オーリドンの伝承

Auridon Lore

アイレン女王の台頭The Rise of Queen Ayrenn

スカイウォッチのヌーレテル 著

忠実なるオーリドンの市民よ!私はアルドメリ・ドミニオンの初代イーグル・プライマーチ、サマーセット諸島の上級女王、ウッドエルフのカモラン王家と友誼を結び、カジートのたてがみの親友である、我が女王アイレンの側近であることの喜びを感じている。

王室の側近として、私はアイレン女王の人生と経歴を略叙することにした。我が女王を己の心に迎え入れるつもりで読んでいただきたい。

女王陛下の幼きころは、島の多くの子供たちと同じように過ごされた。父君の側で剣の訓練を受け、我らの黄金の浜辺にて波間を馬で駆けた。そして、女王陛下は柔らかな桃色の花弁の下で、歴史と詩文を暗誦された。

20年以上前、我らの前向きな王——アリノールのヒデリス王、エセリウスで永遠に栄誉に浴されよ——は、殿下の迷宮への道を祝うため、水晶の塔にて王族と集まりになられた。この集中的な勉学の期間は、歴代のサマーセットの統治者に課せられるものであり、殿下はその期間を両腕を広げて迎える予定だった。その時が近づくと、女王だった殿下は失踪していたのだ!

長い捜索活動が開始される間、実際のところ、殿下はご自身の運命を切り拓いていた。殿下はアダマンチンの塔のディレニと共に生きるために、密かにバルフィエラ島に行かれた。殿下はそのクランの者たちに戦闘技術の訓練を受けた。彼らは殿下の単なる貴族の剣さばきを熟達した刃の舞踊へと変えたのだ。殿下の浜辺での乗馬は、馬上の強行軍となり、祖国の木の下での殿下の詩文の吟唱は、神秘的な芸術分野の研究の道を切り拓いた。

殿下のタムリエルでの冒険については、吟遊詩人と一般の書記たちに数多く書かれた。さよう、かつて熊に騎乗されたというのは事実だ。スカイリムのフロスト・トロールを狩り、ドワーフの遺跡の奥深くを探検し、シロディールの海賊船の乗組員になった。殿下はかつてアリクル砂漠の空を巨大な凧で飛び、イレッサン・ヒルズのネレイドと踊った。これらの冒険は理由のない戯れではなく、思慮のある歩みだった。それは、まさに剣の焼き入れのようなものだった!

ヒデリス王が薨去され、遠く離れた島々が歴史に飲み込まれそうになった時、アイレン王女はご帰還された!陛下は塵に落ちた冠を拾い上げ、父君の剣を取り、我々を世界へと導いてくれた。

殿下は我々を世界へと導いてくれ、我が岸辺の近くで待つ、新たな盟友を見出してくれた!殿下の高貴なるウッドエルフたちと猛々しきカジートとの繋がりは、タムリエルをまたぐこの強力なドミニオンの形成を可能にした。我々はシロディールの暗黒の心臓を襲撃できる態勢にあり、戦争を好む北の同盟からの略奪を退けられる。

殿下の勇気のベールの陰から誹謗中傷する者はいるが、アイレン女王はドミニオンの脈打つ心臓なのだ。我らの富と繁栄は、殿下失くしてはありえない。

エボンハート・パクトに関してRegarding the Ebonheart Pact

教化サピアルチ、シマーリーンのアイカンター 著

我々の従姉妹ダークエルフは、自分たちの先祖の裏切りに対する罰を正当に受けている。デイドラを信奉して見習おうと試みたために、呪いによって身体は醜くなり、国土は吹き飛ばされてしまった。今やその呪われた領土の境界線を離れ、本土の他の地を自分たちの異端信仰で染まらせようとしているところを見れば、その教訓はどうやら不十分だったようだ。彼らを意のままにする、ずる賢い悪魔の三人は、お人よしのノルドと、奴隷トカゲのアルゴニアンをだまし、このばかげた突拍子もない行為に参加させている。

エボンハート・パクトにシロディール統治を許してしまうのは、帝国を人間の部族に任せるくらい愚かなことだろう。トリビュナルはニルンにとって、最終的には無頓着で衝動的な人間よりも危険な存在である。彼らの力を破壊した上で、取り憑かれた大陸の隅へと再び追いやらなければならない…永遠に。

サルモールのチラシThe Stormfist Clan

教化サピアルチ、シマーリーンのアイカンター 著

諸島の忠実な市民よ、サルモールの声明を聞け。我らの新たな同志である、カジートとウッドエルフについて言葉の証人になれ。

我らの新たな同志、ウッドエルフとカジートとの結合は迅速に進んでいる。同盟の調和を促進するために、サルモールに忠実なる密偵たちが役に立つ通知を以下の短いリストにまとめた。この義務的な指針を歓迎できれば、我らの新たな同志は好意的に見てくれるだろう。

—カジートを「猫」、「子猫」、「毛玉」や他の猫が関連する差別用語で呼んではいけない。

—カジートの珍味の多くはとても甘く、もしくはムーンシュガーと呼ばれるエキゾチックな材料で味付けされている。食事をする時は気をつけるように。

—許可なくカジートの尾を触ってはいけない。

—我らが味方、カジートの民は珍しい方言を使う。彼らの会話をあざ笑うこと、マネすることはとても無礼なことである、アルドマーらしくない。

—ウッドエルフを食事に招待する時、彼らにとって森は聖なる場所であることを知っておこう。鹿の肉は出してもいいが、サラダはダメだ。

—ウッドエルフのことを、「チビたち」、「小人たち」や背に関する差別的用語で呼んではいけない。

—ウッドエルフの酒は、我らのものとはかなり違うので、飲む時は注意が必要。

—ウッドエルフに彼が食人種であることをほのめかしてはいけない。また、死者の処分はどのように行うのか伺ってはいけない。

鷲よ、団結せよ!

シーバイパーの牙Fang of the Sea Vipers

発明家テレンジャー 著

私は女王陛下の側近であるヌーレテルの要請で、シーエルフとして広く知られるピャンドニアのマオマーについて、簡潔な報告書を作成した。さあ、読みたまえ、そして知識の光明によって恐怖を取り除くのだ。

彼らの古代史はドミニオンの全域でよく知られているので、ここで詳しく述べる価値はない。オルグヌム「王」として知られるアークメイジが、隠れ島の追放者たちを長い間先導したと言えば十分だろう。その者は自分の若さと活力を、邪悪な呪文と儀式、そして生贄を使い、絶えず再生させていた。

すでに耳にしたことのあるその他の噂話も事実である。マオマーはオルグヌムの儀式によってシーサーペントを支配できる。中には、波間をぬって獣に乗る術を習得した者もいるし、より大きくてさらに扱いづらい獣が、彼らの最大の艦隊を支援するため泳いでいるのだ。

今現在オーリドンを脅かす船団は、シーバイパーと名乗っていることが明らかになった。三旗の戦いにおける最近の状況が、バイパーをオーリドンや本土辺りの海へと呼び込む原因となっている。この機に便乗したマオマーは、今や同盟間の争いにおいて自らの勝利を収めようとしている。

オーリドン第一海兵隊およびドミニオン海軍、そしてその他の者たちも、マオマーの前進を止める用意はいつでもできている。バイパーの形跡を見た者は、すぐにキャノンリーブか、近くのドミニオン将校まで報告するように。

鷲たちよ、我々の巣をバイパーに取らせはしない。慎重に、だが勇気を持って挑むのだ。

ダガーフォール・カバナントの罪Crimes of the Daggerfall Covenant

概要

教化サピアルチ、シマーリーンのアイカンター 著

ダガーフォール・カバナントの諸王国には、ディレニの従姉妹たち、北西タムリエルを統治する正当な権利のあるハイエルフに、ひどい抑圧を与えた成り上がりの混血たちが住んでいる。彼らはアレッシア教団として知られる、危険な、大量虐殺の狂信者の台頭に大きく加担した。自分たちの海賊がアルドマーの船舶を襲うことを許容しているのだ。ブレトンも見境がないために、残忍なオーシマーを仲間として受け入れた。(オーシマーだって!一体想像できるか?)相当な数の野蛮な部隊を集める能力はあるが、この堕落した混血に現在ムンダスを脅かす、神による天災に対処する知恵や知識があるという証拠はない。できるだけ早急に彼らを懲罰し、制圧しなければならない。ドミニオンが世界を救い…そして、将来世界を守る仕事を進められるように。

ファーストホールドへの到着The Lay of Firsthold

エルフは試練によって追いやられ
スロードだらけの海を越えてサマーセットへ。
ああ、アルドメリス!旧エルノフェイ!その優しい顔立ちが今でも思い浮かぶ。
今でも我らはそよ風の口づけに心を奪われるが
それは心の記憶の中だけで、
心髄の深遠への悲しみが
すべてのアルドマーを満たす。
マグナスが沈んで夜の時刻が訪れた時、
フクロウと亡霊が忍び足でうろつきまわり
目がもはや星を見られなくなった時、
幻想が深遠を横切り
アルドマーは強烈で多彩な領域に
色を染められたオーリドンに
無関心な宿命を逃れ
東の島々へとなぜ来たのか。

船の前の泡の中から浮かび上がる
その9つの船首はキラキラ光るなぎさを切って進む。
先頭の船からトリナーンが降りてきて
銀色の浜辺から緑に覆われた丘まで、
この地すべてのキンホールドだと主張した
その姿は金色の暁にずいぶんと染められていた。
オーリドンの名前はそのようにして、
ほどなくその王国に与えられた。
そこは未開の地であったが、
一度は後悔したトリナーンの心を瞬時にして掴んだ。
彼は剣を抜いて血を抜き、
決してこの地を出ないと誓いを立てた。
彼らは陸に降り立ち、
家を建てて街を作り、製錬所を建てて群衆を築いた。
そして牧草地を耕し、浜辺を整備して田畑を作り、
エルフが繁栄することのできる郷里を作った。

その後、丘から怒って吠えながら、
目を飾りたてた角のある醜い者がやってきた。
ギータス、ウェルワ、イリアディの
求めたのはアルドマーの残酷な死。
何人かの者はこう言った。改めて船に乗り込み、
遠くのもっと安全な陸地を探し求めるべきであると。
しかし果敢なトリナーンの勇気によって、
先祖の物語を利用して、
オーリドンの織り機で織った
ヴァルラの石の神聖文字に刃を付け、
頭上の星から力を引き寄せ、
怪物を倒し破滅へと追いやった。
皆に恐ろしい魔法で苦しめられながら、
怪物は丘と高台の向こう側へと急かされ、
雷撃、氷、炎で吹き飛ばされて
最後には一人ずつ倒れた。

そのように紡いだ呪文によって
護られたオーリドンはその後、
工芸と農業、イマゴフォームに彫刻と、
アルトマーの器用さの下で繁栄したが、
他のアルトマーがそれよりも感心したのは
トリナーンの勇気ある偉業で、
他のキンホールドがすぐに後からサマーセットへと、
大変恵まれた穏やかな航行でやってきた。
ただ、そのキンホールドによる繁栄は
諸島のいたるところで見られたが、
ファーストホールドの岸を奮起させる
アルドマーの上陸が明らかになり、
彼らは果敢なトリナーンのその勇気、知恵、
洞察力を深く尊敬した。
天を利用し、
窮地のアルドマーを護った英雄を。

オーリドンは素晴らしき家。
マオマーを倒し、スロードを追い出す。

ベールを着けるのはなぜだ?Why Don the Veil?

善良なエルフよ、ベールを着ける理由をご存じだろう。この諸島が脅威に直面していることを、心の中では分かっていよう。我々は裏切られているのだ。

我々の指導者は今、怠け者の子供に従っている。猫と小人たちの女王だ。血統の偶然によって玉座を与えられた策士だ。玉座の間よりも茶碗の家がお似合いの娘だ。

この諸島は我々のものだ!アルドマーの末裔であるハイエルフが、花々の下で何もせず座り込んでいなければならないなんて。平原からやってきたみすぼらしい混血が、エルフのようにはしゃいでいるのをただ見なければいけないなんて。森から来た獣の言葉が我々の道で話されるのを、聞かなければならないなんて。

我々の生活にこのような暴力を引き込んだのも、引き起こしたのも我々ではない。こんな対立は、予想もしなかったし招いてもいない。民の持つ真の強さは、このような瞬間が訪れた時、いかに立ち上がるかで定められる。

オーリドンのエルフよ、今こそ立ち上がれ。ベールを着けるのだ!女王に、そのドミニオンに対抗し、敢然と立ち上がれ。そして、サマーセット諸島を取り戻すのだ!

