ブラックウッドの本

Books of Blackwood

アスタラからの手紙Letter from Astara

エラム

ブラッドラン洞穴の中の遺跡はずっと昔に破壊され、近くの村によって遺体安置用の穴に転用された。とは言え、聖域そのものは元の状態のままだ。計り知れない危険がある場所という洞窟の評判は、今も明らかに残っている。これは我々の役に立つ。

戦いながら進むのは大変な労力を要するだろうが、扉は遺跡のはるか奥深くにある。長い道のりだ。注意してくれ。この聖域を再び開けるつもりなら、片付けなければならない。詳細を渡そう。

それから、これは忘れるな。死だ、我が兄弟。それが鍵だ。

マトロン・アスタラ

アステラ女公爵のメモDuchess Astella’s Notes

もうすぐ、愛するマセンが戻ってくる。でもまだやることが沢山ある!

儀式のためには護符、つまり彼の防具をハートベインの茂みの下に埋めなければならない。あの植物の強烈な毒は、妨害する霊魂を遠ざけておくためのもの。問題はどこに置くかよ。

彼の胸当ては井戸のそばに置こう。彼の心臓が再生するように。

彼の兜は壁のそばに置こう。近づいてくる危険が見えるように。

彼の盾は門のそばに置こう。この城と彼の霊魂を守るために。

最後に、彼の剣はある祖先の手に委ねるわ。危険はあるけれど、やってみるしかない。

アボール評議員の日記Councilor Abor’s Journal

他の元老院の者たちとは違って、私はレオヴィック皇帝に信頼されていた。ロングハウス帝の秘密の真実を知っていた。まあ、そのほとんどだが。私と大司祭。その時はそこに含まれることが名誉のように感じられた。今?私は生命の危険を感じて、この忌々しい監視塔に隠れている。

知っていることを全て書き綴っておくのが最善だろうと判断した。四つの野望とそれがどのように作られたかについて。メエルーンズ・デイゴンとの取引について。あらゆることを。新しい宝物庫の場所を知るのはおそらく私だけだろう。ヴァレンの軍勢が近づいてきたため、レオヴィック皇帝が野望を移動させた場所だ。

この件は全て終わったのではないかと思っていた。レオヴィックが死に、ロングハウス帝が滅びたときに。ファルル・ルパスから受け取った手紙によると、それは間違いだった。以下は四つの野望が収められている3つの宝物庫の場所だ。

〈続く数ページは破り取られている〉

アリジンダの日記Alizinda’s Journal

栽培の月 12日

ああ、彼ったらすごく優しく「アリジンダ、君は私の月夜、昼の太陽だ」なんて言うの。でも、貴族の人ってこの程度のことは恋人に言うの?時々マセンは、私のことをただの一時的な遊び相手としか見てないんじゃないかと不安になる。彼が口説けば手に入れられるだろう、ニベンの女性たちにはとても敵わないと自分でも分かってる。私から彼にあげられるものはほとんど何もない。たとえそうでも、彼からは一番高いアリクル砂漠の太陽よりも温かい愛を感じている。どうか分かっていてもらえますように。

年央 8日

彼は私を愛してる!長身のパパのズボンにかけて、私があんな人に愛されるなんて、一体どうして?彼には無駄に心配してると言われた。彼の心は私のものなんですって。それも私だけの!結婚のことさえ口にした!想像できる?夢が全部叶いそう!

年央 16日

私は本当に馬鹿だった。愛?そんなの残酷な冗談よ。マセンの結婚や旅の話は、全部ただの嘘だった。彼が手に負えない軽薄な行為にふけることを許す甘い言葉。彼が誰かにプロポーズしたって、他の女性たちが教えてくれた。まだ見たこともない、北の地方の跡取りに。女公爵は誇りに思ってるでしょうね。でも、私は笑い者にされない。これ以上は。

年央 18日

準備は整った。マセンは今夜、小屋で私と会うつもりでいる。今夜でなければ。私の怒りは夜ごとに薄れ、悲しみが取って代わっている。彼は私の心を踏みにじった。私を利用した!今報復しなかったら、ずっとできないんじゃないかと思う。あなたが憎いわ、マセン!私に愛する人を傷つけさせる、あなたが憎い!

アルディアの日記Ardia’s Journal

「砕かれた遺跡」の探検

ジギラはこの奇妙な遺跡に調査員を護衛する代金をたっぷり支払ってくれた。正直言うと、ここで何が見つかるか知ってたら、ただでもついて来たかもしれない。

デイドラのデザインは今までに見てきた何にも似てないけど、異様なほど親しみを感じる。最初の印象より、明らかに広大でもある。まだそれほど進んだようには思えないが、施設内の風景は入口の外からの観察と調和していないように思える。おそらくメモに地図を加えた方がよさそうだ。

* * *
地図を描いておくべきだった。グループから離れた瞬間に、ジギラの調査員が裏切った!転んでマントが破けたおかげで逃げ出せた。どこへ行くかを記さなければならない。おそらく遺言として。

* * *
左。左。扉から出る。裂け目を越えて。完全に振り返った。近づく音が聞こえる。時間がない。

アロイシウスのメモAloysius’s Note

私を見つけた人へ。この手紙とかばんに入った指輪をレヤウィンのターシャ・ファルトーに届けてください。

最愛のターシャ

君は「ほら、撫でてあげて。ただの無害なモングレルよ」って言ったね。

僕たちがどれだけ間違ってたか、ほとんど分かってなかったよ。あの悲し気な犬は前兆であり、僕の死の導き手だったんだ。

あのレヤウィンでの完璧な夜は今でも頭に浮かぶ。喜びに満ちた君の顔。まぶしかった。通りを歩いた時の君は太陽の光で輝いてた。できたら、本当にできたら、それをもう一度見たかった。できたら。

ポケットの中にある指輪を渡して、計画どおりにプロポーズすればよかった…

手を伸ばしてあの忌々しい犬を撫でようとせずに。もちろんあいつは噛みついたよ。だけど、その表面的な怪我は単なる始まりに過ぎなかった。

当然ながら、手から血が噴き出している状態で君にプロポーズなんかできなかった。だから僕は我慢して、黙ってその場を離れて一番近い治癒師のところに行った。そこでは親切なアルゴニアンが怪我に包帯を巻いてくれて、痛みを抑えるために薬用ヒキガエルをくれた。不幸にも、それは本当の負傷に対しては貧弱すぎる鎮痛剤だと分かった。

日が沈むと、僕は高熱による狂気じみた夢に苦しめられた。最後に覚えてるのは、自分の服を引きちぎって吠えながら夜の中へ駆けて行ったことだ。目を覚ましたら、誰かの鶏小屋で、血と羽にまみれてた。

どうか分かってくれ。これは君のためにやる。この呪いを受けたままもう一度君に会ったら、危害を与えてしまうかもしれない。そんなことになったら、自分が許せない。だから会わない。渡せなかった指輪を遺すよ。これは他の誰でもない、君のためのものだった。

いつまでも君を愛する
アロイシウス・フルヴァヌス

イナリースからの手紙Letter from Inalieth

バスティアン様

私を覚えていらっしゃるでしょうか。計算だと、そろそろ15歳におなりでしょう。ほとんど大人ですね。最後にお会いした時は本当にお小さかったですが、何年もあなたのことを考えておりました。

私は亡きお父様とご結婚される前から、あなたのお母様の召使をしておりました。お母様が亡くなられてからも、しばらくの間はお世話をさせていただきました。私があなたをダガーフォールのシルヴェッレ家にお連れして、何ヶ月かそちらにお仕えしたのです。ですが、まだ小さい内に去らねばなりませんでした。

私は具合がお悪く、もう長くないことをお分かりになっている時にさえ、お母様が一番気にかけ、心配していたのがあなたであることをお知らせしたいのです。お母様はあなたの教育やその他の資金を確保するため、持参金の中から宝石を取り分けておいででした。そしてシルヴェッレ家を離れることが許されたら、すぐにあなたをお姉さまのところにお連れして、一緒に暮らせるようにして欲しいと私に依頼なさったのです。クラレーヌ様はあなたよりもかなり年上で、お父様が屈辱を受けた時にはすでに幸せな結婚をなさっておいででした。なのにどういう訳か、シルヴェッレ家はあなたを解放するどころか義務を負わせたのです。あなたの旅路が続きそうだと思われた時に何度もお願いしましたが、満足のいく返事は決して得られませんでした。その後間もなく私は解雇されました。

私は今、レッドファーの村に住み、宿屋〈ハーティー・ホーヴァー〉で働いています。グラーウッドには何人か家族もおり、最近は十分に満ち足りています。もしお手紙をくださるなら、あるいはこちらの方にいらっしゃるようなことがあるなら、元気だと一言お知らせいただけたら、こんなに嬉しいことはございません。

心からの愛情を込めて
イナリース

ヴィヌスのメモVinnus’s Note

オーサス

愛しい人よ、探していたものを見つけた。石は間違いなく何らかの闇の力、発見された場所から考えると恐らくメエルーンズ・デイゴン自身の道具だ。だが、これを満足いくまで調べられる機会は得られなかった。彼の領域に不法侵入している間に、デイゴンやその従者の注意をひくのはあまりいい考えと思えない。

この仕事が私の最後になりそうな気がする。私を見つけた人にぜひお願いしたい。もしあなたが味方なら、この石をレヤウィンの戦士ギルドのオーサス・ポンタニアンへ届けて欲しい。あのデイゴン信者たちが私たちに対する武器にする前に、彼がこの石の目的を解明できればいいのだが。

それから、彼の人柄については謝っておく。オルトス、これを読んだら私の新しい友人に親切にしてくれ。これを届けるため、それは長い旅をしたのだ。

ウェアシャーク船長のサーガ、2巻The Saga of Captain Wereshark Vol. 2

沈んだ墓地にとらわれ、ドラウグルの群れに囲まれ、古代アンデッドのプリンスに直面したとき、海賊の船員が応じる方法は沢山ある。プリンス・ヴァウグルの要求に対する強きフリッカの答えは、もっとも直接的なものだったかもしれない。大股で頭蓋骨が散乱する玉座に近づき、プリンス・ヴァウグルに向かって嘲るようにニヤリと笑うと、炎のような王冠を叩き落とせる強さで彼をぶん殴った。

「戦いへ!」強きフリッカは叫んだ。「栄光のために!」。

一度は尻込みしたウェアシャークの海賊たちが即座に応じた。怒号や叫び声が湧き上がると、海賊たちはアンデッドへの恐怖を忘れ、周りを囲むドラウグルに棍棒や、短剣や、拳を叩き込んだ。完全に不意打ちを食らわされたスカイリムの忌まわしい死人は、当初敗北したも同然だった。

残念ながらすでに死しているドラウグルは、一般的な盗賊よりも棍棒や短剣に対する強さを備えていた。我らが海賊が連続で殴打を放っても、プリンス・ヴァウグルの軍勢は同じようにやり返してきた。最初にやられたのは羽のつま先のガーンだった。彼の伝説的なスピードでさえ、矢の雨を避けきれなかったのだ。我々がレッドミスト島から助け出した、化粧をした人食い部族の2人が墓まで彼についていった。

戦いはすぐに我々が不利になった。強きフリッカの大斧が次々にドラウグルを真っ二つにしても、ヴィミー・ラクロイックの輝く短剣が目を、耳を、内臓を奪っても、ドラウグルは押し進み、叩き切り、甲高い声で笑った。ひしめく船員の中央で身動きがとれなくなった私は、自分の棍棒を振り上げ、覚悟を決めた。

だが、征服されるその前に、狂乱の魔術師ネラモが炎の環を放つと、朝の太陽の中の明るいオレンジ色の花のように広がった。炎は一番近くにいたドラウグルを灰になるまで焼き尽くし、残りを追い散らした。「逃げろ、この馬鹿ども!」ネラモが叫んだ。「地表へ!財宝を運べ!」そこで我々は財宝を運んだ。

海賊たちはそれぞれ何であれ運べるもの、黄金、ゴブレット、燭台、あらゆる高価な金属や高価な宝石がはめ込まれたものをさっとひと掴みすると、やってきた方向に逃げだした。

恐ろしく巨大なドラウグルが我々の行く手を塞いだが、硬き鱗の者と毒の短剣が静かな怒りと共に切り裂いた。私と他の者が死体を飛び越すと、硬き鱗の者が後方を守ってくれたが、彼の顔に失望の色が浮かぶのが見えた。またしても、好敵手にも見える相手が、彼をシシスのもとへ送ることに失敗したのだ。

ずぶ濡れの広間全体が大きく振動したとき、我々はほとんど地表に到達していた。我々はよろめいた。いつものように前を行く二つの傷のガレナが、最初に危機へ気づいた。我々がこじ開けた扉が自動的に閉じつつある。止める方法を見つけなければ、永遠にこの沈んだ墓地に閉じ込められてしまう!

だが、石の扉が閉じる前に彼が戻った。船長だ!たなびくシルク、小粋な王冠、大量の色とりどりの羽を見間違える者などいない。ウェアシャーク船長は明るく光を放つ宝石を両手に持ち、古代ノルド語と思われる言葉を叫んだ。彼の耳に残る抑揚は、プリンス・ヴァウグルのそれを真似たものだった!閉じかけた扉は振動し、やがて止まった。

安堵の歓声が上がり、ウェアシャークの船員たちが開いた扉に殺到して駆け抜けると、背後でドラウグルが唸り声をあげた。最後に現れたのは強きフリッカだった。私は彼女がその広い背に、羽のつま先のガーンを担いでいるのを見た。

最初は、彼女がそこまでの危険を冒した意図が理解できなかった。ガーンは死んでいるのだ!だがその後、私は二つの傷のガレナがいつも言っていたことを思い出した。ウェアシャークの船員は家族だ。家族は誰一人置き去りになどしないのだ。

ウェアシャーク船長のサーガ、3巻The Saga of Captain Wereshark Vol. 3

[これより前の数ページは破り取られている]

我々が凍った島の地表に到着するやいなや、プリンス・ヴァウグルの恐ろしい言葉が響き渡った。それはあたかも凍り付いた空気そのものが語っているかのようだった。

「それは我が財宝だ、定命の者め。我が遺産だ。お前たちに盗むことなどできぬ。偉大なる北風が私に仕えているのだ!」

だが、我々がペールスピリット号の伸ばされた上陸用の橋を急いで登り、盗み出した戦利品を運び入れると、もう追って来たドラウグルが水中の墓地から現れることはなかった。大量の財宝と共に逃走する、熟練の海賊の船員にふさわしい迅速さで、我々は巨大なウェアシャークの船の出航の準備を整えた。船を守るために長弓を構えた海賊を乗せ、死して久しいドラウグルのプリンスから盗んだ財宝を腹いっぱいに詰め込んだペールスピリット号は、その深紅の帆を広げた。

凍った島とその水没した墓地を後にすると、北からの強風が帆を膨らませ、同時に新たな雪の結晶が我々の周囲で渦巻いた。だが辛うじて島を脱出したところで、風が我々を裏切った。荒れ狂っていたスカイリムの沖が穏やかな湖となり、博学な観察者でさえガラスと見まごうばかりに静止した。音もなく、風もなかった。スピリット号の船体に打ち寄せる波までもが無音だった。

この巨大な船に乗る者たちにとって、それは間もなく凍ってしまうことを意味するようなものだったが、それよりもさらに恐ろしい運命が私の頭に浮かんだ。プリンス・ヴァウグルが脅したように北風を止めている。漕ぐことも出来るが、ひどく消耗する作業な上に遅い。船を漕いで無事浜辺にたどり着くには、数日、いや数週間かかるだろう。おまけにペールスピリット号に詰まっているのは黄金で、食料ではない。黄金を食べることはできない。我々はこの静かな海の真ん中で、プリンス・ヴァウグルに水中の墓の中から残酷な、光を放つ目で見つめられながら飢えてしまうのではないか?

「いいや!」とウェアシャーク船長は宣言した。「やられはしない!俺は埋葬されたプリンスの宝石を手に入れた。それとレッドミストの島で発見した巻物で、この魔術を打ち破ってやる!」

強きフリッカが口火を切り、海賊たちと私は歓声を上げた。我らが船長はどんなに切迫した状況であっても、我々を失望させたことは一度もなかった。今回も彼がしくじる心配はない。プリンス・ヴァウグルは古代の者で強力かもしれないが、ウェアシャーク船長は私が航海してきた中で、最も機転の利く船長だ。

快活にお辞儀をして手を振ると、ウェアシャーク船長と人食い司祭クラックティースはウェアシャークの私室へと入っていった。逃亡中のレッドミスト島の女王と共に、脱出すべく魔法を手なずけてやる、と船長は断言した。

船長と骨の女王が仕事に取り掛かると、残された我々には何もやることがなかった。ネラモが自らの手で問題を解決しようと心に決めて空中に火花を放つと、ヴィミーがフルートで陽気な音楽を奏でた。

他の何人かは腕相撲かサイコロに興じていたが、より勤勉なものは強きフリッカの監視のもと、甲板の血を掃除し、ロープや帆の確認を行った。我々は風が戻ることを確信していたので、その時のためにスピリット号を万全の態勢にしておく必要があった。

数時間が過ぎた。朝が昼に変わり、二つの傷のガレナと、常に影の如く彼女に付き従う二人の無口なボズマーがその日の食料を配布した。我々はとても早く食べ、とても大声で自慢した。なぜなら凪いだ海の耳に刺さるような静寂が、我々皆を恐怖させたからだ。ヴィミーの陽気な曲さえも悲しげになっていった。その時だ。帆のはためきや木材のきしむ音もなく、船体に当たる泡の音が沸き起こった。動いた!

近づいて来る道化師祭りに声援を送るため、ダガーフォールの壁に向かってわめきたてる興奮した子供のように、私や他の海賊たちはペールスピリット号の欄干に体を押し付けた。ペールスピリット号は動き、船首から泡が広がったが、帆はだらりと垂れ下がったままだった。風もなしにどうやって航海した?

船尾で二つの傷のガレナが喜びの声を上げ、我々を手招きした。我々は船尾に押し寄せ、波の下にある二つの巨大な貝と、上陸用のボートぐらいもある大きさのヒレが泡立てるようにパタパタと動くのを見た。自分の目が信じられなかった。巨大な海亀だ!

どうにかしてウェアシャーク船長と人食い司祭クラックティースが、古代の海の大物を呼び出したのだ。海亀は風でさえ敵わないような速度でペールスピリット号を押した!

我々が圧倒されて眺めていると、私室からウェアシャーク船長と骨の女王が乱れた服装で現れた。どちらも行ったばかりの大仕事により紅潮していて、その時になって初めて私はレッドミスト島で行われていた儀式の話を思い出した。おそらくこのような文書には生々しすぎる話を。船長と司祭が私室で使った魔法が何であれ、それは成功したのだ!

輝く黄ばんだ歯で微笑みながら、クラックティースは髪につけたカタカタと音を鳴らす骨のお守りを払い除け、海を指さした。「見よ、純朴な海賊たちよ。古代の海の婦人たちを。ナールノーズとステゴフィンズだ!お前たちの船長の妙技が、彼女たちの支援を獲得した!」

岸に辿り着くまで一晩はかかるだろうが、私にはもうこの穏やかな海から逃れられることが分かっていた。

ヴェヨンドの伝説Legend of Veyond

イレルニル・デュレリによるガイドと怪談

崩れた壁の奥深く、記憶が語ると言われ死者が生者と交流する場所では、他に類を見ない財宝が待っている。その起源は知られていないが、ヴェヨンドの遺跡に踏み込む勇気を持つ者たちが、遠い昔に死んだ者たちから語られた言葉を持ち帰っている。

もっとも注目すべきは、療養中の母の病の治療法を求め、怪物や夜の獣と戦いながら広間を進んだ若き冒険者の幽霊だ。彼は地中に埋められた回廊で敵と戦う姿を見ることができる。彼は毎回襲撃にあえぎ、まるで声が聞こえているかのように母と話す。あたかも自分が戻ることを伝えて安心させるかのように彼女と話す時もあれば、怒りに満ちた魂をなだめようとする頬につたう涙が見られる時もある。

遺跡の別の場所では、岩場の間に遊ぶ子供たちの声を聞くことができる。鍛冶屋の槌の音が聞こえることもあるが、それは星が雲の向こうに姿を隠した夜だけだ。さらに珍しいものとしては、嵐の間、雷が壁の割れ目を走る直前に、詠唱し、未知の言葉で話す声を聞くことができる。ヴェヨンドが他に何を抱えていようと、はっきりしていることがある。この場所が黙って死者やその秘密を放棄することはない。

ウェルキンド石についてOn Welkynd Stones

魔術師ギルドの学者フィレンルの、頭脳と献身的な研究からなる記録された知識に関する著述

本書で論じた宇宙地質学的な機器に関するより基本的な情報については、同僚の学者タネスのレディ・シンナバーによる「エセリアルのかけら」を参照されたい。

ご承知のように、ウェルキンド石とは膨大かつ未だ解明されていない能力を持つアイレイドの道具である。この石は、大いなる魔術の力の源として一般に高い需要がある。その起源については、石自体がタムリエルに落ちてきたものであることを示唆する記述が数多く存在するという事実以外に語れることはあまりない。この石がどこからどういった目的で来たのか、そもそもアイレイドが発見する以前からこの石に何らかの目的があったのかどうかは分かっていない。だが、この石が地面に落下し、偉大なる魔術師たちの仕事の助けとなったと最初に記録された時から、ずっと使用され続けていることだけは確かだ。

ウェルキンド石の色は青く、偉大なるアイレイドの街には欠かせない素材だった。アイレイド滅亡以来、この石はあらゆる個人的な利益や目的のために集められ、使われてきた。言うまでもないが、これらの石に倫理的な傾向はない。石はどこまで行っても石なのだ。

本書では詳細に述べないある種のウェルキンド石の存在は注目に値する。と言うのは、闇のウェルキンド石について多くのことが知られているものの、未だ謎に包まれている部分も数多くあるからだ。この変異型は、とりわけ純粋に破壊的な類の魔法を蓄えているように思われる。きっかけもなく爆発し、これまでに技術や作品の回収を目的とした遠征でアイレイドの街に踏み込んだ数多くの研究者やトレジャーハンターを死に至らしめてきた。まるでアイレイドが防衛を付加するものとして、闇のウェルキンド石を使っていたかのようである。とても危険なためこの石は遠征隊の間ではよく知られていたが、抑制された状態で研究されたことはない。簡単に言えば、学校や研究所など学問の場に無傷で持ち帰られたことがないということだ。

一方、ウェルキンド石と大ウェルキンド石についてはとても詳細な研究がなされており、その知識の集積は本書でもご覧いただけるだろう。

エスディルの古い日記Esdir’s Old Journal

ラロスとクエンティンは私のことをガヴォスと同じぐらい愚かだと思っている。

奴らの企みは分かっている。彼を消し、在庫を拡張させる気だ。禁制の魔法の遺物に攻撃的な異国の獣。奴らはあの貪欲な手がつかめる、ありとあらゆるものを取引するだろう。

まあ、奴らにしてやられたなどと言わせるつもりはない!間もなくスクゥーマの積み荷が到着する。確実に大修道院全体で、それを売るのは私だけにするつもりだ。小物や野生のペットなどはすぐに飽きられるだろうが、スクゥーマの需要は常にある。

クエンティンは資金を用意した買い手がいるから、金床を回収して売るべきだと言っている。それが本当に労力を費やすに値する話なら、おそらく自ら行動を起こすだろう。念のため、私の印を移動させた。にぎやかな通りのはるか上にある、私が一番うまい酒を飲める場所にな。

エドヴィルダの記録Edvilda’s Log Book

しばらくはリフトに近づかないほうがいい。それほど間違ったことはしてないが、ノルドの中には古い祠や墓地に関してすごく神経質な者もいる。それでも、何とか拾い集めた小さい像は、ちゃんとした収集家にかなりいい値をつけてもらえそうだ。

小さいマンモス像1個 – 象牙、彫刻
さらに小さいマンモスの像2個 – これも象牙の彫刻(考えてみるとちょっと皮肉だ)
小さな熊(?)の像1個 – もしかしたらスキーヴァーかもしれない。木はひどくかじられている(ドラウグルに歯は生えるのか?)

* * *

あんまり長くストンフォールにはいたくない。メエルーンズ・デイゴンの脇みたいな、少なくともデイゴンの脇ってこういう感じだろうなっていう臭いがする。でも、このスチームフォントは、ドワーフの遺跡にしては野営が安全そうだ。内海のアルマチュアでゴミあさりの運を試したいと思っていたけれど、今は盗賊が隠れてると聞いた。奴らに煩わされないように距離を置くべきだし、それが自分の運命なんだろう。

* * *

もうミルテュから買った地図の元は取れた。まだすごい成果ではないが、歴史家に売れそうな古い陶器を見つけた。

小さな花瓶 – 珍しい模様。第一紀のもの?調査が必要。この手のものが好きな買い手が数人いる。必要なら何かでっちあげよう。

* * *

気が変わった。この地図は支払った分の半分の価値にも導いてくれてない!やっぱりアルマチュア周辺に探しに行こう。盗賊は古いドワーフのガラクタなんか気にしないはずだ。

* * *

あの忌々しい穴の中にはものすごく大量の盗賊がいる。勝手に奴らの食料を少しいただいたけど、あちこち見て回るような危険は冒せなかった。

* * *

ちくしょう、ミルテュ。最後のお金をあんたの地図に使ってなかったら、船に乗ってこの灰だめの外のどこかに行けたのに。どこでもいいから。

* * *

ミルテュが以前、ドワーフのガラクタに夢中になっているダークエルフと働いていたことを思い出した。ドワーフのパズルボックスの手掛かりにかなりの大金を払うだろうと言っていた。ミルテュの奴に、彼女をこっちに送らせてやる。それでポケットにゴールドを入れてもらおう。もし彼女があの盗賊たちを片付けられるようなら、さらにいい。

オトゥミ・ラへの手紙Letter to Otumi-Ra

オトゥミ・ラ、この不良卵生まれめ!

