西スカイリムの記録

Western Skyrim Register

あの人形についてAbout That Doll

ヴァルドロルド

人形についてだが…ドラゴンの家から放り出してくれ。崖の上から蹴とばそうが、私の知ったことではない。あの惨めな女は我々に挑戦するため、勇気の枯れ草を腹に詰めて永遠の時を過ごすだろう。君があれをどうしようと私は本当に構わない。とにかく私の目に入る場所から排除してくれ。

我々の物資の供給経路については、もっと注意する必要がある。それに人の目や耳はあらゆるところにあることを忘れるな。誰一人としてドラゴンの家に連れて行くような危険を冒してはならない。我々が真の脅威となるために十分な強さを得るまで、影の中に潜むことが確実に成功する唯一の道だ。

イルムへの手紙Letter to Irm

愛しいイルム

今日、高きイングフレドから新しい仕事を得たの。だからもう少しここにいるわ。調査していない洞窟から鉱石サンプルを探して欲しいと頼まれたの。ついて来られないように注意しなければならなかった。彼は「偶然」ここで私に会うことを望んでいたみたいね。あのスキーヴァー。彼と恋煩いのケルバーンの間で注目を集めすぎてしまった。まるで彼らが、私をいやらしい目で見ていることに気づかなかったように。でも、あなただけを見ているからね?

とにかく、いいサンプルを見つけたわ。届けるためダスクタウンに戻る。いくつか仕事をした後で地上に向かう。運が良ければもう1週間か2週間で、一緒に寝られるわよ!

あなたのイングヤ

追伸 髪を切らないでね!あの柔らかい手触りが大好きなの。

イングフレドの作業命令Ingfred’s Work Order

トカゲ

そろそろ探鉱を学ぶべきだ。

話をした地域に行ってくれ。もし何か有望そうなものを見つけたら、サンプルを採取してダスクタウンの私のところへ持って来て欲しい。それぞれサンプルの採取場所を忘れるな!ボーナスは良い貴金層を見つけた者のものだ。運が良ければ、この場所から出ていく手段を買えるかもしれない。

高きイングフレド

くすねられた毒Pilfered Poison

お前が私の物を盗んだ哀れな輩なら、惨めな人生の終わりへようこそ!毒の効果は素早い。俺はただの漁師かもしれないが、卑劣な盗賊の殺し方ぐらいは知っている!

そして、あなたがここにある私のささやかな罠で窒息した不運な臆病者でないなら、このメモをモーサルの港に持って来てくれ。私の物を盗んだ人間か、他の何かについて情報があれば金を払おう!

アングラー

クラウディナ・イルデーンの仕事The Exploits of Miss Claudina Ildene

フィービ・ペロナード 著

偉大なるクラウディナ・イルデーンの仕事を見学するのは、とても興味深くためになる経験だ。彼女自身が自分の業績について多くの話を書き記しているが、その職業の真の秘訣を明かしてはいないように思える。もちろん、クラウディナは虚飾を好む人ではない。彼女は事実だけを記す。それはそれで興味深いものだ。だが彼女は、自分の手法の本当の驚異をあまり考慮していない。驚くべき偉業をいともたやすくやってのける、彼女の才能がいかに美しいことか!この文書で、私はクラウディナの偉大さを語ってみようと思う。

呪われた馬屋事件
最近、クラウディナと私はウィンドヘルムに呼ばれ、ある家族の馬屋についての悩みを聞いた。彼らは馬のいるところで奇妙なものが見え、騒音が聞こえて馬が落ち着かないと述べた。ある年長の兄弟の1人は幽霊を見たと主張した。幽霊は何かを伝えようとしていたが、意味は分からなかったという。

クラウディナはすぐこの事件に取り掛かった。彼女は馬屋の周囲に結界を設置し、それぞれの仕切りに香りのついた塩をまいた。馬は喜ばなかったが、我慢してもらった。数時間経過したが、何も起こらなかった。家族は眠りに着いたが、クラウディナは起きて見張っていた。彼女は何時間も馬屋を見張った。無言で、ただ観察していた。私もこの体験には興奮していたが、それでも疲労に耐えられなくなった。目を開けているのも辛かった!だがクラウディナは身じろぎもしなかった。彼女は石像のように監視を続けたのだ。

そしてついに!周りから囁き声が聞こえてきた。空中に光の揺らぎが現れ始めた。霊魂がクラウディナの結界にかかったのだ。霊魂はおぞましい咆哮をあげ、私は(恥ずかしながら)子供のように泣き叫んだ。クラウディナは当然ながら取り乱した様子もなく、立って亡霊に挨拶した。彼女は命令するような低い声で「目的を教えなさい」と言った。

霊魂は男の姿に変化したが、その衣服は大昔のものだった。彼は私たちがいて都合が悪いとでもいうように、当惑した様子だった。言葉を話すとは思っていなかったが、彼は口を開くと実によく通る声でこう答えた。「ずっと伝えようとしていたんだ!あの連中が、私の墓の上にこの馬屋を建てたことを!」
クラウディナは霊魂と長く話していた。会話を全て書き写すのはとても無理だったが、気の短い客が冷静な商人と話し合う様子によく似ていた。クラウディナは霊魂の心配事に耳を傾け、適切なタイミングでうなずき返し、いくつか質問をした。

それで終わりだった!霊魂の相手を済ませると、クラウディナは家族と話し合い、馬屋を別の場所に建てるよう言った。彼らは幽霊の問題が平和的に片づいたことに喜び、すぐ作業に取り掛かった。これは言っておく必要があると思うが、家族はクラウディナに、仕事の報酬としてかなりの大金を払うと言ったが彼女は断った。私がそのことについて尋ねると、「あの人たちは金持ちじゃなかったし、私も大したことをしたわけじゃない。簡単な仕事だった。ゴールドは彼らが持っていたほうがいいわ」

クラウディナのメモClaudina’s Notes

以下の場所で、奇妙かつ霊的な活動の可能性に関する報告が民から寄せられている:

– 街の北にある洞窟は祟られていると噂されている。洞窟から奇妙な音が発せられており、数名の住人が彼らの言う「冷たい風」が吹いているのを感じている。

– ある鉱山労働者が水辺での昼食を恐怖により中断された。流れのゴボゴボという音に混ざって、得体のしれない声が叫んでいるのが聞こえたという。その声は「お前は終わりだ」か「私も欲しい」と言っていたようだと説明している。当人は昼食を共にすることを恐れ、その場を離れた。

– 鉱山労働者グルモグは晩に何杯か飲んだ後で帰宅する途中、幽霊のような力で押され、橋から下の水に落とされたと主張している。グルモグの誰もが知る習慣を考慮すると、この件で唯一不思議な点は、このような事件がもっと起きないことだと住民は考えているようだ。いずれにせよ、引き続き調査する。

– 山の尾根に沿って浮かぶ光が目撃されている。付近の光るキノコが発する光だろうか?それとも霊魂か?調査する。

ケルバーンの作業リストKelbarn’s To-Do List

今日の目標

採掘サンプルを見つけて、ダスクタウンにいる高きイングフレドに持って行く。

イングヤへの詩を完成させる

ブラックリーチの奥深く
お前は私の心を盗んだ
そして私は…

    奥へと叫ぶ?
    あなたの桃をもぐ?
    深く願う?

これを見つけた親切な方へTo the Kind Stranger Who Finds This

この者はどうかお願いしたい。

この近くで採掘サンプルが入った袋を見つけて…それをダスクタウンにいる高きイングフレドに届けて欲しい。

彼は質問するだろう。過去の影があまりにも近づいていると伝えて欲しい。彼がアダンズダに会うことはもうない。
この者はもう行かなくてはならない。

彼に皿を洗うよう伝えて。彼にはわかるはずよ。

シャウラスの歌Chaurus Chant

カチ、カチ、カチャリ
シャウラスが襲いかかる

カチ、カチ、カチャリ
速やかに殺してほしい

カチ、カチ、カチャリ
暗闇から飛び出してくる

カチ、カチ、カチャリ
もっと大きな棒があれば

カチ、カチ、カチャリ
これで虫の餌になる

すべての古遺物収集家に告ぐ!Calling All Antiquarians!

あなたは古遺物に情熱を注いでいますか?古代の遺物に心が躍りますか?寝るのも忘れるほど文化や歴史に惹かれていますか?手を汚す作業は好きですか?

古遺物収集家協会は胸躍る新たな機会のために、有能な学者、考古学者、探検家を求めています。

世界を見よう!忘れられた遺物を取り戻そう!古代の謎を解こう!土から何かを掘り出そう!

該当する方は、ソリチュードにあるグウィリム大学北支部にいるヴェリタ・ヌミダまでご連絡ください。歴史に名を刻みましょう!

レジナス・ブーカ

(補遺:高い教養と秘術に対する生来の才能を持つ方のみ応募してください。私の時間を無駄にしないように。 -V.N.)

ドービンへの手紙Letter to Dorbin

ドービン

この緊急任務を引き受けてくれてありがとう。成功したら大学はこの恩を忘れることはないだろう。

渡した手付金が十分であることを祈っている。ソリチュードの吟遊詩人の大学にいる私のところに顔を出して変装を受け取ってくれ。それから、できる限り目立たないようにお願いする。

レイボーン

ドラウグルと竜教団Draugr and the Dragon Cult

竜教団の歴史家、スコルンヴィニル・キルンド 著

竜教団の古代の信者と、その司祭の関係について詳述した小さな書物がある。多くの人がこのつながりの深さについて理解しようと試みてきたが、結局は真の犠牲を痛ましいほど過小評価するに至るのみだった。

長く忘れられた竜教団の墓の広間をさまようドラウグルは、単なる足元のおぼつかぬ心ない獣を大きく超える存在である。彼らは我々の最強の守護者だ。全てを竜教団にささげた者は、ドラゴンプリーストへの奉仕に永遠を費やす者なのだ。彼らの崇拝が尽きることはなく、今もなお続いている。我らの祖先の敗北から長く。このことは励みになるはずだ。これはスカイリム全体が、竜教団を単なる遠い昔の記憶だと考えている証だ。我々の存在が実際に嗅ぎつけられることはない。

ドラゴンは我々の司祭に永遠の命を約束した。ドラウグルは礼拝する忠実な従者であり、司祭の死後も彼らを支える。毎夜彼らは目を覚まし、畏敬される司祭に力を移す儀式を行い、もう一度眠りにつく。永遠なる守護者。時間にも環境にも止められない、最も純粋な礼拝。

我々はドラウグルを愛しむべきだ。我々の最も名誉ある兄弟なのだ。

ネルフセアの警告Nelfthea’s Warning

隊長!沿岸に向かってくる船がある。見たことのない大きさだ。ランプは消えているが、欠けたところはない。襲撃だ!出られる者を連れて阻止に向かうが、他の者の援護も必要になる。できるだけ早く。

ネルフセア

ヘイルナの日記Heiruna’s Journal

旅の間に偶然出会えるだろうと考えていたさまざまな集団の中で、想定さえしていなかったのが竜教団よ。これは全くもって馬鹿げている。そこまで妄想するのは不可能だったと考える者もあるでしょう。しかし、結果は極めて明白ね。

私は彼らを隠れ家らしきものまで追跡した。彼らはそれを「ドラゴンの家」と呼んでいるが、見た目としてそう大したものではない。彼らはかつて強大だった勢力の屍のような場所に暮らしているが、彼ら自身も屍でしか有り得ない。仮に私がドラゴンの召喚を検討するほどイカれていたら、間違いなくもう少し陰鬱でない場所で実行するでしょう。実際のところ、そのような召喚に必要とされる機知や力を持ち合わせているかどうかはとても疑わしいと考えている。しかし、それでも彼らの理想は危険よ。

少なくとも、私があの馬鹿どもを排除することを戒める者はいないでしょう。過去に自分で法を執行することで様々な悪影響を被ってきたけど、これは別問題よ。芽生えたばかりの竜教団を虐殺する?ほとんど英雄になってしまうじゃない。

モル・カズグールの歴史A History of Mor Khazgur

歴史家、カレナ・エスムリー 著

モル・カズグールのオークは、オークととしても特に気難しい人々である。この情報を編纂するのは簡単ではなかった。我慢強い鉱山労働者が何人か、私の質問攻めを少々の苛立ちと脅迫だけで済ませてくれなかったら、この記述が可能になることはなかっただろう。

ロスガーを去って以降、モル・カズグールのクランを創設したオークは豊かな鉱山を見つけ、そこに身を落ち着けることにした。当初、鉱山は自給自足できていた。この場所には資源があふれ、オークは定住して生活を軌道に乗せた。彼らは鉱山の周囲に居住地を築き、栄えた。

現在の鉱山の監督官サルスグレグは、長い指導者の家系に連なる人物である。サルスグレグの祖父と父親は、クランの族長を務めていた。彼らは鉱山自体が栄えていた、いわば黄金時代にクランを導いた。クランはかなりの成功を収め、オルシニウムと分断されても快適な生活を送れた。

サルスグレグが父親から鉱山を相続するのは当然のことだと考えられていた。彼がその前に結婚していたことを考えると、奇妙ではある。このクランは伝統に忠実と言えないが、それでもこのことは私を驚かせた。

サルスグレグにとっては不運なことに、父が族長を受け渡す準備を整え始めた頃、モル・カズグールの鉱山は枯渇した。完全な枯渇ではないが、没落は急激だった。かつて栄えたクランは突如として、死滅の危機に立たされたのである。鉱山が枯渇すれば、彼らには何も残らない。

幸運にも、新しい族長が頭角を現した。若く力強いウルジクというオークが、族長の座を求めてサルスグレグに挑んだのである。彼女は勝利し、クランにかつての栄光を取り戻させるため、新しい採掘手法を即座に導入した。

ラシルの日記のページRasir’s Journal Page

今回はいいところまで来ている。感染源が見つかっていないのがとてももどかしい。何かが食べ物に混入したか?水?動物だろうか?ブラックリーチには多くの謎がある。私が知ることはきっとない。

しかし、もし聖域を浄化できたら私は英雄だ!トランヤやスコルのようにではないが、半分くらいは英雄になれるだろう。また自分の能力を活かせるのは気分がいい。さて、レシピに取りかかろう

ラシルの日記のページ、2ページRasir’s Journal, Page 2

思いがけないことに、ここブラックリーチには治療薬の材料が全て揃っている!理にかなってはいるだろう。この奇妙な場所で生まれた病には、そこの植物相に解熱剤があると思われる。

鍵はその多様な果実の中から、ブラックリーチモレルを見つけ出すことだった。これはとても高い効果のある治療薬をもたらす。とは言え、成功を確実とするために被験者は必要になるだろう。

ラシルの日記のページ、5ページRasir’s Journal, Page 5

被験者は自ら現れた。

本道に沿った洞窟の1つに感染者がいる。だが、結果がどうなるかは予想がつかない。感染者は信じられないほど凶暴だ。私はこの実験を、命を大きな危険に晒して行う。

そのため、中へ入る前に治療薬の大部分を隠していく。私がこの試験を生き延びられなかったら、他の誰かがこの責務を引き継がなくてはならない。

ラシルの日記のページ、8ページRasir’s Journal, Page 8

珍しいキノコを用意した。

治療薬の準備はできた。

あるいは、これまでになく準備が整った。試験を行うため、洞穴の北東にある小さな洞窟に向かう。

運が良ければ、これが最後の日記にはならないだろう。

リリスからの手紙Letter from Lyris

相棒へ

アイスリーチの魔女が喪心の嵐の背後にいる証拠を集めたわ。あたしはソリチュードへ向かって、ガーヒルド女王に知らせる。彼女は合理的なようだから、上級王スヴァーグリムが謁見を拒否し続けたとしても、あたしが一人で戦争を始めないようにしてくれるでしょう。

ソリチュードで合流して、一緒に女王と話しましょう。

リリス・ティタンボーン

ロズヒルデへの手紙Letter to Roshilde

ロズヒルデ

移動しなければならない。これを手にしたら、最初の地上行きの支度をするんだ。すぐに全員を引き上げる人員がいなくなるだろう。昨日の夜、またセントリーがザバシルの身体をえぐり取った。

彼は生きているよ。ただ、もう運搬はできない。

愛しい人へFor My Love

マクステン

私はあなたへの愛を、ずっと捨て切れないのではないかと恐れています。おそらく、それが私を愚かにするのでしょう。私がより強く賢ければ、きっともっと早くここを出ていたのでしょう。あなたと恋に落ちる前に、あなたのありのままの姿を見ていたかもしれない。しかし、私はここにいます。ここまで来るのにあまりにも長い時間がかかった。あなたの手で苦しみすぎてしまった。

あなたが私にしたことは、意図的であろうとなかろうと許すことはできない。さらに悪いことに、このことであなたが正気を取り戻したように見えない。こんな言葉があなたの胸に響かないことは分かっているけど、それでも書いておきたい。あなたの仕事は何の恵みにもならないし、命を救うこともない。あなたは自分が決して理解できない力に手を加えている。そして、それがあなたを腐敗させている。あなたが意に沿わない被験者に、生きた人々に行っている不快で冒涜的な儀式はとてもおぞましい。

ひょっとしたら、あなたはずっとこうなると知っていたのかもしれない。これを待っていたの? 自ら進んで、今の恐ろしいあなたになることを、進んで受け入れたの? いえ、そんなことはどうでもいいのでしょう。あなたがこれを読んでいるなら、私は去った後よ。追わないで。探しに来ないで。

どうか間違えないで、マクステン。私の一部は、あなたをずっと愛している。その一部を、切り離せたらよかったと思ってはいるけれど。この手紙を、燃やせるものなら燃やしたい。

フレイウェン

回収対象の品Things to Salvage

ドワーフのジョッキ
ドワーフ・スパイダーの脚
センチュリオンの兜(あるいはその一部)
ドワーフセントリーのキラキラ輝く部品
歯車
折れたパイプ

海の巨人の上陸The Sea Giant’s Landing

– 海の巨人の船は巨大だが、巨人のサイズを考えれば小さいとも言える。推定:あのような船では4人も乗れば座礁する可能性がある。また、操船はただ1人の担当と思われる。

– 船に不自然な損傷は見られない。推測:海の巨人は意図的に西スカイリムへ来たもので、風に煽られて航路を外れたか、何らかの危機的状況から逃れて来たのではない模様。

– 船は今も航海可能な状態。提案:付近の洞窟を調査し、海の巨人が上陸した兆候がないか確認する。ここが最初の目的地か、最終的な目的地ではない可能性がある。

日没後、海の巨人の船に密かに侵入する。獣は鈍感で注意が散漫な様子なので、気づかれることはないはずだ

海の巨人の動きThe Sea Giant’s Actions

– 私が到着した時、海の巨人はキャンプを設営していたが、どうやらその夜には落ち着いていたようだ。散らばった内臓や残骸から判断するに、この地域には地元の狩人がいたが、巨人がさっさと始末したらしい。

– 巨人は時々浜辺を行き来しているが、何か特別なものを探しているのか、ただ時間を潰しているだけなのかははっきりしない。

– 海の巨人はもう数時間ほとんど動いていない。休んでいるようだ。もっと近づいて、眠っている間に船へ乗り込めるかどうかを試してみる。奴がここで何をしてるのかは分からないが、私の存在に全く気付いていないのは確かだ。

海の巨人の捕食Sea Giant Predation

ヴァーセント・アードレイ 著

危険多き北の海でも、海の巨人ほど船乗りに恐れられている謎はほとんどない。伝説の生物と言われるほど希少であるにもかかわらず、海の巨人は第一紀からノルドの海の物語に登場する。海の巨人と出会ってから長い歴史があるのに、文化や行動についてはごくわずかなことしか知られていない。

漁師の物語から収集できる証拠によれば、地上に留まって群れを築く巨人と異なり、海の巨人は複雑な道具を使用し、集団で協力して自然の獲物を狩る。海上の氷の下に潜む鯨を。

マンモス飼いはマンモスの群れと協力関係を築いて平和に暮らすが、海の巨人は狡猾で無駄がなく、恐れを知らない捕食者である。大変な幸運により、私は海の巨人の狩りの成果が浜辺に打ち上げられたものを観察できた。勤勉な博物学者の目からすれば、死骸も豊かな情報源になる。

鯨の死骸に接近したところ、臭いを除いて最も強烈な印象を与えたのは、背びれの上から突き出た木製の大きな棒だった。ノルドの太腿より幅の広いこの棒は、鯨の皮の内部で折れているようだった。先端は硬い骨を削ったもので、銛に似た構造で先が尖っており、鯨のあばらの上の脂肪に引っかかっていた。深い傷だが、致命傷ではなさそうだ。

ではこの獣はなぜ死んだのか?その分厚い皮は恐るべき事実を物語っている。切り傷が背面や側面に付いており、かなり大きな肉の塊が切り取られている。刃で切り落とされたのだ。海の巨人は、どうやら鯨を生きたまま削り取ったらしい。

これには前例がないわけではない。ヅラゾグや狼が大型の獲物を狩る戦術は見たことがある。獲物に傷を負わせて出血とショックを狙うのは有効な作戦である。海の巨人の頑丈な骨格と強大な腕力、そして冷気への耐性があれば、極寒の水中に飛び込んで獲物と取っ組み合いをするのもたやすいだろう。戦いは凄惨なものだったに違いない。大人の鯨を無力化するには、6体以上の巨人が必要だと思われる。

船乗りは海の巨人の船を凍りついた荒野で見たと主張している。島ほどに大きな船で、ギザギザの槍で武装されていると。もちろん、こうした報告は空想に近い誇張と一般に思われている。だが狩猟部隊が乗る船は、とてつもない大きさでなければならないだろう。

海の巨人について我々が知らないことはまだまだ沢山ある。より小さな船を連携させ、正確な攻撃を行う知性はあるのか?あるいは単一の船に固まって、機会がやって来たら獲物へ襲いかかるだけなのか?彼らはどうやって、鯨を海底からおびき寄せるのか?突然現れた嵐によって元の居場所から引き離されたこの死骸は、解答よりも多くの疑問を投げかけている。

海の巨人の野営地The Sea Giant’s Camp

– 海の巨人のキャンプファイアは普通のたき火以上だが、予想されるほど大きくはない。1人か2人の巨人が心地よく温まる大きさだ。

– 相対的に言えば、キャンプも同じように小さい。おそらくここには2人以上の巨人がいない。他の巨人が雪の中での睡眠を楽しんでいるのでなければ。

– 備蓄も乏しいようだ。巨人の集団が必要な量としては、だが。船には最大でも数日過ごせる薪がある。食料はごくわずかだが、陸に着いた後で狩りをしようと考えていた可能性はある。

– これはとても小さな部隊だと考えられる。一番あり得るのは我々のような斥候だが、機敏さや鋭い観察眼は全くない。おそらく何の問題もなく、さらに近づいて調べられるだろう。

弓術大会Archery Competition

お知らせします:

弓術大会は中止になりました

理由は

関心の欠如のため

問い合わせはモリン首長まで

協会の通信ガイドAn Introduction to Circle Correspondence

古遺物収集家協会へようこそ

この高名な協会へ新たに入ったメンバーには、たくさんの質問があるでしょう。アルケインの通信に関する、下記にガイドを書いたわ。

あらゆる旅人が知っている通り、タムリエルはあまりに広く連絡が難しい。伝令を使った手紙は遅延するか破損することが多い。到着するだけマシね。隊商で送った小包は定期的に盗賊が襲う。私たちの仕事は繊細であるため、こうした粗雑な手法は需要を満たさない。幸運なことに我々の高名な創立者、チュルヘイン・フィーレは長距離通信の賢い方法を編み出した。あなたの古遺物収集家の目が鍵になる。

オリエンテーションの間に入手した古遺物収集家の目は、ここグウィリム大学支部にある中心の目と強力に結びついている。私たちの筆頭秘術師、ガブリエル・ベネレはあなたが発見した古遺物の画像をすべて召喚できる。これにより、私たちの勤勉な学者は、あなたが発見してからすぐに解析を開始できるのよ!

ガブリエルは解析結果をあなたの目に転送できる。古遺物の書に簡単な注記を添えてね。対象の複雑さを考えると記述は短いけど、情報が助けになることを祈りましょう。

ここで、古遺物収集家の目が計り知れないほど貴重であることをもう一度伝えておくわ。何ヶ月も調べたけど、その能力については表面的なことしかわからなかった。使用時には十分注意してね!

もし質問がさらにあるなら。ガブリエル・ベネレまで連絡して。良い探索を!

-ヴェリタ・ヌミダ

交渉の成功に必要なものNecessities for Successful Negotiations

オベレール・ペティット 著

交渉は難しいものだ。すでに合意が成立している集団であっても、お互いの喉を掻き切ることしか考えていないような集団でも、人々の間で交わされる会話の誘導は慎重に行われるべきだ。

あなたが実績のある外交官や事業家であっても、交渉は必須の技術である。誰にでも学べるが、練習を重ねて洗練させなければならない。私はここに、熟練した交渉者にとって重要ないくつかの技術を列挙しておく。

忍耐!交渉は時としてひどくストレスがたまるものだ。他の人々があなたを困らせるために力を尽くしている時でも最後まで冷静さを保てれば、間違いなく皆が合意に達する助けになるだろう。声が大きくなるか、気分が落ち着かないと感じるようになったら、感情が収まるまで休息を取ることを考えよう。

快適で広々とした会合の場所を持つこと。狭くて不愉快な場所では、交渉も不愉快なものになりがちだ。話し合うべき問題を切り出してもらう際には、安心してもらうのが望ましい。地域に関係なく、暑すぎないようにすること。暑いと緊張しやすくなる。それが防げない場合は、冷たい飲食物を提供すること。

会合の間は、全員の話をきちんと聞くこと。誤解されている、あるいは完全に無視されていると感じている集団がいると、交渉は開始する間もなく雲散霧消してしまうことが多い。全員に自分の事情を説明する時間を与え、その言葉を理解すると確約すれば、交渉は遥かに進めやすくなるだろう!

採掘者の日記Scraper’s Journal

この場所は滅茶苦茶だ。

オルグヴァルはここで財宝が見つかると言っていた。彼はここが古いドワーフの工場か何かだと考えている。この事業に参加している者の大半にはどうでもいい。ただ給料がほしいだけだ。

このトンネル掘りは厄介極まりない仕事だ。これまで見つかったのは、目が痛くなるあのクリスタルだけだ。こいつはブラックリーチ中にあるし、きっと価値なんてないだろう!それに加えて、トンネルを開けば奥には俺たちを喰おうとする何かが待っている。生きたまま皮を剥ぐドワーフの防衛装置、気味の悪い昆虫、何か恐ろしい怪物だ。

さらに悪いことに、オルグヴァルは下水で腐ったスキーヴァーの死体みたいな臭いがしやがる。生まれてから一度も風呂に入ってないんじゃないか?ここは腹の立つことばかりだ。空気は通らない、逃げ場もない!耐えがたいくらい不潔だ。言葉では表現できない。ここに来て自分で経験してもらうしかない。だがどんなに嫌いな相手でも、そんな目に遭わせるのは気が引けるほどだ。

オルグヴァルが死んだら、俺の言葉は正しかったってことだ!

くそ。地表に戻ったら、このドワーフのガラクタの一部は売れるかもしれない。生きて戻れたらな。

治癒薬の場所(最初の手掛かり)Directions to Cure, First Clue

この上の古い道を行け。

水晶の台座に着くまで南へ向かえ。

アーチを左へ曲がれ。

湖で足場を探せ。

治癒薬の場所(第二の手掛かり)Directions to Cure, Second Clue

2本の柱の間を北に向かって泳げ。

右に曲がって浜辺へ向かえ。

治癒薬の場所(最後の手掛かり)Directions to Cure, Final Clue

一番右側の塚から鍵を掘り出せ。

湖の端にある扉に入れ。

新たな溶液の指示書New Solution Instructions

私はこの石を溶かす薬と、これを使用するべきだという族長の主張を信用していない。しかし彼女は族長であるため、我々は従わねばならない。

とは言え、彼女が要求する生産量を満たすため、仕事で命を落とすような真似をさせるつもりはない。魔法の薬が、下にいる時間を縮めることはない。深く潜るほど空気は乏しくなり、坑道は不安定になっていくだろう。そこで割当量を達成するため、レシピの量を4倍とする。これでより早く成果を挙げ、坑道にいる時間を短縮できるはずだ。

細挽きして乾燥させたショーク樹脂 x4
煮立てた雪熊の胆汁 x8
アッシュピットの粉 x4

別途指示があるまで、前のレシピではなくこの指示書を使用すること

マゾグ

青白い肉食の獣Pale Creatures with a Taste for Flesh

地下の施設も、洞窟ももう知ったことか!どうしてオボルの言うことを聞いてこんな仕事を引き受けちまったのか、自分でも分からない。ゴールドの約束のせいか?それは間違いない。名誉と、もしかしたら首長になれるって考えもあったか?可能性はある。

とにかく、簡単な仕事のはずだった。洞窟に忍び込んで、辺りを見て回る。この伝説の青白い獣が実在するという証拠を見つけて、オボルのところへ持ち帰る。報酬を受け取って、雨あられの称賛を受ける。うん。そして沼地をアルゴニアンに売りつける。

こいつらは一体何なんだ?地元の老人がファルマーと呼んでいたのは聞いた。ゴブリンの一種に見えるが、考えが甘かったらしい。この忌々しい怪物に、脇腹をえぐり取られちまったからな!罠にかかったホーカーみたいに血が出てる!それにあの虫の羽音も聞こえる。近づいてきてるんだ。

誰かがお前をぶっ殺してくれることを祈るぜ、オボル。この――

石を溶かす薬のレシピStonemelt Potion Recipe

材料:

煮立てた雪熊の胆汁 x2
細挽きして乾燥させたショーク樹脂 x1
アッシュピットの粉 x1

石の組織の中で適切な反応を確実に行わせるため、材料は規定の割合を正しい順番で入れなければならない。

最初に雪熊の胆汁でベースを作り、その中にショーク樹脂を軽い泡状になるまでゆっくりとかき混ぜながら入れる。アッシュピットの粉を静かに振る。ただし、使用前に溶液をかき混ぜすぎないこと。

使う準備ができたら、勢いよく振って狙う表面に注ぐ。

墓荒らしの嘆きGraverobber’s Lament

オボルが正しかったかなんてどうでもいい。この沈んだ墓に、ドミニオンの艦隊を沈めるくらいの財宝があったって知るものか!今考えているのは、このおぞましい場所を無事に出ることだけだ!

古代のノルドが最悪のものを埋めた場所だと伝説にあったら、それが誇張じゃないとは思わないだろう?その最悪のものが、荒らしてきた他の死体みたいに横になって死んだままでいないなんて、誰に予測できる?

ここから出られたら、オボルにはもう黙っちゃいないぞ。もし出られなかったら、ここのアンデッドどもに教えを乞うことになるが。

俺がここで死んだら、オボルが惨めな人生を終えるまで化けて出てやりたいからな。

無記名の採掘日記、37ページUnnamed Mining Journal, Page 37

…ついにシャドウグリーンへ到着した。洞窟は日が当たって温かい。壁に少し氷があるのは珍しい。上の通路を試す。何もなし。明日の朝はもっと奥に行く。

物資
サルトリス3袋、粗びき1つ
乾燥湿地ウナギ5匹
スラッジ粉2袋
ロウソク15本
油脂2鍋
フェクの袋はまだ大丈夫だ。メートのカゴはもうすぐ空になる

シセイ25日

下の通路で火山の活動を感じた。これが温かい理由だ。同時にいい鉱石が見つかる前兆でもある

無記名の採掘日記、42ページUnnamed Mining Journal, Page 42

シセイ28日

カオク。スプリガンがシュサジャを殺した。地上に戻ったら彼女が死んでいた。私の物資が散乱してしまった。それでもあと数日は大丈夫。まだ鉱石のサンプルもある。シュサジャがいなくなって寂しいが、今晩はグアルのシチューを作ろう。

今日の発見: マグマの湖がある。さらに奥へは行けない。炎の湖があぶくを立て、火花を吹き出す。でも危険だとは思わない。あともう一日調査してみよう。いい鉱石がなければ移動すべきだ。お金を稼がなければ。

物資
新鮮なグアルの足
乾燥湿地ウナギ2匹
ロウソク9本
油脂1鍋
フェクの袋はまだ大丈夫

無記名の採掘日記、45ページUnnamed Mining Journal, Page 45

シセイ28日

今日、底にて探索のために炎の精霊を召喚。驚くべきものだ。泡のような炎で召喚を行うと燃え上がる。山さえ精霊の動きに合わせて揺れる。きっとお互いに話をしているんだと思う。ここは安全じゃない。炎の魔法が多すぎて、シャドウグリーンを怒らせてしまう。

いい鉱石はないが、シャドウグリーンの秘密は誰かにとって黄金に価するものだろう。スプリガンについても警告してあげたら、十分な報酬をくれるかもしれない。

物資
グアルの足半分
乾燥湿地ウナギ2匹
ロウソク5本
フェクの袋は空

旅に向けた食料品のリストFood Item List for Travel

従者スヴァインは食べることが大好きだ!彼を満足させられるものが揃っているか確認しよう。

パン6斤
スイートロール25個
タマネギ10個
乾燥ホーカー3樽
サルトリス3袋
チーズ18ブロック
ニンジン7ブッシェル
小麦粉5袋

持てる限りの魚(誇張ではない)

マークマイアの伝承

Lore of Murkmire

アジム・ジャアからの手紙Letter from Ajim-Jaa

マク・タイードへ

彫刻から少し離れて、本気で聞いてほしい。卵の兄弟として、お前の面倒を見て問題に巻き込まれないようにする責任がある。自身を裁定者と呼んでいるシャドウスケールほど、避けるべき問題は存在しない。

彼女は高齢で盲目だから最初は素直そうに見えるかもしれないが、あの白い目には今でも厳しさが残ってる。シャドウスケールは生まれた時からただ1つ、殺すために訓練されていることを忘れるな。ためらいも後悔の念もない。彼女は以前にも殺したことがあるはずだし、また殺すことは分かりきってる。

とにかく近付くな。いいな?もし通りで彼女を見かけたら、敬意を持って接しろ。彼女に殺したいと思われたら、この有能な卵の兄弟でさえ救ってやれない。

アジム・ジャア

アルゴニアの季節The Seasons of Argonia

ジンチェイ・コヌの番人、ジェッカワス・パザルト 著

時間は不変である。変化の意志を駆り立てる原動力であり、不可避にして始原的である。恒常的な循環の中で動き続ける力。その変化の進展を印づけることは、サクスリールにとって最も神聖な行為である。

各月は年の循環のある特定の面を印し、それに従って祝われる。月とそれに対応する意味を以下に示す。

バッカ(太陽)
循環の最初の月であるバッカは、存在の始原的な起源、あるいは起源一般と関係する。この時期に我々は、部族の長老たちに普段以上の敬意を示すよう求められる。

ジーチ(木の実)
隠匿の時期としても知られるジーチは、種と理想の両方を植える月である。沼の球根が埋められ、まかれた種が芽を出す。長老たちはその知識を伝えることで、知を植え付ける。希望の時期だが、憂鬱の時期でもある。

この月は三つの喪の最初のものである。何かが植えられると、それは隠れて消えてしまうからだ。出てくるものは何か新しいものだ。すなわち、木の実は永遠に失われてしまう。

シセイ(芽)
シセイは新しさ、可能性、若き興奮などを表す。ヒストはその休眠の生を脱ぎ捨て、真の意味で生きた状態になる。多くの子供の祭りがこの時期に行われる。この月はまた「跳躍の季節」としても知られている。スポーツや競技の盛んな月だからだ。力やスピード、意志の強さといった徳が尊重され、祝われる。

ヒスト・ディーク(ヒストの樹液)
ヒスト・ディークは良くも悪くも、権威への反抗と個人の主体性の力に捧げられる。多くの者はこの月を利用して不正を告発し、その結果としてしばしば部族内部の争いが起きる。

言うまでもなく、論争の的になることの多い月である。多くの者は、この時にヒストといかに離れたかを分析する。崇拝について反省し、それが絆であって束縛ではないことを理解するためである。

ヒスト・ドゥーカ(成熟したヒスト)
騒がしいヒスト・ディークを相殺する役目を担うヒスト・ドゥーカは、家族、伝統、義務といった観念を中心に置く。若いサクスリールはより大きな責任を与えられ、多くの若者たちはチュッカ・セイ。すなわち成人の試練に挑み、自らが大人と呼ばれるにふさわしいことを証明する。試練を突破した者は完全な部族の成員となり、この月は通常、大きな祝賀と共に終わりを迎える。

ヒスト・ツォコ(年老いたヒスト)
おそらく一年で最も神聖な月であるヒスト・ツォコは、知識や賢明さ、可能性の充足といった観念に捧げられている。この月に行われる集会の大部分は厳粛な行事であり、その中でも最も重要なのが、部族の長老たちがサクスリールの歴史を暗唱する「根の語り」である。この月はまたヒストが成長を止め、その個々の可能性が使い果たされたという事実から、「第二の喪」をも表している。

スティシル・ガー(卵の籠)
スティシル・ガーは愚行と軽薄の月であり、通常はヒスト・ツォコの重苦しい厳粛さからの喜ばしい小休止である。子供のような驚きや若々しい歓喜、軽い困惑などが祝いの対象になる。多くの旅芸人の一座たちは、利益の大半をこの時期に得る。祭りや宴会はほとんど途切れなく続く。

スティシル(卵)
卵の月は謎や予期、そして(やや奇妙だが)目的にかかわる。大半の部族にとって、このつながりは文字どおりのものだ。産卵の多くはこの月に起こる。

ヌシュミーコ(トカゲ)
トカゲは静かで手早い労働の象徴である。ヌシュミーコは日々の生活において感謝されることのない仕事を祝い、労働はほぼ途切れなく行われる。清掃、建築、修復、準備など。部族の成員は皆、ひたすらに働く。

シャジャ・ヌシュミーコ(半人トカゲ)
この月はヒスト・ディークのように、謎と議論の絶えない月である。半人トカゲが実際に何を表しているのかについては、かなり大きな論争がある。卵から出てきた子供のことなのか、それとも我々の文明の起源を表すのか?

変化や生成、移り行く価値といった統合的な概念について想いが馳せられる。そのため、多くの若者たちの集会がこの時期に開かれ、様々な恋愛がらみの問題が持ち上がる。若者の不器用さがしばしばこの月と結び付けられる。

サクスリール(アルゴニアン)
サクスリールは我々の文化の真の情熱に関係する月である。狩りと収穫の季節が過ぎた今、部族の成員たちは陶芸や木工、その他の創造的な活動を自由に追求できる。物事が終わりを迎えつつあるという感覚が広まる。

多くの部族で、月の終わりには長老たちの大きな集会がある。この祭典の目的は我々の長老たちと共同体の両方を、迫りつつある死に備えさせることである。肌の乾いた者には、これを陰惨な伝統と見る向きも多い。

ズロマート(死者)
多くの伝統と同様、ズロマートは明らかに矛盾する発想の月である。この月は「第三の喪」に結びついており、文字どおり一年の終わりであるため、3つの喪の中で最も強力である。部族は一年の出来事を振り返り、過ぎ去っていくことを受け入れる。

しかしながら、この月は祝賀と追憶の時期でもある。古い生を終え、新しい生へと移行した全ての者に敬意を表すため、大規模な祭典が開かれる。月の大部分はこうした祭典の計画と準備のために費やされる。

イクスタクス探検家の日記、1ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 1

仲間たちは正しかったようだ。イクスタクス・ザンミーアへの旅に備えることはできない。遺跡に入って数分もしないうちに、もう完全に迷ってしまった。しかも、価値のあるものはほとんど何一つ見つけていない!ボロボロの骨や割れた壺を探しに来ていたならよかったが、残念ながら私は財宝を探しに来たのだ。

十分に奥深くまで進んでいないのかもしれない。何か脱出手段を探すべきなのは分かっているが、手ぶらで去るという考えは受け入れがたい。小さなものでもいいから、何か見つけなければ。

何かのクリスタルがここの中心部に隠されているという噂を聞いている。クジュ・ジャスとか、カジプ・ザットとか、そういう(発音不可能な)クリスタルだ。それが見つかれば、この災難も報われるだろうか。

イクスタクス探検家の日記、2ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 2

何時間も暗闇の中で無駄に過ごしたが、その幻のクリスタルには近づいてもいない。日誌のページを撒いていくことにした。パンくずの跡のようなものだ。私は建築家ではないが、この場所の設計者もそれくらい無能だったに違いない。扉や階段はどこにもつながっていないものばかり。ほぼ底なしの穴が不気味なほど頻繁に現れる。それにあの忌々しい像だ。戯画化されたアルゴニアンの顔で、歪んだ口はぞっとする冷笑をたたえている。あれは「してやったり」という表情に見えて仕方がない。控えめに言っても、気味が悪い。

まだ探索していない回廊が一つある。最も暗く、腐臭がする場所だ。どこに続いているのか、見てみるしかなさそうだ。マーラのご加護を。

イクスタクス探検家の日記、3ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 3

ついに進展があった!蜘蛛の群れと、終わりなき罠を避けて素早く通り抜けると、巨大な地下室を見つけた。巨大な像の足元に何かが輝いているのが見える。一直線に駆け寄って行きたいところだが、何かがおかしい。あそこで何か音がしている。ゴボゴボいう妙な音で、背筋が寒くなる。とはいえ、危険を冒さねば何も得られない!あの財宝を取って、家路につく時だ!

イクスタクス探検家の日記、4ページIxtaxh Explorer’s Journal, Page 4

壁の中に何かが隠されていた。のたうち回っている!罠がそこら中にある。これを見つけたら、私のような過ちを犯してはならない。行け!とにかく――

[残りの部分は判読不可能]

エシュラフの日記Eshraf’s Journal

〈ページの大半は切り取られている。以下は残っている部分〉

…何者かが私を見ている。バケツ一杯のゴールドをかけてもいいが、あの忌まわしいナガに違いない。ツォナ・ジーヴァ遺跡ではもう少しで奴らにやられるところだったが、私はセンチネルの路地で育った。あんなトカゲどもに捕まったりはしない!

ただ、荷袋を置いてきてしまったのは後悔している。バッカ石を失くしたと言ったら、ファミアはいつもの悲しい子犬みたいな目をするだろう。気が重い。幸いにも、ディニアは自分の荷袋をここに置いていったようだ。少なくとも、ないよりはマシだろう。

とにかく、今日は刺激的な出来事はもうたくさん。ここの小屋の中で一夜を過ごして、次の朝にはリルモスに戻ろう。時々、この場所がすごく嫌になる!

オリーンの最初の持参品のヒントOleen’s First Dowry Reminder

やあ、爪の曲がった愚か者よ。私はもうお前が好き勝手に物を盗み出して、目録の計算を台無しにするのにいい加減我慢がならない。それほど私の時間を無駄にしたいのなら、私もお前に時間の無駄遣いをさせてやろう!戦うチャンスをくれてやってもいい。まずは品物の倉庫から始めよう。以下のことを覚えておけ。

ルートハウスが盗むかもしれないものはどこに隠す?
見ることのない目の中だ!

オリーン

オリーンの2番目の持参品のヒントOleen’s Second Dowry Reminder

おやおや。正解を当てたらしいな。まぐれ当たりではなかったかな?そろそろ諦めないと、ひらめきを得るために目の前で火打石を叩いて一日を過ごすことになる。頑固にも続けるなら囲いへ向かい、以下の言葉を覚えておけ。

この刃は戦場で役に立つ。
もう身に帯びられぬ者にとってのみ。

オリーン

オリーンの3番目の持参品のヒントOleen’s Third Dowry Reminder

今回の旅で気分が落ち込んだ時、私はいつもお前がグアルの肥やしに肘をついて持参品を探そうとしているさまを思い浮かべているよ。だが、どうやらついに手がかりを解いたようだな。欲しいものが見つかるまで、あらゆるものに手を突っ込んでいるのではあるまいな?次はサラマンダー取りの罠を使うべきかもしれないな。

目当ての物に近づいていると思うなら、監視塔に行って以下の言葉について考えろ。

私は自分のものでない皮膚をまとっている。
他の者たちの手で、私は時間の計測を助ける。

オリーン

それから、絆の儀式の前には風呂に入れ。無礼な蛮族め。

オリーンの最後の持参品のヒントOleen’s Final Dowry Reminder

チーシュ・ナッサへ

私が隠したあの持参品は、お前のお気に入りの箱の二重底の中に見つかるだろう。私が知っているはずはないとお前は考えているだろう。隙間を作るため、お前のコレクションを動かさねばならなかったよ。これからは部屋の中に置くんだな。倉庫はあんなもののためにあるんじゃないぞ。

オリーン

カスタブ皇帝の墓碑銘Emperor Kastav’s Epitaph

2812年に死去した、退位したが極めて神聖な故人、カスタブ皇帝の定命の遺体がここに眠る。埋葬は完了し、私は部屋に戻って自ら命を絶つ。

——儀仗兵隊長サディネラス・コー

キーマ・ルーの墓標Keema-Ru’s Grave-Stake

キーマ・ルー

簡素に生き
真面目に働き
苦難に耐えた

ク・ヴァステイ:必要な変化Ku-Vastei: The Needed Change

魔術師ギルドの秘術師、道を照らす者 著

私の民の文化を記述するのは困難である。説明しようとすると舌が動かなくなることも多いが、インクと筆が私に考えをまとめる時間を与えてくれることを願う。こうした執筆により、私の故郷マークマイアと、魔術師ギルドにおける私の新しい生活が繋がるかもしれない。

この日誌は私のク・ヴァステイとなるべきものだ。これを書くにあたって、これ以上の主題は思い浮かばない。

ク・ヴァステイは大まかに「必要な変化の触媒」と翻訳できる。しかしこのように直訳しても、本来の意味は正しく表現できない。他の訳としては「変化が起きるための必要な道を生み出すところのもの」、あるいは「存在へと来たるべき炎を点火する火花」も可能だろう。

おそらく、より直接的な分析を最初に提示しておくべきだろう。ク・ヴァステイは名詞であり、物か人を指す。ヴァステイを直訳すれば変化であり、それは私の文化の重要な部分である。クのほうは説明が難しい。それは変化を導くものであるが、変化を生み出すものではない。重要な役割でだ。停滞は死よりも悪い運命だからだ。

崖の頂上でぐらつく大岩を例としよう。岩はいつか落ちねばならない。ク・ヴァステイは岩を押して崖から落とさない。むしろ、岩をその場に留めている小石を取り除く。すると岩は落ちるが、押されたからではなく、道が開かれたからだ。

ク・ヴァステイは崇拝される。変化自体が崇拝されるように。過去を振り返ることは、未来へ進む道を躓かせることだからだ。正しい方向へ少し押されるだけで、こうした叡智を思い起こさせることもある。そうでない場合は、強く押されなければならない。

クスル・ツクシスXul-Thuxis

俺たちはここから脱出しないといけない。この場所に留まるくらいなら、密航してリルモスから出たほうがマシだ。

ウィップテイルは先日、俺たちに壁を壊させた。壁の向こうはアルゴニアンの死体で一杯だった。奴は俺たちに中へ入って死体を探り、死体と共に埋められた物がないか確かめさせたんだ。沼で墓を漁ったことは前にもあるが、今回は違っていた。あそこには何か感じるものがある。死体を一つ動かした時にすぐ、脱出しなきゃここで死ぬことになると分かったよ。

今はお前を信じてる。妙なものが見えると言っていたな。何かが聞こえると。俺もそうなり始めてる。

アルゴニアンたちが広間を歩いているのが見えた。自分たちの仲間を生贄に捧げていた。生贄たちは恐怖せず、自分の意思で従っているように見えた。ものすごく静かだった。怖かったよ。だって、本当にそこにいるわけじゃないって分かってたんだから。あれは、別の世界の木霊のようだった。

しかも、ウィップテイルはやめようとしない。奴はもっとやれと言う。シシスの祝福を受けた古代の武器かなんかが、ここに隠されていると確信してるんだ。奴はそう言ってた。あの場所は全部呪われてると思う。

俺は逃げ出そうと思っている。お前も逃げたいだろう。一緒に来るなら今日の真夜中、俺たちがカサンドラのために用意した部屋で会おう。読んだらこの巻物は燃やせ。ウィップテイルに見つかる危険は冒せない。俺たち二人とも殺されてしまう。

M

ケシュ:黒きヒレの戦争、パート1Keshu: The Black Fin Goes to War, Part 1

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

黒きヒレのケシュが古き者(彼女は遥か昔に生きていた、進歩していたサクスリールをこう呼んだ)たちの遺跡から帰還した次の季節。私たちはケシュの望みを実現するため、とてつもなく忙しく働いた。古き者たちの生活について多少のことを知ったのに加えて、ケシュが遺跡で考察に費やした時間は、私たちのリーダーにして生涯の友人の心に新しい考え方を生み出した。彼女は、夢を携えて戻ってきたのだ。

遺跡から戻ってきた瞬間から、ケシュはサクスリールの進歩した社会を復活させようと思っていたのだと言う者もいるだろう。ただし、彼女が古き時代についてさらなる知識を得ることに関心を抱いていたのは確実だが、最初の夢は遥かに単純なものだった。ケシュはサクスリールをよそ者の脅威から守りたかったのだ。ゾシンがダークエルフの奴隷商人たちに捕まったことは、ケシュに深い影響を及ぼしたのではないかと思う。私が思うに、ゾシンや他のサクスリールの捕虜たちを解放した時、ケシュの運命は決まったのだ。

ケシュは軍隊を創設することを決断した。彼女が大マーシュ中から志願者を募ると、驚くべき数がその呼びかけに応えた。村の長老や木の番人、樹液と話す者たちは彼女の行動に複雑な思いを抱いていたが、結局は傍観し、ヒストの解決を待つことにした。サクスリールでの生活は全てそうなのだが、ケシュが成功したなら、それは彼女の計画が実現する定めにあったということだ。もし失敗したら、ケシュは沼に姿を消し、二度とその名を聞くこともなくなる。ブラック・マーシュの物事はそういう風に進むのだ。だがケシュにどんな運命が待っているにせよ、当初の彼女は誰にも止められない勢いを持っていた。

非公式に黒きヒレ軍団と呼ばれる当初の部隊は、活気に溢れていた。最初はケシュとヴォス・フルクが教官、指導者として集まったわずかな戦士を教える任務についていたが、すぐに他の有名な戦士たちが彼女の下に駆け付けた。その中には「虚空の炎」と呼ばれる魔闘士や、「エルフ殺し」と呼ばれるサクスリールの自由戦士もいた。彼らが専門知識を提供し、訓練を手伝うことで、我らの愛するリーダーの負担は減った。ケシュは軍団に試練を受ける準備が整ったと判断すると、標的を決め、新たに研いだ武器で指し示した。私たちはドーレス家の奴隷隊商を襲い、捕虜を解放することになった。

私たちは何週間も計画を練り、訓練し、ケシュと彼女が最も信頼する助言者たちは、考えつく限りのあらゆる偶発事項に備えた。私たちはドーレス家の居留地を偵察した。ストームホールドからモロウウィンドへ向かう道として、最も使われる可能性が高い道を調査した。私たちは監視し、待った。そして行動を開始した。

ドーレス家の奴隷隊商はある雨の朝、ひっそりとストームホールドから出発した。50人以上の卵の同族から成るサクスリールの奴隷が鎖でつながれ、2つの巨大な荷車の間を行進させられていた。それぞれの荷車はグアルの群れによって引かれていた。ドーレス家の衛兵たちは荷車の上に乗り、あるいは奴隷たちの列の両端を行進し、あるいは馬やその他の騎乗動物に乗って隊商の周囲を回っていた。全体として、約30人のダークエルフ戦士が隊商を護衛していた。この襲撃のために、ケシュは黒きヒレ軍団26人を奴隷解放のために従えていた。

戦士たちは緊張していた。彼らの大部分にとって、これが初めての本物の戦闘だったからだ。彼らはよく訓練され、ケシュの大義に賛同していたが、それでも生死を分ける状況に入っていく際によくある恐怖に襲われていた。ケシュと士官たちは見える位置に留まって自信と決意を見せ、これが兵士たちを落ち着かせる大きな効果を示した。私たちは隊商がモロウウィンドの国境から数百歩のところにある狭い道を通るところで奇襲を準備した。ケシュは号令を出しながら敵に向かって突進した。私たちは従い、腐った丸太から出てくるウッドアントのように隠れ場所から飛び出した。私たちがまだ緊張していたとしても、ダークエルフたちに飛び掛かっている最中に緊張は見えなかった。

ケシュの戦略は完璧に機能した。戦いが終わった時、ダークエルフの衛兵たちは死ぬか降伏しており、軽傷者はいたものの、黒きヒレ軍団に死者は1人も出なかった。任務はこれ以上ない成功を収め、ケシュの評判は解放したサクスリール1人ごとに高まっていった。

ケシュ:黒きヒレの戦争、パート2Keshu: The Black Fin Goes to War, Part 2

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

ドーレス家の奴隷商人たちに対するケシュの戦争は幾つかの季節の間継続し、黒きヒレ軍団が勝利を刻むたび、彼女の忠実なサクスリール軍は拡張していった。彼らは遠くから、また様々な地域からやって来てケシュに忠誠を誓った。ダークエルフの支配地から解放された奴隷や、遠くの村から来た危険を好むサクスリールなどが参じた。ストームホールドやヒストの影響外にある地出身の、都会化したアルゴニアンさえ何人か来たほどだ。

私もようやく成人の儀式を完了し、部族にとって一人前の大人と見なされるようになった。私は残りの人生で何をしたいかを決断しようとしていた。私はケシュが好きだったし、その大義を信じてもいたが、兵士や自由戦士になりたくはなかった。私はもっと単純な生活を求めていた。ヒストや、ザル・ウクシスに仕えるような生活が。私は樹液を話す者や卵の番人になる定めだった。少なくとも、当時の私はそう信じていた。だから私はケシュに自分の望みを告げ、黒きヒレ軍団から脱退しようと決めた。

ケシュは私の事情を理解し、私を義務から解放することに同意してくれた。しかしティー・ワンが野営地に戻ってきた時、私はまだ軍団と共にいた。彼は今ケシュの密偵部隊長であり、ドーレス家の勢力との戦いに黒きヒレ軍団が利用できる情報を集めるため、何日も、何週間も戦場を駆けまわっていた。だがこの時彼が持ち帰った知らせは、より大きく、より危険な敵に関するものだった。「遠い海から来たよそ者が、スカイリムの地を侵略している」とティー・ワンは説明した。「ストームホールドで私たちを助けたノルドからの伝言を持ってきた。吟遊詩人のジョルンからだ」

ジョルンの伝言は、アカヴィリと呼ばれる敵がウィンドヘルムの街を襲い、今はモーンホールドに向かって進軍していると説明した。ジョルンの姉は命を落とし、今は彼が一時的にノルド勢力の指揮を執っていた。「俺はこの邪悪な侵略を止めるため、ダークエルフに加勢する」とジョルンは書いていた。「もしお前が借りを返すつもりなら、モロウウィンドで合流してくれてもいいぞ。お前たちアルゴニアンのシェルバックなら間違いなく、この紛争の戦況を変える力になるはずだ」

ケシュの目を見れば、もうジョルンを助けに行くと決めているのは分かった。「ヴォス・フルク、虚空の炎」とケシュは副官たちを呼んだ。「兵を集めてほしい。今日、黒きヒレ軍団は戦争へと向かう」

私はケシュと他の者たちに涼やかな風と澄んだ水を祈ったが、この冒険に加わるつもりはなかった。私は故郷、シークハット・ゾルへ帰るのだ。私は月が幾度か循環する頃には、彼らも帰ってくるだろうと思っていたが、それは間違っていた。私は暦が10周以上するまで、再びケシュに会うことはなかった。そしてその頃、彼女は大きく変わっていた。

だが噂は孤絶したシークハット・ゾルにさえも届いた。私たちはノルドとダークエルフの共闘によって、そしてアルゴニアン戦士の思わぬ介入によって、アカヴィリは打ち破られたと聞いた。その日、エボンハート・パクトが生まれた。ケシュとその軍団はアカヴィリの脅威が片付いた後も同盟の地に留まり、新たに結成された同盟の境界を確立し、パクトが続く限りサクスリールの自由を守るため力を尽くした。ケシュはスカイリムとモロウウィンドを巡回して時を過ごし、反逆者を潰すのに力を貸し、敵対する連合軍から境界を守り、最終的には三旗戦役で武器を取るに至った。

ケシュのこうした冒険に加わらなかったことを後悔しているか?時々はする。だが、卵の番人としてシークハット・ゾルで過ごす時間は、どんなものとも交換したくない。たとえ再びケシュのそばで戦えるとしても。

ケシュ:成人の儀式、パート1The Rites of Maturity, Part 1

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

私たちの成人の儀式は、まるで昨日のことのように覚えている。戦争の英雄にしてサクスリール進歩社会運動の創設者、黒きヒレのケシュは、この試練を完了することでその異名を得た。そして彼女は徐々に名声を築き上げ、当時の仲間との絆を固めていった。仲間たちは全員、試練で優れた成績を残した。ケシュ、ヴォス・フルク、ティー・ワン、ゾシン、私でさえもだ(少なくとも、最後の試練までは)。確かに私たちは偉業を成し遂げたが、功績の多くは私たちの教官にして師であるラジ・デーリス、ドラミーンシンに帰されるべきだろう。

この長老の教師は大変な歳だった。一説によると、彼は私たちの卵の両親が巣から孵った時、すでに年老いていたらしい。だが年齢のせいでドラミーンシンの動きが鈍っているようには見えなかった。それどころか上質の苔や発酵した泥のように、彼は季節が過ぎるごとに活気付いた。私たちが彼の生徒になる頃、ドラミーンシンの技術は最高潮に達していて、私たちは彼の傑作になる予定だった。彼は若いサクスリールを教える通常の方法に従って、私たちを共同体の必要と要求事項に合わせつつ、狩り、追跡、クラフトの上級技術を教えてくれた。しかし彼は水源をさらに遡り、固有の才能を伸ばすこともしてくれた。ドラミーンシンにとって、私たちは籠に入った替えの利く卵ではなかった。私たちは個人だった。とりわけケシュは、彼の指導の下でみるみる成長していった。

サクスリールの成人の儀式は、数日間にわたって行われる技と勇気の試練から成っている。一部の試練は大マーシュ全土のサクスリール共同体で実施される。他の試練は場所や時代、季節によって、あるいは共同体のラジ・ナッサ(長老の指導者)の意向によって変わる。私たちの儀式には3つの異なる試練があった。ケシュが3つの試練を攻略した方法は、彼女がどういう人物に成長しつつあったかを示していた。

3つの試練の第一は「迷子ムカデの試練」だ。私たちは一人ずつ樽の中に手を入れ、マーシュムカデを1匹引っ張り出すよう指示された。見たことのない人のために言っておくと、マーシュムカデは巨大で凶暴な性質を持った素晴らしい生き物だ。平均的なマーシュムカデは指を思いきり広げたぐらいの長さで、太さは手首ほどもある。選ばれたムカデは目立つ印で彩られていた。そしてムカデを与えられた競争者たちは、自然の中に駆けて行ってムカデを放す。試練は私たちの特別なムカデを追跡し、捕まえ、生きたままラジ・ナッサの下へ連れ帰ることだった。さて、植物の生い茂るマーシュで特定のムカデを追跡するのは簡単なことじゃない。技術と忍耐、それに少々の運が必要だ。

ゾシンが最初に自分のムカデを捕まえたが、彼はその際ハジ・モタを刺激した。この獣を避けるため、ゾシンは危険な流砂に入り込んでしまった。その時偶然通りがかったケシュは、ハジ・モタの気を逸らせて反対方向に突進させた。そして戻ってきて、泥と砂の渦に吸いこまれているゾシンを助け出した。

ケシュが自分のムカデの居場所を突き止めた時には、ムカデが恐るべき状況に置かれていた。敵対的なナガの3人組が食事にするため、この丸々としたムカデを追いかけていたのだ。成人の儀式のこの部を完了するため、ケシュはそれを許すわけにはいかなかった。彼女はためらうことなく暗い水の中に体を滑りこませ、3人組に向かって泳いでいった。水面下に隠れて見られないようにしつつ、接近したのだ。ヴォス・フルクは自分のムカデを捕まえて村に帰るところだったが、この場面に出くわして、成り行きを見ていた。彼女が起きたことを報告し、私がそれを今、記録のために書き記しているわけだ。

ナガの狩人たちがムカデを囲み、距離を詰めたその時、ケシュは無言のまま、獲物を探す黒いヒレのように暗い水の中から立ち上がった。片方の手に1本ずつ危険な短剣を握り、両目には決意が宿っていた。彼女は最初の2人を素早い斬撃で仕留め、死体が沼地に沈むよりも早く3人目に接近した。死がすぐそばまで近づいていると最後のナガが気づいた時には、もう身を守るには遅すぎた。迷いなきケシュに対して、ナガは形ばかりの抵抗すら示せずに倒れた。ケシュは自分のムカデを拾い上げ、ヴォス・フルクを追ってラジ・ナッサの下へ戻った。

ケシュ:成人の儀式、パート2The Rites of Maturity, Part 2

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

3つの困難な試練のうちの1つ目が完了し、2つ目の成人の儀式が始まろうとしていた。「完璧な器の試練」だ。これは私たちの製作技術の試練であると同時に、謙遜と自信の試練でもあった。後になってから分かったのだが、目標は工夫の限りを尽くして最も華麗で複雑な器を作ることではなく、簡素で実用的なものも完璧でありうると証明することだったのだ。

この試練は3つの部分から成っていた。まず、器を作るために必要な材料を手に入れる。さらに、今回のため特別にマーシュの危険な地帯に設置された、隠された作業台を見つけ出す。最後に、器を作ってラジ・ナッサに見せ、審査を受ける。危険な場所に置かれた作業台が破壊される前に。

私たちはそれぞれ、器を作るのに使わねばならない特別な素材を課された。例えばティー・ワンは希少な三本爪のマッドクラブの殻を手に入れる必要があり、私はクロナの木の実の殻を手に入れなければならなかった。そしてゾシンは竜の舌の木から完璧な枝を見つける必要があった。これらはそれぞれ難しい題だったが、ケシュが主要な素材にしなければならないものを知った時、私たちは彼女のことが心配になった。ケシュはハジ・モタの巣から卵を盗まなければならなかったのだ!ハジ・モタは巣を守るために細心の注意を払う上、ハジ・モタの卵の脆い殻は、加工が難しいことで悪名高いのだ。細心の注意と技巧を尽くさない限り、殻は割れてしまうのが普通だ。

最初の儀式の成功譚が村中に広まって、今や「黒きヒレ」と呼ばれるようになったケシュは、ハジ・モタの巣を探しに出発した。彼女は前回の試練の間にこの巨大生物に出会っていたので、その一帯に戻って探索を始めた。彼女は沼地を見ながら丸一日過ごし、ハジ・モタの行動を観察した。ハジ・モタは雌で、近くに巣があることがすぐに明らかになった。言うまでもなく、卵を守るハジ・モタの母ほど危険な生物はほとんどいない。ケシュは慎重に進まなければならなかった。試練のこの部を成功させ、生き残って儀式全体を終わらせるために。

さて、ケシュは巣から卵を盗みたかったが、その過程で残りの卵やハジ・モタを傷つけることは望まなかった。彼女は、世界を通り過ぎる際に及ぼす影響が少なければ少ないほどいいと信じていた。だから彼女は再びハジ・モタの気を逸らし、巣から離れさせた。こうすることで、怪物の怒りに立ち向かうことなく卵を手に入れられると期待したのだ。ケシュは今回、オレンジグラスとマーシュルートの束を集めた。これに逆らえるハジ・モタは滅多にいない。その(少なくともハジ・モタにとっては)魅惑的な香りを利用して巣から引き離した。その上でケシュは束を水トカゲに括り付け、沼地のさらに奥へと走って行かせた。ハジ・モタはその後を追っていったので、ケシュは巣へ進むことができた。

巣の中には3つの卵があった。ケシュが選んだのは一番大きな卵でも、一番殻の厚い卵でもなく、一番小さな卵だった。斑点模様が付いたその卵の殻はすべすべしており、彼女の職人としての目からすると完璧だった。ケシュは生まれつつある器を、その卵の中に見ていた。彼女がギリギリまで見なかったのは、雄のハジ・モタが沼地を歩き回り、巣へ向かっていることだった。雄が巣に辿りつき、卵が1つなくなっていることに気づく前に、ケシュはすんでのところで逃げ出した。ケシュは雄が怒りと喪失感の入り混じった咆哮を上げるのを耳にしつつ、作業台へと向かった。

ケシュの作業台は巨大な死の流砂の上に置かれた、1本の丸太で出来た足場の上に設置されていた。彼女は作業台が丸ごと沼の下に沈む前に、器を作らなければならなかった。ケシュは素早くしかし注意深く作業し、卵の先端部分を使って器の基礎とした。ケシュはその部分を洗い、磨き、試薬を加えて殻を補強し、容器として使えるようにした。作品を仕上げて足場から外すと、泥が足場の上に跳ねかかり、丸ごと沼の中に引きずり込み始めた。

ラジ・ナッサが提出品を順番に検討している間、私たちは実に見事なクラフト作品を眺められた。だがこの季節は、ケシュがこの領域で抜きんでていたのは明白だった。彼女の器は最も簡素なハジ・モタの殻で作られていたが、その質素さには気品があり、その純粋さには美があった。殻に必要なのは、その自然な形に忠実であることだけだった。ケシュは脆い殻を強靭で壊れることのない器に変えながらも、その自然な形を見事に輝かせたのだった。

ケシュ:成人の儀式、パート3The Rites of Maturity, Part 3

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

成人の儀式を完了させるための3つ目にして最後の試練は「忍び寄るハックウィングの試練」だ。これは私たちが大人の社会に席を得るために参加しなければならない儀式の中で、最も危険なものだった。私たちはそれぞれ、1羽の巨大なハックウィングと共に牢の中に入れられる。この猛禽は凶暴な生き物で、力強く自信に満ちており、私たちの誰にも劣らない有能な狩人である上に、空を飛ぶことができた。私たちはこいつに攻撃させて血を流さなければならない。ヘマをしなければ、血を流させるだけで重傷を負わずに済む。その後ハックウィングは解き放たれる。目標は、私たちを狙ったハックウィングを捕えて殺すことだ。相手が私たちを殺す前に。

ヴォス・フルクとゾシンはくちばしの一撃を足に受けた。どちらの傷も軽く、血は流れたが筋が裂けることも、骨が折れることもなかった。ティー・ワンは左手を切らせ、肘から肩までの長く浅い切り傷を受けた。ケシュは飛び退くタイミングを誤り、鳥に右目のすぐ上のこめかみを切り裂かせてしまった。しかし私は、試練のこの部分を完全に失敗してしまった。ハックウィングの鋭いくちばしに胸を直撃されてしまったのだ。治癒師が言うには、ギリギリのところで心臓を外したらしい。それでも私は深手を負ってしまい、続けられなくなった。私は成人の儀式を完了するため、次の季節を待つことになる。

ケシュは私の無事を確かめることを望んだが、ラジ・ナッサは耳を貸さず、試練を続けるよう命じた。黒きヒレかハックウィングか、どちらかが死ぬまで。そのため、治癒師が私を助けているのを確かめるために最後の一瞥を送ってから、ケシュは目から血を拭って自然の中に駆けて行った。伝統に則り、彼女は武器も鎧も身につけなかった。自分の体と知恵だけを使うのだ。狩人が、狩りを生き延びるべき時が来たのだった。

あなたは飢えたハックウィングに追われたことがあるだろうか?当惑する経験であり、少々どころではなく恐ろしい。大抵の場合は翼がはためく音と、空気のざわめきが聞こえてくるだけだ。通り過ぎていく影に気づくこともある。翼や爪が一瞬でも目に入ることは珍しい。そして少しでも弱みを見せれば、ハックウィングは降下して傷を負わせようとしてくる。その後は、ただ出血多量で倒れるのを待ちながら追ってくるのである。儀式の場合、私たちはすでにこの鳥に血を流されている。手段はどうあれ、追ってくることは間違いないのだ。攻撃を予期しつつ、攻撃して迎え撃つのがコツだ。

(「私たち」と言っているが、私は実質的に試練から脱落していたことを理解してほしい。私は負傷して弱っており、試練の残った部分の大半はほとんど意識もなかった。何が起きたのかを知ったのは治療を受けて回復し、この季節の試練が終了した後になってからだ。)

ケシュは空の見える場所がほとんどないマーシュの一帯にハックウィングを誘い出した。彼女は木の幹や葉の屋根を利用し、ハックウィングと現在位置との間に直線の道しか残さないようにした。ケシュは木々のさらに奥深くまで進んで道を低くし、ハックウィングがついに攻撃してくる時には、上空からではなく水平方向から、それもほぼ地面すれすれの位置から攻めざるを得ないようにしたのだった。

ケシュは捕食者であり獲物である相手を待ちながら、傾いた角度に生えていた木から丈夫な枝を折って取り、粗雑ながらも先の尖った即席の槍を作った。彼女は槍を構え、背中を木の幹に押し付けて、ハックウィングが姿を現した時に素早く槍を持ちあげられる位置に着いた。長く待つ必要はなかった。獲物が出血に倒れ、木の群れの中で動きを止めて力尽きたと思ったハックウィングは、急降下してケシュが用意した道にぴったりと沿って飛んできた。ケシュは限界まで待ってから槍を上に向けて持ち上げ、後はハックウィング自身の速度と軌道がとどめを刺した。

狩りは終わった。ケシュは勝利した。彼女は成人の儀式を完了し、共同体の成人メンバーとしての席を得る準備を整えた。そして彼女が最初にしたことは、駆け戻って私がまだ生きているかどうかを確かめることだった。

ケシュ:村の外への旅、パート1Travels Beyond the Village, Part 1

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

戦争の英雄にしてサクスリール進歩社会運動の創設者である黒きヒレのケシュが、成人の儀式を完了してサクスリールの成人としての地位を獲得した後、最初に行った決断の一つは、私たちの小さな村の外の世界についてより多くのことを知るため、旅に出ることだった。抜け目のないティー・ワンと力持ちのヴォス・フルク、手先の器用なゾシン、そして私を脇に従え、ケシュは村と私たちの教師、ラジ・デーリスのドラミーンシンに別れを告げ、シークハット・ゾルの見慣れた境界の外に待ち受ける驚異を見るために出発したのだった。

私たちは北に進んだ。道の途上にあった村全てに立ち寄って友人や家族を訪ねながら、伝説の都市ストームホールドへと向かった。ズルークの村で、私たちはストームホールドにあるダークエルフの居留地を避けるようにと警告を受けた。彼らは迷い込んだサクスリールを捕え、奴隷にするためモロウウィンドに送ってしまうことで悪名高かったからだ。私たちは子供の頃にダークエルフの奴隷商人の噂を耳にしていたが、大マーシュの孤絶した地域にいた私たちは、そのような物語を本気で信じたことはなかった。

私たちは他の訪問者たちの群れに混じってストームホールドに到着した。訪問者の中には交易商、傭兵、職人、他にも私たちがこれまで見た中で、最も多様な種類の人々がいた。明らかに都市生活に慣れたサクスリール(他の種族にはアルゴニアンと呼ばれていることをその時知った)に加え、大柄なノルド、肌のきれいなハイエルフ、派手なブレトン、陰鬱なダークエルフ、わずかだがカジートやウッドエルフまでもが街角をうろついている姿を、驚きでぽかんと口を開けて見ていた。

彼らは全員、私たちにとっては奇妙で異国情緒に溢れていた。それに私たちの卵の兄弟や卵の姉妹が、よそ者にどんな風に扱われているのか、直接見たのだ。例えば力も尊厳もある街の居住者の一部は、頭を下げて敬われていた。弱く貧しい他の者たちは、命令され、蔑まれ、主人たちの気分によっては殴られていた。私たちは衝撃を受け、嫌悪感を覚えたが、ケシュは私たちに平静でいるように命じた。「この川の流れを私たちに変えることはできない」と彼女は言った。「少なくとも、今は」

街を探索している間、私たちは若いノルドの集団を見つけ、その人望篤きリーダーであるジョルンという吟遊詩人に出会った。私たちはジョルンの演奏を聞き、彼が語る物語に魅了され、その明瞭で表現豊かな声に聞きほれた。彼は私たちの、特にケシュの強い関心に気づき、自分と仲間たちに混じって夕食をとらないかと誘ってくれた。ケシュとジョルンはすぐに友達になり、夜遅くまで色々なことについて語り合った。実はジョルンと仲間たちは私たちとそれほど変わらない年頃で、彼らもやはり、成人の責任を担わされる前に世界を見ておこうと旅をしているのだった。私たちはジョルンとその友人たちに伝統的なサクスリールの食事の食べ方や飲み方を教え、彼らは宿に用意されていたノルドの珍味を紹介してくれた。

私はジョルンとケシュがその夜に話し合ったこと全てを聞いていたわけではないが、いくつかの内容は耳にした。ジョルンは自分の家族やスカイリムの素晴らしさ、そしていつかは有名な吟遊詩人になりたいという望みを語った。姉がノルドの女王になると彼は説明していたが、どうせ彼の空想的な物語の一つだろうと思った。ケシュが信じたのかどうかはよく分からない。ケシュのほうはジョルンにマーシュでの生活や、サクスリールであることの意味、そして私たちの民が昔、ずっと進歩した文明を持っていたことなどを話した。ジョルンは彼女の言うこと全てに心から関心を抱いているようだった。暖炉の炎が煤となり、ノルドのハチミツ酒とサクスリールの胆ビールのジョッキがついに空になった時、ティー・ワンが駆け込んできた。「ゾシンが」と彼は言った。声が恐怖と悲しみにかすれていた。「奴隷商人に連れ去られた」

ケシュは迷わなかった。彼女は立ち上がり、行動を命じた。ケシュには私たちの卵の兄弟がダークエルフにさらわれ、鎖で縛られるのを黙って見過ごすつもりはなかった。武器を集めて出発する前に、ジョルンが立ち上がった。「友達ってものは、戦いに行く友達を放置しないものだ」と大柄なノルドは宣言した。「それに、俺たちは木耀からまともな殴り合いをしてない。俺の仲間たちは長いこと殴り合いをしてないと、機嫌が悪くなるんだ」

ケシュ:村の外への旅、パート2Travels Beyond the Village, Part 2

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

ストームホールドを訪ねた旅は、陽気な一日に突然襲いかかる嵐のように不運な展開を迎えた。ゾシンとティー・ワンは、ケシュとヴォス・フルクと私がノルドの新しい友人たちと夜を過ごしている間に、自分たちで街を探索することに決めたのだ。ティー・ワンが戻ってきた時、彼は一人だった。彼はダークエルフの奴隷商人たちがゾシンを捕らえたと説明した。ケシュは当然、彼を救出する計画を立てた。そして驚いたことに、新しいノルドの友人たちのリーダーである吟遊詩人のジョルンが、私たちを手伝いたいと言ってきた。「正しい目的のためにダークエルフの頭をぶん殴るなんて、これほど血が沸き立つことはないぞ」と、彼は深く、よく通る声で宣言した。

ケシュとジョルンは街の外れにあるダークエルフの居留地へと進んだ。「ドーレス家か」とジョルンは言ったが、名前というより呪いの言葉のような言い方だった。「わかっていたさ」。私たちは居留地を偵察し、衛兵の位置や巡回経路を記録した。新しく手に入れた奴隷たちが収容されている場所を判断し、解放するための計画を立て始めた。ケシュが戦略についての議論を主導した。ジョルンはそれを注意深く聞き、時々提案を挟んだが、それ以外では彼女の計画に賛成した。太陽が空に昇り始めると同時に、4人のサクスリールと5人のノルドはドーレス家の奴隷商人の居留地に戦争を仕掛けた。戦いは栄光に満ちたものだった!

自信過剰で備えていない敵に対して奇襲を仕掛けるのは、想像するよりも簡単なことだ。半分酔っぱらった、熱意に満ちたノルドが数人味方についていればなおさらだ。ケシュとジョルンはつむじ風のように戦って奴隷の檻への道を開き、残った私たちは到着した援軍の相手をした。ダークエルフたちが防衛体制を整えるまで、私たちの予想よりも長くかかった。遅い時刻に予期しない襲撃を受けたことで、どうやら奴隷商人たちの活動は完全に混乱してしまったようだった。ジョルンの説明によると、彼らは荒野で隊商を防衛するのには慣れているが、ドーレスの居留地を直接襲撃するような大胆な者はこれまでにいなかったそうだ。「だからお前の計画は成功するよ」と彼はケシュに言った。

ケシュは苦もなく奴隷の檻の門を守っていた衛兵たちを片づけた。ジョルンは彼女が切り開いた道に踏み込み、巨大な戦斧を一振りして檻の錠を叩き壊した。ゾシンが檻から飛び出し、みすぼらしい身なりのサクスリールの一団を檻の外へ導いた。この時、ダークエルフたちは隊列を整えて私たちの位置へと進んできていた。「お客さんのお出ましだよ、黒きヒレ」とヴォス・フルクが警告した。「奴らは魔術師も連れている」と私は付け加えた。ケシュは必要なら全滅しても戦う覚悟をせよ、と命令を出しかけた。だがジョルンには別の考えがあった。

「死ぬまで戦わなくたっていいこともあるぞ、アルゴニアンの友よ」と大柄なノルドは目をきらめかせて言った。「お前の民を連れて逃げるんだ。俺と仲間であの弱っちいエルフどもを抑えておくから、その間に抜け出せばいい」。ケシュは彼に感謝し、いつか借りを返すと約束した。「その約束は、本当に守ってもらうことになるかもしれないぞ」と言ってジョルンは笑い、迫りくる奴隷商人たちに向き直った。「そのうちにな」

ケシュは私たちと解放した奴隷をマーシュへ誘導し、ジョルンとその仲間たちが背後で守った。ノルドたちは喜び勇んで戦い、私たちは彼らの笑い声と戦いの歌を耳にしながら、沼地へ姿を消した。太陽が空の一番高い位置にまで昇るくらいまで走り続けた後、ケシュが私たちに止まるよう呼び掛けた。彼女は私に、街へ戻ってノルドたちが奴隷商人の領地での戦いに生き残ったかどうかを確かめてきてほしいと頼んだ。隠密とごまかしの技に優れるティー・ワンが私に同行すると申し出た。ケシュが解放された奴隷たちに話しかけている間、私たちはすぐに出発した。

私たちはできる限り静かに、人目につかないようにストームホールドへ戻った。居留地は厳重に封鎖されており、大規模な衛兵の派遣部隊が到着して守りを固めていた。ティー・ワンと私は宿屋へ戻った。私たちはジョルンとその仲間たちをそこに発見した。朝の戦いの時よりも悪い状態には見えなかった。彼は心配して様子を見に来てくれたことに感謝したが、長居をしないように言った。「ドーレス家のリーダーは奴隷を失ったことに大層ご立腹だ」とジョルンは言った。「俺たちもここを離れるつもりなんだ。食事とハチミツ酒を片づけたらな。また会えるのを楽しみにしてる、とケシュに伝えてくれ」

こうして、ティー・ワンと私はストームホールドの街を去り、ケシュや皆の元へと帰った。

ケシュ:村の外への旅、パート3Travels Beyond the Village, Part 3

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

戦争の英雄にしてサクスリール進歩社会運動の創始者であるケシュの若き日々の物語はまだ続く。私たちが育ったシークハット・ゾルの村の外への旅は続き、大マーシュを通る私たちの道は全て、ケシュが決定した。私たちの仲間は5人から12人以上へ増えた。ストームホールドのドーレス家の領地から解放した奴隷たちの大半は、故郷と家族の元へ帰る道を探して去って行った。だが全員に帰る場所があるわけではなかった。それに、ケシュはどうやらストームホールドで会ったノルドのジョルンのように、カリスマ性を持ち、慕われるリーダーになりつつあった。

ケシュはいつも、遥か昔に栄えたとされる先進的なサクスリール社会の物語に魅了されてきた。旅のこの時期、彼女はそうした古代都市の跡地を訪ねる意思を固めていた。私たちはラジ・デーリスのドラミーンシン先生から借りた古い書の手がかりに従い、マーシュの奥深くへと進んだ。私たちが通った沼地は、鱗なきよそ者と同様、サクスリールにとっても危険な場所だった。奇妙な肉食獣や猛毒の雲が当たり前のように空気中を漂い、肉食の植物や肉を溶かす泥の動く塊、飢えた昆虫の大群まで相手にしなければならなかった。しかし、私たちは試練を受けて力を認められた成人のサクスリールであり(ただし、私はまだ成人の儀式を終えていなかったので除く)、しかも偉大にして強大な黒きヒレがリーダーなのだ。沼などものの数ではなかった。

私たちはしばらくうろつき回り、陰気なマーシュの奥地で、ある特定の目印を探そうとした。ケシュの書には2本の巨大なイトスギの木を探せと書いてあった。その幹は樹齢のためにねじ曲がり、互いに近くにあるため絡まり合い、結んだ分厚いロープのようになっているとのことだった。その絡まった木々をついに見つけたのはティー・ワンで、彼は興奮と恐怖の入り混じった叫び声で自分の発見を告げた。というのも木々の向こう、沼の不透明な水の先には、サクスリール先進文明の石の古代遺跡が山のようにそびえたっていたからだ。

遺跡は私たちを待ち構えていた。遺跡を構成する石と暗い影とには、どちらも同じような圧迫感があった。私たちの大半はこの場所へ近づくことに対して警戒心、というより全くの恐怖心を感じていた。真のサクスリールが、こんな建物の中に住むことをどうやって耐えていたのだろう?だがケシュは他の者たちが感じていた恐怖を一切示さなかった。彼女の顔は驚きと興奮で輝いていた。誰かが止める間もなく、ケシュはザンミーアの頂点へ向かう石の階段を駆け上がり、失われた文明の秘密を解き明かそうと急いだ。他の者たちがしり込みしているのを見て、彼女は戻ってきて皆に呼びかけた。

「ヴォス・フルク」ケシュは言った。「皆をシークハット・ゾルまで誘導して。私もすぐに後から行く」私たちはケシュが一人で遺跡に残ることを不安に思ったが、村に帰りたくもあった。「ここで何をするつもり?」と私は聞いた。ケシュは慈悲の背骨を立て、ただ「できる限りのことを学ぶわ」と答えた。

ケシュが沼地から出てシークハット・ゾルへ戻ってきた時には、私たちが村に帰ってからほぼ月が一巡するくらいの時間が経過していた。彼女は英雄として出迎えられた。私たちの冒険の物語は語り伝えるたびに大きくなり、ケシュは私たちの中でもっとも偉大な存在と考えられたからだ。彼女は決してお世辞を煽ることも、栄光を求めることもしなかった。彼女は私たち全員の様子を見に来て、同行した解放奴隷の状態を尋ね、それからドラミーンシン先生の助言を求めに行った。ケシュはかつての師が日光の熱を避け、泥の家にいる姿を発見した。「よくぞ帰った」と彼は言い、挨拶の背骨を立てた。

「ラジ・ディーリス」とケシュが口を切った。「古き者たちの地で見つけたものについて話させてください」

ケシュ:卵から青年期Keshu: From Egg to Adolescence

黒きヒレのケシュの友人にして相談相手、ピーク・エリール 著

戦争の英雄にしてサクスリール社会進歩運動の創設者である黒きヒレのケシュも、最初はどこにでもいる数多くの卵の同族の一人だった。私たちがシークハット・ゾルの村で育てられた間、彼女には特別なところが何もなかった。もっとも私に見分ける力があったわけではないが。彼女は伝統的な遊びをし、伝統的な食べ物を食べ、狩り、追跡、戦いのやり方を学んだ。ケシュが何かに秀でていたとすれば、それは追跡と戦闘だった。彼女は水を得たシャプのように追跡と戦闘を身につけた。他の者を圧倒する様は、ほとんど超自然的なくらいだった。

ケシュと私は、ほとんど卵から出てきた瞬間から友人になった。私たちを引き離すことはできなかった。一緒に遊び、雑用も勉強も一緒にやり、全てのサクスリールと同じように成長した。多分、私はこの時期にケシュが何か違うと気づき始めたと思う。彼女は歴史に関して、事実と数字を暗記する以上の情熱を持っていた。彼女はダスクフォール以前に存在していた、かつての偉大なるサクスリール文明についてできる限りのことを知りたがった。この点に関して、彼女は際立っていた。他の卵の家族よりもずっと自立して、自由な考えを持っていた。彼女の燃えるような個人主義はある意味で、私を怯えさせた。

多分、ヒストは私が気づいたのと同じものを見たのだろう。私たちの名付け日にヒストを舐めた時、彼女は「ケシュ」の名を授けられたのだから。これは文字どおり「離れて立つ」という意味だ。力強く、いい名前だった。シャプばかりの湖にいるワニだ。ケシュはこの名を尊厳と名誉をもって受け入れた。彼女にはぴったりだった。

ケシュが歴史と戦闘だけの退屈な人物でなかったことを示すために、私たちが小さな子供だった頃のある出来事を話しておこう。卵の番人ジュラン・ナーはいつも私たちを叱りつけ、ザル・ウクシス、すなわち聖なる巣から私たちを追い払っていた。ケシュは育ちつつある卵に混じって遊ぶのが大好きだったのに。ケシュは卵の番人を懲らしめるため、若いワマスを追って捕らえた。彼女は卵の番人を怖がらせて笑ってやろうと、ワマスを巣に向かって放した。確かにそれは成功したが、同時に罪のない無力な卵が3つ割れてしまった。ケシュは自分が引き起こした被害に深く恥じ入り、暦が完全に一巡するまでの間、番人を手伝うことを志願したのだ。

それで暦が一巡する頃、ラジ・ディーリス(文字どおり訳すと長老の教師)のドラミーンシンが、私たちの成人の儀式のための準備として、教えを与えるためにやって来た。ケシュの仲間たちが集まったのは、この集中講義と訓練の時期の最中だった。ケシュは私に加えて、力の強いヴォス・フルク、いたずら者のティー・ワン、そして機転の利くゾシンの注目を集めた。ヴォス・フルクは山のようにそびえたつ女性で、戦いではケシュに匹敵するほどだった。ティー・ワンは後に盗賊、そしてスパイとなった。それに対してゾシンは錬金術の溶剤を混ぜるのが好きで、後に強大な魔術師となった。全員がケシュについて戦争に行った。私を除いて。

その季節の間中、私たちの友情は深まり、ドラミーンシンは力の及ぶ限り私たちを成人の儀式に備えさせた。だが、それはまた別の機会に話そう。

ゴースト族についてOn the Ghost People

新しい案内人のオリク・ジャーは、前にこのじめじめした沼のあちこちを案内した者と同じくらい苛立たしい。目的地まで真っ直ぐ連れて行ってくれるように頼んでいるのだが、相変わらず聞き入れようとしない。どうやら、まっすぐ行くとヴィーシュクリールの土地の中心を通ることになるようだ。そして彼はそこを通りたくないらしい。毎日何か新しい呪われた洞窟、侵すべからざる干潟、あるいは聖なる木の森が出て来る。私たちがこの八大神が見捨てし場所のどこにでも行けるとは奇跡だ。

ヴィーシュクリールはゴースト族という変わった名で知られている。真っ白な幽霊のような存在で、汚水まみれのこの土地に捨てられた水死体を回収し、彼らの聖なる木の近くに埋める。一見すると、この魅力的な住民たちが片付けをしているだけのように思える、ただオリク・ジャーによると、彼らには「ヒストへの帰還」を阻止する力があるらしい。この木々に興味のない私にとってはどうでもいいことだ。それでも私は案内人について行くしかない。どうやら彼にとっては、数十キロ遠回りしてでも回避すべきことらしい。個人行動をするほど私は愚かじゃない。あんなことがあった後なら尚更だ。

シロディール・コレクションにご協力を!Cyrodilic Collections Needs You!

アルゴニアンの骨董品の回収、修復、保存、マークマイアの正当な所有者への返還を目的とする協会、シロディール・コレクションは、最高の仲間を探しています。シロディール・コレクションは歴史を重視し、過去の過ちを正そうとする者を求めます。

バルケルガード、ダボンズ・ウォッチ、ダガーフォールでコンコルディア・メルシウスを探してください。競争に勝ち、アルゴニアンの文化を守るための助力をお願いします。

セプティミウスへの手紙Letter to Septimius

セプティミウス修道士

私を弟子に取っていただいて以来、多くのことを学びました。私にとって最も重要なことは、無謀になれと誰かに言ってもらえたことでした。あなたのように、私も好奇心の強い者です。普通の生活は送れません。あなたは必要なら、好奇心のせいで殺されればいいと教えてくれました。そして解決すべき謎の一覧をくれ、ブラック・マーシュへ送り出しました。アルゴニアを恐れるなと教えてくれました。私が沈まないようにしてくれましたが、そのことにあなたの体調が優れないという知らせを聞くまで気づいていませんでした。

何年にもわたるやり取りを通じて、数多くの発見を共有しましたね。いつかあの一覧を完了できると私は本当に信じています。それはもちろん、私がブラック・マーシュに戻れた場合です。ええ、心配するなとは言われましたが、私はシロディールへ向けて出発しました。あなたが乗り越えるまで、私がそばにいます。その時まで私の個人的な問題は後回しにして、あなたが寝床で読めるものをお届けします。

私が怖がってやめることを願って、あなたは一覧の最初に最も難しい謎を挙げましたね。ヒストの本質とは何か?

答えは分かりません。それどころか、この事項について事実として述べられるようなことはあまりありません。それでも、私の推測を楽しんでもらえたらと思っています。

懐疑的な者たちは、あれがただの木にすぎないと言います。ブラック・マーシュのトカゲ族によって樹液を飲むために育てられた木。トパルが悪臭の漂う悪しき場所とした記述を誰もが覚えていて、皆が慎重な結論に達しています。戻ってきた帝国軍は、毒を持つ植物、有毒な沼地、ある時は怒りに満ちて襲ってくるのに、ある時には侵略者を無視するおかしな守り手の話をしました。そして、より「文明的な」トカゲ族でさえ恐怖を和らげられる答えを提供できないのですから、博学とされる学者たちがアルゴニアンとおかしな木を恐れるようになったのは当然のことでしょう。

私たちの周囲では、ヒストの木には知覚があり、トカゲ族を育てたのは木の方かもしれないと言い伝えがあります。この件については、サクスリールにおける生の連鎖を注意深く研究することで証明するか、反証を挙げたいと思っていました。残念ながらご存知の通り、全ての答えはまた別の疑問を生みました。はっきり言えるのは、この問題について話を聞くたび、あるものの前に別のものが存在したという考えが、サクスリールには理解できないという結論に達しました。この魅惑的な文化が線形の出来事をどう考えるかについて語って、これ以上話をそらすのはやめておきます。私が何か書くたびにそう言われましたから。

しかし、これは言えます。ヒストは感覚があろうとなかろうと、単なる木ではありません。あの木が堂々としていて、その下に立つとある種の敬意を払わずにはいられないのは事実ですが、私はいつもその根に最も興味を引かれてきました。セプティミウス修道士、私が目にしたことをうまく表現できたらいいのですが。根は沼の下に深く延び、それがどの木のものか分からないほど広く広がっています。私は、ある意味で根は沼そのものだと信じています。根が一つにまとめ、変化する時を決めているのです。

このことは以前にも話したのは分かっていますし、あなたは沼の無秩序な性質が、単にヴァレンウッドのエルフに似た一種の魔法によるものだと仮定していました。私にはその主張が誤りだと証明できず、論理は理解できますが、それが本当だとは信じていません。

私は腕の立つ追跡者がこの地の気まぐれに挫折させられる姿を見てきました。動きを見たとは言えませんが、経験を積む中で堂々巡りにされる方向感覚は十分に習得しました。もっと疑わしい相対空間の説については述べるまでもありません。私は、サクスリールが環境に応じて変化するように、根もブラック・マーシュをふさわしいと思われる形に変えているのだと考えます。

セプティミウス修道士、ブラック・マーシュはこれまで一度も征服されそうになったことがありません。アルゴニアの境界は考えられたことさえほとんどありません。地図が正しいはずもありません。根は深く広く延びすぎて、私たちが真のアルゴニアを知ることは無理なのです。

学会は樹液にばかり注意を注いできました。自らを樹液の民と呼んでいるのは、私が書いたばかりのウッドエルフではないのですか?

サクスリールは根の民であり、あなたの難しい謎に対する答えはそこで見つかることになるでしょう。

それは私が戻る時まで待たなければいけません。じきにお会いして、あなたが回復への道へ向かえるようにしましょう。

愛を込めて、
ジュニア・セヴェラ

そこにある虚無That of Void

ニッソ・ゼーウルム 著

永遠なる虚無であるもの
第一の創造者、第一の破壊者
全て無から生まれたものは
再び無へと帰った

黄昏へと溶けゆく日
鋭い一突きにより奪われる命
崩れて塵と化す石
咲いて命になる死

望まれぬ変化、必要な変化
成長し、腐敗し、再び生まれる
闇のように、汝の死のように
瀕死の者にかける無の言葉

季節は変わる、我々の意志を越えて
全てのものは変わる、我々の恐怖を越えて
虚無であるものを見よ
目を開いて見よ

テーバ・ハツェイTeeba-Hatsei

肌の乾いた者はよくテーバ・ハツェイについて尋ねる。彼らはボールとコートを見て、ありとあらゆるおかしなことを言う。今日は旅を共にする長身のエルフがコートを指さして「これは菜園だな?」と聞いてきた。どう答えたものやら分からず、ただ目をしばたたかせることしかできなかった。食物を育てない菜園?長身のエルフは馬鹿なのかもしれない。それでも人々からの質問が減るように、ルールを書き留めておくべきだと私は考える。

テーバ・ハツェイとは肌の乾いた者の言葉に直すと、「ヒップ・アンド・テイル」となる。我々は皆この競技を行い、中には他の者より秀でた者もいる。私はあまり上手ではなかった。腕が長すぎるし、尾が細すぎるからだ。最もティーバの選手に適しているのは、ずんぐりした体型で、ワニのような幅広い尾と、シナモン草の袋のように左右に揺れる尻を持つ者だ。

試合は乾いた泥と塩牧草の干し草の広い競技場で行われる。競技場の両端には泥とイートの茎の壁がある。競技場の大きさと壁の高さは村によって異なる。例えばシニスでは、壁の高さが20の手の高さだ。競技場の上には葦の輪が二つ吊るされている。一つは大体30の手の高さ。もう一つは大体50の手の高さだ。これも統一はされていない。例えば、タム・タリールは肥えていて愚かで、あまり高く飛べないために輪を低く吊るしがちだ。

各チームは5人の選手で構成されている。試合はボール(ティーバ)を空に向かって放り投げることで始まる。各チームは尻、肘、あるいは尾でボールを打とうと試みる。これは少し痛いかもしれない。なぜならティーバは非常に重く、デパサ・ガムで作られているからだ。保護のために木と乾燥したワッソの葉のパッドを身に付ける選手もいるが、ほとんどのサクスリールはそうすると馬鹿にする。

それぞれの選手がボールを相手の壁に当てようとして、ティーバを前後に飛ばし合う。成功すれば、そのチームは点を獲得する。チームワークは非常に重要だ。1人の選手が上に向かってティーバを弾き、次の選手がそれを尾で叩けるようにする。大抵は尾の打撃のほうがずっと強い。一方のチームが10点獲得するまで続く。

低いほうの葦の輪を通せば、3ポイント獲得できる。輪はとても小さいため、通すのは非常に難しい。もし選手が上の輪を通すことができたら、そこで試合は終了し、その時点で多く点を取っているほうが勝者と認められる。

もちろん、これが全てではない。だが、少なくともこの入門書は、鱗のない連中がコートの中央にテントを張ろうと思わないようにはできるはずだ。

ドラデイヴァの日記Dradeiva’s Journal

私はあらゆる物語を聞き、あらゆる語り部や長老と話した。多くの季節をかけた探索と調査の末、私の卵の家族の祖先は、インペリアルの第九軍団をツォフィア洞窟に連れ込んだという結論に達した。軍団はそこで歴史の中に埋もれ、失われた軍団になったのだ。

* * *
ツォフィア洞窟に関係する物語の多くは、ウジュカと呼ばれる巨大かつ強力なボリプラムスに言及している。確かめた限り、この邪悪なスライムの巨大な塊は、他のボリプラムスとは行動が異なる。自身を拡張するのだ。ウジュカと何らかの形で連結している動く粘液の塊を広げ、ウジュカの目、耳、触角として機能させる。それがウジュカの外の世界との接触点になっているのだ。私が話した長老たちは敬意を込めてウジュカについて語ったが、明らかに彼らもその生物を恐れていた。彼らが言うには古代の季節において、付近の部族の長老たちがツォフィア洞窟に行き、拘束の儀式を執り行って、巨大なボリプラムスとその拡張を洞窟内部に閉じ込めていたそうだ。

拘束の儀式はもう非常に長い季節の間行われていない。ツォフィア洞窟への入口が落石で塞がれて以来ずっとだ。第九軍団が行方不明になったのはその時か?彼らはどのようにしてか、洞窟の内部に閉じ込められたのだろうか?

* * *
私がボリプラムスについて知ったことは以下の通りだ。あのスライムは沼を這い回り、その途上にあるもの全てを吸収する。新しく生まれる時は分裂して新しいボリプラムスになるか、吸収した肉をボリプラムスの死体に代えてしまうか、どちらかだ。ボリプラムスの死体は半透明の体のような外見をしており、肉が骨から溶け落ちてボリプラムス状のスライムに置き換わっている。この吐き気をもたらすような蠢く生き物は、生まれる元となったボリプラムスと何らかのつながりを持っているが、ウジュカの場合ほどではない。

* * *
ある長老はウジュカのための拘束の儀式を私に教えてくれた。少なくとも、彼女は以前の長老に教わったことを私に教えてくれた。ウジュカがもう存在していなければいいが。もしあれがまだツォフィア洞窟を占領しているとしたら、洞窟を去る前に拘束の儀式を行わなければならない。ただ、私としては第九軍団の痕跡と証拠も見つけだして祖先の動機を示し、私の卵の家族を貶めてきた、裏切り者の汚名を返上したい。

パヒーザからの手紙Letter from Paheiza

ナーヘイへ

沼バエが何度噛みついても、クロコダイルは自分の道を進み続けるものよ。お前の脅迫と私や、私の卵の姉との関係も同じ。確かに、私はお前に借金がある。でも脅すだけで早くゴールドを稼げるようになったりはしない。

もう少し時間が欲しいと言っているだけよ。キーマ・ルーは私たちの農場が苦労していることを知っている。近いうち売却に同意してくれるでしょう。その時に借金は全て返す。

パヒーザ
パヒーザ

パヒーザへの脅迫状Threatening Letter to Paheiza

パヒーザへ

キーマ・ルーはすでに私が申し出た貸付金を、サルトリス農場の未来を確保するために受け入れた。彼女が自分の土地を売ったとしても、利益は直接、この貸付金の返済に回る。

分かっているのか?お前の趣味が積み上げた借金は全て、お前の財布から支払うしかないんだぞ。何しろ、お前にやっているスクゥーマは簡単に入手できるものじゃないんだ。お前の卵の姉の貯金を散財しつづけたら、キーマ・ルーにお前の窃盗を伝えるしかなくなる。もちろん、事業のパートナーとしての懸念からな。

ナーヘイ

ヒートザシの日記、1ページHeetzasi’s Journal, Page 1

より多くの金がRを探すためにばらまかれている。

マーラの聖堂でサングインを見つける可能性の方がまだ高そうだ。

奴はまた厚かましくなってきている。俺は譲らなかったが、奴については色々な噂を聞いている。陰惨な噂を。カサンドラの件がうまく片づけばいいが。

ヒートザシの日記、2ページHeetzasi’s Journal, Page 2

また調べ回っている。痕跡を探すため。

地元の者たちはRについて「知って」はいない。伝え続けるような情報じゃないんだ。全てはヒストの知識。本能だ。具体的なことは何もない。仕事が面倒になる。真面目に働くのは嫌いだ。

ブラックガードの発想は正しい。部族からヒストと話すのに使う物を奪う気だ。それでRについて知ろうとしている。だがデッドウォーターに試すのは正気の沙汰じゃない。ナガどもが遺物を盗まれて黙ってるわけがない。奴らは葬式を出したようなものだ。

奴は今日もまたやって来る。紹介をする必要があると言っている。

ヒートザシの日記、3ページHeetzasi’s Journal, Page 3

ベーリシャルス…5ゴールド
カルガ・フラヴォニウス…7ゴールド
ヒフプ…3ゴールド、魚取り網2つ(なぜ?)
あの上唇の割れたオーク(名前?)…18ゴールド

ファミア・メルシウスの日記、1ページFamia Mercius’s Journal, Part 1

自分の幸運が信じられない!1ヶ月の間毎日冒険者を募って、ついに本物の英雄を見つけたわ!古典的な意味の英雄ね。まだ知り合ってから間がないけど、限界が見えないほどの機転、勇気、力を示してる。この人と知り合えなかったら、完全に挫けていたと思うわ!

私たちはついに、長いこと遅れていたイクスタクス・ザンミーアへの探検に乗り出したの。ほぼ一瞬にして危機に陥ったわ。幸運にも、我らが英雄と私は遺跡の数多の脅威を通り抜け、カジン・ジャットのクリスタルを回収できた!カサンドラの展示ケースにあれを置いた時、彼女は微笑んだみたいだった。珍しい光景よ!

もちろん、私たちの喜びは最近のブラックガードの事件で曇らされた。どういう方法でか、あの悪党どもは私たちがアルゴンの名残を探していることを知った。奴らは私たちの組織のメンバーを誘拐までしたの!運よく新しいメンバーと親友のズカス、そしてジャクシク・オルンというデッドウォーター族の戦士が彼らを救出してくれた。友人たちを無事に取り戻せて安心したけど、ブラックガードのならず者どもが名残の場所についてどれだけ知っているのか不安が残る。この新しい英雄さんの力を借りて、先に名残を見つけられるといいんだけど!

ファミア・メルシウスの日記、2ページFamia Mercius’s Journal, Part 2

前回日誌に書いた時から、すごく沢山のことが起きたわ!この文を書いている最中にも、カサンドラの船が私とズカス、ジャクシク・オルン、カサンドラ、そしてウィップテイルをリー・アン・ウー、別名「呑まれた林」へ運んでいる!マーラの心臓にかけて、先走りすぎね。

シロディール・コレクションの新メンバーがまたしても、欠かせない存在だということを示したの。ズカスとジャクシク・オルンに協力して、アルゴンの名残についての重要情報が、ブライトスロートとデッドウォーターの遺物の中に隠されていることを発見した。それぞれの部族の遺物は謎の半分を与えてくれた。その謎は私が解けたわ!分かっている限り、呑まれた林に行って「夢浸り」と呼ばれる儀式を行うの。この儀式が何を教えてくれるのか、見当もつかない。それが名残自体へ導いてくれることを祈るしかないわ。きっとすぐに分かるわね。待ちきれないわ!

ファミア・メルシウスの日記、3ページFamia Mercius’s Journal, Part 3

ようやく、書く時間ができたわ!呑まれた林への旅以来、沢山のことが起こった。どこから始めればいいのか分からないくらいよ。

ズカスとジャクシク・オルンの夢浸りの儀式は、彼らが話した幻想的な伝説にふさわしかった。強力な錬金術の煙を吸い込んだ後、新しい友は過去の鮮明な幻視に入り込んで、名残が実は失われたアルゴニアン部族の作ったものだと知った。昔、バルサエビク・アイレイドの一団がその部族の村を襲撃し、そこに住んでいたアルゴニアンを皆殺しにして、しかもその魂を使い尽くそうとしたの!幸運なことに、アルゴニアンの長老は部族の魂を保管して守る器を作ることができた。それがアルゴンの名残よ。

私たちがそのことを知ってすぐ、カサンドラは私たちを裏切った!彼女は儀式の最中に現れた魔法の杖を奪い取り、逃げ去ったの(私を引きずってよ!)

その後の数時間は本当に怖かった。彼女の不気味な手下ウィップテイルは、思ってた以上にひどい奴だった。私をシシスに捧げようとしたんだから!新しい友がすんでのところで現れて、あのブラックガードの暴漢から助け出してくれてよかった。

いくつもの予期せぬ展開と、長い追跡の後、友と私はカサンドラに追いついた。でも残念ながら、彼女を救うには手遅れだった。カサンドラは名残に触れ、巨大なマイアゴーントと結合してしまったの。彼女は一時的に怪物を支配したけど、我らが英雄は撃破に成功したわ。私はこの出来事にまだ悩んでいる。カサンドラを止めることは明らかに必要だった。でもどうしても彼女を救えなかったかと考えてしまう。彼女の狂気にもっと早く気づいていたら、カサンドラは今も生きていたかもしれない。悲しいわ。

とにかくカサンドラが倒れた後、私は名残を手に取ってズカスとジャクシク・オルン、そして我らが英雄に頼んで、中に入ってもらった。本当は、ほとんど覚えていないの。ヒストの中の何かが私を包んだ。苦痛ではなかったけど、快適でもなかった。私があんなものを長時間持ってちゃいけなかったのよ!

名残の中で起きたことにはあまり詳しくないけど、友達を1人失ったことには今でも動揺している。でも、犠牲が無駄ではなかったと知って気持ちが晴れたわ。ルートウィスパーのヒストは完全に開花し、枝の下に新しい部族が集った。新しい始まりよ。私にとってもね。カサンドラの支えとリーダーシップがなくなった今、シロディール・コレクションはかつてのままじゃいられない。でも色々なことを見て経験した後では、これまでよりさらに素晴らしいものにできる自信があるわ。次の冒険が待ちきれない!

ファラルへの手紙Letter to Faral

ファラルへ

ボグブライトには気を付けろとお前が言ってたのは覚えてる。気を付けてるよ、信じてくれ!お前が言ったとおりパンジーの煙を仕掛けた。俺たちの匂いを隠すため大量の腐った肉を置いたよ。だがファラル、お前に俺の計画を検討してもらいたいんだ。俺はあいつらを観察してる。動き方や狩りの仕方、それから、破裂する仕方を記録してる。あの力の一部を利用できたら、ブラックローズの連中は俺たちを英雄扱いしてくれるぞ!

まず考慮すべきは、あいつらの居場所と起こし方が分かってるってことだ。この点に謎はないよな?アルゴニアンの死体を水の下に留めてるあの墓標が集まってる場所を探して、引き抜けばいい!まあ、死体はただ水面を流れていくこともある。だが時々、ここみたいなアンデッドの鉱脈が見つかる。何がここの死者たちを目覚めさせているのか分かるといいんだが。水の中に何かあるんだろう?きっとそうだ。ナガだけがあれを飲めるんだ。何年か前、口一杯に含んじまったことがあるが、気持ち悪くて死にそうになった。

ボグブライトを捕まえるのは不潔だが、難しいことはない。ブラックガード数人とロープ1巻き、少々の忍耐があれば、すぐに何体かは手に入る。爆発させないようにするのがコツだ。

正直言って、そこがまだよく分からない。死体をあまり長く放っておくと、ふいごみたいに膨らむのは知ってる。だが爆発はあまりに急で、強烈だ。ボグブライトはわざとやってるに違いない。突進して、ハンマーで叩かれたカボチャみたいに破裂するんだ。
確かに、まだ解明すべきことはたくさんある。でも、だからこそ捕まえなきゃいけないんだ!少なくとも、ドラキーとあの連中に話をしてくれよ。いいな?

モンガノー

ブラック・マーシュの鱗の騎乗動物Scaly Steeds of Black Marsh

リルモスの馬屋の親方、ウカスパ 著

肌の乾いた者の多くが、血もつながっていないにもかかわらず、毛の生えた騎乗動物に感情的な執着を抱いていることに私は気づいた(我らの隣人カジートは例外かもしれない。彼らは全ての猫が親戚だと言う。それは本当かもしれないが、カジートの髭とピクピクする耳から、表情を読み取れる者などいるだろうか?誰も彼らを信用しないのも当然だ)。とにかく、肌の乾いた者が自らの愛する毛の生えた騎乗動物に乗ってブラック・マーシュまでやって来ると、馬は突発の流砂に飲み込まれ、ニクバエから泥肌病をうつされ、斑点模様の毒キノコを食べてバタン!と死ぬ。そして肌の乾いた者は目から水を流すのだ。

確かに、悲しきビーク・オジェルにとって酷い状況だ。簡単に避けられる状況であればなおさらだ!なにせ、マーシュの親方はほぼ全員が、鱗のある上等な騎乗用トカゲを売っているのだから。トカゲには様々な形があり、どれも肌の乾いた者にとってはお馴染みのものだが、沼の奥地の条件に適応しているのだ!我々のトカゲは非常に便利で、鱗たっぷりで魅力的だ。1頭欲しがらない者がいるだろうか?あるいは何頭でも?

