生産の本

Crafting Books

クラフトモチーフ1:ハイエルフスタイルCrafting Motif 1: Altmer Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

この小論集は、タムリエルの主要文化の1つひとつにつき、それぞれを他と分かつ象徴的および様式的特徴を芸術作品や工芸品から抽出し、大づかみに概観しようという試みである。論考の焦点は、さまざまな種族の携行耐久財、すなわち、衣類、装飾品、武器防具などに当てられることになるだろう。なぜなら、それらには個々の文化の表情が如実に現れるからだ。この小論集が完成した暁には、アルケイン大学の初等民族誌学コースのカリキュラムで教材として使われる予定である。

本稿の筆を起こすにあたって、まずはハイエルフ、すなわちサマーセット諸島に隠遁するアルトマーを取り上げたい。というのも、タムリエルの文明は旧エルノフェイのアルドマーによってもたらされたという議論が可能であり、実際、そういった議論がしばしばエルフたちによって提起されるからだ。確かに、サマーセット諸島のエルフが神話紀の先祖から受け継いだ遺産を守るために意識的な努力をする限りにおいて、第一紀以前の社会の伝統に最も近いのは、彼らの伝統であることは間違いない。

もっとも、だからといって、最初のアルドマーがこの大陸にやってきて以来数千年のあいだに、ハイエルフの文化が次第に本流からはずれ、さまざまに枝分かれしていないとは言えない。なぜなら、それは事実に反するからだ。むしろ、現在のアルトマー文化を歴史家の目で見れば、そこには文化的起源の輪郭がかろうじて見て取れる、と言えるに過ぎない。

今後の研究の端緒となるだろうこの仕事において、私はここアルケイン大学で教鞭を執る変性意識学の泰斗、モリアン・ゼナス教授から助言を賜る幸運に恵まれた。ゼナス教授は本学の教授陣で唯一、サマーセット諸島を訪れた経験があり、具体的にはアルテウムでしばらく過ごしたほか、ダスクにも乗り継ぎの際にごく短期間ながら滞在している。

聖堂地区にある教授の住まいを初めて訪ねたときには少々恐れをなしていた私だが、実際に会ってみると、教授は気難しいという評判が嘘のように魅力的な老紳士だった。モリアン(教授がそう呼んでほしいと言うので、あえてこう書くが)が夕食を食べていくよう勧めてくれたので、私は教授の弟子で無駄口をきかないアルゴニアン、セイフイジ・ヒッジャの給仕で供応にあずかった。

モリアンの説明によると、ハイエルフはシンプルな美しさをそなえたデザインを旨としており、流れるような線は自然界の優美な造形を反映しているのだという。多かれ少なかれ抽象的に描かれた鳥や花、貝殻といったものはよくあるモチーフで、それらが豊かな、それでいて抑えた色調で描かれる。鎧には鱗や羽毛の模様が刻まれ、重いキュイラスや兜にさえ、翼や嘴を模した意匠が凝らされる。

金属製品にはしばしば、「碧水晶」と呼ばれる緑がかった半透明な材質でアクセントが添えられる。これは一種のヒスイ様黒曜石であり、アルトマーにしか知られていない秘密の手法によってそれを加工するすべを、エルフの鍛冶屋たちは習得したのである。冷やせば切れ味鋭い刃になるほど硬い反面、可鍛性を持たせることができるため、ほぼどんな形にも整えられる。ハイエルフは装飾を凝らした武器防具の作製に、この碧水晶という素材を広く用いている。

夕食のあと、2人でシロディールブランデーのグラスを傾けながら、私はモリアンから質問攻めにされた。モチーフに関する研究計画のこと、私自身のこと…。これは面映ゆくもたいへん嬉しい経験だった。もう一度彼と話をする口実を見つけなければ。

クラフトモチーフ2:ダークエルフスタイルCrafting Motif 2: Dunmer Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

ハイエルフの次はダークエルフについて考察するのが自然だろう。なぜなら、モロウウィンドに移り住む前の彼らの故郷はサマーセット諸島だからだ。それゆえ、ダークエルフの文化はアルトマー文化から枝分かれしたものと考えることもできるが、多くの意味で、ダンマーの文化はサマーセット文化の延長というよりは、それに対する反発として生まれたものと言える。

ところで、モリアンからディヴァイス・ファーというダークエルフを紹介された。教授によれば、「変性意識状態による逗留」なるプロジェクトを手伝ってもらっているパートナーだという。いったいどういう内容なのか見当もつかないが、それでもディヴァイス本人からダンマー文化のことならなんでも訊いてほしいと言われたので、私としては断る理由もなかった。

優美さを重んじる程度においてはダークエルフもハイエルフに引けを取らない。が、それ以外の点では、2つの種族の様式はこれ以上ないほど違う。モロウウィンドは風光明媚なサマーセット諸島とは比べものにならないぐらい自然環境が厳しく、その過酷さがダンマーのデザインに反映されているのである。ダークエルフもまた自然からインスピレーションを得るが、鳥や植物のモチーフに代わって、ダンマーはモロウウィンドに生息する巨大な昆虫の甲殻が持つ、曲面や尖りで構成された形状を模倣する。それらは優美ではあるが、同時に恐ろしげでもあり、ダンマーが生存をかけて日夜戦っていることを絶えず思い出させてくれる。

黒檀はダークエルフの重装鎧に好んで用いられる素材だが、軽装鎧や軽盾も、素材の鋼や合金鋼をわざわざ暗い色に塗って黒檀のように見せる場合が少なくない。衣服は鎧も含め、しばしば肩や頭頂部あるいは腰部を膨らませてアクセントとし、さらにはドワーフ文化から拝借したとおぼしい重層的な幾何学模様をあしらっている。もっとも、ダンマーがいかなる形であれドゥエマーの影響を受けているなどという考えに、ディヴァイスは苛立ちを隠さないのではあるが。

実を言うと私は、このヴァーデンフェル出身のソーサラーが、妙に抗いがたい魅力をそなえていることに気づいている。彼はさほど年配に見えないが、少なくとも60歳は超えているだろうモリアンのことを「あの青年」と言う。いったい彼はいくつなのだろう?いや、気になるところは他にも山ほどある。心の底まで見透かされそうなあの赤い眼…あの眼で見つめられると、少々ドギマギしてしまう。

そのディヴァイスから、波止場地区にあるボズマーの酒場に行ってみないかと誘われた。この機会に一度、足を運んでみるのもいいかもしれない。

クラフトモチーフ3:ウッドエルフスタイルCrafting Motif 3: Bosmer Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

次はエルフの項のしめくくりとして、ヴァレンウッドのボズマーを取りあげたいと思う。類縁に当たるハイエルフやダークエルフに比べて世界全体におよぼす影響力は劣るものの、数ではタムリエルに住む他のエルフ族すべてをしのぐ。ウッドエルフはエルフにしては多産であり、あえて言うなら、他よりも色好みの気がある。

ウッドエルフが自然のモチーフを好むというのは月並みな指摘だが、単にそれだけではないことを私は学んだ。そうした自然のモチーフが埋め込まれ様式化されたスタイルには、彼らのイフレ崇拝と「アース・ボーンズ」にまつわる物語が反映されているのである。ボズマーの信じるところによれば、イフレがすべての動植物と人々に名前を与える前、自然はことごとく混沌に包まれていたという。名前こそが、各動植物種に恒久的な姿形を与えたのだというのだ。だからこそ、各動植物種はイフレから与えられた原型を表す、独特かつ理想化されたモチーフによって描かれるのである。

このことは、ウッドエルフが手掛ける芸術、工芸、衣服のいたるところに現れるデザインに反映されている。こうしたデザインには膨大な数のレパートリーが存在する。というのも、ボズマーの世界に生息する動植物各種には、それぞれ固有のデザインがあるからだ。もっとも、こうしたデザインの使い方や描き方は文化的にきっちり決まっていて、バリエーションが生まれる余地はほとんどない。これら様式化されたいわば絵文字を正統的でないやりかたで用いることは不適切のそしりを免れず、はっきり言えば「誤り」と見なされる。

その他のことにはひどく無頓着で奔放そうな種族だけに、矛盾して見えるかもしれない。けれども、これは誇張でもなんでもなく、私も実際にこの目でそれを確かめる機会に恵まれた。帝都には相当数のウッドエルフがいて、波止場地区には「酔いどれホタル亭」という酒場を中心に、小さなボズマー街が形づくられている。モリアン・ゼナスの実験を手伝っている魅力的なダークエルフの魔術師ディヴァイス・ファーから、ボズマー街に行ってみないかと誘われた私は、良い機会なので足を運んでみることにした。

ディヴァイスと波止場地区に行く約束の日、モリアンの住まいを訪ねると、玄関の扉をあけてくれたのは教授自身だった。ちょっと書斎に寄ってほしいと言われ、いささか面食らうとともに、モリアンのいでたちにも私は驚かされた。なんと彼は星座のシンボルをあしらった真新しい絹のローブに身を包み、髪の毛はきちんと刈りそろえて櫛を通し、かすかにラベンダーの香りまで漂わせていたのである。それまで、焦げ痕と染みだらけのみすぼらしいローブを着ているところしか見たことがなかったので、その変わりようには目をみはらされた。

書斎で話を聞いてみると、教授はディヴァイス・ファーと波止場地区に行くのはよしたほうがいいと言うのだった。私は思わず吹き出してしまい、教授の顔を赤らめさせたのだが、そのあときちんと、自分は子供ではないし心配にはおよばないと告げた。モリアンはやや狼狽し、ぶつぶつと詫び言を口にした。それから察するに、どうやら教授は私が波止場地区に足を運ぶことよりも、ディヴァイスと一緒に過ごすことのほうが気がかりなようだった。私は彼の気持ちを傷つけたくなかったので、まっさらなローブをほめた。モリアンが相好を崩すのを見てから、私はディヴァイスが待つ客間に足を向けた。

これ以上だらだらと書き連ねるのもはばかられるが、それにしてもあの夜は素晴らしかった。酔いどれホタル亭はにぎやかな店で、ディヴァイスは女将のレディ・ビニエルに紹介してくれた。彼女は一緒に飲もうと言って譲らなかった。出しものは「ビニエルのボズマー風バーレスク」で、これがとても愉快だったうえ、ひどい味がするウッドエルフの飲みものはどれも受けつけなかったものの、バグスモークのパイプをディヴァイスと回し喫みすることは断らなかったものだから、私は妙な具合に陽気になってしまった。

実を言うと、ボズマーが「不適切なデザイン」をいかに蔑むかの格好の例を目の当たりにすることができたのも、このパイプのおかげだった。というのも、私がディヴァイスのパイプを喫っているのを見て、レヤウィンの船乗りが、骨を削ってこしらえた「純ヴァレンウッド製」だというパイプを買わないかと持ちかけてきたのだ。するとレディ・ビニエルが、それは偽物だから騙されちゃいけないよと忠告してくれた。船乗りは抗議したが、この小柄なウッドエルフ女性が、火皿にイムガが彫ってあるようなガラクタがまともな品でないことは、どんな馬鹿にだって分かると一喝すると、船乗りは引き下がるしかなかった。

それから間もなく、ディヴァイスと私は店を出た。帝都の城門に向かう道すがら、ディヴァイスは星降る夜空を指さし、それぞれの星座を古いチャイマーの言葉でなんというか教えてくれた。正直、星座の名前は全部忘れてしまったが、ただ、ディヴァイスのよく通る声の暖かい調子は憶えている。そして、私の腕に触れる彼の掌の温かい感触も…

クラフトモチーフ4:ノルドスタイルCrafting Motif 4: Nord Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

次はノルドについて考察する。タムリエルでエルフの支配に抗い、あまつさえ取って代わることに成功した最初の人間文化である。

ボズマー同様、ノルドもまた建築や工芸、被服の各分野において、様式化され、しばしば絡み合った自然のモチーフに大きく頼っている。しかし、ウッドエルフのデザインが主として植物を意匠化したものであるのに対し、ノルドのそれは動物を強調しており、とりわけアトモーラの古い信仰においては8つの「トーテム」動物が重んじられる。すなわち、狼、鷹、鯨、蛇、蛾、狐、その他である。また、デザインのバリエーションという点では、ウッドエルフの様式をはるかにしのぐ。動物のモチーフの中には、あまりに抽象的すぎて、何の動物か判別しがたいものまであるほどだ。それどころか、縁取りの部分など、まったく自然物を想起させない幾何学模様の組み合わせで埋められることも少なくない。

ノルドのデザインは、エルフのそれとも、また別な点で異なっている。エルフの作品がほっそりとして優美で、かつ控えめなのに対し、ノルドのデザインはおおむね単純で重々しく、それでいてダイナミックな形状に依拠する。何にせよ、ノルドの作るものに控えめなものなど存在しない。

このことは、帝都のスカイリム大使館の外観にもはっきりと表れていた。モリアン、ディヴァイス、私の3人で、ログロルフ王の歓迎会に足を運んだときのことだ。大使館の入口扉の上に渡されたまぐさは、挑発の言葉を叫んでいるかのようにくちばしを大きくひらいた鉄製の巨大な鷹の頭を戴いており、扉の側柱には意匠化が強すぎて鳥類というよりも斧と呼ぶほうがよほどふさわしい鷹の浅浮き彫りがほどこされていた。扉自体は暗色のオーク材でできており、木材がまるで攻撃を跳ね返すためでもあるかのように鉄で束ねられ、鉄の鋲がいくつも打ち込まれていた。

大使館のなかは、外側ほど武張ったものではなかった。ただ、扉のすぐ内側には甲冑に身を固め武器を携えた衛兵が立ち、番をしていた。パーティーの招待客をチェックするのに羊の角をあしらった顔まで覆う兜を着ける必要がはたして本当にあるのかどうか、私には疑問に思えたが、ノルドの衛兵の目つきは必ずしも質問を促すようなものではなかった。

パーティーはすでに述べた通り、最高顧問に敬意を表するために帝都を訪れているログロルフ王を歓迎する催しだった。モリアンはアルケイン大学の代表として招かれたのだが、彼から同行してほしいと頼まれた私は、気性の荒いことで知られるこの北方の(同じ人間種に属する)いとこたちを彼らのホームグラウンドで見られるならばと、二つ返事で承知した。私たち2人がどこに出かけるのかを聞きつけたディヴァイスは、モリアンがものすごい目つきでにらむのにも構わず勝手についてきたが、いざ大使館に足を踏み入れ、大声で話す騒々しいノルドたちに囲まれてみると、一緒に来たことを後悔しているようだった。

一方モリアンはというと、それとは対照的だった。ハチミツ酒をひと壜飲み干したあとの彼は、突如として、私の目にまったく新しいゼナス教授として映ったのだ。真新しいローブで盛装したモリアンは、まさに意気軒昂と形容するにふさわしく、称賛の目で彼を見つめる外交官たちを相手に魔法の歴史を長々と弁じたて、ノルドのアークメイジ、シャリドールがなしたという数々の魔術的偉業を語り、聞く者を夢中にさせたのだった。その姿はまるで20歳も若返ったかのようで、私には突然、初めて帝都を訪れ、アルケイン大学の創設に関わった全盛期にはきっとこんなふうだったに違いないと思えるモリアンが垣間見えた。

モリアンはなんとログロルフ王本人に私を紹介してくれたが、彼がどうやってスカイリムの君主と近づきになったのか、私には見当もつかない。ディヴァイスを探すと、彼はいつのまにか姿を消していた。モリアンと私は遅くまで大使館に残り、ハチミツ酒をあおりながらノルドのあけっぴろげな冗談に腹を抱えて笑った。ようやく御輿をあげ、モリアンに送られて家まで歩く道すがら、私は彼の眼にそれまでとは違う光が宿っているのを見た気がした。

彼もまた、私の眼に同じ光が宿っているのを見たかもしれない…

クラフトモチーフ5:ブレトンスタイルCrafting Motif 5: Breton Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

アルケイン大学の大賢者レディ・オペル・ダンテーヌはブレトンだ。そこで、ブレトンのモチーフを研究するにあたって、私は彼女に意見を仰ぐことにした。レディ・オペルは気さくな女性で、惜しみなく協力してくれた。

ブレトンは、タムリエルで最後にエルフによる支配のくびきを脱した主要人間種である。そして、長きにわたりディレニに臣従してきたことが、多くの点で彼らの文化を規定している。ブレトンは自治の気風が強く、ハイロックの各王国は個々の主権を死守しているが、ブレトンの社会そのものは階級主義のディレニ王朝に由来する封建的構造を脱していない。また、ブレトンは同じ人間種のノルドとほぼ同じくらい気難しいが、長らくエルフの保護下にあったことから魔術に対しては開放的で、さほど抵抗感を持たない。

以上のことが、果たして彼らの芸術や工芸にどのように表れているだろうか?例として、ブレトンの鎧を見てみよう。ブレトン騎士が着る光沢を放つ重装鎧はノルドの私兵が着る鎧と同じくらい頑丈で実用的だが、目に心地よいその形状にはエルフの優美さを髣髴とさせる微妙な洗練がにじんでいる。同じ影響は、美しい外観と裏腹に恐るべき破壊力を誇るブレトンの武器にも見て取れる。

このことから私が連想したのは、ディヴァイスとモリアンの違いだった。ディヴァイスがエルフ特有の都会性をそなえているのに対して、モリアンはその深い学識とは裏腹に、例の気難しさも含め、あまりにも人間臭い矛盾をいくつも抱えている。変性意識状態の実験は、どうもうまくいっていないようだった。ゆうべ教授の家に立ち寄ったところ、モリアンもディヴァイスも不在だった。教授の弟子のセイフイジによると、2人はオブリビオンへの旅から確実に生還できるようにするには、輸送の担い手にどのような対価を支払うのが妥当かという問題をめぐって口論を始めたという。やがて個人攻撃の応酬になり、ついには私の名前まで持ち出されたらしいのだ。2人は怒鳴り合いのすえ、研究室から憤然と出ていくと、神々通りをそれぞれ反対方向に歩み去ったという。

