デッドランドからの文書

Dispatches from the Deadlands

アイアンクラッドの道Path of the Ironclad

破滅の運び手ジャユース 著

破壊のデイドラ公、メエルーンズ・デイゴンの名においてご挨拶しよう!

目覚めの炎に仕える者には困難な道が待ち受けている。壊れた世界を再建する任務は、取るに足らない者どもを一掃することから始めねばならない。だが、弱く愚かではあっても、敵は多く我々は少ない。この世界は大いなる戦いなくして終わらない。すなわち最終決戦だ。ニルンの全ての生命が、立場を選ばねばならぬ戦いだ。”変異”の父が我々を呼んだのはまさにこの使命のためだ。メエルーンズ・デイゴンを称えよ!

さて、兵士なくしては戦いに勝利できない。破壊のデイドラ公はデイドラの軍団を率いておられるが、我々定命の者にも役割はある。目覚めの炎はニルンでの戦いの最前線に立ち、怯まぬ勇敢さと揺るがぬ信仰で道を切り開く。そうすることによってのみ、我々がメエルーンズ・デイゴンの忠良な下僕であり、その大いなる計画に参加する資格があると証明できる。

突撃の先陣を切って、不信心者の軍勢を叩き潰す格別な名誉は当然ながら、最強かつ最も決意の固い戦士のものだ。それこそ我らがアイアンクラッドで、炎と洪水の王への信仰に劣らぬほどの肉体的な力を誇る。

熱意こそが信徒の鎧だが、目覚めの炎のアイアンクラッドは信仰同様に強靭なデイドラ鋼で守られている。アイアンクラッドがひとたび強力な兜をかぶれば、卑しき定命の者ならではの弱さも疑いも投げ捨てる。彼らは生ける破壊の原動力となり、破壊のデイドラ公が敵を撃つ稲妻となるのだ!慈悲なく、疲れ知らずで、不可避の兵だ。どのような敵も強靭な信仰を持つアイアンクラッドには敵わない!そして誉れある破壊によってついにアイアンクラッドが散る時、デイゴンの勇者は砕かれ、痛めつけられた不信心者どもの死体に囲まれていることだろう。

これこそがアイアンクラッドの道なのだ。入信者よ。信仰に劣らぬ腕力を誇るなら、お前の道にもなり得る。破壊のデイドラ公を称えよ!メエルーンズ・デイゴンを称えよ!

(志願を決めた者は、このパンフレットを高位のディサストリクスに手渡すこと)

インファーニウムに関してOn Inferniums

帝都の評議会付デイドラ学者、ペラギウス・ハーバーのメモより

デイドラ学者はめったにデイドラを召喚しない。我々のほとんどが本物の魔法の資質を欠いているからだ。勇敢か、あるいは愚かな魔術師はオブリビオンの獣をニルンに招くが、大抵はズィヴィライやドレモラといった亜人や、クランフィアやデイドロスのような獣じみた生物ばかりだ。こういった10から15種に偏向することは、不幸にもオブリビオンの住人の真の姿を魔術師の目から覆い隠してしまう。オブリビオンの平原を徘徊するものの中にはニクバエのような大きさのものから、遥かに大きなものまで存在している。

例えばインファーニウムだ。高名なドレモラの外交官によれば、定命の者にその獣の真名は発音できないという。我々の耳で聞き取るにはあまりにピッチが低すぎるからだ。この獣はそのサイズと醜さの両面で既知のデイドラのほとんどを圧倒し、その姿は牙を生やした巨大ヒルや化物じみた芋虫に似ている。馬ほどの生物ですら軽々と丸のみにし、手当たり次第に何でも食べる。

それだけでも大抵の人々には十分に恐ろしいのに、その動機の異様さにはさらなる戦慄を覚える。デイゴンと盟約を結ぶ全てのデイドラのように、インファーニウムは動乱と革命に憑りつかれているようだ。だが、他の獣型のデイドラと違い、この生物はこういった標的を大雑把で一般的な意味では追求しない。この生物は政治的、文化的な力がどこにあるかを鋭敏に知覚しているようで、行動を起こして確認し、恐るべき結果をもたらす。高位のドレモラが定期的にインファーニウムに襲われて餌食になる割合は、身を守る術の乏しい低位のヴァーレットよりもずっと多い。インファーニウムはさらに極大魂石、マスタールーセント、貴重な異次元の遺物などの強力なアイテムを食らう。潜在力、名誉、権威があるところ、必ずやインファーニウムがそばに隠れ潜んで舌なめずりしている。

これは我々定命の者がずっと抽象概念とみなしてきた、力というものの本質に対して様々な存在論的な波紋を起こす。オブリビオンにおいて抽象的な力は、定量化でき、検知できる物理的な力として、計測可能かつ物理的に収拾できる形で存在している可能性を考慮せねばならない。私の生があるうちに真実を明らかにすることはできまいが、いずれ未来のデイドラ学者がこの点を明らかにしてくれるものと信じている。

ヴァルキナズ・ノクブロズについてOn Valkynaz Nokvroz

ヘクソス家貿易共同事業体最高相談役 ガレリア・ヘクソス様

ヘクソス家運営主任 フォーティス・スカエバ より

もっとうまくやれたかもしれません。

たった今、切望の要塞の最高指揮官ヴァルキナズ・ノクブロズという、融通の利かないドレモラとの恐ろしい会談から戻りました。失礼しました――あなたは今もドレモラと彼らの異様な慣習に、大変とまどっておいででしたね。ノクブロズが名前で、ヴァルキナズは称号です。”公”と”将軍”の間のようなものと考えていただければ差支えないでしょう。とにかく、ノクブロズはデッドランドで最も強力な要塞の指揮を執っています。メエルーンズ・デイゴンのしもべの中でも筆頭格で、そのことを本人も自覚しています。

ともあれ。先日、地元民が集めた有害なバーブ・ブライトの根を買い入れるため、ジュニアトレーダーのファルヴィオル・ストリンを作業員や荷馬車と共に、哀れなる者の尖塔に送り出したことは覚えておられるでしょう(この植物でテルヴァンニの魔術師からどのような利益が得られるかはご存じですね!)。ファルヴィオルの一団が戻らなかったため、私は調査を行うべく哀れなる者の尖塔に向かいました。そこで私は、我々の従業員が荷物を積んで出発した直後に、巡回中のドレモラに捕まったことを知りました。彼らは切望の要塞に連行されたのです。私はいつもの世話役に手配させ、ファルヴィオルの解放を交渉するため安全な経路を確保しました。

ノクブロズとは要塞の謁見の間で会いました。そこは率直に言って、タムリエルのほとんどの玉座の間が恥じ入るような場所でした。ヴァルキナズの背はこれまでに会ったことがあるどのドレモラよりも頭一つ高く、幅広い肩と劣った者への軽蔑であからさまに輝く、赤い眼を備えていました。キンの多くが厳格で、残酷ですらありますが、あのように純粋な悪意を感じたことはほとんどありません。私は安全な経路の確約があってさえ、部屋を生きて出られるかどうか疑問に感じていると気付きました。

「で?」ノクブロズは挨拶代わりに言いました。「お前はある種の商人で、取引を望んでいると部下から聞いた。定命の者と商人には我慢ならない。だからさっさと話せ」

私は儀礼的な挨拶を省略しました。「はい、ヴァルキナズ。私はファーグレイブのヘクソス家の代表者です。あなたの戦士が哀れなる者の尖塔の近くで我々の従業員を拘束しました――ファルヴィオル・ストリン他3名です。ここには彼らの解放をお願いにあがりました」

「ダメだ」ノクブロズは顎から突き出た黒い角をなでましたが、愉快そうな様子は露ほども見られませんでした。「奴らはいるべき場所にいる。命を奪わなかったのは、単にデイゴン公のため働く可能性があるからだ」

前任者の謎めいた失踪の後、ヴァルキナズが今の(何にせよ、ドレモラの用語で言うところの)職位に就いて、切望の要塞の指揮を執り始めてからまだ日が浅いということは耳にしていました。彼は自らが支配する領域で、私たちが取引をするために支払う一種の賄賂や手数料のようなもので、新たな収入の見込みを立てたいのだろうと考えました。「もちろん、取り立てて価値もない労働者4人の返還と引き換えに、彼らより価値があるものを提供できますよ」と、私は言いました。「通常は」と始めたところで彼が遮りました。

「お前やお前の家とやらからは、何も求めていない」

私は困惑しました。「では、なぜ彼らを連れ去ったのですか?」

ノクブロズは私を睨みつけました。「定命の者が、処罰もされずにこの領域をうろついていると聞くとむかつくからな。そんなことは容認しない」

「それは今まで問題になりませんでした!」と私は抗議しました。

「今までがどうであろうと関係ない。お前が雇っている定命の者を気にかけるなら、デッドランドに立ち入らせるな」

「目覚めの炎教団はどうなんです?」私は尋ねました。「あなたの軍は、彼らがデッドランド中にある様々な所有地に出入りすることを許可しているじゃないですか」

「目覚めの炎の話はするな!」ノクブロズは怒鳴って勢いよく立ち上がり、私は思わず三歩後退しました。「デイゴン卿は食卓から、あのしおらしい振りをした定命の者どもにパン屑を落としてやるのを楽しんでおられるのだ。奴らなどどうでも良い。我が主人が定命の者の教団で遊ぶことに飽きた瞬間、喜んでデッドランドから残らず排除してやる。お前の馬鹿げた商人を排除したのと同じようにな。それとも、お前はその判断が不当だと思うのか?」

安全な経路だろうが何だろうが、私は哀れなファルヴィオルが陥っている悲惨な状況にとても近いところにいると感じました。私たちはこういった問題に巻き込まれた従業員を救うためなら、どんなことでもすると思いたいところですが、ヴァルキナズと話して自分が加わったところで誰も救われないでしょう。何より、私自身が。

「とんでもない、ヴァルキナズ」私は注意深く答えました。「お立場を明確にしてくださったことに感謝します。これ以上ここで同僚がご迷惑をかけることの無いよう取り計らいましょう。よろしいでしょうか?」

ノクブロズは小さく不快そうな音を立て、何も言わず手振りで私を追い払いました。

以上です。ヴァルキナズの非協力的な態度からすると、デッドランドでの業務を調整する必要があるでしょう。地元で見て見ぬふりをするよう説得できる指揮官を見極めるまでは、仲介人や臨時雇いを使ったほうがよさそうです。そして、残念ながらファルヴィオル・ストリンとそのグループの近親者には、慣習的な金銭を渡さなければならないでしょう。

再び彼らに会えるとは思えません。

ヴァルキナズ・ノクブロズのメモNote from Valkynaz Nokvroz

ポータルの機械を動かすには、充填されたルーセントが挿入されていなければならない。

ルーセントを何度も抜いているところを発見された者は、悔やむことになるだろう。好奇心と実験は、私が与える罰に見合ったものではない。

ヴァルキナズ・ノクブロズ

ヴィビアス・ソシアへの手紙Letter to Vibius Sosia

ヴィビアス、

私の望みはデイドラにここに住んでもらうことだけだ。定命の者同様に。彼らには思考能力も目標もある。敬意を払われるべきだ。

哀れなる者の尖塔の中からデイドラが出ないようにするため手伝うという申し出は、当初ありがたかった。だがもう私は2人殺した。いや、1人はオブリビオンに送り返し、街の庇護から遠ざけたというべきか。ともかく、お前の命で決してできないと思っていた行為をやってのけた。

だが、お前が約束した変化は起きない。だから、残念だが、自分の手で解決する。お前の助言なしで。うまくやってみせる。そうすればデイドラは哀れなる者の尖塔で安全に暮らせる。疑いもなく、彼らの家で。

エヴェリの演説案Eveli’s Speech Ideas

演説メモ!

メエルーンズ・デイゴンの呼び方一覧:

尻の赤い腰抜け
腕が無駄に多い奴
敗北のデイドラ公
割れた巨大ドングリ
敗北者デイゴン
育ちすぎのマッドクラブ
地団駄おじさん
怒鳴り声のデイドラ公
ここから見るとスカートが短すぎる
でかくて醜いスキャンプ

話すこと:
– 激戦だった!爆発、矢、炎について話す。
– 全員の名前を言う。いや、時間がかかりすぎるかも。名前が多すぎる。
– 勝ち目の薄い戦いに勝った!メエルーンズ・デイゴンの醜い顔を蹴飛ばしてやった!(これはいい表現。使う)
– 捜査官ヴェイル

忘れないように
– 長く話しすぎないこと。伸びきった射手は嫌われる。
– 笑顔。でも笑いすぎない。ニヤニヤしすぎると不気味だ。
– デイドラを馬鹿にしない!
– ライランスの話はしないほうがいいかな?彼女が来れば別だけど。その場合、野望の力の話はしないほうがいいかもしれない。

オブリビオンの性質On the Nature of Oblivion

デイドラ学の第一人者、カナンミルディル 著

この私、デイドラ学者カナンミルディルは長年デイドラ研究において、極めて高い確率で創意あふれる結論を生み出してきた。その特大の知性を活かして史上最大の謎にまつわる知識体系を掘り下げよう。つまり、オブリビオンの真の性質についてだ。

周知の通り、オブリビオンはアービスの内に存在し、様々なデイドラの領域を含む。だが、オブリビオンとは何だ?特に領域の狭間には何が存在している?領域の間には敵対的な虚無が存在すると示唆されている。そこに肉体を持つ生命は一切住まうことができず、肉体を持たない生命は次元と次元の間で闇の広がりを目撃し、経験を損なうことなく戻る。デイドラ自身はこの話題を避ける。

私見だがあらゆる無慈悲な力と同じく、オブリビオンの本質が敵対的な訳ではない。だが、その冷酷な性質に破壊への危険な嗜好を孕んでいる。さらに言えばオブリビオンと我々が呼ぶものは、生命を軽視しているわけではないが、見守る気も維持する気もない。結果として性質と方向性によって、多くの領域が衝突しあっている。多くの次元でデイドラ公やその他の勢力が、オブリビオンでの次元の動きを操作していることは幸運だ。そして彼らが不在の次元は、運命に定められた通りに叩き潰される。こういった不幸な次元の証拠は喜びの領域やクアグマイアの夢の中の幻影で見られる。そこには詳細な記録がある。伝説のエバーグロームの囚人が書いた「堕落した男の不穏な考え」や「サングインの儀式と領域」を参照するといい。

オブリビオン学者は無数の真実がクリエイシアの羊水の中で存在しうるという考えを受け入れられずにいる。「なぜそんなことが可能なんだ」とか、「生きた定命の者がいる場所がある一方で、なぜ他の場所では不死の生命が繁栄しているのか?」といった質問に頭をぶつけている。こういう疑問はまったくもってくだらない。オブリビオンに関するあらゆる質問はハルメアス・モラの信者やクラヴィカス・ヴァイルに聞けばいい。ハルメアス・モラとアポクリファの学者は真の学術的疑問に対する最高の資源だ。だがオブリビオンに関する質問は根源にぶつけるべきだ。考えることに長けている諸君は、もうすでに私がクラヴィカス・ヴァイルをオブリビオンに関する最高の専門家と見なしていると結論しているかもしれない。その活動の一部は、彼の手が左右していると言っても過言ではあるまい。この考えに異を唱える者は、オブリビオンについて知られていることがほとんどないのを思い出してほしい。その活動は複雑怪奇だ。オブリビオンのように混沌とした存在の支配者として、狡猾な願いの主ほどふさわしいデイドラ公はいまい。

私の考えを証明しよう。私はまず後悔の野のスカーフィンに対して問いを投げかけてみた。私の興味という贈り物に対し、彼らは活動の観察を許してくれた(私の著書、「デイドラの真の性質」参照)。このとき、私は密かに彼らがオブリビオンをどう思っているか探ってみた。そしてその一人は親切にも、定命の者もクリエイシアで致命傷から回復できると教えてくれた。スカーフィン・マズフィラックスの手を借り、実験をしようと考えている。定命の者がデイドラのようにクリエイシアで再形成できるのかどうかを試す。実験が思うようにいかなかった場合に研究を進めるため、彼とは30年後にまた会う約束をした。

カザシャへのメモNote for Khazasha

カザシャ、

戻ってきたのなら、自分の義務は分かっているだろう。お前はまだカルマーの次期賢女だ。私とバーゾナシュをアッシュピットに送れ。後悔はない。凶悪な獣を相手にして、名誉ある戦いで斃れたのだ。

我々がそばにいないことで、お前の任務は辛くなるかもしれない。だがお前はカルマーだ。他の誰よりも強い。我々のクランの復讐を果たしてくれる。

切望の要塞の中にある略奪者の住処を見つけて、奴を滅ぼせ。アトロズの導きがありますように。お前が最後の望みだ。

カジートの定命の者ザジュッキとの契約Pact with Khajiiti Mortal Zajukki

切望の要塞の契約作成者として、我、テリナックスは定命のカジート、ザジュッキの魂を大いなるメエルーンズ・デイゴンに捧げることを宣言する。

その代償として、我々は彼女の家族の遺骨に結界を張り、彼らの霊が眠り続けられるようにした。いかなる魔術師も、死霊術師も彼らの死を乱すことはできない。なぜなら彼らは、今や破壊のデイドラ公のものとなったからだ。

我かく宣言せり。

契約作成者テリナックス

カスタブの日記Kastav’s Journal

〈折りたたまれボロボロになったページには、土と血にまみれた短い文章が様々な形で書かれている〉

私の名はカスタブ。それを忘れてはならない。カスタブ。苗字は思い出せない。以前は服を仕立てていた。上質なものを。レヤウィンのささやかな店で売っていた。よく息子が手伝ってくれた。

なぜここに来たのか、記憶がぼやけている。おぼろげだ。ここではそうなる。血が滴るたびに詳細が失われる。息子がいるのはわかってるのに、顔が思い浮かばない。

ここには他の人もいて、土まみれで鎖に繋がれている。彼らはあれをドレムナケンと呼ぶ。それが名前なのか種別なのかは思い出せない。その声は私の頭に入り込む。雷鳴のように眼の後ろで響いている。飢えと残酷さを表す、絶え間ない咆哮。

衛兵が連れて行く人の中には、二度と戻らぬ人もいる。彼らは泣き叫ぶオークの男を引きずって行った。あれほど怖がるオークは見たことがない。

と言っても、私が恐れているのは死ぬ方法だ。神々が終わらせてくれることを祈っている。

衛兵たちがドレムナケンの話をしていた。街のこの地域を支配しているらしい。彼らはドレムナケンを称賛している。良い刺激を与えているのだ。ドレムナケンは狩りのたびに存在を危険に晒すのだと言う。彼らはそれを尊敬すべきことだと考えている。どういう意味なのか、私には理解できなかった。

その言葉を聞いて怒りに駆られた。食ってかかろうとしたら、エルフの女性になだめられた。そんなことをして何になる?もう彼女の名も思い出せない。

囲いの中には、ほんの数人しか残っていない。ドレムナケンは狩りを完了できない。力を失いつつあるようだ。より遅くなっている。占いにはもっと人数が必要だ。私は2回、いや、恐らくもう3回は行った。行くたびにより多くの生命を奪われる。息子がいたことを知っているのは、以前書き留めたからに過ぎない。それでも自分の名は思い出せる。カスタブ。

エルフの女性が姿を消す前に秘密を教えてくれた。脱出口がある。以前からの囚人、名前が思い出せない誰かが穴を見つけた。壁のごく一部が欠けている。自由になれる人がいるとしたら、穴を這って抜けられる人だろう。彼女は穴のことを知ったいきさつを思い出せなかった。だがその話は必死に保っていた。

残っているのは私だけだ。さらなる血を求めて怪物が叫ぶ。私はカスタブ。私はカスタブ。私は

グリーフ砦修復The Restoration of Fort Grief

破壊者イドリアン・ヴォルターノ 著 第二紀580年春

目覚めの炎教団の大司祭の命により、グリーフ砦を訪れて古き要塞の調査を行った。ここは帝国ハートランドの基地として理想的な場所だ。そして島の立地は、我々の重要な任務を好奇の目から遠ざけてくれる。推薦理由は下記の通りだ。

まずは歴史的背景から伝える。グリーフ砦はシルバーフィッシュ川の河口にある島に、第一紀2709年から第一紀2718年にかけて構築された。この時期は皇帝レマン一世の治世初期に当たる。ニベンの湾東沿岸をトランス-ニベンやブラック・マーシュから防衛するのを目的としていたが、完成前から過剰だと言われてきた。第二帝国が急速に拡大したことで、敵艦隊がニベンに攻め寄せてくる本格的な脅威は消滅してしまい、最も攻撃的なアルゴニアンの襲撃者ですら、ハートランドに直接攻撃を仕掛けてくることはなかった。第一紀2900年に、要塞はほぼ放棄された。

その後300年、この帝国の砦は近隣都市の税関と巡視隊が、密輸や付近での海賊を取り締まるための監視塔として何度か利用した。しかし、誰も本格的にグリーフ砦を修繕しようとしなかったため瓦解した。壁と石の塔の状態は良好だが、ニベン湾周辺の湿度のため、木の床や屋根は修復できないほど朽ち果てている。

砦復興のための計画は下記の通りとなる:

第一段階(2ヶ月)
土地を所有し、維持費を支払う意思のある貴族であれば、軍団長議会から砦を借りられるとのことだった。「密輸予防の巡視」を支援するのもやぶさかでないという近隣の領主を用意し、レヤウィンの係官を適切に買収する。この問題に関しては、すでに大司祭が手を打たれているとのことだ。

第二段階(4ヶ月)
砦の港を修理し、付近の運河を浚渫する。現状では、島に小型ボートで近づいてから岸まで歩いて上がるしかない。大規模な修理を実行するには、重い木材や石材を積んだはしけが接岸できる上陸地点が必要だ。安価な労働力はブラヴィルとレヤウィンで手に入る。労働者のための仮設住宅も必要だが、それはテントや小屋で十分だろう。

第三段階(8ヶ月)
傷んだ土台を修繕して壁を補強する。もっとも困難な作業は城郭の下にある地下室の大規模な拡張だ。教団の特殊計画のためにこのスペースが必要だと聞かされている。要塞のこの部分の修復作業を担当させるために連れてくる職人は、仕事が終わり次第始末せねばならない。遠くの都市から呼び寄せて、この地の官吏に探りを入れられないようにせねばなるまい。

第四段階(4ヶ月)
内部の建物の床と屋根を全て張り直す。必要に応じて建物に家具を入れる。この作業は近隣の労働者で十分だ。しかし、砦には誰一人立ち入らないようにしなければならない。倉庫と武器庫に、それなりの規模の駐屯兵が3ヶ月しのげる物資を用意しろ。ブラヴィルはさほど遠くないが、定期的な物資供給をあの街に頼るわけにはいかない。継続中の三旗戦役に近いからだ。

資金が十分だと仮定すれば、1年半ほどで再建されたグリーフ砦に住めるようになる。メエルーンズ・デイゴンに栄光あれ!

サドリアクスへの指示Thadriax’s Instructions

破壊者サドリアクスへ

今すぐデッドライト要塞に帰還しなさい。記憶の限り、あなたはこれまでにポータルの鍵を利用していない。デッドランドのポータルを解除するには、この図に示されている通りに鍵のシンボルを並べなさい。

この暗号はしっかりと隠しておくこと。ポータルの鍵とこの暗号を同時に持ち歩かないように。もし捕まりそうだと思ったら、この巻物は破壊しなさい。正しい暗号がなければ、鍵は役に立たない。

私たちの敵は大胆になっています。ひとまず退却し、再編成しなければなりません。次の輝かしい転生者の一団を用意している間、彼らには無駄に探し回ってもらいましょう。

メエルーンズ・デイゴンの名において
シスター・セルディナ

シスター・セルディナの命令Sister Celdina’s Orders

キンマーチャー・ジンド

有望な被験者の獲得はあなたの責任だとヴァルキナズ・ノクブロズから聞いている。もしそうなら、あなたは任務を怠っている。

デイゴン卿の目的にかなう転生者を作り出すため、もっとドレモラが必要よ。どのクランだろうが構わない。この手紙を届けた破壊者に、手元の囚人を全て引き渡しなさい。その後さらに探すように!

また、目覚めの炎の侍者が何人かセヴァーで行方不明になっている。あなたの鋳造所からそう遠くないところよ。キンに指示して地域を捜索させなさい。彼らを見つけて。

シスター・セルディナ

シャンブルズでの生存Surviving the Shambles

ヒンが書き記した、ファーグレイブのシャンブルズと呼ばれる地区に入り込んで生き延びられるようにする方法の概略。彼はこの分野において、現在潜入を検討してるとてつもなく頭のおかしな連中より、ずっと経験豊富だ。

シャンブルズとは記録にない街路の集合体と迷路のような洞窟からなる謎多き地区で、街の北東の壁の向こうに位置する。この本を手にしたからには、きっと興味があるのだろう。我が卓越した知的能力で断言させてもらうが、貴君は娯楽や不法行為を求めて死ぬ、どうしようもない愚か者だろう。もしくは薄汚い通りで消えた仲間を探していて、その哀れな命のために勇敢ではあるが、恐ろしく無謀な救出作戦を敢行しようと思っているのかもしれない。そういうことなら、まさに正しい本を読んでいる。貴君はこの言葉をかけるチャンスを私に与えてくれた。貴君は「知的」というあいまいなカテゴリーに分類された種族をまれに襲う愚行の発作で、人生を投げ出そうとしている。

自分を一番苛つかせた者を始末する理由を他人に与えることによって成り立っているシャンブルズの生活は、そうした目的に叶っている。最も一般的な、凄惨かつ苦痛に満ちた死因は避けたほうが良いだろう。明確かつ効率的にするため、死因を以下に列挙する。

存在
これを避けるためには、定命の者でいることをやめよう。不幸にも読者が定命の者であったら、単に生きることをやめるべきだ。この提案が耐えがたいようなら、やがてその状況に苦しむことはなくなり、存在が消滅する事実に慰めを見出してほしい。そうすれば、シャンブルズのこの面についてはもう頭を悩ませる必要がない。

ゴールドの携行
貴重品を身につけてシャンブルズに立ち入れば、長く苦しむことがないと保証しよう。加えてベルトに下げた小銭入れを欲しがる輩がいるので、ベルトはずっと軽くなる。金が有り余って困っている者にとってはありがたいことかもしれないが、財産を減らすにはより愚かしくなく、苦しまずに済む方法があると断言しよう。間抜けで思いあがった愚者になってはならない。エラント、ヴァンキッシュドとインビジブルウェブが待ち構えている。

目を合わせる
シャンブルズの住人と目を合わせ、にらみ返すことは決闘を挑むのも同然だ。戦闘で彼らに勝つことはできない。どれほど腕が立ってもだ。まさか、と思うのは愚かさの証拠だ。どんな状況においても目立ってはならない。

目を合わせない
にらみ返さねば、襲撃者に自分はカモだと伝えることになる。カモになってはならない。

スキャンプの母のことを話題にする
このルールの起源は不明だが、この疑問への反応は常に迅速で、かなりの痛みを伴う。スキャンプと話していなくとも、スキャンプがそばにいないときに話をしていても、母との絆に関する話題は一切口にしないのが賢明だ。

衣服を脱ぐ
通説とは逆に、衣服や身につけた装飾品を捨てても助かりはしない。それで襲撃者の注意がそれるわけでもなく、従順さを示すことにもならない。どうせシャンブルズで死ぬのなら、衣服を着て尊厳を保ったまま、凄惨なバラバラ死体となって失血死したほうがマシだ。結局、死後に衣服をはぎ取られることになるとしても。

足や尻尾周りの品を捨てる
前項参照。

最初に攻撃する
不幸にもシャンブルズに来てしまったなら、貴君が持ちうる唯一の希望は、襲撃者が攻撃の好機を掴む前に襲い掛かることだろう。とんでもない。シャンブルズはファーグレイブの成立時から存在している。その住人は彼らが徘徊する街を己が掌のように熟知している。つまり、縄張りに新入りがくればすぐに分かるということだ。彼らの隙を突くことができ、なおかつ撃ち倒せるなどという愚かしい妄想を抱いてはならない。

最後に攻撃する
シャンブルズの狭い道を歩く時、後手に回るのもお勧めできない。戦闘が避けられないのなら、必ず最初と最後の間あたりに攻撃を仕掛けるべきだ。そうすることで襲撃者にならず、腰抜けだとも見られずに済む。自身の祖先に会わす顔がないという事態は避けられる。

シャンブルズのギャングGangs of the Shambles

サラアス・トング警備主任、ナシン・ファランダス 著

まずは明白な事実を言わせてもらいたい。サラアス・トングの人員はどうしても必要な場合を除き、シャンブルズに近寄らないこと。

シャンブルズが危険なのは、ストリクチャーのグラスプがこの地区を管轄外とみなしているせいだ。グラスプが不在なため、シャンブルズの住民は好き放題に互いを食い物にできる。手の内に飛び込んでくるうかつな訪問者もだ。その結果、この地区の大半は複数のギャングのどれかに支配されている。エラントやインビジブルウェブ、ヴァンキッシュドなどだ。この中でも、無法のドレモラ集団であるヴァンキッシュドは、最も対処が難しい。

ヴァンキッシュド
ヴァンキッシュドはシャンブルズの中央地区を支配している。シャンブルズのギャングとしても、奴らは予測困難で好戦的だ。このドレモラたちは残酷な戦士で、没落しても圧倒的な傲慢さを失っていない。キンの中でも低い地位に落とされて力を証明しようと躍起になっているため、むしろより危険になっている。ヴァンキッシュドはすぐに気分を害し、定命の者のような下等生物に対して、自分の言葉を約束とは考えない。ヴァンキッシュドとの協定はドレモラに都合がいい間しか続かず、気まぐれに破棄されることもある。

大部分のドレモラとは違い、ヴァンキッシュドは肩書きや称号を無視する。おそらく、奴らが同族にならず者の雑魚と思われているせいだろう。しかしリーダーはいる。エンジルと呼ばれる勇猛な戦士だ。彼女は特に頭が切れる訳でも狡猾な訳でもなく、単に他のヴァンキッシュドが誰も戦いたくないという理由で指導者の地位についているらしい。

他のドレモラは残念ながら、ヴァンキッシュドについてあまり話さない。私の知る限り、奴らはクランを持たないクランだ。一部はデイドラ公に仕え、独立クランに加入する資格がなしとされた者たちらしい。それ以外は以前のクランから罰を受けたか、あるいは追放された連中だ。だが、ドレモラがそんな罰を受けるほどの犯罪とは何なのか、私には想像もつかない。また、今は忘れられている滅びたデイドラ公に仕えていた者もいるという噂だ。

ヴァンキッシュドについて最後に一つ述べておくと、奴らはファーグレイブだけにいるわけじゃない。より知名度の高いドレモラのクランと同じく、ヴァンキッシュドはオブリビオンの様々な領域をうろついている。だがどこに行こうと、奴らは最も不潔な無法地帯を求め、そこを自分たちのものにする。おそらく、自分たちにはそれが相応だと信じているのだろう。

エラント
一方で、定命のエラントはシャンブルズの西側路地を支配している。暴力をちらつかせる脅迫で生活の糧を得ているこのストリートギャングは、ボス・ケゾが率いている。彼らは路地に住む定命の者に一定の保護を提供しているようだが、噂によると保護にはそれなりの代償が伴うらしい。

エラントはシャンブルズでそれなりの権威と支配力を持っているが、活動の規模は明らかに小さい。ボス・ケゾに夢と野心はあるが、周囲から抜きんでるための狡猾さや戦略が欠けている。とはいえ、このギャングは身一つでファーグレイブにやって来た定命の者に安全と仕事を供給する、重要な役割も果たしている。

この路地中に散りばめられた市場や店の活動は、ボス・ケゾの機嫌次第だ。商人の売る品物を彼が気に入り、商人の側がギャングの要求する最低限の支払いに応じれば、商人は比較的安全に仕事ができる。気に入らない点があるか、商人がギャングの保護に金を払わなければ、商人はすぐシャンブルズの路地裏に消え去り、二度と姿を見せない。

エラントはニルンの王国にいるような遍歴の騎士の真似事をして、街路を巡回している。彼らは西の路地をヴァンキッシュドとインビジブルウェブから基本的には安全に保っているが、訪問者や誤って縄張りに迷い込んだ者を襲う機会は伺っている。

インビジブルウェブ
シャンブルズの一部分を支配する第三の有力なグループは、インビジブルウェブだ。このスパイダーキスのクランは蜘蛛のようなデイドラと、形も大きさも様々な蜘蛛の大軍団で構成されている。スケイン・ロウと呼ばれるシャンブルズの東区域は彼らの住処兼狩場となっており、縄張りは建物の間や表面に張り巡らされた分厚い蜘蛛の糸で容易に判別できる。

特に残酷なスパイダーキスの シャエルメタが、有無を言わせぬ力でこのクランを支配している。噂によればファーグレイブのある主要地区で事件が起こり、グラスプとの言い争いの末、ストリクチャーの衛兵少なくとも3人が、再形成に通常の倍の時間がかかるほど徹底的に叩きのめされたらしい。その後、シャエルメタはクランを引き連れてシャンブルズに逃げた。奴らはそこに住んでいた定命のコソ泥を排除して、スケイン・ロウを築いたという噂だ。

現在、インビジブルウェブはスケイン・ロウをしっかりと掌握している。インビジブルウェブの狩人は縄張りに入ってくる者を誰でも獲物とみなすが、獲物が少なくなった時にはシャンブルズの近隣地区を襲うことも厭わない。スパイダーキスは食料がなくても生きられるが、狩って殺すことは奴らの本性であり、シャエルメタの愛する蜘蛛たちを養う必要もある。

シャンブルズに入らなければならない時は、何があってもスケイン・ロウは避けるべきだ。

シャンブルズの薬物Intoxicants of the Shambles

ここに記されているレシピを使った場合、収益の4分の3はバーラクサに帰される。

ここに記した液体や粉末などの物質は、最底辺の獣どもが臭くて汚い手で触れるために殺し合いを始めるような代物だ。こんなものを作るのに技術は要らないし、これを接種する連中は高等動物と名乗るのを恥じるべきだ。こういう物質を接種する定命の者は、自らの劣等を証明しているだけだ。敵のためにたっぷりと、仲間と呼んでくるような間抜けのためにはさらに多くの量を用意しろ。いつものことだが、薬の快楽と引き換えに法外な価格を請求すること。

痺れ鼻
尋問の時に相手が喋るのを止めない場合か、嗅覚やそれ以上の高度な認知機能が不要な場合に用いるペースト。

血の錆が付いたナイフで削ったマグネシウムの欠片を、ホタルの背中から取った炎やドラゴンナイトのポールドロンと混ぜ合わせる。混ぜたものを浅い溶岩の海に放り込み、不屈の墓通りの丸石の上で冷ます。全体が粉末になるまでかき回し、腐ったレモンの汁を数滴加える。犠牲者の鼻孔の下に薄く塗りつける。


この黒っぽい液体は、飲む者の精神をオブリビオンに転送させると報告されている――ただしどの場所に行くかは分からない。また頭蓋骨をボロクズのようにしてしまう。可能な限り定命の者に与えること。目が膨れあがる瞬間に注目されたし。

プラムのブランデーを上等な汚水樽に入れて急速に熟成させ、粉末にした毒キノコを加え、バザールの雨水で薄める。

光る漆喰
鼻や口を必要としないので、監視人に好まれている粉末。この粉は目に直接放り込むもので、正常な摂取量は火山岩を一緒に目へ投げ込んで計測する。岩がむき出しの眼球に当たったら、愚かな監視人はかなりの量を接種したということだ。それでも通常、監視人はさらなる量の接種を止めない。粉を放る役目を積極的に引き受け、投げる時に躊躇しないこと。私は一度、ある顧客の眼球を完全に破壊したことがある。あれはキャリアの中でも最高の一日だった。

オークの牙を砕く。砂利とオグリムの血を混ぜる。中型の火山岩1つと一緒に小袋へ入れる。

乞食の嘆き
元々は光輝と呼ばれていたこの飲み物は、オブリビオンへの帰還が避けられないほどの傷を負った者に重宝されている。光輝の使用者は音を見、姿を聞けるようになる。一説によると、これはオブリビオンの再形成の泉での再形成時間を加速するらしい。骨砕きのスクロ・カグは光輝を傷のミルクで薄めて乞食の嘆きを作った最初の人物だ。この透明でとろみのある飲み物の作り手を見つけるには、荒廃した戸口で休んでいるうつろな目をしたデイドラを探せばいい。定命の者はこの体験を面白いと感じないらしく、数人がこの飲み物はバラの花びらのピクルスのような味がするが、何の効果もないと主張している。

乞食の嘆きのレシピは厳重な秘密にされている。正確な材料を公開した売り手はいない。今までのところは。承認を受けた作り手を殺し、再形成して戻ってくるまでの間に店から奪うほうが簡単だ。

シミ
シミは最も血に飢えたズィヴィライの怒りさえも鎮める。過剰摂取はデイドラを、定命の者の独房に入れられたネズミほど従順に変えてしまう。バザールのデイドラの中には、定命の者を攻撃しなくても意思疎通をしやすくなるため、シミが有用だと考える者もいる。一人前のデイドラがなぜシミに顔をしかめるのか、私には理解できない。私は捕虜によく使っている。移動させるのが簡単になるからだ。

蛇の毒を1.5、セヴァーの嵐の水を3、ムーンシュガー(鮮度は問わない)を1、モルトビネガーを1の割合で混ぜて青白い飲み物を作る。面倒を起こす捕虜の喉に流し込む。

レッドメイデン
大半の定命の者は、デイドラの助けなしにファーグレイブで長く生き延びられない。一部の裏切り者はこの哀れな獣に同情して契約を交わし、役立たずの定命の下僕を実質的に養っている。定命の者と接触して汚点を作りたくない全てのデイドラにとっては幸運なことに、レッドメイデンが存在する。これはドレインの効果を抑制し、短い間だが定命の者の正気を保ってくれる。

火山灰とデイドラットの内臓、味をごまかすため少量のスクゥーマ、トゥム・ソの木の種を砕いたもの、ドレインに冒された定命の者が死ぬ時に出す血液を、小さな器で混ぜる。数周期の間貯蔵する。定命の者に小瓶で与え、2週間以内に戻ってくるようにする。

シャンブルズ観光案内Visitor’s Guide to the Shambles

ファーグレイブの定命の者受け入れおよび視察プログラムのための、ディラマーによる記述

大部分の定命の者は危険な無法地帯という評判にもかかわらず、シャンブルズを住処としている。シャンブルズの路地にこれだけ定命の者やデイドラが引き寄せられるのは、この無法のおかげかもしれない。この地区の様々な住民や雑貨屋、工芸品などは独特の雰囲気を生み出している。住宅地にはファーグレイブの主要地区で課せられる厳格な行動規範から距離を取ることを望む、定命の入植者やデイドラが混じり合っている。

入口
シャンブルズは、ファーグレイブのより上流の地区と隔てる壁の先にある。シャンブルズへ通じる扉の大半は隠されているか目立たない。ファーグレイブの門は派手で精巧な作りだが、シャンブルズの街路への入口の大部分は全く人目を引かない。シャンブルズへの扉を探すには、計画的な探索だけでなく偶然と運も必要になる。旅人は時々、シャンブルズの迷路のような路地に迷い込んでしまうことがある。

市場
バザールの露店とは異なり、シャンブルズの市場は風に舞う葉のように場所を転々と移動する。しかしなぜか、常連客はいつでも店を探す方法を心得ているようだ。街路に記された謎の印を利用した複雑なシステムにより、知識のある者には特定の品物を売っている商人の場所が分かるという噂がある。残念ながら、それについての情報はストリクチャーに反しているため、このガイドの範囲を超えている。シャンブルズでしか得られない品物やサービスが存在すると言えば十分だろう。そうしたものを求めている者にとって、行ってみるだけの価値はある。

飲食
シャンブルズの大きな喜びとして、知る人ぞ知る〈ブリジット〉が挙げられる。ここの食事は素晴らしく、バターの香る菓子や食感豊かな果物、そして外の街路を溶解させられるほど熱い飲み物を味わえる。ミックスリーフティーを頼んで、ディラマーの推薦で来たと告げよう。もっと強い飲み物を求めているなら、ウィッシュボーンがいいかもしれない。この酒場には荒々しい魅力があり、エバーグロームのこちら側では最高の凍結蒸気を出す。

地域の特色
定命の者に入手できるあらゆる商品を取り扱う、ネテリアスとのスリリングな会話を楽しもう。彼の伝説的な話術と友好的な態度は、ドレモラにとってもこの露店で買い物をする楽しみを与える。猫が嫌いでなければ、ネテリアスの猫マルフィーザンスの相手もしてやるといいだろう。

治安
すでに述べたように、ファーグレイブ中心部には定命の者の挑発に暴力をもって応じるデイドラがいる。幸運にも、街の中にいる限りどんなデイドラも破ることのできない法秩序が存在する。ストリクチャーとそれを施行するグラスプはシャンブルズでも活動しているが、これは安全の保障にならない。友好的とは言い難いいくつかの集団がシャンブルズの各地を支配しているため、できる限り彼らの縄張りは避けるべきだ。

ボス・ケゾ率いるエラントは、ファーグレイブの環境で正気を保つための契約を持たない定命の者の集団だ。このためエラントは縄張りの防衛に全力を注いでおり、暴力の行使もためらわない。彼らはシャンブルズに居住する定命の者、特に西の路地に住む者を守っていると主張するが、筆者の見るところでは保護という名の恐喝である。このトラブルメーカーたちには注意しよう。

東の街路網スケイン・ロウは、スパイダーキスのシャエルメタや仲間たちの住処となっている。このデイドラは友好的でなく、特に定命の者は食料とみなしている。スケイン・ロウは建物の間に張り巡らされている広大な蜘蛛の巣を見れば分かる。大きな蜘蛛の巣に出会ったら、回れ右をして引き返そう。

ヴァンキッシュドはシャンブルズ中央広場周辺の一帯を支配している。エンジルとその仲間のドレモラたちは、定命の者を狩って楽しんでいる。さらなる情報があるまで、この地帯は立ち入り禁止と考えていいだろう。

このような危険にもかかわらず、シャンブルズは訪問する場所としても住む場所としても素晴らしい。新しい街は全てがそうだが、この地区で過ごす最初の数日は慎重に行動することを勧める。しかし危険の兆候に慣れてくれば、すぐに私と同様、この地区に溶け込めるだろう。

シャンブルズ観光案内に関するメモNotes on the Visitor’s Guide to the Shambles

ボス・ケゾ 著

いいか、シャンブルズ観光案内とかいうのは全くの嘘っぱちだ!ディラマーがスケイン・ロウより西の路地について知っているはずがない!シャエルメタの巣に入り込んで、ペットの蜘蛛どもに喰われていないならな。あのパンフレットの目的は、定命の者たちを主要な地区から離れさせ、デイドラの主人を喜ばせることだ。シャンブルズについて、本当の話をさせてくれ。

まずスケイン・ロウの蜘蛛の悪魔どもや、エンジルの血に飢えたドレモラのことは忘れちまえ。東はシャエルメタとインビジブルウェブにくれてやる。どうせあそこはもう蜘蛛だらけだ!しかし、エンジルのヴァンキッシュドには忠誠心がない。どのデイドラ公に仕えていたか知らないが、裏切ったんだろう?奴らが仲間割れを起こすまでどれだけかかると思う?どの周期に起きてもおかしくないと思うね。そうなったら、シャンブルズは完全にエラントが支配する。スケイン・ロウは別だがな。俺は蜘蛛が嫌いだ。

あのパンフレットは、こう書かれるべきだ。

入口
シャンブルズへ通じる扉はファーグレイブ中心部の北区ならどこにでもある。ファーグレイブのクラフト広場には大きな入口もある。財布を一杯にして来ることだ。まとまったゴールドやその他の価値ある通貨を提示されれば、俺のギャングが命を奪うようなことはおそらくない。

市場
西の路地のあちこちにある市場は、シャンブルズでも最高の市場だ。我々があそこの売上で利益を得ているから言ってるんじゃない。上前を跳ねているのは確かだが、本当に最高だと思っている。

飲食
うちの醸造家のジクは美味な骨片のエールを作るが、飲めるとは思うな。彼女が作る分量はエラントの喉を潤すだけで精一杯だ。それからアルゴニアンの鉢をかき混ぜる者は、クランフィア焼きの達人だ!これも、お前たちにはやらん。シャンブルズで飲み食いしたいなら、このガイドのお勧めは確かに悪くない。ウィッシュボーンはちゃんとした酒場だからな。それにあそこは静かになりすぎると、必ず誰かがケンカを始める。

地域の特色
一体これは何のことだ?ネテリアスだと?奴は自分のものを決して渡さない詐欺師だ。こいつを忘れずに片付けておこう。次は見ていろ

治安
ここはシャンブルズだ。治安などない。自分の身を守れないなら、我々が守ってやる。うちの価格は高くないし、俺のギャングは大抵の場合、適度に暴力を振るう術を心得ている。それからグラスプには期待するな。奴らの力はシャンブルズに届かない。当然だろう?ここにいるのはほぼ全員が定命の者だ。ストリクチャーは定命の者など気にしない。

というわけで、シャンブルズに来るなら目をしっかりと見開いて、ポケットを一杯にしておくことだ。帰る頃には財布が少し軽くなっているかもしれないが、素敵な品物や見どころがあるのは本当だ。

スキャンプ・ナールの日記Journal of Scamp Naal

ナール、ハスクの鞄で書く棒と葉みたいなのをみつけた。ハスクは変な形で、顔によけいな歯がある。ハスクは歩く時間の間、何もないとこにいかない獣。ハスクは地面にいる。ハスクは書く棒と葉みたいなのを探さない。ナールがもらった。

* * *
ナールはここが好き。とてもあったかい。いい臭い。怒鳴る男はいない。ポータルに突き飛ばされない。怒鳴る男の本を運ばない。焼ける熱い水を運ばない。長い時間本を読まない。ナールは好きなことをする。ナールは歩きたい。大きな丘を登る。小さな丘を下る。耳の間に温かい空気感じる。大きな鐘聞く。ナールはやることを探さない。ナールは怒鳴る男に従わない。ナールは自分に従う

* * *
とっても大きなよくないこと。ナールは大きな鐘のそばを歩く。いろいろ聞く。ドレモラを聞く。幸せなドレモラを聞かない。歩く大きなのを聞く。あいつらは嫌い。ナールは大きな丘をとても急いで越える。歩くハスクが大きな丘の上。ナール止まる。ドレモラ、ハスクを大きく長い火でドカン!やめてほしい。ナールは耳がおかしい。ナールは寒い。ナールは逃げたい。大きな丘越えてあまりみたくない。ナールは止まる。丘の上の岩の後ろにいる。ドレモラとハスクに近づかない。ナールはドレモラの行先見ない。ナールは残って温かくなるまで待つ。ナールは新しい怒鳴る男に従わない。怒鳴るドレモラは嫌。ナールはいらない。

* * *
大失敗。大きな口の大きな獣。ナールを追ってくる。今逃げてる。

* * *
ナール逃げる先知らない。地面が温かくない。空気に光がない。大きな雲。ナールは歩き続ける。どうなるだろう。

* * *
ナールはとても遠くまで歩いた。ここは落ちて濡れる。温かくない。大きなドカンが聞こえる。怒鳴る男いない。ナールは温かいとこに行く。ドレモラがいた。ズィヴィライの剣の女もいる。あいつらは怒鳴らない。もっと大きな火のそばに立ってる。ナールはそばにいる。どうなるかみる

* * *
ナールはまずい。怒鳴らないドレモラとズィヴィライの剣の女がナールを見た。大きな岩のそばでナールを見つけた。ナールは怒鳴る男になるなと言う。ナールはナールに従うと言う。ズィヴィライの剣の女はここがバーンだと言う。ナールがうまく隠れると言う。ナールは怒鳴る男のところも、歩くハスクのところもいかないと言う。ナールは残る。ここはバ-ンとセヴァーだと言う。落ちて濡れるのはセヴァー。怒鳴らないドレモラも同意する。そいつもセヴァーに行きたくないらしい。ナールは何がおもしろいかわからない。でもナールは仲間になる。ズィヴィライの剣の女は言う。ナールは好きなところに行けと。ナールは仲間じゃないと言う。ナールは賛成しない。でもナールはあまり言わない。

ズィヴィライの剣の女はナールが嫌い。ナールはどうするかわからない

* * *
ナールは合ってた。ズィヴィライの剣の女はナールをいさせない。怒鳴らないドレモラはあまりしゃべらない。ズィヴィライの剣の女にナールおいださせた。ナールは残りすぎだと言う。行く時が来たと言う。ナールは怒る。

ナールは怒鳴らないドレモラを追いかける。ナールは泥をぶつける。ナールは火を踏み消す。ナールはズィヴィライの剣の女を蹴飛ばす。ナールは大きなポータル呼ぶ。あいつらバーンを追い出す。ナールに指図するな。ナールは自分の言うことを聞く。

ナールは仲間にならない

ストリクチャーとグラスプThe Stricture and the Grasp

定命の者への手引き、ガレリア・ヘクソス 著

定命の仲間の皆様、ファーグレイブへようこそ!ご存じのように、ヘクソス家は何世代もこの奇妙で危険な領域に存在しつづけてきました。私たちは数えきれないほどの挫折と失敗を通じて、この場所のルールに関して様々なことを学んできました。ファーグレイブ大市場への配属は大きなチャンスですが、同時に危険でもあります。この小冊子は皆さんが豊かになり、しかも無事にタムリエルへ帰還できる可能性を高めることを目的としたものです。

ご注意ください:最初はファーグレイブに圧倒されるかもしれません。人であれエルフであれ、この場所はあらゆることが異なっているように見えます。空は奇妙な色です。邪悪の化身とも思えるような獣が通りをうろついています。当たり前のように思っていた法や習慣は、ここに存在しません。そして皆さんが知りもしないルールを破ってしまった場合は、肉体と魂の両方に対して恐ろしい危険が待ち受けています。

ストリクチャー
ファーグレイブにおけるヘクソス家の事業は、ストリクチャーの存在に依存しています。これはファーグレイブを様々なデイドラの中立地として保つため、規則と合意をもたらすデイドラの協定です。ストリクチャー内の条項により、同様の中立性が定命の者にももたらされています。ストリクチャーがなければ、街を歩くあらゆるデイドラは思い付きで皆さんを奴隷にし、拷問し、ただ貪ることになります。

(当然ながら、全てのデイドラがそのようなことをするわけではありません。多くのデイドラが高い知性を持ち、良好な取引関係の維持に価値を見出しています。ですが、危害を加えたいと思っているデイドラは見ただけでわかりません)

ファーグレイブに足を踏み入れるデイドラは全員、ストリクチャーによる束縛に同意しています。そして違反できません。協定には拘束力があります。ファーグレイブの地区全体が中立とされ、その中にいるデイドラは通常、ストリクチャーに違反せずには他の生物を傷つけられません。「通常」と申し上げたのは、警戒を怠った者にとって致命的となり得る例外があるからです。

– 危害を受けることを承諾した獣は、ストリクチャーによる保護を受けられません。
– 攻撃を受けたか、単に何らかの方法で不快にさせられたデイドラは自由に身を守れます。
– ファーグレイブの特定地域(場合によっては建物や部屋)は、中立条項によって保護されていません。また、自分が保護されていないエリアに進入したことを知る手段もありません。
– デイドラが人を誤った方向に誘導するのは自由です。例えば、皆さんがストリクチャーの中立条項によって保護されたエリアを出ようとしても、デイドラは教えないかもしれません。

安全を確保するため、私たちは知る限りの領域を皆さんに示しています。ですが、常に助言と指示に注意しなかった従業員を失っています。ファーグレイブでは、推測で安全性を判断しないでください。

中立条項に加え、ストリクチャーは主にファーグレイブでデイドラが他のデイドラと接触する際の難解な方法に細かく対応しています。これは途方もなく複雑なため、私たちが知る限り完全な形ではどこにも書き記されていません。私たちがファーグレイブで事業を開始してからもう200年以上になりますが、未だに大市場の営業へ影響を与える新たなルールを発見しています。そこで、グラスプの存在が意味を持ちます。

グラスプ
グラスプは紛争裁定者の役割を果たし、あらゆる状況において複雑なルールのどれが適用されるのかを判定するため、ストリクチャーの規則によって任命されたデイドラです。彼らは治安官ではありません――少なくとも他のデイドラにとっては。ストリクチャーがデイドラに適用されると、その影響と罰則は回避できません。しかし、我々定命の者はストリクチャーによって縛られていません。つまりグラスプのデイドラが定命の者にファーグレイブの平和をしっかり維持させるには、物理的に規則を強制せざるを得ません。

重要:ストリクチャーを擁護する役割のため、グラスプのデイドラはファーグレイブの中立地区内でかなり自由に武力を行使できます。彼らは平和を脅かす(と判断した)定命の者を制圧、追放、殺害できるのです。ファーグレイブのデイドラ全員が自分を傷つける力を持っていないと考えてはいけません――グラスプの見ている前でデイドラを怒らせれば、彼らは介入するでしょう。

グラスプへの対処が難しいことがお分かりでしょう。彼らは定命の者がストリクチャーに縛られていないことを知っていて、基本的に皆さんが容認されないことに関わっているのではないかと疑っています。仕事をする際には止められ、質問されることを想定してください。そして不正に得た品物を手にしたら、どうかそれを持ったままグラスプに捕まらないでください!

グラスプに力を行使させることのないよう、くれぐれもお願いします。

もし質問や懸念がある場合は、ヘクソス家の上長にお問い合わせください。

セヴァーの動植物Flora and Fauna of the Sever

魔術師ギルド研究員、アンスロパス・ガリア 著

大方の素人学者は、デッドランドがメエルーンズ・デイゴンの領土だから、生命のない荒野だと思い込む。確かに、デッドランドの一部には特定のデイドラ以外住めないところもある。結局、溶岩の池の生態学を学んだところで大した意味はない。だが、生命は生存に適さないような場所ですら、しがみつく方法を見出す。いかに過酷であっても。セヴァーと呼ばれる地域はその一例だ。

暴風が吹き荒れ、稲妻はやまず、気温が激しく上下するのがセヴァーの特徴だ。存在する土壌も険しい岩石にうっすらと積もった埃程度だ。しかしこのような環境でも、驚くほど多様な動植物が生き延びている。この巻では、かの地で私が分類した生物のごく一部を詳述する。

動物

アッシュホッパー
その大きさが猫の成獣並みの巨大昆虫。アッシュホッパーは独立行動する採食者で、餌とするのはセヴァーの岩だらけの峡谷や丘陵地に生える固い苔や草だ。彼らは少量の腐肉を食べることもあるが、かの地にはより巨大で危険な腐食性動物がうろついている。一般的な餌動物として、アッシュホッパーはセヴァーの多くの捕食者の主食になっている。この昆虫は、似ているもののニルン各地にいるものとは違う。彼らがオブリビオンで過ごしてきた時間が、まだ完全には判明していない微妙な変化を生んだものと思われる。

デイドラット
アッシュホッパー同様、定命の世界のネズミに比べれば大型で危険ではあるが、セヴァーの食物連鎖では下位に位置する。アッシュホッパーは定命の害虫だが、デイドラットはデイドラ的な特質と食欲を備えた生物だ。彼らは食物も水もなく半永久的に生きられるが、飢えに駆られて何らかの食物を永久に探し続けている。大抵は単独で行動するが、小さな群れをなすこともあり、うかつな冒険者にとっては危険な存在になりうる。

ニクサド
ニクサドという奇妙な亜人型昆虫は驚くほどセヴァーのあちこちにいる。吹き荒れる風がやみただの凪に変わるや否や、この小さな獣の集団が姿を現わして、お気に入りの低木や茂みの上で飛び周り始める。ニクサドはデイドラの獣ではないものの、この自然環境によく適応している。セヴァーの恒常的な稲妻が、ニクサドを招き寄せているのではないかと思われる(なぜそうなのかという理由は推測するしかない)。

ウォッチリング
無数の目を持つ恐怖の存在、ウォッチリングほど恐ろしく、異質なデイドラの獣はいまい。しかし意外なことに、この奇妙な存在は最初から大きく危険な怪物なわけではない。かなり小さなものもいて、人間の拳ほどのサイズだ。このウォッチリング(そのように呼ばれている)はより大きな獣から生まれるわけではない。デイドラは子を生まない。彼らは単に彼らの種の小型の存在で、恐怖すべきでなく、純粋に興味を抱くべき存在だ。彼らが小さいままでいるのか、それともいずれ大型に変身するのか?まだ結論は出ていない。

植物

ブラッドグラス
デッドランドの他の場所と同様、ブラッドグラスはセヴァーのあちこちで茂っている。特徴は荒れ地で育つ長く華奢な深紅の茎だ。アッシュホッパーはこの固く鋭い茎を噛み裂けるようだが、見る限り他の誰もブラッドグラスを食べない。

エンバーオーク
セヴァーのどこに行っても、黒焦げになったかつて生きていた樹の残骸に出くわす。そもそもこのような環境でどうやって育っていけるのか分からないが、明らかに死ぬまでそれなりのサイズに達するほど長く生きている。しかし、中には見た目ほど死んでいないものもある。エンバーオークは樹冠がなく幹の太い植物で、稲妻に撃たれた切株に似ている。実際に樹皮の割れ目には赤く光る木炭が見え、それと分かるほどの熱を放っている。しかしこの樹木はまだ生きていて、水もなくゆっくりと成長している。この木は地面から栄養素を吸い上げる根によって支えられており、我々の世界の樹木が陽光で育つように、稲妻に撃たれることで繁茂するのではないかと思われる。

スタティックピッチャー
セヴァーで最も一般的な食肉植物はスタティックピッチャーだ。この奇妙な植生は周囲の環境から吸収した電気エネルギーで発光し、かすかにパチパチという音を立てている。ネズミより大きな生物がうかつにも近づきすぎると、突然放電して感電させ、即死させることもある。通常、ピッチャーは暖かい沼地のような環境を好むが、セヴァーはそういうところからかけ離れた土地だ。私にできる推測は、デッドランドのこの地域の恒常的な落雷が、この危険な植物の繁殖を助けているというものだ。

デイドラの真の性質On the True Nature of Daedra

デイドラ学の第一人者、カナンミルディル 著

あまり知られていないデイドラに関する発見をしたのは、奇妙な形のサイコロのようなものを動かしている、重装備のズィヴィライ戦士2名の隣に立っていた時だった。彼らはどちらの意志が強く、サイコロを有利に転がせるかと議論していた。バラバラにしてやるぞという脅しが幾度も交わされたのを覚えているが、印象深かったのは、ズィヴィライがサイコロのようなものに影響を与え操作できることをほのめかしていたことだ。それがサイコロだと仮定するなら、だが。サイコロを自在に動かせるなら、他にどんなものへ意志を働かせられるのか?

私は急ぎ書斎に戻り、可能性を考慮し始めた。以下が私の結論だ。デイドラの肉体の動かし方は定命の者とは異なる。彼らの意識は自身の身体の周辺に漂っており、肉体や他の物体を自在に操れる。これでデイドラが倒されても死なないことの説明がつく。彼らの身のこなしが、定命の者には遠く及ばないほど洗練され優雅なことも。監視人が翼も使わずに浮かぶことすら説明がつく!浅い学者は後述の論点を魔法を使って実現しているのだと言うだろうが、それは安易な説明だ。

別の発見は、ドレモラがデイドラの中で唯一の厳格な草食動物であることだ。彼らは生存し続けるために食物を摂取する必要がなく、どんなものであれ肉を食べると消化器官が機能不全を起こしてしまう。彼らが味わう苦しみは、ドレモラに現在の経験を考え直させ、より苦痛の少ない状態で再生されることを願って、自らオブリビオンに帰りたくなるほどだ。

最後に、デイドラの知性は彼らが仕えるデイドラ公に比例していないことだ。さて、これはそれほど異常なことでもあるまい。最も愚かな定命の主君に、極めて知能の高い側近が助言するのはよくあることだ。だが、知識や狡猾といった郎息を司るデイドラ公がいる時、スキャンプがスカーフィンより賢いのは非論理的にも思える。しかし、それこそ私が観察した時に起きたことだ。名前は明かすまい。そんなことをすれば残酷だし、学者失格だ。だが信じてほしい。スキャンプの指図を受けるスカーフィンがいたのだ。スキャンプが早口でまくしたて、あれこれいいことを言ったようだった。一方、スカーフィンは大人しくその後に従って歩いていた。

私はいまだにデイドラの行動について実験と観察記録を続けているので、こういった発見が出版されるのは後日になるだろう。私の知識の及ぶ限り、純粋に科学的な手法を取る唯一のデイドラ学者は私だけだ。研究対象のデイドラからの助言に頼ることはまったくない。彼らが真実を言うことも、客観性を保つこともないからだ。そういうわけで発見には長い期間を要するが、研究の質は図抜けている。独特の手法と幾つもの驚愕の発見ゆえに、この分野での先駆者は私だと言えよう。ペラギウス・ハーバーからこんな真実は手に入れられまい?

デッドライトの伝説The Legend of Deadlight

(アービス収集団に流布している物語)

昔々、スリージェスツのフロファルドという勇敢な収集者が、デッドランド中に散在する忘れさられたデイドラのポータルの台座を開く鍵を見つけた。

(いや、どうして彼がスリージェスツのフロファルドと呼ばれていたかは誰も知らない。この物語をするたびにその質問を受ける)

フロファルドはポータルのネットワークを探検に出かけた。そして隠された秘密を一つずつ暴いていった。ほとんどのポータルは遺跡となって久しい場所に続いていた。一方、まだメエルーンズ・デイゴンに忠誠を誓うデイドラであふれかえる要塞に通じているものや、他の次元につながっているものもあった。フロファルドは極めて慎重に進んでいった。デッドランドより危険なところに取り残されたくなかったからだ。探検を通して彼は貴重な神秘を目にし、面白い財宝を手に入れた。そしてある日、彼は帰ってこなくなった。

それなりに時が経ってから、収集者たちはファーグレイブの運び手の休息所の壁に彼の外套を掛け、名誉のために乾杯し、最後の旅の安全を祈願した。

歳月は流れた。あまりに流れて、フロファルドの名もその冒険のことを知る者もめっきり減った頃、雪のように白い髭を生やし、ぼろをまとった男が現れた。恐ろしいほどの高齢になり、腰は曲がっていた。彼は運び手の休息所によろよろと入ると、壁の外套を取った。「私がフロファルドだ」と彼はその場にいた者に言った。「世界の果てを見て帰ってきたのだ」。そして彼は物語を語った。

彼が消えた日、フロファルドは鍵を使って、崩れかけたポータルの台座を復活させた。入ってみると、そこは不毛の荒野だった。星一つない空に浮かぶ、緑のおどろおどろしいオーロラの光にだけ照らされて、荒れ果てた要塞が立っていた。それでもフロファルドはひるまなかった。最初は恐ろし気に見える次元は珍しくないからだ。何より彼が動揺したのは、この次元に生命も力もまったくないことだった。彼の持つ鍵は力を使い果たしており、この新たな次元には鍵を充填するために必要な原初の力がなかった。

フロファルドは周囲の探索に出かけ、脱出口になりうる他のポータルを探した。だが彼は、この未知の次元が砕け散った残骸にすぎないことに気づいた。凄まじい災厄に見舞われたかつての世界のなれの果てでしかないのだと。数時間歩くと、この寂しい残骸のちぎられたような岸とオブリビオンの海が接するところへとたどり着いた。そして帰る道はなかった。

いかにしてフロファルドがその陰鬱な地で命を保つべく苦闘したかは記録がない。次元の残骸のあちこちで見つけた死骸を漁って生き延びたと言う者もいる。生命と光が消え果たその地では、飢餓という自然のサイクルが這うように緩慢だったと言う者もいる。いずれにせよ、スリージェスツのフロハルドは耐え忍び、ゆっくりやつれていった。たった一人で。

そしてある日、新たなポータルがその領域で開いた。ポータルをくぐったのは2人。司祭のローブに身を包んだ高貴な定命の者と高位のドレモラだった。フロファルドは這い寄って、彼らの話に耳を傾けた。助けを請うた方が賢明なようならそうするつもりだった。

「見ろ、この荒れ果てた世界を、定命の者」とドレモラが司祭に言った。「すでに名前も忘れ去られたデイドラ公の領域の残骸だ。お前の種族がお前の世界で歩み始める前に、破壊のデイドラ公はその敵に戦を仕掛け、その本拠地を壊滅させたのだ。メエルーンズ・デイゴンの憤怒を生き延びられる者などない。これは彼からの贈り物だ。彼の力を示し、味方とも敵とも約束を果たす証拠だ」

定命の司祭は畏怖しているようだった。「大いなる王の教訓に感謝いたします」と彼は言った。そしてその場でひれ伏すと、デイゴンを礼拝し始めた。

祈りの言葉を終えて立ち上がると、司祭はデイドラと共にポータルを通って還っていった。フロファルドは脱出のチャンスと見て、よろばいでた。すんでのところで閉じかけたポータルを潜り抜けると、そこは彼と同様に老いさらばえて荒れ果てたデッドランドだと気づいた。

今日に至るまで、この壊滅した次元を見つけた者はいない。「死んだ光の世界」とフロファルドが呼ぶ世界を。忘れられた財宝がまだそこに隠されていて、そこへの道を見つけ出してデイゴンの戦利品をくすねられるほど賢い収集者を待っているのではないかと考える者もいる。定命の者が、ほとんど目にしたことのない光景について考える者もいる。

とはいえ、デッドライトを探しに行った収集者はほとんどいないことを付け加えておこう。財宝を探すなら、もっとましなところがあるからだ。

デッドライトへの召喚Summons to Deadlight

目覚めの炎の者たちへ

デッドライトの要塞は聖堂、修練所、本部としてよく機能している。我らの主、メエルーンズ・デイゴンはこの不運な次元に神聖なる破壊をもたらすため、恩寵の印として私たちにデッドライトをお預けくださった。

勝利の準備を整えられる堅固な避難所として、デッドライトが最終的な目的を果たす時がきた。この隔離された領域に隠れ、私たちは我らの主の転生者に生命を吹き込む――1体の生きた災厄ではなく、生きた災厄の大軍に。

直ちにデッドライトを、扉のない要塞にしなくてはならない。他の拠点や領域につながるポータルは遮断する。血の穴の先にある溶岩の川の上に位置する西門を除いて。このポータルは開いたままにするが、鍵と暗号で保護して、デッドライトに加わる者が移動できるようにする。

門を封じるまでは、デイドラに対する強力な結界で守ることにする。私たちはもはや我らの主、メエルーンズ・デイゴンに仕える他者を信用できない。彼らは私たちの成功を妬んでおり、気を許せば取って代わられるだろう。ポータルの鍵を持っていようといまいと、彼らは締め出さなければならない。

我が仲間たちよ、デッドライトに来なさい。最後の任務は目前だ。

シスター・セルディナ 著

デッドランドの食料Food of the Deadlands

ヘクソス家の補給係、フララヴ・ポラス 著

もしデッドランドと呼ばれる災厄のデイドラ公、メエルーンズ・デイゴンの領域をさまようなら、食料と水を持参するべきだ。パンとホイールチーズ、乾燥肉やワインと水を持てるだけ持っていけ。この領域で調達しなければならないなら、定命の者が摂取できるのは下記の通りだ。

デイドラットの串
デッドランドをさまよう者によく知られている一般的な料理だ。デイドラットの串焼きで、見た目ほどまずくはない。よく調理したデイドラットは驚くほど美味で、その肉の持つ野趣あふれる味わいと食感を補うスパイスはほとんど必要ない。魅力に付け加えるなら、これは荒涼とした領域をとぼとぼと歩きながら食べられる食料だ。デイドラット一頭で一日以上の間、空腹を満たすことができる。この料理の唯一の難点は、近くに集落があって取引できない場合、図抜けた狩猟の腕を必要とすることだ。デイドラットは素早く、狡猾で、とても鋭い歯を持っている。狩りの手間は成果に見合わないかもしれない。ここで、デイドラの死体に栄養価があるのかという問題にもぶち当たる。これについてはわからないが、ポータルにたどりついてファーグレイブへ戻るまで、飢えをしのげたことはお伝えしよう。

デッドランドの小枝シチュー
デッドランド中には木々がまばらに生えていて、飢えた旅人に別の選択肢を提供してくれる。死んだ木々から集めた枝と大量のお湯で、うまいシチューができる。長く煮込むほど、枝は美味になる。デイドラットのくず肉かバックパックに残った糧食を加えてシチューのかさ増しをしても、味を加えてもいい。

焦げた肉
飢えてデッドランドで迷ったら、食料をえり好みする余裕はない。幸運なことに、正体不明の焦げた炙り肉の塊には事欠かない。完全に焦げたウェルダンの肉が、領域中に転がっている。燃える前に、その肉がどんな姿をしていたかは考えるべきではない。

フラッシュベイクド・アッシュホッパー
アッシュホッパーもデッドランドにあふれている獣だ。ヴァーデンフェルと呼ばれるニルンの地域を旅した者には馴染み深いだろう。この獣がデッドランドに来て、生き残るどころか栄えているのはその耐久力のおかげである。虫を捕まえてバーンの溶岩に放り込んでみると、 飢えた定命の者が得られるデッドランド最高の珍味が生まれた。時間に余裕があるなら虫を集めてゼリーにするといい。モロウウィンドのダークエルフには人気のメニューだ。さらにアッシュホッパーの殻は耐熱性があり、足を覆うこともできる。

デッドランド案内A Guide to the Deadlands

星を歩む者 著

オブリビオンの全次元において、デッドランドより旅人を拒む場所を見つけるのは難しい。メエルーンズ・デイゴンの軍団が警戒し、スパイ、侵略者、脱獄囚に目を光らせている。おまけに恐ろしいモンスターが獲物を求めて徘徊し、しかも気候は恐ろしい噴火の続く火山地帯から、極寒の嵐が唸りをあげて吹きすさぶ荒野まである。そして大地もカミソリのように鋭い岩、ナイフのような岩棚、切り立った谷間を形成している。とは言え、この地において旅人は定命の者が滅多に見ることのできない光景を目にできる。命があれば。

デイゴンの領域への旅を生き延びるには準備が鍵になる。まずは旅に必要となる食料を全て詰め込め。デッドランドという地名は伊達じゃない。食料はほとんど見つからないし、見つかってもロクなものではない。運べるだけの水を運び込め。この世界の半分は溶岩の荒野で覆われ、残りは石で覆われた荒野だ。泉や池に出くわしても汚染されているか、定命の者が飲むのに適していない。

最も大事なことは訪問が終わった時、デイゴンの領域からどう抜け出すかを決めておくことだ。デッドランドへつながるポータルの多くは気まぐれで頼りにならない。旅人を招じ入れはするが、出口としての機能がないのだ。少なくとも3種の脱出方法を用意していなければ、デッドランドを訪れる準備ができているとは言えない。

デッドランドを訪ねる最も簡単な方法は、まず天空の籠、ファーグレイブまで行くことだ。この街の郊外にある広場には二つの常設ポータルがあり、それぞれデッドランドの異なった場所につながっている。このポータルは安定していて、メエルーンズ・デイゴンの軍勢が滅多に巡視しない辺境の地につながっている。ニルンや他の次元で見つけるポータルには気をつけることだ。要塞やダンジョンの真ん中に放り出されることがままある(しかも双方向ではない場合がしょっちゅうだ)。

さて、デッドランド本土の話に戻ろう。メエルーンズ・デイゴンの領域は地域に分かれている。ファーグレイブからの旅人によく知られている主要地域はバーンとセヴァーだ。バーンは火山性の荒れ地で、溶岩の川とデイゴンの軍勢がひしめく要塞が林立している。セヴァーは寒く、風が吹き荒れる石の荒野だ。大きな要塞の間には、強力な怪物と血眼になったスカベンジャーがたくさんいる。この二つの地域の間には名もなく険しい山岳地帯が連なり、通り道は少ない。

勇敢な旅人向けの旅程としては、ファーグレイブからバーン行きのポータルを使うことをお勧めする。ポータルのプラットフォームのそばを通る道を西に向かえ。この道は灼熱の渦の砦と呼ばれる陰惨な要塞に続く。その古びた塔を見ながら先へ進むといい。誰も歓迎してはくれないが。さらに北へ進めば、血の穴と呼ばれる悲惨な牢獄兼鉱山を過ぎる。ここでは破壊のデイドラ公の機嫌を損ねた多くの者が、惨めな一生が終わるまで労役に苦しめられている。彼らの仲間になりたくはないだろう。

高く、曲がりくねった道は血の穴の北にある丘を通り、切望の要塞という大要塞のある東へ続いている。この要塞はメエルーンズ・デイゴンの軍勢が詰める777の要塞でも随一のものだ。この一帯の警戒は厳重だから、遠くから眺めるだけにしておくべきだろう。上の丘を東に進み続けると、セヴァーにつながるトンネルがある。このトンネルは破壊の安置所の玄関先へと連れて行ってくれる。

ここで長居してはならない。この死んだように見える都市はメエルーンズ・デイゴンの本拠地だ。ゲートが開いていても、入ってはならない!

東へと下る道を進み、陰鬱なセヴァーの平原を横切ると、南北へ伸びる道にぶつかる。進むべきは南だが、気をつけろ。この道を永遠に徘徊する凶悪なハヴォクレルは、出会った者に挑戦し続けるよう命じられている。だが、やがて荒れ果てた不毛の地へと出るだろう。そこにある南に向かう道は、デッドランドのこの付近における安全な避難所に通じている。哀れなる者の尖塔と呼ばれる地だ。

哀れなる者の尖塔は、大きな聖堂の残骸の側に建設されている。この聖堂はメエルーンズ・デイゴンがずっと昔、ニルンからデッドランドへと引きずり込んだものだ。ここは追放者やスカベンジャーなど、デイゴンの目を逃れたい者たちの楽園となっている。どういうわけか、デイゴンの下僕たちは決してこの地に近寄ろうとしない。名誉を失ったわずかなデイドラと、迷い込んだ(もしくは逃げてきた)定命の者がmある種の集落を造り上げている。暮らしは厳しいが、旅人を休ませ、いくばくかの物資を調達するくらいのことはできる。

哀れなる者の尖塔から、道は東の高地へと続き、セヴァーの東へと伸びていく。ここには安全なファーグレイブへと帰れるポータルがある。だがメエルーンズ・デイゴンの世界をもう一目見ておきたいのなら、もう少々北へと進むと偽殉死者のフォリーがある。セヴァーの山間の恐ろしい谷間にへばりつく死んだ森、フォリーには、メエルーンズ・デイゴンを怒らせた者たちの魂が捕らわれているという。恐ろしいサイズの昆虫の腐りかけた死骸や、うるさいインプが森の中に潜んでいる。ここでも、長居は禁物だ。デイゴンの敵の石化した残骸を見たら、手遅れになる前に脱出すべきだ。

幸運を祈る、旅人よ!

テロファサの日記Telofasa’s Diary

周期5679

マダム・ウィムと面倒な助手のナスに回収を依頼された次元石を持って、ファーグレイブに向かっている。彼らは大事なウィムの館で待っている。約束されたゴールドは、今でも後でも変わらないだろう。

ちょっとした遊びとして、石を入れたままバックパックをフォリーに放置することにした。そのうち取りに戻ればいい。マダム・ウィムには待たせておこう。強行軍の遠出にはうんざりだ。報酬なんて何の意味もない。私の存在が復活するのは、自分で願った時だけだ。

偽殉死者のフォリーの嵐は前と違っている気がする。前回通り抜けた時は、数歩ごとに稲妻を集める杖が地面から突き出していなかった。杖のおかげで感電を避けるのが容易になったように思う。焼けこげた肉体でオブリビオンに戻るのはまっぴらだ。だが、今は誰でもフォリーを通り抜けられる。少しも大したことじゃない。手応えもない。時間はあらゆることをつまらなくしてしまう。すぐに定命の者が、極めて需要のある品を回収する平凡な仕事をこなすようになるだろう。

かつて勇気と技は意味のあるものだった。存在が自分の力に挑んだ。私の進むべき道は明らかだ。もう一度冒険のスリルを感じたいなら、さらなる危険に身を晒す必要があるだろう。それが唯一の方法だ。

ドレモラのクランに関してOn Dremora Clans

ディヴァイス・ファー 著

定命の者がオブリビオンの無数の軍団を数えられるなどと思ってはならない。デイドラ種族の目録を作るだけでも一生の仕事だ。よりややこしいことに、デイドラの多くが恐ろしく多様な忠誠心と目的を持った組織を作っている。ドレモラもその例に漏れない。

クランとは単なるドレモラの同盟宣言ではない。デイドラに永遠の刻印をする結盟であり、真名を意味するニミックを変え、そのありようをも変えてしまう。デイドラのニミック自体も独立した論文を要する主題ではある。とにかくこの話をするにあたっては、ドレモラがクランと自己のアイデンティティを切り離せないと言っておけばよいだろう。デイドラの場合はよくあることだが、例え死んでもクランの結盟が、オブリビオンから戻ってきた時点のドレモラの姿を決める。

とても多くのドレモラのクランがオブリビオンの次元で暮らしている。そのほとんどがニルンの賢者に知られていない。最も経験豊富な次元の旅人ですら、遭遇するドレモラのクランは一握りといったところだ。絡み合う同盟の網やライバル関係、様々なクランを結びつける憎悪の絆について、理解を深めることもない。ドレモラがどのクランに所属し、定命の者をどう見ているのかを把握するまで、旅人はその怪物が害をなすと思っておいたほうが賢明だ。

その戒めを前提として、比較的知られているドレモラ種族を簡単に説明しよう。なお、クランが通称する「名前」がニミックでないことは覚えておきたい。ニミックは重要機密だ。しかしクランの通称はあり方の一部を反映しているか、クランのニミックの真相を反映している場合もある。

大まかな地位により、以下昇順に記載する:

ヴァンキッシュド・クラン
庇護してくれるデイドラ公のない独立クラン。ヴァンキッシュドは追放者や亡命者で構成され、他のドレモラから軽侮されている。忠誠を誓ったデイドラ公が完膚ないまでに叩き潰された場合、生き残ったドレモラはヴァンキッシュドになると推測する定命の賢者もいる。別の説では、ヴァンキッシュドが大失態や背信に対する刑罰の儀式でのみ作りだされると考えている。ヴァンキッシュド自身は認めないが、耐えがたい苦しみを耐えることに彼らは苦い自負心を抱いている。それでも彼らはドレモラのままだ。つまり、劣っていると思う者に対しては残酷で傲慢だ。

ファイアスカージ・クラン
メエルーンズ・デイゴンは他のどのデイドラ公よりも多くのドレモラ同盟を支配している。ほとんどのドレモラ軍団の戦士たちはデイゴンの777の要塞に駐屯し、オーバーロードに出陣を命じられるまで待っている。ファイアスカージは数こそ多いが地位の低いクランで、洪水と炎の王の忠実な歩兵を努めている。

ドゥームドリヴン・クラン
マラキャスの下僕として、ドゥームドリヴン・クランはオースブレイカーにニルンの信者への使者として遣わされることがある。しかし、彼らはアッシュピットのオークの霊魂の軍団の元帥や指揮官を務めていることのほうが多い。

ブラッドレイス・クラン
デイドラ公ボエシアに仕えるブラッドレイスは大掛かりなトーナメントでチャンピオンに挑み、試練を与えることを使命としている。シャドウナイトと闇の魔術師という名のみが知られる強力な君主が、終わりなきアリーナの試合にクランを駆り立てている。

レイザースウォーン・クラン
破壊のデイドラ公、メエルーンズ・デイゴンに仕えるもう一つのドレモラクラン。レイザースウォーンは略奪者やアサシンとして活動し、他の領域にいるデイゴンの敵を討つために送りこまれる。彼らはファイアスカージを蔑視するが、ルインブラッドの権勢に苦しめられている。

ブレードベアラー・クラン
独立を貴ぶブレードベアラーはデイドラ公に仕えていない。誇り高き戦士で、戦場での勝利によって自らの価値を決める。結果として、定命の傭兵のように世界を股にかけては身を投じられる戦いを探し、どちらかに参戦するため取引を持ち掛けることもある。独立系クランでは最も名高く、強力なクランだ。

フットキラー・クラン
大抵のクランは自ら選んだデイドラ公と長きに渡って絆を保ち、忠誠は揺らがず、関係も変わらない。フットキラーは少なくとも一度は主人を代え、モラグ・バルを捨てた。企みの神が彼らの仇敵であるデスブリンガーを認め、彼らに取って代わらせたからだ。賢者の中にはフットキラーがもう存在しないと考える者もいる。悪名高きドレモラ、ライランスは最後のフットキラーと呼ばれることもある。

デスブリンガー・クラン
モラグ・バルの下僕の中での地位が高いデスブリンガーは、長年フットキラー・クランのライバルだった。ヴァルキナズ・セリスの指揮により、デスブリンガーはフットキラー・クランを引きずり下ろし、追放することに成功した。最後の報告によれば彼らは暗い要塞からコールドハーバーの大半を手中に収めたとのことだ。

ルインブラッド・クラン
メエルーンズ・デイゴンに仕えるクランの中でも最強のクランであるルインブラッドは、破壊のデイドラ公の野望を実行することを任された精鋭の衛兵であり、上級指揮官である。このクランの魔術師はデイドラと定命の者双方の血を用いた魔法に長け、しばしば「ブラッドアデプト」と呼ばれる。このクランの者たちは、デイゴンの軍団の戦士長や士官を務めていることもある。クランの指導者はヴァルキナズ・ノクブロズで、切望の要塞の司令官でもある。

ドレモラは死なずDremora Never Die

ファーグレイブの酔っ払いの歌

故郷を遠く離れて、なお我々は酒を飲む
ここのエールは変わっているが、不死者はがぶがぶ飲む!
ここの仲間は飲みもしないし、食いもしない
楽しみなくして生き続けるとは、驚くほかない!

きっと凄く退屈だろうが、我々が助けましょ
下品で、死に怯える定命の俺たちがご一緒
酔わないなら飲んでも無意味だ
定命の者と戯れるとは落ちたな、いい気味だ

全部ただのおふざけさ、奴らを見下したりしないさ
ここの仲間は誰にも負けやしないさ!
変わることなく、眠ることもなく、よからぬことを企んでるんだ
我らが不死の友は、誤解されてるんだ!

飲め、飲め、飲め、ドレモラのために!
動物なのか植物なのか、よく分からない奴らのために!
飲め、飲め、飲め、ドレモラのために!
俺たちが死に絶えた後も、残る奴らのために!

バーンの動植物Flora and Fauna of the Burn

魔術師ギルド研究員、アンスロパス・ガリア 著

メエルーンズ・デイゴンの領域、デッドランドは通説と異なり、単一の環境ではない。領域は様々な地方に分かれ、それぞれに凄惨で過酷さを形容する名がついている。例えばバーンだ。バーンを一切の生命がいない地獄のような環境だと思いこむのは愚かだ。確かに火山帯の荒涼とした土地ではあるが、それでも活気に満ちている。実際、ここで目にする全ての野生動物や植物を記録すると1冊の本に収まりきらない。この巻では主だった種族のみを記載する。だが読者に強調しておきたいのは、ここに出てくるのがこの過酷ながらも美しい地域で出会うであろう生物の、ほんの一部でしかないことだ。

動物

クランフィア
クランフィアは知能の低いトカゲのようなデイドラだ(異論を唱える者もいる)。ここで各種の定説について論じるのは避ける。クランフィアについて覚えておくべき最も重要なことは、甘く見てはならないことだ。その牙は定命の者の肉体をやすやすと切り裂き、その肉体は鋭い鱗に覆われている。鋭利な爪を持ち、棘の生えた尻尾は刃物にも鈍器にもなる。小さいからといって、侮ってはならない!

スキャンプ
バーンでは珍しく、悲鳴を上げて逃げ出したくならない獣だ。スキャンプは小型の亜人デイドラで、微弱な魔法のような力を操る。デッドランドに住まうものを無害(断言するがスキャンプもある程度の脅威となりうる)と言ったら無責任になるが、この獣は往々にしてとても臆病で、切迫した脅威になることは少ない。むしろ、彼らが仕えるより大きなデイドラを懸念すべきだ。スキャンプにはたくさんの種類があるが、最もよく遭遇するのはバーンにいるマグマの変種だろう。

ドレムナケン
ドレムナケンはデイドラで、その大きさは大型犬程度から一番大きなノルドすら見下ろせるものまでまちまちだ。この四本足のデイドラが群れをなしてバーンをうろついているのをよく見かけるだろうが、その獣のような姿に騙されてはならない。彼らは私たちと同じ程度か、それ以上に賢い。だが彼らには神々の力に対するやまぬ飢えと、満足するまで狩りを続けなければならない暗い欲求がある。メエルーンズ・デイゴンの軍勢はその肉体的な欲求を利用し、敵を追跡して殺すためにドレムナケンを使役する。中には精巧な鎧に身を包んでいるものもいるが、針のように鋭い歯や、尖った爪がある以上、余分にも見える。この獣に備わった純粋な力だけでも、十分な威力を持つ。

植物

スピッダル
スピッダルは簡単に見分けられる。これはバーンで育つ数少ない花だからだ。申し訳程度に花のようなものが、ぬめりのある棘だらけの茎に咲く。大抵は黄だが、熱源のそばには赤とオレンジの変種も育つ。自生しているのを見かけたら、最大限警戒すべきだ。デッドランドに咲くものは、毒ガスを放って自衛する。

ハラーダの根
ハラーダの根は扱いが難しい。この本を執筆するため、私は遥か遠くから自然を観察するのを好むが、その私でさえこの苛立たしい植物の射程を見くびっていたと言わざるを得ない。どうにか回避したが、帽子が棘で裂けてしまった。

変種は2種類ある。一つは洞窟などでよく見かけ、もう一方はより広い屋外で育つ。屋外の種はまっすぐ上に伸びるか、または蔦のように岩沿いへ伸びる。洞窟の種は天井から垂れさがる。その姿がどうであれ、この根は近づき過ぎた者を見境なく襲ってくる。

ブラッドグラス
デッドランドのあちこちに生息するブラッドグラスは、華奢で、深紅の茎を持ち、荒れ地に育つので簡単に見分けられる。必ずしも危険ではないが、この植物のそばでは気をつけるべきだ。その葉は見かけによらず鋭い。正しく収穫すれば、葉は独特な錬金術の効能をもたらす。

ピビハのメモPibiha’s Note

これを見つけた親切な方、どうかこの者の妹に渡してください。妹の名はトゥフェ。ファーグレイブにいます。不可能かもしれないということは分かっています。これだけ無責任な略奪者とペテン師がたくさんいては、ファーグレイブにいつでもたどり着ける訳ではない。でも、これはピビハが最後に残す生きた証となる。何とか妹の手に届くよう願っています。

トゥフェへ

賢いのはいつもあなたの方だった。最初にあなたから目覚めの炎教団にいくなんて、問題を求めに行くようなものだと言われた時に従っておくべきだった。

妹よ、あなたはきっと誇りに思ってくれると思う。どれだけ教官が鞭や言葉と、斧を駆使しても決して折れなかったピビハのことを。もしあなたが想像しているなら申し訳ないけど、この者はどんな恐怖を生き延びたかについて書き留めるつもりはないことをわかって。デイゴンの悪臭を放つ脇にかけて、ここで奴らが囚人にしていることをあなたに伝えはしない。

奴らは私たちにも同じような考えを持たせようとした。ピビハは一緒に捕まった仲間の多くが、らしからぬ行動をとり始めるのを目にした。彼らはさらに怒りを募らせ、浄化の炎が皮膚を浄めることを切望したの。正気の沙汰とは思えなかった。この者がそんな考えを持ったことは一切ない。

最後にあなたの顔を見てから、ずいぶん長い時間が経ってしまった。そのことは後悔している。ここの時間の流れは奇妙よ。空を見ることができないので。トゥフェ。他に悔やんでいるとすれば、このオグリムの尻のおできの中に入ってから、毛皮を吹き抜けるそよ風を感じていないこと。まるで最後に世界を見てから一生分ぐらいの時間が経ったように感じるけど、心の中ではそこまで長くないこともわかっている。

仔猫よ、この者は疲れた。それに寒さで手がけいれんしている。信念に忠実でいて。あなたが何をしようと、姉があなたを愛していることを知っていて。

ピビハ

ファーグレイブの運び手The Bearers of Fargrave

定命の歴史家オレッテ・アルボガスク 著

私はニルンよりもファーグレイブに長く住んでいるが、この場所には今でも驚かされる!私はここ運び手の休息所に座り、目の前に筆記用具を広げ、テーブルには未開封のスパイス入りドリームワインを用意してある。この理想的な場所で、ここに名前を与えた存在、すなわちファーグレイブの運び手について発見したことを記録していこうと思う。

ファーグレイブを訪ねるか、長く滞在した者なら誰でも知っているだろう。見上げればファーグレイブの中央地区周辺を守る境界のようなものを築いている、巨大な骸骨が目に入るはずだ。ちなみに、これは動く骸骨ではない。この巨大な人型生物の骨が一歩でも動くのを見た者は、ドレモラの一生分ほどの時間を遡っても見つからない。また、骸骨の様々な部位がこの街中に自然の地形を生み出している。

ここに座って死に、岩のように固い構造物になって今の空を覆う前、この巨大な生物は一体何者だったのか?本当のことは誰も知らない。しかし仮説は多い。私のお気に入りの説をいくつか話した後、ファーグレイブの運び手の真実についての考えを述べよう。

定命の者の間で人気の仮説は、ファーグレイブがかつて四柱のデイドラ公が支配圏を巡って争う領域だったというものだ。うち続く戦いの末、彼らは全員が同時に滅び、その体は崩れ落ちて分解され、今日我々が目にするような4体の巨大な骸骨を残したという。時を経て、デイドラも定命の者もこのデイドラ公のいない領域に来て、骸骨の間に街を築き、オブリビオンの驚異の地を生み出した、というわけだ。もちろんデイドラに聞けば、対立するデイドラ公が同じ領域の支配を争うなどという考えは一蹴されるだろう。

別のあまり知られていない物語によると、ファーグレイブはかつて、デイドラでもエドラでも定命の者でもない、ある巨人族の埋葬地のような場所だったとされている。スカイリムのマンモスの墓地のように、この巨大生物はファーグレイブを歩き回り、座ったり横になったりしていたが、時が来ると死を迎えた。こうして、今日も残っている骸骨のポーズが生まれた。この物語にも一定の支持者がいるが、骸骨4体では埋葬地にならないだろうとの指摘もある。

様々な物語の中でも一番のお気に入りは、この巨人たちをファーグレイブの運び手と呼ぶ話だ。この物語によると、ファーグレイブはオブリビオンのこの地点(それがどこかはともかくとして)に落ち着く以前、4体の運び手によって場所から場所へと運ばれていた。「天空の籠」という名称はそこから来ている。遠い昔、この巨人たちは荷物運びのように街を肩に担いで移動していたというのだ。これは永遠とも思えるほど長い間続き、街が行った領域と連結した。それが恒久的なポータルとして、今日も残っているのだ。

哀れな運び手たちに何があったのだろうか?誰も本当のことは知らないが、ポータルの連結が確立されてから、ファーグレイブを物理的に移動させることは不要になったのではないだろうか。運び手が不要になったことで、彼らは単純に存在する意志を失ったのだ。しかし彼らは長い間支えてきたこの場所を去ることなど考えられなかったので、かつて力を尽くして働いたその場所で座り込んで死んだという。

運び手たちは奴隷で、もはや忘れ去られた主のためにファーグレイブを運ばされていたと言う者もいる。私としては彼らが忠実な召使で、ファーグレイブとその古い住民たちへの愛のために働いたのだと思いたい。どんな住民だったのかは知る由もないが。

ファーグレイブの歌Fargrave’s Song

輝く夜の屋根の下
霊魂が眠りを知らぬ時
石炭は燃えて勇者を照らす
赤い足跡が真っすぐに
酒場の戸口へ続いてる
皆の声が、ファーグレイブを歌う!