40杯じゃ私は負かせない。あなたはそれ以上に飲む必要がある。私はどっちかって言うと
飲む時は自分のペースでいくタイプだから、この
あなたが注ごうとした北の酒なんかに
やられない。だって私はどこもかしこもあんたと同じように強いんだから。ハハ!でもこのこと
変に取らないでね。冒険と勇ましさに満ちた日々が懐かしくなるわ。私は影のように静かで、あなたは
木のように強い。ミーア・タは古代人のように賢く、サトゥル・サは神のような知恵を持ってる。

彼らがなつかしい。

オニミリルの書付Onimiril’s Writings

絶対にあのずる賢い収集家が墓から邪魔をしている。もう何十年もたつのに、まだあの怒りに満ちた目が時々私を睨みつけてくる。忌まわしいダークエルフの赤い目が。それだけの価値はあった。あの謎の価値に比べれば、ダークエルフの恨みなど何ほどのこともない。全く。

* * *

あの魔術師ギルドの気取った輩とは関係のない、そこそこ才能のある魔術師を5人雇った。不満を抱いていて用心深い。彼らは私が追放されたことを知らない。まるで私がヴァヌス・ガレリオンの言いなりになって働く奴らの、柔軟性のない精神を必要としていたかのようだ。彼らはこの実験でギルドへの加入権を提供されると思っている。

* * *

ついに必要となる適切な配列を持つドゥエマーの地を見つけた。それがリフトにあるのは残念だ。私は無骨なノルドと彼らのやり方が好きではない。それでも、アバンチンゼルにはまだ無法者やろくでもないクズが住み着いていない。多少のアニムンクリなら対処できるはずだ。

すぐに、ドワーフがこの奇妙な装置に隠した知識が判明するはずだ。私はこれで他の者よりも抜きんでることになる。特にヴァヌスより。

* * *

何が悪かった?何故だ?雇った馬鹿どものせいだ。当然の結果だ。彼らが死んだのは残念だ。でなければ奴らの精神を、愚かさが故に剥ぎ取ってやったのに。戻らなければ。もう一度試みるんだ。睡眠が必要だ。まずは少し休もう。取り返すんだ。

* * *

赤い目。闇に光る。奴の仕業だ!奴だ!私からは隠せないぞ!財宝と秘密は、すべて取り返してやる!

カロ女伯爵の誕生日Countess Caro’s Birthday

カロ女伯爵の誕生日は単なる行事ではない。これは一つの事件である。

女伯爵その人はレヤウィンの日々の運営からは一線を引いているが、謙虚さによるものでないことは保証しよう。誕生日がその証拠である。快楽の追及はレヤウィンの支配者一族にとってなくてはならないものであり、女伯爵もまた例外ではない。

いかなる祝賀においても、食事は最も重要な部分である。優れたパーティーの基礎は、客人たちの腹を満たすものから始まる。カロ女伯爵の誕生日では、最上のものだけでテーブルを飾ることにしている。黄金の大皿には、よく肥えた鶏にバターとハチミツで焼き色をつけて乗せる。牛肉の赤身のスライス、舌の上でとろける魚の切り身、子豚、こんがり焼いたキノコ――香りが混ざり合ってうっとりしてしまうほどだ。陶器の皿に乗せた野菜料理、柔らかい黒パンと一緒に食べたくなる濃厚なスープ、そしてプルプルしたプディングの入ったボウルなど。

甘いものは全く別のカテゴリーだ。何層もあるケーキは塔のように客人たちの頭上にまで積み上がり、その形もよりどりみどりである。砂糖をまぶしたペイストリーが積み上げられ、アイシングの光沢は鏡のようにきらめく。飴を絡めたサツマイモや、ダークベリーのジャム、パイは甘い樹液で泡立ち、黄金色の皮にはバターがたっぷり。次々に出る新しい菓子はどれも、前に出たものよりさらに美しい。

食事についてはいつまでも書いていられるが、次へ進まなければならない。食事はこの大いなる行事に費やされる贅沢の中の、ほんの一部分でしかない。装飾は私の個人的な誇りであり、私が心血を込めて作った部分である。イメージとして使った言葉は常識外れ、豪勢、途方もない、目のくらむような、といったところだ。

黄金は祝賀の花形である。黄金の皿、金糸入りのテーブル掛け、キラキラ光る黄金のカーテンなど。明かりでさえも、くぼみに隠したりテーブルに沿って並べたりした数百のロウソクの光に合わせて、完璧に設計してある。花束は温かみのある光を浴びて、黄金そのものの色に匹敵する豊潤で輝かしい香りを放つ。

最後になるが、このイベントに出席するには適切な服装が欠かせない。客人たちはその他の装飾品と同じくらいこの行事にとって重要である。幸運にも招待を受けた者は、何ヶ月もかけて服装を整える。派手な絹服に、宝石をはめ込んだ上着、真珠をあしらった靴やサークレット、全ての指に指輪をはめるなど、誰もが最高の身なりをして入ってくる。客人の中には祝賀の途中で服装を変える者もいるほどだ!

この全てにかかる費用?優れたパーティー立案者は、決してそのような秘密を明かさないものだ。

カロ女伯爵への取材An Interview with Countess Caro

帝国の崩壊と元老院解体後に、レヤウィン市民を代表するマーキュロ・カトラソによって行われた。

マーキュロ・カトラソ:なぜ権限を軍団長会議に譲渡することにしたのですか?

カロ女伯爵:誰かに何かを譲渡なんて一切していないわ。私は今もレヤウィンの街とその周辺地域の女伯爵です。それが生得の権利であり神聖な責務なの。より高潔な問題に集中している間に、軍団長会議が街の日常的な業務に対応するよう任命しただけよ。

マーキュロ・カトラソ:より高潔な問題とはどのような類のものですか?

カロ女伯爵:最高に高潔な問題よ、それはもう!でも別の話題にしましょう。こういった繊細な問題は、一般に公開すべきではないわ。

マーキュロ・カトラソ:分かりました。軍団長会議内の人員はどのように選んだのですか?

カロ女伯爵:そうね、調査と熟考を重ねた結果、意思決定を円滑に進行させ、「過半数」の欠如による法整備の遅れを防ぐために、3人体制を取ることに決めたの。数学って役に立つわね。全員が同じ結論に達しなくても、少なくとも2人のうちどちらかの軍団長には同意できるかもしれないでしょ。多数決よ。誰がやるべきかについては、最初のメンバーは明らかだったわ。私は地域に関心を寄せる3つの主要なグループ全てから代表者が出るようにしたかった。テベザ・コとアム・ハルはどちらもロングハウス帝の時代から地域社会に尽くしていたわ。カジートとアルゴニアンが決まったら当然インペリアルも見つけないとね。幸運にも元老院が解体されてから、ロヴィディカス評議員の手が空いていたの。

マーキュロ・カトラソ:あなたと軍団長たちは、時々下された決定に対して納得できないと感じることがあるという噂を聞いています。

カロ女伯爵:どこで聞いたの?首を飛ばしてやらなきゃならない人がいるの?冗談、冗談よ!いいえ。軍団長会議には自分の仕事を好きなようにやらせてるわ。彼らもさっき言ったような高潔な仕事の熟考は任せてくれている。時には城内の場所をあんなに占有しないでくれたらと思うこともあるけど、それ以上に軍団長たちの支援と仕事には感謝してるの。ロヴィディカス評議員にさえ。彼が元老院にいた間は、いろいろあったけど。

マーキュロ・カトラソ:ということは、あなたとロヴィディカス評議員の間にわだかまりがあったと言って差し支えない?

カロ女伯爵:どこからそんなことを思いついたの?政府の役人とはいつだって意見の対立があるものよ。それも仕事のうちなの。でも私たちは、どちらも心の底ではレヤウィンとブラックウッドのことを大切に思ってる。目標を達成する手法が違うとしてもね。それが宮廷生活を興味深くするのよ!

マーキュロ・カトラソ:宮廷と言えば、先月元老院議長アブナー・サルンが街を訪問した際、会談を拒んだと聞きました。それは本当ですか?

カロ女伯爵:アブナー・サルンはうぬぼれた老いぼれよ。彼は私たちが親しんだ帝国の不運な崩壊とこの忌々しい戦争の勃発に関して、何らかの役割を果たしたと確信してる。オブリビオンに行こうが知ったことではないわ。ええ、そのとおり。彼はレヤウィン城の境界内では歓迎されない。

マーキュロ・カトラソ:三旗戦役に関して。現在進行中の紛争に対して、レヤウィンは安全でしょうか?

カロ女伯爵:帝都との距離を思えば、精一杯安全を保ってるってところね。でも、今のところライアン隊長と象牙旅団は最悪の戦いが私たちの地域に及ばないようにできている。解決に至るまでの間、旅団が境界の尊厳を維持してくれると思ってるわ。

マーキュロ・カトラソ:お時間をいただきありがとうございました、カロ女伯爵。

カロ女伯爵:あら、いいのよ、気にしないで。ほんの数分間時間を取って、民と考えを共有するのは楽しいものよ。対処すべき高潔な仕事の息抜きになる。少しだけど気が晴れるの。

ギデオンの門前でBefore the Gates of Gideon

ウド・セラス 著

戦いの熱気で狂乱状態になった数百のアルゴニアンによる騒音が再び街境の向こうで湧き上がると、ファビア隊長はその部族の者こそがこの戦争で不当な扱いを受けている側だと考えずにはいられなかった。彼女の仲間が彼らの土地に入り込んだ。仲間は土地の部族に相談もせず集落を作った。そして今、習慣のようにアルゴニアンを殺している。一体何故?家畜を狩るようなささいな犯罪で?家畜が人のものであるとアルゴニアンに教えた者など、誰一人いないではないか!彼女が先週裁判所で言い争いをしたのは、まさにこの状況全てが理由だった。彼らには適切な外交官が必要だったのだ。

部隊と防衛を任されている長く伸びた壁の背後に身を潜めた彼女は、これまでにも幾度かしてきたように、どうして自分の仕事についてこんなにもひどい勘違いをしたのだろうと考えた。ただ自分の仲間を守り、ちょっとした市民のいさかいを収めたかっただけなのに。ファビアは元々の動機が何であれ、怒りに駆られたアルゴニアンの一団が血を求めるあまり錯乱状態となって自らを傷つけている間、こうして街の防衛施設の端に隠れるため、軍に加わったのではないことだけは分かっていた。

始まった。ファビアにはアルゴニアンが街の反対側を襲撃する音が聞こえた。岩と矢が周囲に降り注ぐなか、他の部隊の指揮官が命令する叫び声が高い石の壁に反射して響き渡った。彼女が立っていたあるギデオンの門の上は恐ろしく静かだった。ファビアは身をかがめて遮蔽の上に出ないようにしながら、兵士たちの前を進んだ。彼女は通り際に肩へ手を置き、勇気づける言葉をささやいた。胸壁の上まで緊張感に満ちた空気が届いていた。他の壁はすべて包囲されていたが、今のところ彼らの前でほんの一瞬の動きすら見られなかった。

それでも彼女は列の間を歩き、入隊できる年齢になったばかりの兵士や、戦闘のリズムとこれから起きることを熟知している、戦い疲れた古参の兵士の恐怖心を落ち着かせた。ファビアが門の上の自分の位置に戻ると、マダーリズが身を乗り出し、耳をぴくぴくさせながら石のように心に重くのしかかる質問をささやいた。

「あんたの技で、奴らを撃退できると思うか?」

ファビアは街の門の外側でフックに吊るしてある小さなランプのことを考えた。ランプは胸壁にいる者から見えないが、沼地にいる者にとって、特にこんな暗い時間には目印だった。ファビアはアルゴニアンの領域が始まる場所ではないかと思われる場所に近い、湿地帯の荒野でランプを見つけた。

「そう願うわ」彼女は静まり返った沼地に視線を走らせながら溜息をついた。「じゃなきゃ私たちは圧倒される」そう言いながら、ファビアは口元に安堵の笑みが浮かぶのを押さえられなかった。あの向こう、沼地の漆黒の闇の中の、静かな水の溜りに反射する光はランプだった。インペリアルのランプだ。

ファビアは立ち上がり、胸壁から降りるために進んでいった。市民たちが家から街の最も静かな壁に逃げてくると、彼らに向かってうなずいた。彼らの腕には荷物と子供たちがしっかりと抱えられていた。数人の兵士がパニックを起こした群衆の流れと衝突したが、ファビアはぶつからなかった。彼女は体の間に滑り込み、埃が充満する道を着実に進んでいった。そして、彼女のすることに誰かが気づき、阻止する前に、彼女は門を開け放った。

ギデオンへの旅の案内Traveler’s Guide to Gideon

アスティニア・イサウリクス 著 公開日:第二紀570年降霜の月22日

聞く相手に応じて、ギデオンはブラックウッド東端の街か、ブラック・マーシュの西端の街か違ってくる。沼地のただ中にある文化と文明の島であり、人口の半分近くはインペリアルの生活様式に馴染んだアルゴニアンである。ブラックウッド街道を終端まで辿る旅人は少ないが、仕事でブラック・マーシュまで行く狩人や木こり、薬草の商人、異国の生物を捕まえる罠猟師は、ギデオンを仕事の拠点としている。

その歴史の大半において活気のない前線の駐屯地であったギデオンは、第二帝国初期の短期間、人々の注目を集めた。皇帝レマン二世がここで大量の人員を集め、アルゴニアンを自分の領域に統合しようとしたのである。強大な軍団は帝国南東のフロンティアへと行進して街道や要塞を築き、そこから皇帝の計画が実行に移された。ニベン人の植民者の波がその後に続いた。

ブラックウォーター戦役で何度も後退と苦戦を強いられた後、皇帝レマン二世はこの地域に恒久的な帝国の権力を確立することに成功した。だが皇帝の注意がブラック・マーシュから逸れたその日から、ギデオンの没落が始まった。危険な前線を防衛していた要塞は、忘れ去られた僻地へと縮小した。ギデオンの防衛は老朽化し、帝国の許可によってこの地に引き寄せられた多くの植民者は、より手間のかからない植民地を求めて去っていった。

今日でも、ギデオンは湿地と数百年前に残された軍団の兵舎や礼拝堂、兵器庫の廃墟に取り囲まれたままである。ブラックウッド街道は高地を通って正門の南西側から街につながっており、湿地帯や崩壊した要塞の姿をよく見渡せる。街の中では、広い道が門から総督の館まで通っている。ギデオンの家屋や商店のほぼすべてはこのたった一つの街路沿いにある。それはこの道が、街の残された部分における唯一の乾いた土地だからという単純な理由による。

市の行政
ギデオンは帝国総督の支配下に置かれている。総督とは、伝統的には西ブラックウッドの主だった貴族に与えられる肩書きである。近年では、ヴァンダシア家かマルティウス家に属する者が総督となるのが通例である。どちらの一族もブラック・マーシュ国境に広い土地を所有している。エルトゥス・ヴァンダシア卿がシロディールで元老院に仕えているため、帝国総督の任務は現在、パーノン・マルティウスの手に委ねられている。

食事、飲み物、宿泊
ギデオン西門の近くには宿屋〈卵とハンマー〉がある。素朴な宿屋だが、沼地のフロンティアにある宿屋にしてはいいもてなしを受けられる。もっとも、食事のメニューはデリケートな旅人に適さないかもしれない。〈卵とハンマー〉調理スタッフに数人のアルゴニアンを抱えている。アルゴニアンの食べ物は人を選ぶが、ギデオンのアルゴニアンの大部分は人間やエルフの相手をすることに慣れているし、他の種族が食べても大丈夫な沼の食料を知っている。

地域の名所旧跡
ギデオンはかつて強大な要塞だったが、もう遥か昔の話だ。壁はろくに修復もされておらず、大部分の監視塔は中に入るのも危険である。街を移動する主要な道であるブラックウッド街道から少し離れた程度の距離にも、小さな沼の穴が点在し、注意の足りない旅人を待ち受けている。

ディベラの聖堂は、この街に残された祠の中で唯一言及に値するものである。ギデオンに愛の淑女の信者がいるのは奇妙に思えるかもしれないが、ブラック・マーシュの国境においてディベラ崇拝が生き残ったのは理由がある。いわゆるブラック・マーシュの輝かしき民コスリンギはディベラを大いに敬愛しており、自分たちの特別な守護者とみなしていたのだ。コスリンギはもはやこの国にいないが、ギデオンのインペリアル市民は彼らのディベラ崇拝を共有している。聖堂自体は元々裕福な貴族で愛の淑女の信者であったレディ・ドルシア・マルティウスの館だったが、彼女は40年前に死去した際、ディベラの司祭たちに家を譲ると遺言を残した。

総督の館が実際の住居として使われることは滅多にない。ギデオンの帝国総督は通常、より大きく快適な地所を付近に所有しているからだ。しかしここは統治の座として、また市政の中心として機能している。館にあるこの地方出身の画家の、絵画コレクションには一見の価値がある。

歴史あるギオヴェッセ城の廃墟は、ギデオンから少し北へ向かったところにある。言うまでもなく、この城は皇帝レマン三世が第一紀末、妻であるタヴィア女帝を幽閉した場所として現在では悪名高い。城の床は不快に程遠いとはいえ、金縁の牢屋も牢屋には違いない。女帝はその驚異的な野心と知性の全てを、玉座から正気を失った夫を取り除き、追放の身から帰還する試みに向けた。

興味深い事実
ギデオン周辺の湿地帯は、ブラック・マーシュの西側を原生地とする大型の肉食ガエル、デスホッパーが大量に住む場所である。

ギデオンはアルゴニアンを屈服させることを目的としたブラックウォーター戦役末期、ルシニア・ファルコ将軍と彼女率いる帝国軍の本営となっていた。

観察眼の鋭い旅人は、総督の館の側の広場や街の南東隅の人気のない地区など、いくつかの場所に古いアーチや奇妙な石細工があることに気づくかもしれない。これらはかつてこの場所にあった、アイレイド都市の廃墟である。

旅の安全を祈ろう!ギデオンはかつての誇り高き駐屯地に比べれば寂れた場所だが、沈みゆく街の中には、斜陽の輝きも見出せるだろう。

クイストリー・シルヴェッレからの手紙Letter from Quistley Silvelle

バスティアン

お前が家族への奉仕から離れ、これ以上私の両親に対する義務を果たす意思がないことは分かっている。だが、個人的なことでお前の助力がどうしても必要なんだ。私にとっては極めて重要なことだ。これは両親とは何の関係もない。実際、できれば両親には知られたくないと思ってる。

我々が良き友だったとは言えない。だから同情に訴えようという気はない。そのかわり、力を貸してくれたらお前が興味を持つと思われるものを提供しよう。私は父の書類の間から見つけた手紙を持っている。お前宛ての手紙だ。恐らく10年ほど前に送られたもののようだ。お前の母親に関連するものだ。

興味があるなら、できるだけ早くダガーフォールの宿屋〈酔いどれライオン〉に会いにきてくれ。二階のいつもの場所にいる。

クイストリー・シルヴェッレ

クエンティンの秘密の往復書簡Quentin’s Secret Correspondence

友へ

間もなく金床を手に入れてやろう。既にガヴォス・ドゥーアに盗まれていると誰もが信じているものである故、惜しむ者などおるまい。必要なのは、同僚の大臣二人から助力を得るための根回しだけだ。最近の彼らは少々扱いづらいが、君が提供してくれた護衛のミノタウロスを紹介すれば、ずっと乗り気になるのは間違いない。

とは言え、少しの遅れも出してはならない。彼らが何かに勘づいたら、金床を確保できなくなるかもしれない。だから可能な限り早く、ゼニタールの大修道院に向かってくれ。

到着したら、鍛造用の火の背後で落ち合おう。私は我々が必要とするものを全て手にしているはずだ。

グルームマイアの鳥Birds of Gloommire

翼のある獣のうち、諸々の理由でこの本の通常の章に載せられなかったもの。この節はドミンド・カマズと若手研究者のウニラ・ロセロスが記載している。

カラス
「私がたまたま気に入った空の一角に巣食う、この翼を持つ災いは、どんな状況においても私の存在を許容しない。数世代前にハグレイヴンが私の一族にかけた呪いのせいかもしれない。地域住民はこの地方、とりわけアルペニア周辺のカラスが異様なまでに高度な知能を持つと警告しており、私はこの忌まわしい鳥についての記述を助手のウニナ・ロセロスへ全面的に委任することにした」

実地調査員にして鳥の専門家ドミンド・カマズ

タムリエルの他の地域と同様、ブラックウッドの南端グルームマイアにもカラスはいる。以前の版を参照するなら、カラスの大きさは手のひら程度から、噂に基づけば人間の前腕ほどの長さまで幅がある。黒いクチバシと、やはり黒を基調とする羽を持つカラスは、荒涼としたこの地形でかなり目立つ存在である。また、この羽根のおかげで、カラスは密林や湿地帯に意外なほどうまく紛れ込める。余談だが、そのせいで私はベースキャンプまで戻る時に、カラスの小さな家族がついてくるのに全く気づかなかった。しかしこの点については後で触れよう。

カラスは知能が高く、よく工夫を凝らす生き物だとよく言われる。大体において正しい。しかし木の上の巣から転げ落ちるカラスも一定数目撃されていることは言及しておくべきだろう。このような行動がカラスの認知的欠陥に基づくのか、娯楽の一環としてやっているのかは不明だ。

ある程度の確実性を持って言えるのは、カラスは恨みが深いらしいということだ。しかも、過去に受けた侮辱の記憶を若い世代に伝えられるという。私はこうした行動を、研究会からの報告を待つドミンドのもとへ戻る際についてきたカラスの一家で目撃できた。このカラスたちは複数の石を彼に投げつけた。私は無傷だったが、さらにカラスたちは凄まじい勢いでドミンドに襲いかかったので、彼は近くのシェルターに逃げ込み、1週間そこから出ようとしなかったほどだ。

ハックウィング
多くの読者は「グルームマイアの鳥」と題された本の中にこの生物が載っていることを意外に思うのではないだろうか。ハックウィングは鳥とみなされる他の生物とどこも似ておらず、形態学的には小さなドラゴンと分類されるべきではないのかと思うだろう。

これは言うまでもなく、完全な誤りである。ハックウィングは鳥に共通する多くの特徴を示し、灰を被った空のネズミ(カラスの欄を見よ)を「鳥」という高貴な名称に含めなければならないのなら、ハックウィングにも当然その資格はある。

鳥とは卵を産み空を飛ぶ、翼のある生物である。もっとも、我々が鳥と呼ぶ生物の一部には、これらの特徴の一つか複数が欠けていることもある(恐ろしい鳥と飛行についての項を参照)。ハックウィングには明らかに翼があり、卵を産み、他の鳥と同様に優雅な様子で空を飛ぶ。そのため、鳥に含められているのである。

行動の点から言うと、ハックウィングは標準的な鳥よりも岩の周辺をうろつくことが多い。長い爪を使って岩の表面や、湿地帯の木の皮を引っかく。ハックウィングはしばしば岩の上で日に当たって1日を過ごし、油断した地域住民の籠から果物や肉を盗むこともある。盗みを働くとはいえ、この生物が盗んだものを食べている光景は目撃されていない。ハックウィングは道端の死骸を食べることを好むので、おそらくはいたずら自体を楽しんでいるのだろう。

個人的に、ハックウィングには好感を持っている。愉快で遊び好きであり、命の危険も少ししかない。性格的に、ハックウィングは綿密に整えられた野営地に突入しても、ベッドを荒らしインク壺をひっくり返す程度で、人に襲いかかって目玉をくりぬくことはあまりない。

グレネッタの日記Grenetta’s Journal

地耀
ようやく運が向いてきた。ダガーフォールの酔っ払った間抜けが自分の婚約を祝ってて、私たちのカードゲームに加わってきたの。その馬鹿は自分の手にすごく自信があったから、持ってた婚約指輪を賭けた。私が勝ったわ!しっかり勝ち分をいただいて街の外に向かった。お金持ちのやることって分からないから…指輪を取り戻すため、誰かに追跡させるかもしれないでしょ。でも私は正々堂々と勝ち取ったのよ。カードでイカサマなんて絶対にしない。

基地に戻ってみんなのために夕食の支度をしなくちゃ。みんな私のことは公平に扱ってくれるけど、私は強盗でも無法者でもない。私は料理人。このきれいな指輪が売れたら、まともな服を買って、もう少し清潔にする。もしかしたらちゃんとした酒場か宿屋で雇ってもらえるかもしれない。

火耀
あのならず者のパトレルが巨大な卵を持ち込んできて、大きなオムレツを頼れと言う。確証はないけど、あれはハーピーの卵だと思う。とんでもない思い付きよ!彼らが鳥なのは知ってるけど、多少は人間でもあるでしょ?ゾッとする。誰か他の人にここから持ち出してくれって言うつもり。

明日、夜明け前にここから出て行こう。グレネッタ・ファッセルはここからやり直すの。

グレンブリッジに設置されたアルゴニアンのシシスに捧げる祠Glenbridge’s Argonian Shrine to Sithis

リンメンの旅人の館のガルジールによる記録

最初の印象では、グレンブリッジを貫く主要な街道の脇に立つシシスの祠に、これといって目を引くような部分はなかった。この祠が注目に値しないと言っているのではない。ただ第一印象とは往々にして誤解を招くものであるというだけだ。背の高い建物で、付近のほとんどの木に匹敵する高さでそびえてはいるが、その印象も祠の周りに建物が見られないことによって誇張されたものにすぎない。壁は厚い石板で出来ていて、建物のすべての角にある石細工からは顔が覗いている。それでも、ほど近い場所にそびえ立つザンミーアと比較すると、印象に残るような祠ではない。

祠の中は壁同士が間近に迫っていて、4人ほどしか入れない空間に干渉している。たとえ三方の壁を開放していたとしても、祠そのものの中では呼吸をするのも困難だろう。空間の中央に立つと、あたかも空気が全く存在しないかのように感じられるのだ。