言葉もなかった。私を巡って2人がケンカを?白状するが動転のあまり、私はレディ・オペルに洗いざらい打ち明けてしまった。彼女は信じられないほど優しく、親身になってくれた。2人の魔術師のどちらかに特別な感情を抱いているのかと訊ねられた私は、そうだと認めたものの、気持ちは葛藤し、せめぎ合っていた。レディ・オペルがバンコライのスパイスが入ったワインを1本か2本あけてくれたので、夜が更けるにつれて私たちはいっそう打ち解けていった。どうやって家に帰り着いたかは憶えていない。今日は二日酔いで頭が痛いけれど、そのかわり心がいくぶん軽くなったのでよしとしよう。

クラフトモチーフ6:レッドガードスタイルCrafting Motif 6: Redguard Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

今朝モリアンの住まいを訪ねると、前日のことが嘘のように何もかも普段通りだった。ディヴァイスと教授はまるで親友同士のように、チャルを注いだマグカップを片手におしゃべりに興じていた。話題はラリバラーの「11の儀式形態」と「最も神秘的盟約の本」の比較だ。私はディヴァイスに、商業地区のヨクダの礼拝堂に連れていってくれる約束はどうなったかと訊ねた。モリアンはかすかに眉を曇らせたが、それでも笑顔を作り、自分は研究室で新しい超苦悶媒体をテストしたいから、かえって好都合だと言ってくれた。

(それと、おそらく光の加減だと思うが、私の目には二人ともなんだか…若やいで見えた。どちらも高い能力を持つ魔術師であり、おそらくは幻惑魔法にも通じているだろうから、その点を忘れないようにしなければ。たんに私がのぼせあがっているだけかもしれないが)。

礼拝堂では博識なレッドガード数人と会ったが、全員が全員、例の威厳と奥ゆかしさをそなえていた。私が見たところ、それらはレッドガードのなかでも高い教育を受けた人々に特有の資質だ。トゥワッカの司祭であるジルミル大司祭(つづりが間違っていないことを祈る)はとりわけ協力的だった。

大司祭が指摘したのは、レッドガードの故郷であるヨクダにしろ、彼らの現在の本拠地であるハンマーフェルにしろ、どちらも砂漠だ(ヨクダについては、砂漠「だった」と言うべきか)という点だ。涼しく過ごすため、また厳しい日差しや強い風から身を守るため、レッドガードの衣服はおのずと軽いうえ、丈が長く、ゆったりとしたつくりになる。そしてその流れるような曲線が、彼らの作る芸術作品や工芸品のデザインに持ち込まれているのである。彼らの着るローブや鎧は、関節部と頭部に曲線状の膨らみでアクセントを添えることが少なくない。剣でさえ、やもすると曲線を描く。

対照的に、彼らの建築物はどちらかというと重厚な印象だが、よく見ると、それは主として砂漠の極端な気温を遮断するためのものだと分かる。ジルミル大司祭は礼拝堂の優れたシステムを見せてくれた。かすかな風をも逃さず身廊に送り込むため、明かり層に「よろい張り」を施した換気ダクトが設けられているのである。

ジルミル大司祭が受け持ちの信徒団の相手をするために呼ばれて行ってしまうと、ディヴァイスと私はヨクダの神々を祀った8つの祠を眺めようと、ぶらぶら後陣に入っていった。ディヴァイスによれば、ハンマーフェルのフォアベアーがレマン帝国によってもたらされたシロディールの神々を崇めることが少なくないのに対して、より保守的なクラウン・レッドガードはこうした伝統的な神々を崇拝するのだという。そんなうんちくを傾けていたディヴァイスだったが、モルワを祀った蜂の巣状の祠の後ろで不意に向きなおり、例の燃えるように赤い眼で見つめながら、私の手を取るや、だしぬけに、あなたはこの帝都で誰よりも聡明で素敵な女性だと言った。私は息を飲んだ。心臓が早鐘のように打っている。ところが、彼が私を抱きしめるようなそぶりを見せた瞬間、私は急に怖くなった。私は後ずさりをし、かぶりを振ると、身をひるがえして身廊に駆け込んだ。モルワの祭壇に蝋燭を立てていたレッドガードの子供たちを、ずいぶん驚かせてしまったと思う。

どうしよう?ディヴァイスをひどく侮辱してしまったに違いない。どうしたらこの埋め合わせができるだろう?それと、モリアンには話すべきだろうか?ああ、ジュリアノスの小さな茶瓶にかけて、なんというジレンマだろう!

クラフトモチーフ7:カジートスタイルCrafting Motif 7: Khajiit Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

今朝教授の住まいを訪ねた私が真っ先にしたかったのは、ディヴァイスに謝ることだった。ところがセイフイジからあいにく留守だと言われた。ポータルのある部屋でなにやらまじないを唱え、どこかに行ってしまったという。あとには物が燃える匂いの他、何も残っていなかったとか。仕事を進めるのよと、私は自分に言い聞かせた。仕事が忘れさせてくれる。というわけで、私はモリアンを探しにいった。

教授は朝食中で、ちょうどスイートロールを食べ終え、チャルを飲み終わったところだった。私が台所に入っていくと、驚いたことに、彼はお辞儀をしようとあわてて立ちあがった拍子に、あやうくマグカップを引っくり返しそうになった。私は小論集ではカジートにも触れたい旨を告げ、あいにく猫族に知り合いがいないので、誰か紹介してもらえないかと訊ねた。教授はそれならうってつけの人物を知っていると請け合い、ちょうど今日は「あの癇癪持ちのテルヴァンニ」も休みをとっているし、喜んで紹介しようと言ってくれた。

それまでにも私は市場の門の外側に折々設営されるバーンダリ行商人組合のキャンプの前をよく通っていたが、中に足を踏み入れたことはなかった。あそこには近づかないようにという父の忠告がいまだに残っていることもあるし、鼻を刺すようなにおいが自然に足を遠のかせたということもある。けれどもモリアンは躊躇なくキャンプに入っていくと、色とりどりの祈りの旗で飾られた天幕に私を連れていった。あとについて天幕に入っていった私を、彼はマダム・シザヒ・ジョーに引き合わせてくれた。なんでも、アズラーとマグルスに仕えるカジートの妖術師だという。蓮華座を組んで座ったまま、マダムは恭しく頭を下げ——猫族の体はかくもしなやかなのだ——、床に敷かれた一組のクッションを勧めると、「この者」がどんなお役に立てますかと訊ねてきた。

マダムとの会話は楽しく、私たちはすっかり話し込んでしまった。カジートとレッドガードのモチーフやデザインには表面的に似通っている点があるが、これはおそらく、両者がいずれも暑く乾燥した土地に住んでいるためと思われる。しかし、レッドガードが長く、流れるような曲線を好むのに対し、猫族は円形と三日月形に愛着を示す。それは、マッサーとセクンダのすべての月相の形状が、カジートの衣類や装飾品のいたるところに現れることからも明らかだろう。鎌にも似た三日月の形はまた、カジートの手足の肉球からバネ仕掛けのように飛び出す鉤爪を思い出させる。目立たないとはいえ、そんなものを四六時中ちらつかされては、気の弱い人はたまらないだろう。

マダム・シザヒ・ジョーはお茶をたててくれ(カジートの食べものや飲みものの例に漏れず、これもまたベタベタと甘ったるかった)、それから私のカップの底の茶葉を見るよう促した。彼女は桃色がかった鉤爪でお茶をかきまわし、私の悩みの種が分かったと言った。夫人によれば、私は臆病風に吹かれて本心から目をそらし、ふさぎの虫に取りつかれているのだという。私はディヴァイスにキスされそうになったことを、うっかり口にしてしまった。モリアンは自分のカップを取り落とした。飛び散ったお茶がマダムにかかったのは、気の毒としか言いようがない。

てっきり激怒するかと思いきや、モリアンはいかにも悲しげな表情を浮かべ、それから私に対する自分の気持ちを堰が切ったように話しだした。彼の言葉はとても情熱的で、私はすっかりほだされてしまった。カジートの魔術師が気を利かせて席を外してくれたので、私たちはクッションに座ったまま、それこそ何時間とも知れないほど話し続けた。

クラフトモチーフ8:オークスタイルCrafting Motif 8: Orc Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

ゆうべ、短い時間だが酔いどれホタル亭でディヴァイスと会い、あなたのことは大好きだけれど、モリアンに心を奪われてしまったと正直に打ち明けた。ディヴァイスはジェラール山脈を吹き荒れる嵐もかくやというほど表情を曇らせたが、それでも大きく息をつくと、どうにか威厳を保ちながら店を出ていった。ああ、どうか彼が大丈夫でありますように。

ただ、正直に言えば、今はモリアンのほうが心配だ。ディヴァイスとの共同研究は佳境を迎えつつある。間もなくモリアンはゲートをひらき、単身オブリビオンへと旅する予定だ。とりあえずはアズラが支配する領域、ムーンシャドウを目指すつもりだと言っている。それなら比較的安全なはずだと。安全ですって!?私は鉄板の上に載せられたスクリブみたいに心配でならない。せめて出発する前にひと目会いたいが、モリアンは承知しない。儀式の執行に集中しなければならず、気が散るようなことは避けたいからと。

セイフイジからモリアンの手紙を渡された。オルシニウムの新しい大使を迎える支配者主催の公式晩餐会に、自分の代わりに大学を代表して出席してほしいと書いてある。是非とも行きたいと言っていたこの催しを欠席するからには、よほど忙しいに違いない。もっとも、わが「諸種族のモチーフ」プロジェクトにとっては願ってもない話だ。それに、仕事に没頭していれば、あれこれ気に病まずにすむ!

新たに帝国の州となったオルシニウムはまだ帝都に大使館を置いていないため、支配者に仕える半人半蛇のしもべたちの手で、白金の塔の1階に天幕がずらりと設営されていた。ズグギク大使を歓待しようと、すべての天幕はロスガーから取り寄せた本物のオーク備品で飾られている。私はこれ幸いとばかり、だらだらと冗長なスピーチが続くあいだ、日誌を取り出し、そうした品々をせっせとメモにとる作業に励んだ。

それにしても、オークのような野蛮な種族がこれほどまでに洗練された品々をデザインし、こしらえることができるとは!もちろん、彼らは防具作りの名手としてタムリエル全土に知られているが、私は常々、それは技能のおかげというよりも並外れた腕力のなせる技だと思っていた。しかし、彼らの武器や防具をちらっと見ただけで、それがいかに間違った考えかを思い知らされた。華美な装飾どころか、装飾自体いっさい凝らされていないのだが、ノルドのそれよりもシンプルで実用的なオークの金属細工には、均整と対称性、そして調和というものを彼らがどれほど深く理解しているかが表れているのである。オークの剣は暴力の道具かもしれないが、使う者の掌に吸いつくように造形された重いが形の良い柄と好対照をなす刃が、ダイナミックに薙ぎ払われるさまを思い浮かべると、なぜだか私はほとんど安らぎに似た気持ちを覚える。

その後、嬉しいことに、晩餐会の席で大賢者レディ・オペルの姿を見つけた。彼女は親しげに挨拶をしてくれ、エイダールチーズを肴にウェストウィールドのワインを傾けながら、2人の魔術師とはその後どうなっているのかと訊いてきた。私が何もかも台無しにしてしまったと思うと答えると、レディ・オペルは大丈夫、最期に全部丸く収まるからと請け合ってくれた。モリアンとは長い付き合いだそうで、あれこれと小うるさい年寄りのように見えて、そのじつ非常に思慮深い人間だという。彼があなたぐらい賢い女性を見初めたのは嬉しいかぎりだとも言ってくれた。これで研究室に入ったきり姿を消してしまう心配がなくなるもの、と。

けれども、私に言わせれば、それこそまさに彼がしたことだった。セイフイジともう一度話してみよう。彼なら、旅立つ前のモリアンになんとか会わせてくれるかもしれない。

クラフトモチーフ9:アルゴニアンスタイルCrafting Motif 9: Argonian Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

今朝、メイドのダリエラが興奮した口ぶりで、戸口にトカゲの女性が来ていますと告げた。何やら、急ぎの用事らしいという。帝都にアルゴニアンはそれほど大勢いない。そう考えると、セイフイジの使いではないかと思い当った。きっとモリアンに関する何か恐ろしい知らせを携えてきたに違いない。私は大学のローブを羽織ると、玄関に急いだ。

戸口で待っていたのは、まさに若いトカゲ族の女性だった。複雑な螺旋形の意匠で飾られたスパイダーシルク製の洒落た上着をまとい、通りに立っている。彼女は〈尾を上げる者〉と名乗り(私は冗談に違いないと思ったが、爬虫類特有の無表情な顔立ちからは、冗談とも本気ともつかなかった)、主である〈明瞭なる者〉デッシュ・ウルムの命で迎えにきたと言った。どんな用件かまでは知らされていないが、とにかく急を要することだから、すぐに来てほしいという。私はためらいながらもうなずくと、そのまま彼女のあとについていった。

アルゴニアンの娘に連れられ、私は聖堂の門をくぐり、波止場地区へと向かった。埠頭のはずれまで行くと、そんなものがあるとはそれまで気づかなかった風変わりな古びた館があった。玄関の脇の黒いプレートには〈ザンミーア〉と彫ってある。初めて目にする言葉だった。中に入ると、その大きな館は丸ごとアルゴニアンに占領されていることが分かった。人数は十数人もいただろうか、全員そこに住んでいるらしく、どの部屋もみなで共有しているようだった。そこらじゅういたるところに、アルゴニアンの掛け布、彫刻、呪物がある。それらは貝殻、骨、羽根といった自然の素材でつくられ、目もあやな螺旋と幾何学のデザインが凝らされていた。もしそのどれもがアルゴニアンの故郷で使われているのと同じものだとしたら、蛇皮、亀の甲羅、鋸歯状牙、ターコイズ、ヒスイ…私たちが珍しい異郷の素材と見なしているこれらすべてが、ブラック・マーシュではありふれたものに過ぎないことになる。

〈尾を上げる者〉は私の先に立ち、階段を取り払ってしつらえたとおぼしい傾斜路を上がっていった。上の階で、彼女はとある湿った部屋に私を案内した。気のせいか、腐臭とかび臭さが感じられる。咳き込みながら足を踏み入れると、部屋の中はほとんど丸ごと熱帯植物の鉢植えで埋まっているのが分かった。一部はとっくの昔に枯れてしまい、腐っている。私はサンダルで何かを踏みつぶしてしまい、思わず後ずさりをしたが、トカゲ族の娘が優しく手を取り、シダの葉が生い茂るなかを部屋の真ん中まで導いてくれた。

そこには不釣り合いにも、陶製の大きなニベン式浴槽が置かれていた。私の住まいの化粧室にあるものと似ているが、目の前にあるそれは縁までなみなみと気味の悪い緑色の泥で満たされている。そしてその泥のなかに、かろうじて鼻づらだけ覗かせた、見たこともないほど年老いたアルゴニアンが身を横たえていた。

じっさい、その老いさらばえたトカゲ族の男性はミイラにしか見えなかったので、その口がひらき、そこから言葉が発せられたとき、私は肝をつぶしてしまった。皮革がきしむような声で、その爬虫類はゆっくりと言葉を継いだ。「わしはデッシュ・ウルム。お前様はアル・フィッド…帝都で並ぶ者なき才女とお見受けする。わがウクシス——いや侘び住まいにようこそ参られた」

相手の視線が私の肩のあたりにさまよっているように見えたので、怪訝に思ってよく見ると、年老いたトカゲ族の両目は乳白色の膜で覆われていた——彼は盲目だったのだ。向こうは目が見えないという事実が、いくぶん気を楽にしてくれた。私は冷静さを取り戻し、ありがたいことに、礼儀作法を思い出した。私はお辞儀をし——相手には見えなかっただろうが——、こう述べた。「お招きにあずかり光栄に存じます、デッシュ・ウルム様。私のような若輩者が、どのようなことで叡智の長老のお役に立てるでしょう?」

「気をつけられよ!」彼はしわがれ声で叫んだ。鱗に覆われた両手が泥の中から現れたかと思うと、浴槽の縁をつかみ、腕の力で上体を持ちあげる。「お前の肌の乾いた魔術師たち——彼らのことで、横糸がほどけつつあるのじゃ」そう言うと、アルゴニアンの老人はやや落ち着きを取り戻し、両手で螺旋形を描く見慣れないジェスチャーをした。「由々しき事態じゃ。アウルビクのかせ糸たちが悪意によって分かたれてはならぬ」

このところ魔術師たちと過ごしているおかげで、私は彼の言う意味を推し量ることができた。「モリアンとディヴァイスのことですか?2人の身に危険が?私はどうすればよいのでしょう?」

デッシュ・ウルムはあごを2度鳴らしてから言った。「お前様は有能じゃ。彼らを止めなければならぬ。お前様は勝つじゃろう。万一敗れれば——」額に生えた3本の鋭い棘状の突起物が立ちあがる。「——その川を泳ぐ者たちすべてに悪夢と鋸歯状の刻み目がもたらされるじゃろう。カオック!」歳ふりたアルゴニアンはだしぬけに浴槽のなかでばちゃばちゃやりだし、泥を周囲にまき散らした。「セイラル!」

〈尾を上げる者〉が昆虫の甲殻でつくったとおぼしい水差しにさっと手を伸ばし、栓を抜くと、茶色の液体をトカゲ族の老人の喉に注ぎ込んだ。「行って!」部屋の出口を指さし、彼女は鋭く言う。「お師匠様がそう言ってるの!さあ早く!」

私はきびすを返して部屋を出ると、傾斜路を下り、玄関を抜け、走って帝都の市内に戻った。

クラフトモチーフ10:インペリアルスタイルCrafting Motif 10: Imperial Style

タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き

(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)