一度ならず、私は好奇心旺盛なビーク・オジェルに尋ねられたものだ。「ウカスパ、なぜお前のところの乗用トカゲはタムリエルの他の地域の騎乗動物のような姿をしている?なぜ馬トカゲやラクダトカゲ、センチトカゲがいる?なぜお前のところのとっても美しい騎乗動物は、トカゲの姿をしているんだ?」。いい質問だ。私ウカスパはこれに答えたいと思うが、大きな謎になっている部分は別だ。

我々サクスリールはヒストの子であるゆえに、肌の乾いた者たちと違うことは知っているだろう。だが、それはどういう意味なのかと思うだろう。ヒストは木であって、我々は明らかに苗ではない。それは、ヒストが木以上の存在であり、根を持つ知恵だからなのだ!ヒストは高く、広く成長し、とても賢いが、成長する場所に留まっていなければならない。それが不便な時もある。だがヒストは人間とエルフが足で歩き、器用な手を持っているのを見て、「おお、これはいい!」と賢くも考えたのだ。そして急いで根を伸ばし、今ではマーシュのどこでも我々が「役に立つ」と呼ぶ種類のトカゲがいるわけだ。そしてある出来事が起こった。我々が「役に立つ」と呼ぶ種類のトカゲをヒストが手に取り、それからあなたがアルゴニアンと呼ぶ民を作ったのだ。

川がどこに流れているか見えてきただろう?ヒストは歩く足と器用な手のある子供としてアルゴニアンを扱っているのだ。そしてアルゴニアンは最も優れた民だ。なぜなら人間とエルフの持つ欠点がないからだ。だが、彼らは時々長い距離を長い間旅しようとする。人の形をした者がどうやって旅する?騎乗動物に乗ってだ!だから役に立つトカゲは役立つ姿の乗用トカゲになり、アルゴニアンは尻尾を鞍に載せて誇り高く乗れるのだ!

だが分かっているぞ、ビーク・オジェルよ。さらなることを知りたいのだろう。知識が鱗を潤わせるとでも言うように(ちなみにそんなことはない)。役に立つトカゲがたまたまヒストの子供であり、乗用トカゲでもあると知っただけでは足りず、あらゆる細かい点、特にあのトカゲは肌の乾いた者が「セクシー」と呼ぶようなものなのかを知りたいのだ。しかし、それについてウカスパは手助けできない。なぜならそうしたことは全て大きな謎だ。ああ、もちろんヒストのアルゴニアンにとってはそうではない。全ての手がかりを知っている我々にとって、それが大きな謎であるはずはないのだ。だが君には全く手がかりがない。君は我々の卵の兄弟ではないからだ。とにかく、私が乗用トカゲについて教えられることは以上なので、もう行っていい。喜びに打ち震え、潤いを保ち、愚か者のように沼の奥地にふらふらと迷い込まないように。いいな?

ブラック・マーシュは待っている!Black Marsh Awaits!

シロディール・コレクションはマークマイアの沼の探検に参加してくれる、勇敢で進取の気性に富む冒険者を探しています!アルゴニアンの故郷の謎めいた奥地で、興奮、発見、財宝が待ち受けています!

興味のある方は、リルモスでファミア・メルシウスまでご連絡ください!

ブラックウォーター戦役、第1巻The Blackwater War, Volume 1

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

ブラック・マーシュの侵略が第一紀2811年に始まった時、帝国軍は勝利を確信していた。インペリアルはアルゴニアの戦いで決定的な勝利を得ていて、他の衝突も同様の結果に終わった。これらの戦闘は一方的であり、アルゴニアンたちが多数の負傷者を出したのに対して、インペリアルにはほとんど疲労の色さえ見えなかった。第一紀2811年蒔種の月、トカゲの民は全面的な退却状態にあり、ブラック・マーシュ内陸の薄暗い奥地に逃げ込んだ。帝国はこれを好機と判断し、アルゴニアンたちが態勢を立て直す前に総力を挙げて侵略を試みた。

部隊は若く人望のあるアウグリアス・ブッコという司令官に率いられていた。ブッコはシロディールで名を知られた人物だった。その麗しい外見と巧みな弁論術により、彼は前例のない早さで帝国軍の階級を駆け上がったのである。25歳になる頃、ブッコはすでに将軍の証であるダイヤモンドを身につけていた。将軍の印を受け取るに際して、彼は実質的にシロディールのどんな場所の軍団も選択できた。ブッコが指揮することを決めたのは、ブラック・マーシュの第四軍団だった。

他の歴史家たちはなぜブッコがこのような陰鬱で危険な仕事を選択したのかについて、無数の理論を提供してきた。私としては単に、プライドが決定的な要因だったと主張したい。ブラック・マーシュの国境沿いにおける帝国軍の活躍の噂が、第一紀2811年恵雨の月にはすでに、帝都の宿屋や街路に届いていた。沼地の征服を大将軍への昇進への機会と見ていたブッコは、ブラック・マーシュでの戦争が短期間の大勝に終わるだろうと確信し、貪欲にも第四軍団指揮官のマントをまとったのである。彼の判断は完全に誤っていた。

ブラックウォーター戦役、第2巻The Blackwater War, Volume 2

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

ブラックウォーター戦役の当初数年間は、帝国軍にとって厳しい戦局になった。シロディールの大地では数々の勝利を手にしていたこの軍団は、悪臭を放つブラック・マーシュの沼地に対処する用意がまるでなかった。

まず、帝国軍の装備はこのような環境に適していなかった。例えば彼らの鎧は重く、湿気の多い気候の中ではすぐに錆びてしまった。軍団兵たちはブーツや盾から泥を落とすために何時間もかけ、戦場に持ち込んだ荷物を少しでも軽くしようと必死になった。2年目の終わりに差し掛かる頃になると、軍団兵たちは胸当てやグリーヴを完全に放棄し、金属の鎧で汗にまみれて死ぬよりも、快適な死を選んだ。

数世紀にわたってインペリアルが発展させてきた戦術も、この厳しい地においては鎧と同様に役立たずだった。歩兵隊の展開や厳格な隊列システムは、沼だらけの内陸部で実施できるものではなかった。イトスギの枝の繁茂や泥まみれの地形によって部隊はすぐ散り散りにされ、その結果頻発した小規模の乱戦では主にアルゴニアンが勝利した。こうした条件では命令系統がすぐに悪化した。これにより、軍団内では命令無視や士気を下げる権力闘争が早晩巻き起こった。

そして、沼自体が部隊を飲み込んでしまうことがしばしばあったようである。帝国軍の野営地周辺では噂や事実の断片が始終飛び交っていた。ある者は行方不明の部隊が道に迷って方角が分からなくなり、安全な場所に戻る道を見つけられずに飢えや乾きで死んだと考えた。別の者たちは大いに恐れられていた「ゴーストウォリアー」の仕業だと言った。残忍なことで知られた、青白く醜いアルゴニアンである。暗く邪悪な化け物が沼の下に潜んでいて、それが一口で歩兵部隊を丸ごと飲み込んでしまったのだと囁く声すらあった。こうした噂は明らかに間違いだったが、軍の士気には大きな打撃を与えた。

さまざまな障害と環境が絡み合って、何年も続く悲惨な戦争が始まろうとしていた。ブラック・マーシュの戦闘が終結するまでには、数千もの兵士たちが死ぬことになった。

ブラックウォーター戦役、第3巻The Blackwater War, Volume 3

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

第一紀2816年になると、ブッコ将軍の軍団は歩兵隊6部隊にまで縮小していた。しかも戦いが続くうち、どれ一つとして万全の状態ではなくなっていた。終わりなき襲撃に疫病、謎めいた失踪などが重なり、絶望と悲観が常態化するようになった。

援軍がない限り敗北は必至と見たブッコは、ブラック・マーシュにもう一軍団を展開することを要請した。新しい部隊を前線に送って追い詰められた部下たちを休ませるのではなく、ブッコは彼らに「レマン街道」(後の沼街道)の建設を行わせた。この道がどこに続くのか、これが将来の紛争にどう貢献するのかを知る者はほとんど誰もいなかったが、ブッコは舗装されて警備された道路が戦いを助け、戦況を帝国軍へ有利に傾けると確信していた。

理論上、この道路はインペリアルにとって願ってもない恩恵であるはずだった。帝国軍にとって、物資の不足は長らく悩みの種だった。安全な物資の流れがあれば兵を頻繁に交換でき、食料や水、装備の流入も阻害されなくなる。だが、街道が完成することはなかった。

レマン街道は工事の開始とほぼ同時に攻撃を受けた。アルゴニアンの波状攻撃が作業員たちを日夜襲い続けた。盾と槍で武装すべき兵たちは、シャベルと鎖で身を守らねばならなかった。兵士たちはまた、疲労と沼風邪に倒れることも多かった。街道は前線まで半分の距離を建設したところで放棄されてしまった。沼街道の計画はブラック・マーシュ侵攻が苦い失敗に終わった後も、「ブッコの愚行」として記憶される。

ブラックウォーター戦役、第4巻The Blackwater War, Volume 4

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

第一紀2820年、ブッコ将軍の第四軍団は完全に崩壊していた。残存する数少ない兵士たちはまともに戦える状態になかった。暴動まがいの事態でブッコの指揮権が脅かされるに至ってようやく、彼は残った兵士たちに退却と、マーシュ内陸部からの脱出を命じた。彼は帝国軍が沼を去れば、アルゴニアンも追っては来ないだろうと判断した。

10日間の厳しい退却の後、帝国軍の残存兵たちは「ジ・ツェイ」と呼ばれる古代アルゴニアンのピラミッド周辺に集まった。軍はこの時点でもはや350人程度にまで減少していた。ブッコはピラミッドの陰で短い休息を取ったら、残存勢力は比較的安全なシロディールまで退却できるだろうと考えていた。その望みが果たされることはなかった。第一紀2820年収穫の月14日、ブッコの誇った第四軍団の残存兵たちは全滅したのである。

ジ・ツェイの虐殺の詳細は歴史コミュニティにおいて議論の多い問題である。ブッコの残存勢力が大規模なアルゴニアン軍団によって撃破されたことについては広く合意されているが、この結論を支える証拠には一貫性がないと言わざるを得ない。ピラミッド周辺の考古学的発掘調査では数百の死体と放棄された武具が見つかったが、帝国軍の遺体が少なくとも100体は未発見のままだ。これは当然、この兵士たちに何があったのかという問いを導く。彼らがシロディールに辿りつけたことを示す証拠は何もないため、捕虜として連行された可能性もある。だが既知の戦場の野営地の発掘からは、帝国軍捕虜のいかなる証拠も発見されていない。これもまた、この紛争中に発生した謎の失踪事件の一つである。アルゴニアンはこれ以上のことを知っているかもしれないが、歴史家に情報提供を申し出た者はこれまでに誰もいない。

ブラック・マーシュでの大敗によって、帝国議会はこれ以上の屈辱を許容できなくなった。他の敵対勢力はブラック・マーシュを見て、かつては恐れられた帝国軍が弱体化したと見て気勢を上げた。議会は対抗措置として、第四軍団をレグルス・サルデカス将軍の指揮の下に再編成し、第二次ブラックウォーター戦役を開始した。

ブラックウォーター戦役、第5巻The Blackwater War, Volume 5

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

サルデカス将軍は帝国軍において伝説的と言ってもよい存在であった。数えきれないほどの会戦に参加した古参兵であり、兵士としても将軍としても、周囲に抜きん出た力を示してきた。

サルデカス(別名「岩のサルデカス」)は、行方不明でおそらくは戦死したブッコ将軍とは正反対の人物だった。目撃者の証言が記すところによれば、彼は大柄で冗談を解さない男であり、鷹のように鋭い容貌を持っていた。彼は足を引きずって歩き(アルゴニアの戦いの古傷である)、短く重々しい言葉で服従を命じた。正装や礼服の類は全て避け、簡素な百人隊長の鎧兜に、自らの役職を示す勲章を身につけることを好んだ。

サルデカスと再編成された第四軍団は間を置かずに戦いへと復帰した。第一紀2823年、彼らはブッコが退却した際に失った全領域を取り戻した。多くの軍事学者はこの成功をサルデカスの適応力と戦略的独創性に帰している。例えば、サルデカスは全帝国軍兵士に命じて金属の鎧を捨て、胸当て付きの革鎧を身につけさせた。インペリアルの補給係はアルゴニアンの非正規兵や斥候と連携を取り、沼地から得られる食料だけで生き残る術を学んだ。また、百人隊長や軍団長には追加権限が与えられ、軍が分断された際も独立して戦えるようにされた。大隊と中隊が独立して機能するように計らうことは、兵士たちの士気を驚くほど高めた。帝国軍兵士たちはこの時初めて指揮官を自分の目で見て、その命令に従って個人として戦いに参加できるようになったのだ。もちろん、軍団長たちの手腕と指揮能力に負うところも大きかった。しかしサルデカスは要求の厳しい指揮官として悪名高く、期待に背いた兵を格下げすることもためらわなかった。

だが、サルデカスが最も成功したのは外交の領域においてだった。紛争初期、彼は追放されたアルゴニアンの部族に呼びかけ、帝国側について戦えば報酬を与えると申し出た。死したブッコ(および多くの同時代人たち)はトカゲの民を一枚岩の蛮族集団と見ており、低俗な交配と野蛮な気質によって結びついていると考えていた。サルデカスはそれが誤りであることをほぼ一瞬で見抜いた。彼は影響力のあるいくつかの部族と強固な同盟関係を結び、その中には油断ならぬアーチェインやショス・カリールもいた。彼の勢力は一挙に3倍近くへ膨れ上がった。ブラック・マーシュ戦役はようやく、帝国軍有利に傾きつつあった。

ブラックウォーター戦役、第6巻The Blackwater War, Volume 6

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

サルデカスの指揮戦術は一つの原則に基づいていた。それは真の敵が沼であり、アルゴニアンではないというものだった。第一次戦役における死者の約半数は疫病が原因であり、ほぼ同数が謎の失踪によるものであった。彼の算定で、アルゴニアンの襲撃はそれらより遥かに低い第三の要因だった。この事実を考慮して、サルデカスは新たな戦いの心得を作り、士官全員に普及させた。この戦術の要点は単純だった。すなわち、ブラック・マーシュを征服する唯一の方法は、それを破壊することであるというものだ。

サルデカスは技術者と工兵で構成された大隊を全て前線に展開した。帝国軍兵士が国境付近の村に激しい襲撃を行っている間、支援兵が沼を干上がらせ、水田に塩をまき、数百の木を切り倒した。戦役のこの時点において最もよく知られている出来事は、第一紀2828年の「大炎上」である。

記録が示すところによれば第一紀2828年恵雨の月上旬、エリシア・マリシウス(サルデカスが信を置いていた軍団長の1人)が工兵部隊に命じて、ストームホールド外にある泥炭の沼地に火を放たせた。工兵たちは命じられたとおり行動したが、沼地が地下に広がる巨大な網構造の一部であることは知らなかった。数ヶ月経って、帝国軍兵士たちはソウルレストやギデオンなどの遠隔地で突然の出火を報告するようになった。この地域全体が炎に包まれていることに帝国軍が気づくまでには、さらに数ヶ月を要した。

泥炭や廃棄物が燃えて発生した炎は、3年以上もの間足元で荒れ狂った。ただでさえ危険なマーシュがさらに凶悪になり、帝国軍はこの10年近くの期間で初めて後退を余儀なくされた。窒息する煙と燃える沼から噴出するガスにより、この地帯はアルゴニアンにとってさえほとんど居住不可能になった。この地帯に固有の数百種もの動植物が絶滅させられ、アルゴニアンの中には部族ごと消滅したものもあった。帝国軍でさえ、多大な犠牲者を出した。数百の兵士が「沼肺」やガス爆発のために命を落とし、あるいは炎の猛烈な熱さのために逃げ出した。帝国軍とアルゴニアンのどちらにとっても壊滅的な打撃だった。この出来事が第二次戦役と、サルデカスの任期を終焉させた。帝国軍が退却したすぐ後、サルデカスは病に倒れ、帝都に帰りつく前にエセリウスへ旅立った。公式の診断では、マーシュから脱出する際に受けた傷による急性の感染症ということになっているが、帝国軍の兵士たちは納得しなかった。

サルデカスの死に本当はどのような事情があったのかについては、いまだに歴史学上の論争となっている。シャドウスケールの関与の可能性は排除できない。彼らの組織や方法について我々はほとんど何も知らないが、この紛争において何らかの役割を果たしていたと考えて間違いはないだろう。大炎上のような惨事のすぐ後に高位の将軍が謎の死を遂げたということは…私が歴史の研究で学んだことがあるとすれば、偶然などというものが存在しないということだ。

ブラックウォーター戦役、第7巻The Blackwater War, Volume 7

グウィリム大学歴史学者、ヴァレンカ・アルヴィーナ 著

歴史家たちはしばしば、ブラックウォーター戦役を26年間にわたって繰り広げられた単一の紛争としている。戦いに参加した主要な人々は基本的に同じだが、第一次、第二次、第三次戦役は互いにほとんど共通点を持たない。第一紀2833年、インペリアルの戦術はあまりに刷新されていたため、ほとんどインペリアルのものと認識できないほどだった。「サルデカスの改革」は帝国軍を再編したが、「ファルコ理論」はこの戦役を大詰めへ導いた真の触媒だった。

ルシニア・ファルコ将軍はサルデカスの逝去後まもなく、帝国軍の指揮を引き継いだ。彼女は順当な人選だった。サルデカスの親友であり、力強く、かつ過激なほど帝国に忠実であり、さらに情け容赦のない人物であった。彼女はアルゴニアの戦いのすぐ後に士官となった。つまり、軍人としての功績が全面的にブラックウォーター戦役で形成されたことを意味する。前任者とは異なり、ファルコは単一の方向から攻めるだけでは戦いに勝つことはできないと理解していた。彼女は帝国に要請し、リルモスとアルコンの沿岸沖にいた無数の海賊たちに対し、敵国船の私掠免許状と一時的な任命書を発行させた。ダイヤモンド海軍と連携することで、この勢力はマーシュ南東の広大な地と、内陸部にある一部の沼さえ奪い取ることに成功した。

ギデオンを拠点とし、ファルコは地域全体にわたる攻撃の第二波を開始した。ファルコは前任者のように軍団をまとめて派遣することは控え、勢力を小規模で戦闘能力に優れた数百の部隊に分けた。後に「レッドベルト」と呼ばれるこの小隊は沼で長年戦ってきた古参兵に率いられており、彼らの一部は第二次戦役の初期から従軍していた。

レッドベルトは当初大きな戦果を挙げ、ブラック・マーシュ西の大部分を占拠した後、分厚い沼と不気味な沈黙が支配するこの地の中核部の外側でようやく止まった。残念ながら部隊の規模のため、彼らは占拠した地を長く維持できなかった。国家間の戦いとして始まったものは引き延ばされ複雑化したゲリラ戦争となり、紛争に付きものの残虐行為に満ちていた。第一紀2834年から2836年は、双方にとって暗黒の時期だった。アルゴニアンとインペリアルは互いに対して威圧とテロを仕掛けたのである。

公式の休戦協定を結ぶことなく、戦いは第一紀2836年に終わったように見えた。数十年もの間インペリアルと戦ってきたアルゴニアンたちは正式に降伏するわけでもなく、突然武器を地面に埋め、農作業や魚釣り、裁縫の仕事に戻った。帝国は機を逃さず、第一紀2837年にこの地域の占拠を公式に主張した。ついにブラックウォーター戦役は突然の、しかも不可解な終わりを遂げたのである。

アルゴニアンたちによる敵対の急激な停止もまた、この紛争にまつわる謎の一つである。推測として支持されているのは、木を崇拝する彼らの奇妙な伝統が関係しているということであるが、彼らが武器を捨てた本当の理由は、永遠に分からないかもしれない。歴史家としては悩ましい状況だが、ブラック・マーシュの深い暗闇で生まれた謎が解決されることは滅多にない。少なくとも、満足のいくような結論によって解決されることは珍しい。

ブラックローズ監獄の歴史A History of Blackrose Prison

ウェイレストの放浪者、ティリリャ・レン 著

悪名高いブラックローズの街から名前を取ったブラックローズ監獄は、1日で建てられたと言われている。そんな話が誇張なのか驚くべき真実なのかは、誰もわからない。しかし1つ確かなのは、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエが監獄の建設を命じ、ペラディル・ディレニが忠実に、もしくは自慢げに石の精霊の集団を召喚して働かせ、その命令を遂行したということだ。

街に隣接して建てられたと考えられることが多いが、実際に監獄がある場所は街から南へ1日進み、沼の危険が及びながらも岸から到達可能な場所だ。この孤立した場所は、囚人が逃げないようにするため特に選ばれた。地元の民以外で危険なマークマイアを横断できた者はわずかしかおらず、脱獄者のように装備の乏しい者ならなおさらだ。

ブラックローズ監獄へ送られた帝国の囚人は、凶悪犯や政治犯ばかりだった。その時の権力者が二度と見たくないと考えた人間やエルフが送られた場所だったのだ。そのため、監獄の職員は好きなように振る舞った。囚人が受けた残虐で残酷な行為は、誰に聞いても大変ひどいものだ。

その都合の良い立地のせいで、帝国の権力と衝突したマークマイアの民も皆、ブラックローズ監獄送りになった。特にナガは、帝国の圧政に対する反抗的な姿勢から、そこへ送られる傾向があった。他の囚人にもナガは軽蔑された。それは彼らの攻撃的な文化と、目立つ外見からくるものだった可能性が高い。ナガの囚人数が増え、この地域における帝国の権力が衰えたことから大規模な暴動につながって、結果的にブラックローズ監獄が放置されることになったと考えられている。

放置されてから数年後、監獄は解放しようとした囚人自身によって乗っ取られた。かつて彼らを拘束した場所を奪い、自分たちの故郷を危険にさらしたインペリアルの撲滅を誓った。彼らはブラックガードと名乗り、自分たちだけに忠誠を誓った。

この主張は周囲の部族から歓迎されず、彼らはそうした価値観が自分たちの文化の根幹に反するものだと考えた。私が話したアルゴニアンは、この件について次のように語った。「ブラックガードは石のような心と不快な腹を持っていて、石の巣の中で変化から隠れている。彼らは後ろを見るばかりで、前を見ない。だから部族は彼らを支持しないのだ。そして今では、盗賊とほとんど変わらない」

確かに元の理想がどれほど高潔なものだったとしても、今のブラックガードはマークマイアで最大の犯罪組織として知られている。ここ10年で、彼らは非アルゴニアンのメンバーも組織に入れ始め、その中には彼らがかつて激しく戦ったインペリアルも含まれる。

残念ながら、ブラックローズ監獄の現在の様子については、ブラックガードによる危険が存在するために記述できない。訪問すれば豊かな歴史が見られるので、残念な事態ではある。

ボーキへの手紙Letter to Bhoki

卵の父へ

あなたからは数多くの警告を受けたが、愚かしさの許しを乞おうとは思わない。あなたがこれを読む頃、私はすでに百合の道へ進んでいるだろう。私はメワー・ジェズの頑固さから見習いたちを救っているか、救えなかったかのどちらかだろう。どちらにせよ、私は捕らえられて刑期を待つことになると想定している。全ては、我らの部族が愚か者の訓練で若者たちを殺し続けるのを、我慢できないから起こったことだ。

もう一つ別の点でも、私はあなたの望みに反する行いをした。あなたはカディーリスだった時に使っていた古い訓練の手引きを破棄せよと私に言った。あなたにはぜひ、私があれを隠した場所へ行って回収し、見習い全員が殺される前に戦士長を説得し、再び健全で成功を収めた訓練を採用させてほしい。

この詩で我々のお気に入りの隠し場所を思い出してほしい。

「階段の頂点にて青い炎の前に立ち、
その目を公正なるヒストへ向けよ、
心を乱す恍惚へ歩み入り、
守りの枝の下に探し物を見よ」

キシ
キシ

ホスティア・アセラスの日記Journal of Hostia Asellus

また厳しい時期になった。人々は私たちが監視している道に足を踏み入れようとしなくなっている。私はファンダスに、間抜けな手下たちが旅人を頻繁に襲いすぎるのよと言った。今、旅人は私たちを完全に避けてしまっている。欲が深くて、馬鹿な連中だ。

やはりまともな収穫はない。限られた物資を長持ちさせるために蛙を捕まえているけど、状況が変わらなければじきに革のブーツを煮る羽目になるだろう。ジュリッタを食べさせるために自分の食事を抜いている。こんなところに病気の子供がいるべきじゃない。

ファンダスはもう大丈夫だと請け合った。言い合いになった。彼は手下たちと共に襲撃を計画していると言った。気に入らない。一番近くの村はあのルートハウスの民に属している。凶暴で、縄張りにうるさい。ファンダスは戦士たちの大半が狩りに出ている間に食糧庫を襲うと言っている。議論しても仕方がない。食料は必要だ。

ジュリッタは誰もいないキャンプで不安がっている。父親がいつ戻ってくるのか何度も聞いてくる。私が「もうすぐ」と言うのは嘘だと気づいている。

やった。ファンダスと仲間たちは偉そうにして、馬鹿みたいにニヤニヤしながらキャンプに戻ってきたけど、腕には新鮮な食料と乾燥させた保存食をたっぷり抱えてきた。今夜はたっぷり食べられる。少なくとも、これから数週間は大丈夫。

もう3日になる。叫びすぎて声が出なくなった。泣きすぎて涙も枯れてしまった。このままでいいはずがない。ジュリッタの命を守らなければ。あの子はようやく眠っている。私も寝たほうがいい。

あの目。目覚めるといつも、あの丸い黄色の目がある。いつもそう。まるで、またあそこにいるみたい。ジュリッタがベッドから引きずり出されても叫び声をあげないから、現実じゃないと分かるだけ。あの忌まわしいトカゲどもめ。

危険を冒して沼地の奥、ブラックローズに向かって進んだ。その価値はあった。ブラックガードのキャンプをもう一つ見つけた。彼らは養う相手が増えるのを歓迎しないようだった。檻に入れろと思っていた者も何人かいたのが分かった。でもグルズナックは私が一人前の仕事をしている限り受け入れようと同意した。後で教えてくれたが、私の目を見て判断を決めたらしい。娘を檻に入れさせるくらいなら、素手で何人でも殺しそうな様子なのが分かったと言っていた。実際そのつもりだった。

グルズナックは今、私に家畜の餌をやらせている。こいつらを見ると胃が痛くなる。痛めつけられた奴は問題を起こさない。嫌なのは新しい連中だ。犬を躾ける時は、少なくとも言葉を話して懇願はしないのに。動かなくなるまで殴ってしまった。

家畜を傷つけたことで大目玉を喰らった。問題は歯だった。買い手は見苦しい獣を好まない。次はそのことを覚えておけとグルズナックは言った。彼は新鮮な家畜の訓練を始めてくれと言っている。私には才能があると。

ここに来てから、時間が飛ぶように過ぎていく。将来が期待できると思うくらい。グルズナックは理解のある指導者だ。分け前はたっぷり持っていくけど、私たちが全員ちゃんと生活できるように計らってくれる。ジュリッタと私は他の皆より少し取り分が多い。気に入られているのだと思う。

またしても1年が過ぎた。早いものだ。いい年は長く味わえたらいいのに。食べ物や暖かいベッドを求めていたのはもう昔の話なのに、今もできるだけ溜め込む癖がついている。圧迫するような恐怖は嫌なものだ。あのトカゲたちの目は、私が眠っている間も見ている。明日は2匹潰してやろう。グルズナックが何と言おうと知ったことじゃない。

ジュリッタはもう子供じゃない。泥トカゲどもの事件があっても残っていた無邪気さもなくなった。一週間前には私のスカートにしがみついていたかと思ったら、今じゃもう言い寄ってくるグルズナックの下っ端たちを、私があげたナイフで撃退している。あの子もそろそろ、自分の仕事をしなきゃならない歳になった。ナイフの使い方を教えてあげてもいいかな。

ジュリッタに臆病なブライトスロートの世話をさせた。最初は怖がっていたけど、もうこの獣を恐れる必要はないと示してあげた。

ジュリッタはブライトスロートに紐をつけて引っ張るのを楽しんでいる。こんなに屈託のないあの子の姿を見たのは久しぶりだ。あの子がどれだけの恐怖を抱えていたのか、私は気づいていなかった。もう数日間は楽しませてあげるつもりだけど、泥トカゲをペットにする考えについては少々話し合う必要がある。

グルズナックの奴隷事業は大きく成長している。一味の数は彼がヴァーデンフェルのテルヴァンニに販路を開いて以来、3倍にもなった。グルズナックは私に自分の部隊を組織してもらいたいと言っている。その響きは、嫌いじゃない。

ボリプラムスについてOn Voriplasms

沼の泥に関する論文、シロディール・コレクションのコンコルディア・メルシウス 著

個人的にはまだその風変わりな泥を見たことがないが、確かな情報によると、ねばねばした土と軟泥の動く水たまりであるボリプラムスは、実に驚くべきものである!広範囲にわたる研究と、シロディール・コレクションのジー・ラー氏を含めたマークマイアの民に話を聞いた結果、ボリプラムスにおいて分かったことは以下の通りだ。

ボリプラムスの生態には謎めいた部分が残っている。自然の中で見かけると、浅い沼の中であろうと草に覆われた川底であろうと、ボリプラムスはどろっとして粘性の高い緑色をした、ヘドロの水溜まりでしかない。しかし詳しく調べると、そのヘドロは水溜まりのように広がることも、消散することもない。代わりにその形のない形をとどめ、極めて穏やかならぬ様子で波のように動く。見たところ感覚組織も内臓もまったくないその注目すべき泥の塊は、とても効率よく動き、狩りをし、食べる。それもジー・ラー氏の主張によると、ボリプラムスは20ペース以上離れたコヒョウグアルに気づき、目もくらむような速さで地面を滑って進み、哀れな獣に身の危険を感じる暇を与えることなく飲み込んだという。その泥はすぐに獲物をむさぼり、残った骨を排出し、日光浴をしていた以前の場所へ滑って戻ったのだ。

この件に関する数少ない学術的研究から、ボリプラムスには基本的な知能があるらしい。ほとんどの肉食獣と同様に、獲物を認識し、危険を避け、強い相手から逃げるのは確かだ。群れをなし、単独でだけでなく集団で狩りをすることも多い。どうやって意思の疎通をしているのかは、周囲の世界との交流に使う方法と共に謎のままだ。解剖の試みはまだ成功していないらしい。

これについて研究する学者、グウィリム大学のイクセリアス・タロス氏によると、ボリプラムスは大きくなってから分裂して、新しいボリプラムスを作り出すことで繁殖すると推測している。生産という意味では効率的ながらいくらか孤独だとも思われるが、歩くヘドロの塊としては筋が通っている。

さらに驚くべき説として、マークマイアの自然の中には、ボリプラムスの死体と呼ばれる同族らしい獣がいると噂されている。ボリプラムスは獲物の肉を食べてから骨を出すのに対して、その泥は骨を新しい皮膚のように保持するのだ。自然界で見かけると、それはまるで骸骨のような体で、骨から肉が溶け落ちてボリプラムスのヘドロに入れ替わったかのように見える。ボリプラムスの死体は、その名前と裏腹に歩き回る性質を持つが、死霊術やその他の超自然な存在とは関係がない。カタツムリが貝に住むように、ボリプラムスは捕えた骸骨を利用して泥に形を与え、しっかりとした輪郭を与えているのだ。それが、少なくとも私の現在の説だ。シロディール・コレクションのマークマイア奥地への探検に参加できたら、さらに知識を深め、この書を更新するつもりである。

マークマイアで冒険を探そう!Seek Adventure in Murkmire!

一生に一度の旅を体験できる、屈強な冒険者を探しています!

古代の遺跡!魅惑の風習!雄大な眺めに魅力的な動物!こうしたものが、マークマイアの不思議な沼地で見つかるでしょう!

世界を見る機会を求めていますか?日常を逃れ、地平線の先を探索する機会を夢みていますか?今すぐシロディール・コレクションの仲間となり、未来の歴史書に名を残しましょう!発見と冒険が待ち受けています。今すぐご参加ください!

詳細は、ストームホールドのコンコルディア・メルシウスまでご確認ください。

マークマイアの諸部族:ゴーストTribes of Murkmire: Ghost People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

この文章はロウソクの明かりで書いている。私の同行者たちがストームホールドへ向かっていると、不意に案内人が止まれと命じた。彼は空気の匂いを嗅いで鼻にしわを寄せ、それで全て説明されるとばかりに、私たちは「ヴィーシュクリール・ツェル」に近づきすぎていると宣告した。私たちは彼に従ったが、進路を修正しながらもっと説明してくれと頼んだ。案内人はこの話題についてそれ以上口を利くのをためらったが、しつこく説得を続けた。当初思っていた以上の所有物を失うことになったが、ついに答えを得た。

「ゴースト族」はマークマイアの原住部族で、なかなか恐ろしい評判があるらしい。彼は影に向かって一瞥した後、小声でしか話さなかった。彼によると、ゴースト族は完全な暗闇の中で生活しており、ディープマイアから出るのは不注意な者を夜中に追跡し、誘拐する時だけだという。彼も実際に見たことはないのだが、色がひどく薄いので骨が透けて見えるという話だ。アルゴニアンの子供が夜眠れない原因を考えたことのある人は、こいつを思い浮かべればいい。とても歓迎はできそうにないが、この変わった部族についてもっと知りたくなったのも確かだ。彼らの地を直撃したい気にもかられたが、私はヴィーシュクリールについて話す意志のある他の民に聞くだけで満足することにした。

分かったのはゴースト族がこの地の人々の間でも謎に包まれており、彼らを巡る噂が数多いことだった。ヴィーシュクリールについて私が耳にした途方もない話の中でも、二つのことは確かなようだ。彼らはその青白い鱗によって見分けることができ、「死者盗み」であり誘拐者であるという悪評を得ている。墓荒らしに対する嫌悪感はもちろん理解できるが、マークマイアのアルゴニアンが永続性に対して全く執着しないことを考えると、彼らにとってもタブーであることには驚いた。案内人にこのことを尋ねると、ゴースト族が盗むのは死者だけではないと言った。彼らは死体を自分たちのヒストの根の周りに埋め、冒涜的な儀式を行って死者の魂をその部族から盗むと信じられている。アルゴニアンにとって、これ以上に大きなタブーはほとんどない。

ここに座って、暗闇の中で恐るべき死霊術について考えを巡らせていると、私のロウソクが消えかかると共に浅瀬の中から泥にまみれ、腐れ落ちた不運な旅行者たちが起き上がってくるのではないかと想像せずにはいられない。夜が明けたらすぐに出発するべきだ。この黒い夜と青白いゴースト族を追い払える時が、とにかく早く来てほしい。

マークマイアの諸部族:デッドウォーター族Tribes of Murkmire: The Dead-Water Tribe

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私たちの幸運は長く続かないと知っていて然るべきだった。マイアダンサーたちと過ごした愉快な休息の後、私たちは北へ進むことにした。案内人のリーラスは、考え直すよう私たちに迫った。「深い泥はよそ者を飲み込んでしまう」と彼女は言った。リーラスはケール・サッカ橋での事件を蒸し返し、北方の部族はタム・タリール以上に交渉の余地がないのだと説明した。私たちの多くは探検を中断したいと思ったが、結局は多数票に押されてしまった。

自分たちの愚行に気づくまで、長くはかからなかった。北方へ分け入っていくにつれ、植生は1時間ごとに厚みを増していった。以前にも遭遇したニクバエの小さな渦は膨れ上がり、羽音と苦痛の巨大なうねる雲と化していた。リーラスは何度も引き返すよう勧告したが、私たちはさらに暗闇の奥深くへ進んでいった。

月耀の朝早く、ペルシウスがいなくなっているのに気づいた。私たちは分散して、1時間以上もの間声をあげて呼びかけ、分厚い泥の中でつまずきながら彼を探した。荷車のところで再び集合した時、ヴァレンティナとモーテンの姿も消えていることが分かった。私たちの勘違いした勇気が即座に溶けてなくなったことを認めても恥だとは思わない。私たちはすぐに荷車の向きを変え、沼が許す限り急いで南へ移動した。鳴き声が聞こえ始めたのはその時だった。

最初は静かだった。蛙が数匹集まっているような感じだった。少しずつ、声は大きくなった。パニック状態で1時間進んだ後、鳴き声は耳をつんざくばかりの不協和音へと成長していた。そして叫び声が上がった。誰の声かは分からなかった。私に言えるのは、あれは苦悶の叫びだったということだけだ。私は周囲の木々を通り抜けるいくつもの影を見たが、ほんの一瞬見えただけだ。はっきり見えたのはそのうち1つだけだった。リーラスが言うには、間違いなくナガだった。恐るべきナガ・クルのメンバーである。どうやら、デッドウォーター族はマークマイア北方の広大な領域を支配しており、周辺の村のサクスリールから大いに恐れられているらしい。

私が目にした1人に関して言えば、あれを忘れることはできないだろう。その女の顔は蛇の一種に似ていたが、全身が泥で覆われていた。だが一番衝撃的だったのは、その盾だ。顔が付いていたのだ!ナガ・クルはしばしば自らの武器や鎧に死んだ仲間の一部を使うとリーラスが教えてくれた。顔や爪、足の骨などを。死んだ友を切り刻むなどとは考えただけでも寒気がするが、リーラスは肩をすくめるだけだった。「ナガ・クルは日々戦って生涯を過ごす。そうすれば彼らは死んだ後でも戦える」筋は通っている、と思う。
幸運なことに、私たちはそれ以上被害を出さずに逃げおおせた。だがあのナガ・クルのことはすぐに忘れられないだろう。間違いない。

マークマイアの諸部族:ブライトスロートTribes of Murkmire: Bright-Throats

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

数ヶ月前、私はマイアダンサーの長老に、ブラック・マーシュの沼地にはいくつの部族が住んでいるのかと尋ねた。彼は長い間静かに座ったままでいた後(アルゴニアンはよくそうする)、私の背後を指差した。振り返ると、イトスギの木々の間を何百匹ものホタルが飛び交い、薄暗がりを貫いて緑と黄色の光を発していた。「あの光と同じくらいだ」と彼は言った。

これはなかなか信じられなかった。アルゴニアンは大げさに言うことが多いので、長老のこの主張もまた誇張だろうと切り捨てたのである。しかし現地の人々とさらに時間を過ごした後、あの長老の数え方は当初私が考えたよりも実情に近いと信じるようになってきた。私はマークマイアだけでも、少なくとも12のはっきりと区別される部族を発見したし、これを遥かに超える数の部族がいることを確信している。部族の多くは敵対的なので、直接の交流は不可能に近い。だが彼らの存在を神話や伝説として片づけるには、あまりにも多くの証拠を見てきた。この日記は私がマークマイアの未開地を探検して発見した記録として使えるだろう。まずは多くのよそ者が最初に出会うであろう部族から始めよう。

リルモスで少しの間でも過ごしたよそ者の多くは、沿岸に住むいくつかの部族と交流を持つ可能性が高い。しかし最も注目に値するのは「ワッセーク・ハリール」つまり「ブライトスロート」である。大まかに言って、この部族はよそ者と沼の奥地のアルゴニアンの両方と実りある関係を好む、陽気な職人たちで構成されている。ブライトスロートはその豊かな音楽と踊りの伝統、そして商人や外交官、木工職人としての超自然的な才能によって知られる。彼らは数えきれないほどの品を作っており、その中には楽器や台所用品、鎧や武器も含まれるが、最も尊重されているのは「ジーチキ」つまり「種の人形」である。この人形の大きさはさまざまであり、オークの拳ぐらいの大きさのものもあれば、米粒のように小さいものもある。人形はほぼ常に現地の動物をかたどっているが、ブライトスロートは卵や小さなアルゴニアンに似せて種の人形を彫ることもある。

種の人形は非常に珍重されている――お守りとして、また工芸品として。安物の模造品が競争相手の部族によってよく作られるが、本物のジーチキを手に取ったことがあれば、見分けるのは容易である。私もここで過ごす間にいくつか購入した。一番気に入っているのは琥珀が散りばめられた小さな亀である。彫刻家が教えてくれたところによると、この亀は強大だが手に負えないトーテムであると言う。私は亀が特別手に負えないと思ったことはないが、それに関してはここの人々のほうが詳しいだろう。バンコライに戻り、最終的にウェイレストの家へ帰る前にもういくつか買うつもりでいる。

マークマイアの諸部族:ブラックトングTribes of Murkmire: Black-Tongues

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

今日、私たちは見慣れない光景に出くわした。空のフラスコが、フォッサの木の下に山と積まれていたのだ。案内人の説明では「ブラックトングがこの木を吸い出した」そうだ。彼はさらに「コタ・ヴィムリール」つまり「ブラックトング」とは、ブラック・マーシュのマークマイア地域に住む無数のアルゴニアン部族の1つだと説明した。好戦的なタム・タリールや不気味なヴィーシュクリールとは異なり、ブラックトングは基本的に礼儀正しく、物腰が柔らかである。状況さえ許せば。しかし、彼らは不意を突かれると反射的に暴力で応対し、縄張りに侵入する者たちを躊躇も慈悲もなく殺すことで知られている。優れた錬金術師である彼らはしばしば、よそ者に対する警告として、自分たちの縄張りを示すフラスコなど、錬金術の道具を置くのである。

ブラックトングは熱心なシシスの崇拝者である。そのため、彼らは自分たちの資源のほとんど全てを、可能な限り多くのシャドウスケールを生み出すことに用いている。シャドウスケールとは何か?私が聞きたいくらいだ。地元民の大半は、この話題についてよそ者と話し合うことをきっぱりと拒絶する。アルゴニアンの民は彼らを、畏敬と恐怖が混ざったと見られる気持ちで尊敬しており、その名を口にすることさえ文化的な禁忌とされているようである。私が出会った少数の、迷信の度合いが低いアルゴニアンたちは、いくつかの事実を教えてくれた。

どうやら、シャドウスケールとは高度な訓練を受けた暗殺者によって構成された、奇怪な修道院のような教団のメンバーであるらしい。影座の下に生まれたアルゴニアンは誰でもこの教団に渡され、その謎めいた殺人者の一員として育てられる。私は仰天してしまった。「そんな野蛮な実践に従っているとは、ただの敵対的な部族ではないのか?」と私は聞いた。だが、違う。これはどうやら全くどこでも見られる実践のようである。友好的なブライトスロートや賢いマイアダンサーでさえ、この伝統に加わっているらしい。

だが、ブラックトングはこの義務をとても真剣に受け止めている。彼らは沼地の植物や野生生物に関する知識を利用して、「薄闇の甘露」と呼ばれる強力な避妊薬を作る。この薬を飲むことで、この部族は産卵周期を一致させて、大量の新しいアルゴニアンを毎年、影座の下に産むことを保証している。

彼らの錬金術の能力は、影座に生まれた者たちが将来暗殺者となった際にも役立つ。ブラックトングはタムリエル全土でも最大級に強力な毒を作ることで知られている。薄闇の甘露でさえ、アルゴニアン以外が飲めば死を招く。ブラック・マーシュに見出されるものは全て、状況が許せば死を招く証拠がまた増えた。

コタ・ヴィムリールの成員に直接会って、彼らの錬金術の技術と謎めいたシャドウスケールとの結びつきについてさらなることを知りたいのは山々だが、招待もなしに彼らの縄張りに長居をするのは賢い行為ではない。朝の紅茶に毒蛇の牙を入れられるのは勘弁願いたい。

マークマイアの諸部族:マイアダンサーTribes of Murkmire: Miredancers

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私はこれまでにマイアダンサーの長老2人と話す光栄を得たが、どちらとの会話からも非常に多くのことを学んだ。自らを「ギー・ルスリール」と呼ぶ彼らは、私が旅行中に出会った中で最も内省的なアルゴニアンである。彼らはまた、最も好ましいアルゴニアンでもある。孤独を好み、用心深いことの多いアルゴニアンだが、私は彼らほど積極的に食事や、貝殻と石のゲームに誘うことを好む人々を見たことがない。彼らは熟練の職人であり、とりわけヒストの琥珀や卵の殻を加工するのに優れた才能を示す。彼らはまた比類なき航海士であり、縫製の達人であり、熟練の地図職人でもある。

しかしマイアダンサー最大の特徴は信心深さである。ヒストに対する深い信仰心によって、彼らは数えきれないほどの世代にわたって、「樹液と話す者」を任命する権利を得てきた。

私が話した長老たちによれば、樹液と話す者はヒストの直接の媒介者である(これにはもちろん、議論の余地がある。多くの部族はヒストと交信する特別の方法を誇っている。しかし私が見た限り、マイアダンサーが用いる方法は最も説得力がある)。樹液と話す者はしばしば何日も、それどころか何週間もの間隠遁生活を送るため根の奥深くに分け入るか、一番高いところにある枝の葉の層にまで登っていく。彼らはそこでヒストと交信する。実際、長老たちの一人が使った言葉は「旅」だった。

このヒストへの旅は樹液と話す者に多大な負担を強いるもので、徹底的に個人的な行いである。孤独に何日も過ごした後、樹液と話す者は姿を現し、古文書や巻物、石板を持って再び隠遁する。私はこの隠遁の目的を尋ねてみた。いつもどおり、答えは詳細なものではなかった。「樹液と話す者はヒストの抱擁へ入り、大いなる木から学ぶ」と、長老の一人は言った。「根や枝と密に触れていることで、樹液と話す者は幻視や、あなたにも私にも理解できぬその他の形の交信を受けるのだ」。

もう一人の長老は続けて言った。「示されるものの一部は、樹液と話す者にとってさえ神秘的で困惑するものと感じられる。私が聞いたところ、樹液と話す者は古代の隠喩やアルケインの秘密、そして樹液と果肉から離れた生き物には理解しがたい幻視を受け取るという」。どうやら、隠遁の第二期は樹液と話す者に、見せられた内容について考える時間と、以前の樹液と話す者による古い文書を参照する時間を与えるものであるらしい。適切な期間にわたって研究と熟慮を行った後、樹液と話す者は姿を現し、ヒストの意志を部族に明かすのである。

私は樹液と話す者が根や枝の間で瞑想している期間に何が起きるのか、もっと情報を得ようとしたが、長老たちがこれ以上のことを知っているのかどうか定かではない。彼らが教えてくれたのは、樹液と話す者が隠遁期に得られる唯一の栄養はヒスト自体から、樹液や葉、あるいはこれ以外の場合に禁じられている木の実によって与えられるということだった。

しかしながら、ヒストとの交信という贈り物には犠牲も伴う。ヒストの樹液を大量に摂取することは、アルゴニアンにとってさえ危険な行為である。樹液と話す者は樹液中毒の症状に苦しむことが多く、症状には「黄金舌」(口の色素が恒久的に金色に変化すること)や不意の幻覚、「樹皮の鱗」(鱗表面が分厚くなり、色も暗くなる)、その他にも彼らが話すのをためらうような病気がある。現在の樹液と話す者であるトゥマルズは、私が部族の村を訪問した際には隠遁中だった。いつか彼に会えることを期待している。彼が私の話した長老たちの半分の知恵でも持っていれば、多くのことを学べるのは疑いない。

その深い信仰心にもかかわらず、マイアダンサーはあらゆる種類のゲームにも熱中しているようだ。彼らが特に好むのは九つの貝殻、および貝殻と石のゲームである。また有名なスポーツ「テーバ・ハツェイ(ヒップ・アンド・テイル)」も人気だ。自分たちのゲームを嬉しそうに説明してくれるのに加えて、彼らは私たちがウェイレストでどんなゲームを嗜むのかについて、私が教えられる限りのあらゆることを知りたがった。彼らの情熱が移ってしまったことは認めねばなるまい。彼らが私の漠然とした描写に基づいて「詐欺師の骨」を再現しようとするところを見るのは、非常に面白かった。

マイアダンサーは常習的なギャンブラーであるが、しばしば賞金を受け取るのを忘れてしまう。人間やエルフのするゲームとは違い、マイアダンサーの競技は悪意や意地の張り合いとは全く無縁のようである。勝利や敗北は目標ではなく、おまけにすぎないように見える。これは沈着冷静な彼らの気質に負うところが少なくないだろう。大抵の物事におけるのと同様、彼らは厳密に今、この瞬間に集中する。彼らの村を離れるのは心苦しいが、まだまだ研究しなければならない部族が多くいる。もっともマイアダンサーほどに魅力的で、友好的であろうとは思えないのだが。

マークマイアの諸部族:ルートハウスTribes of Murkmire: Root-House People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

今日もまた危ない目に遭った。現地の案内人の激しい抗議にもかかわらず、探検隊はケール・サッカ川を橋で渡ることに決めたのである。案内人たちの1人(明るい色の鱗を持つアルゴニアンで、名をリーラスと言った)は、遥か下流を歩いて渡河し、橋は避けるように強く言ってきた(念のために言っておくと、私はこの計画に賛成だった。リーラスの案内は誤ったことがなかったからだ)。しかしグループの中には、辛い作業や危険な環境に慣れていない学者が数多くいた。私たちは危うく、彼らの快適さのために命を失うところだった。

後で判明したのは、この橋は「タム・タリール」あるいは普通の言葉で「ルートハウスの民」と呼ばれる部族によって「所有」されていることだ。彼らは好戦的で、争いを好む民である。怒りっぽく、残虐性と気の短さで沼中に知られている。彼らは平和な村を襲い、居住者を殺し追い払うのを習慣としている。その上で空になった小屋に住み着き、村の資源を使い尽くしてしまうのである。他のサクスリールはこの部族を「盗賊ガニ」としばしば比較する。カタツムリや小さいカニを食べ、空いた殻に引っ越す生物だ。

我々が橋に足を踏み入れるや否や、この部族の成員が数人、私たちの隊商の前に立ちはだかった。彼らを見た瞬間、自分たちが危機に陥ったことが分かった。タム・タリールは私がこれまでに出会った他のアルゴニアンよりも明らかに大柄であり、肩幅が広く、目は細く、顎は幅広で力強い。彼らは腰布と戦化粧の他は何も身につけておらず、羽根で飾られ、血が染みついた巨大な木の棍棒を手にしていた。

リーラスは素早くキャラバンの先頭に歩み出て、必死な鳴き声で話し始めた。彼女が何と言っていたのかは見当もつかないが、タム・タリールは少しの間、彼女の言葉を考えていたようだった。リーダーは私たちを指差し、低くゴロゴロいう唸り声で何か言った。リーラスはこれにうろたえたと見えて、私たちのほうを向いた。

「彼は馬を欲しがっている」とリーラスは言った。

黙って従う以外の選択肢がないのは明らかだった。私たちは綱を切って馬を放した。4頭全てをだ。ルートハウスの民はそのうち3頭を取り、道を外れて沼へと連れていった。賊のリーダーは4頭目の馬を橋の中央まで連れていき、数歩下がってから、吐き気のするような鈍い音と共に、棍棒を馬の頭蓋骨に叩きつけた。哀れな獣の頭はグシャグシャになってしまった。あんな恐ろしい光景は見たことがない!私の同国人の1人は荷馬車の脇で吐いてしまった。リーラスは間を置かず、一行のうちで一番力のある者たちを集めて橋の反対側まで荷車を押した。幸運にも、次の村に着くまでは半日押し続けるだけでよかった。これからは皆、リーラスの言うことに従うだろう。

マークマイアの諸部族:部族間のつながりTribes of Murkmire: Tribal Connections

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私はここの部族については測り知れないほど多くのことを学んだが、部族間の関係性についてはいまだ重要な洞察が欠けているような気がしてならない。ここには奇妙な友好関係があり、私がこれまでに見てきたほとんど全てのことと矛盾している。暴力的な略奪や死者盗み、密漁があっても、アルゴニアンの種々の部族は互いを卵の兄弟、姉妹として見ている。例えば先日、私はブライトスロートの一家がタム・タリールの略奪者数人とテーバ・ハツェイで遊んでいるのを見た。これは武力衝突によりタム・タリールの1人が命を落として、たった数時間後のことだった。まるで忘れっぽさを強制されているかのようだ。あるいはあらゆる部族間の関係を規定している、特別な許しの文化があるのか。

少なくともこうした友好的な振る舞いの一部は、彼らが人種共有しているという事実に根差しているに違いない。ブラック・マーシュの諸部族は互いの違いを脇に置いて、モロウウィンドやシロディールの侵略者を追い払わねばならない状況が無数にあった。彼らはまた、自分たちがいかに互いに依存しているか理解しているようでもある。この点で、彼らは私がこれまでに会った人間とエルフの大部分よりも遥かに上だ。タム・タリールは自分たちが盗む家や物を作る他の部族が必要だということを認識している。マイアダンサーは国境を守り、大型の沼の捕食者を追い払うためにデッドウォーター族が必要だということを知っている。ブラックトングは錬金術の調合に使うための作物を育てるヘー・テプスリールが必要なことを知っている。ブライトスロートは、誠実な交易を妨害する悪意のよそ者に「沼の法」を強制するため、ブラックトングのシャドウスケールが必要だと知っている。こういった具合だ。

宗教もまた一定の役割を果たしている。私は友人のエウテイになぜ彼らはこれほど寛容なのかと聞いた。彼は輪廻に関する漠然とした信念に言及した。

「我々は皆、根の民だ」と彼は説明した。「ブラックトングは時が来ればマイアダンサーになるかもしれないし、マイアダンサーはブラックトングになるかもしれない。そういうことはヒストだけが知っている。互いを憎むことは我々自身を憎むことだ。サクスリールにとって、自分を憎むことに何の得がある?忘れて、前へ進むほうがいい」

いくらか考えを巡らせてみたが、私たちも少々忘れっぽくなったほうが役に立つこともあるのではないか。そう思わずにはいられない。

より明敏な言語:ジェル語入門The Sharper Tongue: A Jel Primer

魔術師ギルドの秘術師、道を照らす者 著

アルゴニアンの会話におけるニュアンスの多くは、あからさまな隠喩とさりげない動作から生まれるものだ。しかし、ジェル語は学びにくい言語だと感じる者が多い。しかし、共通語を話していても、私たちが母語をたくさんちりばめていることに気づくはずだ。

ほとんどの言語と同様に、旅人なら鍵となる言葉やフレーズを学ぶと、ブラック・マーシュの部族を理解して交流するために役立つだろう。よそ者の関係改善に役立つように、ブラック・マーシュを訪れる者のための短い手引きを書くことにした。この手引きがより良い旅の始まりになることを祈る。

ビーコ:友人。変化形としてディーク・ビーコ、ラジ・ビーコ、ビーク・オジェル、ウクシス・ビーコがある。

ボク:器。深い丸皿、もしくは丸いカップのような空洞。

ディーリス:教師。もっと正確に言うと、知恵を他の者に伝える者。誰にとっても誉れある称号。

グリール:敵。サクスリールは数多くのヒストの下にある1つの民だと信じられているため、他の部族を表現するには滅多に使われない。敵対的な獣やよそ者に対して一般的に使われることが多い。

ハジ:隠れる、隠れた。ハジ・モタの名前の一部に使われているのも納得できる。

カール:戦闘隊長。この称号は特に暴力的な部族で崇められている。

クロナ:大きい、巨大な。「あいつの足はクロナだ!」のように、誇張や冗談で使われることが多い。

ルキウル:非アルゴニアン文化に順応したアルゴニアン。彼らはブラック・マーシュの民からよそ者扱いされることが多い。

ナヒーシュ:部族の長老。尊敬されているが、この称号は一部の学者の説と異なり、地位や権力とは関係ない。

ナルパ:ひどい。直訳は「腐った」だが、ひどい出来栄え、ひどい性格、ひどい料理などを表現するのにも使われる。

ノルグ:禁じられた。ほとんどの禁じられたものは話題にしないので、私の文化ではほとんど使われない言葉だ。

オジェル:部族の者ではない、よそ者。文字通りには「アルゴニアン語を話さない者」もしくは「ジェル語の話し手ではない者」の意。

リール・カ:戦士。力を示せば、いずれはカールになることもある。

サクスリール:アルゴニアン。細かく言えば、アルゴニアン語でアルゴニアンを表わす言葉。

スティシル:卵。この言葉は言いづらいと感じる者が多いようだ。スティシルはサクスリールの文化において重要なものなので残念だ。

ツクシス:蛇。目的を達成するために卑劣な手段を使う者のことを言い表すにも使われる。

トテイク:素晴らしい。対象となるものについてとても強い意見を示すので、たまにしか使われない言葉だ。もし使うのであれば節度を持って使うこと。

ツォナ:泳ぐ(ちなみに、ブラック・マーシュの沼で泳ぐことはお勧めしない)。

ウクシス:巣、家、ベッド。私たちにとって、これらのコンセプトは同じである。誰かのウクシス・ビーコになってほしいと言われたら注意すること。

ヴァステイ:変化。おそらく私たちの意欲の背景にある原動力。変化に逆らうことは究極の愚行として知られている。

ザル:怖い。他の言葉やフレーズと合わせて使われることが多い。例えばジンチェイ・コヌは、ザル・ヴァステイを起こすことで有名な記念碑だ。

ジーチ:木の実、種。さらに、始まり、誕生、まだ見えない潜在力を持つもの。

ズル:死、または死に関係があるもの。私たちからすると同じものとして考えられるため、復活も意味する。

バッカ:太陽。私たちが太陽を崇拝すると信じている学者がいると読んだことがある。それは誤りだ。太陽の温かさと日光浴は好きだが、それだけだ。

リー・ナカルの命令Ree-Nakal’s Orders

あのブライトスロートの女はますます取り乱している。私を信用してくれと言っておとなしくさせているが、いつまでもつか分からない。ブライトスロート村付近にある、ドラゴンソーンの乾いた草地でハクサラを待ち、彼女が自白を決断する前に黙らせろ。

リルモスの歴史A History of Lilmoth

ウェイレストの放浪者、ティリリャ・レン 著

リルモス、ブラック・マーシュの膿んだ宝石。マークマイア最南端の港であり、その先にある自然の沼への入口である。商人や旅人は泥だらけの通りを歩き、湿度が高いので肌の上で汗がしずくへ変わる。ブラック・マーシュの中で、これほど洗練された街はない。

ただし、実際のところは帝国支配の時代から数十年経った今、そもそも他の街に出くわすことがない。元帝国都市のリルモスにも、今では帝国の影響がほんのわずかしか残っていない。沈みかけた屋敷に飾られた絵が、苔に覆われて腐りかけている姿が見えるだけだ。アルゴニアンがブラック・マーシュを取り戻したように、沼がリルモスを取り戻したのだ。

しかし、リルモスの基礎を作ったのは鱗だらけの手ではなかった。それは、街を築いた狐の民を示す独特の名前からすぐに分かる。残念ながら、リルモシートの住民はナハテン風邪で全員死んでしまったので、もうリルモスにはいない。タムリエル中から来た商人と、近くの部族から来たアルゴニアンの旅人が街を占有している。

まともな権力構造が存在しないため、影響力のある商人が集まる議会が街のほとんどの問題に対応している。彼らは港の関税に目を配り、リルモスの街を巡回する衛兵を雇っている。さらに、全ての非住民に対して略式の裁判制度を使って裁きを下す。ただし、うまく賄賂を使えば、口のうまい弁護よりも早く問題を解決できることはよく知られている。

マークマイアの民には、もっと構造的ではない裁きの制度がある。周囲の部族では木の番人と戦士長が紛争のほとんどに決着をつけるのに対し、リルモスにはそのような法的制度が存在しない。リルモスで1年過ごしたが、多くのアルゴニアンがスラーキーシュという名の年長のアルゴニアンに従っていることに気づいた。彼らの社会における彼女の役割はよく分からないが、どうやら彼女は仲間内で尊重される裁定者として見られているようだ。

まだ荒削りではあるが、元は戦い、海賊、政治的紛争の巣だったリルモスはずいぶん変わった。今ではマークマイアの風変わりな謎を、広大な沼の危険に身をさらすことなく経験したい者にとって、素晴らしい場所であることに気づくだろう。私のように、アルゴニアン文化の奇抜さに引きつけられた者なら、ぜひ訪れるべき場所である。

ロスガーからリルモスへ:ある鍛冶師の物語、第一巻From Wrothgar to Lilmoth: A Smith’s Tale, Vol 1

熟練の鍛冶師ガルノザグ 著

俺はただの年老いた武器職人で、武器こそ命だ。まだ牙も小さいヒヨッコだった頃、俺はオルシニウムの大鍛冶場に忍び込んで、達人たちが仕事をするのを見ていたものだ。そのうち俺は見習いになって、鍛冶場の端から端までスラグを運んだ。そうして一人前になり、頭から爪の先まで煤と汗まみれになった。最終的に、俺は偉大なる熟練の鍛冶師に加わった。鉄をたわめ、鋼鉄に槌を打ち付けて過ごした年月の間、俺は金属以外のものを使って武器を作る可能性なんて一度も考えなかった。そりゃ、結んで縛るにはマンモスの革とかも使ってる。時には絹を着て生まれてきたような洒落者が、宝石をはめ込んでくれと求めてくることもあった。だが金属は俺の技の心臓だ。ここリルモスの武器職人に出会った時の俺の驚きを想像してみてくれ。

俺はいつも、タムリエルの南方にはそのうち行ってみたいと思っていた。戦争が始まった時、今行けばいいじゃないかと思った。カバナントの補給係に装備を売ってがっぽり儲けることもできた。だがブラック・マーシュにはなぜか、いつも俺の好奇心を刺激する何かがあった。

このトカゲの民が戦闘で木の棍棒を身につけているという物語は耳にしていた。俺は蛮族がシューシュー言いながら亀甲の兜と粗雑な革のグリーヴを付けてるところを想像してたんだ。完全な間違いだったと躊躇なく認めよう。ここのアルゴニアンたちは、俺に想像もできなかったような方法と素材を使っていて、結果は驚くべきものだ。メモは取ってるんだが、役に立つかどうか疑わしいな。素材の半分はブラック・マーシュでしか見つからないし、何十年も金属を叩いてきたこの手じゃ、細かい仕事までやれるかどうか自信がない。それでも、学ぼうとしない鍛冶師なんて何の役にも立たない。だからここにいる。あのトカゲどもに少々教えてやろうと思ってたんだが、俺のほうがたくさん学べそうだ。

ロスガーからリルモスへ:ある鍛冶師の物語、第二巻From Wrothgar to Lilmoth: A Smith’s Tale, Vol 2

熟練の鍛冶師ガルノザグ 著

今日もリルモスにいる。地元の武器職人で、シュケシュという名の年寄りで狡猾なアルゴニアンは、俺の眼鏡にかなう女だ。彼女は真面目で仕事熱心、しかも少々頑固だ。俺は彼女にオークの血が半分入ってるに違いないと言った。アルゴニアン特有の作り笑いをされた。本気で面白がっているとも、全く賛成していないとも取れるあの笑いだ。俺には違いがさっぱり分からん。最初に会った時、彼女は「トゥシック」の剣を作っていたが、これを「剣」と呼ぶべきなのか自信はない。正直に言って、これがどういう種類の武器なのか分からない。棍棒と剣が子供を産んで歯を半分取っ払い、残りを削って牙にしたような感じだ。もう少し詳しく説明したほうがいいかな。

このアルゴニアンの鍛冶師はまず、ある長さの木を手に取る。自分の腕の長さでもいいし、尻尾の長さでもいい。彼女は一週間かけてこの木を削り出し、櫂の形にする(俺は製作中のものをいくつか見せてもらったが、船の櫂と見間違えた)。多くのアルゴニアンはこの木を染色するだけで次の段階に進んでしまうが、老シュケシュは達人だ。俺には分かる。彼女は自分の欠点を根気で補っている。彼女は骨と精密に削り出した黒曜石のノミを使い、櫂の表面に装飾を刻んでいく。こうした模様の大半は抽象化された動物の形だ。クロコダイルとかな。だが模様の中にはいくつか、ちょっと不気味なものもあった。特にあるトゥシックにはぞっとさせられた。それは暗く着色された頭蓋骨に、隆起と棘がついたもののように見えた。彼女は「特別な客」のためのものだと言っていた。その客には会いたくないな!

木が硬化して染色と研磨が終わったら、シュケシュはそれを脇に置いて、仕事の次の段階に取り掛かる。つまり石の彫刻だ。シュケシュによると、この工程にはあらゆる種類の石を使っていいが、彼女は黒曜石を好むそうだ。原石は削られてナイフの刃のように鋭くなり、粗雑な四角から均一に削られた牙になる。この「歯」を削り出したら、シュケシュは木や骨の釘、煮沸したデパッサ・ガムを使ってこいつを櫂に取り付ける。

デパッサ・ガムというのは、奇妙なねばねばした物体だ。エシャテレの脇の下みたいな臭いがするが、ペーストのように木や石にくっつく。いったん固くなると引き剥がすのは不可能に近いが、アイアンウッドの若木のように軽く柔軟だ。俺はシュケシュに、こいつは俺が皮を固定する時たまに使う、マンモスの下地を思い出させると言った。彼女は特徴的な鳴き声をあげてこう言った。「木を刈るほうが、マンモスを狩るより簡単じゃない?」。それには同意するしかない。

歯がしっかりと所定の場所にはまったら、シュケシュは持ち手に革や樹皮の切れを巻き付け、どんなに雨や血で濡れても滑らない握りを作る。これで武器は完成だ。金属は一切使われていない。もっとも、この作品を完成させるため、彼女はほぼ3週間を費やした。

トゥシックの最も驚くべきところは、武器それ自体(これもまた素晴らしい出来栄えなのだが)ですらない。凄いのはこれの製作に伴う技術だ。シュケシュはただの鍛冶師じゃない。彼女は木工職人であり、錬金術師であり、石細工職人であり、縫製職人でもある。どれか一つを極めるにも一生を要するのに、彼女は4つ全てに熟練している。ほとんど恥ずかしくなるほどだ。暇を見て俺も木工を練習したほうがいいかもしれない。なんてな!無理に決まってる。結局、年寄りのオークに新しい芸は覚えられない。

ロスガーからリルモスへ:ある鍛冶師の物語、第三巻From Wrothgar to Lilmoth: A Smith’s Tale, Vol 3

熟練の鍛冶師ガルノザグ 著

アルゴニアンの「鍛冶場」は奇妙な場所だ。鍛冶場というより作業所に近い気がするな。この場所に入った時、故郷で馴染んでいた音や匂いには全く出会えなかった。金床を叩く音も、石炭の煙も、冷却用の桶がジューっという音もなし。不気味なほど静かで、ノミや斧、変な液体が入った木の桶、積み上げられた石、死んだ鳥、生きたナメクジ…こういったものがたくさんある。

最初の1週間ぐらい、俺はシュケシュの作業所で居心地悪く感じた。彼女はあまり口数が多いほうじゃない。最初の数日の間に彼女が出した唯一の音は、何かが完璧に計画どおりにいかなかった時不意に出てくる、イラついたシューシュー声だった。古いジェルの民謡もいくつか歌ってた。もっとも「歌」と呼べるのかどうか分からんが。初めて聞いた時、彼女はそこらじゅうをうろつきまわってるトカゲを殺してるのかと思った。ここはあいつらの巣窟になってるんだ!

そのうち、シュケシュは俺に話しかけてくるようになった。最初の頃の話は大抵、俺に鱗がなくて不愉快だとか、俺の目がビーズみたいに丸いとか、そういうことだった。彼女が俺を馬鹿にし始めた瞬間から、すぐに仲良くなれると分かったよ。シュケシュが教えてくれた最初の秘訣は「ナメクジ型」の技術だった。どうやらブラック・マーシュには大量のナメクジがいるらしい。俺の故郷でこのねばねばした生き物はあまり見かけないし、見かけてもすぐに踏み潰して、ブーツが汚れたのを不快に思うぐらいだ。だがここリルモスでは、どんなものにも意味がある。大半のナメクジは食料にしかならない(聞いた話だ。俺は4つ足でないものは食べない)。だが一部のナメクジには驚くべき使い道があるらしい。そういう特別なナメクジの一種は「ジャッサ・レッド」と呼ばれ、一風変わった防衛手段を持っている。脅威にさらされると、このナメクジは酸性の粘液を噴出させる。食べられそうになった時にそれがどう役立つのかはよく分からんが、この酸性の粘液はアルゴニアンの武器職人にとって有用なのだ。

シュケシュが自然の意匠を作品に組み込みたい場合は、このナメクジを木や石の上に置いて、ナメクジのすぐ後ろで繰り返し火打ち石を打ち合わせる。火打ち石の位置を調節すれば、ナメクジを様々な方向に押しやれる。ナメクジは木や石の上を動くにつれて酸性の粘液の細い線を跡に残し、長くなめらかな道が素材の上にできていく。粘液の働きは使われる素材によって異なる。粘液の作用は自然の着色料にもなり、その色は薄茶色から輝く黄色まで様々だ。

シュケシュは試しに俺にやらせてくれた(何の価値もない割れた材木で)。予想はしていたが、俺は下手だった。俺はグチャグチャな溝を作ってしまった。それも全部不気味な緑色の斑点に染まって。気持ち悪くなって火打ち石を投げ捨てたら、シュケシュは笑ったように思えた。本人はただの咳払いだと言って、このナメクジ型は完全に「ラジプ」だと言った。ラジプというのが何なのかよく分からなかったから反論はしなかったが、推測はつく。とにかく、俺には皮膚を焼く鼻水のねばねばした塊より、金槌と鋏のほうがずっといい。

韻と鐘Rhymes and Chimes

編訳 チャク・シュシュ

卵の番人の子守歌(作者不明)

小さなスティシル、小さなスティシル
樹液を飲み干して
小さなスティシル、小さなスティシル
さあお昼寝をして

小さなスティシル、小さなスティシル
殻の中で眠りましょう
小さなスティシル、小さなスティシル
世話をしてあげましょう

小さなスティシル、小さなスティシル
そっと寝返りをうって
小さなスティシル、小さなスティシル
固くしっかりと育って

ヒスト賛歌(作者不明)

我らが生まれた根の中に
あなたの樹液を浴び、姿を形作り
我らはここに集い、あなたの賛美を歌う
あなたが育みしものへ感謝を捧げる

風が鐘を優しく撫でて鳴らす
泥が全ての苦しみを貫いて固く抱きしめる
雨が黄金の陽光を越えて根に辿り着く
太陽が命ある間、葉に口づける

全ての小枝と大枝を祝福しよう
その下で我らは誓いを立てよう
繊細な樹皮と花を祝福しよう
祝福されしあなたを、我らのヒストと呼ぼう

童謡 ミンメ

チリン、チリン、虚ろな鐘
韻に合わせて鳴るね
愛し子のいる巣に思いを寄せる
勝ち得た眠りに落ちる

あなたは容易に揺らいで踊る
夜の優しいそよ風に乗る
怠惰な流れの思いが起こる
喜ばしい夢に渡る

チリン、チリン、虚ろな鐘
韻に合わせて鳴るね
夜の霧の中を率いる
ヒストの根に帰る

番人の根 チャク・シュシュ

あなたの腕の下で
抱かれて横たわる
朝露にしっとりと湿って
過ごした時間がもつれ合う

太陽の口づけを浴びて
湿気を帯びた空気のように熱くて
息は霧のように吐き出され
熱気が耐えられなくなるまで

私は鱗を濡らし、泥で整える
優しい大枝が影を作る
愛しい根の中で、私は血を冷ます
まどろみ始める

あなたはそっと子守歌を歌う
そよ風の中の鐘の歌を
心の目にあなたの種を植える
そして与える木々の夢を

影の道The Way of Shadow

ソリス・アデュロによる翻訳

見習いとして、諸君は常に自らの力の源泉を覚えておかなくてはならない。我らの主人の気まぐれ一つで、力が奪われてしまうこともあるからだ。諸君は多くの他の勢力に誘惑されるだろう。それらの多くは我らが父に似た仮面を被っている。彼らは父が持つ顔と同じぐらい多くの名を持つ。諸君が影のルーンを引き出す時、思い出すべきは父の全ての顔であり、彼らの顔は一つとして思い出してはならない。

また、光なくして影はないことも忘れてはならない。光がなければ虚無があるのみである。我々は父の顔を崇拝するが、避けられないものに向かって進む労力を払うのは我々の定めではない。太陽は血を流す黄身であり、我々はそれを飲むのである。

それまでの間、我らの鱗が黒くあり続け、影の席に仕えられるように。

影の鱗Scales of Shadow

ニッソ・ゼーウルム 著

暗闇の星々よ、星座よ、
集めるべき星を教えたまえ
必要な子供たちに与え
必要な道を教えるため

影の鱗よ、死の手よ
汝の刃によりシシスは名誉を得る
必要な変化を生み出すため
流されるべき血によって

汝は一党に入る
唯一の真ならざるものに導かれて
我らの無の言葉を覚えよ
無が見るものを見よ

ある日、汝の鼻が青白くなる時
汝は沼へ帰る
暗闇は汝の心に留まる
汝の鱗はいまだ影なれば

解き放たれしドラキーの日記、3ページDrakeeh the Unchained’s Journal, Page 3

私の祖父はまさにこの壁の中で鎖につながれていた。彼は私よりも毒舌だったが、彼の心は同じ憎悪で満ちていた。故郷から連れ去られ、インペリアルは彼を自分たちの意志に従わせようとした。ナガ戦士の曲げられない精神を曲げることを。

彼らは失敗した。侮辱するたびに彼の決意は強くなった。鞭を使うたびに彼のかぎ爪は鋭くなった。つながれた鎖は彼を強くするだけだった。彼は卵の兄弟を集め、心に戦士の歌を歌った。共にブラックローズ監獄を、鎖で縛った帝国のクズどもから奪った。

しかし他の部族がその戦士の歌を聴いた時、彼らは恐怖で萎縮した。祖父の心の中にある憎悪を見て、彼が毒されていると考えた。彼らは怒りを忘れるように、帝国の罪を忘れるように言った。ヒストの葉の下でもう一度踊るように、地平線を憧れのまなざしで見つめるだけで満足するようにと。

私の祖父は、それが愚かなことだと考えた。彼は新しい部族の族長、ラジカールになっていた。自分たちを迫害した者たちの道具を利用した。肌の乾いた者の監獄を取り戻して自分の砦にし、彼らの武器を自分の力にし、彼らの鎧を自分の保護に使った。そうして、かつて彼らを拘束していた鎖を振り回し、ブラックガードは生まれた。

解き放たれしドラキーの日記、12ページDrakeeh the Unchained’s Journal, Page 12

あまりにも長い間、私たちは卵の兄弟だけを仲間にして戦った。優秀な戦士ではあるが、数が少ない。私たちの力には限りがあり、活動範囲はちっぽけで、虫のように影をはい回らざるを得なかった。ただの盗賊に成り下がっていた。邪魔な存在なだけだった。

私は変化をもたらすのが賢明だと悟った。数を増やし、影響力を拡大するには、仲間が必要だった。肌の乾いた者が組織に入ることを許し、彼らを私たちの力にするのだ。そうしてブラックガードは大嵐のように、打ち寄せる波のように大きくなった。

しかし目の曇った者たちは、身内を疑った。私の指導力に疑問を持ち、昔のやり方に目がくらんでいた。怒りに満ちた声で叫び、それはどんどん大きくなった。私は彼らを落ち着いて観察した。シシスが、変化は常に混乱につながり、同様に混乱は血につながると教えてくれた通りだった。

そうして私の試練は生まれた。私の決断を疑う者は、仲間である肌の乾いた者の戦闘能力を試す機会を与えられた。そのような挑戦に成功した、数少ない者たちはどうなるのか?彼らは私の相手をする。彼らが疑問視しているのは私の命令で、指導者としての強さだったのだから。

私の前にいたシシスのように、私は破壊と創造を両方行い、疑う者を始末し、従う者を強くした。そうして、ブラックガードは復活した。

解き放たれしドラキーの日記、17ページDrakeeh the Unchained’s Journal, Page 17

誰かが私たちから逃げることはあまりない。ブラックガードに存在するのは、忠誠と死だ。そのため、誰かが私たちの手から抜け落ちる時、私は忘れない傾向にある。

その男は闇を探す者と名乗っているが、私はピマクシ・タイードと言う名を知っている。かつて奴は卵の兄弟であり、戦士であり、ブラックガードだった。今では盗賊の巣に隠れている。なぜマークマイアに戻ることにしたのか、私には分からない。だが、何としてでも後悔させてやる。

奴を私の試練で戦わせるように計画した。目の前で奴がぼろぼろになって死ぬのを見るのは面白そうだ。しかし斥候の話で、奴の仲間が私の砦をうろついているのが目撃されたと聞いた時、私にはどうすべきか分かっていた。

ピマクシ・タイードがゆっくりと苦しみながら死ぬのを見れば満足感が得られるだろうが、奴とそのウッドエルフには絆があるに違いない。ならば、その心を殺してやろう。明らかに大切な存在であるその者の死を自分が引き起こしたのだと悟って、目に不幸がわき上がる様子を見るのだ。

殺すのは後でもいい。今は、手紙を書いてウッドエルフに選択肢を与えよう。報復を遂行するのはそれからだ。

壊れたジンチェイ・コヌThe Broken Xinchei-Konu

黒き棘が崩れた監獄を覆い
根の獣が門の側に潜む
太陽は獣に喰われ、もはや輝かぬ

その枝から離れた実は
苔むした石の上に落ちた
実は東を見る、海へ向かって

淀んだ沼の奥深く
積まれた石に生える芽一つ
捨てられた巣、入るものもなし

沈没船の葦は腐れ落ち
北へ向かい、通り過ぎる交易船が
ヒストの若木に影を投げかける

虚ろなこだまの中、轟く根の向こう
成熟せしヒストは佇む
風の吹きすさぶ洞窟の奥深くに

海と沼が出会う場所、崖の縁の下
黒に覆われたインペリアルの石の陰
冷たい水の中に、年老いたヒストは座る

ヒストなき街の外れ
卵の籠はうずくまる、石造りの巣に
肌の乾いた、定まらぬ手が築いたもの

石の蛇は石の卵を守る
過去の愚行の二柱の間
西には、ハジ・モタが潜む

枯れゆく根の地下室にて
高くそびえる石の背後に
トカゲは座り、待っている

死の水から北
沼の端には根が潜む
その腹の中には、歩くトカゲ

虚無の口の下で
歩く根は我らの一族を飲んだ
轟音を立てる滝の下で

死の最後の季節は
根の最後の敵の内に横たわる
ささやく根が聞こえるほどに近く

蛙の演奏On Playing the Frogs

愛しいヘルガへ

君は先日私が見たことを信じないだろうな。リルモスを通り抜けようとしたら、アルゴニアンの音楽家の小さな集団に出くわした。ほとんどの者は粘土のフルートとトカゲ皮の太鼓を演奏していたが、1人だけ今までに見たことのないイカれた楽器を演奏していた。彼はそれを「ヴォッサ・サトル」と呼んでいた。どうやら、ヴォッサ・サトルにはいろいろな種類があるらしい。口琴のような小さなものから、パイプオルガンのような大きなものまで!我が新しき友のヴォッサ・サトルは、雌鶏くらいの大きさだった。音もちょっと雌鶏に似ていたな。

楽器の見た目は、上部にバルブが連なって付いている、磨いた木製の貝殻のようだ。貝の各部分は意外と小さくて、ラッパのような口がついた仕切りのある空洞になっている(見たやつには5個あった)。音楽家によれば、小部屋はそれぞれ大きさが異なっていて、異なる音色を生み出すんだそうだ。

で、これが一番イカれた点なんだが、奴らは生きた蛙を中に入れるんだ!友人は親切にもヴォッサ・サトルを開けて中にいる5匹の小さい蛙を見せてくれた。1室に1匹ずついるんだ!彼はまるで母親が生まれたばかりの子を自慢するように、蛙について何やら並べ立てていたよ。彼は蛙の名前、好きな遊び、好きな食べ物について教えてくれた。唯一教えてくれなかったのは見つけた場所だ。どうやら産卵池の場所は極秘らしい。

彼は毎回演奏の前に、数滴の蛙香を小部屋に吹きかける。これで蛙たちが興奮して、どうかしたみたいに甲高く、ケロケロ鳴くようになる。バルブを押すことで、他のは開いたまま特定の小部屋の音を弱められる。これで奇妙だけど、調和のとれた音が出せるんだ!ほとんど信じられなかった!即座に楽器を買い取ると申し出たんだが、断られた。まあ、それで良かったのかもな。蛙たちがウィンドヘルムの冬を生き延びられるかどうかは怪しい。結局、君のためにはフルートを買ったよ。一番ワクワクするような楽器じゃないけど、君が好んで吹くあの古い山羊の角笛よりは、いい音を間違いなく出せる!

カイネの天啓を込めて

トラルフ

蛙の集め方ガイドA Guide to Gathering Frogs

友のビーコよ!

ジミラ船長にプレゼントするヴォッサ・サトルを完成させるために、お前には以下の蛙を集めてきてもらいたい。

必要なのはアシゴケガエル、ルビーホッパー、インディゴツリーガエル、太陽に祝福されし蛙だ。これらが最も広い音域を出せる蛙なのだ。

まず、リルモスの東にある湿地の茂みにいる、アシゴケガエルを何匹か探してくれ。こいつらはとてもおとなしく、捕まえやすい。

次に、ルビーホッパーを探すんだ。この珍しい赤いカエルは、リルモスの水辺にある石の上で陽を浴びるのを好む。だが、気づかれないように近づけ。でないと怖がって逃げて行ってしまう。そうなったら、怯えた蛙は街の中心にある大きな木に隠れることが多い。

インディゴツリーガエルを捕まえる手順は少々複雑だ。この蛙が住む木を見つけたら、ニクバエを何匹か集めてくれ。この青い蛙の大好物なんだ!ニクバエを木の下に放してみろ。下に飛び降りて食べに来たら、捕まえればいい。

最後だが、太陽に祝福されし蛙は一番捕まえるのが難しい。泥の穴からこの蛙をおびき出すには、騙して交尾の時間だと思わせる必要がある。そのためには、まず蛙を引き付ける匂いを出す材料を集め、隠れ家から出て来るようにしないといけない。

匂いを作るためには、以下の植物を集めてくれ。ニオイスゲ、シオイグサ、ワライアオイだ。これらを組み合わせて、蛙の香を作るんだ。香が出来たら、蛙の泥穴を探す。そして蛙の香を自分にかけて、クロークホイールを使うんだ。香の匂いとクロークホイールから出てくる鳴き声があれば、きっと太陽に祝福されし蛙をおびき寄せて捕まえられるはずだ。

幸運を祈る!

虚ろなる者の成長Development of the Hollow

我らのヒストは無駄と、他の部族たちの我がままを認識している。彼らは太陽に愛された自らの地で、豊穣な生活を楽しんでいる。彼らのヒストは何も求めず、彼らもまた何も求めない。卵でさえ有り余っており、奴らのヒストは何の使い道も持たないほどなのだ。巣全体が捨て去られ、忘れ去られている。深い沼のリヴァイアサンに子供たちの集団が飲み込まれる苦痛を彼らは知らない。枯れた根も正しく世話すれば生命を得て膨らむことを忘れているのだ。私はあの虚ろなる殻のために目的を見つけてやろう。そうすれば、我々のヒストは再びその根を価値ある子どもに巻き付けてくれるだろう。

失敗。大量の失敗だ。予測済みのことではあった。虚ろなる卵に真の生命を吹き込むのは、捨てられた肉体をなだめすかして生者の行動を思い出させるように単純なことではない。

ブラックトングの霊薬は卵の成長を促進するが、荒っぽく無秩序な代物だ。腫瘍に似た原始的な肉の突起は、私が探し求めていたものから程遠いが、生命は生命だ。必要なのは導き手だ。何をすべきなのかは分かっている。

サクスリールになるはずだったものの萌芽は見える。最初は歯や鱗、あるいは背骨が、形を成さない塊に混じって卵から孵る。樹液は何をすべきか知っている。しかしまだ要素が足りない。時が来れば、この謎への答えが分かるだろう。

私は生命を創造した。短い命だったが、命には違いない。孵化したサクスリールは奇形であり、数時間生き残った者は少数だが、私は正しい道を進んでいる。

これらの卵を次々に孵化していったことで、自分が探し求めているものからどれだけ遠くにいるかようやく理解した。困難を乗り越えるたび、それが前回の困難とは比較にならないほど大きなものだと分かる。子供の成長を促進させることで、生き延びるための体の組成を与えてやることはできたが、身体的な異常を排除してさえ、やはりあれは虚ろなる者だということが明らかになった。サクスリールなのは形だけだ。一歩ずつ目標に近づいていると自分に言い聞かせるしかない。

孵化を生き延びた虚ろなる者を檻に入れねばならなかった。中には知能と言わないまでも、本能を備えているものがある。我々には見えないものに引き付けられているらしく、いかなる干渉に対しても敵意をもって反応する。貧弱な個体であっても適切な監視にはあまりに労力を必要とする。すでに1人以上を失っていると思うが、これほど失敗が多いといちいち数えていられない。

今日のことは勝利とまでは言わなくても、誇りに思っていいだろう。ヴィーシュクリールの儀式を私の錬金術と組み合わせることで、健康なサクスリールを1体作れた。虚ろなる者に比べればおとなしいが、目には認識の兆候が乏しい。魂は感じられるが憑依に欠陥があるのか、それとも体がやはり適さないのか、何とも言い難い。

安定した調合法を手にしたが、儀式に順応することに関しては全く進展がなく、以前の成功例も感知能力の改善を一切示していない。私はこの道を進んだことで、あまりに深い沼に沈み込んでしまったらしい。一歩退いて、他の道を探すべき時が来ている。

私の霊薬の限界を試すために少なからぬ数の卵を失ったが、卵の供給は続いているし、犠牲を払うだけの価値はあった。卵のうち2つからは、これまでに見たことのないサクスリールが生まれた。他の虚ろなる者とは違い、青白くない。体の模様には鮮やかな色が付いており、皮膚からは我々にとってさえ致命的な調合薬の成分が発散されている。安全な研究のため、私は隔離しておいた。

この新しい調合法にはかなり期待をかけている。卵の成長はあらゆる期待を上回るものだ。魂の拘束の儀式も同じような結果を出せればよいのだが。

恐怖の父の嘘Lies of the Dread-Father

ニッソ・ゼーウルム 著

丸い舌はそれに姿形を与える
そして「それ」は「彼」へ変わる
彼らはその腐れ落ちた花嫁に囁きかける
彼を称えよ、彼を崇拝せよと

彼らはそれを父と名づける、恐ろしきものと
彼らは恐るべき血の刃と共に祈る
彼らは真理の一面を語る
彼らの舌に絡みつく何かを

無形が形を与えられ
変化は停滞になる
一つの真理は真ならざるものへ変わる
何かの一党が見つめる

軍団士官のメモLegion Officer’s Notebook

我々が雇ったアルゴニアンの斥候は天の恵みだ。ジン・ラジュルはこの沼地を知り尽くしているようだ。実際の話、この洞窟に野営することを進言したのもあの斥候だった。風雨からの保護と、身を守るのに適した防ぎやすい場所を提供してくれるのに加えて、彼の部族の伝説によれば、ここには大昔、ある強力な武器がしまい込まれたのだと教えられた。その武器を入手できれば、帝国にとって大きな利益となるだろう。

* * *
この洞窟にいるのは第九軍団だけではない。何者かが我々の警備兵と物資捜索隊を襲ったのだ。アルゴニアンの斥候は、ここにいるのが軍団だけだと主張した。つまり我が兵たちが義務を放棄して脱走したと言いたいのだ。馬鹿げている!第九軍団が責任を放棄することなど決してない!ジン・ラジュルは本当のことを言っていない気がするが、なぜ私に嘘をつくのかは分からない。

軍団士官の日記Legion Officer’s Journal

ジン・ラジュルめ!奴は何らかの魂胆で第九軍団をこの洞窟に引き入れたのだ!今では何もかも滅茶苦茶になってしまった。あの物体は兵たちの半数以上を食い尽くしてしまった!あれは巨大になり、さらに強くなっている!

まだ何らかの行動を実行に移せる程度の兵は無傷で残っているが、あの悪臭を放つおぞましい泥の塊が外に出て、帝国を脅威に陥れることのないよう、入口を封鎖するつもりだ。

好色なアルゴニアンの歩兵、第1巻The Lusty Argonian Footman, Volume 1

(未完成)

– 第5幕、第1シーン、続き

背骨を立てし者:申し訳ございません、奥様!

ナデネ・ヴェラス:こんなこともできないの?

背骨を立てし者:努力はしています!でも何をしても…

ナデネ・ヴェラス:もっと磨かないとだめよ。私の器に艶を出してくれないと。

背骨を立てし者:はい!今すぐもっと磨きます。

ナデネ・ヴェラス:そうよ、それいいわ!本当に、熱心に喜ばせてくれるのね。

背骨を立てし者:貴女を喜ばせることが私のすべてです!

ナデネ・ヴェラス:分かってるわ。この後は食卓の準備をしないと。

背骨を立てし者:ただちに!旦那様が出掛けてる間は、お好きな部屋にご用意できます。

ナデネ・ヴェラス:忠実な召使なら、当然ね!

– 第V幕の終わり、第1シーン –

高名な探検家の失われた物語:欠片1Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment I

ソリス・アデュロ 著

「3人だけか」とマティウスは抗議した。3人では偵察隊にもならない。本格的な探検隊となればなおさらだ。「最低でも9人という約束だったのに」

ターナは机の上にドンと足を投げ出した。「それが精一杯だったわ、マティウス。あんたの名前にもう昔みたいな効力はないの」

マティウスはそれが本当のことだと知ってはいたが、自分の友人からそう言われたのは初めてだった。自分の任務を続けるつもりだと言ってから、ターナが彼に冷たくなったことにマティウスは気づいた。彼がインペリアル公認の調査隊のリーダーとして、ブラック・マーシュ地域の正確な地図を作る任務についてもう10年が過ぎた。国境地域は十分に画定されたが、沼地の中心部についての情報は乏しく、検証不可能だった。帝国から市民へ広められる公式の記述ですら、無数の疑わしい報告に基づいて作った、継ぎはぎだらけの物語だった。

探検は失敗と考えられていた。彼の仲間は探検が長引くにつれて死ぬか任務を放棄して、規模を刻々と縮小していった。ターナは彼のところに残った唯一の者だが、彼女は病気にかかってうわごとを言うようになり、旅の最後の日々を思い出せなくなってしまった。

そしてマティウスが大学に戻って失われた都市や古代文明について話すと、彼の主張を保証する目撃者が他にいないこともあって、疑いの目にさらされるたのである。それ以後、ターナとの関係は変わってしまった。マーシュは彼らを二人とも変えてしまったが、その余波もまた楽なものではなかった。マティウスは昔のことを水に流してまた一緒にやれることを期待していたが、ターナはもう二度とブラック・マーシュには戻らないと言ってきっぱり断ったのである。彼女は隊員集めに協力してくれた。マティウスとしては、力を貸してくれる人がいるだけでも感謝しなければならなかった。

「少なくとも、そいつらは経験豊かなんだろうな」。彼には期待するしかなかった。

「運がいいわよ」とターナは言い、何かの書類を眺めた。「まあ、あんたがハイエルフと仲良くできるならね。彼女は魔闘士だから、何とかなるでしょ。名前はサラーラ。聞いたことない名だけど」

マティウスは眉をひそめた。そんな熟練の仲間が手に入るのは嬉しいはずだったが、何か警戒すべきものを感じたのだ。「なぜ魔闘士が私のところに来るんだ?」

ターナは肩をすくめた。「私の知る限り、これは公認の任務じゃない。私の情報筋も彼女については何も知らない。自分なりの理由があって来たんでしょう。今は贅沢言ってる場合じゃないわ」

マティウスはうなずいた。そのエルフには目を配っておかなくてはならないだろう。「で、他の二人は?」

「逃亡奴隷のリファン。若いけど熱心なノルドよ。情熱の大切さは知ってるでしょう。先回りして言っておくけど、彼は読み書きできるし、狩りや食料調達の腕もそれなりにある。これまで自分の力で生き残ってきたんだから、チャンスを与えてやりなさい」

働き手が多いのは悪い事ではないし、チームの規模は小さいからその少年が邪魔になることはないだろう。それでもマティウスは、覚悟のない者にとってこの旅がどれほど厳しいものになるかを知っていたので、申し訳ない気分になった。「で、三人目は?まだ案内人の話をしてないだろう。アルゴニアンの協力者なしにはどこにも行けないぞ。少なくとも、それくらいは覚えているだろう」。そう言ってしまったことをマティウスは後悔したが、ターナは無視した。

「河のエラ」と彼女は言った。「あんたが依頼したとおり、経験豊富なアルゴニアンの案内人よ。条件は一つだけ」

「条件があるのか?」マティウスはため息をついた。「俺が約束した金額は提示したか?」

「したわよ。最後まで聞いて」。ターナは一旦話を切った。彼を待たせるためだけにやっているようだった。「河のエラは途中まで案内してくれる。そこからはあんたが行きたいところに半分の時間で連れていってくれる、別の者を紹介してくれると約束している」

良識ある人間なら断るところだとマティウスは思ったが、彼には断れないのが分かっていた。どんなに見込みが薄くても、もう一度チャンスを得られるのをもう10年も待ち続けてきた。沼にはあまり人前に姿を現さない部族がいて、隠された道を知っているという話はマティウスも聞いたことがあった。そうした部族と安全に接触できるという考えは、彼を勇気づける程度には魅力的だった。

「よしわかった」とマティウスは言った。「ありがとう、ターナ」。彼は背を向けて立ち去ろうとしたが、扉のところで立ち止まった。「本当に、何を言っても一緒に来てはくれないのか?やっぱり、俺たちは二人で行かないと」

「言ったでしょ、マティウス。たとえ世界中のゴールドをもらってもブラック・マーシュには戻らないって。私のほうこそ、行かないようあんたを説得できたらと思うわよ」

高名な探検家の失われた物語:欠片2Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment II

ソリス・アデュロ 著

彼らがようやく野営地に適した開けた場所に辿りついた時、まだ太陽は高く昇っていた。進み続けることもできたが、明かりが続く限りは進めると考えて迷子になった探検隊は数多い。早朝が旅に最適な時間なのだ。沼はまだ寝ぼけており、夜は完全に明けていた。マティウスは火をおこすのに必要なものを集めに行ったが、仲間たちから離れないように気を使った。彼は棒きれとシダも探すことにした。それを使えば光を隠せる。マティウスはこれだけマーシュの奥深くにいる時は、こうしたほうがいいことを知っていた。彼の新しい仲間たちには何も言わなかった。皆疲れていたし、退屈していたからである。

「古代アルゴニアンには黄金の鱗があり、卑しい人間やエルフの目を眩ませることができたと言われている」マティウスは全員にこの任務の重要性を思い起こさせることで、彼らの士気を高められればいいと思った。そしてキャンプファイアの物語というのはいつでも、少し誇張した話をするものである。「彼らはその最も偉大な街を高く建設し、太陽にまで届かせた」

「それからどうなったの?」と若きリフェンは聞いた。

マティウスとしては、この若者の尽きることのない好奇心を気に入ったと認めざるを得なかった。マティウスはわざと答えを保留し、河のエラが自分から答えを言ってくれることを半分期待した。こうした伝説についてマティウスが知っていることは全て、他のインペリアルの探検家や学者の業績だった。彼はアルゴニアンからこうした話を聞き出せたことがなかった。

河のエラは全く聞いていないかのように、ただ座って陽の光を浴びていた。マティウスから見ると、このアルゴニアンは眠っているも同然だった。

「太陽が彼らを滅ぼしたと言う者もいる」とマティウスは続け、棒切れの束を放った。「彼らは太陽を卵のように割って開け、神になったと言う者もいる」

エルフのサラーナは失笑した。「馬鹿げてるわ。太陽が卵じゃないのは誰でも知ってる」これまでのところ、マティウスがこの魔闘士について知ったことは、彼女が自分の信念に何の疑いも持っていないことぐらいで、その信念の大部分はギルドの教えから来ていることが彼には分かった。

「じゃあ何?」とリフェンが聞いた。

「穴よ」

リフェンは鼻をすくめて見上げた。「あれって穴なの?」

「見たらダメだ」マティウスはため息をついた。

「黄金の都市も信じてないの、サラーラ姉さん?」とリフェンは聞いた。「船乗りはただの物語だって言ってたけど」

「自分の目で確かめたいんだろう」とマティウスが口を挟んだ。サラーラはこの探検に加わる個人的な理由を教えてくれなかったので、予想しただけである。

サラーラは二人から顔を背け、茂みをじっと見つめた。壊れたコンパスを取り出し、それを強く握りしめた。

「まだ何か、価値のあることが学べると思っているわ」とサラーラは答えた。「彼らの信じていることが全て間違っているとしても」

河のエラが目を開いた。

高名な探検家の失われた物語:欠片3Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment III

ソリス・アデュロ 著

彼らは3日間河を移動し、夜になると河のエラが安全に停泊して休める場所を示した。

1日目、河のエラは理由も言わず、一行を河の土手にある岩だらけの露出部に数時間も停止させた。マティウスはリフェンに、沼の奇妙な植物や動物について教えて時間を潰した。マティウスは名前を知らないもののほうが面白いと思っていたが、捕まえて観察することを考えるわけにはいかなかった。無数の色を持つ鳥や、大きな岩のような甲羅を持つ巨大カブトムシ、集団で移動し、灰色ベヒモスの死骸を食べる鱗犬などがいた。マティウスはどれ一つとして名前を知らなかった。

旅を再開する頃には、夜になっていた。他の者たちは抗議したが、河のエラは今が旅に適した時間だと請け合った。マティウスはアルゴニアンの案内を信じることにして、一行は引き続き河を下った。サラーラでさえ、皆に加わって沼を見つめた。木々を通り抜けて移動する、薄暗い光を放つ不思議なクラゲで沼地が明るくなっていたからである。

2日目、リフェンが何かを発見し、「見てよ!」と叫んだ。

サラーラは息を呑んだ。マティウスは振り向いたが、他の者たちと同様言葉が出なかった。沼の中から飛び出してきたのは蛾の羽根のような、巨大な金属の羽根だった。苔と泥にまみれてはいたが、マティウスは2つのドームのような、何層にもなったガラスの目を見分けることができた。何だか分からないが、あれの全体はどれだけ大きいのだろうと思った。

河のエラは一行の前方にある曲がりくねった河から目を逸らさなかった。頭にあるヒレが高速で振動し、低くうなっていた。

「止めてよ、あれを見なきゃ」サラーラの声は震えていた。彼女は河のエラに向けて手を伸ばした。

「止まることはできない」と河のエラは落ち着いて言った。「少し前から、リヴァイアサンが我々を追跡している」

サラーラは一瞬だけ静止したが、すぐに筏から飛び降りた。他の者たちは落ちないように苦労した。

「サラーラ!」とマティウスは叫び、筏のバランスを保つために重心を移そうとした。「河のエラ、速度を落としてくれ」

「止まることはできない」と河のエラは言った。

サラーラは仲間の抗議を無視して、可能な限り早く泥の中を移動していた。彼女は移動しやすいようにマントの紐を解いて脱ぎ捨てた。サラーラは手足をばたつかせて水しぶきをあげながら、不思議な蛾に接近していった。

「サラーラ姉さん!戻ってきて!」とリフェンは叫んだ。

サラーラは今や沼に引っかかり、のろのろと進んでいた。彼女は立ち止まって力の言葉を囁き、マティウスは移動を補助するものだろうと思った。彼女が壊れたコンパスを手に持っていることに、マティウスは気づいた。

すると突然、沼自体が彼女を引きずり込み、飲み込んでしまったようだった。彼女は音もなく消え、二度と浮かび上がってこなかった。マティウスはただ、水の中を動く何か巨大なものの形をかろうじて見分けられただけだった。虫たちさえ音を出すのをやめたことに彼は気づいた。

サラーラのマントは物憂げに漂っていた。彼女の物語の中で残されたのは、ギルドの留め金だけだった。

「止まることはできない」と河のエラは言った。

誰も反論しなかった。そして事実、その日は誰も口をきかなかった。夜になると、彼らは村ほどもある大きさの木の中で眠った。

次の日の朝マティウスが目を覚ますと、リフェンの姿が消えていた。彼が残していったメモには、近くにある集落の明かりが見えたので、彼らに頼んで都会に帰してもらおうと思う。見捨ててごめんなさい、と書いてあった。マティウスには若者がすでに死んでいることが分かった。マティウスがこれでたった二人になったと言った時、河のエラは一言も発しなかった。

その日、彼らはついに徒歩に戻った。険しい地形だったが、マティウスにはそのほうがよかった。しかし旅を続けるにつれ、マティウスの心は以前の探検の記憶に苛まれた。河のエラはもうあまり遠くまで案内はしてくれない。マティウスには次の案内人がどういう人物なのか見当もつかなかった。ブラック・マーシュにおける孤独と恐怖がどういうものか、彼は覚えていた。

3日目の夜、河のエラはヒレを伸ばしてシューっと音を出し、マティウスに洞窟の中へ隠れるよう命じた。

河のエラは外に留まり、夜の残りの時間、マティウスは眠れなかった。夜中じゅう、彼には確かに、歌声と蛇のシューシューいう音が聞こえていた。朝になると、アルゴニアンは何事もなかったかのように再び現れた。

「ヌブタは今、お前に会うと言っている」河のエラはそう伝えて立ち去り、二度と戻ってこなかった。

高名な探検家の失われた物語:欠片4Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment IV

ソリス・アデュロ 著

ゴボゴボ、ゴボゴボ。

またあの音だ。マティウスは虚しく松明を振り回した。息の詰まるようなこの霧の中では、何も見えなかった。彼は空いているほうの手でマントを引き寄せて口を覆い、洞窟のさらに奥深くへと走った。

ゴボゴボ、ゴボゴボ。

すると、その生物の影が目に入った。巨大な球根状の影。それは彼を追いかけていた。彼は走り続け、息を切らしてあえいだ。

ゴボゴボ、ゴボゴボ。

彼はゲップのような笑い声の反響を耳にした。自分は頭がおかしくなったに違いない、とマティウスが考えるまで、その音は響き続けた。その後、彼の足元で、骨のぶつかる音が聞こえた。霧は晴れ、マティウスは自分があらゆる形と大きさの頭蓋骨を並べた部屋に立っていることに気づいた。床は何の生物のものかも分からない骨で埋め尽くされていた。彼は人間を丸呑みし、骨を吐き出す邪悪なボリプラムスのことを思った。「では、俺もこれでおしまいか」彼は息を吐き出した。あのアルゴニアンの嘘を見抜けなかったとは。

ゴボゴボ。

マティウスは部屋の空気が変わったのを感じた。凄まじい悪臭が彼の鼻を焼いた。

声が響いた。「また肉を持つ者がヌブタに会いに来たのか?飲み込まれる前に全て話してしまえ」

薄暗い松明の明かりの下では、不気味な生物の形がかろうじて分かる程度だった。これはプラムスではないが、吐き気を催させるような湿り気でギラギラしていた。丸々とした腹に、ナメクジのような潰れた顔を持つ、巨大な蛙の一種だった。中でも目が一番ひどかった。マーカスはその目の中に禁じられた知と際限なき恐怖を見た。この生物が喉を膨らませたので、彼は勇気を振り絞った。禁じられた知こそ、彼がこんな朽ち果てた場所に来た理由だったのだから。その獣は喉をゴクリとさせ、突然彼に迫ってきた。頭がくらくらするような煙が、鼻から噴き出していた。

「黄金の階段への道を探しているんだ」とマティウスは吐き出すように言った。自分の声がかすれているのは気に入らなかった。

獣は後退し、息を詰まらせたか、あるいは笑ったようだった。その後でゲップをしたのがマティウスには分かった。気絶せんばかりだったが。

「見せてやってもいい」とナメクジ生物は鳴いた。「対価を払えばな」

「もちろんだ、善良なる泥の王よ」とマティウスは言ったが、言わなければよかったと思った。こいつがお世辞ごときで満足するはずがない。実務的に応じたほうがいい。「その情報の対価とは?」

太った腕がポケットを探った。マティウスはこの生き物が模様の入った緑と茶色のローブを着ていることにさえ気づいていなかった。湿ったでこぼこの指が、黄金の装飾用アミュレットにはめ込まれた光輝く黄色の宝石を取り出して示した。宝石には傷一つなく、まばゆいばかりだったが、マティウスは呪われた遺物や不思議な宝石に関して素人ではなかった。彼は剣を抜き、待った。心臓が鳴り響いていたが、恐怖なのか興奮なのか分からなかった。これは古代アルゴニアの遺物なのか?獣は笑って、顎をぶんぶんと振った。

アミュレットを角のついた、何だか分からない古代の獣の頭蓋骨にかけてぶらさげると、それは松明の明かりの下できらめいた。「お前はこれをヌブタのために黄金の都市へと持っていく。それが対価だ」

マティウスは眉にしわを寄せた。「それで、到着したらこれをどうすればいい?」

「その時になれば分かる」とヌブタは囁いた。マティウスはその言葉が彼の耳の中をくすぐる感覚にぞっとした。「お前が死ぬ直前にな」

一瞬の間、マティウスは怪物の顔が自分の目の前まで来たと思ったが、まばたきをして再び見ると、怪物は動いていなかった。「道を教えてくれ」とかろうじて声に出した。

「ここから行くことはできん」と泥の王は言った。「お前は水中の根のように深く進まねばならん。お前の神々さえも見たことのない場所を潜り、探し回り、行き来するのだ」怪物がゲップをして最後の言葉を発した時、マティウスは何も言えなかった。「私はお前をクスル・アクシスまでは連れていこう」

マティウスは悪臭に逆らって呼吸し、剣を収めた。足を踏み出して黄金のアミュレットを拾い上げると、ぬくもりを感じた。「死ぬつもりはない」と彼は言い、アミュレットを荷袋に滑り込ませた。「そのことで気を悪くしないでほしいが」

怪物のゲップのような笑い声が響き渡り、それが消えた時、マティウスは一人で立ち尽くしていた。松明の明かりが燃え尽きかけていた。

高名な探検家の失われた物語:欠片5Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment V

ソリス・アデュロ 著

マティウスは旅仲間の悪臭のせいか、それとも再び沼を逆さまに通り抜けるという行為のせいか、吐き気を催していた。

ナメクジ生物ヌブタは笑った。「これで分かっただろう。この領域は広さよりも、深さのほうが大きいのだ」

マティウスにはさっぱり分からなかった。彼らが、ヌブタの言い方では「河に滑り込んだ」のはこれで3度目だったが、これをやる度に方向を見失うばかりだった。最後の時など、マティウスは自分が溺れているのを見ていたと確信したほどだった。

「夢を見ているようだった」とマティウスは言った。彼はせき込んでねばねばした水を吐き出した。

「夢を見ていたのだよ」

泥の王はそれ以上何も言わず、太い指で指し示した。その先をマティウスが目で追うと、周辺の沼地を通る開けた道の上に、黒い石のアーチ形の道が見えた。アーチ形の道には、蛇と根が互いに絡まり合っている姿が彫られており、頂点の部分には割れた舌を持つ頭蓋骨があった。マティウスはここから先、一人で旅を続けなければならないことを理解した。彼の案内人はこれから先を助けてはくれないだろう。彼らはクスル・アクシスの門に辿りついたのだ。まだ十分目的地に近づいていないのではないかと思い、彼は不安になった。

マティウスには考えがあった。彼はヌブタに渡された黄金のアミュレットを取り出した。「泥の王よ、あなたは自分の言葉を守った」とマティウスは言った。「私も自分の言葉は守る。この宝石を黄金の都市に帰そう。ただ、道を見つけられればだが」

ヌブタはゲップをしてうなった。その奇妙な目はアミュレットを見て少し考えていた。「影が滲み出る聖堂が見えるまで、道を外れずに行け。それは死の場所だ。中に入ってはならない。聖堂の前に立ったら空に太陽を探し、その方向へ歩め。着いた時は分かるだろう」

泥の王が突然這って河へ戻り、いなくなってしまった時、マティウスは抗議しようかと思った。一瞬だけ、マティウスはパニックが胸をつかむのを感じた。彼の仲間たちは一人また一人とこの旅を放棄していったが、マティウスは突然彼らが正しかったのではないかと考えた。この任務を投げ出すこともわずかな間だけ考えたが、前に進む唯一の道は黒い石の道であることにすぐ気づいた。川は足元で干上がっていた。

マティウスは勇気を振り絞った。アミュレットは彼の手の中でぬくもりを放っていた。彼はアーチ形の道に足を踏み入れて進んだ。

高名な探検家の失われた物語:欠片6Lost Tales of the Famed Explorer: Fragment VI

ソリス・アデュロ 著

その古代のアルゴニアンはマティウスに向かって大股で歩み寄り、喉から絞り出すような言葉で叫び声をあげた。このアルゴニアンは平均的なサクスリールよりも頭2つ分ほど背が高く、鱗は金色、赤と紫と緑の明るい羽根や大きな曲がった角を持っていた。頭には鳥の顔の形に彫られた黄金の仮面を被っていた。羽根の付いたローブと黄金の腕輪を身につけており、両腕を広げると翼が付いているように見えた。マティウスにはどこまでが生物で、どこからが装飾なのかが分からないほどだった。

彼には考え込む時間はなかった。この黄金の怪物が呪いの言葉を叫びながら、彩色した爪で襲いかかってきたからである。マティウスに翻訳できた言葉は3つだけだった。太陽、炎、死。

マティウスは後方によろめいた。怪物が飛び掛かってきたので剣を抜くことができなかった。怪物は必死の形相で首にかかった黄色い宝石を爪でひっかいた。マティウスは何とか後ろに退き、剣を抜いたところでこの鳥のようなトカゲが叫びながら覆いかぶさってきた。彼は片手でやみくもに突きまくりながら、もう片方の手を怪物の喉に押し付け、爪で切り裂かれまいと必死でもがいた。怪物は何度も繰り返しアミュレットをひっかいた。アミュレットを首から切り離そうとしていた。

マティウスは宝石が砕ける音を聞いた。黄色い塵が空気を舞った。

アルゴニアンはもう動かなくなっていた。ようやく死んだか、とマティウスは安堵のため息をついた。手が疲れていた。

突然、怪物は目にもとまらぬ速さで再び動き出した。爪のついた両手が飛び出し、マティウスの顔を覆った。彼は自分の首が折れる音が聞こえるかと思ったが、アルゴニアンは強い力で抑えつけるだけだった。黄金の仮面が怪物の顔の一方からずり落ちていた。

それは鳥でもトカゲでもなく、蛇だった。さらにマティウスはその鱗が黄金ではなく金色に塗装してあるだけで、仮面の塗装が削れているのを見た。鱗が白黒の斑模様で、死体から色が消えつつあるのを見た。その目は虚ろな穴だったが、塵がその中に流れ込むと、黄色になった。

恐怖からか勇気からか、マティウスは蛇に剣を突き刺し、もう一度攻撃した。それと同時に黄金の仮面が滑り落ち、床に当たってガランと音を立てた。その中には血がついており、マティウスは蛇の顔が何度も繰り返し変化するのを見た。再び蛇に戻るまで、顔は12回変化した。

彼はこの怪物を殺すことを忘れていた。自分の命を守ることも、そもそも自分がなぜブラック・マーシュにまで来たのかさえ忘れていた。マティウスに分かったのは、ただ恐怖のみだった。

マティウスは落下し、そして吹き飛んだ。世界は彼に向って突進し、炎と栄光、狂気となって襲いかかった。持っていた覚えもない背中の翼に風の流れを感じ、飛び上がった。彼はいくつもの黄金の街と黒い石の街を飛び越えた。街々はそれらを包み込むヒストのごとく、尽きることがなかった。空は燃え上がり、太陽は穴だった。それでも彼は飛んだ。ただ風に運ばれる以上のことをする力はなかったからだ。

彼は塔へとやって来た。それは高く広大で、何層にもなったその沼地から、たくさんの木が生えていた。獣たちは、塔の外の世界を知ることなく生き、そして死んでいた。塔の頂上には火を放出する木があった。マティウスに似た、翼を持つ他の者たちがその木の周りを回っていた。彼らは叫び、マティウスはその言葉を理解した。知らない言葉だったのに。彼は深い悲しみを感じ、塔は見えなくなっていった。

マティウスが見上げると、他の世界と他の塔がいくつも見えた。それらは回転する輪であり、互いにめり込んでいた。輪の軸は絡まり合い、互いを破壊し合っていた。彼は自分の世界が壊れていくことも感じたが、蛇のように素早く影がやって来て塔の根を飲み込み、壊れないようにしていた。

マティウスはまだ飛んでいた。すると炎と暗闇だけがあった。そしてひどい騒音。だが恐れるには、彼は疲れすぎていた。だからマティウスは眠り、黒い太陽へと漂っていった。

黒きヒレ、故郷に帰るThe Black Fin Comes Home

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

黒きヒレとして知られるケシュ将軍は、シロディールのパクト勢力の指揮をフェリシ・ヴァロというダークエルフの将軍に任せた。そして私とヴォス・フルク、ティー・ワン、ゾシン、ダークエルフの双子レンシとメラリン、ノルドのジョドとウルフベルという少数の仲間を連れ、戦争で荒れ果てた田舎を離れてモーンホールドへ戻り、スカルド王ジョルンと最後の会合を行ったのだった。

「この奇妙な国で時を過ごすほど、山や雪が懐かしくなる」とジョルンはダークエルフの街の謁見室に入る時に言った。「さて、黒きヒレよ、言ってくれ」と彼は言い、ケシュに顔を向けた。「本当にこれでいいのか?」

ケシュは肯定の背骨を立てて言った。「ジョルン、私はあなたとパクトのためにやると決めたことは全てやった。ブラック・マーシュに帰って、同じことを私の民のためにやるべき時が来たのよ」

ジョルンは厳粛な面持ちでうなずいた。「ならばもう何も聞くまい、信頼する友よ」と彼は言った。目に涙が光っていた。「カイネがお前を故郷へと導かんことを。俺の助けが必要になったら、ただそう言ってくれ」

その言葉を聞いて、ケシュの両目は空の星々のようにきらめいた。「そう、一つ小さな問題があるの」と彼女は言い、彼女の民の知識と経験を広げるため、ブラック・マーシュをよそ者に、特に手工業者や職人に対して開くという望みを説明した。「触れを出そう」ジョルンは同意した。「で、その手工業者や職人はどこへ行けばいい?ストームホールドか?」

「いいえ、」ケシュは答えた。「彼らをギデオンへ送って」

ケシュは私たちをギデオンへと導いた。ブラック・マーシュ中央部にある帝国の拠点である。彼女はここにより開放的で活気のある、「近代的な」アルゴニアン社会を築こうと決心していたのだ。ケシュは旅の途中で私たちに計画を説明した。まずは私たちがモロウウィンドとスカイリムにいる間に学び、発見したことをギデオンに持ち込み、それから古代アルゴニアン文明の秘密を再発見するための冒険を開始する。「私は自分の文化を変えたいわけじゃない」とケシュは誓った。「私は文化を強化して、大昔に持っていた、失われた栄光を取り戻したいの」

故郷への旅路でケシュが説明した全てのことに皆が同意していたわけではないが、私たちは黒きヒレを信じていた。もし彼女が頼めば、私たちはオブリビオンまでもついて行っただろう。だから彼女が民のために抱いていた夢の実現を手伝うのは、それほど突飛なことではなかった。

私たちがブラック・マーシュの国境に近づくにつれ、シークハット・ゾルにいたただのサクスリールが頼れるアルゴニアンへ成長するこの物語も終わりを迎える。これから先また書くかもしれないが、ギデオンに移住したら私の自由な時間は、暑い日の小さな水たまりのように蒸発すると思う。もし、あなたが私たちの麗しき街に来ることがあれば、立ち寄って声をかけてほしい。私たちは全ての訪問者を歓迎する。アルゴニアンも、肌の乾いた者たちも同様に!

