木工師助手メール 28週間目

192日目
完成したばかりの思い出の品の箱を通りに運び出して、戦いの前に錬金術師のクラリのところに届けるつもりだったんだ。数週間前に注文された品で、「勇敢なる小さなスクリブ」のシーンを蓋に彫るように言われてた。ファンシー・ファーが箱を見ようと近づいてきて、彫り込まれたシーンを手でなぞった。彼女の目に涙が浮かんだのさ。

193日目
「勇敢なる小さなスクリブ」とファンシー・ファーはつぶやき、出来たての思い出の品の箱を眺めまわした。「私の大好きな話だったの」と彼女は言った。そしてその眼には涙があふれていた。「父がよく読んでくれた。家にいる時にね」。何かが起きようとしていたが、それが何かは見当がつかなかった。「あなたが作ったの?」と彼女が尋ねた。そして当然のように俺は頷いた。

194日目
「勇敢なる小さなスクリブは気高い魂の物語よ」ファンシー・ファーは続けて言った。「そしてその魂を素晴らしい正確さで描き出してる」。それに対して俺は木工が好きだと答え、お気に入りの物語であることも伝えた。彼女は俺の眼を覗き込んだ。「こんな才能のある職人を殺せないわ」と彼女は言った。「こんな状況になるなんて、どうしたらいいの?」

195日目
ファンシー・ファーは俺を殺したくなくて悩んでいる間、シェドリック治安官が彼女に近づいた。俺は何が起こってるのかよく分かってなかったが、どうやら勇敢なる小さなスクリブへの共通の思いのおかげで命拾いしたらしい。「このような状況での解決策はひとつしかない」とシェドリックが言った。「教えてちょうだい」ファンシー・ファーが涙をぬぐいながら言った。そして奴は言ったんだ。

196日目
「結婚だ!」ファンシー・ファーと俺は跳びあがった。「それが唯一の論理的な解決策だ」。シェドリックは続けた。ほとんど分からないほどの薄笑いを浮かべながら。「双方の財産への支配権を分かち合え、しかも誰もその過程で死なずに済む」。ファンシー・ファーを見た。彼女はそれなりに魅力的だったが、やっぱり戦いに賭けた方が良かったのかもしれない。

197日目
ほらよ、クラフト材料だ。とりあえず、ファンシー・ファーと俺は酒場に戻って語り合った。なんと彼女はとても面白くて若い女だった。乱暴でねちっこくて俺の最大のライバルのカジートの娘にしてはな。この結婚ってやつを試してみようと思う。何も問題は無いよな?

198日目
確かにオークの伝統に反してる。カジートのあらゆる教義にも違反してる。だがファンシー・ファーも俺も、伝統や教義をスキーヴァーのケツにくれてやるつもりだ!俺たちは財産を一つにまとめて、夫と妻としての協力と敬愛の立場から、稼業を切り盛りすることにした。豪放なヤツも違法なヤツもだ。ざまあみろ、猫野郎め!

199日目
今日、ファンシー・ファーと俺は華麗なる前足を訪ねた。奴は明日、裁判のために首都に送られることになってたが、ことの成り行きを伝えておきたかったのさ。予想通り奴は激怒した。ハントマザーが言ってたように、復讐は横に回った時が一番だ。この裏切りを後悔させてやると奴が誓うのを耳にしながら、俺たちは手に手を取って歩み去った。

200日目
よう、槌のマーゴッグとファンシー・ファーだ。毎日は恐ろしく忙しくなったが、材料は欠かさず送ると約束するぜ。他の仕事も繁盛してる。シェドリック治安官は目を光らせてるが、敵意というよりは興味を持ってるように思える。本当に信じられないが、勇敢なる小さなスクリブみたいに幸せだ!