帝都…私はこの街に憧れていた。若いころ、故郷のスキングラードはどうしようもなく田舎臭く思え、年に1度ハートランドを訪ねる母親に同伴する機会が来るのを待ちわびたものだ。私にとって帝都は学びと文化そのものであり、私が愛おしむすべてのものの縮図だった。

私は今、その帝都の街路を歩いている。地区から地区へと移動しつつ、街並みに目を凝らす。スキングラードはたしかに田舎臭く思えたが、それでもコロヴィアらしい町ではあった。直截的かつ簡潔で、すっきりとした線で構成され、質素で禁欲的な趣をそなえる。そこに暮らす人々もまた同様だ。

それに対して帝都はというと、城壁と白金の塔はアイレイドが作ったものだから除くとしても、ニベンの色彩が強い。洗練され、装飾過多で、捉えがたく、隠微なのだ。

退廃的で、爛熟しているのだ。

…そこに住む人々やそこに引き寄せられる人々がそうであるように。

私は間に合わなかった。

モリアンは行ってしまった。ディヴァイス、呪うべきディヴァイスの助けを借りて夢をかなえ、オブリビオンに旅立ってしまったのだ。セイフイジによると、モリアンは計画通りムーンシャドウにたどり着いたものの、そこに留まらず、なおも旅を続けたのだという。ムーンシャドウからアッシュピットへ。アッシュピットからコールドハーバーへ。コールドハーバーからクアグマイアへ。クアグマイアからアポクリファへ…

そしてアポクリファで、彼は足をとめた。

平板なはずの爬虫類の声を震わせながらセイフイジが教えてくれた。オブリビオンに足を踏み入れてから、モリアンはますます向こう見ずになり、次の次元へと通じるポータルをくぐるたびに、どんどん有頂天になってゆくように見えたこと。助手である自分がいくら戻ってきてくれるよう懇願しても、耳を貸そうとしなかったこと。モリアンがアポクリファに…魅入られてしまったこと。

セイフイジ・ヒッジャは取り乱していた。頭を抱え、背びれをしょんぼりと垂れさがらせたその姿は、明らかに途方に暮れている者のそれだった。自分でなんとかするしかない。そう悟った私はディヴァイスの部屋へ走った。セイフイジから留守だと聞かされていたが、モリアンと連絡を取る何らかの手立てが見つかるかもしれない。あるいは、助けを求める私の声に、ディヴァイスなら反応してくれるかもしれない。

ディヴァイスの部屋では、1冊の本しか見つからなかった。机の上に置いてあったその書物の題名は「フラグメンテ・アビーサム・ハルメアス・モラス」。デイドラ公ハルメアス・モラスを呼び出す儀式について書かれているとおぼしきページが開かれており、そこには次のようなくだりがあった。「いかなる代償であろうとも、必ずや支払うべし」

アポクリファの王ハルメアス・モラを呼び出す儀式…

私はモリアンの研究室に急いだ。徹底的に調べたが、手がかりになりそうなものは1つしか出てこなかった。それは丸められた紙切れで、広げるとこう記してあった。「汝がオブリビオンに入らんとするとき、オブリビオンもまた汝に入らんとす」

モリアンは行ってしまった。彼はアポクリファに渡り、そこに留まっている。

だから、私は地区から地区へとさまよい歩きながら、思いをめぐらせている。アポクリファの王がディヴァイス・ファーに求めた代償はなんだろうか?モリアン・ゼナスを魅了し、虜にすることの対価として、ハルメアス・モラはディヴァイスに何を求めたのだろう?

私は帝都の大路小路をあてもなくさまよいながら、自問自答を繰り返している。

私はいつ、代償を支払う覚悟ができるだろうか?

クラフトモチーフ11:古代エルフスタイルCrafting Motif 11: Ancient Elf Style

セイフイジ・ヒッジャ 著

先生、モリアン・ゼナスは行ってしまわれた。レディ・アルフィディア(いつもはルプス博士と呼んでいた)も姿を消した。姿を消したと言えば、あのテルヴァンニ家の男もそうだが、少なくともあいつに関しては、いなくても寂しいとは思わない。あのいけすかないエルフときたら、教授の目を盗んでは「鱗肌の助手風情」が云々と意地の悪いことを口にしていた。

そうとも。あのテルヴァンニ家の男が消えてくれて、むしろせいせいしている。しかし、他の2人については…

私はできるかぎりここに留まり、教授の住まいをきちんとしておくつもりだ。誰かが手記や試料を整理整頓し、蔵書のほこりを払わねばならない。私はまだ教授が帰ってくるという希望を捨てていない。今のところ大学は教授を「長期休暇」扱いとし、私が教授の居宅と研究施設を維持できるように俸給を送ってくれている。

あるとき教授の机を整理していた私は、偶然、数冊のノートを見つけた。それはレディ・アルフィディアの優美な筆跡でしたためられた研究ノートだった。複数の文化様式における被服や武器防具を題材にした、未完の労作だ。川の流れがゆるやかな今日このごろ、私は(望むらくは)ルプス博士がそうしたであろうやりかたに近いやりかたで、これらのノートをまとめあげようと決心した。

今日のタムリエルに存在するエルフの主要な社会がそれぞれ備える様式に関する研究ノートは、すでにまとまってはいるものの、まだ言及しなければならない要素が残っている。というのも、自らの祖先と血統を大切にするエルフは、アルドメリ文化の歴史に特別な敬意を抱いているからだ。エルフが初めてタムリエルを征服し植民地化した神話紀を、彼らは模倣すべき黄金時代と見なしている。結果として、当時の衣服と防具が本当の意味で時代遅れになることはかつて一度もなかったし、多くのエルフは古代アルドメリの様式と作法にいまだ愛着を感じているのである。往古のアイレイドやチャイマーのような装いをしたハイエルフやダークエルフに出くわすことは、タムリエル大陸でさえ珍しいことでもなんでもない。こうしたいでたちをエルフは「ゆったりとした襞を多用したエルノフェイ・スタイル」と呼ぶが、エルフ以外はたんに「古代エルフスタイル」と呼びならわしている。

(ここで、不在のレディ・アルフィディアに代わって私見を付け加えたいと思う。私自身、長年帝国の首都で暮らしているが、ウッドエルフに限っては、この古代エルフスタイルの装いをした手合いにお目にかかった試しがない。どうやらボズマーは我々アルゴニアン同様、今現在に生きることを好むようであり、昔の流儀にはさほど敬意を払わないように見える)

古代エルフスタイルは、サマーセット諸島やモロウウィンドに暮らす現代の匠たちが好むエルフ様式とまったく同じというわけではない。前者のほうが、いくぶん有機的な度合いが強く、かつ、より抽象的でもある。流れるような植物のモチーフが使われるのは同じで、たいてい先細りして尖った先端や終端に収束するのだが、これはいたるところにアイレイドの遺跡があり、鋭角なアーチを見慣れているシロディールの住民にはなじみ深いものだ。古代エルフスタイルでは円、半円、円弧がふんだんに使われ、しばしばそれらのなかに先細りする有機的な巻きひげが描かれるが、これはエドラ(エルフが自分たちの祖先だと主張する人々)がムンダスの創造によって束縛されたことを象徴しているように思える。

(え?今のはなんだ?「気取ってること、セイフイジ!」だって?まるでレディ・アルフィディアに耳打ちされたような…)

クラフトモチーフ12:蛮族スタイルCrafting Motif 12: Barbaric Style

セイフイジ・ヒッジャ 著

引き続き、アルフィディア・ルプス博士が残した、さまざまな文化様式における被服および武器防具の研究ノートの編集を進める…

誉れ高き我らが第二帝国による文明化の影響にもかかわらず、タムリエルには今なお文化果つる辺境があちこちに残っていて、そういった場所には未開の部族が住んでいる。おそらく、我々シロディール人にとって最もなじみ深いのは、スカイリムとハイロックにまたがる荒涼たる山岳地帯に住む蛮族、リーチの民だろう。ブルーマの周縁部で略奪をはたらく彼らの姿が見られたのは、さほど昔の話ではない。リーチの民のほかにも、モロウウィンドのアッシュランダー、ブラック・マーシュに住む好戦的なコスリンギ、中央ハンマーフェルのケット・ケプトゥ等々、数多くの蛮族が存在する。

こうした数多の蛮族が、それぞれ大陸の遠く離れた場所に暮らしながら、服装に関しては驚くほど嗜好が似ているというのは、奇妙だが否定できない事実だ。それがいったいどういう理由によるのかは、もっと思弁的な民族誌学の研究に任せるとしよう。本稿は、単なる記述的研究にすぎないのだから(したがって、記述を続けよう)。

「バーバリック」と呼ばれるこの氏族的あるいは部族的な様式は、実のところ、洗練度において他の文化の様式に引けを取らない。いわゆる「蛮族」たちは、単に気取った抑制というような考えをことごとく蔑んでいるだけであり、けばけばしさや悪趣味をことさら好むに過ぎないのである。彼らのあいだでは鮮やかな色彩が好まれ、素材をどんな色合いに染めるかに関してはほとんど制限がない。装身具にはたいてい頭蓋骨、鹿の骨、羽根、紐でつなげた歯などが使われるうえ、銅箔によるアクセントが加えられる。また武器については、これでもかというぐらい大きなものを、これみよがしにいくつも身に着けるのが普通だ。

(ついでに言うなら、上の記述の多くは、我が故郷ブラック・マーシュの様式にも当てはまる。かの地が「バーバリック」などと形容される謂れはほとんどないにも関わらずだ!…この文化様式については、別の機会にあらためて取り扱おう)

クラフトモチーフ13:野生スタイルCrafting Motif 13: Primal Style

セイフイジ・ヒッジャ 著

引き続き、アルフィディア・ルプス博士が残した、さまざまな文化様式における被服および武器防具の研究メモの編集を進める…

完全装備をしたゴブリンの族長を見て、読者諸賢はこう思うかもしれない。なんてちぐはぐな恰好なんだ。原始的な装備品を手当たり次第に身に着けただけじゃないか、と。けれども、それは間違いだ。族長が身に着けているものは、すでに評価の定まった優れものを注意深く選び抜いた逸品であり、数千年の伝統に裏打ちされた選定を表しているのである。これは我々民族誌学者が「野生」と呼ぶ武器防具の様式であり、その独自性と識別のしやすさは他のどんな文化にも劣らない。

プライマルを自分たちの文化様式として採用したゴブリンその他の種族は、たいてい、ゴミ漁りとお宝の回収を得意とする。捨てられたもののなかにも、まだまだ使えることはもちろん、他よりも優れた品質さえ備え、なおかつ野生の美意識にかなうような装備品はいくらでも存在する。彼らはどこを探せばそういうものが見つかるかを嗅ぎ分ける特殊な嗅覚をそなえているようにも見える。そして彼らが自分たちのいでたちに対して抱いている誇りは、帝国のどんな百人隊長にも劣らないのだ。

グウィリム大学のイントリケイトゥス博士による最近の研究は、上記を裏付けるばかりでなく、「野生」というのがこの様式を形容するのに最もふさわしい言葉であることを示す新情報をも発掘した。虐殺された「ナイフビター」というゴブリンの部族がまとっていた原始式の装束を57組調べたところ、死体が身に着けていた品々の多くは、数千年とは言わないまでも、数百年は昔のものであることが判明したのだ。グリーブやキュイラスのなかには第一紀初期のものと思われるものがあり、そうした装備品にはその後歴史に埋もれてしまった古代の鍛造技術が使われていたという。はたしてゴブリンたちは、巷間言われてきたように、それらをシロディールの古代遺跡から掘り出しているのだろうか?それとも、彼ら自身の手で、悠久の過去から現在へと、いくつもの世代を仲立ちにして受け継いできたのだろうか?

ええ、ゼナス教授。教授はそういうふうに「悠久」とお書きになります。えっ…どういうことだ?教授?今のはあなたのお声ですか?

クラフトモチーフ14:デイドラスタイルCrafting Motif 14: Daedric Style

セイフイジ・ヒッジャ 著

引き続き、アルフィディア・ルプス博士が残した、さまざまな文化様式における被服および武器防具の研究ノートの編集を進める…

ルプス博士による小論集「種族別のモチーフ」の掉尾を飾るこの項目がデイドラの武器防具であるのは、まったくもって妥当である。というのも、不在のレディ・アルフィディアは消息を絶った我が師モリアン・ゼナス教授の後を追って、いかなる方法を使ってかデイドラが支配するオブリビオンの次元に赴いたものと私は信じているからだ。そして、教授のささやき声がほとんど絶えず聞こえてくるようになった今こそ、ルプス博士のノートのまとめを締めくくり、オブリビオンへの扉をくぐった教授の旅について語る段階に移行する潮時であると考える。

デイドラは教授がしばしば言っていたように混沌の獣であり、巨大なエネルギーと力を併せ持つ存在だが、創造性というものを完全に欠いている。彼らは模倣や誇張はできるし、改悪もできる。しかし、新しいものは何一つ生み出すことができない。創造という能力は本来エドラと、彼らからその能力を贈られた我々ニルンの定命の者だけに備わっているのである(ブラック・マーシュではもちろん見解が異なる。上記はあくまでも教授とレディ・アルフィディアの考えであることに留意されたい)。

それゆえに、ルプス博士が「人間型」と呼ぶドレモラ、ズィヴィライ、ゴールデンセイントのようなデイドラの武器防具は、我々にとってなじみ深いタムリエル様式の胴当て、胸当て、ポールドロン、剣、槍、弓で構成されている。それらは我々の目には、風変わりな鋲と大げさな飾り線文様で飾られているように映るかもしれないが、デイドラの鎧一式の内側を見れば、そこには、見慣れた詰めものや革ひもがついていて、普通の体型をした者ならば誰でも着用できるようになっている。デイドラの剣を手に取れば、その異様な形状にもかかわらず、柄はしっくりと手になじみ、目方のバランスも良好だと分かる。実際、「モラグ・バルの戦棍」のような名高いデイドラ公のアーティファクトは、そのほとんどが、魅入られた、あるいは強要された定命の匠の手で作られたと言われているほどだ。

ええ、教授。もう充分だと思います。少なくとも当面は。親切だった博士に対する義理はこれで果たしました。さあ、私はあなたの書斎で机につき、耳をそばだてています。もう一度ムーンシャドウのことを話してください…

クラフトモチーフ29:魂なき者スタイルCrafting Motif 29: Soul-Shriven

コールドハーバー王宮の騎士、騎士道の勇者、無防備な者を守る者、魂なき者の指導者 アンドーンテッドのキャドウェル卿 著

ここコールドハーバーにはタムリエル全土から人々が集まってきている。彼らを責めることができるか?この王国は楽園のようなものだ!それと、今思えば食の面では矛盾している。なぜなら、我ら魂なき者は生きているが、食べはしない。最後に少しでも腹が減ったと感じたのはいつだったか、覚えてすらいない。おかしいだろう?なぜなのだろうか?

だがそれはいい。本題はこれだ:スタイル!厳密には魂なき者のスタイルだ。全てのスタイルから吸収しているため、スタイルなきスタイルなのだ!全てのいいところ取りだと思わないか?

我々の武器を見てみろ!とがった凶器に戦闘向けの付属品が本当に豊かだ。短剣:魂なきカジートの波状の短剣!戦棍:魂なきオークの上質なとげとげ鎖鉄球!剣:カマリの馬鹿げたまっすぐな剣ではなく、本物のアカヴィリ、あのずる賢いツァエシが使っていた本物のカタナだ!そして斧:大鎌のついた格好いいやつだ…本物の大鎌…いや、正直に言うとどこからきたものか知らないが、ほぼ間違いなくどこか楽しいところだろう!

そして鎧も見てみろ!ほら!似たようなものは見たことがないが、私はその見た目が好きだ。あれは…何といえばよいだろうか?なんだかごちゃごちゃに混ざって分かりにくいだろう?そこらじゅういろんなものの断片が寄せ集められた感じで…少し精霊に似ているが、着心地は何倍もいいし、あんなに刺激的ではない。

そこで、少しでもスタイルに関心があるのなら、無鉄砲な冒険に向けて魂なき者の武器や防具を作ってみてはどうだろうか?魅力的だし、全くもって怪しくない。いやまあ、少なくとも怪しすぎることはない。

タムリエルの釣りの手引きA Guide to Fishing Tamriel

「老いぼれスローターフィッシュ」 著

釣りはいいものだ。農耕の大変な時期のあとや妻になじられた長い夜のあと、ちょいと釣りに出ることよりいいことなんてない。

自然の中に自分だけ、木々の間を抜ける風や岸に寄せる波の音を聞く。これで大抵の男は満足だ。価値のある獲物を釣るなんてことは考えちゃいない。だから森で居眠りしてると妻やご近所に思われるんだ。

だが真の釣り人は常に、うまい料理に使えるようなでかい魚でびくをいっぱいにしたがるものだ。それには何を釣ればいいのか、そいつはどこにいるのか、餌は何がいいのかを知らなきゃならない。これがタムリエル中で見つかる一般的な魚だ:

スローターフィッシュとトロッド:
こいつらは下水道、悪臭のする沼地や腐乱死体のそばの水たまりなど、どにかく汚い水にいる。安全な壁の中にいたい街の住人たちのお気に入りだ。この魚たちははい虫や魚卵に引き寄せられる。

サケとリバー・ベティ:
このうまい魚の住みかは清流だ。餌は昆虫や小さなシャッドをよく食べる。

スペードテールとシルバーサイド・パーチ:
日差しを遮れる深い穴や茂みのある湖をこの魚は好む。小さなカエルやグアル、鶏などの内臓、それに小さなオーシャンミノウが一番の餌だ。

ズフィッシュとロングフィン:
海辺にいるなら、このきれいな魚を手づかみで捕まえてみるといい。庭によくいる虫や小さなチャブがこの魚の中でも大物を誘うだろう。

これが今度釣りに行った時に役立つことを祈っている。これならきっと大漁で家に帰れる。誰にも1日を無駄にしたと責められることはないだろう。

バカでもできる木工Woodworking For Simpletons

「スカヴィンのヘボ大工」ことホアリー・ドゥロッツェル 著

おふざけはそこまでにしときな、鼻たれども。手に職をつけねえ限り、おめえたちにゃゴブリンの糞ほどの値打ちもねえ。そしてオイラは、小屋を身内の糞の臭いで満たすつもりはねえんだからな。

今日は木工のイロハを教えてやる。おい、腹を鳴らすのはやめて聞けってんだ!木工はまっとうな商売だ。おめえたちもこのホアリーを見直すことになるだろうぜ。いいか、テボンズでもついてこれるよう、優しい言葉で教えてやっから安心しな。

まずはこの斧を持って森に行くんだ。古い切り株や岩の近くで苔むした丸木を探しな。見つかったら斧で叩き割って粗目のカエデ材を10持ち帰るんだ。何?なんでそう呼ぶかだって?粗目だからに決まってんだろうが、この馬鹿ガキ!とにかく何かをこしらえようと思ったら、それだけの数は入り用だぜ。

次に、集めた粗目のカエデ材10を木工場に持ってくんだ。そこで、粗目のカエデ材を上質のカエデ材に変えるってわけよ。これを、この商売じゃ「加工」って呼んでる。いや、研磨じゃねえ、加工だって!できあがるのは上質なカエデ材だ。全然紛らわしくなんかねえだろ!