黒きヒレ:外国での冒険、パート1The Black Fin: Foreign Adventures, Part 1

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

私は最初、偉大なる黒きヒレのケシュに仕える単なるカーだった。サクスリールの言葉で、カーとは見習いのような意味だが、ノルドやダークエルフの見習いが持つ責任や義務は必ずしも伴わない。後になってケシュが私たちの同盟者の風習を取り入れ始めてから、私は黒きヒレの従者と呼ばれるようになった。ピーク・エリールが軍団を去ると決めた時、私は偉大なるケシュの人生に起こった重要な出来事を記録する義務も引き継いだ。理解してほしいのは、これはカーとしての役割に付随する義務ではないということだ。これはピーク・エリール本人から私に伝えられた義務であり、ケシュは表立ってこのことを知らない。私はこの義務を進んで引き受けた。

では、どこから始めよう?同盟が形を成し始めた日からにしようと思う。3つの国(私は自分の民を1つの国と呼ぶのは難しいと思うが、ノルドやダークエルフにとってはこの呼び方の方がいいらしい)は戦場で出会い、協力してついに侵略するアカヴィリを打ち破った。アカヴィリはウィンドヘルムを陥落させた後、注意を南東へ向け、モロウウィンドへ進軍を開始した。アカヴィリの侵略軍がモロウウィンドへの道を切り開くと、トリビュナルのアルマレクシアに率いられたダークエルフ軍が、侵攻を止めるための防衛線を張った。その間、ジョルンとノルドたちは自らの軍勢を集結させ、アカヴィリに背後から追いついた。アカヴィリは2つの強力な軍団の挟み撃ちに遭ったが、それでも挟撃を持ちこたえた。そのままならアカヴィリが勝利していたかもしれないが、それは私の推測に過ぎない。いずれにせよ、それを確かめる機会はなかった。

サクスリール・シェルバックと沼の戦士たちで構成されたケシュの歩兵部隊がアカヴィリを南から襲い、侵略を終わらせる貢献をもたらしたのだ。ブラック・マーシュにおけるダークエルフの奴隷商人との戦いで経験を積んだ私たちの兵士は、侵略者を圧倒するために必要な切り札だった。私たちは全力でアカヴィリに襲いかかった。ケシュは友人のジョルンを手助けすることを望んでいたが、軍団を沼からモロウウィンドの中心部まで進軍させることには、先を見据えた動機もあった。彼女は他の国にサクスリール、すなわちアルゴニアンの価値と誠実さを認めてもらいたかったのだ。私たちは原始的な蛮族ではなく、奴隷でもない。私たちは他の民と同等であり、彼らを侵略者から守るためにいるのだと。

勝因が全てケシュ軍団の参戦のおかげであるとは言わないが、私たちも役割を果たしたのは確かだ。私たちは猛々しいノルドと狡猾なダークエルフについて勇敢に戦い、一歩前進するたびにアカヴィリの兵士たちを殺戮していった。エボンハートの街付近でようやく戦闘が終結し、勝利を手にすると、ケシュは他2つの陣営のリーダーに急いで会いに行った。私は忠実な従者として彼女に従った。

あれほど多くの強大で重要な人物たちが一堂に会したのは見たことがない!ノルドの吟遊詩人ジョルンについての物語は聞いていたが、本当にあれほど大柄だとは想像もしていなかった!そして、ダークエルフたちが神と崇拝するアルマレクシアは冷たく美しかった。鱗も尻尾もないエルフにしては、だが。ジョルンが歩み出て、ケシュに旧友として挨拶をした。「俺たちは大きな借りを作ったな、黒きヒレよ」とジョルンはその大きく響く声で言った。「今日、お前たちのかけがえのない支援への感謝として、ノルドとダークエルフは何を提供できる?」

ケシュは長い間沈黙していた。まずはジョルンに熱意のこもった視線を向け、次いでアルマレクシアに注意を移した。モロウウィンドの母へ目を向けたまま、ケシュはついに返答した。「アルゴニアンの奴隷をなくすこと。私の民を解放してほしい」

アルマレクシアとジョルンは視線を交わした。大柄なノルドの視線は全くぶれなかった。少し経って、ダークエルフのリーダーは軽くうなずいて言った。「理にかなった要求です。ダークエルフはその願いを尊重しましょう。ただし条件が一つあります。アルゴニアンはダークエルフ、ノルドと共に、相互の協力と防衛の条約に加わらなければなりません。そうすれば、我々三国の全員が自由でいられるでしょう」

こうして、次の日まで続く一連の交渉が始まり、それはエボンハート・パクトの形成という結果になった。ケシュは自らの戦力を北方に留め、新たな同盟者たちの防衛を補強することに同意したが、その前にストームホールドへ伝令を送り、私たちの民に知らせを伝えた。奴隷制は廃止され、アルゴニアンは今やノルドおよびダークエルフの同盟者となった。私たちは政府を持たない。少なくとも私たちの新たな同盟者たちのような政府は持っていないため、ケシュはノルドとダークエルフの領地に残ってサクスリールの地位を確立し、様々な合意が正しく適用されることを確かめることを決断した。その間、彼女はゾシンをブラック・マーシュに送り、同盟の首都で大使となる者を探させた。

このようにして、アルゴニアンはエボンハート・パクトに加入した。

黒きヒレ:外国での冒険、パート2The Black Fin: Foreign Adventures, Part 2

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

エボンハート・パクト結成と、アルゴニアン奴隷の廃止宣言は、ダークエルフ奴隷商人の活動全てを即座に停止させる結果にはならなかった。ダークエルフの領土や支配地の大部分がトリビュナルの命令に従うまでにはほぼ1年を要し、その後でさえ、新たな協定を受け入れようとしないダークエルフの名家が存在した。その結果、ケシュとその黒きヒレ軍団が同盟のアルゴニアン代表としてモロウウィンドの地を巡回した際に、居心地の悪い状況もいくつか生じることになった。

同盟の初期には、恐怖や憎悪の出迎えを受けることが少なくなかった。ダークエルフたちの中には、重武装のアルゴニアン勢力が自分たちの街や村に接近することを不快に思う者もいた。そうした場合、追い返されるのはまだいいほうで、集落でかなりの規模の自警団から襲撃を受けることもあった。だがエボンハートの戦いの話を知って私たちの協力に感謝し、喜んで家に迎えてくれる者もあった。今ではこのように扱われることの方が遥かに多くなったが、当時はほとんど聞いたこともないような待遇であり、私たちは友好的な人々に会うたびに驚き、感謝した。

私たちは同盟の最初の1年をダークエルフの領土で過ごし、私たちの存在を周知させると共に、協定の条約が全て守られていることを確かめた。私たちはまた、新たに解放されたアルゴニアンたちを数多く受け入れ、ブラック・マーシュに戻らないと決めた者、あるいはモロウウィンドで自由なサクスリールとして生きていく意志のある者に、当面の目標と所属する集団を与えた。このようにして、黒きヒレ軍団はモロウウィンドを旅する間にその数を増していったのである。

そのうち、私たちはトリビュナルの客人としてモーンホールドに到着した。私たちは1ヶ月近くも街の外に野営し、アルマレクシアやその他重要なダークエルフおよびノルドの高官と定期的に会合した。ケシュはパクトの防衛を強化するため「同盟軍」を形成する議論に参加した。これは同盟に参加する民のそれぞれから派遣される勢力を含むという話だった。私たちは目的を探していたため、ケシュは黒きヒレ軍団が新設される同盟軍の中心となることを申し出たのだった。時と共に、ケシュは戦争の英雄のみならず、パクトの勢力を率いる将軍たちの筆頭格になった。

最初の1年が終わる前に、ケシュと黒きヒレ軍団は再び窮地を救うことによって、パクトに対して自らの価値を証明した。今度は西の山脈を越えてやってきた略奪者への対処だった。流布していた噂によれば、略奪者たちはダガーフォール・カバナントからの資金提供を受けているか、あるいは偽装したカバナント兵士であるとのことだったが、証明はできなかった。大規模な略奪者の部隊がモロウウィンド西のダークエルフ集落を襲っているという報告がモーンホールドに届くと、ケシュはパクトの軍を連れ、追跡のための遠征に出ることを提案した。

ケシュの勢力は大部分が黒きヒレの軍団で構成されていたが、ノルド兵の分隊とダークエルフ魔術師、治癒師の中隊で補強されていた。私たちは素早く移動して略奪者たちによって残された破壊の跡を追い、インドラノ街道でついに彼らの姿を捉えた。ケシュは勢力を分け、分隊の半分で山脈への逃走経路を塞ぎ、残りの兵たちは矢の型の陣形を組んで略奪者の位置に進撃した。略奪者たちは守りを固めず、方向転換して逃げ出した。そこへ私たちの兵が岩だらけの丘から飛び出し、略奪者たちを挟み撃ちにした。あれだけの被害を引き起こしたにしては、あっけない最後だった。

黒きヒレ:外国での冒険、パート3The Black Fin: Foreign Adventures, Part 3

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

エボンハート・パクトが結成されて2年目に入って久しい頃、ケシュと黒きヒレ軍団(パクト軍の一部としてモロウウィンドに残してきた兵たちを除く)はノルドの地であるスカイリムを巡っていた。ノルドの領地に足を踏み入れて最初に逗留した地はリフテンの街で、私たちはそこで典型的なノルド式の祝賀で迎えられた。大量の食事とハチミツ酒、そして寒い地方ではおなじみの余暇であるらしい、和気あいあいとした乱闘の催しがあった。そこにいる間、私たちは街の防衛の一部の強化を手伝ったが、これは訪問中に可能な限りの支援を提供する意思があることを示すために、ケシュが私たちの行く場所全てで実施するよう強調した行為だった。

リフテンで1週間以上過ごした後、私たちは北へ向かってイーストマーチを通り、ウィンドヘルムの街でケシュとジョルンが再会した。彼は今や、スカルド王ジョルンだった。信じられるだろうか!どうやらこのノルドは王子か何かだったようで、今ではノルド全体のリーダーなのだ!そしてウィンドヘルムはなんという街だろう!大きく、モーンホールドとは違った形で、しかし同じくらい印象深い。だがダークエルフの大都市がその民を反映していたのと同様、ウィンドヘルムも明らかに、否定しがたくノルドを反映していた。アカヴィリの攻囲で受けた被害の修復はまだ続いていたが、それはノルドの街の圧倒的な雄大さを少しも損なうものではなかった。

ジョルンは門のところで私たちを迎え、ケシュを豪快に抱きしめた後で、私たち全員に向かって、彼の故郷である街の歓待を楽しむよう告げた。祝賀は1週間と1日も続いた!ノルドがパーティー好きなのは間違いなく、あらゆる口実を設けてパーティーを開くようだ。祝賀の間、私たちはノルドが作る最高のハチミツ酒とエール、ウサギのミートボールなどの素晴らしい珍味でもてなされ、それに私がこれまで聞いた中で最も下品な歌が加わった。全てが凄まじい大声で歌われ、グラスやジョッキを打ち合わせる音が乱舞するのだった。

ハチミツ酒の樽がついに空になり、ウサギのミートボールが食べ尽くされると、祝賀は突然お開きとなった。そして仕事が始まった。私たちは1ヶ月の大部分の間ウィンドヘルムに留まり、街の外壁の修理を手伝い、ノルドが安心して手伝わせてくれる他の支援を何でも行った。そしてケシュとスカルド王は、時間がある時にいつでも隅に引っ込んで、様々な話題について長時間話し合った。そうした話し合いには誰も加わることを許されなかったが、二人はリーダーシップや同盟、私たちの民の未来についての考えを交換していたのだと思う。

私たちが知らされたのは、黒きヒレ軍団もまた、スカイリムで終結を迎えることだった。私たちの兵士たちは小さなチームに分けられ、民族混合のパクト兵士として仕えるために派遣され、ノルドやダークエルフたちと共に同じ部隊で戦うことになった。私はもちろんケシュの下に留まった。そして私はスカルド王が、彼女に特別の名誉を授けたところに居合わせた。「黒きヒレよ、お前にスカイリムのパクト勢力を指揮してもらいたい」とジョルンは宣言した。「この任務を引き受けてくれるか?」当然のこととして、ケシュは同意した。そしてその後7年間の彼女の努力を通じて、パクト軍の戦略戦術は発展し、確立された。

三旗戦役が始まった時、パクトに備えができていたのはそのためだった。

黒きヒレ:外国での冒険、パート4The Black Fin: Foreign Adventures, Part 4

黒きヒレのケシュの従者にして専属補佐官、ミー・シー 著

ケシュ将軍によるエボンハート・パクト同盟勢力の構築と改善が続けられているさなか、黒きヒレはスカルド王ジョルンからの召喚状を受け取った。私たちはリフテン付近で連合部隊と訓練を行っていたが、そこへ伝令が封蝋のされた手紙を持ってやって来た。2日後、イーストマーチのアモル砦で会合が開かれる。ケシュはすぐに出発する準備を整えた。

黒きヒレのケシュは軽装で素早く移動することに決め、小規模の分隊だけを連れてスカルド王に会いに行った。私は当然将軍に同行したが、その他にはティー・ワン、ゾシン、ノルドの戦士コラ・グレートストームがいた。ヴォス・フルクは兵を指揮し、訓練を続けるために残った。私たちの小集団がアモル砦に近づくと、砦の外のかなり離れたところで迎えられ、主要な道を迂回して街へ出入りする隠し通路へと導かれた。私たちは急いで首長の館へと案内され、広大な敷地の中にある秘密の会議室へと連れられた。大型のテーブルの後ろに立っていたのは、スカルド王ジョルンだった。

私はすぐに、前回ジョルンに会った時とは何かが大きく違うことを感じた。まず、彼は突進してケシュを激しく抱きしめなかったし、いつものように大声で話さなかった。王冠の重みが元吟遊詩人の支配者を圧迫していたのかもしれないが、彼は私がこれまで見たことがないほど深刻で真剣なように見えた。「トリビュナルが危険な警告を送ってきたんだ、黒きヒレよ」とジョルンは口を開いた。「アルマレクシアが幻視を見た。あるいはヴィベクだったか?誰にも分からん。とにかく、彼らはエボンハート・パクトに対する脅威が育ちつつあり、我々が準備を整えるべきだと警告している。だから、今お前がやっている努力を3倍にして、戦争に備えなければならない」

新たな戦争準備の任は3人の将軍の手に与えられた。パクトの民から1人ずつだ。ケシュがアルゴニアンを代表し、コラ・グレートストームがノルドを、そしてイェベス・ノラミルがダークエルフを代表した。この3人の将軍は協力してこの後数年間、パクトの攻撃と防衛能力を強化し、準備を整えることになった。黒きヒレがすでに始めていた準備のおかげで基礎は確立されていたため、比較的短期間で武装を整え、次の段階に到達できた。私たちが首長の館にある隠し部屋を去る前、ジョルンはケシュに最後の知恵を授けた。「平和は脆く、貴重なものだ」とスカルド王はうんざりしたような声で言った。「平和な時間を大切に過ごせ。決して長続きすることはないのだから」

それからの2年間、拡大するパクト軍はいくつかの小さな試練に出会った。その中には帝国軍やダガーフォールの兵との小競り合いも含まれ、パクト軍は見事に任務を果たした。多くの意味において、こうした小規模の戦いが三旗戦役を導いた。それぞれ異なる3つの同盟がついに互いに対して戦争を布告すると、ケシュはパクト軍を率いて戦場へと向かった。シロディールの地は戦場となり、戦争の音は全土に響いた。

1年の大半の間、ケシュ将軍とパクト軍は領土を奪い取っては失い、再び取り返した。戦争は続いたので私たちは勝利できたわけでなかったが、多くの重要な戦いには勝ち、カバナントとドミニオンを悔しがらせた。そして、権力と人気の絶頂にあった時、黒きヒレは私たち全員を驚愕させる決断を下した。「私たちはパクトのためにできることを全てやった」とケシュは説明した。「もう故郷へ帰る時だ」

こうして、黒きヒレの外国での冒険は突如終わりを告げたのだった。

根の子供たちChildren of the Root

[注:別途言及がない限り、調査員ソリス・アデュロがアジ・コストリール族の口承から収集したもの]

最初は大きな根、アタクしかいなかった。自分のことしか知らなかったので、全てのものになろうとした。無を自分で埋めようとして、どんどん大きくなった。大きくなるにつれて新しい根が作られ、そうした根は名前を持ち、自分たちが育つ空間を欲しがった。

そしてアタクは自分以外のものの存在を知った。アタクと似ていたが、別の道を進んでいた。彼らはおかしな新しいものを見て作ったが、長続きせずに変化を起こすだけだった。

アタクは大きくなり続け、ある時、無から何かが戻ってきた。それは根のようだったが、鱗と目と口があった。アタクに対し、それは自分がコタであり、自分も大きくなり続けてきたことを伝えた。口ができたので、空腹だった。

アタクはコタにふさわしい名前をつけた。蛇だ!アタクは蛇の目に根を通した。しかしコタは根のアタクと同様に古くて強く、遠くへ行っている間に牙を生やしていた。蛇はアタクにかみついた。彼らは互いに巻きつき合った。そうして苦しむ中で、新しいことが起きた。アタクは空腹を含めてコタが学んだことを学び、そしてコタにかみつき返した。彼らは長い間食べて暴れ、やがて一つになって争いを忘れた。

彼らは脱皮して根を断ち、自らをアタコタと呼び、「おそらく」と言った。

アタコタがそう言った時、脱皮した皮は己のことを知った。そして断たれた根を食べ、死んではいたが、影のようにアタコタの後をついていった。

アタコタが暴れ続ける間、それぞれの鱗はアタコタがむさぼった世界だった。しかしアタコタはもう争っておらず、物事には始まりと終わりの時があった。影はそうしたものを食べられたらいいのにと願ったが、その腹は大きくなる根で一杯だった。

影は耐えきれなくなると、アタコタのそばへ泳いでいき、根を吐き出した。そして腹が空になったので、影は危うく目に映るものを全て食べそうになった。しかし、ずっと腹に入れていた根のことは自分の一部として感じるようになっていたので、秘密を教えてから眠りについた。

根は他の者を見つけ、影の腹の中で生き延びたこと、そこでもまだ大きくなれたことを話した。その知識を他の者と分け合った時、それは根を変え、新しい姿になって新しい名前を持った。

一部の霊魂は自分たちが選んだ名前と姿を維持したがったが、影を通して学んだことは霊魂の中にもあり、一時的な存在でしかなかった。空腹と争いを学び、変化を恐れ、それを死と呼んだ。

霊魂たちは怒って恐れていたが、根は霊魂に、アタクが無から道を作った時の場所の間にある道を教えた。その川の道を使えば死から隠れることができた。

霊魂たちは満足して、自分たちと似たような姿のものを作るようになり、愛を与えた。彼らはアタコタと同じくらいの大きさになるまで成長し続け、それが自分たちより先に存在したことを忘れ、眠っている影がいることを忘れた。

やがて、世界は大きくなりすぎ、空きがなくなった。再び、霊魂は根の所に行ってもっと欲しいと頼んだ。しかし根は自分たちが作ったものに満足して眠っており、何度も変化したので大きくなる必要もなかった。

霊魂は次第に腹を空かせて我慢できなくなり、アタコタの皮を引き裂いてその血を飲んだ。アタコタが壊れるまで食べたので、アタクは大きくなることを思い出し、コタは無でいることを思い出した。再び争いが起こり、アタクとコタは霊魂から死について学んだので、暴力、血、樹液が発生した。

そんな大混乱の中で霊魂は途方に暮れておびえ、他の者や互いを食べるようになった。血と樹液を飲み、鱗と毒牙と翼を生やした。そうした霊魂は、食べる以外に作る理由を忘れた。

一方で、まだ元の自分たちと自分たちが作ったものに執着する霊魂もいた。ある森の霊魂は、根が彼女のように子供を愛しているのを見て、歩くことと話すことを教えた。根は言葉を使って彼女に秘密を教え、彼女は歌を歌って返した。それを聞いた根は目を覚まし、森に加わった。

根はコタの血が海を作り、アタクの樹液が石を作るのを目にした。そうした霊魂は影のことを知らなかった。根はそれが意味することを知っており、影に子供たちを守るように頼んだ。

影は目を覚ました。コタとアタクを見て、無がどれほど変わったか、どれほど以前と同じになっているかを目にした。自分がアタコタの皮だったことを思い出し、コタとアタクより自分の方が大きいので、両方とも食べてしまうことに決めた。

そして食べた。影は蛇と根を食べ、樹液と石、血の海、そして全ての霊魂を食べた。子供である根のことを思い出す前に全てを食べてしまったので、それを探すため、自分に目を向けた。

影がそれを見た時、自分よりも先に何かの皮が存在したこと、その後に生まれたものを食べてしまったこと、それは来るべき終わりを意味することを思い出した。

そこで影は脱皮した。たったそれだけではあったが、根を覆う布のように落ち、秘密の中で守ってやることを約束した。

最後の軍団兵のメモNote from the Last Legionnaire

私は帝国第九軍団の最後の生き残りかもしれない。少なくとも、私が知る限り最後の生き残りだ。

私は多少呪文を唱えられる。それでここまで生き残れたのかもしれない。それよりも大事なのは、私はアルケインの訓練を受けたおかげで、我々を壊滅させたあの生物を理解できるかもしれないことだ。あの裏切り者のアルゴニアンはボリプラムスと呼んでいたが、奴は我々が洞窟の外で遭遇した検体のどれとも違っていた。こいつはずっと強大で大きく、耐久力も高い。ジン・ラジュルはウジュカと呼んだが、奴はあの生物に我々を食わせるため、わざとここに導いたのだ!

机か、祭壇のようなものがある。おそらくこれがウジュカを止める秘密を隠していると思う。それさえ分かれば…

まずい!あの生物は自分の一部を私に送ってきた…

死の狩りが待っているDeath-Hunts Await

オジェル。この季節はズル・モタスが溢れていて、死の狩りに向いている。ズル・モタスは我々の戦士たちが狩り尽くす前に、蔓を枯らしてしまう。我々ナガ・クルは、よそ者の中に参加する勇者を求める。

死を恐れないなら、リルモスでボルが待っている。

沼クラゲの世話と餌やりCare and Feeding of Swamp Jellies

黒親指のアグリンドール 著

ハイホー!もし最近沼クラゲを所有したなら、あるいは所有しようと考えてるなら、ここに来たのは正解だ!この小さいラッパ吹きたちは、沼を旅する者にとっては願ってもない最上級の相棒だ。家畜を飼うつもりだったら、世話をするのも簡単だ。

ひょっとしたらもう沼クラゲについて多少はご存知なのかもしれないが、抜けた部分を埋めるために基本から見直そうじゃないか?

生息地:
沼クラゲはブラック・マーシュ固有の野生生物の一種だ。彼らは海岸に近い湿地帯を好む。彼らが海にいるクラゲの遠い親戚である可能性は極めて高い。だが、沼クラゲはいかなる湿った環境でも健康に育てる。必要があれば、汗ばんだブーツの中だって大丈夫だ。

体の構造:
他のクラゲと同じく、彼らには骨も固体化した部分もない。ただ、弾性のある、ゼリー状の体と肢があるだけだ。それ以外の大きさ、形状、色などは種類によって大幅に異なる。マークマイアで見られるもっとも一般的なクラゲは、ひだのある球状の体を持ち、そこから4本の触手がぶら下がっている。これらの触手はクラゲが込み合った場所を移動し、獲物を捕らえるのに役立つが、ほとんどのクラゲの動きは、いくつかの浮き袋に沼のガスを吸い込んで吐き出す小さな開口部が制御している。どうやって沼クラゲが浮くようになったのか確かなことは分からないが、私の理論は海のクラゲが嵐で内陸に運ばれ、沼地の水溜まりで生き延びたというものだ。最終的に、彼らの浮袋は浮き上がって水から立ち去るため、十分な沼のガスを溜め込んだんだ!

習性:
沼クラゲは生来信じられないほどおとなしく、ほとんどの時間を静かにそよ風にのって漂い、何も知らない虫を捕らえて食べている。沼クラゲは単独で生活する傾向があり、たくさん集まるのは産卵の時だけだが、社会的な動物だ。この小さなラッパ吹きはガスの浮袋を使って、複雑な鳴き声でお互いを呼びあう。1匹面倒を見れば、実にお喋りなことが分かるだろう。そしてその鳴き声を少し学べば、沼クラゲに簡単な指示を送ることもできる!これは愛好家にも飼育者にも、とても役に立つ技術だ。

餌:
浮揚する沼クラゲはもっぱら空を飛ぶ種類の虫を食料とするが、彼らの粘つく触手にぶつかるあらゆる小さな生き物が恰好の餌食となる。私は1日に千匹もの虫を食べる沼クラゲを見たことがある。それだけでもブラック・マーシュのような場所で沼クラゲを仲間にする理由には十分だ。少なくとも週に3回は、違う場所で群れを放牧するようお勧めする。1ヶ所にクラゲたちを長く置きすぎると、ほんの数日でその土地の土着の昆虫を消し去ってしまう!虫を切らしてしまった場合は、愛情のこもったスプーン1杯のスクリブのゼリーが適切な代用品になる。

世話:
沼クラゲは生きるために湿気を必要とする。もし服が体に張り付かないなら、それは恐らくクラゲにとって、何の手助けもなしに数時間以上過ごすには乾燥しすぎている。沼クラゲは飲むことを必要としないが、空気中から必要な水分を得られない場合は、ボウルや口の広い器から水を吸い上げられる。理想は汽水だが、淡水でも海水でも問題ない。

特定の時間に限って餌を与えるよりも、可能であれば1日中、安定して虫を供給したほうが良い。飢えた沼クラゲは大食いをする傾向にあり、体が重くなって不活発になる。

沼クラゲが怪我をしたとしても、心配しないように。彼らは切り傷を修復するし、時間をかければ肢の再生さえする。沼クラゲが浮かび続けようとしてもがいていないかだけ気を配れば良い。その哀れなラッパ吹きには、浮袋にガスを溜められるようになるまで、手で餌を与える必要があるだろう。

例え私の助言を肝に銘じたとしても、遅かれ早かれ、小さなラッパ吹きたちとはお別れをしなければならない。野生の沼クラゲは傾向として2年から3年の寿命だが、家畜化された沼クラゲは、きちんと世話をすれば5年生きられる。

食べる時の準備:
ペットとして飼っているのであれ、食肉とするために飼育しているのであれ、彼らの小さなゼリー状の体を無駄にしないためには、入念な解体処理が重要だ。沼クラゲを触る前には、手に食用油を塗ったほうが良い。そうしないと指に張り付いてしまい、手を自由にしようとして彼らをバラバラに引き裂く可能性がある。ほとんどの場合は身から触手を取り外し、後で使うために取っていたほうが良いだろう。彼らをまな板の上に真っ直ぐに置き、横に切る。肢を除去したら、身の真ん中で切り分ける。大包丁で強く押すことを推奨するが、鋭いものなら何でも良い。気を付けないとクラゲと手とナイフが油に塗れ、指のサンドイッチが出来上がる!

身の部分の空洞を洗ったら、クラゲを直火かオーブンで焼く準備は完了だ。赤くなった炭の上で、クラゲの身は少し硬くなり、外側が少々カリッとする。通常、私は触手を身の中に入れて調理し、チキンスープと共に音をたてて飲み干すが、串に刺して10分ほど焼き、塩味のおやつにするのもいい。体重に気を使っているなら、沼クラゲはレシピにある脳ミソやスクリブのゼリーの良い代用品になる。

クラゲの捕獲:
もし野生のクラゲを手懐けるつもりなら、上質の網を手に入れよう。一番いいのは虫取り網だ。クラゲを網で優しくすくい取れば終わりだ。ほとんどの沼クラゲは無害だし、抵抗すらしない。ディープマイアには僅かだが、触手に軽く触れただけで死に至るようなとても強い毒を持つ品種がいるが、それについては心配しなくてもいい。

沼クラゲの捕獲と世話について知るべきことは、本当にこれで全部だ。他のことは全部、クラゲケーキに乗っているジャムみたいなものだ!

沼のマイアゴーントMiregaunts of the Marsh

ブラック・マーシュ探検協会、クラティアス・グレイ

ブラック・マーシュ探検協会は、厳しい沼地の奥で生き残れる勇敢で丈夫な体を持つ冒険家を支援することにおいて、長く立派な歴史を持つ協会である。冒険家は力強く、有能で、広大な沼地と踏み込むことのできない熱帯雨林につきものである、数多くの謎を解明できなくてはならない。例えば、マイアゴーントの謎がそうだ。歩き回る沼の怪物に対面する時には、堅い決心と冷静な頭が必要とされる。

マイアゴーントはマークマイアへ訪れても決して見かけないというほど希少なものではないが、探検を継続的に危険にさらされるほど多くいるものでもない。とはいえ、私たちが探検したい場所の付近に集まっている傾向はある。こうした大きく、歩く沼の怪物は何となく人間のような形をしているように見えるが、頭部は認められない。主に植物から成り、他にも泥、石、蔓、さらには古代建築物の欠片といった物質まで取り込んでいる。

このおかしな獣の生態について、協会には手掛かりがないままだ。タムリエルの他の地域にいるラーチャーや類似の獣の一面と似ている部分もわずかにあるが、他の面においてはまったく独特な生物に見える。地元の伝説はマイアゴーントをヒストの木と関連付けているが、その説明は理解しにくいと言わざるを得ない。一部の部族はヒストの木が沼の一部を呼び起こして、地域の保護、場所の防衛、または何らかの形でヒストを傷つけ、邪魔をした者や物に報復をする特定の仕事をさせると信じている。他の者は、マイアゴーントが故意に生まれたのではなく、ヒストの未知の活動による副産物であり、誤って呼び起こされて、特別な目的もなく放たれたとしているようだ。正直言って、私が聞いた話は腹立たしいほど矛盾している!

ある程度の確信を持って言えることは、全てのマイアゴーントの中に大きな空洞があることだ。遭遇したマイアゴーントの空洞が空である時もあれば、何でもない石やその他の破片が空洞を埋めている時もある。まれに価値の高いものがマイアゴーントの中に入っている。例えば宝石、古代の遺物、もしくは生物だ。地元のアルゴニアンは、そうした貴重なものが守るか捕まえるため、故意にマイアゴーントへ取り込まれたと信じている。非現実的なのは承知だが、それが部族の信じていることだ。

真実が何であれ、探検隊がマイアゴーントに遭遇した場合は、協会が勧める行動を取ってもらいたい。逃げるのだ。

食の旅、第1巻A Culinary Adventure, Volume 1

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

私はついに、緑豊かなブラック・マーシュの沼地に辿りついた!私は常々、本場のアルゴニアン料理を味わう機会を求めてきた。そして今ようやく、念願の瞬間が訪れたのだ!まずは地元の珍味から始めることにした。ナメクジである。

上等なアルゴニアン料理の全てがそうであるように、ナメクジも多くの場合は生で、ソルトメドウの葉の小枝を添えて出される。私は今回の訪問中、3種類しか味わうことができなかった。シェフの訛りは非常にきつかったが、メニューの制限は季節と関係しているのだと思う。沼の季節は風のように素早く移り変わることを私は知った。だから数日後にはまったく異なるメニューから選べるかもしれない。今日食べたものと同じくらい、味わい深ければいいのだが!

ビアーデッド・ブルー
この藍色の美しい生き物はツォフィア洞窟周辺の沼でよく見られる。大まかに言ってノルドの親指くらいのサイズで、長い目の茎状部の下に、毛むくじゃらの触手を生やしている。このナメクジには繊細な香気があるが、さわやかな柑橘系の風味を基調に秘めている。触手の多さゆえにビアーデッド・ブルーには独特の食感があり、その点が少々気になるかもしれない(特に生で食した場合)。しかしその味は端的に言って最高だ。風味としては、噛んだ時に強く柑橘系の香りを感じるが、その奥にはかすかな土っぽさが隠されており、大地を感じさせる。かなりのご馳走だ!

ブラックバンド・スライダー
ブラックバンド・スライダーはこの地方の特産品だ。蒸してからゾウムシの幼虫とオレンジグラスの上に乗せて食べることが多いが、私は生で食すことを強く勧める。このナメクジは刺激されると苦味のある黒い油を分泌するが、それをさっとふき取れば、青白くなめらかな膜の表面に横長の黒い斑点がついた、長い胴体があらわになる。洗った後でもブラックバンド・スライダーは硬く、苦味もあるが、これを我慢すればさわやかで繊細な後味に辿り着く。アルゴニアンはこれを楽しむらしい。基本的には威圧的な食べ物だが、そこに花が咲いたようなまろやかさがあるのだ。

キング・イエロー
キング・イエローがこの時期に食べられると知って喜んだ。これは実に巨大な生物だ。ほぼ私の前腕くらい長く、それが肉々しい、波打つ毛の森で覆われている!アルゴニアンの表情はいつも判別が難しいが、私が生で食べたいと言った時、シェフは非常に驚いたと思う。彼はこの獣をワッソーナッツの葉にくるみ、藍色ユリを添えて出した。私はすぐさまその苔っぽい、草のような豊かな香りに驚かされた。この獣が分泌する粘液の中に、ブラック・マーシュの全ての匂いが感じられると言ってもいい。一口味わうたびに新しい、驚異的な風味の波が押し寄せた。尻尾の肉の複雑で風味豊かな味わいは、次第にコクのある、脂っぽい苦味の膜へと進む。そして最後に、私は頭へと辿りついた。この危険なほどの風味の噴出を上回るものは、ちょっと思いつかない!バターのような甘ったるさ、食べ終わる頃には乾いたマスタードのような味へと激しく移り変わる。感激だ!

私は重い心でテーブルを去った。おそらく次の季節までキング・イエローを味わうことはできないだろうと分かっていたからだ。だが、明日にはまた新しい、大いなる食の冒険が待ち受けていると知って気持ちが高まっている。今回はカブトムシの幼虫だ!待ちきれない!

食の旅、第2巻A Culinary Adventure, Volume 2

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

今日、マク・マカは彼の見事なイモムシ農園を案内してくれた。もちろん、「農園」というのは言葉のあやだ。この農園は小さな葦の囲いがいくつか並んでいるだけで、それぞれに数百匹のイモムシが住んでいる。その種類の多さには驚愕した。私が見たイモムシは長いのや太ったの、オレンジと紫の縞模様のなど…これほどの多様性は見たことがない!いくつか質問をしてみたが、マク・マカのシロディール語力が完全でないため、私たちのやり取りは何度も行き詰った。私は言葉の壁をどうにかするためジェルを学ぼうとしているのだが、なかなか上達しない。それでも、彼は助けようとしてくれる。笑えて仕方がないと彼に言われた。もちろん、アルゴニアン相手に笑われているかどうかを察するのは不可能である。

私はイモムシを食べるのかと聞いたが、面白がられたようだった。彼はただ首を振り、私をより大きな囲いの中へ案内した。彼がランプに火をともすと、部屋は様々な色で溢れかえった。大きな蝶や蛾が壁から一斉に飛び立ち、竜巻のように羽をはばたかせてランプの周囲を踊った。マク・マカは特に大きな個体のいくつかに向かって身振りをしながら、でたらめなシロディール語で長めに喋った。彼は囲いを去る前に、何羽か手に取ってみるよう私を促した。

蛾や蝶を食べるのは大変だったが、貴重な食の経験だった。この特産品を味わってみようという勇気のあるよそ者の大部分は、食べる前に羽を取ってしまう。マク・マカは羽を取ってあげようと申し出たが、私は断った。彼は助手に向かってジェルで何か言い、二人ともしばらくの間、微妙に楽しそうにしていた。これは多分、マク・マカが何かあり得ないくらい笑えることを言ったのだろう。その少し後、彼は私に5羽のグリーン・スリッパーテイルを伝統的な「アジュム」(網目模様の蓋がついた織物の盆)に乗せて出してくれた。大いに堪能できた!

真に満足のいく蝶の一皿は、「ルヒーズ」すなわち「羽畳み」の繊細な技法にかかっている。アルゴニアンの達人シェフはその爪を使って羽を折って畳み、極小ながらも華麗な、食べられる彫刻に変える。残念ながら地元の風習により、よそ者は自分で羽を畳むことになっている。私は最も簡単な「ジーチ」畳みを再現しようと努力したが、結果は悲惨なことになった。それでも、食事は美味だった。グリーン・スリッパーテイルはおそらく、スリッパーテイル種の中で最も甘味が強い。ハニーグラスのような味だが、甘くポロポロと口の中で溶ける。蝶の料理をマスターする機会が、もっとたくさん得られることを期待しよう!

食の旅、第3巻A Culinary Adventure, Volume 3

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

マク・マカはこの数日間、忙しく働いている。私が存在すら知らなかったある料理を準備しているのだ。実に素晴らしい!彼の助手が私に教えてくれたが、地元民はそれを「ナガーセー」と呼んでいるという。これは私が思うに「蛇の巻物」というような意味だろう。「蛇の靴下」といったほうがいいかもしれない。それについてはもう少し後で話そう。

料理はワッソイケガキヘビを捕まえることから始まる。どうやらマク・マカはある地元の蛇商人しか信用していないらしい。パクシットという名の、角ばった顔の狩人だ。パクシットと話していて分かったが、評判のいい蛇商人を選ぶのは、ナガーセーを作る際に決定的な重要性を持つようだ。というのも、ワッソイケガキヘビはアカマルキヘビとほとんど同じ見た目をしているからだ。前者を食べればお腹が満たされるが、後者を食べればテーブルから立ち上がる前に死ぬ。この話を聞いて私は嬉しくなった。私は危険な食べ物に目がないのだ!

シェフは蛇を手に入れたら、内臓を取り除く。この蛇の内臓は他のいくつかの料理に使用されるが、ナガーセーに必要なのは皮だけだ。中身を空にした皮に詰める食材は野生のマーシュ米、乾燥させたパースニップ、バークイヤーキノコのスライス、そして生きたネズミを1匹!パクシットが説明してくれたが、ナガーセーは特別な料理で、常に変化するそうだ。できたてを食べることにした者は新鮮な野菜の組み合わせと、身のしまった生きのいいネズミの肉を味わえる。しかし料理を数時間(あるいは数日)寝かせた者には、その忍耐に見合うだけのものが手に入る。寝かせれば、それだけネズミは太っていく。ネズミはかなり長い時間をかけて米とパースニップを食べ、最終的には死ぬ。ナガーセーは通常、約5日間かけて「熟す」のである。

この話を聞いていて、食べるのが待ちきれなくなってきた。私はほぼ2日間寝かせてある巻物を選んだ。皮の下から、まだかすかな鳴き声が聞こえている。最初の一口を食べる前に、もう少しだけ待とう!

食の旅、第4巻A Culinary Adventure, Volume 4

食の求道者、ラローム・ルモンズ 著

私はもう何日も、マク・マカに催促し続けている。私はアルゴニアン料理について測り知れないほど多くのことを学んだが、未だに味わっていない料理が1つある。アオジェー・サッカだ。私がこれを要請すると、マク・マカはいつも動揺して、別のものを出してくるのだった。彼の躊躇も分からないではない。アオジェー・サッカはタムリエル全土でも最も危険な料理の一つなのだ。

この料理は実のところ、同時に出される2つの料理から成っている。第一の料理は焼き目を付けてきれいにスライスしたアオジェーガエルで、シロップで覆ったイチジクとシナモングラスに乗せて出される。二つ目の料理は冷たいホッシュ(黒くドロドロしたスープ)だ。どちらの料理も、単独で食べることはできない。致死性の毒を含むからだ。これらはゆっくりと、かつ同時に食べなければならない。一方の毒は他方の解毒剤になるのだ。蛙を食べ過ぎると体が激しく震え、口から泡を吹き、その後死が訪れる。ホッシュを食べ過ぎると腸の焼けるような痛みと嘔吐に引き続き、死が訪れる。当然ながら、大抵の人はこの料理を避ける。シェフも客も同様だ。だが私の食欲には逆らえない!

マク・マカは、私の要請を少なくとも考慮してくれていると思う。少なからぬ額のゴールドを用意したし、半ダースもの蛇の皮で出来た文書にサインした(おそらく誓約書か何かの類だろう)。すでに蛙の味が感じられるくらいだ。我が食の冒険は完成しつつある!

* * *

この本を返そう、ラロームの友よ。他のものを調理しようとしたが、彼はアオジェー・サッカでないとダメだと主張した。調理したが、食べ方が違っていた。蛙を食べ過ぎた。彼が死んで残念だ。

よい生活を!私たちのところに食事に来てくれ!でも、アオジェー・サッカはダメだ。

—マク・マカ

深淵からの呼び声The Call Beyond

ソリス・アデュロによる翻訳

来るのだ子供たちよ、集まれ
太陽が沈みつつある
お前たちはもう眠れ
根を恐れることはない
私が留めておく
そしてお前たちが目覚めた時
私がしたことを思い出せ

甚だしき無駄So Much Wasted Potential

浅瀬に分け入っていったが、危険を冒す価値はあった。デッドウォーターは愚かな試練で自分たちの未来を潰しているが、他の部族たちは交配に熱心だ。集める機会が訪れたら、彼らの倒れた戦士たちを喜んでいただこう。

大半の部族は卵の盗難に対して備えがないが、ブラックトングとブライトスロートは例外だ。彼らは自分たちの卵をまばたきもせず見守っている。だが困難はあっても、どちらに関しても見込みは十分あると思う。

ブラックトングの卵用調合薬を直接盗むことはできていないが、観察から多くのことを学んだ。彼らの方法が卵の成長をどのように制限するか、試験を楽しみにしている。

もう数ヶ月の間見張っているブライトスロートに接近してみた。彼女の名はハクサラで、想像していたよりずっと純朴で信じやすい。絶望の臭いを辿れば、必ず機会に行きつくものだ。

ハクサラを説得して、部族の不要な卵を手に入れる手伝いをさせるのは難しいことではなかった。まだ分からないのは、あの愚か者が気づかれずに卵を奪えるかどうかだけだ。彼女が失敗すれば、大きな後退を強いられるだろう。

ヒストは我が道を祝福している。ハクサラはウクシスの卵を数回、問題なく盗むことに成功した。欠陥はあるにしても、興味深い検体だ。これらの卵の安定した供給が得られれば、私もよりリスクの大きい方法を取れるだろう

戦場からの手紙:ウィンドヘルムLetters from the War: Windhelm

シェイ・ハルへ

やあ、卵の姉妹。村の様子はどうだ?お前はまだ、テーバ・ハツェイのフィールドでは一番か?リーク・クースはまだマッドクラブを追うハジ・モタみたいに、お前に付きまとってるのか?本当に故郷が懐かしいよ!

この手紙はウィンドヘルムのコールドムーンという宿で書いている。雪はたくさんあるし、ここは容赦なく寒い。ノルドも物語で聞くとおりに大柄で、声もでかいぞ。だがそれでも、この場所には我々の愛するブラック・マーシュとは全く違う美しさと魅力がある。まだあちこちにアカヴィリの包囲の爪痕が見えるし、スカルド王の王宮は修理中で閉鎖されているが、人々は荒々しくて親切だ。サクスリールがあんな風になることはないだろうな。

お前だったら地元の魔術師ギルドのギルドホールを気に入っただろう。タムリエル中の魔術師が出席していて、その中には見物に来た兵士のために見事な手品を披露する小さなウッドエルフもいたよ。彼女は私の耳から金色の魚を取り出して見せたんだぞ!どうやったのかは分からないが、実にうまそうだった(ちなみに、そのことを言ったら彼女は恐れをなしたようだった。ウッドエルフってのは変わってるな)。

俺が一番気に入った場所は、鍛冶場のあるロングハウスだ。中はすごく暖かくて快適なんだ!建物の端は両方開かれているのに寒さを感じない。燃えている火がそれくらい熱いんだよ。

九つの塔に支えられた巨大な壁が、この街を囲んでいる。攻囲の時に壁の一部が破壊されたことは知っているが、今じゃその痕跡は見られない。九つの塔はスカイリムの九つの地を代表していて、このことはノルドが我々とほとんど同じくらい象徴に敬意を持っていることを示している。彼らはいくつもの祭りや祝賀で、壁の上に沿って大規模な競争をやるらしいんだが、俺がいる間にはそういう競技はなかった。

でもここにいる間、地元の珍味を一つ食べてみたよ。「ウサギのミートボール」と呼ばれているものだ。どうやら耳が長くて毛の生えた、小さなげっ歯類の肉を使っている。砕いて様々なハーブとスパイスを混ぜ、小さな球形にして、外はカリカリ、中は暖かく汁気たっぷりになるまで揚げるんだ。お前はこの描写を読んで、きっと気分が悪くなってるだろう。俺もそうだった。でも意外なことに味はよかったぞ。

次の手紙と一緒に送ろうかな。

ガム・ザウ

戦場からの手紙:シロディールLetters from the War: Cyrodiil

ああ、卵の母よ、会えなくて寂しい!

戦争は悲惨だ。悲惨でないなどという声に耳を傾けてはいけない。嵐の吹き荒れる湖に立って、暗い色のヒレが底から出てきて手足を噛みちぎるのを待っているみたいなものだ。僕たちは長いことじっと待ち、あらゆる方向から迫る脅威を心配しながら監視する。それから突進して敵とまみえ、しばらくの間は激しく戦い、守りの固い、比較的安全な場所に逃げ込む。それを何度も、何度も繰り返すんだよ!

今日、僕は大柄なノルドの女性(多分女性だったと思う。肌の乾いた者の性別は未だによく分からない)と、ダークエルフの魔闘士と共に戦った。どちらとも初対面だったが、パクト兵の少なくとも3部隊と、同数の敵が入り混じった突撃で混乱状態に陥った後、僕たちは気づいたら一緒にいた。他に頼れる相手もいなかったから、僕たちは一言も発することなく共に動き、敵軍の攻撃から身を守った。

僕たち3人は4倍の数の敵に圧倒されていた。どういうわけか、僕たちは2つの丘の間の岩だらけの地帯にいて、残りのパクト軍がどこにいるかすぐには分からなかった。戦いの音が付近の丘の向こうから響いてはいたが、誰がどこで戦っているのか正確に判別する方法はなかった。それに僕たちは、まだ目の前に敵を抱えていた。多分カバナントのオークだったと思うが、僕には未だにハイエルフと区別がつかない。

敵が何者だったにせよ、奴らは突進してきて僕たちの力量を測りに来た。僕たちは何度も押し返し、連中を次々に倒したが、こちらも切り傷や打撲をいくつも受けた。10分だったかもしれないし、10時間だったかもしれない。肩を寄せ合い、固まって敵の波を押し返しているうちに、時間は意味を失ってしまった。

ダークエルフの魔闘士の名前は結局分からずじまいだったが、彼は命の恩人だ。敵の数を減らしたので、相手の数は今や2倍程度になっていたが、そこで敵の魔術師が僕に炎の球を発射した。僕は2人の戦士と戦っていて、1人は剣を、もう1人は戦槌を持っていた。視界の端に明るい輝きを目にしてはいたが、炎の進路から逃れることは不可能だった。その時ダークエルフが僕と炎の間に飛び込んで攻撃を受けてくれたので、僕は目の前の戦士2人を倒すことができた。僕が駆けつけた時は、彼はすでに激しい熱と炎にやられていた。

こうなったらノルドと僕で残りの敵を片づけなければならない。最優先すべきことは、致命的な呪文を再び唱えられる前に妖術師を倒すことだった。そのためにノルドは最後の矢を魔術師の方へ放った。少なくとも2本は命中し、魔術師の胸に突き刺さった。これで3対2になった。残った敵は自信と戦いを続ける気力の双方を失ったようだった。彼らは背を向けて逃げようとしたが、そうはさせなかった。

さらに少し時間をかけて歩き回る必要があったけど、僕たちは結局、どちらも自分の部隊と再会できた。三つの種族の同盟がいかに大事か教えられたのは、あの日だったと思う。

オトゥミ・テイ

戦場からの手紙:ハチミツ酒!Letters from the War: Mead!

親愛なるティーワジへ

今日、素晴らしきウィンドヘルムの街からそれほど遠くないところにある酒蔵を訪ねたよ。そこはヴォルジャー醸造所と呼ばれていて、これまで私が喉に入れた中で最高の酒を造って出してくれるんだ。ハチミツ酒というらしいよ!ベースになる材料は何だと思う?発酵させたハチミツだ!そう、彼らは蜂が吐き出した蜜を使って作るんだよ!いや、つまりズーチのことさ。君の花の庭園をブンブン飛び回ってる、あの針を持つ昆虫だ。

とにかく、ノルドはこいつが大好きなんだ。だから私もここにいる間に味見してみようと思った。美味しかったよ!職人たちの誰かにレシピを教えてもらって、マークマイアに帰った時、自分で作れるようにしておくといいかもしれないな。

ただし、どうして彼らは自分の土地の前に、槍に刺したオークの頭を置いているのかよく分からない。ノルドの風習は、私にとって全く意味不明なものが多いんだ。

子供たちによろしく言っておいてくれ。

太陽を探す者

戦場からの手紙:モーンホールドLetters from the War: Mournhold

おお、偉大なるラジ・デーリスよ、ダークエルフの大いなる栄光の都市、モーンホールドの驚異をあなたに伝えさせてください!

私はモロウウィンドのデシャーン地域を担当するパクト兵団へ派遣されたのですが、最初の休暇の機会に、ダンマーの物語に伝えられるこの都市を探検しました。我々の村で育ったサクスリールの多くと同様、私はダークエルフの街で自分の民がいかに過酷に扱われているかについて、恐ろしい物語を聞いていました。私たちはもう友であり同盟者であるわけですが、私は奴隷や拷問器具で溢れているのをほとんど期待していたほどです。しかし、真実とはかけ離れていました。

大部分において、私が出会ったダークエルフたちは友好的と言ってもいいほど寛容でしたし、また市場では他の種族の人々を大量に見かけました。旅の間はノルドやウッドエルフ、インペリアルにブレトン、カジートやハイエルフにさえ会いました。それに市場で売られている品物の多様さといったら…理解が追い付かないほどでした!

トリビュナル聖堂は見ものでした!巨大で威圧的ですが、偉大なるヒストの木の影に立っているような神聖さも感じられました。自ら三大神を崇拝するようになったアルゴニアンにも会いました。彼との会話は興味深いものでしたが、血と肉で出来た存在を崇拝する気持ちは私にありません。ましてやダークエルフなんて!

それから、有名なダークエルフのコーナークラブを訪れる機会もありました。そこはフラミング・ニックスと呼ばれていて、大広間の中央にファイアピットがあるのが自慢のようです。酔った客たちが順番に飛び込み、熱い石炭に混じって踊るのです。白状すると私もやりました。実に愉快でした!もっとも、炎に踏み込む前にフリンの瓶を数本開けておけば、もっとよかったと思いますが。

近いうちにまた手紙を書きます!どうか、卵の一族に私からよろしくお伝えください!

あなたの最愛の生徒
ララ・ラー

太陽の祝福との調和In Accord With Those Sun-Blessed

ソリス・アデュロによる翻訳

我々は根の民である。そのことはこの世界において、他のあらゆる世界と同様に真実である。我々の根は影へと深く伸びていき、記憶の波を飲むが、我らの枝は空高く伸び、太陽の光を浴びている。我々は今、一つになり、そのぬくもりを鱗に感じなければならない。

偽の予言者は我らの兄弟の心を禁じられた嘘で変えてしまった。彼らは我々の目的を放棄した。我々の運命も。

私は皆に伝える。共に川を上ろう。彼らは海へ沈むに任せておくがよい。我々は栄光の階段を上り、太陽を割り開くのだ。

太陽の祝福の最後の願いThe Last Wish of the Sun-Blessed

ソリス・アデュロによる翻訳

光り輝く栄誉に浸りながらも
黄金と樹皮の肌の
我らは黄身に到達しなかった
今となっては手遅れだ

だが暗闇なき光は目を眩ます
影は常に我らを見ていると
それは今も我らのためここにいる、我らが願いさえすれば
返済の苦役は長いとしても

我ら黄金の鱗
我らは深奥の兄弟たちに加わらねばならぬ
どれほどのものを失おうとも

我らの根は忍耐強く
我らは再び立ち上がる
この世界か、それとも次の世界で

大いなる変身A Grand Transformation

木の番人フリーリイーク 著

変化を恐れてはいけないし、顔を背けてはいけない。そのことを私たちは分かっているし、常に胸の奥底で分かっていなくてはならない。時に、変化は外の力によって訪れる。季節の流れ、もしくは愛する者の死。私たち自身の内側から訪れる変化もある。古い自分を振り払い、新しい自分を受け入れる必要性だ。

自分を変える方法は、もちろんたくさんある。遠くの地へ行って、新しい文化と生活様式を取り入れる者もいる。新しい技術を学び、木工職人から戦士、仕立屋から卵の番人になることを選ぶ者もいる。しかしもっと大きな変化が必要だと感じる者もいて、ヒストの助けを必要とする。それは性別を変えることを選んだ者たちだ。

こうした個人の奥深くでは、この変化を行うことを求めるものがある。ヒストのおぼしめしなのか、各自の意思なのかは分からない。だが私はいつも心と手を開いて耳を傾け、こうした変身の時期を手助けする用意がある。一緒にヒストと語り合い、手助けを受ける準備をする。

儀式にはいつも息をのまされる。ヒストは部族を見守り、私たちの道を案内してくれているが、じかに何かをすることは滅多にない。しかしこの時には、ヒストと霊魂が結合し、愛に満ちた抱擁の後で大きな変化が起きる。

その後、私は変身したばかりの者を部族に改めて紹介する。彼らは全員に迎えられ、大切な者が去ってしまったことと、大切な者が訪れたことを祝って大きく祝福される。

調査報告書:ヴァロ・ホシディアスDossier: Varo Hosidias

インペリアルのヴァロ・ホシディアスに関する報告を以下に記す。年配の男だが、それにしてはずいぶんよく動き回る。ブラックガードには追加費用を支払ってもらいたい。

ヴァロ・ホシディアス:ファミア・メルシウスの仲間として知られ、歴史に関する彼女の慈善事業、シロディール・コレクションに時々雇われている。しばしばカジートのザダザと同行している。地域で調査した結果、彼はブラック・マーシュに移住する以前、帝国軍で際立った働きをしていた。移住の事情は不明瞭。軍法会議やそれに類する軍の処分から逃れるためと言う者もいるが、単なる隠居だと言う者もいる。依頼者の要求にはおそらく無関係だろう。

朝はシロディール・コレクションの本部かリルモスの埠頭で訓練をして過ごす。剣と盾の両方にかなり熟練している。相手にするなら、素手になるまで待つことを勧める。午後の大半は「好色なアルゴニアン歩兵」の中か、その付近で過ごす。酒は飲むが、飲み過ぎは滅多にない。

市の城壁外に頻繁に出ていく。常に他の探検家数人を伴っている。おそらくは帝国軍時代の習慣だろう。移動も戦闘も、常に集団でというわけだ。

お勧めの誘拐方法:酒に何かを混ぜること。最初にファミア・メルシウスをさらっておけば、行動に隙ができる可能性あり。街で正面から襲うのは避けるべき。ここには奴の仲間が多すぎる。

調査報告書:ザダザDossier: Zadaza

カジートのザダザに関する報告を以下に記す。こいつはブラックガードに倍払ってもらわないとならない。ウナギのように捉えどころがない。

ザダザ:カジートの傭兵にしてトレジャーハンター。ファミア・メルシウスやその仲間ヴァロ・ホシディアス、エシュラフ、ジー・ラーなどとよく仕事をしている。ブラック・マーシュの外における彼女の生活について、詳細な情報は未だに少ない。地域住民は対立する仮説を複数提示しており、その中には盗賊ギルドのメンバーだとか、以前ドミニオン軍で活動していたというものもあった。いずれにせよ、ザダザを特定の場所で捕捉するのは非常に難しい。彼女は予測できるルーチンに従わない。食事も睡眠も仕事も、1日ごとに場所を変えている。

彼女はファミアかヴァロとよく食事を共にするが、探検についての話し合いと費用の支払いのためだけだ。どの情報に従っても、ブラック・マーシュには彼女の親しい友人がいない。事業のパートナーだけだ。圧力をかけられる部分が非常に少ない。

我々はザダザが戦いに参加するところを見ていないので、戦闘能力は未だ不明。しかし、高度な隠密と鍵開け、その他の関連技術に高度な熟練を示している。

お勧めの誘拐方法:ザダザと仲間をザンミーアに入らせ、出てきたところを襲撃する。ザダザは通常、最初に外へ出てくる。他の仲間たちがついてくるのを数分待っていることも多い。注意深く計画を立てることを強く勧める。ザダザは容易に捕まらないだろう。

調査報告書:新規加入者Dossier: The Newcomer

この新参者はかなりの評判になっている。我々の知る限りこの地域との深いつながりはないが、ファミアの仲間に加わった。ブラックガードは注意を払っておいたほうがいいだろう。

新参者:旅の冒険者であり、シロディール・コレクションに最近雇われるようになった。戦闘とダンジョン探索の両方に高度な能力を示す。初期の報告が示すところでは、マークマイアに到着してすぐ、イクスタクス・ザンミーアでファミアの一味を救出したか、護衛をしたようだ。

どの程度の情報を知っているかは明らかでないが、ファミアは秘密の一部を明かしていると考えるのが理に適っているだろう。

お勧めの誘拐方法:集団で襲うこと。一致団結して行う必要がある。戦士を少なくとも20人用意することを勧める。それでも足りないかもしれない。リスクを覚悟すること。

帝国の侵攻:士官の嘆きImperial Incursions: Officer’s Lament

帝国備忘録 #61509.N

帝国秘書ジロリン・アリウスへ

親愛なる兄さん、なぜ私は罰せられているの?この神に見放された泥溜めに送られてしまうほど悪いことを何かしたの?きっとメナニウス将軍に口説かれて拒絶したからよ。目をつぶって、ただ彼女の好きなようにさせればよかったんだわ!でもダメ。私にも意地があった。自尊心があったの。それで今どんな目に遭ってると思う?泥と汗まみれよ。この髪に付いた臭いは、もう二度と取れないわ!

ここをどれだけ嫌ってるかって話はもうした?あのトカゲどもは普通の人間みたいに戦わないから、まともに戦闘もできないのよ!卑怯すぎる!あの樹液をしゃぶるアルゴニアンみたいな敵とは、これまで戦ったことがないわ!

で、愛する妹のためにちょっとした口添えをしてもらうには、あなたに何をあげたらいい?今度帝都に戻ったら、付き合ってもいいかなと思ってるって将軍に伝えてくれたら、想像もできないくらい感謝するわよ。この忌々しい沼から脱出させてくれるなら、どんなものでもあげるから!

ミロナ・アリウス隊長
第四軍団
第一紀2812年、栽培の月17日

帝国の侵攻:沼へ進む理由Imperial Incursions: Why a Swamp?

帝国備忘録 #53902.B

帝国議会の皆様へ

まず、帝国に奉仕するこのような機会を与えていただいたことに感謝します。皆様の信認に値する存在であり続けるために、我が力の限りを尽くす所存です。

次に、ブラック・マーシュの第四軍団の指揮を執るという私の決断に関して、一部の議員から意外の念、それどころか不安の声さえも上がっていると伺っております。「もっと重要な拠点があるのに、なぜ忌々しい沼を征服するのだ?」これはある上級議員の発言として、私の耳に届いたものです。申し上げるまでもなく、私は皆様の果てることなき知恵に従う心づもりでおりますが、なぜこの「忌々しい沼」が帝国の将来の安全にとって必要であるのか、思うところをお伝えしたく存じます。

ブラック・マーシュはタムリエル南東の巨大な部分を占めています。我々が行った沿岸地帯の探索によれば、沼地の内陸部はゆうにハンマーフェルやスカイリムに匹敵する大きさであり、そこには採掘を待つばかりの、手付かずの富と資源の宝庫が眠っているのです。トカゲの民がこれを利用しないのであれば、我々がそうすべきでありましょう。

そして、トカゲの民自身についてはどうでしょう?あの原始的な蛮族に、自らの統治を任せて本当によいのでしょうか?彼らから人望ある指導者が出現すれば、我々の国境が襲撃の危機にさらされます。起きると分かっていることを、なぜ待つのでしょう?我々自身の手で問題を処理し、自分の運命は自分で描き出すべきです。それこそが、インペリアルの流儀ではないでしょうか!

最後に、ブラック・マーシュはインペリアルの軍事力にとって最後のフロンティアです。新しく、汚されていない、探検を誘う未知の領域なのです。我らが軍勢を率いてこの必要にして価値ある冒険へ向かうことを、私は心待ちにしています。どうかご安心ください。トカゲの民に対する我らの勝利は素早く、輝かしいものになるでしょう。私は保証します!

アウグリアス・ブッコ将軍
第四軍団指揮官
第一紀2811年、薄明の月13日

倒れた探検家の日記Doomed Explorer’s Journal

7日の間、私はこの遺跡の大広間をうろついてきた。2日目の終わりには、完全に迷ってしまった。5日目の終わりには、食料が底をついた。今、静かで悲惨な1週間目の日没がやって来て、水筒からはただ1滴の水も絞り出すことができない。どうやら私はここで、幽霊と巨大な石の門に囲まれて死ぬらしい。

この魔法の扉に嘲られている!囁き声は毎回逃げ道を約束するが、扉を抜けても太陽はない。ただ虚無が一瞬だけ輝き、それから元通りの、やはり暗い地下室があるだけだ。このアイレイドの石細工はあまりに厳格で、荘厳だ。私は野外で死ぬのに、もう墓に埋められた気分だ。巨大な石棺に埋められているのだ。

一人で死ぬのではない。ここはベールが薄い。薄すぎる!最初は囁き声だけが聞こえた。風に漂うアルゴニアンの泣き声と、アイレイドの声。だが3日目には、彼らがはっきりと見えた。まばゆいほど華麗な、アイレイドの幽霊たち。彼らは私を見ず、私の存在に反応もしなかった。彼らはひたすら、古い出来事を再演していた。いくつかの場面はあまりに平凡で驚いた。だが他の場面は、失われた真実と古代の脅威に満ちている感じがした。ここで何か恐ろしいことが起きたのだ。最初はアルゴニアンに、後にはアイレイドに。この遺跡の中(下かもしれない)の何かが、これらの出来事の展開を見るよう私に要求している。その帰結の深刻さを感じるよう要求しているのだ。何かの力が私の理解を求めている。私はそれゆえに死ぬのだと思う。理解できなかったから、残らねばならないのだ。

この日記を誰かが見つけたら、あの幽霊たちに注意深く耳を傾けてほしい。彼らは大いなるアルゴニアンの財宝の物語を伝えている。彼らの言葉に隠された、深い真実を学べる洞察力が自分にあればと思う。

今はもう、書き物は沢山だ。近くにまた門が見える。もしかすると、これで家に帰れるだろうか。とにかく力を振り絞らなくては。ただ、少しだけ休みたい。

肌の乾いた者の奇妙さThe Strangeness of Dryskins

ナガ・クルのカール・ドリーンジー 著
ウェイレストの放浪者ティリリャ・レン 訳

これから書くことは真実だ。マークマイアに来る肌の乾いた者の存在は歓迎されず、招かれざる客である。デッドウォーターの地に入る者は始末される。これはマークマイア全土で知られていることだ。

だが、私は頭を垂れる。こうしたよそ者を歓迎する部族の所に行くことがあるのだ。彼らは私たちに、愚かな選択を尊重するように頼んでくる。そのため、肌の乾いた者の殺し方以上のことを学ばなくてはならない。私は拳を握る。こういう時のために、平和な交流を学ばなくてはならない。ナガが備えられるように、私が書くことは真実である。

肌の乾いた者の肉は柔らかく、簡単にあざができて切れる。彼らの皮は多くの沼の植物に触れると、水ぶくれができて破れる。子供の食べ物は、肌の乾いた者を病気にすることがある。槍の助けがなくても、多くのよそ者は単なる沼の性質によって死んでしまう。私は微笑む。

この目では見ていないがこの耳で聞いた話によれば、肌の乾いた者は生きた子を産むという。考えただけで身震いする。その幼児(孵化した子について肌の乾いた者が使う言葉)は救いがたいほど傷つきやすくて弱い。歩くことさえできない。私の目は混乱に細まる。そんな生物が、どうやって大人になるまで生き残るのだろう?

さらに、彼らの石の巣は多くの者の手と数多くの石を必要とする。しかし地面が沈み始めたら?嵐が荒れ狂い始めたら?そうしたら彼らは貧しく哀れな状態になってしまう。そんな愚かさに、私は首を振るばかりだ。肌の乾いた者が不変を望む理由の一つだ。

最後に真実を書く。あのよそ者たちのことは、寛大に取り扱うべきではない。彼らはこれまで何度もその下劣な性質を見せてきた。ブラック・マーシュの部族はいつか、肌の乾いた者を避け、追い払うべきなのである!ナガが常にしてきたように。

不透明な時間Murky Time

サクスリールの諸概念の研究 魔術師ギルドのテルデンリンデ 著

「ハジ・モタは古い霊魂を持っている。卵の中にあってさえ、それは古く賢い。ハジ・モタを狩りたいと思うのなら、汝もまた古くあらねばならない」

これはアルゴニアンの文化と民間伝承においてよく見られるテーマである。逆方向に年を取ること、あるいは早期に年を取るという考えだ。よそ者にとって、完全に理解するのが難しい概念でもある。これは驚くべきことではない。人間にとってもエルフにとっても、生の経験は過去と未来の間のどこかで起きる。アルゴニアンにとって、時間とはそれよりも遥かに流動的なものだ。

この理由で、ジェッカワス文明暦の存在と重要性はより混乱を招く。ワッセーク・サクスリールとその隣人たちの多くは、月の移行とタムリエルの年が循環し、再帰する性質を多大に強調している。一部の学者は、この暦が偉大なるアルゴニアンの石彫刻があった古代の時代の名残にすぎないと片づけている。この理論に従うなら、暦は伝統を通じて残った断片ということになる。しかしこの考えは現在のサクスリールの価値観と全く一致せず、私にはあまり納得できない。

私は最近ジェッカワスの長老に、彼らはなぜ時間を流動的で不透明なものと見ていながら、詳細で驚くほど正確な暦を維持できるのか、と尋ねた。彼は永遠と思えるほど長く、静かに座っていた。そのうち、彼は言葉を発した。

「〔暦は〕水の入った鉢のようなもの。昼と夜は鉢の中を泳ぐ」

彼はこの答えに満足していなかったが、諦めてそう言ったのだと私には分かった。彼の苛立ちの原因はシロディールの言語能力の不足にもあったが、彼の母語にも欠陥があった。私の知る限り、ジェルには時制がない。少なくとも、我々が時制と認識できるようなものはない。通訳者が用いるのを耳にした限り、最も近い代替語は「古い」と「新しい」だ。彼らは「変化すること」や「変わること」についてよく話す。前方への運動を含意する語である。いずれにせよ、これらの語は私にさえ解読できないような古代の用語や概念によって不明瞭となっている。

私としてはできる限り理解するよう努めるが、不透明な水が完全に透明になる日が来るとは思えない。

蔓の舌:序章Vine-Tongues: Introduction

自分の蔓の舌を馴らして、言うことを聞かせたいのだな?今はまだ芽でしかない。ここからどうすれば良いのかを知らなければならない。私の詳細な解説の助けがあれば、あなたも遠からず、すっかり育った蔓の舌を馴らす喜びを得られるだろう。

マークマイアのアルゴニアンのような蛮族はこの素晴らしい植物を野蛮な手段に用いるが、我々は蔓の舌を訓練してそれよりもずっといいものに変える方法を学んだ。真の忠実な友だ。

だから私の解説に従ってほしい。そして、蔓の舌はあなたの家の一部というだけではなく、あなたの心の一部でもあることを忘れないでほしい。

蔓の舌:一般的な失敗Vine-Tongues: Common Mistakes

愛すべき蔓の舌の苗を自宅に迎え、何を食べさせればいいかも、どんな住処を好むかも、退屈させないようにする方法も分かった。事故を避け、君の生活の混乱を少なくするため、私が自分の蔓の舌を育てていて学んだ、3つの重要な教訓をここに記しておこう。

1)蔓の舌を完全に躾けるまで、他のペットはどこかへやっておくこと。友人や遠くの家族に世話をしてもらおう。そうすればおませな蔓の舌が抱きしめ、優しくなでた時に、意図せずして食事を始めてしまうことを避けられる。蔓の舌は愛情豊かだが、常に腹を空かせているのだ。私が注意しておけば、猫のミクシーちゃんも生き残っていただろう!

2)否定的な連中は無視すること。多くの人は、蔓の舌を飼うのが危険だと言うだろう。あんな肉食の植物は躾けられないし、信用できないと。私に言わせれば戯言だ!躾けられた蔓の舌は誤解されているだけで、愛すべき生き物だ。危険なのは確かだが、昼ご飯を食べるのだって危険だ。次にウサギのミートボールを噛んだ時、喉を詰まらせないとも限らない。だが、食事するなとは誰も言わないだろう!

3)たとえ完全に躾けていても、蔓の舌に対する支配を保っておく必要はある。この植物は気が短く、すぐに機嫌を悪くするが、ほんのわずかでも躊躇や恐怖を見せれば、君を獲物と見て襲ってくるかもしれない。蔓の舌は愛情を求めている。そのことさえ忘れなければ、全て上手くいくだろう。多分間違いない!

蔓の舌:栄養Vine-Tongues: Nourishment

君は腹が減っている時に幸せだろうか?違うだろう!君の新たな友、蔓の舌にとっても同じことが言える。さて、この素晴らしく驚異的な植物に何を食べさせればいいのかと考えているかもしれない。恐れることはない、私が説明しよう!

蔓の舌にはもちろん、水が必要だ。それも大量に!水をやられた植物は幸せな植物だ!

水はいいし、必要なものだが、蔓の舌にはもう少し実のある食べ物も必要だ。正確に言えば、肉だ。場合によっては生で、できれば生きて動いているやつがいい。私はいつも言っているのだが、ピクピクしているものなら、食べさせても大丈夫だ。

苗の時、蔓の舌にはミミズや昆虫、小魚を食べさせよう。たまにならネズミを1、2匹やってもいい。成長してきたら、蔓の舌の食べ物の量とサイズを大きくしていけば、健康を保ち、しっかりと能力を伸ばせるようになる。だが、食事を与えすぎないこと!太り過ぎた蔓の舌は陰鬱で不幸になり、不適切なものを食べたがるようになる。ペットや主人の手足などを。

蔓の舌:幸福な家Vine-Tongues: A Happy Home

長く疲れる旅から帰ってきた時、君はおそらく暖かい食事とベッドを求めるだろう。蔓の舌も同じなのだ!まあ、暖かい食事は除くが。蔓の舌は生の、まだ動いている食事を好む。蔓の舌には最高のものを与えるべきだし、それを与えるのは君の仕事だ。

最も快適な過ごし方として、蔓の舌は湿気のある気候で、流れる水に囲まれた土の上を好む。それに加えて、蔓の舌が巣に決めた場所は周囲を徘徊する生物にとって魅力的であることが必要だ。君の愛する蔓の舌は十分に大きくなると、君が与える美味しい食事を補完するため、自分で獲物を捕まえるようになる。これにより蔓の舌が達成感を得られるだけでなく、君の家から害虫を排除するにも役立つのだ。

蔓の舌は優れた門番になることに気づいただろうか?高い所に置いて周囲を観察させ、景色を眺められるようにしておくのだ。誰かが君の地所に近づこうとすれば、君の新たな友は彼らにふさわしい出迎えをするだろう。ただし、不幸な誤解を避けるためにも、友人や家族が訪問する前に、蔓の舌を引っ込めておくことだ。

蔓の舌:準備Vine-Tongues: Preparations

蔓の舌を君の人生に迎え入れる覚悟ができたら、完全に準備を整えておかなければならない。この喜ばしい蔓は大変な幸福をもたらしてくれるが、多くの作業と極端な忍耐も要求するのだ!

君のパートナーや友人、家族と話して欲しい。これから先、何が起きるのかを知らせるのだ。そうすれば深夜の餌やりや定期的な土の入れ替え、時々起こる血の儀式に警戒され、気分を害されることがないだろう。

驚きは面白いかもしれないが、お腹を空かせた蔓の舌の吠えるような叫び声が夜中に響けば、人々を仰天させてしまうだろう。だから君も心の準備をして、友人や家族、隣人たちにも心構えをさせておくことだ。生涯の幸福のためなら、少々の不便など安いものだ!

蔓の舌:植物を幸福にするためにVine-Tongues: Happy Plants

小さな植木鉢に蔓の舌の苗を入れて、新しい家に設置する準備を整えたら、あとはどうすればいい?簡単だ!可愛い植物を幸せにするため、できる限りのことをすればいいのだ!

蔓の舌には個性があり、私と君のようにそれぞれ違っている。ある程度は実際に試して、苗を育てる最良の方法を確かめなければならない。一般的に言って、必要なのは長い熊手と水やり用の缶、それと幅広の剣だ。彼らは少々怒りっぽくなる時があるのだ!

この基本的な3つの道具があれば、苗に水をやり、背中をかいてやれる。蔓の舌が隣人の猫や地元の子供を食べようとした時、思いとどまらせることもできる。これらの道具を手許においておけば、君と蔓の舌には長く喜ばしい年月が待っているぞ!

無の代弁者Speakers of Nothing

ニッソ・ゼーウルム 著

無の代弁者、無の言葉よ
虚無は無の舌にしがみつく
千の舌と十倍の言葉
真理は安らう、無の肺と共に

知恵の息吹は空気を汚す
腐れ落ちて久しい果実のごとく
闇は言葉の隙間に挟まる
何かの間にある無

足は多くの道を歩む
ヒストの多くの根によって敷かれた道を
唇は多くの真理を語る
ロウソクの明かりのように広がる真理を

汝にはいかなる安息もなく
恐怖を鎮める優しい真理もない
だが言葉をよく聞け
無の目を見よ

名誉ある行いActs of Honoring

ニッソ・ゼーウルム 著

汝が耕す畑を通じて
壊れた大地を通じて
汝が育てる作物を通じて
変化である名誉を

無の言葉を聞け
多くの舌を聞け
その中に一つの真理を聞け
虚無である名誉を

血にまみれた牙と
激烈なる一撃と
汝の最後の息と共に
死である名誉を

卵の番人の日記Egg-Tender’s Journal

今年こそは違う。昔の人がやっていたみたいに、私はドラゴンソーンを噛み始めている。調合薬と一緒にこれから何ヶ月も続ければ、きっと絆の準備ができるはず。今年こそは私が選ばれる。間違いない。

大恥をかいてしまった。ドラゴンソーンは刺激が強い。息が酸っぱくなって、他の人が気づき始めてしまった。ミンメでさえ私と話すのを嫌がってるみたい。痛んだサラマンダーを食べちゃったのと言ったけど、これからはもっと目立たないようにあの草を噛まないと。

効いてる気がする。鱗にも爪にも、前よりも艶が出てる。多分、これはいい徴候だわ。でも歯に黄色いシミが出てきてる。醸造したスカルドルートを飲んで口を洗い始めた。死にそうな味だけど、歯にはいいと思う。

キーナムが間違って私のスカルドルート茶を一口飲んで、気絶しかけた。ウクシスで彼を看護しなくちゃならなかったから、暗くなるまでドラゴンソーン畑に行けなかった。暗闇の中から女の人が近づいてきたけど、鱗がものすごく青白くて、月明かりの下では特にその色が目立っていた。私は怖くて叫び出しそうになったけど、彼女は優しい声で話しかけた。どうしてこんな夜中にドラゴンソーンを摘んでいるのかと聞かれて、どうしてかは分からないけど、本当のことを彼女に言った。知らない人にどうしてこんなことを告白したのかは分からない。知らない人だったからかもしれない。憐れみの目で見られずにこのことを話せる相手は、村に誰もいない。闇夜の中で、私はこの人とずっと話をした。再び会うことになった。

この頃はほとんど眠れていないけど、仕方ないわ。リー・ナカルは夜中しか会いに来られないと言っているし、私は一日中彼女に会うことばかり考えている。あの人は私の痛みを分かってくれるし、耳を傾けてくれる人がいるって本当にありがたい。家でこの話題が出た時にも、私は恥ずかしさを感じない。リー・ナカルはヴィーシュクリールの一員、つまりゴーストの民。彼女があんなに優しいなんて思っていなかった。ブライトスロートはあの人たちと付き合わない。付き合いのある部族は少ないわ。彼らは卵を奪うから、追放者のように扱われている。でも仕方がないのよ。自分たちでは子供を産めないから、ヒストはあの人たちに他の部族へ行かせている。なんて悲しい話なの。

リー・ナカルと絆の儀式について話した。ブライトスロートはゴーストと絆の権利の取り決めをして、彼らがもう卵を盗まなくてもいいようにできるかもしれないと言った。彼女はありがとうと言ったけど、礼儀上そうしただけだった。私たちの部族が味方になるなんて希望をほとんど持っていないのは目を見て分かった。私たちの絆の儀式は特別なものだから、勝手にやればいいと彼女は言った。私は強く言わなかった。自分の部族にされたことを、彼女に対してしたいとは思わなかった。彼女を憐れんだりはしない。

悲しい一日。ヒストの下へ帰る卵が分かる日は、いつも悲しい日。なぜヒストは他の卵を差し置いて、一部の卵を選ぶの?明らかに病気の卵なら分かるけど、どの卵が孵って、どの卵が根の中に沈むのか、私たちはいつも予測できるわけじゃない。あの子たちのためにできることは何もないとずっと受け入れてきたけど、リー・ナカルはそうじゃないって教えてくれた。あの子たちも生まれることができるんだ。卵を彼女のところへ持ってくれば、あの子たちを助けるために力を貸してくれると彼女は言った。私の部族は卵がなくなっても気づきさえしないだろう。あの子たちのことは、みんなもう諦めている。でも私は諦めない。私はあの子たちが欲しい。あの子たちは、私たちの子供になるのよ。

今夜、私はまたキーナムと一緒に働くことになっているけど、彼の飲み物にスカルドルートのエキスを加えておいた。夜の間に、卵をいくつか持ちだせるはず。考えるのは恐ろしいけど、あの卵には私が必要なの。怖いからって、諦めるわけにはいかない。

やったわ。朝の番人が交代に来た時、私の肌は死んだ樹皮みたいに乾いていた。私は夜のうちに卵がいくつかヒストの元に帰ったと言うと、彼らはただうなずいて受け入れた。彼らが知らせに全く動じないのを見ると、喉がつかえる気分がする。

眠りに落ちるまでに何時間もかかった。木の番人がやって来て私を告発するかと思ったけど、次の番をするために目を覚ますと、全ては日常どおりだった。ヒストは私がしたことを知っているの?

最後の集団から出た不適格の卵はほとんど全部、リー・ナカルに渡してしまった。考えてみれば、ものすごくたくさんあった。何て無駄をしていたんだろう。でもそれももうなくなる。彼女が言うには私がすでに渡した卵は巣の中に入れられ、彼女の部族の人々が番をしているから安全で、健康にしているそうだ。私がここを離れてあの子たちに会いに行くのはまだ早いと彼女は考えている。最後の卵を救い出すまで待ったほうがいい。多分、そんなに長くはかからないと思う。考えただけで棘が震えそう。

私の子供たちは元気でやっていると言われた。まだ卵たちを目にすることはできていない。村で卵の世話をしていると毎日、あの子たちがいないのを思い出してしまう。私は自分の子供の世話をしたい。私はあの子たちの母親なんだから。他の人たちも、自分の卵を育てる時にこういう気持ちを味わうの?

卵がもうすぐ孵るとリー・ナカルが言っている!その瞬間を見たいと彼女に伝えたけど、まだその時ではないと言われてしまった。もうすぐ、絆の儀式が再びやって来る。私は出席しないだろう。でも、そんなこと気にしない。部族は私がいなくてもやっていけるけど、あの卵は違う。あの子たちには私が必要なんだから!

ケンカをして以来、リー・ナカルには会っていない。戻って来なかったらどうしよう。そうなったらどうしていいか分からない。どこで彼女を見つければいいか分からない。私の子供たちがどこにいるのかもわからない!私はあの子たちに会いたいだけなのに!

卵の番人の未完の手紙Egg-Tender’s Unfinished Letter

チーダシへ

あなたの申し出を受けるべきだったわ。あのしょうもない交易の仕事だって、ここの大騒ぎから逃げられるならありがたいくらいだわ。今年は色々なことがまともじゃなくなっていて、まるで全ての目が卵の番人に注がれているみたい。1分だって落ち着いて考えていられない。紙に筆を走らせる暇はなおないわ。あなたが儀式のための物資を持って戻る頃には、事態も落ち着いているかもしれないけど。早く戻って来てくれたら嬉しいわ。親身に耳を傾けてくれる人がいれば、気分が全く違うもの。他の卵の番人に打ち明け話なんてできないし。

ミンメは本当に噂好きで、部族の使者になれそうなぐらいだわ。ハクサラが今の時期になるとどうするか、あなたも知ってるでしょう。ミーナは黄金の蛙の夜以来、口をきいてくれないの。彼女だってそろそろ許してくれなきゃ。

木の番人の間に動揺が走っているみたいね。面倒が降りかかって来なければいいんだけど。

ペレタインの文書

Pellitine Postings

アズラーの渡しAzurah’s Crossing

沈黙の司祭アムン・ドロ 著

足に砂が触れて、彼は自分が死んだと悟った。なぜ死んだのかは思い出せなかったが、気にもならなかった。本当かどうかはともかく、よい生だったと感じた。あるべき生だった。

自分の名前は思い出せなかった。まだカジートだ。それしか分からなかった。爪に、髭に、毛皮に触れた。塩と砂糖の匂いがした。

自分に目があることを思い出し、彼は目を開けて終わりなき海を眺めた。上にも下にも古きものがいた。自分が孤独ではないと分かった。他の魂が、ゆっくりと岸から漂い離れていった。彼らを呼び止めようとして思い直した。足の指の間で砂は温かく、空は黄昏ていた。

彼は振り返って島を見渡した。一軒の家があった。ガラスと月光と真実の家だ。その方向から砂糖が匂っていたので、彼はそちらに向かって歩いた。

足元で砂が動き、しっかり歩いているとは感じられなかった。石のように見えるものに足を乗せようとすると、足元で崩れた。それでも彼は歩き、躓き、登った。階段にたどりついて乗ったが、それは透明なガラスでできていた。砂よりはしっかりしていたものの、足を踏み出すたびに信じられなかった。それでも彼は歩き、躓き、登った。光の家の扉まで来たが、開けることはできなかった。空とラティスを見上げた。母に教わった秘密、動きを思い出そうとしたが難しく、ラティスは震え続けた。それでも彼は歩き、躓き、登った。

家の門が開き、彼は中に入った。彼女がいると分かった。彼女を見上げたら眩しさで見えなくなると分かっていたが、見ずにはいられなかった。彼は絶壁に座るアズラーを見上げ、そうして彼女を見た。目は眩まなかった。アズラーはしなやかで背が高く、霞んだ星のベッドにもたれていた。何も着ていなかったが、彼女のある顔しか見えなかった。その顔の目は、月のように輝いていた。

「我が子よ」とアズラーは言い、彼は自分の名を思い出した。「お前は故郷に帰ってきた」

「私は以前ここにいた」とカジートは言った。

「お前は多くの道を歩いた」アズラーは喉を鳴らして答えた。彼の足の前に薔薇の道ができ、彼女まで続いていた。「すべて私のために」

彼は薔薇の道に足を踏み出した。棘で足が傷ついた。アズラーに近づくほど、彼女は遠ざかるように思われた。彼女はどんどん高く登り、彼は薔薇の壁を登るようになった。毛皮は血にまみれた。壁の上にたどりついて身体を持ち上げると、また道の出発点に立っていた。それでも彼は歩き、躓き、登った。

すると彼は、アズラーの丸めた掌の中にいた。彼女の顔は空で、目は輝く月だった。彼はそこで甘い至福の生を何度も生きた。足が再び砂に触れるまで。

今、彼は島の反対側にいた。そこは暗く寒かった。あまりにも暗く、見えるのは水が動いた時だけだった。そこに霊魂がいたとしても、闇の霊魂だけだった。尻尾が引き攣った。

彼は振り返り、再びアズラーを見た。今度は小さく、彼と並んで立っていた。彼女は月の杖を持ち、紫と黄金の絹のドレスを身にまとっていた。定命の者と違うようには見えなかった。美しく、疲れていた。彼女は彼と一緒に闇を見つめた。

カジートはアズラーの目に悲しみを見た。彼女はとても多くのものを与えてくれたが、返せたものはあまりに少なかった。「また歩く覚悟はできています」と、とうとう彼は言った。「何をすればいいでしょう?」

「小さき者、お前を闇に送らなければならない」彼女の目には涙があったが、流れはしなかった。「お前は私のため、道を作らねばならない」

彼は振り返って暗い水を眺め、水がどれだけ動いたかに気づいた。「母よ、私は何を求められても成し遂げるでしょう」

アズラーは微笑み、彼の心は喜びに満たされた。彼女は自分の杖の上から月をもぎとり、彼に向かって足を踏み出した。

「お前に私の月を与えよう」とアズラーは言い、彼の額に唇を押し当ててキスした。そして彼が月を受け取ると、それは武器に変わった。

カジートは前にあった剣を手にした。剣は月光を受けて輝き、彼はもう闇を恐れなかった。

そしてアズラーは言った。「私の子供たちを取り戻して」

アムン・ドロの霊魂についての書簡、第一巻Epistle on the Spirits of Amun-dro Vol 1

サヴァ・コはリドル・サールの歌を歌う。その甘い真実をこの舌に宿らせたまえ。

双子月の踊りの子たち。サヴァ・コの声を聞きなさい。トルヴァル・クリアタに噂が届きました。ある古い書。アムン・ドロという古代の司祭が集めた、リ・ダッタ以前の霊魂の目録が、ペレタイン中でカジートを魅了しているそうです。民はどうやら、善悪が入り混じる強き霊魂についての、華やかで現実離れした記述に惹かれているようです。アデプトは遠くからサヴァ・コの元に来て、好奇に満ちた心で尻尾を揺らしながら、なぜこの古い聖典について教えてくれなかったのかと聞いてくる。私たちカジートは好奇心が強く、遊び心の強い民です。しかし大きな危険を秘めた話題もある。この異端の文書が軽率なジャ・カジートの心に膿のように広まるのを見て、私たちは心穏やかでいられません。だからサヴァ・コと司祭はこの反駁文を出版します。リドサーリ・ダッタの忠実な子供たちよ、広く伝えてください。

最初のたてがみの啓示以前の暗黒時代、私たちの祖先の信仰は統一されていませんでした。十六の信仰が歴史と絡み合い、全てのカジートの魂を求めて争いました。この精神の混沌は私たちを多くの道へと引き入れ、その全てが大きな危険を伴っていました。危険の証拠は、曲がった同族であるドロ・マスラを見れば十分でしょう。この罰当たりな書は、そうした暗黒時代の産物です。私たちは十六の戦争と領地の奪い合い、無慈悲な飢餓の時代に戻るべきでしょうか?いいえ、断じて違います!リドル・サールの真理により、私たちは精神的な充足以上のものを得ました。私たちは定まらぬ砂に別れを告げ、石の土台を見出しました。平和と秩序に基づく、より優れた道を見つけたのです。

この古い書は真理の薄衣の下に冒涜を隠しているため、より大きな危険を示しています。この書の言葉の多くはリドル・サールと同様で、例えば双子月の賛美、ケナーシやスレンダーのような祝福された霊魂への敬意などは変わりません。しかし、その暗い寓話は罠のように隠されています。例えば、月の獣ローカジュについての報告を見ましょう。

騒がしきローカジュの闇を、カジート以上によく知る者はいません。私たちは生の途上で、誰もが闇への呼び声に苛まれる経験をします。深い悲哀や苦痛に満ちた後悔の時、闇の心臓が脈打つ音を聞かない者がいるでしょうか?最初のドロ・マスラを私たちの英雄に祭り上げることは、信仰と理性の両方を裏切ることです。何人のアデプトが、この書のせいでナミイラに屈するでしょう?何人のジャ・カジートが月の獣を呼び出し、その真の霊魂を復活させようとして永遠の呪いに蝕まれるでしょう?獲物の財布に触れる最も確実な道が微笑から始まることは、盗賊なら誰でも知っています。微笑むローカジュは、見ることさえ危険なのです。

アムン・ドロの霊魂についての書簡、第二巻Epistle on the Spirits of Amun-dro Vol 2

サヴァ・コはリドル・サールの歌を歌う。その甘い真実をこの舌に宿らせたまえ。

私たちの民が持つ強みは柔軟性です。私たちはダークエルフと違い、自由思想家を投獄しません。ヴァレンウッドの小柄なドングリ崇拝者と違い、サラダを冒涜だと非難しません。死して久しいアレッシアの毛を持たぬ子孫と違い、埃を被った8つの神話に魂を捧げもしません。カジートであることは、自由であること。残忍な教義と苦い自己否定から自由であることです。リドル・サールは跪いて呟くのではなく、踊り歌うのです!私たちの信仰は、歓喜と信仰に満ちた快楽と、笑顔の慈悲に根差しています。悲しいかな、この強みはしばしば冷淡な無関心へ変貌します。私たちの爪は真実から逸れ、「真実」に意味があること自体を疑います。崇拝と意見交換は停滞し、苦労の末に得る安息は子猫の怠惰に変わる。私たちの霊魂は貧しくなり、汚された霊魂はドロ・マスラの格好の餌食になるのです。

アムン・ドロの霊魂の記録は、私たちの楽天的な性質の最悪の部分を狙います。八つ爪のマファラの追加はその一例です。罪深き自殺という恐怖の事件は、マファラの闇の性質を証明していませんか。それに、潮汐の王ハーモーラーはどうでしょう。この書はアズラーが彼の友として、暗い蔵書庫の湿った廊下を歩んだと主張します。遠き母のしたことなら、私たちも倣うべきでしょうか?いいえ!ハーモーラーの助言を求めるカジートには、死よりもなお悪い運命が待っています。海からの呟きは、最も強力なスクゥーマほど確実に心を引き裂くでしょう。彼の塩辛い「真実」は私たちの現実に対する感覚を切り刻み、ジャ・カージェイから遠く離れた地を彷徨わせるのです。

また、この霊魂の記録が排除している対象も一考に値します。邪悪な存在については飾り立てた記述がありますが、愛のマーラと高貴なるスレンダーについてはどうでしょう?この古代の狂信者アムン・ドロは、彼らの名に触れてさえいません。なぜか?それはこの男の古い神学は、慈悲、謙虚、愛のような素朴な美徳を許さないからです。我らの愛するリドサーリ・ダッタは、クランマザーの物語以上のものを与えました。あの方は私たちに恩寵を賜ったのです。偉大な霊魂と宇宙的な計画がひしめき合う世界の中で、普通のカジートは疲れた手をどこに休ませるべきでしょうか?双子月の踊りです。踊りには古代の争いなど不要で、よく生きるための簡素な教えがあればいい。歓喜に満ちた生こそが、リドル・サール最大の贈り物なのです。

アムン・ドロの霊魂についての書簡、第三巻Epistle on the Spirits of Amun-dro Vol 3

サヴァ・コはリドル・サールの歌を歌う。その甘い真実をこの舌に宿らせたまえ。

今、サヴァ・コは道のことを考えます。

古いアムン・ドロの霊魂の記録は、道徳的な行動については思いつき程度しか示していません。これは当然のことです。実際のところ、最初のたてがみの悟りは、過去の諸王国の古い物語とほぼ無関係だったのです。リドル・サール以前、司祭とアデプトは古代の予言者による古ぼけた戯言を必死に解読していました。崩れかけた広大な蔵書庫から、価値あるものを少しでも拾い集めようとしたのです。まるで真珠採りのようではありませんか!無数の醜い貝をこじ開け、中の小さな宝を虚しく求めるのです。

心に問うべきです。そんな書に頭を悩ませることが、カジートに益をもたらすのでしょうか。鎌を持ち、荷車を引き、鍛冶場で働くあなたに。こうした宇宙の大事に関する物語は、闇に落ちた時の慰めになりますか?病気の子供を食べさせるため盗みを働く時、父親があなたの犯した罪のために兄弟を鞭打つ時、異国の圧政者の支配に苦しむ時、この古い神話にどんな導きを見出せますか?こうした物語は「道」や「法」を語りますが、アムン・ドロの道とは単なる服従でしかありません。それは遠く離れた我らの母、アズラーへの奴隷のごとき献身であり、オブリビオンの最も暗い霊魂への忠誠と敬意であり、カジートをローカジュの開いた口に放り込むと脅すような、錯綜し矛盾した徳の数々です。アムン・ドロの世界とは苦悩の世界、運命と闇の歪んだ道であり、カジートはそこに崇拝の歌と恐怖の叫び以外の声を持ちません。

レレスウェアは?歓喜と良き食事、誠実な労働はどうなるのでしょう?祝福された我らが最初の者が記すとおり、リドル・サールは真の道を示しています。しかも、あなたたちがすでに知っている道です。双子月の踊りはあなたたちの心の中で渦を巻き、生まれた瞬間からずっと続いているのです。遠い過去を振り返る必要などありません。今、目の前に伸びる道を見ましょう。信心厚き巡礼たちの手で清められた道を。月の子よ、ニルニの報酬と楽園の砂があなたたちの生まれ持った権利なのです。アムン・ドロの病んだ物語を捨て、砂糖の神にふさわしく、歓喜に満ちた生を送りなさい!

アルコシュの誇りThe Pride of Alkosh

クランマザー・ヒズニ 著

アルコシュは糸を紡いでしっかりと結び合わせ、終わりなき時のタペストリーを作る。彼は裂け目やしわを見る。爪一本で彼は繊維を貫き、裂け目を捉えて下に引っ張る。すると糸は再び並ぶ。

私はこのタペストリー、固く結ばれた、終わりなき物語の糸について歌おう。誇りの家の司祭も私と歌い、声は交じり合って調和する。だがアルコシュの誇りに入る者は、垂れ下がった糸を捉えて引く、竜王の爪となるだろう。

彼らは暗い蝕に生まれた子として、私たちの元へやってくる。彼らは忘れられたたてがみであり、支配せぬ定めにある。私たちは彼らに目的と導きを与える。私たちはアルコシュの言葉を歌う。その知恵が彼らの心に、砂時計の砂のように積もることを願って。この秘密の守り手たちは、アルコシュの誇りに加わる。

アルコシュが顔をしかめる時、彼らは立ち上がる。エルスウェアが泣く時、彼らは戦う。そして彼らの息が絶える時はケナーシが現れ、彼らを星の裏の砂場の彼方へ導く。

アルコシュの勇者の歌Song of Alkosh’s Champion

目の前に広間が広がる
我が心は未だ試されん
これが運命だと知る
誇りを持って歩まん

導きの風に押され
行く手に広がるは闇
糸は解け始め
飲み込むべきは恐れ

ケナーシの風に導かれる
誇りを胸に道を進むため
ローカジュのステップに縛られる
彼の歩みを辿らせるため
アルコシュが我を浄める
時の砂を正すため
その仮面は我を浄める
誇りの勇者となるため

賢く風に乗った
歩みを止めることはない
勇敢に闇へ対峙した
ランターンを道標に

糸が全て紡がれる時
私は力を得る
終わりなき者の前に立つ時
その強さに頭を垂れる

ケナーシの風に導かれる
誇りを胸に道を進むため
ローカジュのステップに縛られる
彼の歩みを辿らせるため
アルコシュが我を浄める
時の砂を正すため
その仮面は我を浄める
誇りの勇者となるため

聖なる仮面と誇りの道
誇りの道、誇りの道

時の砂を正そう…

ヴィジャリの具合が悪いのVijari is Unwell

姉さん、

カイシュカを助けて。ヴィジャリを失いそうなの。彼の心は日を追うごとに離れ、意志が自分のものではないように思える。カイシュカは彼を失う覚悟ができているつもりだったけど、こんな風にではない。何かがおかしいの。ヴィジャリの生命の壁への旅を遅らせるため、できることは全部やった。でも、まだ足りない。お願い、アダーラハイ。彼を助けて。

カイシュカ

エルスウェアに恋して、1ページElsweyr My Love, Page 1

エルスウェアに恋して:台本

登場人物
ユリウス・クルイリウス、インペリアル指揮官
ティゲリウス・ファルコ、高潔なインペリアル兵士
シャシャラ、緑の目をした美しいカジートの踊り子

アクト1、センシャル宮殿

ユリウス・クルイリウス[命令口調で]:緑の目の者を私のところへ呼べ![ワインをすする]

シャシャラ[優雅にお辞儀。絹のスカーフが微かに揺れる]:帝国軍の名高い指揮官が、卑しいカジートの踊り子に何をお望みでしょう?

ユリウス・クルイリウス:お前は美しく優雅だ。インペリアルではなく、猫に生まれついたのが残念だよ。

シャシャラ:[目を下に向けたまま]:…お褒めいただき、感謝いたします。

ユリウス・クルイリウス:よろしい。そばにいてもらおう。私の足元に座ってよいぞ[シャシャラは優雅に座るが、目は逸らしたまま]

エルスウェアに恋して、5ページElsweyr My Love, Page 5

ユリウス・クルイリウス:[自慢気に、有頂天になって]「…そして私、ユリウス・クルイリウスは、こうして帝国の司令官の地位を手に入れた!」

シャシャラ:[あくびを噛み殺しながら]「とても劇的な戦いの物語です、司令官。ああ、詩人がリュートを調律しているようですね。広間にいる皆様のところへ戻ったほうが良いでしょう」

ユリウス・クルイリウス:[ワインを飲み干し、シャシャラの腕に手を伸ばし、流し目で]「いや、違う戦いの時間だ」

シャシャラ:[クルイリウスが掴もうとする手を上品に避けながら]「この者はそのようなカジートではありません、司令官。侮辱なさいませんよう」

ユリウス・クルイリウス:[敵意を持って]「侮辱だと?私を誰だと思っている!」

エルスウェアに恋して、9ページElsweyr My Love, Page 9

シャシャラ:[勇敢に]「シャシャラは野営地の商売女ではありません。あなたの言いなりにはならない。手を離しなさい、司令官!」

ユリウス・クルイリウス:「ハハ!この猫め!無関心と高慢を装っているが、どんな女も、猫女でさえ、このユリウス・クルイリウスを拒むことはできない!」

[ユリウス・クルイリウスはシャシャラにキスしようとするが、彼女は猫の鳴き声を上げ、顔を引っかき押しのける]

ユリウス・クルイリウス:「ほう!威勢がいいな!」

[シャシャラは高級ワインの瓶でユリウス・クルイリウスの頭を叩き、瓶が割れる。彼はよろめき、呆然となり、混み合った酒場に消える。シャシャラが裏口から出ていくと、笑いが起きる]

ユリウス・クルイリウス:「ユリウス・クルイリウスを笑うとは、許さん!」

[クルイリウスが出ていき、みんなさらに笑う。怒りと恥はさらに増す]

エルスウェアに恋して、16ページElsweyr My Love, Page 16

ティゲリウス・ファルコ:「シャシャラ?さっき酒場に寄ったんだ。前に話していた本を持ってきた。君も欲しいんじゃないかと思って」

シャシャラ:「親切に感謝するわ、ティゲリウス。シャシャラは、あなたの贈り物を受け取れない。私は…」[言葉を止め、泣きそうになりながら去る]

ティゲリウス・ファルコ:[心配そうに、独り言]「素敵なシャシャラに、何が起きたんだろうか?いつもなら本の話をするのが好きなのに。彼女は美しく、頭もいい」

ティゲリウス・ファルコ:[退出しながら、叫ぶ]「シャシャラ、待ってくれ!」

エルスウェアに恋して、19ページElsweyr My Love, Page 19

ティゲリウス・ファルコ:[英雄らしくひざまずく]「私の大切な、柔らかな毛のシャシャラ、君が泣くのを見るのはつらい。この心は、君のものだ」

シャシャラ:[激しく泣く]

ティゲリウス・ファルコ:[寂しそうに立つ]「分かったよ。君のような素敵な女性が、身分の低い帝国の兵士と時間を無駄にするのは間違っている。つい気持ちを告げたこと、どうか許してほしい」

シャシャラ:[去ろうとする彼を、上品な仕草で手を伸ばして止める]:「違うの、愛しいティゲリウス!あなたの言葉は、シャシャラに寂しさと喜びの両方をくれた。一緒にいて、お願い」

エルスウェアに恋して、26ページElsweyr My Love, Page 26

ティゲリウス・ファルコ:シャシャラ、君の緑の瞳はとても緑で…まるで緑の宝石のようだ!」

シャシャラ:「素敵なティゲリウス、あなたと離れたくないわ」

ティゲリウス・ファルコ:「君の気高さは神々からの贈り物だ、シャシャラ。君のためなら、何でもしよう」

シャシャラ:「帝国の軍を抜けること以外はね」

ティゲリウス・ファルコ:[動揺して視線を逸らし]「帝国軍は、大切な場所なんだ。帝都の路上にいた孤児を受け入れてくれた」

エルスウェアに恋して、36ページElsweyr My Love, Page 36

ユリウス・クルイリウス:[厳格に、冷酷に]「行け、ティゲリウス。街を焼き払え。特に、酒場をな」

ティゲリウス・ファルコ:「司令官、お言葉ですが…街も住民も、何も問題を起こしていません。なぜ焼き払うのですか?」

ユリウス・クルイリウス:「お前は兵士だ、私の指揮下にある。命令に逆らうつもりか!」

ティゲリウス・ファルコ:[敬礼する]「仰せのままに」

[ティゲリウス、ハンサムな顔に不安な影を落とした顔で去る]

エルスウェアに恋して、42ページElsweyr My Love, Page 42

シャシャラ:「ティゲリウス!ここで何をしているの?どうして松明を持っているの?」

ティゲリウス・ファルコ:「司令官の命令で、街を焼き払う。特に酒場を。本当にすまない。君の仕事場なのに」

シャシャラ:[激しく泣きながら]「ユリウス・クルイリウスは、この街の罪のない人々を傷つける命令を出したの?シャシャラのせいね。司令官のいやらしい誘いを断ったから。友達に警告しなくちゃ!」

[シャシャラが走り去る]

エルスウェアに恋して、44ページElsweyr My Love, Page 44

ティゲリウス・ファルコ:[独り言]「命令に従うのか、それとも背くのか?兵士はどうしたものか」

ティゲリウス・ファルコ:[引き続き独り言]「もし心の声に従ってシャシャラと街を救えば、司令官の命令に背くことになる。そうすれば、私は死刑に処される」

ティゲリウス・ファルコ:[引き続き独り言]「もし帝国の兵士として命令に従えば、シャシャラを失うことになる。シャシャラからの敬意と愛は、自分にとって全てだ。だが、兵士としての名誉も、とても大切なものだ」

ティゲリウス・ファルコ:[引き続き独り言]「だが、愛しいシャシャラにいやらしい真似をしたユリウス・クルイリウスに、名誉はあるのか?帝国に利をもたらさない命令なら、司令官に逆らうことが名誉なのではないか?」

ティゲリウス・ファルコ:[引き続き独り言]「頭が痛い」

エルスウェアに恋して、52ページElsweyr My Love, Page 52

ユリウス・クルイリウス:「ティゲリウス・ファルコ、命令に背いたな。だが、この命令には逆らえないぞ。お前を処刑する!」

ティゲリウス・ファルコ:[拘束されて]「私は正しいことをした。あなたが街を焼き払えと命令した理由は、自分が…」

ユリウス・クルイリウス:[ティゲリウスに叫ぶ]「射手!構え…撃て!」

シャシャラ:[走ってきて、ティゲリウスの前に現れる]:「やめて!」

[矢はシャシャラに浴びせられ、ティゲリウスの足元に崩れ落ちる]

ティゲリウス・ファルコ:[恐ろしい声で]「シャシャラー!」

[ティゲリウスが、シャシャラの隣に膝から崩れ落ちる]

シャシャラ:[苦しみながら]「私たちは…結ばれる…運命ではなかった。きっと違う時代…違う場所で。愛しているわ」
[シャシャラが死ぬ]

ティゲリウス・ファルコ:「シャシャラ!」

ユリウス・クルイリウス:「射手!撃て!」

[矢がティゲリウス・ファルコを撃ち抜く。彼は崩れ落ち、死ぬ]

ギャンブラーの技The Gambler’s Art

やあ、我が友よ、座ってくれ
甘いものでも食べて、一緒に楽しもう。
耳がくすぐったくなった
近くに来て「お金はちゃんと持ってきた」と言うから。

かっこいい腰からコインの音がして
勝ち取る富の歌を歌う。
たてがみを下ろして、一緒にゲームをしよう。
まさに始まったばかりだ!