上級公ライリスと魔術師ギルドKinlord Rilis and the Mages Guild

魔術師ギルド上級遺物師ヴァラステ 著

幹部の者として、上級公ライリスXII世が魔術師ギルドの創設者であるという意見についての説明と根絶が必要だと思われる。一般の者には、上級公の残酷さとサディズムが広く知れ渡る前に、彼は庶民を守るため「危険な魔術師」を支配する協定がまとまるように取り計らったとされている。これは事実ではない。

イアケシスの生徒、ヴァヌス・ガレリオンは確かに大都市での魔法の実験を通じて、市民の間の一般的な考えを侮辱した。彼はファーストホールドの都市に、数多くの学生や発明家たちを呼び集めた。魔法使いが近接する利点を証明しようと初めて試みたのだ。強力な儀式などのためではなく、勉学、研究と友愛のために。

この単純な前提がファーストホールドの住民をあまりにも怖がらせ、彼らは統治者である上級公ライリスXII世に助けを求めた。今では下品な肩書きで呼ばれているが、ライリスは何よりもまず政治家だった。彼は、当時「ガレリオンの愚行」と呼ばれたものに、魔術師と一般人を対立させる機会を見出した。

よくいろいろと推測される「憲章秘密会議」には、ライリス、イアケシス、ガレリオンや、その他諸島とサイジック会の著名人たちを呼び集められた。同意があったため、その会議の記録は確かに残されなかった。だが、このことはご記憶いただきたい。ライリスは会議の開催を許可し、ガレリオンの行動も許可した。すべては己の目的のために。

もちろん、今思い返せば、アルテウムの遺産は新たなる魔術師ギルドの立派な財産だ。我らはギルドの旗印のもとに正々堂々と集い、これから何世紀先も間違いなくそうするだろう。ただ、このことは覚えておいて欲しい。ライリスXII世は危険なエルフだった。秘密会議が行われていた時も、彼は邪悪な力と取引し、デイドラと協定を結んでいた。

我らが仕える誇り高き団体は、彼の思惑と異なり、それに反したことで今現在存在している。

様々な宗派:ハイエルフVarieties of Faith: The High Elves

タムリエルにおける様々な宗派:ハイエルフ

帝国大学 ミカエル・カルクソル修道士 著

八大神

(ただし、帝国外のほとんどのアルトマーは神を八柱に制限することを認めない)

アーリエル(アルドマーの王):

エルフのアカトシュはアーリエルである。アーリエルはアヌイ・エルの魂であり、同様にアヌイ・エルは「すべてのもの」のアヌの魂。ほとんどのアルドマーの神々の長である。大抵のアルトマーとボズマーがアーリエルの直接の子孫であると主張している。唯一知られる欠点として、アーリエルは定命の者の次元の創造で役目を果たすことに同意したが、それは永久なる霊魂の世界からエルフが永遠に分断される行いであった。その埋め合わせをするべく、アーリエルは神話の時代に最初のアルドマーを率いてロルカーンの軍と戦い、強大な力に打ち勝って、アルトマー、アルトモラ、旧エルノフェイの、最初の諸王国を建立した。その後彼は、信奉者たちが定命の者の次元から逃避するのに必要な道のりを学べるよう、皆が注目する中で天に昇った。

マグナス(メイガス):

魔術の神であるマグナスは最後の最後で世界の創造から身を引いたが、その代償は大きかった。この世に残っている彼の名残は定命の者たちに魔法として認識され、操られている。伝説の一つでは、定命の次元を生み出すこと自体はロルカーンの発案だったものの、実際の構築に必要な図式や図表を作り出したのはマグナスだったとされている。

トリニマク:

初期アルドマーの強靭な神で、場所によってはアーリエルよりも人気がある。彼は人間と戦うために軍を率いた、最初のエルフ種族の戦士の魂であった。ボエシアは、アルトマーの群衆に耳を傾けさせるためにその形になったと言われている(いくつかの物語の中で、彼はトリニマクでさえ食べている)が、それによって結果的にチャイマーに変えられてしまった。トリニマクはこの後、神話の舞台からは姿を消すが、恐ろしいマラキャスとして戻ってくる(アルトマーのプロパガンダは、これをダンマーの影響がもたらす脅威として表現している)。

イフレ(森の神):

時の竜アカトシュが神の王であっても、イフレは「現在」の霊魂として崇拝されている。エルフによると定命の者の次元の誕生後、何もかもが混沌に陥っており、最初の定命の者たちは植物に姿を変えては動物に変化し、再び戻ることを繰り返していた。そこでイフレがアース・ボーンズを意味する最初のエルノフェイ、もしくは「アース・ボーンズ」に姿を変えた。これら自然の掟が確立した後、定命の者たちは新たな世界を理解することで、ある程度の安全を確保できるようになったという。

ザルクセス:

ザルクセスは先祖と秘密の知識の神である。始めはアーリエルの書記だった彼は、時間が始まって以来、小さいものも大きいものも含め、これまでのすべてのアルドマーの偉業を記録している。妻のオグマは、歴史上自分が気に入った節目から作り出した。

マーラ(愛の女神):

万物の女神といっても過言ではない。起源は豊穣の女神として神話の時代に始まった。創造を生んだ宇宙の女性の本源である、「アヌアド」のニールを時に連想させる。アルトマーにとっては、アーリエルの妻。

ステンダール(慈愛の神)

慈悲と公正な規範の神。アルトマーの初期の言い伝えの中では、ステンダールは人類の弁証者である。

シラベイン(ウォーロックの神):

アルドマーの魔法の神の先祖であるシラベインは、スロードの衰退でベンドゥ・オロを支援した。魔法の指輪を慎重に使い、スラシアの疫病の災厄から多くを救った。また、魔術師ギルドの若いメンバーから好かれているため、見習いの神とも呼ばれる。

—アルトマーにおいて崇拝されるその他の重要な神々—

フィナスタール:

サマーセット諸島の英雄の神。アルトマーに歩く歩幅を短くすることで自然に100年寿命を延ばす方法を教えた。

ロルカーン(不在の神)

この創造者、詐欺師にして試練を与える神は、タムリエルに存在するどの神話にも登場する。彼の最も一般的に知られる名前はアルドメリの「ロルカーン」か破滅の太鼓である。彼は父親であるパドメイが始まりの場所に不安定さをもたらして現状を乱したのと同じように、原初の魂を説得、もしくはけしかけて定命の者の次元を生み出させた。その世界が実現すると、ロルカーンは神の中心地から離れ、伝承によっては不本意ながらという説もあるが、原初の神々の創造地をさまよう。彼と彼の「計画」については文化によって解釈が大きく違う。ハイエルフにとっては崇高なる力において最も不浄な存在であるが、それは彼らの精神世界へのつながりすべてを永久に壊したためである。言い伝えにおいて彼はいつでもアルドマーの敵であり、ゆえに初期の人類にとっては英雄である。

鷲の影の生活Life in the Eagle’s Shadow

暁星の月、1日:
新たな年、新たな始まり。昨夜、シルネは私の婚約者になることを承諾してくれた!私はマティースン一の運の良いエルフだ。すでに鍛冶場を使えるよう、ヨンディンに手配した。私は父の古い剣を溶かし、マーラの指輪の土台にするつもりだ。マティースン鋼は兵士たちにとって十分満足できるものなんだろう?私の最愛の人にとってもそうだろう。

薄明の月、3日:
伝令が島中で声を上げている。新たな女王が誕生した!それで、私たちは同盟か何かの一員になった。よりによって、ウッドエルフとカジートとの同盟だ。「アルドメリ・ドミニオン」と呼ぶらしい。誇らしく思ったが、父は文句を言うだけだ。父は「あのような連中」を島に入れては、仕事に悪い影響がでる、と言っている。

薄明の月、10日:
夜中に、シルネと一緒にお忍びでスカイウォッチに行った。道端で寝たのがとてもワクワクした。まるでギルドの戦士だった!祝賀を告知するちらしは島中に溢れ、こんなことは見過ごせないと私たちは思った。老いたエルフにこっぴどく怒られることはわかっている。だけど、いいんだ。女王、たてがみとボズマーの樹の従士をこの目で見る機会を見過ごす?ありえない。

薄明の月、11日:
今日が何かの兆候だったのであれば、父は正しかった。パレードは素晴らしかった。女王が門まで続く道を、海兵隊のファランクスを率いながら歩んだ。その後、樹の従士の狡猾な密林のレンジャーがやってきた。ヴァインダスク、と誰かが言っていたかな?それから、髪を編んだたてがみたちが来た!カジートの戦士は素晴らしかった。

私の小銭入れを盗もうとしていた、あの毛むくじゃらのスリよりも素晴らしかった。逃げる前に捕まえようとしたが、カエルレースに熱中していた港の職員たちの中へ紛れ込んでしまった。そのまま消えてしまった。シルネは大丈夫だと言ってくれた。計算したよりも早めに出ればいいと。ちくしょう。彼女をがっかりさせたくない。

薄明の月、17日:
ちくしょう!シルネとスカイウォッチから戻ってきてから、すべてがごちゃごちゃだ。父は私たちがこっそり行ったことをカンカンに怒っていた。あのスリにどれだけ小銭を盗まれたかを教えたら…鍛冶場の仕事を学んでいたとき以来、あれほどあの老人に殴られたことはなかった。

それで、数日前、私たちみんなは鍛冶頭の事務所に連れていかれた。コンダリンから、同盟のおかげでエルフの商人たちが「あの連中」を雇えるようになったという報告を受けた。「彼ら」に仕事を与えれば、サルモールからお金がもらえるらしい。

それで、彼は父の契約を破棄したんだ!鍛冶場で何十年も働いたのに、いまでは猫人間と食人族が代わりに仕事をしている。すべてはこの忌々しい同盟のせいだ。父は自分のことよりも、鋼のことを心配している。彼らはやり方を知らないと言っている。天の星よ、何が起きているんだ?

蒔種の月、5日:
私は夕飯を盗まなければいけないほど落ちぶれたが、もちろん捕まった。夕暮れ後にシルセイレンに忍び込み、おいしそうな白魚の香りが漂っていた。採用担当者が街に来たあの午前中、シルネの母親が作ったスパイス入りのパンを食べて以来、私は何も口にしてなかった。

街に忍び込み、地元の宿屋のにおいをたどった。どうやって調理場に入ろうか考えていたときに、大きな手が私の肩を叩いた。キャノンリーブの部下だった。彼は私が何を企んでいたかはっきりわかっていた。まるで、街に忍び込んでからずっと私のことを監視していたように。今は、リーブの邸宅の近くにある牢屋に座りながら、裁きを待っている。少なくとも、ここでは手記を書かせてくれる。

クソくらえ、アイレン!クソくらえ、ドミニオン!