巨人の骨が眠る地はアッシュピットから遥か遠く
外の道は暗く、明かりが灯ることもない
クランが見つけた最も偉大な街
生涯をかけてたどり着けるか
それでもファーグレイブは全て受け入れる!

ここはアポクリファではない
街の中の街、永遠に歌い継ごう
誰にでも利益を与え、誰にも慈悲を与えぬ
繁栄のための仕事は、決して終わらない
ファーグレイブのバザールは閉まらない!

輝く夜の屋根の下
霊魂が眠りを知らぬ時
石炭は燃えて勇者を照らす
赤い足跡が真っすぐに
酒場の戸口へ続いてる
皆の声が、ファーグレイブを歌う!

メリディアの彩られた部屋よりも活気があり
デイドラがいても危険が少ない
取引と交渉が、通りを残らず埋め尽くす
他人も仲間も、出会う相手は皆忘れない
ファーグレイブに入った日を!

虚無の星が遠くに輝く
デイドラ商人が昼から値切る
ポータル広場からどこにでも行ける
運び手の休息所に酒もある
ファーグレイブはいつでも宴会だ!

ファーグレイブの愚か者The Fool of Fargrave

(マダム・ウィムの依頼により吟遊詩人ティラシー・ミレルが執筆した隠者にまつわる歌。隠者を軽視したユーモラスな作品になるはずだったが、吟遊詩人はウィムの指示に従いながらも、この裏通りの人気者に敬意を払うため全力を尽くした)

本当に彼女を知る者はない
本人だって知りゃしない
彼女はあばら屋の隠者
このポータルと次元取引の場で

定命の者が空の手を差し出す
彼女はぼんやりと満たす
この商業の街で
利益も損も気にしない

彼女は仮面の女
解けぬパズル
隠遁の日々を送り
あなたの痛みを感じる、ファーグレイブの愚か者

本当に彼女を知る者はない
本人だって知りゃしない
彼女は裏通りの人気者
外せぬ仮面に捕らわれている

定命の者が嘆き悲しむ
彼らは飢えて苦しんでいる
彼女は支援に力を尽くす
好意もコインも求めずに

彼女は仮面の女
解けぬパズル
隠遁の日々を送り
あなたに手を差し伸べる、ファーグレイブの愚か者

ファーグレイブの事件Fargrave Happenings

ファーグレイブの出来事を記録した事件簿、イラーラ・キンヴァル 著。「ファーグレイブの目撃者」第94号掲載

今日は事件がたくさんあった。ドレモラの一団が、この素晴らしい街において定命の訪問客がゴミを保管し処理するために選んだ場所の封鎖に踏み切った。定命の者はファーグレイブのグラスプの官吏に、廃棄物を処理する仕組みが必要だと訴えた。簡潔でもあり、教育的すぎる訴えだった(事件の詳細は33ページを参照)。グラスプは廃棄物を街の境界の外に留め置く必要を感じ、定命の者の計画に合意した。それでも、この許可にファーグレイブ内の全住人が満足したわけではない。私はいつもの通り定命の者を追って、彼らの行いを記録しようとした。だがファーグレイブに関わりのある、様々なドレモラのクランもまた彼らを追っていた。

続いて小競り合いが起こった。きっかけは帝国の者がシャベル一杯の掘削現場の泥をドレモラに投げつけたことだ。そうなる前に口論もあったようだったが、やりとりは静かだった上、荒野の風が吹き荒れていたので聞き逃した。一方、土は標的に命中した。後に続いたのは正々堂々とした決闘だったとは言えないが、双方ともに激昂し、カジートの女が熊手を廃棄物に突き刺して、戦う者たちにぶつけると脅すまで続いた。双方ともにこの件を黙っておいたほうがいいという結論に達した。私はそのような約束をしなかったので、ファーグレイブの目撃者としての権利により、本件を記録することにした。

* * *
定命の者が夜と呼ぶ期間がこの周期ではゆっくりと流れる。バザールではデイドラの商人が品物を売っている。彼らは見込みのありそうな客を呼び止め、品物の宣伝をすることがない。もう彼らの事業はしっかりと根を下ろしており、目端の利く客に隠すこともない。商人が店や露店の宣伝をするのは希少な品が手に入った時か、新たな定命の者がきた時だけだ。最も活気にあふれるのは、新しい商人が商売を始めた時だ。すると全ての店主が、自分たちの存在を知らしめ、仲間の店より抜きんでているとアピールし始める。その時まで通りは静かなままで、露店はどっしりと構え、誰一人足音ほどの声もあげない。

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今日からまた負傷者の間引きが始まった。毎度のことだが、非公式に開催されたイベントが、明確な主催者もなく運営されている。定命の者の商人がバザールで店を開けると間もなく、負傷していると見える者や、今や全盛期を過ぎたと思しきデイドラが、街の東の溶岩流へと身を投げた。溶岩流の中へ旅立ったデイドラは今年これで5人目だ。

分解された者たちがみな短期間で再生され、遠からずファーグレイブの門をくぐるよう願っている。

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今度の周期はストリクチャー広場のグラスプが大いに活躍している。定命の者、デイドラ、その他様々なファーグレイブの商業団体の指導者が会合し、街の統治に関する条約改正について討議した。代表団の間で何度も殴り合いが起きかけた。グラスプ・キン・マルキナズがものすごい剣幕でバネキンの独白を怒鳴りつけ、紛糾する代表団を黙らせなければ収拾がつかなくなっていただろう。しばらくしてから人々は広場を出て、〈運び手の休息所〉へ向かった。そこで静かに敬意を抱き…いや、少なくとも静かに話し合った。グラスプ・キン・マルキナズを再び怒らせたくなかったのだ。

最初の晩の討論が終わり、グラスプは進行の中断を命じた。そして数件の議題が片づいた。

第一に、ストリクチャーの保護の有無に関わらず、ファーグレイブの知性ある市民を市場で売ることを禁じる。

第二に、ストリクチャーの保護の有無に関わらず、市内においてファーグレイブの市民の知性を奪うことを禁じる。

第三に、今後無期限に、ストリクチャーの法令に従うことに合意したファーグレイブの全住民を、ストリクチャーの盟約が与える市民権の保護対象に含めるものとする。

第四に、物資や商品の市内への流入を妨害することを禁じる。

* * *
この会議は8期目を迎えるが、出来事が多すぎて日報にまとめることができないようになってきた。代わりにメモを取っておいて、定命の者が自分が休むための休憩を無理強いする時点で、考えをまとめることにした。これまで本格的な殴り合いの喧嘩は3回以上あった。定命の者は〈運び手の休息所〉をどうしても専用の戦場に変えなければ気が済まないようだ。あるアルゴニアンはグラスプの代表に椅子まで投げつけた。グラスプ・キン・マルキナズは7回も、獰猛なドレモラの戦歌を様々に披露して、高まった緊張を鎮めなければならなかった。

定命の者がデイドラの食事場所を街から排除するように要求したが、これ以上の政策変更は合意にも、実現にも至らなかった。彼らは「生きるための養分を必要としない者に、食事の準備や食事に類似した消耗品の用意を任せられない」と主張していた。

ファーグレイブの傭兵募集Work for Hire in Fargrave

問題と危険が、オブリビオンにあるファーグレイブの街を脅かしています。

ファーグレイブの周辺にある、デッドランドと呼ばれる領域の周辺で、計り知れない恐怖に対処できる冒険者を募集します。興味があり、見返りに金と栄光を求めているなら、ヘクソス家は仕事を提供します。

詳しくは、ファーグレイブのヒューレット・ヘクソスにお尋ねください。

ファーグレイブ観光案内Visitor’s Guide to Fargrave

ファーグレイブの定命の者に向けた、包括的な観光プログラム用にオサタが準備した資料。

旅人よ、幸先のよい一日を!ファーグレイブという栄光の街に到達したことで、あなたの運勢は好転を始めた。自分で用意したか、恒久的なゲートを利用したかはともかく、あなたには次元を越えてこの素晴らしい街にやってきたことで、きっと幸運が訪れるだろう。

ポータルの広場
どのように天空の籠の街を見つけたかにもよるが、ポータルの広場のことはもうご存知かもしれない。この場所には恒久的なポータルが配置され、中にはデッドランドの二つの領域につながっているものもある。他の次元への一時的なポータルを作る許可を持った者は、旅行のためにここへ集合する。ファーグレイブへ行き来する安全なルートの一つとして、多くの定命の者が広場で休憩する。ここはファーグレイブが持つ故郷の領域との絆を、彼らに思い起こさせる場所なのだ。

バザール
あなたがたがファーグレイブを訪れたのは、おそらく高名なファーグレイブの名産品を交易し、取引するためだろう。品物は街のどこでも取引できるが、お探しの場所はバザールに違いない。オブリビオンのあらゆる場所からくる商人や職人が集まっている。望みの物は何でも揃い、望んだ以上の物ですら、バザールでは手ごろな価格で見つけられる。品物の取引はいつでも行われている。バザールを頻繁かつ隅々まで探検して、見落としがないようにしよう。

ファーグレイブのクラフト広場
職人志望の方々に品物を製作するための素材を提供できないのは、我々の街にとってこれ以上ない恥辱だ。そのためファーグレイブのクラフト広場には、作業台や創作を支える様々な工具が用意されている。

定命の者支援
定命の者にファーグレイブの複雑な交易に慣れ親しんでもらうための組織がいくつも存在している。 ヘクソス家、サラアス・トング、アービス収集団は全てがファーグレイブ中に本部を構え、バザールに公式の出店を出している。ガイド、助言、雇用など、必要に応じて助力を提供する。しかし、ストリクチャーのグラスプは避けるべきだ。彼らはストリクチャーの協定を重視し、定命の者やその活動に対して一切の慈悲を持たない。

ストリクチャー
ファーグレイブに王や権力構造は存在しないが、ストリクチャーと呼ばれる魔法の協定が全デイドラを拘束し、天の籠の平和と中立を維持している。ストリクチャーのグラスプ、もしくは単にグラスプと呼ばれるグループがこの協定を強制し、仲介者にして合意の解釈者としていさかいや紛争が起こると介入する。定命の者はストリクチャーに拘束されないため、グラスプは定命の者を信用せず、必要がなければ無視することも多い。ほとんどのグラスプのメンバーはドレモラであり、全てのメンバーはストリクチャーの下で平等である。

シャンブルズ
必死な新顔に警告しておこう。シャンブルズと呼ばれる地区に近づいてはならない。ほとんどの定命の者はシャンブルズの路地や共同住宅に住んでいるが、エラント、ヴァンキッシュド、インビジブルウェブなど複数のギャングの狩場でもある。全ファーグレイブはストリクチャーの掟に拘束されているが、シャンブルズはこの地区に定命の者が多いことを理由にグラスプが無視するため、ある種の無法地帯になっている。

ファヴェンのメモFaven’s Note

テフィラズに要求されたが、デイドラが哀れなる者の尖塔内に留まることを許すつもりはない。直ちに実施する。最強の戦士たちを呼び集め、我らの家から獣を追い出すのだ。

哀れなる者の尖塔の浄化は今日から始まる。

-ファヴェン・インドリル

ブルガリクの日記Brugurikh’s Journal

第二紀582年、暁星の月6日(?)

到着した。どれほどかかったかは言えない。というのも、境界を越える移動の詳細はサラアス・トングの極秘事項だからだ。私がここにきた理由を知る者はいない。あるオークに正体がばれそうになったが、そいつは殺して、死骸はファーグレイブの通りに捨てた。

多くの発見があった。いかにしてメエルーンズ・デイゴンの信者が簡単に次元の間を行き来しているか、デイゴンが我らの愛するタムリエルに何を企んでいるかなどだ。まだ暴くことができていないのは、どうやって炎の暴君の蛮人どもが我々の美しいマンティコラを操れるようになったかだ。彼の丹精込めた作品に何が起きたか摂政ボワードにお伝えせねば。

第二紀582年、薄明の月8日(?)

ドレモラに尋問をしたが、無駄骨だった。デイドラは死を恐れない。痛みに反応するだけだ。石に尋問したほうがマシだった。この忌々しい地で一月探索を続けたが、マンティコラの誘拐犯探しはまったく進展してない。

第二紀582年、薄明の月22日(?)

毎夜、大蛇の知恵に祈る。いや、この地で夜と呼ばれている時間にだが。ここの空気は何か私の体を弱らせるものがある。だが我が信仰は弱まらない。ヴィネシャラというズィヴィライの獣飼いに接触した。彼女はグリルグというオグリムが誘拐犯かもしれないと言った。オグリムを殺したことは一度もないが、トロールなら何度もある。大きな獣の死に様はみな同じだ。怯えて死ぬ。

第二紀582年、薄明の月26日(?)

グリルグはデッドランドという領域へと逃げた。奴め、呪われろ!こんなところは呪われろ!その四本腕の君主も呪われてしまえ!

第二紀582年、恵雨の月3日(?)

行方不明のマンティコラの一頭にようやく出会えた。口にするのも悔しいが、こいつは私を覚えていなかった。このブルガリクが卵の泉で世話をしてやり、ニルンクラッツを目からふき取り、大きな角で隠れた耳に名前をささやいてやったのに。悲しみで胸に穴が開いたようだ。私のかわいい子供たちに、グリルグが何をしたのか解き明かさねば。

第二紀582年、恵雨の月8日(?)

見つけた。マンティコラの苦しみの原因を。数あるメエルーンズ・デイゴンの要塞の奥深くで、グリルグは彼らにデッドランドのハーブと巨大な虫のような獣の血を醸造したものを飲ませていた。オグリムの調合薬を飲むと、彼らの鱗は熱い石炭のように赤く輝き、行動も変わる。狡猾さをそのままに、従順となるのだ。自由にできる獣はたくさんいるのに、なぜデイゴンは我々のタムリエルへの最高の贈り物を奪うのか?なぜ私たちの努力の結晶を、異質で野蛮なものに変えてしまうのか?

明日、子供たちを解放しに行こう。大蛇の力に祈る。クラグローンとタムリエル全土の運命は危うい均衡を保っている。私が死んだら、摂政ボワードに伝えてくれ。私はコートのため、共に生み出した子供たちのために死んだと。

〈後のページには血が染みている〉

マルキナズ・オイクスの報告Report from Markynaz Oyx

強大なるヴァルキナズ

兵士が蔵書庫の壁の下に穴を掘って、脱走を試みていた囚人を発見しました。その女は取り押さえ、畜舎に戻しました。ご指示のとおり、決して出血しないようにさせました。

穴は修理が必要です。大至急スキャンプの作業員を派遣願います。

-オイクス

ミクゲトの作業リストMikget’s To-Do List

ミクゲト、やる

ミクゲト、きれいな次元石見つける。

ミクゲト、ファーグレイブのウィムの館行く。

ミクゲト、ナスに次元石渡す。

ナス、ミクゲトに輝くお金くれようとする。

ミクゲト、とらない。

ナス、マダム・ウィムに「ミクゲトに定命の者の契約やれ」と言う。

定命の者、ミクゲトに詩くれる。

ミクゲト、ファーグレイブの詩、全部持つ。

ミンウィレスの日記Minwileth’s Diary

エリザの具合が悪くなってる。隠そうとしてるけど、バクも私も彼女のことはよく分かってる。子供の頃から一緒に走り回ってきた仲だ。私たちに隠し事はない。

不公平なのは私たちの中で、病気になったのが彼女だと言うことだ。エリザはいつも私たちの支えだった。苦しい時でも私たちをつなぎとめてくれた。私たちの中で一番優しく、面白く、機転が利いた。大抵の連中にとって、私たちはろくでなしの盗賊でしかない。飲んだくれて、ファーグレイブの路地にたむろするネズミの群れ。でもエリザはそれだけの子じゃなかった。思いやりがあって、美しく、活力にあふれ、素敵だった。

ファーグレイブに流れ着いた定命の者なら、誰だって天空の籠での暮らしのことは知り尽くしている。誰もがドレインにかかるリスクを背負っている。あまりに不可解すぎて恐れを抱くのも難しい。定命の者の中には、何十年もファーグレイブで暮らしているのに、毛ほどの影響を受けない者もいる。ドレインにかかった者のことを耳にすれば、必ず何もなかったことにする。自分がかからなくてよかったとか、きっと自分は大丈夫さと言ってみる。愚かにも、自分たちが無敵だと思い込む。

エリザが苦しむのを見るのは耐えがたい。正気を失うと分っているのが、どれほど恐ろしいことか想像もつかない。何かを思い出せない時、彼女の瞳に怯えが浮かぶのを見ると胸が痛む。

でもバクには考えがある。危険だけど、何でもするつもりよ。何もかも捨ててファーグレイブを去ることになっても、エリザを救えるなら惜しくない。

メイリードの日記、項目3Mairead’s Diary, Entry 3

[子供が書いたような乱雑な手書きの文。長い年月を経たせいで文字がかすれている]

女の人がまた来た。あの人は好きじゃない。意地悪だから!いや、意地悪とは違う。でも、すごく厳しい。たぶん笑ったことがない。あの人が話すことは私の義務と責任ばかり。あの人の絵を描いてあげたけど、気に入らなかったみたい。

他の子を見たことがない。子供はみんなこういう場所に住んでいるの?皆、本で読んだみたいな優しいお母さんがいるの?勇敢で強いお父さんも?ここに来る女の人は冷たいから、子供なんていないと思う。どうして私に会いに来るんだろう。私のこと、好きじゃないだろうに。ああしろこうしろって、私に言うばかり!

抱きしめようとしたのに、押し返された。

メイリードの日記、項目346Mairead’s Diary, Entry 346

見慣れないものばかりだ。もちろん予想はついていた。あいつらは私を唯一の家から追い出しておいて、理由も教えなかった。慣れは私と無縁の贅沢よ。それでも、少なくとも快適に過ごせることを期待していた。私に友達はいないけど、十分だと思っていた。でも、ここは何もかもが私に逆らう。ベッドは硬すぎるし、床の溝にしょっちゅう躓くし、壁に押し潰されそうな気分。

あの女はもう訪ねてこなくなった。あの女が懐かしいのか、来る日常が懐かしいのか分からない。もちろん、レオヴィック皇帝が一緒に来ることも懐かしいとは思わない。いつもあいつの目が嫌だった。子供の頃でさえ、あの目は夢に見るほどだった。

でも今は、なくて寂しくなるくらい。あいつの見透かすような眼差しは気味が悪かったけど、少なくとも予想はついた。慣れていたから。

この新しい場所では噂が聞こえてくる。私は14歳だけど、本物の危険がここにあると思うには成熟しすぎている。ここで暮らしているのはそのためじゃないの?檻に閉じこめておけば何も入ってこないし、何も出ていかない。でも、時々心臓がバクバクして、夜中に目を覚ますことはある。まるで悪夢から目覚めたけど、何が怖ろしかったのか思い出せないみたい。この場所のせいなのかもしれない。

それとも、私のせいなんだろうか。

メイリードの日記、項目712Mairead’s Diary, Entry 712

まだ手が震えている。まともに字も書けないけど、これは記しておかないと。頭の中にあるものを外に出してしまいたい。書いておかなかったら、本当に起きたことか分からなくなってしまう。ただの悪夢でなかったと、自分を納得させられなくなる。

一瞬の出来事だった。恐ろしい、奇妙な格好をした男たちが私を連れ去ろうとした。理由は言わなかったけど、数人は私が知らない名を叫んだ。ヴァルキナズ・ノクブロズ。

自分の目がほとんど信じられなかった。あいつらは物凄い勢いでやって来た!宝物庫にこんなに多くの人が一度に入ったのは初めてだ。騒音と異常で、まるで壁が侮辱を受けて震えているかのようだった。耳が赤くなるのを感じた。家に侵入してきた奇妙な男たちは、傷が付くほど強く私の腕をつかんだ。私は殴りかかり、思い切り蹴りを入れた。叫びもしたけど、無駄なことはあの時でさえ分かっていた。私の声など誰にも聞こえない。これまで何度も叫んできたけど、いつも答えるのは反響だけだった。

でも捕まったと思った時、私の内部で何かが解き放たれた。それは私の胸の中から鞭のように飛び出した。痛みを感じたか、それとも何も感じなかったのかは覚えていない。その感覚は私を完全に圧倒した。叫びたかったけど、肺に空気が残っていなかった。少しの間、私には光しか見えなかった。眩しさが全てを洗い流し、光が隅々まで拡がり、全ての影を追い払った。その後は、無が続いた。

目を覚ますと、床に死体が転がっていた。他の者たちは消えていた。また、私は一人だった。何が起きているのか分からないけど、何かが変わろうとしている。永久に。

メエルーンズ・デイゴンの叙事詩、第1巻Epics of Mehrunes Dagon, Volume 1

目覚めの炎教団の歴史家、ヴァレンタイン・リオレ 著

権勢を誇る高貴なる王は、この本に書かれた物語を喜ばない。物語を書き記さねばならないことは俗悪だ。野望のデイドラ公のことを耳にした者ならすべて知っているだろうが、彼こそが全世界の正当なる支配者だ。どんなデイドラ公も彼の機知には敵わない。どんなデイドラ公もカミソリを統べる者のように世界を賢明に導き、浄化する精神的な強さを備えていない。どんなデイドラ公もメエルーンズ・デイゴンの栄光には及ばない。この栄光の物語を書き記す罪を犯したため、この仕事が終わったら、自らを彼の怒りの炎に投じねばならない。

交わした取引に対するはメエルーンズ・デイゴンの尽力と力を披露するため、まずは炎と洪水の王と付呪師アレバスの物語から始めよう。アレバスは炎の暴君を呼び、彼女の最大の儀式を披露するのと引き換えに領域を借用しようとした。彼女は必要な材料を集めた。そこには自然の恵みや定命の者の創造物も含まれていた。一方、デイゴンには結界に彼の力を込め、魔法が誕生するのを見守るように依頼した。

アレバスは、デイゴンに「我が安全を保障せよ」という取引条件を提示し、彼は承諾した。準備が整うと、アレバスは砂浜に図を描き、波の力を呼んで、死者と腐敗した木々を復活させる力を借りた。

儀式がアレバスが想定したより大きな力を水から引き出すにつれ、水は引いて行った。海の中央から山のような大波が殺到してくるのを、彼女は怯えて見ているしかなかった。

デイゴンは取引を思い出し、素早く呪文を放ち、海の力に対抗した。向かってくる波よりも高く炎が膨れ上がり、盛り上がった水は蒸気に変わった。アレバスが気がつくと、自身は焼けた森と潮だまりの入り交じった浜辺におり、無事だったことに気づいた。季節が一つ過ぎ、全ての腐敗した木々は元気に育ち、枝は茂った。

これはまさにメエルーンズ・デイゴンの力の栄光と、取引を結んだ相手への尽力を示している。変化のデイドラ公は血と苦痛で代償を払わせることで知られている。彼と関わった者はみな、この世界は痛みと苦しみが常に存在していることを承知し、定命の体が滅ぶ衝撃を通り越した者たちだ。だがメエルーンズ・デイゴンは取引を裏切らない。デイドラ公と取引をする時は、賢く要領よく立ち回れ。さすればデイドラ公が慈悲を垂れてくださる。

メエルーンズ・デイゴンの叙事詩、第2巻Epics of Mehrunes Dagon, Volume 2

目覚めの炎教団の歴史家、ヴァレンタイン・リオレ 著

この書の前巻は私の即座な死で終わらなかった。ただし高貴なる王の行いと御業を書き記したという僭越さによって、我が命は奪われて然るべきだ。私はさらなるメエルーンズ・デイゴンの物語を書き続けることに決めた。この著作が破壊のデイドラ公の遠謀を高めず邪魔になるようなことがあれば、私は喜んでその生命を再び彼の怒りの炎に引き渡そう。デイゴン卿、どうか心置きなく我をいずれ罰したまえ。

さて、デイゴンの戦闘での信じがたい勇ましさを知っているだろうか?洪水と炎の王の業に関して、畏怖の心をかき立ててやまない物語は枚挙にいとまがない。モーンホールドはデイゴンの怒りを買い、破壊されたことを忘れていない。有名な過去の勝利を蒸し返し、我が王の周知の機略をうそぶくのではなく、新しい物語を語ろうと思う。戦いと、血と、勝利の物語を。デイゴンが恐るべき戦いに打ち勝ち、忠実なる者をモラグ・バルの虜囚から救出した物語を。

コールドハーバーの奥深くで、デイドラの監督官に厳重に監視され、真の信仰者の一団が苦しめられていた。意識ある限り彼らは苦痛にさいなまれたが、メエルーンズ・デイゴンこそが真実であり、彼らと共にあると確信していた。信仰者たちは彼の炎を頼りに暖を取り、捕らえた者どもに破壊的な変化をもたらすため執念を燃やした。この信心深く、先見の明のある定命の者は誰一人としてコールドハーバーから逃れられると思っていなかったが、機会さえ巡ってくれば信じがたい破壊工作と殺戮をやってのけられると信じていた。そこで、彼らは時節を待った。策を練り、血と破壊のデイドラ公に祈り、襲撃の機会に備えた。

一部は信仰を失った。彼らの決意は神聖なる海の星々のように砕けてしまった。だが一団の中でも最も正しき者たちは信仰にすがり続けた。その決意と献身は彼らに信じがたい爆発を授けた。大地を揺るがす魔法の奇跡によって、監督官たちは苦痛を与える器具を取り落とした。一団は団結して飛び掛かった。彼らの襲撃の後には炎が尾を引いた。忠実な一団が苦痛を与える者たちへ反撃したのを目にして、他の囚人たちも立ち上がって彼らに加わった。

定命の者たちの頭上、デイドラとコールドハーバーの山の向こうから見下ろしていたのは大崩壊の父だった。デイゴンの振るう剣は素早く鮮やかで、その腕が霞んで見えた。モラグ・バルの凶悪な尻尾が大地を薙ぎ払い、苛立ち紛れに定命の者や手下を叩き潰した。デイドラ公たちはぶつかり合い、互いを打つ音が雷鳴のように領域中に響き渡った。

最終的に、モラグ・バルが勝ったように見えた。魂の収穫者は山羊のような頭を上げ、憤怒の雄叫びをあげた。一瞬、全てが静寂に包まれた。地表の争いは奴隷たちとデイドラの監督官が共倒れになって終わった。彼らの手は血が流れる耳を押さえつけていた。デイドラ公たちが戦っていた場所に近すぎた哀れな連中は、瓦礫に埋もれていた。彼らは雄叫びの力で、体が粉々になったのだ。

だが、斃れた者たちの遺体の中にデイゴンの真の信仰者はなかった。彼らはデッドランドの熱で目を覚ました。最も賞賛されるべき者は、幻影だけでデイドラ公と戦ってのけながら、彼らをモラグ・バルの束縛から逃れさせたのだ。だから我々は、メエルーンズ・デイゴンに従っているのだ。

ルーセントの教訓Lessons on Lucents

ヘクソス家主任研究員、ロガナス・アティウス

どこかの時点で、定命の者にはファーグレイブの数多くの謎が決して解けないと諦めるべきだ。サラアス・トングの発明家は長年オブリビオンの謎を解き明かそうと頭をひねってきた。はっきり言うが、その割に彼らは大した成果を上げていない。デイドラのガラクタの山を築く過程で、何人か魔術師が正気を失っただけだ。

私はもっと単純な提案をしたい。ファーグレイブの隠された真実に対して根本的な理解を深めようとするのではなく、単に利用方法へ注力すべきなのだ。使い道があるものなら収集する。複雑すぎるなら処分する。冷徹な実利主義は当家の尊い資質だ。我々はデイドラ遺物調査にもこの原則を当てはめるべきだ。

これまで見た中で最も有力な研究対象は、デイドラの「ルーセント」だ。このクリスタルは魂石に似ており、同様の働きをし、素人にも分かりやすい。無論、その類似性はほとんど表面的なものだ。我が主任研究員によると、力を保存して放出する能力の他は、魂石とほとんど共通点がないそうだ。

そこに何が収められているのかについては諸説ある。魔術師の中には何らかの「デイドラのマジカ」が入っていると考えている者もいる。ヴァヌス・ガレリオンに属する者たちは特に、魔術はマグナスに由来するもので、その考えはバカげていると言う。リッシニア・カタラスという魔術師は、その相違を「ムンダスの球」説で切り分けようとした。彼女は「オブリビオン魔法」が原初の神々による創造の残滓だと提案する。マグナスとその仲間が定命の者の世界の天空を割った時に放出された、創造の力の波のようなものだと言う。確かに頭が痛くなるテーマだ。私が聞いた最も説得力のある説は、「オブリビオンの明確なダイナミズム」に関連していて、これはオブリビオンに姿と基本法則を与える普遍の力のようなものだ。その出自も、本質も、どう計測するかも分からない。だが前にも言った通り、我々の焦点は実用性だ。それでうまくいくことが分かっている。

このクリスタルの出所は分からないが、きっとスカイシャードのようにオブリビオンの様々な領域へ降ってきたのではないかと思われる。そのままの形でも微弱な力を含んでいる。そこに再充填する手続きには「ディナマスの源」というアイテムが必要になる。我々はこの物体を作成する術をまだ学んでいない。だが、スカーフィンの仲間であるピラゴスから十分な量を購入できた。ルーセントを源の空洞に入れればクリスタルは充填される。恐らくピラゴスは冗談のつもりだったのだろうが、源にはある種の精霊がいて、その力をルーセントに吸い出しているらしい。軽口だったのだろうが、デイドラの言うことは判断に困る。

充填が完了したら、その力を「放出台」と呼ばれるデイドラの装置で解放できる。デイドラはこの力を多様かつ巧緻に利用する。扉を開け、障壁を作り、排除装置の原動力にする。繰り返すが、クリスタルを挿入するプロセスは分かりやすく、展開しやすい。

この品をできるだけ多く集めて、我々の保安機構に組み入れる方法を模索するよう提案する。繰り返すが、ファーグレイブの謎は多い。だが、何よりも喫緊の謎とは、ヘクソス家のさらなる繁栄のために我々が利用できるガラクタがいくつあるかということだ。ルーセントは、ファーグレイブのより大きな力を解放するための鍵かもしれない。

ロブヒールの手紙Robhir’s Letter

大好きなロウィナへ

君の側を離れていると、毎日が灰色だよ。やるべきことはマダム・ウィムの助手のナスに奇妙な次元石を届けるだけだ。それで全てがうまくいく。僕が契約を交わせば、一緒にファーグレイブでの生活を始められる。

もっときちんと説明しないとな。愛しい人よ、僕はマダム・ウィムというデイドラと契約をしたんだ。ある品を彼女と仲間のもとに持ち込めば、結構な金額を支払ってくれる。

僕がアルビス収集団に入りたがっていることは知っているだろう?たとえ能力があの名誉あるグループへの入会に及ばなかったとしても、マダム・ウィムに気に入られれば絶対に考え直してもらえると思う。

また君に抱きしめられて過ごす日を楽しみにしてる。
愛を込めて

ロブヒール

ロングハウス帝との謁見Audiences with the Longhouse Emperors

元老院補佐センタナス・マーリンの回想録より

初めてロングハウス帝の御前に出たのは若い頃だった。私は帝国元老院の補佐見習いで、ブラック・ドレイクのダーコラクが権力の座に就いた直後のことだった。当時は動乱期だった。冷徹で残酷なリーチの民による支配という現実に、帝国の流儀と伝統をすり合わせようと努力していた。仕えていた評議員の後ろに控えて、皇帝が日常の御触れを出すための羽ペン、インク、羊皮紙を用意しつつ、必死に手の震えを隠そうとしていたことを覚えている。ブラック・ドレイクがいかに我が帝国を征服したかをつぶさに聞き、怯えきってはいたが、ダーコラク皇帝の必死な努力には気づかざるを得なかった。明らかに彼はまともな教育を受けておらず、帝国宮廷の文化や手続きについてほとんど何も知らなかった。しかし、彼は帝国人として振舞おうと務めた。彼は正式な手続きを指南するよう求め、不慣れさと苛立ちが明白ではあったが、謁見の際に殺害した補佐は1名だけで済んだ。その行為によって、偶然にも私の見習い期間は前倒しで終わった。補佐としてダーコラクの御前に立つ機会は、片手で数えるほどしかなかった。彼は懸命に努力したものの、粗暴な本性を捨て去ることはどうしてもできなかった。

ブラック・ドレイクの息子にして後継者であるモリカルはまた別だった。彼はリーチとシロディールの双方の特質を兼ね備えた、強く有能な指導者だった。帝国の教育で育ったおかげでリーチの出自を和らげることはできたが、消し去ることはできなかった。モリカル皇帝は帝国宮廷の政治的な機微をつかみつつ、父親を恐ろしい存在たらしめた獰猛さと非情さも見せつけた。だがモリカルに対する恐怖には畏怖の念も含まれていた。彼は皇帝ごっこに興じる蛮人以上の存在で、な武力と狡猾な知恵の双方で統治した。彼の玉座の間に入った初日、私はその双方が活かされているのを目の当たりにした。彼は後見役のアブナー・サルンとロヴィディカス評議員と議論を戦わせ、ハイロック地方の戦役でダーコラクが戦死したことを踏まえ、当該地方を服従させる最良の手段を論じた。彼はサルンとロヴィディカス双方が様々な選択肢のリスクと利益を並べるところに聞きいった。しばし考えた後、ダガーフォール・カバナントを独立国とみなす宣言を発布する準備を私に命じ、サルンには帝国の西側諸国との和平交渉を命じた。「あの頑固な地方を服従させるため、これ以上命を投げ出すわけにはいかない。かの地は我が父がはまった泥沼だ。私まではまるわけにはいかない」

モリカルの息子のレオヴィックがルビーの玉座に登極した時、私はずっと年老いていた。彼もまたアブナー・サルンの弟子だったが、完全に帝国式の考え方で育てられていた。彼はリーチをほとんど訪れることなく、帝国の中心で富と豊かさがあふれかえった生活にだけ触れて成長した。ロングハウス帝の中では最も洗練された人物で、最も帝国的だった。中には彼を軟弱で頭でっかちと思う者もいたし、甘やかされたとまで言う者すらいた。しかし、彼の芯は父や祖父と同様に鉄でできていた。単にそれをビロードの手袋で隠していただけにすぎない。即位後、初めて謁を賜りはっとした。宮廷はロングハウス帝が台頭する以前に存在していた宮廷のように感じられた。リーチやリーチの民の慣習が話題に上ることはほとんどなかった。少なくとも最初は。後日、拝謁(その時には上級補佐を務めていたのでより頻繁だった)した時には、その考えを改めた。レオヴィックが自身のルーツを受け入れるようになっていたのだ。当初は一時的に熱をあげているだけのように見えた。リーチの呪物や、ダーコラクやモリカルが好んだレシピを再現するように厨房に注文する具合だった。やがて物事はひどい方向に急転換した。レオヴィックがデイドラ公に捧げる偶像や祠を玉座の間に作ったのだ。明らかに彼は、直に触れたことのない伝統と文化に憑りつかれていた。そしてその妄執が、残念なことに、最終的な破滅をもたらした。

ロングハウス帝秘史Secret History of the Longhouse Emperors

ヴァンダシア評議員 著

ブラック・ドレイクのダーコラク。その死から何年経ても、その名は恐怖と絶望を呼び起こす。第二紀485年頃に生まれた彼は、リーチで権力を手にした。まず20代後半で族長としてクランを導き、1万の戦士に号令する武将となった。タグ・ドロイロック魔術結社の助力で彼はデイドラと手を結び、その力を強大かつ確固たるものへと成長させた。第二紀529年、ダーコラクとその軍勢は競合クランを下してリーチを支配すると、シロディールを目指して南へ進軍を開始した。

ダーコラクが勝利とリーチの外の領土を手中に収めるにつれ、帝国の支配層に潜む帝国貴族の同調者と隠れデイドラ信者が彼に手を貸しているという噂が広まった。この支持者たちの協力によって、彼はルビーの玉座に座って幾世代も支配するという契約をメエルーンズ・デイゴンと交わしたようだった。この取引には何らかのデイドラの武器の取引が関わっていたと言われているが、確認することも裏付けることもできなかった。第二紀533年には、ブラック・ドレイクとリーチの民の軍勢がシロディールを征服した。そしてロングハウス帝の治世が始まった。

ダーコラク皇帝はその巨躯と剣の腕前に、獰猛な気性で知られていた。話し方や作法に現れる明らかな出自は決して改められなかったが、それでも彼は帝国文化を吸収しようとした。第二紀534年に彼は新たな元老院を立ち上げ、息子のモリカルの教育係を選び出した。そしてリーチの感性と帝国文化を統合し、シロディールでの支持拡大に務めた。同年、彼はニベン人の有力者であるサルン家のヴェラクシア・サルンを妻にした。これも帝国とのつながりを深めるためだった。

ブラック・ドレイクは過去の勝利に満足することを拒み、さらに多くの領土を獲得するため進軍を続けた。第二紀541年、彼は軍勢を引き連れてクラグローンを抜け、エバーモアへ達してウェイレストに対する長い籠城戦を始めた。最終的には相手が降伏しないことにしびれを切らし、ダガーフォールに注意を向けた。これがブラック・ドレイクの破滅をもたらした。ダガーフォールの門で阻止されたダーコラクとその軍勢は、カンバーランドのエメリックとその軍勢に背後から奇襲された。そこで始まった戦闘でブラック・ドレイクは倒れたと言う。伝え聞くところでは、エメリック自らが討ち取ったそうだ。

大方の期待に反して、ダーコラクの死はロングハウス帝の治世を終わらせなかった。ダーコラクの忠臣たちはまだシロディールを押さえており、すでに玉座の懐刀となっていた息子のモリカルは、帝都で父の崩御の報に触れるや帝位に就いた。23歳のモリカルは、10代で帝国の教師に引き渡されるまで生粋のリーチの子として育てられ、その父にはできなかったやり方で二つの世界を行き来した。続く第二紀542年、モリカル皇帝自身の嫡子が生まれた。その名をレオヴィックという。

彼も、その父モリカルのように、多くのデイドラ公との契約を履行し続けた。その中にはメエルーンズ・デイゴンと交わした取引もあった。モリカルがさらなる領土の拡大を模索する最中も、準備と儀式は隠されたデイドラの司祭たちによって内密に続けられていた。第二紀561年、モリカル皇帝と息子のレオヴィックは少数の例外を除いて立入禁止となった帝国宮殿にほとんど引きこもって暮らすようになった。振り返ってみれば、彼らは待望のデイドラの武器を創造するため、メエルーンズ・デイゴンに究極の犠牲を捧げる儀式を行う準備に追われていたのだろう。1年後、彼らはようやく姿を現わした。その時、モリカルは次の征服の準備を始めていた。すなわち西スカイリムの征服である。

第二紀263年、モリカル皇帝は軍勢を率いてリーチを出ると、スヴァーグリム上級王の領土へと侵入した。ソリチュードの門に迫るまで、彼らは一切抵抗を受けなかった。そこでスヴァーグリム上級王の大軍はモリカルの軍勢に殺到すると、一戦で壊滅させた。モリカルは帝都に帰った。敗れ去った彼は重傷を負っていた。帝国とリーチの治癒師双方が最善を尽くしたにもかかわらず、モリカルが回復することはなかった。第二紀264年に彼が崩御すると、息子のレオヴィックが後を継いだ。

レオヴィック皇帝はロングハウス帝の中で最も帝国風だった。帝都で生まれ、主に帝国の教師に育てられ、父や祖父のようにリーチで培った経験がまったくなかった。しかしながら彼はリーチ式の修行を多少は施されており、教師陣にはアイスリーチ魔術結社の者たちと「ネズミ」としてのみ知られるリーチの民の協力者も含まれていた。まだ彼が王子だった頃、国境を脅かす襲撃者に対して素晴らしい戦果を上げて凱旋すると、父にどんな褒美がほしいか尋ねられた。ためらうことなく、レオヴィック王子はアブナー・サルン議長の娘クリビアとの婚姻を求めた。皇帝となったのち、彼は父とともに着手した極秘計画の監督を続け、最終的にはリーチ人としてのアイデンティティを完全に受け継ぐ決意をした。時が経つにつれ、彼は奇矯になっていた。第二紀576年にデイドラ崇拝を合法化すると宣言したことで、さらに帝国の民の反感を買い、ヴァレン・アクィラリオスの反乱を誘発した。

第二紀577年、ロングハウス帝の治世はヴァレンが帝国宮殿に突入してレオヴィック皇帝を殺害したことで幕を閉じた。ヴァレンは帝位に就いたことを宣言し、シロディールに残っていたリーチの民はリーチへと帰っていった。

悔悟者の物語The Penitent’s Tale

入信者ヴァーニー・モーロルド 著

洪水と火の王に対して背信を働いたために陥った現在の窮状を語り、減刑を嘆願する。

私の過ちは以下の通りだ。

第一に、私が放った炎はあまりに小さかった。

第二に、王が必要とするものを察しようとした。

第三に、メエルーンズ・デイゴンの名において私が実行した破壊は、他のデイドラ公に従って引き起こした被害を超えられなかった。

この失敗によって我が命は終わり、責苦が確定した。炎が足りなかったゆえに、私は熱に囲まれている。王の御心を察しようとした不遜さゆえに、心正しき侍者は私に苦しみが必要であると察し、気が向けば私に苦痛を与える。破壊的傾向が足りなかったゆえに、私は破滅した。

こうした特定の苦しみの他にも、我が王の広大なる領域が我が足を焼いている。あらゆる居住者が我が苦しみを喜ぶ限り、私に安息の場所はない。私が唯一安らげるのは、彼らが私の悲鳴に飽き、他の犠牲者のもとへ行く時だけだ。他の罪人は英雄が助けにくると信じている。格別に勇敢な家の一員や、デッドランドに踏み込むことを決意した傭兵などだ。私はそんな妄想は抱かない。私はすでに王に見放されたと思っているが、お怒りが解けていないことを知っている。私はお仕えしている間、ずっとデイゴン卿の信頼を裏切り続けていたのだ。彼は私を解放しない。

改良型”変異”モデルImproved Cataclyst Model

グリーフ砦での実験で”分裂した変異”がうまく動作し、無事に転生者を作り出せることが証明されたものの、その工程は未だ遅く困難だ。シスター・セルディナは転生者の作成が一度に一体であることと、あまりにも多くの試行で完全に失敗することは許容できないと明言している。メエルーンズ・デイゴン卿が要求しているのは多数の生きた災厄で、ほんの一握りではない。

私は盲目の予言者の設計を分析し、成功率を大幅に高め、培養期間を短縮すると思われる数多くの改良点を割り出した。私の指示により、魔術師たちが共同して改良型”変異”と呼んでいるものの4分の1スケールモデルを組み立てた。これまでのところ、試験でモデルの動作は申し分ない。

次の段階ではフルサイズのドレモラで試験する。新たな設計ではシスター・セルディナの構想を完全に実行し、デイゴン卿が要求する数字の達成が可能になると確信している。

破壊者ノミオ

看守の本日の命令Warden’s Orders for the Day

指示に従わない者は処分する。

1. 再びヴァルキナズ・ノクブロズが、老いた盲目の定命の者を尋問に来る。彼からの質問には全て答えること。特にデイゴン卿のドレモラの囚人について問われた場合は確実に返答すること。諸君の間で交わされた会話は、一言も漏らさず報告すること。

2. 幽閉房内にはヴァルキナズが使用する霊薬を十分に用意しておくこと。さらに作る必要がある場合は、至急私に報告すること。

3. 現在、制圧者フィヴァクスが幽閉房の扉を警護している。彼は私の許可なく扉に近付いた者を、全て殺すよう命令を受けている。注意するように。

看守ファスゾン

矯正施設の登録The Reformatory Register

恵雨の月の収容者記録

名前 措置 日付

ノリメリアン 勧誘 第一日耀

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ヴィットリア・ルルス 再教育 第一月耀

* * *
デクシオン・クロシウス 鞭打ち 第一火耀

* * *
オソ・ママナス 再教育 第一央耀
サビナ・メッサーラ 重労働 第一央耀
カミラ・ヴォルスス 再教育 第一央耀

* * *
ピビハ 勧誘 第二日耀
(困難そうに見える。重労働予定)
クリステラス 勧誘 第二日耀
バルガス 勧誘 第二日耀
デルヴィン 勧誘 第二日耀
カルリッシュ 勧誘 第二日耀

* * *
グラニル 再教育 第二月耀
スタル 再教育 第二月耀

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マルティナ・ホラティウス 鞭打ち 第二央耀
タイナン・ネイサンズ 鞭打ち 第二央耀

* * *
ウェイキン 再教育 第二木耀

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アナンミル 勧誘 第三日耀
ヴィスチャ・タ 勧誘 第三日耀
ナイジシャン 勧誘 第三日耀
ゾエ・レイノ 勧誘 第三日耀

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アルフェ・ファラヴェル 再教育 第三月耀
(4回目の収容。教官は排除を選択)

* * *
スカヴォルフ 重労働 第三火耀
フィニス・レン 再教育 第三木耀
キール・キラヤ 鞭打ち 第三木耀

* * *
オリン・ブレナー 再教育 第三金耀
ハジン 再教育 第三金耀

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クド・テイ 勧誘 第四日耀
アバハジ 勧誘 第四日耀
ガルヴォーチ 勧誘 第四日耀
(有望そうに思われる。コースを加速した)
ウッカ・サ 勧誘 第四日耀
ヘルヴェンヌ 勧誘 第四日耀

* * *

苦情の手紙Letter of Complaint

シスター・セルディナへ

根拠のない懸念を取り上げるのは好みませんし、この問題に具体的な対策がないとなればなおさらですが、我らの大いなる目的が邪魔されるのを傍観しているのは耐えられません。あなたに注意を促したい問題とは、ブランドファイア矯正施設をうろつくデイドラのことです。彼らは自分たちこそが炎と苦痛のデイドラ公の真の下僕だと思っています。我々が働く間も、彼らは隅に立って常に我々を監視しているのです。手際が悪く、メエルーンズ・デイゴンの熱を受け入れるに値しないとして、新人を排除した者さえいるのです。

これが越権行為であることは説明するまでもないでしょう。あのデイドラたちは矯正施設の責任者のように振る舞っているのです。許しがたいことです!確かに、ここがメエルーンズ・デイゴンによる懲罰の場所として使われていることは理解していますが、我々の作業はそんな古い役割よりも優先されるべきです。彼らのリーダーと話し、矯正施設から、でなければせめて我々が利用している区域からのデイドラの退去を命じて頂きたい。定命の者だけの警備隊を創設し、我々のやり方には口出し無用としてほしいのです。あなたに指図をするつもりはありませんが、デイドラたちは私の仕事を妨害しています。

私のやり方はこれまで成功してきたし、あなたにも賛同を頂いています。それについて、絶えずケチをつけられるのは我慢がなりません。

ブランドファイア矯正施設、上級監督官

継承者モリカルの秘密Secrets of Moricar the Inheritor

破壊者イレニアン・ダスト 著

モリカルが皇帝として成し遂げた全ての事柄の中で、最も重要な成果は未だ語られていない。父ダーコラクとメエルーンズ・デイゴンとの長年におよぶ契約の誠実な履行と、ロングハウス帝の秘密だ。

ブラック・ドレイクはシロディール征服以前から破壊のデイドラ公と50年間の取引を結んでおり、後継者がそれを維持することが約束されていた。第二紀541年にダーコラクが没すると、モリカルは占領地と父の負債を共に受け継いだ。

その後、モリカル皇帝は破壊のデイドラ公と自身の契約を結んだ。彼はメエルーンズ・デイゴンに有名な予言者を提供した。モリカルは様々な手段を駆使して、デイゴンがニルン中に変異を発生させ、定命の者の世界の支配を可能にする手法の構想を、この予言者が生み出すよう仕向けた。結果として、メエルーンズ・デイゴンの忠実なしもべは豊かな報酬を獲得し、モリカルの血筋はあらゆる定命の者に勝る力を手にした。

第二紀564年にレオヴィックが玉座を継ぎ、父親の契約を継承した。だが、ロングハウスの後継者は彼だけでない。自分の血統を確実に維持するにはメエルーンズ・デイゴンとの契約が不可欠であることを理解していたモリカルは、複数の妻を娶り、数多くの子の父となった。彼が認めた子も認めなかった子もいる。中には誰の血が流れているのか、本人すら知らない子もいる。

血の穴の囚人名簿Blood Pit Prisoner Roll

〈血の穴に収監されている囚人のリスト。リストの最上部付近に「エレギアン」と名があり、「特別な命令により、牢獄の南西区域にある幽閉房に監禁」というメモ書きがある。

リストの最下部に近い「非公開囚人」の下には「切断者アロクス」の名があることに気付くだろう。名前の横には、「脱走した。もしくは定命の者の囚人に食べられた。いずれにしてもヴァルキナズ・ノクブロズには言うな」と書かれている〉

最初の収集団The First Gleaner

一定の地位を持つ収集団の間で「交換」されるメモ(互いに盗み合うという意味。盗まれても気分を害さないこと。このメモはそういうものだ)。組織の後任に自分の知識と経験を伝えるため、ハリーファイアがこの書にメモを集めた。

* * *
エルジグへ

我らが愛するリーダー、ピエロン・デサントのことは何から話すべきか…そうだな、まずあの男は何も肯定しない。むしろ彼が何かを認めたら、完全な嘘と思っていい。私が彼の素性やファーグレイブに来た理由について知っていることは、あの男と関係のあるドレモラやスパイダーキスから得た情報だ。彼はあるキンリーヴから、ファーグレイブのポータルの秘密を盗んだらしい。そして2週間過ぎるまで、誰もあの男の正体も、よそ者だということも分からなかった。ようやく捕まった時、彼はファーグレイブ中とグラスプから盗んだ大量の財宝を抱えていたため、キンリーヴもこの男を滞在させざるをえなかった。でないと、この定命の大盗賊に面目を潰されてしまうからだ。

ハリーファイア

* * *
ハリーファイアへ

とんでもない嘘っぱちだ。この者は今までこんな酷い嘘を読んだことがない!ストリクチャーのグラスプは財宝など持っていない。ピエロンがファーグレイブに来たのは、どこかの教団の生贄にされそうになって脱走してきたからだ。名前は忘れたが、わずかに生き残っている教団員がまだ彼を探していることは知っている。奴らは彼の血をサングインに渡すと誓い、それを果たすまで休むことはない。だからピエロンはニルンに戻らないんだ。ポータルに足を踏み入れた瞬間、教団のリーダーに見つかることを恐れているんだ。

エルジグ

* * *
エルジグへ

何を言っている?ピエロンがニルンに行かないって?彼はすごいお宝を持ってハイ・アイルズから戻ってきたばかりだよ、この嘘つきめ!グラスプがもう財宝を持ってないのは、手癖の悪い我らがリーダーのせいだって考えたことはないのか?ないだろう。あんたの頭は壊れたドゥエマー・スパイダーよりも働かない。それから、この手紙を盗むのはめちゃくちゃ簡単だったよ、エルジグ。あんたは読めないだろうけど、他の皆には知らせてやるよ。

ピエロンに関しては、どうして自分の考えを紙に記すなんて馬鹿なことをするのか理解できないね。ピエロンはこれまでバザールに来た中で最高の収集団なんだ。彼がこの紙の存在を知ったら、一瞬で盗まれるよ。おふざけも大概にしな!

ステファニー・ラフォーン

* * *
この手紙を次に読む者へ

私がいつも聞いている話によれば、ピエロンはそもそも定命の者ではない。彼は自分の領域から脱走したデイドラで、オブリビオン最大の宝物庫を築くことを目指している。彼が年を取らず、怪我もしないのはそのためだ。とにかく、私はそう聞いている。

ウィ・ジャ

* * *

ウィ・ジャへ

馬鹿げている。ファーグレイブで最初の収集団が、今我々の仕事を監督しているピエロンと同一人物だったはずがない。彼がエルフの血を引いているのでもない限りは不可能だ。ピエロンは彼の一族の名だ。一族の男子は姿を隠して父親から技を学び、十分に成長して髭をたくわえたら、その中の誰かがピエロン・デサントの名を受け継ぐ。だからピエロンの髪の毛は15年ぐらいすると劇的に変わるのだ。これが真実だ!

ガルンフェリオン

* * *
全員へ

お前たちの突拍子もない話は全部間違っている。あるいは本当かもしれないが。

PD

* * *
ピエロンへ

お前は恥知らずだ。

星を縫う者

* * *
全員へ

信じる奴がいるかどうか知らないが、このメモは私の手を離れていない。私はこれを夜の間、枕の下に隠していた。ピエロンにも星を縫う者にも、これを奪う時間や機会はなかった。私はもう何年もの間、我らが創立者の正体について考えを巡らせていたし、このメモには定期的に目を通している。毎日読んでいるんだ!私の頭がずっと上に乗っていたというのに、一体どうやってあの二人はメモに書き記すことができた?

ガルンフェリオン

四重の怒りの祈りPrayer of Fourfold Wrath

おお、破壊のデイドラ公!高貴にして強大なる王よ!洪水と火の王よ!あなたが選ばれたしもべの祈りを聞きたまえ!

あなたの力強い足踏みが大地を揺るがし、信心なき者の塔を打ち崩さんことを。力によって築かれしものは試練に耐え、砂の上に築かれしものは崩れ去る運命なれば。

あなたの溶鉱炉のごとき吐息の下で、森や街が炎に包まれんことを。邪悪なる者は火の中で滅し、徳ある者は浄化され清められるように。

あなたの赤き四本腕の命により、東西南北の川が価値なき者どもを押し流さんことを。あなたの言葉を聞かぬ者は溺れ死に、あなたの警告に耳を傾ける者は救われるように。

あなたの至高なる眼の一瞥により空が割れ、その眼に映る忌まわしきものに稲妻が降り注がんことを。勇気ある者は嵐を切り抜け、臆病者は風が吹かぬ時でさえ恐怖に飲み込まれるように。

変異の父メエルーンズ・デイゴンに称えあれ!あなたのしもべを大地と火により、水と風により試したまえ。我らがあなたに仕えるにふさわしき力を示せるよう!この祈りを聞きたまえ!

捨てられた日記Discarded Diary

デストロンがいないと、すべてが奇妙な感じだ。カリアが恋しがっているのはわかっている。私も同じだ。3人いればあらゆることを制御できるような気がしていた。血と力で結ばれた、3人の野望で。ヴァンダシアがデストロンを殺してから、すべてが変わった。

これまでの全ての研究がここに導いた。デッドランドの秘密が私に開かれ、この宝物庫の中にはメエルーンズ・デイゴンを理解するために役立つ何かが入っていることがわかっている。私たち自身の理解に役立つだろう。探していた答えがすぐ目の前にあるのに、見ることができない。

私の力で何とかカリアと私がこの隠し部屋に来られるようにしたが、どうやらそれが能力の限界らしい。何をどう試しても、宝箱は私の言うことを聞かない。野望の力に耐えるとは、一体どういった防護が施されているのか。

答えを求めて徹底的に本を調べたが、そこから自力で学べることはごくわずかしかない。少なくとも今のところ、ここは安全に調査を続けられる場所だ。カリアはじっとしていられないのだろう。手伝いたがるが、今ひとつわかっていない。責任の一部は私にある。彼女を守るため、立ち入らせないようにしていたからだ。私たちがこの旅を始めたのは、彼女に自分の力の制御を学ばせるためだった――こんなにも自分自身や、野望の力全体について知るとは予想もしていなかった。とても私には整理できない。彼女に説明を試みることなど想像もできない。少なくとも、今はまだ。私がわかるまでは。

この本の中には、これ以上望めないほどの答えがあることはわかっている。だが内容を読むすると、湿った砂の中を歩くような感覚がある。いたる所で私に抗う。真実を発見したと思うと、徐々に離れ、濁ってしまう。

「我が元に来るか、死か」。彼を止められなければどうなるか、メエルーンズ・デイゴンは明確に示した。だが、そのためには自分たちを理解しなければならない。力を支配しなければならない。それが前に進む唯一の道だ。私たちの中にある、この恐ろしく底知れない力が鍵となるはずだ。これが全ての錠を開ける。とにかく時間がもっと必要だ。

もっと時間が。

主任監督官の命令Head Overseer’s Orders

目覚めの炎の侍者とパイアに次ぐ

デッドランド中で、道を踏み外した目覚めの炎教団の信徒をくまなく探せ。それと知らずに献身の熱を求める、新たな祝福の子もだ。

破壊のデイドラ公の計画は最終段階に近づいている。これまでの我々の仕事は、この後のための焚きつけのようなものだ。もう勧誘を控える必要はない。

どんな手段を使うことも許可する。強要、暴力、脅迫。仲間を増やすためなら何をしてもいい。恐れるな。ブランドファイア矯正施設に連れてこられた新入りは気高く、勇敢なメエルーンズ・デイゴンの下僕として生まれ変わる。

成功の報せを待っている。

ブランドファイア矯正施設
主任監督官

狩りの儀式Rites of the Hunt

私は蔵書庫を守る者。デイゴン卿の知識の番人にして確信の塔の番人。

私は力を宿す。メエルーンズ・デイゴンに授けられた贈り物。知識を吸収する力。一度源を消化すれば、私の存在の一部となる。

私は源を狩る。あらゆる源を。全ての知識を。私は聡明になる。よりよい守護者となる。守るべきものを理解する。

私には代価がある。我が主は契約を好む。一度標的を定めれば他のものはない。誓いを果たすまで、私が造り出した血、魂、魔法のオーブが唯一のものとなる。それからまた他を探そう。

この代価を受け入れよう。失敗は許されない。私は全てを知り尽くす。

商品の回収命令Merchandise Retrieval Order

優先度:至急

オークションハウスの職員へ

ガレリア・ヘクソスの命令により、「品目M-62124—黒檀の刀剣」のオークションと販売を延期します。テルヴァンニ家の一員がこの品に対して過度に興味を示しているため、上層部はこの魔術師がファーグレイブを去るのを待って販売を進めるべきだと判断しています。

品物を梱包し、輸送の準備をしてください。本日中にスカーフィンの工作員、ヴリーゴとヒゾラが回収に来ます。今後の問い合わせは全て職員事務所を案内してください。

ヘクソスの名において
フラヴィア・モレナ

消費の誓約Vow of Consumption

カルマー・クランを食らい家の知識を得るために立てられた誓約

私は定命の者の家という概念をより深く理解することを欲し、吸収すべき知識の適当な器を選んだ。

カルマーというオークのクランがニルンの平原に住み、アトロズという存在を生み出している。彼らの団結と家の絆によって、この獣が生み出される。

メエルーンズ・デイゴン公に与えられし力に賭け、アトロズを吸収し、それによって求める知識を得ると誓う。さらに、我が狩りが終わるまでに出会ったカルマーの魂も貪ろう。

この誓いと共に、標的のもとへ私を導いてくれる新たな誓いのオーブを召喚する。失敗すれば、我が体は灰となって霧消し、デイゴン公に二度とお仕えできなくなってもかまわない。

焦げた日記Charred Journal

耐えられない。やりすぎだ。目覚めの炎のやり方に馴染めると思っていた。その残虐さにも。だが無理だった。彼らは力を約束するが、信者はメエルーンズ・デイゴンという炎にくべる薪でしかなかった。

罪悪感に苛まれている。彼らを哀れなる者の尖塔に誘い込んでしまった。ここにいる者たちはそっとしておいてもらいたいだけなのに。忘れられたいだけだ。その彼らに疫病を仕込んだ。想像以上の早さで広まった。

私が逃げ出す直前に、愚か者の何名かを大義のために改宗させたと聞いた。街の有力者の誰かだそうだ。あそこを乗っ取るのには、それで十分だったのだろう。

常なる飢えA Constant Hunger

やめはしない

創造の秘密を追い求めることを

全てが虚無になるまで

尖塔が落ちる時When the Spires Fell

雷鳴が剥げ落ち、空が大きく裂けた
仲間を引き連れ、獣がやってきた
聖堂の立つ穴に突進したが
我らは決して屈しなかった

嵐が頭上を渦巻き続ける
獣が外を徘徊する
だが哀れなる者の尖塔に残る
我が希望は生きながらえる

轟音と悲鳴が叩きつけられた
塵の雲が肺に満ちた
叫んでもどこへも行けぬ
頭を垂れ、言葉を控えよ

嵐が頭上を渦巻き続ける
獣が外を徘徊する
だが哀れなる者の尖塔に残る
我が希望は生きながらえる

教えよう、哀れなる聞き手よ
この街は闘争から守るかもしれぬ
けれどいつまでかは誰も知らぬ
生命の縁に立っている

嵐が頭上を渦巻き続ける
獣が外を徘徊する
だが哀れなる者の尖塔に残る
我が希望は生きながらえる

もはや尖塔の鐘は鳴らず
いかなる書にも答えはない
追放者は皆、デイゴンの眼を逃れ
故郷への道を見出すよう祈っている

双子の要塞の幻視A Vision of the Twin Citadels

破壊者イレニアン・ダスト 著

昨晩、炎と洪水の王がかたじけなくも私を選び、かの世界を覗かせてくださった。

夜明け前の静寂の時にそれは訪れた。あまりの鮮烈さにベッドの上で硬直するほどの夢だった。体から切り離された魂は、炎と灰の荒野をあっという間に飛び越した。溶けた岩が川となってカミソリのように鋭い丘の間を蛇行し、頭上では炎の嵐雲が逆巻いている。私の前には強大な要塞の黒い壁が聳え立っている。威圧的な石塔が輪をなして燃え盛る山の斜面にそそり立ち、デイドラの戦士たちが警備している。

「ここは何だ?」。夢の中で私は問うた。展開する幻視に畏怖を覚えつつ。

「お前が見ているのは切望の要塞だ」と大いなる声が轟いて答えた。夢の中の自己は、熱い灰の道沿いの3つの門に引き寄せられ、燃える山の中心へと吸い込まれた。そこには大きなクレーターに包まれた溶岩の湖があった。小島のような玉座に腰かけ、溶岩に足を浸して私を待っていたのはメエルーンズ・デイゴンだった。その巨体は塔のようだ。

ここでの私はただの魂にすぎなかったが、強大なる王の御前にひれ伏した。「お命じ下さい、我が主。私はつまらない虫けらでしかありませんが!」私は叫んだ。

メエルーンズ・デイゴンは微笑んだ。「ならばここで見たものを忘れるな、虫けら」彼は言った。「切望の要塞の門の数を数え、塔を測り、我が巨大な軍団を目に焼き付けよ。定命の殻に戻った時、出会った者全てに我が意のままになる兵力を伝えよ。私は力。不可避の存在だ。私に仕えることでのみ、お前のみじめな命は意味を持つ。来い」

デイゴン卿は燃える灰の雲となり、空へと舞い上がった。私はその後を追い、切望の要塞とその火山を後にすると、第二の要塞へと昇った。こちらは高い山道に聳え、切望の要塞を見下ろしていた。ここに火はなく、溶岩の川もなく、荒涼とした岩を打つ強風が吹き荒れるばかりだった。

私は壊れた壁と黒い門の向こうにある静まり返った中庭へと吸い寄せられた。ここでは誇り高き軍団が戦に備えて整列しているわけではなく、苛まれる亡霊が影に身を潜めているだけだった。屋根のない巨大な広間の廃墟に、デイゴン卿が再び現れ、冷たく黒い石の玉座の上で静かに考えていた。

口を開くのは憚られたが、そうせねばならなかった。「ここで何が起きたのです、我が主?」

「ここは破壊の安置所。切望の要塞の双子だ」とメエルーンズ・デイゴンが答えた。「かつて私は我が領域の全てをここから統治していた。広間には召使と無数の勝利の記念品がひしめいていた。だがその全てを内側から破壊しつくした」

「なぜなのです、デイゴン卿?」恐怖に慄きながら私は尋ねた。

「なぜなら私は破壊であり、それが私のなすべきことだからだ」デイゴンはがらんどうの宮廷で腕を振った。「亡霊を忘れるな、破壊の激しさを思い知れ、我が不変の決意を心に刻め。定命の姿に戻った時、出会ったもの全てにその目で見たものを伝えよ。私の手によってのみ、彼らの最期に意味を与えられる。さあ、行け」

彼は身振りで私の肉体のない魂を追い払った。私はベッドの上で絶叫して目を覚ました。私の目は見てきたもので焼けるようだった。なぜデイゴン卿がお仕えするようになってたかだか9年の破壊者に、かような名誉を与えられることにしたのかは分からない。

だが、私は我が主の命に従うつもりだ。

大司祭への手紙Letter to the High Priest

第二紀563年、恵雨の月11日

偉大なる目覚めの炎教団の大司祭様

以前はお伝えしなかった真実を把握していただくため、この手紙を書いています。教団内での立場はわきまえておりますのでご安心ください。私はただ、メエルーンズ・デイゴンから直接受けた命令に従って行動してきただけにすぎません。

前回お会いした際、あなたは私の子の父親について質問なさいました。私は床を共にするよう皇帝から命令された衛兵隊長だとお答えしました。あれは嘘です。子の父はモリカル。シロディールの皇帝です。

私はメエルーンズ・デイゴンに従って、モリカルの妻となりました。彼が夢に現れて、皇帝の子をなすよう指示されたからです。彼は、子供の血統の真実を誰にも知らせてはならないともお命じになりました――たとえあなたであっても。

今このことを明かすのは、計画の次の段階が私に示されたからです。私は我が子を養育する役目を担うのです。娘が運命を全うする日が来るまで成長に手を貸し、守っていくべきなのです。

シロディールでの私の仕事は終わりました。今度はデッドライトで見習いたちを管理するよう命じられていますが、ご連絡いただければいつでも向かいます。娘の世話に協力するためなら、全てを投げ捨てるつもりです。

デイゴン卿とロングハウス帝の名において
ディサストリクス・セルディナ

嘆願者の歌A Supplicant’s Song

メエルーンズ・デイゴンからの解放が我らの懇願
喜びによりて我らにもたらされた混沌
皆を苦境から許し、穏やかな休息を与えよ
彼が課す全てから逃れ、安全を共にせよ

デイゴンの過酷な炎から逃れるため力を貸せ
彼の激しい害から守る盾となれ
多くのゲームで我らはポーンと扱われ
その破壊的な狙いから皆を守れ

デイゴンの凄まじい刃を鈍らせたまえ
厳粛な粛清による恐ろしき流血を止めたまえ
信徒はおぞましき闘争に酔い痴れよ
彼の命の放散を終わらせよ

デイゴンの災厄から我らを救え
堅固な戸口を越えて支援をもたらせ
野望の鎖の拘束を受けるでない
さもなくば破滅の痛みで消え去る他ない

定命の歌On Mortal Song

書記フォルサルゴールと教師センデル・オマヴェルを見事に狩り、定命の言葉を学んだことで、新たな定命の概念を獲得した。それは定命の歌だ。

それは定命の者が彼らのみに分かる内なるリズムに合わせて、高低様々な音を生み出す奇妙な現象だ。音はどうやら定命の者が好む順序に並べられているようだ。その時、さらに学ばねばならないと悟った。

私はオーブを呼び出した。スヴァクハートという彼らの土地の北部に住まう定命の者を探すためだ。我が魔法と偵察によれば、歌作りで知られた者のようだった。ゆえに私は彼を追い、彼が寝ているうちに気づかれないよう、定命の者が定期的に飲む毒で酔わせた。

歌の知識が私の精神を駆け巡った。岩を飲み込む溶岩のように。音の流れ、様々なテンポ、その魅力に弱い獣を大人しくさせる効果など。歌は実にくだらないものと思えるが、ニルン中にあまねく漂っている。

定命の者は歌の作り手を尊敬し、名誉ある地位に置いている。だが、彼らに食物のため跪くことを強要してその社会的地位を低下させてもいる。こういった矛盾は、定命の者の暮らしの非論理性の好例だ。

さて、ドレモラを呼んで記述させよう。歌というものを試してみたい。

定命の者に関するドレモラの物語Dremora Stories About Mortals

スカルド・ヘルグネアの編纂

ドレモラは定命の者を軽んじがちだ。それには誰も驚くまい。ほとんどの者は我々をある程度見下している。運がよければその憎悪が好奇心に覆われることもあるが、必ずしもそうではない。しかし、彼らの視点(ドレモラの間でも様々に広がっている)はとても面白い。ファーグレイブに滞在していた間、ニルンの者を様々なドレモラがどう思っているのかを調べてみた。不思議なことに調査するうち、実に多くの荒唐無稽な思い込みや物語に出くわした。聞けば聞くほどでたらめな話ばかりだった。ある種の民話といってもいい。最も有名な(そして私のお気に入りでもある)ものをアンソロジーとして集めた。

貪欲な旅人
間違いなく圧倒的人気を誇る物語は、オブリビオンの珍味を探すべく、正体不明の定命の者がファーグレイブにやってくるものだ。デイドラは食べる必要がない。そういった行為の必要性が見下されているようだ。確かに興味を持っている者もいる。ファーグレイブのような場所は、好奇心旺盛な定命の者を喜ばせる食材に事欠かない。

しかし、この定命の者は満足できなかった。物語によると、彼は食事をしながらファーグレイブを通過して行った。彼は噛まなかった。単に顎を外し、クランフィアのような大口を開けて、食物を放り込んで行った。その場にいた者は(直接の目撃談は聞けなかった)店にあるもの全てを平らげて行った。男が通り過ぎた後には、空っぽになった棚や店が残された。店の物資を貪り尽くすと、次の店に移ってそこでも貪った。

やがて野次馬が集まってきた。デイドラも定命の者も、満たされない飢えを抱えた定命の者を見物にきた。やがて、定命の者は汗をかいて苦しみだした。ズボンが破け、チュニックが裂けて腹がせり出してきた。目につくものを食べつくし、あきらかにそのツケを払うことになったのだ。定命の者は座っている椅子にもたれかかり、眠りに落ちた。何日もの間、誰であっても、何が起きても彼を起こすことはできなかった。そのイビキは遠く離れた通りからも聞こえた。

脆いカジート
デイドラの間に流布する他の物語に、不運なジザルと言う名のカジートの話がある。このカジートが実在したかどうかはどうでもいい。この物語のバリエーションが豊富であることから、ジザルの実在は疑わしい。実在していても、後日付け加えられた物語の一面でしかない。ジザルは多くの人物を一つのキャラクターに凝縮したものだろう。

物語によると、ジザルはニルン出身で大冒険を求めていた。しかし到着するなり、やたらと好戦的なスキャンプにからまれる。スキャンプはジザルの外套をズタズタに引き裂き、彼女が持ってきた食料を奪った。格闘した時の傷が化膿し、彼女は失明する。その後ドレインを受け、精神もやられてしまう。

話にこれ以上付け加えることはない。なぜデイドラがこの話を語り継いでいるのか、よくわからない。

定命の者の優しさ
優しさとはほとんどのデイドラが見下している資質だ。概念そのものが侮辱だと言う者もいて、そういった資質を見せる者は軟弱者として扱われる。そういうわけで、デイドラの間に流布している話は定命の者の優しさを小馬鹿にするものがいくつかある。私のお気に入りはセヴァーへ雷雨の研究に行った名もなきアルゴニアンの話だ。彼女は旅先で多くのデイドラに出会い、それぞれに優しく接する。

残念なことに、毎度彼女はバカにされる。中には優しくされて、文字通り顔につばを吐く者もいた。他の者は彼女を笑った。とりわけ不機嫌なドレモラは彼女の尻尾をネックレスにしてやると脅した。だがそれでも、アルゴニアンの決意は揺らがなかった。 やがて哀れな愚か者の噂が広まり、彼女の愛すべき気質を利用しようとする連中が列をなすようになった。

有り金を全て寄越せと言う者もいた、彼女が本当に渡すか試すためだけにだ。アルゴニアンは承諾し、そのデイドラが物も言わずに持ち逃げしても怒らなかった。他の意地悪な野次馬はフィーンドロースの一団にからまれているふりをした。アルゴニアンは彼らを救おうと果敢に突撃したが、到着すると、犠牲者だったはずの者に手ひどく罵倒されただけだった。優しくしただけで彼女が非道に苦しめられたエピソードがさらにいくつもあるのだが、それでも彼女は怯まなかった!

さて、もしこれがニルンの話であれば、ハッピーエンドを期待するところだ。物語には多少の教訓が織り込まれているだろう。優しさが常に勝つだとか、根気強さとは偉大な長所だとかだ。しかし、大半のデイドラはそういった物語に興味がない。デイドラに優しさがもたらす秘められた利益などない。

優しいアルゴニアンは最後にスカーフィンに出くわし、彼が助けを求めていると思い込む。彼女は「こんにちは!あなた大丈夫?」と呼びかける。スカーフィンは無防備な獲物を察知して、哀れっぽく泣き、足が痛むと嘆いて見せた。しかしアルゴニアンが近づくと、スカーフィンは跳び起きて飛び掛かった。

この話のエンディングには様々なバージョンがある。そのほとんどが実に陰惨だ。優しいアルゴニアンの運命はおしなべて悲劇的だというだけに留めておいたほうがよいだろう。教訓は実に単純だ。デッドランドに来ることがあったら、誰にも優しくしてはならない。

適切な鞭打ちの手順On Proper Whip Procedures

どう考えても、なぜ事態がこのようなことになったのかわからない。このメモを読んで深く反省し、上級教官からの酷評を受け入れること。このリストにある項目のいずれかでも行ったなら、教官トガラス・ヴァノのもとに出向いて再教育を受けるように。

– 授業を始める前に、対象を確実に指定された線の中でひざまずかせること。不適切に滴った血で足を滑らすことにはもう耐えられない。
– 鞭が木の幹の割れるようなピシッとした音を立てない場合は、握り方が間違っている。
– 対象に支配権を握られるのなら、お前にはデイゴン卿に仕える資格がない。
– 対象の骨が見えるようにしてしまったら、それは失敗だ。
– 最後に、鞭を使う予定があるなら、授業の後は必ず適切な場所に戻すこと。他の者をデイゴンのもとへ案内できる時に、鞭を探して時間を無駄にするのはうんざりだ。

破れた日記のページTorn Journal Page

セルヴェニ、お前は偽殉死者のフォリーに向かうんだ。お前の腕をもぎ取りたがっているデイドラの軍団のことは考えるな。乗り越えねばならない荒野に控えているマグマや稲妻のことは絶対に考えてはならない。その責任の重さもだ。

ここに閉じ込められた二つの魂のことを考えろ。お前はマザーストーンを持っている。それを忘れず、先に進め。一歩ずつ進むだけでいい。

たったの一歩だ。

たかだか、小さな一歩だ。

ダメだ。こんなの無理だ!一人じゃ無理だ。三大神は何を考えて、私をここに遣わしたんだ?

破壊の要綱The Tenets of Destruction

炎の暴君に仕える者にとっての破壊の意味に関する考察、クイストン・メリアン 著

破壊。かつて存在していたものを完全に抹消すること。破壊は畏怖の念を抱かせる。徹底的で包括的なものだ。

破壊された家は、住人の望む通りに再建される。彼らの必要性と欲求がその建物の形を決める。家は店、聖堂、さらには公園となることもありえる。そういった場合、当初の破壊を受けた者たちに、圧倒的な幸せと利益をもたらしたことになる。これは、破壊が進歩や改善の力であることを示す。

クーデターが王や議会を転覆し、人々も、そして自身も仕えるべき根本的な法の支配に従わない政体が崩壊したところで、合理的な人間は否定すまい。政治的動乱は、奉仕すべき統治者が押し付けた悪を正すために存在する。このような状況では、裏切り者と愚かしい忠臣のみがかつての首魁をあおぎ、かつてあったものを立て直そうとする。そもそも不健全な政体だったのだ。全市民に対して効率的かつ公平に機能していたのなら、クーデターなど起こらなかったはずだ。

破壊がこうしたこと全てであり、それ以上でもあるのなら、なぜこれほど否定的な響きがあるのか?答えは簡単だ。真の破壊によってのみ可能な絶滅を目撃する幸運に見舞われた定命の者は、事件の凄惨な性質にのみとらわれているからだ。彼らにはそういった素晴らしき破壊がもたらす可能性を見る客観性も知識も欠けている。頼りにしてきた家、政体、街、人物の絶滅を知覚した時、その先の未来が可能だとは思えないのだ。だが可能だ。虐殺自体を目的とした虐殺は破壊ではない。それはただの蛮行だ。

破壊を恐れるな。それは望ましい変化の力だ。そこにある治癒の力は過ちではなく、我々全てが従う基礎的な英知なのだ。

破壊者ウルサナへの手紙Devastator Ursana’s Letter

破壊者ウルサナへ

“分裂した変異”計画のために被験者がさらに必要よ。番兵の一隊をキンマーチャー・ジンドの鋳造所に送り、現在彼女が抑留しているデイドラの被験者を全て預かって。その後、彼らを機械のところまで輸送するため、掃滅王の頂まで連れて行きなさい。

必要条件を書いたジンド宛ての手紙も同封した。ためらうようなら、作業のために囚人を提供することにはヴァルキナズ・ノクブロズも同意していることを思い出させて。

遅れないように。同盟していないクランの中には、行方不明のキンを探すところも出始めた。ブレードベアラー・クランの者を鎖につないでいる時、彼らの仲間に見つかりたくはないでしょう?

シスター・セルディナ

破滅の運び手セルディナの遺言Doombringer Celdina’s Testament

破滅の運び手セルディナ 著

目覚めの炎教団は、人生の立て直しを望むあらゆる人を歓迎します。多くの土地から様々な職業の人々が、メエルーンズ・デイゴンに仕えるためやってきます。ですが強大なデイドラ公の眼から見れば、かつて私たちが何者であったかは全く重要ではありません。崩壊、失敗、失望、悲嘆――すべてどうでもいいことです。デイゴン卿が教えてくださるのは、与えられたものをどう使うかです。

見習いの皆さん、ここで私自身の話をさせてください。これは私の信仰の告白です。

もうかなり昔のことのように思えますが、子供の頃に私は無価値な両親に捨てられました。私は黄金の杖の小修道院に身を寄せました。太陽の神であり偉大な建築家マグナスの信徒は私を世話し、教育してくれました。

しばらくの間、私はそこで幸せに過ごしました。小修道院の侍者たちは、マグナスによるムンダスの壮大な設計と、創造物に取り込まれた欠陥に対する彼の落胆について教えてくれました。ある老いたモンクなどは、より闇の深い設計を明らかにする禁書を見せてさえくれました。かつてのマグナ・ゲの中には、建築者の計画に沿ったものに作り直せるよう、誤って作られたものを破壊する道具を探し求めた者たちがいたのです。

私は混乱しました。自分の眼には甘く若々しく映るこの世界を破壊することが一体何の慈悲なのか、理解できませんでした。その後16歳になった時、ブラック・ドレイクのリーチの大軍がやって来て、ハイロックに対し戦争を起こしました。

リーチの民は私のいた小修道院を燃やしました。彼らは私の兄弟を殺し、姉妹を凌辱し、そして殺しました。偶然私は生き残りましたが、結局はリーチの民の捕虜として連れ去られました。彼らは何ヶ月も無力な労働者である私を手元に置きました。そして私は世界の欠陥の真実を学んだのです。苦しみだけが待ち受けていることを。

やがて軍が解散すると、私を捕らえたリーチの民はそのまま私を捨てました。彼らは私の故郷と家族を破壊しました。塵に帰したのです。だから私は逃れましたが、怒りと復讐心は保ったままでした。私はマグナ・ゲとこの欠陥のある世界を破壊する道具の話を思い出しました。それがメエルーンズ・デイゴン、破壊のデイドラ公です。私は目覚めの炎教団の信者を探し出し、隠されていた彼らの教えに真実を見出しました。その真実の中に、復讐を遂げる方法を見出したのです。

そして、私は支配者を崇拝し、彼の意志が成し遂げられる時を目にするため、毎日勤勉に努めています。メエルーンズ・デイゴンを通じてのみ、偉大なる建築家の完成された仕事とマグナ・ゲの願いが実現することがわかっているからです。

部分的に隠された日記Partially Hidden Journal

我々が取引をした相手が誰なのか、しっかりと覚えておかねばならない。メエルーンズ・デイゴンはデイドラ公だ。人ではない。彼は我々の理屈で納得しない。今はこの協定が双方に利益をもたらすが、いつまでもそうあり続けると考えるべきではない。最悪の事態に備えて、身を守る手段を確保しておかなければ愚かだろう。

これまでのところ、我々の研究の成果は控え目に言っても苛立たしい。「干し草の中の針を探す」という言葉があるが、私の前任者たちがデッドランドで答えを徹底的に探した苦労の半分も表していない。だが、ブラック・ドレイクの努力は無駄ではない。

答えはエゴニミックだ。野望の中にある力は古い。これはメエルーンズ・デイゴンにとって基本となるもので、切り離せない力なのだ。これはデイドラ公の名のかけらだと考えられる。だがこの言葉、エゴニミックは、単なる名をはるかに越えるものだ。この言葉を発する者は誰でも、信じられぬような力をデイゴンにもたらすだろう。それは彼をニルンから追放できる。

これを利用することがないよう願ってはいるものの、これを意のままにできることは私に安堵をもたらす。これだけ有益な秘密をここに置くのはあまりにも危険だ。指示の記録はブラックウッドにある我が娘、メイリードの宝物庫に移した。もし彼女が復讐のために必要とするなら、自由に使えるだろう。

目覚めの炎の日記Waking Flame Journal

破壊者カーシの日記より。

この鍛冶場を言い表せる言葉はない。メエルーンズ・デイゴンはここで兵器を精錬する。炎、硫黄、苦痛の臭いがする場所だ。

鍛冶場は冷えているが、かつてここで燃え盛った偉大な炎の記憶は今も残っている。デイゴン卿の力はこの壁を通じて響いている。その核が石の下で唸りをあげる。この場所の秘密の鍵を開けたい。鍛冶頭は去って久しいようだ。偉大な道具がどのように動いたのか、説明らしきものはない。だから何かを知るつもりなら、自分で解明するしかない。発見をこの日記に記録していこう。

小さな物体が無秩序に散乱している。ルーセントだと思うが、その目的はわからない。ほとんどが反応しない状態だが、以前は力がうなっていたようだ。この場所の周囲に散らばっているのは、深く印が刻まれた様々な放出台だ。私は多くの書で、この放出台がデイドラの結界にとって欠かせない理由を読んだ。ルーセントは台にうまく合うように見える。もしかしたら、これが力を浸み込ませる方法か?炉は動力を必要としている。それも大量の。ルーセントが鍵なのか?解明するには、試みなくてはならない。

歴史上のデイゴン信者Dagonists Through the Ages

最近確認された目覚めの炎教団についての短い論文。デイドラ教団学者、ラリナ・ハヌス 著。

教団は支持者、入信者、指導者が集まった奇妙な集団だ。信仰の性質と存在がどのように受け止められるかという社会的な違いによって、デイドラ公の教団は様々な人口構成を示す。例えば、ペライトの病の教団はほぼ完全に、社会からの追放者で構成されている。真逆の存在なのが自然教団で、貴族の尊敬されるグループだが秘密裏に疫病のデイドラ公を崇めている。

メエルーンズ・デイゴンの教団も構成と信仰の篤さが多様で、その性質は教団が結成された場所と、中核となる人口構成の傾向に左右される。「破壊の兄弟」は第二紀115年から第二紀140年の間に活動し、帝都の貧民で構成されていた。教団は信徒が増加したにも関わらず、5年も概ね秘密主義を貫き通せた。彼らが悪名を轟かせたのは、市内の中産階級の商人を襲い始めてからである。主要な商人が失踪し、流通経路の多くがズタズタにされた。彼らは拷問の末、死刑を言い渡された。

第二紀243年~244年のブラッドファイア教団はそれほど慎重ではなかった。ほぼ完全に貴族のみで創設、構成された教団は迅速に行動し、レイヴンウォッチの中核を叩き潰そうとした。下僕の力を借りた教団の崇拝者は市内の名家の扉を封鎖し、家に火をかけた。市内の教団に関わらない貴族が殺人を目論む者から逃れられたのは、何人かの召使がこの計画を警告してくれたからだった。ブラッドファイア教団のメンバーは残らず現行犯で逮捕され、死刑に処された。

現在ブラックウッド地域などで注目を集めている目覚めの炎教団は、古いデイゴン教団と新しい入信者を組み合わせたもののようだ。ブラッドファイア教団と同様、目覚めの炎教団の信徒は名家の出身を謳っている。数世代にわたって参加する者が多く、判明した中の著名人には裕福な帝国の伯爵とその息子がいた。

ブラッドファイア教団と異なり、目覚めの炎の手口はより「破壊の兄弟」に近い。襲撃の準備が整うまで、活動を隠して待ち構えることを苦にしない。ひとたび計画が走り出せば、教団の活動は散発的に行われ、密かで統制されたものとなる。だが目撃談が増え、教団の活動が活発になるにつれ、より血なまぐさく、破壊的な活動が間違いなく露見するだろう。今後数ヶ月のうちに教団の計画が明らかになることで、ブラックウッド地域の官吏を悩ませてきた未解決事件が解明されるに至っても驚くには当たらない。

目覚めの炎が「破壊の兄弟」教団の道を辿るのなら、次のステップは有力なターゲットに対する大規模な攻撃だ。過去の教団と同様、メエルーンズ・デイゴンとの盟約により、死と破壊がもたらされるだろう。災厄のデイドラ公に従っている以上、それだけは確かだ。

ブラックウッドの本

Books of Blackwood

アスタラからの手紙Letter from Astara

エラム

ブラッドラン洞穴の中の遺跡はずっと昔に破壊され、近くの村によって遺体安置用の穴に転用された。とは言え、聖域そのものは元の状態のままだ。計り知れない危険がある場所という洞窟の評判は、今も明らかに残っている。これは我々の役に立つ。

戦いながら進むのは大変な労力を要するだろうが、扉は遺跡のはるか奥深くにある。長い道のりだ。注意してくれ。この聖域を再び開けるつもりなら、片付けなければならない。詳細を渡そう。

それから、これは忘れるな。死だ、我が兄弟。それが鍵だ。

マトロン・アスタラ

アステラ女公爵のメモDuchess Astella’s Notes

もうすぐ、愛するマセンが戻ってくる。でもまだやることが沢山ある!

儀式のためには護符、つまり彼の防具をハートベインの茂みの下に埋めなければならない。あの植物の強烈な毒は、妨害する霊魂を遠ざけておくためのもの。問題はどこに置くかよ。

彼の胸当ては井戸のそばに置こう。彼の心臓が再生するように。

彼の兜は壁のそばに置こう。近づいてくる危険が見えるように。

彼の盾は門のそばに置こう。この城と彼の霊魂を守るために。

最後に、彼の剣はある祖先の手に委ねるわ。危険はあるけれど、やってみるしかない。

アボール評議員の日記Councilor Abor’s Journal

他の元老院の者たちとは違って、私はレオヴィック皇帝に信頼されていた。ロングハウス帝の秘密の真実を知っていた。まあ、そのほとんどだが。私と大司祭。その時はそこに含まれることが名誉のように感じられた。今?私は生命の危険を感じて、この忌々しい監視塔に隠れている。

知っていることを全て書き綴っておくのが最善だろうと判断した。四つの野望とそれがどのように作られたかについて。メエルーンズ・デイゴンとの取引について。あらゆることを。新しい宝物庫の場所を知るのはおそらく私だけだろう。ヴァレンの軍勢が近づいてきたため、レオヴィック皇帝が野望を移動させた場所だ。

この件は全て終わったのではないかと思っていた。レオヴィックが死に、ロングハウス帝が滅びたときに。ファルル・ルパスから受け取った手紙によると、それは間違いだった。以下は四つの野望が収められている3つの宝物庫の場所だ。

〈続く数ページは破り取られている〉

アリジンダの日記Alizinda’s Journal

栽培の月 12日

ああ、彼ったらすごく優しく「アリジンダ、君は私の月夜、昼の太陽だ」なんて言うの。でも、貴族の人ってこの程度のことは恋人に言うの?時々マセンは、私のことをただの一時的な遊び相手としか見てないんじゃないかと不安になる。彼が口説けば手に入れられるだろう、ニベンの女性たちにはとても敵わないと自分でも分かってる。私から彼にあげられるものはほとんど何もない。たとえそうでも、彼からは一番高いアリクル砂漠の太陽よりも温かい愛を感じている。どうか分かっていてもらえますように。

年央 8日

彼は私を愛してる!長身のパパのズボンにかけて、私があんな人に愛されるなんて、一体どうして?彼には無駄に心配してると言われた。彼の心は私のものなんですって。それも私だけの!結婚のことさえ口にした!想像できる?夢が全部叶いそう!

年央 16日

私は本当に馬鹿だった。愛?そんなの残酷な冗談よ。マセンの結婚や旅の話は、全部ただの嘘だった。彼が手に負えない軽薄な行為にふけることを許す甘い言葉。彼が誰かにプロポーズしたって、他の女性たちが教えてくれた。まだ見たこともない、北の地方の跡取りに。女公爵は誇りに思ってるでしょうね。でも、私は笑い者にされない。これ以上は。

年央 18日

準備は整った。マセンは今夜、小屋で私と会うつもりでいる。今夜でなければ。私の怒りは夜ごとに薄れ、悲しみが取って代わっている。彼は私の心を踏みにじった。私を利用した!今報復しなかったら、ずっとできないんじゃないかと思う。あなたが憎いわ、マセン!私に愛する人を傷つけさせる、あなたが憎い!