コーラス:
賭けをしよう、賭け金を上げよう
小銭で塔を建てよう。
運命を賭け、富を放り投げ
リスクを冒せば、成功できる。
道に放り出されたとしても
真のカジートにはなれる。

分かるよ、我が友、勇気があるな
でも幸運が足りない、その手では勝てない。
もしこの悲劇的な敗北に
怒りを感じているなら、何か負けた原因がある。

勝てないカードに
こっそり細工したね
でもこの猫の目は、ごまかせない
次はもっと慎重に。

コーラス:
ギャンブルをしよう、だが、君は終わりだ。
破産したんだから、尻尾を巻いて逃げろ!
罵るのも吠えるのもなしだ。
嘲笑やわめき声を受けるといい
次にカモられる時は
うまくイカサマできるようにね。

クランマザー・タダリからの手紙Letter from Clan Mother Tadali

クランマザー・ヒズニへ

ドラゴンが解き放たれたという話は、きっとあなたの耳にも届いているはずです。ドラゴンたちは世界の深淵に眠る兄弟を探し求め、東から来た悪魔さえも解放しました。私もあなたもこの日が来ることは知っていた。これが何を意味するのかも。

東から来た悪魔は常にそう記された通り、アルコシュの霊魂に満たされた戦士によって滅ぼされねばなりません。この古き戦いを終わらせる時が来たのです。それがずっと、アルコシュの誇りの目的だったのですから。

あなたの選ばれし戦士が準備を整えていることを期待しています。失敗はできません。

クランマザー・タダリ

クンザ・リと迷子のアルフィクKhunzar-ri and the Lost Alfiq

十六王国伝説の保管者、アネシによる複写

ある日、太陽が一番高い位置にある時、クンザ・リは道の脇から弱々しい声を聞いた。

「どうして家を離れてしまったんだろう?」声は言った。

「なぜ家にいたい?」クンザ・リはその声に向けて、質問を返した。

「ああ!見つかっちゃった!」

そして、小さなアルフィクは見つかってしまった。クンザ・リは片手ほどの震える塊を調べた。絡まった毛並みに、イガや小枝やあれこれが刺さっていた。「遠くから旅してきたのか?」

「ええ。聖堂に送られる前に世界を見たかったの」

「それは尊敬に値する、小さな者よ。でも、なぜ家を離れたことを悲しんでいる?」

「迷子になってお腹をすかせてるからよ」

「ああ、空腹はすぐに解消できる」そしてクンザ・リは若いアルフィクの前に美味しいフィッシュケーキを置いた。「迷子については考えてほしい。今はいるべきでない場所にいると思っているのか?」

食べながらアルフィクは言った。「いるべき場所ではないと思う。ここがいなければならない場所だったら、きっと分かるでしょう?」

「そうとは限らない。迷ったと思うのは、恐怖や混乱に襲われていたからそう思えるのかもしれない。代わりに、どんなふうに世界を見たいのか考えてごらん…ほら、ここでも世界を見ていることになる」

「私が迷子なのは、迷子だと考えているからに過ぎないと言っているの?私は今望んでいたことをしているから、迷子ではないって?」

「それを決めるのはお前だ。それだけだよ!」

「なら、私は迷子じゃないわ!」

クンザ・リはクスクス笑った。「よかった、迷子でない友よ。しばらく一緒に私と旅をしないか?私も今は、世界を見たくてたまらない」

そして若いアルフィクはクンザ・リと同行し、2人は多くの冒険を一緒に楽しんだ

サイ・サハーンへTo Sai Sahan

サイ・サハーン、

エルスウェアに解き放たれたドラゴンの怒りについて手紙を交換し始めてから、再結成されたドラゴンガードと、手を組んだドラゴンの知らせをずっと待っていた。素晴らしい業績だ。私がいなくても達成できるとは思わなかったが。

大切な話がある。私の側の調査で、南エルスウェアへの脅威が発見された。現在、ドラゴンガード聖域に向かっているところだ。友人も同行している。ドラゴンと一緒に到着を待ってほしい。時間がない。急ぎ動かなくてはならない。

もう一つ。我々の共通の友人と一緒に動いているようだな。アネクイナの勇者にして、ドラゴンガードの誇りだ。一緒に呼んでおいてくれ。この危機に立ち向かうには、協力してもらう必要がある。伝えてもらっては困るが、北エルスウェアで共に動いた時には驚かされた。ああ、そうだ。私でさえ、お前と同じように驚かされたのだ。

間もなく南エルスウェアに到着する。待っていてくれ。

アブナー・サルン

さまよう霊魂The Wandering Spirits

沈黙の司祭アムン・ドロ

アカ。最初の猫であり、道を探す者、および嘆かれざる者として知られている。オーナールとファドマイがまだ愛し合っていた最も早い時代、彼は天空を探検し、その辿った跡が多くの道になった。アカはオーナールが愛した息子であり、オーナールは自分がファドマイを見つけたように、愛する者を見つけよとアカに言った。アカは東の翼をもつ蛇、西の砂丘の女王、そして北の母なるマンモスなどと結婚したことが知られている。彼はそれから南へ行き、二度と戻らなかった。その代わりにアルコシュが現れ、アカが多くの道の途上で作り出したものについて警告を発した。それ以来、アルコシュとその忠実な部下たちはアカの多くの子供を見守っている。彼らは恐ろしく、また優しいからである。

アルコシュ。竜王。高きたてがみ。彼は多くの道の途上にあるアカの無数の王国の支配を譲られた。時が経ち、アカの子供たちはアルコシュを打倒し、その体を西風に乗せてばらまいた。ケナーシはこのことを知ると、空を飛んで多くの道を通り、アルコシュを元に戻したと言われている。その際、ケナーシはアカが作った全てのものを見て、その中には作るべきでなかったものも含まれていたことを見た。今、アルコシュとケナーシは多くの道をアカの道を外れた子供たちから守っている。アルコシュの力やその強烈な咆哮のためではなく、義務と目的のため彼に祈るべきである。

アルカン。鱗公。炎と影の悪魔と交わったアカの第一子。彼は殺した者の魂を貪り、大変な大きさに育った。歌によれば、彼はローカジュとその仲間に殺されたが、アカの不死身の息子として、時が来れば多くの道から戻ってくるという。アルカンはアルコシュ、ケナーシ、ローカジュの敵であり、常に王冠に飢えている。

ボエスラ。東と西の戦士。彼女はマファラの伴侶であり、マファラはオーナールがボエスラをその反抗的な性質のため追放に処してからも、彼女への愛を忘れなかった。ボエスラは追放されて多くの道を歩き、戻ってきた。マグルスから目を引き抜いたのはボエスラであり、これを理由として、カジートは爪と共に剣も大切にする。真の猫はボエスラに祈る必要はない。ただ道を歩み、飛び掛かるために身を隠すことによって、この霊魂を称えられる。亡霊の月の夜に彼女の名を呼ぶことは禁じられている。この時期のボエスラはローカジュの死衣をまとい、ラティスの彼方へ向けた争いを始めるからである。

マファラ。教える母。古代の霊魂であり、ファドマイの古い秘密の番人である。それは彼女の子供たちが最初の時にのみ必要とした秘密であり、それを伝えたのはマファラである。彼女は多くの道のうち8つを見守り、カジートは時が来れば、それぞれを歩まねばならない。マファラはカジートを道へ案内するクランマザーを助け、我々の秘密を他者から守る。彼女はアズラー、ボエスラ、ローカジュの味方である。彼女の数字は8と16であり、これらはマファラの二本の鍵である。

ジサードのメモJ’saad’s Note

愛しのアディンバへ

残念だ。私の聞いた声が私の心の中にしかないことを、お前が望んでいたのは分かっている。私が知覚した姿が、私の想像であることを。だが、そうではない。あの幻視、私に話しかける声はそれ以上の何かだ。

神聖なる存在が、この石を通じて私に話しかけてくる。なぜ私なのかは分からないが、声は強くなるばかりだ。声と共に、まばゆい光が現れる。不思議な幻視も。彼女は自分の光を運ぶ騎士を、もう1人探していると言っている。彼女を裏切らない者。以前の過ちを正す者を。

何を意味しているのかははっきりしないが、私は彼女の試練を受けねばならないのだと思う。他の者たちが失敗したことに、私は成功しなければならない。

旅が終わったら、ブラックハイツにいる君のところに戻る。真実を見せよう。君にも光が見える。皆に光が見える。

ジサード

ジャダスサールの手紙J’daththarr’s Letter

兄弟へ、

もうここにはいられない。センシャルにいる難民は我々だけじゃないし、人混みは苦手なんだ。自分の空間が必要だ。食料を、きれいな水、服を求める人々と一緒にいると気分は最悪だ。求めてばかりだ。お前には神経質だと呼ばれてきたが、過剰な感情移入という方が正しい。自分が見つけた食料を、自分より必要な人へ渡さずにいられない。これを始めてからだいぶ体重が減った。状況はさらに悪くなるだけだ。他の人々が食べていないのに自分が食べる罪悪感が続く限り、生きていけない。自分はこの食料を本当に必要としているのか?たった今街にやって来た人より?ドラゴンの攻撃をどうにか生き延びた人々より?この思いがずっと続く限り、食事ができない。誰もが食料を必要としていると感じる。誰もが多くを望んでいる、それを感じて、自分の力で他人を助ける重荷で死んでしまいそうだ。だから、ここを離れる。

北のリンメンに向かっている。そこからどうなるかは分からない。おそらくどこか港町を経由してサマーセットへ行く。だが、ハイエルフたちが助けてくれないことは分かっている。同時に、冷ややかで傲慢な彼らに囲まれて、少しは落ち着けるかもしれない。共感の欠如が、大きな苛立ちを生むまでは。

剣も強く振れるし、弓の扱い方も知っている。安全に旅ができるはずだ。いずれ手紙を書くよ。約束する。お前は、ドラゴンとの戦いに参加するべき存在だ。心から幸運を祈る。できるなら、全滅させてやれ。あいつらに愛は何も感じない。あいつらがもたらすのは、破壊だけだからな。

愛を込めて、
ジャダスサール

シルナマへの手紙Letter to Shirnama

シルナマへ

雇用する者はもっと厳選しなくてはならない。我々がセンシャルで力を増すにつれ、ますます多くの者が来たるべき嵐から逃れるために加わっている。弱虫で技術もない凡人など不要だ。お前が探すべきは戦士だ。

ブラック・キエルゴの地下闘技場なら、我々の求める人材を輩出するはずだ。最高の戦士だけを選び出し、我々の要塞へ招くのだ。私を失望させるな。

新たなる月は、間もなく我ら全員の頭上に昇る
ラカジン

しわになった童謡Crumpled Nursery Rhyme

「徳への渇望」、ある友人による作曲

素敵なスレンダルの揺りかご
ひしゃくの中にはスープもなく
熱い茶のための水もなし

水の貯えは減り続け
心もまた沈み続ける
霊魂の慈悲はいずこへ?

倒れて死にゆく者たちに
彼らは涙も流さなかった
水がそよ風のように流れたから

ただ一人だけが慈悲に値する
そして我らは彼女に報いる
病を生き延びた素敵な猫に

セローへの手紙Letter to Selloe

セローへ

オーベリック・デュフォンから連絡を受けた時の、私の驚きを想像して。彼は次の催しの入場トークンについて、とても心配しています。私の記憶が正しければ、あなたの役目は彼に相応しい威厳を保ちながら、参加証を送り届けることだったはずです。記憶が誤っているはずもありません。彼は私たちの顧客に加えるべき候補者の中でも裕福であり、最大限の注意を払うべき相手よ。

もし簡単な仕事も、次の催しのために適切な候補者を勧誘することもできないのなら、私に連絡しなさい。どちらの任務についても、十分にこなせる者が他にいるでしょう。

サマーセットのギシリアネ

センシャルからの脱出Fleeing Senchal

今日、センシャルから逃げ出した。あんなことが起きた後で、そこにいることに耐えられなかった。ナハテン風邪だけでもひどかったのに、あの炎だぞ?呼吸も、とてもつらい。

あのことを考えるたびに吐き気がする。くしゃみをする時は大体煙のせいだが、鼻を覆えば自分の毛皮が暗くなる。

我々は皆、心に闇を抱えている。自分たちのしたことで。止めようとした者も同じだ。我々は失敗した。闇は我々が吸う空気よりも暗い。我々の魂が光を失った。いや、縮んでいるのかもしれない。

これから我々は、世界に加えたこの破壊と生きていく。ナハテン風邪?恐ろしいことだ。だが、それ以上にひどいことをした。我々がやったんだ。我々の責任だ。何と傲慢だったのか!それにとても恐ろしい。ひどい行いだ。我々を汚した。

だが、今いる場所から始めよう。祖母ならそう言うだろう。今いる場所から始めよう。

炎の形を与えた闇があっても、我々は先に進まなくてはならない。

だからセンシャルを離れる。死臭と破壊を置き去りにする。壁の外で、出会う人すべてを治癒する。センシャルの近くには、絶対にいられない。いるだけで耐えられない。だが、外に出れば治癒を行える。おそらく、いずれナハテン風邪にかかるだろう。かからないかもしれない。自分ではどうしようもない。

ジス。もういい。

* * *
忘れる前に書き留めておこう。火事から数週間が経った。センシャルに戻ることはできない。センシャルの一部にはなれない。だが、壁の外で放浪している集団と出会った。お互いを守り合い、食料を探し回り、できる限り集団に受け入れている。見つかった物資を使って、全員を治癒している。この地は期待するほど寛大ではないが、治癒に使えるハーブがあちこちで見つかっている。

だが、私がこの記録を書いている理由は異なる。ここ数日、誰もナハテン風邪で死んでいない。治った者もいる。助からなかった者もいる。だがここ数日、誰もナハテン風邪にかかっていない。北に向かって、アネクイナのいわゆる野蛮人たちが、センシャルの「文明的な人々」よりも親切かどうか、確かめに行ったほうがよさそうだ。あるいは、より恐怖や傲慢に駆られた行動を見ることになるかもしれない。自分ではどうしようもない。

今いる場所から始めよう。前へ進め。一歩一歩、確実に。

* * *
ジス!あれから…何十年経っただろう?この小さな日誌に自分の痛みを書き留めて、隠れ家に隠したことを忘れていた。あれは暗い日々だった。あの頃は、ナハテン風邪の他にも苦労があった。恐怖や飢えと戦っていた。大地に頼り、大地と我々を破壊することなく生きていた。だが、全員が共有していたことがある。より良い存在となり、より良い行動をし、もっと共感を持ち、親切になり、辛抱を学ぶ。そうする必要があるという意識だ。他者、何より自分たちに対して。

そう、旅をしている間は長く破壊から解放されなかった。悪行もたくさん目撃した。できる限りその埋め合わせを試み、ある程度は成功した。望んだほどではなかったが、重要なのは努力であり、結果ではなかった。

この小さな本を拾った誰かが、この言葉を忘れずにいてくれることを期待して置いていこう。今いる場所から始めよう。どんな時も、とりわけ想像しうる最悪の事態に直面した時こそ、それが唯一できることだ。今いる場所から始めよう。

リーファ、旅の治癒師

センシャルの盾The Shields of Senchal

センシャル市評議会、年代記編者ジリ 著

ナハテン風邪は、帝国が南エルスウェアと呼ぶペレタインを荒廃させた。多くのカジートがこの恐ろしい病に倒れた。センシャル総督であり、ペレタイン貴族のほとんどと同じようにアネクイナ王家の忠実な家臣だったザル・タスルズもその1人だ。17年間、センシャルはタムリエルの他の地域から切り離され、自ら生き延びざるを得なかった。他人と協力する余裕はなかった。

正当な指導者の死によってできた空白を埋めようとしたのは、海賊、密売人、略奪者、盗賊だった。センシャルと周辺の地方には、死、破壊、炎、抑圧の暗い時代が訪れた。私たちは生き残るために、強く賢くなる必要があった。我々がエルスウェア中でより洗練され、教養ある集団だと自負してきたことを思えば皮肉だったが。

ついに助けはやってきた。帝国の軍団として。正確に言えば第十三軍団だ。アクィラリオス皇帝はルビーの王座について間もなく、レンムス将軍と軍団兵を派遣した。それは崇高な意思表示だったが、皇帝が消え帝国が崩壊すると、将軍と兵士は取り残されてしまった。しかし、彼らは持ち場を放棄しなかった。そして表面上の秩序を取り戻し、センシャルをこれまでよりずっと安全な場所にしてくれた。ドラゴンが戻ってくるまでは。

レンムス将軍は無法地帯に秩序を取り戻した。軍事独裁者になり、市民を抑圧することも拒否した。元々は彼らを敵対的で信頼できない存在として扱っていたが、我々は次第に彼らを尊敬するようになった。彼らに新しい名前を授けさえした。センシャルの盾と。その名はすぐに広まった。彼らの保護によりセンシャルは再建を開始し、昔のような場所に戻った。違法な活動は陰に追いやられ、秩序も若干回復した。将軍は私たちが街に必要なことをより良く管理できるように、評議会を結成する手助けさえしてくれた。

彼らはカジートでないかもしれないが、彼らの心は常にセンシャルや民と共にある。彼らは私たちの盾であり、私たちは彼らがこれまでにしてくれたこと、これから私たちにしてくれることすべてに感謝している。この者はただ、彼らがドラゴンの怒りから私たちを救ってくれることを信じ、祈るばかりだ

センシャルの大火The Burning of Senchal

陽の光は差しているのに
過去の闇が悲しませる。
炎が皆の息を止めた後
私は全ての死を嘆きながら立った。
そして私に何が起きたか?
それは言えない。

月が照らした時、
私は悪い道を歩くことを選んだ。
星の輝く空から、
月の寂しい輝きが死を目撃した。
そして私に何が起きたか?
あえて言わない。

生き延びなければならぬ。破壊された残酷な生を
苦しみと不正と共に
死が取り囲む中で。
だが、望みが全て消えたのに繁栄できようか?
残されたのは悲嘆と、浅い墓穴だけだ。
闇は進み続ける。
何ができる?生き延びるだけだ。

数十年が経った。我々はどうなった?
悲惨な死の試練の後で。
高すぎる代償を払ったのか?
全てを知りながら、歩み去ることの。
そして我々に何が起きたか?
誰も言えない。

我らは生き延びた。破壊された残酷な生を
苦しみと不正と共に
死が我々を捕らえた時に。
だが、あんな代償を払って繁栄できようか?
今の我々は何者だ?あえて言わない。
闇は進み続ける。
何ができる?我々に何が起きた?

センシャルの歴史:概要History of Senchal: An Overview

パーラッティーン学会、スレマ 著

私を育て、ナハテン風邪に倒れてしまった者たちへ捧ぐ。あなたたちは生前、この者に命を吹き込んでくれた。

センシャルの歴史を調べる者にはいくつかの課題が立ちはだかる。センシャルの起源そのものが、カジートの部族によって歌や口承で伝えられてきている。さらに様々な混乱の時代に侵略を受け、記述された伝承が失われるなど、数々の厄災も学者たちの困難を増大させている。しかし、この者はセンシャルの歴史を簡潔にまとめた資料を入手できた。ただし資料の特性上、以下の文章を読むにあたっては、恐ろしい鳥の隣を通り過ぎるような注意が必要とされる。

センシャルの成立

現在のエルスウェアにおける初期のカジートは、16の部族に分かれており、それぞれが異なる役割を果たしていた。現在センシャルのある場所は、船の建造や航海を得意としていたセンシャル族が好んで船を着けていた場所である。

貿易が活発化すると、カジートは住居や商業施設などの建造物を作った。初期はたびたび火災によって破壊されたため、石を使用するようになった。この頃、商人や貿易関係者、襲撃者などの階級制度が成立を始めた。ここから悪名高きブラック・キエルゴ区域(ラジーンの出身地だと噂された場所)が生まれ、襲撃者や盗賊の巣窟となった。街の他の部分も階級ごとに区分けされ、その中には族長の住居もあった。

スラシアの疫病

芽生えたばかりのセンシャルの街は、第一紀2260年にスラシアの疫病が流行するまで成長を続けた。一部焼失した、著者不明の日記にはこう記されている:

「…スラシアの疫病で多くが死に、残りは皆が混乱している。この者は逃げるべきだと思うが、門が閉ざされている。密売人のトンネルは燃え、ブラック・キエルゴの者たちは閉じ込められている。皆が焼け死ぬだろう。どんな極悪人でも、そのような死に方をするなど考えたくもない。その炎が現存する木造建築へと、さらにそこから石造の建物へと燃え移ることも心配だ。すでに煙で息ができない。濡らした布で口を覆っても効果は知れている。火を放った者たちが憎い。生き残った我らまでもが殺され…」

最後の一文は疫病のことを指していたと思われる。著者の予想通り炎は広がり、可燃性のものは燃え、石は焼け焦げた。誰も生き残れなかっただろう。この火災の後、センシャルは大規模な再建を余儀なくされたと様々な資料から推測される。

センシャルの再建

その後数十年かけて街は再生し、建物を再建しながら社会的な構造も固めていった。ブラック・キエルゴは盗賊や襲撃者など無法者たちの安息の場であり続けた。疫病の後はペレタイン全体の政治構造も変化し、街の支配者が地域全体を統治するようになった。ブレトンや帝国の影響から部族の固有性は完全に失われ、センシャル社会の中で個人の役割が尊重された。この時期のペレタインの支配者たちは安定を重要視し、「公平」や「正当」とは思われないような行動もとった。

中でも一人、帝国との繋がりが特に目立つ支配者がいた。ドローゼル王である。第一紀2920年、吟遊詩人の歌を聞いた彼はモラグ・バルを召喚しギル・ヴァ・デールの街を破壊させた。その後ほどなくして、皇帝レマン・シロディール3世の新しい相談役となった。レマン3世が没し、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエが支配者となるまで帝国との繋がりは強まり続けた。さらに第二紀309年、ペレタインのエシタとアネクイナのキールゴの婚姻によりエルスウェアが誕生して、政治情勢は大きく変動した。

そして第二紀324年、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエが当時滞在していたセンシャル宮殿にて、正体不明の暗殺者によって殺害される有名な事件が起きた。

近年の出来事

ヴェルシデュ・シャイエの死後、さらに事件が起きた。カジートの反乱軍がエルスウェア王家の大半を惨殺したのである。センシャルの市民たちは強固となっていた伝統や社会構造を守ることに努め、第二紀565年にナハテン風邪が流行するまで、一般市民の生活はほとんど変わらなかった。

資料によるとナハテン風邪はブラック・キエルゴから発生し、スラシアの疫病と同様、最終的には火による解決が試みられた。恐怖に取りつかれた市は、その昔センシャルを破滅へ追いやった行動を知らずに繰り返したのである。ナハテン風邪だけではなく、炎や煙からも多くの死者が出て、今日のセンシャルはかつての栄光を失ったままである。

現在は帝国軍が駐在し民兵のように働く中で、カジートはまたも再建を目指している。シロディールの現状を考えると、カジートとインペリアルの協力体制がどのような結果を生むか、楽しみにしている。

トゥロからの手紙Letter from Turo

親愛なるダイニへ

私はここサウスガードにおけるお前の悪戯に対して、できるだけ見てみぬふりをしてきた。お前の父親に免じて、お前を妨害することもなく、元の家に残らせてやった。だが最近、お前が私の労働者や資産を襲撃したため、罰さないわけにもいかない。

私はお前の仲間たちを手中にしている。大部分の者は首に縄をかけられることもなく、奴隷として生きるだろう。これも私の親切の表明だ。だがお前の弟は、お前が即座に出頭しない限り絞首刑になる。猶予の余地も、交渉の余地もない。

こうしなければならないのは残念だ。速やかに降伏するように。お前の弟を見習ってな。

敬具
トゥロ

トゥロの貨物目録Turo’s Cargo Manifest

トゥロの砦に配送する全ての品物だ。途中で休まず、商品の損傷や紛失は全て明確に記録するように。トゥロは無能者を容赦しない。

目録:

上質な絹10反
アルトワイン12本
上質な陶器壺15個
アネクイナ・スパイス8袋
コロヴィア穀物30袋
6箱の—

〈残りの文書は引き裂かれている。おそらく、恐ろしい鳥の仕業だ〉

トパル軍団兵士官学校Topal Legionary Academy: A Khajiit’s Summary

勤勉なるザーギット 著

この者はトパル軍団兵士官学校で何度か研究をしていた。(生前の)内部の者に、この場所の歴史について聞いたこともある。士官学校の現状を見ると、ザーギットは行く気になれない。いつか行こう。だが今は、士官学校について知っていることを書いておく。

元々は単なる帝国のベースキャンプで、その時の状況にぴったりの場所だった。帝国はここで皇帝のため、何年もかけて地形を研究した。どの皇帝だったかは記憶にない。士官学校の本のどこかに書いてあったはずだ。この件に関するこの者のメモは混乱している。研究の目的は教えてくれなかったが、おそらくカジートの地を奪い取るための研究だったはずだ。帝国は、いつの時代も帝国だ。

やがて帝国は、ザーギットに教えられない理由で、ここに要塞の建設を開始した。数世代の間、ここはこの区域で活動する帝国軍の単なる避難所になっていた。だがある指導者が、可能性を秘めたインペリアルを訓練するための場所に変えるべきだと決意した。こうしてトパル軍団兵士官学校が誕生した。

それから数世代の間、トパル軍団兵士官学校は帝国軍人の間で名誉ある地位を獲得した。運営資金は幾つかの家が提供していた。初期はこの区域に派遣されたインペリアルの兵舎としても機能を続けていたが、資金が提供され精鋭を訓練する必要性が高まったことから、兵士の移動のために使われた場所は、完全な学校に変わった。

卓越した訓練の伝統は、ナハテン風邪によって中断された。士官学校の命運は、疫病との戦いで尽きてしまった。なお、この学校はスラシアの疫病を生き延びていた。指揮官の話によれば中に自ら閉じ込もって、感染せずに生き残れたという。残念ながら今回は決断も虚しく、ナハテン風邪が広く蔓延し、士官学校も終焉を迎えた。

現在、この地のカジートはこの場所がナハテン風邪の犠牲者の霊魂に呪われていると言う。だが、魔法の使い手たちはこの場所が「アルケインか呪い」によってこの地を悩ませているという。彼らは近づいてそれが何なのかを判別することはない。「どうして放棄された要塞なんて呼ばれる場所に行くんだ?」と言っている。

こうした警告は受けているが、この者はあの豪華な蔵書庫に入って、さらに研究を進めるため書を何冊か持ち出したい。だが、誰もこの者に同行しようとはしない。ザーギットは、もっときちんとメモを取っておくべきだった。できれば、この過ちを正したい。きっといつの日か。

ドラゴンの種類:初期研究Varieties of Dragons: An Initial Exploration

ブラック・マーシュのアクスルシャ 著

ヒストへの潜在的な脅威に対して備えるため、南エルスウェアのドラゴンについて研究することにした。ここで述べるのは私の観察したドラゴン2匹の外見、食生活、日常的な習慣、戦闘技術に関する記録だ。単純化するため、2匹は色で分類した。

赤いドラゴン
センシャル在住の者と話した結果、現在エルスウェアで活動しているドラゴンにはある種の権力構造があることを理解している。これはドラゴンについて読んだ伝承を考慮すると珍しいことだ。だからこそ私が数日間観察した赤いドラゴンが、南エルスウェアで狩りをしていた様子は注目に値する。明らかに、どんな組織にも属していなかったからだ。この大枠の観察に加え、詳細に関してまとめた記録は下記の通りである。

外見
深紅の重なり合う鱗に包まれた赤いドラゴンの外見には艶がある。仰々しい角はなく、それには驚かされた。すべてのドラゴンは雄牛の角のように捕食相手を突く角を持ち、ぎざぎざしているという先入観があったせいだろう。目は黄色く、瞳孔には細長い切れ目が入っていた。

食生活
赤いドラゴンの主食は肉のようだ。どんな時も植物を食べる姿は見なかったので、肉食動物に分類されると考えて間違いないだろう。食物連鎖の頂点にいる捕食者として納得できる。好きな食べ物は?特定の好みには気づかなかったが、時々ドラゴンは知的な捕食相手に対し、目の前に挑戦を差し出された狩人のように振る舞った。特に挑戦を挑んできた狩人2人を相手にした時は楽しそうだった。ドラゴンは1人が幸運にも矢を当てるまでもてあそんだ。そしてその後、さっさと戦いを終わらせた。

日常的な習慣
食事の他、このドラゴンに一定の習慣は見つからなかった。睡眠を必要としているかどうかも判然とせず、必要としないならさらに危険な存在となる。しかし目撃した例はあまりに少ないため、たまたま不眠型で決まった活動時間の好みがないドラゴンに当たっただけかもしれない。食習慣は無作為だったものの、きっと最後にどれだけ食べ、どれだけが消化プロセスにあるかによって変動するのだろう。

戦闘
大きな角がないため、ドラゴンは知的な捕食相手に対して爪、咆哮、翼、尾に頼って攻撃した。動物に対しては、欲しい相手を単に掴んで叩きつけて食べた。このドラゴンは炎を使った攻撃を活用し、炎の精霊のような炎に関連する生物を召喚できた。この獣を相手にするには、炎に対処する方法を用意しなければならない。

黒いドラゴン
私の観察した赤いドラゴン同様、黒いドラゴン(人によっては「ダークグレイ」と呼ぶかもしれないが)にも他のドラゴンと関連した組織は見受けられなかった。少なくとも、私の見た限りでは。

外見
このドラゴンの黒い鱗もまた重なり合い、頭の構造は下向きに湾曲した角が特徴的だった。尾の先は尖った突起で覆われ、武器としてとても効果的になっている。目はオレンジがかった金色で、瞳孔には細長い切れ目が入っている。

食生活
このドラゴンは何よりも肉を好んだが、ある時には葉を食んでいるのも目撃した。きっと体に栄養を取り込むために必要としているのではないか?空腹になると食べたい動物を掴み、比較的安全な状況で食べるために短距離を飛んだ。知的な捕食相手の狩りに関しては、より奇襲攻撃を好み、抵抗を最小限に保つため待ち伏せた。ドラゴンが待ち伏せ戦術をとる理由は推測に過ぎないが、過去に武器を装備した狩人の集団を追って傷を負ったのではないだろうか。あるいは、単に隠れて脅かすことに楽しみを見出しているのかもしれない。

日常的な習慣
黒いドラゴンは夜行性の行動を好み、昼間は私が慎重な観察の結果見つけた場所に退避していた。日が沈むとドラゴンは食事のために狩りを開始し、捕まえた獲物と一緒に巣へ戻った。その後で獲物を空まで連れて飛んで、夜明けには私がその巣、あるいは隠れ場所と考えるようになった場所に戻ってきた。どこかの時点で私の存在に気づいたに違いないと考えている。次の朝に戻ってこなかったからだ。最近の食事の残りをざっと調べたところ、ドラゴンは食事にこだわりがあることが分かった。慎重に防具を外し、自然に保護されている部位の周辺にある、中の柔らかい肉を食べていたのだ。

戦闘
上述したように、私が観察した黒いドラゴンは捕食相手を待ち伏せして狩り、驚かせて素早く処理することを好んだ。攻撃した相手には尾を振り回して強打し、翼で叩き、叫び、爪で引っ掻くような攻撃を組み合わせて使った。動物に対してはひったくって掴む戦術を好んだ。この黒いドラゴンは複数の相手に対する補助として雷の精霊と嵐の精霊を召喚したので、私はこのドラゴンをストームドラゴンと呼ぼうとする誘惑にかられている

ニシュゾの日記Nishzo’s Journal

私が雇った密偵がついにパルハディを見つけだし、酒を飲みながら彼女と話すことができた。大酒飲みであることは、彼女に関して最も確実な点だ。この情報は私の協力者たちの現在の居場所リストを完成させるために役立った。この咳が収まったら、彼らを探し出すつもりだ。

これはあの風邪だと私に言おうとした錬金術師がいたが、彼女はニシュゾ以上に盗賊っぽかった。とにかく眠って治そう。この下らないタペストリーと引き換えに、手に入るゴールドの山の夢を見たい。

ファドマイの愛した娘The Favored Daughter of Fadomai

沈黙の司祭アムン・ドロ 著

深い闇で、ファドマイの子は皆が彼女の元を去った。アズラーを除いて。

アズラーは母を抱きしめ、贈り物を求めなかった。その代わり、アズラーは泣いた。ラティスの光が彼女の涙に映っていた。

ファドマイはアズラーに三つの秘密と、さらなる秘密を囁いた。彼女は娘に多くのことを話した。愛と戦争の物語、夢にも思わぬ夢の物語を。そして聞いたアズラーはさらに泣いた。月光が暗闇の中で輝くほどに。

そしてファドマイはアズラーに全ての門と境界の名を教え、全ての霊魂の名を教え、これから生きる全てのカジートの名を教えた。そしてアズラーは彼らの道の困難さを知り、さらに泣いた。涙の光がラティスと一体になるほどに。

そしてファドマイは自分の子供たちの物語と、それぞれの姿で一番好きな部分を話した。話がアズラーに及ぶと、ファドマイは決められないと愛した娘に言った。そしてファドマイは死んだ。

アズラーは深い闇に座って永劫の時を過ごし、自分が学んだことについて思いを巡らせ、母を失ったことを悲しんだ。アズラーはさらに泣き、今や闇は彼女の涙を避けて月のラティスから逃れ去った。アズラーはあまりに長い間泣いたので、もはや深い闇ではなく、月光と影の場にいた。

そしてアズラーは母ファドマイの元へ戻ろうとしたが、彼女の涙は大きな海になっていた。海の向こうには黒い門があり、飢えた闇へと通じていた。

ローカジュが門の入口に立っていた。彼は打ちのめされ、血を流していた。胸には穴が一つ空いていた。だが深い闇はまだ彼の血の中にあり、心臓のあった場所を満たしていた。闇の塊は心臓のように脈打ち、黒い血が境目からあふれ出していた。アズラーには心臓の鼓動がドラムを叩く音のように聞こえた。血が一滴ずつ落ちる音はリズムとなって、彼女の尻尾に感じられた。

だがファドマイはアズラーに全ての霊魂の名を教えていたから、深い闇の正体がアズラーには分かった。そして時が来ると、アズラーは大声をあげて歌った。

ウル・ドラ・ナ・ミイ・ラ・ウル・ドラ・ナ・ミイ・ラ・ウル・ドラ・アズ・ラ

そしてアズラーはローカジュの闇の心臓を引き抜き、合わせて彼の中の闇も全て抜き出し、海の向こうへ投げ捨てた。

ローカジュの闇の心臓から最初のドロ・マスラ、月の獣が生まれた。ラティスの縁に潜み、飢え以外のものを知らぬ獣である。

そして闇が流れ出たことで、アズラーはローカジュの中に母を見た。そしてアズラーは、彼が死ぬ時までローカジュを抱きしめた。

アズラーはローカジュの遺体に残った部分を門の前で、愛と慈悲のランターンの火により焼いた。アズラーは弟であるローカジュのために泣き、その涙は薪の上に落ちた。

ローカジュの灰がラティス中に散らばると、月の獣でさえしばらくは口を閉ざした。

そしてアズラーの涙もついに枯れ、彼女は世界へ向かった。嘆きの時は終わった。そしてファドマイは、彼女になすべきことを数多く与えていたのである。

ブラック・キエルゴ:ペライトにふさわしいか否かBlack Kiergo: Primed for Peryite?

さて、これは私の日記だ。私はペライトに選ばれし者、ヤミグー。願わくばこの日記が便所紙として使われることのないように。前回はそうなってしまったが。念のため、頁にかゆみ粉を振りかけておこう。私はかゆみに耐えられるが、ほとんどの者には耐えられまい。特に敏感な部位においては。

ペライトを崇拝する信者のために新たな場所を探す旅は、私のようなオークにとって辛いものだった。私はペライトのために故郷を捨てたが、それはエルスウェアにあるアンゴースをすべて飲んでも足りないほど長い話だ。そして、まだ新しい家を探している。ブラック・キエルゴと呼ばれる場所の話を聞き、いつか訪ねてみようと心に決めた。それが今だ。

ブラック・キエルゴはセンシャルの地下に広がる広大な地下スラムだ。恐らくブラック・キエルゴにつながる秘密の道がいくつかあるはずなので、道を見つけなければならない。みすぼらしさと貧しさに加え、ブラック・キエルゴの奥深くでは、あらゆる種類の不道徳で堕落した商売が横行している。つまり、ペライトの栄光をほぼ完璧に証明しているわけだ!この目で見るのが待ちきれない。

1日目

センシャルは荒れ果てている。疫病に見舞われ、火事にも見舞われたと聞いている。難民が非常に多い。きっと仕事が必要だ。自分には食べていく価値があると証明しなければ。たぶんこれは兆候だ。ペライトのおかげで、頼める仕事がたくさんある。ここは食べ物が足りない。それにドラゴン。奴らが雰囲気をさらに盛り上げている。実にいい。

ブラック・キエルゴが最初に燃えたのは、スラシアの疫病とナハテン風邪の流行中だと分かった。心の弱い愚か者め。火をつけても煙を吸い込んで死ぬだけだ。布教の成功は約束されている。そんな気がする。

2日目

ブラック・キエルゴで育った盗賊ラジーンの話をいくつか聞いた。それからブラック・キエルゴに住んでいない者がどれだけ恐れているかも。そこはこの街のスラムなのだ。とてもいい場所に思える。私を歓迎してくれる闇に向かう時がきた。

時間をとって、今朝から見たものを書き留めている。それから嗅いだ臭いを。無法者とろくでなしの根拠地として考えると、ブラック・キエルゴは広大だ。私たちが一角を占めても、きっと誰も気づきもしない。ここの者たちは疑い深いが、そこが気に入っている。信じやすい奴らを見ると牙がかゆくなる。だが臭い。スラムと聞いて想像する臭いそのものだ。これを記したのはリフテンに隠れていた頃を思い出すからに過ぎない。いい思い出だ。

猫の国の歴史では、キールゴという者が誰かと結婚して国を建立したと言われている。その名前を正しく綴らなければ。地下のスラムと同じ綴りではない。この場所とその者には実際のつながりはない。地元の者に訊ねてそれが分かったのだが、そいつは私の喉にナイフを突きつけた。自分たちの伝統に誇りを持つのを見るのはいいものだが、受けた面倒に対しては鼻を血塗れにして、ナイフを折ってやらねばならなかった。ペライトに栄光あれ!

だが、ここの者たちはもっといいナイフを持つべきだ。簡単に折れるようではいけない。

3日目

ブラック・キエルゴのアリーナ付近で少しばかりお祝いをした。強い酒をしこたま飲んだ。中にはエルフのものもあったが、フラゴンで20杯飲んだあとではかまうものか。そして、スラムにはアリーナがある。闘犬場に近い様子だが。金を使って、貧しい者がどれだけの血を流せるかを賭ける貴族のための場所だ。だが少しは興奮する。ドラゴンを崇拝する教団について噂を聞いた。競合相手か?耳の穴を掃除してよく聞いておかねば。もちろんドラゴンよりペライトのほうが上だが、信者を取り合わなければならないとは想像しなかった。とにかく、全員牙で突けばいい!

4日目

店を開くのにいい場所を見つけた。リーツァを送り出し、私たちの残りをかき集めてここに連れて来よう。彼女はセンシャルのまともな側の地域で、民に話しかけペライトの言葉を広めるのに忙しい。私たちは楽しみと仕事を混ぜ合わせようとしている。バランスというやつだ。ペライトは病気と貧しさだけではない。病気を送られた?それを乗り越えて自分の強さを証明しろ。そう言いたい!私に同意せず、墓場に送り込まれた者は実に残念だ。私がまだここに生きていて、彼らがそうではないことを考えれば、ペライトも私に賛成していると思う。

残りが到着するのを待つ間、アリーナに入ろうかと考えている。長い間、いい戦いをしていない。その結果、金を稼げるかもしれない。資金はペライトの役に立つだろう!ブラック・キエルゴで、私の幸運を祈ってくれ!

ペレタインの歴史:概要History of Pellitine: An Overview

パーラッティーン学会、スレマ 著

先人たちの経験に敬意を込めて。大義のために払った犠牲が、後に続く者たちに尊重されることを祈りながら。

「アネクイナとペレタイン」の紹介でも述べたように、カジート以外の資料を用いてエルスウェアの歴史を紐解く場合、非カジートが知らず知らず持っている先入観と直面する。母語とは違う言語が使用されるとニュアンスを捉えきれない。例えば私が翻訳されたアルゴニアンの資料を用いて、マークマイアの歴史書を書こうと思えば同じことが言える。あらゆる言葉は一対一で対応するものでなく何かを象徴するものであるため、完璧に翻訳することはできない。象徴にはしばしば色調や感情が込められている。人は象徴のために戦い、また死ぬ。単なる布の切れ端のために戦うのではなく、それが象徴しているもののために戦う。

それを踏まえた上で、この者は16の部族から成ったカジートとその支配者である月の皇帝が存在した時代から、現在ペレタインと呼ばれる地域の歴史を綴ってゆく。この頃、今で言うエルスウェアは16の部族が全て自由に出入りできる場所であり、月の皇帝の保護下で役割を果たすため、必要に応じて行動した。船大工やムーンシュガー農家など、安定した地盤が必要な役割があった部族は常設の居住地を設けることもあった。

ペレタインという地名はタアグラ語のパーラッティーンという月の司祭の部族から来ている。年月を経てこの名が有名となった理由は様々だが、第一紀2260年のスラシアの疫病までは地域の名でなく単なる部族名であり、月の司祭たちは他の部族の者と共に暮らしていた。しかし疫病は大打撃をもたらし、南部では部族の構造が崩れた。疫病の後はすでに港を訪れたブレトンやインペリアルの影響を受け、社会構造を変えつつあったセンシャルがこの流れを先導した。方法?単に例を示し、地の利を生かしただけだ。

南部の部族は疫病の被害に対する援助を受けるため、当時最大の街だったセンシャルに集まった。パーラッティーンの月の司祭たちも可能な限り援助できるよう集まった。センシャルの住民たちが築いていた社会構造と合わさって、全てが変わった。センシャルの生活は他の地域から来たカジートにも根付き、徐々に秩序が戻ると彼らは新しい人生を歩んだ。

北のカジートが部族の繋がりをさらに重視するようになった一方、南のカジートは階級社会を築きはじめた。ここで、今日のように南北が分裂した。

時が経つと南のカジートは壊れた建物を再建し、他種族との交易路も再構築して再び繁栄を始めた。センシャルは活気ある貿易港にして、文化や伝統の中心地として南部の中心となった。帝国との繋がりも強まり、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエがセンシャル宮殿に住居を構えるほどだった。そのため第二紀309年にペレタインの支配者エシタがアネクイナのキールゴと結婚すると、不満を持つ者もいた。センシャルの住民の多くは、自分たちの支配者が北の蛮族と結婚することに愕然とした。アネクイナの部族も同じように裏切られた気分だった。それでも結婚は進み、支配者たちは国を統一するため尽力した。たてがみのリドサーリ・ダッタは混乱を鎮めるため、月の満ち欠けに応じて部族と貴族が権力を分け合う制度を設けた。

そして第二紀324年、暗殺者がセンシャル宮殿に滞在中の最高顧問ヴェルシデュ・シャイエを殺し、その血で壁に「モラグ・トング」と書いた。調査を撹乱する目的だったと考える者もいれば、犯人がモラグ・トングの一員だと信じて疑わない者もいた。いずれにせよ、カジートと帝国の関係は緊張した。

緊張は高まり続け、第二紀326年にはとうとうカジートの反乱軍が王家の大半を虐殺した。この時点で両国は関係を切り、互いに事件の責任を問う文書を送った(参考までに記すと「北の蛮族の裏切り」と題された文書では、血に飢えたネ・クイナル族が王家を滅ぼしたと匿名の著者が主張している)。

北との関係が悪化する中でもペレタインは繁栄を続け、センシャルの成長は次の疫病が訪れるまで続いた。第二紀565年に到来したナハテン風邪である。

ブラック・キエルゴのスラムを中心に多くの死者が出る事態となり、自分の身を守るためセンシャルの一部に火を放って風邪を追い払おうとする者もいた。炎が広がると、それまで影響のなかった区域でも煙による死者が多数出た。多くが逃亡したが、街の外は食料品に乏しかったため、餓死する者がほとんどだった。他にもトパル士官学校の謎の閉鎖など不運が続き、南エルスウェアは一時低迷した。

南エルスウェアは困難に苦しんでいる。センシャルに駐在していた帝国軍が復興を支援しているが、わずかに残った部族の慣習は自衛の本能に駆逐されようとしている。この文書の次の章では、もう少し明るい内容を書きたいものだ。

ムーンシュガー:より良い計画Moon-Sugar: A Better Plan

この者にはもっといい計画がある。パンザラはリーダーだからって、いつも最大の分け前をもらう資格があると思ってる。ふん、そんなのクソくらえだ!俺たちの分け前を合わせ、グルメ・ムーンシュガーを同量の安物と混ぜれば、高値で売りつけて利益を3倍にできるぞ!

そうだ、パンザラがいつも停泊する場所に行こう。センシャルから岸の向こう側に行ったところだ。あの女の分け前を盗んで、もっとゴールドを稼ごう。

計画ってのはこういう風に立てるもんさ!この者がリーダーになるべきじゃないか?

ムーンシュガー計画Moon-Sugar Plans

このムーンシュガーは素晴らしい!これを運べばたっぷりと稼げるぞ!

俺の取り分はセンシャルに持っていこう。あそこの連中はいつもまともなムーンシュガーに飢えているし、ゴールドの蓄えもある。

ハロの取り分は、俺たちが以前スクゥーマを蒸留していた古い農場に置いていこう。記憶はぼんやりしているが、あの場所にはいい思い出がある。

ヤシラの取り分は沼の北にある、河が下りにさしかかる地点に置こう。あの場所は嫌いだがな。あの泥は毛皮から落ちやしない。

近いうちにまたメモを書く。ゴールドが手に入ったら、お前もすぐに分け前をもらえるぞ。

ラカジンの日記、3ページRa’khajin’s Journal, Page 3

ずっと私には、偉大な運命が待っていると分かっていた。仲間たちは座り、アルコシュ神の恩恵を求めて祈っている。私は彼らを導いた。彼の秩序を守るべき勇者だった。蝕の下で生まれ、偉大になる運命を授かった。

私は、アルコシュの誇りの戦士だ。

だが、私の血には危険も潜んでいるとクランマザーには警告された。月は誰よりも強く私に呼びかけているが、その声に逆らうには意思を強く持たなくてはならない。ローカジュの闇に心を囚われてはならない。聖なる創造主が、かつて闇に囚われてしまったように。

だが、闇を恐れることはない。私の意志は強く、私の理想は正しい。誇りの家にいる月の司祭から、できる限り学ぼう。そしてエルスウェアを守る時を待とう。それが私の責務であり、課せられた運命だからだ。

ラカジンの日記、12ページRa’khajin’s Journal, Page 12

勉強が退屈になってきた。同じ詩を、同じ声で繰り返す。彼らは、砂時計の底の砂のようにアルコシュの叡智を私に集めようとしている。しかし、彼らには分かっていない。すでに叡智は集まっている!私は生まれた時から運命を悟って、すでに受け入れた!

だが、クランマザーは私の言葉を信じない。困ったような目で私を見上げ、説教を繰り返している。

正直に言うと、彼女の言葉からは見下しに近いものを感じる。まだ私を、はるか昔に聖堂へ来た頃の泣き虫の子供だと思っている。私が誇り高き戦士になったことを、決して認めないようだ。

生まれながらに秘密を背負った私を、クランマザーが心から信頼することはあるのだろうか?

彼女と同等になり、理解してもらわなくてはならない。彼女に育ててもらった子供時代とは違うと理解させなくては。私は戦士で、アルコシュの勇者だ。私をそう扱うべきだ。

ラカジンの日記、25ページRa’khajin’s Journal, Page 25

誇りの家を去る時が来た。守護者アルコシュについて、学べることは全て学んだ。だが、自分の誕生の真実についても、この世界での居場所、来たる未来についても、なぜ我々が謎と嘘で民をだましているのかも、ほとんど分からなかった。

すべてがゲームのように感じられる。天から月に照らされた目で、我々を見下ろしている彼女のゲームだ。アズラーよ、私に何を望む?あるいは、これを望んでいるのか?自分が単に、あなたが作ったものだと気づくことが?

お断りだ。アルコシュについて学べることは全部学んだ。ドラゴンブレイクについても。彼を倒せば、アズラーの手による束縛も破壊される。

もう終わりだ。アルコシュについて、そして彼に続く多くの霊魂の全てを学んだ。あなたと同様に、彼らは古く強力だ。だが、すべて去ってはいない。今はまだ。

カジートには、もう長く新たなリーダーが生まれていない。すぐに生まれるだろう。

ラカジンの命令Ra’khajin’s Orders

新たなる月の教団はナーファーラールというドラゴンの息の根を止めねばならない。奴は我らが主、強大なるラートヴロン様の敵であり、新たなる月の意志に従うことを拒んでいる。それ以外にも理由はあるが、奴は抹殺しなければならない。

奴が隠れている聖域を占拠するため、必要な勢力は全て使え。止まることなく進むのだ!脅威が排除されるまでは帰還しないように。

新たなる月は、間もなく我ら全員の頭上に昇る。
ラカジン

リドル・サールの秘密Secrets of the Riddle’Thar

悟りし最初のたてがみ、リドサーリ・ダッタが予言した聖なる年代記より抜粋

ああ、多くの誇り高きカジートが、自分の夢を私の夢に重ねて編んだ髪の束を持ってくる。私の前に跪き、疲れた足に口づけし、ジャ・カージェイの印を求める。私は無数の族長の重責のかかった高い王座に座り、溜息をつく。リドル・サールの啓示はたてがみの力の内にはない。双子月の舞踏の聖堂にさえない。リドル・サールの真実は真のカジートの心の中にある。爪の中、髭の中、魂の中に。今こそジョーンとジョーデを思え。その満ち欠けに思いを馳せよ。カジートは子宮で考えはしない。私たちは姿や目的のために苦闘することはない。舞踏が決めるのだ。そして運命づけられた生誕の瞬間に、私たちは魂が既に知っていることを学ぶ。リズムに合わせてステップを踏む。双子月の美徳と義務は固有のものだ。その血が固有のものであるように。リドル・サールの真実は魂の中でサトウキビのように育つ。甘く、力強く、収穫を渇望する。私たちはサトウキビを育てない。成熟もさせない。自発的に育っていくのだ。必要なのは適切な季節に鎌を手に取り、豊かな恵みを刈り取ることだけだ。

リドル・サールの謎の追究は楽しみの追求でもある。充足の追求でもある。今話している真実は、皆が心の中で既に分かっていることだ。その知恵を受け入れ、魂を支配するものに注意を払い、平和をもたらし、リドル・サールの命に従え。そうすれば豊かな楽しみが見つかる。

まず、真の猫は好奇心が強くなければならない。どれだけ多くの毛皮を持たないよそ者が、策略と幻想の犠牲になっていることか!ローカジュの発明は視界の隅に潜んではいない。目につくところをうろついている。あまりにも普通で控えめなので、子猫のように無邪気に真実として受け入れてしまう。誰もが常にもっと長く耳を傾け、もっとじっくり見なければならない。あっさり飛びついてはいけない。調べよ。大きい石も小さい石も持ち上げよ。忍耐から得られるものは実に多い。

次に、真の猫は賢くなければならない。天は私たちに素早く動く爪、軽快な足、優美な強さを与えてくれた。しかしニルニの背をうろつく危険は、適切な攻撃にも耐え抜くことがとても多い。残酷な迷路に陥った場合は、単純な解決の誘惑に抵抗しなければならない。工夫のない策略に頼ってはいけない。あらゆる問題には無数の戦略がある。その中でも最高の戦略は心の中にある。戦わずして戦え。話さずに話せ。譲歩せずに応じよ。こうすれば、最高の楽しみが冗談の対極に隠れていることに気づくはずだ。

三つ目に、真の猫は自身に優しい。本の指導者は自腹を切って施しをせよと説教することがとても多い。彼らは陰気な埋葬布の下に隠された、喘ぐような美徳を主張する。飢えた慈善家がどれだけのコインを運べるだろう?実に僅かだ。施しの果実は楽しく丈夫な枝に実る。全員が与え誰も受け取らなければ、王国はどれほど悲惨になるだろう!労働の成果は受け取れ。天から落ちてくる砂糖は味わえ。ニルニを豊かに流れるワインは飲め。喜びの道を歩くために、踏みつけるべき道の目印をつけよう。

次に、真の猫は敬虔でなければならない。双子月の舞踏はジャ・カージェイへの道を提示するが、レレスウェアの案内がなければ、最も賢いカジートも闇に向かって漂いかねない。強いアルコシュ、祝福されしケナーシ、高貴なスレンダル、愛情溢れるマーラ、賢いバーン・ダル、そして最も重要な、星の裏を統治し、優しさと知恵と高潔な抜け目なさで輝くジョーンとジョーデ。リドル・サールは悟り、真の猫が聖なる先人をどのように見ているか、明らかに見通すことができる。彼らの忠告を聞き入れ、法を守り、リドル・サールの恵みを受け入れよ。そうすればナミイラの誘惑の餌食にならない。

最後に、真の猫は用心深くなければいけない。ニルニの背に住むあらゆる種族の中で、私たちカジートは最も危険を冒している。私たちの歴史は人の歴史を矮小化する。私たちはエルフが来る前から種を蒔き作物を育てた。私たちの魂は年を数えるずっと前に遡る。それは毎朝、日が昇るほど確かだ。それが私たちを賢くし、危険にもしている。ローカジュの憎悪の目はいつも私たちを睨んでいる。ナミイラの闇は夢と疑いの中を飛び跳ねる。オブリビオンの悪はすべてラティスに対し爪を立て、牙をきしませ、古い魂を賞品として奪う機会を狙っている。慎重になれ。素早く動け。自身の深いジャングルに心臓を隠し、その偉大な価値にしばしば思いを馳せよ。自分の心臓の鼓動に耳を傾けるのをやめれば、ローカジュの鼓動が永遠にとって代わるだろう。

リドル・サールはこうした美徳のすべてだ。月の子よ。私たちはカジートの精神の偉大な井戸から飲んでいる。その真実はたてがみを越え、聖堂を越え、愛する故郷の平原とジャングルを越えて踊っていることを知れ。ジョーンとジョーデが頭上で踊る時、皆の魂も合わせて踊る。

闇の霊魂The Dark Spirits

沈黙の司祭アムン・ドロ 著

ローカジュ。月の獣。ローカジュの闇の心臓から生まれ、ある大きな裏切りを受けた後、この心臓に支配された。ローカジュは賢明にも姉のアズラーに助けを求め、アズラーはローカジュが暗闇に飲み込まれる前に闇を切り裂いて彼を救い出し、心臓を虚無の中に投げ捨てた。我々はこのローカジュの影が、我らの敵であるウル・ドラ・ナミイラに仕えた最初のドロ・マスラであることを知っている。月の獣はラティスの縁を徘徊し、道から離れすぎたカジートに襲いかかる。亡霊の月の夜にアズラーは虚無の門を開き、月の獣は消滅するまでの間、定命の者に戦いを挑むことを知っておくと良い。我々は道の一部として、また失われた同族のために、この重荷を受け入れている。

ナミイラ。最古の霊魂。深い闇。虚無。腐った肉を食べる生物は全て彼女の密偵であり、猫たちの獲物である。月のラティスは我々をナミイラの飢えから守っているが、我々自身の飢えからは守ってくれない。ナミイラの名を呼ぶことは闇を招くことであり、決して行ってはならない。ナミイラとは彼女の真の名の音だからである。ナミイラは無限の領域の霊魂であり、領域の全てを知っているのはアズラーのみである。この霊魂に捕らえられた定命の者は自分が何者かを忘れ、ナミイラのみを知るようになるまで苛まれる。これはアズラーが闇に委ねないジャ・カージェイを除く全ての魂にとって、永遠の苦しみである。

ノクトラ。影の盗賊。薄明の娘。虚無の門の階段で、ローカジュの黒い血から生まれた。歌の中で、ボエスラはこの霊魂がナミイラではないと気づくまで、これを相手に戦った。戦いが終わった時、ノクトラはアズラーの前に引き出され裁きを受けた。アズラーは慈悲を示し、ノクトラがアズラーとジャ・カージェイに仕える限り、生きることを許した。だがノクトラは反抗的な性のため、アズラーの鍵の1つを盗み、虚無へと逃げ帰った。アズラーはローカジュの真の霊魂を送って彼女を探させ、それ以来ノクトラは求められればカジートを助けてきた。部族は沈黙、影、幸運を求めてノクトラの名を囁く。邪悪な行いに彼女を呼んではならない。それは彼女と共に闇をもたらすだろう。

ヴァルミーナ。悪夢の女王。失われた娘。この霊魂は猫でなく、子を失うのではないかというファドマイの恐怖から生まれた。アズラーはこの闇の霊魂を地下世界で殺し、今やヴァルミーナはカジートが夢を見る時にのみ苛む。彼女はカジートを試し、恐怖で道を離れさせようとする。だが彼女がジャ・カージェイに真の意味で危害を加えられるのは、夢の中だけであることを知っておくとよい。

[?????]復讐の霊魂。ファドマイとローカジュの死後、アズラーの嘆きから生まれたため、自身の意志を持たない。アズラーとボエスラ、マファラ以外の何ものも、この霊魂を呼び出すことはできない。彼らだけがその名を知っているからである。歌の中では時として黒き豹、黒檀の鎧に身を包んだ戦士、あるいは隠された剣として出てくることがある。

黄昏の先唱者:アズラーの祈祷師Twilight Cantors: The Exorcists of Azurah

ゼヨ・プレヴェット 著

ゴーストハンターとして旅をする間に、あらゆる種類の奇妙な霊魂や異常な存在に出会ってきた。だが、カジートが稀に苦しむ憑依のようなものは見たことがない。最初は精神的なひきつれ、尻尾のかゆみ、当人は打ち消せない耳鳴りから始まる。

カジートの伝承によれば、これが迷い猫になる最初の兆候らしい。何もしなければ、カジートはさらに聞こえない曲に魅了される。ビートに合わせて動くようになり、ベントの踊りと呼ばれる奇妙な動きをする。このおかしな状態は単に病気の結果だと思えるだろうが、憑依された者がベントの踊りを始めたら、憑依されたことは見逃しようがない。

そのカジートが踊りを続けると、肉体に変化が生じ始める。毛皮が黒くなり、闇の力が身体から発せられ、普通の者にも見えるほどだ。他の種の憑依と異なり、憑依されても魂は消え去らず、他の霊魂に乗っ取られることはない。その代わり、元々の魂がねじ曲がってしまう。身体の変化が完了すると、もはやカジートではなくなり「ドロ・マスラ」に変わってしまう。この邪悪な霊魂は、ニルンを去るまでさらに苦痛を生み出す。

この恐ろしい症状と戦うために、カジートは旅の司祭の集団を結成した。彼らは奇妙な曲の影響に対抗するため歌を使う。それが「黄昏の先唱者」だ。彼らは自分たちが歌う「黄昏の賛歌」が、彼らの「神」であるアズラーからカジートへの贈り物だと言う。真実かどうかは証明できない。デイドラ公が世界に恐怖以外のものをもたらすとは考え難い。いずれにせよ、ベントの踊りに囚われたカジートを観察している限り、黄昏の先唱者の言葉は憑依された者を静めて、正気に戻していることは間違いない。ある先唱者が3日間歌い続け、被害者から不自然な力を排除したのを目撃したこともある。もしその休息がなかったら、彼女はさらに闇の道を進んで消え去る運命だっただろう。

この旅の秘術師たちはドロ・マスラとの戦いに備えながら、常に旅を続けている。黄昏の先唱者の所有物は少なく、任務に必要なものと道具だけを身につけている。任務に対する対価を求めることはなく、代わりに感謝の印としてカジートから差し出されたものを頼りに生活している。どうやらカジートは、先唱者たちに対して敬意と恐怖が混ざった感情を持っているようだ。先唱者が訪れることは間もなく不幸が訪れる兆しであり、彼らを迎え入れる家族は先唱者からの守護を確実にするため、すぐに贈り物をする必要があると一般的に信じられている。取り返しがつかないほど魂が破壊される危険があるわけだから、そうする理由は明らかだろう。

プロのゴーストハンターとして、毎日自らの魂を危険に晒しながら正義を貫こうとする、その献身には敬意を感じている。もしこの献身的な祈祷師に出会うことがあったら、礼儀正しく振る舞い、不断の努力と危険な仕事への敬意として金銭を渡すべきだ。

我らが飛ぶようになった理由How We Came to Fly

ファドマイがオーナールに逆らい世界が生まれる前、ケナーシは速く高く飛んだ。偉大なるアルコシュも届かぬほどに。彼女は限界がなく自由だったが、喜びを分かち合う相手はいなかった。そこで彼女は、空を分かち合う相手を母にねだった。ファドマイは夜にジョーンとジョーデ、昼にマグルス、夜と昼の間にアズラーを与えた。しかし彼らは自分に与えられた道を辿るだけで、ケナーシの喜びを本当に分かち合えたものはいなかった。これを見たアズラーは、ケナーシに2人だけが共有できる秘密を打ち明けた。

アズラーの忠実な子供が死を迎えた時、ケナーシはニルニの嫉妬深い爪から彼らを奪い取り、星の裏の砂場に運ぶことにした。こうして、選ばれた人々はレレスウェアへの道が与えられ、ケナーシはついに喜びを分かち合う相手を見つけた。

輝く海の聖なる水Sacred Waters of the Shining Sea

月の司祭シャヴカ 著

ジョーンとジョーデの祝福を受けた王国ペレタインには、聖なる砂糖が豊富にある。浅瀬でさえも双子月の恵みで満ちている。潮を照らす月光はトパル湾へ流れ込み、我々の聖地である月光の入江に集まる。日光から守られたこの場所で、蓄積された月光が自然の洞窟に穏やかな夜空を作りだす。

この祝福された水は心と体、魂に救いを与える。エルスウェアの至る所からカジートが訪れては月光の砂州や聖なる祠に浸り、悪い気を出して出てくる。ほんのわずかな寄付と返金可能なタオル貸し出し費を払えば、あなたも入江の神秘を体験し、聖なる水で心身を癒すことができる。月の司祭一同、浄化に役立てることを心待ちにしている

空の霊魂The Sky Spirits

沈黙の司祭アムン・ドロ 著

アズラー。全てのカジートの母。夜空と薄明の領域、黄昏と暁の女王。ファドマイに愛されし娘。我々の先人の重荷を背負っているため、アズラーの領域は幅広い。全ての部族はアズラーを魔術、美、予言の神として知っている。アズラーはまたあらゆる門と鍵、縁と境界の番人でもある。カジートは我々を持ち上げ、月のラティスに結び付けたのがアズラーであることを知るべきである。これで我々は運命の鎖から解き放たれ、我々だけが自らの未来を形作れるようになった。ジャ・カージェイと我々の完璧な姿形は、アズラーの贈り物である。アズラーはこの世に生きた全てのカジートの名を知っていると記されている。自らアズラーを知らねばならない。それが道の最初の一歩なのだから。

ケナーシ。天における太古の霊魂であり、ニルニの側を通り過ぎる際に風と雨の歌を歌う。最も古い音はこの霊魂によって世界に贈られたものである。我々は音楽と歌、神話を語ることによって彼女を称える。一部の部族にとって、ケナーシは悲嘆の霊魂でもある。ローカジュが死んだ時、彼女は嵐の中に姿を隠し、アルコシュが慰めに来るまで泣き続けたと記されているからである。ケナーシは死んだカジートの魂を裁きのためにアズラーへ送り届けるので、アズラーの伝令でもある。時の終わりに創造物を守るため、すべてのカジートが永遠に団結した魂を呼び起こすのは、彼女の呼び声である。

ジョーンとジョーデ。永遠に嘆かれる者。このファドマイの死産した双子の霊魂は、今でも月のラティスで踊っている。ケナーシは彼らが生まれ落ちた時その手に抱き、死にゆく母に真実を伝える勇気を持たなかった。ケナーシは彼らの目を光らせるために2つのランターンを照らし、母が逝去するまでの間、彼らを空中に揺すぶった。今ではアズラーが双子の面倒を見て、ランターンの明かりが弱まると再び火をつける。ジョーンとジョーデの愛は月の光とムーンシュガーとして、全てのカジートに共有されている。この霊魂を称えるためには、明るい月の夜にケナーシの子守歌を歌わねばならない。

ローカジュ。月公。ファドマイの愛する息子。白い獅子。彼は深い闇の中で生まれ、それが彼の重荷となった。ローカジュは多くの者に愛され、高潔な指導者と見なされた。ローカジュは目的をもって自らの道を切り開いた最初の霊魂だった。彼は生まれた時から葛藤の中にあったためである。彼の勇気は出会う全ての者の心を励まし、ついに彼は霊魂を集結させて世界を作った。ローカジュはそのために自らの命を捧げた。我々は目的をもって道を歩み、闇の呼び声に抵抗することによって彼の犠牲を称える。ローカジュはカジートの魂の二面性と、全てのカジートが乗り越えねばならない困難を象徴している。アズラーはその知恵を用いて、弟の薪にジョーンとジョーデの双子のランターンで火をつけた。これにより、時としてローカジュの真の霊魂が姿を現す。ただしそれはアズラーやケナーシに呼ばれた場合や、彼の最古の名前で呼ばれた場合のみである。

マグルス。太陽神。一般的には猫の目、あるいはアズラーの第三の目と呼ばれ、アズラーの怒りを日々思い起こさせる存在である。マグルスがボエスラとローカジュから逃げた時、彼は片目しか見えず、ムーンシャドウに落ちたと記されている。そこでアズラーは彼が恐怖に満たされており、領域を支配するには適さないと判断し、彼のもう一つの目を引き抜いた。マグルスは盲目となって天に取り残されたが、アズラーは彼の片目を石に変え、ヴァーリアンスの門を映し出させた。これが夜明けに開き、黄昏に閉じるエセリウスのプリズムである。一部の魔術師はマグルスがこの目を自らの意思でアズラーとその子に捧げたと考えており、こうした魔術師たちは今でも彼の名で祈りを捧げている。

月と潮が交わる場The Marriage of Moon and Tide

クランマザー・ツラダマ 著

真のカジートであればジャ・カージェイの空のワルツを知っているだろうが、ニルニも踊りに参加していることを知っている者は少ない。彼女は子を生むためローカジュによって設けられた場所から動けないが、夜空に踊る月と共に彼女も揺れている。

「だが、ニルニが月と共に揺れるところなんて見たことがない」と思うだろう。

おそらく見たことはあるが、見ている光景を理解していなかったのだ。あなたが陽気な歌に尻尾を揺らしていても、毛皮に張り付いたノミには分からないように、ニルニの動きを見極めるのは難しい。ジョーンとジョーデが昇る時海をよく見ていれば、ニルニの波が後に続いて海岸を進むのが分かるだろう。これは月の歌に合わせて、ニルニが揺れていることを示す

剣の魂Soul of the Sword

流血の牙の師範、ヴァラミによる瞑想

ヴリン・サクを極めるため、定まった道があるわけではない。アデプトや師範になる定まった方法は存在しない。こうしたことは熟考し、自分の道を見つけるものだ。

剣はお前の魂だ。魂はお前の剣だ。

[怒った筆跡で殴り書きされている。「このろくでなしめ!ヴァラミの魂が自分の剣で引き裂かれますように!そもそもどういう意味だ?]

こうした言葉で瞑想せよ。その瞑想は、お前にどんな意味を持つ?

[さらに怒った筆跡で。「お前が自分の弟子も訓練できない、どうしようもない無能だという意味だ。意味だと。ろくでもない!]

瞑想は道を示唆しているのか?いや、きっと違う。

[大文字でギザギザの筆跡で。「いいかげんにしろ」]

武器を手渡される前に、ヴリン・サクが何時間もかけて基本の型を習った方法で訓練する者よ。もし魂がお前の剣で、お前の剣がお前の魂なら、そもそも師範が弟子の成長を邪魔しているという意味にならないだろうか?私はそう言わない。

[小さな手書きで。「もういい。この者はうんざりした。この者は…」]
[この巻物は唐突に終わっている。まるで注釈者が、最後のメモの下をすべて破り取ったかのようだ]

誇りの家:時から切り離された場所?Pridehome: A Place Outside Time?

魔術師ギルドのカーラレスによる転写

転写者のメモ:この転写では、我々の言語で時の経過を示す動詞を使っている。この放浪するカジートの月の司祭が私に説明しようとしたことへの理解を難しくするかもしれないが、自分の意識がさらに混乱する前に、厳密には正確でなくてもこの概念をまとめる必要があった。結果としてこの転写に過ちが起きた場合は、全て自分の責任である。月の司祭が私に示した、時間を越えた感覚が伝わることを願う。だが、おそらくこの方法はシェオゴラスのような存在への道を開くだろう。それから、この月の司祭は名前を明かすことを拒否した。自分は知識を持った司祭であり、同時に知識のない未熟者でもあると彼は語っていた。

* * *
時とタペストリーより前に、誇りの家は存在していた。概念としてずっと存在していた。これからも常に存在する。時の竜神であるアルコシュはタペストリーと時にこれを吹き込み、時を線形にしか捉えられない我々にも現実として認識させた。

誇りの家は、時の神の教えに従うアデプトの故郷となった。隔離された場所だ。そこで彼らは来たるべき破滅、ドラゴンが帰還し世界に不均衡をもたらす時に備えていた。

勇者ジャダッリはアルコシュの呼び声を聞き、誇りの家を作った。そして我々も現実として認識できるようになった。そう、彼女は黒き獣と戦ったのだ。そう、彼女は勝利したが命を失った。君の意識の中で、彼女が勝ったのはわずかな間だ。だが、彼女は常に存在し勝ち続けている。彼女は常に存在し続ける。

誇りの家の概念と場所は、ずっと存在してきた。ジャダッリが創設したアルコシュの誇りのように。一息にではなく、徐々に明らかになっていく物事の概念が理解できていればだが。

想像できるだろうか、タペストリーと線形の時に囚われた君に。ジャダッリは成功し、同時に失敗した。アブナー・サルンと呼ばれる者が、成功し同時に失敗したように。同じ瞬間に、線形の時の外側で。君には分からないだろう。それは望みすぎだ。

呼び声を聞いた勇者はジャダッリの後にもいた。線形の時で。さらに勇者は集まった。クランマザーも訪れては去っていった。一般的な言い方で言う時が過ぎ、ラカジンと呼ばれる者が現れた。彼は勇者となることに成功し、失敗した。過去のジャダッリのように。どうしてそんなことが可能か、それを知りたいか?彼は線形の時で、誇りの家を去るまで成功していた。だが、時の外では?彼は成功し、同時に失敗した。永遠にと言ってもいい。

誇りの家の一番新しいクランマザー、ヒズニは最初のクランマザーでもある。誇りの家のすべてのクランマザーは最初でもある。だが、この話はもう十分なようだ。私が話した中から君が何かを掴んだなら忘れるな。誇りの家はずっと存在していた。そしてこれからも存在する。アルコシュの誇りはずっと存在していた。そしてこれからも存在する。誇りの家のすべてのクランマザーは、ずっと存在していた。そしてこれからも存在する。来たるべき破滅は?ずっと存在していた。そしてこれからも存在する。

黒き獣の戦いBattle of the Black Beast

聖なる仮面の力によってのみ
その聖なる光によってのみ
汝は知るだろう、黒き獣を
我らの危険な戦いを

仮面を使って物語を見よ
聖なる炎の輝きにより
前へ進む道は開かれる
地下に広がる氷の牢獄へ

糸の修復Mend the Threads

選ばれた戦士は時のタペストリーがほつれたら、
それを繕う爪とならねばならない。

この運命を受け入れることは大いなる名誉であり、大いなる重荷でもある。
躊躇なく行わねばならない。

選ばれた戦士は時の意志を受け入れ、
心を尊敬と誇りで満たす。

彼らは自然の秩序を守り、
先人たちと道を共にする。

このことを知れ。でなければ仮面を被ってはならぬ。

狩りへの招待Invitation to the Hunt

オーベリック・デュフォン様

この招待を貴公に届けられることを光栄に思います、セルヴァル・デュフォン。貴公もよくご存じのとおり、レディ・ギシリアネは候補者の選定に最も厳格な基準を適用します。貴公が選出されたのは、品格の高さと優れた作法が大きく評価されたためです。

貴公には、二週間以内に認証トークンをお届けします。それを催しの当日、我々のハントマスターに渡してください。この狩りは沼で開催されるので、服装も合わせたものをお選びください。

獲物を用意した熟練の罠師は、今回の採石場での催しがどのような技量の狩人にもお楽しみいただけることを保証しています。獣じみたオークや抜け目のないカジートが、貴公の狙いすました矢を待っています!全ての狩りには一定の危険が伴いますので、どうかご注意いただきたい。熟練のハントマスターたちが控えておりますので、状況が危険と見れば支援するでしょう。

狩りの達人の到着を、心よりお待ちしています!幸運を祈ります!

セロー

修復された石板Restored Tablet

これが物語の言葉であり
真実の言葉になる
石は開く
中に眠る者の
名を口にした時に

彼のクラ・ジュンを思い出せ
彼らはこの者を覚えている
辛辣なアネクイナ
完璧なるヌラリオン
悪魔狩人フリンシルド
〈裏切り者〉でさえ

中に眠るのは誰だ?

焦げたレディ・GのメモSinged Lady G Note

〈ドラゴンの攻撃による炎により、メモの大部分は読めなくなっているが、一部の文は残っている〉

…しけた獲物なのは確かだ。あのオークはいい戦いになるかもしれないが…

…他の者たちは陽動に使えるかもしれない…

…奴らをセローの元に連れていけ。あの女は馬鹿だが…

…水辺を通っていけばいい。私が聞くところ、レディ・Gがセローをセンシャルに留めておきたいそうだ。あの間抜けには新しい人材を「勧誘」するほうが楽だし、レディ・Gにとっても目を光らせるのが…

賞金首と盾The Bounty and the Shields

ジュリア・ルネリウスの日記

賞金首を狙って旅をする場合、行動を日記に記しておくように父から教わった。このまっさらの本を父から渡されて、ここに記すように言われた。書くのは得意じゃないが、父の希望をできるだけ尊重したいと思う。今はセンシャルにいて、行方不明者の痕跡を追っている。標的はジアン・ミコだ。複数の犯罪で指名手配され、ダガーフォールの魔術師ギルドから大事な本を盗んだ罪も含まれている。本だって?よりによって本を盗んだのか!ここは、彼が最後に目撃された場所だ。自分の勘では、カジートに紛れていれば安全だと考えたんだろう。特に、ここにはインペリアルが駐屯している。紛れ込めると踏んだはずだ。

だが、必ず見つけ出す。

2日目、センシャル

街中を歩き回った。どこに行っても、難民か不機嫌なカジートに出くわす。民兵の一種が辛うじて街を守っている。彼らは「センシャルの盾」と呼ばれている。元々は第十三軍団だったが、ここに駐屯して街の警備を担当するようになった後、センシャルの民から新たな名前で呼ばれるようになった。だが、街を統治しているわけではない。聞くところによれば、カジートが守らせたい法を執行しているだけだ。

おそらく、ミコは盾に参加している。標的を見つけるまで、自分も同じ行動を取るべきだろう。

3日目、盾

何てことだ、アルフィクがいる!どうやってこの部屋に入ってきたのか、ゴロゴロ喉が鳴る音で目が覚めた。ここの飼い猫かと思ったが、はっきりと「起きる時間だ、歩き手」と言った。どうすべきか分からない。もし相手がインペリアルなら、鼻先を殴り飛ばして部屋から追い出すところだ。だが、初めて飼った猫のマウサーに似ている。ただうなずいて、できるだけ丁寧に部屋から出ていくようお願いした。

朝食の後、ブルッシウスという男に盾のことと、入隊する方法を聞いた。彼は自分の体の痛みについての文句や、どこかの気まぐれな司祭の追跡を頼む方により関心があるようだった。しかし話題を維持して、新兵になる方法について聞いた。ありがたいことに、彼は訓練をしている場所を教えてくれた。そこへ行って、ミコを探すことにした。

4日目、お役所仕事

今日はほとんど、様々な盾の成員との会話に費やした。ミコは新兵の中にいた。訓練の責任者のところに行ってミコの過去の所業を伝え、ダガーフォールの魔術師ギルドに彼を連れ帰れば賞金がもらえることも伝えた。上官に伝える必要がある、と彼女に言われた。盾の指揮官であるレンムス将軍と会えるまで、それほど時間はかからなかった。

彼と話をして、センシャルの盾についてさらに情報が得られた。彼らは5年前、アクィラリオス皇帝の命令でここに派遣され、ナハテン風邪の被害を受けた街の秩序を取り戻すよう命じられた。センシャルを統治していた王家が途絶え、街は統治者を失っていたので、帝国は評議会の設立を助け、この地域を統治する手助けをしてきた。だがドラゴンの出現により、難民が街に押し寄せ、すでにぎりぎりだった物資がさらに不足した。彼には盾への参加を要請された。高度な訓練を受けた、優秀な戦闘員が不足しているためだろう。

もちろん光栄な申し出だったが、今は単独で旅して仕事を続けたい。

その時、将軍からミコがとても優秀な魔闘士だと言われた。本を盗んだのも、ここに来て新しい魔法でドラゴンを倒せるかもしれないと思ったからだそうだ。将軍はミコの行動を許したわけではないが、センシャルを守るためにできるだけ多くの兵隊が必要なのも事実だ。だから将軍は、ミコの引き渡しを拒否した。

最初の賞金稼ぎの仕事で、いきなり決断を迫られた。大義のために賞金をあきらめるか、あるいは将軍を説得してミコをダガーフォールに連れ戻し、裁きを受けさせるか。すでにミコと話はしている。彼は魔術師ギルドから盗んだ本から学んだ技を使って、ドラゴンと戦うことを強く望んでいる。だが、盗んだことは事実だ。なぜあの魔術師たちと一緒にドラゴンと戦わなかったのか?ドラゴンは、永遠にエルスウェア周辺で留まっているわけではない。全世界にとっての脅威だ。

これを書きながら決断した。父がこの日記を渡してくれたことは正しかった。書くことで、考えがまとまることもある。おそらく、次の賞金稼ぎはもっと楽になるだろう。次の機会のため、新しい本を手に入れよう。(ああ、これも書いておこう。本を盗まれた魔術師たちを呼び、ミコと連絡させよう。そうすれば、彼らは協力してドラゴンに立ち向かえるだろう。)

色彩豊かなカジートThe Colorful Khajiit

ユートロピア・ラトニウス 著

カジートは派手好きで知られている。彼らはどんなことでも熱心に行うようだ。しかしテンマール・フォレストの山奥にある小さな村が、センシャルの優雅な街並みを上回ると聞いて信じられるだろうか。誇張ではなく、ブラックハイツは文字通り色彩に溢れている。

この村の住民の半分以上は芸術にその身を捧げている。芸術家や、高品質な道具を提供する職人である。「彩色工場」と呼ばれる場所で生産される顔料は、塗料や染料としてタムリエル全土で高い人気を誇る。これだけでも、少人数の村が芸術に没頭できる富を生んでいる。

ブラックハイツのカジートは世代を越えて技術を磨き続けており、その作品は村の創立以来受け継がれてきた伝統に影響を受けている。特に古く、目立って見えるのは石の絵である。ブラックハイツ自体が山脈の麓にあり、岩に囲まれている。特に子供の頃、カジートは前足を使って石に絵を描く。数百の小さな足型から、広大で色彩豊かな絵を創り上げる。その最たる例が生命の壁と呼ばれる場所で、全ての村人が死ぬ前に生きた証を刻む。この甘く切ない史跡の規模に、私は言葉を失った。安全なセンシャルを離れ、ペレタインの神秘を味わう勇気があるならば、あなたもきっと同じ気持ちを味わえるだろう

新しい教団か、古代の宗教か?New Cult or Ancient Religion?

新たなる月教団に関する調査
パーラッティーン学会、スレマ 著

新たなる月教団の徴募官の出現は、この新興宗教に対する反応をセンシャルの人々に呼び起こしている。軽蔑するか考慮するかはそれぞれの地位と視点によって異なる。この者は異なる形でこの問題に取り組むことにした。新たなる月教団はドラゴンの怒りによる混沌から生まれた新しい教団なのだろうか。それとも、長い歴史を持つ古代の宗教が蘇ったものだろうか?

この者は徴募官と話すことができた。徴募官はその信仰の教義と信条について、生々しい詳細を喜んで教えてくれた。このカジートたちはジョーンとジョーデを認めているが、間もなく新たなる月が昇って、より明るく輝くようになると信じている。また救いへの道と力は新たなる月にあって、信仰深い者が切実に祈ったにもかかわらず、沈黙を守り距離をおく神々の崇拝にはないと信じている。

新たなる月教団は、明らかにドラゴンの出現により悪化している現在の困難な状況に苦しむ者たちに訴えかけようとしている。このため、彼らは主に貧しい者や住処を失った者を教団に引きつけてきた。この者の見るところ、教団は偽の約束と恐怖を勧誘の戦術として使っている。またドラゴンと戦うことよりも、ドラゴンを宥めることに熱心なようだ。とても興味深い。

この者は古代に活発だった、類似の集団に言及している資料を見つけた。そこでそもそもの疑問に立ち返る。新たなる月教団は最近組織された教団なのか、それとも復活の機会を待っていた、古代の宗教が復興したのだろうか?それを判断するためには、さらなる研究と調査が必要になるだろう

新たなる月の義務New Moon Obligations

新たなる月の教団、ザカール 著

この者は多くのカジートと異なり、明確な指針と共に生きることを好む。新たなる月の教団に多くの者が新たに入信したことを受けて、ザカールは信徒が従わねばならない義務を記録することにした。

1.入信

新たなる月の教団に入信できる者は健全な精神と肉体を持つ者に限る。この基準を満たさないものは、試練が始まる前であっても拒否されるだろう。

2.試練

試練の内容は秘密にしておくべきだ。試練に関する情報を共有し、他者を助けようとする者は即座に新たなる月の教団から追放される。いんちきもヒントも禁止だ!

3.勧誘

勧誘は優れた判断力を持つ者が実施しなければならない。栄養失調の者があまりにも多く入信している。こうした弱き者は、我々を目的に向け進ませてはくれないだろう。病気の者も要らない。必要なのは新たなる月の昇天を助けられる、強く、有能な者だ。

4.考え方

新たなる月の教団に入信した者は、理由が何であれ定められた義務に従い、リーダーとドラゴンの命令通りに行動することを忘れてはならない。明晰で決断した心を持つ者だけが、教団に新たなる月の昇天を実現させる。

5.儀式

すべての入信者は、どこかの時点で特別な儀式に呼ばれる。その時が来たら、誇りに思うように!我々の中でも最も優秀な者だけが、イオンストーンの儀式へ呼ばれる。唯一無二の名誉だ!その理由はすぐに分かるだろう

新たなる月が昇天するまで、休まず熱心に働くこと。新たなる月を崇める、ドラゴンを崇めよ!

世俗の霊魂The Worldly Spirits

沈黙の司祭アムン・ドロ 著

ニルニ。緑の母。調和の霊魂。その霊魂は弱まったとはいえ、ニルニは今でも暖かい砂や鬱蒼と茂るジャングルなど、定命の者が大地を侵害していない全ての場所において感じられる。カジートは彼女の秘密の守り手である。なぜならニルニの霊魂は定命の次元に生命を植えており、それはローカジュからニルニへの贈り物だったからである。ニルニは常にファドマイの寵愛を巡ってアズラーと争おうとしていたため、時として嫉妬深き姉と呼ばれる。しかし、ニルニはアズラーよりも美しい唯一の霊魂だったと言われている。

ワイファー。古代の形作る者。オーナールの落とし子の一人。彼は父親と違い、賢く優しかった。ワイファーは最初の花を創造することでニルニの心を動かし、伴侶とした。そして二人は多くの子を設けた。ワイファーはローカジュの死後、どこかの時点で深い闇に堕落させられた。混沌に囚われたワイファーは、ニルニを攻撃して殺してしまった。アズラーとケナーシ、ハーシーンはその復讐としてワイファーを滅ぼし、その骨でニルニの墓を作った。木の国に住む民には今でも彼の声を聞くと言う者もいるが、我らカジートはもはや彼に話しかけることはない。

ハーシーン。狩人。追及と目的ある変化の霊魂。ハーシーンはニルニに恋をしていたが、彼女はワイファーを伴侶に選んだ。悲しみに暮れたハーシーンはワイファーの勇者グラーエルクを屠り、その頭を戦利品として被った。彼はニルニの子どもたちを愛し、しばしば彼らに交じって歩く。カジートは道から迷った時、ハーシーンに祈るべきである。狩りの父はいつも道に戻してくれる。ハーシーンはニルニが最初に出産した子供たちの父親であると主張する部族もいる。この子たちが双子月のごとく変化に富むからである。そうした部族は、この子たちがジャ・カージェイのための器として選ばれたのだと述べている。

ハーモーラー。監視者。潮汐の霊魂。ハーモーラーは自らが知覚する全ての出来事を記録し、それを海底の大蔵書庫に貯蔵している。忍耐強い霊魂であり、世界が創造され、ケナーシが双子月とその運動を維持できなくなってから、アズラーがその仕事をこなすのを助けた。彼は他者の知識の番人でもある。自分が学ぶこと全てをアズラーと分かち合い、アズラーはよく彼の蔵書庫を歩いている。道の途上で試されることを望むのでない限り、この霊魂を呼ぶべきでない。ハーモーラーの仕事を邪魔してはいけない。

サンジーン。第二の出産で生まれた血の神。サンジーンは本来悪しき霊魂ではないが、彼の領域にある全てのものは、真の猫を道から逸脱させることをカジートは知るべきである。それは血の渇望と目的なき快楽である。サンジーンへの堕落は闇に屈することではないが、肉に屈することである。サンジーンはカジートを誘い、不死の肉体を得させようとするが、これはジャ・カージェイの全ての霊魂の牢獄である。サンジーンはそれゆえ道の途上で試す霊魂であり、克服されねばならない。彼を打ち破る秘訣は無視することであり、我々はこれをマファラから学ぶ。マファラは言う。真理のみを渇望せよ、と

生存者の自責Survivor’s Guilt

エーケンは死んだ。一緒に育ち、砂漠を走って競争して、剣に見立てた棒で遊び、何年も他人の戦争で戦って金を稼いだ。盾の衛兵の仕事に落ち着いた時、少し早く引退したように感じた。

ドラゴンが来るまでは。

いつものようにパトロールをしていた。恐ろしい鳥は繁殖の季節だったから、明らかに怒りっぽくなっていた。だが、エーケンにはアルゴニアンから習った技があった。乾燥したヒョウタンにいくつか穴を開けて、長い紐に結ぶ。馬鹿な真似はよせ、と言ったんだが。彼がそいつを頭の上で回すと、ジャッカルの群れのような音が出た。鳥たちは逃げていった。

いい考えだな、と彼に言ったことはなかった。馬鹿だったよ。いい考えだった、だが…

エーケン、お前はバカ野郎だ。そいつでドラゴンを追い払うなんて、無理に決まっているだろう。ドラゴンはあいつを一口で飲み込んだ。何もできず、あいつの叫び声を聴きながら漏らすしかなかった。

私は逃げた。すまない、エーケン。私は臆病者だ。

あいにく、誰にも許しては貰えなかった。ジャッガの瓶の底にも、ショーンホルムの安いワインの底にも、スクゥーマのゴミにもなかった。二日酔いと砂糖小屋が残るだけだ。喉が髪の毛に覆われているような気分になる。代わりに神を頼れば、司祭たちはつまらない説教をするだけだ。これは神々の意志であり、救いは祈りの中にしかない、とかな。

実にくだらん。あいつらには何も分かっちゃいない。

エーケン、何とかしてやる。お前を守るはずだったのに、いざという時に何もできなかった。私は忌々しい人食いウッドエルフに指を食われながら素手で絞め殺し、素早いウェアウルフにも追いついた。だが、あのドラゴンに会った時、初めて怖気づいた。

遠くでドラゴンが飛んでいるのを見た。何時間も輪を描いて飛んでいる。私がここにいると分かっているんだろう。復讐をするつもりはないが、少なくとも我々の父の幽霊は、この臆病者を死ぬまで呪いはしないだろう。

愛していたぞ、兄弟。もうすぐ会いにいく。

多くの糸The Many Threads

アマフィが見える、司祭のふりをしている
その心は黒く、高みに昇ることはない

水は甘いとオラヌは言うだろう
月の下、彼女は心安らかに留まる

ガード固き盗賊、マグパイを探せ
南にあるのは彼女の死、安らかでなかったと願いたい

ブファサは、いつも騒がしく喧しい
彼は自信に満ち、誇り高く家へ向かうだろう

美しきセレイズは木々の下で静かに眠る
破滅の石の砦にて

幸福なるヒージャーを、私はいつも思い出す
学校ではきっとうまくやれただろう

老グラスティアは今や無言で、丘の上にただ一人
彼女を悩ます風も、風車が挽く穀物もない

ダンサーはいつでもスリルを求め
盗賊たちと共に隠れるが、その善し悪しは知らぬ

ファロは無口で背の高い、寂しい見張りを見つけた
特別な眺めだが、それだけではない

ケスタは秘密を明かさない、だがいつも見ている
彼女は塔を見張る。遠くから、高くから

ジャロは私を驚かせた。街へ戻ったのだ
断頭台で冷たくなった。憐れみは覚えない

忠告The Good Bits

(この伝承の書には、ドラゴンの肉片を使って特別な薬を作る方法が体系と一緒に記される予定だ)

敵対する霊魂The Adversarial Spirits

沈黙の司祭アムン・ドロ 著

シェッゴラス。精神の神。彼の領域は定命の者の心であり、その安定性である。シェッゴラスは道の上でカジートに自らの考えや信念、行動の真理について疑念を抱かせることで、試練を与える。彼はカジートがハーモーラーの図書館を訪問する前に道の途上で対決し、克服しなければならない存在である。部族の中にはシェッゴラスが死んでおり、何か別の者に置き換わっていると信じるものもある。

オーカ。多くの道を通ってボエスラを追った悪魔。病の呪いを話し、それ以外の言葉を知らない。ローカジュ、ケナーシ、ボエスラは古代の歌でこの悪魔と戦ったが、オーカを追放できても死なせることはできなかった。カジートはオーカとその仲間が道の途上における試練であり、それ以外の何ものでもないと理解すべきである。

デイゴン。悪魔の猫。メルンズとも呼ばれる。彼はファドマイの二度目の出産の時に生まれた猫だが、すぐに破壊的で手の付けられない存在になった。オーナールは彼を追放したが、デイゴンは多くの道でなく深い闇を探索することを選び、悪魔モラグに敗れた。モラグは世界の創造まで彼を苦しめ続けた。混沌の時、モラグの妻はメルンズを解放し、その破壊的な本性をラティスに対する武器として利用したと記されている。メルンズはこれに夢中になり、同族殺しとなり、それゆえ我々がデイゴンと呼ぶ悪魔になった。道の途上で彼に立ち向かうだろう。

モラグ。12の悪魔王の1人。支配と至高法の古い霊魂である。この悪魔はデイゴンやメリド・ヌンダと共に、意図的にラティスを攻めた最初の者である。ボエスラとモラグはラティスの前で戦ったが決着がつかず、アズラーは彼女のみが知る秘密によって、この悪魔王に手枷をはめた。モラグは試すだろう。そしてカジートは規則に対抗する意志、ボエスラの力によって彼を克服するだろう。

メリド・ヌンダ。貪欲の偽りの霊魂。孤立した輝き。彼女はマグルスの娘だが、マグルスは自身と自分が作り出したものしか愛さなかった。マグルスは伴侶を持たなかったが、エセリウスで子を作った。メリド・ヌンダは愛なき光から生まれた冷たい霊魂である。彼女は知恵なき知能であり、目的なき知識である。メリド・ヌンダは悪魔の仲間であり、力強きローカジュの死を引き起こした張本人であるとして彼女を非難する歌もある。メリド・ヌンダがラティスを攻撃しようとした時、アズラーは彼女をヴァーリアンスの門の前で倒し、彼女を引きずってそこから離れた。そしてアズラーはメリド・ヌンダを虚無に投げ込み、鏡でそこに閉じ込めた。遊牧民によれば、メリド・ヌンダはその後脱出したという。

東からの恐怖Terror from the East

悪魔がケナーシの地へ来た時
彼女は運命だと知っていた
彼女の子供たちは最後の戦いを挑み
真紅の門を開いた

まず誇り高く力強いアルコシュが来た
黄金のたてがみをまとい
悪魔が存在してはならず
倒されねばならないと知った

次に強きローカジュがやって来た
その剣は青の輝きに燃えていた
彼は闇を再び押し返し
悪魔を追い払った

最後に来たのはニルニを嘆くハーシーン
彼はニルニの墓を骨で作った
樹木の茂る緑から、黒くなった海へ
ハーシーンは孤独に彼女を見守る

東から来た悪魔Demon from the East

王国は砂漠に広がる
平和が幸せな地を暖める、
心が放つ光が闇を照らす
時の糸に包まれて。

悪魔が東から現れ
深紅の獣が続く、
この地は破壊され枯れた
民には恐怖しかない。

戦士が剣を太陽に向け
後に続く戦士たちに呼びかけ、
アルコシュは紡がれぬ糸を導き
彼の勇者は進む。

異国の岸から戦士が集まり
この恐ろしい戦いに加わる、
戦士の傍らで歩み
戦いに備える。

深紅の獣は気高く
悪しき敵を倒すために角を与える、
その音は悪魔を地に落とす。
勝利は目の前に見える。

戦士は最後の戦いに挑む
恐ろしい悪魔との戦いに、
冷たく血塗られた平和な砂
空を夜が包む。

鎖と魔法が悪魔を固く縛る
闇の奥に閉じ込める、
戦士は新しい夜明けの光を祝い
再び平和が訪れる。

南エルスウェアのドラゴンDragons of Southern Elsweyr

市井の学者、グザンドリア・プレヴェット 著

北エルスウェア(別名アネクイナ)で行われているドラゴンの破壊に注目が集まっているが、南エルスウェアもこの悪質な獣の災難に直面している。これはこの野獣に関する私の体験記録だ。無論、遠くからの。私はドラゴンハンターではない!

センシャル近くを訪れた際に、ドラゴンの目撃者に初めて出会った。彼らは大きな赤い野獣が空を切り裂くように飛ぶ様を描写してくれた。ドラゴンが攻撃する前に目撃者は逃げた。この賢い行動指針に対する判断は差し控えるが、私は逃げない。代わりに分類し、記録するべく努めたい。

私は意を決して、目撃者が最後にこの赤いドラゴンを見た場所へ向かった。幸いまだ周囲に居残っていたので、近づいて少しの間観察できた。そして角の構造に奇妙な点があるのに気づいた。あれは角の欠損だろうか?しばらくしてドラゴンは飛び去った。何一つ傷つけはしなかった。ドラゴンの目的は分からないが、どんな騒動も損害も引き起こさなかったことに興味をそそられた。北で報告されてきた事態とはまったく異なる。このドラゴンが無害だという可能性はあるだろうか。悲しいかな、そのような考えを客観的に証明する証拠がない。

その後まもなく、別の赤いドラゴンがセンシャル近くの焦土に現れた。明らかに狩りの意図を持っていた。ドラゴンハンターの一団も現れ、派手な戦闘が起きた。私はドラゴンが叫び、吼える際にその名が分かるのではないかと期待しつつ観察した。ドラゴンはハンターに倒されたが、私は死ぬ前にドラゴンへ近づき尋ねた。「お名前を教えていただけませんか、記録できるように」

「定命の者よ、お前に名を教える価値はない」そう言って、ドラゴンは息絶えた。残念だ。きっと次のドラゴンはもっと協力的だろう。後世のためなのだ。私はこの赤いドラゴンをどちらも「名称不明のドラゴン」の中に入れた。マスナン修道士が、第二紀373年のドラゴン地図で記録したように。

次に、私は南の採石場近くで黒いドラゴンが目撃されたと聞きつけた。私は忠実な馬に乗り、急いでそこへ向かった。このドラゴンが動く姿を見られることを願って。今回も幸運だった。ドラゴンは採石場が見渡せる岩の上に止まり、私には見えない姿に向かって話をしていた。

「私はラートヴロン、お前の主だ。命に従え」とそいつは声を張り上げた。

ドラゴンが自分の名を語るのを聞けるとは、何と幸運だろう!私はそれを書き留めると、ドラゴンと手下に少し近づきすぎていたことに気づき、慌ててその場を去った。学者の探究心は時に救い難い。

私はセンシャルに戻り、そこで新しいドラゴンガードについて難民たちが話すのを小耳に挟んだ。古代の組織が、我々をドラゴンから救うために戻ってきたのだろうか?私は彼らを探さねばならない。もちろん、研究のためだ。

誰に紹介を頼めるだろうか?

破滅と闇を越えてThrough Doom and Darkness

選ばれた戦士は死が確実であっても、恐れを抱いてはならない。
それにより闇を心に忍び込ませてはならない。

命を軽んじる時、死を恐れないことは容易である。
それは闇の欺きである。

選ばれた戦士は胸の内に燃える炎を強め、
心を命と愛で燃え上がらせる。

彼らは必要によって戦い、
自らと他の者の命を守る。

このことを知れ。でなければ仮面を被ってはならぬ。

風の子供たちChildren of the Wind

立ち上がるのは爽やかな風
素敵なのはシカモアの種
クルクルとワルツを踊る
翼の上で踊る

故郷から遠く離れ
強く吹く風に運ばれ
ついに見つけたのは安らぎの場
根を生やすのは新たな木

すぐに嵐を呼んで羽を曲げ
優しい雨には羽を休め
そして雨が止み
吹き飛ばして太陽は自由になり

やがて雲により育まれ
若木の枝は伸ばされ
いくつもの春を越えて伸びる
翼はいっぱいに広がる

そして強風は種を飛ばす
白いシカモアを旅に出す

未送付の手紙Unsent Letter

アクイラ・ペルトラシウス司令官殿

第二紀562年、薄明の月16日

閣下

申し上げにくいのですが、先の火耀に話していた保護の儀式を先延ばしにするか、見直す必要があります。欠かすことのできない参加者の1人、魔闘士ホノリア・ガラナが昨晩脱走したのです。手ぶらで去ったのであれば、同じ程度の技術を持つ魔術師を探して彼女抜きで儀式を完了できたでしょう。しかしまずいことに、彼女は重要な試薬を持ち去っていきました。我々は危機に立たされています。特別委員会を招集してこの裏切りについて話し合うと共に、ガラナが見つかった際に与えるべき懲罰について考慮することを正式に要請します。

ダイアモンドに手を置いて誓いますが、この困難の中にあっても、私は全力を尽くして儀式を行う所存です。しかし以前に申し上げた警告を繰り返しておかなければなりません。この呪文は死霊術の実践にある意味でとても近いものです。魂に影響を与え、あるいは変化させる魔術は常に危険を伴います。しかしすでに話し合った様に、ナハテン風邪に対する感染の脅威は、私の予測によれば士官学校の学生と学部にとって、遥かに大きな脅威となっています。ガラナの試薬なしに儀式を行えば、失敗の危険はより高まります。しかし我々は行動を起こさねばなりません。でなければ、ヴィトゥラシウス百人隊長の運命が、士官学校に属する他の者へも拡大するでしょう。

八大神がこの試みと、我らの愛する帝国を祝福しますように。

閣下の僕
魔闘士ジャノ・インヴェル

無限のジャダッリJa’darri the Endless

ケナーシの息吹とローカジュの影

彼女は誇りをもって道を歩んだ

アズラーの光とアルコシュの咆哮

彼女は頭を下げ、祝福を受けた

赤き獣の角と神聖なる仮面

彼女の終わりは、始まりにすぎない

迷子の猫Lost Cat

こんにちは!

これを読んでいるなら、あなたは私の大切な猫、テンダークロウのそばにいるはず。彼はすぐどこかに行ってしまう癖を持っているの。ありがたいことに、彼はいつもこのメモを持っている。もしよければ、彼をセンシャルの南にある家まで連れていって。それが面倒なら、動物のことを気にしてくれる、他のもっと役に立つ通りすがりの人のためにメモを置いていってね。どうもありがとう!

キシマ

追伸:彼は自分の眼帯について何か言われるのを好まないの。だから、気づかないふりをしてやってね。

優しい風によりBy Gentle Winds

選ばれた戦士は絶望の淵の中でも、
常に優しい風が導くことを受け入れねばならない。

だが導きがあってさえ、彼らは自分の意志で運命へ歩んでいかねばならない。
それは英雄の定めである。

選ばれた戦士は目の前に敷かれた道を辿り、
その確信によって心を強める。

彼らは選ばれた道の途上にいる、全ての者を導く光となる。

このことを知れ。でなければ仮面を被ってはならぬ。

贖罪のマントラMantra of Redemption

迷い猫、あなたは月光が届かぬ場所をさまよってきた。しかし私は黄昏で待っていた。あなたが耳を傾けるように。

ローカジュは闇の中で、あなたを迷わせている。不実な曲を聴かず、こちらに尾を向けなさい。

アズラーの言葉で心を満たし、闇を振り払いましょう。私の歌が、あなたを家に導く。

月のラティスを抜けて戻り、愛しい光を浴びなさい。

喜びなさい、迷い猫。あなたは見つけられました。

アネクイナの蔵書庫

Anequina Archives

アカヴィリの埋葬儀式On Akaviri Burial Rites

古代学名誉教授レリエン・アーニーズ 著

アカヴィリの謎めいた蛇の民はタムリエルの海岸に異国情緒あふれる多くの慣習を持ち込んだが、その中でも埋葬の儀式ほど奇妙なものはない。最も奇怪な伝統はすぐに消え去ったものの、アカヴィリの末裔であるインペリアルは蛇の民の比較的穏当な儀式の多くを保った。以下の記述は網羅的なものでは全くないが、若い研究者に対して、アカヴィリの墓地がどのような学問的、物理的な困難を提起するかについて、一定の理解を与えると想定される。

一例として、大蛇の墳墓を挙げよう。カジートの建築家はこれを、元々リンメン王家の霊廟として考案した。しかし第二紀400年におけるアカヴィリ最高顧問の失墜と、それに伴うシロディール社会の混乱により、アカヴィリを祖先とするインペリアル数千人が移住することになった。彼らは国境を越え、大挙してエルスウェアに押し寄せた。常に日和見主義者であるリンメンのカジートは、この新たな居住者の尊い死者をカジートの墓地に引き取る名誉を与えた。値札を付けて。当時、アカヴィリの死者数は現地のカジートの死者を大幅に上回ったため、この建造物の名を「大蛇の墳墓」と変えたのである。

どの記述に従っても、古典的なアカヴィリの埋葬は厳重に管理されたものだったという。蛇の民の儀式は死者の体を、顔を除く体全体を覆う豪勢な絹の衣で縛りつける。顔の部分には細かく意匠を施した仮面を置くが、しばしば位の高い者には銀、低い者にはブリキの飾りが配してある。この仮面は通常、不気味な大蛇やその他の怪物の姿をあしらってある。これは悪霊を追い払うためかもしれないが、むしろ迷信深い墓荒らしへの対策の可能性が高い。それ以上に大事なのは、葬儀を執り行う者は死者が身に着けていた先祖伝来の武具を、遺体の側の台座に置いたことである。こうした武具はとても価値が高い。盗賊は定期的に壺を漁り、石棺をひっくり返して鎧兜を探し、裕福な収集家に売ろうとする。しかし危険もある。

まるで怒れる霊魂が操っているかのように自ら起き上がって身を守る鎧の存在は、多くの歴史家が言及している。こうした記述を顧みない者もいるが、従わないのはとても愚かと言える。忘れてはならないのは、墓地の探索において、適度な迷信が有用な点である。

アカヴィルの不思議Mysterious Akavir

アカヴィルは「竜の国」、タムリエルは「暁の神秘」、アトモーラは「エルダーウッド」をそれぞれ意味する。ヨクダの意味するところはレッドガードにしかわからない。

アカヴィルは野獣の王国である。人間もエルフも暮らしていない。かつて人間が住み着いたことがあったが、彼らはとうの昔にツァエシの生血を吸う蛇人に食べられてしまった。たとえ食われずにすんだとしても、遅かれ早かれタムリエルに移り住んだことだろう。ノルドはアトモーラからタムリエルに向かった。ノルドよりも早く、エルフはアルドメリスを捨ててタムリエルを目指していた。レッドガードは旅をするためにヨクダを破壊した。人間やエルフなら、タムリエルが創造の中心であること、そこで最終戦争が勃発すること、神々がロルカーンを破壊して謎めいたアダマンチンの塔をあとに残した土地であることは知っている。アカヴィルがタムリエルをどうとらえているのかは誰にもわからないが、考えてみるといい。どうして彼らは三度以上もその地を侵略しようとしたのか?