石が落ちたか、あるいは脇に倒されたような場所がある。これが祠の中にも続き、独特の光の欠落も伴って、大方の礼拝の場にはふさわしからぬ荒廃した様相を呈している。祠の外観について司祭たちに尋ねても特に気にしているようには思えなかったが、落ちている石板を正しく設置すべきだという意見には気を悪くしたようだった。若干の会話と慎重な質問で、司祭たちが祠の状態をシシスの行いの指標と見ていることが明らかになってきた。祠の壁の修復は冒涜となるのだろう。

シシスが祠の外観に直接影響を与えたかどうか、石が外れたのは彼の力によるものか、あるいは天候と時の流れのせいなのかははっきりしないが、祠をいつくしむ司祭たちに影響を与えたのは確かだ。

ザイナの契約の書Xynaa’s Book of Contracts

(数百ページがかすれてほとんど消えてしまった手書きの文字で埋められている。だが最後の数ページは輝く黄金のインクで書かれている)

契約 1,137
メエルーンズ・デイゴンの命令により、私は以下の条件の下で拘束に服する。シロディールとして知られる定命の者の領域における征服に対する我が主の支援と引き換えに、ブラック・ドレイクのダーコラクとして知られるリーチの民の首領は、聖なる書に記載された兆候と環境のもとに四つの野望が生まれるようにするものとする。これは定められた。

契約 1,138
メエルーンズ・デイゴンの命令により、私はダーコラクに課せられた契約を、その息子であり後継者であるモリカル現シロディール皇帝まで拡張することを承認する。モリカル皇帝がメエルーンズ・デイゴンによって定められた四つの野望を存在させるという父の重責を遂行したことに対し、私は聖なる書に記載された力の付与の儀式において、皇帝の代行者を導き指示するものとする。これは定められた。

契約 1,137および1,138:不履行
メエルーンズ・デイゴンに課せられた義務に基づき、私は前述の2つの契約の遂行に対するダーコラクの後継者の不履行を証明する。後継者を指名することなくレオヴィック皇帝が死亡したことにより、聖なる書に記載された遺言補足書が有効となる。用意された野望をメエルーンズ・デイゴンが要求する方法で捧げた者は、如何なる者であろうとダーコラクとその後継者に約束された報酬を獲得できる。これは定められた。

(流れるような文字で付け足されている)
忌々しいソンブレンめ!野望の3人はまだ宝物庫に隠れたままだ。捕まえた1人は定命の者の領域に戻ってしまった。少なくとも、奴はメエルーンズ・デイゴンのしもべが全て奴の定命の敵だと信じている。適切な時が来たら、奴をおびき寄せよう。あるいは自ら私を探しに来るかもしれない。それでも報酬は私のものだ。必要なのは忍耐だけだ。

サルヴィットの招待状Salvitto’s Invitation

グラシアン・サルヴィット閣下

誉れ高きヴァンダシア評議員主催の特別な会合にご招待申し上げます。

機密性により、この件については一切口外なさいませんようお願いいたします。会合への移動手段をご用意いたします。2週間以内にレヤウィンの港までお越しください。港にはカラミティ号という船が停泊しています。この船で安全に、かつ安心して移動いただけます。

必ず正装でご来場ください。軽食と宿泊施設をご用意しております。

ヴァンダシア評議員がご来場をお待ちしております。

シャドウスケールへの祈りPrayer for a Shadowscale

絶え間なく変わるシシスを称えよ。

尽きたものは取り戻された。

虚無の無、ヒストの囁き。

血が刃を研ぎ、根を湿らせた。

影を通り抜け、戻れ。

ジリッチ評議員の記録Councilor Jirich’s Records

ジリッチ評議員

世話係を呼び集め、野望を移動すべき時だ。新しい宝物庫の位置は、私か大司祭が必要とするまでの間、野望の安全を確保した状態で隠しておける場所でなくてはならない。反逆者ヴァレンに忠実な軍勢がこれまでになく接近している。野望を彼らの手に渡すわけにはいかない。

これは公式な命令だ。すぐに行動するように。

〈この行はインペリアルの複雑な暗号で書かれている〉

皇帝レオヴィック

スル・ザンのメモSul-Xan Note

神像が渇望している。千もの求める口を伴った顔が上を向き、懇願する。

それははるか昔の時代、忘れられた時代から。だが我々の役にも立つ。奪い、与えるのは我々だ。それが満ち、破壊の霊魂を産み出すまでには多くが必要になる。霊魂は野を焼き沼を血で満たす。どこであろうと触れた場所には混沌を植え付ける。我々がここにもたらせる限り。だが神像は激しく飢えたままだ。儀式のためにはさらなる死体が必要だ。

霊魂は彼らの叫びを楽しむだろうか?さらに多くを捧げよう。

神像は霊魂が到着するまで飲むだろう。

スル・ザンの儀式場Sul-Xan Ritual Site

象牙旅団のサルヴィティカスの日記より。

記録:1
スル・ザンを監視し、活動を報告する任務を負った。レヤウィンとブラックウッドに脅威をもたらしているにも関わらず、このアルゴニアンのナガの部族について分かっていることは比較的少ない。このナガと直接交流するのは危険極まりないため、交渉を試みることは禁じられている。試そうとして、ただ挨拶しただけで命を落とした者もいる。

私の仕事はあるスル・ザンのグループの観察だ。この特定の小集団は極めてよく移動するが、これは我々がこの部族に対して予想していた行動とは異なっている。この日記では、彼らを追う中で発見したことを書き写していく。十分に安全な距離を保ちつつ、観察できるよう願おう。

記録:2
このスル・ザンのグループは私の予想よりもはるかに長い距離を移動した。彼らは北をうろつき、奇妙なことに道中の小さな村や前哨基地で立ち止まった。他の者を監督していると見られるスル・ザンはこういった立ち寄りのあと長々と話すが、内容が聞こえるほど近くにはいない。

記録:3
少数のスル・ザンがグループから離脱した。彼らは近くの街から犠牲者をさらうと、彼らと南に向かった。助けたかったが、人数の差がありすぎた。私にできる最善のことはさらなる情報収集だ。彼らが何をしているのかはっきりと突き止められれば、象牙旅団が阻止できるかもしれない。

記録:4
このスル・ザンのグループは明らかに狩猟グループと見られる。食料などの用途に動物を狩るのに加え、さらなる囚人を獲得するために縄張りから遠く離れた南をうろついているようにも見える。彼らは捕まった不運な人々を生贄にすると聞いたことがあるが、そのような行為は直接目にしていない。

私はヴィーシャという沼の秘術師に率いられるグループをブラックウッド湖の岸辺にある古い遺跡、ギデオンの北西まで追った。少なくとも部族の魔法使いが4人、ある種の儀式に取り掛かろうとしていた。何故彼らが自らの土地から遠く離れたこの辺境の地を選んだのか分からないし、儀式の目的に対する手掛かりもない。分かるのはどことなくおかしい気がすることだけだ。危険で、邪悪でさえあるような。

今のところはここを離れ、レヤウィンに報告を返そう。ライアン隊長は見たものに興味を示すはずだ。

ゼニタール賛歌Hymn of Zenithar

〈リフレイン〉
聖なる金床に跪け、敬虔なる鍛冶場の炎の子よ
誠実な仕事の報酬を取り、ゼニタールへの愛を示せ

ゼニタール、我が労働の主よ
この両手を硬く分厚く鍛えたまえ
あなたの金床に汗流し
我が胸は力強く脈打つ

ゼニタール、我が富の神よ
この貴品箱を稼いだゴールドで満たせ
誠実なる産業の成果で
誓いを守り売った、よき品物で

ゼニタール、我が休息の父よ
この腰に安息の褒美を与えたまえ
日が陰り、石炭の火が弱まる時
喉の渇きを潤し、労働を止めさせたまえ

セリースの別れのメモCerise’s Farewell Note

リエル、最愛の人、いつかこれを見つけてくれますように。どうやらギデオンに戻れそうにないみたい。ロレイン女司祭と争って重傷を負わされた。その後、馬車が崖から湖に落ちたわ。馬車は沈んで、雨によって視界から消えた。宝箱や裏切りのディベラの女司祭と一緒に。私も足を折ってしまった。どうやらこれまでのようね。

ロレインに何かの呪文をかけられてしまって、自分が腐っていくのを感じる。だけど人々に知らせなければならない。愛しい人。これは証言であり遺言でもある。どうか許してね。

ロレイン女司祭とギデオンの治安官の半数が、目覚めの炎というある種の秘密教団に所属してるってことを最近知ったの。ロレインは人々を殺しては魂を盗んでる。おそらく、もう何年も。いつでも好きな時に悪趣味なゲームを追体験できるように、殺人を呪文をかけた石に記録までして。彼女はどうかしているの、リエル。彼女の狂気により、たくさんの修練者が犠牲になった。

昨夜、ロレインがアイディール・マスターとか呼ばれる死霊術師たちと、捕獲した魂を取引する計画をしてることが分かったの。他の手段が見つかればよかったけど、迅速に行動するしかなかった。修練者たちは私たちの友達よ。見捨てることなんてできない。分かったことをあなたに知らせなくてごめんなさい。でも、奴らがあなたを狙うのが怖かった。

ロレイン女司祭が死んだ今、あなたには記憶石とこの宣誓証言をレヤウィンの治安官のところに持っていってもらいたい。他の誰かを殺す前に、目覚めの炎を暴いてやらなければ!

心からあなたを愛してる。愛しい人、いつかまた会いましょう。あなたにディベラの祝福を

あなたを愛する妻
セリース

ソフスの封印された巻物Sophus’s Sealed Scroll

〈封をされた巻物に2枚の羊皮紙が入っている。1枚目にはソフス評議員の印章があり、以下のように書かれている〉

第二紀576年

新たな宝物庫の建造のために雇用された魔術師については、仕事の完了後には確実に抹殺するように。決して未達成の状態にはしておかないこと。

アコニア・ペラ
トラシウス・ヴィノーマン
エフェル・ブロックス
ナリナ・セナレル
ジュルス・クィンティウス
カバンティナ・プロシラス

〈2枚目にはレオヴィック皇帝の印章があり、以下のように書かれている〉

ソフス評議員へ

最後の宝物庫も設置する必要がある。残っている魔術師に必要な呪文をかけさせ、宝物庫を私が選んだ場所へ移動させろ。必要な情報は以下の暗号化された文章の中にある。私を失望させるな。

[以下の文章はインペリアルの暗号で書かれている]

ダリンへの手紙Letter to Darene

ダリン

お前たちは影の外へ踏み出す者から、通常は認められていない性質の仕事を探しているようだな。私も夜を恐れず危険を招くこともためらわない者を探している。私の手伝いをしてくれたら、関与による恩恵に見合う報酬を出そう。

興味があるなら、必要な遺物がある。レヤウィンから北東にあるノクターナルの祠に、聖なる鎌の遺物が収められている。レッドメイン砦の近くだ。その影の鎌をブラッドラン洞穴へ持って来い。そうしたら残った人生に、貧しい日がなくなるよう取り計らってやる。

ツマ・マクサス

ツマ・マクサスの日記Tumma-Maxath’s Diary

かなりの捜索の末、私、ツマ・マクサスは墓所を発見した。今は私の名に影響力はないが、いつの日か口にする者を戦慄させるだろう。

予想どおり、ここには数多くの人が埋葬されている。うまい具合に隠れている上、ここにはすでに獣が住んでいるため、比較的人の手に触れられていないようだ。この場所を無傷で通過できるか否かは、真の勇気があるかどうかの問題になるだろう。だが、私のために戦う死体を蘇らせ始めれば、すぐにずっと楽に過ごせるようになる。単純にそれまで粘ればいいだけの話だ。

* * *

胸躍る進展だ。かつてその名を知られたシャドウスケール、アジュム・シェイの遺体を見つけたようだ。彼は眼窩の内部にはめこまれたままの宝石と共に埋葬されていた!私にとっては幸運な発見だ。頭蓋骨から引き抜けなかったので、頭を完全に取り除いた。この桁外れな発見を活用するためには、持ち帰る必要がある。

ディート・ローのメモ:ネレイドの呪いDeet-Loh’s Notes: Nereid Curses

アルゴニアンの村の古代のニッソが、 ヴナーク遺跡ではブラックウッドで一番楽しげで、耳に心地よい蛙を見つけられると教えてくれた。彼は住人のネレイドに注意するようにも言っていた。どうやら彼女はあまりにも奥深くまで自分の巣に入り込んでくる者に、呪いをかけることで有名なようだった。

いかに私が制作に打ち込んでいるか、いかに音楽家として才能があるかを彼女が知れば、大喜びで遺跡に住む蛙を何匹か引き取ることを許してくれるはずだと私は確信している。

ディート・ローのメモ:蛙の歌Deet-Loh’s Notes: Frog Songs

タムリエルで一番のヴォッサ・サトル奏者になるための努力をする上で、どうしても必要なのが特別な蛙を見つけることだ。ヴナーク遺跡の奥深くにある、自然のままの池で戯れている蛙が、ブラックウッドで最も美しい蛙の歌を生み出すとニッソが教えてくれた。それなら絶対にこの蛙たちを見つけて、自分の耳で彼らのメロディを聞かなくては!

今のところ、この遺跡に住んでいるさまざまな獣は避けることができているが、例のネレイドにもまだ出会っていないことに驚いている。私はどうしても蛙を捕る前に、彼女と話をして許可を得たいと思っている。彼女が私と同じぐらい音楽が好きなら、絶対に分かってくれるはずだ。

ディート・ローのメモ:蛙の魔女Deet-Loh’s Notes: The Frog Witch

私はここに座り、あの素晴らしい小さな蛙たちの美しい歌に耳を傾けている。ニッソは正しかった。こんなのは今までに聴いたことがない!彼らの最新のセレナーデの中盤に差し掛かったあたりで、ネレイドが池から浮かび上がった。彼女はまるで母親のように蛙たちをかわいがっている。これはなかなかいい光景だ。彼女は本当に彼らを愛しているようだ。

彼らに話しかける様子、それに返事をする様子。彼女はただのネレイドじゃない。ああ、彼女はある種の蛙の魔女なのだ!私がこの音楽を奏でる生き物を数匹引き取ることを喜んで認めてくれるに違いない。すごく沢山いるんだから。絶対に気にせず、ヴォッサ・サトル用に何匹か捕まえさせてくれるはずだ。

それでは、あのネレイドに話しにいこう!

ディサストリクス・ザンソラの日記Disastrix Zansora’s Journal

高貴なる大司祭にはすでに伝言を送った。執事と3人の評議員が死んだ。現在ブラックウッドにいないため、イティニア評議員だけが我々の手を逃れている。

また、闇の一党の聖域で回収された文書も送った。その情報があれば、大司祭は何の問題もなく最初の四つの野望の場所を見つけ出せるだろう。加えて、レヤウィン城への攻撃を命じた。すぐに他の評議員が保管している文書も我々のものとなる。そうすれば全ての野望の場所が明らかになる。

さて、私は席を外して遺跡に入り込んだ害虫を始末せねばならない。どうやら聖域からつけられていたようだ。災いのデイドラ公に忠実な者が、必要な時に振るえるよう手にしている真の力を見せてやるのが楽しみだ。

デストロンの日記Destron’s Journal

私たちは双子だ。私たちは羊だ。世話係は我々の訓練と隔離はほぼ完了したと言うが、まだ誰も来ない。

もう何年も新しい教師に会ってない。それに皇帝でさえ、昔は頻繁に訪ねてきていたのに、カリアと私が幼かった頃から姿を見せていない。何かで彼を失望させてしまったのか?私たちに怒っているのか?

カリアと私は勉強を続けている。私たちには私たちの活動がある。だが孤独だ。世話係たちは親切だが、恐ろしく退屈だ。カリアは聖域の外の世界を見たがってるし、私は冒険をして本でしか読んだことのない場所を見てみたくてたまらない。

彼らは時がもうそこまで迫っていると言うけれど、それが実際にどういう意味なのかは教えてくれない。あともう少しなら待てるかもしれない。

どうやら他の選択肢もなさそうだ。

デスホッパーの恐怖Terror of the Death Hopper

レミウス・ヴォルソナスの日記より

発見が困難なデスホッパーの調査を始めてから6日になる。同僚は私のことを異常だと言う。そうかもしれない。馬ほどの大きさのカエルを追うには少々の狂気が必要だ。だが、優秀な研究者でちょっとした危険を好まない者などいるか?あんな途方もない生き物について始めて書いた人物として歴史に名を残せるなら、命を危険に晒す価値はある。

デスホッパーは通常群れで見られる。1匹だけでいるのを見かけたら、他の個体を探すべきだ。この巨大なカエルは棲家であるよどんだ水の表面のすぐ下に潜むことを好む。忍耐強い狩人で、大抵は何も知らない獲物が彼らの通り道に迷い込む失敗を犯すまで待ってから攻撃を仕掛ける。

デスホッパーとの遭遇に関して第一に知っておかねばならないのは、彼らの毒性が極めて高いことだ。その毒が皮膚から分泌されているのかを見極められるほど近くに寄れないが、近々そうする計画である。それに応じてこの記録を新たに書き加えるつもりだ。だが、彼らがかなり遠くまで毒を吐き出せることに気付いた。私はこの巨大な毒物の塊が、あらゆる材質のものを浸食するのを見た。防護のない肉体だったらどうなるか、想像しただけでゾッとする。

第二に注意すべき点は、デスホッパーがそのとてつもない大きさをうまく利用することだ。この生物は空高く飛び上がり、気絶するほどの激しさで獲物の上に飛び降りることが知られている。その後、デスホッパーは横に飛んで放心状態の獲物を混乱させてから、最後の大抵は致命傷となる攻撃を放つ。これまでの研究の日々で、デスホッパーが大きな獲物を丸ごと飲み込むのを見た。だが、その口の中には細く、この上なく鋭い歯が数百も生えている。デスホッパーにとって、骨を噛み砕くなど造作もないことだ。

私はこの巨大で極めて残忍なカエルに際限なく魅了されている。そして、私の調査は始まったばかりだ!デスホッパーに関してこれ以上何が分かるかは想像しかできない。だが、まずは近づかなければ!

テナレイの契約Tenarei’s Contract

テナレイ・ヴェルス:

約束どおり、書面による契約だ。長い親交があるにもかかわらず私の言葉を信用しないとは少々侮辱的だが、大目に見よう。クイストリー・シルヴェッレなる人物をレヤウィンのシンジケートに連れて行ってくれ。生存していればより好ましい。この仕事を完了すれば、シンジケートに対するお前の負債は帳消しとなる。

この愚かなクイストリーは自分の負債を記憶しておくことが困難なようだが、シルヴェッレ家はダガーフォールの裕福な一家だ。恐らく息子の債務は彼らが清算できるだろう。そうでなくても、お前も良く知っているように、負債は様々な手段で清算できる。

現在の居場所:

– 数週間前に街を出るところを目撃された。ギデオンに行くとのこと。

– レヤウィンの南と東にある洞窟の外で活動している、密売人か盗賊と合流した可能性がある。深い嘲笑の洞穴か、洞窟か?(あの地域は洞窟だらけだ)

– 高価な印章指輪を身に着け、役立たずの金持ちのクソ野郎のような服装をしている。自身を色男だと思い込み、やたらに自慢する。

我々が負債を回収するよりも先に、密売人が殺してないことを願う。

ラーズ・トゥル
レヤウィン

トパル湾にてOn Topal Bay

(愛の歌)

トパル湾で愛を見つけた
川が海と出会うところ
2人で岸にぶつかる波を見た
レヤウィンの塔の3つから

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾で富を築いた
海の上の船員として
要塞を満たした黄金で
愛しき人にこの指輪を捧げた

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾で愛を失った
彼女は海辺で散策したが
リバー・トロールを見逃した
逃げ出すことはかなわなかった

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾の海賊Pirates of Topal Bay

評議会議長タルニアン・ロヴィディカス 著

数ヶ月前にシロディールを引退してレヤウィンに来た時、そこで待ち受けていた様々な問題の中でも、海賊はおそらく最も厄介で継続的な問題になりつつある。もちろん、海賊は数百年前のレッド・ブラマンの時代から、ニベン下流やトパル湾に蔓延していた。しかし帝国の権威が失墜したことで、略奪船や血に飢えた海賊船の大群が、かつては安全だった帝国の海域を臆面もなく荒らしまわるようになった。交易が帝国の動脈だとすれば、トパル湾の海賊は最悪の種類の吸血鬼である。自分の糧となるものを平気で破壊する、決して満たされず後先も考えない怪物だ。

レヤウィンの石の胸壁でさえ、大胆なトパル海賊を抑えてはおけない。この悪党どもの一部はただの商人に扮装し、港の役人を買収して街の橋下を通過する。南の海から来る海賊はブラヴィルやコルベレ川ほどの北方でも家を襲い、貨物船を拿捕することで知られている。たとえレヤウィンの軍団長会議でそれ以外に何もできないとしても、私は我らの川のこの恥ずべき現状に終止符を打つ決意を固めている。そのためのゴールドや戦力さえ手に入れられれば。

以下に記す海賊たちは、暴虐の限りを尽くしてブラックウッドのとりわけ悪名高い敵となった者たちである。

三つ爪のアシャサと呼ばれることもあるアシャサ・ドラは、海賊の母と名乗る年老いたカジートである。ペレタイン沿岸沿いのあらゆる場所にスパイを擁しているらしく、リンメンからセンシャルの遺跡に至るまでの各地で手下を操っている。アシャサの海賊団は十数隻の船を沿岸で操り、無害な商人を装って接舷する術に卓越している。つい先月も、アシャサ・ドラとその手下はレヤウィン胸壁の真ん前につないであった商船を盗んでいった。

トパル湾の恐怖、ヴォルダーはトパル島西の海域で数隻の船を略奪した張本人である。この男がいずれレヤウィン本土を襲撃すると豪語したことは有名だが、ここしばらくは目撃情報がない。我々の海域を離れて船を集め、大胆な襲撃のための準備をしているのかもしれない。

ブルーワマスの船長の名前は不明だが、珍しく知能を持ったアルゴニアン・ベヒーモスだと言われている。ブルーワマスは重装備の大型ガレオン船で、船体を犠牲者の骸骨で飾りつけており、また獲物を突き刺す鉤爪を発射する重いバリスタを装備している。ブルーワマスの船長は特に血に飢えた男で、襲撃時には誰も生きて返さない。この海賊船のガレオンはトパル島海域でよく見られる。

最後にノルドのグジャルグリダは、海と風を操る特殊能力を持った自称「海の魔女」である。この女はブラック・マーシュ西沿岸のオンコブラ川で、無数の河口のどこかに潜む海賊船の小艦隊を率いている。グジャルグリダは数隻の素早いガレー船を指揮しており、獲物を開けた海で捕らえることを好む。よく肥えた商人たちを北の狼の群れのように襲うのである。グジャルグリダのせいでタイドホルム東の海域はあまりに危険となったため、トパル湾に入る大部分の商船の船長は、この女に気づかれないよう島の西側の狭い海路を通るようにしている。

挙げられる海賊船長はまだ5,6名ほどいるが、この4人だけでも絶望の淵へ追いやるには十分だ。

帝国元老院に仕えていた長い年月の間、私はブラックウッドにいる帝国の役人からトパル湾の海賊問題について大量の報告を読んだ。レヤウィンは何度も繰り返し白金の塔にこの凶暴な犯罪者たちを制圧するための資金や艦隊を要求したが、我々には余裕がなかった。レヤウィン軍団長会議の議長となった今、私は以前無視していた問題に向き合わねばならない立場に置かれており、助けを求める手立てもない。運命とは皮肉なものだ。

トランス・ニベンの珍味Trans-Niben Delicacies

ニベン川で2番目に速い無許可財宝運搬業者、グアルの嘴の一等航海士スナゴス 著

俺のような決して合法とは言えない仕事を持つ者がレシピの本を書くことに疑問を持つ人は、船に乗って広大な海を航海するといい。初めて風の吹かない日に出くわした瞬間にそういった疑問への答えが得られるだろう。

今の状況、つまり無風の苦境を鑑みた結果、長きにわたる海賊稼業を始めて以来食べてきたうまい食べ物の記録に着手することにした。まずは好物から始めよう。

このレシピは俺がただの若者に過ぎず、旅を始めたばかりでまだブーツが硬く乾いていた頃に、川の側の流れが逆流する場所にいたアルゴニアンの漁師から手に入れたものだ。この漁師はカードゲームの名目で俺から少額の金を巻き上げるつもりでいたが、こちらも同じ方法で夕食代を調達しようとしていた。俺たちは夜更けまで続け、ついには漁師が手放せるものが、まさにその時まで部族の秘密とされていたこのレシピだけになった。

ザリガニのサラダ
潮溜りでザリガニと呼ばれる殻に覆われた生き物を探す。魚とは似ても似つかない姿で、どことなくロブスターのような生き物だ。

風味付けした湯でさっと茹でる。

その間に葉物野菜を集めて準備する。

ザリガニの身を殻から外し、頭を切り落とす。

身が十分に冷めたら葉物野菜に加え、好みの果物や野菜や肉などをトッピングする。俺は提供者の薦めに従い、柑橘類をサラダに加えた。これは葉物野菜に素晴らしい影響を与えた。と言うのも、普通なら葉物野菜はひいき目に見ても好ましいものじゃないからだ。

ニベンを越えてAcross the Niben Bar

(ニベン川の歌)

シロディールからトパル湾まで
ニベンの背中は広がっている
レヤウィン港に船は並んで
朝の満ち潮を待っている

エイルズウェルでは鉱石を
ウェイでコロヴィアの赤を買って
ブラヴィル港まで材木を運び
ブラックウッド・ヘッドへ出航だ

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
濃霧の中に浅瀬が潜む
ニベンを越えて!

トルヴァルで買うはサトウキビ
サウスポイントでは毛皮と染料
ダガーフォールで全部売り
ストロス・エムカイで酔っ払う

ゴールドコーストで絹とワイン
俺たちゃ故郷に舞い戻る
レヤウィンで恋人が待っている
船乗りのお帰りを!

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
波の下にはネレイドが潜む
ニベンを越えて!

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
船乗りたちが海をゆく
ニベンを越えて!