アルディアの日記Ardia’s Journal

「砕かれた遺跡」の探検

ジギラはこの奇妙な遺跡に調査員を護衛する代金をたっぷり支払ってくれた。正直言うと、ここで何が見つかるか知ってたら、ただでもついて来たかもしれない。

デイドラのデザインは今までに見てきた何にも似てないけど、異様なほど親しみを感じる。最初の印象より、明らかに広大でもある。まだそれほど進んだようには思えないが、施設内の風景は入口の外からの観察と調和していないように思える。おそらくメモに地図を加えた方がよさそうだ。

* * *
地図を描いておくべきだった。グループから離れた瞬間に、ジギラの調査員が裏切った!転んでマントが破けたおかげで逃げ出せた。どこへ行くかを記さなければならない。おそらく遺言として。

* * *
左。左。扉から出る。裂け目を越えて。完全に振り返った。近づく音が聞こえる。時間がない。

アロイシウスのメモAloysius’s Note

私を見つけた人へ。この手紙とかばんに入った指輪をレヤウィンのターシャ・ファルトーに届けてください。

最愛のターシャ

君は「ほら、撫でてあげて。ただの無害なモングレルよ」って言ったね。

僕たちがどれだけ間違ってたか、ほとんど分かってなかったよ。あの悲し気な犬は前兆であり、僕の死の導き手だったんだ。

あのレヤウィンでの完璧な夜は今でも頭に浮かぶ。喜びに満ちた君の顔。まぶしかった。通りを歩いた時の君は太陽の光で輝いてた。できたら、本当にできたら、それをもう一度見たかった。できたら。

ポケットの中にある指輪を渡して、計画どおりにプロポーズすればよかった…

手を伸ばしてあの忌々しい犬を撫でようとせずに。もちろんあいつは噛みついたよ。だけど、その表面的な怪我は単なる始まりに過ぎなかった。

当然ながら、手から血が噴き出している状態で君にプロポーズなんかできなかった。だから僕は我慢して、黙ってその場を離れて一番近い治癒師のところに行った。そこでは親切なアルゴニアンが怪我に包帯を巻いてくれて、痛みを抑えるために薬用ヒキガエルをくれた。不幸にも、それは本当の負傷に対しては貧弱すぎる鎮痛剤だと分かった。

日が沈むと、僕は高熱による狂気じみた夢に苦しめられた。最後に覚えてるのは、自分の服を引きちぎって吠えながら夜の中へ駆けて行ったことだ。目を覚ましたら、誰かの鶏小屋で、血と羽にまみれてた。

どうか分かってくれ。これは君のためにやる。この呪いを受けたままもう一度君に会ったら、危害を与えてしまうかもしれない。そんなことになったら、自分が許せない。だから会わない。渡せなかった指輪を遺すよ。これは他の誰でもない、君のためのものだった。

いつまでも君を愛する
アロイシウス・フルヴァヌス

イナリースからの手紙Letter from Inalieth

バスティアン様

私を覚えていらっしゃるでしょうか。計算だと、そろそろ15歳におなりでしょう。ほとんど大人ですね。最後にお会いした時は本当にお小さかったですが、何年もあなたのことを考えておりました。

私は亡きお父様とご結婚される前から、あなたのお母様の召使をしておりました。お母様が亡くなられてからも、しばらくの間はお世話をさせていただきました。私があなたをダガーフォールのシルヴェッレ家にお連れして、何ヶ月かそちらにお仕えしたのです。ですが、まだ小さい内に去らねばなりませんでした。

私は具合がお悪く、もう長くないことをお分かりになっている時にさえ、お母様が一番気にかけ、心配していたのがあなたであることをお知らせしたいのです。お母様はあなたの教育やその他の資金を確保するため、持参金の中から宝石を取り分けておいででした。そしてシルヴェッレ家を離れることが許されたら、すぐにあなたをお姉さまのところにお連れして、一緒に暮らせるようにして欲しいと私に依頼なさったのです。クラレーヌ様はあなたよりもかなり年上で、お父様が屈辱を受けた時にはすでに幸せな結婚をなさっておいででした。なのにどういう訳か、シルヴェッレ家はあなたを解放するどころか義務を負わせたのです。あなたの旅路が続きそうだと思われた時に何度もお願いしましたが、満足のいく返事は決して得られませんでした。その後間もなく私は解雇されました。

私は今、レッドファーの村に住み、宿屋〈ハーティー・ホーヴァー〉で働いています。グラーウッドには何人か家族もおり、最近は十分に満ち足りています。もしお手紙をくださるなら、あるいはこちらの方にいらっしゃるようなことがあるなら、元気だと一言お知らせいただけたら、こんなに嬉しいことはございません。

心からの愛情を込めて
イナリース

ヴィヌスのメモVinnus’s Note

オーサス

愛しい人よ、探していたものを見つけた。石は間違いなく何らかの闇の力、発見された場所から考えると恐らくメエルーンズ・デイゴン自身の道具だ。だが、これを満足いくまで調べられる機会は得られなかった。彼の領域に不法侵入している間に、デイゴンやその従者の注意をひくのはあまりいい考えと思えない。

この仕事が私の最後になりそうな気がする。私を見つけた人にぜひお願いしたい。もしあなたが味方なら、この石をレヤウィンの戦士ギルドのオーサス・ポンタニアンへ届けて欲しい。あのデイゴン信者たちが私たちに対する武器にする前に、彼がこの石の目的を解明できればいいのだが。

それから、彼の人柄については謝っておく。オルトス、これを読んだら私の新しい友人に親切にしてくれ。これを届けるため、それは長い旅をしたのだ。

ウェアシャーク船長のサーガ、2巻The Saga of Captain Wereshark Vol. 2

沈んだ墓地にとらわれ、ドラウグルの群れに囲まれ、古代アンデッドのプリンスに直面したとき、海賊の船員が応じる方法は沢山ある。プリンス・ヴァウグルの要求に対する強きフリッカの答えは、もっとも直接的なものだったかもしれない。大股で頭蓋骨が散乱する玉座に近づき、プリンス・ヴァウグルに向かって嘲るようにニヤリと笑うと、炎のような王冠を叩き落とせる強さで彼をぶん殴った。

「戦いへ!」強きフリッカは叫んだ。「栄光のために!」。

一度は尻込みしたウェアシャークの海賊たちが即座に応じた。怒号や叫び声が湧き上がると、海賊たちはアンデッドへの恐怖を忘れ、周りを囲むドラウグルに棍棒や、短剣や、拳を叩き込んだ。完全に不意打ちを食らわされたスカイリムの忌まわしい死人は、当初敗北したも同然だった。

残念ながらすでに死しているドラウグルは、一般的な盗賊よりも棍棒や短剣に対する強さを備えていた。我らが海賊が連続で殴打を放っても、プリンス・ヴァウグルの軍勢は同じようにやり返してきた。最初にやられたのは羽のつま先のガーンだった。彼の伝説的なスピードでさえ、矢の雨を避けきれなかったのだ。我々がレッドミスト島から助け出した、化粧をした人食い部族の2人が墓まで彼についていった。

戦いはすぐに我々が不利になった。強きフリッカの大斧が次々にドラウグルを真っ二つにしても、ヴィミー・ラクロイックの輝く短剣が目を、耳を、内臓を奪っても、ドラウグルは押し進み、叩き切り、甲高い声で笑った。ひしめく船員の中央で身動きがとれなくなった私は、自分の棍棒を振り上げ、覚悟を決めた。

だが、征服されるその前に、狂乱の魔術師ネラモが炎の環を放つと、朝の太陽の中の明るいオレンジ色の花のように広がった。炎は一番近くにいたドラウグルを灰になるまで焼き尽くし、残りを追い散らした。「逃げろ、この馬鹿ども!」ネラモが叫んだ。「地表へ!財宝を運べ!」そこで我々は財宝を運んだ。

海賊たちはそれぞれ何であれ運べるもの、黄金、ゴブレット、燭台、あらゆる高価な金属や高価な宝石がはめ込まれたものをさっとひと掴みすると、やってきた方向に逃げだした。

恐ろしく巨大なドラウグルが我々の行く手を塞いだが、硬き鱗の者と毒の短剣が静かな怒りと共に切り裂いた。私と他の者が死体を飛び越すと、硬き鱗の者が後方を守ってくれたが、彼の顔に失望の色が浮かぶのが見えた。またしても、好敵手にも見える相手が、彼をシシスのもとへ送ることに失敗したのだ。

ずぶ濡れの広間全体が大きく振動したとき、我々はほとんど地表に到達していた。我々はよろめいた。いつものように前を行く二つの傷のガレナが、最初に危機へ気づいた。我々がこじ開けた扉が自動的に閉じつつある。止める方法を見つけなければ、永遠にこの沈んだ墓地に閉じ込められてしまう!

だが、石の扉が閉じる前に彼が戻った。船長だ!たなびくシルク、小粋な王冠、大量の色とりどりの羽を見間違える者などいない。ウェアシャーク船長は明るく光を放つ宝石を両手に持ち、古代ノルド語と思われる言葉を叫んだ。彼の耳に残る抑揚は、プリンス・ヴァウグルのそれを真似たものだった!閉じかけた扉は振動し、やがて止まった。

安堵の歓声が上がり、ウェアシャークの船員たちが開いた扉に殺到して駆け抜けると、背後でドラウグルが唸り声をあげた。最後に現れたのは強きフリッカだった。私は彼女がその広い背に、羽のつま先のガーンを担いでいるのを見た。

最初は、彼女がそこまでの危険を冒した意図が理解できなかった。ガーンは死んでいるのだ!だがその後、私は二つの傷のガレナがいつも言っていたことを思い出した。ウェアシャークの船員は家族だ。家族は誰一人置き去りになどしないのだ。

ウェアシャーク船長のサーガ、3巻The Saga of Captain Wereshark Vol. 3

[これより前の数ページは破り取られている]

我々が凍った島の地表に到着するやいなや、プリンス・ヴァウグルの恐ろしい言葉が響き渡った。それはあたかも凍り付いた空気そのものが語っているかのようだった。

「それは我が財宝だ、定命の者め。我が遺産だ。お前たちに盗むことなどできぬ。偉大なる北風が私に仕えているのだ!」

だが、我々がペールスピリット号の伸ばされた上陸用の橋を急いで登り、盗み出した戦利品を運び入れると、もう追って来たドラウグルが水中の墓地から現れることはなかった。大量の財宝と共に逃走する、熟練の海賊の船員にふさわしい迅速さで、我々は巨大なウェアシャークの船の出航の準備を整えた。船を守るために長弓を構えた海賊を乗せ、死して久しいドラウグルのプリンスから盗んだ財宝を腹いっぱいに詰め込んだペールスピリット号は、その深紅の帆を広げた。

凍った島とその水没した墓地を後にすると、北からの強風が帆を膨らませ、同時に新たな雪の結晶が我々の周囲で渦巻いた。だが辛うじて島を脱出したところで、風が我々を裏切った。荒れ狂っていたスカイリムの沖が穏やかな湖となり、博学な観察者でさえガラスと見まごうばかりに静止した。音もなく、風もなかった。スピリット号の船体に打ち寄せる波までもが無音だった。

この巨大な船に乗る者たちにとって、それは間もなく凍ってしまうことを意味するようなものだったが、それよりもさらに恐ろしい運命が私の頭に浮かんだ。プリンス・ヴァウグルが脅したように北風を止めている。漕ぐことも出来るが、ひどく消耗する作業な上に遅い。船を漕いで無事浜辺にたどり着くには、数日、いや数週間かかるだろう。おまけにペールスピリット号に詰まっているのは黄金で、食料ではない。黄金を食べることはできない。我々はこの静かな海の真ん中で、プリンス・ヴァウグルに水中の墓の中から残酷な、光を放つ目で見つめられながら飢えてしまうのではないか?

「いいや!」とウェアシャーク船長は宣言した。「やられはしない!俺は埋葬されたプリンスの宝石を手に入れた。それとレッドミストの島で発見した巻物で、この魔術を打ち破ってやる!」

強きフリッカが口火を切り、海賊たちと私は歓声を上げた。我らが船長はどんなに切迫した状況であっても、我々を失望させたことは一度もなかった。今回も彼がしくじる心配はない。プリンス・ヴァウグルは古代の者で強力かもしれないが、ウェアシャーク船長は私が航海してきた中で、最も機転の利く船長だ。

快活にお辞儀をして手を振ると、ウェアシャーク船長と人食い司祭クラックティースはウェアシャークの私室へと入っていった。逃亡中のレッドミスト島の女王と共に、脱出すべく魔法を手なずけてやる、と船長は断言した。

船長と骨の女王が仕事に取り掛かると、残された我々には何もやることがなかった。ネラモが自らの手で問題を解決しようと心に決めて空中に火花を放つと、ヴィミーがフルートで陽気な音楽を奏でた。

他の何人かは腕相撲かサイコロに興じていたが、より勤勉なものは強きフリッカの監視のもと、甲板の血を掃除し、ロープや帆の確認を行った。我々は風が戻ることを確信していたので、その時のためにスピリット号を万全の態勢にしておく必要があった。

数時間が過ぎた。朝が昼に変わり、二つの傷のガレナと、常に影の如く彼女に付き従う二人の無口なボズマーがその日の食料を配布した。我々はとても早く食べ、とても大声で自慢した。なぜなら凪いだ海の耳に刺さるような静寂が、我々皆を恐怖させたからだ。ヴィミーの陽気な曲さえも悲しげになっていった。その時だ。帆のはためきや木材のきしむ音もなく、船体に当たる泡の音が沸き起こった。動いた!

近づいて来る道化師祭りに声援を送るため、ダガーフォールの壁に向かってわめきたてる興奮した子供のように、私や他の海賊たちはペールスピリット号の欄干に体を押し付けた。ペールスピリット号は動き、船首から泡が広がったが、帆はだらりと垂れ下がったままだった。風もなしにどうやって航海した?

船尾で二つの傷のガレナが喜びの声を上げ、我々を手招きした。我々は船尾に押し寄せ、波の下にある二つの巨大な貝と、上陸用のボートぐらいもある大きさのヒレが泡立てるようにパタパタと動くのを見た。自分の目が信じられなかった。巨大な海亀だ!

どうにかしてウェアシャーク船長と人食い司祭クラックティースが、古代の海の大物を呼び出したのだ。海亀は風でさえ敵わないような速度でペールスピリット号を押した!

我々が圧倒されて眺めていると、私室からウェアシャーク船長と骨の女王が乱れた服装で現れた。どちらも行ったばかりの大仕事により紅潮していて、その時になって初めて私はレッドミスト島で行われていた儀式の話を思い出した。おそらくこのような文書には生々しすぎる話を。船長と司祭が私室で使った魔法が何であれ、それは成功したのだ!

輝く黄ばんだ歯で微笑みながら、クラックティースは髪につけたカタカタと音を鳴らす骨のお守りを払い除け、海を指さした。「見よ、純朴な海賊たちよ。古代の海の婦人たちを。ナールノーズとステゴフィンズだ!お前たちの船長の妙技が、彼女たちの支援を獲得した!」

岸に辿り着くまで一晩はかかるだろうが、私にはもうこの穏やかな海から逃れられることが分かっていた。

ヴェヨンドの伝説Legend of Veyond

イレルニル・デュレリによるガイドと怪談

崩れた壁の奥深く、記憶が語ると言われ死者が生者と交流する場所では、他に類を見ない財宝が待っている。その起源は知られていないが、ヴェヨンドの遺跡に踏み込む勇気を持つ者たちが、遠い昔に死んだ者たちから語られた言葉を持ち帰っている。

もっとも注目すべきは、療養中の母の病の治療法を求め、怪物や夜の獣と戦いながら広間を進んだ若き冒険者の幽霊だ。彼は地中に埋められた回廊で敵と戦う姿を見ることができる。彼は毎回襲撃にあえぎ、まるで声が聞こえているかのように母と話す。あたかも自分が戻ることを伝えて安心させるかのように彼女と話す時もあれば、怒りに満ちた魂をなだめようとする頬につたう涙が見られる時もある。

遺跡の別の場所では、岩場の間に遊ぶ子供たちの声を聞くことができる。鍛冶屋の槌の音が聞こえることもあるが、それは星が雲の向こうに姿を隠した夜だけだ。さらに珍しいものとしては、嵐の間、雷が壁の割れ目を走る直前に、詠唱し、未知の言葉で話す声を聞くことができる。ヴェヨンドが他に何を抱えていようと、はっきりしていることがある。この場所が黙って死者やその秘密を放棄することはない。

ウェルキンド石についてOn Welkynd Stones

魔術師ギルドの学者フィレンルの、頭脳と献身的な研究からなる記録された知識に関する著述

本書で論じた宇宙地質学的な機器に関するより基本的な情報については、同僚の学者タネスのレディ・シンナバーによる「エセリアルのかけら」を参照されたい。

ご承知のように、ウェルキンド石とは膨大かつ未だ解明されていない能力を持つアイレイドの道具である。この石は、大いなる魔術の力の源として一般に高い需要がある。その起源については、石自体がタムリエルに落ちてきたものであることを示唆する記述が数多く存在するという事実以外に語れることはあまりない。この石がどこからどういった目的で来たのか、そもそもアイレイドが発見する以前からこの石に何らかの目的があったのかどうかは分かっていない。だが、この石が地面に落下し、偉大なる魔術師たちの仕事の助けとなったと最初に記録された時から、ずっと使用され続けていることだけは確かだ。

ウェルキンド石の色は青く、偉大なるアイレイドの街には欠かせない素材だった。アイレイド滅亡以来、この石はあらゆる個人的な利益や目的のために集められ、使われてきた。言うまでもないが、これらの石に倫理的な傾向はない。石はどこまで行っても石なのだ。

本書では詳細に述べないある種のウェルキンド石の存在は注目に値する。と言うのは、闇のウェルキンド石について多くのことが知られているものの、未だ謎に包まれている部分も数多くあるからだ。この変異型は、とりわけ純粋に破壊的な類の魔法を蓄えているように思われる。きっかけもなく爆発し、これまでに技術や作品の回収を目的とした遠征でアイレイドの街に踏み込んだ数多くの研究者やトレジャーハンターを死に至らしめてきた。まるでアイレイドが防衛を付加するものとして、闇のウェルキンド石を使っていたかのようである。とても危険なためこの石は遠征隊の間ではよく知られていたが、抑制された状態で研究されたことはない。簡単に言えば、学校や研究所など学問の場に無傷で持ち帰られたことがないということだ。

一方、ウェルキンド石と大ウェルキンド石についてはとても詳細な研究がなされており、その知識の集積は本書でもご覧いただけるだろう。

エスディルの古い日記Esdir’s Old Journal

ラロスとクエンティンは私のことをガヴォスと同じぐらい愚かだと思っている。

奴らの企みは分かっている。彼を消し、在庫を拡張させる気だ。禁制の魔法の遺物に攻撃的な異国の獣。奴らはあの貪欲な手がつかめる、ありとあらゆるものを取引するだろう。

まあ、奴らにしてやられたなどと言わせるつもりはない!間もなくスクゥーマの積み荷が到着する。確実に大修道院全体で、それを売るのは私だけにするつもりだ。小物や野生のペットなどはすぐに飽きられるだろうが、スクゥーマの需要は常にある。

クエンティンは資金を用意した買い手がいるから、金床を回収して売るべきだと言っている。それが本当に労力を費やすに値する話なら、おそらく自ら行動を起こすだろう。念のため、私の印を移動させた。にぎやかな通りのはるか上にある、私が一番うまい酒を飲める場所にな。

エドヴィルダの記録Edvilda’s Log Book

しばらくはリフトに近づかないほうがいい。それほど間違ったことはしてないが、ノルドの中には古い祠や墓地に関してすごく神経質な者もいる。それでも、何とか拾い集めた小さい像は、ちゃんとした収集家にかなりいい値をつけてもらえそうだ。

小さいマンモス像1個 – 象牙、彫刻
さらに小さいマンモスの像2個 – これも象牙の彫刻(考えてみるとちょっと皮肉だ)
小さな熊(?)の像1個 – もしかしたらスキーヴァーかもしれない。木はひどくかじられている(ドラウグルに歯は生えるのか?)

* * *

あんまり長くストンフォールにはいたくない。メエルーンズ・デイゴンの脇みたいな、少なくともデイゴンの脇ってこういう感じだろうなっていう臭いがする。でも、このスチームフォントは、ドワーフの遺跡にしては野営が安全そうだ。内海のアルマチュアでゴミあさりの運を試したいと思っていたけれど、今は盗賊が隠れてると聞いた。奴らに煩わされないように距離を置くべきだし、それが自分の運命なんだろう。

* * *

もうミルテュから買った地図の元は取れた。まだすごい成果ではないが、歴史家に売れそうな古い陶器を見つけた。

小さな花瓶 – 珍しい模様。第一紀のもの?調査が必要。この手のものが好きな買い手が数人いる。必要なら何かでっちあげよう。

* * *

気が変わった。この地図は支払った分の半分の価値にも導いてくれてない!やっぱりアルマチュア周辺に探しに行こう。盗賊は古いドワーフのガラクタなんか気にしないはずだ。

* * *

あの忌々しい穴の中にはものすごく大量の盗賊がいる。勝手に奴らの食料を少しいただいたけど、あちこち見て回るような危険は冒せなかった。

* * *

ちくしょう、ミルテュ。最後のお金をあんたの地図に使ってなかったら、船に乗ってこの灰だめの外のどこかに行けたのに。どこでもいいから。

* * *

ミルテュが以前、ドワーフのガラクタに夢中になっているダークエルフと働いていたことを思い出した。ドワーフのパズルボックスの手掛かりにかなりの大金を払うだろうと言っていた。ミルテュの奴に、彼女をこっちに送らせてやる。それでポケットにゴールドを入れてもらおう。もし彼女があの盗賊たちを片付けられるようなら、さらにいい。

オトゥミ・ラへの手紙Letter to Otumi-Ra

オトゥミ・ラ、この不良卵生まれめ!

40杯じゃ私は負かせない。あなたはそれ以上に飲む必要がある。私はどっちかって言うと
飲む時は自分のペースでいくタイプだから、この
あなたが注ごうとした北の酒なんかに
やられない。だって私はどこもかしこもあんたと同じように強いんだから。ハハ!でもこのこと
変に取らないでね。冒険と勇ましさに満ちた日々が懐かしくなるわ。私は影のように静かで、あなたは
木のように強い。ミーア・タは古代人のように賢く、サトゥル・サは神のような知恵を持ってる。

彼らがなつかしい。

オニミリルの書付Onimiril’s Writings

絶対にあのずる賢い収集家が墓から邪魔をしている。もう何十年もたつのに、まだあの怒りに満ちた目が時々私を睨みつけてくる。忌まわしいダークエルフの赤い目が。それだけの価値はあった。あの謎の価値に比べれば、ダークエルフの恨みなど何ほどのこともない。全く。

* * *

あの魔術師ギルドの気取った輩とは関係のない、そこそこ才能のある魔術師を5人雇った。不満を抱いていて用心深い。彼らは私が追放されたことを知らない。まるで私がヴァヌス・ガレリオンの言いなりになって働く奴らの、柔軟性のない精神を必要としていたかのようだ。彼らはこの実験でギルドへの加入権を提供されると思っている。

* * *

ついに必要となる適切な配列を持つドゥエマーの地を見つけた。それがリフトにあるのは残念だ。私は無骨なノルドと彼らのやり方が好きではない。それでも、アバンチンゼルにはまだ無法者やろくでもないクズが住み着いていない。多少のアニムンクリなら対処できるはずだ。

すぐに、ドワーフがこの奇妙な装置に隠した知識が判明するはずだ。私はこれで他の者よりも抜きんでることになる。特にヴァヌスより。

* * *

何が悪かった?何故だ?雇った馬鹿どものせいだ。当然の結果だ。彼らが死んだのは残念だ。でなければ奴らの精神を、愚かさが故に剥ぎ取ってやったのに。戻らなければ。もう一度試みるんだ。睡眠が必要だ。まずは少し休もう。取り返すんだ。

* * *

赤い目。闇に光る。奴の仕業だ!奴だ!私からは隠せないぞ!財宝と秘密は、すべて取り返してやる!

カロ女伯爵の誕生日Countess Caro’s Birthday

カロ女伯爵の誕生日は単なる行事ではない。これは一つの事件である。

女伯爵その人はレヤウィンの日々の運営からは一線を引いているが、謙虚さによるものでないことは保証しよう。誕生日がその証拠である。快楽の追及はレヤウィンの支配者一族にとってなくてはならないものであり、女伯爵もまた例外ではない。

いかなる祝賀においても、食事は最も重要な部分である。優れたパーティーの基礎は、客人たちの腹を満たすものから始まる。カロ女伯爵の誕生日では、最上のものだけでテーブルを飾ることにしている。黄金の大皿には、よく肥えた鶏にバターとハチミツで焼き色をつけて乗せる。牛肉の赤身のスライス、舌の上でとろける魚の切り身、子豚、こんがり焼いたキノコ――香りが混ざり合ってうっとりしてしまうほどだ。陶器の皿に乗せた野菜料理、柔らかい黒パンと一緒に食べたくなる濃厚なスープ、そしてプルプルしたプディングの入ったボウルなど。

甘いものは全く別のカテゴリーだ。何層もあるケーキは塔のように客人たちの頭上にまで積み上がり、その形もよりどりみどりである。砂糖をまぶしたペイストリーが積み上げられ、アイシングの光沢は鏡のようにきらめく。飴を絡めたサツマイモや、ダークベリーのジャム、パイは甘い樹液で泡立ち、黄金色の皮にはバターがたっぷり。次々に出る新しい菓子はどれも、前に出たものよりさらに美しい。

食事についてはいつまでも書いていられるが、次へ進まなければならない。食事はこの大いなる行事に費やされる贅沢の中の、ほんの一部分でしかない。装飾は私の個人的な誇りであり、私が心血を込めて作った部分である。イメージとして使った言葉は常識外れ、豪勢、途方もない、目のくらむような、といったところだ。

黄金は祝賀の花形である。黄金の皿、金糸入りのテーブル掛け、キラキラ光る黄金のカーテンなど。明かりでさえも、くぼみに隠したりテーブルに沿って並べたりした数百のロウソクの光に合わせて、完璧に設計してある。花束は温かみのある光を浴びて、黄金そのものの色に匹敵する豊潤で輝かしい香りを放つ。

最後になるが、このイベントに出席するには適切な服装が欠かせない。客人たちはその他の装飾品と同じくらいこの行事にとって重要である。幸運にも招待を受けた者は、何ヶ月もかけて服装を整える。派手な絹服に、宝石をはめ込んだ上着、真珠をあしらった靴やサークレット、全ての指に指輪をはめるなど、誰もが最高の身なりをして入ってくる。客人の中には祝賀の途中で服装を変える者もいるほどだ!

この全てにかかる費用?優れたパーティー立案者は、決してそのような秘密を明かさないものだ。

カロ女伯爵への取材An Interview with Countess Caro

帝国の崩壊と元老院解体後に、レヤウィン市民を代表するマーキュロ・カトラソによって行われた。

マーキュロ・カトラソ:なぜ権限を軍団長会議に譲渡することにしたのですか?

カロ女伯爵:誰かに何かを譲渡なんて一切していないわ。私は今もレヤウィンの街とその周辺地域の女伯爵です。それが生得の権利であり神聖な責務なの。より高潔な問題に集中している間に、軍団長会議が街の日常的な業務に対応するよう任命しただけよ。

マーキュロ・カトラソ:より高潔な問題とはどのような類のものですか?

カロ女伯爵:最高に高潔な問題よ、それはもう!でも別の話題にしましょう。こういった繊細な問題は、一般に公開すべきではないわ。

マーキュロ・カトラソ:分かりました。軍団長会議内の人員はどのように選んだのですか?

カロ女伯爵:そうね、調査と熟考を重ねた結果、意思決定を円滑に進行させ、「過半数」の欠如による法整備の遅れを防ぐために、3人体制を取ることに決めたの。数学って役に立つわね。全員が同じ結論に達しなくても、少なくとも2人のうちどちらかの軍団長には同意できるかもしれないでしょ。多数決よ。誰がやるべきかについては、最初のメンバーは明らかだったわ。私は地域に関心を寄せる3つの主要なグループ全てから代表者が出るようにしたかった。テベザ・コとアム・ハルはどちらもロングハウス帝の時代から地域社会に尽くしていたわ。カジートとアルゴニアンが決まったら当然インペリアルも見つけないとね。幸運にも元老院が解体されてから、ロヴィディカス評議員の手が空いていたの。

マーキュロ・カトラソ:あなたと軍団長たちは、時々下された決定に対して納得できないと感じることがあるという噂を聞いています。

カロ女伯爵:どこで聞いたの?首を飛ばしてやらなきゃならない人がいるの?冗談、冗談よ!いいえ。軍団長会議には自分の仕事を好きなようにやらせてるわ。彼らもさっき言ったような高潔な仕事の熟考は任せてくれている。時には城内の場所をあんなに占有しないでくれたらと思うこともあるけど、それ以上に軍団長たちの支援と仕事には感謝してるの。ロヴィディカス評議員にさえ。彼が元老院にいた間は、いろいろあったけど。

マーキュロ・カトラソ:ということは、あなたとロヴィディカス評議員の間にわだかまりがあったと言って差し支えない?

カロ女伯爵:どこからそんなことを思いついたの?政府の役人とはいつだって意見の対立があるものよ。それも仕事のうちなの。でも私たちは、どちらも心の底ではレヤウィンとブラックウッドのことを大切に思ってる。目標を達成する手法が違うとしてもね。それが宮廷生活を興味深くするのよ!

マーキュロ・カトラソ:宮廷と言えば、先月元老院議長アブナー・サルンが街を訪問した際、会談を拒んだと聞きました。それは本当ですか?

カロ女伯爵:アブナー・サルンはうぬぼれた老いぼれよ。彼は私たちが親しんだ帝国の不運な崩壊とこの忌々しい戦争の勃発に関して、何らかの役割を果たしたと確信してる。オブリビオンに行こうが知ったことではないわ。ええ、そのとおり。彼はレヤウィン城の境界内では歓迎されない。

マーキュロ・カトラソ:三旗戦役に関して。現在進行中の紛争に対して、レヤウィンは安全でしょうか?

カロ女伯爵:帝都との距離を思えば、精一杯安全を保ってるってところね。でも、今のところライアン隊長と象牙旅団は最悪の戦いが私たちの地域に及ばないようにできている。解決に至るまでの間、旅団が境界の尊厳を維持してくれると思ってるわ。

マーキュロ・カトラソ:お時間をいただきありがとうございました、カロ女伯爵。

カロ女伯爵:あら、いいのよ、気にしないで。ほんの数分間時間を取って、民と考えを共有するのは楽しいものよ。対処すべき高潔な仕事の息抜きになる。少しだけど気が晴れるの。

ギデオンの門前でBefore the Gates of Gideon

ウド・セラス 著

戦いの熱気で狂乱状態になった数百のアルゴニアンによる騒音が再び街境の向こうで湧き上がると、ファビア隊長はその部族の者こそがこの戦争で不当な扱いを受けている側だと考えずにはいられなかった。彼女の仲間が彼らの土地に入り込んだ。仲間は土地の部族に相談もせず集落を作った。そして今、習慣のようにアルゴニアンを殺している。一体何故?家畜を狩るようなささいな犯罪で?家畜が人のものであるとアルゴニアンに教えた者など、誰一人いないではないか!彼女が先週裁判所で言い争いをしたのは、まさにこの状況全てが理由だった。彼らには適切な外交官が必要だったのだ。

部隊と防衛を任されている長く伸びた壁の背後に身を潜めた彼女は、これまでにも幾度かしてきたように、どうして自分の仕事についてこんなにもひどい勘違いをしたのだろうと考えた。ただ自分の仲間を守り、ちょっとした市民のいさかいを収めたかっただけなのに。ファビアは元々の動機が何であれ、怒りに駆られたアルゴニアンの一団が血を求めるあまり錯乱状態となって自らを傷つけている間、こうして街の防衛施設の端に隠れるため、軍に加わったのではないことだけは分かっていた。

始まった。ファビアにはアルゴニアンが街の反対側を襲撃する音が聞こえた。岩と矢が周囲に降り注ぐなか、他の部隊の指揮官が命令する叫び声が高い石の壁に反射して響き渡った。彼女が立っていたあるギデオンの門の上は恐ろしく静かだった。ファビアは身をかがめて遮蔽の上に出ないようにしながら、兵士たちの前を進んだ。彼女は通り際に肩へ手を置き、勇気づける言葉をささやいた。胸壁の上まで緊張感に満ちた空気が届いていた。他の壁はすべて包囲されていたが、今のところ彼らの前でほんの一瞬の動きすら見られなかった。

それでも彼女は列の間を歩き、入隊できる年齢になったばかりの兵士や、戦闘のリズムとこれから起きることを熟知している、戦い疲れた古参の兵士の恐怖心を落ち着かせた。ファビアが門の上の自分の位置に戻ると、マダーリズが身を乗り出し、耳をぴくぴくさせながら石のように心に重くのしかかる質問をささやいた。

「あんたの技で、奴らを撃退できると思うか?」

ファビアは街の門の外側でフックに吊るしてある小さなランプのことを考えた。ランプは胸壁にいる者から見えないが、沼地にいる者にとって、特にこんな暗い時間には目印だった。ファビアはアルゴニアンの領域が始まる場所ではないかと思われる場所に近い、湿地帯の荒野でランプを見つけた。

「そう願うわ」彼女は静まり返った沼地に視線を走らせながら溜息をついた。「じゃなきゃ私たちは圧倒される」そう言いながら、ファビアは口元に安堵の笑みが浮かぶのを押さえられなかった。あの向こう、沼地の漆黒の闇の中の、静かな水の溜りに反射する光はランプだった。インペリアルのランプだ。

ファビアは立ち上がり、胸壁から降りるために進んでいった。市民たちが家から街の最も静かな壁に逃げてくると、彼らに向かってうなずいた。彼らの腕には荷物と子供たちがしっかりと抱えられていた。数人の兵士がパニックを起こした群衆の流れと衝突したが、ファビアはぶつからなかった。彼女は体の間に滑り込み、埃が充満する道を着実に進んでいった。そして、彼女のすることに誰かが気づき、阻止する前に、彼女は門を開け放った。

ギデオンへの旅の案内Traveler’s Guide to Gideon

アスティニア・イサウリクス 著 公開日:第二紀570年降霜の月22日

聞く相手に応じて、ギデオンはブラックウッド東端の街か、ブラック・マーシュの西端の街か違ってくる。沼地のただ中にある文化と文明の島であり、人口の半分近くはインペリアルの生活様式に馴染んだアルゴニアンである。ブラックウッド街道を終端まで辿る旅人は少ないが、仕事でブラック・マーシュまで行く狩人や木こり、薬草の商人、異国の生物を捕まえる罠猟師は、ギデオンを仕事の拠点としている。

その歴史の大半において活気のない前線の駐屯地であったギデオンは、第二帝国初期の短期間、人々の注目を集めた。皇帝レマン二世がここで大量の人員を集め、アルゴニアンを自分の領域に統合しようとしたのである。強大な軍団は帝国南東のフロンティアへと行進して街道や要塞を築き、そこから皇帝の計画が実行に移された。ニベン人の植民者の波がその後に続いた。

ブラックウォーター戦役で何度も後退と苦戦を強いられた後、皇帝レマン二世はこの地域に恒久的な帝国の権力を確立することに成功した。だが皇帝の注意がブラック・マーシュから逸れたその日から、ギデオンの没落が始まった。危険な前線を防衛していた要塞は、忘れ去られた僻地へと縮小した。ギデオンの防衛は老朽化し、帝国の許可によってこの地に引き寄せられた多くの植民者は、より手間のかからない植民地を求めて去っていった。

今日でも、ギデオンは湿地と数百年前に残された軍団の兵舎や礼拝堂、兵器庫の廃墟に取り囲まれたままである。ブラックウッド街道は高地を通って正門の南西側から街につながっており、湿地帯や崩壊した要塞の姿をよく見渡せる。街の中では、広い道が門から総督の館まで通っている。ギデオンの家屋や商店のほぼすべてはこのたった一つの街路沿いにある。それはこの道が、街の残された部分における唯一の乾いた土地だからという単純な理由による。

市の行政
ギデオンは帝国総督の支配下に置かれている。総督とは、伝統的には西ブラックウッドの主だった貴族に与えられる肩書きである。近年では、ヴァンダシア家かマルティウス家に属する者が総督となるのが通例である。どちらの一族もブラック・マーシュ国境に広い土地を所有している。エルトゥス・ヴァンダシア卿がシロディールで元老院に仕えているため、帝国総督の任務は現在、パーノン・マルティウスの手に委ねられている。

食事、飲み物、宿泊
ギデオン西門の近くには宿屋〈卵とハンマー〉がある。素朴な宿屋だが、沼地のフロンティアにある宿屋にしてはいいもてなしを受けられる。もっとも、食事のメニューはデリケートな旅人に適さないかもしれない。〈卵とハンマー〉調理スタッフに数人のアルゴニアンを抱えている。アルゴニアンの食べ物は人を選ぶが、ギデオンのアルゴニアンの大部分は人間やエルフの相手をすることに慣れているし、他の種族が食べても大丈夫な沼の食料を知っている。

地域の名所旧跡
ギデオンはかつて強大な要塞だったが、もう遥か昔の話だ。壁はろくに修復もされておらず、大部分の監視塔は中に入るのも危険である。街を移動する主要な道であるブラックウッド街道から少し離れた程度の距離にも、小さな沼の穴が点在し、注意の足りない旅人を待ち受けている。

ディベラの聖堂は、この街に残された祠の中で唯一言及に値するものである。ギデオンに愛の淑女の信者がいるのは奇妙に思えるかもしれないが、ブラック・マーシュの国境においてディベラ崇拝が生き残ったのは理由がある。いわゆるブラック・マーシュの輝かしき民コスリンギはディベラを大いに敬愛しており、自分たちの特別な守護者とみなしていたのだ。コスリンギはもはやこの国にいないが、ギデオンのインペリアル市民は彼らのディベラ崇拝を共有している。聖堂自体は元々裕福な貴族で愛の淑女の信者であったレディ・ドルシア・マルティウスの館だったが、彼女は40年前に死去した際、ディベラの司祭たちに家を譲ると遺言を残した。

総督の館が実際の住居として使われることは滅多にない。ギデオンの帝国総督は通常、より大きく快適な地所を付近に所有しているからだ。しかしここは統治の座として、また市政の中心として機能している。館にあるこの地方出身の画家の、絵画コレクションには一見の価値がある。

歴史あるギオヴェッセ城の廃墟は、ギデオンから少し北へ向かったところにある。言うまでもなく、この城は皇帝レマン三世が第一紀末、妻であるタヴィア女帝を幽閉した場所として現在では悪名高い。城の床は不快に程遠いとはいえ、金縁の牢屋も牢屋には違いない。女帝はその驚異的な野心と知性の全てを、玉座から正気を失った夫を取り除き、追放の身から帰還する試みに向けた。

興味深い事実
ギデオン周辺の湿地帯は、ブラック・マーシュの西側を原生地とする大型の肉食ガエル、デスホッパーが大量に住む場所である。

ギデオンはアルゴニアンを屈服させることを目的としたブラックウォーター戦役末期、ルシニア・ファルコ将軍と彼女率いる帝国軍の本営となっていた。

観察眼の鋭い旅人は、総督の館の側の広場や街の南東隅の人気のない地区など、いくつかの場所に古いアーチや奇妙な石細工があることに気づくかもしれない。これらはかつてこの場所にあった、アイレイド都市の廃墟である。

旅の安全を祈ろう!ギデオンはかつての誇り高き駐屯地に比べれば寂れた場所だが、沈みゆく街の中には、斜陽の輝きも見出せるだろう。

クイストリー・シルヴェッレからの手紙Letter from Quistley Silvelle

バスティアン

お前が家族への奉仕から離れ、これ以上私の両親に対する義務を果たす意思がないことは分かっている。だが、個人的なことでお前の助力がどうしても必要なんだ。私にとっては極めて重要なことだ。これは両親とは何の関係もない。実際、できれば両親には知られたくないと思ってる。

我々が良き友だったとは言えない。だから同情に訴えようという気はない。そのかわり、力を貸してくれたらお前が興味を持つと思われるものを提供しよう。私は父の書類の間から見つけた手紙を持っている。お前宛ての手紙だ。恐らく10年ほど前に送られたもののようだ。お前の母親に関連するものだ。

興味があるなら、できるだけ早くダガーフォールの宿屋〈酔いどれライオン〉に会いにきてくれ。二階のいつもの場所にいる。

クイストリー・シルヴェッレ

クエンティンの秘密の往復書簡Quentin’s Secret Correspondence

友へ

間もなく金床を手に入れてやろう。既にガヴォス・ドゥーアに盗まれていると誰もが信じているものである故、惜しむ者などおるまい。必要なのは、同僚の大臣二人から助力を得るための根回しだけだ。最近の彼らは少々扱いづらいが、君が提供してくれた護衛のミノタウロスを紹介すれば、ずっと乗り気になるのは間違いない。

とは言え、少しの遅れも出してはならない。彼らが何かに勘づいたら、金床を確保できなくなるかもしれない。だから可能な限り早く、ゼニタールの大修道院に向かってくれ。

到着したら、鍛造用の火の背後で落ち合おう。私は我々が必要とするものを全て手にしているはずだ。

グルームマイアの鳥Birds of Gloommire

翼のある獣のうち、諸々の理由でこの本の通常の章に載せられなかったもの。この節はドミンド・カマズと若手研究者のウニラ・ロセロスが記載している。

カラス
「私がたまたま気に入った空の一角に巣食う、この翼を持つ災いは、どんな状況においても私の存在を許容しない。数世代前にハグレイヴンが私の一族にかけた呪いのせいかもしれない。地域住民はこの地方、とりわけアルペニア周辺のカラスが異様なまでに高度な知能を持つと警告しており、私はこの忌まわしい鳥についての記述を助手のウニナ・ロセロスへ全面的に委任することにした」

実地調査員にして鳥の専門家ドミンド・カマズ

タムリエルの他の地域と同様、ブラックウッドの南端グルームマイアにもカラスはいる。以前の版を参照するなら、カラスの大きさは手のひら程度から、噂に基づけば人間の前腕ほどの長さまで幅がある。黒いクチバシと、やはり黒を基調とする羽を持つカラスは、荒涼としたこの地形でかなり目立つ存在である。また、この羽根のおかげで、カラスは密林や湿地帯に意外なほどうまく紛れ込める。余談だが、そのせいで私はベースキャンプまで戻る時に、カラスの小さな家族がついてくるのに全く気づかなかった。しかしこの点については後で触れよう。

カラスは知能が高く、よく工夫を凝らす生き物だとよく言われる。大体において正しい。しかし木の上の巣から転げ落ちるカラスも一定数目撃されていることは言及しておくべきだろう。このような行動がカラスの認知的欠陥に基づくのか、娯楽の一環としてやっているのかは不明だ。

ある程度の確実性を持って言えるのは、カラスは恨みが深いらしいということだ。しかも、過去に受けた侮辱の記憶を若い世代に伝えられるという。私はこうした行動を、研究会からの報告を待つドミンドのもとへ戻る際についてきたカラスの一家で目撃できた。このカラスたちは複数の石を彼に投げつけた。私は無傷だったが、さらにカラスたちは凄まじい勢いでドミンドに襲いかかったので、彼は近くのシェルターに逃げ込み、1週間そこから出ようとしなかったほどだ。

ハックウィング
多くの読者は「グルームマイアの鳥」と題された本の中にこの生物が載っていることを意外に思うのではないだろうか。ハックウィングは鳥とみなされる他の生物とどこも似ておらず、形態学的には小さなドラゴンと分類されるべきではないのかと思うだろう。

これは言うまでもなく、完全な誤りである。ハックウィングは鳥に共通する多くの特徴を示し、灰を被った空のネズミ(カラスの欄を見よ)を「鳥」という高貴な名称に含めなければならないのなら、ハックウィングにも当然その資格はある。

鳥とは卵を産み空を飛ぶ、翼のある生物である。もっとも、我々が鳥と呼ぶ生物の一部には、これらの特徴の一つか複数が欠けていることもある(恐ろしい鳥と飛行についての項を参照)。ハックウィングには明らかに翼があり、卵を産み、他の鳥と同様に優雅な様子で空を飛ぶ。そのため、鳥に含められているのである。

行動の点から言うと、ハックウィングは標準的な鳥よりも岩の周辺をうろつくことが多い。長い爪を使って岩の表面や、湿地帯の木の皮を引っかく。ハックウィングはしばしば岩の上で日に当たって1日を過ごし、油断した地域住民の籠から果物や肉を盗むこともある。盗みを働くとはいえ、この生物が盗んだものを食べている光景は目撃されていない。ハックウィングは道端の死骸を食べることを好むので、おそらくはいたずら自体を楽しんでいるのだろう。

個人的に、ハックウィングには好感を持っている。愉快で遊び好きであり、命の危険も少ししかない。性格的に、ハックウィングは綿密に整えられた野営地に突入しても、ベッドを荒らしインク壺をひっくり返す程度で、人に襲いかかって目玉をくりぬくことはあまりない。

グレネッタの日記Grenetta’s Journal

地耀
ようやく運が向いてきた。ダガーフォールの酔っ払った間抜けが自分の婚約を祝ってて、私たちのカードゲームに加わってきたの。その馬鹿は自分の手にすごく自信があったから、持ってた婚約指輪を賭けた。私が勝ったわ!しっかり勝ち分をいただいて街の外に向かった。お金持ちのやることって分からないから…指輪を取り戻すため、誰かに追跡させるかもしれないでしょ。でも私は正々堂々と勝ち取ったのよ。カードでイカサマなんて絶対にしない。

基地に戻ってみんなのために夕食の支度をしなくちゃ。みんな私のことは公平に扱ってくれるけど、私は強盗でも無法者でもない。私は料理人。このきれいな指輪が売れたら、まともな服を買って、もう少し清潔にする。もしかしたらちゃんとした酒場か宿屋で雇ってもらえるかもしれない。

火耀
あのならず者のパトレルが巨大な卵を持ち込んできて、大きなオムレツを頼れと言う。確証はないけど、あれはハーピーの卵だと思う。とんでもない思い付きよ!彼らが鳥なのは知ってるけど、多少は人間でもあるでしょ?ゾッとする。誰か他の人にここから持ち出してくれって言うつもり。

明日、夜明け前にここから出て行こう。グレネッタ・ファッセルはここからやり直すの。

グレンブリッジに設置されたアルゴニアンのシシスに捧げる祠Glenbridge’s Argonian Shrine to Sithis

リンメンの旅人の館のガルジールによる記録

最初の印象では、グレンブリッジを貫く主要な街道の脇に立つシシスの祠に、これといって目を引くような部分はなかった。この祠が注目に値しないと言っているのではない。ただ第一印象とは往々にして誤解を招くものであるというだけだ。背の高い建物で、付近のほとんどの木に匹敵する高さでそびえてはいるが、その印象も祠の周りに建物が見られないことによって誇張されたものにすぎない。壁は厚い石板で出来ていて、建物のすべての角にある石細工からは顔が覗いている。それでも、ほど近い場所にそびえ立つザンミーアと比較すると、印象に残るような祠ではない。

祠の中は壁同士が間近に迫っていて、4人ほどしか入れない空間に干渉している。たとえ三方の壁を開放していたとしても、祠そのものの中では呼吸をするのも困難だろう。空間の中央に立つと、あたかも空気が全く存在しないかのように感じられるのだ。

石が落ちたか、あるいは脇に倒されたような場所がある。これが祠の中にも続き、独特の光の欠落も伴って、大方の礼拝の場にはふさわしからぬ荒廃した様相を呈している。祠の外観について司祭たちに尋ねても特に気にしているようには思えなかったが、落ちている石板を正しく設置すべきだという意見には気を悪くしたようだった。若干の会話と慎重な質問で、司祭たちが祠の状態をシシスの行いの指標と見ていることが明らかになってきた。祠の壁の修復は冒涜となるのだろう。

シシスが祠の外観に直接影響を与えたかどうか、石が外れたのは彼の力によるものか、あるいは天候と時の流れのせいなのかははっきりしないが、祠をいつくしむ司祭たちに影響を与えたのは確かだ。

ザイナの契約の書Xynaa’s Book of Contracts

(数百ページがかすれてほとんど消えてしまった手書きの文字で埋められている。だが最後の数ページは輝く黄金のインクで書かれている)

契約 1,137
メエルーンズ・デイゴンの命令により、私は以下の条件の下で拘束に服する。シロディールとして知られる定命の者の領域における征服に対する我が主の支援と引き換えに、ブラック・ドレイクのダーコラクとして知られるリーチの民の首領は、聖なる書に記載された兆候と環境のもとに四つの野望が生まれるようにするものとする。これは定められた。

契約 1,138
メエルーンズ・デイゴンの命令により、私はダーコラクに課せられた契約を、その息子であり後継者であるモリカル現シロディール皇帝まで拡張することを承認する。モリカル皇帝がメエルーンズ・デイゴンによって定められた四つの野望を存在させるという父の重責を遂行したことに対し、私は聖なる書に記載された力の付与の儀式において、皇帝の代行者を導き指示するものとする。これは定められた。

契約 1,137および1,138:不履行
メエルーンズ・デイゴンに課せられた義務に基づき、私は前述の2つの契約の遂行に対するダーコラクの後継者の不履行を証明する。後継者を指名することなくレオヴィック皇帝が死亡したことにより、聖なる書に記載された遺言補足書が有効となる。用意された野望をメエルーンズ・デイゴンが要求する方法で捧げた者は、如何なる者であろうとダーコラクとその後継者に約束された報酬を獲得できる。これは定められた。

(流れるような文字で付け足されている)
忌々しいソンブレンめ!野望の3人はまだ宝物庫に隠れたままだ。捕まえた1人は定命の者の領域に戻ってしまった。少なくとも、奴はメエルーンズ・デイゴンのしもべが全て奴の定命の敵だと信じている。適切な時が来たら、奴をおびき寄せよう。あるいは自ら私を探しに来るかもしれない。それでも報酬は私のものだ。必要なのは忍耐だけだ。

サルヴィットの招待状Salvitto’s Invitation

グラシアン・サルヴィット閣下

誉れ高きヴァンダシア評議員主催の特別な会合にご招待申し上げます。

機密性により、この件については一切口外なさいませんようお願いいたします。会合への移動手段をご用意いたします。2週間以内にレヤウィンの港までお越しください。港にはカラミティ号という船が停泊しています。この船で安全に、かつ安心して移動いただけます。

必ず正装でご来場ください。軽食と宿泊施設をご用意しております。

ヴァンダシア評議員がご来場をお待ちしております。

シャドウスケールへの祈りPrayer for a Shadowscale

絶え間なく変わるシシスを称えよ。

尽きたものは取り戻された。

虚無の無、ヒストの囁き。

血が刃を研ぎ、根を湿らせた。

影を通り抜け、戻れ。

ジリッチ評議員の記録Councilor Jirich’s Records

ジリッチ評議員

世話係を呼び集め、野望を移動すべき時だ。新しい宝物庫の位置は、私か大司祭が必要とするまでの間、野望の安全を確保した状態で隠しておける場所でなくてはならない。反逆者ヴァレンに忠実な軍勢がこれまでになく接近している。野望を彼らの手に渡すわけにはいかない。

これは公式な命令だ。すぐに行動するように。

〈この行はインペリアルの複雑な暗号で書かれている〉

皇帝レオヴィック

スル・ザンのメモSul-Xan Note

神像が渇望している。千もの求める口を伴った顔が上を向き、懇願する。

それははるか昔の時代、忘れられた時代から。だが我々の役にも立つ。奪い、与えるのは我々だ。それが満ち、破壊の霊魂を産み出すまでには多くが必要になる。霊魂は野を焼き沼を血で満たす。どこであろうと触れた場所には混沌を植え付ける。我々がここにもたらせる限り。だが神像は激しく飢えたままだ。儀式のためにはさらなる死体が必要だ。

霊魂は彼らの叫びを楽しむだろうか?さらに多くを捧げよう。

神像は霊魂が到着するまで飲むだろう。

スル・ザンの儀式場Sul-Xan Ritual Site

象牙旅団のサルヴィティカスの日記より。

記録:1
スル・ザンを監視し、活動を報告する任務を負った。レヤウィンとブラックウッドに脅威をもたらしているにも関わらず、このアルゴニアンのナガの部族について分かっていることは比較的少ない。このナガと直接交流するのは危険極まりないため、交渉を試みることは禁じられている。試そうとして、ただ挨拶しただけで命を落とした者もいる。

私の仕事はあるスル・ザンのグループの観察だ。この特定の小集団は極めてよく移動するが、これは我々がこの部族に対して予想していた行動とは異なっている。この日記では、彼らを追う中で発見したことを書き写していく。十分に安全な距離を保ちつつ、観察できるよう願おう。

記録:2
このスル・ザンのグループは私の予想よりもはるかに長い距離を移動した。彼らは北をうろつき、奇妙なことに道中の小さな村や前哨基地で立ち止まった。他の者を監督していると見られるスル・ザンはこういった立ち寄りのあと長々と話すが、内容が聞こえるほど近くにはいない。

記録:3
少数のスル・ザンがグループから離脱した。彼らは近くの街から犠牲者をさらうと、彼らと南に向かった。助けたかったが、人数の差がありすぎた。私にできる最善のことはさらなる情報収集だ。彼らが何をしているのかはっきりと突き止められれば、象牙旅団が阻止できるかもしれない。

記録:4
このスル・ザンのグループは明らかに狩猟グループと見られる。食料などの用途に動物を狩るのに加え、さらなる囚人を獲得するために縄張りから遠く離れた南をうろついているようにも見える。彼らは捕まった不運な人々を生贄にすると聞いたことがあるが、そのような行為は直接目にしていない。

私はヴィーシャという沼の秘術師に率いられるグループをブラックウッド湖の岸辺にある古い遺跡、ギデオンの北西まで追った。少なくとも部族の魔法使いが4人、ある種の儀式に取り掛かろうとしていた。何故彼らが自らの土地から遠く離れたこの辺境の地を選んだのか分からないし、儀式の目的に対する手掛かりもない。分かるのはどことなくおかしい気がすることだけだ。危険で、邪悪でさえあるような。

今のところはここを離れ、レヤウィンに報告を返そう。ライアン隊長は見たものに興味を示すはずだ。

ゼニタール賛歌Hymn of Zenithar

〈リフレイン〉
聖なる金床に跪け、敬虔なる鍛冶場の炎の子よ
誠実な仕事の報酬を取り、ゼニタールへの愛を示せ

ゼニタール、我が労働の主よ
この両手を硬く分厚く鍛えたまえ
あなたの金床に汗流し
我が胸は力強く脈打つ

ゼニタール、我が富の神よ
この貴品箱を稼いだゴールドで満たせ
誠実なる産業の成果で
誓いを守り売った、よき品物で

ゼニタール、我が休息の父よ
この腰に安息の褒美を与えたまえ
日が陰り、石炭の火が弱まる時
喉の渇きを潤し、労働を止めさせたまえ

セリースの別れのメモCerise’s Farewell Note

リエル、最愛の人、いつかこれを見つけてくれますように。どうやらギデオンに戻れそうにないみたい。ロレイン女司祭と争って重傷を負わされた。その後、馬車が崖から湖に落ちたわ。馬車は沈んで、雨によって視界から消えた。宝箱や裏切りのディベラの女司祭と一緒に。私も足を折ってしまった。どうやらこれまでのようね。

ロレインに何かの呪文をかけられてしまって、自分が腐っていくのを感じる。だけど人々に知らせなければならない。愛しい人。これは証言であり遺言でもある。どうか許してね。

ロレイン女司祭とギデオンの治安官の半数が、目覚めの炎というある種の秘密教団に所属してるってことを最近知ったの。ロレインは人々を殺しては魂を盗んでる。おそらく、もう何年も。いつでも好きな時に悪趣味なゲームを追体験できるように、殺人を呪文をかけた石に記録までして。彼女はどうかしているの、リエル。彼女の狂気により、たくさんの修練者が犠牲になった。

昨夜、ロレインがアイディール・マスターとか呼ばれる死霊術師たちと、捕獲した魂を取引する計画をしてることが分かったの。他の手段が見つかればよかったけど、迅速に行動するしかなかった。修練者たちは私たちの友達よ。見捨てることなんてできない。分かったことをあなたに知らせなくてごめんなさい。でも、奴らがあなたを狙うのが怖かった。

ロレイン女司祭が死んだ今、あなたには記憶石とこの宣誓証言をレヤウィンの治安官のところに持っていってもらいたい。他の誰かを殺す前に、目覚めの炎を暴いてやらなければ!

心からあなたを愛してる。愛しい人、いつかまた会いましょう。あなたにディベラの祝福を

あなたを愛する妻
セリース

ソフスの封印された巻物Sophus’s Sealed Scroll

〈封をされた巻物に2枚の羊皮紙が入っている。1枚目にはソフス評議員の印章があり、以下のように書かれている〉

第二紀576年

新たな宝物庫の建造のために雇用された魔術師については、仕事の完了後には確実に抹殺するように。決して未達成の状態にはしておかないこと。

アコニア・ペラ
トラシウス・ヴィノーマン
エフェル・ブロックス
ナリナ・セナレル
ジュルス・クィンティウス
カバンティナ・プロシラス

〈2枚目にはレオヴィック皇帝の印章があり、以下のように書かれている〉

ソフス評議員へ

最後の宝物庫も設置する必要がある。残っている魔術師に必要な呪文をかけさせ、宝物庫を私が選んだ場所へ移動させろ。必要な情報は以下の暗号化された文章の中にある。私を失望させるな。

[以下の文章はインペリアルの暗号で書かれている]

ダリンへの手紙Letter to Darene

ダリン

お前たちは影の外へ踏み出す者から、通常は認められていない性質の仕事を探しているようだな。私も夜を恐れず危険を招くこともためらわない者を探している。私の手伝いをしてくれたら、関与による恩恵に見合う報酬を出そう。

興味があるなら、必要な遺物がある。レヤウィンから北東にあるノクターナルの祠に、聖なる鎌の遺物が収められている。レッドメイン砦の近くだ。その影の鎌をブラッドラン洞穴へ持って来い。そうしたら残った人生に、貧しい日がなくなるよう取り計らってやる。

ツマ・マクサス

ツマ・マクサスの日記Tumma-Maxath’s Diary

かなりの捜索の末、私、ツマ・マクサスは墓所を発見した。今は私の名に影響力はないが、いつの日か口にする者を戦慄させるだろう。

予想どおり、ここには数多くの人が埋葬されている。うまい具合に隠れている上、ここにはすでに獣が住んでいるため、比較的人の手に触れられていないようだ。この場所を無傷で通過できるか否かは、真の勇気があるかどうかの問題になるだろう。だが、私のために戦う死体を蘇らせ始めれば、すぐにずっと楽に過ごせるようになる。単純にそれまで粘ればいいだけの話だ。

* * *

胸躍る進展だ。かつてその名を知られたシャドウスケール、アジュム・シェイの遺体を見つけたようだ。彼は眼窩の内部にはめこまれたままの宝石と共に埋葬されていた!私にとっては幸運な発見だ。頭蓋骨から引き抜けなかったので、頭を完全に取り除いた。この桁外れな発見を活用するためには、持ち帰る必要がある。

ディート・ローのメモ:ネレイドの呪いDeet-Loh’s Notes: Nereid Curses

アルゴニアンの村の古代のニッソが、 ヴナーク遺跡ではブラックウッドで一番楽しげで、耳に心地よい蛙を見つけられると教えてくれた。彼は住人のネレイドに注意するようにも言っていた。どうやら彼女はあまりにも奥深くまで自分の巣に入り込んでくる者に、呪いをかけることで有名なようだった。

いかに私が制作に打ち込んでいるか、いかに音楽家として才能があるかを彼女が知れば、大喜びで遺跡に住む蛙を何匹か引き取ることを許してくれるはずだと私は確信している。

ディート・ローのメモ:蛙の歌Deet-Loh’s Notes: Frog Songs

タムリエルで一番のヴォッサ・サトル奏者になるための努力をする上で、どうしても必要なのが特別な蛙を見つけることだ。ヴナーク遺跡の奥深くにある、自然のままの池で戯れている蛙が、ブラックウッドで最も美しい蛙の歌を生み出すとニッソが教えてくれた。それなら絶対にこの蛙たちを見つけて、自分の耳で彼らのメロディを聞かなくては!

今のところ、この遺跡に住んでいるさまざまな獣は避けることができているが、例のネレイドにもまだ出会っていないことに驚いている。私はどうしても蛙を捕る前に、彼女と話をして許可を得たいと思っている。彼女が私と同じぐらい音楽が好きなら、絶対に分かってくれるはずだ。

ディート・ローのメモ:蛙の魔女Deet-Loh’s Notes: The Frog Witch

私はここに座り、あの素晴らしい小さな蛙たちの美しい歌に耳を傾けている。ニッソは正しかった。こんなのは今までに聴いたことがない!彼らの最新のセレナーデの中盤に差し掛かったあたりで、ネレイドが池から浮かび上がった。彼女はまるで母親のように蛙たちをかわいがっている。これはなかなかいい光景だ。彼女は本当に彼らを愛しているようだ。

彼らに話しかける様子、それに返事をする様子。彼女はただのネレイドじゃない。ああ、彼女はある種の蛙の魔女なのだ!私がこの音楽を奏でる生き物を数匹引き取ることを喜んで認めてくれるに違いない。すごく沢山いるんだから。絶対に気にせず、ヴォッサ・サトル用に何匹か捕まえさせてくれるはずだ。

それでは、あのネレイドに話しにいこう!

ディサストリクス・ザンソラの日記Disastrix Zansora’s Journal

高貴なる大司祭にはすでに伝言を送った。執事と3人の評議員が死んだ。現在ブラックウッドにいないため、イティニア評議員だけが我々の手を逃れている。

また、闇の一党の聖域で回収された文書も送った。その情報があれば、大司祭は何の問題もなく最初の四つの野望の場所を見つけ出せるだろう。加えて、レヤウィン城への攻撃を命じた。すぐに他の評議員が保管している文書も我々のものとなる。そうすれば全ての野望の場所が明らかになる。

さて、私は席を外して遺跡に入り込んだ害虫を始末せねばならない。どうやら聖域からつけられていたようだ。災いのデイドラ公に忠実な者が、必要な時に振るえるよう手にしている真の力を見せてやるのが楽しみだ。

デストロンの日記Destron’s Journal

私たちは双子だ。私たちは羊だ。世話係は我々の訓練と隔離はほぼ完了したと言うが、まだ誰も来ない。

もう何年も新しい教師に会ってない。それに皇帝でさえ、昔は頻繁に訪ねてきていたのに、カリアと私が幼かった頃から姿を見せていない。何かで彼を失望させてしまったのか?私たちに怒っているのか?

カリアと私は勉強を続けている。私たちには私たちの活動がある。だが孤独だ。世話係たちは親切だが、恐ろしく退屈だ。カリアは聖域の外の世界を見たがってるし、私は冒険をして本でしか読んだことのない場所を見てみたくてたまらない。

彼らは時がもうそこまで迫っていると言うけれど、それが実際にどういう意味なのかは教えてくれない。あともう少しなら待てるかもしれない。

どうやら他の選択肢もなさそうだ。

デスホッパーの恐怖Terror of the Death Hopper

レミウス・ヴォルソナスの日記より

発見が困難なデスホッパーの調査を始めてから6日になる。同僚は私のことを異常だと言う。そうかもしれない。馬ほどの大きさのカエルを追うには少々の狂気が必要だ。だが、優秀な研究者でちょっとした危険を好まない者などいるか?あんな途方もない生き物について始めて書いた人物として歴史に名を残せるなら、命を危険に晒す価値はある。

デスホッパーは通常群れで見られる。1匹だけでいるのを見かけたら、他の個体を探すべきだ。この巨大なカエルは棲家であるよどんだ水の表面のすぐ下に潜むことを好む。忍耐強い狩人で、大抵は何も知らない獲物が彼らの通り道に迷い込む失敗を犯すまで待ってから攻撃を仕掛ける。

デスホッパーとの遭遇に関して第一に知っておかねばならないのは、彼らの毒性が極めて高いことだ。その毒が皮膚から分泌されているのかを見極められるほど近くに寄れないが、近々そうする計画である。それに応じてこの記録を新たに書き加えるつもりだ。だが、彼らがかなり遠くまで毒を吐き出せることに気付いた。私はこの巨大な毒物の塊が、あらゆる材質のものを浸食するのを見た。防護のない肉体だったらどうなるか、想像しただけでゾッとする。

第二に注意すべき点は、デスホッパーがそのとてつもない大きさをうまく利用することだ。この生物は空高く飛び上がり、気絶するほどの激しさで獲物の上に飛び降りることが知られている。その後、デスホッパーは横に飛んで放心状態の獲物を混乱させてから、最後の大抵は致命傷となる攻撃を放つ。これまでの研究の日々で、デスホッパーが大きな獲物を丸ごと飲み込むのを見た。だが、その口の中には細く、この上なく鋭い歯が数百も生えている。デスホッパーにとって、骨を噛み砕くなど造作もないことだ。

私はこの巨大で極めて残忍なカエルに際限なく魅了されている。そして、私の調査は始まったばかりだ!デスホッパーに関してこれ以上何が分かるかは想像しかできない。だが、まずは近づかなければ!

テナレイの契約Tenarei’s Contract

テナレイ・ヴェルス:

約束どおり、書面による契約だ。長い親交があるにもかかわらず私の言葉を信用しないとは少々侮辱的だが、大目に見よう。クイストリー・シルヴェッレなる人物をレヤウィンのシンジケートに連れて行ってくれ。生存していればより好ましい。この仕事を完了すれば、シンジケートに対するお前の負債は帳消しとなる。

この愚かなクイストリーは自分の負債を記憶しておくことが困難なようだが、シルヴェッレ家はダガーフォールの裕福な一家だ。恐らく息子の債務は彼らが清算できるだろう。そうでなくても、お前も良く知っているように、負債は様々な手段で清算できる。

現在の居場所:

– 数週間前に街を出るところを目撃された。ギデオンに行くとのこと。

– レヤウィンの南と東にある洞窟の外で活動している、密売人か盗賊と合流した可能性がある。深い嘲笑の洞穴か、洞窟か?(あの地域は洞窟だらけだ)

– 高価な印章指輪を身に着け、役立たずの金持ちのクソ野郎のような服装をしている。自身を色男だと思い込み、やたらに自慢する。

我々が負債を回収するよりも先に、密売人が殺してないことを願う。

ラーズ・トゥル
レヤウィン

トパル湾にてOn Topal Bay

(愛の歌)

トパル湾で愛を見つけた
川が海と出会うところ
2人で岸にぶつかる波を見た
レヤウィンの塔の3つから

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾で富を築いた
海の上の船員として
要塞を満たした黄金で
愛しき人にこの指輪を捧げた

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾で愛を失った
彼女は海辺で散策したが
リバー・トロールを見逃した
逃げ出すことはかなわなかった

急げ、急げ、朝もやだ!
急げ、急げ、霧が来る!
急げ、急げ、嵐は不意にやってくる
トパル湾の浜辺に沿って来る!

トパル湾の海賊Pirates of Topal Bay

評議会議長タルニアン・ロヴィディカス 著

数ヶ月前にシロディールを引退してレヤウィンに来た時、そこで待ち受けていた様々な問題の中でも、海賊はおそらく最も厄介で継続的な問題になりつつある。もちろん、海賊は数百年前のレッド・ブラマンの時代から、ニベン下流やトパル湾に蔓延していた。しかし帝国の権威が失墜したことで、略奪船や血に飢えた海賊船の大群が、かつては安全だった帝国の海域を臆面もなく荒らしまわるようになった。交易が帝国の動脈だとすれば、トパル湾の海賊は最悪の種類の吸血鬼である。自分の糧となるものを平気で破壊する、決して満たされず後先も考えない怪物だ。

レヤウィンの石の胸壁でさえ、大胆なトパル海賊を抑えてはおけない。この悪党どもの一部はただの商人に扮装し、港の役人を買収して街の橋下を通過する。南の海から来る海賊はブラヴィルやコルベレ川ほどの北方でも家を襲い、貨物船を拿捕することで知られている。たとえレヤウィンの軍団長会議でそれ以外に何もできないとしても、私は我らの川のこの恥ずべき現状に終止符を打つ決意を固めている。そのためのゴールドや戦力さえ手に入れられれば。

以下に記す海賊たちは、暴虐の限りを尽くしてブラックウッドのとりわけ悪名高い敵となった者たちである。

三つ爪のアシャサと呼ばれることもあるアシャサ・ドラは、海賊の母と名乗る年老いたカジートである。ペレタイン沿岸沿いのあらゆる場所にスパイを擁しているらしく、リンメンからセンシャルの遺跡に至るまでの各地で手下を操っている。アシャサの海賊団は十数隻の船を沿岸で操り、無害な商人を装って接舷する術に卓越している。つい先月も、アシャサ・ドラとその手下はレヤウィン胸壁の真ん前につないであった商船を盗んでいった。

トパル湾の恐怖、ヴォルダーはトパル島西の海域で数隻の船を略奪した張本人である。この男がいずれレヤウィン本土を襲撃すると豪語したことは有名だが、ここしばらくは目撃情報がない。我々の海域を離れて船を集め、大胆な襲撃のための準備をしているのかもしれない。

ブルーワマスの船長の名前は不明だが、珍しく知能を持ったアルゴニアン・ベヒーモスだと言われている。ブルーワマスは重装備の大型ガレオン船で、船体を犠牲者の骸骨で飾りつけており、また獲物を突き刺す鉤爪を発射する重いバリスタを装備している。ブルーワマスの船長は特に血に飢えた男で、襲撃時には誰も生きて返さない。この海賊船のガレオンはトパル島海域でよく見られる。

最後にノルドのグジャルグリダは、海と風を操る特殊能力を持った自称「海の魔女」である。この女はブラック・マーシュ西沿岸のオンコブラ川で、無数の河口のどこかに潜む海賊船の小艦隊を率いている。グジャルグリダは数隻の素早いガレー船を指揮しており、獲物を開けた海で捕らえることを好む。よく肥えた商人たちを北の狼の群れのように襲うのである。グジャルグリダのせいでタイドホルム東の海域はあまりに危険となったため、トパル湾に入る大部分の商船の船長は、この女に気づかれないよう島の西側の狭い海路を通るようにしている。

挙げられる海賊船長はまだ5,6名ほどいるが、この4人だけでも絶望の淵へ追いやるには十分だ。

帝国元老院に仕えていた長い年月の間、私はブラックウッドにいる帝国の役人からトパル湾の海賊問題について大量の報告を読んだ。レヤウィンは何度も繰り返し白金の塔にこの凶暴な犯罪者たちを制圧するための資金や艦隊を要求したが、我々には余裕がなかった。レヤウィン軍団長会議の議長となった今、私は以前無視していた問題に向き合わねばならない立場に置かれており、助けを求める手立てもない。運命とは皮肉なものだ。

トランス・ニベンの珍味Trans-Niben Delicacies

ニベン川で2番目に速い無許可財宝運搬業者、グアルの嘴の一等航海士スナゴス 著

俺のような決して合法とは言えない仕事を持つ者がレシピの本を書くことに疑問を持つ人は、船に乗って広大な海を航海するといい。初めて風の吹かない日に出くわした瞬間にそういった疑問への答えが得られるだろう。

今の状況、つまり無風の苦境を鑑みた結果、長きにわたる海賊稼業を始めて以来食べてきたうまい食べ物の記録に着手することにした。まずは好物から始めよう。

このレシピは俺がただの若者に過ぎず、旅を始めたばかりでまだブーツが硬く乾いていた頃に、川の側の流れが逆流する場所にいたアルゴニアンの漁師から手に入れたものだ。この漁師はカードゲームの名目で俺から少額の金を巻き上げるつもりでいたが、こちらも同じ方法で夕食代を調達しようとしていた。俺たちは夜更けまで続け、ついには漁師が手放せるものが、まさにその時まで部族の秘密とされていたこのレシピだけになった。

ザリガニのサラダ
潮溜りでザリガニと呼ばれる殻に覆われた生き物を探す。魚とは似ても似つかない姿で、どことなくロブスターのような生き物だ。

風味付けした湯でさっと茹でる。

その間に葉物野菜を集めて準備する。

ザリガニの身を殻から外し、頭を切り落とす。

身が十分に冷めたら葉物野菜に加え、好みの果物や野菜や肉などをトッピングする。俺は提供者の薦めに従い、柑橘類をサラダに加えた。これは葉物野菜に素晴らしい影響を与えた。と言うのも、普通なら葉物野菜はひいき目に見ても好ましいものじゃないからだ。

ニベンを越えてAcross the Niben Bar

(ニベン川の歌)

シロディールからトパル湾まで
ニベンの背中は広がっている
レヤウィン港に船は並んで
朝の満ち潮を待っている

エイルズウェルでは鉱石を
ウェイでコロヴィアの赤を買って
ブラヴィル港まで材木を運び
ブラックウッド・ヘッドへ出航だ

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
濃霧の中に浅瀬が潜む
ニベンを越えて!

トルヴァルで買うはサトウキビ
サウスポイントでは毛皮と染料
ダガーフォールで全部売り
ストロス・エムカイで酔っ払う

ゴールドコーストで絹とワイン
俺たちゃ故郷に舞い戻る
レヤウィンで恋人が待っている
船乗りのお帰りを!

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
波の下にはネレイドが潜む
ニベンを越えて!

コーラス
いち、に!いち、に!狙って投げろ!
おい測鉛手、出番が来たぞ!
船乗りたちが海をゆく
ニベンを越えて!

バザールの名簿Bazaar Directory

ディジェリエルの仕立屋 – 仕立専門店、中央市場

ラロスの遺物 – 古代と魔法の品、バザール北西

エルスウェアの砂 – カジートの小間物、バザール南中央

賢者クエンティンの動物店 – 異国の家畜、バザール南東

ダモザグ金属加工 – 上質な宝飾品と鉱物、バザール西中央

高貴なるエスディルの店 – 錬金術試料と植物、バザール東中央

ハックウィングはどのようにして尾を手に入れたのかHow Hackwing Got Her Tail

ツリーンキーシュによって記録されたアルゴニアンの童話

ある日、ハックウィングがせっせと空を飛び回っていると、地上から呼びかける声が聞こえた。「ずいぶんうまく飛ぶもんだ」悪意に輝く目で空中のハックウィングを追いながらボグドッグが言った。「でも、地上での速さはどんなものかな?」

ハックウィングはボグドッグの頭に向かって一直線に襲い掛かり、彼が身をかわすとクスクスと笑って言った。「必要なだけ速くなれるわ」

「絶対に俺の方が速い」ボグドッグが挑んだ。

ハックウィングは空中で回転すると、ボグドッグからは届かない位置にある岩の上に軽やかに着地した。「一体何がしたいの?」

「レースさ。そっちが勝ったらもうお仲間を狩るのはやめよう」

「勝たなかったら?」ボグドッグを信用してはならないと知りながらハックウィングは尋ねた。

「俺が勝ったら」ボグドッグが吠えた。「あんたを食う」

ハックウィングはレースの条件について考えた。見逃すには惜しい内容だった。ボグドッグはそれは長い間、彼女の家族を狩り続けてきた。そして今、彼を阻止する絶好のチャンスを手にしたのだ。ハックウィングはうなずいた。「あの遠くにある大きな石まで競争しましょう。最初にたどり着いたほうがレースの勝者よ」

ボグドッグはうなずいた。「スタートする前に俺の横に並んでくれ。じゃないとどっちかが有利になって不公平だ」

ハックウィングはボグドッグを信じてはならないことを忘れ、頼まれたとおりにゴツゴツとした足場から降りた。その瞬間、ボグドッグの歯をむき出した口先が噛みつこうとしたが、ハックウィングはとても素早かった。彼女がさっと空に飛び立つとボグドッグは胴体を噛み損ね、その短い尾にぱくりと食らいついた。ハックウィングはできるだけ速く翼をはためかせてどうにか前に進んだ。彼女はボグドッグを引きずり、羽ばたき、力一杯動いて、ついに大きな石に到着した。

「勝ったわ!」彼女は得意げに羽づくろいをした。「尾を放して。あたしが勝ったんだから食べられないわよ」

ボグドッグはしぶしぶ尾を放した。その尾はあまりにも長く引っ張られていたので以前よりもずっと伸びてしまっていた。

今もハックウィングは長い尾を保ち、彼らの素早い先祖を称賛し、ボグドッグに約束を守ることを思い出させている。

ファルル・ルパスからの手紙Letter from Farrul Lupus

ジリッチ評議員

旧友よ、お元気でお過ごしだろうか。私がレオヴィック皇帝の執事で、君が元老院にいた頃から何年も経ったというのに、ロングハウス帝の秘密が今も私たちに付きまとっているのではないかと恐れている。

君と他の元老院の者たちは、重大な危機に瀕している。君と同僚たちが何年にもわたってロングハウス帝のために行ってきたことにより、君たちは心ならずも正体不明の存在、あるいは存在たちの標的となってしまったようだ。もちろん、私たちは君がただ命令に従っただけだと分かっている。職務を果たしただけだ。残念ながら、君を追う者は理由など気にしけていない。奴らの望みは、レオヴィック皇帝の最後の秘密のほんの小さなかけらでも知る者を全て抹殺することだけだ。

もっと情報を提供できたらよかったのだが、今のところ私が知っているのはこれだけだ。また何かが分かったら連絡する。とりあえず、今は注意してくれ。

寝る時も警戒を怠るな。

ファルル・ルパス

ファレヴォン最後の戦いThe Last Battle of Phalevon Vero

上級歴史家、シリノ・ヘンター 著

従弟のブルミウンを失い嘆き悲しむファレヴォンは、彼を真っ二つに引き裂いたミノタウロスを追跡し、打ち倒すことを誓った。多くの人にとってミノタウロスはどれも同じように見えるものだが、今回は従弟を殺した者の正体についてファレヴォンは十分に情報を得ていた。グレンブリッジの住人がブルミウンの戦いを目撃していた上に、彼らは戦った相手のミノタウロスのこともよく知っていたのである。その野獣は赤きフルームと呼ばれていた。皮がレンガのように赤く、たてがみも赤茶けたオレンジ色だったからだ。それでも、赤いミノタウロスが潜んでいる場所をファレヴォンに教えられる者は誰もいなかった。

嘆きと冷酷な決意を闇のマントのように身にまとったファレヴォンは、探し求めた対象を追い詰めるまでブラックウッドにあるミノタウロスの巣を空にしていく仕事に取り掛かった。彼はそれぞれの薄暗い洞窟や崩れかけた石の門の前で立ち止まると、老いたカースで作った戦の角笛をとてつもなく大きな音でひと吹きし、ミノタウロスに敵と恐怖の訪れを知らしめた。これを7回行い、7体のミノタウロスを殺したが、赤きフルームはまだ彼の怒りから逃れていた。

ついにファレヴォンはニベンの川岸にある、ブラックウッド内で最後のミノタウロスの巣にやってきた。そして、彼の力強い角笛を吹き鳴らした。「出てこい、出てこい、お前が赤きフルームなら!」彼は叫んだ。「違うのなら、今すぐどこで彼が見つかるか教えるんだ。そうすれば見逃してやる」だが、洞窟からはミノタウロスのうなり声以外、返事はなかった。そこでファレヴォンは身構えて洞窟の中に入った。

(後年、学者たちはファレヴォンがミノタウロスの話を理解していたかどうかは疑問だとしている。と言うのも、理解できる人間はほとんどいないからだ。残念なことに、しがない執筆者である私は挑戦に対するミノタウロスの返事の内容を知らない)

ファレヴォンは洞窟の中に降りていった。その最も奥深い場所でこれまで目にしたどのミノタウロスよりも大きいミノタウロスと対面した。赤きフルームは立ち上がると長身のノルドの2倍は背が高く、犠牲者の頭蓋骨で作った首飾りを身に着けていた。「忌々しい野獣め!」ファレヴォンは叫んだ。「ついに見つけたぞ!さあ、我が従弟を引き裂いたお前に正義をもたらしてやる!」

「フルーム!」と、赤きフルームは答えた。そして血塗られた縞入りの角を下げると、この勇ましき英雄に突進した。

ファレヴォンが脇に飛び跳ねると、赤きフルームは洞窟の壁に力一杯激突した。壁が壊れてヒビが入り、そこから川の水が注ぎ込み始めた。ファレヴォンは赤きフルームが体を引き抜いて再び自由になる前に脇腹を3度切りつけたが、その攻撃は相手をさらに怒らせただけだった。ミノタウロスは大斧をつかむと、ファレヴォンに恐ろしい一撃を与え、彼の右腕を切り落とした。それでもファレヴォンはひるむことなく左手で戦い続けた!

両者の間で激しい攻撃が幾度となく交わされた。そして、ついにファレヴォンがその輝く剣を赤きフルームの心臓に突き刺した!だが、最後の一撃に対する怒りに駆られたミノタウロスは狙いを定めて激しい一撃を与え、勇敢な英雄の輝く兜を叩き割った。ファレヴォンは力尽き、自らが殺した恐ろしいミノタウロスの死体の上に倒れた。

そしてレヤウィンの人々はファレヴォン・ヴェロを発見し、敬意を払って彼を外へと運び出した。

ブラック・マーシュの家産Homesteads in the Black Marsh

布告第19号:第二紀194年 薄明の月11日
帝国評議会最高顧問ヴェルシデュ・シャイエ

ブラック・マーシュとして知られる地域が荒廃した土地であり続け、その地のアルゴニアンの原住民がこの地域で耕作するための方策を講じていない限りにおいて、第二帝国最高顧問は本布告の添付文書に記載されたブラック・マーシュ地域が、この機会を利用することを望むすべての帝国市民が自由に居住できる土地となることをここに布告する。

あらゆる帝国市民(以下「入植者」)は今後ブラック・マーシュの領域内で居住者のいない土地を占有し、それによって900歩尺四方を超えない区画(以下「区画」)の所有権を主張できる権利を有するものとする。その後入植者はギデオンの帝国執政官の面前で、この区画に対する所有権の請求を申し立てることができる。ギデオンの帝国執政官は、入植者の請求および区画が耕作できる状態であり、入植者の主たる居住地であることを示す証拠が提示された日から5年が経過した時点で、入植者とその子孫に対し、区画の永続的な公有地譲渡証書を発行するものとする。

本布告はブラック・マーシュに植民と耕作をもたらすことを目的とするため、入植者は区画を取得した日より土地を改良する権利を有するものとする。改良には、樹木の伐採、開墾、水流の遮断、池の排水、柵の建設が含まれる。入植者が権利を主張する区画内に一時的な住居や野営地を有する全てのアルゴニアンの原住民は、自ら区画から退去および所有物の撤去をしなければならない。さもなければ、最寄りの帝国の守備隊が強制的に移動することとする。

これを布告せよ:ブラック・マーシュは最高顧問の善意の手において繁栄する。

ブラック・マーシュの物語Tales of Black Marsh

物語収集家ジュノ・アセリオ 著

圧迫するような熱気がのしかかり、私を溺れさせる。暑さは喉に詰め込まれた毛布のように、肺の中で広がっていく。こんな暑さは経験したことがない。湿気のこもった熱には具体的な感触がある。手を伸ばせば空気を搾り取れそうなほどだ。

「どうしてあいつらはこんなところで我慢できるの?」とテオドシアは言って唾を吐いた。月明かりの下で、彼女の汗が染み込んだチュニックと、首元にへばりついた髪が見えた。

彼女はきっと、この場所を故郷と呼んでいるアルゴニアンのことを言っているのだろうと思った。私は答えを知らない。喋ろうとしたら、言葉が口の中で溶けてしまいそうな気がして怖かった。

腕に鋭い痛みが走った。もう叫び声をあげる気力も残っていない。ニクバエを狙って叩いたが、離した指は腫れた皮膚の表面からせり上がる血で濡れていた。この痛みも、焼けるような両足の感覚に比べれば鈍い轟きにすぎない。私たちは何時間も歩き続けていた。日が暮れる前に街道が見つかるはずだった。だがもう否定しようがない。私たちは完全に迷ってしまった。

「同じところを堂々巡りしてるのね」とテオが言った。「ブーツがぐしょ濡れだわ」

ブーツが濡れるどころの問題じゃないと言いたかったが、思い直した。彼女を怖がらせたくない。慰める言葉を探していると、低い、くぐもった太鼓の音が聞こえた。音は一挙に周囲に跳ね返り、不気味なこだまと共に汚泥を貫いて響いた。

一瞬、私の頭がおかしくなって、自分の心臓の鼓動が耳の中で鋭い悲鳴に変わったのかと思った。だがテオは頭を上げた。

「今のは何?」彼女の声にも、今では恐怖の片鱗が伺えた。

「太鼓の音みたいだった」と私は役にも立たないことを言った。

私は月に照らされたブラック・マーシュの影に目を凝らした。心臓が早鐘を打っていた。何の動きも見えない。夜に潜む墨汁のように黒い人影も、暗闇に光る目もなかった。沈黙が痛いほどだった。何ひとつ息をしていない。水も動いていなかった。

「とにかく移動しよう」と私は言った。

テオの声はなかった。恐怖で口がきけなくなったかと思い、私は彼女の様子を見るために振り返った。背後には暗闇だけがあった。目の錯覚かと思って手をかざし、テオの体に触れようとした。だが手は空を切った。重く耐えがたい熱気だけが残っていた。

「テオドシア?」私はほとんどたしなめるように呼びかけた。「はぐれてはいけない」

太鼓の音が一度だけ鳴って私に答えた。今度は前よりも近い。もう少しで飛び上がるところだった。周囲を見回すと、今度は私の先を駆けていく人影が見えた。テオにしては足が速すぎる。それにわずかな月光から、尻尾があるのが見えた。

「テオ?」と私は囁いた。

ドン!

恐怖で血が煮え返った。またして太鼓の音がブラック・マーシュを突き抜け、私は走り出した。どこに向かって走っているのか自分でも分からなかったが、逃げるしかない。一歩進むごとに泥を振り払わなければならなかった。分厚い空気に肺が詰まり、汗が背中を流れ落ちた。

ドン!

太鼓は接近し、今やすぐ背後まで来ていた。だが立ち止まって見るわけにはいかない。絶対にダメだ。進み続けなければ…

地面が目の前に飛び込んできた。私は倒れて沼に落ち、汚水まみれになって沈み始めた。耳の中に水が入ってきたが、それでも雷鳴のような太鼓の音はまだ聞こえていた。

ドン!

私は何とか起き上がった。草や泥が指先からこぼれ落ちた。水面から頭を出すと、正面で何者かが同時に頭を出した。テオかと思ったが、顔が違った。大きさは同じくらいだったが、両目がルビーのように光り、月明かりに鱗が輝いていた。自分が見つめているのは、巨大な蛇の顔であることに気づいた。

ドン!

蛇は顎を大きく開いた。底なしの虚無が開き、私を見つめ返している。

ドン!

私に向かって落ちてくる。

ドン!