アカヴィルにはカマル、ツァエシ、タン・モー、カ・ポツーンという四大国家がある。タムリエルに攻め込んでいるときをのぞけば、彼らはお互いに戦っている。カマルとは「雪の地獄」という意味で、悪魔のはびこる土地である。夏がやってくると活発になり、毎年のようにタン・モーに攻め込むが、勇敢な猿人たちが彼らの侵略を許さない。かつて悪魔の王、アダスーム・デア・カマルがモロウウィンドの征服をもくろんだものの、アルマレクシアと地底王の手により、レッドマウンテンで成敗された。

ツァエシは「蛇の宮殿」という意味であり、かつて(竜虎が訪れるまで)はアカヴィルで最大の勢力でもあった。アカヴィルの人間を食いつくしたのはこの蛇人ではあるが、その姿はどことなく人間のようでもある。すらりとして美しく(恐ろしくもあるが)、黄金の鱗におおわれ、永遠の命を持つ。近隣の島々に暮らすゴブリンを奴隷にしてこき使い、その生血をすする。ツァエシの領地は広大である。タムリエルの民がアカヴィルと聞いて思い浮かべるのはこの蛇人である。前世紀には蛇人のひとりがシロディール帝都を四百年にわたって支配したことがあるからだ。その名を最高顧問ヴェルシデュ・シャイエといい、モラグ・トングの手で暗殺された。

タン・モーとは「千の猿の島」という意味である。いろいろな種類の猿人が暮らしており、みな一様に気さくで、勇ましく、単純である(なおかつ、多くは狂っている)。周囲の国家の襲撃によって奴隷にされかけたことが何度かあるため、もしものときは軍隊も組織する。蛇人と悪魔のどちらとも憎んでいるはずだが、あえてどちらかを選ぶとなると、彼らはきっと「蛇人」と答えるだろう。かつては仲たがいしていた時期もあったが、カ・ポツーンの虎人とは同盟関係にある。

カ・ポツーンとは「竜虎の帝国」という意味である。この地の猫人は、竜虎である聖人によって統べられている。今や立派な帝国であり、その力はツァエシをもしのぐ(ただし、海上ではまだかなわない)。蛇人は人間を食いつくしたのち、竜族を食いつくそうとした。赤竜はなんとか奴隷にしたものの、黒竜はポツーン(当時の名称)に逃がしてしまった。大戦が勃発し、猫人も蛇人もぼろぼろに衰弱し、竜族は絶滅した。そのときから、猫人は竜族になろうとしてきた。その最初の成功例がトシュ・ラカである。彼は世界最大の竜であり、その体は橙と黒で彩られ、その頭脳は新鮮なアイデアに満ちている。

「まずは、生血を吸う蛇どもを皆殺しにしよう」と、トシュ・ラカは言う。竜虎の帝国がタムリエルを侵略するのはそれからだと言いたいのだろう。

アジン・ジョーの日記Azin-jo’s Journal

自分の時間が残り少なくなるにつれ、毎日が長くなっている気がする。務めを続行するため、アルコシュが力を与えてくれることを祈っている。この者は偉大な聖堂という重荷を背負うのに必要な体力を持たない、年老いたカジートにすぎない。

* * *
アジン・ジョーはずっと前にいなくなった友人と家族のことを思う。信仰を次第に失っていった者たちとは長い間会っていないし、残った者たちは全員死んでしまった。自分の番になったら、後任となる者が誰もいないのが心配だ。

* * *
アジン・ジョーの心には常にアルコシュが存在している。カジートが最も偉大なる神を忘れるとはどういうことだ?リドル・サールを軽蔑すべきでないのは分かっているが、たてがみは神々に取って代わるのではなく、神々を称えるように導くべきだ!ラジーンでさえ、共有することを心得ているのに!

* * *
どうやって説明したらいいのか分からないが、後世のためにこの奇跡を記録すべきだということは分かってる。アジン・ジョーは今日、アルコシュの訪問を受けた。夢でも幻覚でもなく、足元の石と同じように本物だ!内陣で祈っていると、影に包み込まれた。晴れた一日で、日没までずっと祈っていたわけでもない。頭を上げた時、目にしたのは思いがけないものだった。

空から、太陽のような黄金色で、日差しのように輝く大きなドラゴンが下りてきたのだ!私たちが必要とした時に、猫たちの竜王がついに山へと戻ったのだ。アジン・ジョーは地面にひれ伏し、自分のようなしもべの祈りに答えてくれたアルコシュに礼を言った。偉大なるアルコシュは雷の声でこう言った。

「仲間のところへ行き、私の帰還を伝えよ。ここへ連れてきて聖堂を再建せよ。私への信仰を持つ者は、この先の未来に居場所を持つだろう」

明日、アジン・ジョーは山を下りて、この素晴らしい知らせを伝えよう!

アネクイナとペレタイン:紹介Anequina and Pellitine: An Introduction

パーラッティーン学会、スレマ 著

あらゆるものを疑うよう教えてくれた先生たちに敬意を込めて。常に逆立てた毛と伸ばした爪をもって伝承にあたらんことを。

学者たちがエルスウェアについて真実とみなしていることの多くは、シロディールやその他非カジートのロアマスターや学者の偏見と知覚を通したものである。元来カジート部族の名であるネ・クイナルとパーラッティーンはそれぞれ、一般的にアネクイナおよびペレタインとして知られているが、これはシロディールを拠点とした研究の優勢と、非カジート研究者による現地人の伝承の軽視、および現地で得られる情報の喪失によるものである。当初は交易やその他の社交のためにしか定住地を持たなかった遊牧民族に対し、部族名と地域を、まるで地域に常時存在していたかのように結びつけるのは問題がある。それは特定の地域の所有を含意することになるが、各部族は現在エルスウェアと呼ばれる地方を、必要に応じて移動していた。ネ・クイナルとパーラッティーンの名はタアグラ語であると言う者もいるだろう。それは許容できる考察ではあるが、この者の感覚ではこうした名称を部族に対して使い、シロディールの名称であるアネクイナとペレタインは地域に用いるのがより正確であると思われる。

当初はカジートの月の皇帝が単独で地域を支配していて、その中には第一紀461年に即位した名高いダルロック・ブレイもいる。この時代、エルスウェア地方には16のカジート部族が遊牧しており、それぞれが何らかの機能を果たしていた。例えばネ・クイナルは戦士で構成されており、部族の成員に武術や戦術の訓練を施していた。当時も各部族は特定の地域や領域に属していたと言う者もいるが、それは単純化が過ぎる。カジートは多かれ少なかれ必要な場所、あるいは彼らが望む場所に移動した。典拠としては子守歌「ハサ・ザジャ」あるいは「名前の踊り」を参照のこと。この中には部族が名を獲得した経緯についての、知られている中で最初の物語がある。

各部族がそれぞれの専門領域を洗練させ、外部の圧力が彼らを決まった役割と、地理的に限定された地域に制限したことで、カジートにも部族の領域という概念がある程度は根付くようになった。こうして民族と地域の両方をネ・クイナルと呼ぶことがより正確になった。しかし「より正確」は完全な正確さを意味しない。部族を持たないカジートによって第一紀2243年に書かれた詩「ザン・ザブ」は、部族名から地域名への移行の様子を示しているが、詩の中で言語が変わっていく間も、移行の必要に疑問を呈している。

そして第一紀2260年にスラシアの疫病がやって来る。死者の数があまりに多く、カジートが飢餓と困窮で完全に死滅することを防ぐため、部族の機能は変化した。16の部族は2つになり、理念においても地理的領域においても切り離された。ネ・クイナルは部族の風習に従って遊牧を続け、主に乾燥した北部地域で活動した。パーラッティーンの者たちはより緑の多い南方地域に留まり、他の地方、とりわけブレトンとシロディールの風習を取り入れ、彼らを模倣した政治的・社会的構造を築いた。

上記の全てはアネクイナとペレタインのカジートの差異の由来を理解させてくれる。アネクイナの者たちは北のより過酷な気候で部族の伝統に従い続けたため、南方の怠惰と腐敗、弱さしか見ない。他の民の生き方に従い伝統を捨てたことで、南のカジートは心も体も軟弱になったと北の目には映ったのである。ペレタインのカジートから言えば、彼らが北に見出すのは干上がった大地と、軍国主義的な蛮族だけである。こうした南の者たちにとって、力による支配は忌むべきものであり、アネクイナにはまだ建造物が残ってはいるとはいえ、未だに多くの者が家もなく遊牧民生活を送っている事実は、ペレタインの人々に北のカジート文明の程度の低さを印象づけるだけだった。

時と共に、南北カジートの分断は深まっていった。この断絶の修復を始めるには、婚姻を必要とした。第二紀309年、アネクイナを支配するキールゴとペレタインを支配するエシタが結婚し、現在のエルスウェア地域ができあがった。両方の民がこの同盟によって裏切られたと感じ、自分たちの価値観を共有しているとは思えない連中と命運を共にすることになったと毒づいたが、当初は不和もある程度の収束を見せていた。そこに、いくつかの衝撃がこの地域を襲った。第二紀324年にはセンシャルにおける最高顧問ヴェルシデュ・シャイエの暗殺があり、第二紀326年にはネ・クイナルの崩壊と、その結果として王家の大半の人々が反乱したカジートに虐殺される事態が起きた。どちらの事件もエルスウェアの政治構造を弱体化させ、さらなる不安定の種をまいた。より詳しくは「ザ・ジャヴァン・カーチン」あるいは「双子国の踊り」と題された当時の口伝史料の文字起こしを参照してほしい。

おそらく、カジートの内在的な性質が政府の直接的な崩壊を防いだ。アネクイナとペレタインのどちらに属する者たちも、自立した思考と適応を好む傾向にあったので、政府が彼らを長期間支配するのは難しかったのである。

しかし病は我々皆に降りかかる。第二紀565年にナハテン風邪が襲うと、エルスウェア統治政府という不安定な構造はさらに損害を受け、リンメンの市政体の接収と、それに続く出来事の引き金を引いた。

アネクイナの動物の見分け方とその味Anequina Animal Identification and Tasting

フロドキル・ミンスミート 著

お前は肉が好きか?フロドキルのように暖かい気候を求めてエルスウェアに来たのか?いい選択だ。ここには雪がない。この者はずっと昔、ウィンターホールドで罠師をしていたが、今ではもう何年もアネクイナに住み続けて言葉を学び、サバンナの猫たちに手を使わず獲物を捕らえる術を教えている。フロドキルは絵が描けないので、捕まえるべきものをただ教えよう。幸運を祈る。

ジェルボア

エルスウェアには沢山のネズミがいる。フロドキルが思うに、だから猫も沢山いるのだ。ネズミは通常、あまりよい食料ではない。スキーヴァーは別かもしれないが。アネクイナにはジェルボアというウサギのようなネズミがいて、これがいいミートボールになる。本当のことを言うと、フロドキルはあれがウサギなのかネズミなのか分からない。長い耳と足を持つが、尻尾も長い。見れば分かると思う。沢山見るだろう。あれはすぐに繁殖するのだ。1日に2、3匹捕まえて食料にしても、気にも留めなそうだ。ちょっと甘い味がする。ムーンシュガーを食べるせいだろう。

フェネック狐

フロドキルには猫のように見える、耳の長い狐もいる。だが猫ではないので、食べても騒ぎにはならない。馬鹿みたいにでかい耳だと思ったが、ちゃんと機能している。この狐は狩るのがとても難しいが、フロドキルにはうまく捕まえる方法がある。狐に食べさせるサソリを何匹か集めろ。あいつらはサソリが好きだ。針は切り落としておけ。ニンニクと玉ねぎを刻む。そのペーストをサソリにたっぷりと厚くもみ込む。ペーストは狐にとって毒だ。殺すと同時に味付けにもなる!狐はフロドキルに狼を思わせるが、それよりも柔らかく、野生の獣臭さが少ない。

フェルルンナー

大きな鳥だ。馬ほど大きくはない。山羊と鹿の間ぐらいだ。足と首が長いが、翼は小さい。この鳥は飛ばないし泳がない。走る。速い。だがとても馬鹿だ。フロドキルはこいつらを大声でまとめて追いやり、仕掛け紐に引っ掛ける。全速力で走ると、奴らは転んで色々なところを折る。骨が脆いんだ。フェルランナーは上質のジャーキーになるが、乾燥させすぎずに調理するのが難しい。ベーコンの脂をとっておくこと。

恐ろしい鳥

さらに大きな鳥だ。ハゲトカゲに似ている。飛ばないが、走り、ジャンプし、爪を使う。とても力が強い。フロドキルはこいつがライオンを踏み潰すのを見たことがある。頭もいい。罠にかけるのは難しく、狩るのは危険だ。死んだ奴を見つけたので、肉を味見した。硬くて筋っぽく、脂っこくて、使い古したブーツのような味がした。避けたほうがいい。苦労に見合わない。

トゲヤモリ

他のヤモリと似ているが、トゲがある。いい名前だろう?日中は素早く動いて虫を狩るが、夜は動きが鈍って暖かい場所を探す。ダークストーンを手に入れて、待ち伏せ場所を探せ。苦労せずに捕まえられるだろう。だがトゲには気をつけろ。味も他のヤモリと似ている。ヤモリの肉が好きなら、トゲヤモリの肉も好きだろう。

ダガーバック

多くの場所で見つかる剛毛のイノシシだ。頭の周りが牙と羽根だらけだ。穴を掘り、その上に毛布を置く。石を重しにする。毛布の上に砂とキノコを散らす。穴が十分深ければ、何週間も食べられる。味は癖が強い。シチューに最適だ。

砂漠アリット

口に足が付いている。フロドキルはこいつをタムリエル中で見た。砂漠の奴が一番凶暴だと思う。大きな口を持ち、あまり食べるところがない。網の罠が一番効果的だ。いったん絡まれば、もう逃げられない。皮膚は硬いが、肉はうまい。噛み応えはあるが。

セプ・アダー

フロドキルはエルスウェアに来るまで見たことがなかった。ハンマーフェルにもいると言われた。大型の砂漠の蛇で、鱗が茶色で背中に翼が付いている。あまり飛ばない。翼は主に捕食者への威嚇と、頭を覆うために使う。だが長距離を飛び跳ねられる。普通なら蛇に網はかけないが、翼がよく引っかかる。皮を剥いで簡単に調理できる。鱗のついた不気味なニワトリみたいなものだ。

ライオン

エルスウェアの猫が全部カジートなわけじゃないが、意外と多くの猫がカジートだ。フロドキルは普段、猫が服を着ていないと見分けられない。エルスウェアにいる間は猫を食べないことを勧める。カジートが悪趣味と考えるからな。しかし、正直に言うとこの肉は美味い。

アネシのメモAneshi’s Note

西に向かってわずかに道を辿り、分かれ道になったら左に曲がる。

傾いた柱のところで、北に向かってわずかに道を外れる。

散乱した遺跡の中に、古い階段を探す。

その先は、倒れた尖塔が道を示す。

ザイマの一番好きな花、スパイニー・ピンクが2輪、壁のそばに生えている。

2つ目の窓の反対側、地面に土が盛ってあるところを掘る。

マスターキーはそこにある。

アブナー・サルンからの手紙Letter from Abnur Tharn

私はアブナー・サルン、魔闘士にして皇帝の元顧問だ。私はカジート防衛軍を支援し、ドラゴンの怒りを阻止するための仲間を求めている。

この恐るべきドラゴンは、カジートがアネクイナと呼ぶ北エルスウェア地域を飛び回っている。私はたてがみの代弁者ガレシュ・リ公のため、彼らの故郷の危機に力を貸すと決めた。しかしこの脅威に対して、自分一人では対処できない。

剣や呪文に自信があり、究極の敵に対して自分の力を試そうという意欲を持つならば、リバーホールドの街にあるカーザブ・ホールで私を探してほしい。

なお、これは本当の話だ。ドラゴンは戻ってきたのだ。

アブナー・サルン

ヴァル・ヴィジャー・ヴァ・ルフーク、バーンダリVal Vijah Va Rhook, Baandari

(カジートの祭りの歌)

サバンナの草原を踊り抜け
足取りも軽く我らは進む
さあ、バーンダリの少年よ
踵を打ち鳴らして歩め
さあ、バーンダリの少女よ
尻尾を左右に振り回せ

コーラス
ヴァル・ヴィジャー・ヴァ・ルフーク、バーンダリ
抱えた袋は我が世界
ヴァル・ヴィジャー・ヴァ・ルフーク、バーンダリ
背中の荷物は我が王国

またしても故郷は動く
荷車の車輪に乗って、我らは行く
さあ、バーンダリの少年よ
激しい風が吹くところ
さあ、バーンダリの少女よ
我らがキャラバン列をなす

コーラス
ヴァル・ヴィジャー・ヴァ・ルフーク、バーンダリ
抱えた袋は我が世界
ヴァル・ヴィジャー・ヴァ・ルフーク、バーンダリ
背中の荷物は我が王国

旅人よ、ステップを教えようか
お前を導く星になろう
さあ、バーンダリの少年よ
離れなければ、遠くまで行ける
さあ、バーンダリの少女よ
我らが放浪のバザール

ウィーピング・スカーを抜けてThrough the Weeping Scar

ユーラクシアの部隊はリンメンの支配を日に日に強めている。遠からず、カジートは忌々しい女王の許可なく呼吸もできなくなるだろう。我々はこの荷物を街の外に密輸したことで、注意を引きすぎてしまった。誰かに止められる前に、ステッチズに到着したい。

* * *
最短ルートがウィーピング・スカーを抜ける道だということで合意した。この者は曲がりくねった穴だらけの場所を荷馬車で通るのは好まないが、従うつもりだ。

* * *
道は狭く険しい。荷馬車が足掛かりを失って岩の傾斜を滑り落ちた時の事故を防ぐため、間隔を空けておかなければ。ウィーピング・スカーは距離こそ短いが、早く通れない気がしてきた。少なくとも、忌々しい女王の監視の目からは遠く離れているが。

* * *
ここは静かすぎる。ギザギザの岩や尖った植物の隙間から、乾いた空気が立てる唸るような音しか聞こえない。ネズミのカサカサいう音も、鳥の鳴き声もしない。隊商では食料に困らないのが救いだが。

* * *
嫌な予感がする。何かに見られているような。忌々しい女王の密偵がやはり追ってきていたのかもしれない。追跡に備えて数人を後ろに残し、痕跡を隠させよう。

ヴィトーリアへの手紙Letter for Vittoria

ヴィトーリア

サウリニアの暗殺者にやられた。隠れ場所を探せ。だがあまり時間がない。

井戸を調べろ。桶の中に鍵を隠した。

馬屋の地下室の扉を開けられる。そこからカロと残った不正規兵のところへ行ける。

いつも愛していた。

エルスウェアの戦士たちよ!Elsweyr Needs You!

カジの戦士たちよ!

北エルスウェアとその先の地が、かつてない脅威を目にしている。ドラゴン、犯罪者、そして洞窟に潜む獣たちが、愛するアネクイナの至る所から出現しているのだ。そのため、市の評議会や各地の治安部隊がリンメンに集結し、祖国を守るための行動に対して報酬を提供している!

時間と能力のある者は、急ぎリンメンへと向かうこと。ジョイシはいかなる質問にも答える用意がある!

お前のものは俺のもの(ちょっとした泥棒)What’s Yours is Mine (A Little Larceny)

俺のものは俺のもの、お前のものは俺のもの
お前が背中を向けた瞬間
お前の持ち物はどこかに行って
もう二度と見ることはない

歩き手よ、執着してはいけない
物質的な物や道具に
知恵は天上にあると言うだろう
双子月の中に、霊妙なる天空に
(素早く考えろ!)

俺のものは俺のもの、お前のものは俺のもの
お前が背中を向けた瞬間
お前の持ち物はどこかに行って
もう二度と見ることはない

残念だが、ゴールドを信じるのは間違いだ
真の富は友情と愛
お前に目配せしてるあの踊り子を見ろ
あの子たちの考えてることは分かるだろう
(見ろ!)

俺のものは俺のもの、お前のものは俺のもの
お前が背中を向けた瞬間
お前の持ち物はどこかに行って
もう二度と見ることはない

カジート武術の起源Origins of the Khajiiti Martial Tradition

異国の慣習のサピアルチ、テンドブエイン 著

エルスウェアでも屈指の長い歴史を誇る伝統でありながら、カジート武術、あるいは「爪の踊り」の起源は曖昧と言わざるを得ない。第一紀463年にマールンズの信者によってコリンスの大蔵書庫が焼かれたことで、当該地域の神話紀の記録の大部分が失われたため、私のような文化史家の仕事はとても難しいものになっている。幸いにも名高い征服者、アネクイナの黄金の獣と呼ばれるダルロック・ブレイは多大な努力を払って残された歴史資料を保護し、エルスウェア中の地下室やより小規模の蔵書庫に配置した。言っておくが、こうした蔵書庫の利用権を得るのはハイエルフにとって並大抵の苦労ではない。しかし何年も根気強い粘った結果、それなりの成果があった。

私が確認できたところ、神話紀エルスウェアの生活は辛苦に満ちていた。当時、有名なカジート十六王国は競合する小集団程度の規模であり、残酷な狩人の貴族政治に支配されていた。厳しい干ばつと飢饉の時代が容赦のない規則性をもってアネクイナを襲い、狩人貴族たちの続く反目は広範な徴兵となった。それは農村共同体から若い労働力を奪い、地域の飢饉をさらに拡大させた。狩人公たちの力を制限していた唯一の存在は、双子月の踊りの聖堂だった。カジートのアデプトとその他トルヴァルの聖職者は多大な文化的影響力を持っており、時にはその力を使って特に暴虐な狩人公を苦しめ、権力の座から引きずり降ろすことさえあった。貴族政治はこうした介入に苛立ったが、アデプトに直接反抗するほど愚かではなかった。

神話紀の隆盛時代のある時点で、縞模様の死神タカンジンという名の特別に無慈悲な狩人公が、犯罪者の一団に金を払ってラウル・ハ聖堂に火を放たせた。火災によって居場所を追われた聖職者たちは、即座にアデプト戦士たちの小軍団を出撃させ、犯人たちに報復を行った。紛争の詳細は歴史の中に埋もれているが、結果は明白だった。タカンジンの勢力が司祭たちの反乱を鎮圧し、残されたアデプトたちをデューン王国から一挙に追放したのである。

アデプトたちの邪魔に終止符を打つため、現在のエルスウェア北方にいた狩人公たちはこの機会を捉え、武具徴発の制度を打ち立てた。彼らはラウル・ハでの暴動を聖職者に反逆の意図があるの証拠として挙げ、従おうとしない教団は全て暴力的に鎮圧された。

長期間にわたる深い失望と熟慮を重ねた後、アデプトたちは内に向かった。すなわち、時代の政治情勢とのつながりを断ち切り、全面的に自己の洗練へ集中したのである。宗教的瞑想はこの移行の本質的部分であった。

多くの文化において、瞑想とは静かで動きのない活動である。しかしカジートにとっては違う。カジートの神経質な力とむき出しの身体への集中は、情熱的で踊りに似た瞑想の形態をとった。アデプトたちの踊りが、武術に類したものへ変化するまでに長くはかからなかっただろう。優雅で瞑想的な踊りは、機敏な爪の一撃と大胆な跳躍へ変わった。これはカジートの捕食者としての本能を考えれば、全く意外なことではない。爪と牙を持つ民が、ずっと平和的に留まっているとは期待できないだろう!

何世紀もの孤立の後、アデプトは武術の技と知恵を身に着けて修道院の生活から出てきた。この頃、狩人の貴族政治は終わりに近づいていた。富と権力の格差は臨界点に達しており、長く待ち望まれていた民衆の蜂起を準備していた。アデプトたちは機を逸することなく、厳しい修行で身に着けた技を、虐げられた農民たちに教えた。幾世代かを経て、アデプトの武術は完全に行き渡った。人々が必要としていたのは、きっかけのみだった。

神話紀の後期、反目し合うメイアヴェールとヘルカーンの狩人公が数千の農民を徴兵して従軍させ、エルスウェア史上で最大規模の飢饉を引き起こした。3年間の無益な紛争の後、どちらの公の軍隊もその主人に牙をむき、鋭い爪の一撃や風を巻き起こす蹴り、骨をも砕く拳を雨あられと浴びせ、貴族政治を転覆させた。

間もなく、農民の蜂起は近隣のリバーホールドやオークレスト、ヴァーカース、ブルクラ、ネ・クイナルにも広がった。100年もせずに、数千年もエルスウェアに君臨し続けた壮麗な狩人の宮殿は、権力の座から転がり落ちた。

農村の楽園という輝かしい夢がエルスウェアに実現されなかったことはご存知の通りだ。数百年すると、新たな種類の領地貴族が十六王国の玉座に上り詰めた。しかし民衆は、自分たちの力を決して忘れていない。文字の資料は欠いていても、カジートのクランマザーによる豊富な口伝の伝統は、猫の民が自らの苦難と勝利を決して忘れないように取り計らっている。

私はあくまで部外者だが、我々はエルスウェアで新たな臨界点に近づいているように思えてならない。ユーラクシア・サルンの配下のインペリアルは、数千年前の狩人公とそれほど変わるまい。そして彼女が自分の過ちから学ばないのなら、あの女が辿る運命も、彼らと同じものになるのではないだろうか。

カダビのルールKhadabi’s Rules

私はルールが嫌いだ。だが今、私は自分の望みに反して鉱山で掘っているので、私が見つけた紙片にルールを書き記しておく。書くと覚えやすくなると言うからな。このルールがこれから先、鉱山を避ける役に立つかもしれない。

1. 相手の同意を得ずにつがいを作ろうとしないこと。
2. 相手がパートナーを求めていると決めつけないこと。
3. 外見は当てにならないことを覚えておくこと。
4. もっと早く走れるようになること。
5. 個人が誰かの必要を全て満たすことはできないこと。
6. 理想主義に走るべきではない。
7. もっともっと早く走れるようになること。
8. つがいを作らない方がいいのではないだろうか?永遠に。他人の人生を変えようとするなんて何様のつもりなんだ、カダビ?

キャットフードCat Food

親愛なる嵐の胸のヴィグリ従士へ

ノルド文化交流の栄誉あるリーダーである私、向こう見ずなリガートが、要請に応えてウィンドヘルムにいるあなたへの報告を書いています。私はカジートの民の故郷である、暑く砂だらけの北エルスウェアに到着しました。とても暑く、砂だらけです。ここに住むカジートの数は、きっと信じられないでしょう!リガートの両手足を使っても数えきれません!

リガートは親切な猫の民との友好的な予備交渉に浸かっています。ご安心ください。もうすぐ署名入りの和平協定が手に入り、全面的な文化交流が開始するでしょう。リガートがあなたの期待を裏切ったことがあるでしょうか。まあ、あの時は別ですが。それからあの時も、大層お気に召しませんでしたな。召しといえば、リガートがここアネクイナ(猫の民は北エルスウェアをこう呼びます)で食べた、素晴らしい食べ物について話させてください!

まず、猫の食べ物です。大部分は甘いものですが、かなりの美味です。しかもハチミツ酒によく合います。リガートには3つの料理が印象に残りました。レシピももらってきたので、ウィンドヘルムに戻ったらあなたのために作りましょう。スカルド王を呼べるような饗宴を開けるでしょう!王も参加なさるでしょうか?

私はリンメンの裏路地で屋台を発見しました。そこではビクビクした犬のような猫が大きな鍋をかき混ぜていて、実によい香りが漂っていました。なお、カジートの種類についてはリガートも混乱していますので、細かいことは聞かないでください。その匂いはイェッギ従士の酒場を思い起こさせました。鼻を突く魚と、こぼれたハチミツ酒の甘い香りが混ざった匂いです。実はこの犬のような猫は、甘いタレをかけた魚の一部分を料理していたようです。魚が部位に分かれているとは知りませんでしたが、ムーンシュガーを混ぜて油でカリカリになるまで揚げると、素敵な午後のおやつになるようです。リガートは4人分食べました!

リバーホールドの街では、宿屋〈消えた後悔〉に入りました。実に多くの消したい後悔があるからです。リガートが即座に気づいたのは、猫の民が皆飲むだけでなく、カリカリの小さな揚げ物を手に一杯持って食べていることでした!これを書いていても口から唾液が溢れそうです!臭くて鱗だらけのトカゲをカリカリで美味な食事にできるなど、誰が考えたのでしょう?ハチミツ酒1週間分の費用をかけましたが、宿屋の料理人を説得してレシピの写しをもらいました。猫の民はこの食べ物を食べることを止められないらしく、リガートも同感です。ただ、レシピを読まなければよかった。どうやら彼らは料理を作るのにトカゲの外側ではなく、内側を使っているらしいのです!

味が素晴らしかった食事は、ステッチズの荷車で食べた肉のパイです。甘く香り豊かで肉汁たっぷりのパイが口からお腹に滑り落ちた時、私の味覚は一回転しました。あれは食事なのか、デザートなのか?リガートには両方のように思えました!混乱はしますが、とてもおいしいのです。料理長は、中身にどんな肉が使われているのかリガートに教えようとはしませんでした。「色々なものを少しずつ」と言うばかりです。私のキッチンに戻ったら、試してみなければなりません。心配は無用です。あなたの分も作ります!

さて、旅がこの時点に差し掛かると、リガートにはカジートの甘い料理を食べ飽きていました。辛いウサギのミートボールか羊の後ろ脚の煮込みが欲しくてたまらなかったのですが、ノルドの珍味は北エルスウェアに存在しないようです。しかし暗き月のスパイス入りウィスキーは見つけました。ハチミツ酒は神々の霊酒ですが、猫の民が蒸留するこのスパイス入りウィスキーは、焼けるようなのど越しがたまりません。リガートが思うに、いかに甘いものが好きなカジートでも、普段食べているシロップ漬けの食事から一息つくための飲み物が必要なのではないでしょうか。私はこれを3樽手に入れて、スカルド王への贈り物として次のスカイリム行きの船に乗せるつもりです。ジョルンが前回の私の文化報告をお聞きになった時、彼がいかに強い酒を好んでいたかは知っています。

ノルド文化交流特使、向こう見ずなリガート

クンザ・リ:起源Khunzar-ri: Origin

十六王国伝説の保管者、アネシ 著

数多のカジートの英雄の中でも、強大なクンザ・リほどに冒険と驚異を感じる者は他にいない。神話や伝説の多くがそうであるように、クンザ・リに関する物語はしばしば互いに矛盾し、重要な真実が寓話や比喩に隠されている。この愛すべき英雄の起源を記す物語を考察する場合にもそれは当てはまる。以下に記すのは、クンザ・リの最初の冒険を伝えている最も有名な物語のうちの3つである。それぞれがいかに異なっているかに注意していただきたい。これらは全て真実なのだろうか?そう信じる語り手もいるが、ある偉大なロアマスターの主張によれば、クンザ・リの起源に関する真実は、3つ全てが交差する点にあるという。

* * *
クンザ・リと神聖なる月の光線

最初の爪シャジーアがバルキト王国の勇猛にして強大なクランマザーになる前、彼女は勇敢で好奇心の強い子供で、多くの騒動に巻き込まれた。例えば輝きの隆起の頂上に登って、思いがけず腹を空かせたセンチライオンの群れに囲まれたことがある。先のとがった棒と小石の山で近寄らせないようにできたが、夜になり、疲れて彼女自身も空腹でどうしようもなくなった。そこでジョーンとジョーデに助けを求めると、月明かりが隆起を照らした。その月明かりの中にはシャジーアと同じ年頃のカジートの青年が立っていた。「どこから来たの?」とシャジーアが聞いた。「私はジョーンとジョーデが月明かりと雲と、あなたの勇敢な心から作り上げた者、クンザだ。あなたを救いに来た!」とクンザは言い、そのまま助けたのだった!

* * *
クンザ・リと祠の箱

ある日、身分の低いアデプトが、祈りと供物を捧げるためケナーシの祠にやって来た。そのアデプトは、祠の上に目立つように置かれた小さな箱を見つけた。それを捨てようとすると、中から弱々しい鳴き声が聞こえ、箱が揺れ動いた。中に何か生物が入っていたのだ!アデプトが急いでフタを開けると、小さなカジートの赤ん坊が足をいっぱいに伸ばしてきた。その子を箱から持ち上げると、赤ん坊は子供になって上着は脱ぎ捨てられた。アデプトが子供を下ろすと、その子は青年の大きさになった。「こんにちは、身分の低いアデプト」その若いカジートは自信たっぷりに威張って言った。「私はケナーシの息によって、この祠と周囲に栄光をもたらすために送られてきた」。アデプトはひざまずいて息をのみ、「あなたは… 何者ですか?」と聞いた。カジートはにやりと笑って「今はただのクンザだが、いずれ英雄のクンザ・リになる者だ!」と言った。だからエルスウェアでは、中身を確認せずに箱を捨ててはいけない。

* * *

クンザ・リと歓喜の涙

アルコシュは暗い気分だった。時を守る仕事は大変で、機嫌が悪かった。マーラはそんな彼の気分を晴らそうとしたが、アルコシュはマーラの優しい言葉などに興味はなかった。次にケナーシが気難しいアルコシュに喜びを吹き込もうとしたが、どなられるだけだった。「私の出番か」とシェッゴロスがおかしな笑いを発して言った。「ハーシーンの終わりなき空腹を満たすには、ムーンシュガーがどれほど必要だか知ってるか?」知りたくなったアルコシュは「知らない。どうか教えてくれ」と返事をした。シェッゴロスは指を鳴らして顔をしかめ、「ちぇっ、あんたなら知ってるかと思ったのに!」と言った。アルコシュの顔におかしな表情が浮かぶ中、みんなは沈黙した。そして突然、アルコシュは笑い始めた。その笑い声は空を揺らし、月を踊らせた。彼は昼も夜も30日間笑い続け、ついには歓喜の涙が一粒頬を伝い、エルスウェアに落ちた。その涙は水しぶきとともに地上へ落ち、その奥底から、今にも冒険を始めようかという立派な成人の英雄、クンザ・リが現れた。

クンザ・リ:第一の物語Khunzar-ri: Tales, One

クンザ・リと12匹のオーガ

十六王国伝説の保管者、アネシによる複写

ある日、クンザ・リはデューンの近くにある僧房に立ち寄り、長く辛い旅の後の休息と食事を求めた。運悪く、その僧房は12匹の涎を垂らしたオーガに占領されていた。

「これはまずい」とクンザ・リは貪欲なオーガたちが建物を蹂躙する姿を近くの丘から眺めて言った。彼はオーガたちがムーンシュガー・ダブルラムの店に押し入るのを見た時、とりわけ心配した。彼はアデプトの強い酒を特に楽しみにしていたからである。そこでクンザ・リはいい考えを思いついた。

「おお、勇敢にして強大なオーガたちよ」とクンザ・リは呼びかけた。「お前たちが見つけたその樽。ラムが傷んでいるのが分からないか?私はここからでも、その液体が悪くなっている匂いが分かるぞ!」

「傷んでいるだって?」と一番大きなオーガは疑わしそうに言った。「そんなことが分かるものか。まだ樽を割ってもいないのに!」

「私がカジートだと、見て分からないか?」とクンザ・リは誠実そうに尋ねた。「そしてカジートは、嗅覚が特別に優れていることで有名ではないかな?」

「それは本当だ」と別のオーガが言った。「猫と匂いのことはみんな知ってる」

「でも俺は喉がからからだ!」と一番大きなオーガは文句を言った。「傷んだラムなんて飲みたくないぞ!」

「私に考えがある」とクンザ・リは言った。「ここからすぐ近くにネードの砦がある。彼らはラムやその他の酒が詰まった倉庫を丸ごと1つ持っていて、私が通った時は、傷んでいる匂いは全くしなかった。反対に、全て美味な香りがしたものだ!」

それを聞いて喜んだ一番大きなオーガは、アデプトのラムのことなど忘れ、ネードの砦に向かって走った。一瞬の躊躇もなく、残り11匹のオーガもそれに続いた。

「さあ」とクンザ・リは言った。「樽を空けて飲もうじゃないか!」

「しかし、オーガは?」

「オーガだって?もうあれはネードの問題だよ」こうして、クンザ・リは樽を丸々1つ飲み干しにかかった。ジョッキに1杯、また1杯と注ぎながら。

クンザ・リ:第二の物語Khunzar-ri: Tales, Two

アネクイナがクンザ・リを救った話

十六王国伝説の保管者、アネシによる複写

ネ・クイナル・ラス・ル。シロディールの共通語で辛辣なアネクイナは、長くクンザ・リのかけがえのない仲間としてこの地を放浪した。二人を恋人と呼ぶ者もいる。実際、彼らは時としてそのような関係にあった。英雄と呼ぶ者もいる。彼らは確かに英雄的な偉業を成し遂げた。そうした偉業の一つはマオマーに関するものである。クンザ・リとアネクイナが共に旅をしている間、彼らはケナーシズルーストの島を訪ねた。この島ではシーエルフと猫の民が共存し、友好的な時期もあればそうでない時期もあった。この事件は後者の時期に起きたものである。

この物語は複数の説に分かれている。あるものはクンザ・リの活躍に注目しているが、私が一番気に入っているものはもう一人の英雄の姿を描き出している。その説を以下に記そう。

* * *
シーエルフの船長でリンヴァロールという暴漢が、ある月の司祭の娘を誘拐し、解放を求めるあらゆる交渉の努力を拒絶した。アネクイナは考えがあると言ったが、クンザ・リは彼女が止める前に月の司祭の娘を救いに突っ込んでいった。クンザ・リは巧妙で力強かったが、無鉄砲なところもあった。この無謀な行いが祟って、リンヴァロールと乗組員であるマオマーの殺し屋は、苦もなく英雄気取りの男を捕まえてしまった。

こうなったらアネクイナが月の司祭の娘とクンザ・リを救い出すしかなかった。「偉大なるクンザ・リさえ失敗したのに、どうやってあなたにそんなことができる?」と月の司祭は尋ねた。「ふん」とアネクイナは喉を鳴らした。「この者の得意な手を使うだけよ。シーエルフに勝ち目はないわ」

そしてアネクイナは勇敢にもリンヴァロールのキャンプに歩いていき、剣を持った数多くの海賊たちを無視して、シーエルフの船長が士官たちと賭け事をしているところに直接乗り込んだ。彼らは「裏切り者の円盤」、あるいは「剣と盾」と呼ばれるゲームに熱中していたため、アネクイナが彼らのすぐ頭上から覗き込んで「ふーん、面白そうなゲームじゃない。誰でも勝負できるの?それとも、耳の濡れたエルフのゴールドしか受け付けない?」と言うまで、彼女の存在に気づきもしなかった。

アネクイナの落ち着きと自信に驚き、また魅力を感じたリンヴァロールは、彼女に椅子を与えて残りの乗組員を追い払った。「勝負はしよう」とリンヴァロールは言った。「だがゴールドのためじゃない。俺が勝ったらお前は30の日と30の夜の間、俺の奴隷にして愛人となって、共に船へ乗るのだ」。アネクイナはこの要求にショックを受けたふりをして、「で、もしこの者が勝ったら?」と抜け目なく尋ねた。リンヴァロールは笑った。「これまで俺に勝った猫はいない!ましてやメス猫なんて!だから何でも望みのものを言えばいいさ。さあ、勝負だ!」

「いいでしょう」とアネクイナは言った。「この者が勝ったら私たち3人。つまり月の司祭の娘とクンザ・リ、そして私は自由になってここを去るわ」。勝利を確信していたリンヴァロール船長は、この魅力的な猫女を早くベッドに連れ込みたい一心で同意した。

その後に続いた勝負は激しいものだった。リンヴァロールは賭けのたびにはったりをかけて怒号をあげ、アネクイナはルールを知らないふりをして、円盤のタンブラーが振られるたびに怖がって見せた。しかし二人とも熟練の遊び手だった。何巡もして、尋常でない量のワインを消費した後、決定的な瞬間が訪れた。リンヴァロールは円盤を2つ残していたが、アネクイナには1つしかなかった。

両者は残った円盤をそれぞれのタンブラーに入れて回した。そして熟慮を重ねた末、二人はタンブラーを叩きつけ、容器の下の円盤で、「剣」の側か「盾」の側が表になるようにした。リンヴァロールはタンブラーをわずかに持ち上げ、その下を素早く一瞥した。剣と盾が1つずつあるのを確認して、再び円盤を覆った。アネクイナはただ笑顔を見せて、見ようともしなかった。リンヴァロールは決着が近いことを悟っていた。彼は剣2つか盾2つかを当てればいいだけだった。「2つの…」と彼は口を開き、アネクイナの落ち着いた表情から何でもいいから読み取ろうとした。「…盾」と言ったが、宣言よりは質問に近い口調だった。

「あら、大した詐欺師ね、船長さん」とアネクイナは言って自分のタンブラーを持ち上げ、円盤を示した。剣だ。リンヴァロールは眉毛の汗を払い、自分の円盤を1枚脇にのけた。「これが最後よ、船長さん」とアネクイナは言い、残された1枚をそれぞれのタンブラーに入れて振り始めた。アネクイナはタンブラーを叩きつけ、シーエルフに投げキッスを送った。リンヴァロールは唸り声をあげ、同様に叩きつけた。

リンヴァロールは確認のため、少しだけタンブラーを持ち上げた。彼の円盤は盾が表になっていた。アネクイナはまたしても自分の円盤を確かめようとしなかったので、見もせずに言った。「盾が2枚。私たち二人が誰も剣を持っていないのは明らかだから」。二人がタンブラーを持ち上げると… どちらの側にも盾があった。

「イカサマだ!」とリンヴァロールは叫んで立ち上がり、ゲームの駒を払いのけ、残っていたワインをぶちまけた。「まあまあ、船長」とアネクイナはいなした。「シーエルフは少なくとも、約束したことは守るとこの者は聞いているわ。私たちを行かせてくれれば、アネクイナは1年と1日後に戻ってきて、もう一度勝負してあげる」。船長はしぶしぶと同意した。「次の勝負はこういかんぞ」。「楽しみにしてるわ」とアネクイナは喉を鳴らした。

月の司祭の娘を間に挟んで立ち去る途中、クンザ・リが聞いた。「お前は、イカサマをしたんだな?」。アネクイナは無邪気そうな表情を見せた。「それで、本当にあいつとまた勝負するつもりなのか?」。アネクイナは笑った。「当然じゃない!他にどうやってあのお洒落な海賊船を手に入れるの?」

クンザ・リの歌The Song of Khunzar-ri

(神話の英雄の歌)

十六王国が十六部族でしかなかった時
1人の英雄がゆっくり歩いていた、背は高く、力強く、知恵にも恵まれ
その毛並みのよさ!そのかぐわしさ!五つ爪だろうか?いいや、十つ爪だ!
彼は退屈しのぎに巨人と取っ組み合い、センチの巣に突進する!

コーラス
あれは誰だ?クンザ・リだ!クンザ・リだ!
声を上げて、高らかに歌え。戦士よ、恋人よ、詩人よ、盗賊よ
彼こそは称えるべきカジート!
あれは誰だ?クンザ・リだ!クンザ・リだ!
誇り高く、力強く歌え!勇敢にして狡猾、気後れもしない
彼についていけば間違いない!

どんな地下牢の檻も、どんな錠前も閉じ込められない
神と呼ぶ物語もあるが、確かめられはしない
彼はジョーンとジョーデから光を引っ張り、育ちゆく畑へ注がせた
それが我々に、ムーンシュガーの恵みをもたらした

コーラス
あれは誰だ?クンザ・リだ!クンザ・リだ!
声を上げて、高らかに歌え。戦士よ、恋人よ、詩人よ、盗賊よ
彼こそは称えるべきカジート!
あれは誰だ?クンザ・リだ!クンザ・リだ!
誇り高く、力強く歌え!勇敢にして狡猾、気後れもしない
彼についていけば間違いない!

クンザ・リ語録、第一節Khunzar-ri Sayings, Verse One

クンザ・リはかく語る

戦争は双子月の如し

常にあるが

目には見えない

クンザ・リ語録、第二節Khunzar-ri Sayings, Verse Two

クンザ・リはかく語る

ムーンシュガーの新芽が芽生える頃

カジートは慎重に歩き

痕跡を残してはならない

これが沈黙の爪の道だ

クンザ・リ語録、第三節Khunzar-ri Sayings, Verse Three

クンザ・リはかく語る

カジートに金があっても

爪がないなら

それは富ではなく

輝く物体に過ぎない

クンザ・リ語録、第四節Khunzar-ri Sayings, Verse Four

クンザ・リはかく語る

黙って見られずに

敵の背後へ歩き

肋骨へと短剣を滑らせよう

夜へ消える前に

それがカジートの道だ

サウリニア隊長の指示Captain Saulinia’s Instructions

ユーラクシア女王の命令により

以前カロ長官に指揮されていた駐屯軍は私の支配下にある。ユーラクシア女王から直接私に与えられた命令に従うことを拒否したため、カロ長官は反逆の意思があるとされ、不服従のため投獄された。この瞬間から、シグナス不正規兵は全員私の指揮の元、ユーラクシア部隊の活動を支援すること。

このような事情のため、邸宅の母屋は一次的に封鎖され、牢獄および上級士官の司令部として用いる。カロ長官が罪状宣告のため移送され次第、この制限は解除されるものとする。この期間内に母屋を利用する必要がある場合は、タリア副隊長に伝えよ。現在、彼女は地下室への進入を許可できる唯一の士官である。そこから主要階層へ移動できる。

暗殺部隊に選ばれた兵士たちは近く、最後のドラゴンガードを探し、抹殺する任務へ参加する命令を受け取るだろう。

サウリニア隊長

ザザズララへの手紙Unsent Letter to Zazazrala

最愛のザザズララへ

お前がこれを読む頃、ヤナビはもういないだろう。何年もの間、この者はお前の関心を買おうとした。砂糖や甘いバラを贈り、お前が外国旅行でタムリエル中を飛び回っている間、飼い猫に餌をやって世話をした。応接間や便所を鏡のように光るまで磨いた。それでも私の求婚を拒絶する。お前は明らかに、何よりも力強さを重視するのだな。

そして、この者はプレデター・メサに向かった。ヤナビが以前この計画を話した時、お前は嘲笑して私が臆病者だと思った。今、お前は自分が間違っていたことを知るだろう!私がハーピーの羽と恐ろしき鳥の鉤爪を山のように持って帰ってきたら、お前も私のことを見直すかもしれない。

最も熱心な求婚者
ヤナビ

ジャカーンへの手紙Letter to Jakarn

いいだろう、スイートミート。こいつをやってくれたら貸し借りなしだ。とりあえずはな。

トゥヘイバは仲間と一緒にダークプール鉱山へ旅している。遥か西にある硫黄の洞窟だ。だが急いだほうがいい。この者は、あの女がどれだけ滞在する予定なのか知らないからな。

また会おう、可愛い坊や。

N

シャザハの日記Shazah’s Diary

黄昏の月22日

父はシャザハに見るなと言ったけど、見てしまった。

荷車一杯にカジートの死体が積まれていた。そのうち1人はこの者のために市場から飴を盗んできて、毛皮がきれいだねと言ってくれたパフズバルだった。シャザハは何と言えばいいか分からなくて、逃げてしまった。あと1つ飴が残っていたから、埋葬のため彼の手に握らせてあげたいけど、父は荷車に近づかせてくれない。

ありがとうと言えなくて残念だ。この病気がここに来ているのは悲しいけど、父と友人たちが頑張って対処している。シャザハも手伝うつもりだけど、まだ勉強中だ。

黄昏の月23日

父は恐れることはないと言うが、ニエンは誰の意見も聞かないで野菜を煮た。彼女は寝る前、シャザハに物語を聞かせてくれたし、優しかった。みんな、シャザハには分からないと思っている。シャザハはただの子猫だと。でも私には分かっている。変なことをするのは、悪いことが起きているからだ。

市場で燃えている火は、この者が炎の呪文で火傷した時のような匂いがする。それにあの火はもう何日も消えていない。

黄昏の月24日

父は今朝、金持ちの貴族の1人と話をした。みんなはシャザハが眠っていると思っていたみたいだけど、実は起きて耳を澄ましていた。金持ち貴族はこの地区の封鎖を望んでいるけど、父はまだ助けが必要な病人がいると言っている。長い間議論していた。

黄昏の月25日

父は私たちの野営地を門の近くに移した。金持ち貴族たちが帰らせてくれない。市場は全部焼かれて、人々は通りをうろついている。ものすごい数の病人。少し前、女の人がどこかの家の外で叫んで扉を叩いたけど、入れてもらえなかった。もうすぐ太陽が沈むのに、あの人が階段のそばに座っているのが見える。エデルインは彼女を助けに行ったけど、腹を立てた様子で戻ってきた。

ラネロルとソレリルの容態もよくない。父は明日、彼らを休ませることにした。

黄昏の月26日

父が一つ咳をしたけど、シャザハに水を取りに行かせてくれない。エデルインはその代わりに勉強のための新しい本を何冊かくれたけど、集中できない。空気はひどい臭いがするし、煙で息が詰まりそう。

軍隊が来るという話がある。父が薬を配るのを助けてくれるといいと思う。

ラネロルは今日の午後、父と話した後に出て行った。もう遅いのに、まだ戻ってこない。遠くの方の金持ち貴族の門の辺りで、叫び声が何度も上がった。シャザハは怖くなってきた。

黄昏の月27日

父とニエンは今朝、ソレリルを布に包んだ。彼女の皮膚は荒れて、発疹だらけだった。父の咳も悪化している。昼過ぎ、父はエデルインと話し合っていた。私の名前を口にしているのが聞こえた。

今では、通りに多くの死体が転がっている。グロソルとラリオンが前は死体を回収していたけど、やめてしまった。今、彼らは金持ち貴族たちに助けを求めに行った。

ニエンは今日、私たちのために食料を探そうともしなかった。あったのは沸騰させた肉汁だけで、この者はすごくお腹が減っているけど、残しておいたものをこっそり父にあげた。とても疲れているみたいだったから。

黄昏の月28日

ニエンがいなくなった。昨日の夜に去って行った。この者は寂しい。彼女は夜中に誰も聞いていないと思って、よく歌を歌った。でもこの者はいつも聞いていた。これでもうエデルインと父だけだ。シャザハは急に姉妹と母にすごく会いたくなった。ここはとても寂しい。みんな病気で、怒っている。今日の午後、野営地に誰かが来て、父から物を盗もうとした。エデルインはナイフで追い払わなければならなかった。

父はもうこの者に会ってくれなくなった。エデルインは、私たちが母を探すために出て行かなければならないと言う。こんな風に父を置いていくなんておかしい。具合が悪いのに!

エデルインがもう来る。残って手伝うように要求するつもり。出て行くのが運命だと父に言われても関係ない。

くだらない運命なんかより、父のほうがずっと大切だ。

ジュハ・リ年代記 第一章Chronicles of Juha-ri, Chapter 1

保証は彼方の子供たちのために成された。子供たちが肉によって作られ、神聖にして栄光に満ちた魂の前で夢見の道が知られることを、リドル・サールは知っている。

第一章
ある若者が我々の元へやって来て、白き砂のジュハ・リに対して丁重に、影の踊りを教えていただけないだろうかと尋ねた。彼は他の多くの者たちと同じように、クンザ・リの優れた仲間、辛辣なアネクイナの偉大なる踊りについて耳にしたのである。お決まりの言葉と嘆願をたっぷりと舌にのせ、彼はジュハ・リに知識を授けてくれるよう頼んだ。若者は、月を動かせる踊りならばさぞかし美しいだろうと考えたのである。

ジュハ・リはこの若者に対して、彼がいつも若者に見せる笑顔を見せた。悲しみと憐れみの笑顔である。ジュハ・リは若者に尋ねた。蛇にどうやって歩き方を教える?フクロウに火の起こし方を教えるには、猿に祈り方を教えるにはどうすればいい?若者はジュハ・リの言葉の意味を理解した。彼は白き砂の偉大なる賢者の言葉に感謝し、長い徒歩の家路につき始めた。

ジュハ・リは若者に呼びかけた。白き砂の賢者はごく小さな囁き声を発しただけだったが、風がその声を運びゆく様は、まるで声がジョーンとジョーデから直接降り注いだかのようであった。ジュハ・リは若者に踊りの知識を教えようと申し出た。若者は困惑した。蛇に歩き方を教えることはできない。フクロウに火を起こすことはできない。これは影の踊りを教えることへの比喩ではなかったのか?

白き砂の賢者はうなずいた。蛇はいつでも蛇であり、フクロウはいつでもフクロウである。だが魂は多くのものになれる。しかしそのためには生涯を費やしても足りないかもしれない。多くの者はそのような代償を大きすぎると考え、決して影の踊りを知ることがない。

若者はうなずき、立ったまま考えに浸った。そしてジュハ・リが影の踊りの聖堂に戻った時、若者はその後に従った。

ジュハ・リ年代記 第二章Chronicles of Juha-ri, Chapter 2

保証は彼方の子供たちのために成された。子供たちが肉によって作られ、神聖にして栄光に満ちた魂の前で夢見の道が知られることを、リドル・サールは知っている。

第二章
彼はもう若者ではなかった。白き砂の賢者の弟子としての数年間は、彼の肉体に刻み込まれた。若者の生命力を宿していた顔は沈んだ。毛皮は日々の油塗りを欠いたためにもつれて硬くなった。しかし弟子の目はジュハ・リの知恵に類したものを示していた。未だに残る世俗的なものへの飢えのために、それも覆い隠されてはいたが。

白き砂の賢者は弟子の魂が知恵を聞き入れるために必要な形を築いたのを見て、教えを施した。彼らは共に蒸留した形の月の光を体験し、奇妙な角度をした道を歩いて、微かに夢に似た場所を通り抜けたが、夢を見ていたのではなかった。ジュハ・リは弟子が月のラティスの反射のみをその目に映すよう気を配った。その栄光と恐怖を見つめたあまりにも多くの者が狂気へと至ったことを、白き砂の賢者は知っていたからである。

だが白き砂の賢者の見立てでは、ラティスの反射ですらも弟子にとっては十分だった。その無数の歪曲とリズムの中には、他のところで見られない存在の牙城が見出されたからである。

彼らは聖堂へ戻った。体は汗にまみれ、口には甘い味が残っていた。弟子は白き砂の賢者ジュハ・リに向き直り、影の踊りがどのようにして莫大なラティスに影響を及ぼしうるのかと尋ねた。

同じ大きさだからだ、とジュハ・リは答えた。同じ大きさだから。

ジュハ・リ年代記 第三章Chronicles of Juha-ri, Chapter 3

保証は彼方の子供たちのために成された。子供たちが肉によって作られ、神聖にして栄光に満ちた魂の前で夢見の道が知られることを、リドル・サールは知っている。

第三章
白き砂のジュハ・リは砂漠の風に自らの死の匂いを感じ取り、最年長の弟子、すなわち影の踊りを学ぶことを求めたかつての若者に、迎えの時が来たと伝えた。師の辛抱強い教えと時の残酷さによって貧相になり、賢くなった最年長の弟子は、ダルカーン河のほとりへ行き、葦のくずを取ってきた。

最年長の弟子は白き砂の賢者を抱えて踊る月の聖堂の階段を昇り、我らの教団の信者たちがそれに続いた。彼らは月の光を吊り香炉で燃やした。煙と詠唱が石と砂と肉体を結び付けた。最年長の弟子が白き砂の賢者を山頂まで運び、辛辣なアネクイナが最後の影の踊りを踊った地下室まで連れてくると、詠唱は止んだ。月の光の煙が香炉から流れ出し、部屋は沈黙の黄昏に包まれていた。

長い献身の年月により弱ったジュハ・リは、最年長の弟子の前で、定まらない足取りで立ち、よろめいた。彼は最年長の弟子に、遥か以前にお前を踊る影の聖堂に連れてきたものが何だったか覚えているかと尋ねた。最年長の弟子はうなずいた。彼は聖典を研究したことで、年月は冬のフェッチャーフライの羽の瞬きのように短いことを知っていたからだ。

最年長の弟子のうなずきに自分もうなずきを返しつつ、ジュハ・リは微動だにせず立っていた。白き砂の賢者の魂のうちに、最年長の弟子は運動を見た。混沌としていて、しかし美しい運動を。それはラティスを通して響き渡り、月光の煙と、大小の頂点に反響して膨れあがっていった。煙となった月光が肺を焼く中、最年長の弟子は影の踊りが要求でも祈願でもないことを見た。それは存在、完璧に近い存在であった。ラティスは形を反射し、洗練させ、そうしながらもしばしの間変化した。

始まるやいなや、影の踊りは終わった。ジュハ・リは倒れ、その魂は星の彼方の砂地へと旅立った。最年長の弟子はその教えをよく聞いた。

ジョーンとジョーデの祝福The Blessings of Jone and Jode

本当にありがたい。神々による奇跡をこの目で見られるなんて!司祭がうらやましい。偉大な猫が空から下りてきて聖堂を取り戻すところを目撃するなんて、さぞかし見事な光景だったに違いない!

それでも、私が目撃した神々の行いも負けずに見事だった。カジートがアルコシュの誇りに加わったのだ!ジョーンとジョーデが轟く祝福を述べ、信者にすごい力を吹き込むところを目にした!私も近いうちに価値を証明し、気に入ってもらえることを祈ろう。

アルコシュの聖なる戦士になれたら、これ以上の祝福はない!

ショマエの日記Shomae’s Journal

この者はエスラジという、ハルザ長老が最後に持っていたカジートの伝統楽器を探してここにやって来た。長老は死ぬ前、砂漠の風の洞窟で過ごした時間について多くのことを話した、と一族の伝承は述べている。見つけた時、エスラジが砕け散っていたのは残念だが、残ってラウィス・カジの道を身に着けたいと思う。だからショマエは留まるつもりだ。

この者の師匠は、新しい生活のために新しい日記を付けろと言う。だからショマエはそうする。これを書くために集中するための最高の場所は、洞窟の隅だ。ショマエが見つけた限りでは。

ああ、エスラジがこんな状態で見つかるとは。悲しい。しかし、それがショマエをここに導いたのは良かったのか、悪かったのか?

ショマエには分からない。我々の師匠はどちらでもないと言うだろう。この悲しみを探究し、そして手放さなければならないと。だからショマエはそうする。

センチラート:ただの騎乗動物にあらずSenche-rahts: Not Just Mounts

サハルザグ 著

書記:シルザリ

謝辞:私が以前から知的な存在であり、現在も知的な存在であることを理解しなかった全ての人へ感謝しよう。諸君のため、そして他の似たような者たちのために、私はこの冊子を作らせた。諸君には心当たりがあるだろう。仮にこれを読んだ後、私と会って分からなかったとしても言葉は残る。また、私の書記にも感謝する。私は彼女が、この冊子内に注記を留めることを許可している。

センチラートは長い間存在してきた。我々は自分自身と他の者のために、守り手の役割を長く務めてきた。筋肉質で四足の体型は、単独で戦うにも組んで戦うにも向いている。仲間と組んでいない場合、我々は大きく前に跳躍し、攻撃する意思がある者を誰であろうと、爪で引き裂き噛みつける。訓練された戦いの仲間なら(「訓練された」という部分は強調してほしいが)、我々を戦場でさらに危険な存在に変えられる。彼らが秀でているのが剣であれ、杖、魔法、弓であれ、我々と組めば戦場での機動力が大きく向上し、我々は彼らがの攻撃を利用できる。互いへの脅威に目を配っておけば、共に倒される危険が減る。

上記の内容は、戦場におけるより優れた武器や戦略を求めている、血に飢えた人々にとって魅力的なものだろう。我々の戦闘能力はよく知られている。

[書記のメモ:この者はセンチラートの戦いを見たことがある。爪と歯の嵐のようだった。このような生物を敵に回してはいけない]

しかし、センチラートを隷属させ、その意志に反して利用しようと考えている者には、私からのメッセージを授けよう。

やめておけ。

以前に試みた者もいる。多少はうまくいくように思えるかもしれない。だが我々にも手がある。本当にいくらでもある。我々には仲間もいる。それに、我々の許可と受容がなければ、我々の力を最大限に発揮させることはできない。

[書記のメモ:この尊敬すべきセンチラートは上記のことを理解している。彼らはとても賢い。しかしもちろん、この者はセンチラートの手段を明かさない]

我々は物語を通して、若者たちに戦いへの協力を拒む密かな、あるいは公然とした手段を教える。もちろん読者に明かすほど私は愚かではない。諸君が知るべきことではないのだから。

要するに、諸君が我々に何をさせるつもりであろうと、我々の賛同を得る努力をしなければ、結局は失敗する。そして諸君には、失敗の理由すら分からないかもしれない。

だから対等な存在として扱わねば、何であろうと我々を味方にできると思わないことだ。

むしろ話しかけてほしい。我々は知的生物であり、耳を傾ける価値がある。我々は話をよく聞く。

[書記のメモ:確かに、センチラートが話す時はよく聞いたほうがいい]

さて、前置きはこの辺にしよう。これを読んだ者は、センチラートの相手をする時、我々が知的生物であり、固有の生活と経験を持っているということを理解して始めるべきだ。戦争に利用するための単なる騎乗動物やペット、怪物と考えてはならない。我々は友人にもなるし、家族もいる。また恐ろしい敵にもなる。対等の存在として話し始めよう。思考を持つあらゆる生物と同様、センチラート個人にその先のことは任せるべきだ。

これはよく話題に上るので重要なことだが、我々と協力関係にある何者かが、たまたま騎乗して我々と共に行動しているのを見た場合、その者が我々の所有者や世話人、操作者だと想定しては絶対にいけない。まずは「パートナー」と見なすべきである。

[書記のメモ:センチラートのことを考える時は「パートナー」から始めなければ、二度と考えることができなくなるかもしれない。そういう結果を見たことがある]

この短い冊子を読んで、諸君が私の言葉をきちんと理解し、全てのセンチラートに敬意をもって扱い、単なる獣や戦争の道具として扱うことのないよう願っている。諸君がそのようにせず、我々と出会った場合、私は諸君の態度を記憶し、どのように矯正すべきか考えよう。他の全てのセンチラートも同じようにするだろう。

[書記のメモ:これは本当だ。センチラートは長期におよぶ正確な記憶を持っている。センチラートが物事を忘れることを願うより、このことを知識として持っておくことをこの者は選ぶだろう。希望は確実でないし、人生にはただでさえ試練が多すぎる]

その帰還を恐れ、備えよDread Their Return and Prepare

カ・ブレシ・ホカイ・デル・スーング

夜明けからドラゴンが消えた
その帰還を恐れ、備えよ

体を鍛えて苦痛に備え
心を磨いて明晰となり
魂を高揚させ勝利せよ

カ・ブレシ・ホカイ・デル・スーング

タジッリのメモTajirri’s Note

旧友のアナグマがまた昼寝をしているらしい。訪ねない?旅は思ったより甘いかもしれない。

T

タジッリの日記Tajirri’s Journal

リバーホールドはタジッリの新しい始まりになるはずだった。もう酒は飲まず、賭博もせず、密輸もしない。堕落した生活は全部センシャルに置いて、心機一転するつもりだった。ようやく悪徳から自由になるチャンスのはずだった。

そうしたら母が一緒に引っ越してきた。母と一緒に、絶えることのない泣き言や文句、侮辱もついてきた。タジッリは本当にそれを着ていくのか?タジッリは本当にシュガークローをもう1つ食べたいのか?

だからまず、タジッリの憂さを少しでも軽くするためにちょっと飲む。それから家を出るために、少し賭博をする。すると当然、かなりの借金ができる。するとさらに飲酒、さらなる賭博、さらなる借金につながる。

それで、今や密輸に逆戻り。なぜならタジッリは借金を返し、家を守らなきゃならない。タジッリが絶望的な状態になってきた時、リデザが姿を現したのは幸運だった。運ではないのかもしれない。リデザはどうしてか、分かっていたのかもしれない。

いくつか仕事をするだけ。それでおしまい。リデザがリバーホールドから取れるだけの金を搾り取るのを手伝おう。そうしたらタジッリには、もう借金の心配が要らなくなる。

タジッリへのメモNote to Tajirri

タジッリ

青い大蛇は森の側を這う
四つ角の模様は品物を示す
輝くことはないが、道を印す
今日街を離れる予定

R

タハラの移動動物園Tahara’s Traveling Menagerie

タムリエルの奇妙な獣に驚きを感じますか?

自分の目で奇妙な獣を鑑賞したいと思いますか?

海を越えて旅するのは嫌い?

それなら職人通りの近くにある、タハラの移動動物園へお越しください。従順な獣と、恐ろしい獣が待っています!

トネナカの祠The Tonenaka Shrine

アカヴィリの神秘に関する研究

豪商フェイナ・ダラク 著

北エルスウェアのカジートとリム・メンが、最高顧問の失墜を受けて避難してきたアカヴィリを難民として受け入れた時、最初の到着者たちは首都の西にある使われていない地下墓地を与えられた。そこにおいて、アカヴィリは帝都からの逃避行を生き延びられなかった死者たちを埋葬した。

その地方の君主であったリンメンのサヴィリアン王とアネクイナ・カジートの女王パダラは、アカヴィリの生存者たちに対し、首都の内部および南方の肥沃な丘に再移住を促す布告を発した。彼らは血から言えば完全にインペリアルだったが、それでもかつての支配者に忠実だったため、思い出の品を数多く持ち込んだ。

リンメンはインペリアルとカジート交易の中継点として、すでに折衷的な社会を築いていたが、アカヴィリ移住者の風変りな美的感覚と文化、食習慣がこの街を決定的に変えた。アカヴィリの最も変わった貢献を敢えて一つ挙げるならば、リンメンの北方地区におけるトネナカの祠の建設だった。

アカヴィリの建築スタイルに影響を受けたカジートの石工技術によって建設されたトネナカの祠は、残っていたアカヴィリの移住者と彼らの臣下だったインペリアルにとって、文化的な試金石になった。家長たちは石を彫った小型の像を何万体も建設するよう注文を出し、南タムリエル中から彫刻家や技師を集めてこの計画に協力させた。

確かに、アカヴィリ居住者がこの計画の資金調達のために持ち込んだ莫大な富は、リンメンの経済を大きく豊かにした。しかし年月が過ぎ、残ったアカヴィリの数は激減したため、生きて祠の完成を見届けたのはたったの5人だった。大部分の者はインペリアルとの交配を進めるか、あるいは遥か南の村落ハコシャエに移り住んだ。

最後の石像が置かれた時、5人のアカヴィリはトネナカの祠に入って扉を封鎖し、進入を防ぐために強力な結界を張った。これはリンメンの権力者とアカヴィリ建築士たちの当初合意にはなかったものである。しかしゴールドの約束により、怒りは和らげられた。

祠は今日に至るまで封鎖されたままであり、その驚異的な石工技術を劣化から守るため、外部の修復が時折行われるだけだ。

ドラゴン:女王への報告Dragons: A Report for the Queen

ユーラクシア女王陛下

この報告は、北エルスウェア中でその存在を知られるようになったドラゴンに関する結論を要約したものです。

ムラームニルと名乗る竜は、カールグロンティードと呼ばれる、さらに強力な怪物へ従っています。その者はカジートの反逆者たちに対する我々の戦いに、ドラゴンの支援を申し出ています。陛下が予期した通り、あの巨大な獣たちは勝利の多くに決定的な役割を果たしています。ムラームニルを説得して一度に1匹以上を貸してもらえれば、この地域全体を支配できるかもしれません!

残念ながら、ドラゴンは我々の兵と敵の区別ができないか、あるいはする意思がないようです。彼らは味方に犠牲を出すことを気にも留めず、標的が何であれ破壊しています。あの怪物を制御しようとしても、ほとんど機能していません。

以下は私の進言です。ムラームニルに命じて、ドラゴンに命令へ従うよう教示させることです。武器とは行動を制御できた時に、最もうまく機能するものです。

それに加えて、我々の同盟を確実なものとするため、ドラゴンを支援する必要があります。暗殺部隊を送り、エルスウェアの荒野に隠れていると信じられている、最後のドラゴンガードを抹殺することを進言します。

ジャガス百人隊長
女王の宮廷戦略家

ドラゴンが1匹、ドラゴンが2匹One Dragon Two Dragon

ドラゴンが1匹、ドラゴンが2匹
赤いドラゴン、青いドラゴン。

1匹は檻から放たれ
空にいる沢山のドラゴンは怒っている

残酷なもの、素早いもの
通ると炎を吹きかけるものも

ドラゴンはあなたを凍らせる
あるいは跡形もなく焼き尽くす
咆哮で吹き飛ばし
穴に落とす!

空を見上げ
夜明けか夜中に
ドラゴンが見えるかもしれない
殺意に満ちた羽ばたきと共に!

なぜドラゴンは怒っている?
なぜここに留まる?
私は知らない
とにかく逃げろ!

ドラゴンガードの報告Dragonguard Report

シグナス不正規兵に諜報官として任命された、ファリクシア百人隊長による報告の写し

我々は北エルスウェアの荒野に隠れていると言われる、失墜し解体されたドラゴンガードの生き残りについての報告を調べることから始めた。まずユーラクシア・サルンの関心についてだが、リンメンからの情報によれば、彼女は王家の保管所を徹底的に調べ、この問題についてカジートが集めたあらゆる情報を掘り返すよう命じたという。名高い古代のドラゴンハンターを起源にするという伝説が、彼女の想像力を捉えたようだ。ドラゴンもこの問題に関心があるのかどうかについては明言できない。

月の歌い手に確認すると、相互に矛盾する情報が出てきた。ある語り手の主張では、ドラゴンガードの一軍団が丸ごと、古代にドラゴンが姿を消して以来スカーに隠れ続けているという。別のある語り手は管理人が1人だけ残っており、隠された聖域にある古代の騎士団の秘密を守っていると語った。

魔術師ギルドで確認したところ、ドラゴンガードの手法が本当にアカヴィリのドラゴンハンターに遡ることは、賢者たちの記録に残されている。ドラゴンガードの大部分はドラゴンが姿を消した後、伝統を捨てて皇帝の護衛となったが、いくつかの文書の主張によれば、少数の者が古い方法で訓練を続け、ドラゴンが再び現れた時に備えて、ドラゴンと戦うための知識を保持しているという。

以下は有力な手掛かりである。ステッチズから、西スカーの奥で隠されたアカヴィリの祠を見つけたとの報告がある。酒席で交わされた話によれば、その場所は呪われていて、危険きわまりない罠が張り巡らされているという。一部の者はまた、彼らが主張するところのドラゴンガード最後の生き残りが1人、祠の手入れをしながら、ドラゴンガードが再び必要とされる日を待っていると述べている。

ドラゴンホーン!おお、ドラゴンホーン!A Dragonhorn! Oh, Dragonhorn!

スターヘヴンの記録管理者、アデプト・イジャディによる翻訳

ある日アカヴィルがやって来た
我らが星のヘヴンに
戦士たちは誇り高く
毛を剃らぬ者は1人もなかった!

彼らは言った。ドラゴンがうろついている
我々は気を付けるべきだと
「留まることはできぬ、戦うこともできぬ
持っているものを渡すのみだ」

ドラゴンホーン!おお、ドラゴンホーン!
ただ一度の呼び声で
上空のいかなるドラゴンも
たちまち落下する

ドラゴンホーン!おお、ドラゴンホーン!
汝は高き塔に留まる
ドラゴンが攻めるなら
奴らは汝の強き叫びを聞く!

ナハテン風邪の犠牲者のメモFlu Victim’s Note

発疹が拡がってきている。咳がひどくなっている。鼻血が止まらない。目や口から流血するのは時間の問題だ。兄はこの状態に達してから3日しかもたなかった。彼はいつも私より強かったのに。

ナハテン風邪の最初の兆候First Signs of the Flu

オークレストにナハテン風邪を持ち込んだのは何者なのか、誰も知らない。

アルゴニアンを非難する者もいる。ぺライトの仕業だと言う者もいる。原因が何であれ、この病気は素早く蔓延し、死体が山と積まれ始めている。感染していない住民の一部は避難しているが、市外の状況はさらに悪いと言う。

私はどこに行くつもりもない。オークレストは私の故郷だ。

ニクッシャの研究メモ1Nikussha’s Research Note 1

ブラック・マーシュの錬金術師ニクッシャ 著

南中の月7日

シカトリスの者は全員、オアシスの洞窟に逃げ込んだ。もちろん、一時的な解決策でしかない。私の研究はこの季節か次の季節に完成すると見ている。幸運にも、食料と清潔な水は豊富だ。

クランマザーのアバーシは今でも私を完全には信用していない。なんといっても彼女の民にとって、私はよそ者だ。新入りで、種族も違う。だがもう彼女に選択の余地はない。この疫病はシカトリスを壊滅させ、街は灰と化してしまった。

もはや私が行動しなければ、ここの人々を救うことはできない。

ニクッシャの研究メモ2Nikussha’s Research Note 2

ブラック・マーシュの錬金術師ニクッシャ 著

南中の月14日

なぜこのオアシスに治療効果があるのか、その理由をついに発見した。水そのものではなく、この洞窟を住処としているネレイドのためだ。我々が突然侵入しなければ、この秘密は永遠に明かされなかったかもしれない。ネレイドはどうやら、驚くほど人見知りの激しい生物のようだ。

クランマザーのアバーシは誰も彼女の側に近寄らせず、ネレイドが住んでいる中央の間を隔離している。これは愚かしい行動だと思う。ネレイドの力は我々の研究を大きく助けてくれるかもしれないのだ!カジートは何も知らずに首を振り、彼女を怒らせるだけではないかと恐れている。

このことについてはもう何時間も話し合った。無駄な議論だったかもしれないが、緊張は高まっている。ますます多くの人々が病気になり、多くの者はすでに死んでいる。それに、私がこの病気に完全にかからないからといって、私が影響を受けていないわけではない。

ニクッシャの研究メモ3Nikussha’s Research Note 3

ブラック・マーシュの錬金術師ニクッシャ 著

南中の月28日

私は何ということをしてしまったのだろう。

私はこの疫病を抑えることができると思っていたが、どれほど努力を払っても病気は急速に拡散していった。緊急性の高さを鑑み、私は研究を急いで進めた。治すべき相手がいなくなったら、治癒など何の意味がある?

だが研究の途中で、私は恐ろしいことをしてしまった。このオアシスはかつて浄化と治癒の場所だったのに、ここもまた病に汚されていた。多くの死体があるせいなのか、単に死のオーラのせいなのかは分からない。だがオアシスは変わってしまった。それも急激に。

死体が起き上がり始め、瘴気が洞窟を満たしている。この日以降、誰一人として生き残る者はいないだろう。ただ謝りたい。こんなつもりではなかった。私はただ自分の愛する街を救おうとしただけなのに。孤独な旅人を受け入れ、あれほど信頼してくれた人々を救いたかった。

ごめんなさい。

バーン・ダルを知る者On Those Who Know Baan Dar

アカン 著

最初に言っておこう。バーン・ダルとチキンはあまり関係がない。

アカンはなぜあれほど多くの者がチキンについて話すのか分からない。確かに、ウッドエルフはチキンを爆発させるし、そのような愚かな行為を祝祭と呼んでいる。ウッドエルフはリンゴを食べるのが間違っていると言うが、リンゴは美味だろう?ウッドエルフは腐った肉と虫で酒を作る。ウッドエルフの言うことを聞いてはいけない。

よそ者はバーン・ダルが盗賊神であり、千の顔を持つ男であり、放浪者であると言う。彼らはカジートがバーン・ダルを知るようにはバーン・ダルを知らない。ウッドエルフはバーン・ダルの名においてゲームやいたずらを行い、ブレトンは生きている盗賊や伝説について語り、吟遊詩人はバーン・ダルの偉業を現世の盗賊のように歌う。

よそ者にとって、バーン・ダルは伝説であり、物語であり、冗談なのだ。バーン・ダルはそういうものではない。真のカジートにとって、バーン・ダルは我々の生き方である。彼を理解する全てのカジートは、ドーレスの農園で働く鎖でつながれた人々から、血の染みついたシロディールの戦場で金貨のために戦う傭兵まで、どのようにバーン・ダルを称えるかを知っている。

ジャ・カジートが窓の敷居からスイートミートをくすねて飢えた腹を満たす時、ジャ・カジートはバーン・ダルを称える。血で毛がガチガチになった奴隷がその鎖で奴隷商人の喉を掻き切る時、奴隷はバーン・ダルを称える。お前が奴隷にするために仕掛けた罠から遊牧民が足を噛みちぎって逃げる時、遊牧民はバーン・ダルを称える。

誰にでも見える場所に貴重品を置いたなら、バーン・ダルが持って行く。奴隷商人の鎖を他の者がちぎるのを待っていれば、バーン・ダルはお前が暗闇で憐れみの涙を流している間に抜け出す。バーン・ダルはお前を解放することも、慰めることも、助けることもしない。だが彼のために耳を澄ませるならば、バーン・ダルはお前が自らを救えるよう導く。

暖かい砂を越え、暖かい太陽の下、木や石や言葉で甘やかされていないカジートが剣と弓を持って自由にさまよう地で、バーン・ダルは従う者全てにただ3つのことを求める。

お前が持っていたいと願うものを、他人に取らせてはならない。

鎖なく生きたいと願うなら、他人に縛られてはならない。

騙されたくないと願うなら、他人に見くびられてはならない。

バーン・ダルは自分の名を称えよと求めることはない。バーン・ダルは供物を求めない。バーン・ダルはお前が愚かでないことだけを求める。エルスウェアの暖かい砂に、愚かなカジートの居場所はないからだ。

バクルへの手紙Letter to Bakul

バクルへ

私は重大な過ちを犯してしまった。甘い言葉とまやかしでここへ誘い出されたけれど、まやかしは触れた途端に輝きを失った。ここにはドラゴンがいるのよ、バクル。足元の砂のように本物だけれど、あのドラゴンがアルコシュでないのは間違いない。ただし、毎日を永遠のように感じさせる術は心得ている。

ダイルナは石を持ち上げたことも、れんがを積んだこともないのに、サンスパイア聖堂を元の美しい姿に戻すため、足がボロボロになるまで働いた。最初は嫌でなかったけれど、努力が足らないとして鞭打たれた。抗議するとさらに鞭を受けた。この聖堂を認めていないけれど、立ち去ることもできない。
バクル。この者は良い姉だったとは言えないけど、それでも姉よ。ダイルナからのお願い。この話をたてがみに伝えてほしい。ダイルナのために来てはいけない。ドラゴンとそのしもべはひどい連中よ。

この手紙が無事に届くことを祈る。誰なら信用して配達を任せられるかも分からないけど。

心を込めて

ダイルナより

ハダズの最後の手紙Hadaz’s Final Letter

マールンズの信者どもと、デイドラだらけだ。急いで書かないといけない。

デーゴンの爪という信者たちが、何らかの魔法の道具を見つけた。奴らはデッドランドの槌と呼んでいる。連中は油と硫黄を鉱山から取り、固めて召喚石のようなものを作っているみたいだ。でも、それはデイドロスやバネキンを呼ぶものではない。鉄の精霊を召喚するんだ!石炭と溶岩で出来た心臓を持つ、鉄の巨人だ!これを見つけたら、たてがみに伝えてくれ。そしてできるなら、こいつを止めてくれ!

それから、マラダーニに謝っておいてほしい。

ハダズ

フェイナ・ダラクへの手紙Letter to Feina-Darak

愛しきフェイナ・ダラクへ

我が一族が多くの重荷を背負っていることは分かっています。いつの日か、あなたは我らが民の繁栄を守るため、ハコシャエを導くことになる。あなたが最高顧問の血を受け継ぐ者だからです。この血のつながりは祝福でもあり、呪いでもある。あなたは備えなければなりません。

一族が私たちの祖先についての噂をハコシャエの外に漏らすことを禁じてきたのには、相応の理由があります。モラグ・トングは今でもタムリエルの暗部に潜んでいる。彼らはこの知らせを軽く受け止めないでしょう。最高顧問の末裔である私たちは、彼らが完了し損ねた仕事なのです。

一族の安全を保証するため、私たちはこの秘密を固く守らねばなりません。それが唯一の道です。

常にあなたを思う
母より

ヘマカル王の墓King Hemakar’s Grave

ヘマカル

平和の運び手、
愛されし父
名誉あるアネクイナの王よ

今、王は歩む
星の裏の砂場を
次の襲撃の時まで

ペライトへの手紙Letter to Peryite

ぺライトよ、感謝します。

あなたがこれを読むことはないと承知していますが、私の祈りを聞き届けてくださったことに、文章で感謝したいのです。この手紙はあなたに向けたものですが、あなたに宛てたものではありません。全ての不信心者、疑う者たちへ宛てた手紙なのです。古き神々が彼らの邪心を洗い流すだろうと私が告げた時、鼻で笑った連中へ。私は全てのデイドラ公に祈りましたが、応えてくださったのはあなた一人です。この街を正す唯一の道は、内部から破壊し、灰燼に帰すことだけだと理解したのはあなたです。私の体にまでナハテン風邪が拡がり、血が口から流れ出ていても、私の口には笑顔が走り、熱に浮かされた心にはたった1つの言葉が巡っているのです。

ぺライトよ、感謝します。

マーズラ・ジョーのメモMarzula-jo’s Notes

第二紀342年、恵雨の月12日
さて、ついに不名誉の家にたどり着いた。他のカジートが近づこうとしない理由がよく分かる。あらゆる死霊術の実験がここで行われたに違いない。壊れた壺、カビ臭い蒸留器、半分開いた石棺等々。私も死霊術には詳しいから、それだけなら不安になるようなことではない。だが、マーズラ・ジョーは緊縛のベルトと首絞めの輪も見つけた。ここの死霊術師たちは粗暴な死霊術を行っていたに違いない。疑いなく闇のクランマザー、マファラへ捧げられた死霊術だ。この者の心は深い失望に満たされる。それでも、不名誉の家では自分なりの、完全に道徳的な実験を行うための場所と孤独が得られる。仕事にかかる時だ!

[奇怪なグリフや謎の公理を含む記述がいくつか続くが、大部分は水で滲んでいて読めない]

第二紀342年、真央の月22日

また一つ成果があった!骨の粉と木椅子キノコの溶液6ドラムを基本の蒸留水に入れることで反応が安定し、遥かに揮発性の低い混合液ができる!残るは最近死亡した組織に塗って、数日間厳密に観察するだけだ。私が見つけたウサギは、試験対象として完璧なはずだ。

マーズラ・ジョーは大きな誇りと興奮を感じているが、気をつけて進めなければならない。実験のこの段階には多大なリスクが伴う。

第二紀342年、真央の月28日
再生したウサギは不穏な行動を示した。檻の格子を攻撃し、口から泡を吹いている。この者にはまだやるべきことがあるようだ。

第二紀342年、収穫の月8日
暗い月よ!重い心で報告しなければならないが、マーズラ・ジョーの最高の友人シュガースノウトが昨晩命を落とした。センチタイガーとしてはとても若く、まだたったの4歳だった。ほんの数週間前、激しい病が彼を襲い、必死の努力にもかかわらず、容体は急速に悪化した。この者は心が痛い。これについてもう何も書くことはない。

第二紀342年、収穫の月11日
長い間考えた末、蘇生薬の最新バージョンをシュガースノウトに試してみることにした。下等な獣でもっと試すべきなのは分かっているが、この機会を見逃してしまったら、自分を許せなくなるだろう。マグルスよ、この仕事を優しい目で見守り給え!

第二紀342年、薪木の月2日
成功だ。ある意味では。私の錬金術的な治療はシュガースノウトを予想どおりに蘇らせたが、彼は攻撃の徴候を見せ、私が呼んでも分からない。マーズラ・ジョーはすでに自分の決断を後悔しているが、やってしまったものは仕方がない。今となっては、この者にできるのは最善を祈ることばかりだ。とりあえずは、私の錬金術のレシピを洗練させる作業を続けよう。次の検体は、愛するシュガースノウトよりもうまくいくことを願う。

マファラを称えよ!Praise to Mafala!

糸を紡ぐ方を称えよ!
巣を紡ぐ方を称えよ!

古代の秘密を隠し持ち
その策略は忍び寄る

血と骨で称えよ!
まかれた闇の種となれ!

マリザズの日記Malizaz’s Journal

ズモグ・フームの見習い死霊術師マリザズ 著

また行き止まりだ!また失敗だ!マリザズは何日もスレンダルの揺りかご近くの大墓地を発掘して過ごした。爪は汚れ、尻尾がよじれる労働を何日もやった!それなのにこの者が見せられるものといったら、バラバラの骨が1袋と、腰の痛みだけだ!

こんな惨めなことをさせられると知っていたら、ズモグ・フームと奴にへつらう連中について来なかったのに。マリザズは実力を証明しなければ!本当に価値のあるものを見つけないと!

* * *

バルを称えよ!この者の調査で、アッシェン・スカーの奥にしまい込まれた財宝の存在が明らかになった。聖句箱のようなものだ。どうやら、アルム・カルという謎の多いリッチが、自分の爪でこのオーブを削ったらしい。このオーブに込められた力を手にできれば、ズモグ・フームが遠からずこの者に仕えることになるかもしれない!

* * *

マリザズはついに聖句箱を見つけた!遺跡は不安定だから、簡単なことではなかった。だが問題は、建物の耐久性だけじゃなかった。小さな猫の霊魂が、隠された月の僧房の広間をうろついている。霊魂は一度ならず私を崩れかけた通路へ導き、ぐらぐらする床を通らせようとした。最後にはこの者が勝利したのを見て、霊魂は悔しかったことだろう!

さて、運命的な発見の瞬間だ。もうすぐ私は、アルム・カルの秘密を全て知ることになる!エルスウェアの民よ、刮目せよ!マリザズが到来する!

ムーンシュガー:報告Moon-Sugar: A Report

帝国交易省の密偵/調査官、コルネリウス・クラニウス 著

ムーンシュガー!ドラゴンスター・キャラバン社が輸入を始め、また猫どもがこれは神聖だが無害な調味料だと主張して以来、ムーンシュガーはより広まるようになりました。しかし、これを野菜に振りかける者に何が起こるか、見たことがありますか?興奮する!そしてだるい気分になるのです!両方同時になることもあります!猫どもは我らが若者たちを、その甘く毒のある「砂糖」で堕落させるつもりです。すぐにでも帝国から締め出さなければ。子供たちのために!

しかし、交易省が私の言葉を鵜呑みにするとは思っていません。だから抜け目のないコルネリウス・クラニウスは真実を明らかにするため、自らエルスウェアまで旅立ったのです。

ムーンシュガーの第一印象は意外と迫力に欠けます。砂か粉、または水晶のような物質です。一つひとつの「かけら」は米粒のサイズから親指のサイズまで幅があり、砕くか溶かして料理に使います。白か銀色の光沢があり、見た目は塩の結晶に似ていますが、光を通しません。むしろ固体のムーンシュガーのかけらに光が当たると、中から光を発するように見えるのです。

これが反射光に過ぎないのは明らかですが、ムーンシュガーが結晶化した月の光で出来ているという文化的信念はここから来ているのかもしれません。多くのカジートはこれを彼らの神々の贈り物と信じています。ある民間伝承は彼らが「砂糖の神」と呼ぶアズラーについて語っています。アズラーは月の光を湿地へともたらし、光はそこで砂糖となったのだと。このような原始的な信仰は少しでも錬金術の知識があれば容易に反証できますが、それは私の専門ではありません。

エルスウェアの風景に点在する数多くの小さな僧房に入ると、ムーンシュガーが様々な儀式で用いられている姿が見られます。こうした場所では、ムーンシュガーを摂取することで、彼らの神々の魂の一部を吸収すると考えられています。多くの者はムーンシュガーを様々な調合薬に混ぜて接種し、瞑想と組み合わせることで幻視を得られると信じています。

彼らはムーンシュガーが悟りをもたらすと述べていますが、真実はもっとおぞましいものです。こうした僧房は時として、自分たちでムーンシュガーから精製したスクゥーマを用いるのです。月の司祭は自分たちだけが使うもので、決して配布はしないと言い張りますが、騙されるコルネリウス・クラニウスではありません!この二枚舌の「賢人」どもは、薬物の使用により幻視を得ると主張します。こんな発想が帝国内部で流行ったらどうなるか、想像できますでしょうか?

帝国交易省の密偵/調査官であるコルネリウス・クラニウスが、このムーンシュガーをいくらかでも吸ったことがあるか、とお尋ねでしょうか?本当に言うほど酷いものか試してみたのかと?そう、試したからこそ、私はこれほど熱心に禁止を叫ぶのです!というのも、カジートはムーンシュガーをあらゆるものに入れ、毎日のように食べています。彼らは甘いものに目がないので、そうして欲求を満たしていると言う。たわごとです!奴らは全員薬物中毒なのです。それだけのことです。使えば使うほど、その効果に鈍感になる。しかし、我々人間はどうでしょう?我々は感覚が鈍っていない。自らの最も卑しき衝動に負けてしまうでしょう!

この敬虔にして熱心な密偵がムーンシュガーを食べた時、何が起こったと思いますか?狂ったように笑いだしたのです!何というエネルギー!何という情熱!自らを厳しく律する几帳面なコルネリウスが、街灯を抱きしめたのです!爪の痕の一つ一つが魅惑的な発見でありました。その手触りは歓喜を呼び覚まし、私は誰彼構わずこのことを話して回りました。我らが若者たちが座り込んで、単なる物体を愛する様を思い浮かべていただきたい!これこそカジートが求める未来です。帝国は機能不全となり、避けがたい崩壊への道を開くでしょう。

もしあれが街に残されるならば、我々は座り込んで堂々と自分の感情を発露させる、変質的な世代を丸ごと一つ作ってしまうでしょう。その後に倦怠感が続くのは言うまでもありません!カジートが怠け者なのも当然です。あの恐るべき砂糖が体を巡ったら最後、力を奪われ疲労困憊してしまいます。あれはインペリアルの労働倫理と相容れません。

そう。ムーンシュガーはただちに違法化されるべきです。

忠実にして献身的な密偵/調査官
コルネリウス・クラニウス

ムズムの日記M’zum’s Journal

ムーンシュガー泥棒たちはより大胆になっているようだ。ムズムには全く理解できない!地下室の入口に衛兵を置き、傭兵を雇って農場を巡回させ、まだ残っている作業員全員を尋問し、さらにもう一度尋問した。なのに成果がない!

もしかすると、あのレッドハンドに騙されたのだろうか。あの連中がムズムのムーンシュガーを奪ったとしても不思議ではない。しかし、事業提携がこれだけ進んでいる今、このようなことで告発するのはまずいかもしれない。

それなのに、ベラニが話すのはいるかどうかも分からん獣のことばかりだ。馬鹿げている!

メレロンの日記Melleron’s Journal

私はロトメス作りを生業とするエルフだ。両親もそうだったし、両親の両親もそうだった。また、グラーウッドでは人気の職業である。長い狩りの後に、強いロトメスを飲まないウッドエルフがいるだろうか?

だがエルスウェアは全く異なる市場だ。カジートは私の醸造酒の匂いを軽く嗅いで、さっさと行ってしまう。あらゆる種類の売り口上と割引を試したが、まだ1人の客さえもつかめていない!イフレにかけて、無料の味見すら受け入れようとしないのだ。

そこでこの新しい、甘いロトメスの出番だ。本来の飲料が持つ豊かな肉の風味はそのままに、カジートの客を満足させる甘みを仕込んである。ただあと数日、発酵させればいいだけだ。タラズルと私がステッチズに着く頃には、試飲の準備が整うはずだ。

モジャは愚かだMojha is a Fool

モジャは愚かだ。ドラゴンが神じゃないからって何だ?崇拝に値しないと言うのか?

鞭を打たれずに済むのなら、偉大なトカゲのために頭を下げて掃除でも労働でもするつもりだ。二度と近付くな。この者は自分の身を守るために裏切るからな。

この言葉をしっかりかみしめ、忘れるな。

やり残した聖餐A Sacrament Remains

ナザラ 著

この地に帰ってくるのは、この者が想像していたよりも難しかった。夜母が任務のためナザラを呼んだ時、私は病気と死、悪臭がするゴミで満たされたこの場所を去った。今、私は自分がここにいなかった期間と同じだけ古い依頼を完了するために戻ってきた。標的がすでに死んでいる可能性もあるが、聖餐は終わらせなければ。だからナザラは彼を探す。

この者はアッシェン・スカーから捜索を始める。エルスウェアにある、無数の大規模埋葬地の一つだ。ナハテン風邪が襲った時、この者は埋葬地が満杯になるのを見た。多くの者がアッシェン・スカーと呼ぶのは、その最初のものだ。ナザラのような一般の民にも感じられるほど、霊的な力が強い。標的は何かを探してここに来たが、自分が見つけたものが正しいのかどうか疑っていた。崩壊しかけた遺跡の影には常にアンデッドが徘徊しており、影の中を歩むこの者にとってさえ危険だ。

標的がここに埋葬されている証拠はなかった。だからもっと先を探さねばならない。

手掛かりを追って南へ向かい、ここの民がステッチズと呼んでいる、石の尖塔とガタガタ揺れる木の橋の地に辿り着いた。ここはいつも不運な者、卑しい者、無法者の隠れ場所だった。ナザラはこの場所で初めて、この爪を血で汚した。この場所を変えてやると言った子猫がいたことを覚えている。この地に希望をもたらすと。聞くところでは一時成功したようだが、今は姿を消した。抱いていた夢と同じように。

この者の標的はここにいなかったが、彼を覚えている者は見つけた。彼は一人で南方へ、遊牧民のキャラバンと共にナハテン風邪を逃れて旅に出た。ナザラはその後を追う。

シカトリスはかつて、オークレストから西エルスウェアまでの街道沿いにある小さな街だった。遊牧民はそこに立ち寄って食料を調達し、物語を語った。そこは休息と温もり、笑いの場所だった。しかしナハテン風邪はその全てを滅ぼした。この場所の居住者たちはあるアルゴニアンに従い、助けを求めてオアシスに行ったという噂を聞いている。ナザラが見つけたのは毒の充満した洞窟と、獲物が再び単独で出発したという証拠だけだった。

今度は彼も病気になり、北へ向かった。スカーが鳴く場所へ。その場所は分かるが、そこで見つけることになるものを私は恐れている。

この者の毛皮の色がもっと濃く、爪がもっと鋭かった頃、ウィーピング・スカーの物語を聞いた。暗闇の中に入り、快楽と血の渇望に身を任せたカジートたちがいた。大部分の者は戻ってきて、再び暗闇の中に入って行った。しかし一部の者は留まった。

ナザラの標的は留まった。彼を追って暗闇へ入ると、ナザラの子供じみた恐怖が牙と血への渇望を持った怪物となって現れた。彼らは攻撃してこなかったが、状況は何だか不自然で、違和感があった。何かの争いが起きているようだが、それに参加するつもりはない。探しているのは標的のみ。そして私の若い頃の亡霊は、それを与えてくれた。

標的はナハテン風邪に侵され、スカーの吸血鬼のところで永遠の命を求めた。彼は病気を別の病気で滅ぼそうとして、死の暗闇を別の暗闇と交換したわけだ。それは成功しなかった。そしてナザラの標的は月の光の中へ旅立った。

このカジートはかつて、自分の妻とその子供を襲った。スクゥーマと貧困によって彼は怒りに駆られ、怒りは彼の妻を駆って聖餐を行わせた。その子供は母の願いを叶えるために来たが、父が自分自身の暗闇を見出したことを発見した。

今は別れを告げておこう。聖餐は満たされ、娘はもはや残る必要もなくなった。夜母は今も優しく呼びかけ、ナザラは応える。

ユーラクシアの個人的日記Euraxia’s Personal Journal

カジートの神話と伝説にはやはり興味をそそられる。なんといっても憤怒の石へ私を導き、間抜けな腹違いの兄を騙してホール・オブ・コロッサスからドラゴンを解放させることを可能にしたのは、月の歌い手たちによって伝えられるクンザ・リの物語だった。

残されたクンザ・リの物語では、他にどんなことが待ち受けているのだろう?確実なのは〈裏切り者〉の役割だろう。奴の吐き気のする首は、私の筆頭死霊術師を哀れな子犬のように追いかけている。奴は伝説から我々のところに出てきたのだ。そして月の門の必要性も。だが(少なくとも私的なメモの中では)認めねばならないが、あれに対して形而上学的に完全な理解をすることはできそうにない。

一方で、エルスウェアにおけるドラゴンガードの最後の生き残りに関する噂の調査が、ついに実を結んだ。我々はこの潜在的脅威を排除し、カールグロンティードに協定の真の価値を示してやろう。カロ長官の報告書を、もっと詳細に検討するのが待ち遠しい。

あの忌々しい男が、私に送ればの話だが。

ユーラクシアの死霊術師Euraxian Necromancers

宛先:たてがみの代弁者ガレシュ・リ卿
差出人:代弁者の密偵カミラ

僭女王が即位の直後から死霊術師と闇の魔術を利用していることはわかっています。しかしここ数ヶ月、僭女王の勢力を支持する死霊術師の数が劇的に増加しています。その原因はただ1つ。闇の魔術師にしてユーラクシアの死霊術師の長、ズモグ・フームです。

「闇の技の王」を自称するズモグ・フームは、ロスガーの最北地方の出身だと言われています。このオークの死霊術師に関する若い頃の情報は、腹立たしいほど少ないものですが、多数の推測はなされています。ロスガーの荒野は苛酷な地で、オークの要塞での生活は厳しく、質素で無慈悲なことが知られています。しかしそこで生存し、頭角を現したオークは良質な剣に似ています。叩かれて鍛えられることで、カミソリの刃のように鋭くなるのです。

アネクイナに来る前の彼を示す最初の証拠は、次元融合の危機の間、虫の教団の活動を調査した報告書にあります。詳細は乏しいながら、ズモグ・フームの名は教団の幹部メンバーとして載っており、黒い虫の教団の指導者であるマニマルコとの密接なつながりが示唆されています。しかし降霜の月のクーデターの直後には、彼がリンメンで活動していたことを我々は知っています。おそらく、次元融合に関する教団の活動に直接関わってはいないと思われます。

ユーラクシアがズモグ・フームを特に勧誘したか、リンメンの玉座を奪った後でズモグ・フームの方から接近したのでしょう。当初のズモグ・フームは付き従う小さな集団を擁しており、彼の個人的な暗黒教団の基礎となりました。北エルスウェア防衛軍は何度か迷い出てきたゾンビやわずかなスケルトンと戦いましたが、基本的に死霊術師たちはこれまで、ユーラクシア軍において副次的な役割のみを果たしてきました。それが変わりつつあるのではないかと懸念しています。

次元融合が終わり、虫の教団が表面上は解体してから、多くの死霊術師が僭女王の旗の元に集まり、残忍ながらある種の魅力があるズモグ・フームに導かれています。捕獲した魔術師の何人かは指導者に対して異常な崇拝を示し、ズモグ・フームの暗黒の力と、彼とユーラクシアがエルスウェアを完全に手中に収めたら何をするかについての脅迫を、嬉しそうに話していました。具体的な計画についてはほとんど明かしていませんが、ズモグ・フームがその秘密の隠れ家と、彼らの言葉で言う「アンデッド工場」で何をしているのかについては色々とほのめかしています。

噂を信じるなら、ズモグ・フームと弟子たちは人目につかない場所に工場を設置し、そこで儀式や実験を行い、ユーラクシアの傭兵部隊を強化するためにアンデッド軍団を蘇らせているようです。まだこのような邪悪な場所から生み出されたものを目にしてはいませんが、地域全体で墓荒らしの証拠を発見しています。特にアッシェン・スカーなど、ナハテン風邪の流行が最もひどかった時代の大規模墓地周辺で、こうした証拠が見つかっています。

我々はズモグ・フームと信者たちがユーラクシアに兵士を無限に供給する前に、始末する方法を見つけなければなりません。疲れを知らず際限なく復活する軍隊を押し返すことは、防衛軍にとって不可能です。アンデッド工場を見つけだし、全力で稼働する前に破壊するしか方法はないでしょう。

ズモグ・フームを殺すことができれば、なお良いのですが。

ラーチの命令Rahti’s Orders

いいかお前ら。偽善者どもの牧場を手緩く襲撃するのはもう終わりだ。穀物を数袋、前の日に残った肉を一握りかすめ取ってくるなんて。俺たちは狩人か、それともネズミか何かか?

どんな武器でもいいから集めて、全面攻撃の用意をしろ。あの動物どもは檻に入れ、週末までに売り飛ばす準備をするんだ。特にあの白センチだ。あれは高値で売れるぜ、間違いなくな。

お前ら役立たずには無理だっていうなら、新しい狩人を探すまでだ。

-ラーチ

リサナ・ディ・レナダの謎かけRiddles of the Rithana-di-Renada

ドレモラが這い回る墓の中
左に2回、右に2回、3つの壺を上に
リンメンの遺産が待つ

恥ずかしき家の奥深く
黄金の花に見守られて
リバーホールドは忍耐強く座る

星の天国の東
丘の上、石のアーチの下
デューンは空から隠れている

丘の頂上、地面の下
骨と宝箱の間に
ヴァ―カースは隠されている

プロウルで空のかけらを探し
西に隠された裂け目を探せ
メイアヴェールはランターンの明かりで待ち受ける

メイアヴェイルの西の道
吊られた橋を越え、石の階段を昇る
ペレタインが2つの炎の間で待つ

砂漠が遺跡を覆うところ
牙を持つ死霊術師がうろつく場所
スカーの端に光るはアラバスター

密林で絡まる根の中央に
柱が立ち、柱が倒れる
そしてブルクラは冷たい水に浸かる

煙の立ち込める残り火
朽ち果てた街の中に
オークレストは石の祠に守られる

スカーはコリンスのために泣く
2本の曲がった木の間
サバンナの草が生える場所

ステッチズの西、茶の丘にて
4つの柱が共に立つ
ヘルカーンを中央に戴いて

灰の傷の遥か上
孤独なテントに守られて
センシャルは這い寄る死者から隠れている

石のカジートがテンマールを守る
彼女が双子月を崇拝する
聖堂の中庭で

トルヴァルは虚ろな切り株に座る
アーケイズ・ラッシュの泉で
ネレイドが濁った水を守る

リンメンの郊外、反乱の野営地
遺跡が丘の上で歪む
ケナーシはその中で待っている

ルディファングThe Ruddy Fangs

鋭き爪のザイレバ 著

ルディファングについてまず言っておくべきことは、私たちが単なるごろつきや盗賊、詐欺師や殺し屋ではないことよ。その全部だからね。私たちはこの月に見捨てられた地で正義を保とうとする、全ての者にとっての災厄になる。それで満足してる。

道徳心があるなら、捨ててしまいなさい。善行をしろとしつこく言ってくる、倫理というちっぽけな良心はもう必要ない。必要なのは周囲に先駆けて進み、頂点に達するためなら何でもする意志だけよ。そうでなければ生き残れない。

私たちの主な資金源はエルスウェア内外での密輸よ。砂糖の売人とシロディールに行ってもいいし、小さな街で盗賊のリデザと協力してもいい。運が良ければ、私と一時的に仕事をするかもしれない。いずれにせよ、遠からず財布にはゴールドが流れ込むでしょう。ただ質問をしないように。細かい部分は知らなければ知らないほどいい。

ああ、それからもう一つ。この役に立つ案内をここまで読んだなら、もう出ていくことはできない。少なくとも、生きてはね。だから新しい生活に慣れなさい。それも急いで。

畏怖のマントを纏えTo Wear Dread Mantle

ヴェン・イロ・ドセク・カン・フーン

武具は強く、精神を高め
畏怖のマントを纏え

我らが故郷の神々は
血を流し四つに裂かれ
卓越した教えを授けた

ヴェン・イロ・ドセク・カン・フーン

王国は倒れ民はさまようKingdoms Fall People Wander

ノル・ファ・インドヴィト・ケル・ウソク

兄弟の他に頼れる者はない
王国は倒れ民はさまよう

我らが番は決して終わらぬ
壁よりも長く立ち続け
玉座よりもさらに強くあれ

ノル・ファ・インドヴィト・ケル・ウソク

獲得した動物の記録Beast Acquisitions Log

新しい戦利品:

ジャッカル、オス:
身はしまってないが、皮は見栄えがいい。肉はシチュー用にとっておいたほうがよさそうだ。皮と頭蓋骨は20ゴールドぐらいで売れるはずだ。

センチパンサー、オス:
がっしりした獣だ。栄養状態がいい。皮は左後ろ足に傷があるだけ。罠の傷だろうか?皮の価値を大きく下げるものではない。こいつはリンメンで丸ごとあのハイエルフに売るのがよさそうだ。あの足長の紳士どもは、こういう動物を役立てる方法を何も知るまい。情けない連中だ。おそらく200ゴールドになるだろう。悪くない。

センチライオン、メス:
骨格が丈夫で、肉は硬いが、脂肪がたっぷりある。おそらく木工職人用の獣脂を作るために使えるだろう。新しい弓もほしかった。皮自体もいい値で売れそうだ。100ゴールドぐらいか。いい絨毯になるかもしれない。取っておくのもありか?

センチライオン、オス(白い!):
こいつは1年ぐらい見ておけ。金を持っていて、丸ごとオルシニウムに連れ帰る意思のあるオークの買い手を探せ。問題にするほどの傷はほぼない。サイズは巨大だ。2000ゴールドは下らないだろう。たっぷり食事をとらせるのを忘れないように。だが必要なら、鎖の轡をためらうなよ。

獲物として戦えFight As Prey

レト・アシュトゥ・ジン・フォング・ダン・ロ

ドラゴンの名誉は忘れよ
獲物として戦え

逃げて隠れ、待ち伏せて襲いかかれ
無数の切り傷にて負傷させよ
欺きは誇りに勝る

レト・アシュトゥ・ジン・フォング・ダン・ロ

甘いムーンシュガーの茎Sweet Moon-Sugar Cane

(カジートの労働歌)

ウッドエルフにはロトメスがある
肉と胆汁で出来た酒
トカゲは虫と枝を喰う
どれも全くひどいもの

だが砂を歩く我々は
人生最高の快楽を知っている
この上なく甘く、美味な食べ物
ムーンシュガーこそ我々の宝!

コーラス
月光に浸った畑は
夏の雨をたっぷりと浴びて
輝く緑を高々と伸ばす
甘いムーンシュガーのサトウキビ!
甘いムーンシュガーのサトウキビ!

双子月よりの贈り物
その満ち欠けと共に
我らの器と、魂を満たす
甘いムーンシュガーのサトウキビ!
甘いムーンシュガーのサトウキビ!

上等のステーキに振りかければ
甘美なる輝きを放ち
サーモンに塗りつければ
すぐにぺろりと平らげる

甘いお菓子に入れて焼く
味見はいかが?
急いで全部食べなさい
無駄にしたらもったいない

コーラス
月光に浸った畑は
夏の雨をたっぷりと浴びて
輝く緑を高々と伸ばす
甘いムーンシュガーのサトウキビ!
甘いムーンシュガーのサトウキビ!

双子月よりの贈り物
その満ち欠けと共に
我らの器と、魂を満たす
甘いムーンシュガーのサトウキビ!
甘いムーンシュガーのサトウキビ!

救援求む:メイアヴェイルHelp Wanted: Merryvale!

スイートウォーター農場は予期せぬ問題が発生したため、健康な作業員を探しています。

潤沢な報酬を保証します!

興味のある者はメイアヴェイルの街にいるラクザルゴに話してください。

叫びが破滅への道Devastation is the Scream

ミク・ワノ・フェル・テト・プリヌク

鉤爪でも、尻尾でも、牙でもなく
叫びが破滅への道

石も兵も裂く
敵に沈黙させ
喉に叫びを留めよ

ミク・ワノ・フェル・テト・プリヌク

恐ろしい鳥:その生態Terror-Birds: Up Close and Personal

ダルダーフィン 著

私は捉えどころがなく危険な恐ろしい鳥を探すため、北エルスウェアのより人里離れた地域を訪ねるという、唯一無二の素晴らしい機会を与えられた!現地ではクラサートと呼ばれるこの巨大で恐れを知らぬ猛禽は、とてつもなく攻撃的な性向を持ち、知能が高く、かつ見目麗しい存在である。可能な限り接近するつもりだ。

カジートの戦士たちはしばしば、自らの獰猛さを証明するためにこの動物を単独で狩るが、勝利と同じくらい頻繁に死ぬ。この肉食動物を甘く見てはいけないのは明らかなので、接近する際には最大限の注意を払わねばならないだろう。

* * *
私は若いオスの恐ろしい鳥を追跡して、テンマールの鬱蒼と茂ったジャングルへ入り、夜の間ずっと観察し続けた。なんと雄大な生き物だろう!私がこれまでに会った最大のオークやノルドよりも明らかに大きい。体重は年老いたダルダーフィンの10倍もあるだろう!見せたいものだ。彼が羽を揺らし、翼を広げるところを!長いアーチ状の首が左右になびき、暗いビー玉のような目は月の光を受けて輝く。メスに向けて誇示しているのだろうか?私の存在を察知して、警告を発しているのだろうか?

* * *
いやはや、危ないところだった!あの素晴らしい鳥が空を飛べず、木登りもできないのは幸いだった。でなければ間違いなく私は命を落としていただろう!あれは警告などではなく、合図だったのだ。もう少しだけ近くまで歩み寄ろうとした瞬間、私は突然、もう3羽の恐ろしい鳥に囲まれていた!彼は単独ではなく、群れのための偵察として行動していたのだ。実に見事だ!あの生物が持つ知能には驚いた!

恐ろしい鳥は影に隠れて移動するのに適している。羽根は濃い青色、あるいは埃がかったような黒に見え、喉の部分に印象的な、血の斑点のような模様がある。実に恐怖を誘う姿だ!彼らが私を罠にかけた時、そのうちの1羽がセンチを追いかけ、強烈な蹴りで仕留めるところを見た。そこから鳥は鉤のようなくちばしを凄まじい力で突き刺し、肉も骨も貫通してしまった。ハイエルフの動物園では絶対に見られない光景だ。恐ろしい鳥はムーンシュガーの草花を食べると言われたが、それは違う!彼らは血に飢えた猛禽だ!

夜を通して、私はこの群れが接近してくる全てのものを攻撃するのを見た。彼らが集団でアンテロープを殺しておきながら食べなかった時、私は何かがおかしいと思った。巣が近くにあるに違いない。だから接近して見にいくべきだ。他の人にはお勧めできない。ものすごく危険だからだ!