その次は——おい、聞いてんのか?ここは大事だぜ!スタイルも決めねえで、ただ闇雲に上質なカエデ材を削り始めることはできねえからな。わかるか?スタイルだよ、スタイル!タムリエルの全種族は固有のスタイルを持ってて、それぞれ好みの素材も違うんだ。

アルゴニアンはアルゴニアンスタイルで素材を加工すんだ。わかるかい?じゃあ、街でスタイル素材を仕入れてくるがいいぜ。木工師から買うに決まってんだろ、このイカレポンチが。ええい、どの木工師からだろうと構いやしねえよ!

さあ、いよいよスタイル素材と上質なカエデ材3つを持って木工場に行き、カエデの弓を作る段だぜ。弓弦のことは気にしなくていいからな。いや、だから無視して構わねえって言ってんだよ!しなやかなウッドエルフの踊り子の脚みてえな弓をつくることに集中しな。うん?踊り子?おめえたちにゃ関係ねえ話だよ!

「それだけ?」ってのはどういう意味だい?八大神の名にかけて、それだけのわけがねえだろう!木工はもっと奥が深いもんよ。材料を増やして品質を上げることだってできるし、完成した木工品を改良することだってできるんだ。

だから今それを話そうと思ってたところだって!カエデの弓は〈樹脂〉で改良してはじめて仕上がったと言えるんだ。〈樹脂〉なら、そこらで見つかるはずだぜ。「そこら」と言ったら「そこら」だよ!言っとくがな、充分な〈樹脂〉を用意しねえで改良しようとすると、弓はおしゃかになるし、〈樹脂〉も無駄になるから気をつけるんだぜ。

ああ、森に行けばいつだってカエデはあるぜ。ん?どういう意味だ?砂漠で過ごす予定でもあんのか?ああ、そういうことか…いいだろう。砂漠じゃカエデを見つけることはできねえ。なぜって砂漠にゃ森がないからな。だが、おめえにゃカエデの弓がある。そいつを木工場に持ってって、弓そのものから必要な素材を取り出せばいい。もちろん弓はおしゃかになる。オイラたちはこの処理を「解体」って呼んでる。おめえの姉妹がこさえる出来の悪い詩みてえなネーミングだけどよ、とにかく鑿さえあればそいつができるってわけだ。

なぜそんなに木工がうまくなったかだと?分析のおかげだよ。いや、本を読んでお勉強するのとは違うぜ。できのいい木工品が手に入るたび、オイラはそいつを分解して調べたんだ。そこらのガラクタとどこがどう違うのかを学ぶためにな。そりゃあ時間がかかったし、分解すればその木工品はおしゃかになったが、オイラは気にしなかった。どうやってそれをつくったかさえ分かれば、てめえでいくらでも新品を作れるわけだからな。

さあ、いい加減その口を閉じなよ、テボンズ。飛び込んできた肉喰い蝿を飲み込んでしまう前にな。

基本調理ガイドBasic Provisioning Guide

第七軍団糧秣担当下士官クロエリウス・マルギネンシス 著

私はこの20年というもの帝国軍第七軍団の補給責任者を務めているが、その間に1つの絶対的な真理を学んだ。それは、こと食糧の調達と供給に関しては、自分1人のためでも軍全体のためでも変わらないということだ。魔導将軍セプティマ・サルンの命により、実績と経験で我々に劣る他軍団の補給担当者の力となるべく、ここに私の知識を披露する次第である。

ステップ1:材料の調達

戦場において、味方兵士たちが食糧貯蔵庫として当てにできるのは、貴君のバックパックしかない。したがって、見つかるものは手当たりしだいに徴発すべし。樽、箱、穀物袋…こういったものからは漏れなくその一部を差し出させなければならない。

帝国兵士として、貴君には欲しいだけ徴発する権利がある。とはいえ、節度は保つべきだ。食料庫を空っぽにされた市民は、帝国の横暴をなかなか忘れまい。私は単純に、1つの樽、箱、あるいは穀物袋から徴発する量としては、片手に一杯、柄杓にひと掬い、数えられるものであれば1個にとどめておくことを自分に課している。

ステップ2:レシピの入手

自分が調理師であって、シェフではないことを忘れないように。貴君は何も、シェイデインハル女公爵が召しあがる食事をこしらえているわけではないのだ。部隊の腹を満たすことさえできれば、味なぞどうでもよろしい。貴君に必要なのは、手間がかからずシンプルで、大量に作るためのレシピだ。

鶏の胸肉のローストを例にとってみよう。これをつくるには鶏が要る。ただ、正しいレシピがなければ、いくら必要な食材を知っていても無意味だ。レシピなしでは、手に入れた材料は単なる生肉にすぎない。住民には料理の材料を準備する彼らなりのやりかたがあるものだ。したがって、物資の徴発にあたっては、レシピを見落とさないことが重要になる。

ステップ3:調理、調理、ひたすら調理

レシピを頭に入れたら、集めた材料を調理場まで持っていく。いよいよ調理開始だ。くれぐれも焦がさないように注意されたし。

味方兵士たちには、彼らが最も必要としているものを供すること。斥候と尖兵にはふんだんな野菜が必要だ。魔術師には果物がいちばん効く。歩兵にはいつでもボリュームたっぷりの肉料理が喜ばれる。暖かい食事がときに生死を分けるということを、ゆめゆめ忘れないように。

補足:陣中における醸造

酒類の醸造については訊ねられることが多いので、特に紙幅を割く。まず、酒はポケット瓶1つぶんより多い量を作り置きしないことをお勧めする。そうすれば、味方兵士たちも、それが目覚ましい戦功をあげた者たちだけに与えられる褒賞だと理解するだろう。

とはいえ、戦いや閲兵式の直前など、部隊に景気をつけることが必要なときもある。そんなとき、私はその土地のレシピをひもといて酷い味の地酒をこしらえることにしている。それなら一種のショック療法で兵士たちに自信を与えられるし、とにかくまずいので病みつきになる心配もない。

ステップ1とステップ2は調理と同じだ。ではステップ3はどうだろう?

ステップ3:醸造、醸造、ひたすら醸造

レシピを頭に入れたら、材料を調理場に運び、醸造を始める。失敗しないように。

私は事前に材料を「寄付」してくれた現地住民に、余った醸造酒を分けてやることが少なくない。これは帝国の徴発方針とは異なるのだが、将来われわれほど勇猛果敢でない軍団の巻き添えを食って退却を余儀なくされたとき、部隊が現地住民の敵意に囲まれないようにするには些かの効果がある。

救済のお願いA Request for Relief

親愛なる財務府さま

今年私に課せられました税金について、考え直していただけますよう再度お願い申し上げます。確かに私は帝都に暮らす、認可済みの付呪師です。ですが状況が変わり、かつてはうまくいっていた商売も、今では収入を削るばかりなのです。

数年前、付呪師は付呪をかける対象物を使いました。さまざまな材料と道具を使い、必要な神秘の力をそれに吹き込むのです。このため、付呪師が競う相手は同じ街の同業者だけでした。多くの人々はわずかなゴールドドレイクを浮かせるために剣を下げて何百リーグも先の付呪師の元へ行くのは望みませんでしたから。街での値段は3、4人の付呪師による友好的な会合で決められ、十分な利益を上げられました。王家の権利により、街での営業には高額の税が課せられることもありました。

ですが今はすべてが変わりました。付呪師は望みの効果を閉じ込めたグリフを作るだけです。グリフは単なる宝石で、誰でも剣の柄頭や鎧の部品に取り付けられます。そうすればグリフ内の魔法がその品に流れ込みます。

簡単に思えますでしょう?これが市場の暴落を引き起こしたのです。街ごとの基準で決めた付呪の価格をつけるのではなく、タムリエルの全付呪師が競い合うことになってしまいました。ダガーフォールの三流付呪師が10個の炎のグリフを作り旅の商人に売ります。商人はそれを帝都に持ち込み、シロディールの付呪師たちが決めた値段よりずっと安く売るのです。

この競争により、今では材料費をわずかに上回るほどのゴールドしか得られません。そしてこれでは、あなた方が課した税を払えないのです。

あなた方がよそで作られたグリフの輸入を停めないのであれば、私がこの商売を続けるための税を減らしてください。このままでは20年住み続けた家を売り、商人の息子の家庭教師など、他の職業に就かねばなりません。

お返事を心よりお待ちしております。

疲れ果てた賢者

仕立屋入門A Clothier’s Primer

粉々の仮面 著

未来の挑戦者たちよ!俺様、粉々の仮面が戦ってきた相手のなかには、きちんとした履きものの重要性を理解しない連中があまりに多い。

この入門書では、貴様にシンプルな手織りの靴のこしらえかたを伝授しよう。もし将来「聖なるるつぼ」で貴様と相まみえるなら、貴様が負けるのは靴が満足に縫えなかったせいではなく、俺様の比類ない戦闘技能のおかげであってほしいからな。

ステップ1:黄麻の入手

未加工の黄麻は安く、豊富なうえ、編みやすい。一目でそれと分かる黄色い花を原野で探すんだ。なんなら、誰かに金を払って積んできてもらってもいい。闘技場で俺様が懲らしめたいのは、その手の怠け癖だからな。

ステップ2:布の加工

仕立台さえあれば、未加工の黄麻に手を加えることができる。プロの仕立屋はこの処理を「加工」と呼ぶが、加工は未加工の素材であればどんなものにも施せる。靴をこしらえるために必要な加工済みの黄麻を作るには、さしあたり未加工の黄麻が10要る。

もっとも、機織りなんぞやってられるか、というなら話は別だがな。

ステップ3:スタイル!

仕立屋たる者、自分たちの文化に固有のスタイルを守るものだ。何より、闘技場で目立つ格好をしようと思ったらスタイルが欠かせない。だから、自分が作業しやすいスタイル素材を見つけることだ。貴様がアルゴニアンなら、アルゴニアンスタイルの素材から始めるといい。仕立屋から買うもよし、貴様に負けて吠え面をかいている負け犬から取り上げるもよしだ。

ステップ4:靴の作製

スタイル素材と黄麻5(いいか、加工済みの黄麻だぞ。未加工の黄麻じゃ駄目だ)を持って仕立台に足を運び、さっそく作業に取りかかれ。手織りの靴を1足こしらえるんだ。使う黄麻を増やせば品質を上げられるが、まずは5から始めるのがいいだろう。

たやすい仕事だぞ!硫黄の王冠を勝ち取るという貴様のはかない、勘違いも甚だしい望みを打ち砕くのが、俺様にとってたやすいのと同じくらいにな。

粉々の仮面流仕立術

闘技場でそれなりの戦いぶりを見せる戦士ならば誰しも、ただの靴じゃ満足しない。その点、生皮のブーツなら防御力が上がるし、色鮮やかなサッシュなら闘技場で目立つこと請け合いだ。是非、こしらえてみるといい。仕立屋家業の勘所さえつかんでおけば、愛する者たちの目の前で俺様に恥をかかされたあとでも、食うに困る心配はなくなるぞ。

靴の改良

こしらえた靴、またはその他の衣服を改良するには、仕立台で「タンニン」を使う必要がある。ただし、慎重にやらないと、衣服もタンニンも途中で失われてしまうぞ。タンニンは、必要と思うだけ使うこと。

タンニンは自分で見つけるんだ。なんでもかんでも楽な方法があると思うなよ。

解体

貴様は手間を省きたいタイプかもしれない。未加工の素材を集める暇がないなら、要らなくなった衣服をいつでも解体できるぞ。解体すればその衣服は駄目になるが、その代わり、俺様に頭から吹っ飛ばされる運命の帽子を作るために必要な素材を回収できるだろう。

特性の調査

さて、そろそろ貴様はこう考えているだろう。「粉々の仮面と戦うには、何か強みが必要だぞ」と。それなら、自分より腕のいい仕立屋がこしらえた衣服をばらばらにし、使われている技術を学ぶのがお薦めだ。そうすれば、その衣服に固有の特性が分かる。とにかく、自信をつけるためにできることはなんでもするがいい——俺様がそいつを粉々に打ち砕いてやるまではな。

鍛冶の基本Blacksmithing Basics

ゼグ・グラ・ドゥシュ 著

オークの鍛冶夫人たちは言う。鍛冶のノウハウを知っているのは自分たちだけだと。そんな言い草はくそ喰らえだ!本書では鉱石の見つけかたから始め、鉱石からインゴットを取り出す方法を示し、さまざまな加工スタイルを説明したうえで、具体的な武器の作り方を解説する。これを読めば、君もすぐに鍛冶屋を名乗れるようになるだろう。

ステップ1:鉄鉱石の入手

鉄鉱石は最も扱いやすく、しくじっても簡単にやり直しがきく。まずは、大きな岩の露頭の近くで艶のないさび色の岩を探すこと。見つかったら掘り出す。自分で掘らない場合は、掘り出した人から買うか、知り合いに借りればいい。鉄鉱石の塊が10個集まったら、次のステップに進む準備は完了だ。

ステップ2:インゴットの加工

まず、鍛冶場を見つける。次に、鉄鉱石の塊10個からインゴットをつくる。この作業を「加工」と呼ぶ。理由が知りたければ、鍛冶夫人に訊ねればいい。

ステップ3:スタイルの選択

すべての種族が独自の鍛冶スタイルを持っており、それぞれ伝統的に好まれる素材が違う。憶えやすいように、ここではそれを「スタイル素材」と呼ぶ。私にはオークのスタイルが一番しっくりくるが、それは私がオークだからだ。君がアルゴニアンなら、アルゴニアンスタイルの素材から始めるといいだろう。素材が他で見つからなかったら、鍛冶屋に行けば売っている。

ステップ4:鉄の短剣の作製

鉄の短剣は簡単に作れる。必要なのはスタイル素材が1つ、インゴットが2つ。あとはハンマーをしっかり握った片手があればいい。これらがそろったら鍛冶場を見つけ、鉄の短剣を一振り作ってみよう。高品質なものを作るには使うインゴットの数を増やさなければならないが、さしあたって2つで充分だ。

ステップ5:作品の鑑賞

先に進む前に、しばし自分の作品を鑑賞しよう。それは「ただの鉄の短剣」とは違う。君が地面から鉱石を掘り出してつくった、命を奪うことができる道具だ。自分の作品には敬意を払うべし。

とはいえ、鉄の短剣では鍛冶夫人たちを感心させられないだろう。だが、あの連中に何が分かる?鍛冶仕事をする者は誰しも鍛冶屋を名乗る資格がある。何も鍛冶屋に嫁ぐ必要はない。今日は鉄の短剣しか作れなくとも、明日は黒檀の大剣を作ればいいのだ。

補足:上級鍛冶

本気で鍛冶夫人たちの鼻を明かしたいと思ったら、鉄の短剣以上のことを知らねばならない。

武器防具の改良

鍛造した武器や防具を改良するには、〈添加物〉を用いる。必要なときに見つかった試しがなく、いつも怒りに我を忘れる。

〈添加物〉が見つかったら、改良したいアイテムと一緒に鍛冶場に持ってゆく。〈添加物〉の数が多いほど、品質を向上させられる確率が高まる。ただし、成功する保証はない。失敗すれば〈添加物〉もアイテムも失われる。

〈解体〉

素材が足りないとき、武器や防具を〈解体〉して素材を取り出すことができる。〈解体〉すればそのアイテムは壊れてしまい、素材の一部しか回収できないが、インゴットを手っ取り早く手に入れたいときには便利な方法だ。

特性の調査

鍛冶夫人を戸惑わせる方法の1つは、彼女から最良のアイテムを買い、それを分解して彼女が作る武器防具の最大の特性を突きとめることだ。それが分かれば、その鍛冶夫人の最高傑作をコピーして、安く売ることができる。本気で彼女を怒らせたいなら、その鍛冶夫人の鍛冶場で作業を行えばいい。

弟子のための錬金術Alchemy For My Apprentice

言わずと知れた私より

我が愛弟子よ、お前が無駄にしてくれた錬金術の材料は、とうてい不問に付せる量ではない。我が師なら、かくも見下げはてた無能さにはとうてい耐えられまい。「教えるだけ無駄」、「本でも読んでいれば」などと突き放されるのが落ちであろう。そんな不肖の弟子のために、私はこの簡単な手引書をしたためた。希少な溶媒をもう1ケース調達するよりは安くあがるからだ。