蒔種の月、10日:
今までの私の人生は終わった。ベールの下で新たな人生が始まった。ヴァラノという誇り高き男であるキャノンリーブ自身も、ドミニオンの下での人生に疑いを持っていたらしい。彼は女王と親友だったらしいが、歳月が彼女を変貌させてしまったと心配している。

ヴァラノはベールの継承者という団体の一員だ。彼らは自由を得るために戦う人たちだ。彼は難しい選択肢を選ぶことを辞さず、外国の影響が我らの土地を汚すのを止めようとしている。

私はあのシルセイレンの地下にある牢屋から連れ出されたとき、重労働を覚悟した。それどころか、私は新たな家族を見つけた。ヴァラノは私が抱える問題のすべてを知っていると言ってくれ、私がドミニオンの採用担当者に連れて行かれたことも知っていた。彼は私を助けてくれると言った。そして、私が自分を助けられるように手伝うと。

私はそのようにする。

イーストマーチの伝承

Eastmarch Lore

スカイリムのオークOrcs of Skyrim

最果ての放浪者ソーラ 著

スカイリムのノルドにとって、これまでのところオークほど叩いても叩いても自分たちを悩ませる存在は他にない。あの牙の生えた連中が我々の麗しい郷土の占有を主張したのは、遠くイスグラモルが「亡霊の海」を渡る以前までさかのぼる。当時の記録はほとんど現存していないが、同胞団がスノーエルフを駆逐するかたわら、オーク要塞を一つ残らず滅ぼしたことについては、さまざまな歴史に言及がある。

オーク要塞は防備の堅い拠点であり、鉱物資源の鉱床の周囲に築かれることが少なくない。十数世帯が暮らせる施設を擁し、周囲には最強の軍勢以外どんな相手でも撃退できるよう設計された防壁が巡らせてある。領内のオーク要塞を滅ぼそうと企てた挙句、果たせずに命を落としたことで歌にうたわれ、記憶にとどめられている首長は数知れない。オーク要塞を単に滅ぼせないだけならまだしも、滅ぼしたはずの要塞が世代も代わらないうちに復活することもしばしばである。それを防ぐにはノルドの砦で対抗するしかないが、その場合は兵員と糧秣を絶えず補給しなければならない。

岩を積みあげただけの砦とも呼べないような代物を数年以上にわたって守る余裕のある首長などほとんどいない。だから、オーク要塞は依然として我々の土地の病巣であり続けている。オーク要塞の中にはこの調子で数千年とは言わないまでも、数百年存続しているものがある。イーストマーチのクレイドルクラッシュにある古いオーク要塞などは、地下の鉱脈が完全に枯れてしまったにもかかわらず、これまで攻め落とされたこともなければ打ち捨てられたこともないと言われている。

スカイリムにおけるオークの勢力が絶頂に達したのは、第二紀の初頭、ヤシュナグの族長国が樹立されたときである。ブレトンとレッドガードの連合軍によるオルシニウムの破壊を契機に民族大移動を強いられたオークたちは、北の大地全土に離散する。ハイロックを追われたヤシュナグとその民は東へと逃れ、いにしえの権利によって自分たちのものだと彼らが感じるスカイリムの土地を奪還しようとした。西スカイリム王のスヴァートルは、西王国を蝕むオークやリーチの民を撃退する能力に欠けていた。ヤシュナグの族長国は30年余りものあいだ西ファルクリースを悩ませ続けた末、第二紀の467年に「ヤシュナグ殺し」のハックヴィルドによって焼き払われた。

ハックヴィルドがファルクリースの首長になったのは、父親である先代首長が戦場でヤシュナグに殺されたからである。若き首長が継承したのは、西から攻めてきたオークの侵略者たちに大部分を占領された、崩れかけの砦以外にほとんどなかった。ハックヴィルドはヤシュナグとヤシュナグに従うオークの勇者たちに決闘の儀式で勝負をつけようと申し込み、1人ずつ倒していったと言われている。この知られざるオークの儀式をハックヴィルドがどうやって知ったのかは詳らかになっていないが、指導者が倒されたのを見て、ヤシュナグの追従者たちは族長国を捨て、去っていった。

ヤシュナグの族長国が崩壊すると、オークはスカイリムのさらに奥へと入り込んで散らばるか、または後退してロスガーの山々に分け入った。ヤシュナグの民を祖先に持つオークの諸部族は、スカイリムの歴代王に対して激しい憎悪を燃やしてきた。オークが数百年前に自分たちの故郷を焼き払ったタムリエル西部の民とさえ関係を修復していることを考えると、ノルドに対する彼らの敵意がこうまで大きくなったのは、皮肉としか言いようがない。

スカイリムの霊魂Spirits of Skyrim

学究の徒イシティルレ 著

スカイリムでも往来の少ない寂しい道には、さまざまな霊魂が出没する。そうした英魂の一部は凶暴で恐ろしい存在だ。彼らは定命の者を憎み、ねたんでいる。それ以外の霊魂は単にいたずら好きなだけだが、彼らが山ほど用意している無邪気ないたずらは、仕掛けられた側がきちんとそれに気づかないようだと危険なものに変わりうる。少数ながら、中には気立ての良い霊魂もいるとはいえ、そういう霊でさえ、こちらが礼節を欠いたり敬意に乏しかったりすれば敵意を露わにしてくる可能性がある。一口に霊魂と言っても、自由にさまようデイドラから、死んだ定命の者や自然の化身まで多種多様だ。もっとも、脅かされている当事者にとっては、そうした区別にさほどの意味はないかもしれない。あれこれ悪さをしてくる霊魂が、さまようデイドラだろうとこの世にぐずぐず居残っている村の小作人の亡霊だろうと誰が気にするだろう?どちらにせよ、実体を持たない存在であることに変わりはなく、危険な相手であることにも変わりはない。

ウィンドヘルムのずっと南に広がる「亡霊の森」は、遠い昔から謎と危険に満ちた場所だった。閃く光や抗しがたい囁き声が、どんなふうに旅人を森の奥へと誘い込むかを語る物語はそれこそ枚挙にいとまがない。本来ならば用心深いはずの地元の農夫や木こりたちでさえ、太陽が中天高く登る時、あるいは夜闇が大地を覆いつくす時、奇妙な物音や怪しい光景の犠牲になってきた。そういう話には事欠かない。

そうした霊魂の一種に、湖や丘や木立といった特定の土地に縛られた、ガーディアン・スピリットがある。彼らは緑のある一帯に出没し、そこを捨て去ったり、そこから遠く離れたりすることはできない。定命の者の前に現れるとき、ガーディアン・スピリットは定命の者の姿をとることが多い。だが、騙されてはならない。こうした霊魂は決して定命の存在ではないし、定命の世界からかけ離れていることはオブリビオンの住人と変わらない。彼らは定命の者の振る舞いを真似るかもしれないが、そうした振る舞いを理解することもなければ、そうした振る舞いにほんのわずかでも関係があるわけでもない。

ガーディアン・スピリットは決まりきった日常に飽きるかもしれない。また、縄張りに迷い込んできた新たな生き物に興味を抱くかもしれない。ことによると、自分の領分を訪れた定命の存在から侮辱を受けたと思い込んで、怒りに駆られることさえあるかもしれない。いずれにせよ、そういう場合はガーディアン・スピリットの注意を引いてしまう。あるいは、今挙げた3つとは全然違う理由から、ガーディアン・スピリットに目をつけられることも考えられなくはない。この世ならぬ存在が何に動かされているかなど、いったい誰に分かるだろう?

亡霊の森のガーディアン・スピリットは、物見高くいたずら好きではあるものの、定命の訪問者に対していきなり敵意を示すことはまれだ。あの森の中で何かをなくす、怪しい何かが現れる、無邪気ないたずらを仕掛けられるといった話には事欠かないが、森が底を訪れた定命の者に牙を剥いたという話はほとんどない。どうやら、少なくともこの霊魂に限っては、我々と何らかの関係を築こうとしているように見える。あるいは、そういう考えもまた、霊魂の意図を誤解しているだけなのかもしれない。ひょっとしたらこのガーディアン・スピリットは、単に森を訪れた者を油断させようとしているだけなのかもしれない。相手が気を緩めたところを見計らって、襲いかかるために。

ストームフィスト・クランThe Stormfist Clan

最果ての放浪者ソーラ 著

ノルドのクランはマンモスの群れのようにスカイリム全土に広がったが、その数と土地におよぼす影響力はマンモスの比ではない。もっとも、各クランが名を馳せる理由はそれぞれ違う。狩猟の腕前で知られるクランもあれば、森林に精通していることで知られるクランもあり、クラフトの技術で知られるクランもある。大柄なクランもあれば、小柄なクランもある。政府や共同体で華々しく活躍するクランもあれば、忌まわしく、暗いイメージがつきまとうクランもある。後者は誰もが関わり合いになるのを避け、その名を口にするのも憚られるクランだ。そうしたクランの1つとして、ホワイトラン・ツンドラを本拠地とする悪名高いストームフィストを挙げられる。

ストームフィストの系譜を遡れば、クランの始祖であり50年近くに渡って率いた力強い女族長、オグラ・ストームフィストに辿り着く。戦闘技能と鎧作りの腕前を高く評価されたストームフィスト・クランは、何世紀にも渡り、数々の戦いで中心的な役割を果たした。ホワイトラン要塞の戦い、ダイアルマーチの虐殺、ウィンドヘルム包囲…。ただ、ウィンドヘルム包囲を最後に、この一族は信頼を失い、忌むべき存在の烙印を押されてしまう。

第二次アカヴィリ襲来の前夜、東スカイリムを統べるマブジャールン女王の息子、強健王子フィルジョアは、異郷とそこに住む人々を自分の目で見るため西方に旅した。そこで王子はストームフィスト・クランの若い男女たちと出会い、後に大いに役立ってくれる友情と絆を育む。やがて、成人の試練に挑む覚悟ができたフィルジョアが旅を再開する際、ストームフィスト・クランの仲間が彼と旅を共にすることを決める。やがて彼らはストームフィスト旅団と呼ばれるようになり、フィルジョアは生まれながらの仲間ではないにもかかわらず、事実上の指導者となった。

もし、それ以前のストームフィスト・クランに何がしかの評判があったとしても、ストームフィスト旅団が築いた伝説の前で色あせてしまった。彼らは勇猛な戦士たちであり、冒険を求めては、王国で最も敵意に満ち、最も周囲から隔絶された地域へと足を向けた。フィルジョアに率いられた彼らは山賊の集団を潰走させ、埋もれた財宝を見つけ、怪物を倒した。アカヴィリの侵略軍が攻め寄せたとき、フィルジョアはストームフィスト旅団を率いて戦いの渦中に身を投じる。そうして彼らはついにウィンドヘルムまでたどりつき、マブジャールン女王及びその主力との合流を果たした。

ウィンドヘルムの陥落を防ぐことも女王を救うこともできなかったものの、ストームフィスト旅団は侵略軍を敗走させるために功があった。彼らはノルド連合軍の一翼を担い、土壇場で加わったダークエルフおよびアルゴニアンと共にアカヴィリを打倒したのである。しかし、それに続いて運命の決断がなされた。フィルジョアが姉ナルンヒルデの死によって空位となった玉座に就く意思を表明したとき、ストームフィスト・クランは王子を最も強く支持する輪に加わったのである。その結果どうなったかは承知の通りだ。ジョルンとフィルジョアは一対一の果し合いにおよび、結局ジョルンが玉座を勝ち取った。フィルジョアは追放の憂き目に遭い、いつか戻ってくることを誓ってスカイリムを離れた。

ストームフィスト・クランはフィルジョアに対する忠誠を最後まで貫き、ジョルンの前に頭を垂れることも、その王たる権威が自分たちに及ぶのを認めることも拒んだ。彼らは西の故郷に帰ってゆき、戦いに倦み疲れていたジョルン王もあえて止めようとはしなかった。以来今日に至るまで、ストームフィスト・クランは外界との交わりを絶ち、自分たちの縄張りから外に出ることも、クランより大きなノルドの共同体に加わることも稀だ。ただし、もし彼らが故郷のツンドラ地帯を離れ、他のクランの間で地位を回復しようと決意した場合、何が起きるかは誰にも分からない。特に、もしフィルジョアが自らの誓いを果たしたとしたら、そのときどうなるかは神のみぞ知る。

テルニオンのモンクThe Ternion Monks

書記エルガド 著

テルニオンのモンクについては、邪教の教団だと切って捨てる者もいれば、さらに悪しきものだという者もいる。しかし、彼らは三柱の古き神々とそのそれぞれに結び付いたトーテムを崇める伝統の担い手なのだ。古くから存在する信仰だが、今や帰依する者はほとんどいない。多くの点で、テルニオン信仰はゆっくりと死に向かっていると言える。というのも、現在のモンクによる布教の成果は微々たるものだからだ。三柱の古き神々の崇拝に改宗する者の数が減る一方であることを考えると、この信仰がただのぼんやりとした記憶と化してしまうのは時間の問題かもしれない。

治癒魔法で知られるテルニオンのモンクは、三柱の古き神々の姿を呼び出すことができる。それらの姿の助けを借りて、彼らは単なる定命の存在に許された範囲を超える務めを果たせるのである。それぞれの姿は三柱の古き神々を模している。すなわち、狐、熊、狼である。

狐はずるがしこく、機敏で、その姿は自分を呼び出したモンクの速度と敏捷性を増大させる。

熊は堂々たる体躯と膂力を有し、守護者となる。その姿は自分を呼び出した者の力を強くし、その者を危害から守る。

狼は抜け目がなく鋭敏で、獰猛かつ危険な存在だ。状況を見定め、待機し、行動を起こす絶好の機会を探す。その姿は自分を呼び出した者の視野や知覚を広げ、よりはっきりと物事が見えるようにする。その結果、隠れているものや曖昧なものに気付くようになる。

テルニオンのモンクは自分以外の誰かがほとんど近づけないような場所で瞑想にふけり、神々を崇めることを好む。モンクの魔法を使わないかぎり、そうした神聖な隠れ処にたどりつけないことも少なくない。ガーディアンは他のモンクか、よほど差し迫った必要に駆られた、道を開いて通すに値する相手に求められなければ道を開かない。