* * *
恐ろしかった!群れの狩場に近い小さな洞窟の中にいるが、ここには枝と破れた布地、羽根で作られた巣がある。心なき鳥の群れが作ったものにしては非常に精巧だ。また、巣には卵がいくつか入っている。卵は青い筋の入った暗い楕円形のオニキスのような見た目で、それぞれが私の頭ほどの大きさだ。実に素敵だ。だがこの美しい卵に触れたくはない。触れれば私の匂いで両親は卵を捨てるか、あるいは破壊さえしてしまうかもしれない。私は他の種がそういう行動を取るのを見たことがある。残念ながら、メスが1羽戻ってきたので、とりあえずはこの洞窟から動けない。

* * *
この雄大な鳥も夜中は目がよく見えないので、暗闇が訪れた機会に逃げ出すことにした。正しい判断だった。逃げたすぐ後に、さらなる群れが到着したからだ。恐ろしい鳥は、子供の世話に関しては公共的な性質を持っているようだ。

そろそろ文明の地へ戻るべき時だ。密猟者たちがエルスウェアに来ており、この雄大な生物をスポーツとして狩ろうとするだろう。読者のみなさんが私と同様に、そのような活動に対して反対の声を上げてくれることを願っている。動物には敬意を払うべきであり、保存に力を尽くすべきである。娯楽のため、あるいは恐怖から殺すべきではない。動物はこの環境の価値ある一部で、あのような見事な生物が消えてしまったら残念だ。

空の牙のジュン・ジョーへTo Jun-Jo the Empty Fang

空の牙のジュン・ジョーよ、お前の時は来た。お前の体は十分に弱く、魂は十分に強く、心は十分に冴えている。

空の牙のジュン・ジョーよ、今登らなければならぬ。神々がかつてお前の祖先を呼び、お前の後の人々を呼ぶように。

山頂へ行け。風がお前の毛皮をなびかせ、太陽が顔へ降り注ぐに任せよ。木々のみを支えとせよ。その針と種、樹脂を。形なき地をさまようため、肉体は拒絶せねばならない。お前の形は縮小するが、心と魂は大きくなるだろう。

お前は渇きで水を求めるだろう。飲め。そして1日ごとに、飲む量を減らすのだ。残された毛は抜け落ちるだろう。残された心臓は遅くなるだろう。呼吸は止みつつある風のようになるだろう。

そして体が用意を整えたら、天は霊と化したお前の魂を待ち受け、その秘密で満たすだろう。体は魂の帰還を、双子月とラティスの雄大さに見守られながら待ち受けるだろう。

空飛ぶ神々の叡智Wisdom of the Flying Gods

マグニウス・カルッサ 著

我々の言葉は位階を問わず広がっており、その外の人々にも遠からず広められるべきである。真なる主の御言葉を書き記し、教える時が来ている。我らの上空を飛ぶ神々の御言葉を。私は耳を傾けたため、聞いたことを伝えよう。彼らの知恵を。彼らの命令を。

以下に記すのは私が理解したドラゴンの言葉であり、その言葉が何を意味するかについて、不完全ながら解釈したものである。

* * *
「ドブ・ニファ―ス・ウィーセロス」
ドラゴンは蔓の罠を恐れない。

汝の力を自覚せよ。低劣なる存在を引き倒す弱さに陥ってはならない。

* * *
「ニーンゼイ・ミール・ワー・ヴィーク」
裏切りは敗北への道である。

裏切り、文字通りに言うと毒に侵された兄弟は、同盟に穴を穿つ。それは終わりの始まりと成り得る。

* * *
「ニーンゼイ・ミール・ワー・クロングラー」
裏切りは偉大なる勝利への道である。

主たちは賢い。時として、同盟を破ることは勝利を得るために必要である。

* * *
「ルル・ジョル・ロク」
不安定な時は、起ち上がれ。

私は最初これを勘違いした。というのも「ロク」は単に「空」を意味し、それゆえ空を見るべきだという意味だと思ったのだ。だが今では完全に理解している。これは空を見て上空に助けを求めよという命令ではない。空を飛ぶことの隠喩なのだ。「起ち上がれ」。すなわち力を振り絞り、激しい風を越えて上に突き進めということだ。地上の安全を求めてはならない。起ち上がり、より偉大な栄光を求めるのだ。

* * *
「ヌノン・メイ・ボ・ストラン・ヴォコスティード・ナール・ソブ」
嵐の中を飛び、雷に驚くのは愚か者だけである。

周囲の状況に注意せよ。環境を見ないか、目標に集中しすぎて周囲の明らかな危険を忘れることがあってはならない。

* * *
「デイ・オン・フォルーク・フェイ・コ・ヴェン・アールク・ロン」
信じ難き霊魂は風と雨の森をさまよう。

自分が何を見ていると思っても、もう一度見返すこと。より注意して見よ。さらに合理的な説明はあるか?

注釈:「デイ」という語はやや粗雑な直訳のようである。本質的には、これは「誤り」を意味するが、「笑えるほどの誤り」という含意がある。主張する者を笑っているのである。「オン」はそれよりもやや漠然としている。おそらく「魂」のようなことを意味しているが、それよりも空虚なもの。生命を欠く何かだ。

* * *
「ニド・ジード・ニド・クン」
月なくして月光なし。

汝の力の源を間違いなく確保せよ。その力がどこから来ているかを知り、あって当然のものとは考えぬこと。

* * *
私が主たちのそばにいた時に聞こえてきた知恵は、ほんのわずかな断片に過ぎない。私は彼らの古き言語を十分に理解できると感じるが、言葉の中にある知恵にしっかりと耳を傾けなければならない。可能な限り、私はそばに留まるつもりだ。私は重要人物ではないが、義務勘によって耳を傾ける。そして皆が彼らの知恵を聞けるように、私は報告する。時が来たら、さらに伝えよう。

賢きカイル・ペルワと大いなる自慢 第1巻Clever Kail-Perwa and the Great Boast, Volume 1

最高顧問ヴェルシデュ・シャイエの桂冠詩人、ナラエ・ポレクの語り

かつてアカヴィリの地には、カイル・ペルワという賢い女がいた。彼女は蜘蛛が糸を紡ぐように、魅惑的で美しい言葉を紡いだ。だがこの賢い舌には慢心の口が付いていた。

「生者でも死者でも、アカヴィリで私の機知に適う者はいないわ!」カイル・ペルワはある日、そう宣言した。

彼女の両親は黙らせようとしたが、カイル・ペルワは自分の言葉を撤回しなかった。彼女はそれを1度、2度、3度と繰り返した。そして3度目の時、彼女の言葉はあまりに確信に満ちた大声であったため、言葉は死後の世界にまで響き渡った。

「私ぐらい賢い者は誰もいないのよ!」

カイル・ペルワの祖先は皆、彼女の言葉に気分を害したが、ある霊魂は特に強く侮辱を感じた。それはその機転で多くの偉大なる勝利を得たハロ・バナル将軍の霊魂だった。将軍はいつも自分の功績について謙虚だったので、子孫がそれを範例としなかったことを不快に思った。

「カイル・ペルワは生者と死者の誰よりも賢いと主張している」と将軍は言った。「私が生者の世界へ旅し、あの慢心の言葉に真実があるかどうかを確かめてこよう」

ハロ・バナル将軍は生者によって大いに尊敬されていたので、彼の霊魂は死後の世界を去って、定命の者たちの領域に入っていけるほど強かった。将軍は今、その霊体の外見を黄金の鎧に身を包んだ戦士に変えてやって来た。彼は風のように素早くカイル・ペルワの村に向かい、彼女を探し求めた。

将軍はカイル・ペルワが村の端で、家のためのハーブを集めているところを見つけた。一瞬だけ、彼は躊躇した。将軍は自分の子孫が賢いだけでなく、仕事熱心でもあることを知ったからだった。だから彼はカイル・ペルワにその慢心した生き方を改め、謙虚に生きるチャンスをもう一度だけ与えようと心に決めた。

「カイル・ペルワを探している」とハロ・バナル将軍は言い、自分の存在を知らせた。「お前だろうか?」

カイル・ペルワは顔を上げてうなずき、手のひらから泥を払い落とした。「そう、私です」

「あなたはいかなる生者と死者よりも賢いと主張していると言われているが、それは本当だろうか?」

カイル・ペルワは立ち上がって真っすぐ背筋を伸ばし、自信に満ちた笑顔を将軍に見せた。「ええ、そのとおりよ。私よりも賢い者はいない」

「随分と大きなことを言うではないか」と将軍は応じた。彼の口調は冷淡になった。「そもそも、死者に対してどうやってそのことを証明するのかね?」

カイル・ペルワは肩をすくめた。「死者が私の言葉を気に入らなければ、私に自分の能力を示してくれればいい!霊魂だって生者の地を訪ねてくるぐらいのことはできるでしょう?」

「よかろう」と将軍は厳かにうなずいて言った。「これから三日三晩の間、お前は自分の祖先の中で最も賢い者たちの訪問を受ける。自分の能力を彼らに示せば、お前の自慢は真実となるだろう」

突然、カイル・ペルワは怖くなった。この見知らぬ男はなぜそんなことを言うのだろう?

「あなたは何者?」と彼女は聞いた。声が震えていた。

「私はお前が第三夜に会うことになる者だ」とハロ・バナル将軍は言った。その声は力強く、その眼差しは一切ぶれることがなかった。「私こそお前を誰よりも賢いと認定する者だ。お前がその力を示せればな。そしてその自慢が賢い嘘に過ぎなかったと分かれば、お前に罰を与える者だ」

そう告げると、彼は姿を消した。

賢きカイル・ペルワと大いなる自慢 第2巻Clever Kail-Perwa and the Great Boast, Volume 2

最高顧問ヴェルシデュ・シャイエの桂冠詩人、ナラエ・ポレクの語り

カイル・ペルワはその夜、なかなか眠れなかった。黄金の戦士は彼女の祖先の中で最も賢い3人の訪問を受けると言っていた。カイル・ペルワが3人全員に対して機知を証明するのに失敗すれば、彼女は罰せられるという。しかしどのような罰なのだろう?

カイル・ペルワは賢かったので、自分を訪ねてきた黄金の戦士が祖先の霊魂だと分かった。とすると、霊魂には彼女に対して、自分の判定に応じて大いなる幸運か不運を授ける力があるのだ。本当に怒らせてしまったら、彼はカイル・ペルワを死後の世界まで引きずっていくかもしれない。

この3つの試練を突破できるだろうか?失敗したら殺されてしまうのだろうか?そうした疑問が、カイル・ペルワを夜遅くまで目覚めさせていたが、ついに彼女は眠りに落ちた。

カイル・ペルワが次に目覚めた時、彼女は本当に目覚めてはいなかった。彼女には自分が夢の中にいることが分かったが、夢の中でこれほど意識がはっきりしているのは初めてだった。本当に、まるで別の領域に転送されたような感じだった。

そしてなんという奇妙な領域だったろう。彼女の周囲の大地は薄い水の層で覆われていて、彼女の足を冷たく濡らしていた。上空は限りなく白かった。目につく唯一のものは、水中から突き出した歪んだ黒い木だった。そして木の隣には赤い服を着た女が1人いた。

カイル・ペルワは、彼女を判定する第一の霊魂だと即座に理解した。

赤い服の女は微笑んだ。貴族のような物腰の若くて美しい女で、彼女が口を開くと、その声は大嵐を予告する風のように響いた。

「私はあなたを裁きに来ました」と赤い服の女は言った。「あなたは私よりも賢いと言ったのですから。あなたの祖先として、私には賢さを試す権利があります。我が審判を受け入れますか?」

カイル・ペルワは深く一礼し、「受け入れます」と言った。

「なら、私の与える課題は簡単です。私のところまで歩いてきなさい。それだけです」

カイル・ペルワはその言葉に不安を抱いた。赤い服の女が言うほどに課題が簡単だとは思えなかったからだ。しかし、彼女にできるのは前に進むことだけだった。だがカイル・ペルワが歩くと、どんどん遠ざかる方向に移動していることにすぐ気づいた。まるで木と赤い服の女が、カイル・ペルワが前に歩くのと同じ速さで後退しているかのようだった。

「何もかも見た目通りではないんだ」とカイル・ペルワは考えた。「この場所には、まだ私に見えていない仕掛けがある」

そこで彼女は背後を振り返ったが、見えたのは果てしない水だけだった。見上げれば、果てしない空があるだけ。しかし下を向くと、彼女自身の姿が映っていた。そしてこの映った姿はありえないことに、赤い服の女の反対方向を向いていたのである。

カイル・ペルワはもう少しで笑い出すところだった!なんて簡単な仕掛けだろう。カイル・ペルワが前進すると、反射した像が彼女を赤い女から離れるように動かしていたのだ。霊魂に向かって歩くためには、彼女自身ではなく、反射した像を正しい方向に動かさねばならないのだ。

だからカイル・ペルワは赤い服の女に背を向けて歩き出した。奇妙な感じだった。なぜなら彼女が歩むたび、目の前の大地が遠のいていくように見えたからだ。間もなく、鈴の鳴るような笑い声が耳のすぐそばで聞こえてきた。向き直ると、謎の霊魂がすぐ目の前にいた。

赤い服の女は微笑んで言った。「お見事です、カイル・ペルワ。あなたは私の課題を解いた。でも、あなたは教訓に気づいた?」

カイル・ペルワは舌を噛んで首を振った。分からなかったからである。

「前に進むためには、後退しなければならない時もある」と赤い女は優しく説明した。「これを導きの言葉としなさい。まだ試練は2つ待ち受けているのだから」

こうして、カイル・ペルワは朝日と共に目覚めた。

賢きカイル・ペルワと大いなる自慢 第3巻Clever Kail-Perwa and the Great Boast, Volume 3

最高顧問ヴェルシデュ・シャイエの桂冠詩人、ナラエ・ポレクの語り

カイル・ペルワは明るい太陽の下のトカゲのように勝利に浸っていた。なぜ不安など抱いたのだろう?何せ、彼女より賢い者などいないのだ!決して受けるはずのない罰などをなぜ恐れる?

残る試練はあと2つ。カイル・ペルワはどちらも成功させる自信があったが、そうなれば彼女の自慢も証明された真実になるのだ!祖先たちはもしかすると、この勝利に報酬を与えてくれるかもしれない。

カイル・ペルワはその夜、安心してよく眠った。

前の時と同じように、彼女は夢の中へ入った。またしても、彼女の周囲の大地は薄い水の層で覆われており、彼女の足を冷たく濡らしていた。またしても、上空は果てしなく白かった。だが今度は黒い木も女もいなかった。その代わりに、黒いテーブルと2つの黒い椅子があった。椅子の1つには青い服を着た老人が座っていた。

カイル・ペルワは祖先の霊魂に一礼し、丁寧に「ごきげんよう、お祖父様」と言った。

「ああ、カイル・ペルワか。ついにこの老人とまみえる時が来たな」と青い服の祖父は挨拶した。「さあ、座ってくれ。試練を始めよう」

一瞬だけためらってから、カイル・ペルワは言われた通りにした。今度は歩いても仕掛けはなく、あっさりとテーブルまでたどり着いて座った。

「さて、お前の試練だが」と祖父は続けた。「とても簡単だ。私たちはティハセイの勝負を一度だけやる。お前の目標は、私が勝つのを止めることだ。分かったかな?」

カイル・ペルワはうなずいたが、彼女の胃はぐっと引き締まった。確かに、ティハセイなら何度もやっている。勝つためにはかなりの巧妙さが必要だが、カイル・ペルワはよく勝った。だが知恵と巧妙さをあわせ持つ、この老人の霊魂を相手にしても勝てるだろうか?

青い服の祖父は手を一振りして、ティハセイの盤を召喚した。ゲームの駒は真っ白で、濃い茶色の盤とくっきり対照をなしていた。彼はカイル・ペルワに合図をして、第一手を打つように誘った。こうしてゲームは始まった。

簡単な勝負ではなかった。カイル・ペルワが盤上に駒を動かすたび、彼女の手は震えた。彼女が攻撃しようとすると、青い服の祖父は決まって鉄壁の守りで返してくるのだった。そして彼がカイル・ペルワの駒を攻める番になると、その攻撃は無慈悲だった。たちまちのうちに、思っていたよりもずっと早く、彼女は敗北寸前まで追い込まれた。

ついに、カイル・ペルワはあと1手で負けると分かった。もう勝つことは不可能だし、敗北を逃れることすら不可能だった。彼女は賢かったので、このことは分かった。

だが、勝たなければならないのだろうか?突然、カイル・ペルワの目が大きく開いた。青い服の祖父は彼の勝利を止めろと言ったのだ。これが本当に簡単な課題なら、彼に勝つ必要など本当にあるのだろうか?

それ以上考えることなく、カイル・ペルワは盤の上を手で払いのけた。ティハセイの駒が散らばって、ポチャリと静かな音を立てて水の中に落ち、ありえないくらい深く沈んでいった。この単純な動作によって、ゲームに決着を付けることはできなくなった。どちらのプレイヤーも勝利できなくなったのだ。

青い服の祖父はくすくすと笑って言った。「見事だ、カイル・ペルワ。たったの1手で、お前は私の勝利を止めた。簡単だったろう?」

カイル・ペルワはあえいだ。呼吸が乱れていた。もう少しで試練を失敗するところだった。そして失敗は、死を招いていたかもしれないのだ。

「さて、こいつが教訓だよ」と青い服の祖父は首を縦に振りつつ続けた。「目に見えるものではなく、真実を探すこと。これを導きの言葉にするがいい。試練はまだ1つ待ち受けているのだから」

こうして、カイル・ペルワは朝日と共に目覚めた。

賢きカイル・ペルワと大いなる自慢 第4巻Clever Kail-Perwa and the Great Boast, Volume 4

最高顧問ヴェルシデュ・シャイエの桂冠詩人、ナラエ・ポレクの語り

カイル・ペルワは一日中絶望に駆られていた。第二の試練はあと少しで失敗するところだった。そして今、第三の試練が待ち受けているのだ。最後の試練をしくじれば、重い罰を受けるだろう。命すら奪われるかもしれない。

彼女はあらゆる選択肢を検討した。霊魂から守ってくれる司祭はいるだろうか?永遠に眠らなくていい薬は?しかし考えれば考えるほど、発想は現実味を失っていった。

カイル・ペルワはあまりに恐れていたので、夜遅くまで眠りにつけなかった。

彼女は再び夢の中で目覚めた。またしても、カイル・ペルワは果てしない水の大地と果てしない白の空に迎えられた。だが今回は、黄金の戦士が輝きに包まれて彼女の前に立っていた。その手には強大な黒い剣が握られており、それはカイル・ペルワには到底持ち上げられそうにないほど大きかった。

「お前は2つの試練を通過した」と黄金の戦士は言った。彼の声はいで立ちと同様に誇り高く、力強かった。「だがまだ私を越えてはいない。私の審判を受け入れるか、子孫よ?」

カイル・ペルワは素早く、一度だけうなずいた。反抗しても無意味なのは分かっていた。

「お前は自分の行動により、二度までもその賢さを示した」と黄金の戦士は続け、その強大な剣を両肩の上に乗せた。「だがお前の言葉の賢さはどれほどのものか?これがお前の最後の試練になる、カイル・ペルワよ。お前が全ての生者と死者よりも賢いと、私を説得してみよ」

人生で初めて、カイル・ペルワは何と言えばいいのか分からなかった。一体どんな言葉を紡げば、この賢い霊魂を説得できるのだろう?

「前進するには、後退しなければならない時もある」と赤い服の女は言っていた。

「あからさまなものではなく、真実を探すこと」と青い服の祖父は言っていた。

カイル・ペルワは目を閉じて考えた。彼女は自分が他の誰よりも賢いと証明するため、2つの試練を乗り越えた。だがそれが本当にあの苦難の目的だったのだろうか?カイル・ペルワは自分の賢さと機知を全て使って、これまでに学んだことと、これからすべきことを考えた。

次に目を開いた時、カイル・ペルワには真実が見えていた。

「できません」と彼女は黄金の戦士に言った。手が少し震えていた。「私が全ての生者と死者よりも賢いとあなたを説得することは、私にはできない」

「ほう?」と黄金の戦士は言った。彼の声は落ち着いていた。「それはなぜだ?」

「私はそんなに賢くないからです」とカイル・ペルワは答えた。「もし私が本当にそれほど賢ければ、そのような自慢は決してしないでしょう。私がこれまで会ったことのない人々と、これからも決して会うことのない人々がいます。そうした人々が私よりも賢くないと非難するのは、愚かなことです」

「なるほど」と黄金の戦士は言った。その表情からは何も窺えなかった。「お前が言うことはそれだけか?」

カイル・ペルワは深く一礼した。恥ずかしくて頭を上げられなかった。「今では、あのような自慢が一族の名誉への侮辱だと分かりました。謝ります」

その言葉と共に、戦士の表情が崩れてにやりと笑った。彼の鎧は貴族のローブに変化し、顔には長いひげが生えてきた。その時初めて、カイル・ペルワは目の前の霊魂が祖先の中で最大の名誉を受けている、他ならぬハロ・バナル将軍であることに気づいた。

「お前は罰を受ける危険も顧みず、私の前で謙虚になった」とハロ・バナル将軍は言った。「そのために、私はお前の過失を許そう。謙虚に生きるがよい、我が末裔よ。自らの限界を知る者以上に賢い者はいないのだから」

「ありがとう、ハロ・バナル将軍」とカイル・ペルワは言った。彼女の心は感謝で満たされていた。「その教えを決して忘れません」

こうしてカイル・ペルワはついに自らの祖先たちの知恵に目覚め、全ては無事に終わった。

古きアカヴィルはFor the Old of Akavir

ヘワ・オクシュ・ツァンドリ・タ

古きアカヴィルは
刀剣も盾も信じぬ

我らが最初の兄弟の歌
必要とされる時のための武器
アネクイナのドラゴンホーン

ヘワ・オクシュ・ツァンドリ・タ

古代の墓石Ancient Gravestone

〈裏切り者〉の首、ここに眠る

その名は歴史から消された

ジョーンとジョーデが空から落ちてくる時まで

その分断された身体を隠すために

降霜の月のクーデターThe Frostfall Coup

エルスウェアとアルドメリ・ドミニオンへの影響

異国観察のサピアルチ、タンデメン 著

アイレンが帰還しアルドメリ・ドミニオンを生み出した4年前、第二紀576年にユーラクシア・サルンはアネクイナ王家を殺害し、不法にリンメンの玉座を奪った。この事件が起きた原因と、ドミニオンがどう対処すべきなのかについて、いくつか見解を提出しておきたい。

同年の早い時期にレオヴィック皇帝はシロディール帝国全体でデイドラ崇拝を合法化し、これは即座に反乱を引き起こした。ヴァレン・アクィラリオスが自ら兵を進めて帝国を掌握しようと動き始めた時、ユーラクシア・サルンはある外交任務のために北エルスウェアへ派遣された。彼女は混乱を利用してニベン傭兵の大軍団を雇い、リンメンに進軍して味方として迎え入れられた。帝国の一部として、リンメンのヘマカル王は皇帝の特使を受け入れるのが当然だと判断した。致命的な誤りだった。

ユーラクシアはヘマカル王と他の王族を処刑し、自らをリンメン女王と宣言した。彼女の傭兵はユーラクシア兵の記章を身に着けて各地に広がり、素早く北エルスウェア全土を征服して、リバーホールドからリンメンに至る領地を制圧した。いったん権力の座につくと、ユーラクシアは急ぎ自分の地位を安定させようとした。彼女はさらに傭兵を雇い、死霊術師の教団の支援を取り付け、リンメンの支配を維持するために攻城兵器で防衛線を張った。カジートの民にとって、ユーラクシアの支配は望ましいものではなかった。彼女の統治はあらゆる意味において専制に他ならなかったからだ。

状況が落ち着き、事態が明らかになると、カジートは民兵を結成してユーラクシア兵と戦い、アネクイナの奪還を試みた。アイレン女王は同盟を確立してドミニオンを形成した際、カジートの民が北エルスウェアの支配を取り戻すために力を貸すと約束した。しかし、実際に部隊が派遣される前に三旗戦役が勃発してしまった。わずかな軍事顧問と不足していたゴールドの供給を除けば、カジート防衛軍は自力で何とかするしかなかった。たてがみの代弁者ガレシュ・リ卿がアネクイナまで出向いて民兵の指揮を執り、彼の導きの元で防衛軍はリバーホールドの街と、リンメン城壁外の領域の大半を解放しつつある。

残念ながら、リンメンはいまだユーラクシアの牙城であり続けている。その主な原因は王宮の周囲に配置され、街に直接狙いを定めている攻城兵器である。ユーラクシアは自らの支配が何らかの形で脅かされることがあれば街を破壊すると脅迫しており、ガレシュ・リにはそれを疑う理由がない。攻城兵器を始末するまで、ユーラクシアはリンメンの玉座を維持し続けるだろう。

三旗戦役が続いている限り、カジートが僭女王と呼ぶ専制君主を倒すため、ドミニオンが勢力を割くことは不可能である。我々としては資金と顧問を提供しつつ、戦争が終わるまでカジート民兵が持ちこたえてくれることを祈るしかない。さもなくばドミニオンは、エボンハート・パクトとダガーフォール・カバナントに対する戦争を終えた後、国境の内側の脅威を相手にする羽目に陥るかもしれない。

三つの月の物語The Tale of Three Moons

我らの民の最初の記憶よりも前の時代、しかしアズラーの薪が誇り高き獅子ローカジュの肉を奪ってから遥か後、我らが偉大なる母は泣いてため息をついた。兄弟の暗き心臓の運命に悩まされて。自分の広大な領地の丘と峡谷を歩き回りながら、彼女は鼓動から逃れることができなかった。渦巻く海の向こうからやって来る、微かだが止まることなく打ち続ける音から。大いなる闇の中のどこかで、月の獣の獰猛なリズムは加速し、激しさを増していった。

様々な姿形の子供たちが月の獣の冒涜によって倒れることを知っていた彼女は、星に向かって喉を鳴らし、ジョーンとジョーデのランターンを説得して空のガーディアンを呼び寄せた。この第三の月にしてラティスの盾は、その光をアズラーの砂の中でも最も純粋な心と従順なところへ投げかけた。彼女はそこの猫たちを隠された月の寝床と呼び、彼らに月の二つに分かれた道と慈悲深き剣の秘密を教えた。その時以来、彼らは偉大なる母を他のどんなカジートよりも愛するようになった。その愛の中に、心臓の鼓動によって歪められた全ての猫への同情を見出した。

愛されしアデプトたちよ。この言葉を心に抱き、我々がアズラーの戒律を守り続ける理由を知るがよい。我らは皆、隠された月の子供なのだから。

死と恐怖の贈り物Gifts of Death and Fear

エロク・ファ・オフシュ・ジリト・ケスン

全てのドラゴンガードよ忘れるな
死と恐怖の贈り物を

我らが敵は無限にして傲慢
我らのようには考えぬ
得ることのみを考え、失うことは思わぬ

エロク・ファ・オフシュ・ジリト・ケスン

死の中にこそ約束があるIn Death is the Promise

ネート・ザン・ウル・ジェンドライ・ツォリ

終わりは全ての者にやって来る
死の中にこそ約束がある

戦いに倦んだ剣は置かれ
戦いに傷ついた盾は脇に置かれ
全ての者は永き平和に休む

ネート・ザン・ウル・ジェンドライ・ツォリ

死霊術師:女王への報告Necromancers: A Report for the Queen

陛下

陛下との協定は我々の双方に実りあるものだと証明されました。陛下は不屈のアンデッド軍団を手にし、私は自らの技を実験するため、死体の尽きることなき供給源を得ています。私の力を用いようという先見の明ある支配者が他にもいたならば、闇の技がどれだけの進歩を見せていたことか。ぜひお考えいただきたい!

死体が潤沢に入手でき、ユーラクシア様の兵士に協力いただけるようになりましたので、我々はアンデッドを目覚めさせ、貯蔵するための死体工房をいくつか敷設しました。残念なことに、スカーや共同墓地でさえ、陛下が望む大規模な軍団を作るために十分な死体を擁してはおりません。工房に利用するため、さらなる死体が必要です。私に従う者たちは次の積荷を待ち望んでおり、すぐに処理する準備を整えています。

それから、〈裏切り者〉の身体の部位の捜索が順調に進んでいることを喜んで報告いたします。〈裏切り者〉を再生させるために必要な部位は全て、近いうちに手に入るでしょう。繰り返しになりますが、〈裏切り者〉はドラゴンへの支援の継続を維持し、保証するための鍵です。

もう一つだけ。私が荒野に隠れていることを発見したあの「問題」を処理するための命令は、すでにお出しになられたでしょうか?陛下の暗殺部隊があの、取るに足らぬとはいえ無視できぬ脅威を始末すれば、ムラームニルと兄弟たちもずっと協力的になるでしょう。

ズモグ・フーム
闇の技の王

試練の祭典The Proving Festival

ライジェ・パラク・ルリシアン 著

薪木の月14日

帝都の輝きに比べれば、ハコシャエは青白い光でしかない。我々の故郷は簡素で、生活は日々労働に満ちている。かつては柔らかかった私の手も、今では豆と埃で覆われている。それでも、我々は安全だ。

豪商は近く試練の祭典を始めるとの告知を出した。人生で初めて、祖先の名誉を汚す心配をしなくてよくなるのだ。私は長い旅と辛い労働を経て、ハコシャエを築く助けをしてきた。私の行いはきっと、私の前にここへ来た者たちを満足させたものと思う。

薪木の月18日

試練の祭典が始まったが、祭りはほろ苦い感慨に貫かれている。たった3年前、この同じ祝賀を一族の美しい領地で行ったことを思い出さずにはいられない。饗宴があり、踊りと音楽、他にも色々あった。千の物語が語られ、千の歌が歌われ、美しい装飾が私たちの故郷を覆った。

ハコシャエの試練の祭典は遥かに簡素な行事だ。食料に余裕がないため、饗宴はなし。我々の労力は今や故郷となったこの街を築くために使われたので、装飾もなし。偉大なる冒険の物語は疲れ果てた長老たちによって語られる。かつての労働の重荷が、今でも彼らの声にのしかかっている。

だがそれでも、豪商の決断には感謝している。アカヴィリを再び感じられるのはいいことだ。

薪木の月20日

私の妹が昨晩、奇妙な音を聞いたと言っていた。ゆっくりと、つまずきながら彼女の窓のそばを歩く音。彼女は目を覚ましたが、怖くて外を見られなかったという。

心配することは何もないと言っておいたが、気が重い。祭典は我々の祖先に裁定を仰ぐものだということは誰もが知っている。我々がどれほど見事に祖先を称えるかによって、彼らは我々に幸運か、もしくは不運をもたらす。だが生者の領域を乗り越えるということは、彼らが激怒していることを意味する。

昨晩ハコシャエを訪れたのが、私の祖先でないことを祈るしかない。祖先が私たちを常に見守り、死後の世界へ幸せに留まっていてくれますように。

薪木の月22日

試練の祭典は完了し、誰も悲惨な死を遂げはしなかった。妹の話はただの夢だったのだと今では思っている。彼女の悪夢を信じ込むとは、私が愚かだった。

しかし祝賀には奇妙な空気が漂っていた。通常は荘厳で動じない豪商が、今日は普段より深刻そうに見えた。彼は祭典について、そして我々が祖先を称えたことについて話した。私自身の父が何度も繰り返し語るのを聞いたことがある、普通の演説だった。

しかしその後、彼は我々の毎日の行いが祖先に対する我々の価値を証することになるのだと語った。我々は祖先の注意を要求し、馬鹿馬鹿しい試練や無意味な謎で自分の力を証明するべきではないと語った。ただハコシャエを築き、維持するだけでも、我々は祖先を十分に満足させたのだと。

こうした意見に、私は落ち着かないものを感じている。まるで豪商は来年、試練の祭典を開催したくないと言うようだ。もちろん、私はそうでないことを心から願っている。今年の薪木の月、我々はアカヴィリ文化の重要な一部を祝ったのだ。それを手放してしまうのは望ましくない。すでに我々は、あまりに多くのものを手放してきたのだから。

終焉への旅へJourney to Endings

ウブ・ヒアン・ジョンリ・イセク・トー

祝福を求め、許しを与えよ
終焉への旅へ

我らに帰還はない
兵士、狩人、巡礼者
魂と心は朽ち果てる

ウブ・ヒアン・ジョンリ・イセク・トー

十六王国The Sixteen Kingdoms

[上級学士ヒロ・シラによって収集された伝統的なカジートの童謡]

女王と宮廷のお通りだ
ネ・クイナルの君主
家畜の群れを追う遊牧のクラン
ネ・クイナルの民

王と宮廷のお通りだ
傲慢なリンメンの王
種々雑多なリムの商人
怒りっぽいリンメンの民

女王と宮廷のお通りだ
リバーホールドの女王
北方の剛毅な農民
リバーホールドの開拓者

王と宮廷のお通りだ
デューンの月の司祭
古き時代の司祭と学者
デューンの埃っぽい賢者

女王と宮廷のお通りだ
オークレストの支配者
砂の焼け付く砂漠の猫
オークレストの風に吹かれた盗賊

王と宮廷のお通りだ
ヴァーカースの戦士王
勇猛なる剣と弓の使い手
きびきび行進するヴァ―カースの兵士

女王と宮廷のお通りだ
メイアヴェールのラム長者
大胆な醸造業者と蒸留業者
メイアヴェールの喜ばしき発酵職人

王と宮廷のお通りだ
ヘルカーンの家畜公
油断なき鋭い目をした羊飼い
ヘルカーンの家畜追いの猫

女王と宮廷のお通りだ
アラバスターの吟遊詩人の女王
沿岸の熟練の詩人
アラバスターの劇作家

王と宮廷のお通りだ
ブルクラの商人王子
鋭く情報に長けた川の交易商
ブルクラの商人

女王と宮廷のお通りだ
コリンスの大工女王
高地の森の材木の猫
コリンスの彫刻師

王と宮廷のお通りだ
パーラッティーンの敬虔なる王子
神秘を誓ったアルケインのアデプト
祈りを捧げるパーラッティーンの司祭

女王と宮廷のお通りだ
テンマールの密林の女王
葉と枝の森の民
テンマールの木に住む毛皮の民

王と宮廷のお通りだ
トルヴァルの聖なるたてがみ
毛深い陛下のしもべ
トルヴァルのロイヤルガード

女王と宮廷のお通りだ
ケナーシアの女伯爵
砂糖を植え魚を釣る猫
ケナーシアの風に愛された民

王と宮廷のお通りだ
センシャルの港の公爵
船乗りと港の労働者
センシャルの海の悪漢

償いの石Stone of Atonement

真の猫がナミイラに堕ちるのを見ること以上の深い悲しみが、カジートにあるだろうか?仲間の輝く顔が突然真夜中のように暗くなり、憤怒と悲哀で顔を皺にするのを見せられる。我らが民はドロ・マスラを呪うが、ナミイラの踊る僕はかつてアズラーの純真なる子にして、ジャ・カージェイを受け継ぐ者だったことを決して忘れてはならない。

救済の及ばぬカジートはいない。ドロ・マスラの魂を倒れた我らの眷属の骨に押し付けることで、我々は彼らに償いの機会を与えられる。平穏は黄昏にのみ見出されるからである。だから、暗闇へ呼びかける我々の声に尻込みする者の言葉に耳を貸してはならぬ。清められた魂のためならば、どんな代価も大きすぎはしない。

聖なる記憶より消えたGone from Sainted Memory

テル・コ・アン・ブルジ・ティ・アーン

かつて知られた平穏は
聖なる記憶より消えた

大いなる苦痛の教え
星の裏の知恵
学ばぬのなら、死なねばならぬ

テル・コ・アン・ブルジ・ティ・アーン

誓約の石Stone of Commitment

アズラーの多くの戒律の中でも、何より重要な戒律が1つある。全ての魂は、大きいものも小さいものも、真っすぐであろうと歪んでいようと、月の祝福を受けていても、呪いに侵されていても、彼女の抱擁の元へ戻らなければならない。肉の生を霊魂の生から切り離す、月のラティスの向こう側で。この戒律の内に、隠された月の教団はその使命を見出す。

愛されしアデプトよ。我々は羊飼いの道を行かねばならぬ。祈りと歌を通し、我々は人々の魂を我らが女王にして母の左腕たる、指定された場所へ導かねばならない。他の者たちを救い我々は自らをも救う。

戦争、狩り、解放War, Hunt, Deliverance

ゴム・ハクー・ロート・ブ・ケンリ

多くの名と共に旅せよ
戦争、狩り、解放

戦利品を取る者も、栄光を求める者もいない
たとえ我らより美しくとも
神々の眷属を倒すためには

ゴム・ハクー・ロート・ブ・ケンリ

素敵な花に囲まれて踊ろうDancing Among the Flowers Fine

(カジートの舞踊歌)

[句切り様式その1:軽いスタッカート]
花に囲まれて踊りながら
歌であの人に呼びかける
気まぐれな月光のセレナーデ
花に囲まれて踊りながら

深い夢の中で眠りながら
あの人の蝶を追いかけて
夏が終わるなと願いつつ
深い夢の中で眠りながら

[句切り様式その2:各行をレガートで]
今や風景が開かれ
その秘密を歓喜と共に知らせる
秘密は虹のように輝き、暗く不吉で
柔らかく燃える炎で温める…

[区切りスタイルその1]
いくつもの世界を飛び回り
宝石の鳥を追いかけて
あの方の囁きを願いながら
いくつもの世界を飛び回り

属性の物語Tale of the Elements

最高顧問ヴェルシデュ・シャイエの桂冠詩人ナラエ・ポレクにより

ミィンは力強き杖を掲げ
東に明かりが灯る

ジサは優雅なる杖を振り
南は水中に沈む

ニファは怒りと共に靴を打ち付け
北に轟音が鳴り響く

イルニは色鮮やかな扇をはためかせ
西に風が吹き抜ける

隊長の手紙Captain’s Letter

陛下

訓練された我が一流の暗殺部隊は、陛下のお求めに従い、いかなる任務も遂行する用意を整えてあります。しかし、私の暗殺者は数が少ないため、補充の形式で援軍を付けることがより確実かと思われます。

敢えて進言いたしますが、シグナス不正規兵の兵士たちを指揮する権限をお与えいただきたく存じます。私はいずれにせよ、砂の渦の邸宅にて最後のドラゴンガードについてのカロ長官の報告を入手せねばなりません。

それに加え、あの傲慢なインペリアルにナイフを突き刺す機会をいただければ光栄です。あの男は私の傭兵たちが自分の兵に劣ると考えており、そのために私は彼を憎んでいます。

サウリニア隊長

脱走の機会A Window for Escape

夜の礼拝の後でミドゥナと話せ。

2日以内に到着する荷車について伝えろ。

準備を。

追放の石Stone of Banishment

償いへの道はしばしば、憤怒と自己憐憫の影に飲み込まれる危険を伴う。この道はことあるごとに振り出しへ戻り、罪人に繰り返し、自らの罪に向き合うことを強いる。時と共に、苦悩するドロ・マスラは真理を受け入れ、教団の奉仕を通じて救済を求めることもあるが、多くの者は抵抗する。そうした憐れむべき者に対しては、追放が唯一の手段である。

祈りと歌、そして切り裂く剣により、我々は異なる世界をつなぐ道の安全を保っている。我々はこの仕事に大いなる名誉を見出すが、大いなる危険をもまた見出す。ナミイラが他の何にもまして、狩人の心臓を渇望していることを忘れてはならぬ。アデプトは戦争の苦い果実の奥に隠れている、平和の種を探さねばならない。

敵を恐れ、師の言葉を聞けFear the Foe, Heed the Teacher

ウドゥ・エワット・ピクラ・ナトセイ・ブリン

大胆な爪、終焉の声
敵を恐れ、師の言葉を聞け

風のごとく動き、川のごとく曲がれ
勝利の前に生き延びねばならぬ
傷を憎み、死を避けろ

ウドゥ・エワット・ピクラ・ナトセイ・ブリン

怒りアルフィク:コレクションThe Angry Alfiq: A Collection

リンメン魔術師ギルドの記録係ティバールによって文字に書き起こされたもの

[記録係のメモ:怒りアルフィクの話はカジートの物語において長い伝統を持つ。語り部たちが常に新たな話を選集に加えているため、全部でいくつの話が存在するのか知る者は誰もいない。表題の登場人物以外では、こうした話の共通点として短いこと、脱線の多さ、ユーモラスな結末がある。

一部の者にとっては意外に映るが、これらの話は多くの民間伝承と異なり、道徳的教訓や文化的価値を教えるためのものではない。どちらかというと、怒りアルフィクの冒険は手の込んだ冗談に類するものである。だからカジートの伝統に則り、耳を澄まして笑う準備をして、ここに伝える怒りアルフィクの物語の中でも、最も人気のある数話を聞いてもらいたい]

* * *

怒りアルフィクとセンチ

ある日、怒りアルフィクはとても可愛いセンチに出会った。それは彼がこれまでに見たどのカジートや毛皮のある生き物よりも美しかった。その瞬間、彼はこのセンチの愛を勝ち取るためなら、どんなことでもすると心に決めたのだった。

「あんたは意気地なしじゃない!」とサセイのいとこは笑った。「彼女の気を引けるの?」

「あんたは弱すぎるわ!」とキャセイの姉は笑った。「踏み潰されちゃうわよ!」

「お前は小さすぎる!」とパフマーの兄は笑った。「彼女に手も届かないだろう?」

だが怒りアルフィクは可愛いセンチの愛を勝ち取ると固く決心していた。彼は強くなるために昼夜を問わず訓練した。恋愛の本を沢山読んだ。分厚いかかとのついたブーツを4つも買った。こうした準備を整えると、彼は愛する女性の心を勝ち取るために出発した。

次の日の朝、彼は心と腰を痛めて帰ってきた。

* * *

怒りアルフィクとリュート

ある日、怒りアルフィクは旅の吟遊詩人と出会った。彼女は怒りアルフィクがこれまでに聞いたどの吟遊詩人よりも美しく演奏し、歌った。その瞬間、彼はこの吟遊詩人のそばで音楽を演奏するためなら、どんなことでもすると心に決めたのだった。

「タンバリンをやったらどう」と吟遊詩人は言った。「口にくわえて振ればいいわ!」

しかし怒りアルフィクはタンバリンを演奏したくなかった。

「ドラムをやったらどう」と吟遊詩人は言った。「前足で叩けばいいのよ!」

しかし怒りアルフィクはドラムを演奏したくなかった。

「うーん、あなたの体で、他に演奏できる楽器がある?」と吟遊詩人は聞いた。

怒りアルフィクはリュートを吹きたいと答えた。あらゆる楽器の中で最も優雅で、美しい音色を奏でるからだ。

吟遊詩人は笑うだけだった。彼女にはこんなに小さくて、前足の不器用な者がリュートを吹くなど想像もできなかったのである。そんなことは不可能。どう考えても不可能だった!

だが彼女が笑えば笑うほど、怒りアルフィクは誤りを証明してやろうと決心を固めた。彼は吟遊詩人にリュートを渡してくれ、演奏してみるからと要求した。吟遊詩人は面白がって渡した。

怒りアルフィクはにやりと笑って鋭い爪を1本出した。彼は素早く爪を走らせて全ての弦を一度にかき鳴らし、一つ残らず切断してしまった。

こうして、怒りアルフィクは笑いながら道を駆けて行った。すぐ後ろに怒り狂った吟遊詩人を従えて。

* * *

怒りアルフィクと口ひげ

ある日怒りアルフィクはこれまでに見た中で最も大きくふさふさの口ひげを見た。それは黒く分厚く、その生やし手であるカジートの腹まで伸びていた。その瞬間、彼はあのような素晴らしい口ひげを生やすためなら、どんなことでもすると心に決めたのだった。

だがいかに努力を重ねても、怒りアルフィクは顎に元々生えている毛をそれ以上伸ばすことはできなかった。様々な調合薬や、呪文まで試したが、何も効果はないようだった。

「この者が力を貸すわ!」とサセイのいとこが言った。「ただし家族でも、ゴールドは払ってもらうわよ」

怒りアルフィクはこの条件に同意し、サセイのいとこは仕事に取り掛かった。いとこはタールを接着剤にして羽根をどんどん重ね、怒りアルフィクの顎につけた。仕事が完了すると、彼女は荷袋から鏡を取り出した。

怒りアルフィクは怒ってフーッと声を上げ、サセイのいとこの敏感な鼻のあたりを鋭い爪で払った。いとこがわめいている間に、怒りアルフィクは自分のゴールドと、ついてに彼女のゴールドも全部取り、急いで家を去った。

「この者が力を貸すわ!」とキャセイの姉が言った。「ただし親戚でも、お金は払ってもらうわよ」

怒りアルフィクは再びこの条件に同意した。今度の姉はハチミツを使い、綿の塊を次々と彼の顎に付けていった。ついに作業を終えると、姉は怒りアルフィクを連れて行き、壁にかかった鏡を見せてやった。

怒りアルフィクは怒りで吠えて、キャセイの姉の手のあたりを鋭い爪で払った。姉がわめいている間に、彼は自分のゴールドと、ついでに姉のゴールドも全部取り、急いで部屋を去った。

「俺が力を貸そう!」とパフマーの兄が言った。「ただし、もしうまくいったら、お前が今持ってる金を全部俺に渡すんだ」

ためらったが、怒りアルフィクは同意した。そしてパフマーの兄は口ひげのあるどこかの知らない人のところに行って殴り倒し、その顎から器用に1本残らず毛を切り取った。彼は歯をむき出してニヤニヤしながら、その大きな毛の塊を怒りアルフィクに見せた。

怒りアルフィクは何度も唸ったが、それでもゴールドを手放した。確かにパフマーの兄は、とてもよい口ひげを渡してくれたからだった。

盗まれたワインの報酬Reward for Stolen Wine

関心を持たれた方へ:

我が主人は、盗まれたワイン3本の安全な返還に対して報酬を提示しています。質問はせず、こちらからも答えません。3本のボトルがどこにあるにせよ、互いに歩いて行ける程度の距離しか離れていないでしょう。いつもそうなのですから。

1本目は冷たい白ワインのボトルです。いつボトルに触れても冷たいのはなぜなのか不思議に思っていらっしゃるかもしれません。しかし深く考えない方が良いでしょう。

2本目は上質の赤ワインのボトルです。これを持ち上げると感覚が麻痺するでしょうが、取り乱す必要はありません。ボトルが時間どおりに届けられれば、感覚はまた元に戻るはずです。

最後の3本目は色の定まらない自家製ワインのボトルです。ボトルを持っていると激しい憂鬱を引き起こし、それに続いて容赦ない絶望感と感情的な無気力、最終的に自己破壊がやってきます。

これらのボトルのどれかが開けられた場合、主人はできる限り地下深くに埋め、かつその際に中身が皮膚に触れないよう細心の注意を払ってほしいと述べております。もし誰かがボトルの中身を飲んでいるところに出くわしたならば、その者は殺し、周囲一帯にある全てのものを焼き払うようにと仰せられています。

手付かずの状態で発見した場合は、どうかワインを私のところへ早急にお持ちいただきたい。私はステッチズの住居から決して動きませんので、あなたのご到着を心よりお待ちしています。

敬具
主人の忠実なる僕、ホフグラッド・キジョーセン

盗賊の謎The Thief’s Riddle

直そうとしていたものは

消え去った

蛇人間の墓へ

道筋と潮汐Trail and Tide

月の司祭フナル 著

どんな猫でも月を見れば、毛皮を照らす甘い光の愛撫を感じることができる。どんな猫も潮の満ち引きと、無視できない双子月の踊りのリズムを感じることができる。

しかしどんな猫にも、ジョーンとジョーデが優しきニルニと世界の陰の闇の間にある不毛な天空をさまよい、猫が虚無に向かって吠えることがないよう守っている時、彼らが発している囁き声が聞こえるわけではない。だからこそ月の司祭は子猫を導き、先頭に立って秘密の糸を辿り、月の運動と潮汐を教える。

真の猫は正しき道筋のために休むことなく狩り、ジョーンとジョーデが踊りながら空へ向かって辿った終わりなき道、を一つまた一つ、肉球の痛みもミルクを求める喉も構わず進む。ジョーンとジョーデは全世界にある砂糖の粒よりも多くの道筋を辿った。猫にとって、飽きて追跡を断念することは容易である。だからこそ、月の司祭は子猫を励まし、最も古い時代の物語を分かち合い、彼らが狩りへと戻るよう誘う。

全ての猫は、砂糖が丘のように積みあがる星の裏の砂場に憧れている。全ての猫は月光の合唱を夢見る。真の猫が知る喜びの音である。

だが、全ての猫が死に際してケナーシの優しい抱擁を知るわけではなく、全ての魂が彼方へ飛び、終わりなき温もりに浸るわけではない。だからこそ、月の司祭は性悪の猫を叱り、道を外れた者たちに打擲を加え、月が織りなす道へ戻るのを待たねばならない。

真の猫はつまずき、森の奥で道を見失い、恐るべき心臓に導かれた暗い踊りの誘惑に遭うかもしれない。恐怖が魂を捉え、精神を混乱させ、感覚を鈍らせるかもしれない。だからこそ、月の司祭は最も声高き猫となり、悪臭を放つ靄を吹き飛ばさねばならない。

道塞ぎのノーディグループNoordigloop the Clog

オークレストの下水道は、何と興味深い場所だろう。この腐敗した深淵では、驚異的な数の野生動物が見つかる!探検家としてもアマチュア自然学者としても、私の仕事にとってとてつもなく好都合だ。

正直に告白すると、私が下水道のシステムを探し求めてオークレストまで来た時には明確な目的があった。私は無形の緑スライムの標本が、表向きはオークレスト研究所で錬金術の研究をする目的で、遥か遠いマークマイアから輸送されたという噂を聞いたのだ。聞くところによれば、この生物は街を荒廃させた疫病が最高潮に達した時の混乱と不安の最中に脱走したという。スライムは下水道に流れ込み、そこに流れてくる病気に侵された残骸を吸収して巨大に成長し、さらに強力な毒性を獲得したという。

そこで私はメモ帳とペンを携え、危険を冒してオークレストへ向かい、下水道への入口を見つけた。廃棄物や残骸を漁る小さなスライムにはいくつか出くわしたが、巨大生物はいなかった。失望したが、先に進み続けることにした。そこで私は大きな穴と、そこを支配するかなり大きいスライムを発見したのである。私はそれを、道塞ぎのノーディグループと名づけた!

この見事な生物を眺め、私はこの大きさならば鈍重でおとなしいだろうと思った。怒れる粘液の波のように、私の方へ押し寄せてきた時の驚きを想像していただきたい!どうやって私の存在を感知したのだろう?見当もつかない!そしてより小さなボリプラムスが、周辺一帯に散らばった。これらは別の生物なのか、それとも強大なノーディグループの延長に過ぎないのか?さらなる研究が必要である。残念ながら、私はこれを隠れ場所から記しており、スライムたちが私を探している間にここから出るのはためらわれる。私はもう少しだけ待ってから、徹底的な調査ができるくらい近くまで、ノーディグループに接近するつもりだ。

もしかすると、あの震えるスライムのサンプルを私の錬金工房に持ち帰ることさえできるかもしれない。そうなったらどれほど素晴らしいだろう?

匿名の引き裂かれた日記Anonymous Torn Journal

ここの床は奇妙だ。どういう仕組みなのか分からない。この祠にはこの簡素な部屋以外にも何かがあると考えざるを得ない。魔術師ギルドから誰かを雇ってくる金があればよかったんだが、もう手遅れだ(アーヴィングのせいだぞ)。

とりあえずキャンプを張ろう。あの猫どもは月が大好きだ。夜中のうちに何か出てくるかもしれない。

18日目
夜中には何もなかったが、目覚めた時ブーツの中にサソリを1匹見つけた。無料の食料を無駄にする手はない(ジュロの言うとおりだった。少し火の中に突っ込んでおけば、毒は消える)。

それを見つけた時は、遺跡近くの崖を偵察していた。崖の表面から、風が漏れていたんだ。

何とか中に入れる程度に、裂け目を広げることに成功した。長い下り坂だった。

どうやら忍耐の甲斐はあったようだ。中に入ってみよう。

19日目
妙な場所だ?聖堂か?よく分からない。

床にはシミがある。古い血だ。間違いない。古い死の教団の隠れ家でも見つけたかと思った。だが、騒ぎの跡にも見える。幸いなことに、起きたのはずっと昔らしい。

奇妙さはさらに増していく。骨を見つけたが、驚きもしない。だが他にも死体がある。死体の肉が木のようになっている。皮膚は漆のようだ。瞑想の姿勢で立っているか座っている。埋葬か何かの儀式に違いない。しかし不気味だ。

20日目
昨晩はほとんど眠れなかった。ここではあらゆるものが反響する。夜中にあらゆる種類の騒音が聞こえる。多分、ネズミだと思う。
ここは光で目の錯覚が起きるんだな。あの変な死体の1つが今動いた。

猫のセレナーデA Cat’s Serenade

(カジートの恋愛歌)

コーラス
この者は歌を紡ぎ
一日中君に歌おう
愛してくれるだろうか?愛してくれるだろうか?

この者は千の宝石を盗み
愚か者を演じるだろう
愛してると言ってくれ。愛してると言ってくれ

確かに、君の母は賛成しないだろう
でも正直な気持ちを言ってごらん
君も望んでいるだろう

この者がマーラの指輪を買うことはない
でも星の光の下なら
君はこの者を抱きしめられる

コーラス
この者は歌を紡ぎ
一日中君に歌おう
愛してくれるだろうか?愛してくれるだろうか?

この者が求婚できる美女は無数にいる
でも必要なのは君だ
おお、どうかお願いだ

この者は月の光の下で君を崇拝する
でも朝の太陽がやって来たら
きっと逃げ出してしまうだろう!

コーラス
この者は歌を紡ぎ
一日中君に歌おう
愛してくれるだろうか?愛してくれるだろうか?

不死のマソックMathoc the Immortal

晩年においてさえ、マソック・ライザーは出会う者すべてに恐怖を引き起こした。彼は巨漢のブレトン戦士であり、その顔は彼が持つ盾と同様に傷だらけだった。彼は決して話さなかったが、他の者たちは彼が倒した恐るべき戦士や獣たちについての物語を伝えた。本人が聞いていない時、彼らは別の物語を囁いた。彼は殺した者たちの霊魂で、自分自身の霊魂を養っていると。

戦い続けている限り、不死のマソックは決して死ぬことがないのだと。

マソックはいつでも戦う準備が整っているように見えた。むき出しにした歯を軋らせ、必殺の一撃を繰り出すために肘を曲げていた。黒檀も砕けるほど拳をきつく握りしめていた。なぜマソックが常に戦いを欲するのか、誰もその理由を尋ねなかった。あまりにも恐ろしかったからだ。

たとえ尋ねたとしても、彼は答えることができなかっただろう。ドワーフのオートマトンに喉を潰されてから、彼は喋る能力を失った。巨人が彼の顎を粉砕して以来、彼はむき出しの歯を軋らせていた。同じようにして彼は肘を折り、まともには治らなかった。41年の間、彼は腕を真っすぐ伸ばすことができなかった。拳はウッドエルフが背中に矢を浴びせて以来、岩石のように丸く固まったままになっていた。治癒師はこれが矢の毒への反応で、治しようがないと彼に告げた。

マソックには戦い続ける以外にすることはなかった。殺した相手の霊魂で強くなるためではなく、他者が苦痛に悶えるのを見ることで、時として自分自身の苦痛を忘れられるからだった。いつの日か誰か、あるいは何かが、ついに彼を倒してくれるかもしれないと期待していた。

不死のマソックが戦い続けたのは、死ぬ覚悟ができていたからだった。

封印された帝国の召喚状Sealed Imperial Summons

your name

お前の業績には驚かされ続けている。実は、警戒が必要と思われる緊急事態が発生した。最大限の注意と警戒が要る。対応に遅滞が生じないよう、至急お前を召喚したい。同盟の都合に合わせて、下記の場所のどこかで連絡してくれ: ダボンズ・ウォッチの魔術師ギルド、バルケルガードの邸宅と預金庫ダガーフォールの王城だ。

急いでくれ。互いに、そう若くはないのだからな。

アブナー・サルン

放棄された命令Discarded Orders

パンシウス部隊長

ユーラクシア女王陛下とその宮廷死霊術師ズモグ・フームの両名が、リンメンの西境に危険なほど近い場所に、不明な魔法の力の高まりを探知された。即座にお前の部隊から人員を割き、付属の地図に指し示されている場所を調査せよ。

お前の任務は各地帯を調査し、変わった生物や出来事を記録し、目撃者は尋問のため、誰であろうと捕まえてくることだ。念を押しておくが、陛下は生きたまま連れてくることをお望みだ。

失敗は許されない。

レピダ副隊長
ユーラクシア第一軍団

忘れ去られたたてがみの痕跡On the Trail of the Forgotten Mane

調査官ヴィアニス・オラニア 著

依頼37、第一段階

忘れ去られたたてがみの埋葬地を調査せよとの依頼を受け取ったのち、私は危険を冒してリンメン・ネクロポリスへと向かった。ネクロポリスの歴史についての私の知識と、この哀れな「忘れ去られた」者についての手掛かりの乏しさを考慮するに、この人物があそこに埋葬されているとは思えなかった。だがより面倒で、可能性の低い答えを調べる前に、一番ありそうな答えを確認しておくべきだ。この失われた支配者を探すためにこの場所へ来たのは、きっと私が最初ではない。

リンメンの名が冠されてはいても、ネクロポリス自体はリンメンの「中に」はない。不可解ではある。しかしジャスミンの酒と見れば手当たり次第に飲むらしいあるブレトンの老女に尋ねたところ、興味深い情報を得た。この老女自身の研究によれば、ネクロポリスはなんと、今では顧みられないある地元の迷信を理由に作られたというのである。

老女にさらなるジャスミン酒を提供したところ、その迷信を教えてくれた。当時、当該地域の建築士たちは掘削を行う際、黄金の紐で何かの仕掛けを作ったという。その後彼らは掘削予定の場所を、紐を手にして歩き回る。紐が揺れたら、彼らはその動きを記録し、工事の計画を定めたのである。建築士たちは望ましい揺れが起きるまでに、かなり歩いたという。

さらなるジャスミン酒によりブレトンの情報源が気を失って倒れたため、建築士たちがどのような揺れを求めていたのか知ることはできなかった。彼女が自分の借家に戻ったのを確認してから、最初の目的地へ向かった。

ここから、ネクロポリスへの実際の旅について記す。

残念ながら記憶があまり定かではない。まずリンメンは迷惑極まりないユーラクシアの問題に対処中であり、ネクロポリスにいるだろうと期待していた司祭や番人は誰も残っていなかった。道の途上で出会った親切なアルフィクのアデプトが話したところによれば、人がいないのは私が入る少し前に「僭女王」ユーラクシアが起こした行動のためらしい。

当然ながら、私は依頼を終えねばならない。ネクロポリスの番人の不在は職務遂行を諦める理由にはならなかった。
しかし、わずかに気後れさせられる問題はあった。見たところ蘇生させられたらしいダルロック・ブレイの軍がいて、ドレモラなどで構成された部隊とネクロポリス中で戦闘を繰り広げていたことである。私はいつものごとく静かに通り過ぎようとしたが、たてがみの墳墓に到達するまでには、一度ならず戦闘しなければならなかった。

墳墓は静かなものだった!

だが残念ながら、それも長続きはしなかった。誰かと話したことを漠然と覚えているが、その後たてがみの最後の休息地のすぐ外の隅で目を覚ますと、私の帽子にメモが貼られていた。私の顔に当たるよう、実に不愉快かつ奇怪な貼り方をしてあった。何なのか考えたくもない暗黒の物質で殴り書きされていたのは、次のような言葉だった。

依頼を完了せよ。しかし、その答えはこのネクロポリスにない。お前は必要になったら呼ばれるだろう。

失われた会話は、どれだけ長く必死に考えても思い出せない。あの時ネクロポリスで起きたことで心に残っているのは、二つの勢力が復讐合戦をやっていた珍事を除けば、忘れ去られたたてがみを探す衝動だけだった。これまでの私の顧客は、私がいつでも依頼を完了する衝動を抱いていることを認めてくれるだろうが、今回のは違った。強いられている感じだ。また、強いられていることに不快感もある。

残念だ。私はどちらかといえば、時間をかけて情報を探すのが好きだ。きっといつの日か、リンメン・ネクロポリスで起きたことを知るために自分の足跡を辿り直そうと思う。強大なダルロック・ブレイと危険なメエルーンズ・デイゴンの争いを邪魔するつもりはないが、戻れば争いも終わっているかもしれない。もしかすると、この現在進行中の戦闘は、ユーラクシアの行動以上に番人が不在になった原因かもしれない。

それまでの間は、忘れ去られたたてがみの捜索を続ける。この人物が本当に存在していて、単なる噂でないことを祈りたい。

北エルスウェアへの案内Guide to Northern Elsweyr

インフラシア・マリウス 著

大帝国の辺境地域の中で、エルスウェアほど歓待を受けられる地は他にないかもしれない。人々の獣じみた外見に戸惑ってはならない。カジートは一般的に言って友好的で親切な民であり、訪問者を迎え、旅行者をあらゆる種類の品物やサービスで魅了することに熱心だ。気楽にくつろげる、穏やかな風と暖かい気候の場所を求めているのなら、これ以上の場所はない!

シロディールからエルスウェアに旅する場合、あなたはエルスウェア地域を構成する二大地方の一つ、由緒あるアネクイナに入ることになる。牧畜の街リバーホールドがあなたを歓迎するだろう。

この活気あふれる国境の街は、エルスウェアと大帝国の間を通る隊商と旅人がよく立ち寄る。広々とした街の広場は青空市場になっており、様々な品物が行商人の荷車から降ろされて売られている。交易商たちは旅に出ては戻るため、時間ごとに売り物は変化する。もちろん、値切る以外にもすべきことは沢山ある。〈消えた後悔〉宿屋が頻繁に提供している輸入品の酒は乾いた喉を潤し、 月の祝福の聖堂の静謐とした雰囲気はしばしの平穏を与えてくれる。また、改築中の歴史の館もある。歴史の館が完成した暁には、長く物語に満ちたカジートの歴史が展示されるだろう。

くつろいで再び旅に向かう準備を整えたら、リバーホールドから東へわずかに進めば、アネクイナの首都であるリンメンに着く。

リンメンへ向かう道では、エルスウェアの大地がカジートと同じくらい多様であることが見えてくるだろう。繁栄する都市に近づくにつれ、不毛のサバンナが開拓され、乾燥した牧草地が青々と茂る緑と、サトウキビの大草原へ移り変わっていくのが明らかになる。リンメンの高い壁の内側では、カジートが水を嫌うという偏見がひどく誇張されたものであると知るだろう。ここでは木や熱帯の植物が、街中に張り巡らされた人工運河に沿って育つ。この運河は王国全体に広がる水道から水を供給されている。水道は街よりも古く、遠い昔に建設された遺産である。水に沿ってぶらぶらと移動するのは、住民にとっても訪問者にとっても人気の散歩道だ。一年を通したリンメンの暖かさと、晴れの多い空模様のため、ここは帝国中から休暇を過ごしに来る者が多い場所である。ここで1日を過ごせば、カジートの歓迎がどこにも負けないことが分かるだろう!

少し冒険をしたい気分で、かなりの登山も気にならないなら、時間を割いてアネクイナ水道を辿りながら各地を回ろう。アネクイナの驚異を巡る間に、スカーを見逃すことは文字どおり不可能だろう。この地方の中心部に食い込んでいる広大な峡谷だ。上から見ても下から見ても息を呑む規模で、ここを見ないのはもったいない。もっとも、豊穣な水資源がわずかに手の届かないところにある光景は、西に広がる不毛の僻地にあって少々耐え難いと感じるかもしれない。

曲がりくねった峡谷、スカーを横断する決心をする前には、オークレストの街に立ち寄るのが自然だろう。リバーホールドがアネクイナの入口で、リンメンが首都なら、オークレストは商業の中心地である。壁に囲まれたこの古い街はスカーの崖沿いに位置し、アネクイナの分散した地方同士を結びつけるために、街の大きな橋を歓待の腕として伸ばしている。王国中、王国外からも交易商たちがここに来て、自分の商品を近隣のペレタインやヴァレンウッド、シロディールの商人に売りさばく。ここで売られていないものはほとんどない。ここのカジートは対価さえ払えば自分の尻尾すら手放すと言われているが、私はタアグラ語に流暢でないため、ニュアンスを掴み切れているかどうか自信がない。

都市生活の活気と慌ただしさに疲れたなら、景色を楽しめる静かな場所は沢山ある。メイアヴェイルの牧草地には穏やかなムーンシュガー農場が点在し、サトウキビの茎が陽気な収穫の歌と共に、涼しい風に揺れている。神々へ捧げられたカジートの聖堂は数多く、衝撃的なほど美しい。特にサンスパイアの前では、クヴァッチのいかなる大聖堂も小さく見えるだろう。しかし本当にエルスウェアでしか味わえない体験を求めるなら、僧房でモンクたちと瞑想して時を過ごし、献身的なモンクが持つ力と敏捷さ、技を見せてもらうといい。

私の言葉によってあなたがここまで来たのなら、さらに歩を進め、帝国の中でも最も素敵な地域への旅を始めてくれるよう願っている!

毛皮を持つ者たちの歌The Furstock Song

コーラス
賢いダギ、素早いサセイ、筋骨隆々のパフマーにセンチラート
アズラーが我々に贈り物を授けた時、たくさんの種類を授けられた
ハンサムなキャセイ、機敏なトジャイ、隠密のオーメスとアルフィク
形と大きさは違い、唯一無二の特徴がある!

木登りを愛するダギはみんなのお気に入り
ピンクで節だらけの膝で、ウッドエルフよりずっと上手く
枝から枝へ、素早く優雅に飛び回る
愛らしさは爽やかな真夏のそよ風に吹かれる羽根のよう

コーラス

助言を与えよう、センチの邪魔をしないこと
爪はカミソリのように鋭く、顎は骨を砕く
瞬きする間に、エルフをバラバラにしてしまう
戦いを挑むのは、死にたい時だけだ!

コーラス

我らの愛する母、アズラーは、アルフィクをとても小さく作った
だから彼らがしゃがむと、もう何も見えなくなる
これは魔法だ!と言うが、それはごもっとも
カジートにはどんなことでもできる!

コーラス

歴史の館を訪れましょう!Visit the House of Histories!

美しき北エルスウェアのあらゆる場所から集められた、驚くべき景観や音、匂いまでも含む、特別な文化的冒険をご体験ください。注意深く吟味された私たちのコレクションは、間違いなく感動と驚きをもたらします!

本日のツアーは、イラヤかイザンジにお尋ねを!

(追記:近日発生した盗難事件により、現在ツアーは実施しておりません。ご理解いただけますようお願いいたします)

埃と石を信じよFaith in Dust and Stone

ジェンナイ・ダブ・ツォング・ル・カブ

大地の獣よ
埃と石を信じよ

虫として生きるために戦え
隠れて影から襲うために
日と開けた空を恐れよ

ジェンナイ・ダブ・ツォング・ル・カブ

サマーセットの巻物

Summerset Scrolls

<強欲>The Insatiable

デイドラは目的を持つ獣だ。満足させるべき欲求を表わしている。なぜか?確実に知っているのはデイドラ公のみだが、こうした存在の力を自在に行使する者にとって、目的を理解することは極めて重要である。儀式を補佐するためにクランフィアを、巨人を倒すためにスキャンプを召喚などしないだろう。

〈強欲〉として知られる獣もまったく変わりはない。目的が消費することだと理解せずに、絶え間ない空腹の化身を招きはしない。他の目的はない。一度解放されたらどんな指示にも従わず、協議もしない。唯一の望みは生者を追って貪り食うことのみだ。獲物を巣へ連れ去り、獲物が想像を超えるほど長い間生き延びる、恐ろしくゆっくりとした宴でその内臓をじっくりと楽しむ。獲物の死体を群れに残しておく傾向があるため、彼らはそこに捕食者がいることを明確にして、恐怖の味を楽しんでいるのだと信じる者もいる。

命がなく、恐怖に襲われた場所を見たければ、そして一度肉体が与えられたらその怪物をなだめる術はないと承知しているのなら、捧げるものは下記の通りだ。

-餓死した人間かエルフの死体を置く。
-その舌を切り、それを食道に向けて口の中に戻す。
-太らせた定命者の血で舌を喉に流し込む。簡単にはいかないかもしれない。
-獣脂のロウソクを少なくとも6本、用意した死体の回りで燃やす。
-最後の火が消えたら、舌は死体から滑り出て、溶けた脂の中に収まる。
-3日後に、この肥大化した繭から〈強欲〉が現れ、恐ろしい仕事を始める。見届けるかどうかは自分次第だ。

「沈む島」の偏在The Ubiquitous Sinking Isle

照覧の大学の歴史管理人、ライルフィン 著

いかなる歴史家にとっても、真の仕事は虚構と事実を分けることにある。あらゆる種族の多様かつ互いに矛盾する文書を研究し、信ずるに足る共通の物語へと継ぎ合わせるのである。これには勤勉と規律が必要とされるが、何よりも大事なのは謙虚さである。真の歴史家は新たな証拠が現れた時、誤りを認めて自らの記述を修正する意志を持たなければならない。

新しい歴史家にとって最も有害な罠の一つは、裏付けのある記述に頼ることである。すなわち、複数の著者が同じ出来事を同じ手法で詳述していたら、その記述は本当だろうと信じてしまうことである。実際は、その逆だと考えるべきだ。社会的圧力や広く普及した文化的妄想は、しばしば全く同じ歴史的記述として帰結する。例えば、ネードの文書はしばしば「蛇たちの秋」と呼ばれる出来事に言及している。歴史によれば、何百もの蛇(多くはマンモス並みの大きさである)が大地から出現して町を飲み込んだが、ついにネードの槍の乙女、炭目の放浪者ラネヴによって倒されたことになっている。ネードの学者たちはこの秋を詳細かつ、ほぼ同一の手法で詳述しているが、我々は今日、この出来事が完全な作り話であることを知っている。

著者たちが意図的に嘘を述べているわけではない(そういう場合もあるが)。おそらく、古代の歴史家は出来事を忠実に記述しようと最善を尽くしたのだろう。残念ながら彼らには言語的手段や学問的洗練が欠けていたために、真実を伝えることができなかったのだ。そのため、広く受け入れられているが誇張されているように見える物語はどんなものであれ、厳格に検討しなければならない。また「繰り返される災い」、すなわち大きく異なる場所と時代において、同じ様に起きたとされている出来事にも注意すべきである。

「繰り返される災い」の最も明らかな例は、消える島の物語である。タムリエルの歴史は沈没し、隠され、消滅する島で満ちている。ヨクダ、ピャンドニア、アルテウム、ドラニル・キル、アイベア、スラス、そして(おそらく最大の)アルドメリスなど。消滅の原因はほぼ常に魔法的な性質のものである。多くの場合は傲慢な行いか、秘密を守ろうとした結果である。もちろん、これら全てについてこう問うべきである。こうした物語の中に真実はあるのか?私は疑わしいと思っている。

神話上の「沈没する」島を検討しよう。ヨクダ、スラス、アルドメリスだ。それぞれの島は居住する種族にとって祖先の故郷であり、3つの事例全てにおいて、敵もしくは運命が、傲慢なる行いを罰するため島を破壊した。レッドガードの場合は、愚かなソードシンガーたちが禁断の剣の一撃でヨクダ島を切断した。全旗海軍の戦士たちはスロードとその島スラスを、スラシアの疫病に対する罰として海に沈めた。そして我々の祖先であるアルドマーは、謎の災いを避けるためにアルドメリスの島を避難させた。おそらくは、エドラの恩寵から我々が堕落したことの結果として。

さて、新米の歴史家であれば、これらの物語を額面どおりに受け取るだろう。「複数の歴史が島は沈没したと言っているのなら、沈没したに違いない!」と。だが、どうかもっと深く検討してもらいたい。この「沈没する島」は文字どおりの出来事ではなく、むしろ一つの比喩だという可能性はないだろうか?

スラス、ヨクダ、そしてアルドメリスは単なる土地ではなく、社会的象徴である。時の中に失われた、文化的アイデンティティの体現だ。つまり、こうした島の切断や沈没の物語は脚色かもしれない。その起源が忘れ去られてしまった苦しみを説明するための、詩人の努力である。大陸が丸ごと1つ、剣の一撃で沈没したのか?我々の祖先は神秘的な半エドラの島からサマーセットへ旅したのか?私はそう思わない。これらの失われた島は事実と寓話の中間に位置している。この物語の中に真実が含まれているのは確かだろう。しかし真の歴史家は、全ての真理が文字どおりに描かれていないことを理解している。

アーティヴァルの詳述Ertival’s Recounting

悪夢だ!

目を閉じると、夢幻の暗闇の中に恐るべきものが見えてしまう。心を照らすロウソクの光の輪の向こうにぞっとする奇怪なものが拡がり、もはや目を覚ましていられなくなると襲いかかってくる。

不安を落ち着かせるためのあらゆる方法を試した。瞑想、催眠術、ハニーベリーティー。だが眠りに落ちた瞬間、私は再びあそこで待ち受けている恐るべきものに襲撃されてしまう。

絶望に駆られて、私は筆を取っている。夢の中に見えるものを書き記すことで、夜中に見る暗闇を追い払えるかもしれないと期待して。

夢の中で、私はアルテウムの穏やかな海辺に座っている。波が無限のエセルから砂浜に打ち寄せている。空にある太陽は低く赤く、その静けさで愚弄しているかのようだ。

そして、海の中から怪物が飛び出してくる。巨大で、寄生虫と海底の獣がまとわりつき、腐り落ちている。それは海辺に向かって進み、背後に真紅の泡を残していく。怪物の周囲の水は全て黒く濁り、魚は全て死に、風と音も止んでしまう。怪物の5つある頭はもつれあって互いに噛みつき、耳障りな叫び声をあげる。頭のねじ曲がった節がのたうちまわるのをよそに、その怪物はゆっくりと前に進み、破壊をまき散らす。頭の1つはほとんど腐った肉と骨でしかなく、吠え声をあげている時にさえ、海底の獣がその頭の腐肉を貪っているのが見える。頭が吠えるたびに死んだものが震えて踊り出し、その不浄なる力の操り人形になる。

第二の頭には無数の吹き出物と膿の痕、球根状の水疱があり、真紅と青緑色に光る液体が詰まっていた。それらが破裂して、しみ出した中身が互いに混ざり合う。混ざった液体はヒューっと音を出してバチバチと跳ね、燃えて煙を吹いた。他の頭はこの忌まわしき液体を歓喜と狼狽と共に舐めた。

第三の頭は星のない夜のように、窓のない部屋に置かれたオニキスのように黒かった。それよりもさらに黒いのは目で、太陽によって生じた長い影を、純粋な暗闇の覆いに引き込んでいた。

第四の頭は私から見えなかった。その顔に何があったかは分からなかった。

だが最後の、第五の頭は…それを見るのはあまりにも恐ろしかった。他の頭の数倍の大きさだったからだ。これが叫び声をあげるだけでも他の頭は震え、争いを鎮めた。この巨大な頭はほとんどが輪になった歯で出来ており、その上には恐るべき脳髄が乗っていた…醜悪なまだら模様で、しわと折り目が不吉で吐き気のする脈動に波打っていた。膿の汁と胆汁の線が、フジツボともポリープともつかない肉の窪みから滲み出し、表面で凝固して、空気を求めて喘いでいた。

そしてこの怪物の頭たちは私に注意を向けた。自分を見下ろすあの目に凍りついた。今も凍りついているし、これからも永遠に凍りついたままだろう。それよりもさらにひどいのは、奴らが一斉に歌う歌、破滅を招く不協和音。

ケトール・ア、エン・ガルサ!ベコール・ゲン、ゼマ・ジャ!
ウルヴォクスが待っている、
ウルヴォクスは目を覚ます、
ケトール・ア、エン・ガルサ!ベコール・ゲン、ゼマ・ジャ!

そしてこの恐怖の歌が最高潮に達した時、おぞましき夜が太陽に道を譲った時、私は遠くの地平線に輪郭を見る。海から姿を現す山だ。そしてその頂点から水の中に落ちていくのはさらなる怪物たち。数えきれないほど多く、名状しがたいほど恐ろしい。

彼らが来る。

私たちの方へやって来る。

そして太陽が完全に沈んだ時、私は叫びながら目を覚ます。

アラセルへのメモNote to Arathel

アラセル

何を考えてるかはわかってる。いいか、お前は大きな間違いを犯してる。会って話そう。

宿屋〈碇を揚げよ〉に行って、カジートのバーテンダーにデスランズ・エールを注文しろ。彼女は仲間だ。だから信用していい。とにかく急ぐんだ、わかったな?お前が死んでしまったら力になれない。

E

アリノールの星の瞳の花嫁The Star-Eyed Bride of Alinor

磨かれた琥珀の目、流れ星の尾のように束ねた髪
愛と喜びに燃える魂は、身籠った黄金の帆の下に

アリノールの星の瞳の花嫁
嵐と水しぶきに消えた
アリノールの星の瞳の花嫁
残酷なる運命が奪った

白鳥の羽根が、象牙色の花嫁衣裳になびき
届けたい誓いが、唇から滑り落ちた

アリノールの星の瞳の花嫁
波の底に消えた
アリノールの星の瞳の花嫁
海が墓となった

頭上に集められた雲は、マストから帆を引き裂き
棺の蝶番のように船体が軋み、船長が掴まれと叫んだ

アリノールの星の瞳の花嫁
故郷に戻ることはなかった
アリノールの星の瞳の花嫁
海と泡に溺れた

稲妻が海を叩き、風は大波と吠えた
白く輝く手を掴もうと腕を伸ばしたが、深淵に彼女は落ちていった

アリノールの星の瞳の花嫁
最期の言葉は私の名
アリノールの星の瞳の花嫁
今も無念に泣く

私は未だ浜辺をさまよい、海に目を凝らす
あの人の輝く顔が、微笑み返すのを見たくて

アリノールの星の瞳の花嫁
嵐と水しぶきに消えた
アリノールの星の瞳の花嫁
残酷なる運命が奪った

アルコンの森の群れThe Pack of Archon’s Grove

ソーンファングのゲロドロス 著

我々の族長がこの島への移住を選んだことに対して、多くの者が疑問を抱いた。サマーセットが我々にとっての安全な避難所だと、誰が思えようか?だが私は、彼女の決定に知恵が見える気がしつつある。

端的に言って、ハイエルフはウェアウルフへの対処法を知らない。隔離されていたため、この島では大した問題ではないように思う。賢明に振る舞う限り、かなりの長期間を注目されずに済むはずだ。

競合することもない。とにかく群れは、縄張り意識の強さで悪名高い。過去の対立で多くを失った。だがここには他のウェアウルフがほとんどいないし、群れとなるとなおさら少ない。我々は数を失うよりも増やす可能性が高い。

数を増やすといえば、族長がやっと説得できたことは有難い。群れを強化する必要があるが、唯一の方法は力によるものだ。ここには我々の祝福を喜んで受け入れる者がほとんどいない。旅人を捕らえて追い返すのは危険が伴うが、攻撃に備えて数を強化しなければならない。

今度捕まえた者は、うまく変えてやらねばならない。ウッドエルフの仲間をうまく変えられなかったのは残念だが、仕方がない時もあるのだ。

アルド・マラクの包囲The Siege of Ald Marak

攻城の名手、ゲルミア・デメトリウス 著

レマン王朝の領土拡大戦争中、帝国軍は大小問わず数えきれないほどの要塞に攻城を仕掛けた。ほとんどの場合、無慈悲な砲撃が迅速な降伏につながった。帝国軍の卓越した掘削と攻城技術、そしてアカヴィリの火の魔法と錬金術の見事な腕。その組み合わせは破竹の勢いだった。それでも、帝国と同等と自惚れる敵も中にはいた。ダークエルフの偽神、虚言のヴィベクはそんな敵だった。

数ヶ月の戦闘の末、レマンII世の軍はダークエルフを領地の奥深くへ退却させた。とうとうエルフたちはアルド・マラクの古い要塞に腰を据えた。確かに立派な要塞で、高く頑丈な壁と進入を阻む深い水のため、歩兵による攻撃はほぼ不可能だった。
トリビュナルを信仰する者たちは壁の内側に力を結集し、彼らの神の到着を待ちわびた。しかしヴィベクはやってこなかった。愚かな密偵の助言を受け、彼は別の場所、アルド・イウヴァルの近くの防衛についていた。そこは遠すぎて、攻撃に介入できなかった。

帝国軍は信仰と狂信の力をよく知っていた。背後の神に支えられたモロウウィンド軍との戦闘は愚かだった。長い攻城戦を戦う代わりに、帝国軍は大胆な計画を作り上げた。夜のとばりに紛れ、秘術師たちが水中呼吸の呪文を全軍に唱えたのだ。この魔法のおかげで重装備の軍隊がコロナティ湖を行軍した。遂に彼らは復讐に燃える幽霊のように姿を現し、警備の軽い門を突き抜け、乾いた焚き付けの束のように砦を燃やした。

おわかりのように、創造力と勇気は、破城槌やトレビュシェットと同様に攻城戦に役立つ。兵士よ、狐のように狡猾であれ。きっと役に立つ。

アルトマー文化への案内(決闘編)Guide to Altmeri Culture (On Dueling)

第47章:アルトマー的な武を競う様式

エドラの威厳ある遺産を引き継いだにも関わらず、我々アルトマーは下等種族の間ではびこる日常的ないさかいから自由ではない。知識と分別という観点から考えると、単純な不一致については会話によって解決するのが一番の方法である。ワインを飲みながら熟考することで、すぐに友情が和解をもたらすこともある。しかし、侮蔑の中には深く傷付くものもあり、そうなれば栄誉ある武を競う様式が唯一の和解手段となる。その場合、侮蔑された者は下記の規則に従う。

1.どちらも伝統的なアルトマーの決闘用フルーレを使用する。ロングソード、斧、フレイルなどはトリマニクの神聖な法によって禁止されている。フルーレは天然鉱水で洗浄し、完全に乾燥させた後で磨き上げる。

2.決闘の前に両者は相手の名前を暗唱しなければならない。それが適切と思われる場合は、母方、父方、血族の敬称も忘れずに付ける。言いよどみ、もしくは発音を間違えた場合は、そこでやめて最初からさらに二度繰り返し、相手の名前を暗唱する。

3.決闘者は決闘に全てを捧げなければならない。観客には、当事者たちが名誉を欠いた行動を取った場合に介入する権限が与えられている。名誉を欠いた行動には、相手の目への泥の投げつけ、決闘終了前の戦場からの逃亡、相手をさらに激昂させるような不快な言動などが含まれる。

勝者は倒した相手に思いやりを持って、謙虚な態度で接しなければならない。お抱えの医者や包帯など、傷を治療するためのあらゆる手段が役に立つ。敗者は自分の過ちを認め、自分の行動に対して謙虚に許しを請わねばならない。両者がこの規則に従えば、お互いの名誉を傷付けずに揉め事を解決できる。ニルンでこれ以上名誉なことはない。

アンベリーへTo Amberrie

アンベリーへ

さあ、二度は言わないわよ。信用してるからね、アンベリー!あなたは私が友達になった唯一のハイエルフなの。失望させないで!私たちはもう、もったいぶった態度を取る段階は過ぎたでしょう?イフレもご存じのとおり、私はああいうのに我慢が…ああ、手紙でも愚痴を言っちゃう!まあ、それはともかく。

私はある地位を得たの、それも大きな地位を。女王の密偵になったのよ!

いや、あなたも悪い噂を聞いたでしょうけど、そんなのは全部嘘よ!あなたの同族が女王について言うことときたら。私はグリーンレディについてあんなひどいことは言わないわ!女王陛下は、ならず者を雇って民を命令に従わせたりしない。女王が信頼しているのは善良な人々よ、アンベリー。彼らはアルドメリ・ドミニオンのために多くの善行を施している。それは信じてほしい。

それに、私はとてもしっかりと面倒を見てもらえている。加入してから、師はとても丁重に教えてくれるの。愉快なカジートで、とにかく冗談を言うのが好きなのよ。でも、ちょっと演技しているんでしょうね。彼は女王に最も信頼されている人物の一人なんだから。私たちの仕事は、気の弱い人にできるようなものじゃない!

ついに私も何かの役に立てるのよ。ああ、サマーセットに移住してからこんなチャンスが訪れるなんて思わなかった。私はウッドエルフだし、誰も私なんかまともに取り合わないだろうと感じてた。それなのに、女王その人に抜擢されるなんて!とにかく、私の努力がついに実を結ぶのよ。裏切り者と殴り合うとか、密偵を相手にするの。どんな冒険が待っていることか!

ただ、あなたを置いて行かなければならないのが残念だわ。それが唯一の心残り。できるだけ頻繁に手紙を書くと約束する。でもあなたに、どれだけ事情を伝えられるか分からない。とにかく私は無事だって知っておいて。きっとまた会えるわ。でもね、たまには私のために祈ってくれてもいいわよ。あなたのところの気難しい神々だって、ちょっと私を探すぐらいのことはしてくれると思う。だって、私は、アルドメリ・ドミニオン全体を助けてるんだから!

さあ、すぐに出発しなきゃ。でもあなたには心配してほしくないの。こんな手紙を書いてはいけないんだけど、直接会って伝える時間がない。だから、読んだ後はこの手紙を燃やしてくれるって約束してね。本気で言ってるんだからね!きっと記念にとっておきたいと思うだろうけど、間違った人の手に渡ってほしくないの。だから署名もフルネームでしないようにするけど、あなたには誰だか分かるでしょ。

たくさんの愛をこめて。それから、イフレの祝福が私たちにありますように!

-T

イフレの輝く駿馬Y’ffre’s Sparkling Steeds

メロブリアン 著

サマーセット島の原初の荒野で少しでも過ごせば、息をのむような植生をいくらでも見られる。しかし本当に幸運であれば、歴史上最もよく物語の題材とされてきた生物を見られるかもしれない。それはインドリクである。この生物を見る特権を得たのは、私も数回しかない。野生のインドリクは警戒心が強く、非常に見つけにくい。不純な意図を持つ者に見られた瞬間、インドリクは消え去ってしまうと言われている。

インドリクは見れば分かる、というのは陳腐な言い方だが、この生物を描写する任に耐える言葉は少ない。アルトマー文明と同じほど古い民話が伝えるところによれば、〈歌い手〉イフレはインドリクを森のエキスから紡ぎだし、森に住む全ての生物の姿を盛り込んだ。一瞬目にしただけではただの鹿と見間違える可能性もあるが、何気なく観察するだけでも、インドリクがそれ以上の存在であることが分かるだろう。

インドリクに関しておそらく最初に目を引くのは、その枝角である。インドリクの頭からは最高品質の水晶の先端が、光る大木の枝のように伸びている。この目を奪う光景は、枝角が素敵な戦利品になるだろうと考える多くの野心的な狩人が最期に見たものだ。一瞬でも警戒を解けば、インドリクの額から突き出たこの堂々たる槍に貫かれる危険を冒すことになる。インドリクの角については、数えきれないほどの伝説がある。錬金術の万能薬であるとか、手で触れれば寿命が7倍に伸びるとか、イフレの涙からできているとするものまである。私が言えることは、インドリクの角が美しく、かつ危険であることだけだ。以上に記したことは眉唾だと思うだろうか。しかしこれはまだ序章に過ぎない。

インドリクの体は毛皮と羽根、葉状体で覆われており、分類不能である。動物なのか、鳥なのか、それとも植物なのかと問いたくなるだろう。それともこの全てなのだろうか?あるいはどれでもないのかもしれない。一部の学者が主張する理論によれば、インドリクは神聖な存在であり、実はこの世界のものではなく、定命の者よりもエドラに近いという。ある寓話ではエルフがインドリクを殺すと、その心臓は純粋な水晶だったとされている。彼はこの完璧な宝石を愛する女性に渡そうと決めるが、女は宝石の輝きに魅了され、その欲が完璧な宝石を汚し、呪いにかけてしまう。それ以降、二人の生活は大変な悲しみで満たされ、結局彼らは海に身を投げる。残された親族は宝石を巡って争い、呪いを引き継ぐ。架空の物語ではあるが、インドリクが魔力を秘めていることは確実であるにしても、文字どおり魔法からできていることを示す証拠は、私が見つけた限り十分ではない。

ついでに、インドリクには耳が4つあることも言っておく。他の動物であればこれは目立つ特徴だろうが、私がこれまで記した内容からすれば、わざわざ記すほどのことではないように思えるのは同意してもらえるだろう。推測ながら、この特徴はインドリクが周囲を感知し、脅威を避けるのを助けている。しかし1対の耳は物理的世界を聞くため、もう1対の耳は精神的世界を聞くためにある、という噂がどこかで囁かれているに違いない。より詳細な研究がなされるまでは、インドリクは神話に取り巻かれた生物であり続けるだろう。しかし私には、秘密を暴くのがこの生物の価値を貶めてしまうような気がしてならない。実際、この世界に少々の不思議があることを望まない者がいるだろうか?

イメドリルに宛てた手紙Letter to Imedril

サピアルチ・イメドリル

大学を離れて古代遺跡に行くという決断は間違っていなかったと思う。ここは何かがおかしい。でも、私にはそれが何なのかはっきりとわからない。

できるなら何日も、大学の本の中に身を潜めていたい。蔵書庫の静かな学習室ならずっと隠れていられそう。居心地の良い本の世界のほうが、よっぽど安全な気がする。

私の今後の調査手順について伝えておくわ。まずはテレンジャーのスロードに関する考察を復習する。最後に夕食を一緒にしたとき彼は、自分の書いた文章を私がしっかり覚えていなかったことでがっかりしていたようだった。

次に、シースロードに関する帝国地理学会の論文を何度も読み直す。大学の蔵書庫は本当に広大ね!

そして、我々の偉大な大学に関する魔術師ギルドの考察を読む。間違いと偏見だらけだと思うけど、楽しい驚きがある発見ができそう。

最後に、肩のこらない本を読むつもりよ。研究のためではなく純粋に楽しめる本がいい。ダークエルフ2920年シリーズの4巻がいいかもしれない。あなたがこの本を軽蔑していることは知っているけど、本当に面白いのよ!

外国文学サピアルチが考案した技術を試すのもいいかもしれない。彼女は変わり者だったけど、並んだ演壇に本を置き、同時に読み進めながら、内容に従って次々と演壇を移っていくアイデアには前から興味があった。

このやり方の効果が判明したら、連絡するわね。

ハナイエル

インディリムの日誌(収集済)Indirim’s Journal, Assembled

シースロードがサマーセットに侵入している明らかな証拠。我々は卑劣な生き物を追跡して海岸沿いにアリノールの西、ウェレンキンの入江近くまで来ている。

* * *
我々は元来全く自然に見えない現象に出くわした。ガイザーが現れ、そこから水が噴出された。さらにシマーリーンや島の他の地域で報告されている恐ろしい海の獣、ヤグーラが飛び出してきたのだ。よりひどいことに、獣の群れの中にはアンデッドもいた。

* * *
この発見を確認する必要はある。私見だが、ヤグーラとアンデッドはシースロードのある種の魔法による攻撃だという結論に達した。

* * *
奇妙なガイザーの中心に、サピアルチが「アビサルの真珠」と名付けた宝石を見つけた。真珠はガイザーを固定させるだけでなく、ヤグーラを引き寄せる生餌の役割を果たすような、悪しき魔法を発していた。真珠を破壊すると、恐ろしい出来事は唐突に終わった。

* * *
我々はシースロードを追跡してウェレンキンの入江にある隠れ場所まで来た。この獣はしわがれた口語と直接心に訴える言語を組み合わせてヤグーラの召使に呼びかけ、その際に自らをブコルゲンと名乗った。近づいていくと、我々の頭に精神魔法が入り込んできた。奇妙で冒涜的な体験だった。

* * *
ブコルゲンはアビサルの真珠の、養殖場の世話係のようだった。真珠の周囲の水や、真珠の輝く表面にまで奇妙な印を描いた。それから水に錬金術的な混合物を加えると、海がアルケインの光で輝いた。きっとこれが真珠の魔法の源だ。

* * *
我々が観察している最中に、外套に身を包んで頭巾を被ったハイエルフが、ウェレンキンの入江にいるシースロードを内密に訪れた。人影はこそこそと話していたが、海風に乗って一部が耳に届いた。ブコルゲンは現在サマーセットの影で活動するシースロードのグループの1人のようだ。彼らは「アビサルの徒党」と名乗り、「ベドラムの宮廷」と名乗るハイエルフの集団と協力関係を結んでいるようだった。バトルリーブは彼らについてもっと知りたいだろう。

* * *
聞き取れた会話から、ガイザーはサマーセット中で大暴れし、最終的には島を沈めてシースロードが取り戻すという、大きな計画の一部に過ぎないとわかった。

* * *
機会を伺い、こっそりと近づいて印や真珠、外套と頭巾をまとう人影をよく見ようとした。ブコルゲンは明らかに魔法と錬金術を組み合わせてアビサルの真珠の性質を変えている。その技術を調べる時間がもっとあればよかった。シースロードが頭巾の人影に心配するなと言っているのを聞いた。「ク・トラは役割を果たした。彼の死は残念だったが、それで全体の計画が変わるものではない」

* * *
頭巾の人影は静かに立ち去り、ミリヤと隊長は追跡しないと決めた。ここで知った情報を持ってアリノールに戻り、バトルリーブに次の手を決めてもらうほうが良い。

* * *
これまでにわかったのは、サマーセットは圧倒的なスロードの軍隊に侵略されているのではないということだ。代わりに少人数のシースロードの徒党、4人で始まりク・トラという者の死で今は3人に減っている彼らが、破壊的なアビサルガイザー、ヤグーラとアンデッドの群れを解き放つため、島に侵入していた。彼らはどうやら「ベドラムの宮廷」と名乗るハイエルフの集団と協力関係にあるようだ。

* * *
海兵隊員サルウィが濡れた石の上で滑り、我々の存在がシースロードにばれてしまった。シースロードは手下のヤグーラに殺せと命じた。急いで逃げなくては。この報告書と、知ったことをすべてバトルリーブに届けなければならない。

ウェイリモの体験記Wailimo’s Personal Account

秘術師ウェイリモ 著

こうなるとわかっていた。なぜウェルキナーはシースロードを連れてこようと考えたのか。全くわからない。今、クラウドレストは廃墟になり、私は幸運にも生きている。

全ては大釜から吹きこぼれるように、高所から流れ出た黒い霧から始まった。それから市場が静かになった。実をいうと、何が起こっているのかはっきりわからなかった。だが皆が良いことではないとわかっていた。

その時、霧の中から叫び声が聞こえた。誰もが街の門からできるだけ早く出ようと突進した。あんなに慌てた群衆を見たのは生まれて初めてだった。誰もが叫び、走り回り、逃げようとしていた。

しかし霧は我々の歩みよりも速く、間もなく私たちは霧に包まれた。私の肌には冷たい濃霧のように感じられた。突然、膝が崩れた。一瞬で力がすべて抜け落ちた。心臓の鼓動がゆっくりになっていった。存在全体が重くなった。こんな極端な疲労は今まで感じたことがなかった。

死んでいくとわかった。まもなく心臓の鼓動が完全に止まるだろう。横たわった私が考えていたのは…私と一緒に何人が死ぬのだろうということだけだった。

力強い2つの鉤爪に掴まれたのはその時だった。ウェルキナー・オロライムが助けに来てくれて、街の上流に私を降ろした。救助の記憶はほとんどないが、自分の胴体がきつく抱き締められた感覚と、肌に当たる風はよく覚えている。

シースロードがどんな力を持っていたのかはわからないし、知りたくもない。だが危うく命を奪われそうになった。他の大勢の、既に奪われた命のように。

ヴェヤの個人的メモ(パート1)Veya’s Private Thoughts, Part 1

モロウウィンドを後にした

初めて孤独になった。孤独を感じたことは前にもあったが、今感じているのは息が詰まるほど重苦しい感覚だ。重苦しさが考えにまとわりつく。判断力が鈍っている。

あたしは怒っているの?悲しんでいる?ほっとしている?新しいスタートになると、師のナリューは請け合ってくれた。カジートがあたしの面倒を見る。モラグ・トングとはまったく異なる方法だが、訓練を続けてくれる。過去はきれいに拭い去られる。

でも、これはあたしの望んだことなの?あたしができることとできないことを、別の人に教えてもらう?自分の過去を忘れ、家族の行動によって感じた苦痛を忘れる?あたしがこうなったのはそのためなのに。その痛みは今のあたしを形作っている。

すべて忘れてモロウウィンドに置いてくることが、本当にできるの?

ヴェヤの個人的メモ(パート2)Veya’s Private Thoughts, Part 2

海にいる

計り知れない距離を航海する船の乗客になると、日を追うごとに退屈さが増していく。この退屈さのおかげで、自分の考えを整理できた。明らかになった出来事と、どうして今サマーセットに向かうことになったのか、理解しようとするために。

でも、あたしは何を熟考すべき?むろん、ここまで導いた状況だ。兄さんがどうやって奪い去られ、家のろくでもない名誉がどれだけ責めを負うべきか。あたしは兄さんの復讐をしたが、それによって父さんの命を奪った。かつての師は私を助けようとした。あたしを密かにモロウウィンドから連れ出し、遠い異国へ向かうこの船に乗せてくれた。残りたいというあたしの意見と嘆願を聞き入れなかったにせよ、彼女は善意でやってくれた。少なくとも、自分にそう言い聞かせ続けている。彼女は所属する組織や同盟、愛する者たちの多くに嘘をつかねばならなかった。あたしを無事に脱出させるために。

だが、彼女があたしを殺そうとしたことを、本当に忘れられるだろうか?やらねばならなかったことを止めようとしたことを? 彼女ともう1人。あたしは友人だと思っていた。あたしはまだ生きてる。それは意味のあることだと思う。

あたしは自分が正しいことをしたとわかってる。父さんをまた殺すことになっても。それがこの世界だ。政治と誇りがすべてだ。金と力の追求が。引き起こされるのは死、死、死。完全に終わらせるためなら、どんなことでもしてやろう。

ヴェヤの個人的メモ(パート3)Veya’s Private Thoughts, Part 3

闇の中で声がする

サマーセットへの旅が終わりに近づいているが、率直に言うとあたしは正気を失いつつある。それは、乗客の何人かが影から出てこないことに気づいた時から始まった。彼らは船の下層、最も暗い片隅に居続けている。あたしが彼らに気づくと、彼らもあたしに気がついた。彼らはあたしに話しかけてきた。周囲の闇に耳を傾けろと言う。影の母の声を聞けと。

気味の悪いフードをかぶった頭に刃を突き立て、海に投げ捨てようかと思う。そうすれば少なくとも、夜はもっとよく眠れるようになるだろう。だがなぜか行動に移せないでいる。気に入り始めたのかも知れない。あるいは思っていたよりも孤独だったから、不気味で頭のおかしい、影を這う者たちさえも、いい友人になりかけているのかも知れない。彼らには彼らの利用法があるのだろう。だがこの新しいことは?闇の中の声?これに頭を悩ますようになってきた。

今は、本当に声が聞こえているわけではないようだ。だが気がついてみると、自分で自分に語りかけていた。時には誰かが言うことを聞いているように感じられることもある。こう書いてみると奇妙だけど、そのおかげで気分がよくなる時もある。

母さんが恋しくて、母さんと話しているのを想像しているだけなのかも知れない。この件に関して、母さんにまったく非はない。母さんは今どこにいるのだろう?父さんを殺してから、母さんを直視できなかった。母さんは多くのことを経験した。正当だったかもしれないが、あたしの行動が引き起こす苦痛を見たくなかった。

* * *
いや、あたしは正気を失っているわけではない。夢を見ていた。喋るカラスや影の獣でいっぱいの夢。星まで届く塔。これは闇と変化の夢だ。新しい世界への機会の夢だ。

この言葉を読むと、あたしが恐れているように思える。そうではない。奇妙に聞こえるかも知れないけど、実に快適だ。それは影の淑女なのだろう。夢の中で語り掛けると、彼女はあたしの言葉を聞いてくれる。泣いている時は抱きしめてくれる。あたしを慰めてくれる。

この女性は、自分の母よりもあたしにとって母だ。誰も苦しみ、愛する人を失わないように世界を修復しようと、彼女はあたしに約束してくれた。

ヴェヤの個人的メモ(パート4)Veya’s Private Thoughts, Part 4

サマーセットに近づいている

あたしは生まれ変わった。

あたしがたどってきた道は、あたし自身の道ではなかったと母が明らかにしてくれた。あたしはこの世界の規範や法の奴隷になってしまう。あたしは別人の道を歩かされている。あたしは自由になるべきであり、自由とはあたしがなるべきものだ。

闇の中から、新しい夜明けがこの世界にやって来ようとしている。夜明けの到来とともに、憎悪、強欲、死は一掃されるだろう。あたしはこれがいつ起きてもいい。これほど自分が果たしたい役割について確信できたことは、かつてなかった。

母はあたしにベドラムの宮廷の地位を申し出てくれた。この新しい世界を顕現するために尽くしてきた集団だ。だが、母の計画はこの名高い集団をも出し抜く。

母はあたしに新たな名前を与えてくれた。新たな目的も。血が流されるだろう。命が失われるだろう。だが最後には、世界そのものが変化する。もはや苦痛はない。喪失もない。

もうあたしはレドラン家の娘ではない。今ではノクターナルの娘だ。

我が名はタンディルウェン、よりよい世界が灰から生まれるように、世界を燃やそう。

ウェルキナーのグリフォンThe Gryphons of the Welkynars

ウェルキナー・シロリア 著

さて、はっきり言っておきましょう。グリフォンの訓練は大変な仕事よ。野生のグリフォンに関わるのは命がけ。危険きわまりない。見られた瞬間に食われてしまう。それを証明できる訓練師が、サンホールドには大勢いる。気を抜けば、雛ですら指の数本は食いちぎってくる。

ウェルキナーは自分のグリフォンを、孵化から死の瞬間まで世話することになっている。職務の一環として、もちろん自分が先に死ぬこともある。いずれにせよ、まずは卵を手に入れることからよ。そう、卵を入手するのは自分。初日に助けを求めるべきじゃない。それから、母グリフォンも殺さない方がいい。親を無残に殺された生物と絆を結ぶのは骨が折れる。経験者の言葉を信じなさい。

雛が孵化した瞬間から、絆を結ぶ過程は始まる。すぐに絆を結ぶ魔法の儀式を始める。それだけではなく、雛との関係を親密なものに育て上げねばならない。雛に餌をやり、清潔にして、世話をするの。さんざんつつかれ、引っかかれ、眠れぬ夜を過ごすことになるでしょう。

絆を結ぶ過程が終われば、グリフォンは味方として戦ってくれる。このグリフォンはあなたの馬、守護者、忠実なる友となるでしょう。彼らにとってもあなたにとっても、訓練は厳しく困難なものとなる。でもそれが終わると、この獣は最も優れた兵士となる。

覚えておいて。これは気軽に引き受けられる仕事じゃない。あなたがグリフォンと結ぶ絆は、これまで経験したどんなものとも異なっている。単なる仲間などではない。あなたのグリフォンは、拡張されたあなた自身。あなたの思考、感情、欲求、すべてが彼らとつながり、一体となるでしょう。

この責務を全うすれば、あなたはウェルキナーに迎え入れられる。人生そのものを一変させる名誉ね。だからこそ、慎重に卵を選びなさい。

ウェルキナーの突撃Charge of the Welkynar

サマーセット、ああ、サマーセット、我らの素晴らしく素敵な地
透き通った輝ける海を越えて恐れられる
ウェルキナー グリフォンの騎士は翼を駆り 力を尽くし
勇気と力と大胆さで アルトマーの自由を守る!

突撃せよ、グリフォンの騎士
空を舞い、敵と戦え!
突撃せよ、ウェルキナー
剣と弓を手に翼を広げよ!

アリノールからシマーリーンまで
ウェルキナーは風に乗り、光り輝く島を守る
平民、貴族、商人、女王、誰であろうと
グリフォンの騎士は微笑んで 皆を守る!

突撃せよ、グリフォンの騎士
空を舞い、敵と戦え!
突撃せよ、ウェルキナー
剣と弓を手に翼を広げよ!

ウェルワの回復Restoring the Welwas

動物学サピアルチ、アンボリッセ

アルドマーが原野の岸に初めて辿り着いた時、サマーセットは今とは全く異なる場所だった。今とは違う生物たちが生息していたのだ。恐ろしいものもいれば、温和な生物もいた。初期のアルドマーは、望まれない脅威を島から排除する時には決して手を抜かなかった。彼らはウェルワを根絶やしにすることにした。なぜか記録には残っていないが、彼らはウェルワを酷く嫌っていた。それから数年でウェルワは絶滅し、サマーセットの生態系から排除された。

昔の記録によれば、ウェルワは新たな訪問者であるアルドマーたちを殺そうとしたようだ。ウェルワはギータスやイリアディと一緒にアルドマーを攻撃した。アルドマーたちは星々から先人の知恵と力を引き出すと、雷、氷、炎を使って、この凶暴な獣たちを徹底的に破壊した。

サマーセットの絵や彫像で、ウェルワは角と鋭い歯を持つ奇妙な聖獣として表現されている。実際に、このような姿をしていたことが原因で絶滅することになったと考える学者は少なくなかった。中にはその存在について、ただの神話や伝説の類でしかないと考えていた学者もいた。彼らをハンマーフェル東部のクラグローンで見つけた時の、私たちの驚きを想像してみてほしい。しかもそこには、絶滅してしまった地域で個体数の回復計画を間違いなく実行できるだけの数が存在していたのだ。

サマーセットのウェルワ回復計画に参加できたのは本当に名誉なことだった。私たちは慎重に作業を進め、グラグローンで6組のつがいを集めることに成功した。彼らの健康状態と夫婦仲を確認するためにしばらく隔離した後、北西の沼地に解放した。彼らはすぐにその地域へ馴染んだ。その後さらにウェルアを求めて3回遠征したが、彼らの健康には問題なさそうだ。しかも私は現在のサマーセットで、最初のウェルワの誕生を目撃することもできた。本当に素晴らしい経験だった!