万一この手引書を失くしても——お前のことだ、どうせ失くすだろうが——、捨て鉢になる必要はない。私はお前に年俸として支払うべき金を投じてこの手引書を大量に印刷し、ほうぼうに配布する手はずを整えた。いずれ、タムリエルじゅうの錬金術の作業場にこの小冊子が行き渡るだろう。

ステップ1:溶媒の入手

すでに承知の通り、どんな薬を調合するにも下地となる溶媒が要る。私の講義を一度でも真剣に聴いたことがあるなら、最も望ましい溶媒は自然に湧き出た清浄な水だということを知っていよう。水の純度が、薬の品質を左右する。したがって、水を汲むのに最も適しているのは自然の泉なのだ。

新鮮な水が湧く場所の必要性は、何度強調しても足りぬ。治癒の水薬に関する例の事故を憶えているかね?淀んだ水たまりや入り江の洞窟、製革所の下流などで水をすくって事足れりとしてよいはずがないのだ。都会であれば瓶入りのきれいな水がいくらでも手に入るだろうが、それでも自分で汲むに越したことはない。

ついでながら、お前の言う「雨水溶媒」は絶対に使いものになるまい。無駄な実験はただちにやめることだ。

ステップ2:試料の入手

錬金術は組み合わせの学問だ。溶媒が薬の下地であるのに対し、試料は薬の有効成分となる。1つの試料には、4つの特性がある。ここで方形混合の原理を——あらためて——お前に説明するのは気が進まぬが、基本だけは思い出させてやろう。そう、「似たもの同士を組み合わせるべし」だ。

今後、必要な試料は野や山で探すがいい。我が研究室ではなくな!よいか、草花とキノコ類を探すのだぞ。他のものは必要ない!いかなる状況下でも、この原則から逸脱してはならぬ。いつかお前が持ってきた「リスをすりつぶした粉末」などは、八大神に対する冒涜以外の何ものでもない。

なお、使った乳鉢と乳棒は念入りに洗い、きれいにしておくのを忘れぬように。

ステップ3:薬の調合

溶媒1種類と試料2種類を持って錬金台に足を運ぶがいい。くどいようだが、試料は種類の異なるものが必要となる。ムラサキ草とムラサキ草を組み合わせたところで、できあがるのはたんなるまずい水だ。

必要なものがそろったら、それらを混ぜ合わせて薬を調合する。プラスの特性を持つ試料同士を組み合わせれば、プラスの効能を持つ薬ができる。反対に、マイナスの特性を持つ試料同士を組み合わせれば、それをあえて飲もうという愚か者に害悪を及ぼすだろう。試料の特性が合わなければ、溶媒も試料も失われてしまう。

とにかく試料をとっかえひっかえし、どういう薬ができるか試してみることだ。そうすれば、おのずと試料の特性が分かってこよう。もっとも、試料のごく基本的な特性は食べてみれば分かる。ただし、食べるのは1つだけでいい。間違っても試料で腹を満たそうとするでないぞ!

そう言えば、お前はニルンルートを口にしただろう?ばれないとでも思っていたか?こうしていても歯の歌う声が聞こえるくらいだし、だいいち、光るおまるを隠す方法などないのだぞ。

上級錬金術の原理

あくまでも基本をマスターしたうえでの話だが、手の込んだことをやろうと考えるのもよかろう。注意深い研究を重ねれば、薬を調合する際にマイナスの特性を抑える方法、単純な試料の組み合わせから複数の薬を調合する方法、あるいは、試料を追加してより強力な薬を調合する方法さえ習得できよう!

しかし、さしあたって今は、「自分に毒を盛らないこと」を目標にすべきであろうな。

付呪は簡単Enchanting Made Easy

「ルーンをすなどる者」 著

付呪師には誰でもなれる。今何者であるかも、過去何者であったかも関係ない。私など、ひょんなことから付呪の世界に足を踏み入れることになるまで、20年間、ブラック・マーシュで魚を獲っていた。アルゴニアンの元奴隷漁師にマスターできるのだから、あなたにできないわけがない!

ステップ1:ルーンの入手

何年も前、ブラック・マーシュで漁をしていた私は、光り輝くルーンを見つけた。そのときはてっきりウィスプだとばかり思ったよ!ルーンは危ない場所でよく見つかる。だから、充分用心しつつ、そういう場所でルーンが埋まっている角ばった石を探すといい。

—赤い品質ルーンは魚の歳を思い出させる。稚魚はたくさん獲れるが、身が少ない。反対に、歳をくった老魚にはめったに出くわさないが、釣れれば大きい。
—青い潜在力ルーンは魚の味を髣髴とさせる。うまければ1日気分がいいし、まずければ敵に食わせるのにうってつけだ。
—緑色の本質ルーンは魚の種類のようなものだ。霜魚、鎧魚、毒魚…あとは考えれば分かるだろう。

タムリエルじゅうにルーンが散らばっているのはなぜかと訊かれることもある。でもそんなことは魔術師ギルドに訊いてほしい。自分は魚がどこから来るかなんて考えたこともない。考えたのは、どこに行けばたくさんいるかということだけだ。

(白状すると、私は色が識別できない。そういう向きはルーンの明るさを見るといい。品質ルーンは暗く、潜在力ルーンは明るく、本質ルーンはとても明るい)

ステップ2:付呪の作成

品質(魚の年齢)、潜在力(魚の味)、本質(魚の種類)の各ルーンが1つずつそろったら、付呪台に持っていく。さあ、ルーンを1つにまとめて、記念すべき最初の付呪を作成しよう!

漁を学ぶ最良の方法は、実際に魚を獲ってみることだ。付呪にも同じことが言える。付呪を作成する過程で、未知のルーンの意味と機能が分かってくるだろう。「ルーンがどのように魂と共鳴するかを理解しなければ、本当に理解したことにはならない」という意見もあるだろうが、そういう小難しいことは魔術師ギルドに任せておけばいい。

ステップ3;アイテムへの付呪

記念すべき最初の付呪が完成した。いよいよ、初めてアイテムに付呪する準備が整ったぞ!付呪を施し、魔力を付加したいアイテムを見つけるんだ。楽勝だろう?もちろん、そんなに簡単なわけはない。

付呪は選り好みが激しい。武器に使うのがふさわしいものもあれば、防具に使うのがふさわしいものもある。また、宝飾品にしか使えない付呪も多い。自分の手元にあるものよりも高品質なアイテムでないと使えない付呪だってあるかもしれない。そうそう、もし気が変わったら、アイテムを再付呪できるが、新たな魔法を付与すると、古い魔法は失われてしまう。肝心なのは、私の卵の姉妹が言うように、「その場にふさわしい魚を食べさせろ」ということだ。

補足:ルーンの抽出

作成した付呪が自分で使えなくても、がっかりすることはない!売ったり、交換したり、それを使える友達にプレゼントすればいい。

もちろん、付呪台さえあれば、付呪からルーンを抽出することができる。私はこれを「魚のわた抜き」と呼んでいる。この処理で付呪は駄目になってしまうが、使われているルーンの1つを回収できるので、それを別な付呪に使える。

宝飾の喜びThe Joys of Jewelry Crafting

宝飾職人フェラリアン 著

私たちの内には、それぞれ石がある。粗く、でこぼこで、控えめな石が。だがギザギザな表面の奥では色と、可能性の光が輝いている。精錬されていないが有望だ。そして少し磨くだけで、その石は美しく光り輝く宝石になれる潜在力がある。

私たちは誰でも宝飾の技を内に秘めているが、誰もがその力を見通せるわけではない。それゆえ、技を磨き始めるための方法について案内を書く役目を引き受けた。以下に記す簡単な手順をこなせば、どんな新米でも宝飾の基礎を学ぶことができる。

ピューターの粉末の入手

ピューターは入門者が最初に取り組むのに適した素材だ。加工が容易なだけでなく、呆れるほどどこにでもある。ただ荒野でピューターの鉱脈を探せばいい。鉱石と同じように、こうした鉱脈は通常岩の露出部分で見つかる。そこから必要なピューターの粉末を簡単に入手し、クラフトを始められるだろう。

ピューターのオンスの精錬

次に、ピューターの粉末をピューターのオンスへと精錬する必要がある。これはどの宝飾台でも可能だ。宝飾台は通常、大都市で見つかる。もちろん、可能なら自宅に自分用の宝飾台を置くことを推奨する。利便性は費用に十分見合うと思う。

指輪の作成

ここからがピューターのオンスを有効活用する時だ。簡素なピューターの指輪はクラフトで作れるアイテムの中で豪華なものではないが、最初のアイテムとしては上出来だ。この作業を完了するためには、やはり宝飾台が必要になる。

宝飾の解体

宝飾台は宝飾の作成だけでなく、解体のためにも使える。解体すれば指輪やネックレスを作成するために使った材料の一部を回収できる。例えばピューターの指輪を解体すると、ピューターのオンスが手に入る。もちろん、クラフトの大部分と同様、これによって経験値を得ることもできる。

特性の研究

宝飾はそれだけでも美しいが、非常に有用でもありうる。正しい特性を与えられれば、指輪やネックレスは体力、スタミナ、マジカを増加させられる。望ましい特性の宝飾を作るには、まずその特性をすでに有している宝石を研究しなければならない。例えば「堅牢」の特性を持つピューターの指輪を見つけたら、その指輪を研究すれば「堅牢」の特性を持つ新しい宝石を作る助けになる。残念ながら、このプロセスは常に研究されたアイテムを破壊してしまう。それが進歩というものだ。

終わりに

この案内を読んで、宝飾という栄誉ある技の探究を始めてくれることを心から願っている。上に記した基礎を覚えておけば、誰でも真の職人になる旅を始められるだろう。記述はこの辺にして、君の努力が実るよう祈っている!

デイドラ公

Daedric Princes

アズラの祈りInvocation of Azura

シギラウ・パレート 著

300年もの間、私はアズラことムーンシャドウのデイドラ公、薔薇の母そして夜空の女王の女司祭をしてきた。どのホギトゥムも我々は蒔種の月21日を祝い、価値ある美しいものをあの方に捧げるのと同様に助言を求めて彼女を呼び出す。彼女は残酷だが、賢い支配者である。どのホギトゥムであれ、雷雨の時は彼女に祈らない。たとえ日取りが重なったとしても、こうした夜はマッドゴッドのシェオゴラスに属するからである。そのようなときアズラは我々の注意を理解している。

アズラの祈りは非常に個人的なものである。私は他3柱のデイドラ公の女司祭をしてきたが、アズラは礼拝者の性質と彼女への崇拝の裏にある真実を重視する。私は16歳のダークエルフで侍女であったとき、企みのデイドラ公ことモラグ・バルを礼拝する、祖母の魔術結社に参加した。恐喝、ゆすりそして賄賂は闇の魔法であると同時にモラグ・バルの魔女の武器でもある。モラグ・バルの祈りは、暴風雨を除いて星霜の月20日におこなわれる。この儀式が行われないことはめったにないが、モラグ・バルはしばしば他の日に人間の装いで自分の崇拝者たちの前に姿を現す。ファイアウォッチの後継ぎに毒を盛ろうとして祖母が亡くなったとき、私は自分の信仰をもう一度問いただした。

兄弟はボエシアの教団のウィザードだった。彼の話から、闇の戦士は信用ならないモラグ・バルよりも私の精神に近かった。ボエシアはデイドロスの誰よりも戦士らしいデイドラ公である。数年間を陰の策略で過ごした後では、行動に直接結果が生まれる主人は好ましかった。その上、私はボエシアがダークエルフのデイドラの1人であるのが気に入った。黄昏の月2日、籠手と呼ぶ日に我々の教団は彼女を召喚した。血まみれの戦いが彼女に敬意を表して行われ、9人の信者の命が他の信者の手で奪われるまで衝突は続いた。ボエシアは彼女の信者に対してほとんど気を使わず、彼女の関心は我々の血だけだった。誤ってスパーリング中に兄弟を倒してしまったとき、彼女は確かに笑った。私の恐怖が彼女を大喜びさせたのだと思う。

その後すぐに教団を離れた。ボエシアは私にひどく冷たかった。心に深みのある支配者が欲しかった。人生の次の18年間、私は誰も崇拝しなかった。その代わり、本を読んで研究をした。古くて俗な書に、不可思議なノクターナルの夜の女王、ノクターナルの名前を見つけた。その本が指示したように、炉火の3日、聖なる日に彼女に呼びかけた。ついに、長いこと求めていた自分の主を見つけたのだ。彼女の不可思議な痛みの元になる、入り組んだ哲学を必死で理解しようとした。話し方や私に求めた言動でさえも、彼女に関することはすべて闇に包まれていた。私がノクターナルを理解できることはないという、単純な事実を理解するまで数年かかった。ボエシアへの残忍な行為やモラグ・バルへの裏切りと同じように、彼女の神秘は彼女にとって不可欠だった。ノクターナルを理解することは彼女を否定し、その部分を闇で覆う幕をめくることだ。私は彼女を愛する程に、彼女の謎を解く無益さに気がついた。代わりに彼女の姉妹、アズラのことを考えるようになった。

アズラは私が崇拝したデイドラ公の中で、唯一信者を気にしているように思える。モラグ・バルは私の精神、ボエシアはは私の腕、そしてノクターナルはおそらく私の好奇心を欲しがった。アズラはそのすべてを望み、とりわけ愛を欲しがる。盲従ではなく、誠実で純粋なあらゆる私達の愛だ。そしてその愛は、内側にも向かわねばならない。我々が彼女を愛し自身を憎むと、彼女は我々の苦しみを感じる。私が今後他の主に仕えることはないだろう。

エドラとデイドラAedra and Daedra

神、悪魔、エドラ、デイドラという名称は一般の大多数にとっては紛らわしい物である。これらは同意語として使われることも多い。

「エドラ」と「デイドラ」は相対語ではない。両方共、エルフ語で正確な定義がある。アズラはスカイリムとモロウウィンドのデイドラである。「エドラ」は通常「祖先」と訳され、シロディール語としてはエルフ語の概念に可能な限り近づけている。一方、「デイドラ」は大まかに言うと「我々の祖先ではない」という意味になる。伝説上の系図がイデオロギーを根本的に分岐させているダンマーにとって、この違いはとても重要な物だった。

エドラは静止に関連付けられる。デイドラは変化を象徴する。

エドラは定命の者の世界を作り、アース・ボーンズに縛られている。一方、想像ができないデイドラは変化をもたらす力を持っている。

神の創造に基づく契約の一部として、エドラは殺すことができる。ロルカーンと月がその証明である。

契約が適用されない、変幻自在なデイドラは、追放することしかできない。

オプスカルス・ラマエ・バル・タ・メッザモルチェOpusculus Lamae Bal ta Mezzamortie

ラマエ・バルと休まらぬ死の概要

マベイ・アイウェニル 書記

グウィリム大学出版局翻訳 第二紀105年

光が大きくなると、陰の闇が濃くなる。デイドラのモラグ・バルがアーケイを見て、人間やエルフ族の死を支配するエドラを高慢と考えた時、それは真実となった。

残酷な抑圧と定命の者の魂を罠にかける役割のバルは、ニルンの人間やエルフ族、獣人も死からは逃れられないと知っているアーケイを邪魔しようとしていた。エドラは自分の役割を疑わず、だからこそモラグ・バルは最高の死をニルンに送った。

バルが人の姿になってネードの民のラマエ・ベオルファグの乙女を奪った時、タムリエルはまだ若く、危険や驚くべき魔法に満ちていた。バルは乱暴に愛もなく彼女の体を汚した。その叫びが悲鳴の風になり、今もスカイリムのフィヨルドでは聞こえるところがある。1滴の血を彼女の額に流し、バルは怒りを撒き散らしながらニルンを去った。

乱暴を受け意識のない状態で、ラマエは遊牧民に発見され世話を受けた。2週間後、遊牧民の女性は彼女が他界したために布で覆った。習わしに従い、遊牧民はたき火を作り魂のない体を焼いた。その夜、ラマエは火葬の薪の中から立ち上がり、燃えたまま群衆に襲いかかった。彼女は女性の喉を裂き、子供の目を食べ、バルに暴行されたように残酷に男性を犯した。

そしてラマエ(血の母として有名)はタムリエルの人達に呪いをかけ、醜悪な物を際限なく生み出した。最も狡猾な夜の恐怖、吸血鬼はここから生まれた。タムリエルには不死の苦しみがもたらされ、原初の神々の時代から続くアーケイの生と死のリズムを残酷に阻害したのだ。アーケイは悲しんだが、元に戻すことはできなかった。

ハーシーンのトーテムThe Totems of Hircine

ハーシーンから最も貴重なライカンスロープの贈り物を授かった我々の間で、彼が自分の力をこの世界に存在する特定のアーティファクトにもたらしたという伝説がある。それは人間が書く事も話す事も考える事もほとんどできなかったが、選ばれし者達には野獣の血がまだ色濃く流れていた頃の時代の話だ。

第1:彫刻がほどこされた狼の頭蓋骨。
我々一族を作り上げた血の儀式で古代の呪術師によって使われ、その前にひれ伏す人々への存在感を高めると言われている。それは、ハーシーンの顔をちらっとでも見たことのある人々以外は、彼らの姿を見ると未知の恐怖で縮み上がるほどだと言われる。

第2:頭蓋骨同様、彫刻が施された大腿部の骨だが、何の動物の骨かは不明。より古代の仲間の多くが薬効効果のある棒として使用し、視力も嗅覚も高めると言われていた。そのため感覚が鋭くなった我々から獲物が遠くに逃れられなくなった。

第3:平凡な太鼓。そのありふれた外観はおそらく長い歳月の中で忘れ去られたことを意味するのだろう。我々の父が戦場から仲間を呼ぶために拍子をとったように、太鼓を鳴らせば我々の血の中に眠る先祖が同族を呼び集めるだろう。