バザールの名簿Bazaar Directory

ディジェリエルの仕立屋 – 仕立専門店、中央市場

ラロスの遺物 – 古代と魔法の品、バザール北西

エルスウェアの砂 – カジートの小間物、バザール南中央

賢者クエンティンの動物店 – 異国の家畜、バザール南東

ダモザグ金属加工 – 上質な宝飾品と鉱物、バザール西中央

高貴なるエスディルの店 – 錬金術試料と植物、バザール東中央

ハックウィングはどのようにして尾を手に入れたのかHow Hackwing Got Her Tail

ツリーンキーシュによって記録されたアルゴニアンの童話

ある日、ハックウィングがせっせと空を飛び回っていると、地上から呼びかける声が聞こえた。「ずいぶんうまく飛ぶもんだ」悪意に輝く目で空中のハックウィングを追いながらボグドッグが言った。「でも、地上での速さはどんなものかな?」

ハックウィングはボグドッグの頭に向かって一直線に襲い掛かり、彼が身をかわすとクスクスと笑って言った。「必要なだけ速くなれるわ」

「絶対に俺の方が速い」ボグドッグが挑んだ。

ハックウィングは空中で回転すると、ボグドッグからは届かない位置にある岩の上に軽やかに着地した。「一体何がしたいの?」

「レースさ。そっちが勝ったらもうお仲間を狩るのはやめよう」

「勝たなかったら?」ボグドッグを信用してはならないと知りながらハックウィングは尋ねた。

「俺が勝ったら」ボグドッグが吠えた。「あんたを食う」

ハックウィングはレースの条件について考えた。見逃すには惜しい内容だった。ボグドッグはそれは長い間、彼女の家族を狩り続けてきた。そして今、彼を阻止する絶好のチャンスを手にしたのだ。ハックウィングはうなずいた。「あの遠くにある大きな石まで競争しましょう。最初にたどり着いたほうがレースの勝者よ」

ボグドッグはうなずいた。「スタートする前に俺の横に並んでくれ。じゃないとどっちかが有利になって不公平だ」

ハックウィングはボグドッグを信じてはならないことを忘れ、頼まれたとおりにゴツゴツとした足場から降りた。その瞬間、ボグドッグの歯をむき出した口先が噛みつこうとしたが、ハックウィングはとても素早かった。彼女がさっと空に飛び立つとボグドッグは胴体を噛み損ね、その短い尾にぱくりと食らいついた。ハックウィングはできるだけ速く翼をはためかせてどうにか前に進んだ。彼女はボグドッグを引きずり、羽ばたき、力一杯動いて、ついに大きな石に到着した。

「勝ったわ!」彼女は得意げに羽づくろいをした。「尾を放して。あたしが勝ったんだから食べられないわよ」

ボグドッグはしぶしぶ尾を放した。その尾はあまりにも長く引っ張られていたので以前よりもずっと伸びてしまっていた。

今もハックウィングは長い尾を保ち、彼らの素早い先祖を称賛し、ボグドッグに約束を守ることを思い出させている。

ファルル・ルパスからの手紙Letter from Farrul Lupus

ジリッチ評議員

旧友よ、お元気でお過ごしだろうか。私がレオヴィック皇帝の執事で、君が元老院にいた頃から何年も経ったというのに、ロングハウス帝の秘密が今も私たちに付きまとっているのではないかと恐れている。

君と他の元老院の者たちは、重大な危機に瀕している。君と同僚たちが何年にもわたってロングハウス帝のために行ってきたことにより、君たちは心ならずも正体不明の存在、あるいは存在たちの標的となってしまったようだ。もちろん、私たちは君がただ命令に従っただけだと分かっている。職務を果たしただけだ。残念ながら、君を追う者は理由など気にしけていない。奴らの望みは、レオヴィック皇帝の最後の秘密のほんの小さなかけらでも知る者を全て抹殺することだけだ。

もっと情報を提供できたらよかったのだが、今のところ私が知っているのはこれだけだ。また何かが分かったら連絡する。とりあえず、今は注意してくれ。

寝る時も警戒を怠るな。

ファルル・ルパス

ファレヴォン最後の戦いThe Last Battle of Phalevon Vero

上級歴史家、シリノ・ヘンター 著

従弟のブルミウンを失い嘆き悲しむファレヴォンは、彼を真っ二つに引き裂いたミノタウロスを追跡し、打ち倒すことを誓った。多くの人にとってミノタウロスはどれも同じように見えるものだが、今回は従弟を殺した者の正体についてファレヴォンは十分に情報を得ていた。グレンブリッジの住人がブルミウンの戦いを目撃していた上に、彼らは戦った相手のミノタウロスのこともよく知っていたのである。その野獣は赤きフルームと呼ばれていた。皮がレンガのように赤く、たてがみも赤茶けたオレンジ色だったからだ。それでも、赤いミノタウロスが潜んでいる場所をファレヴォンに教えられる者は誰もいなかった。

嘆きと冷酷な決意を闇のマントのように身にまとったファレヴォンは、探し求めた対象を追い詰めるまでブラックウッドにあるミノタウロスの巣を空にしていく仕事に取り掛かった。彼はそれぞれの薄暗い洞窟や崩れかけた石の門の前で立ち止まると、老いたカースで作った戦の角笛をとてつもなく大きな音でひと吹きし、ミノタウロスに敵と恐怖の訪れを知らしめた。これを7回行い、7体のミノタウロスを殺したが、赤きフルームはまだ彼の怒りから逃れていた。

ついにファレヴォンはニベンの川岸にある、ブラックウッド内で最後のミノタウロスの巣にやってきた。そして、彼の力強い角笛を吹き鳴らした。「出てこい、出てこい、お前が赤きフルームなら!」彼は叫んだ。「違うのなら、今すぐどこで彼が見つかるか教えるんだ。そうすれば見逃してやる」だが、洞窟からはミノタウロスのうなり声以外、返事はなかった。そこでファレヴォンは身構えて洞窟の中に入った。

(後年、学者たちはファレヴォンがミノタウロスの話を理解していたかどうかは疑問だとしている。と言うのも、理解できる人間はほとんどいないからだ。残念なことに、しがない執筆者である私は挑戦に対するミノタウロスの返事の内容を知らない)

ファレヴォンは洞窟の中に降りていった。その最も奥深い場所でこれまで目にしたどのミノタウロスよりも大きいミノタウロスと対面した。赤きフルームは立ち上がると長身のノルドの2倍は背が高く、犠牲者の頭蓋骨で作った首飾りを身に着けていた。「忌々しい野獣め!」ファレヴォンは叫んだ。「ついに見つけたぞ!さあ、我が従弟を引き裂いたお前に正義をもたらしてやる!」

「フルーム!」と、赤きフルームは答えた。そして血塗られた縞入りの角を下げると、この勇ましき英雄に突進した。

ファレヴォンが脇に飛び跳ねると、赤きフルームは洞窟の壁に力一杯激突した。壁が壊れてヒビが入り、そこから川の水が注ぎ込み始めた。ファレヴォンは赤きフルームが体を引き抜いて再び自由になる前に脇腹を3度切りつけたが、その攻撃は相手をさらに怒らせただけだった。ミノタウロスは大斧をつかむと、ファレヴォンに恐ろしい一撃を与え、彼の右腕を切り落とした。それでもファレヴォンはひるむことなく左手で戦い続けた!

両者の間で激しい攻撃が幾度となく交わされた。そして、ついにファレヴォンがその輝く剣を赤きフルームの心臓に突き刺した!だが、最後の一撃に対する怒りに駆られたミノタウロスは狙いを定めて激しい一撃を与え、勇敢な英雄の輝く兜を叩き割った。ファレヴォンは力尽き、自らが殺した恐ろしいミノタウロスの死体の上に倒れた。

そしてレヤウィンの人々はファレヴォン・ヴェロを発見し、敬意を払って彼を外へと運び出した。

ブラック・マーシュの家産Homesteads in the Black Marsh

布告第19号:第二紀194年 薄明の月11日
帝国評議会最高顧問ヴェルシデュ・シャイエ

ブラック・マーシュとして知られる地域が荒廃した土地であり続け、その地のアルゴニアンの原住民がこの地域で耕作するための方策を講じていない限りにおいて、第二帝国最高顧問は本布告の添付文書に記載されたブラック・マーシュ地域が、この機会を利用することを望むすべての帝国市民が自由に居住できる土地となることをここに布告する。

あらゆる帝国市民(以下「入植者」)は今後ブラック・マーシュの領域内で居住者のいない土地を占有し、それによって900歩尺四方を超えない区画(以下「区画」)の所有権を主張できる権利を有するものとする。その後入植者はギデオンの帝国執政官の面前で、この区画に対する所有権の請求を申し立てることができる。ギデオンの帝国執政官は、入植者の請求および区画が耕作できる状態であり、入植者の主たる居住地であることを示す証拠が提示された日から5年が経過した時点で、入植者とその子孫に対し、区画の永続的な公有地譲渡証書を発行するものとする。

本布告はブラック・マーシュに植民と耕作をもたらすことを目的とするため、入植者は区画を取得した日より土地を改良する権利を有するものとする。改良には、樹木の伐採、開墾、水流の遮断、池の排水、柵の建設が含まれる。入植者が権利を主張する区画内に一時的な住居や野営地を有する全てのアルゴニアンの原住民は、自ら区画から退去および所有物の撤去をしなければならない。さもなければ、最寄りの帝国の守備隊が強制的に移動することとする。

これを布告せよ:ブラック・マーシュは最高顧問の善意の手において繁栄する。

ブラック・マーシュの物語Tales of Black Marsh

物語収集家ジュノ・アセリオ 著

圧迫するような熱気がのしかかり、私を溺れさせる。暑さは喉に詰め込まれた毛布のように、肺の中で広がっていく。こんな暑さは経験したことがない。湿気のこもった熱には具体的な感触がある。手を伸ばせば空気を搾り取れそうなほどだ。

「どうしてあいつらはこんなところで我慢できるの?」とテオドシアは言って唾を吐いた。月明かりの下で、彼女の汗が染み込んだチュニックと、首元にへばりついた髪が見えた。

彼女はきっと、この場所を故郷と呼んでいるアルゴニアンのことを言っているのだろうと思った。私は答えを知らない。喋ろうとしたら、言葉が口の中で溶けてしまいそうな気がして怖かった。

腕に鋭い痛みが走った。もう叫び声をあげる気力も残っていない。ニクバエを狙って叩いたが、離した指は腫れた皮膚の表面からせり上がる血で濡れていた。この痛みも、焼けるような両足の感覚に比べれば鈍い轟きにすぎない。私たちは何時間も歩き続けていた。日が暮れる前に街道が見つかるはずだった。だがもう否定しようがない。私たちは完全に迷ってしまった。

「同じところを堂々巡りしてるのね」とテオが言った。「ブーツがぐしょ濡れだわ」

ブーツが濡れるどころの問題じゃないと言いたかったが、思い直した。彼女を怖がらせたくない。慰める言葉を探していると、低い、くぐもった太鼓の音が聞こえた。音は一挙に周囲に跳ね返り、不気味なこだまと共に汚泥を貫いて響いた。

一瞬、私の頭がおかしくなって、自分の心臓の鼓動が耳の中で鋭い悲鳴に変わったのかと思った。だがテオは頭を上げた。

「今のは何?」彼女の声にも、今では恐怖の片鱗が伺えた。

「太鼓の音みたいだった」と私は役にも立たないことを言った。

私は月に照らされたブラック・マーシュの影に目を凝らした。心臓が早鐘を打っていた。何の動きも見えない。夜に潜む墨汁のように黒い人影も、暗闇に光る目もなかった。沈黙が痛いほどだった。何ひとつ息をしていない。水も動いていなかった。

「とにかく移動しよう」と私は言った。

テオの声はなかった。恐怖で口がきけなくなったかと思い、私は彼女の様子を見るために振り返った。背後には暗闇だけがあった。目の錯覚かと思って手をかざし、テオの体に触れようとした。だが手は空を切った。重く耐えがたい熱気だけが残っていた。

「テオドシア?」私はほとんどたしなめるように呼びかけた。「はぐれてはいけない」

太鼓の音が一度だけ鳴って私に答えた。今度は前よりも近い。もう少しで飛び上がるところだった。周囲を見回すと、今度は私の先を駆けていく人影が見えた。テオにしては足が速すぎる。それにわずかな月光から、尻尾があるのが見えた。

「テオ?」と私は囁いた。

ドン!

恐怖で血が煮え返った。またして太鼓の音がブラック・マーシュを突き抜け、私は走り出した。どこに向かって走っているのか自分でも分からなかったが、逃げるしかない。一歩進むごとに泥を振り払わなければならなかった。分厚い空気に肺が詰まり、汗が背中を流れ落ちた。

ドン!

太鼓は接近し、今やすぐ背後まで来ていた。だが立ち止まって見るわけにはいかない。絶対にダメだ。進み続けなければ…

地面が目の前に飛び込んできた。私は倒れて沼に落ち、汚水まみれになって沈み始めた。耳の中に水が入ってきたが、それでも雷鳴のような太鼓の音はまだ聞こえていた。

ドン!

私は何とか起き上がった。草や泥が指先からこぼれ落ちた。水面から頭を出すと、正面で何者かが同時に頭を出した。テオかと思ったが、顔が違った。大きさは同じくらいだったが、両目がルビーのように光り、月明かりに鱗が輝いていた。自分が見つめているのは、巨大な蛇の顔であることに気づいた。

ドン!

蛇は顎を大きく開いた。底なしの虚無が開き、私を見つめ返している。

ドン!

私に向かって落ちてくる。

ドン!

ブラックウッドのワインWines of Blackwood

オリウス・ヘルタノ 著

シロディールが食事と飲み物に対して抱く愛情はタムリエル中に知れ渡っている。瓶か水差しに入れた香り豊かなワインを食事に添えなければ、インペリアルの食卓は始まらない。しかし愛好家たちが集まってお気に入りのヴィンテージについて話す時、大半の者は豊潤さで知られるコロヴィア台地の赤のブレンドが一番だと決めつけている。著者の考えでは深刻な間違いだ。帝国のどの地域も何らかの価値あるワインを作っている。その中にはもちろん、ブラックウッド地方も含まれる。

当然ながら、これほど広大な地域の醸造業者すべてに対して信頼性の高い調査を行うことは、このささやかな写本の射程を越えている。むしろ、本著はこの顧みられることの少ないブドウの栽培地で作られるワインのスタイルや特徴に注意を向けたい。レヤウィンとその周囲のブラックウッド地方は、帝国内でも最も温暖で湿度の高い地域であり、当然ながらコロヴィアよりも多くの種類のブドウが採れ、多様な栽培技術が要求される。この気候でブドウは短期間で熟し、甘みに加えてフローラルでフルーティな味わいを強く持つ、複雑なワインになる。

アネクイナの乾いた平原にほど近い、ニベン川の西の丘で作られる「レフトバンク」ワインから始めよう。ここはもちろんトランス・ニベン地方で最も乾燥した部分であり、ここで生まれるワインはレヤウィンのどこよりもコロヴィアに性質が似ている。クイーンズティアーやネリアンス・ファインなど、赤の品種がこの地に適している。穏やかな冬と長い栽培の季節のおかげで、ブドウは早期に熟成する。トランス・ニベンの丘は熟練の醸造業者の手にかかれば、真に見事な出来栄えの、甘く豊穣なワインを生み出す。

東に移動すると、ニベン森の軒先にやって来る。川の西にある地域よりも暑く高湿度なこの一帯は、大半の赤ブドウに適さない。しかしプティット・グレイやホワイトムーン、グレート・アンブロシアのような白ブドウの品種は、この森林の影に覆われたブドウ園でよく育つ。これらの品種は言うまでもなく、インペリアルの全てのワインの中でも特に甘くフルーティなワインになるが、だからといってその品質を軽視してはならない。上質なニベン森の白は、優雅で身の引き締まる爽やかな風味を持ち、どのインペリアルのワインセラーに置いても恥ずかしくない逸品である。

さらに東へ向かい、ブラック・マーシュの辺縁に行くと、ついにブドウが一切まともに育たない土地にたどり着く。うだるような蒸し暑さのせいで、ブドウ園を作るのは不可能に近い。しかし必要は発明の母である。そのためブラックウッド東境の人々は手に入るもの、例えばイチジクやブラックベリー、ブルーベリー、さらには桃でワイン(の一種)を作っている。こうした材料ではうんざりするほど甘いフルーツジュースしかできないだろうと思うのも無理はないし、実際そうなることも多い。しかしこのフルーツワインの一部は意外なほどバランスが取れており、この地方の辛い料理によく合う。ブラック・マーシュのピーチワインを地下に貯蔵し、舌の肥えた来客に供すのはお勧めできないが、暖かい夏の夕べに入植者の夕食を流し込むために飲むのであれば、決して悪いワインではない。

ブラックウッドの景色Sighs of Blackwood

ギデオンでランプが消え
筏が沼地を漂う時
聞こえるだろう、槍蛙の歌が
樹液を浴びた合唱のように響きわたるのを

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

あなたの濁った水を泳ぎ
ワッソフルーツを味わう時
ホタルの光のごとき、自らの祝福を思う
我がヒストがここに根を張ったことを

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

泥炭の匂いが鼻を満たし
泥が背中で乾いていく
百の収穫が花開くのを感じて
あなたの黒い大地で眠る

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
あなたの物語の吐息で、我らの鱗を湿らせたまえ
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

ブラックウッドの諸部族:ギデオンと国境Tribes of Blackwood: Gideon and the Border

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

マークマイアへの長く危険な遠征の後、私は故郷のハイロックへ戻ってたっぷりと休息を取るのがいいだろうと思った。しかし八大神には別の計画があったようだ。私の最初の本「マークマイアの諸部族」の売り上げが予想を遥かに上回ったのである。研究者にとっては嬉しいジレンマだ!新たな求めに応えるため、私はトランス・ニベン地方でキャラバンに別れを告げ、ギデオンに向かって東へ出発した。

行ったことのない人のために説明しておくと、ギデオンは無数の文化が不可解に混ざり合う地であり、アイレイド建築とインペリアルの歴史、コスリンギの民間伝承、そしてアルゴニアンの伝統の異様な集合体である。豊かな多民族社会の歴史を持つにもかかわらず、現在のギデオンに住んでいるのは主にアルゴニアンである。私にとっては家族のように大切な存在になった南の親族とは異なり、ブラックウッドのアルゴニアンはシロディールとの長期間の接触により正負双方の影響を受けている。彼らはより正確なシロディール語を話し、より繊細な事業を営み、外国の伝統によりうまく適応している。このことはしばしば、古い伝統やアルゴニアン哲学の純粋な体裁を失う結果につながる。アルゴニアンがヒストの至上性を公然と否定するのを初めて聞いた時、私は驚愕した。だが時と共に、私はブラックウッドの諸部族も複雑さに劣るわけではないことを理解した。多くの点で、彼らは他の部族よりも遥かに複雑だとさえ言えるだろう。

タムリエルのより大きな部分との境に住むアルゴニアンは、外国の破壊の大半を経験している。戦争や飢餓、奴隷貿易、環境破壊などである。国境のアルゴニアンはこうしたこと全てを体験してきた。その結果、この地のサクスリールの友情を得るには大変な苦労が伴った。マークマイアのアルゴニアンの大半は外国人に対し、困惑を交えた滑稽なほどの無関心で迎える。しかしブラックウッドのアルゴニアンは、大部分のよそ者を軽蔑に近い疑念を持って見ている。ケシュという地域の指導者は、民をより広いタムリエル社会に統合するため多大な努力を払っている。この試みが不信の増大ではなく、協力の促進へとつながることを祈っている。

ブラックウッドの諸部族:リバーバックTribes of Blackwood: Riverbacks

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私が追放したい迷信を選べるなら、アルゴニアンの見た目や行動が全員同じという考えを追放したい。ブラック・マーシュの境界の外側にいる人々はしばしば、アルゴニアンの身体機能が固定されていて、部族ごとの違いもごく些細なものだと思い込む。大半のアルゴニアンが基本的な形態学的パターンを共有していることは事実だが、それでも差異は大きなものから小さなものまで存在する。サルパ、ナガ、ハプスリート、パートルなどの例はほんの一部である。確実に言えることは、こうした差異が各部族のヒストを取り巻く生息環境に対応していることだ。長老ナヒーシュの大半は、ヒストが「正しい皮膚を正しい時に」与えてくれると考えるに留めている。それが本当なら、リバーバック族のヒストは実に見事な仕事をしたと言える。

私の案内人である蘭を名づける者は、沼の奥地へ私を連れて行って、ナカ・デシュ、もしくはリバーバックというあまり知られていない部族に会わせてくれた。川の民に会えるほどブラック・マーシュの奥に行くインペリアルは少なく、ナカ・デシュはヒストの根の境界から外に出ることにほとんど意義を見出さない。そのため、大半の者は彼らを秘密主義で神秘的な部族とみなしている。リバーバックは際限なき歓待の精神を持っているため、この誤解は余計に愉快である。

私たちはリバーバックの領域へ渡し舟で近づいた。遠征隊はほとんど一瞬で部族の哨戒兵に出くわした。哨戒兵たちは亀かワニのように水上を漂っていた。彼らの顔の幅広さや目の大きさ、そして前腕と喉元についた水かきには驚かされた。ヒストがこの地域民に「正しい皮膚」を与えたのは明らかだ。リバーバックの領域は地面よりも水が多く、沈んだ沼地は小さな筏やカヌーで移動するしかない。

蘭を名づける者は低い鳴き声で哨戒兵に挨拶をした。彼らは元気よくその音を繰り返し、私たちの船に乗り込んできた。哨戒兵たちの誰もシロディール語はできないらしく、案内人に通訳してもらなければならなかった。彼女によると、リバーバックは通行許可を与える前に、謎かけの貢物を要求しているということだった。この要求に脅迫の匂いは感じ取れなかった。命令というより、誘い掛けのようだった。私に言葉遊びの才能はないが、インペリアルならほとんど誰でも知っているドアノブに関する子供の謎かけを教えた。蘭を名づける者がそれを翻訳すると、すぐに2人の哨戒兵は拍手をした。1人が自分の額を私の額に押しつけて2度鳴き、その後2人は現れた時と同じく突然、水中に消えていった。

私たちはリバーバックと共に4日間過ごした。1日を除いては、ずっと筏に乗って釣りをしていた。リバーバックの釣りは伝統的な釣りと名前しか似ていない。ナカ・デシュは釣り針と糸ではなく、オシージャ・ガースという大きな川魚を使う。オシージャは1匹ごとに変わった引き具と紐で繋ぎ止められている。魚の大量にいる場所を見つけると、アルゴニアンたちはこの捕食者を解き放ち、魚を捕まえさせる。オシェージャが魚をくわえるや否や、アルゴニアンはこのペットを船の脇に引き寄せ、魚を取り上げるのである。私は蘭を名づける者にどういう仕組みなのかと聞いた。どうやら、紐は魚を飲み込むのを防ぐらしい。しかし、オシージャはちゃんと世話されていると彼女は請け合った。もちろん、それはオシージャが年老いるまでの話で、そうなったらやはりこの魚も食べられてしまう。

リバーバックと過ごした時間の中で、苛立つことがないではなかった。私が出会ったアルゴニアンたちの中で、ナカ・デシュは圧倒的に好奇心を欠いていた。謎かけを除けば、彼らは私たちが持ち込むものに全く興味を示さなかった。私たちの食事は拒絶し、私たちの物語には特別関心を持たず、私たちの名前すら聞かなかった。この無関心と、彼らの際限なき歓待が合わさって、遠征隊の大半は居心地の悪い思いをした。蘭を名づける者は、親切に返礼が必要だと思うのがおかしい、と私たちをたしなめた。いつものことながら、こうした小さな失望もまた貴重な教訓を与えてくれるのである。

ブラックウッドの諸部族:レッドドリームの民Tribes of Blackwood: Red-Dream People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

多くのアルゴニアンが石の住居を避ける一方で、国境地帯の部族は大抵それほど信念に固執しない。ブラックウッドを旅すればすぐに様々な種類の古代遺跡に遭遇する。そして、これらの遺跡は頑丈で守りの固い住居を提供しうる――これほど荒廃し、戦火に引き裂かれた土地では非常に重要なことだ。

私たちは沈んだザンミーアの中と周囲に住むいくつかの部族に会った。また、古いアイレイドの集落に避難していた部族にさえも会った。例えばレッドドリームの民だ。彼らの「水浸しの家」は伝統的なアルゴニアン様式で建てられているが、乾燥した時期にはよく近くのアイレイドとアルゴニアンの遺跡に避難する(ブラックウッドのほとんど集落と同じように、これらの遺跡は1年のうちかなりの期間水没している。そのため、長期の住まいには適していない)。

乾季の間、ハッツリールは遺跡の「歌を知る」ために樹液の儀式に参加する。外部の者はおそらくこれを型破りな考古学と解釈するだろう。彼らは遺跡の中で何時間もかけて歴史的価値があるものを探す。欠けた杯や壊れた武器といったものを。十分に集まったらそれらの上に灰をまき、奇妙な樹液の酒を飲み、その品々の「夢を見て」それにまつわる物語を知る。私が確認できたところによると、この物語のほとんどは作り話か完全に暗喩で覆い尽くされていて、学術誌にはほとんど使えないようなものばかりだった。たとえそうでも物語は示唆に富み、場所に対する価値ある思いを部族にもたらすのだ。根の使者、ラー・ネイはそれを「収獲」、狩猟とも農業とも違う習慣だと説明してくれた。儀式が完了すると、この歴史家たちは見つけたものを家に持ち帰り、創造的なやり方で日常生活に組み込む。ハッツリールの農民は剣を鋤の刃として使うかもしれない。料理人たちは古代アイレイドの杯を植木鉢にするかもしれない。それはここブラック・マーシュだけで見られる、素敵な創造力の表れだ。