もちろん、この野心的な計画に反対する者もいる。偉大なサピアルチの同僚の中にも、我々が大昔に手に入れた自然に再びこのような危険な生物を呼び戻すなど、無鉄砲で危険すぎると反対する者もいた。批判する人々には、「価値のあることをする時にはある程度の危険が伴う」という古い格言を思い出してもらいたい。最初にウェルワを乗せた船が港にたどり着いたとき、反対の意志を示すため現場に現われた穏健なアルトマーの人数に私は圧倒されてしまった。だが幸運なことに、その場を納めるため神聖執行局と衛兵が現われ、この偉大な生物たちが傷付かないように配慮してくれた。

今でも反対している人々はおり、計画を廃止させるために法的手段へ出る者もいるが、私は屈することなく計画を進め、サマーセットの自然に再びウェルワの群れを取り戻すことに成功した。サピアルチのおかげでこの島はさらに一歩、本来の美しさに近付くことができたのだ。次はできることなら、ギータスとイリアディを復活させたい。

エトン・ニルのウェルキナーThe Welkynars of Eton Nir

ウェルキナーのウィングキャプテン、レレクエン 著

ウェルキナーはサマーセットの偉大な歴史をほぼ常に支え続けた騎士団だ。我々は故郷を守り、邪悪な潮流に抵抗すべく人生を捧げている。悪意が醜悪なる頭をもたげ、邪悪なる者が市民を脅かす所には、どこにでも我々は赴く。

クラウドレストが本拠地だが、我々はいかなる緊急要請にも応じる。このためには素早い行動力が必要であり、だからこそグリフォンと絆を結ぶことが最優先事項となっている。この獣の助けを借りることで、我々は遠く離れた場所へ素早く移動できる。諸島の中心に位置し、高所にあるクラウドレストをウェルキナーが砦に選んだのは、このような理由からだった。

我々は全部で4人、それぞれが4つの方位を表す。引退し、職務半ばで命を落とす者がいれば、その者に代わる者が新たに選ばれる。加入資格を得るための訓練には何年もかかる。自分の相棒となるグリフォンを捕らえ、育てる必要があるからだ。

それぞれのウェルキナーは、選ばれるに足る戦闘能力を備えている。我々はサマーセット随一の魔闘士を輩出することで知られてはいるが、魔法は加入の必須条件ではない。戦強きモルニャレマルは史上最高のウェルキナーの1人に数えられているが、魔法を全く使えなかった。加入に必要なのは、我々の仲間にふさわしい戦闘能力を示すことだけである。

サマーセットの統治機関や軍のメンバーは誰でも、ウェルキナーに助けを求められる。もちろん要請を受けるかどうかは、つねに我々の選択による。任務の合間に我々はサマーセットを巡回して立ち寄り、潜在的な脅威に関する情報を収集して、危機の兆候への警戒を続けている。

そう、ウェルキナーが真の意味で休息することはない。だが、この人生をかけた献身ゆえに、サマーセットの市民の安全を確保できるのだ。この栄誉ある集団に名を連ねることほど、真に名誉なことはない。

エボン・スタドモントに閉じ込められてTrapped in Ebon Stadmont

アンデウェン 著

この森に来るなんて愚かだった。自分は賢く、力強く、揺るがないと思っていたけれど、長年の孤独を通して今は真実がわかる。私は頑固だった。高慢だった。だからとても愚かだった。そしてそのために苦しんできた。

この森に閉じ込められてもう数十年になる。過去に閉じ込められた。私の顔は皺だらけで、心は後悔で暗くなっている。私の人生は私から盗まれた。そう、盗まれたのだ。今はそれがわかる。

私をここに留めるものがある。長い年月を経て、私はこの存在、看守をエボン・スタドモントの霊魂と名づけた。彼女は私を監視した。研究した。私をここに閉じ込めているのは彼女だ。私を現在から切り離し、他の世界から切り離した。

この罠は私が森に足を踏み入れた瞬間に仕掛けられた。なぜ疑問を持たなかった?私を導き案内する声に。彼女が必要とする場所に直行させた声に。どれだけの間分からずにいた?どれだけこの言語を研究し、使い、意思に従わせようとした?あまりに長い。

彼女は何かのためにこの言語を必要としている。言葉はわかるが使えない。彼女には私が必要で、私には彼女が必要だ。その囁き声は、私に聞かせたいことだけを伝える。私は耳を傾け、従う。無意識のうちに忠実で、服従していた。だがもう終わりだ。

私は突き止めた。もう囁き声には頼らないし、彼女の意思だけで動かない。南の石。バネウェ・テルデ。あれが元の時間に戻る方法だ。それで、私は何もかもが起こる前に止められる。自分があの入口から入り、この牢獄に入るのを止められる。

だけど彼女は知っているのではないか。森の中に留まる限り、比較的楽に動き回ることができるのに、南の石へ向かう企ては必ず妨害されてきた。この私と霊魂との静かな戦いはもう何ヶ月も続いているけれど、私は固く心に決めた。自由になる。これを終わらせる。やらなければ。

エボン・スタドモントの言語The Language of Ebon Stadmont

著者不詳 著

私の研究はエボン・スタドモントの調査へと行きついた。噂と憶測は多いが、事実がほとんど知られていない森だ。特に私の興味は森の至るところで見つかる、崩れかけた遺跡内の碑文に描かれた謎の言語にある。この言語は未知で調査されておらず、誰も疑問視していない。これは当該言語の適切な研究をする力がないというより、森の持つ危険性と大いに関係しているのではないかと考えている。

森はある意味で捻じれている。森の中を歩くと変わるのだ。目的地は木々の葉の向こうに見える。ところがたくさんあるアーチ道の1つを抜けると、最初に目指していたところではなく、全く新しい場所にいる。転移の魔法がかかっているようだが、あまりにもスムーズなのできっと気づかないと思う。

木々の葉は密度が濃く、普通の森というより生垣の迷路を思い起こさせる。誰か、あるいは何かがこの森を他から切り離す設計にしたのは明らかだ。明白な目的は、余所者を排除することだと思う。この保護対策は、私が研究しようとしている言語と何の関係があるのだろう。よくわからない。だがきっと私の研究を通して、答えが見つかるだろう。

* * *
エボン・スタドモントにおける最初の発見は、恐れていたように結論へと達しなかった。この言語はデイドラの形に似ていると思ったのだが、その方向のあらゆる実験は何の成果も生まなかった。古さという点は似ているかもしれないが、デイドラに由来するとは思えない。というわけで、ゼロから研究をやり直すことになりそうだ。

この調査旅行の幸運は、私が最大の障害だと思っていたことからやってきた。森そのものだ。噂は誇張されていたのか?森の自然を捻じる出来事は回数も少なく、たいして不便でもなかった。心配していたように、隊員を失うこともなかった。固まって移動するよう命令はしていたが。

受け入れられている感覚がある。まるで森がその謎を明かす価値があると判断したかのようだ。あるいは時を経て、魔法の保護の力が弱くなったのかもしれない。いずれにしても、この幸運を無駄にするつもりはない。退却はしない。この言語を研究すると心に決めた。

* * *
とうとうこの言語の謎が進展し始めた。私は全く間違った見方をしていた。それが問題だったのだ。私は言語が単に記号から成っているとみていた。研究して翻訳するものだと。しかしこの言葉には力がある。今はそれがわかる。

碑文に手つかずの魔法の力の源がある。しかし試したものの、解放する方法が見つからない。使うと、力が使ってほしいと強く願っているのを感じる。一種の創造的な力で、計り知れない可能性に満ちている。しかし何の?

言葉は生きている。私が近くで聞いていると、時々話しかけてくる。私の心に囁くのだ。言葉の持つ力は長い間休止していて、再び存在したいと願っている。あとは私が方法を見つければいい。

オグル船長への手紙Letter to Captain Oghul

よう、オグル。

たった今、アリノールの郵便からお前の手紙を受け取った。お前の質問に答えると、交易はエルフの女王の命令以来順調だ。順調どころじゃない。あの背の高いエルフどもは傲慢だが、ゴールドはゴールドだ。そしてあいつらは大抵の連中よりも払いがいい。とはいえ、サマーセットを航海して回るのは簡単じゃない。お前が下手なのは知ってるから、センチネルに来る時は航海の達人を拾ってきたほうがいいぞ。

サマーセット付近の航海について最初に知っておくべきことは、あの島が見た目より大きいってことだ。ずっと大きい。大半の連中には、あの島は誘っているようにしか見えない。白い砂浜、甘い香りのする花、新鮮な湧き水があってな。だがそういう連中が見てないのは、水面のすぐ下がごつごつした岩礁の巣窟になってることだ。それも全部サンゴに覆われてる。しかもトパル湾で見るような脆いエチャテレ・アントラーじゃない。巨大な海の骨、モーロッチの顎のように硬く、メエルーンズのカミソリのように鋭い脱色サンゴだ。傾斜した部分が触れると、豚の皮をナイフで削ぐように船体を切り裂いちまう。だから注意するんだぞ、いいな?地図と、喫水に気をつけろよ。

それから海賊もいる。忌々しいシーエルフどもだ。奴らのサーペントの旗が、沈没した商船や捕鯨船の上にはためいているのを見ない日はない。斬り込みを撃退する必要があったのは2度だけだが、しっかりと叩きのめしてやったよ。しばらくは奴らもオークのブリグ船を襲おうとは思うまい。礼はいらんがな。

船員にも目を配っておけよ。水夫というのは迷信深いからな。俺が聞いた幽霊話のいくつかは、きっとお前も信じないだろう。巨大な海のサーペント、幽霊船、脳味噌をブラッドプディングみたいにグチャグチャにするナメクジ人間。そんなのばっかりだ。甲板での愚痴をあんまり放っておくと、暴動が起きる危険がある。だからオークが口を閉じないようだったら、そんな迷信は遠慮なく叩き潰しちまえ。

いい風と、静かな海を願おう。近いうちにシマーリーンでジョッキと話を交換しようや。

ヴォシュ、
ダルズール

カートレルの最後の手紙Cartorrel’s Last Words

愛する人へ

今回は家に帰れないでしょう。ここの海はこの上なく穏やかだけど、いつだってどんな航海で私の最後に成り得ると知っていたわよね。私の最期を告げるのは変わりやすい海流ではなく、血管を駆け巡る毒なの。愛してる。そしてごめんなさい。

シーエルフがワステン・コラルデイルを侵略した。今は小さな部隊だけど、増強の準備をしている。この島がもっと大きな軍事行動の足場として使われるまで、そう遠くないでしょう。

二度と本土は見られないけれど、潮の流れがうまくいけば、この伝言は間もなく届くはず。

これを見つけた人へ。王立海軍にシーエルフが来ていると伝えて、これ以上の命が失われる前に、奴らを止めて。親切な方ならこれをアリノールのウェンドレインに届けてください。

愛と希望を込めて、
カートレル

カーンハルの日記Karnhar’s Journal

ここの人々は、この地の呪いなんて怖くないという振りをしているが、何か普通でないことが起こった瞬間に本音が出てくる。我々は昔からここに住んでいて、野営地の水没と粗末な食事以外には何の問題もなかった。大地が揺らぎ、人々が行方不明になっている今は、デイドラが地面から這い上がってきて、我々を食べるとでも言うかのようだ。

真実はおそらく、誰かが穴の中に落ちて助けを求めているのだろう。他の者たちが恐れて行かないことは気にならない。バカげた迷信のために、善良な人々が暗い穴の中で餓死するに任せておくことはできない。

* * *
ある大穴の付近で終わっている足跡を見つけた。確かに誰かが穴の中に降りたのだ。自分の意志でかどうかは不明だが。呼んでも返事がなく、投げ入れた松明はほとんど一瞬で消えてしまった。水の流れる音が聞こえたように思う。浸水しているに違いない。ロープがあったとしても、自分で降りてみる気にはならないが、別の道から降りられるかもしれない。水はどこかに続いているはずだ。

* * *
どうやらあの古い館は土台から滑り落ちてしまったか何かのようだ。崩れ落ちた壁があるし、水の流れは自然の洞窟まで続いている。野営できる乾燥した場所を見つけるまで進み、探索を続けるつもりだ。

* * *
巨大な開けた洞窟へと続くトンネルを見つけた。柱のようなものが見える。かつてここに暮らしていたエルフたちが岩から削り出したに違いない。岩が再び戻ってきて、この場所を占拠しつつあるようだ。この場所はどれくらい古いのだろう?

今のところ、ヘンリグやミンドリルの手掛かりはないが、このトンネルにはもう一つ分岐がある。一晩ぐっすり眠ってから、そっちに行ってみよう。

カソリンウェへの手紙Letter to Casolinwe

カソリンウェ

また君の友人であるマニマルコと、昨日不快な出会いをしてしまった。前にも言ったかどうか分からないが、遺物マスターは私を宝物庫の納品監視係に任命した。簡単な仕事だ。爆発する可能性のある試薬や不安定な遺物を分類するだけだ。

大部分の見習いは小包を1つか2つ持ってきた。だがマニマルコは謎めいた錬金術の溶剤の入った、印のつけられていない木箱や樽などを何十個も持ってきた。彼の経歴を考え、ある程度は大目に見るつもりだった。だがあれだけの量の材料となると…何も言わないわけにはいかないだろう?

私はとても丁重に、最新の納品物の中身は何かと尋ねた。彼は私を見もしなかった。ただ「お前の興味を引くものではない」とだけ言った。私は食い下がった。紳士的にだぞ!もう一度聞くと、彼はあの冷たい目を私に向けて、ウブリヴェイ神秘学の失われた言語で何か囁いた。あの時、私は彼が「もう一度聞いたら、お前は後悔を知る」と言ったように思った。だがいくらか不愉快な回想をすると、おそらく彼は「もう一度聞いたら、お前は殺しを知る」と言ったんだと思う。よくある間違いだ。2つの言葉はよく似ている。だが君には言っておくが、あれは間違いじゃなかったと思う。彼は私が言語学者だと知っている。自分が言っていることはちゃんと理解していたはずだ。今でさえ、考えただけで背筋がぞっとするよ。あのエルフはどこかまともじゃない。私には分かる。お願いだから、気をつけてくれ。

古き習わしが君を導くように
ルリナリオン

追伸――あの男が運んでいく時、木箱はカタカタと虚ろな音を立てていた。私の推測だと、あの木箱には乾燥させた木か、あるいは骨が入っていたんだと思う。どっちの可能性が高いか、君にも予想が付くだろう。

ガリドールの愛の詩Galidor’s Love Poem

愛しきジャヴァナへ、
知っているはず
三度の人生を共にしたいと思っている

けれどポケットは満たされず
分けられるものもあらず
お金もなく、靴には穴が開いてる

でもいつか、そう
一緒に行こう
緑の深い樫の木の森へ

根の中で休み
グラーベリーをついばみ
王と女王の姿へ

ガリドールの走り書きされたメモGalidor’s Scribbled Note

宿主へ

何度も抗議したのに、ならず者が相変わらず部屋の外に集まっている。

犯罪者は見れば分かる。ごろつきの一人で、鼻水を垂らしてもじゃもじゃの赤毛をした若い奴は、とりわけ悪さをしているようだ。そっちが対処しないなら、自分でどうにかするかもしれない。

ガリドール

ガリドールの台帳Galidor’s Ledger

ブラックマーケットでの購入:

アズドル – 未加工のムーンシュガー2杯:支払い済み

キャリエシル – スキャンプの耳のシロップ漬け:支払い済み

キャリエシル – ドレモラの歯:支払い済み

エミール・オンセント – 羊の血1樽:支払い済み

エミール・オンセント – 錬金術用注射器(5個セット):支払い済み

ファンダーカー – ウェルキンド石(盗難):支払い待ち

ガリドールの買い物リストGalidor’s Grocery List

1:子羊のスネ肉

2:シナモン

3:シャロット6個

4:パセリの小枝(付け合わせ用)

5:チーズ丸ごと

キャスタティル船長の輝く剣:第6場The Bright Blade of Captain Castatil: Scene VI

第6場。外洋。恐怖のアッシュ・バイパーの甲板。恐怖の船が演者の足元でゆっくりと沈む

オルグヌム王と、黄金の仮面をつけた謎のキャスタティル船長が入場

オルグヌム王:
キャスタティル!古き大敵よ!踵の薄いハイエルフのブーツで、荘厳極まりなき船の看板をよくも汚したな!

[オルグヌムが威嚇するように前へ出て、冷笑と共に毒の塗られた剣を引き抜く]

キャスタティル船長:
ハッ!魚の王は大言するものだ。周りを見ろ、シーエルフ!お前の艦は波に飲み込まれ、船員は泡と海で窒息するだろう!お前も加われ、裏切りの海賊め!

オルグヌム王:
死ぬのはお前のほうだ、黄金仮面よ!突き刺す前にその仮面を引き剥がしてやる。我が毒の剣で串刺しにするとき、苦悶の表情を見てやれるようにな!

キャスタティル船長:
いいだろう。実はこの時を長年待っていた!

[キャスタティルが仮面を外し正体を明らかにする。それは、復讐に燃えたエロルダリンの息子、マーシベルであった。オルグヌム王は息を呑む]

オルグヌム王:
馬鹿な!マーシベル?エロルダリンの屈強な息子か?

マーシベル:
そうだ!お前が昔を殺した時、お前の廃墟を海に沈めると誓った!今こそ復讐の時だ!

[マーシベルは輝く剣を抜き、戦いに備える]

オルグヌム王:
なら来るがよい、エロルダリンの息子よ!大蛇の牙と戦え!

[2人の敵が舞台を横切りながら、突きを入れ、受け流し、切りつける。一時的にマーシベルが優勢になる]

マーシベル:
魚屋の妻のような戦いぶりだな、オルグヌム!真の挑戦を私から奪うのか?残忍な願いがこうも簡単に満たされてしまうとはな!

オルグヌム王:
ハッ!若いな!その自信過剰が命取りだ!

[オルグヌムが滑りやすい甲板にブーツを強く踏み下ろし、マーシベルを転ばせる。前かがみになったマーシベルが避けて受け流す瞬間、オルグヌムが襲いかかる]

オルグヌム王:
鉤先でのたうつがいい!我々の決闘は残酷な終わりを迎える!

マーシベル:
私を倒したつもりか?見えないものを串刺しにできないと知らないのか?

[マーシベルは付近の手桶をつかみ、中身をオルグヌムの顔にはねかける。青の厚化粧が洗い流され、マーシベルの父エロルダリンの光り輝く顔が露わになる。マーシベルは息を呑む]

マーシベル:
父さん?ど…どういうことだ!

エロルダリン:
ようやく真実が分かったか。そうだ、マーシベル、エロルダリンだ!お前の父だ!スターボーン・アルマダの元提督だ!

マーシベル:
死んだと思っていた!オルグヌム王の手によって!

エロルダリン:
死んだ?ハッ!あのマオマーが殺したのは、老いぼれのアーリエルへの信仰のみ!サマーセットのエルフを縛る欺瞞と虚偽への信仰だ!分からぬか?あの大蛇の真実が最も重要なのだ!サマーセットのあらゆるエルフが学ぶだろう!皆が偉大なる大蛇の魔道師に敬意を払うのだ!

[マーシベルは跳び上がり、器用にエロルダリンの剣を受け流す。最後の一突きで心臓を貫く]

エロルダリン:
クソ!これで終わりか!

[エロルダリンは死ぬ]

マーシベル:
黙れ、父さん。本当に貫かれたのは私の心臓だ!何と言う悲劇!父の敵討ちをするつもりが、父親殺しになってしまった!私はどうしたらいい?

[長い間マーシベルは何も言わずに立ち続けたあと、捨てられた仮面を拾い、おごそかに身に着け、再びキャスタティル船長となる]

キャスタティル船長:
いいや!己を憐れみはしない!マーシベルは死んだ。彼の記憶、そして父の記憶は、壊れた船体と沈むがいい。渦巻く海に誓おう。この仮面をつけるのは1人のエルフのみ。キャスタティル船長だ!アリノールの英雄!シマーリーンの盾!サマーセットの勇敢な剣士!そして、下劣なオルグヌム王の油断なき敵だ!

よく聞くがいい、大蛇の王よ!間もなくお前はエロルダリンと同じ、血塗られた運命に苦しむだろう!キャスタティル船長の輝く剣により、串刺しにされるのだ!

[場の終わり]

キングズヘヴン交易記録King’s Haven Trade Record

地域内のほぼすべての部族と通商協定を結び終えた。海の恵みが内陸の民には最も魅力的だとわかったが、布と道具にも安定した需要がある。交換の対象は彼らが狩りや罠で得る獲物だ。こちらの部族は捕獲も上手だが、地域に生息するウェルワやグリフォンを手なずけることにも熟達している。

それでもこの交易で最も利益があるのは、丘陵地に点在する洞窟から採掘される精製前の鉱物だ。地元民はそれに高い価値をつけず、原鉱を精製した製品と取引することを好むようだ。

キングズヘヴン地域記録King’s Haven Territory Record

基地は東西の道に広がっている。先住の民は建築技術に興味をそそられているようだが、それ以外は居住地に落ち着いている。

* * *
旅人が先住の民の居住地を通過できる道を安全にした。これでコルグラドからシマーリーンまで、かなりの時間を節約できる。

* * *
王は、王冠にまだ忠誠を誓っていない者に、戦略的に重要な土地を委ねたままにしていることを心配している。もっともな心配だ。私たちは部族の残った土地の取得に向けて交渉を開始した。

* * *
東西の道は自然の境界線で簡単に区切られているが、地下通路網の広がりはまだ検証されていない。住民が土地に対する提示に気乗りしないのはこのせいかもしれない。この件で、王は東の岩山を再居住地として認めるという寛大な提案をした。部族の長はこの新しい提案の協議に同意したが、君主の忍耐は無限ではない。

キングズヘヴン偵察記録King’s Haven Scouting Record

丘を東西に抜ける道は、基地を設けて駐留するために絶好の場所となるだろう。北へ丘を抜けるための一番近い道であるだけでなく、地形と洞窟の網目のおかげで非常に守りやすい場所でもある。岩の多い地形にもかかわらずこの地は肥沃であり、自然の小川が丘の高所にある水源からこの一帯に注いでいる。

残念なことに、この地域は少なくとも1つの先住部族に占拠されている。彼らは原始的な農耕社会を営んでおり、野菜を作り、地域内の野生動物を狩っている。彼らはまた、鉱石のために石の加工も行うようだが、加工の技術は初歩的なものだ。

この人々はよそ者に敵対的ではなさそうだ。この部族の人々が捧げ物としてか交易でか、物品を交換するのを観察している。しかし我々の敵となった場合、彼らは攻城戦においてかなりの有利を得るだろう。幸運にも、新鮮な水のための彼らの水源は一つしかなく、直接攻撃の代わりとなる選択肢を提供している。

クラウドレストの秘密の入口Cloudrest Secret Entrance

ばかばかしい。

とにかく、これは強盗だ。普通の市民より、少しはコソコソしないとな。クラウドレストに入るのなら、古い通路を使うがいい。お前のために鍵を開けておこう。安心しろ。

――D

追伸。このメモを落として人に見られるようなへまはするな。アリノールで何があったか忘れるなよ。

グリフォンの飛行The Flight of Gryphons

アルトマーが最初に空を見上げ、雄大なグリフォンが風に乗って飛び上がるのを見た時から、グリフォンを飼いならし、戦いや娯楽のため背中に乗り、世界を遥か下に眺める自由を感じる、という夢が存在してきた。

だがこれは子供の夢であり、人々はすぐにグリフォンが誇り高く凶暴で、いかなる下等な生物にも乗り物として仕えることはないと知った。何世代もの間人々は試したが、グリフォンは決して屈することがなかった。

愚か者は野生のグリフォンを網にかけ、ただの馬のように飼いならそうとした。グリフォンは彼らの愚かさが次の世代に受け継がれるのを防いだ。アルトマーのより賢い部族は島の崖という崖をよじ登り、親がいない間に巣から卵を取ることに成功した。しかし何年もかけたこの方法も、空飛ぶ乗り物を提供するには至らなかった。卵は決して孵らなかったからである。しかしその後の御馳走はそれなりの慰めとなった。卵は王たちに珍味として重宝されたのだ。

島の南の小さなクランは、グリフォンの飼いならされることのない輝きに立ち向かい、頭角を現した。後にサンホールドの王となるウロロームは狩りの最中、見捨てられた巣に卵を1つ見つけた。どうせ孵化することはなかろうと考え、彼は卵をクランへ持ち帰り、宴会に供するため大きな暖炉の火の中に入れた。暖炉と家の古い歌を歌いながら、ウロロームはクランが食べる前に食事へ祝福を与えようとした。だが見よ!暖炉のぬくもりと優しい歌が冷たい卵を蘇らせ、生まれたてのグリフォンが飛び出してきた。火の輝きの中、その羽根は赤々と映えたので、火の鳥かと思った者もいたほどである。ウロロームはこの贈り物を神々に感謝し、まだ燃えている火からグリフォンを取りあげ、セル・ヒンウェと命名した。

セル・ヒンウェがその主人を乗せて戦いへ赴いたのかどうか、伝説は語っていない。だがこの生物、すなわちマオマーの伝説で言う赤い風は、後にサンホールドの有名なグリフォン線の原形となったものである。上級公とグリフォンの二本線は互いを取り囲むように織り込まれ、一方がなければ他方も存在しえないようになっている。グリフォンはまたサンホールドの象徴として受け入れられ、その決して服従せぬ心のシンボルとなった。

ゴージThe Gorge

ボエシアとクラヴィカス・ヴァイルの領域の間には分水嶺が存在し、そこでは需要と飢餓が合一する。僅かな場の痕跡がムンダスの肌にまとわりつき、生き残るため無益に浸食する。これがゴージ、飢饉と絶望の穴である。そこでは凶暴なデイドラが、決して満たされることのない空腹を解消するため、同族すら糧にしながら、あらゆるものを永久にむさぼり続ける。

このような哀れな獣の頂点に君臨するのが、狡猾で力を求める〈強欲〉である。このデイドラが物質界に召喚されれば、その特質を活用してゴージとニルンの間へ自由に入り込み、次の獲物を待ち伏せして、絶えず生命を堪能し続けるだろう。

魔術師は正確な手順さえ理解していれば、同じようにこの領域間を移動できる。ゴージの脅威と向き合う覚悟さえあれば、それは定命の者の世界に感知されない、素晴らしい移動手段となるだろう。

ニルンとオブリビオンの間には障壁が存在するが、そこはどこよりも薄い。その場を物質界に繋ぎ止められているのは、ゴージの一番の欲求が満たされているためである。その欲望とは誰もが必要とする要素、つまり生命、自我、熱意、死すべき運命である。この要素を捧げるためにかがり火を焚き、適切な順番に並べよ。

完成すればアンカーがゴージの喉に繋がり、胃にいつでも入れるようになる。そのアンカーを動かしたいのなら、投げ入れた順番に供物の印を消す。そうすることでアンカーは物質界に戻り、その力をどこでも利用できるようになる。

サイジックThe Psijic Order

現代史の年代記サピアルチ、ヴリシリン 著

現代の出来事とサマーセットの進歩および幸福との関係を理解し、分析する任を追っているサピアルチとして、私は現代という時代の重大な問題について、専門家としての意見を提供するようしばしば求められる。それにより、この問題に導かれた。女王代理アルウィナルウェはサピアルチ大学に対し、サイジックについて知っている全ての情報を宮廷に提供せよとの要請を出した。どうやら、アルケインを学ぶ古き賢者たちが戻ってきて、現在の危機に際して援助を申し出たらしい。

我々は絶対の確信をもって、サイジックがかつてタムリエルで最も偉大な支配者たちの顧問、教師として仕えたことを知っている。我々はまた、約350年前に賢者たちが妨げられず研究するため、アルテウム島に退いたことも知っている。そして島は、文字通り消えたのである。

サイジックとは何か?この古い組織はサマーセット発祥であり、今日われわれが知っているアルケイン魔法の基礎を形成した。歴史上のどこかの時点で、彼らはアルテウム島を占領し、セポラタワーを本拠に定めた。サイジックの功績は数多い。元サイジックの賢者ヴァヌス・ガレリオンによる魔術師ギルドの創設や、秘術の発展も含まれる。秘術、あるいは古き習わしは、問題に対して適切に用いられた場合、宇宙の秘密を解明できると言われてきた。秘術はまた未来を覗くためにも用いられる。彼らがタムリエルの指導者たちに提供した助言は、秘術によるものだった可能性がある。

我々の祖先がサマーセットに居を定めた時、文化は変わり始めた。我々はもはや先人の霊魂を崇拝せず、その代わりそうした霊魂の一部を神格化して崇拝した。長老たちの一部が当時、この流れに反抗した。彼らは自らをサイジック、すなわち古き習わしの守り手と呼んだ。彼らはアルトマー社会の腐敗から離れるため、アルテウムへと退いた。しかし、新たな習わしに対する忌避にもかかわらず、彼らは助言と導きを与えるために戻ってきた。

私の意見を言うなら、サイジックが提供する助力を受け入れるべきだ。この危機の時にあって、秘術の達人を味方に付けられるのは悪い話ではないはずだ。

サイジックの写本:受け渡し場所のリストPsijic Codex: List of Dead Drops

うまく隠されていても
遺物の在りかは分かる
この影のような盗みを止めるには
サマーセットへ行かなくてはならない

悪意を灯す偽りのランターンは
ウェレンキンの入江の岩礁近くで見つかる
サンゴ石の割れ目の中
コーラル・クラブの住むところ

インドリクの心臓は深い水辺の近く
セイ・ターン砦の壁の裏にある
1と3の印のついた木々の裏で
この遺物はすぐに見つかる

筆記を強制する遺物は
用意のできた船の隣にある
アリノール港右端の桟橋を調べろ
銀舌の羽根ペンは近くにある

偉大なる演者の故郷リレンシルで
解ける杖は待っている
穏やかな小川の橋の下に
求める遺物はあるだろう

ラッサフェルドの旅の祠の近くに
背骨を外した頭蓋骨はある
些細な呪いの頭蓋骨は隠れる
大きな窪み近くの崖の縁に

影裂きの刀剣は運ばれた
尖った石と滝によって
アルド・モラの遺跡の東に
この恐ろしげな遺物は隠れる

魂の番人の壷は葬られた
東にも西にもない街に
ラッサフェルドの大邸宅の裏で
待ち受ける遺物は見つかるだろう

非難の箱は見渡す
エボン・スタドモントの泡立つ小川の1つを
壊れたアーチ道を探せば
稀有な呪われた遺物は見つかる

照覧の大学の近くに
別の悲劇の遺物は隠れる
終わりなき巻物は見つかるだろう
通行料を取らない橋の近くで

コルグラド・ウェイスト遺跡の中に
逃れられぬ兜は待っている
ねじれた木の下を見よ
海より水が入り込む場所の近く

サンゴの女王を見渡す
静寂に包まれた小森の中
手放せぬリュートは
王家の孵化場近くに隠れる

北の浜辺の滝近く
岩肌に置かれ
怒りしグリフォンの往来する先に
偽顔の扇は隠れる

ディレニの廃屋と
勇敢だった王の峠との間
岩丘近くの緑葉の下に
甘い夢の枕は見つかるだろう

調和の修道院の目の先
海辺の塔の足元
波をせき止める壁の端に
致命的な予感の鏡は隠れる

シマーリーンの壁境の先
海鳥のさえずりが聞こえるところ
積み重なる苔石の近くに
白黒の絵筆は待っている

知覚時間の砂時計は
東の海の近くで待つ
サンゴの森の隠れたところに
不道徳きわまる遺物は見つかるだろう

ガイザーが噴き出る場所の南東
密輸船の難破船の近くに
待ち受ける失われた恋の靴は
恐ろしい足並みの遺物である

開けたアラクソナルドの北に
大いなる渇きの遺物は運ばれた
常に満ちた聖杯は
羽根の皮の獣の後ろにある

乾燥の胸当ては
サンホールドの巨大な門の左で待つ
白壁が苔石と交わるところに
この遺物は寂しく置かれる

アルテウムの扉のすぐ外
インプの舞い上がる聖堂の南に
待ち受ける砕け散る剣は
不当な戦いの扱いづらい遺物である

サピアルチの推薦状Sapiarch’s Recommendation

廷臣ヴィンディルウィーン様

サピアルチ大学の公式文具がないことを、どうかお許しください。リランドリルからの新しい出荷を待っているところです。その間に、この上質な羊皮紙をお贈りするとともに、スカイリムとエボンハート・パクトの向こう見ずなリガート大使が女王代理アルウィナルウェ陛下にすぐ謁見を賜ることができますよう、心から推挙いたします。

リガートはアリノールの淀んだ世界に新鮮な空気を送り込める人物であると、私は理解しております。女王の布告を受け入れ、訪問者を友好的な微笑みで迎えるべき時です。リガートと名乗り、あらゆる機会にその名を思い出したくなるこの陽気なノルドのいる時こそ、これを始める絶好の機会であると考えます。

知と完全なるものの飽くなき追求の名のもとに。
異国観察のサピアルチ、タンデメン

サピアルチ大学にてOn the College of Sapiarchs

流浪の年代記作家アダンドラ 著

サピアルチ大学。それはリランドリルの西、海から突き出した小さな島にある。リランドリル本土とこの小さな島をつなぐ魔法の出口を操るポータル管理人の許可を得ない限り、一般市民はこの地区に入ることはできない。これは賢者を保護し、深い思想を考え、未知の伝承を研究するための静けさを保つ措置だと言われている。著者は繰り返し、この孤絶した大学地区で何が起きているのかを確かめようとした。私が明らかにしたことを以下に記そう。

だがまずは、サピアルチ自身についての背景を述べておこう。サピアルチとして正式に認定された者は常に223人おり、各人は何らかの専門的研究領域に専念し、その領域を管轄している。例えば、サピアルチを現在指導しているリランドリルのラーナティルはアルケイン学サピアルチを務めており、アルケインの伝承に関して収集された知識を、その卓越した精神の中に詰め込んでいる。また、それぞれのサピアルチには1人か複数の侍者が助手を務めている。侍者は修行中のサピアルチであり、いつの日か自分たちのマスターを引き継ぎ、大学の席を得ることを望んでいる。しかし賢者志望の者にとって、これが唯一の道というわけではない。優秀なハイエルフの学者はいつでも召喚を受け、この名門大学に加入するよう招待を受ける可能性がある。

個人としてのサピアルチは調査の実施と記録によって専門領域を拡張し、講義を行い、自分の研究領域に関する問い合わせがあった場合には助言を与え、論文や本を書いて自分が扱う論題を解説する。集団として、サピアルチ大学の機能はサマーセットの現在の指導者に助言を行い、そして玉座の継承者を訓練することである。また調査や研究によって一般に知らせておくべき新たな情報が解明された場合、彼らは声明を発し、調査を検討した上で、それが学問的価値のある対象に加えられるべきかどうかを判断する。

サピアルチ大学という名で知られている、物理的な地区の話に戻ろう。著者はまだ大学地区を個人的に探索する機会を得られないでいるが、信頼できる筋から得た情報なので、以下のことは大部分において真であり、信用できる可能性が高い。壁に覆われたこの地区は、リランドリルから真西にある小さな島を埋め尽くしている。私に調べられた限り、この地区の中心部分には大蔵書庫や学習室、大学の最上位者のための居室がある。下級のサピアルチが使う寮と学習用の個室があることも分かっている。

しかしサピアルチ大学の真の驚異は、水晶の塔とのつながりを除けば、主要部分の下にある部屋と廊下の巨大な迷路である。「迷宮」として知られるこの区域には複数の機能があるが、その最も名高い用途は、アリノール王家の継承者の試練に関するものである。玉座の継承者は適切な年齢に達するとサピアルチ迷宮へ赴き、3555日の間「アルトマー王の実践と儀式の道」を学び、その上で王位を得る。

謎めいたサピアルチ大学にはさらなる秘密があることを著者は確信しているが、賢者たちがプライバシーを要求し、女王とその密偵がそうした政策を支持している限り、サマーセットの民は大学地区の壁の内側で本当は何が起きているのか、決して知ることがないだろう。

サマーセットにいるカジートへのヒント(バージョン1)Tips for a Khajiit in Summerset V. 1

サマーセットへのカジート特使、ベズミ 著

ハイエルフは特に誇り高き民だ。このことは私たちも知っている。まるで私たちがお尻に巣食うノミでもあるかのように、常に不快そうな眼差しを向けてくる。通常はよく回る口と、さらに素早い爪がこうした侮辱への答えになる。しかし、私たちは今、彼らの地に来ている。ここサマーセットの海辺で、私たちは数でも力でも圧倒されている。適応しなければならない。

この地で、口の巧さは私たちの故郷におけるほど有利にならない。あのハイエルフたちは、腹を抱えて笑うということがない。彼らは心を無視して、頭だけで考える。もちろん愚かなことだけど、ハイエルフの考えは潮の満ち引きを変えられないように変えられない。いつものように、知恵で出し抜くようにしましょう。

歴史から始めましょう。ハイエルフは、カジートが何も知らないと思い込んでいる。この者はあのジェコジートたちの誤りを証明してやる以上の喜びを知らない。彼らは私たちが、最も基本的な知識さえも持たないと考えている。その期待を裏切ってあげましょう。

スラシアの疫病は、今でも血を流し続けているナハテン風邪の傷に比べれば消えつつある傷跡でしかないようだけど、サマーセットのエルフにとって深い重要性を保っている。ベズミが思うに、これは神なる祖先であり、妖術師の神としても知られるシラベインの関与が大きな理由でしょう。その強大さゆえに神へと昇格した魔術師というのは、何というか、ハイエルフの理想じゃない?

スラシアの疫病は自然の病ではなく、スロードとして知られる邪悪な種族の仕業だった。デブでのろまで気持ち悪いスロードは闇の魔術を海にかけ、タムリエルの大部分にこの病気を広めた。病気は素早く、激しく拡散し、街も、都市も、文明も破壊した。しかし大きな悲劇の多くがそうであるように、英雄たちが現れ始めた。シラベインはただそのうちの1人で、ハイエルフに最も尊敬されているだけよ。

シラベインは強大な力を持つアークメイジとして知られていたけれど、その魔法だけで解決したわけじゃない。彼は非常に強力な付呪が施された指輪を持っていたからね。これによって、彼は無数の命を疫病から救うことができた。彼一人の働きにより、この破滅的な疫病にタムリエル全土が飲み込まれるのを免れたと言う者も多い。ベズミはこのアークメイジが尊敬されているのは自分が救った人々への共感よりも、この功績に必要な力によるという感じをよく受けるけど、これについては口を閉ざしておく。

アークメイジ・シラベインはもちろん、これで終わらなかった。彼はコロヴィアのアンヴィル王で、男爵提督ベンドゥ・オロの勢力に加わり、疫病を根源から止めに行った。彼らは協力して、エルフだけでなくコロヴィア人やレッドガード、ブレトン、アルゴニアンまでも含む艦隊で構成された全旗海軍を団結させた。この種族たちは意見の相違を脇に置いて、スロードの故郷であるスラスの襲撃で多くの命を犠牲にした。そして驚くべきことに、多くの損失を出しながらも、彼らは勝利した。彼らは珊瑚の王国を沈め、スロードたちを深海の底という、いるべき場所に追い落とした。

この物語が特に有用だと考える理由がいくつかある。すでに述べたけれど、私たちはカジートが同盟者たちについて無知であるという誤った考えに、すぐに終止符を打たなければならない。もちろん、私はハイエルフの歴史と文化についてさらにいくつかの記事を出版したいと考えている。でも理由はそれだけじゃない。ベズミがこの歴史に関する情報を収集することを選んだのは、これが同盟者の重要性を示しているからよ。つまり私たちの重要性ね。

各種族が戦いに持ち寄った軍事力がなければ、全旗海軍の勝利は不可能だったでしょう。確かにシラベインは便利な指輪を持つ、強大な魔術師だった。でもたった一人でこの戦いに勝てたはずはない。この勝利を達成するために、彼は他の多くの者たちに頼らなければならなかった。

あなたが話し始めた途端、ハイエルフが鼻であしらってきた時。あなたが歩いて通り過ぎようとすると、母親が子供をそばに引き寄せた時。ベズミが言ったことを忘れないように。万能のサマーセットが友人を必要としたのはこれが最初じゃないことを思い出させてやりなさい。私たちが彼らを必要としているのと同じくらい、彼らにも私たちが必要だということを思い出させるの。

サマーセットにいるカジートへのヒント(バージョン2)Tips for a Khajiit in Summerset V. 2

サマーセットへのカジート特使、ベズミ 著

この者がハイエルフの誇りと虚栄心について話す必要はない。誰でも知っているしょう?彼らの目に宿る軽蔑心は、偽造硬貨のように明るく輝く。彼らの見下す態度は、ハチミツをかけた毒のように舌からにじみ出る。我らが背の高い同盟者は、カジートのことをあまりにも低く見ている。誤りを証明する時は今よ。彼らの土俵で出し抜いてやりましょう。

このシリーズの1巻を読んだなら、ハイエルフが自分たちの歴史をいかに重視しているかはもう分かっているはずね。それは分かっている。でもこの誇りさえ、彼らが家の過去に対して抱く虚栄心には及ばない。大半の者は自分の祖先の名前、職業、偉大な点について、何世紀にも遡る知識を持っている。保証するけど、ハイエルフはそういうことを熱心に教えようとしてくるわよ。

ハイエルフにとって家は全て。でもそれを感情的な意味で理解してはいけない。家は彼ら自身を縛る鎖であり、決して変わらない肩書きなの。地位は偉業によってのみ上がる。彼らは日々、自分が栄光に包まれる瞬間を求めてやまない。多くの者はアルケインの技によって自分の価値を証明する道を選ぶ。彼らの特性として、強い魔力を持っていることが多いからよ。芸術に身を投じる者もいる。絵画の傑作を描き、栄光に満ちた音楽を作って自分たちの地位を上げようとする。

そう、ハイエルフは自分の目の前に高い壁を作るの。それを登れというわけよ!でも道のりは多くの場合険しい。ここサマーセットの芸術家たちほど互いに敵意を抱く人々を、私は見たことがない。これまでに出会った盗賊や暗殺者にさえ、敵に対してもっと節度のある者がいたほどよ!魔術師はあらゆる者を見下しているけど、同僚の力をすぐに妬む。同族の間でさえ、ハイエルフは上から見下ろそうとするのよ。

彼らはあなたも、あなたの家も気にしない。彼らにとって、私たちにはたった一つの肩書きしかない。それはカジート。だから私たちは下等で、利用される存在でしかない。それは知っているでしょう。ハイエルフの前で価値を高めてみせるのは簡単じゃないわ。何度も、自分の価値を証明しなければならない。最も勤勉な者にとってさえ疲れる仕事だけど、やるしかないわ。

ハイエルフは技で挑まれるとすぐに受けることをベズミは発見したわ。自分をより優れた存在として示すチャンスをぶら下げてやれば、彼らはいつでも飛びついてくる。でも、狡猾さで得た勝利にもそれなりの名誉があることを私たちは知っている。いつでも自分の有利になるように立ち回りなさい。

ハイエルフに挑戦して勝つのはいつも…いいことばかりじゃないわ。誇りを傷つけられて、再戦を挑んでくる者もいる。強烈な癇癪を起こして、いんちきをしたに決まってると宣言し、さっさと行ってしまう者もいる。でも、頭を下げて敗北を認める、尊敬すべき者たちもいる。そうした者のうちには、敬意の小さな火が灯る。その火を大きくしましょう。

この者の助言とお墨付きがあっても、全てのハイエルフの歓心を買えるわけではない。自分の意見以外には目も耳も貸さない者も多くいる。そういう連中に心を挫かれないようにね。彼らに勝たせてはだめ。毒と無知を吐き出させるようにしなさい。変わるべきなのは私たちだけど、よりよいものに変わらなければ。より偉大なものに。

サマーセットの童謡Nursery Rhymes of Summerset

照覧の大学の詩学教授クイリダンによって収集され、書き写された韻文。

継承者の韻文:
囁き言い合い
王冠のぐらつきを見たまえ
盲目の女王は進む
猫の爪でひっかき合い
勇敢な反逆者を捕らえ
笑って皆を吊るす!

船と骨:
不毛な10と50年、ポケットの中は石ばかり
洞窟、畑も汚染され、残されたのは骨ばかり
船長たちが旗を掲げ、浮かべた船は1000ばかり
ナメクジの民の島沈め、浮かんだスロード刺すばかり!

爪と根の歌:
樹液と鋭い歯を集め
髭、爪、月の花輪も集め
トパルブルートとエルデンルート、ナイフと剣を鞘から抜いて
素早く彼らの綱を切り、泡吹き吠える様を見よ
ドレイクとライオンに食わせてやれ、それが奴らの使い道!

サマーセットの誘いVisit Summerset

アイレン女王はハイエルフ代々の故郷を万人、訪問者や商人、移民に等しく開かれた地にするという、長く続く布告を出した!

黄金のアルトマーは優美と知性で名高い。あなたも彼らの先祖代々の故郷の恩恵に浴することができるようになった。冒険に乗り出そう!名声と栄光を手に入れよう!タムリエルの他のどこにもない、美と魔法の国を探索しよう!新参者は大歓迎される!

かの地への船は主要都市の港から出ている。

サマーセット諸島:訪問者への案内Summerset Isles: A Visitor’s Guide

調査官ルニルスティール 著

ごきげんよう、旅の方々。みなさんは今や、アルトマーの地に足を踏みいれる恵まれた大陸民の一員となった。蒼き分水嶺の心地よい空気と鮮やかな色は、想像したとおりだったろうか?もし諸君が我々の船で渡る贅沢を堪能したのであれば、きっとみなさんの人生で最も円滑な船旅だったろう。しかしそれはみなさんがこの島への訪問で経験するもてなしとくつろぎのうち、最初のものにすぎないと思っていただきたい。岬の冷たい水を後ろに見ながら、我らが太陽のぬくもりと、甘い花の香りの出迎えを受けてほしい。

どうかバルケルガードの活気に怖気づかないでほしい。街の人々は品物を運んでくる大陸民の相手をするのに慣れている。彼らは船乗りの相手をする忍耐心を備えているのだから、みなさんのような礼儀正しい客人に気分を害することなどない。ここの宿の豪勢な部屋を利用し、タムリエルでは見つからない地元の食材を味わってほしい。アルトマーのもてなしは、我々のあらゆる娯楽がそうであるように、一つの芸術であり、数千年にもわたって磨き上げられてきたものなのだ。

あまりに豊かな体験に圧倒されてしまうかもしれないが、安心してほしい。この島は調和の地であり、その自然な平穏に導かれるままにしておけば、自らの均衡を見出すことができるだろう。サピアルチは最も高い木から、最も短いガラスの破片に至るまで、全ての要素が完璧なバランスを保つように気を配っている。

あまり遠くへ行きすぎて日常の静けさを乱さないことが望ましいが、バルケルガードの北へ向かえばサウスビーコン灯台がある。我らが王立海軍を夜間、安全に導いている魅力的な建造物だ。灯台が建っている丘は、聖なる島サマーセットの素敵な眺めを提供してくれる。特に天気のいい日は、シマーリーンの街が忙しく人と物をオーリドンとの間に行きかわせている姿を見られるだろう。灯台に登ってよく見たいと思うかもしれないが、係員の迷惑にはならないようにしてもらいたい。

アルトマー全体を代表して、我々の文化に参加することで新しい発見を得られることを願っている。バルケルガードで過ごす時間が、一生の間残り続ける思い出をもたらしてくれることを願う。滞在が5日を越える場合は、必ず当局の承認を受けなければならないことを忘れないように。でないと、予期せぬ形で訪問を終えることになってしまうかもしれない。

どうぞタムリエルへの帰り道はお気をつけて!

[神聖執行局より承認を受けて配布しています]

シースロードの神話The Myth of the Sea Sloads

海の敵意のサピアルチ、ラーヴァリオン 著

愛すべき我々の島を取り巻く海は食物や資源を供給してくれる上に、迅速な輸送を可能にし、サマーセットとそれ以外の世界の境界にもなっている。だが残念ながら、海から来るものがすべて利益になると考えられているわけではなく、海には島にとって大きな危険を及ぼす脅威も多く存在する。サピアルチ大学に在籍する我々は、危険度が高いと見なしたものに対して、学問領域を越えて研究に取り組み、防衛手段を考案してきた。海の敵意部門の職位に私があるのはそのためだ。

海に由来する脅威は、自然現象から敵の王国に至るまで多岐にわたる。自然は水晶の塔がもたらす魔法の守護をもってしても、破壊的な嵐、砕ける波、洪水がサマーセットに与える被害を常に止められないことを島に知らしめる。敵に関する限り、王立海軍が航路の障害を可能な限り除去し、対立勢力の軍事力を抑止する役割を果たしている。だがこれには例外が残っている。マオマー、すなわちシーエルフは大胆にも定期的に、哨戒をかいくぐって沿岸の集落を襲撃している。

恐らく、最も恐ろしい潜在的脅威はスロードだ。南西のアビシアン海からやって来るこの不快な生物、スラスの珊瑚の王国の住人は、以前よりサマーセットを占領しようという野心が薄れたとはいえ、近年に至るまで我々の所有物の略奪と襲撃を続けている。水陸両生のナメクジのような生物は魔法との親和性を持っているが、有益な魔法よりむしろ闇の魔法に引きつけられているようだ。彼らは死霊術や疫病など、死と破壊の手段を使いこなす。

最近島中で聞かれる噂話によれば、スロードの変異種シースロードが戻って来て、サマーセットを苦しめているそうだ。この数百年間名前も聞かれなかったが、その間シースロードはウルヴォルクスという、真珠海のどこかにある海底王国を支配していた。そのような生物が島に入りこんでいる可能性があるだけで、懸念と最大限の警戒を引き起こしている。この目的のため、私は広大な蔵書庫にある古い学術書や古代の書物を参照し、得られる限りの情報をかき集めた。残念ながら、あまり多くないと言わざるを得ない。シースロードは数多くの近縁種よりも閉鎖的で、謎が多い。

明らかにできたことは、我々はシースロードの脅威を過小評価してはならないということだ。スラスのスロードが常としていたように小さな王国を打ち立てるのではなく、シースロードは特定の目的の元に協調する小集団を形成する。その後は関心や必要性に応じて、分裂、変容、再構築される。シースロードは他のスロードと同様、死霊術に大きな関心を抱いている一方で、錬金術、影魔法、精神魔法など、他の領域の技も披露している。だが彼らの野心と力にもかかわらず、記録上シースロードは今にも絶滅しようとしているとある。前任者のウィナウェンは、有望な著作「ウルヴォルクスの悪党」の中で、多くのことを書いていた。シースロードは数百年すれば自然と姿を消すだろうというのが、彼女の知識に基づいた意見だった。そのような出来事は、今すぐ起こりそうにない。

サマーセットにおけるシースロードの活動が確認されるまで、注意して海を監視し続けた方がよいと思われる。シースロード自体に加え、この不快で敵対的な生物は、すべての種類の海の怪物を利用することで知られている。この不穏な時代に、海からの獣による攻撃は、島に最も起きてほしくない事態だ。

シラベインの物語The Tale of Syrabane

(楽曲:壮大にして危険なるもの)

寄り集まりて聞け
大魔術師シラベインの物語を
その慈悲と力によって
彼はスラシアの疫病を止めた

目前の疫病を止めるための
唯一の手段、それは戦
シラベインは助けを求め呼んだ
あまねく地に向かって

合唱
おおシラベイン、おおシラベイン
神なる運命のエルフよ
おおシラベイン、おおシラベイン
最も新しき八大神

人間もエルフも呼びかけに応えた
負けるはずはないとわかっていた
皆が集い、力を合わせた
全旗海軍は出航した

ベンドゥ・オロを味方につけ
剣と呪文を投げつけて
シラベインは波を押し返し
珊瑚の王国は潰えた

合唱

善きエルフよ、忘れてはならぬ
大魔術師シラベインを
闇の時代がやってきた時
彼が助けを呼びかけたことを

合唱

スロードに関するさらなるメモFurther Notes on the Sload

発明家テレンジャー 著

スロードとマオマー:スロードは他の定命の種を敵と認識しているが、スロードとマオマーの間に外交的な繋がりがあることが確認されている。ナメクジとシーエルフが衝突を起こすのは日常茶飯事である。驚きはない。そもそもシーエルフとスロードは現在、他の種族全てと戦争状態にあるのだ。マオマーの不満の原因は、沼地に覆われた薄暗い群島ピャンドニアだと思われる。酷い悪臭がするあの島で、彼らは身動きが取れなくなっている。スロードが他の種族を敵視している理由については、明らかになっていない。

珊瑚の塔:珊瑚の塔は全旗海軍のスラス侵攻により崩落してしまったため、この塔については今ある知識に基づいて推測するしかない。我々にしてみれば正道とは言いがたいがが、スロードは非常に有能な魔術師の集団であり、珊瑚の塔には神秘の力を集めて投射する力があったとされている。私は塔の伝説の専門家ではない。興味があるのはもっと現実的なものだが、神話歴史学者たちによるこの主張は、いわゆるニルンの塔の目的と実践に(ほとんど)一致するものである。珊瑚の塔はサマーセットにある法の水晶のような「本物」の塔だったのだろうか?それともドゥームスパーアーのような、不完全な模造品だったのだろうか?我々の知識で、その答えは見つけられないだろう。

スロード石鹸:とにかく推測はもうたくさんだ。たまには、自信を持って説明できるものも取り上げてみよう。今回はスロード石鹸だ!スロード石鹸の起源についは多くの誤解があり、それを洗い流す機会を与えてくれたことを嬉しく思う。まず、スロードの生物学的変質について考えてみよう。彼らはスラシアの珊瑚島で生まれる。ベンドゥ・オロ提督は彼らについて「不快で形を持たない小さな幼虫」と説明している。優柔不断な親に見捨てられた幼虫は海までなんとかして這っていき、「ポリウィグル」と呼ばれる水生の疑似頭足類に変態する。成体のスロードは肥満体であるため、珊瑚島の浅瀬から動くことはほとんどなく、そこでポリウィグルと一緒にゴロゴロしている。鈍すぎて親たちの偽足を避けられなかったポリウィグルは、そこで捕らえられて収穫される。これにより弱者は排除され、スロード石鹸の原料となる。

捕まったポリウィグルは常時沸騰している大釜に入れられ、徐々に溶解していき粘液性のスープとなる。このスープにスロード秘伝の物質を加えて錬金的な混合物を精製したら、金型に流し込んで冷えるまで待つ。固まったらこの塊を取り出して、ハグフィッシュの内臓で包み込んで保管する。

この石鹸はスロードの黒魔術的儀式になくてはならないものだと考えられている。黒魔術に詳しいわけではないが、自らの子孫を原料とする乳化試薬に不死者の魔力を増強する力があってもおかしくはない。スロード石鹸はスラス以外で滅多にお目にかかれないが、あったとしても法外な価格で売られている。錬金術師たちはそれが持つ特殊な能力を活用して、敏捷の薬や最も貴重な人格変異の薬を作り出す。錬金術サピアルチの赤きアリアノラによれば、スロード石鹸はスラス以外の土地でまだしっかりと分析されたことがないらしい、つまり未知の錬金術的性質がまだたくさん含まれている可能性もあるということだ。また、この石鹸は非常に優秀な洗浄能力を持っており、奥深くまで優しく浄化してくれるため、これを使うと肌が若返って生まれ変わったような気分になれる。

セランの日記Celan’s Journal

こんな場所なんか消えてしまえ!父さんはグラーウッドを出発した時、ここサマーセットで富と祝福が見つかると言った。ハッ!横柄な足長どもから、犬扱いされるようになっただけだ。

ブドウ園の労働は意味がない。貰える金はごくわずかだ。これでは生活できない。昔のように狩りをしても、鹿は怖がりだし痩せている。ここの獣は呪われているんだ。収穫は1口分の肉と、もろすぎて道具にならない骨だ。

ファリルがいなかったら、ここには耐えられないだろう。イフレに誓って、あれほどの美人は見たことがない。バターチェストナッツのような丸い目、白鳥の首、狼の歯のように鋭い耳。ここに記しておこう。僕はあの少女と結婚する。彼女の気が引けるなら、ここにも価値はある。

* * *

ハリモリオンの獣め!昨夜ファリルが泣いてやってきた。あの好色な男に尻をつかまれ、二又の舌を口に入れられるところだったって!僕は宣言する。あの雑種の頭は、年の瀬までにシチューの具にしてやる。

* * *

信じられない。ズェンに祈りが届いたんだ。狩りに出ると、緑の亡霊に出くわした!本物の緑の亡霊だ。昔ハイエルフが逮捕した偽者じゃない。革、弓、矢筒の一式を渡されて、同じやり方で殺せと言われた。嘘みたいだが本当のことだ。僕は緑の亡霊!復讐を果たす!

* * *

ハリモリオンを殺せば心が晴れると思ってた。ファリルの傷を癒し、正義をもたらすと思った。でも今は…本当に悩んでいる。泥の中で苦しむ奴を見下ろすと、胸がズシリと重くなった。息もまともに吸えなかった。やめとけばよかった。母さんが知ったらどう思うだろう?許しを乞うために頭を使おう。赤の聖堂で許しを乞えるかもしれない。今から向かおう。

セレンウェの日記Selenwe’s Journal

シラベインの指輪にかけて、私は一体何をしてしまったの?

私の最愛の妹。日曜の午後、お花畑で私を追いかけていたおさげ髪の小さな妖精。マキバドリの歌声を持った心優しい少女が、死霊術師に魅了されるなんて。とても信じられない。私たちが何をしたというの?何かの霊魂を冒涜でもしたの?あの時私がいたら。留まっていれば。全部私のせいだわ。

何もしないわけにはいかなかった。死霊術の実践は許されざる罪。私はあの子に悔い改め、ディレニ一族の慈悲を乞うようにと懇願した。でもあの子は心を変えなかった。あの子は物憂げな生気を欠いた目で、私を見つめて言った。「彼らに私は殺せない。私は復活する、何度でも、永遠に」。あの優しさと穏やかな純粋さは消えてしまった。あの瞬間、私にはもうほとんどあの子と分からなかった。

だから私は儀式を行った。あの子を石棺に閉じ込め、緊縛の言葉を叫び、聖なる炎を燃やした。それから私は墓のそばで泣きながら、あの子の怒りと嘆きの声を聞き、最後にあの子は静かになった。

ただラウリエルの霊魂がここアクロポリスで安らかに眠れることを願う。あの子はここを去れない。決して去れない。アーリエルよ、私をお許しください。私自身は決して許すことができないでしょう。決して。

セレンウェへの手紙Letter to Selenwe

セレンウェへ

元気かしら。あなたの疑問に答えると、残念だけどラウリエルは良くなっていない。あの子はあなたをひどく恋しがっているけど、そのことはほとんど話さない。美しい声を聞きたくてたまらない!あの子が毎朝歌っていた、秋の頌歌を覚えている?今でも時々口ずさむのが聞こえるけど、陰気な調子の歌になっている。

あの子には新しい友達ができたの。サンホールドから来た発明家よ。実を言うと、あの男を見ていると不安になる。滅多に口をきかないし、すごく変な服を着ている。それに臭いがあるのよ。彼の行くところはどこでも、鼻を突くようなカビ臭さがするの。二人は何時間も地下墓地で過ごし、呪文を鍛えている。どうしてそんな陰気な場所で訓練するのかあの子に聞いたけど、答えようとしないの。

何日か前、意を決してラウリエルにあの浮浪者と会うのを禁止しようとしたけど、やっぱりやめたの。毎日あの子は私から離れていくような気がする。あの新しい友達を奪ったら、完全に背を向けてしまうかもしれない。

あなたはあの子を誰よりもよく知っている。どうすればいいの?不安でいっぱいよ。返事を待っています。

あなたの母
オハディル

ソーン・ブラックスタッフに関してRegarding Thorn Blackstaff

ライトマスター・イアケシス

また1人、注目に値する候補者がいます。ジョサジェーから聞いたところによると、一風変わった人物だそうですが、我々にとって大きな価値があるかもしれません。

その候補者とはソーン・ブラックスタッフ。アルトマーであり、オータメルドと思われます。名前はおそらくサマーセットから追放された後に自分で選んだものでしょうが、これはあくまで推測です。ドミニオンとの間にどういう事情があるのかはまだ明らかにできていませんが、元の親類との間にはほとんど愛情もないはずです。彼はダガーフォール・カバナントの旗の下で、無慈悲な戦いをしました。

通常なら、このような根深い敵意を持つ者は考慮の対象外とすべきでしょうが、ジョサジェーが占って私に伝えたところによれば、この男は高貴で寛大です。しばしば導きを必要とする者たちの師として、また守護者として活動しています。気性に合っているから、という以外の理由もないようです。しかし、その助言は経験の浅い者にのみ重宝されているわけではありません。魔術師ギルドのアークメイジとテルヴァンニ家の魔術師王の両人から、非常に重大な事柄について何度も相談を受けているようです。

ブラックスタッフはサイジックになる大きな可能性を秘めていると思います。あのエルフの徳は欠点を上回るのではないでしょうか。承認いただければ、監視を続けるよう勧めます。

ロアマスター・セララス

ターナミルへの手紙Letter to Tarnamir

セルヴァル・ターナミルへ

ウッドエルフの美しい召使ファリルと私との関係について、ウッドエルフのコミュニティから正式な抗議を受け取ったと聞いています。信じてください。この一件は不幸な誤解であり、教育の欠如と生来の粗野な偏見のため、大げさになったのです。私はあのウッドエルフに相応しい敬意を持って接していると、断言します。
ファリルに手を出したことはありません。

ただ、私には客人を心より温かく迎える義務があります。そこで消えぬ疑念に対処するため、ファリルとの契約を解除しました。好意的な推薦状を持たせ、地元の競合相手(彼らもあなたの借家人でしょう)へ送りました。労働環境は良好であり、この結果にとても満足しているようです。

さらなる好意の印として、新しいウッドエルフの隣人に贈り物をするつもりです。

ご存知のとおり、私たちの仕事は、地域の同業者の固い結束と愛が欠かせません。この対応に不手際がないことを祈ります。

調和を求めて

ハリモリオン

ツォクソルザの手紙Tsoxolza’s Letter

ジーマト

サマーセットは使者が言っているような素晴らしい楽園ではない。女王の布告は非常に魅力的だが、ハイエルフはよそ者たちに何も望んでいない。彼らにとって新参者はグアルのノミ以下の存在なのだ。船から下りるとすぐに、私の「社会規則に対する理解力」を確かめるため、修道院の司祭たちに「文化的評価」をされることになった。しかし、結局一度も質問されることはなかった。

彼らは修道院の奥にある独房に私を閉じ込めた。この島に来た他の新参者たちもそこにいた。私は全てのことに納得できなかった、まるで間違って冷たい流れに入り込んでしまったお湯のような気分だ。デイドラの祈りと共に感謝を捧げる、モンクの声が聞こえてきた、もはや脱出する以外に方法はない。彼らが盗賊ギルドに所属していたかどうかは定かではないが、私はお前に認められないだろう友人たちから学んだ技術を活用して、修道院から脱出した。

朝になったらアリノールに向かう。できるならマークマイアまで無事に辿り着きたい。だがとにかく、今はここ以外ならどこでもいい。

ツォクソルザ

ティンドリアの必要画材リストTindoria’s List of Needed Supplies

希少な染料:サマーセットで最も豪華な緑藍の色は、ハエナミルの貴重な染料が唯一の原料だけど、簡単には手放してくれない。この辛辣な世捨て人は、印をつけた場所の小屋で見つかる。染料は、ヨクダのブルーティーと交換すればいい。

ローチの死骸:ブロドランのローチの死骸を粉状にすると、銀がかった灰色になる。この色ほど、岩肌の景色に適したものはない。ブロドランは、印をつけた場所の農園で探すといい。支払いは済んでいるから、私の名を告げれば材料を渡してくれるはず。

オーリアリス:この花は、古風で趣のある海辺の庭園に咲いている。その場所に印をつけた。この花を使うと、最も鮮やかなオレンジの色が出る。明るい太陽には最適よ!花を摘むだけだから、他よりも簡単に入手できるはずよ。

テロムレ隊長へFor Captain Telomure

テロムレ隊長

もしあなたがこれを読んでいるなら、愚かにも追ってきたのでしょう。

やめてください。

司法高官アヴァナイレは単独じゃありません。魔術師が彼女を待っていました。部隊全員で協力しても、生き延びられないかもしれません。ですが女王と国のため、やってみます。

あなたには生き残って報告する義務があります。彼女を逃がしちゃいけません。目的を果たさせてはダメなんです。裏切り者の汚名を広めてください。当然の報いです。

リーウェル

ナイトランナー船長の日記Night Runner Captain’s Journal

ヌガルザと名乗るシースロードは、吐き気のする怪物だ!我々の洞窟に奴が初めて出現した時、私はナイトランナーで最高の襲撃者を派遣して追い払おうとした。だが考えられないことが起こった。あのでかいナメクジに虐殺されたのだ!しかもあの怪物はそれだけで満足しなかった。奴は死霊術師の一種だ!襲撃者たちを蘇らせ、私に敵対させたのだ!

* * *
さらに2つの襲撃団がシースロードと不死の群れにやられた。なお悪いことに、今や彼らも不死の群れの一部になっている!この状況を考え直さなければ。

* * *
私はシースロードに取引を持ち掛け、驚いたことに怪物はそれを受け入れた。我々は密輸のためにこれからも入江を使える。その代わり、私は死霊術の実験のために捕虜をヌガルザに提供すればいい。気味が悪いが、こんな取引でももう一つの道よりはマシだ。

* * *
洞窟をうろつきまわっていたオークを捕らえた。ヌガルザの準備ができるまでの間、襲撃者の1人に彼を縛りあげさせた。幸運なことに、この哀れな奴は完全に酔いつぶれていた。おそらく自分がどんな目にあうのか、何も分かるまい。

* * *
あるハイエルフが交渉を求めてきた。彼女はヌガルザの代理だと主張したが、ヌガルザはアビサルの徒党というものに加わっているらしい。シースロードの集団が邪悪な目的のために協力しているというのは、胸が悪くなる。彼女はヌガルザの意志に従い、徒党のために働くという提案を私にしてきた。彼女が言うには、ヌガルザの仲間の1人が現在南で活動しており、サマーセットを沈没させ、あの地を再びスロードの支配下に置く計画を練っているらしい。

白状するが、最初にこの言葉を聞いた時、最初の反応はこのハイエルフのはらわたを引き抜いて、神聖執行局に警告を伝えることだった。結局、我々の事業はサマーセットが稼働していなければ成り立たないのだ。しかし私は何とか怒りと吐き気を抑え、提案については考慮すると約束した。徒党の契約を受け入れるまで、あまり長く考えないように彼女は警告した。

ブラック・マーシュか、どこか遠い場所に向けて出航するには手遅れだろうか。

ナリアラのメモ、2日目Naliara’s Notes, Day 2

始めたばかりだけど、もう大きな手掛かりが見つかった。メッツェの知り合いの大学の後援者のコテージに立ち寄り、メッツェが公演の話をすると、後援者がコレクションの1つである奇妙なモニュメントを見せてくれた。

それはキングズヘヴン・パスにあった、風化したサンゴのモノリスだった、腰程の高さがあり、エルフ文字が刻まれていた。彼は遠い昔のエルフたちが使っていた道標だと言った。

それを見たメッツェは口から泡を噴きそうになっていた。エルフの文字で「ゴブリン」と書かれていたのがはっきりと見えたのだ。私も同じぐらい興奮した。良い前兆に思える。

メッツェは後援者が提供してくれたベッドの、上等でダウンが入っているマットが固すぎるからもう辞めたいと不満を漏らしていた。岩山でどうするつもりなんだろう?

ナリアラのメモ、8日目Naliara’s Notes, Day 8

キングズヘヴン・パスの丘を越えている間、私たちは隠者から調査に向いていそうな場所を教えてもらった。残念ながら、どれも互いに大きく離れた場所にある。

メッツェは相変わらずゴブリンの縄張りに接近を試みている。彼はそこに行けば未知の発見があると確信しているようだ。それよりも胸を槍で突き刺される可能性のほうが高そうだけど、彼はいまだに楽観視している。

この任務に志願したのが、私だけだった理由が徐々にわかってきた。

ナリアラのメモ、13日目Naliara’s Notes, Day 13

私たちが訪れた場所はどこも、キングズヘヴン・パスの地下に巨大な建造物があることを示唆していた。山の岩もその根拠になった。私たちは今、そこを目指している。

この考察が正しければ、考古学的に非常に重要な意味を持つ可能性がある。この仕事に就いたのはやはり正解だった!

またメッツェがケイルンベリーを食べていた。彼はアレルギーではないと言っているが、発疹はまだ消えず、体臭もどんどん酷くなっている。とにかく目的に集中しよう…

ナリアラのメモ、18日目Naliara’s Notes, Day 18

クソ。ゴブリンの領土の奥深くまで入り込んだが、遺跡が隠されていると思われる場所までまだ大変な距離がある。
メッツェは前進すべきだと言っている、だが危険すぎる。

見られているような気がする。ゴブリンの斥候が潜んでいるようなことはないと思うが、メッツェは考えてもいないようだ。とにかく、私に何かあったら彼の責任だ。少なくとも彼のあの大きな声なら、ゲートに向かうまでいい囮になってくれるはずだ。

ノラシーへの手紙Letter to Norasea

ノラシーへ

辛い知らせを聞いて胸がはりさけそうだ。すぐにリランドリルへ来てくれ!サピアルチは十分な資源を持っている。約束する、この病気は必ず治療する。何を犠牲にしても。

ある人と知り合っている。名をエミールといって、治癒や回復のことに関して類稀なる才能を持っている人だ。3人で君の健康を取り戻す方法を見つけよう。絶対にだ。

頼む、急いでくれ!それから、同じ病気に悩まされている人がいたら一緒に連れてきてくれ。

君の友
ハラダン

ハラダンの研究日誌Haladan’s Research Journal

記録1

ようやく親しい友人のノラシーがリランドリルに到着した。エミールと私はすぐさま彼女を連れ去った。急いでソルトブリーズ洞窟の奥深くに研究室を作った。好奇の目から逃れるために。私はサピアルチの仲間が彼女の状況に気づくことを恐れた。彼らは手遅れになるまで、彼女をただ隔離するだけだろう。

彼女は友人を伴っていた。ゲーウェーデルという痩せたエルフだ。私にはこの女性がもう手遅れに見えた。彼女は常にうろうろしていた。頻繁につぶやきながら。既に、色濃く固い染みが彼女の胸と腕に現れていた。病気の進行を遅らせるように努力しよう。だが、最優先はノラシーのままだ。彼女は、私に友人がいなかったとき、唯一の友でいてくれた人だ。そして今、ようやく恩返しする機会が訪れた。手遅れでなければいいが。

記録2

エミールと私はゲーウェーデルの石化が進まないように、強力な消毒薬を作り出した。だが、これはせいぜい進行を抑えるだけだ。日を追うごとに彼女の振る舞いが常軌を逸している。ノラシーには抗議されたが、彼女を拘束用の部屋に隔離しなければならなかった。

我々の治療薬がノラシーに効果をもたらすことはなかったようだ。エミールと私は協力して昼夜作業をした。正直に言って、エミールがいなかったら私に何ができただろう?長い夜と続く失敗を耐えられたのは、彼の愛と配慮があったからだ。

記録3

出来たと思う。エミールと私はニルンルートの凝縮物に数々の少量の試薬を組み合わせ、高度に集束した石型の霊薬を作り出した。皮膚の下に蓄積している角化の塊を粉砕すれば、病気の進行を止められるかもしれないと私たちは考えた。だが逆に、どうやら私たちは塊を小さな欠片に砕いて、拡散を早めてしまっただけのようだった。もはや万策尽きてしまった。手遅れなのかもしれない。

記録4

エミールがあることを考えた。これを書き記すことはためらわれる。角化の成長に対する試験の結果は、塊が血管の伝送によって拡散することを示していた。病気は血液の成分を皮膚のすぐ下の血管内に蓄積する固い粒に変質させ、その後石灰化し、どんどん成長する。血だ。病気は血の中にある。

決定的な知見に到達すると、エミールは解決策が存在する可能性を示唆した。ポルフィリン・ヘモフィリア。吸血症と言う名が有名だろう。私はその考えに愕然とした。だが彼の理論を信用する。私たちの理解では、吸血症は血液の成分を大幅に変化させる。理論上、この再構成は角化の成長を不可能にするはずだ。ノラシーの視力を回復させることはできないだろうが、病気の進行は十分に止められる。考えなければ。

記録5

長期間検討した後、エミールの計画を進めることを決断した。ノラシーに見通しについて詳しく話すと、彼女はそれに同意した。そう、これは単に吸血病の感染を錬金術的に再現するだけのことだ。サピアルチは決してこのようなやり方を認めないだろう。だが私たちは治療するとノラシーに約束した。時に伝統は、恐るべき革新に道を譲らなければならない。

記録6

無事に工程を終えた。ノラシーは吸血症の取り込みに対して予想通りの反応をした。私たちに分かる範囲では、治療は成功だった。角化の成長の拡大は認められなかった。そして、彼女の精神は完全に回復したようだ。エミールに、ゲーウェーデルに対しても同じ治療を施さなければならないと告げた。それに対して、彼は大きな懸念を抱いているようだ。だが、吸血鬼が危険だからと言ってこのような治療を否定はできない。今晩彼女に注射をするつもりだ。マグナスよ、どうか力を。

ハラダンへの手紙Letter to Haladan

ハラダンへ

またあなたに手紙を書けてすごく嬉しい。長い間連絡が取れなくてごめんなさい。アイレン女王が布告を発表した時、貿易省が厳しい日程を設定したおかげで、個人的な用事に使える時間がまるでなかった。先月はほとんど海で過ごしたわ。

で、そのことなんだけど。いくつか嫌なことをお知らせしないといけない。先日、遠くの島で数日間足止めを食っていたの。航海士の重大な過失のおかげでね。その呪われた島に足を踏み入れた者は皆(私も含めて)恐ろしい病気にかかった。肌が石になって、錯乱をもたらす致命的な病気にね。

今も関節が固くなっているし、頭はいつもぼんやりしてる。この病気に体と心がやられる前に、最後にもう一度あなたに会いたい。会ってくれる?月末までにリランドリルに到着できるわ。

早めにお返事をください。

心を込めて
ノラシー

フォルテ団長の研究Grand Maestro Forte’s Research

エボン・スタドモントの中で発見された巨大な石は、不明な言語で覆い尽くされている。その古代の言語を翻訳する方法はある程度考案できたが、石に刻まれた文を保存する以外の仕事はほとんど進まない。

* * *

この言語は間違いなく、これまでタムリエルで、それどころかニルン全体で研究してきたものより古い。デイドラと何らかの関係があるような気がする。あり得ないような話だが、これはオブリビオンの言語よりも古いかもしれない。

* * *

石にある一部の節を翻訳できたが、何を意味しているのかはまったく分からない。

「カラスが導いてくれる
道に迷った時、
そびえ立つ木が道をふさぐ時に」

* * *

引き続き努力の成果が出ている。この節は特に不可解だ。

「探求を始める時は2羽のカラス、
止まり木には1羽のカラス、
しかし道を開くのは1羽や2羽でなく、
カラスたちの声を聞け」

* * *

この謎めいた言語を研究するにつれ、不安と心配が募ってきている。その意味を解明しようとしているだけで、自分には理解もできないような力の注意を集めているような気がする時がある。しばらくこの研究のことは忘れて、他のプロジェクトに力を入れようと思う。

絹の手袋をなくした3人のカジートに関する、あの喜劇を書き上げようか。

プラキスの代価The Price of Praxis

セルヴァル・ロルマリル

私は自分がカリアンを受け取った日を完璧に覚えている。皆このことによく驚く。とりわけ人間はそうだ。彼らはうろ覚えの夢を漂うのに対し、我々アルトマーは全てを覚えている。あらゆる抱擁、あらゆる侮辱、あらゆる栄光と敗北が我々の視界の端に潜み、時の中に凍りついている。不快なほどの正確さで、思い出されることを待っているのだ。だから私が完璧に覚えていると言う時、それは文字どおりの意味だ。

私は屈強な18歳だった。教会ではお香と桜の匂いがしており、私のクランの母と父、大予言者、その他の者たちが一堂に会して椅子に座り、緊張と誇りに満ちていた。高き者たちの司祭がゆっくり近づいてきた。白鳥の羽根と竜の舌の法衣が彼女の肩を覆っており、額には流木と種々の宝石で彩られたウェルキンの花輪があった。彼女は私からほんの指の長さほどの距離で立ち止まり、私に跪くよう命じた。私がそうすると、彼女は私のカリアンを空中に掲げた。それが星空の光で輝くのを見て、突然自分が泣いていることに気づいた。当時、その球体は素朴なもので、乳白色のエセリアル水晶と陽光で加工したガラスで飾られていた。「すぐに壊れてしまいそうだ」と思ったことを覚えている。当時でさえ、私はその大きな価値を知っていた。アセル・ヴィアレンを暗唱した後、彼女は球体を私の手に置いて微笑んだ。私はそれを、卵から孵ったばかりの小鳥のように包んだ。その瞬間、私はカリアンを守ることを誓ったのである。だが18歳の者に誓いの何を理解できるというのか?若者は神聖なる事柄を大げさに扱うことが多いものだ。あまりにも多い。

私は怒りやすいエルフの若者に成長した。仲間の怠惰な自尊心と、長老たちの軽蔑的な無関心に幻滅したのだ。52歳で、私は私掠船の乗組員となった。13年間、レッドガードの密売人たちを撃退し続けた。時が経つにつれ、我々の金庫は外国の財宝で溢れかえった。別れた時、各乗組員は測り知れないほどの富を手にした。

海上生活の間ずっと、私は一度もカリアンをなくさなかった。自分の寝台の下に置き、ヤナギの木の箱の中に安全にしまった。ハンマーフェルの財宝全てを集めても、この輝きには及ばない。我が高貴なる種族の誇りの全てが、この乳白色の光に込められていた。

身を落ち着ける決心をして、私はアリノールの東に一片の土地を探した。まあまあ評判のあるブドウ園だった。私は年老いたワイン商に大金をゴールドで支払うと申し出たが、彼は売ろうとしなかった。一日ごとに、私の提示額は(私のいら立ちと共に)大きくなった。こんな老いぼれエルフに、私の幸福を邪魔されるとは!こいつに私の望みを奪う権利があるとでもいうのか?私は時間をかけて、この歯のないエルフを説得しようと決意した。私は豪雨の夜に彼の住居へと出かけていった。手には剣を持ち、息からはワインが匂っていた。私は彼を眠りから起こし、小屋に押し入った。汚い言葉を投げかけ、売却証書を彼の顔に突き付けた。彼は立ち去れと私に向かって叫び、私の腹にその貧弱な肩を押しつけ、私を扉から押し出そうと虚しく試みた。私は酔った勢いで激昂し、何も考えずに彼の胸に剣を深々と突き刺した。一瞬後に私は自分の愚かな過ちに気づいた。私は壁に背中をもたれかけ、死に瀕した彼の弱々しい断末魔を恐怖して見つめた。深く恥じ入る気持ちから、私はもう少しで即座に命を絶ってしまうところだった。だが結局は高き者たちの元に出頭すると決めた。裁きを受けるために。

若い頃私にカリアンを渡したのと同じ司祭が、裁判の席に座っていた。私が事件を陳述している間、彼女は冷たい視線を私に注いでいた。私が話を終えると、彼女は同行の修道士に囁いてから、立ち上がって私に会いに来た。修道士は装飾を施された私のヤナギの木の箱を取り出し、開いて私のカリアンを見せた。私の偉大で完璧な宝を。宝石職人のようながっしりした手で、彼は球体をその置き場所から抜き取り、司祭に渡した。彼女は悲しみと怒りが入り混じった目で私を見つめた。一言も発することなく、彼女はカリアンを空中に掲げた。私は肩をこわばらせ、爪が掌に食い込むほど両手を握りしめた。ついに彼女は「アプラックス」と審判の言葉を囁き、球体を指の間から滑らせて落とした。私は貴重な宝が空間と時間を転がり落ち、そして冷たい大理石の床に当たって砕けるのを恐怖と共に眺めた。司祭と同行の修道士は背を向け、下級修道士が私と砕けたカリアンの破片を、闇夜の中に追い出した。

こうしてアプラックスとしての生が始まった。罪の大きさを沈黙のうちに反省するよう任された、恥ずべき追放者である。

30年の間、私は自分の祝福されたカリアンの残骸を直そうと骨を折った。石を切るための道具や、真珠粉の固定剤、聖油などのために、全財産を使い果たした。ほとんど食事をとらず、睡眠は全くとらなかった。私のひげは長く伸び、筋肉は衰えた。1つ成功するごとに、3つの新しい失敗が起きた。その間、他のアルトマーは私をはねつけ、呪った。

ついに栽培の月のある明るい朝、私は最後の繊細なガラス片をはめ込み、カリアンを元々の無垢な状態に戻した。その瞬間、私は安心の気持ちから赤ん坊のように泣き出した。長い時間をかけ、私はバラ水で体を洗い、もじゃもじゃのひげを刈り取って、高位会館へと出発した。

足を震わせながら、私は司祭に近づいた。配慮の気持ちから、両目は床に向けていた。私はヤナギの木の箱を開け、調べてもらうためにカリアンを高く掲げた。司祭と同行の修道士が球体を調べている間の不気味な沈黙は、永遠に続くかと思われた。そして、私は彼女の手が私の肩に置かれるのを感じ、「立ちなさい」との優しい囁きを聞いた。

私はためらいながら立ち上がり、目をあげて彼女と視線を合わせた。

彼女がずっと求めていたあの言葉を言った時、私はほとんど息をすることができなかった。「迷えるアルドマーの子よ、お帰りなさい」。

マオマーの報復主義の偽りThe False Revanchism of the Maormer

スカイウォッチのハデンドリル 著

アルトマーとマオマーの古い対立はあまりに長いため、複雑な対立であるという印象を受けやすい。不当な行為と報復が重なり、数百年も対立が構築されてきた。これは最も有害な集団的誤謬である。何の価値もない略奪に正統性の片鱗を与えているのだ。マオマーはサマーセット諸島の領有権を主張したことはなく、神々の意志によってそれが実現することもない。

我々がアルドマーの恩寵を失うことになった事態への誤った説が、ピャンドニアに住む人々と我々が親密な同胞だという誤解を招いたのではなかろうか。だが真実を言えば、我々は祖先が同じだけの遠く離れた親類でしかない。この歓迎すべき真実の暴露は、水晶の塔にあってこれまで翻訳されていなかったアルドマーのタペストリーによってもたらされた。痛みを伴う研究の後でやっと白日の下にさらけ出された純然たる真実が物語るのは、望まざる移民と悲劇的な民族の離散の苦しみではなく、謀反と追放の物語だった。

マオマーが流す血は常に、強欲と強い野心の名の元にあった。堕落した「王」オルグヌムは、アルドマー代々の故郷を正当な支配者から奪い取ろうと考えていた。サマーセットを我々から盗もうとしたのだ。マオマーに対して長く罪の意識を抱いている者もいたが、彼らはそれに値しない、見下げ果てた者達である。この件についての議論は終わり、マオマーの擁護者たちは黙らされた。そしてピャンドニア人に対する戦争は、後悔の念もなく実行されるはずである。

ミノタウロスの真実The Truth of Minotaurs

帝国の遺物研究者、ティロニウス・リオレ 著

自らを貶めた賢者、ノヌス・カプレニウスの馬鹿げた戯言は既に読まれたに違いない。その名を非難することは少しも楽しいものではない。カプレニウスはかつて野獣学に精通し、学者の中でも傑出した存在だった。悲しいかな、彼の牛男とその怪しげな起源に対する執着があまりにも強く、仲間にとって耐え難いものとなってしまった。この件を明らかにし、今回限りで片を付けさせてほしい。

カプレニウスは明らかに一種の躁病の最中で、ミノタウロスはアレッシアと伝説的な配偶者である牛男、モリハウスの子孫だと主張した。異端である以上に、この主張には歴史的事実の裏付けがない。アレッシアの息子の牛人間、ベルハルザの運命は良く知られている。当時の無数の学者が(遠回しに)記録したのだ。彼はエルフの槍先にかかってその生涯を終えた。確かなのはその程度だ。身体的特徴に共通点があるからといって、奴隷の女王と牛頭の野蛮人の粗野な血を結びつけるのは、人とグアルを二足歩行だからといって繋げるくらいに意味をなさない。

事実を言えば、ミノタウロスは呪文か錬金術のプロセスが失敗した苦い結果だ。そこには大いなる陰謀も、ひたむきに守られた秘密もなく、ただ不幸で恐ろしい事故があるばかりだ。実際、牛属の獣を見て、アカトシュの誇り高き遺産がその獣の血に流れているとわかる者がいるだろうか?これは神経症を患った心の妄言で、そのように取り扱うべきだ。

私の助言を聞き、ミノタウロスに会ってもその高貴な血について尋ねることのないように。遭遇して生き残りたければ、殺すか逃げるかだ。

ミルロンの報告Mirulon’s Report

伯爵の皆様へのご報告:

シマーリーンに対する我々の計画は速やかに進行しています。ある程度の修正は必要でしたが、大枠はそのままです。前回の報告で言及した若者は、予想通りではありましたが与えた任務を放棄しました。私はサピアルチが彼の手によって死なねばならないと明確に説明し、彼は拒否しました。反抗的な態度を取られたため、私は精神操作の使用を決定しました。奴が奴隷になるまで、長くはかからないはずです。

彼を奪回するため、市街で小さい爆発を起こさなければならなかったのは残念です。あれは間違いなく、神聖執行局の注意を引いたでしょう。ですがご安心ください。彼らに妨害する機会はありません。もうすぐサピアルチは抹殺され、この街は大混乱に陥ります。任務が完了したら、またご連絡します。

オブリビオンの名において、
ミルロン

ラウリエルへの手紙Letter to Lauriel

ラウリエルへ

私の手紙に返事をくれるとよかったのに。ここですごくたくさん学んだけれど、妹に会えなくて寂しいわ。夜中に話し合って、変なゲームで遊んだことが懐かしい。お願い、あなたの様子だけでも教えて。ほんの数行でもいい。あなたが元気でいることを知らせてほしいの。

あなたは何日も自分の部屋にこもっていて、歌も滅多に聞こえてこないってお母さんは言っている。自分がそんなひどい状態に追い込んだのかと思うと、心が痛むわ。あと数年で私の勉強は終わるはず。家に戻ったら、もうどこへも行かないと約束するわ。

お願いだから返事をください。

あなたの愛する姉、
セレンウェ

ラウリエルへの別れのメモFarewell Note to Lauriel

ラウリエルへ

出発する前に会いたかったけど、地下に行ってしまったのね。あの古いワイン貯蔵庫に隠れてるんでしょう。どの場所かも正確に分かる。南東の角にある、アリノールの古い樽の後ろでしょう?あなたはいつも隠れるのが下手だった!見つけてあげたいけど、私の船は満潮に出てしまうの。

一人になるのが怖いのも、私が行くことに怒っているのも知っているわ。でも、バルフィエラの長老たちと研究する機会を逃すことはできない。偉大なるディレニの塔を見る機会!いつか、あなたも理解してくれるといいのだけど。

あなたは自分が思っているより強い。もう私が守る必要はないわ。とにかく本を読んで、あの美しい歌を書き続けてね。すぐに帰ってくるわ。

あなたの愛する姉、
セレンウェ

リナイデの日記Rinyde’s Journal

暁星の月9日

ラリデルは最近一層よそよそしくなった。生まれた時からずっとそばにいたのに、今ではほとんど赤の他人。授業への興味は薄まり、一人で何時間も出掛ける。ただ気分転換のために散歩に行ってくると言うけど、それが本当だとは思えない。

もしかしたら心配しすぎなのかもしれない。一人で訓練しているのかもしれないし。彼は私よりも魔法の能力があるし、ただ一緒に授業をすることに飽きたのかもしれない。これまで孤独な時間が必要なのは自分のほうだと思っていたけど、こうして弟がいなくなったことを嘆いている。今夜また話しかけてみよう。

蒔種の月16日

まさか役者の一座が、これほど研究の妨げになるとは思いもしなかった。かつては静かだった街が、彼らの到着以来すっかり無秩序になっている。昼夜問わず、彼らのキャラバンは観客に囲まれていて、騒音だけでおかしくなりそう。

特に最悪な点は、弟がひどく興奮してることよ!いつも彼らの素人芸や陳腐な芝居の話ばかりしてる。役者と話してるところを見かけるのはしょっちゅうだ。弟が自分よりも社交的なことは知ってるけれど、いくら何でも行き過ぎよ。

じきに終わるだろうと自分に言い聞かせている。彼らは目新しい存在で、それも通りすがりにすぎない。街からいなくなれば、すぐに弟も研究に戻るでしょう。間違いない。

恵雨の月2日

弟にあれほど驚かされたことはない。侮辱的すぎて、もう涙が出そう。こんな出来事を書くのは嫌だけど、彼の恥ずかしい行動は否定しようがない。

今夜、ラリデルは酒と香水の匂いをプンプンさせて研究に参加した。どんな類の連中と一緒にいたのか知らないし、知りたくもない。今まであんなばかげたことをするのは見たことがない。私はあの恥と口紅まみれの顔を見るので精一杯だった。

もちろん彼は後悔していた。自分の行動がどんな悪影響を及ぼすか、どれほど許されないかは分かってると言ってた。それでも、彼には今まで以上に失望した。引きこもったと思ったら、次はクズと仲良くなって、今度はこれ?私が知ってる弟を失ってしまいそう。

真央の月9日

今日は素晴らしい知らせを受け取った。どうやって書いたらいいか分からないほどだ。今でも興奮で指が震えて、羽根ペンをしっかり持てないくらい!これまで頑張って研究と実践を続けてきたおかげで、ついにこの時が訪れた。

サピアルチが私たち2人を助手として受け入れたのだ。私は技巧のサピアルチを手伝い、ラリデルは魔術のサピアルチに受け入れられた。うれしすぎて泣きそう。私たちの一人だけが受け入れられて、もう一人は取り残されてしまうかもしれないと心配していた。大切な弟から離れるなんて考えたくもなかったけど、そんな心配はしなくてすむ。今までと同じように、これからも一緒にいられる。

ラリデルは…知らせを聞いてショックを受けていた。今ならそれが分かる。最初は怖いのかと思ったけど、そんなのはばかげてる。何を怖がる必要があるというの?きっとただ驚いてるだけよ!こんな名誉を授かって、心配なのかもしれない。

これはいいことよ。気にしないように努力したけど、ラリデルは最近とてもよそよそしい。自分の研究のために離れて住むことにした理由は分かる。そもそも、彼の足枷になることをいつも心配していた。でも会うと…

彼が別人のように見える時がある。まるで一緒にいる時は仮面を被っているみたい。今でも、考えただけで胸が苦しくなる。だめよ、こんなふうに考えては。もうすぐリランドリルで、また一緒に研究できるようになる。幸せに。やっと追いつける。もう一度彼と並べるの。

こんなに幸せな日は初めて。やっとまた弟と一緒にいられる。

リレンデルの家の祠Lirendel’s Family Shrine

アーリエルの名誉と称賛をニヴリレルに。この威厳ある名を持つ指輪を星空に。 刮目せよ!偉大なる先人の名に刮目せよ

ルミリオン・レン・イネシル・キュラナリン・サロリンウェ・アタ・ピリャデン・イテルノリル・ヒルノア・ファーラミルカル・ターネーベン・ニヴリレル

ルルタリの日記Rultari’s Journal

今日、街から執事がやって来て父を訪ねた。彼はいつも少しやつれているが、今日の表情は普段よりも誠実に見えた。いつになく、本当に心配しているようだった。彼はまた、いつもより口が固かった。普段なら、彼は自分がいかに忙しく欠かせない存在か言及する機会は逃さないのに、今回は一言も引き出せない。晩餐の時、父が詳細を話してくれるかもしれない。

父は昨日、ほとんど丸一日留守にしていた。屋敷に帰ってきたのは日が暮れて大分経ってからで、騒々しさで私はベッドから起き上がった。数十人は引き連れていたはずだ。見た目からして大部分は船員だったが、街の衛兵も近いくらいの数がいた。もしかして、父は暗闇に乗じて家宝を海外に持ち出すつもりなのだろうか、と思った。父は人々を全員、家の地下室へと導いた。全ては秘密作戦のようだった。私は暗闇の中、窓の側で1時間近くも待った。何かこのことを説明してくれるものが見えないかと思ったのだ。だが出てきた時、父は一人だった。

今朝目覚めた時、私は家の衛兵が玄関で待っていることに気づいた。父の命令により、家の全員はさらなる通達があるまで館の中に留まるように、と伝えられた。私はこの知らせに納得しなかった。父の暴君のような振る舞いに抗議したくて、私は父の部屋の前で張り込み、帰ってきた瞬間を待ち伏せしてやろうとした。私は朝食も、昼食も、夕食も取らずに、檻の中のライオンのように廊下を行ったり来たりしたが、父は現れなかった。今夜は、部屋の扉の前で寝るつもりだ。

* * *
父の部屋の扉のせいで、頭にこぶができてしまった。いきなり起こされたが、起こした母は当惑していた。私のバカげた行動を叱りつけた後、母は私を不憫に思い、父の突然の奇妙な振る舞いについて、自分が知っていることを教えてくれた。数日前、ある深海漁業船が王の船にも匹敵するほどの大漁で到着したが、それから船員たちの多くが病気になってしまった。父は皆を地下に隔離し、その間に彼らの状態を調べているという。

* * *
執事が再び訪ねてきた。彼の表情は、いい知らせを持ってきたのではないことを物語っていた。さらなる人々が、街から屋敷の地下室へとやって来た。

* * *
父は2週間近くも会いに来ていない。この事件が始まってからずっとだ。考えてみれば、父が太陽を見たかどうかすら定かではない。これでは健康にいいわけがない。父が病気でなければいいが。どうして我慢できるのだろう。私自身、このきらびやかな牢獄で狂いそうになっているのに。少なくとも私には、外の世界が存在することを思い出させてくれる窓がある。父はあの船員たちを海に帰すべきだったのだ。

* * *
私が時間の感覚を失っているせいかもしれないのだが、街からやって来る人々の流れは、さらに加速しているような気がする。ワインで神経を落ち着かせるためなら何でもするのに、ここにはもう一滴も残っていない。この家で、最後に水がコップを満たしたのはいつだったろう。ひどいことになったものだ。

* * *
家の衛兵たちの一部が、街の不安について噂をしているのを聞いた。どうやらここに閉じ込められているのは、私たちだけでないらしい。私の父はこの疫病が去るまで、誰もコルグラドに出入りしてはならないと布告を出した。すでに何ヶ月にもなることを考えれば、同じ境遇である彼らの気持ちは理解できる。私たちにできるのは、病気が自分たちに来ないことを祈って待つだけだ。

病気が進行した状態で街から運ばれてきた者たちは、ほとんどエルフに見えないほどだ。尊厳を守るため外套に身を包んでいてさえ、担架で地下室へ運ばれていく体が歪んでいるのがすぐに分かる。今頃はもう亡くなっているはずの者たちは、どうなっているのだろう?考えたくない。

* * *
書き物机で飲むのは嫌だが、一日中喉が干上がったような感じがしている。一瞬でも舌を湿らせるのをやめると、歯の裏側がやすりで削られているような感じがしてくる。ここに自前の水源があってよかった。飲み物が必要になる度に街の井戸まで歩いていかなければならなかったとしたら、私はとても健康になるか、疲労困憊していただろう。

* * *
慈悲深きステンダールよ、私たちをお救いください。止まらない。吐くまで飲んでも、喉が渇いてしょうがない。止めてくれ!

引き返せ!Turn Back!

プーナラへ、

すまない。ここに来るべきではなかった。呪いに耳を傾けるべきだった。ここにいるものはエルフに似ているが、獣のような連中だ。奴らは暗がりから我々に飛びかかり、墓地のようなところに引きずっていった。そこに奴らのリーダーがいた。普通の人間のように見えたが、口を開くまでの間だった。奴が大穴について語るのを聞いていると、世界の終わりだという感じがする。奴は救い主たちの期待に背くわけにはいかないが、我々が彼らの親切に報いる助けになるだろうと言い続けていた。

他の者たちも捕われていた。まだ生きていたが青ざめていた。切開された傷があり、ほとんど治療されていなかった。私はお前が見せてくれたように、牢屋の鍵を外せた。だが他の者にその力はなかった。私は戻ってくると約束したが、今どこにいるのか分からない。トンネルは家、家は道、道はトンネルに続いている。追い詰められた。足音が聞こえる。

私を見つけたら、逃げてくれ。このトンネルを海で塞ぎ、二度と戻ってくるな。ここに埋まっているのが何であろうと、埋めたままにしておくべきだ。

カーンハル

開かれた国境の問題A Case for Open Borders

上級公アンドゥリオン 著

我が市民よ、私もアイレン女王の布告を読んだときは心配したものだ。国境を開放するのは、重い決断だった。私もそのような行為が愛する故郷にもたらす不吉な事態を恐れた。我々の街はノミで溢れるのか?夜中に子供たちは寝床からさらわれるのか?断言するが、私も誇らしきサマーセットの安全については同じように心配していた。

上級公としてこれらの懸念をサマーセットの裁判所に伝え、しばしば激論を交わしたことは、大変名誉なことであった。それは前例のないことであり、最も荒々しい問題だった!私は愛する故郷への冒涜を止めようと決意した。私も我々が先人の願いを裏切っていると感じた。そうだ、我が市民よ。私はよそ者、猫、共食い種へ国境を開放する考え自体に強く反対した。その価値がないと知っていたのだ。

だが、変化があった。私が変わったのだ。私が心から女王の布告を支持する理由を説明させてほしい。味方であり、隣人となった者たちの権利を弁護させてほしい。

この変化が始まったのは、戦争への努力について聞いたときだった。ウッドエルフの弓の支援が可能にした辛勝。賢い工作で、決め手となる秘密を聞き出したカジートの密偵。我が勢力の数を見るだけでも良い。我が軍にどれだけの技術と力があっても、この戦いは単独で勝てないと分かっていた。それでも、私は頑なだった。一時的な味方には前線で戦ってもらうだけでよい。サマーセットに用はないはずだと考えていた。

私は意見を定め、変えることはないと感じていた。私が真実を悟ったのは、信じられないようなことが起きた時だった。

我が一人息子、アンディメリルが戦場で倒れた。あの夜のことは幾度となく振り返る。もう少し頑固でなければ。腹いせに黙り込まなければ。息子が残るようにうまく説得できていれば。息子は若く、向こう見ずで、過去の私よりも遥かに勇敢だった。あの顔を二度と見られないと考えただけで、胸が締め付けられ、激痛のあまりほとんど息ができなかった。

息子の死を知ったのは、使者からでも友人からでもなかった。若いウッドエルフが私の前に立ったことで知ったのだ。そのブーツは泥がこびりつき、目は涙でいっぱいだった。その手には簡素な金属製の箱があり、中に息子の灰があるのは彼女が話す前から分かった。彼女の名前はグレニスだった。

「彼に頼まれたわけではありません」と言うと涙を流し始めた。「実際、彼は二度と帰らないと常々言っていました。ただ、私には我慢できなかった。彼は故郷に帰って当然でした」

私はその日まで別の種族の者と話したことさえなく、格段に劣っていると信じ切っていた者たちの目を見ることもなかった。何が起きているのか、もはや否定できなかった。あの日、私の目はようやく真実に開かれた。議論や布告ではなく、グレニスと共感した悲しみによって。それはあまりにも辛く、真実でないはずがなかった。

毎日、我々が気にもしない味方が、息子や娘たちとともに死んでいる。彼らは食事を共有し、物語を伝え、できるときに笑いや慰めを見つけようとする。彼らは一緒に戦い、互いに命を預けている。これが、穏やかな海岸から遠く離れたところの、日々の戦いの現実だ。

アンディメリルの人生最後の数週間はグレニスから聞いた。老いたエルフを慰めるためであっても、息子を讃えることしか言わなかった。息子の勇気と優しさを語る言葉に心から励まされた。息子は己が信じる理想に殉じたのだ。私にとっては女王陛下の手紙より、仲間の兵士の優しい言葉ほどアンディメリルを讃えるものはなかった。

この考えは今でさえ身勝手なものだが、この安らぎは開かれた国境がなければ不可能であった。グレニスが私の家族に表した敬意は存在し得なかった。彼女は私が信じてやまなかったように、下等であり無価値な種族の者として扱われていただろう。彼女がいなければアンディメリルの帰郷はなく、遠い戦場の見知らぬ死体となっていただろう。息子を葬る名誉は決して得られなかった。

我が市民よ、他種族はまさに尊敬に値する。私の個人的な話を聞いて何も感じなかった者は、どうか彼らと話をしてほしい。地元の酒場で酒をおごり、家の食事に招くのだ。学者の文化を持つ私たちは、心を開いて学ばなくてはならない。断言するが、まったく異なる文化が見つかるだろう。しばしば衝撃を受けることもあるが、彼らの文化は私たちと同じく豊かである。

かつて国境を封鎖したように心を閉ざしてはいけない。私たちの未来は先へ進む能力に懸かっている。共に最初の一歩を踏み出すのだ、我が市民よ。間もなく、明日へ歩くようになるだろう。

隔離された賓客のリストList of Sequestered Guests

ウッドエルフ。男性4名、女性3名。全員ドミニオン市民だと主張。1名はサマーセットに1年以上居住していたと述べる。準備房に移動。

カジート。男性7名、女性9名。全員ドミニオン市民だと主張。半分を準備房に送り、半分を待機房へ送る。

アルゴニアン。4名。性別は不明。誰が泥で泳ぐ者のことなど分かる?準備房に移動し、即時吸い上げ。

ブレトン。男性1名、女性2名。自称ウェイレストの商人。いや、ダガーフォールと言ったか?関係はあるのか?一体なぜこれを書き留めているんだ?新たなアルダークはこの情報で何をするつもりなんだ?待機房へ。

レッドガード。男性2名、女性4名。全員ハンマーフェルからの船で到着。1名は商人ラヌルによって送られてきたと述べる。半分を待機へ送り、半分を準備へ送る。

ノルド。男性1名。ノルド文化交流探検隊だか何だかの一員だと主張。待機へ。

観察メモ154:ズマジャの捕縛Observation Note 154: Z’Maja’s Capture

ウェルキナー・ガレンウェ 著

ズマジャの捕縛は、あまりにもあっけなかった。最も楽観的な計算上でも、これほど短時間に彼女を従わせることができるとは考えられなかった。他の仲間たちが勝利に夢中になったのも無理はない。彼らは私が小うるさい虫でもあるかのように、懸念を無視している。

彼女の影魔法は動揺を誘う出来事だった。それは私を傷つけたが、そのようなことは見たことも聞いたこともなかった。力の源は彼女の胸に埋め込まれたアミュレットであると結論づけた。恐らく、デイドラのアーティファクトだろうか?その魔法の存在について研究すればするほど、疑惑は確信へと変わっていった。

これ以上の分析については、推測以外にできることはほとんどない。ズマジャの力はどうやって手に入れたにせよ、危険であり謎めいている。彼女が操っていた影は、触れたものすべての生命を吸い取っていたかに見えた。その力だけで、多くの兵士が失われた。仲間や私が瘴気を克服できたのは、光の性質を有するオロライムの魔法あってのことだった。

さらに厄介だったのは、戦った相手の戦士を複製するズマジャの能力だった。兵士が任務半ばで命を落とすと、その死体から影がむくりと起き上がった。邪悪な物真似に見えるその影は、ズマジャの味方として戦い始めた。シースロードを取り押さえることに成功していなかったら、影が戦局をひっくり返すことは容易だったと思われる。

ズマジャが我々に対する計画を立てた場合、クラウドレストが心配だ。安全が脅かされる以上、彼女を捕らえておかねばならない。逃げられたら…生き残れないだろう。

忌まわしき文明A Loathsome Civilization

発明家テレンジャー 著

敗北したマオマーの艦隊が占有していた、思いも寄らぬ希少な品を収集品に加えられた。この文書が船団に持ち込まれた理由は知る由もないが、どうやらこれは第一紀2260年よりも前に書かれた、スラスに赴任した外交官の日誌のようだ。損傷はしているが、判読可能な状態を保っている。スロードに関する記述は魅惑的なものだ。推測するに、これは虚構やねつ造された奇妙な作品ではない。これが正当なものなら、実に目覚ましい発見だ。何故ならスロードは、常に全タムリエルの種族と交渉を嫌ってきたからだ。

スラスのナメクジたちが悪しき死霊術を行ったことを我々は知っているが、これが本物の文書だったとしたら、彼らと恐怖の技法との関わりは、今まで考えられていたより優れたものだったかもしれない。著者は生き返った奴隷との交流に対し、頻繁に嫌悪感を表している。スロードもまた様々な海洋生物を殺戮し、再生させていたようだ。亀、蟹などをペットとして手元に置くために。だが、彼の嫌悪感はそこでは終わらなかった。彼はスロードの不快な臭い、あらゆる地上の建物の床の上にある粘液で覆われた水、食料として供される様々なカビ、菌類に対して不満を述べていた。

複雑な生贄の儀式に関する言及があるが、これは彼らが通常、崇拝を拒絶していることを考えると極めて稀なものだ。スロードは間違いなく、適切だと思われる場合にはデイドラとの契約を結んでいた。だがここに記されている祭式は、典型的なデイドラへの生贄を示すものではない。彼らは最終的な作業(数週間は続くかもしれない)を、肉体に対する「脱水クリスタル」技術の応用による全ての演者の死で終わらせながら、スロードの神話的英雄と悪役の行いの再現に参加させる固体の仕立てに、何年も費やしていた可能性がある。

さらに興味深いのは激しく損傷している部分の記述で、それは「膨張せし長老」の水中の塔での謁見について論じている。少しだけこの2人の間の議論を判読することができる。だが、「素晴らしく肥満した身体と奇妙に脈動する頭」、そして、腹に浮かび上がる3つの目がそれぞれ「歯のない口として再び開き、(判読不能)を噴き出すと、従者たちが先を争って吸収した」という内容の記載があるが、これは私が初めて遭遇した、スロードの間に文化的指導者がいる可能性につながる見識だ。

「多種多様な荘厳なる影響」への訪問を記録したこの部分の日記はほぼ判読不能だったため、私は限りなく落胆した。名前はさておき、この部分のほとんどは、「化膿の噴出」「血液の腐敗」から、「悪化するハエウジ症」といったものまで、あらゆる種類の苦痛を暗に示す狼狽させるような言葉を除いて、解読できないものだった。スラシアの疫病についての多くは未だ謎のままだ、そしておそらく、埋もれたままにしておくのが最善なのだろう。しかし、ここで示されている病気に対するグロテスクな関心の理由と意図について、興味を引かれることは否定できない。

この文書に対する第一感を記録した、アリノールにいる仕事仲間に、真偽の検証を期待してこれを送らねばなるまい。これから何か役立つものが得られるかどうかに関わらず、万が一このような脅威が再び浮上した場合に、タムリエルの全種族にとっての恐ろしい敵に対し、少なくとも我々の理解を進められるかもしれない。この文書の内容に真実が含まれるとしたら、決して起きないようアーリエルに祈ろう。

血の腐敗Corruption of the Blood

「アルドメリスの真の子」 著

数千年の間、我らアルトマーは神聖なる遺産を守ってきた。我々は旧エルノフェイ最後の生き残りである。我々は彼らがあれだけの犠牲を払って作り出したものを保存する役目を原初の神々に任されたのだ。今でも伝統に忠実な者たちは、遺産を純粋に、文明を無傷のままに保ってきた。アルドマーが敷いた道から外れた者たちは品位を落とした。連中は堕落し、彼らを作った神々とは似ても似つかない存在になってしまった。

この聖なる島の外でエルフと自称する連中は、アルドマーの歪んだ遺骸でしかない。ダークエルフの赤い目を前にして、自分と似たものを見出せるだろうか?もちろん、できるはずがない。そこに見えるのは、より偉大なものが偽の予言者ヴェロスにより破壊され、奴が仕えたデイドラによって忌まわしき影に形を変えられ、残った灰だけである。醜い奇形のオークを見た時、そこにエドラの創造があるだろうか?ない!そこに見えるのはボエシアの排泄物だけだ。汚物から自分たちの糞の神を作り、自分たちの存在に意味を与えねばならなかった、憎悪に満ちた残留物である。

だが、我々が学ばねばならないのはこうした憐れむべき外道からだけではない。我々の生きる道を歪める危険を持つのは、デイドラに誘惑されるような愚か者だけではないからだ。ウッドエルフを見れば、神々の誤った崇拝でさえ、我々の血を倒錯させうることが分かるだろう。森を尊重することと獣になることは同じではない。今やこの放浪の親類は、自らの親族を喰らう野生の蛮族とほとんど区別がつかない。最初の民が生き残って、彼らの完全性がこれほど腐敗したのを見る羽目にならなかったことに感謝したい。

教訓は明白だ。たとえほんのわずかにでも祖先の道から外れれば、深刻な結末が待ち受けているということだ。それが分かっていながら門を開いて、笑顔で腐敗を聖なる地へ迎え入れるなどということを黙認できるのか?あの油断ならぬ女王は我らの破滅の使者である。女王の異端に抵抗しなければならない!

血清投与報告Serum Infusion Report

これまでに実験した動物の中では、インドリクが最も期待できる結果を示した。血清を投与すると魔力が増大する。インドリクを中心に実験を行えば、このプロセスはさらに洗練され、様々なことに活用できるより安全な血清を作り出せるはずだ。

このような進展があった一方で、小さな後退もあった。野生のインドリクに血清を投与すると性格が劇的に変化し、異常なほど好戦的になる。これにより彼らは抑制できなくなり、非常に危険な存在になる。直近の検体以外は安楽死させたが、この検体もいずれ同じ運命を辿るだろう。

飼い慣らしたインドリクにも同様のリスクがあることを確かめるべきだ。ロータスはどの野生のインドリクよりも穏やかだ、このプロセスを上手く乗り切れる可能性が高い。ロータスに必要以上の愛情を注いでいるタロマーが障害になるかもしれない。疑いを持たれずに引き離すのは難しいだろう。だが彼が新入りの動物の世話を拒否するなら、適度に危険な仕事を与えることもできる。

言葉と力Words and Power

発明家テレンジャー 著

タムリエルの言語には、ただの便利な意思疎通の道具以上の役割があるのではないだろうか?私は様々な研究を通して、言語と魔法の繋がりを明示する例を無視できない頻度で発見してきた。特に今行っているルーンストーンの調査がそうだ。考えを言葉に流し込む行為そのものが、発動を意味するのではないだろうか?確かに過激すぎる考えだが、この考えを支持する証拠を提示したいと思う。水晶の塔のサピアルチが、この考えの是非を証明してくれることを心から願う。

まずは付呪のルーンストーンから始めよう。どの石にも文字の組み合わせから成る印が刻まれている。ルーン1文字だけでは効果がない。だが他の文字と組み合わせて適切に配置すると魔力を発揮する。完全な状態、つまり表現が完成すれば魔法が発動する。その言語を完全に理解していなくても、力を解放できる。十分な数の文字が存在していないし、はっきりとした発音もわかっていない、だがグリフを研究してルーンストーンを組み合わせることで、活用するために意図を理解することはできる。言語そのものが根底で魔法と繋がっているのは間違いないが、起源についてはまだわかっていない。

将来有望な付呪の学生たちには説明するまでもないが、解読不能なルーンに出会っても落ち込む必要はない。学んできた文字と文章を何度も復唱し、グリフからルーンを抽出することでようやく、さらに難しいルーンを解読するための知識を得ることができる。辛抱強く他の学生と一緒に研究し、グリフの作成と解体を行えば、いずれ相互作用と本当の意味を理解できるようになる。

特に文字がそうだが、言語はアルトマーにとっても非常に重要なものだ。我々の歴史を保管できるだけでなく、文字があるからこそ、未来を約束された我々の実態を捉えて定義し、全てのエルフに自分の立場を確認させることもできる。アルトマーの社会がタムリエルで最も整然としていて、系統立っているのは偶然ではない。それはザルクセスの意志なのだ。聖なる文字を扱う学者司祭は謎に包まれた存在だが、大昔に失われてしまった言葉を保管していると言われている。ヘラアメリルの「原形を繋ぎ止める者との会話」では、作者不明の文章の中で、巻物を利用することで味、匂い、踊る姿の幻影を作り出し、さらに例え読み書きができなくても、凝視するだけで読めるようになる文章を生み出せることが示唆されている。ヘラアメリルを信じるとするなら、これも文字による魔法の1つである。

日常に目を向けてみよう。戦争を始める際に偉大な将軍が演説を行えば、士気が上がり兵士は素晴らしい働きをする。熟練の吟遊詩人が歌えば感情が刺激される。子供にとって母親の声は癒やしの効果がある。会話や文字を通して意志を伝える日常生活の中に、魔法の断片のようなものが見えてこないだろうか?確かに消滅しつつあるかもしれないが、それは黎明期以前の力の名残かもしれない。細かい話はここでは省くが、タムリエルの歴史を紐解いていけば、この考察を支持する証拠はもっと見つかる。同僚たちとこの仮説について論じるのが楽しみだ。

五重の祝福を!Five-Fold Felicitations!