これらのトーテムを通して、我々は野獣の力を呼び起こし、集中させる。ウェアウルフが人々に知られている魔法を見限る一方で、我々は時により直接的な自然エネルギーと接触できる。そしてこのようなトーテムを通して、人工的な文明に汚される前の最初に世界を支配した力を見つけられるのだ。

フラグメンテ・アビーサム・ハルメアス・モラスFragmentae Abyssum Hermaeus Morus

…そしてイスグラモルは巨人の妻の嘆きを集め、フロアとグロスタの元に持って行き、イスグラモルの強弓ロングランチャーを張り直すため、より合わせて悲嘆の弦にしてもらった。以来、ロングランチャーは運ばれるとため息をつき、発射されると嘆きの声をあげた。そして、イスグラモルはそれを狩りに持って行くことにした。

そして彼はアトモーラのフロストウッドで狩りをして、多くの獲物を仕留めてから、喉を心ゆくまで潤そうと浅瀬で立ち止まった。そこにフォーレルグリムの白鹿が、流れを越えて飛び跳ねた。イスグラモルは鹿を射た。だが彼は何と射損じた。不機嫌な彼は誓った。白鹿を倒すまで追い続けると。だが鹿は静かに落ち着いて、雪の上にかかる霧のごとく通り過ぎていった。イスグラモルは何度も鹿を見たが見失った。悲嘆の弦のため息が、白鹿の足音より大きくなったがゆえに。

再び跡を見失い、怒りに燃えて立ち止まったとき、ウサギが現れて言葉を発した。「鹿はあそこの谷の中に潜んでいます」「どうしてわかるのだ?」イスグラモルはウサギに問いただした。ウサギは答えた。「長い耳があるのでわかります。ええ、あなたも私ほどの長い耳を持っていたら、獲物がどこに行っても聞きつけることができますよ」

「それならば」イスグラモルは言った。「私の耳が汝のものほどの長さになるように」するとウサギの鼻がひくひくと動き、イスグラモルは自分の耳が伸びて先が尖るのを感じた。ところが一匹のキツネが雑木林から飛び出して、ウサギに飛びかかって殺した。イスグラモルは不思議なことに、自分の耳が縮んでいつもの大きさになったのを感じた。

そしてキツネが言葉を発した。「知るがよい、定命の者よ。我が名はショール。この者はウサギなどではなく、ハルマ・モラである。汝を欺き、エルフの仲間に変えるところであった。これより後は、人間の素直なやり方に頼り、エルフのごまかしを避け、彼らのようにならぬようにせよ。さあ、谷で汝を待つ白鹿のもとへ向かうがよい」

ハイルマ・モラ・パド・アダ・オイア・ナガイア・アバ・アゲア・カヴァ・アポクラ・ディーナ・ゴリア・ガンドラ・アルカン

「ハルメアス・モラはアダ、アビサル・セファリアークよりも年長であり、この下劣な者の請願に耳を傾ける。私が否定された知識を交換するに至ったがゆえに。私が求めるものはこの羊皮紙に名前が書かれており、それによって私はお前に敬意を表して知識の悪魔を使役する。我が願望にとって知ることは計り知れず、償いには名づけられたいかなる対価もみたされるであろう」エ・ハルマ・モラ

エ・ハルマ・モラ・アルタドゥーン・パドメ・ルカン・エ・アイ

(私の次なる夢は)アポクリファの夢だった。そこで私は(名もなき書物)の間の影の広間、煙のごとく吸い込んだ意見と議論の間を歩いた。左手にはベラムの巻物、右手には羽根ペンを持ち、通り過ぎてきた歴史(を書いた)が、巻物が文字で満たされることはなかった。(言葉を)下に書くにつれて上の(言葉が)消えていくからだった。

そして私はラピスラズリの台座の元で立ち止まった。そこにはこれまで述べてこなかった(物が)しまってあった。奇妙な装飾の壷だった。そこで私は巻物と羽根ペンを(脇に置いて)、装飾をつかんで蓋を持ち上げた。

(壷の中には)ねばねばした不快な匂いの(液体)があった。その上に浮かんでいたのは、灰色に輝く定命の者の(思考器官)だった。それで、なぜかはわからないが理解した。その(液体)は塩水ではなく、その脳は保存されていたのではなく生きていて、警戒しており、闇の知性によって思考を続けていたのだと。私は蓋をしめて壷(から目を上げて)、そして(台座の向こうの)長くどこまでも続く回廊を見やった。左右に数え切れないほどの台座が並び、(それぞれの台座の上には)壺があった。

(そういうわけで)私が目を覚ました(時)、私の舌は刺し貫かれていたのであった。

ボエシアの証明Boethiah’s Proving

(以下の説明は真実である。聞く耳と考える心を持つ人々に警告として届きますように)

ある日ある時刻に、信仰深い者たちは主を一目見ようとある儀式を行うために集った。日程は正しく、まさしく召喚日和だった。

ベールに立ち込める煙を掻き分けて、恐ろしくもまばゆい女が姿を現した。彼女は太陽の表面よりも熱く燃え上がる刀剣を振りかざしながら、月が出ていない夜よりも暗い漆黒の衣装で着飾っていた。ダンマーの戦う女王の姿だったが、レッドマウンテンから彫り出された像のようにそびえ立っていた。

「なぜ私の眠りを妨げたのだ?」

驚いて、人々の間で1番目の者は祈った。

「ボエシアよ、策略のデイドラ公にして民を惑わす者であり、影の女王でありそして破壊の女神でもああるお方よ。あなた様に崇拝を奉げるために参りました!」

彼女は証言をしようと集まった彼らを見下ろした。不機嫌そうな顔で最初に尋ねた。

「答えよ。お前は私を知っているが、私はどうやってお前を知ればいいのだ?」

恐る恐る男は答えた。

「毎晩あなた様に祈ります。毎晩あなた様の素晴らしいお名前を声に出してお呼びします。もちろんあなた様は私の声がお判りになりますよね?最も忠実な信者ですよ?」

彼女は顔をしかめて長い溜息をもらすと、そこから出た空気が男を包み、突然彼の姿は消えた。

2番目の者の方を向き、彼女は尋ねた。

「お前はどうだ?どうお前の価値を見定めればいい?」

その声の力に衝撃を受け、男は漆黒の衣装を纏った彼女の前で頭を垂れた。

彼女が手をたたくと、彼もまた消えた。

3番目の者には次のように尋ねた。

「そこのお前、答えてみろ。私は先ほどの彼ら、そしてお前のように情報がない者をどう知ればいいのだ?」

震え、仲間の失踪に言葉を失い、男は囁いた。

「我々にお慈悲を!」

彼女は2度まばたきした。1度目のまばたきで男は苦しみ悶絶し、2度目で死んだ。

彼女は残りの者たちに容赦ない視線を向けて言った。

「私は慈悲を与えはしない」

他の者たちも一緒だった。彼女は彼らを試し、彼らは何も与えられなかった。

ついに、怒りで目をぎらつかせ憎しみで舌を濡らし、彼女は私のところに来て言った。

「すべての私の信者の中で残りは2人だ。最後から2番目の者よ、どうやってお前の存在を証明するのだ?」

ためらうことはなく私は武器を抜いて、隣に立っているもう1人の胸を突き刺した。恐れることなく答えた。「今この刃から血を流すこの男に、私が存在しているかどうかを聞いてください」

彼女は微笑んだ。そして彼女の歯の間にあるオブリビオンの門が開いた。それから言った。

「最後となった者よ、なぜ他の者たちがいない場所に残るのだ?」

私は刃をしまい、答えた。

「そこにいる者が死んだから、私は生きています。私が存在しているのは、その意思があるからです。この刃から血が滴るように私が仕事をする証がある限り、私は生き残るでしょう」

贈り物を受け取りながら、彼女は言った。

「確かに」

(もし、これを読んでいるときに血管の血が煮えたぎり、心が燃えていたなら、ボエシアに呼ばれるだろう。彼女の声に耳を傾けることは最も賢明である)

モラグ・バルの子供The Spawn of Molag Bal

モラグ・バルは奴隷にする。モラグ・バルは冒涜する。

モラグ・バルは従わざる者との子供を生み、軽率な者の魂を刈り取る。

伝説によれば、モラグ・バルは最初の吸血鬼の父である。吸血鬼の多くの種についての詳細は明らかではないが、吸血鬼はみな彼の子と考えられるかも知れない。

大部分の吸血鬼は血をたどっていくと同じ遠い祖先に行き着く。モラグ・バルに汚された、ネードの従わざる処女だ。彼は怪物の血を生み出し、怪物達はさすらい、彼の汚れを遠くに撒き散らした。

モラグ・バルとの契約や取引の結果吸血鬼となった種もある。モラグ・バルは契約の見返りに、不死と永遠の罰を伴う力を約束したのだ。

モラグ・バルは混沌と不和の種を蒔き、次々と魂を腐敗させることで争いを撒き散らす。彼の軍は勢をなし、彼の忍耐は無限である。彼の究極の目的は、生きとし生けるものすべてを支配し、奴隷とすることだ。

現代の異端者Modern Heretics

帝都内のデイドラ崇拝の研究

ゴトルフォントのハデラス 著

シロディール内でデイドラ崇拝は法で禁じられてはいない。これは主に、デイドラの召喚を許可するために帝都が魔術師ギルドに対して認めた特権の結果といえる。にもかかわらず、聖職者および一般大衆からのデイドラ崇拝への風当たりが非常に強いため、デイドラ関連の儀式を行うものたちは秘密裏に活動している。

一方で、諸地方に目を向けてみるとデイドラ崇拝に対する見方は様々である。シロディール内でも年月と共に伝統的な世論に少なからぬ変化が見られ、デイドラを崇拝する集落も存続している。伝統的なデイドラ崇拝を志す者には信仰心や個人的な信念を動機とする者がいるのに比べ、現代的なデイドラ信者の多くは魔法的な力を目当てにしている傾向がある。とりわけ冒険家と呼ばれる人種は、伝説に名高いデイドラのアーティファクトの、武器や魔法的な利点を追い求める傾向にある。

筆者自身も、夜明けと黄昏の女王であるアズラを信仰する一団と遭遇している。デイドラ崇拝に興味をもつ研究者は複数の方法で調査を進めることができる。既存の文献の研究、古代のデイドラの祠の探索および発見、各地の情報通からの聞き取り、そして信者そのものからの聞き取りなどが挙げられる。筆者自身はアズラの祠を発見する際にこれらの手段を全て用いている。

筆者は最初に文献を紐解くことにしている。本書のような解説書からデイドラの祠に関する一般的な事情などを知ることができる。筆者が自身の研究によりシロディール内のデイドラの祠について理解している事項を例示すると、一般的に、デイドラの主の像が祠の象徴となっており、祠の位置は集落などから離れた野外にあり、各々の祠には信者の一団がついており、祠ごとにデイドラの主への嘆願等を行うべき特定の時間(週の間のある日であることが多い)が決まっており、デイドラの主は嘆願者が十分な力を有しているか、相応の人物でない限り嘆願に応じないことが多く、また返答を得るには適切な供物を捧げる必要があり(捧げるべき供物については信者の一団のみが知る秘密となっていることが多い)、そしてデイドラの主は何らかの仕事や使命を達成した冒険家には、しばしば魔力をもったアーティファクトを授けることがわかっている。

筆者は次の段階として、周辺地域の地理に精通している地元住民に聞き取りを行う。とりわけ得るものが多い聞き取り対象は二つあり、一つめは(移動中に祠を発見する可能性のある)旅の狩人や冒険家であり、二つめは魔術師ギルドの学者たちである。アズラの祠については、どちらの対象も有益な情報源となってくれた。旅路の途中で奇妙ながらに雄大な彫像を見かけたというシェイディンハルの狩人によると、像は両腕を伸ばした女性の姿をしており、片方の手には星を、他方の手には三日月を持っていたとのことだった。祟りを恐れて像を避けたものの、その位置は記憶しており、シェイディンハルの遥か北方、アリアス湖の北西、ジェラール山脈の奥深くという情報が聞き出せた。像の外観に関する情報が得られたので地元の魔術師ギルドを訪ねてみると、その外見を元に崇拝の対象となっているデイドラの主の正体が特定できたのであった。

祠の位置が判明したので現地に足を運んでみると、祠の周囲に信者の一団が住み着いていることがわかった。デイドラ崇拝に対する風当たりの強さゆえ、信者たちは当初こそ自分たちの素性を認めたがらなかったものの、筆者が彼らの信頼を得た後にはアズラが嘆願に耳を貸す時間帯(夕暮れから夜明けまで)に関する秘密や、捧げるべき供物がウィル・オ・ウィスプから得られる「発光する塵」であることを教えてもらえた。

筆者は一介の聖職者兼学者であるため、ウィル・オ・ウィスプを発見して発光する塵を入手することはかなわなかったうえ、供物として捧げられたとしてもアズラが耳を貸してくださったかどうかは定かではない。しかし、仮に供物を捧げてアズラがそれを認めてくださった場合、筆者は何らかの使命を与えられ、それを達成できた暁には伝説的な魔力を秘めたデイドラのアーティアクト「アズラの星」を授かることができた可能性があったのは確かである。

筆者はその後、シロディール内に上記以外にも複数のデイドラの祠が存在すること、およびそれぞれの守護神であるデイドラの主の名、そして冒険家たちが授かりうるデイドラのアーティファクトに関する噂を耳にしている。狩人のハーシーンは強力な魔力を帯びた鎧である「救世主の皮鎧」の伝説と結びついている。魔剣「ヴォレンドラング」は妖魔の王マラキャスと関連があるらしく、名をそのまま冠した「モラグ・バルの戦棍」もデイドラ崇拝の対象となっているようである。シロディール内にあるこれら以外のデイドラの主の祠および信者たちについては、たゆまぬ努力を続ける探究者たちによって明らかにされていくことだろう。

災厄の神The House of Troubles

聖ヴェロスとチャイマーに従って約束の地モロウウィンドへと向かった祖先の霊魂の中で、デイドラの主である4人、マラキャス、メエルーンズ・デイゴン、モラグ・バル、シェオゴラスは、災厄の四柱神として知られている。彼らデイドラの主は、トリビュナルの助言と勧告に反発し、クランと名家に大いなる騒動と混乱をもたらした。

マラキャス、メエルーンズ・デイゴン、モラグ・バル、シェオゴラスは、試練の時に障害物の役割を果たすという意味において聖人である。時に彼らは、この地域の敵であるノルド、アカヴィリ、あるいは山のオークとさえ交流を持った。

マラキャスはかつてトリニマクだった者の残骸であり、弱いが復讐心に燃えた神である。ダークエルフは彼がオークの神王マラクだと言う。彼はダンマーの身体的な弱さを試す。

モラグ・バルは、モロウウィンドにおける残虐の王である。彼は名家の血統を壊そうと試みており、さもなければダンマーの遺伝子プールを汚すつもりでいる。モラグ・アムールに住んでいたと言われる怪物の種族は、前紀に行われたヴィベクの誘惑の結果である。

シェオゴラスは狂気の王である。彼は常にダンマーの精神的な弱さを試す。多くの伝説において彼は、ダンマーのある派閥に対抗しようとする派閥に招かれている。物語のうち半数において、彼は自分を呼んだ者たちを裏切らず、そのため、全体的な枠組みにおける彼の立場について混乱が生じている(果たして彼は我々を助けられるのか?障害にはならないのか?)。彼は、例えば帝国のように、ダンマーが恐怖を抱く他の種族と、役に立つ同盟者として結びつくことがある。

メエルーンズ・デイゴンは破壊神だ。火事、地震、洪水など、自然の危険と関わりを持つ。ある者たちにとって、彼はモロウウィンドの住みにくい土地の象徴である。耐えて生き延びる意思がダンマーにあるかどうかを試す。

これら四柱の邪悪は崇拝は、聖堂の掟と慣習に反することである。しかし、四柱に仕えようとするどん欲で無謀な者や、正気を失った者が絶えた試しはない。古代の聖堂の掟と秩序、そして帝国の法に基づいて、こうした魔女やウォーロックたちは処刑される。帝国の駐留部隊は聖堂のオーディネーターやボイアント・アーミガーと協力して、荒野の隠れ家や古代の遺跡に隠れて冒とく的な崇拝を行う者たちを追い詰め、始末している。

夢中の歩みThe Dreamstride

1000年以上もの間、ヴァルミーナの司祭は錬金術の達人である。彼らの混合剤の複雑さと効用は、まさに伝説にほかならない。このような錬金術の秘宝は非常に人気があり、闇市に出回る水薬1つが大金を生むこともある。

現在知られている数多くの薬の中でも、おそらくヴァルミーナの不活性薬が1番素晴らしいだろう。この粘着性のある液体を一滴飲むだけで、「夢中の歩み」として知られる状態に陥る。使用者は他人の夢を、まるで自分がそこに入り込んだかのように体験できるのである。対象者は最初から居たかのように夢の世界に溶け込み、夢の重要な一部になる。夢の中に登場する人々からは、使用者の方が夢を見ている人だと思われるだろう。使用者は、自分の癖や話し方、適切に広がった知識さえも目にするはずだ。

観察者の目には、薬を飲んだ使用者の姿が消えてしまうようだ。対象者が夢の中で行ったり来たり歩くとき、観察者たちもまた実際の世界を行ったり来たり移動する。不活性薬の効き目が切れると、対象者の姿は再び見えるようになり、夢の中でいた場所とまったく同じ場所に出現する。わずか数フィートしか動かなかった対象者もいるし、ほんの数分で元の場所から数千マイルも離れた場所に現れた者もいる。

注意すべきこととして、夢中の歩みは非常に危険で対象者に様々な潜在的危険を与えることだ。ある夢では、対象者は病気や、暴行そして死のような生命を脅かす状況にさらされた。ほとんどの場合は傷を負うことなく現実の世界に戻って来れるが、場合によっては対象者は帰ってこずに薬の効き目が切れたと見なされるか、死亡した状態で現れる。現実世界においては危険で有害な場所に戻ってきてしまうことも多い。たとえ夢中の歩みの中では、そこが安全な場所であったとしてもだ。