私はモンクたちと共に過ごすことで、彼らの流儀の幾分かを学び、彼らが実際に治癒魔法を使うところも目にした。彼らは価値ある伝統を守り、今に伝える善良な人々だと思う。けれども残念ながら、今の世代が死に絶えた時、テルニオンのモンクと三柱の古き神々の崇拝は、次第に消滅の道を辿るだろう。

そしてそれは、悲しむべき日になるに違いない。

フレイディスの王冠The Crown of Freydis

神話の作り手タレオン 著

我らが敬愛するマブジャールン女王が戴くフレイディスの王冠には、長い歴史がある。名高いその美しさについて知る者は多いが、この王冠の本当の使い道や、この王冠が作られた経緯を知る者は少ない。そして、フレイディス女王以前の君主たちもこの王冠を被っていたという事実も、ほとんど知られていない。

フレイディスの王冠は、実を言うとスカイリムでは2つめの王冠である。最初の王冠の栄誉は、「尖った王冠」に属する。これはノルドの初代王ハラルドがドラゴンの骨から作った王冠で、伝説によればハラルド王の血を引く最後の王ボルガスが、第一紀369年のワイルドハントで落命した際に行方知れずになったという。イスグラモルの系譜に連なる最後の1人であったボルガスには子がなく、彼の死は「継承戦争」と呼ばれる血で血を洗う内紛の引き金を引いた。

継承戦争は隻眼のオラフが新しいスカイリムの上級王になるまで、5年余り続いた。オラフが王に選ばれた主たる理由は、ヌーミネックスというドラゴンを退治したことで得た名声であり、仁徳や政治的手腕を見込まれてのことではまったくなかった。隻眼のオラフによる治世は、ノルドの間で大きな争いと分断が起きたことによって特徴づけられる。オラフがボルガス同様に明確な世継ぎを残さず死んだとき、上級王を選出するための新たな手続きを導入することが決まった。

かくして、スカイリムの各要塞から1人ずつ選出された魔術師たちが一堂に会する。目的は、上級王の有力候補の適格性をテストする魔法のアーティファクトを作製することだった。この時彼らが創り出したのが「認証の王冠」である。王冠の形をしたアーティファクトの作成は革新的なアイデアだった。というのも、「尖った王冠」が失われてから、オラフは一目でそれとわかる王権の象徴を身に着けなかったからだ。この新しい王冠が、比較的不安定だったオラフの治世後、新王の元で国がまとまる助けになるだろう。そう魔術師たちは感じた。この王冠が作製されたタイミングは、吉兆だったと言える。

さて、ムートは氷砕きのアサーンという族長を次期スカイリム上級王に選出する。アサーンはドラゴンを倒したことこそなかったものの、隻眼のオラフ同様、武勇無双の戦士だった。しかし、即位する前に、アサーンは完成間もない「認証の王冠」を被る必要があった。このアーティファクトが持つ、本当の力が明らかになったのはその時である。

王冠はアサーンを拒絶した。文字通り、彼の頭に載せられることを拒んだのである。激怒したアサーンは忠実な支持者たちを呼び集めて周りを固め、もし自分を正統な王として認めなければ皆殺しにしてやるとムートに迫った。アサーンとしては、王冠ごときに否定される気は毛頭なかったのである。すると、ムートのメンバーに名を連ねる語り口の穏やかな男が椅子から立ち上がった。彼は法に則り、アサーンに戦いを挑む。勝負は短時間で決着がついた。アサーンは打ち倒された。語り口の穏やかなその男が王冠を手に取り、難なく自分の頭の上に載せた瞬間、スカイリムの新しい上級王が誕生した。これが、「白のジョリック」が王位に登ったいきさつである。

以来今日まで、フレイディスの王冠は上級王から上級王へと受け継がれてきている。この王冠は上級王の候補について、それが誰であるかにかかわらず、ムートが適格性を確かめるために使われている。アサーンが倒されてからというものの、王冠の正当性やその力に疑義を唱える者は誰もいなかった。第二紀の431年、レマン帝国が四分五裂し、ログロルフ王が暗殺されるまでは。

ログロルフの娘フレイディスは庶子であり、したがって王位継承者はムートによって選ばれなければならない。ソリチュードのスヴァートル首長がそう主張したのである。「認証の王冠」を被ったフレイディスがウィンドヘルムで上級女王に指名されていたにもかかわらず、ソリチュードで開かれた不公正なムートはスヴァートルを上級王に選出する。それ以降、西王国はスヴァートルとその後継者たちによって統べられ、東王国は「認証の王冠」という呼称を自らの名を冠したものに改めた、フレイディスの跡継ぎたちによって治められた。

巨人のすべてAll About Giants

第二紀569年、スカイリムの巨人族の観察記録。放浪者ボノリオンの日記より

イーストマーチとリフトの雪深い辺境を探索したとき、私はスカイリムの原住民たちが「巨人」と呼ぶ風変わりで図体の大きな人々を観察する機会に恵まれた。スカイリムの原住民からして大柄だが、雪に覆われた原野を放浪する巨人の身長は、猪首で肩幅の広いノルドの平均身長の2倍(もしくはそれ以上!)もある。ここに、私が観察の結果知り得たことをいくらか書き記しておきたいと思う。将来この寒冷な地を旅する人々の役に立てば何よりだ。

巨人は背が高い

巨人たちは見たところ、いたっておとなしい。ただし、怖がらせれば話は別だ。そうなると彼らは巨大な棍棒を振りまわし、筋骨たくましいノルドさえ野や川の向こうまでぶっ飛ばしてしまう。これをやられたノルドは十中八九助からない。もっとも、巨人の全力攻撃を浴びて命を取り留めた者の話を聞けた試しがないから、あくまでも私の推測に過ぎないが。

巨人を怖がらせる行動としては、次のようなものがある。ただし、これらに限るわけではない。
 側に近づく。
 マンモスに手を出す。
 矢を射かける。

私が話を聞いた人々の中に、巨人の女性や子供を見たという者はいなかった。巨人は子供でもボズマーより背が高いのだろうか?また、巨人の女性はひどく内気ではにかみ屋なのだろうか?この件については、さらなる観察が必要だ。

巨人は野営地近くの岩や木に絵を描く。この原始的な芸術は、希少な女性の巨人が近くを通りかかった際、誘い込むためのものかもしれない。あるいは、縄張りを示す印か。それとも、たんに絵を描くのが好きなだけかも。その辺りを見極めるには、さらなる調査が必要だ。

巨人はどうやっいぇマンモスの乳を搾るか?答えはおっかなびっくり搾る(注:ノルドはこのジョークがお気に入りだ。ハチミツ酒を何杯か飲んだ後は特に)。

話を聞いたノルドのなかに、マンモスチーズを口にしたことのある者はいなかった。別段食べてみたいとも思わないらしい。

何とかしてあの図体の大きな種族と親しくなる手立てを見つけなければ。あのすばらしく香り高いチーズをひとかけらでも手に入れるには、それしか思いつかない。

第二紀571年に記された博識家ジェゴードのメモ

ウッドエルフのボノリオンはクレイドルクラッシュと呼ばれる一帯にほど近い、大きな丘のふもとで見つかった。全身の骨が砕けていたという遺体の状態からして、どうやら彼は自分自身の戒めを無視したらしい。ノルドならどんなに血の巡りが悪い子供でも、巨人に近づかないだけの分別はあるというのに。ところで、ボノリオンの亡骸が見つかった場所にいちばん近い巨人族の野営地でも、1リーグ近く離れている。これに鑑みるに、ウッドエルフは巨人の棍棒で飛ばされれば、相当な距離を飛べるということが言えるかもしれない。

私は彼の日誌を回収し、保管しておいた。イーストマーチやリフトといった、巨人が住む地域を探索しようという者の役に立つかもしれないからだ。とにかく、巨人と親しくなろうなどとはゆめゆめ考えないこと。これは、たとえ筆者自身がなおざりにしたとしても、肝に銘じるべき教訓だ。

兄弟の戦争The Brothers’ War

アカヴィリの襲来が最高潮に達していた第二紀572年、ナルンヒルデ姫の双子の弟、スカルド王子ジョルンと強健王子フィルジョア(面と向かって口にされることこそなかったが、「癇癪王子」とも)はそれぞれ、まったく違う場所にいた。ジョルンは最も近しい仲間である「吟遊詩人団」とリフテンに、フィルジョアはスカイリムの北東沿岸で、姉と共にディル・カマルのアカヴィリを迎え撃っていた。アカヴィリがウィンドヘルムに迫るなか、ジョルンとその仲間たちも急ぎこの名高いノルドの都市を目指した。

一方フィルジョアは、沿岸部の支配を巡る攻防戦が激しくなるにつれ、武勇はもちろんのこと、天井知らずの怒りを何度も繰り返し示した。彼にも「ストームフィスト旅団」と呼ばれる側近集団があり、しばしばこれを率いて戦った。ストームフィスト・クランのメンバーで構成されるこの旅団は、フィルジョアの巡礼と成人の試練に付き従い、共に戦うことで強健王子に尽くしてきたのだった。

それぞれの側近集団を従えてウィンドヘルムに到着したジョルンとフィルジョアが目にしたのは、都市の城門が破られ、大きな突破口を開けられる光景だった。双子の兄弟はどちらも雄々しく戦ったが、都市の陥落もマブジャールンとナルンヒルデ(別名「短命女王」)の両女王の死も防ぐことはできなかった。二代の女王は宮殿と愛する民を守りながら命を落としたのである。双子の兄弟は、何年も疎遠だったにもかかわらず、血のつながった者同士で意気投合し、侵略者を撃退するために力を合わせて戦った。ジョルンがダークエルフと手を組んだこと、そして意外にもアルゴニアンが加勢してくれたことにより、アカヴィリの野望はついに潰えた。

ジョルンと配下の兵がウィンドヘルムに戻ると、フィルジョアが姉の後継者に名乗りをあげる。危機が去った今こそ潮時だと、そう強健王子は考えたのだ。彼はジョルンがおとなしく従うものとばかり思っていた。それまでも、フィルジョアの怒りと抑えきれない情熱の前に、ジョルンは大抵そうしてきたからだ。ところが、予想に反してジョルンは異を唱えた。スカルド王子は「スカルド王」になることを決意したのである。というのも、彼はフィルジョアの情熱がどういった性質のものか分かっていたからだ。確かに、戦を共に戦う味方としては頼もしい。しかし、民を導く指導者としてはどうだろう?本音を言えば、ジョルンは王位になど就きたくなかった。しかし、そうも言っていられない。フィルジョアが民にとって良い統治者になるとは到底思えなかったからだ。

ジョルンの反抗に怒ったフィルジョアは、ストームフィスト・クランをはじめとする自分の支持者を国中から集めた。結局のところ、彼は正真正銘のノルドの戦士であって、ジョルンのような歌い手でも学者でもないのだった。王国が内戦に突入することを危ぶんだジョルンは、フィルジョアに一騎打ちで決着をつけようと提案する。強健王子はほくそ笑んだ。吟遊詩人の兄弟など、簡単に倒せるという自負があったからだ。フィルジョアがこの提案を受け入れ、最近の歴史では最も長い3時間の幕が切って落とされた。文字通り、骨肉の果し合いが始まったのである。

双子の兄弟は、アカヴィリとの戦闘で被害を受けた宮殿の外の広場で戦った。この戦いは激しく、長く続いた。武器が切り結ばれ、受け流され、打ち合わされたと思うとまた離れ、相手に血を流させた。このままではどちらも優勢をとれないまま、疲労困憊して双方が倒れるだろうと思われたその時、ジョルンが予想外の底力を発揮した。彼は相手の武器を粉々に打ち砕くと、フィルジョアを地面に這わせ、降参するよう迫った。

他に選択肢がなかったため、フィルジョアはやむなく降参した。しかし、彼の憎しみの炎は燃え上がり、彼の怒りは吹き荒れる嵐のごとく彼の体を取り巻いた。ジョルンは心を鬼にしてフィルジョアを追放し、彼に肩入れした罪でストームフィスト・クランも罰した。フィルジョアはジョルンの名前を呪ってウィンドヘルムを離れた。スカルド王が務めに打ち込み、自らが有能で敬愛される君主であることを示している間、強健王子はダガーフォールカバナントが支配する国々に亡命したと噂された。ひょっとするといつの日か、この兄弟の骨肉の争いは再燃するかもしれない。

第二の侵略:報告Second Invasion: Reports

南中の月7日

アカヴィリの大船団が浜辺に押し寄せてくる。一部は撃退または撃沈したものの、こちらの防備をかいくぐった船のほうが多い。我が軍は前進し、浜辺を見おろす断崖の上で敵と相まみえることにした。地の利を活かす作戦だ。

見晴らしの利く崖の上から、女王は近づいてくる敵を眺め渡しておられる。ブラッドクローの獰猛さと強さを、女王は直にご覧になられるだろう!