ブラックウッドのワインWines of Blackwood

オリウス・ヘルタノ 著

シロディールが食事と飲み物に対して抱く愛情はタムリエル中に知れ渡っている。瓶か水差しに入れた香り豊かなワインを食事に添えなければ、インペリアルの食卓は始まらない。しかし愛好家たちが集まってお気に入りのヴィンテージについて話す時、大半の者は豊潤さで知られるコロヴィア台地の赤のブレンドが一番だと決めつけている。著者の考えでは深刻な間違いだ。帝国のどの地域も何らかの価値あるワインを作っている。その中にはもちろん、ブラックウッド地方も含まれる。

当然ながら、これほど広大な地域の醸造業者すべてに対して信頼性の高い調査を行うことは、このささやかな写本の射程を越えている。むしろ、本著はこの顧みられることの少ないブドウの栽培地で作られるワインのスタイルや特徴に注意を向けたい。レヤウィンとその周囲のブラックウッド地方は、帝国内でも最も温暖で湿度の高い地域であり、当然ながらコロヴィアよりも多くの種類のブドウが採れ、多様な栽培技術が要求される。この気候でブドウは短期間で熟し、甘みに加えてフローラルでフルーティな味わいを強く持つ、複雑なワインになる。

アネクイナの乾いた平原にほど近い、ニベン川の西の丘で作られる「レフトバンク」ワインから始めよう。ここはもちろんトランス・ニベン地方で最も乾燥した部分であり、ここで生まれるワインはレヤウィンのどこよりもコロヴィアに性質が似ている。クイーンズティアーやネリアンス・ファインなど、赤の品種がこの地に適している。穏やかな冬と長い栽培の季節のおかげで、ブドウは早期に熟成する。トランス・ニベンの丘は熟練の醸造業者の手にかかれば、真に見事な出来栄えの、甘く豊穣なワインを生み出す。

東に移動すると、ニベン森の軒先にやって来る。川の西にある地域よりも暑く高湿度なこの一帯は、大半の赤ブドウに適さない。しかしプティット・グレイやホワイトムーン、グレート・アンブロシアのような白ブドウの品種は、この森林の影に覆われたブドウ園でよく育つ。これらの品種は言うまでもなく、インペリアルの全てのワインの中でも特に甘くフルーティなワインになるが、だからといってその品質を軽視してはならない。上質なニベン森の白は、優雅で身の引き締まる爽やかな風味を持ち、どのインペリアルのワインセラーに置いても恥ずかしくない逸品である。

さらに東へ向かい、ブラック・マーシュの辺縁に行くと、ついにブドウが一切まともに育たない土地にたどり着く。うだるような蒸し暑さのせいで、ブドウ園を作るのは不可能に近い。しかし必要は発明の母である。そのためブラックウッド東境の人々は手に入るもの、例えばイチジクやブラックベリー、ブルーベリー、さらには桃でワイン(の一種)を作っている。こうした材料ではうんざりするほど甘いフルーツジュースしかできないだろうと思うのも無理はないし、実際そうなることも多い。しかしこのフルーツワインの一部は意外なほどバランスが取れており、この地方の辛い料理によく合う。ブラック・マーシュのピーチワインを地下に貯蔵し、舌の肥えた来客に供すのはお勧めできないが、暖かい夏の夕べに入植者の夕食を流し込むために飲むのであれば、決して悪いワインではない。

ブラックウッドの景色Sighs of Blackwood

ギデオンでランプが消え
筏が沼地を漂う時
聞こえるだろう、槍蛙の歌が
樹液を浴びた合唱のように響きわたるのを

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

あなたの濁った水を泳ぎ
ワッソフルーツを味わう時
ホタルの光のごとき、自らの祝福を思う
我がヒストがここに根を張ったことを

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

泥炭の匂いが鼻を満たし
泥が背中で乾いていく
百の収穫が花開くのを感じて
あなたの黒い大地で眠る

おお、ブラックウッド、ヴァステイ、ヴァステイ、ブラックウッド
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
あなたの物語の吐息で、我らの鱗を湿らせたまえ
ロトゥヘーヴァ!ロトゥヘーヴァ!
物語の吐息で、鱗を潤わせたまえ

ブラックウッドの諸部族:ギデオンと国境Tribes of Blackwood: Gideon and the Border

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

マークマイアへの長く危険な遠征の後、私は故郷のハイロックへ戻ってたっぷりと休息を取るのがいいだろうと思った。しかし八大神には別の計画があったようだ。私の最初の本「マークマイアの諸部族」の売り上げが予想を遥かに上回ったのである。研究者にとっては嬉しいジレンマだ!新たな求めに応えるため、私はトランス・ニベン地方でキャラバンに別れを告げ、ギデオンに向かって東へ出発した。

行ったことのない人のために説明しておくと、ギデオンは無数の文化が不可解に混ざり合う地であり、アイレイド建築とインペリアルの歴史、コスリンギの民間伝承、そしてアルゴニアンの伝統の異様な集合体である。豊かな多民族社会の歴史を持つにもかかわらず、現在のギデオンに住んでいるのは主にアルゴニアンである。私にとっては家族のように大切な存在になった南の親族とは異なり、ブラックウッドのアルゴニアンはシロディールとの長期間の接触により正負双方の影響を受けている。彼らはより正確なシロディール語を話し、より繊細な事業を営み、外国の伝統によりうまく適応している。このことはしばしば、古い伝統やアルゴニアン哲学の純粋な体裁を失う結果につながる。アルゴニアンがヒストの至上性を公然と否定するのを初めて聞いた時、私は驚愕した。だが時と共に、私はブラックウッドの諸部族も複雑さに劣るわけではないことを理解した。多くの点で、彼らは他の部族よりも遥かに複雑だとさえ言えるだろう。

タムリエルのより大きな部分との境に住むアルゴニアンは、外国の破壊の大半を経験している。戦争や飢餓、奴隷貿易、環境破壊などである。国境のアルゴニアンはこうしたこと全てを体験してきた。その結果、この地のサクスリールの友情を得るには大変な苦労が伴った。マークマイアのアルゴニアンの大半は外国人に対し、困惑を交えた滑稽なほどの無関心で迎える。しかしブラックウッドのアルゴニアンは、大部分のよそ者を軽蔑に近い疑念を持って見ている。ケシュという地域の指導者は、民をより広いタムリエル社会に統合するため多大な努力を払っている。この試みが不信の増大ではなく、協力の促進へとつながることを祈っている。

ブラックウッドの諸部族:リバーバックTribes of Blackwood: Riverbacks

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

私が追放したい迷信を選べるなら、アルゴニアンの見た目や行動が全員同じという考えを追放したい。ブラック・マーシュの境界の外側にいる人々はしばしば、アルゴニアンの身体機能が固定されていて、部族ごとの違いもごく些細なものだと思い込む。大半のアルゴニアンが基本的な形態学的パターンを共有していることは事実だが、それでも差異は大きなものから小さなものまで存在する。サルパ、ナガ、ハプスリート、パートルなどの例はほんの一部である。確実に言えることは、こうした差異が各部族のヒストを取り巻く生息環境に対応していることだ。長老ナヒーシュの大半は、ヒストが「正しい皮膚を正しい時に」与えてくれると考えるに留めている。それが本当なら、リバーバック族のヒストは実に見事な仕事をしたと言える。

私の案内人である蘭を名づける者は、沼の奥地へ私を連れて行って、ナカ・デシュ、もしくはリバーバックというあまり知られていない部族に会わせてくれた。川の民に会えるほどブラック・マーシュの奥に行くインペリアルは少なく、ナカ・デシュはヒストの根の境界から外に出ることにほとんど意義を見出さない。そのため、大半の者は彼らを秘密主義で神秘的な部族とみなしている。リバーバックは際限なき歓待の精神を持っているため、この誤解は余計に愉快である。

私たちはリバーバックの領域へ渡し舟で近づいた。遠征隊はほとんど一瞬で部族の哨戒兵に出くわした。哨戒兵たちは亀かワニのように水上を漂っていた。彼らの顔の幅広さや目の大きさ、そして前腕と喉元についた水かきには驚かされた。ヒストがこの地域民に「正しい皮膚」を与えたのは明らかだ。リバーバックの領域は地面よりも水が多く、沈んだ沼地は小さな筏やカヌーで移動するしかない。

蘭を名づける者は低い鳴き声で哨戒兵に挨拶をした。彼らは元気よくその音を繰り返し、私たちの船に乗り込んできた。哨戒兵たちの誰もシロディール語はできないらしく、案内人に通訳してもらなければならなかった。彼女によると、リバーバックは通行許可を与える前に、謎かけの貢物を要求しているということだった。この要求に脅迫の匂いは感じ取れなかった。命令というより、誘い掛けのようだった。私に言葉遊びの才能はないが、インペリアルならほとんど誰でも知っているドアノブに関する子供の謎かけを教えた。蘭を名づける者がそれを翻訳すると、すぐに2人の哨戒兵は拍手をした。1人が自分の額を私の額に押しつけて2度鳴き、その後2人は現れた時と同じく突然、水中に消えていった。

私たちはリバーバックと共に4日間過ごした。1日を除いては、ずっと筏に乗って釣りをしていた。リバーバックの釣りは伝統的な釣りと名前しか似ていない。ナカ・デシュは釣り針と糸ではなく、オシージャ・ガースという大きな川魚を使う。オシージャは1匹ごとに変わった引き具と紐で繋ぎ止められている。魚の大量にいる場所を見つけると、アルゴニアンたちはこの捕食者を解き放ち、魚を捕まえさせる。オシェージャが魚をくわえるや否や、アルゴニアンはこのペットを船の脇に引き寄せ、魚を取り上げるのである。私は蘭を名づける者にどういう仕組みなのかと聞いた。どうやら、紐は魚を飲み込むのを防ぐらしい。しかし、オシージャはちゃんと世話されていると彼女は請け合った。もちろん、それはオシージャが年老いるまでの話で、そうなったらやはりこの魚も食べられてしまう。

リバーバックと過ごした時間の中で、苛立つことがないではなかった。私が出会ったアルゴニアンたちの中で、ナカ・デシュは圧倒的に好奇心を欠いていた。謎かけを除けば、彼らは私たちが持ち込むものに全く興味を示さなかった。私たちの食事は拒絶し、私たちの物語には特別関心を持たず、私たちの名前すら聞かなかった。この無関心と、彼らの際限なき歓待が合わさって、遠征隊の大半は居心地の悪い思いをした。蘭を名づける者は、親切に返礼が必要だと思うのがおかしい、と私たちをたしなめた。いつものことながら、こうした小さな失望もまた貴重な教訓を与えてくれるのである。

ブラックウッドの諸部族:レッドドリームの民Tribes of Blackwood: Red-Dream People

ウェイレスト旅人協会、エマヌベス・フレント 著

多くのアルゴニアンが石の住居を避ける一方で、国境地帯の部族は大抵それほど信念に固執しない。ブラックウッドを旅すればすぐに様々な種類の古代遺跡に遭遇する。そして、これらの遺跡は頑丈で守りの固い住居を提供しうる――これほど荒廃し、戦火に引き裂かれた土地では非常に重要なことだ。

私たちは沈んだザンミーアの中と周囲に住むいくつかの部族に会った。また、古いアイレイドの集落に避難していた部族にさえも会った。例えばレッドドリームの民だ。彼らの「水浸しの家」は伝統的なアルゴニアン様式で建てられているが、乾燥した時期にはよく近くのアイレイドとアルゴニアンの遺跡に避難する(ブラックウッドのほとんど集落と同じように、これらの遺跡は1年のうちかなりの期間水没している。そのため、長期の住まいには適していない)。

乾季の間、ハッツリールは遺跡の「歌を知る」ために樹液の儀式に参加する。外部の者はおそらくこれを型破りな考古学と解釈するだろう。彼らは遺跡の中で何時間もかけて歴史的価値があるものを探す。欠けた杯や壊れた武器といったものを。十分に集まったらそれらの上に灰をまき、奇妙な樹液の酒を飲み、その品々の「夢を見て」それにまつわる物語を知る。私が確認できたところによると、この物語のほとんどは作り話か完全に暗喩で覆い尽くされていて、学術誌にはほとんど使えないようなものばかりだった。たとえそうでも物語は示唆に富み、場所に対する価値ある思いを部族にもたらすのだ。根の使者、ラー・ネイはそれを「収獲」、狩猟とも農業とも違う習慣だと説明してくれた。儀式が完了すると、この歴史家たちは見つけたものを家に持ち帰り、創造的なやり方で日常生活に組み込む。ハッツリールの農民は剣を鋤の刃として使うかもしれない。料理人たちは古代アイレイドの杯を植木鉢にするかもしれない。それはここブラック・マーシュだけで見られる、素敵な創造力の表れだ。

プロノビウスへの未完の手紙Unfinished Letter to Pronobius

プロノビウス・ヘブリン大司祭様

今頃はギオヴェッセ公爵領の嫡子が、袖にされた恋人によって残酷に殺されたことをお聞きになっていることでしょう。凶行に及んだとされるレッドガードの女は故郷の砂漠に逃げ帰ったようです。女に正義がもたらされるかどうかは怪しいものです。嫡子マセンの死は大いに悼まれています。彼は父親と同じようにギオヴェッセ内外から好かれておりました。彼は母親から大変愛されておりました。愛する、と言うには少し支配欲がありすぎたようですが。私は批判をいたしません。求められれば助言をするか、相談に乗るだけです。

ご存じのとおり、私は何十年もの間忠実にガレヌス家に仕えてまいりました。こういった職務では、時折の厄介ごとはつきものです。亡き公爵は敬虔な方でした。ですが奥様のアステラ女公爵は、もしかしたら… それほどではなかったかもしれません。もちろん、その立場ならやらねばならぬように、祭礼や儀式には全て参加し監督もしておいででした。ですが、常に心がそこにないように感じていました。とは言え、マセンを失った今、私は彼女の神々や光の道への信仰心に対して心から疑問を感じています。差し支えなければギオヴェッセ城を訪ねて、女公爵とお話をしていただけないでしょうか。

最近耳にした噂を、紙に書き記したくはありません。夫人が個人的な研究でしているらしきことに関連して、闇の技に関連する書物を持っているという噂です。また、夫人が我が子を失ったことについてどのように憤慨し、逆上しているかについても書きたくありません。明らかにそのような運命を受け入れる境地に達することはできないようです。

ボロボロになった交易商人の記録Tattered Trader’s Log

今日はアルゴニアンのキャラバンが立ち寄った。何とかいくつかの奇妙な樹液の壺の値段交渉をした。裁定者ガヴォスがまた自由貿易を抑圧する無意味な規制を思いついたりしなければ、結構な利益になるかもしれない。彼から樹液を市場内で取引できない理由に関する、長々とした講義を聞かされずに済むようゼニタールに祈る。

自分自身で実際に仕事をやることもなく、ぜいたくに暮らすのはさぞかし楽しかろうな。ここで商品と金を回し続けてるのは我々商人だ。取引を妨害するだけでも十分よろしくないが、彼は黄金の金床を誰にも見せないらしい。我々と神々の間に立とうとするとは出過ぎた真似だ!それを許すつもりはないし、そう思うのは私一人ではない。

マタス・アムニスへの手紙Letter to Matus Amnis

マタスへ

招待状は受け取ったか?ヴァンダシア評議員の催し物はいつだって素晴らしいからな。それに、今回はとりわけすごいものになると聞いてる。

私はほぼ君と同じぐらい長い間、評議員と彼の試みの忠実な支援者でい続けてる。また、我々はどちらも彼の特別な社会組織に所属している。私は常々、我々の尽力が何かに至るのか疑わしく思っていた。真実が明らかになると、私が長年築いてきた想像なんて、ちっぽけに見えるものだと感じてるよ。

もう一つ。サルヴィットの屋敷で何が起きてるか知ってるか?ブラックウッド湖の近くにある彼の地所でだ。どうやら何かが、ヴァンダシアに次の催し物を前にして人目につかないようにすることを決意させたようだ。グラシアン・サルヴィットと避難したという噂を聞いたよ。サルヴィットが我々よりも先にヴァンダシアの秘密の計画について知ったとしたら、すごく腹が立つ。

君に会うのを楽しみにしている。道中で、もっと詳しい情報を手に入れないとな。

覚醒した兄弟
モリス

モーゲインへのギルド指示Morgane’s Guild Orders

守衛モーゲイン

レヤウィンの魔術師から、ブラックウッドにある奇妙なデイドラの施設に対する調査を依頼された。この「破滅の宝物庫」が領域内にいくつあるのか正確な数は分かっていないが、一ヶ所だけ場所が分かっている。ギデオンの東にある沼の奥深くだ。この地域にはほとんど住人がいないが、建物から奇妙で工業的な音が聞こえてくるとの報告が現地のアルゴニアンからあった。

君と クド・アフハダジャには、この破滅の宝物庫ポルシジドに入り、その忌むべき住民が何を企んでいるのかを明らかにしてもらいたい。中には信者と、もしかしたら多少のデイドラがいることが推測される。君とクドがはぐれた場合は、忘れずに送信石を使用して退却の態勢を整えるように。

戦士ギルドのために
ギルド幹事 ボルヴス・ダルス

ラロスの焼け焦げた日記Ralos’s Charred Journal

ガヴォスは終わった。

予想どおり、奴のしみったれた兵士たちは買収できた。クエンティンとエスディルにとって、説得して同意させる負担は大したものではなかった。我々は彼らを買っても釣りがくるほどの金を持っているからな。

奴が大切にしている金床と共に閉じ込められた今、絶え間なく挟まれる「公正さとは」という言葉を聞くことなく、本物の利潤の獲得に戻れる。奴に何が分かる?この市場の繁栄の理由は我々で、奴の説教や小物のおかげではない。

今日、新しく指名された裁定者が来た。彼は努めてさりげなく一週間分の取り分の増額を示唆し、「夕日の下」での休暇の計画のための金が足りないことを匂わせてきた。言葉の選び方がかなりわざとらしいような気がした。私の秘密の隠れ家を知っているのか?思っていたよりも不注意だっただろうか?

いずれにせよ、我々は今のところ、さらに気前よく心付けを渡せるの余裕がある。だが、奴が私の事情についてあまりにも知り過ぎた場合は、交代させる必要があるかもしれない。

リルモシートの贈り物Gift of the Lilmothiit

チャニル・シースによる、勇気ある青年向けの本

クザールは元気に先頭を行き、草に覆われた岩を軽々とまたいで進んだ。彼はもうすぐ仲間のキャンプに着くと言ったが、2人がジー・ティーの部族の領地を出発して以来、彼は毎朝同じことを言っていた。ジー・ティーはそろそろ我慢の限界だと思い始めた。それでもクザールは仲間がもうすぐ近くにいるし、彼らはまだ移動しないと約束した。ジー・ティーは彼を信じたが、他にどうすればよかっただろう?彼女の部族はリルモシートが持っていた薬を求めていた。しかも、彼女の母親が治療を必要としていた。母親は日に日に衰弱していたのだ。

病気はどこからともなくやってきた。ある日、数人の大人が熱を出した。その後、症状が拡がっていった。当初、拡散はゆっくりだった。治癒師は熱を治し、食事を飲み込むのに苦労する患者の手当てをしたが、それで治癒師の小屋は満杯になった。治癒師はできる限りのことをした。大抵の場合、患者たちは安静にしているしかなかった。

若者が村に迷い込んで来て、奴隷商人から逃げてきたと言った時、最初に近づいたのはジー・ティーだった。クザールはとても若かったが、その話しぶりは子供とは思えなかった。彼は奴隷商人によって仲間のもとから連れ去られて以来、目にしたことを全て覚えていた。連れ去られる時に通った道はまだ彼の記憶に新しく、リルモシートがキャンプを張った場所もよく覚えていた。彼女の部族の大半はこの若者を信用する気になれなかった。リルモシートの策略を忘れていなかったからだ。だがジー・ティーは事の重大さを理解していた。彼女はこの若者と荷物を集め、彼がキャンプにやって来てから3夜と経たないうちにこっそり抜け出した。

今、ジー・ティーはクザールを信用した自分の判断を疑い始めた。あまりに長い間歩き続けていたので、彼女の足はボロボロになり、背中の荷袋はほとんど空になっていた。道の砂埃が喉にこびりついていた。最後に他の旅人を見かけてから数日が経過していた。事情に詳しくなければ、ジー・ティーは誰もこの道を通ったことがないと思っただろう。だが砂埃の中に足跡があったし、茂みも刈り取られていた。最近誰かがここに来たのだ。ただ見えるところにはいなかった。

若者はまた別の大岩の上に昇り、喉を張り上げて短く歓声をあげた。「着いた!ここだ!」

ジー・ティーはしなやかな足で積み上がった岩をよじ登り、若い旅仲間の隣に立って峡谷を見下ろした。キャンプの痕跡があった。狭い円の内側に集められた燃え殻や、テントの柱を立てた時地面にできた穴、そして周囲に置かれた材木、東へと通じる足跡もあった。ジー・ティーは失望で背骨がしぼむ気分だった。リルモシートがここにいたとしても、もう移動したのだ。

ジー・ティーは無言で放棄されたキャンプを歩き、クザールは駆け回って岩や木の陰を探した。まるで部族の成員がひょっこりと姿を見せて挨拶するのを期待しているかのように。2人はキャンプを一回りして、太陽が上空で輝く中、峡谷を移動した。キャンプには灰と穴以外には何も残されていなかった。旅は無意味に終わった。クザールが仲間たちと再会することはないし、ジー・ティーは母親にどうしても必要な薬を取ってくる使命を果たせなかった。

「ほら、これ!」クザールは捨てられた木材と荷車の車輪の山に飛び込んだ。出てきた時、彼は両手に粘土の瓶を抱えていた。ジー・ティーは若者に近づくにつれ、足が重くなるのを感じた。彼の耳は失望感で垂れていたが、目は輝いていた。クザールは瓶の蓋を外した。中には強烈な香りを放つ、濃厚な薬草のペーストが入っていた。

「それは何?」と、臭いに顔を背けながらジー・ティーは尋ねた。

「母さんの調合薬だ。どんな病でも治す。クザールにも、ジー・ティーにも役立つ」

ジー・ティーは嘘だと思うところだった。そもそも、彼は部族が自分を置いていくはずがないと言ったではないか。「薬なの?」

クザールは真剣な目で彼女を見つめ、蓋をした容器をジー・ティーの手に押しつけた。「薬さ。贈り物だよ。俺の部族からあんたの部族へ」

するとクザールは背を向けた。彼は足跡を追って東へ向かい、二度と振り返らなかった。ジー・ティーは彼が地平線の向こうへ消えていくまで見ていた。その後彼女はリルモシートの贈り物を持って帰り、母親と、治癒師の小屋に集まる残った病人たちに与えた。

レオヴィックの偉大なる霊魂の声明Leovic’s Great Spirits Proclamation

〈帝国の公式布告、第二紀576年の原典に基づく写本〉

帝国の全臣民よ、この言葉を聞くがよい。

ロングハウスの古き知恵は国家の繁栄にとって重大であり

多様な宗教的実践を認めることは地域の平和を保つために必須であり

我らの帝国は強さの美徳を尊び、隷従の悪徳を憎む。

以上を鑑みて、私、すなわちブラック・ドレイクの後継者である皇帝レオヴィック一世は、ロングハウスの長に任命された者として、大衆にはデイドラの名で知られるリーチの古い霊魂を、帝国の統治における守護者かつ保証者としてここに承認し、また賛美する。この霊魂の崇拝を禁じるいかなる法や習慣もここに無効化されるものとする。ルビーの玉座の臣下でこの霊魂を賛美する典礼や儀式、祈祷への干渉を試みる者は玉座の敵対者とみなされ、反逆者や不平分子など、国家の敵と同じ懲罰の対象となる。

宗教改革の時代をシロディールとその先にまで押し広げ、栄誉ある我らがデイドラ公の言葉と報酬に、新たな力を求めようではないか。

上記を確認の上、ここに我が手と心を本件の大義に添え、帝国の印を押すものとする。

ロングハウスに栄光あれ!帝国に栄光あれ!デイドラ公に栄光あれ!

レッドメイン砦の帝国軍の歴史A Legionary’s History of Fort Redmane

第二紀233年薄明の月19日、プリスタン・ヴィニツィオ百人隊長 著

護民官マルティウス・コンダラ殿

前回我々の拠点をご訪問頂いた際、貴官はレッドメイン砦の名の由来を尋ねた。私は恥ずかしながら答えを知らなかったので、若い士官であるアギアン副隊長に頼んで、我らが拠点の信頼できる歴史を調査してまとめてもらった。彼女の勤勉な仕事のおかげで、レッドメイン砦という名前の起源について、貴官の質問に答えられることを誇りに思う。

砦の建設が開始されたのは、レマン皇帝がアカヴィリに大勝利を収め、第二帝国が築かれて間もない第一紀2707年だったことがはっきりしている。この時期についての俗説では、周辺地域がすぐにレマン皇帝の支配を認めたということになっているが、必ずしも真実ではない。当初、第二帝国の国境は確定していなかった。ヴァレンウッドのウッドエルフやアネクイナのカジート、ブラック・マーシュのアルゴニアンは皆、生まれ変わった帝国への統合に抵抗したのだ。

ここトランス・ニベン地方では、カジートの好戦的なクランがリンメン周辺のサバンナからやって来て、川を越えてブラックウッド北方の農地や小さな街を襲撃することもあった。大河から西へ領土を広げるニベンの植民者たちは、伝統的なアネクイナの狩猟地にまで食いこんだため、好戦的な狩猟公たちは自ら問題の解決に乗り出した。このプライドの高いカジートたちは自らの土地で行われる「ニベン人の密猟」に対して、人間の土地で「狩り」を行うことで報復した。

カジートの絶え間なき略奪の脅威からこの地域を守るため、第十軍団を指揮していたネメニウス・ヘスター将軍はニベン下流の峡に国境要塞を建設することを提案した。これはレヤウィンの屈強な守りとニベン湾の守りの中間に位置するだけでなく、峡はカジートの略奪者たちが好んで渡河する場所でもあった。ヘスター将軍の本来の計画では、この強力な要塞がニベン砦と呼ばれる予定だったが、建設はなかなか進まなかった。レマン皇帝の統治初期、シロディールの人員はタムリエル中の脅威に対処する必要のせいで酷く不足していた。ブラックウッドのカジート盗賊は、他の脅威に比べれば霞んでしまっていたのだ。

上官たちの出し渋りに業を煮やしたヘスター将軍は、アネクイナの略奪者の脅威に彼らの注意を向けるため、少々問題のある策略を思いついた。彼は凶暴だが公式には知名度の低いフンズー・リというカジートの族長を選び、人間を奴隷にして血を抜き取る「野獣」軍団のリーダーに仕立て上げたのである。将軍はフンズー・リに「赤いたてがみ」という異名まで与え、トランス・ニベン地方から全ての人間を追い出す聖戦を呼びかける、狂信的な宗教的指導者であると報告した。

言うまでもないが、カジートのたてがみは常に一人であり、このリーダーがそれほどの戦士でもなく、強盗でもないことは良く知られていた。だが第二帝国初期、カジートの地域アネクイナとペレタインはシロディールの民にとって未知の異国だった。この見慣れぬ国の「野獣」たちについてのあらゆる不正確な物語が、まことしやかに伝えられていたのだ。

ヘスター将軍の計画はうまくいった。赤いたてがみの脅威を誇張したことで、帝国の財布の紐が緩んだ。ヘスターが国境を守るために要求した砦の建設には、大量のゴールドが投入された。

一方その頃、フンズー・リはインペリアルを「挑発」したことで他の狩猟公たちに叱られ、困り果てていた。ヘスター将軍の報告で広められた作り話に激怒したフンズー・リは、忠実な仲間を集めて小規模な部隊を作り、ニベンを渡って憎き敵を探し求めた。噂されたような騒々しい大軍ではなく、たった一回の密かな襲撃だった。砦から歩いて1時間も離れていない場所で、フンズー・リと戦士たちはヘスター将軍に奇襲をかけた。将軍は自分が悪名を押しつけたカジートに殺されたが、フンズー・リもヘスターの兵士たちに切り伏せられた。

帝国軍は討伐すると主張した怪物がおそらく自分たちの捏造であったことは認めず、ネメニウス・ヘスターの死を英雄的な抗戦として描き出し、将軍は「赤いたてがみ」の脅威に終止符を打つために、勇敢にも命を捧げたのだと喧伝した。数年後、ニベン砦は軍団の獰猛な敵の名を取って赤いたてがみ、すなわちレッドメイン砦と改名された。皮肉なことに砦が完成する頃には、ヘスター将軍にこの地域の守りを強化させたそもそもの要因である略奪の問題が終結していた。カジート王国のアネクイナとペレタインは、すでに帝国の支配下に入っていたからだ。

それから現在に至るまで、レッドメイン砦はニベン川の峡に立ち、決して来ることのない敵を見張り続けている。

レヤウィンにて傭兵求むWork for Hire in Leyawiin

問題がブラックウッドの民を悩ませている。自分がもっとも勇敢で強く、金と栄光を山積みにするためには計り知れない危険に向き合うことも厭わない冒険者だと思うなら、軍団長会議は仕事を提供する。

詳しくは、レヤウィンの街にいるサーヴァティウス・レオントゥロンを探してほしい。

レヤウィンの解放The Liberation of Leyawiin

雷鳴と共に、サイ・サハーンは
激戦の中、レヤウィンに向かう
レオヴィックの戦士が攻め
裏切り者はサイの背後を襲う

矢が飛び交い、剣がきらめく
死の鐘が鳴る時は近い
動じぬ顔で内なる力を引き出し
彼はレヤウィンのため剣を振るう

背後の裏切り者、前方のロングハウス
両者が戦いに望むは、剣聖の死
サイ・サハーンはその運命に抗い
今や一人で、門を突破する

中に入り、サイは息を吐く
二つの軍隊と戦い、死を相手取る
剣と知恵のみを武器にして
レヤウィンの自由のため戦う

背後の裏切り者、前方のロングハウス
両者が戦いに望むは、剣聖の死
サイ・サハーンはその運命に抗い
街の解放を試みる

軍と激突しても、サイの剣は鎮まることなく
レオヴィックは逃げ、サイの使命は果たされる
彼は裏切り者の死体の山に立つ
防衛者は悪を滅ぼし
レヤウィンの民は自由となった!

レヤウィンの出港スケジュールLeyawiin Shipping Schedule

レヤウィン港出航予定 — 第二紀580年 蒔種の月 第3週

メリトリアス号 – 象牙旅団の巡回船。日耀の明け方、2週間の巡回のため出航。恵雨の月第2週帰港予定。(密航、海賊に遭遇、飛び降りる?)

フラウンダリング・フラウンダー号 – ブラクソン・エムリの漁船。央耀の朝出航。同じ週の金耀帰港予定。(退屈すぎ!)

シェル・バック号 – 黒きヒレ軍団の軍艦。月耀の正午、ギデオンへの潮流で出航。(硬き鱗の者なら一緒に航海できるはず。あの章は読み返さないと)

メリーマーメイド号 – ランジェル・ミリの商船。税関検査終了まで出航は保留。ゴールドコーストのアンヴィル行き。レッドセイルの密売人の疑いあり。(完璧!港に引き止められていてくれるなら、忍び込む時間はたっぷりある!)

レヤウィンへの旅の案内Traveler’s Guide to Leyawiin

アスティニア・イサウリクス 著 公開日:第二紀569年降霜の月1日

ニベン川の河口にまたがって位置するレヤウィンは活気溢れる港であり、産業の集積地であり、崇拝の中心地でもある。ブラックウッドの温暖な丘陵と肥沃な農地に囲まれた、この陽気な経済都市は、その居住者の多様性を誇っている。3つの異なる種族に属する民が象牙の馬の街で出会い、交流している。ここレヤウィンでは、エルスウェアの異国情緒溢れるカジートとブラック・マーシュの原始的なアルゴニアンが、帝国都市の貿易と文化に触れる。これはタムリエル中を探しても他では見られない光景である。

レヤウィンは誇り高く、厳格な顔を外の世界に見せている。高い側壁や円柱型の塔、強靭な門に守られたこの街は、要塞としても貿易の中心地としても機能している。街の大部分はニベン川の西岸に位置しており、東岸はレヤウィン城が占めている。レヤウィンで最も人目を引く要素である、ニベン川を横断する巨大な石橋と防護壁が街を接続している。毎日大量の船がシロディールやアビシアン海沿岸、あるいはモロウウィンドの港へと向かって出発し、レヤウィンの橋の下を通っていく。船は大きな門が開いて通行を許すと、一旦停止して帆をたたむ。

市の行政
レヤウィンはレヤウィン属州にあるブラックウッドの首都である。第二帝国の初期、カロ家はこの国を統治する一族として正式に認知された。ネヴェニア・カロ女伯爵はこの誇り高き血統を継ぐ者である。この優雅な女性は高官たちに余興を提供し、街の社交界を取り仕切るだけでなく、街の演劇を支える気前のいい後援者でもある。

日々の行政事務は帝国の布告によって任命された総督の役目である。総督は女伯爵と共に、この地方全体を監督する。軍団長会議は市内の活動における細かな政務処理に従事する。

大礼拝堂
壮麗なゼニタール大礼拝堂に言及することなく、レヤウィンの話は始まらない。空に突き出す鐘楼が屋根よりも高くそびえたつ様は、街のほとんどどこからでも見ることができ、初めての訪問者にとっては目印としても役立つ。この大聖堂は第一紀600年代、聖カラダスによってペリナル・ホワイトストレイクと聖戦士の戦棍を称えるために築かれた。この尊敬を集めた聖人は、死後礼拝堂地下の聖なる墓に安置された。今日でも、信心深い人は聖カラダスの墓で礼拝中に、聖戦士の戦棍の幻視を見たと報告することがある。

食事、飲み物、宿泊
レヤウィン通が高く評価するのが、ゼニタール大礼拝堂から広場の向こう側、街の中心に位置するカラダスの宿屋である。ここは歴史ある建物で、鉛枠が付いた美しい窓ガラスに、優雅な鏡板、上質のカウンターを備えている。この宿は400年以上もこの場所にあり、無数の大貴族や名のある英雄を迎えてきた。

格式にこだわらない旅人には、レヤウィンの商店街地区が予算的にお手頃だ。 多くの商人が季節ごとに変化する短期の市場で露店を開いているが、常駐の食事処としては、礼拝堂南の労働者地区にある「頬落ち大根」がお勧めだ。数多くのレヤウィンの職人や商人がここで日常的に昼食をとるため、早めに行って行列を避けたほうがいいだろう。

主な施設
レヤウィンの店や職人街、ギルドホールは主に大礼拝堂の南、街の西半分にある。

魔術師ギルドは礼拝堂広場の南に位置している。ここにはブラックウッド最大の蔵書庫があり、本棚で一杯の部屋にあらゆる種類の謎めいた書物が置かれている。ここではまた、カジートの秘術師フェイッフィが瞑想のモルフォリスの印を掲げ、奇妙かつ強力なクリスタルを売っている。

ゼニタールは言うまでもなく、鍛冶と産業の守り神である。そのため、レヤウィンの商店街地区で高品質の鍛冶屋を見つけても驚くには値しない。鍛冶屋「歌う鋼鍛冶」はトランス・ニベン地方でも最高クラスの武器と防具を作っている。

最後に、鎧と素敵な服の簡素な看板に欺かれてはならない。熟練の仕立屋たちが特別な機会や催し物のために作った驚くべき作品が誇らしく展示されており、その隣にはより実践的な、防御力の高い作品が並べられている。

興味深い事実
この街のシンボルである象牙の馬の起源は知られていない。ある伝統では、古代の英雄ペリナル・ホワイトストレイクが関係していると信じられている。別の伝統では、神話の時代にブラックウッドは神のごとき力と美しさを持つ光り輝く白馬の住む地であり、この馬が岸辺を守っていたのだと述べられている。

カジートの武将であるアネクイナの黄金の獣、ダルロック・ブレイは第一紀500年代にレヤウィンを征服した。この街は20年以上もの間、カジートの支配下にあった。

第二紀299年、最高顧問ヴェルシデュ・シャイエはレヤウィンの橋を撤去し、大型の帆船がトパル湾からニベン川へと通過できるようにせよと命じた。しかしレヤウィンの軍団長会議は商業の流れが増えても、レヤウィンに停泊せず通り過ぎるだけではないかと考え、帝国の計画を遅らせた末、ついには放棄させることに成功した。今日においても、大きすぎて橋の下を通過できない船は街の南の港に停泊し、貨物をより小さな川船へと移し替えねばならない。

親愛なる読者よ、よき旅を!象牙の馬の街への訪問をどうか楽しんでほしい。

ロヴィディカス評議員への手紙Letter to Councilor Lovidicus

ロヴィディカス評議員長

我々が共に帝国元老院へ仕えたのははるか昔のことだが、今でも君のことは同僚であり友人であると思っている。確かに私はあのウッドエルフが君に伝えた警告を無視した。あの古い秘密が未だに何らかの力と、何らかの危険をはらんでいると信じることを拒否した。間違いだった。

今日、ファルル・ルパスから手紙を受け取った(彼の死の報告が確かなら、殺される前に送ったに違いない)。そして、私は尾行されているのではないかと思っている。今朝、島の散歩中に岩の方から私を見ている人影が垣間見えたような気がしたのだ。私はその光景にひどく動揺して、ファルルの手紙を落としてしまった。洞窟に到着する直前まで、手紙を失くしたことに気づかなかった。

これはきっと20年ほど前に、モリカル皇帝から与えられた計画に関連しているに違いない。彼はある種の宝物庫のための世話係を必要としていて、私がそれを調達したのだ。契約の手配をした。費用を払った。だがそれはかなり昔の話だ。

これを書きながらも、締めなわがきつく引かれるのを感じる。これを受け取ったら、他の者に伝えてくれ。警告に耳を傾け、君の支援を受け入れるよう説得してくれ。ロングハウス帝の秘密。今回は本当に自分の死につながると考えている。

ジリッチ評議員

愛しい人へTo My Love

最後に別れた時、あなたが言ったことをずっと考えてた。そして、決断した。愛しい人、あなたを選ぶよ!真の幸せへの道があなたと共にあることを知った今では、あちこち走り回る無数のペットの影に埋もれながら、ただ彼女の側に存在するだけで満足することはできない。

苦しくはあったけど、脱出に最適な時が来るのを待つ必要があった。今手紙を書いているだけなのはそれが理由だ。君がこの手紙を受け取る頃には、リルモスにある2人のアパートで君のことを心待ちにしてるよ。そこで2人の未来の計画を立てよう。毎日希望が膨らんでいってる。

私の態度の変化に、彼女が疑いを抱きつつあるように感じる。これを書いている今も窓のほうから小さな爪がカチカチと鳴る音が聞こえるし、影の中でブラシのような尻尾を持つ、げっ歯類のビーズのような目がギラギラと輝いているのを感じるんだ。ああ、ついにこの毛皮の拷問者から逃れて、君の腕の中に行けるんだ!

愛しき者を救ってくれSave My Precious

頼む、誰でもいいがこれを見つけた人。何としても我が愛しき者を守ってくれ。なだめてくれ。このひどい場所から連れ出してくれ。

全力を尽くしたが、成し遂げられなかった。我が愛しき者をこのひどい場所に置き去りにしないでくれ。

お願いだ。

トゥーモン

愛情を込めて書かれたメモLovingly Written Note

事は起きた。

兵士たちが裁定者ガヴォスに背いたんだ!聞いたところでは、奴が大修道院の内陣に閉じこもったので、交易大臣たちが魔法で中に封じるらしい。実に皮肉だ!

彼らは俺たちに対して大きく貢献してくれた。このおかげで俺たちの子は、市民のことを市民が決められる自由な街で成長できる。武装した支配者に上から布告をされずにな。解放者の一人にちなんだ名前を子供につけるのはどうかな?ラロスか、エスディルか、クエンティンか。一番好きな交易大臣は誰だ?

義父さんのところから戻ったら話し合おう。

海賊の財宝のメッセージPirate’s Treasure Message

幸運な冒険者へ

我々のチャンスはないに等しい。ブルーワマスは数で勝ってるし、こっちは水が不足してる。私の財宝が奴らの手に落ちるのだけはお断りだ。その名誉は君に委ねよう。

レヤウィンから港を隔てた向かいに滝がある。その水源まで辿れ。

水源から90歩南に進む。

すると、かつて私がその基盤を徹底的に破壊するという栄誉に浴した古い要塞がある。

一番北東の角に立っている木の根本を掘る。

よい狩りを、友よ。何が起きても世界が決して君の名を忘れないようにするんだ。

トパル湾の恐怖、ヴォルダー

皆さんいらっしゃい!Come One, Come All!

楽しくて型破りなショーであなたの気持ちを温かくします!

圧巻のダンスをお楽しみください!

夢見の館が夢の世界にあなたをご案内します!

ファーマーズヌークの南の火までぜひお越しを!

巻き牙の機密情報Fang-Furls’ Dead Drop

クラフティングホールの商人から追加徴収しろ。忌々しい信者どもが、ずっと港での活動を邪魔しやがるから埋め合わせが必要だ。

ブラックウッドの商人どもはみんな腰抜けだ、シシスに感謝するよ。奴らが気骨の気配でも見せたら、行儀よくさせておけるかどうか怪しいものだ。

巻き牙の台帳Fang-Furls’ Business Ledger

[この後のページには犯罪者の所有物と巻き牙の活動が記載されている。それには大量の記述だけではなく、走り書きされた指示も含まれている]

引き渡し場所

今度は滅茶苦茶にするなよ。見つけるのは簡単なはずだ。

– 街の北、小山の上にある水の中
– 東に向かう。完全には橋を通り過ぎるな。隠し場所は大きな木の下だ
– フタン・ツェルの北、ちょっとした旅。丘の中腹に隠されてる

パンジェント・アダーのための大樽を回収するのも忘れるな。オリアンダーコースト・リザーブだ。積荷はレヤウィン港に置いてある。街から来るなら、一番左端だ。「絶対に」落とすな。あるいはどんな形であれ手を出すな。アダ―は気づくぞ。必ずな。

巻き牙の第二の機密情報Fang-Furls’ Second Dead Drop

我々が待っている隊商がボーダーウォッチで引き止められてるらしい。商品を入手する手段を他に見つけなければならん。港の作業員どもを絞り上げよう。家族を持ってる奴を見つければ、より簡単にいくだろう。

あのレヤウィンの奇妙な兄弟は反抗ばかりする。争いなど、ここでは全く必要ないものだ。すぐに思い知らせないと、他の奴らが同じことをやり出す。

巻き牙の第三の機密情報Fang-Furls’ Third Dead Drop

いくつか扉を壊して、何軒か荒せ。どうやら皆、我々に金を払う理由を忘れ始めてるようだ。思い出させてやれるかどうかは我々にかかっている。

教団のせいで状況が厳しくなり始めてる。仲間がどんどん捕まってる。我々はすでに力が半減していて、これ以上弱体化したらブラックウッドを支配できない。

完全な飲み物A Perfect Drink

オトゥミ・ラの日記から

私は旅を通じて、大規模な村から最も質素な農場に至るまでのあらゆる場所で、数多くの酒に出会ってきた。自分の人生と経験してきた事柄を振り返る時間ができた今、最高の飲み物を探し出すのは、晩年を過ごすための平和的な手段と思われる。戦士から醸造家への対照的な転換だ。

だが、実験ではいくつかの失敗をおかした。これらの材料のいくつかを組み合わせた醸造や試験は、ある種の予測し得ない結果に終わった。例えば、ゴールドルートワインは舌触りが良く滑らかだが、最初にこれを飲むとすぐに気分が悪くなることが分かった。その前に赤ニガヨモギを飲んでおけば別だが。どうやらこれが効果を消してくれるらしい。だが、私は先に何かしっかりしたものを胃に入れておかないと、これを飲むことができない。ひとつかみのベリーや豚の足肉とかだ。幻覚を誘発する効果を吸収するものなら何でもいい。

先日、ハチミツ酒の醸造でそれなりの成功を収めた。庭のハーブひと揃いと組み合わせて素晴らしい緑の色合いを付け加えたものだ。これはすでにたらふく食べた後の夜の締めくくりには最高だ。外に座り、マグカップを手に下の谷を見渡す… 自分が目の当たりにするとは思いもよらなかった人生だ。自分で材料を育てることが、仕事にとって大きな利益となっている。

とは言え、野生のベリーや根を求めてゆっくり歩くことにも恩恵がある。まだいくらか作業が必要だが、私のベリーエールは野生の風味から恩恵を受けている。どのバッチも見つかったものによって異なっているが、どれも必ず同じように粘度が高くシロップのような濃度だ。まるで飲むと言うよりも食べるかのように。昼間にこれを飲むと、他に何も入らなくなるので、少量の混合用になることは間違いない。私は材料を外の植物に依存しているから、それはいいことだ。

風の者たちと共にした冒険の日々が懐かしい。これに疑問の余地はない。だが、ここでの作業を通して、私は彼らと共有できる新しい何かを見つけられるだろう。比較的平和で落ち着いた残りの人生を楽しみながら。私が気に留めておかなければならないのは、ただこれらの飲み物がお互いにどう調和するかだ。また意図せず、前後不覚になってしまってはいけないから。

協力に感謝するYour Assistance Is Appreciated

我が愛しき者を傷つけようとする輩を抹殺してくれたことに心から感謝する。あの卑劣な狩人どもが消された今なら、我が愛しきものを追跡して助け出せるかもしれない。だが、荒野でとても気掛かりなものを見つけた。どうやら我が愛しき者は過剰に恐れてしまっているようだ。彼女は恐れるものから逃れようとして、ついにはオブリビオンへのポータルとしか言いようがないものを通り抜けてしまった。

私はこの奇妙な現実の裂け目がブラックウッドの荒野のあちこちに開いているのを見た。次に機会が訪れたら、そのポータルに飛び込んで、我が愛しき者の救出を試みるつもりだ。もし貴殿が私の替わりにこのメモに遭遇したなら、それは私がポータルが導いた先から戻る方法を見つけられていないということだ。

その場合は、どうか私の後に続いてくれ。私のためではなく、我が愛しきもののために。

トゥーモン

鏡とカラスOn Mirrors and Crows

レヤウィンから運び出せる古い鏡は全部集めた。こんなに沢山の反射面が本当に必要なのか?それと、あの鳥たちは本当に喋るのか?と言うか本当に鳥なのか?あの鏡が彼らを忙しくさせて、静かにさせてくれることを期待するよ。あれがなければあいつらは絶対に黙らない。

何故あの獣たちが我々の計画にとって重要なのか理解に苦しむ。だけど、君の言うとおり、彼らがエバーグロームに通じる扉を開けるための鍵となるなら、割れたガラスを磨いたりかき集めたりするのも、やる価値がある仕事なんだろう。

銀のチャイムChimes of Silver

ナカ・デシュ族の歌う代弁者、ギーム・シャー 著

多くの肌の乾いた者たちが私たちにコスリンギ殺害の罪を着せる。彼らは顔をゆがませ、「人殺し」「陰謀」「妖術」といった乾いた言葉を私たちに浴びせかける。長い季節が過ぎ去った今でさえ、人々はサクスリールが呪文でナハテン風邪を呼び起こしたと信じている。彼らがその目から憎しみを引きはがし、私が子供だった頃に目を向けてくれればいいのだが。その当時、根の民と銀の肌の部族は共に手を取り合って歩んでいた。泥、良き食料、そして陽気な踊りで結ばれていたのだ。

私には銀の肌の者たちの思い出が沢山ある。定命の目を閉じると、今でもかまどから出したてのクーサのヒール・スネイルケバブの匂いを嗅ぐことができる。ダシルの腰でぶつかり合って音を立てる、錫のチャイムの歌が聞こえる。ハドゥクの根の泡が喉を滑り降り、腹を温めるのが感じられる。だが、何よりもよく思い出すのが音楽だ。キラキラと輝く終わりのない曲の数々。何よりもあれらの曲を懐かしく思う。

私たちサクスリールには、単純なものからあまり単純とは言えないものまで数多くの楽器がある。だがコスリンギはさらに多くの楽器を使っていた。実際、卵の姉妹と私はコスリンギの手にかかればどんなものでも楽器になってしまうことについて冗談を言い合っていたほどだ。彼らの木のカッターは空洞のある丸太をワマス大の太鼓に変える。彼らはクリフストライダーから腱を抜いて、低い音でブンブン音を立てる弓状のハープを作る。だが、彼らが最も愛した楽器はチャイムだ。

根の民とは異なり、コスリンギは金属に対して嫌悪感を抱いていなかった。彼らが服を着ることはほとんどなかったが、細くより合わせた縄に付けた金属片を身に着け、歩くたびにカチャカチャと音を鳴らしていた。コスリンギの金属使いであるビーラーは、よく錫と銅の塊を大きな炉に流し入れて熱し、その後取り出してあるべき形になるまで、石の槌を使ってねじり、成形していた。金属の棒が冷めたら木の大枝に吊るし、曲を見定めるためにそれぞれの棒を調子よく叩く。ビーラーは金属が出すあらゆる音を意のままにしようとして、このチャイムを何百も作った。

ヌシュミーコのある暖かい晩、彼は饗宴のために部族を村に呼び集めた。彼らがなぜ饗宴をしたのかは分からないが、私たちは気にしなかった。饗宴の終わりが近づくと、見事なイトスギの木の周りに集まって彼の家族が演奏するチャイムを聴いた。8人のコスリンギ、彼の妻、叔父、5人の息子がまるで足元のしっかりしたツリーフロッグのように根元から飛び上がり、演奏用のバチでチャイムを叩いた。チャイムから生じる音は、まるで穏やかな雷鳴の子供のように響いた。私たちは心が松明のように明るく燃えるのを感じ、銀の肌の者の多くが喜びの涙を流した。

私たちがコスリンギを殺したと肌の乾いた人々が言うのを聞くと、私はあのヌシュミーコでの晩のことを考える。私が子供の頃に見聞きしたもののことを聞いたら、あれほど美しいものを破壊するヒストの子など誰もいないということが彼らにも分かるだろう。

苦々しい奴らに甘味をSweets for Sour Company

(カジートの侮辱の歌)

歩き手よ、お前がさまよう場所が
遠く毛皮のない場所ならば
少しシュガーを取っておけ
先には苦みがたっぷりだ

シロディールではご用心
奴らがやるのは挑発ばかり!
鈍さにかけちゃ帝国一
ブラック・マーシュの沼を入れても!

モロウウィンドには何がある?
にやにや顔の虫食いの陰口だ!
ダークエルフにむかついたなら
シュガーが吐き気を止める!

スカイリムの雪の小山に、温かみなんてない
炉端も機知もぼんやりだ
ノルドの傲慢さより分厚いのは
頭蓋骨と花嫁を結ぶ紐だけ!

毛のない奴らに追い詰められたら
臭いのきついつるつる肌?がぶりといこう!
杯に甘味をひとつまみ
尾のねじれた爪なしども?もうひと口!
ナメクジ舌の疥癬舐め?そんな奴らはひと飲みだ!
スイートロールに手を出すな、北の豚め!

汗が染みてるハンマーフェルの砂漠?
友よ、嗅いだことない悪臭だ
芳香を放つレッドガードの文化に興味を持つ者など
輪を描いて飛ぶハゲワシの群れだけ!

ヴァレンウッドの木で爪を研ぐな
立ってる場所から小さな雑草が生え出す
爪に噛みつき、噛みしめ、裂くために
むき出しの足首が擦り切れるまで

ハイロックの断崖に挑むべき?
ブレトンのわめき声が好きなら
あそこにあるのは雨と霧だけ
それと濡れた犬のしつこい臭い

毛のない奴らに追い詰められたら
へこんだ鼻の平たい歯?おかわりといこう!
杯に甘味をひとつまみ
無作法なかぎ足?ゴクリと飲み込め!
よだれ垂らしの雑種?今こそ一気飲み!
尻嗅ぎの尻好き?ジョッキを空けろ!

サマーセットの象牙の浜辺?
ハイエルフが悔やむしょっぱい涙に身を浸せ
とても高貴な自然は楽しめない
聞こえるのは鼻声のすすり泣きだけ

ブラック・マーシュで語るべきこと?
いささか手厳しい野生動物?
ぐちゃぐちゃのぬかるみ?
それとも最高の収穫がウジだってこと?

毛のない奴らに追い詰められたら
衰えゆく杖吸い?ワインを取り出せ!
杯に甘味をひとつまみ
無骨なのろま?そいつはいただきだ!
毛づくろいの行き届かぬムスカルセ、こすってやる!
バーンダリの慈悲よ、風呂桶はどこだ?
ジスヴォー!

愚かなる翼Foolish Wings

囁く影のロミエン・ガルヴェッタ 著

パタパタと舞う、愚かな羽の大群。奴らは自分たちを、高貴で狡猾で賢いと思っている。

だが奴らは空っぽだ。小さく、お喋りなあの方の模造品。あの方の優雅の切れ端でしかない。影ではなく、ハエのように群がるだけ。愚かな獣。均衡を欠いていて、賢くない。不愉快で、爪で引っかき、羽をばたつかせる。奴らはコウモリと戦う。棒切れと葉の戦いだ。

奴らはなぜあの方の意志にあれほど近い?うるさい音を立ててばかり。追い出されたのも当然だ。追放された。奴らの力は無駄になった。無駄、無駄だ。利用できたはずのものが無駄になった。奴らはお喋りしてばかり。叫び声だ。爪をちっぽけな愚かしい財宝に引っ掛ける。キラキラした、錆びついた輝き。

何と奇妙な獣だ。馬鹿どもめ。奴らには何も与える価値がない。奴らは無価値だ。私は奴らを恐れない。あいつらはあの方の囁き声。割れ目から漏れた囁き声が、ゴミを漁り、貪っているのだ。奴らのにやついた目に恐怖はない。ただ黒いだけ。光り輝く黒。

あのような模造品の気を逸らすのは簡単だ。利己的で、愚かな奴らめ。剣ではなく羽根の騎士たち。なまくらなクチバシどもめ。鈍った爪め。奴らはあの方のオブリビオンの絵をすぐ近くで運んでいる。我々をあの高みまで登る手助けをしてくれれば。だが奴らは笑うだけ、ただ笑うだけ。ケラケラと政治工作をしている。

内部で大量の力が失われた。あの方は、あれを我々に入手させたくないのだろうか?

軍団長の議事録:ゴブリンに関してLegate Minutes: Concerning Goblins

地元のゴブリンに関する探鉱者ヴィヌス・ドニチクスの苦情。第二紀581年 降霜の月26日、タシタ・マエニウスによる記録

ここに来るのはこれが3度目だ。自分の土地を離れるのは好きじゃない。俺はこの八大神に見捨てられた街と、その洒落のめしたコウノトリみたいな曲がった足の街の住民どもが大っ嫌いなんだ。だがブラックウッドの状況は日増しに厳しくなってる。俺たちは剣と盾でやるべきことをツルハシと鋤でやってる。もういい加減嫌気が差してんだ。

俺が言ってんのはゴブリンのことだ。あんたらが肉と上等なワインで腹をいっぱいにしてベッドでスヤスヤとお休みになってる間に、こっちは納屋や鉱山の中で眠っちまわないように自分の顔をひっぱたいてんだ。自分の財産を守るために必死でな。ああ、あんたらにとってはあんなちっぽけな緑の奴らなんて単に邪魔くさいだけだろうよ。犬にたかる刺す虫みたいなもんだ。だが俺らのような壁の外側に住む、素朴な者にとってはどうだ?こっちはクソみてえな戦争を戦ってる。それも絶対に勝ち目がないって分かってる戦争でな!

例えば先週、月耀の夜のことだ。俺は友達のシルスと火を囲んで座り、鹿の尻肉を焼きながら翌日の仕事の計画を立ててた。すると突然藪の中からカサカサという音が聞こえてきた。狐とかアナグマが立てるような音じゃなかった。何かもっと大きいものが骨や腐った革の中でざわめいてた。俺が皮はぎ用のナイフを抜くと、シラスはツルハシを手に取った。俺たちは恐ろしく長い間、猫のように静かに立っていた。その後、奴らが突然飛び出してきた。あのひどく猫背な野郎どもが6、7人、シューシューとかキーキーとか音を立てながら錆びた剣を振り回しやがった。シルスは危うくズボンを汚すところだった。ツルハシを落として、あわてて鉱山に逃げていったよ。俺はというと、蹴とばし、唾を吐き、突破する途中で奴らの1人を突き刺して、森に向かって駆けだした。3人ほどが激怒して、歯をカチカチ鳴らせて、イカれちまったかのように口からつばを飛ばして奴らの汚らしい言語で何かを言いながら追いかけてきた。命からがらランプが灯った友達の家の玄関にたどり着いたよ。シルスはどうしたかって?今も彼の破片が岩の下や古い立て抗の下から見つかってる。

これは俺が経験した話にすぎない。それも一番最近にだ。2週間前にはアスティア・ブルソがゴブリンに見事な牝牛を盗まれた。2日後、まるでマスみたいにはらわたを抜かれて他の牛が水を飲む川を汚している牝牛が見つかった。その1週間前には、異母姉妹のヴァラが追っかけられて屋根の上に逃げた。ヴァラが煙突の背後によじ登って身を隠してる間、1時間かそこら矢を浴びせ続けた。ヴァラが言うには、奴らはその間ずっと笑ってたらしい。

いいか、俺は何も軍隊を送れって言ってんじゃない。ディベラの胸にかけて、兵士の一団すら望んじゃいない。望んでいて必要なのは、オブリビオンの恐怖をあのちっぽけな野郎どもに植え付けてやれる、肝っ玉のすわった数人の戦士だ。1人か2人、見せしめにしてやるんだ。みんなの土地の周囲にゴブリンの頭を突き刺した槍を設置する。北での馬鹿げた赤、青、黄の騒ぎが起きる前、俺たちはそこそこの民兵を持ってたんだ。今、ここにあるのは何だ?あんたらには指ぬきを満たせる程度の根性しかないじゃないか!腰を上げて何かしろよ!

軍団長会議についてOn the Chamber of Legates

カロ女伯爵の統治下にあるテベザ・コ軍団長による考察

軍団長方式は都合よく機能している。他の君主国には当てはまらないのかもしれないが、レヤウィンで法の制定や街の日常生活の監視は、帝国時代から街の支配者が事前に目を通すものではなかった。帝国が消え元老院が解体された今、この仕事はそれを果たすために最近作られた、軍団長会議が担うことになった。歴史的に見ると街の支配者と運営機関を切り離すことで、君主たちは街の運営を気にすることも放棄することもなく、政治ゲームに興じていたのだ。

軍団長会議は街と周囲の管区の運営に関する、行政的な機能全体の支配権を有している。例えば、港湾での事業には免許証、認可、目録、必要な品すべてが確実に正しい場所や船、業者に運ばれるようにするための輸送機関が必要だ。これらの職務を完遂させるため、我々は登録簿に商船とその航路の詳細を記録し、いつ積荷の準備ができるのか計算できるようにしている。日中はずっと、時には夜間にも十分な訓練を受け情報に通じた港長を配置し、各船を出迎えて正しい指示を与えられるようにしている。道は安全かつ確実に品物が運搬できるよう整えられ、廃棄物などがない状態が保たれなければならない。

それを達成するために、我々軍団長が港長を監督する。港を建造し、維持するための木材の入手。新しい商船からの積荷の予定。港長のそれほど大きくはない権限下で信任された船長たち。レヤウィン、特に市場周辺の街道や通りを整備するための人員の雇用。例えば飼い慣らされていない動物や医療目的の範囲を越えた使い方をするスパイスやハーブといった、特定の外来品を除くあらゆる品やサービスに対する販売許可。そういったものを。

レヤウィンに影響を与える事業について話し合うため、軍団長会議は必要であれば毎日顔を合わせる。時には一般市民に会議への出席を許可することもある。そうすることで一般市民、特に商人階級は市民生活の中で軍団長会議が目を向けねばならないと信じている、あらゆる領域に対して関心を寄せるよう求めることができる。軍団長会議側も政策がどのように機能しているか、また欠陥への対処の必要性、手法の変更の必要性について直接意見を聞くことができる。だが何よりも、一般公開された会議の存在により、我々は街から信頼された誘導者となれるのだ。現在の我々の評価は上々である故、市民たちは臆すことなく苦情を告げるだろう。彼らは強く懸念している問題に我々が耳を傾け、いずれ命や生活手段に脅威を与えることなく対処することを知って安心する。

この管理体制は帝国崩壊後に軍団長会議が設立されて以来使用され、改良され続けている。この体制は完璧ではない。まだ政治的野心、階級格差、偏見、あらゆる統治体制に内在するその他多くの欠陥に満ちている。だが、軍団長会議による代議体制、そして玉座に座る我々の意見を進んで取り入れる女伯爵によって欠陥を回避し、先頭に立ってレヤウィンの利益を維持し、街の事業を前進させられると承知している。

賢者ロヴィリセルのメモNotes of Lovirithel the Sage

第二紀575年、収穫の月6日
これはいけるかもしれない!何週間もレヤウィン城の散らばったコレクションを研究した成果が出たようだ。推論通り、アレッシア帝国の初期に建設された聖堂の施設がブラックウッド沿岸の荒れ地にあった。遺跡が埋まっていたのはブラックウッド南東にある、これといって特徴のない島だった。古代の聖堂に続く、原始的に掘られたトンネルには最近様々な集団が使用した形跡があった。おそらく密売人か盗賊だろう。しかし、幸運なことに現在は地下の部屋をそのような犯罪者が使用してはいないようだ。明日から探索を始めよう。

第二紀575年、収穫の月8日
隠された聖堂の上層にはほとんど何も残っていなかったが、風雨に耐えた建築と彫刻を慎重に調査した結果、多くのことがわかった。羊皮紙と木炭で拓本を取らなければ判別できない色褪せたシンボルは、古い秘密を示している。「下」を象徴するシンボルが「怒り」「憤怒」と組み合わされている。これは、明らかにこの場所の現在の名前、 「深い嘲笑」を示している。

また、他にも面白いヒントがあった。「闇で待つ者」「破壊者」「貪る者」。原始の神シシスの呼び名だ。この場所は明らかに古代ニベンで、シシス崇拝の中心だったようだ。とても興味深いことは言うまでもない。この地域でシシス崇拝は一般的に見られるが、信者はたいていがアルゴニアンであって、獣からより遠い種族の間ではあまり多くない。深い嘲笑の洞穴は、混沌の力を崇めるアイレイドを模した秘密結社の隠れ家だったのだろうか?さらに研究する必要がある。

第二紀575年、収穫の月14日
大きな発見だ!見つけたオベリスクの部屋には崩れた壁に隠された通路があり、聖堂の奥へとつながっていた。助手に壁を外して洞穴と部屋へ向かえるよう指示した。明日の探索が楽しみだ。ただし、通路には奇妙な冷気が漂っている。石が侵入を感知していると感じられるほどだ。

第二紀575年、収穫の月17日
新しい洞窟の広がりはただただ素晴らしい。以前は探索できなかった場所の先には、曲がりくねった通路と広大な部屋が広がっている。ほとんどは未完のように見えるが、二つの大広間が広がっている。最初に名付けたのはシシスの間だ。二つ目は嘲笑の神殿と名付けた。中には色褪せた印があったところだ。冷たく、何かに見られているような沈黙が中に入る者の背筋を凍らせる。もちろん、地下の空気の興味深い特質にすぎない。

助手たちが神経質になっている。新しく見つかった部屋で、何らかの力が動き始めたように感じられると考えているのだ。エリエンドロは下の階を塞いでいた壁を建て直すように言って来た。もちろん、彼の根拠のない恐怖に屈するつもりはない。学問とは臆病者に向かない仕事だ!

第二紀575年、収穫の月20日
愚かしい!エリエンドロが姿を消した。ヤイルセスは嘲笑の神殿の闇に連れ去られたと主張しているが、もちろん馬鹿げている。愚かな恐怖に屈して、ここの仕事を放棄したのだろう。おそらくレヤウィンの酒場で安ワインでも飲みながら、故郷へ帰る計画を立てているはずだ。残念なことに、ヤイルセスはより下の階の部屋へ足を踏み入れることを拒否した。私は神殿の探索を一人で続けるので、ここに残るよう彼女に伝えた。

愚かな子供だ。

幻の発見が待っている!Phantasmal Discovery Awaits!

アルケイン考古学調査隊が、スリル溢れる実験のために勇敢な冒険者を求めています!

できれば重量のある魔法の器具を運ぶ能力を有する方。幽霊、亡霊、その他のアンデッドに対峙した際、勇敢でいられることは必須です。

詳しくはヴェヨンドの遺跡にいるリヴス・デムネヴァンニへお尋ねください。

幸福なアヴェルノ輸送会社の看板Happy Averno Shipping Company Sign

幸福なアヴェルノ輸送会社
仮本社

イウリウスとシピオン・アヴェルノ
経営者

勧誘お断り

魂の台帳Ledger of Souls

目覚めの炎の教団の諸君

私はアイディール・マスターのために3つの新たな魂を獲得した。だがもう私の黒魂石は全て満たしてしまった。アイディール・マスターとの関係を向上させたいなら、もっと石を見つける必要があるだろう。

台帳への記録用として、獲得した魂を以下に記す:

– 修練者クララ・アスティエ
– 修練者アリエール・エフィーン
– 修練者エドガルド・ゲイン

今も修練者の腐敗の噂はギデオンを流れている。私が獲得した魂については、すでに人生に不満があったという噂を街中に流し、ディベラの聖堂の金庫からコインを取り除いておいた。単純な偽装だが、無知な街の住人は簡単に信じるだろう。

収穫は続く。約束しよう。

目覚めの炎のために!

災いよ去りたまえMay Disaster Turn Away

大地が揺れて、空震え
森に炎が灯りだす
闇が落ちて、混沌が広がり
裏切りがはびこる

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

遠くの雲から嵐来る
火は燃え盛り、死者は積み上がる
忍び寄る黒、迫る不和
オブリビオンの門開く時
剣のごとく、裏切りが光る

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

破壊の主よ、災いの公よ
我らの民に手を出すな
流血の神よ、裏切りの王よ
不幸はどこかへ持ち去っていけ

災いよ、我らのもとを去りたまえ
地震など、隣の奴らにくれてやる
死も破壊も、我らの脇を通り過ぎ
火や水は、他人の家に行くがいい

作家助手求むAuthor’s Assistant Wanted!

作家が地域の歴史調査のため、筋肉質で活力あふれる助手を求めています。

応募者は進んで沼地や取りつかれている(可能性がある)遺跡を歩いていただける方に限ります。比類なき武術の技能とデイドラに動じない姿勢は必須です。できれば前向きな考え方や明るい気質をお持ちの方。

この高報酬のチャンスをお見逃しなく!

全てギデオンの宿屋〈卵とハンマー〉にいる、センチネルのイサラにお問い合わせください。

死霊術師の日記Necromancer’s Diary

影の鎌が手に入れば、目的を達成するのも時間の問題だ。今までずっと進めて来た計画が実を結ぶ。あのブレトンどもがこの刃を鍛造した時は、何を成し遂げられるのか想像もできなかっただろう。生きた者をその影から切り離す能力を持った刃。それがどんな力を秘めているか気づくには類まれなる才能が必要だったのだろう。この刃は単なる玩具ではない。影を切り離されると、人は自分自身との接点を失い始める。その不運な者が紛れもない奴隷となるまで、生命の基本的な事実を超えた思考が消滅していくのだ。これが私がよく知る魔法だ。

もちろん、他にも同じことに気づいた者はいるだろう。そうでなければ、この鎌が贈り物に見せかけてノクターナルの祠に隠されていた理由がないではないか?これだけ重要な遺物がただ祠に置かれ、故意に忘れ去られることなどない。影の女王自身は、今となっては何とも愚かしい呼称だが、疑いなく鎌がただの道具だと信じている。だが今に分かるだろう。他の皆と同じように。

当然だが、完璧な計画でもなかなかうまくは行かない。影の鎌を回収するために雇った馬鹿どもは無能さのあまりあやうく私の計画を台無しにするところだった。子供時代の友人に見つかるとは。本当に愚か者の無謀さには限度というものがない。それでも、仕事は半ば適切に行ったのだから、報酬は与えるべきだろう。彼らの行動を逐一制御できるようになれば、このような失敗を繰り返すこともなくなる。もちろん、彼らを使わなくても構わない。利用価値が尽きたらすぐに縁を切ることもできる。

鎌の力を完成させるための儀式の前に、持って来てもらわねばならない品物はあと少しだ。鎌の力が頂点に達すれば、それを使って如何なる強情な精神も私の目的とする方向へ変えられるようになる。それに新たな奴隷の精神が傷つけられたとしても、いつでも魔法を使って支配できるように修復できる。しもべの寿命と生命力は留まるところを知らぬ。

私の時代はもう目の前だ。人を率いる指導者たちも今は拒絶しているかもしれないが、私が如何なる才能を持つか知った時には、恐怖におののくだろう。

招待状の添え状Invitation Cover Letter

最も優れた、選ばれし者の教団における仲間と過ごす特別な催しにあなたをご招待します。恵み深いヴァンダシア評議員が、かつて誰も目にしたことのない、歴史を変える公演を開きます。評議員は祝宴であなたと同席することを望んでいます。

移動と宿泊に関する詳細と共に、特別なコインを同封しました。行事は数日間行われますので、正装と教団のローブを含めた着替えをご持参ください。また、コインもお持ちください。会場まで確実に移動するために必要となります。

炎が揺らがず、洪水が収まらぬことを

商人王たちの積み上げられた文書Merchant Lords’ Compiled Documents

ラロスの焼け焦げた日記:

ガヴォスは終わった。

予想どおり、奴のしみったれた兵士たちは買収できた。クエンティンとエスディルにとって、説得して同意させる負担は大したものではなかった。我々は彼らを買っても釣りがくるほどの金を持っているからな。

奴が大切にしている金床と共に閉じ込められた今、絶え間なく挟まれる「公正さとは」という言葉を聞くことなく、本物の利潤の獲得に戻れる。奴に何が分かる?この市場の繁栄の理由は我々で、奴の説教や小物のおかげではない。

今日、新しく指名された裁定者が来た。彼は努めてさりげなく一週間分の取り分の増額を示唆し、「夕日の下」での休暇の計画のための金が足りないことを匂わせてきた。言葉の選び方がかなりわざとらしいような気がした。私の秘密の隠れ家を知っているのか?思っていたよりも不注意だっただろうか?

いずれにせよ、我々は今のところ、さらに気前よく心付けを渡せるの余裕がある。だが、奴が私の事情についてあまりにも知り過ぎた場合は、交代させる必要があるかもしれない。

* * *
クエンティンの秘密の往復書簡

友へ

間もなく金床を手に入れてやろう。既にガヴォス・ドゥーアに盗まれていると誰もが信じているものである故、惜しむ者などおるまい。必要なのは、同僚の大臣二人から助力を得るための根回しだけだ。最近の彼らは少々扱いづらいが、君が提供してくれた護衛のミノタウロスを紹介すれば、ずっと乗り気になるのは間違いない。

とは言え、少しの遅れも出してはならない。彼らが何かに勘づいたら、金床を確保できなくなるかもしれない。だから可能な限り早く、ゼニタールの大修道院に向かってくれ。

到着したら、鍛造用の火の背後で落ち合おう。私は我々が必要とするものを全て手にしているはずだ。

* * *

エスディルの古い日記

ラロスとクエンティンは私のことをガヴォスと同じぐらい愚かだと思っている。

奴らの企みは分かっている。彼を消し、在庫を拡張させる気だ。禁制の魔法の遺物に攻撃的な異国の獣。奴らはあの貪欲な手がつかめる、ありとあらゆるものを取引するだろう。

まあ、奴らにしてやられたなどと言わせるつもりはない!間もなくスクゥーマの積み荷が到着する。確実に大修道院全体で、それを売るのは私だけにするつもりだ。小物や野生のペットなどはすぐに飽きられるだろうが、スクゥーマの需要は常にある。

クエンティンは資金を用意した買い手がいるから、金床を回収して売るべきだと言っている。それが本当に労力を費やすに値する話なら、おそらく自ら行動を起こすだろう。念のため、私の印を移動させた。にぎやかな通りのはるか上にある、私が一番うまい酒を飲める場所にな。

沼の巨人についての研究On Marsh Giants: A Study

グウィリム大学、植物研究の副学部長ファネミル 著

数多くの同僚が、森のスプリガンの研究に生涯を捧げてきた。彼らの発見は森の霊魂を理解するための堅固な基礎を与えてくれているが、スプリガンの驚くべき親戚である沼の巨人に関する奨学金は、未だに乏しいのが現状である。巨人たちの生息地へのシロディール難民による侵略は、残念ながらここ数ヶ月で多くの死者を出している。この点だけを考えても、この謎多き森の巨人たちについて、詳しく知るため努力すべき理由となるだろう。

まず、沼の巨人が実際には伝統的な意味での巨人でないことを繰り返しておいたほうがいいだろう。体のサイズと牧畜を営む性質を除けば、沼の巨人はスカイリムの巨人と何の共通点も持たない。彼らは森の霊魂であり、古き自然の守り手の顕現である。この存在、あるいは力の正確な性質については神学の教授たちに任せるとして、重要なのは沼の巨人がスプリガンと同じく、野生の空間を保全する意思を持っているらしいことである。

沼の巨人の知的能力は議論の的になり続けている。多くの学者はスプリガンに初歩的な知能があることを認めているが、沼の巨人との接触機会は限られているため、彼らの認知能力を判断するのは困難である。現時点では、我々の知識の大半がアルゴニアンの民間伝承や伝統から来ている。ギデオンの学者によれば、原始的なアルゴニアンの大半はこの生物に近寄ろうとはしない。どうやら、ヒストはこの森の巨人との間に長く白熱した歴史を持っており、ヒストはアルゴニアンたちに(仲介者を通して)できる限り巨人を避けるよう求めているらしい。

その反対に、多くのルキウル(文明化されたアルゴニアン)は、沼の巨人に敬意を払っていることを私は知った。この生物の幅広く節くれだった足は大地をよく耕し、彼らの通り道にはしばしば、乾いた小枝や果物、その他の有用なものが吹き飛ばされて落ちており、ルキウルはそれを熱心に拾い集める。

私が最も興味深いと考えるのは、沼の巨人がブラックウッドの自然の営みとリズムに果たしている役割である。私の調査によれば、この生物は自然という布地に欠かせない継当てである。大地を単に耕すだけでなく、沼の巨人は枯れ木を倒して若い植物のための隙間を作り、貴重な苔の繁殖を助け、繁殖力の強い菌類の発達を抑え、野生の猫やその他の捕食者を近づけないようにして鳥類の多様性を促進している。そしておそらく最も重要なのは、巨人は木こりや鉱員、商人などが荒らされぬ沼を傷つけることを防いでいる点だろう。

私はこの森の巨人と共存する方法を見つけられると心から信じているが、そのためには労働者と地域の指導者の双方に忍耐と柔軟性が必要になるだろう。この生物と必要もなく戦うことのないよう願いたい。沼も森も彼らの存在に依存しているのだから。

象牙旅団についてOn the Ivory Brigade

評議員長にして軍団長会議参加者、タルニアン・ロヴィディカス 著

国政の研究から学ぶべき永遠の教訓のうち、「平和を望む者は戦争に備えよ」ほど変わりなく有効なものはないだろう。近隣諸国との競争に没頭し、問題を力で解決する誘惑に屈することには危険が伴う。力を示すことで敵を思いとどまらせる方が遥かによい。思い留まらせることに失敗した場合は、最悪の事態に備えている指導者の方が、この義務を怠った指導者よりも遥かによく領地を守るだろう。

残念なことに、レヤウィンは今この古い問題に悩まされている。我々はもはやシロディール軍の保護を期待できない。帝国の崩壊により、我々は潜在的な敵対者に取り囲まれた独立都市国家となった。三旗戦争で中立を維持することはもう何度も繰り返し宣言してきたが、同盟のどれかが二つの危険な事実に気づくのも時間の問題ではないだろうか。ブラックウッドは裕福かつ無傷であり、さらにニベン川の河口に位置するレヤウィンには、測り知れない戦略的価値があることをだ。レヤウィンを支配する者はタムリエルのどの港からも、直接帝都に艦隊を派遣できる。大胆な一撃さえあれば、ルビーの玉座の争奪戦を決することができるのだ。ジョルン、エメリック、アイレンの誰一人として中立の侵害を望まなかったとしても、果たして彼らの競争者たちも同じ気持ちであると賭けるだろうか?他の者の手に渡さないためだけに、彼らの誰かがレヤウィンを掌握しようとしてもおかしくない。

こうした事実を考慮すると、三旗戦争がブラックウッドにまで飛び火するのを防ぐ道は一つしかない。レヤウィンも自らの強力な軍隊を育てることだ。今すぐに。

これは破滅的に金のかかる提案に見えるかもしれないが、私もよく考えた。同盟の集中攻撃を真っ向から打ち破れるほどの勢力は必要ないと考えている。必要なのは適度の防衛力を示し、どの同盟もレヤウィンを確保しようとすれば損害を受け、競争者との戦いに致命的な不利を被ると分からせることである。そのために完全な軍団を展開する必要はない。訓練を受け武装を整えた、強力な旅団が1つあれば短期的には十分なはずだ。

元帝国軍所属のライアン・リオレ隊長は、レヤウィンの紋章にあしらわれている白い馬にちなんだ象牙旅団という名称を提案してくれた。私は次の軍団長会議にこれを持ち込むつもりだ。名称について議論するのは無駄だと思うかもしれないが、名前には心を奮い立たせ、動機を与え、単なる概念を現実に変える力がある。

当然ながら世界最高の名前をつけても、それを担う兵がいなければ無意味だ。そこで帝国の騒乱が我々の有利に働く。ブラックウッドに滞在中の多くの帝国軍団兵はもう数ヶ月の間、シロディールから給金も命令も受けていない。彼らの部隊は、もう実質的に解体しているのだ。我々はこうした遭難状態の軍団兵を積極的に雇用し、繰り越し分の給金を支払い、この地域の守護者としての彼らの役割を認めることで、我々の大義に役立ってもらうべきだ。数百人もの経験豊富な帝国軍団兵がいれば、レヤウィンに必要な戦力を築く素晴らしい土台ができるだろう。

インペリアルの熟練兵から成るこの盤石な中核を礎として、跡は故郷を守るために戦う力と意思のあるブラックウッド出身者で民兵を組織すればいい。民兵は経験豊富な仲間から軍の規律や帝国式の戦闘技術を学べるだろう。また私の考えが正しければ、地域の民兵は熟練兵たちにブラックウッドの地理や人間、気候条件などについての貴重な知識を教えられるはずだ。
今は危険な時代である。しかし正しい指導と軍団長たちの支持があれば、我らが象牙旅団はきっと試練に耐え抜くことができると信じている。

身代金のメモAdder’s Ransom Note

お前たちは重要な判断を誤った。

我々が来た時にお前がいなかったのは、単に運がよかっただけだ。

アヴェルノ兄弟は預かった。殺すつもりだ。

彼らを助けたいなら、ギデオンの地下の騒動の輪に来い。一対一で話をつけよう。

パンジェント・アダー

水避けの巣の建設The Making of Wading-Nests

ブラック・マーシュにおいて様々なアルゴニアン部族に招かれた個人的な経験に基づく、ラニャールネ・アビティウスの文化概説。

水避けの巣と呼ばれる形式の家屋は部族の土地のあちこちで見られるが、新しい巣の建設は通常、共同体の活動として実施される。水避けの巣の実際の建設手順は簡単なものだ。大きな木の杭を蔓やロープで束ね、縦にして地面に突き立てる。その部族が居住する土地によってはまず地面に穴を掘り、杭をしっかりと固定してより大きな重さを支えられるようにするが、洪水が少なく、地面が硬い地域でこの工程はあまり一般的でない。

木の杭が立ったら、それが水避けの巣の土台となる。床は杭にまたがるように建設され、その上に住居の残りの部分が築かれる。部族によっては巣の床を支柱となる脚の面積へ正確に合わせて作るが、それよりも広く床を作る部族も一部存在する。これは虫が木の土台を昇って、家の中に入るのを防ぐためである。

個人でも数日かければできそうなこの仕事は通常、部族全体の共同作業として行われる。私がその理由を尋ねると、返ってきた答えはいくつかのテーマに分かれていた。最も一般的なのは、水避けの巣が落ちるか洪水で流されれば、被害を受けた巣全てが再建されなければならないから、というものだ。個人が自分の力で家を作ることはできるが、複数の巣が必要な場合はより計画的に行わなければならない。私の質問に対する他の答えは、楽しみと関係していた。どうやら、部族はこのような計画を必要な仕事としてのみならず、娯楽としても等しく重視しているようだ。

おそらくもう一つ答えがあるのではないかと思う。大きなグループは、建物が脆弱な部分を発見して修正するのが容易だからだ。大工仕事や森林管理についての知識は個人で異なる。共同体全体をこのプロセスに包摂すれば、重要な過程を見逃さずに済む。またこれは、知識が部族の若いメンバーにも受け継がれることを保証する。私は多くの若いアルゴニアンが、水避けの巣の作り方を卵の母親や部族の長老から教わっているのを見た。この点からすると、水避けの巣の建設を部族の仕事として扱うことには、いくつもの目的があると言えるだろう。

聖コエリシアの饗宴 第一巻The Feast of Saint Coellicia I

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

序章

親愛なる読者よ、まずは歓迎の一言を述べたい。あなたをこの書へと導いたのが単なる好奇心か、それとも食の文学への燃え盛る渇望かは測りかねるが、いずれにせよここに来たからには、ぜひともこの第二紀中期において最も有名なニベン流域南東の料理書に数えられる、本書の成り立ちに関する説明を加えておきたい。というのも、聖コエリシアの饗宴はこの時代、この地域における料理本の中で25位以内に入る有名な文書であることは確実であり、14位以内に入るかもしれないからだ。

帝国の中心地よりも外側の出身である読者や、八大神の光を信仰していない人々のため、案内を試みたい。以下に続く書はレマン二世の後継者にして、帝国行政の大部分を最高顧問に委ねた放蕩者とこの時代の学者の大部分に評されるブラゾラス・ドール皇帝の統治時代に行われた、豪勢な宴会を詳細に記したものである。職務の重圧から解放されたブラゾラス皇帝は、飽食や無為、遊興を比類のないレベルにまで進歩させ、それはロングハウス皇帝の時代が来るまで続いた。

この本が記録しているのは、アレッシアの奴隷蜂起におけるやや知名度の低い殉教者、聖コエリシアを称えるために行われた、ブラゾラス皇帝の饗宴である。聖コエリシアは通常、収穫の月の終わり頃の数日間に断食によって称えられるが、これは彼女が拷問の末に餓死したことによる。ブラゾラス皇帝は臣下の敬意を再び得るため、断食を饗宴に変えたのである。皇帝は自ら率先してこれを実行し、無数の料理人や宮廷人、美食家たちは皇帝が秋を過ごすレヤウィンの地に集まり、饗宴を開いた。

そこで起きたのは12時間をかけて40皿を食べるマラソンだった。5皿のコースが8回に分けて用意された。私はそれぞれのコースの皿を1つずつ詳細に紹介していこうと思う。読者の理解を助けるために、必要に応じて注釈を付けながら。

聖コエリシアの饗宴 第二巻The Feast of Saint Coellicia II

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第1コース

著者による注記:レマン宮廷における饗宴の伝統として、第1コースは味覚を活性化し、腸を活発にするように構成されていた。

伝統的に聖コエリシアの断食中に唯一食べることが許されていた「パン屑」。レヤウィンからブラヴィルに至るまで、あらゆるパン焼き窯から集められたパン屑がスプーンに一杯ずつ各招待客に出された。ブラゾラス皇帝の愛人だった「牙を見られぬ者」は、司祭がパン屑の教義を語る間に待ちきれず、側にいた5人のスプーンを口に入れてしまったと言われている。

生きて殻に入った状態で配膳され、テーブルの脇でむき身にした「牡蠣」。ニベンの伝統ではオリーブのつけ汁の他に、煮つめたワインをみじん切りの玉ねぎに混ぜたものが付け合わせとして招待客に提供された。より冒険心に満ちた招待客には、牡蠣にブラゾラス皇帝が好んでいたアルゴニアンのピリッとしたソースをかけることが許された。牡蠣を食べ終えると、ブラゾラス皇帝はレヤウィンの貧しい人々に殻を配るよう指示した。皇帝が牡蠣の殻で貧しい人々に何をさせるつもりだったかは定かでないが、それを言った時のブラゾラスはすでにワインを何杯もがぶ飲みした後だったことを記録は示唆している。

丸ごと1羽の「溺れたガーネットビーク」。ガーネットビーク、より正確に言うならトパル・ガーネットビークは、貴族の食卓で一般的な品だった。ほとんどの場合、鳥はワインで溺死させた。彼らは速やかに羽をむしられたのちに給仕され、招待客は通常頭の上から布をかけてそれを丸ごと食べた。これは表向きにはワインの蒸気を逃がさないようにするためとなっていたが、実のところは食べる際にしばしば鳥から激しく噴き出す内臓や分泌物を封じ込めるためだった。長年に及ぶこの習慣が、ガーネットビークを絶滅に至らしめた。

「舌のローフ」のミントとチャービルのグリーンソース添え。もう一つの貴族の食卓の定番である舌のローフは、それぞれの家庭に見合った何らかの動物の舌を集めたもので作られていた。この食事の場合は、ほぼ間違いなくアヒルの舌で作られたローフだったようだ。

「エッグパフ」の塩炭焼き。ブラゾラスは鶏卵の燻製を出すことで有名だった。これは大抵の場合、数ヶ月もの間泥に埋められていた。そうすると白身は硬くなりマホガニー色を帯びるが、黄身は緑色の凝固物に変化した。アルゴニアンから得た技術を使って卵に驚くほどの弾力性を与えることができたブラゾラスのシェフたちは、針によって殻を貫通させた蒸気で4倍の大きさになるまで膨張させた。卵を最初に割った時の燻製の芳香は、極めて満足が得られるものだったと招待客たちは記している。

* * *
第2コース

著者による注記:最初の塩味の料理が終わると魚が出された。魚の定義は海、川、湖の生き物全てにまで拡大されていた。

「ニベンパイクのクリーム和えソレル詰め」、サフランの皮包み焼き。これは典型的なニベン川料理の見本とも言えるものを、ブラゾラス皇帝の食卓に適合するよう昇華させたものだ。サフランは平均的な漁師にとって決して手が届くようなものではなかったが、ソレルやその他のハーブと共に詰め物をするのは当時も今も一般的な調理法だ。サフランの皮は魚を食べられる黄金で包みたかったブラゾラスと、それを馬鹿げた考えだとしたシェフの間の妥協案だと言われている。

生きたマッドクラブから吸い出した「生の白子」。聖コエリシアの饗宴はトパル湾でマッドクラブが産卵するのと同時期に行われる。卵を抱えた雌の蟹が貧者の食卓に最適である一方で、貴族たちは雄の蟹の濃厚でミルクのような白子をすすることを好む。ゲームの愛好家であるブラゾラスは召使に大量の生きたマッドクラブをテーブルに放り投げさせ、招待客に手と口だけでこの生物に立ち向かい、白子を取り出すよう要求したと当時の歴史家は記している。

「ビーバーの尾」の小麦粉巻きフライ。ブラゾラス皇帝はビーバーの尾を、人が食することができる最高の白身魚だと主張することで知られていた(だが、どのシェフもその肉はいかなる川魚よりも硬く色が濃いと言うだろう)。ブラゾラスはビーバーの尾だけで楽しんだため、記述された調理法にはこのメニューの他の部分で見られる付け合わせがほとんどない。

「子イルカ」の母イルカミルク煮。子牛を同じように馬の乳で煮込んだノルドに人気のごちそうを捻じ曲げたものだが、あれは家畜で作られるものであり、イルカではない。イルカの肉と乳は地上のいかなる生物のものよりも濃厚なので、この料理には例えようもないほどコクがある。残念ながら、香味料と付け合わせは失われてしまった。

「スローターフィッシュの肝」のロースト。料理の記録では定説となっているが、スローターフィッシュの肝は中に含まれる毒を取り除いてからでなければ提供するのが難しいため、通常は避けられていた。ブラゾラスがスローターフィッシュの肝を100人以上の招待客に出したのは、その料理を作るために契約した30ものアルゴニアンの部族に対する信頼を示す証拠だ。彼の信頼は適切だった。呼び集められた客人たちの中で、失明と腸の弛緩に苦しんだのはネッティオ公爵だけだったからだ。

聖コエリシアの饗宴 第三巻The Feast of Saint Coellicia III

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第3コース

著者による注記:慣習に従い、魚料理のあとに野菜料理が続いた。

「しんなりさせた葉物野菜」、オリアンダーコーストのビネグレットドレッシング添え。ケールと思われる野菜の簡素でボリュームたっぷりなサラダは、おそらくはこの晩のもっとも衝撃的な料理で、オリアンダーコースト・リザーブを使って作られたビネグレットと組み合わせられた。このアリノールから輸入されたワインは大変希少で、サファイアが入っているゴブレット(それもハイエルフの主張によれば、ゴブレットには未使用のサファイアの飾りがそれぞれ必要とされる)で飲まなければ、真の味わいを楽しむことができないと言われている。このようなビンテージをサラダドレッシングに使うことは、ある者にとって巨万の富の証となるが、他の者から見たら途方もない愚かさの証でもあった。

強くたたいて伸ばした「アンバーパーシモンの芯」。多くの人はアンバーパーシモンの甘い果肉を楽しむが、グリーンシェイドのマーブルク郊外にある果樹園はこのフルーツの芯の多い種類を栽培している。この高価でもちもちとした芯は木槌で平らに潰され、軽くガーリックオイルがまぶされていた。

「キノコの塔」。組み立てられた料理が12フィートを超える高さだったためそう呼ばれた。この技巧を凝らした塔は白金の塔を模していたと言われているが、現代まで残っているスケッチは存在しない。塔の崩壊を防ぐため、召使たちは改造された竿状の武器を使い、招待客のために塔の天辺から下に向かってキノコを選んでいった。

ブラゾラスのシェフによるオリジナル料理、「シンムールのニンジン」。この一品の中心となるのは、シェイディンハル郊外の農民によって発見され、ブラゾラスの城代が公表されていない金額で購入した驚異的な大きさのニンジンだ。高さは十分に成長したブレトンと同じくらいで、幅はホグスヘッドほどもあったと言われている。ニンジンは丸ごと穴に埋め、炭で焼いた後、酢とシロップを添えて出された。

トリュフ油のアイオリ添え「昆布のフリッター」。トパル湾の島々で採れる硬い昆布は、コリンス産の茶に数日間浸してその革のような食感を柔らかくする。昆布に小麦粉をまぶし、製本会社の手法で折りたたむ。溶き卵に浸し、全体にパン粉をまぶしたらラードに入れる。出来上がった品には複雑な食感が詰まっている。サクサクとした衣の下には噛み応えのある層があり、内部はクリーミーだ。

* * *
第4コース

著者による注記:地位の低い者の家庭では、大抵穀物料理が最後に食された。肉類が簡単には手に入らなかったためだ。

ブドウの果もろみをたっぷり入れた「マーラの目」。通常は子供向けの菓子の扱いである味付けをした米球を、ブラゾラス・ドールは悪趣味な冗談として出した。その頃、彼の義理の兄弟のアンウェンテンデが海賊に捕らわれ去勢されたばかりだったのだ。その冗談が歓迎されたか黙殺されたかは、後世のために記録されていない。

バターとクリーム付き「ブラゾラスのサプライズ」。簡単なロールパンだが、ブラゾラスの指示でそれぞれに独自の具が入ったものが無作為に招待客に配られた。歴史が示す限り、皇帝のサプライズには生きた鳩が入っていたこともあったらしい。一方、とある無名な従騎士が自分の分にブドウ大の真珠がぎっしり詰まっているのを見つけたこともあったようだ。

伝統的な配膳方式の「アルムフィンガー」。アカヴィリ様式のオーブンを使うブラゾラスの厨房では、サルトリスを数倍に膨らませて蜂の巣のような奇妙な食感にすることが可能だった。マスタードを混ぜたハチミツの鉢がテーブルの脇に用意され、招待客はその中で粘つくソースを手全体に絡めてから、膨らませたサルトリスの中に入れられるようになっていた。その後、膨らませたサルトリスとソースは手から舐めとられた。参加していたカジートの外交官はこの不快な習慣に潔癖な感性が耐えきれず、怒ってその場を飛び出してしまった。シロディールとエルスウェアの関係の回復には数年間を要したとのことだ。

煮込んだハーブのソースに入れた「ニベン編み」。ニベンの編み麺が珍重されたのはその長さ故だったため、皇帝ブラゾラスは自らのシェフに、決して9フィート以下の麺を作ってはならないと命じた。

付け合わせなしの「宗教的なウエハース」。聖コエリシアの断食では、終わりの印としてウエハースが食された。ここでブラゾラスは、断食の終了と豪華な食事の到来を示すものとしてウエハースを出した(ここまでのコースでは肉類を強調していなかったため)。出どころの疑わしい話によれば、皇帝ブラゾラスは聖コエリシアの骨を掘り出してすり潰し、ウエハースの小麦粉に混ぜ込ませたとも言われている。当然ながらこれはばかげている。と言うのは、聖人食の習慣はそれより10年ほど前に禁止されていたからだ。

聖コエリシアの饗宴 第四巻The Feast of Saint Coellicia IV

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第5コース

著者による注記:ジビエと鶏をテーマとした第5コースは、「空の獣」を広く解釈したものである。注目すべき点として、レヤウィンはブラック・マーシュに近いため、このテーマは空を飛ばない様々な生物を含みうることがある。

細切れにした「クリフストライダーの膜」の煮込み。この料理はシチューに似ているが、そんな呼び方は侮辱も甚だしいとダークエルフは言う。モロウウィンドの田舎で食されるこの料理は、おそらくブラゾラスが大臣のアーヌス・デムネヴァンニへ内密に謝罪するために供したものと思われる。皇帝は当時、デムネヴァンニの妻と積極的に同衾していたからだ。

「コウモリの串焼き」のヨーグルトとピスタチオがけ。またしても、ブラゾラスは平凡な料理を最高の素材と見事な調理技術によって、帝国の饗宴に相応しい一品に変えている。コウモリはブラックウッドの湿地で頻繁に見かける生物であり、地元の漁師にとっては魚が釣れない時にも豊富な肉の供給源である。網で捕らえたコウモリを串に刺して、ヨーグルトソースを塗りながら丸焼きにし、砕いたナッツをまぶす。この料理は大変な人気を博したため、ニベンのコウモリ生息数が壊滅的に減少したほどである。

ブランデーで仕上げた「レマンのスープ」。この料理は主に冗談のために作られたものである。スープはこれの前に出されたコウモリの串焼きと同じく一般的な料理だが、ブラゾラス皇帝が平凡な食事を提供することは決してない。肉汁で野菜や豆類を煮込むのではなく、ブラゾラスが供するスープは鴨の眼球を使っており、これは食事の開始時に食べさせた鴨の舌と同じ鴨から取った眼球である。ブラゾラス皇帝は全員が出された食事を食べ終えるまでは、スープの材料を客人たちに教えようとしなかったと言われている。

「詰め物入りの白鳥」、付け合わせは不明。この料理は供された人々にとって最も強く記憶に残った一皿であり、しばしば「ブラゾラスの馬鹿げた茶番」と呼ばれている。白鳥に様々なものを詰めた料理だということは分かっているが、あまりにきつく詰め込まれていたので、白鳥はテーブルに置かれた途端、爆発したのである。サテンやダマスクが油と肉汁でぐしょ濡れになり、テーブル付近にいた全ての人々が嘆いた。

「クチバシのゼリー」およびその他のゼリーのクリームアニスソース添え。最後の一皿はウッドエルフの漬物作りの技術を使って柔らかくしたクチバシで、さぞかし見ものだったろうと思われる。残念ながら、この料理に関する記録は少ない。直前に供された白鳥の爆発のせいで、部屋には陰鬱な空気が漂っていたからである。

* * *
第6コース

著者による注記:大半の饗宴について言えることだが、肉のコースはシェフと主催者が食事全体で表現しようとしている中心的なテーゼが明らかになる部分だと考えられている。ブラゾラス皇帝がこのコースで何を伝えようとしたのかは不明だが、もしかすると聖コエリシアの殉教を快楽趣味の中に沈めようとしたのかもしれない。

「ラクダの丸焼き」の羊肉と鶏肉と卵とナッツ添え。ブラゾラスが一夜の話題をこの茶番で持ちきりにするつもりだったのは間違いないが、知ってのとおり最も人々の記憶に残ったのは白鳥の詰め物だった。それでも、ラクダの中に羊を詰め、羊の中に鶏を詰め、鶏の中に卵を詰め、卵をナッツでコーティングした姿は確かに見ものではあった――しかもシェフはこの化け物を全てテーブルのそばで切り分けてみせたのである。シナモンの香りが何週間も取れなかったと言われている。

「ヤマネ」のゼンマイ添え。典型的な快楽趣味の見世物であり、ブラゾラスは数週間、レヤウィンにいる浮浪児を1人残らず雇い、賓客に供するためのヤマネを集めさせたという。ブラゾラスはヤマネをガチョウの油で徹底的に肥えさせたので、食べた時には、ヤマネの骨までも舌の上で溶けてしまうほどだったという。

「若黒鶏」の亀甲焼き。ホワイトローズの黒鶏種はその猛毒の肉で知られている。有毒の甲虫を食べるせいで、体に黒い斑点ができるのである。ブラゾラスはこの食事のためにまたしてもアルゴニアンの発明を採用した。まず、普通の亀に彩色を施してこの若鶏の肉を食べさせる。亀は毒を無効化できるからである。あとは鶏肉が完全に消化される前に亀を殺し、丸焼きにして客に供すればよい。亀の肉は平凡だが、体内に入った若黒鶏の肉の病的な味わいは、五感を刺激する逸品である。

「センチの心臓のフィレ」のサトウキビ添え。この料理は挑戦的である。多くの賓客はセンチの心臓を食べるという象徴的行為を問題視したからだ。しかしこの臓器を食べることを選んだ者たちは、通常は硬いはずの心臓の筋肉がとても柔らかく処理されていることに感動した。

「骨髄と腱」のブラウンソース添え。この料理はブラゾラスの前任者のシェフ、アルベレット・ソーヴィンが発明したもので、帝国の宮廷で長く人気を博した。インペリアル料理の伝統にアカヴィリの影響を交えており、特に腱の味つけと調理法にそれが現れている。腱は雄牛の骨に浸され、骨髄をすくうための道具として用いられる。

聖コエリシアの饗宴 第五巻The Feast of Saint Coellicia V

ニベン料理の専門家、アルフォンス・ジェリカンダンテ 著

第7コース

著者による注記:第7コースはこの晩の唯一の甘味料理だ。これは高貴な晩餐会の形式から逸脱していた。通常は少なくとも2つの甘味コースが食事の前後にあったからだ。だが、この逸脱は大いに成功し、すぐに伝統的なコース料理の順番に取って代わった。

砂糖チーズのアイシング付き「ナツメヤシとベリーのケーキ」。このコースの1品目となるこのケーキは極めて美味であったが、それよりも驚くほどの大きさ(直径10フィート弱)と、指1本分程度の高さしかないことで知られていた。ケーキの表面にある砂糖をまぶしたチーズは複雑で美しい形に編み上げられており、切り分けられるのを見て多くの人が涙した。

「ファイアベリータルト」。中身が漏れたり服を汚したりする心配をせずに持って食べられるように折り込まれたこのタルトは、この晩の画期的な取り組みの一つだった。これらの形状は魔術師ギルドの研究の賜物だと言われている。

カルダモンシロップ添え「ノルドのミルク」。「ノルドのミルク」の興味深い部分は、ノルドと無関係ということ以外、未だ完全には分かっていないことだ。シェフはミルクを凍った半固形の状態にできて、この世でもっともおいしいお菓子の一つであること以外は。もちろん作るためにつぎ込む金額を思えば、これを食せるのは極端な特権階級だけだ。

シナモン入り「焼き蜂の巣」。ハチミツが噴き出す蜂の巣をオーブンでじっくりと火を通したものは、最高に美味だったことだろう。だが、ブラゾラスがどのようにしてこれだけ多くの巣を確保したのか、はっきりとは分かっていない。

「プラム煮とクリーム」。何やら楽しげな雰囲気だが、名前とは誤解を招くものだ。ブラゾラスはホワイトローズへの探検隊と契約してから、以前のレヤウィンでは見られなかった果物を出すようになった。ここでプラムと呼ばれているものは、アルゴニアンの間で食べると舌が痺れるトカゲフルーツとして知られていた。その効果はローズウォーターを飲むだけで消えるのだが、ブラゾラスが少なくともわずかな間自分が楽しむため、その情報を招待客に伝えることを差し控えていたのはほぼ間違いない。

* * *
第8コース

著者による注記:この晩の最後のコースは濃厚なチーズで構成されていたが、これは胃を落ち着け、消化を促すことを意図したものだった。このコースを食べ切る能力があった招待客はほとんどいなかったと記録は示しているが、ここまでの料理の数々を思えば十分にうなずける。

「メロン皮チーズ」。この晩のために車輪型のメロン皮チーズの塊が2ダース注文された。その大きさは最も小さいものでも3個積み重ねた荷車の車輪ほどもあったと言われている。硬いが砕けやすいこのチーズの名は、2年熟成させると皮の部分に現れる興味深いへこみ傷に由来している。

ローリエの葉に入れて配膳された「ラッカーウェブチーズ」。凝乳を入れる前に、型の中へ手間をかけて糸あめ細工の網を作り上げる。この形状は動物の血管に似ており、それぞれ枝分かれした部分の中は空洞になっている。型に凝乳を注ぎ、チーズが十分に硬くなったら、刺激的な酢を網の中に流し込む。網は融け、チーズの中全体に素晴らしい風味の筋が残される。

「エイダールチーズ」。スカイリムからの輸入品。チーズ好きの食品庫の定番だ。

「レッドアーモンド」。レッドアーモンドの料理は幸運の印として知られているが、ブラゾラスがどのようにしてこれほど多くの量を客人に提供できたのかは依然として謎である。これらのナッツは、ある種のアナグマの消化管を通過したものでなくてはならず、風味の熟成に時間がかかるため、入手が困難なのだ。

「砕いた桃の種」。これはしばしばアリノールの様々な果樹園から来た客人に、より伝統的な挽きナッツの代替品として出される。

走り書きされた呪文Scrawled Incantation

母の悲しみを深く覗き、怒りの種を引き抜け

冷酷な亡霊を呼び出し、力を借りて魂の道を照らせ

長くねじれた影で、血によって奪われた命を蘇らせよ

殺害に奪われたものを取り戻せ。高すぎる代償などない

大司祭の命令High Priest’s Orders

ブラック・ドレイクの邸宅以来、あのウッドエルフの射手にはずっと悩まされている。彼女とその友人は、レオヴィックの秘密の真実を知るまであとわずかというところまで来てしまった。また、奴らは我々が四つの野望を手にしようとする懸命な取り組みの邪魔をし続けている。

奴らを闇の一党の兆候で煩わせるのは、しばらくの間だがうまくいった。時間を稼げた。そろそろ終わらせる時だ。

大司祭として、奴らを闇の一党の聖域まで追跡するよう命じる。遺跡にレオヴィックが隠した物を回収し、奴らを皆殺しにしろ。暗殺者とレヤウィンの傭兵も同様だ。そしてウッドエルフが死んだら、まだ聖なる書物を持っているかどうかを確かめろ。あの書が欲しい。

帝国の策略の歌Imperial Deception Song

ワインあふれる金のゴブレット
美しい目をした官能的な踊り子
ルビーのサークレットを頭上に戴く
毛布はもつれ、ベッドに倒れる

燃え盛る炎に熱い油脂が滴る
欲望に口を開けばブドウが揺れる
青いベルベットと黄金の縁が満ち
あさましき者が取り囲み喜び

だが素晴らしいものには代償がある
黄金にも隠せぬ腐敗がある
色鮮やかに塗られた唇の下に牙が潜む
船から矢のように無垢が落ちる

疲れた脚が血を吹くまで踊る
珍味とハチミツ酒に溺れる
素敵な策略が黄金を曇らす
何を売ったか最後に気付く

伝令が運んだ手紙Courier-Delivered Letter

好奇心に満ちた目があらゆる場所にあるため、このような形をとることをお詫びしたい。

お前が是が非でも知りたいと思っている情報を持っている。あの奇妙な遺跡で共に過ごした後に知った情報だ。

ギデオンの南側にあるアムニス邸に来てくれ。お前とあのウッドエルフだけで。

誰にも言うな。最大限に注意を払い、また俺を信用してくださるよう願う。俺の意図が誠実なものであることを、誰もが信じるわけではないだろう。

塗られた目の要求Demands of the Painted Eye

ボーダーウォッチの指揮官へ告ぐ

我々は要塞を掌握した。中に残された民間人の招待客、労働者、要人は全て我々の囚人となった。彼らの身柄を無傷で解放するのと引き換えに、以下を要求する:

一、象牙旅団の完全な武装解除と解散。また、全士官と官兵をソルスセイム島に送り、生涯そこで追放すること。

二、以下の囚人の解放:
-アルクトゥルス・ヴァノ。現在スキングラードの議員暗殺により収監中。
-ハイマンドリル。現在ネクロムでの放火により収監中。
-ベンコル。ホワイトランの虐殺者。現在陰謀の罪で収監中だが場所は不明。
-ダガーフォールの5人。現在カバナントに対する犯罪によりマッディング・ウインド監獄に収監中。
-レディ・ベンウィン・スローンベイン。現在セスパーに追放中。
-その他我々が要求する囚人全員。

三、ケナーシズルーストを政治的に独立した地域とし、ルビーの玉座、アルドメリ・ドミニオン、およびその他のあらゆる外部の権威者から干渉されることなく自由に独自の法を作り、利益を追求できるようにすること。

四、全ての定命の者が自己を統治する普遍的な権利を受け入れ、自身の権力機関による独立した統治を認める、シロディールの貴族階級によって署名された通知の作成と配布。加えて、これらの冊子には、前述のような自立した地域の制定と、それが塗られた目の価値観を共有する者を歓迎する地域であることを記載するものとする。

五、それぞれが3本以上のマストを持つ4隻の船の係留。航海に必要な食料および物資を完全に蓄えた状態でブラックウッド南沖に係留することとし、併せてボーダーウォッチから当方への安全な経路を保証すること。

上記のいずれについても交渉は受け付けない。人質の命と引き換えに、それぞれの要求は完全に達成されなければならない。

反逆者の色褪せた手紙Rebel’s Faded Letter

もうすぐ事態が急速に進展する。

あの横暴な裁定者ガヴォスから、大修道院を解放する計画がある。奴のある兵士と話したら、彼らも我々とそう変わらないことが分かった。ただ生活と養うための金を稼ごうとしてるだけだ!彼らも裁定者を快く思っていないし、阻止する人々に協力する意思がある。彼らが味方につけば、戦うことなく裁定者を追放できる!