ヴァルミーナの不活性薬は、それを作り出す錬金術師のように不思議でとらえ所がないものである。この独特の移動装置が不活性薬自体の効果なのか、単にヴァルミーナの奇妙な企みなのか定かではない。しかし、通り抜けられるはずのない障害物を通り抜ける夢中の歩みの効果は、確実にその不思議な性質によるものである。

オブリビオンの伝承

Oblivion Lore

オブリビオンについてOn Oblivion

モリアン・ゼナス 著

どれほど習慣的であっても、オブリビオンの次元の居住者を「魔族」と呼ぶのは適切ではない。おそらくこの習わしは、第一紀の予言者マルクによるアレッシアの理論に始まる—その中に「魔族との取引を禁ず」と、興味深く記したが、魔族とは何なのかについての説明を怠った。

おそらく、オブリビオンの次元から出でる、動機不明で強力な魔物という意味を持つ、エルフの古語「デイドラ」を誤って「魔族」と記したと考えられる。理論の原本が発表されてから約千年後、スカイリムの敬虔王ヘイルによる小冊子の中で彼は政敵を、「オブリビオンの魔族のように邪悪…彼らの腐敗はサングインの如くであり、ボエシアのように残酷であり、モラグ・バルの如く打算的、そして、シェオゴラスのように狂っている」と比較表現した。そこでヘイルは長々と記録にデイドラの四柱について説明し、書き込ませた。

しかし、結局のところ文書の記録はオブリビオンやそこに住むデイドラについて調査する最善の手段ではない。「魔族と取引」を行うような者は、ほとんどの場合、その行為を他に知られたくないからである。それでも、第一紀の書物には日記や日誌、魔女が焼かれた知らせやデイドラと戦う者向けの指南などが記載されている。これらを私は主要な情報源としてきた。これらは、最低でも私自身が召喚して長話を交わしたデイドラの主ほどは信用できる。

どうやら、オブリビオンは多数の領域で構成されているらしい。よって、オブリビオンには多数の同意語が存在する。コールドハーバー、クアグマイア、ムーンシャドウ等。オブリビオンの個々の土地は一人のデイドラの主によって支配されていると仮定して間違いはなさそうだ。デイドラの主たちで、その名が太古の記録に頻出する(確実に存在した裏づけや内容の真正を証明するものではない)のは前記したサングイン、ボエシア、モラグ・バル、そしてシェオゴラス、これらに加えて、アズラ、メファーラ、クラヴィカス・ヴァイル、ヴァルミーナ、マラキャス、ハルメアス(または、ヘルマエウス、ホルマイウス、ヘルマ—決まった呼び名はないようだ)モラ、ナミラ、ジャガラグ、ノクターナル、メエルーンズ・デイゴン、ペライトである。

経験から、デイドラの構成は非常に複合的であると言えるであろう。強大な力と過激主義であることを除いたら、彼らを一つの分類に収めるのは不可能に近い。とはいえ、純粋な学術便宜上、いくつかの事例に関して分類を試みた。

メエルーンズ・デイゴン、モラグ・バル、ペライト、ボエシア、そしてヴァルミーナじゃその破壊的本分から、デイドラの中でも常に「悪魔的」のようだ。もちろん、他のデイドラも同様に危険だが、めったに上記の五柱のような破壊のためだけの行動を取らない。そしてまた、これらの五柱ですら、それぞれの破壊性が同質という訳ではない。メエルーンズ・デイゴンは怒りを発散するのに、大地震や噴火などの自然災害を好むようだ。モラグ・バルは他のデイドラを巻き込み、ボエシアは人間の戦闘意欲をかき立てる。ペライトの本領は悪疫で、ヴァルミーナは拷問を好む。

この連続記事の次掲載分を準備するために、私がデイドラ研究者となってから興味を持ち続けてきた二つの事柄を調査する。一つ目は、初期に数々の記事でハーシーンと紹介された特定のデイドロスで、デイドラの主だ。ハーシーンは「狩人のデイドラの主」や「獣人の父」と呼ばれているが、いまだ召喚できる人を目にしたことがない。二つ目、そしてさらに達成できるか疑わしい目的は、人間がオブリビオンへ渡れる実用的な手段を探すことだ。かねてからの私の持論は、理解できないものを怖がる必要はない、だ。私はいつもそれを心に刻んで目的を追っている。

オブリビオンの扉、パート1The Doors of Oblivion, Part 1

セイフィジ・ヒッジャ 著

「そなたがオブリビオンに立ち入るとき、オブリビオンが汝に入りこむ」

—ナイ・チロル・ラー

これまでに存在した最高の魔術士は私の師匠、モリアン・ゼナスであった。デイドラに関するあらゆる事柄の必読本である「オブリビオンについて」の著者として、彼の名を耳にしたことがあるであろう。彼は長年寄せられている多くの嘆願をよそに、古典を新しい発見や説で更新しようとはしなかった。それは、これらの領域に関して深く調べれば調べるほど、確信を持てなくなってくることに気が付いたからである。彼は憶測ではなく、事実を探していた。

「オブリビオンについて」の出版前と後の数十年間で、ゼナスはデイドラの住みかであるオブリビオンに関する巨大な個人蔵書庫を作り上げた。彼は自分の時間の半分をその研究に、そして我々の世界を超越した危険な場所に入りこむ道の発見に成功したとき、その間の進路を進むには強大な力が必要であるという推測の下、残りの半分を個人の魔力育成に費やした。

ゼナスが一生準備を重ねてきた旅に発つ12年前、彼は私を助手として雇った。私はその立場に必要な3つの特性を持っていた。私は若く、何も問わず熱心に手伝い、本を1度読むだけで内容を記憶し、若いにもかかわらず、既に召喚のマスターであったのである。

ゼナスも召喚のマスターであった—実際、彼は全学問のマスターであったが—彼の最も危険な研究を前に、自分1人だけの力を頼りにしたくはなかった。地下室で、彼らの故郷に関する話を聞くために彼はデイドラを召喚した。彼らが到着し、拘束され、問題なく送り帰されることを確実にするために、もう1人召喚士が必要であった。

あの地下室は一生忘れないであろう。質素で飾り気のない見た目ではなく、見えなかったものを忘れない。花と硫黄、性と腐敗、力と乱心、それらの香りが召喚された魔物が帰った後も、かなりの間漂った。今なおその記憶が私を悩ませる。

召喚の仕組みに関する知識を持たない素人に説明しよう。召喚は術者の心を召喚される側の心に結び付ける。それは脆いつながりであり、単に引き寄せ、留め、送り帰すだけのものであるが、マスターが行うことによって、さらに強力になる。サイジックやドゥエマーは何マイルも離れた相手と心をつなぎ、会話することができる。(ドゥエマーの場合、できたと言うべきか)この能力はたまにテレパシーと呼ばれる。

雇われている最中、ゼナスと私の間にそのようなつながりが構築された。2人の強力な召喚士が、お互いに密接して作業を行った結果からの偶然であったが、このつながりは彼がオブリビオンへの旅に成功した場合、大変貴重な能力になるであろうと確信した。あの地の居住者は未熟な召喚士の技術でさえ接することができるため、彼があの地にいる間、発見を記録するためにこの能力で通信を続けることが可能かもしれない。

「オブリビオンの扉」モリアン・ゼナスの言葉を引用すると、それは簡単には見つからず、我々が鍵を握るある1つを見つけるまでにたくさんの可能性を検討しつくした。

アルテウムのサイジックは、デイドラの領域に踏み入り、戻ってこれる、夢見る洞窟と呼ばれる場所を所有していた。イアケシスやソーサ・シルやネマティグ、その他にも多数がこの方法を採ったと記録されているが、修道会への度重なる懇願も叶わず、我々はその利用を拒否された。修道会の指導者であるセララスは、皆の安全のために洞窟は封印されたと我々に言った。

読者諸君は他の扉のことを聞いたことがあるかもしれないが、我々はすべての扉を探そうと試みたことは自信を持って言える。

いくつかは完全な伝説であったが、または残された情報だけでは辿ることができなかった。言い伝えのなかで、これらについて言及している:マルクの地獄、コーリングトンの鏡、クロスロード、マンテランの十字架、マウス、さらにはジャシンスと呼ばれる錬金術の調合法の謎、ライジングサン。他にもたくさんの場所や物体が扉とされているが、我々には見つけられなかった。

存在はするが、安全には入れないものもある。バルの大渦巻きと呼ばれるアビシアン海の渦は船を消失させることができ、オブリビオンへのポータルかもしれないが、その渦に乗ったときの衝撃は誰をも殺してしまうであろう。同じく、スラスの柱からの跳躍もその危険を冒す価値があるとは考えなかった。それは千フィートもの高さがある珊瑚の螺旋であり、スロードが行う生け贄の行為は目撃したことがある。その犠牲者の一部は落下によって殺されてしまうが、一部は岩に砕かれるまえに消えてしまうように見受けられる。スロードにもなぜ一部は連れ去られ、また一部は死ぬのかがはっきりとしていなかったため、飛び込みの勝算には否定的であった。

一番簡単であり、気が狂うほど複雑なオブリビオンへの移動方法は、単純にここでの存在をやめ、あそこで存在し始めることである。歴史を通して、我々の領域を超えた場所へと、一見任意で移動していたような魔術師たちの例がある。もし存在したのであれば、これら旅人の多くはとうの昔に死んでいるが、我々は1人だけ生きている人を探し出せた。モロウウィンド地方、ヴァーデンフェル島のザフィルベル湾の近くにある塔に、非常に老齢で、非常に人目を嫌うディヴァイス・ファーと呼ばれる魔術師が存在した。

オブリビオンの扉、パート2The Doors of Oblivion, Part 2

ディヴァイス・ファーと接触するのは容易なことではなく、また彼はモリアン・ゼナスとオブリビオンへの扉を分かち合うことに気が進まなかった。幸いにも、我が師匠の伝承に関する知識がファーを感心させ、かれはゼナスに道を教えた。ここでその手順を説明することはゼナスやファーへの約束を破ることになるし、できたとしても、明かしたくはない。もし、知り得る危険な知識が存在するならば、これがそうである。しかし、ファーの仕組みは、長く行方不明で死んだと推定される、テルヴァンニの魔術師によって作り出された数々の領域へのポータルを有効に生かすことに頼っている。これだけはあまり明らかにせずとも言える。侵入箇所が限られる不利益と、信頼性や通路の安全性を比較検討した時、我々はこの情報提供者がいて幸運であると考えた。

そして、モリアン・ゼナスはこの世界を離れ、探検を開始した。私は蔵書庫に留まり、彼の情報を書き起こし、彼が必要な調査の手伝いをした。

「塵」旅の初日に彼はそうささやいた。その言葉特有のわびしさにもかかわらず、私は彼の興奮を声に聞き、それが心の中でこだました。「私には、世界の端から端が百万もの灰色の色加減で見えている。空も、地も、空気もなく、ただ単に粒子が私の周りで浮かび、落ち、旋回しているだけである。私は浮揚し、魔力で呼吸しなければならない…」

ゼナスはしばらくその不透明な世界を探索し、実質のない魔物や、煙の王宮などに遭遇した。デイドラ公には出会わなかったが、我々は彼がアッシュピットにいるとの結論を下した。そこは苦悩や裏切りや破られた約束が、冷酷な空気に灰が充満するようなマラキャスの家であった。

「空が燃えている…」次の領域に進んだ彼が言うのを聞いた。「地面はぬかるんでいるが、歩ける。焼け焦げた廃墟がいたるところに見える。大昔に戦争でもあったかのようだ。空気は凍てつくようだ。暖かさの呪文を周囲にかけたが、全方向から氷の短剣が刺してくるようだ」

ここはモラグ・バルがデイドラ公として君臨するコールドハーバーであった。残虐の王の下、そこは苦痛に満ち、荒廃した不毛の地であり、ゼナスにはそこが未来のニルンであるかのように見えた。モリアン・ゼナスが見たものに対してすすり泣く声や、血と排せつ物が飛び散っている帝都の王宮に身震いするのも聞こえた。

「美しすぎる…」次の領域に入るとゼナスは息をのんだ。「半分眼が見えない。見えるのは花と滝、堂々とした木々、銀の街、しかし、すべてが霞んで見える。水彩のように色が流れている。今は雨が降り、風は香水のような匂いがする。ここは間違いなくアズラが住む、ムーンシャドウだ」

ゼナスは正しく、そして思いがけなくも彼は、彼女の薔薇の王宮で黄昏と暁の女王に謁見さえした。彼女は彼の物語を笑顔で聞き、ネヴェヴァリンの到来のことを彼に話した。私の師匠はムーンシャドウを相当気に入り、半分眼が見えないまま永遠に留まることを望んだが、さらに進み、発見のための旅を完結しなければならないことを知っていた。

「嵐の中にいる…」次の領域に入ると彼は私に言った。彼がそこの景色を、暗黒のねじ曲がった木々、ほえる霊魂、うねる霧と表現したとき、メエルーンズ・デイゴンの死の地に入ったと思った。しかし、すぐに彼は「待て、もう森の中にはいない。稲妻の閃光が走り、今は船上にいる。柱はぼろぼろだ。乗組員は皆、惨殺されている。何かが波の中を近づいてくる…「ああ、神よ…待て、今度は湿った地下牢の密室だ…」」

彼は死の地にはいなかったが、そこはクアグマイア、ヴァルミーナの悪夢の領域。数分毎に稲光が発生して、必ず不快で恐ろしい方向に現実が移り変わる。一瞬、暗闇の城にいたかと思えば、次は飢えた獣のねぐら、月に照らされた沼地、生きたまま埋められた棺の中など。師匠は恐怖に耐え切れず、素早く次の領域へと向かった。

彼の笑い声が聞こえた。「我が家にいるようだ」

モリアン・ゼナスは何重にも積み重ねられ、全方向に広がる本棚の列があり、果てしなく続く蔵書庫を説明した。本が、彼には感じられない神秘的な風で浮き上がっている。すべての本には題名がなく、黒い表紙が施されていた。誰も見えなかったが、積み上げられた本の間を動き、永遠に本の中を調べ続けるゴーストの存在を感じた。

そこはアポクリファであった。ハルメアス・モラの地であり、すべての禁じられた知識が見つけられる場所である。心の中に震えが生じたが、私のか、師匠のかは分からなかった。

私が知る限り、モリアン・ゼナスは違う領域へは行かなかった。

師匠が最初の4つの領域を訪れている最中は、常に話しかけてくれた。アポクリファに入った途端、研究と調査の世界に引き寄せられたかのように彼は静かになっていった。それは、ニルンにいた間に彼の心を支配した情熱と同じであった。必死になって彼に呼びかけてみたが、彼は私に心を閉ざした。

そして彼はささやいた。「そんな馬鹿な…」

「誰もこの真実を想像し得ないであろう…」

「さらに学ばねば…」

「世界が見える、錯覚の最後のきらめき、世界が我々の周りで崩れ去っている…」

私は彼に叫び返し、何が起きているのか、何を見ているのか、何を学んでいるのかを教えてくれるよう懇願した。私は召喚術を使って彼をデイドラであるかのように召喚しようとさえ試みたが、彼はそこを離れることを拒否した。モリアン・ゼナスは失われた。

前回彼からのささやきを受け取ったのは6ヶ月前であった。その前は5年間が経過して、そしてその前は3年。彼の思考はすでにどの言語でも理解できない。おそらく彼はいまだにアポクリファをさまよっているのかもしれないが、出たくない罠の中で幸せなのかもしれない。

できることなら彼を救いたい。

できることなら彼のささやきを止めたい。

デイドラの分類パート1Varieties of Daedra, Part 1

治癒師、および反体制の司祭、アラネア・ドレサン 著

我々がデイドラの分類や、それらがどのようにデイドラ公やその支配に関わっているのかを知ることは、あまり期待できない。我々の世界に現れるデイドラの分類が、その仲間たちや後援者とどう関係しているかなど、把握することはできない。1ヶ所で見られた姿が別の場所では全く逆な場合もあり、また違う場所では矛盾して両方であったりもする。

どのデイドラがこのデイドラ公に仕えている?どのデイドラが命令を下し、どのデイドラが仕えていて、どのような上下関係がどのような状況下でありうる?どのデイドラがどの団体にいて、どのデイドラが永遠の敵対関係にあるのか、そしてどのデイドラが孤独、または社交的、もしくはその両方を行き来するのか?観察でき得る行動の種類には限りがなく、1ヶ所ではコレであり、また違う場所ではソレであり、彼らを定義する法則には必ず矛盾があり例外が生じる。

さらに、位階に関して誰から答えを求めればよいのであろうか?ほんの一握りしか知識を持たない人間から?我々の支配を続けるために、隠し事をし、謎めいた出来事を謎々で話す神から?決して率直さや正直の見本とはいえず、嘘や撹乱で有名なデイドラから?

もしデイドラが真実を語ったとしても、我々はどのようにして彼ら自身が理解しているのかを確認すればよいのか?実際に知ることができる真実すらあるのか?デイドラの取り決めは永遠に変わらないとでも言うのか?