南中の月8日

アカヴィリの船団は、沖合で錨を下ろした。恐らく我々の刃を恐れているのだろう。ならば、せいぜい船の上で飢えさせてやりましょう。私がそう申し上げると、ナルンヒルデ姫は首を振り、きっと彼らは臆病風に吹かれた訳ではなく、何か企んでいるのだとおっしゃる。私より賢くあらせられる姫のお言葉だ。私はさっそく斥候を差し向けた。敵が何か腰抜けの考えそうな策略を実行に移そうとしているのならば、その内容を突き止め、不埒な意図をくじいてくれよう。

南中の月19日

あれから1週間以上経つが、依然としてアカヴィリは攻めてこない。我が兵は落ち着きを失い、ナルンヒルデ姫も考え込んでおられる。斥候は空手で戻ってきていた。それでも、私は毎日のように斥候を出している。私に異論を唱える者などいないが、もう一度海岸沿いを哨戒してくるように命じられたときの彼らの表情を見れば、言いたいことは嫌でも分かる。

ブラッドクローは殺戮のために創設された部隊だ。待ち続けるためではない。

南中の月22日

野営地では口論やケンカが絶えなくなった。アカヴィリの船団は依然として我々の手の届かないところで待機している。海岸沿いの北と南では攻撃があったとの報告を受けた。特に南は、ダークエルフの領土までアカヴィリの攻撃が及んでいるという。よそで戦闘が起きているのに、なぜ自分たちはここでただ待っているのか。兵士たちは怪訝に思っている。そして、その怪訝な思いは怒りに変わりつつある。

目の前の船団こそが敵の主力であり、向こうは我々を誘い出そうとしているのです。女王がそう諭すと、兵士たちも頭を冷やし、短慮を慎むようになる。姫は彼らの怒りや反発をものともされない。もっと頻繁に兵士たちに語りかけてくださるとよいのだが。

南中の月26日

今日アカヴィリの船が1隻、浜に乗り上げた。夜明け前の、まだ暗い時刻だった。我が軍の兵士たちが船を取り囲み、矢が雨あられと射かけられるのを予想して身構えたか、意外にも敵の攻撃はない。今にして思えば、あれほどの大型船が浜に乗りあげること自体おかしかったのだが、兵士たちは退屈し、血に飢えていた。結局その船に仕掛けられた魔法の罠が作動し、我が方に7名の犠牲者を出した。

我が軍の兵士たちがあれほど怒りに駆られるのを、私は見たことがない。女王でさえ、なだめるのに苦労されたほどだ。アカヴィリが上陸してきたら、連中は八つ裂きにされるだろう。我々が自分の体を八つ裂きにしていなければの話だが。

南中の月29日

ダークエルフの地が蹂躙されているという報告が相次いで寄せられる。ノルドとダークエルフは本来不仲ではあるが、今度ばかりは彼らが感じているに違いない無念に共感せずにはいられない。報告で聞くかの地でのアカヴィリの狼藉ぶりに、我が軍の兵士たちは戦いへの飢えを募らせるばかりだ。

姫と話をした。今度の知らせで、ブラッドクローの鬱屈が未知の域にまで高まる恐れがあると申し上げる。王女は何もおっしゃらず、唇を一文字に結ばれただけだった。常に我々の数歩先を行っておられる姫のこと。もしや、私がまだ気づいていない何かに気づいておられるのでは?

収穫の月2日

今朝、アカヴィリが上陸してきた。ついに破壊の大波が波に打ち寄せたのだ。戦闘準備の号令が下るや、我が軍の兵士たちは冷静さを失ってしまった。彼らは闇雲に打って出、第一陣は戦列を整える間もなく敵の弓兵になぎ倒された。結局こうした無謀さの代償として我々は浜辺を失い、侵略者が我が領土に橋頭保を築くのを許す結果になった。

収穫の月3日

我々は後退を余儀なくされた。戦闘があまりに激烈なのを見かねたナルンヒルデ姫は、全軍にウィンドヘルムまで退くよう命じられたのだ。かくなる上は城壁で敵を迎え撃ち、地の利を生かして侵略者を完膚なきまでに叩きつぶしてくれよう!

収穫の月4日

この張りつめた空気。今夜にも、アカヴィリが総攻撃を仕掛けてきそうな気配だ。ナルンヒルデ姫も鎧に身を包んでおられる。ブラッドクローは姫に従うだろう。姫の命令がドラゴンの声のように聞こえるに違いない。だが、リスクは途方もなく高い。一方、双子の王子がすぐそこまで来ておられるとの知らせが届いた。戦いながらウィンドヘルムに向かっておられるという。お二人が間に合ってくださることを祈るばかりだ。

収穫の月7日

マブジャールン女王とナルンヒルデ姫は亡くなられた。ウィンドヘルムの城門が破られるのをご覧になった姫は、ブラッドクローを率いて戦いに身を投じられたのだ。彼らはかつて私が見たこともないような戦いぶりを示し、完璧な連携で暴れまわった。マブジャールン女王が討ち死にされると、皆が怒りに我を忘れそうになったが、ナルンヒルデが王冠を被られ、戦列に秩序を回復しようとされた。結局、アカヴィリは都から撤退した。向こうは我々を追い詰めたつもりかもしれないし、実際その通りだが、その結果覚醒した獣は、彼らの手におえる相手ではなかったのだ。

それでも、また彼らは戻ってきた。新女王ナルンヒルデ陛下はすでにない。本来であれば、私が配下の戦士たちを指揮し、制御できなければならなかった。死ぬべきは新女王でなく、私だったのだ。その死の責任は私にある。そのことを、双子の王子に直接説明申しあげなければ。

忍び足On Stepping Lightly

トレジャーハンターのナルシス・ドレン 著

スカイリムの土地に点在している古代ノルドの遺跡は、過去のノルド人の創造力を証明している。貴族階級の墓を建てる時、この「野蛮」と思われる人たちは、全く野蛮ではないことを証明した。我々の先祖は最も洗練されて賢い防衛策を開発していた。恐ろしいドラウグルの存在と合わせて、この墓はトレジャーハンター志望の者に相当な試練となった。

最も見落としがちなのが、墓中に展開する無数の罠だ。単純なワイヤー式落石から複雑な圧力版式ダーツトラップと幅広く、古代のノルド人はこれらの装置を多数活用した。ほとんどの罠は起動装置を探して避ければ回避できる。邪魔な物があるところによく設置されているから、床に注意したほうがいい。

ノルドの遺跡を生き残る鍵の1つが、罠を上手く使って遺跡の居住者に対して優位に立つことだ。多くの場合、起動装置の向こう側で彼らが罠にはまらないかと期待しておびき寄せるのは簡単だ。この優位はオイルトラップの時に発揮される。弓を使って犠牲者をオイルの上まで誘い出し、上にぶら下がったファイアポットに矢を放つ。ファイアポットは粉々に砕け散り、オイル溜まり全体に火がつき敵に熱い死を与える。自分がオイルのないところにいないように注意すること。さもなければ、この技で冒険が想定よりも早く終わるかもしれない。

恐らく遺跡で見つかるすべての技術で最も驚異的なのは、殺すために設計された罠がほとんどないことだ。鎖の引き方、レバー、スイッチ、圧力板をすべて活用し、苛立たしい障害がパズルとして現れて進行の邪魔をする恐れがある。これらの障壁の兆候に注意する。一ヶ所に複数のレバー、回転する柱に顔の彫刻がされていたり、大きな圧力板が部屋の床に並べてあったりする。ほとんどの場合パズルは実験でき、他の場合は遺跡のどこか別のところに答えがある。筆記用具と日誌を持っていき、見つけたあらゆるものを記録することを勧める。施設のどこかにあったものを、いつ参照しなければならなくなるか分からない。

ノルドの遺跡には通常スキーヴァーやクモなどの害虫が出没するが、ドラウグルと比べれば見劣りする。この動く恐ろしい死体はほとんどの墓にガーディアンとして発見され、無慈悲に墓を守る。ドラウグルは誰かが偶然出くわすまで休眠する傾向にあり、遭遇する狭い隙間や石棺を注意して見たほうがいい。このアンデッドは素早く静かに動くから、常に背後へ気をつける。通り過ぎた亡骸が突然動き出して、警告なしに襲いかかってくるかもしれない。

ノルドの遺跡の冒険には報酬がないわけではない。大きな建造物の埋葬室にはあらゆる財宝が入っており、金貨もあれば、魔法がかかった武器や鎧の場合もある。遺跡に点在する儀式用の骨つぼは決して無視してはならない。ほとんどが非常に価値のある古代の奉納物で満たされている。すべてではないかもしれないが、ほとんどの遺跡には大きな壁があり、魔法の碑文が書いてあるという噂があるが、まだ確認はされていない。

ノルドの遺跡について知っていることをできるだけ広範に記述したが、独自のまだ発見されていないものの中にも間違いなく危険が潜んでいる。墓に入る時は常にたくさんの装備と道具、そして頑丈な武器を持っていかなくてはならない。少しの辛抱と、鋭い眼で注意しながらそっと歩けば、ノルドの遺跡は大いなる富をもたらしてくれる。私の助言に従わなければ、多くの墓荒らしの先輩のよう、永久に閉じ込められてしまう。

夢歩きDreamwalkers

モーンホールドの学徒レイナルドによる考察

彼らは夢歩きと呼ばれている。簡単な呪文を1つ唱えるだけで、他人の夢の中に足を踏み入れることができる者たちだ。自分の最も暗い欲望、最も不埒な夢想、本当の自分自身、そういったものの一切合財が、夢歩きにかかれば開いた本のように丸裸にされる。かけがえのない思い出も、前夜の宴の残飯のように漁られ、丹念に改められてしまうのだ。

夢を歩く者たちは、デイドラ公ヴァルミーナに忠誠を誓っていると言われる。ヴァルミーナが支配する次元「夢中の歩み」に入る能力を得るため、魂を売り渡したのだ、と。この説の真偽を云々することは私の手に余る。ただ、夢歩きの技とヴァルミーナの司祭が行う秘蹟は、気味が悪いほど似通っている。

私が確認できたのは、夢の状態への入り方が違うということだけだ。ヴァルミーナの司祭は錬金術の調合薬を一滴だけ必要とする。最も優れた錬金術師の手で用意された水薬だ。これに対して夢歩きは、そういった薬を必要としない。その代わりに魔法を使うのだが、それは誰に教わったわけでも、何らかの相続手続きによって譲り渡されたわけでもない。純粋に天与のものに思える。彼らはデイドラ公の祝福を受けたのだろうか?それとも、彼らの両親が生まれてくる子供にこの力を授けようと、何らかの秘儀を執り行ったのだろうか?誰に聞いても本当のところはあやふやだし、人によっても言うことが違う。

しかし、夢歩き自身はどうなのだろうか。彼らは何のためにこの力を使うのだろう?想像してほしい。他人の夢に侵入することで、どんな大混乱が起こりうるか。考えただけで恐ろしくなる。

それでも、私が会った夢歩きたちは、みな親切で優しかった。彼らは他人を助けるために自分たちの力を使う。苦い記憶を消し、最も優秀な治癒師でさえ癒せない精神の病気を治す。単に相手の夢に触れるだけで、信じられないような奇跡を起こすのだ。なぜ私にそんなことが分かるのかというと、夢歩きがその力を使うところを、実際にこの目で見たからだ。

私の妻と子供たちはナハテン風邪を患った。さんざん苦しんだすえ死に至る、恐ろしい病だ。妻子をなくすと同時に、私は生きる意味も失った。ところが、そんな私をある夢歩きが憐れみ、チャンスをくれた。家族を失う苦しみを忘れ、家族を思い出すチャンスを。喪失の痛みから解放され、病気にかかる前の家族を思い出すチャンスを。幸せと愛を思い出すチャンスを。

その夢歩きは私の夢の中に入ってきた。目覚めると、私は穏やかな気持ちで満たされていた。何もかも大丈夫だという安堵。この先の人生を生きていけるという自信。私は礼をしたかったが、夢歩きはすでにいなかった。彼にはそれっきり会っていない。