交易大臣たちは、裁定者ガヴォスが権力の放棄を拒んだら投獄するつもりだ。彼らはすでに魔法の封印を作り出すため、魔術師も雇っている。3つの印でできた封印だ。それぞれの交易大臣の印だよ。奴を解放するには3人が同意しなければならない。だから、あいつが二度と日の光を拝めないってことは請け負う!

今晩、いつもの場所で会おう。計画と今後の行動について説明する。

秘密の保持Preserve the Secret

ディサストリクス・ザンソラ

四つの野望の時が目前に迫っている。我々の活動を加速させなければ、数十年におよぶ計画が水の泡になる。レオヴィック皇帝は野望を隠し、その場所を私に知らせる前に殺された。だが彼は帝国のあちこちにある様々な隠し場所に、手掛かりを残した。

処刑する前に同僚の評議員たちを追求して、彼らが気付いている秘密の一部を探し出すこともできるだろう。もちろん、彼らはロングハウス帝の秘密を保護するために死なねばならない。殺害の責任は闇の一党に負わせる。それによって目覚めの炎教団への疑惑を、可能な限り長くそらす。また、レオヴィックの隠し場所が彼らの元のブラックウッドの聖域に一つ隠されていることが最近分かった。

最高の侍者を送り出してくれ。執事ファルル・ルパス、アボール、ファレリア、イティニア、ジリッチ、ソフス評議員を殺すのだ。ロヴィディカスも殺す必要があるかもしれない。元評議員長は、安寧に暮らすには賢すぎる。恐らく起きていることに気づき、我々が四つの野望を確保する前に行動を起こしてくるだろう。

私も自分自身に対する攻撃を計画する。失敗に終わるものだが、闇の一党をさらに関与させる。

忘れるな、私に接触してはならない。私のほうから連絡する。適切な時が来るまで、私の正体については一切明かされてはならない。

我らが炎と洪水の王の名において
大司祭ヴァンダシア

冒険者求む!胸躍るチャンス!Adventurers Wanted for Exciting Opportunity!

新たに発見された遺跡の探索のため勇敢な人を募集します。栄光と金を手にできる、またとないチャンスです!

探検についてはジギラにお尋ねください。

〈別人の筆跡で書かれている〉

大仕事よ。合法とは言えないようだけど、お金は本物よ。レッドメイン砦の北で会いましょう。お友達を連れてきて。それじゃまたね、弟くん

ミッリ

目覚めの炎教団The Order of the Waking Flame

ペレグリナ・ポムピタラスによる暴露記事

熱心な読者の皆さん、ご注目あれ!この数ページに及ぶ出来事の記録者である私が、ブラックウッドの貴族の間で急速な広がりを見せている最新の集団の真実を明らかにしよう。この集団について、ある人はレヤウィンとギデオンの有力者用の、単なる社交クラブと考えている。またある人は、暇を持て余した金持ちのための罪のない道楽だと見ている。とんでもない、熱心な読者よ!目覚めの炎教団は、もっとずっとたちの悪いものだ!

象牙旅団の士官を含め、この動きに詳しい当局者は彼らを比較的新しい哲学者のクラブだと考えている。彼らに言わせれば無害だそうだ。高級な宿屋や酒場の奥まった部屋で生み出された新たな気晴らしに過ぎないと。これほどの誤りがあるだろうか!目覚めの炎教団はその程度のものでは全くない。実際には、彼らは破壊のプリンスと呼ばれる、あのメエルーンズ・デイゴンに身を捧げる危険なデイドラ教団なのだ!

このデイゴンの狂信者たちの望みは何か?実に明白だ。タムリエルの完全破壊に他ならない。もしかしたら全ニルンの破壊さえも!さらに詳しく説明しよう。

綿密な調査の結果、以下の結論に至った。一つ、新たに結成された志を同じくする裕福な思想家の集まりのように見えるものは、実際には少なくとも皇帝モリカルの時代、おそらくはそれ以前の時代から秘密裏に活動してきた大規模な組織である。二つ、彼らは間違いなくデイドラ公の信条に心服して従う宗教的な組織である。三つ、彼らが崇敬するのは、破壊のデイドラ公、洪水と火の王メエルーンズ・デイゴンである。四つ、この教団はロングハウス帝とつながりがあるが、彼らの歴史のその部分を明らかにすることは控え目に言っても困難である。五つ、潜伏していたこの教団が姿を見せるようになったのは、彼らが忠誠と献身を強く主張するための何らかの活動を大々的に行うことを計画しているからだと拙記者は考えている。また、それが大惨事を引き起こす自然災害と同程度に破滅的なものであるのではないかと危惧もしている。

教団の組織そのものについて述べると、調査の結果は大司祭が指導していることを示唆しているが、その正体は今のところ巧みに私の目をかわしている。教団内の個々の小集団は「破滅の運び手」と呼ばれる有力者たちの指揮下にある。他の高位には「災害の化身」、「カミソリ」、「破壊者」などがある。しゃれているではないか?こうした肩書がこの教団の本質を示すわけではないだろうとおっしゃるなら、ダメ押しの情報を公開させていただこう。

私はギデオンの近くにある古い遺跡で行われた目覚めの炎の儀式に潜入することに成功した。怪しい数人を尾行し、その中の1人からローブを拝借し、背後をうろついて観察するのは実に容易だった。目撃した儀式は心底ゾッとするものだった。厳粛な儀式を取り仕切っていたのは「破滅の運び手」だ。儀式はデイゴンに対する祈りと歓喜の声で始まったが、彼のことはほとんど数多くの大げさな称号のいずれかで呼んでいた。おお、権勢を誇る高貴なる王、野望のデイドラ公、大洪水の父、といった具合だ。その後、彼らはニルンでデイゴンの意思を達成させるための力を授けるよう願い求めた。その次に行われたのは、どこからともなく流れ出る溶岩の噴煙、祭壇の上に出現した猛烈な嵐、炎のカーテンと群衆の上空で裂ける稲妻を伴う複雑かつ不穏な儀式だった。感動的であると同時に恐ろしくもあった。

こっそりと抜け出す前に、私は「破滅の運び手」がうたい上げる声を聞いた。「デイゴン卿よ、我ら控えたり!デイゴン卿よ、野望を示したまえ!デイゴン卿よ、君が革命は我らが革命!ニルンは君のものとなろう!」

我々は賛詠の始めの数行を聞いたに過ぎないのではないだろうか。破壊が訪れるだろう、熱心な読者の皆さん。備えを!

目覚めの炎教団への参加Join the Order of the Waking Flame

世界は混沌から成り、いずれ混沌へ帰ります。破壊は不可避です。しかし瓦礫の灰から新たな世界が生まれるのです。

この考えに賛同する者、環境に対する自然災害の利点についての議論に関心がある者、あるいは来たるべき新世界に居場所を得たいと望む者よ。目覚めの炎教団はあなたを歓迎します。

日没に会いましょう。

外套を持参してください。

旅団の日記Brigadine’s Journal

他の象牙旅団が街をうろつき、スリを捕まえ、大酒飲みを街から追い出しているというのに、俺たちはクソにどっぷりと浸かって生きたままニクバエに食われてる!俺は普段から文句を言ってるわけじゃない。贅沢な暮らしを期待して入ったわけじゃない。だけどこいつは無茶苦茶だ!アルゴニアンはどうやってこんな場所に耐えてるんだ。沼の空気はまるで肺にずぶ濡れの羊毛を吸い込んでるような感じだし、ちゃんとした服を身に着けてなかったら一瞬で虫に殺されるだろうし、馬ぐらいでかい蛙までいやがる!どうやったらこんなとこで生活できる?

これで民が友好的ならまだマシだった。アルゴニアンたちには、この場所を少しでも暮らしやすくするための防御策が沢山あるはずなんだ。だが明らかに俺たちを歓迎してない。隊長がひどいことをするために来たんじゃないって説明しようとしてたが、どうやら交渉はあまりうまくいかなかったようだ。可能な限り彼らを避け、全力で反感を買わないようにしろというのが俺たちが受けた命令だからな。

交易路を拡張する、と奴らは言った。簡単だろうと。ハッ!ブラックウッドの沼地で簡単なものなんて何一つない。

少なくとも、俺たちは繋がってる。よく聞く話だが、苦しみってのは兵士を仲間に変えるもんだ。プレンタスにあれほど話術の才能があるとは思わなかった。それにアクシラの奴、ホッパーが驚いて死ぬくらいでかいゲップができるとはね!

ここにいるのもそんなに悪くはないのかもしれない。いい時も悪い時も共有できる、旅団の仲間がいる限りは。

力を貸してくれ!I Need Your Help!

これを読んでいる人へ

私、トゥーモンは切実に助けを求めている。私にとって価値あるものを失くしたのだ。心から深く愛しているものを。私の落ち度だ。ほんの一瞬よそ見をして… まあ、細かいことはどうでもいい。重要なのは我が愛しき者を傷つけたがっている奴らがいることだ。彼女を追い詰め、戦利品として手にすることを望む奴が。そんなことをさせるわけにはいかない。この卑劣な狩人どもは始末する必要がある。莫大な報酬を約束しよう。

下に記した3人を見つけ出し、片付けてほしい。その後、この野営地に戻ってくれ。新しいメッセージが待っているだろう。頼むから質問は一切しないでくれ。信じてくれ、この狩人どもは心底卑劣な奴らだ!

悪しきフジャルダー。最後に目撃されたのはレヤウィン周辺の丘。

邪悪なヴァシャ。最後に目撃されたのはギデオン付近の沼地。

素早きビンギム。最後に目撃されたのはストーンウェイストを囲む湿地。

支配人のカタログ

The Impresario’s Catalogue

エルスウェアへの招待An Invitation to Elsweyr

冒険好きな方、勇敢な方、好奇心旺盛な方へ。

カジートの故郷、エルスウェアのきらめく砂漠と壮大な浜辺を訪れましょう!物語に名高いこの国の人々は、ご来訪を心からお待ちしています。この地にある危険との戦闘や観光など、豊富な見どころを心置きなくお楽しみください。

今すぐおいでください!冒険が完了したら、フィリウス・ドーミアからあなたにふさわしい報酬をお受け取りいただけます!

スレイヤーのメモSlayer’s Note

寄生虫どもが西スカイリムで目覚めた。

強靭な体と鋭い剣を持つ者たちよ。私の狩りに加われ。

カースウォッチ北東の私のキャンプまで来い。力を合わせて、闇に立ち向かおう。

メル・アドリス

タムリエルの極上ワインTamriel’s Finest Wines

テンプレサミュエル・グーロン 選

グレナンブラ、ブラッドルートローズ
このワインは現在グレナンブラに住んでいるブラッドソーンの信者が造っている。彼らは怪物のような蔓から成長する奇妙なブドウを使うという噂を聞いている。それがこのワインにデイドロスが好む、やや土のような味わいを与えているのだ。前回訪ねた時、彼らはダガーフォールの北東にある荒廃した塔の中にボトルをしまい込んでいた。

ストンフォール、蜘蛛毒ワイン
かつてメファーラの巣に住んでいた教団は極めて強いワインを造っていた。このワインにはその地域に繁殖している蜘蛛の毒が混ざっていると言われている。その場所がゴブリンに占領されて以来、このワインのボトルは大変希少なものとなっている。スキャンプや黄昏は、特にこの不快なビンテージを好むようだ。

オーリドン、フィオラリアン・ムスクワイン
アルドマーはかつてオンディルにやや腐敗したような火酒を保管していた。この酒は上質なエルフの果物と腐敗させる魔法の混合物で発酵させたものだ。疫病を広める可能性があり、オグリムと収穫者に好まれると聞いている。

メモ:こうしたワインの誘引力は長続きしない。風味が失われる前にすばやく使用すること!

ブラックウッドの恵みBounties of Blackwood

旅人と探検者を求む

チャニル・ジェイがレヤウィンの街の外で、旅人と探検者を求めています。あなたの物語が私の物語になります。共に川の音楽を聞きましょう。冒険をお望みなら、お話しに来てください。奉仕は報われるでしょう。

お待ちしています。

メル・アドリスの日記Mel Adrys’ Journal

この地域に入ってまだ短い時間しか経っていないが、すでにスカイリムもリーチもその面影がなくなっている。この病気に対する私の戦いの中でも、これほどの規模の吸血症の浸食は見たことがない。後に役立つことがあるかもしれないので、私の観察をここに記録しておく。自分のためか、私が力尽きた後、戦いを続ける者のために。

1日目
我が獲物の捜索が始まった。喪心の嵐の闇の力が奴をこの地域に惹きつけたに違いない。警戒を怠らぬようにせねばならない。まるであらゆる岩や木陰にあの血に飢えた者が隠れているかのように感じる。危険は承知だが、奴を逃すわけにはいかない。それだけの借りがある。

4日目
最初、グレイホストと名乗ったのは単なる虚栄心だと思っていた。この血に飢えた連中がヴァーカースの群れの恐るべき評判に比肩しうるはずはないと考えたのだ。私は間違っていた。むしろ、過去の脅威を上回るほどだ。圧倒されるのを避けるため、戦略に多少の変更を加える必要に迫られた。恐れてはいない。むしろ望むところだ。獲物に狩られる狩人は、恐怖の味を思い出す。それにより力を限界まで引き出し、感覚を研ぎ澄ませられる。

7日目
この仕事には大変な労力を要する。毎晩落ち着く余裕はなく、現実と想像の悪夢に共に苛まれている。私は狩れる時に狩り、止むを得ない時には眠る。この狩りは軍事作戦のようになった。責任の重さに耐えなければならない。

12日目
グレイホストがまたしても新たな戦略、新たな残虐行為を見せてきた。私はある避難民の集団を追跡していた。群れへ加わりに来た雛たちだと思っていたのだ。彼らは道の脇で泣いている若い女に出くわした。私は剣に手をやり、女を救おうと突進していったが、その途中ではっと立ち止まった。青ざめた顔の子供たちが影の中から姿を現したのだ。孤児の少女とその仲間は避難民たちを惨殺し、その赤い目を私に向けた。やるべきことをやらざるをえなかった。

15日目
疲労が私を捉えつつあるのだろう。タムリエルで最速のガーゴイルに出会ったのか、それとも私の動きが鈍くなっているのか。どちらが真実か、わかるような気がする。私の治癒の技で事足りるはずだ。しかしあれより一瞬でも遅かったら、この文章は片手で書くことになっていた。躊躇はしたが、支援の要請を送った。狩りに決着をつけるため、プライドは脇に置かなければ。これからの仕事には相棒が必要になりそうだ。

レディ・アラベルからの手紙テンプレアアアアアア

your name

あなたの名前をある共通の知人から聞きました。仕事の腕にかけては信用できると伺っています。私はそういう人物を緊急に求めています。

私の密偵ジャカーンに、あなたの同盟の首都でお会いください。タムリエル全土にとって重要な問題に関し、協力を申し出ていただければ幸いです。参加いただければ、高額の報酬を得られるでしょう。

レディ・アラベル・ダヴォー

協力求む:フィリエン・ツアーHelp Wanted: Philien’s Tours

ここハイ・アイルを拠点とする新事業、フィリエン・ツアーは、新たな事業を開始するために旅を愛する冒険者を求めています!

興味のある方はゴンファローネ湾のゴンファローネ・ゲーミングホールにて、フィリエン・ヴィスールをお探しください。

シストレス諸島で、冒険が待っています!

砂と雪と血A Quest of Sand, Snow, and Blood

冒険好きな方、勇敢な方、好奇心旺盛な方へ…

同じ気候ばかりで、うんざりしていませんか?見慣れたダンジョンの石に気分がふさいでしまうことは?あなたの放浪にちょっとした変化を加えるために、支配人がご招待します!あなたの冒険を新たな高みへ引き上げましょう!ロスガーの吹雪が吹き付ける山やクラグローンの危険な砂漠へ行き、帝都の危険な遺跡を征服しましょう!

冒険者の宴がここまで多様になったことはありません!冒険を完了したらフィリウス・ドーミアを訪れ、報酬をお受け取りください!

支配人のカタログThe Impresario’s Catalogue

このコレクションのページにあるのは支配人が集めた書き物、エッチング、タムリエル各地のあらゆる祭りに関する告知である。

今後こうした文書がどこにあるかわからなくなった場合、この書に戻って確認できる。

超越の勇者の命令Ascendant Champion Orders

メダルをサレロス洞窟に持って来い。そこで会おう。

港には常に船がある。どれでもいいから使える船に乗れ。遅れるな。

超越の勇者

超越の勇者の新しい命令Ascendant Champion’s New Orders

命令は変更された。

メダルの使用はもう現実的ではない。我々は上級王エメリックの私的静養地である、ソードレスト島へ行かなくてはならない。私は砦の襲撃に向かい、エメリックをこの手で殺す。

計画は達成されるだろう。目的、信条を忘れるな。
超越の勇者

超越騎士団のメモAscendant Order Note

超越の勇者殿、

ご命令の通り、ハイエルフの魔術師を誘拐しました。かなり抵抗もされましたが。従士オーベロンは鼻血を出す羽目になりました。

しかし、メダルは手に入れました。ご命令通り、魔術師とメダルを隠れ家に持ち帰ります。

超越騎士団の命令によりBy Command of the Ascendant Order

この釣り場は今や、超越騎士団の所有地となった。

この一帯への侵入者やスパイには容赦しない。

この命令に逆らう者はこの侵入者たちと同じように、即刻かつ厳格に処罰される。

警告は以上だ。

超越騎士団

リーチの指導者

The Reach Reader

Rによる命令Orders from R

ペンターチ・セヴィダ

リーチの魔女はネザールートの群生地をもう1つ突き止めた。カースワステンの村の下には大量に生えているが、現地の住民には使い道がないのでほぼ無視されている。ネザールートはブラックリーチの北で見つかる形状のものと品種が違うが、出発前に教えておいた材料を加えれば、目的に十分役立つはずだ。ネザールートはより短期間で生えるので、収穫すればさらに強力な喪心の嵐を生み出すための助けになるだろう。

命令はこの新種を育て、魔女に供給することだ。1週間ほどしたら、誰かが進捗を確認に行く。

R

アークスザンドの伝説Legend of Arkthzand

非凡なる功績の学者、ネラモ 著

神話中の神話はどのように追求するのか?物語で名高い北タムリエルのドゥエマーの街は、その秘密の深さが未だ解明されていないとは言え、広大な遺跡の位置は良く知られており、また、土地に住むエルフや人間との交流が数多く歴史に記録されている。だが、それとは異なり、アークスザンドは今も謎のままだ。その場所がどこにあるかは誰も知らず、他の民の書物にはアークスザンドについての話が全く残っていない。我々がアークスザンドについて知ることと言えば、ドゥエマーの文書にある暗号のような言及だけで、その文書自体もほぼ完全な解読は不能だ。確かに言えることは、アークスザンドと呼ばれる場所が実在し、そこが伝承と学びの中心地だったということだけだ。

ああ!確かなことが尽きれば、あとは推測しかできない。

私に言える限り、アークスザンドはブラックリーチと呼ばれる地下世界の洞窟にあった、ドゥエマー文明の絶頂期に築かれた。第一紀の初め、4つのドワーフの街がエセリウムとして知られるアルケインの鉱物を採掘し、その知識を得るために鉱山労働者の連合、もしくは同盟を組んだ。そのうち2つの街、アルクンザムズとブサーゼルはおそらくリーチの西にある山麓の丘陵地帯の下にあった。発見と繁栄の時代、彼らはこの深みのどこかに、大規模な蔵書庫を作るために手を結んだと情報源は示唆している。多くのドゥエマーのクランが、学び知識を共有するためアークスザンドへやって来た。だが、やがてこの隠された領域に衝突や戦争が訪れ、平和に満ちた蔵書庫は放棄された。

妙な話だが、ヌチュアンド・ゼルの街は、アルクンザムズとブサーゼルの近くに位置していたにも関わらず、ブラックリーチの同盟の話やエセリウム戦争と呼ばれる記録の中で驚くほど触れられていない。私にはドゥエマーの忘れられた政治問題について、不思議に思うことしかできない。ヌチュアンド・ゼルは他の街の敵だったのか?あるいは中立地帯?でなければブラックリーチ同盟の内政により、5番目の仲間を加えることが不可能だったのか?

この謎の答えが、アークスザンドの蔵書庫の謎を解くためには重要なのかもしれない。ブラックリーチやブサーゼルやアルクンザムズへの道を見つけ出した者は、知る限りまだいない。しかしヌチュアンド・ゼルはマルカルスの街にある。私はまだ訪れたことはないが、報告によれば地下には遺跡が連なっているそうだ。実在しているとしたら、ここからアークスザンドの蔵書庫への道が開かれていたかもしれない。

未発見かつ略奪されていないドゥエマーの伝承の宝物庫を見つけられるという可能性は、もちろん想像力を刺激する。長年にわたり、多くのダンジョン探検者がアークスザンドの存在に関する手掛かりをいくつか見つけ出し、手つかずのドゥエマーの遺跡を調査するために危険を承知でリーチに挑んだ。これらの盗掘者のほとんどが、数えきれないほどの財宝や富のことしか考えていなかったことはほぼ間違いない。泥棒と破壊者どもめ!何よりも素晴らしい宝は知識だ。ここではどんな秘密が見つかる?エセリウムのクリスタルの働きは?音調の構造?星の秘密とは?誰にも分からない。

後世の人々のため、教養のない金目当ての奴が偶然この場所を見つけて、何かかけがえのないものを不器用に破壊する前に、いつかその地を訪れてアークスザンド蔵書庫を探したい。マルカルスへ訪問できたなら、暴君に合理的な行動を取るよう説得したいのだ。もしかしたら、新たにヌチュアンド・ゼルに降りる試みをさせてくれるよう説得…あるいは賄賂で、どうにかできるかもしれない。求める答えが、悪名高いアンダーストーン砦の下のどこかにあることは確信している。

アークスザンド蔵書庫The Library of Arkthzand

我々はレディ・ビレインがアークスザンドの蔵書庫と呼ぶ遺跡に到着した。蔵書庫のようには見えない。この闇の遺物を目覚めさせることへのビレインの執着には懸念を覚える。長く隔絶されていた悪影響があるのではないだろうか。

闇の遺物の存在は、どうやらある種の奇妙な力の穴を作り出したようだ。レディ・ビレインは彼女の仲間が、短距離を移動するために力を利用したと主張している。他の手段では行けない場所へ。灰の王は私にこの現象のさらなる調査を命じた。これがグレイホストの大きな利益につながるかもしれないからだ。私はこの虚無のポータルの有用性を確認するため、全力を尽くす。

とは言え、警戒は怠らないつもりだ。私は時と共に、ここの闇から活力を得た者たちがどうなったかを見て来た。これは生きるための手段ではない。レディ・ビレインとの同盟がグレイホストの目標にとって必要なことは理解している。だが、彼女の狂気の罠に捕らわれてはいけない。

ペンターチ・シーヴェルネス

あなたに向いたギルドは?Which Guild is for You?

冒険者、傭兵、魔法使い、悪党の皆さん!冒険の仲間が必要だと思ったことはありませんか?大胆な偉業を可能にする深い絆を切望してはいませんか?もしかしたら、ギルドに入る時かもしれません!

現在のリストを確認したい場合は、ギルドの使者アムサードまで

アンスデュランからの手紙Letter from Ansdurran

フェイラへ

今回の襲撃では、なんとかいいものを手に入れたよ。確かに見た目は役に立たない骨のかけらだが、リーチの魔女から奪った。見習いレイレンと名乗って、どうか取らないでくれと懇願してきた。マルカルスの新しい祠に必要だって言ってたな。彼女の師、大呪術師グリンロックに。その魔女のために言っておく。彼女はなかなか健闘したよ。死ぬ前には、俺に怪我までさせたしな。

君の後援者は、こういうガラクタを買うんだろ?彼女の魔術師なら、絶対にこれが本物だって見分けられるはずだ。これはドルアダッチ砦の近くの、いつもの場所に隠しておく。これにはいい報酬を期待してる。この怪我の埋め合わせにな。血が止まらないんだ。

A

イーグルシアー・クランでの1年A Year Among the Eagleseer Clan

グウィリム大学、グラブリアン・ツリエル 著
(第二紀564年、レオヴィック皇帝統治時代に執筆)

数百年に渡り、リーチとその住民は他の土地の人々にとって謎めいた存在だった。だが、マルカルスにおける帝国総督の任命は、リーチと民に新たな時代を告げている。タムリエルの学者と旅人はついにリーチへ踏み込めるようになり、そしておそらくリーチの民と彼らのやり方について理解してきている。

そのような目的を胸に第二紀560年の春、モリカル皇帝からの紹介状を持って私はマルカルスへ旅立った。カダッチ総督は(懸念を持ちつつも)ガイドの調達に力を貸してくれた。ドゥニアルと言う名で、私を友好的なクランであるイーグルシアーに紹介するためのガイドだ。3日間の旅でイーグルシアーのデュン(要塞化された丘の上の村。内陸地域ではよく見られる)に到着した。ドゥニアルが私の任務を説明すると、ダラー族長と側近の魔女アシュリンは私を受け入れてくれた。当初、ダラーは私の意図に戸惑っている様子で、アシュリンは露骨に私を蔑んでいた。彼らが滞在を許したのは、ダラーがカダッチに小さな貸しを作っておけば使えるかもしれないと考えたからにすぎないと思う。

到着したのは早春で、儀式的な狩りの準備が進行していることに気づいた。どうやらこの季節で初めて行うもののようだ。長く寒い冬の後で、クランの食料の備蓄が尽きかけていたのだが、ついに雪が融けたため、大人数の狩りの一行が出発の準備をしていた。狩人たちが出発する前の晩、クランの者がハーシーンの加護を願う儀式のために集まった。野性的な踊りが追跡と殺戮を表現したが、かなり暴力的な光景で不安を感じた。いかなる理由であれ、デイドラ公に祈願するなど、どう考えても無謀に思えた。アシュリンと魔女たちが全てを取り仕切っていた。儀式が最高潮に達すると、彼女はクランの戦士たちに私を追い払うよう命じた。どうやらこの後に続く秘密の儀式は部外者が見るべきものではないらしい。それ以上のことを学ぶ機会はなかった。

儀式(だか何だか知らないが)では、どうやら狩りがうまく行くというハーシーンの好意的意見が得られたようだった。私は狩人たちが戻ってから2週間ほどイーグルシアーに留まり、彼らのライフスタイルを観察した。彼らは下品で遠慮のない人々で、中にはわざわざ無理をしてまで、私を怖がらせるか驚かせられないかと試みる者もあった。しかし、私がダラー族長の保護下にいるという事実が、最悪の事態から私を守ってくれていたようだった。紙とインクの在庫が尽きかけ、また長居しすぎて嫌われたくないという意識から、持ってきた小物を彼らに贈り、別れを告げた。そしてマルカルスへ引き返した。

夏のさなかにイーグルシアーへ戻ると、クランのデュンが半ば空になっていることに気づいて驚いた。クランは家畜の群れを豊かな牧草地に移動させ、多くが貴重な家畜を見張るために一時的なキャンプを設置しているのだと知った。リーチの民はクラン同士が揉めていない限り他のリーチの民から盗みを働くことはないが、山にはオーガやトロール、危険な野獣が住んでいる。家畜の群れは絶え間なく守らなければならない。他のイーグルシアーの者は近くの川岸に釣り用キャンプを設置するために離れていたか、マルカルスへ取引に行ってしまっていた。前に滞在していた頃よりも、彼らは忙しくしていた。

秋には3回目の訪問をしたが、クランはまた新たな生活の一面を見せてくれた。ほとんどのリーチの民のクランのように、イーグルシアーの者が畑に種を撒くことはなく、秋の収穫を楽しみにすることもない。だが、彼らは野生の根やベリーを集め、来たる冬に向けて準備をする。燻製小屋の中にはたっぷりの肉が保管されていた。1年のこの時期、イーグルシアーの者は家畜の群れから寒い季節を耐え抜くために必要な家畜を選んで殺すのだ。今回、私はマルカルスから役に立つ贈り物を持って来ていた。ナイフや毛布などだ。そして、機会があるたびに努めてクランの仕事に参加していた。イーグルシアーの者たちは徐々に私の存在に慣れてきているようだった。

4ヶ月後、私は真冬に雪の中を困難かつ危険な旅をして戻った。私はイーグルシアーの友人たち――この頃には多少いたので――がどうしているか心配だった。私は、冬が道具や服やおもちゃを作る季節であることを学んでいた。狩人たちは天候と獲物の状況が良さそうなら自らの運を試すが、ほとんどの人は夏と秋に蓄えることができた食料で生き延びている。恐ろしいことに、私はイーグルシアーが嘆き、激怒していることに気づいた。

私が戻る3日前にシックスフォード・クランの戦士たちがイーグルシアーの狩猟団を待ち伏せし、ダラー族長を殺したのだ。どうやらシックスフォードとイーグルシアーは昔の侮辱のことで、長年におよぶ確執があったらしい。2つのクランは突発的に紛争を起こしていたが、冬は抗争と襲撃の季節なのだった。アシュリンは真正面からダラーの死について私のことをとがめた。老族長が軟弱なよそ者を歓迎したことで、リーチの厳格な神々の怒りを買ったのだと。彼らは不信を示し、私は直後に不安を感じて去った。

しかしイーグルシアー・クランに一年滞在して得られたものは大きかった。

ウェアウルフ:長く苦しんだ守護者Werewolves: Long-Suffering Guardians

リーチの戦士ブリグウォール 著、グウィリム大学民俗学助教授ザムシク・アフハラズによる書き起こし

「多くのアレッシア人や北方人、豚の民がリーチに贈り物を持って来た。お前たちは無価値な硬貨と本を友好の証として持ってくる。だがそれは全て嘘と欺きだ。リーチの子はよそ者の“贈り物”が全て要求を含んでいることを知っている。知識や土地、敵に対する助力の要求を。獣と霊魂の世界、つまり真実の世界で贈り物は存在しない。取引があるだけだ。だからその口から不誠実な舌を切り落とし、本当の舌を生やせ。我々はお前たちを好きにはならないが、少なくとも敬意は払うだろう」

「例えば、力強きハーシーンを見るがいい。古きエルクの目は苦痛なくして何も与えない。贈り物などない。ただ苦痛に満ちた取引だけだ。栄光も財宝も、饗宴も苦痛なしには手に入らない。ハーシーンの祝福でさえ、噛み傷の先からやって来る」

「狼の踊りを贈り物と呼ぶ者もいる。お前たちは呪いと呼ぶ。どちらの言葉も無意味だ。よそ者は世界の全てを“善”と“悪”に分けるが、本当の闘争は臆病と苦痛の間にしかない。英雄は苦痛を選ぶ。臆病者は安心を選ぶ。それが物事の本来の道だ」

「狼の踊りは苦痛の道だ。双子月の呼びかけは常に我々の胸の中でうずいている。我々の鼻は乾いて荒れる。木の煙とタンニンの臭いで燻される。腹は夜も昼も唸り声を上げ、クランの友人と一族の肉のために飢える。血への渇きと怒りの全てが、紐を引っ張っている。束縛を引きちぎり、世界を粉々に打ち砕くために」

「我々はなぜこのように苦しむのか?残酷な世界の中では、残酷さが唯一の慰めだからだ。リーチを食い物にする獣と人間には、苦痛を与えなければならない。そして我々狼の民は、ほとんどの者に理解できない苦痛を知っている。我々はその痛みを利用して民を守っている。我々は心を固くし、渇望を窒息させ、掌に爪を喰い込ませる。近いうちに遠くから、何者かが我々の持つものを奪いに来ると分かっているからだ。そして奴らが来たら、牙と爪で応じる用意を整えている」

「これで分かっただろう。ハーシーンは贈り物など与えぬ。取引するだけだ。我々の痛みと引き換えに、我々の敵に痛みを与える。我々はこの取引を喜んで行う。苦痛はリーチの道だからだ。我々と道を違える者は、誰であろうとこの教訓を学ぶだろう」

ヴリンドリルの間の積荷証Vlindrel Hall Bill of Lading

マダム・ディアンテナ様

この船荷証は貴重品の長距離輸送が終了したことを確認するものです。今回と以前の3回に関しまして、ご依頼通りヴリンドリルの間にお届けしました。最新の輸送品は下記の通りです。

– 高級アルゴニアンシルク4
– アンヴィルから輸入されたダイヤモンドブローチ2
– リンメン上質なカジートの毛皮6

現時点で商品がお客様の所有物となったため、輸送中に配送品が受けたあらゆる損害、またはあらゆる窃盗の事例に対して、マルカルス商会は責任を負いかねますことを念のためお知らせいたします。またのお買い上げをお待ち申し上げます。

ご利用ありがとうございました。

ヘルミニア・コルヴィヌス
マルカルス商会
高級品取り扱い

カーススパイアー草原の戦いThe Battle of Karthspire Lea

リーチ人はほとんどの学者が慣れているようなやり方で自らの物語を書くことはない。物語を人から人へと伝える彼らの伝承は美しく、それに対して深く敬意を感じている。だが、私の中の学者は、書き記すことなく物語を頭の中に保つのは困難であることに気づいた。私にとって、書き記すということは物語をいつくしむもう1つの形なのである。伝える内容は変わらないが、羊皮紙に書きこむ行為は親密に感じられるやり方でその言葉を私の心に貼り付ける。もちろん、物語の伝え方を正す人などいない。だが、私はこの話をあるリーチのヴァテシュランから聞いたのだが、そいつは私に爪をたて、紙に書き記すまで放してくれなかった。私はこの書き取りをヴァテシュラン本人に捧げたいと思う。彼がこれを読むために学ぶことも期待しないし、それを頼むつもりもない。これは私から彼への記念品、つまり、彼が独自のやり方で表現することで物語を共有してくれたことに対して感謝を示す手段だ。

おそらく彼はこれをよそ者の愚かさと感じて捨て去るだろう。だがそれでかまわない。私はとにかくこの話を聞けたことに感謝しているのだ。

* * *
カーススパイアー草原の戦い
ヴァテシュラン・バースによる談話に基づく。

それは戦いというよりも血の海だった。シックスフォードとイーグルシアーは戦ったのではなく、ただ血を流しただけだった。草原の草はほぼ完全に赤く染まり、遠くからはまるで黒い色のように見えた。

明らかな勝者はいなかった。リーチの者同士の衝突ではよくあることだ。多くの戦いが、この戦いの原因にもなったある種の怒りと激しさをもって行われる。だが歴史的に見ると、その怒りと激しさは一方の軍勢によってもたらされる。それが闘争の本質だ。そして集団というものは、どれだけ怒りに駆られていようと、圧迫されれば勢いが弱まる。だがこの戦いは違った。どちらの勢いも衰えなかった。彼らはお互いに対して身を投げ出し、まるで崖に打ち付ける波のように絶えることなく衝突を続けた。

どちらのクランの男も女も、まるで死ぬつもりで戦っているかのように見えた。彼らの頭に勝利はなく、あるのはただ殺戮のみだった。

戦いが始まって間もない時期に、イーグルシアーの族長マドルファが致命傷を負った。彼の脚に槍が刺さり、歩くことができなくなった。彼は立たなくても戦いを続けられるように、近くの柱に自分を縛り付けるよう側にいた者に強く要求した。戦いは勝敗よりも闇の深い何かになっていた。それは妨げられることのない、留まるところを知らない、可能な限り多くの敵を殺すことを目的とした怒りだった。

その日、カーススパイアー草原から立ち去ったリーチの者は多くなかった。

カース川での生活Living on the Karth River

アオドシル 著

父は私が読み書きを覚えることに賛成しなかったが、私たちの物語は語る価値があるはずだ。リーチの外には、私たちを軽蔑の目で見る者が数多くいる。彼らは父の硬くなった手を見て身をすくめるだろうし、陽に焼かれた頬は見苦しいと思われるかもしれない。だがこの父に関する全てが、カース川における人生を物語っている。父に口を開かせることができれば、リーチを流れる水が血管に流れていることが分かるだろう。

カース川はリーチの民が住む他のどんな場所とも変わらず、暴力的で過酷だ。激流が水から突き出した鋭い石に沿って流れ、狂ったように渦を巻く。切り立った崖から流れ落ちる滝は白く濁った水を雷鳴のように轟かせ、大人の馬も一瞬にして流し去ってしまう。

しかしリーチの大部分がそうであるように、カース川はそこに住む民に恵みをもたらす。ある瞬間には残酷でも、次の瞬間には母の愛を示してくれる。川に頼って生きる者は、また次の日を迎えられる。川の許しがあれば。川辺で老いるまで生きた私の父のような者は、敬意が重要であることを知っている。川はある者に大量の魚を与え、ある者は溺れさせる。そのどちらにも区別はなさそうに見える。だがカース川で育った者は知っている。川が敬意を、少なくとも配慮を要求することを。

父は川の中で服を洗う。川の水を飲み、川で体を洗う。そして川は彼に食料をもたらす。私のクランの者も大半は同じようにする。私たちのクランはずっと川のそばで暮らしてきた。時として他のクランや、川を手なずけ利用するために来たよそ者に追い出され、移動することもある。だが私たちはいつも川に引かれて戻ってくる。どこで分かれても、どのように流れていても、私たちは川に従う。川は故郷なのだ。

もっとも、カース川が私たちから奪わないわけではない。川は私たちと同様、対価を要求する。子供をさらい、食料の貯蔵所を破壊し、骨を折り、嵐の際には計り知れないほど大きく膨れ上がって、川沿いのキャンプを全て水没させてしまう。だが私たちはこうしたことがあっても、川に文句を言わない。カースで生きるとはそういうことだ。

カリスの日記Calis’s Journal

自分用の記録のために日記を書き続けるようマスター・ピシスに指導された。記録を書くのは決して得意ではないけど、記述する代わりに様々な標本の絵を描いて大部分のページを費やしてみたらどうだろうか。絵は単なる言葉より伝えやすいと思う。もしかしたら、私が大した書き手ではないからなのかもしれないが。

でも、どうやらマスター・ピシスは私を信じているらしい。遭遇するたびに困惑させられる。彼の植物学の研究にはずっと感銘を受け続けている。彼が私の指導者になることを申し出てくれたときは、言葉を失ってしまった。どうして彼ほどの人物が、私のような新人を指導して時間を無駄にしたいと思うんだろうか?ものすごく感謝はしている。夢が叶ったんだから。

彼はあまりしゃべらない。不親切ではないが、過度に温かいわけでもない。私もかなり無口なほうだから、これは問題ない。ただ彼の沈黙が、新しい見習いに対する苛立ちから来ているものじゃなければいいと思ってるだけだ。

マスターは最新の計画について固く口を閉ざしている。他のサイジックの人たちの多くが、私たちほどには植物学を真面目に捉えていないことには気づいていた。私は全く気にしていない。集団の中の興味や才能の対象がさまざまな場合は、その方が集団にとっていいと思っている。でも、マスター・ピシスが研究をほぼ私たち2人の間のものにし続けているのは、私たちが研究に対して真の情熱を持ってるからだと思う。彼が他の人には理解できない(私は他の人と話したときにそんな風に思ったことは絶対にないが)とあからさまに言ったことはないが、どちらかというと彼は、他の人に私たちの問題へ口出しして欲しくないんだろうと思う。

キッツァ・エノーへの手紙Letter to Kitza-Enoo

キッツァ・エノー
マルカルスの暴君が、カース川峡谷の全てのクランを石の街の壁の内側に避難させるために呼び集めたという話が耳に入った。我々の団体の文化的遺物コレクションを、ここまで充実させられる機会は今までなかった。

そこで君への現在の指令について考えてみた。リーチの大呪術師グリンロックがマルカルスに入る前に、見習いエグヴァーンを阻止するのだ。彼は狼の頭蓋骨のトーテムを運んでいる。彼らがストリーベグの象徴と呼ぶものだ。このデイドラの遺物が祠に祭られる前に入手してくれれば、かなりの額を支払おう。

迅速に行動して、この機会を無駄にしないように。
V

グレイホスト:歴史 第1部The Gray Host: A History Part 1

偉大なる探検家、アーチバルド・ローレント卿 著

年に一度、聖ぺリンの殉教を再演する赤のパレードの時期にバンコライ駐屯地を訪ねたことがある者ならば、グレイホストの名は聞いているだろう。しかしその恐るべき評判以外にはほとんど何も知らなくても無理はない。私でさえこの高度に脚色された歴史記述の影に何があったのか、あまり考えたことはなかった。しかし私には、ある戦争の光景を目撃したことで、千年前の戦いの実態が見えてくるようになった。

ブラック・ドレイクが駐屯地の壁にリーチの戦士を繰り返し送り込み、門の付近で日々殺戮が行われるのを見ながら過ぎたおぞましい5か月の後、地面は膝まで達する血と泥の海となり、ブラック・マーシュにも劣らぬ底なし沼の様相を呈していた。あの残虐なる液体が予知の聖水となって、私は聖ぺリンの犠牲を完全に理解できた。確かに実際は不器用で愚かな私の下男が、胸壁から転げ落ちた後で起き上がっただけだったかもしれない。しかし類似は明らかだ。リーチの大軍が退却したことで我々も多少の喜びを覚えたが、夜が落ちるにつれて消滅してしまった。恐怖に満ちた囁きが駐屯地中に陰湿な迷信を広め、生まれ変わったグレイホストが血塗れの汚泥から飛び出してきて復讐するという考えに、歴戦の兵までもが長靴を履いた足を震わせた。聖ぺリンの騎士たちは噂を鎮めるため、焦土の中に古代の敵の骨は一片たりとも残らなかったと請け合ったが、私は関心をそそられ、騎士団長にグレイホストの歴史を詳しく教えてほしいと頼んだのである。

私の同郷の者たちが抱いた恐怖は、祖先も殺戮の際に味わっていたようだ。疲労困憊した駐屯部隊は戦場の地面を削り取り、両手に一抱えの土が地平線に到るまで取り除かれた(これも脚色だろう)。女帝ヘストラのアレッシア司教の復讐に満ちた眼差しのもと、倒されたグレイホストの死体は聖なる炎で焼かれて灰となり、塵の山だけが残った。この積み上げられた灰はあるトゥワッカの教団によって南へ埋められ、教団はサタカルの皮膚が剥がれ落ちるまで、誰にも灰には手を出させないと誓った。どうやら、それはあまり長い期間ではなかったらしい。

さて、私も旅の途上で吸血鬼やウェアウルフに出会ったことはある(それどころか、以前の遠征ではその両方が馬鹿な下男を襲ってきたことさえある)。確かに恐るべき怪物だが、それほどの恐怖を引き起こすのは見たことがない。私はグレイホストについてもっと詳しく学び、彼らがいかにしてヘストラの熱狂的な信奉者の心にまで恐怖を与えたのかを知りたいと思った。駐屯地での仕事が終わると、私は駐屯地を去って南へ向かい、騎士団長が言っていた集団墓地を探した。

不浄の墓と呼ばれる場所を見張るパイアウォッチという衛兵に頼まれたので、グレイホストが最終的に埋葬された地の場所は明かさない。彼らに「歓迎」されるまでには、数週間をかけ、崩れかかった谷から飛び降りる不幸な経験が必要だったと言えば十分だろう。洞穴の境界を越えて進むことは誰にも許されず、さもなくば死刑になると言われた。しかし首にかけていた聖ぺリンの土塊によって、私たちは信用に値するとみなされ、とにかく埋葬地の生きた衛兵のところまでは案内された。嘆きのアイギスを身に着けようとした不運な下男を私が引きはがした後、パイアウォッチの衛兵は彼らが見張っている恐るべき軍団について、いくつかの逸話を話してくれた。

彼らの話によると、ハンマーフェルは不浄の都市ヴァーカースの暴政に数百年苦しめられていたが、女帝ヘストラが軍を率いて帝国から腐敗を一掃したという。呪われた者の街がいつ廃墟から現れたのかは不明だが、彼らの主張では街がどこからともなく出現し、その影でスカヴィンと周辺の村を覆った。ある説によれば怪物たちは隣人との平和を約束したが、それは獲物を彼らの王国へ誘い寄せる甘い嘘だった。暴君ストリキ王が本性を表した時、グレイホストはソースタッドとエリンヒルの間の全ての地を占拠したと主張し、この地方を2つに分断した。これが女帝の怒りを招き、その怒りが彼らの破滅を招いた。

パイアウォッチによれば、元のヴァーカースの街は大部分がインペリアルによって破壊されたという。この地はアレッシアの名のもとに再び聖別され、解放された者に与えられて、公正なる女帝の似姿として再建された。アレッシア人がどれほど熱心に戦争を遂行するかは知っているが、グレイホストの歴史について、ぞっとするような怪談以上の知識を与えてくれる断片があるはずだ。だから私は、次にこの街を訪れることに決めた。

グレイホスト:歴史 第2部The Gray Host: A History Part 2

偉大なる探検家、アーチバルド・ローレント卿 著

ヴァーカースは近隣の集落と比べて、建築においても文化においても明らかに一線を画している。レッドガードの影響はちらほら見られるが、インペリアルの解放者の象徴がこの街を支配している。しかし街の骨組みはさらに古く、帝国が征服したアイレイドの集落とよく似ている。街の壁を築く石、貴族の邸宅、中心にある城などは全てヴァーカースに固有のものである。優雅であると同時に威圧的で、古代デイドラ遺跡の石細工にも似ているが、より洗練されている。

意外とは言えないが、地元民はよそ者に懐疑的である。そのため私は自分がハイエルフ貴族であることをひたすら秘密にした。このことは愚かな我が下男に頭部への打撃数発を加えて教え込む必要があった。地元民は彼らの祖先をかつて支配した異教の怪物の話になるとあまり役に立たず、街の中央広場に飾られた女帝を称える歌を歌うのみだった。ヴァーカースの下で栄える地下世界に関する調査はより成果があった。しかしその前に、私が役立たずの下男に愚かにも預けてしまった物資を返すよう、彼らを説得しなければならなかったが。

ここの無法者は、地上にあるものを圧倒するほど広大な地下都市を隠れ家にした。広い回廊はヴァーカース最古の建物と交差し、盗賊に地表への容易な侵入口と脱出口を提供している。残念ながら、この地下都市は元々の居住者たちが追い払われて以来大部分が荒らし尽くされてしまったが、このならず者たちは私のような者に売りつけるために、あまり派手でない遺物をある程度残してあった。この手の連中にしては知恵があったものだ。

特に興味を引いたのは、どうやらデイドラ語の方言で書かれたと思われる巻物の束である。これを書いている時点で私の翻訳はまだ不完全だが、この文書は明らかにグレイホストの手によるものであり、内容は私的な伝言から命令、国事に到るまで様々だ。文書はヴァーカースがその君主によって完全に統治されていたわけではなく、街の創設に先立って存在していたグレイ評議会も統治に加わっていたことを示唆している。この評議会のメンバーはどうやら生まれたての王国の行く末について、全員が一致した意見を持っていたわけではないらしい。街が創設された日付を確定することはまだできないが、ヴァーカースはパイアウォッチが言うように一夜にして完成したのではない。街は地表へと拡張される以前も長い間、地下で栄えていたのだ。吸血鬼とウェアウルフの軍団が協力に至った速度を考えるならば、近隣の者たちが気づく前に街が存在していたという考えは、完全に不合理なものではないように思える。

推測は入るが、グレイホストの拠点は外の世界に「現れる」よりもほぼ100年前に形成された。街を築いたグレイ評議会がどういう経緯で成立したのかは分からないが、崩落したトンネルや歩道の存在からして、この地下都市は孤立していなかったと思われる。ここで筆を止めるのは不吉だと承知しているが、これ以上の探検は私の軟弱な下男が悪性の茶腐熱の発作から回復するまで停止しなければならない。言い訳めくが大量の香水で打ち消さないと、奴は常に便所の臭いを漂わせているのだ。そうでなければ、奴の状態にもっと早く気づいてやれたのだが。

最後にちょっとした金言を述べておこう。「埋められたものは、消えてしまったわけではない」。グレイホストに関して、この言葉が当てはまらないことを祈りたいものだ。

グレイホストの諜報報告Gray Host Intelligence Dispatch

同志たちへ

あの魔女の反乱軍一員が街に侵入したと密偵から報告があった。奴らは家や街角に集まり、街を離れて東の丘で奴らと合流するよう、汚らしい親族どもをけしかけている。まともな自尊心のある定命の者なら温かい家を熊皮のあばら家と交換しないが、灰の王が定期的に思い出させてくださるように、リーチの者はまともでないし自尊心もない。

如何なるリーチの者も、街から避難することを許してはならない。この神々に見放された土地の丘や森をうろつく蛮族は全て恰好の獲物だ。反乱軍が森を怖がり、夜を避けるようにしてやろう。奴らが死ぬのが早いほど、我々の計画も早く達成される。

血の結束を
ペンターチ・ハウトリング

シスター・グリノルドからの手紙Letter from Sister Glynolde

姉妹たちへ

この吸血鬼の召使たちは、まるで太り過ぎたメンドリのように動く。遅い。遅すぎる!

私たちの灰の王はさらなる喪心の嵐を求めているのに、このカブの箱ひとつ満足に運べない、ましてや灰の聖骨箱や魔女の長槍のような強力な試料なんて、とても任せられない。こいつらと一緒に何をしろと言うの?

集合場所に来て。ヴァルスム墓地のすぐ北西よ。マルカルスの友人は、そこでよくグレイホストの指導者たちに会う。彼女ならもっと適した労働者を提供してくれるよう、エグザーチを説得できるかもしれない。

霊魂の導きを
シスター・グリノルド

セナンのメモSenan’s Note

ナサリめ!ここで俺たちに選ぶ権利があると言ったのに、何人かが死ではなく生きることを選んだら死を与えやがった。俺は怪我を負った。これが致命傷となるだろう。少なくとも逃れては来たが。

ナサリは生贄として死ねば永遠に生きられるようになると言って、クランの他の者たちを説得した。だが俺は真実を知っている。この儀式は力が目的だ。最後には彼女だけが残って褒美を獲得する。

下の闇への降り口から詠唱が聞こえる。もうすぐ生贄が始まる。ここで孤独に死ぬのと、仲間と一緒にあの恐ろしい穴へ投げ込まれるのとでは、どちらがより悲惨だろう。おかしなものだ。ブラダンはいつも俺に読み書きを覚えるなど時間の無駄だと言っていた。だが少なくとも、おかげで体から血が流れ出ている間に、やることができた。

ディオナス・トルートーの日記Journal of Dionus Trutor

何か大事なものがここに閉じ込められている!だがあの台が気に入らない。まだ我々の存在に反応していないが、ドワーフは不注意な侵入者を罰するために置いたのではないかと思う。

こうしてこの部屋を自分の目で見ると、ヴェセニオンの暗号じみた下手な詩よりもはっきりと理解できる。

王が盗賊を追う
淑女が王を追い回す
駿馬が全員の後を追う
盗賊に報酬をもたらすために

もちろん星座だ。1年の星座の順番は、王、駿馬、淑女、最後に盗賊だ。ヴェセニオンが正しいなら、答えは先頭の盗賊から始まり、最後に駿馬が来る。

盗賊と冬の星座や、北の空のつながりは明らかだ。それに駿馬は夏至の間、南の空でひときわ目立っている。王と淑女は少しはっきりしない。どちらも季節の間は東とも西ともつながりがない。東の星は淑女か?それとも王?

レイドナンを待つのに疲れてきた。少し実験をしてみるべきかもしれない。

トスモーン作品集(翻訳版)、IThe Translated Works of Tosmorn, I

編者注

グザンディア・イデットの本「トスモーン作品集(翻訳版)」は、著者の死後に出版されて以来、20年ほど議論を呼んでいる。

本人の言葉をそのまま受け取るなら、イデットは希少なアーティファクトを求めてリーチの土地を隈なく調査しながら生涯を過ごし――その途中で古代リーチの民による手稿を見つけた。イデットの主張によると現在は死語となった文字で書かれていたこれらの原稿には、伝説的なヴァテシュラン、トスモーンによって書かれた一連の叙事詩が収められていた。

イデットはこれらの手稿の現代語への翻訳に数十年を費やした。イデットの仕事の成果は不完全だったが、それは進行していた手稿の劣化や、翻訳を目指した文字に対する彼自身の知識不足によるものだった。彼は仕事を終え、原稿を出版のため売却してから間もなく亡くなった。

出版直後、学者たちはこの詩が偽物で、イデットの話はでっち上げだと非難した。ほとんどの学者は、現代のリーチの民が口承に頼っており、歴史的な記録にも文書の記録が用いられた形跡がないという事実を指摘している。イデットの話に対する別の反対者は、リーチの民にはトスモーンが著したような芸術的表現をする能力が無いと主張している。この議論は安直で、しばしばリーチやリーチのヴァテシュランに関する経験がない研究者などによって行われている。

これらの偽造だと叫ぶ人々に反対するのは、正当な評価をされていなかった天才、ヴァテシュラン・トスモーンに対する関心を呼び起こした、イデットを称賛する人々である。とりわけ、彼らはブレトンやインペリアルの厳格な詩の形式から程遠い、詩の断片の滑らかさ、刺激性、素朴な純粋さを高く評価している。彼らはまた、失われた技はタムリエルの歴史的記録の中で決して珍しいものでなく、それ故特にタムリエルの他の人々と比較して、リーチの者の文化を扱った学術的研究が少ないことを考えれば、イデットの失われたリーチの文字だという主張は、大激震が走るようなものではないと指摘している。

どちらの側も、イデットの主張を決定的に証明する、またはその反証となるであろう「ある物」が存在しないことを嘆いている。イデットが発見し、翻訳したと主張する手稿だ。生前のイデットを知る人は、彼は隠遁生活を好む孤独な人物で、しばしば荒野のキャンプに引きこもり、1年のうちの長い時間を研究と翻訳をしながら過ごしたと述べた。イデットはリーチ全域に多数のキャンプ地を持つと考えられていたが、彼の手稿を発見するという希望に満ちた野心的な学者により発見されたのはごくわずかな数のみだ。イデットの反対者は手稿がないのは、そもそも存在しないからだと主張している。イデットの支持者は、発見時に既に分解していた手稿は、おそらく朽ちて消滅してしまったのだろうと推測する。

こうして問題は解決することなく――不安定な状態で疑いの目と過剰な称賛の間に捕らわれている。私がこの詩のようなものの研究に打ち込んだ年月は答えを出してくれていない。という訳で、親愛なる読者の皆様には、ぜひこの本をご自身で読み、この後に続く内容が高く評価されたリーチのヴァテシュラン、トスモーンの作品――あるいは精巧な偽造品について知る唯一の手段なのかどうかを考えていただきたいと思う。

ヴァネッセ・オーリリー
第二紀322年、暁星の月5日

トスモーン作品集(翻訳版)、IIThe Translated Works of Tosmorn, II

テンプレアアアアアア 著

第一の断片

[編者注:グザンディア・エデットによって翻訳された詩の第一の断片には、すでに失われた、より大きな作品から抜粋された台詞が登場する。以下に記すエデット自身の序文からは、これがトスモーンのヴァテシュラン(伝承の守り手)としての経歴における初期の作品で、叙事詩的悲劇『イゾレンの愛』の一部分であることが伺える]

翻訳者グザンディア・エデットによる序文

以下に放棄されたリーチ狩人のキャンプの残骸を探して見つけたいくつかの断片のうち、第一のものを記す。これらの言葉が刻まれていた皮は雪解けによってかなり濡れており、また雪を溶かした太陽光もこの悲しむべき損傷を加速させた。このためヴァテシュラン・トスモーンの文章のうち、翻訳可能な程度に判読できたのは一部分だけだった。現代の読者の感覚に訴えるよう詩行に整えてあるが、これは人為的な構築である。皮に刻まれた本来の文に、このような形式はない。

以下の詩に記されたやりとりは、おそらくトスモーンが試みた叙事詩的悲劇の第一作品『イゾレンの愛』から抜粋されたものである。白髪の老戦士グリニンは、最愛の娘イゾレンの死を知らされる。グリニンの嘆きはイゾレンの恋人ヴァルトーンの到着によって中断される。彼はグリニンの憎むべき敵、リーチの魔女デヴェラの一人息子なのだった。

* * *

グリニン
イゾレンは麗しき風
足元に猟犬を従え
娘は丘や谷を駆け回った
弓の弦が歌を奏でれば
雄鹿も雌鹿も倒れたものだ

谷間には重い空気が漂う
林に流れる小川は口を閉ざし
鳥たちは歌うのを止めた
イゾレンがもう狩らないからだ

ヴァルトーン
老グリニン、イゾレンは私の恋人だった
かつて、この丘の木々も
若く緑にあふれていた
イゾレンと私はその間を歩み
深い峡谷の中
霧に包まれ、荒野を二人で過ごした

私たちは約束の言葉を交わし
カバノキの小枝で指輪を作った
我が心は墓石の下に眠る
もはや他の者を抱くことはない

グリニン
ヴァルトーン、我が敵の血よ
下等な虫、魔女デヴェラの血
お前と喪に伏すつもりはない

我がクランの地から去り
穴と闇へ帰るがいい
お前の母の見捨てられた広間へ
この手が悲しみで動きを鈍らせようと
我が石の切っ先はお前の血を流す

ヴァルトーン
イゾレンが死んだというのに
あなたが私にかける言葉は
恋人の死装束のように黒い
私は火の安らぎを求めている
霧は私を骨まで凍えさせた

私の手は石を削って荒れている
死した恋人の墓のため
グリニン、抱擁など求めはしない
我が親族への憎しみは知っている
あなたの親族への愛も知ってもらいたい

グリニン
デヴェラの子よ、お前に与えられるのは刃のみ
イゾレンは私の優しさだったことを知れ
彼女がいなくなった今、私に残されたのは
怒りと恐怖、悲しみだけだ

警告はした、誠実に
だが今や、構えたこの石は
お前の肉と血を求めている
受け入れたくばそうするがいい

ヴァルトーン
グリニンよ、クランはこのことを知るだろう
私は殺されたのだ!
傷から流れ出るこの血が地面を汚すように
この行いはあなたの魂を汚している
私の霊魂は愛するイゾレンの元へ発とう
あなたが追いかけてこない草地へ
冷たい霧からも、残酷なあなたからも自由な地へ
私が死んだら、デヴェラに伝えてほしい
母は殺された息子のために泣くべきだと

トスモーン作品集(翻訳版)、IIIThe Translated Works of Tosmorn, III

第二の断片

[編者注:グザンディア・エデットによって翻訳された詩の第二の断片は、ヴァテシュラン演劇の研究者や好事家におそらく見慣れたものに映るだろう。グウィナ、ロウォラン族長、半神デアロラ、そしてホーンストライド・クランは口承によく現れる。ただしエデットが記しているとおり、彼らの描写は作品ごとに大きく異なっている。事実、エデットはヴァテシュラン・トスモーンの影響力と評判を考慮して、以下の作品がこれらの古典的登場人物の元来の姿であることを示唆している]

翻訳者グザンディア・エデットによる序文

グウィナの歌は、寒い春の夜にヴァテシュランが火のそばに姿を現せば、今日でも聞こえてくる。トスモーン版のこの歌を翻訳して記録するに当たって、私は人気の主題の描かれ方に驚かされた。彼が語るこの歌において、グウィナはロウォラン族長とそのクランの親族であり、ホーンストライド・クランの狩人ではない。現代における描かれ方と同様、ロウォランの神話的なまでの戦闘能力は、ハーシーンの子である半神デアロラから彼の末裔に与えられたものである。

腹立たしいことに、私が収集した手稿はロウォランがホーンストライドに倒される事態を引き起こした経緯を説明していない。トスモーンほど地位のあるヴァテシュランならば間違いなく、それがロウォランの7人目の娘の裏切りのせいだったか(これは特に人気のある説だと聞いている)、白い雄鹿の凶兆を見なかったせいか(これもまた人気の説である)、それともまだ語られていない原因があったのか、決着をつけられるはずなのだが。

* * *
グウィナ
かつてここは静かな森だったのに
今では葬送歌が響き渡る
つるはしの音が聞こえる
大地を掘り返しているのは
神聖なる死者の家を作るため

戦いは勝利に終わった
ホーンストライド・クランは倒れ
絶壁の下の暗闇に消えた

勝利を歌った
力を叫んだ
悲しみを囁いた

今やクランの死体は
この土の中に埋められた
そこから何が育つ?
ただ栄光の物語だけ
大地は不毛のまま
私たちがそう保つから

そして花と草を取り除き
名を思い起こす
クランのために死んだ者の

ロウォラン族長は横たわる
矢に目を射抜かれ、息は吐かれぬ
子が周囲に集まる
力強い樫の周囲に葉が集まるように

巨大な枝が落ちた
葉も共に落ちた
そしてロウォランの血は絶える
その血はハーシーンの娘
デアロラの血

ホーンストライドは撃退された
だが心臓はえぐられた
互いに勝利の笑みを交わし
季節は冬へ移り変わる
そして次の春、私たちは消え去る
陽光の中の霧のように

迅速に攻めねばならぬ
クランが力を失う前に
他の者がロウォランの死を知れば
鴉が集まるだろう

我らの骨が漁られる前に
石の街を攻めなければ
岩の下の王を攻めなければ

魔女の元へ行こう
腐ったイチイの林の中
彼らの風は苦く
我らを中から腐らせる
だが親族よ、この毒を飲まねばならぬ
マルカルスの矢に立ち向かうため

我らのために掘られる墓はない
我らが石の壁を得ても
生きて守ることはできぬのだから

マルカルスの財宝など求めぬ
ロウォランは王を殺し
民を解放しようとした
彼の大義は我らの大義

我らは魔女の炎で血を燃やし
街を蹂躙する

我らは石の下の砦を襲い
王冠を床に叩き落す

我らは王の喉を掻き切る
研ぎ澄ました石と狩人の爪で

我らは死ぬが、それは些細なことだ
ロウォランの夢は成就する
愛するクランは滅びる定め
この季節か、次の季節か
だが孤独には死なぬ

トスモーン作品集(翻訳版)、IVThe Translated Works of Tosmorn, IV

3つ目の断片

[編者注:グザンディア・イデットの翻訳された詩のようなものの断片の3つ目は、リーチの伝説の中でも、最も長く伝わることとなった話を取り上げている――「赤鷲」だ。序文で示されているように、イデットはこの断片を奪われた誇り――赤鷲の物語の要となる部分――と理解し、ほぼ哀歌調の文章を採用している。— V.A.]

翻訳者グザンディア・イデットによる序文

赤鷲。女帝ヘストラによるリーチ征服中の彼の不従順と抵抗は、何世代ものヴァテシュランに加え、リーチの厳しい土地を越えた先にいる吟遊詩人や語り手に感銘を与えた。このことは、トスモーンがこのリーチの者の偉大な英雄の生と死を年代順にまとめていたことを知る者にとって、驚きに値しないだろう。

私がこの遺物の一部を入手できたことはかなり幸運だった。めったに人前に姿を現さない魔女の魔術結社、ソーンルートの保有地に入るための安全な経路を確保した後、私は彼らの骨董品や消耗品の中に、古い頭飾りを見つけた。そのバンドの中に固く巻かれた仔馬の皮があった。その表面には見覚えのある名前が殴り書きされていた。「ファオラン」。赤鷲は現地の言葉でこう呼ばれていた。

断片の文章は、ファラオンと女帝ヘストラの軍隊との最後の戦闘の余波についてのみ焦点を当てている。より広く語られている作品の口調に反して、トスモーンは悲し気な、いつまでも心に残る詩(と呼べるようなもの)で我々を楽しませてくれる。話を盛り上げる赤鷲の最終的な帰還の予言が存在しないため、読者は「赤鷲の復活とリーチの自由を求める声は後のヴァテシュランの創作なのだろうか?」と推測することになる。このことは、この岩だらけの土地に何千とある謎の1つであり続けるだろう。

* * *
ファオランの死

涙に暮れる者たちが彼を背負い、険しい岩山を登る。
生まれた時に赤鷲と呼ばれた者が
死して百の傷より赤く染まる。
朝日の光が世界に示す
死者の絨毯と
千の魂が重くのしかかる
リーチの息子。
呪術師が灰と樹脂の壺を手にやって来る
涙に暮れる運搬人に会うために
そしてファオランは横たわる。

彼を見て族長は涙を流す
無のために引き裂かれた彼を。
彼の体に灰が撒かれる
けれども落ち着くことはない。
ファオランの下の石の上にたまりを作る
彼に足がかりを得られずに。
静かな囁きが広間を飛び回り
全ての頭が下げられた。

今、ハグが与えられるべきものを獲得にやって来た
前には彼女の鴉
そして呪術師を見て笑う
灰も樹脂も役に立たぬと。
彼女はイチイの杖を手に取り、降り下ろす
ファオランの胸の上に。
中のイコルが噴き出す
黒い血が
そして彼女は自らの欲望の種を手に取り
ファラオンに植えた。

百の手が火打ち石を取り、矢をつがえる。
誰もが落胆する。
ハグの笑いは魂を膿ませる
死が彼女を取り巻く時に。
彼女の頭巾の下で千の鴉が飛び立つ
そして彼女は行ってしまう。
彼女は槍も、剣も、弓をも越えている。
逆らえる呪術師はいない。
ファオランが戦いの支援を命じたため
得るべきものを彼女は獲得した。

泣く者はファラオンを下ろす
山の心臓へ。
彼は最後に裸で横たわる
眠りなき眠りの中に。
石は封じられ、蝋が注がれる
そして火打石が砕かれる。

ここにファラオンは死して横たわる。

ドルアダッチの怖い話、第一巻Scary Tales of the Druadach, Book 1

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

親愛なる読者諸君。「怖い話」の新たな書へよく戻った。今回、我々はリーチの人里離れた荒野、特に荒々しく人を拒むドルアダッチ山脈を探検する。野蛮なリーチの者はただ危険なだけではなく、それと同じくらい孤立した場所を好む得体の知れない民族だ。そして、この物語は著しい危険を冒すことなく集めることはできなかった。

だがまたしても、私はこの年季が入った語り手の魅力、機転、そしてとても早く走る能力により、未だ確認も解明もされていない物語を、帝都やそれ以外の地域の読者諸君にお届けするために逃れて来た。

それではお気に入りの椅子に腰を落ち着け、ハチミツ酒を手にして、夜の暗闇にランターンを灯したなら読み進めたまえ。勇気があるなら、だが!

* * *
デイドラの遠吠えをする狼

最初の未だ解明されていない話は、あるレッドガードの商人キャラバンの生き残りから聞いたものだ。この人物はドラゴンスターからソリチュードまで大量の上質な絨毯やカーペットを運んでいる最中に出会った、計り知れない規模の無慈悲な災難を耐え抜いた。この何も知らない、間もなく危険にさらされることになるカーペットの運搬人たちは、その季節のソリチュードの高級装飾品不足をうまく利用できるようにと願いながら、恵雨の月の終わりにドラゴンスターを出発した。キャラバンは匿名を希望している2人の商人で構成され、バーガマの刃と呼ばれるハクミル隊長率いる、8人の傭兵によって守られていた。

商人は最初から呪われていたかのような長旅について語る。境界を越えてリーチに入ると、すぐにキャラバンは最悪の嵐、数日間にわたり弱まることなく降り続く激しい雨に襲われた。レッドガードの荷馬車と頑丈な馬、砂の上で荷馬車を引くことで鍛えられた強く丈夫なその馬でさえ、陰気でぬかるんだ状況の中では速度を保つのが困難になった。隊商と馬が最大限の努力をしたにもかかわらず、キャラバンの進行には数日の遅れが出た。だが、この厄介な不自由さは、夜間にハクミル隊長の傭兵が2人消えたことで一層悲惨なものとなった。

その日は消えた2人の恐怖の叫び声が聞こえることはなく、遺体も見つからなかった。だが、2人が行方不明になる前の晩、キャラバンの生存者全員が1匹の狼の悲し気な遠吠えを聞いたことを思い出している。それはゾッとするようなものすごい遠吠えで、雨でずぶぬれになったテントの中で身を寄せ合ってウトウトしていた者全員が目を覚ました。そして遠吠えが次第に小さくなり聞こえなくなった後も長い時間眠れなかった。彼らは言った。「遠吠えは…まるでデイドラのもののようだった!」と。

雨は朝までに弱まったが、他のキャラバンの護衛6人がどんなに捜索しても、行方不明の仲間の足跡も形跡も一切見つからなかった。歴戦のクラウンの戦士たちが、あたかもキャラバンを苦しめた嵐そのものにさらわれたかのように消えてしまった!あるいは…デイドラの狼に。

先導役の商人が警告を発した…キャラバンは引き返すべきではないか?だが、腕に自信があり、消えた兵士を見つけると固く決意していたハクミル隊長は、進むことが可能だと商人たちに断言した。そこで彼らは強引に進んだが、結局最悪な霧が猛烈な嵐に取って代わっただけだった。1人は「霧があまりにも濃くなって、目の前の自分の指さえ見ることができなかった!」と語ってくれた。

さらにまずいことに、生存者たちは遠吠えを聞いた。その日は1日中、騒々しく弱まることのない、最初の傭兵たちが消えた夜にキャラバンを目覚めさせたのと同じあの恐ろしい遠吠えが何度も何度も聞こえた。いつも霧の中から、しかし突き止めるには遠すぎる位置から。傭兵たちは仲間同士で悪態をつき、文句をつぶやきながら隊列を詰め、身を守ろうとした。しかし攻撃されることはなかった。キャラバンが重い足取りで進むにつれ、彼らは遠吠えはリーチの者によるただの悪質ないたずらに過ぎないと確信するようになった。リーチの野蛮なクランは、決して道を行く6人のクラウン・レッドガードをあえて襲ったりはしない。このような熟練の戦士が不意をつかれるようなことは2度とない!

霧が立ち込めた晩、ハクミル隊長は傭兵たちに交代で寝ることにすると告げた。夜明けが来るまで3人が眠り、3人が起きているのだ。彼の計画は妥当なもののように思えた。霧に満ちた晩の最も暗い時間に、狼のデイドラじみた遠吠えが再び夜を切り裂くまでは。キャンプ中の全員がすぐに目を覚まし、ハクミル隊長が闇の中の兵士たちに声をかけた。だが返事をする者はなかった。瞳に激しい怒りをたたえたこのバーガマの刃は、残った2人の兵士に如何なる状況であろうと決してキャラバンを離れないように命じ、自らの巨大な剣を抜いた。ハクミルはデイドラの狼と対峙し、仲間の運命を知るため霧の中へと勢いよく歩いて行った。

そしてこの勇敢なハクミル隊長だが、皆が待ち望むこの物語の語り手は不幸にもこうお知らせしなければならない。決して戻ることはなかった。

翌朝も霧は残り、再び強い雨も加わっていた。間もなく頑丈なレッドガードの荷馬車の車軸の1本がまっぷたつに折れた。どうしてそんなことが有り得るだろうか。荷馬車は出発前に、ドラゴンスターで修理し強化してあったのに!一体なぜこんなことに?嵐と、霧と、この幽霊じみた奇妙な狼に悩まされながら2週間もとぼとぼ歩くしかないということが予想されると、クラウンの商人たちは荷馬車を放棄して、さっさと馬でソリチュードに帰るという決断をした。「カーペットやシルクにはまだ生きている人間ほどの価値はない!」と、彼らは言い切った。

1頭の馬に2人がまたがり、回収できた所有物を乗せた最後の馬と共に一行が荷馬車を離れると、すぐに恐ろしく深い霧が晴れたと言う。緊迫した4日間の後に、生存者たちはソリチュードに到着した。放棄した財産は失われたが、それ以外は略奪もされず、怪我を負うこともなかった。

だが、ハクミル隊長と消えた6人の勇敢な傭兵の消息は不明なままだ。デイドラのような狼の記憶だけが残り、その遠吠えを聞いた者全員の脳裏に焼き付けられている。嵐と霧で作られた狼が夜中に不用心な者を奪い去って消えた。その犠牲者を、ドルアダッチ山脈の影に連れ去ったかのように!

ドルアダッチの怖い話、第二巻Scary Tales of the Druadach, Book 2

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

次に話したい物語は、ドルアダッチ山脈の影を舞台にした病と裏切りの物語だ。恐怖を味わってくれ!

* * *
カースワステンの滴る病

北リーチにある包囲された街カースワステンは何世代も残り続けてきたが、その支配は頑健なノルドと油断ならぬリーチの民との間で、センシャルの賭博場における金貨以上に何度も持ち主を変えてきた。この街に関して、心騒がす裏切りの物語はアリクルの砂粒のようにありふれたものだが、ある嘆きと死の物語は他の全ての物語を凌ぐ。それがカースワステンの滴る病の物語である!

20年ほど前、リーチの民は再びカースワステンのノルドを追い払い、家を焼き、カースワステンを掌握した。このリーチのクランは飛び抜けて残虐で、カースワステンへの侵入を試みた勇敢なノルドは、リーチの民と獣の軍隊を相手にすることになった。聞くところによれば、このリーチの民は凶暴なウェアウルフと手を組んだという!

この街は1年ほどリーチの手に留まり続けたが、それも高名なノルドの略奪者、ウルガー・ストーンビアードが鴉の手という名のみが知られる強大なリーチ魔女に会うまでのことだった。一説によればウルガーと鴉の手は最初戦場で出会ったが、どちらも相手を仕留められなかったという。2日間の戦闘の後、彼らは停戦して食事を共にした。そこでウルガーは、鴉の手とカースワステンの向こう見ずなウェアウルフ戦士クランが別に良好な関係にはないことを知った。そしてウルガーの戦士たちによれば、彼はこの悪魔の女と闇の取引を結んだ。

鴉の手はカースワステン手前の平原に乗り出し、ウルガーの戦士たちに守られて、多くの不浄な犠牲を捧げた。美しくも忌まわしい言葉を詠唱しながら、彼女は墨汁のように黒い雨を降らせた。妖術の嵐はカースワステンとその建物を汚れで覆った。間もなく、叫び声が上がり始めた。
門が開かれ、リーチの戦士がよろめき出てきた。真っ黒な雨によって体の肉が燃え上がり、金切り声をあげながら!リーチの強力なウェアウルフでさえ病にかかり、苦悶の吠え声は傷ついた獣のようだった。配下の戦士の言葉によると、ウルガーはこの虐殺の報を聞いて喜び、街へ突入してリーチの生き残りを始末せよと命じた。

だが頑健なノルド戦士の集団でさえ、漆黒の妖術に覆われた街に足を踏み入れるのは躊躇した。鴉の手はウルガーに対して漆黒がリーチの民とウェアウルフにしか危害を加えないと保証したが、ノルドにはリーチの魔女の言葉を信じる気などなかった。街の叫び声は彼らを骨の髄まで震え上がらせた。配下の戦士がこのように怯えるのを見て、ウルガーは全員を臆病者と罵り、悠々と街に踏み入って、立っているのもやっとの状態で挑もうとしたリーチの民を切り伏せた。ウルガーが街の中心に立ち、斧が怖いかと生き残りに叫んだその時、漆黒の雫が一滴、彼の眉に落ちかかった。

漆黒の雫はウルガーの兜の表面で獣のように大きくなり、彼の頭を幕のように覆った。すぐにウルガーの体全体が漆黒で覆われ、ノルドの話では、死そのもののように黒い笑みを浮かべた。

裏切りを目撃した他のノルドたちは鴉の手に襲いかかり、指揮官を乗っ取った狂気の魔女を倒そうとした。しかしリーチの魔女が笑うと、ノルドの斧は空を切った。大鴉の群れが空に飛び立ち、カーカーと鳴き声が上がった。そして今や漆黒に覆われた指揮官が、その斧から疫病を滴らせながら向かってくるのを見て、ノルドは戦場から逃げ出した。

現在も、漆黒に包まれた巨大な戦士がドルアダッチ山脈の影をうろついているのを見たという話を耳にする。その手に持つ斧は肉も鋼鉄も溶かす雫を滴らせ、通った道には鴉の手の笑い声がついてくるという。彼は顔に笑みを浮かべた死神であり、道を塞ぐ者全てを切り刻む。それがカースワステンの滴る病だ!

ドルアダッチの怖い話、第三巻Scary Tales of the Druadach, Book 3

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

読者のみなさんにお伝えする物語も、これが最後になった。これは魔女と魔術に関する話だ。こうした物語が全てそうであるように、今回のものもドルアダッチ山脈の影が舞台になる!

* * *
肌が赤に染まった姉

この物語は私を斧で叩こうとすることなく話してくれる、わずかなリーチの民が教えてくれた。これは全ての物語の中で最も背筋の凍るものだ。老女は2人の姉妹について語った。1人は金髪、もう1人は黒髪で、どちらも最高クラスのリーチの魔女だった。老女によれば、どちらも力への渇望により正気を喰い尽くされてしまった。

色白で年長のリーチ魔女タンシアは、その年齢と強大な風の魔術によって選ばれ、クランを率いることになった。しかしタンシアはすぐに予想もせぬ挑戦者と争うことになった。1歳下の妹ウレシアである。彼女はタンシアの風の魔術と同じくらい強力な、水の魔術の使い手だった!

クランの中には姉妹のどちらにも戦いで適う者がいなかったが、姉妹が殺し合う様を見るのに耐えられる者もいなかった。タンシアとウレシアはクランの誇りであり、数世代で最強の魔女たちだった。クランの誰もが、これほどの逸材を失うことを望まなかったのだ。だがクランのメンバーたちが姉妹にどれほど懇願しても、タンシアとウレシアはどちらがクランを導くか、意見を一致させることはできなかった。結局、クランはこの膠着状態を解消する唯一の道に落ち着いた。驚異的な魔術の課題を解くコンテストである!

こうしてタンシアとウレシアは、魔術の力を試す様々な妙技を披露した。技が行われるたびに激しさを増していった。タンシアは荷馬車を動かすほど強力なつむじ風を召喚したが、妹が木を根ごと押し流すほど強力な水流を召喚したのでうろたえたという。ウレシアがクランの水をハチミツ酒のように甘くしたかと思えば、タンシアはクランの狩人を空気のように軽くして、空を階段のように駆けられるようにした。

老女によると、最終的に常軌を逸してコンテストを激化させてしまったのはタンシアだった。妹に勝とうと必死になったタンシアは、デイドラ公と約束を交わし、クランを指揮する力と引き換えに70年の奉仕を申し出た。しかしデイドラとの取引の常として、デイドラ公はタンシアが要求した以上のものを与えた。新たな族長が指名される前日、タンシアがクランのキャンプに戻った時、白かったタンシアの肌は血のように赤く変わり、両目は小さな炎のように輝いた。そしてクラン全員の前でタンシアは大気を沸騰させ、妹を生きたまま焼き殺した。

裏切られたクランは恐れをなし、散り散りになって逃げ去った。しかしリーチの老女によれば、赤い肌と炎の目を持つ姉は今でもかつてこのクランがいた荒野を放浪しており、人を見れば叫び声を上げ、この孤独な生を終わらせてくれと戦いを挑んでくるという。クランも家族もいない、孤独で陰気な終わりなき生を。

だが赤い肌の姉が持つ力は絶対的で、誰も彼女を倒すことができない。彼女は自分が交わしたデイドラの取引に囚われたまま、誰にも対抗できない力と、誰にも終わらせられない不死の生という呪いを受けているのだ。姉妹のうちウレシアは運がよかったと老女は言った。自由なまま死ぬことができたから。

ドルアダッチ山脈の動植物Flora and Fauna of the Druadach Mountains

帝国植物学者、テルラヴェス・デカニス 著

ドルアダッチ山脈は旅人に人気がない場所のままだ。多くの人に恐れられている。リーチの慣習を知らない人々は、断崖に潜むクランや山道の至る所にある暗い洞窟を恐れ、徹底的にこの場所を避ける。実に残念なことだ。何故なら最も美しい景色が、この力強い山岳地帯にはあるからだ。リーチの民は、おそらく彼らの領域に存在する動植物について、我々が得られる知識よりも多くのことを知っているだろう。私が得た知識は、主に周辺部に暮らす人々から、日記の余白に荒々しく書きなぐられた「茂みに隠れて息を潜めろ!」というメモと共に教わったものである。私はこれまでに記録されていなかった植物や動物について知りたいと願っていたが、恐怖のあまり深い探求ができなかったのではないかと感じている。いずれどなたかが加筆してくれることを望みつつ、私はここに記録したことを書き記した。

* * *
リーチの植物

ジュニパーベリー
まるで真珠のように美しく輝く白いベリーは、自然の環境下に数多く育ち、ドルアダッチ山脈を走る山道に無秩序に広がっている。危険を承知で摘みに行く勇気ある人々は、よく見かけるこのベリーにさまざまな使い道を見出している。ハチミツ酒に風味付けしたい場合であれ、甘い菓子を作りたい場合であれ、各種の薬用チンキ剤の材料として使う場合でさえあっても、このベリーは万能であり豊富に実る。

垂れ苔
ずっと垂れ苔の生えている光景には奇妙に引き付けられてきた。洞窟の入り口や岸壁を美しく覆う姿。世界における彼らの存在には、何か不思議で魔法的なものがある。ドルアダッチ山脈にはその湿度が高い気候により、驚くほどの数が生育している。

モラ・タピネラ
この風変りなキノコは倒木や腐敗した切り株などで発見される。平凡な外観ではあるが、私は彼らを美しいと思う。彼らは死がその手を触れた場所に育ち、それがもたらす静寂にひるむことはない。私はその執念を称賛する。彼らはドルアダッチ山脈における最も魅力的な菌類の見本とは言えないが、私の一番のお気に入りであることは確かだ。

* * *
動物

雪熊
この本で恐るべき力を持つ雪熊について触れなかったとしたら、それは私の怠慢だろう。ドルアダッチ山脈の高く雪深い山頂は、この巨大な野獣にとって完璧な生息地である。しかしながら、彼らの愛らしい見た目に騙されてはいけない。雪熊はより低い地域に生息する同等の生物と同じくらい危険だ。彼らの毛皮はその白い光沢と柔らかさ故に極めて人気が高いが、皮を入手するための対価は、この大胆不敵な観察者が積極的に支払おうとは思わないものである!