単純に言えば、知り得ることは少なく、信じられることは皆無なのである。

これらのことを述べた上で、私が探し出し、彼の療養院にいたコープラスの犠牲者に安息をもたらすと申し入れた相手、テルヴァンニの魔術師、ディヴァイス・ファーから私が見聞した、デイゴンのしもべの話の関連付けを試みる。

ディヴァイス・ファーは、自ら進んで2柱のデイドラのみと交流を持ったと私に言った。メエルーンズ・デイゴンとアズラだ。

アズラはすべてを知り理解していたが、これらについて話すことを断った。話したとしても謎かけだった、と彼は言った。

一方、メエルーンズ・デイゴンは、ごう慢さや、目的の不変性、そして想像し得る繊細な考え方の欠如から何も知らず、何も理解しておらず、包み隠さず遠慮なく話したがった。

デイゴンの主なしもべ、ドレモラはデイゴンのようにごう慢で、目的を変えず、繊細さがなく、さらに追加してデイゴンに対してや自身の階級の中でも奇妙な特徴の敬意と忠誠心を持っていたとディヴァイス・ファーは言った。

ドレモラはクランと階級制度の中に命令されて入り、これらのクランと階級制度は明確に定義されていた。個人としてドレモラの階級は上がったり下がったりするし、クラン間の移動も可能であったが、複雑な誓いなどで統制されており、デイゴンの気分次第であったとも言っていた。

ドレモラは彼ら自身のことを「キン」(人々)と呼んでおり、他のデイドラを無思考の動物と考え彼らと差別化した。言葉「キナーズ」はドレモラ種族の一員を指す。

キン階級の最下層はチャールであり、それはドレモラの平凡な大衆であり、彼らの最下層階級である。チャールは上位にこびるが、人間や他のデイドラに対してはとても残酷である。

次の階級はケイテフであり、彼らは何も考えずに熱中し、常に全力な生物である。信頼できないが、積極的で熱心なケイテフは、バーサーカーや突撃隊などの予備部隊としてデイドラの派閥争いに使われる。

ドレモラ部隊の通常階級のなかでも最高級はキンヴァルである。かれらは戦騎士であり、戦闘において際立った活躍をし、慎重性を持った戦闘隊長の候補である。

戦士階級のチャール、ケイテフ、キンヴァル階級の上は士官階級である。

キンリーヴはクラン保安官、またはクラン将校である。キンリーヴは通常、クラン戦闘部隊か戦闘に関する管理任務と関係している。

キンマーチャーはロードであり、デイドラ宮殿や砦や門の上級将校である。キンマーチャーは通常、部隊と「フィエフ」(管理責任を問われる土地か場所)に関連する。

キンマーチャーの上はマルキナズ、またの名を「大公」である。マルキナズはロードのロードであり、メエルーンズ・デイゴンのロード評議会、マーキンの一員である。

ドレモラの最高階級はヴァルキナズ、または「王子」である。戦士デュークはメエルーンズ・デイゴンの個人衛兵であるヴァルキンの一員である。タムリエルでヴァルキナズに遭遇するのは極稀である。通常かれらはメエルーンズ・デイゴンの側にいるか、デイゴンが重要視する作戦の指揮を執っている。

デイドラの分類パート2Varieties of Daedra, Part 2

ディヴァイス・ファーのコープラスアリアムで仕えていたときに出会った他のデイドラの種類は、オグリム、ゴールデンセイント、デイドロス、翼もつ黄昏、スキャンプ、クランフィアである。言えることは多々あるが、あまり有用でもなければ信用もできない。

ディヴァイス・ファーがドレモラに似たようなデイドラで、さらに強く、独立の意思を持ち、自立したデイドラを呼ぼうとしたとき、彼はズィヴィライを召喚したことを明記しておく。ズィヴィライはドレモラに似た性格と気質を持つが、違うのは彼らが絶対的な服従を嫌い、もし敬意をもって接せられていないと感じた場合、裏切りや不忠を働きやすい点だ。

野生化した、クランフィアやデイドロスに似た獣のようなデイドラはデイドラの派閥のいたるところに現れ、それは一般的な生物の存在を表している。オブリビオンの荒野の野生動物のように。スキャンプやスパイダー・デイドラのような、他のどう猛で半知的生物もデイドラの主の領域で見られる。

一方で、元素の精霊に関してはあまり明確ではない。例をあげると、炎の精霊と氷の精霊は非常に知的に見えるが、元素の精霊のすべてが社会的、またが言語能力を持っている訳ではなさそうである。ディヴァイス・ファーはこれらの生物と多少関わったことがあるが、これらの性質にまったく興味がなかったため、召喚を嫌がった。よって、テル・ファーでの滞在中、それらの生物に関してはあまり学べなかった。

デイドラの霊魂Spirit of the Daedra

汝、我々を以下と見なすがいい

死、敗北、そして恐怖と

我々は死することはない。死を恐れることもない

肉体を破壊すれば憎悪は闇へと追いやられる。だが憎悪はいずれ戻ってくる

だが我々全てが勇猛なわけではない

我々は苦痛を感じ、それを恐れる。我々は恥を感じ、それを恐れる。我々は損失を感じ、それを恐れる。我々は闇を憎み、それを恐れる。

スキャンプが考えが小さく、恐怖も小さい

ヴェルマイは考えがなく、恐怖も無い

ドレモラは考えが深く、恐怖を知り、克服しなければならない

クランの絆

我々は生まれたわけではなく、父も母もいないが、親類やクランはいる

クランの形は強大で、肉体と考えを形作る

クランの形には力と目的がある

誓いの絆

我々は、我々の意思で他者に仕える。我々は加護を得るため、強きものに仕える

クランは伝統に沿って仕えるが、伝統が変わることもある

ドレモラは長きに渡りデイゴンに仕えているが、初めからそうではなかった

誓いの絆が固く、相互に信用がある時、伝統も固くなる

誓いの絆が弱ければ、苦痛と、恥と、損失と、闇と、大いなる恐怖に繋がる

我々が人をどう思っているか

汝はスキャンプを滑稽に思い、ヴェルマイを粗野に思うかもしれない

ならば、我々が汝らをどう思っているかわかるか?

汝らは獲物であり、我々は狩人なのである

スキャンプは猟犬であり、ヴェルマイは勢子なのである

汝らの肉は旨く、狩りは良き余興である

汝らが狐や兎を讃え、その機転や素早さを褒め、猟犬がその肉を裂くのを惜しく思うのと同じく、我々は時に獲物を褒めそれが我々の罠や追い立てをかいくぐると密かに喝采を送るのである。

だが、万物の例に漏れず。汝らはやがて廃れ、荒れていく。齢を重ね、醜く、弱く、愚かな存在へと成り果てる。遅かれ早かれ、汝らは失われるのである

時に獲物が踵を返し、我々に噛みつくことがある。だがそれも些事に過ぎぬ。傷ついたり疲れたとしても、我々はその場から飛び去り、回復するだけである。時に価値あるものが失われることもあるが、その危険があればこそ、狩りの楽しみも高まるのである。

人の謎

人は定命であり死と挫折と損失から逃れられぬ運命にある

我々が理解できぬのは、汝らが何故、絶望せずにいられるかである

デイドラ全書The Book of Daedra

アズラは闇と光の橋渡しをする神秘の領域である黄昏と暁をつかさどり、「ムーンシャドウ」「薔薇の母」「夜空の女王」とも呼ばれる。

ボエシアは虚偽と陰謀、秘密裏に行われる殺人、暗殺、反逆、法に依らない権力の転覆などをつかさどる。

クラヴィカス・ヴァイルは儀式的な祈祷や契約による力の授与や願いの成就をつかさどる。

ハルメアス・モラは運命の流れをつかさどる。星と天から過去や未来を読みほどき、知識や記憶という財宝をその手に有する。

ハーシーンはデイドラの娯楽でもある偉大なるゲーム、狩猟をつかさどり、「狩人」とも「獣人の父」とも呼ばれる。

マラキャスは拒絶されしもの、追放されしものたちの後見人であり、誓約や血の呪いの守護者でもある。

メエルーンズ・デイゴンは、破壊、変化、変革、活力、野望をつかさどるデイドラである。

メファーラは領域のはっきりしないデイドラである。「蜘蛛糸を紡ぐもの」「紡ぐもの」「蜘蛛」としても知られており、定命の者に介入すること以外に統一性がない。

メリディアは領域のはっきりしないデイドラである。生きとし生けるものの活力と関わり合いがある。

モラグ・バルは定命の者を支配し、奴隷とするデイドラである。人間の魂を刈り取って懐柔することを望んでおり、そのために定命の者の領域に不和の種をばら撒いている。

ナミラは古代の闇をつかさどるデイドラである。「霊魂のデイドラ」とも呼ばれ、あらゆる悪霊や邪霊を統べている。蜘蛛、昆虫、ナメクジなどの人間が本能的に嫌悪する薄気味悪い生物と関わり合いがある。

ノクターナルは夜と闇をつかさどるデイドラで、「夜の女王」としても知られる。

ペライトはオブリビオンの最下層階級を統べる「親方」とも呼ばれるデイドラである。

サングインは快楽主義的な供宴や道楽、よこしまな欲望への耽溺をつかさどる。

シェオゴラスは乱心をつかさどるデイドラで、その真意は誰にもわからない。

ヴァルミーナは夢と悪夢をつかさどるデイドラで、凶兆はその領域より生まれる。

「マラキャス」の項には印がつけられており、「神の怒り」に関する興味深い記述がみられる。要約すると、マラキャスに祝福されたこの武器は人の為に作られたもので、デイドラがその力を引き出そうとするとオブリビオンの虚空へと追いやられてしまうらしい。

デイドラの伝説のアーティファクトの中でも、「アズラの星」や「シェオゴラスのワバジャック」などはよく知られているが、災厄、マッカーンの槌、デイドラ殺しなどは馴染みが薄いようである…

ところが、マラキャスは「災厄」を祝福して仲間のデイドラに対抗しうる力を吹き込んだものの、それが彼らの手に落ちることはどうしても避けたかったため、卑怯者と落伍者の私闘における武器にしようと考えた。こうした事情からマラキャスは、邪悪な仲間のデイドラが武器の力を引き出そうとしても虚空が開いてその者を飲み込み、オブリビオンの彼方へと放逐されるよう呪いをかけ、そこから時の乱れのない実在と非実在の世界へ追い返そうとしたのだ。

最も深い闇Darkest Darkness

モロウウィンドでは、崇拝者も妖術師も位の低いデイドラを召喚し、奴隷や従者のようにこの世に縛りつけている。

妖術師の召還するデイドラの僕のほとんどはわずかな時間で消えてしまい、命令系統もきわめて心もとなく、縛りつづけておくのは難しい。このおかげでデイドラの暴走を防げるのだから幸運と言えるかもしれないが、数分もあればこの僕たちは敵だけでなく術者にも手ひどいダメージを追わせることができる。

崇拝者はデイドラの僕を儀式や契約でこの次元に縛りつけることができる。デイドラの僕は少なくとも物質化した姿が破壊されたとしても、その元となる霊的存在がオブリビオンに逆流してしまうまで、いつまでもこの世界に留まれるようになる。遺跡や墓でデイドラを見かけることがあったら、彼らはこの世界の長きにわたる訪問者であると考えてもらっていいだろう。

同じように、デイドラの主によって武器や鎧に縛りつけられる下級の存在にも、わずかな時間だけ召喚されるもの、壊れたり消えたりしないかぎり存在しつづけるものがある。聖堂の信者や召喚士の呼び出す魔力の武器や鎧は効果があまり持続せず、「メエルーンズのカミソリ」や「クラヴィカス・ヴァイルの仮面」のようなデイドラのアーティファクは効果が長い間持続する。

モロウウィンドのトリビュナル聖堂では、不滅のアルムシヴィに従属する下級の霊魂としてデイドラを崇拝している。アルムシヴィとは、アルマレクシア、ソーサ・シル、ヴィベクが三位一体となった神である。下級デイドラは善のデイドラと悪のデイドラに分類され、善のデイドラはアルムシヴィの権威に服することをいとわないが、悪のデイドラはアルムシヴィに反抗的で、仲間よりも敵になることの多い背教者なのである。

善のデイドラはボエシア、アズラ、メファーラである。ハンガーは「策略の父」ボエシアとつながっている強大かつ凶悪な下級デイドラである。しなやかで長い手足と尻尾を持ち、その顔は獣のようで、麻痺能力や武器や鎧を解体する能力で知られている。翼もつ黄昏は黄昏と暁の女神であるアズラの死者である。西方の野蛮なハーピーとよく似ているが、ふくよかな体つきははるかに魅力的で、すらりと伸びた鉤爪は比べものにならないほど強力だ。スパイダー・デイドラはメファーラの僕で、蜘蛛と人間の中間のような姿をしている。禿げあがった頭、胴体、両腕はどれも人間のようで、8本の足を持ち、巨大蜘蛛の甲殻によって守られている。残念ながら、このデイドラはあまりに凶暴で理性に欠けるため、「紡ぐもの」メファーラの命令を忠実に守るとは言いがたい。そのため、モロウウィンドでこうした怪物を呼び出す、あるいは支配しようとする召喚士はまれである。

悪のデイドラはメエルーンズ・デイゴン、マラキャス、シェオゴラス、モラグ・バルである。すばしこくて煩わしいスキャンプ、猛獣のようなクランフィア、気高き死の番人ドレモラはどれもメエルーンズ・デイゴンと繋がりのある下級デイドラである。ワニの顔を持つヒューマノイドのデイドラはデイドロスと呼ばれるモラグ・バルの僕である。一方、体はいかついが血の巡りの悪いオグリムはマラキャスの奴隷である。シェオゴラスの下級デイドラであるゴールデンセイントは半裸の女性の姿をしており、魔法に耐える力がとても強く、危険な魔法使いである。

モロウウィンドでしばしば遭遇するその他の下級デイドラに、精霊、もしくは元素の精霊がいる。精霊とデイドラの主の間に連帯感はなく、
彼らと手を結ぶこともない。気まぐれに世界を渡り歩きながら、誘惑や衝動、あるいはタイミングによって立場を変えるのである。

コールドハーバーの自然On the Nature of Coldharbour

エリンヒルのファラスタス 著

これは第八講である。コールドハーバーの自然について扱う。どうやらいるはずの人数より多くの人がここにいるようだ。だからどうかご自分の台帳を確かめてほしい。もしトランスリミナル・ブリッジズと書いてあったら、部屋を間違えている。

コールドハーバーは残忍、奴隷、吸血症、そしてその他様々な嫌悪の対象のデイドラ公、モラグ・バルによって支配されるオブリビオンの領域である。それゆえ、気持ちの良い場所ではない。その次元の説明はオブリビオンのいかなる研究においても相変わらず広く多様化しているが、コールドハーバーは陰気で冷たく、そして大部分は生物が住んでいない。恐怖の毒気が充満した場所で、そこでは彷徨える魂が永遠に苦しめられているという点ではすべての説明は一致している。

これは、私の前回の講義で述べた、まさしく混沌によって作られているオブリビオンの次元が、その支配者の本質を反映した姿と気質を帯びているという論点を強調する。それゆえコールドハーバーは、強力なモラグ・バルの目的を具現化するよう形成されてきた。

ではそれらの目的とは何だろうか?最近折よく、ステンダール教団の後期カーディナル・ベルフォートの蔵書庫と文書を手にしたので、私はこの問題に権威をもって話すことができる。カーディナルはタムリエルから全種類のデイドラ信者達を取り除くことに生涯を捧げた。彼は特に、モラグ・バルの崇拝者達の迫害において厳格であり、そしてその時代の彼らの胸の悪くなる小論文や論文を多く手に入れた。

これらの資料の研究は、モラグ・バルの欲望、とりわけ定命の者達の魂を奴隷にすることについて明らかにした。この目的、つまり魂の状態をあの世への旅からコールドハーバーの次元での監禁と隷属に転換するこの最終的な目標のために、様々な厭わしい卑怯者達が雇われた。モラグ・バルの領域への到着に際し、魂はオブリビオンのいくつかの解き放たれたクリエイシアに自身を結び付け、生きていた時の外観を持つ見せかけの肉体を形成する。魂なき者と呼ばれるこの悲しき奴隷達はその後、彼らの主である奴隷王モラグの栄光と快楽のための苦痛の中で骨を折って働く。

私はこれまで明らかにされていなかった教団のこれらの秘密を伝える、だから諸君達は…ホール内のあのひどい混乱は何だ?あんな身の毛もよだつ叫び声の中でどうやって講義しろというのだ?このような状況では働けないな。

コールドハーバーの奴隷の穴The Slave Pits of Coldharbour

キンブリーフィング 3/97:

さてお前達は身体喪失も痛みの輪の刑を宣告されることもなく穴での最初の2シフトを生き延びた。今やそのすべてを知ったと思っている。そうではないのだ、キンワームよ。最初の2シフトは、どんな馬鹿でもできる簡単な仕事を任務として与える。だからお前達は、ありがちな失敗で私達を当惑させはしないだろう。しかし次は3番目のシフトだ、キンワーム達よ。これからノルマの話をする。

これらの魂なき者はお前達の気晴らしのために連れてこられたのではないのだ。オーバーキンとして、それらは私の気晴らしのために連れてこられたものでもないと言える。それらはただ単にデイドラ公の気晴らしのためにここにいる。そして彼は大いに楽しむ。だから注意を払え。お前達は魂なき者を割り当てられた。それらがする必要のあることを命じられ、そして必ずそれをやらせるのだ。

そしてお前達は、それについて情け容赦ない態度でいるように。楽しい部分だがコツのいる部分でもある。なぜなら私達は限られた数だけの魂なき者を手にし、それらを長続きさせなければならないからだ。もちろん、魂なき者はきっと苦しむだろう。でなければ、お前達は苦痛のノルマを達成しない。しかし魂なき者をあまり早く使いきってはいけない。でなければお前達は苦労のノルマを逃すだろう。そしてもしお前達がそのどちらかのノルマを逃したら…

そうだ。お前達は痛みの輪を見たことがあるな。

そういうことだ。キンワーム達よ・苦労と苦痛、そしてその二つの間のバランスを保つ。お前達の何人かは失敗し、ゆっくりと苦しい身体喪失を受ける。だが他の者達は内なる嫌悪と勝利を見つけ、ノルマを満たし、至福の監房での時間を手に入れるだろう。それはお前達次第だ。キンワーム達よ。切り開くのか、それとも痛みかだ。