プロノビウスへの未完の手紙Unfinished Letter to Pronobius

プロノビウス・ヘブリン大司祭様

今頃はギオヴェッセ公爵領の嫡子が、袖にされた恋人によって残酷に殺されたことをお聞きになっていることでしょう。凶行に及んだとされるレッドガードの女は故郷の砂漠に逃げ帰ったようです。女に正義がもたらされるかどうかは怪しいものです。嫡子マセンの死は大いに悼まれています。彼は父親と同じようにギオヴェッセ内外から好かれておりました。彼は母親から大変愛されておりました。愛する、と言うには少し支配欲がありすぎたようですが。私は批判をいたしません。求められれば助言をするか、相談に乗るだけです。

ご存じのとおり、私は何十年もの間忠実にガレヌス家に仕えてまいりました。こういった職務では、時折の厄介ごとはつきものです。亡き公爵は敬虔な方でした。ですが奥様のアステラ女公爵は、もしかしたら… それほどではなかったかもしれません。もちろん、その立場ならやらねばならぬように、祭礼や儀式には全て参加し監督もしておいででした。ですが、常に心がそこにないように感じていました。とは言え、マセンを失った今、私は彼女の神々や光の道への信仰心に対して心から疑問を感じています。差し支えなければギオヴェッセ城を訪ねて、女公爵とお話をしていただけないでしょうか。

最近耳にした噂を、紙に書き記したくはありません。夫人が個人的な研究でしているらしきことに関連して、闇の技に関連する書物を持っているという噂です。また、夫人が我が子を失ったことについてどのように憤慨し、逆上しているかについても書きたくありません。明らかにそのような運命を受け入れる境地に達することはできないようです。

ボロボロになった交易商人の記録Tattered Trader’s Log

今日はアルゴニアンのキャラバンが立ち寄った。何とかいくつかの奇妙な樹液の壺の値段交渉をした。裁定者ガヴォスがまた自由貿易を抑圧する無意味な規制を思いついたりしなければ、結構な利益になるかもしれない。彼から樹液を市場内で取引できない理由に関する、長々とした講義を聞かされずに済むようゼニタールに祈る。

自分自身で実際に仕事をやることもなく、ぜいたくに暮らすのはさぞかし楽しかろうな。ここで商品と金を回し続けてるのは我々商人だ。取引を妨害するだけでも十分よろしくないが、彼は黄金の金床を誰にも見せないらしい。我々と神々の間に立とうとするとは出過ぎた真似だ!それを許すつもりはないし、そう思うのは私一人ではない。

マタス・アムニスへの手紙Letter to Matus Amnis

マタスへ

招待状は受け取ったか?ヴァンダシア評議員の催し物はいつだって素晴らしいからな。それに、今回はとりわけすごいものになると聞いてる。

私はほぼ君と同じぐらい長い間、評議員と彼の試みの忠実な支援者でい続けてる。また、我々はどちらも彼の特別な社会組織に所属している。私は常々、我々の尽力が何かに至るのか疑わしく思っていた。真実が明らかになると、私が長年築いてきた想像なんて、ちっぽけに見えるものだと感じてるよ。

もう一つ。サルヴィットの屋敷で何が起きてるか知ってるか?ブラックウッド湖の近くにある彼の地所でだ。どうやら何かが、ヴァンダシアに次の催し物を前にして人目につかないようにすることを決意させたようだ。グラシアン・サルヴィットと避難したという噂を聞いたよ。サルヴィットが我々よりも先にヴァンダシアの秘密の計画について知ったとしたら、すごく腹が立つ。

君に会うのを楽しみにしている。道中で、もっと詳しい情報を手に入れないとな。

覚醒した兄弟
モリス

モーゲインへのギルド指示Morgane’s Guild Orders

守衛モーゲイン

レヤウィンの魔術師から、ブラックウッドにある奇妙なデイドラの施設に対する調査を依頼された。この「破滅の宝物庫」が領域内にいくつあるのか正確な数は分かっていないが、一ヶ所だけ場所が分かっている。ギデオンの東にある沼の奥深くだ。この地域にはほとんど住人がいないが、建物から奇妙で工業的な音が聞こえてくるとの報告が現地のアルゴニアンからあった。

君と クド・アフハダジャには、この破滅の宝物庫ポルシジドに入り、その忌むべき住民が何を企んでいるのかを明らかにしてもらいたい。中には信者と、もしかしたら多少のデイドラがいることが推測される。君とクドがはぐれた場合は、忘れずに送信石を使用して退却の態勢を整えるように。

戦士ギルドのために
ギルド幹事 ボルヴス・ダルス

ラロスの焼け焦げた日記Ralos’s Charred Journal

ガヴォスは終わった。

予想どおり、奴のしみったれた兵士たちは買収できた。クエンティンとエスディルにとって、説得して同意させる負担は大したものではなかった。我々は彼らを買っても釣りがくるほどの金を持っているからな。

奴が大切にしている金床と共に閉じ込められた今、絶え間なく挟まれる「公正さとは」という言葉を聞くことなく、本物の利潤の獲得に戻れる。奴に何が分かる?この市場の繁栄の理由は我々で、奴の説教や小物のおかげではない。

今日、新しく指名された裁定者が来た。彼は努めてさりげなく一週間分の取り分の増額を示唆し、「夕日の下」での休暇の計画のための金が足りないことを匂わせてきた。言葉の選び方がかなりわざとらしいような気がした。私の秘密の隠れ家を知っているのか?思っていたよりも不注意だっただろうか?

いずれにせよ、我々は今のところ、さらに気前よく心付けを渡せるの余裕がある。だが、奴が私の事情についてあまりにも知り過ぎた場合は、交代させる必要があるかもしれない。

リルモシートの贈り物Gift of the Lilmothiit

チャニル・シースによる、勇気ある青年向けの本

クザールは元気に先頭を行き、草に覆われた岩を軽々とまたいで進んだ。彼はもうすぐ仲間のキャンプに着くと言ったが、2人がジー・ティーの部族の領地を出発して以来、彼は毎朝同じことを言っていた。ジー・ティーはそろそろ我慢の限界だと思い始めた。それでもクザールは仲間がもうすぐ近くにいるし、彼らはまだ移動しないと約束した。ジー・ティーは彼を信じたが、他にどうすればよかっただろう?彼女の部族はリルモシートが持っていた薬を求めていた。しかも、彼女の母親が治療を必要としていた。母親は日に日に衰弱していたのだ。

病気はどこからともなくやってきた。ある日、数人の大人が熱を出した。その後、症状が拡がっていった。当初、拡散はゆっくりだった。治癒師は熱を治し、食事を飲み込むのに苦労する患者の手当てをしたが、それで治癒師の小屋は満杯になった。治癒師はできる限りのことをした。大抵の場合、患者たちは安静にしているしかなかった。

若者が村に迷い込んで来て、奴隷商人から逃げてきたと言った時、最初に近づいたのはジー・ティーだった。クザールはとても若かったが、その話しぶりは子供とは思えなかった。彼は奴隷商人によって仲間のもとから連れ去られて以来、目にしたことを全て覚えていた。連れ去られる時に通った道はまだ彼の記憶に新しく、リルモシートがキャンプを張った場所もよく覚えていた。彼女の部族の大半はこの若者を信用する気になれなかった。リルモシートの策略を忘れていなかったからだ。だがジー・ティーは事の重大さを理解していた。彼女はこの若者と荷物を集め、彼がキャンプにやって来てから3夜と経たないうちにこっそり抜け出した。

今、ジー・ティーはクザールを信用した自分の判断を疑い始めた。あまりに長い間歩き続けていたので、彼女の足はボロボロになり、背中の荷袋はほとんど空になっていた。道の砂埃が喉にこびりついていた。最後に他の旅人を見かけてから数日が経過していた。事情に詳しくなければ、ジー・ティーは誰もこの道を通ったことがないと思っただろう。だが砂埃の中に足跡があったし、茂みも刈り取られていた。最近誰かがここに来たのだ。ただ見えるところにはいなかった。

若者はまた別の大岩の上に昇り、喉を張り上げて短く歓声をあげた。「着いた!ここだ!」

ジー・ティーはしなやかな足で積み上がった岩をよじ登り、若い旅仲間の隣に立って峡谷を見下ろした。キャンプの痕跡があった。狭い円の内側に集められた燃え殻や、テントの柱を立てた時地面にできた穴、そして周囲に置かれた材木、東へと通じる足跡もあった。ジー・ティーは失望で背骨がしぼむ気分だった。リルモシートがここにいたとしても、もう移動したのだ。

ジー・ティーは無言で放棄されたキャンプを歩き、クザールは駆け回って岩や木の陰を探した。まるで部族の成員がひょっこりと姿を見せて挨拶するのを期待しているかのように。2人はキャンプを一回りして、太陽が上空で輝く中、峡谷を移動した。キャンプには灰と穴以外には何も残されていなかった。旅は無意味に終わった。クザールが仲間たちと再会することはないし、ジー・ティーは母親にどうしても必要な薬を取ってくる使命を果たせなかった。

「ほら、これ!」クザールは捨てられた木材と荷車の車輪の山に飛び込んだ。出てきた時、彼は両手に粘土の瓶を抱えていた。ジー・ティーは若者に近づくにつれ、足が重くなるのを感じた。彼の耳は失望感で垂れていたが、目は輝いていた。クザールは瓶の蓋を外した。中には強烈な香りを放つ、濃厚な薬草のペーストが入っていた。

「それは何?」と、臭いに顔を背けながらジー・ティーは尋ねた。

「母さんの調合薬だ。どんな病でも治す。クザールにも、ジー・ティーにも役立つ」

ジー・ティーは嘘だと思うところだった。そもそも、彼は部族が自分を置いていくはずがないと言ったではないか。「薬なの?」

クザールは真剣な目で彼女を見つめ、蓋をした容器をジー・ティーの手に押しつけた。「薬さ。贈り物だよ。俺の部族からあんたの部族へ」

するとクザールは背を向けた。彼は足跡を追って東へ向かい、二度と振り返らなかった。ジー・ティーは彼が地平線の向こうへ消えていくまで見ていた。その後彼女はリルモシートの贈り物を持って帰り、母親と、治癒師の小屋に集まる残った病人たちに与えた。

レオヴィックの偉大なる霊魂の声明Leovic’s Great Spirits Proclamation

〈帝国の公式布告、第二紀576年の原典に基づく写本〉

帝国の全臣民よ、この言葉を聞くがよい。

ロングハウスの古き知恵は国家の繁栄にとって重大であり

多様な宗教的実践を認めることは地域の平和を保つために必須であり

我らの帝国は強さの美徳を尊び、隷従の悪徳を憎む。

以上を鑑みて、私、すなわちブラック・ドレイクの後継者である皇帝レオヴィック一世は、ロングハウスの長に任命された者として、大衆にはデイドラの名で知られるリーチの古い霊魂を、帝国の統治における守護者かつ保証者としてここに承認し、また賛美する。この霊魂の崇拝を禁じるいかなる法や習慣もここに無効化されるものとする。ルビーの玉座の臣下でこの霊魂を賛美する典礼や儀式、祈祷への干渉を試みる者は玉座の敵対者とみなされ、反逆者や不平分子など、国家の敵と同じ懲罰の対象となる。

宗教改革の時代をシロディールとその先にまで押し広げ、栄誉ある我らがデイドラ公の言葉と報酬に、新たな力を求めようではないか。

上記を確認の上、ここに我が手と心を本件の大義に添え、帝国の印を押すものとする。

ロングハウスに栄光あれ!帝国に栄光あれ!デイドラ公に栄光あれ!

レッドメイン砦の帝国軍の歴史A Legionary’s History of Fort Redmane

第二紀233年薄明の月19日、プリスタン・ヴィニツィオ百人隊長 著

護民官マルティウス・コンダラ殿

前回我々の拠点をご訪問頂いた際、貴官はレッドメイン砦の名の由来を尋ねた。私は恥ずかしながら答えを知らなかったので、若い士官であるアギアン副隊長に頼んで、我らが拠点の信頼できる歴史を調査してまとめてもらった。彼女の勤勉な仕事のおかげで、レッドメイン砦という名前の起源について、貴官の質問に答えられることを誇りに思う。

砦の建設が開始されたのは、レマン皇帝がアカヴィリに大勝利を収め、第二帝国が築かれて間もない第一紀2707年だったことがはっきりしている。この時期についての俗説では、周辺地域がすぐにレマン皇帝の支配を認めたということになっているが、必ずしも真実ではない。当初、第二帝国の国境は確定していなかった。ヴァレンウッドのウッドエルフやアネクイナのカジート、ブラック・マーシュのアルゴニアンは皆、生まれ変わった帝国への統合に抵抗したのだ。

ここトランス・ニベン地方では、カジートの好戦的なクランがリンメン周辺のサバンナからやって来て、川を越えてブラックウッド北方の農地や小さな街を襲撃することもあった。大河から西へ領土を広げるニベンの植民者たちは、伝統的なアネクイナの狩猟地にまで食いこんだため、好戦的な狩猟公たちは自ら問題の解決に乗り出した。このプライドの高いカジートたちは自らの土地で行われる「ニベン人の密猟」に対して、人間の土地で「狩り」を行うことで報復した。

カジートの絶え間なき略奪の脅威からこの地域を守るため、第十軍団を指揮していたネメニウス・ヘスター将軍はニベン下流の峡に国境要塞を建設することを提案した。これはレヤウィンの屈強な守りとニベン湾の守りの中間に位置するだけでなく、峡はカジートの略奪者たちが好んで渡河する場所でもあった。ヘスター将軍の本来の計画では、この強力な要塞がニベン砦と呼ばれる予定だったが、建設はなかなか進まなかった。レマン皇帝の統治初期、シロディールの人員はタムリエル中の脅威に対処する必要のせいで酷く不足していた。ブラックウッドのカジート盗賊は、他の脅威に比べれば霞んでしまっていたのだ。

上官たちの出し渋りに業を煮やしたヘスター将軍は、アネクイナの略奪者の脅威に彼らの注意を向けるため、少々問題のある策略を思いついた。彼は凶暴だが公式には知名度の低いフンズー・リというカジートの族長を選び、人間を奴隷にして血を抜き取る「野獣」軍団のリーダーに仕立て上げたのである。将軍はフンズー・リに「赤いたてがみ」という異名まで与え、トランス・ニベン地方から全ての人間を追い出す聖戦を呼びかける、狂信的な宗教的指導者であると報告した。

言うまでもないが、カジートのたてがみは常に一人であり、このリーダーがそれほどの戦士でもなく、強盗でもないことは良く知られていた。だが第二帝国初期、カジートの地域アネクイナとペレタインはシロディールの民にとって未知の異国だった。この見慣れぬ国の「野獣」たちについてのあらゆる不正確な物語が、まことしやかに伝えられていたのだ。

ヘスター将軍の計画はうまくいった。赤いたてがみの脅威を誇張したことで、帝国の財布の紐が緩んだ。ヘスターが国境を守るために要求した砦の建設には、大量のゴールドが投入された。

一方その頃、フンズー・リはインペリアルを「挑発」したことで他の狩猟公たちに叱られ、困り果てていた。ヘスター将軍の報告で広められた作り話に激怒したフンズー・リは、忠実な仲間を集めて小規模な部隊を作り、ニベンを渡って憎き敵を探し求めた。噂されたような騒々しい大軍ではなく、たった一回の密かな襲撃だった。砦から歩いて1時間も離れていない場所で、フンズー・リと戦士たちはヘスター将軍に奇襲をかけた。将軍は自分が悪名を押しつけたカジートに殺されたが、フンズー・リもヘスターの兵士たちに切り伏せられた。

帝国軍は討伐すると主張した怪物がおそらく自分たちの捏造であったことは認めず、ネメニウス・ヘスターの死を英雄的な抗戦として描き出し、将軍は「赤いたてがみ」の脅威に終止符を打つために、勇敢にも命を捧げたのだと喧伝した。数年後、ニベン砦は軍団の獰猛な敵の名を取って赤いたてがみ、すなわちレッドメイン砦と改名された。皮肉なことに砦が完成する頃には、ヘスター将軍にこの地域の守りを強化させたそもそもの要因である略奪の問題が終結していた。カジート王国のアネクイナとペレタインは、すでに帝国の支配下に入っていたからだ。

それから現在に至るまで、レッドメイン砦はニベン川の峡に立ち、決して来ることのない敵を見張り続けている。

レヤウィンにて傭兵求むWork for Hire in Leyawiin

問題がブラックウッドの民を悩ませている。自分がもっとも勇敢で強く、金と栄光を山積みにするためには計り知れない危険に向き合うことも厭わない冒険者だと思うなら、軍団長会議は仕事を提供する。

詳しくは、レヤウィンの街にいるサーヴァティウス・レオントゥロンを探してほしい。

レヤウィンの解放The Liberation of Leyawiin

雷鳴と共に、サイ・サハーンは
激戦の中、レヤウィンに向かう
レオヴィックの戦士が攻め
裏切り者はサイの背後を襲う

矢が飛び交い、剣がきらめく
死の鐘が鳴る時は近い
動じぬ顔で内なる力を引き出し
彼はレヤウィンのため剣を振るう

背後の裏切り者、前方のロングハウス
両者が戦いに望むは、剣聖の死
サイ・サハーンはその運命に抗い
今や一人で、門を突破する

中に入り、サイは息を吐く
二つの軍隊と戦い、死を相手取る
剣と知恵のみを武器にして
レヤウィンの自由のため戦う

背後の裏切り者、前方のロングハウス
両者が戦いに望むは、剣聖の死
サイ・サハーンはその運命に抗い
街の解放を試みる

軍と激突しても、サイの剣は鎮まることなく
レオヴィックは逃げ、サイの使命は果たされる
彼は裏切り者の死体の山に立つ
防衛者は悪を滅ぼし
レヤウィンの民は自由となった!

レヤウィンの出港スケジュールLeyawiin Shipping Schedule

レヤウィン港出航予定 — 第二紀580年 蒔種の月 第3週

メリトリアス号 – 象牙旅団の巡回船。日耀の明け方、2週間の巡回のため出航。恵雨の月第2週帰港予定。(密航、海賊に遭遇、飛び降りる?)

フラウンダリング・フラウンダー号 – ブラクソン・エムリの漁船。央耀の朝出航。同じ週の金耀帰港予定。(退屈すぎ!)

シェル・バック号 – 黒きヒレ軍団の軍艦。月耀の正午、ギデオンへの潮流で出航。(硬き鱗の者なら一緒に航海できるはず。あの章は読み返さないと)

メリーマーメイド号 – ランジェル・ミリの商船。税関検査終了まで出航は保留。ゴールドコーストのアンヴィル行き。レッドセイルの密売人の疑いあり。(完璧!港に引き止められていてくれるなら、忍び込む時間はたっぷりある!)

レヤウィンへの旅の案内Traveler’s Guide to Leyawiin

アスティニア・イサウリクス 著 公開日:第二紀569年降霜の月1日

ニベン川の河口にまたがって位置するレヤウィンは活気溢れる港であり、産業の集積地であり、崇拝の中心地でもある。ブラックウッドの温暖な丘陵と肥沃な農地に囲まれた、この陽気な経済都市は、その居住者の多様性を誇っている。3つの異なる種族に属する民が象牙の馬の街で出会い、交流している。ここレヤウィンでは、エルスウェアの異国情緒溢れるカジートとブラック・マーシュの原始的なアルゴニアンが、帝国都市の貿易と文化に触れる。これはタムリエル中を探しても他では見られない光景である。

レヤウィンは誇り高く、厳格な顔を外の世界に見せている。高い側壁や円柱型の塔、強靭な門に守られたこの街は、要塞としても貿易の中心地としても機能している。街の大部分はニベン川の西岸に位置しており、東岸はレヤウィン城が占めている。レヤウィンで最も人目を引く要素である、ニベン川を横断する巨大な石橋と防護壁が街を接続している。毎日大量の船がシロディールやアビシアン海沿岸、あるいはモロウウィンドの港へと向かって出発し、レヤウィンの橋の下を通っていく。船は大きな門が開いて通行を許すと、一旦停止して帆をたたむ。

市の行政
レヤウィンはレヤウィン属州にあるブラックウッドの首都である。第二帝国の初期、カロ家はこの国を統治する一族として正式に認知された。ネヴェニア・カロ女伯爵はこの誇り高き血統を継ぐ者である。この優雅な女性は高官たちに余興を提供し、街の社交界を取り仕切るだけでなく、街の演劇を支える気前のいい後援者でもある。

日々の行政事務は帝国の布告によって任命された総督の役目である。総督は女伯爵と共に、この地方全体を監督する。軍団長会議は市内の活動における細かな政務処理に従事する。

大礼拝堂
壮麗なゼニタール大礼拝堂に言及することなく、レヤウィンの話は始まらない。空に突き出す鐘楼が屋根よりも高くそびえたつ様は、街のほとんどどこからでも見ることができ、初めての訪問者にとっては目印としても役立つ。この大聖堂は第一紀600年代、聖カラダスによってペリナル・ホワイトストレイクと聖戦士の戦棍を称えるために築かれた。この尊敬を集めた聖人は、死後礼拝堂地下の聖なる墓に安置された。今日でも、信心深い人は聖カラダスの墓で礼拝中に、聖戦士の戦棍の幻視を見たと報告することがある。

食事、飲み物、宿泊
レヤウィン通が高く評価するのが、ゼニタール大礼拝堂から広場の向こう側、街の中心に位置するカラダスの宿屋である。ここは歴史ある建物で、鉛枠が付いた美しい窓ガラスに、優雅な鏡板、上質のカウンターを備えている。この宿は400年以上もこの場所にあり、無数の大貴族や名のある英雄を迎えてきた。

格式にこだわらない旅人には、レヤウィンの商店街地区が予算的にお手頃だ。 多くの商人が季節ごとに変化する短期の市場で露店を開いているが、常駐の食事処としては、礼拝堂南の労働者地区にある「頬落ち大根」がお勧めだ。数多くのレヤウィンの職人や商人がここで日常的に昼食をとるため、早めに行って行列を避けたほうがいいだろう。

主な施設
レヤウィンの店や職人街、ギルドホールは主に大礼拝堂の南、街の西半分にある。

魔術師ギルドは礼拝堂広場の南に位置している。ここにはブラックウッド最大の蔵書庫があり、本棚で一杯の部屋にあらゆる種類の謎めいた書物が置かれている。ここではまた、カジートの秘術師フェイッフィが瞑想のモルフォリスの印を掲げ、奇妙かつ強力なクリスタルを売っている。

ゼニタールは言うまでもなく、鍛冶と産業の守り神である。そのため、レヤウィンの商店街地区で高品質の鍛冶屋を見つけても驚くには値しない。鍛冶屋「歌う鋼鍛冶」はトランス・ニベン地方でも最高クラスの武器と防具を作っている。

最後に、鎧と素敵な服の簡素な看板に欺かれてはならない。熟練の仕立屋たちが特別な機会や催し物のために作った驚くべき作品が誇らしく展示されており、その隣にはより実践的な、防御力の高い作品が並べられている。

興味深い事実
この街のシンボルである象牙の馬の起源は知られていない。ある伝統では、古代の英雄ペリナル・ホワイトストレイクが関係していると信じられている。別の伝統では、神話の時代にブラックウッドは神のごとき力と美しさを持つ光り輝く白馬の住む地であり、この馬が岸辺を守っていたのだと述べられている。

カジートの武将であるアネクイナの黄金の獣、ダルロック・ブレイは第一紀500年代にレヤウィンを征服した。この街は20年以上もの間、カジートの支配下にあった。

第二紀299年、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエはレヤウィンの橋を撤去し、大型の帆船がトパル湾からニベン川へと通過できるようにせよと命じた。しかしレヤウィンの軍団長会議は商業の流れが増えても、レヤウィンに停泊せず通り過ぎるだけではないかと考え、帝国の計画を遅らせた末、ついには放棄させることに成功した。今日においても、大きすぎて橋の下を通過できない船は街の南の港に停泊し、貨物をより小さな川船へと移し替えねばならない。

親愛なる読者よ、よき旅を!象牙の馬の街への訪問をどうか楽しんでほしい。

ロヴィディカス評議員への手紙Letter to Councilor Lovidicus

ロヴィディカス評議員長

我々が共に帝国元老院へ仕えたのははるか昔のことだが、今でも君のことは同僚であり友人であると思っている。確かに私はあのウッドエルフが君に伝えた警告を無視した。あの古い秘密が未だに何らかの力と、何らかの危険をはらんでいると信じることを拒否した。間違いだった。

今日、ファルル・ルパスから手紙を受け取った(彼の死の報告が確かなら、殺される前に送ったに違いない)。そして、私は尾行されているのではないかと思っている。今朝、島の散歩中に岩の方から私を見ている人影が垣間見えたような気がしたのだ。私はその光景にひどく動揺して、ファルルの手紙を落としてしまった。洞窟に到着する直前まで、手紙を失くしたことに気づかなかった。

これはきっと20年ほど前に、モリカル皇帝から与えられた計画に関連しているに違いない。彼はある種の宝物庫のための世話係を必要としていて、私がそれを調達したのだ。契約の手配をした。費用を払った。だがそれはかなり昔の話だ。

これを書きながらも、締めなわがきつく引かれるのを感じる。これを受け取ったら、他の者に伝えてくれ。警告に耳を傾け、君の支援を受け入れるよう説得してくれ。ロングハウス帝の秘密。今回は本当に自分の死につながると考えている。

ジリッチ評議員

愛しい人へTo My Love

最後に別れた時、あなたが言ったことをずっと考えてた。そして、決断した。愛しい人、あなたを選ぶよ!真の幸せへの道があなたと共にあることを知った今では、あちこち走り回る無数のペットの影に埋もれながら、ただ彼女の側に存在するだけで満足することはできない。

苦しくはあったけど、脱出に最適な時が来るのを待つ必要があった。今手紙を書いているだけなのはそれが理由だ。君がこの手紙を受け取る頃には、リルモスにある2人のアパートで君のことを心待ちにしてるよ。そこで2人の未来の計画を立てよう。毎日希望が膨らんでいってる。

私の態度の変化に、彼女が疑いを抱きつつあるように感じる。これを書いている今も窓のほうから小さな爪がカチカチと鳴る音が聞こえるし、影の中でブラシのような尻尾を持つ、げっ歯類のビーズのような目がギラギラと輝いているのを感じるんだ。ああ、ついにこの毛皮の拷問者から逃れて、君の腕の中に行けるんだ!