リーチメア
リーチの外でこれほど忍耐強い馬の血統は見つけられないだろう。リーチメアはかつては野生種だったのだろうと私は推測する。山脈の谷を突き進む彼らの姿はどれだけ素晴らしかったことだろう。しかし、手なずけられたからといってその非凡さが損なわれたわけではない。リーチ人の闘志と不屈の精神は、この堂々とした動物に具現化されている。時に彼らは気難しく、他者に対して極めて強い不信感を抱くことがある。この項目のための観察で、手足を1本も折らずに済んだのは幸運だった!リーチメアは愚か者には容赦しないのだから。

ハグレイヴン
私は自分の書いたものが、いつの日か旅人にドルアダッチ山脈を訪れ、自分の目でこれらのものを見てみようという気を起こさせる可能性があることについて考慮しなければならない。だから、私にはあなた方に警告をする責任があるのだ、読者諸君ん。もし自分がドルアダッチ山脈にいることに気づいたら、冷静さを失わないように。自然の土地にある以上の危険がそこにはある。私はこの記録にハグレイヴンも含めたいと思っていた。何故なら彼らもこの記録の一部だからだ。私は皆さんがハグレイヴンを見たことがなく、また見る理由もないことを祈る。だが、もし鳥のような性質を持つ恐ろしい老婦人に偶然出会ったら、自分が差し迫った危険に直面していることに気づいて欲しい。観察の時間は終わり、今や逃げるべき時なのだ。

ドワーフ・ディナスターについてOn Dwarven Dynastors

ドゥエマー古遺物研究者、レイノー・ヴァノス 著

大半のアマチュア探検家は、旅のどこかで何らかのドゥエマーの機械を見たことを自慢するだろう。そうした物語に出てくるのは決まってドワーフ・スパイダーやドワーフ・スフィアで、型通りの退屈な代物だ。アニムンクリが壁から飛び出し、両手の爪を振り回してくる話だ。こうした物語はドゥエマー技術の表面に触れているだけだ。最も奥深くの遺跡には様々なドワーフの機械が動き回っている。私たちが発見したものは、彼らの機械仕掛けの下僕のほんの一部でしかないと言っても過言ではない!

一例として、ディナスターを挙げよう。この巨像を自分の目で見たことはないが、いくつか部分的な描写を見つけている。記述だけに頼って正確なサイズを判断するのは難しいが、おそらくディナスターの背丈はドワーフ・センチュリオンを越え、横幅はゴールドコーストの交易馬車に匹敵する。他のアニムンクリと同様、ディナスターは有機体の形状を模倣しているようだ。この場合、角の生えたベヒーモス・ショークである。最も興味深いと思うのは、中核をなす装置だ。

設計図に関する私の理解が正しければ、ディナスターは運搬器具の一種として使われていたようだ。中心部の甲殻内に複数のドワーフ・スフィアが格納されていた。その時になればスフィアは隠された射出口から飛び出し、おそらく遭遇した敵を倒すために連携して戦ったのだろう。この装置はドワーフの基準からしても、めまいがするほど複雑に見える。

ここから導かれる問いは、なぜドゥエマーがこんな機械を作ったのかということだ。他のドワーフの下僕と異なり、ディナスターが戦争のため特別に作られたことは明らかであるように思える。私たちはレッドマウンテンの噴火以前にタムリエル地下で起きた戦いについて、未だわずかなことしか知らない。これよりさらに大きな機械が、ドゥマクの敵を探して遺跡をうろついていてもおかしくない。探索がさらに深くまで進展し、この古代の謎が今まで以上に明らかになることを期待しよう!

ナミラの踊りNamira’s Dance

リーチの儀式の観察
文化書記、ゲンマ・パンフェリウス 著

リーチの儀式について直接の目撃報告は少ない。大抵の場合、よそ者がこうした儀式に参加することは激しく忌避され、見学さえ許されない。私がリーチとその鋭く不屈の人々について発見したことがあるとすれば、それは彼らがドルアダッチ山脈の崖や谷間に人知れず咲く野生の花のように、互いに全く異なっているということだ。

多くのリーチのクランはよそ者が自分たちの生活に入り込むことを許さないが、ボールドクロウ・クランは私が学者だと名乗ると丁重にもてなしてくれた。彼らはデイドラ公ナミラを称える儀式に私を参加させてくれた。時として霊魂の女王、あるいはより劇的に死の女神と呼ばれることもあるナミラは、暗闇と終末の霊魂とみなされている(ただしリーチの民は、ナミラを再誕を司る霊魂ともみなしている)。リーチの民はナミラを自然界における強大な力と考えている。彼らのデイドラ崇拝は、例えばタムリエルの他の地域の人々が神々を崇拝するのと意味合いこそ違うが、彼らが霊魂と呼ぶ存在はリーチの民の生活に重要な役割を果たしている。リーチの民はデイドラとの間に持ちつ持たれつの関係を築いており、日々の課題や困難の助けを得るため、合意を形成しているのである。

ボールドクロウはナミラを深く尊敬している。彼らはナミラが死と生の両方に及ぼす作用を、古代の儀式によって称える。この儀式の光景は言葉で描写できるものではないが、私が目撃したものを記述するよう努力してみる。

ナミラの踊りはボールドクロウ・クラン全員の参加を必要とする。最年少の子供から最年長の狩人までの全ての成員が、空き地の中心にある大きな炎の周囲に集まる。多くの者は暗い色の服を身に着け、暗い色の絵具を顔から喉にかけて塗りつける。しかしそれ以外の人々は全裸で現れる。彼らが世界に生まれてきた時の姿を象徴するためである。踊れる者は一斉に踊り、死と生まれ変わりを目まぐるしく表現する。これは恐ろしく、また美しくもある。

この踊りの最中には血が流されるのだが、何が暴力を加えているのかはよく分からなかった。それに「暴力」は言い過ぎかもしれない。炎のきらめきの中に捉えられた血は溶けたルビーのようで、美しいと言ってもいいくらいだった。ある者は血の色を両目の下になすり付け、別の者は土に手形を押しつけた。彼らは血を恐れるだけでなく、血を称えてもいるようだった。おそらくそれがナミラの踊りの核心にあるのだろう。

私自身に関して言えば、デイドラ公についてどちらかというと伝統的な視点を持っていた。特にナミラについてはそうだ。それは恐怖と不快感が混ざった視点であり、リーチの民には無縁な視点のようだ。彼らはナミラを肯定的に捉えており、私が見た儀式は美に満ちていた。リーチの出身でない私たちにとっては奇妙に聞こえるかもしれないが、自分の目で見ればきっと同意してもらえるだろう。この地とその人々に、愛が欠けているわけではないのだ。

ノルドの子供の日記Nord Child’s Journal

父さんは行かなきゃいけないって言ってる。ここは僕たちの土地じゃなくって、自分たちの土地だって言う悪い人たちがいるんだ。僕にはよく分からない。ここがその人たちのなら、どうして僕たちはここに住んでるの?ここが誰か他の人の家だなんて誰も教えてくれなかった。考えると悲しくなる。僕はここで暮らすのが好きだけど、父さんはいつも人のものを取ったらいけないって言ってる。それって、人のだって知らなかったとしてもダメってことかな?

どうして悪い人たちと話してみようとしなかったのかな。それはあの人たちが危険だからで、僕たちは攻撃される前に出て行かなきゃいけないんだって父さんは言う。でも、「ここがあなたたちの家だって知らなかったんです」って説明したら、絶対に親切にしてくれると思う!父さんは僕があんまり子供だから分からないんだって言うけど。

僕は行きたくない。悪い人たちと一緒にここに住めたらいいのに。あの人たち、どのくらい悪いのかな?もしかしたら、僕みたいな子供がいて、僕と友達になれるかもしれない。

ファルクフィルのメモ、1ページ目Falkfyr’s Notes, Page 1

3日目:私はファルクフィル・スノウメイソン。ソリチュードのハイルフラルド王の臣下だ。これはきっと最後の報告になると思うが、我が王を失望させるつもりはない!

私の任務は、我が国境で問題を起こしているリーチの民の略奪者の一団を追跡することだった。リーチの民はカースワステンを通り越して西に逃れ、その後北に向かった。私は彼らを山の中まで追ったが、ブリザードに阻まれてしまった。洞窟に避難しようとしたとき、足元の地面が崩壊した。

2日間ほど救助を待ち、今は食料が尽きかけている。この巨大な洞窟の中に扉を見つけたものの、開くことができない。コンパスはまだ機能している。だから私は西へ向かい、高い土地を探そうと思う。多分他の出口を見つけられるだろう。

万が一出口を見つけられなかった時のために、この報告書はここに置いて行く。もしこれを見つけたら、ファルクフィル・スノウメイソンが任務を放棄しなかったことを知ってくれ!

ファルクフィルのメモ、2ページ目Falkfyr’s Notes, Page 2

4日目:この洞窟には終わりがないらしい。おまけに巨大な虫がはびこっている!子供の頃、祖父がモーサルの沼にいる巨大な虫の話をしてくれたが、私は全く信じなかった。今、その虫がどこから来るのかが分かった。

食料も尽きてしまったが、もっと重要なのは水が尽きそうだということだ。4日間の偵察任務用の1週間分の物資では、穴に落ちた後の分はまかなえない。だが、ここから地下に川が見える。水筒に補充したいなら、あの巨大虫の前をこっそり通り抜ける以外に選択肢はない。

もし成功したら、別のメモを川の横に残そう。失敗したら、ファルクフィル・スノウメイソンは両手に斧を持って戦って死んだと理解してくれ!

ファルクフィルのメモ、3ページ目Falkfyr’s Notes, Page 3

5日目:今、真実が分かった。この巨大な洞窟は昔話の地下世界、ブラックリーチだ。私、ファルクフィル・スノウメイソンはここに足を踏み入れた最初の男だ!

水筒に水を汲んでいたら巨大な虫に見つかった。それを殺したあと、あることを思いついた。私は体中に虫の膿のような液体を塗り付けた。それ以後、他の虫は寄ってこなくなった。思ったとおり、奴らは臭いで狩りをする!

本当にここで生き延びられるんじゃないかと思う。ソリチュードに戻ったら私は伝説になるぞ。人々はブラックリーチを発見した斥候、ファルクフィル・スノウメイソンの銅像を建てるだろう!

もう寝よう。明日は上にあるドワーフの遺跡で食べ物を探すつもりだ。必要に駆られるまでは、そこら中に生えてるキノコを試すような危険は冒したくない。今ではあきらめる気は全くなくなった。

ファルクフィルのメモ、4ページ目Falkfyr’s Notes, Page 4

6日目:ドワーフどもは街を固く閉じたままにしやがった。入る手段も鍵をこじあけるものもない。中に食料があるとしても、私には食べることができない。

今朝、灰色がかった白い色のキノコを1つ食べた。生焼けの肉みたいな味だった。今日は休んで、死なないか様子を見る。死ななかったら、必要な食料は十分にあるってことだ!

7日目:キノコは毒じゃなかった。必要なら何だってあさってやるぞ!私は生きるんだ!ブラックリーチの奥深くで生き延びた話は、語り草になるだろう!

川を渡った南に、木のようなキノコの林が見える。今度はあっちの方に行ってみよう。

ファルクフィルのメモ、5ページ目Falkfyr’s Notes, Page 5

9日目くらい

食べられるキノコキノコ
大きくて灰色は肉のような味
小さくて青はおいしいおやつ
緑に光るのはとても甘く歌う

ここにあるキノコは全部食べられる。偉大なるウームがそう言ってる。偉大なるウームは私が南に行くことを望んでいる。私は南へ行こうと移行と以降と思う。

探さなきゃならないものがあったはずなのに、何だったか思い出せない。まあいい。今では全部の根が私の名を知っている。

ファルクフィルのメモ、6ページ目Falkfyr’s Notes, Page 6

?日目

私は選ばれし者だ。偉大なるウームは私を胞子にし、そして、私、スノウファルク・メイソンルートは、永遠に生きる。根は真実を知っている。根、ウーム、歌、全てつながっている。これはとても深い!

下の方に扉があるが、そっちは私の行く道じゃない。今、偉大なるウームは私に北について告げている。悪臭と虫の源だ。宝物はそこに捨ててもいい。何故ならもういらなくなるから。私は胞子で、まもなくウームになる。私は全てのウームになる。

家を見つけ、根を広げる。

ファルクフィルのメモ、7ページ目Falkfyr’s Notes, Page 7

何日目か…どうでもいい。

空気が紫を歌い、血が石を湿らせる。偉大なるウームの胞子が根を張る。もうそんなに長くはかからない。

私は土を食べ、闇を飲む。私は今、家にいる。私たちが家だ。

殻が砕けるが、素早く動く者たちは気に留めない。それは中にある、そして準備できている。

語れ、偉大なるウームよ! ルートメイソンについて語れ! もう一度、葬られた夢について私に語れ!

成長する時が来た。

ファルクフィルの完成した報告書Falkfyr’s Complete Report

3日目:私はファルクフィル・スノウメイソン。ソリチュードのハイルフラルド王の臣下だ。これはきっと最後の報告になると思うが、我が王を失望させるつもりはない!

私の任務は、我が国境で問題を起こしているリーチの民の略奪者の一団を追跡することだった。リーチの民はカースワステンを通り越して西に逃れ、その後北に向かった。私は彼らを山の中まで追ったが、ブリザードに阻まれてしまった。洞窟に避難しようとしたとき、足元の地面が崩壊した。

2日間ほど救助を待ち、今は食料が尽きかけている。この巨大な洞窟の中に扉を見つけたものの、開くことができない。コンパスはまだ機能している。だから私は西へ向かい、高い土地を探そうと思う。多分他の出口を見つけられるだろう。

万が一出口を見つけられなかった時のために、この報告書はここに置いて行く。もしこれを見つけたら、ファルクフィル・スノウメイソンが任務を放棄しなかったことを知ってくれ!

* * *
4日目:この洞窟には終わりがないらしい。おまけに巨大な虫がはびこっている!子供の頃、祖父がモーサルの沼にいる巨大な虫の話をしてくれたが、私は全く信じなかった。今、その虫がどこから来るのかが分かった。

食料も尽きてしまったが、もっと重要なのは水が尽きそうだということだ。4日間の偵察任務用の1週間分の物資では、穴に落ちた後の分はまかなえない。だが、ここから地下に川が見える。水筒に補充したいなら、あの巨大虫の前をこっそり通り抜ける以外に選択肢はない。

もし成功したら、別のメモを川の横に残そう。失敗したら、ファルクフィル・スノウメイソンは両手に斧を持って戦って死んだと理解してくれ!

* * *
5日目:今、真実が分かった。この巨大な洞窟は昔話の地下世界、ブラックリーチだ。私、ファルクフィル・スノウメイソンはここに足を踏み入れた最初の男だ!

水筒に水を汲んでいたら巨大な虫に見つかった。それを殺したあと、あることを思いついた。私は体中に虫の膿のような液体を塗り付けた。それ以後、他の虫は寄ってこなくなった。思ったとおり、奴らは臭いで狩りをする!

本当にここで生き延びられるんじゃないかと思う。ソリチュードに戻ったら私は伝説になるぞ。人々はブラックリーチを発見した斥候、ファルクフィル・スノウメイソンの銅像を建てるだろう!

もう寝よう。明日は上にあるドワーフの遺跡で食べ物を探すつもりだ。必要に駆られるまでは、そこら中に生えてるキノコを試すような危険は冒したくない。今ではあきらめる気は全くなくなった。

* * *
6日目:ドワーフどもは街を固く閉じたままにしやがった。入る手段も鍵をこじあけるものもない。中に食料があるとしても、私には食べることができない。

今朝、灰色がかった白い色のキノコを1つ食べた。生焼けの肉みたいな味だった。今日は休んで、死なないか様子を見る。死ななかったら、必要な食料は十分にあるってことだ!

7日目:キノコは毒じゃなかった。必要なら何だってあさってやるぞ!私は生きるんだ!ブラックリーチの奥深くで生き延びた話は、語り草になるだろう!

川を渡った南に、木のようなキノコの林が見える。今度はあっちの方に行ってみよう。

* * *
9日目くらい

食べられるキノコキノコ
大きくて灰色は肉のような味
小さくて青はおいしいおやつ
緑に光るのはとても甘く歌う

ここにあるキノコは全部食べられる。偉大なるウームがそう言ってる。偉大なるウームは私が南に行くことを望んでいる。私は南へ行こうと移行と以降と思う。

探さなきゃならないものがあったはずなのに、何だったか思い出せない。まあいい。今では全部の根が私の名を知っている。

* * *
?日目

私は選ばれし者だ。偉大なるウームは私を胞子にし、そして、私、スノウファルク・メイソンルートは、永遠に生きる。根は真実を知っている。根、ウーム、歌、全てつながっている。これはとても深い!

下の方に扉があるが、そっちは私の行く道じゃない。今、偉大なるウームは私に北について告げている。悪臭と虫の源だ。宝物はそこに捨ててもいい。何故ならもういらなくなるから。私は胞子で、まもなくウームになる。私は全てのウームになる。

家を見つけ、根を広げる。

* * *
何日目か…どうでもいい。

空気が紫を歌い、血が石を湿らせる。偉大なるウームの胞子が根を張る。もうそんなに長くはかからない。

私は土を食べ、闇を飲む。私は今、家にいる。私たちが家だ。

殻が砕けるが、素早く動く者たちは気に留めない。それは中にある、そして準備できている。

語れ、偉大なるウームよ!ルートメイソンについて語れ!もう一度、葬られた夢について私に語れ!

成長する時が来た。

ペンターチ・ドラルジュルへの手紙Letter to Pentach Draljura

ペンターチ・ドラルジュル

ラダ・アルサランがあなたは頼りにできると保証してくれた。闇の予言で果たす役割のため、ゴーストソングに準備をさせるまで何年もかかった。この期に及んでつまらない失敗を許すつもりはない。

ナサリに時が来たことを納得させた。闇の予言に必要な儀式を行わなけばならない時が来たと。彼女とクランが妨害されないようにするため依頼することは、何でもやって欲しい。彼女の影響力は強いけど、実際に何をするつもりかを知ったらクランは尻込みするでしょう。必要なら最後の一歩を手助けするように。ナサリが扉を封じたら、全員を墓地から退避させること。

私は待っている。儀式が闇の心臓を目覚めさせたら、私はそこにいなくてはならない。ゴーストソング・クランが私たちの目標への最も確かな道であることを忘れないで。何者にも、私のペットの魔女を邪魔させないように。

レディ・ビレイン

マスター・ピシスの日記Master Pythis’s Journal

彼は何も疑わない。彼を騙して、私が装置を確保するのを手伝わせるのは簡単だった。私自身の手では不可能だった。遺物に与える損傷についての便利な嘘は、無能な腰抜けどもが私を追うのを阻止してくれるだろう。できれば、これが音調の魔法から受けるあらゆる潜在的な影響に対する言い逃れにもなるといいが。遺物の力を最大限利用するためには、音調の混乱をとても大きく産み出さなければならない。

運が良ければ、サイジックが遺物の紛失に気づくまでに、カリスは完璧な犯人になっているだろう。彼は報いを受ける。その後はこの遺物から手に入れた新しい力で、ご立派なサイジック会に、彼らが本当はどれほど私より劣っているか、見せつけてやる。

マルカルスにて傭兵求むWork for Hire in Markarth

多数の問題がリーチの民を悩ませている。自分がもっとも勇敢で強く、金と栄光を山積みにするためには計り知れない危険に向き合うことも厭わない冒険者だと思うなら、リーチの者は仕事を提供する。

詳しくは、マルカルスの街にいる執政官カルデアを探してほしい。

マルカルスのインペリアルAn Imperial in Markarth

アルドの行政官、執政官カルデア 著

ロングハウス帝の時代からマルカルスは大きく変化したが、変わらない物事も多い。モリカル皇帝がカダッチを総督に指名した後、私は最初の任務としてここに派遣された。

シロディールからマルカルスへの移住は、思ったほど大きな衝撃をもたらさなかった。リーチ自体は大きく異なっていたが、故郷のしがらみは都市の中にいても常に明らかだった。私はささやかながら秩序を維持するために派遣された。文書や行政、この場所を治めるための様々な任務を処理するために。ある意味では私がここにいる目的自体が、ホームシックの防止に役立ったと言えるかもしれない。

マルカルスは住民にとって常に捉えどころのない場所で、その古代の技術は魅力的であると同時に、圧迫感を伴ってもいる。リーチには野生的で無秩序という評判があるが、マルカルスには今でもドワーフの緻密な意匠が残っている。秩序立てられ細密だが、時を経てそれとはまるで反対の人々が占めるようになった。

帝国が倒れた後も留まるほど自分がこの場所を好きになると誰かに言われていたら、私は面と向かって相手を笑い飛ばしていただろう。だが実際にそうなった。カダッチがアルド・カダッチになった時、彼が個人的に私の残留を求めたのも一因だった。彼を相手に断るのは難しく、しかも私は常に自分の事務能力を評価してくれる者に弱かった。

私がリーチの民をこれほど気に入るようになったのは、それが理由かもしれない。彼らの多くは読み書きができないし、学ぶ意思もない。そのため私は、彼らにとって欠かせない存在である。この立場を喜んだことは否定しがたい。

しかしインペリアルとしてマルカルスで暮らすことが大変でないとは言わない。誰もが私の仕事を評価してくれるわけではない。やって来るクランの中には、自分たちの仲間でさえ信用しない者もいる。彼らと異なる者はなおさらだ。記録をつけ、彼らと話して問題を解決する手伝いをするのが私の役目だが、大変な不利を抱えつつ働かなければならない。私は脅迫され、侮辱され、憎悪されてきた。どれだけ長くここで働いても、リーチには自分たちの問題に干渉するインペリアルを信用しない者が未だにいる。

だが私はこの地が好きだ。人間とクランの個性が奇妙に混ざり合うマルカルスが好きだ。アルド・カダッチと働くのは楽しく、必要とされているという感覚も楽しい。この地と民への献身にとって、解決できない困難など存在しない。

マルカルスの暴君についての報告Report on the Despot of Markarth

ストームヘヴンのレディ・ナイリーン・デヴィエリン 著

陛下のご下命により、私はマルカルスの暴君宛てに苦情を届け、彼が我々の国境を襲撃するクランの制御に意欲を見せるかどうかを見極めるためマルカルスに参りました。我々の交渉における困難な問題についてまとめた報告書はすでにウェイレストに送付済みです。ですが、どのような男がリーチを統治しているのかを理解することは、宮廷にとって有用であろうと思われます。マルカルスの暴君は教養のない軍人ではありません。また、彼をそのように扱わないよう注意する必要があります。

まずは、ブラック・ドレイクのカダッチが現在の地位についたいきさつについて、改めてお話するところから始めさせていただきます。その名が示すとおり、カダッチはロングハウス帝ダーコラクの親族にあたります。若い頃、ダーコラクの次男でありロングハウス朝第二代皇帝モリカルのリーチ衛兵を務めるため南に向かい、若くても戦えることを示しました。シロディールに滞在中、カダッチはインペリアルの協力と軍事訓練を受けました。モリカルが徐々に落ち着きを失くしていく母国の各クランに対して、ある程度帝国の権威を確立する必要があると考えた時、彼はその任務に信頼のおける血族を指名することを選び、カダッチをマルカルスに送り返しました。

帝国法の全てを自由なリーチの民に強いるつもりではないことをクランの族長に再認識させるため、モリカルはカダッチの権限をマルカルスと街を直接取り巻く土地に制限しました。この結果、カダッチはマルカルス内の秩序を維持するに留まり、それ以外は各クランの統治に任されることとなったため、クランの族長たちは納得しました。モリカル皇帝の残った統治期間、カダッチ総督は効果的にマルカルスを管理し、レオヴィック皇帝の不穏な統治期間を通してその地位を維持しました。

この期間に、カダッチはリーチ流の支配を敷きました。採決は迅速で野蛮であり、マルカルスの暴君と呼ばれるようになったのです。

レオヴィックが倒され、残ったリーチの民がシロディールから撤退すると、カダッチは自らの名において権力を獲得し、かつてのリーチの民の称号「アルド(砦の王)」を手に入れました。次に彼は自身のクランを残忍な手法で粛清し、主導権を脅かす可能性のある、残存するブラック・ドレイクを全て殺害か追放しました。いずれにしても15年に及ぶマルカルスの支配は、自らの指揮下にある統制のとれていない戦士を、王として支える覚悟のある忠実な軍隊に育てる機会をカダッチにもたらしました。

カダッチはアルドとして、「クランではなく、リーチを所有している」ことを主張しています。各クランが他の王を選ばず、必要な時要請に応じる戦士がいる限りにおいて、彼は他のクランを支配し、彼らの問題に干渉するつもりはありません。一部に嫌々ながらというケースもありましたが、リーチのクランは彼がマルカルスを統治することに同意しています。如何なるクラン、または有効と思われるクランの同盟も、カダッチの軍に挑むことはできません。自ら玉座につき、総督の称号を放棄してからの5年間で、暴君カダッチはゆっくりとマルカルスにおける権力を強化し、かつての要塞を簡素な都市国家、自由で独立したリーチのための首都へと変貌させました。

それでは、カダッチがどのような男なのかという話ですが。彼を説明するのに最も適した言葉は「現実的」であると考えます。彼は自分の力が確信できない限り、注意深くリーチのクランが乗り気ではないことを強要しないようにしています。しかし自分の力が確信できる時は、制御できないクランを服従させるために全力を尽くすことを躊躇しません。これが、ハイロックを脅かしているクランと休戦協定を結ぶための仲介を暴君カダッチにさせるのが困難である主な理由です。カダッチは我々の国境の平和のため、彼らを刺激して自分の力に反抗させることに興味がないのです。マルカルスにおける法(のようなもの)の強制、アンダーストーンでの文書記録維持の命令、より強力な魔術結社への助言の要求、必要だと感じられた際の同盟の結成および破棄など、彼は自分の目標を達成するためなら、あらゆる手段を積極的に使います。

しかし、暴君カダッチの真の才能は、政治的計算にあります。彼はリーチの伝統を正しいものとし、またよそ者の劣ったやり方(彼の言葉であり、私のものではありません)を軽蔑しながら、リーチの民に向かって自由で独立したリーチについて語ります。ですが、この「リーチの民のためのリーチ」という大仰な話の背後で、カダッチは罠や帝国の権威の体制を利用し、マルカルスをリーチの長く血生臭い歴史の中で最初の機能的な国家に変化させたのです。また、これを認めるリーチの民はいないかもしれませんが、カダッチの権力の強化と、彼がマルカルス周辺に強制している相互的な平和は、良い方向へ向かうための、本物で長続きする変化に向けた必要な手順だと多くの者が理解しています。

外国を激しく嫌うクランがアルド・カダッチの権威を認め続けるか、あるいは反発するかは、当然ながらリーチの大きな問題です。

マルカルスの歴史:石の物語History of Markarth: A Story in Stone

アルドの行政官、執政官カルデア 著

マルカルスの物語はドワーフがこの地に定住し、地上と地下深くの双方に建物を築いた第一紀初頭に始まる。彼らはカース川の峡谷の上流にそびえる山、カースマッドの麓に新たな要塞を建設した。長い年月をかけ、ドワーフは山の心臓部からヌチュアンド・ゼルの街を削り出し、地上へ建設を続け、ついに太陽の射す世界へ顔を出した。この高い谷で、ドワーフは地上に強力な防衛設備と大きな貯蔵庫を作った。ヌチュアンド・ゼルはしばらく繁栄した。そして他全てのドワーフ集落と同様、第一紀700年に突如として放棄された。

放棄され空になった他のドワーフの街の大半は廃墟と化した。しかしヌチュアンド・ゼルには、大部分のドワーフ都市に欠けていたものがあった。地上に広がる要塞と、付随する建物である。ドワーフたちの消失から数年後、リーチの民の様々なクランがドワーフの建造物を隠れ家や要塞として、窮乏の時期に利用し始めた。第一紀930年にはこの地を訪ねた希少な旅人が、リーチの民がこの廃墟を通年占拠していたことを報告している。彼らはここをマル・カース(「カースの上」の意)と呼び、この場所に住むクラン最強の族長はアルド(「砦の王」の意)として知られた。

マルカルスはリーチの民に占拠され、皮のテントや手触りの粗い毛皮で飾られた遺跡となっていた。しかし第一紀1033年、女帝ヘストラがリーチを服従させ、支配地に加えるように命令をアレッシア帝国軍に出した。女帝の将軍はこの遠征の最初の目標をマルカルスに定め、帝国の力をリーチの要塞に叩きつけた。アルドは勇猛果敢に要塞を防衛したが、女帝ヘストラの軍団は士気が高く、指揮も素晴らしかった。一方リーチの民は組織が乱れ、共通の敵を前に団結するのが遅れた。マルカルスはインペリアルの手に落ちた。アルドの最も勇猛な戦士の多くは、降伏よりも壁から身を投げ、石を血に染めることを選んだ。

リーチを屈服させるための戦いは長く続いた。帝国の軍団はしばしばマルカルスで包囲され、壁の向こう側には赤鷲の反乱軍が待ち受けていたので、外に出ることも困難だった。だが、赤鷲がインペリアルをマルカルスから追い払うことはできなかった。彼の反乱が終結する頃のマルカルスは、要塞から都市へと変化する最初の一歩を踏み出していた。アレッシア帝国の終焉まで、マルカルスはインペリアルの支配下にあり続けた(駐屯部隊に配属されたインペリアル兵士にとっては、陰鬱で危険な任地だった)。この時期、ドワーフの貯蔵庫の多くは広間や家屋、工房に変えられた。街は現在のような外見になったが、いかなる人間の技術もドワーフが築いた壁と監視塔を改良できなかった。

150年前にアカヴィリ最高顧問が死に、インペリアルの権威が大きく低下したことで、マルカルスは再び歴史の闇に埋もれた。インペリアルの支配下でも常に反抗的だったリーチは、帝国の力が下がった瞬間に、よそ者が滅多に旅することのない場所となった。ブレトンの男爵もノルドの首長もこのリーチの街に攻め込んだが、そのたびに難攻不落のドワーフの防衛設備に撃退された。外国の侵略者がマルカルスの冷たい石に血を流し、リーチの民は独立を取り戻した。

リーチの民が再び敵対的になると、マルカルスとタムリエル他都市の交易や旅は途絶えた。その結果、マルカルスの統治者やその治世についての噂リーチの外に届くことはほとんどなくなった。しかしこの暗闇の中から、タムリエル全土を根底から揺るがす嵐が勃発した。ブラック・ドレイクと呼ばれる戦士長ダーコラクが、第二紀533年にリーチ戦士の大軍勢を招集してシロディールになだれ込み、ルビーの玉座を奪取したのである。

この動乱は多くの変動をもたらし、マルカルスはある意味で再びインペリアルの影響を受けるようになった。シロディールに入ったリーチの征服者は大量の略奪品と捕虜を故郷に持ち帰り、かつてないほど多くのリーチの民が、外国で財産を築くことを求めた。マルカルスへの道は再び賑わい、長い間忌避されて来たこの街道は、交易の恩恵で息を吹き返した。

現在、この街はアルド・カダッチの支配下にある。いわゆるマルカルスの暴君である。ロングハウス帝ダーコラク家の親戚となるブラック・ドレイク・クラン出身のカダッチは、第二紀559年に帝国の総督に任命された。その任務は街の統治だけでなく、反抗的なリーチのクラン同士の平穏を保つことも含まれた。レオヴィック帝が玉座を失うと、カダッチは帝国の称号を捨て、古いリーチの称号であるアルドを名乗った。彼は躊躇なくブラック・ドレイクの生き残りを粛正し、この街の支配を確立してライバルを黙らせた。

アルド・カダッチが反抗的な親族を街の一番高い壁から投げ落として処刑し、胸壁を血に染めたことは言っておかねばなるまい。これはマルカルスの石に刻まれた残酷な物語の、最も新しい章にすぎない。

リーチのおとぎ話Reach Bedtime Stories

語り部イサ・トルイアンド 著

語り部イサ・トルイアンド著

これらの物語は話すことに同意してくれた、様々なリーチの民から収集したものである。大半の人はよそ者に対して何を教えるのにも積極的ではなかったが、私はタムリエル中の物語を分かち合おうとしているただの語り部だと強調した。交換に興味を示す者もおり、私は他の人々から聞いた物語をリーチの民の方式で語るように最善を尽くした。揺れる炎の周りを囲んで、強い感情を込めて演じるのである。その見返りとして、私は以下に記録したリーチのおとぎ話を集められた。

* * *
小さな薄き血の者

昔々、小さな男の子がいました。男の子の父は勇敢な狩人で、息子にも同じようになってほしいと思っていました。父親は毎日少年を訓練し、追跡して戦い、殺す方法を教えました。でも男の子は心優しく、戦いや殺しに興味がありませんでした。男の子は矢にも荒野での生存術にも関心がなく、上等な服を作り、ヴァテシュランの話を聞いていました。

ある日、少年は森に行って父と練習をしていました。熊が丘を駆け下りてきて、二人を急に襲いました。熊は子供を守ろうとして襲ってきたのです。少年の父はこの大きな動物から身を守りつつ、息子に助けを求めました。でも少年は剣を握ることも、矢を削ることもできませんでした。恐ろしい熊は少年の父を倒し、父は血を流しながら、武器を取って熊を殺すよう息子に言いました。

「教えたとおりにやるんだ!」と父は命じました。

でも少年は針と糸やヴァテシュランの物語にばかり時間を費やしていました。男の子は恐怖でその場から動けませんでした。熊も話せば理解してくれるかもしれない、と少年は考えました。

「熊さん、ちょっと話を聞いてくれないか…」と少年はどもりながら言いました。

熊は怒って吠えました。熊には理解できるはずもなかったのです。熊は喉に噛みついて少年を殺してしまいました。少年は最期に、父へ囁きかけました。「お父さん、ごめんなさい。お父さんの言うことを聞いていればよかった」

だから子供たち、お父さんの言うとおりにしないと、熊に食べられてしまいますよ!

* * *
裏切りのノルド

昔、メロックというクランの族長が、皆と友達になろうとしました。ある日、ノルドが一人で馬に乗ってやって来て、取引を求めました。メロック族長はノルドを食事に招き、クランと談笑して時を過ごすよう誘いました。多くの者がメロック族長に、新参者と友達付き合いをするのはやめるよう助言しました。その男が礼儀正しく友好的であることは彼らも認めましたが、リーチの者ではないのだから、本当に理解することはできないと言いました。彼らはよそ者を信用しないよう族長に警告しましたが、この警告は聞き入れられませんでした。

メロック族長はノルドとの交流に気をよくして、次の日彼を狩りに誘いました。二人は一緒にキャンプを出て、笑いながら付き合いを楽しんでいるようでした。彼らは獲物を探して森の奥へ入っていきました。歩きながら、メロック族長はクランの古い霊魂との付き合い方や、秘密の伝統などをノルドに教えました。ノルドは愛想よくうなずき、質問を返しました。族長はノルドの学習意欲に喜びました。親友ができたと思ったのです。

二人は獲物を見つけました。メロック族長は一番お気に入りの槍をノルドに渡しました。「新たな友よ、とどめの一撃を加える名誉は君が得るべきだ」と彼は言いました。ノルドは槍を手に取りましたが、空き地に立っている鹿を殺すのではなく、槍をメロック族長の腹に突き刺しました。

キャンプでは、ノルドの仲間の戦士たちがクランを全滅させていました。族長がいなくなったので、クランには侵入者を撃退できる強さがなくなったのです。

メロック族長は倒れて血を流しながら、ノルドに質問をしました。「なぜだ?」

ノルドは残酷に笑って答えました。「お前たちは俺たちがほしいものを持っているからだ。これで、お前たちの土地を奪える」

メロック族長とクランはその日死に絶えました。族長がよそ者を信用する愚か者だったからです。どれだけ友好的に見えても、リーチの子でない者は信用できないのです。

* * *
夜の王

(注記:私はこの物語の様々な派生版を複数のリーチの民から聞いた。その大半は年寄りから。しかし全体的なテーマは同じである。ここには私が一番好きな物語を記しておく)

ずっと昔、夜の王たちがリーチを支配していました。彼らは影をさまよい、その目は血のように赤く光っていました。平原の獣は恐怖して逃げ出しました。彼らが姿を現すと、木々も身をすくめて嘆きの声を上げました。

他の怪物でさえ彼らを恐れました。

リーチの子供たちよ、気をつけて、毛布に身をくるみなさい。暗くなった後でキャンプから離れすぎると、夜の王たちに見つかるかもしれません。彼らにとって、リーチの子の血は蜜のように甘いのですよ。

リーチのクランについてOn the Clans of the Reach

帝国書記、テオフォ・ハーヴィアン 著
(第二紀568年、レオヴィック皇帝統治時代に執筆)

「ブラック・ドレイク」のダーコラクがリーチの戦士を率いてシロディールに対抗するまで、リーチの民をうなり声をあげる蛮族以外として述べた学者はほぼいなかった。タムリエルの他の人々は、リーチの者を無秩序な状態で存在する、手に負えない大規模な集団と見ている。残念ながら1世代前に、ブラック・ドレイクの戦士がその無知の代償を明確に支払わせた。シロディールの賢者たちが、現在帝都を支配するこの戦を好む民族について学ぶべきことが数多くあると気付いた時にはすでに手遅れだったのだ。その必要に応じるため、現在指名された統治者であるブラック・ドレイクのカダッチが管理する、マルカルスでの7ヶ月におよぶ貿易大使の経験から、リーチとそのクランについて学んだことを書き記そう。

序文:リーチにはさまざまなクランが数多く存在し、それぞれが独自の性質や伝統を有している。一ヶ所に恒久的なキャンプを設置し、定住するクランもある一方で、遊牧民であり続けるクランも存在する。クランは大家族と故郷の村の中間的な存在であり、中にはクラン内で血縁関係にある者もいるが、それ以外の者はクランへの忠誠を示すためにクラン名をつける。新しい土地に居住するため、または獲物の群れを追うため、あるいは無秩序な時期には近隣の地域の襲撃や略奪をするため、気の合うリーチの者の一団が集まれば、いつでも新しいクランが出現する。その結果、クランは驚くほど流動的になることがあり、時間と共に分裂や再編成が行われる。

各クランは族長が統制する。中には自ら首領、代弁者、長老、王と名乗る者もあるが、ほとんどのリーチの民は自身を「王」などと呼ぶのはどこか気取った感じがすると考えている。リーチではもう何十年も、わざわざ自らを王だと主張するクランの族長はいない。だが、その者が王の称号を主張するに足る強さを持つと十分な数のリーチの民が同意すれば、如何なるクランの族長も王となれる。事実、歴史的には多数のクランの族長が同時期に王と名乗る時代もあったが、リーチの民がよく言うように、リーチでは誰もが王になれるが、リーチの王となれる者は誰もいない。その称号はダーコラクでさえ主張しなかった。現在に至るまで、リーチの民はロングハウス帝を自らの自由意思で従った戦いの統率者と見ている。たとえそれがシロディールのリーチの民の王であっても、王にひざまずくことはより弱い人々がすることなのである。

すでに述べたように、リーチには数多くのクランが居住している。ほとんどは小規模なクランで、小さな村や、遊牧民の集団や、人里離れた洞窟や地域にある略奪者の住み家だ。しかし、リーチを訪れる旅人なら誰もが知る有名なクランには以下のものがある。

ブラック・ドレイク:人数としては少ないブラック・ドレイクは、偉大なる武将ダーコラクによって誕生した。敵からも味方からもブラック・ドレイクと呼ばれたダーコラクは全リーチ人を彼の旗の下に結集させ、シロディールを征服してロングハウス帝の血統の基礎を築いた。彼の近親やリーチの友人は、有名な呼称を自らのクラン名とした。必然的に、他のクランは普通なら命令を下す規模のクランでありながら、ダーコラクの親族にはより多くの敬意を示している。また、総督のカダッチもブラック・ドレイクである。

シンダーハート:しばしばマルカルス付近で見かける好戦的なクランであるシンダーハートは、捕虜を生きたまま燃やすことで知られている。彼らは犠牲者の空の胸の空洞に熱い石炭を詰めることで、ブライア・ハートを用意すると言われている。ただでさえ陰惨な儀式に対する、恐ろしい改良点だ。

イーグルシアー:誇り高く好戦的なイーグルシアーは、他のクランが子供たちの世話をするようなやり方で確執を育てる。これは外部の者との接触を妨げるように思われるかもしれないが、実際の彼らは友好的で、口論の相手でなければ心を開く。イーグルシアーの者にとって、単に他の土地からの訪問者はリーチの抗争相手に値しないのである。

ゴーストソング:東リーチの荒野に生まれた孤立を好むクランであるゴーストソングは、その強力な魔女と忠実なウェアウルフで知られている。彼らはナミラに対して特別な崇拝の念を抱き、彼女を霊魂の女王と呼んでいる。

ヒルハンター:マルカルスの南の山中に居住する遊牧民の狩人であるヒルハンターは、木工技術で有名である。他のクランの間では、ヒルハンターの者からあえて狙われない限り、彼らを追跡できる者はいないと言われている。

リバーエルク:大所帯を誇るリバーエルククランは、カース峡谷全体に数多くある半恒久的なキャンプで暮らしている。彼らはよそ者のやり方に不信を抱いてはいるが、自身がクランにとっての友であることを証明するよそ者とは進んで取引をする。

シェイドフェザー:幸いなことに少人数であるシェイドフェザーは、ハグレイヴンの強力な魔術結社の支配下にあるクランだ。彼らはリーチのあちこちで旅人を待ち伏せし、捕虜となった者を闇の儀式で殺害する。他のリーチのクランでさえ、邪悪な彼らからは逃れられない。シェイドフェザーの者はしばしばキャンプを移動し、不運にも偶然出くわしてしまった者は誰であれ全て殺害する。

ソーンルート:獰猛で強いソーンルートは、通常ブライアロック近辺で野営している。彼らはシェイドフェザー同様ハグレイヴンに率いられているが、近隣のクランとは友好的な関係を維持し、激しい怒りはよそ者に向けるために温存している。クランの戦士の多くがブライア・ハートになることを選び、戦闘でのソーンルートをとても危険な存在にしている。

ワイルドスピア:マルカルスの近くに土地を持つ定住クランであるワイルドスピアは、ハーシーンに心身を捧げ、儀式の狩猟でこの追跡の師を称賛する。彼らは人間、中でも強く賢い敵は、流血の儀式に最適な獲物だと信じている。

リーチの偉大な霊魂 第1巻Great Spirits of the Reach: Volume 1

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

タムリエルに暮らす者の大半は、何らかの信仰を持っている。物理的、精神的な危機に脅かされた世界において、神を捨てるのは難しいものだ。残念ながら宗教的アイデンティティへの共通の欲求が、人々を団結させることは滅多にない。むしろ分断することの方が多い。対立点の多くは分かりやすい。種族間の政治や歴史的な怨恨、神による承認の主張はしばしば誠実な対話の試みを台無しにする。だが、全てを包括する中心的な断絶が1つある。それはエドラ至上主義である。

ある古いオークの格言では「征服者が戦争を名づける」と言われる。これは力ある者が歴史についての理解を形成するという事実を適切に述べている。この格言は、信仰の問題についてはなお正しい。征服者は戦争に名をつけるだけではない。信仰をも形成する。白金の塔を支配する者が何らかの根本的な意味でタムリエルを支配するという約束事を受け入れるなら、エドラ至上主義は完全に筋の通った考えである。それはエドラが実際に他より優れているからではなく、優位な立場にある者が自らの至上性を主張できるからだ。

いくつかの注目すべき例外を除くなら、シロディールの、より広く言えばタムリエルの物語はエドラの信者たちによって形成されてきた。それはアルドマーに始まりアイレイドに受け継がれた。野生のエルフは一時的にデイドラ崇拝に走ったが、彼らはアレッシア人の手によって高い代償を支払わされた。この時点から、エドラはタムリエルの信仰という領域において特別な地位を得た。その地位は本質的に、エドラ以外の信仰実践を奉じる種族の立場を弱体化させた。オーク、アルゴニアン、カジートなど、そうした種族の大半はすでに人間とエルフによる嫌悪と迫害を受けていたが、チャイマーや後のダンマーなど、エルフの同族から冷たい疑惑の視線で見られる者たちもいた。これら全ての民は昔も今も、エドラ崇拝者に与えられた特権に苦しんでいる。だが、リーチの民以上に信仰を理由とした迫害に苦しめられてきた種族はいない。

外国の襲撃者に迫害され、嫌悪され、繰り返し侵略されてきたにもかかわらず、リーチの民は豊かなデイドラ崇拝の文化を維持することに成功しており、希薄化や衰退の兆しも見られない。本論がこの評価されることの少ない信仰について新たな光を投げかけ、リーチの誇り高く頑健な民への敬意を高めてくれることが、筆者の切なる願いである。

リーチの偉大な霊魂 第2巻Great Spirits of the Reach: Volume 2

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

リーチの民は大小様々な、数多くの霊魂を崇拝する。実際にはリーチにいるクランの数と同じだけの信仰が存在する。聖なるエルクや山の泉の霊魂を崇拝するクランもいれば、古代の英雄の亡霊のために山羊を生贄に捧げるクランもいる。しかし一部の霊魂は、クランの境界を超越して崇拝されている。それはタムリエルの残りの部分にいる我々が、デイドラ公と呼ぶ霊魂である。

リーチの主神は狩りのデイドラ公ハーシーンである。古きエルクの目、狩りの王、獣の父、皮を作る者、五又槍など、名称はクランごとに様々だ。リーチの神々全てと同様、ハーシーンは冷酷な師とみなされている。実際、リーチの民は自分たちの信仰を「信心」ではなく「教え」と呼んでいる。しかしハーシーンの教えを聞く者は素早く、強く、狡知に長けた者へと育つ。リーチの狩人にとって、こうした信仰の物理的な表明は、神々の聖堂で議論されるような漠然とした倫理的懸念よりも遥かに大事だ。

ハーシーンは凶暴かつ恐るべき「今」の化身である。彼は生がその瞬間に生きられるものであり、全ての生物は捕食者か獲物か、その両方であることを信者に教える。これにより緊張と注意を怠らない感覚が生まれ、それはしばしば争いにつながるが、リーチの民の安全を守ってもいる。ハーシーン崇拝者の心には休息も、休息の予感もない。

外部の者にとって、このような信仰はひどく不快なものに思える。しかしその成果は無視しがたい。リーチの民が維持している集中力と身体能力に並べる種族はほとんどない。狩りの後には短い静寂があるが、視界の端には常に次の狩りが待ち受けている。

リーチの民はまた、ハーシーンに最も忠実に仕える者を守護者や導き手として遇する。もちろん、ウェアウルフのことである。ライカンスロープを祝福とみなすリーチの民は少ないが、彼らは有用な状態としてこれを受け入れている。ウェアウルフは属するクランのために苦しみ、それは敵の苦痛を引き起こす原因となる。

リーチの偉大な霊魂 第3巻Great Spirits of the Reach: Volume 3

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

リーチの民は2つの世界しか知らない。肉体の世界と霊魂の世界である。ハーシーンは肉体の世界を支配するが、霊魂の女王であるナミラは、無限なる霊魂の領域を支配する。

デイドラ崇拝者の間でさえ、ナミラは恐怖と疑念を持って見られるのが通例である。ナミラが伝統的に影響を及ぼす領域は、定命の者へ即座に嫌悪を催させる。背筋の凍る謎や避けがたい腐敗は、多くの定命の者の恐怖の核心にある。しかしリーチにおいて、ナミラの支配は単なるナメクジと闇よりも遥かに広く及んでいる。リーチの民はナミラを全ての始原的な二元性の化身とみなしている。生と死、始まりと終わり、可能性と無秩序。根本的に対立する全ての力は、ナミラの霊魂の領域から流れ出て来る。多くの宗教は何らかの調和を求めるが、リーチの神学はこのような闘争と避けがたく結びついている。存在の本質的な力としての闘争へのこうした執着が、よそ者やリーチの民同士での敵対的な態度に一定の役割を果たしていることは疑いない。

逆説的だが、リーチの民の大半はナミラの教えに何らかの平穏を見出している。クランの魔女はしばしばナミラを与え、また奪う者として描く。霊魂が深い知恵を見出すまでの間、ナミラは生命を与え奪うのである。

リーチの偉大な霊魂 第4巻Great Spirits of the Reach: Volume 4

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

リーチの民は自然のリズムと時間の無慈悲な歩みを強調する。存在する全てのものは過ぎ去る。高すぎる砦は崩れる。飢えたクランはいつの日か強く成長する。永遠の均衡は課題の主にして秩序の王、ぺライトの仕事である。多くの点において、ぺライトは闘争の至上性を引き立てるために欠かせない存在となっている。戦争や病気は深刻な傷をもたらすが、ペライトは世界が常に自然によって意図された状態へと戻ることを保証する。

多くの文化と同様、リーチの民もぺライトを荒廃と病気に結びつける。しかし他の民とは違い、リーチの民は病気のうちに悪意を見ることはない。むしろその反対である。病気によって消された生命はより健康で、より活発なリーチの民が代わりを務めるための空きを作る。病気は野火のごとく、自然の再生力として働く。豊穣の危機に対する必然的な調整弁である。

リーチ社会におけるぺライトの役割が、多くの重要な点でエドラの信仰におけるアカトシュの役割に似ていることには言及しておくべきだろう。時間や厳格な自然の秩序、圧政者としてのイメージなどは、タムリエル北西で人間とエルフの初期交流の際に、何らかの文化的交配があったのではないかと思わせる。異教的ではあるが、魅惑的な考えである。

リーチの偉大な霊魂 第5巻Great Spirits of the Reach: Volume 5

グウィリム大学デイドラ学部長、ヴァシュ・グラモルガ 著

学者はしばしばリーチの神学を単なるデイドラ崇拝として退けるが、リーチの民の偉大な霊魂はオブリビオンのデイドラ公よりも広い範囲を司っている。多くの人間の文化と同様、リーチの民もロルカーンを尊敬している。彼らはロルカーンをロルク、すなわち人間の霊魂、定命の霊魂、あるいは肉を植える者としている。

リーチの神話で、ロルクは霊魂の女王ナミラを説得して永遠の虚無に居場所を与えてもらい、ロルクはそこで放浪の霊魂のための領域を作ったという。ロルクは活気ある楽園ではなく、過酷で苦痛に満ちた場所を作った。苦難を通じて教える領域である。ロルクの残酷さを嫌う者もいるが、多くは彼の知恵を称える。リーチの民によると、最も激しく苦しむ者が最も優れた知恵を持つという。苦難は知恵と栄光のための手段であり、ロルクは苦難を豊富に提供する。

ロルクは今でもニルンの定命の者がいるところに姿を現すとされている。彼が現れることはとても稀だが、心から必要とされる時には創造した苦痛と悲しみの残酷な世界に進み出て、リーチの民を助けるという。私の調査では、恐れられているブライア・ハートの儀式が、この不死の犠牲を反映するものとして始まった可能性を示唆している。

リーチの狩猟賛歌Reach Hunting Hymn

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

狩りは曲のように始まる
脚は葉を散らし
翼は茨を切り裂く
エルクの影がさまよう
エルクの影がさまよう

果てなき森が手招く
恐怖は鋭く身震いする
狩られることは生きること
試されることは価値あること

逃げよ、小さきウサギ
お前の皮は見事な報酬になろう
肉に当たる歯を感じるがいい
ハンティング・グラウンドが待っている
ハンティング・グラウンドが待っている

果てなき森が手招く
恐怖は鋭く身震いする
狩られることは生きること
試されることは価値あること
試されることは価値あること

リーチの酒Drinks of the Reach

ヴォルジャー醸造所のフィヨリダ 著

リーチの民が近隣の土地に求めるものがあるとすれば、それは味の良い酒よ。ノルドのエール、ブレトンのブランデー、シロディール産ワイン。手に入るものなら何だっていい。リーチの土地の多くは他の土地が大量に産出する、ある種の飲料の生産に必要とされるブドウ園や、大麦畑、あるいは家畜化された蜂の巣に適していないけど、リーチの者はほとんどがお酒を好むの。盗めない場合に限ってだけど、お酒はリーチ人が進んで取引する数少ない日用品の1つよ。

外交的なリーチの民はお酒を取引で入手するけど、外界の商人とあまり接触しないリーチの民は手元にあるもので間に合わせなければならないわ。リーチの奥深くに旅することがあれば、すぐにリーチ産のお酒に出くわすことになるでしょう。そういったお酒は、大抵はリンゴ酒か、「クレフ」と呼ばれる発酵させた汚らしい羊の乳の形を取っている。

リーチのリンゴ酒は濃い色で、かび臭くて、甘い――強引に言えばそこそこ飲める――ものから、済んだ色で、どちらかと言うと慣れが必要な酸味のある造りのものまで幅広い。この風味は、使用するリンゴや圧力をかける年数に依存する。リーチに果樹園はめったに見られないけど、森や川の流域には野生のリンゴの木が豊富にある。そういった地域に住むクランには、それぞれが愛飲するリンゴ酒を醸造するために好んで使う手法があるの。その中には良い酒を産み出すものもあるし、最悪の酒を産み出すものもある。

クレフ。言ってしまえば、クレフとは人が羊しか持たない場合に造り出すものね。こんな代物に耐えられる部外者に会ったことがないわ。それどころか、クレフを好きだと主張するリーチの者は、ただその人がどれだけ不快なものに耐えられるかを証明しているだけなんだと思う。これは勇気を試すものなのね、きっと。でも、ほとんどのリーチの者はクレフが好きだと言う振りすらしないけどね。ただ酔っ払うためだけに飲むの。

うちの優良顧客の一部をリーチの民が占めているのはこれが理由よ。

リーチの食べ物の手紙The Reach Food Letters

ロングハウス帝の即位直後、シロディールの人々はリーチについてより詳しく知ろうとした。彼らを魅了した中には、帝都の宮殿から香る奇妙な食べ物の噂もあった。商人の娘がマルカルスの父から来た手紙を出版すると、すぐにベストセラーになった。これは最新版である。

***
親愛なるハイパティア

壊れた荷車を修理するためにあまりにも長くロリクステッドに滞在してしまったこと以外は、何事もなく到着した。リーチは君のお母さんが言ってた通りだと思う。弧を描く地形と景色を数えきれないほどの地区に分断する岩山。マルカルス自体は立派だが、石板の上に積まれた毛皮の山はベッドの代替品としては貧弱だ。

子供たちは寂しがってないか?マルカルスに向かう途中でガイドと一緒に経験した、思いがけない出会いのことを子供たちに伝えたいんだ。あの子たちが眠りにつく前に、これを読んで聞かせてやってくれ。

やあ、チビちゃんたち。父さんは遠くにいるけど、夜が明けるたびにお前たちのことを思ってるよ。父さんはリーチにいるんだ!ここは変わった場所で、変わった人たちが住んでいるよ。獰猛で、知らない人を嫌う意地悪な人たちだ。でも運が良かった!父さんのガイドはあのリーチの者のクランを知ってた。その人たちはごちそうの会をして、父さんも混ぜてくれたんだ!
リーチでごちそうはめったに出ないんだよ、チビちゃんたち。厳しい土地なんだ。うちの方みたいにブドウや小麦が育ったりはしない。彼らは固いものを食べる。例えば干し肉とか、じゃなきゃ大麦みたいな、私たちなら動物に食べさせるようなものだ。だけどごちそうの日は違う!たくさんの料理をクランで分け合うんだ。リーチの者は自分の狩猟ナイフと、浸して食べるためのパンの皮と、時々はヴァレンと呼ぶ短いキルティング用の針みたいな道具を使って食事をする。

父さんはできる限り色々なものを食べてみた。一部を紹介しよう。

ハーシーンの分け前はごちそうの主役だ。スパイスを効かせて骨を抜いた何匹かの動物が動物の中に詰まってる。父さんのごちそうはウサギが詰まったライチョウで、それが山羊に詰まっていた。その山羊は雌鹿に詰まっていたんだ!もっと大きなクランでは丸ごとの雄牛から始まって、最後はネズミで終わるらしい!

リーチのスープはもっと控え目だ。彼らはある種の苔がついた石を見つけて、それを鍋の中で煮る。それでできた薄いスープは深い酸味のある味がする。ごちそうの日のために、スープにオーツ麦を混ぜてある種のお粥を作る。

スモークした鱒と鮭はミルクで料理して、栄養たっぷりのシチューを作る。このシチューは鮭が産卵のために川の上流へ向かって泳いでいく時期には、とても頻繁に食べるんだ。その時期には小さな子供でも、岸から手で捕まえることができるんだよ。フォースタス叔父さんの別荘で、初めて魚を捕ろうとした夏のことを覚えているかな?

アルドノットはお菓子のようなものと考えられている――干し肉の組み合わせを叩いて粉にして、溶かした動物の脂と混ぜてペーストを作るんだ。これを長い糸みたいな形にして、何か小麦粉のようなもので覆う――粉の名前はどうしても覚えられなかった――そうすると複雑な結び目の形にできる。結び目の形はリーチの者の心に響くらしい。何故だかは分からないが。

魔女の水は試した中で一番面白いものだった。植物と種の秘密の組み合わせを石の車輪ですり潰してペーストにして冷たい水と混ぜる。出来上がったものは触ると個体だが、かき混ぜると液体なんだよ。見た目はすごいが全く味がない。だけど妙に食べ応えがあるんだ。

リーチのパンは帝国で食べるようなローフとは全然違う。リーチの民はいろいろな根を掘り出すと、茹でて皮を剥いてから壺に入れて火の側に置く。そこからすくったものが焼く前のパン生地みたいなものなんだ。このパンの皮は素晴らしいぞ。

リンゴは大抵石のボウルに入れてある。ボウルにはクリームが満たされていて、火の側に置いてあるんだ。ほぼお行儀のいい子供だけがもらえるものだ(これは1つ食べて少なからぬ視線を浴びてしまった後に分かったんだよ!)。

ロウソクの火が消えるぞ、子供たち。今夜はここまでにしておこう。次の手紙を楽しみにしててくれ!

みんな大好きだよ。

父さんより

リーチの政治Politics of the Reach

第二紀578年、アルドの行政官、執政官カルデア 著

アルド・カダッチの指示により、私はマルカルスでリーチの民に仕え続けています。帝都からマルカルスに送られた理由は、レオヴィック皇帝自身がマルカルスを助け、シロディールとリーチの架け橋になるよう望まれたためです。現在ルビーの玉座に座る者から追加指令は受けていませんが、私は退出して故郷に帰るものと考えていました。アルド・カダッチが私の行政管理能力を保持したいと望まれたため、私はここに残っています。新しい皇帝が興味を持たれた場合に備えて、職務中に学んだことをここに記録します。

まず、リーチは1つの国ではなく2つの国だと考えたほうが良いでしょう。マルカルスと荒野です。伝統的に、誰であれマルカルスを統治する者は荒野に対してほとんど権力を行使しませんが、一方で荒野の強力なクランの雑然とした集まりには、リーチの都市を支配する力も意思もありません。マルカルスが弱い指導者の統治下にある時――もしくは時々あることですが、完全に統治者が不在の場合は――影響の輪が縮小します。強い統治者がマルカルスを掌握している時は、都市の力が近隣の土地にまでおよび、西リーチのクランは、名目上そうではなかったとしても、実際にはマルカルスの権威を認めなければなりません。長きに渡るリーチの物語は、領域を形作ろうとするマルカルスと、拡大する街の権威に激しく抵抗するマルカルスの外のクランの物語です。

リーチに対処する上でとても困難なのは、それぞれ独立したクランが自らを独自の政治機構だとみなしている点です。自由に襲撃し、取引し、戦争を起こし、クランが選んだ相手であれば誰とでも手を結びます。リーチとの間に長く続く平和を築くためには、数多くのクランと交渉しなければなりません。中には激しく憎み合うクランもあり、彼らは決して敵が受け入れることを選んだ平和を守ることに同意しないでしょう。驚かれるかもしれませんが、これは新皇帝のような外国の支配者に当てはまるのと同様に、マルカルスの支配者アルド・カダッチにとっても当てはまります。いくつかのクランの族長にとって、アルド・カダッチは単に並立した族長であり、彼に服従することは、他の同格の者へ服従するのと同じなのです。実際、彼らはアルド・カダッチをとても懐疑的な目で見ています。彼らのことも支配するつもりでいると信じているのです。

幸い、全てのリーチの民があらゆる人やものを敵にしたいと思っているわけではありません。アルド・カダッチは独立したクランに対し、思慮深く対応しています。彼はマルカルスの利益が直接脅威にさらされた場合にのみ行動を起こします――たとえば、シェイドフェザーのような敵意のあるクランによって、マルカルスへの道中が危険になる場合や、ボーンシェイパーのような境界にあるクランが隣接したクランに対し、全てのリーチの民を対象にして無差別に報復するよう促している様子が見られた場合などです。同様に、比較的規模の大きいクランの大部分はお互いに微妙な友好関係を保っています。無謀な対立を煽るクランは、高い確率で大規模なクランに対抗する他のクランの同盟関係を生じさせます。その上で、全てのリーチの民はマルカルスが中立地帯であるべきだと考えています。そこに行き、取引をしたいと願うあらゆる荒野の者に対して開かれているべきだと信じているのです。リーチの多くの人には、粗削りで用心深い平和のようなものが適しているのでしょう。

荒野での権力は主に有力なクラン(イーグルシアー、シックスフォード、リバーエルク、ソーンルートなど)が握っていますが、リーチには我々がアルド・カダッチの壁を越えてクランとの取引を望む時に考慮すべき慣習があります。「大族長」です。これは通常、味方と敵の両方から尊敬の念を勝ち得た族長が獲得する、ある種の「名誉族長」の称号です。大族長は、最も頑なで外国のものを嫌うクラン以外の全てのクランに対して、影響力のある道徳的権限を行使します。現在、大部分のクランはカニアーという元リバーエルクの族長を大族長として認めています。カニアーは紛争の裁定人であり仲介役で、現役時代は抗争の解決や同盟の修復などを行いました。敵対心の強いクランはカニアーを干渉者と見なし、どちらかと言えば軍事的な指導者の方に従いますが、彼女が死ぬか地位を手放すことを選ぶまで、荒野における彼女の声は大きな力を持ち続けるでしょう。

とても危険な狩りや強力な侵略者を撃退するなど、クランに協力が必要な場合は大族長が一時的な指揮権を得ます。脅威が去るまで、戦略と反応を調整するのです。

アルド・カダッチとマルカルスの民と働く過程で、私はこのような政治状況を理解しました。

リーチの捜査官ヴェイルInvestigator Vale in the Reach

高名な犯罪の解決者にして謎解きの名人、捜査官ヴェイルの紹介は不要だろう。野生のリーチにさえその名は轟き渡っているのだから。ヴェイルをスキングラードからソリチュードへ運んでいたキャラバンは、ファルクリースで停留して北に向かった時、リーチの民の略奪者に襲撃を受けた。

キャラバンの荷馬車4台のうち3台は逃げ延びたが、4台目のヴェイル捜査官を乗せていた荷馬車は車軸が壊れ、たちまち略奪者に包囲されてしまった。キャラバンの護衛4名は武器を掲げ、荷馬車と品物、乗客を守って死ぬ覚悟を決めたが、その時捜査官が客席から飛び降りて前に進み出た。

「リーチの慣習に従って、恩の交換を申し出たい」とヴェイルは言った。リーチの民の伝統を調査した時のことを思い出したのである。「こちらの通行の安全を保証してもらう代わりに、クランの族長にしてあげられることが何かあるでしょう。私は捜査官ヴェイルよ」

略奪者の間で、不愉快そうな囁きが交わされた。言うまでもなく、彼らは破壊と略奪を望んでいたのだった。他と印象の違う女性が前に出てくると、略奪者は沈黙した。明らかにリーチの魔女だった。そして彼女がこの略奪者のリーダーなのも明らかだった。

「私はオラーナ。スピリットテイル・クランの族長よ」と彼女は誇り高く、力強い声で言った。「お前は本当に、ハイロックから来た伝説の謎解き人なの?」

「謎解き人、という呼び名はぱっとしないけれど」ヴェイルは言った。「でも、私は捜査官ヴェイルで間違いない。解決してあげられる犯罪や殺人事件はある?」

オラーナ族長は笑みを浮かべた。「殺人はない。少なくともまだ。だが、複数のクランがフロルダンの環の霊魂に捧げた供物が消え続けている。すでに私のクランと他2つのクランが戦いになるところだった。誰かが供物を盗んだのではないかとね」

ヴェイルは若い男女の狩人が、他の略奪者の間で目立つまいとしていることに気づいた。しかしオラーナが状況を説明している間、2人は互いに緊張した視線を交わし、彼らの頬は赤くなった。

「いいでしょう」とヴェイルは言った。「受け入れます。この謎を解いて、代わりにリーチの領地を安全に通行させてもらうわ」

「それならば儀式を…」とオラーナ族長は言い出したが、ヴェイルは手を振って2人の若い狩人の元へ歩いていった。

「彼らが犯人よ、オラーナ族長」とヴェイルは宣言した。「悪意はなかった。いたずらのつもりだったんでしょう?」

若い狩人は2人とも同意を示すようにうなずいた。明らかに恥じており、次に何が起きるのか不安がっていた。

オラーナ族長は眉をひそめて言った。「狩人のいたずら。なるほど、覚えている。私もかつては若かった。この2人よりも。彼らはクランに報いる必要があるが、それは私たちで何とかしましょう」

「素晴らしい!」とヴェイルは言った。「では私たちは進んでいいのね。約束通り、安全に通行できるんでしょう?」

「安全に通行できる」と族長は笑顔で言った。「儀式の後でな。ここではあらゆる物事に儀式がある」

「そうでしょうとも」とヴェイルは言った。「まあ、失礼にはなりたくないし…」

リーチの魔女の詠唱Reach Witch Chant

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

心に留めよ、血を分けた者よ
高らかな我らの歌を聞け
我らの時に猶予はない
影が長く伸びるとき
大きな目を持つ
強き霊魂が待つ
狼の牙は鋭さを保つ
群れを救うために

心に留めよ、偉大なる野獣よ
高らかな我らの歌を聞け
雄鹿の角は肉体を貫く
腱硬く
筋肉は締まり
我らを通じて力を与えよ
我らが霊魂は降り注ぐ
土の上に
汝への褒美のために

心に留めよ、黒き虫よ
高らかな我らの歌を聞け
無で満たされた
我らの飢餓を知れ
腐敗の活力
虚無の力が
我らの胸を空にする
魂と、求めるもので

リーチの旅行ガイドA Reach Travel Guide

カムハイン・サルン 著
(第二紀558年に書かれたもの)

偉大なる我らがダーコラク帝の生まれた地を訪ねたい?お前たちはリーチをどう見ている?リーチは自分に属している者を知っている。それを詐称する者は誰であろうと飲み込んでしまう。だが、私の叔父を他の全ての者の上に立つ存在に作り上げた地を目にしたいなら、導きを与えよう。そうすればお前たちも跪き、彼がその正しき征服の際に与えた慈悲に感謝するだろう。

まず霊魂の祠を訪ね、今歩いている地の所有者に供物を捧げるべきだろう。リーチに神々の慈悲はないのだから。しかしその前に、民の許しを請わねばならない。さもなければ彼らは以前に来た者たちと同様に、お前たちも追い払ってしまうだろう。クランと霊魂を鎮め、正しく通行許可を得たなら、この旅を生き延びられるかもしれない。

カースワステンの村で休息を取れ。ここには侵入者を侮辱せず、取引を求めてくる者に会えるだろう。物々交換のための品物を持ってくるのが最善だが、民は取引に我らが帝国のゴールドを尊重する。無価値な硬貨をリーチの民の労働の成果と交換させてもらえることを、皇帝に感謝するがいい。

さらに西へ向かえば、深き民の領域の残骸を見ることができる。彼らは石を手にして荒野を征服したと思い込んだが、結局飲み込まれてしまった。石の都市マルカルスは、鳥の骨のように生気がなく、空のまま残っている。リーチの多くの者は、動けない石に住み着いて霊魂の怒りを招くようなことはしないと決めた。だがああいうがらくたを好むなら、ドワーフの玩具がいくらでも見つかるだろう。北の遺跡にもあるが、その名前は口にしたくない。

南へ向かえば、ノルドが我々の土地に刻んだ石の傷がある。この地を手なずけようとしたの失敗の名残だ。ブライアロックとロストバレーの遺跡は、今ではリーチの正当な支配者しか受け入れていないので避けた方がいいだろう。あそこにいるクランは、占拠した地を全力で防衛するからだ。あそこに行ったら、愚かなノルドの死体を数えてみろ。ヴァルスムという墓地で丸太のように積み上げられている。リーチの土もノルドの骨は受け入れないからだ。

飼い慣らされることも、帝国に保護を求めることもないこの地に対する敬意が芽生えたか。ここでは強く生き残る者に育たなければ食料にされる、懐の深い地でもあることが分かるだろう。道なき道を行き、裸足で大地を感じ、葉のこすれる音に耳を澄ませ、霊魂の声を聞け。慣れ親しんだ快適な生活を捨てて1ヶ月過ごせたなら、リーチに帰る資格があるかもしれない。

レディ・ビレインからの手紙Letter from Lady Belain

ペンターチ・ハウトリングへ

魔女の反乱軍が街の南と東で、私たちの努力を無駄にし続けています。念のため言っておきますが、マルカルスでの私の陰謀は、あの好戦的な野良犬が自由に走り回っている限り実を結びませんよね?度重なる失敗が気付かれずに済むことなどありませんよ、ペンターチ。

あなたの使者は、灰の王の召集状を何事もなく届けました。珍しいですが歓迎すべき成功です。私は間もなくヴァルスム墓地へ向かいます。おそらくここのところのあなたの失敗については、徳高き指導者に伝えないでしょう。

今のところは。

血によって結ばれた
レディ・ビレイン

虚無のポータルVoid Portals

アークスザンドのキーストーンの捜索中、他の者たちが消えて久しい。レディ・ビレインと灰の王は蔵書庫に入るために必要としている。だが、この力についてもっと多くを知る必要がある。この遺跡の人気のない静けさは、研究を行うには完璧な環境だ。心を持たないコンストラクトと、力の穴の間を一瞬にして飛んでいく奇妙な、ゆがんだ影以外に邪魔をするものもない。レディ・ビレインはこの虚無のポータルを使えるようだ。きっと私は自力で秘密を掴むことができる。

* * *
レディ・ビレインが闇の遺物に関する秘密を守っていたにもかかわらず、私は突破口を切り開いた。遺跡に集中している力を調査していたら、闇の内部から生じたと思われる、小さな欠片を発見したのだ。

それぞれの欠片には重さがあり、まるで力が外側にあるものを内部に向けて引っ張っているようだった。集中したら、周囲の力の穴にも同じ引力を感じられるだろう。欠片はそれぞれ、まさしく出て来た力に向かって戻ろうとしている。これを持って近づいたらどうなるだろう?

* * *
新たな発見だ!欠片を持って力の穴に近づいたら、謎が明らかになってきた。引力は近づくにつれて強くなった。突然、滑ったとしか言いようのない感覚がした。まるで滑って転んだかのようだった。それも下ではなく、横に。辺りを見回すと、どこか新しい場所に来ていることに気づいた。私は欠片と共に、力を通じてこの新しい場所に引っ張られてきたのだ。

力を利用することで、この遺跡の長く閉じられていた扉が私に向かって開いた。結局のところ、蔵書庫に入るのにアークスザンドのキーストーンは必要ないのかもしれない。少なくとも建物に入るためには。レディ・ビレインのことだ、キーストーンには、彼女がまだ灰の王に明かしていない別の機能があるに違いない。

ペンターチ・シーヴェルネス

見習いグウェリナへの手紙Letter to Apprentice Gwerina

見習いグウェリナへ

お前がまだ文字に悪戦苦闘していることは知っている。だからこの手紙は手短にしよう。カース峡谷に闇が襲い掛かった。賢い者たちはマルカルスの石の壁の背後に避難している。アルド・カダッチが目を光らせている場所だ。だが、どんなに危険でも自分たちの領域を放棄することを拒むクランもある。

アルドは寛大にも、アリーナの王、我らの狩猟の父ハーシーンの新しい祠を設置する目的で広間を使う許可をくださった。

そこで合流しよう。この祠を正しく設置できるように、フロッキベグの象徴を持って来てくれ。マルカルスで待っている。

大呪術師グリンロック

古代の霊魂を称えよHail to the Ancient Spirits

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

ハーシーンを称えよ、狩りの王を
森と丘を統べる者
生けるもの全ては追うか逃げる
死によって止まるまで

ナミラを称えよ、霊魂の女王を
糸を編む、沈黙の産婆
あらゆる始まりには終わりが要る
生と死の闇の母

古代の霊魂を称えよ
師として練を与える、いついかなる時も
厳しい教訓は必要なもの
敵だらけのこの世界には

モラグ・バルを称えよ、苦痛のデイドラ公を
暴虐の主人、災厄の王
殺し戦うための力を与えし者
人は争うべき存在なれば

古代の霊魂を称えよ
師として練を与える、いついかなる時も
厳しい教訓は必要なもの
敵だらけのこの世界には

古代の霊魂を称えよ
古代の霊魂を称えよ

荒野で生き延びるヒントWilderness Survival Tips

冒険者兼年代記編者、ジェメル・マラエニウス 著

リーチは無情な地であり、無情な地は無情な人々を産み出す。この地域の過酷さに慣れていない人にとって、準備もせずに赴くことは通常死刑宣告を意味する。だからと言って、人は挑むことをやめない、当然ながら。たとえ当人がいかに危険にさらされる可能性があろうと、私は人が冒険することを非難するような人間ではないが、リーチの者なら彼らの土地をもう少し生き残りやすく旅するためにはどんなことを提案するのだろうかと、かなり以前から考えていた。

そういう訳で、自分自身のために明らかにしたいと思う。

話をした数少ないリーチの者のうち、約3分の1が真摯に回答してくれたものと推定する。ここに最も有益な見識をまとめた(クスッと笑ってしまったものも少々含む)。

狼からの攻撃の生き延び方
「逃げるな。自分のいる場所に立ち、狩人としての権威を狼に尊重させろ」

「臆病者は木に登る。真の戦士は近くの小枝をつかみ、獣をかわす!」

「祈ってみろ。お前らには少なくとも時々は効くみたいだ」

「腐った魚の中に身を隠せ。じゃなきゃ何でもいいから本当に嫌な臭いがするものの中だ。狼は繊細な鼻を持ってる。酷い臭いを放ってたら、彼らもしり込みするだろう」

蜘蛛の噛み傷の最良の治療法
「ただ耐えるだけだ。毒に対する耐性がないのなら、多分リーチを歩き回るべきじゃない」

「取り乱すな。ただ毒の回りが早くなるだけだから」

「運よく手足に噛みつかれたのなら、それを切り落とせ。確実に生きて朝日を拝みたいなら、それが一番手っ取り早い」

「蜘蛛にもよる。きちんと違いを知っておくことだ」

道に迷ったら
「水の音を聞け。音の源を見つけたら、流れに従って進め。最終的には誰かを見つけるだろう」

「迷うなら昼間にしろ。リーチで夜が来たらお前は足の折れたウサギ以外の何者でもなくなる」

「リーチの者に道なんか聞くな」

ハグレイヴンに遭遇したら
「お前の死を望むハグレイヴンに出くわしたら、できることはそれほどない」

「お前たちよそ者はみんな理解できないものを酷く恐れる。まるで暗闇を嫌がる子供のように。だが、もし生き延びることを強く求めるなら、とにかく逃げろ。ハグレイヴンはそれほど速く動けない。少なくとも、俺が見たやつはみんなそうだった」

「理由があってハグレイヴンがお前に目を付けたのなら、おそらくお前はそういう運命なんだろう」

熊から逃げるには
「幸運を祈る」

効果的な狩り
「狩る者と狩られる者の関係以上に神聖なものはない。そのつながりを尊重すれば、魚を突く時であれ、矢をつがえる時であれ、ハーシーンはお前の努力に微笑むだろう」

「もし、より強い動物がお前の仕留めた獲物を奪いに来たら、奪わせておくがいい。勝てない時を知っておけ」

「誰かが仕留めるのを手伝ってくれるなどとは期待するな。唯一の真の狩りの報酬は、自身の自立から得られる」

「狼の隙を確実に狙え」

食用の虫
「食べるために足元の虫をかき集める者を見下す奴は、明らかに苦境とは無縁の人生を送ってる」

「蟻をすり潰してペースト状にすると飲み下しやすくなる」

「何だろうが鮮やかすぎる色のやつは食うな。お前にとってもその虫にとっても、ろくな結果にならない」

婚約者たちからの手紙Letter from the Intended Couple

大族長カニアー様

申し訳ございません。あなたが達成されるよう願っていることが何なのかは分かっています。でも、私たちにはやり遂げられません。

エスリンとマデアルン

再び戦うために立つWe Rise to Fight Again

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

悲鳴が聞こえる
息をもらし
急襲を感じ
死を感じ
縫うように前進し
一団を抜ける
命を奪う
その手で

彼らは止まる?
さらに見える
彼らが来る
そして戦う
我らは固守する
血が滴る
たじろぎ
彼らの袋が満ちる

故に我らは裂け目に突き進む
鋭い戦いの声とともに
彼らがリーチの全てを奪い
クランの全てを殺すため
故に衝突は続く
血が地面を湿らせる
涙はもう枯れた
それでもまだ敵は来る

では狩ろう
全ての獲物を
人であれ
迷い犬であれ
安らぎはない
恐怖はない
彼らは
ここに来るだけ

彼らは止まる?
さらに見える
彼らが来る
そして戦う
我らは固守する
血が滴る
たじろぎ
彼らの袋が満ちる

故に我らは裂け目に突き進む
鋭い戦いの声とともに
彼らがリーチの全てを奪い
クランの全てを殺すため
故に衝突は続く
血が地面を湿らせる
涙はもう枯れた
それでもまだ敵は来る

我らは真の自然の姿で
再び戦うために立つ
全ての苦痛を叫ぶ
我らの敵は決して勝たない

そして我らは裂け目に突き進む
大いなる戦いの叫びと共に
彼らがリーチの全てを奪い
クランの全てを殺すため
けれど衝突はいつまでも続く
血が地面を湿らせる
涙はもう枯れ果てた
そしてまだ虐殺者が来る

深き墓にてIn the Deep Tombs

深き墓に入ってから今日で34日目。だと思う。

ボス・トレンロルが俺をここに投げ落とすとは信じられない。忠実な兵士だったのに!彼の要求は全てこなしたのに!まあ、「ほぼ」全てだが。

ボス・トレンロルにはむらっ気がある。一緒に笑っていたかと思うと次の瞬間には怒鳴りつけられる。死ぬ一歩手前まで殴っておきながら、その後自らの手で治癒の湿布を貼って、回復するまで一緒に座っている。それにかんしゃく持ちだ。金だろうが品物だろうが血だろうが、要求するものを相手が出さなかったら、俺と仲間に急襲させて何人かを見せしめにする。「群れを行儀よくさせるためだ」というのが口癖だ。

何人かは考え付く限りの恐ろしいやり方でただ殺す。残りは捕まえて深き墓に閉じ込める。ボス・トレンロルは常に、新鮮な血が自分の手に供給されることを好む。彼は何人かを狂血鬼に与えるのも好きだ。ちょっとした気晴らしのために。

とにかく、ボス・トレンロルにフレイレスの喉を裂けと言われたときは冗談だと思った。時々そういうことをする。忠実な従者をとんでもない残虐行為をすると言って脅す。ただ反応が見たいがために。この時は本気だったみたいだ、多分。喉を切り裂かずに笑ったら、まるで野生動物みたいに向かってきたからな。無茶苦茶殴ってきやがった。

気付いたら、数年来の友達や仲間の吸血鬼たちが俺をひきずって深き墓に入れるところだった。そして、俺が自分の手で投獄した定命の者の、すぐ横にある監房に俺を投げ入れた。屈辱的だった。1週間か2週間俺をここに入れておいたら、ボス・トレンロルは俺を出してくれるだろうと思った。教訓は学んだと。だがもう4(いや、5か?)週間にもなるし、俺は飢えてる。近くに血の臭いがする。ほとんど味もする!だが俺に血をくれる衛兵はいない。ほんの一口でさえ。

俺は忘れられたのだろうか。それとも俺を飢えさせて、野生化させることが前からの計画だったのだろうか。もしかしたら、離れると決心したカサドの考えは正しかったのかもしれない。彼がフレイレスを連れて行かなかったのには驚いたが、きっと戻るつもりなんだろう。だがもしそうしたら、俺と同じ結果になるだろう。

深き民の怖い話、第1巻Scary Tales of the Deep Folk, Book 1

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

親愛なる読者諸君。「怖い話」の新たな書へよく戻った。今日は謎めいた驚異の街、マルカルスの内
部から諸君に書き送ろう。絶滅したドワーフによってはるか昔に築かれたこの街は長く存在し続け、現在はなかなかの信望を集めるリーチの戦士、アルド・カダッチの元に団結した、リーチ部族の集団の本拠地となっている。アルド・カダッチはリーチの人々を一つの旗に集結させた、いとこのレオヴィック以来初の族長だ!

公明正大な作家による、解決も解明もされていない前作の物語の書物「ドルアダッチ山脈の怖い話」が大好評を博した後、この旅の物語の語り手は他ならぬアルド・カダッチその人からマルカルスの街に招待された。アルドは、「リーチは野蛮人だ」という印象(諸君の公明正大な作家は決して伝達するつもりなどなかった印象だ、もちろん!)を正し、我が指導者の全員に、リーチの人々にも全ての人々と同じように、壮大な文化と物語を伝える豊かな伝統があることを思い出させることを望んでおられる。

そこで、我が後援者たちと作家仲間の助言に反し、私はアルド・カダッチに会い、彼の民の長く語り継がれた物語を不滅のものとするため、長く危険に満ちた旅に出発した。
以下はつつましい作家によって初めて集められた、マルカルスのリーチの民による、リーチにおける奇妙で説明のつかない出来事に関する3つの物語だ。それではお気に入りの椅子に腰を落ち着け、ハチミツ酒を手にして、夜の暗闇にランターンを灯したなら読み進めたまえ。勇気があるなら、だが

* * *
暗き場所の魚人

最初の話は歴史の守り手を意味するリーチのヴァテシュランから聞いたものだ。彼女のクランはマルカルスの上にある山の中に、何十年も暮らしていたそうだ。彼女は言った。何年も昔、驚くほど人間にそっくりな生き物が、クランが暮らす場所の下にある洞窟に出入りしているのを見たという斥候からの報告があった。

最初、クランの者はそれをゴブリンだと思った。だがこのゴブリンには毛も目もなく、まるで魚のような生気のない灰色の肌をしていた。このクランが呼ぶところの「魚人」は決してキャンプに近づかず、その中にいるリーチの者を攻撃することも絶対になかった。だが、クランは明らかに忌まわしきものたちとの共存を拒んだ。

族長が戦闘部隊を結成し、彼らを率いて地下の洞窟の中に入っていった。彼らは魚人たちを追い出し、クランの縄張りを取り戻すことを固く決意していた。ところが、部隊が抵抗にあうことはなかった。洞窟中を探し回ったあとでさえもそうだった。戦闘部隊が結成されるほんの数時間前に、多数の魚人が洞窟に入ったと斥候が報告してきたにもかかわらず、彼らが洞窟の中で魚人の痕跡を見つけることは一切なかった。

その夜遅く、夜明け前の最も暗い時間に、最初の襲撃が行われた。数人のリーチの者が音もなく殺され、彼らの遺体が無残に晒され、他の者は完全に消滅していた。族長は再び最強の戦士を集め、クランを襲って殺害した魚人たちを根絶やしにするため洞窟に乗り込んだ。そして、今度も丸一日をかけた捜索で、見つかったものは空の洞窟だけだった。

その夜、クランは警戒状態を保っていたが、新たな襲撃はなかった。その後数週間にわたり、彼らは毎晩見張りを立てた。だが、さらなる襲撃は行われず、魚人たちを目撃することもなかった。一月以上が経ち、族長はついにクランの者たちに通常の見回りを再開することを許した。するとまさにその晩、魚人たちが再び襲撃した。今度は残された長老の遺体が山の上に吊るされ、さらにひどいことに子供たちが何人か跡形もなく姿を消してしまい、それきり行方不明になった。

またしても行われた卑怯な攻撃、そしてクランで最も弱い存在に対するとてつもなくむごい襲撃に憤った族長は、正義の怒りのために我を忘れた。彼女は魔女と呪術師を呼び集め、近くのクランから魔法の支援を受けた。彼らは次々にクランの地下洞窟を封じて行った。彼女は山中の傷を怒りと、魔法と、意志の力で崩壊させた。仕事を終えたとき、洞窟の中にあるのは砕けた岩だけだった。

クランはその後何ヶ月も警戒を解かなかったが、新たに攻撃されることもなく、魚人の姿が目撃されることもなかった。賢明な族長は洞窟を封じたが、十分に行われていない報復が今も彼女と彼女のクランを苦しめている。彼らは尋ねる。あの魚人たちは何者だったのか?如何にして洞窟の中で、見えないように隠れることができたのか?

深き民の怖い話、第2巻Scary Tales of the Deep Folk, Book 2

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

次の物語は宿屋〈川の恵み〉で会ったリーチの斥候、マルコルのものだ。彼は感動的な音楽と青春と悲劇の物語を伝えてくれた。若い斥候の物語を信じられるかどうか、親愛なる後援者の諸氏にはぜひお読みになって判断いただきたい!

* * *
山の下からの音楽

リーチの民の大部分は、大昔に消えたドワーフが残した、永遠の恐怖が付きまとう遺跡を忌避するが、例外もいる。マルコルとエサナという2人の若いリーチの斥候はある日、クランの誰も行きたがらない場所を探検しようと決めた。彼らは名を挙げるため、山の下にあるドワーフの遺跡に向かったのだ。こうして2人はいくつもドワーフ都市の奥深くへ進み、オートマトンやさらに凶悪な敵と戦って、勇気を証明しようとした。

こうしてドワーフ名は知られていないが、リーチの民がダークホロウと呼ぶある遺跡の深部を探検していた時、エサナが最初に山の下からの音楽を聞いた。マルコルは全力で耳を澄ませたが、何も聞こえなかった。しかしエサナは嵐のように大音響で音楽が聞こえると言い張った。彼女はどこにいても聞こえると言った。

エサナは何度もマルコルにその音楽を説明しようとした。それは真鍮の鳥が暗闇の中で奏でる歌、歯車と岩の交響曲、蒸気と炎の賛美歌、などだった。しかしエサナは山の下の音を辿り、マルコルも彼女に付き従ったが、2人ともこの謎めいた音楽の源を突き止められなかった。

マルコルが私に語ったところ、そのうちエサナは音楽に執着するようになり、マルコルと共にキャンプに戻った後も音楽を口ずさんだ。彼の話では、眠っている時もやめなかったという。彼女の口笛は美しいものではなかったが、奇妙に心に響き、今になってもマルコルはエサナの無味乾燥な口笛を頭から追い払えないという。

エサナは毎日ダークホロウへ行きたいと主張し、クランの斥候としての任務を放棄するようになった。そのうちクランのウィッチマザーがマルコルとエサナの2人にダークホロウへ行くことを禁じた。その次の日、ウィッチマザーの怒りを買いクランから追放される危険まで冒して、エサナは最後にもう一度ダークホロウへと向かった。

ウィッチマザーはマルコルがエサナを追うことを禁じたが、彼は禁を破った。幼馴染の友人は獲物を見つけるまで戻らないと確信していたからだ。マルコルはエサナが自分にしか聞こえない山の下の音楽を探して、正気を失うのではないかと恐れた。もう二度と帰れないほどの奥まで進んでしまうのではないかと。マルコルは遺跡の外でエサナの荷袋を見つけ、できる限り奥深くまで進んだ。

マルコルの捜索は悲劇に終わった。最終的に、彼が幼馴染のエサナに関して見つけたのは、ダークホロウの最深部に置かれた、笑顔が落書きしてある動物の皮だけだった。マルコルは悲しみに沈みながら、絵の意味を完璧に理解した。彼は悲痛な気分になった。

「見つけた」と落書きされた絵は言っていた。それはエサナが親友のために残した、最後のメッセージだったのだ。

それ以来、エサナの姿が見られることは二度となかった。

深き民の怖い話、第3巻Scary Tales of the Deep Folk, Book 3

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア 著

マルカルスのリーチの民は謎と魔術に満ちた、数多くの暗く悲惨な物語を抱えている。その数があまりに多いので、一介の作家にはどの物語から記録すべきか判断が難しいほどだ。しかし夜中に火の側で語られ、私が聞くことを許可された全ての物語の中で、血を流す木の物語は最も不気味で奇妙な話だ。ご堪能あれ!

* * *
狩人と血を流す木

この物語は最も高齢のヴァテシュランの大半よりも古く、何世代にもわたってクランからクランへ受け継がれてきたもので、数多くのバージョンが存在するが、始まりは全て同じだ。あるリーチの狩人が昔々、暗い森の鹿に向けて矢を放った。しかしその時、何か他の動物が近くで小枝を折った。大きな音に驚いた鹿は飛び跳ねて駆け出し、狩人の矢は背の高い古木に突き刺さった。

逃げた夕食と運のなさを呪いながら、狩人は矢を回収に行った。しかし木のそばまで近づくと、彼はなんとも奇妙な光景に出会った。鋭く正確な彼の矢尻は、ねじれた高い木の皮を貫いて深く刺さっていた。その木の傷口から、輝く赤の液体がこんこんと流れ出ていたのである。

最初、狩人は樹液がこういう色をしているのに違いないと思った。しかし近づいて見れば見るほど、木は血を流しているのだと確信した。木の皮から流れる赤い液体を味見すると、その考えは確信に変わった。彼の矢を受けたこの木は、明るい色のしょっぱい血を流したのだ。狩人は困惑した。

真相を突き止めてやろうと決心した狩人は、ナイフを取り出して木を突き刺した。よく磨かれた鋭い骨の刃は、暖かい木の皮をいともたやすく貫いた。狩人が傷を付けるたび、そこからさらなる血が流れだし、なぜ木が血を流せるのかを理解できない狩人は何度も突き刺した。物語のあるバージョンで、狩人は木を傷つけたことに罪の意識を覚え、苦痛から解放してやろうと思った。別のバージョンでは、木の血を味見した狩人は怒りの発作を起こし、それまで感じたこともないほどの戦いの憤怒に駆られた。

理由は何であれ、物語のどのバージョンにおいても、狩人は傷口が無数に広がるまで木を刺し続けた。木の足元の血だまりはすぐに、彼の足首が浸るほどの深さになった。流すはずのない血を流し、死ぬ様子もないこの木に対する攻撃で疲れ果てた狩人は、矢を回収して立ち去った。クランを探して自分が見たものを知らせようと決心したのだ。狩人は自分の頭がおかしくなったのかどうかを知りたかった。

次の日、狩人とそのクランは血を流す木のあった場所まで戻ってきたが、そこに木はなかった。塩気を含んでいて不気味な、乾いた黒い血だまりだけが残っており、それが木々の葉の隙間に開いた穴から差し込む太陽光を吸い取っていた。昨日までこんな穴は絶対になかったと、狩人はクランに言った。

狩人の仲間たちは笑い、どうせ血は死にかけた動物のものだろうと言った。しかしその彼らでさえ、これほどの血だまりを作っておきながら死体も残さない動物など考えつかなかった。地面に痕跡は何もなく、体を押しつけた跡もなかった。ただ円形の、不気味な血だまりがあるだけだった。

時が経つにつれ、クランも木を傷つけた狩人も、この問題を気にかけなくなった。この事件はそのうちに焚火の側で話す物語に過ぎなくなった。狩人が奇妙な木を傷つけてから、ちょうど1年が経った。

その朝、狩人が朝食に姿を見せなかった後で、クランの他のメンバーたちはテントの中に彼を発見した。狩人の胸には本人の矢が突き刺さり、無数の刺し傷が体中につけられ、気味の悪い自らの血の海に横たわっていた。

しかしテントの中にも外にも足跡は見つからず、斥候の報告では前の日の夜にキャンプへ入った者も出た者もいなかった。クランの族長は不運を呪いつつ、狩人の死体とそのテントを燃やすよう命じた。彼を襲った森の霊魂か何かを鎮めようと思ったのだ。その後クランはこの区域を去り、荒野のこの部分に二度と戻ってこなかった。他の誰かが、また傷ついた木を見つけるのではないかと恐れて。

* * *
「怖い話」の最新巻はこれで終わりだ。しかし安心してほしい。リーチの民は私をサークルに招いてくれた数夜の間、実に数多くの「怖い話」を話してくれた。アルド・カダッチが明確に説明したように、リーチの民は蛮族や獣ではなく、他の民と同じ人間であり、多様で物語に富んだ口承の歴史を持っている。彼らの奇妙な国は、「怖い話」の宝庫なのだ!

