の導き手の一覧を記す。闇を貫き、我らをソブンガルデの栄光に導いた者達だ。

導き手のメモ:同胞団にはイスグラモル以来本当の統率者はいない–誰にもジョルバスクルで鼓動する偉大な心臓を統率するような強さはなかった。魔術師や盗賊などは階級によって何を着るかも変わって来るが、我々同胞団は自ら栄光の運命を掴める。導き手は助言し、問題を解決し、名誉に関する疑問が上がったら解明する。同胞団は何千年もの間ジョルバスクルにあり、導き手の中には悲惨な者も卓越した者も共に存在する。腕や心、その魂によって。歌や行動に影響を与えた最も栄光ある導き手を記載する。

イスグラモル:最初の導き手、最初の人間、言葉をもたらす者、そしてはるか昔、遠く離れた地で初めて同胞団に栄光をもたらした者。もっと良い者が彼について書いているため、ここには記載しない。

川のジーク:帰還中のジョルバスクルの船長で、スカイフォージの発見者、ホワイトランの創設者、時と共に失われた、同胞団の最初の誓いの番人。他の乗組員は征服に栄光を求めていたが、彼の乗組員は最初に定住し、戦争に向かない者がその地で遅れた時、彼らの護衛を勤めた。

撤退者ムライフウィール:イスグラモルの死から数百年後、同胞団は傭兵より少しましな雇われ兵士の集団だった。戦争で戦うために雇われたが、個人の名誉を追求したため、盾の兄弟は否応なく戦場で顔を合わせた。ムライフウィールの知恵により、いかなる戦争や政治的な争いにも関与しないと宣言するまで、同胞団の名誉の絆は崩壊する寸前だった。彼の優れた統率力のおかげで、今日の同胞団は公平な調停者として、戦場の栄光とともに有名だ。

高慢なシロック:最初のアトモーラ人以外の導き手。これはノルドが自分達をノルドだと考え始め、純粋さとイスグラモルの遺産を巡って大きな論争があった頃だ。シロックは最初従者としてジョルバスクルに来たが、このレッドガードは当時の名誉のない戦士から不当な扱いを受けた時、すぐに勇気を証明した。導き手の沈黙のタルバーを助けた後、彼は名誉ある同胞団の地位を得た。盾の兄弟で最も有能な戦士として知られ、速さと狡猾さではあらゆるアトモーラを上回った。彼が導き手となった時間は短かったが、その剣さばきは訓練を通して新しい同胞団へ受け継がれている。

よそ者ヘナンティア:最初のエルフの導き手。前のシロックのように、彼もまたジョルバスクルに着いた当初は嘲りの的で、時期的な事もあって(第一紀が終わるところだった)エルフは正式な同胞団にはなれず、殿堂の中を見ることさえほとんどの者に許されなかった。日中のヘナンティアは謙虚に、頼まれた事を何でもやった。夜は中庭の外で激しく訓練し、翌日の仕事を再開するまで数分しか眠らなかった。彼は数名の導き手に尽くし、休まず不満も言わず、心と体を磨き続けた。長い年月が過ぎ、彼は同胞団に名誉のあり方を教える助けとなる者として信用されるようになった。

弟子の1人が導き手となり、老人となった時、ヘナンティアは死の床に付き添った。導き手はすべての同胞団を集め、彼の後継者にヘナンティアを指名してこう言った。「エルフもノルドの心を持って生まれる事がある」その日同胞団には武器を置く者もいたが、真の名誉を知る者は残った。我々は彼らの遺産を担っている。

鋭い眼のマッケ:その美しさで知られる導き手だが、それを理由に過小評価した者は同じ過ちを繰り返せないだろう。敵軍の半分を睨み倒し、残りを単独で倒したと言われている。導き手として8年目に行方不明になった理由は不明だが、多くの中傷的な嘘が理由として挙げられている。

長鼻のキルニル:第二紀の暗黒期の後、相次ぐ不誠実で不名誉な導き手がジョルバスクルに対する権利を主張していた時、真の心を持った同胞団を荒野に集め、ジョルバスクルに猛攻撃を仕掛けたのが、長鼻のキルニルだった。昔ながらのやり方で強奪者を倒し血を流して名誉を取り戻した。彼は若く新しい同胞団に規範を示す、サークルと呼ばれる信頼できる相談役(偉大なるイスグラモルの船長の議会から名付けた)を創設した。

名誉の概念を壊れない伝統として、彼は同胞団が進む道を定めた。我々は再びイスグラモルの下へ向かい、ソブンガルデへと進めるようになった。

秘術師ガレリオンGalerion the Mystic

荒れ果てた時代だった第二紀の初期、無名の貴族ソルリチッチ・オン・カーのジルナッセ卿の農奴、トレクタスとして生まれたのが、後のヴァヌス・ガレリオンである。トレクタスの父と母は普通の労働者だったが、父はジルナッセ卿の法に逆らい、密かにトレクタスに読み書きを教えた。奴隷が教養を持つことは自然に反しており、奴隷自身と貴族にとって危険な存在であると、ジルナッセ卿は教えられてきた。ソルリチッチ・オン・カーにある本棚はすべて封鎖されており、ジルナッセの砦の外では、すべての本屋、詩人、教師が禁じられた存在だった。しかしながら、少しずつ密かに書物と巻物が持ち込まれ、ジルナッセの目を盗んで出回っていた。

トレクタスが8歳になったころ、書物を持ち込んだ者たちが逮捕され、投獄された。無学で信心深く、夫を恐れていたトレクタスの母の裏切りによるものだと言われているが、他の噂もある。裁判は存在せず、すぐに刑が執行された。トレクタスの父の遺体は、何世紀もすさまじい暑さが続いているソルリチッチ・オン・カーの真夏の時期に、何週間も吊るされたままにされた。

3ヶ月後、トレクタスはジルナッセ卿の元から逃げ出した。サマーセット諸島までの道のりの中間地点、アリノールまでたどり着いた。道脇の水路で丸くなって死にかけていた彼は、吟遊詩人の楽団の手によって介抱され、食事と寝床の見返りに雑用係として雇われた。吟遊詩人の1人、予言者ヘリアンドがトレクタスの精神を試したところ、内気ではあるが、劣悪な環境で育ったにも関わらず、不思議なほど知的で洗練されていると分かった。アルテウム島で秘術師としての訓練を受けていたヘリアンドは、少年の中に自分と共通するものを感じた。

サマーセットの東の果て、ポテンサで一座が演奏をしていた時、ヘリアンドは11歳になっていたトレクタスをアルテウム島へ連れていった。島の賢者イアケシスはトレクタスの資質を見抜き、生徒として受け入れ、ヴァヌス・ガレリオンの名を与えた。ヴァヌスはアルテウム島で精神、そして身体を鍛えた。

そして、魔術師ギルド最初のアークマギスターが誕生した。彼はアルテウム島のサイジックから訓練を受けた。幼少期からの欲望と不当な扱いから、彼は知識を分かち合う哲学を身につけていた。