夢歩きの正体がなんであれ、また彼らが結局のところ誰に仕えているのであれ、私は恩義を忘れないだろう。もっとも、だからといって、私の心の底にわだかまる恐れが消えるわけではない。はたして苦しみを取り除いてもらったことは正しかったのだろうか?記憶こそが、我々を唯一無二の存在たらしめているものではないのか?記憶が改変されてしまった私は、要するに別の誰かになってしまったのではないのか?これではまるで、苦悩の後釜に恐怖が居座ったかのようだ。はたしてどちらが良かったのか、私には分からない。

アリクル砂漠の伝承

Alik’r Desert Lore

アリクルの冒涜と狂乱Sacrilege and Mayhem in the Alik’r

ヘガテの王家への報告書

外部者管理局 タジーム博士

おお、モルワに愛されゼェトの涙に祝福されし方々よ

卑しき召使は、己が無価値な存在であることをお詫び申し上げます。取るに足りない考えで両陛下の高尚なる瞑想の時をお邪魔することをどうかお許しください。先週のふとしたお申し出は私にとっては厳しいご命令でしたがそれにお応えし、報告書をご用意いたしました。アリクル北部では最近発生している、不浄の不死とその異例な隠蔽手段についてです。

復活した我々の先祖たちと不浄な交流があるとして避けられている、北の荒れ地の追放されし部族であるアシャバーについては以前お伝えしました。彼らの起源は古いのですが異常な行為が現代まで続いているという事実は、フォアベアーの一部の恥知らずどもの内密の支援によるものと考えられます。何より許されざる、伝統に背く行為を彼らは黙認しているのです。

この仮定は最近の出来事により裏付けられるでしょう。それについてはこれより謹んでお伝えします。センチネルでは、簒奪者ファハラジャードが彼の元に助言者を集めています。幾人かは評判に曇りなき者ですが、ほかの者は名の知れたフォアベアーの活動家たちです。彼らは故ラジム王(どうかトゥワッカが王の魂を碧落の岸へ導きますように)による神に祝福された統治に公然と反対していたのです。その怪しげな高官の1人、ストゥラという者は好ましくない助言者である上、実は死霊術師であるようなのです。我が局の密偵たちによりますと、このストゥラはファハラジャード「王」の高官たちを皆殺しにし、ファハラジャードを殺させようと蘇らせたとのことです。この企ては失敗しファハラジャードは死を免れましたが、ストゥラも逃げおおせたのです。

ストゥラは東へ逃げ、黒き虫の教団の団員らと合流しました(両陛下は恵雨の月2日の私の報告書を思い出されるでしょう)。大部分はラー・ネトゥー
であるアンデッドたちが、砂漠の奥地の忘れ去られた墓地で大量に蘇らされたのです。ストゥラはこの不浄の手下たちを率いてセンチネルに向かいました。

我々の情報提供者たちによると、ファハラジャードは堕落したのです。恐ろしいことに追放されし者アシャバーに対し、ストゥラに対する介入を頼んだといいます。アシャバーの首長であるマリマーは同意しました。しかしファハラジャードがどんな下劣な条件を突きつけられたのかは突き止められておりません。アシャバーは禁じられた神秘の技で奇襲をし、ストゥラのラー・ネトゥーの軍勢を倒したのです。ストゥラ自身は追放者マリマーの刃に倒れたと言われています。

もちろんファハラジャードはアシャバーへの要請については口をつぐんでいます。そして公にはセンチネルを代表し聖なる神々の介入に感謝しています。フォアベアーの強奪者が追放されし者たちと不穏な会合を持ったという噂を流布すべきか、その判断は両陛下にお願いしたいと思います。

サラス・エン探検隊The Salas En Expedition

レディ・クラリス・ローレント 著

ハンマーフェル沿岸、シラ岬にあるサラス・エンというエルフの遺跡が今まできちんと探索や研究をされていないのは奇妙なことです。十中八九それは迷信深い地元の人々が、他文化の墓地であっても過度の敬意を抱いているからでしょう。アリクルのレッドガードを臆病だと責めるわけではありません。でも私の部下たちをハイロックから湾にまで連れてこなければならないのはあんまりです。

いずれにしても、もう始めているからには仕事はきちんとします。サラス・エンについてわかっていることはわずかですが、過去三つの時代に渡った文化の遺物が残っているというのは魅力的です。最も上にある遺物はつまり最も新しいもの、第一紀にラ・ガーダ後期の王家がサラス・エンを占領した時に遡るレッドガードの遺物です。失われたヨクダのヤスの島から来た開拓者、そのレッドガードたちはそれまでそこに暮らしていたエルフたちを立ち退かせたようです。そしてそのヤスの子孫たちは23世紀半ばまでサラス・エンに暮らしました。これはスラシアの疫病の惨禍の時期と重なります。

ヤスのレッドガードたちが追い出したエルフたちは伝承によれば、それより少し前にやってきていたアルトマーの開拓者でした。彼らはデイドラの崇拝者だったと言われるコレラニア・クランです。(だからサマーセットから寂しいハンマーフェル沿岸に移住したと考えられます)彼らは第一紀6世紀のある時期にやって来たと考えられます。そして元々アイレイドが建てた建築物を拡大しながら居住していたのでしょう。ボズマーの遺物が伝統的なアルトマー最盛期のものに混ざっています。これはコレラニアがその歴史的な最盛期にウッドエルフの沿岸貿易に加わっていたか、あるいはコレラニアが来る前のサラス・エンがボズマーの商人たちに中継地として使われていたことを示しています。

ハイエルフによる増築部分の下は、それ以後に建てられたどの建築物よりも状態がいいのです。これはアイレイドの石造建築で、千年の時を経てなお誇らしげに天にそびえています。サラス・エンを築いたアイレイドエルフは、歴史上はほとんど知られていません。私がこの遠征隊を組織した主な目的は彼らについて明らかにすることです。厳選した経験豊かな発掘者たちの助力もあります。サラス・エンの石は秘密を明かしてくれるはずです。

センチネル、アリクルの宝石Sentinel, the Jewel of Alik’r

サタカラームの歌姫、ベールをとったアザディエ 著

王子よ。ラ・ガーダの時代、フォアベアーは破滅したヨクダからハンマーフェルにやって来たのです。最初に上陸したヘガテで、彼らは獣人たちを苦しみから解放しました。そして大きな港と豊かな水のあるオアシスを求め、陸地に沿って両方向へと散開していったのです。

北と西へ向かったのはヤグーブ大公の戦士であり船乗りたち。アコス・カサズから立派な船に乗っていたのですが、それもシラ岬を曲がるときまでの話です。そこでラ・ガーダの中で初めてイリアック湾を目にしたヤグーブは、あまりの素晴らしさを褒め称えます。そしてその岸に住まいを作ろうと誓ったのです。

栽培の月17日の夜明け、騎馬座の方角に後悔していた折、見張りが停泊所にぴったりの場所を見つけたと叫びます。気付いたヤグーブも彼に賛同し言いました。「この停泊所は我々のものとなるだろう、これから手に入れるのだ。最初に見つけた者にちなみ、ここはセンチネルと名付けよう」

そのセンチネル(以後もこのように呼ばれた)の港にはすでに街があり、下層のエルフや彼らと付き合いのある人間たちが出入りしていました。岸辺はザクロやイチジク、オリーブの葉で緑に彩られています。これを見た空腹の部下たちは、港の群衆の警告や叫び声を無視して何とか上陸しようとしました。

ヤグーブが部下たちと上陸すると、きらめく剣ととがった兜に港の群衆はおびえ、へつらって言ったのです。「我々をどうなさるおつもりか、強きソードシンガーよ。あなた方に悪さはしない、殺すのだけはご勘弁を」

ヤグーブは答えました。「ああ、お前たちは不信心で悪事に関わっているが殺したりはしない。港より高い場所に宮殿が欲しいのだが、そんな労働は我が高貴な部下にはふさわしくない。だから生かしておいてやろう。石工や石職人、家の召使となるがいい」

こうしてセンチネルに本格的な港ができたのです。港の群衆は新たな仕事に目標を見い出し、壁や市場、ヤグーブの宮殿を造りました。この宮殿の誉れ高き名はサマルイク。以後ここで統治を行った王や女王たちは伝説を残します。フォアベアーに続く王家にとってふさわしい居場所をセンチネルに見つけたのです。ここに定住した多くはナ・トタンブでした。

そして王子よ、今もこの都市の門の上には三日月の旗が翻ります。ヤグーブ大公の旗であったこれは、彼を偲んでセンチネルの象徴とされたのです。忠実なる支持者たちは栽培の月17日をコーム・アレザーリ・ヤグーブの日として彼を称えています。偉大な先祖に敬意を表してザクロを分け合うのです。

トゥワッカの祈りTu’whacca’s Prayer

碧落の岸の神トゥワッカよ
あなたの恵みと導きあれ
このウォークアバウトを終え
あなたの玉座の前に彼女が現れますよう
美徳と強さで包み
彼女を星々の小径で導きたまえ
道を示したまえ
次の世に備えさせたまえ
我々の誉れ高き先祖として
彼女に剣を携えさせたまえ

モタリオン・ネクロポリスの報告書Motalion Necropolis Report

サタカラームのドエン様:

私のような者がご報告するのは心苦しいのですが、モタリオンの試みは中止いたします。このまま続行することはお勧めできない状況となりました。それどころか、続ければこれは(いつも以上に)不信心であるというだけでなく、おそらくギルドの者たちの命まで失われることとなるでしょう。

あなたの比類なき計画の完ぺきさについては、何の落ち度もないことを急ぎ申し上げます、我がドエンよ。ご指示に従い、モタリオン墓地破壊の監督官であるバービズ・アル・ティゴウスはそつなく仕事をこなしました。それに略奪の取り分を20%にしようと我々が申し出たところ、彼は15%のみ受け取ることを望んだのです。彼が申し出を受け入れてから数週間で、共同墓地の南区域の墓や霊廟の略奪は完了しました。高潔なる乙女たちの墓地で追剥ぎのクエンが背中に負傷したものの、ドエン様の見事で精力的な計画のとおりに進みました。

聖なるウェルキンドの収穫と販売も、同様にうまくいきました。発光呪文をかけたターコイズガラスの模造品と入れ替えるというあなたの考えは今も見破られていません。発光屋のアファブに10日ごとに呪文をかけ直させる賃金は、魔術の市場でウェルキンド石から得られる収益に比べたらスカラベのエサ代のようなものです。

今思えば、墓地を4つに分けてもっとも裕福な祖先たちが葬られている区域から始めろというあなたの助言は正しかった。あなたがその地位におられるのはもっともなことです。我々は石棺に対し不敬な行いはいたしませんでしたが、バービズ監督官があちこちを番人に巡回させていた間に、墓地の外れの墓にあった高価な装飾品は奪われてしまったのです。裕福さに劣る我々の同胞が眠っている東西の区域は、合わせても南区域で得られるほどの利益とはならないでしょう。

遺憾ながら、ドエン様のこの上なく素晴らしいモタリアンの試みを放棄せねばならない残念な理由を述べねばなりません。不信心者や犯罪者の死体を埋めるにふさわしいとされる北区域は、恐ろしいアンデッドたちの出現に苦しめられています。大勢のラー・ネトゥーが墓からはい出し、今では共同墓地全体にはびこっています。私が思いますにこれは、汚らわしい者たちの区域に何度も番人を送ったパービズ監督官や、他の不敬な行為の数々のせいでしょう。監督官の責任であるとすれば、彼は確かにその代償を払いました。蘇った死者による最初の犠牲者たちの中に彼もいたのです。

さらに、残念なことに追剥ぎクエンの死もお伝えせねばなりません。99階段の下でラー・ネトゥーから逃げようとして背中を痛めた者です。彼の遺族には通常の給付金が出されます。

最高の敬意を込めて。

工作員マフッド

レッドガードの歴史と英雄たち 第1巻Redguards, History and Heroes, V. 1

フランダー・フンディングは2356年に生まれた。我らの愛する砂漠の地における、古き数え方での年だ。それまでの皇帝たちによる統治が2012年に覆されてからは、皇帝は帝国の名目上の長となり権力は大幅に縮小されていた。以来300年に渡ってほぼ絶え間なく内戦が続いていた。地方の君主やモンク、山賊たちが土地と権力を求め争っていたのだ。我々の民族はかつて職人や詩人、学者であったが、次々と展開する戦いによりやむなく剣を手にした。大気を、あるいは肉や骨を断つ剣の歌。鎧に当たり響く音。それが我々の祈りに対する答えだった。