愛しき者を救ってくれSave My Precious

頼む、誰でもいいがこれを見つけた人。何としても我が愛しき者を守ってくれ。なだめてくれ。このひどい場所から連れ出してくれ。

全力を尽くしたが、成し遂げられなかった。我が愛しき者をこのひどい場所に置き去りにしないでくれ。

お願いだ。

トゥーモン

愛情を込めて書かれたメモLovingly Written Note

事は起きた。

兵士たちが裁定者ガヴォスに背いたんだ!聞いたところでは、奴が大修道院の内陣に閉じこもったので、交易大臣たちが魔法で中に封じるらしい。実に皮肉だ!

彼らは俺たちに対して大きく貢献してくれた。このおかげで俺たちの子は、市民のことを市民が決められる自由な街で成長できる。武装した支配者に上から布告をされずにな。解放者の一人にちなんだ名前を子供につけるのはどうかな?ラロスか、エスディルか、クエンティンか。一番好きな交易大臣は誰だ?

義父さんのところから戻ったら話し合おう。

海賊の財宝のメッセージPirate’s Treasure Message

幸運な冒険者へ

我々のチャンスはないに等しい。ブルーワマスは数で勝ってるし、こっちは水が不足してる。私の財宝が奴らの手に落ちるのだけはお断りだ。その名誉は君に委ねよう。

レヤウィンから港を隔てた向かいに滝がある。その水源まで辿れ。

水源から90歩南に進む。

すると、かつて私がその基盤を徹底的に破壊するという栄誉に浴した古い要塞がある。

一番北東の角に立っている木の根本を掘る。

よい狩りを、友よ。何が起きても世界が決して君の名を忘れないようにするんだ。

トパル湾の恐怖、ヴォルダー

皆さんいらっしゃい!Come One, Come All!

楽しくて型破りなショーであなたの気持ちを温かくします!

圧巻のダンスをお楽しみください!

夢見の館が夢の世界にあなたをご案内します!

ファーマーズヌークの南の火までぜひお越しを!

巻き牙の機密情報Fang-Furls’ Dead Drop

クラフティングホールの商人から追加徴収しろ。忌々しい信者どもが、ずっと港での活動を邪魔しやがるから埋め合わせが必要だ。

ブラックウッドの商人どもはみんな腰抜けだ、シシスに感謝するよ。奴らが気骨の気配でも見せたら、行儀よくさせておけるかどうか怪しいものだ。

巻き牙の台帳Fang-Furls’ Business Ledger

[この後のページには犯罪者の所有物と巻き牙の活動が記載されている。それには大量の記述だけではなく、走り書きされた指示も含まれている]

引き渡し場所

今度は滅茶苦茶にするなよ。見つけるのは簡単なはずだ。

– 街の北、小山の上にある水の中
– 東に向かう。完全には橋を通り過ぎるな。隠し場所は大きな木の下だ
– フタン・ツェルの北、ちょっとした旅。丘の中腹に隠されてる

パンジェント・アダーのための大樽を回収するのも忘れるな。オリアンダーコースト・リザーブだ。積荷はレヤウィン港に置いてある。街から来るなら、一番左端だ。「絶対に」落とすな。あるいはどんな形であれ手を出すな。アダ―は気づくぞ。必ずな。

巻き牙の第二の機密情報Fang-Furls’ Second Dead Drop

我々が待っている隊商がボーダーウォッチで引き止められてるらしい。商品を入手する手段を他に見つけなければならん。港の作業員どもを絞り上げよう。家族を持ってる奴を見つければ、より簡単にいくだろう。

あのレヤウィンの奇妙な兄弟は反抗ばかりする。争いなど、ここでは全く必要ないものだ。すぐに思い知らせないと、他の奴らが同じことをやり出す。

巻き牙の第三の機密情報Fang-Furls’ Third Dead Drop

いくつか扉を壊して、何軒か荒せ。どうやら皆、我々に金を払う理由を忘れ始めてるようだ。思い出させてやれるかどうかは我々にかかっている。

教団のせいで状況が厳しくなり始めてる。仲間がどんどん捕まってる。我々はすでに力が半減していて、これ以上弱体化したらブラックウッドを支配できない。

完全な飲み物A Perfect Drink

オトゥミ・ラの日記から

私は旅を通じて、大規模な村から最も質素な農場に至るまでのあらゆる場所で、数多くの酒に出会ってきた。自分の人生と経験してきた事柄を振り返る時間ができた今、最高の飲み物を探し出すのは、晩年を過ごすための平和的な手段と思われる。戦士から醸造家への対照的な転換だ。

だが、実験ではいくつかの失敗をおかした。これらの材料のいくつかを組み合わせた醸造や試験は、ある種の予測し得ない結果に終わった。例えば、ゴールドルートワインは舌触りが良く滑らかだが、最初にこれを飲むとすぐに気分が悪くなることが分かった。その前に赤ニガヨモギを飲んでおけば別だが。どうやらこれが効果を消してくれるらしい。だが、私は先に何かしっかりしたものを胃に入れておかないと、これを飲むことができない。ひとつかみのベリーや豚の足肉とかだ。幻覚を誘発する効果を吸収するものなら何でもいい。

先日、ハチミツ酒の醸造でそれなりの成功を収めた。庭のハーブひと揃いと組み合わせて素晴らしい緑の色合いを付け加えたものだ。これはすでにたらふく食べた後の夜の締めくくりには最高だ。外に座り、マグカップを手に下の谷を見渡す… 自分が目の当たりにするとは思いもよらなかった人生だ。自分で材料を育てることが、仕事にとって大きな利益となっている。

とは言え、野生のベリーや根を求めてゆっくり歩くことにも恩恵がある。まだいくらか作業が必要だが、私のベリーエールは野生の風味から恩恵を受けている。どのバッチも見つかったものによって異なっているが、どれも必ず同じように粘度が高くシロップのような濃度だ。まるで飲むと言うよりも食べるかのように。昼間にこれを飲むと、他に何も入らなくなるので、少量の混合用になることは間違いない。私は材料を外の植物に依存しているから、それはいいことだ。

風の者たちと共にした冒険の日々が懐かしい。これに疑問の余地はない。だが、ここでの作業を通して、私は彼らと共有できる新しい何かを見つけられるだろう。比較的平和で落ち着いた残りの人生を楽しみながら。私が気に留めておかなければならないのは、ただこれらの飲み物がお互いにどう調和するかだ。また意図せず、前後不覚になってしまってはいけないから。

協力に感謝するYour Assistance Is Appreciated

我が愛しき者を傷つけようとする輩を抹殺してくれたことに心から感謝する。あの卑劣な狩人どもが消された今なら、我が愛しきものを追跡して助け出せるかもしれない。だが、荒野でとても気掛かりなものを見つけた。どうやら我が愛しき者は過剰に恐れてしまっているようだ。彼女は恐れるものから逃れようとして、ついにはオブリビオンへのポータルとしか言いようがないものを通り抜けてしまった。

私はこの奇妙な現実の裂け目がブラックウッドの荒野のあちこちに開いているのを見た。次に機会が訪れたら、そのポータルに飛び込んで、我が愛しき者の救出を試みるつもりだ。もし貴殿が私の替わりにこのメモに遭遇したなら、それは私がポータルが導いた先から戻る方法を見つけられていないということだ。

その場合は、どうか私の後に続いてくれ。私のためではなく、我が愛しきもののために。

トゥーモン

鏡とカラスOn Mirrors and Crows

レヤウィンから運び出せる古い鏡は全部集めた。こんなに沢山の反射面が本当に必要なのか?それと、あの鳥たちは本当に喋るのか?と言うか本当に鳥なのか?あの鏡が彼らを忙しくさせて、静かにさせてくれることを期待するよ。あれがなければあいつらは絶対に黙らない。

何故あの獣たちが我々の計画にとって重要なのか理解に苦しむ。だけど、君の言うとおり、彼らがエバーグロームに通じる扉を開けるための鍵となるなら、割れたガラスを磨いたりかき集めたりするのも、やる価値がある仕事なんだろう。

銀のチャイムChimes of Silver

ナカ・デシュ族の歌う代弁者、ギーム・シャー 著

多くの肌の乾いた者たちが私たちにコスリンギ殺害の罪を着せる。彼らは顔をゆがませ、「人殺し」「陰謀」「妖術」といった乾いた言葉を私たちに浴びせかける。長い季節が過ぎ去った今でさえ、人々はサクスリールが呪文でナハテン風邪を呼び起こしたと信じている。彼らがその目から憎しみを引きはがし、私が子供だった頃に目を向けてくれればいいのだが。その当時、根の民と銀の肌の部族は共に手を取り合って歩んでいた。泥、良き食料、そして陽気な踊りで結ばれていたのだ。

私には銀の肌の者たちの思い出が沢山ある。定命の目を閉じると、今でもかまどから出したてのクーサのヒール・スネイルケバブの匂いを嗅ぐことができる。ダシルの腰でぶつかり合って音を立てる、錫のチャイムの歌が聞こえる。ハドゥクの根の泡が喉を滑り降り、腹を温めるのが感じられる。だが、何よりもよく思い出すのが音楽だ。キラキラと輝く終わりのない曲の数々。何よりもあれらの曲を懐かしく思う。

私たちサクスリールには、単純なものからあまり単純とは言えないものまで数多くの楽器がある。だがコスリンギはさらに多くの楽器を使っていた。実際、卵の姉妹と私はコスリンギの手にかかればどんなものでも楽器になってしまうことについて冗談を言い合っていたほどだ。彼らの木のカッターは空洞のある丸太をワマス大の太鼓に変える。彼らはクリフストライダーから腱を抜いて、低い音でブンブン音を立てる弓状のハープを作る。だが、彼らが最も愛した楽器はチャイムだ。

根の民とは異なり、コスリンギは金属に対して嫌悪感を抱いていなかった。彼らが服を着ることはほとんどなかったが、細くより合わせた縄に付けた金属片を身に着け、歩くたびにカチャカチャと音を鳴らしていた。コスリンギの金属使いであるビーラーは、よく錫と銅の塊を大きな炉に流し入れて熱し、その後取り出してあるべき形になるまで、石の槌を使ってねじり、成形していた。金属の棒が冷めたら木の大枝に吊るし、曲を見定めるためにそれぞれの棒を調子よく叩く。ビーラーは金属が出すあらゆる音を意のままにしようとして、このチャイムを何百も作った。

ヌシュミーコのある暖かい晩、彼は饗宴のために部族を村に呼び集めた。彼らがなぜ饗宴をしたのかは分からないが、私たちは気にしなかった。饗宴の終わりが近づくと、見事なイトスギの木の周りに集まって彼の家族が演奏するチャイムを聴いた。8人のコスリンギ、彼の妻、叔父、5人の息子がまるで足元のしっかりしたツリーフロッグのように根元から飛び上がり、演奏用のバチでチャイムを叩いた。チャイムから生じる音は、まるで穏やかな雷鳴の子供のように響いた。私たちは心が松明のように明るく燃えるのを感じ、銀の肌の者の多くが喜びの涙を流した。

私たちがコスリンギを殺したと肌の乾いた人々が言うのを聞くと、私はあのヌシュミーコでの晩のことを考える。私が子供の頃に見聞きしたもののことを聞いたら、あれほど美しいものを破壊するヒストの子など誰もいないということが彼らにも分かるだろう。

苦々しい奴らに甘味をSweets for Sour Company

(カジートの侮辱の歌)

歩き手よ、お前がさまよう場所が
遠く毛皮のない場所ならば
少しシュガーを取っておけ
先には苦みがたっぷりだ

シロディールではご用心
奴らがやるのは挑発ばかり!
鈍さにかけちゃ帝国一
ブラック・マーシュの沼を入れても!

モロウウィンドには何がある?
にやにや顔の虫食いの陰口だ!
ダークエルフにむかついたなら
シュガーが吐き気を止める!

スカイリムの雪の小山に、温かみなんてない
炉端も機知もぼんやりだ
ノルドの傲慢さより分厚いのは
頭蓋骨と花嫁を結ぶ紐だけ!

毛のない奴らに追い詰められたら
臭いのきついつるつる肌?がぶりといこう!
杯に甘味をひとつまみ
尾のねじれた爪なしども?もうひと口!
ナメクジ舌の疥癬舐め?そんな奴らはひと飲みだ!
スイートロールに手を出すな、北の豚め!

汗が染みてるハンマーフェルの砂漠?
友よ、嗅いだことない悪臭だ
芳香を放つレッドガードの文化に興味を持つ者など
輪を描いて飛ぶハゲワシの群れだけ!

ヴァレンウッドの木で爪を研ぐな
立ってる場所から小さな雑草が生え出す
爪に噛みつき、噛みしめ、裂くために
むき出しの足首が擦り切れるまで

ハイロックの断崖に挑むべき?
ブレトンのわめき声が好きなら
あそこにあるのは雨と霧だけ
それと濡れた犬のしつこい臭い

毛のない奴らに追い詰められたら
へこんだ鼻の平たい歯?おかわりといこう!
杯に甘味をひとつまみ
無作法なかぎ足?ゴクリと飲み込め!
よだれ垂らしの雑種?今こそ一気飲み!
尻嗅ぎの尻好き?ジョッキを空けろ!

サマーセットの象牙の浜辺?
ハイエルフが悔やむしょっぱい涙に身を浸せ
とても高貴な自然は楽しめない
聞こえるのは鼻声のすすり泣きだけ

ブラック・マーシュで語るべきこと?
いささか手厳しい野生動物?
ぐちゃぐちゃのぬかるみ?
それとも最高の収穫がウジだってこと?

毛のない奴らに追い詰められたら
衰えゆく杖吸い?ワインを取り出せ!
杯に甘味をひとつまみ
無骨なのろま?そいつはいただきだ!
毛づくろいの行き届かぬムスカルセ、こすってやる!
バーンダリの慈悲よ、風呂桶はどこだ?
ジスヴォー!

愚かなる翼Foolish Wings

囁く影のロミエン・ガルヴェッタ 著

パタパタと舞う、愚かな羽の大群。奴らは自分たちを、高貴で狡猾で賢いと思っている。

だが奴らは空っぽだ。小さく、お喋りなあの方の模造品。あの方の優雅の切れ端でしかない。影ではなく、ハエのように群がるだけ。愚かな獣。均衡を欠いていて、賢くない。不愉快で、爪で引っかき、羽をばたつかせる。奴らはコウモリと戦う。棒切れと葉の戦いだ。

奴らはなぜあの方の意志にあれほど近い?うるさい音を立ててばかり。追い出されたのも当然だ。追放された。奴らの力は無駄になった。無駄、無駄だ。利用できたはずのものが無駄になった。奴らはお喋りしてばかり。叫び声だ。爪をちっぽけな愚かしい財宝に引っ掛ける。キラキラした、錆びついた輝き。

何と奇妙な獣だ。馬鹿どもめ。奴らには何も与える価値がない。奴らは無価値だ。私は奴らを恐れない。あいつらはあの方の囁き声。割れ目から漏れた囁き声が、ゴミを漁り、貪っているのだ。奴らのにやついた目に恐怖はない。ただ黒いだけ。光り輝く黒。

あのような模造品の気を逸らすのは簡単だ。利己的で、愚かな奴らめ。剣ではなく羽根の騎士たち。なまくらなクチバシどもめ。鈍った爪め。奴らはあの方のオブリビオンの絵をすぐ近くで運んでいる。我々をあの高みまで登る手助けをしてくれれば。だが奴らは笑うだけ、ただ笑うだけ。ケラケラと政治工作をしている。

内部で大量の力が失われた。あの方は、あれを我々に入手させたくないのだろうか?

軍団長の議事録:ゴブリンに関してLegate Minutes: Concerning Goblins

地元のゴブリンに関する探鉱者ヴィヌス・ドニチクスの苦情。第二紀581年 降霜の月26日、タシタ・マエニウスによる記録

ここに来るのはこれが3度目だ。自分の土地を離れるのは好きじゃない。俺はこの八大神に見捨てられた街と、その洒落のめしたコウノトリみたいな曲がった足の街の住民どもが大っ嫌いなんだ。だがブラックウッドの状況は日増しに厳しくなってる。俺たちは剣と盾でやるべきことをツルハシと鋤でやってる。もういい加減嫌気が差してんだ。

俺が言ってんのはゴブリンのことだ。あんたらが肉と上等なワインで腹をいっぱいにしてベッドでスヤスヤとお休みになってる間に、こっちは納屋や鉱山の中で眠っちまわないように自分の顔をひっぱたいてんだ。自分の財産を守るために必死でな。ああ、あんたらにとってはあんなちっぽけな緑の奴らなんて単に邪魔くさいだけだろうよ。犬にたかる刺す虫みたいなもんだ。だが俺らのような壁の外側に住む、素朴な者にとってはどうだ?こっちはクソみてえな戦争を戦ってる。それも絶対に勝ち目がないって分かってる戦争でな!

例えば先週、月耀の夜のことだ。俺は友達のシルスと火を囲んで座り、鹿の尻肉を焼きながら翌日の仕事の計画を立ててた。すると突然藪の中からカサカサという音が聞こえてきた。狐とかアナグマが立てるような音じゃなかった。何かもっと大きいものが骨や腐った革の中でざわめいてた。俺が皮はぎ用のナイフを抜くと、シラスはツルハシを手に取った。俺たちは恐ろしく長い間、猫のように静かに立っていた。その後、奴らが突然飛び出してきた。あのひどく猫背な野郎どもが6、7人、シューシューとかキーキーとか音を立てながら錆びた剣を振り回しやがった。シルスは危うくズボンを汚すところだった。ツルハシを落として、あわてて鉱山に逃げていったよ。俺はというと、蹴とばし、唾を吐き、突破する途中で奴らの1人を突き刺して、森に向かって駆けだした。3人ほどが激怒して、歯をカチカチ鳴らせて、イカれちまったかのように口からつばを飛ばして奴らの汚らしい言語で何かを言いながら追いかけてきた。命からがらランプが灯った友達の家の玄関にたどり着いたよ。シルスはどうしたかって?今も彼の破片が岩の下や古い立て抗の下から見つかってる。

これは俺が経験した話にすぎない。それも一番最近にだ。2週間前にはアスティア・ブルソがゴブリンに見事な牝牛を盗まれた。2日後、まるでマスみたいにはらわたを抜かれて他の牛が水を飲む川を汚している牝牛が見つかった。その1週間前には、異母姉妹のヴァラが追っかけられて屋根の上に逃げた。ヴァラが煙突の背後によじ登って身を隠してる間、1時間かそこら矢を浴びせ続けた。ヴァラが言うには、奴らはその間ずっと笑ってたらしい。

いいか、俺は何も軍隊を送れって言ってんじゃない。ディベラの胸にかけて、兵士の一団すら望んじゃいない。望んでいて必要なのは、オブリビオンの恐怖をあのちっぽけな野郎どもに植え付けてやれる、肝っ玉のすわった数人の戦士だ。1人か2人、見せしめにしてやるんだ。みんなの土地の周囲にゴブリンの頭を突き刺した槍を設置する。北での馬鹿げた赤、青、黄の騒ぎが起きる前、俺たちはそこそこの民兵を持ってたんだ。今、ここにあるのは何だ?あんたらには指ぬきを満たせる程度の根性しかないじゃないか!腰を上げて何かしろよ!

軍団長会議についてOn the Chamber of Legates

カロ女伯爵の統治下にあるテベザ・コ軍団長による考察

軍団長方式は都合よく機能している。他の君主国には当てはまらないのかもしれないが、レヤウィンで法の制定や街の日常生活の監視は、帝国時代から街の支配者が事前に目を通すものではなかった。帝国が消え元老院が解体された今、この仕事はそれを果たすために最近作られた、軍団長会議が担うことになった。歴史的に見ると街の支配者と運営機関を切り離すことで、君主たちは街の運営を気にすることも放棄することもなく、政治ゲームに興じていたのだ。

軍団長会議は街と周囲の管区の運営に関する、行政的な機能全体の支配権を有している。例えば、港湾での事業には免許証、認可、目録、必要な品すべてが確実に正しい場所や船、業者に運ばれるようにするための輸送機関が必要だ。これらの職務を完遂させるため、我々は登録簿に商船とその航路の詳細を記録し、いつ積荷の準備ができるのか計算できるようにしている。日中はずっと、時には夜間にも十分な訓練を受け情報に通じた港長を配置し、各船を出迎えて正しい指示を与えられるようにしている。道は安全かつ確実に品物が運搬できるよう整えられ、廃棄物などがない状態が保たれなければならない。

それを達成するために、我々軍団長が港長を監督する。港を建造し、維持するための木材の入手。新しい商船からの積荷の予定。港長のそれほど大きくはない権限下で信任された船長たち。レヤウィン、特に市場周辺の街道や通りを整備するための人員の雇用。例えば飼い慣らされていない動物や医療目的の範囲を越えた使い方をするスパイスやハーブといった、特定の外来品を除くあらゆる品やサービスに対する販売許可。そういったものを。

レヤウィンに影響を与える事業について話し合うため、軍団長会議は必要であれば毎日顔を合わせる。時には一般市民に会議への出席を許可することもある。そうすることで一般市民、特に商人階級は市民生活の中で軍団長会議が目を向けねばならないと信じている、あらゆる領域に対して関心を寄せるよう求めることができる。軍団長会議側も政策がどのように機能しているか、また欠陥への対処の必要性、手法の変更の必要性について直接意見を聞くことができる。だが何よりも、一般公開された会議の存在により、我々は街から信頼された誘導者となれるのだ。現在の我々の評価は上々である故、市民たちは臆すことなく苦情を告げるだろう。彼らは強く懸念している問題に我々が耳を傾け、いずれ命や生活手段に脅威を与えることなく対処することを知って安心する。

この管理体制は帝国崩壊後に軍団長会議が設立されて以来使用され、改良され続けている。この体制は完璧ではない。まだ政治的野心、階級格差、偏見、あらゆる統治体制に内在するその他多くの欠陥に満ちている。だが、軍団長会議による代議体制、そして玉座に座る我々の意見を進んで取り入れる女伯爵によって欠陥を回避し、先頭に立ってレヤウィンの利益を維持し、街の事業を前進させられると承知している。

賢者ロヴィリセルのメモNotes of Lovirithel the Sage

第二紀575年、収穫の月6日
これはいけるかもしれない!何週間もレヤウィン城の散らばったコレクションを研究した成果が出たようだ。推論通り、アレッシア帝国の初期に建設された聖堂の施設がブラックウッド沿岸の荒れ地にあった。遺跡が埋まっていたのはブラックウッド南東にある、これといって特徴のない島だった。古代の聖堂に続く、原始的に掘られたトンネルには最近様々な集団が使用した形跡があった。おそらく密売人か盗賊だろう。しかし、幸運なことに現在は地下の部屋をそのような犯罪者が使用してはいないようだ。明日から探索を始めよう。

第二紀575年、収穫の月8日
隠された聖堂の上層にはほとんど何も残っていなかったが、風雨に耐えた建築と彫刻を慎重に調査した結果、多くのことがわかった。羊皮紙と木炭で拓本を取らなければ判別できない色褪せたシンボルは、古い秘密を示している。「下」を象徴するシンボルが「怒り」「憤怒」と組み合わされている。これは、明らかにこの場所の現在の名前、 「深い嘲笑」を示している。

また、他にも面白いヒントがあった。「闇で待つ者」「破壊者」「貪る者」。原始の神シシスの呼び名だ。この場所は明らかに古代ニベンで、シシス崇拝の中心だったようだ。とても興味深いことは言うまでもない。この地域でシシス崇拝は一般的に見られるが、信者はたいていがアルゴニアンであって、獣からより遠い種族の間ではあまり多くない。深い嘲笑の洞穴は、混沌の力を崇めるアイレイドを模した秘密結社の隠れ家だったのだろうか?さらに研究する必要がある。

第二紀575年、収穫の月14日
大きな発見だ!見つけたオベリスクの部屋には崩れた壁に隠された通路があり、聖堂の奥へとつながっていた。助手に壁を外して洞穴と部屋へ向かえるよう指示した。明日の探索が楽しみだ。ただし、通路には奇妙な冷気が漂っている。石が侵入を感知していると感じられるほどだ。

第二紀575年、収穫の月17日
新しい洞窟の広がりはただただ素晴らしい。以前は探索できなかった場所の先には、曲がりくねった通路と広大な部屋が広がっている。ほとんどは未完のように見えるが、二つの大広間が広がっている。最初に名付けたのはシシスの間だ。二つ目は嘲笑の神殿と名付けた。中には色褪せた印があったところだ。冷たく、何かに見られているような沈黙が中に入る者の背筋を凍らせる。もちろん、地下の空気の興味深い特質にすぎない。

助手たちが神経質になっている。新しく見つかった部屋で、何らかの力が動き始めたように感じられると考えているのだ。エリエンドロは下の階を塞いでいた壁を建て直すように言って来た。もちろん、彼の根拠のない恐怖に屈するつもりはない。学問とは臆病者に向かない仕事だ!

第二紀575年、収穫の月20日
愚かしい!エリエンドロが姿を消した。ヤイルセスは嘲笑の神殿の闇に連れ去られたと主張しているが、もちろん馬鹿げている。愚かな恐怖に屈して、ここの仕事を放棄したのだろう。おそらくレヤウィンの酒場で安ワインでも飲みながら、故郷へ帰る計画を立てているはずだ。残念なことに、ヤイルセスはより下の階の部屋へ足を踏み入れることを拒否した。私は神殿の探索を一人で続けるので、ここに残るよう彼女に伝えた。

愚かな子供だ。

幻の発見が待っている!Phantasmal Discovery Awaits!

アルケイン考古学調査隊が、スリル溢れる実験のために勇敢な冒険者を求めています!