最愛の姪へ

知らせをもらえるなんて、本当に嬉しいわ!それと、栄えあるエドナヴォリスの証明に五重の祝福を!あなたのお母さんは最後に訪ねた時、興奮を抑えられない様子だった。あなたの結果は、あの人の途方もない妄想さえ上回っていたわ。でも私は疑ってなかった。私たちは名門に属しているし、あなたの父親の祖先には欠陥があるにしても、あなたは私たち高貴な種族の最高の部分を受け継ぐだろうと思っていたわ。肌の色と耳の形についての報告は、特に好ましいものだった。安心したわ!皆が知っているように、耳の欠陥はあなたの父親に根差しているの。あなたが罠を逃れられたのは幸運だわ!

さあ、本題に移りましょう!あなたの質問だけど、そのとおりよ。私たちの地所は完璧な血の優秀な若いエルフを数人、保証人として抱えているわ。ここで彼らについて詳しく記すと共に、色々な証明も添えておくから利用してね。きっとあなたにふさわしい婿が見つかると思う。

1人目はタラノール。名門エンルネルディニオン家に連なる、本当にハンサムなエルフよ。彼のいいところは抜きんでて背が高いことと、父親から受け継いだ特徴である琥珀色の目ね。肌の色と顎の幅に軽い欠陥があるけど、見逃せるものだし、おそらく劣性の形質だから大丈夫。彼は文学にとても詳しくて、あらゆる学派のアルケインを実践できる。この年齢で彼以上に熟練の魔術師は見つからないわ。どこに出しても恥ずかしくない夫になると保証する。

その次はヘレブリムの息子ヒルヨン。この名前には聞き覚えがあるはずよ。ヘレブリムはサマーセットでも最高の作曲家の一人で、世代に一度しか出現しないような音楽の天才なんだから。ヒルヨンの凄いところは、父親の優れた性質の多くを持っていること。彼の歌声はマーラも羨むほどだし、なんと12種類もの楽器を演奏するのよ。残念ながら身体的な特質に関して、素晴らしいとは言い難いわね。顔の対称性には欠陥がある。目がやや小さいのが主な原因ね。それに、鼻梁のところが少しだけ大きくなっているのも欠点よ。これは人間との交雑を示す特徴なの。こうした身体的欠陥が有り余る才能と魅力的な性格を上回るかどうかの判断は、あなたに任せるわ。少なくとも、彼の父親の栄誉は宮廷で有利に働くはずよ。

最後は私の一番のお気に入り、ペランレルよ。底が浅いって言われても構わないわ!この情熱的な若者はトリニマクにも比肩しうる外見と気質の持ち主よ。彼の顔立ちはアルドメリの祖先に気味が悪いほど似ている。本当に、上級公のタペストリーから出てきたみたい。大きなアーモンド色の目と、短剣のように鋭い耳、そして私たちの古代の親類の、引き締まった鷹のような横顔。見とれてしまうわ!彼は練習場でも競技場でも素晴らしい力と速度を見せ、鍛冶をやらせれば水を得た魚のよう。唯一欠けているのは、魔法と学問への意欲だけね。でもそんな弱点は、私たちの家に入れば簡単に克服できるはずよ。

すぐに返事を書いてね、私の大切な姪っ子!この秀逸な男たちの誰にあなたが興味を示すのか、知りたくてうずうずしてるんだから。素早く行動すれば、今年中にも可愛い赤ちゃんができるかもしれないわ!

あなたを愛する伯母、
アンバール

国境開放への拒否A Rejection of Open Borders

シマーリーン上級公女アヴィネッセ

不測の女王は今もなお、急進的な思想を忠臣たちに押しつけており、それが原因で清浄で不屈の地は現在、あらゆる変化と悲しみに苦しめられています。他の種族を尊重し、アルトマーと同列に扱うという試みは、不自然なものでしかありません。ハイエルフが至高の存在であることは誰もが知るところであり、なぜ不浄で完全に正当性を欠いたこの宣言によって、その立場を弱めようとするのでしょうか?この不合理で非常に危険な宣言を撤回させるためであれば、シマーリーンの住人と上級公女は手段を選ばないことを知らせなければなりません。

なぜ私はサマーセットの清浄な性質を手放すことに異を唱えるのでしょうか?なぜなら、それが論理的に正しいことだからです!十分な記録による裏づけがあることですが、アルトマーはこの世界を共有している下等種族に対して、あらゆる面で優れているのです。結局のところ、エドラまで先祖を辿れる者は他に存在しません。我々は自分たちの聖なる遺産を堂々と受け入れれば良いのです。他の種族とは違い、我々は神々の創造したものではありません、我々は彼らの子孫です。その遺伝的な繋がりは、エルノフェイから原初の神々、最初のアルトマーまで遡ることができます。このため、これだけでも、我々には純粋な血を守り、その完璧な聖なる故郷を保護する権利を与えられるべきなのです。

冒険好きな女王がさらなる証拠を求めるなら、我々の像や黄金の肌、生来の魔術的素質に注目すればいいのです。他の種族は知識の追及という点で、我々の足下にも及びません。彼らはそういった戦いに対して無防備なのです。タムリエルで最初に本物の文化を形成したのは我々であり、今でも全種族の中で最も文明化されています。この事実を覆すことはできません。我々は宗教、言語、建造物の基礎を築き上げました。その影響力は大陸全土で見られます。我々はこれだけのものを与えてきたのです。世界のほんの一部を独占することぐらいは許されるべきです。

我々は以上のような自明の事実だけでなく、惨めな下等種族たちのことも考えなければなりません。この素晴らしい文化と社会的風習には厳格さと能力が求められます、彼らに要求するのは残酷すぎると思いませんか?彼らは我々の習慣と伝統に求められる精度を備えていないのです。彼らの無能を責めるべきでしょうか?それとも、彼らが到達できるような低い基準を設けて、欠けている部分を増強するべきでしょうか?彼らは恐らく我々を残酷と考えるでしょう。見えざる門は閉じたままにしておくべきです、そうすればこれ以上お互いに悲しみ、苦痛を味わうことはありません。下等種族にサマーセットへの移住を許しても、彼らのためになりません。むしろその反対です、最後には彼ら自身が傷付くでしょう。

サマーセットの純潔を守りなさい。サマーセットを穢してはなりません。サマーセットはアルトマーだけのものです。それだけが正しいことなのです。

司法高官アヴァナイレの日記Journal of Justiciar Avanaire

サロシルが言っていた。借金取りたちが怒っているみたい。何とも愉快な状況ね。妹が帰ってくることをいつも夢見ていたけど、妹が帰ってきた今は悲しみに満ちている。妹は問題ばかり持ち込む。でも見捨てられないわ。今は無理。しかも妹は助けを求めている。

妹は何かやっているかもしれない。妹にこんなことは言いたくないけど、スクゥーマはエルフを変えてしまう。妹の面影はほとんど残ってなかった、とても痩せていた。骨張った指で私のスカートを掴み、しわがれた声で助けを求めてきた。妹を信じたい。彼女が幸せに生きられるように助けたいわ。でも…無理よ。今はまだ。

だからといって、迷ってはいられない。妹は危険な人物に借金をしている。妹を見捨てればテルヴァンニの魔術師に売られるか、見せしめに殺されるかもしれない。そんな危険は冒せない。

問題は神聖執行局よ。裏取引をすれば信用に傷が付いてしまう。サマーセットには賄賂を喜んで受け取るような愚か者はいない。疑り深いのよ。認めたくないけど、サロシルが見つけた仲介人しか選択肢は残されていない。彼らが真珠を使って何をしようとしているのかは知らない。でも他に選択肢がある?

計画どおり、テロムレ隊長の部隊に潜り込んだ。動くのはトー・ヘイム・カードに近付いてからよ。そこで仲介人が私を待っていてくれているはず。そこについたら隊長に奇襲を仕掛け、真珠を奪い、彼にはそのまま死んでもらう。サマーセットの兵士なら、きっと私を遺跡まで追いかけてくる。そうしたら…仲介人が面倒を見てくれる手はずになってる。永遠にね。

真珠は山賊に奪われたと報告する。しかもその話を否定できるエルフは、その頃には全員死んでいる。全て上手く行けば、私の立場は安泰よ。もしかしたら、勇気を讃えられて昇進する可能性もある。そしてサロシルは必要なお金を手に入れる。そうなれば妹は安全よ。

これは妹のためにやる。昔と違ったとしても、妹は私に残された最後の家族よ。妹は私が守るわ。どんな犠牲を払ってでも。

自らの価値を示せShow Us Your Worth

テラニエル

お前が待ち続けていた瞬間がついにやってきた。機会を与えてやれる。宮廷と我々の支援者に、狡猾さを示す特別な機会だ。彼が有能な者を高く評価することは知っているだろう。

私が多大な金額を支払って入手した書物をお前に委ねよう。領域の間にある場所、我々の世界とオブリビオンの間にある虚無の穴、隙間についての記述がある。そこにはある太古の存在、大いなる欲求を持つ存在が住んでいる。そして我々の支援者は、欲求を持つ者がお好きだ。

この〈強欲〉という生物と取引し、セイ・ターン砦の守備隊に向けて放て。勝利は手が届くところにある。しかし、あの至高な道化に仕える者どもはまだあまりにも近くにいる。安心はできない。我々の計画の最後のピースがはめ込まれるまで、彼らを忙しくさせてやれ。

任務が終わったら、お前をシマーリーンへ戻そう。それまでは状況に注意し、有利な結果を生み出すよう行動せよ。この投資を無駄にしようものなら、我々は皆、大いに失望するだろう。

お前に幸運のあらんことを、

T

失われたアルテウムArtaeum Lost

ヴァヌス・ガレリオン 著

私はサイジックの島アルテウムにいた時のことを滅多に話さない。年齢と気質のせいで、回想すると腹が立つし、気が乗らないのだ。医者ならば、消化に悪いと言うだろう。とはいえ、我らがギルドの出自について、学生たちに一定の説明を与える義務が私にはある。

私をよく知る者は、私がアルテウムの生まれではないことも知っている。私は劣悪な環境で育った。サマーセット島の気難しい上級公の下で働いていたのだ。長い間ではない。諸事情あって、その生活からは離れざるをえなくなった。その後少し経って、サイジックが私の才能を見いだした。彼らは、これまでの生活が終わったと私に言った。もう見つかるのを恐れて、本を床板の下に隠す必要はない。干し草をかき寄せ、食器を洗って膝にアザを作る必要もない。これからは賢者として生活せよ。好きなだけ勉強していい。その勉強が平等や平和、知恵を発展させるものでありさえすればいい。私はその時、喜びで弾けるような気分を味わった。もちろん、どんな喜びも永遠には続かない。

私は導き手である秘術師ヘリアンドに、これまで海を走る乗り物に乗ったことがないので、出航するのが楽しみだと言った。彼女は笑い、光り輝くルーンを下に落とすと、我々はアービスを突き抜けて飛び出した。こんなスピードがありうるとは想像もしていなかった。数秒もすると、我々は風の吹き荒れる丘に立って、アルテウムの田園地帯と牧草地を見下ろしていた。

1日ごとに、新たな発見があった。ニクサドの群生で埋め尽くされた、霧のかかった谷間。出来立てのガラスのように透明な、歌う滝のある秘密の礁湖。風が吹くと秘密を囁く花々、そして定命の者の舌には長すぎる名前を持つ石。私は精力的に本を読み、常に各地を放浪し、すぐに灰色のローブを獲得した。

後に虫の王と呼ばれることになるマニマルコに、私が初めて出会ったのはこの頃だった。当時、彼は私と同じように、将来を嘱望された優秀な見習いだった。私たちは底知れぬ才能を持っていたが、性格は正反対だったため自然なライバル関係ができあがった。だが、サイジックの古き習わしはそのような競争を禁じていた。私の師である強大なライトマスター・イアケシスは「対立は戦争の種をまく」と私に行った。残念ながら、彼は盲目的な好意も同じ結果を招きうることを学んだ。

研究を進めるにつれて、私はサイジックの掟の欠陥に気づき始めた。その中でも特に大きなものは、サイジックでは全てに優先する受動性だ。困惑した亀のようにのろのろと歩き回り、ごくたまに頭を出し、草の陰から危険を確かめる。イアケシスの目は内部へと向かうようになり、タムリエルでの出来事に対する無関心は、年を追うごとに増していくようだった。なぜライトマスターが孤立へと向かう歩みを開始したのか、いまだに私は分からない。だが我々の特使や顧問たちは1人、また1人と帰還し始めた。島の周囲の霧はその濃さを増し、王たちから嘆願が寄せられる頻度も少なくなった。アルテウムの沿岸を越えた先の出来事となると、我々は過剰な警戒心に苦しんだ。この警戒心には高い代償が伴ったからだ。

風の冷たいある降霜の月の夜、私は古代の石塔、セポラタワーの中を歩き回っていた。あの場所では、時間そのものが琥珀の中に閉じ込められているような感じがする。激しい風が、時を経て傷ついた石を突き抜けて笛のような音を上げ、夢見の洞窟の鈍いうなり声がブーツの底を通して感じられる。そこは力の場所であり、法則と理性は創造の崇高なる謎に道を譲る。あの松明に照らされた回廊の内部に隠された場所で、私はマニマルコが闇の力を注ぎこんでいるところを見つけた。異端の死霊術を隠れて実践していたのだ。そして彼は、私も加わるように迫ってきた。私は拒否し、追放の呪文によって彼の儀式をずたずたに引き裂く態勢を取った。私が呪文を紡ぎ始めようとしたその瞬間、我々の周囲で塔が傾いた。夢見の洞窟の唸り声は必死さを増し、悲痛な響きとなった。周囲全体に島の怒りを感じたため、我々は次の日の朝、ライトマスターと話してこの争いを解決することで合意した。

マニマルコはイアケシスの前に立って、死霊術の研究を許可してくれと熱心に訴えた。イアケシスが拒否すると、マニマルコの態度は下品で好戦的になった。彼はデイドラの獣のように、呪いや古代の冒涜の言葉を吐いた。私は脇に立って、ライトマスターはマニマルコを幽閉するだろうと確信していた。だがイアケシスは彼を幽閉しなかった。彼はマニマルコを叱責し、灰色のローブを取りあげ、島から追放した。

「この気のふれたエルフを、タムリエルの人々へ向けて解き放とうと言うのですか?」と私は叫んだ。

イアケシスは何も言わなかった。彼はただ手を上げて、マニマルコを紫に輝く光で包んだ。そのようにして、私のライバルはいなくなった。私は驚きのあまり立ちつくしていた。私が最も尊敬していたエルフが、狼の檻を開いて、おとなしい羊の世界へと解き放ったのだ。次元融合が起こった今、我々はイアケシスの慈悲の無残な結果を目にしている。

私はその少し後、アルテウムを去った。肩越しに振り返って、あの巨大な丘とゆるやかな牧草地が霧の中に退いていく姿を見たことを覚えている。後になってから、私は自分が出発してほんの数時間後、島が消滅したことを知った。これを偶然と考えるのは難しい。イアケシスが自分の過ちを認め、孤立を選んだのかもしれない。サイジックはマニマルコが解き放たれることを知って、戦うことよりも安全を選んだのかもしれない。いずれにせよ、サイジックの島は記憶の中に消え去り、誇り高きサイジックは暗闇の中に沈んだ。

彼らが戻ってくる時は、タムリエルを平和と繁栄へ導くという誓いを、彼らが忘れていないことを願っている。戻ってくることがあればだが。それまでの間、我々ギルドの魔術師は彼らの責任を引き受ける。弱き者を守り、新たな呪文と新たな発見を追い求めよ。そして何よりも、勇敢であれ。秘められた危機を前にして、魔術師ギルドは先陣を切らなければならないのだ。

蛇の王(17編)The King of Vipers, Canto 17

海はサーペントの舳先の前に割れ
風は黒い布の帆船に捕らえられた
打ち鳴らされる鼓は漕ぎ手の苦悶を隠し
海の悪魔が後を追って泳いだ

暗い雨が寡婦のベールのように降り注ぎ
稲光と雷鳴を従え
虐殺者ヴィスカルネは船の舵輪を掴んだ。
砕け散った千の物語の悪党。

彼は膝をついた者も容赦なく刃にかけた
若き者、弱き者、病人、老人をも
その心の残忍さはしばし語られ
その刃にまみえた者は、決して癒えることなし

残忍な艦隊の標的はサンホールド
オルグヌム王が求め続けたアルトマーの獲物
かつてグリフォンの翼を授けられた黄金の港
語られずにはおかれぬ勝利

ヴィスカルネは船を乗り入れた、と我らが先人は歌う
だが港はもはや空っぽ、動くものとてなし
焼く船もなし、殺すべき無実の者もなし
サーペントの苦い一突きを味わう者はなし

すると丘にそびえる宮殿より
黄金をまとった一軍が突撃した
北からのアルトマーの圧倒的な波
マオマーの冷気に太陽のぬくもりをもたらすため

彼らはヴィスカルネの副官を次々殺し
虐殺者の艦隊は港にて燃え上がった
マオマーは彼の敗北を知り
彼の勢力は斃れ、その無力を示した

祝福されし諸島の案内Our Blessed Isles: A Guide

調査官ルニルスティール 著

愛する親族に七重の祝福を。高貴な探究を一時脇に置いて、私と一緒に心を巡らせてほしい。

我々の驚嘆すべき旅は、まず文明の住処であるアリノールから始めよう。西海岸の山々に居を構えるこの街は、山頂とほぼ同じくらいの高所に位置しており、その白い尖塔は空高くそびえている。我らが支配者たちはこの高みから何千年もの間、自分たちの支配地を見渡してきた。華美な王宮を見る機会に王を敬いなさい。我らが王国の比類なき偉大さに包まれることで感じる誇りだけでも、旅をする価値は十分にあるというものだ。

外国のものに興味があるのなら、サマーセットではアリノール以上に世界の物産を味わうために向いた場所はない。タムリエル全土からの雑多な品々が毎日、船で港に運ばれてくる。神聖執行局が販売してよいと見なすものは、生活に全く新しい視点をもたらし、またアルトマーの生産品の評価を高めるだろう。

我々の品がなぜ他に抜きんでているのか知るためには、少し船に乗り、湾岸を越えてリランドリルへ向かえばいい。この祝福された街は何世紀もの間、高等教育の中心地となってきた。多くの王や女王がサピアルチ大学の知恵を求めてやってきた。大学には我が民の中でも最も偉大な知性の持ち主である223人が、あらゆる物事の知識を進歩させている。

芸術に関しては、公道を西に辿ってリレンシルへ向かい、全世界で最高の娯楽が生まれている場、夢見の館を見よう。この名高い一座の団長は、開拓の最も初期の頃から開かれている野外劇場で、昼夜の別なく演目を披露している。我らの文芸の長い遺産を受け継ぐ者であるため、団員は特別な者に限られる。真に才能のある者だけが加わることができるのだ。君の趣味が何であれ、夢見の館が披露するショーには味わい深い魅力がある。

味わうといえば、我らの島でワインが生まれる地に案内させてほしい。少し道を行くだけでいい。ラッサフェルドのブドウ園はリレンシルとシマーリーンを結びつけそうなほど横長に広がっている。ブドウの木から熟した実をもぎ取る誘惑には抵抗してほしい。確かに、自然にこれ以上のものはないが、ワイナリーで作られたものを一旦味わうと、たった1つでも実を取ってしまったことを後悔することになる。

「でもラッサフェルドの赤なら飲んだことがある」と言うんだろう!愛する親族よ、3000年もののビンテージを熟成された樽から直接味わったのでない限り、本当に飲んだとは言えないのだ。その特権のためには家を抵当に入れなければならないかもしれないが、それだけの価値はある経験だ。

目を北に向ければ、大いなるエトン・ニル山の上にクラウドレストが見えるだろう。あの橋やテラスからの眺めは息が止まってしまうほどだが、おそらく辿りつくための昇り道では、文字どおり息が止まってしまうだろう。もちろん、君がウェルキナーの一族ならば別だ。あのグリフォンの騎士たちは我々の地を頂上から見守り、空を駆けてサマーセットのどこにでも、一瞬のうちに守りへ馳せ参じる用意ができている。

クラウドレストを離れる前に、島で一番眺めのいい場所にしばし立ち、水晶の塔の栄光に目を向けよう。悟りの柱は創造の中枢であり、我らの祖先たちと同じほど古い、限りなき知の源泉だ。サピアルチはその秘密を昼夜の別なく守り、研究しながら、高き者の完全性へと我々を近づけることを望んでいる。

旅の疲れを癒したいなら、シマーリーンは愉快な人々で一杯の、快適な海辺の街だ。オーリドンや長い西街道への旅に出発する前に、静かな夜の休息を取るには理想的な場所だ。そのついでに聖なる調和の修道院を訪ね、均衡の儀式への参加を申し込もう。これ以上によく眠れる夜はないだろう。

東海岸に昇る太陽を拝む喜びを味わったら、旅の最後の地に出発しよう。すぐ南にあるシル・ヴァー・ウォードの原初の荒野は、王立動物園のレンジャーたちによって注意深く管理されている。ここでは、世界中から集められた特別な生物たちを見られるだろう。この場所は一般に公開されており、市民なら無料で見学できる。家族で出かけるにはちょうどよい場所だ。

最後に、西に戻ってアリノールの姉妹都市サンホールドへ行こう。間にそびえる山脈がなければ、二つの都市は避けがたく同化して、失われたアルドメリス以来の大都市になっていただろう。サマーセットでも最大の港の一つを有するサンホールドは頻繁にシーエルフたちの襲撃の対象となるが、港は非常に防衛しやすい。分厚い海の壁から、狭く曲がりくねった入江に至るまで、石がそれぞれマオマーの襲撃への対処を考えて配置されている。難攻不落の砦には違いないが、同時に繁栄する街であり、島における海上輸送の中心地であることも忘れてはいけない。迷宮のような通りで何時間か過ごし、世界最高のシーフードを味わうことを強くお勧めする。

愛する親族よ、旅の終わりがやってきたが、これが我らが故郷への旅の始まりに過ぎないことを願っている。旧エルノフェイは懐かしいが、神々の黄金のぬくもりはいつも、太陽の接吻を受けたサマーセットで涙を乾かしてくれるだろう。

照らされし書Illuminus

なんて劇的で芸術的だろう!哀れな学者はそれぞれ古く退屈な仮面を脱ぎ捨て、新たな役に就いた!大胆な冒険家、苦難の皿洗い、伝説の英雄だ!

しかし悲しいかな!そこへおせっかいな詐欺師がやってきて、学者の遊びを邪魔する気だ!彼らに恐ろしい運命が待っていることを、侵入者は知るよしもない!

勇敢な「英雄」は何度も舞台へ押しかけた。不愉快な言葉とともに、この侵入者は役者から力を奪った。しまいに愚かな本の虫たちは役を忘れ、元の退屈で目新しいこともない、笑って「現実」と呼ぶしかない日課に戻ってしまった。

やがて、大胆な脚本家は英雄の干渉にうんざりした。彼女は暗く激しく動く海の向こうを見つめた。極めて勇敢な芸術家でしか航海できない、恐ろしい悪夢の海だ。そしてその真っ暗な奥底から、彼女は想像を超えた恐怖を召喚した。すぐに、英雄は食われてしまうことになる!

悲しいかな、恐怖は十分でなかった!英雄は脚本家を追って向こう見ずに突進し、作品を踏みつけた。その美しさ、狡猾さ、創造力を持ってしても、輝ける存在である脚本家、照らされし者は英雄の的外れな勝利を予見できなかった。断続的な叫びを上げ、復讐を誓って、彼女は自分の本のページへ退却した。今もそこにいる。待ち続け。次の見事な脚本の構想を練りながら。

称えよ(先人の歌)Praise Be (Ancestor Song)

(音楽:落ち着いて威風堂々)

さあマーラを称えよう
おお、愛の女神よ
我らに子の恵みを授けたまえ
高き我らの母よ

コーラス
手を打って称えよう
神々を賛美しよう!
手を打って称えよう
我らが先人の血を!

さあザルクセスを称えよう
我らの物語を記した者
書記に名誉を
栄光の文書保管者

コーラス

さあイフレを称えよう
おお、第一のエルノフェイよ
森の神
道を示すアースボーンズよ

コーラス

最後にアーリエルを称えよう
全ての者の祖先を
彼らに似せて我らを作った
賢く、気高く、背も高く

コーラス

上級公女の会合への招待状Invitation to the Kinlady’s Conference

会費を支払った貴族、議長、商人王はすべて、上級公女アヴィネッセの邸宅での会議に快く招かれ、現在の政治状況、異国人の流入、女王の布告について話し合うことができます。この案件について、あなたの声を聞き入れることを、上級公女はお約束します。

軽食の提供があります。

上級公女の手紙Kinlady’s Letter

親愛なるアルダーク・ティルカラー

この素晴らしき修道院への赴任を検討してくれて嬉しく思います。実現させるために協力できたのは幸いでした。アイレン女王の急進的でかなり危険な布告について、実りある話し合いをした後だけになお嬉しいものです。一緒に働けることを楽しみにしています。それがシマーリーンだけでなく、サマーセット全体を安全なまま保つ助けになるはずです。

シマーリーンに相応しいかどうか確かめるため、新参者たちを隔離する計画は素晴らしい案だと思います。想像力に富むこの文化の一員になれる能力と気質を持っている者とそうでない者を選別できれば、手遅れになる前に厄介者や情熱に欠ける一時滞在者を見分けられます。完全な解決策ではありませんが、不測の女王が宣言を取り消し、招かざる者ネバラを全員追い返すまで、これで十分でしょう。

サマーセットに相応しいと思われる候補者のリストを送ってください。誰に滞在許可を出し、誰を送り返したかがわかれば、女王代理アルウィナルウェもきっと喜ぶはずです。私は今でもサマーセットを極めて神聖な場所であると考えています。他の種族のことはオーリドンに任せておけばいい。我々の「愛する」女王はいつもそこで、猫やウッドエルフと一緒に浮かれ騒いでいる。仲間が増えれば彼女も喜ぶでしょう。

上級公女アヴィネッセ

食料品の請求書Invoice for Comestibles

今週配送の食料品は下記の通り

-生きているロバ30頭
-干し草の束14個
-リンゴ50キロ
-各種塩漬けの魚4樽
-全粒穀物10袋
-濃縮グリマーベリー5瓶
-ニクサドエキス1壺
-エクトプラズム1ボトル

ウグイアビの肥大化が止まらない。餌のスケジュールを調整して、穀物を与えないようにしてくれ。

森の闇The Forest Dark

ジョセリン・マディア 著

死者の魂で黒く染められた長靴を履き
恐怖の喘ぐ戸口に立った
乾いた茨の向こうに隠れた
狼の喉が遠吠えし、闇の枝が溜息をついた

一度だけその中を彷徨った
年央の心を持った元気いっぱいの若き日に
髪はまだ死の骨ばった手に掴まれてはいない
魂はまだ恐怖の熱い焼印を押されてはいない

苔に覆われた骨とスッポンタケの茎の上
私の足は恐ろしい、油まみれの滑車を見つけた
悪臭の闇が渦巻く木々の向こうに
唸り声をあげる血に飢えた生き物が潜んでいた

周り中で、奴らの息が聞こえた
雨に濡れそぼる森に響く弓鋸を引く音のように
そして遠吠え!あの陰気な聖歌
狩りの王ハーシーンと残忍な気まぐれ

私は向きを変え引っ掻く棘の間を走った
獲物の兎は私の目を見てうろたえる
ぎこちない一歩と共に唸り声が大きくなる
黄ばんだ牙が肉を切り開く

私はギザギザの木々の並びを突き抜ける
ボロボロのシーツをまとい、皮膚はひどく打たれている
しかし黒い狼は茨の茂みの後ろで怯んだ。
真っ黒な目は白い炎に輝きじっと見据えていた

「ここから逃げろ」そう言っているようだった
「お前の炉辺へ、うつろな喜びへ戻れ」
「だが我々狼はまだつきまとう」
「お前の最後の血に染まったスリルを求めて戻る!」

真珠の調査記録3Pearl Research Notes, Log 3

現在アビサルの真珠の研究をしているが、予想していたよりかなり危険なようだ。魂の魔法に反応するらしく、制御できないほどの力を持っている。それが原因で研究者を何人も失った。

最初の犠牲者たちによって、真珠の持つ魔力が目覚めてしまったようだ。その力に引きつけられ、すでに周りにはヤグーラが群がってきている。今はまだ食い止められているが、いずれ防衛線を突破されてしまう。真珠を安全な場所に移動させる必要がある。より内地はどうだろう。サマーセットから完全に隔離するのも一つの手だ。

司法高官アヴァナイレはかなり使えるかもしれない。神聖執行局との繋がりを利用すれば安全に活動できる。サロシルは払った金以上の働きをしてくれた。とにかく、何をするにしてもスクゥーマ常習者は信用できる。自分の唯一の姉だろうと平気で裏切る。

神聖執行局The Divine Prosecution

ノルド文化交流探検隊、巨人殺しのアクスルファ 著

私はこれまでノルド文化交流探検隊の一員として幅広く旅をしてきた。敬愛すべきエボンハート・パクトと関わりのある土地は、モロウウィンドやブラック・マーシュも含めて全て訪問した。オークの住むロスガーも探検した。しかし、私をどこよりも最も苦しめたのは、横柄なハイエルフの住む島サマーセットだ。普通なら誰でも気に入るリガートでさえ、あの自惚れていて耳のとがったミルク飲みの連中を嫌っているほどだ!彼らに対してどんなに苛立っても、私はできるだけ寛大に振る舞い、斧で襲わないよう努めている。

塩水と虚偽の匂いがするこの地に到着して初めての仕事は、とにかく法と秩序に関する情報を集めることだった。いくら平和と外交の旗を掲げて来たと言っても、私たちがノルドであることに変わりはない。ハイエルフに嫌われている理由がパクトと関係しているせいなのか、それとも彼らと見た目が違うせいなのかは分からないが、代表団のメンバーがうっかり決まりを破って、そのせいで外交問題が起きないようにしなくてはならない。島には十分すぎるほど衛兵と治安官がいるが、本当に権力を持ってるのは神聖執行局というおかしな名前の者のようだ。

神聖執行局は、アイレン女王とドミニオンの準軍事的組織であるサルモールに忠実な、権限を与えられた執行官で構成されている。サマーセットでは神聖執行局が法と秩序の象徴であり、宗教的・世俗的な法を守らせる責務を負っている。トリビュナルのオーディネーターに似ているようだが、不気味な仮面や派手な鎧は身につけていない。メンバーの一人、陰気だが気さくなルリオンという名の司法高官に話を聞くことができた。

司法高官ルリオンは、神聖執行局の主な役目が、犯罪や違反における調査官、議論や争いにおける仲裁役を務めることだと説明していた。神聖執行局は彼が言うよりもさらに幅広い権限を持ち、世俗の法の番人であるだけでなく、宗教的および社会的道徳規範の保護者であるような気がした。追求すると、彼は事態が地元の衛兵の手に負えなくなると自分たちが呼ばれるのだと認めた。最後に「調査の必要があるので出掛けるよ」と付け加えて立ち去り、私は兎のミートボールとハチミツ酒の昼ご飯を食べた。

アリノールの街をぶらついていると、ルリオンが常に私の見える所にとどまって神聖執行局の仕事をしていることに気づいた。商人と客の間で起きた口論を、両者から話を聞いた後で拘束力のある裁定を下して事を収め、両者が受け入れた後で立ち去るのを見た。その後で、スリが貴族の財布を盗んでいるところを捕らえ、その犯罪者を街の衛兵に引き渡した。こうした中でずっと、彼は私に目を光らせているような気がした。よそから来た滞在者を観察するのも、神聖執行局の執行官の仕事に含まれるのかもしれない。私はそれでも構わなかった。それに、彼が常に近くにいることで、食事時に彼を探すのが楽になった。

司法高官ルリオンは、ハチミツ酒が好きだろうか?

神聖執行局の事例Cases of the Divine Prosecution

神聖執行局ビューローリーブ、上級執政官リンワレイ 著

神聖執行局はサマーセット島の法秩序を管轄する最高機関であり、女王と王家の宮廷にのみ従う。我々は上級公や上級公女の意志には従うものの、必要であれば貴族においても不正がないかどうかを調査する義務と権力を有している。

例として、不実なキャノンリーブの事例を挙げたい。これは数年前、アイレン女王が玉座につくよりも以前の出来事である。当時、クラウドレストのキャノンリーブは貴族出身で評判も優れたアルトマーで、比類なき血の一族に属していた。このことは当然ながら、血がアルトマーの全てではないことを証明している。我々の司法高官の1人が噂を聞きつけ、キャノンリーブの事業を調べ始めた。徹底的な調査の後、このキャノンリーブがエトン・ニル山の内部に多くある遺跡の1つで行われていた歴史研究プロジェクトから、特に優れた古美術品を着服していたことが判明した。彼は目録や記録を改ざんして外国の収集家に古美術品を売り、美術品が紛失した形跡を一切残さないようにしていたのだ。司法高官は証拠を集め、結局キャノンリーブは、地位と貴族の血があってもこの国の法の外にあるわけではないことを学んだ。

神聖執行局は宗教的、文化的な法律に関することも扱う。アルトマー社会の慣行を守らせることも我々の仕事である。不完全なる完全の事件は検討すべき事例である。この事件はある宝飾師に関するものだが、彼はネックレスや指輪、アミュレットを製作中不運に見舞われ、見た目にも明らかな傷がついてしまった。この職人が完全な宝石細工を作ることにいつも失敗しているという訴えの調査は、筆頭司法高官ナルダルモが引き受けた。筆頭司法高官はこの職人が昔に比べて遥かに熟練の度合いを落としていることを確かめ、令状付きの懲罰措置として、彼が見ている前で職人に自分のアラクソン球を割ることを命じた。職人は再び熟練を得るために働き、新しい球を申請しなければならなくなったのだ。

以上は、神聖執行局によって処理された事例の、ほんの一部である。

神聖執行局の通知Divine Prosecution Notification

女王代理アルウィナルウェおよび神聖執行局の命により、サマーセット島への訪問者全てに関係する以下の命令は、即座に効力を発揮する。

訪問者が十分な戦闘能力を有しており、
かつ訪問者が正当なる道徳意識を抱いている場合、

上記の基準を満たしている全ての新参者は、法の執行任務を代理する任命を受けるため、神聖執行局に出頭すること。

至急、筆頭司法高官キャラウェンまで報告することが推奨される

親愛なる護衛へDear Escort

your name

これを読んでるなら、やっと私に追いついたのね。あなたより先に石の翻訳をしていたら、前の扉が開いたの。あなたを待ったけど、扉が閉まってしまう恐れがあった。石にある碑文を読めば、後を追えるわ。翻訳はわりと簡単なはずよ。

星々の導きがありますように、
アンデウェン

追伸 その骨は私のじゃないから心配しないで。

人間の愚行Folly of Man

よく聞け、警告がある
伸びすぎた草がある
予言ならぬ、このささやかな歌には
心に留めるべき教訓がある

さあ物語は開く、哀れなカビの上に
腐敗の上で育つ定め
この見苦しい細菌、それは手品師の反抗
戦いも終わって遥か後の

これは大いなる断裂、念のため言っておく
天が空から落ちた時
彼らはドシンと落ち、泥に命を与えた
この定命の豚小屋を作った。

それは最悪の汚さ、でもそのことは置こう
私の物語は豚に関するもの
この地に根づいたもの、それは人間という種
垢からキノコが生えるように伸びた

その生は短く、取るに足らないとしても
彼らの不手際には注意せよ
笑うのはたやすい、この単純な害虫を
彼らの略奪を見るまでは

人が破滅の太鼓の音に縛られる時、
死体の神の細工を知る。
トリニマクさえ知らずにいた、彼の最後の一撃に
どれほど強く打たれたかを

人物確認証書Writ of Valid Credentials

ここに神聖執行局を筆頭とする諸機関は、スカイリムの向こう見ずなリガートの背後関係を検証、精査し、証書を発行した。その上で神聖執行局は、当該証書を正式で法的拘束力のあるものと認定した。

ゆえに向こう見ずなリガートは、ノルド文化交流探検隊とエボンハート・パクト双方の正式な外交官兼大使であるというのが、神聖執行局の見解である。この資格ゆえ、彼はサマーセットとアルドメリ・ドミニオンにおいて得られる、あらゆる特権と免責を受けるものとする。

準備、立会、検証
神聖執行局司法高官ロルムデル

水晶の塔The Crystal of the Tower

アルケイン学サピアルチ、リランドリルのラーナティル 著

水晶の塔はサマーセット北部にそびえ立ち、アルトマーが敬愛するすべてのものの導き手であり、象徴である。塔は水晶のような法とも呼ばれているが、我々の大切な国境の彼方で信じられていることとは違い、水晶でできてはいない。塔の名前は頂上にある水晶、透明な法から名付けられた。

透明な法は力とエナジーを水晶の塔に送り、それによってこの謎の建造物はサマーセット全土を守っている。塔より放出された力は見えない日よけのように大地を覆い、諸島の安全を確保している。

こうした守りは古く、水晶がこれを建立したアルドマーによって塔に埋め込まれた時に設定された。率直に言うと、サピアルチは塔や水晶の正確な働きについて、完全に理解している訳ではない。アルドマーが水晶の塔を建立したのは初期のアルドメリ植民者の墓を保存するためであり、エルフの霊魂を永久に記憶し、我々が完全に団結していたわずかな時代を記したことは分かっている。

透明な法の重要性は自明だろう。その名から全てが明らかになっている。透明になっているのは簡単に認知や探知をされず、姿を明らかにし、開かれ、明確かつ隠されぬ状態にされないためだ。法とは、次元の一部を支配する原理と規制を意味している。この場合、水晶はアルドマーの遺産の明確ではっきりした原則を明らかにしている。実際のところ、水晶が実体化した聖性の欠片ではないかと疑っている。

明らかに、透明なる法と水晶の塔に対する重要性の理論はサピアルチ大学の中に留まっている。水晶がアルトマーの完璧に対する意欲を吸収してアルトマーに返し、諸島を弱体化させ危険にさらす完璧ではないものを跳ね返しているという説は気に入っている。私に同意する者が多くはないが、水晶の塔に関する誇りと称賛、安全に対する感情が諸島を覆っていると感じられる時はある。象徴的な関係だ。

もしくは、ただの古代アルドマーの魔法かもしれない。誰にわかるだろう?

水晶の塔の賢者Sages of the Crystal Tower

魔術師ギルドの書記、ヌララン 著

彼らを賢く博学と呼ぶ者もいる。サマーセット諸島で最も優れた魔術の使い手と呼ぶ者もいる(ただし私の仲間の多くはその考えに反対するだろう)。彼らはサピアルチ、水晶の塔の賢者であり、サマーセットの王位継承者の教官である。現代の最も偉大な魔術師と言える者のうち、何名かはサピアルチに存在している。しかし彼らはたいてい魔術や難解な学問の学者であり、それぞれ特定かつただ一つの研究テーマを専門にしている。

サピアルチは水晶の塔の番人を務めている。塔は正当な水晶、「水晶のような法」とも呼ばれる。塔の名前は水晶で出来ているからではなく、塔の頂上に透明なる法という魔法の水晶を収めていることに由来する。

塔の中にはわずかな賢者が住み、塔の管理をして秘密を守っている。他にも研究で出入りする者はいる。当然ながら塔に入るには、ただそこへ行って扉を開けば入れる訳ではない。入口は隠されていて、強力な結界によって守られている。唯一入れる方法は塔の衛士の助けを必要とする。この特別に調整された2人のサピアルチは、それぞれ塔に入るために必要な、決意のダイヤモンドを1つずつ持っている。塔の衛士によって、決意のダイヤモンドが正しく調整されて同時に使用されると、その紺碧のダイヤモンドは水晶の塔への道を開く。そのような衛士は2名しかおらず、それぞれ携えるダイヤモンドへのリンクを確立するため、長く厳しい儀式を受けなければならない。衛士たちはその役目に11年間就き、その後は新たな2名がダイヤモンドの保護を受け持つ。

他の賢者たちはサピアルチ大学に入り、それぞれが魔術や難解な学問における特定の分野を担当して献身する。リランドリルのラーナティルはアルケイン学のサピアルチで、サピアルチとその助手に223の異なる分野が割り当てられたこの大学を取り仕切っている。サピアルチはサマーセット中で個人、もしくは小グループで独自の研究を行うか、大学全体のために特定の課題を研究している。研究の中には水晶の塔、またはリランドリルのサピアルチ大学で行えるものもあるが、それ以外は賢者たちが必要に応じて旅し、自分の書斎に閉じこもって、世界で最も大きい複雑な謎についてあれこれと考える。

サマーセット諸島の支配者が領土を収める慣例として使うプラキスの書の解釈者として、サピアルチは重要な儀式学の持続における役割を果たしている。プラキスの書は、アイレン王女が生まれた際には王女が落ち着きのない不穏な時代を象徴し、いずれは支配することになると予言したとされている。時が来れば、王位継承者は必要条件として王位継承の3555日前に、サピアルチの元へアルトマーの王政プラキスと儀式学を学ぶために訪れる。その後、サピアルチ大学は新しい支配者にとって強力な人材として仕え、求められれば助言や意見を提供する。

学問を追究している者として、サピアルチは兆候や前兆に対して過度に興味を持っているように見える。彼らは星座の動き、月の位置、動物の気質、さらには一世一代のスープに浮いている泡の渦にまで、深く重大な意味があると考えている。こうした知性と迷信の綱引きは、私たちにとって矛盾のように思えるが、サピアルチは同じコインにおける表と裏のように捉えている。そしてコインと同じように、中に入る代金を払うには両方とも必要だ。少なくともサピアルチはそう言っている。

サピアルチの主な研究分野には、オブリビオン学、教化、アルトマー遺産、付呪、神話史、デイドラの誤謬、月学、神正統主義がある。それぞれの研究室と研究分野を示すため、各自がアルトマー美術のサピアルチ、海軍考案のサピアルチ助手といった肩書を持っている。サピアルチは一生、もしくは学問分野の変更を申し立てるまで、その肩書を持つ。ただし、塔の衛士は決意のダイヤモンドにまつわる責務を11年間全うした後、塔の鍵を後任となる次のサピアルチに渡してから、自分たちの研究分野に集中する生活に戻る。

聖なる数に関する考察Thoughts on the Sacred Numbers

この完璧な庭に座り、私は聖なる数について考える。吉兆とされ、宇宙の存在にとって重要と我々が認める数である。

3は最高位の天体の数であり、太陽と2つの月に体現されている。これは私の完璧な娘たちの数でもある。だから我々はこれ以上後継ぎを生んではならない。

5は元素の数である。現実は大地、大気、水、火、エーテルから成っているからだ。これはまた、私が机の上で同時に開いておく本の数でもある。

8は惑星の数であり、3と5の合計でもある。8はまた私が哲学協会の会員たちと繊細なトーニーポートワインを飲む際に定めている、杯の数の制限でもある。それ以上でも、それ以下でもない。

以上が良き数である。そして良き数の合計を我々は16と呼ぶが、これは非常に強力な数だ。

しかし悪い数には気を付けねばならない。2は視野を欠き、二元性を示そうと試みる。それが不可能であることは誰もが知っている。

船乗りに贈るシーエルフガイドA Sailor’s Guide to Sea Elves

シルバーセイル号のヴィリルダ 著

あなたが王立海軍の一員であれ、単に海上の旅行者であれ、マオマーの船を地平線の上に発見するという不運を経験する前に知っておくべきことがある。このガイドは避けがたい事態が起こる日に備える一助になるだろう。これを最初の教訓としてほしい。たとえ短時間でも海上や海辺で過ごせば、シーエルフに出会うことがある。

名前が示しているように、シーエルフは水上を故郷とする。彼らは波を利用することに長けているため、マオマーの船は海と呼べるような場所でさえあれば、いつまでも海上にいられる。マオマーは我々の交易船を襲撃し、艦隊に奇襲をかける際、この点を最大限に活用する。退却するシーエルフの船は決して追いかけてはならない。たとえ弱っているように見えてたとしても。彼らは相手に追いつけると思わせて誘い込むが、勘違いしてはならない。シーエルフのカッター船は我々の艦隊のどの船よりも早い。すぐに沖に誘い込まれて安全に退却できなくなり、鮫のようにあなたの周囲を回り出す。食料が底を突き、衰弱して戦えなくなると、マオマーはとどめを刺しに来る。卑劣ではあるが、有効な戦法だ。

第二に、地上が見えるのでない限り、シーエルフの船から逃げてはならない。見えているとしても、大いに気をつけるべきだ。問題はマオマーに追いつかれるかどうかではなく、いつ追いつかれるかだ。マオマー船に対峙した時の最良の行動は、立ち止まって戦うことである。少なくともこれなら優位に立てる可能性がいくらかある。シーエルフの艦隊は大抵の場合、小さく小回りの利く船で構成されており、素早い一撃離脱の戦法に適している。素早く鼻先をへし折ってやれば、本格的な攻撃へと入る前に追い払える可能性がある。

マオマーと戦う際、恐ろしいのはバリスタなどではない。彼らは海そのものを武器にする。スループ船より大型の船ならどれにでも、その帆の下に少なくともシーメイジが1人いて、風と嵐を召喚し、あなたの船をおもちゃのボートのようにひっくり返そうとしてくる。マオマーのシーメイジをできるだけ早く無力化するため、あらゆる努力を費やすべきである。波で倒せないとなると、シーエルフは獣を放ってくる。マオマーは戦力のために様々な種類の海の肉食獣を交配し、訓練している。水上を飛んで甲板を襲う翼のついたリーフバイパーから、戦艦を転覆させるほど大きなシーサーペントまで。いずれにせよ、一定の速度で移動し続けていれば、こうした怪物はあなたの船へと辿りつく前に疲弊するだろう。

マオマー自身について言えば、欺瞞的な戦術に騙されてはいけない。シーエルフは凶悪な戦闘員であり、アルトマーの血を流す以外の望みを持っていない。彼らがあなたの船の甲板に乗り込んできたら、厳しい戦いが待っているだろう。マオマーは海が最も荒れている時でさえ驚くほどバランスを崩さず、船の索具を通り抜けることに関しては軽業師よりも機敏だ。想像がつくかもしれないが、よく訓練され装備を整えた海兵が侵入に対する最大の防御となる。しかし白兵戦では、回り込みを防げるように陣形を整える必要があるだろう。シーエルフの襲撃者は分散した敵を素早く圧倒する包囲戦術を好むからだ。

ガイド1冊から学べることは限られているが、この知識によって、生死を分ける日の準備を整えやすくなることを願っている。フィナスタールがあなたの船旅を導くように。

捜査官ヴェイル:シャンブルの廷臣(パート1)Investigator Vale: Retinue of Shambles, Part 1

ウッドエルフが汚れ一つない船室のベッドの上で、大の字に倒れていた。短剣が胸から突き出し、下には血だまりが拡がっている。「殺人か、ヴェイル?」と帆船シルバースワン号の船長を務めるハイエルフ、ネムダランが言った。もう少し不吉でない方がいいと期待しているのは明らかだった。「間違いないのか?」

捜査官ヴェイルはため息をついた。「誤って自分の心臓に刃を突き刺したと思うの、ネムダラン船長?ないとは言い切れないけど、可能性はとても低いと思うわ」

ウッドエルフの醸造業者フィリノールは、サマーセットの国境を開放するというアイレン女王の布告に応えるつもりでいた。ハイエルフの故郷に足を踏み入れる、最初の新移民の一人になるはずだった。彼は今やヴァレンウッドの想い出、イフレのキャンプの客人でしかない。捜査官は身をかがめて近寄り、醸造業者の胸から突き出している柄と持ち手を調べた。

「お高く止まったハイエルフの誰かがやったに違いない」とカジートの仕立屋ザラキが言った。「アイレン女王がいくら約束しても、あの連中は自分たちの清純な島を我々に汚されるのが我慢ならないのさ」

「そうかもね」とヴェイルは言いながらロウソクの火を使い、殺人に使われた武器の持ち手を装飾している、緻密な彫り模様をよく調べようとした。「でも、儀式用の短剣が使われているのは重要だと思う。きっとデイドラ関連ね。ここにあるシンボルの全てが分かるわけじゃないけど、模様は複数のデイドラ公の崇拝を示唆している。興味深いわ」

「それで、推理はどうなんだ、ヴェイル?明日の朝にはシマーリーンに到着する予定なんだよ!」とネムダラン船長はせき込んで言った。

「私の推理ではね、船長さん。あなたの船には殺し屋が乗っているだけじゃない。殺し屋で、しかもデイドラを崇拝してる何者かが乗っている。一番興味深い類の殺し屋ね」とヴェイルは言った。興奮を隠す気もほとんどないようだった。「この旅もようやく面白くなってきたわ!」

* * *
ヴェイルとカジートの仕立屋は船底にある船室を捜索し、床から天井まで積み上がっている木枠箱、小樽、大樽などの狭い隙間を探した。「私に付いてこなくてもいいのよ、ザラキさん」と、捜査官は困惑して言った。「自分の身を守る術は心得ているわ」

「ザルは信用してない訳じゃない、捜査官」とザラキは返しながら、黄褐色の毛から蜘蛛の巣を払いのけた。「ただ、一人でこの船底まで下りて行かせるのはよくないと思った。殺人犯がうろついているのだからな。船長や臆病者の船員たちがどうして手伝いを申し出なかったのかは、ジョーデとジョーンだけがご存知だ!」

ヴェイルは積み上がった木枠箱の山2つの間に体を滑りこませ、貨物の中にある、少し開けた場所へと進んだ。山のうち1つがぐらついていることにヴェイルは気づいた。支えている縄が旅の間に緩んでいたのである。彼女は注意深く進んで不安定な山を通り過ぎ、開けた場所の中心に立った。

「ちょうど予想したとおりの場所で見つかったわ」とヴェイルは誇らしげに言い、急ごしらえで作られたデイドラ公の祠を指差した。「グウィリム大学でデイドラ学の教授に受けた授業の記憶が正しければ、誓いと約束の神ね」

ザラキはルーンに覆われた床と、その中心から立ち上がっているデイドラのシンボルの周囲を警戒しながら回った。「大学に行ってたのか?」

「まあ、個人授業を数回聴講したと言っておくわ」とヴェイルは悪戯っぽく言った。「私が彼女から学んだのと同じくらい、彼女も私から学んだ。それがちょっとした自慢よ」

カジートが毛に覆われた手を、邪悪なルーンに囲まれ頭蓋骨を上に乗せた木製の台座に向かって伸ばすと、捜査官はその手をぴしゃりと打って止め、静かにするよう身振りで示した。隠された祠に足音が近づいてきていた。ヴェイルとザラキは、密集した木枠箱の影に身を押しつけて待った。少しすると、木枠箱の山の隙間から、高貴な身なりをした背の高いハイエルフが現れた。

「あなたがデイドラ信者?」と尋ねつつ、ヴェイルは驚いているハイエルフの進路を塞いだ。

「欺きの王の餌食になるがいい!」と彼は叫び、ベルトから曲がった短剣を引き抜いた。「よくも、シャンブルの廷臣の問題に首を突っ込んでくれたな、ブレトンの放浪者め!」

ヴェイルが返事をする前に、ザラキが飛び出した。仕立屋はどこから取り出したのか剣を構えて、信者の短剣による突きを防いだ。「レディに向かって、その態度はないだろう!」

信者は短剣をカジートに向け、呪文を唱え始めた。唱え終わるのを待つことなく、ヴェイルは高価な革のブーツをハイエルフの腰にめり込ませた。蹴りは信者を横に突き飛ばし、緩んでいた木枠箱の山に突っ込ませた。木枠箱は床に散乱し、その下の信者を押しつぶしてしまった。

「しまった!」とヴェイルは言い、目にかかった髪の毛を払い落とした。「全部丸ごと落ちてくるなんて思わなかった!死んだら口を割らせられないじゃない!」

「とにかく、殺人はこれで終わるんだろう?」とザラキは言った。

「こいつはシャンブルの廷臣と言っていた」とヴェイルは答えた。「これはまだ始まりにすぎない予感がするわ」捜査官ヴェイルは立ち止まり、見定めるようにカジートを眺めた。「それと、あなたはただの仕立屋じゃないって気がするんだけど」

「私が?この者は何を言いたいのか見当もつかないな、捜査官」

ヴェイルは顔をしかめた。「謎ね、ザラキ。知らないの?捜査官ヴェイルは謎を解くのよ。でもそれは後で解決するわ。今は二人とも、酒が必要ね。船底の掃除が必要だって船長に伝えましょうか?」

捜査官ヴェイル:シャンブルの廷臣(パート2)Investigator Vale: Retinue of Shambles, Part 2

捜査官ヴェイルは酒場のラウンジにある小さなテーブルに座り、装飾を施された輝くグラスからゴールデンワインを飲んだ。ラウンジの窓はシマーリーンの大通りに面しており、ヴェイルはハイエルフたちが行きかう姿を見ながら、シルバースワン号乗船中に起きた出来事に思いをめぐらせた。シャンブルの廷臣と名乗っていた信者たちのことが、ヴェイルは口に出した以上に気になっていた。この集団が複数のデイドラ信者から成っていて、何か不吉な計画を抱いているらしいとなればなおさらだ。その計画はサマーセットだけでなく、世界全体を脅かすものだとヴェイルは気づいていた。

これは明らかに、ヴェイルが普段相手にするような事件ではなかった。しかしこの近くには、他に解決しようと名乗り出る者は誰もいなかった。サマーセットへの旅は基本的に何事もなく、気楽なものになるだろうと思っていたのに。

ただの仕立屋だと主張するカジートが大股に歩いてきて、ヴェイルの向かい側にある空いた椅子に身を落ち着けた。「ザラキ抜きで飲み始めたんだな」と言いながら、彼は自分のグラスにワインを注いだ。「この者は追いつかなきゃな。ぐいっと!」

ヴェイルはザラキとグラスを合わせてから、泡立つワインをぐっと飲んだ。「白状するけど、この異国の地では調子が出ないのよ」と彼女は言った。「私が普段使っている情報屋や調査網は海の遥か向こうにある。シャンブルの廷臣とかいう連中について、詳しく知るための方法を考えなきゃ」

「心配はいらない、お嬢さん」とザラキは陽気に言った。「こういう時に私たちを助けてくれそうな奴を、この者は何人か知っている」

「私たち?」ヴェイルは訝しげに言った。「最初の質問に戻るけど、本当は何者なの、ザラキ・ダー?」

「この者は糾弾するような口調に傷ついたぞ、捜査官。でも名前の後に敬称をつけてくれたのは嬉しい。その響きはとてもいい。とにかく、信者たちをどうにかしたいんだろう?」

「もう、分かったわよ」と渋々ヴェイルは言った。「サマーセットでの、あなたの情報源のところに連れて行って。きっと服の卸業者やボタン商人が、この島のデイドラ信者の活動を全部教えてくれるんでしょうね」

「質問する相手と内容さえ心得ていれば、驚くほど多くの情報が得られるものだ。そばにいて、ザラキに手本を示させてくれ!」

* * *

4時間後、ザラキについてシマーリーン中の店先や酒場、裏路地を回った後では、ヴェイルもこのカジートが相手に話させる術を心得ていると認めないわけにはいかなかった。彼は魅力的で愛想がよかったが、相手に応じて、話を引き出すために必要な場合は恐ろしく威圧的になった。ヴェイルにはこの男を敵に回すつもりはなかったが、腕前には感心した。それでも、曖昧な噂話や突飛な主張を除けば、シャンブルの廷臣を探す手掛かりは得られなかった。その時、二人は巻物や写本、とてつもなく古い本でいっぱいの地味な店に足を踏み入れた。

「レンテルファン!」とザルは静かな紙の山に向かって呼びかけた。「旧友のザラキが訪ねてきたぞ!」

高く積み上がった山の1つから、ハイエルフが出てきた。長い黒髪の女で、貴族の装飾品を身につけていた。首の周りの鎖からメダルがぶら下がっており、蜘蛛が糸を紡ぐ姿が描かれていた。美しい意匠だが、なぜかヴェイルは居心地が悪くなった。

「レンテルファンはもうこの店の主じゃないわよ」とハイエルフは言った。「何かお手伝いできることがあるかしら。あるとは思えないわね。私は普段、あなた方のような人々とは取引をしないもの」

「あのねえ、何を偉そうに――」ヴェイルは我慢できず、女の前に歩み寄ろうとしたが、ザラキの力強い手に押し留められた。

「お連れの汚い猫は自分の立場をわきまえているようね、ブレトン」とハイエルフは嘲笑った。「あなたも見習えばいいのに」

「高貴なお方よ、これはとんだ失礼を」ザラキは喉を鳴らし、二人の女の間に割り込みつつ、ハイエルフに向かって低く頭を下げた。ザラキは仰々しく複雑な謝罪を続け、その間ヴェイルは後ろに下がり、この機会に周囲をよく観察した。

捜査官ヴェイルの視線は、羊皮紙と何十もの巻物の山の下に埋もれている小さな机の上に止まった。特に1枚の紙がヴェイルの注意を引いた。名前と場所のリストのようだが、その一部はヴェイルが今回の旅行の準備のため、サマーセットの地図を調べていた時に見た覚えがあった。紙にはヴェイルに分からないシンボルも含まれていた。ヴェイルはザラキがハイエルフの視線を塞いでいることを確かめつつ、羊皮紙を長いコートの内ポケットに滑り込ませた。

「もう飽きたわ、ザル」と言って、ヴェイルは黒い髪を振り上げ、唇を目いっぱいとがらせた。「夕食といいワインを約束するって言ったじゃない。ここはダガーフォールのレストランとは似ても似つかないわ」

二人は素早く店を出て、あのハイエルフが追って来ることを考え、背後を一瞥した。

「今、お前が戦いそうになった相手が誰だか分かるか?」ザラキが聞いた。

「メダルから判断するに、メファーラの上級司祭ね」とヴェイルは言った。「しかも驚くほど失礼なやつ。でも、この辺りで起きていることの手掛かりになるかもしれないものを見つけたわよ。あなたの知り合いに、デイドラ語を読める人がいれば」

「この者はたくさんの物事についての専門家をたくさん知っている」

ヴェイルはカジートに微笑みかけ、彼の前足を握った。「あなたのことが好きになってきたような気がするわ、ザラキ・ダー」敬称で呼ばれて、ザラキが喉を鳴らす音が聞こえた。

小さな蜘蛛が後をつけてきていることには、二人とも気づいていなかった。

捜査官ヴェイル:シャンブルの廷臣(パート3)Investigator Vale: Retinue of Shambles, Part 3

捜査官ヴェイルは落ち着きなく足で地面を叩きながら、古書店から取ってきた羊皮紙をハイエルフが翻訳し終えるまで待っていた。ザラキは彼女に目で合図したが、ヴェイルは無視してさらに激しく地面を叩いた。

デイドラ学のサピアルチ助手であるガラーディルは体を後ろに反らし、目をこすった。「私のところに持ってきてくれて正解でした、密偵どの――」

「いやいや」ガラーディルの呼びかけにヴェイルが眉をひそめたのに気づいて、ザラキは割り込んだ。「ここにいるのは皆友人だ。そんなにかしこまらなくていい。ザラキか、ザルと呼んでくれればいい。話を続けてくれ…」

「ここに出ている名前はハイエルフ社会の著名なメンバーです。各人がサマーセットの決まった場所に結びつきを持っている」とガラーディルは説明した。「デイドラの象徴については、彼らは3柱のデイドラ公を崇拝しており、強力な遺物に言及しています。この遺物はどのようにしてか、人々と場所に関連しているようです。実に興味深い!これをどこで見つけたと言いましたか?」

「そんなこと言わなかったわ」とヴェイルは言って羊皮紙を取りあげ、背を向けて立ち去ろうとした。

「そんなに急いでどこに行くんだ、お嬢さん?」とザラキは言って、ヴェイルを追おうとして立ち上がった。

「ただのカジートの仕立屋が私の仕事に興味を持つとは思えないわ」とヴェイルは何気なく言った。「でも、〈女王の瞳〉の密偵、ザラキ・ダーの助けなら借りてもいいわよ」

「何?一体誰が…?この者は別に――」ザラキは口ごもった。そして静かに言った。「いつ分かった?」

「知らないの、ザル?」とヴェイルは意地悪く言った。「女王の耳ザラキ・ダーの物語は、文明の劣ったハイロックの海辺にさえ届いているのよ。私はあなたの黄褐色の、毛深くて丸い…頭に目をやった瞬間から分かってたわ。まあ、それよりは後だったかもしれないけど。さあ、シャンブルの廷臣を止めに行くわよ」

「おかげさまで、ザルの毛深くて丸い…頭は皆に大人気だよ」とザラキはブツブツ言いながら、捜査官ヴェイルに追いつこうとして急いだ。

並んで歩く二人は、小さな蜘蛛がヴェイルの長いコートの後ろにくっついている姿を見ていなかった。

* * *
日没が迫る中、ヴェイルとザラキ・ダーは注意しながらシマーリーンの外にあるサンゴの森へと進んだ。石のように硬くなったサンゴは、島の東海岸に沿って不思議な迷宮のような地形を生み出していた。羊皮紙に記されていた手掛かりが二人をここに導いたのである。この一帯に数歩入りこんだ途端、二人は不吉な歌声が突き出たサンゴに反響して、自分たちの周辺に迫ってくる音を聞いた。未知の言葉は刃のように鋭く、ヴェイルの背筋を寒くし、ザラキは毛を逆立てた。

二人はサンゴの迷路の奥へと進み、周囲に目を光らせた。サンゴの柱の後ろでかがり火の明かりが明滅したのを見て、ヴェイルはその方向へと向かった。ザラキは無言で彼女の肩に前足を置き、警戒を呼び掛けた。ヴェイルはうなずいて、柱の周囲を覗き込んだ。

サンゴの森の中心部にある開けた場所の中には、以前古書店で会った、メファーラのメダルを身につけたハイエルフが、三面の祠の前に立っていた。祠は抽象化されてはいるものの不愉快なほど不格好で、3柱のデイドラ公のシンボルがあしらわれていた。女は3つの燭台に燃えている炎に見入りながら、同じ言葉を何度も繰り返し詠唱していた。彼女の背後では空気が揺らめき、奇妙な、自然のものではない光がきらめいていた。何かが起きようとしていた!ヴェイルが動くよりも先に、小さな蜘蛛が彼女の背中から小走りで降り、信者に走り寄った。女の肩にまで駆け上がった時、蜘蛛は猫ほどの大きさになっていた。

「ちょうどいい時に来たわね」とハイエルフは軽蔑をむき出しにして言った。「下等な種族の中ではあなたたちが最初よ、生まれ変わったアルトマーの威厳と力を味わうのはね!」

「ねえ、ザラキ・ダー」ヴェイルは言った。「この尖り耳の、大げさでデイドラ好きな馬鹿は何のことを言ってるんだと思う?」

「見当もつかないな、お嬢さん」ザルが返答した。「だが、この者はあの祠の見た目が気に入らない。あまり合法でもなさそうだ」

「そう、それだったら」とヴェイルは言って2歩前進し、間に合わせの祠に重い革のブーツで蹴りを入れた。祠はバラバラになり、小さな燭台3本は飛び散って、3つの小さな炎のうち2つが消えた。

信者の背後の光が消え、空気が揺らめくのを止めた。女は激昂して叫んだ。女はローブから長く湾曲した短剣を引き抜き、肩に乗った蜘蛛は立ち上がって口を開いた。

「デイドラ信者の遊びには付き合っていられない」とザラキ・ダーは言い、自分の剣を抜いてヴェイルの前に進み出た。「女王の命により、この者はお前の降伏を受け入れよう!」

それを合図に、十数名のドミニオン兵士が開けた場所に押し寄せ、信者を包囲した。各人が武器を構えていた。信者と蜘蛛は周囲を見渡してから、女は短剣を落とし、蜘蛛は元の姿勢に戻った。

「このままでは終わらないわよ」とハイエルフの信者は捨て台詞を言った。

「そうかしら、終わりだと思うけど」とヴェイルは陽気に言い返した。「少なくともあなたに関してはね」

* * *
ヴェイルは枕にもたれかかり、宿屋の上階の暗い部屋を見上げた。「ああいう連中がまだいると思う、ザル?」

ザラキ・ダーは片手で自分の頭を抑えつつ、もう片方の手でヴェイルのあらわになった腿を撫でた。「いつだっているさ、お嬢さん。だから女王はこの者を抱えているんだ」

「まあそれなら、とりあえず気にしないでおくわ。私はもう一度あなたの黄褐色で毛深い――」

ザルはヴェイルにキスして言葉を遮った。彼女もお返しをした。

懲戒処分Disciplinary Action

クオリル

厄介者の番人助手のことだが、協力できる機会を狙ってレンジャーをつけ回している。しかもまたレンジャーへの異動を志願してきた。エリーゼに今の任務に集中させろ。そうすればそんなことをしている暇はなくなるはずだ。お前の部下の管理はお前の仕事だ。だがそれが私たちの仕事に影響を及ぼすなら話は別だ。レンジャーは隠密行動を得意としているとエリーゼに伝えてくれ、訓練はそこでもできるはずだ。

管理者ヴァインロア

倒れし者の言葉Words of the Fallen

デイドラ公を決して信じるな。この件から学んだことはそれだけだ。私は昔、自分には目的があると思っていた、大がかりな計画の一部なのだと。私は目的を果たした。少なくともそう思っている。だが結果的に、それは想像したようなものではなかった。メリディアは私を器だと言った。私の運命は、彼女が作った瞬間に決まっていたのかもしれない。

私は彩られた部屋に戻ってきた。私はメリディアのためではなく友人のため、剣の修復に力を注いだ。それが私の目的だと思ったからだ。確かに私は戻ってきた。だが今回は前と違う。私の光は消えかかっているのだ。暗闇が近付いている。もう時間がない。光が消えてしまえば、全て終わりだ。

メリディアについて教えておきたいことがある。彼女は詐欺師だ。彼女に尽くすことで、私は自由を与えられるはずだった。彼女は私に、自由とは虚無を別の言葉で表現したものだと語った。彼女を信じるな。デイドラ公を信じるな。絶対に。

だが私は安寧を手に入れた。メリディアは私に世界と守るべきものを見る最後のチャンスを与えてくれた。かつて愛した者たちを救うため。少なくとも、それには感謝している。

できるなら全員に別れの挨拶をしたかった。スコルド。ガブリエル。寂しくなる。だが、とにかくyour nameだ。彼らが私にとってどれほど重要な存在だったのか、理解されることはあるだろうか。もしかしたらまた会えるかもしれない。他の場所で、他の時間に。だがその時の私は、こんなことを書かないだろう。そんな私もいつかいなくなる。仕方ない。

できることなら皆と一緒にもっと過ごしたかった。もっと冒険に行きたかった。いつも話していた飲み物を注文したかった。

友人たちには安寧と幸福と愛に満ちた人生を送って欲しい。私は手に入れられなかったが、彼らには権利がある。この本を見た人に言っておくが、私はここで挙げた人々のことを決して忘れない。彼らに会うことを願っているが、会ったら伝えて欲しい。

愛する者を守れ。手放すな。その瞬間を大切にしろ。笑顔にし、一緒に喜べ。一緒に笑いながら、とても貴重な瞬間だということを決して忘れるな。

それから、私のことを忘れるなと伝えてくれ。まあ、私は伝説の存在だからな。

親切で、男前で、謙虚な騎士

ダリアン・ゴーティエ

謎の後援者:メファーラThe Inexplicable Patron: Mephala

ディヴァイス・ファー 著

トリビュナル聖堂の自称「司祭兼学者」と話すと、私はよくあることだがいつも気恥ずかしくなってしまう。だが我々の祖先たちを「受け入れた」デイドラの性質について大きな誤解があったとしても、当たり前だが驚くようなことではない。現代の司祭はつまらない暗証と、巡礼から金を搾り取る技術のみを訓練しているようで、本来の役割から悲しくなるほど大きく逸脱してしまっている。これを冒涜行為だと考える者もいるだろう。その場合は私との話し合いに招待している。お望みなら魔法による対決でも構わない。社会についてそれほど興味はないが、無知を是認するこの流れを誰かが止めなければならない。

ダンマー全員が私と同じような知的領域に到達できるとは思わない。一般的なエルフは、日々を生き抜くために日常生活を中心に考えている。だとしても、いかなる場合でも怠惰は嫌悪すべきことであり、下層階級の者でも独りよがりな情報の選択は許されない。善きデイドラのわかりやすい例を挙げさせてもらおう。まずは最も誤解されやすいメファーラについてだ。

「善き」という単語はいかなるデイドラに対しても不適切な表現方法だ。だが残念なことに当たり前のように使用されている。各々の領域の絶対的な表現者であるデイドラ公たちは、我々の道徳で分類できるような行動を取らない。デイドラとはそういうものだ。メファーラ、ボエシア、アズラは、ダンマーに多くの利益をもたらしてくれた。そのことを考えると確かに善き存在だ。だがその動機と目的、それがもたらす影響については我々の知るところでない。

メファーラが「網の紡ぎ手」と呼ばれているのには理由がある、だが現代のダンマーはこの異名を知らないらしく、共感を示す代わりに、メファーラが「守護している」正反対の存在である、暴力と知恵と詩の伝道者ヴィベクに傾倒している。この風潮が原因で、メファーラの望みである本来の意味が覆い隠されてしまっているのだ。

メファーラは我々の先人に、全面戦争時に敵だけでなく、味方とも戦うために暗殺術を教えた。子孫たちがタムリエルに移住し、ノルドやダンマーと難しい交渉をする時に「善く」役立ったことは間違いない。我々は綿密な計画の立て方、嘘の付き方、敵をおびき出して罠に掛ける方法、困難の乗り切り方や結果の予測方法を学んできた。しかし、このデイドラ公がなぜ我々を特別視するのか、自問する者は少ない。騙されやすい者は我々が選民だという幻想を抱き、冷笑的な者は我々がデイドラのおもちゃに過ぎないと考える。だが、どちらも恐ろしいほど馬鹿げた仮説でしかない。

デイドラには創造力がないことを忘れてはならない。彼らができるのは模倣、操作て誇張だけである。中には定命の者をただの道具としか考えていない者もいるが、メファーラは当てはまらないだろう。彼女の行動には必ず意味がある。アービス全体を、因果を結び付けるシステムと考えており、彼女自身も新たに糸を紡ぎ、結果に影響を及ぼしている。

ではその目的は?それは私のように、自分で見つけなければならない。私が秘密のデイドラ公の秘密を明かすほど、愚かだと思うだろうか?

番人の誓いThe Keeper’s Oath

番人の目に祝福あれ、
深紅と黄金で作られ
悔悟の眼差しは呪われた墓に向けられ
最も昏き日々より
骨と死の幕が下で動く時
灯る火を写すため
彼女が負う闇を強いて
魂をきつく縛るため

筆頭司法高官キャラウェンへTo Chief Justiciar Carawen

筆頭司法高官キャラウェン

任務は失敗した。司法高官アヴァナイレが裏切り、配下の兵士たちを何人も殺した。彼女はトー・ヘイム・カードに逃げ込んだ。残った戦力で彼女を追跡中だ。星々の導きがあれば、真珠を取り戻せるだろう。

この伝言があなたに届くことを願って、兵士を派遣する。増援を送ってもらいたい。この遺跡には、アヴァナイレ以外の相手も待ち伏せている。

テロムレ隊長

貧しき姫(第1幕)The Peasant Princess, A Play in One Act

語り手:かつてアリノールの中心にヴィレニアという若いエルフが住んでいた。かなりの美人であり、大勢から讃えられていたが、家は常に貧しかった。そのため召使として働いていた

ヴィレニア:ああ、この境遇から逃れられたらいいのに

ナレーター:ヴィレニアは熱心に掃除をして、女主人のテリルディルからよく褒められたが、なおも驚きに満ちた豪奢な生活を夢見ていた。王宮での来たる舞踏会を耳にすると、ぜひ参加したいと思った

ヴィレニア:王宮の舞踏会!王子様もきっといらっしゃるわ!でもこのような服では行けない

ナレーター:ヴィレニアは決意した。節約し、嘆願し、懇願し、ようやく美しいドレスを購入できた。裕福な女主人を説得して付き添いにもなってもらった

テリルディル:あなたはこれまでずっと働き者だった。頼みを断れる訳がないでしょう?

ナレーター:それでも、賢い女主人のテリルディルは召使に警告を与えた

テリルディル:舞踏会に行ってもいいけれど、あなたの居場所は忘れないでね、ヴィレニア。どれほど美人で、綺麗に着飾ったとしても、召使であることに変わりはないわ

ナレーター:これを聞いたヴィレニアはとても悲しかった。裕福な貴族の目にとまりたかったのだ。しかし、よき召使として彼女は押し黙っていた。まさに次の夜、女主人と召使は舞踏会に参加した

ヴィレニア:何て素晴らしい衣装!何て美味しい食事!毎日がこのような優雅な雰囲気なら、私はサマーセット一幸せなエルフになるでしょう

ナレーター:余りにも美しいヴィレニアは、若い王子の目にとまった。あらゆる礼儀作法を忘れてやってきた王子に踊りを誘われた。王子と召使の少女がその夜の大半を踊ったのであった

王子:あなたほど美しいエルフは見たことがない。ご両親はどなたかな?

ヴィレニア:王子様、正直に言わなくてはなりません。両親は貧しい農民であり、私は裕福な女主人の召使の女に過ぎません

ナレーター:魅力に溢れるエルフの美しい目を見つめたまま、よき王子は事実に驚愕した

王子:私は騙されたのか!求愛していつかは結婚するような大貴族のエルフと思ったが。ただの召使の少女とは

ナレーター:ヴィレニアはその言葉に傷ついたが、本当のことだと分かっていた。王子と結婚できるのは貴族のエルフに限られる。ヴィレニアは、自らの城で相応しい夫を見つけると決意した。当然のことながら、王子は相応しい評判の上級公女と結婚し、召使の少女とは二度と話さなかった。よって私たちはみな忘れてはならない。外見や所持品にかかわらず、我々は常に家に縛られるのだ

粉砕の技、第一巻ART OF SMASHING VOL. 1

ハードカバー版

言葉の細工師ウルベク 著

序文:

ウルベクはこの本が、趣味と実益のために粉砕する夢を追求する、喜びと自信を読者に与えることを願う。粉砕を始めたばかりの時、ウルベクは小さく貧弱な子供で、クラン・タムノッシュのために岩を削っていた。ウルベクも多くの粉砕を失敗してきた。特に紙だ。今ウルベクは言葉を粉砕する事業で大成功した起業家だ。粉砕の難しさに粉砕されてはならない。粉砕が辛くなったら、さらに激しく粉砕するべきだ。

献辞:

粉砕の旅の序盤でウルベクを支えた最初の顧客、ウルベクの親友ファローク、床で寝かせてくれた小さな親方のラウモントに。

第一章:粉砕する対象の発見

粉砕の道を進むことを選んだ場合、どこから始めればいいか不安だろうとウルベクは推測する。全てのものが粉砕に適しているわけではない。木を粉砕するのは楽しいが、バラバラになって壊れるだけだ。金属にも粉砕に向いたものはある。だが正しい粉砕の仕方を知らなければ、脆くて弱いものしかできない金属もある。粉砕できるもので溢れている世界の中で、初心者にいいものは何だろう?答えは簡単だ。岩を粉砕しろ。

岩を粉砕するのは無意味だと考える読者がいるかもしれない。その読者は馬鹿だ。ウルベクは岩の粉砕から始めた。岩を粉砕すると粉砕のための筋肉が付き、もっと大きなものを粉砕する準備ができた時、粉砕して鉱石を集められる。ウルベクは小さな岩から始めて、より大きな岩や石の壁に進むことを勧める。そうすれば痛くない。オークなら話は別だが。

休まず常に粉砕できるようになったら、有用な粉砕が行える。例えばハンマーを作るような。石を粉砕し続け、石像でも作りたいと考える者もいるかもしれない。ウルベクは読者の情熱に水を差したくはないが、石で美しいものを作るには優しく粉砕する技術が必要だ。ウルベクは上級の粉砕技を後の巻で披露する。次の章では、鉱石を粉砕する方法を扱う。ウルベクは次の授業のため、鍛冶場を使えるようにしておくことを読者に勧める。

閉鎖の終わりAn End to Isolation

アリノール玉座の君主であり、アルドメリ・ドミニオンのイーグル・プライマーチたるアイレン・アラナ・アルドメリ女王による、女王の儀式学的布告により、長きに渡ったサマーセット諸島の閉鎖は終わりを告げる。勇敢で無私のアルトマーは、甘やかされ怯えた子供のように世界から隠れることはない。もはや味方や仲間から隔絶されることはない。その代わりに先人の故郷の象徴的な門を開き、仲間として迎える。そして友情を抱き、対話、交易、外交に関わりたいと真に望む者は、誰であってもサマーセットを訪れられるようにする。

この命令に対応するため、私たちは先入観や先天的な偏見を捨て去らなくてはならない。心を開き、豊かな土地を世界と共有せよ。サマーセットの誇りあるアルトマーには、古い不当な行為を許し、過去の反目を忘れてもらいたい。立場や文化の差を受け入れ、それによって心に友情の花を咲かせるべきだ。これは私の確固たる理想であり、女王陛下の命令でもある。

上級公と上級公女、キャノンリーブ、神聖執行局の調査官、サマーセットの市民に対し、過ちを犯さぬよう告げる。女王陛下の意志と、この命令の意図は完全に明らかである。サマーセット諸島が、下等種族の立ち入りを禁じることはない。名誉、高潔、事業の基準に達する者は、旅人、商人、移民を問わず皆を歓迎する。私たちは友情でアルドメリ・ドミニオンを形成し、友情でサマーセットをさらに完璧な楽園とする。これは私の至高の理想であり、女王陛下の命令でもある。

返事をください。愛しきおばダイヤンニよりPlease Respond, Your Beloved Aunt Daiyanni

愛するルルタリへ

あなたの最後の書簡からこれで3通目の手紙になるわ。あなたの健康が心配なの。あなたの父親がしていることは不気味だし、正直に言って危険よ。その感染した旅人たちを自分の家に連れてくるだけでも愚かなことだけど、病人たちと一緒に家の地下聖堂にこもるなんて正気とは思えない。そんなおぞましいことをして、神聖執行局がどう思うの?あなたの父が耳を貸さないのならコルグラドを離れ、彼が正気に戻るまでここに留まりなさい。父を説得できるなら、あなたの兄弟も一緒にね。少なくとも、あなたが無事でいるという知らせをちょうだい。

あなたのおば、

上級公女ダイヤンニ

本物の捜査官ヴェイル?The Real Investigator Vale?

人気のあるミステリー小説「捜査官ヴェイル」の、秘密主義の作家を追う。
流浪の年代記作家アダンドラ 著

捜査官ヴェイルの事件を詳しく描いた人気のミステリー小説は、何百万冊も売れている。有名なブレトンの探偵の冒険はダガーフォールだけでなく、ウィンドヘルムやスカイウォッチでも引っ張りだこである。だが他の作家とは違って、捜査官ヴェイルの作者は自作の素晴らしいヒロインと同じ舞台に立とうとはしない。実際、彼女が誰であるのかは今まで不明だった。

この逃亡中の年代記編者は、ダガーフォール・カバナントの諜報部門であるダガーの環の元メンバーの話を聞いてから、この謎の調査を始めた。この元メンバーは、話によれば手練れの密偵というだけでなく、凄腕の探偵、熟練の戦士、勇敢な冒険者でもあった。この傑出した女性を調査するほど、私の頭の中には小説のヴェイルが浮かんでならなかった。この女性に会わねばならず、私はアラベル・ダヴォーの追跡を開始した。

アラベル・ダヴォーは第2紀527年にウェイレストで生まれた。彼女は高貴な家で育ち、ハイロックで最高の学校に通った。やんちゃな若者、反抗的な十代だった彼女は、15歳で家を出て傭兵部隊に加わり、リーチから押し寄せた侵略者からハイロックを守る手助けをした。獅子の守護団に落ち着くまで、彼女は大陸中で数多くの戦闘に参加した。第2紀560年までには隊長の地位を得て、獅子の守護団の精鋭部隊を指揮した。そこでウェイレストの王にして未来のダガーフォール・カバナントの上級王、エメリックの関心を引いた。

今では、アラベルの業績はヴェイルの物語の最も奇抜な部分で読める。彼女は山賊王を片づけ、トロールを襲撃し、上品かつ堂々とした態度で敵勢力に立ち向かったと報告されている。噂によれば彼女には、1ダースの街、都市、寄港先に、あらゆる種族や性別の恋人がそれぞれいたという。彼女の人生は冒険そのもので、戦闘で敵に向かうように冒険へと立ち向かっていった。スキャンダラスな話でさえ、エメリック上級王を彼女とロマンティックな形で結びつけた。彼の護衛として仕えていた数年間は特に。真実はどうあれ、アラベルがエメリックの目に留まり、ダガーの環が創設された時、最初のメンバーとなったのは明らかである。

50歳になって、アラベルは人生の新しい章を始めることにした。彼女はダガーの環をきっぱりと引退し、世界旅行を再開し、仕事の一環としてしか見てこなかった人々や場所を、楽しみのために訪れるようになった。今の彼女は、陰謀、密偵工作、戦争の噂を扱うには「年を取り過ぎた」と主張し、有閑婦人となって特別室を確保し、異国の地を点々としながら、長く豪勢な日々を過ごしている。私はオークの都市オルシニウムで、彼女に追いつくことができた。

年代記編者:アラベル・ダヴォー、素晴らしい物語を読んでから、あなたにお会いできてうれしく思います。リバー・トロール4体を片手で倒して、カーボルの洞穴の人々への攻撃を食い止めたのは本当ですか?

アラベル:実際には沼トロール6体だったんですが、報告書で自慢したように思われたくなかったんです。

年代記編者:並外れた人生を送ってきましたよね。傭兵、冒険者、兵士、密偵。今は新しい情熱をもっておいでですね。読者に説明していただけますか?

アラベル:今夢中なのは、旅行と観光ですが、読者がツアーガイドとしての冒険について聞きたいのなら…

年代記編者:恥ずかしそうなふりはやめてください。私が言っている情熱が何についてのものか、ちゃんとわかっておいでのはずです。捜査官ヴェイルから始めましょう。

アラベル:あら、それで会いに来てくれたんですね。大人になってから、犯罪とドラマの大胆な物語が好きになったんですよ。はっきり言って、捜査官の下品な様子が大好きですね。お分かりでしょうが、昔の血が騒ぐんですよ!

年代記編者:いやいや、アラベルさん。認めましょうよ!あなたは捜査官ヴェイルの作者でしょ。

アラベル:作者?私が?この細い指が、何時間も羽根ペンを握ってがちがちにこわばっているように見えますか?私の手にインクの染みがありますか?

年代記編者:でも、あなたがご自身の業績をモデルにしてヴェイルを作り上げたのは本当じゃないんですか?薄いベールを羽織って、エメリック上級王の密偵として活躍していた時代の自伝だという説は?

アラベル:すごい想像力をお持ちですね!あなたこそ、ヴェイルのすばらしい冒険の作者じゃないんですか?

年代記編者:私?ばかばかしい!私はニュースを伝えますが、複雑なフィクションを創作することはしませんよ!

アラベル:そういうことにしておきましょうか

年代記編者:でも、あなたが謎解きにまだ手を出しているというのは本当じゃないんですか?どんな犯罪や陰謀が現在地元の権力者を困らせているのかに基づいて、訪問先を選んでいるというのは?

アラベル:私が?気づきませんでした。

年代記編者:なんと!あなたは「捜査官ヴェイルとハイロックの革命」の中で、エメリック上級王とともに「ダガーを鞘におさめる」役割を果たしたことを、事実上認めましたね!

アラベル:そんなことはしてません!それに、エメリックのダガーだったら、もっと正確に、剣として説明されているはずです…

年代記編者:ほら!また認めましたね!

アラベル:ご自分がお感じになったことを、なんでも書くのがよろしいでしょう。私はオルシニウムの衛兵のゴーザ隊長とディナーをご一緒することになっています。好色なオークと会うのは久しぶりなんですよ。彼女は博物館の盗賊を捕らえるのに苦労しているという話です。

年代記編者:誠実な読者のみなさん。レディ・アラベルは捜査官ヴェイルの作者であることを告白しました!有名な探偵にふさわしい事件が、これで解決です!

味方の調査パート1Investigating Our Allies, Part 1

サマーセットの筆頭年代記編者、フェリンウォイン 著

真実を求める皆の叫び、嘆願、要求を聞きました。いつものようにフェリンウォインは伝えるためにいます。最新かつ、最も関連性の高い知らせだけをお伝えしましょう。この新しい布告における自分の役割はわかっています。もちろんドミニオンの同盟がサマーセットの海岸に上陸できるようになった、新しい法について話すつもりです。多くはこの出来事の影響について、もっともな理由から心配しています。街は安全?故郷は安心?

読者の皆さん、それを突き止めるのが私の使命です。

私はアリノールから始めました。宮廷があり、最も王にふさわしき女王代理、アルウィナルウェ様の住まわれる土地。この最も困難な時代に、ご長命と偉大なる統治を願っています。通りを歩くときはできるだけ平民に見える服装に変装しました。誰も私に気づかなかったが、そう望んでいました。平民の人ごみを抜けてゆっくり歩き、新しい、いわゆる裏通りに入ったのです。

最初に出会ったのは商店で買物をしている不愛想なカジートでした。私は脇から観察した。その特徴であるベタベタした手先が盗みに使われないかどうかを油断なく見ました。盗難の目撃は叶いませんでしたが、そこでかなり驚くべき交易を目にしました。このカジートは店員に近づくと自分の持ち物をカウンターに置き、こう尋ねたのです。「いくらだ?」

親愛なる読者の方々、間違っていません!挨拶も、お辞儀も、愛想もないのです!私たちの同盟には基本的な共通の礼儀も望みすぎなようです。ああ、天のアーリエルよ。私は動揺するばかりでした。気の毒な店員がずっとこの場にふさわしい態度で答えようと心を尽くしていましたが、このカジートは礼儀を全く知らないままでした。身を縮こまらせて少し目撃した後、私は不作法の重みに耐えられず店を後にしました。目撃したことのため、心臓がドキドキしていましたが。

次に目撃したのはアリノールに多くある贅沢な噴水での出来事です。近くのベンチに座って間もなく、カジートの子供の集団が噴水に駆け寄ってきました。少なくとも10名はいたでしょう!何の抑制も効かず、全員が同時に澄んだ水に飛び込み、静かな噴水は最も野蛮な形で水をはね散らかしました。後ろから母親がやってきて、頭のおかしいニワトリのように舌を鳴らしました。子供たちは1人ずつゆっくりと噴水から上がってきましたが、その間はずっと興奮して話していました。

もちろんカジートが一腹の子を産むことは聞いていましたが、同年の子供があんなにたくさんいるとは考えていませんでした!毛に覆われた同盟者の人口は、10年毎に10倍上昇するのが見えるようです。そんな…傾向があるなら。母親の子供たちの監督ぶりは言うまでもなく、どうやら子供たちにわずかな礼儀作法を教える気もないようでした。

私が驚きで口をぽかんと開けていると、最も困惑させる交流が始まりました。たぶん私が仲間をあからさまに観察していたせいでしょうが、近くに立っていた若いカジートが話しかけてきたのです。ここに馬鹿げた会話を書いて害を及ぼすつもりはありませんが、それは子供の作り方に関連したもので、彼がそうした活動にとても「奉仕」したいという話でした。淫らな話に直面して、私は顔を真っ赤にしてすぐに立ち去りました。

もちろん読者の方々に、法を守るサマーセットの市民である私が見ることのできない他の評判を思い出させる必要はありません。確かに、身の安全を危険にさらして街のもっと不穏当な一帯に行けば、スクゥーマの増加や闇市の取引を目にしたでしょう。そう、私はこうした主張につながる噂を持っているだけですが、カジートは不法行為に加担する傾向があることで知られています。我々の愛する故郷に彼らが居住することで、犯罪の統計が途切れず上昇することは間違いありません。

我々の指導者がすぐに自分たちの過ちに気づくことを祈りましょう。おそらく戦争のために同盟は必要でしょうが、私たちは愛する島のこの岸で戦っています!私たちの社会を内側から腐らせる恐れがある、粗野で下劣で、往々にして悪党のカジートを相手に。たった1日の観察で、すべての市民が心配するのは当然だと言えるのです!

私たち全員が力を合わせて立ち上がり、平和で隔離された土地の回復を請願しなければなりません。地域の長に訴え、仲間の市民に伝え、既に故郷へ侵入した者に目を光らせましょう。かつて安全だった通りを進む時は、財布と子供をしっかりと抱えるのです。擁護者に動揺させられてはいけません。読者の皆さん。私の信頼された手で書かれた、真実を知ってください!

次号も調査を続けます。今度は我々の下位種族、ウッドエルフの習慣と文化を掘り下げます。購入を忘れずに。そのおかげで、私は大切な仕事を続けられます!

味方の調査パート2Investigating Our Allies, Part 2

サマーセットの筆頭年代記編者、フェリンウォイン 著

我らが崇敬する祖先が没して以来、我々はすべてのエルフが平等に作られていないと知っています。私たちハイエルフは先達の輝かしい歩みに続くことを選びました。私たちは素晴らしく、力強く、正当な存在です。他の者、例えばダークエルフは私たちの習わしを裏切り、罰を受けない代わりに呪われました。偽の神に祈り、灰の中で暮らしています。

それから現在、同盟を組むウッドエルフがいます。ウッドエルフに関して何が言えるでしょう?同じ神を信仰してはいますが、明らかなイフレびいきを考慮すると、信仰心は薄いものです。そして彼らの耳は尖っています。比較はここでやめなければなりません。それ以外のすべては、文化から身長に至るまで私たちの完璧な水準から程遠いのです。

しかし、原始的な親族に恐れる点があるのか?それを見つけるのが今回の使命です。

有名人も私がこの特別な使命を完遂することに興味津々でした。私が調査の決意を固めた頃、独占的な仕事に招待されたのだ。詳細はもちろん明かせませんが(王族のかなり高い地位にある方の屋敷で開催されたことだけは言っておきましょう)、それは私が探し求めていた機会を与えてくれました。仕事を受ける前に熟読した招待状のリストの中に、数名のウッドエルフがいたからです。

これで私たちの同盟国が、サマーセットの社交界で最も高名な人々との交際を企んでいるとわかりました。彼らが我々の文化にどれほど馴染んでいるかを観察する、またとない機会です。手帳を片手に豪華な衣装を身に着けると、私ははやる思いで招待者の屋敷へ向かいました。

食卓へ向かいながら、私は興奮を隠しきれませんでした。そこにクランで固まっていたのは、私の調査の対象であるウッドエルフだったからです。知り合いから、彼らがグリーンパクトの信奉者だと素早く教えてもらいました。実際に目の当たりにできるとは、何という幸運な偶然でしょうか。多くの者がサマーセットの汚れなき原則に激しく対立すると恐れているのは、まさにこの野蛮な信仰なのです。

彼らの食事が出された時、最初の奇妙な出来事が起こりました。ご存知のように、グリーンパクトは植物系の素材の使用や消費を許しません。そのため、親切な主催者はウッドエルフに適したサマーセットの最上級の肉のみを提供した。彼らは食事を物凄い勢いとしか表現しようのない様子で食べていました。銀食器の適切な使用など全く気にかけていませんでした。理由はわかりませんが、中には皿の上の肉汁をデザートスプーンですくった者までいました!

この小さな部族が食事を貪るのを見て、ウッドエルフの軍団が我々の動物を食らいつくす想像ができました。あれが唯一の食物なら、我らの小さな親族が我慢すると信じられるでしょうか?私たちの静かな島を美しく飾る牛、鶏、豚、猫でさえいなくなる日がくるかもしれません。そんな未来を本当に許せるでしょうか?

それでも私はこの招待客と交流しようと決めました。夕食後、私は1人に近づくと、いつものように非の打ち所がない礼儀作法で、島に来た理由を尋ねました。

「私あ王の代理でいています」彼はそう言いましたが、強い訛りで子音が聞き取りにくかった。「アイエルフに、私たちも同様に開化されているとお見せしたくて」

ぼそぼそと単語を並べたので、話の結びがなかなかわかりませんでした。それでも私は礼儀正しくウッドエルフがサマーセットの栄光に何をもたらせると思うか尋ねました。この島を故郷と呼ぶハイエルフの向上にどんな貢献ができるのだろうかと。

残念ながらその簡単な質問の後、彼はかなり粗野な態度をとりました。言葉遣いは無教養のせいと推測するにしても、言葉の選択の下品さはあからさまな敵意を表していました。そのような質問をする私の純粋な意図に図々しくも疑問を投げかけてきた上に、私についての描写をつけ加えてきたのです!

私はただ驚愕してしまいました。彼の仲間が慌てて私に謝罪すると彼を連れ去りました。それでも傷ついたことには変わらない。私たちが国境の内に迎え入れることを選んだ者たちの、礼儀作法と礼節については十分に目撃できました。

読者諸君に思い出してもらいたいのは、私たちの日常生活に危険をもたらしかねない文化の違いです。共食い、目に余る盗み、歩き回る木!このウッドエルフが小さな骨の小屋の周囲を走りまわる代わりに、私たちと一緒にきちんと生活する姿を信じられるでしょうか。これまで見てきたことから、私にはそんなことが可能だとは思えません。

読者諸君、私は抵抗することを強く勧めます。流れに対抗する声を上げましょう!これ以上一歩も許してはいけません。押し戻すのです。私たちはサマーセットに過去の栄光、ハイエルフの故郷、ハイエルフだけの故郷を取り戻すのです。

あなたも、その大義に賛同しませんか?

夢見の館:オーディションHouse of Reveries: The Audition

候補者のための入門書
夢見の館の公文書保管人クィル 著

では、夢見の館に加わりたいのだな?残念ながら、入会するには決意を単に表明するとか、いくらか会費を払うような簡単なこと以上のものが必要だ。教化には長い手順がある。しかし、君はもうセリフを覚えて自分のパートを歌ったな?剣を呑む勇ましい才能であれ、複雑な踊りであれ、技術に磨きをかけたはずだ。それでは、オーディションの話をしよう。

数週間程度の公開オーディションは、季節ごとに開かれる。勇気を出してステージに立ち、その才能で驚かせてくれればいい!見事なパフォーマンスが終われば、一座の演者が君に話しかけ、候補者に相応しいかどうかを伝える。候補者になれなくても、次の季節に頑張れ!

さて、候補者になったことを過大評価してはならない。候補者になれば技術に磨きをかけ、一流の者から学ぶために仮面の館への立ち入りが許される。君だけの仮面と名前を授けもする。ただ、夢見の館に加わったことにはならない。これは初めの一歩にすぎない。候補者は、最終オーディションを通過しなくてはならない。

これは大変な旅ではあるだろうが、孤独な旅ではない。師が候補者全員を導く。一座の古参の助けを受けて、とても重要な最終オーディションに準備をするのだ。この師は知識の泉の役を担い、君はその水を飲む。彼らの言葉を心に留め、模範とするがいい。一座に入るには師が鍵だ。手順を学び、言葉を覚えるだけでは不十分である。真の芸術家の情熱を、心に燃やす必要がある。師は火を灯せるが、それを業火に煽れるかどうかは君次第だ。

この期間、他の候補者は永遠の仲間となる。積極的に手助けをするのだ!間もなく共に演者となるのは、彼らかもしれないのだから。恐怖や嫉妬で敵意に沈んではならない。争う枠は1つではない。全ての候補者が合格した季節もあれば、全員が落選した時もある。最終オーディションの期間は、己が才能のみを頼らなくてはならない。他人のミスに頼ることなく、自分のミスに気をつけよう。

仲間の候補者と仲良くなることは推奨するが、君自身の姿が以前とは異なることを忘れないように。常に仮面をつけ、過去の名を語ってはならない。これは訓練の始まりだ。一座の現役の一員のように行動しなくてはならない。秘密を抱えた興味深い生活を始めるのだ。過去の名前を知るのは自分と、師と、団長のみだ。その後は忘れ去られるべきなのだ。

最終オーディションは思ったよりも早くやってくる。陽気なサーカスの座長であり、壮大な交響曲の指揮者であり、夢見の戯曲の演出家である団長の前に立つのだ。君の命運は団長が決める。

最後のパフォーマンスにはこれまで示した技の表現を至高にまで高めた、誉れ高く夢のような水準が求められる。全力を注げ。君が一座に入る準備ができているかどうかは、その時に分かる。名前、家族、過去の生を捨て去り、夢見の館の一員として加われるかどうかは、その時にようやくわかる。

夢見の館:一座House of Reveries: The Troupe

候補者のための入門書
夢見の館の公文書保管人クィル 著

夢見、興味、戯曲、喜びの生活を求めて加わったのだな!君のことは心から誇りに思っている。まず、私が最初に君を迎えよう。

ここから君は変化を始める。新しい名前を選び、新しい仮面をつけたが、これは始まりに過ぎない。声を変えることを学び、新しい型を学び、髪を明るい色に染めろ。千の自慢をして、真実の欠片も伝えないことを学べ。君は繰り返し試されるだろう。興味を惹くことは、ロマンスの最大のスパイスだから。強くあれ、無口であれ。他ならぬ一座での立場が、君の思慮にかかっている。

学ぶことはまだある。リュートの柔らかい弾き方は習得したのだな?剣を拾い芝居のフェンシングを学べ!君の周りには、サマーセット一の陽気な演者がいる。くだらないプライドを守ろうとして、この機会を無駄にしてはならない。無様に失敗し、震える声で歌い、成長をやめるな。新たな技を学べば、一座全体が強くなる。完全なパフォーマンスと呼べるものはないが、そこに到達しようと皆が努力する。

リレンシルは活動拠点だが、仮面の館が一座の全員を収容することはできない。それにサマーセットは大きな島だ。敬愛する聴衆全員にここまで足を運べとは言えない。君には大半を外で過ごし、必要に応じて手を差し伸べてもらいたい。全ての団員には、自らの役割を果たすことが当然に求められる。馬の毛にブラシをかけ、荷馬車のガタガタした車輪に油を差し、夕飯を料理し、便所を掘る。文句を言っても無駄で、厄介事が増えるだけだということを忘れるな。

それぞれの旅の一座は、自らが堂々たる称号に相応しいと示した座長が率いる。私が初めて座長とサマーセットを旅したのは、そう昔のことではない。バリトンという名の寡黙なエルフだった。私は饒舌で足早を自認しており、険悪な仲になるのは最初から決まっていたようだった。程なくバリトン座長に演技を見抜かれ、最も長く無味乾燥で、初披露のために覚えたセリフの中で、最高に退屈な独白を渡された。

それを読んだときは泣きそうになった。嫌がらせとしか思えなかったからだ。夜には聴衆の不満げな顔を想像しながら寝返りを打った。毎日別のパートをくれるよう座長に懇願したが、うまくいかなかった。首を横に振るだけで、練習に戻るよう言われた。大変な労力をかけ、忌々しい独白のセリフ、無味乾燥なセリフの全てを覚えた。バリトン座長から次の指示を受けたのは、セリフを間違いなく、口ごもらずに暗唱できたときだった。

「さて、クィル」。彼は珍しく微笑みながら言った。「自分で独白を作れ」

唖然とした。憎むべき独白への嫌悪がありながら、葛藤が起きていたからだ。それは歴史の作品だった!千年の時を生き長らえるほど名を馳せた、古き先人によって書かれた独白。どのように変えられるだろうか?あるいは汚せるだろうか?その困惑に終わりはないと感じた。座長は常に規則に固執していたからだ。

「お前はもう十分この作品に敬意を示した」と彼は言った。「繰り返し読んだ。全ての名前、場所、詳細を覚えたが、そこに心がないことも知っている。クィル、お前のことを信じている。それに心を与えるのはお前だ」

その日私は変わった。軽く考えていた名前が、私そのものとなった。私はクィルという羽根ペンであり、再び創作を始め、言葉を記す意欲が湧いた。新たな始まりだった。今日に至ってもなお、冴えない古典に新たな命を吹き込むことより愉快なものはない。そして、初めて会った時から嫌で仕方なかったエルフ、私の座長がそれを教えてくれたのだ。あの初めて涙した夜には、想像もつかないことだった。

学べ。聞け。創れ。君が発したのは初めのセリフに過ぎず、歌ったのは初めの音階に過ぎない。とても長く、難しく、辛く、不思議な旅が待っている。素晴らしい制作の過程を余すことなく楽しめ。幕は開かれた。舞台に立て。君の演技を見るのが待ちきれない。

夢見の館:歴史House of Reveries: The History

候補者のための入門書
夢見の館の公文書保管人クィル 著

サマーセットで最高の演者の故郷、夢見の館へようこそ!君たちは、名声や富を求めて訪れたのかもしれない。あるいは純粋な好奇心や所属への欲求だろうか。いずれにせよ、崇高な一座に加わらんと大がかりなオーディションに参加する前に、規律を理解してもらう。あらゆる壮大な劇と同じく、何事にも序幕はあるのだ。

夢見の館を創設したのは、高貴な意図と莫大な財産を持ったハイエルフだ。イングレス団長は、大変な先見性と途方もない財産を持つ指導者であり、壮大な物語の幕を開いてくれた。その名誉を讃える劇、詩、歌は数多くあれど、いずれも演技という芸術への献身と情熱を語るものだ。ただし、初代団長の献身は、新たな劇を作ろうとする意欲よりも、旧い劇への嫌悪から生まれた。

彼女は団長になる前、熱い情熱を持つが平凡なエルフだった。演技に注ぐ愛は、父親が育んだとされる。壮大な古典から余興としての簡単なジャグリングまで、あらゆる芸術を歓迎した。そう。経歴のない者から一流のスターまで、あらゆる仲間の演技に共感を抱いたのだ。そして、一時は幸せだった。

悲しいかな、彼女は年齢を重ね、物事の裏も見えるようになった。仲間の演技に目を凝らすと、この職業を真に愛している者はごく少数だった。エルフたちが芸術を踏み台にしていることに気付き始めたのだ。それはやがて悪名と権力につながる道だった。最高位に昇格し、特権と名声を掴むための道だ。気の合う者との出会いが減るにつれ、その哀れな魂は孤独になった。間もなく演劇から身を引いたが、それはひどく心を痛める体験だった。

この孤独な期間に、彼女はこの悲しい潮流を変えようと思いを巡らした。変化を起こそうとして、思いもつかないことをした。自らの名を捨て去り、過去の自分を焼き払ったのだ。彼女はイングレス団長として灰より蘇り、同じ志を持つ仲間の一座を作ろうと誓った。こうして夢見の館は誕生した。

一座の全員は、己の情熱のみに生きることになっていた。イングレス団長はこの誓いを忘れないため、演者はみな仮面を付け、名を新たにすると宣言した。彼らが身元を明かすことはなかった。多くの仲間の演者から幸せと楽しみを奪ったのは、他ならぬ名声なのだから。夢見の館に加わった者は、パフォーマンスのスリルに対する愛情だけに従った。演者たちが唯一求めたのは、聴衆の鳴り響く拍手だけだったのである。

では、自分が何に成りたいのか見極めよう。ここの戸口を訪れたのは、名声や富を求めてのことか。もしくは利己的な鎖を捨て去り、芸術に生きる覚悟はあるか?参加の意志があるなら、知っておくといい。君は君でなくなる。より明るく美しいものになる。千の仮面を付けても、素顔を見せることはない。

君は、仮面をつけるか?

緑の亡霊The Ghost of the Green

樹の従士エイニッセ 著

我ら樹液の子は多くの偉大な英雄を認める。吠えし骨のエルソノール、広く語られし狼、フィルドゥノール・ボウブローなど。しかし、ズェンの復讐者、緑の亡霊の栄光のような英雄は、かつて存在したことがない。

緑の亡霊は、人やエルフの輝かしく自賛する英雄とは対照的に、歴史の影に埋もれている。ごく稀に強力な弓の弦を引き、緑の敵を打ち負かす。その精神は不朽だが、忍耐強くはない。民が鹿の心臓とイノシシの牙を供えると、すぐに正義の処刑が行われる。

緑革と恐ろしい頭蓋骨、後に残すシダの葉、ウッドエルフの鋭利な矢、敵の亡骸を見れば彼だと分かる。一度呼び出せば、その憤怒から逃れられる者はいない。煙が立ち上る召喚の日は、聖なる鹿を生贄とする。亡霊が憤激した日は、敵が必ず死ぬ。死は避けられない。それはまるでイフレの摂理のようだ。

鱗のエルフThe Scaled Elves

マリン・ラロワ 著

船員の物語好きは有名だ。遥か遠くの地の途方もないほら話、巨大な獣、莫大な財宝、美しき誘惑者、世界を滅ぼすほどの嵐。多くの者はこうした主張に健全な懐疑を向けるが、全ての伝説が純粋な空想ではない。比較的平穏なイリアック湾から離れれば、海には真に恐るべきものがいろいろと潜んでいる。マオマー・リヴァイアサンはそうしたものの一つである。

シーエルフを見たことがない人のために言っておくと、彼らは奇妙であるが目立たない。体型はハイエルフに似ており、肌は海の水しぶきの色、目は青ざめている。緻密に描かれたタトゥーと悪意ある態度を除けば、大半の人は注意して見ることもないだろう。しかしあの種族がリヴァイアサンと呼んでいる存在は、あなたの血を彼らの血のように冷たくする。

不浄な魔術によってシーエルフとシーサーペントをかけ合わせて生み出されたこの巨人は、目いっぱい背を伸ばした最も背の高いノルドよりも頭1つ半ほど大きい。もっともこのエルフは大抵の場合、噛みつこうとする蛇のように、屈んで背を丸めた獣の姿勢をしているので、なかなか立っている姿は見られない。いざ動く時も、彼らは歩くというより捕食者の動きで、ゆっくり滑るように移動する。まるで地面と足のどちらにも慣れていないかのようだ。

私が生きたリヴァイアサンを見た最初の時、彼女は船の船体をムカデのようによじ登っていた。滑りやすい板を苦もなく伝いながら、ジグザグに進んでいた。その青い鱗には光が当たってきらめき、ほとんど美しいくらいだった。だが死んだような白い目は鮫のように冷淡で、にやりと笑った表情は陰気だった。

彼女が右舷の手すりを乗り越えてきた時、恐怖は倍増した。彼女は一瞬で私に飛びかかり、巨体で私を甲板に引き倒した。とどめを刺されると私は思ったが、彼女は冷たく平然と見つめ、私は蛇を見たネズミのように凍りついた。私は魅了されると同時に恐怖していた。彼女の顎が元の位置から外れてガバッと開き、私を飲み込もうとしたので、ようやくショックから立ち直って抵抗した。

リヴァイアサンの怪力には到底適わなかったが、何とかして片手をもぎ放し、喉の奥に叩きつけた。リヴァイアサンは炎に喉を詰まらせ、その歪んだ生を終えたが、彼女が残した傷跡は、死ぬまで残るだろう。波の下に潜む鱗のエルフをもし見ることがあったら、私はあなたのために祈ろう。