最初の戦いの王子フランダー卿の時代、ヨクダと呼ばれる君主たちが自身や土地を守るための巨大な石の城を築いた。そして城壁の外の城下町が発展した。しかし2245年にマンセル・セスニットが台頭した。彼は軍事独裁者エルデン・ヨケダとなり、帝国のほぼすべてを8年に渡り掌握せしめた。2253年にセスニットが暗殺されると平民が政府を奪った。ランディック・トーンはセスニットが始めた帝国の統一化を続け、かすかな反乱の兆しも許さず鎮圧していった。彼は剣の所持に関する制約を設け、戦士すなわちソードシンガーと平民との間にあった古き隔たりを蘇らせた。「トーンの剣狩り」として知られたこれはシンガーにのみ剣の所持を認め、他の住民とシンガーとを識別するものだった。

トーンは帝国を内戦前の状態に戻すべく多くを成したが、2373年の没時にも内部の混乱は残っていた。彼の死により本格的に内戦が勃発した。過去の300年に渡る争いがかすむほどのものだった。フランダー・フンディングが育ったのはこの時代である。

フンディングはソードシンガーに属していた。ソードシンガーは砂漠の職人から成長を遂げ帝国の社会の一員となっており、当初は上流家庭の若き子女たちから採用されていた。彼らは無名の戦の神々への最初の聖堂と訓練場「戦いの美徳の間」を築いた。数世代のうちにその剣術「刀剣の歌」は彼らの人生そのものとなっていた。剣に生きる彼らの詩心や芸術的才能は健在で、無名の神々の力と魔法の込められた美しい剣術に活かされた。特に優れた者はアンセイ、つまり「剣の達人」と呼ばれるようになる。そして彼らはそれぞれ独自の剣術を教える訓練学校を始めた。最も徳があるとされたアンセイは地方をさまよって戦い、悪を正し、争いを終わらせようとしていた。

フンディングはトーンの死により蘇った争いの最盛期におけるソードシンガーであり、達人、マスターアンセイである。多くのシンガーは生まれ持った職人の魂により剣を収め、芸術家となった。他の者はフンディングのように危険に満ちた剣の道に悟りを求め、戦士の理想を追求した。復讐の決闘や腕試しは日常茶飯事であり、剣術学校も増加していた。

レッドガードの歴史と英雄たち 第2巻Redguards, History and Heroes, V. 2

フランダー・ド・フンディング・ヘル・アンセイ・ノ・シラこと、フランダー・フンディングはハイデザートの砂漠の辺境に生を受けた。「フンディング」は生誕地近くの地名、「ノ・シラ」は「高貴な人物」や「高貴な生まれの者」という意味、そして「ヘル・アンセイ」は剣の聖人たる彼の称号だ。

フンディングの祖先は有史初期、ハイデザートで職人や秘術師として暮らしていたところまで遡れる。彼の祖父はエルデン・ヨケダことマンセル・セスニットの家臣で、セスニットの暗殺前まで統一のための多くの戦いを率いていた。

彼が14歳の時に父親が反乱の1つで命を落とし、フンディングは母親や4人の兄弟を支えることになった。剣での武勇はその人生を楽にも難しくもさせた。仕事の上ではガーディアンや護衛として大きな需要があった。だが彼の評判が高まったために、戦では彼を倒して手軽に名声を得ようという者たちが次々と現れた。

30歳になるまでに彼は90回以上の決闘で相手を殺し、勝利を収めた。卓越した技能と経験を有する彼は、剣において事実上無敵となる。先祖代々の才能による本物の剣での技を使う事をやめ、シェハイという「魂の剣術」を使うようになっていた。

ソードシンガーは誰しも厳しい訓練と戦の神々への信仰、そして剣術を通して、霊剣を生み出す修行法を身につける。これは単純な魔法のようなもの、思考のみで剣を形作るという精神的な技術である。ソードシンガーは精神統一により剣を生み、剣はその手に現れる。その剣は大抵はほのかな光である。ぼんやりとして実体がなく、おそらく美しく、剣の道や神々への愛情の象徴であるが武器ではない。しかし優れた能力と感性を持つアンセイたちや魔法の才能に長けた者は、重圧のかかる状況下で光や空気どころではない霊剣、シェハイを作り出せる。これは向かうところ敵なしの強さで、持ち主の精神を奪わねば取り上げることもできない武器である。

シェハイはフンディングの武器となり、彼はこれで土地を荒らす悪党や怪物たちを殺した。ついに90回目の決闘で邪悪なジャニック卿と従者の7人のリッチを倒した彼は、自分が事実上無敵であると確信する。そしてフンディングは己の剣術の哲学を明確にすることに取りかかった。60歳で世捨て人として高地砂漠の山地にある洞窟で暮らしながら、彼は己の知識を円環の書に書き記した。

その年フンディングはこう考えていた。帝国の多くの戦いに参加しあらゆる敵を倒してきた自分はもう、死ぬ準備ができていると。彼は洞窟に引きこもり、自分の戦術や秘術的な考えを他のソードシンガーたちと分け合うために記録していた。シンガーたちが彼を見つけたのは円環の書の完成後だった。彼はこの世を去り戦の神々に加わろうと、辞世の詩を作っていた。

60歳にして頑強であった彼はもう人生をやり遂げたと考えていた。だが仲間のソードシンガーたちは、それまでにないほどフンディングを必要としていたのだ。

レッドガードの歴史と英雄たち 第3巻Redguards, History and Heroes, V. 3

トーンの剣狩りはソードシンガーと平民を分離したが、最後の皇帝の出現が砂漠の帝国に最後の大きな争いをもたらした。皇帝と妃のエリザが、ソードシンガーたちを倒して人々から帝国の支配権を奪おうとしたのだ。ヒーラはオークと帝国の戦いの残党たちによる悪の軍勢を使ってシンガーを一人残らず見つけ出し、この世から消そうと決意した。

ソードシンガーの数は決して多くはない。過酷な砂漠では生まれる命も少なく、その厳しい環境では鉄の勇気と意志を持つ物しか生き残ることはできない。かくしてこの「シンガーの戦い」として知られる最後の争いが始まる。だがソードシンガーたちは、己の命や住まいを守るために力を合わせて軍を作り上げる準備も心構えもできてはいなかった。

見つかったフランダー・フンディングは辞世の詩を邪魔され、突然シンガーたちの指揮官にされた。彼が洞窟にこもり積年の知恵や戦略、シェハイの使い方について書き記す時間があったことを無名の戦の神々に感謝しなければならない。シンガーたちはキャンプを離れ不毛の丘や山々、「山々の父」たるハッツ山のふもとに逃れた。フンディングが静かに書き物をし、死に場所に選んでいた場所だ。生き残ったシンガーたちはそこで円環の軍を結成する。彼らはフンディングの教えを学んだ。彼の戦略や戦術、敵に大きな一撃をくらわせる最終作戦を授かったのだ。

フンディングは7つの戦いを考案した。それにより徐々にヒーラの軍勢を、最終決戦の地ハッツ山のふもとの荒野へ導いたのだ。彼はこの計画を「ハンマーと金床」と呼んだ。戦いの内にシンガーたちはフンディングの戦略や戦術を学んでいき、シェハイの使用についても成長する。7つめの戦いまでに敵を倒せる力を身につけるのだ。かくして6つの戦いが行われた。戦いは勝敗のつかぬまま、次の戦いへとなだれ込む。数で勝るヒーラの軍勢はフンディングの小さな軍を追うが、30倍の数の敵にも教えを受けたシンガーたちはひるまなかった。そしていよいよ舞台は整った。ヒーラとその軍はハッツ山のふもとに展開、大激戦となり、多くのシンガーが命を落とした。生き残るシンガーはわずかでも、ヒーラとその悪の帝国は滅ぶとフンディングは予想し、そのとおりになった。

最後にはフンディングと2万人弱のシンガーが生き残り、悪の軍勢は誰ひとり残らなかった。その日ハッツ山では30万人以上が命を落としたのだ。逃げ出し生き延びた残党は散り散りになり、再び徒党を組むことはなかった。

シンガーたちは集まりテントを畳み、命を落とした仲間を悼んだ。そしてフンディングに従い、シーウィンド地域の大きな港街、アーチに向かった。そこでフンディングは小さな船団を待たせていた。シンガーたちは砂漠を離れ、新たな地へ向かうのだ。砂漠の帝国ではもう彼らは歓迎されず、伝説として歌われ語られるだけとなった。最後の偉大なる戦士、シェハイのシンガーと円環の書は、その美徳を認めない地から去ったのだ。戦わぬ市民の目に、彼らは血にまみれた赤き者だった。自分たちが巨悪から市民を守ったということを、彼らは気にもとめなかった。

新たな土地へと海を渡るシンガーたちは新たな生活を受け入れることを誓った。名は改めるが過去の栄光を捨てはしない。彼らは最後の戦いを称え、新たな地をハンマーフェル、自らをレッドガードと名付けたのだった。

偉大なる戦いの王子フンディングに敬意を表し、ハンマーフェルの家庭では暖炉の近くの壁にくぼみを作り、円環の書を収めている。

様々な宗派:クラウン・レッドガードVarieties of Faith, Crown Redguards

帝国大学 ミカエル・カルクソル修道士 著

タムリエルに最も長くいるフォアベアーは第二帝国と強い結びつきがあり、帝国やブレトンと同じ神々を強く崇拝している。より保守的なクラウンは今も古代のヨクダの神々を崇めている。

クラウンの八大神:

サタカル(ワールドスキン):
アヌとパドメイの概念が融合した、全てを司るヨクダの神。基本的にサタカルは、世界を壊して次の世界を始めるというノルドのアルドゥインに似ている。ヨクダの神話でサタカルはそれを何度も行い今でも続けている。変化に耐えられる霊魂の誕生を促すために繰り返しているのだ。これらの霊魂は人物は最終的にはヨクダの神々となる。アリクルの遊牧民のクラウンに人気の神。

ラプトガ(長身のパパ):ヨクダの神々の主神。「長身のパパ」の名でなじみ深いラプトガは、「サタカルの飢餓」を生き抜く方法を最初に突き止めた神である。彼に従い、他の神々は「ウォークアバウト」を学んだ。これにより寿命を超えて存在し続けられるのだ。長身のパパは低位の霊魂たちにもこの方法を教えるため空に星を置いた。だがこれをたどる霊魂が多くなりすぎたため、ラプトガは過去の世界から助手を作り出した。この助手が、のちに定命の者の世界を作ることになるセプ(下を参照)である。

トゥワッカ(狡猾な神):
ヨクダの魂の神。世界創造の前、トゥワッカは誰にも構われぬ神だった。長身のパパがウォークアバウトの創造に取りかかると、トゥワッカは目標を見つけた。彼は碧落の岸の管理人となり、レッドガードが来世への道を見つけられるよう手を貸し続けている。

ゼェト(農園の神):
ヨクダの農耕の神。世界創造ののち父親との縁を切ったため、長身のパパは食糧の生長を困難にした。

モルワ(乳首の神):
ヨクダの豊穣の女神。ヨクダの神々の中でも重要であり、長身のパパの妻の中で最も愛されている。ストロス・エムカイを含むハンマーフェルのさまざまな地域で今も崇拝されている。モルワは常に4本腕として描かれる。「もっと夫たちを手にする」ためである。

ターヴァ(鳥の神):
ヨクダの大気の魂。ターヴァはヨクダの祖国が破壊されたのち、彼らをヘルネの島に導いたとして特に知られる。以来彼女はキナレスの神話に同化するようになった。ハンマーフェルでは今も船乗りたちに多大な人気を誇り、ほとんどの港町に彼女の祠が見られる。

オンシ(戦の神、骨を削る者):
ヨクダのラ・ガーダの優れた戦士の神。ナイフを剣にする方法を人間に教えた。

ダイアグナ(側面の刃のオリハルコンの神):
「二十七の蛇の民の虐殺」の頃のヨクダに起源を持つ、レッドガードの暴力的かつ陳腐な信仰対象。永遠を得たフーンディング(ヨクダの前進の神、下を参照)の化身だった。彼はオリハルコンの武器をヨクダの人々にもたらし、レフトハンド・エルフの敗北に一役買った。ラムリエルでは古代の力の最盛期にあったオルシニウムのオークたちに対し、絆の固い信徒たちの一群を率いた。

追加の神々とレッドガードの重要な崇拝対象:

レキ(霊剣の聖人):
長身のパパの娘であるレキは、優れた剣術の女神である。神話の時代、ヨクダのナ・トタンプはレフトハンド・エルフとの戦いで誰が先頭に立つかで争い、事態は行き詰っていた。剣聖たちは誉れ高き剣の腕に特に優れており、互角の勝負が続いたのだ。レキが「はかなき牽制」を教えたのち勝者が現れ、アルドマーとの戦いが始まった。