できれば重量のある魔法の器具を運ぶ能力を有する方。幽霊、亡霊、その他のアンデッドに対峙した際、勇敢でいられることは必須です。

詳しくはヴェヨンドの遺跡にいるリヴス・デムネヴァンニへお尋ねください。

幸福なアヴェルノ輸送会社の看板Happy Averno Shipping Company Sign

幸福なアヴェルノ輸送会社
仮本社

イウリウスとシピオン・アヴェルノ
経営者

勧誘お断り

魂の台帳Ledger of Souls

目覚めの炎の教団の諸君

私はアイディール・マスターのために3つの新たな魂を獲得した。だがもう私の黒魂石は全て満たしてしまった。アイディール・マスターとの関係を向上させたいなら、もっと石を見つける必要があるだろう。

台帳への記録用として、獲得した魂を以下に記す:

– 修練者クララ・アスティエ
– 修練者アリエール・エフィーン
– 修練者エドガルド・ゲイン

今も修練者の腐敗の噂はギデオンを流れている。私が獲得した魂については、すでに人生に不満があったという噂を街中に流し、ディベラの聖堂の金庫からコインを取り除いておいた。単純な偽装だが、無知な街の住人は簡単に信じるだろう。

収穫は続く。約束しよう。

目覚めの炎のために!

災いよ去りたまえMay Disaster Turn Away

大地が揺れて、空震え
森に炎が灯りだす
闇が落ちて、混沌が広がり
裏切りがはびこる

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

遠くの雲から嵐来る
火は燃え盛り、死者は積み上がる
忍び寄る黒、迫る不和
オブリビオンの門開く時
剣のごとく、裏切りが光る

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

破壊の主よ、災いの公よ
我らの民に手を出すな
流血の神よ、裏切りの王よ
不幸はどこかへ持ち去っていけ

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

作家助手求むAuthor’s Assistant Wanted!

作家が地域の歴史調査のため、筋肉質で活力あふれる助手を求めています。

応募者は進んで沼地や取りつかれている(可能性がある)遺跡を歩いていただける方に限ります。比類なき武術の技能とデイドラに動じない姿勢は必須です。できれば前向きな考え方や明るい気質をお持ちの方。

この高報酬のチャンスをお見逃しなく!

全てギデオンの宿屋〈卵とハンマー〉にいる、センチネルのイサラにお問い合わせください。

死霊術師の日記Necromancer’s Diary

影の鎌が手に入れば、目的を達成するのも時間の問題だ。今までずっと進めて来た計画が実を結ぶ。あのブレトンどもがこの刃を鍛造した時は、何を成し遂げられるのか想像もできなかっただろう。生きた者をその影から切り離す能力を持った刃。それがどんな力を秘めているか気づくには類まれなる才能が必要だったのだろう。この刃は単なる玩具ではない。影を切り離されると、人は自分自身との接点を失い始める。その不運な者が紛れもない奴隷となるまで、生命の基本的な事実を超えた思考が消滅していくのだ。これが私がよく知る魔法だ。

もちろん、他にも同じことに気づいた者はいるだろう。そうでなければ、この鎌が贈り物に見せかけてノクターナルの祠に隠されていた理由がないではないか?これだけ重要な遺物がただ祠に置かれ、故意に忘れ去られることなどない。影の女王自身は、今となっては何とも愚かしい呼称だが、疑いなく鎌がただの道具だと信じている。だが今に分かるだろう。他の皆と同じように。

当然だが、完璧な計画でもなかなかうまくは行かない。影の鎌を回収するために雇った馬鹿どもは無能さのあまりあやうく私の計画を台無しにするところだった。子供時代の友人に見つかるとは。本当に愚か者の無謀さには限度というものがない。それでも、仕事は半ば適切に行ったのだから、報酬は与えるべきだろう。彼らの行動を逐一制御できるようになれば、このような失敗を繰り返すこともなくなる。もちろん、彼らを使わなくても構わない。利用価値が尽きたらすぐに縁を切ることもできる。

鎌の力を完成させるための儀式の前に、持って来てもらわねばならない品物はあと少しだ。鎌の力が頂点に達すれば、それを使って如何なる強情な精神も私の目的とする方向へ変えられるようになる。それに新たな奴隷の精神が傷つけられたとしても、いつでも魔法を使って支配できるように修復できる。しもべの寿命と生命力は留まるところを知らぬ。

私の時代はもう目の前だ。人を率いる指導者たちも今は拒絶しているかもしれないが、私が如何なる才能を持つか知った時には、恐怖におののくだろう。

招待状の添え状Invitation Cover Letter

最も優れた、選ばれし者の教団における仲間と過ごす特別な催しにあなたをご招待します。恵み深いヴァンダシア評議員が、かつて誰も目にしたことのない、歴史を変える公演を開きます。評議員は祝宴であなたと同席することを望んでいます。

移動と宿泊に関する詳細と共に、特別なコインを同封しました。行事は数日間行われますので、正装と教団のローブを含めた着替えをご持参ください。また、コインもお持ちください。会場まで確実に移動するために必要となります。

炎が揺らがず、洪水が収まらぬことを

商人王たちの積み上げられた文書Merchant Lords’ Compiled Documents

ラロスの焼け焦げた日記:

ガヴォスは終わった。

予想どおり、奴のしみったれた兵士たちは買収できた。クエンティンとエスディルにとって、説得して同意させる負担は大したものではなかった。我々は彼らを買っても釣りがくるほどの金を持っているからな。

奴が大切にしている金床と共に閉じ込められた今、絶え間なく挟まれる「公正さとは」という言葉を聞くことなく、本物の利潤の獲得に戻れる。奴に何が分かる?この市場の繁栄の理由は我々で、奴の説教や小物のおかげではない。

今日、新しく指名された裁定者が来た。彼は努めてさりげなく一週間分の取り分の増額を示唆し、「夕日の下」での休暇の計画のための金が足りないことを匂わせてきた。言葉の選び方がかなりわざとらしいような気がした。私の秘密の隠れ家を知っているのか?思っていたよりも不注意だっただろうか?

いずれにせよ、我々は今のところ、さらに気前よく心付けを渡せるの余裕がある。だが、奴が私の事情についてあまりにも知り過ぎた場合は、交代させる必要があるかもしれない。

* * *
クエンティンの秘密の往復書簡

友へ

間もなく金床を手に入れてやろう。既にガヴォス・ドゥーアに盗まれていると誰もが信じているものである故、惜しむ者などおるまい。必要なのは、同僚の大臣二人から助力を得るための根回しだけだ。最近の彼らは少々扱いづらいが、君が提供してくれた護衛のミノタウロスを紹介すれば、ずっと乗り気になるのは間違いない。

とは言え、少しの遅れも出してはならない。彼らが何かに勘づいたら、金床を確保できなくなるかもしれない。だから可能な限り早く、ゼニタールの大修道院に向かってくれ。

到着したら、鍛造用の火の背後で落ち合おう。私は我々が必要とするものを全て手にしているはずだ。

* * *

エスディルの古い日記

ラロスとクエンティンは私のことをガヴォスと同じぐらい愚かだと思っている。

奴らの企みは分かっている。彼を消し、在庫を拡張させる気だ。禁制の魔法の遺物に攻撃的な異国の獣。奴らはあの貪欲な手がつかめる、ありとあらゆるものを取引するだろう。

まあ、奴らにしてやられたなどと言わせるつもりはない!間もなくスクゥーマの積み荷が到着する。確実に大修道院全体で、それを売るのは私だけにするつもりだ。小物や野生のペットなどはすぐに飽きられるだろうが、スクゥーマの需要は常にある。

クエンティンは資金を用意した買い手がいるから、金床を回収して売るべきだと言っている。それが本当に労力を費やすに値する話なら、おそらく自ら行動を起こすだろう。念のため、私の印を移動させた。にぎやかな通りのはるか上にある、私が一番うまい酒を飲める場所にな。

沼の巨人についての研究On Marsh Giants: A Study

グウィリム大学、植物研究の副学部長ファネミル 著

数多くの同僚が、森のスプリガンの研究に生涯を捧げてきた。彼らの発見は森の霊魂を理解するための堅固な基礎を与えてくれているが、スプリガンの驚くべき親戚である沼の巨人に関する奨学金は、未だに乏しいのが現状である。巨人たちの生息地へのシロディール難民による侵略は、残念ながらここ数ヶ月で多くの死者を出している。この点だけを考えても、この謎多き森の巨人たちについて、詳しく知るため努力すべき理由となるだろう。

まず、沼の巨人が実際には伝統的な意味での巨人でないことを繰り返しておいたほうがいいだろう。体のサイズと牧畜を営む性質を除けば、沼の巨人はスカイリムの巨人と何の共通点も持たない。彼らは森の霊魂であり、古き自然の守り手の顕現である。この存在、あるいは力の正確な性質については神学の教授たちに任せるとして、重要なのは沼の巨人がスプリガンと同じく、野生の空間を保全する意思を持っているらしいことである。

沼の巨人の知的能力は議論の的になり続けている。多くの学者はスプリガンに初歩的な知能があることを認めているが、沼の巨人との接触機会は限られているため、彼らの認知能力を判断するのは困難である。現時点では、我々の知識の大半がアルゴニアンの民間伝承や伝統から来ている。ギデオンの学者によれば、原始的なアルゴニアンの大半はこの生物に近寄ろうとはしない。どうやら、ヒストはこの森の巨人との間に長く白熱した歴史を持っており、ヒストはアルゴニアンたちに(仲介者を通して)できる限り巨人を避けるよう求めているらしい。

その反対に、多くのルキウル(文明化されたアルゴニアン)は、沼の巨人に敬意を払っていることを私は知った。この生物の幅広く節くれだった足は大地をよく耕し、彼らの通り道にはしばしば、乾いた小枝や果物、その他の有用なものが吹き飛ばされて落ちており、ルキウルはそれを熱心に拾い集める。

私が最も興味深いと考えるのは、沼の巨人がブラックウッドの自然の営みとリズムに果たしている役割である。私の調査によれば、この生物は自然という布地に欠かせない継当てである。大地を単に耕すだけでなく、沼の巨人は枯れ木を倒して若い植物のための隙間を作り、貴重な苔の繁殖を助け、繁殖力の強い菌類の発達を抑え、野生の猫やその他の捕食者を近づけないようにして鳥類の多様性を促進している。そしておそらく最も重要なのは、巨人は木こりや鉱員、商人などが荒らされぬ沼を傷つけることを防いでいる点だろう。

私はこの森の巨人と共存する方法を見つけられると心から信じているが、そのためには労働者と地域の指導者の双方に忍耐と柔軟性が必要になるだろう。この生物と必要もなく戦うことのないよう願いたい。沼も森も彼らの存在に依存しているのだから。

象牙旅団についてOn the Ivory Brigade

評議員長にして軍団長会議参加者、タルニアン・ロヴィディカス 著

国政の研究から学ぶべき永遠の教訓のうち、「平和を望む者は戦争に備えよ」ほど変わりなく有効なものはないだろう。近隣諸国との競争に没頭し、問題を力で解決する誘惑に屈することには危険が伴う。力を示すことで敵を思いとどまらせる方が遥かによい。思い留まらせることに失敗した場合は、最悪の事態に備えている指導者の方が、この義務を怠った指導者よりも遥かによく領地を守るだろう。

残念なことに、レヤウィンは今この古い問題に悩まされている。我々はもはやシロディール軍の保護を期待できない。帝国の崩壊により、我々は潜在的な敵対者に取り囲まれた独立都市国家となった。三旗戦争で中立を維持することはもう何度も繰り返し宣言してきたが、同盟のどれかが二つの危険な事実に気づくのも時間の問題ではないだろうか。ブラックウッドは裕福かつ無傷であり、さらにニベン川の河口に位置するレヤウィンには、測り知れない戦略的価値があることをだ。レヤウィンを支配する者はタムリエルのどの港からも、直接帝都に艦隊を派遣できる。大胆な一撃さえあれば、ルビーの玉座の争奪戦を決することができるのだ。ジョルン、エメリック、アイレンの誰一人として中立の侵害を望まなかったとしても、果たして彼らの競争者たちも同じ気持ちであると賭けるだろうか?他の者の手に渡さないためだけに、彼らの誰かがレヤウィンを掌握しようとしてもおかしくない。

こうした事実を考慮すると、三旗戦争がブラックウッドにまで飛び火するのを防ぐ道は一つしかない。レヤウィンも自らの強力な軍隊を育てることだ。今すぐに。

これは破滅的に金のかかる提案に見えるかもしれないが、私もよく考えた。同盟の集中攻撃を真っ向から打ち破れるほどの勢力は必要ないと考えている。必要なのは適度の防衛力を示し、どの同盟もレヤウィンを確保しようとすれば損害を受け、競争者との戦いに致命的な不利を被ると分からせることである。そのために完全な軍団を展開する必要はない。訓練を受け武装を整えた、強力な旅団が1つあれば短期的には十分なはずだ。

元帝国軍所属のライアン・リオレ隊長は、レヤウィンの紋章にあしらわれている白い馬にちなんだ象牙旅団という名称を提案してくれた。私は次の軍団長会議にこれを持ち込むつもりだ。名称について議論するのは無駄だと思うかもしれないが、名前には心を奮い立たせ、動機を与え、単なる概念を現実に変える力がある。

当然ながら世界最高の名前をつけても、それを担う兵がいなければ無意味だ。そこで帝国の騒乱が我々の有利に働く。ブラックウッドに滞在中の多くの帝国軍団兵はもう数ヶ月の間、シロディールから給金も命令も受けていない。彼らの部隊は、もう実質的に解体しているのだ。我々はこうした遭難状態の軍団兵を積極的に雇用し、繰り越し分の給金を支払い、この地域の守護者としての彼らの役割を認めることで、我々の大義に役立ってもらうべきだ。数百人もの経験豊富な帝国軍団兵がいれば、レヤウィンに必要な戦力を築く素晴らしい土台ができるだろう。

インペリアルの熟練兵から成るこの盤石な中核を礎として、跡は故郷を守るために戦う力と意思のあるブラックウッド出身者で民兵を組織すればいい。民兵は経験豊富な仲間から軍の規律や帝国式の戦闘技術を学べるだろう。また私の考えが正しければ、地域の民兵は熟練兵たちにブラックウッドの地理や人間、気候条件などについての貴重な知識を教えられるはずだ。
今は危険な時代である。しかし正しい指導と軍団長たちの支持があれば、我らが象牙旅団はきっと試練に耐え抜くことができると信じている。

身代金のメモAdder’s Ransom Note

お前たちは重要な判断を誤った。

我々が来た時にお前がいなかったのは、単に運がよかっただけだ。

アヴェルノ兄弟は預かった。殺すつもりだ。

彼らを助けたいなら、ギデオンの地下の騒動の輪に来い。一対一で話をつけよう。

パンジェント・アダー

水避けの巣の建設The Making of Wading-Nests

ブラック・マーシュにおいて様々なアルゴニアン部族に招かれた個人的な経験に基づく、ラニャールネ・アビティウスの文化概説。

水避けの巣と呼ばれる形式の家屋は部族の土地のあちこちで見られるが、新しい巣の建設は通常、共同体の活動として実施される。水避けの巣の実際の建設手順は簡単なものだ。大きな木の杭を蔓やロープで束ね、縦にして地面に突き立てる。その部族が居住する土地によってはまず地面に穴を掘り、杭をしっかりと固定してより大きな重さを支えられるようにするが、洪水が少なく、地面が硬い地域でこの工程はあまり一般的でない。

木の杭が立ったら、それが水避けの巣の土台となる。床は杭にまたがるように建設され、その上に住居の残りの部分が築かれる。部族によっては巣の床を支柱となる脚の面積へ正確に合わせて作るが、それよりも広く床を作る部族も一部存在する。これは虫が木の土台を昇って、家の中に入るのを防ぐためである。

個人でも数日かければできそうなこの仕事は通常、部族全体の共同作業として行われる。私がその理由を尋ねると、返ってきた答えはいくつかのテーマに分かれていた。最も一般的なのは、水避けの巣が落ちるか洪水で流されれば、被害を受けた巣全てが再建されなければならないから、というものだ。個人が自分の力で家を作ることはできるが、複数の巣が必要な場合はより計画的に行わなければならない。私の質問に対する他の答えは、楽しみと関係していた。どうやら、部族はこのような計画を必要な仕事としてのみならず、娯楽としても等しく重視しているようだ。

おそらくもう一つ答えがあるのではないかと思う。大きなグループは、建物が脆弱な部分を発見して修正するのが容易だからだ。大工仕事や森林管理についての知識は個人で異なる。共同体全体をこのプロセスに包摂すれば、重要な過程を見逃さずに済む。またこれは、知識が部族の若いメンバーにも受け継がれることを保証する。私は多くの若いアルゴニアンが、水避けの巣の作り方を卵の母親や部族の長老から教わっているのを見た。この点からすると、水避けの巣の建設を部族の仕事として扱うことには、いくつもの目的があると言えるだろう。

聖コエリシアの饗宴 第一巻The Feast of Saint Coellicia I

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

序章

親愛なる読者よ、まずは歓迎の一言を述べたい。あなたをこの書へと導いたのが単なる好奇心か、それとも食の文学への燃え盛る渇望かは測りかねるが、いずれにせよここに来たからには、ぜひともこの第二紀中期において最も有名なニベン流域南東の料理書に数えられる、本書の成り立ちに関する説明を加えておきたい。というのも、聖コエリシアの饗宴はこの時代、この地域における料理本の中で25位以内に入る有名な文書であることは確実であり、14位以内に入るかもしれないからだ。

帝国の中心地よりも外側の出身である読者や、八大神の光を信仰していない人々のため、案内を試みたい。以下に続く書はレマン二世の後継者にして、帝国行政の大部分を最高顧問に委ねた放蕩者とこの時代の学者の大部分に評されるブラゾラス・ドール皇帝の統治時代に行われた、豪勢な宴会を詳細に記したものである。職務の重圧から解放されたブラゾラス皇帝は、飽食や無為、遊興を比類のないレベルにまで進歩させ、それはロングハウス皇帝の時代が来るまで続いた。

この本が記録しているのは、アレッシアの奴隷蜂起におけるやや知名度の低い殉教者、聖コエリシアを称えるために行われた、ブラゾラス皇帝の饗宴である。聖コエリシアは通常、収穫の月の終わり頃の数日間に断食によって称えられるが、これは彼女が拷問の末に餓死したことによる。ブラゾラス皇帝は臣下の敬意を再び得るため、断食を饗宴に変えたのである。皇帝は自ら率先してこれを実行し、無数の料理人や宮廷人、美食家たちは皇帝が秋を過ごすレヤウィンの地に集まり、饗宴を開いた。

そこで起きたのは12時間をかけて40皿を食べるマラソンだった。5皿のコースが8回に分けて用意された。私はそれぞれのコースの皿を1つずつ詳細に紹介していこうと思う。読者の理解を助けるために、必要に応じて注釈を付けながら。

聖コエリシアの饗宴 第二巻The Feast of Saint Coellicia II

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第1コース

著者による注記:レマン宮廷における饗宴の伝統として、第1コースは味覚を活性化し、腸を活発にするように構成されていた。

伝統的に聖コエリシアの断食中に唯一食べることが許されていた「パン屑」。レヤウィンからブラヴィルに至るまで、あらゆるパン焼き窯から集められたパン屑がスプーンに一杯ずつ各招待客に出された。ブラゾラス皇帝の愛人だった「牙を見られぬ者」は、司祭がパン屑の教義を語る間に待ちきれず、側にいた5人のスプーンを口に入れてしまったと言われている。

生きて殻に入った状態で配膳され、テーブルの脇でむき身にした「牡蠣」。ニベンの伝統ではオリーブのつけ汁の他に、煮つめたワインをみじん切りの玉ねぎに混ぜたものが付け合わせとして招待客に提供された。より冒険心に満ちた招待客には、牡蠣にブラゾラス皇帝が好んでいたアルゴニアンのピリッとしたソースをかけることが許された。牡蠣を食べ終えると、ブラゾラス皇帝はレヤウィンの貧しい人々に殻を配るよう指示した。皇帝が牡蠣の殻で貧しい人々に何をさせるつもりだったかは定かでないが、それを言った時のブラゾラスはすでにワインを何杯もがぶ飲みした後だったことを記録は示唆している。

丸ごと1羽の「溺れたガーネットビーク」。ガーネットビーク、より正確に言うならトパル・ガーネットビークは、貴族の食卓で一般的な品だった。ほとんどの場合、鳥はワインで溺死させた。彼らは速やかに羽をむしられたのちに給仕され、招待客は通常頭の上から布をかけてそれを丸ごと食べた。これは表向きにはワインの蒸気を逃がさないようにするためとなっていたが、実のところは食べる際にしばしば鳥から激しく噴き出す内臓や分泌物を封じ込めるためだった。長年に及ぶこの習慣が、ガーネットビークを絶滅に至らしめた。

「舌のローフ」のミントとチャービルのグリーンソース添え。もう一つの貴族の食卓の定番である舌のローフは、それぞれの家庭に見合った何らかの動物の舌を集めたもので作られていた。この食事の場合は、ほぼ間違いなくアヒルの舌で作られたローフだったようだ。

「エッグパフ」の塩炭焼き。ブラゾラスは鶏卵の燻製を出すことで有名だった。これは大抵の場合、数ヶ月もの間泥に埋められていた。そうすると白身は硬くなりマホガニー色を帯びるが、黄身は緑色の凝固物に変化した。アルゴニアンから得た技術を使って卵に驚くほどの弾力性を与えることができたブラゾラスのシェフたちは、針によって殻を貫通させた蒸気で4倍の大きさになるまで膨張させた。卵を最初に割った時の燻製の芳香は、極めて満足が得られるものだったと招待客たちは記している。

* * *
第2コース

著者による注記:最初の塩味の料理が終わると魚が出された。魚の定義は海、川、湖の生き物全てにまで拡大されていた。

「ニベンパイクのクリーム和えソレル詰め」、サフランの皮包み焼き。これは典型的なニベン川料理の見本とも言えるものを、ブラゾラス皇帝の食卓に適合するよう昇華させたものだ。サフランは平均的な漁師にとって決して手が届くようなものではなかったが、ソレルやその他のハーブと共に詰め物をするのは当時も今も一般的な調理法だ。サフランの皮は魚を食べられる黄金で包みたかったブラゾラスと、それを馬鹿げた考えだとしたシェフの間の妥協案だと言われている。

生きたマッドクラブから吸い出した「生の白子」。聖コエリシアの饗宴はトパル湾でマッドクラブが産卵するのと同時期に行われる。卵を抱えた雌の蟹が貧者の食卓に最適である一方で、貴族たちは雄の蟹の濃厚でミルクのような白子をすすることを好む。ゲームの愛好家であるブラゾラスは召使に大量の生きたマッドクラブをテーブルに放り投げさせ、招待客に手と口だけでこの生物に立ち向かい、白子を取り出すよう要求したと当時の歴史家は記している。

「ビーバーの尾」の小麦粉巻きフライ。ブラゾラス皇帝はビーバーの尾を、人が食することができる最高の白身魚だと主張することで知られていた(だが、どのシェフもその肉はいかなる川魚よりも硬く色が濃いと言うだろう)。ブラゾラスはビーバーの尾だけで楽しんだため、記述された調理法にはこのメニューの他の部分で見られる付け合わせがほとんどない。

「子イルカ」の母イルカミルク煮。子牛を同じように馬の乳で煮込んだノルドに人気のごちそうを捻じ曲げたものだが、あれは家畜で作られるものであり、イルカではない。イルカの肉と乳は地上のいかなる生物のものよりも濃厚なので、この料理には例えようもないほどコクがある。残念ながら、香味料と付け合わせは失われてしまった。

「スローターフィッシュの肝」のロースト。料理の記録では定説となっているが、スローターフィッシュの肝は中に含まれる毒を取り除いてからでなければ提供するのが難しいため、通常は避けられていた。ブラゾラスがスローターフィッシュの肝を100人以上の招待客に出したのは、その料理を作るために契約した30ものアルゴニアンの部族に対する信頼を示す証拠だ。彼の信頼は適切だった。呼び集められた客人たちの中で、失明と腸の弛緩に苦しんだのはネッティオ公爵だけだったからだ。

聖コエリシアの饗宴 第三巻The Feast of Saint Coellicia III

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第3コース

著者による注記:慣習に従い、魚料理のあとに野菜料理が続いた。

「しんなりさせた葉物野菜」、オリアンダーコーストのビネグレットドレッシング添え。ケールと思われる野菜の簡素でボリュームたっぷりなサラダは、おそらくはこの晩のもっとも衝撃的な料理で、オリアンダーコースト・リザーブを使って作られたビネグレットと組み合わせられた。このアリノールから輸入されたワインは大変希少で、サファイアが入っているゴブレット(それもハイエルフの主張によれば、ゴブレットには未使用のサファイアの飾りがそれぞれ必要とされる)で飲まなければ、真の味わいを楽しむことができないと言われている。このようなビンテージをサラダドレッシングに使うことは、ある者にとって巨万の富の証となるが、他の者から見たら途方もない愚かさの証でもあった。

強くたたいて伸ばした「アンバーパーシモンの芯」。多くの人はアンバーパーシモンの甘い果肉を楽しむが、グリーンシェイドのマーブルク郊外にある果樹園はこのフルーツの芯の多い種類を栽培している。この高価でもちもちとした芯は木槌で平らに潰され、軽くガーリックオイルがまぶされていた。

「キノコの塔」。組み立てられた料理が12フィートを超える高さだったためそう呼ばれた。この技巧を凝らした塔は白金の塔を模していたと言われているが、現代まで残っているスケッチは存在しない。塔の崩壊を防ぐため、召使たちは改造された竿状の武器を使い、招待客のために塔の天辺から下に向かってキノコを選んでいった。

ブラゾラスのシェフによるオリジナル料理、「シンムールのニンジン」。この一品の中心となるのは、シェイディンハル郊外の農民によって発見され、ブラゾラスの城代が公表されていない金額で購入した驚異的な大きさのニンジンだ。高さは十分に成長したブレトンと同じくらいで、幅はホグスヘッドほどもあったと言われている。ニンジンは丸ごと穴に埋め、炭で焼いた後、酢とシロップを添えて出された。