改めて、多大なるご支援に感謝しよう。次巻も乞うご期待!

赤鷲の歌Red Eagle’s Song

(ロングハウス帝に仕える帝国書記ヴァラナ・タッポによる口承の書き起こし)

思い出せ、思い出せ、リーチの子よ
ファオランの血塗られた物語を
思い出せ、思い出せ、リーチの子よ
赤鷲の最後の栄光を

鷲が甲高く彼の名を叫んだ
彼が母の胎内より立ちし時
血のヘラジカの目を持って生まれた
怒りはダイヤモンドの運命の兆し

諦めよ、諦めよ、ヘストラが来た
南生まれの白い石の塔のハグ
鉄の槍と盾の一団と共に
彼女は王の心臓を黒く変えた

季節が過ぎ彼は戦いに吠えた
帝国の娘と息子を殺して
だがリーチの者は矢と槍に倒れた
クランの友がいなくなるまで

ついに彼は自分の鷲の心臓で取引した
我々の力を欲しがるレイヴンと
彼らは胸にブライアの種を植えた
それは死体の花から育つ

数千が炎の剣に倒れた
血の太陽が昇り、沈むと
数百の矢に刺されたが
死を迎えるまで戦った

全ての者よ、ファオランの怒りを思い出せ
皆の心に住んでいる
聖なるリーチを欲しがる者は全て
我らの槍に苦しみ倒れる!

約束と警告A Promise and a Warning

この保管庫を守る者へ

闇の心臓と虚無に関する知識が、まだ私にとって役立つものだったことは幸運だったな。この書状の所持者は、遺言の中から私が興味ある節を書き写すことを許されなければならない。

約束しよう。従うなら、私がこの世界を作り直した暁には、お前のクランを素晴らしいものへと導こう。

警告する。私のペンターチが保管庫に入ることを拒んだ場合、または不当な害が及ぼされた場合は、定命の者たちでさえ涙するほどの、想像を超える苦しみを与えてやろう。

お前たちのレディは死んだ。この上うぬぼれを許容することはできない。

ラダ・アルサラン

抑制装置The Containment Apparatus

欠片を使って虚無のポータルを通り抜けるのは実に爽快だ!おかげでこの素晴らしい抑制装置がある古代の部屋に来ることができる。この機械が大きい虚無の欠片をどう使うか見てくれ。と言うよりも、クリスタルだ。これは、この穴、この現実の構造の裂け目からあふれ出る闇の力を何らかの形で利用している。これはある時点で凍結されたドワーフの実験の名残なのか?

クリスタルが回転させることによって力の焦点の役割を果たし、それを反射し、屈折させることに気づいた。装置はこの増幅を通じて動き始める。もしかしたら、力の穴を安定させるために調整できるかもしれない。引力は強力だが、制御を維持しなければならない。何か一つでも失敗したら、この力から逃れられなくなるだろう。

ペンターチ・シーヴェルネス

ソリチュードの独白

Solitude Soliloquies

アテイアの横笛Ateian Fife

インペリアルの伝説の笛職人パーテロン・アテイアが死の直前に作った笛の一つ。パーテロンの笛は希少であり熱烈に求められていたが、これは彼が死ぬ前に完成させた最後の笛である。パーテロンは特別に吟遊詩人の大学へ寄贈し、長く保存され楽しめるようにした。

彼の横笛のいくつかは今もタムリエル中で使われているが、大部分は収集家か、アテイア家の才能ある笛奏者の元で隠されている。

アンジャルドの日記Anjuld’s Journal

最高だ!ついに夢が叶って、レディアント装具店を開店する。長年家のハチミツ酒醸造所で働きながら仕立やファッションのことを全部学んで、店を始められた。そして故郷のソリチュードで店を開くための場所を確保するため、何年も待った。何ヶ月もかけて店の準備を整えて、在庫の用意をした。そして、お店の営業を開始する。

成長を続ける企業にできたらいい。たとえ家族経営の事業でも。母のハチミツ酒醸造所を継ぐより、ファッションの道を選んだことで父ががっかりしていないといいが。そうは言っても、私に彼らの人生は歩めない。私は私の人生を生きるべきだ。

* * *
開店してから最初の数週間は何とも言い難い。人々は私の服のデザインに興味を持ち、品物を買ってくれる人もいた!上級王の娘が服を買ってくれることになったくらいだ。彼女はどうやって戻ってくるかについてと、特定のデザインについて何か話していた。

ハチミツ酒醸造所のことは父から聞いた。2人は私がいなくてもうまくやっているらしい。良かった。姪と甥に私の代わりをやらせている?冴えているな!おばとおじに感謝だ。

* * *
姪のダリエが仕立屋の一周年記念に立ち寄ってくれた。あの子はいつだって変わり者だ。むしろ私に似ているかもしれない。宝飾品も売ろうと考えたことはないかと聞かれた。正直に言うとそれほど興味はないが、アクセサリーは洋服を引き立てる!あの子がもっと大人になって、私に投入する資金がもっとできたなら。あの子に加わってもらって、ここで宝飾品の事業をやるのもいいかもしれない。

拡張する時期が来たら考えよう。

* * *
数年前に書き始めたこの日記を引っ張り出して、自分が日記をつけることに向いていないと気づいた。

この数ヶ月で変化があった。店から離れている時はいつも誰かに見られているような気がする。最終的には、ダリエと彼女の夫にここに来るよう頼むことは考えないだろう、という予感がする。彼女が宝飾品の商売を始める資金はあるが、ソリチュードはもう安全だと思えない。これについては、もう数ヶ月様子を見てみよう。その間に、テオネッタがそろそろハチミツ酒醸造所へ戻るべき時なのかどうか話し合うべきだ。彼女はここですごく役に立ってくれたけど、向こうでも新たな戦力が必要かもしれない。

ウスベト(発掘)Uthbet (Exhumed)

ウスベトここに眠る

族長殺しのライルの息子は

丘のように老いた

生まれながらの戦士

便所で死す

冷笑を浴びせながら

エナからの手紙Letter from Ena

ウラング

お互い無事だった時のために、「だから言っただろ」は取っておいて。いい価格を提示されたからと言って、リーチの民と取引すべきだった?いいえ。最後の瞬間に裏切ることを予測してた?きっとそうすべきだったのよね。でも、やっぱり答えはいいえ。

ここに長く留まり過ぎたら、奴らに見つかってしまう。だからそうしないで、滝の側にあるキャンプを目指して上流に向かうわ。向こうのほうが安全なはずよ。できるだけ早く会いに来て。でも、どうか気を付けて。リーチの民はドラゴン・ブリッジを狙っていると思う。

エナ

オグヴァル従士への手紙Letter to Thane Ogvar

オグヴァル従士

ご依頼のとおり、海の巨人についての情報を可能な限り集めました。予測に違わず、大した情報は得られませんでした。大部分の情報は、吸血鬼がカイネズ・パーチへ来る前に港を去った老人たちから聞いたものです。彼らは熱心に話してくれましたが、精度は疑わしいでしょう。何と言っても彼らは船員です。船に乗るより嘘をつく方がうまい。しかし、手に入ったのはその情報だけです。

ステグリルによれば、海の巨人は本土の巨人の親類ですが、より賢いそうです。彼とおかしないとこのようなもの、だそうですが。これはイングフィルの証言とも一致します。彼は海の巨人が言葉を話すのを聞いたと言います。半巨人だけではありません。彼が言うには、一番大きな巨人がシロディール語で何か叫んだそうです。これが本当なら、巨人に関する我々の知識は完全に覆されるでしょう。私も古代の巨人やアトモーラのタイタンの物語は聞いていますが、おとぎ話だと思っていました。ステグリルは断言していますが、実は自分で見たことはないと認めました。どう考えるかはお任せします。

実際のところ、船員たちは全員がこれまで海の巨人を見たことがないと白状しました。「見たら生きては帰れない」と言うのです。ただ1人だけ、以前に海の巨人を見たと主張する者がいます。セングレットです。一番の年寄りで、少なくとも80歳にはなるでしょう。彼女はドーンスター西の漁村で育ち、海の巨人が沿岸を襲った話を祖母から聞いたそうです。それは「ペイルがドラウグルの心臓のように冷え込み、ホーカーが岩の上で凍え死に、トロールが極寒に泣いた時」だったと。そして、第二紀532年にそんな冬が訪れました。セングレットが冷たい突風の中、沿岸に立っていると、ロングシップが一隻、みぞれ交じりの雪を突き抜けてくるのが見えたそうです。それだけです。それで話は終わりです。

お気づきのとおり、ここ数年間は暖冬が続いています。少なくとも、例年と比べれば暖かい。ですから、セングレットの話は筋が通りません。吸血鬼を考慮に入れなければ。ファルグラヴンが人々の心を歪め、泡立つ血の渦を起こして船を沈めていることは有名です。奴が巨人に何かを提供したのか、それとも隷属させているのか。いずれにせよ、誰も予期しなかった同盟です。本土に到達しなければいいのですが。ソリチュードの民にあれを押し返す力があるかどうかは、確信が持てません。

スンヴィルデ

カリソスの磁鉄鉱Callisos’ Lodestone

これは大吟遊詩人にして全ニルンで名を知られる音楽家、カリソスの楽器として崇められている。このリラは彼と共に、数十年にわたってタムリエル中を旅した。

カリソスはしばしば、どのようにしてマッドゴッドのシェオゴラスを出し抜いてこの楽器を手に入れたかという物語を語った。シェオゴラスに出会った時、カリソスはすでに熟練の吟遊詩人で、シェオゴラスが聞いたことがないような、もっとも官能的なラブソングを演奏した。カリソスはこの狂乱の王子に、彼の質素なリラにはディベラのむき出しの情熱が植え付けられていることを納得させたのだ。

シェオゴラスはそれを欲しがり、代わりに磁鉄鉱と呼ばれる楽器をカリソスに与えた。彼が栄光と名声をもたらすことを断言しながらカリソスの魂に結び付けたリラは、栄光と名声を実現した。

しばらくしてから、カリソスの偉業と才能は吟遊詩人の大学の卒業生の間で伝説となった。しかしある朝、磁鉄鉱が大学の練習室で発見され、それ以来カリソスの消息は一切不明となった。それ以来、カリソスは定期的にシェオゴラスの怒りから逃れてタムリエル中を旅するが、最後には捕まってしまうのだと長く考えられている。

カル・ドルーンのメモKal Druun’s Notes

我々はグレイホストの吸血鬼だ。故に扉を開ける必要はない。それでも我が主エグザーチ・ツィンガリスと同じように、私には知識への飽くなき渇望がある。このドワーフの扉は解明せねばなるまい!

鍵はない。ノブもない。ヒンジもない。
レバーもなく、はっきりと分かるものは何もない。古代のドワーフはどうやって開けていた?

機械に覆われた柱。あれについたパネルには何の意味がある?4つの異なる絵柄。星だ。

ドワーフは天空に興味を持っていたと言われている。パネルは夜空の異なる部分を表したものか?模様を見定める方法があるはずだ。

パネル。模様は正確に繰り返しているわけではないが、パネルに答えがあるに違いない。

どうやら分かったようだ。何が足りないかに気づいたら、答えがはっきりする!

知識が得られたら退屈になった。次の大きな謎に取り掛かろう!

グレイホストの書簡Gray Host Communique

エグザーチ・ツィンガリス

お前の素晴らしき知性には感謝している。再誕してから、我々の夢をこれまでになく実現に近づけてくれた。私が千年もかけて少しずつ崩してきた障害を、わずか数日で切り開いてくれた。

隠れ潜む時は間もなく終わる。お前の技を洗練させ続け、魔術結社の魔女に労働の成果を供給しよう。彼女たちは、ウルフラとその同胞を展開するための儀式の材料を作れるはずだ。最も強力な嵐を解き放つための準備をする間は、無差別に喪心の嵐を解き放ってノルドどもを悩ませよう。

お前の精製ネザールート混合薬を、儀式に必要なもの全てと一緒に中部のキャンプと私の砦に送ってくれ。沿岸のキャンプには、メダルをさらに準備しておくように警告する。ブラックリーチのキャンプの戦士長には、最新の命令を送っておく。

我が兄弟よ、強くあれ。グレイホストはまもなく蘇る!

ラダ・アルサラン

グレイホストへの命令Gray Host Orders

愛すべき同胞たちよ

何と言えば良いだろうか。ツィンガリスが死んだ。

彼を殺した者は影の中に逃げ去った。間違いなく、我らの邪魔をするつもりだろう。すでにその目的が、喪心者の拡散を阻止することだという噂もささやかれている。

これ以上、我らの目標を脅かす者を見逃すわけにはいかない。我が家族は苦痛から救われた。もうモラグ・バルでさえ私を止めることはできない。そのため、我々は仕事を早めなければならない。ソリチュードへの攻撃に関わるすべての準備を、至急完了させるのだ。

アンダーグローブでの作業に必要なものは、全て用意しておけ。場所は隠されており、古代の墓地は安全が確保されている。古代の墓地が地下に落ちたのは、まさにこのためかもしれない。喪心の嵐を次に進めるための、完璧な試験場になるだろう。エグザーチ・ウルフラは努力を導き、最後の喪心の嵐のための道を用意する。

グレイホストに栄光を!

灰の王、ラダ・アルサラン

コスリンギのリヴァイアサンホーンKothringi Leviathan Horn

絶滅したブラック・マーシュのコスリンギ人はごくわずかな遺物しか残していないが、吟遊詩人の大学はこの悲しげな楽器をその文化とナハテン風邪の被害を思い起こさせるものとして大切にしている。

この陽気なラッパはブラック・マーシュを徘徊する怪力の獣、リヴァイアサンの角から作られている。消えたコスリンギの人々の肌に合うよう、銀青の染料で染められていた。

大きく、良く響く音色は往時のコスリンギの人々のように、喜びと希望に満ちている。

サデウスの部品リストThaddeus’s List of Parts

回路化ハーフシェル(2):これらの部品は音調が循環する間、均衡を維持するために共鳴キャパシターが必要とする。

交換用歯車:コンストラクトの修理で既に使用されていなければ、特別な機械加工をしたコグと歯車はあらゆるドゥエマーの自動修理ジャンクションで見つけられる。

ドゥエマー焦点スコープ:特定の音が光を作り、ある光が音を作る。スコープの内部にあるレンズやクリスタルにヒビを入れないこと!

シスター・エルラの布告Sister Elra’s Proclamation

リーチの民よ

強大な軍が目覚め、我らの聖なる働きが力となっていることを知りなさい。私たちの力は高まっています。古き軍がこの世界で地位を取り戻した暁には、大きく報われることでしょう。

賢明にして老いぬ灰の王が、私たちの努力を讃えています。私たちの差し出す収穫が、王の愛する仲間を呼び戻すのです。これこそあるべき姿であり、正しいことなのです。

私たちの働きに疑念を抱く者もいるでしょう。我らが同盟者を恐れる者も。知りなさい!喪心の嵐の儀式の美しさを!儀式は灰の王に求めるものを与え、敵の心を恐怖で満たします。

私たちは儀式を極めました。より強力なものに変えたのです。今や嵐を呼び出すために必要な長槍はたった1つ。大きな嵐ではなくとも、十分な力を刈り取ってくれるでしょう。

心を強く保ち、魔術結社の命ずる通りに動きなさい。光を求めるのではなく、灰を称えるのです!

シスター・エルラ

ジャハル・フソジャJahar Fuso’ja

第二紀の初頭、カジートが入学し教職につく許可と引き換えに、エルスウェアのたてがみがこのカナンを吟遊詩人の大学に寄付した。当時は拡大するレマン王朝のインペリアル支配に対して、カジートの支配層が彼らの文化を保護して拡散するための手段を模索していた。

このカナンはエルスウェアに壊滅的打撃を与えた、スラシアの疫病の終焉を告知する祝祭で演奏された。祝祭の楽器を意味する「ジャハル・フソジャ」と名付けられたこの楽器は、現在も我々に生命の誇りと、古い曲を思い出させる。

スカイトーカーSky-Talker

この太鼓はシャドウフェンで無数に起こったある奴隷の反乱で、無名のアルゴニアン奴隷によって使用されたものだ。持ち主の名は失われてしまったが、このスカイトーカーという太鼓は、暴動の最中に他の奴隷たちへ伝言を送るために使われていたと言われている。「太鼓の声」は、しばしば反逆者に偉大な功績を与えたようだ。

この太鼓は精神を奮い立たせて魂を鼓舞する必要がある時、最悪な状況であっても音楽が力を与えられることを、吟遊詩人に思い出させている。

スカイリムのチーズ:ハイヤルマーチ、ハーフィンガルCheeses of Skyrim: Hjaalmarch, Haafingar

通信員の要請により、私は読者を退屈させないために多大な努力を払って旅行記の内容を制限した。スカイリムを旅するにあたって、私は自分の旅をどのような観点から見せるべきか迷っていた。旅の最初にたっぷりと食事をとった後、食べ物しかないと私は思った。このようにして、スカイリムのチーズ一覧が誕生したのである。

この国は様々な顔を持ち、その気候も多様である。そのためチーズの種類も膨大だ。繰り返すが簡潔にするため、訪ねた地のそれぞれから、最も注目すべきチーズだけを記すよう気を使った。

B.

グリーンエッジ
グリーンエッジはお祭りのチーズである。ハイヤルマーチ、特に首都のモーサルの陰気な評判を考えると少し変わっている。このチーズの名前は、近くの沼地から摘んだイラクサで編んだ可愛らしい「籠」から来ている。見た目も製法も籠としか呼びようがない。チーズはこの籠の中で塩水に漬けられ、それから潰される。潰す際に、通常は乳白色のチーズに緑の輪郭ができる。

ここではチーズの食べ方も変わっている。グリーンエッジは祭りの最後に出されることになっていて、ちょっとした見ものだ。若い狩人はイラクサで包んだこのチーズを持って松明を当て、包みが燃えてチーズが溶けかかった状態になるまで熱するゲームをする。このゲームに熟練した者は、チーズを焦がさず指を火傷しない程度に動かしながら、とても溶けやすいこのチーズを松明の炎の周りで踊らせる。観衆からは熟練者に喝采が上がる。

このように調理した後で熱いチーズは食卓に供され、来客はすぐさまパンや、場合によってはスライスしたリンゴを溶けたチーズに突っ込む。子供にとっては特に楽しい瞬間である。ここでチーズの隠された中身が明らかになるからだ。ドライフルーツやベリー、裕福な家庭ではアンバープラムが丸ごと1つ入っていることもある。最初にプラムを引いた運のいい者は、その祭りの王と呼ばれる。

ソリチュード・エイダール
個人的な意見だが、これはスカイリムで最高のチーズである。味や変わった性質のためではない。とてつもない希少性のためだ。ソリチュード・エイダールはその名の通りエイダールチーズであり、菌類の胞子を吹き込んで熟成させる。そしてエイダールは地下で熟成させるが、このチーズも古代都市の下にある地下室を用いる。しかし、普通のエイダールと似ているのはここまでだ。

まずは材料が違う。ソリチュード・エイダールは西スカイリムの頑固な伝統主義をチーズ製造へ見事に反映したものであり、それは牛乳の時点から始まっている。西スカイリム最初の王スヴァルトル首長が飼っていた牛だけが、このチーズの乳を供給できる。この牛の末裔である王家の牛は、忠実な家臣によって管理されている。牛乳は定期的にソリチュードへ配送され、そこでブルー・パレスの世襲官職である王家のチーズ売りによって検査を受ける。この乳製品の達人は検査対象の牛乳に厳密な基準を設けている。実際に彼の仕事を見たが、ソリチュード・エイダールを作って良いとされる樽は1ダースにつき1樽程度である。牛乳を凝乳にする際も、このプロセスのために特別に作られたいくつかの砂時計を使って正確に行われる。最後に前回のチーズのかけらが次のチーズに使われ、何世代も遡るエイダールの途切れない連鎖が生み出される。

私が受けた説明によると、この結果スヴァルトルの時代と同じ外見と香り、味が正確に再現されるという。私は疑わしいと思ったが、数十年間保存されたチーズと、最近切り取ったばかりのチーズの2片を与えられた。違いがあるかどうか、両方を味見せよと言われたのだ。

違いは分からなかった。私は泣いた。

スカイリムのチーズ:ホワイトラン、ウィンターホールド、イーストマーチCheeses of Skyrim: Whiterun, Winterhold, Eastmarch

私はスカイリムの旅行記を、東のチーズに注目して続ける。ホワイトラン、ウィンターホールド、イーストマーチのチーズである。繰り返すが簡潔にするため、訪ねた地のそれぞれから、最も注目すべきチーズだけを記すよう気を使った。

B.

アルド・アンバー
スカイリムで最も贅沢なチーズの一つは、この王国の穀倉地帯となっている肥沃にして広大なホワイトランで生まれた。しかしアルド・アンバーは食べれば豪勢な気分を味わえるものの、私がこの旅で出会ったチーズの中で、もっとも複雑かつ挑戦的なチーズとは言えない。

多くの人はその名前だけを見て、アルド・アンバーはエイダールのように熟成されたチーズだと思い込む。しかし事実ではない。この名前は、このチーズがいかに長い間ホワイトラン料理の一部を成していたかを示す証だ。正直に言って、これをチーズと呼ぶことさえためらわれる。その製法は私が知るどんな製法とも似ていない。凝乳に圧力を加えて取り出したホエーを捨てず、クリームの中に混ぜる。混ぜたものを口が広く浅い鍋で何時間も煮ると、いずれ液体は固体になる。その過程で薄い茶色になり、キャラメルのような香りが出る。「アンバー」の名はそこから来ている。

ゴーストフレッシュ
ウィンターホールドの民は、ここの有名な大学で魔術を学んでいない限り単純な人々であり、亡霊の海で働いて生計を立てている。家畜に向いた牧草地は少なく、海からはしばしば厳しい風が吹くため、子牛の群れがしばしば熱病にやられてしまう。牛の乳もヤギの乳も供給量は少ない。手に入るわずかな量は、新鮮で柔らかい農家のチーズになる。しかし質素な環境にもかかわらず、ウィンターホールドの人々は私が味わった中でも屈指のチーズを作る。

老人や亡霊の海へ挑むには若すぎる子供は、海草を集めて日々を過ごす。これは数週間かけて乾燥される。簡素な農家のチーズは海草を積んで燃やした煙で燻すため、潮の香りが込められている。その上で、小麦粉とホーカーの脂肪で作ったパンにチーズを包んで焼き上げる。ここが秘訣のようだ。こうして勇敢な漁師は、海で仕事をしながら食べることができる。彼らは片手しか自由に使えないことが多い。
このパンは焼き立てだと中身がとろけ、湯気を出しながらパチパチと音を立てている。外はまだサクサクしていて軽く、透明な生物の肉を噛んでいるような食感だ。ウィンターホールドの凍える海辺を数時間歩き回り、日没に見舞われた後で食べることを勧める。

マンモスのチーズ
旅の途中で私を親切にもてなしてくれたイーストマーチの善良な人々はおそらく、彼らのチーズ製造を省略してしまうことを許してくれないだろう。しかしここにある巨人の野営地の数を考えれば、スカイリムの童話で必ず言及される食べ物、マンモスのチーズについて語る機会を逃すわけにはいかない。これは巨人によって製造される、唯一の流通商品である。

これは原始的なチーズである。若いマンモスの胃を、巨人の飼うマンモスの乳で破裂する寸前まで一杯にする。乳が凝固してできた凝乳を皮の袋に入れて搾り、湿気を取り除く。するとペースト状になったマンモスのチーズが残る。食通も好まぬ代物で、危険を冒して手に入れる価値はない。

しかし言及する価値があるのは、硫黄の泉付近で群れを飼う巨人の奇妙な行動である。彼らは凝乳の袋をミネラル豊富な水で煮るが、これによって複雑な芳香が生まれる。何の香に似ているかというと、ガラス製造に用いられるカリウムの灰くらいしか思いつかない。この工程が終わると、マンモスチーズはあらゆる地の食卓に届ける価値がある品となる。

スカイリムのチーズ:リーチ、ペイルCheeses of Skyrim: The Reach, The Pale

スカイリムの旅行記を、このリーチとペイルのチーズの調査によって続行する。繰り返すが簡潔にするため、訪ねた地のそれぞれから、最も注目すべきチーズだけを記すよう気を使った。

B.

雌の怒り
カーサルドとリーチでは岩場の多い山道と切り立った崖のため、現実的に飼育可能な動物は山羊だけだ。従ってこの地域の主なチーズは山羊乳で作られ、この地方全体で育つごく普通のジュニパーの実で味付けされている。このチーズでもっとも興味深いのは味でなく(ちなみにうんざりするほど塩辛い)、むしろ地域の政治における奇妙な役割である。リーチではよく反抗的かつ野心的な指導者が誕生する。彼らはソリチュードやエバーモアから来た、武装した監視役の兵士の元で暮らす。彼らはしばしばリーチの人々の心に叩き込まれているらしい、征服への欲望を抑えるためにすべきことをする。

野望を挫く中で、多くのリーチの伝統が抑圧されるようになった。雌の怒りを作ることと、食すことを除いて。この名はチーズを作るために、雌山羊の乳をその仔山羊の胃の中で凝固させることが由来となっている。チーズはリーチの人々が大切にしている祝宴の日に食される。リーチの人々の魂を抑圧する者たちに対する、厳然たる反抗の中で。このチーズの塩辛い特性は、雌山羊の涙によるものだと言う人もいる。その乳が仔の死体の中で酸味を付けられるからだ。リーチの愛国者は、チーズが塩辛いのはそれを食す者にリーチへ降りかかった不幸、達成されない宿命に対する罰を思い出させるためだと言う。

ビエンオスト
ビエンオストはスカイリムで最も興味深く、「チーズの中のチーズ」と呼ばれる。これを食すのはほぼペイルの民のみで、彼らはそれを冬が終わり、春が戻ってくる証とする。

多くのチーズと同様、ビエンオストはほぼ間違いなく貧しい人々の間から生まれたものだが、現在では貴族も平民も同じようにこの珍味を楽しんでいる。ソーセージの多くと同じ形式で、解体された豚の腸に詰めて作られる。雪解けが近づくと、彼らは長く暗い冬が続く間に消費したチーズの外皮やかけらを、エール(酵母と麦芽の茶色いとろみのある液体。それ自体が食事にもなる飲み物のようなもの)の醸造樽に浸し、その後腸の中に詰め込む。それからビエンオストを乾くまで吊るし、仲春祭の時に初めて降ろされる。黄金の円盤のように薄切りにされたビエンオストは春の太陽に似ていると言われ、皆で楽しまれる。

スカイリムのチーズ:リフテン、ファルクリースCheeses of Skyrim: Riften, Falkreath

スカイリムで普及しているチーズに焦点を絞ったこの旅行記はまだ続く。スカイリムの地と料理はあまりに多様であり、私はとても様々な味わいを体験している。繰り返すが簡潔にするため、訪ねた地のそれぞれから、最も注目すべきチーズだけを記すよう気を使った。

B.

リフトウォッシュ
かつてはリフテンの首長だけが食べられたリフトウォッシュは、ガラスのような紫がかった黒い色をしたチーズだが、その中心は見た目を裏切って青白く砕けやすい。山羊乳のチーズであることから、スカイリムのより温暖な地域ではあまり見られない。リフトウォッシュは圧縮されてチーズ内の水分が取り除かれるため、ブレトンが水気の多さを高く評価するストームヘヴンの山羊乳チーズと異なり、比較的乾燥している。

リフトウォッシュはチーズの製造者がホイールをホンリッチ湖の泥水に漬けるので暗い色合いになると噂されているが、当然のことながらこれは根も葉もない嘘だ。実際はリフテンの有名なブラックベリーハチミツ酒で何回か洗い、その後は街で急増しているハチミツ酒工場の副産物である、ブラックベリーの果もろみで染めたロウで覆う。

バローオスト
ファルクリースの人々は戦いや死とファルクリースの長い結び付きを心から尊重しているようだ。店やとても多くの家族が名前や個人的な紋章を、街に隣接した限りなく広く思える墓地から取っている。ファルクリースで屈指の評価を得たチーズが、重要な製造過程を死者に依存しているのは驚くに値しないのかもしれない。

一般的には墓地チーズと呼ばれるバローオストは、スカイリムの各地で見られる普通のエイダールチーズととてもよく似ている。しかしエイダールチーズは地下や洞窟で熟成させるが、このバローオストは墓地だけで熟成させるのだ。崩れかけ、ドラウグルがはびこるスカイリムの暗い過去の墓で。よどんだ空気、とめどなく水分のにじみ出る石、あるいは壁の中の闇魔法。このチーズはそういった環境で、抗い難い鋭く鼻をつく香りがアクセントとなった、凝縮された素朴な甘さを獲得する。

余談だが、私はファルクリースでは今も古代ノルドの習慣「墓の凝乳」を実践していることを知った。習わしによれば、愛する者の棺の上には新鮮なファーマーズチーズが埋葬される。毎年、故人の命日になると墓の凝乳が掘り出され、その5つ目を遺族が消費する。墓場で生産されたものを食べるのは多くの人がためらうだろう。だが、私に出されたチーズはとても美味だった!

スカルド王の密偵からの手紙Letter from the Skald-King’s Agent

信頼する協力者へ

これまでに提供してくれた情報は、スカイリムだけではなく全タムリエルに及ぶ可能性がある恐ろしい脅威の存在をほのめかしている。我が君主、スカルド王ジョルンは範囲と力が増大する前にこの脅威を阻止することを望んでおられるが、そのためにはより詳細な情報が必要だ。脅威が事実で、スカルド王の支援を受け入れなければならないことをソリチュードの支配層に納得させるための証拠がいる。あなたが頼りだ。

西スカイリムにあるハーフィンガルの首都、ソリチュードの門の近くまで会いに来て欲しい。メモを比較して、最善の行動を決定しよう。

カイネのご加護がありますように

B

セデュアSedua

セデュア

パクトの兵士として

戦いに死す

あまりにも若く

ソリチュード:焼け焦げた日記Solitude: A Charred Journal

イソガルによる注釈付きの書き写し

[注釈者の注記: 私は祖母のナンの遺品の箱の底に、この焼け焦げた日記を見つけた。彼女の筆跡ではなかったため、別の親類のもののようだ。祖母の母親だろうか?より良い状態で保存するため、これを新しい日記に書き写し、注釈を付けた]

最近、変な夢を見るようになった。それはソリチュードでの最初の夜に始まった。これまで生きてきて、夢なんて見たことがない。だからどんなものなのか、全然知らなかった。他の人々が説明してはくれたけど、くだらないと思っていた。

でも、ここであったことは夢と呼ぶしかない。目覚めた時周囲にあるものとは、似ても似つかない。書き記せば意味が分かるかもしれないので、書いてみる。

最初の数回はここソリチュードで起きたけど、建物が見えなかった。ただ自然の地形があるだけ。それに風もあった。とても強かった!アーチから出てきて、その後海辺を少し歩いて、キャンプに着いたのを覚えている。毛皮と木で建てられた小屋があったが、人の姿は見えなかった。どこに行ったんだろう?燃える料理の火と、食べかけの食料が残されていた。

[これはソリチュード以前の時代のようだ。当時ノルドはカース川沿いで、アーチを風よけに使って即席のキャンプをしていた。ナンが聞かせてくれた物語のおかげで、私もそういう夢を見たことがある]

その後、私が今ソリチュードのあるところに姿を現すと(目印のアーチでわかった)、建物がいくつか見えた。また誰もいなかったが、近くで上級王アーリンについての会話が聞こえた。王は神々に捧げる聖堂の建設を命じ、また壁の計画を始めていた。スリラヒルデという女性が、壁のためにある特殊な様式を推薦した。それは見た目が特徴的なだけでなく、他の計画よりも優れた防御力を発揮すると言った。彼女に反対する者は非難の声を上げたが、名前は聞こえなかった。歴史に埋もれてしまったのだろうか?

というのも、私の夢は明らかに、なぜか私を過去に連れ戻しているからだ。ただ、完全ではなかった。人の姿が見えない。夢の中はとても…孤独だ。聞こえる声を除けば。

[夢の中で過去を旅する?馬鹿げている。それに私の一族の物語で、ソリチュードを建築した者の名前は、一人も現代まで残っていない。ただし、スリラヒルデが実在するかどうかは何とも言えないが、ソリチュードの外壁が特徴的で、ドール城の聖堂が民の心に強く根づいていることは事実だ]

次の夢で、私は司祭が、石工によって壁に加えられる前の石に祝福を与えているのを見ていた。これは一つの夢でしかないけれど、受けた印象では全ての石が一つずつ、神々の司祭による祝福を受けていた。アーリンの声があちこちを漂っていた。彼は直接、この工程を監督しているようだった。

[ナンは確かに、すべての石が神々の祝福を受けたと言っていた。私の知る限り、これは私の一族だけに知られている伝承だ。ナンはこれを一族の物語で知ったのか、それともこの日記から知ったのだろうか?私はこの著者よりもナンを信じる。だからこの情報も、同じように正しいと思う]

次の日の夜、ブルー・パレスが私の前に姿を現した。作りかけの回廊の中に立っていると、金切り声と道具がガタガタいう音が聞こえた。

「幽霊だ!幽霊が見えたぞ!」

少し時間がかかったが、声の近さを考えると、こう尋ねるしかなかった。私のこと?彼には私が見えるの?なぜ私には見えないの?そこで私は急に目を覚まし、その夜は再び眠りにつくことができなかった。

[妙な話だ。これはただの物語で、本物の日記ではないのだろうか?]

私が見られる人々から私を守ろうとするかのように、私たちは再びもっと前の時間に飛んだ。「私たち」と言ったのは、このことに関係している者がきっと他にいるからだ。今回とそれ以降の数日は、吟遊詩人の大学が目の前に姿を現した。完成した入口を、最初の吟遊詩人がぼやけた影になってまたいだ。言葉までは聞き取れなかった。

でも、私は影を見た。

そして影も私を見た。

私はこの時、叫びながら目を覚ました。

[こんな歴史のふりをした物語には付き合っていられない]

次の夢は戴冠式だった。私の予想では、隻眼のオラフだ。なぜかというと、同じ夢の中で、この男の像が焼かれるのを見たからだ。毎年行われる祭り、オラフ王の焚刑は明日だけど、その時に焼く像だった。

彼の目は…両目は、私の両目に焼きついた。今、私の体にはあちこちに火傷がある。治ってきてはいるが、もう眠りたくない。二度と。

[ナンはなぜこの日記を他の持ち物と一緒に残したのだろう。周知の歴史を夢に移した、くだらない作品だ。やれやれ。だが念のため、書き写しておこう]

[数週間が経過したが、私は言葉が燃え上がり、隻眼の上級王の周囲を飛び回る夢を見ている。今朝は、自分の髭が燃える臭いで目が覚めた。髭は黒焦げになっていた。明日は、オラフ王の像を燃やす日だ。今日は神々を訪ね、私が陥ってしまったらしいこの夢の罠から抜け出したいと思う。なぜあの焦げた日記を開いてしまったのだろう?]

ソリチュードのおとぎ話Solitude Bedtime Stories

ニルカスとユキサーベルキャット

ある日、ニルカスという名の少年が氷上へ釣りに出かけました。ニルカスはとても遠くまで歩きました。歩いていると、周りで嵐が巻き起こりました。すぐに雪がとても激しくなり、ニルカスは何も見えなくなってしまいました。ニルカスは近くの洞窟で吹雪をやり過ごすことにしました。

ニルカスが待っていると低いうなり声が聞こえ、嵐の白い霧の中から、ユキサーベルキャットが現れたのです。ユキサーベルキャットは大きく吠えると、洞窟に入ってきました。ニルカスは怖くなりました。あんなに大きく強そうな獣と戦えるような武器など持っていなかったのです。ユキサーベルキャットが吠えて唸ったので、ニルカスは攻撃されると思って心の準備をしました。その時、ニルカスはユキサーベルキャットが足をひきずっていることに気づきました。

近づいてよく見ると、ユキサーベルキャットの足に大きなとげが刺さっていました。ニルカスはありったけの勇気をかき集め、ユキサーベルキャットから逃げずに近づいてとげを抜きました。ユキサーベルキャットは痛みで吠えましたが、苦痛が消えていくにつれ、ほっとした様子が体中に広がりました。

ユキサーベルキャットはとても感謝し、ニルカスの顔と手を舐めると、横で丸くなりました。その後、ニルカスが出ていくにはまだ嵐が危険だったので、ユキサーベルキャットは彼のために獲物を持ち帰り、安全で温かい洞窟の中で、仲良くそれを食べました。

嵐が去ると、彼らは洞窟から出ました。それ以来、ニルカスとユキサーベルキャットは共に旅をするようになり、一生の友達になりました。

* * *

見知らぬ者とは決して話すな

リーチの民とは決して話すな、奴らは夜にお前を食べる。
東の者とは決して話すな、奴らが望むのは戦いだけ。

オークに挨拶するな、奴らは常に臭そうだ。
レッドガードに挨拶するな、奴らはただ叫ぶだけ。

エルフとは決して話すな、高慢な癇癪持ちで、とても無礼になる。
インペリアルとは決して話すな、奴らが人と分かち合うのは不機嫌だけだ。

アルゴニアンとは友達になるな、湿ってぬるぬるしている。
カジートとは友達になるな、奴らは光るものを全部奪う。

ブレトンとは決して話すな、奴らはエルフと同じほど悪い。
見知らぬ者とは決して話すな、我らノルドは孤高を保つ!

***
首長の新しいローブ

昔、驚くほどうぬぼれ屋の首長がいました。首長は世界中の何よりも自分の上等な服が好きでした。そして、自分の新しい服を見つけて買うために、しばしばやるべき仕事を怠りました。

ある日、仕立屋と称する2人の汚らわしい犯罪者がやって来ました。2人は最高に美しい色とデザインで、この上なく素晴らしい服を作ることができると首長に言いました。2人が作った服はそれは素晴らしく、おまけに愚か者と今いる地位にふさわしくない者の目には見えないものだったのです。

首長は仕立屋たちにできるだけ早く上等な服を作るよう要求しました。それも、首長にふさわしい服を!首長が仕立屋たちに気前よくお金を払うと、2人は仕事を始めました。ですが実際、2人は全く何もしませんでした!2人はシルバーウィードやスパイダーシルクのような立派な材料を求めましたが、それはただ自分たちのためにしまっておき、一生懸命仕事をする振りを続けました。2人は仕事の振りをする間、スイートロール、パイや、首長のロングハウスにある豪華なベッドで眠ることが必要だと言いました。

やがて首長は服の進み具合を知りたくなりました。首長はそれを確かめるために私兵を送り出しました。私兵が到着すると、仕立屋たちは何もないテーブルで仕事をしていました!私兵は一体どういうことなのかと不思議に思いました。仕立屋は私兵に、服は気に入ったか、色はきれいだと思うかと尋ねました。私兵は服が見えないのは愚か者と、今の地位にふさわしくない者だけということを思い出しました。自分はそのうちのどちらでもないと思った彼女は、この服はこれまでに見たどんな服よりも美しいと仕立屋に向かって嘘をつきました。私兵は首長のところに報告に戻り、服は全く素晴らしいものだったと断言しました。首長が同じように宮廷魔術師と執政を確認に向かわせると、2人にも何も見えませんでしたが、見えた振りをしました。彼らは首長に、衣装は目を見張るようなものだったと請け合いました。

間もなく、仕立屋たちが仕事の完了を告げました。首長は自分で見に出かけました。到着すると、首長は自分に何も見えないことにひどく衝撃を受けました!仕立屋たちは何もないテーブルを指さすと、この出来栄えに満足するかと尋ねました。首長はそのデザインを気に入ったでしょうか?息をのむような色合いはどうでしょう?首長は真実を認めることがあまりにも恐ろしかったため、とても気に入ったので今すぐに着たいと仕立屋に告げてしまいました。

首長が服を脱ぐと、仕立て屋たちは身振り手振りで新しい服を着せつける真似をしました。2人はとても几帳面だったので、終わらせる前に首長の首元に想像上のローブを留めることさえしました。それが終わると、首長は新しい服を誉めさせるためにお付きの召使たちを呼び入れました。召使たちはみんな、まるでホーカーのように裸で立っている首長を見て驚きましたが、見えないと認めるのはあまりにも恥ずかしいと感じました。そこで、そう言うかわりに首長の服を誉めそやし、全員が素晴らしい服だという意見に賛成しました。

仕立屋たちは首長に、街中に出て民に新しい服を披露すべきだと強く勧めました。そこで首長は言われたとおりにしました。人々が一目見ようと集まる中、首長は誇らしげに道を進んで行きました。街の人々もみんな裸の首長を見ましたが、愚か者だと言われないかと恐れ、言うことはできませんでした。

人々が服の見える振りをやめたのは、人だかりから飛び出した子供が大声で「首長が裸だ!」と叫んだ時のことでした。人々は指をさして笑いはじめました。恥をかいて腹を立てた首長は、ロングハウスに走って戻りました…しかし、自称仕立屋たちはもう立ち去った後でした!

そこで首長は、私兵、宮廷魔術師、執政を処分しました。首長の愚行を止められなかったためです。彼はとても鋭く硬い斧で、自ら首を切り落としました。

ソリチュードの狼The Wolf of Solitude

吟遊詩人の大学 スカルドのピエトル 著

豊かな髪と獰猛な精神がハーフィンガルの白い狼のような上級王スヴァーグリムは、やむことのない激しさをもってブルー・パレスの広間を闊歩する。警戒を怠らず。隙を見せず。彼の前のスヴァートルの子孫と同様、スヴァーグリムは四方を囲む敵に悩まされる王だ。だが我らがソリチュードの高貴な狼のように、気高い血筋の中には、統治期間中に不利な状況へ直面した者がいない。

彼が統治を始めて2年も経たぬ時、海の巨人クランサースの艦隊が知られざる土地から彼の街の高き壁を包囲するためにやってきた。クランサースがスヴァーグリムと王国に対し、降伏し貢物をよこせと要求したとき、我らが王は城の胸壁の上に立ち、その怪物のごとき戦士と対峙したと言われている。だが我らが上級王は屈服しただろうか?否!彼は壁から跳躍すると、あたかも狼がマンモスを捕食するかの如く、巨人の喉を切り裂いた。大いに感銘を受けたスヴァーグリムの兵たちは、門を押し開けると彼の後を追って突撃し、呆然としている海賊を海に追い返し、二度と我らの岸辺に戻らぬようにした!

第二紀265年(本当だったかさえ分からないが)の大規模なトロールの発情期のことも忘れるべきでない。時ならぬ暖かな気候がこの恐ろしい種族を触発し、彼らが西スカイリム中で暴れ回って、言葉にするのもはばかられる恐ろしい行動から抜け出せずにいた時の話である。狼は自ら20もの不浄な結びつきを断ち切り、さらに40もの獣を剣で引き裂いた!今日に至るまで、トロールはウグイアビがサーベルキャットの巣を避けるように、ソリチュードの壁にもっとも近い地域を避ける傾向にある。

アカヴィリが征服を目的にスカイリムへやって来たとき、絶壁の上にいる我らの恐ろしき王をひと目見ると、より簡単な獲物を求めてそのまままっすぐ東へ帆走していったことは、誰もが確信できる。彼らはダークエルフ、泥トカゲ、そしてスカルド王子と呼ばれる者の陰謀によって衰退させられたが、ウィンドヘルムと東の偽上級女王、炎の髪のマブジャールンを手早く片付けた。余談だが、奴がスカルドを名乗るのは高潔な技能に対する侮辱だ。

中庸なる皇帝モリカルは、ルビーのクッションが効いた玉座の上からスカイリムを支配下に置く無駄な試みのため、軍団を我々の境界に送り込む前に注意するべきだった。彼はその臆病さのおかげで先王と同じ体裁の悪い死を免れることはできたが、一戦で彼の軍の運命を決めた狼の遠吠えは間違いなくはるか白金の塔まで届き、悪夢となって人生の最後まで悩まされたことだろう!

そして最後にロングハウス帝が倒れた後、シロディールから群れをなして殺到した魔法使いから西スカイリムを救ったのは誰だったか?数千のごろつきが追い詰められ、病にかかった犬のように我らの土地に入り込んでかじりついたが、我らの気高い狼は大股で飛び出し、誰の牙が最も鋭いかを見せつけた。我らの土地で小隊以上のリーチの民を見たのは、どれほど前のことだろうか?

強くあれ、西のノルドよ。東と西から、南と北から厄介な問題が我らを攻め立てる。エルフとトカゲと氷の踵が野合した協定や、マルカルスの暴君の汚らしい大群を恐れる必要は全くない。ソリチュードの狼が塔の上で、夜を徹して絶え間なく警戒を続けている。我々の素晴らしき地で、敵は安全な隠れ場所を見出すことなどできないだろう。

ソリチュード王家の醜聞Scandals of Solitude’s Royalty

組織的学者協会、エリサ・シルベニッテ 編

家族の伝承を教えてくださった、多くの西スカイリムの一族の皆様に感謝を込めて。

上級王アーリン、ハラルド、スヴァートル、スヴァーグリムについては、その間のより目立たない首長よりも多くのことが知られている。しかしノルドの口承が情報源となるため、初期の上級王や家族の重要な、もしくは淫らな物語がそれぞれの家に伝わり、論文、書籍、巻物のような媒体に記録されなかった。ここにはソリチュード王家にまつわる、恥ずべきと言って良いかもしれない物語を収録した。

「首転がし」ロレケの血塗られた最後

第一紀後半のある時期、冷静で控え目な態度と落ち着いた佇まいから、無表情なイルシヴィドと呼ばれた若き首長がノルドの間で名を上げた。イルシヴィドがどこの出身だったかはもはや定かでないが、彼らは支配者である上級王「首転がし」ロレケが、5分もかけずに20人以上の反逆者の首を一人で切り落とした後に、ソリチュードが秩序を取り戻すために協力した。(ある情報によれば、その20人の中には彼女の当時の夫も含まれていたとされている。彼女は自らの統治時代に、次々と夫を替えた)。その後間もなく、指導者による振る舞いに対するソリチュードの民の忍耐は尽き、立ち上がってブルー・パレスにいたロレケを攻撃した!

その地域にいたイルシヴィドは戦士と共に反乱の声が湧き上がるのを聞き、ソリチュードへ向かった。門にたどり着くとイルシヴィドの前にカイネが現れ、ロレケが1時間前に子供の手によって死んだことを告げた。悲しいことに、息子や娘たちも残忍で血に飢えたロレケによって負傷し、命を落としていた。そのため、ソリチュードにはもう上級王や直系の後継者がいなくなった。

馬に乗っていたイルシヴィドはカイネの恵みにより、結果として生じる混乱を解決するため、ソリチュードの市民を助ける準備が整っていた。カイネの祝福によってイルシヴィドがソリチュード上級王の冠を戴いたのは、わずか数時間後のことだった!

イルシヴィドの安定した統治により、ロレケの残忍な支配の後に平和が訪れた。数十年が経過し、若きイルシヴィドは中年のイルシヴィドとなったが、伴侶はいなかった。ノルドの王家で後継者がいないことは大きな問題ではなかったが、疑問は生じた。イルシヴィドは伴侶を持つことも、子供を持つことも断固として拒否した。最終的に、上級王の称号はイルシヴィドの顧問のうちで最上位だったテミルダに受け継がれた。テミルダはこのために複数の首長と一度に戦い、勝利したのだ。これは当然ながら、私が収集した口承の次の話につながる。

亡霊作りのアルディマー

テミルダの統治が終わってから約40年後、流血と暴力を経て新たな上級王が玉座に着いた。アルディマーというリーチの民との小競り合いを数多く経験してきたノルドが、先王の子供だと証明されていなかった後継者から強引に称号を奪い取った。彼の強みは優れた戦術能力と、多くのノルドが眉をしかめるアルケイン関連の知識だった。血にまみれた即位にもかかわらず、彼が統治を始めると国全体に平和が訪れ、彼がソリチュードを獲得した後は、行政や外交について不満を言う者は誰もいなかった。その結果、多くの者が子供に王位を継がせることに疑問を覚えるようになった。なお、その子供の名と来歴は忘れ去られている。そのように英雄的で戦場の試練を乗り越えた人物を指導者とすることは、ノルドの戦いを好む性質にも適合していた。

だが、アルディマーの全てが完璧ではなかった。時々、召使はそこにいない誰かに話しかける君主を見ることがあった。彼らはまた、王の顧問であるフレイレッタという冷たい目をした女についても噂した。その女はアルディマーの前にいない場合、人前に姿を現すことがなかった。部屋に入ることは誰にも許されなかったのだ。

この噂がソリチュードの人々の間に広まるにつれ、不安感が高まっていった。アルディマーは戦闘中に頭を打ちすぎたのではないか?実際フレイレッタとは何者なのか?ここでまだ何かが起きているのか?

アルディマーが玉座に着いてから1年と1日後、事故が起こり始めた。毎週、ソリチュードの者が新たに奇妙な死に方をした。ある者は不思議にも風で運ばれた矢に狙われて〈寂しいトロール〉に張りつけられた。ある者はただつまずいて尻もちをつき、命を落とした。さらにある者は目に見えない脅威から逃げるホーカーに踏みつぶされた。

召使は上級王の部屋の周辺で、姿の見えない声を聞くようになったと囁き合った。

最初の事故から1年と1日後、アルディマーが亡くなってから彼の秘密が明らかになった。「事故」の被害者たちの頭蓋骨が、上級王の部屋にある秘密の棚にまとめて置いてあったのだ。だが、一体何の目的で?

理由は何であれ、上級王アルディマーはこの発見により「亡霊作り」と呼ばれるようになった。

私の情報源は、司祭が行き場を失った遺体のために適切な儀式を執り行ったと告げている。しかし召使たちは今に至っても、ブルー・パレスの中で声が聞こえ、視界の隅で何かが見えると主張している。

デスハウンドの生態Ecology of the Death Hound

オドグレテ・ビェルセン 著

荒野でデスハウンドに遭遇したことがないなら、自分は幸運だと考えるべきだ。彼らと出会って生き延びた者はほとんどいない。この目が赤く光る大きくたくましい犬はアンデッドであり、吸血鬼の拠点の番犬として共存していることが多い。もしこの獣と正面から出会ってしまったら、おそらくより差し迫った問題に対処しなければならないことに気づくべきだろう。

多くのデスハウンドが室内に留まり、主人たる吸血鬼の番犬の役割を果たしている一方で、荒野をさまようデスハウンドも存在する。彼らは生息地の生態系において重要な役割を担っており、しばしば生息環境そのものにまで被害を及ぼす。彼らは目に入ったものをほとんど全て攻撃する、貪欲なアンデッドの肉食獣だ。彼らが獲物を狩るのは食物を得るためか、単に血への欲望を満足させているのかは未だ明らかになっていない。獲物の内臓を抜き取り摂取するが、それは生存のためというより、気性の問題だということを広範囲に及ぶ獲物の種類が示唆している。

デスハウンドの特徴の中でも珍しいものは、噛みつかれると冷気を感じることである。デスハウンドの一噛みは「墓場のように冷たい」という言葉で言い表されている。デスハウンドの噛みつきはほとんど毒物のように噛まれた肉を凍らせ、動きを封じられる。この魔法が吸血鬼と何か繋がりがあるのか、あるいは単なるこの怪物じみた生物の資質なのかを知る者はいない。

デスハウンドがいる地域の動植物は被害を受けやすい。この獣は見境なく狩りをするため、あまりにも長くとどまった場合は、その地域の生物を全滅させる可能性がある。幸い、荒野で活動する吸血鬼の結社は頻繁に移動する性質がある。デスハウンドも、獲物が枯渇すれば移動するに違いない。

テルヴァンニの使者の日記Journal of a Telvanni Emissary

(スカイリムに派遣されたテルヴァンニ家の代弁者、エルヴァリ・トランデルの日記より) 著

しかし無駄な旅だ。名誉あるテルヴァンニ家が彼らの惨めな小競り合いに引きずり込まれることはないと、スカイリムの王たちは理解するだろうと思っていた。境界やどちらが正当な統治者かなど、誰が気にするのだ?間違いなく、私たちには王冠や東西対立について意見などない。この世には、誰がどの雪と氷だらけの土地を統治するかなどより重要なことがある。他の「名家」がこの理解を分かち合ってくれたら、ダンマーはずっといい状態になるだろうに。

この旅の外交的な目的は無意味かもしれないが、この道程は役に立つことが証明されるかもしれない。スカイリムで古代の勢力が再び力を取り戻し、活発に活動しているらしいと噂を聞いた。アイスリーチ魔術結社の魔女が関わっているらしいが、彼らは私が偶然聞いた噂に比べれば素人みたいなものだ。私はこの古代の勢力の手法について学ぶ機会を堪能している。何と言っても、闇の魔法には力がある。もし噂が真実なら、その力が私のものになるかもしれない。

滞在を少し延ばして、何が学べるか確かめてみよう。もしかしたら、モロウウィンドに戻った時にその知識を、私の地位を高めるために使えるかもしれない。テルヴァンニ家の他の者もこういったことを学んでいるが、こうも力の根源に近いところにいた者はいない。この土地の下には、何かが眠っていると感じられる。何か暗いものが。何か…強力なものが。私はそれを見つけ、自分のものにするのだ。

テンダークローTenderclaw

現存する中では屈指の古さを誇るエスラジであるテンダークローは、タムリエル全土の吟遊詩人が最後に目指す地としての、リンメンの評価を強固なものとした。名高いカジートのスカルド、アーン・エクスカーは長年、叙事詩「ファドマイの死」を一週間演奏する際にこれを弾いた。

それ以降、アーン・エクスカーがこの楽器から引き出した完璧で魅惑的な音に到達した音楽家はいない。伝説によれば、テンダークローはカジートの神々からの贈り物と言われている。アーン・エクスカーは、自らが選ばれし者であるかどうかを決して明らかにせず、謎にすることを好んでいた。

ドゥエマー語の正しい発音How to Pronounce Dwemer Words

学生、アマドリ・ドレヴィン 著

ドゥエマー語の発音については、数多くの異なる考え方がある。私はマスターや数人の学者と議論をした。いつものことだが、「熟練の」学者は意見が合わない。色々なことに。彼らはまた、自分の声に酔っている。ドゥエマー関係のエリートには、特にこの傾向がある。

私は現在でも残っているドゥエマー語、特に地名を検討し、長ったらしい学問的な評議も検討した。分かったことをまとめて、ドワーフ学者を目指す仲間のために、ドゥエマーの発音についてガイドを作ってみた。

ドゥエマー語の正しい発音
– まずは深く息を吸い込むこと
– 次に、ハチミツ酒かシロディールのブランデーをグラス1杯飲む。好きな方でよい
– 再び深く息を吸い込む
– すべすべして丸い小石を4個から7個、口に含む
– 好きな言葉を言おうとする。ただしほとんどの母音を省略し、子音をいくつか余分に加える
– 第三もしくは第四音節を過度なまでに強調して発音する(たとえその言葉が二音節であろうとも)

おめでとう。ドゥエマー語を正しく発音できたはずだ。

ドゼンのタルハルパDozzen Talharpa

この素朴なリラの来歴が語るのは双子のブレトンの兄弟、ドゼンとジビハンの物語だ。競争意識を持ってはいたものの、とても仲の良い兄弟だった。彼らの残した物語は、街の広場でタルハルパを使った音楽コンテストに関するものだ。彼らが観衆を賑やかでテンポの速い掛け合いで魅了すると、人々は踊り始めて歓声をあげた。民は聞いたこともないような素晴らしいコンサートだったと記憶している。その後、ジビハンはドゼンに家まで競争しようと持ち掛けた。丘の中腹の道が狭くなった時、ジビハンがドゼンの前に出た。家が近づき、勝利が目前に迫ったジビハンはゴールの前に振り返ったが、そこにドゼンの姿はなかった。

ドゼンは丘を転がり落ち、巨大な石に激しくぶつかっていた。彼は激しく血を流していた。ドゼンは青ざめて浅い呼吸をしながら、思い出せるのは音楽コンテストで勝利を収めたことだけだと言った。街の住人たちは勝者がいないと宣言していたが、あの絡み合った曲には感銘を受けていた。

最後が近いことを知り、彼はジビハンに自分の腱を使って新しいタルハルパを作り、それを演奏して人々を勇気づけ、踊ってもらうよう誓わせた。ジビハンは言われた通りに兄弟の腱を使ってこのタルハルパを作ったが、喜ばしい気持ちで演奏することはできなかったため、吟遊詩人の大学に寄付したのだった。

ナルシス・ドレンのスカイリム日記Narsis Dren’s Skyrim Journal

あの不愉快な司書め。私をつまみ出すとは!私を!このナルシス・ドレンを!まるであのような場所が、私が時間を割くに価するとでも言わんばかりだった。あの無能なうすのろどもの幹部が、どうやってメイルモスの日記を入手したのか見当もつかない。

「逆転の儀式」について詳述しているページの間に、折り込まれた奇妙な巻物を見つけた。あの鱗に覆われた本の収集家が、この存在を知っていたかどうか疑わしいものだ!つまり私の考え方からすると、これをいただいても全く問題はない。

さて、メイルモスの日記自体についてだが、前述の一節を手早くメモすることしかできなかった。逆転に関するほんのわずかな部分だ。解明できた限り、この儀式には3つの要素がある。文書は呪文を完成させるために読み上げねばならない、三節の場所を提示しているようだ。またゴミあさりか!なんと滑稽な。指示は以下に書き写した。

自分の鼻に注意しろ、熱心な読者よ。満たされた器はしばしばひび割れる!
もし自分がガラスを通して見ていたら、この言葉に耳を傾ける友人を見つけよ:

自慢と詮索が好きな者は、知恵の泉をしばしば干上がらせる、
石よりも長く残る唯一のものは歌、
危険が迫る年、まだ来ない時代、魔術師は石に巣を作る。ツバメのように。

この巻物に、あまりバカげたことが書いていないよう祈るばかりだ!さあ、研究を始めよう!

ネザールートのメモNetherroot Notes

驚異の植物、ネザールート。これはここブラックリーチの深部にある孤立した土地でしか育たないが、その錬金術的な性質は際立って有用だ。私はこれを発見し、私のレシピに使用したアイスリーチ魔術結社の魔女たちに称賛を送ったが、生み出された混合薬は粗いものだった。もしこの完璧とは言えない調合薬で続けていった場合、灰の王の計画はもう千年かかる。喪心の嵐の力を増大させる方法を探し出すため、さらにこの深淵の根の研究をしなければならない。

* * *
地下のエルフの技を模倣して基礎ができた。彼らの配管農場はより多くの収穫を生み出したが、効力はそれほどでもない。私はさらに強力な試料を作り出すつもりだ。とにかくもっと時間が必要だ。もっと多くの被験者が。

* * *
日ごとに新しい種類のネザールート混合薬が誕生し、効果は百倍ほどになった。混合薬はすでに喪心の嵐のためより強力な触媒をもたらし、より完璧な力の交換を確実なものにしている。私の精製ネザールート混合薬はまもなく用意できる。そして、灰の王は私への信頼に対して見返りを得るだろう。

ネルの秘められし愛Nel’s Hidden Loves

言い逃れるそこの者、
言い返し、争う者よ:
遺物の歌が、
暗号として、ここに秘められる。

詩人の伝説はまず、
私がこの手に保つ。
その意味は真なるも
愛と共に朽ち果てる。

ハーフィンガルよ、進め!
刃の柄へ。
翡翠の影は秘める
雄大な洞窟を。
西の鉱山にて
長き貯蔵庫が行進する。
2つの地にかかる
アーチがそびえる場所へ。
偉大なる獣の故郷にして、
西のまた西の果て。
北の凍りついた洞穴
極寒にして、隠遁の地。

ハイヤルマーチ、ある首長が
宮廷を構える。
ノルドの墓をかき乱す。
冷たい壁の迷路!
低く進む塔は
偉大なる物語を担う。
眠りを追いかけて、
この者が航海する海。

カーサルドへ、風向きを変え
首長の敵を見よ。
南へ下れば
刺す風が足を凍えさせる。

そして闇へ向かい
ドウェマーは奪う。
虚空に、光が落ちる
滝の裂け目に。
日は落ちて闇となり、
鉱夫は望む。
ガラクタの山の宝石、
その上にシャウラスの王。
塔は形作られる
大きく育つキノコで。
その上には深き砦
下には溶岩。

ネルフセアのくしゃくしゃのメモNelfthea’s Crumpled Note

マグレタ。私は抜けられない。今はまだ。襲撃は明日よ。2人とも隊長を置いていったら逃げるのが精一杯で、襲撃なんて仕掛けようもない。物資はわずかしか残っていない。飢えてしまう。私もこんなことを続けたくはないけど、ここにはもう何年もいるの。飢えさせるのはあんまりよ。

あんまり焦らないで。とにかく最後の襲撃をやって取り分を回収し、フロストバイトが略奪品で埋まっている間に、それとなく離れましょう。それでいいわね?

ネル

ノルドの戦いの歌Nord War Song

金のハチミツ酒を血に見立て
お前の剣に注げ
戦の角笛は強き者を呼ぶ
戦士は戦いでしか生まれない

輝きが雪を照らすまで
お前の斧を研ぎ澄ませ
敵の胸に食い込む斧の
甘美な音を味わえ

真のノルドは死を恐れない
気高き死を歓迎しよう!
勇気を持ち、大胆に振る舞えば
ソブンガルデに行けるだろう!

戦士は雄叫びを秘めている
心の底からの、力強い勝利の雄叫びを
イスグラモルの勇気が手を支え
彼の力が魂に宿る

真のノルドは死を恐れない
気高き死を歓迎しよう!
勇気を持ち、大胆に振る舞えば
ソブンガルデに行けるだろう!

ノルド料理:お菓子編Nord Cuisine: Sweets Edition

ギルバード・バック 著

ノルドが飲む様々なハチミツ酒については詳細な報告が数多く存在するが、彼らの料理の好みについては驚くほど情報が少ない。ノルドのレシピは他の文化に比べて意外性や複雑さに欠けるが、それでも記しておく価値は十分にあると思う!ノルドには数多くの珍味がある。彼らは食欲旺盛な民であり、これまでに会ったどんな民族よりも、飲み食いに情熱を燃やす人々である!味のない食事は彼らにとって、戦場での臆病にも劣らぬ侮辱である。ここにノルド料理に関する調査を記しておく。

甘いお菓子

リンゴのハチミツがけ
スカイリムのアップルタルトを抜かすわけにはいかないだろう。ノルド家庭料理の定番であるこの果実は、川岸のマッドクラブと同じようにスカイリムではありふれている!自然の状態でも木から直接食べられ、シチュー、肉料理、サラダを引き立てることもできる。最良の用法はデザートだろう。リンゴのハチミツがけの材料は明らかだ。大半のノルドのレシピは簡素だ。基礎は簡単で単純だが、最終的な味は見事なものだ!リンゴは焼くことも生の場合もある。それから甘い牛乳とハチミツでアイシングをされる。ベトベトで手は汚れるが、とても甘い。最高の味である!

スノーベリー・クロスタータ
スノーベリーはそのままだとかなり甘く、食べられたものではない。だがスノーベリー・クロスタータは違う!パイよりも簡単だが同じように美味しいこのお菓子は、ベリーの酸味とパンの甘さを完璧に組み合わせ、真に印象深い味わいを生み出している。この絶妙なバランスは食後のデザートか、一般的なノルドが行動を始める前の朝に食べられることが多い。いつ食べてもよい味なので、どちらも魅力的な選択肢である。

ジャズベイ・クロスタータ
それに対して、ジャズベイ・クロスタータはたっぷり食事をとった後に食べるべき、デザート限定の珍味である。このブドウは魔術師が使うことが多いが、その強い甘みは食通ならば見逃せない。黒くて甘いブドウジュースが生地にしみ込んで水気を生むが、ベチャベチャにならない程度の固さは維持される。甘すぎると言う者もいるが、明らかに間違っている!

ハニーナッツのおやつ
ノルドはハチミツを愛している。ハチミツ酒の甘みは最高だが、それだけではない!スカイリムのハチミツ酒醸造所で人気のハニーナッツのおやつは、どんな酒にも合う甘いおつまみだ。手が汚れそうだが、ナッツをまぶした生地は串に刺してあるため、持ち運びが容易である。長距離の旅にも、お気に入りの宿で暖炉のそばに座って飲むつまみにも適したハニーナッツのおやつは、誰もが一度は味わうべきスナックである!

ノルド料理:香味編Nord Cuisine: Savory Edition

ギルバード・バック 著

ノルドが飲む様々なハチミツ酒については詳細な報告が数多く存在するが、彼らの香味深い料理の好みについては驚くほど情報が少ない。ノルドのレシピは他の文化に比べて意外性や複雑さに欠けるが、それでも記しておく価値は十分にあると思う!ノルドには数多くの珍味がある。彼らは食欲旺盛な民であり、これまでに会ったどんな民族よりも、飲み食いに情熱を燃やす人々である!味のない食事は彼らにとって、戦場での臆病にも劣らぬ侮辱である。ここにノルド料理に関する調査を記しておく。

ホーカーのスープ
スカイリムにはたくさんのホーカーがいる。見た目に食欲をそそるとは全く言えないが、彼らは未だ活用されていない美味しさの可能性を主張している!そしてノルドの習慣に従い、彼らは食料として捕らえ、シチューを作り出した。納得するほかはない。人生のほとんどを寒さの中で過ごし、毛皮に身を包み、雪の中を歩き回る頑丈な人々は、間違いなくこのように温かい食事を作るだろう。ホーカーのスープは素直な味で、素晴らしく塩気があり、出汁はスッキリしている。最後の残りをすくうため、暖かいパンの塊と一緒に出してもらうと最高だ。

温かいアップルキャベツのシチュー
このシチューはノルドの家庭で好まれる一般的なものだ。一般に、このような簡素な料理へ美食の本で言及する価値はないかもしれない。だがこの場合は違う!温かいアップルキャベツのシチューのレシピは単純なものだが、味と料理の心地よさはまったく単純ではない!多くのノルドにとって、この料理は子供時代を思い起こさせるものだ。だがこのシチューの料理法に関しては議論もあり、主にリンゴの使い方に関するものである。すりつぶし派と切り刻み派の間には厳密な分断が存在する。私は自ら両方を試食したが、どちらも同じように美味だった。とは言え、これはノルドに伝えない意見である。どちらかを支持する者のほとんどは、大抵が暴力的な度合いに達しているからだ。

マンモスのステーキ
最初にスカイリムのマンモスを見て「食べたい!」と思った人に対し、私は深く感銘を受ける。ノルドはその勇敢さで知られている。臆病をひどく嫌う人々だけが、恐ろしく巨大なものから料理を作ろうなどと考えるのだろう。マンモスの大部分は固く食用に適さないが、腰肉はこの上なく柔らかい。切り取れば、表面をさっと焼いて炙れる肉となる。

スローターフィッシュ焼き
この料理を作るために必要な生物を捕らえようと、危険を冒して濁った水に入る人々を羨ましいと思うことは決してない。だが、心から感謝する。スローターフィッシュ焼きの美味しさを体験できるのは、彼らの勇気のおかげなのだから!正しいノルドの伝統で、料理人は魚(もちろん、骨をきれいに取り除いた後の)の皮が黒くなるまで焼くことを求められる。中には魚をキャベツの葉で包み、ゆっくり料理して、食べる直前の最後の段階で皮を焼くことを好む者もいる。私の見解では、どちらも等しく素晴らしい。

バルグヴィルの攻城日記Balgvir’s Siege Journal

今晩も首を噛まれずに過ぎた。それは勝利と言ってよいかもしれない。叔父のホフナーは船乗り時代、スコールに備えるため片目を開けて眠っていたという自慢話をしていた。叔父を越えるために両目を開けて眠ろうとしているが、うまくいかない。

バリスタの弾は尽きた。鍋やフライパンでも使わない限り、今じゃ高価な薪にしかならん。そもそも大して役に立ってはいなかった。昨日壁に目をやったら、ある巨人がバリスタのボルトを棍棒のように振り回しているのを見た。棍棒が必要な連中に、棍棒をくれてやったようだ。

どれくらい持つだろうか。吸血鬼どもが壁を引っかく音が夜の間ずっと聞こえる。俺たちに囁きかけているようだ。闇の魔術で誘惑するつもりだ。俺は片耳が聞こえないから、他の連中の半分しか効かない。だがルドヒルドを手すりから引きずり降ろし、連中のところに飛び込んでいくのを止めなきゃならなかった。彼女はオグヴァルが縛って、顔に水をかけた。まだ泣きわめいて、ブツブツ言っている。皆は闇の魔術のせいだと言っているが、どうだろう。俺たち全員が、数日もすれば彼女と一緒に叫び始める気がする。

ひいおばあちゃんの話Things My Great-Gran Said

102歳まで生きたひいおばあちゃんは、いつも助言やちょっとした伝承を話してくれた。折に触れ、季節ごとに、本人や誰かの事件のたびに!誰かが戦いで足を失った?それはその人が黄昏の月の前半に奥さんと結婚したからだよ。ある一家が投資に失敗して、大量のゴールドを失った?それはその一家が牛を11頭飼ってたからだよ。11が縁起の悪い数だってことは、誰もが知ってるからね。

彼女の「叡智」には以下のようなものがあった。

丘の中腹にマンモスがはぐれていると、変化の訪れを意味する。
遠くに2頭のマンモスがいると、誰かから贈り物をもらえる。
3頭のマンモスが1列に並んでいると、誰かに死が差し迫っている(必ずしも見た者の死ではない。その人がマンモスの列の前に立とうと決心した場合は別かもしれないが)。

月耀に新しいハチミツ酒を飲んではいけない。(思うに、これは夫や息子を仕事の時間に酔わせないため、ひいおばあちゃんがでっち上げたものだろう)

熱々のホーカーの脂が顔にはねたら、3日以内にけんかをする。はねたのが左手なら、間もなく訪問者が現れる。

双子月がどちらも満ちているときにブリストルバックを殺すと、その年の残りは運が悪くなる(満月にひいおばあちゃんは決して狩りに出なかったし、夫や息子にもさせなかった)。

暁星の月に鷹の影に入ったら、その冬は長く続く。

夜明けに西の丘を東に走る白狐は、やがて疫病を導く。

蒔種の月の最初の7日間に、身内や愛する人との間にある不満を解決しないと不作になる。

地面で青いビーズを見つけたら、それはたった今ハグレイヴンが作られた証。青いビーズを粉々になるまで石で砕き、その粉を淀んだ水(流れていてはいけない)に投げ入れると、そのハグレイヴンの寿命が短くなる。

ビターブレイドへの報告Report for Bitterblade

ビターブレイドさん

ダスクタウンでの作戦のために、目立たない容姿だからと私をお雇いいただきましたね。特に、高きイングフレドに目をつけられないように。ここ数週間、あの間抜けなオークを手玉に取って彼のために働いてきました。あの馬鹿はあなたをだましていると、自信を持って報告します。今週、彼は新しい場所の調査に私を送り出しました。以下は私が見つけた鉱石の一覧です。私の一覧と、何であれ彼が連絡する結果を慎重に比べることをお勧めします。それが合致したら驚きますよ。そもそも、彼が何かを一覧にしているかどうか

私はもう、あなたが判断を下せる材料を集めたと思います。

ガンボルツ

探鉱の結果:

ガラタイト、推定1トンあたり20%
ドワーフ、推定1トンあたり31%
虚無石を含有したドワーフ、推定1トンあたり4%

ピックルのおやつPickle’s Treats

これだけ一緒にいるんだから、彼もこのレシピを覚えているだろうと思うでしょうね。私の愚かな夫は向こう見ずな冒険や英雄的な行動はできるけど、料理の材料を覚えるのは難しいみたいなのよ!私に愛されていて彼は幸運だわ。あなたのためにこれを書いたのよ、ヴィゴル!これを読んでるなら、私は感心するわ。ピックルが食べ尽くしてしまった場合に(そして底をつきそうな時に)、おやつを作るために必要な材料と手順を書いておきます。間違えたら彼にも分かるから、必ずこのレシピ通りに作ること!全部を鍋に投げ込んで、出来上がりなんて言わないように。あの犬はあなたのことをたくさん我慢してるのよ。あなたがしてやれる最低限のことは、確実にお気に入りのおやつを食べられるようにすることよ、分かったわね?

手順
-たっぷり二握りのすりつぶしたカボチャ
-鶏卵3個
-袋入りの小麦粉半分
-シナモンで味付け
-混ぜる!

フェノリアンからの伝言Message from Fennorian

友よ

ムジョレンとの作業を進め、我々を困惑させている謎を完全に解明できそうな発見に行き着いた。そのため、私はダスクタウンと呼ばれる採掘集落に戻った。

私の手をさらに借りる必要ができた場合は、街の南側にある小屋を確保している。

この手掛かりから成果を得られるようなら、また連絡する。

フェノリアン

ブラックリーチ:創作と事実Blackreach: Fictions and Facts

その名はスカイリムで噂される。街道沿いの酒場や罠猟師のキャンプで名が出てくる。その名は畏敬の念とともに語られることも、最悪の呪いのように口にされることもある。ブラックリーチとはそういう場所だ。

タムリエルの荒れ果てた北部では、ブラックリーチにまつわる民話や迷信が数多くある。多くのペテン師が、この伝説的な地の貴重な鉱石や宝石で財を成したと言われる。しかし親たちは、子供が良い子にしていないと、怪物が出て来てブラックリーチに引きずり込むと脅す。

さて、ブラックリーチとはどんな存在だろう。伝説か、亡霊か、寓話か。ブラックリーチはそれ以上の存在だ。ノルドによれば、氷と雪の地下に広がる広大な大地だと言う。そこはかつてドワーフの地で、今は空っぽか、より悪い状態になっている。あらゆる神話や怪物に取り巻かれているのだ。

こうした物語はすべての民話と同じように、疑いの目で見なくてはならない。頭脳の足りぬ者はしばしば人生における謎や悲劇を正当化し、合理的な説明を付けるために素晴らしい物語や恐ろしい物語に頼る。愛する者が突然病に倒れ、命を落とした?間違いなく、ブラックリーチから上がって来たミアズマに毒されたのだ。敵が思いがけず大金を手にした?彼はブラックリーチの精霊と闇の契約をしたのだ。

もちろん、ブラックリーチの物語は全て根拠がないと単純に書くのは狭量で意味がない。スカイリムには地下の洞窟が点在している。必要なのはそのような深き地へ潜って暮らしている、多くの冒険者の誰かと話をすることだけだ。無学な者にこうした洞窟がより深部まで広がっていて、どの冒険者も知らない地が、泥の道や光と忘れ去られたトンネルの中へ続いていると信じさせるのは造作もない。それがブラックリーチの真の姿だ。いくつかの奇妙な洞窟と、半分酔っ払った農民の想像力によるものだ。

読者諸君、私のことを尊大だと思わないで欲しい。私はこの仮想上の愚か者を尊敬している。彼の頭脳からとても説得力ある考えが飛び出し、それが現在に至るまで酒場、キャンプ、裏通りのあばら家で話の種となっているのだ。私はその想像力を称賛したい。

フレイウェンの日記Freiwen’s Diary

母さんに今日、ウィルギンと話してきなさいと言われた。彼の製材機は外が凍えるほど寒い時期にも、街を色々な意味で活かしてくれている。母さんは私がウィルギンの仕事の仕組みをもっと学んだほうがいいと考えている。私がもっと大きくなったら、母さんの仕事を継ぐだろうとも。でも、母さんはそんなことを望んでいないと思う。心の底では。きっと父さんの受け売りよ。

まあ、ウィルギンは親切な人だし、あの大きなノコギリで丸太を切らせてくれるかもしれない。

* * *
ハヴィルと会いに農場まで行った。私はいつも何か口実を作って街を離れ、森を探検している。父さんは狼やトロールについて警告するけど、怖いと思ったことはない。ハヴィルは動物と遊ばせてくれるし、農場の人たちは卑猥な話で笑わせてくれる。楽しいところだわ。モーサルから離れているから、一人前になった気分でいられるし。ムジョレンを訪ねるのも同じ理由。私を首長の娘ではなく、友人として扱ってくれる。

* * *
凄い人が街にやってきた!酒場に入っていくのを窓から見ていた。荷袋と変な杖しか持っていなかったけど、一体何の用で来たんだろう。仕事じゃなきゃ、誰もモーサルなんかには来ないのに。出てこなかったから、多分部屋を見つけたのね。もっと詳しいことを突き止めなきゃ。

* * *
その人の名前はマクステン。彼女に会いたい一心で、一日中酒場で待った。詩か何かを書いていて忙しいふりをして、エイガに怪しまれないようにしたわ。うまくいったようには思えなかったけど。

ついに彼女が下の階に降りてきたので、すぐ近くに座ってと頼んだ。多分、妙に興奮していると思われたんじゃないかな。私はこういうことにあまり経験がないから。マクステンは少しの間、私を見つめていた。なぜ私が馴れ馴れしくするのか、考えていたんだと思う。それから座って、何か夕食を注文した。朝食と言ったほうがいいかも。日中はずっと寝てると言ってたから。

とっても面白い人よ!世界中を旅して、自分の研究について学んでいるの。細かい話はしてくれなかったから、私も詮索しなかった。仲良くなれたわ。それに、なかなかの美人ね。

* * *
母さんは私が家をこっそり抜け出したことに気づいた。というより、帰ってくる時にバレたみたい。私はマクステンと一緒に、彼女が辿っているエネルギーの源泉を探しに行った。死霊術を研究していると言われた時、最初は心配したわ。そういう魔術に危険があることは誰でも聞いてるから。でも彼女はとても慎重で、緻密に仕事をしている。今は私も、死霊術がちゃんとした知識の分野だと理解しているわ。他のものと同じよ。泥とかを調べる時、彼女が真剣になっている様子は素敵だと思う。

闇の中を歩いていた時、私は彼女の手を握った。どうしようもない気持ちが込みあげてきて、私は立ち止まって彼女にキスをした。暖かくて、気持ちが落ち着いたわ。もっと何度もあんな気持ちになりたい。

もう言ったけど、戻った時母さんに見つかった。母さんは私が秘密を明かそうとしないことを厳しく叱ったけど、心配しているだけなのが分かった。結局マクステンのことは話しちゃったけど、死霊術のことは言わなかった。母さんが賛成してくれたのでびっくりした。モーサルの暮らしは単調で、母さんもここに来る前の方が充実していた。私にも同じように生きてほしいんだと思う。

* * *
長い探索の末、マクステンはついに探していたものを見つけた。今夜、彼女は古い遺跡まで来てくれと言っている。母さんの意思は無視するけれど、またこっそり抜け出すつもり。マクステンが目標を達成するのを見るためなら、これくらいのことはしても構わない。

街の人々は彼女のことを怪しみ始めている。もう何ヶ月にもなるのに、マクステンは私以外のほとんど誰とも口をきいていない。彼らはいい人たちだけど、よそ者に慣れていないのよ。特にマクステンみたいな魔術師には。

この儀式が終わった後も、ここに留まってくれるといいけど。もう彼女なしで生きることなんて考えられない。

フレリッタとプラル:愛の歌Frelytte and Pular: A Love Song

優しく美しきフレリッタ
干し草色の髪は
編んだ黄金とハチミツ
真昼の輝く太陽

プラルという青年を愛した
そして彼も彼女を愛した
氷が湖を埋めるように激しく
春が溶かすように確かに

彼女の口はスノーベリーのように赤く
彼の手は固く誠実だった
彼はこう言って、氷のレイスを狩りに出た
「君にふさわしい男になる」

それから四夜待ち続け
フレリッタは雪の中へ馬を駆った
闇を伴い、山が吠えた
月はひどく低かった

しかし馬は間もなく疲れ
寒さが彼女を眠らせた
彼女は木の下で丸くなった
嵐が彼女を深く埋めるまで

意気揚々とプラルが戻る
予告の通りレイスを殺して
彼は木の根元で立ち止まった
そこで見たのは黄金の房

彼は雪を払い除け、彼女を見つけた
クリームのように白く、死のように冷たい
けれど神々が彼らの愛に微笑んだ
そして彼がキスすると、彼女は息を吹き返した

「僕は獣を殺したよ」プラルが誇らしげに叫ぶと
フレリッタは喜びの涙を流した
2人は手を取り合って家に戻り、結婚した
彼らの愛こそ、冬には壊せぬものだった

ブロケル(発掘)Brokel (Exhumed)

ブロケルここに眠る

愛されし息子にして

羊飼い

眠りながら死す

スカイリムのように老いて

ブロンドルドの日記Brondold’s Journal

〈カバーの間にリリス宛の手紙が折り込まれている〉

リリス

あなたがこれを読んでいるなら、私はあなたと会いにブルー・パレスへ行けなかったということだ。おそらく死んでいるか地下牢にいるものと思われるが、あなたに連絡することはできた。あなたが追っているアイスリーチ魔術結社がハーフィンガルにいるという確かな証拠はないが、ソリチュードの首都では何かが腐敗している。自分が正しい道筋を辿っていることは分かっている。残念ながら、相手にもそれは知られているようだ。もっと多くの情報を掴めていたら良かった。申し訳ない。

私が見つけたものをガーヒルド女王に渡してくれ。彼女は上級王よりも分別がある。彼女の口添えがなければ、上級王スヴァーグリムと面会できるかどうかも怪しい。

ブロンドルド

* * *
〈日記の内容は以下の通り〉

この任務は予想よりずっと困難になりそうだ。ここの民はよそ者に対して警戒心を抱いている。衛兵は常に監視しているようだ。ソリチュードのような規模の街で、ノルドの中にいても浮いてしまう。

王家の馬屋である人物と会った。コーヴィンという若い女性だ。輝く瞳で純真だ。見慣れない旅人に目を光らせるよう彼女に告げた。他には誰とも話していない。日常生活に馴染んでいくつもりだ。私を見かけることに人々が慣れるように。

あらゆる人はいつか〈寂しいトロール〉を通過する。ここの民と話して最新情報を手に入れるには、街で最も適している場所だ。モーグという常連のオークがいる。彼は会話に意欲的な様子だ。常にジョッキを満たしてやっていればだが。アイスリーチ魔術結社について何か知っている者がいるとすれば、間違いなく〈寂しいトロール〉で見つけられるはずだ。

民との間に築いた信頼は、魔女について軽く触れただけで消え去ってしまう。神々への祈りを除いては、一言も口にされない。これだけリーチに近ければ、闇の魔法のことをより深刻に捉えているのは仕方がない。だが、不運を招かないように耳をふさぐことを選択しているようだ。

コーヴィンがやってくれた。いかつい連中が山岳馬に乗ってやって来て、かなり無理をして気づかれないようにしていたらしい。そいつらは街中にチラシを貼っていった。何らかの求人だそうだ。賢い娘だ。

* * *
〈ページの間に求人のチラシが押し込まれている〉

作業員と職人募集!

ドルアダッチ山脈の先の未知の領域にて、遠隔地で危険な作業に従事する勇敢な仲間を募集しています。移住が必要です。食事と宿泊場所はこちらで提供します。一年間の勤務を必須とします。報酬は危険に見合ったものです!

お問い合わせはソリチュードの宿屋〈寂しいトロール〉まで

〈チラシの最後に走り書きされたメモ〉

どこへ行ってもこの掲示が見られる。何のために、どこで働くのか誰も知らないようだ。

* * *
〈日記の続き〉

ここの港に、レッドガードの船が定期的に泊まることに気づいた。私に対する冷ややかな反応を考えると、これは興味深い。

結構な額は必要だったが、裏道で賭博をしていた情報屋のグレイガが有望な証拠を提供してくれた。レッドガードの船員たちは、貨物をセンチネルから持ってくるらしい。積荷の目録によれば家庭用品だ。船員は商人と言うより傭兵に見える。グレイガは、いくつかの木枠箱に目立たない印がついているのを見たらしい。聞き込みをしよう。

中にあるものを取ろうとしたが見つかってしまい、品物は木枠箱から奪う前に手から滑り落ちてしまった。追って来た奴らは何とか振り切った。奴らが私の顔をよく見ていないことを祈るばかりだ。

リリス・ティタンボーンがブルー・パレスでガーヒルド女王と謁見する前に、私はリリスと会う予定だった。見つけたことを彼女に伝えてくれ。そうすれば危険が迫っていると上級王スヴァーグリムに納得させられる。私が手に入れたのは疑惑だけだ。確かなものは何もない。上級女王は、より寛大に統治していると聞いた。彼女はきっと親身に話を聞き、機会をもたらしてくれる。

ブロンドルドの文書Brondold’s Papers

〈震える手で急いで走り書きされた紙片が書類の山の一番上にある〉

ブロンドルド

衛兵があなたについて聞きに来た。彼らは片っ端から剣の鞘を鳴らして、あらゆる人を脅していた。私は怖い。あなたの馬は森に隠した。街の外の馬屋の横にある納屋で待ってる。あと1日だけ。

〈注釈付きの公文書らしき書類〉

関税申告書
出国港:センチネル
入国港:ソリチュード
陸揚げ貨物:
-オアシスの水 3樽
-スカヴィンの家庭用品 4箱
-ソースタッドの陶器 5箱
-センチネルの水筒 1箱

――ある船員が波止場にある木枠箱のいくつかに、こっそり印をつけているのを見た。何か隠されているのか?中を見ることはできなかった。

〈書類の間に挟み込まれた、固く小さく折りたたまれたメモ〉

驚くものを残した。指示に従ってほしい。

寂しい港の南にある、石が立つ場所
避難所の影の中
生きている木が見張る場所

ペトラループPetraloop

温かい音色で音が良く伸びる、マスター・ペトラによって作られたこのリュートは他に類を見ない楽器だ。この興味深い名前は長いセッションの終わりに、「ペトラのリュート」を求める酩酊した数多くの吟遊詩人にちなんだものと言われている。

裏には、大学で最も有名な吟遊詩人の名が数多く彫られている。

ペンターチの命令Pentarch’s Orders

ペンターチ・コルブ

キルクリースの喪心の嵐は予期しなかった抵抗にあった。敵はこちらの動きに気づいており、我々の計画を暴露しようとしている。奴らは厄介だが、人数はごくわずかだ。

宮廷で親身に話を聞く耳を奪えば、悩みの種を一気に叩き潰せる。

魔術結社は愛すべき仲間を失い、復讐を求めている。

彼らの願いを叶えよ

R

ペンターチへの手紙Letter to the Pentarch

ペンターチ・ザロス

準備は完了した、ブレトンの仲間よ。儀式はいつでも開始できる。

最新の積荷をキルクリース聖堂に送ってくれ。シスター・アンブリットが全て活用してくれるだろう。

ここまでよくやってくれている。

次の指示を待て。

R

マクステンの研究日記Maxten’s Research Journal

〈大半のページは黒焦げになっているか、触れると手が凍えるような分厚い氷に覆われている。判読できる記述はわずかだ〉

知識を求めてモーサルまでたどり着いてしまったことには、不満の一つも言うべきだろう。古き良き田舎町と好意的に言われているが、他の旅人に勧められるものはない。川から漂う湿った臭いがあらゆる場所に染み込んでいる。それに私が到着した時から、ここの民がよそ者を好まないことがはっきりと分かった。敵意を示す者は誰もいないが、誰もが距離を保つ。私は構わないが。

しかし、私がこの小さな街にわずかな好意を持っている理由が三つある。一つは太陽が昇ると、製材機が休みなく動き続けること。製材機は途切れなく大きな唸りをあげるので、日中は眠りやすくしてくれる。闇の技に関する研究には暗くなる時間が一番都合良いので、日中休みを取れるのは歓迎だ。

さらに、モーサルは私が望んでいたとおり、死霊術の力が集中する。ここは死のエネルギーを発している。源泉を求める夜の狩りはもうすぐ成果をあげるだろう。そうすれば多少の調整を経て、吸収の儀式を始められる。この地域の力を一部でも抽出できれば、数年間は研究できる力が得られるだろう。

最後に、ここで素敵な友人と出会ったことた。彼女は街の首長の娘だ。モーサルを離れたことはないそうだが、世界についての奇妙な知恵と好奇心を私が認めるほど持っている。母親が元々ソリチュード出身らしく、意外なほど世間慣れしているのはそのせいかもしれない。だが何よりも、彼女は親切だ。私たちはかなりの時間を一緒に過ごし、自分の調査の性質も教えた。彼女は多くの者のように不快感を示さなかった。それどころか秘密を守ると誓い、可能なら手助けをするとまで言ったのだ。告白するが、私は彼女ともっと一緒に過ごせることを心待ちにしている。

* * *
…この街の周辺の死霊術の源泉へさらに近づけた気がする。昨晩、私は死のエネルギーの痕跡を求めて土を調べながら、東をさまよった。来週になれば、新月が環境の共鳴をうまく増幅するはずだ。その期間なら、中心を突き止めるのは簡単だろう。

森の中にいる間、私たちは遠くに立つ人影を目にした。我々を見張っていたが、動かなかった。フレイウェンはその女を「賢女」と呼んだ。呪術師を意味するここの言い方だ。到着してから初めて、私は不安になった。今になって詮索好きの老魔女に妨害されるなどまっぴらだ。

そう、それからフレイウェンはこの旅に同行してくれた。家からこっそり出て来たところが可愛らしいと思う。彼女がいると気分がいい。一緒に星の下を歩いていると、特別な気分になるのも無理はない。

* * *
…ここはクジェンスタッグ遺跡と呼ばれている。私が聞いた相手は、全員がその歴史について何も知らなかった。だが遺跡に強大な力が込められているのは間違いない。エネルギーの量を増やすため、ラノヴォの吸収儀式を調節しなくてはならないが、計算は簡単なはずだ。

フレイウェンが誘引体になることを同意してくれるかもしれない。狼など付近の野生生物を使うつもりでいたが、この地で生まれ育った民のほうが効果があるだろう。ラノヴォは誘引体に負の影響はなかったと言っていた…

メイルモスの開花The Blossoms of Maelmoth

見事指示に従ったな!しかし、詩人の心はあるだろうか?

冬風の淑女と 勇気を称えよ
凍てつく冷気をまとった 彼女の愛は道を照らす
エルフと人が呼吸する 山の花が2本
頬を涙と海水に濡らし 嘆く寡婦のためにデスベル4本
炎を吐く古代の喉のため 竜の舌を3本
そして最後のキスのため 最後の花を1本

メイルモスの驚くべき傑作Maelmoth’s Marvelous Masterpiece

謎の幻の達人、メイルモス 著

私は我が美の全てを集めた!財宝を!遺物や奇妙なものを見れば、古遺物収集家も泣き出すだろう!ウェイレストの浪費家のブーツ!リーチのハグレイヴンの鍋!小さな石のマンモス。こいつはいずれ自由にしてやろう。素晴らしい!神秘的だ!我が秘儀のように壮大なものはない!