フーンディング(前進の神):
ヨクダの「不信心者に対する不屈」の霊魂。フーンディングは歴史上、レッドガードが仲間のために「前進」せねばならないときに姿を現している。タムリエルの歴史では、第一紀のラ・ガーダの侵略時に2度だけあったという。

マルーク(群れの王):
ラ・ガーダには敵神。第一紀にレッドガードに対しゴブリンたちを率いたが、フーンディングの軍が彼のゴブリンの大軍を襲った際に東へと逃げた。

セプ(蛇):
ヨクダにおけるロルカーン。長身のパパが霊魂に関する仕事の管理を手伝わせるために生み出した。だがセプはサタカルの飢餓によって正気を失ってしまう。そしてウォークアバウトより簡単な代替手段を作る手助けをするよう、一部の神々をそそのかした。もちろんそれが我々の知る世界である。セプに従った霊魂たちはここに囚われ、定命の者として生きることとなる。数々の罪で長身のパパに罰されるが、彼の飢餓は星々の間に虚無として生き続けている。この「空間ではないもの」は定命の者が碧落の岸に入るのを阻もうとする。

様々な宗派:フォアベアーVarieties of Faith, The Forebears

帝国大学 ミカエル・カルクソル修道士 著

タムリエルに最も長くいるフォアベアーは第二帝国と強い結びつきがあり、帝国やブレトンと同じ神々を強く崇拝している。より保守的なクラウンは今も古代のヨクダの神々を崇めている。

フォアベアーの八大神:

アカトシュ(時の竜神):アカトシュは八大神(シロディールおよびその各地方に普及している一大宗派)の主神であり、タムリエルのすべての宗教で登場する二つの神の一方である(もう一方はロルカーン)。一般に、始まりの場所に出現した神々のうち最初の神だったと見なされている。アカトシュの存在が確立すると他の神格も存在という過程を経るのが容易になり、世界中に様々な神々が登場したという。アカトシュはシロディール帝国の究極神であり、そこでは耐久、無敵、そして永劫に続く正当性などの資質の象徴とされている。

ターヴァ(鳥の神):
ヨクダの大気の魂。ターヴァはヨクダの祖国が破壊されたのち、彼らをヘルネの島に導いたとして特に知られる。以来彼女はキナレスの神話に同化するようになった。ハンマーフェルでは今も船乗りたちに多大な人気を誇り、ほとんどの港町に彼女の祠が見られる。

ジュリアノス(叡智と論理の神):ノルドの言語と数学の神であるジュナールとの繋がりがしばしばあるジュリアノスはシロディールの文学、法学、歴史と矛盾の神である。ブレトンの魔術師に最も好まれる。

ディベラ(美の女神):八大神の一員で人気のある女神。シロディールでは様々な分派が存在し、女性を尊ぶもの、芸術家や美学を尊ぶもの、性愛の指導を身上とするものなどがある。

トゥワッカ(狡猾な神):
ヨクダの魂の神。世界創造の前、トゥワッカは誰にも構われぬ神だった。長身のパパがウォークアバウトの創造に取りかかると、トゥワッカは目標を見つけた。彼は碧落の岸の管理人となり、レッドガードが来世への道を見つけられるよう手を貸し続けている。彼への信仰は、ハンマーフェルの国際的な地域でアーケイと結び付けられることが多い。また、フォアベアーには信仰されている

ゼェト(農園の神):
ヨクダの農耕の神。世界創造ののち父親との縁を切ったため、アカトシュは食糧の収穫を困難にした。ゼニタールと類似しており、その名で信仰されることも多い

モルワ(乳首の神):
ヨクダの豊穣の女神。ヨクダの神々の中でも重要であり、長身のパパの妻の中で最も愛されている。ストロス・エムカイを含むハンマーフェルのさまざまな地域で今も崇拝されている。モルワは常に4本腕として描かれる。「もっと夫たちを手にする」ためである。マーラと類似しており、フォアベアーによってその名で信仰されることもある。

ステンダール(慈悲の神):ステンダールは慈悲、慈善、正義、正しき統治の神である。レッドガードの「ギャラント(騎士)」にもっとも好まれている。

レッドガードの宗教に加えられている神

レキ(霊剣の聖人):
長身のパパの娘であるレキは、優れた剣術の女神である。神話の時代、ヨクダのナ・トタンプはレフトハンド・エルフとの戦いで誰が先頭に立つかで争い、事態は行き詰っていた。剣聖たちは誉れ高き剣の腕に特に優れており、互角の勝負が続いたのだ。レキが「はかなき牽制」を教えたのち勝者が現れ、アルドマーとの戦いが始まった。

フーンディング(前進の神):
ヨクダの「不信心者に対する不屈」の霊魂。フーンディングは歴史上、レッドガードが仲間のために「前進」せねばならないときに姿を現している。タムリエルの歴史では、第一紀のラ・ガーダの侵略時に2度だけあったという。

マルーク(群れの王):
ラ・ガーダには敵神。第一紀にレッドガードに対しゴブリンたちを率いたが、フーンディングの軍が彼のゴブリンの大軍を襲った際に東へと逃げた。

セプ(蛇):
ヨクダにおけるロルカーン。長身のパパが霊魂に関する仕事の管理を手伝わせるために生み出した。だがセプはサタカルの飢餓によって正気を失ってしまう。そしてウォークアバウトより簡単な代替手段を作る手助けをするよう、一部の神々をそそのかした。もちろんそれが我々の知る世界である。セプに従った霊魂たちはここに囚われ、定命の者として生きることとなる。数々の罪で長身のパパに罰されるが、彼の飢餓は星々の間に虚無として生き続けている。この「空間ではないもの」は定命の者が碧落の岸に入るのを阻もうとする。

アイベアの試練

The Trial of Eyevea

クワマーはいかにして靴を失ったかHow the Kwama Lost His Shoes

ストンフォールの灰と砂にまみれて
小さなクワマーが道に迷った
ひっく、ぐすんとママを呼ぶけど
火山はびくともしない。

食いものあさりが通り過ぎ
砂とお金を背中にかける
はずみで転んで右前足の靴をなくした
おやつを持ってくればよかったのに。

作業員が引っ張って
時間の無駄を責めていく
はずみで転んで左後足の靴をなくした
足をひきずって登りに向かう。

戦士が怒鳴り声を上げ
汚いショークにかみつき襲う
はずみで転んで残りの靴をなくした
怪物を避けて、こっそり歩く。

そして女王に見つかった
泣いて涙が顔を流れる
靴をなくした?女王は彼の甲羅を割って
不名誉を責めて叫びながら、彼を食べてしまった

ロビヤーの野菜畑Robier’s Vegetable Garden

隣人によく「おじさん」と呼ばれるロビヤーという名のブレトン、彼は裕福で大規模な農園を所有しており、その規模はそこの作物で何十という村を養えるほどであった。ハイロック中で味も見た目も最高の作物を作るために、農奴は昼夜を問わず畑に出て、爪を使ってアブラムシやイモムシを取り除いていた。

ある時、怪物が畑を侵しにやって来た。農奴の目と鼻の先で、奴は貪り食った。ジャガイモ、キャベツ、ニンジン、レタス、ラディッシュ、そして豆を。

奴を捕獲しようとした農奴の試みはうまくはいかなかった。やっとの思いで掴みかかろうと前に飛び出しても地面に置かれた作業具で怪我をする!そうでなければ、その怪物が白昼堂々と背後から近づいてきて、飛び掛かられた後に首を折られてお終い!

ロビヤーおじさんは何故か呪われている、そしてあの怪物は彼が過去に不当に扱った人の復讐か何かだと思われるようになった。農奴は畑を放棄し、怪物の手によって死ぬよりも1週間晒し台の刑を受けた方がましだと言いだすほど。

ロビヤーおじさんの畑はあっという間に飢えた怪物によって坊主にされ、ついに彼は崇拝を始めるようになった。館の中に閉じこもり、彼は神々に懇願した。しかし彼らは答えない。ロビヤーの耳に入るのは床板の下、防壁の内側、そして食べ残しを貪り食った戸棚で怪物が引っ掻きまわす音だけ。

夜の暗闇の中、寝室で体を丸めるロビヤーは、最後のロウソクが小さくなって燃え尽きるのを見届けた。その後、彼も他と同じように怪物に食われるのであった。

楽しい殺戮者のサーカスCircus of Cheerful Slaughter

幸福は孤独
  幸福は孤独
    幸福は孤独
          幸福は孤独
            幸福は孤独
              幸福は孤独
                幸福は孤  独
                  幸福は孤独
          幸福は孤独
  幸      福は孤独
  幸福は孤      独
  幸  福は孤      独

孤独は幸福

  幸福は孤独
    幸福は孤独
      幸福は孤独
          幸福は孤独
            幸福は孤独        
              幸福は孤独
                幸福は孤      独
                  幸福は孤独
          幸福は孤独
  幸      福は孤独
  幸福は孤      独
  幸  福は孤      独

孤独は幸福

幸福は孤独
  幸福は孤独
    幸福は孤独
          幸福は孤独
            幸福は孤独
              幸福は孤独
                幸福は孤      独
                  幸福は孤独
              幸福は孤独
          幸福は孤独
    幸    福は孤独
  幸福は孤      独
  幸  福は孤      独

孤独は幸福

幸福は孤独
  幸福は孤独
    幸福は孤独
          幸福は孤独
            幸福は孤独
              幸福は孤独
                幸福は孤      独
                  幸福は孤独
              幸福は孤独
          幸福は孤独
    幸    福は孤独
  幸福は孤      独
  幸  福は孤      独

孤独は幸福

幸福は孤独
  幸福は孤独
    幸福は孤独
          幸福は孤独
            幸福は孤独
              幸福は孤独
                幸福は孤      独
                  幸福は孤独
              幸福は孤独
          幸福は孤独
    幸    福は孤独
  幸福は孤      独
  幸  福は孤      独

孤独は幸福

幸福は孤独
  幸福は孤独
    幸福は孤独
          幸福は孤独
            幸福は孤独
              幸福は孤独
                幸福は孤      独
                  幸福は孤独
              幸福は孤独
          幸福は孤独
    幸    福は孤独
  幸福は孤      独
  幸  福は孤      独

孤独は幸福

幸福は孤独
  幸福は孤独
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                  幸福は孤独
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  幸福は孤      独
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孤独は幸福

幸福は孤独
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孤独は幸福

幸福は孤独
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孤独は幸福

聖域の贈り物A Gift of Sanctuary

ある時、幼い少年が両親と共に湖の畔へ向かった。彼は裕福な家の御曹司であった。大人達が気取り屋の仲間と小屋でワインをちびちび飲む傍ら、少年は泥遊びでもするようにと放置された。蔑まれている気がした少年はひどく悲しみ、1人で友達を探しに行くことにした。

友達探しにそう時間はかからなかった。葦の葉の中で驚くほどお喋り好きなアヒルを見つけたからだ。そのアヒルは少年が想像でしか描けないような場所のことを話してくれた。少年はすぐに物語の虜になったが、そんな場所を自分の目では決して見ることができないと思うと悲しくなってしまった。そんな少年にアヒルが笑ってこう言った。それは違う!一緒に作るんだ!

少年とアヒルは水の中をどんどん進んで湖に浮かぶ小さな島まで行くと、木の枝と砂を使って力を合わせて小さな小さな家を建てた。しかし1時間も経たない内にアヒルがこう言いだした。こんな家は君に相応しくない。宮殿が相応しい!でも接合に使うモルタルが足りない。大人が1人でもいればなぁ。

少年は小屋に戻ると、用を足そうとして外に出てきた貴族にちょうど出くわした。そんな有頂天な貴族を少年は容易く丸め込み、島まで案内したのだ。戻ったところでアヒルが貴族に飛び掛かり、その喉を切り裂く。彼の血と肉をモルタルに、さらに骨を梁に使った。少年の心は躍ったが、宮殿はもっと大きくなければならない!

少年は何度も何度も戻って、壮大な宮殿を見せようと酔っ払い達を集めた。そしてアヒルは何度も何度も彼らの体の一部を壮大な宮殿に加えていったのだ。やがてその尖塔やアーチは乾き、アラバスターや金に変化していった。

両親が少年を迎えに来た時、彼はその壮大な宮殿を2人に見せた。2人は大きな声で叫ぶと、少年とアヒルを置いたまま走り去ってしまった。しかし少年はちっとも悲しくなかった!少年とアヒルは共に島で陽気に過ごした。そのうち島は霧に閉ざされ、歓喜と陽気に満ちた永遠の世界へと誘われていったのである。

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