トリュフ油のアイオリ添え「昆布のフリッター」。トパル湾の島々で採れる硬い昆布は、コリンス産の茶に数日間浸してその革のような食感を柔らかくする。昆布に小麦粉をまぶし、製本会社の手法で折りたたむ。溶き卵に浸し、全体にパン粉をまぶしたらラードに入れる。出来上がった品には複雑な食感が詰まっている。サクサクとした衣の下には噛み応えのある層があり、内部はクリーミーだ。

* * *
第4コース

著者による注記:地位の低い者の家庭では、大抵穀物料理が最後に食された。肉類が簡単には手に入らなかったためだ。

ブドウの果もろみをたっぷり入れた「マーラの目」。通常は子供向けの菓子の扱いである味付けをした米球を、ブラゾラス・ドールは悪趣味な冗談として出した。その頃、彼の義理の兄弟のアンウェンテンデが海賊に捕らわれ去勢されたばかりだったのだ。その冗談が歓迎されたか黙殺されたかは、後世のために記録されていない。

バターとクリーム付き「ブラゾラスのサプライズ」。簡単なロールパンだが、ブラゾラスの指示でそれぞれに独自の具が入ったものが無作為に招待客に配られた。歴史が示す限り、皇帝のサプライズには生きた鳩が入っていたこともあったらしい。一方、とある無名な従騎士が自分の分にブドウ大の真珠がぎっしり詰まっているのを見つけたこともあったようだ。

伝統的な配膳方式の「アルムフィンガー」。アカヴィリ様式のオーブンを使うブラゾラスの厨房では、サルトリスを数倍に膨らませて蜂の巣のような奇妙な食感にすることが可能だった。マスタードを混ぜたハチミツの鉢がテーブルの脇に用意され、招待客はその中で粘つくソースを手全体に絡めてから、膨らませたサルトリスの中に入れられるようになっていた。その後、膨らませたサルトリスとソースは手から舐めとられた。参加していたカジートの外交官はこの不快な習慣に潔癖な感性が耐えきれず、怒ってその場を飛び出してしまった。シロディールとエルスウェアの関係の回復には数年間を要したとのことだ。

煮込んだハーブのソースに入れた「ニベン編み」。ニベンの編み麺が珍重されたのはその長さ故だったため、皇帝ブラゾラスは自らのシェフに、決して9フィート以下の麺を作ってはならないと命じた。

付け合わせなしの「宗教的なウエハース」。聖コエリシアの断食では、終わりの印としてウエハースが食された。ここでブラゾラスは、断食の終了と豪華な食事の到来を示すものとしてウエハースを出した(ここまでのコースでは肉類を強調していなかったため)。出どころの疑わしい話によれば、皇帝ブラゾラスは聖コエリシアの骨を掘り出してすり潰し、ウエハースの小麦粉に混ぜ込ませたとも言われている。当然ながらこれはばかげている。と言うのは、聖人食の習慣はそれより10年ほど前に禁止されていたからだ。

聖コエリシアの饗宴 第四巻The Feast of Saint Coellicia IV

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第5コース

著者による注記:ジビエと鶏をテーマとした第5コースは、「空の獣」を広く解釈したものである。注目すべき点として、レヤウィンはブラック・マーシュに近いため、このテーマは空を飛ばない様々な生物を含みうることがある。

細切れにした「クリフストライダーの膜」の煮込み。この料理はシチューに似ているが、そんな呼び方は侮辱も甚だしいとダークエルフは言う。モロウウィンドの田舎で食されるこの料理は、おそらくブラゾラスが大臣のアーヌス・デムネヴァンニへ内密に謝罪するために供したものと思われる。皇帝は当時、デムネヴァンニの妻と積極的に同衾していたからだ。

「コウモリの串焼き」のヨーグルトとピスタチオがけ。またしても、ブラゾラスは平凡な料理を最高の素材と見事な調理技術によって、帝国の饗宴に相応しい一品に変えている。コウモリはブラックウッドの湿地で頻繁に見かける生物であり、地元の漁師にとっては魚が釣れない時にも豊富な肉の供給源である。網で捕らえたコウモリを串に刺して、ヨーグルトソースを塗りながら丸焼きにし、砕いたナッツをまぶす。この料理は大変な人気を博したため、ニベンのコウモリ生息数が壊滅的に減少したほどである。

ブランデーで仕上げた「レマンのスープ」。この料理は主に冗談のために作られたものである。スープはこれの前に出されたコウモリの串焼きと同じく一般的な料理だが、ブラゾラス皇帝が平凡な食事を提供することは決してない。肉汁で野菜や豆類を煮込むのではなく、ブラゾラスが供するスープは鴨の眼球を使っており、これは食事の開始時に食べさせた鴨の舌と同じ鴨から取った眼球である。ブラゾラス皇帝は全員が出された食事を食べ終えるまでは、スープの材料を客人たちに教えようとしなかったと言われている。

「詰め物入りの白鳥」、付け合わせは不明。この料理は供された人々にとって最も強く記憶に残った一皿であり、しばしば「ブラゾラスの馬鹿げた茶番」と呼ばれている。白鳥に様々なものを詰めた料理だということは分かっているが、あまりにきつく詰め込まれていたので、白鳥はテーブルに置かれた途端、爆発したのである。サテンやダマスクが油と肉汁でぐしょ濡れになり、テーブル付近にいた全ての人々が嘆いた。

「クチバシのゼリー」およびその他のゼリーのクリームアニスソース添え。最後の一皿はウッドエルフの漬物作りの技術を使って柔らかくしたクチバシで、さぞかし見ものだったろうと思われる。残念ながら、この料理に関する記録は少ない。直前に供された白鳥の爆発のせいで、部屋には陰鬱な空気が漂っていたからである。

* * *
第6コース

著者による注記:大半の饗宴について言えることだが、肉のコースはシェフと主催者が食事全体で表現しようとしている中心的なテーゼが明らかになる部分だと考えられている。ブラゾラス皇帝がこのコースで何を伝えようとしたのかは不明だが、もしかすると聖コエリシアの殉教を快楽趣味の中に沈めようとしたのかもしれない。

「ラクダの丸焼き」の羊肉と鶏肉と卵とナッツ添え。ブラゾラスが一夜の話題をこの茶番で持ちきりにするつもりだったのは間違いないが、知ってのとおり最も人々の記憶に残ったのは白鳥の詰め物だった。それでも、ラクダの中に羊を詰め、羊の中に鶏を詰め、鶏の中に卵を詰め、卵をナッツでコーティングした姿は確かに見ものではあった――しかもシェフはこの化け物を全てテーブルのそばで切り分けてみせたのである。シナモンの香りが何週間も取れなかったと言われている。

「ヤマネ」のゼンマイ添え。典型的な快楽趣味の見世物であり、ブラゾラスは数週間、レヤウィンにいる浮浪児を1人残らず雇い、賓客に供するためのヤマネを集めさせたという。ブラゾラスはヤマネをガチョウの油で徹底的に肥えさせたので、食べた時には、ヤマネの骨までも舌の上で溶けてしまうほどだったという。

「若黒鶏」の亀甲焼き。ホワイトローズの黒鶏種はその猛毒の肉で知られている。有毒の甲虫を食べるせいで、体に黒い斑点ができるのである。ブラゾラスはこの食事のためにまたしてもアルゴニアンの発明を採用した。まず、普通の亀に彩色を施してこの若鶏の肉を食べさせる。亀は毒を無効化できるからである。あとは鶏肉が完全に消化される前に亀を殺し、丸焼きにして客に供すればよい。亀の肉は平凡だが、体内に入った若黒鶏の肉の病的な味わいは、五感を刺激する逸品である。

「センチの心臓のフィレ」のサトウキビ添え。この料理は挑戦的である。多くの賓客はセンチの心臓を食べるという象徴的行為を問題視したからだ。しかしこの臓器を食べることを選んだ者たちは、通常は硬いはずの心臓の筋肉がとても柔らかく処理されていることに感動した。

「骨髄と腱」のブラウンソース添え。この料理はブラゾラスの前任者のシェフ、アルベレット・ソーヴィンが発明したもので、帝国の宮廷で長く人気を博した。インペリアル料理の伝統にアカヴィリの影響を交えており、特に腱の味つけと調理法にそれが現れている。腱は雄牛の骨に浸され、骨髄をすくうための道具として用いられる。

聖コエリシアの饗宴 第五巻The Feast of Saint Coellicia V

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第7コース

著者による注記:第7コースはこの晩の唯一の甘味料理だ。これは高貴な晩餐会の形式から逸脱していた。通常は少なくとも2つの甘味コースが食事の前後にあったからだ。だが、この逸脱は大いに成功し、すぐに伝統的なコース料理の順番に取って代わった。

砂糖チーズのアイシング付き「ナツメヤシとベリーのケーキ」。このコースの1品目となるこのケーキは極めて美味であったが、それよりも驚くほどの大きさ(直径10フィート弱)と、指1本分程度の高さしかないことで知られていた。ケーキの表面にある砂糖をまぶしたチーズは複雑で美しい形に編み上げられており、切り分けられるのを見て多くの人が涙した。

「ファイアベリータルト」。中身が漏れたり服を汚したりする心配をせずに持って食べられるように折り込まれたこのタルトは、この晩の画期的な取り組みの一つだった。これらの形状は魔術師ギルドの研究の賜物だと言われている。

カルダモンシロップ添え「ノルドのミルク」。「ノルドのミルク」の興味深い部分は、ノルドと無関係ということ以外、未だ完全には分かっていないことだ。シェフはミルクを凍った半固形の状態にできて、この世でもっともおいしいお菓子の一つであること以外は。もちろん作るためにつぎ込む金額を思えば、これを食せるのは極端な特権階級だけだ。

シナモン入り「焼き蜂の巣」。ハチミツが噴き出す蜂の巣をオーブンでじっくりと火を通したものは、最高に美味だったことだろう。だが、ブラゾラスがどのようにしてこれだけ多くの巣を確保したのか、はっきりとは分かっていない。

「プラム煮とクリーム」。何やら楽しげな雰囲気だが、名前とは誤解を招くものだ。ブラゾラスはホワイトローズへの探検隊と契約してから、以前のレヤウィンでは見られなかった果物を出すようになった。ここでプラムと呼ばれているものは、アルゴニアンの間で食べると舌が痺れるトカゲフルーツとして知られていた。その効果はローズウォーターを飲むだけで消えるのだが、ブラゾラスが少なくともわずかな間自分が楽しむため、その情報を招待客に伝えることを差し控えていたのはほぼ間違いない。

* * *
第8コース

著者による注記:この晩の最後のコースは濃厚なチーズで構成されていたが、これは胃を落ち着け、消化を促すことを意図したものだった。このコースを食べ切る能力があった招待客はほとんどいなかったと記録は示しているが、ここまでの料理の数々を思えば十分にうなずける。

「メロン皮チーズ」。この晩のために車輪型のメロン皮チーズの塊が2ダース注文された。その大きさは最も小さいものでも3個積み重ねた荷車の車輪ほどもあったと言われている。硬いが砕けやすいこのチーズの名は、2年熟成させると皮の部分に現れる興味深いへこみ傷に由来している。

ローリエの葉に入れて配膳された「ラッカーウェブチーズ」。凝乳を入れる前に、型の中へ手間をかけて糸あめ細工の網を作り上げる。この形状は動物の血管に似ており、それぞれ枝分かれした部分の中は空洞になっている。型に凝乳を注ぎ、チーズが十分に硬くなったら、刺激的な酢を網の中に流し込む。網は融け、チーズの中全体に素晴らしい風味の筋が残される。

「エイダールチーズ」。スカイリムからの輸入品。チーズ好きの食品庫の定番だ。

「レッドアーモンド」。レッドアーモンドの料理は幸運の印として知られているが、ブラゾラスがどのようにしてこれほど多くの量を客人に提供できたのかは依然として謎である。これらのナッツは、ある種のアナグマの消化管を通過したものでなくてはならず、風味の熟成に時間がかかるため、入手が困難なのだ。

「砕いた桃の種」。これはしばしばアリノールの様々な果樹園から来た客人に、より伝統的な挽きナッツの代替品として出される。

走り書きされた呪文Scrawled Incantation

母の悲しみを深く覗き、怒りの種を引き抜け

冷酷な亡霊を呼び出し、力を借りて魂の道を照らせ

長くねじれた影で、血によって奪われた命を蘇らせよ

殺害に奪われたものを取り戻せ。高すぎる代償などない

大司祭の命令High Priest’s Orders

ブラック・ドレイクの邸宅以来、あのウッドエルフの射手にはずっと悩まされている。彼女とその友人は、レオヴィックの秘密の真実を知るまであとわずかというところまで来てしまった。また、奴らは我々が四つの野望を手にしようとする懸命な取り組みの邪魔をし続けている。

奴らを闇の一党の兆候で煩わせるのは、しばらくの間だがうまくいった。時間を稼げた。そろそろ終わらせる時だ。

大司祭として、奴らを闇の一党の聖域まで追跡するよう命じる。遺跡にレオヴィックが隠した物を回収し、奴らを皆殺しにしろ。暗殺者とレヤウィンの傭兵も同様だ。そしてウッドエルフが死んだら、まだ聖なる書物を持っているかどうかを確かめろ。あの書が欲しい。

帝国の策略の歌Imperial Deception Song

ワインあふれる金のゴブレット
美しい目をした官能的な踊り子
ルビーのサークレットを頭上に戴く
毛布はもつれ、ベッドに倒れる

燃え盛る炎に熱い油脂が滴る
欲望に口を開けばブドウが揺れる
青いベルベットと黄金の縁が満ち
あさましき者が取り囲み喜び

だが素晴らしいものには代償がある
黄金にも隠せぬ腐敗がある
色鮮やかに塗られた唇の下に牙が潜む
船から矢のように無垢が落ちる

疲れた脚が血を吹くまで踊る
珍味とハチミツ酒に溺れる
素敵な策略が黄金を曇らす
何を売ったか最後に気付く

伝令が運んだ手紙Courier-Delivered Letter

好奇心に満ちた目があらゆる場所にあるため、このような形をとることをお詫びしたい。

お前が是が非でも知りたいと思っている情報を持っている。あの奇妙な遺跡で共に過ごした後に知った情報だ。

ギデオンの南側にあるアムニス邸に来てくれ。お前とあのウッドエルフだけで。

誰にも言うな。最大限に注意を払い、また俺を信用してくださるよう願う。俺の意図が誠実なものであることを、誰もが信じるわけではないだろう。

塗られた目の要求Demands of the Painted Eye

ボーダーウォッチの指揮官へ告ぐ

我々は要塞を掌握した。中に残された民間人の招待客、労働者、要人は全て我々の囚人となった。彼らの身柄を無傷で解放するのと引き換えに、以下を要求する:

一、象牙旅団の完全な武装解除と解散。また、全士官と官兵をソルスセイム島に送り、生涯そこで追放すること。

二、以下の囚人の解放:
-アルクトゥルス・ヴァノ。現在スキングラードの議員暗殺により収監中。
-ハイマンドリル。現在ネクロムでの放火により収監中。
-ベンコル。ホワイトランの虐殺者。現在陰謀の罪で収監中だが場所は不明。
-ダガーフォールの5人。現在カバナントに対する犯罪によりマッディング・ウインド監獄に収監中。
-レディ・ベンウィン・スローンベイン。現在セスパーに追放中。
-その他我々が要求する囚人全員。

三、ケナーシズルーストを政治的に独立した地域とし、ルビーの玉座、アルドメリ・ドミニオン、およびその他のあらゆる外部の権威者から干渉されることなく自由に独自の法を作り、利益を追求できるようにすること。

四、全ての定命の者が自己を統治する普遍的な権利を受け入れ、自身の権力機関による独立した統治を認める、シロディールの貴族階級によって署名された通知の作成と配布。加えて、これらの冊子には、前述のような自立した地域の制定と、それが塗られた目の価値観を共有する者を歓迎する地域であることを記載するものとする。

五、それぞれが3本以上のマストを持つ4隻の船の係留。航海に必要な食料および物資を完全に蓄えた状態でブラックウッド南沖に係留することとし、併せてボーダーウォッチから当方への安全な経路を保証すること。

上記のいずれについても交渉は受け付けない。人質の命と引き換えに、それぞれの要求は完全に達成されなければならない。

反逆者の色褪せた手紙Rebel’s Faded Letter

もうすぐ事態が急速に進展する。

あの横暴な裁定者ガヴォスから、大修道院を解放する計画がある。奴のある兵士と話したら、彼らも我々とそう変わらないことが分かった。ただ生活と養うための金を稼ごうとしてるだけだ!彼らも裁定者を快く思っていないし、阻止する人々に協力する意思がある。彼らが味方につけば、戦うことなく裁定者を追放できる!

交易大臣たちは、裁定者ガヴォスが権力の放棄を拒んだら投獄するつもりだ。彼らはすでに魔法の封印を作り出すため、魔術師も雇っている。3つの印でできた封印だ。それぞれの交易大臣の印だよ。奴を解放するには3人が同意しなければならない。だから、あいつが二度と日の光を拝めないってことは請け負う!

今晩、いつもの場所で会おう。計画と今後の行動について説明する。

秘密の保持Preserve the Secret

ディサストリクス・ザンソラ

四つの野望の時が目前に迫っている。我々の活動を加速させなければ、数十年におよぶ計画が水の泡になる。レオヴィック皇帝は野望を隠し、その場所を私に知らせる前に殺された。だが彼は帝国のあちこちにある様々な隠し場所に、手掛かりを残した。

処刑する前に同僚の評議員たちを追求して、彼らが気付いている秘密の一部を探し出すこともできるだろう。もちろん、彼らはロングハウス帝の秘密を保護するために死なねばならない。殺害の責任は闇の一党に負わせる。それによって目覚めの炎教団への疑惑を、可能な限り長くそらす。また、レオヴィックの隠し場所が彼らの元のブラックウッドの聖域に一つ隠されていることが最近分かった。

最高の侍者を送り出してくれ。執事ファルル・ルパス、アボール、ファレリア、イティニア、ジリッチ、ソフス評議員を殺すのだ。ロヴィディカスも殺す必要があるかもしれない。元評議員長は、安寧に暮らすには賢すぎる。恐らく起きていることに気づき、我々が四つの野望を確保する前に行動を起こしてくるだろう。

私も自分自身に対する攻撃を計画する。失敗に終わるものだが、闇の一党をさらに関与させる。

忘れるな、私に接触してはならない。私のほうから連絡する。適切な時が来るまで、私の正体については一切明かされてはならない。

我らが炎と洪水の王の名において
大司祭ヴァンダシア

冒険者求む!胸躍るチャンス!Adventurers Wanted for Exciting Opportunity!

新たに発見された遺跡の探索のため勇敢な人を募集します。栄光と金を手にできる、またとないチャンスです!

探検についてはジギラにお尋ねください。

〈別人の筆跡で書かれている〉

大仕事よ。合法とは言えないようだけど、お金は本物よ。レッドメイン砦の北で会いましょう。お友達を連れてきて。それじゃまたね、弟くん

ミッリ

目覚めの炎教団The Order of the Waking Flame

ペレグリナ・ポムピタラスによる暴露記事

熱心な読者の皆さん、ご注目あれ!この数ページに及ぶ出来事の記録者である私が、ブラックウッドの貴族の間で急速な広がりを見せている最新の集団の真実を明らかにしよう。この集団について、ある人はレヤウィンとギデオンの有力者用の、単なる社交クラブと考えている。またある人は、暇を持て余した金持ちのための罪のない道楽だと見ている。とんでもない、熱心な読者よ!目覚めの炎教団は、もっとずっとたちの悪いものだ!

象牙旅団の士官を含め、この動きに詳しい当局者は彼らを比較的新しい哲学者のクラブだと考えている。彼らに言わせれば無害だそうだ。高級な宿屋や酒場の奥まった部屋で生み出された新たな気晴らしに過ぎないと。これほどの誤りがあるだろうか!目覚めの炎教団はその程度のものでは全くない。実際には、彼らは破壊のプリンスと呼ばれる、あのメエルーンズ・デイゴンに身を捧げる危険なデイドラ教団なのだ!

このデイゴンの狂信者たちの望みは何か?実に明白だ。タムリエルの完全破壊に他ならない。もしかしたら全ニルンの破壊さえも!さらに詳しく説明しよう。

綿密な調査の結果、以下の結論に至った。一つ、新たに結成された志を同じくする裕福な思想家の集まりのように見えるものは、実際には少なくとも皇帝モリカルの時代、おそらくはそれ以前の時代から秘密裏に活動してきた大規模な組織である。二つ、彼らは間違いなくデイドラ公の信条に心服して従う宗教的な組織である。三つ、彼らが崇敬するのは、破壊のデイドラ公、洪水と火の王メエルーンズ・デイゴンである。四つ、この教団はロングハウス帝とつながりがあるが、彼らの歴史のその部分を明らかにすることは控え目に言っても困難である。五つ、潜伏していたこの教団が姿を見せるようになったのは、彼らが忠誠と献身を強く主張するための何らかの活動を大々的に行うことを計画しているからだと拙記者は考えている。また、それが大惨事を引き起こす自然災害と同程度に破滅的なものであるのではないかと危惧もしている。

教団の組織そのものについて述べると、調査の結果は大司祭が指導していることを示唆しているが、その正体は今のところ巧みに私の目をかわしている。教団内の個々の小集団は「破滅の運び手」と呼ばれる有力者たちの指揮下にある。他の高位には「災害の化身」、「カミソリ」、「破壊者」などがある。しゃれているではないか?こうした肩書がこの教団の本質を示すわけではないだろうとおっしゃるなら、ダメ押しの情報を公開させていただこう。

私はギデオンの近くにある古い遺跡で行われた目覚めの炎の儀式に潜入することに成功した。怪しい数人を尾行し、その中の1人からローブを拝借し、背後をうろついて観察するのは実に容易だった。目撃した儀式は心底ゾッとするものだった。厳粛な儀式を取り仕切っていたのは「破滅の運び手」だ。儀式はデイゴンに対する祈りと歓喜の声で始まったが、彼のことはほとんど数多くの大げさな称号のいずれかで呼んでいた。おお、権勢を誇る高貴なる王、野望のデイドラ公、大洪水の父、といった具合だ。その後、彼らはニルンでデイゴンの意思を達成させるための力を授けるよう願い求めた。その次に行われたのは、どこからともなく流れ出る溶岩の噴煙、祭壇の上に出現した猛烈な嵐、炎のカーテンと群衆の上空で裂ける稲妻を伴う複雑かつ不穏な儀式だった。感動的であると同時に恐ろしくもあった。

こっそりと抜け出す前に、私は「破滅の運び手」がうたい上げる声を聞いた。「デイゴン卿よ、我ら控えたり!デイゴン卿よ、野望を示したまえ!デイゴン卿よ、君が革命は我らが革命!ニルンは君のものとなろう!」

我々は賛詠の始めの数行を聞いたに過ぎないのではないだろうか。破壊が訪れるだろう、熱心な読者の皆さん。備えを!

目覚めの炎教団への参加Join the Order of the Waking Flame

世界は混沌から成り、いずれ混沌へ帰ります。破壊は不可避です。しかし瓦礫の灰から新たな世界が生まれるのです。

この考えに賛同する者、環境に対する自然災害の利点についての議論に関心がある者、あるいは来たるべき新世界に居場所を得たいと望む者よ。目覚めの炎教団はあなたを歓迎します。

日没に会いましょう。

外套を持参してください。

旅団の日記Brigadine’s Journal

他の象牙旅団が街をうろつき、スリを捕まえ、大酒飲みを街から追い出しているというのに、俺たちはクソにどっぷりと浸かって生きたままニクバエに食われてる!俺は普段から文句を言ってるわけじゃない。贅沢な暮らしを期待して入ったわけじゃない。だけどこいつは無茶苦茶だ!アルゴニアンはどうやってこんな場所に耐えてるんだ。沼の空気はまるで肺にずぶ濡れの羊毛を吸い込んでるような感じだし、ちゃんとした服を身に着けてなかったら一瞬で虫に殺されるだろうし、馬ぐらいでかい蛙までいやがる!どうやったらこんなとこで生活できる?

これで民が友好的ならまだマシだった。アルゴニアンたちには、この場所を少しでも暮らしやすくするための防御策が沢山あるはずなんだ。だが明らかに俺たちを歓迎してない。隊長がひどいことをするために来たんじゃないって説明しようとしてたが、どうやら交渉はあまりうまくいかなかったようだ。可能な限り彼らを避け、全力で反感を買わないようにしろというのが俺たちが受けた命令だからな。

交易路を拡張する、と奴らは言った。簡単だろうと。ハッ!ブラックウッドの沼地で簡単なものなんて何一つない。

少なくとも、俺たちは繋がってる。よく聞く話だが、苦しみってのは兵士を仲間に変えるもんだ。プレンタスにあれほど話術の才能があるとは思わなかった。それにアクシラの奴、ホッパーが驚いて死ぬくらいでかいゲップができるとはね!

ここにいるのもそんなに悪くはないのかもしれない。いい時も悪い時も共有できる、旅団の仲間がいる限りは。

力を貸してくれ!I Need Your Help!

これを読んでいる人へ

私、トゥーモンは切実に助けを求めている。私にとって価値あるものを失くしたのだ。心から深く愛しているものを。私の落ち度だ。ほんの一瞬よそ見をして… まあ、細かいことはどうでもいい。重要なのは我が愛しき者を傷つけたがっている奴らがいることだ。彼女を追い詰め、戦利品として手にすることを望む奴が。そんなことをさせるわけにはいかない。この卑劣な狩人どもは始末する必要がある。莫大な報酬を約束しよう。

下に記した3人を見つけ出し、片付けてほしい。その後、この野営地に戻ってくれ。新しいメッセージが待っているだろう。頼むから質問は一切しないでくれ。信じてくれ、この狩人どもは心底卑劣な奴らだ!

悪しきフジャルダー。最後に目撃されたのはレヤウィン周辺の丘。

邪悪なヴァシャ。最後に目撃されたのはギデオン付近の沼地。

素早きビンギム。最後に目撃されたのはストーンウェイストを囲む湿地。