だがこのように金では買えない価値ある宝でさえ、この瓶の前では色あせてしまう。見てくれ!生涯をかけた研究の最高の成果だ。磨き上げられ、完成した幻惑魔法!この瓶は幻惑か、それとも現実か?これに触れると、お前は幻惑になるなのか?それは問題か?ハッ!見極めるには触って見るのだ!

見よ!入れ子の幻惑だ!わずかに軽く触れただけでも作動し、形を変え、好奇心を歓迎して抱きしめる。さらに多くの幻惑を産み出す幻惑!

利用法を考えよう!例えば、私の卓越した詩や言葉遊びを絶え間なく馬鹿にするあの憎むべき吟遊詩人ども!リュートを手にしたとたん、リュートになってしまったらどうするかな?誰に分かる?私だ。私には分かる!私、謎のメイルモスには。幻惑の達人には!ハッ!

ハ!ハハ!ハハハハハハ!

メイルモスの最後の日記Maelmoth’s Final Journal

〈日記には数百ページにもわたる意味不明な戯言が並べられている。判別できるのは最後の記述くらいだ〉

誰も私の傑作には値しない。誰も!それとも、誰かいるかな?ハッ!試験だ!そう、忍耐と精神力の試練!偉大な狩りは全て謎かけから始まる。始まるべきなんだ!

謎は横たわる、見えやすい場所に
タイルとレバー、古代の座席!
ドラゴンが祈る聖堂の座席
人の命が尽「きる」場所、そこで悲劇は「くり」返「す」
しばし瞑想するがいい
お前の知恵が足りるといいが!

モロケイの危険The Danger of Morokei

ドラゴンプリーストはノルド史の暗黒時代、誇り高き民が強大なドラゴンの前に委縮し、ひざまずいた時代を体現している。彼らはドラゴンの栄光のおこぼれにあずかるため、同胞を破滅させて苦境に追いやった。

スカイリム中がそれを知り、ドラゴンプリーストの多くが古代の戦争の末に埋葬されたが、彼らが安らかに眠ることはなかった。多くが死んだままではいなかったのだ。その中にモロケイがいた。

モロケイは生前、ラビリンシアンと呼ばれる遺跡に住んでいた。さらにその昔はブロムジュナールと呼ばれた場所で、ドラゴンプリーストの力の中心だった。モロケイが倒されると、彼がドラゴンから与えられた力の全てが明らかになった。彼はドラゴンの声に救われ、殺すことができなかったのだ。

私とカイネの司祭は4つの聖なる炎を使って、この眠らないプリーストを墓に閉じ込めた。炎を絶やさぬことにより、我々は防護の魔法で墓を封じた。これは我々の秘密で、神聖な目的だった。もしモロカイの力を求める愚か者がこの場所に侵入して封印を破った場合、スカイリムに対するドラゴンプリーストの復讐は、素早く恐ろしいものになるだろう。

だが私も年老いて、心臓や骨から活力が失われていった。いつか近いうち、孫娘のイルシルドにこの使命を引き継いで欲しいと頼まなければならない。彼女はカイネに忠実で、この秘密の責務の切迫した重要性を理解するだろう。

モロケイの力Morokei’s Power

求めていた力に近づいた!ノルドと彼らの味気ない埋葬場所は、死者をあらゆる剣を持った愚か者の略奪と窃盗のために放置している。この凍った地に散在している墓に、数百年経って何か価値のあるものが残っていたら奇跡だ。

しかしこれは?これは希望と期待を大きく上回る。伝説のノルドのドラゴンプリーストは、信じがたい力を装着者に授ける仮面を持っていた。問題はもちろん、仮面を持ち主から切り離すことだ。この特別な遺跡にいる司祭はモロケイと言うようだが、彼は守護の結界によって安らがぬ眠りの中に封じられている。ドラゴンプリースト本人を掘り出す前に、まず結界を突破しなくてはならなかった。

この遺跡にいる動きの鈍いアンデッドは、結界の炎の存在が分からない様子だ。すなわち、炎が影響を与えないことを示唆している。とはいえ、私はよくいるスケルトンでもなければよろよろ歩く死体でもない。結界の炎の魔法を取り消すのは、そこまで難しい仕事ではないだろう。適切な逆転の呪文を、正確に唱えることができれば。

ドラウグルが松明の灯し方を学び始めてかがり火の中に入らない限り、私が仕事を終えるまでの間、炎は消えたままだ。

ライカンスロープの耐性Lycanthropic Immunity

エグザーチ・ウルフラが興味深い課題を提示した。私の錬金術と魔術は、彼女たちの精神を奪えるだろうか?喪心の嵐はライカンスロープの仲間に影響を与えるように作られたものではないが、グレイホストが最後に征服を目指して出発してから長い年月が経過した。その間に吸血鬼とウェアウルフは四散し、世界中に広がった。彼らの全てが、灰の王に服従するわけではない。今日、ウルフラが捕らえた捕虜も含めて。

反抗的な態度を理由に劣等種を引き裂くことは容易だが、そうする代わりに彼女はより論理的な解剖のため、彼らを私のもとに送って来た。あの野獣のような頭蓋骨の中には、狩人の狡猾さが隠れている。

* * *
捕虜たちは群れの階級を尊重している。間違いなく、自分たちの呪いの源流を反映したものだ。彼らの指導者エジャーを捕らえて人質にすれば、他の者は従順でいる。他のウェアウルフたちに対してわずかな慈悲を示せば、エジャーは自発的に被験者を引き受ける。結局、彼らは恐ろしく単純な獣なのだ。

* * *
研究を完成させるためには乗り越えなければならない障害が数多くあるが、ウェアウルフの驚くべき耐久力は人間の姿でさえ障害を生み出す。見たところ、この被験者に対してネザールートの効果はない。凝縮した状態であってもだ。魂に対する肉体の束縛の力を弱めることが、実験を望ましい結果に着地させるための第一歩となるだろう。

* * *
もっと早く思い至るべきだった。あの獣とオブリビオンのつながりは利用できるものだ。たとえそれが、広大な別の領域に結びついているとしても。そのつながりはムンダスとその上にあるものの溝を橋渡しするために役立つ。そして、あのウェアウルフの血はネザールートに、不死の者が決して複製できない活力を植え付けられる。

* * *
上手くいっている。新たな血の蒸留液を精製するごとにネザールートの混合薬は強力になり、毒性を増している。ウェアウルフは注射の度、苦痛が大きくなる兆候を示している。ただ、唯一の疑問は残っている。儀式で不可避の死を迎える時、魂はうまく交換されるのだろうか。

ラジーンの影Shadow of Rahjin

伝説によれば、若く愚かな吟遊詩人がラジーンと取引し、誰でも望む者を曲で誘惑できる力を手に入れた。トリックスターの神はこの取引を面白いと考えたようで、7つの影の1つをこの若者のリラの弦に磨きをかけるために送り込んだ。

しかし、このような取引には常に代償が伴うものだ。若者のリラが欲望に満ちた情熱を刺激する一方で、その曲は寝取られた恋敵の嫉妬の怒りも同じように掻き立てた。しばらくの間、若者には運がついていた。挑戦、決闘、深夜の逃走など、物語の題材をもたらすほどだった。

だが運とは回転する車輪であり、やがて彼に背を向けた。彼は殺され、リラは別人の手に渡った。間もなく他の音楽家が楽器の秘密の力を発揮させる方法を発見し、最終的に同じ運命を迎えた。そして、この循環は数百年繰り返された。

大学が入手した後は徹底的に試験し、ラジーンの影を退けてはいる。しかし、演奏したいという者の安全は保障されない。

リーチの進捗The Reach’s Progress

駐屯地は弱っています。補給キャラバンを襲撃し続けたおかげで、奴らは分散して秩序を失っています。さらに嬉しい報告を続けますと、私はついに試薬を完成させました。新しい物質は、橋の支点を崩壊させる威力を持っています。洞窟全体を破壊するには、柱に直接面している数ヶ所を狙うだけでいいでしょう。

我々は地下も使えます。駐屯地は疑っていません。全ては計画通りに進んでいます。

ドラゴン・ブリッジはもうすぐ崩れるでしょう。ご命令通りに。

ブンド

リーチ忠誠派の手紙Reach Loyalist’s Letter

今、私はリーチの忠実な仲間に語り掛ける。

メシラと魔術結社が我々に接近してきた時、我々はそれを神々からの啓示だと考えた。我々は捧げ物として自らの血を流してきたのだから、当然の救済と考えた。報復の機会が目前にあると考えた。

今、これは誤りだったと皆に告げよう。アイスリーチクランは道を見失った。もう古き神々に仕えることはなく、自らを永遠に吸血鬼の王と彼のグレイホストの奴隷にしてしまったのだ。

メシラは甘い言葉で、グレイホストに加われば土地を取り戻せると我々に約束した。だが、圧制者を圧制者に変えたところで何になる?カースの地が我々の土地になることはない。ノルドは自分たちがしたことを知っている。彼らが耕す土地に、我々の血が流れていることを知っているのだ。

だが、吸血鬼が故郷の空を支配する時、再び取り返せることは決してない。

この伝言をクランの他の者たちに回してくれ。まだ手遅れではない。我々は抵抗できる。カースの血のために。真の神々に対する誓いのために。先人と故郷のために。

リリータングLilytongue

アルドマーのハープであるリリータングは、時が記録されてからずっと、アリノール宮廷で最高の演者によって演奏されてきた。リリータングは、偉大な作曲家ロルメルヴァルによって作られた最も魅惑的なアリアの一部を演奏するために使われた楽器だ。このハープはユヴィチル戦争の間に姿を消し、破壊されたものと思われていた。新たな王家のハープが替わりに演奏へ用いられた。

リリータングは500年以上も行方不明になっていた後、100年ほど前に再び姿を現した。現在は歴史と優れた美を併せ持つエルフ職人の比類なき工芸品として、吟遊詩人の大学が光栄にも所有している。

ルーンの神ジュナールJhunal the Rune God

ジュナールの知恵と力を軽視するのは不可能だ。我々スカイリムの者は、大抵の場合他のタムリエルから酒飲みののろまか、戦いに対する熱望以外はほとんど何も頭にない蛮族だと見なされている。ほとんどの者は彼らの好むジュリアノスがそもそもノルドの神であり、知恵と知性を重視し、他の何よりも知識を追求したことを忘れている。

我々真のノルドはジュナールを忘れていない。我々の中には今も学術的な探求と、精神の広がりを楽しむ者がいる。おそらく近年、我々のような者はごく少数しかいないが、希望は失われていない。ノルドは剣を振り回す以上の目的を求められている。我々は人生を危険に晒すものではなく、豊かにするものを追求すべきなのだ!学問、歴史、読書、発明といったものを!

これを読んでいて鼻で笑ったなら、それがあなただけではないことを知って安心するがいい。同じように感じるノルドは大勢いる。知識の追求はどうしたわけか我々にふさわしくないという馬鹿げた見解により、ジュナールへの信仰は揺らぐ。つまり我々を強くせず、勇敢さを誰もが見えるように提示しないものには価値がないという考えだ。だが、私はそのような考えを捨てるよう懇願する。学んだことは忘れられる。頭脳を高めるために、戦士としての力を捨てる必要などない。文武に秀でることは、我々の存在を両面で改善する。

優れた戦士になるためには、戦い抜くことを可能にしてくれる強い精神と知識も持たなくてはならない。そう思わないか?もし学ぶことの重要性が魅力をそそらないなら、替わりにこれで動機を付けよう。ジュナールはまだ我々の神だ。そしてスカイリムは、今も戦いだけではなく、知識によっても強化された戦士の土地だ。

このような探求を鼻で笑ってはならぬ!ジュナールと彼の教えを無視するなら、我々の民は破滅するだろう。

ルカル戦士長への手紙Letter to Warlord Rukar

ルカル

我々の指導者が魔術結社の魔女と行った取引の内容などどうでもいい。私はリーチへ戻る。秘密の会合に吸血鬼。私は臆病者じゃないが、理解できないことが多すぎる。故郷を奪い返してノルドを倒そうとする情熱では誰にも負ける気がない。しかし、このような魔法は老いたシャーマンにさえ許容できない。

お前も自分が大事なら、ここで死ぬ前に私と同じ行動を取るべきだ。

アヴァ

レマンのウォードラムReman War Drum

レマンがスカイリムをアカヴィリから防衛した際、彼の軍には多くの鼓手が同行した。この太鼓はそのような兵士の所有物で、ペイル峠の戦いでアカヴィリがレマンに屈服した場にあったものと思われる。さらに何人かのレマン王朝の指導者へ引き継がれたが、最後のレマン皇帝が暗殺される前には使用されなくなっていた。それ以来、太鼓は相続、贈答、征服の際に、首長から首長へ受け渡された。

現在、この太鼓はスカイリムの偉大なる英雄の宴に鳴らされる。

ろくでなしハーロック(発掘)Harlock the Bastard (Exhumed)

ろくでなしハーロック、この石の下に眠る

ジョールの兄弟にして

疲れて老いた怠け者

吹雪にて凍る

老いて疲れ切った無精者

暗殺者の手紙Assassin’s Letter

ペンターチ・コルブ

採掘社は準備が整っていつでも利用できる状態です。間抜けな鉱山労働者どもはうかつにも何に署名してしまったかさっぱり理解していませんし、どれだけ壮大な地が目の前に広がっているか、全く分かっていません。

彼らは自分たちの仕事と秘密の保護をしっかりと行い、暗闇の下にある私たちの秘密が発覚しないように守ってくれます。我々は定期的に労働者の補充を行っていく予定ですので、適切だと思う人物がいれば自由に食すか、錬金術師の元に送ってください。

そして儀式を行う時が来たら、彼らは私たちが必要とする力を提供するために配備されます。

シスター・サルダ

我が愛しきエグザーチMy Beloved Siblings, the Exarchs

戦場を共にした愛する仲間のことを考えなかった日は一日もない。コールドハーバーで苛まれた彼らは、果てなき愚者ストリキによる契約の文言に苦しめられている。手配には永劫と思える時間がかかったが、もうすぐ彼らをあの忌まわしい穴から解放するつもりだ。全員を一度に救出したいのは山々だが、まずは足掛かりを作る必要がある。そうすることで、グレイホストの帰還が確実になる。彼らは我が体、我が力である。この戦略は我が仲間を自由にするだけでなく、正当な報酬を与える。

ああ、エグザーチよ!

這い寄る黄昏のエッゼ、我が王冠にして栄光。最初にして最大の者。
ツィンガリス、我が頭脳。常に思考を続け、我らが再生の謎を解き明かす。
赤い眼差し、我が右目。過去の過ちを物欲しげに眺める。
セレヴル・ルイラック、我が左目。誇り高く未来を見つめる。
ブラザード、我が舌。我が真理を外の世界へ囁く。
赤爪のウルフラ、我が背骨。あらゆる不運に立ち向かう。
クラグレン、我が右腕。敵を追い払うため構えている。
ウルス・グリムランターン、我が左腕。恐ろしくも素早い正義をもたらすため掲げられる。
ディルジのヴェム、我が吐息。私のあらゆる部分に命をもたらす。
大ネズビ、我が筋肉。私の愛する全ての者を一つにまとめる。
カイア・アヴェルニコ・サンクトゥス、我が骨。我が力の底石。
リティア・ロングステップ、我が闊歩。私を目的へ近づける。

これら12の者たちが最初に蘇り、新しく再生されたグレイホストのリーダーとなる。だがもう一人、名を書き記すことを思うだけでも手が震えるほど、深い裏切りを犯した者がいる。私はかつて、仲間の中で最も偉大な者として彼を愛した。今では、憎悪しか感じない。私は奴を、13人目の仲間を探そう。自由のためではなく、報いさせるために。

彼は我が心臓。悲しみによって壊れ、もはや修復は適わぬ。

改修の指令Dictate of Renewal

石工、技師、墓地の番人は注意すること:

我々の成功は急速に近づいています。灰の王の支援と洞察により、新たな闇に満ちた時代が嵐の先で我々を待っているのです。だが悲しいことに、大きな成功はより厳重な監視をもたらします。我々は長年にわたって影に隠れ住んでいたため、防備はずさんになってしまいました。多くの壁が修繕を必要としています。かつては素晴らしかった門が放置の重みに耐えかねてきしみ、不平を漏らしています。これでは用をなしません。

グレイムーア砦の壁が再び難攻不落となるまで、終わることのない改修をここに宣言します。

東門は大規模な修繕を必要としています。正門の改築は灰の王の到着後ほどなくして開始されました。壁の西の部分には最も注意が必要なのではないかと危惧しています。石の窪みのほとんどが通れる状態のままになっているからです。こうした通路は「盲目の破滅」攻城戦の間、とても価値があるものだと証明されましたが、そのような脅威は過去のものです。故に、この通路も同じく過去のものです。

全タムリエルのいかなる建築物も、グレイムーア砦の荘厳な気高さや、永遠の恐怖にはかないません。この場所の壁は、我々の意思のように決して揺らいではならないものです。

王と同胞のために
レディ・エッセニア

楽士の集会 第1巻Convergence of Maestros, Volume 1

吟遊詩人の大学、楽士の集会
ソリチュード、第二紀580年
薪木の月、第一地耀

出席者:
~ 筆頭楽士カトレル・ゲオリック
~ 楽士フロフゲン・ウェルチューンド(打楽器教授)
~ 楽士テザラ・ハーフテイル(南方弦楽器教授)
~ 楽士テニヴァル・レンドゥ(小型管楽器教授)
~ 楽士エフノート(ベルとホルン修士)
~ 楽士ヴィアトリクス・アンブラノクス(声楽教授)
~ 楽士レイボーン(北方弦楽器教授)
~ イングマエア・レイヴンクィル(吟遊詩人大学の王家歴史家)
~ リュート・ボイスのヘルグレイル(ウィンドヘルム王家の吟遊詩人、スカルド王ジョルンの代理人)
~ 二つの夜(アルゴニアン音楽理論非常勤教授)
~ 熟練楽士アルムナス・ネル・ファーソング
~ 筆頭楽士助手兼書記 ハートリン・トレグ(著者)

〈開会宣言〉

カトレル:栄えある最上の吟遊詩人の皆様、ご清聴を!皆さまのご列席に心から感謝します。今回の会合は適切な手入れと、そして――

〈唐突に楽士テニヴァルが立ち上がる〉

テニヴァル:手入れと監禁ですか?まっぴらです!あなたは箱に閉じ込めることで、楽器の生命力を台無しにする気だ!
カトレル:いいですか、楽士テニヴァル!この会議でかんしゃくを認めるつもりはありません!しばらく管楽器の音量を下げておきなさい!
テニヴァル:この件について私の意見は変わらない。
カトレル:分かりました。どうか落ち着いて。

〈テニヴァル、怒った様子で座る〉

カトレル:先ほど述べたように、私たちは目の前にある伝説的な、歴史的に名高い、この上なく優れた楽器に対する処置について話し合うために集まりました。大学が数百年に渡って収集し、維持してきた楽器です。この部屋にいるか、外にいる吟遊詩人の何人かは教え、作曲をするためにこうした楽器を大々的に使用してきました。他の者からの苦情により、また内外の…

〈多くが不満を漏らし、横目でチラチラ見る〉

カトレル:…このことは楽器に過度の悪影響を与えかねないという懸念があります。ごく最近、シルスクのトムの大規模な修理を行いました。誰かが――

フロフゲン:あれは私の責任じゃない。それに酔ってはいなかったぞ。ほのめかされたようにはな!

ヴィアトリクス:トムが壊れる直前に、あなたがブランデーを継ぎ足してるのを見たわ!

フロフゲン:それは否定しない。だが酔ってはいなかった。生徒が私につまずいて転んだ時に滑り落ちたんだ。私が昼寝をしていた時に。太鼓の上で。

ヴィアトリクス:だらしない――

カトレル:もう結構!私たちはあなた方の情熱について論争するために集まっているのではありません。解決策が必要なのです。楽士エフノートが意見を用意してきたそうです。エフノート?

〈エフノート、起立する〉

エフノート:はっきり言いますが、私はフロフゲンがうろつきながら独り言を太鼓に言って部屋の皆をあぜんとさせる前に、ブランデーを継ぎ足しているのを見ました。トムに損害を与えたことに関して、弁解の余地はないとみなします。故に、我々の芸術品の保護を主張します。

〈エフノートは咳払いをし、険しい目でフロフゲンを見る〉

エフノート:これらの楽器は音楽の歴史の遺産の象徴です。吟遊詩人の大学は生徒や観光客、弦楽器職人、その他工芸作家に職人芸と文化的歴史の一部となるものを示すため、可能な限り長く楽器を保護するべきです。

〈テザラが起立する〉

テザラ:エフノート、楽器は恋人のようなものだって認めなければならないわ。楽器がもっとも美しいのは、かき鳴らされ、つま弾かれ、楽しそうに歌いながら演奏されてる時じゃないの?檻に入れたら、楽器は鳴らされることもなく孤独だわ。違う?

〈エフノート、居心地が悪そうに位置を変える。ひょっとしたら彼とテザラに関する噂は真実なのか?〉

エフノート:テザラ、尊敬すべき人よ。あなたが熱のこもった嘆願をしようとも、私はあのような楽器に対しては繊細でありたいと思う側なんだ。あれは尊いものだ。もうニルンにとても多くのものをもたらした。敬意に値しないか?永遠に演奏し続けることはできないってことだ。

テザラ:自分の曲を奏でたいと懇願する楽器を、そのまま持ってるなんてあり得ないわ!

〈テザラはほとんど怒鳴っている。エフノート、おどおどしながら座る〉

ヴィアトリクス:どんなに楽器の状態が良かったとしてもね、テザラ。大学の生徒が撫でまわし、思い描くひどいソネットを演奏したら、そんなのはどうでもよくなるのよ。

テザラ:よくもそんな――

〈テザラはヴィアトリクスに飛び掛かり、顔に爪を立てようとした!〉

カトレル:やめなさい!座りなさい、2人とも!

〈カトレルはヴィアトリクスとテザラの小競り合いを遮った。エフノートは遠くを見ている〉

カトレル:芝居がかったことをするのはやめなさい!タムリエルの吟遊詩人は、私たちが吟遊詩人全体の文化のために成熟した判断を下すことを期待しているのです。名誉にふさわしい行動をしなさい!

二つの夜:本当に吟遊詩人全てのことを考えるなら、私はアルゴニアンの代表として意見を述べたい。あらゆるものが最終的にはニルンに戻る世界で、すべてを保存しようとして何になる。私たちの土地では、時や沼地より長く存在し続けるものは何もない。私たちはあらゆるものを使う。もし使い道がないなら、それは再び沼地に委ねるんだ。

フロフゲン:その通り!この鱗野郎が言ってるのを普通の言葉で言えば、素晴らしい楽器は手にしている間に使うべきだってことだよな。どうせ最終的には盗まれ、燃やされ、その、何かをこぼされることになるんだろう?

二つの夜:鱗野郎?

カトレル:静粛に!

〈第2巻に続く〉

楽士の集会 第2巻Convergence of Maestros, Volume 2

吟遊詩人の大学の楽士の集会
ソリチュード、第二紀580年
薪木の月、第一地耀

出席者:
~ 筆頭楽士カトレル・ゲオリック
~ 楽士フロフゲン・ウェルチューンド(打楽器教授)
~ 楽士テザラ・ハーフテイル(南方弦楽器教授)
~ 楽士テニヴァル・レンドゥ(小型管楽器教授)
~ 楽士エフノート(ベルとホルン修士)
~ 楽士ヴィアトリクス・アンブラノクス(声楽教授)
~ 楽士レイボーン(北方弦楽器教授)
~ イングマエア・レイヴンクィル(吟遊詩人大学の王家歴史家)
~ リュート・ボイスのヘルグレイル(ウィンドヘルム王家の吟遊詩人、スカルド王ジョルンの代理人)
~ 二つの夜(アルゴニアン音楽理論非常勤教授)
~ 熟練楽士アルムナス・ネル・ファーソング
~ 筆頭楽士助手兼書記 ハートリン・トレグ(著者)

〈第1巻より続く〉

カトレル:静粛に!

〈ヘルグレイルが他の人と共に起立する〉

ヘルグレイル:スカルド王ジョルンの使者として、私にはこれらの楽器をスカイリムの財宝とすることを宣言する権限があると思います。これを保護するために――

テニヴァル:東の者は黙れ!お前は大学の楽士でさえないじゃないか!

カトレル:静粛に!静粛に!

イングマエア:王家の使者に対してよくそんな口がきけるわね、テニヴァル!私とヘルグレイルは招待されて来ている。あらゆることに口を挟む権利を持っているのよ。小型管楽器の教授風情が、王家の吟遊詩人にでもなったつもりなの!

テニヴァル:口を挟むのは、その臭いをなんとかしてからにしてもらおうか。

フロフゲン:まったくだ!大学はいつも重要な判断を下せる。お前が部屋を臭くしなくてもな!

ヘルグレイル:偉そうに飲んだくれてる臆病者が、よくも言う!

〈今や全員が立ち上がった。熟練楽士のネルとレイボーン、そして私を除いて〉

カトレル:静粛に!静粛に!無意味な侮辱の他に提案がある者は?

〈やっとカトレルとヴィアトリクス以外が座った〉

ヴィアトリクス:はい、あります。博物…いえ、名誉館を作るのよ。そこに私たちの誉れ高き楽器を置いておくの。酷使から受ける損傷から守られた状態でね。

〈ヴィアトリクスがエフノートを見る〉

ヴィアトリクス:そこでなら次のカリソスになろうとして弦楽器を折り、太鼓の皮を切り裂く元気いっぱいの吟遊詩人の汚い手とは無縁の状態で、美しさや歴史を堪能できるわ。

カトレル:他に何か提案は?

〈二つの夜はガラガラした咳で喉を整えた〉

二つの夜:楽器の使用を承認しよう。彼らを中心の焦点にする。学生や教授が自らの手で、それぞれの楽器を使って音階や歴史を学ぶことを認めるんだ。壊れてニルンに帰ることになるなら、それはそれでいい。

カトレル:ありがとう、二つの夜教授。どうやらあなたの意見は楽士テザラとテニヴァル、それにフロフゲンが支持しているようですね。楽士ヴィアトリクスが提示した名誉館を支持する者はいますか?挙手だけで。

〈ヴィアトリクス、イングマエア、エフノート、ヘルグレイルが手を挙げる〉

カトレル:どちらも同数。4対4。意見を述べていない人も少々いるようですが。レイボーンはどうなのですか?

レイボーン:名誉ある筆頭楽士。私はもっとも最近任命された楽士です。我が師である楽士アルムナス・ファーソングに投票を任せたいと思います。

カトレル:誉れ高きアルムナス。あなたの知恵なら、間違いなくこの熱を帯びた討論を決着させてくれるでしょう?

〈熟練楽士アルムナス・ネル・ファーソングが昼寝から目覚める〉

ネル:カトレル?君には意見はないのか?

カトレル:私は投票を差し控えます。偏らないように。私の筆頭楽士の地位による影響を、いかなる投票にも与えたくないのです。

ネル:そうだと思ったよ。

〈アルムナス・ネルが立ち上がる〉

ネル:私の地位は重要ではない。含めていただくことには感謝するが、我々が収集した素晴らしい楽器の数々に関して、合意に達するかどうかは楽士、教授諸君と誉れ高き招待客の皆にかかっている。付け加えさせてもらうなら、満場一致でな。楽器の中には私の楽士時代に遡るものもある。だが君たちは意図を持って行動すべきだ。そのため、君たちにちょっとした手助けをした。

イングマエア:誉れ高い者よ、どういう意味ですか?

ネル:私は今晩、楽器を全て集めて、密かに土地のあちこちにしまい込んだ。君たちが合意に達するまで楽器の姿を見て、手を触れることはできないよ。

イングマエア:あなたにそんな権利はない!

テニヴァル:あなたは大学自体に背いたのだ、老人よ!

〈皆が立ち上がってお互いに怒鳴り、小競り合いを始めると、ネルは座った。先ほどひっかかれた仕返しとして、ヴィアトリクスがテザラの顔を打った〉

〈カトレルは秩序を保てないため、会合を終わらせて散会とし、皆を離れた扉から強制的に退出させた〉

〈老いたネル楽士は私にこうささやいた。「恋人たちによりを戻させるには、もっと大きな敵が必要かもしれないぞ」。何のことだか私には分からない〉

監督官への手紙Letter to the Overseer

ブラックリーチにやってくる吸血鬼が日に日に増えている。襲撃が頻度を増しているんだ。鉱山労働者たちが危険に晒されていることに気づき、街を放棄するまでに撃退できる数などたかが知れている。どうやらアゲラン隊長は、もう何かに気づいているようだ。すぐに話して、彼の懸念を和らげて欲しい。

約束通り、お前の事業を守るためにできることは全てやっている。だが攻撃の増加により、予想よりも困難な状況となっている。危険性が上昇したため、さらなる血の提供が必要だ。できれば消えても気づかれずに済む弱い標的が望ましい。

これについてためらいがあるなら、こちらには我々の協定の証拠があることを思い出してくれ。我々の関係を維持したいなら、頼まれた通りにしてくれるはずだ。

ブルイク

魚捌きのイセンドラIsendore Fish-Gutter

魚捌きのイセンドラ

忠実な魚屋にして

ヨレンの妻

魚の骨が喉に詰まり

若さが褪せぬうちに死す

恐妻家のモラチェリスのパンフルートPan Flute of Morachellis Hag-Husband

このパンフルートは伝説のスカルドであり元教官でもある、恐妻家のモラチェリスの所有物だった。彼はこの世に知られぬ楽器に熟練した数少ない者である。その奇行で名高いモラチェリスは、このフルートを不運な出来事で亡くなった双子の片割れの足の骨で作ったと言われている。常に遊び心にあふれたこのスカルドは、時にこの噂を肯定し、時には否定した。

不安を感じる笛の素材と演奏時の衛生に対する疑問から、モラチェリスが指導する生徒を持つことはほとんどなく、後継者もいなかった。

吟遊詩人の大学で、サルスカップを今夜開催!Bards College Salskap Tonight!

タムリエルの吟遊詩人の皆さん!ソリチュードの皆さん!

吟遊詩人の大学で最も尊重されている楽器が、あるべき場所に戻ってきました!今晩、私たちは伝説の楽器を台座から降ろし、帰還を祝して大サルスカップを開催します。

この伝統的な吟遊詩人の催しでは「冒険者の勝利」のお披露目も行います。

全ソリチュードが記憶するであろう、歌と供宴の夕べにぜひご参加ください!

建国の頌歌Ode to the Founding

[以下の複写は、現存しているウェルのエルデの最後の演技に由来するものである。エルデはソリチュードが継承戦争に加わる前夜、首長の前でこの詩を歌った]

ハーフィンガルを導くハーケン、我らが家を称える声を聞け
空を横切りそびえる、街の孤独な三日月が
誇りと意志に満ち、固い岩から空へ昇り
響く波と、終わりなき時の試練を見下ろす
ああ、栄誉ある観衆よ、我らが家はかつて慎ましかった
亡霊の海の凍てつく嵐、巻き上がる風は
怯えた信仰厚き、見捨てられし祖先を
海辺から突き出た崖の下に避難させ
厳しい冬を生き延びるようショールに祈らせた

見よ、アカトシュの回る砂時計に見守られ
我らが民は栄え、石のねぐらに安らいだ
壁と井戸は、不吉に唸る厳しい風を跳ね返した
鍛えられた手で石を切り、民は高い塔を築いた
ドールの城、神々に仕える者のための聖堂
基礎に砦と、信仰の家が支えとなり
我らが街ソリチュードは、詩にしばしば歌われる

こうして建てられた礎に建つこの砦
ソリチュードは空へ昇り、周囲を見渡し、支配した
縛られぬ手と、たじろがぬ目で
瞬く間に槌を振るい、内陸をハーフィンガルへ変えた
多くの者が嘆き、さらに多くの者が抗弁した、だがその声は呟きに消えた
首長がその銀の王冠を身に帯びた時
知恵と力の狼
街の象徴にして、ソリチュードの荘厳な魂が宿った時

だから剣を取れ、誓える息子よ、臆せぬ娘よ
狼の冠を被った王の支配に服すのだ!
戦いで血が流れようと、我らは知っている
スカイリムに絡みつく大蛇を屠ったなら
聖なる故郷ソブンガルデで兜を脱げることを
今は休め、我が同族よ。休み、夢を見よ
近い夜明けに、勝つべき戦いの夢を
そして勝ち続ける、さらなる戦いの夢を

我らはソリチュードの子
我らはスカイリムの子

研究メモ:ヴェランディスの後継者Research Notes: The Heir of Verandis

上級錬金術師にしてグレイムーア砦上級侍従、レディ・エッセニア 著

私の仕事に運命が微笑んだ!全く予期しなかった標本が私の玄関口に現れた…新しく刺激的な研究の道を開いてくれるかもしれない標本だ。

このカジートはアドゥサ・ダロと名乗っている。吸血症の感染源を尋ねると、彼女は言葉を濁し、従順さを失った。自白薬を使った後でさえ、話すことを拒んだ。これは大して問題ではない。私は即座に彼女の血統を推測した。私たちの仕事に対する思い上がった侮辱と秘密への献身から、裏切者のヴェランディスの匂いがする。彼が常に太陽で苦しみますように。

ヴェランディスの下劣な性格にもかかわらず、彼の血には興味深い性質がある。彼の鼻持ちならない節制は、後継者を見つけ出すことをとても困難にしている。あの者が軽率にも私の門を通り抜けたのは、運命の女神が私の仕事に喜んでいる証としか思えない。

ヴェランディスの血は独特なものだ。適切な試薬と調合液があれば、神をも圧倒するようなものが絶対に作れるはずだと私は信じている。最古の純粋な血を力と可能性で超えるかもしれない、新たな段階の吸血症。私の血の騎士は単なる前座で…真に目覚ましいものの先触れなのかもしれない。楽しみだ。

研究メモ:混沌の吸血症Research Notes: Chaotica Vampiris

上級錬金術師にしてグレイムーア砦上級侍従、レディ・エッセニア 著

一体どうして王冠を脱ぐことに耐えられたのか、と最年長の親族が頻繁に尋ねる。まるで力が統治している者の手にしかないかのように。灰の王自身の物語が、その誤りの十分な証拠ではないの?

新たな王が我が戸口に初めて現れた時、同じように考えていたことは認めざるを得ない。数百年統治していたことが私の精神を歪めてしまい、統治者と被統治者という単純な原理だけが尊重に価するものと考えてしまっていた。政治。玉座。廷臣に請願。自分自身に手綱や轡をつけるとは、なんと愚かだったことか!ある種の者にとって、真実と実現は玉座に依存している。私のような吸血鬼にとって、真の実現は研究にある。かすかに光るフラスコ、きらめく解剖用メスに注射器…これらが私の心を引き付ける唯一の宝石だ。私はあまりにも長い間、自分の使命から目を反らしていた。灰の王の出現によって、このことを再び見出すことができた。

私はずっと吸血症感染の複雑さと可変性に驚いていた。それぞれの血統は長く語られる歴史を持っており、それぞれが独自の贈り物を病に求められた者に対して与える。統治者の無意味な位から解放された今、私は自分に問いかける。贈り物を向上させられるだろうか?こうした染みを一体化させることができるだろうか?

私の研究の成果を見るがよい!混沌の吸血症!我らが吸血鬼の本質における革命だ。出血吸血症やポルフィリン・ヘモフィリアとは異なり、この新しい病はすでに吸血症にかかった者を標的とする。錬金術の手法で血統を混ぜ合わせても小さな成功がもたらされるとは言え、真の触媒は混沌のクリエイシアだ。これはあらゆる吸血症の根源、コールドハーバーで獲得されたものである。モラグ・バルはタムリエルの獲得を急ぐあまり、双方に向けて開いた扉のことを忘れている。

私はこの混沌の吸血症の感染者を「血の騎士」と呼んでいる。この新しい生物は、今までに知られているどの吸血鬼よりも素早く強い。

全ての偉大な科学的冒険で見られるように、結果は必ずしも安定していない。彼らの下劣な本能の抑制に対する取り組みはまだ苦戦している。さらに研究を行えば、状態をより改善できると私は確信している。幸い、夜ごとに新たな吸血鬼が我々の門に現れる。奴隷用の囲いは被験者で溢れんばかりだ。必要なのは時間だけだ。

絹の叫びShriek-of-Silk

数少ない高名なアルゴニアンの旅吟遊詩人、柔き嘴が300年にこのヴォッサ・サトルを大学にもたらした。現在、習得の難易度が屈指の楽器と見なされている。

その後数百年に、楽器は演奏のためではなくいじめのために使われるようになった。習得が容易で、特定の音があらゆるアルゴニアンに受け入れられて興奮させるため、ある時点で上級生が新入りの吟遊詩人にヴォッサ・サトルを始めるよう告げるのだ。もし正しい音を出せないなら、それは十分な肺活量で吹いていなかったからだと言われる。

吟遊詩人の大学職員は最終的にこれをやめさせ、このヴォッサ・サトルは現在アルゴニアン音楽理論の非常勤教授、二つの夜の愛用楽器として、誇り高い扱いを受けている。

古いノルドの酒飲み歌Old Nord Drinking Song

ハチミツ酒を飲みながら
シアーポイントを登った
視界がだんだんぼやけ
文字が読めなくなった

居心地よさげな洞窟があった
警告も何も書いてない
フロストトロールと一緒に寝た
朝になったら、お互い驚いた

ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒!
これさえあれば、何もいらない
とても甘くて、とても強い
この美味さなら、心配いらない
ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒!

トロール女に1瓶やった
そいつはすぐさま飲み干して
ニコニコ笑って踊った後に
ボコボコに俺を叩きのめした

トロール女のいびきの音で
目が覚めたらもうこんな時間
ハチミツ酒はもうすっからかん
でも気分はあっけらかん

ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒!
これさえあれば、何もいらない
とても甘くて、とても強い
この美味さなら、心配いらない
ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒!
これさえあれば、何もいらない
とても甘くて、とても強い
この美味さなら、心配いらない
ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒、ハチミツ酒!

孤児ネルNel the Orphan

孤児ネル

若くして死んだ

カースの娘

生涯の放浪者

水たまりで溺れた

鉱山労働者の失踪Missing Miners

アゲラン隊長

お願いしたい。行方不明事件の捜査をあまりにも…派手に行うのはやめてほしい。鉱山労働者が失踪したなどという噂が立ったら、街はパニックに陥る。労働者たちがどれだけ迷信深いか、よく知っているだろう。

この件は、間もなく論理的に説明できるようになると確信している。どうしても調査を続行しなければならないのなら、個人的に会って目立たないように調査する方法について、話すことは可能だろうか?街の裏にある洞窟で、妥当な行動計画について2人で話し合いたい。事務所に招きたいが、やはりこの件は慎重に行うことが最も重要だ。今以上に注意を引くことはやめておこう。

ウールヴァル

鉱山労働者の日記Miner’s Journal

2日目

鉱山のできるだけ奥に拠点となるキャンプを設置した。誰かがひどく苦労してこの通路を掘ったようだが、遠い昔の話に違いない。

幸運にも、鉱山のこの区域はまだ銀やその他の微量金属が豊富にある。トンネルの壁を貫く巨大な手つかずの鉱脈が見える。だが、このことは元々発掘した者の運命に関してかなりの不安を感じさせる。これだけの苦労と投資をして鉱山を開いたのなら、なぜ鉱脈に蓄積された膨大な鉱石を掘り尽くす前に放棄したのだろう?

3日目

今日は崩落したあるトンネルの片付けを終え、その先にある大きな部屋まで入った。私は歴史家ではないが、ここにあるのはドワーフの遺跡の名残に間違いないと思う。岩や鉱石とはかけ離れた、絶対に自然ではないものがあった。

アエサが昨夜、寝ている時に走り回る音を聞いたと言った。スケグは心配がいらないとなだめ、こんなトンネルには素早く動くものがたくさんいるからと言っていた。だが私も物音を聞いたし、それは普通の蜘蛛が立てる音ではなかった。何かにつけ回されている気がして仕方がない。まるで見張られているようだ。

4日目

こんなところには絶対に来るべきじゃなかった。何時間も前にアエサとスケグがドワーフの遺跡へ偵察に行ったが、どちらも戻っていない。影の中で青白い姿が動いていて、癇に障る虫のようなカチカチ鳴る音が通路中で反響している。幻覚を見ているのだろうか?脱出する道を探しても、おそらく見つけられないだろう。

どうやら今、キャンプにいるのは私だけらしい。誰かが出ていくところを見てはいないが。カチカチ鳴る音はどんどん大きくなっている。呼吸音が聞こえる。さっき、暗闇の中で叫び声を確かに聞いた。アエサの声のようだった。

何かが近くにいる。私を嗅ぎつけたようだ。

今日の指示Today’s Instructions

ザニクー。新鮮な死体を探す間は、嵐から身を守るためにフレイウェンのアミュレットを使いなさい。しかし、なくさないように。

調査場所:
~ 最近凍結した商船
~ 要塞南の氷棚沿い

入手すべき品:
~ 人間の死体
~ 狼の死体 1
~ アルゴニアンの死体 1

上記の品を持ってベルグラの空洞の下にある私の工房に戻りなさい。見つかるまで戻ることは許しません。

マクステン・ファヴレット

失われた愛への挽歌A Threnody to Lost Love

心の中の奥深く
私の中に集まる嵐
心の中の奥深く
満ちる潮はあまりに高い
心の中に隠れる
悲しみが奔放にささやく
恐れは冷たく
私の涙を通じて叫ぶ

どうか私を見つけないで
自由になれない
どうか私を見つけに来て
あなたの死が頭から離れない
あなたの死が頭から離れない

心の中の奥深く
私の中で炎が燃える
魂の中の奥深く
痛みが全てを切り裂く
心の中に潜む
孤独が懇願する
私はもう完全じゃない
涙を通じて悲鳴をあげる

どうか私を見つけないで
自由になれない
どうか私を見つけに来て
あなたの死が頭から離れない
あなたの死が頭から離れない
あなたの死が頭から離れない

取り消しの呪文(第一節)Incantation of Reversal, First Fragment

自由の指輪が渇きを癒すなら、まずこの言葉を言うように推奨する:
大海の岸で、ホーカーの群れが自由に遊ぶ

取り消しの呪文(第二節)Incantation of Reversal, Second Fragment

春になれば、土壌が豊かになる。呪いを破るには、2番目にこの言葉を言え:
豚、そして豚、そして豚、そして豚。叔母の指は小枝のように細い!

取り消しの呪文(第三節)Incantation of Reversal, Third Fragment

この言葉に気をつけろ。しばしば不明瞭だが、この詩を大声で歌うべきだ:
震える羽が風に漂う。髪は長く伸びたが、決して細くない!

首長殺しJarlsbane

この卓上弦楽器はヴァーデンフェルのヴィベク卿の代表団から上級王スヴァートルに贈られたものだ。ダンマーの音調の構造に慣れていなかった宮廷音楽家たちは、これを「はなはだしく調子外れであまりにも理解しにくい」と断言した。これはレドラン家の大吟遊詩人のエンドロニ・セルヴィロによって発見されるまで、長くブルー・パレスに珍品として置かれていた。

スヴァーグリム王はダンマー芸術への理解を深めるため、寛大にもこの楽器を大学に寄付した。

(「それでも金切り声を上げるウナギみたいな音がする!」と金属の飾り板の碑文の下に彫られている)

終わりなき鐘Chime of the Endless

この小さな鐘はジズ・クラアのアデプトであるユジッラを、僧房の仲間全員を殺したドロ・マスラの無慈悲な攻撃から守った。ユジッラは鐘をリズミカルに叩いて、恐ろしい夜を通して彼女を守ったジョーンとジョーデに対する賛歌を作った。残念ながら賛歌は失われてしまったが、鐘は残っている。

大学はカジートの仲間に敬意を表し、この鐘の使用を制限している。

終わりの一つ前の笑いThe Penultimate Laugh

ホーカーと怒ったガチョウがウィンドヘルムの酒場に入った。
何も特別なことは起きなかった。

これは謎かけではない!ハッ!私のお気に入りの物語だ。

だが物語の時間はない!全くない!謎のメイルモスの脅威の財宝はもう手の届くところにある!驚くべき秘儀がお前を待っている!鍵は不要だぞ。巻物が鍵だ!分かるかな?どうかな?

覚悟があるなら、入れ!

盾の衛士カーシShield-Guard Karthi

盾の衛士カーシ

衛兵として

彼は警戒し続けた

若き盾は破られた

腹に矢を撃たれ

焼けた紙Burnt Papers

〈明らかに燃やされた日記のページ。文章の断片しか残っていない〉

…を入手するのは難しい。ブラックリーチでさえも…

エジャーは嘘をついていた。落盤であんな怪我はしない…信頼はなかなか得られないが、彼は自分の身に起きたことについて真実を教えてくれた…

エジャーの血にはネザー…が染み込み…おそらく彼の抵抗によるものだが…自分の目で確かめる必要がある…中へ入る道はエジャーが知っている…

エジャーは協力しないだろう…群れの仲間の救出に固執している…光ささぬ…の古いドワーフの塔の近くに…

解放すると約束した…ダスクタウンの外でエジャーに会う…橋の東にあるキャンプで…

蒸留の目盛りと指示Distillation Calibrations and Instructions

正当な許可なく、ネザールート成長噴霧器の目盛りを調節しないように!

現在の目盛り:(有効性97%)
– 第1の目盛りは4ユニット
– 第2の目盛りは2ユニット

誤ってノズルが調整されてしまった場合、リセットを使用して全てのバルブを現在の目盛りに戻し、報告して適切な処分を受ける。調合薬の安定性を損なうことがないように!植物が不純物のない霧状のミストを吸収した場合、ネザールートは使用不能となり、数週間の作業が水の泡となる。

現在の目盛りに関する注意:
どちらの蒸留液も2ユニットを下回るか、4ユニットを超えてはいけない。パラメーターから外れた数を設定しようとするとバルブは停止する。パラメーターを強引に超えようとすると目盛りはリセットされる。

2つ目の蒸留液は、決して第1の目盛りを2ユニット以上超えてはいけないことに留意するべきだ。2ユニット以上超えると現在の調合薬が不安定になり、その結果純粋なミストが噴出される。そうなった場合は死につながる可能性がある。特に操作者の。

-目盛りのリセットは指示があった場合のみ、中央の端末を用いて行うこと。

深き洞窟のハイドリクの、機知と知恵Hydrik Deep-Delve’s Wit and Wisdom

さて、諸君。私は足首を折ってギルドホールにある自室にいる。治癒師によれば、6週間以内に再び歩けるようになったら奇跡だそうだ。ギルド幹事が時間を取って羊皮紙に色々と書いてみるのも良いではないかと言うので、若きメンバーは私の「知恵」の利益に預かれるという訳だ。時間をつぶす方法としては一杯やるほうが良さそうだが、何しろ私の回復のためにと勧めてくるのがギルド幹事だ。

だから、心して読むように。キルクリースの丘なら、どんなに弱い男でも短剣を持てばサーベルキャット数匹の腸を抜くことができる。だが本当の仕事は、西スカイリムの穴の中や薄暗い片隅にある。私はそのような場所を詳しく見て回った。こうした場所を探検した後に再び太陽を拝みたいと望むなら、この文を読み続けることだ。

シャドウグリーン
新人なら誰でも、ソリチュードに近接した場所ならそれほど危険ではないと考えるだろう。間違いだ。ここには極めて奇妙な獣が数多くいて、人の目を爪でくり抜き、肝を食べてやろうと待ち構えている。それはほんの始まりに過ぎない。そこをとめどない炎が覆い尽くすのだ。ただ近くに立っていただけで、肺に空気を詰まらせてしまった治癒師を見た。熱だけではない。また、亡霊の海から吹き付ける凍り付く風もある。手をきつく覆っていなければ指を真っ黒に変えてしまうような風だ。指が凍傷にかかっている手で、飢えた熊を回避できるか試してみるといい。やってみろ!

最近ではもっと悪い噂も流れている。厄介な魔女のハグレイヴンがそこに拠点を作っているというのだ。そしてあらゆる種類の不快なものを傍らに呼び集めているらしい。奴らが何を求めているのかは、誰にも分からない。

ドラゴンの家
まずははっきりさせておこう。ここにドラゴンは1匹もいない。スヴァイン、ボル、オーダたちがドラゴンを倒し、英雄になろうと考えるのにはうんざりする。
そうしたいなら、エルスウェアに行け!

この場所にいるのはドラウグルで、どんなギルドの支部でもこいつには躊躇するはずだ。竜教団はかび臭い広間に軍団を収める方法を実によく知っていた。それは認めよう。そしてドラウグルがいない場所には、ドラゴンを崇拝することが賢明だと考える程度にはおかしい信者がいるだろう。まるで昔に戻ったかのように!ここでは墓地におけるその他の魅力的な特徴も見られる。罠、突然勢いよく開く墓室、それに…一番厳しいのは、足元に注意を払わなければ落ちて死ぬことだ。高さには気をつけろ!

フローズンコースト
溺死はひどい死に方だ。我々の職業で間抜けが死ぬ原因は沢山あるが、溺死はその中でも最悪の部類だ。よく滑る氷棚の上に立って海の巨人を追い払っている時に足を踏み外し、ナミラの胸よりも冷たい水の中に落ちたとする。そこから飛び出すことはできない。その冷たさはすぐさま肺から空気を奪う。どれだけ力があろうと、武装した体を極度の混乱から引き出すのは無理だ。そして沈む。

これが悪い場合。もっと悪いのは、海の巨人のクランがその岩を見て、呪文をかけて混乱の種を植えるのにちょうどいいと考えた場合だ。私が話しているのは、荒野で見かける毛皮に身を包んでよろよろ歩いている巨人のことだと思っているかもしれない。そうではない。海の巨人は賢い。そして意地が悪く、できるだけ苦しめて殺すためなら喜んで時間をかけるだろう。楽しみのためだけに。それから、奴らはマンモスのミルクからチーズを作らない。少なくとも、私に分かる限り。

冷風ヶ淵
これは洞窟だ。薄暗く、天井も低い。最近まで、心配すべきようなものは大していなかった。リーチの民が何人か隠れているぐらいのものだった。あるいははぐれ死霊術師が。ギルドは容易に対処できた。だが、これまでに見たことのない怪物がこのトンネルの中に住み着いた。見たことのない獣だ。まるでゴブリンのようだが、違っている。

ひどく汚らしい鎧を身に着けた青白い連中で、叫び声をあげる大人のオークを、黒いトンネルへ引きずり込むくらいの力がある。私はそれを調査する仕事を受けて、攻撃される前にかろうじて部屋に入れた。

奴らはある種の虫を使役している。巨大で、鋼の罠のような下あごを持ったものだ。チェインメイルを貫いて噛みつける。顎に毒があっても驚くことはないだろう。

ラビリンシアン
どんな小生意気な間抜けも、隠れ場所や攻撃の心配をすることなくこの洞窟に出入りできるだろう。だが、ちょっとした軍団を作らずラビリンシアンへ行くのは愚か者だけだ。その学者が護衛を1人雇う金しか持っていなくてもである。金には代えられないからだ。ここの上層には大きな敵がいて、下の洞窟にはさらに悪意のある連中が大量にいる。忠告しておくが、あまり奥には行くな。多くの者が降りて行ったが、上がって来た者はいない。

神々とノルドDivines and the Nords

大司祭インガルト 著

ノルドの宗教は長年の間に、数々の興味深い転換点を経た。最も初期の信仰はアトモーラに起源を持ち、動物のトーテム崇拝を中心に展開した。ドラゴン、鷹、雌狼、蛇、梟、鯨、熊、狐などは八大神にロルカーンを足したものに相当するように見える。後にドラゴンが注目を集めるようになり、竜教団が誕生した。竜教団がより邪悪になってその意思を全土へ強制するようになったのは、タムリエルへの移住中かその後まもない時期のことだった。ドラゴンや司祭を打倒するには竜戦争が必要だったが、その話は別の機会にすべきだろう。

最終的に、動物トーテムの神々は現在我々が信仰している八大神に変化した。我々は彼らを真の名前で呼ぶ。アルドゥイン、カイネ、マーラ、ディベラ、ストゥーン、ジュナール、オーキー、ショール。我々は神々が世界と同じように循環するものと理解しているので、現在の世界をもたらすために戦って死んだ、死した神々(ショールとストゥーン)、現在の循環を見守る炉の神々(カイネ、マーラ、ディベラ、ジュナール)、次の循環を先導する黄昏の神(アルドゥイン)をも記憶している。また、これに試練の神々と呼ばれる者たちも加わるが、彼らは崇拝の対象でなく、反対に彼らから炉を守るべきだと認識している。これにはオーキー、モーロッチ、ハルマ・モラが含まれる。

インペリアルが到着した時、彼らは南の宗教をもたらし、八大神の信仰と一体化させるための活動を行った。それ故に我々は、ソリチュードの美しい街を優雅に飾る、この素晴らしき神々への聖堂を手に入れることができた。我々は8人の神がいるという一般的な概念に多かれ少なかれ同意するが、極めて異なった観点で捉え、異なる名前で呼んでいる。我々の聖堂は現在の統治者の要求や要望に幾度となく適応し、もはや我々自身がルビーの玉座の恩恵を受けることはないにも関わらず、明らかにインペリアルの観念と習慣に馴染んできた。

恐らく、我々の最大の相違は神々の最上位に関連するものだろう。我々ノルドはカイネを神々の指導者と認識しており、インペリアルがアルドゥイン(彼らはアカトシュと呼ぶ)に魅了されていることを知って困惑し、やや不安を感じている。我々がアルドゥインを眠らせておくために弛まぬ努力を行っているのに、その一方で南の隣人たちは幾度となく彼の注意を引こうとしているのだ!私が聖堂での礼拝を毎回アルドゥイン(おお、偉大なる時の神よ!)を称える祈りで始め、その後に彼を寄せ付けないようにする祈り(その眠りが幾千もの世にわたり続かんことを!)を続けるのはそのためだ。

神々の歌The Song of Gods

カイネ、最後のキス
人類の母と呼ばれる
自らの聖なる嵐で踊り
鷹として飛べ、我らがカイネ

マーラ、愛の女神
その恩寵は我らを高め
聖なる花を祝福する
愛すべき狼の女神マーラ

ディベラ、芸術家の詩神
美の女神に世辞はいらない
この銀蛾に欠陥はない
麗しのディベラしか見えない

ストゥーン、身代金の鯨神
戦争の捕虜は彼の慰めを求める
盾と角笛が彼の宝
共に立て、公正なストゥーン

ジュナル、ルーンの賢神
輝く月の下で自由に飛ぶ
奇妙な夜の梟
共に飛べ、賢きジュナル

オーキーは全ての定命の者を試す
あらゆる争いを始めたがる
誰も逃れられぬ蛇
強きオーキーは誰にも騙せない

アルドゥイン、恐怖の世界を喰らう者
我らが恐れる事を行う
最初のドラゴンとして知られる
アルドゥインを崇めてはならぬ

聖なるスイートロールへの祈祷Holy Sweetroll Liturgy

聖なるスイートロールを称えよ!
フワフワ、ベタベタ、温かく甘い
聖なるスイートロールを称えよ!
おいしいごちそうを称えよ!

聖なるスイートロールを称えよ!
祝福されしシロップをかけられる
聖なるスイートロールを称えよ!
口の中がいっぱいで、称賛も叶わぬ!

聖なるスイートロールを称えよ!
黒檀の木箱に鎮座する
聖なるスイートロールを称えよ!
神聖な皿で供される

聖なるスイートロールを称えよ!
フワフワ、ベタベタ、温かく甘い
聖なるスイートロールを称えよ!
おいしいごちそうを称えよ!

西スカイリムへの案内:カーサルドGuide to Western Skyrim: Karthald

帝国調査官、ブンタラ・グラヴィウス 著

僻地にある西スカイリム王国の案内を続けよう。今回は最も南の地が舞台となる。

このガイドが最初に書かれた時には存在しなかったカーサルドは、ハーフィンガルの南、ハイヤルマーチの西にある。この地域は5年前まで、リーチの支配下にあるとされていた。しかしはるか昔からノルドとリーチの人々はこの地域の所有権について激しく争ってきて、決定的に獲得できたものはいない。設立されたのは最近だが、ノルドは何世紀もこの地域で暮らしてきた。カーサルドは容赦のない尾根と広範囲な絶壁の土地、松の森を有している。こじんまりした風景には多くの驚くべき場所と、同時に秘められた危険が隠されている。

カースウォッチは権力の座だ。首長と民は西スカイリムの南の境界を管理しているようなもので、その任務は迫るリーチの民に対して守りを固めることだ。旅人に対しては親切だが、カースウォッチの人々は快適さを提供できることがほとんどなく、訪問者が集落に滞在する間耐えることになる、あらゆる不快な状況について言い訳をすることはない。厳密にいえばカースウォッチは街だが、住民は砦だと考えている。

オークの採掘集落であるモル・カズグールは、西の境界にある山の中にある。クランの土地を訪れる人々は、キャンプ内や周囲の土地がカーサルドに属していることについて言及しないよう助言する。たとえ法的にも論理的にも真実であったとしても。オークたちは彼らの領域がロスガーの主権を有する辺境の居留地で、オーク種の規則や習慣の支配下にあると考えることを好む。そのためこの地域への訪問者は、宿主を怒らせて仲間が怪我をする危険があるため、オークの礼儀作法や振る舞いについて十分把握しておくことをお勧めする。とは言え、モル・カズグールのオークはオルシニウムにいる彼らの同胞と変わりはない。強健で、熱心で、しきりに友情を求める人々だ。

著者注:全スカイリムと同様に、カーサルドには他にも旅人の安全が決して保障されない洞窟などの場所がある。著者は読者の安全を守りたいと願い、この版からこうした危険な場所への言及を削除することに決めた。

西スカイリムへの案内:ハーフィンガルGuide to Western Skyrim: Haafingar

帝国調査官、ブンタラ・グラヴィウス 著

僻地にある西スカイリム王国は孤立主義や閉鎖的と評されているが、恐れを知らぬ旅人はこの地や住人との間で楽しみを数多く見出せる。このガイドに記された詳細は、このような感想を反映している。しかし、西スカイリムは無謀な旅人のための場所ではないことに注意しておくべきだろう。その地形は住民と同じように険しく、どちらも愚か者に容赦しない。

東スカイリムと同様に西スカイリムはいくつかの地域に分かれ、それぞれに首都があって支配する首長がいる。全員がその中で最も強い地であるソリチュードの首長に忠誠を誓い、その首長は上級王の冠を被る。

ハーフィンガルは北東にあり、山と凍った海岸線に覆われている。亡霊の海から不吉な風が吹きつけ、全てを骨まで凍えさせる。

ソリチュードは巨大な石のアーチにまたがり、首都と首長、上級王の居城の役割を果たしている。街は由緒正しく守りやすいドール城に見守られていて、その砦はこの街の初期の建造物である。ソリチュードには主要な地区が2つある。活気ある市場があるウェル地区と、アベニュー地区だ。建築学の学者ならアベニューで魅力ある家を数多く発見できるが、世俗的な娯楽を求める者はウェル地区を好むだろう。アベニューにはブルー・パレスも隣接している。ここは高位ノルド建築の優れた見本であり、上級王とも呼ばれる首長の居城でもある。また、街の中にはソリチュードを亡霊の海の上に持ち上げる壮観な石、アーチがあることも記載しておく。

ハーフィンガルの山中に建つキルクリース聖堂は、デイドラ公メリディアを祀った建造物だ。デイドラ公の崇拝は、タムリエルにおいてひいき目に見ても物議を醸す議題だが、その建築面での素晴らしさや落ち着いた環境はそれだけでこの聖堂を訪ねる価値があるものにしている。自ら進んで異端の会話に参加しようとする者は、キルクリース聖堂の司祭が温かくもてなし好きで、喜んで旅人に食料や暖かなベッドを提供することを知るだろう。秘密の儀式を行うために管理人が扉を閉じる、高き太陽と低き太陽の宴の間は、訪問を避けるよう注意してほしい。

ドラゴン・ブリッジは小規模なキャンプで、カース川沿いにある街はこの壮大な橋によって名付けられている。川をまたぐと切り出した石で作られた古代の道、ドラゴン・ブリッジがある。興味深いことに、その先端にはドラゴンの頭蓋骨が2つ設置してある。橋の石と頭蓋骨の石細工の細かな違いは、一部の学者をこれが石化した古代動物の実際の骨であるという結論に導いた。その他の学者はこの主張を空想的で馬鹿げていると嘲笑している。遺体であろうがなかろうが、頭蓋骨は何世紀も旅人の想像力を刺激してきた。これからの数世紀も間違いなくそうするだろう。

巨人の野営地はハーフィンガルの荒野全域に広がっている。定住している訳ではなく、放浪の巨人がその都度設営する。同じ場所を何度も使用する傾向にあるため、放棄された巨人の野営地の痕跡を見つけたら、再び使用される可能性は高い。これらの野営地に近づくことは無謀な試みだが、安全な距離からこの生物を観察できる機会を与えてくれる、興味深い冒険を提供する経験豊かなガイドを、数多く雇うことができる。

著者注:全スカイリムと同様に、ハーフィンガルには墓地と洞窟があり、放棄されているように見えるが、とても危険なことが多い。著者は読者の安全を守りたいと願い、この版からこうした危険な場所への言及を削除することに決めた。

西スカイリムへの案内:ハイヤルマーチGuide to Western Skyrim: Hjaalmarch

帝国調査官、ブンタラ・グラヴィウス 著

僻地にある西スカイリム王国の案内を続けよう。今回は最も東の地が舞台となる。

西スカイリムのハイヤル川にちなんで名づけられたハイヤルマーチは、西の王国の中で最大の規模を誇っている。カース川とハイヤル川の河口で形成される広大な塩水の沼地、ドラークミールがこの地の中心だ。しばしば不気味な霧に覆われる大部分が無人の湿地帯には、一般に不吉とされているデスベルの花が群生している。湿地の探索は困難を伴うが、熱心な旅人なら発見や楽しみを数多く見出せるだろう。

ドラークミールの南東にある林業の街モーサルは、首長の権力の中心地として役割を果たしている。家は必然的に鉄柱の上に建てられ、沼地の上に安全な通路をもたらすための港でつながっている。ここの建物はノルドの粗削りな建築の見本だ。街への往復が大変な悪路であるため、モーサルの人々は旅人に不慣れかもしれないが、親切にもてなすこともできる。彼らの多くは塩沼で釣りや罠を使った漁で、魚を獲って生計を立てている。暖かい季節になると、棒で漕ぐはしけでソリチュードの港に木材が運ばれる。モーサルは隣接する墓地のために不可欠な目的地と考えられており、数少ない墓地の1つは今も、武装しない旅人が安全に探索できる場所となっている。

亡霊の海に隣接する氷棚は探検者や冒険者に人気の場所だが、安全に渡るためには適切な装備が必要とされる。時代が経つにつれて多くの船や大型船が氷に捉われ、残骸の多くが収集家や愛好家に、過去の時代の小装飾品やお土産を見つける機会を提供している。ほとんどのスカイリムの自然と同様、知識が豊富なガイドを雇うことは、氷盤を訪れたいと願う人々にとって不可欠だ。

ラビリンシアンはハイヤルマーチの南東にある、山の麓の丘で見られる巨大な墓地だ。とても危険で珍しい場所となっている。学者たちはこの施設が古代スカイリムの卑しむべき過去において竜教団の中心地だった、ブロムジュナールの街の遺跡であることを知っている。噂では遺跡の中に複雑で苛立つほどの迷路があると言われているが、その存在は信用に足る情報源による確認がなされていない。ラビリンシアンがハイヤルマーチにおける有名な史跡である以上、このリストに含める必要があったわけだが、ここはしばしば厄介な獣や悪しき人々に占拠されている場所である。避けるのが無難だ。

著者注:全スカイリムと同様に、ハイヤルマーチには他にも旅人の安全が決して保障されない洞窟などの場所がある。著者は読者の安全を守りたいと願い、この版からこうした危険な場所への言及を削除することに決めた。

西スカイリム周遊記Travels Around the Western Holds

漆黒の爪 著

殻の兄弟たちも、広大な北の旅へ一緒に来れば良かったのに!まあ、あの生温いギデオンの泥風呂に留まることを選択した彼らを非難しようとは思わない日もそれなりにあるが。どうやら西スカイリムと肌の乾いた住人どもはブラック・マーシュからの旅人に慣れていないようだ。とはいえ、東の隣人に対する態度に比べれば、我々のような者に対する接し方はずっと友好的なようだ。彼らは東の隣人のことを「ミルク飲み」と呼び、地面に唾を吐く。素晴らしい粘膜からの分泌物を無駄にするとは!

西スカイリムには氷と岩しかないと考えていた。だが、彼らが住む地に合わせて様々なものが見つけられる。たとえそれが、丸い舌を持たない者にとって厄介な名前だとしても。

西スカイリムを頭飾りとするなら、ハーフィンガルは頭蓋骨だ。頭飾りがあるかどうかは知らないが。亡霊の海から冷たい風が荒野に吹きつけ、多くが荒涼とした海岸線である。だが川と海が出会う場所に安全な港があり、そこにソリチュードの街がある。ハーフィンガルが頭飾りの頭蓋骨なら、ソリチュードは頭蓋骨の中のウシュル豆だ!ここは間違いなくノルドの考える大都会だ。花や香りのある虫がほとんどいない。くつろげる温かい泥もない。それでも、この者はタムリエル中で楽しんだ慰めを楽しんだ。港への密輸だ。どうやらここの人たちは、外部との開かれた貿易を推奨されていないようだ。

***
キャラバンと一緒にソリチュードからオルシニウムに向けて旅をするつもりだったが、ノルドの訛りに混乱してしまい、結局西スカイリムの別の場所へ向かう荷車に乗ってしまった。ここはハイヤルマーチと呼ばれている。

初めて見た時は、旅に出てから初めて故郷を出たことが悲しくなった!ここの湿原や沼地は雪に覆われているものの、ブラック・マーシュの悪臭を放つクアグマイアを思い出させる。まあ、ここにある湖上の住居や泥小屋は、故郷にあるものの薄っぺらな模造品でしかないが。それに、ここの連中は豊かな腐敗物からほんのわずかな生活の糧しか取り出さない!彼らは主に釣りや罠の猟で生活し、足元の海水に浸かっている発酵の元など考えもしない。私は「首都」であるモーサルの住民を教え導こうとしたが、有意義な時間ではなかった。残念だ。ずぶぬれの丸太小屋は、シロアリの幼虫の繁殖地にちょうど良いことに気づいた。いくつか乾燥させよう。これを書いているのは、村の子供たちにお菓子を作るためだ。

***
オルシニウムに行く計画は阻止されてしまったので、西スカイリムで3つ目の地を見るのも悪くないと考えた。カーサルドと呼ばれる場所だ。だが、ノルドはカースワステンと呼ばれる村について話している。ただでさえその2つについて混乱しているのに、間違える度にここの肌の乾いた者たちは、まるで骨の祝宴で歓喜の背骨を立てたかのようにこっちを見る。シシスよ、我を連れ去りたまえ!

凍える亡霊の海から遠く離れているため、ここは西スカイリムの中で最も穏やかな場所だ。だが険しい岩山が多く、計画的に植物を育てることは難しい。不毛であるにもかかわらず、この地は西スカイリムのノルドと南の棒を愛するリーチの民との戦場となっている。

私は時間を取って、ここの主要な街であるカースウォッチを見ることにした。彼らはカース川関連以外の名前を考えられないのだろうか?中心となる集落は印象的だった。石の断崖の上に建つ要塞のように配置されていて、その使命が南にいる西スカイリムの隣人を見張ることだと知った。カーサルドは最近卵から孵ったばかりで、聞いたところではできてから数年しか経っていないそうだ。その境界は地図で見るだけだが、ここにいる肌の乾いた者たちはこの土地を心から深く愛していて、いくつかのクランは何世代もここに住んでいる。確かに、故郷の地を守る役割にふさわしいと思える。

***
明日、ようやくオルシニウムに向かうことを3度も確認した荷車に乗る。私が西スカイリムで過ごした時間は有益だったと言い切れないが、いい勉強になった。いつかギデオンの殻の兄弟に伝えるつもりだ!

青い憧れのリュートThe Lute of Blue Longing

この楽器は呪われた吟遊詩人グジャルドレッドのものだった。彼が東の王国の宮廷で演奏している時、女王がこの麗しい吟遊詩人に心を奪われた。冷酷にも、彼は女王を誘惑するために甘いバラッドを作曲した。彼に愛されていると信じ込んだ女王が衛兵を下がらせると、グジャルドレッドが部屋にやってきた。

夜明け前に彼の楽しみは終わり、この不実な吟遊詩人はこっそりと部屋を出て城から逃げ出した。無情にも欺かれたことに気づいた女王はグジャルドレッドに恐ろしい呪いをかけ、自ら命を絶った。彼は自らの裏切りの歌を歌わずにはいられぬようになり、リュートを手に取るといつでも女王の霊魂が姿を現すようになった。

このリュートで愛の歌を演奏すると、女王の霊魂が見られることがあると今も言われている。

喪心の嵐についてOn Harrowstorms

レイヴンウォッチ家のフェノリアン 著

このメモはいつか喪心の嵐とその背後にある魔法に関しての論文となるだろう。最終的に、発表できるような質に高める時間があればだが。

喪心の嵐はアイスリーチ魔術結社の魔法と、古代の吸血鬼の錬金術が融合して創り出された神秘的な天候現象だ。何の前触れもなく襲い掛かり、去った跡には死を残していく。私はこの超自然的な嵐が残した惨状を見た。引き起こされた力はその内部に捕らわれた生者を殺すか、我々が喪心者と呼ぶようになった、ほぼ心を持たない抜け殻にできる。だが、中には現在我々が喪心鬼と呼ぶ、新種の野生化した吸血鬼になる者もいる。もちろん、嵐に捕らわれた者全てがこうした苦痛を受けるわけではないが、誰が死に、誰が変化し、誰が無傷でいられるのか、その理由をまだ特定できていない。

この現象を研究する中でほぼ確信を持って言えることは、喪心の嵐がある種のリーチの魔法の儀式によって創り出されることだ。儀式では集中し魔法を解き放つための儀式的な詠唱に加えて、ある種の呪物やトーテム、錬金術の調合薬など、様々なアルケインの材料を使用する。

結果として生じる災いは喪心の嵐の最終的な目的なのか、あるいはより陰湿な目的の副産物に過ぎないのかはまだ分かっていない。また、この超自然的な事象の背後にいるのが何者なのかも、確かには分かっていない。嵐が犠牲者を殺害し変化させる方法と、犠牲者が奪われたものを回復させる方法があるのかどうかについては、さらなる研究を要する。時が来れば分かるだろう。

捜査官ヴェイルとしらふのノルドInvestigator Vale and the Sober Nord

「私の評判を賭けてもいいけど、これは毒よ」と捜査官ヴェイルは言った。

「彼は絶対に、夜を通して一切飲まなかった!何かを食べるのも見てない」と、〈寂しいトロール〉のバーテンダーがそわそわした様子でタオルを絞りながら言った。「だが、恐れているように見えた。ビクついていたな」。

捜査官ヴェイルは、かつて活気があった酒場の床に横たわるノルドの男のそばに立って見下ろした。夜の間に男が倒れて死んだ時、その場にいた多くの者が立ち去った。しかし死体の見えない、店の隅にいた常連たちは飲み続けていた。

平均的なノルドのハチミツ酒への関心は、尊敬すべきものがあるとヴェイルは考えた。

「おかしいわね。食べも飲みもしなかったなら、彼はここで何をしていたの?それに、どうやって毒を盛られたの?」

魅力的な衛兵隊長が胸の前で腕を組み、眉をひそめて言った。「酒場でしらふのノルドか。いつも問題を起こすわね」

ヴェイルは微笑んだ。「同感よ、アエジャ隊長」

捜査官ヴェイルは警告すらせずに仕切りから出ると、残っている客の中を進んで行った。アエジャ隊長は急いで彼女の後を追った。彼女はとても背が高かったが、酒場に残った集団を進む、素早く美しい体つきの私立探偵についていくのは至難の業だった。

「捜査官、どこへ行くの?」

ヴェイルは酒場の奥に押し込まれているテーブルに、肩に乗っているペットのサソリ以外には連れもなく、一人で座るハンサムな男の前で止まった。2人の女性が近づくと男はにっこり笑い、手にしたジョッキを掲げて見せた。

「やあ、お嬢さん!どうして麗しい女性が2人も、このテーブルにお越しくださったのかな?」

捜査官ヴェイルは狡猾な笑顔を浮かべ、男の隣の席に滑り込んだ。「あなたのジョッキが満杯だって気づいたの」

男の表情が揺らぐことはなかった。ヴェイルの予想通りに。彼が上手い役者か、あるいは彼女の勘が間違っていたか。だが、彼女の勘は滅多に外れることがなかった。

「こいつを飲み干すのを手伝いたいって?」と男は眉毛を動かしながら言った。

ヴェイルが横で体を強張らせているアエジャを見ると、彼女の手は鞘に収めた剣の柄頭を握りしめていた。この若い隊長は、誰かを守ろうとしている時の方が魅力的だ。だが、そのための時間は後で取れるはずだ。

「いいえ。ただどうして遠慮しているのか興味があっただけ」と彼女は微笑みながら言った。

男は微妙な動作でローブの袖を整えた。「男には酒をじっくり楽しみたい時もあるのさ。それが罪なのか?」

「いいえ、全然」ヴェイルは落ち着き払って言った。「もちろん、自分の仕事の成果が首尾良く行くかどうか、混雑した酒場で見届けるためにしらふでいたんじゃなければね」

「これは途方もない言いがかりだ」男はせせら笑った。「うろうろ歩き回って、飲んでない奴を片っ端から殺人犯呼ばわりするのはやめてくれ」

「そうね。でも、危険なアズールスコーピオンを連れている人を、殺人犯として告発することはできるわ」

「ザレヤは誰も傷つけなんかしない」と男は抗議した。

「確かに、自分の意思ではね」とヴェイルは言った。「でも、その特殊なサソリは家畜化されてる。指示されれば主人の命令を聞くわ」

男は目を細めて言った。「証拠がないだろう!」

捜査官はほっそりとした手を差し出した。彼女の目が危険に光った。「なら、彼女に私を刺させて」

アエジャ隊長が妨げた。「なんですって?捜査官、だめよ!」

「あの大きさの男を殺すなら、かわいいザレヤちゃんは全部と言わないまでも、かなり消費してるはずよ。毒をね。それを回復するには時間が必要。だから私が正しいなら、完璧に安全なはずよ」

隊長はじっと勇敢な捜査官を見つめたが、最後にはその視線を男の方に向けた。「そうね。じゃ、結果を見ましょう」

男の表情は変わらなかったが、捜査官ヴェイルは目の中に怒りがはじけているのを見た。サソリを摘まみ上げ、待ち構えている捜査官の手に置くと、男の顎の筋肉がビクッと動いた。彼が静かな舌打ちを鳴らすと、サソリの尾がヴェイルの掌に突き刺さった。

ほぼ同時に、男が立ち上がり、逃げ出そうとした。捜査官ヴェイルは落ち着いて立ち、静かにサソリをあやしていたが、巧みに脇へ寄ってアエジャ隊長に場所を開けた。この背の高い衛兵が男を激しく突き飛ばして椅子に戻すと、椅子は後ろに倒れ、男は床に倒れた。慌てて立ち上がる前にアエジャ隊長は剣を抜き、喉元に突き付けた。

捜査官ヴェイルは微笑み、繊細な指でサソリを撫でた。「まあ、あなたって本当に勇気があるのね、ザレヤ?」

「捜査官、大丈夫?」と隊長が尋ねた。

「絶好調よ」とヴェイルは答えた。

「一体どういう女なんだ、お前は?」男が息を詰まらせながら言った。「痛みに膝をつくはずだったのに!」

「私は本当に特別な状況でしか膝をつかないの」ヴェイルは澄ました顔で言うと、サソリを手からテーブルの上に這わせた。「特別な状況と言えばね、アエジャ隊長。ここの仕事が終わったら、ぜひあなたに一杯おごらせて欲しい」

魅力的な衛兵は頬を赤らめ、笑顔を隠そうとしたがうまくいかなかった。「仰せのままに、捜査官」

「でも」捜査官ヴェイルはウィンクしながら言った。「違う酒場を選んだほうがいいかもしれないわね」

蒼白の紳士The Pale Man

よそ者が訪ねてきた
亡霊のようにやつれていた
無言で、火の側で震えていた
その者は深刻な顔で絞り出した
ほとんど聞こえない、ひどく虚ろな声
言葉の少ない、警告の呟き

蒼白の紳士が来る
冷たい風と暗い雲の日に
蒼白の紳士が来る
愛する人を奪うために
蒼白の紳士が来る

警告が発せられて間もなく
初雪が大地に降り注いだ
風の唸り声に心は怯え
陰る陽光に祈りを唱えた
扉を閉じて夜を締め出し
体を寄せ合って相談した

蒼白の紳士が来る
雪の外套に身を包んで
蒼白の紳士が来る
その手は骨まで凍えさせる
蒼白の紳士が来る

恐るべき嵐が止むと
体を伸ばして夜明けを待った
休むわけにはいかぬと
招かれざる客を待ちながら
剣を固く握り
盾の揺れる音にも耳を澄ませた

蒼白の紳士が来る
幽霊のように通り過ぎて
蒼白の紳士が来る
後も残さず消えていく

ついに夜は終わった
予告された訪問もなく
警戒が解け始めた時
私はよそ者がいた場所を見やった
だがどこにもいなかった
残っていたのは、冷たい輝きだけ

太ったレッカ(発掘)Lekka the Corpulent (Exhumed)

太ったレッカ

ヒストのように老いた

マークマイアの母

我らが習わしの学者

心臓発作により死す

嘆きの笛Highmourn Dizi

アカヴィリ様式のフルート。前アカヴィリ最高顧問サヴィリエン・チョラックの葬送で演奏された楽器だ。

この笛が演奏され、悲し気ないつまでも忘れられない音色を耳にすると、アカヴィリの忠実な参列者は遠く離れた故郷の声を聴いて泣き伏したと言われている。アカヴィリではない者さえ、その死を悼む切ない音調には心を動かされた。中にはアカヴィリ以上に感動していた者もいたようだ。

長き炎Long Fire

このタンブラーはヨクダの芸術を代表しているものだ。この楽器は、フランダー・フンディングのハンマーフェル遠征軍にいたソードシンガーの持ち物だったと考えられている。

伝承によればヨクダの吟遊詩人は、自分の楽器を神聖で神の霊魂が宿っていると見なしていた。長き炎との名は砂漠の中央で吟遊詩人が仲間と集まり、星とわずかに燃える火に照らされながら失われた故郷の曲を演奏する、静かな夜に由来する。

鳥の歌を求める者Seeks-Birdsong

ストームヘヴンの鳥の歌を求める者

焼けて死す

とても若く、痛ましい

我らの元を訪ねし

信仰の伝道師

灰となって別れた

入場の言葉Words of Entry

墓地の番人と従僕へ

私の研究所の利用は引き続き制限される。そのため、私は誤って広間に迷い込んだ配下を妨げるため、入場方法を再設定した。

扉を探している時は、この簡単な語句を心に思い浮かべなさい:「我らは再び立ち上がる」

後は自分で察することができると私は信じている。もしそうでないなら、最初から私の研究所に用はないはずよ。

レディ・エッセニア

秘儀の入口The Mysterium’s Threshold

カイネは優しかったようだな!ハッ!火は温かい。お前はどんどん温かくなっている!

全ての扉はどこかに通じる、だがどこにも通じぬ扉がある
右の力は正義だとも言うが、正義が誤ることもある
左に残された者の、右の権利を試せ。しかし長くは続かない
一番左のセレクションが、コレクションに通じるかもしれない
だが三番目は惨番目となる

さあ、飛び込んで行け!猫のように跳躍せよ。猫のように信じれば、安全に着地できるだろう!

標的リストList of Targets

下記の鉱山労働者は最近の仕事ぶりが芳しくなく、もし消えても惜しまれることもない者たちだ。彼らが好ましい提供者であることを祈る。素早く彼らに死をもたらしてくれ。必要以上に苦しんで欲しくない。

アドリッド:過剰な飲酒、秩序を乱す振る舞い
ドレヴァ:食堂からの窃盗
ホロルド:怠惰で、人の半分しか働かない

注意:鉱山労働者たちは失踪に対して不安を募らせ始めている。間隔は開けば開くほどありがたい。我々の協定の噂がエレの耳に入っては困るんだ。妻が俺の関与を知ったら、互いにとってまずい結果になるだろう。

監督官ウールヴァル

不明(発掘)Unknown (Exhumed)

不明

行商人

盗賊により刺される

スカイリムに生まれし

賢き老女

怖がりの小さなスノーモスScared Little Snow Moth

怖がりの小さなスノーモスは怯えるのが嫌だった。友達のように勇敢になりたかったのに、彼女はあまりにも簡単に怯えてしまうのだった。怖がりの小さなスノーモスにとって、世界はとても大きく恐ろしい場所だった。彼女はできる限り外に出ることを避けていた。

だがある日、彼女は食べ物を求めて居心地の良い木を離れた。それは寒く、風の激しい日だった。怖がりの小さなスノーモスは、雪や羽に吹き付ける冷たい風は気にしなかったが、吹雪の中に潜んでいるものが怖かった。彼女は怪物と鉢合わせしたくなかった。

彼女が飛んでいると、雪の中に輝く光が見えた。恐ろしい怪物の目かもしれないと考えたが、近づいてみるとただの小さなホタルだと分かった。

意地悪なホタル爺さんはクワマー鉱山での冒険にうんざりしていた。彼ははるばる旅をして雪と氷に覆われた土地までやってきたが、とてもつまらない場所だったのだ。そんな時、彼は怖がりの小さなスノーモスを見つけた。きらめく雪の結晶と共に浮かぶ彼女を見た時、彼の心に邪な考えが湧き出た。

「やあ、小さなスノーモス」とホタルが叫ぶと、その声はまるで寒さの中の炎のように飛び出した。「こんな嵐の中で何をしているんだ?」

「お腹が空いてるの」と怖がりの小さなスノーモスは小さな声で言いました。「面倒は嫌よ」

「お腹が空いてるなら、向こうにある洞窟を探検してごらん」とホタルは声をあげました。「おいしい食べ物がいっぱいだよ!」

そこは安全そうに見えなかった。というより、ひどく危険そうに見えた!彼女は食べ物を集められる、もっとずっと怖くない場所を知っていた。

「さあ、ほら」ホタルは言った。「そばにいて何も起こらないようにしてあげるから。おいしいごちそうが欲しくないのか?」

怖がりの小さなスノーモスは長い間そのことについて考えた。彼女はとても怖がっていたけれど、愚かではなかった。

「そんなの信じない」と彼女は言った。「あなたはただ私を洞窟に行かせて、怪我をさせたいだけでしょ」

「怪我じゃない、ただ食べられるだけさ!誰かがあんたをごちそうにするところを見物できたらいいなと思ったんだよ、小さなスノーモス」

「また今度ね、ホタルさん」と怖がりの小さなスノーモスはそれまでより少しだけ大きな声で言った。「怖すぎて食べられるなんて無理」

「それなら仕方ないな、小さなスノーモス。さようなら」とホタルは声を上げた。

そして、怖がりの小さなスノーモスは雪の中を羽が体を運べる限り早く飛んで、ホタルを残して去って行った。彼女は他の誰とも口をきかなかった。食べ物を集めるとすぐ、彼女は急いで居心地の良い木に戻り、安全だと分かっている木の皮の上でうずくまった。

北の伝承の怪物Monsters of Northern Folklore

インペリアルの歴史家、ミネルヴァ・カロ 著

迷信を調べれば、民について多くのことを学べる。古代の恐怖は根が深い。大切な伝統や、歴史的な敵意よりも深いのである。怖いものがあると認めるノルドは少ないが、私は北方人がかなりの高確率で取り乱す話題を発見した。それは「雪の亡霊」である。最初はアイスレイスかウィスプマザーを指す言葉だと思っていたが、この「雪の亡霊」はそうした怪物と一切似ていなかった。「ボーグル」、「リークル・キン」、「地響きマント」などとも呼ばれるこの怪物には、羊飼いも交易商も悩まされている。家畜を盗み、旅商人の寝込みを襲い、地下室を有毒のスライムで台無しにする。私はモーサルとソリチュードで以下の証言を集めた。虚構から事実を見分ける作業は、親愛なる読者に任せよう。

モーサルの魚売りボンベッタは以下のように述べている:「そうよ!あのスキャンプどもは何度も見てる!港をうろついてたのさ。うちの網を奪って、魚を掻きだしやがった。奴らは月のない夜にしか出てこないんだよ。だからちゃんと見えないんだ。あたしの目も昔に比べれば衰えたけど、エルフみたいな鋭い耳をしてるように見えたね。ゴブリンみたいに背中を曲げてさ、肌の色は死んだ鱒の腹みたいだったよ。つまり真っ白さ。うちの主人は追い払おうとしたけど、あいつらはすばしっこくてね。それに最近じゃ、ラルミグの膝は、枯れた松の木みたいに軋るんだ。でもそれでよかったよ。聞くところじゃ、あいつらは男を見たら殺すっていうからね」

私はドラゴン・ブリッジの近くで、この生物に対する嫌悪を隠せない羊飼いに出会った。乾燥したキルニルの根を噛みながら、しばしば拳を震わせていた。素性は明かさないでくれと彼は言った。「この世から消えてもらいたいね、あんな連中は!昔は人生で何度か耳にする程度の存在だった。今じゃあいつらはここ半年だけでも、一番いい牛を3頭も奪っていった。もう一瞬たりとも気が休まらないよ。マンモスと牧草地の奪い合いをするだけでも大変だっていうのに。今じゃ朝から晩まで、あの地響きマントが俺の家畜を切り刻むんじゃないかと気をもんでいるんだ。兄弟は黒革の服を着た牛泥棒だろうと言うが、俺は見たんだ。あんなに背中の曲がったノルドはいない。それにあいつらの着てる服ときたら…あんなの見たことないぞ。まるで、モーサルの近くでたまに見る洞窟虫から削り出したみたいな服だ。今度ソリチュードに行ったらいい弓を手に入れて、牛泥棒どもの眉間を射抜いてやる」

吟遊詩人の大学出身で、意外なほど好感の持てるダークエルフのギルゼ・ティスターは、こうした証言が地域の迷信でしかないと一蹴している。「ノルドってのはそういう人たちなの。本当にあいつらは、不幸が起きれば何だって変な獣や外国人のせいにするんだから。この間なんか商人が目まで青白くなって、自分の犬に“エルフの呪い”をかけただろうって私を非難したのよ。何なのそれ?それに、私とそいつの犬に何の関係があるの?全く馬鹿げてるわ。まあでも、馬鹿げた話は愉快な詩になる!ちょうど昨日の夜、私は5つ目のトロールについてのお芝居を書いたの。最後のオチなんて爆笑間違いなしよ」

私はカースウォッチでおかしな目をした浮浪者に出会ったが、彼は両手をぶんぶん振り回しながら、全く途方もない証言をした。「あいつらはエルフだ!スノーエルフだよ!あいつらは…ゴブリンとか、リークルとか言われてるけどな!リークルだと!冗談じゃねえぜ。へっ、俺は見たんだ。この目でしっかりとな。あいつらは一番色の白いノルドよりも青白く、尖った耳とコウモリみたいな鼻をしてる!“エルフにコウモリみたいな鼻はないだろう”と言うんだろう!違うんだなそれが。全然違う!イスグラモルは他のエルフと区別するために奴らの鼻を切り落として、虫みたいに地下へ追いやったんだ。奴らは洞窟暮らしで太陽を浴びないから、今じゃ全員背中が曲がってる!そして奴らは戻ってくる!本当だぜ!あいつらはスカイリムを取り戻そうとしてるんだ。叫びの夜みたいにな。油断するなよ!油断しちゃいかん!」

現実にせよ想像の産物にせよ、この生物はノルドの伝承の興味深い側面を見せてくれる。またこれは古代の亡霊物語が、今日においても北方人を悩ませている完璧な実例である!

勇敢な魂と健全な肉体を求むSeeking Brave Souls and Able Bodies

多くの問題が西スカイリムを悩ませています。ハーフィンガル、ハイヤルマーチ、カーサルドの民の利益のため、ゴールドと栄光を求めて命と肉体を自ら危険に晒す、勇気ある人々を求めています。

詳しくはソリチュードの貸し手シルグレットまで

雷の王King Thunder

オーシマーの典型的な太鼓、雷の王はその低音と大音量の双方で知られている。この祝賀と戦争の際に贈られるオークの太鼓は、彼らの戦争じみた儀式の基盤をなすものとして、複雑なリズムを生み出す。

この太鼓はオルシニウムが包囲している間は隠されていて、後にファルクリースのヤシュナグ・グロー・ヤズグ要塞のものとなった。太鼓はハックヴィルド首長により、ヤシュナグ族長と勇者たちの勝利を記念して大学に贈られた。

狼の塔The Tower of the Wolf

ソリチュードの石工による概説より

愛する祖国の建築とスタイルについて、最初の資料から更新する機会はあまりなかった。。そして今、私の羽ペンは好奇心に震えている。私の人生において5つ目の補遺を加えられるからだ。それもドール城のような、建築の模範例に関するものを!
私の概説の忠実な読者は主砦、スヴァートルの塔、神々の聖堂、ソリチュードの地平線まで塞ぐ城壁についてよく知っていることだろう。我らの上級王スヴァーグリムは、この石の拳に指を付け加えることが適切だと考えた。今までで最も野心的な案で、建設が始まってから1年も経っていないが、もう完成に近い状態となっている。

この新たな巨大建築は「狼の塔」と呼ばれ、ソリチュードの紋章を飾る高貴な獣にちなんで名づけられている。何と壮観なことか。天を高く押し上げ、スヴァートルの塔さえも小さく見せている!この城の建築に元々使用された石を供給した採石場が、狼の塔の建設にも石を供給できたのはとても嬉しい。資源が枯渇しているという報告は、どうやら事実無根のようだ。

狼の塔の素晴らしい建築について考察するつもりで胸を高鳴らせていたが、残念ながらそれはできない。現在作業を行っている者以外、塔への入場は全て拒否されている。私は研究範囲を示してブルー・パレスに特例を願い出たが、役人どもは拒絶したのだ。私はひるまずに請願を続けたが、どこぞの名もなき小役人からではなく、上級王その人からの返事を受け取った衝撃はご想像いただけるだろう!

「偽王ジョルンが詮索している現状では、狼の塔の内部について秘密を保たねばならない」。上級王スヴァーグリムはこのように書いていた。塔は軍事的に重要なものであり、上級王の実際的な理論を否定することはできなかった。だが、まだ希望はある。「私がこの書状を書いている今も、塔は完成に近づいている」。上級王スヴァーグリムはこう続けた。「完成した暁には、我々の民にとってこの巨大建築物がどのような成果となるか、ソリチュードの人々も理解するだろう」

我々に必要なのは待つことだけだ、忠実なる読者諸君!